...

運用・証券・投資銀行業務WG 今年度の活動結果

by user

on
Category: Documents
15

views

Report

Comments

Transcript

運用・証券・投資銀行業務WG 今年度の活動結果
運用・証券・投資銀行業務WG
今年度の活動結果
今年度の活動
⃝第1回WG(6月9日):
WG所属機関におけるフリーディスカッション
・・・今後のワーキンググループの開催形態や方向性等について議論を実施
⃝第2回WG(9月11日):
講演:「スチュワードシップ・コードにおいて金融機関に期待するもの」
パネルディスカッション:「スチュワードシップ・コードへの対応
∼21世紀金融行動原則との関連を踏まえて∼」
⃝第3回WG(1月21日):
講演:「Creating Shared Value」一橋大学大学院
国際企業戦略研究科 教授 伊藤 友則 氏
パネルディスカッション: 「企業評価・対話とCSVの可能性」
第1回WG
( 6月9日)
第1回運営委員会(5月9日) ・・・年度計画の発表
•
•
•
•
•
今後の運用・証券・投資銀行WGの長期的な方
針について、第1回WGでディスカッション。
→結果公表
→第2回以降の活動に反映
今後、長期のロードマップに沿っての活動実
施。(PRIやJSIFとの連携可能性も検討)
日本独自の取組の情報発信
第1回の参加者は、運用・証券・投資銀行WGメ
ンバー中心で実施。
アセットオーナーとのコラボレーション・意
見交換の検討
※第1回運営委員会資料より抜粋
第1回WG開催(6月9日)
フリーディスカッション
「21世紀金融行動原則 第1回運用・証
券・投資銀行業務 ワーキンググル
ープ活動の中長期ロードマップに
ついて」
署名金融機関15機関・計20名
にて開催
第1回運用・証券・投資銀行業務WGでの議論を踏まえて①
(活動結果追記)
※第1回WG終了後の座長打合せを踏まえ、所属WG宛に周知を実施
1.当面の活動
当原則の署名金融機関による自主的な活動であることを踏まえ、他の署名金融機関との連
携、お互いの実力向上、当原則・WGの社会的認知度向上に努める。
2.今年度の活動
上記のうち、特に当WGの署名金融機関の実力向上を支援する活動を中心に据える。
1)具体的活動予定
具体的には、下記テーマ・形式でのWGを開催予定。その他、必要に応じて追加でWGを開催
する。
また、うち1回以上において懇親会の場を設ける。
⇒計2回のWGを開催。うち、2回目に懇親会を開催。
①金融庁等を交えたパネルディスカッション
スチュワードシップコード等において、期待される力点と、金融機関がこれらの原則
に準じて取り組む目線との摺り合わせや、行動原則との関係性の整理を実施する。
⇒第2回WGにて、本WGを開催。
②環境投資に関する勉強会
環境投資に関する有識者による勉強会を開催する。特に、再生可能エネルギー事業等
を投資対象とする金融商品等による運用の可能性を模索する。
⇒再生可能エネルギーを投資対象とする金融商品に関するフォーラムに対し、主旨を鑑
み開催協力を実施。
第1回運用・証券・投資銀行業務WGでの議論を踏まえて②
(活動結果追記)
③非財務情報等に精通した大学教授等による勉強会
非財務情報に関する経済学や経営学の分野に精通した大学教授を招き、勉強会を開催する。
⇒第3回WGにおいて、CSVの評価の観点より大学教授を招き、WGを開催。
2)情報発信及び働きかけ
①セミナー開催時のメディアへの呼びかけを実施する。
②ウェブサイトにおいて、活動内容等を掲載する。
⇒各WGの議事要旨及び資料を、WG所属金融機関内に事後共有を実施。
③WG所属署名機関数や、残高等の推移等をウェブサイトに掲載する。
⇒各WG所属金融機関の数及び一覧をウェブサイトにて掲載。今後追加情報を加えたい。
④活動結果を踏まえ、アセットオーナーを含む未署名機関への呼びかけや、各種協会への働
きかけを実施する。
⇒日本投資顧問業協会や日本証券業協会、PRI等を通し、未署名機関への呼びかけ及び働きか
けを実施。
第2回WG
( 9月11日)
54機関/団体・計78名が参加
※外部講演者・事務局・報道関係を除く
(うち金融機関51機関・計75名)
プログラム
【講演】
「日本版スチュワードシップ・コードにおいて
金融機関に期待するもの」
金融庁 総務企画局 企業開示課長
油布 志行 氏
【パネルディスカッション】
「スチュワードシップ・コードへの対応
∼21世紀金融行動原則との関連を踏まえて∼」
●コーディネータ
・日興アセットマネジメント株式会社
CSR担当 坪井 亜紀子 氏
●パネリスト
・金融庁 総務企画局 企業開示課長
油布 志行 氏
・環境省 総合環境政策局 環境経済課長
大熊 一寛 氏
・セコム企業年金基金 常勤理事/運用執行理事
八木 博一 氏
・三井住友信託銀行 リサーチ運用部長
堀井 浩之 氏
・アライアンス・バーンスタイン 執行役員
遠藤 勝利 氏
WG内容(第2回 ①)
講演「日本版スチュワードシップ・コードにおいて金融機関に期待するもの」
(金融庁 総務企画局 企業開示課 油布課長)
・・・以下について、参加金融機関に向けて講演いただいた。
日本版スチュワードシップ・コードの概要
コードの受け入れ表明をした機関投資家・金融機関の皆様にお願いしたいこと。
⇒外形的・機械的な投資先企業の評価手法ではなく、本質的な評価を。
⇒創意工夫と差別化の努力の重要性。
パネルディスカッション「スチュワードシップ・コードへの対応∼21世紀金融行
動原則との関連を踏まえて∼」
・・・ディスカッションの中では、以下に話題が及んだ。
「スチュワードシップ・コード」の受け入れに際して、社内で新たに議論したこと、新
たに取り決めたこと。
スチュワードシップ・コードから見た金融行動原則との相乗効果及びESG情報活用の可
能性。
形骸化することなく、実りある活動で発行体と投資家が好循環を生むために、機関投資
家は何に注力していくべきか。
また、好循環を生むためには、経営者目線で企業のあるべき方向性を提示し、気づきを
促す等、事業者から信頼されるような本質的なエンゲージメント活動を継続して行うこと
が必要であるというコンセンサスが得られた。
ご参考
「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫
∼投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために∼
以下の趣旨を前文とし、H26.2に金融庁により策定
本コードにおいて、「スチュワードシップ責任」とは、機関投資家が、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく
建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより
、「顧客・受益者」(最終受益者を含む。以下同じ。)の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任を意味する。
本コードは、機関投資家が、顧客・受益者と投資先企業の双方を視野に入れ、「責任ある機関投資家」として当該スチュワード
シップ責任を果たすに当たり有用と考えられる諸原則を定めるものである。本コードに沿って、機関投資家が適切にスチュワー
ドシップ責任を果たすことは、経済全体の成長にもつながるものである。
本コードの原則
投資先企業の持続的成長を促し、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るた
めに、
①
スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
②
スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策
定し、これを公表すべきである。
③
投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該
企業の状況を的確に把握すべきである。
④
投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を
図るとともに、問題の改善に努めるべきである。
⑤
議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方
針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成
長に資するものとなるよう工夫すべきである。
⑥
議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについ
て、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである。
⑦
投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理
解に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うた
めの実力を備えるべきである。
H26.12時点で、現在以下
の機関投資家が受け入れ
を表名
• 信託銀行等 : 6
• 投信・投資顧問会社
等 : 122
• 生命保険会社 : 17
• 損害保険会社 : 4
• 年金基金等 : 19
• その他(議決権行使
助言会社他) : 7
(合 計) : 175
※金融庁ウェブサイトより
第3回WG
( 2月11日)
プログラム
【講演】
「Creating Shared Value」
一橋大学大学院 国際企業戦略研究科
伊藤 友則 氏
62機関/団体・計82名が参加
※外部講演者・事務局・報道関係を除く
(うち金融機関44機関・計52名)
教授
【パネルディスカッション】
「企業評価・対話とCSVの可能性」
● コーディネータ
・アライアンス・バーンスタイン
執行役員/AB未来総研所長 遠藤 勝利 氏
● パネリスト(氏名 五十音順)
・一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授
伊藤 友則 氏
・コモンズ投信株式会社 会長
渋澤 健 氏
・日興アセットマネジメント株式会社
株式運用部 企画調査グループ
グループディレクター
中野 次郎 氏
・キリン株式会社 常務取締役 CSV本部長
橋本 誠一 氏
WG内容(第3回 ①)
講演「Creating Shared Value」
(一橋大学大学院
国際企業戦略研究科
教授
伊藤 友則 氏)
・・・講演では、以下についてお話いただいた。
CSVの取組の意義
如何に経済価値の創造と社会への貢献を両立さ
せるか
ウォルト・ディズニー/ネスレ/ホールフー
ズ・マーケットのケーススタディ
一橋ICS・CSVフォーラムの紹介
講演内で紹介された、日本の代表的企業約30社
が参加するCSVフォーラム(研究会)での学びを、
本スライドにて一部紹介している。
ご参考
CSV(Creating Shared Value):マイケル.E.
ポーター教授らが提唱した、企業と社会の両方
に価値を生み出す企業活動を促進する経営フ
レームワーク。2006年に「競争優位の戦略的
フィランソロピーを提唱、その後2011年、「共
通価値の戦略」が発表された。
※本WGでの講演資料より
WG内容(第3回 ②)
パネルディスカッション「企業評価・対話とCSVの可能性」
①「キリンのCSVのお取組み紹介」キリン(株) 常務取締役
CSV本部長 橋本 誠一 氏
・・・パネルディスカッションの冒頭で、実際に企業としてCSVを積極的に推進されて
いるキリン(株)の橋本氏より、CSVの社内の位置付け及び体制、CSVのフレームワー
クの紹介、各種の具体的なCSVの取組について説明をいただいた。
②ディスカッション
・・・ディスカッションの中では、以下について言及された。
日興アセットマネジメントの「CSV戦略(ファンド)」のお取組み紹介。
コモンズ投信のお取組み紹介。
長期の視点を運用に取り入れる際の、
アセットオーナーとのメッセージを
共有することの重要性。
投資におけるCSV評価と企業価値の考え方。
日本企業とCSVの親和性及びCSVと
リスクテイキングの関係。
機関投資家において、CSVを運用で活用
していくために。
総括
【テーマ設定等】
本年は、第1回のWGにおいて、金融行動原則の趣旨に立ち返り、署名機関の実
力向上等をテーマ設定の中心に据えた。
また、ディスカッションの意見を踏まえ、日本版スチュワードシップ・コード
との整理ができるようなWGを開催した。
【進め方】
運用・証券・投資銀行業務WG参加者増減
第1回目のWGで年度の活動方針の摺り合わせ
を行ったため、WG所属機関と認識を共有し 延べ参加金融機関数(機関)
ながら通年の活動に取り組むことができた。
署名機関
【参加者等】
各種業界団体やPRIとの連携を通して、署名
機関のみならず、非署名機関においても昨
年より多くの参加をいただき、共に議論を
行うことができた。
【情報共有】
WG終了後は資料や議事要旨をWG所属機関に
発信を行った。
今年度
昨年度
増減
74
36
+38
36
8
+28
110
44
+66
署名機関
102
56
+46
非署名機関
45
8
+37
147
64
+83
180
138
+42
非署名機関
計
延べ金融機関参加者数(人)
計
延べ全参加者数(人)
参加者数
※上記の値は外部講演者・事務局・報道関係者数得を除く
保険業務WG
今年度の活動結果
今年度の活動
保険業務と関連するテーマを設定し、勉強会方式を中心に今年
度2回開催した。
第1回WGでは損害保険会社と関連の強いテーマ、第2回WGで
は、生命保険会社と関連の強いテーマを取り上げた。
第1回WG(11月18日)
「気候変動のレジリエンスについて」をテーマに、適応策の動向
や取組内容について専門家を交えて議論を行った。また、国連環
境計画 金融イニシアティブ(UNEP FI)の「持続可能な保険原則
(PSI)」で取りまとめたグローバルレジリエンスプロジェクトの
紹介をいただいた。
第2回WG( 1月26日)
「少子化対策」「健康」に関する金融機関の取組をテーマに、生
命保険会社の取組内容や生命保険協会でのプロジェクトの話題提
供を受け、参加者で「今後の金融機関の取組における可能性の模
索」をテーマにグループディスカッションを行った。
第1回WG
(11月18日)
テーマ(講演者)
16機関/団体・計22名が参加
• 講演:「気候変動レジリエンスにつ
いて ∼適応策の動向と展開」
(法政大学 地域研究センター 特任
教授 白井 信雄 氏)
• 講演:「国連環境計画 金融イニシ
アティブ「持続可能な保険原則」に
おけるグローバル レジリエンス プ
ロジェクト」
(東京海上日動火災保険株式会社経
営企画部部長 兼 CSR室長 長村 政
明 氏)
※外部講演者・事務局・報道関係を除く
(金融機関のみの参加)
• ディスカッション
WG内容(第1回 ①)
講演「気候変動レジリエンスについて ∼適応策の動向と展開」
(法政大学 地域研究センター 特任教授 白井 信雄 氏)
・・・「S-8 温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究(環境研究
総合推進費)」の成果をもとに、適応策の必要性や、基本的な考え方
を紹介いただいた。また、悪い適応策と良い適応策の考え方、行政や
企業の適応策の取組など、今後適応策に対応する方向性について講演
をいただいた。
ご参考
出典:白井氏講演資料より
出典:法政大学作成
WG内容(第1回 ②)
講演「国連環境計画 金融イニシアティブ「持続可能な保険原則」におけるグロ
ーバル レジリエンス プロジェクト」
(東京海上日動火災保険株式会社 経営企画部部長 兼 CSR室長 長村 政明 氏)
・・・国連環境計画 金融イニシアティブ(UNEP FI)の持続可能な保険原則(PSI
/The Principles for Sustainable Insurance)の活動の紹介及びPSIグローバ
ル・レジリエンス・プロジェクトの紹介をいただいた。
ご参考
PSIの4つの原則
※ PSIグローバル・レジリエン
ス・プロジェクト
・・・保険会社が協力し、災害リ
スク軽減への理解及び経済的・
社会的コストの評価を行うとと
もに、ステークホルダー(政
府・コミュニティ等)に災害リ
スク低減に向けて提言していく
プロジェクト。
左図はその一次報告としての
レポート。
出典:長村氏講演資料より
第2回WG
( 1月26日)
テーマ(講演者)
開催テーマ『「少子化対策」「健康」
おける金融機関の取組』
• 取組紹介:「少子化対策の取組∼所
有不動産への保育所誘致等を通して
∼」
(第一生命保険株式会社 DSR推
進室 佐賀 次長)
• 取組紹介:「生命保険協会の女性活
躍推進の取組み・健康増進啓発プロ
ジェクトについて」
(一般社団法人生命保険協会 広報
部 大澤部長)
14機関/団体・計22名が参加
※外部講演者・事務局・報道関係を除く
(うち金融機関13機関・計20名)
• グループディスカッション
「今後の金融機関の取組における可
能性の模索」
WG内容(第2回①)
取組紹介「少子化対策の取組∼所有不動産への保育所誘致等を通して∼」
(第一生命保険株式会社 DSR推進室 次長 佐賀 奈穂 氏)
・・・第一生命保険で進めている所有不動産を活用した保育所の誘致を通じて、少子
化対策の取組の事例の紹介をいただいた。待機児童数の約1割に当たる2,500名の受
け入れを目標に、各種課題に対応して取組を推進している内容を講演いただいた
取組紹介「生命保険協会の女性活躍推進の取組み・健康増進啓発プロジェクトにつ
いて」(一般社団法人生命保険協会 広報部長 大澤 和浩 氏)
・・・生命保険協会の女性の活躍推進の各
種取組(行動指針の制定、会員企業の取
組共有、保育所や学童保育の拡充や質の
向上のための助成活動等)の紹介をいた
だいた。
また、健康増進啓発活動として取り組
む各種イベントや普及啓発ツールの紹介
をいただいた。
出典:大澤氏講演資料より
WG内容(第2回)
グループディスカッション「今後の金融機関の取組における可能性の模索」
・・・第一生命保険や生命保険協会の取組を話題提供として、今後の金融機関の取
組における可能性をテーマにグループディスカッションを行った。
参加金融機関で4∼5名のグループに分かれ、ディスカッション及び発表を行
った。
グループディスカッションでの発表内容(抜粋)
•女性の活躍推進:女性の多い職場である生命保険会社等の金融機関が率先して目標設
定、制度整備を行い、経済界をリードする。
•金融教育の拡充:将来設計を含めた若年層の金融リテラシーを高めるため、金融機関
が出張授業等を実施する。
•少子化対策:出資や融資、助成金などで、結婚や出産を支援する。ただし、金融機関
だけの取り組みたけでは問題解決は困難であり、国の構造的な転換が重要。
•本業を通じての取組が重要であり、保険商品や情報発信等、収益とも関連する分野で
力を入れることが、課題解決の継続的取組に繋がる。
•産休・育休からの職場復帰の支援、女性の次世代リーダーの育成・福祉分野における
ボランティア活動など。
•健康増進に取り組む人の保険料割引。
•介護、認知症への取組の強化。地域への貢献活動として、認知症サポーターを代理店
に拡大する。
•良い取組は個社を超えて業界全体で取組み、業界としてのPRを行っていくべきである。
総括
【WG開催内容】
今年度のWGでは、第1回WGでは損害保険会社と関連の強いテーマ、第2
回WGでは、生命保険会社と関連の強いテーマを取り上げ、通年で保険業
務全体をカバーできるWGを開催できた。
第2回WGでは、グループディスカッションの時間を設け、「今後の金融
機関の取組における可能性の模索」について議論を行った。実務担当者の
参加も呼びかけ、他社の参加者と共に同じグループで議論することで、活
発な議論ができた。また、最後に各グループの結果を互いに発表し、幅広
い取組の観点やヒントを得ることができた。
【参加者等】
開催の案内時に実務担当者の参加呼びかけを行い、ワーキンググループで
の議論が、本業の「気づき」となるよう取り組んだ。
講演テーマの設定を工夫し、保険業務以外の金融機関の参加とも議論を実
施することができた。
預金・貸出・リース業務WG
今年度の活動結果
今年度の活動
地域開催(計3回):
昨年度に引き続き、「地域」の再生可能エネルギー事業に
対する融資の実務に関する内容を主として扱った。また、
地域金融機関と連携し、事業者や自治体等も招き、地域に
おいて再生可能エネルギー等を推進する考え方等について
議論を行った。
富山開催(10月16日/協力 北陸銀行)
三重開催(11月14日/協力 百五銀行)
岡山開催( 2月 6日/協力 中国銀行)
東京開催(12月16日):
地域開催の内容に加え、赤道原則等の幅広い視点のテーマ
を扱った。また、リース会社やグリーンファイナンス推進
機構の末吉代表理事を招き、本WGの立ち上げ以降の振り返
りや、我が国・地域の環境金融の可能性について議論した。
今年度活動開始に当たって
(協力金融機関の募集∼予定の公表)
第1回運営委員会(5月9日) ・・・年度計画の発表
今年度も、地方の再エネ実務に重きを置いたテーマにて、
地方開催を実施
• H25年度に引き続き、地方開催では、地域金融機関を
ホスト行に招く。
(ホスト行の募集期間を設ける)
• 東京開催については、地方開催のラップアップイベント
や、他のWGとの共催可能性、高度な内容を扱ってのWG開
催を検討
•
※第1回運営委員会資料より抜粋
地方ワーキンググループ協力金融機関の募集(5月27日)
「平成26年度『持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則』預金・貸出・リース
業務ワーキンググループ開催予定に関しまして(お知らせ)」の署名機関宛送付(
9月1日)
※ 地方ワーキンググループ協力金融機関の結果及び今年度活動予定のWG所属金融
機関宛の連絡
第1回WG開催(10月16日)
富山開催
(協力:北陸銀行)
22機関/団体・計31名が参加
※外部講演者・事務局・報道関係を除く
(うち金融機関19機関・計27名)
テーマ(講演者)
• 北陸銀行の取組紹介
(北陸銀行 執行役員 藤田部長)
• 富山県庄川水系における農業用水路
を利用した小水力発電の取組みにつ
いて(庄川沿岸用水土地改良区連合
常務理事 定司氏)
• グリーンファンドについて
(グリーンファイナンス推進機構)
• 地域における再生可能エネルギー事
業の事業性評価等に関する手引き
(三菱総合研究所)
• 再生可能エネルギー事業の事故に関
するリスクについて
∼風力発電事業に焦点をあてて∼
(三井住友海上火災保険/インター
リスク総研)
• ディスカッション「地域の再生可能
エネルギーについて」
WG内容(富山開催①)
講演「富山県庄川水系における農業用水路を利用した小水力発電の取組
みについて」(庄川沿岸用水土地改良区連合 常務理事 定司氏)
・・・庄川沿岸用水土地改良区連合により運営されている複数の小水力発
電所において、事業の立ち上げ、運営における課題や課題に対する対
応策について、講演をいただいた。
講演「再生可能エネルギー事業の事故に関するリスクについて∼風力発
電事業に焦点をあてて∼」
(三井住友海上火災保険/インターリスク総研)
・・・風力発電事業の概要、事故リスクの傾向と事例、そして保険による
リスクヘッジと損害からの復旧事例について、ノウハウ豊富な保険会
社及びそのコンサルの方から金融機関向けに講演をいただいた。
※三重開催においても、同テーマにて講演
講演「グリーンファンドについて」(グリーンファイナンス推進機構)
・・・環境省のグリーンファイナンス推進の概要及び出資事例を紹介し、
地域案件組成時の参考となるよう講演をいただいた。
※三重・東京・岡山開催においても、同テーマにて講演
WG内容(富山開催②)
講演「地域における再生可能エネルギー事業の事業性評価等に関する手
引き」(三菱総合研究所)
・・・環境省では、今年度、風力発電及び小水力発電事業に関して、再生
可能エネルギー事業への融資を検討する際の参考となる事業の概要や
リスク、リスクへの対応策を記載した手引きを作成している。この手
引きの案を金融機関に説明及び配布すると共に、意見を募った。
※三重・東京・岡山開催においても、同テーマにて講演。ただし、
富山開催では風力発電事業編のみを扱った。
ディスカッション「地域の再生可能エネルギーについて」
・・・富山会場では、北陸地方の歴史・地域特性を踏まえた再生可能エネ
ルギー事業の特徴、そして当地域で取組が盛んな小水力発電事業にお
けるトラックレコードの考え方等について、議論を行った。
また、北陸新幹線開通という転換点や、少子高齢化に対応し得るコ
ンパクトシティ、そして環境モデル都市、環境未来都市に力を入れる
富山市において、地域金融機関と地域がともに発展するための在り方
や考え方について議論を行った。
三重開催
(協力:百五銀行)
23機関/団体・計37名が参加
※外部講演者・事務局・報道関係を除く
(うち金融機関20機関・計32名)
テーマ(講演者)
• 百五銀行の取組紹介
(百五銀行 経営企画部 中尾部長)
• グリーンファンドについて
(グリーンファイナンス推進機構)
• 地域における再生可能エネルギー事
業の事業性評価等に関する手引き
(三菱総合研究所)
• 再生可能エネルギー事業の事故に関
するリスクについて
∼風力発電事業に焦点をあてて∼
(三井住友海上火災保険/インター
リスク総研)
• 森林の再生と再生可能エネルギーに
ついて
(津市 農林水産部 野呂部長)
• ディスカッション「地域の再生可能
エネルギーについて」
WG内容(三重開催)
講演「森林の再生と再生可能エネルギーについて」
(津市 農林水産部 野呂部長)
・・・津市農林水産部の野呂部長より、津市バイオマス産業都市構
想及び森林の再生と再生可能エネルギーの取組について講演を
いただいた。講演では、自治体として、林業再生及び再生可能
エネルギー促進に関する各種施策や、JFEエンジニアリング(株)
と包括連携協定を結んで実施する木質バイオマス発電事業の概
要等について紹介いただいた。
ディスカッション「地域の再生可能エネルギーについて」
・・・三重会場では、バイオマス発電事業や林業再生の観点から、
地域金融機関がどのように一歩踏み込んだ取組ができるかにつ
いて議論を行った。その際、地域金融機関における理念・体制
を踏まえて、実際の融資実行にどのように繋げることができる
か、その際どのような点がポイントになるかについて、意見が
交わされた。
東京開催
テーマ(講演者)
46機関/団体・計74名が参加
※外部講演者・事務局・報道関係を除く
(うち金融機関45機関・計73名)
• 講演・ディスカッション「金融機関
に求められる環境社会リスク管理∼
エクエーター原則の経験から∼」
(みずほ銀行/三井住友銀行/三菱
東京UFJ銀行)
• 地域における再生可能エネルギー事
業の事業性評価等に関する手引き
(三菱総合研究所)
• 環境省施策紹介(環境省)
• グリーンファンドについて(グリー
ンファイナンス推進機構)
• 我が国の環境金融に期待されるもの
(末吉 竹二郎 氏)
• ディスカッション「金融機関の地域
の成長への貢献可能性を考える」
(上記他、NECキャピタルソリュー
ション 児玉部長)
WG内容(東京開催①)
講演・パネルディスカッション「金融機関に求められる環境社会リスク管理∼エクエーター
原則の経験から∼」
(みずほ銀行/三井住友銀行/三菱東京UFJ銀行)
・・・冒頭にて、三井住友銀行より環境社会問題の企業活動への影響やエクエーター原則の概
要について講演をいただいた。その後、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行に加わっていただき
、メガバンク3行とパネルディスカッションを行った。
その中で、
•
•
•
銀行や企業及び社会にとっての、融資検討時の環境社会リスク評価の実施によるメリッ
ト、デメリット
環境リスクに対応するための銀行の体制
より規模の小さな地銀等における融資案件において、環境社会リス ク評価体制を整え
る際にどのような工夫が考えられるか
都市銀行-地銀間の連携の可能性
等についての議論が交わされた。
•
ご参考
赤道原則:
• 開発等にともなう環境負荷を回避・軽減するために開発プロジェクト案件において環境や社会への影響とリスクを
評価・管理すべく金融業界が独自に設定した行動原則のこと。
• 赤道原則を採択した金融機関は、開発プロジェクト案件において、この基準に沿った環境・社会への配慮が行われ
るようにプロジェクト実施者と協議し、基準を遵守しない案件への融資は行わない。
• 2014年11月現在世界34カ国80の金融機関が赤道原則を採択。
• 赤道原則は従来プロジェクトファイナンスのみを対象としていたが、2013年6月に赤道原則が改訂され、プロジェク
ト紐付きコーポレートローン(借入額の過半が、お客さまが実質的な支配権を有するプロジェクト向けであるも
の)へも対象を拡大。2014年1月より全ての採択行が新しい赤道原則の適用を開始した。
WG内容(東京開催②)
環境省施策紹介(環境省)
・・・環境省より、低炭素社会構築に向けての総論及び今年度実施している環境金融に
関する各種施策の紹介をいただいた。
講演「我が国の環境金融に期待されるもの」(末吉 竹二郎氏)
・・・グリーンファイナンス推進機構代表理事の末吉氏を招き、講演をいただいた。講
演の中では、
• 世界のGreen Investment Bankの動向を踏まえたグリーンファンドの紹介
• UNEP FIやグローバルな環境金融の動向及び考え方
• バーゼルⅢの見直しと環境リスク
• 我が国の環境金融に期待される考え方(融資のフローに加え、アセットにおける
環境配慮等)
について言及された。
ディスカッション「金融機関の地域の成長への貢献可能性を考える」
・・・ NECキャピタルソリューションでCSV推進に取り組む児玉部長を招き、末吉代表理
事等とともにパネルディスカッションを行った。ディスカッションでは、これまでの
預貸WGの活動の振り返りを行うとともに、 NECキャピタルソリューションのリサ・
パートナーズを通してのCSVの活動や「環境・復興支援シンジケートローン」の取組
を踏まえ、金融機関の地域の成長への貢献可能性を模索した。
岡山開催
(協力:中国銀行)
テーマ(講演者)
• 中国銀行の取組紹介
(中国銀行 営業統括部 宮崎部長)
• 再生可能エネルギー事業の事故に関
するリスクについて(損害保険ジャ
パン日本興亜/損保ジャパン日本興
亜リスクマネジメント)
• 地域における再生可能エネルギー事
業への事業性評価の手引き
(三菱総合研究所)
• グリーンファンドの案件につい
(グリーンファイナンス推進機構)
• 木質バイオマスを活かした地域の活
性化(銘建工業 中島社長)
• ディスカッション「地域の再生可能
エネルギーについて」
28機関/団体・計45名が参加
※外部講演者・事務局・報道関係を除く
(うち金融機関25機関・計42名)
※なお、本WGでは、翌日にエクスカーションを開
催し、銘建工業(株)の工場、バイオマス集積基
地及び真庭市役所を訪問した。
WG内容(岡山開催①)
講演「再生可能エネルギー事業の事故に関するリスクについて」(損害
保険ジャパン日本興亜/損保ジャパン日本興亜リスクマネジメント)
・・・保険会社及びそのコンサルとしてのご経験と知見の共有として、講
演においては、バイオマス発電・風力発電・太陽光発電の各事業毎に
、事業の概要・特徴・リスクや事故事例について紹介いただいた。ま
た、再生可能エネルギー事業における損害保険の役割の説明及び各事
業における保険手配の特徴について紹介いただいた。
講演「木質バイオマスを活かした地域の活性化」 (銘建工業 中島社
長)
・・・ 岡山県を代表する銘建工業(株)が手がける、真庭バイオマス発電
の概要や運営について社長の中島氏よりご講演いただいた。また、我
が国の森林資源の活用の視点を踏まえ、今後市場の拡大が期待される
CLT(Cross Laminated Timber)の概要や、世界及び我が国の動向につ
いてご紹介いただいた。
WG内容(岡山開催②)
ディスカッション「地域の再生可能エネルギーについて」
・・・岡山開催では、バイオマス発電や林業の再生に論点を絞り、集荷リ
スクの考え方等、事業の継続性についての議論を行った。また、林業
の再生等、地域活性化の視点を踏まえ、金融機関がそれらをどのよう
にサポートできるか、またその際にどのような考え方を事業者と共有
しながら進めるべきかについて意見が交わされた。
【ご参考】昨年度のWG活動内容
総括
【参加者等】
本年度は、昨年度と同じく計4回
のWGを開催した結果、全体の参加
機関・参加者数が増加した。特に、
金融機関の参加機関数・参加者数
が大幅に増えたことが、昨年度か
らの継続的な取組が結果に結びつ
いていると考えられる。(右表)
また、今年度は審査部門や営業部
門等、融資実務に関連する地域金
融機関の方々の参加割合が高かっ
たことが、大きな変化であった。
預金・貸出・リース 業務WG参加者増減
今年度
昨年度
増減
全参加機関数
119
91
+28
参加金融機関数
109
76
+33
金融機関割合(%)
(92%)
(84%)
全参加者数
187
158
+29
金融機関参加者数
174
129
+45
金融機関割合(%)
(93%)
(82%)
延べ参加機関数(機関)
延べ参加者数(人)
※上記の値は外部講演者・事務局・報道関係者数得を除く
【WG開催内容】
本年度は、実務に携わる金融機関の参加者が多く、ディスカッションの場
では皆様に多くの意見をいただけた。その結果、昨年よりさらに踏み込ん
だ密度の濃い議論ができた。
地域の視点での多くの議論を通し、地域と地域金融機関のあり方について、
WGの場での認識共有ができた。
環境不動産WG
今年度の活動結果
今年度の活動
第1回WG(12月3日):
既存ビルに焦点を当て、環境性能評価とファイナンスへの適用
可能性について、環境不動産に積極的な企業より環境性能評価シ
ステム(認証・ベンチマーク等)とそれらを活用した既存ビルの
評価の現状や評価事例等について講演いただき、具体的な既存ビ
ルの改修事例の紹介後、既存ビルのバリューアップにおける環境
不動産とファイナンスの可能性についてディスカッションを行っ
た。
第2回WG(2月26日):
地域の持続可能性と不動産の観点を交え、人口動態・少子高齢
社会問題を踏まえた講演をいただき、金融機関の課題・可能性を
模索するディスカッションを、持続可能な地域支援WGと共催で
行った。
今年度活動開始に当たって
(ワーキンググループ準備会(プレWG)∼第1回WG開催)
第1回運営委員会(5月9日) ・・・年度計画の発表
•
•
•
H25年度に引き続き、今年度も地域の再生・都市計画といっ
たところについて積極的に取り組む。
WGを2回開催。第1回は単一不動産での取組、第2回では金融
機関の地域における貢献、面的な開発を扱うような内容に取り
組む。
特に地域密着型の金融機関と一緒に、地域の再生に関する議論
を想定している。
※第1回運営委員会資料より抜粋
ワーキンググループ準備会(プレWG)(9月26日)
・第1回・第2回のWGのテーマ決定
第1回WG開催(12月 3日)
第2回WG開催( 2月 6日)
ワーキンググループ準備会(プレWG)
テーマ
:今年度の活動テーマ、ワーキングの進め方
8機関/団体・計9名が参加
※事務局を除く
(すべて署名金融機関)
第1回WGに先立つ、今年度の活動テーマ、WGの進め方に関しての議論
【主な意見】
・人口が減少し、余っている既存ビルの活用は、金融による支援が必要であり、ビジネスチ
ャンスでもある。
・ファイナンスにより不動産の環境性能をどう高めるか、高めた度合いの定量的な「可視化
」が重要。環境不動産のファイナンスでは、「評価」が課題であり、評価方法が確立され
れば地域活性化にも繋がる。 ⇒第1回WGにて実施
・グリーンボンド、CASBEE、LEED、GRESB等による既存ストックの運用や持続可能性を踏ま
えた評価に関する議論を行えないか。 ⇒第1回WGにて実施
・持続可能な地域支援WGとの共催の可能性の検討。 ⇒第2回WGにて実施
・UNEP FIの不動産WGレポート和訳版の共有の検討。 ⇒第1回WGにて実施
【WGでの結論】
・今年度のWGは2回開催。
第1回WG:ビジネスとして実施されている事例を交えた既存の個別不動産の評価の在り方
やUNEP FIのレポート紹介等
第2回WG:エリアを対象とした環境不動産
(持続可能な地域支援WGとの共催の打診)
第1回WG
テーマ(講演者)
24機関/団体・計29名が参加
※外部講演者・事務局・報道関係を除く
(うち金融機関17機関・計21名)
テーマ:「既存ビルにフォーカスした
環境性能評価とファイナンスへの適
用」
• CASBEE-不動産の特徴と可能性
(三井住友信託銀行 不動産コンサ
ルティング部 伊藤環境不動産推
進チーム長)
• LEEDにおける既存ビルの環境性能評
価(ヴォンエルフ 小山取締役)
• DBJ Green Building認証制度のご紹
介(日本政策投資銀行 アセット
ファイナンス部 中村課長)
• ディスカッション「既存ビルの環境
バリューアップの今」
(上記他、物産不動産 三谷氏、物
産プロパティマネジメント 大高氏、
CSRデザイン環境投資顧問 堀江氏)
WG内容(第1回WG①)
テーマ:「既存ビルにフォーカスした環境性能評価とファイナンスへの適用」
講演「CASBEE-不動産の特徴と可能性」
(三井住友信託銀行 不動産コンサルティング部
伊藤環境不動産推進チーム長(CASBEE不動産評価検討小委員会幹事))
・・・日本の環境性能評価システムであるCASBEE標準版の既存不動産への課題
等、CASBEE不動産に着手した背景、課題への対応、UNEP FIレポート等の海
外の反応、CASBEE不動産も加点対象となったGRESBにおける活用可能性、環
境性能と経済価値の「見える化」の必要性と、そのために実施している調
査・分析等について紹介いただいた。
講演「LEEDにおける既存ビルの環境性能評価」
(ヴォンエルフ 小山取締役)
・・・米国から発信されたLEEDの近年の国際的な拡がりと米国内外での違い、
世界のグリーンビルディング市場の規模、既存建物を対象とするLEED既存
版(EBOM)が多い米REITのLEEDの活用の現状、国の成熟に伴い新築から既
存へ移行する過程と日本の現状、まだ新築が多いが日本でも増加し始めた
LEED既存版の特徴と活用するメリットについて今後の可能性も含めて紹介
いただいた。
WG内容(第1回WG②)
講演「DBJ Green Building認証制度のご紹介」
(日本政策投資銀行 アセットファイナンス部 中村課長)
・・・取引先との対話から開始した対話ツールを活用する金融機関による
DBJ Green Building認証制度について講演をいただいた。評価項目外
の革新的な取組も加点し(イノベーションポイント)、毎年のモニタ
リングや改善等を通じランクの格上も可能な中、築85年で価値を維持
している不動産の事例等を紹介いただいた。
ディスカッション「既存ビルの環境バリューアップの今」
・・・「物産ビル・エコモデルプロジェクトのご紹介」を物産不動産の三
谷氏、物産プロパティマネジメントの大高氏から講演いただき、CSRデ
ザイン環境投資顧問の堀江氏よりGRESBの紹介、日本政策投資銀行の中
村氏よりグリーンボンドの紹介、三井住友信託銀行の伊藤氏よりUNEP
FI PWGのレポートを紹介いただきながら、パネリストの間で環境不動
産とファイナンスの可能性について、意見が交わされた。
第2回WG
テーマ(講演者)
21機関/団体・計31名が参加
※外部講演者・事務局・報道関係を除く
(うち金融機関19機関・計26名)
• 人口動態・少子高齢社会問題につい
て(仮)
(日本政策投資銀行 地域企画部
中村担当部長)
• 少子高齢社会と公共施設マネジメン
ト(仮)
(日本政策投資銀行 地域企画部
遠藤課長)
• 英国憲章・認知症の人にやさしい金
融サービスについて
(三井住友信託銀行 経営企画部
金井CSR担当部長)
• ディスカッション「持続可能な不動
産、少子高齢社会問題に関する講演
を踏まえ、地域の持続可能性への金
融機関の取組の課題を考える。」
WG内容(第2回WG)
講演「人口動態・少子高齢社会問題について」
(日本政策投資銀行 地域企画部 中村担当部長)
・・・我が国の人口動態の変化を踏まえての地域の経済環境や地域のあり方につい
て、「人口減少問題研究会」における調査及び報告書をもとに、種々のデータ
を用いながら講演をいただいた。また、人口減少社会に求められる金融機関等
に求められる視点や取組について、お話いただいた。
講演「少子高齢社会に求められる公共施設マネジメント」
(日本政策投資銀行 地域企画部 遠藤課長)
・・・人口減少社会のもと、自治体に求められる公共施設マネジメントの概要や現
状及び、様々な先進的な取組事例について紹介いただいた。また、公共施設等
の地域資産の活用や資金調達の場面における金融機関の連携の可能性について
お話いただいた。
話題提供「英国憲章・認知症の人にやさしい金融サービスについて」
(三井住友信託銀行
経営企画部
金井CSR担当部長)
・・・金融サービスにおける認知症問題に対応するため、英国の大手金融機関が
集まって研究され、まとめられた英国憲章を紹介いただき、その内容や、認知
症の立場に立って考える視点の重要性についてお話いただいた。
総括
H25年度には、「責任ある不動産投資(RPI)や認証、環境不動産
普及促進機構等」「インフラファンド/公共施設マネジメントの
重要性」をテーマに2回WGを開催、今年度では、既存の個別不動産
(第1回WG)、地域の持続可能性を踏まえたエリアを対象とした不
動産の持続可能性(第2回WG)と、一貫したテーマを扱っている。
ワーキンググループ準備会(プレWG)のように、WGのテーマに関
心を持つ金融機関が集まり、積極的に開催内容を検討している。
またH25年度第1回WGでは預金・貸出・リース業務WGとの同日開催、
本年度の第2回WGでは持続可能な地域支援WGとの共催と、他ワーキ
ンググループとの連携も活発に行っている。
持続可能な地域支援WG
今年度の活動結果
今年度の活動
【昨年度の活動】:計4回
初年度である平成25年度では、外部有識者を招き、まずは少子高齢化
問題の基礎と実態を学ぶことに注力した。また、第4回では3回の外部
有識者の話をもとに、ワーキンググループ参加金融機関とともに、フリ
ーディスカッションを実施した。
【今年度の活動】:計4回
2年目に当たる平成26年度では、地域包括ケア等に力点を置き、有識
者から追加で講演をいただいた他、地域包括ケアの現場の視察や、少子
高齢化問題に対して具体的に金融機関がどのような取組ができるかの可
能性を模索するディスカッションを実施した。
また、第4回では、環境不動産WGと共催し、高齢社会に対応した持続的
なまちづくりの観点から議論を実施した。
加えて、2年間の活動結果の成果として、WG座長より活動レポートをま
とめた。
⇒総括を含め、活動詳細はレポート内ご参照のこと。
第1回WG
(6月23日)※詳細は活動レポートをご参照ください。
プログラム
• 講演:「地域包括ケアの現状と地域
金融機関への示唆」
(東京財団 研究員 兼 政策プロ
デューサー 三原 岳氏)
• フリーディスカッション
出典:厚生労働省資料
16機関/団体・計20名が参加
※外部講演者・事務局・報道関係を除く
(金融機関のみの参加)
第2回WG∼地域包括ケア現地視察∼
(9月25日)
※詳細は活動レポートをご参照ください
プログラム
「地域包括ケアに関する幸手市現地視察」
・幸手市地域包括ケアに関する説明
東埼玉総合病院 在宅医療連携
拠点事業推進室長 中野 智紀 医師
6機関/団体・計7名にて訪問
※事務局を除く
(金融機関のみの参加)
・地域包括ケアセンター現地視察
・意見交換
NPO 法人すぎとSOHO クラブ
理事長 小 川 清一 氏
日本社会福祉事業協会
理事長 豊島 亮介 氏
第3回WG
(10月31日)
※詳細は活動レポートをご参照ください
プログラム
・今年度議論の振り返り
・話題提供「超高齢社会の介護問題」
大和総研 経済調査部 研究員
石橋 未来 氏
9機関/団体・計10名にて議論を実施
※外部講演者・事務局・報道関係を除く
(金融機関のみの参加)
・フリーディスカッション
「少子高齢化社会に対しての新たな金融
機関としてのアプローチの模索」
ディスカッションテーマ
‥少子高齢化社会における課題の整理
‥(協働または単独で)金融セクター
ができる新たな価値・役割提供の具
体的手段
第4回WG
( 2月6日)
第2回環境不動産WGと共催にて開催。詳細は、環
境不動産WG活動報告資料をご参照。
【ご参考】昨年度のWG活動内容
WG全体の総括
昨年度との対比表
年度
※1
平成24年度
平成25年度
平成26年度
対前年度比
①WG数
4
5
5
±0
②WG開催回数(回)
7
14
14
±0
③WG参加金融機関人数
(人)
−
421
447
+26
④WG参加金融機関数
(機関)
−
281
315
+34
⑤業態別WG参加
金融機関人数(人)※2
−
246
363
+117
⑥業態別WG参加
金融機関数(機関)※2
−
156
248
+92
⑦WG全参加機関人数
(人)
158
569
508
▲61
⑧WG全参加機関数
(機関)
99
380
348
▲32
※1:第2回環境不動産・第4回地域支援WG共催WGについては、計1回として集計
※2:業態別WGは、運用・証券・投資銀行業務WG、預金・貸出・リース業務WG及び保険
業務WGの合計(テーマ別WG以外における合計)
【総括】
今年度の活動は、昨年と比較し、各WG毎に目標を意識し、取り
組んだ年度となった。
開催回数は、昨年と同じであり、全体の金融機関以外を含む参
加人数としては少し減少しているものの、本原則の対象となる
金融機関の参加者数としては機関数、人数ともに増加した結果
となった。(表内②③④及び⑦⑧)
特に本業に係る業態別WG(運用・証券・投資銀行業務WG、預金
・貸出・リース業務WG及び保険業務WG)では、裾野の拡大やノ
ウハウ向上を意識し、テーマ設定で実務に関連のあるテーマを
選別したり、呼びかけの際の業界団体との連携等を行った。結
果、業態別WGにおいては、金融機関の延べ参加数が92機関、117
名と大幅に増加したことが今年度はの大きな成果の1つといえ
る。(表内⑤及び⑥)
また、テーマ別WGでは、今年度は昨年度より具体的なテーマに
踏み込んだWGが開催され、金融機関における腰を据えたディス
カッションや、現地視察等を中心に開催された。
少子高齢化問題における金融の役割
と可能性について
平成 25 年度・26 年度
持続可能な地域支援 WG
活動レポート
持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則
(21 世紀金融行動原則)
持続可能な地域支援 WG 座長
1. はじめに
1.1 問題意識・ワーキンググループの活動
地域社会(少子高齢化)の問題に対し、金融機関は十分に社会的な問題を理解し、それ
を踏まえて、地域での問題解決型の金融を考えねばならない。そもそも、少子高齢化は、
将来に渡って社会システムを維持できるかどうかという問題である。また、環境面では、
人口減少は長期的に自然資本の増減とも関連性があると言える。
なお、地域の問題は地方に限ったことではない。本レポートでも記載している通り、都
市部の将来的な高齢化率等を考慮すれば、少子高齢化は都市部の金融機関においても深
刻な問題である。
これらの社会問題を背景とし、金融機関として取り組む具体的な施策及び課題解決につ
いて検討するため、平成25年度第1回運営委員会において、当ワーキンググループが
設立された。
当ワーキンググループでは、平成25年度及び平成26年度においてこの社会問題を掘
り下げ、今後の金融機関の具体的方策を探るため、皆が目を背けがちである少子高齢化
問題の実態を、正面から理解することに注力した。
初年度である平成25年度では、外部有識者を招き、まずは少子高齢化問題の基礎と実
態を学ぶことに注力した。また、第4回では3回の外部有識者の話をもとに、ワーキン
ググループ参加金融機関とともに、フリーディスカッションを実施した。
第1回:山崎史朗氏(消費者庁次長)よりご講演
第2回:高橋紘士氏(国際医療福祉大学大学院教授)よりご講演
第3回:中村 秀一 氏(内閣官房社会保障改革担当室長)よりご講演
第4回:第1回から第3回の活動を踏まえてのディスカッション
2年目に当たる平成26年度では、地域包括ケア等に力点を置き、有識者から追加で講
演をいただいた他、地域包括ケアの現場の視察や、少子高齢化問題に対して具体的に金
融機関がどのような取組ができるかの可能性を模索するディスカッションを実施した。
第1回:三原 岳氏 (東京財団 研究員 兼 政策プロデューサー)よりご講演
第2回:東埼玉総合病院(埼玉県幸手市)現地視察
第3回:今までの活動を踏まえてのディスカッション
第4回:自治体・不動産の切り口を交えてのご講演及びディスカッション
1
1.2 本レポートの性格
本レポートは、当ワーキンググループの中で得られた知見や示唆を背景とともに説明し、
またそれらを踏まえたディスカッションの中で得られた、今後の金融機関が少子高齢社
会において担いうる役割や、可能性のある取組の切り口を整理したものである。
21 世紀金融行動原則に署名している金融機関は、本レポートを通して各金融機関が直面
する課題を改めて見つめ、金融機関が地域に貢献できる可能性を模索することを期待し
ている。また、かかる模索に当たっては、当ワーキンググループにおいて共に議論し、
解決策を見いだせることを期待している。
2
2 各講演(平成 25∼26 年度)の論点整理
2.1 H25 第1回:「日本の少子・高齢社会の現状と課題」
山崎史朗氏(消費者庁次長)
2011 年厚生労働省社会・援護局長、2012 年 9 月から内閣府政策統括官、2013 年 6 月
28 日の発令で消費者庁次長に異動。
<以下講演の内容>
高齢化問題は地方の問題と考えられがちであるが、都市部においても深刻な問題。介護
保険制度の推移は、
2000 年には 10 人であったものが 2010 年には 6 人に 1 人という状況。
都市部の介護制度はまだ十分ではなく、かつ今後高齢化が特に進むのが都市部であるた
め、予断を許さない状況。
出典)平成25年度第1回講演資料より
介護の点では、認知症が今後の大きな課題であり、現在 280 万人であり、軽度認知障害
を含めると約 800 万人がいるといわれている。
少子高齢化問題については、地域間格差が大きい。人口推移については、ステップ1:
高齢者の増加→ステップ2:子供の人口が減っていく(高齢者は横ばい)
、ステップ3:
高齢者も減り出す(全国平均では、2060 年目途)という流れで推移していくが、山口県
長門市等では、既に高齢者も減り出すというステップ3の段階に入っている。即ち、高
3
齢化問題は、全国同じレベルで扱うことはできない。また、地域がステップ3に移れば、
猛烈な人口減少に突入する。
現在、既に地方で老人ホームを運営する企業や社会福祉法人は都市部の高齢者人口増加
を見据え、東京に進出し始めている。
我が国の介護基盤の強化等高齢者の保険福祉推進のために 1989 年に策定されたゴール
ドプランの下、先に高齢化が進んだ地方で多くの施設が造られたが、現在高齢者が地方
で減り始め都市部で増える傾向があるため、むしろ今後、医療・介護施設が急速に不足
する都市部での高齢化問題の深刻化が非常に懸念される。特に首都圏では、高齢者を含
む住民自身がこの問題に気づいていないため、解決への道筋が見えない。
出典)平成25年度第1回講演資料より
2.2 H25 第 2 回
「地域包括ケアシステムの構築における住宅政策と医療介護政策の再編」
高橋紘士氏(国際医療福祉大学大学院教授)
全国社会福祉協議会研究情報センター所長、社会福祉医療事業団(現福祉医療機構)
理事などを歴任。
<以下講演の内容>
4
日本の社会福祉法人・医療法人は内部留保をため込んでいる傾向があり、これを地域で
還元することが必要。
高齢者の死後処理問題で私たちが想定していなかったことが起こり、例えば相続財産で
ある不動産で考えてみても、空き家率は地方では 15%を超え、都心でも 10%を既に超え
ている中で、高層マンションが引き取り手のない相続財産として残る等、今までの資産
運用の前提は通じなくなる。
日本では高齢者の「看取りの場所」が病院である割合が、海外に比べて非常に高い。戦
前は日本でも「看取りの場所」は多くが自宅であったことから、急激に病院での看取り
が増加したことになる。今後の高齢化の進展により、病床数が間に合わない地域におい
て、病院ででも自宅でも看取りができない、すなわち死に場所が見つからない状況すら
発生しかねない。各自が死に場所を確保するためには、自宅で死ねる環境を作る必要が
ある。そのためには「共助」のシステムが必要であり、「地域包括ケア」の役割が大き
い。
出典)平成25年度第2回講演資料より
日本は、住宅や都市計画においてこれまで高齢化を無視した空間設計をやってきた。ヨ
ーロッパでは公的性格の住宅が多く、また高齢者が過ごしやすいように配慮されている。
日本でも、たとえば障がい者、高齢者、若い学生が一緒に住めるような、今で言うコレ
クティブハウス型の施設を作る等、地域で生活を支えるという考え方を基本とした単な
る病院施設以外のいろいろな試みが広がってきており、事業計画・内容を考慮しての金
融機関の融資拡大に期待する。
5
2.3 H25 第 3 回:「介護と認知症」
中村 秀一 氏(内閣官房社会保障改革担当室長)
2001 年 厚生労働省大臣官房審議官(医療保険、医政担当)
、2002 年 厚生労働省老
健局、2005 年 厚生労働省社会・援護局長、2010 年から現職。
<以下講演の内容>
介護保険がスタートした 2000 年は施設における介護費用の方が多かったが、次第に在
宅関係にかかる費用の方が増えてきている。特に通所介護費用が急増しており、ついに
介護老人保健施設の費用を抜いて特別養護老人ホームの費用に次ぐ位置まできている。
出典)平成25年度第3回講演資料より
高齢者の支援の現状は、介護施設(特別養護老人ホーム・老健施設・介護病院)に入っ
ている人の数は 92 万人で、65 歳以上全体の 97%が在宅と考えられている。また、要支
援・要介護認定者の 82%が在宅と考えられている。今後 2025 年、2030 年までに 600 万
人程度の高齢者人口が増えることを考慮すれば、その全てを介護 3 施設(特別養護老人
ホーム・老健施設・介護病院)をつくり、入居させていくということは現実的ではなく、
今後どんな住まい方をしても、その建物の中にある介護サービスか、建物の外から調達
する介護サービスや医療サービスで高齢者の生活を維持できるようにしていかなけれ
ばならない。
6
出典)平成25年度第3回講演資料より
現在、要支援の人は 100 万人を超えており、要介護・要支援認定者全体の 25%を占める。
この要支援の人達に対しては、予防を重視した予防給付に変えようという議論がなされ、
今回の介護保険では、今後自治体や NPO、ボランティア等による地域支援事業を活用し、
地域での支え合いを増やそうと問題提起されている。
現在、全国の 65 歳以上の高齢者では、認知症の該当者の割合が既に 15%に達している。
今後、高齢者の増加が想定されるため、社会における認知症該当者の割合が増えること
となり、事態は深刻である。
年金に対する議論については、社会保証の中の年金シェアは、今後どんどん減っていく
ことが既に決定されており、国においては介護と医療が重要視されていく。
金融機関の役割:
〔ハード面〕
これから増える高齢者の6割が首都圏に集中してくる。しかし、首都圏では特別
養護老人ホームの数が非常に少ない。現在、都市の再開発や介護事業等を行う株式
会社と連携して参画する事業者が増加しており、今後このようなプロジェクトを一
層支えていくことが金融機関に期待される。
〔ソフト面〕
今後、生涯所得に対する年金の割合は、50%程度に下がっていくことになるので、
公的年金に対する、私的年金の補完機能が注目される。
7
2.4 H26 第 1 回:「地域包括ケアの現状と地域金融機関への示唆」
三原 岳氏 (東京財団 研究員 兼 政策プロデューサー)
1995 年時事通信社に入社し、経済部、高知支局、内政部で勤務。その間、財務省、国
土交通省、文部科学省、全国知事会などを担当し、税財政や地方行財政、公共事業、教
育などの政策決定過程を取材。2011 年 4 月から現職。
<以下講演の内容>
人口の減少と少子高齢化が急速に進展する中、地域の持続可能性が問われている。こ
れまでの病院・施設中心の高齢者のケアには限界があり、国は在宅に力点を置いた共
助システムである「地域包括ケア」を推進している。
住民が自らの意思で生き方と住まい方を決め、そこに生活支援サービスや医療・介護
といった各種サービスが育つイメージ。これは一種のまちづくりであり、本質的には
商店街の振興と変わりない。
出典)平成 26 年度第1回講演資料より
しかし、地域包括ケアはサービスを整備するだけで完結するわけではなく、住民が主
体的に参画しなければ機能しない。同時に、地域ごとに異なる健康課題やケアに使え
る地域資源などを把握しなければならない。
国の政策で地域包括支援ケアセンターはその拠点として期待されており、医療等多職
種連携の下、地域包括ケアを支えていくことが期待されている。また多職種連携と地
域資源活用のため、「地域ケア会議」の設置が義務化され、また制度以外で高齢者を支
えるため、「生活支援コーディネーター」が設けられる。
8
ただし、実際の医療・介護・福祉制度は縦割りで作られており、都道府県や市町村も
相互連携がとれていない。こうした課題に取り組む地域包括ケアのモデルが日本各地
で生まれている。国保病院に役場の健康、福祉部門を併設し、様々なサービスをワン
ストップで提供している宮城県の涌谷町、高齢化が進む団地横の東埼玉総合病院を中
心に様々な専門職だけでなく、住民や地域団体を巻き込んでいる埼玉県幸手市などが
好例。
これらの取組において、地域金融機関も役割の一部を担うことができるのではないか。
まず、地域によって異なる健康課題や疾病構造の把握、ケアに使える地域資源などを把
握しつつ、地域金融機関としてできることを探すべきではないか。
地域包括支援センターの存在すら知らない金融機関も多いが、情報発信など連携できる
余地があるのではないか。
2.5 H26 第 2 回:「地域包括ケアに関する幸手市現地視察」
中野 智紀氏(東埼玉総合病院 在宅医療連携拠点事業推進室 室長)
地域包括ケアシステムにおいて代表的な取組を行う幸手モデル(埼玉県)の視察を実施。前
半は東埼玉総合病院にて、在宅医療連携拠点事業室の中野氏より幸手モデルについての説
明を受け、その後幸手モデルの中で重要な役割を担っている地域の NPO を訪問し、ディス
カッションを行った。
<以下講演の内容>
埼玉県幸手市や周辺地域では、「医療資源の不足」という問題があるが、これを解決す
るために地域の医療機関が協力して診療にあたる「地域完結型医療」を推進。また、地
域医療 IT ネットワーク「とねっと」も稼働され、患者の医療情報を複数の医療機関等
で共有できる体制を実現。
9
出典)平成 26 年度第 2 回講演資料より
地域包括支援センターの医療側の窓口として、在宅医療連携拠点を東埼玉総合病院に置
いているが、これは医師会を通して実施している事業。医師会を通すことで行政と医師
会の連携がスムースにできている。さらに介護との連携も図れる。
病院主体ではなく、住民主体の体制づくりを行っている。具体的には、地域で活動して
いる NPO やコミュニティデザイナーとともに活動している。
高齢化する地域コミュニティに潜在する未治療の疾病や健康生活リスクを吸い上げる
ための努力を行っている。例えば「暮らしの保健室」という地域にある相談室が幸手市
内外には 12 か所ある。ここで相談を受けた内容を医療、心理社会的問題、生活健康問
題などに分類し、医療に関係することは、総合病院やかかりつけ医へ紹介することで、
医療や介護へつなぐことが可能。
出典)平成 26 年度第 2 回講演資料より
10
ディスカッション
幸手モデルの標準化は難しい。各地域の課題の違いを踏まえた、現状把握と判断の繰り
返しであり、それを解決するためにどのような情報を得るのか、その時に地域に適した
資源があるのかを知らないと動かせない。連携できる人・団体をつなぐことを繰り返し
てきた。
地域包括ケアシステムの幸手モデルは基本的に住民主体でないといけない。ただし、医
療のために住民主体になってくださいというのは難しい。同じ方向で進む方法としては、
住民にとっては街づくりである。また、街づくりと共有できるのは防災である。
埼玉県は元々東京のインフラを使っているので産業が育成せず、教育や医療等も不十分
なままここまできている。さらに医療介護の莫大なニーズがかかっているのがこの地域
の問題。
2.6
H26 第 4 回
第4回においては、環境不動産ワーキンググループと共催で開催し、少子化・高齢社会問題
と不動産の観点から金融機関の可能性について議論を行った。
<以下講演の内容>
「人口動態・少子高齢社会問題について」
中村 欣央 氏(株式会社日本政策投資銀行 地域企画部 担当部長)
人口減少社会に入っていく中で、問題点や課題解決策を考える必要があるため、「人口
減少問題研究会」を設置し、地域に焦点を当て、将来の人口減少が地域の経済・産業・
都市構造等に与える影響の分析と、人口減少に対応した地域企業・自治体の経営の方向
性、地域金融に期待される役割の考察を行い、2 年間の研究の末、2014 年 6 月に最終報
告書を公表した。
非常に人数が多い団塊ジュニア世代が 40 代に突入し、出産適齢期を過ぎてしまってい
る。そのため、国の少子化対策がすぐに効果をあげても我が国の人口減少傾向は変わら
ず、人口が減ることを前提に考えねばならないのが日本の現状。
11
出典)平成26年度第4回講演資料より
都道府県別に年齢階層別の 30 年(2010∼2040 年)の人口の推移を見ると、生産年齢人
口、年少人口はどの地域でも減ることがわかる。一方で、老年人口は、地方の県ではあ
まり増減しないが、急増する大都市圏や地方の中枢都市では、病院、介護施設不足の顕
在化が推測できる。
出典)平成26年度第4回講演資料より
12
総務省の全国消費実態調査の世帯主の年齢階層別消費支出と年齢階層別の人口予測を
かけあわせて試算したグラフから、高齢世帯で比較的支出の大きい住宅設備修繕・維持、
リフォーム関係、医薬品は現状よりも消費が増えると予測でき、若年世帯が多く支出し
ている外食や洋服、さらに教育といったような分野は、平均以上に消費が縮小すると予
測される。
出典)平成26年度第4回講演資料より
地域別で見ると、人口減少が激しい東北、四国等の地域では、30 年間で 2 割前後消費が
減少すると予測される。
出典)平成26年度第4回講演資料より
13
人口が減少していくと、需要面では、内需の縮小あるいは需要構造の変化が生じ、供給面で
は労働力が少なくなっていく。企業としては、高齢者市場や域外市場、海外市場を開拓しつつ、
付加価値の向上や、外部人材及び女性、高齢者等の有効活用を通して生産性の向上を図っ
ていくことが、大まかな対応の方向性かと思う。
出典)平成26年度第4回講演資料より
財政制約のもと、インフラの維持更新はある程度の選別が必要となる。内閣府の調査を
参考にすると、ほとんどの人が 1km 以内と答えているが、70 歳以上だと、500m 以内が
一番多くなっている。当然、年をとると歩いて行ける距離は狭まってくる。したがって
コンパクトシティの形成が方向性の一つとして鍵となり、それに合ったインフラの維持
更新を行っていく必要がある。その際に、公有資産マネジメントという考え方や手法が
出てくる。また、実施団体に対しての、PPP 、PFI の活用も考えられる。
14
出典)平成26年度第4回講演資料より
地域金融機関は、人口減少に伴い、より能動的に地域企業の成長支援を行い、地域経済
の拡大に貢献していくことが求められ、また資金面のみではなく、知的貢献も含めて支
援していくことが求められるだろう。その際、経営支援において、全国展開する専門機
関や専門家と連携して対応していくべきである。また、自治体と密接な連携体制を構築
することに加え、金融機関の有するネットワークを活用したヒト、情報の融通に関わる
媒介機能の強化も有効である。
これらを取り組むに当たっては、「企業」、「自治体」、「金融機関」、「教育機関・研究機
関」が一堂に介し、地域の経済・産業の情報を共有する、そのうえで政策の優先順位を
検討、あるいは成長戦略の作成、成長戦略の実現のための連携スキームを検討していく
という「地域経済連携広域プラットフォーム」の形成を提案している。
出典)平成26年度第4回講演資料より
15
「少子高齢社会に求められる公共施設マネジメント」
遠藤 健 氏(株式会社 日本政策投資銀行 地域企画部 課長)
自治体に求められる公共施設マネジメントとは、保有する公共施設を総合的に把握し、
財政運営と連動しながら管理・活用する仕組みのことであり、単なる施設更新計画・保
全計画ではない。平成 26 年 4 月 22 日、総務省から全国の自治体に対して、「公共施設
等総合管理計画」の策定要請が行われ、実質的に平成 28 年度末までの策定を求められ
ている。
平成 26 年 10 月の総務省の調査結果では、全国の自治体の99.7%と殆どの自治体が
「公共施設等総合管理計画」の策定を予定している。一方、分野別・地域別等の再配置
方針を含む計画策定にまで至っている自治体は、現段階では少数。
出典)平成26年度第4回講演資料より
人口減少下で国や自治体の財政制約は厳しい一方で、公的ストックの老朽化は急速に進
んでいる。現在ある公的ストックを維持する前提、かつ投資可能総額を 2010 年度以降
横ばいと設定した試算(平成 21 年度国土交通白書)では、今後、社会資本の新設は難
しくなるうえ、
いる。
更新できない公的ストックが全国で約 30 兆円にものぼるといわれて
16
出典)平成26年度第4回講演資料より
公共施設マネジメントでは、定量的に可視化されたマネジメント方針の策定が有効であ
る。また、個別不動産の具体的なマネジメントへの移行に際しては、PPP、PFI の活用が
重要。
マネジメント方針の策定においては、公共施設の実態把握だけに留まるのではなく、人
口動態や財政状況を捉えることが必要である。例えば人口と施設配置の分析を行うこと
により、需要と施設配置のミスマッチの有無を把握することができ、効果的な計画策
定・実行に繋げることができる。
17
出典)平成26年度第4回講演資料より
今後の施設維持・更新費用を試算した結果、将来に亘って維持できる公共施設が現状と
比べて大幅減を余儀なくされる見込となった場合には、保全計画や施設維持管理手法の
見直し等をあわせて実施することで、比較的現実的な公的ストックの減少幅に抑えるこ
とも想定可能。
公共施設の再編成においては、当行が実施したアンケート結果によると、約9割の住民
が公共施設の再編成に賛成し、かつ約9割の住民が利便性の低下をも許容している。こ
の分野の市民会議やワークショップを支援してきた経験を踏まえると、住民への丁寧か
つ透明性のある説明や情報提供を行えば、しっかりと住民として考えて頂き、的確な方
向に検討が進むと思われる。
今後、公共施設マネジメントの進展に伴い、遊休・低稼働となった公共施設の利活用が
求められる。特に学校は、少子化の進展に加え、文部科学省による統廃合基準の見直し
もあり、廃校や空き教室が増える可能性が高い。学校はコミュニティの拠点機能を担っ
てきたことから、用途を変換し、地域において活用されることが期待されており、全国
で既に様々な事例がある(例:にしすがも創造舎(劇場・稽古場)、世田谷ものづくり
学校(起業家育成施設)、東京おもちゃ美術館、ヘルスケアタウンにしおおい(高優賃・
保育園等))。
出典)平成26年度第4回講演資料より
自治体と民間が連携しながら持続的な街づくりの財源を確保する手法として、欧米では
BID(Business Improvement District:主に地権者が地域の発展を目的に必要な事業を
18
行うための組織化と財源調達を行う仕組み)や TIF(Tax Increment Finance:プロジェ
クトの実施により生じる税収増を返済財源とする債券)を用いた手法がある。我が国で
も、BID 類似事例として、近時、大阪市と北海道倶知安町でエリアマネジメント関連の
条例が成立したところであり、今後の運用がおおいに期待される。
出典)平成26年度第4回講演資料より
【ポイント】
①自治体にとって、公共施設等総合管理計画の策定等、公共施設マネジメントは必ず取り組
まねばならないテーマであり、かつ金融機関にとっても貢献できる余地が大きい。
②一例として学校の利活用(コンバージョン)事例を取り上げたが、学校施設以外でも地域
には 遊休・低稼働の資産がある。地域課題を認識した上で、それらの地域資産を活用す
る視点で 知恵を出す必要があり、ここで金融機関がヒントを出せるのではないか。結果
として投融資機会の創出にも繋げられる。
③自治体と地域が連携した資金調達の手法の検討・構築についても、金融機関が貢献できる
余地があるのではないか。
19
3 少子高齢化問題における金融の役割と可能性
3.1 役割と可能性に関する議論の整理
当ワーキンググループでは、少子高齢化問題における金融と役割の可能性について複数
回のディスカッションを実施してきた。また、地域包括ケアの理解を深める観点から、
埼玉県幸手市の東埼玉総合病院へと現地視察を実施した。これらの活動より、得られた
金融の役割と可能性について、以下に整理する。
〈金融機関の役割と可能性〉
【融資】
老人ホームほか介護事業者等少子高齢化問題と関連する事業性を見極めての融資
在宅を支援する介護サービスの供給が不足している。
(H26 第 3 回)
小規模介護事業者に対する売掛債権のファクタリング(H25 第 4 回)
リバースモーゲージの活用(H25 第 4 回)
リバースモーゲージの制度の観点のみならず、+αの踏み込んだ支援が必要。
(H26 第 1 回)
【保険】
生涯所得に対する年金割合減少に伴う、公的年金の補完機能を担う、私的年金の
提供。
本業とのシナジー効果を与え得る介護事業へのグループでの参入(H26 第 3 回)
【運用/証券】
クラウドファンディング、SRI 関連投資との連携により、地域の社会事業者の支
援を実施する。
(H25 第 4 回)
地域の少子高齢化に応じて立ち上がった市民ファンドを応援する。
(H26 第 1 回)
資産保有者の高齢化に伴う相続問題への対応強化(H26 第 3 回)
【共通】
認知症サポーターの拡大を通しての高齢者支援(H25 第 4 回等)
独居老人に対する見守りサービス/人との繋がりの構築
自治体との連携による公共施設のコミュニティスペースとしての活用
(H26 第 1 回)
高齢者宅の訪問時に、高齢者の人生設計を一緒に見つめるようなシートの共
20
有等を導入する。
(H26 第 1 回)
行政と連携し、見守りサービスの質を一層高める。
(H26 第 3 回)
地域の専門家や NGO との連携を通しての地域包括ケアの支援(H25 第 4 回)
地域包括ケアセンターと金融機関との連携(H26 第 1 回)
東京の高齢者はコミュニティを有していない場合が多く、地域包括ケアの基
礎となる地域コミュニティを創出できる事業者の育成(H26 第 3 回)
公共施設のマネジメントにおける自治体と金融機関の連携
地域課題の共有や遊休・低稼働の資産活用における資金調達手法での連携
(H26 第 4 回)
3.2 さらなる可能性の模索(今後の活動方針)
少子高齢化問題における金融の役割と可能性に関して、3.1 のように当ワーキンググル
ープの途中経過として整理が実施できた。しかしながら、地域包括ケアを含む地域の少
子高齢化問題については、深掘りすればするほど、新たな課題が発見されることもわか
った。
また、少子高齢化問題は、幅広い業態の金融機関が深く関連する問題であることが再確
認できた。今後さらに取組の切り口等の整理を行うと同時に、各金融機関が取りうるア
プローチを結び付けることで、業界を超えた新たな価値の発掘や商品開発を行い地域に
貢献できる可能性も十分にあると考えられ、金融行動原則のダイナミズムを体現できる
のではないか。
当ワーキンググループでは、具体的な解決の糸口をさらに模索するため、引き続き少子
高齢化問題を採り上げ、議論していく予定である。来年度以降、より多くの金融機関が
当ワーキンググループに参加し、金融機関が少子高齢化問題解決に貢献できる幅広いア
プローチの発見と、解決への可能性を拡大できることを期待している。
以上
21
Fly UP