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平成26年度グリーン貢献量認証制度等基盤整備事業 (J

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平成26年度グリーン貢献量認証制度等基盤整備事業 (J
平 成 26年 度 経 済 産 業 省 委 託 事 業
平成26年度グリーン貢献量認証制度等基盤整備事業
(J-クレジット等活用モデル構築実証事業)
報告書
平成27年3月31日
マイクライメイトジャパン株式会社
目次
1 はじめに ...................................................................................................... - 1 1.1 事 業 目 的 ................................................................................................. - 1 1.2 事 業 概 要 ................................................................................................. - 1 2 カーボン・オフセット取 組 事 例 の調 査 (実 態 調 査 ) ......................................... - 3 2.1 調 査 について ........................................................................................... - 3 2.2 国 内 調 査 事 例 の分 析 ・評 価 ..................................................................... - 5 2.3 海 外 調 査 事 例 の分 析 ・評 価 ................................................................... - 20 2.4 分 析 のまとめと考 察 ................................................................................ - 29 3 旅 行 会 社 Web サイトを活 用 した実 証 事 (仕 組 み構 築 及 び実 証 試 験 ) ......... - 37 3.1 構 築 するカーボン・オフセットの仕 組 み ..................................................... - 37 3.2 スキーム概 要 ......................................................................................... - 37 3.3 スキーム詳 細 ......................................................................................... - 40 3.4 顧 客 調 査 ............................................................................................... - 45 3.5 実 証 実 験 実 施 内 容 ................................................................................ - 45 3.6 実 証 実 験 の結 果 と分 析 .......................................................................... - 46 3.7 考 察 と今 後 の可 能 性 について ................................................................ - 58 4 展 開 可 能 性 事 業 の調 査 ............................................................................ - 60 4.1 調 査 対 象 一 覧 ........................................................................................ - 60 4.2 調 査 結 果 と分 析 ..................................................................................... - 61 4.3 IT プラットフォーム活 用 による拡 大 可 能 性 ................................................ - 63 4.4 今 後 の可 能 性 について ........................................................................... - 65 5 まとめ ........................................................................................................ - 66 -
1 はじめに
1.1 事 業 目 的
平 成 25 年 度 より国 内 の地 球 温 暖 化 対 策 の一 つとして、省 エネ設 備 の導 入 や再 生 可 能 エネル
ギーの活 用 による温 室 効 果 ガスの排 出 削 減 量 をクレジットして国 が認 証 する「 J-クレジット制 度 」
が開 始 された。
本 制 度 は、大 企 業 等 による技 術 ・資 金 の提 供 を通 じて、中 小 企 業 が行 った温 室 効 果 ガス排 出
削 減 量 を認 証 する「国 内 排 出 削 減 量 (国 内 クレジット)認 証 制 度 」及 び、 国 内 における自 主 的 な温
室 効 果 ガス排 出 削 減 ・吸 収 プロジェクトから生 じた排 出 削 減 ・吸 収 量 を認 証 する「オフセット・クレ
ジット(J-VER)制 度 」の、従 来 の 2 つのクレジット認 証 制 度 を統 合 し、新 設 したものである。
初 年 度 においては 50 件 のプロジェクトが登 録 され、平 成 32 年 度 までに約 174 万 t-CO2 のJ-
クレジットが創 出 される見 込 みである。しかしながら、旧 制 度 に基 づく国 内 クレジット及 び J-VER を
含 め、クレジットの無 効 化 量 は認 証 量 と比 較 して低 調 に留 まっている。
J-クレジット制 度 の円 滑 な市 場 形 成 のためには、クレジット の創 出 (供 給 )と活 用 (需 要 )のバ
ランスが必 要 不 可 欠 であり、クレジット需 要 の拡 大 が喫 緊 の課 題 である。 本 事 業 は、クレジット需
要 の更 なる活 性 化 のため、消 費 者 や企 業 等 に 対 する商 品 ・サービス 提 供 を通 じて、クレジットが
簡 便 かつ継 続 的 に活 用 される仕 組 みをモデル化 し、消 費 者 や企 業 等 が カーボン・オフセットを簡
便 かつ継 続 的 に行 える仕 組 みを広 く普 及 ・促 進 することを目 的 とする。
1.2 事 業 概 要
本 事 業 では、消 費 者 や企 業 等 に対 する 商 品 ・サービス提 供 を通 じて、クレジットが有 効 に活 用
にされている事 例 を調 査 し、他 の商 品 ・サービス提 供 のモデルとなるクレジット活 用 の仕 組 みを構
築 するとともに、その仕 組 みが有 効 に機 能 するか実 証 を行 い、消 費 者 や企 業 等 の カーボン・オフ
セットに対 するニーズ等 を分 析 ・検 討 する。具 体 的 には以 下 の実 態 調 査 及 び実 証 試 験 を行 う。
(1)カーボン・オフセット取 組 事 例 の実 態 調 査
国 内 外 の企 業 等 が商 品 ・サービス提 供 に対 して、カーボン・オフセットを継 続 的 に行 える仕 組
みを取 り入 れている事 例 について、国 内 事 例 は文 献 またはヒアリング調 査 を、海 外 事 例 は文 献
調 査 を中 心 に実 施 し、①商 品 ・サービス提 供 の概 要 、②導 入 の経 緯 、③効 果 についてまとめ
る(単 発 のイベントや期 間 限 定 の商 品 ・サービスは除 く)。
(2)カーボン・オフセットの仕 組 み構 築
(1)にて得 られた結 果 も踏 まえ、a)消 費 者 が容 易 に参 加 できること、b)企 業 等 が継 続 的 に実
施 できること、c)商 品 ・サービス提 供 に係 るクレジットの提 供 の方 法 が明 確 であることに留 意 し、
-1-
企 業 等 が商 品 ・サービス提 供 の利 用 ・購 入 を通 じて行 うカーボン・オフセットのモデルとなる仕 組
みを検 討 し、構 築 する。
(3)市 場 調 査 (実 証 試 験 )
(2)で構 築 したシステム(仕 組 み)を用 いて、消 費 者 に対 して 商 品 ・サービス提 供 を行 う業 者 と
協 力 して実 証 試 験 し、カーボン・オフセットに対 する消 費 者 ・企 業 の意 識 やニーズを調 査 する。そ
の結 果 を基 に他 の事 業 者 が仕 組 みを構 築 する際 の課 題 や留 意 点 を抽 出 する。
(4)カーボン・オフセット展 開 可 能 性
実 態 調 査 ・実 証 調 査 で得 た結 果 を踏 まえ、今 後 のカーボン・オフセットの取 組 の展 開 について
どのような企 業 ・分 野 での可 能 性 が考 えられるかを検 討 する。構 築 した仕 組 みの展 開 に限 らず
具 体 的 なヒアリングを元 にした考 察 を行 い、具 体 的 な方 向 性 を提 示 することを目 的 とする。
-2-
2 カーボン・オフセット取 組 事 例の調 査(実 態 調 査)
2.1 調 査 について
2.1.1 事 業 目 的
本 調 査 の目 的 は、国 内 の消 費 者 や企 業 等 に対 する 商 品 ・サービス提 供 を通 じて、クレジットが
有 効 に活 用 されている事 例 を調 査 し、取 り入 れている仕 組 みや、消 費 者 や企 業 等 の カーボン・オ
フセットのニーズを知 ることによって、今 後 の国 内 におけるクレジットの活 用 の促 進 に活 かす ことで
ある。
2.1.2 調 査 対 象 の事 例
旅 行 ・航 空 ・宿 泊 業 のカーボン・オフセットのいくつかの事 例 において、個 人 消 費 者 は少 額 の負
担 であれば一 定 の割 合 でカーボン・オフセットを実 施 している実 績 がみられた。このことから、オフ
セットの需 要 が少 ないという現 在 の問 題 点 を解 決 するために必 要 な 方 策 は、これらをはじめとした
事 例 を調 査 し、その成 功 要 因 を分 析 することで見 出 すことができる可 能 性 が高 いと考 えられる。 よ
って調 査 対 象 は、国 内 外 の商 品 ・サービスのカーボン・オフセットの事 例 の中 から以 下 の特 徴 をも
つ事 例 を対 象 とした。
 消 費 者 向 けビジネス
 参 加 者 ・オフセット量 が多 い
 仕 組 み(IT 仕 組 み)の活 用
 複 数 年 に渡 って継 続 的 に取 り組 んでいる事 例
表 1 個 人 消 費 者 をターゲットとしたカーボン・オフセットの事 例
事業名
概要
費用
実績
株式会社
2012 年 11 月 よりエコツーリズムデス
1 口 500 円
エコツアー総 取
エイチ・アイ・エス
クが企 画 するすべてのツアーにおい
/利 用 客 負 担
扱 人 数 に対 する
エコツアー
て、オプションでカーボン・オフセットが
実施 者数 比率
選択可能
9.6%
スイスの
2007 年 末 よ り カ ー ボ ン ・ オ フ セ ッ ト サ
0.60 ス イ ス フ ラ
宿 泊 者 の約 64%
ユースホステル
ービスを開 始 。支 払 時 に宿 泊 者 がカ
ン
495,000 人 (2013
ーボン・オフセット実 施 の可 否 を選 択
円 )/宿 泊 者 負 担
年)
TUIfly
チ ケッ トの 予 約 サ イ ト で 、 予 約 者 が 利
利 用 距 離 に応じ
チケット予 約 者 の
(ドイツの LCC)
用 する飛 行 機 から排 出 される CO2 を
た CO2 相 当 金 額
8%
確 認 し 、 自 費 で カ ーボ ン・ オフ セットを
/利 用 客 負 担
実 施 するサービスを提 供
-3-
( お よ そ 50
2.1.3 調 査 方 法
国 内 の企 業 ・団 体 による商 品 ・サービスのカーボン・オフセットの事 例 について、各 事 業 者 のホ
ームページや雑 誌 等 の閲 覧 、電 話 ヒアリング、訪 問 ヒアリングにより調 査 した。また海 外 について
の情 報 収 集 は、主 にプレスリリースやウェブサイトなどの文 献 、及 び 弊 社 関 連 会 社 で欧 州 の オフ
セット・プロバイダーである NPO マイクライメイトの協 力 を得 て行 った。
2.1.4 調 査 内 容
調 査 項 目 は以 下 を 中 心 に行 った。カーボン・オフセットの取 組 を 始 めるきっかけから今 後 の課
題 までをその対 象 としている。
① カーボン・オフセット取 組 の分 類
② 導 入 の経 緯 ・目 的
③ 取組開始時期
④ クレジット種 類 と内 容
⑤ オフセット量 と費 用 負 担
⑥ システム利 用 有 無
⑦ 継続理由
⑧ 導入効果
⑨ 今 後 の展 開 予 定
-4-
2.2 国 内 調 査 事 例 の分 析 ・評 価
2.2.1 調 査 対 象
調 査 対 象 について、「2.1.2 調 査 対 象 の事 例 」で定 義 した内 容 に基 づき 20 事 例 を選 定 した。商
品 のオフセットが 14 件 、サービスのオフセットが 5 件 、両 方 実 施 が 1 件 となっており、割 合 として
は大 企 業 の取 組 の割 合 が多 い。
表 2 国内事例調査 対象一覧
-5-
2.2.2 カーボン・オフセット取 組 の分 類
今 回 対 象 にした事 例 を分 類 した。オフセット類 型 とはどのようなタイプのオフセットであるか、オフ
セット対 象 とはどのような範 囲 をオフセットの対 象 としているかということを示 している 1 。「商 品 」 と
「サービス」は対 象 となる商 品 ・サービスを提 供 するために発 生 した CO2 を、「寄 附 」は算 定 せずに
一 定 量 の CO2 を、「自 己 活 動 オフセット支 援 」は商 品 ・サービスを購 入 ・利 用 する消 費 者 個 人 の日
常 生 活 に伴 う CO2 をカーボン・オフセットしている。
自 己 活 動 オフセット支 援 や寄 付 をオフセットしているのは商 品 14 件 のうち 7 件 、サービス 6 件
のうち 1 件 となっており、全 体 の 40%を占 める。取 り組 む事 業 者 が、オフセットの総 量 を決 めること
ができ、消 費 者 にカーボン・オフセットに取 り 組 む機 会 を提 供 できる。商 品 ・サービスに比 べ排 出
量 計 算 などについて簡 便 化 ができることも事 業 者 側 のメリットといえる。
表 3 調 査 事 例 のオフセット類 型 分 類
2.2.3 導 入 の経 緯 ・目 的
カーボン・オフセット導 入 の経 緯 ・目 的 について各 事 例 に対 しヒアリングを行 った。
導 入 のきっかけの理 由 として、「他 社 から提 案 を受 けた」という受 動 的 な理 由 が一 番 に挙 がった。
共 通 してみられることは提 案 を受 けて、環 境 貢 献 ・温 暖 化 対 策 という社 会 の動 きに対 して、どう貢
献 していくべきかとの企 業 命 題 に対 し、取 組 の一 形 態 として検 討 するきっかけとなったということだ。
類 似 の動 機 として、「社 会 的 な温 暖 化 への関 心 の高 まり」、「顧 客 からの環 境 対 策 の要 望 」を踏 ま
えると 20 件 中 14 件 (70%)となっており、社 会 における事 業 者 のあり方 として環 境 貢 献 ・温 暖 化
対 策 を無 視 できない状 況 にあることが伺 える。
環 境 省 「我 が国 におけるカーボン・オフセットのあり方 について(指 針 )第 2版 」より
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/carbon_offset/guideline/140331guideline.pdf
1
-6-
表 4 導 入 のきっかけと目 的
各 事 業 者 がカーボン・オフセットを導 入 した理 由 については、「商 品 ・サービスの差 別 化 」と「 CSR
強 化 」という 2 つの理 由 が 20 件 中 16 件 (80%)と大 半 を占 めている。企 業 の社 会 的 責 任 としての
CSR は 2000 年 代 になって社 会 的 にも認 知 され始 めたが、当 初 、環 境 活 動 については、ゴミ拾 い
や植 林 、募 金 などの活 動 にとどまっていた。その後 、温 暖 化 貢 献 や CO2 削 減 について数 値 で可
視 化 できるカーボン・オフセットは、環 境 CSR という切 り口 で企 業 に徐 々に普 及 していった。
商 品 ・サービスの販 売 の差 別 化 は、各 企 業 の本 来 の事 業 活 動 にかかわるものであり、単 なる
CSR ではなく、環 境 と事 業 戦 略 の融 合 した形 といえる。これは CSR における環 境 の取 組 を進 める
に当 たっての一 つのゴールといえる。
販 売 活 動 についてカーボン・オフセットを取 り組 むことで企 業 価 値 を上 げていくことは、「他 社 サ
ービスとの差 別 化 ・市 場 拡 大 を狙 い、CSV(Creating Shared Value )としてカーボン・オフセットを実
施 した」、「販 促 企 画 担 当 としては、カーボン・オフセットの取 組 によって販 促 につながらなければ、
継 続 していくことは難 しい」といった企 業 コメントからも推 察 できるように、カーボン・オフセットに取 り
組 むことは同 時 に販 売 促 進 のツールとして差 別 化 の実 現 が期 待 されているといえるだろう。業 種
としてもモビリティを利 用 する旅 行 代 理 店 、商 品 を提 供 するメーカー、商 社 などが多 く見 られる。
ゴミ拾 いや植 林 といった環 境 貢 献 活 動 は自 社 事 業 と関 係 がない場 合 が多 く、その継 続 性 につい
ては不 透 明 であるが、商 品 ・サービスの販 売 活 動 においては、カーボン・オフセットの効 果 が認 め
られる場 合 、事 業 継 続 とともに取 組 が継 続 する可 能 性 が高 い。
-7-
表 5 導 入 の目 的 と事 業 者 の業 種
2.2.4 取 組 開 始 時 期
取 組 開 始 時 期 についてはその時 点 での社 会 の動 きが影 響 した事 例 も少 なくない。2005 年 の京
都 議 定 書 が批 准 されチーム・マイナス 6% がスタートしたことや、2008 年 の洞 爺 湖 サミットで、国
連 での 2013 年 以 降 の次 期 枠 組 みに関 する議 論 を後 押 しすることを含 め、地 球 温 暖 化 対 策 が重
要 項 目 として取 り上 げられた。この年 がオフセット元 年 と言 われ、日 本 でのカーボン・オフセット活
動 が始 まった時 期 である。第 34 回 主 要 国 首 脳 会 議 (北 海 道 洞 爺 湖 サミット)でカーボン・オフセッ
トが実 施 され、日 経 MJ 発 表 の上 期 ヒット商 品 番 付 でカーボン・オフセットが東 の関 脇 に選 ばれた
年 でもある。
2008 年 は日 本 においてカーボン・オフセットへの注 目 度 が上 昇 したことから、社 会 の関 心 に合
わせて取 組 を開 始 している事 業 者 が 7 件 と最 も多 くみられた。ヒアリングの結 果 、丸 吉 日 進 堂 印
刷 等 のカーボン・オフセット取 組 のきっかけとなっている。ただし社 会 の関 心 の低 下 とともに取 組 を
-8-
止 めてしまった事 例 も多 く、2008 年 開 始 の 7 事 例 のうち 3 事 例 (約 42%)は既 に取 組 を終 了 して
しまっている。一 方 2009 年 以 降 の取 組 については 1 件 を除 きすべて継 続 している。
震 災 の影 響 で全 国 的 な節 電 対 応 が行 われた影 響 か、2011 年 開 始 の取 組 は今 回 の調 査 対 象
には含 まれていなかった。2011 年 度 以 降 は取 組 件 数 の大 幅 な増 加 はみられず、国 内 全 体 のカー
ボン・オフセット事 例 件 数 からみても、年 100 件 程 度 のペースにとどまっている状 況 2 である。
8
7
6
件数(n=21)
3
5
4
取組終了
3
5
2
継続中
1
4
1
2
2
1
1
1
0
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
年度
図 1 調 査 事 例 の取 組 開 始 時 期
2.2.5 クレジット種 類 と内 容
2.2.5.a 種 類
クレジットの種 類 においては、件 数 別 割 合 は、 CER 3 が 12 件 (55%)、CER・国 内 クレジット 4 ・ JVER 混 合 が 2 件 (10%)、J-VER 5 が 7 件 (35%)と CER が過 半 数 を占 めた。またオフセット量 につい
ては CER の利 用 が 97%を占 めた。
2
3
4
5
国 内 におけるカーボン・オフセットの事 例 件 数 http://www.j-cof.go.jp/cof/market.html
Certified Emission Reductions
国 内 クレジット制 度 (国 内 排 出 削 減 量 認 証 制 度 )に基 づくクレ ジット
オフセット・クレジット(Japan Verified Emission Reduction )
-9-
1574 748
2% 1%
単位:
t-CO2
7
35%
11
55%
2
10%
CER
75140
97%
CER・国内クレジット・J-VER
J-VER
図 2 クレジット種 類 別 事 例 件 数
CER
CER・国内クレジット・J-VER
J-VER
図 3 クレジット種 類 別 オフセット量
クレジットの種 類 別 に対 象 商 品 の内 訳 を見 ると、CER が全 体 の約 55%と幅 広 い商 品 で活 用 され
ていることが分 かる。CER は価 格 の低 さに加 え、 6 風 力 発 電 もしくは水 力 発 電 といった環 境 に優 し
いクリーンなイメージのクレジットが多 いことから、全 般 的 に活 用 されていると考 えられる。実 際 に
活 用 されている CER のプロジェクトの内 容 を見 ると、創 出 国 はインドやブラジル、アルゼンチン等 の
新 興 国 で、プロジェクトはほとんどが風 力 発 電 もしくは水 力 発 電 であった。国 内 クレジットは 2009
年 から創 出 が始 まっているが、今 回 の調 査 事 例 においては 2 件 のみにとどまっている。また J-VER
を活 用 した事 例 は 2009 年 以 降 にみられ、近 年 では国 内 の地 域 へ資 金 提 供 ・貢 献 という形 を希 望
する事 業 者 に選 択 されている。
表 6 クレジット種 類 別 対 象 商 品 とその取 組 年 度
6
http://www.j-ver.go.jp/project/anken03.html
- 10 -
2.2.5.b 単 価 ・費 用
クレジット種 類 ごとに単 価 を調 査 したところ下 表 のとおりとなった。
最 安 値 は CER の 1,000 円 というものがある。近 年 ではより価 格 が下 落 しており京 都 議 定 書 の
枠 組 みから日 本 が離 脱 しているため 2015 年 以 降 の取 扱 いについては不 透 明 となっている。代 替
として価 格 面 からは国 内 クレジットが挙 げられる。今 回 の調 査 事 例 においては平 均 単 価 が CER を
下 回 っており、コスト負 担 面 を 重 視 する事 業 者 については次 の選 択 肢 として挙 げられることは間
違 いない。J-VER は森 林 吸 収 系 のものが多 く間 伐 や森 林 整 備 にかかる費 用 を踏 まえると、価 格 の
大 幅 な下 落 は見 通 しとして低 いだろう。
表 7 クレジット種 類 別 の各 価 格
また、クレジットの単 価 と年 間 オフセット 量 の相 関 も見 られた。年 間 の総 トン数 が判 明 している
18 事 例 に お い て 、 年 間 オ フ セ ッ ト 量 が 多 い ほ ど 使 用 ク レ ジ ッ ト の 単 価 が 低 く な る 傾 向 に あ る 。
10,000 円 /t-CO2 以 上 の事 例 の平 均 年 間 オフセット量 が 87t-CO2 であるのに対 し、10,000 円 /tCO2 未 満 の事 例 の平 均 年 間 オフセット量 は 986t-CO2 であり、年 間 数 千 トン規 模 のオフセット案 件
であるローソンとフォルクスワーゲンの 2 案 件 を除 いた場 合 でも 353t-CO2 と 4 倍 近 い量 となって
いる。(表 8 を参 照 )
一 方 で、クレジット費 用 の年 間 負 担 額 は使 用 クレジットの単 価 にかかわらず違 いは見 られなか
った。 一 部 を 除 き 、 事 業 者 が カーボ ン・オ フセ ッ ト の取 組 のために 確 保 でき る 予 算 額 はおお よそ
100 万 円 強 だとも推 察 できる。事 業 者 はオフセット量 の多 い取 組 であったとしても、単 価 の低 いク
レジットを活 用 し総 費 用 を抑 えることで取 り組 んでいるという現 状 が明 らかとなった。
表 8 使 用 クレジットの単 価 とオフセット量 ・費 用
- 11 -
2.2.6 カーボン・オフセット量 と費 用 負 担
2.2.6.a 使 用 クレジットとの関 連
全 事 例 の年 間 平 均 オフセット量 については、以 下 のとおり事 業 者 によってオフセット量 はまちま
ちではあるが、オフセット量 が多 い大 規 模 事 例 は限 られている。500t-CO2 を超 えるものは 20 事 例
中 5 件 となっている。これらに共 通 してみられることは全 て CER が使 用 されていることである。CER
は単 価 が低 いこともあり、オフセット量 の多 い事 例 ではコストを抑 える目 的 で CER が使 用 されるこ
とが多 く、国 内 クレジットと J-VER については 500t-CO2 未 満 の案 件 でしか使 用 されていない。
平 均 年 間 オフセット量 が 500t-CO2 未 満 の事 例 では、CER6 件 、国 内 クレジット・J-VER は 8 件 と
なっている。CER の割 合 が一 定 量 存 在 するように見 えるが、これら CER の事 例 の 6 件 中 3 件 は
2008 年 に開 始 されていることから当 時 CER 以 外 のクレジットが普 及 しておらず他 の選 択 肢 がなか
ったと考 えられる。この点 を加 味 するとオフセット量 の少 ないものについては CER 一 択 ではなく、国
内 クレジット・J-VER の活 用 も進 んでいることがわかる。
表 9 年 間 平 均 オフセット量 と使 用 クレジット
- 12 -
2.2.6.b クレジット費 用 負 担 者
クレジット費 用 については、事 業 者 が負 担 する場 合 と、その商 品 ・サービスの購 入 者 (利 用 者 )
が負 担 する場 合 がほぼ同 じ割 合 でみられた。
取 組 を終 了 した事 例 について着 目 すると、費 用 負 担 の観 点 では「購 入 者 負 担 」が 2 件 、「実 施
事 業 者 負 担 」が 2 件 となっている。終 了 理 由 のヒアリング調 査 からも事 業 者 側 にとってその負 担
は重 荷 になっている場 合 が多 い。「オフセットの取 組 によって販 促 に つながらなければ、継 続 して
いくのは厳 しい。クレジット購 入 費 20 万 円 程 度 でも社 内 で稟 議 を通 すのは大 変 」や、「組 合 員 であ
る町 民 からの資 金 で成 り立 っている団 体 のため、町 からの補 助 金 がないと実 施 はできない」といっ
た意 見 もみられた。
また、オフセット量 の多 かった案 件 はともに事 業 者 と購 入 者 の両 方 負 担 であった。事 業 者 側 に
よる資 金 投 入 に加 え、購 入 者 に対 しても取 組 を意 識 させる形 で一 部 負 担 を行 った ものである。取
組 件 数 が少 ないが事 業 者 との両 者 負 担 の可 能 性 については、今 後 の動 向 が注 目 されるところだ
ろう。一 方 購 入 者 による負 担 はその金 額 の設 定 が難 しい点 があるがスミフルや JTB 関 東 のように
オフセット量 500t-CO2 を超 えるものもみられ、事 業 者 側 による予 算 確 保 の問 題 を解 決 する方 法 と
考 えられる。
表 10 クレジット費 用 負 担 者 別 の事 例 継 続 状 況
- 13 -
4,786
フォルクスワーゲン
両者負担
ローソン…
3,521
イトーキ
1,095
マルエツ
350
交通エコロジー・モビリティ財団
262
B社(百貨店・スーパー・コンビニ)
142
コープさっぽろ・サッポロビール
110
実施事業
伊勢丹・国際自動車
73
サッポロビール
40
きたみらい農業協同組合
11
県木住
10
金ケ崎産直組合… 3
スミフル
JTB関東
571
全日本空輸
購入者負担
グラフの色
821
青 :CER
400
A社(商社:植物)
赤 :J-VER
117
エイチ・アイ・エス
緑 :CER/J-VER/国 内 ク
45
丸吉日新堂印刷
1
日本航空
0
レジット
Yahoo!JAPAN… 0
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
図 2 クレジット費 用 負 担 者 と年 間 平 均 オフセット量
2.2.6.c 商 品 における費 用 負 担 者 別 のオフセット量
今 回 の事 例 において商 品 のオフセット取 組 を行 っている 14 事 例 について着 目 した際 に、購 入
者 が負 担 する場 合 のオフセット量 についてはオフセット量 、負 担 金 額 については事 業 者 負 担 の場
合 と比 べ低 い設 定 に留 まっていることが明 らかになった。
1 商 品 当 たりのオフセット量 についてはおよそ 9 分 の 1、販 売 数 を加 味 した年 間 負 担 金 額 でも 3
分 の 1 程 度 にとどまっている。このことから商 品 のオフセットにおいてオフセット相 当 量 を商 品 の単
価 に上 乗 せすることは、あまり普 及 していないと考 えられる。いずれの事 例 も CER を使 用 して負 担
額 を抑 える設 定 はしているが、オフセット量 、そして追 加 費 用 についてその金 額 設 定 とその効 果 に
ついてのノウハウが不 十 分 といえる。消 費 者 (オフセット参 加 者 )にとっての許 容 値 を見 出 していく
ことが今 後 の課 題 となってくるだろう。
- 14 -
今 回 の調 査 事 例 においてフォルクスワーゲンと県 木 住 の商 品 ・サービスの当 たりのオフセット量
は飛 びぬけて多 く、フォルクスワーゲンは車 の走 行 にかかる半 年 分 (1t-CO2/台 )もしくは 3 年 分
(7.5t-CO2/台 )の CO2 排 出 量 を、県 木 住 は注 文 住 宅 の営 業 から建 設 にかかる CO2 量 (2t-CO2/棟 )
を対 象 にしており、排 出 量 が多 く出 る商 品 の広 い範 囲 をオフセット範 囲 に含 んでいる。オフセット
量 が多 い理 由 としてはともに販 売 価 格 が高 い商 品 であることが挙 げられる。最 もオフセット量 が多
いフォルクスワーゲンの商 品 (アウディ)の費 用 は 300 万 円 ~1,400 万 円 、次 にオフセット量 が多 い
県 木 住 の商 品 である注 文 住 宅 の費 用 は一 般 的 に 2,000 万 円 程 度 と高 額 であるため、クレジット
費 用 の負 担 においても許 容 される範 囲 が大 きくなるものと考 えられる。相 対 的 に許 容 範 囲 が広 ま
ることに因 果 関 係 は見 られないが、数 百 万 を超 えるような高 額 商 品 についてはこのように広 い設
定 についても許 容 されることから、オフセット普 及 において高 額 商 品 への取 組 も選 択 肢 の一 つとし
て挙 げられるだろう。
表 11 商 品 のオフセット事 例 に関 する諸 データ
2.2.7 システム利 用 有 無
調 査 した 20 事 例 のうち、システムを活 用 した事 例 は 55%と半 数 を超 えた。システムを活 用 する
ことは事 業 者 にとって手 間 を排 除 し、Web サイトを通 じて多 くの消 費 者 にオフセット商 品 を提 供 す
る機 会 を増 やすことができるため、オフセット量 も連 動 して増 えているものと考 えられる。ヒアリング
結 果 によると、オフセットサービスを提 供 するために新 規 にシステム導 入 をした事 例 は 11 件 中 6
件 、既 存 のシステムを基 礎 として導 入 した事 例 は 5 件 であった。
- 15 -
表 12 システム導 入 状 況 とオフセット費 用
対 象 商 品 別 のシステム導 入 状 況 においては、 2 件 以 上 のサンプル数 があるカテゴリの中 で導
入 割 合 が高 いのは交 通 手 段 となっており 6 件 中 5 件 ・83%であった。また日 用 品 、住 宅 、電 化 製
品 の 3 カテゴリについては一 切 システム導 入 をしていなかった。
システム導 入 に当 たってはすべて自 社 で賄 うのみならず外 部 システムの活 用 もおこな われてお
り、費 用 負 担 の軽 減 やシステム導 入 のハードルを下 げる事 業 者 側 のニーズにマッチしている一 方 、
消 費 者 にとってカーボン・オフセットに参 加 しやすいものになっていない状 況 も存 在 している。
表 13 対 象 商 品 別 システム導 入 状 況
2.2.8 カーボン・オフセット継 続 の理 由
調 査 した 20 事 例 のうち、継 続 中 が 16 件 、取 組 終 了 が 4 件 であった。継 続 している理 由 は下
記 のとおりである。継 続 方 針 の 16 件 について分 析 を行 った。
継 続 理 由 を分 類 すると大 きく「販 促 ・PR」、「環 境 貢 献 」、「その他 」の 3 つに分 けられ、「販 促 ・
PR」が 7 件 、「環 境 保 全 」が 5 件 、「その他 」が 4 件 となっている。「販 促 ・PR」が多 い理 由 は、カー
ボン・オフセットが単 に環 境 保 全 やプロジェクト創 出 地 域 に貢 献 できる取 組 であるだけでなく、 2.3
で挙 げた導 入 の目 的 である「商 品 ・サービスの差 別 化 」と「CSR 強 化 」に対 して、「売 り上 げに貢 献 」
や「顧 客 の反 応 が良 い」といった一 定 の効 果 がみられたためと考 えられる。実 際 に販 売 促 進 ・ PR
の 7 事 例 のうち、前 者 が 5 件 、後 者 が 2 件 との回 答 を得 ている。
取 組 を終 了 した理 由 については、4 件 中 2 件 から回 答 を得 ており、「組 合 員 である町 民 からの
資 金 で成 り立 っている団 体 のため、自 治 体 (町 )からの補 助 金 がないと継 続 はできない。」、「販 促
企 画 担 当 としては、カーボン・オフセットの取 組 によって販 促 につながらなければ、継 続 していくの
- 16 -
は厳 しい。クレジット購 入 費 の 20 万 円 程 度 でも稟 議 を社 内 で通 すのが大 変 。」という理 由 であっ
た。これらはクレジット費 用 に見 合 う対 価 が得 られなければ継 続 していくことは難 しいことを示 して
いる。
取 組 を継 続 させる方 法 としては、商 品 価 格 にクレジット価 格 を上 乗 せすることによりクレジット費
用 を購 入 者 負 担 にする方 法 があるが、その方 法 については上 述 の 2 事 業 者 は「思 いつかなかっ
た」と回 答 しており、カーボン・オフセットにかかる費 用 負 担 の方 法 ・スキームについて事 業 者 に対
し適 切 な情 報 提 供 の必 要 性 が感 じられた。
表 14 事 例 の継 続 状 況
表 15 継 続 事 例 における継 続 理 由
- 17 -
2.2.9 カーボン・オフセットの導 入 効 果
効 果 については、「不 明 」4 件 を除 く 16 件 から回 答 を得 た。効 果 として「売 上 に貢 献 」が 6 件 、
「顧 客 に好 評 、リピート」4 件 と期 待 された効 果 が発 揮 された事 例 が多 く、その結 果 が継 続 につ
ながっていると考 えられ る。また、現 在 も継 続 している事 例 については効 果 とともに、今 後 の展
開 としてもオフセット取 組 の継 続 や対 象 製 品 の拡 大 」といったことが予 定 されている。
「通 常 、製 品 が発 売 してから年 を重 ねるにつれ製 品 の販 売 数 は落 ちてゆくのだが、本 製 品 は
売 り上 げが落 ちていない。」(イトーキ)、「年 間 3 回 のキャンペーン期 間 内 で約 12 万 杯 /年 を販
売 見 込 んでいたが見 込 み以 上 に伸 びている。」(サッポロビール)、「 カーボン・オフセットの実 施
が購 入 要 因 になっている顧 客 は 60%。」(フォルクスワーゲン・ファイナンシャル・サービス・ジャ
パン)といった、数 字 で具 体 的 な効 果 が図 られた事 例 もあった。
表 16 オフセットの導 入 効 果
2.2.10 今 後 の展 開 予 定
現 在 継 続 中 の事 例 16 件 となっており、そのうち 75%が取 組 の継 続 を、約 18%が対 象 商 品 の
拡 大 を検 討 している。これらの事 業 者 においては効 果 として売 上 への貢 献 、顧 客 に対 しての PR な
どといったものを挙 げている。特 に対 象 商 品 の拡 大 においては、売 上 に貢 献 する施 策 として評 価
されているといえる。この 3 事 例 (イトーキ、コープさっぽろ・サッポロビール、伊 勢 丹 ・国 際 自 動 車 )
は単 にオフセットの取 組 を行 っていただけでなく、それを打 ち出 す PR についても注 力 していた。イト
ーキはパンフレットなどを通 じて対 面 で、コープさっぽろ・サッポロビー ルは商 品 自 体 に、伊 勢 丹 ・
国 際 自 動 車 はサービスを利 用 する場 でカーボン・オフセットの情 報 発 信 を行 っていた。それぞれ商
品 が違 うために方 法 は異 なるが、購 買 タイミングにて カーボン・オフセットの適 切 な情 報 提 供 がな
- 18 -
されていた事 例 といえる。一 方 ここまでの取 組 を実 践 できるのは、販 促 にもコストをかけられる大
企 業 に限 られており、中 小 企 業 など予 算 の確 保 に限 りがある事 業 者 にとって同 様 の進 め方 はハ
ードルが高 いといえる。
さらに、再 開 を検 討 している事 例 (金 ヶ崎 )があることも興 味 深 い。この事 業 者 は中 止 の理 由 が
資 金 面 の問 題 だったことから、カーボン・オフセットの取 組 による費 用 対 効 果 が再 度 示 されれば再
開 の可 能 性 があるといえる。購 入 者 の参 加 実 績 、オフセットへ取 り組 むことによる費 用 対 効 果 及
びその認 知 が高 まることによって、資 金 面 で苦 慮 する事 業 者 にとっての取 組 障 壁 が解 消 されやす
くなる可 能 性 を示 唆 している。
表 17 今 後 の展 開 予 定
- 19 -
2.3 海 外 調 査 事 例 の分 析 ・評 価
2.3.1 調 査 対 象 /分 類
調 査 した海 外 事 例 15 件 のうち、航 空 券 などを扱 う旅 行 会 社 が 5 件 、レンタカー・カーシェアリン
グが 2 件 、宿 泊 施 設 が 2 件 であり、旅 行 ・移 動 に関 連 する事 業 者 が半 数 以 上 を占 める。その他
は食 料 品 や複 合 機 等 の商 品 のカーボン・オフセットが 3 件 、銀 行 の自 主 活 動 が 1 件 、オリンピック
が 1 件 、国 レベルでカーボン・ニュートラルを目 指 すコスタリカの案 件 が 1 件 となっている。なおオリ
ンピックの案 件 については、調 査 事 例 のデータが実 際 にオフセットを実 践 した国 際 オリンピック委
員 会 ではなく、パートナー団 体 であるため、これまでのオリンピックのオフセットに関 して補 足 情 報
を記 述 した。
海 外 事 例 については聞 き取 り調 査 は実 施 していないため、限 定 された情 報 ではあるが、 次 項 で
調 査 内 容 の結 果 から一 定 の傾 向 として言 える事 柄 と、その背 景 や評 価 について述 べる。
表 18 海 外 事 例 調 査 対 象 一 覧
- 20 -
2.3.2 導 入 の経 緯 と目 的
国 内 の傾 向 とは異 なり、導 入 の経 緯 として商 品 の差 別 化 という理 由 を挙 げているものが少 なく
15 件 中 3 件 となっている。海 外 での取 組 においてはカーボン・オフセットを導 入 する理 由 として、環
境 意 識 の高 い顧 客 層 を取 り込 む狙 いがみられる。つまり事 業 者 が新 しい環 境 取 組 を PR していく
ことで結 果 的 に同 業 者 との差 別 化 を図 るという構 図 となっている。よって環 境 貢 献 ・ CSR を導 入 の
きっかけとしてあげる事 業 者 が最 も多 いが、単 なる環 境 貢 献 活 動 ではなくその延 長 線 上 には自 社
の取 組 を活 かした差 別 化 につながっていると考 えられる。
山 岳 や自 然 体 験 などのツアーを実 施 している旅 行 会 社 ( Bergwelt 、 Globetrotter など)は環
境 意 識 の高 い顧 客 への追 加 サービスとしてカーボン・オフセットを勧 める取 組 を行 っている。また、
環 境 意 識 の高 い消 費 者 を意 識 して自 社 費 用 負 担 にてカーボン・オフセットしている場 合 も ある。例
えば Brauerei Locher はリユース瓶 を利 用 できない商 品 に対 して、何 か環 境 対 策 を行 えないかと
いう考 えからオフセットを導 入 している。Danone のように、自 社 の乳 製 品 を他 社 商 品 と比 較 するた
めのカーボン・フットプリントの計 算 をきっかけにオフセットを実 施 した 事 例 もある。
表 19 導 入 の経 緯 と目 的
2.3.3 取 組 開 始 時 期
コスタリカを除 いた全 14 件 中 、カーボン・オフセットを開 始 した時 期 は 2006 年 が 4 件 (旅 行 代
理 店 2 件 、銀 行 、カーシェアリング)、2007 年 が 4 件 (旅 行 代 理 店 3 件 、ユースホステル)、2009
~2014 年 まで各 年 1 件 ずつ(食 品 業 界 2 件 、製 造 業 、レンタカー、オリンピック)となっている。
2006~2007 年 はカーボン・オフセットがスイスで普 及 し始 めた時 期 と重 なり、UBS などのスイス
大 手 企 業 やスイス最 大 の旅 行 会 社 Kuoni を含 む旅 行 会 社 がカーボン・オフセットを開 始 し始 めた
頃 である。また、2007 年 は気 候 変 動 に関 する政 府 間 パネル(IPCC)が第 4 次 評 価 報 告 書 を提 出
してノーベル平 和 賞 を受 賞 した年 であり、京 都 議 定 書 の第 1 約 束 期 間 が始 まる 2008 年 に向 けて
地 球 温 暖 化 問 題 が注 目 されていた。
- 21 -
欧 州 では、2005 年 より域 内 排 出 量 取 引 (フェーズⅠ )が開 始 しており、2008 年 にフェーズⅡ とし
て領 域 が拡 大 されている。一 般 的 に国 の規 制 が入 る前 は、将 来 クレジットが高 くなることを予 想 し
て、Pre-Compliance と呼 ばれる自 主 的 なクレジットの購 入 の増 加 現 象 が起 きると言 われている。
調 査 事 例 は欧 州 排 出 量 取 引 域 外 であるため、特 に Pre-Compliance との関 連 性 はないと考 えら
れるが、2006-2007 年 に導 入 が多 いのは、この時 期 に温 暖 化 対 策 やカーボン・オフセット自 体 が
欧 州 で盛 り上 がりつつあったからであると考 えられる。
このように、IPCC の評 価 報 告 書 発 表 や京 都 議 定 書 の第 1 約 束 期 間 開 始 、サミットといった温
暖 化 に関 連 する世 界 的 「イベント」や、欧 州 の排 出 量 取 引 のような国 の規 制 がカーボン・オフセッ
トの取 組 開 始 のきっかけとなったのではないかと考 えられる。
図 3 海 外 事 例 の取 組 開 始 時 期
- 22 -
2.3.4 クレジットの種 類 と内 容
クレジットの種 類 は、14 件 中 13 件 がゴールドスタンダード 7 VER(以 後 、GSVER)クレジットを利 用
しており、このうち 6 件 がゴールドスタンダード CER(以 後 、GSCER)、1 件 は GSCER 及 びスイス国 内
のクレジットを混 ぜて利 用 している。取 り上 げた海 外 事 例 の中 でゴールドスタンダード(以 後 GS)事
業 を選 択 する企 業 が多 いが、一 般 的 に GS 事 業 が多 いというわけではない。
国 の規 制 ではなくボランタリー市 場 で選 ばれるクレジットは、世 界 的 には VCS 8 と呼 ばれるスタン
ダードが多 く、GS を選 択 するのは全 体 の 15%程 度 である 9 。GS 事 業 は特 に地 域 の持 続 可 能 な発
展 を重 視 し、価 格 も一 般 的 に VCS より高 いことから、調 査 した事 業 者 もクレジット創 出 事 業 の中 身
について一 定 の拘 りがある事 業 者 が多 く、Kuoni のように顧 客 の旅 行 先 であるバリ島 でのストーリ
ー性 のある環 境 保 全 事 業 を重 要 視 する傾 向 や、Kyocera や Globetrotter のように欧 州 の消 費 者
に訴 求 力 の高 い発 展 途 上 国 のプロジェクトから創 出 された クレジット、例 えば、女 性 の仕 事 軽 減
や健 康 を守 ることに繋 がる事 業 を使 用 し、ウェブサイトで PR している事 例 がある。
国 内 規 制 によって実 施 するカーボン・オフセットであれば、価 格 のみが重 視 されるが、自 主 的 に
独 自 の CSR として実 施 されるカーボン・オフセットでは、価 格 と同 時 に、このような慈 善 事 業 への貢
献 を意 識 した事 業 が選 択 される傾 向 にあると言 ってよい。
1
7%
1
7%
CER
GSCER、GSVER
6
40%
7
46%
GSVER
国内森林事業
図 4 海 外 事 例 における使 用 クレジット種
7 CDM(クリーン開 発 メカニズム)や JI(共 同 実 施 )プロジェクトの「質 」の高 さに関 する認 証 基 準 である。温 室 効 果 ガ
ス削 減 につながると同 時 に、持 続 可 能 な開 発 (Sustainable Development, SD )に貢 献 することを支 援 するためのツ
ールで、VER の買 い 手 に対 して、その「質 」を保 証 する。
8 Voluntary Carbon Standard (VCS)企 業 、団 体 、個 人 の自 主 的 な VER 取 組 のための測 定 ・認 証 基 準 である。対 象
とするプロジェクトのスコープを限 定 していない( VCS に承 認 されたスコープで あれば可 )。またプロジェクトのホスト国
も限 定 していないことから、AnnexⅠ 国 、米 国 、 豪 州 含 む広 く世 界 で使 用 可 能 な認 証 基 準 となっている
9 State of the Voluntary Carbon Markets 2013 http://www.forest trends.org/documents/files/doc_3960.pdf
- 23 -
2.3.5 カーボン・オフセット量
年 間 オフセット量 で見 ると、数 百 トン規 模 が 1 件 (旅 行 代 理 店 )、数 千 トン規 模 が最 も多 く7件
(旅 行 代 理 店 3 件 、カーシェアリング、食 品 、製 造 )、数 万 トン規 模 が 2 件 (食 品 、旅 行 代 理 店 )、
数 十 万 トンに及 ぶものが 2 件 (レンタカー、オリンピック)となっている。
排 出 量 の多 い案 件 のオフセットの中 身 を見 ると TuiCars の事 例 が数 十 万 トン規 模 、旅 行 会 社
の中 でもオンライン予 約 にカーボン・オフセットを実 施 できるシステムを持 つ TUIfly の事 例 とカーボ
ン・ニュートラル乳 製 品 としてカーボン・オフセット付 の商 品 を販 売 している Danone の事 例 が数 万
トン規 模 となっている。
TUIfly は予 約 時 に同 時 にワンクリックでオフセットへ参 加 できること、また TuiCars や Danone は
すべての商 品 ・サービスについて企 業 負 担 で カーボン・オフセットが組 み込 まれている。よってこれ
らの取 組 は消 費 者 にとってオフセットへの参 加 の手 間 が最 も省 けるパターンであ るともいえる。カ
ーボン・オフセット 実 施 者 及 びその顧 客 の手 間 を省 くという点 は、オフセット数 量 を増 やす上 で重
要 であり、これについては後 述 の課 題 で詳 細 を記 述 する。
一 回 のオフセット量 が多 い例 としては、ソチオリンピック(16 万 トン)や事 例 にはないが FIFA ワー
ルドカップ・南 アフリカ大 会 (10 万 トン)などの世 界 的 イベントが挙 げられる。ソチオリンピックでは観
客 とメディアの交 通 にかかる CO2 排 出 量 の概 算 値 がオフセットされた。世 界 的 大 規 模 イベントであ
れば、一 度 のカーボン・オフセットでもトン数 は非 常 に多 くなる傾 向 がある。
表 20 年 間 平 均 オフセット量
- 24 -
2.3.6 クレジット費 用 負 担 者
取 り上 げた海 外 事 例 の中 では、特 に企 業 負 担 (5 件 )、顧 客 負 担 (8 件 )に関 わらず継 続 されて
いる。購 入 者 負 担 によるオフセットについては最 高 10,000 トン台 のものもみられた。
提 供 商 品 ・サービスあたりのカーボン・オフセット費 用 を低 く抑 えた事 例 でも、多 くの参 加 者 を募 る
ことで結 果 的 に多 くのクレジット量 の取 組 となっている。カーシェアリング会 社 Mobility のカーボン・
オフセット費 用 は、導 入 当 初 で乗 車 km あたり 2 スイス・ラッペン(2 円 程 度 )、スイスのユースホス
テルで宿 泊 日 あたり 50 スイス・ラッペン(50 円 程 度 )/人 であり、消 費 者 に対 しても受 け入 れられ
易 い価 格 となっている。全 体 では数 千 トン、数 万 トンという規 模 のカーボン・オフセットでも、このよ
うに1人 当 たりの負 担 額 を抑 え参 加 者 を多 く募 っていることが多 く、導 入 する事 業 者 自 身 にとって
特 にデメリットがなく追 加 サービスを提 供 できるという状 況 が見 られた。件 数 としては顧 客 がオフセ
ット負 担 する取 組 が多 く、前 述 のようにオフセットを追 加 サービスとして付 加 価 値 を提 供 するスキ
ームにおいては、顧 客 である消 費 者 の参 加 が必 須 であり、彼 らはその付 加 価 値 に資 金 を提 供 す
ることで満 足 したサービスを得 ることにつながっていることも要 因 の一 つであろう。
表 21 費 用 負 担 者 と年 間 オフセット量
2.3.7 システム利 用 について
システムを活 用 した取 組 については 15 件 中 7 件 となっており、約 半 分 程 度 にとどまった。また
オフセット量 との強 い関 連 性 はみられなかったが、フライト・ホテル・ツアーといった旅 行 ・観 光 業 に
おいての取 組 が 7 件 中 6 件 となっていることが特 徴 的 な調 査 結 果 となった。個 人 消 費 者 が旅 行
するにあたり海 外 旅 行 をはじめとしてその人 数 はモビリティの発 達 とともに増 えている、よってそれ
を処 理 するためには人 手 ではなくシステムによる対 応 が必 要 となってくることがわかる。
また航 空 会 社 のシステムについては消 費 者 がオフセット参 加 のしやすい仕 組 みを提 供 している
ものもみられる。特 に TUIFly については Web サイトでの航 空 券 予 約 時 にその旅 程 に応 じた CO2
排 出 量 とそれを埋 め合 わせるために必 要 な費 用 が表 示 され、予 約 のバスケット画 面 でチェックを
することで参 加 への同 意 がなされるという非 常 にシンプルで消 費 者 が協 力 しやすいものとなってい
る。
- 25 -
図 5 TUIFly 予 約 画 面 内 オフセット参 加 セクション
表 22 システム利 用 と業 種
2.3.8 カーボン・オフセット継 続 の理 由
継 続 の理 由 として共 通 している点 は、「オフセットの取 組 は消 費 者 の自 主 性 によって選 択 するこ
とが可 能 なため、特 に やめる理 由 がない」というものだ。これは既 にあ る一 定 の 自 主 的 に カーボ
ン・オフセットを実 施 したい消 費 者 がいることを前 提 したスタンスであ り、カーボン・オフセットがそれ
らの顧 客 に対 するひとつのサービスとして確 立 していることを示 している。実 際 に「オフセットを旅
行 代 金 の中 に固 定 してしまうと、他 との競 争 力 は保 てない。」といった意 見 があったことからもそれ
がうかがえる。
旅 行 会 社 においては、各 事 業 者 が提 供 する旅 行 商 品 と海 外 のクレジット創 出 事 業 への貢 献 が、
消 費 者 にとって結 び付 けやすいということも、取 組 が多 い理 由 といえる。旅 行 会 社 の中 でも Kuoni
はオフセットを提 供 するだけでなく、プロバイダーの協 力 を得 て現 地 の廃 棄 物 に対 処 する独 自 のク
レジット創 出 事 業 をバリ島 に持 ち、顧 客 に対 する PR ツールとしてクレジット創 出 事 業 を活 用 してい
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る。このように、旅 行 先 として人 気 のある地 域 への地 域 貢 献 をうたうことができるという点 で、カー
ボン・オフセットを効 果 的 な CSR 広 報 ツールとして利 用 している。
また、単 にサービスや地 域 貢 献 にとどまらず大 きな実 績 を伴 っている取 組 が、スイスユースホス
テルや Mobility である。独 自 の CO2 削 減 対 策 (省 エネの取 組 等 )の結 果 、宿 泊 や乗 車 km あたり
の CO2 排 出 量 が減 り、顧 客 がオフセットすべき量 が減 ってきていることから、その分 費 用 も低 く抑
えられるといった効 果 の 好 循 環 を 生 み出 し、さらにカーボン・オフセットの取 組 が継 続 しやすい環
境 になっているものもある。そして情 報 提 供 ・PR の仕 方 もその取 組 の詳 細 やどこのプロジェクトに
貢 献 しているのかといった情 報 をクレジット創 出 事 業 とのかかわりを踏 まえて強 く PR している。か
つて欧 州 においてクリーン開 発 メカニズム(CDM)の CO2 削 減 根 拠 や持 続 可 能 な発 展 への貢 献 と
いった点 での社 会 的 な不 信 感 の広 がりや、クレジット価 格 が暴 落 する時 期 があったが、その中 で
継 続 してもらうための対 応 として取 組 についての信 頼 を得 る必 要 があり、オフセットするクレジット
創 出 事 業 の内 容 を積 極 的 に公 開 し、貢 献 を明 確 にしていくことが重 要 だったといえる。クレジット
創 出 事 業 の情 報 公 開 や透 明 性 の確 保 し、貢 献 の中 身 を公 開 していくことで CSR の PR 効 果 を高
めていくことが継 続 性 をもたらしたといえるだろう。
2.3.9 カーボン・オフセットの導 入 効 果
オフセット商 品 ・サービスを提 供 している事 業 者 が得 られるメリットは様 々であるが、以 下 の意 見
が多 くみられた。
・環 境 意 識 の高 い顧 客 の獲 得
・商 品 を通 じ訴 求 力 と企 業 イメージの向 上
・オフセットを顧 客 が選 択 できることで接 点 と貢 献 機 会 を保 つ
一 般 的 に 海 外 においてはオフセットといった環 境 保 全 について意 識 の高 い消 費 者 が多 いとい
われているが、企 業 側 にとっての取 組 理 由 は日 本 国 内 の調 査 事 例 と大 きく変 わることはない。オ
フセットの仕 組 みやメリット、効 果 を理 解 し企 業 活 動 を進 めていくための一 つのツールとして利 用 し
ている点 で見 てもそれは一 致 している。
TuiCars は、ドイツで名 の知 れたレンタカー企 業 として、国 内 で初 めてすべてのレンタカーの乗 車
をオフセットすることで、その他 の企 業 との差 別 化 に成 功 している。導 入 してまだ 1 年 程 度 である
が、評 判 はよく、環 境 意 識 の高 い顧 客 を引 き付 けられていると認 識 している。
スイスの地 ビール会 社 Brauerei Locher や Kyocera などの商 品 やサービスを通 じたカーボン・オ
フセットの取 組 実 践 者 は、商 品 自 体 にオフセット・マークを付 けて、カーボン・オフセットの実 践 を積
極 的 に宣 伝 している。これら商 品 のオフセットは、消 費 者 への訴 求 力 を高 めた いという意 図 があり、
商 品 自 体 が広 告 媒 体 となるため、商 品 の広 告 宣 伝 だけでなく、企 業 イメージの向 上 を図 ることが
できるというメリットもあると考 えられる。
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Kyocera の場 合 は、複 合 機 という企 業 相 手 の商 品 をオフセットできる機 会 を与 えているが、これ
は購 入 後 も購 入 企 業 との接 点 をもつことを重 視 して実 施 している。オンラインのシステムを導 入 し、
ウェブページでオフセットしてもらい、グリーン・ラベルを配 布 することで、顧 客 との接 点 が更 に生 ま
れる。特 設 サイトへの訪 問 によるその他 の環 境 事 業 や企 業 の宣 伝 効 果 もある。オンラインシステ
ムによる顧 客 の自 主 的 なオフセットはさほど多 くはなく、Kyocera が実 施 するオフセット量 の多 くは
企 業 自 身 が負 担 しているトナーのオフセットが圧 倒 的 に多 いが、こういったシステムを取 り入 れる
ことによって、顧 客 との接 点 を図 るところに Kyocera 側 がメリットを感 じている。
- 28 -
2.4 分 析 のまとめと考 察
今 回 の国 内 ・海 外 事 例 のヒアリング結 果 から、取 組 の継 続 している案 件 は以 下 にあげる特 徴
のいずれかを持 つことが認 識 できた。これらの特 徴 を踏 まえカーボン・オフセット普 及 についての考
察 を進 める。
2.4.1 売 上 向 上 への貢 献
今 回 ヒアリングした国 内 事 例 のうち、「伊 勢 丹 ・国 際 自 動 車 」「イトーキ」「コープさっぽろ・サッポ
ロビール」の 3 案 件 は、担 当 者 がプロモーションへのカーボン・オフセットの活 用 が商 品 の売 上 向
上 に寄 与 したと認 識 しており、今 後 の展 開 として カーボン・オフセット商 品 ・サービスの「対 象 商 品
の拡 大 」を示 唆 している。
また各 案 件 は以 下 のようなプロモーション活 動 を行 っており、 カーボン・オフセットを活 用 した環
境 への貢 献 と自 社 商 品 ・サービスと関 連 付 け、差 別 化 を図 ることで売 上 拡 大 やイメージの向 上 に
つなげている。それぞれの事 例 の概 要 ・効 果 については下 表 のとおり。
表 23 国 際 自 動 車 株 式 会 社 ・株 式 会 社 三 越 伊 勢 丹 ホールディングス
開始日
2012 年 9 月 ~
商 品 ・サービスの概 要 ・伊 勢 丹 新 宿 店 のタクシー乗 り場 を、km グループ直 系 8 社 と提 携 企
業 13 社 (合 わせて 21 社 )の専 用 タクシー乗 り場 とし、乗 り場 から
発 車 するすべてのタクシーの初 乗 り分 (2km)の CO2(約 580gCO2)をオフセット。お客 様 の費 用 負 担 はなし。タクシー数 は約
3,000 台 。タクシー乗 り場 を「環 境 にやさしいタクシーのりば」と命 名
効果等
・2013 年 9 月 ~2014 年 8 月 の期 間 のオフセット量 は約 93.5tCO2。
・1 日 あたり乗 車 実 績 ⇒ 405 台 (月 間 約 12,000 台 )
・スタンドサイン・壁 面 サインの効 果 で環 境 問 題 に対 する取 組 をアピ
ールできた。
・百 貨 店 ご利 用 お客 様 から、環 境 問 題 に積 極 的 に取 組 んでいる姿
勢 を評 価 いただいた。利 用 客 から「乗 るだけで環 境 に役 立 てると
いう点 がいい」といった好 感 の声 が多 かった。
- 29 -
表 24 イトーキ
開始日
2010 年 12 月 ~
商 品 ・サービスの概 要
・タスクチェア スピーナシリーズ全 機 種 (32 種 類 )の原 材 料 調 達 、
生 産 、流 通 、廃 棄 ・リサイクルの各 プロセスにおいて排 出 する
CO2 をオフセット。1 脚 あたり 75.6〜152.6kg-CO2 をオフセット。
・クレジット費 用 は全 額 イトーキが負 担 し、商 品 への価 格 上 乗 せは
行 わない。
・2010 年 12 月 から毎 年 カーボン・オフセット認 証 を取 得 。
効果等
・販 売 台 数 は、年 間 約 10,000 脚 を超 え、1 脚 ごとにカーボン・オフ
セット認 証 マークが貼 付 された状 態 でお客 さまのもとへ届 けられ、
カーボン・オフセットマークが購 入 者 のみならず来 訪 者 の目 に触
れ、採 用 した企 業 の環 境 に対 する姿 勢 を示 せるようになった
・お客 さまからは、「カーボン・オフセットしている点 が環 境 配 慮 として
よい。」、「(全 社 で環 境 配 慮 製 品 の購 買 を推 進 しているので)社
内 での理 解 を得 られやすかった。」、「(環 境 配 慮 商 品 の導 入 が目
標 に入 っており)設 計 サイドとしてお客 さまへ薦 めやすかった。」な
どの声 をいただいており、売 上 げにつながっている。
・スピーナの国 内 販 売 台 数 は 2007 年 の発 売 から 4 年 が経 っても
落 ち込 みが少 なく、カーボン・オフセットで底 上 げが図 られていると
感 じている。
・オフセット量 は下 記 のとおり。
2010 年 12 月 ~2011 年 11 月 : 1,136t-CO2
2011 年 12 月 ~2012 年 11 月 : 1,141t-CO2
2012 年 12 月 ~2013 年 11 月 : 1,200t-CO2
2013 年 12 月 ~2014 年 11 月 : 1,100t-CO2
2014 年 12 月 ~2015 年 11 月 : 900t-CO2
表 25 生 活 協 同 組 合 コープさっぽろ・サッポロビール
開始日
商 品 ・サービスの概 要
2013 年 11 月 ~
・サッポロビールが製 造 し、コープさっぽろを通 じて販 売 するアルコ
ール飲 料 を対 象 に、対 象 飲 料 を飲 む消 費 者 の日 常 生 活 に伴 っ
て発 生 する CO2 の一 部 をカーボン・オフセットした。
・缶 のデザインを変 更 し、飲 料 の購 入 により森 林 保 全 に貢 献 できる
というイメージと説 明 を追 加 することで、地 域 の環 境 に貢 献 する
商 品 であることを消 費 者 にひと目 でわかるようにした
- 30 -
・缶 飲 料 は 1 缶 1 円 (約 66g-CO2)、ワインは 1 本 10 円 分 (約
666g-CO2)と貢 献 量 を誰 にでもわかる金 額 で記 載
・対 象 商 品 については下 記 のとおり
2013 年 新 ジャンル酒 類 1 種 2014 年 ビール 2 種 新 ジャ
ンル 2 種 ワイン 2 種
2013 年 :1,350,000 円 (税 別 ) 90t-CO2
2014 年 :1,950,000 円 (税 別 ) 130t-CO2
効果等
【取 組 の成 果 】
・キャンペーンの結 果 、キャンペーン対 象 商 品 の販 売 促 進 効 果 がっ
た。さらに、キャンペーン前 にキャンペーン対 象 商 品 と同 じジャン
ル(新 ジャンル)の商 品 の購 入 経 験 のない消 費 者 が、キャンペー
ン対 象 商 品 を他 の同 じジャンル(新 ジャンル)の商 品 と比 較 して選
択 的 に購 入 したことが確 認 できた。これは、カーボン・オフセットを
行 うことが商 品 の選 択 につながったと言 える。
・本 キャンペーン開 始 後 、環 境 経 営 度 調 査 (日 本 経 済 新 聞 社 )や、
環 境 ブランド調 査 (日 経 BP)のランキングが上 昇 。また記 者 会 見
により、各 メディア(TVニュース、新 聞 、雑 誌 )等 に取 り上 げられ
たため、通 常 の何 倍 もの費 用 対 効 果 が得 られた。
海 外 事 例 においては商 品 の差 別 化 を主 目 的 として取 り組 んだ事 例 は Danone(ヨーグルト)の 1
件 であり、他 者 との比 較 のためにフットプリントを始 め、その後 乳 製 品 をオフセット(ニュートラル)し
たという取 組 であるが、全 ての乳 製 品 をその対 象 としており、社 をあげての取 組 となっている。
こうした売 上 向 上 につながるキャンペーンは取 組 の成 功 例 として他 社 へ展 開 、自 社 での拡 大 を
することで、カーボン・オフセットの普 及 が図 れることが想 定 される。オフセットの取 組 事 例 において
参 入 する事 業 者 側 の期 待 値 は、販 売 における商 品 ・サービスの差 別 化 が一 番 の理 由 として挙 げ
られるからだ。取 組 におけるきっかけや効 果 からわかるように、今 回 の オフセットキャンペーンによ
って販 売 数 量 が同 ジャンルの他 商 品 より増 えた、業 界 初 の取 組 として他 社 との差 別 化 が実 現 し
た、という成 果 がでており、定 性 的 にも環 境 配 慮 を商 品 ・サービスを通 じて実 現 している企 業 とし
てお客 様 より一 定 の評 価 も得 られている。これらは事 業 者 におけるオフセット取 組 への期 待 値 を
実 現 した事 例 といえ、他 においてもモデルとなる取 組 である。
しかしこれらの事 例 を鑑 みると、どれも大 企 業 の施 策 であることがわかる。実 際 にどの取 組 も事
業 者 側 がクレジット費 用 負 担 をしており、 多 くの件 数 もしくはクレジット量 をオフセットした実 績 を持
っていることから、効 果 的 なプロモーションを打 つためには、それなりの人 員 や資 金 といった企 業
体 力 が必 要 であることが推 測 される。なお業 界 、商 品 内 容 、顧 客 (個 人 ・法 人 )に共 通 点 は見 られ
ないため、どのような分 野 の商 品 サービスが効 果 的 であるかといった分 析 は、今 後 の検 討 課 題 で
ある。
- 31 -
2.4.2 消 費 者 による費 用 負 担
クレジット費 用 を購 入 者 が負 担 している国 内 事 例 は 21 件 中 11 件 あるが、担 当 者 が明 確 な効
果 を認 識 していないにも関 わらず、11 件 中 9 件 と約 80%の事 業 者 がカーボン・オフセットのサービ
スを 継 続 している。 弊 社 の実 績 に 基 づいても 、事 業 者 が 費 用 負 担 す るオフセッ ト 取 組 の場 合 は
49%程 度 しか継 続 していないため、当 該 分 類 (クレジット費 用 を購 入 者 が負 担 する)における継 続
性 は高 いといえる。中 止 した 2 つの事 例 について分 析 すると、1 件 は明 確 にオフセット実 施 による
効 果 が得 られていないと判 断 したケースであり、もう 1 件 は Web コンテンツの見 直 しにともないオ
フセットサービスが中 止 となっている。ともに積 極 的 に継 続 しない理 由 として「取 組 が期 待 される効
果 に対 して成 果 が乏 しい」との判 断 が明 確 になされたものと 推 測 される。ただ、この判 断 まで至 る
取 組 はまだ 2 件 と少 ないこと、また事 業 者 の感 想 として成 果 が明 確 にないと判 断 するのも早 計 と
いった状 況 にある。
よって、一 度 消 費 者 が カーボン・オフセットに係 る資 金 を負 担 する仕 組 みを構 築 してしまえば、
高 い割 合 で事 業 を継 続 することがわかる。
なお、マルエツの事 例 は、顧 客 (消 費 者 )が収 集 に協 力 したペットボトル等 廃 棄 物 の売 却 費 用
を活 用 してカーボン・オフセットを実 施 ・継 続 しており、単 純 に消 費 者 に資 金 的 な追 加 負 担 を強 い
るのではなく、環 境 貢 献 行 為 で貢 献 できる仕 組 みであり、事 業 者 ・消 費 者 ともに負 担 が ない仕 組
みであることから、こういった仕 組 みの更 なる可 能 性 を検 討 する価 値 は高 いことが想 定 される。
海 外 においても、顧 客 がオフセットする手 間 を省 く方 法 として、レンタカー会 社 TuiCars やビール
会 社 Brauerei Locher が実 施 しているように、消 費 者 が支 払 う時 点 ですべての商 品 に既 にオフセ
ットが付 帯 することが実 践 されている。また費 用 負 担 の観 点 からは、顧 客 がオフセット参 加 を自 主
的 に選 択 する方 法 もいくつかとられている。欧 州 ではオフセットの実 施 がサービスの一 環 として 確
立 されており、ある一 定 のオフセット参 加 者 の実 績 をもつため、自 主 選 択 制 が成 り立 つという日 本
とは異 なる状 況 となっている。日 本 において同 様 の手 続 きを踏 むには、手 続 きを簡 素 化 するなど
一 般 消 費 者 に対 する参 加 阻 害 要 因 を排 除 していくことが必 須 であろう。
適 切 な費 用 負 担 額 については調 査 事 例 における各 設 定 からは CER を利 用 して負 担 額 を抑 え
る等 の取 組 は見 られたが、価 格 に関 する適 正 値 についての解 は得 ることができなかった。実 証 事
業 等 のさらなるデータを元 にして傾 向 を分 析 したい。
- 32 -
2.4.3 システム導 入
前 項 であげた「消 費 者 が資 金 を負 担 する仕 組 み」「手 間 のかからない 仕 組 み」の手 段 として IT
の導 入 をもって構 築 されたオフセット参 加 のシステムが挙 げられる。今 回 の調 査 に おいてもシステ
ムを活 用 してオフセットの取 組 を進 めている事 業 者 は 21 件 中 8 社 あり、うち 7 社 が現 在 も取 組 を
継 続 している。
これら取 組 はいずれも Web サイトを経 由 しての申 込 みができるようになっており、大 別 するとオ
フセット付 商 品 を購 入 することで参 加 するケースと、消 費 者 自 身 がオフセットへの取 組 を任 意 で追
加 選 択 できるケースに分 けられる。特 に継 続 取 組 中 の 7 件 において 6 件 が後 者 であり、消 費 者
が商 品 の購 入 やサービスの利 用 に際 し発 生 する CO2 について負 担 額 を示 し、消 費 者 がオフセッ
トに賛 同 する材 料 を示 すものとなっている。
主 な業 界 としては旅 行 代 理 店 や交 通 ・運 輸 業 と CO2 を多 く排 出 するイメージを持 つ業 界 が多
い。ただしその負 担 額 の設 定 においてはまちまちであり、ヒアリングから得 られる取 組 の実 績 も共
通 した傾 向 はみられなかった。また Web サイトが自 社 ドメイン内 ではなく外 部 で設 置 されている場
合 が多 く、オフセット実 施 のために消 費 者 は通 常 の購 買 行 動 に加 え都 度 別 サイトに移 動 して参 加
する必 要 があるため、参 加 率 が低 いとの推 察 もできる。「手 間 」の軽 減 などの使 い勝 手 においては
改 善 の余 地 が多 分 に残 っている。
各 社 へのヒアリングに おいてもオフセット参 加 をしやすくするための自 社 システムの変 更 という
方 向 性 には賛 同 しているが、実 施 に当 たっては各 事 業 者 において予 算 獲 得 や実 施 などが難 しい
状 況 であるとのコメントが大 半 を占 めた。それに伴 うオフセットの参 加 率 の向 上 や、売 上 への貢 献
が明 確 に見 えない限 り、どの事 業 者 においても費 用 対 効 果 の面 で膠 着 状 態 にある。
国 内 のみならず、海 外 事 例 においても、顧 客 のオフセットの手 続 きは大 きな課 題 であることがわ
かった。今 回 の事 例 には入 っていないが、その他 の航 空 会 社 ( Lufthansa、SwissAir)や、調 査 した
Kyocera においてもオンラインシステムであってもオフセットする顧 客 が思 うほど伸 びない理 由 とし
ては、従 業 員 の販 売 時 の説 明 の手 間 や、オフセットをする側 の手 続 きが嫌 われるという点 があげ
られる。航 空 券 や商 品 を購 入 後 、再 度 サイトにアクセスする手 間 に加 え、入 力 項 目 やクリック数 が
増 えるごとに顧 客 を失 うと考 えてよい。この点 においては、TUIfly は、チケット購 入 時 に同 時 にカー
ボン・オフセットを実 施 できるためにオフセットの参 加 率 が 8%と高 い実 績 を残 した模 範 的 事 例 と言
える。その他 の航 空 会 社 で、一 旦 チケットを購 入 した後 に別 のサイトに飛 んでカーボン・オフセット
を実 践 する場 合 では、参 加 率 は大 幅 に減 少 する(1%未 満 )。
また「オフセットの取 組 は消 費 者 の自 主 性 によって選 択 することが可 能 なため、特 にやめる理
由 がない」という点 も興 味 深 い。これは既 にある一 定 の自 主 的 にカーボン・オフセットを実 施 したい
消 費 者 がいることを前 提 したスタンスであるといえ、カーボン・オフセットがそれらの顧 客 に対 する
ひとつのサービスとして確 立 してしまっていることを示 している。
- 33 -
2.4.4 クレジット需 要 拡 大 に向 けた取 組 先 の候 補
2.4.1-2.4.3 にあてはまるような取 組 先 についていくつか候 補 を検 討 する。
2.4.4.a 環 境 を通 じたイメージの向 上 ・貢 献 に取 組 む事 業 者
今 回 の事 例 の中 で、売 上 への貢 献 といった効 果 が明 確 になっていないにも関 わらず、事 業 者
負 担 でカーボン・オフセット 継 続 している案 件 として、公 共 系 事 業 者 の存 在 が 明 らかになった。そ
れが、きたみらい農 業 協 同 組 合 、県 木 住 (企 業 組 合 )である。当 社 でもこれまでに 11 社 の公 共 系
事 業 者 との取 引 があるが、その中 で 6 社 がサービスの継 続 をしている。これら公 共 系 事 業 者 は地
元 の貢 献 のために、地 元 クレジットを用 い、地 産 地 消 型 のカーボン・オフセットの取 組 を行 うことが
多 く、1 社 あたりの購 入 金 額 にかかわらず、一 度 関 係 を構 築 することにより継 続 が期 待 できる企
業 と認 識 される。またオリンピックやワールドカップなどの大 規 模 イベントにおいて環 境 に取 組 むと
いうイメージの向 上 を図 るためのオフセットの取 組 は過 去 実 施 されており、ワールドカップにおいて
は個 人 参 加 者 もボランタリーに取 り組 める窓 口 があった。2020 年 のオリンピックに向 け、国 内 の大
規 模 イベントにおいても大 量 のオフセットの可 能 性 をもっているだろう。
2.4.4.b 取 扱 件 数 ・販 売 数 の多 い事 業 者
取 扱 件 数 ・販 売 数 の多 い事 業 者 、インフラを持 つ事 業 者 を 考 えたときに、少 額 商 品 をた くさん
販 売 することや、多 くの利 用 があるサービスは多 く存 在 する。また今 までの調 査 から販 売 促 進 に
つなげる商 材 もある。しかし消 費 者 がオフセットに取 組 んでもらうための動 機 づけにおいて、 2.4.1
にあるとおりきちんとした情 報 や妥 当 なシナリオは欠 かせない。消 費 者 が利 用 する、購 入 するもの
において環 境 負 担 を強 いているもので一 番 イメージが強 いのはモビリティによる温 室 効 果 ガス排
出 ではないだろうか。今 回 の事 例 調 査 においてもモビリティの取 組 は群 を抜 いて多 く、事 業 者 側 の
CSR の観 点 もオフセット取 組 に対 して協 力 的 なものであった。
2.4.4.c Web 等 にて商 品 ・サービスの提 供 を行 っている事 業 者
2.4.2 や 2.4.3 に挙 げたようなシステムや消 費 者 負 担 の仕 組 みを導 入 するにあたり、既 に Web
で販 売 ・取 引 されている商 品 ・サービスが対 象 として考 えられる。参 加 者 にとってオフセット参 加 の
手 間 を排 除 しやすく、容 易 に取 組 ができるためだ。対 象 範 囲 は広 く、商 品 の単 価 についても制 限
はなくその可 能 性 は大 きい。また大 量 の参 加 があった場 合 もシステムにより処 理 することが可 能
なため、参 加 者 が多 くみこまれる大 規 模 オフセットにおいても適 用 できるはずであ る。なお、既 に
Web での販 売 を行 っている事 業 者 といっても、導 入 のコスト面 や展 開 性 を踏 まえると、 自 社 でのシ
ステム開 発 ・構 築 を行 った事 業 者 ではなく、ある共 通 プラットフォームを利 用 している方 が望 ましい。
- 34 -
2.4.5 制 度 への期 待 値
これら事 業 者 のボランタリーな取 組 については、企 業 の社 会 的 責 任 と環 境 への取 組 を売 上 増
大 にうまく活 用 してきているが、ヒアリングを通 じて日 本 における取 組 事 例 が今 一 つ広 がらない現
状 について考 察 してみると、日 本 における制 度 的 な問 題 も存 在 している。同 時 に COP21 などを見
据 えた今 後 の目 標 設 定 などへの期 待 感 など今 後 の期 待 値 も併 せ持 っており、国 の施 策 をうまく
示 すことでボランタリーな取 組 の活 性 が期 待 される。
また、日 本 や欧 州 でカーボン・オフセットの 取 組 の盛 り上 がりやきっかけとなったのが、 IPCC の
評 価 報 告 書 発 表 とノーベル賞 受 賞 や、洞 爺 湖 サミットといった温 暖 化 に関 連 する「イベント」であっ
たように、今 後 もこのような世 界 的 な環 境 イベントで国 内 でのオフセットが盛 り上 がる可 能 性 はあ
る。一 方 で、流 行 で終 わらせないためには国 ・地 域 としての方 向 性 が明 確 に打 ち出 され、企 業 の
販 売 戦 略 や消 費 者 の消 費 行 動 の根 底 に「脱 炭 素 化 」思 考 が根 付 くようにしていく必 要 がある。そ
の上 で、この報 告 書 でみてきた事 例 のように、消 費 者 に対 し、カーボン・オフセ ットの仕 組 や機 会
の提 供 を適 切 に設 定 することで、全 体 的 な需 要 を喚 起 していく必 要 がある。
2.4.6 カーボン・オフセットの普 及 に向 けたまとめ
前 項 の考 察 よりいくつかのキーワードが浮 かび上 がってきた。
ある程 度 纏 まった量 のクレジットを流 通 させるためには 積 極 的 な取 組 を行 っている事 業 者 への
アプローチが考 えられる。よって前 述 の考 察 から、売 上 向 上 の目 的 で取 組 を実 施 している大 企 業
におけるカーボン・オフセットを活 用 したプロモーションを実 施 させることがまずその対 応 として考 え
られる。しかし、プロモーションが「当 たる」かどうかは保 証 することが出 来 ず、さらに大 企 業 を動 か
すには予 算 面 をはじめとして意 思 決 定 プロセスに複 数 の人 数 や部 門 が関 与 するため一 定 の時 間
が必 要 となり、一 気 に普 及 を促 すことは難 しい。また、公 共 性 の高 い事 業 者 に対 するアプローチに
ついても、継 続 性 はある程 度 期 待 出 来 るが、公 共 であることがゆえに新 規 の カーボン・オフセット
の取 組 を開 始 するに当 たっての意 思 決 定 に時 間 がかかることが予 想 される。高 額 商 品 を持 つ事
業 者 は大 企 業 が多 く時 間 を要 することについては変 わらない。
一 方 、消 費 者 負 担 による仕 組 みの構 築 は、一 度 仕 組 みが完 成 すると、事 業 者 に金 銭 的 な負
担 がそれほどかからないため継 続 的 な運 用 が期 待 できる。但 し、その際 も、多 くの消 費 者 が参 加
する仕 組 みを構 築 しない限 り、流 通 量 はあまり期 待 できない。
これらのことから、より多 くの消 費 者 が集 う「インフラ」を持 つ事 業 者 に、数 値 や実 績 を持 ってそ
の効 果 を示 し、当 該 インフラにて実 績 を作 ることで、継 続 的 かつ安 定 的 に、大 量 のクレジットが流
通 できることが期 待 される。またその効 果 を示 すことで、上 記 の大 企 業 によるプロモーションや、公
共 系 事 業 者 において自 発 的 な参 加 が期 待 され、さらに 多 くのクレジットが流 通 する好 循 環 が発 生
することが期 待 できる。
- 35 -
インフラをもつ事 業 者 に対 し消 費 者 負 担 によるオフセットの仕 組 みを構 築 する、このためにいく
つもの要 素 について検 証 が必 要 だろう。どういったシステムを設 定 すべきか、負 担 金 額 の適 正 値
は、負 担 金 額 の設 定 、取 組 の適 切 な説 明 、オフセットの仕 組 みなど、クレジット創 出 事 業 の説 明
などの情 報 の透 明 性 、など今 回 の実 証 事 業 や各 取 組 の事 例 から適 切 な内 容 ・レベルを把 握 、設
定 することで普 及 の筋 道 を示 すことができると考 える。
今 後 のオフセット普 及 に対 して今 回 提 起 した内 容 を踏 まえ、実 証 事 業 においてその内 容 を検 証
していくことで、より効 果 的 な方 法 の糸 口 を導 き出 したいと考 える。また国 内 ・海 外 の事 例 調 査 を
通 じて感 じたことは、それぞれの事 業 者 がいろいろな思 いでカーボン・オフセットの取 組 に参 加 して
おり、実 際 に素 晴 らしい取 組 もたくさん存 在 することだ。現 時 点 ではそれぞれによる自 発 的 な 取 組
にとどまっているが、国 内 での全 体 的 な活 動 に広 げていくことで今 後 のオフセット普 及 ならびに地
球 温 暖 化 対 策 の一 つとしてより重 要 になっていくことを期 待 したい。
- 36 -
3 旅 行 会 社 Web サイトを活 用した実 証 事 業(仕組 み構 築 及び実 証 試 験)
事 例 調 査 の内 容 を踏 まえ、多 くの個 人 消 費 者 が商 品 ・サービスの購 入 時 にオフセットに参 加 可
能 な仕 組 みを提 供 することとした。個 人 消 費 者 の動 向 を踏 まえ、オフセットの実 績 を始 めとした各
データを取 得 ・分 析 することを目 的 とすべく、仕 組 みの構 築 に向 けて検 討 を行 った。
3.1 構 築 するカーボン・オフセットの仕 組 み
事 例 調 査 の結 果 を踏 まえ、どの業 界 や企 業 に対 してスキームを構 築 していくべきか検 討 を行 っ
た。実 際 に多 数 の個 人 消 費 者 が CO2 を排 出 し、環 境 に対 する負 荷 がかかっていると考 えられる
業 界 、その一 つとして自 動 車 業 界 がその例 であるが、高 速 道 路 利 用 時 における自 動 車 の CO2 排
出 量 を ETC の活 用 によって把 握 することや、カーシェアリングサービスでの展 開 などが検 討 段 階 で
考 えられた。また、今 回 のスキームにおいては大 量 のトランザクション(商 取 引 )を処 理 することも
必 要 になってくることが考 えられたため、導 入 の容 易 性 や取 組 への賛 同 、今 後 の展 開 性 を踏 まえ、
旅 行 予 約 Web サイトが対 象 として浮 上 した。
旅 行 予 約 Web サイトは航 空 券 、宿 泊 、レンタカーなど複 数 のカテゴリにわたって予 約 を処 理 す
ることが求 められるため、表 面 的 には一 つの Web サイトに見 えるが、バックグラウンドでは複 数 の
予 約 システムにて運 営 されていることが多 い。旅 行 代 理 店 の例 をとると、予 約 する内 容 によってそ
れぞれ端 末 を使 い分 けているような状 況 となっている。しかし、 GDS(Global Distribution System)
はそれらを横 断 的 に一 元 管 理 するプラットフォームを提 供 しており、それぞれ接 続 する手 間 を省 き
最 新 情 報 が把 握 できる。このため、GDS は今 後 の展 開 性 として大 きなポテンシャルを秘 めており、
航 空 機 といった CO2 排 出 負 荷 の大 きい消 費 者 向 け交 通 手 段 も取 り扱 っていることから、今 回 の
実 証 事 業 においては GDS が提 供 している旅 行 予 約 Web サイトにおける航 空 券 取 扱 いを対 象 と
し、個 人 消 費 者 が商 品 ・サービスの購 入 時 にカーボン・オフセットの実 施 と負 担 金 額 を選 択 できる
仕 組 みで、かつ横 展 開 が可 能 なものを構 築 するものとした。
3.2 スキーム概 要
今 回 の調 査 にあたり、今 回 は a)オフセットの普 及 、b)クレジットの提 供 、c)オフセットの市 場 分
析 の 3 項 目 を実 証 の柱 として、必 須 となるオフセットの要 件 とその要 件 を満 たす機 能 を以 下 のと
おり定 義 した。特 に、システム化 に当 たっては、Web などに簡 単 にアクセスができ、申 込 時 に CO2
排 出 量 ・金 額 が計 算 され、証 明 書 発 行 ・提 供 までを包 括 的 にカバーすることを前 提 とした。またク
レジットの調 達 から無 効 化 、前 述 の証 明 書 発 行 までを支 援 するカーボン・オフセットプロバイダー
の参 加 も必 須 とした。
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<機 能 ①>
a)オフセットの普 及 の必 須 要 件
・商 品 ・サービスが対 象
・Web 等 で簡 易 にアクセス可 能
・購 入 ・決 済 時 に実 施 可 能
・申 込 時 の CO2 排 出 量 ・金 額 の 自 動 計 算
・消 費 者 の負 担 が少 額
・システム利 用 者 による手 動 金 額 調 整
<機 能 ②>
b)クレジット 提 供 の必 須 要 件
・クレジット提 供 ・無 効 化 の実 施
・多 数 量 に対 応 する証 明 書 の発 行
・証 明 書 の発 行 ・送 付
・証 明 書 のオンライン提 供
<機 能 ③>
c) 市 場 分 析 の必 須 要 件
・システム利 用 データの収 集
・システム利 用 者 の個 別 データの集 計
・分 析 に必 要 な項 目 の網 羅 性
・システム利 用 時 のアンケート実 施
図 6 必 須 要 件 を満 たす機 能
定 義 した機 能 の搭 載 ・実 証 が可 能 な事 業 者 であることから、旅 行 予 約 のプラットフォームは株
式 会 社 アマデウス・ジャパン(以 下 「アマデウス・ジャパン」という。)の保 有 する「 Amadeus e-Power
(以 下 「e-Power」という。)」を使 用 することとした。アマデウス・ジャパンは旅 行 業 界 に特 化 した大
手 IT プロバイダーであり、オンラインの旅 行 関 連 商 材 の予 約 ・発 券 プラットフォームを提 供 し世 界
3 大 GDS の国 内 No.1 のシェアを誇 っている。e-Power は 2012 年 より販 売 が開 始 されている旅 行
会 社 のウェブサイトへ簡 単 ・スピーディに統 合 できるオンライン予 約 エンジンであり、ワンストップで
航 空 券 、ホテル、 レンタカーの予 約 可 否 をリアルタイムに検 索 できるのが特 徴 。
本 事 業 では e-Power の既 存 機 能 にカーボン・オフセット算 定 表 示 機 能 (以 下 「オフセット機 能 」
という。)を追 加 し、旅 行 会 社 の Web サイト上 に表 示 されるべく実 装 した。オフセット機 能 とは、旅
行 予 約 者 の旅 程 に基 づき、国 際 民 間 航 空 機 関 ( ICAO)の定 める航 空 機 の温 室 効 果 ガス排 出 量
の算 定 方 法 に則 り、予 約 された旅 行 の航 空 機 の利 用 による温 室 効 果 ガスの排 出 量 と当 該 排 出
量 相 当 分 のオフセット・ クレジットの購 入 費 用 を自 動 計 算 し、予 約 画 面 に表 示 させるものである。
また、旅 行 予 約 者 が任 意 でオフセットの実 施 に了 承 を 表 明 することで旅 行 の申 込 みと同 時 に 自
動 的 にオフセット(=クレジットの購 入 )を実 施 できるものとした。
さらに、オフセット証 明 書 の発 行 については、株 式 会 社 パイプドビッツ(以 下 「パイプドビッツ」と
いう。)が提 供 するクラウド型 プラットフォーム「 SPIRAL」を利 用 することとした。パイプドビッツはイン
ターネット等 を通 じて、アプリケーションやそれに付 随 するサービスを顧 客 に提 供 する情 報 資 産 プ
ラットフォーム事 業 を展 開 しており、アンケートや証 明 書 発 行 の対 応 のノウハウをもつアプリケーシ
ョンサービスプロバイダーである。SPIRAL は幅 広 い業 種 で利 用 可 能 な情 報 資 産 管 理 システムであ
り、10,000 件 を超 える企 業 にて採 用 されている。本 事 業 では、SPIRAL の機 能 を活 用 し、オフセット
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の利 用 データを元 にオフセット証 明 書 の発 行 ・旅 行 予 約 者 への通 知 メール送 信 ・アンケートの送
信 ・データ集 計 までを行 う、オフセット証 明 書 の発 行 ・提 供 システムの立 ち上 げを行 った。
今 回 のスキーム構 築 に当 たっては、個 人 消 費 者 、旅 行 会 社 (Web 予 約 サイト運 営 )、GDS であ
るアマデウス・ジャパン、証 書 予 約 発 行 システムを提 供 するパイプドビッツの協 力 を得 ることとなっ
た。
具 体 的 には、個 人 消 費 者 が旅 行 をする際 に旅 行 会 社 の Web サイトにアクセスをするところから
始 まる。希 望 する航 空 経 路 を検 索 した際 に CO2 排 出 量 が表 示 される仕 組 みとなっており、同 じ経
路 でも経 由 便 や利 用 する航 空 機 材 、クラスによっても異 なる CO2 排 出 量 が表 示 されることになる。
計 算 に当 たっては ICAO(International Civil Aviation Organization :国 際 民 間 航 空 機 関 )が提 供
する係 数 を利 用 した CO2 排 出 量 が表 示 される。希 望 便 を選 択 すると予 約 を確 定 させるカート画 面
に移 り、そこで CO2 排 出 量 とそれに応 じたカーボン・オフセットプロジェクトへの協 力 寄 付 金 額 、協
力 プロジェクトの概 要 、イメージ写 真 が表 示 され、個 人 消 費 者 はここでプロジェクトに参 加 協 力 す
る場 合 はチェックボックスにチェックを入 れるだけで参 加 することができる。また、参 加 に当 たっては
表 示 された金 額 を任 意 で変 更 することも可 能 としており、参 加 者 の意 に沿 った協 力 ができるように
した。
予 約 が成 立 すると、次 はその予 約 データを元 にカーボン・オフセットプロバイダーがその CO2 排
出 量 に応 じて、クレジットの調 達 を行 う。また、データを元 に個 人 消 費 者 に向 けてカーボン・オフセ
ット証 書 の発 行 メールを送 付 し、証 書 のダウンロードサイトにアクセスし、ダウンロードしてもらうこ
とで PDF 形 式 の証 書 を参 加 した個 人 消 費 者 に提 供 することとなる。ダウンロード前 に一 定 のアン
ケート事 項 を設 定 し、取 組 の動 機 や動 向 、意 見 等 を把 握 することも可 能 とした。
このように個 人 消 費 者 の参 加 を容 易 にする窓 口 、CO2 排 出 量 計 算 の仕 組 み、簡 便 なオフセット
の参 加 方 法 、クレジットの調 達 から無 効 化 までの一 連 の作 業 、そして証 書 発 行 からアンケートまで
の横 断 的 なスキームを構 築 し、実 証 を行 うこととなった。(図 7 参 照 )
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図 7 スキーム概 要
3.3 スキーム詳 細
3.3.1 システムの仕 様
一 部 機 能 がアマデウス・ジャパンの事 情 により 1 か月 遅 れることになったが、実 証 実 験 について
は前 述 の要 件 に基 づき、2 月 1 日 よりスタートした。
導 入 先 は既 に e-Power を導 入 しているいくつかの企 業 の中 から、今 回 の実 証 事 業 の主 旨 に賛
同 していただいた旅 行 会 社 3 社 で行 うこととした。
3.3.2 e-Power のオフセット機 能 詳 細
e-Power を導 入 する旅 行 会 社 の Web サイトにおいて、従 来 の旅 行 予 約 画 面 に追 加 して、オフ
セット実 施 のための以 下 の項 目 を表 示 した。旅 行 予 約 者 は予 約 する旅 程 によって排 出 される CO2
量 を認 識 し、オフセットの意 味 を理 解 した上 で、オフセットへの参 加 可 否 を選 択 する。オフセットを
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了 承 した旅 行 予 約 者 については、オフセット実 施 のための金 額 が旅 費 に追 加 され決 裁 画 面 へと
進 むこととなる。
これにより、旅 行 予 約 者 は e-Power を意 識 することなく、Web サイト上 で通 常 の旅 行 予 約 と同
じ形 でクリック 1 回 の手 順 だけでカーボン・オフセットの実 施 ができる。
3.3.2.a カーボン・オフセット参 加 機 能
a)CO2 排 出 量 (検 索 結 果 画 面 )
検 索 対 象 の出 発 地 から到 着 地 までの航 空 機 の利 用 による CO2 排 出 概 算 量 を、検 索 結 果 画
面 に表 示 する。複 数 の航 空 便 が対 象 となる場 合 もあるため、ヘッダの部 分 に CO2 排 出 量 の
最 大 値 及 び最 小 値 を表 示 し、その中 で個 人 消 費 者 が選 択 する個 々の航 空 便 についても個
別 に CO2 排 出 量 が表 示 されるようにした。また、 CO2 排 出 量 の算 定 については出 典 元 が
ICAO である旨 を表 示 し計 算 値 の正 確 性 について担 保 した。
b)オフセット賛 同 チェック
チェックボックスにチェックすることでオフセットへの参 加 可 否 を選 択 できるようにする。
c)オフセット・クレジットの説 明 欄
オフセットに使 用 するクレジットのプロジェ クト名 とプロジェクト内 容 に関 する説 明 文 を 表 示 さ
せる。また、外 部 URL へのリンクも追 加 できる形 式 とする。
d)クレジットイメージ画 像
オフセットまたは上 記 クレジットに関 係 するイメージ画 像 を表 示 し、オフセットへの参 加 意 義 を
視 覚 的 に伝 える。
e)CO2 排 出 量 (予 約 画 面 )
旅 程 等 をもとに ICAO の排 出 係 数 等 により算 定 した航 空 機 の利 用 による CO2 排 出 量 を表 示
する。寄 付 金 額 を基 に再 計 算 された場 合 、端 数 については切 り捨 てとする。
f)寄 付 金 額 初 期 値
旅 程 に基 づく CO2 排 出 量 相 当 分 に対 してクレジット単 価 を乗 じて計 算 される寄 付 金 額 の初
期 値 を表 示 する。
g)寄 付 金 額
寄 付 金 額 初 期 値 に対 して、旅 行 予 約 者 が任 意 で金 額 変 更 を可 能 とする。
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図 8 検索結果画面
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図 9 バスケット画 面 (上 ・オフセット協 力 部 分 下 ・料 金 表 示 部 分 )
3.3.2.b 管 理 ・データ取 得 機 能
旅 行 会 社 毎 に管 理 画 面 上 でクレジットの説 明 や価 格 等 を 設 定 することができるものとした。こ
れにより任 意 のクレジットや価 格 の設 定 が可 能 となるため、旅 行 会 社 によるキャンペーンや販 売
促 進 などへの活 用 も今 後 期 待 できるものとなっている。
また、旅 行 予 約 者 の予 約 情 報 及 びオフセット情 報 を基 に、オフセット実 施 者 の属 性 や旅 行 予 約
者 全 体 に占 めるオフセット実 施 者 の割 合 、適 切 な価 格 帯 を把 握 するためのデータをアマデウス・
ジャパンより提 供 できるようにした。
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3.3.3 SPIRAL を活 用 した証 明 書 発 行 スキーム
オフセット機 能 により実 施 されるオフセット は、今 後 取 扱 数 の増 加 が予 測 されることから、マイク
ライメイトジャパンが提 供 するオフセットの案 件 毎 のデータに基 づきオフセット証 明 書 を自 動 作 成 し、
旅 行 予 約 者 がオンラインでその証 明 書 をダウンロードする形 式 とした。
カーボン・オフセット証 書 とはカーボン・オフセットを適 正 に実 施 したことを証 明 するものである。
今 回 その証 明 書 を個 別 提 供 するスキームを構 築 した理 由 としては、カーボン・オフセットが、実 際
に実 施 されたことがオフセット協 力 者 にとってわかりづらいためである。いつ、どこで、どのように実
施 されるのか、といった内 容 は、オフセット参 加 を促 す画 面 で一 定 の説 明 はあるものの消 費 者 にと
って実 感 することは難 しい。本 システムにより、オフセット・プロバイダーが代 行 するオフセット手 続
きの完 了 後 通 知 メールが発 送 され、オフセット協 力 者 はメールに記 載 される URL より証 明 書 をダ
ウンロードすることが可 能 である。また、ダウンロード時 にオフセットに関 するアンケートの記 入 依
頼 がなされ、オフセット協 力 者 の意 識 調 査 のデータを取 得 できるものとした。
図 10 証 明 書 発 行 システムイメージ
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3.4 顧 客 調 査
3.4.1 アンケートの実 施
実 証 事 業 に並 行 して、オフセットの参 加 に対 する意 識 調 査 と、価 格 についての動 向 を調 査 した。
対 象 としては今 回 利 用 する e-Power を提 供 するアマデウス・ジャパンの顧 客 に対 するものとした。
e-Power ユーザーに限 らずアンケート対 象 としたのは、今 後 アマデウスのプラットフォームによる展
開 を見 据 えたときの参 加 可 能 性 を調 査 しておくべきとの判 断 からである。また、実 証 事 業 の実 績
から価 格 動 向 を判 断 するのみならず、アンケート内 容 において、何 円 なら取 り組 むべきか、どのく
らいの価 格 帯 なら参 加 の許 容 範 囲 かという 調 査 も併 せて行 うことで、より正 確 に動 向 を把 握 する
ことができると考 えたからである。
3.4.2 Facebook を活 用 した顧 客 の反 応
Facebook を活 用 し、オフセットの説 明 画 面 に使 用 するイメージ画 像 の適 性 について反 応 を調 査
した。Facebook 広 告 を活 用 する形 式 を用 いた理 由 としては、調 査 対 象 となる顧 客 属 性 を容 易 に
設 定 できることが挙 げられる。今 回 は旅 行 、地 球 温 暖 化 、といった属 性 を持 つ消 費 者 をターゲット
とした。また画 像 については複 数 の画 像 を設 定 し、それに対 する反 応 度 を調 査 することができる。
文 言 等 を同 一 に設 定 し、画 像 による反 応 の違 いを確 認 することでどの画 像 を使 用 することで、オ
フセット需 要 を喚 起 することができるのかを調 査 した。
3.5 実 証 実 験 実 施 内 容
平 成 27 年 2 月 1 日 より平 成 27 年 3 月 30 日 まで、オフセット機 能 を搭 載 した e-Power を用 い
て、グリーンバイオコーポレーション株 式 会 社 (以 下 「グリーンバイオ」という。)、株 式 会 社 シナジー
コーポレーション(以 下 「シナジー」という。)、株 式 会 社 AlphaPrime Japan(以 下 「アルファプライム」
という。)の旅 行 会 社 3 社 の旅 行 予 約 Web サイトにおいて、オフセット実 施 スキームの実 証 試 験
を行 った。
本 実 証 試 験 では、上 記 Web サイトでの旅 行 予 約 者 のオフセット実 施 の実 績 を基 に、個 人 消 費
者 へ提 供 する効 果 的 なオフセット実 施 スキームに必 要 とされる条 件 の考 察 を行 った。
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3.6 実 証 実 験 の結 果 と分 析
3.6.1 予 約 実 績 ・オフセット参 加 実 績
今 回 の実 証 事 業 の結 果 について以 下 各 項 にて説 明 を行 う。
グリーンバイオ、シナジー、アルファプライムの各 社 の旅 行 予 約 実 績 は合 計 98 件 (旅 行 セグメ
ント予 約 実 績 10 171 件 )、うちオフセットへの参 加 は合 計 20 件 (セグメント合 計 42 件 )であり、オフ
セットの実 施 率 (オフセット参 加 件 数 /旅 行 予 約 件 数 )は 20.4%となったことから、カーボン・オフセ
ットに参 加 する個 人 消 費 者 はある一 定 数 の割 合 で存 在 すると考 えられる。
また、サンプル数 から今 回 の旅 行 予 約 実 績 のデータの品 質 において統 計 の観 点 から検 証 する
と、国 内 の全 人 口 を母 数 としサンプル数 98 件 とした場 合 のオフセット参 加 率 20.4%の標 準 誤 差
は 4.07%となり、オフセット参 加 率 は 12.3~28.5%の範 囲 となる。これは 95%の確 からしさで、当
該 機 能 を導 入 することで、少 なくとも 12.3%の旅 行 予 約 者 がカーボン・オフセットを行 うことを意 味
し、ある程 度 の信 ぴょう性 は保 たれていると考 えられる。今 後 も参 加 データ取 得 を継 続 することに
よりサンプル数 を増 やすことで、より精 微 な検 証 データを取 得 していくことに努 めたい。
表 26 会 社 別 予 約 実 績
3.6.2 オフセット金 額
個 人 消 費 者 のオフセット実 施 率 の増 加 のための条 件 の一 つとして、適 切 な金 額 の設 定 が考 え
られる。3.6.1 の実 績 より、オフセットに対 するボランタリーの取 組 として、個 人 消 費 者 に許 容 される
範 囲 について検 討 をおこなった。
e-Power のオフセット機 能 では、検 索 時 に複 数 の旅 程 が表 示 されそのすべてに排 出 される CO2
量 が表 示 される。その後 予 約 画 面 に旅 程 に基 づく航 空 機 の使 用 による CO2 排 出 量 と当 該 排 出
量 相 当 分 のクレジットの購 入 費 用 (=オフセット金 額 )が表 示 される。また、詳 細 を確 認 したい個 人
消 費 者 のために、オフセットの仕 組 みや説 明 のページも予 約 画 面 にリンクがあり、閲 覧 できるよう
になっている。オフセット金 額 は任 意 で変 更 できる設 定 となっているが、今 回 の実 証 結 果 として、オ
フセット参 加 者 の寄 付 金 額 は全 て初 期 値 のオフセット金 額 のままであり、変 更 した参 加 者 は 0 名
であった。この結 果 から、旅 行 予 約 者 はオフセットに参 加 するに当 たり、手 間 をかけず、場 合 によ
10 セグメントとは予 約 において往 復 便 の場 合 2 件 と数 える旅 行 業 における数 え方 であり、搭 乗 回 数 に等 しい。
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ってはオフセットという仕 組 みの意 味 を十 分 理 解 していなくても、社 会 貢 献 という理 由 だけで参 加
に至 っている可 能 性 があると考 えられる。そこで、オフセット金 額 の初 期 値 は参 加 の可 否 に少 なか
らず影 響 を与 えるとの前 提 のもと、a)初 期 オフセット金 額 、b)旅 費 総 額 に対 する初 期 オフセット金
額 の比 率 について、オフセット参 加 との関 連 性 を分 析 した。
a)初 期 オフセット金 額 とオフセット参 加 の関 連 性
本 実 証 試 験 において、旅 行 会 社 3 社 で予 約 された全 旅 行 については、初 期 オフセット金 額 とし
て表 示 された金 額 は 29 円 から 1,773 円 の範 囲 であった。うち、オフセットの参 加 に至 った旅 行 (全
20 件 )を抜 粋 すると、初 期 オフセット金 額 (=実 際 に参 加 表 明 されたオフセット金 額 となった。)が
29 円 から 542 円 の範 囲 であった(旅 行 代 金 に対 するオフセットの平 均 割 合 0.3%)。
表 27 オフセット参 加 金 額 内 訳
一 般 的 に寄 付 金 額 の絶 対 値 が高 くなる程 、寄 付 の実 施 者 は少 なくなると考 えられる。今 回 の
オフセット参 加 者 のオフセット金 額 のみを参 照 すると、オフセットに対 する寄 付 金 額 の許 容 値 は数
百 円 までと考 えられる。
一 方 、本 実 証 試 験 においてオフセット参 加 者 20 件 と母 数 が少 ない中 、400 円 以 上 の価 格 帯 に
ついては 1 件 のみの参 加 であったため、500 円 前 後 以 上 を上 限 として価 格 帯 の許 容 値 が存 在 す
ることは推 測 されるものの、上 限 値 を確 定 するまでには至 らなかった。そのため、オフセットの適 正
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価 格 についての分 析 については、後 述 のアマデウス・ジャパンの顧 客 に対 して行 ったアンケート調
査 で補 完 することとした。
表 28 初 期 オフセット金 額 価 格 帯 毎 の参 加 状 況
b)旅 費 総 額 に対 する初 期 オフセット金 額 の比 率 とオフセット参 加 の関 連 性
オフセット金 額 の絶 対 値 とともに、旅 費 総 額 が高 ければオフセット金 額 に対 する許 容 値 も高 くな
り、オフセット参 加 率 も高 くなるのではないかという推 定 のもと、旅 費 総 額 に占 める初 期 オフセット
金 額 によるオフセット参 加 率 の変 動 があるかを検 討 した。
予 約 された全 旅 行 については、旅 費 総 額 が 2 万 円 代 から 32 万 円 台 、オフセットの参 加 に至 っ
た旅 行 のみを抜 粋 すると、旅 費 総 額 が 2 万 円 台 から 17 万 円 台 であった 17 万 円 台 の旅 行 のオフ
セット参 加 率 は 1%(1 件 )であり、むしろ旅 費 総 額 が低 い方 が、オフセット参 加 率 が高 いという結
果 となり、オフセット参 加 率 との相 関 性 は見 られなかった。
表 29 旅 費 価 格 帯 毎 のオフセット参 加 状 況
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3.6.3 属 性 分 析
個 人 消 費 者 のオフセット実 施 率 を増 加 させ、オフセット実 施 スキームの提 供 者 たる企 業 等 がオ
フセットに取 り組 む意 義 を得 られるようにするためには、どのような属 性 の個 人 消 費 者 がオフセット
に積 極 的 に参 加 するのかを把 握 し、属 性 毎 の傾 向 に応 じてアプローチを適 切 に行 っていく必 要 が
ある。
そこで、本 実 証 事 業 においてオフセット参 加 ・非 参 加 の旅 行 予 約 者 の a)性 別 、b)年 齢 につい
て分 析 を行 い、一 定 の傾 向 が見 られるかを検 証 した。
a)性 別 による傾 向
本 実 証 試 験 に参 加 する旅 行 会 社 3 社 は各 旅 行 予 約 者 の性 別 データを取 得 しており、それぞ
れ、成 人 男 性 、成 人 女 性 、既 婚 成 人 女 性 、3 から 11 歳 の男 児 、3 から 11 歳 の女 児 、0 から 2 歳
の幼 児 で表 記 される。このデータを基 に性 別 毎 のオフセット参 加 ・非 参 加 の比 率 の比 較 を行 った。
旅 行 予 約 者 の内 訳 は成 人 男 性 :49 件 、成 人 女 性 :31 件 、既 婚 成 人 女 性 :12 件 、3 から 11 歳
の男 児 :6 件 であり、うちオフセットの参 加 者 は成 人 男 性 :10 件 、成 人 女 性 :6 件 、既 婚 成 人 女 性 :
4 件 、3 から 11 歳 の男 児 :0 件 で、オフセット参 加 率 は成 人 男 性 :20.4%、成 人 女 性 :19.4%、既
婚 成 人 女 性 :33.3%、3 から 11 歳 の男 児 :0%となった。また、オフセット参 加 者 のオフセット金 額
の範 囲 は成 人 男 性 :29 円 から 363 円 、成 人 女 性 :115 円 から 312 円 、既 婚 成 人 女 性 :29 円 から
542 円 で、オフセット参 加 者 1 人 当 たりの平 均 オフセット金 額 は、成 人 男 性 :215.5 円 、成 人 女 性 :
200.3 円 、既 婚 成 人 女 性 :271.1 円 であった。
この結 果 、オフセット参 加 率 については、男 女 比 で明 らかな差 は見 られなかったが、女 性 の方
が男 性 よりもオフセット金 額 に対 する上 限 値 は高 いという結 果 となった。更 に女 性 の中 でも既 婚 者
の方 が、よりオフセット参 加 率 及 び平 均 オフセット金 額 も高 いことが分 かる。
表 30 性 別 毎 のオフセット参 加 者 実 績
b)年 齢 による傾 向
日 本 国 内 において、自 然 環 境 の保 全 について意 識 が高 まったのは、廃 棄 物 の処 理 や水 質 汚
濁 、土 壌 ・大 気 の汚 染 が進 んだ高 度 経 済 成 長 期 以 降 であり、地 球 温 暖 化 防 止 については京 都
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議 定 書 が採 択 された平 成 9 年 以 降 に、一 般 的 な認 知 度 が高 まったとされている。このことを踏 ま
えると、個 人 消 費 者 の年 齢 層 により、オフセット参 加 率 が変 わってくることが考 えられる。年 齢 層 も
性 別 と同 様 に、多 様 な業 界 の企 業 において把 握 される顧 客 や消 費 者 層 のデータであり、年 齢 層
による傾 向 が判 明 すれば、オフセット実 施 スキームの導 入 の検 討 において活 用 が可 能 であると思
われる。
旅 行 予 約 者 の内 訳 は 20 歳 未 満 :13 件 、20 歳 以 上 30 歳 未 満 :26 件 、30 歳 以 上 40 歳 未 満 :
31 件 、40 歳 以 上 50 歳 未 満 :14 件 、50 歳 以 上 60 歳 未 満 :9 件 、60 歳 以 上 :5 件 であった。うち、
オフセット参 加 者 は 20 歳 以 上 30 歳 未 満 :2 件 、30 歳 以 上 40 歳 未 満 :9 件 、40 歳 以 上 50 歳 未
満 :5 件 、50 歳 以 上 60 歳 未 満 :4 件 であり、各 年 齢 層 のオフセット参 加 率 は高 い順 に 50 歳 以 上
60 歳 未 満 :44.4%、40 歳 以 上 50 歳 未 満 :35.7%、30 歳 以 上 40 歳 未 満 :29%、20 歳 以 上 30 歳
未 満 :7.7%であった。
この結 果 から、60 歳 未 満 においては高 年 齢 層 程 オフセット参 加 率 が高 いということが分 かった。
表 31 年 齢 毎 のオフセット参 加 者 実 績
3.6.4 経 路 ・方 面 別
旅 行 予 約 者 の属 性 の他 に、オフセット参 加 ・非 参 加 の選 択 をするに当 たり、影 響 を及 ぼす要 素
として旅 行 先 や旅 行 目 的 が挙 げられる。例 えば、旅 行 先 が豊 かな自 然 環 境 を観 光 資 源 としてい
るような国 であった場 合 、旅 行 予 約 者 の自 然 や環 境 への関 心 が比 較 的 高 く、オフセット実 施 率 も
高 くなるという傾 向 があるのではないか。また、旅 行 目 的 が出 張 であった場 合 、企 業 方 針 として環
境 保 全 に取 り組 んでおり、自 社 の事 業 活 動 にあたる出 張 のオフセットに至 るという可 能 性 が考 え
られる。そこで、本 実 証 試 験 において取 得 した旅 行 予 約 者 情 報 より、分 析 可 能 な旅 行 先 について、
仮 に旅 行 予 約 者 が全 て観 光 を目 的 としているとして、旅 行 先 地 域 毎 の自 然 環 境 とオフセット参 加
との相 関 性 が見 られるかどうかを分 析 した。
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旅 行 先 地 域 は外 務 省 HP に掲 載 される、国 ・地 域 の名 称 に加 えて、旅 行 先 件 数 の多 かったア
ジアはより詳 細 な分 析 を行 うため、アジア及 び東 南 アジアに分 けている。また、旅 行 先 件 数 は当
該 地 域 を含 む旅 行 を 1 件 とし、複 数 地 域 を旅 行 先 に含 む旅 行 については各 地 域 でそれぞれ 1 件
とカウントすることとした。
その結 果 、旅 行 先 はそれぞれの合 計 が欧 州 :26 件 、アジア:20 件 、東 南 アジア:37 件 、北 米 :
24 件 、中 南 米 :6 件 、大 洋 州 :4 件 であった。うち、オフセットに参 加 された旅 行 先 は欧 州 :10 件 、
アジア:6 件 、東 南 アジア:5 件 、北 米 :3 件 、中 南 米 :4 件 であり、オフセット参 加 率 は高 い順 に中
南 米 :66.7%、欧 州 :38.5%、アジア:30%、東 南 アジア:13.5%、北 米 :12.5%であった。
図 11 旅 行 先 地 域 名 称
最 もオフセット参 加 率 の高 い中 南 米 については、オフセット参 加 者 の旅 行 先 の内 訳 はアルゼン
チン:4 件 で、次 点 の欧 州 については、オフセット参 加 の旅 行 はイタリア: 4 件 、ドイツ・スウェーデ
ン・ノルウェーがそれぞれ 2 件 であった。自 然 環 境 を連 想 させる旅 行 先 はノルウエー・スウェーデン
の 4 件 であり、オフセット参 加 者 のみからは一 定 の傾 向 は読 み取 れなかった。
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表 32 旅 行 先 別 実 績 (セグメント別 )
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3.6.5 オフセット金 額 の適 正 値
旅 行 予 約 者 がオフセットに参 加 する価 格 帯 について、より正 確 な金 額 を把 握 し、オフセット金
額 の適 正 値 を探 るものとして、アマデウス・ジャパンの顧 客 である企 業 の協 力 を得 て、これらの
企 業 (2621 名 )に対 して、アンケート調 査 を行 った。
アンケートは、航 空 機 の利 用 が CO2 を排 出 し、地 球 温 暖 化 の要 因 の一 つとなっていることを
説 明 の上 、個 人 として旅 行 する際 にオフセットに参 加 するか、参 加 ・非 参 加 の理 由 、オフセット
金 額 の上 限 値 について選 択 式 (一 部 自 由 回 答 あり)の質 問 を行 い、合 計 126 件 の回 答 を得 た。
3.6.5.a オフセット参 加 機 能 によるオフセットへの参 加 ・非 参 加 について
アマデウス・ジャパンが Web オンライン旅 行 予 約 を通 じて、航 空 券 の予 約 をする際 に、経 路
等 に応 じた CO2 排 出 量 を、任 意 選 択 によりオフセットできる環 境 保 全 のキャンペーンを実 施 して
いることを伝 えた上 で 205 円 という金 額 を示 し、本 キャンペーンへの協 力 の可 否 を質 問 した。こ
の金 額 は、仮 に“回 答 者 が東 京 -グアムの直 行 便 (往 復 )のエコノミークラスを予 約 するとし、旅
費 がおよそ 7 万 円 で初 期 オフセットが 205 円 となった”場 合 を想 定 して設 定 している。
その結 果 、”協 力 する”:79 件 で回 答 全 体 のうち 62.7%、”協 力 しない”:47 件 で 37.3%であ
り、”協 力 する”が半 数 以 上 を占 め”協 力 しない”の約 1.7 倍 となった。
また、それぞれの回 答 者 に対 し理 由 を質 問 したところ、 ”協 力 する”の理 由 としては、“地 球 温
暖 化 防 止 に貢 献 したい”が 48 件 と最 も多 く、次 点 の“航 空 機 は多 量 の CO2 を排 出 するため”が
10 件 で、“CO2 削 減 プロジェクトを支 援 したい”、“取 組 の必 要 性 を感 じた”の 7 件 。また無 回 答
及 びその他 を除 き、最 も少 なかった理 由 は“申 込 金 額 が安 いから”の 5 件 であった。
一 方 、”協 力 しない”の理 由 としては、オフセットの意 義 についての “仕 組 みがよくわからない”
が 16 件 、“CO2 削 減 プロジェクトの内 容 がわからない”が 4 件 と合 計 20 件 であり、“金 額 負 担 が
ある”が 8 件 、“CO2 の排 出 は仕 方 ない”が 7 件 と続 く。またその他 自 由 回 答 9 件 では“参 加 の
是 非 を個 人 レベルで問 うのに抵 抗 がある”や“航 空 会 社 がコストを負 担 すべき”といった CO2 排
出 の責 任 は航 空 会 社 にあるとする意 見 が多 かった。
- 53 -
表 33 アンケート回 答 (205 円 オフセット参 加 可 否 とその理 由 について)
3.6.5.b オフセット金 額 の上 限 値 について
本 取 組 の申 込 金 額 として設 定 した 205 円 についての価 格 感 を質 問 したところ、回 答 数 の多 い
順 に、“ちょうどよい”が 80 件 、“高 い”が 37 件 、“安 い”が 9 件 となった。また、”高 い”又 は”安 い”
を選 択 した回 答 者 に負 担 可 能 な金 額 を質 問 したところ、具 体 的 な数 値 が回 答 されたものとして
は、前 者 は 100 円 が 17 件 、0 円 が 14 件 、150 円 が 2 件 となり、後 者 は 500 円 が 6 件 、700 円
が 1 件 ずつとなった。
旅 費 に占 めるオフセット金 額 の比 率 の上 限 値 を質 問 したところ、“旅 費 の 1%”が 72 件 で最 も
多 く、“旅 費 の 3%”は 5 件 、“旅 費 の 5%”は 2 件 、“旅 費 の 10%”は 0 件 であった。その他 回 答
の中 では“旅 費 に関 係 なく 100 円 程 度 ”や“旅 費 の 1%以 下 ”、“ワンコインが上 限 ”というような意
見 が多 かった。
本 取 組 に協 力 するかつオフセット金 額 205 円 をちょうどよいもしくは安 いと選 択 した回 答 者 を、
オフセット参 加 者 として整 理 すると、オフセットに参 加 する個 人 消 費 者 の一 定 の割 合 は約 70%
となり、3.6.1 予 約 実 績 ・オフセット参 加 実 績 におけるオフセット参 加 率 約 20%よりも大 幅 に高 い
数 値 となった。これは、アンケート対 象 者 がアマデウス・ジャパンの顧 客 であり、オフセット実 施 ス
キームを利 用 した旅 行 予 約 者 より、オフセットについて正 確 に認 識 して選 択 した可 能 性 がある。
しかし、逆 を言 えばオフセット参 加 機 能 についてデザインの工 夫 やポップアップの表 示 等 により、
オフセット参 加 機 能 に対 する意 識 を喚 起 することで、オフセット参 加 率 を上 げられる可 能 性 があ
ることを示 している。
また参 加 理 由 は、個 人 もしくは航 空 機 の CO2 の排 出 削 減 や排 出 削 減 プロジェクトへの支 援
といった、個 々の詳 細 な情 報 に基 づくものではなく、地 球 温 暖 化 防 止 という社 会 全 体 への貢 献
- 54 -
が選 択 された。不 参 加 理 由 も 、“仕 組 みが分 からない”が最 多 回 答 の一 つであり、社 会 貢 献 へ
の理 解 度 が、金 額 以 外 にオフセット参 加 へ影 響 を与 える要 因 であることが判 明 した。そして、オ
フセット金 額 の適 切 な価 格 帯 としては数 百 円 、上 限 値 としては 500 円 という結 果 となった。
これらは 3.6.3 属 性 分 析 及 び後 述 する 3.6.6 オフセットの理 解 度 の考 察 と同 様 の結 果 であり、
個 人 消 費 者 のオフセットへの参 加 に至 るきっかけは社 会 貢 献 意 識 であると言 える。一 方 、オフ
セットへの理 解 やオフセット金 額 に関 わらず、オフセット実 施 者 や CO2 排 出 に対 する見 解 により、
オフセッ ト に 参 加 し ない 個 人 消 費 者 が 存 在 す るの も 事 実 であ る 。また 、 最 終 的 に オ フセッ ト 参
加 ・非 参 加 を決 定 する大 きな要 因 の一 つとして金 額 が関 わっており、個 人 消 費 者 が許 容 可 能
なオフセット金 額 はワンコイン 500 円 以 下 であると推 計 される。
また、最 終 的 にオフセット参 加 ・非 参 加 を決 定 する大 きな要 因 の一 つとして金 額 が関 わってお
り、個 人 消 費 者 が許 容 可 能 なオフセット金 額 はワンコイン 500 円 以 下 であると推 計 される。
表 34 アンケート回 答 (205 円 という参 加 金 額 について)
表 35 アンケート回 答 (協 力 してもよいと思 う上 限 金 額 )
- 55 -
3.6.6 オフセットの理 解 度
3.6.2 オフセット金 額 においては、オフセット参 加 者 の寄 付 金 額 が全 て初 期 値 のオフセット金 額
のままであったことから、旅 行 予 約 者 が場 合 によってはオフセットという仕 組 みを理 解 せず、社 会
貢 献 という包 括 的 な意 義 のみでオフセットに参 加 している可 能 性 があると述 べている。これは、オ
フセットによる地 球 温 暖 化 防 止 の推 進 や地 域 活 性 化 支 援 等 の具 体 的 な貢 献 内 容 を伝 えることが
できれば、より多 くの旅 行 予 約 者 にオフセットに参 加 してもらうことができるとも考 えられる。
そこで、個 人 消 費 者 のオフセットに対 する理 解 度 を向 上 させるため、どのような伝 え方 が最 も個
人 消 費 者 の関 心 を引 き付 けるかを検 討 するため、Facebook の広 告 機 能 を活 用 し調 査 を行 うこと
とした。
Facebook の広 告 機 能 とは、告 知 記 事 と告 知 を行 う対 象 、例 えば趣 味 関 心 における “旅 行 ”の
設 定 を行 うと、Facebook において、“旅 行 ”に関 心 があると区 分 された Facebook 使 用 者 に対 して、
自 動 的 に登 録 した記 事 が広 告 表 示 されるものである。また告 知 結 果 として、告 知 対 象 者 数 (リー
チ数 )、Facebook に登 録 されている告 知 対 象 者 の情 報 (国 籍 、性 別 、年 齢 等 )、告 知 記 事 のクリッ
ク数 、告 知 記 事 に掲 載 される URL のクリック数 等 の集 計 データを取 得 できる。このように、個 人 消
費 者 の属 性 の設 定 が容 易 に行 え、クリック率 が高 く多 くの反 応 が見 込 めるため、告 知 の実 績 分
析 が可 能 であることが、Facebook の広 告 機 能 の特 徴 である。
本 実 証 試 験 においては、オフセットへの関 心 度 合 いを測 る告 知 記 事 の内 容 を、 a)オフセットの
キャッチフレーズ画 像 、b)旅 行 のオフセットキャンペーン画 像 、c)地 球 温 暖 化 イメージ画 像 、と 3 パ
ターンで分 類 し、合 計 5 件 の d)告 知 記 事 においてそれぞれ異 なる画 像 (画 像 1~5 参 照 )を掲 載
した。また告 知 記 事 には画 像 の他 、地 球 温 暖 化 防 止 のプロジェクトへの参 加 を呼 びかける文 を掲
載 (告 知 記 事 (例 )参 照 )し、これらの複 数 の告 知 記 事 に対 するクリック数 から、告 知 記 事 別 の個
人 消 費 者 の反 応 率 を比 較 した。
第 一 弾 として平 成 27 年 3 月 2 日 から 3 月 10 日 まで、告 知 対 象 を“日 本 国 内 ”・“旅 行 代 理
店 ”・“地 球 温 暖 化 ”・“格 安 航 空 会 社 ”・“旅 行 ”・”よく旅 行 をする”に設 定 し、日 本 を使 用 する
Facebook 使 用 者 に対 して、画 像 1 から 5 を掲 載 した。その結 果 、各 画 像 に対 するクリック数 が高
い順 に、画 像 3:382 件 、画 像 4:254 件 、画 像 1:104 件 、画 像 2:97 件 、画 像 5:79 件 の合 計
916 件 となった。
そこでクリック数 が多 く反 応 率 の高 かったc)パターンの画 像 2、画 像 4 及 び画 像 5 に限 定 して、
さらに第 二 弾 として平 成 27 年 3 月 13 日 から 3 月 23 日 まで、第 一 弾 の告 知 対 象 に追 加 して、国
籍 が海 外 14 ヶ国 であり日 本 語 を使 用 言 語 とする Facebook 使 用 者 に対 して、同 様 の告 知 を行 っ
た。その結 果 、各 画 像 に対 するクリック数 が高 い順 に画 像 3:2569 件 、画 像 4:669 件 、画 像 5:
463 件 の合 計 3701 件 (第 一 弾 及 び第 二 弾 合 計 4144 件 )となり、となり、画 像 3 に対 するクリック
数 が全 クリック数 の 69.4%を占 めた。
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表 36 イメージ画 像 別 実 績
オフセットについて打 ち出 しているパターン a)の画 像 1 及 びパターン b)の画 像 2 よりも、地 球
温 暖 化 や環 境 破 壊 のイメージを喚 起 させるパターン c)の画 像 3・画 像 4・画 像 5 のクリック率 が高
いことから、カーボン・オフセットという単 語 やカーボン・オフセットの説 明 よりも、カーボン・オフセット
自 体 への理 解 は低 くとも、“シロクマ”と“氷 山 が解 ける”といった、視 覚 的 に地 球 温 暖 化 による危
機 を訴 えかける方 が、個 人 消 費 者 の反 応 率 が高 くなると推 察 される。また、パターン c)において
画 像 5 のクリック数 が他 の画 像 と比 べて低 かったのは、途 上 国 現 地 の子 供 達 の画 像 は、直 接 地
球 温 暖 化 を連 想 させるものではなかったためと考 えられる。
よって、個 人 消 費 者 のオフセットの実 施 を促 進 するためには、オフセットに対 する理 解 度 の向 上
も重 要 であるものの、オフセットの取 組 の意 義 、つまりカーボン・オフセットの仕 組 み を明 確 に理 解
できていなくても、オフセットにより何 を支 援 しているのか、を視 覚 的 ・直 観 的 な情 報 により提 示 す
ることが重 要 であると考 えられる。
a)オフセットのキャッチフレーズ画 像
b)オフセットキャンペーンの画 像
画像 1
画像 2
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c)地 球 温 暖 化 イメージ画 像
画像 3
画像 5
画像 4
d)告 知 記 事 の表 示 例
図 12 Facebook 広 告 イメージ
3.7 考 察 と今 後 の可 能 性 について
3.6.1 予 約 実 績 ・オフセット参 加 実 績 より、本 実 証 試 験 においてはカーボン・オフセットに参 加 す
る旅 行 予 約 者 は 20.4%存 在 することが確 認 された。また、3.6.5 オフセット金 額 の適 正 値 より、個
人 消 費 者 のオフセット実 施 可 能 性 が 62.7%であることが分 かった。多 様 な業 種 業 態 にオフセット
実 施 スキームの提 供 を展 開 した際 に、同 様 のオフセット実 施 率 を得 られるかは 定 かではないが、
オフセット実 施 スキームの提 供 先 が旅 行 予 約 者 のみならず、個 人 消 費 者 全 体 へ拡 大 させた場 合
においても、ある一 定 数 の割 合 の人 々がオフセットの実 施 に至 るものと推 察 される。
また、3.6.2 オフセット金 額 及 び 3.6.5 オフセット金 額 の適 正 値 より、①500 円 前 後 以 下 の価 格
帯 においてオフセット実 施 率 の変 動 はない、3.6.3 属 性 分 析 及 び 3.6.6 オフセットの理 解 度 より、②
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自 然 環 境 への関 心 が高 い個 人 消 費 者 はオフセット実 施 率 も高 い、③地 球 温 暖 化 や環 境 破 壊 に
ついて関 心 のある個 人 消 費 者 は多 く、これらの人 々はオフセッ トの実 施 に至 る可 能 性 が高 いとい
う傾 向 がみられたことに着 目 したい。
これらのことから、オフセット実 施 スキームの提 供 者 による適 正 なオフセット金 額 の設 定 に加 え
て、社 会 貢 献 意 識 が高 い個 人 消 費 者 にオフセットに参 加 してもらい、ボランタリーのオフセッ トの
実 施 率 を向 上 させるためには、“如 何 にオフセットの取 組 の意 義 や貢 献 内 容 を理 解 してもらい、共
感 が得 られるか”が重 要 となることが明 らかとなった。
- 59 -
4 展 開 可 能 性 事 業 の調 査
「2 カーボン・オフセット取 組 事 例 の調 査 (実 態 調 査 )」において構 築 したオフセット実 施 スキーム
については、旅 行 業 界 以 外 の業 界 や 既 存 の予 約 ・決 裁 システム等 にも適 用 が可 能 なものである
と考 えられる。よって今 後 、旅 行 のみならず個 人 消 費 者 の様 々な商 品 ・サービスの 利 用 ・購 入 時
におけるオフセットの機 会 を提 供 するためのオフセット実 施 スキームを展 開 していくため、各 業 界
における展 開 可 能 性 について調 査 検 討 を行 った。今 回 のスキームの拡 大 、そして個 人 消 費 者 に
おけるニーズを企 業 側 が適 切 に反 映 することにより、企 業 での取 組 を活 性 化 し、カーボン・オフセ
ットの普 及 促 進 につながることを期 待 している。
調 査 対 象 としては、本 実 証 事 業 において構 築 したオフセット実 施 スキームを導 入 できる可 能 性
の高 い旅 行 会 社 やオフセット実 施 スキームの横 展 開 が比 較 的 容 易 と考 えられる航 空 会 社 を選 定
することとした。
4.1 調 査 対 象 一 覧
具 体 的 には国 内 でオンラインの予 約 ・ 決 済 等 システムを導 入 しており、オフセット商 品 またはサ
ービスを既 に提 供 している事 業 者 4 件 において、現 在 の事 業 状 況 及 び実 証 事 業 にて構 築 するオ
フセットの実 施 スキームの展 開 可 能 性 についてヒアリング調 査 を行 った。
- 60 -
表 37 発 展 可 能 性 調 査 対 象 一 覧
4.2 調 査 結 果 と分 析
ヒアリングを行 った事 業 者 のうち、オフセット実 施 スキームの導 入 に対 して、長 期 的 な検 討 では
あるが積 極 的 な回 答 をした事 業 者 が航 空 会 社 2 件 、現 時 点 では導 入 できないが今 後 の検 討 の
可 能 性 を示 した事 業 者 が旅 行 会 社 2 件 との結 果 となった。
4.2.1 航 空 会 社 の可 能 性
航 空 会 社 は CO2 を大 量 に排 出 する航 空 機 を使 用 していることから、カーボン・オフセットに関 す
る取 組 は初 期 (2008 年 ごろ)から各 社 とも実 施 していた。また予 約 システム等 との連 携 はないが、
一 定 のシステムを立 ち上 げ 、後 日 ユーザーが任 意 にアクセスしオフセットするような受 け皿 として
の仕 組 みを構 築 している。それらのシステムについては現 在 のオフセット参 加 状 況 が わずかであ
るということからオフセットの普 及 を図 るという観 点 では 適 切 なものとはいえないだろう。将 来 的 な
オフセット拡 大 の必 要 性 については理 解 しつつも、欧 州 等 と比 較 して日 本 の個 人 消 費 者 はボラン
タリーの意 識 が低 いことから、相 応 したコストの採 算 を取 ることが難 しく、消 極 的 な姿 勢 を取 らざる
- 61 -
を得 ないとの判 断 が現 状 である。また、カーボン・オフセットの取 組 についてもユーザーの理 解 を得
ることに労 力 がかかるという意 見 を 強 く持 っており、消 費 者 のみならず航 空 会 社 社 内 に対 しての
取 組 の周 知 、理 解 についても苦 心 している状 況 だとわかった。
彼 らとしては、カーボン・オフセットの普 及 については、燃 油 サーチャージのような義 務 化 などに
よって生 み出 される大 きな変 動 を期 待 している。この点 については既 に国 際 航 空 における CO2 排
出 量 の国 際 的 な削 減 対 策 の 促 進 の枠 組 みが議 論 されている。かつて京 都 議 定 書 に より 、国 内
航 空 による CO2 排 出 量 は各 国 の排 出 量 に計 上 され、各 国 毎 の責 任 のもと削 減 対 策 が行 われる
こととなっているが、国 際 航 空 は複 数 国 を跨 がって運 航 されるセクターの特 殊 性 から、ICAO 主 導
にて削 減 対 策 が行 われることとなって おり、①新 技 術 の導 入 、②運 航 方 式 の改 善 、③代 替 燃
料 の使 用 、④経 済 的 手 法 (MBMs:Market Based Measures)の活 用 が主 要 な対 策 手 段 とされて
いる。
今 後 アジアを 始 めとして世 界 的 に 大 幅 な航 空 需 要 の増 加 が予 測 される( 図 14 参 照 )なか、
2010 年 の ICAO 総 会 において、グローバル削 減 目 標 として燃 料 効 率 毎 年 2%改 善 、2021 年 以 降
2020 年 以 上 の CO2 排 出 量 の増 加 禁 止 が決 議 され、2013 年 ICAO 総 会 において、市 場 メカニズ
ムを活 用 した国 際 的 な排 出 削 減 制 度 ( MBMs)の構 築 が決 定 されている。これにより、航 空 会 社
各 社 は 2021 年 以 降 2020 年 以 上 の CO2 を排 出 した場 合 、超 過 排 出 分 をオフセットすることが必
須 となってくる。
このような背 景 もふまえ 、自 身 が排 出 削 減 義 務 を負 うこととなる航 空 会 社 が、 ICAO 制 度 の構
築 ・施 行 と併 行 して 2020 年 に向 け CO2 排 出 に対 する対 応 策 が求 められるのは必 至 であり、効 率
的 に実 施 可 能 なオフセットスキームの導 入 を義 務 履 行 対 策 及 び CSR の取 組 として進 めていく方 針
については今 後 より 議 論 が深 まるだろう。今 後 航 空 業 界 における排 出 削 減 目 標 が立 てられ、国
内 施 策 とは別 に国 際 的 に対 策 が求 められていくなか、各 社 においても 2021 年 からの実 施 に当 た
っては 2018 年 には制 度 が確 定 するとの見 込 みから情 報 収 集 とノウハウの収 集 に努 めている状 況
であり、今 後 数 年 間 においてはそれを見 据 えた戦 略 立 案 とシステム設 計 といった重 要 な段 階 とい
えるだろう。
図 13 全 世 界 の CO2 排 出 量 内 訳
図 14 国 際 航 空 の需 要
11
- 62 -
4.2.2 旅 行 会 社 の可 能 性
旅 行 会 社 においては旅 行 商 品 を提 供 にするに当 たり、旅 行 の付 加 価 値 を消 費 者 に見 える形 で
提 供 することに苦 心 している。ただしオフセットについてはその実 現 方 法 の一 つとして一 定 程 度 有
効 であると考 えており、訪 問 先 のクレジットを活 用 することによる取 組 の訴 求 や、個 人 消 費 者 にオ
フセット協 力 費 用 を上 乗 せして負 担 してもらうなどの方 法 を実 践 している。しかしその効 果 につい
ては旅 行 会 社 自 身 もはっきりとした形 でとらえきれていない状 況 であるため、一 部 のエコツアーな
どの限 られた旅 行 商 品 において盛 り上 がりはみられるものの、全 社 的 な動 きにはなって いない。
旅 行 には必 ず交 通 サービスの利 用 が発 生 し、航 空 機 利 用 は環 境 負 荷 を与 えていることから、
実 証 事 業 においては旅 行 における航 空 券 予 約 を対 象 にした取 組 を行 ったが海 外 旅 行 ・日 本 への
インバウンドの観 光 客 の増 加 が依 然 続 くことが見 込 まれており、旅 行 会 社 としても何 らかの対 応
を実 施 することが必 要 となっているが、前 述 のとおり、具 体 的 な効 果 が見 えない中 、経 営 者 側 が
オフセットを CSR や顧 客 サービスにつなげていくことについての決 断 ができていないのが現 実 であ
る。
旅 行 業 者 の数 は 1995 年 の 12,921 社 をピークに現 在 10,000 社 強 で推 移 している。うち海 外 の
募 集 型 企 画 旅 行 を取 り扱 える第 1 種 旅 行 業 者 は年 20 社 のペースで減 少 しており 2013 年 には
701 社 と事 業 存 続 の厳 しさがわかる。また国 内 旅 行 についてもそれを取 り扱 う第 2 種 旅 行 業 者 は
現 在 の制 度 で最 高 の 2,869 社 となり業 者 間 の競 争 がし烈 なものとなっていくだろう 11 。このような
状 況 の中 今 後 のエネルギー政 策 や CO2 削 減 の方 向 性 と相 まって、カーボン・オフセットの効 果 を
旅 行 会 社 が認 識 し、消 費 者 に対 する業 者 選 択 の差 別 化 のツールとして提 供 するような取 組 を実
施 することが期 待 される。
4.3 IT プラットフォーム活 用 による拡 大 可 能 性
ヒアリングと状 況 調 査 の中 、航 空 会 社 、旅 行 会 社 についてはカーボン・オフセットの今 後 の拡 大
可 能 性 を感 じられた。しかし同 時 に解 決 しないといけない課 題 も浮 き彫 りとなった。 一 番 の課 題 は、
オフセットの取 組 に必 要 なシステムの導 入 である。ヒアリングにおいてはどの事 業 者 もシステム開
発 ・導 入 にかかるコストを懸 念 しており、それに見 合 ったメリットや資 金 回 収 がされないと導 入 に踏
み切 れないという立 場 をとっている。そしてオフセットの参 加 率 を 確 保 できるかどうかという点 につ
いても同 様 に懸 念 している。しかし、実 証 事 業 や事 例 調 査 において明 らかとなった一 定 のオフセッ
ト参 加 者 の存 在 を踏 まえると、①オフセットに容 易 に参 加 できる仕 組 みの提 供 、 ②現 行 システム
への導 入 にあたりコスト負 担 の解 消 、③導 入 後 のスキームの運 用 体 制 を確 立 すること、の 3 点 を
適 切 に提 供 することで懸 念 を払 しょくし、導 入 可 能 性 は高 まるものと考 えられる。
11 一 般 社 団 法 人 日 本 旅 行 業 協 会 「数 字 が語 る旅 行 業 2014」出 典
- 63 -
①オフセットに容 易 に参 加 できる仕 組 みの提 供 、については、現 状 オフセット参 加 のための手
段 がオフセット参 加 について最 適 化 されておらず、大 抵 の事 業 者 において別 システムにアクセスす
る必 要 があり、手 間 が生 じている。またそもそもこのような仕 組 みをもたない事 業 者 も多 い。 今 回
の実 証 事 業 のような CO2 排 出 量 の適 切 な計 算 と参 加 の仕 組 みを提 供 できれば、航 空 予 約 や旅
行 予 約 においての手 間 は解 消 され、容 易 にオフセットに参 加 できる機 会 が提 供 されることになる。
そのポテンシャルは非 常 に大 きく、航 空 会 社 1 社 での年 間 の航 空 旅 客 数 はおよそ 4000 万 人 であ
ることからその大 きさもうかがえる。
②現 行 システムへの導 入 に関 するコスト負 担 、については 事 業 者 持 つそれぞれのシステムに
対 し開 発 ・導 入 する手 法 では工 数 と費 用 が莫 大 なものとなってしまう。また、ある一 定 のプラットフ
ォームを用 意 し、オフセット機 能 についてはそちらを利 用 してもらう形 もあるが、そうすると ①に挙
げた手 間 の問 題 が発 生 してしまう。よって、旅 行 会 社 や航 空 会 社 が共 通 で利 用 するプラットフォー
ムである GDS の活 用 の展 開 ・拡 大 を考 えるべきであろう。GDS 側 にてプラットフォームに対 しての
追 加 機 能 を搭 載 することは初 期 からの導 入 に比 べ工 数 も費 用 も抑 えられ、 それを利 用 する複 数
の事 業 者 に対 して機 能 を提 供 できることについては今 回 の実 証 事 業 において証 明 されている。ま
た航 空 会 社 や旅 行 会 社 にとってはプラットフォーム 上 に機 能 が搭 載 されている状 態 であれば、一
からの開 発 コストは不 要 となり、各 Web サイトにおいてインターフェースのカスタマイズ等 の対 応 で
オフセットの仕 組 み搭 載 が可 能 になると考 えられる。
③導 入 後 のスキーム運 用 、についてはクレジットの取 扱 いなど事 業 者 単 独 での運 用 は難 しく、
信 頼 性 の担 保 という観 点 からも第 三 者 を交 えた連 携 体 制 を構 築 する必 要 がある。情 報 取 扱 の観
点 やクレジット提 供 側 との連 携 、無 効 化 等 のクレジット取 扱 、証 書 の発 行 の作 業 など豊 富 な クレ
ジットの取 扱 実 績 を持 つオフセット・プロバイダーの参 加 によってこれらは解 消 されるだろう。
可 能 性 調 査 の対 象 となった国 内 の航 空 会 社 及 び大 手 旅 行 会 社 は 2.4 分 析 のまとめと考 察 で
挙 げたオフセット普 及 の条 件 である大 規 模 インフラを持 ち、CO2 を直 接 的 に排 出 する交 通 手 段 で
あることから消 費 者 にとってオフセットのイメージを持 ちやすい事 業 者 の代 表 といえる。また大 手 の
みならず、多 数 存 在 する旅 行 会 社 ・ホテル・旅 館 など対 して予 約 システムを提 供 する事 業 者 は 数
多 く存 在 する。予 約 プラットフォームの提 供 を通 じその基 盤 に参 加 する多 数 の事 業 者 に対 し、オフ
セットスキーム提 供 を実 現 することも可 能 となるだろう。
図 13 取 組 スキーム例
- 64 -
4.4 今 後 の可 能 性 について
カーボン・オフセットの取 組 において今 回 の可 能 性 調 査 から業 界 のポテンシャルや IT プラットフ
ォームの活 用 による展 開 可 能 性 が一 定 程 度 あることがわかった。
本 事 業 においては、GDS であるアマデウス・ジャパンが提 供 する 旅 行 業 界 向 けのオンライン予
約 プラットフォームである e-Power を活 用 しての実 証 を行 ったが、e-Power を利 用 するその他 の企
業 への横 展 開 については短 期 的 に実 現 が可 能 であると考 えられる。旅 行 会 社 向 けにおいては、
個 人 消 費 者 向 けの BtoC のシステムである今 回 の e-Power の拡 充 のみならず、BtoB の企 業 向 け
オンライン海 外 出 張 手 配 ・管 理 ソリューションへの展 開 も期 待 できる。B2B 向 けへのオフセット参 加
率 や課 題 については今 後 の実 証 課 題 となるだろうが、旅 行 業 における B2B は企 業 の業 務 出 張 が
主 な内 容 となり、安 定 した需 要 があるため一 定 の規 模 感 が見 込 めるだろう。
今 後 、取 組 参 加 者 の母 数 が拡 大 することで、大 多 数 の個 人 消 費 者 が身 近 にオフセットを実 施
する機 会 を得 られ、オフセットが一 般 的 に認 知 されるようになれば、オンラインの管 理 ・決 裁 等 シス
テムを使 用 する旅 行 ・航 空 業 界 以 外 の様 々な業 界 におけるオフセット実 施 ス キームの導 入 の可
能 性 が見 えてくる。
- 65 -
5 まとめ
今 回 の事 業 において、カーボン・オフセット取 組 事 例 の調 査 、旅 行 会 社 Web 予 約 サイトの構
築 ・実 証 実 験 、発 展 可 能 性 事 業 の調 査 に取 り組 んできた。結 果 、一 定 数 のオフセットに参 加 する
人 々が確 実 に存 在 することが明 らかとなった。容 易 にオフセットへ参 加 できる仕 組 みを個 人 消 費
者 に提 供 し、拡 充 していくことがさらなるオフセットの需 要 拡 大 へとつながる一 つの方 法 であ るの
は間 違 いない。併 せて、旅 行 業 界 ・航 空 業 界 への取 組 のみならずその他 業 界 にいても同 様 の仕
組 みの適 用 可 能 性 を検 討 していくことが必 要 であろう。
今 後 、国 際 的 にも CO2 排 出 に対 する取 組 強 化 の流 れが続 くのは必 至 で、日 本 においてもカー
ボン・オフセットがその手 法 として注 目 が高 まることが予 想 される。コストに関 する懸 念 やシステム
導 入 に相 応 する効 果 面 など、まだまだ事 業 者 側 の十 分 な理 解 を得 られているとはいえない状 況
であり、オフセットの取 組 件 数 が伸 びない現 状 はその効 果 について懸 念 している事 業 者 も数 多 い。
これら事 業 者 に対 して今 回 の結 果 や適 切 な仕 組 みをもってアプローチを行 い、一 層 の取 組 を促 し
ていくことでオフセット需 要 の更 なる拡 大 を図 りたい。
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