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植物の生育状況からみた高アルカリ建設発生土の中和

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植物の生育状況からみた高アルカリ建設発生土の中和
1347
D - 10
第40回地盤工学研究発表会
(函 館) 2 0 0 5 年 7 月
植物の生育状況から見た高アルカリ建設発生土の中和による土壌性能の改良
発生土
pH 植生
早稲田大学
学生会員
○斉藤
真一
早稲田大学
学生会員
岸上
太樹
早稲田大学
国際会員
赤木
寛一
1.はじめに
はじめに
国土交通省による H14 年度の建設副産物実態調査によると,建設発生土の再利用率は H7,12 年度に比べ向上はして
いるもののより一層の改善が必要となっている.そのため本研究では,発生土の中で特に石灰安定処理土の緑農地化へ
の再利用可能性を検討することを目的としている.石灰安定処理は土質改良効果を利用して土の物性を改善し,発生土
の再利用において有効な方法であるが,改良土が高い pH を示すという問題がある.そのため緑農地への再利用を考え
る際,注意が必要である.本研究では風乾処理とピート及び石膏による中和処理によりアルカリ改良を行い,各種の土
壌条件における pH や吸着陽イオンの分析結果をもとに土壌性能を調査した.またこの pH 改良土にコマツナ,西洋芝を
播種し,植物生育に影響を及ぼす要因の検討と植物の生育状況から見た土壌性能の改良評価を試みた.
2.実験概要
実験概要
表1
2.1 土壌 pH 改良試験
試料の物性値
試料土
土粒子密度 ρS(g/cm3) 2.63
として用いた.石灰混合量は発生土湿潤質量当たり 3%であり,物性値を表 1 に示す.
液性限界 ωL(%)
98.6
(1)風乾試験
塑性限界 ωP(%)
71.3
石灰安定処理土の礫分を 2mm フルイで除去した後,温度 20∼25℃,湿度 40∼50%
塑性指数 IP
27.3
の室内条件で風乾を行った.28 日経過後まで 7 日おきに試料の含水比,pH を測定した. 初期含水比 ω(%)
91.3
(2)吸着陽イオン定量分析
有機物含有量 ω(%) 5.179
初期pH
風乾試料 6g あたりの CEC 及び吸着している交換性陽イオンの飽和度を「セミミク
12.83
本研究では建設発生土中間処理プラントにおいて生成される石灰安定処理土を試料
ロ schollenberger 法」を用いて測定した.その結果を表 2 に示す.
(3)中和材混合試験
表2
土壌 pH に影響を与える要因として,風乾の有無,中
和材とその混合割合,細粒分調整の有無,塩基飽和度を
考え,各土壌条件の pH,吸着陽イオン定量分析から中和
処理による土壌 pH,塩基飽和度,塩基バランスから見た
土壌性能を評価した.中和材としてはピートと石膏を用
いて,試料 1800g 当たり,それぞれ発生土湿潤質量に対
混合 28 日後の吸着陽イオン定量結果
ピート
3%
Na
4.19
K
2.02
Mg
1.01
Ca
102.58
CEC(NH4+)
36.67
塩基飽和度(%) 299.48
pH
12.12
未風
5%
4.08
1.83
0.84
127.38
35.93
373.33
12.01
10%
3.67
1.72
0.82
128.57
35.37
381.03
11.94
3%
3.52
1.63
0.88
87.38
36.48
256.05
10.61
風乾
5%
3.62
1.67
0.82
81.31
35.74
244.59
10.3
10%
3.34
1.57
0.76
85.24
35.74
254.35
10.2
3%
3.57
1.66
0.85
120.24
32.96
383.22
10.04
石膏
風乾
5%
3.48
1.62
0.56
122.62
29.63
432.94
10.02
風乾土
10%
3.55
1.58
0.58
164.29
26.85
633.09
10.03
3.94
1.87
1.01
158.33
36.30
454.99
10.83
して 3,5,10%の割合で混合し,底面積(1/5000)a,高さ 19cm のワグネルポットにつめ,28 日間の混合試験を行った.
試験条件は温度 20∼25℃,湿度 40∼60%であり,ポット内の含水比を常時 70∼80%に保ち,7 日おきの pH の経時変化
を測定した.具体的な土壌条件を表 2 に示す.
2.2 植物生育試験
pH 改良試験で得られた 28 日経過後の試料を用いて,さらに 28 日間の植物生育試験を行った.試験植物にはコマツナ,
西洋芝(トールフェスク)を用いて 1 ポット当たりコマツナ種子 20 粒,西洋芝 0.4g を播種し,温度 20∼25℃,湿度 40
∼60%,照明 12 時間明暗サイクルの試験条件で,7 日おきに生育の経時変化を測定した.生育測定の指標として,コマ
ツナは発芽率(%),地上部長(cm),根の長さ(cm),湿潤質量(mg)を測定し,西洋芝は地上部長(cm),湿潤質量(g)を測定し
た.また本実験では改良土自体の植生への影響を調査するため,施肥等は行わなかった.
3.実験結果及び考察
実験結果及び考察
3.1 土壌 pH の変化と塩基飽和度
(1)風乾の影響
経過日数に伴い含水比,pH ともに低下した.風乾 28 日間で含水比は 91.3%から 12.8%へ,pH は 12.83 から 11.42 へ
と低下した.これは風乾による炭酸化の影響と考えられる.
(2)中和材の影響
図 1 に示すようにピートの混合によって pH の経時的低下が見られたこと,また未処理の対照区と比較して pH が低下
していることから中和材の効果が確認出来た.これは石膏も同様の傾向を示した.混合割合の増加に伴い pH は低下し
たが,その差はわずかであった.また図 2 より風乾処理と中和材混合を組み合わせて考えると,未処理の試料と比較し
Improvement of lime stabilized soil performance in view
of vegetation
SAITO, Shinichi, Waseda University
Kishigami,Taiki,Waseda,University
AKAGI, Hirokazu, Waseda University
- 2685 -
14
て風乾処理と中和材混合により,中
未風乾 対照区
未風乾 ピート3
未風乾 ピート5
未風乾 ピート10
風乾 対照区
風乾 ピート3
風乾 ピート5
風乾 ピート10
性化が早く進み pH 改良が促進され
13
ることがわかった.各中和材のアル
13
カリ改良の要因として,ピートは腐
は中性塩であることが考えられる.
(3)塩基飽和度と塩基バランスから見
た土壌性能
表 2 より交換性塩基のバランスを
考えると,当量比で約 80∼120:1:
2 となっており,作物施肥基準から
12
pH
COOH)と石灰の Ca との反応,石膏
12
pH
植酸に含まれるカルボキシル基(−
14
11
11
10
初期pH
9
10
混合7日
8
9
0
図1
5
10
15
20
25
30
day
ピート混合による pH の変化
混合28日
7
未処理
図2
未風乾+ピート5%
風乾+ピート5%
風乾と中和材の影響(ピート 5%)
14
判断すると,植生に適した土壌とはいえない.以降では,塩基飽和度を用い
て土壌性能を評価する.塩基飽和度と pH の関係は,図 3 より石膏混合試料
13
を除いて考えると,塩基飽和度の低下に伴い pH が低下している.同一ポッ
トにおける塩基飽和度と pHの経時的変化に着目すると,石灰混合試料にお
の塩基飽和度の管理が可能であるといえる.
12
pH
いてもこの関係は成立した.以上より,簡易に測定できる pH によって土壌
11
3.2 植物生育から見た土壌性能
コマツナ,西洋芝ともに対照区と比較して中和材による改良効果が得られ
10
対照区
ピート
たが,その傾向は植物の湿潤質量変化で明確に表れた.ピートは添加率 3∼
5%で生育良好であり,石膏は 10%混合で生育不良となった.これは Ca 含有
9
量が過剰であったためと考えられる.コマツナの生育において風乾の有無に
0
200
よる影響が大きく出た.コマツナは西洋芝に比べ生育最適 pH が低いため,
図3
400
600
800
塩基飽和度(%)
塩基飽和度と pH の関係
7
風乾による pH 低下の影響が強く出たためと考えられる.中和材による比
較はピートを用いた場合の成育が良好となった.これはピートが有機物で
1000
14
地上部長(cm)
湿潤質量(mg)
6
12
あり,ピート自体が肥料となったためと考えられる.
4
8
3
6
pH と塩基飽和度の対応関係から,植物の生育状況からみた土壌の改良効
2
4
果を pH で管理することが可能であるといえる.
1
2
図 4,5 に塩基飽和度と植物生育の関係を示す.コマツナ,西洋芝とも
に過剰な塩基飽和度が低下すると,植物の生育が良好となっている.植物
生育において,塩基飽和度は重要な指標となりうる.したがって,図 3 の
(2)生育評価
地上部長,湿潤質量の両方の観点から見て,植物生育における中和処
地上部長(cm)
10
0
200
250
300
350
塩基飽和度(%)
理効果を評価すると,コマツナは風乾処理+ピート混合が有効である.西
図4
洋芝はコマツナと比較して改良効果が表れやすく,比較的高いpH であっ
ても,生育可能な範囲が広いことから石灰安定処理土の緑化用として有効で
あった.
・石灰処理土においても pH で塩基飽和度を管理可能である。
・pH と塩基飽和度には密接な関係があるので,植物生育に適した塩基飽和
地上部長(cm)
・風乾処理に中和材を組み合わせることで中性化が促進される。
5
地上部長
湿潤質量
4
8
3
7
2
6
1
度を簡便に測定可能な pH により管理できる.
本研究の実施に当たり,㈱東興開発のご援助をいただいた。記して,謝意
5
0
を表する。
参考文献:斉藤,赤木,第
39 回地盤工学研究発表会(N0.403,2004 年 7 月)
参考文献
- 2686 -
0
100 200 300 400 500 600 700
塩基飽和度(%)
図5
塩基飽和度と西洋芝生育の関係
湿潤質量(g)
・pH 低下には風乾処理による炭酸化が有効である。
塩基飽和度とコマツナ生育の関係
9
石灰安定処理土における pH 改良試験,植物生育試験により,以下のこと
がいえる.
0
400
10
4.まとめ
まとめ
湿潤質量(mg)
5
(1)塩基飽和度と植物生育の関係
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