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技術研究会の変遷と役割
平成27年度 高エネルギー加速器研究機構 技術職員シンポジウム テーマ:技術職員のプレゼンスの向上 ∼技術研究会などを通したスキルアップの施策 技術研究会の変遷と役割 自然科学研究機構 分子科学研究所 技術課 鈴井光一 2016.3.16 技術研究会 参考資料 1:技術研究会開催一覧 分子研技術課HPより、水谷まとめ 2:「技術研究会報告によせて」技術研究会報告No.1_巻頭言 分子科学研究所の設立に尽力された井口洋夫教授(後に第3代所長)による技術研究会を行う趣旨説明 3:「技術研究会の役割」技術研究会報告No.2_巻頭言 高橋重敏技術課長による技術研究会の役割についての説明 4:「技術研究会によせて」技術研究会報告No.3_巻頭言 研究会を立ち上げ当時の制度上問題となった点をどう解決したかについての記録。 5:「技術研究会の歴史」,小平純一氏(核融合科学研究所),1993 技術研究会の歴史についてまとめられた資料 6:「技術研究会の歩みと今後について」,竹中たてる氏(KEK),2005 2004年度大阪大学総合技術研究会にて発表された報告書 7:機器・分析技術研究会ほか各種技術研究会報告集の巻頭言及び各種記事 大阪大学産研の山田等氏、田中高紀氏らの記事など 6:技術研究会運営協議会(2015.9.9:山形大学)説明ppt http://techsv.ims.ac.jp/SNS/?m=pc&a=page_o_login 技術研究会 歴史的な経緯(1) 高橋重敏氏 1975年、分子科学研究所創設と同時に教室系文部技官を行政職の組織として発足した技術課 (全国で初)の技術課長として名古屋大学理学部工作室から異動し着任。 この工作室は技術員の数は少ないが、実験に必要なものを作る総合力がある。最近は極低温や真空 の装置が多いが、電子線溶接なども駆使して、会社ではできない無理な作業もする。しかも、研究者 に渡される装置は、ヘリウムによる漏れ試験を終わっている。もちろん結構づくめとはいかないが、 研究者の困った設計の相談に応じ、必要とあれば新技法の開発もする。このような機能をもつ工作室 は外国にはざらにあるが、日本にはその例が少ない〔原 :東北大学科学計測研究所の工作室は例外 で、規模も大きく機能も優れている紹介がある〕。……… ……この工作室は実験装置を作っただけでなく人材も養成したから、私は「高橋学校」と呼んでい た。……略…… さて、校長先生の高橋自身は最近、新設の分子科学研究所に懇望され、その技術課 長に転出した。個人的には気の毒だが、「高橋学校」の精神を広めるために頑張ってほしい。 【出典】上田良二「電子回折と電子顕微鏡──過去四十年の回想」日本物理学会編『日本の物理学史・上──歴史・回想編』東海大学 出版会、1978年。(名古屋大学_上村泰裕准教授Webより)。『上田良二(1911∼1997)昭和期の物理学者。電子回折と電子顕微鏡 の研究に従事。』 技術研究会 1975年以前 歴史的な経緯(1) 高橋重敏氏が名古屋大学理学部に在任中、学術研究を技術面で支援する 技術者が、技術・技能を向上させる意識の高揚と技術者育成のために、 勉強会を行ってきた。 (技術研究会の土台部分) 基本となる考え: 学術研究を推進するためには、研究者と協働する技術者の存在が重要である 1975年11月 1976年2月 分子科学研究所 技術課長(高橋重敏) 着任 分子科学研究所で第1回技術研究会を開催 開催趣旨 → 技術研究会報告No.1及びNo.2の巻頭言参照 「…研究所としては広く知識を求め、交流し、とかく狭くなりがちな技術者同士の協力に資すると共に自分 たち自身の発展への刺激のために技術研究会を持つことにしている。」 → 技術研究会報告No.1の巻頭言 当時の大学等における技官の閉鎖的な現状を憂慮し、優れた技術者のしかるべき処遇や技術向上に資する機 会を設けることが重要。 技術者自身の技術研鑽や技術習得の場として技術研究会を行うこととした。 技術研究会 歴史的な経緯(2) 分子科学研究所は国立大学共同利用機関の1つとして設置され、全国の大学等からの共同 研究・共同利用を推進する機関であるという特性を活用し、技術研究会への参加者に旅費 を準備した。(技術研究会報告No.3巻頭言) 1978年10月 ∼∼ 分子研は機械工作部門と電子回路工作部門の技術職員を擁する陣容となり、 機械・回路の2つの分科会を年に2回開催していた。 高エネルギー物理学研究所(KEK)の機械工作部門が年2回のうち1つの研 究会を受け持つようになった。←(研究会の趣旨に同調) 分子研やKEKの電子計算機を担当する技術者や低温分野を担当する技術者も 研究会での技術発表や情報交換を希望し分科会として成立していった。 1980年3月 高橋技術課長定年退職 ←1つの区切りとなる 1983年3月 「高エネルギー物理学研究所技術研究会」開催。 KEKはここまでの2年間を準備期間とし、この年に開催した技術研究会を 3機関持ち回り開催の最初と位置づける。 開催日程も2日間とし、従来までの研究会の転換点ともいえる。 (現在の開催形式の原点?) 技術研究会 1984年11月 歴史的な経緯(3) 名古屋大学プラズマ研究所(核融合科学研究所)技術研究会を開催。 3研究機関(分子研、核融合研、KEK)の持ち回り開催が定着することとなる 小平氏のまとめ(資料5)から、回を重ねるたびに技術研究会に期待する様々な思いが込められ、 それぞれ独自の新企画を盛り込んだ技術研究会運営されて行く状況がよくわかる。 1992年3月 分子研 開催 拡大していく技術研究会の運営に関して3機関の代表者が会合持つ。 声かけは三国技術部長(KEK)? 1993年2月 核融合研 開催 研究所間討論会 メンバー:KEK、分子研、核融合研、天文台、宇宙研 日本原子力研究所那珂研究所(オブザーバー) (資料5)は、ここまでの技術研究会の歴史を踏まえて議論すべきと考え、小 平氏が討論会の資料としてまとめられた物?。 技術研究会 歴史的な経緯(4) 1995年2月 KEK 開催 研究所間討論会(あり懇) 大学からもメンバーが加わり技術研究会のあり方について議論される。 1996年3月 ↓第1回の「機器・分析技術研究会」と位置づけられる 分子研 開催 ・第5分科会として「化学分析分」を設置。 ・研究所間懇談会(あり懇)で化学分析分科会を始め各分科会を大学で分担 する形の分散開催など技術研究会の新しい方向が話し合われる。 1996年9月 1997年2月 電通大、天文台、名古屋大、北大がそれぞれ分科会を受け持つ形で分散開催 が行われる。 ・前年の分子研開催時の「化学分析」分科会を、 大阪大学が受け持つ形で「機器分析技術研究会」を開催 記録では、平成8年度技術研究会第5分科会「機器・分析技術研究会」となっている 1999年3月 KEK 開催 「技術研究会運営協議会」が発足 技術研究会 歴史的な経緯(5) 2001年3月 東北大学 技術研究会 開催 ・7分科会で開催され「総合技術研究会」の様相が見られる 2003年3月 東京大学 総合技術研究会 開催 ・10分野の分科会。技術研究会に「総合」が付される ・「教育・演習・実習指導」分科会 ↑「実験・実習技術研究会」の基点となる分科会 2004年3月 KEKが中心となり大阪大学・分子研などと協力して報告書を電子出版とした 2004年4月 国立大学法人化 2005年3月 大学大学 総合技術研究会 ・8分科会で開催。「実験・実習」分科会 大学で実験・実習に貢献する技術職員らの、毎年開催したいという要望を実現 2006年3月 鳥取大学 第1回「実験・実習技術研究会」 開催 技術研究会 歴史的な経緯(6) 2015年 多岐に渡る技術分野の分科会を設けた「総合技術研究会」と、3研究機関 (KEK、核融合研、分子研)における主要な技術分野(概ね5つの技術分野) で開催する「技術研究会」を交互に開催し現在に至る。 2016年3月 KEK技術研究会2015(明日から開催) 技術研究会運営協議会 ・将来的な開催機関の確認 ・開催方法など運営に関する事項の協議 →「技術研究会・総合技術研究会開催指針」 技術の向上と技術者間の交流 の場として発展しつつ続いている 技術研究会 歴史的な経緯(7) 変遷 大学や研究機関における技術職員の役割は時代の変遷とともに移り変わってきている。 その流れのなかで、技術研究会を主催する大学や研究機関がその時代で活躍する技術職員 にとって最良の技術研究会となるよう努力されている。 技術研究会 役割について(1) 技術研究会の開催に際して 「技術研究会・総合技術研究会開催指針」に沿いつつ詳細は機関の裁量で進めていただく 趣旨、会場・会期、参加資格、技術分野、要旨、報告書、について記述 趣旨: 開催趣旨は以下を踏襲することが望ましい。 本研究会は、大学、高等専門学校及び大学共同利用機関等の技術者が、日常業 務で携わっている実験装置の開発、維持管理の話題から改善、改良の話題に及ぶ 広範な技術的研究支援活動について発表する研究会です。発表内容も通常の学会 等とは異なり、日常業務から生まれた創意工夫、失敗談等も重視し、技術者の交 流及び技術向上を図ることを目的にしています。 ・どの技術分野からも関連した業務の成果発表がほとんど ・開発過程の話題や失敗談の発表は少ない。(報告書の作成) 技術研究会 役割について(2) 研究会開催する各機関で 会の趣旨・目的としてよく示されるキーワード(技術研究会に期待するもの) 【技術研修】 技術交流、技術研鑽の場、技術情報の共有 【プレゼンテーション_スキル】 学会発表の練習 まとめる力 話す力 文章力 【先端的科学技術への追随】 技術情報収集・共有 技術向上(グローバル化) 【職員活性化】 技術者交流の場、コミュニケーション 技術研究会 役割について(3) 技術職員の「スキルアップ」の視点で 発足当初の技術研究会の役割は専門技術を伸ばす場を意識していたが、 近年では広範囲な技術領域を網羅し、幅広い知識吸収の場としての役割が強い めざす技術者像 ハイタレント T型(またはπ型)技術者 幅広い知識 (周辺技術、マネジメント) 軸足となる専門技術 技術研究会 役割について(4) 技術研究会開催における技術組織のプレゼンス 大学および研究機関の事業 技術組織として認識・評価 予算獲得 組織としての取り組み 自立した組織 人員組織力 技術研究会 今後に向けて 技術研究会の発足と現在までの変遷を紹介 ここから技術職員に向けた役割などを考えてみた。 ●まだ課題は多く存在している 多様化する技術職員の業務スタイル 大学や研究機関の性格の違い ●今後に向けて 技術職員にとって有益な研究会でありつづけ、 かつ持続可能性を探り発展させてほしい