Comments
Description
Transcript
基本型水ロケット - 公益財団法人日本宇宙少年団
(ロケット1:水ロケット1) 水ロケットを先ず飛ばしてみよう!! 基本型水ロケット <目 1.ねらい<目的と概要> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2.材料集めの情報やヒント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2-1.水ロケット本体 2-2.ランチャー (発射台) ①(市販品) 2-3.ランチャー②(ゴム栓式) 3.工作(材料・工具、工作方法)・・・・・・・・・・・・・・・・・1 3-1.材料・工具 3-2.工作方法 3-3.リーダーへのアドバイス 4.打ち上げ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 4-1.用具及び防具類 4-2.リーダーの心掛け 4-3.打ち上げ前準備 4-4.試し打ち 4-5.打ち上げに最低必要な役割分担 4-6.打ち上げ手順 5.安全対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 5-1.何のために安全をうるさく言うか? 5-2.打ち上げ手順を守る 次> 5-3.子供の自由な発想を生かす 5-4.そもそも危険が伴っている 5-5.なぜ管制官が必要か? 6.科学する心を育てるための具体的ヒント・・・・・・・・14 6-1.水の量について 6-2.フィンについて 6-3.ノーズコーンについて 6-4.重心の移動について 6-5.圧力容器の恐ろしさについて 6-6.キーワード 7.この教材を行う(用いる)ことのできる子どものレベル ・・・・15 8.この教材を行う(用いる)ことのできる活動団体の 経験年数・・・・16 9.関連項目 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 9-1.学習指導要領との関連 9-2.活動総覧(活動マップ) 9-3.教材系統図(カリキュラムマップ) 10.補足資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 本教材は宇宙とのつながりを軸として科学を身近に感じてもらうために作った 科学教材です。本教材の利用による事故等については一切責任を持ちかねます ので、本教材の利用は、経験のある指導者の指導の下に行って下さい。 2005年(平成17年)3月31日 日本宇宙少年団 教材検討グループ 水ロケットを先ず飛ばしてみよう!! - 基本型水ロケット - 1.ねらい<目的と概要> 体験版と言うべき内容なので、基本的な水ロケット(基本型)の工作と打上げを通して、「楽し さ」を味わう事が第一です。予想以上の飛距離に驚き、感動し、空気を加圧してその力で飛んだと いう実感、飛ぶのは本物のロケットと同じ原理など、「ロケットを自分で作って飛ばした」と感じ、 「もっとやりたい!(向上心と継続)、次はこうしたい!(工夫)、どうして?(知的好奇心)」 と思う心を育て、今後につなげていく様にしましょう。 2.材料集めの情報やヒント 2-1.水ロケット本体(ボディ) 使用するペットボトルは、必ず炭酸飲料のものを使用する。傷や割れがあると内圧がかかった 時に破裂や破損の危険があるので、よくチェックすること。 材料集めはリサイクルセンター、スーパーマーケット、酒屋等へ行って下さい。なおペットボ トルは衛生上、水道水でよく洗浄して使用すること。 又形状、寸法がメーカーによって少し違うので、同一メーカー品を使うのがよい(おすすめ: サイダー、ファンタ、グレープ、等の円柱状のペットボトルが工作しやすい)。 2-2.ランチャー(発射台)①/(市販品) 使い易さと安全面から、プラスチック製の市販ランチャーを購入する事をお勧めする。自転車 のブレーキを使用したリモートレバーで発射できるタイプが最も安全である。通信販売でも購入 することができる(「10.補足資料」参照)。 2-3.ランチャー②(ゴム栓式) 本当に体験版でしか使えないが、ビーカーやフラスコに使うゴム栓や椅子の脚にはめるゴムを 使用する方法もある。ペットボトルの口に合うサイズのゴム栓に穴を空け、サッカーボールやテ ニスボールに空気を入れる時の針を刺して空気を入れる。加圧していくとゴム栓が外れて飛んで 行くが、いつ発射するか分からないのが難点である。 3.工作(図-1参照):材料、工具、工作方法 3-1.材料・工具 1)材料 ⅰ.ペットボトル(1.5ℓ×2本):ボディ、スカート(フィン取付用の筒) ・必ず炭酸飲料のもの(同一メーカー品) ・傷や割れが無い事を確認すること ・水道水でよく洗浄すること(衛生対策) ⅱ.牛乳パック(1,000mℓ×2枚)又はポリプロピレン板(PPシート厚さ0.75 mm(折りやすく、形状の保持性がよい)):フィン(尾翼) ・水道水でよく洗浄すること(衛生対策) ・牛乳パックは数回の打上げに耐えるが、耐久性(変形、破損)に乏しい。従って耐久 性を高めるのであれば、市販のポリプロピレン板(PPシート)を使用するとよい。 ⅲ.色画用紙(B5判×1枚):ノ-ズコーン 1 ⅳ.新聞紙(大判×1枚):緩衝材(ノーズコーンに入れる) ⅴ.油粘土(15~20g):重り(ノーズコーン先端に入れる) ⅵ.セロテープ、ビニールテープ、両面テープ、ホッチキス ⅶ.ノズル(市販品、工作教室の時は主催者より貸与してもよい) ⅷ.タコ糸 2,000mm 1本 2)工具・道具(リーダーは刃物や工具の安全な使い方を事前に指導すること) ⅰ.はさみ ⅱ.カッターナイフ ⅲ.机上保護版(カッターマット、段ボール、他) ⅳ.フィン取り付け位置図(ペットボトルと同径円に中心線を入れたもの) 3-2.工作方法(図―1、図-2参照):工作時間 約2~3時間 (参加者の興味と自主性を喚起するように呼びかける) 1)ボディになるペットボトルを選ぼう (品番① 参照) 傷や割れ、へこみや変形していないペットボトルを選ぼう。 ボディには圧力がかかるので、傷や割れがあると圧力をかけたときに、破裂や破損の恐れが あるよ。へこみや変形しているとバランスが悪くなり又組立時に部品が正確に組み付けられ ないよ。 2)スカートを作ろう (品番② 参照) ペットボトルの上下を切り、胴体の部分(中央円柱部)をスカートとして水ロケットボディ 下部に中心位置(ペットボトルの芯)を合わせてビニールテープでしっかりつけよう。 このスカートは水ロケットが落下したときに、危険を防止すると共にノズルの破損を防ぐの だ。下部になる切り口には危険防止のためにビニールテープを巻き、触ったときに指を切っ たりしないようにしておこう。細かいところにも安全の配慮は必要だよ。 *スカートが長いとランチャーに当たってセットできない場合がある。又、ノズルとジョイ ントのセット不良が発生した時にはずせないことがある。 3)フィンを作ろう (品番③ 参照) 牛乳パックを二つ折りして、のりしろの部分をはしに作り、好きなフィンの形を書いてハサ ミで切ろう。続いて同じ形のものを数枚作ろう。(基本型では4枚) フィンを広げて内側同士を両面テープで張り合わせよう(又はホッチキスで止める)。 のりしろ部を除きフィンの外周をビニールテープで巻きしっかり補強しよう。 完成したフィンののりしろを左右に広げて両面テープを貼りつけ、フィン取り付け位置図を 基にスカートに貼りつけよう。 さらに上からビニールテープでのりしろ部を貼り、全体を補強しよう。 4)ノーズコーンを作ろう (品番④⑤⑥ 参照) 色画用紙を円錐の形に丸めて、セロテープで仮止めするよ。 簡単なようだけどなかなかうまく円錐(形状、長さ)が出来ないよ。いろいろなやり方を試 そう。 下のはみ出したところを切って三角ぼうしのような形にしよう。(コーンを立てた時に鉛直 に立つよう底面を正確に切ろう。組立が正確で容易になるよ) 完成したらビニールテープでつなぎ目をしっかり固定しよう。 ノーズコーンの先端のとがっていて危険と思われる場合は先端を少し切っておこう。 2 その中に油粘土と新聞紙をまるめて入れよう。油粘土は重心の位置を前に出し、又新聞紙は 水ロケットが落下でノーズコーンがつぶれる時に衝撃を吸収するためだよ。又油粘土をノー ズコーンの先端に固定するためのものでもあるよ。 5)組み立てよう (図-1参照) ⅰ.ボディ(スカート及びフィンはすでに付いている)にノーズコーンを取り付けよう。 組立はボディの中心線に各部品の中心線を合わせ、ボディを立て360度回転させな がら、傾いたりゆがんだりしていないか確認し、仮付をしながら正確に取り付けよう。 ⅱ.各部品の接合部はビニールテープでしっかり固定しよう。 ⅲ.ノズルをセットしよう。 ノズルにパッキンやO(オー)リングが付いているか どうかを確認しボディにしっかり取り付けよう。パッ キンやOリングに傷は無いかな。傷があると水漏れす るよ。 6)名前やイラストを書こう 完成した水ロケットに自分の名前を書こう。 ロケットの名前や号機も書こう。 自分の好きな絵や言葉(夢や希望)を書くのも楽しいものだ。 いよいよ自作水ロケットの完成は目前だヨ。 7)検査をしよう (図-1参照) ⅰ.部品の組み付け忘れはないかな? ⅱ.各部品はボディの中心線と合っているかな? 左右対称についているかな? ⅲ.接合部はしっかり固定されているかな? 検査官になったつもりで、しっかり検査をしよう。 3-3.リーダーへのアドバイス (図―1参照) (安定飛行の確認と事前の安全確認をする) 1)重心の位置を調べよう フィンの大きさ、形、位置関係と重心位置はどうなっているのだろう? 水ロケットを糸でつるして水平になるところに重心がある。 重心とフィンまではどれくらい離れているか? 実は重心とフィンの場所が近づきすぎると飛び方が不安定になる。 重心の位置を変えるには、ノーズコーンの先端に入れた油粘土の量を調整するとよい。 少なくすれば重心の位置が後ろへ、多くすれば重心の位置は前へ移動する。 2)飛ばす前にテストをしてみよう 水ロケットが安定して飛ぶかどうか飛ばす前に簡単なテストをしよう。 重心でひも(タコ糸 約1.5m程度)を結びぐるぐる回してみる。(ストリングテスト: 次ページイラスト参照) 安定して回すことが出来たら、重心に結んでいるひもをフィン側に少しだけずらし、同じよ うに回してみよう。それでも安定して回すことができればOKだ。 正しい姿勢が保てる範囲(復元力)を確認する ひもをボディに結びつけ、ずれたり、外れたりしないようにセロテープでしっかり固定し、 又持った指から糸が外れないようにし、周りの人を退避させてからやろう。 安全確認を十分行い、自分や周囲の人がケガをしないように気をつけよう。 3 3)工作教室や実験や体験活動では“動いているもの”、“動くもの”は“危険”の認識を持と う。(テストを子どもがやる時は安全確保のためにリーダー又は保護者の監視下で実施する こと) 4)製作手順図を参考までに添付する。(図―2) 4 基本形水ロケット概略寸法図 (単位 mm) (図‐1) ⑤油粘土 15~20g 260mm ⑥緩衝用新聞紙 大判1枚分 フィン取り付け位置図 フィンの 取り付け位置 組み立て後の寸法 約 530mm ペットボトルの 外周 ①本体(ボディー) 1.5ℓ炭酸飲料ペットボトル フィン取り付け位置図に ③フィン4枚 ロケットのスカート側を乗せ、 1,000mℓ牛乳パック 2つ折 フィン取り付け位置の印に 合わせてフィンを取り付ける のりしろ 70mm ⑦ノズル 市販品 35mm 70mm 110mm 底辺から5mmの 位置につける ②スカート 1.5ℓ炭酸飲料ペットボトル 5 6 4.打ち上げ(図―3参照):打ち上げ時間 1回5~10分 4-1.用具及び防具類 1)自転車用空気入れ(圧力計付がよい) 2)ランチャー 3)泥水跳ね返り防止用ビニールシート(ランチャ-の下に敷く) 4)給水用500ccペットボトル(水道の蛇口よりの直接給水でもよい) 5)セフティーコーン(射場区域の明示)、トラロープ、立ち入り禁止等の安全表示看板 6)シールテープ(水漏れ対策) 7)ドライバー、ペンチ等(ランチャーの修理等) 8)ヘルメット 9)ゴーグル 10)耳栓 4-2.リーダーの心掛け 1)時間は余裕を持って、慌てず、あせらず安全をその都度確認しながら実施すること。 2)打ち上げは危険を伴う。 特にリーダー(指導者)および安全管理責任者は適切な準備と明確な指示を出してメリハ リを付けて実施すること。 決して成り行き任せや曖昧な言動で打上げをしてはならない。 (子供たちにほんものの打ち上げ体験をさせよう) 4-3. 打ち上げ前準備 1)場所 ⅰ.充分な広さを確保する。 飛行が安定している機体でも学校の校庭の半分は欲しい。 (目安:長さ約100m、幅50m以上) ⅱ.他者の有無を確認する。 特に第三者や子どもがいる時は安全な場所に退避をお願いする。 ⅲ.射場区域(立ち入り禁止区域)をセフティーコーンや看板等で明示する。 2)天候 ⅰ.強風(特に横風)、雷鳴時は打上げを中止する。 ⅱ.雨(打ち上げは可能だが・・・)の場合も注意力が散漫になりやすいので中止するの がよい。(小雨で実施の場合は通常以上の安全確保を確認の上、行うこと) 3)ランチャー・自転車用空気入れ ⅰ.使い方の熟知と水・空気漏れの対策方法の確認 <加圧中の水漏れ> *ボディ-とノズルの間から ← ノズル取付け不良 ← ゴムパッキン不良(暴発の恐れ無し) *ノズルとジョイントの間から ← ロック不良(暴発の恐れあり!) *ジョイントの後ろから ← 自転車用空気入れ不良(暴発の恐れ無し) ← 自転車用空気入れ接続不良(暴発の恐れ無し) <加圧中の空気漏れ> *ジョイントの後ろから 7 *自転車用空気入れが外れた! → 自転車用空気入れバルブが正常なら水ロケッ トの圧力は変化無し(虫ゴムは逆流防止にな っている) ⅱ.自転車用空気入れの圧力計が示しているのは、ボディ内の圧力ではなく「ホース」の 圧力である。 ⅲ.ランチャーのジョイントや稼動部を事前に確認すること。 加圧後ジョイント不良でセットした水ロケットが発射しない時がある。 子供たちを退避させてランチャー係が安全を確保し、点検すること。 4)保護具の着用 ⅰ.落下水ロケットから頭部を保護する(落下地点の監視員):ヘルメット ⅱ.発射時の飛散汚泥から目を保護する(発射担当者及び近くの子ども):ゴーグル ⅲ.破裂、暴発(発射担当者及び近くの子ども):耳栓 4-4.試し打ち 1)機体の飛行特性、飛距離、高度、着地点等を把握しておくこと。 (射場の広さに応じた適正圧とランチャーの上下角) 2)最高圧又は加圧(ポンピング)回数を決めておくこと。 4-5.打上げに最低必要な役割分担 1)管制官(射場の安全管理責任者) (「5.安全対策」で説明) 2)ランチャー係 ⅰ.水ロケットのランチャーへのセット確認(ロック確認)は、必ずランチャー係が行う。 セットの仕方が分からない子供だと、ロックしていない状態かもしれない。 ⅱ.全員がセットできたら、管制官の指示により加圧(ポンピング)を開始する。 ⅲ.加圧の補助 小学校低学年は、最後まで加圧するのが無理かも。親に手伝ってもらうのもよい。 ⅳ.水漏れや空気漏れの対応 決して子供を水ロケットに近づけない。上からのぞかない。 ⅴ.自転車用空気入れがランチャーから外れていないか、空気入れのクリップ部(口金) を点検する。(外れていれば漏れる音がする) ⅵ.加圧は斜め後ろで行い、ランチャーの真後ろに子供を立たせない。(発射時も) 3)監視係 ⅰ.立ち入り禁止区域への侵入者確認。 立ち入り禁止区域内に人がいるときは、管制官に合図をして、打ち上げを待ってもら い、安全な場所に退避を指示する。また、区域外への落下も予想されるので、周囲の 人にも注意を促す。 ⅱ.どこに落ちたかを確認する。 *木に引っかかったり、池などに落下した時は安全に回収する方策を指示する。 ⅲ.水ロケットを回収した後は打上げ場の脇を通って速やかに戻る様に指示。 4-6.打上げ手順 (図-5参照) 打上げ準備作業から回収まで、安全確保のために管制官が指示を出し、足並みを揃えて作業 を行う。管制官は子供やリーダーが聞こえる様にマイクやメガホンを使い、ランチャー係・監 8 視係と連絡を取りながら手順を進める。具体的な手順は以下の通り。 1)水入れ(“燃料充填”) ⅰ.水は500cc程度を入れる。 ⅱ.ノズルにゴムパッキン及びOリングが入っている事を確認し、ノズルをボディに確実 に締める。 ⅲ.ノズルの締め付けは小学校低学年生では心許ないが、男性の大人が力任せにやるとパ ッキンを潰し過ぎて漏れの原因になる。女性の大人が、そこそこの力で締める位がよ い。 2)ランチャーセット ⅰ.ランチャー係が、ノズルがきちんとジョイントにロックされている事を確認する。 ⅱ.射場の広さを考慮し、ランチャーの上下角・方位も、この時に再設定する。 3)加圧前確認(手順再確認) 加圧前の落ち着いた状態で、子供と手順を再確認する。 ポイントは、 ⅰ.管制官の指示に従う。 ⅱ.加圧を始めたら、何があっても水ロケットに近づかない (水漏れ等があったら、ランチャー係が管制官に知らせる) ⅲ.加圧が終了したら、自転車用空気入れを倒して待つ(加圧完了合図と安全確保)。 ⅳ.全員の打ち上げが終わるまで(全機が発射されるまで)、回収に行かない。 ⅴ.回収したら発射場の端を通り、速やかに安全エリアに逃れる。 4)加圧 ⅰ.管制官は射場の監視係に、周囲の安全確認及び加圧の予告をする。 (全員の退避を確認する) ⅱ.管制官は加圧開始の指示を出し、全員の加圧が終了するまで待機する。 5)カウントダウン(本ものを疑似体験する) ⅰ.発射レバー(自転車のブレーキレバー)はワイヤーが外れやすいので、上下逆にする など工夫する。 ⅱ.水をかぶるので、ランチャーの真後ろには立たない。 ⅲ.射場の監視係は周囲の安全確認を行い(最終確認)、カウントダウンに入る。 ⅳ.カウントダウンは管制官の指示に従い、全員で大声を出して行う。 全員が大声でカウントダウンすることにより、打ち上げ機に集中することが出来る。 6)回収 ⅰ.全機が発射し終わったら、回収に行かせる。 ⅱ.回収したら射場の端を通り、速やかに安全エリアに逃れる。 7)次ロケットのランチャーセット ⅰ.回収中でも時間短縮のため、ランチャーセットのみは行ってもよい。 ⅱ.加圧は射場に人がいなくなってから行う。 8)その他 風向・風速と落下点の状況を見て、適宜ランチャーの上下角・方位を修正する。 9 10 11 12 5.安全対策(子どもに危険を予知させる指導を含む)(図-3、4参照) <活動を継続し発展させる為の基本> 加圧された空気の力について、事前に話をしておくと良い。(例:風船の破裂) 工作の基本的な注意事項や打上げ時の注意事項は、その活動を始める前の落ち着いた状態で参加 者及びリーダー・指導者全員で確認し合うこと。 必要な場合は保護者にも協力を呼びかける。 5-1.何のための安全をうるさく言うか? 1)とんでもない! → → 自由にやるのを縛る?? 取り返しの付かない事にならないように!! 自由にやるためには安全と秩序が必要!! 2)やってはいけない事をやりたがる子供に刃物や工具の正しい使い方を指導し、打上げの段 階では、“本物の打ち上げ現場”を疑似体験させる。 5-2.自由に作ったロケット(どこへ飛ぶか解らない)を打ち上げる時ほど、打ち上げ手順を 守る必要がある。 5-3.子供の自由な発想を生かす。 自由に自分で作って成功した時の喜びと感動を味わうためにはリーダーは“限界”や“異 常事態”を知っておくべきである。 1)破壊圧力(例 15~16kg/㎠) 2)破裂や落下機体に当たった時の衝撃 破裂時の音・破片 → → ヘルメット 耳栓・ゴーグル 3)飛行不安定機体及び部品の飛散(射場広さの確保) 5-4.そもそも危険が伴っている 1)圧力容器を扱っている(参考:圧力容器、高圧ガス保安法他) 2)ペットボトルの本来の目的以外の使用をしている(PL法外) ⅰ.当事者以外は誰も安全を保証してくれない。 ⅱ.事故が発生しても誰も損害を補償してくれない。 ⅲ.自主自律、自己責任の活動であることをしっかり認識することが必要である。 5-5.なぜ管制官が必要か? 1)かつては誰も全体を観ていない現場もあり、皆好き勝手にやっていた。 まだゴム栓ノズル(発射のタイミングがまちまち)の時代ではあったが今もある 可能性はある。 図―4を見てどこに危険や不安全が潜んでいるか考察してみよう。子供たちと危 険予知訓練(KYT)を行うとよい。 2)誰が安全を確認しているか?(事故が発生してからでは取り返しがつかない) ⅰ.活動全体を統括する安全管理責任者を決めて活動する。 子供たちの安全確保のためには安全管理責任者を決めてバラバラではなく一 元化された状態で運営することが大切である。 ⅱ.参加者数や開催回数が多くなるに従って、ヒヤリハットは多くなり、安全確 保のために訓練された管制官が必要になって来ている。 6.科学する心を育てるための具体的なヒント (「なぜ」「くふう」「感動」を子供たちが自ら発見し、体得することを援助する) 13 初めて水ロケットを飛ばした時、あまりによく飛ぶのでびっくりする。その飛翔は、衝撃的でも ある。全く初めての子どもたちの場合、この「最初の打上げ」を是非大切にして欲しい。どれ位飛 ぶか予想させたり、水を入れないで空気だけで飛ばして見せたりと、ドキドキ感を高めてから打上 げに臨みたい。そして、なぜあれほどよく飛ぶのか(原理)、もっと飛ばすにはどうしたらよいか (工夫)を問いかけ、好奇心を高めていく。 《タイミングをみてまた経験年数(学年)に合わせて子供たちに呼びかけよう》 6-1.水の量について 《やってみよう》 1)水の量を多くしたり少なくしたりしてみよう。 飛ぶ距離や高度がどんなに変わるかな? 6-2.フィンについて 《やってみよう》 1)フィンの形をいろいろ変えてみよう。同じ形でも大きさを変えると飛び方もずいぶん 変わるよ。 2)フィンを斜めにつけてみよう。機体がくるくるとスピンするはずだ。 回転と飛行の安定性及び飛距離の関係を調べてみよう。 3)フィンをつける位置を水ロケットの先のほうにしたり、まん中にしたりといろいろ変 えてみよう。 4)フィンの枚数もいろいろ変えてみよう。 5)いろいろやる時は危険も伴う(どこへ飛ぶか分からない)ので、ベテランリーダーの 下で、リーダーの指示やルールを守ってやろうね。 本物のロケット実験の歴史の中では、大怪我や死亡事故も有るんだよ。 6)リーダーは前もって限界テスト等をやること。(いきなり本番はやらない) 6-3.ノーズコーンについて 《やってみよう》 1)ノーズコーンの長さを長くしたり、短くしてみたりしよう。 2)ノーズコーンの中に入れる油粘土や新聞紙の量を変えてみよう。 6-4.重心の移動について 《やってみよう》 1)重心とフィンがどれくらい離れているときが一番安定して飛ぶのか実験してみよう。 2)さらに、重心より前(ノーズコーン側)にフィンをつけると、どうなるかな? 14 6-5.圧力容器の恐ろしさについて 1)圧縮性の高い気体(空気)が高圧で閉じこめられている。 2)カチカチのボトル、5気圧を体感 ← 気体と圧力の性質を知る安全教育 圧縮空気が入っていて破裂の危険性がいつも伴う。 3)風船の破裂等で危険を体得させること。 6-6.キーワード 《科学の着眼点をヒントとして子供たちに提供する》 1)“飛ぶ”のヒント ⅰ.動物、植物、鉱物でどんなものが空を飛んでいるか? ⅱ.飛び方や着地のやり方は? ⅲ.飛んでいる速さや高度そして飛行距離は? ⅳ.人間が作ったもので空を飛んでいるものは? 2)推進原理(反動推進、作用反作用、空気中・真空中、圧縮ガス、噴射)のヒント *「宇宙をめざすきみへⅠ」参照 3)推力を大きくするヒント(圧力、質量) 4)安定した飛行のヒント(形状、寸法、重量、重心と尾翼の関係) 5)速度や高度を知るためのヒント 速度の例 *プチロケット(約40km/h) *プロ野球投手の最高速(約158km/h) *サッカーボールのシュートの最高速(約200km/h?) *流れ星(約50~100km/秒) *ジェット機B747(巡航速度約910km/h(マッハ 0.855) 6)本物との比較 型 仕 式 様 水ロケット 全 長 (m) 0.53 (53cm) 直 径 (m) 0.09 ( 9cm) 53 4 H-ⅡAロケット (標準型) 重 量 巡航速度 (t) (km/秒) 0.00015 約0.02 (150g) (約80km/時) 月探査機切り離し速度 約285 10.8 (全備質量) (約39,000km/時) 7)打上げ可否の判断(水ロケットの故障、ランチャーの故障、気象条件、射場の状況) 8)飛行記録と分析(与件条件の整備、計測、試験、実験、比較のやり方)、発表 7.この教材を用いることのできる子どものレベル 体験版であるので、小学校低学年でも対応は可能である。 但し、ハサミやカッターナイフがうまく使えない年齢の場合、補助が必要。また自転車用空気入 れで加圧する時も補助が必要。 15 8.この教材を用いることができる活動団体の経験年数 結成したばかりの団体でも実施できるが、リーダーは必ず事前に試し打ちをして、ランチャーの 扱い方、空気圧と飛距離などを把握しておくこと。 9.関連項目 9-1.学習指導要領との関連 小学校編:内容 A「生物とその環境」生物の体のつくりと働き 4年B「物質とエネルギー」 中学校編:第1分野(1)身近な物理現象、(5)運動の規則性 第2分野(1)植物の生活と種類 中学3年 第1分野 高等学校編:物理Ⅱ 「運動とエネルギー」「作用と反作用」 力と運動 9-2.活動総覧(活動マップ):「ロケット」 9-3.教材系統図(カリキュラムマップ): 「まず飛ばしてみよう」から始め、上手に飛ばすためのポイントそして順次アイデアロケッ トへ発展させる。 10.補足資料 10-1.参考文献 1)水ロケットを飛ばそう 執筆:日本宇宙少年団リーダー(片岡鉄雄 監修:的川泰宣 竹前俊昭 福田研一 吉田 譲) 発行:日刊工業新聞社 2)宇宙をめざすきみへⅠ、Ⅱ(宇宙開発事業団、財団法人日本宇宙少年団) 3)『L5(エルファイブ)』97年8月号 (財団法人日本宇宙少年団) 4)刃物及び工具類の使い方(日本宇宙少年団教材検討グループ編) 5)危険予知訓練(下記文献等を参考に各活動団体で訓練を実施して下さい) ⅰ.社団法人全国子ども会連合会 発行 「こうしてすすめよう!子ども会KYT」(執筆・シート絵:伊藤昭彦) 「こうしてすすめよう!子ども会KYT-2みつけたキケンくん」 (イラスト:伊藤昭彦/菊谷礼子) *社団法人全国子ども会連合会 本の杜「FAX情報サービス」FAX.№ 03-3220-1829 または(社)全国子ども会連合会事業開発部(東京都杉並区荻窪 5-16-15)へ。 <取り扱っている本の一覧>http://boku.ra-net.gr.jp/~kids/books/mori.html ⅱ.中央労働災害防止協会 「KYT4ラウンド法 発行 イラスト・シート集②」 「短時間KYTイラスト・シート集②」 ⅲ.労働基準調査会 編著 「安全作業シート集」 ⅳ.ボーイスカウト愛媛県連盟・健康安全委員会 「スカウトの安全 発行 危険予知トレーニングシート」 *財団法人ボーイスカウト連盟 16 他 <スカウト用品販売店一覧> http://www.scout.or.jp/j/info/supply/supply_list.html 10-2.教材入手先 1)夢小屋:〒504-0815 岐阜県各務ヶ原市蘇原東栄町1-63 TEL/FAX 0583-71-3453 2)ブルーウィングス(かかみがはら航空宇宙博物館内ミュージアムショップ) TEL 3)中村理科工業 0583-86-8145 FAX 0583-86-8164 通販サイト「1・2理科」 http://www.12rikachan.com/ 4)日本ペットボトルクラフト協会 部品供給サービス http://pcaj-i.jp/supply/index.html 教材提供 :日本宇宙少年団横浜分団 竹前俊昭氏 日本宇宙少年団大和まほろば分団 二唐義夫氏 追記、編集:「宇宙航空分野における次世代人材育成のためのリーダー育成支援」検討委員会 日本宇宙少年団 教材検討グループ お問合せ先:財団法人日本宇宙少年団 TEL.03-5542-3254 FAX.03-3551-4870 e-mail [email protected] 発行 :宇宙航空研究開発機構 広報部 ©JAXA 無断転載を禁じます 17