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ペン画淡彩で描く風景画 テキスト(2) 実用編

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ペン画淡彩で描く風景画 テキスト(2) 実用編
豪
ペ ン画淡彩 で描 く風景画
テキス ト
(2)実 用編
明治神宮外苑・絵画館学園
丸谷i豊
講師
目次
1 1)ベ ン画 について
2)ベ
ン画淡彩 につ いて
3)構
図につい て
4)ペ
ン画 に至 るまで
ヽも`
■
ゝ
5)淡 彩 で着色 します
6)テ
ー プル ス ケ ッチについ て
ム争
1)ペ
ン画 に つ い て
日本では毛筆 中心 の文化 で、ペ ンを利用す るよ うにな つた のは明治になつて
か らの こ とで、ま してやペ ン画は殆 ど剛1染 み がなく、時々挿絵な どに描かれて
い るペ ン画などを見 る程度で したが、 ヨー ロ ッパ ではペ ンの歴史は古 く、ペ ン
を使 う生活に古 くか ら親 しまれてお り、い ろい ろな用途に使われていま した。
但 し文字 の付属物だ つた り彩色装飾 のためにとる縁取 りだ つた り輪郭線だ つた
よ うで、ペ ン画 として確 立す るまでには至 ってお りませんで した。
印刷技術 の発達 によ り挿絵や図面な どとして重要な役割 を担 い ますが、絵画 と
して認 め られるようになるのは 19世 紀後半頃 とな ります。
それで も 「ペ ン画」は彩色画 の研究 のための ものや、部分的なもの、 気ままに
描 きとめる早描 き (略 図)の ようなもの と見な されてきま した。 ゝ
ペ ン画は羽根ペ ンか ら金属ペ ンに移行す ることで (ペ ン軸・ ペ ン先 の発達・ 改
良が進み)使 いやす くな り身近にな つて行きます が、そ の後 の写真技術 の発明・
改良によリペ ン画 の印刷 が可能 となつて大きく発展 します。
同時にイ ンクや紙 の質な どが良くな り、用具用材 が多種多様 にな り価格的にも
入手 しやす くなつた結果、ペ ン画は大きく前進 します。
ペ ンは線描 の道具 であ り、 ク レヨンや木炭 と違 つて色彩 も トー ン も表現 しま
せん。 ペ ンは筆 に似 ていますがペ ン先 に少量 のイ ンクしかつ けられないので、
筆 よりも微細なもの を描 く事ができます が、広 い部分を覆 うことは不可能 です。
ペ ンは鮮明な輪郭 を描 いた り、精密な製図に適 してい るだけでな く、その線 は、
た とえ真 つ黒な線 でも線 の粗密 さを利用 してあ らゆる種類 の不規則な形や質感
を表現出来ます。
この 「輪郭 を取る」方法 と、点描や 「線 の粗密」 で明度を表現立五左塗至昼∠
画表現 の 2大 特徴 となつています。
「輪郭 を取 る」 ことだ け しか しないペ ン画は漫画や イ ラス トの よ うな絵 にな つ
て しまい ますが、そ こに 「線 の粗密」 を加 えることで建物や レンガの質感、樹
木な どの幹 の肌合 いな どが見事に表現 されることにな ります。
ペ ンの持 つ制約 か ら個性 の表現 が難 しい と言 う人 が多 いのですが、全 く逆で各
人 が各様 な文字 を書 くの と同 じよ うにペ ンほ ど個人 の個性的技法 を発展 させて
描 ける素材はない と言 えます。
白地 に黒 と言 う単純なペ ン画は、見 る者 に緊張感 と率 直 さを訴 え、生命 と光 を
感 じさせ ます。 また表現は暗示的で見る者 は想像力をかき立て られ るので、そ
れが楽 しみ とな ります。
何本 か の線 とタッチ の違 いで完全 な写実性 を持 つ写真 を しの ぐ力 を秘めてい ま
す。 広告用や書物や雑誌な どの挿絵 としてペ ン画 が多 く利用 されてい るのは
そ の美 しさだ と思 い ます 。
ペ ン とイ ンクで措 くペ ン画 の特徴 はそ の 「清潔感 ]に あ ります。
ペ ン画 では紙 の 自か らイ ンクの黒まで の間にある明暗をすべ て表現す ることは
不可能であると言 う限界 があるのです が、実際 には明度 を幾つ かに単純化 して
捕 らえ方法を使 います。
即 ち明度 を単純化 して幾つ かの固 ま りとして表現す ることにな ります。
この よ うな簡略な手法が思わぬ効果 を引き出す ことがあつて、かえって個性的
に見 える場合 があ ります。
2)ペ
ン画 淡 彩 に つ い て
「ペ ン画淡彩」 とは どう言 う手法を言 うのか、 まだ明確な定義付 けはなされて
いませんが、私 の師匠である雨宮久馬先生が指導 してい る 「ペ ン画淡彩」は
「ペ ン画それ 自体 で完成 品 と言 えるもの まで描 き上げ、それ に透明水彩絵具で
薄 く着彩す るもの」 と考えます。
水彩画 の補助的な役割 としてペ ンを利用する のではな く、飽 くまでもペ ンで し
つか り描 き上げ、ペ ン画 として完成 させた上で透明水彩絵具を淡彩着色 します。
水彩画は、通常、鉛筆 で下書き し、鉛筆 の線 を残 し、そ の上に水彩絵具を塗 る
手法 で、透明水彩、不透 明水彩 いずれ も同じです が、ペ ン画淡彩 の場合は鉛筆
の下書 きを元 にペ ンで全体 を描き、そ の後 にケシ ゴムですべ ての鉛筆 の線 を消
して しまい ます。用紙にはペ ンだけの線 で描 かれたペ ン画 が 出てきますが、そ
の後 に透明水彩絵具を薄 く着色 して完成 させます。
ペ ン画 の勢いの良 さ、簡潔 さ、清潔 さ、 などを失わない程度 に着色す るのが 良
い と考えます。
「ペ ン画淡彩」 では 「ペ ン」 で描 かれた微妙な陰影 や質感に薄 く着色す ること
で、一層、建物 の質感や陰影 のデ リケー トな雰囲気 を表現す る ことが可能にな
ります。 ペ ン画 の段階 で 出来 るだけペ ンで表現 で きるもの、例 えば陰影や質
感 なども描 き込 んでお くのが良い と考えます。
私 の経験 か ら言えば殆 ど全てペ ンで描 き上げることが出来る と思 つています。
一方、水彩画 の補助的な役割 としてペ ンを使 う手法 もあ ります。
「ペ ン画水彩」 とか 「ペ ン彩」 と言 う名前 で表現 していますが、鉛筆 と同 じよ
うなペ ンの使 い方を し、着色 も水彩 と同 じよ うに行 います。
着色す ると鉛筆 の線 が薄 くばんや りと見えますが、ペ ンに替 えると線 も しつか
り残 つて絵全体 がは つきりした感 じとな ります。
水彩画 を見てペ ン画淡彩或 いはペ ン画水彩 を見 ると水彩画 がボーつ と霞んで見
えると思 い ます。 「ペ ン画淡彩」や 「ペ ン画水彩」は水彩画 の 良さが失 われ
て しま うと言 う人 もお ります し、ペ ンの線 が きつ過 ぎて疲れ ると言 う人 もお り、
ま さに百人 いれば百通 りの解釈 が 出来 ると言 うことで しょ うか。
逆に 「ペ ン画淡彩」 に出会 つて、虜 になつて しま う方 もお られます。
また水彩画 の 中で も鉛筆 の下絵 に淡彩 で着色 して描 かれ る手法 もあ り (淡 彩画
と称 しています)、 これ ら様 々な組み合わせでペ ン画・水彩画 が共に幅広 くな り
い ろい ろな手法 で楽 しむ ことが出来るようになつてい ます。
3)構
図 につ い て
ペ ン画淡彩 に限 らず、絵 を描 くときに注意す ることは構図の取 り方です。
構図 の良 し悪 しで絵 の良 し悪 しの 60∼ 70%が 決ま つて しま う為言 われ るほ
ゝ
どに構図は大事です。
特にペ ン画や透明水彩画 は一度構図を決 めて描 き始 めた ら、途中で修 正す る こ
とが出来ません。油絵や不透明水彩 の場合は上か ら絵具を塗 る ことで下の絵具
を消す ことが出来 ますが、ペ ン画や透明水彩画 ではそれは出来ません。
構図を決 めると言 うことは連続 してい る風景 を 「右端 は どこか ら、左端はどこ
まで、上はどこか ら、下はどこまで、
」 と風景を部分的に切 り取ることを言 うの
です が、画面を立てにす るか、横 にす るかで違 つてきます し、対象物 をどの程
度 の大きさに切 り取 るか、など様 々な要素を加 えて検討 します。
特 に気 をつ けたいこ とは対象物 の画面 の 中におけるバ ランスです。
形か ら来 るバ ランス、色合 いや明暗か ら来 るバ ランスな ども重要 な決め手にな
ると思 います。
描 きたい対象物 が画面 の真 ん 中に来ると、対象物 だけが強調 され、見てい る方
は対象物 の説明画に接 してい るよ うな気分にな ります。
最近 では敢 えて対象物を真 ん 中に持 つて来る意表をついた構図を取る方 もお り
ますが、やは りどちらかに若干ず らした構図が無難だ と思 います。
一般的に 7:3の 割合 (こ れを黄金比 と言 う)で 描 くよ うに薦 めていますが、
これに拘 らず全体的な構図やバ ランス を考えて決めるのが 良いで しょう。
次に技術的な ことを申し上げます。
目の前 の リンゴは大きく、遠 い リンゴは小 さくな り、 目の前 の広 い道は遠 くに
行 けばい くほど狭 くなつて行 き、両側 の本 立 も遠 くに行けば行 くほど低 くな つ
て行 きます。
この理論 が 「遠近法」 です。
「遠近法」 の具体的な構成要素を ご説明 します。
・ 風景 の地平線や海 の水平線は常に自分 の 日と同 じ高 さにあ ります。 これが
「目線」 です。 最初 に自分 が選 んだ風景 の 中で、 自分 の 目線 が何処 にあ
、
るのかを確認 し、画面上でその 目線 の位置を何 処に持 つて行 くかを決 める
必要があ ります。 切 り取 る風景 をどの よ うな大きさと位置 で画面 に取 り
込む のか と言 うことに もな ります。
低 い椅子に座 つて描 く場合は どうしても目線が低 くな り、バ ランスが悪 い
絵 にな り勝 ちです ので、注意 が必要です。
画面上 の 目線 の位置 を高 くす ると下が広 くなる分、上が狭 くな ります し、
逆に 目線 の位置を低 くす ると上は広 くな ります が、下は狭 くな ります。
風景 の何処 を切 り取 るかによつて 目線 の位置 は重要なポイ ン トにな ります。
日線 は画面 の真 ん 中に持 つて行 くと絵が二つに分 かれたよ うに見 えます の
で、極力避 ける方 が良いで しょ う。
・ 2番 目に申し上げたいこ とは 「消失点」です。
.J tl・
.
ビル街 の 中に立つ と良く分か りますが、両側 の ビル壁 の窓 の線 も遠 くに行
けば行 くほ ど低 くな り、 日線に近づ き最後は 目線 と一緒にな ります。
この集 中す る一点が消失点です。
日線 と同 じよ うに 「消失点」 も真 ん 中に持 つて来 ることを避 けた方が良い
と思 います。 勿論、 ビル街 の長 さを強調す るた めに消失点を敢 えて真ん
中に持 つて来 る場合があ りますが、一般的 には 7:3ど ちらかにず らした
構図を取るのが無難だと思 います。
なお近 くの建物や風景を描 く場合 には消失点 が画面上に現れない場合 が多
い と思 います が、遠近法 の法則はどんな場合 で も生きています。
・ 目線 が決ま り、消失点が決 まると風景 の全景は全 てそ の法則に従 つて描 く
ことにな りますが、そ の為 には補助線 (リ ー ド線 )を 引 くことで構図を取
りやす くす ることが 出来 ます。
即 ち、 日線 よ り高 い ものは遠 くに行 くに従 つて下 がつて行 き、 日線 より低
い ものは遠 くに行 くに従 つて上がって行 きます。 しか しいずれ の場合 も日
線 を超 えることは絶対 にあ り得 ません。
実際に建物 などをス ケ ッチす る時は知 らず知 らず の うちに必ず リー ド線を
引いて描 いてい ることと思 います。
私達 の感性 の 中に「消失点」を意識 させ る DNAの ようなものが潜 んでい る
ので しょ っ。
4)ペ
ン 画 に 至 るま で
風景を描 く場合、建物 が 中心になることが多 くあ ります。
具体的な手順 を見てみま しょ う。
① 鉛筆 で全体 の形をおおまかにとらえる。
描 きた い対象物 をどの程度 の大きさで どの位置 に描 くか ?目 線 は何処か ?
消失点は何処 か ?必 要な補助線 を引いて大まかな形をとらえて下 さい。
鉛筆 の線は後 で消 します ので、余 り強 く描 かない よ うに します。
細部にとらわれず に 中心 と両端 に見 えるもの を目印に して大まかに下描 き
をします。 最初 か ら窓な どを克明に描 かない よ うに しま しょ う。
この段階で描 く下絵 が全て を決 めることにな ります ので、対象物 の位置や
大きさなど納得 の行 くまで描 き直す勇気を持ちま しょ う。
② 実景 と見比べ る。
おおまかな下絵 がほぼ完成 した ら、少 し離れ て 自分 の下絵 と実景 を見比べ
て下 さい。 目線 の確認、消失点か ら引 く補助線 を確認 し、建物 の大きさ、
屋根・ 軒先 の傾斜角度、窓 の位置な どを実景 と見比べ て下 さい。
この段階で修正す るものは全て修正 して置 く必要があ ります。
間違 つた下絵 で描 き進めて行 くと出来上が つた とき、必ず不具合 が生 じて
きます。
.
鉛筆 で細部 を描 くに して も、ペ ンで描 くに しても下絵 の段階 でゆがんだも
のは最後 までゆがんだままになって しまいます。
後はペ ンで描 くだけです ので、くどい ようですが、 この段階 で納得 の行 く
下絵 を描 いて下 さい。 この絵 で完成品の良 し悪 しが決ま ります。
③ 大まかな下絵 か ら、そのままペ ン描きに移 つても良いのです が、ペ ン画に
まだ慣れ ていない時はもう少 し鉛筆 で細部を描 くほ うが良いで しょう。
建物 の特徴的な部分 とか窓枠、特徴的な樹木な どを鉛筆 で描 きカロえてお く
とペ ンで描 くときに比較的楽 に進めることが出来ます。
何処 まで鉛筆 で描 くかはそ の時 の時間の余裕 にもよりますが、徹底的に細
部 を描 く必要は全 くあ りませ ん。いずれはペ ン描 き したあとには消 されて
しま うものです か ら。
ペ ンは失敗 が許 されない もの と言 う観念 があるため、出来 るだけ細か く鉛
筆 で描 く方 が多 いのです が、もつ と気を楽に して 「下絵 はここまで !と 割
り切 ることが大事 です。
④ レヽよい よペ ン描 きに移 ります。
下絵 には様 々 な鉛筆 の線 が残 つています 、 日線や補助線、更には迷 い線、
間違 った線などが何本 も残 つています が、そ の中か ら自分 の正 しい と思 う
線 を選んでペ ン描 きを します。
6
_
ペ ンの持 ち方は自由です が、長 い線や水平に近 い線或 いは垂直 に近 い線な
どを描 く場合はペ ンを比較的長 く持 つて描 くこ とをお奨 め致 します。
私 の場合はキャ ップ をつ けて長 くしたペ ンを 目一杯 に持 つて 出来 るだけ
長 く使 うよ うに しています。
また平行な線 を描 いた り、陰影 をつ ける時はベ ンを寝せて長 く持 つて描 く
と比較的楽 に描 くこ とが出来ます。
勿論、細部 の窓枠や樹木肌 を描 く場合などは当然鉛筆 で字を書 くように持
ちます。
‐
ペ ンは一度描 いて しま うと消せません。
線 が曲がった り、はみ 出 した りしますが一々気にせず、それはそれで味が
、
出るもの と考 えて どん どん描 き進みま しょ う。
.ゃ
曲がった線を直したい時は正しい線を別に引きます。重なつせも離れても
構 いません。あま り神経質 になる必要はあ りません。
ペ ン画ではな く 「ペ ン画淡彩画」です ので、 この上に色を塗ることで多少
の線 のずれや重な りは 目立たな くな りものです。
ペ ン画 の項で書きま したが、明暗をある塊 (か たま り)と して捕 らえ、ペ
ンで 明暗をつ けて行 きます。ペ ン画 の特質はそ のシャープ さ、簡潔 さ、清
潔感 にあると思 います ので、その特徴を大事に して下 さい。
⑤ 鉛筆 の線をキ レイに消 し、ペ ン画を完成 させます。
た くさんの鉛筆 の線 が描 かれて、そ の上にペ ンで描 いた ものは随分 と汚 い
ものに見 えます が、ペ ンで描 き終わった部分をケ シ ゴムで消す と信 じられ
ないほ どキ レイで シャー プな線が現れ ます。
ケシ ゴムで消す ときは、紙を傷 めないよ うに丁寧に、そ して完全に消す よ
うに して下 さい。
鉛筆 の線 が消えず に残つてい ると、着色 の時に色が黒ずんで しまい、折角
のペ ン画淡彩 の持ち味であるキ レイ さが台無 しになる恐れがあ ります。
これでペ ン画 の出来上が りです。 但 し輪郭をなぞ っただけでは漫画絵や
イ ラス トの ようになって しまいます。
建物 の屋根 、 レンガの壁、軒下 の影、樹木 の本肌など濃淡 である程度表せ
る質感 などはパ ンで描 き加 えま しょ う。 (陰 影 を塊 として とらえる)
色をつ けないペ ン画 のままで も充分、絵 の美 しさが表現できるまで完成 さ
せ ま しょ う。 ペ ン画 の持つ 白と黒 の コン トラス トを強調する ことでペ ン
画 の持 つシャープ さ、簡潔 さ、清潔 さが表現できるのでないで しょ うか ?
特に太陽光 の角度、それによる陰影 の濃 さな どをペ ンで表現す るこ とが大
事だ と思 います。
5)淡 彩 で 着 色 しま す 。
ペ ン画 に淡 く着色 して絵 を完成 させます。
・ 明るい部分 か ら着色 します。
原則 として透 明水彩絵具は明るさの上に暗 く重ねて塗 つてい くことは容
易 にできますが、暗 くなつて しまったところを明るく戻す ことは困難です。
従 って、画面上で一番明 るい部分 か ら薄 く着色 して行きます。
また空か ら着色するか、対象物 か ら着色す るか、良く問われます が、自分
の好 きな方を選 べ ば良い と思 います。因み に私は対象物か ら描 くよ うに し
ています し、空は最後 に全体的な色 のバ ランスや明暗を考えて仕上げをす
るようにしています。
繰 り返 し申 し上げますが、淡彩画を描 くにあた つては最初 か ら濃 く描かな
いで下 さい。色を濃 くする ことはいつで も出来 ますが、一度濃 くした色は
中々元 に戻す ことが出来 ません。 水を多 めに使 つてパ レッ トに色を出 し
て混色 し、何度 も試 し塗 りをしてか ら画面 に着色 して下 さい。 淡彩過ぎ
る場合には同 じ色 を 2度 3度 と塗 り重ねをすることで、返 つて色合 い に深
み が 出てきます し、失敗 しない方法だ と考えます。
・ 混色は混ぜ る色が多 くなればなるほど色が濁 つて きます。
せいぜい混色は 3色 までに しま しょ う。 更に色を加 えたい場合 は最初 に
塗 つた絵具が乾 いてか ら、画面に塗 り重ねることで色合 い を作 つて下 さい。
加筆す るごとに色が濃 くなつてい きがちです が、下地 の 自、最初 に塗 つた
明るい色 を出来だけ残す よ うに して下 さい。
・透明水彩 の腕 の見せ所 は如何に紙 の 自を残す かにかかつています。
水が空を反射 して光 つていた り、窓ガラスが反射 してい るところは紙 の 自
(紙 の地色)を 利用 します。屋根 が光 つていた り、樹木 の葉 が照 り返 しで
光 つてい ることが 良 くあ ります が、全て このよ うな場合は紙 の地を利用 し
て色 を塗 らない ように します。
紙 の地色 (白 )よ り明るい 白はあ りません。
・ 次 に画面全部を隈 な く色を塗 る方 もお ります し、周 りは塗 らないでそのま
まに して置 く方 もお ります。 これは個人 の考 え方によると思 います。
描 きたい対象物 を強調す る為に敢えて周 りを描 かず、そ して塗 らずにお く
ことで、絵 に奥行 きを持 たせ ると言 う方 もお ります。 (見 てい る方 が何 も
描 かれていない部分を勝手 に想 像 して貰 い、絵 の広が りを持たせ ると言 う
ことで しょ うか)
描 きたい対象物 は しつか り描 くのですが、周 りの淵 の方をしつか り描 くと
対象物 と張 り合 つて しまい対象物 が際 立 たな くな つて しま う恐れ があ り
8
ます。周 りをペ ンで描 く場合にはあま り細 か く描 かず大掴み に描 きま しょ
う。 また着色 も抑 えた色合 いが良いで しょう。濃 い色を使 うと前面 に出て
きて本 当に描 きたい対象物を壊 して しまいます。
・パ レッ ト上 で色を作 り時はある程度 のスペースに多少多 めに作 りま しょう。
足 りな くなって 同 じ色 を作 ろ うとしても微妙 に違 つてきます し、塗 つた色
が斑 になつて しま う場合 があ ります。 また試 し塗 り用 の予備 の紙を常 に側
に置 いて色 を確認す ることも大事です。
・ スケ ッチは限 られた時間で描 き上げます か ら、何処 で筆 を置 くかが大事 で
す。得 て して描 き込みす ぎて失敗す るケースが多い よ うに思い ます。
勿論、 自宅に戻 つてか ら更にカロ
筆す る ことも自由です が、現場 で描 いた絵
は多少乱暴な線 があるで しょうが、線 が生 き生 きとしてお り1臨 場感 を感 じ
ゝ
させて くれます。
旅行 な どの現場 で描 いた絵は出来ればそ のまま大事に取 つて置 くのが良い
で しょう。 そ の絵 を見れば、描 いた時 の天候、風、空気までがまざま ざと
思 い起 こされ、沢山の文章を読む よりも勝 るもの と思い ます。
展示会用 に出品す る場合 には、写真などを確認 しながらそ の時に空気 を思
い起 こしなが ら、改 めて描 き直す方 が良い と思 います。
6)テ
ー ブル ス ケ ッチ に つ い て
旅先 でスケ ッチの時間が取れない場合や、急に雨が降 つてきてスケ ッチを途
中で 中止 した り、或 いは最後 まで仕 上げる時 間が無 い場合は、カ メラでその
風景を写真 に撮 ってお きま しょう。
最近 はデジカメが普及 してい ます ので、様 々な角度か ら対象物やその周 り
の風物 を少 し多 めに撮 つて置 くと良いで しょう。 ズームに して窓飾 りや玄
関 の飾 り、壁 に書 かれて い る飾 り文字な ども撮 つて置 くと、後 で家 に戻 つ
てテー ブル スケ ッチをす る時に大 い に役 立ちます。
更に動 いてい る人物や 自動車、きれ いな花、動物、木 立、刻 々 と変化す る
空なども写真に撮 つてお くと意外に役 立つ ものです。
・ 写真か らスケ ッチす る場合、どうして も細部 に 目が行 き勝ちで、折角 の景
色 の雄大 さ、臨場感、景色 のバ ランスが失 われ る恐れ があ ります ので、細
部 に拘 らず に野外 スケ ッチ と同 じ手法で始 めて下 さい。
日線 は何処か ?対 象物をどの くらいの大きさで どの位置 に収めるか ?
消失点は何処 か ?補 助線 は どう引けば良いか ?写 真 の通 りに描 く必要は
あ りません し、写真 の中か らどの部分を切 り取るのか を決 めます。
写真 とそ つ くりに描 こ うとせず、その風景を思 い出 して、そ の場 でスケ ッ
ヽ
チ してい る気分で描 きま しょ う。 (現 場 の雰囲気 を出すためにそ の国の最
も有名な曲を CDで 流 した りす る方 もお ります)
また最近、プ リンターが発達 しています ので、写真を少 し大きめにプ リン
トす るとスケ ッチ に利用 しやす くな ります。
私 の場合は構図を決 めた り、ペ ン画までに使 う写真には A-4の 普通紙 に
カラー プ リン トしたもの を利用す ることがあ ります。 普通紙を使 つたカ
ラー印刷 は どうしても色合 いが悪 くな ります のが構図を決 め、ペ ンで描 く
段階では大 きくプ リン トされたものは見やす くて役立ちます。
で もペ ン画 が完成 して着色 の時には別 に写真用紙でプ リン トした もの を
使 います。
`も‐
゛
ゝ
10
Fly UP