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ライフサイエンスフォーラム - 神奈川県産業技術センター

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ライフサイエンスフォーラム - 神奈川県産業技術センター
1PM-C01
平成27年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿
異業種からの植物工場事業参入
~持続可能な収益事業を目指して~
株式会社キーストーンテクノロジー ○岡崎
聖一
植物工場は,一見構造が単純で,スチール棚に照明と水耕栽培用の部材を取り付ければ出来
上がりと思われがちである.しかし,現実は厳しく,そのような簡便な方法により作られた栽培
プラントでは採算性が低いのが実情である.完全人工光型植物工場は,“電気エネルギーを光エ
ネルギーに変換し,植物の光合成作用を利用して無機物から有機物を作り出す装置”を運用し,
収益あげなければならない.そのため「如何に光エネルギー利用効率を高めるか」が大きな課題
である.しかし,完全人工光型植物工場は,圃場とは栽培環境がまったく異なるにもかかわらず,
そこで用いられている栽培および植物に対する考え方は圃場の技術が援用され,
「エネルギー工
学」的視座からのシステム構築および植物工場事業運営にはさまざまな課題が存在している.
持続可能な植物工場事業モデルには,慣行農法野菜とは異なる価値を持った野菜の生産及び,
価値に見合った販売方法の構築が重要である.株式会社キーストーンテクノロジー(以下,当社
とする.)は,LED を用いた植物工場技術の開発と市場で受け入れ可能な価格帯での栽培ノウハ
ウ構築を進めている.また,当社の植物工場産野菜は,味覚成分分析を実施するなど客観的に味
の面でも優位性が示され,ブランド野菜としてマーケットから高い評価を得ている.
共同研究機関である理化学研究所では一般の露地野菜と人工光で栽培された植物工場野菜の
成分に着目し,試験的な成分分析を行ったところ,栽培方式の違いが野菜に含まれる機能性成分
量に明確な差異が認められた.
完全制御型植物工場は閉鎖環境での植物栽培を行うために人工光源が重要な役割を果たす.植
物の健全な生長には,その成長時期にあわせて,赤色光と青色光がバランスよく配合されること
が必須である.LED は電子技術で制御可能なので,太陽光よりも効率の良い植物成長促進に有
効な光源として利用できる.LED の光質を制御した栽培が野菜やハーブの生食用および加工原
料用など,用途別に最適化した栽培が可能で,それらの特性を活かした目的別商品化,ブランド
化およびマーケティング・販路開拓が植物工場の事業採算性を向上させる可能性について実例を
交えながら講演を行う.
1PM-C03
平成27年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿
エアドーム式植物工場の取組みと実践について
株式会社グランパ 業務部
(陸前高田ファームプロジェクトマネージャー)
1、はじめに
これまで水耕栽培施設と言えば、オランダ型ハウスに
代表されるような四角い箱型であったが、2011 年に当社
は、独自の開発によりエアドーム型の水耕栽培施設であ
る「グランパドーム」を開発した。
従来の水耕栽培の概念を変える特徴的なシステムから、
開発当初から多くの農業関係者が関心を寄せたが、
特に、
東日本大震災の津波による農業復興のため岩手県陸前高
田市に「グランパドーム」だけの農場が初めて建設され
たこともあって、国内外で注目され、
「復興の救世主」と
して喧伝された。私はこの陸前高田ファームのプロジェ
クトマネージャーとして、現地に駐在し、農場建設から
運営まで携わっていた経験をベースに
「グランパドーム」
の仕組みや当社の取組みについてお話したい。
2、
「グランパドーム」の特徴と仕組みについて
「グランパドーム」の特徴は、次のとおりである。外
部と内部の気圧差を利用してフィルムを膨らませる構造
になっており、いわゆる従来型ハウスのような鉄骨構造
になっていない。そのため内部に影を作らないことで、
生育している作物に十分な太陽光を届けることができる。
鉄骨ハウスではないので、よく強度について質問を受け
るが、日本施設園芸協会の「園芸用施設安全構造基準」
(積雪荷重 450N/㎡ 風荷重 45m/S)の認可を得ている。
二つ目の特徴は、外側のフィルムである。フッ素ダブ
ル樹脂コーティングされた特殊なフィルムで、94%とい
う高い採光率と取り込んだ光を拡散させる性質を持つた
め、弱光性に強い性質を持っている。
そして最大の特徴は、ドーム内部に自動スペーシング
システムを有した直径 20m、深さ 8cm のドーナツ型の
円形水槽が設置されていることである。この水槽には
250 枚の扇形のフロート(パネル)が浮かんでおり、こ
のフロートの間に最大 14,250 株の葉物野菜が植えられ
る仕組みになっている。作業手順は、中央に開いている
定植スペースに作業員が入り、シリンダーと呼ばれる筒
で生育させた苗を差し込んで定植するだけである。定植
された苗は、
成長するに従いフロートが自動的に回転し、
順次面積の広い外周側の方にゆっくりと出てくる仕組み
になっている。そして、約1か月後、一番外側に出てき
た株(1周 250 株)を外周に沿って引き抜いて収穫する
のである。従来の水耕栽培のように苗が大きくなってか
ら、別のパネルに植え換える面倒な作業も無く、単位面
積当たり従来の水耕栽培システムよりも生産量が
1.5~2.0 倍である(レタスの品種による)
。
これらのほかに、クラウドシステムを利用した遠隔モ
ニターもオプションで付けることもでき、ドーム内の状
況やデータ確認が外部端末やグランパ本社においても可
能なため、トラブル発生時に迅速に対応が可能である。
○山田
篤志
3、
「グランパドーム」の利用について
開発からまだ4年なので、日本国内ではまだ9農場で
75 基程度しか稼働していない。海外からの問い合わせも
多いが、まだ輸出の実績は無い。自社農場を除くと、ほ
とんどが非農業の新規参入企業であるため、農場ができ
るまでの間に栽培管理者を当社の農場で受入れ、施設園
芸の理論習得と実践を中心に据えた研修を実施している
(50 日研修)
。また、継続的なフォローを望む農場につ
いては、農場設立後も必要に応じて、契約によって定期
的に栽培技術指導を受けられる仕組みである。
当社では、栽培管理技術に IPM(総合病害虫管理)技
術を導入し、環境に負荷をかけない防除に取り組んでお
り、天敵昆虫や微生物農薬といった自然由来の資材を積
極的に取り入れているほか、世界的な生産管理工程基準
に準じたマニュアルを設けている。経験の浅い、若いス
タッフが多い中で、栽培管理者を早く一人前に育成する
ことは、喫緊の課題のひとつである。
最近では、農業経営における野菜生産という側面での
利用のみならず、高齢者や障害者が働くことができるシ
ステムにより、老人ホームの敷地に導入し、入居者に作
業をしてもらうことにより、健康維持や生きがいに貢献
するといった「農福連携」の事例も生まれた。余談であ
るが、私自身、陸前高田での経験で、津波で肉親を亡く
すなど心に傷を負ったパート職員たちが「緑に囲まれて
仕事していると心が落ち着く」という話を聞いたことが
あり、セラピー効果もあるのではないかと考えている。
また、昨年、期間限定ではあったが、横浜市みなとみ
らい地区に「横浜農場」としてドームを設置して、公開
していたが、その場で収穫して販売するコンビニ農業の
実現や子供たちに対する農業体験学習などへの対応も可
能ではなかったかと思う(この時は、市との取り決めに
より、現地での販売や栽培スタッフ以外のドーム内立ち
入りは禁止されていた)
。
このように、グランパドームは、農業経営以外におい
ても、汎用利用できるツールとして注目されているよう
にも思われる。
1PM-C05
平成27年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿
場所を選ばず、且つ持続可能な農業(アイメック)の世界展開
メビオール株式会社
○森
有一
アイメックは医療、環境、エネルギー分野に広く使用され、日本の最も得意とする先端機能性
膜技術を世界で初めて農業に展開し、世界 116 ヵ国で成立している特許技術である。キーは農
業に必要不可欠の土と水の役割をする“ハイドロメンブレン, HM”と呼ばれる機能性膜である。
図 1 に示すように、レタスの根が HM の表面に根を張り、HM 中の養液を摂取し生長する。HM
にはナノサイズの微孔が無数に開いていて、水と栄養素は吸込むものの、病原菌類は遮断し、農
薬の使用を大幅に削減でき、安全性が担保される。又、HM はハイドロゲルの性質を有してい
て、吸収された水、栄養素は外部には流出しないため、作物は膨大な量の毛細根を HM 表面に
張り付け、内部の養分を摂取する過程で糖分、アミノ酸類を高濃度で生産し、高品質化する。
HM を使ったアイメック栽培システムを図 2 に示す。大地を隔離する止水シート、養液を供
給する点滴チューブ、不織布、HM フイルムから成っていて、砂漠、汚染地帯、コンクリート
などで栽培が可能であり、供給される養液のロスがゼロである。又、設置、移設か容易で、且つ
安価である。更に、HM フイルムの上から供給される養液量によって収穫量と品質のコントロ
ールが可能であり、生産者の事業幅が拡大する。以下に記すように、アイメックによって従来農
業が困難であった場所で、且つ農業経験の無い人々でも品質の高い農産物の安定生産が可能にな
った。
国内では、東日本大震災による大津波被災地の陸前高田市内でアイメックトマト生産
(12,000m2)が始まった。中国、上海近郊の電池工場跡地でアイメックトマト生産(15,000m2)
を開始した。ドバイの砂漠でアイメックトマト試験生産(5,000m2)を実施した。今後、サウジ
アラビア、モロッコ、アゼルバイジャン、サハリンなどにアイメックトマト生産基地を設置する
予定である。
上部灌水チューブ
HM フイルム
不織布
下部灌水チューブ
止水シート
大地
図1HM フイルム上のレタス
図 2 アイメック栽培システムの構成
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