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統計力学入門(ミニマム) 1:統計力学入門の為のゲーム

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統計力学入門(ミニマム) 1:統計力学入門の為のゲーム
統計力学入門(ミニマム)
1:統計力学入門の為のゲーム
テーブル1つに 対して、 6人(ある いは6チーム) を割り当 て
て、サイコロの出 目を対応させ る。次 のルールでゲームを 行う。
第一段階:初期状態 作成
(0)中央に積 み上げた チップの山 から、サイコロ を振るご と
に出目にあたる 人が1枚 ずつとって ゆく。中央の山 がなくな っ
たら、第二段階に進 む。
第二段階:バクチ開 始
サイコロを2回振る 。
(1)1回目の出目 の人は、持っ て いるチップを中央に 出す。
(2)2回目の出目 の人は、中央 に 出ているチップをと る。
これを延々と繰り返 す。
( 注 意 1 ) チ ッ プ の 数 は 、 と り あ えず 6 6 = 3 6 枚 く ら い が
適当。
(注意2)第 二段階で、 1回目の出 目で所有チップ が0にな っ
た人が指定され たら、も う1回目の 振り直しをする 。つまり 借
金まではさせないル ール。
(注意3)2 回目の出目 にあたれば 、所有チップが 0の人も 晴
れてチップを1 枚もらえ ます。つま り破産しても運 が巡って く
ればまたチップがも らえるルール で す。
問 題 1 ­ 1 : も し 暇 な ら 、 ゲ ー ム の結 果 作 ら れ る チ ッ プ 分 布 関
数を実際に行って求 める。>>課 題 1へ
問題1­2:チップ の分布関数を 理 論的に求める 。(必須)
問題1­3:面白い 例を考えよ 。(必 須)
問題1­4:統計力学 的に面白いル ールを考えよ 。
(可能なら 。)
課題1:チップ 分布関数 をコンピュ ータにサイコロ を振らせ て
求める。( つまり、 モンテカル ロシ ミュレーション を行う 。)そ
の際、チップの 総数依存 性等、適当 に自分でパラメ ータや設 定
を変化させて、そ の結果分かる 事を レポートにまとめよ 。
( も し、
コンピュータが使え るならやって み ると良い。)
1
解答(問題1­1 ):
0∼1枚の人が多数 、大チップ持 ち が少数いると思いま す。
『何を説明している か?』
1:この世界で は、ルー ルは平等で す。でも少数の 金持ちと 多
くの貧乏人がで きます。 金持ちが金 持ちなのは、ず るい事を し
た訳でも、才覚にあ ったからでも あ りません。偶然です 。
2:また、長時 間平均を 取れば、み んな同じ平均値 に至る事 は
はっきりしてい ます。金 持ちは、そ れを維持する努 力をしな い
限り実はいずれは没 落する運命で す 。
解答(問題1­2 ):
1回ごとにどの ように分 布が変化し てゆくのか?と 考えると 、
かえってわからなく なると思いま す 。
『 元 々 の チ ッ プ をM 枚 、 プレ イ ヤ ーを ( 一 般 化 し て )N 人 と し
て、チップがどのように分配されるのか?ここでxは、ある人
の持つチップの枚数 をxとして 、そ の確率を表す関数 (数列 )p(x;
N, M)を求めよ。』とい う問題にすり 替えると良いでしょ う。以
下、N人のプレ イヤーを分け る仕切 りを白チップ(N-1枚必要)、
お金にあたるこれま でチップとよ ん でいたものを、黒チップ(M
枚)とします。
図:チップの所有枚 数と並べ方の 対 応。
ま ず 、 黒 M 枚 、 白 (N-1)枚 の チ ッ プ に 通 し 番 号 を つ け る 。 こ
れらを並べる場 合の数、 すなわち左 から右へと並べ る順列は 、
明 ら か に (M+N-1)! 、 し か し 、 白 の チ ッ プ の 中 に 区 別 は あ り ま
2
せんし( 単なる 仕切だ からで す。)、またM枚の チップ の中に も
本来区別はありませ ん。従っ て、最 初に求めた順列を 、(N-1 )!
とM!で割る必要があり ます。従っ て、分配の仕方は
W (N, M) =
(M + N
1)!
M!(N 1)!
と、これだけありま す。これは、 全 体の場合の数です。
ここで、ある人がx枚チップを持っていたとします。残りの
人たちの所有の場合
の数は、
!
W (N "1, M " x) =
( M " x + N " 2)!
(M " x)!(N " 2)!
と、なります。従っ て、条件付き 確 率は、
W (N "1, M " x) ( M " x + N " 2)! M!(N "1)!
=
!
W (N, M)
(M " x)!(N " 2)! ( M + N "1)!
p(x;N, M) =
と求められる事にな ります。式を 整 理すると、
p(x;N, M) =
!
!
(N "1) • M(M "1) # # # (M " x + 1)
( M + N "1) # # # ( M " x + N "1)
と な る の で す が、 分 子 の M(M-1)…(M-x+1)の 部 分 は 、 ほ と ん
x
x+ 1
どM 、(M+N-1 )…(M+N-x-1)の部 分は、ほ とんど (M+N) 、
そしてN-1は、ほとんどNと 見なせ ば、
x
N " M %
p(x;N, M) =
$
'
M + N #M + N&
となります。(スターリン グの公式 を使ってもでます 。)
注意:実は、こ の結果は 、近似を取 りつつもきちん と規格化 さ
れています。
!
さて、これに、N=6, M=36を代 入して、x依存性をプロ ット
してみて下さい 。0からxは 始まる ので、x=0の時 を求めると 、
6/42, そ れ に 順 次 36/42 が か か っ て ゆ き ま す 。 プ ロ ッ ト し て
みると次のペー ジの図の 様になりま す。指数関数的 減衰を示 す
事がわかります。
3
図: p( x; 6, 36)のプ ロット。横軸は 、x。縦軸は、p( x; 6, 36)。
解答(問題1­3 ):
(例1:二原子分子 の振動エネル ギ ー分布)
振動エネルギ ーを、エ ネルギー量 子単位でやり取 りしてい る
6つの2原子分 子と考え ても良い。 全エネルギーは 、36枚 で
す 。 そ し て す っ て ん て ん の 貧 乏 人 は 零 点 振 動 状 態 (h ν /2 )に い
るわけです。また、1枚もっている人は、振動エネルギー3h
ν/2、2 枚持っている 人は、振 動エ ネルギー5hν/2 と対応さ
せて下さい。n枚所有 なら、もちろ んhν(n+1/2)です 。
図:全エネルギ ー
一定の場合の二
原子分子の集団 。
4
(この括弧内 は、アン サンブルに ついて勉強した 後の為の コ
メントです。この 全系は、ミク ロカノ ニカルアンサンブル です。
つまり、N, V, E、、、というか Eで系 を指定しているので す。で
も 熱 力 学 的 極 限 で は Eと 対 応 の つ く 温 度 T で 指 定 し た 時 の 振 動
状態分布状況と 似たり寄 ったりであ って欲しいもの です。そ の
とき、少数の高 エネルギ ー振動状態 と多数の低エネ ルギー振 動
状態という分布にな ります。
exp["E n / kT]
に、なりそうで す。もち ろん、ルジ ャンドル変換な り、当重 率
の 原 理 を 置 い た 上 で E-En は 小 さ い と し て テ ー ラ ー 展 開 す る な
!
りして、カノニカ ルアンサンブ ルに 移る必要はあります 。後で、
少しまじめに導 出します 。ここは鷹 揚に考えると、 温度一定 の
世界の分布関数 はボルツ マン分布( 上の式)でした が、対応 し
ています。)
(例2:リニアに成 長するポリマ ー )
体 積 Vの 領 域 の 中 に 、モ ノ マ ー が分 散 し て い る と する 。 モ ノ
マーが、ポリマ ーの片側 に引っ付い たり離れたりし てゆくと す
る。会合定数が ほとんど モノマー濃 度に依存しない とすると 、
長さの分布関数はほ ぼ指数関数に な る様に思える。
チップを取ったり 外したりする 過 程が、ランダムだとす ると、
概ね上で考えた ゲームの プロセスに なりそうです。 多分これ は
正しいでしょう 。ただし 、会合定数 がほとんどモノ マー濃度 に
依存しない状況 とは何か について考 えてみる必要が ありそう で
す。この条件必 要でしょ うか?それ から、チップを 使ったゲ ー
ムの場合のチッ プ数ゼロ にあたる数 値はモノマー数 がゼロの 場
合なのでしょう か?『模 型としてそ のままで良いの か?』と い
う若干の疑問が残り ます。
図:リニアに成長す るポリマー。
●はモノマー。
5
——————————————————————————————
予習[理想気体1]( 講義中にはや り ません自宅で復習す る事)
気体分子運動 論で理想気 体の状態方 程式までたどり 着いてく だ
さい。分からな ければ、 高校の教科 書でも何でも良 いので、 そ
れを見て勉強してお いて下さい。
ここは、高校の物理の復習です。
理想気体の仮定:1原子気体分子を想定します。この気体分子は壁とは衝突するが、
気体分子同士は(本当にたまーにしか)相互作用をしないとします。
3
一辺が L で体積 V=L の立方体の箱の中に気体は入っています。(図:理想気体)圧
力 P は、 箱 の壁 が 単位 時間 、 単位 面 積あ た りに 気 体分 子か ら 受け る 力の 平均 と
定 義し ま す 。 この壁が気体分子から受ける力を計算する為に力積と運動量変化の間に
ある関係を使います。
一つの気体分子の運動の x 成分のみを考えます。固定された x 軸に垂直な壁 A を考
え、分子と壁との衝突に完全弾性衝突を仮定すると、衝突時の運動量変化は
(衝突時における気体分子1つの運動量変化)=mp(­vx­vx)=­2mpvx
です。箱の x 軸方向の長さは L なので、壁 A への衝突間隔は、x 軸方向に距離 2L です。
従って、気体分子は、
(衝突時間間隔)=2L/vx
の周期で同じ壁 A に衝突します。従って、
(時間 t の間に衝突する回数)=vx t / 2L
です。衝突一回あたりに壁が受ける力を衝突周期で平均したものを Fx と置いて、力積
は、
Fx t =(vx t /2 L)(2mpvx) = mp vx2 t /L
となるので、
Fx t = mp vx2 /L
6
となります。ここで、気体に流れ等は無く、全気体分子の速度の平均値<v >はゼロであ
るとします。この力 Fx は気体分子一つあたりの平均力ですから、圧力 P は、気体分子
2
数 N をかけて、(壁 A の表面積)=L で割ればよい。よって、P は、
P=
=
F
L2
2
N
m p v x,i
1
2 "
L i
L
N
1
2
= " m p v x,i
V i
2
と表現できます。N 個ある気体分子速度の x 成分の2乗を平均したものを<vx >とする
!
と、
P =N mp <vx2>/ V
さらに考えている気体の場合、速度 v は、x, y, z の各方向に対して区別は無いので、
速度 v の2乗の平均値は、
2
2
2
2
2
2
2
2
< v >=< vx + vy + vz >=< vx >+ < vy >+ < vz >=3< vx >
となります。よって、圧力は
P =N mp < v 2> / 3V
と書けます。上式は、圧力 P は、気体の粒子数 N に比例し、体積 V に反比例していま
す。この点で、理想気体の状態方程式と整合性がとれています。更に、圧力 P が気体
2
分子の平均運動エネルギーEK=mp < v > / 2 に比例する事もわかります。しかし、理想
気体の状態方程式そのものではありません。単原子理想気体分子の平均運動エネルギー
は、
mp < v 2> / 2 = 3kT/2
と考えて、
kT = mp < v 2> / 3
2
と置けば、P =N mp < v > / 3Vと理想気体の状態方程式PV=NkTの両式が一致します。
この事から、理想気体の場合、温度は分子の運動エネルギーの平均値に比例していると
考えて良さそうです。(ここまで、高校の内容。)
——————————————————————————————
7
2:統計力学の基本マニュアルの具体例
3段階のステップ
1: 分配関数を書く
> 2:
熱力学関数 に直す
> 3: 偏微分する 事で熱力 学に接
続
を通じて、統計力学 の基本的な取 り 扱い方法を実習しま す。
ここでは、
『物 質の微視的モ デルか ら物質の巨視的モデ ル(状態
方程式や熱容量の表 現)への接続 が 、統計力学の目的で ある。』
とします。
ex.) 物 質=格子気体 の場合の3段 階のステップ
1: 格子模型で W を求 めた。
> 2: 熱力学関 数 S に直した。
>
3: V や U で偏微分する。
その結果、状態方程 式を得る。
問題2­1 [理想気 体2]
PV=N kTに たどり着くに は、他にど んな方法があります か?考
えてみてくださ い。その 方法と気体 分子運動論の違 いを議論 し
てくださ い。( 違 い を具体 化させ て ゆく事自 体、 課題の 一部で
す。)
解答(問題2­1 ):
[方法1:格子模型]
現象の本質を 掴みたい ときには、 格子模型は便利 です。と り
あえず、コンピュ ータなしで、手計算 も計算出来る事が多 いし、
手計算で計算で きれば自 分が何をや っているかも明 快です。 お
まけに微視的モ デルを変 化させた時 もどんな変化か やった本 人
にとって明快だから です。
( 勿論、他 人が聞いても理解で きれば
明快です。)
ボルツマンの原理:S= k ln W か ら S を求めることに します。
ここで W は、粒 子の配置の場 合の 数です。 S と他の物理量 P
や V などを接続 してゆく必要 がある わけですが、そんな時には 、
準静的過程の時に成 り立つ式:dU (S ,V)= TdS-PdV を思い出し
8
てもらえば良い です。マ ニュアル編 の表を探しても らっても 良
いのですが、物理 量 X とその偏 微 分を結びつけるには 、 dX の
表現があれば良 いので、 自分で導い てみればより明 確に理解 で
きるでしょう。そこ で、dS を左辺 に移して式を整理し て、
dS =
1
P
dU + dV
T
T
と書き直します 。
(分からな ければ、基礎化学熱力学が理 解でき
ていないと思い ます。質 問するか、 戻って復習する かをして 下
!
さい。)
ところで、S は U と V の関数と見なす事が出来るので、
S(U,V) の全 微 分は、( 通常 扱う 連 続 微分 可 能な 関数 な ら) かな
らず、
dS =
"S
"S
dU +
dV
"U
"V
と書く事が出来ます 。
(こち らは、全 微分と偏微分の数学 の問題
です。基礎化学 熱力学か 物理化学、 量子化学などで 出てきた 偏
!
微分と全微分が 分かって
いれば良い だけの話なので 、分から な
ければそこまで戻る か、質問する 事 。)
係数を比較すると 、
"S 1
=
"U T
"S P
=
"V T
が得られます。 以上、ス
!テップ3の 前準備です 。(ここ までは 、
化学科1、2年生の 内容です。新 し い事はありません 。)
ここで、ステ ップ1か!ら始めます 。例えば、2式 目を使う 事
にして、エントロピー S を体積 V の 関数として記述でき れば良
い 事 に な り ま す 。 そ の 為 に 、 W(V) を 求 め る 必 要 が あ り ま す 。
[図:気体の格子模 型]の黒丸が理 想 気体分子で、その数 が n 個
であるとして、マス 目の総数 が N 個ならば(注 意:この N は体
積に比例する。 )、比較的 簡単に W(V) は 計算できます 。
9
図:気体の格子模型
!"#$%&'
!()*"+&,
!-"*"+&.
!)*/%01&.2,
理想気体分子は 互いに相 互作用しな いので、互いに 重なって 配
置しても良いと します 。(『重なって はいけない』と して計算し
ても希薄な気体 なら同じ 結果になり ます。スターリ ングの公 式
を使えば簡単で すが、物 理的考察で 『重なっても良 い』とし た
場合と同じ式になり ます。)この時 、n 分子の配置の場合の数は 、
W(N)=N n / n!
です。ここで、 同種分子 は位置が入 れ替わっても状 態として 区
別できないので、n! で割っ てありま す。
(分からなけ れば、3粒
子の場合に3! で割らな ければなら ない事を絵を描 いて確か め
て下さい。) ここで、1マ スの大き さが v とすると
dV=vdN
と変数変換が出来ま す。従って、
dS 1 " dS %
= $ '
dV v # dN &
となり、ボルツマン の原理: S= k ln W
!
を使 って、
n
"
%
d$k ln N n! '
dS
#
& nk
=
=
dN
dN
N
( )
となります。よ って、上 のエントロ ピーの体積微分 の式を用 い
て P/T=nk/vN=nk/V と 計算でき ました。これは 、理想気 体の
!
状態方程式 PV=nkT です。 よく考 えてみると、新しい 知識は
ボルツマンの原理 S= k ln W だ けです。(高 校までの算数 は
前提にしています 。)
10
課題2(宿題)
:上記の場合 の数は、理想気体分子が重な っても
良いと仮定して計算 されていた。
2 ­ 1 : も し 、 気 体 分 子 同 士 が 重 なっ て は い け な い 場 合 は 、 場
合の数はどのように 記述されるか ?
2 ­ 2 : そ の 場 合 の 数 を ス タ ー リ ング の 公 式 を 用 い て 適 切 に 近
似し、状態方程式が PV=n kT と な る事を示せ。
2­3:スターリング の公式が適用 できる条件を考察す る事で 、
なぜ結果が PV=nkT で一致する の かを考察せよ。
[問題2­2]
同じ格子模型ともう 一つの関係式
"S 1
=
"U T
について考えよ。
解答(問題2­2 ):
!
今、格子模型 を使って導いた S は 、U に完全に独立です 。従っ
て、 1/T=0 すな わち T= 無限大と なります。矛盾では ないが 、
今の理想気体が 、不完全 な模型に過 ぎない為に起こ る問題点 で
す。熱力学関数 S ( U, V, Ni )に問題 があるのです。今、 我々は
理想気体の S を求めるにあた り、分 子の配置のエントロ ピーに
しか興味を持た なかった 。つまり、 分子の運動量に 関する情 報
をいっさい無視 しました 。状態方程 式に関してはそ れでかま わ
なかったのです 。しかし 、エネルギ ーに対する分配 も考える 必
要があります。
掟破りですが 、いきな り結論から 見てみます。エ ネルギー が
0から E までの間にあ る場合の数を 書き出せば、
3n /2
3n /2
Vn
Vn
(2"mU )
W (0,U) =
=
*
$3
'
$3
' n!
h 3N n!#& n + 1) h 3N #& n + 1)
%2
(
%2
(
(2"mU )
これは、複雑な かたちを している様 に見えますが、 配置に関 す
る場合の数と運
動量に関 わる部分が 完全に独立であ る事を示 し
!
ています。従っ て、状態 方程式の情 報には運動量に 関わる部 分
は無 関係 と 言う 事に なり ま す。 実際 、 x>>1 で使 え るス ター リ
ング式
"( x + 1) ~ x x e#x
!
11
と 、( い わ ゆ る ス タ ー リ ン グ の 公 式 x!= x xe"x の 連 続 関 数 版 ) を 使
えば、
3n /2
! *
2/3
4 "mU # V & )5/3 W (0,U) = , 2 % ( e /
+ 3h n $ n '
.
よって、
!
# 3 4 "m U
V 5&
S = kn% ln 2
+ ln + (
$2 3h n
n 2'
これを U で偏微分してみると 、
!
"S
3
= kn
"U
2U
よって、
!
3
U = knT
2
これは、(定 積)熱容量が
!
3
CV = Nk
2
である事を意味しています。なお、この本当の S を求める
課題は、もし関 心があれ!ば、例えば 久保亮五の統計 力学の教 科
書(共 立出 版) に書 いて あり ます。(註: Γ (x )は 、ガ ンマ 関数
といういわば、x!の変数が実数になった関数。この特殊関数
は、おそらくご 存じない 方が多いの でここでは、完 全なエン ト
ロピーの表現を求め なかったので す 。)
とりあえずは 鷹揚に『 粒子の配置 の場合の数を勘 定すれば 、
状態方程式について は議論できる 。』と言う事で 良し としまし
ょう。だって、 配置をキ チンと考慮 できれば、状態 方程式が 求
められ、状態方 程式が求 められれば 、相図が議論で きるので す
からそれだけでもか なりのもので す 。
[宿題の解答と解説 終わり。]
12
3:ミクロカノニカル集団とカノニカル集団
実は、ここま で考えた のはミクロ カノニカル集団 です。そ れ
以外にカノニカ ル集団等 があります 。これら統計集 団を選ぶ と
言う事は、熱 力学で 、熱力学関数 とし て、U ( S, V, N )を選 ぶのか、
F ( T, V, N ) を 選 ぶ の か 、 G ( T, P, N ) を 選 ぶ の か 、、、 と い っ た 事 と
同じ事です。
この3章では、カ ノニカル集団 に ついて考えます 。
『ミクロカ
ノニカル集団だ けでいい じゃないか ?』と言う方も いるかも し
れません。でも 熱力学の 時にも適切 な熱力学関数を 選ぶのが 現
象を理解する上 で大事だ ったと思い ます。それと同 じです。 た
だし、もう少し 別の理由 もあります 。それは例えば 、前の章 で
出てきたΓ(ガ ンマ)関 数の様な小 難しい関数を扱 わずにす む
方法を与えるた めでもあ ります。特 殊関数の直感的 理解は難 し
いですからね。
ここまで、等 重率の原 理など、正 統派の統計力学 ならきち ん
と学ぶべき基礎 をすっ飛 ばしていま すが、実は、理 想気体な ど
の実例を見れば すごく当 たり前に見 える仮定です。 この3章 だ
けは、やや正統派よ りの説明をし ま しょう。
[ミクロカノニカル 集団]
理想気体で物事を 考えた時に 、S = k ln W としました 。まず、
エントロピー S は、 S ( U , V )です。 エントロピーは示量 的だっ
た事を学んだはずで す。
(こ れも基 礎化学熱力学)だか ら、エン
トロピーは粒子 数に比例 します。つ まり、粒子数を 指定しな け
れば、エントロピー は決まらない の で、 S ( U , V, N )と書くべき
でしょう。
さてミクロカノニ カル集団とは 、 U , V, N を指定 する事で決
まる統計集団です 。ある ( U , V, N )が 指定された時に 、図の様に
起こりうるすべ ての状況 を考え、そ れらがすべて等 しい確率 で
実現されている と言う仮 定をおきま す。これが等重 率の原理 で
す。
13
図:等重率の
原理。これら
の配置の出現
確率は皆等し
いとする。
模式図を書きに くいので 、図では、 2章の課題と同 じく配置 し
か考えていませ んが、運 動量につい てもあり得るす べての場 合
を考え、等重率の原 理をおきます。ただし、
『内部 エネルギー=
(運動エネルギーと 位置エネルギ ー の総量)は 、U である場合
のみを考える 。』という縛りがあ り ます。(実際は、δU の幅の
中に押さえ込む様な 数学的操作を 考 えますが。)
その結果、分 配関数= 確率分布の 規格化定数は、 古典論的 な
粒子の場合、
"0 (U,N,V ) =
1
h
3(N )
$
N ! ( H =U )
d#
となります。こ れは、H =U の条件下 で積分するので簡単 にはい
きません。ただ
! し先ほど の理想気体 の様な場合は、 相互作用 を
考える必要がないの で、
『場 合の数』になって簡単な計算 ですむ
わけです。量子 論的な場 合はもっと 分かりやすいの で、マニ ュ
アル編を見て下さい 。
[カノニカル集団]
それに対して、カ ノニカル集団 は 、 T , V, N を指 定する事で
決まる統計集団 です。つ まりやはり 基礎化学熱力学 で学んだ ヘ
ルムホルツの自由エ ネルギー F ( T , V, N )に対応していま す。(ヘ
ルムホルツの自由エ ネルギーは、 A ( T , V, N )と書か れる事もあ
ります。)確率 分布関数とし てボル ツマン分布をとりま す。古典
論的な場合の分配関 数は、
14
ZN =
1
3N
N !h
%e
" #H N
d$
となります。ここ で HN は N 粒 子系 のハミルトニアン( 勿論、
古典力学のハミ ルトニア ン)です。 やはり量子系も マニュア ル
!
を参照してみて 下さい。 ハミルトニ アン∼全エネル ギーは、 粒
子間相互作用を u ( x 1 , x 2 , x N )として 、( x 1 , x 2 , x N は、それぞれ
の粒子の位置ベクト ルです。 )
N
pi 2
+u(x1,x 2 ...x N )
i=1 2m i
H N (p1,p2 ...pN ,x1,x 2 ...x N ) = "
です。ですから、分 配関数の積分 の 部分は、
!
* 1 $ N p2
'exp
1 ," kT &# 2mi +V (x1,x 2 ...x N ))/ d0
% i=1
(.
+
* 1 N p2= 1 1 2 2 2 1 exp," # i /dp1dp2 ...dpN
+ kT i=1 2mi .
"3 "3
"3
3 3
!
3
* 1
111 exp,+" kT u(x ,x ...x
1
V
2
N
)/ dx1dx 2 ...dx N
.
です。一見して分か るのは、配置 x の積分と運動量 p の 積分は
独立して行える と言う事 です。これ が最大のご利益 です。そ れ
だけではありません 。運動量 p の部 分の積分には、ガ ウス関数
の公式
#
$ exp[ax ]dx =
2
"#
%
"a
を適用して簡単 に実行で きます。そ して運動量の形 は、液体 だ
ろうが気体だろ うが変わ
らないので 、公式として求 められる 事
!
になります。その一 方で困難はす べ て、 x の積分つ まり配置積
分に押し付けられま す。
課題3­1[理想気体 2]
理想気体のミク ロカノニ カル集団に ついて分配関数 を求め、 さ
らに状態方程式を求 めよ。
解答3­1
ま ず 、理 想 気体 は 相互 作 用し ま せ ん。 従 って 、 u ( x 1 , x 2 , x N )
=0 です。従って、粒 子配置の積分 に関する部分は、
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"""
dx1dx 2 ...dx N = V N
V
と、簡単に実行 できてし まいます。 一方、運動量に 関する積 分
は、ガウス関数の公 式を使って 、( すべて粒子の質量 は m とし
!
て。)
3N
% 1 N p 2(
, , " " " , exp'# kT $ 2mi *dp1dp2 ...dpN = (2-kTm) 2
&
)
#+ #+
#+
i=1
+ +
+
と、やはり非常に 簡単に求める 事が 出来ます。これら を使って、
理想気体のカノニカ ル分配関数
!
ZN =
3N
1
N
2 V
3N (2"kTm )
N !h
が、求められま す。意外 に簡単でし た。これを巨視 的な物理 量
と関係づけます 。マニュ
アルの方を 見てもらえば分 かる様に 、
!
Z N は、ヘルムホルツの自 由エネル ギー F ( T, V, N )と
F ( T, V, N )=­ kT ln Z N ( T, V, N )
で結ぶ事が出来 ます。一 方、基礎化 学熱力学とその 後の物理 化
学でやった様に、
dF = "SdT " PdV
(+µdN )
で、ありまた数学的 に、
!
# "F &
# "F &
dF = % (dT + % (dV
$ "T '
$ "V '
# # "F & &
% +% ( dN (
$ $ "N ' '
なので、
!
# "F &
% ( = )P
$ "V '
が得られます。こ の F に分配関数 から求めた F ( T, V, N )を代 入
し て V で 偏 微 分 す れ!
ば 、 た ち ど ころ に 理 想 気 体 の 状 態 方程 式
PV = N k T が得 られます。F の T 微分 の方もやってみると 良いの
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ですが、今回は 比較的容 易に理想気 体を完全に特徴 づける巨 視
的物理量の関係 式をすべ て得る事が 出来ました。こ れが、カ ノ
ニカル集団を考える ご利益の実例 で す。
[ミクロカノニカル 集団からカノニ カル集団へ]
折角なので、 利用方法 だけでなく 、便利で使いや すいカノ ニ
カル集団をミクロカ ノニカル集団 か ら導きだしてみよう 。
( ここ
だけちょっと数学的 に難しいかも 知 れません。)基礎 化学熱力学
で考え た様 に、孤 立系 (U, V, N )一 定の前 体系 を考え て、 その
一部が着目する 系だと考 えます。図 に示した様に周 囲の系が 十
分大 きい とす ると 、周 囲の 系を 、あ る温 度の 熱 浴 であ るか の
ごとく見なす事 が出来て 、着目系は 等温定積系と考 えられる 事
になります。まとめ れば、
全系=ミ クロカノニカ ル 集団として扱える。
着目系 =カノニカル 集 団として扱える。
となります。
(78/09:;23425$%'()*
!"#!$%&'( )&*
(+,-./01234251$%6'()6*
図:孤立系(ミ クロカノ ニカル)の 中にエネルギー をやり取 り
できる壁で出来た着 目系(カノニ カ ル)がある。
少し前に述べた 様に『等 重率の原理 』からミクロカ ノニカル 分
布 Ω で扱えば良 い。ミク ロカノニカ ルでは内部エネ ルギーが 固
定されている一 方で、カ ノニカルで は温度が指定さ れていて 、
エネルギーのず れは許さ れています 。そこでそのず れを見積 も
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ります。
十 分巨 大な 熱 浴 部分 の エネ ルギ ーを E B とし て、 熱浴 ( E B )
+ カ ノ ニ カ ル 系 ( E l )で エ ネ ル ギ ー 一 定 の ミ ク ロ カ ノ ニ カ ル の 系
(エネルギー E ) を作っている とし ます。従って、
E B + E l = E = 一定
です。
ここで、系が状 態 l に見い だされ る確率は、等重率の 原理か
ら
P l Ω (E-E l )= e x p[ln Ω (E-E l ) ]
これ E の周りでテー ラー展開して (キュムラント展開と 言うべ
きか)
ln Ω (E-E l ) = ln Ω (E) - E l d ln Ω/dE + ・・・
とできます。こ の2項目 まで考慮す ると、マニュア ル編を参 照
すれば、
"=
#ln$
#E
なので、温度と 関係づけ る事ができ ます。これを展 開式第2 項
に入れて、更にそれ を P exp[ ln Ω (E-E l ) ]式に代入 して整理す
!
れば、
Pl " exp(#$E l )
という、カノニ カル分布 (ボルツマ ン分布)が出て きます。 も
ちろんこれの総和を 取れば、分配 関 数 Z N になりますし、古典的
!
には E l の部分が 、古典 のハミルトニ
アンに置き換わるだ けです 。
いろいろやっ た様です が、本当に 新しく憶えない といけな い
ことと言えば、ボル ツマンの原理 く らいです。
少 し統 計力 学の 王 道 に寄 り 道し まし たが 、こ こは 鷹揚 に考
える事にして、
1:相互作用を 考えずに すむ現象で あれば、配置の 数だけを 数
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えれば、対数を 取ってエ ントロピー にするだけでも 議論をず い
ぶん楽しめる事、
また、そのアンサン ブルの
2:スナップシ ョットの 一枚、一枚 はほとんど意味 を成して い
ないけれども、 たくさん 重ね合わせ ることで、熱力 学で扱っ て
いる対象に対する分 子論的描像の 出 発点である事、
この2点を理解して いただければ 、 まずは結構です。
しかし、いわゆ る相互作 用を考えな くても良い系な らば、こ れ
はかなり有効な考え 方です。
[では、ミニマムは なんで有ったか ?]
勿 論 、『 等 重 率 の 過 程 + ボ ル ツ マ ン の 原 理 あ た り か ら 、 ミ ク
ロ・カノニカル集団を作 って、後は カノニカル集団、グラン ド・
カノニカル集団に広 げる。そし て、マ ニュアルの表を使い 回す。』
これでも良いのです が、実用上は 、
1. モデルを立てる。
(例:格子模型)
2. 数 学 的 に 扱 い 易 い カ ノ ニ カ ル 分 布 を 当 て は め る 。 ( 相 互
作用を書き出すだけ 。)
P " exp(#$H)
3.カノニカル分布 の規格化の式 = 分配関数を求めて、
自由エネルギー!に直す。
分配関数
1
ZN =
N !h
3N
%e
" #H N
d$
ヘルムホルツの 自由エネルギ ー
! F(T,V,N)
= −kT ln ZN(T,V,N)
4.あとは、熱力学 。
(熱力学 の講義 は別にあったと思う ので省
略。)
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+1.相互作用がな い場合は、ボ ル ツマンの原理で
エントロピー を計算するの も 得策。
S
=
k ln W
+2.ガウス関数の 積分を覚えて お く。
#
$ exp[ax ]dx =
2
"#
%
"a
+3.スターリング の公式を覚え て おく。
x!= x x e"x
!
以上の事を、式 を含めて 記憶し、理 解しておくと良 いと思い ま
!
す。
ただ、1.に関 しては、 他人のモデ ル化から学んだ り、例題 を
解いては、自分 で考える 、いわゆる 演習の過程が不 可欠でし ょ
う。
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●他の所で指摘され た事。
1:
13ページの配置の 図ですが、例 え ば、
『一番目の 図を90度回
転したものも同 じ配置と 考えないの か?』という質 問を受け ま
した。答えは『考え ません。』です。しかし、面白い質問 だと思
いました。なぜ なら、こ ういう疑問 を考えてみると 、いつも は
暗黙のうちに仮 定してい る『空間』 の性質が、あら わになる か
らです。端的に 言えば『 二つの粒子 が接しているの は、左側 の
壁であって、右 側の壁で はない。し かし、我々はど の二つが 押
しているか?と 言う事を 区別する事 はしていない。 それが空 間
に張り付いた壁の立 場だ。』と言う 事だと思います。
●[ここまで予習し た人には考えて おいて欲しい事]
理想気体の(定積) 熱容量が
3
CV = Nk
2
である、とさら りと述べ てしまいま したが、これっ て第三法 則
に抵触していな いですか!?熱力学第 3法則を復習し て、この 熱
容量と第3法則 の関係を 考えておい て下さい。また 、現実の 系
を捉えるにあたり、ど うすれば良い のかも考えておいて 下さい 。
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