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東京都医薬品情報 - 東京都健康安全研究センター
東京都医薬品情報 Ⅰ № 3 8 4 平成18年9月号 医薬関連情報から‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2 財団法人 1 日本医薬情報センター Propofol 誘発の持続勃起症:再チャレンジにより確認された 1 症例の初めての 報告 2 妊娠第 3 トリメスター中の NSAIDs と動脈管早期閉鎖のリスク:メタアナリシス 3 興奮剤と注意欠陥多動障害:National Electronic Injury Surveillance System −Cooperative Adverse Drug Event Surveillance(NEISS−CADES)プロジェクト からのデータの調査 4 高血圧女性における Atenolol 誘発の乳房痛:1 症例の初めての報告 5 オランダにおける喘息患児の吸入用ステロイド使用中に報告された薬物有害反 応:Dutch Pharmacovigilance Centre Lareb データベースを用いた研究 6 Thiazolidinediones によると疑われた INR 低下:Warfarin と Thiazolidinediones (Pioglitazone もしくは Rosiglitazone)の相互作用:2 症例(高令者)の初めて の報告 7 Sirolimus との薬物相互作用を介した先発品と後発品の Cyclosporine の差異: 男性健常者 28 例における無作為交差試験 8 Probenecid および Cephalexin の母乳への移行:重度の下痢および関連した症状 を呈した 1 症例(乳児)の報告 Ⅱ 1 その他の副作用情報‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥11 青汁製品中のビタミンKの分析 医薬関連情報2006年7月号から 財団法人 副 作 用 情 日本医薬情報センター 報 1 Propofol 誘発の持続勃起症:再チャレンジにより確認された 1 症例の初めての報告 Vesta K.S.(Univ. Oklahoma,Oklahoma City/USA),ほか Ann. Pharmacother.40(5)980−982/(2006.5) Propofol(以下 P)投与後に発現した持続勃起症の初めての症例報告。患者(男,17 才) は上室性頻拍およびクローン病の病歴を有し,心臓の異常伝導路アブレーションを目的と して入院した。入院時の投薬内容は,atenolol,mesalamine,polyethylene glycol, mercaptopurine,gabapentin,tramadol であった。アブレーション処置の麻酔薬は, midazolam 4mg,P 2.8mg/分注入,cisatracurium 90μg/分注入,sevoflurane 吸入,nitrous oxide 吸入などであった。P 注入開始から 2 時間後(総量 550mg 投与),患者は陰茎の充血 を経験した。回復しないまま 1 時間後,泌尿器科医と相談して,P を中止,sevoflurane を 増量した。泌尿器科医が,lidocaine 0.5%+epinephrine 1:200000 の 2ml を陰茎体に注 射したところ,直ちに萎縮した。持続勃起症は 2 時間持続し,治療後直ちに回復した。麻 酔は,P 注入中止後,sevoflurane,nitrous oxide,cisatracurium,midazolam で維持さ れ,アブレーションは有効に完了した。翌日,ルーチンのアブレーション後に経食道心エ コー検査を行った。この処置中,20 分間かけて総量として midazolam 3mg,fentanyl 75μ g,P 40mg が投与された。心エコー検査が完了して 30 分後,持続勃起症が再発したが,医 療介入なしに 1 時間以内に消退した。本患者における持続勃起症は時間的関係,再投与に よる再発,用量反応関係により,薬物誘発と考えられる。2006 年 4 月 4 日時点で,この有 害作用は報告されていないが,Naranjo probability scale により,本患者における持続勃 起症に対する P の関連の可能性は高い。初めての報告症例であるために,P 使用中の持続勃 起症のリスク因子は明らかにされていない。従って,P は広く使用されていて,低血流持続 勃起症発現は速やかな治療を必要とする緊急疾患であるため,臨床医はこのまれな潜在的 有害作用を認識すべきである。 参照文献 13 propofol(INN) 「医薬関連情報」速報 No.539 掲載 <参考> propofol(INN),ディプリバン(アストラゼネカ株式会社) 、プロポフォール(丸石製薬株 式会社、ホスピーラ・ジャパン株式会社、メルク製薬株式会社、富士製薬工業株式会社)、 2 フレゾフォール(フレゼニウスメディカルケアジャパン株式会社) 【掲載理由】 ・ 掲載基準1(1) 2 妊娠第 3 トリメスター中の NSAIDs と動脈管早期閉鎖のリスク:メタアナリシス Koren G.(Hosp. for Sick Children,Toronto/Canada),ほか Ann. Pharmacother.40(5)824−829/(2006.5) NSAIDs は,妊娠中さまざまな状態を治療するためにますます使用されるようになっている。 異なる妊娠期における NSAIDs の安全性をはっきりさせるために,動脈管早期閉鎖のリスク についての評価は有用である。妊娠第 3 トリメスター中の NSAIDs の使用が動脈管早期閉鎖 のリスク増大に関連するかどうかを明確にするために,MEDLINE(1966∼2004 年),Embase (1980∼2004 年),Cochrane Database of Systematic Reviews(1991∼2004 年)のシステ マティック・レビューを行った。暴露された胎児と暴露されなかった胎児における動脈管 の転帰を比較する概略のオッズ比(OR)推定値と,それらの 95%信頼区間を,ランダム効 果モデルを想定しながら算出した。評価対象は,12 試験 553 例(国別では米国 7,フィン ランド 2,イスラエル,英国,カナダ各 1 試験)であった。NSAIDs への暴露期間は 24 時間 ∼42 日間(12 試験中 8 試験では 24∼72 時間)であった。8 試験における妊娠第 3 トリメス ター中の NSAIDs(indomethacin 5,sulindac 3 試験)暴露群 217 例とプラシーボ(4 試験) または非 NSAID(terbutaline 2,magnesium sulfate,nylidrin 各 1 試験)暴露群 221 例 との比較では,胎児動脈管閉鎖の発生数はそれぞれ 22 例と 0 例で,オッズ比は 15.04(95% CI 3.29∼68,68)であり,胎児動脈管閉鎖のリスクは NSAIDs 投与群がコントロール群に 比べて 15 倍高かった。4 試験における経口 indomethacin 暴露群 55 例とその他の NSAID (sulindac 2,celecoxib,経膣 indomethacin,nimesulide 各 1 試験)暴露群 65 例との比 較では,胎児動脈管閉鎖発生数はそれぞれ 14 例と 10 例で,オッズ比は 2.12(95%CI 0.48 ∼9.25)であり,indomethacin 経口投与は,その他の NSAID 投与に比べて動脈管閉鎖のリ スクの有意な増加を認めなかった。発生率の差(rate differences)の計算で,同様の結 果が認められた。以上,妊娠後期における NSAIDs の短期使用は動脈管早期閉鎖のリスクの 有意な増大に関連すると考えられた。 参照文献 18 NSAIDs,indomethacin:indometacin(INN),sulindac(INN),celecoxib(INN) ,nimesulide (INN) 「医薬関連情報」速報 No.539 掲載 <参考> indomethacin:indometacin(INN),インダシン(萬有製薬株式会社)、インテバン(大日 3 本住友製薬株式会社)、インドメタシン(株式会社 陽進堂、株式会社イセイ)、インフリ ー(エーザイ株式会社) 【掲載理由】 ・ 掲載基準1(2) 3 興奮剤と注意欠陥多動障害:National Electronic Injury Surveillance System− Cooperative Adverse Drug Event Surveillance(NEISS−CADES)プロジェクトからのデー タの調査 Cohen A.L.(CDC,Atlanta/USA),ほか N. Engl. J. Med.354(21)2294−2295/(2006.5.25) 興奮剤は心血管副作用を引き起こすことが知られているが,地域における有害事象の発生 率および種類についてはほとんど知られていないことから,注意欠陥多動障害(ADHD)の 治療に対して処方された興奮剤による有害事象について調べた。National Electronic Injury Surveillance System−Cooperative Adverse Drug Event Surveillance(NEISS− CADES)プロジェクトからのデータを用いた。2003 年 8 月 1 日∼2005 年 12 月 31 日に,64 ヵ 所 の NEISS − CADES 病 院 が , 興 奮 剤 ( methylphenidate , dexmethylphenidate , dextroamphetamine,amphetamine と dextroamphetamine,methamphetamine)の使用による 有害事象が原因の救急部への訪問計 188 例(男 109 例,女 79 例)を報告した。薬物有害事 象には,故意的ではない摂取または過量投与(61%),副作用(33%),アレルギー反応(6%) が含まれた。意図的な自傷,薬物離脱症状,薬物乱用による救急部への訪問は除外した。 薬物有害事象の 82%が 18 才未満の小児で発生し,58%が全年令層の男性患者において発生 した。26 例(14%)は,心血管起源の可能性がある,懸念される可能性のある影響を受け ていた(例えば胸痛,卒中発作,失神,頻脈,高血圧,呼吸困難)。大部分の患者(84%) で,有害事象は興奮剤のみの影響によるものであったが,16%の患者において有害事象は 興奮剤と他の薬剤との併用によるものであった。67 例(36%)は,自身に処方されたもの ではない薬剤を摂取していたことが判明した(故意ではない過量投与患者 115 例中 65 例は これに含まれた)。2004 年に,興奮剤に関連した薬物有害事象 81 件が報告されたことから, 全国的には 3075 例の患者が ADHD の治療として処方された興奮剤による有害事象により救 急部に運ばれたと推定される。医師は,故意ではない興奮剤の過量投与が患者へ害を加え る重要な原因であることを認識すべきであり,興奮剤を摂取している患者における懸念さ れる可能性のある心血管症状について調査すべきである。 参照文献 4 methylphenidate(INN),dexmethylphenidate,dextroamphetamine:dexamfetamine(INN), amphetamine:amfetamine(INN),methamphetamine:metamfetamine(INN) 「医薬関連情報」速報 No.537 掲載 4 <参考> methylphenidate(INN),リタリン錠(ノバルティスファーマ株式会社) methamphetamine:metamfetamine(INN),ヒロポン(大日本住友製薬株式会社) 【掲載理由】 ・ 掲載基準2 4 高血圧女性における Atenolol 誘発の乳房痛:1 症例の初めての報告 Kelleher J.A.(Kaiser Foundation Health Plan of Colorado,Lafayette/USA) Ann. Pharmacother.40(5)990−992/(2006.5) β遮断剤 atenolol(以下 A)投与中の患者における A 誘発の乳房痛および乳房腫脹の初め ての症例報告。患者(女,54 才)は閉経後 6 年で,高脂血症の病歴があり,新たに高血圧 と診断された。処方薬の投与はなかったが,ハーブおよび OTC のサプリメントを使用して いた。クリニックで前月に測定された血圧は 144/92,152/86,148/86mmHg であった。 高血圧をコントロールするための食事と運動の試みが失敗した後,プライマリーケア医は, A 25mg/日(錠剤)の投与を開始した。投薬を開始して 9 日後,患者は不眠の症状を訴え た。経過観察中である 5 週間後,患者は不眠が続いていることと,6 日前からの乳房の疼痛, 腫脹,および圧痛を訴えた。A を速やかに漸減し,中止した。そして,thiazide 系利尿薬 が処方され,その後,乳房痛および腫脹は次第に消退した。Naranjo probability scale に より,乳房の疼痛および圧痛と A 投与の関連は probable とされた。β遮断剤の使用による 高プロラクチン血症および乳汁漏出症の症例はまれに報告されているけれども,β遮断剤 によって引き起こされた乳房痛についての報告は確認されなかった。臨床医は,A が女性に おいて非器質性の乳房痛および腫脹の原因であり得ることを認識すべきである。 参照文献 13 atenolol(INN) 「医薬関連情報」速報 No.539 掲載 <参考> atenolol(INN),アテネミール(鶴原製薬株式会社)、アテノセーフ(大原薬品工業株式会 社)、アテノリズム(株式会社イセイ)、アテノロール(サンノーバ株式会社)、アテンダー ル(大洋薬品工業株式会社)、アルセノール(原沢製薬工業株式会社)、アルマイラー(大 正薬品工業株式会社)、オリジノール(オリエンタル薬品工業株式会社)、カテノミン(長 生堂製薬株式会社)、クシセミン(辰巳化学株式会社)、セーブテンス(ファイザー株式会 社)、セーラジール(日新製薬株式会社)、テノーミン(大日本住友製薬株式会社) 、テノミ ロール(小林化工株式会社)、トーワミン(東和薬品株式会社)、ドルル(ジェイドルフ株 5 式会社)、ハジメ(東洋ファルマー株式会社)、フェルフィシュ(株式会社 陽進堂)、ミロ ベクト(テイコクメディックス株式会社)、メクロール(マルコ製薬株式会社)、メゾルミ ン(沢井製薬株式会社)、メチニン(日医工株式会社)、リスモリース錠(ニプロジェネフ ァ株式会社) 【掲載理由】 ・ 掲載基準1(1) 5 オランダにおける喘息患児の吸入用ステロイド使用中に報告された薬物有害反応: Dutch Pharmacovigilance Centre Lareb データベースを用いた研究 de Vries T.W.(Med. Cen. Leeuwarden,Leeuwarden/Netherlands),ほか Eur. J. Clin. Pharmacol.62(5)343−346/(2006.5) 吸入コルチコステロイドは,喘息治療に広く用いられており,オランダにおいてその使用 中の疑われた薬物有害反応 (以下 sADRs)の報告について調べた。オランダでは,医療専 門家および患者は Pharmacovigilance Certre Lareb に sADRs を報告することが可能である。 吸入コルチコステロイド使用中の sADRs を分類し,これらがステロイド剤の使用に関連し ているかどうかについて調べた。年令および性別を調整した Report Odds Ratios(ROR)と Naranjo Scores(NS)を,3 回以上報告された sADRs について計算した。その結果,1984 年 6 月∼2004 年 10 月に,Lareb では sADRs 46314 件の報告を受け,このうちの 2499 例が 17 才未満の小児の報告であり,うち 89 例(男 48 例,女 41 例;年令中央値 6 才)において 吸入コルチコステロイドによる sADRs が報告された。疑われた薬剤は,fluticasone 46 例 (52%),budesonide 21 例(24%),および beclomethasone 22 例(24%)であった。精神 症状(激越および過活動性 10 例,攻撃性 7 例,不安 2 例)が小児 19 例(21%;ROR 3.8, NS 3.6)で報告され,発育遅延が 6 例(7%;ROR 47.8,NS 3.8),発疹が 6 例(7%;ROR 0.7, NS 2.4)において報告された。歯の異常(変色,う食)に関する報告が 7 件(8%;ROR 2.1, NS 3.4),脱毛症に関する報告が 4 件(4%;ROR 3.3,NS 3.5),多毛症に関する報告が 3 件(NS 4.0)あった。非致死性副腎機能不全が,吸入用 fluticasone(500μg/日)および 鼻腔用 beclomethasone(100μg/日)投与を受けていた 10 才の女児に 1 回報告された。以 上,報告された sADRs の中で,最も頻度が高かったのは行動の変化であった。行動の変化 が吸入コルチコステロイドの真の sADRs でありうるという, より多くの証拠が認められた。 非致死性副腎機能不全は,生命を脅かす可能性のある,報告された唯一の sADRs であった。 小児における多毛症および歯の異常と吸入コルチコステロイドとの関連性は,文献で以前 に報告されたことがない。 参照文献 23 corticosteroids,fluticasone(INN) ,budesonide(INN),beclomethasone:beclometasone (INN) 6 「医薬関連情報」速報 No.537 掲載 <参考> fluticasone(INN),フルタイド(グラクソ・スミスクライン株式会社) budesonide(INN),パルミコート(アストラゼネカ株式会社) beclomethasone:beclometasone(INN),キュバール(大日本住友製薬株式会社)、タウナ ス(共和薬品工業株式会社)、ベクラゾン(大正薬品工業株式会社) 【掲載理由】 ・ 掲載基準1(1) 6 Thiazolidinediones によると疑われた INR 低下:Warfarin と Thiazolidinediones (Pioglitazone もしくは Rosiglitazone)の相互作用:2 症例(高令者)の初めての報告 Hoffmann T.K.(Physicians Inc.,Lima/USA),ほか Ann. Pharmacother.40(5)994−996/(2006.5) 現時点で,warfarin(以下 W)と pioglitazone(以下 P)または rosiglitazone(以下 R) との相互作用は報告されていない。W 投与中に R または P を追加後,INR 値が有意に抑制さ れた 2 症例の報告。症例 1(女,84 才)は,心房細動に対して W 療法(INR 目標値 2∼3) 中で,約 1 年間一定の W 維持量が投与されていた。P 15mg/日の投与が開始された。直ち に INR に対する影響はみられなかったが,week 12 までに INR が 1.2 となった。この時点で 1 回,大量の W を投与したが,INR 値は 1.2 であり,維持用量を 8.5→16mg/週へと 88%増 量後にのみ,INR 値は 2.3 に達した。その後 18 ヵ月間にわたり,同様の維持用量で INR 値 は 1.9∼3.2 の範囲にあり,患者は P 療法を継続している。症例 2(男,76 才)は,心房細 動に対して W 療法(INR 目標値 1.5∼2)中で,約 18 ヵ月間一定の W 維持量が投与されてい た。R 4mg/日の投与開始後,week 4 までに INR 値が 1.1 に低下した。その時点で 1 回,大 量の W を投与し,維持用量を 13%増大した。W を 24→42mg/週へ 75%増量後にのみ,INR 値は 1.9 に達した。その後 1 年間,同様の W 維持量で INR 値は 1.7∼2.6 を維持し,患者は R 療法を継続している。Naranjo probability scale により,両症例とも thiazolidinedione 療法と INR 抑制との関連は probable とされた。著者らは,開業医に対し, thiazolidinedione 療 法 の 併 用 開 始 後 数 ヵ 月 間 INR 値 を 厳 密 に モ ニ タ ー す る よ う に 助 言 す る 。 W と thiazolidinediones の相互作用は,併用開始から 1∼3 ヵ月以内に症状発現するように思わ れ,W 用量の調節が必要な場合がある。 参照文献 2 warfarin(INN),pioglitazone(INN),rosiglitazone(INN) ,相互作用 「医薬関連情報」速報 No.539 掲載 7 <参考> warfarin(INN),アレファリン(富士製薬工業株式会社)、ワーファリン(エーザイ株式会 社)、ワーリン(大洋薬品工業株式会社)、ワルファリン(日新製薬株式会社、ニプロファ ーマ株式会社、ニプロファーマ株式会社) pioglitazone(INN),アクトス(武田薬品工業株式会社) 【掲載理由】 ・ 掲載基準1(1) 7 Sirolimus との薬物相互作用を介した先発品と後発品の Cyclosporine の差異:男性健 常者 28 例における無作為交差試験 Kovarik J.M.(Novartis Pharmaceuticals,Basel/Switzerland),ほか Eur. J. Clin. Pharmacol.62(5)361−366/(2006.5) Sirolimus(以下 S)と cyclosporine(以下 C)は両方とも,臓器移植後の併用療法に使用 される免疫抑制剤である。革新的な剤形の先発品の C と同時投与された場合,薬物動態学 的相互作用のため,S の血中濃度は 3.3 倍に上昇する。先発品が後発品の C に変更された場 合に,この薬物相互作用に差異が生じてくる可能性について調べた。健常志願者 28 例(男, 平均 27.6±5.5 才)を対象に,S 5mg 経口溶液(Rapamune)と併用の C 250mg を,先発品(Neoral) としての軟ゼラチンカプセル,もしくは後発品(Gengraf)として単回投与し,無作為交差 試験を実施した。S の Cmax および AUC について,標準的生物学的同等性試験により,後発 品と先発品との比較を行った。その結果,S の Cmax は,先発品の C と同時投与した場合と 比べて後発品で有意に低下し(平均 17%) (p=0.0003),生物学的同等性の基準に到達でき なかった[後発品/先発品比 0.83(90%CI 0.77∼0.90)]。志願者の約半分(46%)におい て,S の Cmax が変化し,生物学的同等性の範囲からはずれ,個々の Cmax では 52%までの 低下,39%までの上昇が認められた。S の AUC は,先発品の C と同時投与した場合と比べて 後発品で有意に低下(平均 11%) (p=0.041)していたが,平均的な生物学的同等性基準は 満たしており,後発品/先発品比は 0.89(0.83∼0.95)であった。それにもかかわらず, 志願者の 1/3 以上(43%)で,S の AUC が変化して標準的な生物学的同等性の範囲からは ずれ,個々の AUC では 39%までの低下,42%までの上昇が認められた。以上,先発品から 後発品への変更は,同時投与の S の薬物動態に対して,臨床的に重要な影響を与えるもの と思われる。このような変更が処方医師によって開始された場合,必要に応じて用量の調 整が行われるように,C と S の両方の追跡的な治療モニタリングを実施すべきである。処方 医師に相談もなく変更が行われる場合,臨床医や患者がわからないまま,S の暴露において 重大な変化が結果として起こる可能性がある。 参照文献 10 Rapamune:sirolimus(INN),Neoral:ciclosporin(INN),Gengraf:ciclosporin(INN), 8 相互作用 「医薬関連情報」速報 No.537 掲載 <参考> Neoral, Gengraf:ciclosporin(INN),アマドラカプセル(東洋カプセル株式会社) 、サン ディミュン(ノバルティスファーマ株式会社)、シクポラール(日医工株式会社)、シクロ スポリン(富士カプセル株式会社)、ネオーラル(ノバルティスファーマ株式会社)、ネオ メルク(メルク製薬株式会社) 【掲載理由】 ・ 掲載基準2 8 Probenecid および Cephalexin の母乳への移行:重度の下痢および関連した症状を呈し た 1 症例(乳児)の報告 Ilett K.F.(Univ. Western Australia,Crawley/Australia),ほか Ann. Pharmacother.40(5)986−989/(2006.5) Cephalexin(以下 CEX)+probenecid の併用療法を要する再発性乳房感染を有する授乳中 の女性における両薬剤の母乳中への移行についての症例報告。第二子(男児,生後 4.5 週, 体重 4.1kg)に授乳を行っている 30 才の女性(体重 100kg)において,帝王切開による出 産から 9 日後,右乳房に丹毒/蜂巣炎が発現した。初めての授乳中にも同様な乳房感染エ ピソードを 3 回経験しており,penicillin アレルギーであったため,入院して,cephalothin (以下 CET)1g の 6 時間ごと静脈内投与による治療が行われた。治療 2 日後,体温は依然 として 38.2℃まで乱高下し,右乳房の改善と同時に,左乳房の丹毒/蜂巣炎が発現した。 末梢穿刺中心静脈カテーテル(以下 PICC)を留置し,さらに 24 時間 CET 投与を継続した。 体温は 38.1℃まで乱高下し続けた。day 3 に PICC を抜去し,経口 CEX/probenecid(両剤 とも 500mg 1 日 4 回)が処方されて退院した。在宅で 3 日後,左乳房の炎症が悪化し,体 温は 40℃まで乱高下した。治療は約 3 週間続けられた。静脈内 CET 投与が行われていた入 院期間中に,乳児は緑色液状便を生じ,重度の下痢,不機嫌,涕泣を示した。これらの症 状は,在宅で母親が CEX/probenecid を服用している間続いた。CEX/probenecid 療法開始 後 day 13 に母乳を一部ヤギ乳に代えて(1 日哺乳量の 15%まで) ,day 20 までに乳児の症 状はおおむね消失した。乳児における重度の下痢と随伴症状の原因が母体の薬物治療であ るかどうかを明らかにするために,CEX および probenecid の母乳中濃度を HPLC により測定 した結果,それぞれ 745 および 964μg/L であり,絶対乳児用量および相対乳児用量は, CEX について 112μg/kg/日および 0.5%,probenecid について 145μg/kg/日および 0.7%であった。Naranjo probability scale により,乳児の有害作用は CEX について probable,probenecid について possible とされた。母乳中の CEX および probenecid 両剤 9 について算定された相対乳児用量および乳児暴露に対する影響の純理論的な 10%レベルに 基づいて,いずれの薬剤も有意な全身的作用を引き起こすことは予期されないかも知れな い。しかしながら,局所有害作用,特に下痢が観察された。Naranjo probability scale に よる評価は,CEX が probenecid よりも乳児の下痢の原因である可能性が強かったことを示 唆した。以上,授乳中の女性の乳房感染の治療に CEX/probenecid を用いる場合,臨床医 は哺乳中の乳児における有害胃腸作用の可能性を懸念すべきである。 参照文献 14 cephalexin:cefalexin(INN),probenecid(INN),cephalotin:cefalotin(INN) 「医薬関連情報」速報 No.539 掲載 <参考> cephalexin:cefalexin(INN),ラリキシン(富山化学工業株式会社)、キサール(久光製薬 株式会社)、ケフレックス(塩野義製薬株式会社)、パシビドール(辰巳化学株式会社)、ラス ポリジン(鶴原製薬株式会社)、オーレキシン(テイコクメディックス株式会社)、シンクル (旭化成ファーマ株式会社)、セファレキシン(株式会社 陽進堂、東和薬品株式会社、日医 工株式会社、辰巳化学株式会社、マルコ製薬株式会社)、セファレックス(長生堂製薬株式 会社)、セフロング(東和薬品株式会社)、センセファリン(武田薬品工業株式会社) probenecid(INN),ベネシッド(科研製薬株式会社) cephalotin:cefalotin(INN),コアキシン(東菱薬品工業株式会社) 【掲載理由】 ・ 掲載基準1(2) 10 その他の副作用情報 1 青汁製品中のビタミンKの分析 坂巻成恵(東京都健康安全研究センター多摩支所理化学研究科),ほか 食品衛生学雑誌.47(2)85−88/(2006) 市販青汁41製品について、ビタミンKの分析を行い、製品中の含量と一日摂取量を調査 した。青汁製品中のビタミンKは n-ヘキサンを用いて直接抽出し、HPLC試験溶液とし た。ビタミンKはODSカラムで分離した後、白金黒カラムで還元して得られる蛍光(励 起波長 430nm)により測定した。その結果、製品中のビタミンK1 含有量は冷凍製品90∼ 190μg/100g、粉末製品410∼3,300μg/100g、粒状製品640∼3,10 0μg/100g であり、各種青汁製品を喫食した場合、一日あたり20∼380μg のビタ ミンK1 を摂取すると推定された。ワーファリン服用者の場合、青汁製品の喫食がワーファ リンの投薬効果に影響を与える可能性が明らかとなった。 <参考>ワルファリン:ワーファリン(warfarin) アレファリン(富士製薬工業株式会社)、ワーファリン(エーザイ株式会社)、ワーリン(大 洋薬品工業株式会社)、ワルファリン(日新製薬株式会社、ニプロファーマ株式会社、ニプ ロファーマ株式会社) 【掲載理由】 ・ 掲載基準1(1)、1(4) 11 東京都医薬品情報№384 (平成18年9月号) 平成18年8月30日編集 平成18年9月発行 編集委員 古田 賢二(福祉保健局健康安全室副参事(食品医薬品情報担当) ) 古屋 正裕(福祉保健局健康安全室薬事監視課長) 杉下 由行(福祉保健局健康安全室環境保健課課務担当係長) 早乙女 芳明(福祉保健局健康安全室薬事監視課検定担当係長) 大坪 博子(都立梅ヶ丘病院薬剤検査科長) 白石 範子(都立八王子小児病院薬剤検査科長) 大村 由紀子(都立老人医療センター薬剤科主任技術員) 中野 美香子(財団法人東京都保健医療公社大久保病院病院薬剤科主任) 発 行 東京都福祉保健局健康安全室健康安全課 郵便番号163−8001 東京都新宿区西新宿2―8―1 電話(ダイヤルイン) 03(5320)4507