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第 20 章 物流・インフラ

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第 20 章 物流・インフラ
第 20 章
物流・インフラ
1. 主要な国際空港と港湾の位置
図表 20-1 にて、フィリピンにおける主要な国際空港 5 つと港湾 4 つの位置を示している。
図表 20-1 フィリピンの主要な国際空港と港湾
●国際空港
①ニノイ・アキノ(マニラ)
②マクタン・セブ
③ダバオ
E スービック港
④スービック
④スービック
⑤クラーク
■●
●
⑤クラーク
■
●
A マ ニラ港
①ニノイ・アキノ
■港湾
A マニラ港
B セブ港
②マクタン・セブ
B セブ港
●
■
C ダバオ港
D カガヤン・デ・
オロ港
■
D カガヤン・デ・オロ港
E スービック港
●
■
③ダバオ
C ダバオ港
2. 国際空港
フィリピンにはマニラやセブ等に計 10 の国際空港がある56。その他、75 の国内線専用の
空港がある。現在、ミンダナオ北部等に計 4 つの国際空港を建設中であり、2016 年までに国
際空港の数は 14 になる予定である。政府管轄機関は DOTC 傘下の航空庁(Civil Aviation
Authority of the Philippines: CAAP)であり、4 つの国際空港以外の管理、運営を行ってい
る。マニラ、セブ、クラーク、スービックの各国際空港については、マニラ国際空港公団
(出所)フィリピン航空庁。なお、”International Airport”と名のつく空港は計 12 あるが、そ
の内、イロイロとバコロドは正式な国際空港ではない。
56
155
(Manila International Airport Authority: MIAA)、マクタン・セブ国際空港公団(Mactan
Cebu International Airport Authority: MCIAA )、 ク ラ ー ク 国 際 空 港 会 社 ( Clark
International Airport Corporation: CIAC )、 ス ー ビ ッ ク 港 都 市 圏 公 団 ( Subic Bay
Metropolitan Authority: SBMA)によってそれぞれ運営されている。
2012 年における国際輸送実績は、乗降客数が約 1,670 万人、輸送貨物量が約 32 万トンで
あった。航空会社は、国内線の運送を行っているのがフィリピン航空、セブパシフィック等
8 社であり、国際線はフィリピン国の 4 社を含む 48 社である57。
図表 20-2 国際空港乗客数推移
18
16
1.5
乗客数(100万人)
14
12
1.2
0.9
1.5
0.9
その他
10
マクタン・セブ
8
6
11.3
11.2
2008
2009
12.4
13
2010
2011
14.1
ニノイ・アキノ
4
2
0
2012
(年)
(注)スービック及びクラーク分はフィリピン航空庁に報告されていないため含まれていない。
(出所)フィリピン航空庁データより作成
図表 20-3 国際空港旅客便数推移
20
18
1.9
16
1.8
便数(万便)
14
12
その他
10
マクタン・セブ
8
6
4
2
0.6
0.7
0.8
6.1
6.4
6.7
2008
2009
2010
14.5
15.9
ニノイ・アキノ
0
2011
2012
(年)
(注)スービック及びクラーク分はフィリピン航空庁に報告されていないため含まれていない。
(出所)フィリピン航空庁データより作成
57
(出所)Civil Aeronautics Board
156
図表 20-4 国際空港貨物量推移
35
1.4
1.7
30
1.5
1.6
貨物量(万トン)
25
1.3
20
15
その他
30.7
26.3
10
23.8
31.1
26.9
マクタン・セブ
ニノイ・アキノ
5
0
2008
2009
2010
2011
2012
(年)
(注)スービック及びクラーク分はフィリピン航空庁に報告されていないため含まれていない。
(出所)フィリピン航空庁データより作成
① ニノイ・アキノ国際空港
ニノイ・アキノ国際空港は 1948 年に操業開始し、かつてはマニラ国際空港と呼ばれてい
たが、1983 年に空港内で暗殺されたベニグノ・アキノ・ジュニア上院議員(コラソン・アキ
ノ元大統領の夫)を祈念して 1987 年に改称された。全部で 4 ターミナルあり、第 1 ターミ
ナル(1981 年開業)は国際線専用で年間収容能力は 600 万人、第 2 ターミナル(1999 年開
業)はフィリピン航空の全国際線及び一部国内線専用で年間収容能力 900 万人、第 3 ターミ
ナルは 2008 年に開業した最も新しいターミナルであり、フィリピン航空の一部国内線、セ
ブパシフィック航空とエアフィリピンズの全便、ゼストエアウェイズ国内線、及び全日本航
空専用で年間収容能力 1,300 万人、そして第 4 ターミナルは最も規模が小さくて古く、前述
航空会社以外の国内線専用である。
空港から市内へは約 7km あり、交通手段としてはエアポートメータータクシー(黄色い車
体)やクーポンタクシー(行き先に応じた定額制)等がある。
② マクタン・セブ国際空港
セブ島隣のマクタン島ラプラプ市に位置する国際空港であり、年間の乗降客数は国際線が
約 150 万人、国内線が約 530 万人(2012 年)とフィリピンで二番目の規模である。ターミ
ナルは国際線と国内線の 2 つに分かれている。空港からセブ島中心地までは約 9km であり、
交通手段はタクシーである。
157
アキノ国際空港入口
3. 港湾
フィリピンは島国であることからも港湾総数が約 2,450 と多い。この内、約 1,600 港は政
府や地方自治体が所有する公共港湾、約 420 港が私有、そして残りの約 420 が漁港である。
国際貨物を取り扱う主要な港湾は、マニラ港、セブ港、スービック港等である。
漁港以外の港湾の政府管轄機関はセブ港とスービック港を除き、運輸通信省(Department
of Transportation and Communication: DOTC)傘下の港湾庁(Philippine Ports Authority:
PPA)である。セブ港はセブ港湾庁(Cebu Ports Authority: CPA)58が、スービック港はス
ービック港都市庁(Subic Bay Metropolitan Authority: SBMA)によって管理されている。
2011 年における PPA 管理下港湾の貨物取扱量は約 1 億 7,800 万トンであり前年から約 7%
増加した。マニラ港における貨物取扱量が最大で約 3 割を占める。全体に占める国際貨物の
割合は約 6 割(約 1 億 400 万トン)であり、その内約 51%が輸出である。PPA から独立し
ているセブ港における 2011 年の貨物取扱量は約 2,500 万トンであり、その内約 3 割が国際
貨物であった。同じく独立しているスービック港では 2012 年における貨物取扱量が約 2,400
万トンと前年から 70%増加しておりセブ港に追いつく勢いである。
58
1992 年の共和国法 7621 号にて設置され PPA から独立し、1996 年に運営開始。
158
図表 20-5 貨物量及びコンテナ数推移
300
600
493
450
400
409
200
157.4
150
145.9
500
401
149.9
166.4
178.3
400
300
100
200
50
100
0
コンテナ数(万TEU)
貨物量(百万トン)
250
0
2007
2008
2009
2010
2011
(年)
貨物量(百万トン)
コンテナ数(万TEU)
(注)セブ港及びスービック港は含まれていない。
(出所)フィリピン港湾庁データより作成
① マニラ港
マニラ港は主にマニラ国際
コンテナターミナル(Manila
International
Container
Terminal: MICT)、北港
(North Harbor)及び南港
(South Harbor)の 3 つから
成り立っている。この内、国際
貨物を取り扱っているのは
MICT と南港である。MICT は
1979 年に外貨コンテナ専用基
地として開業し、1988 年から
その運営は民間企業である
マニラ国際コンテナターミナル
International Container Terminal Services, Inc.に委託されている。MICT は年間の取扱能
力が 250 万 TEU59とフィリピン最大であり、約 94 ヘクタールの敷地内に 6 バース(総延長
1,520m、水深 10.5~12m)、コンテナヤードは約 58 ヘクタールある。マニラ南港は年間取
扱能力が 85 万 TEU、7 バース(総延長 975m、水深 14m)、コンテナヤードは 30 ヘクター
ルあり、運営は Asian Terminals Inc.に委託されている。
59
twenty-foot equivalent units (20 フィートコンテナ 1 個分)
159
② セブ港
ターミナルは国際貨物と国内貨物に分かれており、国際貨物ターミナルは 14 ヘクタールの
敷地に 4 バース(総延長 690m、水深 9.5m)あり、年間の取扱能力は約 30 万 TEU である。
③ スービック港
スービック港はマニラ首都圏から北西へ約 110km 行ったサンバレス州に位置する。1992
年にフィリピンへ返還されたスービック米海軍基地跡地が、同年に制定された基地転換法に
より自由港区に指定された。運営及び管理はスービック湾都市圏開発公社(SBMA)が担っ
ている。水深約 15m、約 41 ヘクタールの敷地内に 15 埠頭、2 コンテナターミナル(約 14
ヘクタール)がある。年間の取扱能力は 30 万 TEU である。
4. 道路
道路の総延長は約 20 万 km であり、その内国道は約 3 万 1,700km60である。一般国道の舗
装率は約 80%でありマニラ首都圏のみで見ると 100%である。地方道を含めた舗装率は 23%
61とまだ低い。又、舗装されている道路についても路面の維持補修不足、車線分離ラインの
不備等の問題が残る。有料高速道路は、マニラ首都圏から南部及び北部にそれぞれ整備され
ており、総延長約 300km である。国道及び高速道路は、公共事業道路省(Department of
Public Works and Highways: DPWH)によって管轄されている。
首都圏では慢性的な交通渋滞を解
決するために、自動車やバス、二輪
等全ての車に対して「ナンバーコー
ディング規制」62により、プレート
番号の下一桁に応じて平日 7 時から
19 時63まで車を利用できない日を設
定している。又、交通渋滞の主要な
原因ともなっている大型貨物トラッ
クに対し主要道路の通行禁止時間を
設定する規制もある。
マニラ市内の渋滞の様子
60
2012 年 10 月末時点
2007 年時点。なお、地方道の約 7 割がバランガイ(最小の行政単位)に属している。
62
正式名称は、Unified Vehicular Volume Reduction Program
63
地区により 10 時~15 時、9 時~16 時は利用可能な時間(Window hour)を設けている場合も
ある。
61
160
図表 20-6 高速道路の概要
名称
North Luzon Expressway (NLEX)
区間
長さ(km)
開業年
ケソン市バリンタワック~
84
1977 年、2010 年延長
36
1977 年、2008 年改修、
パンパンガ
South Luzon Expressway (SLEX)
カランバ~ラグナ64
2011 年延長
Manila-Cavite Expressway
マニラ~カビテ
14
1999 年、2010 年延長
Southern Tagalog Arterial Road
バタンガス内(SLEX の延長
42
2001 年(フェーズ I)、
道路)
Metro Manila Skyway
2008 年(フェーズ II)
マニラ首都圏
20
1977 年(フェーズ I)、
2009 年(フェーズ II)
Subic-Clark-Tarlac
Expressway
スービック~ターラック
94
2007 年
(SCTEX)
(出所)DPWH 資料及び各有料高速道路保有会社資料より作成
図表 20-7 主な高速道路網
名称
Expressway (NLEX)
Expressway (SLEX)
Manila-Cavite Expressway
Southern Tagalog Arterial Road
(STAR Tollway)
Metro Skyway
Subic-Clark-Tarlac Expressway
(SCTEX)
64
凡例
メトロ・マニラ・スカイウェイ
現在、PPP(官民連携)事業第 1 号案件としてダアンハリから SLEX までの連結道路を建設中。
161
5. 鉄道
鉄道は国鉄 1 本と軽量鉄道路線 3 本の計 4 本が走っている。いずれもルソン島である。な
お、地下鉄やモノレールは存在しない。
(1)
フィリピン国有鉄道(Philippine National Railway: PNR)
スペイン植民地下の 1891 年に Manila Railway Company がマニラ首都圏近郊の路線を開
業し、1961 年に国有化されルソン島北部のサンフェルナンド及び南部のレガスピ、更に支線
が開設され計約 900km の路線を有するまでに至った。しかし、その後の太平洋戦争や道路
網の整備に伴う顧客の鉄道離れ、ピナツボ山大噴火や台風等の自然災害により、現在ではマ
ニラ首都圏からレガスピ間を結ぶビコールトレイン(約 474km の長距離列車)が一日 1 往
復65、マニラ・ナガ間が一日おきに一日 2 本(片道)、マニラ首都圏からルソン島南部カラバ
ルゾン地域のビニャン間の通勤列車(約 40km)が一日一往復、マニラ首都圏からカラバル
ゾン地域手前のアラバンまで一日 23 本往復しているのみである。なおフィリピン国鉄では、
以前は貨物輸送を行っていたが、路線及び貨車の老朽化等により貨物輸送を中止し、現在は
旅客輸送しか行っていない。PNR は DOTC 傘下にある。
(2) 高架鉄道
マニラ首都圏における高架鉄道としては、LRT(Light Railway Train)1 号線・2 号線及
び MRT(Metro Rail Transit)3 号線があり、いずれもマニラ首都圏の通勤・通学用として
利用されている。LRT の運営は軽量鉄道庁(Light Rail Transit Authority: LRTA)が担っ
ている。MRT は BLT(Build-Lease-Transfer)方式で、首都圏鉄道輸送会社(Metro Rail
Transit Corporation: MRTC)が政府の認可の下、資金調達、建設し、DOTC が MRTC から
施設を借り運営している。
政府による首都高架鉄道の整備計画及び現在進行中の事業としては以下がある。
① LRT1 号線カビテ延伸プロジェクト
・LRT1 号線の南部終着駅バクラランから南のバコオルまで 117km を延長、途中 8 駅
を設置予定。PPP 事業案件であり政府負担資金は JICA が支援。2013 年 8 月~2017
年 8 月にかけて建設予定。
② LRT2 号線東方延伸プロジェクト
・LRT2 号線の東方終着駅パシッグから更にマナシッグまで約 4km を延伸し、2 駅を
追加。JICA が事前調査を実施。事業は既に国家経済開発庁から承認され現在事前の手
続き等が進行中。
③ MRT3 号線輸送力増強プロジェクト
・3 車両編成から 4 車両への変更、それに伴う 73 車輌の新規購入。
④ ニノイ・アキノ国際空港鉄道連結プロジェクト
65
時速 40~50km で所要時間は片道 13~14 時間。料金は片道 800 ペソ。
162
・LRT1 号線の南方終着駅バクラランからニノイ・アキノ国際空港ターミナル 3 まで
の 6.2km を繋ぎ、4 駅設置するという計画。まだ事前のフィージビリティ調査が終わ
っていない段階である。
⑤ チケットシステム統一化事業
・マニラ首都圏の LRT と MRT におけるチケットシステムの統一化を計画中。
図表 20-8 高架鉄道概要
名称
駅数
運賃66
路線
全線開業
平均乗客数
ラッシュアワー時
距離
年
LRT1 号線
18km
1985 年
20 駅
12~20 ペソ
約 47 万人/日
1 分に 1 本
LRT2 号線
13km
2004 年
11 駅
12~15 ペソ
約 20 万人/日
5 分に 1 本
MRT3 号線
17km
2000 年
13 駅
10~15 ペソ
約 50 万人/日
3 分に 1 本
の運転間隔
(出所)LRTA 及び MRTC 資料より作成
LRT1 号線
LRT 駅構内
PNR
PNR 車内
LRT 及び MRT の運賃は路線バスの水準と同じ。なお、100 ペソ分のプリペイドカードはある
が、日本の定期券に相当するものはない。
66
163
LRT・MRT 路線図
■
■
LRT1 号線北部延伸(LRT-MRT 連結)プロジェクト
(建設済、Monumento-Balintawak 間は
運行開始済)
LRT1 号線
LRT2 号線東方延伸プロ
LRT2 号線
ジェクト(承認済)
MRT3 号線
LRT1 号線カビテ
延伸プロジェクト
(2013~2017 年建設予
定)
(出所)LRTA 及び MRTC 資料より作成
164
6. 電力
(1)電気料金
フィリピンには原子力発電所がなく化石燃料への依存度が高い。供給源別の発電量を見る
と、石炭が全体の約 34%と最も多く、次いで天然ガス約 29%、地熱約 15%、水力約 12%、
石油約 11%である。フィリピンにおける電気料金は近隣アジア諸国の中でも高く、業務用で
は日本より高くアジアではシンガポールに次いで高い。2012 年におけるメラルコ67の売電単
価は 1kWh あたり 8.6 ペソであり、2000 年からの年平均増加率は 5.2%と、同期間の消費者
物価指数上昇率年平均約 4.9%及び GDP 成長率年平均 4.7%を上回る。電気料金の構成は、
①発電料+②送電料+③配電料+④システム損失料68+⑤補助金+⑥ユニバーサル料69+⑦
税金となっており、課金方法は図表 20-13 に示すとおりである。
図表 20-9 供給源別発電量割合(2010 年)
供給源
石炭
天然ガス
地熱
水力
石油
風力
バイオマス
太陽光
合計
発電量(GWh)
23,301
19,518
9,929
7,803
7,101
62
27
1
67,743
石油
10.5%
割合(%)
34.4%
28.8%
14.7%
11.5%
10.5%
0.1%
0.04%
0.001%
100%
その他
0.1%
石炭
34.4%
水力
11.5%
地熱
14.7%
天然ガス
28.8%
(出所)エネルギー省資料より作成
図表 20-10 配電会社の配電量及び売上(2012 年)
配電地域
配電量
(GWh)
配電量シェア
(%)
売上
(億ペソ)
売上
シェア(%)
1 Manila Electric Company (MERALCO)
マニラ首都圏(NCR)
32,471
67%
506
30%
2 Davao Light and Power Co., Inc. (DLPC)
XI-ダバオ
1,680
3%
105
6%
3 Cagayan Electric Power and Light Co., Inc. (CEPALCO)
X-北部ミンダナオ
755
2%
50
3%
4 South Cotabato II Electric Cooperative, Inc. (SOCOTECO II)
XII-ソクサージェン
610
1%
36
2%
5 Central Negros Electric Cooperative, Inc. (CENECO)
VI-西ビサヤ
573
1%
41
2%
企業/組合名
その他
12,292
25%
963
57%
計
48,381
100%
1,703
100%
(出所)エネルギー規制局データより作成
67
フィリピン最大の配電会社。
送電中の技術的問題や盗電によって失われる電力を消費者が補填するもの。但し消費者に転嫁
できるシステムロス料の上限は 8.5%と定められている(2009 年までは 9.5%。なおメラルコの
2011 年におけるシステムロス率は 7.35%)。
69
後述する 1990 年代初頭電力危機対応時の政府債務返済に充てるために徴収しているもの。
68
165
図表 20-11 アジア諸国における電気料金の比較(2011 年)
(ドル/kWh)
0.3
0.25
0.25
業務用電気料金
家庭用電気料金
0.2
0.16
0.15
0.1
0.05
ピ
ン
ガ
ポ
ー
ル
本
ン
ィリ
シ
フ
日
タイ
港
香
国
中
ー
ド
湾
ン
ン
マ
ミャ
イ
台
韓
国
ラ
オ
ス
ベ
トナ
イ
ム
ン
ドネ
シ
マ
ア
レ
ー
シ
ア
0
(注)値に幅がある場合は(最高値+最低値)/2。右から業務用電気料金の高い順。
(出所)JETRO 資料より作成
図表 20-12 メラルコ売電単価推移
(ペソ/kWh)
10
9
8.3
7.9
8
7.4
6.7
7
7.5
6.9
6.5
6.0
5.7
6
5
8.6
5.3
5.5
4.7
4
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
(注)業務用と一般用を合わせた単価
(出所)メラルコ資料より作成
166
図表 20-13 電気料金の構成及び課金方法(業務用の場合)
電気料金の構成
業務用
課金方法
料金割合目安
①発電料
単価×使用量
59%
②送電料
単価(累進制)×契約量
10%
③配電料
基本料金(累進性)+単価(逆進制)×契約量+
12%
単価(逆進制)×使用量
④システム損失料
単価(逆進制)×使用量
7%
⑤補助金
単価×使用量
2%
⑥ユニバーサル料
単価×使用量
1%
⑦税金(上記項目によ
項目別税率×各料金
9%
り 0.65~12%)
(注)料金割合は契約電力 500kW、月使用量 15 万 kWh の場合
(出所)メラルコ資料より作成
(2) 電力安定性と自由化動向
フィリピンでは 1980 年代後半から 1990 年代初頭にかけて深刻な電力不足が生じ、長期停
電が続いていた。そのため、当時の政府は短期間で電力供給力を上げるために電力危機法や
BOT 法を制定し、民間セクターの発電部門への参入を促進する政策を進めた。しかし、コス
トよりも電力の供給を優先したため、政府と独立発電業者(IPP)間の契約は IPP に有利な
ものとなり、国家電力公社(National Power Corporation: NPC)による電力買取コストが
上昇した。又、NPC による電力事業の独占により電力料金が上昇したため、前述の通りアジ
ア他国と比べて高い電気料金水準となっている。その後、深刻な電力不足は解消されたもの
の、継続する電力需要増(過去 10 年間における増加率は年平均約 4%)及び高止まりする電
気代への対応として、2001 年 6 月に電力産業改革法(Energy Power Industry Reform Act:
EPIRA)が施行され、電力セクターの民営化が進められてきた。2013 年 3 月時点において、
発電、送電部門及び卸売市場の民営化は実現されており、残る小売市場の自由化(オープン
アクセス)が漸く始まろうとしているところである70。なお、PEZA 等投資誘致機関管轄内
では以前から電気料金の特別優遇料金(エコゾーン料金)が適用されていたが、当自由化に
より廃止されることになっている71。
2010 年における最大需要電力は気温が年間で最高の 38 度に達した 5 月 20 日の 7,656MW
であり、前年度同時期から 10.5%増加した72。停電は、大雨や台風の多い 6 月から 11 月にか
けた雨期に多く、マニラ首都圏においても一日数時間停電になることが年に数回ある。その
70
当初は 2012 年 12 月 26 日開始と発表されたものの市場インフラ及び施行規則の未整備から開始
日が延期となった。2013 年 3 月から試行導入が始まり、同年 6 月 26 日から本格開始の予定。
71
小売自由化が開始されるまで優遇料金は引き続き適用される。
72
2010 年における発電設備容量は計約 1 万 4,000 メガワット。
167
ため、オフィスやモールが入る商業ビルでは自家発電を備えている。又、瞬間停電が業務に
影響する工場では、自社で自家発電を設置している場合もある。なお、ミンダナオ島では電
力の過半数を水力発電に依存しており、昨今のエルニーニョ現象により供給不足状態が続い
ているため計画停電を行っている。
7. 通信
通信事業は従来から民間企業によって担われてきた。古くから独占的に事業を行ってきた
フィリピン長距離電話会社(Philippine Long Distance Telephone Company: PLDT)73とグ
ローブテレコム74の 2 社が市場のほぼ全体を占める。電気通信事業に関する規制や監督の所
管 は 運 輸 通 信 省 管 轄 下 に あ る 国 家 電 気 通 信 委 員 会 ( National Telecommunications
Commission: NTC)である。
(1) 電話
フィリピンでは固定電話の加入者数が少なく、2011 年において約 355 万人、普及率は 3.8%
である。一方、携帯電話の加入者は 9,400 万人、普及率は 99.3%と高い。携帯電話利用者の
9 割以上がプリペイド式である。又、フィリピンは SMS(ショート・メッセージ・サービス)
利用の高さでも知られており、その数は一日約 20 億件と米国や中国を抜いて世界一である。
(2) インターネット
1994 年に米モザイクコミュニケーションがフィリピン初の商用プロバイダーとしてイン
ターネットサービスを提供し始めたのを皮切りにインターネットが普及し始めた。2011 年に
おけるインターネット加入者は約 520 万人、普及率は約 5.5%、ブロードバンド加入者は約
180 万人、普及率は約 1.9%とまだ低い。但し、自宅外での利用も含めたインターネット利用
者の割合は約 29%と高い。プロバイダーによる個人向けインターネットサービス料金は下が
ってきたものの、月額料金が 1,000 ペソ前後75するため加入できる層は限られる。最近では、
プリペイド式でも利用可能な USB 型のインターネット無線接続モデムや 2009 年から販売開
始した WiMAX76の利用、又光ファイバー敷設も進みつつある。
NTT グループが約 20%を出資。PLDT 傘下には携帯通信事業者の Smart Communications や
Digitel がある。
74
シンガポール・テレコムとアヤラ財閥の合弁会社
75
上り最大速度が 1MB の場合。なお、インターネット・カフェの利用料金は 1 時間あたり 15~30
ペソ。
76
Wi-Fi よりも広範囲なエリアで高速通信が可能なワイヤレスブロードバンド通信の規格
73
168
図表 20-14 インターネット及びブロードバンド加入者推移
(千人) 6,000
6%
5,000
5%
4,000
4%
3,000
3%
2,000
2%
1,000
1%
0
1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011
インターネット加入者数
300
350
400
500
800 1,000 1,200 1,440 2,000 2,500 3,000 3,600 4,320 5,184
ブロードバンド加入者数
-
-
-
10
21
インターネット加入者率
ブロードバンド加入者率
55
89
123
265
496 1,046 1,722 1,722 1,791
0.4% 0.5% 0.5% 0.6% 1.0% 1.2% 1.4% 1.7% 2.3% 2.8% 3.3% 3.9% 4.6% 5.5%
-
-
-
0.0% 0.0% 0.1% 0.1% 0.1% 0.3% 0.6% 1.2% 1.9% 1.9% 1.9%
(出所)国際電気通信連合資料より作成
(3) 郵便
郵便事業は国有のフィリピン郵便公社(Philippine Postal Corporation)が行っている。
以前に比べると郵便物が途中でなくなるということは殆どなくなったものの配送システムが
脆弱で時間がかかるため、又フィリピンには郵便ポストがなく郵便局まで持参する必要があ
ることから外国人にはあまり利用されていない。又、海外から送られてくる荷物(手紙は除
く)は通知が届くのみで自宅等宛先までは配達されず、郵便局まで取りに行く必要がある。
なお、民間の宅配業者は多数存在し、外国企業・外国人は民間業者を利用する場合が殆どで
ある。
169
0%
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