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「ネコ好き」「イヌ好き」はどんな人か
News Release www.kitakyu-u.ac.jp 平成 28 年 5 月 31 日 報道関係各位 公立大学法人北九州市立大学 人間関係学科田島 司教授の研究成果発表! 「ネコ好き」「イヌ好き」はどんな人か ― 飼いたくなるのは「仮面」をかぶっているから? 北九州市立大学文学部 人間関係学科(社会心理学)の田島 司(たじま つかさ)教 授は、「ネコ好き」「イヌ好き」な人の性格の特徴を明らかにするため調査を行いました。 その結果、「ネコの性格が好きな人」は、人前での性格がネコの性格と類似しており、自 分のしたいことを自由にしていることや、「ネコを飼いたい人」は、本当は無口なのに人前では 陽気に振る舞ってしまうという性格の切り替えが大きいことなどが分かりました。相手に合わせ て性格や行動を調整するという日常のス トレスや気疲れが、「飼いたい動物」の選 択に関わっているということです。 ※本研究は 9 月に開催される日本社 会心理学会で発表予定です。 詳細は別紙のとおりです。 本研究にご興味がありましたら取材方よろしくお願いいたします。 この件に関する報道関係者からのお問い合わせ先 北九州市立大学 学務第一課学部係 舛田、芦屋 電話 093-964-4036 広報入試課広報係 近藤、西村 電話 093-964-4196 ※研究内容に関するお問い合わせは 文学部 人間関係学科 教授 田島 司 電話:093-964-4350 e-mail:[email protected] 5 月 31 日(火)は 15:45~18:00 まで研究室に在室しています。 それ以外は、メールでお願いします。 News Release www.kitakyu-u.ac.jp 別 紙 【主な成果と研究の意義】 ●ネコは「自分のしたいことを自由にする」という性格だとイメージされており、ネコの性格と自分の公 的な性格(外で他者に見せている性格)との差を算出したところ、「ネコの性格が好きな人」はその差 が小さく(つまりネコの性格と似ている)、「自分のしたいことを自由にする」という特徴もありました。「ネ コの性格が好きな人」は、ある程度はネコのように振る舞うことができているということです。理想の生き 方を体現しているからネコを好きになるのかもしれません。 ●公的な性格と私的な(1 人でいる時の素のままの)性格との差を算出したところ、「ネコを飼いたい 人」は、外で他者には陽気でおしゃべり好きに振舞っているが本当は陰気で無口だ、という差が大き い傾向がありました。つまり、陽気に演じなければならない不自由さがあるようです。また、「ネコを飼い たい人」はネコが親切で温和、寛大であるとイメージしているので、ネコを飼うことによって、陽気な「仮 面」を外した後の癒やしを求めていると考えられます。 ●「イヌを飼いたい人」は外で陽気な性格に切り替えるという差が少なく、悩みがちな性格を他者に 対しても隠さず見せているという特徴がありました。この点であまり裏表が無い性格のようです。 ●ペットに「安らぎ」を求める傾向の増加(内閣府調査 https://www.env.go.jp/council/14animal/y143-06/ref01.pdf )や「ネコカフェ」ブームの裏には、公 私での性格の切り替えが強く求められる社会になったことが関わっていると思われます。 【研究の内容】 大学生 183 名を対象に質問紙調査を行った。 ●一般的なネコとイヌの気質を想起させ、Big Five 尺度と要求・期待への対処傾向「内面化:他者 の要求や期待に沿って行動するのが自分のしたいことである」、「自律性:他者の要求や期待と違っ ても自分のしたいことを自由にする」2項目をネコ・イヌについてそれぞれ 5 件法で測定。 ●自己のパーソナリティについて、「公的場面:外で他者に見せている」、「私的場面:1 人でいる時の 素のままの」それぞれについて、Big Five と要求・期待への対処傾向2項目で測定。 ●「気質嗜好性:ネコの性格が好き、イヌの性格が好き」と「飼育志向性:(飼うとしたら)ネコがいい、 (飼うとしたら)イヌがいい」という問いについて、それぞれ「はい・いいえ」で測定。 ● 内 面 化 は イ ヌ の 方 が 高 く ( t(182)=15.37, p<.01) 、 自 律 性 は ネ コ の 方 が 高 い と 評 定 さ れ た (t(182)=13.60, p<.01)。 ●ネコの気質嗜好群はそれ以外のものよりも、ネコの気質と公的場面での自己のパーソナリティとの 差が小さく(t(120.25)=2.20, p<.05)(Figure 1)、要求・期待への対処傾向は公的場面・私的場面と もに自律的であった(F(1, 181)=4.93, p<.05)。イヌの気質嗜好群については効果は見られなかった。 ●ネコの飼育志向群はそれ以外のものよりも、自己のパーソナリティの公的―私的間の差が大きい 傾向があり(t(181)=1.87, p=.06)(Figure 2)、因子別にみると、ネコの飼育志向群は私的場面に比 べて公的場面で外向性が高まる程度が大きかった(F(1, 181)=7.48, p<.01)(Figure 3)。また、飼育 志向群ではネコの気質について調和性が高く評定されていた(F(1, 181)=12.67, p<.01)。イヌの飼育 志向群では、私的場面に比べて公的場面で外向性が高まる差が小さかった(F(1, 181)=4.91, p<.05) (Figure 4)。また、公的場面での神経症傾向がイヌ飼育非志向群より高いという特徴があった(F(1, News Release www.kitakyu-u.ac.jp 181)=5.47, p<.05)。 【用語解説】 ●「性格」「パーソナリティ」「気質」・・・「性格」という語が包括的で一般的にも分かりやすいため、アン ケート調査の質問項目では「性格」という語が用いられている。「パーソナリティ」もこれに類似するが、 外界に適応する際にその場に合わせて行動が変わることを強調した概念である。「気質」は遺伝的 に決定される部分を強調して用いられるため、今回の報告ではネコとイヌについてのみ気質という語を 用いている。 ●「Big Five 尺度」・・・パーソナリティの測定において現在の心理学研究で最もよく使用されている。 下位尺度は「神経症傾向」(悩みがち、不安になりやすい)、「外向性」(陽気な、話し好きな)、「調 和性」(親切な、温和な)、「誠実性」(勤勉な、計画性のある)、「開放性」(独創的な、想像力に 富んだ)の5つに分かれる。