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Arthur Rimbaud
Arthur Rimbaud 1854~1891 (言葉は詩となり、詩は光を放つ) フランスには多くの詩人が誕生したが、アルチュール ランボーはその個性、生き方において、際立っ て特別な存在である。さまざまな言葉が色で象徴的に比喩される。同じフランスの Claude Debussy や Maurice Ravel は音楽で色彩を表現したが、ランボーの頭の中では絶え間なく言葉が渦を巻き、詩となっ て浮かび、光のしずくがこぼれてきたことだろう。 ランボーは 37 歳という短い生涯のうち、20 歳までに多くの詩を作った が、1875 年、21 歳以後は詩を放棄した。家庭をあまり顧みない父と厳格 な母という幼少時の家庭環境になじめなかったことから、外の世界にあ こがれて何度か放浪を繰り返した。語学に才能を示し、15 歳の時本格的 に詩を書き始めた。わずか 5 年という短い期間に数々の傑作を遺した。 詩作のかたわら、放浪の中で Paul Verlaine 1844~96 との異常な交流関係 が続いた。わずか 5 年間だけ詩を作り続け(恐ろしく無垢な流れが圧倒的 に流出し続け=粟津則雄コメント)、以後詩を捨てて軍隊、 曲馬団の通訳、 石切場の監督、武器取引、さらに奴隷商人にまで手を染めて、病にさい なまれながら流浪した。37 歳の 1891 年、右脚に癌ができそれが悪化し て世を去った。いわゆる破滅型の天才の典型ともいえる生涯であった。 (寿子) 彼の DNA は 21 歳を境にして遺伝子構造が明らかに変質してしまったのである。 作品の中でもっとも有名なものの一つである”VOYELLES”=「母音」と訳文である。言葉、文字、発音、 音楽、色彩、光の何という輝き ! VOYELLES A noir, E blanc, I rouge, U vert, O bleu : voyelles, 母音 (粟津則雄 訳) A は黒、E は白、I は赤、U は緑、O は青、母音たちよ、 Je dirai quelque jour vos naissances latentes : A, noir corset velu des mouches éclatantes おれはいつかお前たちの秘められた誕生を語ろう、 Qui bombinent autour des puanteurs cruelles, きらめき光る蠅どもの毛むくじゃらの黒いコルセット Golfes d'ombre ; E, candeurs des vapeurs et des tentes, Lances des glaciers fiers, rois blancs, frissons d'ombelles ; I, pourpres, sang craché, rire des lèvres belles Dans la colère ou les ivresses pénitentes ; U, cycles, vibrements divins des mers virides, Paix des pâtis semés d'animaux, paix des rides Que l'alchimie imprime aux grands fronts studieux ; O, suprême Clairon plein des strideurs étranges, Silences traversés des Mondes et des Angés ; ― O l'Oméga, rayon violet de Ses Yeux ! A、無残な悪臭のまわりを唸り飛ぶ 陰った入江。E、靄と天幕の白々とした無垢、 誇らかな氷河の槍、白い王たち、繖形花のおののき。 I、緋の衣、吐かれた血、怒りに狂った、 あるいは悔悛の思いに酔った美しい唇の笑い。 U、循環期、緑の海の神々しいゆらぎ、 家畜の散らばる放牧場の平和、 学究の広い額に錬金の術が刻む小皺の平和 O、甲高い奇妙な響きに満ちた至高の喇叭、 諸世界と天使たちがよぎる沈黙、 ― おおオメガ、あの人の眼の紫の光線! 20 Mars, 2010 斗内 弘一 (ついでに) シンガーソングライター みなみらんぼう氏の名は Rimbaud にあやかったもの