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変額個人年金販売の背景
第 1 章 個人年金販売の背景 1 変額個人年金販売の背景 変額個人年金は「長生きリスク」への対策の1つとして 注目されています。高齢化について、まずは数値で実感 してみましょう。 重要視される「長生きリスク」への備え 生命保険は、大きく①死亡保障と②生存保障とに分けられます。日本人 の保険加入率は87.5%(2006年9月生命保険文化センター調べ)と高いの ですが、多くの方が「保険」と聞いて思い浮かべるのは死亡保障性の保険 です。 死亡保障は、被保険者が死亡した場合に死亡保険金が支払われるもので、 残された遺族のための資金といえます。誰でも自分の死は予測できないも のですから、その際に収入が減る家族を守るため必要とされてきました。 一方、高齢化社会を迎えるにつれ重要視されてきたのが、新たなリスク である「長生きリスク」への備え、つまり生存保障です。決して短くない セカンドライフに向けて、経済的な準備が必要との認識が高まっているの です。 「長生きリスク」に備える変額個人年金 それでは、このような「長生きリスク」に対応する金融商品としてどの ようなものがふさわしいのでしょうか。 セカンドライフの生活資金を確保するという目的からすると、 「安心」は 重要なキーワードになります。 「預金」には安心のイメージがあり、日本人 にとって一番身近な金融商品といえます。しかし低金利の状況では、物価 上昇分以上の金利を得ることが難しくインフレリスクにさらされています。 「貯蓄から投資へ」という流れが強くなり、株式、債券、外貨預金、投 資信託といった運用商品を検討される方も増えてきています。こうした中 で、変額個人年金は金融商品としての特徴に加えて、「長生きリスク」へ の対策として大変注目されてきているのです。 2 �� �� 歳 女性 ����歳 �� �� 第1章 個人年金販売の背景 ����� 平均寿命の推移 男性 ����歳 �� �� �� �� �� 男性 女性 �� �� �� �� �� �� �� �� �� �� 西暦年 ����年 ����歳 ����歳 ����年 ����歳 ����歳 約50年の間に、 男性でおよそ16年、 女性で18年も平均寿命が延びました。 出所:厚生労働省 2006年 「簡易生命表」より三井住友海上メットライフ生命がグラフ化 ����� 60歳の方が長生きする割合 60歳の方が80歳まで長生きされる確率 男性 女性 62% 81% ※「60歳の方が80歳まで長生きされる確率」は2006年簡易生命表を使い便宜的に 「80歳の生存数÷60歳の生存数」で表したものです。小数点以下切捨て。 60歳の方が100人いる場合、各年齢まで長生きされる方の人数 男性 女性 ��歳まで 約��人 約��人 ��歳まで 約��人 約��人 ���歳まで 約�人 約�人 出所:厚生労働省 2006年「簡易生命表」より三井住友海上メットライフ生命が算出 3 2 変額個人年金の歴史 税制・保障面での充実がはかられ、変額個人年金は米国 で大きく成長しました。日本では1999年に証券会社で取 扱いが開始されました。 米国で1952年に取扱い開始 米国における変額個人年金の歴史は古く、米国最大の年金基金である TIAA-CREF(米教職員保険年金連合会・大学退職株式基金)が1952年に 取扱いを開始しました。その後1980年代の法改正等によって、変額個人年 金の市場は本格的な成長を始めたのです。 変額個人年金市場の発達には、課税の繰延べなどの制度面の影響が大き く寄与していますが、保険会社もお客さまのニーズに応えるべく商品開発 に取組みました。たとえば、当初の商品は積立期間中には死亡保障がない ものが主流でしたが、その後死亡保障が付くようになったのも、お客さま のニーズに応えるためです。 そのほかにも保険料を定期的に分散して特別勘定に投入する仕組みや、 積立期間満了時に支払保険料の一括受取を保証するなど、変額個人年金を より魅力的にする商品設計が行われてきました。 投資信託と並ぶ人気商品に 日本においても1999年に外資系生命保険会社から変額個人年金が販売さ れ、当初は直販チャネルや証券会社を窓口としての販売が中心に行われま した。 特に証券会社においてはリスク性商品の取扱いに慣れていたこともあり、 相続対策商品としての位置づけでその販売額を伸ばしました。その後、 2002年10月から銀行での販売が開始され、現在では投資信託と並ぶ主力商 品となっています。 4 第1章 個人年金販売の背景 1-2-1 米国における変額年金登場の流れ 1930年 代 「年金保険」登場 1950年 代 「変額年金保険」登場 1980年 代 「変額年金保険」本格販売 1990年 代 「変額年金保険」急拡大 1-2-2 米国における変額年金保険年間販売額 ■ 米国において変額年金保険は、1990年代になって株式相場の上昇とともに急成長しました。 (億ドル) 1,500 (ドル) 11,000 NYダウ工業平均 9,000 1,000 7,000 5,000 500 3,000 0 '91 '92 '93 '94 '95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 出所:変額年金調査統計サービス (VARDS)2005年 5 3 米国における販売状況 米国は変額個人年金の先進国といわれています。コンサ ルティング要素が強いので、販売員がアドバイスをする ことで信頼関係を築いています。 市場規模は日本の約8倍 米国における変額個人年金の資産残高は120兆円を超え、この市場 規模は日本の約8倍となっています。こうした市場規模の面だけでな く、商品の多様性等からも米国は変額個人年金の先進国といわれてい ます。 米国において変額個人年金が急成長した背景として、 ①株式相場の上昇を反映した高いパフォーマンスが得られたこと ②課税繰延べ効果等の税制上のメリットがあること ③終身年金や死亡保障といった保険としての機能もあること が挙げられます。 ファイナンシャル・プランナーによるアドバイスが盛んな米国 このように米国における販売の背景も日本と同様、少子高齢化によ る老後の生活に対する不安感があり、運用商品としての側面と同時に 将来の自助努力の必要性が重要視された結果といえます。 販売チャネルについては、その約90%が銀行である日本と違い、一 般の保険販売代理店が大きなシェアを占めています。その理由として、 米国では変額個人年金の商品性が多様化しているので、ファイナン シャル・プランナーなどから自分の年齢や収入等による将来のシミュ レーションに基づくアドバイスを求めて加入する傾向が見受けられる ため、と考えられます。 6 第1章 個人年金販売の背景 1-3-1 個人年金保険販売額(����年度) 米国生命保険外務員経営協会調べ ���/����������/ ����� ������� ��������� ������������������������ ����������������� ������� �������������� ����������������� �� �� �� �� �� �� �� �� �� � �� �� � (単位:百万ドル) 出所:M e t L i f e 社 パンフレット 「Some things get better with age」 ����� 変額年金の販売シェア 販売チャネル ����年 ����年 ■ 生命保険会社の自社専属外交員 ����� ����� ■ 乗合代理店 ����� ����� ■ ファイナンシャルプランナー ■ 証券会社 ����� ����年 ����% ����% ����� ����� ����� ■ 直接販売(DM) ����� ����� ���� ���� TOTAL ����% ����% ����� ■ 銀行 ■ その他 ���% ���% ���% ���% ����% ����% ����年 ����% ����% ������ ������ 2004 年から 2005 年にかけての FP、証券会社のシェ アは変動しました。これは、特定の保険会社が販売数 字の計上項目を変更した為です。 生命保険会社の自社専属外交員:専属代理店75%以上の販売が1社の商品 乗合代理店:複数社の商品を販売 直接販売 DM:テレマーケティングなどによる販売 出所:The 2005 Individual Annuity Market-LIMRA 7 4 日本における販売の現状 銀行等で生保窓販が始まった2002年10月は変額個人年金 販売においてのターニングポイントとなりました。金融 機関のコンサルティング営業に活用されています。 今後は金融機関以外の販売ルートにも着目 先述のとおり、変額個人年金は、1999年から日本で販売開始されました。 販売開始以降、販売額は伸張し2007年3月末での資産残高は14兆円を超え ました。2002年10月の銀行窓販解禁以降、変額個人年金は、銀行や信託銀 行、証券会社といった金融機関の窓口での販売が中心です。特に、2002年 10月の銀行窓販解禁を機に販売のペースが飛躍的に拡大し、4年半で資産 残高は25倍となっています。 2006年3月期には、生保20社が変額個人年金で提携する金融機関の数が、 1,500を超えました。また今後は、駅や商業施設内にある来店型保険代理 店やインターネット上といった、新しい販売ルートにも着目されています。 「ふやし」ながら「つかう」に魅力 このように変額個人年金を取扱う金融機関数は増えていますが、実際に 「加入したい」と窓口に来られるお客さまは少ないようです。変額個人年 金を購入された方の多くは、 「まとまったお金をどう運用したらよいだろ うか」と金融機関の窓口に相談に来た際に、販売担当者から変額個人年金 等の運用商品の説明を受け、そのうえで資産運用の選択肢の1つとして選 ばれています。 特に、銀行で定期預金の満期を迎え、そのタイミングで変額個人年金を 購入された方が多くいらっしゃいます。これは、当初変額個人年金が積立 期間の長いタイプの商品が主流だったため、長期保有に理解のあるお客さ まにアプローチをするというマーケティングを行ったためです。 変額個人年金には、死亡時の保障や収益性、また年金受取りといった他 の金融商品にはない機能があります。 「ふやす」ことに加え「つかう」こ とができる魅力も浸透しはじめています(右ページ〔1-4-1〕参照)。 8