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第3章 学士課程及び修士課程・博士課程の 教育内容・方法等

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第3章 学士課程及び修士課程・博士課程の 教育内容・方法等
第3章
Ⅰ
学士課程及び修士課程・博士課程の
教育内容・方法等
全学
1.全学共通
【目的】
本学の「『個』を強くする大学」という教育理念の下に,各学部は独自の教育目標を掲げ,これに基
づいて教育カリキュラムを編成し,教育・学習活動を展開している。日常の授業は,授業計画をシラバ
スに明記し,完全実施を原則としている。対面教育,少人数制を重視し,本学が有する最新の情報環境
を活用しながら,学生の主体的な学習意欲を喚起し,質の高い教育・学習の展開を目標としている。
(学部・学科等の教育課程)
・学部・学科等の教育課程と各学部・学科等の理念・目的並びに学校教育法第 52 条、大学設置基準第
19 条との関連
・学部・学科等の理念・目的や教育目標との対応関係における、学士課程としてのカリキュラムの体系
性
・教育課程における基礎教育、倫理性を培う教育の位置づけ
・「専攻に係る専門の学芸」を教授するための専門教育的授業科目とその学部・学科等の理念・目的、
学問の体系性並びに学校教育法第 52 条との適合性
・一般教養的授業科目の編成における「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵
養」するための配慮の適切性
・外国語科目の編成における学部・学科等の理念・目的の実現への配慮と「国際化等の進展に適切に対
応するため、外国語能力の育成」のための措置の適切性
・教育課程の開設授業科目、卒業所要総単位に占める専門教育的授業科目・一般教養的授業科目・外国
語科目等の量的配分とその適切性、妥当性
・基礎教育と教養教育の実施・運営のための責任体制の確立とその実践状況
・グローバル化時代に対応させた教育、倫理性を培う教育、コミュニケーション能力等のスキルを涵養
するための教育を実践している場合における、そうした教育の教養教育上の位置づけ
・起業家的能力を涵養するための教育を実践している場合における、そうした教育の教育課程上の位置
づけ
・学生の心身の健康の保持・増進のための教育的配慮の状況
【現状(評価)】
本学は,2004 年度に情報コミュニケーション学部を新設し,現在は,駿河台,和泉,生田の3キャン
パスに,合計約3万人の学部学生が在籍し,約1万6千コマの授業科目を開講している。さらに 2008
年度には新学部を設置する予定である。
理系学部・研究科(理工学部・農学部)は生田キャンパスにおいて教育・研究が実施されるが,文系
学部(法学部・商学部・政治経済学部・文学部・経営学部・情報コミュニケーション学部)の1・2年
次は和泉キャンパスにおいて教育・研究がおこなわれ,3・4年次およびその他の研究科(法学研究科・
商学研究科・政治経済学研究科・経営学研究科・文学研究科・ガバナンス研究科・法務研究科・グロー
バル・ビジネス研究科,会計専門職研究科)は駿河台キャンパスにて教育・研究が行われる。
教育の充実及び向上並びに学部長会の円滑な運営に資することを目的として教務部委員会を設置し
ている。この委員会は一部教務部長及び二部教務部長,そして,各学部教務主任2名により構成されて
いる。また,大学院の各研究科に共通な事項や学部を基礎としない研究科における教員の人事に関する
事項,研究科間の調整に関する事項,学生の育英・奨学及び賞罰に関する事項,学位授与に関する事項
を審議することを目的とした大学院委員会を設置している。この委員会は,大学院長,教務主任,各研
究科委員長及び各研究科長並びに各研究科から選ばれる各1名の大学院委員で構成されている。さらに,
泉キャンパスには和泉委員会を設置して,和泉地区に,1・2年次の課程を置く各学部の特殊性を生か
し,和泉キャンパスにおける教育・研究の充実と駿河台キャンパスとの連携が図られている(和泉委員
第3章 全学 -1-
/97
会の詳細については本章 全学 75 頁参照)。
2004 年4月をもって,二部の学生募集は停止となったが,二部制度による学生が在籍する間は,教育
機関としての責務を全うしながら二部の抱える諸課題について検討していく場として,二部教育本審議
会を設置している(詳細は本章 全学 70 頁参照)。
これまでこの審議会では,主に駿河台地区の二部教育についての検討を行ってきたが,これに加え,
和泉地区・生田地区を含めた夜間時間帯の教育全般に課題を広げ,その充実に努めている。
各学部は,自らの教育目的を達成するため,責任ある体制の下,学校教育法第 52 条,大学設置基準
第 19 条に適合した教育カリキュラムを体系的に編成し,日常の授業を実施している。専門教育的授業
科目は,学部の特徴を生かし,専門基礎的な授業科目からゼミナール・演習科目まで多様で特色ある授
業科目を設置するよう努めている。また,一般教養的授業科目は,幅広く深い教養と総合的な判断力を
培うために必要な授業科目を設置している。特に国際化に対応できる能力の養成のために適切な外国語
科目,学生自身の心身の健康保持・増進を扱う健康・運動科学的科目及びグローバル化時代に対応でき
る能力育成のために必要な歴史文化・倫理関係科目を多数設置している。各学部の専門教育的授業科目
と一般教養的科目の卒業要件上の質的量的配分については,学部の責任に下に絶えず検証し,適切性を
維持するように努めている。さらに,全学的機関として,2006 年度後期に設置が予定されている「教育
開発・支援センター」が,各学部のカリキュラムや教育プログラムの検証・評価・改善作業を実施する
ことになる。各学部の教育活動と協力・連携し,これを支援するため,教務部等の関連機関・部署が適
切な教育学習環境を提供している。特に教務部では,全学部共通的なカリキュラムである,学部間共通
総合講座(詳細は本章 全学 15 頁参照),学部間共通外国語(詳細は本章 全学 18 頁参照),情報
基礎教育科目等の授業科目運営母体(詳細は本章 全学 23 頁参照)となり,各学部の教育目標を達成
するための基礎的授業科目を運営しながら学部教育を補完している。
大学院は,学術・研究の高度化を推進し,優れた研究者・高度専門職業人等の養成を目的とし,それ
に対応した教育目標を設定している。特色としては,まず,研究者養成と高度職業人の養成である。前
者は従来型の学部を基礎とする7つの研究科であり,後者は 2004 年度以降に設置された4つ研究科が
担っている。また,国際化の推進については,大学としての留学制度に加え,日仏共同博士課程,ルノ
ー財団パリ国際MBAプログラムなど多くの機会が提供されている。さらに,都心型大学院としての教
育・研究拠点であり,リバティタワー,アカデミーコモン,さらには生田校舎のハイテクリサーチ・セ
ンターなど施設面での充実も先進的である。現在,大学院の制度改革を積極的に進めているところであ
り,大学院GP等で領域横断・文理融合の連携が推進されている。学界の指導者として活躍する本学大
学院の出身者は,確実に増加している。そうした傾向を維持し,それに一段と加速度をつけるため,各
研究科では目下,博士学位を取得するための手続きをより明確にし,学位取得に必要な制度を充実する
ことにつとめている。
現在推進されているプロジェクトとして,「魅力ある大学院教育」イニシアティブに採択された「社
会との関わりを重視したMTS数理科学教育」がある。また「NTT 物性科学基礎研究所」「独立法人海
洋研究開発機構」「三菱電機デザイン研究所」と連携大学院協定を締結しており,派遣学生と連携研究
機関の増加を図ることにより,より幅広い知識が必要となる学際的・総合的研究が行えるようにする。
社会人学生に対しては研究と実務に卓越した教員を配置して高度職業人教育を実施している。また,
社会人大学院生が受講可能な土曜・夜間開講を実施している。外国人留学生に対しては,チューター制
度を採用することにより,教育のみならず日本文化を理解する手助けを実施している。今後,理系はも
とより文系の研究科においても,大学院学生には研究成果を外国語によって発表する必要性が増えるの
で,大学院全体の共通科目として英語による授業を開始する。
COEなど最近の競争型研究補助金は,後期課程の学生教育を念頭にしている。本学大学院が社会的
な認知度を上げるためには,博士後期課程に属する大学院学生の母数を増やすことが,なによりも必要
とされる。学位授与に至るまでのロードマップを提示することでより充実した教育の実施を可能とする。
以下は,全学的な視点から「カリキュラムにおける高・大の接続」
「カリキュラムと国家試験」
「イン
ターンシップ,ボランティア」
「履修科目の区分」
「授業形態と単位の関係」
「単位互換,単位認定等」
「開
設授業科目における専・兼比率等」
「社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮」
「生涯学習への対
応」「正課外教育」「教育効果の測定」「厳格な成績評価の仕組み」「履修指導」「教育改善への組織的な
取組み」
「授業形態と授業方法の関係」
「3年卒業の特例」について記述をし,全学的な課程やその運営
母体である委員会等によって行われた自己点検・評価も掲載した。それらの委員会や課程等とは,「学
部間共通科目運営委員会」「学部間共通外国語教育運営委員会」「教育の情報化推進本部」「資格課程委
員会:教職課程・社会教育主事課程・学芸員養成課程・司書課程・司書教諭課程」「研究指導室:法制
第3章 全学 -2-
/98
研究指導室・経理研究指導室・行政研究指導室」
「二部教育審議会」
「インターンシップ運営協議会」
「和
泉委員会」「教員研修(FD)委員会」「教育改革支援本部」「学習支援推進委員会」及び「国際交流セ
ンター]である。
(カリキュラムにおける高・大の接続)
・学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行するために必要な導入教育の実施状況
【現状】
(1) 明治大学プレカレッジプログラム
各学部は,大学学則に基づき,入学前に本大学で履修した授業科目を一定の条件のもとに,本大学入
学後の単位として認定することができる。
2004 年度から,付属明治高等学校との間で「明治大学プレカレッジプログラム」を開設し,付属高校
と大学の一貫教育のもと,円滑な接続を促進している。「明治大学プレカレッジプログラム」は,同高
等学校に在学する生徒の進路選択の一助とし,一貫した教育理念の下,高校教育から大学教育へ円滑に
接続が行われることを目的に実施するもので,同高等学校の2年生及び3年生のうち,履修資格がある
と認められた者が対象となり,大学が認める授業科目の一部を 12 単位まで履修することができる制度
である。
原則として正規履修者と同様に試験を受け,この制度で修得した単位は,一部高等学校の単位として
認められることができるほか,大学入学後,大学修得単位として累積加算でき,成績評価もそのまま表
記することができる。これを契機に,本学と同高等学校がさらに太く,様々なパイプでつながり,一体
となって進んでいくことが期待されている。」
(文学部は,高校で認定された場合,大学の単位としては
認定しない)
。
プレカレッジプログラム
2005 年度前期
学 部
科 目 名
理 工
科目別履修者数
受講者数
経営
近代経済学A
2
確率
1
経営
簿記論Ⅰ
2
理 工
基礎電気回路
1
経営
会計学特別講義A
1
経 営
簿記論Ⅰ
1
経営
経営総合講義B
1
情コミ
ジェンダーと法Ⅰ
4
情コミ
社会心理学Ⅰ
1
2005 年度後期
学 部
科 目 名
受講者数
理 工
スイッチング理論と論理設計
1
理 工
数学演習2
1
学 部
科 目 名
受講者数
理 工
基礎数学4
1
商
商業総論A
1
経 営
簿記論Ⅱ
1
理工
情報処理演習1
1
経 営
公共経営学特別講義B
2
理工
情報処理演習2
1
農
図学
1
経営
近代経済学B
1
2006 年度前期
2006 年度後期(履修予定者)
学 部
科 目 名
受講者数
経営
公共経営学特別講義B
3
商
商業総論B
1
経営
簿記論Ⅱ
2
商
会計学総論B
1
経営
会計学特別講義B
2
文
フランス文学史A
1
経営
経営総合講義A
2
理工
確率
2
情コミ
ジェンダーと法Ⅱ
4
農
生産環境概論
1
情コミ
社会心理学Ⅱ
1
(2) 自主選択講座
付属明治高等学校を対象として「自主選択講座」を開設し,本学の教員を派遣している。自主選択講座は,高等
第3章 全学 -3-
/99
学校の総合学習(週2時間,2単位)として位置付けられている。
自主選択講座の目的は,高等学校における既成科目の枠を越え,大学での受講能力を養成すること,さらに,特
色ある講義を受講することによって生徒の学習意欲を喚起させることにある。
(3) 入学前教育の実施(継続)
AO入試等の特別入試により早期に入学が確定した学生の,勉学に対するモチベーションを維持し,基礎学力の
向上を図るため,2005 年度より生田キャンパスにおいて,理工学部及び農学部の特別入試入学者を対象に,英語と
数学の通信添削による入学前教育を,外部専門業者に委託(課題及び解答解説の作成,採点添削,発送業務,報告
書作成)する形式で,年3回実施している。この入学前教育の実施とその後の補習講義を連携させ,学生が入学後
速やかに通常の授業に移行できる環境を整えた。
(4) 補習講義の実施(継続)
理工学部・農学部の学生にとって,数学・化学・生物・物理等の科目は基礎科目であり,これらの基本知識が不
足していると日々の授業についていけない状況となる。そのため,2005 年度後期より生田キャンパスの学習支援プ
ログラムとして,英語を加えた5科目の補修講義を実施している。この補修講義は理工学部・農学部の特別入試入
学者だけでなく,一般入試入学者や他地区文系の学生も対象として,短期集中で高校レベルの基礎学力を修得でき
るプログラムを整備した。
実施にあたっては,大学の教員が高校レベルの基礎を教えるのは難しいので,外部業者への委託と付属中野高校
の教員による協力で行っている。なお,2005 年度は細かく日程を設定したため,受講人数の割に費用がかかるとい
う点で問題を残したが,2006 年度については,入学早々の4月中旬に「フォローアップ補習授業」として1科目5
日間の短期集中で実施し,1コマあたりの受講者も増え,経費も節減された。今後も開催時期,日程等を考慮し,
適宜実施する予定である。
経理研究指導室が行うプレカレッジプログラム
公認会計士試験の受験者を養成するために,その導入教育である簿記講座を本学の付属高校3校において開講し
ている。高校在学中に簿記検定2級の取得を目指し,本学入学後に当研究指導室に入室し,在学中の公認会計士試
験合格を目標とする。付属高校における簿記講座は,本学から講師を派遣し,土曜日の午後や夏季・春季の休業期
間等に実施し,毎年 200 名の付属高校生が受講している。
【問題点】
①付属校とのプレカレッジプログラムについて
本学の付属明治高等学校を対象とした「明治大学プレカレッジプログラム」は 2004 年度から開設し,3年目にな
る。受講者数は増加しているが,約 400 名の対象者(高校2年,3年生)に対し,20 名程度に留まっている。また,
開講授業数も,
全学部合計で約 50 コマであり,
プログラム全体が小規模な計画に留まっている。
学部間においても,
開講科目数,単位認定などについて差があり,高等学校側の趣旨,目的に対して,全学的な対応が不十分である。
②付属校以外とのプレカレッジプログラムについて
付属校以外とのプレカレッジプログラムは,全学的に推進する体制が整備されていない。3キャンパスの近隣高
等学校への取組みについては,各学部の対応に委ねている。
特別入試からの入学者については,各学部と教務部(学習支援推進委員会等)が連携して入学前教育や入学直後
の補習授業を実施している。これらの活動は理工及び農学部の学生への支援は充実しているが,文系6学部の学生
に対しては十分でない。
【問題点に対する改善方針】
付属明治高等学校を対象としたプログラムは,開講科目,受講生の大幅な増加を目指し,教務部,各学部及び高
等学校の連携強化が必要である。2006 年5月,これまでの組織を改組し,
「明治大学及び明治大学付属明治高等学
校・中学校の教育連携推進委員会」を設置した。今後,同委員会が中心となり,大学と付属校の教育的連携を強化
し,付属校としての特色を大きく打ち出し,大学入学後も本学学生の核となる人材の育成を目指す。
第3章 全学 -4-
/100
付属校以外の高等学校との連携プログラムは,まず,駿河台,和泉,生田の3キャンパス近隣の高等学校を対象
とし,展開することを検討する。また,出張講義等を充実させ,各地域の高等学校を対象としたプログラムも拡充
させる。
2005 年度出張講義一覧
日時
4 月 28 日
4 月 28 日
5 月 12 日
5 月 17 日
5 月 26 日
5 月 24 日
5 月 25 日
5 月 25 日
5 月 25 日
6 月 11 日
6 月 13 日
6 月 14 日
6 月 16 日
6 月 16 日
6 月 18 日
6 月 20 日
6 月 22 日
6 月 22 日
6 月 22 日
6 月 22 日
6 月 27 日
6 月 27 日
6 月 27 日
6 月 28 日
6 月 30 日
7月4日
7月6日
7月6日
7月6日
7月6日
7月6日
7月7日
7月8日
7月9日
7 月 11 日
7 月 11 日
7 月 11 日
7 月 11 日
7 月 12 日
高校名
県立長生
県立長生
県立佐倉
横浜市立南
山脇学園
都立富士高校
成田高校
成田高校
成田高校
富士見丘高校
県立千葉西
私立聖学院
都立日野台
県立柏中央
土佐塾
富士見高校
鎌倉学園
鎌倉学園
県立浦和一女
県立浦和一女
山手学院
山手学院
山手学院
県立鎌ヶ谷高校
県立水戸第一
都立城東
県立鉾田第一
県立鶴岡中央高校
専修大学松戸高校
専修大学松戸高校
専修大学松戸高校
都立武蔵高校
私立東京農大一高
私立東京農大一高
鎌倉学園
鎌倉学園
県立厚木高校
県立厚木高校
県立厚木高校
学部
政経
情コミ
政経
文
情コミ
農
法
文
農
文
法
文
文
法
文
商
文
営
文
情コミ
商
情コミ
理工
文
文
営
法
政経
理工
理工
農
農
商
理工
法
理工
情コミ
理工
農
2006 年度出張講義一覧(予定を含む)
日時
高校名
学部
7 月 12 日
7 月 12 日
7 月 12 日
7 月 14 日
7 月 14 日
7 月 15 日
8月2日
8月2日
9 月 20 日
10 月 5 日
10 月 12 日
10 月 12 日
10 月 13 日
10 月 13 日
10 月 14 日
10 月 14 日
10 月 25 日
10 月 26 日
10 月 27 日
10 月 27 日
10 月 29 日
10 月 31 日
11 月 7 日
11 月 8 日
11 月 9 日
11 月 9 日
11 月 14 日
11 月 15 日
11 月 16 日
11 月 17 日
11 月 17 日
11 月 24 日
12 月 6 日
12 月 7 日
12 月 13 日
12 月 14 日
12 月 15 日
12 月 15 日
12 月 16 日
5月9日
第3章 全学 -5-
県立厚木高校
県立上郷高校
川崎市立 橘
品川女子学院
品川女子学院
都立清瀬
県立鎌倉高校
県立鎌倉高校
県立杉戸高校
都立小松川高校
都立上野高校
県立薬園台高校
都立白鴎高校
都立白鴎高校
三輪田学園
三輪田学園
私立足立学園高校
私立大妻高校
群馬県立中央高校
県立越ヶ谷高校
私立浦和学院高校
県立熊谷高校
都立三鷹高校
土浦第二高校
札幌旭丘高校
県立下館第一高校
千葉市立稲毛高校
県立船橋東高校
県立小金高校
県立春日部東高校
県立国府台高校
県立所沢高校
県立茅ヶ崎北陵高校
県立館林高校
都立文京高校
都立小石川高校
県立八千代高校
県立八千代高校
国学院高校
県立佐倉高校
文
理工
理工
理工
情コミ
農
法
農
農
文
商
政経
政経
法
情コミ
法
経営
法
経営
政経
農
法
文
文
理工
政経
法
商
政経
文
法
経営
理工
文
商
文
文
商
政経
法
/101
5月9日
5月9日
5 月 26 日
5 月 26 日
5 月 23 日
6 月 10 日
6 月 10 日
6 月 12 日
6 月 12 日
6 月 13 日
6 月 15 日
6 月 19 日
6 月 20 日
6 月 21 日
6 月 21 日
6 月 21 日
6 月 21 日
6 月 28 日
6 月 21 日
6 月 24 日
6 月 22 日
6 月 22 日
6 月 26 日
6 月 27 日
6 月 28 日
6 月 28 日
7月5日
7月7日
7月8日
7月8日
7月8日
7 月 11 日
7 月 11 日
7 月 11 日
7 月 12 日
7 月 12 日
7 月 12 日
7 月 12 日
7 月 13 日
7 月 13 日
7 月 14 日
7 月 13 日
7 月 15 日
7 月 15 日
7 月 18 日
7 月 18 日
7 月 20 日
県立越谷北高校
県立越谷北高校
県立朝霞高校
山脇学園高校
〃
富士見丘高等学校
土佐塾高校
山手学院
山手学院
県立横須賀大津高校
県立水戸第一高校
都立城東高校
県立成東高校
鎌倉学園高校
鎌倉学園高校
都立富士高校
都立富士高校
都立富士高校
県立浦和第一女子高校
富士見高校
都立日野台高校
県立柏中央高校
山手学院
県立鎌ヶ谷高校
都立新宿高等学校
県立国府台高等学校
県立鉾田第一高校
東京農大一高
専大松戸高校
専修大学松戸高校
専修大学松戸学校
実践学園高校
県立上郷高校
私立鎌倉学園高校
都立白鴎高等学校
都立武蔵高校
県立厚木高校
県立厚木高校
県立厚木高校
県立厚木高校
都立清瀬高等学校
都立北多摩高校
品川女子学院
品川女子学院
県立千葉女子高等学校
県立佐原高等学校
県立長野吉田高等学校
文
理工
商
営
情コミ
情コミ
営
営
理工
営
文
営
理工
法
情
文
政経
農
文
法
商
文
文
営
文
政経
文
商
理工
理工
農
情コミ
理工
情コミ
理工
農
文
理工
文
理工
農
情コミ
理工
情コミ
法
文
文
8 月 23 日
9 月 14 日
10 月 4 日
10 月 10 日
10 月 11 日
10 月 12 日
10 月 13 日
10 月 13 日
10 月 13 日
10 月 18 日
10 月 21 日
10 月 24 日
10 月 25 日
10 月 25 日
10 月 25 日
11 月 2 日
11 月 2 日
11 月 2 日
11 月 2 日
11 月 2 日
11 月 6 日
11 月 6 日
11 月 8 日
11 月 13 日
11 月 15 日
11 月 17 日
11 月 22 日
11 月 22 日
11 月 22 日
11 月 29 日
11 月 30 日
12 月 12 日
12 月 13 日
12 月 14 日
12 月 15 日
12 月 18 日
12 月 22 日
第3章 全学 -6-
県立鎌倉高等学校
県立西湘高校
都立小松川高校
雙葉高校
都立上野高等学校
都立町田高等学校
県立弥栄東・西高校
三輪田学園高校
私立三輪田学園高校
都立新宿高等学校
武南高等学校
足立学園高等学校
県立川口北高校
県立薬園台高校
都立南多摩高等学校
県立越谷高等学校
県立越谷高等学校
県立船橋東高等学校
県立熊谷西
都立武蔵野北高校
都立三鷹高等学校
都立城東高等学校
千葉県立小金高等学校
千葉市立稲毛高等学校
札幌旭丘高等学校
県立蕨高等学校
成田高等学校
成田高等学校
成田高等学校
都立小石川高等学校
所沢高等学校
横浜市立南高等学校
県立大磯高等学校
県立大磯高等学校
県立八千代高等学校
國學院高等学校
八王子高等学校
農
理工
文
情コミ
文
法
理工
商
情コミ
商
理工
経営
商
政経
法
法(院)
政経
経営
文
法
文
経営
商
商
政経
法(院)
法
文
農
文
商
理工
文
文
文
政経
理工
/102
(カリキュラムと国家試験)
・国家試験につながりのあるカリキュラムを持つ学部・学科における,受験率・合格者数・合格率
各学部が教育カリキュラムを編成する上で,国家試験の受験対策のみを考慮することはない。この役
割は,学部以上に専門職大学院へ移行されつつあると言える。しかしながら,学部学生の就業意識のひ
とつとして,国家試験や各種資格試験の位置づけが強まっていることもあり,今後は,各種国家試験の
受験率,合格者数及び合格率の向上を視野に入れたカリキュラムの編成が必要である。
なお,学生の資格取得については,次の5課程を設置して対応がなされている。
ア.教職課程(詳細は本章 全学 26 頁参照)
イ.社会教育主事課程(詳細は本章 全学 36 頁参照)
ウ.学芸員養成課程(詳細は本章 全学 44 頁参照)
エ.司書課程(詳細は本章 全学 49 頁参照)
オ.司書教諭課程(詳細は本章 全学 56 頁参照)
また,本学においては,各学部の教育課程とは別に,次の3研究指導室を設置し,各学部のカリキュ
ラムとの連携を図りながら,国家試験の受験者を支援している。
ア.法制研究指導室(本章 全学 62 頁参照)
法曹界(判事・検事・弁護士)を目指す学生を対象に,基礎から専門学科までの学習指導を実施。
イ.経理研究指導室(本章 全学 64 頁参照)
公認会計士試験をはじめ,簿記・会計に関する資格試験の受験指導を実施。
ウ.行政研究指導室(本章 全学 66 頁参照)
主に,国家公務員採用Ⅰ種試験(法律・経済・行政職)を目指す学生を対象とし,1年次から4
年次までの一貫したカリキュラムで講義を実施。
(インターンシップ,ボランティア)
・インターンシップを導入している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
・ボランティア活動を単位認定している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
(1) インターンシップ
【現状】
本学はインターンシップについて,重要な教育活動の一環であるという基本的な認識をもって取り組
んでいる。学生はインターンシップを経験することにより,自らの適正や能力について実践的に考え,
大学での学習意欲を向上させることにつながるとともに,高い就業意識を身に付けることができる。今,
大学教育のなかにインターンシップを位置付けることは重要かつ必要なことであると考えている。
具体的には,本学では現在,大学全体として実施している全学版インターンシップと,各学部が独自
に実施している学部別インターンシップとがある。
全学版インターンシップは,原則として単位の認定を伴わない。対象となるのは,全学部の学生であ
り,インターンシップに対する意欲を持つ学生すべてに就業体験への門戸を開いている。また,各学部
が独自に実施しているインターンシップは,正規の授業科目として各学部のカリキュラムに位置付けら
れている。
本学では,2002 年度に「明治大学インターンシップ運営協議会」を設置し,実践的な学びの場である
インターンシップを全学的に推進する組織体制を構築し(本章 全学 73 頁参照)
,現在では,商学部,
政治経済学部,理工学部,農学部及経営学部(2006 年度より情報コミュニケーション学部)で単位認定
を行っている。また,これら4学部以外の学部生も,インターンシップに対する関心は高く,このため,
学生の所属を問わず参加できる「全学版インターンシップ制度」を設置し,教務部が窓口となって学生
のインターンシップ活動を支援している。
2006 年4月から,就職部と連携の下,「明治大学就職・キャリア形成支援センター」を設置し,イン
ターンシップ運営協議会は廃止することになった。協議会の役割は同センターが継続することになるが,
センターには,就職部も参画することになっているので,学生のインターンシップによる経験が高い就
業意識を育成し,就職活動にも有益と判断する。
さらに,同協議会は学部間共通科目運営委員会と連携し,全学生を対象としたキャリアデザイン講座
を開設し,2006 年度には学部間共通総合講座のテーマとして「全学版企業研修(インターンシップ入門)」
「スキルアップ講座」の2講座を新設し,既に開講されている「キャリア講座~あなたの将来設計~」
を含めて3講座を開設し,「明治大学就職・キャリア形成支援センター」に引き継いでいる。これらの
テーマにおける学生の関心は高く,多数の学生が履修し,好評を得ている。
第3章 全学 -7-
/103
【問題点】
教務部では 2004 年度から,旧インターンシップ運営協議会の下,全学部の学生を対象としたインタ
ーンシッププログラム(全学版インターンシップ)を実施している。この他に,商学部,政治経済学部,
理工学部,農学部,経営学部,情報コミュニケーション学部では,授業科目としてインターシップ実習
を設置しており,それぞれが独自のインターンシッププログラムを持っている。学部によっては,学部
実施のインターンシップの中に全学版インターンシップを組み入れ,単位認定を行っている。しかし,
このような運用は,学生及び受入機関にたいして不都合が生じる場合がある。
また,駿河台校舎と生田校舎において開催した全学版インターンシップガイダンスでは計 500 名以上
の多数の学生が参加し,学生の関心の高さがうかがえるが,現状では,受入機関の数が非常に少なく,
学生の要望に応えることができない。さらに,受入機関の開拓については,各学部及び教務部にて個別
に行っているので,学内での重複が生じている。
【問題点に対する改善方針】
2006 年4月,「明治大学就職・キャリア形成支援センター」を設置した。同センターの目的は,学生
の職業観及び職業に関する知識・技能を涵養し,主体的に進路を選択できる能力の育成を図ることにあ
る。現在,学部間で大きな差異があるキャリア形成教育について,今後は同センターが基軸となって全
学的なキャリア教育を推進することにより,これまでの様々な問題が解決されることになる。
さらに,就職部と組織的に連携されるので,学生へのキャリア教育が実際の就職活動と融合し,新卒
者早期離職,ニートの増加問題等に象徴される,社会問題への解決に対応できることになる。
(2) ボランティア
【現状】
2005 年4月,経営学部が全学に先駆けてボランティアセンターを設立し,障がい学生への支援活動に
対して組織的な取組みを開始した。また,政治経済学部では,一定期間,公共部門,NPO等でボラン
ティア活動をすることで,同学部の授業科目「社会実習」として単位認定している。
大学全体としてのボランティアへの取組みとして,災害ボランティア推進委員会が千代田区と連携し,
2003 年度から「災害救援ボランティア講座」を開設している。災害に対しては,地域社会,自治体,企
業及び大学等が連携・協力することが求められており,本講座は,ボランティア活動に必要な情報と機
会の提供及びリーダーの養成を目的として開講している。本講座の対象は,本大学学生をはじめ,千代
田区に在住,在学,在勤している社会人である。
【問題点】
本学のボランティアへの取組みは必ずしも充分ではない。総合大学として,障がい者に対しても多様
な教育・学習機会を提供することは社会的な使命である。さらに,在学生に対してもボランティア活動
への参加を喚起させるための取組みや制度改革を進展させ,教育事業の一環としてのボランティア活動
を活性化させる必要がある。
【問題点に対する改善方針】
現在,学生部において,全学的なボランティアセンター設立を構想し,具体化のための作業を進展さ
せている。
本学は,学生が積極的にボランティア活動へ参加することは,学生自身の自立支援を活性化する有効
な教育活動として位置付けている。ボランティアセンター設置趣旨を踏まえ,各学部,機関と連携し,
本学が教育機関として社会的責務を果たすよう同センターを運営する。
(履修科目の区分)
・カリキュラム編成における,必修・選択の量的配分の適切性,妥当性
【現状】
各学部は,自らの教育理念に基づき,どのような人材を育成するかという教育目標を達成するため,
特色ある教育カリキュラムを編成している。このため,履修科目の区分は,学部固有に設定している。
【問題点】
学生にとって,自らが求める目標に到達するまでの学修課程が明確で,理解しやすい履修科目区分の
設定が必要であるが,本学においては,各学部の教育課程を経常的に検証し,改善する取組みを担う全
第3章 全学 -8-
/104
学的な組織・機関を設置していない。
【問題点に対する改善方針】
このため,2006 年に教務部長のもとにワーキンググループを立ち上げ,カリキュラムの検証や教育プ
ログラムの開発を担う機関「教育開発・支援センター」の設立を検討している。
(授業形態と単位の関係)
・各授業科目の特徴・内容や履修形態との関係における,その各々の授業科目の単位計算方法の妥当性
【現状】
各授業科目の授業形態と単位数は,大学設置基準の規定に基づき,本学学則に次のとおり定めている。
ア.各授業科目の単位数は,1単位の授業科目を 45 時間の学修を必要とする内容をもって構成するこ
とを標準とし,授業の方法に応じ,当該授業による教育効果,授業時間外に必要な学修等を考慮して,
次の基準により単位数を計算する。
(ア) 講義及び演習については,15 時間から 30 時間までの範囲で別に定める時間の授業をもって1単
位とする。
(イ) 実験,実習及び実技については,30 時間から 45 時間までの範囲で別に定める時間の授業をもっ
て1単位とする。
イ.前項の規定にかかわらず,卒業論文,卒業研究及び卒業制作等の授業科目については,これらの学
修の成果を評価して単位を授与することが適切と認められる場合には,これらに必要な学修等を考慮
して,単位数を定めることができる。
ウ.各授業科目の授業は,15 週にわたる期間を単位として行うものとする。ただし,教育上特別の必要
があると認められる場合は,これらの期間より短い特定の期間において授業を行うことができる。
(単位互換,単位認定等)
・国内外の大学等と単位互換を行っている大学にあっては,実施している単位互換方法の適切性
・大学以外の教育施設等での学修や入学前の既修得単位を単位認定している大学・学部等にあっては,
実施している単位認定方法の適切性
・卒業所要総単位中,自大学・学部・学科等による認定単位数の割合
・海外の大学との学生交流協定の締結状況とそのカリキュラム上の位置づけ
・発展途上国に対する教育支援を行っている場合における,そうした支援の適切性
【現状】
学部間,及び他大学・機関との単位認定等については,次のとおり運用している。
ア.他学部科目履修制度
学生の多様な学習意欲を喚起させ,高度化,複雑化する現代社会で自立し,活躍する人材を育成す
るため,所属する学部の授業科目のみならず,他の学部が開設する授業科目を 60 単位の範囲以内で選
択履修することができる。なお,この場合に履修できる授業科目は,各学部が個別に定めることとし
ている。
イ.単位互換制度
各学部教授会の決定に基づき,①他の大学,又は短期大学において履修した授業科目について修得
した単位,②学生が外国の大学又は短期大学が行う通信教育における授業科目を日本国内において履
修し,修得した単位,③学生が行う短期大学又は高等専門学校の専攻科における学修その他文部科学
大臣が別に定める学修,④学生が本学に入学する前に,大学又は短期大学において履修した授業科目
について修得した単位(科目等履修生として修得した単位を含む。)について,一定の制限のもとに
本学における授業科目の履修とみなし,単位を付与することができるとして,本学学則に定めている。
本学における他学部履修制度及び他大学等との単位互換制度は,学生の広範囲な学修の機会提供に応
え,さらに学生の主体的な学修意欲を促進する上で,適正な制度であると判断するが,単位互換制度
については,国外の大学・研究機関を含めて,相手校の開拓や教育プログラムの開発を拡充しなけれ
ばならない。海外の大学との学生交流協定や単位認定等については国際交流センター(本章 全学
93 頁参照)に詳細を記載した。
(開設授業科目における専・兼比率等)
・全授業科目中,専任教員が担当する授業科目とその割合
第3章 全学 -9-
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・兼任教員等の教育課程への関与の状況
【現状】
本学は,約3万人の学部学生に対して,1万6千コマに及ぶ授業科目を開設している。このうち専任
教員(専任教授,専任助教授及び専任講師)は,各学部が定めた主要科目を担当し,兼任講師は,専ら
各学部の授業科目を補完的に担当している。
専任教員は,全授業科目の6割を担当し,兼任教員との割合において妥当と判断する。また,兼任講
師に対しては,出講時に出講簿への押印を義務づけ,授業の完全実施を促しており,教育活動への責任
ある対応を求めている。
専任・兼任の比率については,人件費等の財政上の問題も勘案し,カリキュラムの簡素化と任期付専
任教員等の任用を軸として,可能な限り専任教員を増員する方向性を追求する。しかし,専任・兼任と
ういう画一的な区分より,むしろ高等教育界における教員任用形態の多様化を活用し,柔軟で機動的な
教員組織を構成することを優先すべきである。なお,現代社会の第一線で活躍する人材や特色ある教育
プログラムを展開する人材等を客員教員として積極的に招聘し,本学及び各学部の教育活動を活性化さ
せている。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
・社会人学生,外国人留学生,帰国生徒に対する教育課程編成上,教育指導上の配慮
【現状】
各学部は,社会人特別入学試験及び外国人留学生特別入学試験を実施し,社会人学生と外国人留学生
を受け入れている。
本学は,3キャンパスに「学習支援室」を設置し,社会人学生,外国人留学生の他,スポーツ技能を
重視した入学試験で選抜された学生等も含めて,個人別で丁寧な学習指導を実施している。学習支援室
には,助手,TA及び職員を配置し,各学部のカリキュラムと連携した指導を原則としている。更に,
2005 年に発足した,学習支援推進委員会が,スポーツ技能重視入学者への英語授業(和泉・生田キャン
パス),外国人留学生を対象とした英語補習講義(和泉・生田キャンパス),付属高校教員や外部専門講
師による基礎的科目の補習講義(生田キャンパス)を立案し,運営している。なお,外国人留学生へは,
国際交流センターが中心となって,学習支援も含めた大学生活の全般的な支援に取り組んでいる。
本学のような大規模大学であっても,多様化する学生個々のニーズに対応した,きめ細やかな学習支
援が必要である。学習支援室で行う学習指導,特別入学生を対象とした英語の授業,基礎科目の補習講
義等,学習支援推進委員会が中心となって取り組む諸施策は,大学としての社会的な責務として位置付
け,今後も拡充する。(学習支援室の詳細は本章 全学 90 頁を参照)
(生涯学習への対応)
・生涯学習への対応とそのための措置の適切性,妥当性
【現状】
本学は,生涯学習を振興し,併せて大学における学習機会の多様化に適応するため,科目等履修生,
聴講生等を受け入れている。また各機関では,公開講演会等を開催し,学外からの参加者を募っている。
更に,本学の知的資産を社会へ発信する,生涯教育の拠点として,
「リバティ・アカデミー」を 1999
年度より開講している。開講当初は,36 講座,受講者数 2,000 名の規模であったが,現在では,320 講
座,受講者数 18,000 名にまで展開している。
科目等履修生,聴講生の受け入れは,正規学生の教育・学習活動へ影響が無い範囲で行うことを原則
としているが,大学としての使命を果たすため,本大学の立地条件の優位性を社会へ還元すべきである。
リバティアカデミーの拡充と併せて,再考すべき課題である(リバティ・アカデミーについては,第9
章 12 頁参照)。
(正課外教育)
・正課外教育の充実度
【現状】
正課外教育としては,各学部・研究科が実施するものの他,全学的な教育活動として,2003 年度より
「災害救援ボランティア講座」を開設している。同講座は,阪神・淡路大震災等の大規模災害を契機と
し,災害への支援・復興事業には,社会を構成している自治体と企業,そして大学が有機的に連携・協
力してこれにあたる必要があることを認識し,全学的な正課外教育として開設している。同講座の目的
は,①学生に対して市民活動の情報と活動の場を提供し,ボランティアリーダを養成すること,②大学・
第3章 全学 -10-
/106
学生と地域社会の相互関係を構築し,地域社会発展や市民活動の活性化に寄与することである。
同講座は,千代田区及び財団法人日本法制学会と連携して実施し,本学学生の他,千代田区内の大学
に在籍する学生,当該大学教職員等を対象としている。募集人数は毎年約 40 名であり,このうち本学
学生の参加者数は 2003 年度 25 名,2004 年度 26 名,2005 年度 32 名である。
本講座の修了した者には,財団法人日本法制学会災害ボランティア推進委員会よりセーフティリーダ
ー認定証,また東京消防庁より上級救命技能認定証が交付される。
この他,全学的な正課外教育の活動としては学生部(第 10 章 10 頁参照),その他,図書館,博物館
等による公開講座においても学生への正課外教育が行われている。
(教育効果の測定)
・教育上の効果を測定するための方法の適切性
・教育効果や目標達成度及びそれらの測定方法に対する教員間の合意の確立状況
・教育効果を測定するシステム全体の機能的有効性を検証する仕組みの導入状況
・卒業生の進路状況
・教育効果の測定方法を開発する仕組みの導入状況
・教育効果の測定方法の有効性を検証する仕組みの導入状況
・教育効果の測定結果を基礎に、教育改善を行う仕組みの導入状況
・国際的、国内的に注目され評価されるような人材の輩出状況
【現状】
本学は学生の主体的な学習を促進するため,本学及び各学部の教育活動が,学生へどのような教育効
果をもたらしたか,これを測定することは重要な教育活動であると位置づけている。
2004 年度から,半期履修制を導入し,学業成績を半期毎に評価することとした。同時にGPAを算出
し,単位の修得状況だけではなく,学業成績を質的側面から測定し,半期毎のサイクルで,学生への修
学指導を実施している。また,先行して開設していた理工学部に続き,2005 年度後期から3キャンパス
に学習支援室を設置し,学習支援室における学生指導状況を数値的に蓄積し,これを調査・分析する試
みを開始した(学習支援室については,本章 全学 90 頁参照)。
大学及び各学部の教育目標の達成と教育内容の充実を図るため,2002 年 11 月に設置された教員研修
(FD)委員会により,教育効果の測定は全学的に実施されている(詳細は本章 全学 84 頁参照)。
しかし,学生への教育効果を測定する手法や測定結果のフィードバック等について,全学的な検討をさ
らに進呈させるため,2006 年後期に「教育開発・支援センター」の設置が予定されている。
卒業生の進路状況は本学の就職部が管理運営を担っている(詳細は第 10 章 13 頁参照)。
(厳格な成績評価の仕組み)
・履修科目登録の上限設定とその運用の適切性
・成績評価法、成績評価基準の適切性
・厳格な成績評価を行う仕組みの導入状況
・各年次及び卒業時の学生の質を検証・確保するための方途の適切性
・学生の学習意欲を刺激する仕組みの導入状況
【現状】
履修科目登録の上限については,各学部により設定を行い,適切に運用がなされている。
本学は,2004 年度1年次入学者を対象とし成績評価基準の改正を図り,これまで 50 点以上としてい
た合格点を 60 点以上とし,合格の判定を3段階から4段階評価へと細分化した。併せてGPA制度を
導入し,成績を質的側面から評価することとした。この目的は,本学が高等教育機関としての社会的責
任を果たす上で,成績評価が公平性と信頼性を保ち,学生の学習意欲を喚起し,主体的な学習活動を促
進することにある。
成績評価については,評価基準の厳格化とGPA制度の導入を並行して実施したが,この効果をより
高めるためには,一定度の相対的評価を導入する必要があり,今後,
「教育開発・支援センター」
(2006
年度後期設置予定)において検討を進めることになる。
なお,理工学部及び農学部においては,各学年時において,極端な成績不良者に対する退学勧告制度
を導入している。これは,学生への学習支援,修学指導と併せて公平性,かつ透明性ある厳格な成績評
価基準の下に実施している。
(履修指導)
第3章 全学 -11-
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・学生に対する履修指導の適切性
・オフィスアワーの制度化の状況
・留年者に対する教育上の配慮措置の適切性
・学習支援(アカデミック・ガイダンス)を恒常的に行うアドバイザー制度の導入状況
・科目等履修生、聴講生等に対する教育指導上の配慮の適切性
【現状】
本学は,2004 年度1年次入学者から成績評価の厳格化を図ると同時に,半期履修制度を導入し,成績
を半期毎に出し,修得単位とGPAの両面から学生の修学指導を実施することとした。修学指導の内容,
方法は,各学部の教育目的に基づくものとし,学部便覧,又はシラバスに明記し,学生に周知すること
としている。さらに,3キャンパスに学習支援室を設置し,職員,助手,TA等が随時修学指導にあた
る体制を整えている。
履修指導については,
「Oh-o! Meiji システム」のポータル・ページを活用し,FAQやオンライン
サポート等で,学生からの大半を占める単純な質疑を解消し,学生と直接対面する窓口では,可能な限
り,内容が深く専門的になる相談等について,学生にとってきめ細かい対応が必要なものに充分な時間
が取れるよう配慮している。
オフィスアワーについては,各学部や研究科単位で設定し,運用がなされている。
留年者についても各学部や研究科により適切な措置がとられている。
(教育改善への組織的な取組み)
・学生の学修の活性化と教員の教育指導方法の改善を促進するための措置とその有効性
・シラバスの作成と活用状況
・学生による授業評価の活用状況
・FD活動に対する組織的取り組み状況の適切性
・FDの継続的実施を図る方途の適切性
・学生満足度調査の導入状況
・卒業生に対し、在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
・雇用主による卒業生の実績を評価させる仕組みの導入状況
・教育評価の成果を教育改善に直結させるシステムの確立状況とその運用の適切性
【現状】
本学は,2002 年 11 月,これまで教務部委員会の下で活動してきた「授業改善を推進するためのプロ
ジェクト」を発展的に解消し,「明治大学教員研修(FD)委員会設置要綱」を制定し,学長の下に,
教員研修(FD)委員会を発足させた(教員研修(FD)委員会については,本章 全学 84 頁参照)。
教員研修(FD)委員会の目的と任務は,大学及び各学部の教育理念に基づく,教育目標を達成する
ため,教員が主体的に行う教育・授業の改善への支援を組織的に行うことである。
委員会は,FD活動を主に「授業改善」と「教員研修」に位置付けし,学内の全教職員の理解を得な
がら,①学生による授業評価(2005 年度から授業改善と名称変更)アンケート,②新任教員研修,③シ
ンポジウム,講演会,④学外機関主催の研修会への派遣,等を実施し,一定の効果を収めてきた。
しかし,21 世紀の知識基盤社会において,大学が社会的負託に応え,高等教育機関としての責務を果
たすためには,現在のFD活動を大きく発展させ,教授法や学習方法の改善に留まらず,各学部の教育
カリキュラムの改革や全学的な教育プログラムの開発等を任務として活動しなけらばならない。このた
め,教員研修(FD)委員会を発展的に解消させ,授業改善,教員研修だけではなく,より広義にFD
活動を推進し,教育の根幹を改革する取組みを進展させる全学的機関の設置が必要である。
2006 年4月現在,教務部長の下にワーキンググループを発足させ,
「教育開発・支援センター」の設
置を検討している。
また,本学は教育改革に対し,大学の教育理念に基づく教育の質的向上を図るとともに,社会に有用
な人材を育成するための優れた教育改革への取組に対する支援・推進を目的として,学長の下に明治大
学教育改革支援本部(詳細は本章 全学 88 頁参照)を設置した。この本部により組織的な改革が推進
されており,文部科学省が行う大学の教育改革への支援事業-GP(Good Practice)-にも十分な対
応がなされ,評価がされている。
<シラバスの作成と活用方法>
本学では,2001 年度から全学的にシラバス作成の標準化を図り,併せてこれを電子データ化し,「O
h-o! Meiji システム」のクラス・ウェブから,学生,教職員,学外者への公開を可能としている。ま
た,過年度のシラバスも公開することにより,担当教員の講義内容,教授法等への改善,工夫の取組み
第3章 全学 -12-
/108
が年次ごとに比較できる。
シラバスの公開については,各学部で公開レベルを決定しているが,多くの学部が教員個々の判断に
委ねている。日々の授業は,学部の教育理念に基づき,学部のカリキュラムに従って実施されるべきも
のであるので,これを周知するシラバスは,社会へも積極的に公開し,授業内容がカリキュラムと比較
して適切か常に検証されるべきものである。シラバスの公開は,大学として制度的に検討しなければな
らない。
<ホームカミングデー>
本学では毎年,卒業生との連携強化を目的として明治大学ホームカミングデーを開催している。2005
年度は第8回目を向かえ,卒業後 10~50 年目を迎える卒業生(約 2,500 名)を招待し,実施された。
(授業形態と授業方法の関係)
・授業形態と授業方法の適切性、妥当性とその教育指導上の有効性
・マルチメディアを活用した教育の導入状況とその運用の適切性
・「遠隔授業」による授業科目を単位認定している大学・学部等における、そうした制度措置の運用の
適切性
【現状】
本学は大学設置基準に基づき,授業形態を次の五つに分類し,各学部の教育目標の下に授業を実施し
ている。
ア.講義:教室における対面教育を重視している。語学については,一部を除き少人数(30 名~40
名)制を原則に実施している。
イ.演習:少人数で,問題の提起,手段の発見,結果解明等,学生による主体的な活動を重視してい
る。
ウ.実技:少人数クラス単位制で実施している。各キャンパスでの,体育館,グランド等を活用し,
多彩な授業科目を設置している。
エ.実習:社会学,臨床心理学,情報科学,機械工学,電子通信科学,スポーツ科学等,様々な分野
で授業科目を開設している。学生個人が希望するテーマを,少人数で履修することを原則として
いる。
オ.実験:理工学部及び農学部で授業科目を開設している。学生が課題,テーマを設定し,大学が実
験に必要な環境を整備し,学生と担当教員の間でレポートの提出と評価を頻繁に行い,効果的に
授業を実施している。
本学における授業形態と授業方法については,一定以上の水準にあり適切であると判断するが,科学
技術が進展する高度社会においては,現状に満足せず,常に新しい分類の開拓,授業方法を探求する取
組みが必要である。
<マルティメディアを活用した教育>
本学は,1980 年代後半から,3キャンパスにおける情報環境の整備を進展させている。駿河台キャン
パスリバティタワー,和泉キャンパスメディア棟,生田キャンパスA館は,一般教室であるが,ほぼ全
座席に情報コンセントを設置し,教室,教卓には,液晶プロジェクター,スクリーン,パソコン,DV
D,OHC等の機器を備えている。
また,ハード面のみならず,ソフト面においても,①2001 年から「Oh-o! Meiji クラスウェブシス
テム」
(平成 15 年度特色ある大学教育支援プログラム採択時の基幹となる取組み)の本格的運用,②100
コンテンツプロジェクトによる教育コンテンツの作成等,全学的な拡充を進展させている。
2005 年4月より,教学の組織として「教育の情報化推進本部」を設置した。同本部は,従来は主に語
学教育で利用された「AV機器」を撤廃し,様々な形態の授業の中で,最新の情報メディア技術を活用
し,対面教育の活性化に取り組んでいる(詳細については本章 全学 23 頁参照)
。
<遠隔授業>
2002 年後期,教務部・情報システム部及び国際交流センターが連携し,本学協定校である,アルバー
タ大学(カナダ)とインターネットを利用した実験的遠隔授業交換を実施した。
この経験を踏まえ,2003 年度後期に,学部間共通外国語国際理解講座の講義(担当:バワーズ,ジェ
イムズ.R商学部専任教授)において,アルバータ大学と本学駿河台キャンパス及び和泉キャンパスの
3地点を結んだリアルタイムの遠隔授業を複数回実施した。
本学は,今後,インターネットを利用することを前提に遠隔授業の実施を検討するが,革新が著しい
情報技術の中で,費用面も考慮しながら適切な手段を選択する必要がある。
第3章 全学 -13-
/109
(3年卒業の特例)
・4年未満で卒業を認めている大学・学部等における、そうした制度措置の運用の適切性
【現状】
本学では,学校教育法の規定に基づき,入学後3年(又は3年半)間で卒業に必要な単位を優秀な成
績で修得し,本人が希望した場合,学部教授会の議を得て卒業させる,「早期卒業制度」を導入し,こ
れを学則に定めている。この制度は,現在,理工学部(応用化学科)及び経営学部教授会が導入を決定
し,経営学部では,2005 年3月4名,2006 年3月3名の学生を卒業させている。
学生に早い段階で将来の計画や進路選択の機会を与え,目的をもった学習計画の下に大学生活を有意
義に過ごさせることが重要である。優秀な学生には特例的な学習計画を立案させ,学部を3年(又は3
年半)で卒業することにより,さらに高度で専門的な道へ進むことを可能とさせている。
経営学部では,制度の趣旨,目的を学部生に周知させ,対象者の資格,実施方法等についても学部内
で規定しており,この制度を厳格に運用している。この制度の趣旨は,適正であり,今後は全学部へと
拡充すべきと判断する。
【改善方針】
2004 年4月,学長が「外部評価に耐えうる大学」を基本方針として学内外に表明して以来,本学は様々
な改革を進展させてきた。学長,学部長会,教務部委員会及び学生部委員会の任務や権限を明確化させ
るため,学則を始めとし,関係諸規程を整備し,併せて教学に係る制度・組織の統廃合と新設を図った。
これら一連する改革の過程で,最終的に集約される課題は,「教育開発・支援センター」の設立であ
る。同センターの目的と任務は,本学及び各学部の教育理念に基づく教育目標の達成のために,学長の
下,各学部における教育研究活動の全体を鳥瞰し,各学部と連携しながら,カリキュラムや教育研究プ
ログラム,教育研究に係る制度や体制等について,計画,開発し,経常的な評価と改善を支援する取組
みを促進させることにある。
現在,2006 年後期に同センターの設立を目途として,教務部長を中心に各学部教務主任が協力するワ
ーキング・グループを発足させ,検討を開始している。センター設立後は,これまでの教育改革との整
合性を図りながら,新たな計画を立案・具体化させ,強力に改革を推進させることになるので,早期卒
業制度も全学的に実施されることになる。
第3章 全学 -14-
/110
2.学部間共通教育(学部間共通科目運営委員会)
1.使命・目的・教育目標
本学の各学部に設置される共通科目(情報科学センター,国際交流センター,資格課程委員会及び学
部間共通外国語教育運営委員会のそれぞれが運営する授業科目を除く。以下「学部間共通科目」という。)
の授業計画を立案し,その円滑な運営を図るため,教務部委員会の下に,専門部会として明治大学学部
間共通科目運営委員会は置かれている。
本委員会では,主に(1)学部間共通総合講座,(2)共通語学科目,(3)体育実技科目の学部間相互乗入
れ,(4)二部学部間共通科目等の共通科目について教務部委員会をはじめとする教学関連委員会・セン
ターとの連携を図りながら運営している。
各学部間における科目履修,単位修得の制限を緩和し,学部間共通科目化を推進することが,本委員
会の大きな目的である。
2.現状
(1) 学部間共通総合講座について
①学部間共通総合講座の趣旨
社会の制度や仕組みが大きく変化するなかにあって,本学の教育理念・目的は「個性を大切にし
自立心の強い人材を育成する」ことにある。
学部間共通総合講座は,この教育理念・目的に基づきカリキュラムを編成しており,学部のカリ
キュラムを基礎としながら,なお学部や文・理の枠を越えた学際的講義を学生へ積極的に提供する
ことにより,幅広い学問的視野や問題発見能力,判断能力を培うことを主眼とするものである。本
学の全ての学生にとって有益となるテーマについて講座設置の趣旨を踏まえ多様な講座を設定し
ている。また,各々の講座は日頃接することのできない,社会の各分野で活躍するゲスト講師を多
数配置し,現代社会で話題となっている事柄,最先端のホットなニュース等をテーマに取り上げて
いる。
②学部間共通総合講座の体系について
この講座は,(ア)地球市民講座,(イ)技術戦略とビジネス講座,(ウ)現代メディア講座,(エ)キ
ャリアデザイン講座,(オ)歴史・哲学講座の5つの体系に分類することができる。各講座の趣旨は
次のとおりである。
(ア)地球市民講座
一つの課題がすなわち地球的,国際的かつ,地域的に必然的に波及する時代の中で,私達がこ
の時代を地球市民として歩み,その上で考えねばならぬ直面する問題を正面から捉えるための講
座である。
(イ)技術戦略とビジネス講座
著しい技術の進歩により,情報化や国際化が急速に進む企業において,新たに開発された技術
やそれに伴う知的財産を企業戦略を通して考える。また,起業や知的財産の問題,情報化や国際
化がもたらす新たな経営動向など,これらの講座で認識を深める。
(ウ)現代メディア講座
政治・経済・社会・スポーツ・外信・科学・論説担当など,情報メディアの第一線の記者が取
材を通して得た経験をもとにした講義は,現代社会の実像に迫り,現代社会の特徴を浮き彫りに
することができる。また,メディアの活動・役割についても学ぶことができる。
(エ)キャリアデザイン講座
目的をもって学習することが大切な時代となっている。人生と仕事について,基本的な事柄を
学び,キャリアデザインと就職について学ぶ機会を得る。また,社会の第一線で活躍する職業人
の話を聞くことも可能。
(オ)歴史・哲学講座
受講する学生が身体も精神も包括する存在として,己を見つめ,己の歴史的位置を確認し,未
来に向けての生き方を探求することを目的に設置している。学ぶことの楽しさについて再認識す
ることを期待し,幅広い視野,柔軟な好奇心の涵養を目的として設置した。
③学部間共通総合講座の運営方法について
この講座は,経験豊富な本学教授陣に加え,広く学外からその分野の第一人者を講師として招聘
し,3~8名の講師が輪番制で時宜を得たテーマを適宜提供する「総合授業」として実施している。
第3章 全学 -15-
/111
一つの講座は,学年暦に従って授業が設定されており,各授業ごとにテーマが設定されている。
このテーマごとに,各々の分野のエキスパートがリレー方式で講義を進め,結果として大きなテー
マ(講座のタイトル)について総合的に理解する。複数の講師から学ぶことにより,多角的なもの
の見方を養い,教科書では学べない多様な実地体験を聞けるメリットがある。
学部間共通総合講座は,1995 年度から開設しており,2005 年度は,3地区において,20 テーマ
36 講座を開設し,前後期合わせて 6,300 名を越える学生が受講している。
(2) 共通語学科目について
共通語学科目としては,ロシア語 10 コマ(文学部設置科目6コマ,経営学部設置科目4コマ),ス
ペイン語1コマ(文学部設置科目)を設置している。ロシア語は,法学部・商学部・文学部・経営学
部・農学部の学生,スペイン語は,政治経済学部・文学部・農学部の学生に受講する機会を提供して
いる。
(3) 体育実技科目の学部間相互乗入れについて
和泉地区は 2000 年度から,生田地区は 2001 年度から選択体育実技科目の学部間相互乗入れを実施
している。これにより,希望する学生に対し,希望する種目の受講機会を拡大して提供することがで
きた。
さらに,2005 年度は和泉地区開講科目に関しては,2年次に限って募集の際の科目設置学部在籍学
生優先の受付をとりやめ,他学部も含めて一斉に募集する方式へと改善を図り,学生の受講機会を拡
大することができた。
(4) 二部学部間共通科目について
二部の学生は時間割上の制約(3講時から2講時)によって,科目の選択がせばめられている状況
にある。この制約を補うために他学部の豊富な科目を履修することができるよう,学部間で共通化し
た,「二部学部間共通科目」を開講している。さらに,2005 年度には二部教育審議会で,今までの教
養科目中心の設置から,2006 年度開講科目については,履修の利便性を考慮し,専門科目まで拡大し
開講することを決定した(二部教育審議会については,本章 全学 70 頁参照)
。
3.長所と問題点
本学に設置されている多様で豊富な科目を科目設置学部以外の学生に開放し,共通化を推進すること
は,学生にとっては幅広い科目の履修(所属学部には設置されていない科目の履修)が可能となり,有
意義といえる。ただし,学部の教育理念によってその科目の位置付け,捉え方に差異がある。科目の取
扱い方,及び履修可能な上限単位数等については学部ごとに異なるので検討を要する。
(1) 学部間共通総合講座について
近年,魅力ある講座を多数設置したことにより履修者数が激増している。ただ,このことにより,
特に和泉校舎では教室の確保が困難な状況となっているため適正な授業規模に向けて,受講者数を制
限している講座もある。
和泉校舎における開設講座と履修状況
2005 年度
8テーマ
12 講座
3,355 名
2006 年度
10 テーマ
16 講座
2,720 名
(2) 共通語学科目について
本学では,ロシア語,スペイン語の設置科目数は少ない状況であるが,共通化により,これらの科
目を履修する機会を多く与えることができる。
(3) 体育実技科目の学部間相互乗入れについて
スポーツには多種多様な種目があるが,この科目の学部間相互乗入れにより,幅広い種目(卓球,
ゴルフ,水泳,サッカー,剣道,フィットネス,アクアスポーツ他)の中で興味のある種目,所属学
部では設置されていない種目の科目を履修する機会を与えることができる。
(4) 二部学部間共通科目について
二部廃止に伴い,二部設置の各学部の設置科目数は学年進行により年々減少する。これにより,履
修選択の幅が狭まらないよう,他学部の科目を活用し,共通化することは,学生にとって大きなメリ
ットとなる。
4.将来の展望
本学では,多様な科目設置機関(学部,資格課程,情報科学センター,国際交流センター,学部間共
通外国語運営委員会及び学部間共通科目運営委員会がある。)による科目群・科目数が全体として調整
されずに設置されている,今後更に科目の細分化が進行していくならば,種々の問題が生じてくる危険
第3章 全学 -16-
/112
性がある。
大学は,2004 年4月をもって,二部の学生募集の停止と新学部を含めた「文系全学部の授業設計のフ
レックス化」を決定している。「授業設計のフレックス化」は,文系全学部がそれぞれに望ましい形で
これを実施することを承認しているが,その際各学部とも学部間での科目の共通化,連携の強化を提言
している。
このような学部間共通化の必要性が要望されている状況に鑑み,本委員会では,各学部,各関係機関と
の連携を強化し,学部間の科目の共通化の基本方針についての諸方策を推進していきたい。
(1) 学部間共通総合講座について
2006 年度以降も,各学部,各機関から積極的により魅力ある斬新な講座を提供してもらい,学生の
関心にも配慮したテーマを設定するとともに,今後とも広く学外からその分野の第一人者を講師とし
て招聘し,受講生の知的好奇心を向上させ学問的成果を上げるよう努めていきたい。
(2) 共通語学科目について
2006 年度以降も,社会状況の変化,学生からの要望等を考慮しながら,共通語学科目について検討
し,共通化を推進していきたい。
(3) 体育実技科目の学部間相互乗入れについて
2006 年度以降も体育教員会と連携を強化しながら,相互乗入れをさらに推進していきたい。
(4) 二部学部間共通科目について
2006 年度以降も,二部教育審議会でこのことについて検討し,二部学生に履修選択の機会をできる
だけ多く与えられるよう,共通化を推進していきたい。
第3章 全学 -17-
/113
3.学部間共通外国語教育(学部間共通外国語教育運営委員会)
(使命・目的・教育目標)
【現状】
学部間共通外国語教育運営委員会は,
「『個』を強くする大学」という本学の教育理念に基づき,国際
感覚を持った「個」を育成するための,会話科目を中心とした外国語科目を設置している。2004 年度よ
り名称を「学部間共通外国語教育」と変更し学部を超えて横断的に履修できる外国語科目を設置してい
る。
設置趣旨の周知については,冊子「学部間共通外国語シラバス」を作成し,全学生を対象に配布してい
る。また,新年度ガイダンス時に設置科目の紹介や履修ルールの説明を行い,周知を図っている。
【長所】
英会話・ドイツ語会話・フランス語会話・中国語会話に加え,ロシア語・スペイン語・ギリシア語・
ラテン語・イタリア語・朝鮮語・アラビア語など,学部に設置されてない多彩な外国語科目を設置し,
学生に多様な学習機会を提供している。クラスはレベル別であり,主にネイティブスピーカーを中心と
した講師による授業が展開されており,実践的な会話力・語学力を修得できる。また,留学生対象の日
本語科目も設置されている。設置している科目は会話科目だけではなく,英・独・仏の3語種について
は現在「資格英語」「資格ドイツ語」を開講しており,2006 年度は「資格フランス語」も開講する。留
学・就職に必要な資格取得を目標とした科目も設置されている。学部横断で設置されている科目である
ため,本学学生であれば3キャンパスのうちいずれの地区でも受講可能である。レベル別のクラスが開
設されていることに加え,ネイティブスピーカーを中心とした講師陣を配置し,受講生は自分のレベル
や到達目標に合わせた科目を履修することが可能なように配慮されており,学生に多様な学習機会を提
供している。
【問題点】
現在,会話科目を中心に科目を設置しているが,学生・時代のニーズにあった形での科目・授業形態・
履修ルールについて随時検討していく必要がある。
【問題点に対する改善方針】
開講科目の充実・履修ルールについて,委員会または委員会の下のワーキンググループにおいて,常
時検討し,ニーズに合わせ柔軟に対応ができるようにする。
(使命・目的等の検証)
【現状】
全科目担当者を対象とした授業改善アンケートを実施するほか,夏季・春季に開講される集中講座に
おいて受講生を対象にアンケートを実施している。結果は講座運営母体である「学部間共通外国語教育
運営委員会」にて報告され,次回講座開講時の改善点として引き継いでいる。
【長所】
学生のニーズを直ちに適切に把握することができるため,改善点を把握しやすいことが挙げられる。
【問題点】
アンケート質問項目を常に見直し,逐次改善を図ることが必要である。
【問題点に対する改善方針】
アンケート項目について,適切な質問項目の設定等,講座実施前にその都度点検を行う。
(教育課程)
【現状】
2005 年度は 136 クラスが開講された他に長期休暇中の特別講座として,夏季休暇中に「集中講座」の
英会話・ドイツ語会話・フランス語会話・中国語会話の4語種が開講されるほか,協定校(カナダ・ヨ
ーク大,イギリス・シェフィールド大)への短期語学研修留学も実施される。春季休暇中には英会話の
第3章 全学 -18-
/114
合宿の集中講座が開講される。また,「国際理解講座」としてより国際理解を深めるための講座が英語
圏・ドイツ語圏と開講されていたが,2006 年度よりフランス語圏・中国語圏についても開講が決定した。
資格試験への対応として「資格英語」「資格ドイツ語」「資格フランス語」の3科目を設置しており,
留学や就職の際に必要なスキルを修得できる科目を設置している。
これらの科目は学部によっては卒業用件単位に算入することが可能である。
【長所】
学部横断で設置されている科目であるため,学生に多様な学習機会を提供している。集中講座につい
ては,ネイティブスピーカーを講師とし,少人数で行われる授業により短期間で学習効果をあげること
が可能である。
【問題点】
現在会話科目を中心に科目を設置しているが,学生・時代のニーズにあった形での科目・授業形態・
履修ルールについて随時検討していく必要がある。
【問題点に対する改善方針】
開講科目の充実・履修ルールについて,委員会または委員会の下のワーキンググループにおいて,常
時検討し,ニーズに合わせ柔軟に対応ができるようにする。
(カリキュラムにおける高・大の接続)
【現状】
本委員会は付属校である,明治高校に設置されている「自主選択講座」より中国語講師派遣の依頼を
受け,2コマ開講している。
【長所】
高等教育への導入として外国語教育を提供している。
(授業形態と単位の関係)
【現状】
本学は 2004 年度より半期制を実施しており,学部間共通外国語も大学のルールに則り半期1単位と
する授業を開設している。長期休暇中に開講する集中講座については,授業時間を 60 時間確保し2単
位を与えている。
【長所】
集中講座については授業時間数の確保を厳格に行っている。
(単位互換,単位認定等)
【現状】
夏季に実施される協定校(カナダ・ヨーク大,イギリス・シェフィールド大)への短期語学研修留学
では,レベル別のクラスを開設しているが,レベルに応じて学部の卒業用件単位として算入することを
可能としている。また,春季に開講される英会話春期集中講座では協定校であるカナダ・ヨーク大学か
ら教育実習生を招いて授業を展開している。
【長所】
通常の授業開講期に,所属学部の履修状況等によって外国語科目を履修できない学生に対して学習機
会を提供できる。少人数クラス・短期間での学習により,高い教育効果が期待できる。
【問題点】
常により多くの学習機会の提供,及び,海外の他の協定校との緊密な連携を検討する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
現在のカリキュラムは堅持した上で,今後の発展性及び方向について検討に着手する。
(開設授業科目における専・兼比率等)
第3章 全学 -19-
/115
【現状】
2005 年度に開講された 136 クラスのうち,専任教員が担当したのは3クラスのみである。外国語会話
科目を中心に設置しているため,ネイティブ・スピーカーである外国人兼任講師が授業の大半を担当し
ている。
【長所】
ネイティブスピーカーによる自然な外国語に触れる機会を作ることで,高い教育効果が期待される。
【問題点】
兼任講師陣に対し本学の教育理念のさらなる徹底が必要である。
【問題点に対する改善方針】
今後もネイティブスピーカーを中心とした講師陣の充実を図る。教育理念の徹底については,現在は
新年度始めに担当講師を対象に説明会を開催しているが,この会合の内容を充実させることで対応する。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【現状】
外国人留学生を対象に日本語科目を3クラス設置している。
【長所】
2004 年度より設置科目の内容を「オーラル」
「文章」「総合」とし,科目内容をわかりやすくした。
【問題点】
英語未修者への英語教育についての対応を検討することが必要である。
【問題点に対する改善方針】
留学生教育については各学部にて責任ある体制のもとに実施し,これには国際交流センターが協力し
ている。学部間共通外国語運営委員会としても学部と協力して,全学的なサポート体制ができるよう対
応したい。
(厳格な成績評価の仕組み)
【現状】
履修について,「学部間共通外国語科目配当表」をシラバスにて公開し,修得上限単位数を周知して
いる。成績評価基準については 2004 年度より全学的にGPA制度を導入しており,厳格な評価がなされ
ている。また,会話科目という特性上,成績評価があいまいになることを防止するため,シラバス上に
て成績評価基準を具体的に公表することを推進している。
【長所】
大学の定める評価方法を遵守し,適切な修得上限単位数を設定,運用している。
【問題点】
会話科目については当該科目試験以外に客観的な効果を数値化することが困難なため,より適切な効
果測定方法の検討が必要である。
【問題点に対する改善方針】
効果測定方法について,講座運営母体である「学部間共通外国語教育運営委員会」内に小委員会を立
ち上げ検討の端緒とする。
(履修指導)
【現状】
履修指導について,学部間共通外国語は取得単位数の扱いが各学部によって異なるため,各学部事務
室による履修指導が行われているほか,シラバスに取扱いを掲載し,周知を図っている。学部間共通外
国語科目は,大学院生にも「聴講生」として履修することを認めており,シラバスにて周知している。
第3章 全学 -20-
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【問題点】
修得単位科目を学部卒業要件単位等に振替えることを認めているが,修得単位の扱いについては学部
により異なるため,履修希望者が混乱してしまうことがある。
【問題点に対する改善方針】
問合せ先の周知徹底を図るとともに,窓口で適切な履修指導ができるよう,各学部と協力した体制作
りをする。
(教育改善への組織的な取組み)
【現状】
教育指導方法の改善促進について新年度始めに担当講師に対し説明会を開催しており,本学の教育理
念に基づいた教育が実施されるよう周知している。また同時に教員同士の交流の場を設け,授業改善に
ついて意見交換をするようにしている。
シラバスについては授業計画のみならず,履修ルールや成績評価基準について明示をし,学生に対し
積極的に情報開示を行う媒体として活用している。
学生による授業評価の活用方法については全学的に実施されている授業改善アンケートのフィード
バックを行っているが,改善への取組みは各教員にゆだねられている。また,夏季・春季に開講される
集中講座についてアンケートを実施し,改善項目を逐次次回講座に反映させている。
【長所】
改善点が判明した場合,フィードバックのための仕組みは完成している。
【問題点】
さらに内容の充実を図ることが必要である。
【問題点に対する改善方針】
教員が今まで以上に授業改善を意識するような場を設定するため,教員間の意見交換ができる機会を
増やす。アンケートの質問内容の見直しを行い,学生の要望が適切に反映されるようにする。
(授業形態と授業方法の関係)
【現状】
授業形態について。会話科目が中心となるため,グレードⅠ(初級)は 40 名,グレードⅡ(中級)は
25 名,グレードⅢ(上級)は 15 名という履修人数制限を設けている。
【長所】
レベル別に適切な人数で授業が展開できるためより高い教育効果が期待できる。
【問題点】
初級の履修希望者が多いため,希望の授業を履修できない学生がいる。
【問題点に対する改善方針】
教育機会を公平に提供するため,2006 年度より履修希望者の多い和泉地区開講の英会話科目(英会話
Ⅰ・Ⅱ)について,事前抽選を行い履修者を決定する。
(国内外における教育研究交流)
【現状】
外国人教員の任用に当たっては,綿密な授業計画に基づき,運営母体である学部間共通外国語教育運
営委員会にて審議承認された後,各学部教授会において審議されている。
【長所】
今後は「明治大学教員任用規程」に基づき任用され,統一された基準での任用計画が可能である。
(外国人留学生の受け入れ)
第3章 全学 -21-
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【現状】
外国人留学生を対象に日本語科目を 3 科目設置している。
【長所】
2004 年度より設置科目の内容を「オーラル」
「文章」「総合」とし,科目内容をわかりやすくした。
(教員組織)
【現状】
会話科目が中心となることから,2005 年度開講科目の大半をネイティブスピーカーの外国人兼任講師
が担当している。
【長所】
ネイティブスピーカーによる授業により高い教育効果が期待できる。
【問題点】
改善の取組み等について,リーダーとなる専任教員が少ない。
【問題点に対する改善方針】
運営母体である学部間共通外国語教育運営委員会の委員は全て専任教員である。実際の授業担当者と
運営委員会委員の交流の場を設定し,問題点は逐次対応できるようにする。
(教育研究支援職員)
【現状】
春期集中講座においては合宿形式のためTAを配置し,授業補助に当たらせている。
【長所】
教育支援だけでなく,受講生の身近な先輩役として与える効果は大きい。
(教員の募集・任免・昇格に対する基準・手続)
【現状】
運営母体である学部間共通外国語教育運営委員会に任用権限はない。大学の定めるところの任用基準
に準じて任用を行っている。
第3章 全学 -22-
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4.情報教育(教育の情報化推進本部)
1.使命・目的・教育目標
(使命・目的等)
【現状】
2005 年4月,情報メディア環境を活用し,教育支援活動を推進する全学的な組織として教育の情報化
推進本部を設置した。本学は,全国の高等教育機関の中でも,IT環境が最も先進的に発展を遂げた大
学として評価されている。これは,①ネットワーク利用を前提とした情報基礎教育の全学的な実施,②
情報インフラを備えた教育棟の建設及びネットワーク環境の整備,③それらを前提とした教育・学習支
援システム「O Meiji システム」の企画・開発と充実,④「O Meiji システム」に連動するコンテ
ンツ作成事業としての「100 コンテンツプロジェクト」等,情報メディア環境の整備・拡充を積み重ね
た結果である。
教育の情報化推進本部の目的は,これらの情報メディア環境を基盤とし,更なる教育の情報化の進展
を図るために,教育の情報化にかかわる諸問題を総合的に検討し,その具体的方策の企画・立案・実施
を統一的かつ円滑に行うことである。実質的には,本部のもとに「教育支援推進部」
「情報教育推進部」
「情報環境推進部」を設置し,①情報教育と視聴覚教育の統合,②情報資源の有効活用,③意見の公募
と情報公開,④著作権ポリシー,ガイドラインの策定,を基本方針として,各推進部が次の使命・目的・
教育目標を掲げ活動している。
(1) 教育支援推進部の使命・目的・教育目標
視聴覚運営委員会,遠隔教育運営員会,情報システムを利用するための教育・研究コンテンツ構築
委員会(Oh-o! Meiji システムの運営)の廃止に伴い,教育支援推進部では 100 デジタルコンテンツ
プロジェクト,そしてサポート体制などを含む多くの案件を検討推進していかなければならない。廃
止された委員会の方針を尊重しつつも,情報に特化した内容だけでなく大学として本来の教育支援と
は何かという基本から検討し,教員個人の要望に応えるだけで良しとするサービスの提供を目指すの
ではなく,本来の教員・学生に対するサポートを計画・実行することを目的とする。
(2) 情報教育推進部の使命・目的・教育目標
本学の情報環境の利活用促進を念頭におき,また,学部等で展開される情報に関する専門科目に資
するため,学部間共通科目として設置されている基礎的及び応用的情報科目の運営にあたる。これと
ともに,情報教育科目のカリキュラム内容や運営方法について検討する。
(3) 情報環境推進部の使命・目的・役割について
将来の教育環境の変化に対応しうる情報・メディア設備等を整備することを基本方針とし,e-ラー
ニング,ユビキタス教育等をめぐる技術的な革新をも視野に収めながら,的確に環境を整備する。こ
の上で,単に先端の技術環境を後追いすることではなく,最先端の情報環境と最小限の情報環境(ミ
ニマムリクワイアメント)の両極を想定しながら,教室における教育環境の最適化を目指すことを目
的とする。
この目的を達成するため,教育支援推進部及び情報教育推進部と連携し,両推進部が策定する教育
方針に基づきながら,環境整備を推進する。情報メディア環境を活用することにより,授業法の幅を
広げ,教育の質的向上を図ること,また,教育技法の改善や教材開発等を側面から支援することを役
割とする。
2.教育研究組織
【現状(評価)】
2005 年度の各推進部の活動状況は次のとおりである。
(1) 教育支援推進部
ア.各種サポートについて
これまで,情報教室と視聴覚教室に別れてアシスタントを配置していたが,効率性や柔軟性を図
るために,これらの一部を統合した。さらに,各地区,建物によって異なるサポートデスクの契約・
業務内容を精査し,委託業者の一元化,メディア教室へのサポート,ワンストップサービスの充実
を図った。
イ.遠隔教育等について
各学部・大学院から要望や計画があるが,リアルタイムの遠隔授業・オンデマンド型授業配信・
第3章 全学 -23-
/119
LMS(学習管理システム)を持つ e-ラーニングなどは,本学全体の動向を見守ってから対応する
こととし,各機関が個別に導入することは,原則的に認めない方針とした。なお,開設が予定され
ている「ユビキタスカレッジ」は,多様なメディアを利用した通信教育を行うが,これに参加する
学部等の方針を踏まえ,システムの導入やコンテンツ開発に係る機関との連携体制を確定した。
ウ.Oh-o! Meiji システムについて
ネットワークを活用した教育・学習支援システムである「Oh-o! Meiji システム」は,2006 年
度に補助金の交付が終了する。2005 年度は,このサブシステムである,クラス・ウェブとポータル・
ページの機能充実を図り,システムの運用性を重視した追加開発を行い,2006 年度以降のシステム
運用の基盤を構築した。
エ.100 コンテンツプロジェクトについて
2006 年度のプロジェクト完成を目指し,コンテンツ作成を推進した。3年計画の2年目となる
2005 年度は, 当初の計画どおり 72 コンテンツを作成し,既に公開している。
(2) 情報教育推進部
ア.教育内容・方法等
情報基礎論については,担当教員間の理解を得ながらミニマムリクワイアメントを定めており,
情報倫理 教育を中心とした情報リテラシーの修得を基本として授業を実施した。また,数値・文
字・画像情報論等は,各学部の専門教育科目との連結やこれを補完できるようなカリキュラムで授
業を実施した。さらに,授業担当者間の情報交換による教育の質的向上を図るため,①担当者懇談
会(交流会)の実施,②授業担当者のメーリングリストによる意見交換,等を実施した。また,自習
室に自習教材などを整備し,機器操作などについて自ら必要な事柄を学ぶことができるよう情報環
境活用の体制を整備した。
(3) 情報環境推進部
ア.情報メディア教室の整備
3地区の情報メディア環境(パソコン,ソフト等)を有する教室を整備した。
(ァ)駿河台地区 6教室 3実習室等 パソコン 320 台
(ィ)和泉地区
9教室 3実習室等 パソコン 704 台
(ゥ)生田地区
10 教室 3実習室等 パソコン 778 台
イ 一般教室の整備
(ァ)駿河台地区リバティタワー内一般教室教材提示装置の更新(16 施設)
,12 号館メディア教室
(A2)CALL化
(ィ)和泉地区第一校舎地下一階一般教室のプレゼンテーション装置の導入
(ゥ)生田地区中央校舎メディアホールメディア装備改善
ウ.情報メディアと視聴覚教育の統合
情報メディア技術の進展に伴い,AV機器を使用した視聴覚教育はCALL教育へ移行する。本
学においても旧来の「視聴覚」という名称を改め,情報メディアを連想させるものに変更する。ま
た,本部設置により廃止された視聴覚教育運営委員会から申請があり認められていた和泉AV棟ス
タジオの改修については,この必要性を再考し,執行を保留した。
【長所と問題点】
本学の情報メディア環境は,和泉メディア棟,生田第二校舎A館が建設され,駿河台地区のリバティ
タワー,アカデミーコモンと併せて,3地区の情報基盤が一応整備されたことになる。これからは,教
育の質的向上という情報環境ポリシーの継続性を保ちつつ,既存設備を効率的に活用しながら,定期的
な設備更新と新たな教育ニーズに適応しうる設備改善が中心となる。その際,以下の2点が課題となる。
(1) 教育用情報メディアの環境整備
インターネットを活用した授業,デジタルコンテンツを活用した授業等,新たな授業方法に対応す
るために,3地区における既存の情報教室及び語学ラボ教室の情報メディア設備,一般教室のプレゼ
ン設備等の更新を図る。
(2) ネットワーク環境の整備及び改善
安全かつ快適に利用できるネットワーク環境の整備は,教育の情報化を推進する上で不可欠の条件
となる。そのため,各地区における情報コンセントの偏りを解消し,セキュリティを強化する。
(3) 施設・設備等
ア.メディア利用授業との教室利用に関する調整方針の策定
学部や大学院の協力を得て,効率的な時間割調整,ソフトウェア及びハードウェアの整備が行わ
第3章 全学 -24-
/120
れるようにしてゆく必要がある。
イ.カリキュラムの必要性に応じたソフトウェアの検討
技術革新の激しい情報社会に対応しうる質の高い教育を展開できるようソフトウェアの導入計
画を検討する。
【改善方針】
(1) 今後の情報環境整備の方針と計画について
今後の情報環境整備は,各地区・各号館内の設備を一律に整備するのではなく,ミニマムリクワイ
アメントを確保しつつ,教育目的と教育方法に応じたフロア単位あるいは教室単位の整備を検討する。
具体的には次の通りである。
ア.緊急に補修を要する設備の改善
(ァ)リバティタワーの音声関係の補修
イ.既存設備の更新
(ァ)リバティタワーのプレゼン設備更新
(ィ)駿河台 12 号館の設備更新
(ゥ)和泉AV棟の設備更新
(ェ)生田メディアホール・スタジオ教室等の設備更新
ウ.新設すべき設備
(ァ)駿河台自習室の充実
(ィ)駿河台 11 号館のプレゼン設備
(ゥ)和泉第1校舎及び第2校舎のプレゼン設備
(ェ)生田一般教室のプレゼン設備
(ォ)生田モバイルコンセントの増設
(2) 組織と管理体制について
2005 年4月より教育の情報化推進本部が発足したが,これを支える事務機構は未だ整備されていな
い。現在は,教務事務部教務課と情報システム事務部の各課が協力して本部の運営に参画しているが,
教育の情報化に関する企画・立案,予算編成から教育学習支援の実質的な業務までを統合し,一貫し
て実施する部署を新設する必要がある。
2005 年8月1日,本部長は,情報科学センター所長と連名で,教育の情報化推進本部の業務に関わ
る担当部署の早期設置についての願い書を学長へ提出し,教育の情報化推進本部と事務組織が有機的
に機能する体制を早急に整備すべきである旨,提言した。教育の情報化を一元的に支える事務機構の
整備は緊急の課題であるので,2007 年度に予定されている新事務機構発足の前に,強固な体制を構築
しなければならない。同時に,全学的に教育の情報化を推進するには,学内各部署の協力が不可欠で
あるので,新部署が根幹となって学内各部署との連携体制を構築することが必要である。
第3章 全学 -25-
/121
5.資格課程(資格課程委員会)
(1)
教職課程
(使命・目的等)
【現状】
本学教職課程は,戦前の師範学校を中心とした「閉鎖的」教師養成システムに代わる「開放的」教師
養成システムとして,戦後改革の重要な柱の一つとして創設された。これは,広い教養と深い学問的な
素養を持つとともに,型にはまらず豊かな人間性と個性を持った教師を,大学教育を通じて養成するこ
とを目的としている。
【長所】
この理念と目的は,戦後社会の要請に沿うものであり,本学教職課程は,それを忠実に実践しており,
理念や目的に問題はない。また,教職課程を担当している教員は,養成過程及び自己学習,教職課程に
勤務してからの上錬磨,会議等を通じて,十分に理解している。したがって,周知の方法は有効である。
【問題点】
教職課程の授業科目担当者ひとり一人が,教育理念及び目標を十分に理解し,これに基づいて日々の
授業を実施しているのかを組織的に検証していない。
【問題点に対する改善方針】
ア.社会状況の変化や子どもと学校現場をめぐる状況の変化を背景にして,養成段階で身につけるべき
教養や専門性の内実についてさらに具体的に深く検証,検討する。
イ.
「開放制教師養成の原点に立ち,豊かな個性と力量をもった教師の養成をめざして質的充実を図る」
ことであり,このことを勘案して,教職課程カリキュラムの検討,現職教員のリカレント教育等を主
軸にした教職大学院設置などを検討している。
(使命・目的等の検証)
【現状】
教育法制に忠実に則って,教育課程を組み,教師教育を行っているが,教育実習の総括調査や各学部
の指導教員からあがってくる報告書で,検証している。
【長所】
教育実習生には「総括調査書」を,また,各学部の指導教員にも報告書の提出を義務付けていること
は,本学教職課程の長所と言える。開放性の教員養成に生かす努力を教職課程全体で行っている。
【問題点】
教育実習生の総括調査書,各学部の指導教員が提出した報告書を生かすシステムが十分とは言えない。
【問題点に対する改善方針】
教育実習生の総括調査書,各学部の指導教員が提出した報告書を生かすシステムを作る。
(特色ある取組)
【現状】
(1) 文部科学省の教員養成GPに応募し,採択された。現在,「授業デザイン力養成」プロジェクトに
取り組んでいる。この「授業デザイン力養成」を養成するカリキュラムは,明治大学教職課程独自の
カリキュラムであり,
「授業デザイン力」をうまく養成できるカリキュラムを組む努力をしているが,
それがうまくいくかどうかが問題である。これについては,カリキュラム構成に対する考察を進め,
導入効果については,教育実習事後指導で調査する。
(2) 学部間共通科目運営委員会と連携し,同委員会が運営している学部間共通総合講座「日本近代史と
明治大学」に教職課程所属教員がコーディネータを担当し,自校史教育を展開している。
第3章 全学 -26-
/122
(教育研究組織)
【現状】
(1) 本課程の教育組織は,教職課程を設置している学部・研究科を網羅した全学的な形に組織されてい
る。意思決定は学長の下に置かれた資格課程委員会(委員長は一部教務部長)によってなされている。
(2) 日常的な課程教育とその運営は,教職課程の担当者会議である「研究室会議」が主体となって実施
し,事務局として資格課程事務室がこれを組織的に支援している。研究室会議は,7名の専任教員か
ら構成され,全学部・大学院生の他,科目等履修生及び聴講生への課程教育を展開している。なお,
教職課程担当の専任教員は全て文学部教授会に所属している。
(3) この形態は,教職課程としての一体性・機動性・協働性を担保する上ではきわめて妥当であり,実
際上も適切に機能している。しかし他面,文学部(研究科)以外の学部(研究科)の中においては,
教職課程(教育)との連携が必ずしも十分ではないところもある。
(4) 研究組織としては,独自の研究科をもっていないが,教員の論文発表の場として『教職課程年報』
を発刊している。
【長所】
学長の下に設置した全学的な組織である資格課程委員会の目的に基づき,研究室会議が実質的な運営
母体となり,これに資格課程事務室が支援する体制を構築して,約 3,000 名もの受講生へ責任ある教育・
学習体制を整備している。さらに,大学院文学研究科臨床人間学専攻臨床教育学コースとの連携や教員
の論文発表の場として教職課程年報を発刊する等,本学の教員養成教育を大きく進展させている。
【問題点】
教職課程主任が役職と認められていないことが挙げられる。
【問題点に対する改善方針】
教職課程主任を大学か学部の役職にする方策が考えられる。
現職教員等のリカレント教育・研究及び「専修免許状」取得の場としての教職大学院開設の具体的検
討が必要である。近年ますます,教員の資質能力をより高度化し充実する必要性が指摘され,文部科学
省もそのための条件整備に向けた方策を打ち出している。本学の教職課程は,この政策に,教職大学院
を開設して対応しようと考え,現在,文学研究科の心理社会学科を基礎に,臨床人間学専攻が設置され
ている。力量ある教員養成を実行するためには教職大学院が必要である。
(教育研究組織の検証)
【現状】
教育研究組織を検証するための機関は,特別に設けていないが,研究室会議で検証している。
【長所】
個々人の研究態度が生かされている。
【問題点】
個人情報との関係があるが,教育研究組織を検証することが必要である。
【問題点に対する改善方針】
教育研究組織の検証を意識して,研究室会議を開催する。
(教育課程)
【目的】
本学教職課程の教育目標は,総合的人間力と専門的力量を兼ね備えた教師を養成することである。
【現状】
ア.
(1) 教育課程は,法令の規定に基づき,①教職に関する科目(教職科目),②教科に関する科目(教科
科目),③教科又は教職に関する科目,及び④その他の科目(日本国憲法,情報機器の操作等)から
構成されている。
第3章 全学 -27-
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(2) この内「教職に関する科目」の教科科目の大半及び④の科目の多くは,教職課程と各学部との協議
に基づいて各学部に置かれている該当科目が充てられており,必要に応じて学部間共通科目として設
置・運営されている。
(3) 教職科目は,教免法等の規定をふまえて教職課程の責任と判断に基づき,学部等教授会及び学部長
会の議を経て設置・運営されている。
(4) とりわけ教職科目群については,「教師として必要な専門的力量を自覚的に鍛える教育課程」をめ
ざした一定の配慮がなされている。
イ.
(1) 上記の教育目標及び視点に即して教職科目のモデルカリキュラムの体系を作成し,それにできるだ
けそって学生に対して履修するように提示しているが,所属学部の授業科目の履修との関係もあり,
困難を伴っている。
(2) すなわち,①自ら学び,自分の世界を構成し,知的活動のスタイルをつくる社会的視座の形成(教
育基礎論・教師論・教育行政学など),②他者と自己に関わる力の形成(教育心理学・障害児教育論・
教育方法など),③教師としての当事者能力の形成(生徒指導論・教育カウンセリング論・教科教育
法など),④教育実践力を高める(教育実習Ⅰ・Ⅱなど)。
ウ.
(1) 教職課程カリキュラムにおける基礎教育の授業科目としては,教育基礎論・教師論・教育心理学・
青年心理学・教育行政学・教育社会学が設置されている。
(2) 倫理性を培う教育の授業科目としては,教育基礎論・教師論のほか道徳教育の研究及び教育実習指
導を配置して,学生を指導している。
エ.
(1) 本課程における専門教育的授業科目としては,上記のモデルカリキュラムの体系のうち,おもに3
年次以降の履修開始科目である③~④がほぼ該当すると思われる。すなわち,教科教育法・授業デザ
イン論・特別活動論・生徒指導論・教育カウンセリング論・総合演習・教育実習などである。
本教職課程のカリキュラムは,教育職員免許法という法令に基づいて構成しているが,十分な人間
力と専門的力量を形成しうるとはとは言えない。
【長所】
本学教職課程の教育目標を達成するためのカリキュラムを編成し,適切な科目を配置している。
【問題点】
カリキュラムの編成は適切であるが,教育職員免許法の改正等,変革する社会的要因に対応する体制
(絶対的な授業コマ数の不足等)が整備されていない。
【問題点に対する改善方針】
スタッフの充実が前提となるが,以下のような方針に従って改善を行う。
ア.懸案となっている『教職課程50年誌』の作成を踏まえて,検討を進めていく。
イ.カリキュラムの整備と教員人事の充実
(ア)カリキュラムの充実と見直し
2000 年度の教育職員免許法(以下,新法という)施行にともない実施している教職課程の新法用カ
リキュラムは,2000~2003 年度にかけて完成され,2003 年度末には新法用カリキュラムに基づく最
初の免許状取得者が生まれた。それらのカリキュラムの点検・見直しを行い,その合理化と充実を
さらに図る。
a.「教職に関する科目」の整備・充実
2001 年の文部科学省課程認定委員会において 2002 年度以降に課程認定の申請をする際には,
「教
科の指導法」に該当する科目を8単位分開設しなければならないということが新たに義務づけられ
た。本学では現在,多くの教科において「教科の指導法」が6単位分しか設置されていないため,
今後,課程認定を申請するにあたり,この「教科の指導法」に該当する本学授業科目「授業デザイ
ン論」のコマ数を増やしていくことが必要である。
b.「教科に関する科目」等の整備・充実
新たに必修科目(中・高とも)となった「外国語コミュニケーション」と「情報機器の操作」の
2科目は,各学部等に既設されている該当科目を活用することになったが,履修状況によっては,
不足分を学部共通科目として設置することも検討する必要がある。
第3章 全学 -28-
/124
c. 教育実習体制の充実・整備
(ァ)教育実習最低3週間化(中学校免許状)への対応
新法用カリキュラムでは,中学校免許状の教育実習は最低3週間(事前事後指導を含めて5単
位)となっている。事前指導や手続きの2年次からの開始,2つの学年の学生を同時並行して指
導することなども検討する必要がある。
(ィ)教育実習指導体制の整備
教育実習期間の長期化や複数化,及び実習協力校との関係の構築など,教育実習の受け入れ,
実施に求められる条件は,年々厳しさを増している。それにともない,学生への指導,受入れ側
との交渉,実習登録,事前指導,訪問指導,事後指導,オフィスアワーなどの編成・整備,事務
体制の整備など,具体的な検討を行っている。
(カリキュラムにおける高・大の接続)
【現状】
教職課程であり,高校とは異なったカリキュラムなので,高・大の接続はあまり進展していないが,
次のことは指摘できる。
(1) 教職課程カリキュラムの授業科目では,教育基礎論をはじめとする多くの授業科目においては,そ
の導入部分でこれまでに学生が受けてきた教育(特に学校教育)を自らふり返り,それを対象化して
検討する機会を意識的に設けている担当教員が少なくない。
(2) 高等教育へ「円滑に移行できるような教育指導上の配慮」と同時に不可欠な視点は,学生が後期中
等教育までに強く刷り込まれてきた教育観・学習観と受身的な学習スタイルの転換を図り,新たな教
育観・学習観と学習スタイルを形成する教育上の配慮に留意している。
【長所】
できるだけ高等学校で学習したことを生かす授業をしている。すなわち,教育学は高等学校にはない
が,高大連携を意識して授業を行っている。
【問題点】
学生が大学で学ばなければならない学習内容と科目数が多くなりすぎている。これは法律に由来する
問題である。
【問題点に対する改善方針】
じっくりと内容に取組み,消化する法規定が必要である。
(インターンシップ,ボランティア)
【目的】
ボランティアを,個々の学生が,自己を人間味と専門的力量を兼備した学校教師に育て上げる機会と
して位置づけている。
【現状】
地域や学校から,ボランティアの要請があれば,できるだけ希望に添えるようにしている。
【長所】
ボランティアの要請があれば,できるだけ希望に添えるようにしているので,学生が自由に応募でき
る。
【問題点】
組織として対応しているが,基本的に自由に応募できるので,組織としての対応がしづらい面がある。
【問題点に対する改善方針】
できるだけ,組織としての対応がとれるようしている。しかし,そうすると,学生が自主的に,自由
に,応募しにくくなるというジレンマがある。
(履修科目の区分)
第3章 全学 -29-
/125
【目的】
教育職員免許法に基づいて,履修科目を区分している。大学教職課程独自の区分はない。
【現状】
(1) 教職課程カリキュラムにおいては,学部・学科のそれと比較して,教職科目群を中心に必修(選択
必修)授業科目が教免法などの国の法令によってかなり厳密に規定されている。その適切性,妥当性
については関連学会及び各大学の教職課程においてもなお多くの議論がある。
(2) 本課程では,前回の教免法等の改正にともなう再課程認定の際に,新設された「教科又は教職に関
する科目」群(選択科目)に,他の資格課程既設の科目も活用しつつ,できるだけ多様な授業科目(障
害児教育論・教職特論・ジェンダーと教育・学習指導と学校図書館など)を開設して,選択の可能性
を拡大した。
【長所】
法規定に基づいて区分しており,担当者は,それぞれに工夫して授業をやっている。
【問題点】
中身の伴なった法規に基づいてカリキュラムを組む必要がある。
【問題点に対する改善方針】
学生が教師として自己形成できるよりよいシステム・カリキュラムを模索する。
現在,各学部の協力により,免許状取得に必要な科目の一部を卒業単位へ組み入れられている。教職
課程としては,卒業単位以外の修得単位は卒業単位の4分の1前後に押さえることが適当と考え,今後
引き続き各学部へ働きかけ,一層の理解と協力を得たい。
(授業形態と単位の関係)
【現状】
(1) 教職課程においては,大半の授業科目が講義科目であり,演習科目は総合演習(必修)・教職特論
(選択)の2科目のみである。また,ごく一部を除いていずれも半期2単位となっている。学生の一
部からは,じっくり学習するために,通年科目を設置してほしいとの要望も出ている。
(2) 教育実習科目は,他の授業科目とその性格と形態が大きく異なっていることから,単位計算も法令
の基準に基づいた独自な方法が採られている。
(単位互換,単位認定等)
【現状】
(1) 大学以外の教育施設等での学修の単位認定は,教育実習や介護体験がほぼそれにあたるといえる。
前者については,実習校での評価を尊重しつつ総合的な視点から本課程で単位認定を行っている。
(2) この1,2年,本学近隣の教育委員会や学校から,学生ボランティア派遣の要請が増えてきている
が,こうしたボランティア活動を単位認定すべきか否かが検討課題になっている。
(教育効果の測定)
【目的】
個々の学生を人間力と専門的力量を兼備した学校教師に育て上げることを目標としている。
【現状】
大学全体で行っているFDのアンケートを教職課程担当の教員にも活用し,学生からみた教育効果を
測定している。目標を達成するために,教師論,教育基礎論,教育実習,総合学習,道徳教育の研究な
どの必修科目,及び教育社会学,教育行政学,などの選択科目を設置している。特に教育実習において
は,実際に教壇にたつので,日々の授業で培った教育効果が試される。
教育上の効果を測定するための方法の適切性については,研究室会議で教育実習の成績や教育実習学
校の教員から指摘のあった学生の問題点を検討することに加え,実習の採点も最終的には大学で行うの
で,教育上の効果を測定するには,適切であると考えている。また,測定方法に関して研究室会議で定
期的に議論し,教員相互の合意はなされている。教育効果を測定するシステム全体の機能的有効性を検
証する仕組みについては,研究室会議で議論を進展させている。
第3章 全学 -30-
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毎年約 50 名を超える卒業生が専任の教師になり,約 50 名の卒表生が非常勤講師などで教壇に立って
いる。
【長所】
教育学部を設置していないが,有数の現職教師を排出する大学であり,質の高い教員を養成している。
【問題点】
教師採用数については,2005 年 74 人から 80 人へ増加させる必要がある。
【問題点に対する改善方針】
採用数を増やすために,就職指導をもっと綿密にする仕組みを作る。
(厳格な成績評価の仕組み)
【現状】
教職課程の履修科目登録には各学部の場合と異なり単位数の上限設定はないが,過重な履修にならな
いよう窓口で適切に指導している。ただし,本課程の履修登録には,履修年次及び他地区(キャンパス)
開設科目の履修制限などがある。履修登録上の問題点の一つは,学部・学科と教職課程の必修科目等の
時間帯が重なり,必ずしも計画的に履修できないことである。
教職課程教育の総仕上げである教育実習については,教育実習担当者を中心に,成績評価基準をもう
け,採点している。厳格な成績評価は,教育実習については導入しているが,各年次及び卒業時の学生
の質を検証・確保するための方途はいまのところ,導入していない。
【長所】
開放制の理念を専任教員が良く理解し,成績評価にも生かしている。
【問題点】
現場の教師からは,教育実習に行く学生の数をもっとしぼる成績評価をしてもいいのではないかとい
う声も聞かれる。
【問題点に対する改善方針】
人間的力量と専門的能力をもった教師を養成するには,どういう成績評価の方法があるかを模索する。
(履修指導)
【現状】
ガイダンスや履修指導の時間をもうけ,学生の要請に対応している。
(1) 教職課程は1年次から履修ができるため,新入生にはまず各学部のガイダンスと併せて学部ごとに
履修ガイダンスを実施し,その後期日を定めて履修相談に応じている。
(2) 2年次以降の新履修希望者には,別途ガイダンス及び履修指導が行われている。
(3) 教育実習の履修指導は,カリキュラム化されたクラス編成により事前指導を含め,時間をかけた格
別の履修指導を行っている。
(4) 駿河台・生田キャンパスにある教育実習指導室では,実験助手補が教育実習に関する相談・指導を
適宜行っている。
(5) また,正規の授業科目ではないが,2年次から実施可能な「介護体験」については,別途の事前指
導を含む履修指導を行っている
(6) 本教職課程の専任教員全員が,オフィスアワーを設けて,学生の相談に応じている。また,ホーム
ページなどにも掲載している。
【長所】
できるだけ,学生の便宜を図りつつ,きめ細かい履修指導をしている。
【問題点】
履修指導をしているにもかかわらず,途中でやめる学生や単位(18 単位)不足で教育実習にいけない
学生がいる。履修指導を厳密に行いつつも,文部科学省の要求する力量ある教師育成のシステムを考え
第3章 全学 -31-
/127
るならば,教育実習に行く単位を引き上げる。
【問題点に対する改善方針】
落ちこぼれる学生をどう少なくするかシステムを考える。
(教育改善への組織的な取組み)
【現状】
(1) ガイダンス,オフィスアワー及び授業などの機会をとおして,それぞれの担当教員が適宜行ってい
る。
(2) 教育実習指導クラスでは,担当学生へのメール,電話による相談・指導も行われている。
(3) 各学部に準じて本課程独自のシラバスを作成している。
(4) 授業開始時にマスプリして配布,活用している教員も少なくない。
教員研修(FD)委員会が主管して実施している学生による授業改善のためのアンケ-トに積極的に
協力し,個人のレベルになるが,調査結果を活用している。
【長所】
個々の授業担当者は教授法への関心が高く,改善への取組みを継続的に行っている。
【問題点】
理解力が不足している学生に対し,教授法の研究が進展していない。
【問題点に対する改善方針】
教育研修(FD)委員会及び 2006 年度に設置予定の教育開発・支援センターと連携し,組織的に教
授法の開発を進展させる。
(授業形態と授業方法の関係)
【現状】
(1) 必修科目の大半は受講生が 100 人を超える講義科目(200 人超の講義も少なくない)であるため,
各教員が多様な授業方法を工夫しているものの,自ずからその有効性には限界がある。
(2) 総合演習(必修)及び教職特論(選択)の演習科目の多くでは,多様で活性化した授業が展開され
ている。
(3) 2003 年度後期から初めての試みとして導入された教育実習指導のクラス別授業は,なお 80 人前後
と履修学生数は多いが,新たな試みとしてその有効性が期待される。
【長所】
各授業科目担当教員が工夫を凝らし教職課程のカリキュラムの目的に基づく授業を実施している。
【問題点】
教職課程を履修する学生数に比較し,授業コマ数,担当教員数等の適正な授業環境が整備されていな
い。
【問題点に対する改善方針】
各学部と連携し,カリキュラムの簡素化と質の高い授業の実施を検討する。
(国内外における教育研究交流)
【目的】
教職課程教育の内容について,教職課程設置大学の全てが共通理解をもつ。
【現状】
全国私立大学教職課程研究連絡協議会の事務局長を本学が引き受けて,国内の教職課程教育の要にな
っている。
【長所】
第3章 全学 -32-
/128
教職課程の全教員が,全国に発信する教育内容を作ろうと努力している。現に「教育学研究」や「教
職課程年報」著作などでもうすでに発信している教員もいる。
【問題点】
本学の教職課程のみならず,教師教育学会や教育学会などを通じて,教職課程教育の中身について,
全国の教職課程教員が共通認識をもつ必要がある。
【問題点に対する改善方針】
本学から教職課程教育の内容を発信する。そのために,教職課程教員が,教師教育について,さらに
研究する。そのために,教職GPにも応募したのである。「授業デザイン力」を教師も学生も形成しよ
うと努力している。成果は冊子で公表する。
(科目等履修生・聴講生等)
【現状】
本課程では,これまで科目等履修生・聴講生の非正課生を受け入れていたが,単位認定の複雑さ,煩
雑さなどの理由により 2006 年度から当分の間,受け入れ中止を決定している。
【長所】
科目等履修生・聴講生等の非正課生に対しても,正課生と同様に教育理念・目標に基づき教育効果の
高い授業を実践している。
【問題点】
科目等履修生を本学出身の学生のみに限ると,他の大学を出た学生の教師への道をとざすのではない
かという意見もある。本学出身学生のみならず社会に開かれた大学として他大学出身者を受入れるべき
であるが,授業を運営する環境が整備されず社会的要請に応えていない。
【問題点に対する改善方針】
教育環境の整備を図り,他大学出身者に対しても受入可能な体制を整える。
(教員組織)
【目的】
総合的な人間力と教科の能力・方法能力・社会的能力という専門的力量を形成するための教員組織を
作る。
【現状】
(1) 本学の教職課程は7名の専任教員で構成されており,総合的な人間力と教科の能力・方法能力・社
会的能力という専門的力量を形成するために設置している。
(2) 本課程の履修学生の総数は約 3,000 人にのぼっており,これを7人の専任教員と約5人の兼任教員
で担当している。
(3) 大方の大学の教職課程と同様に,教員組織はきわめて不十分な下での教育と運営状況である。
(4) 教員組織の協力・協働は良好といえる。
学生数と専任教員の比率がアンバランスなことは,教職課程の理念や教育目標を達成する上で,マイ
ナスである。ほとんどの必修授業科目へは最低1人の専任教員が配置されているが,教科教育法,特別
活動論への配置はできていない。とりわけ教科教育法担当の専任教員が皆無であることは,本課程の大
きな弱点でもある。
教員組織における専任,兼任の比率は兼任の比率が高いので,適切とは言えない。
専任7人の教員組織の年齢構成は,60 代3人,50 代1人,40 代2人,30 代1人であり適切である。
専任教員間の教育実習指導を中心とした日常的,一般的な連絡調整はほぼ良好といえる。
多くの同一授業科目を複数の専任及び兼任教員が並行して担当しているが,その間の連絡調整は一部
の科目(総合演習,教育実習指導など)を除いて不十分である。
【長所】
学生の人数が多い割には,専任・非常勤ともに頑張っている。
第3章 全学 -33-
/129
【改善方針】
一つの授業における学生の数が多いので授業の数を増やし,教育効果をあげる。
(教員の募集・任免・昇格に対する基準・手続)
【現状】
(1) 本課程の専任教員の募集・任免・昇格は,所属する文学部の人事の一環として,その基準・手続に
基づいて行われている。
(2) 募集人事の場合は,本課程の発議により5人の選考委員会が教授会の承認を経て組織され,公募要
項に従って応募した者の中から,厳正な審査をへて1名の候補者が教授会に推薦される。
(3) 選考委員会には規定により本課程の専任教員から2名が参加するが,他の教員は審査過程には正式
には参画できないため,若干の不満と違和感がある。
(4) 昇格人事の場合も,上記の基準・手続きにほぼ倣っている。したがって,適切と言える。
教授会で5人の選考委員を選考し,昇進や新規任用人事を検討するシステムをとっている。各委員会
ごとに判断し,教授会に報告しているので,教員の選考基準と手続きは,明確である。教員選考手続は
公募制を導入し,適切に運用している。
【改善方針】
授業数を増やす。
(経常的な研究条件の整備)
【現状】
個人研究費は外国の文献を買うと不足するが,研究旅費は適切と言える。
教員研究室は良く整備されていると判断している。ここ数年文部科学省の方針とも連動して,大学改
革・大学院改革のための動きが激しく,ジックリ腰を落ち着けて研究する時間がない。研究活動のため
には,国内学会や国際学会に出席して,情報交換をしたり,話し合ったりするのが有効であるが,ここ
数年文部科学省の方針とも連動して,大学改革・大学院改革のための動きが激しく,ジックリ腰を落ち
着けて国内学会や国際学会に出席する時間がない。
【改善方針】
本学を卒業し,教育界で活躍している教員は,5000 名を超えている。これらの卒業生と教職課程の教
員,学生が一体となった「駿台教育会」を組織し,相互の研修機関として活用する。
(施設・設備等の整備)
【現状】
(1) 永らくの念願であった模擬授業室及び新教育実習指導室が 2004 年度から正式にオープンしたアカ
デミー・コモン(生涯学習棟)に新設され,駿河台地区における教育実習指導に関する施設・設備等
の諸条件は大きく改善された。
(2) 生田地区における施設・設備はきわめて貧弱である。
教育の用に供する情報処理機器などの配備状況は,駿河台地区以外の教室は,マイクが1本しかない
中・大教室も少なくなく,質疑応答の授業ですら実施することが難しい状況である。
【改善方針】
生田地区における教育実習指導室の拡充が是非とも必要である
(図書,図書館の整備)
【現状】
(1) 本課程の教員,助手補及び図書館職員等の努力により,その体系的,量的整備は徐々に進捗してい
るが,和泉地区をはじめとしてまだ十分ではない。
(2) とりわけ,本課程の教育は3地区すべてで展開されていることから,学生用の学習図書・資料の量
的整備に遅れがある。
【改善方針】
本課程及び他の資格課程の教員・助手補からなる小委員会を再組織し,図書館職員の協力を得て,実
第3章 全学 -34-
/130
情を把握し,より体系的整備と量的整備に取り組む。とりわけ生田・和泉地区の整備に留意する。
(就職指導)
【現状】
(1) 教職をめざす学生への就職支援・指導の一助として独自に開設していた「教員採用試験準備講座」
は,本年度からリバティー・アカデミー事業の一環として実施している。これは教員を志望している
学生を対象に,毎年 11 月頃から約 10 ヶ月間,教員採用試験の基礎知識,一般教養及び教職教養の出
題傾向,論作文指導,模擬授業,面接指導等を行っているものである。
(2) また,「教員採用等サポート懇談会」を数年前から設置している。これは本課程の教職員・実験助
手補を中心として,他に2,3の学部の教員有志によって構成・運営されている“学内ボランティア
組織”である。求人情報を含めて具体的な教員採用等の情報の交換と共有,学生への提供が行われて
いる。
(3) これらの活動は,採用試験合格者数を増やすうえで一定の成果をあげている。
本教職課程では,サポート懇談会を一部教務部長のもとに設置し,学生の就職に有効に作用している。
【改善方針】
「教員採用等サポート懇談会」と「教員採用試験準備講座」を,学生の就職支援,教員養成の質的向
上のため,今後さらに充実させたい。
(事務組織と教学組織との関係)
【現状】
(1) 本課程では,相互の連携協力関係は恒常的に確立されている。
(2) 連携協力関係を担保する上で重要な役割を果たしているのは,課程主任が主宰する研究室会議であ
る。会議は少なくとも毎月1回は開催され,全専任教員,助手補のほか資格課程事務長及び事務職員
が参加している。
(3) 教育実習指導,カリキュラム編成などをはじめほとんど全ての重要課題が審議・検討されている。
(自己点検・評価)
【目的】
自己点検・評価することによって,教職課程の長所,短所,改善すべき点を,摘出する。
【現状】
日常的に行うシステムは確立されていないが,研究室会議がその役割を担っている。担当責任者のも
とに,自己点検・評価事項ごとに関係専任教員が協力して報告書を作成している。
【長所】
常に専任教員全員で話し合う体制ができている。
【問題点】
自己点検・評価を専門的に担当する人間が明確でない。
【問題点に対する改善方針】
担当責任者のもとに,点検・評価項目ごとに関係専任教員が協力して報告書を作成している。本課程
の授業を担当している大勢の兼任教員の意見を反映するシステムを確立することが当面の課題の一つ
であり,またさらに学生・卒業生の意見を反映させることは必要であり,その仕組みの検討を開始した
い。
(自己点検・評価と改善・改革システムの連結)
【現状】
(1) 研究室会議及び年度末の合宿研修会で,その一部の事項については改善・改革を行うための検討が
なされている。
(大学に対する社会的評価等)
第3章 全学 -35-
/131
【現状】
(1) 教育コンテンツ・デジタル化事業によって,本学の教育実習生が作成した学習指導案をデータベー
ス化する作業が開始された。2002・2003 年度分学習指導案については,データベース化が完了し,2005
年度から教育実習指導室において学生が閲覧・検索することが可能になった。
(2) 「アカデミーコモン」8階に設置された「模擬授業室」が個別学生やグループによる模擬授業の場
として活用されるようになった。また,模擬授業室使用のためのマニュアルも作成された。
【長所】
教育実習指導室や模擬授業室をもっていることは,教員養成という点で,社会貢献しようとする本学
の姿勢がよく出ている。
【問題点】
本学として,日本の教育界にもっと貢献するにはどうしたらいいか,さらに考える必要がある。教職
大学院を作ることは,社会貢献の1つである。
【問題点に対する改善方針】
研究室会議で考えた結果を実現する為に,全学(理事会を含む)で取り組むことが大切であるが,現
在教職大学院を構想している。これが実現すれば,本学の社会的地位はさらに上昇する。
(2)
社会教育主事課程
(使命・目的等)
【現状】
社会教育主事は,社会教育法により「社会教育を行なう者に専門的技術的助言と指導を与える」教育
の専門職と規定され,都道府県及び市町村の教育委員会に配属される。社会教育主事の養成については
文部科学省令「社会教育主事講習等規定」に科目と単位が定められており,本学では同省令に基づいて
社会教育主事任用資格のためのカリキュラムが組まれている。本学組織上は,他の資格課程と同様,全
学部の学生に開かれた教育専門職の資格取得のコースとして,幅広い人材の育成を目指す。また,昨年
度新たに開設した大学院文学研究科臨床人間学専攻との連携を図り,臨床性・現場性を重視して,より
広い人間学の視点から研究交流を進めていく。
【問題点】
社会教育主事資格の職業への活用という点について,自治体の社会教育主事の採用は極めて限られて
いる。本学のみならず社会教育主事課程を持つ多くの大学で,卒業後の進路の確保が厳しい現状にある。
【改善方針】
生涯学習という視点から,学校を含め地域の教育と生活文化さらには福祉などに関わる領域を幅広く
学べるよう,教職・学芸員・司書等他課程との連携をはかる。そのためそれぞれの課程に設置されてい
る科目を受講できるよう改善を行い,それが達成されてきている。
(使命・目的等の検証)
【現状】
法令上の規定に基づいて行われているが,本学ではとくに社会教育の実態及び今日的課題を重視した
カリキュラムを設置している。
【長所】
本学社会教育主事課程では,実践研究・現場経験のある教員を兼任講師に迎えるなど,社会教育実践
の今日的な動向に即したカリキュラム編成となっている。
【問題点】
教員間の連絡・調整に,課題がある。
【問題点に対する改善方針】
第3章 全学 -36-
/132
専任・兼任の教員による検討会議を実施し,科目間の意見交流を促進する。
(健全性,モラル等)
【現状】
14 日間の社会教育実習に対し,通年の授業で事前事後の指導をこまやかに実施している。
【長所】
実習の現場で体験するさまざまな問題を,授業時に振り返ることにより,健全な社会性・ものごとを
教育的にとらえる視点を培っている。
【問題点】
14 日間連続の実習では,学習者と関係を作りながら,行為・実践を反省的にとらえ返すことが難しい。
【問題点に対する改善方針】
週1回で 10 ヶ月程度現場に通っていくような,継続的にかかわっていくやり方が可能かどうか検討
を始めた。
(教育研究組織)
【目的】
現場性・実践性を重視した教育が可能な教育研究組織を目指す。
【現状】
社会教育主事課程の専任教員は2名(教授1,助教授1)である。
【長所】
社会教育実習の授業を複数教員制で行うなど,他大学にない教育実践を行っている。
【問題点】
履修相談及び,社会教育関係の就職情報の提供等について,現在は掲示と教員によるメール配信にと
どまっている。また,社会教育主事課程室の運営についても,無人で開室しているため施設・物品の管
理に問題があり,資料も未整理のため活用されていない。
【問題点に対する改善方針】
嘱託職員を配置し,教職・学芸員・司書・司書教諭課程と同様の学生サービスが提供できるようにす
る。学生へのサービスを向上させるため嘱託職員の配置等,環境整備に努める。
(教育研究組織の検証)
【現状】
全国社会教育職員養成研究連絡協議会(社養協)等において,他大学・現場自治体との研究討議を行
っている。
【長所】
学外の状況や政策動向に関する情報を得たり,本学の職員養成を報告・検証することができる。
【問題点】
日常業務に追われて学内での研究討議が不十分である。
【問題点に対する改善方針】
前後期に1回程度,課程運営を検討し,共同研究として課程年報に掲載していくよう取り組む。
(教育課程)
【現状】
文部科学省の省令にもとづいてカリキュラムを編成している。本学としてのカリキュラムの体系は,
第3章 全学 -37-
/133
概論(2年次)から現代的課題(3・4年次)へ,さらに自治体社会教育の計画化と現場における実習
(4年次)へと展開している。現代的課題としては,
「社会教育特講Ⅰ」において,ジェンダー・福祉・
環境問題に関わる科目を設置している。
【問題点】
社会教育職員をはじめとする学習支援者の役割を,実践に即して明らかにしていく必要がある。その
ためには,学習論・学習過程論・成人学習論など,学習過程の動態と学習者の認識の変容に迫る実践分
析を核とした科目が必要である。
【問題点に対する改善方針】
生涯学習がキーワードになっている状況をふまえ,地域における多様な学習・文化活動の広がりに対
応するとともに,生涯学習の中核を担うべき社会教育の位置と役割がより鮮明となるカリキュラムを編
成していく。また生涯学習を支援していく方法がより具体的に理解できるよう,実践記録を読み解くこ
とに時間をかけて取り組むことが必要である。その際,とりわけ社会教育実習の充実が重要である。こ
れにかかわって,現在,授業のユビキタス化への対応の一環として,実践記録を大学のサーバに蓄積・
公開する作業を進めている。また授業時間以外にも個別の相談等に応じ,特に社会教育職員を希望する
学生には専門職採用等の情報提供だけでなく,採用試験の対策も含めたサポート体制を強化していく。
さらに大学院臨床人間学臨床教育コースで現職の職員が学び研究できるような条件を整備していく。
(履修科目の区分)
【現状】
文部科学省の省令によって最低必要単位が 24 単位と規定されており,そのうち必修が8単位,選択
が 16 単位となっているため,本学でもそれに沿った単位の配分となっている。
(授業形態と単位の関係)
【目的】
2~4年次に,講義・実習を含めたカリキュラムを履修する。
【現状】
「生涯学習概論」において生涯学習の政策・社会教育の実践を概括し,「社会教育計画」において社
会教育行財政を中心とした講義を配置し,「社会教育課題研究」「ジェンダーと教育」「現代の子どもと
社会教育」
「環境問題と社会教育」
「福祉と社会教育」において現代的な課題別の講義を配置し,4年次
に選択必修で「社会教育実習」を履修できる。年次進行,科目配置とも妥当である。
(単位互換,単位認定等)
【目的】
科目等履修生が履修済みの単位を活用できるようにする。
【現状】
科目等履修生の履修済み単位を科目ごとに教員が検討し,認定する。
(開設授業科目における専・兼比率等)
【目的】
今後とも専任担当科目を高い割合で維持していく。
【現状】
課程独自に設置する8科目のうち,
「生涯学習概論」
「社会教育計画」
「社会教育課題研究」
「社会教育
実習」
「ジェンダーと教育」
「環境問題と社会教育」の6科目が専任担当科目であり,専任担当比率は高
い。
【問題点】
「社会教育実習」は,時間の制約の中で実習先との連絡調整,複数担当制による教員間の調整が求め
られるので,サポートが必要である。
第3章 全学 -38-
/134
【問題点に対する改善方針】
嘱託職員を配置し,教職・学芸員・司書課程における実習と同様のサポート体制を確立する。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【現状】
留学生の受講はない。社会人学生は相対的に積極的に授業に参加しているため,他の学生に良い刺激
を与えている。
【長所】
授業では社会人学生の職業体験を紹介してもらうなどの働きかけを行っている。
【問題点】
社会人学生の場合,有職者も多いことから仕事の関係等で欠席しがちである。
【問題点に対する改善方針】
学生のグループ活動を取り入れ,学生間の関係作りをうながす。また,欠席した際のフォローの方法
などについて検討していく。
(生涯学習への対応)
【目的】
ユビキタスカレッジにより,広く社会人の課程履修を可能にする。
【現状】
社会人学生の積極的な受入れと他大学卒業者の科目等履修生の受入れを行っている。
【問題点に対する改善方針】
今後ユビキタスカレッジの導入により,すでに社会教育での学習経験のある社会人が課程を履修し,
職業資格を得ようとする場合が想定され,よりいっそう現場の経験を職員養成に生かすことができる。
(教育効果の測定)
【現状】
担当教員によっては,毎回授業の最後に学生からの感想や質問などを書いたアンケート用紙を回収し
たり,学生が作成したレポートを少人数で読みあう相互評価などを行っている。
【長所】
大学実施のアンケートも実施しているが,上記の方法は教育内容に即した点検が可能である。また,
言語による表現は数値に反映できない学習の実態を知ることができる。
【問題点】
教員間での検証が十分に行われていない。
【問題点に対する改善方針】
学生の授業評価実施に伴い,定期的に教員間の打ち合わせを行うようにする。
(厳格な成績評価の仕組み)
【目的】
科目の特性に基づき,適正に評価する。
【現状】
科目ごとに適正な評価が行われている。
カリキュラムを整備し,基礎から専門へと学べる科目を配置している。また,グループ討論やワーク
ショップなど社会教育の方法等を授業の中に導入するとともに,施設見学や現場職員の講義など具体的
第3章 全学 -39-
/135
な理解をはかる工夫を行っている。また,4年次には実習を開設し,これまでの学習の成果を確認し,
それを具体的に生かせるようにしている。
(履修指導)
【目的】
学生が社会教育に関心を持ち,資格取得についてある程度具体的なイメージが持てるような履修指導
を行なう。また,就職情報を円滑に提供する。
【現状】
新規履修者・継続履修者向けガイダンスを行っている。履修指導については,毎年4月初めに駿河台
と和泉,生田地区のそれぞれで,2年生以上の新規履修生と継続履修者を対象に,資格課程全体の総合
ガイダンスに加え社会教育主事課程独自の履修に関するガイダンスを行なっている。新規履修生には社
会教育とは何かという基本的な事柄と社会教育主事課程の趣旨及び履修方法並びに社会教育主事の採
用状況等について,3年生以上の継続履修生には専門科目の履修に際しての注意事項等を中心に話をし
ている。また社会教育実習を希望する学生には特別にガイダンスを行い,実習の趣旨と現場実習の形態
や方法等について説明している。
オフィスアワーについては検討中である。留年者は継続履修となるため,特別な配慮は行っていない。
科目等履修生の選考にあたっては面接を行い,それぞれの動機と,有職者の場合には職場の条件など
について話を聞き,履修が可能かどうかを判断してから受入れを決定している。なお,本学卒業生が科
目等履修生となる場合,多くが継続履修となるため履修について特別な配慮はしていないが,他大学出
身者の場合には,これまでの履修科目のすり合わせを行なってスムーズに履修できるよう配慮している。
【問題点】
日常的な履修指導・学習支援・就職情報の提供に,嘱託職員の配置が必要である
【問題点に対する改善方針】
すでに嘱託職員が配置されている他の4課程同様,本課程においても学習支援及び教育活動の支援の
ための嘱託職員が必要である。
(教育改善への組織的な取組み)
【現状】
社会教育をより具体的に理解できるよう,適時,施設見学並びに現場の職員や実践者等を招いての講
義などを行なっている。また授業でも講義形式だけではなく,ディスカッションやワークショップ方式
などを導入することで学習を組織し,援助する社会教育職員の基礎的力量が習得できるようにしている。
卒業生には,単発的ではあるが,次年度の授業(社会教育実習)に参加してもらい,自分が受けた授
業についてどう思っているか,後輩の前で語ってもらっている。
【改善方針】
現在の方法をより体系化するために,担当教員同士で授業方法の集団的検討と共有ができるような機
会を作っていく。卒業後社会教育関係の職場に就職した卒業生と定期的に会合を開き,大学での授業の
在り方について意見を出してもらうようにしていく。
(授業形態と授業方法の関係)
【現状】
講義形式を中心としながらも,討論やワークショップ形式,見学などを取り入れての授業,さらには
実習科目も開講しており,全体としてはバラエティに富んだ授業形態を採用しているが,これらは担当
教員の個人的努力に任されているのが現状である。ビデオの視聴を主とした授業を行なっているが,O
h-o! Meiji システムを利用した指導を行なっている教員もいる。
【問題点】
本学で検討を進捗させている「ユビキタスカレッジ」に参加することも視野に入れ,ネットワーク及
びマルチメディアを活用した教材作りが課題である。
【問題点に対する改善方針】
第3章 全学 -40-
/136
上記のような工夫している授業形態や方法を教員全体の共通理解にするための,授業方法等について
の交流会や講習会を開く。ユビキタスカレッジに対応した授業方法の検討を始める。
(国内外における教育研究交流)
【現状】
毎年『明治大学社会教育主事課程年報』を発行し,全国の資格取得者を出している大学・研究機関と
社会教育関係施設・機関に送付している。内容としては専任及び兼任教員の研究論文に加え,卒業した
社会教育関係職員の実践報告と学生による社会教育実習報告などとなっている。特に社会教育関係施
設・機関からの反応は良く,好意的に受けとめられている。
【改善方針】
毎年発行している『社会教育主事課程年報』については,教員の共同研究の成果を報告したり,卒業
した社会教育職員の実践紹介と交流など,内容のさらなる充実を図っていく。「年報」に加え,専任教
員が所属する研究集団である「社会教育実践分析フォーラム」のホームページを開設し,社会教育実践
の記録を授業の教材にできるようにする。
(夜間学部等への社会人の受入れ)
【現状】
社会人学生の課程履修は必ずしも多くないが,履修者は明確な目的意識と職業的な必要性を自覚して
おり,一般学生によい影響を与えている。科目等履修生として,現役の自治体職員(一般行政職)や市
民が資格取得を目指している。また,NPOなどのスタッフが業務に役立てるため資格取得を目指すこ
ともある。
【問題点に対する改善方針】
社会人の受入れをさらに増やしていく。
(科目等履修生・聴講生等)
【現状】
駿河台校舎の立地を生かし,現役の一般行政職や市民が資格取得を目指し受講している。
【問題点】
既卒者や継続受講者の科目等履修・聴講の希望は少なくないものと認識しているが,学費が受講のハ
ードルとなっている実態がある。
【問題点に対する改善方針】
今後とも積極的受入れ方針を継続するが,科目等履修生の学費が高額であることについては検討する。
(教員組織)
【現状】
社会教育主事養成のための法定課目を充足し,今日的な社会教育の多様性を配慮した上で,学生から
の相談等にも細やかに対応していくため,専任二人体制は適切である。
「生涯学習概論」
「社会教育課題
研究」
「社会教育実習」
「社会教育計画」などの主たる専門科目については,ほとんど専任教員が担当し
ている。専任教員2名に対し兼任教員は4名であり,特に問題はない。専任教員の年齢構成も問題はな
い。
教育課程編成に当たっては専任教員2名が必要に応じて打ち合わせをしている。また毎年兼任教員と
の打合会を行い,その際に教育課程編成に関する意見や要望を聞いてそれが反映されるようにしている
ため,特に問題はない。
社会人・外国人研究者は,現在受け入れていない。
【問題点】
専任教員間で定期的に,学科運営について研究協議する場が設定されることが望ましい。
【改善方針】
第3章 全学 -41-
/137
現在の専任教員2名の体制を維持しながら,必要に応じて兼任教員の充実を図っていく。また学内で
の教育活動の点検を定例化する方向で検討し,団体会員として加盟している全国社会教育職員養成連絡
協議会(略称社養協)での活動を通して他大学との研究討議を行っていく。
(教育研究支援職員)
【現状】
社会教育主事課程は,司書課程と兼務する短期嘱託職員を配置している。
【問題点】
課程室の管理運営,学生への就職情報の提供,実習のサポートが不足している。他課程同様独自のス
タッフの配置を大学に要望している。
【問題点に対する改善方針】
短期嘱託の職員は現在司書課程と兼務しているため,社会教育主事課程独自のTAあるいは嘱託職員
の配置を要望していく。
(教育研究活動の評価)
【現状】
日本社会教育学会の活動への参加により,教員の研究評価が行われるよう努力している。
【改善方針】
ユビキタスカレッジの設置等への対応として,教員間で教育活動の検証を組織的に実施する。
(研究活動)
【現状】
日本社会教育学会,公民館学会等に所属し,依頼論文を執筆するなど,積極的に活動している。
「社会教育実践分析フォーラム」等,実践の記録化と分析,それに基づく社会教育職員の力量形成に係
わる共同的な研究の場へ参加している。
【改善方針】
学習支援者の力量形成を目指す大学間交流の動向を見極めつつ,本学の教育活動にも取り入れること
ができるか検討していく。
(経常的な研究条件の整備)
【現状】
おおむね充足しているが,研究内容によっては不足する年度もある。研究室は整備されているが,や
や手狭ではある。研究時間は教員個人に任されている。日本社会教育学会,全国社会教育職員養成研究
連絡協議会,社会教育推進全国協議会などへの参加費用を支出している。共同研究費は制度化されてい
ない。
【改善方針】
課程及び運営に係わる共同研究を制度化できるか,検討する。
(施設・設備等の整備)
【現状】
社会教育主事課程室には,関係図書及び資料,テレビ,ビデオ,パソコンなどが配備されて,研究会
の他,学生が調べものをしたり自習や話し合いなどをするために利用されている。社会教育主事課程室
がアカデミーコモン8階に移行したことにより,以前より格段に広く快適なスペースが活用できるよう
になった。
【問題点】
施設・設備の開放は,教員参加の研究会や会議等で,一般の人々が利用するという状況にとどまって
いる。
第3章 全学 -42-
/138
【問題点に対する改善方針】
現在の社会教育主事課程室の環境を維持しながら,引き続き文献資料及び視聴覚教材を充実させると
ともにビデオカメラ等の備品を整備していく。また掲示板などの情報提供のコーナーを拡充していく。
さらに,可能な限り開かれた大学を目指し,課程室の活用方策を検討する。
(図書,図書館の整備)
【現状】
社会教育主事課程室には,積極的な資料収集活動や退職寄贈を中心にその後も収集を続け,戦後社会
教育実践に関する資料が充実している。
【問題点】
図書資料及び行政資料の整理が十分に行われておらず,散逸の危険すらある。また,所蔵をデータ化
して本学OPACでの検索が可能になれば,より広く利用に供することができる
【問題点に対する改善方針】
嘱託職員の配置により,図書資料の書誌情報のデータベース化が実現できるようにする
(社会への貢献)
【現状】
教員は,自治体の社会教育委員や社会教育の学級・講座の講師として現場に係わり,また日常的にも
社会教育職員や住民の自主的活動に関わるよう努めている。また『月刊社会教育』(国土社)という,
戦後日本を代表する社会教育実践誌の編集に基幹的に係わってきた。その他,労働組合における成人女
性のエンパワメントに実践的に係っている。
【問題点】
社会教育実践への係わりを含む社会への貢献は,教員にとって大きな労力を要するものであり,教育
研究活動に支障をきたす場合がある。
【問題点に対する改善方針】
社会貢献活動は今後とも進展させるが,教員の個人的な努力に留めず,組織的に展開させる方策を検
討する。
(生活相談等)
【現状】
教員は,本学総合講座でセクシャル・ハラスメント防止講座を担当するなど,努力している。
【改善方針】
クラス担任のような学生との係わりがないので,今後ともジェンダーなどテーマごとに大学・学部と
連携していく。
(就職指導)
【現状】
毎年,社会教育関係職員を希望する学生が少なくない。とくに「社会教育実習」の授業は,学生の社
会教育職への希望を高めている。しかし,現実には社会教育主事の採用は極めて限られている。にもか
かわらず,近年,本学から倍率の高い社会教育主事特別採用に合格した。また,社会教育指導員や児童
館の児童厚生員等の非常勤職は比較的募集があり,本学からもほぼ毎年就職している。しかし,非常勤
職はいずれの自治体でも労働条件が厳しいという問題がある。学生の社会教育職への就業後も,大学と
連絡が取れるよう,教員ができる限り配慮している
【改善方針】
学生の就職先をデータベース化する等,情報の有効活用を検討する。
(事務組織の役割)
第3章 全学 -43-
/139
【現状】
資格課程事務室は,既存の学部改革にともなう業務のみならず,教職大学院やユビキタスカレッジ等
の新規業務で多忙を極めており,体制の拡充が必要である。
【改善方針】
嘱託職員の増員により,教育活動を支援する体制の充実を図る。
(自己点検・評価と改善・改革システムの連結)
【現状】
自己点検を教育研究活動の改善・改革につなげるシステムには,現状課題が多い。
【問題点】
大学から求められる自己点検項目が多岐・多項目にわたり,ときに繰り返しの表現になってしまう。
担当部局ごとに自由に表記できるようにしたい。
【改善方針】
点検した項目を活用していくために,教員間の協議により課題解決を目指したい。
(3)
学芸員養成課程
(使命・目的等)
課程教育とは,本来,職業教育であり,その職業に必要な知識・技能を修得した人材養成を目的とす
る。学芸員養成課程は,学部等で学んだ専門を生かし,博物館で学芸員として研究・教育・資料管理に
従事する能力と資質を持った学生を育てることが目標である。
【現状】
大学博物館を実質的な教育訓練の場として機能できるよう,学芸員養成課程実習室を大学博物館フロ
アに設置し,学芸員の協力も得て博物館実習の充実を図った(博物館については,
「第9章 1頁参照)。
【長所】
大学博物館の協力を得,また長野県長和町(旧長門町)との協力による博物館実習の充実が図られて
いる。
【問題点】
博物館学芸員の採用状況の長期にわたる低迷が学生の意欲をそいでいることが大きな問題であるが,
また,志望動機の薄弱な学生を排除することが原理的に不可能なため,職業教育として求められる専門
的な教育訓練の高度化が図りにくいことが問題である。
【問題点に対する改善方針】
博物館の専門職員の養成は,その専門的学識に関しては学部での専門教育にゆだねなければならない
が,学芸員として必要な博物館に関する専門性や必要とされる技術を学ぶことができるよう,特に実習
を中心にさらなる工夫を重ねる。昨今の博物館における採用状況は大学院修了者中心にシフトしている
ことから,より高度な専門性を持った資格取得者の養成を目標に加える。
(使命・目的等の検証)
【現状】
学生による授業評価の実施については,レポート等で学生の感想を求めているが,フォーマルな形で
の授業評価は行っていない。カリキュラムについては,基本的に資格取得のための法定課目の組み立て
であるため,評価になじみにくい。本学としての独自性は自由選択科目の博物館学特設及び実習を含む
授業内容の組み立ての中で追求している。
(特色ある取組)
【現状】
第3章 全学 -44-
/140
博物館学に関しては,志望者の多い専門につながる地域博物館学芸員向けの特設授業及び博物館史に
関する特設授業を設けているほか,博物館実習に大学博物館の全面的な協力を得ることができている。
さらに 2005 年度からは長野県長和町(旧長門町)教育委員会の協力を得て,長和町立黒耀石体験ミュ
ージアム,同長久保宿資料館で両館の学芸員と協力して地域資料の博物館資源化を図る実習を展開して
いる。
【長所】
大学博物館の全面的な協力を得て実習ができること,長和町との地域連携協力事業の一環として実習
運営のできることも大きな長所である。
【問題点】
自然科学系の実習受講者の博物館実習は,学外の当該分野の館園に委託することになるが,実習館の
確保が毎年課題である。
【問題点に対する改善方針】
長和町との地域連携協力事業の一環としての博物館実習の充実を図る。
(教育研究組織)
【目的】
学芸員養成課程は,職業教育として,学部等で学んだ専門を生かし,博物館で学芸員として研究・教
育・資料管理に従事する能力と資質を持った学生を育てることが目標である。
【現状】
専任教員2名,兼任講師1名のほか大学博物館学芸員5名,実習特別講師9名である。現状では特別
の支障はないが,大学院の開講に伴って教授の持ちコマ増があり,学部設置コマ数を若干調整した。
【問題点】
大学院臨床人間学専攻の開講に伴い,担当教員の負担が増えている。
【問題点に対する改善方針】
このため,多様な専門を持つ学生に対応することができるような教育を行う組織作りが必要である。
同時に,博物館学に関する研究を行う数少ない主体としての活動が求められる。大学院の科目の一部に
ついては,兼任講師の採用も検討したい。また,より高い専門性を持った学芸員養成に向けて,大学院
文学研究科臨床人間学専攻等との連携を強め,質の高い教育研究の推進を図る。
(教育研究組織の検証)
【現状】
博物館学の専任者を置く大学が少ない中で,専任2名体制をとっている,数少ない大学である。
(教育課程)
【目的】
課程教育とは,本来,職業教育であり,その職業に必要な知識・技能を修得した人材養成を目的とす
る。学芸員養成課程は,学部等で学んだ専門を生かし,博物館で学芸員として研究・教育・資料管理に
従事する能力と資質を持った学生を育てることが目標である
【現状】
カリキュラム改革として,フレックス制導入並びにセメスター制導入にあわせて,博物館学各論を二
分し,半期化を図った。
【問題点】
博物館実習については,これを半期化することは現状では困難があることと,フレックス制導入によ
る学生の履修実態を見た上で判断する必要があるため検討課題とした。1987 年成立の公文書館法では専
門職員の配置について「当分の間,地方公共団体が設置する公文書館には,専門職員を置かないことが
第3章 全学 -45-
/141
できる」としているため,その配置は進んでいないが,公文書館あるいは関連施設の建設が進んでおり,
早晩専門職員の配置が問題となるであろう。
【問題点に対する改善方針】
2004 年4月には日本アーカイブス学会も発足し,アーキビスト養成について本格的な動きが始まった
が,その中心は大学院にあるのが現状である。学芸員養成課程としては,大学院文学研究科に関連する
カリキュラムの設置を働きかけるとともに,他大学での学部段階での対応を注視する。また,2008 年度
よりユビキタスカレッジにおいて学芸員養成を開始する考えでいるが,これは現行の通学生の教育方法
の改善にも寄与すると考える。
(履修科目の区分)
【現状】
資格取得のための課程であり,カリキュラムは法定課目を中心に編成している。本学の独自性として
は,歴史系地域博物館学芸員志望者のための特設授業,博物館史に関する特設授業を実施している点に
ある。
【長所】
法定課目を超えた自由選択科目を設置し,特色ある教育学習活動を展開している。
(開設授業科目における専・兼比率等)
【現状】
必修6科目,自由選択2科目のすべてが専任教員の担当(うち必修2科目は他の資格課程科目で専任
担当)。兼任講師1名は専任教員2名とともに博物館実習を担当。博物館実習については,この他大学
博物館学芸員5名,実習特別講師9名が随時係わっている。
(生涯学習への対応)
【現状】
近年,高齢者の受講が少数ながら継続的に発生している。
【改善方針】
ユビキタスカレッジ開講以後,受講者のあり方を見た上で対応を考えたい。
(教育効果の測定)
【現状】
学生による授業評価の実施については,レポート等で学生の感想を求めているが,フォーマルな形で
の授業評価は行っていない。カリキュラムについては,基本的に資格取得のための法定課目の組み立て
であるため,評価になじみにくい。本学としての独自性は自由選択科目の博物館学特設及び実習を含む
授業内容の組み立ての中で追求している。
卒業生の進路については,博物館の学芸員採用が長期にわたって低迷していることから近年は極めて
少ない。また,近年の学芸員採用が大学院修了者中心に移行しているため,資格取得後数年以上経過し
ての採用者も多く,その実態は十分に把握できない場合が多い。同様に,地方公共団体採用者が,後に
異動によって博物館学芸員となることも多いが,これも実態把握はなかなか困難である。
【問題点】
資格取得者の追跡調査を実施しているが,個人情報に関する問題でもあって,機関宛の照会の半数は
回答できないとしてくるなど,調査自体の方法を変える必要がある。
【問題点に対する改善方針】
現状は修了者の一部とのネットワークからの追跡しか実際には行えない状況にあり,調査方法を模索
している。
(厳格な成績評価の仕組み)
【現状】
第3章 全学 -46-
/142
2004 年度入学者から成績評価基準の改正を行い,これまで 50 点以上とした合格点が 60 点以上となっ
た。このため,国家試験等との整合がとりやすくなった。
(履修指導)
【現状】
駿河台校舎では,学芸員養成課程担当教員が実習室に在室(週3日)し,来室する学生への指導に当
たっている。また,学芸員養成課程実習配属の嘱託職員を配置(週4日)し,履修指導を実施している。
教員と嘱託職員によるこれらの指導は,定例化されており,実質的なオフィスアワーとして利用されて
いる。和泉校舎,生田校舎では学習支援室,資格課程分室に履修指導業務を実施している。
【問題点】
あえて挙げれば,和泉,生田の学生からの相談を受けることができるのが出講日に限られることだが,
現状では年度当初以外には問題はないと思える。
【問題点に対する改善方針】
学生の要望も聞き,オフィスアワーを制度化する希望が多ければその方向に移行したい。
(教育改善への組織的な取組み)
【現状】
学生による授業評価の実施については,レポート等で学生の感想を求めているが,フォーマルな形で
の授業評価は行っていない。カリキュラム自体については,基本的に資格取得のための法定課目の組み
立てであるため,評価になじみにくい。
(授業形態と授業方法の関係)
【現状】
講義科目,実習ともに,博物館の現場を知ってもらわなければならないことから,多様なメディアを
使った代理体験を採り入れた授業運営を行ってきた。
【問題点】
現状の講義や実習での映像利用は著作権法上の問題はないようだが,オンディマンド型の授業の場合,
現在利用している映像の 90%以上について著作権問題をクリアーする必要が生じる。
【問題点に対する改善方針】
オンディマンド型授業についての著作権問題については,学内関係機関と連携し解決する。
(国内外における教育研究交流)
【現状】
2005 年度,国際交流センターの長期招聘プログラムにより,大英博物館名誉日本部長のヴィクター・
ハリス先生を半年間招聘し,英国の博物館の現状と英国における日本文化研究の現状について講義した。
英国との博物館学研究にかかわる研究交流の出発点とると思われる。また,2003 年から始めた「日本の
地域博物館を考える」シンポジウムの第3回目を開催した。日本の博物館の中心となっている地域博物
館の現状の分析と将来展望を明らかにする重要な試みであると考えている。このシンポジウムは継続す
る。
【長所】
英国,レスター大学の博物館学の大学院に進学した卒業生がすでに2名おり,英国との博物館学分野
での研究交流を視野に入れた活動に着手できた。また「日本の地域博物館を考える」シンポジウムは,
各地の博物館の学芸員との人的なネットワーク構築に寄与している。また,2006 年度から始まった学術
フロンティア事業「環境変遷史と人類活動」の一環として海外の博物館との共同研究・国際シンポジウ
ムの開催を計画している。
(科目等履修生・聴講生等)
【現状】
第3章 全学 -47-
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科目等履修生について,本学卒業者に限っていた制限を撤廃した。
【問題点】
制限解除して1年目であるが,科目等履修生自体,特に増加傾向はない。数年間の推移を見る必要が
ある。ユビキタスカレッジ開設となれば,多くの科目等履修生はそちらに応募するのではないかと思わ
れる。
(教員組織)
【現状】
専任教員2名,兼任講師1名のほか大学博物館学芸員5名,実習特別講師9名である。現状では特別
の支障はないが,大学院の開講に伴って教授の持ちコマ像があり,若干の調整をした。
【長所】
兼任講師1名のほかは専任教員で授業運営を行っている。
【問題点】
大学院臨床人間学専攻の開講に伴い,教授のうち1名は講義4科目,演習1科目の増コマとなり,学
部設置コマ数を調整した。
(教育研究支援職員)
【現状】
駿河台校舎では,学芸員養成課程実習室配属の嘱託職員が週4日おり,履修相談や指導に当たってい
るほか,博物館実習の助手として学生の指導に当たっている。また,博物館実習にはTA1名を配置し,
専任教員2名,兼任講師1名,実習室嘱託職員に加えてきめ細かな実習運営を行っている。嘱託職員は
学習支援アドバイザーとしての役割も担っている。また教員も実習室での在室時間をほぼ一定させ,嘱
託職員,TAとの連携を取っている。
【問題点】
学芸員養成課程実習室配置の嘱託職員は,その業務内容,特に対学生の指導を含む対応の責任から言
えば,他の簡易な事務の短期嘱託職員と同じ待遇であることには問題がある。待遇の改善を求めたい。
(研究活動)
【現状】
1989 年以来,本学における博物館学研究の成果を学芸員養成課程の紀要として発行し続けている。そ
の論文に対する評価は学会において高いものがある。博物館学の学会は,研究者も少なく,専門学会誌
も少ないのが現状であるが,中心的な学会である全日本博物館学会の活動に専任教員が交互に役員とし
て参画している。また,それぞれの教員は,日本考古学協会,日本文化財科学会,地方史研究会等の役
員を歴任し,関連学会における活動も続けている。
本学の人文科学研究所の研究助成を受けての博物館学研究の推進はそれぞれの専任教員が重点研究
をとり進めてきた。科研費等の学外の研究助成については応募しているが,博物館学の課題では獲得す
るにいたっていない。科研費については博物館学が研究細目にないことから,教育もしくは史学の分野
に応募することになるが,いずれもそれぞれの分野では境界的な領域であることからかこれまで助成を
受けていない。
本学を卒業し,博物館や文化財保護行政に携わる卒業生とともに「明治大学博物館学研究会」を組織
している。この研究会によって,博物館実習のテキストが編纂されており,また会員の研究論文を本課
程の紀要に寄せてもらっている。2003 年に人文科学研究所の研究費の補助を受けて始まった「日本の地
域博物館」をテーマとするシンポジウムも,2004 年よりこの研究会の主催とし,年1回開催している。
5年を目途としてその成果をまとめる予定である。
【問題点】
博物館学会として科研費の研究細目への登録を働きかけているが,実現は厳しい状況にある。
【問題点に対する改善方針】
2006 年度からは学術フロンティア事業による「環境変遷史と人類活動」の研究に関わり,本学の博物
第3章 全学 -48-
/144
館と協力して標記の課題での展示理論の研究とその実践に取り組む。
(教育研究組織単位間の研究上の連携)
【現状】
大学博物館とは博物館実習を通じて協力関係にある。また,現在,長野県長和町の黒耀石研究センタ
ーと連携し夏期の博物館実習に活用している。
【問題点に対する改善方針】
大学博物館と学術フロンティア事業等を通じての協力関係を研究面まで拡大したい。また,大学院文
学研究科臨床人間学専攻等との連携を強め,研究の推進を図る。
(施設・設備等の整備)
【現状】
学芸員養成課程実習室を大学博物館に隣接して設置したことにより,学芸員の協力が得やすくなり,
博物館実習等の教育効果を高めることができている。
【長所】
学芸員養成課程実習室のコンピュータ環境の整備も進んだので,博物館実習の内容充実を図れるよう
になった。
【問題点】
実習室規模が小さいため,受講生の増加があれば,設備的に狭小となり,実習内容を切り下げなけれ
ばならない事態が来ないとも限らない。
(図書,図書館の整備)
【現状】
研究図書や一般図書に関しては,博物館学領域のものは比較的限られるためその収集にそれほど問題
はない(ただし,博物館のカタログ類の収集まで考えればまったく不十分である)が,専門の外国雑誌
の収書が不十分である。
【問題点】
博物館学関係図書の利用は学生・教員ともにきわめて限られると思われる。教員自身同一図書を収集
しているため図書館利用はほとんどないのが現状である。しかし,博物館学研究推進機関であれば,一
定範囲の専門図書と専門雑誌の収集は将来に向けた必要事であると考える。
【問題点に対する改善方針】
雑誌購読費の適切な配分を行う。
(外部資金等)
【現状】
科学研究費は博物館学領域が研究細目にないこともあり,これまで採択はない。2006 年度からは学術
フロンティア事業「環境変遷史と人類活動」に参画している。
(4)
司書課程
(使命・目的等)
【目的】
司書課程は,図書館法で定められた,司書を養成する課程である。すなわち,司書課程の目的は,司
書として必要な知識・技能を修得する人材養成である。司書課程は,図書館法施行規則において定めら
れた科目を修得するとともに,学部等で学んだ専門知識を生かし,図書館で司書として,資料の収集,
整理,及び人々の利用に供することに従事する知識とスキルを持った学生を育てることが目標である。
【現状】
第3章 全学 -49-
/145
司書課程室を設け,図書館情報学関連の資料を集め,受講生に学びの場を提供している。加えて大学
並びに図書館の理解と支援のもとに演習科目において,外部データベースの利用が可能であり,受講生
の情報検索スキルの修得が充実している。図書館では演習科目にとどまらず,講義面においても書誌学
分野などの専門家を講師として派遣,司書課程の受講生に対しその専門性を発揮して,司書養成の一助
となっている。
【長所】
図書館の協力を得て,図書及び図書館の文化史にかかわる貴重書(複製も含む)を収集し,公開展示
し,受講生のみならず,全学生に幅広い教養を培う手段の一つとなっている。
【問題点】
司書職採用における門戸の狭隘状況は,資格付与と就職が結びつかず,大きな矛盾を抱えている状況
である。しかしながら資格のみを求める受講生は多く,高度な専門職教育を阻む状況を生み出している。
【問題点に対する改善方針】
図書館の意義を受講生に知らしめ,図書館活動に対する支援者並びに司書の専門性への理解者を生み,
将来,行政の図書館政策を変革する力となるよう,養成課程を展開している。生涯学習が広く人々に根
付くためには,情報リテラシー(なかでも情報を選択する力,情報の内容を判断する力など)教育の普
及が必要である。情報リテラシー教育を受ける機会をもたなかった人々(高齢者,障害者など)に,修
得できる機会を図書館が提供するためには,人々が修得できるよう,支援する能力を有する司書が必要
である。今後,社会教育主事課程とも協力し,地域社会に貢献できる専門職の養成を考えていく。
(使命・目的等の検証)
【現状】
学生による授業評価の実施については,授業内容へのコメント及びレポート等で学生の意見を入手し,
授業評価も実施しており,授業方法の改善に取組んでいる。カリキュラムについては,基本的に資格取
得のための法定課目の組み立てであるため,評価になじみにくい。本学司書課程としての独自な取組み
は,図書館特論における自由選択科目をそろえていることである。加えて,特別講義の制度により,図
書館関係の専門家を招き,通常の授業で扱うことの少ない内容を補っている。
(特色ある取組み)
【現状】
図書並びに図書館の文化史について,「図書及び図書館史」の授業において扱うに際して,図書館所
蔵の貴重書等(複製を含む)を展示する機会を設け,受講生に人類の文化遺産に触れ,考える機会を設
けている。これは,本学図書館が所蔵する貴重書等を,受講生のみならず,本学学生,教職員並びに本
学を訪れる人々にも広く公開する機会となっている。
【長所】
多くの受講生並びに本学関係者は本学図書館の所蔵資料に関して,誇りを抱く機会ともなり,また,
大学及び図書館の財産を公開することは,社会への貢献の一助ともなり,大きな長所である。
【問題点】
所蔵品のなかには複製品も多く,できるかぎり,オリジナルを揃えていくことが課題である。
【問題点に対する改善方針】
予算等にも限りがあり,また,オリジナルが市場に出る機会は少なくなっているが,機会を見つけて,
できる限り,オリジナルを所蔵できるよう,図書委員会などに働きかけ,蔵書の充実を図るべく,年度
計画書に基づいて段階的に改善する。
(教育研究組織)
【目的】
司書課程は,専門職教育として,学部等で学んだ専門を生かし,図書館で司書として,図書館サービ
スと資料管理に従事する知識とスキルを持った学生を育てることが目標である。このため,多様な専門
第3章 全学 -50-
/146
を持つ学生に対応することができるような教育を行う組織作りが必要となる。
【現状】
専任教員2名,兼担講師2名,兼任講師 14 名である。和泉地区,生田地区での開講科目を増加した
ため,専任教員の負担が増加している。加えて,大学院の開講に伴って教授の持ちコマ増があり,今後
調整が必要である。
【問題点】
大学院臨床人間学専攻の開講に伴い,教授1名は講義2科目の増コマとなった。さらに,2007 年度に
は助教授1名も講義2科目の増コマとなる。今後,学部設置コマ数を調整する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
専任教員の1名増を実現する。これにより,研究の分野においては,大学院文学研究科臨床人間学専
攻との協力関係を通じて,地域社会が抱える様々な問題を視野に入れた今後の図書館の活動について,
あるいは図書館の司書の将来像について,研究を進めていくことが望ましい。すなわち,現実の社会に
根ざした図書館情報学の研究活動を展開していきたい。このような観点から,大学院の科目の一部につ
いては,兼任講師の採用も検討したい。また,生涯学習時代における図書館情報学の専門職養成を目的
として,現代社会の問題に関する幅広い知識と視野を有する人材の養成を検討している。この目的のた
めに,学部段階での図書館情報学教育の充実を図るとともに,現職図書館員の再教育も含めた図書館専
門職大学院の開設も視野に入れて,将来の計画を練る。
(教育課程)
【現状】
図書館サービスは全ての人々に平等に提供されるべきものであるということを命題として,「共生」
を考える機会としている。
【長所】
図書館情報学という分野を超えて,「共に生きる」という命題を扱っている。
【問題点】
1. 司書課程開設当初は履修開始が2年次からであった。これでは最終年次が4年次となり,就職活動
あるいは教育実習などのため,演習を満足に受けることができない学生が多く,資格に必要なスキル
を十分に習得できないという問題があった。このため,2005 年度の入学者から司書課程を1年次から
受講可能とした。従来,駿河台のみで開講していた科目を 2006 年度から5科目,和泉地区において
も開講している。しかしながら,生田地区においては1科目しか増設できなかった。司書課程開設当
初から,生田地区の受講生及び受講希望者から,数科目を開講してほしいとの声が寄せられている。
2. 従来,図書館現場との協力関係あるいは支援活動が希薄であった。実践力のある司書を養成するた
めにも現場との係わりを重視することが肝要である。
【問題点に対する改善方針】
1. キャンパスによって,受講条件に格差があることに対する不満を解消するためには,専任教員の増
員により,生田地区における開講数を増加することを目標とする。
2. 図書館現場への協力と支援活動として,図書館現場における図書館情報学教育界への要望を調査,
把握し支援したい。図書館サービス実践能力重視の司書養成カリキュラムの策定として,図書館見学,
図書館ボランティア,図書館実習など,図書館の現場を重視した科目(仮題:『図書館臨床演習』)を
新設し,実践能力を有した司書の養成を図ることを進めていく。さらに授業方法の改善の一環として,
ユビキタスカレッジの実施に向けて,準備中である。
(履修科目の区分)
【現状】
資格取得のための課程であり,図書館法で定められた司書を養成する課程である。すなわち,司書課
程の目的は,司書として必要な知識とスキルを修得する人材養成である。司書課程は,図書館法施行規
則において定められた科目を修得するとともに,学部等で学んだ専門知識を生かし,図書館で司書とし
第3章 全学 -51-
/147
て,資料の収集,整理,人々の利用に供することに従事する知識とスキルを持った学生を育てることが
目標である。本学の独自性としては,自由選択科目の一つである「図書及び図書館史」を必修科目とし,
図書及び図書館の文化史を司書の教養として,力点をおいたカリキュラム編成を実施している点にある。
【長所】
法定課目において,選択科目は2科目のため,他大学では,2科目設置の例が多いが,4科目を設置
し自由選択として選択の幅を広げている。演習科目においては,各学部の演習科目に準じ,受講者を 25
~30 名に制限し,きめ細かな指導をしている。
(開設授業科目における専・兼比率等)
【現状】
必修 12 科目,選択4科目(うち,必修選択2科目)のうち7科目を専任教員が担当(うち必修1科
目は他の資格課程科目の専任担当)している。兼担講師2名は選択科目を担当している。ほかに兼任講
師が 13 名おり,必修科目を担当している。
【長所】
兼任講師に各科目の専門家である豊富な人材を揃えている。
【問題点】
他大学に比べ,講師陣は豊富であるが,受講生数を限定していない(大学によっては,受講希望者か
ら試験等により,選考し,受講生を絞っている)ため,受講生数が 100 名以上にのぼり,講義形式が主
となり,グループ討議などの教育手法を用いることが困難である。資料組織演習という科目は,本来,
分類と目録に分け,各半期にすべきであるが,開設当初の諸事情のため,半期で両主題を実施している。
今後,分ける必要がある。
【問題点に対する改善方針】
資料組織演習については,1~2年後を目処に改訂する予定である。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【現状】
近年,極少数ではあるが,図書館の現場で働いており,司書の資格を持っていない社会人が受講して
いる。学部の授業ではないが,司書講習を実施していることにより,夏期講習に多くの社会人が参加し
ており,社会人への教育の一端を講習において担っている。
【長所】
既に職場を持つ現職者(嘱託,非常勤も含む)の教育は,資格のみを求める受講生と異なり,専門職
教育の一端として,重要である。
【問題点】
未だ現場経験を持たない学生と現職者への同時教育は困難な面を持つ。
【問題点に対する改善方針】
現場で直面する問題などを,学生に投げかけ,討論を呼び起こすことにより,双方にとって,実のあ
る学習にしていく。
(生涯学習への対応)
【現状】
近年,中・高齢者の受講が少数ながらみられる。図書館における非常勤職員あるいはボランティア希
望者などが主であるように思われる。
(正課外教育)
【目的】
図書館の現状を知るための現場訪問及び情報リテラシー育成のための情報探索などを通じて,専門職
第3章 全学 -52-
/148
としての司書養成を目標としている。
【現状】
演習科目での課外学習は無論のこと,専任教員を中心に,公共図書館の現状を知ることを目的とした,
図書館の見学報告を課すほか,文献探索に基づいた小レポート提出などを半期に数回課している。2006
年度から千代田区立神田一ツ橋中学校における図書館のボランティア活動も開始し,図書館現場での体
験を重視した教育の実践を行っている。
【長所】
学校図書館で働く司書の養成につながるボランティア活動である。
(教育効果の測定)
【現状】
学生による授業評価の実施については,授業内容へのコメント及びレポート等で学生の意見を入手す
る等の方法で実施し,また,授業方法の改善に取組んでいる。カリキュラムについては,基本的に資格
取得のための法定課目を編成しているため,評価になじみにくい。
【長所】
独立行政法人大学に合格した卒業生が,後輩のため,自主的に月に一度,就職のための勉強会を開い
ている。この会から巣立ち,無事就職した者もおり,この勉強会の存在価値は高い。
(厳格な成績評価の仕組み)
【現状】
2004 年度入学者から成績評価基準の改正を行い,これまで 50 点であった合格点を 60 点以上にする等,
厳正に評価している。
(履修指導)
【現状】
駿河台校舎では,司書課程室配属の嘱託職員が週5日おり,履修相談や指導に当たっているほか,嘱
託職員不在の日(現状は月曜日)には専任教員が在室して,オフィスアワーとしている。和泉校舎,生
田校舎では学習支援室,資格課程分室に資格課程全体の相談に対応している。
【長所】
嘱託職員は,卒業生の有資格者を配属しているため,履修相談,進路相談などに力を発揮している。
【問題点】
演習クラスの補助をする TA が不足している。
【問題点に対する改善方針】
全ての演習クラスではないが,TAを採用することが 2006 年度から認められ,実施の方向である。
嘱託職員は学習支援アドバイザー並びに進路相談に応ずる役割も担っている。
(教育改善への組織的な取組み)
【現状】
大学全体の授業アンケートを専任教員をはじめとして兼任講師も含め,実施している。全体の数値に
表れた学生の反応及び個別の自由記述による意見を参考に,授業改善に取組んでいる。加えて授業内容
へのコメント及びレポート等で学生の意見を把握し,改善に取組んでいる。カリキュラムについては,
基本的に資格取得のための法定課目の編成であるため,評価になじみにくい。本学司書課程としての独
自な取組みは,図書館特論における自由選択科目をそろえていることである。加えて,特別講義の制度
により,図書館関係の専門家を招き,通常の授業で扱うことの少ない特色ある教育を展開している。
(授業形態と授業方法の関係)
【現状】
講義科目,実習ともに,図書館の現場を知らしめる必要から,多様な教材メディアを使った代理体験
第3章 全学 -53-
/149
を採り入れた授業運営を行ってきた。今後ともこの方向は強化する。
【問題点】
現状の講義や演習での映像利用は著作権上問題はないようだが,オンディマンド型の授業の場合,現
在利用している映像について著作権問題をクリアーする必要が生じる。
(通信制大学・学部等)
【現状】
2007 年度よりのユビキタスカレッジにおける司書養成の開始を考え,2006 年度中にそのコンテンツ
の作成を企図している。
【問題点】
2007 年度よりのユビキタスカレッジにおける司書養成を開始するには,専任教員が不足している。
(科目等履修生・聴講生等)
【現状】
科目等履修生について,本学卒業者以外も受け入れている。
【長所】
現職者教育を進めていくうえで,司書課程にとって,意義がある。
【問題点】
ユビキタスカレッジ開設となれば,多くの科目等履修生はそちらに応募するのではないかと思われる。
(教員組織)
【現状】
専任教員2名,兼担講師2名のほか兼任講師 13 名である。現状では特別の支障はないが,大学院の
開講に伴って教授の持ちコマ増があり,今後若干の調整が必要である。さらに,ユビキタスカレッジの
開講を視野に入れるならば専任増が必要である。
【長所】
兼任講師に専門分野の多様性がみられること。特別講義における特殊分野の講義が受講生に好評であ
る。
【問題点】
大学院文学研究科臨床人間学専攻の開講に伴い,教授1名は講義2科目の増コマとなった。さらに,
2007 年度には助教授1名も講義2科目の増コマとなる。今後,学部設置コマ数を調整する必要がある。
(教育研究支援職員)
【現状】
駿河台校舎では,司書課程室配属の嘱託職員が週5日おり,履修相談や指導に当たっているほか,嘱
託職員不在の日(現状は月曜日)には専任教員が在室して,オフィスアワーとしている。和泉校舎,生
田校舎では学習支援室,資格課程分室に資格課程全体の相談に対応している。
【長所】
嘱託職員は,本学卒業生の有資格者を配属しているため,履修相談,進路相談などに力を発揮してい
る。
【問題点】
司書課程室配置の本学嘱託職員は,その業務内容,特に対学生の指導を含む対応の責任から言えば,
他の簡易な事務の短期嘱託と同じ待遇であることには問題がある。
【問題点に対する改善方針】
第3章 全学 -54-
/150
開室時間の延長のため,支援職員の担当時間数の増が望ましい。さらにいえば,司書及び司書教諭課
程の長期的見通しから考えると,嘱託ではなく専任職員としての採用が望まれる。あわせて,司書ある
いは司書教諭をめざす大学院生の教育上の意義及び経済的支援という観点から,今後ともTAの活用を
継続していく。
(研究活動)
【現状】
図書館情報学の学会は,研究者も少なく,専門学会誌も少ないのが現状であるが,中心的な学会であ
る日本図書館情報学 会の活動への参画及び日本情報メディア学会,日本図書館協会,日本図書館研究
会,日本図書館文化史研究会等の役員を歴任し,関連学会における活動も続けている。科研費等の学外
の研究助成についても学外研究者と共同で応募し,研究成果も出している。
【改善方針】
図書館サービスにおいて実践能力を有した司書を養成するためのカリキュラムを検討することを目
的として,図書館の現職の司書との共同研究を推進していく。
(教育研究組織単位間の研究上の連携)
【現状】
図書館とは『図書の譜』『らいぶ』及び貴重書の展示などにおいて,あるいは実務者の授業担当など
を通じて協力関係にある。
【問題点】
現時点では,未だ図書館司書と共同での図書館学研究にまでいたっていない。拡大する方向を模索し
たい。
図書館利用リテラシーの充実については,図書館を軸に学部間共通総合講座「図書間活用法」の受講
希望者が増加し,図書館としては,対応に苦慮しているが,司書・司書教諭課程も支援方策を検討する
必要がある。
【問題点に対する改善方針】
1. どのような共同研究が有益であり,望ましいかを検討し,将来の共同研究に備える。あるいは,将
来,図書館のみならず,神保町界隈の古書店街と共同で,書物・情報などに関する文化を内外に発信
することの可能性の有無を検討する。
2. 将来,ユビキタスを採り入れるなどして,より多くの受講に耐えうるように共同で,開発すること
も課題のひとつである。
(施設・設備等の整備)
【長所】
図書館と連携し,情報検索演習における外部データベースの利用が可能となり,より有効な演習が可
能となった。
【改善方針】
演習実施に関する環境・条件整備として,「情報検索演習」における外部データベースのアクセス数
を受講生の数と同数(25-30)にし,同時アクセスが可能な条件を整えたい。
(図書,図書館の整備)
【現状】
研究図書や一般図書に関しては,図書館情報学を重視している図書館として,収集に力を入れている
ため,それほど問題はない。図書の文化史を考える上での内外の貴重書(オリジナル)がさらに必要で
ある。
【長所】
図書の文化史展を数年来実施し,図書館所蔵の貴重書等を公開展示している。
【問題点】
第3章 全学 -55-
/151
外部データベースの利用に際して,人文科学系の利用が制限されており,特に研究者として,制約が
ある。
【問題点に対する改善方針】
図書館が年度計画書に基づいて段階的に改善するよう,働きかける。貴重書の購入に関しても図書館
が長期的な見通しのもとに改善を図るよう,意見を出していく。
(自己点検・評価)
【長所】
カリキュラムにおいては,省令科目を軸に,選択科目の種類を増やし,受講生の知識やスキル並びに
視野を広めている。専任教員は司書の経験者であり,また,兼任講師も図書館情報学の専門家を配する
とともに公共図書館や図書館の経験を有する人々であり,司書課程の教育者として多様な人材をそろえ
ている。
【問題点】
2000 年度に新設されたため,課程の整備に力を注いできたこともあり,図書館現場との協力,支援関
係が十分になされていたとは言いがたい。
【問題点に対する改善方針】
専任教員の増員が実現された暁には,専任教員が分担協力し,教育の面では,司書課程のさらなる充
実,研究の面では,図書館現場との共同研究及び支援を進める。図書館現場については,専任教員がこ
れまでに培ってきた国立国会図書館や市町村の公共図書館との人脈を生かして,具体的にとりくんでゆ
く。
学外の図書館情報学の専門家や,各種図書館の司書等の評価も得ることができるよう,評価組織を設け
たい。
(5)
司書教諭課程
(使命・目的等)
【目的】
司書教諭課程は,学校図書館法で定められた,司書教諭を養成する課程である。すなわち,司書教諭
課程の目的は,学校図書館の専門的職務を掌る司書教諭として必要な知識・技能を修得する人材の養成
である。司書教諭課程は,省令に定められた科目を小・中・高等学校等の教諭の免許状を有する者ある
いは教諭の免許状を取得しようとする者が受講する課程である。各専門教科で学んだ専門知識を生かし,
学校図書館で司書教諭として,図書館資料の収集,整理,及び生徒または教員の利用に供することに従
事するための知識とスキルを持った教師を育成することが目標である。
【現状】
司書・司書教諭課程室を設け,図書館情報学関連の資料を集め,受講生に学びの場を提供している。
【長所】
現役の教員,並びに教員経験を有する者が専任あるいは兼任講師として授業を担当し,学校図書館の
重要性及び教育面での図書館の活用を説いていることは,受講生にとって,有用である。
【問題点】
教職課程受講生の多くに受講を進めたいが,現在の担当者数では不足している。
【問題点に対する改善方針】
ユビキタスの実施に伴い,増員が実現されるよう求めており,実現できれば,司書教諭課程において
も教育上の余裕が生じる。
(使命・目的等の検証)
【現状】
第3章 全学 -56-
/152
学生による授業評価の実施については,授業内容へのコメント及びレポート等で学生の意見を入手す
る等の方法で実施し,さらに授業評価も実施しており,授業方法の改善に取組んでいる。カリキュラム
については,基本的に資格取得のための法定課目の組み立てであるため,評価になじみにくい。
(特色ある取組み)
【現状】
2006 年度から神田一橋中学校において,学校図書館の管理運営に携わるボランティア活動を発足する
予定である。
【長所】
チーム・ティーチングを念頭に数名のグループによる課題研究,討論,学習指導案の作成に取組む等,
特色ある教育活動を展開している。
【問題点】
教職課程受講生の多くに受講を進めたいが,現在の陣容ではゆきとどかず,増員が望まれる。
【問題点に対する改善方針】
ユビキタス実施に伴い,増員を要求している。実現すれば,司書教諭課程にも多少のゆとりが生ずる。
(教育研究組織)
【現状】
専任教員2名,兼担講師1名,兼任講師2名である。生田地区での開講科目を増加したため,専任教
員の負担が増加している。また,現状では特別の支障はないが,大学院の開講に伴って教授の持ちコマ
増があり,今後若干の調整が必要である。
【問題点】
大学院文学研究科臨床人間学専攻の開講に伴い,教授1名は講義2科目の増コマとなった。今後,学
部設置コマ数を調整する必要がある。2007 年度にユビキタスカレッジ開講を進めるなら専任教員の1名
増が必要である。
【問題点に対する改善方針】
大学院の科目の一部については,兼任講師の採用も検討したい。
(教育課程)
【現状】
学校図書館が全ての児童・生徒を対象に平等なサービスが提供されるということをコンセプトに,
「共
生」ということを考える機会としている。
【長所】
図書館情報学という分野を超えて,
「共に生きる」という命題を扱っている。
(インターンシップ,ボランティア)
【目的】
図書館におけるボランティア活動を通じて,実務上の模擬体験をし,司書教諭の具体的な仕事が想像
できること,就職した際に直面する諸問題に対処できる力をあらかじめ備えることを目的としている。
【現状】
2006 年度から神田一橋中学校において開始する。
【長所】
机上の知識のみではなく,現場での仕事を体験することの意義が大きい。
【問題点】
第3章 全学 -57-
/153
現時点では,ボランティア活動であるが,学校図書館実習として単位化が望まれる。
【問題点に対する改善方針】
2006 年度の実績をもとに,単位化を進める。
(履修科目の区分)
【現状】
司書教諭課程は,学校図書館法で定められた,司書教諭を養成する課程である。すなわち,司書教諭
課程の目的は,学校図書館の専門的職務を掌る司書教諭として必要な知識・技能を修得する人材の養成
である。司書教諭課程は,省令に定められた科目を小・中・高等学校等の教諭の免許状を有する者ある
いは教諭の免許状を取得しようとする者が受講する課程である。
(授業形態と単位の関係)
【長所】
グループによる討議や指導案作成など,チーム・ティーチングを想定し,協力して教育に従事する教
員の育成を目指している。
【問題点】
きめ細かな指導を実施するには,大人数のクラスでは困難である。少人数のクラスにするには教員の
増員が望まれる。
【問題点に対する改善方針】
ユビキタス開設に伴う人員増と兼任講師の増員を求めている。
(開設授業科目における専・兼比率等)
【現状】
必修5科目のうち2科目を専任教員が担当。ほかに兼担講師1名と兼任講師が2名おり,充足してい
る。
【長所】
専任教員及び兼任講師に教師経験者及び現職教員がおり,学校並びに学校図書館の実情や問題点を教
えることができる。学校図書館及び学校図書館の資料を有効に用いた教育方法を展開できる。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的】
現職教員の資格取得のための履修に際して,学校図書館の教育上の重要性と活用の必要性を知らしめ
ることを目的としている。
【現状】
現職教員が司書教諭の資格を得るために科目等履修生として登録し,受講する状況が漸次増えてきて
いる。
【長所】
現職者の教育は,学部学生への刺激となり,双方が啓発し,相乗効果を生み出している。
【問題点】
未だ現場経験を持たない学生と現職者への同時教育は困難な面も持つ。
【問題点に対する改善方針】
現場で直面する問題などを,学生に投げかけ,討論を呼び起こすことにより,双方にとって,実のあ
る学習にしていく。
(正課外教育)
第3章 全学 -58-
/154
【目的】
学校図書館におけるボランティア活動を通じて,現場の問題,職業上の課題を体得させることを目標
としている。
【現状】
千代田区立一橋中学校図書館におけるボランティア活動を 2006 年度から実施している。活動の内容
は学校図書館の運営と活動の支援であり,図書の整理,貸し出し,調べ学習への支援,レファレンスサ
ービスなどである。
【長所】
学校図書館の現場でのボランティア活動は,司書教諭志望者にとって実のある体験となる。
【問題点】
ボランティア活動が単位化されていない。
【問題点に対する改善方針】
学校図書館実習として,単位化することを検討する。
(教育効果の測定)
【現状】
学生による授業評価の実施については,授業内容へのコメント及びレポート等で学生の意見を入手す
る等の方法で実施し,また,授業方法の改善に取組んでいる。カリキュラムについては,基本的に資格
取得のための法定課目の組み立てであるため,評価になじみにくい。
【長所】
教員として採用された際,学校図書館の活用を専門の教科指導において,実施することができるのは,
強みである。
(厳格な成績評価の仕組み)
【現状】
2004 年度入学者から成績評価基準の改正を行い,これまで 50 点以上であった合格点を 60 点以上に引
き上げる等,厳格な成績評価に取組んでいる。
(履修指導)
【現状】
駿河台校舎では,司書教諭課程室配属の嘱託職員が週5日いるほかTAも在室し,履修相談や指導に
当たっている。また,嘱託職員不在の日(現状は月曜日)には,専任教員が在室して,オフィスアワー
としている。和泉校舎,生田校舎では学習支援室,資格課程分室に資格課程全体の相談に対応している。
【長所】
嘱託職員及びTAは,有資格の卒業生を配属しているため,履修相談,進路相談などに力を発揮して
いる。
(教育改善への組織的な取組み)
【現状】
学生による授業評価の実施については,授業内容へのコメント及びレポート等で学生の意見を入手し,
授業評価も実施しており,授業方法の改善に取組んでいる。カリキュラムについては,基本的に資格取
得のための法定課目の組み立てであるため,評価になじみにくい。本学司書教諭課程としての独自な取
組みは,特別講義の制度により,学校図書館関係の専門家を招き,通常の授業で扱うことの少ない特色
ある教育活動を展開している。
(授業形態と授業方法の関係)
【現状】
第3章 全学 -59-
/155
司書教諭の科目では,学校図書館の現場を知らしめる必要から,多様な教材メディアを使った代理体
験を採り入れた授業運営を行ってきた。今後ともこの方向は強化されることになる。
【問題点】
現状の講義や実習での映像利用は著作権上問題はないようだが,オンディマンド型の授業の場合,現
在利用している映像について著作権問題をクリアする必要が生じる。
(通信制大学・学部等)
【目的】
教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
【現状】
2007 年度よりのユビキタスカレッジにおける司書教諭養成の開始を考え,2006 年度中にそのコンテ
ンツの作成を企図している。ただし,ユビキタスカレッジにおける司書教諭養成を本格化させるには,
専任教員(司書課程と兼任)の1名増が必要である。
【問題点】
2007 年度よりのユビキタスカレッジにおける司書教諭養成を開始するには,専任教員(司書課程と兼
任)の1名増が必要である。
(科目等履修生・聴講生等)
【現状】
科目等履修生について,本学卒業者以外も受け入れている。
【長所】
現職者教育を進めていくうえで,司書教諭課程にとって,意義がある。
【問題点】
ユビキタスカレッジ開設となれば,多くの科目等履修生はそちらに応募するのではないかと思われる。
(教員組織)
【現状】
専任教員2名,兼担講師1名のほか兼任講師2名である。現状では特別の支障はないが,大学院の開
講に伴って教授の持ちコマ増があり,今後若干の調整が必要である。
【長所】
専任並びに兼任講師に教員経験者がおり,現場の問題もあわせて,教えることができる。特別講義に
おける学校図書館関係者による講義が受講生に好評である。
【問題点】
大学院文学研究科臨床人間学専攻の開講に伴い,教授1は講義2科目の増コマとなった。今後,学部
設置コマ数を調整する必要がある。
(教育研究支援職員)
【現状】
駿河台校舎では,司書課程室配属の嘱託職員及びTAが週5日おり,履修相談や指導に当たっている
ほか,嘱託職員不在の日(現状は月曜日)には専任教員が在室して,オフィスアワーとしている。和泉
校舎,生田校舎では学習支援室,資格課程分室に資格課程全体の相談に対応している。
【長所】
嘱託職員及びTAは,従来有資格者の卒業生を配属しているため,履修相談,進路相談などに力を発
揮している。
【問題点】
第3章 全学 -60-
/156
司書教諭課程室配置の嘱託は,その業務内容,特に対学生の指導を含む対応の責任から言えば,他の
簡易な事務の短期嘱託と同じ待遇であることには問題がある。待遇の改善を求めたい。
(研究活動)
【現状】
図書館情報学の学会は,研究者も少なく,専門学会誌も少ないのが現状であるが,中心的な学会であ
る日本図書館情報学会の活動に専任教員が役員として参画している。また,それぞれの教員は,日本情
報メディア学会,日本図書館協会,日本図書館研究会,日本図書館文化史研究会等の役員を歴任し,関
連学会における活動も続けている。
科研費等の学外の研究助成についても学外研究者と共同で応募し,研究成果も出している。
(教育研究組織単位間の研究上の連携)
【現状】
図書館とは従来から協力関係にある。これを図書館学研究にまで拡大する方向を模索する。
(図書,図書館の整備)
【現状】
研究図書や一般図書に関しては,図書館情報学を重視している図書館として,収集に力を入れている
ため,それほど問題はない。しかし,今後は学校図書館関連の図書がさらに必要である。
(社会への貢献)
【現状】
千代田区との連携の一環として,神田一橋中学校図書館において,ボランティア活動を 2006 年度か
ら開始している。活動内容は,学校図書館の運営及びサービスの提供である。具体的には学校図書館の
資料の整理,貸し出し,調べ学習への支援並びにレファレンスサービスの提供である。
【長所】
学校図書館現場での体験は貴重である。
【問題点】
ボランティア活動から正規の科目として単位化が望ましい。
【問題点に対する改善方針】
1年間の成果を踏まえて,図書館実習として,単位を与えることができるように取組む。
第3章 全学 -61-
/157
6.研究指導室
(1)
法制研究指導室
1.使命・目的・教育目標
法制研究所は,1957(昭和 32)年4月に,野田孝明教授を初代所長として,設立された司法試験受験
指導を専門とする本学の直属機関である。法曹をめざす本学の学生・院生及び卒業生に対して,多数の
司法試験対策講座を主催し,また,徹底した個別指導を実施することにより,本学出身の司法試験合格
者の8割前後を毎年輩出している。多数の優秀な本学出身の司法試験合格者を輩出することが当研究所
の理念ないし目的である。
2.現状
(1) 受験指導
駿河台地区(上級研究室・LSCロースクールクラス)と和泉地区(基礎法学研究室)において,合
格者指導員,明治大学法曹会々員,法学部ないし法科大学院の専任教員の協力のもとに,また,辰巳法
律研究所との提携により,各種の講座を立ち上げ,徹底した合格指導を実践している。
和泉校舎における1年生を対象とした「明治大学司法試験1年目入門講座」
(58 回),2年生を対象と
した「明治大学司法試験2年目入門講座」
(35 回),主に2年生を対象とする「論文練習講座(基礎コー
ス)」
(11 回),
「短答演習講座(基礎コース)」
(12 回),駿河台校舎における中・上級者を対象とする「論
文練習講座(応用コース)」(48 回),「択一答案練習会」(15 回),合同プラン(146 回),論文作成個別
指導講座,口述試験講座,特別講座など,明治大学司法試験早期合格プランを完備し,多数の合格者を
輩出している。
また,法曹養成制度の抜本的改革(2004 年法科大学院開校,2006 年新司法試験開始)に対応した受
験指導体制(法科大学院進学コース,新司法試験受験指導(LSC))の確立を一早く実現している。
例えば,法科大学院入試対策として,適性試験対策講座を新規開講し実施している(「適性試験トレー
ニング講義」(12 回),「適性試験オープン」(11 回))。さらに,新司法試験受験対策として,明大法曹
会スタッフの協力の下,論文作成講座,勉強相談ゼミ,自主ゼミサポート,合格者ゼミ,サンプル問題
解説講座,中間試験サポート,新司法試験論文作成会,プレテスト添削,プレテスト解説検討会,フォ
ローアップゼミを実施している。
なお,法制研究所の 2005 年の在籍者数は,1年生入門講座 389 名,2年生入門講座 86 名,上級研究
室所属 184 名,法科大学院(LSC)会員 70 名である。
(2) 物的施設の整備
駿河台・和泉地区それぞれに,専用の自習室・ゼミ室・事務室が整備されている。
和泉地区については,2005 年に和泉校舎内に専用自習室とゼミ室が確保され,本格的な学習環境が整
った。
駿河台地区は,11 号館の2階に,法制研究所の専用スペースが配置されているが,講座用教室につい
ては,確保できない曜日の多発によりプラン実施に支障を来たし,コースの削減と実施日の変更で何と
か対処しているのが現状である。
(3) 教員組織
弁護士を中心としたOB法曹,元司法試験委員をはじめとする法学部・法科大学院教授陣,司法修習
生,及び司法試験合格者指導員を中心に,各種試験対策講座及び個別指導を実施しているが,運営自体
は極少数のボランティア教員とOB弁護士に支えられているのが現状である。
(4) 事務スタッフ
各地区それぞれ嘱託職員2名により運営されているが,他大学(早稲田大学や中央大学など)と比較
して,事務スタッフが極端に少ないのが現状である。
(5) 学生への経済的支援
各種講座の受講料を可能な限り低廉に設定することにより,学生負担の軽減を図っている。また,論
文講座の成績優秀者及び皆勤者に対する表彰(副賞として数千円の図書券を授与)を行い,学生に対す
第3章 全学 -62-
/158
る精神的金銭的支援を実施している。また,司法試験受験のインセンティブを与えるため,在学中(ま
たは卒業年度)に司法試験に合格した者等に対して,年間授業料相当額(またはその半額)を支給する
奨学金制度を実施している。
3.自己点検・評価
(1) 受験指導
徹底した実践的指導により,毎年多数の司法試験合格者を輩出している。常時,本学が全国大学別合
格数の上位校(例えば,2003 年は全国8位(33 名合格),2004 年は全国7位(46 名合格))に名を連ね
られるのは,熱意ある合格者指導員等による充実した指導の成果であり,このことは従来からの法制研
究所の特色として,高く評価できるところである。
今後は,法曹養成制度の抜本的改革に対応した受験指導体制(法科大学院進学コース,新司法試験受
験指導(LSC))を充実して,司法試験合格者の多数輩出という伝統と実績を新司法試験の時代にも
承継することが緊急課題となっている。新入生向け入門講座の申し込み状況(2005 年 389 名)から明ら
かなように,法学部生の司法試験講座(法科大学院進学)に対する情熱は強い。3000 名合格者時代の到
来に向けて,現行司法試験対策およびロースクール入試対策講座として,法学部生向け講座の充実をさ
らに図る必要がある。すなわち,現在4万人前後(2005 年 45,758 名)が受験している現行司法試験の
受験指導に加えて,法科大学院入試,及び新司法試験に対応した3~5倍規模の受験生の受入れ体制を
今から準備しておく必要がある。しかし,2005 年度はその一部を準備したにとどまり,大部分は次年度
への持ち越し事項となっている。さらなる前進を要するところである。なお,法科大学院との協働関係
の構築も緊急の課題である。
さらに,法学部の教育との連動を常に意識する必要がある。特に,法学部が 2005 年度から採用した
新カリキュラムやコース制(法曹コース)と連動し,かつ,法科大学院入試に対応した新指導体制の確
立が強く望まれる。そのためにも,法学部との強い提携の下,教員の積極的協力,さらには,法学部事
務員の一部派遣なども視野に入れた新体制について検討されるべきであるが,2005 年度は準備に向けた
努力にとどまり,その前進が期待されるところである。
(2) 物的施設の整備
2005 年度に,和泉校舎内に,専用の自習室,ゼミ室,指導員室,事務室が整備され,1・2年生の学
習環境が整備された点は,高く評価できる。今後も利用者である学生の視点に立った改善を継続してい
くべきである。
駿河台地区のビデオ利用可能な大教室の確保は緊急課題となっており,プラン実施に支障を来たして
いるという現状を早急に改善すべきである。また,専用スペースの利用についても,自習室固定席(全
124 席)・運営室の法科大学院クラス(LSC)への割り当て問題をはじめ,解決すべき問題が山積したま
まである。2006 年には,法科大学院の院生 100~300 名(全 500 名中)とその卒業生 100~200 名(全
300 名中)の利用者増となり現在の3~4倍規模となることが見込まれる。とりわけ,2011 年までの新
旧司法試験の併存期間の中で,特に 2006 年から 2008 年の3年間は,両者のピーク状態が併存し,二本
立てで対処せざるを得ないという緊急事態が発生している。これに対応した物的施設(含む,ロッカー
室の整備)の確保が緊急の課題であるが,2005 年度内においては,未だに抜本的な解決方法が見い出せ
ないままに終わっている。かつてリバティタワー建築の際に法制研究所が民間ビルに一時移転したよう
に臨時の優遇処置を採用するなり,センター化構想の実現により恒常的施設を確保することが強く望ま
れるが,このような抜本的な改革すなわち予算と物的施設の確保が急務である。
(3) 教員組織
法制研究所の運営が極少数のボランティア教員とOB弁護士のみに支えられているという現状は,今
後の運営を鑑みても,極めて問題である。センター化構想を早期に実現して組織的恒常的な運営を可能
とする環境を早急に整備すべきである。
(4) 事務スタッフ
2005 年度に駿河台地区の短期嘱託事務員が1名から2名になったことは,高く評価できるが,業務の
現状に即して観察した場合,決して満足できるものではない。更なる事務スタッフの充実が急務である。
各種講座の実施や研究室の運営,受験生へのサービス,講師の依頼,司法試験関係情報収集・整理など,
業務内容が多岐にわたっていることに加えて,法科大学院入試や新司法試験の対策講座の実施により,
事務が3~5倍に膨らんでおり,他大学と同様に,正規職員の配属および常時5名体制の確立が強く求
第3章 全学 -63-
/159
められる。
(5) 学生への経済的支援
各種講座の受講料を低廉に設定するなど,学生への経済的支援については評価できるところが多い。
各種の経済的支援制度は学生にとって,精神・経済の両面において重要であるから,今後も受講生の自
己負担の要請とのバランスを考慮しつつ,最大限の配慮を図れるよう予算確保を不断に努める必要があ
る。なお,合格者報奨金制度を,今後は現行司法試験の他に法科大学院入試や新司法試験を視野に入れ
て実施すること,また,奨学金制度を新たに採用することも今後検討する必要がある。
(2)
経理研究指導室
1.使命・目的・教育目標
(使命・目的等)
経理研究指導室は,「個を強くする」という本学の教育理念の下,会計プロフェッショナルとして社
会的使命を果たす公認会計士を養成することを目的としている。本学の公認会計士試験受験指導機関と
して,簿記講座を開設して受験生の養成を図り,駿河台校舎と和泉校舎に特別会計研究室を設置して受
験生を指導し,合格へ導くことが教育目標である。経理研究指導室では,目的を達成するために,商学
部・経営学部の入学試験合格者にパンフレットを送付し,入学後にガイダンスを3回(うち1回は日本
公認会計士協会の協力を得て)開催して周知を図っている。ガイダンスの周知にあたっては商学部・経
営学部・政経学部の新入生にリーフレットを配布して案内している。また,本学ホームページ上でも各
種情報を提供している。この取組みの結果,ここ5年間,35,39,45,60,45 名と大学別順位で6位前
後と,長年にわたり多くの公認会計士を輩出し,本学出身の公認会計士は 1,000 名以上に及んでいる。
また,受験生の養成を図るための簿記講座では毎年延べ 900 名~1,000 名前後の学生が受講し,公認会
計士受験を目指す学生にとってよいきっかけとなっている。この他,付属高校での簿記講座を開講し,
高大連携の取組みを早期から行っている。また,入学後に実施しているガイダンスでは,毎年 400 名近
くの新入生等が参加しており,多くの学生のニーズに応えている。
2006 年度より新しい公認会計士試験制度が始まり,また 2007 年度には会計専門職大学院の修了生が
受験初年度を迎えることから,公認会計士講座を開講する必要がある。また,簿記講座については受験
級・開講日等により,受講者数にバラツキがあるので,受験者のニーズを的確にとらえて毎年見直す必
要がある。また,ホームページによる告知の更新回数が少ないので,必要な情報をより適切に提供する
必要もある。
2006 年度,本学受験生が最も必要としている「企業法」の会計士講座(2007 年度合格目標)を8月
27 日に開講する。この他,必修科目である「会計学」「監査論」についても計算科目を中心に会計士講
座の開講を早急に企画立案する。ホームページによる情報公開については,事務局委員会で毎月,提供
すべき情報内容を検討し,広報担当者によって管理を改善していく。
(使命・目的等の検証)
経理研究指導室では,2005 年度現在まで,理念・目的等を検証する常設の組織がないのが現状である
が,2005 年 12 月に本学教員と学外の有識者(本学出身の公認会計士)で構成されたワーキンググルー
プを発足して,経理研究指導室の現状と課題について 2006 年5月に提言することになった。また,理
念・目的の検証についてワーキンググループと同じような構成メンバーによる自己点検評価の常設組織
の設置を,5月の所員会議で検討する。
2.教育研究組織
経理研究指導室の教育研究組織は所員として本学教員(専任・兼任)のうち会計学を専門領域とする
教員と学外の有識者(本学出身の公認会計士)から成っている。最高意思決定機関は所員会議で,評議
員に相当する組織として所員の中から選任された運営委員から成る運営委員会がある。その下部組織に,
経理研究指導室の事業を執行する組織として指導委員会と事務局委員会(両者を併せて合同委員会とい
う)があり,指導委員会は簿記講座・特別会計研究室に関する受験指導を担当し,事務局委員会は簿記
講座・特別会計研究室の運営や事務処理を担当している。本学の教員と本学出身の公認会計士が密に連
携して,組織が運営されている点が特徴であるが,本学教員がボランティア的に業務に当たっている点
や事務局委員の下に正職員がおらず,嘱託職員に責任ある仕事を任せざるをえない状況である。国家試
第3章 全学 -64-
/160
験対策の指導機関としての法制研究指導室・行政研究指導室とともに,資格取得センター化構想を推進
する。
3.教育内容・方法等
(カリキュラムにおける高・大の接続)
公認会計士受験者を養成するために,その導入教育である簿記講座を付属高校で開設し,高校在学時
までに簿記検定2級の取得を目指す。本学進学後に1級ないし会計士講座へ進み,在学中に公認会計士
試験に合格することを目標とし,付属高校の明治高校・中野高校において土曜日の放課後に,中野八王
子高校では,夏休みに簿記講座(3級・2級)を開講している。この取組みについては,特に3級の簿
記講座は受講者を抽選で決めるほどの盛況ぶりで,本学進学時に簿記検定2級を取得済みの学生が増え
ており,会計士受験を目指す学生が増加している。しかし,2級と3級の講座を同時に開講していたた
め,受講者が3級から2級へ進む場合,1年間待たなければならない問題がある。このことについては
2006 年度より,すべての付属高校にて高校進学後最初の春休みに3級講座を開講し,その後,夏休みに
2級講座を開講することにした。これにより高校での学習に影響を及ぼすことなく,短期間で効率よく
資格取得に取り組むことが可能となった。
(カリキュラムと国家試験)
経理研究指導室は,公認会計士試験の受験を目指すきっかけとなるよう簿記講座・会計士講座を開設
することを目的としている。2005 年実績では,簿記講座は集中コース(3・2級一括)が3クラス,標
準コースが(3級・2級個別)が延べ6クラス,生田コース(3・2級)が1クラス,1級コースが2
クラス開講された。延べ受講者数は 896 名であった。簿記講座の受講生の簿記検定受験率等は団体申込
をしていないため,把握できていない。特別会計研究室では駿河台・和泉にそれぞれ約 90 名が在籍し,
本学出身の公認会計士である指導委員の指導を受けている。駿河台に在籍する室員が合格予備軍である。
会計士講座は 2005 年度現在,特別講義は随時開講しているものの,常設の講座は開講していない。駿
河台の室員の受験率はほぼ 100%で,2005 年度の本学合格者数は 40 名だが,個人情報法保護法案の施
行で,うち経理研関係者の合格者数が正確に把握できていない。
本指導室は経験豊富な本学教員,本学出身の教員・公認会計士が直接指導に当たっているため,受講
料が低廉であり,履修計画を侵害することなくスムーズに受講できることが特徴である。
簿記講座の受講生における受験率の把握については,学内の関係機関との調整を図りつつ,受講者か
ら直接把握できるよう取組む。また,会計士の受験率等については学内外の関係機関の協力を得て,把
握に努める。
(教育改善への組織的な取組み)
授業評価については,個々の担当者が個別に実施して今後の講座運営や授業内容に反映しているが,
経理研究指導室として学生による授業評価は実施していない。組織的な教育改善のための取組みについ
ては,前後期末に講師打ち合わせ会を開催し,講座の運営や授業内容について意見交換をしている。5
月の合同委員会にて講座の授業改善アンケートの導入について審議し,2006 年度より実施する方向で検
討する。
4.学生の受け入れ
(学生募集方法,入学者選抜方法)
駿河台の特別会計研究室では,本学の在学生・卒業生を対象に,7月・11 月・2月の年3回,室員を
募集している。7月は短答式試験の合格発表後,11 月は論文式試験の合格発表後,2月は和泉分室から
の転室試験という位置づけで実施している。選抜方法は会計士試験でも重要な「簿記」
「財務諸表論」
「原
価計算」の3科目を課している。和泉の特別会計研究室では公認会計士受験者を養成する観点で,4月
と 10 月の年2回,室員を募集している。和泉では大学の授業と並行して学習を進める学生が多いこと
から,前後期の2回としている。受験生の取組み状況に合った形で試験を実施していることが評価でき
る。
5.研究活動と研究環境
(研究活動)
毎年9月に経理研究指導室関係者の研究成果を発表する学術雑誌『経理知識』を発行している。
第3章 全学 -65-
/161
6.施設・設備等
(施設・設備等の整備)
経理研究指導室は当該目的を達成するため特別会計研究室・事務室を設置している。
駿河台校舎 11 号館に,特別会計研究室(自習室と討論室)と事務室,和泉校舎第3校舎に特別会計
研究室和泉分室(自習室・討論室・講義室)を設置している。公認会計士試験の合格を目指す受験生に
とっては,室員1人に固定机が1つずつ与えられ,学習スペースが確保されていることは評価できる。
しかし,今後,会計専門職大学院の修了生が 2007 年3月以降 80 名規模で毎年,増えていくことを考え
ると,その修了生を受け入れるスペースがほとんどないことは問題である。また,会計専門職大学院修
了生を収容するスペースを要求し,調整を図る。
7.学生生活
(学生への経済的支援)
明治大学経理研究指導室奨学金を設定し,室員に対して奨学金試験を実施し,奨学金基金より給付奨
学金を支給している。また,室員で学部在学中に合格した学生に対しては 2005 年度から 2007 年度まで
の間,合格報奨奨学金を支給している。奨学金を支給し学習活動の奨励を図ることにより,実践的な会
計に係る教育研究の充実並びに会計実務界への有望な人材の輩出に寄与している。しかし,合格報奨奨
学金は 2007 年度予算までであるので,2008 年度以降も継続するため予算措置を講じる。2006 年度から
始まる新公認会計士制度では受験資格の制限がなくなり,従来とちがって大学 2 年生以下でも受験可能
となるため,学部在学中の合格者が増加することが考えられ,上記の目的を達成するためにも合格報奨
奨学金の継続が必要であるため,予算措置を継続申請する。
(就職指導)
会計士試験(論文式)合格者に対し,本学出身の公認会計士(指導委員や室員OB・OG)によるリ
クルートや個別説明会,面接指導を行っている。また,やむをえず受験を断念する学生に対しても,こ
れまでの学習が活かせるような就職先の紹介・相談などを行っている。この取組みは,室員の就職等の
進路は,通常の就職活動の時期と大きく異なっていること,卒業生が多く特殊な事情であるため,室員
OB・OGとの連携協力を図って進路指導に当たっているところが評価できる。
8. 自己点検・評価
経理研究指導室では自己点検評価を事務局委員会が担当しているが,自己点検評価を事後的,対処的
にしかできていないため,経理研究指導室の現状と課題を早急に検討するワーキンググループが 2005
年 12 月にできたことで,ワーキンググループと合同委員会の間で,Plan→Do→See→Check の循環
が形成されてきた。これを継続して恒常的に行うための取組みを合同委員会で検討する。
(3)
行政研究指導室
(使命・目的等)
【現状(評価)】
公務員を志望する学生を対象に,単なる受験指導ではなく,良き公務員となるべく,学生による自主
的な研鑚,討論,指導室の運営などを行わせる。併せて本学の学風の振起に寄与する。
学生の志望対象が,国家Ⅰ種に限定されず,直前まで国家Ⅱ種・地方上級職との間でゆれる現状を鑑
みて,国家Ⅰ種と国家Ⅱ種・地方上級の境界を低くした受験指導を行なう。これにより,いままでより
も広範囲の学生を指導対象として受け入れ,現状に則した指導ができるようになる。しかし,難関試験
である国家Ⅰ種に合格するためには,志望者に対し法律職・行政職・経済職の各職の試験特性に合致し
た細やかな指導を行う必要がある。特に人事院が 2006 年度から「公共政策」を新しい受験科目に加え
た試験構成を打ち出したため,早急にこの事態に対応することが求められる。
また,他大学の中には,理科系の技官を中心に国家1種合格者を大量に輩出しているところがある。
本学でも,理工学部・農学部を対象にした,特別講義を実施して合格者数を倍加することが可能である。
現段階では 2006 年度からリバティ・アカデミーを通して,生田地区でこうした事態に一部対応する予
定である。
なお,国家Ⅱ種・地方上級職を希望する学生の中には,地方中級職希望者も少なくない。その学生た
ちを対象に,2005 年まで就職課とともに「公務員講座」を開催してきたが,2006 年度からリバティ・
第3章 全学 -66-
/162
アカデミーへ移行する。
組織の概要等は,大学のHP,各種パンフレット,説明会を利用して公開している。
2005 年度
学部
法
行政研究所学部別構成
学科
46 期(4年) 47 期(3年) 48 期(2年) 49 期(1年)
4
6
7
14
商
4
6
1
1
政治
1
6
3
9
地域行政
1
8
9
14
経済
3
7
13
7
文
0
3
3
1
経営
3
1
4
3
情コミ
0
0
8
6
1
0
0
0
17
37
48
55
政経
農経
農経
合計
2005 年度 駿河台1・2・3年・ガバナンス研究科生を対象とした行政研究所カリキュラム(講師名除く)
月
火
水
木
金
土
18:00~20:00
行政法(通年)
18:00~19:30
2年
政治学・行政
学(通年)
17:30~19:45 17:30~19:00
ミクロ・マク 憲法(通年)
ロ(通年)
3年
19:10~20:40
20:00~21:30 憲 法 記 述 ( 通
財政学(後期) 年)
12:30~15:40 14:10~15:40
ガ バ 民法(通年)2 行政法(通年)
ナ ン コマ連続
ス
1年
18:00~19:30
憲法(通年)
18:00~20:15
民法(通年)
18:00~20:15
民法(通年)
18:00~19:30
憲法(通年)
18:00~20:15
経済学(通年)
18:00~19:30 18:00~19:30
行政法(通年) 教養・知能(通
年)
17:30~19:00 17:30~19:00
国際法(通年) 行政法(通年)
17:30~19:45
民法(通年)
19:10~20:40
政治学・行政
学(後期)
14:10~15:40
政治学・行政
学(通年)
14:10~15:40
憲法(通年)
19:10~20:40
国際法記述
(通年)
12:30~15:40
教養・知能(通
年)
教養・知識(通
年)
18:00~20:15
経済学(通年)
17:30~19:00
教養・知能(通
年)
19:10~20:40
社会学(後期)
12:30~15:40
経済学(通年)
2コマ連続
国家Ⅰ種,Ⅱ種合格者リスト(過去5年間)
国家試験名
国家Ⅰ種試験
国家Ⅱ種試験
受 験 者
最終合格者
(行研合格者数)
19(3)
12
申込者
受 験 者
最終合格
(行研合格者数)
者
28(10)
214
行研期
申込者
2002 年度採用
42
-
2003 年度採用
43
-
15(1)
9
1210
19(8)
212
2004 年度採用
44
514
12(1)
12
1361
16(7)
209
2005 年度採用
45
543
19(1)
5
1431
24(10)
212
2006 年度採用
46
526
5(1)
13
1298
12(5)
162
1183
【改善方針】
現在,HPを使った行政研究指導室の活動内容一般の公開が停止している。早急に再開させたい。
第3章 全学 -67-
/163
(教育課程)
【現状】
2005 年度から実施したカリキュラムの全面改訂・講師の一新により,学生たちの学習意欲は大幅に伸
びている。これらをいっそう実効あるものにした。
1・2年生で受験科目の基礎を徹底的に指導し,3年生では問題演習を中心に指導している。4年生
では直前対策として4~5月,希望職ごとに,択一・専門記述・教養論文・面接試験の対策を行ってい
る。
【長所】
学生の自主性を重んじた運営がなされており,単なる受験指導に終わらず,良き公務員養成機関とし
て機能している。
【問題点】
筆記試験で合格しても実際に省庁に採用されることが極端に少ない。複数の理由が考えられるが,最
大のものとして,面接指導がほとんどなされていないことが挙げられる。
【改善方針】
(1) 国家Ⅰ種試験に最終合格をしても,省庁へ内定が難しい。そのためには面接対策が重要で個別面接,
集団面接,集団討論などの実際の面接試験に即した指導が不可欠である。2005 年度は実験的に指導を
開始した。2006 年度からは本格的なものにする。
(2) 4年生になる直前の3年生を対象に,最終進路を決定させる意味も兼ねて,試験職種ごとのOBを
交えた個別の指導を制度化する。
(3) 2004 年度から開始した,ガバナンス研究科の院生を対象にした指導は,人事院が公共政策大学院・
法科大学院修了者を対象とした「公共政策」の出題を決定していることもあり,特別な対応をしたい。
2006 年度は体制が整わないことから,政治経済学部に設置されている「公共政策学」の履修を勧奨す
る。
生田地区で指導を行うには,理工学部・農学部と密接な協力関係を早急に築き,弾力的な運営に当
たることにしたい。このためにも,大学が政策的に講義の空き時間を作って(たとえば,金曜日の午
後,あるいは6・7時限目など),学習環境を作ることが必要である。
(学生の受け入れ方針等)
【現状】
国家Ⅰ種試験は難関であるため,長期にわたって不断の努力を必要とする。このため,比較的にやさ
しい他の職種受験者と一緒にしておくことは得策ではない。しかし,入学時には志望動機もあいまいな
ため,また,志望別指導ができない現実もあり,行政研究指導室においては,入室時と進級時に試験を
行い,真にやる気があり,それに応える能力を持った学生を指導対象としている。そこで行政研究指導
室に入室できない学生に対しては,リバティ・アカデミーと協力して設置する新「公務員講座」の受講
を勧める。この講座は既存のもの以上に手厚いものとなるが,行政研究指導室入室試験の受け皿である。
【長所】
行政研究指導室に入室できない学生に対しては,リバティ・アカデミーと協力して設置する,新「公
務員講座」の受講を勧める。この講座は既存のもの以上に手厚いものとなる予定である。国家Ⅰ種に比
べると相対的にやさしいとは言え,近年は急激に難化している公務員試験であることを踏まえて,和泉
地区で1・2年生を対象にした入門講座もあわせて開設する必要がある。また,行政研究指導室内の講
義についても志望別,達成度別のクラスの開設も必要となってくる。
(教員組織)
【現状】
公務員試験の出題傾向が年々変化しているため,公務員試験に精通している「受験のプロ」に指導を
仰がなければならない。幸いにして,2005 年度から複数の受験予備校の看板講師を組織することができ
た。これら講師陣と,学部にある既存の行政研究指導室運営委員が連携をとってより実効性のある指導
体制を築いている。
第3章 全学 -68-
/164
(施設・設備等の整備)
【現状】
2005 年度の段階で,和泉地区に 103 名,駿河台に 54 名,ガバナンスに研究科に 13 名の室員がいる。
講義数も 785 と多い。講義室,自習室ともに学生の利用度は高い。
【問題点】
学生相談会,大学HP等で行政研究指導室の周知を行なっているため年々,希望者は増加している。
そのため,和泉地区・駿河台地区での,自習室と講義室の確保が急務である。志望別,習熟度別の細や
かな指導を求められる中ではゼミ室等の教室の確保も必要である。
(社会への貢献)
【現状】
リバティ・アカデミーと共に展開する新「公務員講座」は,一般に解放することが可能であり,とく
に地方公務員の中途採用が近年盛んになってきていることを見れば,公務員講座は一定の社会貢献を果
たすことが可能である。
【長所】
リバティ・アカデミーと協力して設置する新「公務員講座」は広く社会に開かれている。
(事務組織)
【現状】
行政研究指導室の運営は政治経済学部が中心になって行っているが,実際の事務は,駿河台地区と和
泉地区において,教務課所属の嘱託職員各1名が対応している。単なる運営事務ではなく,学生たちの
メンタル面をサポートすることやOB会関係業務など職務は多様である。
【問題点】
駿河台地区,和泉地区とも嘱託職員各1名に依存しているが,単なる運営事務ではなく,大学関連の
事務,外部講師との連絡,各省庁との折衝業務,学生たちのメンタル面をサポートすることやOB会関
係業務など職務は多様である。大学として,将来も継続的な指導を行うためにも,早急に事務体勢の見
直しが必要である。
第3章 全学 -69-
/165
7.二部教育(二部教育審議会)
1.使命・目的・教育目標
二部教育審議会は,学長の下に置かれ,二部(夜間部)の教育内容を充実させ,かつ,円滑な運営を
図ることを目的としている。また,審議会は,二部教育の諸課題に関する学長の諮問に答え,かつ,二
部教育全般にわたって必要と認める事項について審議会独自の調査立案を行ない,学長に建議すること
ができることになっている。
2004 年4月をもって,二部の学生募集は停止となったが,二部制度による学生が在籍する間は,教育
機関としての責務を全うしながら二部の抱える諸課題について検討していく場として,本審議会が依然
として重要な役割を担うこととなる。また,これまで,本審議会では,主には駿河台地区の二部教育に
ついての検討を行ってきたが,昨年度からはこれに加え,和泉地区・生田地区を含めた夜間時間帯の教
育全般に課題を広げ,検討を行なった。2006 年度以降も,夜間時間帯の授業形態について,既存のカリ
キュラム以外の事項(生涯教育,社会人教育,地域への貢献等)も含め,継続的に検討していく予定で
ある。
2.現状
(1) 教育内容
二部の学生募集停止に伴い在籍している学生が不利益とならないよう,次の課題に対する特例措置を
講じるガイドラインを本審議会で立案し,これを各当該学部が承認した。また,このガイドラインに沿
って,学部ごとに特例措置を講ずることについては,二部設置学部からの承認を得,二部設置学部以外
の学部からも協力を得られることとなった。今後は,本審議会・和泉委員会・教務部委員会との連携を
図り,特例措置の細目について各学部で検討・実施していくことが必要となる。
○二部の学生募集停止に伴う課題
ア.学籍上の課題
①転部・編入学試験,②休学・復学,③原級・進級制限,④再入学等
イ.カリキュラム上の課題
①可能な限りの授業科目の設置,②二部学部科目の学部間共通化の推進,③二部学部科目の合
併授業化,④所属学部カリキュラム以外の科目の履修許可,⑤履修上限枠の撤廃,⑥単位不足者
への特例措置
以上のような課題の中で,すでに学部ごとに,原級・進級制限の措置,履修上限枠の一部撤廃,一部
授業科目(1~5限の科目)の条件付での履修許可等,特例措置を決定している。また,本審議会では,
2005 年度は,①二部学生の再入学制度,②二部学部間共通科目の推進等について主に検討し,次のとお
り決定した。
①二部学生の再入学の取扱いについて
本審議会では,二部学生の再入学取扱い方針について検討した結果,次の方針で対処することを決
定し,二部在籍学部に審議依頼した結果,このことについての承認を得た。
ア.7講時制(駿河台校舎・和泉校舎の授業含む)で履修することを条件に,再入学を認める。
イ.6・7時限設置の授業の履修だけで卒業することは保障しない。
②二部学部間共通科目の開講について
二部の学生は時間割上(3講時制)の制約によって,科目の選択が狭められている状況にある。さ
らに,2006 年度からは,二部3講時制から,7講時制の6・7時限を利用した2講時制へと移行し,
二部学生は今まで以上に科目選択の幅がなくなることとなる。
この制約を補うために他学部の豊富な科目を,学部間で共通化した,
「二部学部間共通科目」を開講
してきたが,2005 年度の本審議会では,学生が幅広い科目の履修ができるよう,この科目を拡大して
いく方針を決定し,検討を行なった結果,2005 年度までは教養科目中心の1・2年生用の科目で構成
されていたこの科目を,2006 年度からは,3・4年生用の専門科目にまで拡大し,開講することを決
定した。
(2) 教育方法
①学生指導
二部廃止に伴い,在籍学生には,適切な履修指導を行なう必要がある。学生には,各学部で,学
習指導期間中にガイダンスをおこない,履修指導を行なった。ガイダンス時期に限らず,今後も学
生に対して適切な履修指導を行なっていく。また,二部学生に対しての特例措置を決定した際には,
第3章 全学 -70-
/166
迅速に学生に周知させることが必要となる。
②シラバスの作成と活用
例年どおり,二部学部間共通科目については,シラバスを作成し,この科目の開講曜日・時限,授業
内容,取扱い等について周知することができた。
(3) 社会貢献
①今後の夜間教育の在り方について
本学の夜間教育は,二部廃止に伴い,これまでに培った二部教育の伝統を踏まえて,どのように
継承していくかが課題となってくるが,今後の夜間教育のあり方については,7講時制による授業
設計のフレックス化構想を軸に関係部署で検討がなされ,具体化に向かっている部署もあるが,必
ずしも予想された成果を上げていない点を確認せざるを得ない。そのことを踏まえた上で,大学全
体としても,それらの検討と具体化の推移を見極めつつ,あらたな改善策を模索し積極的に取り組
んでいかなければならない。
②社会人教育の拡充について
企業或いは社会人からの教育需要に応えるため,都心にある本学の立地条件を活かし,社会人教
育の拡充を図る必要がある。そのための方策として,下記のことが考えられるが,一方で二部廃止
が決まったことから,その後の社会人教育の推進策はフレックス化構想及び大学院を視野に入れて
検討される必要がある。
ア.社会人学生の受け入れ
社会人を対象とした夜間教育の展開は社会の求めるところであり,社会人の受け入れのための,
社会人入試制度の改善充実を図る。このことは,生涯学習の発展に資することにつながるものであ
る。
イ.資格取得を目的とした教育
大学と社会との往復型による生涯学習を推進する観点から,社会のニーズに応えた実利的な各種
職業資格取得と直接結びつく,教育プログラムの構築を図る。
ウ.エクステンション教育の充実
時代の要請にあわせた夜間教育の一環として実施されている社会人向けの公開講座を含むエクス
テンション教育を充実していく。そのためにもリバティ・アカデミーの改革充実が図られ,夜間教
育を大学全体として構想しながら連携を強める必要がある。
(4) 教員組織
本審議会は,次の①~⑥に掲げる委員をもって組織されているが,2004 年度からはこの委員に加え,
二部を設置していない学部(経営学部・情報コミュニケーション学部)及び学長室専門員からもオブ
ザーバーとして本審議会に参加した。今後も,夜間時間帯の教育全般については,全学的な課題とし
て検討していきたい。
①二部教務部長,②一部教務部長,③二部担当副学生部長,④各二部主任,⑤各二部教務主任,⑥
二部を設置する学部教授会から選出された者各2名
3.長所と問題点
本審議会は,二部制度の抱える諸問題点について検討を行なう場として,重要な役割を担っており,各
学部の抱えている二部制度の諸問題や現状,それについての取組みについての情報を全学的に共有化す
ることができる。また,学部単独で解決できない問題,全学的に解決すべき問題については,本審議会で,
二部学生が不利益を被ることのないよう,検討を行なうことができる。
(1) 教育内容
本審議会で作成したガイドラインを基に,各学部で二部の抱える諸問題についての検討に取り組ん
でいるが,各学部によって,教育方針が異なるため,二部設置科目の開講状況,特例措置が異なってお
り,必ずしも全ての事項について,全学的に統一した措置を講ずることはできない状況にある。
(2) 教育方法
学習指導期間のガイダンス及び,常時,各学部事務室で履修指導を行なっているが,ガイダンスに
出席しない学生もおり,必ずしも全ての学生に履修指導がいきとどいているとは言えない。
(3) 社会貢献
各部署・諸機関等で,二部制度に代わる夜間教育についての検討を行なっており,リバティ・アカ
デミーや専門職大学院等,それが具体化されている機関等もあるが,方向性が固まっていない各部署・
諸機関もある。
(4) 教員組織
第3章 全学 -71-
/167
オブザーバーとして二部制度のない経営学部と情報コミュニケーション学部の教員も加わっており,
全学的な問題として検討することができる。
4.改善方針
2004 年4月をもって,二部の学生募集は停止となったが,二部の学生が在籍する間は,教育機関とし
ての責務を全うしながら二部の抱える諸課題について検討していく場として,本審議会が依然として重
要な役割を担うこととなる。ただし,今後,二部在籍学生が減少し,ある時期に達した時には,本審議会
の組織の継続・改変等について,今後の学内状況の推移等を踏まえて,適切な時期に処置を検討するこ
とが必要となる。
(1) 教育内容
今後も二部在籍学生にとって様々な諸問題が起こる可能性があるが,その都度,各学部から問題提
起していただき,二部学生に不利益が生じることがないよう,本審議会で検討を行っていきたい。
(2) 教育方法
二部学生は,今後,学年進行に伴い,特例措置の実施等により,年ごとに,カリキュラムの設置状
況,履修方法等が変わる可能性がある。特例措置を実施した場合には速やかに学生に周知できるよう,
履修指導等で周知を図ることが必要となる。
(3) 社会貢献
二部廃止に伴い,これまでに培った二部教育の伝統を踏まえて,どのように継承していくのか,社
会人教育にどのように貢献するのか,大学全体の方向性と具体化の推移を見極めつつ,あらたな改善
策を模索し積極的に取り組んでいくことが必要となる。
(4) 教員組織
課題に応じて,諸機関からもオブザーバーとして本審議会への参加を求め,二部の抱える課題の解決
に向けて努力したい。
第3章 全学 -72-
/168
8.インターンシップ(インターンシップ運営協議会)
(使命・目的等)
インターンシップとは学生が企業等に実習に赴き,就業体験を通じて就業観の涵養と学習意欲の喚起
が可能となる有効な教育プログラムである。「個を強くする大学」として実学を重視する本学ではイン
ターンシップを学長の下で積極的に展開してくこととなり,2002 年7月にインターンシップ制度を円滑
に運営するためにインターンシップ運営協議会を設置した。
【現状】
設置した当時は,各学部で実施しているインターンシップ制度の調整機関として,その役割を担って
いたが,2004 年度からは「全学版インターンシップ制度」を設置し,学生派遣の受け皿を大学として設
けた。派遣者数は,2004 年度の 22 名から 2005 年度は 53 名へと倍増し,学生のニーズに応えるべく,
更なる活動を展開している。
【長所】
これまで,インターンシップを正課として位置付けている学部の学生だけがインターンシップ実習生
として企業等に派遣されていたが,「全学版インターンシップ制度を設置したことにより,学生が所属
する学部に関係なくインターンシップ生として実習に参加することが可能となった。
【問題点】
学内でのインターンシップに対する認知度が低く,派遣実績は倍増しているが,その実数は 2004 年
度実績の 22 名から今年度は 53 名に増加しただけである。本学は学部学生が約3万人いるので,インタ
ーンシップに参加する学生の割合は極端に低いのが現状である。
【問題点に対する改善方針】
「明治大学就職・キャリア形成支援センター」を 2006 年度から設置することが決定しており,学生
へのインターンシップに関する積極的な広報活動や,更なる受入れ先の開拓をセンターの業務として中
心的に行っていく。
(健全性,モラル等)
インターンシップは実際に企業等の受入れ先へ赴いて就業体験を行う教育プログラムである。実習中
に受入れ先の企業秘密等に接する機会も発生し,損害を与える危険性がある。
【現状】
派遣学生を対象として「ビジネスマナー講座」を開講し,社会人としてのマナー修得の他に守秘義務
の意義についての教育を実施している。また派遣学生には「誓約書」の提出を課している。
【長所】
講座の中で実例を挙げながら守秘義務について分かりやすく講義を行い,「企業等の信用を傷つけな
い。実習期間中に知り得た業務内容に関わる事項については,実習中及び実習後においても一切外部へ
漏らさない。
」等について,書面を以って誓約させている。
【問題点】
現在のところ,受入れ先から派遣学生についてのモラルを指摘されることは発生していない。
(インターンシップ,ボランティア)
【目的】
就業観の涵養と学習意欲の向上を目的とする。
商学部,政治経済学部,理工学部,農学部,経営学部(2006 年度より情報コミュニケーション学部)
では,各学部における名称は異なるがインターンシップを各学部の「学則別表1」の中に記載して,卒
業に必要な単位として認定を行っている。学部の教育目標に学生が到達するためには必要な実習であり,
適切性は充分にある。
第3章 全学 -73-
/169
【現状】
商学部は「ジョブ・インターンシップ」,政治経済学部では「地域研究インターンシップ」と「企業
実習」,理工学部では「ジョブインターンシップ実習」,農学部では「専門演習」,経営学部では「NPO イ
ンターンシップ」,
「ビジネスインターンシップ」という科目名称で学則に記載し,卒業用件科目として
取り扱われている。
【長所】
インターンシップを体験した学生は,日常的な大学での授業の重要性を再認識し,履修した科目につ
いて積極的に取り組んでいる。
【問題点】
インターンシップを正課と位置付けていない学部に所属する学生は,インターンシップに対する認知
度が低い場合が多く,「全学版インターンシップ」を当委員会で設置しても,積極的に参加する意識が
薄い。
【問題点に対する改善方針】
学部間共通総合講座の中でインターンシップについて,紹介する講座を設置し,学生に直接説明を行
う体制を構築する。
第3章 全学 -74-
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9.和泉キャンパスにおける教育(和泉委員会)
1.目的・教育目標
(1) 目的・教育目標
【現状】
和泉キャンパスは,1934(昭和9)年の大学予科の移転により開設され,70 年を越える歴史をもって
いる。戦後の新制大学においては,予科教育の伝統を継承して,大学1・2年生の「教養課程」教育を
主として担ってきた。1991 年の大学設置基準の「大綱化」以後,本学においてもカリキュラムの全面的
な改正に着手し,学部教育における一貫性を目標にして,教養教育と専門教育の有機的な連携を図って
きている。2004 年4月,情報コミュニケーション学部の和泉キャンパスでの開講により,現在,文系6
学部(法,商,政経,文,営,情コミ)の1・2年生約 11,000 人の学生が学ぶキャンパスとなってい
る。教養教育の伝統を継承してきた和泉キャンパスは,大学設置基準における「幅広く深い教養及び総
合的な判断力を培い,豊かな人間性を涵養する」ことを教育目標とし,外国語教育,保健・体育・健康
管理教育,総合的教養教育を中心にし,専門基礎教育を加えた教育にあたっている。近年,グローバル
化社会の到来,また今後の知識基盤社会に対応する教育の必要性が求められているなかで,和泉キャン
パスにおいても,「グランドデザイン」の検討を行ない,国際系の新学部や教養系新大学院,それに相
応しい図書館や諸施設の整備についての具体化が図られている。
教育目標やカリキュラムについての新入生ガイダンスは,和泉キャンパスに設定されている4月初旬
のオリエンテーション期間において,各学部の方針のもとに行われている。近年は,父母に対しても説
明会をおこなう学部ができている。また,和泉キャンパスでの教育・研究全般の充実,あるいはキャン
パス内の教室・施設利用の調整等については,本委員会が主体的に検討・調整している。委員会には,
文系6学部代表(一般教育主任を含む)並びに主として和泉キャンパスに研究室をもつ教員からなる,
学部横断的な分科会の座長が委員として参加している。分科会は,国語,英語,独語,仏語,中国語・
ロシア語・スペイン語・日本語,人文科学・社会科学,自然科学・情報,体育の8分科会において構成
され,共通する教育・研究課題について議論し,本委員会に対して提言を行なっている。現在,本委員
会においては和泉キャンパスでの教育開発,研究体制の刷新,施設設備の整備,地域連携・社会貢献に
ついての将来構想(グランド・デザイン)を策定し,その実現にむけ尽力している。
【長所】
和泉キャンパスが教養教育の伝統を継承している点において,本委員会を基軸として「教養」を中心
とした学部横断的な教育・研究上の交流関係が構築しやすいという利点がある。また,学部横断的に6
学部の1・2年生のみが集う場であるので,学習・教育支援活動,キャリア教育支援,学部間共通講座
の開催等が容易に可能である利点がある。さらには,学習活動にインセンティヴを与えるための諸種の
資格講座や国家資格試験のための研究指導室が利用しやすいという長所がある。
【問題点】
初年次教育(FYE)の全学的な取組み,あるいは教育の国際化に対応する全学的な取組み等におい
て,やや不十分であり,今後は8分科会を中心にして,改善を図っていく必要がある。さらにいえば,
学部のキャンパスが2年生と3年生との間において,和泉と駿河台に分かれていることは,教育上から
も,事務業務上からも効率が悪い点がある。就職活動の時期の早期化,あるいは初年次教育の重要性の
増加等の環境要因の変化に対応する,キャンパス再編の議論が全学的に重要になる。
【問題点に対する改善方針】
2007 年の「大学全入時代」を迎えて,大学は選ばれる大学へと変貌しなければならない。和泉キャン
パスは,文系6学部の「知の玄関」として,「キャンパス力」を高め,しかも駿河台及び生田キャンパ
スと連携することによって総合大学としての本学の発展に寄与するために,魅力ある将来構想を提示す
る必要がある。本委員会においては,「グランドデザイン委員会」を専門部会としてたちあげ,新図書
館をはじめとする施設・校舎のキャンパス設計についての検討を重ねてきた。
他方,学長のもとにおいて,本学全体における教育・研究体制の整備を前提として和泉キャンパスの
将来像(「グローバル・ヴィレッジ・キャンパス」構想)についても検討がなされ,学長としての基本
方針が示される段階にいたっている。国際日本学部(仮称)や教養系新大学院の設置を含む,これらの
構想は,和泉キャンパスの根本的な改編へとつながるものとなる。
「グローバル・ヴィレッジ・キャンパス」の理念とは,和泉キャンパスを国際化戦略の拠点として位
第3章 全学 -75-
/171
置づけ,「新しい教養教育」を展開するキャンパスとして再生させる構想であり,具体的には国際系新
学部(仮称・国際日本学部)と新大学院の和泉キャンパスへの設置,研究・教育インスティチュートの
設置,あるいはキャンパス再編の問題等が検討されている。また,今後における「新しい教育方法」の
開発においては,ユビキタスカレッジとの連携が考えられている。本委員会としては,「和泉フォーラ
ム」等を開催して,これらの検討案を十分に検討して,本学の発展に寄与する。
(2) 目的・教育目標に基づいた特色ある取組み
【現状】
大学教育における教養教育の位置づけ,あるいは新しい展開は,今後の大学教育においてはますます
重要性がましてくる。「大綱化」以後,和泉キャンパスにおいては,学部独自の教養教育及び専門基礎
教育が展開されてきたが,今後は,学部横断的な科目の形態や内容を策定し,本学としての教養教育の
充実を図っていく必要がある。現在,教務部の運営による「学部間共通科目」が設置されている。たとえ
ば,「学部間共通外国語」,「国際理解講座」,「学部間共通総合講座」などである。また,正規カリキュ
ラム以外にも「リバティ・アカデミー講座」(有料)の開講を推進している。個別的には,法学部の1
年生を対象とした「教養演習」「法律リテラシー」のような教養と専門を組み合わせたゼミの開設,商
学部のダブル・コア制度,政経学部のACE(英語実践力養成コース)のような学部に特色ある取組み
がなされている。
【長所】
学部単独では設置しにくい科目を学部間共通科目として設置できる。
【問題点】
「学部間共通科目」についての全学的な議論が不足している。教育内容,教育効果等を考慮したうえ
での「学部間共通科目」の設置が必要であろう。また,修得単位の扱いが学部によって異なり複雑なの
で,同じ扱いになるよう検討すべきである。さらに,教室定員を大幅に越えた履修者,履修人員の肥大
化,偏った履修があり,授業科目の適正化が必要である。
【問題点に対する改善方針】
教養教育の内容,カリキュラム編成のあり方等についての全学的に検討する「教養教育研究インステ
ィチュート」の設置が必要である。履修については,コマ数の増加を図ることが最善であるが,抽選や
先着順などの方途による履修制限を実施することも考えられる。
(3) 使命・目的等の検証
【現状】
年に4~5回開催される和泉委員会で各学部,各分科会,各委員会,各課からの報告を受け,問題点
について審議している。長期的な課題については,専門部会を立ち上げて諸課題に対応している。現在,
和泉委員会のもとに和泉地域連携協働推進委員会,マルチメディア委員会,新和泉図書館建設検討委員
会,和泉キャンパスグランドデザイン委員会,和泉校舎 75 年史刊行準備会の5専門部会が活動してい
る。また,年度内において対応しなければならない教学的課題については,時間割編成会議のような関
係機関による会議を開催している。この意味において,和泉委員会が,の諸機関を通して,各学部の和
泉キャンパスにおける教養教育の目標を実現できるよう検証していることになる。和泉委員会では,教
育・研究についての「年度計画」を立て,予算要求をしている。また,教養教育の変化に対応して,年
2~3回『リベラル・アーツ・フォーラム』を刊行して,現状と将来についての意見を公表している。
さらには,和泉キャンパスの課題に関して,学長の参加を得て「和泉フォーラム」を不定期に開催して
いる。
【長所】
和泉地区のあらゆる部署からの意見を集約できる。
【問題点】
就職活動の早期化,専門教育の大学院教育への特化が加速される傾向のなかで,学部(学士課程)教
育をどのように位置づけるかは,重要な問題になっている。専門部会,分科会ともにさらなる活性化が
必要である。
第3章 全学 -76-
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【問題点に対する改善方針】
定期的に専門部会,分科会を開催するなどの方策をとるべきであろう。また,『リベラル・アーツ・
フォーラム』を刊行し,「教養教育」の理念について議論の場を提供してきた。あるいは,その理念が
各学部カリキュラムへどのように反映されているかについても情報を集約し,それが自己点検・評価へ
と繋がるように尽力してきた。
2.教育研究組織
(1) 教育研究組織
【現状】
和泉キャンパスには,独自の教育・研究組織はなく,学部において行なわれている。和泉委員会は,
主として学部間の調整にあたり,教育内容や方法についての検討は教務部委員会にゆだねられている。
また,研究について多くの教員は,駿河台や生田にある三研究所を通して,研究支援を受けている。な
お,研究機関誌である『和泉教養論集』の企画・編集・発行のため,和泉教養論集運営委員会を組織し
ている。
【長所】
教養論集運営委員会には,科学技術の分野もあることから,和泉キャンパスに研究室を持つ教員のみ
ならず,理工学部・農学部からも委員が選出されており,委員の出席率は良い。
【問題点】
教養論集委員会は任期制であるが,委員が固定化している。また,授業との関係で会議開催が休憩時
間にならざるを得ない状況である。
【問題点に対する改善方針】
「新しい教養教育」の理念の具体化を図る「インスティチュート」を設置する必要がある。また研究
活動の活性化のために,研究支援センターの設置が早急に必要である。
(2) 教育研究組織の検証
【現状】
主として各学部が行ない,和泉委員会は授業の適正規模,あるいは時間割編成等について検証をおこ
なっている。研究組織に対しては,個別的に研究所の運営委員として参加しているが,研究所あるいは
和泉キャンパスに設置されていない。
【問題点】
教養教育についての大学としての特色ある展開ができていない。
【問題点に対する改善方針】
検証可能な教養教育についての「インスティチュート」の設置,研究支援センターの設置が必要であ
る。
3.教育・研究の内容・方法等
(1) 教育課程
【現状】
これらの項目は各学部の問題であり,各学部にゆだねられているとはいえ,「教養教育」の充実のた
め,以下の活動を行い,改善を図っている。
①教育・学習支援
教員の教育活動に対する補助業務,並びに学生の学習活動に対する支援業務は,業務内容を異にし
ているが,教育・学習を一体のものとして捉え,その連携のもとに教育効果を一層たかめる方向を見
出していく。研究棟で教育業務を補助する教務アシスタント(嘱託職員),和泉委員会が採用するT
A,学習支援室に従事するTA,メディア棟,図書館等,関係部署の支援活動従事者を招集し,8分
科会からの要望について全学的な調整を図っていく。
②時間割編成
各学部でのカリキュラム改編を有効に機能させるために,6学部間において,時間割を調整する必
第3章 全学 -77-
/173
要性がますます高まっている。和泉委員会では 2003 年度から時間割編成会議を組織してきたが,学
部別の必修科目の固定化,選択科目の適切な配置等について,学生の立場に立った時間割編成を推し
進める。
③教室の有効利用と授業規模の適正化
和泉キャンパスの教育は,演習室(32)・小教室(107)・中教室(19)・大教室(10),合計 168 教
室において行われている。近年,各学部においてゼミの充実が図られ,演習室が不足傾向にあるので,
小教室に可動式の椅子と机を設置し,転用が図れるようにする。また,講義科目については,200 人
以下の中教室の利用を促進し,大教室の講義科目についても 250 名以下をガイドラインとして教育効
果と学生の満足度を高めるようにする。
④教育の情報化の推進
「マルチィメディア委員会」(専門部会)は,和泉キャンパスにおける「教育の情報化」について
の方針と要望をまとめてきた。今後とも「教育の情報化推進本部」と連携し,設備の有効活用のため
のソフトの整備,FD活動につながる教員の教育技術の向上に努めていく。また,「ユビキタスカレ
ッジ」との連携にも努める。
⑤キャリア支援教育の充実
国家試験や資格試験は,学習意欲への動機付けになり,また相互研鑽を通じての基礎学力の養成に
もつながる。キャリア教育を「教養教育」のなかに位置づけ,3研究指導室,リバティ・アカデミー
の充実を図っていく。
⑥分科会からの要望
和泉委員会に所属する8分科会から教育内容を充実させるための機器や教育・自習用ソフト購入等
の要求の実現を図る。
(2) カリキュラムにおける高・大の接続
【現状】
各学部での取組みに委ねられていて,本委員会としての独自の取組みは現在行なわれていない。しか
し,2005 年9月から和泉教務課内に学習支援室を開設し,適宜助手やTAを配置し,随時,学習支援を
実施する体制をとっており,専任職員が支援室の管理を行っている。また,兼任教員などによるオフィ
スアワーの活用も行われている。さらに,スポーツ入学者のための学部間共通授業に関しては,「英語」
をすでに実施しているが,英語以外の外国語は 2007 年度からの実施を検討中である。
【長所】
兼任教員のオフィスアワー利用,学習サポート利用者が増えている。
【問題点】
学習支援に関して,各学部の1・2年生が本当に必要とする科目のTAを必要十分なだけ配置すべき
である。
【問題点に対する改善方針】
各部署において開始されたばかりであり,全学的な調整が必要である。そのため,教育・学習支援会
議で検討し,改善を図る。
(3) カリキュラムと国家試験
【現状】
本委員会としては,国家試験受験者のための3研究指導室の場所を第三校舎に確保し,その充実に協
力してきた。今後も,学習意欲に対するインセンティヴ効果として,研究指導室への支援を行いたい。
しかし,カリキュラムとの関係等については,各学部に委ねている。正規カリキュラム以外の課外授業
として,司法試験,公認会計士試験,国家公務員試験の受験対策講座を設置している。
(4) インターンシップ,ボランティア
【現状】
学部独自のものとは別に,全学共通のインターンシップ制度の案内を和泉教務課,進路相談室が駿河
台の教務課と連携をとりながら行っている。またボランティア活動については,単位認定にまではいた
っていないが,教職課程履修者を中心に杉並区との連携の一環として区内公立初等学校への学生サポー
第3章 全学 -78-
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ト要員としてのボランティアを募集した。経営学部にはボランティアセンターがあり,聴覚障害者の学
習サポートを行っている。
【長所】
杉並区ボランティア募集は教職をめざす者にとって教育インターンシップでもある。
【問題点】
各学部でも障害者が入学する可能性があるにもかかわらず,学部を超えたボランティアセンターが設
置されていない。
【問題点に対する改善方針】
杉並区と区内5大学との連携事業のひとつとして,5大学連携ボランティアセンターのたちあげを検
討している。現在,専門部会・地域連携協働委員会に担当者を選任し,活動を開始することにした。
(5) 履修科目の区分
【現状】
カリキュラム編成は各学部に任せられており,本委員会では主として教室使用の調整を行っている。
(6) 生涯学習への対応
【現状】
和泉委員会は,現在,地域連携・社会貢献をキャンパスの将来計画に掲げ,その一つとして,杉並区
と区内5大学との間の連携協働事業を展開している。これまで,和泉キャンパスにおける生涯学習事業
への取組は,広報部が主催する広報事業に協力して,杉並区と共催して 1985 年度から「日本人の信仰」
をテーマに,1989 年度からは「日本近代文学」をテーマとする「杉並区内大学公開講座」を毎年 10 月
に開講し,毎年度 200 名前後の受講者が参加している。また,1997 年度から情報科学センターが主催す
る「情報科学市民講座」が,1999 年度からは「杉並区内大学公開講座」として共催事業となり,「情報
科学と社会」というテーマで和泉キャンパス内の情報教室を利用して開講されている。2003 年 10 月に
は,杉並区並びに区内5大学との間で地域連携についての包括協定書を締結し,2004 年度は幹事校とし
て5大学の連携公開講座を開催し,また,記念シンポジウム「地域へ,地域から」を開催した。また,
リバティ・アカデミーを和泉でも開講し,今後の展開をはかっていく基盤を築いた。今後は世田谷区と
の連携も視野に入れて,生涯学習社会の到来にみあう,キャンパスのあり方を考えていく。
【長所】
杉並区との連携事業は順調に展開している。
【問題点】
生涯学習活動を支援する担当事務の位置づけが不明確である。
【問題点に対する改善方針】
大学全体として生涯学習を含む社会連携関係のとりまとめ部署を明確にし,現場が協力する体制作り
が必要であり,事務機構改革による改善を図る。
(7) 正課外教育
【現状】
3研究指導室での国家試験指導,リバティ・アカデミー講座,春期・夏期の語学セミナー等が開講さ
れている。
【長所】
学生の強いニーズがある。
【問題点】
リバティ・アカデミー講座は有料であり,同種の正課授業との関連が不明確である。
第3章 全学 -79-
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【問題点に対する改善方針】
和泉キャンパスでの独自のリバティ・アカデミーの講座設定が必要である。
(8) 教育効果の測定
【現状】
教育効果を測定するために学生による授業改善アンケートを実施し,今後の授業改善に資するように
その調査結果を担当教員に返却している。
(9) 国内外での教育研究交流
【現状】
「グローバル・ヴィレッジ・キャンパス」構想のもとにおける国際系新学部設置,あるいは新大学院
設置は,明治大学における国際化戦略の「顔」をつくるものである。それにともなう,施設整備は緊急
の課題となっている。
【改善方針】
上記の目標のためには,次のような課題がある。
①和泉国際交流センターの常設化,②留学生受入れのための学生寮(旧和泉寮跡地),③「国際交流
ホール」(第3校舎一階),④海外研究者の受入れ施設(旧和泉寮跡地),そのなかでも,現在週2回だ
け開かれている「国際交流センター」の和泉分室を常設化する必要がある。そして,そこを拠点として
次のようなことを優先させたい。①キャンパス内における留学生と日本人学生の交流を活発化するため
の「国際交流ホール」を設置する。②1・2年生に対して十分な海外留学についての情報を与える。③
海外協定校との学術交流を深める。④外国人客員教員を学部横断的に採用する。
4.学生の受け入れ
(1) 入学者選抜の仕組み
【現状】
和泉キャンパスを使用して行なわれる入試に対しては,和泉地区本部を設置し,役割分担あるいは責
任体制をきちんと整えた上で実施しているので,適切であると言える。
(2) 編入学者,退学者
【現状】
各学部で正確に把握している。
5.教員組織
(教育支援職員)
【現状】
短期嘱託職員(教務アシスタント)が研究棟事務室に8名配置されており,授業補助,教材準備など
教育補助業務に従事している。そのほかに体育事務室勤務の短期嘱託職員と合わせて 300 時間の担当時
間を受け持っている。情報処理関連教育についてはサポートデスクを設置し専門技術者を配置してきめ
細かい支援体制を構築している。また,教育補助業務以外に和泉教務課一般業務に関しても対応可能と
なり,有効に機能している。
6.研究活動と研究環境
(1) 研究活動
【現状】
教養論集刊行会による紀要『明治大学教養論集』への投稿を促進し,年3回発行している。その他に,
人文科学研究所による個人研究,共同研究の募集がある。また「教養教育」の理念・カリキュラム等を
検討する機関誌として『リベラル・アーツ・フォーラム』があり,公開の議論の場として「和泉フォー
ラム」を開催している。
(2) 教育研究組織単位間の研究上の連携
【現状】
第3章 全学 -80-
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和泉の大多数の教員が所属している人文科学研究所は駿河台に設置されているので,書類の授受など
で不都合な面がある。和泉分室の開設を要望しているが実現していない。また研究指導室も緊急避難的
に第三校舎に設置しているが,独立棟を考えるべきであろう。
【改善方針】
和泉における研究体制を刷新するためには,(1)「研究支援センター」の設置,(2)新大学院(独立研
究科)の設置,(3)新研究棟の検討,(4)『明治大学教養論集』の充実などの施策を具体化する必要があ
る。
(3) 経常的な研究条件の整備
【現状】
個人研究費と研究旅費はおおむね適切であると思われる。教員の個室に関しては,とりわけ旧研究棟
は築 35 年を経過し,隣室との間の壁も薄く,教育・研究施設としては不十分である。学生も自由に出
入りできる新研究棟を考えるべきであろう。
(4) 研究上の成果の公表,発信・受信等
【現状】
研究論文の公表を支援するものとしては『明治大学教養論集』がある。年に3回発行し,一人3本ま
で執筆できる。また,3研究所の論文募集もあり,刊行助成もしている。
7.施設・設備等
(1) 施設・設備等の整備
【現状】
第二,第三校舎,図書館,研究棟等の老朽化への対応と第二校舎上階教室天井のアスベスト除去が必
要である。メディア棟の完成によってかなりの整備はなされた。しかし,1960 年に開館した和泉図書館
は,建物としての老朽化が進むと同時に,設備面においても教育・学習ニーズに十分応えるものとはな
くなっている。このため,2005 年度に図書館との間で「新和泉図書館建設連絡協議会」を結成し,その
建設促進を促してきた。
「架け橋(リエゾン)」をキーコンセプトとした具体像についても図書館長のも
とでのWGにより作成されている。また,6番教室(第2校舎)は,現在,新入生ガイダンスや講義用
教室として使用されているが,そのような施設・設備にはなっていない。
【改善方針】
新図書館の候補地は,第4校舎敷地とし,その取り壊しのための体育更衣室の建替え,諸体育施設の
移設が必要である。文系6学部の学生 11,000 名にとって図書館は「知の玄関」中の玄関であり,早急
な建設が望まれる。また,6番教室(第2校舎)は,プレゼン設備を設置し,改装を図り,
「知の玄関」
にふさわしいホールとし,学会や講演会に使用できるように多目的ホール化したい。
(2) キャンパス・アメニティ等
【現状】
1934(昭和9)年の和泉キャンパスの開講以来,「緑」のキャンパスとしての特色を生かすことに尽
力してきた。キャンパス浄化を掲げ,学内の禁煙推進体制に加え,明大通りや正門周辺での歩行喫煙,
タバコのポイ捨ても注意しており,大学周辺の清掃も委託している。
(3) 利用上の配慮
【現状】
正門前歩道橋下からメディア棟,第一校舎事務室までの点字ブロックの敷設整備を行った。大学前歩
道橋にエレベーター設置を国土交通省に要求している。
【改善方針】
安全・安心で,環境に配慮し,バリアフリー化されたキャンパスづくり,この方針は地域社会ととも
にめざすべきものである。甲州街道歩道橋へのエレベーター設置は,近隣諸団体との間に 2006 年3月
「推進協議会」を設置し,その実現をめざしている。
第3章 全学 -81-
/177
8.社会貢献
【現状】
本委員会では,地域連携・社会貢献を教育,研究にならぶ大学の社会的使命と位置づけて,2004 年4
月専門部会「和泉地域連携協働推進委員会」を設置し,その推進を図っている。具体的には,杉並区と
の連携として,協議会・専門部会の開催,シンポジウム・公開講座の開催,角川邸の調査,子供読書推
進事業,水害ボランティア事業等である。明大前商店街との連携として,歩道橋エレベーター設置推進
協議会,商店街活性化提言,時計塔寄贈等も実施している。公開講座は,主として杉並区民を対象にし
た,すでに長い実績のある明治大学独自のものがあり,「日本近代文学」と「コンピュータ入門」をテ
ーマとしている。また 2006 年度には「生と死を考える」というテーマで杉並 5 大学連携公開講座を初
めて実施し,約 70 名の参加者があった。
「日本近代文学」関係の公開講座は,リバティ・アカデミーが
主宰し,毎年秋実施している。多数の応募があるが,毎回 400 名に限定して開催している。
【問題点】
大学での担当部署が統一されていない。協力体制を整備する必要がある。公開講座に関して,PRが
十分でない。講師の謝礼のための財源が乏しい。
【問題点に対する改善方針】
地域連携を一層推進するためには,
「社会貢献・地域連携センター」
(事務室)の設置が望まれる。ま
た,杉並区並びに区内高等教育機関との協働連携事業の推進については,今後,連携ボランティアセン
ターの設立,地域の街づくり(産業振興)への参加などを企画し,学生課外教育の視点を含めて,拡大・
充実させていく。
京王線・井の頭線の「明大前駅」は,文字通り明治大学のための駅として設置されたものである。し
かし,現在,駅を降りても明治大学の「顔」が見えない状態になっている。駅前に「インフォメーショ
ン・スポット」を確保することは,その宣伝効果として大きいばかりでなく,世田谷区にも拠点をもつ
ことにより,今後の世田谷区との協働事業の推進が容易になるメリットがある。また,明大前商店街と
の「商・学連携事業」の推進にも役立つ。
2006 年度より本格的に開始されているリバティ・アカデミーの開講は,生涯学習社会の到来に対応す
る,和泉キャンパスでの重要な施策のひとつである。学生の要望がある語学講座・資格講座に加えて社
会人に対する教養・人文系の講座の開設が今後の課題である。そのための施設(旧AV棟を考えている)
が必要である。
9.学生生活
(1) 就職指導
【現状】
従来実施していなかった低学年層へのキャリア教育と併せ,和泉教務課内に進路相談室を設置し,進
路相談やインターンシップの情報などを提供し始めた。曜日により,就職事務部,資格課程事務室から
担当者が出張し,相談に応じている。また各学部の就職活動支援に対しても補助活動を行っている。
【長所】
まだまだ案内不足ではあるが,相談者は徐々に増えている。
【問題点】
就職課,資格課程などの直接担当者の対応がまだ十分ではない。
【問題点に対する改善方針】
専門のキャリアアドバイザーが必要である。
(2) 課外活動
【現状】
3研究指導室の講座やリバティ・アカデミーの講座が開講されている。また各サークル活動,大学祭
などは,学生部の記述を参照のこと。
10.財務
第3章 全学 -82-
/178
(予算編成)
【現状】
予算編成の流れが明確ではない。駿河台各所管部署,和泉校舎事務部・教務事務部,各学部の要求の
関連・連携がない。
11.事務組織
(事務組織と教学組織との関係)
【現状】
和泉委員会の事務局でもある和泉教務課は学部横断的な組織であるのに,駿河台の教務は学部縦割り
であるので,ねじれが生じている。
【問題点】
各学部の教務を担当している和泉教務課員は学部事務長の指揮下ではなく,和泉教務課長の指揮下に
ある。
12.自己点検・評価
【現状】
当委員会が自己点検・評価を行うのは今回が初めてのことである。今後,当委員会でも「自己点検評
価委員会」を設置するか,「執行部会」にその任務を課すか,なんらかの方策をたてねばならない。
【問題点】
本委員会の性格と自己点検・評価の様式が合っていない。
【問題点に対する改善方針】
独自の項目を立てるなどの工夫が必要である。
第3章 全学 -83-
/179
10.教育改善への組織的取組み
(1)
教員研修(FD)の推進(教員研修(FD)委員会)
【目的】
本学は,大学及び各学部の教育目標の達成と教育内容の充実を図るため,2002 年 11 月に教員研修(F
D)委員会を設置し,全学的なFD活動の展開を推進している。
本学におけるFDの定義は,高等教育における「教育」の充実・改善(教育の質やサービスの向上・
改善)を図るため,教員個人自らが教授能力の開発を目指して研究・研修することを基本とし,これを
組織的に支援,推進することである。そして,その結果として,ひとり一人の学生に対する教育目標の
達成度を検証し,検証結果を更に教育改革へフィードバックさせ,本学における教育活動の質的な高度
化を図ることである。
この考えのもとに,2001 年 11 月の学部長会において,まず教員個々における主体的な授業改善の推
進を目的とした,「授業改善の推進プラン(授業改善委員会の設置,教員の授業改善検討会の実施,学
生による授業評価:記述式の感想文,簡潔なアンケート調査)」が合意され,これらを具体化させ,推
進プランを実践するためのプロジェクトグループを発足させた。このプロジェクトグループの活動を母
体に,
「明治大学教員研修(FD)委員会設置要綱」を制定し,併せてプロジェクトグループを解散し,
「教員研修(FD)委員会」の設置へと発展させた。
FD委員会では,教育指導方法の改善促進のために,全教員を対象に教育方法の工夫を中心とする「授
業に関するアンケート」を実施した。この結果,①FDについての広報活動,②授業方法に関するシン
ポジウムや研修会の実施,③新任教員に対する研修会の実施,④学生による授業改善アンケート,⑤教
員間の相互評価制度の創設,⑥教育に関する情報のディスクロージャーについて検討を開始し,2003 年
度から組織的な取組みを行っている。具体的な取組み・実施の現状は以下のとおりである。
【現状】
(1) 授業改善のためのアンケート
学生による授業改善アンケートは,既に独自に実施している理工学部を除き,2004 年1月に7学部で
一斉に同一フォーマットで実施した。アンケート科目参加数は 1,883 科目,回答件数 64,350 件であっ
た。その後,2004 年度は前期6月と後期 12 月に実施した。この後期のアンケート参加科目数は 2,218
科目,回答件数は 66,429 件となり前年度より増加した。
2003 年度は,アンケート項目を「授業について」と「授業の総合評価について」に分け,14 項目の
質問を設定し,いずれも「そう思う・ややそう思う・あまりそう思わない・そうは思わない・回答でき
ない」の5段階評価を行い,それぞれの教員に返却した。
2004 年度は,前年度の反省を踏まえ,質問項目・内容を改善して実施した。その内容は,全体及び人
文科学・社会科学・自然科学・情報・語学・資格課程・体育・その他の科目ごとに「総合的にみた満足
度」,
「質問内容別満足度」,
「満足度の高い授業科目数の割合」,
「学生自身の取組みとして授業への知的
関心度,予習復習の熱心さ,出席率」について実施し,その結果を集計した(下表「授業改善のための
アンケート結果」参照)
。評価基準として 70%を期待値としての達成目標とした。この結果,79%の学
生が総合的な満足度を得ており,質問内容では板書のわかりやすさを除いて期待値の 70%を上回った。
しかし,満足度の高い授業科目数では期待値を下回った。また,学生自身の取組みとしては,82%の学
生が授業への知的関心を持っており,ほぼ全ての授業に 76%が出席している。しかし,予習・復習につ
いては,56%の学生が熱心ではないことが伺える。
2005 年度は,前年度同様,前期・後期と2回に分けて実施している。これらの集計結果は,個別のア
ンケート結果とともに兼任講師も含めた全教員に配付し,その際「教員のアンケート」を同封してアン
ケート結果に対する教員の意見・感想を取りまとめ,そのすべてをホームページで公開するなど,授業
改善のためのアンケート結果を有効に活用している。
(2) 新任教員研修会
新任教員研修会は,新規採用された専任教員を対象に全学的なFDへの取組みを理解してもらうとと
もに,自己啓発の意欲を高める機会として実施しており,対象教員の約 90%が参加して好評を得ている。
その内容は4月上旬に実施する「Oh-o! Meiji クラス・ウェブとポータル・ページを主とする教育学
第3章 全学 -84-
/180
習支援システム」の講習会及び 7 月下旬に実施する研修会から成っている。前者は教育の情報化に伴う
教育学習支援システムの説明会である。後者は本学のFDへの取組み(教育改革,厳格な成績評価とG
PA,授業評価,授業改善等)についての説明や学内外の講師による講演等であり,終了後には学長及
び各学部長との懇談会を実施している。
懇談会では4ケ月の教育経験に基づいて,教授法,シラバス,成績評価,教材開発,学生の勉学姿勢
など様々な問題に関して情報交換・意見交換を行っている。
実施後3回目となる 2005 年度は,授業の取組み方について3学部の先任教員から授業及びゼミの取
組み方法,授業改善方法等について報告され,活発な質疑応答・意見交換が行われた。
(3) 講演会・シンポジウム
本学が直面している教育上の課題を念頭において共催を含めて企画・実施している講演会等は,いず
れも 100 人近くの専任教職員(在職の約8%)の参加者を得て,きわめて好評である。内容は時宜を得
たものが多く,高く評価できる。この3ケ年間で実施した講演会等は以下のとおりである。
2003 年度
①授業改善シンポジウム「教育改革に燃える大学」
(講師:井下理慶應義塾大学総合政策学部教授他)
2004 年度
②FD講演会「研究・教育活動とセクシャル・ハラスメント」(講師:角田由紀子法科大学院教授)
③FD講演会「FDの現状について-大学教育開発・支援センターを中心として-」
(講師:寺崎 昌男立教学院本部調査役・東京大学名誉教授)
④教育改革支援本部シンポジウム(共催)「優れた大学教育とは-特色GPの経験から-」
(講師:絹川正吉元国際基督教大学学長・文部科学省特色GP実施委員会委員長)
2005 年度
⑤FD講演会「FDの組織的取組について」
(講師:圓月勝博同志社大学教育開発センター所長)
⑥FD特別研修会「これからの私大伝統校のあり方」
(講師:奥島孝康早稲田大学学事顧問・前総長)
(4) 広報活動
従来,FDに関わる広報活動は,学内広報紙での事後的かつ総括的な報告だけにとどまっており,在
学生やその父母に教育改善状況を周知させることが少なかった。こうした状況を改善するため,2005 年
度からFD委員会のホームページを開設した。そこでは,既述した授業改善のためのアンケート結果の
全体集計や講演会記録,さらにFD活動に関する「教員と学生の声」などを広範に掲載している。
【長所と問題点】
(1) 授業改善のためのアンケート
教員相互の課題の共有化を図るとともに,学生と教員の間のコミュニケーションを促すためにも,学
生による授業改善アンケートは継続していくことが必要である。この授業アンケートは,まだ実施後3
年ということもあり累積データが少ない。評価基準として期待値を設定しているが,より具体的な評価
基準を設定する必要がある。従って,現時点では教員の個別授業改善のための参考データの域をでない
が,今後は集計結果をデータ化し,設定した評価基準により,基準に達しない科目等については重点的
に改善していく必要がある。しかし,学生の学修の活性化と教員の教育指導方法の改善を促進するため
の措置としては有効である。
問題点としてインターネットを利用しての授業評価も考慮される。現状は紙ベースによるアンケート
調査を実施しているが,今後はこれらの可能性を視野に入れつつ,現行方式の定着化とさらなるアンケ
ート集約結果の活用法について検討する必要がある。また,授業アンケートは,卒業時や卒業後のアン
ケート調査も重要である。在学中の学修結果が出口である卒業時や卒業後においてどのように活用され
ているかを知ることにより,教育方法の改善に生かすことができるからである。さらに,卒業生の就職
先である企業等にも聞き取り調査等も行う必要もある。これらについては本学では導入されておらず,
今後その必要性や実施する場合の具体的方法について検討する必要がある。
(2) 新任教員研修会
この取組みは先駆的な取組みであり,ほぼ全員の新任教員が参加することから,新任教員の意見や研
修会で報告する先任教員の意見等を参考に今後とも継続し,より一層の充実を図っていく必要がある。
特に,授業開始前の4月と開始後約3ケ月を経た7月の2回行うことは,FDに対する本学の方針と教
育改善への取組みを意識づけることになる。また,今後は新任教員のみならず,採用後5年及び 10 年
第3章 全学 -85-
/181
の教員,さらには兼任講師の研修についても,その必要性や実施する場合の具体的方法等について検討
する必要がある。
(3) 講演会・シンポジウム
講演会・シンポジウムの開催は,参加者の評価が高く,きわめて有効である。今後も諸課題に即した
テーマを設定し,外部情報を得るためにも積極的に学外からの講師を招聘して企画・実施していく必要
がある。そのために,趣旨・企画をより一層周知させ,当面教職員の2割(約 250 名)が参加するよう
な企画内容にしていく必要がある。問題点として,この講演会等の企画・立案が教員の他大学等での個
人的経験に基づいていることが多いことである。外部情報の収集については,学外機関が実施する様々
なFD関連の講習会等へ教職員を派遣するなど積極的に学外との交流を図ることが必要である。また,
教員同士による特色や工夫のある授業紹介やその授業への参観等「教員間の相互評価制度創設」に向け
た検討も必要である。
(4) 広報活動
ホームページによる広報活動は,学生と父母,受験生や卒業生,さらには広く社会一般に対して本学
のFDの取組み状況や特色ある授業を紹介することにとどまらず,大学の広報戦略の一環として捉え,
大学の社会的説明責任とも関連して,より信頼を高めていくために継続していくことが重要であり,現
状についてはある程度評価できる。
今後は広報活動の結果の具体的な検証が必要である。ホームページでいえば,そのアクセス数(訪問
者数)や閲覧時間数などを調査し,それを基準化することによって本学のFDへの取組みがどの程度周
知されているかを図る指標ともなるからである。
(5) 教育開発・支援センターの設置に向けて
記述したように本学のFDへの全学的な取組みは,ほぼ定着しつつある。しかし,2004 年度からの学
校教育法の改正に伴う認証評価の義務化により,FDはこれまでに様々な角度から評価の対象となった。
これまで,本学におけるFD活動は,授業改善を目的とし,主に教員研修を中心に展開したものであっ
たが,今後は,全学的な教育支援体制の改善にも貢献する取組みとして進め,更に,教育効果を教育改
善に直結させるシステムを確立するための具体的な方策とその運用を図る必要がある。このため,現行
のFD委員会を教育開発・支援センターへ改組して,教育技法の改善・普及はもとより,各学部のカリ
キュラムの評価,検証,改善を支援,促進することも担いうる組織へと発展させていくことが必要であ
る。
【将来の改善に向けた方策】
授業改善のための学生によるアンケートは,3年目に入ったばかりであり,アンケート結果のデータ
は蓄積されていない。従って,短期的な改善方策として 2006 年度も引き続き同様に実施し,最短在学
期間である4年間のデータを累積して活用する。また,卒業時のアンケート調査も実施し,授業アンケ
ートと同時に満足度調査を実施する。卒業後の卒業生や企業等への調査は,大学が実施しているホーム
カミングデーや就職部が実施している企業説明会等を活用するなど現在実施している様々な活動と連
携していく。
新任教員研修会や講演会・シンポジウムは継続しつつ,教員の教育指導方法の改善促進に生かしてい
く。特に採用後5年目の教員や 10 年目の教員,さらに兼任講師の研修についても新任教員研修会の成
果を活用し,数年のうちに制度化する。これらの成果を踏まえ,長期的には明確な評価基準を定め,教
員評価のひとつとして活用する。
教育開発・支援センターの具体化は急務であり,2005 年度は教務部委員会のもとに「教育開発・支援
センター設置検討ワーキンググループ」を発足させた。年度内には検討の結果をまとめ,教育改革・改
善の一環としてFDをより組織的な取組みとして発展させ,本学の教育理念・教育方針に全学的に対応
するべく設置することになる。
第3章 全学 -86-
/182
授業改善のためのアンケート結果
(1) 総合的にみた満足度
高い
やや高い
やや低い
38%
41%
15%
人文
科学
39%
41%
15%
低い
6%
5%
7%
8%
95%
81%
人文
科学
96%
85%
社会
科学
92%
78%
自然
科学
93%
75%
83%
85%
81%
76%
80%
85%
83%
85%
80%
89%
81%
81%
83%
84%
88%
88%
82%
86%
77%
81%
66%
67%
60%
91%
92%
93%
84%
全体
社会
科学
34%
41%
18%
自然
科学
31%
43%
18%
情報
語学
37%
42%
15%
39%
41%
14%
資格
課程
39%
43%
14%
6%
6%
4%
情報
語学
93%
74%
94%
83%
資格
課程
97%
86%
56%
34%
7%
その
他
50%
37%
10%
3%
3%
体育
(2) 質問内容別満足度
全体
授業に対する熱心さ
説明のわかりやすさ
話し方の明瞭さ聞き取
りやすさ
授業遂行の円滑さ
教材・資料の準備活用
プレゼンテーション機器のわか
りやすさ
板書のわかりやすさ
学生からの質問に対す
る適切な対応
授業内容とシラバスの
合致
課題・宿題等の授業での
有効性
97%
93%
その
他
97%
93%
87%
94%
94%
87%
86%
84%
89%
80%
85%
97%
95%
87%
82%
87%
81%
93%
61%
66%
75%
66%
80%
84%
90%
90%
88%
90%
92%
94%
97%
93%
92%
92%
90%
93%
95%
95%
96%
84%
82%
83%
83%
88%
89%
79%
90%
人文
科学
133
207
64%
社会
科学
205
337
61%
自然
科学
49
99
49%
情報
語学
53
89
60%
316
457
69%
人文
科学
46%
37%
12%
5%
社会
科学
42%
39%
13%
6%
自然
科学
38%
41%
15%
6%
情報
語学
52%
35%
9%
4%
40%
40%
14%
6%
人文
科学
13%
25%
35%
27%
社会
科学
12%
24%
38%
26%
自然
科学
12%
35%
28%
12%
情報
語学
22%
31%
30%
17%
22%
38%
28%
12%
体育
(3) 満足度の高い授業科目数の割合
全体
満足度の高い科目数
対象科目数
割合
1424
953
67%
資格
課程
45
65
69%
体育
141
156
90%
その
他
11
14
79%
(4) 学生自身の取組み
①授業への知的関心度
全体
そう思う
ややそう思う
あまりそう思わない
そう思わない
②予習・復習の熱心さ
44%
38%
13%
5%
全体
そう思う
ややそう思う
あまりそう思わない
そう思わない
16%
28%
33%
23%
第3章 全学 -87-
資格
課程
47%
39%
11%
3%
資格
課程
13%
26%
36%
25%
体育
55%
31%
10%
4%
体育
34%
19%
27%
20%
その
他
52%
34%
10%
4%
その
他
23%
38%
28%
11%
/183
③出席率
全体
ほぼ全て
3分の2程度
3分の1程度
3分の1以下
(2)
76%
20%
3%
1%
人文
科学
73%
22%
4%
1%
社会
科学
70%
23%
5%
2%
自然
科学
81%
15%
3%
1%
情報
語学
85%
14$
1%
0%
82%
17%
1%
0%
資格
課程
74%
24%
2%
0%
体育
85%
14%
1%
0%
その
他
78%
16%
5%
1%
教育改革支援(教育改革支援本部)
【目的】
近年,矢継ぎ早に提起されている「特色ある大学教育支援プログラム」や,「現代的教育ニーズ支援
プログラム」等,文部科学省が行う大学の教育改革への支援事業-GP(Good Practice)-に対応す
るため,2004 年 11 月に教育改革支援本部を設置した。
本学が目指す「外部評価に耐えうる大学」になるためには,かかる「教育支援プログラム」への適切
で確実な対応が肝要である。また,こうした文部科学省等が実施する教育支援プログラム情報は,数ヶ
月前にはすでにHP上に表明されている場合や,様々な高等教育機関主催会議等におけて各省課員が参
加した時の発言にも表れる場合があるため,常に細心の注意を払っていなければならない。したがって,
より早く情報を収集し,内容を分析し,申請へ向けた体制を確立することが重要であり,そうした動向
を正確に見極めるため,早期の情報収集に努める体制づくりをさらに強力に推進する必要がある。この
理由から,大学の教育理念に基づく教育の質的向上を図るとともに,社会に有用な人材を育成するため
の優れた教育改革への取組に対する支援・推進を目的として,学長の下に明治大学教育改革支援本部を
設置したものである。
実質的には,本部のもとに教育改革支援事業に係る申請業務を遂行するため,教育改革支援事業の公
募プログラムに応じて,セクションを設置して活動している。
【現状】
(1) GPへの申請活動
2005 年度は,「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」「現代的教育ニーズ取組支援プログラ
ム(現代GP)」
「大学教育の国際化推進プログラム(国際GP)」
「魅力ある大学院教育イニシアティブ
(大学院GP)」
「法科大学院等専門職大学院教育推進プログラム(専門職大学院GP)」
「資質の高い教
育要請推進プログラム(教員養成GP)」への申請を行った。プログラム・申請テーマ・代表者・結果
は,次の表のとおり
1
プログラム名
申請テーマ
取組代表者
採択結果
特色ある大学教育支援
プログラム(特色GP)
知のアーカイブ活用法-教育学習支援機能
としての図書館-
吉田悦志(政経学部・
教育改革支援本部長)
△
広域連携支援プログラム-千代田区=首都
圏ECM(EducationChainManagement)-
水野勝之(商学部)
○
携帯電話を活用した大クラスの授業改善-
授業記録のデジタル・コンテンツ化の構築
に向けて-
川島高峰(情報コミュ
ニケーション学部)
-
高橋正泰(経営学部)
○
高橋岩和(法学部)
-
現代的教育ニーズ取組
2 支援プログラム(現代G
P)
大学教育の
国際化推進
3
プログラム
(国際GP)
海外先進
教 育 実 践 大学教育における障害者学習支援
支援
戦略的国
際 連 携 支 英語で学ぶ日本法プログラム
援
長期海外
(申請なし)
留学支援
第3章 全学 -88-
(申請なし)
/184
国際的会計専門職業人の養成プログラムの 山浦久司(会計専門職
開発
研究科)
法科大学院等専門職大
4 学院形成支援プログラ
ム(専門職大学院GP)
会計大学院教育課程の国際水準への向上
同上(東北大,早稲田,
青山学院,中央,法政,
北海道大,関西学院,
千葉商科大学との共
同申請)
大学・大学院における教
別府昭郎(文学部・資
5 員養成推進プログラム 授業デザイン力養成カリキュラム
格課程)
(教員養成GP)
「魅力ある大学院教育」
社会との関りを重視したMTS数理科学教
砂田利一(理工学部)
6 イニシアティブ(大学院
育
GP)
※採択結果欄については,○は採択,△はヒアリングまで。
-
○
-
○
(2) 教育改革事業への支援
GPへの申請取組を決定する教育改革支援本部において,各プログラムに対応する取組に対して,重
点的に財政支援を行っている。その支援対象は,
①教育改革支援本部においてGPへ申請可能と判断した取組み
②不採択だったものの再申請をめざしている取組み
③採択された取組の初年度において,補完または広報をするための支援
④その他学長が必要と認めた取組み
であり,本部長(もしくは幹事会)が提案し,学長の了承を得て決定する。
2005 年度は上記の支援基準により,現代GPへの申請が不採択であったものの再申請を目指す取組と
して「携帯電話を活用した大教室の授業改善」(取組代表者:川島高峰情報コミュニケーション学部助
教授)への支援を行なった。また,採択された取組の補完としては,大学院GP「社会との関りを重視
したMTS数理科学教育」及び国際GP「大学教育における障害者学習支援」への財政支援を行なった。
【長所及び問題点】
(1) GPへの申請活動
2005 年度は,現代GP・大学院GP・国際GP・専門職大学院GPの4件が採択された。特に大学院
GPに関しては理工農系で 43 件採択されたが私立大学は2件のみであった。補助金についても,2003
年度特色GPで既に採択されている「ネットワークを用いた教育学習支援システム」を含めて,年間
6,000 万円獲得しており,教育改革支援本部を設置したことは大きな成果があった。各GPへの申請取
組の決定は,まず学内公募を行ない,応募があった取組と各セクションで発掘した取組をセクションで
総合的に検討し,行っている。しかし,特色GPや現代GP等,複数年目のプログラムに関しては学内
公募への応募件数が少なくなってきており,今後は各学部・各教員へGPの対応の重要性を機会あるご
とに知らせるなどの活動が重要である。
(2) 教育改革事業への支援
今後ますます増加していくであろう各種教育支援プログラムに対応する取組みの育成が重要である。
文部科学省の動向に注意を払い,教育改革支援本部が中心となり積極的に取組の発掘を行ない,財政支
援を行なっていく必要がある。
(3) 広報活動
採択された取組に関する情報を社会に積極的に発信することは,義務となっている。2005 年度に現代
G P に 採 択 さ れ た 「 広 域 連 携 支 援 プ ロ グ ラ ム - 千 代 田 区 = 首 都 圏 E C M ( Education Chain
Management)-」は,情報発信を積極的に行なっており他大学の参考事例になるということで文部科学
省に取り上げられている。また,大学院GP「社会との関りを重視したMTS数理科学教育」は,関係
大学が集まった 2006 年度に向けての説明会での配布資料として紹介されるなど評価を得ている。他の
プログラムに関しても今後も継続して情報発信を行なっていく必要がある。
【将来の改善に向けた方策】
第3章 全学 -89-
/185
採択された取組は,その成果が厳しく評価されることになるため,教育改革支援本部内に「評価委員
会」を設置する。また,取組によっては「教員研修(FD)委員会」
「社会連携知財本部」
「教育の情報
化推進本部」等と連携して評価にあたる。教育改革支援本部のもと,今後も引き続きGPへ積極的に対
応することにより,補助金獲得による大学財政への貢献は言うに及ばず,恒常的なGP採択を目指す懸
命な教育改革への具体的プログラム作成と実践が,本学の理想的教育環境を構築していくことに繋がる。
(3)
学習支援推進(学習支援推進委員会)
(使命・目的等)
【現状】
大学及び各学部は,それぞれに教育理念を有し,その教育目標を達成するためにカリキュラムを編成
し,一定の指導方針に基づいて統一的に学習指導を行っているが,近年の学生の多国籍化及び入学選抜
の多様化は,これまでの統一的な学習方法だけでは十分に対応できない教育状況を生起させている。ま
た,学生の大学教育への多様で質の高い要望に対して,現状の統一的・全体的な学習指導はそれらの要
望に十分対応できていない。学生個々の多様なニーズに対応するためには,柔軟でかつきめ細かい学習
指導が必要である。これに基づき,教務部委員会のもとに「学習支援推進委員会」を設置し,3地区に
学習支援室を開設するとともに,これを拠点として全学的な体制のもとで学習支援を推進する。
(履修指導)
【目的】
本学の各学部における教育理念の実現と教育目標の達成のため,2005 年7月に学習支援推進委員会が
設置されたことにより,全学的な学習支援体制が整い,2005 年度後期より,駿河台・和泉・生田(農学
部)の各キャンパスに「学習支援室」が開設された。既に,2004 年度より開設していた生田キャンパス
の理工学部と併せて学習支援推進委員会のもと,始動することとなった。
近年の学生の多国籍化及び入学選抜の多様化は,これまでの統一的・全体的な学習指導では十分対応
できていない状況になっており,学生個々の多様なニーズに対しては,柔軟でかつきめ細かい学習指導
が必要となっている。この学習支援を推進するうえで不可欠なのが,各キャンパスに設置された「学習
支援室」である。
【現状】
(1) 学習支援室での学習指導
文系の1・2年を担当する和泉学習支援室では,主に文学部のTAが中心となって,日本語・英語・
ドイツ語・フランス語・中国語・日本史古文書読解・アジア史等の学習支援が行われている。具体的に
は,①授業内容について②レポートの書き方について③学習方法について④単位の取り方について⑤語
学の発音について⑥留学相談について⑦文献の検索方法について等,さまざまな内容で学習支援室を利
用している。その他,教員によるオフィスアワーや職員による履修指導等実施している。
文系の3・4年を担当する駿河台学習支援室では,経営学部の助手が月曜日から金曜日の午後を利用
して,経営学・会計学の専門分野について卒業論文作成の相談等を実施している。
生田キャンパスは理工学部及び農学部の1年~4年が在籍しており,学習支援室は理工学部及び農学
部それぞれに設置されている。理工学部の学習支援室では,主に,基礎数学・基礎物理学・基礎化学等
の基礎科目を中心にTAが,講義内容やレポート作成等に関する相談を行っている。農学部の学習支援
室では,各学科のTAが学習面での相談・質問等にあたっている。
(2) 英語未習留学生に対する補習授業
現在,本学が受け入れている留学生の中に,英語が未習である,または,学習が不足している学生が
おり,一般の授業についていけない状況がある。そのような学生を支援するため,2005 年5月末より和
泉キャンパスにおいて補習授業という形で,外部講師による授業を開講している。
(3) 入学前教育の実施
早期に入学が確定した学生のモチベーションを維持し,基礎学力を向上させるため,2005 年度より生
田キャンパスにおいて,理工学部及び農学部の特別入試入学者を対象に,英語と数学の通信添削による
入学前教育を実施している。外部業者に委託する形式(課題及び解答解説の作成,採点添削,発送業務,
報告書の作成)で行っており,2005 年 12 月~2006 年3月の期間で各3回実施している。
第3章 全学 -90-
/186
(4) 補習講義の実施
既に農学部では,2004 年度後期より基礎学力不足が認められる特別入試入学者の1・2年生を対象に,
短期集中で高校レベルの基礎について,「フォローアップ補習授業」を実施していたが,2005 年後期に
学習支援推進委員会が設置されたことにより,生田学習支援プログラム「補習講義」として実施してい
る。
農学部・理工学部の特別入試入学者1・2年生のほか,一般入試入学者や他地区の文系の学生も対象
として,短期集中で高校レベルの基礎を修得できるプログラムを,平日コース・土曜コースを設け,よ
り受講しやすい体制を整え,政治経済学部及び情報コミュニケーション学部の学生が受講している。
(5) 広報活動
「学習支援室」を周知徹底するため,2005 年度(2006 年3月)にホームページを開設した。掲載内
容は①概要(学習支援室ってどんなところ?・学習支援推進委員長メッセージ)②利用案内(学習支援
室を利用するには?・こんな時には学習支援室へ)③学習支援プログラム④教材一覧(和泉学習支援室)
⑤駿河台学習支援室(支援内容・開室時間割・スタッフ)⑥和泉学習支援室(支援内容・開室時間割・
スタッフ)⑦生田学習支援室:理工学部(お知らせ・支援内容・開室時間割・スタッフ)⑧ 生田学習
支援室:農学部(支援内容・開室時間割・スタッフ)になっている。また,新学期に向けてリーフレッ
トを作成しており,学習支援室のPRのため学生に配布することになっている。
【長所と問題点】
(1) 学習支援室での学習指導
和泉学習支援室は,主に文学部のTAが中心となって学習支援が行われているが,他の文系学部の参
加が検討されており,2006 年度については,商学部が加わることになっている。他の学部についても,
今後参加する予定である。ただし,文系6学部で使用するには,現在の和泉学習支援室では手狭なうえ,
定期試験時には試験本部として使用しているような現状にあり,今後,和泉学習支援室の設置場所が問
題になる。
駿河台学習支援室は,経営学部の助手を月曜日から金曜日の午後に配置し,学習支援業務を実施して
いた。これに加え 2006 年度は,商学部のTA及び文学部の助手を新たに配置している。
生田学習支援室(理工学部・農学部)についてはTAを配置し,学習支援業務を実施しているが,T
Aの出勤管理・来室者データ管理・HPの更新業務等の事務を行う人員が必要となっている。2006 年度
については,派遣職員を配置することとなったが,今後の利用増加を考えると継続的に配置する必要が
ある。
2006 年度より,新たに教務事務部でTAを採用し,学習支援だけでなく,学部間共通総合講座の補助
業務をすることになった。このことにより,不足している部分の学習支援も補えることになる。
(2) 英語未習留学生に対する補習授業
2004 年度から理工学部で開講されている,
「英語未習留学生を対象とした英語」を 2006 年度より他学
部に所属している留学生も履修可能となった。しかし,和泉キャンパスでは開講されないので,2005 年
度同様,外部講師による補習授業の形式で行うことになったが,来年度以降学部横断的な授業を開講す
ることが検討課題となっている。
(3) 入学前教育の実施
外部業者に委託(課題及び解答解説の作成,採点添削,発送業務,報告書の作成)して行っているが,
その後の補習講義に繋がるものと期待している。
(4) 補習講義の実施
理工学部・農学部の学生にとって,物理・生物・数学等の科目は基礎科目であり,これらの基本が出
来てないと授業についていけない状況にある。補習講義「フォローアップ講座」により,基礎学力不足
が認められる特別入試入学者の理解力を高めることができる。この講義は高等学校教育の専門である外
部業者の委託と付属中野高校の教員による協力で行って実施しているが,より細かく日程を設定したた
め,費用がかかることが問題となっている。
(5) 広報活動
第3章 全学 -91-
/187
新規開設したHPについて,よりアピールできるHPの構築を目指す。
【改善方針】
2005 年度後期から学習支援室が開設されてこともあり,体育会学生への全学的な学習支援が充分とは
いえなかった。2006 年度は,スポーツ活動と学業を両立させ,社会人として力を発揮できる人材を育成
するため,次のような支援を行うことになった。
(1) スポーツ入学者横断授業の設置
なかなか授業に出席できない体育会所属の学生の中でも,基礎学力不足が認められるスポーツ特別入
試入学者(公募制・AO)のうち,2005・2006 年度入学者を対象に,2006 年度より法学部・商学部・
政治経済学部・文学部・理工学部がこれらの学生を対象とした英語科目を設置し,設置学部間で授業を
履修できるようにした。このことにより,他地区で練習等があっても各地区で履修することができ,対
象学生にとって学習環境が整うことになった。今後の改善方針としては,全学部での設置及び他の外国
語科目や基礎科目まで,学部横断的に実施できるようにすることである。
(2) 体育会所属学生への「授業出席確認カード」の実施
スポーツ特別入試入学者(公募制・AO)に対する,大学のサポートが重要となってきた昨今,学生
の授業出席向上を図るため,2006 年度より,これらのスポーツ特別入試入学者(公募制・AO)1年~
4年を対象に,「授業出席確認カード」を導入することとなった。この「授業出席確認カード」は1科
目1枚を使用し,授業後担当教員のサインをもらい,最終的には各地区にある学習支援室が管理するこ
とになっている。半期に1度学習支援室から各部の監督及び担当教員へコピーを送付し,今後の指導の
資料としていただく予定である。このことにより,学生の出席が向上し,1人でも多くの体育会所属学
生が,4年間で卒業できる体制ができることになる。
第3章 全学 -92-
/188
11.国内外における教育研究交流(国際交流センター)
(使命・目的等)
【現状】
各学部・大学院等の諸機関と連携して,主導的に,①海外諸研究機関との学術交流,②留学生の受入
れ派遣等の留学生関係,③海外地域研究,及び④日本語・日本研究等各国の語学・文化研究,を主な業
務として推進している。
【長所】
受入留学生の増加(私費),協定校の拡充による研究者・学生交流を盛んに行われるようなった。地
域研究(カナダ,英国,フランス)も一部授業科目として単位化されるなど充実してきた。日本語プロ
グラムについては,私費留学生向けプログラムのほか,交換・政府派遣留学生などに提供できるように
なっている。
【問題点】
入試関連業務から,本学の国際交流戦略の企画・立案にいたるまで,業務が広範囲にわったており,
きめ細かなサービス,業務の遂行にやや手薄感がある。
【改善方針】
前記の目的を達成し,及びそれらの業務を遂行するために,従来から国際交流センターには相当程度
の専門的資質を有する者が配置されてきた。しかし上記業務の拡大と本学全体の国際化への対応の要請
から,さらに多方面に専門性を備えた人材が必要となっている。
本学全体の国際化のためには,上記のような国際交流センターの従来業務に加えて,国際化推進のた
めの業務,すなわち国際戦略企画・調査,国際情報収集,国際広報,及び国際交渉などを担当する部局
が必要である。これらの業務を統合して「国際センター(仮称)」として組織を改める。独・仏・中・
韓国・スペイン語に対応できる人材の育成・配置を検討している。また,これまで新企画等については
学長及び学長室に相談したうえで国際交流センター運営委員会の議を経て,学部長会,教務部委員会に
諮ってきたが,今後は国際戦略に関する基本事項については大学全体の最高意思決定機関としての「明
治大学戦略会議(仮称)
」を置きそこで決定していく。
(教育課程)
【目的】
在学生の海外留学を奨励することや,語学運用能力の強化を目的として,外国語集中講座を設置する。
【現状】
国際交流センターは,本学学生が海外での生活を通して語学力を向上させ,現地の社会文化に生で触
れ,国際感覚を身に付けることができるように夏期語学(英語,仏語及び独語)研修プログラムを設け
ている。参加者の中から交換留学をする者が出てくるなど,毎年,良好な結果を得ている。
【長所】
参加者の中から交換留学をする者が出てくるなど,毎年,良好な結果を得ている。
【問題点】
多数の参加希望者が選考漏れとなっている。また英語圏以外への派遣学生を多く輩出するためにも,
英語以外の語種を充実しなければならないと考えている。
【改善方針】
英語研修の増設として,(a)上級者向けプログラムの新設,(b)従来型プログラムの新設を検討する。
語学研修プログラムをその他の外国語圏(スペイン語,中国語,韓国語等)にも広げて行きたい。研修参
加学生に対する本学教職員の現地における指導監督の負担等について改善する。英会話の少人数指導制
第3章 全学 -93-
/189
を国際交流センターに設置する。また危機管理体制・引率体制の見直しを図る。
(単位互換,単位認定等)
【目的】
国際交流センターでは教育の多様化,活性化を図るために,海外協定大学における学修の単位認定を
推進し,海外協定校との間の一層の連携,・交流を可能とする。
【現状】
本学の海外協定校との間で単位の互換を行っている。具体的な交換単位数及びその互換方法について
は,最終的に所属大学に任される。本学学部は,30 単位を限度として,単位互換を認めている。その具
体的認定については,各学部の判断に任されている。海外の大学と個別に学生交流協定を締結している
大学数は 21 校,コンソーシアムが3件である。
【長所】
本学の学生交流は,原則として1年を限度としており,単位互換により,原則として4年で卒業でき
るように配慮している。
JICA等及び開発途上国政府派遣留学生を受入れている。なお,本学は,「国際協力支援委員会」
を設置して,その支援を推進している。
【問題点】
協定校数がまだ充分とはいえない。
【改善方針】
海外協定校以外の大学との単位互換も検討する。海外の協定校数を拡大して学生交流を一層盛んにす
る。半年単位などの短期間による学生交流の可能性について検討する。開発途上国からの留学生の受入
れの拡大,及び教員の派遣等検討する。
なお,その留学生の受入れにおいては,入門日本語教育の充実及び英語授業体制の確立など検討する。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的】
交換留学生の学修成果の向上に寄与するため「日本語集中プログラム」を置く。
【現状】
国際交流センターは,協定校留学生の日本語能力等の向上を図るために特に「協定校留学生日本語集
中プログラム」
(中級後期及び 2002 年度から中級前期クラス)を置いている。2003 年度からJICAか
らの留学生に「生活のための日本語入門講座」を設けている。
【長所】
国際交流を促進するために種々の交流行事(見学バス旅行,日本語スピーチコンテスト,年末懇親会
等)を実施し,また各キャンパス交流室での交流(情報交換,相談等)を行っている。
【問題点】
留学生の日本語能力に合わせたレベル別クラス数が充分とはいえない。
【改善方針】
日本語能力レベルの異なる外国人留学生が増加してきているので,一層多様なレベルのクラス編成等
を検討する。留学生同志及び日本人学生との交流を一層盛んにする。サービス体制の充実として,(a)
留学生向け国際インターンシップの促進,(b)留学期間終了後のフォローアップを図る。また,特別講
座の設置検討をする。具体的には,(a)短期日本語研修の実施(夏期・春期),(b)協定校学生向け単位
付与科目の開講(英語による「日本学」「日本文化・日本事情」「世界平和と日本」「日本の先端技術・
産業」等)である。
(履修指導)
第3章 全学 -94-
/190
【目的】
留学生の学修成果の向上を図るためチューター制度を実施する。
【現状】
国際交流センターは,大学院留学生の研究補助に当たる制度としてチューター制を導入している。
国際交流センターは,一般留学生についての日本語等における学習支援を増強させるために,2004 年度
から各キャンパスにTAを3名置いている。
【長所】
学修上の支援に充分な効果を発揮している。
【問題点】
チューターという性格上,学修上の支援が主な業務であるが,それに止まらず,生活上のアドバイス
も含めた広範囲なサポートができないか考えている。
【改善方針】
TA及びチューター制の一層の充実,学内外ボランティアによる支援等,人的支援体制の充実を図る。
(国内外における教育研究交流)
【目的】
国際レベルでの教育研究交流を緊密に図るため5カ年計画を立てて推進する。
【現状】
本学の建学精神「権利自由」「独立自治」を教育研究の基本理念として,国際社会で活躍できる国際
性豊かな人材の育成と国際社会に積極的に貢献する教育研究機関として,本学の国際化を推進している。
国際交流重点事項促進5ヵ年計画を 2003 年度から推進している。
(1)国際交流促進数値目標:協定校 50 校に,学生の海外派遣 100 名に, 留学生数を 500 名に。
(2)米加の協定校との受入れ及び派遣学生数のアンバランスの解消
(3)海外地域研究の拡充
【長所】
協定校の拡大
本学の学術交流協定の方式として,従来から3段階(カテゴリー)に分けられていた。すなわち大学
間交流(研究者,学生交流),学術交流(研究者交流),国際協力(学術支援,研究者・専門家派遣,研
究者・研究生受入れ)である。最近では,学部間協定及びコンソーシアム(大学連合)形態の協定を開
発している。
2005 年度末の段階で,大学間協定 34 件,学部間協定2件,コンソーシアム3件に達している。国際
交流センターには,本学創立百周年を記念して設立された「明治大学国際交流基金」をもとに外国人研
究者招請プログラム(短期・長期・アポイントメント)を設け,社会・人文・自然科学の全分野の海外
からの研究者の研究調査を支援している。
さらに,国際交流センターには,カナダ政府からの補助金を得て(1987 年度以降継続)「カナダ研究
連続講座」,英国ブリティシュ・カウンシルの支援を得ての(2001 年度以降)「英国研究 UKNOW」
を設置し,海外からの研究者・実務家を招請し講演会・研究会を開催している。
海外からの招請外国人研究者用に駿河台地区に共同研究室を置いている。
学部によっては,欧文雑誌が発刊されている。
カナダ研究については国際交流センターで報告書(冊子)を発刊している。
【問題点】
学術交流の大きな柱である招請研究制度は年々応募者が増加し,関係各位の要望に充分に応えること
が困難になってきており,このままでは協定校数の拡充に支障を来たすことが懸念される。
ほかに,当センターは,海外からの研究者・実務家を招請し講演を行う形式の「スタッフ・セミナー」
を設置し運営している。このセミナーは年間 10 件分予算化され,前期に7件と後期に3件の募集がな
されている。いずれも募集後僅かな間に予定数が終了する。従って,途中での応募に応えられない状況
第3章 全学 -95-
/191
にある。
本学の教育研究及びその成果についての海外への発表は,教員個人に負うところが大きいのが実情で
ある。
【改善方針】
本学は,国際社会での協調の面においても,支援の面においても国際的教育研究機関として,なお一
層の国際化推進が必要である。その具体策を検討する。協定校数の拡大推進,及び協定校との交流の充
実を図るために継続して改善する。留学生奨学金の充実及び宿舎の配備を増強する。
研究者用宿舎の充実,継続的な地域研究のための海外研究者との交流促進を行う。協定校数の拡大推
進,及び協定校との交流の充実を図れるよう継続して改善する。
最近では,学部間協定及びコンソーシアム(大学連合)あるいは法人関連の組織(リバティアカデミ
ーなど)形態の協定を開発しているが,その協定の実施に当たって国際交流センターと事前事後調整を
行う。国際的コンソーシアム方式による交流の拡充については,(1)コンソーシアム活動の充実として,
現在,ルノー財団の支援によるフランス大学連合とのMBAコース,日仏共同博士課程,USMAP,
U8コンソーシアム,及びマレーシアツイニング・プログラムに参加を図る。(2)コンソーシアムへの
新規参入として,EU及びカナダ等の大学連合及び本学主導によるその立上げる。また,重点地域とし
ては,従来方針どおり,環太平洋地域を重視するが,現在協定校がないアフリカ,ロシア,東欧あるい
は中央・西アジアについて新規協定を推進する。比較的協定校の少ないアメリカ合衆国も増加させたい。
なお,重点地域としては従来方針どおり,環太平洋地域を重視するが,現在協定校がないアフリカ,ロ
シア,東欧あるいは中央・西アジアについて新規協定を推進する。また,比較的協定校の少ないアメリ
カ合衆国にも増加させたい。
その他の地域研究の拡充と補助金支援の開拓する。
大学として組織的に教育研究の成果を海外に積極的に発表する方策を検討する。
広報部で目下ホームページの充実を進めているが広報部との協力も進める。
(外国人留学生の受入れ)
【目的】
本学の建学の精神に基づいた人材を広く諸外国からも受け入れ,国際化を推進に資する。
【現状】
本学の全学部で「日本留学試験」を活用して留学生の資質の審査を行っている。その具体的活用の内
容及び方法については各学部に任されている。留学生は,2004 年度 427 名,2005 年度 520 名,2006 年
度 594 名と確実に増加している。
【長所】
各学部の教育理念に合致した留学生の採用が可能。
【問題点】
各学部で入試科目,方法がまちまちで,受験生にはわかりにくい。
【改善方針】
「日本留学試験」の活用の成果及びその見直しについて今後検討する。また,外国人留学生の教育環
境整備には,留学生数拡大策,特に大学院への受入れ強化策の検討が必要である。また留学生特別入試
制度の改善として,入試制度の学部間統一化(本学の複雑な入試制度の改善),入試形態の多様化(英
語での入試及び海外での実施等),特別教育指導の実施可能性(専門科目等の補講など),英語による授
業科目設置,1年間等短期留学の受入れ(認定校留学の受入れ版)の実施,日本語別科設置などが検討
されている。
(教育研究支援職員)
【目的】
本学の外国人留学生の留学生活をより充実したものにするため,チューター制度を実施する。
【現状】
国際交流センターは,大学院留学生のうち,外国政府派遣やJICAによる派遣,交換留学生の研究
第3章 全学 -96-
/192
補助に当たる制度としてチューター制を導入している。また,一般留学生についての日本語等における
学習支援を増強させるために,2004 年度から3キャンパスにTAを1名ずつ配置している。
【長所】
学修上の支援に充分な効果を発揮している。
【問題点】
一部日本語能力が低い留学生にチューターをあてがう場合,一定の外国語によるコミュニケーション
能力が必要とされるため,必ずしも当該留学生と研究分野が近いチューターを確保できるとは限らない
状況がある。チューターという性格上,学修上の支援が主な業務であるが,それに止まらず,生活上の
アドバイスも含めた広範囲なサポートができないか考えている。また,学生ボランティアによる留学生
支援制度の確立を検討していきたい。
【改善方針】
要求に応じ,TAの増員を図る。また,本学大学院生の外国語能力の向上を図る。
(研究活動)
【目的】
教員の国際的な研究活動がよりスムースに行えるような環境を整備する。
【現状】
教員が国際学会で発表する場合に参加渡航費を助成する制度がある。
さらに,国際交流センターでは大学の国際交流事業の一層の振興を図るため,学校法人明治大学国際
交流基金を設定している。基金による事業は,次のとおりである。
(1) 外国人学識者の招請
(2) 教職員及び研究員の国際交流
(3) 学生の国際交流に対する助成
(4) 外国人留学生の研究・教育に対する助成
(5) 外国の大学及び学術機関との提携にかかわる事業
(6) その他第1条の目的達成のために必要な事業
2005 年度は 11 件の国際的共同研究活動に助成金を支給した。
【長所】
研究者の経済的負担の軽減に寄与している。国際交流基金事業により外国人の研究者を招聘して共同
研究を行える。
【問題点】
国際交流基金事業については,件数に限りがあり充分とはいえない。
【改善方針】
学会の形態に応じた柔軟・多様な補助制度に充実させるよう検討し,多様な国際的共同研究活動に対
応できるように制度の改善見直しを行う。具体的には,(1)国際交流基金事業及びスタッフ・セミナー
の拡充として本学国際交流基金の拡充,(2)地域研究の拡充として「国際地域教育研究所」
(仮称)の設
置についての検討及び各地域研究委員会のセンター内での位置づけの明確化と同活動の推進組織の強
化が挙げられる。特に,(ア)カナダ研究連続講座の充実,(イ)イギリス研究,フランス研究,ドイツ語
圏(ドイツ・オーストリア等)研究の推進,(ウ)アジア・アフリカ・イスラム圏等研究の可能性検討な
どが重要課題である。また,(3)国際協力の推進として,(ア)国際協力支援の推進と同委員会(一部教
務部長主管)への協力,(イ)開発支援のための教職員特別派遣制度の確立が検討されている。さらに,
(4)海外拠点の形成として,在留邦人の多い海外主要都市等にサテライトキャンパスの設置し,日本文
化に関するエクステンション事業の展開も課題となっている。
(施設設備)
【改善方針】
第3章 全学 -97-
/193
留学生用宿舎の整備として,(ア)留学生用宿舎の新規建設推進(和泉寮跡地に 100~150 名収容の宿
舎を建設),(イ)協定校留学生用宿舎の確保,(ウ)私費留学生用宿舎の確保が検討されている。そのな
かで民間宿舎を建物ごと明大生用宿舎として位置付けることなどが必要となる。また,「留学生住宅総
合補償」の充実(2005 年度から機関補償実施)や研究者用宿舎の整備する必要がある。
センター施設関連事項として,(1)センター分室(和泉,生田)の施設拡張及び整備,(2)招聘研究者
用研究室の配備(駿河台,和泉,生田の3地区ともに),さらに,中長期には多目的国際会館の建設も
視野に入れている。
(企業等との連携)
【目的】
本学の国際的な教育・研究活動を広く外部へ発信し,外部資金を導入,教育・研究の一助となすこと
を目的とする。
【現状】
主に外国人研究者招請プログラム,スタッフ・セミナー,各種の国際的地域研究(カナダ研究,英国
研究)を研究者及び市民が参加できる公開講座の形式で開催している。
【長所】
カナダ研究・英国研究については以下のように学外機関と連携している。
「カナダ研究連続講座」
:
学部間共通総合講座科目として設置。カナダ政府の財政的支援及び講師派遣の協力等
「英国研究UKNOW」
:
英国ブリティシュ・カウンシル協賛(講師派遣協力等)
また,正規科目として以下のように設置している。
「フランス研究講座」:
学部間共通総合講座として科目設置。政経学部が特殊講義CⅡ「現代のケベック」を開設。
【問題点】
地域研究科目は一部のみ単位化されるに止まっている。
【改善方針】
それらの講座の充実及び他地域研究への拡充。
(学生への経済的支援)
【目的】
快適な学生生活が送れるように経済的支援,人的支援を行う。
【現状】
本学では,明治大学の協定校留学生奨学金,私費留学生奨学金,私費留学生に対する授業料補助措置,
及び文部科学省学習奨励費等政府並びに民間団体の奨学金制度がある。協定校留学生用借上げ宿舎,私
費留学生用契約企業社員寮などを配備している。
【長所】
奨学金については「外国人留学生のためのガイドブック」,国際交流センターのホームページ,掲示
などによって常に最新の情報を提供している。
【問題点】
財政的な問題や,受給資格などの制約から,すべての留学生が受給できるものではない。
【改善方針】
留学生の増加に対して,奨学金制度と宿舎の拡充が求められるので,学生部と協力して一層の充実を
図る。具体的には,私費留学生に対する授業料補助制度の維持,私費留学生奨学金制度の拡充(明大第
1種 70 名(現行 64 名),文部科学省学習奨励費枠,民間団体奨学金)である。
第3章 全学 -98-
/194
(生活相談等)
【目的】
生活アドバイザー制度を導入し,外国人留学生並びに留学希望の日本人学生への助言等を行う。
【現状】
海外経験のある者を1名生活アドバイザーとして配置している。
【長所】
学修上,生活上の支援を行うことでアドバイザーである日本人学生のとっても異文化体験ができる。
【問題点】
アドバイザーの数が少ない。
【改善方針】
留学生受入れ体制・組織の整備なかで,(ア)専任教員による留学生の生活面サポート体制の整備,(イ)
和泉・生田地区での留学生支援体制の強化,特に専任職員の常駐,(ウ)学生相談体制の強化,特に中国
語・韓国語等による相談が可能なカウンセラーとの契約等が検討され,アドバイザーの研修と複数の要
員確保が課題となっている。
(管理運営)
【改善方針】
国際交流センター事務室機能の強化として,(ア)和泉,生田地区に常駐担当者を配置,(イ)留学生,
学術交流,日本語・日本学,国際戦略推進,プロジェクト推進並びに海外広報担当への再編と人員増強,
及びそれに伴うセンターないし研究所の設置が検討されている。また,国際交流センター組織等の再検
討として,本学の国際戦略活動の強化のまために明治大学国際戦略機構の整備が検討されている。
(事務組織と教学組織との関係)
【目的】
国際交流センターの業務を遂行するため,国際交流センター事務室を設置している。
【現状】
国際交流センターは,主に,学術交流部門として,研究者の受入れ及び海外派遣,国際共同研究,大
学等海外研究教育機関との学術・学生交流協定の締結及び管理など,留学生部門として,私費及び公費
による外国人留学生の受入れ,海外協定校との交換学生の受入れ及び派遣,協定校以外の大学でも本学
が認める大学に留学を希望する本学学生の認定校留学など,地域研究部門として,英独仏等語学研修,
学内外の奨学金支給,海外からの研究者・学生の宿舎の手配,及び途上国支援を中心とした国際協力支
援などの業務を担当している。これらのセンター業務を掌っているのが国際交流センター事務室である。
【長所】
センター単独の事務組織であることから有機的にリンクしており,機動的である。
【問題点】
業務が広範に渡ることからきめ細かなサービス,業務の遂行にやや手薄感がある。
【改善方針】
学生サービスから学術研究まで業務が広範囲にわたるので,分掌事項を整理し,必要に応じて新事務
組織をつくるべき。
(事務組織の役割)
【目的】
国際交流センターを円滑に運営するため,同センター事務室を置き,日常業務にあたる。
【現状】
第3章 全学 -99-
/195
国際交流センターには,役職者として所長(専任教員)1名のほか,副所長(専任教員)3名が配置
されている。国際交流センターには,本センターの業務に係わる事項を審議する機関として国際交流セ
ンター運営委員会がある。この委員会は各学部等本学の関係諸機関の代表者により構成されている。さ
らに,本センターの業務推進力の確保と専門的な意思の反映を目的として,その委員会の下部組織とし
て,学術交流専門部会,留学生専門部会,地域研究専門部会及び日本語・日本事情担当者会といった専
門部会を置く。留学生入学試験に関しては入学志願書類の受け付け処理を行うなど第一次窓口としての
業務を担っている。こうした業務を実際に行うのが事務組織としての国際交流センター事務室である。
【長所】
「国際」に関わる業務を一元的に掌握できる。
【問題点】
国際関係業務を一元的に把握できるが,業務が広範に渡るため,必ずしも機動的とはいえない。
【改善方針】
学生サービスから学術研究まで業務が広範囲にわたるので,分掌事項を整理し,必要に応じて新事務
組織をつくるべき。
(自己点検・評価)
【目的】
大学における教育研究水準の維持向上のため,その構成組織のひとつである国際交流センターの活動
について,不断の点検・評価に努める。
【現状】
国際交流センター執行部により,自己点検・評価制度が確立している。
【長所】
教育・研究に関わる年度計画書と同様に,センター業務の目標と達成度を計る指標となっている。
【問題点】
中長期的な目標設定になりがちなこと。
【改善方針】
到底達成が不可能であると思われる目標設定はしない。確実に本学の国際化に寄与する目標を掲げ,
ひとつひとつ達成していくこと。
(自己点検・評価と改善・改革システムの連結)
【目的】
問題点を真摯に受け止め改善に向けて努力する。
【現状】
自己点検評価により提起された,当面の課題である,受入れ留学生(私費,交換とも),派遣留学生
(認定校留学,協定校留学とも)の増加,協定校の増加,留学生寮,奨学金(受入れ,派遣とも)の充
実,地域研究の拡充などが着実に実を結んでいる。
【長所】
数値目標を掲げるなど具体的な評価が可能。
【問題点】
目標達成のための学内緒手続きが煩雑なため迅速な対応が不十分。
【改善方針】
学内手続きについては,できうる限りの省力化を図るが遺漏の無いように努める。
第3章 全学 -100-
/196
Ⅱ
学部
1-1.法学部
(1) 教育課程等
(学部・学科等の教育課程)
【目的・目標】
本学部は,本学部の創立理念である「権利・自由」「独立・自治」の精神をもとに現在の国際化,情
報化された社会においてこれに新しい位置づけをなし,「人間性,国際性に裏打ちされたリーガル・マ
インドの育成」を教育理念・目標とし,法律学科を設けている。つまり,国際社会のなかで人間の原点
を忘れずに,しかも法律を社会に生かしていくことができる人材の育成を目指している。
・学部・学科等の教育課程と理念・目的並びに学校教育法第 52 条,大学設置基準第 19 条との関連
【現状】
上記の目標を達成するため 2005 年度より実施のカリキュラムでは,法律関係科目として,
「演習科目
群」「法律必修科目群」「コース科目群」「自由選択科目群」の4つの科目群を配置し,それ以外に「総
合教養科目群」
「日本語科目群」
「情報科目群」
「外国語科目群」
「保健体育科目群」の5つの科目群を配
置している。これによって「大学は学術の中心として,広く知識を授けるとともに,深く専門の学芸を
教授研究し,知的,道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」という学校教育法第 52 条
及び「大学は当該大学,学部及び学科又は課程等の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を開
設し,体系的に教育課程を編成するものとする」。また「教育課程の編成に当たっては,大学は,学部
等の専攻に係る専門の学芸を教授するとともに,幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い,豊かな人
間性を涵養するよう適切に配慮しなければならない」とする大学設置基準第 19 条の要請に応えている。
【長所】
学生の進路に対応した 5 コース制を採用し,それぞれのコースにふさわしい科目を配置して,コース
の特色を出している。
【問題点】
新カリキュラムであるため年次ごとの不断の検証が必要である。
【問題点に対する改善方針】
年度ごとに「将来計画検討委員会」の分科会でカリキュラムの妥当性について学年の年次進行に応じ
て問題点を洗い出し,検証する。とりわけ法科大学院が設置されたことに伴い,従前の司法試験受験を
念頭に置いた実利的法学教育ではなく,多様な分野にわたる法学教育,基礎法教育,世界の比較文化教
育,教養教育,外国語教育,リテラシー教育及び身体コミュニケーション教育により,法について考え,
批判することのできる学生の養成を念頭においた教育のあり方を検討する。
・学部・学科等の理念・目的や教育目標との対応関係における,学士課程としてのカリキュラムの体系
性
【現状】
2005 年度より実施のカリキュラムでは,専門科目(法律関連科目)の前提として,「日本語科目群」
「情報科目群」
「外国語科目群」
「保健体育科目群」及び「演習科目群」のうちの「法律リテラシー」
「教
養基礎演習」など,その大半を1・2年次科目として配置し,法律関連科目のうち「現代法入門Ⅰ・Ⅱ」
「憲法(人権)Ⅰ・Ⅱ」
「民法(総則)Ⅰ・Ⅱ」
「刑法(総論)Ⅰ・Ⅱ」からなる「法律必修科目群」を
1・2年次配当の科目とした上で,「法曹コース科目群」「公共法務コース科目群」「ビジネスローコー
ス科目群」
「国際関係法コース科目群」
「法と情報コース科目群」のほか「自由選択科目群」の大部分を
3・4年次履修科目として配置し,「総合教養科目群」は総合科目として1年次から4年次のいずれに
おいても履修可能な科目として配置しており,学士課程としてのカリキュラムの体系性を保っている。
第3章 法学部 -1-
/197
【長所】
1年次に必修科目を配置することにより,学生の将来を見据えたコース選択・科目履修の自由度が図
られている。
【問題点】
必修科目の1年次集中について,学生の過度の負担になっていないか,統計的に追跡検証する必要が
ある。
【問題点に対する改善方針】
授業改善アンケートのほかに,必修科目全体を対象としてアンケート実施して,学生の負担感を評価
し,年度ごとに「将来計画検討委員会」の分科会でカリキュラムの妥当性について検証する。
・教育課程における基礎教育,倫理性を培う教育の位置づけ
【現状】
2005 年度から実施のカリキュラムでは,
「日本語科目群」
「外国語科目群」
「保健体育科目群」
「法律必
修科目群」を必修とするほか,「哲学Ⅰ・Ⅱ」「倫理学Ⅰ・Ⅱ」「ことばの文化Ⅰ・Ⅱ」「心理学Ⅰ・Ⅱ」
「社会思想史Ⅰ・Ⅱ」「生命と人間Ⅰ・Ⅱ」等の「総合教養科目群」に属する科目や「情報科目群」に
属する科目を自由選択科目としている。「法律リテラシー」「教養基礎演習」を必修としている。また,
それぞれの法律専門科目においても,各々の法律を学ぶ際に,人間行為の倫理性が問われることとなる。
【長所】
教員が少人数の学生を受け持ち,学生の幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い,豊かな人間性を
涵養する「法律リテラシー」及び「教養基礎演習」が必修とされることによって,人間の存在について
基本的で幅広い理解が可能なカリキュラムとなっている。
・「専攻に係る専門の学芸」を教授するための専門教育的授業科目と学部・学科等の理念・目的,学問
の体系性並びに学校教育法第 52 条との適合性
【現状】
2005 年度より実施のカリキュラムでは,
「法律必修科目群」すなわち「現代法入門Ⅰ・Ⅱ」
「憲法(人
権)Ⅰ・Ⅱ」
「民法(総則)Ⅰ・Ⅱ」
「刑法(総論)Ⅰ・Ⅱ」を1年次配当の必修科目(16 単位)とした
上で,「法律リテラシー」
「教養基礎演習」を必修とし,「法曹コース科目群」「公共法務コース科目群」
「ビジネスローコース科目群」
「国際関係法コース科目群」
「法と情報コース科目群」のうち各区分で定
められた単位を 44 単位以上選択必修科目として修得しなければならず,また,各コース科目群に「コ
ース専門法律科目」,「コース展開・先端科目」,「基礎法科目」「外国法科目」,「コース専門文化科目」
等を配置することにより,「人間性,国際性に裏打ちされたリーガル・マインドの育成」という教育理
念・目標に応え,学校教育法第 52 条に適合するようにしている。
【長所】
学生の進路に応じたコースごとに特色ある専門科目が履修可能になっている。
【問題点】
3年・4年次配当の専門科目で科目は設置されているが,まだ担当教員の配置ができていないものが
あると思われる。
【問題点に対する改善方針】
早急に各コースにおいてコース主任を中心に,担当教員がいない科目への教員の配置を決め,学部内,
学内手続きを進める。
・一般教養的授業科目の編成における「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い,豊かな人間性を涵
養」するための配慮の適切性
【現状】
2005 年度より実施のカリキュラムでは,「総合教養科目群」に「人文」系列(「哲学Ⅰ・Ⅱ」
「倫理学
Ⅰ・Ⅱ」「ことばと文化Ⅰ・Ⅱ」「心理学Ⅰ・Ⅱ」
「芸術Ⅰ・Ⅱ」の各科目),「社会」系列(「政治学Ⅰ・
第3章 法学部 -2-
/198
Ⅱ」
「経済学Ⅰ・Ⅱ」
「社会学Ⅰ・Ⅱ」
「歴史学Ⅰ・Ⅱ」
「社会思想史Ⅰ・Ⅱ」)
,
「自然」系列(「物質と宇
宙Ⅰ・Ⅱ」
「生命と人間Ⅰ・Ⅱ」
「数理と情報Ⅰ・Ⅱ」
「エネルギーと環境Ⅰ・Ⅱ」
「科学と技術の歴史Ⅰ・
Ⅱ」の各科目)及び共通講座系列(「自由講座」
「総合講座」の各科目)を配置し,12 単位を選択必修と
してするほか,「法律リテラシー」「教養基礎演習」を必修としていることにより,「幅広く深い教養及
び総合的な判断力を培い,豊かな人間性を涵養」するための配慮がなされている。
【長所】
「法律リテラシー」「教養基礎演習」を必修とすることにより「幅広く深い教養及び総合的な判断力
を培い,豊かな人間性を涵養」するための配慮がなされている。
【問題点】
新カリキュラムに対する年次ごとの検証が必要である。
【問題点に対する改善方針】
授業改善アンケートの実施等を通じて問題点を洗い出し,「将来計画検討委員会」の分科会で年次ご
とにカリキュラムの妥当性を検証する。
・外国語科目の編成における学部・学科等の理念・目的の実現への配慮と「国際化等の進展に適切に対
応するため,外国語能力の育成」のための措置の適切性
【現状】
2005 年度より実施のカリキュラムでは,English,ドイツ語,フランス語,中国語,スペイン語,ロ
シア語,及び日本語(留学生)のうちからいずれか2言語を選択し,合計 16 単位を必修としている。会
話を中心とした学部間共通外国語科目も 8 単位を限度として自由選択科目として認定されうる。従来,
中国語について,学生の要望に十分応えられない状態であった。アジアにおける中国文化の重要性を考
慮し,2002 年度から中国語を5クラスに増設した。なお,2004 年度以降,前年まで 4 年間の希望数の
割合に合わせてクラス編成を行うことを決定した。その結果,2004 年度以降は,ドイツ語8クラス,フ
ランス語8クラス,中国語7クラス,スペイン語3クラスとしている。
また,専門科目として「英語で学ぶ日本法プログラム」の一環として Introduction to ModernLaw
Ⅰ・Ⅱ,Business Law in EnglishⅠ・Ⅱを設置し,Native Speaker が講義を行っている。さらに
オーストラリアの西シドニー大学法律・ビジネス学部と教育・研究交流協定を締結し,同学部との1年
単位の学生の交換留学のほか,夏期休暇中に4週間の短期研修への参加も可能となっている。
【長所】
「英語で学ぶ日本法プログラム」で学生に日本法の基礎を英語で学ばせ,日本法を英語で外国に紹介
し,将来自らの職務上でその専門知識を活用できるような能力を身につけることが可能となる。西シド
ニー大学法律・ビジネス学部への短期研修及び交換留学を通じて,外国ロースクールへの進学・外国の
法曹資格の取得への足がかりとなりうる。
【問題点】
外国語クラスの編成については,学生の動向によってクラス数が左右されるので,年次ごとの適切な
クラス編成及び教員の確保が必要となる。また,同一外国語・同一クラスの中でも,学生により外国語
能力に甚だしいばらつきが見られるので,能力別のクラス編成も考えなければならない。西シドニー大
学法律・ビジネス学部への短期研修及び交換留学は 2006 年度より実施されるため,その実績を検証す
る必要がある。
【問題点に対する改善方針】
能力別クラス編成を可能にするため各種検定試験が活用できないか,財政面も含めて「将来構想委員
会」(仮称)の分科会で検討する。
西シドニー大学法律・ビジネス学部への短期研修及び交換留学については 2006 年度より,
「国際交流・
留学支援委員会」(仮称)の分科会等の適切な機関がその実績を検証し,問題点の洗い出しを行う。
・教育課程の開設授業科目,卒業所要総単位に占める専門教育的授業科目・一般教養的授業科目・外国
語科目等の量的配分とその適切性,妥当性
第3章 法学部 -3-
/199
【現状】
総履修可能単位 170 単位のうち,卒業要件として 128 単位の修得が必要であり,そのうち専門教育的
科目(「法律必修科目群」科目 16 単位,各「コース科目群」科目 44 単位,「演習科目群」科目 4 単位)
計 64 単位,
「日本語科目群」科目4単位,
「外国語科目群」科目 16 単位,
「総合教養科目群」科目 12 単
位,「保健体育科目群」科目2単位が必修とされている。専門教育的科目と教養教育的科目との単位の
配分は適切になされている。
【問題点】
早期卒業の要件が策定されていない。
【問題点に対する改善方針】
本年中に早期卒業の要件を執行部で検討し,教授会で決定する。
・基礎教育と教養教育の実施・運営のための責任体制の確立とその実践状況
【現状】
講座制度が存置されているが,講座に属しない科目についてはコース主任の下に設置される会議で検
討されることもあり,教養教育については,教養科目委員会,専門科目については専門科目委員会の審
議を経た上で最終的には教授会で決定されている。
【問題点】
和泉校舎と駿河台校舎に分断されているため,基礎教育・教養教育及び専門教育の一貫した実施・運
営が危惧されることもある。講座と課目群,各コース制の関連が曖昧である。
【問題点に対する改善方針】
駿河台校舎または和泉校舎での4年間一貫教育の実現に向けて,検討に入る。講座と課目群,各コー
ス制の関連をより明確にするため,カリキュラム運営委員会等で検討する。
・グローバル化時代に対応させた教育,倫理性を培う教育,コミュニケーション能力等のスキルを涵養
するための教育を実践している場合における,そうした教育の教養教育上の位置づけ
【現状】
2005 年度よりの新カリキュラムでは,
「外国語科目群」16 単位の必修のほか,
「情報科目群」
(8単位
自由選択科目)の設置,
「法と情報コース科目群」
「国際関係法コース科目群」の科目で国際化・情報化
に対応し,さらに学部間共通外国語科目も8単位を限度として自由選択科目として認定することができ
る。また,専門科目として「英語で学ぶ日本法プログラム」の一環として Introduction to Modern Law
Ⅰ・Ⅱ,Business Law in English Ⅰ・Ⅱを設置し,Native Speaker が講義を行っている。さらに,
オーストラリアの西シドニー大学法律・ビジネス学部と教育・研究交流協定を締結し,同学部との1年
単位の学生の交換留学のほか,夏期休暇中に4週間の短期研修への参加を通じてグローバル化時代に対
応させた教育,倫理性を培う教育,コミュニケーション能力等のスキルの涵養も可能となっている。
【問題点】
西シドニー大学法律・ビジネス学部への短期研修及び交換留学については 2006 年度より実施される
ため,その実績を検証する必要がある。その他のアジアの諸国ならびヨーロッパ諸国の大学の法学部と
の提携も検討する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
西シドニー大学法律・ビジネス学部への短期研修及び交換留学については「将来計画検討」,または
「国際交流・留学支援委員会」(仮称)の分科会等の適切な機関が毎年実績を検証する。その他のアジア
の諸国ならびヨーロッパ諸国の大学の法学部との提携については,執行部でその可能性を探り,国際交
流センターと連携をとりながらできるものから実現に向けて努力する。
・起業家的能力を涵養するための教育を実践している場合における,そうした教育の教育課程上の位置
づけ
【現状】
第3章 法学部 -4-
/200
2005 年度から実施のカリキュラムでは「ビジネスローコース」の設置科目で対応することになってい
る。
【長所】
「ビジネスローコース」では知的財産法,会社法,経済法などの起業家的能力の涵養のための科目が
用意されている。
・学生の心身の健康の保持・増進のための教育的配慮の状況
【現状】
年1回の義務的健康診断の実施。なお,保健体育科目群 2 単位において,学生の心身の健康の保持・
増進を教育的に配慮しながら授業が行われている。
心のケアについては,教養科目担当教員と専門科目担当教員の名から各1名の学生相談室委員を選任
し,学生を適切に指導している。特に問題がある場合には執行部と学生相談室が密接に連携しながら適
切に対処している。
【長所】
心身に特に問題のある学生の存在を執行部が早期に把握し,対処が可能となりうる。
【問題点】
相談件数の増加,内容の多様化に対応できるよう,学生相談室の拡充が求められる。
【問題点に対する改善方針】
学部としては,学生相談室との連携をより密にし,協力していく。
(カリキュラムにおける高・大の接続)
【目的・目標】
学生の後期中等教育から高等教育への移行を円滑にするため,付属校をはじめとする高校への出張授
業等に継続的に対応する。
・学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行するために必要な導入教育の実施状況
【現状】
付属高校の生徒に対して年に 1 回専門科目の試聴を認めている。高大連携の一環として,高校サイド
から課外講座等の要望がある場合には,講師を可能なかぎり派遣するよう努めている。付属明治高校の
生徒に対しては,入学前の導入教育として模擬法廷での研修を行っている。スポーツ推薦入学者につい
ては,入学前に法学関連書物の講読及びレポート提出を課し,入学後においてはTAによるケアが可能
である。全入学生に対する入学後の導入教育として 2005 年度から実施のカリキュラムで「法律リテラ
シー」「教養基礎演習」が必修科目とされている。
【長所】
フレッシュマンゼミナールとしての少人数による「法律リテラシー」「教養基礎演習」の必修化で学
生自身による早期のコース選択・進路決定が可能となる。
【問題点】
付属高校生徒の入学前の導入教育として,模擬法廷での研修を,明治高校だけでなく,中野高校,中
野八王子高校にも拡充する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
明治高校における模擬法廷での研修だけでなく,法学検定4級試験の受験指導などを中野高校,中野
八王子高校に拡充する。
(カリキュラムと国家試験)
【目的・目標】
法科大学院の設立に伴い現行司法試験の受験を目指す学生は減少傾向にあるが,法曹専門家の養成の
第3章 法学部 -5-
/201
ために法科大学院進学者を対象とする法曹コース,国家公務員等志望する学生のための公共法務コース
を設置し,学生のニーズに対応している。
・国家試験につながりのあるカリキュラムを持つ学部・学科における,受験率・合格者数・合格率
【現状】
現行の司法試験については,当面,1・2年生対象の「基礎法学研究室」及びその上級研究室として
の「法科特別研究室」
「法学研究室」
「司法研究室」
「駿河台研究室」
「現代法研究室」を設置して本学卒
業生及び法学部専任教員による指導を行っている。さらに,辰巳法律研究所と提携した司法試験受験講
座を実施し,それと併行して司法試験受験対策基礎指導講座,司法試験論文練習講座も充実させている。
新司法試験に向けて法科大学院既習者コース進学コースとして「法曹コース」(定員制)を設けて対応
する。国家公務員試験等については「公共法務コース」を設けて対応している。司法書士試験について
は「登記・供託法」を「ビジネスローコース」のコース展開・先端科目として位置づけている。平成 16
年度の司法試験については,択一式(短答式)試験出願者数 2,224 名(合格者 297 名),最終合格者数
28 名であり,合格率は 1.26%である。
【長所】
法科大学院既習者コースへの進学のために,約 200 名の「法曹コース」が設置されたことにより,法
科大学院との教育・研究ネットワーク形成も可能となる。
【問題点】
2006 年度から法科大学院修了者を対象とする新司法試験が開始され,現行(旧)司法試験の合格者の
割合が 2010 年に向けて漸減していく中で法科大学院修了者の新司法試験合格に至るまでの処遇につい
て明確なビジョンが提示されていない。
【問題点に対する改善方針】
各種国家試験の合格率上昇に向けて環境整備を図る。たとえば,法科大学院修了者は修了と同時に新
司法試験合格に至るまでの学習の場・自習の十分なスペースが大学内に確保されていないので,法科大
学院と連携してこれを確保すべく検討する。また,税理士試験・弁理士試験・司法書士試験の受験生を
ケアする機関を関係学部共同で設置できないか,大学全体における研究指導室のセンター化構想と連動
しながら,関係学部と協議を開始する。
(インターンシップ,ボランティア)
【目的・目標】
「人間性,国際性に裏打ちされたリーガル・マインドの育成」という教育理念・目標を実現するため,
つまり国際社会における人間のあり方についての深い理解を涵養し,しかも法律を職業活動などの社会
活動に生かしていくことができる人材の育成を目指しているが,社会実習の観点からインターンシップ
やボランティアのあり方について検討する必要がある。
・インターンシップを導入している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
学部としてはインターンシップを導入していない。
【問題点】
定員 900 名のうち法曹コース選択者以外の大部分(約 700 名)の学生は企業等に就職している現状に鑑
み早急にインターンシップを導入する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
2006 年度よりインターンシップの導入に向け,
「学生・キャリア支援委員会」
(仮称)による検討及び
環境整備に着手する。
・ボランティア活動を単位認定している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
単位認定はしていないが,特に秀でた者は学部長表彰の対象としている。
第3章 法学部 -6-
/202
【問題点】
ボランティア活動を人間性理解の一環として単位認定できないか検討する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
ボランティア活動を人間性理解の一環として単位認定できないか「将来計画検討」の分科会で検討す
る。
(履修科目の区分)
【目的・目標】
「人間性,国際性に裏打ちされたリーガル・マインドの育成」を教育理念・目標とし,そのために必
要な必修科目・選択科目の量的な配分の確保を目標としている。
・カリキュラム編成における,必修・選択の量的配分の適切性,妥当性
【現状】
2005 年度より実施のカリキュラムでは卒業要件 128 単位のうち必修科目 42 単位,選択必修科目 56 単
位,自由選択科目 30 単位の割合で配分されている。
【長所】
コース制を採用しているが,多様な選択科目が設置され,学生の自立性を尊重した教育が可能となっ
ている。
(授業形態と単位の関係)
【目的・目標】
履修人員を含めた学生の履修実体に配慮した適切な授業配置を行い,単位計算もこれに見合った形に
なるように継続的に検討していく。
・各授業科目の特徴・内容や履修形態との関係における,その各々の授業科目の単位計算方法の妥当性
【現状】
かつて演習科目は2単位で計算されていたが,学生及び教員の労力・教育効果等から現在では4単位
として算定されている。セメスター制への移行の過渡的措置として,従来の通年科目が半期履修制の導
入にともなって学則上前期Ⅰ 2単位,後期Ⅱ 2単位として位置づけられ,段階的履修制度が導入さ
れている。
【問題点】
完全セメスター制が導入されるまで段階的履修では前期Ⅰを単位修得できない学生は1年を無駄に
する可能性がある。
【問題点に対する改善方針】
完全セメスター制の導入には全学的な対応が必要とされるが,本学部としても実現についてカリキュ
ラム運営委員会等で具体的な検討に入る。
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
「人間性,国際性に裏打ちされたリーガル・マインドの育成」のため,国内外の他大学等との単位互
換性について拡充する方向で検討すべきである。
・国内外の大学等と単位互換を行っている大学にあっては,実施している単位互換方法の適切性
【現状】
外国の協定校または学生が自ら留学先を探し,学部が留学を認めた認定校への留学について,本学部
設置科目と同一科目については現地での履修時間を勘案して本学部の科目として認定するほか,本学部
設置科目と同一科目名でない場合であっても,現地での授業内容や時間数をシラバス等で確認できる場
合には,関連する教員の意見を聞いた上で教授会に諮り,海外留学関係科目Ⅰ~Ⅲとして認定している。
第3章 法学部 -7-
/203
【問題点】
外国の協定校または認定校への留学での履修科目の認定単位数,すなわち海外留学関係科目数の増大
が求められる。
【問題点に対する改善方針】
学則上単位認定の制限が 20 単位から 60 単位に緩和されたことに伴い,
「将来計画検討」,または「国
際交流・留学支援委員会」(仮称)の分科会で海外留学関係科目数の増大を検討する。
・大学以外の教育施設等での学修や入学前の既修得単位を単位認定している大学・学部等にあっては,
実施している単位認定方法の適切性
【現状】
短期大学からの編入学に際して既習単位を認定しているほか,特にない。
【問題点】
付属高校での一定の課外授業(例えば法学検定4級受験講座で合格した場合)の取扱いについて,高
大連携の観点から検討する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
高大連携の観点から付属高校での一定の課外授業(例えば法学検定4級受験講座で合格した場合)を
単位認定できないか「将来計画検討」の分科会で検討する。
・卒業所要総単位中,自大学・学部・学科等による認定単位数の割合
【現状】
2005 年度実施のカリキュラムでは 128 単位中,60 単位以内について本学は,他学部履修を認めてい
る。
【長所】
設置科目への学生のニーズの多様化に対応できている。
【問題点】
ダブルディグリー取得のためのコース等を検討する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
学部間の科目共通化だけでなく,新たな単位認定の形態として科目のデジタル・コンテンツ化を進め
ながら,本学において進行している「ユビキタスカレッジ」構想を視野に入れて検討する。
・海外の大学との学生交流協定の締結状況とそのカリキュラム上の位置づけ
【現状】
ヨーク大学(カナダ),アルバータ大学(カナダ),ヴィクトリア大学(カナダ)
,オレゴン大学(ア
メリカ),アイオワ大学(アメリカ),サザン・イリノイ大学カーボンデール校(アメリカ)
,アデレー
ド大学(オーストラリア),西シドニー大学(オーストラリア),リンシェーピン大学(スエーデン),
シェフィールド大学(イギリス),梨花女子大学(韓国),高麗大学(韓国),中国人民大学(中国)
,国
立台湾大学(台湾),ワィカト大学(ニュージーランド),トゥールース第1社会科学大学(フランス),
フリードリヒ・シラー・イェーナ大学(ドイツ)と協定校となっており,出願時3年次以上で本学成績
の平均点が出願時良以上のものについて,留学関係科目 12 単位を含め 20 単位まで本学の単位として認
定している。認定校については,出発時2年次以上で在学1か年につき 30 単位以上取得のものについ
て,協定校留学と同一の単位認定をしている。2005 年度では4名が海外から帰国し,1名が協定校留学
に出発した。
【問題点】
わが国の法律と関係の深いドイツの大学との協定締結を充実すべきであり,また学則に則り,60 単位
まで単位認定の実施を早急に教授会で決定すべきである。
第3章 法学部 -8-
/204
【問題点に対する改善方針】
ドイツの大学との協定締結の充実については国際交流委員会に委員を通じて働きかける。60 単位まで
の単位認定については「将来計画検討」で検討の上,教授会に諮る。
・発展途上国に対する教育支援を行っている場合における,そうした支援の適切性
【現状】
個別の教員が発展途上国の法整備・法学教育支援を行っている。
【問題点】
組織的に教育支援をできるだけの人的・経済的基盤が整っていない。
【問題点に対する改善方針】
発展途上国から支援要請があった場合には,大学全体に関わることなので,国際交流センター等の関
係部署と協議する。
(開設授業科目における専・兼比率等)
【目的・目標】
学部の基幹科目及びゼミナール形式の授業については法科大学院所属の教員を含めた専任教員が担
当することが望ましい。兼任教員の比率が高い基幹科目や教養系科目についてこの方針を一貫して推し
進めることが必要である。
・全授業科目中,専任教員が担当する授業科目とその割合
・兼任教員等の教育課程への関与の状況
【現状】
駿河台校舎における演習科目 154 コマ中専任教員担当が 68 コマであり,44.2%,講義科目 53 コマ
57.0%を専任教員が担当している。和泉校舎を含めると 642 コマ中 281 コマを専任教員が担当し,その
割合は 43.8%である。専任教員の担当科目以外の科目は,兼任教員が担当している。
【問題点】
他学部と比べて兼任教員の数が圧倒的に多く,極少数の履修者しかいない場合でも開講している例が
見られる。2004 年の法科大学院への教員移籍にともない専任教員の担当割合が減少している。
【問題点に対する改善方針】
少人数授業の開講基準を策定し,兼任教員の削減を図り,法科大学院への移籍教員の補充等を早急に
実現する。スチューデントレシオについては「年度計画書」に基づいて改善を図る。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
「人間性,国際性に裏打ちされたリーガル・マインドの育成」の観点から多様な学生の受け入れが必
要であり,そのための環境整備を整備する。
・社会人学生,外国人留学生,帰国生徒に対する教育課程編成上,教育指導上の配慮
【現状】
社会人,外国人留学生,帰国生に対する特別入試を実施し,TAと研究者養成型助手などによるアシ
スタント制度を実施している。
【問題点】
TA及び研究者養成助手の数が不足している。
【問題点に対する改善方針】
大学院法学研究科と協議し,TA及び研究者養成助手の養成・確保に努める。
第3章 法学部 -9-
/205
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
高齢者を中心とする生涯教育とキャリアアップを中心とするリカレント教育の双方を視野に入れて
検討する必要がある。
・生涯学習への対応とそのための措置の適切性,妥当性
【現状】
科目等履修生制度の運用の他,リバティ・アカデミー,情報科学センター,社会科学研究所の講演会
等への講師派遣を通じて生涯教育の一翼を担っている。法学部に通信教育課程を置くことにより,いつ
どこからでもアクセス(学習)できる「ユビキタス」教育が可能か検討をしている。
【問題点】
本大学の立地条件,とりわけアカデミーコモンを活用して,法学部関係自治体や地域住民等と協力し
て,市民の関心の高いテーマについて十分な知識を提供する,社会に開かれた「地域セミナー」
(仮称)
などの実施を検討する。
【問題点に対する改善方針】
生涯学習への対応については,リバティ・アカデミー運営委員及び学部執行部で検討をする。リバテ
ィ・アカデミーから要請があれば,適切な人材を派遣するよう努力する。また全入学者を対象とする語
学検定試験の実施などでリバティ・アカデミーを利用できないか執行部で検討する。ユビキタス構想に
ついては他学部と連携して,実現に向けて環境整備を働きかける。二部の募集停止に伴い,6・7時限
を利用したセミナーなどを「将来計画検討」の分科会で検討する。また,講義のデジタルコンテンツ化
を促進するよう教員に働きかける。
(正課外教育)
【目的・目標】
法学会誌における懸賞論文や学部長杯を関した催し物など多角的な課外教育のあり方を検討する。
・正課外教育の充実度
【現状】
法学部学生と法学部全教員で組織する研究・親睦団体である「法学会」が主催して,課外において,
裁判傍聴・講演会・刑務所見学・法律討論会・無料法律相談等を実施し,理論だけでなく実務的観点か
らの法学教育の一翼を担っている。また昨年度まで司法試験受験対策基礎講座を行っていたが,法科大
学院の設立に伴い,本年度は行っていない。
【問題点】
司法試験以外の各種資格試験受験のための講座を検討する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
司法試験以外の各種資格格試験受験のための講座について,学生にアンケートを実施し,設置の必要
性について検討する。
(2) 教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
教育効果について授業改善アンケートを実施し,競争科目については教員間で成績評価のばらつきが
生じないように配慮し,GPAを統計的に利用することで教育効果の測定が有効に機能しているか検討
する。
・教育上の効果を測定するための方法の適切性
【現状】
教育効果を高めるためには,常に授業の方法を改善する努力とともに教育効果の測定方法の確立も必
要である。従来,教員一人一人の判断に委ねていた授業の進め方や成績評価について,教員間の情報交
第3章 法学部 -10-
/206
換を進めながら,上記の授業評価の資料を利用しながら学部全体で議論し,効率的でわかりやすい授業
方法の開発と客観的な成績評価基準を確立することが求められる。その前提として学生による授業改善
アンケートを全教員が半期ごとに少なくとも1科目実施するようにしている。また,2005 年度よりGP
A制度を導入し,よりきめこまやかな成績の評価が可能とされた。
【問題点】
授業改善アンケートについて結果は実施した担当教員に個別的に通知されるものの,兼任講師を含め
た実施状況全般についての報告が未だなされていない。
【問題点に対する改善方針】
学部単位での実施状況について教務部委員会や教員研修(FD)委員会などの関係部署と連携して調
査の上,教授会に報告し,教育上の効果を測定するための方法を適切なものとする。
・教育効果や目標達成度及びそれらの測定方法に対する教員間の合意の確立状況
【現状】
2005 年度より実施のカリキュラムで必修の「法律リテラシー」及び「教養基礎演習」については,複
数の担当教員間で教育効果・目標及びそれらの測定方法に対する齟齬が生じないように,会合を年度当
初及び年度内も必要に応じて開いている。
【問題点】
その他の必修の講義科目で担当者が複数いる場合に成績評価の偏りが顕著な例がある。
【問題点に対する改善方針】
成績評価の偏りが顕著な場合には執行部で検討の上,担当教員間で話し合うよう学部長が担当教員に
働きかける。
・教育効果を測定するシステム全体の機能的有効性を検証する仕組みの導入状況
【現状】
5名の教授会員により構成される「授業改善の推進プランに対応する作業部会」を設置し,検証する
ことになっている。
【問題点】
作業部会が定期的に開かれていない。
【問題点に対する改善方針】
半期ごとに行われる学生による授業改善アンケートの実施後に「学生・キャリア支援委員会」を設置
し,授業改善の推進プランに対応する作業部会を定期的に開催する。
・卒業生の進路状況
【現状】
卒業生の進路状況:2004 年度のデータでは,金融 22.3%,教育公務 17.3%,運輸・旅行・広告・観光・
サービス業 15.4%,製造業 14.9%,商事・卸・小売業 14.2%,新聞・出版・放送・情報・通信 8.7%,建
設業・不動産業 7.0%である。大学全体の就職委員会に委員を派遣し,就職事務部作成の就職概況にもと
づき,就職動向を把握している。昨年度全国の法科大学院に約 200 名が進学している。
【長所】
法学教育を生かせる分野への就職・進学が可能になっている。
【問題点】
大学院法学研究科に進学し研究者を目指す学生の確保が急務である。
【問題点に対する改善方針】
本学法学研究科と協議し,学部ガイダンスの充実等で研究者となる進路の啓発に努める。
第3章 法学部 -11-
/207
・教育効果の測定方法を開発する仕組みの導入状況
【現状】
5名の教授会員により構成される「授業改善の推進プランに対応する作業部会」を設置し,そこで開
発することになっている。
【問題点】
作業部会が定期的に開かれていない。
【問題点に対する改善方針】
半期ごとに行われる学生による授業改善アンケートの実施後に上記作業部会を定期的に開催する。
・教育効果の測定方法の有効性を検証する仕組みの導入状況
・教育効果の測定結果を基礎に,教育改善を行う仕組みの導入状況
【現状】
前期・後期それぞれ期末試験を実施している他,授業改善アンケートを各教員が少なくとも1科目実
施している。
【長所】
学生の現状把握が以前より改善している。
【問題点】
授業改善アンケートの結果を担当教員に通知するだけでなく,プライバシーに配慮しつつ公表する必
要がある。
【問題点に対する改善方針】
本学で推進されている教育開発・支援センター(仮称)と連携するなどして,授業改善アンケートの
結果の公表など教育効果の測定方法の有効性の検証の仕組みの改善を「授業改善の推進プランに対応す
る作業部会」において検討する。この作業部会は少なくとも年2回開催する。
・国際的,国内的に注目され評価されるような人材の輩出状況
【現状】
故布施辰治弁護士が大韓民国建国勲章を受章した。
【問題点】
独立自治・権利自由の建学の精神を生かした国際性豊かな人材の輩出に努める必要性がある。
【問題点に対する改善方針】
独立自治・権利自由の建学の精神を生かした国際性豊かな人材の輩出のため国際交流の範囲を拡大す
る方向で執行部または「国際交流・留学支援委員会」(仮称)の分科会で検討する。
(厳格な成績評価の仕組み)
【目的・目標】
授業改善アンケートの実施を通じ,教育内容,教員連携,教育改善を行い,厳正な成績評価の仕組み
が構築されるように努める。
・履修科目登録の上限設定とその運用の適切性
【現状】
法学部では,授業内容の段階的履修をスムーズに進め,卒業に必要な単位を年次毎に円滑に修得して
いくために授業科目の年次履修制限単位制を実施している。2005 年度実施のカリキュラムでは1年次
44 単位,2年次 46 単位,3年次 40 単位,4年次 40 単位を上限として設定している。
【問題点】
第3章 法学部 -12-
/208
3年次卒業単位を超える 130 単位の履修が可能であるが,3 年卒業の要件が定められていない。
【問題点に対する改善方針】
優秀な学生の早期卒業を可能にするため,3 年卒業の要件を 2006 年度中に策定し,教授会で決定する。
・成績評価法,成績評価基準の適切性
【現状】
半期ごとに定期試験期間を設け,定期試験またはこれに代わるレポート提出を実施している。成績評
価に関しては,現状では,各科目の担当教員の主観的な判断に任されている。各科目間及び同一科目間
で評価が異なることは好ましいことではなく,何らかの客観的な評価基準が必要となるが,それには大
変な困難が伴う。今後は,科目ごとの評価基準の設定が必要となる。このことは,法科大学院が設立さ
れ,入学資格として学部時代の成績が考慮されているが,そのこととの関連でも重要な検討課題となる
問題である。これには,外部からの評価に十分に耐えられるような成績評価の基準を設定することが重
要になるであろう。本学部では,今からある程度大まかな基準であっても,検討していく。なお,2004
年4月に施行された学則では,5段階評価を導入し,「GPA制度」を実施する前提が整った。本学部
としては 2005 年度実施のカリキュラムから「GPA制度」に移行している。
【長所】
GPA制度の導入により成績評価の客観化が可能となる。
【問題点】
現行のGPA制度は,A,B,C,D,Fの5段階評価であるが,他大学で行われているS,A,B,
C,Dの5段階評価との関係で本学の学生が不利益を受ける可能性がある。
【問題点に対する改善方針】
他大学で行われているS,A,B,C,Dの5段階評価のGPA制度に改める。
・厳格な成績評価を行う仕組みの導入状況
【現状】
学生による授業改善アンケートは全学共通の用紙で半期に一度全教員を対象に少なくとも1講義科
目について行われることになっている。授業改善アンケートの結果は教務課で集計され,各教員に通知
されるが,担当教員以外に公表されることはない。法学部では 2005 年度入学者からGPA制度を導入
し,A(100-90 点)=GP4,B(89-80 点)=GP3,C(79-70 点)=GP2,D(69-60 点)
=GP1,F(59 点以下)=GP0,T(未受験)=GP0の全学統一基準によっている。原則として,
定期試験の答案用紙は事務室に保管し,学生が成績評価に対して質問や異議がある場合には担当教員が
その学生に答案用紙を提示して応答することができるような体制がとられている。
【問題点】
現行のGPA制度は,A,B,C,D,Fの5段階評価であるが,他大学で行われているS,A,B,
C,Dの5段階評価との関係で明治大学の学生が不利益を受ける可能性がある。
【問題点に対する改善方針】
他大学で行われているS,A,B,C,Dの5段階評価のGPA制度に改める。
・各年次及び卒業時の学生の質を検証・確保するための方途の適切性
【現状】
半期ごとの定期試験及びこれに代わるレポート提出が行われる他,外国語や演習科目においては出席
による平常点評価が行われることがある。学生の質を確保・検証するための方途として,外国語の各種
検定試験や,法学検定試験等各種検定試験の受験を奨励している。
【問題点】
各種検定試験の受験は学生の任意によるものであり,学部学生の全体的な質の検証につながらない。
第3章 法学部 -13-
/209
【問題点に対する改善方針】
学部学生の全員が各種検定試験を受験するような制度化をカリキュラム運営委員会等で検討する。
・学生の学習意欲を刺激する仕組みの導入状況
【現状】
各学年の成績優秀者に学部長表彰を行っている。
【長所】
新入生のガイダンスで行う学部長表彰は新入生の学習意欲を増大する上で効果が大きい。
(履修指導)
【目的・目標】
新入生に対する法律リテラシー,教養基礎演習を通じた履修指導のほか各コースごとの履修モデルを
作成し,履修指導にあたる。スポーツ推薦入学者や留学生に対してはTAによる履修指導を行っている
が,一般選抜入学者についてもTAによる履修指導を拡充する方向で検討する必要がある。
・学生に対する履修指導の適切性
【現状】
まず,現在,新入生に対しては,オリエンテーションを設けて,執行部及びコース主任によるカリキ
ュラム等の説明や事務職員による説明がされている。スポーツ推薦などによる特別入学者に対してはT
Aと研究者養成型助手(法学部学習支援機構)によるオフィスアワーを設け履修相談を常時行っている。
【問題点】
個々の学生に対する履修指導並びにコースごとの内容・特色の案内が必ずしも十分とはいえない。ま
た,TAの数が足りない。
【問題点に対する改善方針】
3年次コース開始時(2007 年度)からより詳細なコースガイダンスをおこなうよう調整する。法学研
究科と共同でTAのなり手の養成に努める。また,SA(スチューデント・アシスタント)の導入につ
いて,「年度計画」によって検討していく。
・オフィスアワーの制度化の状況
【現状】
現在,制度的なものとしては導入していない。TA・研究者養成型助手によるアシスタント業務で補
完している。
【問題点】
早急なオフィスアワー制度の導入の検討が必要であるが,導入に至るまでの間,TA・研究者養成型
助手による学習支援を一般の学生に拡充することが求められる。
【問題点に対する改善方針】
将来計画検討委員会で早急なオフィスアワー制度の導入について検討し,TA・研究者養成型助手に
よる学習支援の拡充を図る。
・留年者に対する教育上の配慮措置の適切性
【現状】
学年進行管理の徹底化の検討段階に止まっている。
【問題点】
学年進行管理の徹底化を早期に実現する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
学年進行管理の徹底化がなされるまでの間は,TA・研究者養成型助手によるアシスタントの充実・
第3章 法学部 -14-
/210
活用を図る。また,6時限目及び7時限目を再履修者のために有効活用することに配慮する。
・学習支援(アカデミック・ガイダンス)を恒常的に行うアドバイザー制度の導入状況
【現状】
TAと研究者養成型助手などのアシスタント,並びに教職員が一丸となって,主としてスポーツ学生
と留学生に対する学習支援室を設け,学習支援を実施している。
【問題点】
TAと研究者養成型助手による学習支援を一般の学生に拡充する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
TAと研究者養成型助手による学習支援を一般の学生に拡充できるよう「年度計画書」に基づいて改
善していく。
・科目等履修生,聴講生等に対する教育指導上の配慮の適切性
【現状】
履修に堪えうるか教務主任が面接をした上で,聴講等を許可している。
【問題点】
申請に対する許可を問題にするだけでなく,事前に履修申請者と授業担当者との相談の機会を設ける
必要がある。
【問題点に対する改善方針】
科目等履修申請者の面接に授業担当者を加える方向で検討する。
(教育改善への組織的な取組み)
【目的・目標】
「人間性,国際性に裏打ちされたリーガル・マインドの育成」という教育理念・目標の実現に向け学
部カリキュラムの不断の検討を行うとともに,授業内容をシラバスで明示し,授業改善アンケートの実
施を通じて学生と教員の信頼関係を構築する。
・学生の学修の活性化と教員の教育指導方法の改善を促進するための措置とその有効性
【現状】
学生による授業改善アンケートを全教員が半期ごとに少なくとも講義科目1科目実施するようにし
ている。また,学生の要望を取り入れるために e-目安箱制度の運用も開始している。また,5名の教授
会員により構成される「授業改善の推進プランに対応する作業部会」を設置し,そこで検討することに
なっている。
【問題点】
授業改善アンケートについて結果は実施した担当教員に個別的に通知されるものの,兼任講師を含め
た実施状況全般についての報告が未だなされていない。また「授業改善の推進プランに対応する作業部
会」が定期的に開かれていない。
【問題点に対する改善方針】
教務課に学部単位での実施状況について問い合わせ,教授会に報告する。「授業改善の推進プランに
対応する作業部会」は少なくとも年に2回開催する。
・シラバスの作成と活用状況
【現状】
全科目について同一書式で簡略なシラバスが作成されているが,時間毎の詳細シラバスの作成は,各
教員の自主性に任されている。学生には紙に印刷されたシラバスを配布するほかOh-o! Meiji システ
ム上でも閲覧可能になっている。
第3章 法学部 -15-
/211
【問題点】
Oh-o! Meiji システムの利用状況を把握し,その活用を促進する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
Oh-o! Meiji システムの利用状況を調査し,学生・教員にその活用を働きかける。
・学生による授業評価の活用状況
【現状】
統一項目が印刷された授業改善アンケートを少なくとも講義科目1科目について担当者全員が半期
ごとに実施するようにしている。授業改善アンケートに基づく授業改善は各担当教員の自発的改善に委
ねられている。
【問題点】
授業改善アンケートについて結果は実施した担当教員に個別的に通知されるものの,兼任講師を含め
た実施状況全般についての報告が未だなされていない。
【問題点に対する改善方針】
学部単位での実施状況について教務部委員会や教員研修(FD)委員会などの関係部署と連携して調
査の上,授業評価の活用を適切なものとする。
・FD活動に対する組織的取組み状況の適切性
【現状】
2005 年度実施のカリキュラムに合わせて「法律リテラシー」「教養基礎演習」のための教員研修会を
開催し,教育内容・方法のばらつきがないようにしている。また,5名の教授会員により構成される「授
業改善の推進プランに対応する作業部会」を設置している。
【問題点】
「授業改善の推進プランに対応する作業部会」が定期的に開かれていない。
【問題点に対する改善方針】
半期ごとに行われる学生による授業改善アンケートの実施後に作業部会を開催する。
・FDの継続的実施を図る方途の適切性
【現状】
大学全体にかかわる教員研修(FD)委員会委員の選任のほか,学部内に「授業改善の推進プランに対
応する作業部会」を設置している。
【問題点】
「授業改善の推進プランに対応する作業部会」が定期的に開かれていない。
【問題点に対する改善方針】
半期ごとに行われる学生による授業改善アンケートの実施後に作業部会を開催する。
・学生満足度調査の導入状況
【現状】
学生による授業評価によって行うほか,e-目安箱制度の運用による。
【長所】
e-目安箱制度により,学部執行部が問題のある授業を把握し,改善を働きかけることが可能である。
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
現在は実施していない。実施することの有無を検討した上で,恒常的なアンケートを実施することに
第3章 法学部 -16-
/212
なれば,その方策を検討する。
・雇用主による卒業生の実績を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
現在は実施していない。実施することの有無を検討した上で,恒常的なアンケートを実施することに
なれば,その方策を検討する。
・教育評価の成果を教育改善に直結させるシステムの確立状況とその運用の適切性
【現状】
半期ごとに授業改善アンケートを実施し,その結果を個別に担当教員に通知し,教育改善については
担当教員の自主性に委ねている。
【問題点】
教育評価の成果を教育改善に直結させる組織的なシステムの確立を検討する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
執行部または「授業改善の推進プランに対応する作業部会」で検討する。
(授業形態と授業方法の関係)
【目的・目標】
少人数教育の実現に向け,講義科目およびゼミナール形式授業についてそれぞれ履修人員に関するガ
イドラインを設け,適切な授業形態を構築する。
・授業形態と授業方法の適切性,妥当性とその教育指導上の有効性
【現状】
本学部は,臨時定員増の終了後,恒常定員を一部について 800 名とすることを決定していたが,規制
緩和を受けて,かつ,二部募集停止に伴って学部定員を 2004 年度から 900 名とすることになった。2002
年度から,クラス定員を 40 名にするためクラス増(25 クラス体制)を実施したが,2004 年度以降の定
員増に対応して 26 クラス体制を実施している。将来的に定員を 700 名に減らすことについて教授会の
決定を得ている。講義科目について教室定員を上回る履修届があった場合には,教室定員を上回らない
ように自動的に担当教員・コマ数を増やすよう制度化し,講義科目の最大定員を 300 名とする開講基準
を策定した。
【長所】
多人数教育による弊害がなくなる。
【問題点】
担当教員のコマ数増につながり,負担が増大する。
【問題点に対する改善方針】
少人数教育の実質化を図るため「年度計画書」等で専任教員の増員の方策を策定する。
・マルチメディアを活用した教育の導入状況とその運用の適切性
【現状】
マルチメディアを活用した教育のインフラはある程度整っているといえるが,これを実施するかどう
かは個々の担当教員の判断に任されている。Oh-o! Meiji システムの運用も個別の教員の判断に任さ
れている。
【問題点】
Oh-o! Meiji システムの運用状況を把握し,活用を促進する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
Oh-o! Meiji システムの運用状況を調査し,活用を促進する。
第3章 法学部 -17-
/213
・「遠隔授業」による授業科目を単位認定している大学・学部等における,そうした制度措置の運用の
適切性
【現状】
西シドニー大学と提携し,単位認定の可能性の研究を始めたところである。
【問題点】
「遠隔授業」をするためのインフラ(ブロードバンド化)が整備されていない。
【問題点に対する改善方針】
実施の方向で今後「国際交流・留学支援委員会」の分科会等で,検討し,西シドニー大学との提携を
強化につとめる。インフラの整備については「年度計画書」に基づいて段階的に改善する。
(3年卒業の特例)
【目的・目標】
法科大学院や大学院法学研究科との接続を念頭にこの特例を検討し,詳細な要件を策定する必要があ
る。
・4年未満で卒業を認めている大学・学部等における,そうした制度措置の運用の適切性
【現状】
当学部では,現在4年未満で卒業を認めていない。
【問題点】
法科大学院との連携を図る上でも成績優秀者の3年卒業の制度は必要である。2005 年度実施のカリキ
ュラムから3年次に卒業単位を超える 130 単位の履修が可能であるが,3年卒業の要件が定められてい
ない。
【問題点に対する改善方針】
早急に3年卒業の要件を 2006 年度中に策定し,教授会で決定する。
(3)
国内外における教育研究交流
【目的・目標】
「人間性,国際性に裏打ちされたリーガル・マインドの育成」を教育理念・目標の達成のため,学部
独自で外国の大学等の研究教育との連携の途を継続的に模索する。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の適切性
【現状】
「人間性,国際性に裏打ちされたリーガル・マインドの育成」という本学部の教育理念・目標に照ら
し,語学教育を行うだけでなく,「国際関係法コース」の設置や専門科目として「英語で学ぶ日本法プ
ログラム」の一環として Introduction to ModernLawⅠ・Ⅱ,Business Law in EnglishⅠ・Ⅱを
設置し,Native Speaker が講義を行っている。さらにオーストラリアの西シドニー大学法律・ビジネ
ス学部と教育・研究交流協定を締結し,同学部との1年単位の学生の交換留学のほか,夏期休暇中に4
週間の短期研修への参加も可能となっている。
【問題点】
西シドニー大学法律・ビジネス学部への短期研修及び交換留学については 2006 年度より実施される
ため,その実績・問題点などを検証する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
2007 年度以降「国際交流・留学支援委員会」
(仮称)で実績・問題点等を検証する。
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
【現状】
第3章 法学部 -18-
/214
法学部では,主として個々の教員のレベルで国際交流及び国際協力活動をすすめてきたが質・量とも
に活発な活動が行われているとは言い難い,国際交流センター,随意選択外国語科目数員,各学部外国
語教員などと連携し積極的な国際化を図ることが焦眉の課題である。大学の国際交流及び国際協力活動
を活性化するために,以下の点を検討し,実施している。
ア.カリキュラムの見直し(国際関係法コースの設置)
。2005 年度より従来の「国際法文化コース」
に代えて「国際関係法コース」を設置し外国語科目を選択必修科目とした。
イ.外国大学の単位認定の緩和及びセメスター制の導入,西シドニー大学への交換留学及び短期研修
の単位認定について検討中である。
【問題点】
国際交流センターが提供している受け入れ体制は,現状では充実しているとは言い難い。また,留学
生に対する住宅環境の整備が必要である。
【問題点に対する改善方針】
外国人留学生の受け入れ体制の整備については,国際交流センターなどと連携して関係機関に継続的
に働きかける。留学生の活用については,
「国際交流・留学支援委員会」
(仮称)を設置し,引き続き検
討する。
・外国人教員の受け入れ体制の整備状況
【現状】
現在3名の語学等担当の専任教員がいるほか,適宜語学等担当の外国人を兼任教員に採用している。
そのほか国際交流センターを通じて適宜外国人招聘研究者を受け入れている。2004 年度より客員教授1
名を招聘している。2006 年度より西シドニー大学から法律専門家の若手教員を派遣するよう交渉中であ
る。
【問題点】
外国人の若手教員を受け入れる制度に調整が必要である。
【問題点に対する改善方針】
本学の関係機関と,外国人の若手教員を受け入れる適切な制度整備とその実施を「年度計画書」によ
り検討する。
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
【現状】
本学部は,邦文による『法律論叢』及び欧文による『MEIJI LAW JOURNAL』という2種類の紀要を刊
行して,専門科目教員の研究成果を発信している。『MEIJI LAW JOURNAL』については,ネイティヴスピ
ーカーによる欧文翻訳添削のための配慮をした上で海外の大学に送付している。『法律論叢』及び『明
治大学教養論集』については国内の大半の大学に送付している。
【長所】
英語やドイツ語・フランス語などでわが国の法律問題の現状などについて発信し,理解を深めること
ができる。
【問題点】
特に『MEIJILAWJOURNAL』について,執筆者が毎号固定する傾向がある。
【問題点に対する改善方針】
『MEIJILAWJOURNAL』の刊行を活性化させるため,「年度計画書」で改善策を検討し適切に実行する。
第3章 法学部 -19-
/215
2-1.商学部
(1) 教育課程等
(学部・学科等の教育課程)
【目的・目標】
本学部は学部創設以来「学理実際」を兼備した,社会的に有為な人材の育成,すなわち,幅広い教養
に裏打ちされたプロフェッショナルな人材の育成を教育目標として,掲げてきた。
現代の市場の姿を本学部固有の視点からとらえ,そのメカニズムを明らかにしていくこと,そして,
問題の所在を指摘し,それへの解決策を考える能力を養成することが求められる。
・学部・学科等の教育課程と理念・目的並びに学校教育法第 52 条,大学設置基準第 19 条との関連
【現状】
本学部の教育課程には,本学部の理念,目的が十分に反映されている。また,学校教育法第 52 条及
び大学設置基準第 19 条の要件は満たされている。その上で,学部内のカリキュラム改善委員会等でカ
リキュラムの見直しを不断に行っている。2005 年度においては,演習教育を拡充する方策として,専門
教育演習と総合学際演習を 2 年次より同時に履修することを可能にする演習教育の「ダブル・コア化」
と初修外国語としてのスペイン語・コリア語(仮称)の新たな導入,セメスター科目の一部導入を決定
している。
【長所】
教養科目と専門科目を車の両輪とする「総合的市場科学」の一層の推進,教養科目と専門科目との有
機的関連づけを実現するためのカリキュラム改革を推進している。
【問題点】
カリキュラム改革に伴い時間割編成等を一層工夫する必要が出てきている。
【問題点に対する改善方針】
2007 年度より導入が予定されている演習の「ダブル・コア化」新たな初修外国語(コリア語,スペイン
語)の導入,セメスター制への移行に向け,演習ガイダンスや時間割編成等,具体的な実施方針を整備
し,広く学生・教員に周知するために,早期に説明会を開催する。
・学部・学科等の理念・目的や教育目標との対応関係における,学士課程としてのカリキュラムの体系
性
【現状】
「総合的市場科学」としての商学のカリキュラムは基礎から応用へ体系的かつ段階的に編成されてい
る。1年次に基礎演習と文章表現,2年次には教養演習を開設し,この2年間に大学での学問研究に不
可欠な基礎的技術と広い視野を身につけさせる。そして,3・4年次の専門演習で「総合的市場科学」
の深化を目指し,多角的でグローバルな視点をもつビジネス・パーソンの育成を目指している。
【長所】
授業運営に関して一層の少人数制教育の徹底化を図るため,「ダブル・コア」の導入を決定するなど,
少人数の演習教育のメニューが多様化しており,学生の選択肢が広い。
【問題点】
演習科目以外の,基本科目,基幹科目の再編成にはいまだ,着手していない。
【問題点に対する改善方針】
基礎から応用へ体系的かつ段階的に編成されているカリキュラムの実効性を更に向上させるべく,基
本科目・基幹科目のあり方についてカリキュラム改善委員会で基本科目の構成の見直しを行う。
・教育課程における基礎教育,倫理性を培う教育の位置づけ
第3章 商学部 -1-
/216
【現状】
授業科目群「基礎教育科目」を配して「文章表現」と「基礎演習」,「経済学A/B」を設置し,専門
教育課程上必須の基礎的な表現力と思考力,基盤知識の修得を図っている。また,語学や文章表現にお
けるさらに進んだ学習ニーズに応える「錬成演習」を展開したり,2005 年度においては,商学専門科目
担当教員が新たに2年次の教養演習を担当したりして,1・2年次における和泉地区での教育と,3・
4年次に行われる駿河台地区での教育の連携強化を図っている。
倫理性を培う教育は,別個の授業科目として教育課程上は位置づけられていないが,総合教育科目の
「哲学」や基幹科目の「経営哲学」などで倫理観養成の教育的観点も加味されている。
【長所】
和泉の基礎教育,駿河台の専門教育というキャンパス別の区分を解消し,互いに相互浸透させている。
【問題点】
倫理性を培うためには商学の専門知識とともに深い教養の教授が不可欠であり,教養のもつ意味を問
い直す必要がある。
【問題点に対する改善方針】
人権教育を含めた倫理性を高める教育的観点の必要性を強く認識し,4年間の学部教育全体の中に,
その視点を反映させるべく,トータルにカリキュラム編成を考えていく。
・「専攻に係る専門の学芸」を教授するための専門教育的授業科目と学部・学科等の理念・目的,学問
の体系性並びに学校教育法第 52 条との適合性
【現状】
学科制を採用せずに3年次から多彩かつゆるやかなコース制を採用している。学生は2年次終了時に
コース選択を行う。カリキュラムは基本科目・基幹科目(コース科目)をおき,体系的・段階的に学習
できるよう編成をしている。
コースは7つに分かれており,以下の目標により専攻に係る専門の学芸が体系的に教授されている。
○“アプライド・エコノミクス”コース
経済学の体系的な学修を通して,将来,経済活動の担い手となるために必要な能力を備えた人材を養
成する。
○“マーケティング”コース
商品およびサービスを前提に,商業者およびサービス業者の存在意義と消費者の観点から競争優位の
マーケティング戦略の考え方・進め方について理論的かつ実証的に学習することを基本的な狙いとして
いる。また,生産活動,商業活動そして消費活動を通じて発生している環境問題や資源・エネルギー問
題にも深い関心を持ち,その解決の方法について多面的に学習することも狙いとしている。
○“ファイナンス&インシュアランス”コース
近年の情報通信技術の革新を背景にしたグローバリゼーションの潮流は,日本のビジネス社会を根底
から変えようとしている。その中でも最も大きく変わろうとしているのが金融・証券・保険の分野であ
る。こうした変革の時代を的確に把握し,理論と実践を兼ね備えた金融・証券・保険の専門知識を習得
することが主たる目的とする。
○“グローバル・ビジネス”コース
貿易を通じて現代世界の動向を深く認識し,同時に貿易に関して必要とされる知識を習得することに
ある。また,国際舞台で活躍する人材を養成する。
○“マネジメント”コース
将来,企業経営の中心的存在となる学生が,講義や演習の履修を通じて企業経営に関する基本的な知
識を習得し,現代の企業人や企業化に必要とされる論理的なものの見方・考え方・そして自由な発想の
できる柔軟性・創造性を身につけ,企業人・企業家としての正しい第一歩を踏み出すことができるよう
な教育を行う。
○“アカウンティング”コース
株式を公開している企業が作成し,公開している財務データは私たちの経済・産業の動向を見る上で
欠くことのできない資料である。そこで,財務データを作成し,それを加工して広く活用しうる知識の
獲得を目指す。さらに,企業が発信する財務データを読みこなし分析する能力を身につける。
○“クリエイティブ・ビジネス”コース
第3章 商学部 -2-
/217
実践的で現場密着型の少人数教育を実践することにより,ニュー・ビジネスを的確に把握しうる企業
家精神に富んだ人材を育成するとともに,幅広い職業能力の涵養を通じてリカレント教育ニーズや自
立・独立支援にも積極的に応える。
多彩にして,ゆるやかなコース制の採用は,より発展的に思考すれば,学生に対して将来の職業像を明
確化することにもつながる。
【長所】
多様なコースをメニューとして学生に提示し,将来の進路を念頭に自由に選択できる。
【問題点】
それぞれのコースに登録する学生数に大きな偏りが見られ,その傾向は数年来,変わっていない。
【問題点に対する改善方針】
学生によるコース登録は自由選択であるため,コースの登録人数に偏りが発生してしまう。そのため
学生のニーズを把握した上で,コースの再編成を含めた見直しを,学校教育法第 52 条との適合性を視
野に入れながら「将来構想検討委員会」で検討する。
・一般教養的授業科目の編成における「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い,豊かな人間性を涵
養」するための配慮の適切性
【現状】
大学設置基準第 19 条2項の要件は,本学部の場合,主として授業科目群「総合教育科目」において
充足されている。これは,「文化と芸術」「地域と社会」「人間と自然」の3分野から構成されており,
更に「教養演習」を配して,その教育効果の実効性を向上させている。さらに専門と総合学際の演習教
育の「ダブル・コア」の導入により,3,4年次においても「総合教育科目」分野の教育を可能にした。
【長所】
幅広く深い教養を4年間に渡って教授していく体制が整備されている。
【問題点】
これら科目群の多くは学生の自由な履修選択に委ねられているため,学生により細かな履修指導をし
ていく必要がある
【問題点に対する改善方針】
「より豊かな人間性を培養」することを明確に意識して,カリキュラムの拡充をカリキュラム改善委員
会等で検討する。その1つの方法はより明確な履修モデルの提示である。
・外国語科目の編成における学部・学科等の理念・目的の実現への配慮と「国際化等の進展に適切に対
応するため,外国語能力の育成」のための措置の適切性
【現状】
商学の領域は地球的規模の市場としているため,異文化とのコミュニケーション能力は不可欠である。
外国語科目の編成には英語を必修言語とする他,仏語と独語,中国語,ロシア語の中から1ヶ国語の選
択履修を必修化し,本学部の理念・目的の実現に向けた十分な配慮が行われている。外国語能力の着実
な育成・高度化に向けて,学習テーマ別の選択クラスや個人の能力レベルに応じたクラス編成も実施さ
れている。また,外国語能力の国際化等の進展への対応を企図して,上記以外の外国語を学部間共通外
国語の枠組みにおいて履修できる措置が講じられている。
このようななか,2005 年7月に外国語教育の基本方針を策定し,本学部における外国語教育の意義づ
けを明確にし,多言語一貫教育を一層充実させるために一連の改革を実行した。2006 年度から,1年生
全員にTOEICを受験させる。また,
「練成演習」
(2008 年度から「発展外国語」と名称変更)の設置
によって,3・4年次におけるより高度な外国語学習も可能となった。さらに,2007 年度からは,コリ
ア語(仮称)とスペイン語を開設することも決定した。
【長所】
英語を含む,多言語を4年間に渡って教授していく体制が整備されている。
第3章 商学部 -3-
/218
【問題点】
語学教育の実をあげるためには,クラスのサイズの見直しや授業時間の集中化など,種々の副次的課
題を検討する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
当面の課題である 2006 年度カリキュラム改革で導入されることが決定した「発展外国語」の拡充方
策や,英語による専門科目の設置について必要な措置を講じる。
・教育課程の開設授業科目,卒業所要総単位に占める専門教育的授業科目・一般教養的授業科目・外国
語科目等の量的配分とその適切性,妥当性
【現状】
教育課程の開設授業科目の構成を卒業所要総単位 126 単位に占める内訳から区分すれば,専門教育授
業科目 60 単位,一般教養授業科目 22 単位,外国語科目 16 単位,基礎教育科目8単位,任意選択科目(フ
リーゾーン)20 単位である。ただし,プロジェクト 101 に伴う演習の「ダブル・コア」導入に伴い,卒業
所要総単位数の見直しを行い,現行 126 単位から 134 単位へ増加させた。
【長所】
今回の卒業所要単位数の変更と共に,専門科目の必要履修単位数を増やし,全体の配分を見直した。
【問題点】
卒論などの問題を含め,各科目群の単位数をどのようにバランスさせるかについて,さらに検討を重
ねる必要がある。
【問題点に対する改善方針】
演習の「ダブル・コア」の円滑な実施に向け,各科目群の単位配分について,執行部を中心に履修体系
を検討する。
・基礎教育と教養教育の実施・運営のための責任体制の確立とその実践状況
【現状】
基礎教育及び教養教育の授業科目は主として和泉地区において開設されており,和泉地区の教務主任
が選任され,その実施・運営には「和泉専任者会議」がこれに当たっている。
【長所】
和泉専任者会議の運営により,多数の教員の声を吸い上げることができる。
【問題点】
今後,和泉地区と駿河台地区のカリキュラム上の垣根が取り払われていくと,上記の会議体だけでは
調整が困難になる。
【問題点に対する改善方針】
「ダブル・コア」の導入と関連させて,カリキュラム全体の中で,基礎教育及び教養教育の改善につい
て,和泉専任者会議で引き続き検討すると共に,駿河台に配置された基幹科目群との整合性を図るべく,
外国語教育推進委員会など他の会議体を活用していく。
・グローバル化時代に対応させた教育,倫理性を培う教育,コミュニケーション能力等のスキルを涵養
するための教育を実践している場合における,そうした教育の教養教育上の位置づけ
【現状】
グローバル化と情報化が加速する現代社会に対応するために,グローバルビジネス・コースを設置し
ている。コミュニケーションやプレゼンテーションのスキルについては,本学部の演習室において育成
されている。また,コミュニケーション手段として重要な外国語の運用能力を,読む・書く・聞く・話
すという,四技能のバランスに配慮しながら伸ばすことなどを目標として外国語教育を実践している。
その一環として,2006 年度から1年生を対象にTOEICの試験を学部の予算で全員受験させ,「練成
第3章 商学部 -4-
/219
演習」(2008 年度に「発展外国語」に名称変更)を導入するなど,「多言語 4 年間一貫教育」を展開してい
る。
【長所】
グローバルビジネス・コース,演習教育,語学教育という三位一体の形で展開されている。
【問題点】
教養教育と専門教育の垣根を無くし,基礎から応用へと段階的に教育していく視点が必要となってい
る。
【問題点に対する改善方針】
「多言語一貫教育」の拡充を目指し,教養教育におけるコミュニケーション能力の向上などを専門教育
において,実践・応用できるようなカリキュラムを導入する。
・起業家的能力を涵養するための教育を実践している場合における,そうした教育の教育課程上の位置
づけ
【現状】
2004 年度入学生より,起業家能力の涵養を主たる教育目標とするクリエイティブ・ビジネスコースが設
置され,2005 年度に担当教員の具体的な人選を進め,クリエイティブ・ビジネス担当者によるコース運
営会議を設置し,具体化の準備を整えた。
【長所】
インキュベーション・センターを通じた教員の起業も萌芽的であるが見られ,学生による空き店舗活
用事業やイベント開催の動きも起こってきている。
【問題点】
クリエイティブ・ビジネスコースを選択した学生数が少数にとどまっており,コースの認知度をどう
高めていくかが喫緊の課題となっている。
【問題点に対する改善方針】
2006 年度の開講状況を見ながら,起業家育成プログラムなど,他のコースにないようなカリキュラム
の提供などコースの魅力度を高めるための方策を執行部で早急に考慮する。
・学生の心身の健康の保持・増進のための教育的配慮の状況
【現状】
授業科目群「保健体育科目」において1年次に「体育・スポーツ実習」を必修として設置している。
また,2年次以上の選択科目として「選択スポーツ実習」
「選択集中スポーツ実習」「スポーツと社会」
及び「スポーツと健康」を開設している。またゼミナール協議会を主体に「スポーツ大会」も開催され
ている。
【長所】
カリキュラム上,必修ならびに選択授業科目として位置づけられており,学生の健康保持・増進への
配慮を適切に行っている。
【問題点】
心のケアを必要とする学生が増えている。これに対しては全学的に学生相談室が設置されているが,
学部としての対応策が未整備である。
【問題点に対する改善方針】
学生の心身の健康面への配慮について,学生相談室との連携を含め,対応策についてのマニュアル作
りを学部教育のあり方等検討委員会等で進める。
(カリキュラムにおける高・大の接続)
【目的・目標】
第3章 商学部 -5-
/220
入学してくる学生の多様化に対応して,高・大の連携を考えていく。具体的には,各種の特別試験入
学生に対して,入学までの導入教育のあり方,高校との連携授業の開講などを目標とする。特に,付属
高校の学生に対しては,本学で実施しているプレカレッジプログラムに協力し,充実させる。
・学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行するために必要な導入教育の実施状況
【現状】
高等学校からの要請による出張講義,付属高校生に対する公開授業(インターンシッププログラム)
の開設,簿記科目についての出張授業を実施している。また,和泉に設置された基本科目について,付
属高校の学生の通年履修を認める,プレカレッジプログラムを導入することとした。
【長所】
付属高校については,緊密な連携が形成されている。
【問題点】
学生が各種の推薦制度によって入学してくるため,大学教育を受ける前提としての基礎知識の面で大
きなばらつきが見られるようになった。
【問題点に対する改善方針】
高・大の接続や導入教育の実施のあり方が問題である。そのために,付属高校における特別講義科目
の充実,各種特別試験入学生に対する入学前導入教育システムを実現していく。また,推薦決定から入
学までの間の導入教育のあり方や入学直後によりきめ細かいクラス編成をすることなどをカリキュラ
ム改善委員会等で検討する。
(カリキュラムと国家試験)
【目的・目標】
公認会計士,税理士,中小企業診断士,ファイナンシャル・プランナー,証券アナリスト,社会保険
労務士,通関士など本学部の講義科目に関係した国家資格は多様であるので,各種の試験制度にあわせ
た指導・助言が行われているかを点検する。
・国家試験につながりのあるカリキュラムを持つ学部・学科における,受験率・合格者数・合格率
【現状】
公認会計士試験制度の変更に対応して,「企業法Ⅰ・Ⅱ」,「租税法Ⅰ・Ⅱ」が 2005 年度より設置され
た。2005 年の公認会計士試験合格者の人数は 40 人である。
【長所】
試験制度の変更にあわせて科目並びに教員任用を見直している。
【問題点】
資格試験受験や各種公務員試験受験の準備や資格取得後に実務を行う上での学問的土台を形成する
ことはできるが,大学教育の性質上,資格取得とカリキュラムが直結しているわけではない。
【問題点に対する改善方針】
公認会計士試験制度変更への対応やその他の資格取得に対して,手厚いフォローができるようにリバ
ティ・アカデミー等との講座開講の連絡調整を行う。
(インターンシップ,ボランティア)
【目的・目標】
商学という学問の性質上,インターンシップによる就業体験は勉学した内容を現場で確認する貴重な
経験になるので,現場と教室との橋渡しがスムーズに行われているかを点検する。
・インターンシップを導入している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
インターンシップは,授業科目群「応用展開科目」の中に授業科目「ジョブ・インターンシップ」と
第3章 商学部 -6-
/221
して組込まれている。一般企業や公共機関等において2~3週間程度(3年次の夏季休業中を利用)の
就業体験を経て,その成果を報告することにより単位(前期2単位)として認定する。
2005 年度,本学部固有の協力企業 15 社,受入先企業 15 社,履修者数3年生 14 名である。これにあ
わせて,マナー講座も開設し,履修者には企業社会で必要な最低限のマナーを事前に習得させる機会を
提供している。2005 年度の同講座の受講者数は,約 150 名である
【長所】
学生にとって貴重な社会体験を得る場となっている。
【問題点】
インターンシップの受け入れ先の更なる拡充が必要である。
【問題点に対する改善方針】
「ジョブ・インターンシップ」のシステムのさらなる充実にジョブ・インターンシップ運営委員会によ
り引き続き取り組んでいく。
・ボランティア活動を単位認定している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
単位を認定していない。
【問題点】
ボランティア活動自体は学生の自発的意志に基づくものであり,それ自体を商学の単位として認定す
ることが適切なのかどうか,慎重な判断を要する。
【問題点に対する改善方針】
ボランティア活動に伴う欠席については一定の配慮が必要なので,その点の取扱いを執行部で検討す
る。
(履修科目の区分)
【目的・目標】
学部創設以来の教育目標である「学理実際」を兼備した,社会的に有為な人材の育成に資するような
必修・選択の量的配分を確保することが目標である。
・カリキュラム編成における,必修・選択の量的配分の適切性,妥当性
【現状】
現行の卒業所要総単位 126 単位中,必修科目は 30 単位である。この必須科目単位の設定は本学部の
教育理念,目的に基づいており,よって必修,選択の量的配分は,概ね適切といえるものである。なお,
2006 年度のカリキュラムから本学部の卒業要件単位を大きく見直し,134 単位へと増やし,2006 年度入
学生から適用することとした。これにより,選択科目の比率が若干,増えることとなった。
【長所】
カリキュラム改革により教養科目と専門科目を車の両輪とする「総合的市場科学」を一層,推進でき
るようになった。
【問題点】
セメスター制の導入,GPA制度による厳格な学業進行管理の実現など,カリキュラムの実効性を確
保する。
【問題点に対する改善方針】
演習の「ダブル・コア化」の円滑な実施に向け,半期履修制(セメスター制)及びGPA制度の効果的な
運用を考慮して,必修・選択の量的配分の妥当性をカリキュラム改善委員会で検証する。
(授業形態と単位の関係)
第3章 商学部 -7-
/222
【目的・目標】
科目の内容に応じて,講義,演習,実習など各種の授業形態を適宜選択し,学生の進路選択の多様性
に応えているかどうかを点検していく。
・各授業科目の特徴・内容や履修形態との関係における,その各々の授業科目の単位計算方法の妥当性
【現状】
30 週の履修時間や予復習の時間を加味した時間を基準に,実習科目は2単位,講義課目は4単位であ
る。いわゆる専門と教養の垣根を取り払い,4年間にわたって相互に連動しあう履修体系へとシフトし
てきた。その象徴である演習の「ダブル・コア化」に伴い,総演習単位を,3年間で総計 24 単位とした。
【長所】
「総合的市場科学」の教育をより大胆に推進していく体制が整った。
【問題点】
2つの演習を3年間履修すれば,計 24 単位となるが,あくまで選択科目なので,全く演習を選択し
ない学生の存在が一定数予想され,これら学生への履修指導のあり方を検討する。
【問題点に対する改善方針】
演習を履修しない学生に対して,別途どのような履修指導が可能なのかをカリキュラム改善委員会で
検討を加えていく。
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
「総合的市場科学」という商学の性質上,市場についての幅広い理解をうながすこと,他方で,市場
を深く理解することの2点は不可欠である。この2点から,単位互換・単位認定のあり方を評価する。
・国内外の大学等と単位互換を行っている大学にあっては,実施している単位互換方法の適切性
【現状】
国内他大学との単位互換制度は整備していない。国外の大学とは 30 単位を限度に本学卒業要件単位
に置き換える「単位認定制度」を適用している。国外他大学との「単位認定制度」に関しては,本学部
の授業科目との適合性の観点から,個別に単位を認定している。また,本学商学研究科との間で学部4
年生の大学院科目履修(上限 12 単位)を認め,大学における履修単位として認定している。
【長所】
大学院の履修単位は学部の単位として認定されると同時に,大学院に進学した場合には既修単位とし
てカウントされる。
【問題点】
セメスター制度の導入が不十分であり,事実上の通年科目がいまだ多数存在しているため,学生が留
学する際の妨げになっている。
【問題点に対する改善方針】
単位互換制度の観点を含め,セメスター制の拡充については学部執行部と学部国際交流委員会を中心
に立案する。
・大学以外の教育施設等での学修や入学前の既修得単位を単位認定している大学・学部等にあっては,
実施している単位認定方法の適切性
【現状】
本学部は短大や他大学からの本学部3年次への編入学試験制度を実施しており,本学入学前の既修得
単位については個別認定の方式ではなく,「一括認定」方式を採用している。
【長所】
入学後に,卒業要件単位数が事前に把握できる。
第3章 商学部 -8-
/223
【問題点】
本学部入学以前に履修した科目によっては,商学の分野とは齟齬が見られる。さらに,演習科目を2
年次スタートとしたため,3年次編入生の演習履修に支障が出る可能性がある。
【問題点に対する改善方針】
現行の「一括認定」方式の改善について,引き続きカリキュラム改善委員会等で検討する。また,3
年次編入生の自由な演習選択を確保する方途を検討する。
・卒業所要総単位中,自大学・学部・学科等による認定単位数の割合
【現状】
本学部の卒業所要総単位 126 単位中に占める認定単位数は,国外他大学との場合には 30 単位,短大
や他大学からの3年次編入学者の場合には 62 単位である。
【長所】
卒業までに必要な修得単位数が明確になっている。
【問題点】
卒業所要総単位 134 単位に増やしたため,卒業までの修得単位数の面で,負担が増加した。
【問題点に対する改善方針】
卒業所要総単位数の見直しに伴って発生する諸課題については,学業進行管理委員会で引き続き検討
する。
・海外の大学との学生交流協定の締結状況とそのカリキュラム上の位置づけ
【現状】
海外の大学との学生交流協定の締結先は,大学主体の 34 大学に及んでいる。2005 年度本学部が派遣
した留学生は2名である。また,全学的な協定校とは別に,学部独自の協定校作りを進めており,2005
年度にフランスのレンヌ商科大学へ同大の授業料を免除して派遣留学生を送った。また,本学部独自の
学生交流の拡充に向け,中国の西北大学経済管理学院とも協定を結び,複数の大学との間で新たな交流
協定を締結することにした。
【長所】
本学部独自の協定校づくりを推進してきたので,学部学生の留学先がより多様化し,また,海外から
の本学部への留学生受け入れ数が増え,学部の授業に参加するため,語学教育が活性化し,異文化を理
解する機会が増えることとなった。
【問題点】
現状では,完全なセメスター制が導入されていないため,受け入れた留学生の単位認定が困難になっ
ている。
【問題点に対する改善方針】
2006 年度から,ドイツ・ブレーメン経済工科大学及びイギリスのカーディフ大学ビジネススクールと
の本学部独自の学生交流を始める予定である。駿河台でも半期履修制度が始動したので,運用面での問
題は解消される。なお,学生交流のカリキュラム上の位置づけ,より卒業しやすい留学制度の設計につ
いては学部国際交流委員会で引き続き検討する。
(開設授業科目における専・兼比率等)
【目的・目標】
本学部の教育理念・目的を共有し合うために本学部に設置された基幹科目は専任の教員によって担わ
れることが望ましい。また,兼任教員の比率が高い基本科目や教養系科目についても,できる限り専任
教員が関わることで,専任教員と兼任教員との相互連携をはかり,本学部の教育への理解を促していく。
第3章 商学部 -9-
/224
・全授業科目中,専任教員が担当する授業科目とその割合
【現状】
開設授業科目における専任,兼任教員の比率は,ほぼ1対1の割合である。
【問題点】
大学院を兼務している専任教員の授業負担が増加の一途をたどっている。
【問題点に対する改善方針】
本学部では,商学科の1学科制を採用し,1学年定員 1020 名となっている。この状況の中で学生に
対して可能な限りの少人数制教育の展開をしているが,専任教員の授業負担は年々増大しており,大学
院執行部との協議のもと,負担軽減策を策定する。
・兼任教員等の教育課程への関与の状況
【現状】
本学部の兼任教員は,教養教育の芸術分野と専門教育の法学分野を除き,公式の資格審査を経て当該
授業科目担当者として任用される。しかし,カリキュラム編成に兼任教員が関与する仕組みは存在して
いない。
【長所】
兼任教員の任用手続きの透明性が確保されている。
【問題点】
兼任教員と専任教員とが顔を合わせ,本学部のカリキュラム等について意見を交わす機会は極めて限
られている。
【問題点に対する改善方針】
専任教員と兼任教員との連携の改善策として,各コース別,各分野別の教員懇談会を随時開催するな
ど,一層工夫をこらす方策を検討する。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
外国人留学生については,入学後の学習支援や,履修科目上の配慮を適切に行う。また,社会人学生
については,その就業状況,バックグラウンドなどを考慮し,学習の便宜ならびに継続性を保証する。
・社会人学生,外国人留学生,帰国生徒に対する教育課程編成上,教育指導上の配慮
【現状】
本学部の教育課程編成上,特に外国人留学生に関しては,授業科目「日本語」を必修化する一方,授
業科目「日本事情」を開設,その8単位を授業科目群「総合教育科目」の所要単位数に含めることがで
きる措置を講じている。また,経済面については,各種の奨学金制度が整備されている。なお,社会人
学生については教育課程編成上の特別措置は現在,講じていない。
【長所】
2006 年度から,学部の2年生がボランティアとして,新入学の留学生をサポートする「留学生サポー
ター制度」を開始することになっている。外国人留学生が,新入生の時点で抱えるであろう,勉学・生
活面での不安を取り除く効果が期待できる。
【問題点】
社会人学生に対する特別措置を講じていないため,履修科目の選択範囲が限定されるケースが発生し
ている。
【問題点に対する改善方針】
二部廃止年度以降の社会人学生の受入体制の在り方については,本学で通信制のユビキタスカレッジ
構想が進んでいるので,その動きをにらみながら,適宜対応していく。
第3章 商学部 -10-
/225
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
商学という教育分野の性質上,教養的な意味での生涯教育のニーズは小さい。本学部に求められる生
涯教育のニーズは,キャリア・アップを中心としたリカレント教育が中心になる。
・生涯学習への対応とそのための措置の適切性,妥当性
【現状】
2004 年度入学の社会人学生には,全日制7講時制の下,夜間土曜帯開講の授業科目の履修のみで卒業
できる新たな特別プログラムを提供した。しかし,社会人の入学者数がわずかにとどまったため,夜間
土曜帯開講の授業科目の履修のみでの卒業保証を見直し,2005 年度より取りやめた。本学のリバティ・
アカデミーで実施している公開講座についてはビジネス分野を中心に本学部教員が適宜担当している。
【長所】
社会人学生の履修態度は一般学生に比べ,非常にまじめであり,大学院に進学して,さらなるキャリ
ア・アップを目指す学生が存在する。
【問題点】
夜間土曜帯開講での卒業保証を見直し,2005 年度より取りやめたので,それに代わる措置を検討しな
ければならない。
【問題点に対する改善方針】
生涯学習のニーズにどう対応していくかについては大学全体のユビキタスカレッジ構想やリバテ
ィ・アカデミーとの絡みで基本方針を定める。
(正課外教育)
【目的・目標】
本学部の課外教育の中心は演習教育を深化させるためのサブゼミならびに研究合宿,討論会等の開催
である。演習の成果を発表する場として,
「学内討論会」
「インター・インナー大会」などがある。これ
ら多様な課外教育の場を通じて,学生の知的好奇心を刺激し,また,本学部出身の著名人を招いた講演
会やシンポジウムを適宜開いて,実社会との接点をもたせるようにすることが目的である。
・正課外教育の充実度
【現状】
国外の協定校及び学生が自ら留学先を探し,学部が留学を認めた認定校への語学研修プログラムの提
供,
「教養演習」や「専門演習」における研究成果の向上を目的とした研究合宿を奨励,実践している。
研究成果の公表機会の場として『奨学論文』や『商学セミナー』を提供している。演習によっては,日
本経済新聞や日本銀行などが主催する学外の大会等にも積極的に参加し,優秀な成績で表彰されるゼミ
もある。
【長所】
演習教育を補完するという本学部伝統の仕組みとして機能している。
【問題点】
演習教育を拡充することが決定したが,2つの演習室に所属した場合のサブゼミや研究合宿のあり方
を早急に決定することが必要になっている。
【問題点に対する改善方針】
演習の「ダブル・コア化」が導入されるので,演習教育と正課外での教育のあり方等について,執行部
で十分な調整を行い,円滑な実施を図る。
第3章 商学部 -11-
/226
(2) 教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
授業改善アンケートの結果を活用して,教師と学生との間に緊張感ある良好な相互関係が形成されて
いるか,GPAを利用することで,入試形態別に教育効果に違いが見られるのか,効果的な学業進行管
理を行っているか等を把握することが目的である。
・教育上の効果を測定するための方法の適切性
【現状】
学業成績評価についてはGPAの導入,合格最低基準の 50 点から 60 点への引き上げ,A(優)評価
の人数割合の上限設定などが実施されている。授業改善アンケートは全学的に前後期に各1回(通算年
2回)実施されている。
【長所】
前期・後期の試験の実施により,成績を評価するのを基本としている。
【問題点】
よりきめ細かな教育効果測定のための方途はいまだ採用されていない。たとえば,優の上限設定(現
行履修者数の 30%)だけではなく,評価全体について,一定の目安等を設けることも必要になっている。
【問題点に対する改善方針】
本学部固有の教育上の効果を測定するための方法それ自体に関する全般的な検討は学部内の独立委
員会である「FD推進委員会」の課題である。当面,入試形態別に新入生にアンケートを行うことなど
測定方法の工夫が考えられる。
・教育効果や目標達成度及びそれらの測定方法に対する教員間の合意の確立状況
【現状】
全学的な授業改善アンケートの結果は,各教員の判断で活用されているが,有効な活用方法について
教員間の合意はいまだなされてはいない。
【問題点】
アンケートの内容は全学的なものであるので,本学部として利用しづらい面もある。また,アンケー
トの利用方法など教員間で合意を形成する段階に至っていない。
【問題点に対する改善方針】
学力の目標,到達度などに関して教員間での合意形成できるよう,本学のFD委員会による講演会に
加え,学部内の独立委員会である「FD推進委員会」でも講演会を開く。
・教育効果を測定するシステム全体の機能的有効性を検証する仕組みの導入状況
【現状】
GPA制度や授業改善アンケートの導入によって,効果測定の基盤は整備されている。これらの仕組
みを検証するためにFD推進委員会も設置されている。また,これに付随する形で学業進行管理委員会
が存在し,学年別の学業不振者の状況把握と修学指導を行っている。
【長所】
教育の中身をFD推進委員会が検証し,成績不良者の実態を学業進行管理委員会が把握するという分
業体制ができあがった。
【問題点】
仕組みが有効に機能するかどうかの判断はいまだ保留せざるを得ない。本学部固有の教育上の効果を
常時検証するまでには至っていない。
【問題点に対する改善方針】
第3章 商学部 -12-
/227
学部のFD推進委員会や学業進行管理委員会などを中心にシステムを検証するための仕組みが導入
されたばかりであり実績をあげていく必要がある。
・卒業生の進路状況
【現状】
本学部の卒業生は,金融業,製造業を筆頭に,卸・小売業,運輸・旅行・広告・サービス業,新聞・
出版・放送などの民間会社に就職する一方,教員や公務員として公的機関に就職する者もいる。また,
大学院進学者や公認会計士や税理士等の専門職業人を目指す学生もいる。進路状況に関するデータを適
切に収集するために,演習の時間などを通じて就職部への情報の提供を学生に対して呼びかけている。
2005 年 3 月のデータによれば,卒業生の進路は金融業 26%,製造業 21%,商事・卸・小売業 15%,運
輸・旅行・広告・観光・サービス業 14%,新聞・出版・放送・情報・通信業 11%,建築業・不動産業
9%,教育・公務4%,その他となっている。
【長所】
就職に強い本学部という伝統を着実に築いてきた。
【問題点】
就職活動が長期化し,なおかつ個人情報保護の問題もあるため,データ収集がより難しくなっている。
【問題点に対する改善方針】
進路状況に関するデータの適切な収集方法として,卒業式などの公式の場を利用して,本学部卒業生
ネットワーク委員会等で進路の把握に努める。
・教育効果の測定方法を開発する仕組みの導入状況
【現状】
学部固有で教育効果を検証する仕組みの一つとして,入学者全員にTOEIC試験を受験させ,試験
結果と入試形態との連関を調べることとした。
【問題点】
調査結果はまだない。
語学のクラス規模,クラス分けの方法等,具体的な方針がいまだ未確定である。
【問題点に対する改善方針】
調査結果をふまえて,外国語教育推進委員会で語学教育のあり方を検討する。
・教育効果の測定方法の有効性を検証する仕組みの導入状況
【現状】
本学部固有の教育上の効果を測定するための方法それ自体に関する全般的な検討が必要であるとの
認識のもとに,学部内の独立委員会としてFD推進委員会を組織した。
【問題点】
FD推進委員会の活動はまだ本格化していない。
【問題点に対する改善方針】
FD推進委員会の役割を教員の間に周知徹底させると共に,FD推進委員会のメンバー編成を見直す。
・教育効果の測定結果を基礎に,教育改善を行う仕組みの導入状況
【現状】
上述のように,FD推進委員会という仕組みは導入されたが,具体的な改善提案は出されていない。
そのような中,本学部入学後の語学教育の進捗状況を把握するために,各種言語の検定試験受験を促進
するために,執行部判断で受験費補助のための予算措置を行った。
【長所】
第3章 商学部 -13-
/228
英語のTOEICだけではなく,各種の語学検定試験の受験を奨励することで,多言語一貫教育を重
視していることを周知させられる。
【問題点】
成績評価のデータをどのように活用していくか,授業改善にどう生かしていくか,試行錯誤の段階で
ある。
【問題点に対する改善方針】
FD推進委員会と学部執行部(特に教務主任)との連携を図り,成績評価データを分析し,改善提案
を学部教授会の議題に反映させる。
・国際的,国内的に注目され評価されるような人材の輩出状況
【現状】
卒業生のデータは十分に整備されてはいないが,本学部の歴史はすでに 100 年を超えており,多様な
著名人を輩出してきた。その人的ネットワークを活用して,株式会社大丸の山本良一取締役社長やワタ
ミフードサービス株式会社の渡邉美樹取締役社長などを講演会に招いた。
【長所】
卒業生の人的ネットワークは日本全国に広がっている。
【問題点】
卒業生のデータ収集は法律の問題や人の移動の問題があり,きわめて困難になっている。
【問題点に対する改善方針】
卒業生との有機的な連携を図るべく,卒業後も利用できる電子メールアドレスの発行を検討する。
(厳格な成績評価の仕組み)
【目的・目標】
卒業要件単位数との絡みで,各年次の履修上限単位数に無理がないかどうか,公平・公正な成績評価
基準が設けられているかどうか,を判断する。
・履修科目登録の上限設定とその運用の適切性
【現状】
履修登録科目の上限設定は,年次履修制限単位数の設定をもって運用されている。「ダブル・コア」導
入に伴い,年次履修制限単位数の見直しを行い,各年次の履修上限単位を次年度新入生より,1年次:46
単位,2年次:46 単位,3年次:46 単位,4年次:48 単位とした。
【長所】
履修科目の選択に対して,学生に規律をもたせることができる。
【問題点】
新たに設定された履修上限単位の適否を学業進行管理の結果をもって今後判断しなければならない。
【問題点に対する改善方針】
履修制限単位数の見直しに伴い,経時的に,執行部でその効果を検証する。
・成績評価法,成績評価基準の適切性
【現状】
従来,成績評価法は,<優,良,可,不可>の4類型であったが,これらは更に細分化され,年度末又
は学期末の総合成績が 100~90 点の場合にA,89~80 点の場合はB,79~70 点でC,69~60 点でD,
59 以下(不可)はFと表記することとした。さらに,2006 年度から,全学的に 100~90 点の場合はS
とし,以下A,B,C,Fと表記を変更する予定である。
第3章 商学部 -14-
/229
【長所】
GPA制度の導入に合わせて,成績評価基準を見直し,より良いものになっている。
【問題点】
新しい成績評価基準を事前に学生に周知していくことが必要である。また,現状では,旧カリキュラ
ムの学生が在籍しているため,合格最低点が二重になっており,採点が煩雑である。
【問題点に対する改善方針】
合格最低点が 50 点以上から 60 点以上へと引き上げられ,その適用は和泉キャンパスから開始された
が,今年度,駿河台キャンパスでも開始されることになるので,その変更点を学生に周知徹底する。
・厳格な成績評価を行う仕組みの導入状況
【現状】
GPA制度が 2004 年度入学生から導入された。また,多人数科目については,厳格な評価(優の全
体に占める割合の上限設定)を促す学部長名の文書が配布されている。学生は,成績評価について疑問
があれば,随時教員に問い合わせすることができる。
【長所】
学生の目から見て,いわゆる「優がとりやすい科目」などというものは存在しないことになる。
【問題点】
優(A)の割合の上限目安だけでは不十分であり,各評価に該当する人数の詳細を把握する必要があ
る。
【問題点に対する改善方針】
成績評価について,学年間の不整合性を生じさせないように工夫するため,学業進行管理委員会を活
用する。
・各年次及び卒業時の学生の質を検証・確保するための方途の適切性
【現状】
2年次から3年次への進級並びに卒業時において必修科目の履修状況と取得単位数の観点から厳格
な判定会議を実施している。また,これに伴い学業進行管理システムが導入され,前期・後期の開始時
点に成績不良者に対して,面談等による個別指導を行っている。
【長所】
1,2年次の成績不良者については,個別面談による修学指導が一定の効果をあげている。
【問題点】
成績不良者の中には,いわゆる「引きこもり」などの精神面の問題をかかえる学生もみられる。こう
した学生は,修学指導の範囲を超えるものであり,別途,対策を考える必要がある。
【問題点に対する改善方針】
GPA制度と学業進行管理システムを有機的にリンクさせ,精神面の問題を含め適時かつ有効な教育
的指導が実施できるシステムの確立に努め,各年次及び卒業時の学生の質を検証,確保する。
・学生の学習意欲を刺激する仕組みの導入状況
【現状】
現行の3年次から4年次に開設される専門演習については選抜試験を実施し,学生各自の学習目標の
明確化を促している。また,演習室所属の学生の論文発表の場として『商学セミナー』が,在学生全員
の論文発表の場として「奨学論文」が発刊されている。成績優秀な在学生(3年生)については新入生
ガイダンスの場で表彰を行っている。
【長所】
第3章 商学部 -15-
/230
例年,100 本を超える論文が投稿されており,学習意欲を刺激する仕組みとして有効に機能している。
【問題点】
演習教育の変革に伴って,選抜試験の日時,サブゼミ・合宿のあり方等を見直す必要がある。十分な
棲み分けができないと,2つの演習を同時履修することが困難になる。
【問題点に対する改善方針】
「ダブル・コア」の導入により,学生の知的好奇心が刺激されるようにし向けると共に,ダブル・コア
履修者に対して,卒業時に顕彰等を行うことで演習教育の改革を継続し,履修への動機づけを行ってい
く。
(履修指導)
【目的・目標】
本学部のカリキュラム体系を十分に理解した上で,各自の将来像(進路)に合わせた系統的履修,コ
ース選択を促していく。
・学生に対する履修指導の適切性
【現状】
履修指導は,入学時及び進級時のクラス別ガイダンス,さらに4年次の特別ガイダンスを通じて集中
的に展開されている。また,学業進行管理委員会を組織し,成績不良者に対して,前期と後期の2回,
面談等を通じて,個別指導を行っている。さらに,学習支援室も設置された。
【長所】
学業進行管理のシステムや学習支援室が整備され,よりきめ細かい指導が可能になった。
【問題点】
4月に実施されるガイダンスは1回限りであり,各学生個人に合わせた,きめ細かさに欠けている。
【問題点に対する改善方針】
学業進行管理や学習支援室と連携した履修指導ガイダンスのあり方を事務方と相談の上,展開してい
く。また,必要な人材(大学院生)を学習支援室に配置する。
・オフィスアワーの制度化の状況
【現状】
一週間に一度,専任教員のオフィスアワーを設けている。オフィスアワーの時間帯は新学期が始まる
と学生に公示され,その活用を呼びかけている。
【問題点】
学生にオフィスアワーの存在と意味が十分に理解されておらず,オフィスアワー制度が十分に活用さ
れているとは言えない。
【問題点に対する改善方針】
学生への周知徹底方法を含め,オフィスアワーの有効な活用策についてRA・TA制度運営委員会を
中心に検討する。
・留年者に対する教育上の配慮措置の適切性
【現状】
留年者に対する教育上の配慮は,一般的なクラス別ガイダンスにおける履修指導とは別に実施してい
る。具体的には学業進行管理委員会をベースに,成績不良者の就学指導面談を前期・後期の開始時に実
施している。
【長所】
2名一組の教員が成績不良者の面談にあたっており,個人情報管理を徹底している。
第3章 商学部 -16-
/231
【問題点】
学習指導の呼び出しに全く応じない学生がおり,行き詰まってしまう場合がある。
【問題点に対する改善方針】
留年者への徹底した教育的指導の機会を増やす方策を学業進行管理委員会で引き続き検討する。
・学習支援(アカデミック・ガイダンス)を恒常的に行うアドバイザー制度の導入状況
【現状】
学習支援を恒常的に行う「学習支援室」制度が全学的にスタートした。
【問題点】
支援室業務に配置される要員確保が間に合わなかった。年度内に,専任助手並びにTAを支援業務担
当とする旨の教授会決定を行った。学習支援室の運営方法等については実績がないので,適宜,見直し
が必要になる。
【問題点に対する改善方針】
専任助手並びにTAの大学院生を軸に学習支援室における「アカデミック・アドバイザー」業務に従
事してもらうことになったので,その実施結果を適宜評価する。
・科目等履修生,聴講生等に対する教育指導上の配慮の適切性
【現状】
科目等履修生,聴講生等に対しては,現在,教育指導上の特別の配慮は実施していない。
【問題点】
科目等履修生については,事前に履修科目を確定し,申請をしなければならず,授業開始後にミスマ
ッチが生じることがある。
【問題点に対する改善方針】
科目等履修生,聴講生等に対する教育指導上の必須項目,履修登録時期等について執行部で必要な見
直しを行う。
(教育改善への組織的な取組み)
【目的・目標】
本学部におけるFD活動の目的は,学生と教員相互のモラールアップをはかり,相互に高めあうよう
な信頼関係を構築することである。
・学生の学修の活性化と教員の教育指導方法の改善を促進するための措置とその有効性
【現状】
教育面からの改善をうながすために本学部内各種委員会の一つとして「FD推進委員会」を設置して
いる。また,学生の修学指導を行うための委員会として「学業進行管理委員会」を設けている。全学的
には学習支援室が設置され,本学部の専任助手,TAを配置することとした。
【問題点】
これら委員会の活動実績が限られている。
【問題点に対する改善方針】
教育指導法の改善について実効性を高める方策を検討するため,
「FD推進委員会」
「学業進行管理委
員会」「学習支援室」の間で適切な連携によって教育指導方法の改善を促進する。
・シラバスの作成と活用状況
【現状】
統一様式のシラバス作成を全教員に依頼し,半期 15 週の枠組みにおいて各週の講義内容を個別に記
第3章 商学部 -17-
/232
載し,ネットワーク上でも閲覧できるようにした。シラバスの作成の意義はほぼ全教員に理解され,定
着している。
【問題点】
現行のシラバスは本格的なシラバスと言うには不十分な点がある。Oh-o!Meijiシステムを
使ったネットワークシステムで閲覧できるデータも限られている。
【問題点に対する改善方針】
本格的なシラバス様式への改善について,学部広報 Web 委員会で検討する。
・学生による授業評価の活用状況
【現状】
前期末,後期末の年2回,授業改善アンケートを行った後,集計結果を教員に伝達し,個別の教員レ
ベルで対応している。
【長所】
授業改善アンケートは後期末の年1回から前後期の年2回へと着実に浸透している。
【問題点】
アンケート結果の扱いは個別の教員対応に委ねられているため,フィードバック結果がどのような活
用されているのかが,不明である。また,学生への公表も現在のところ行われていない。
【問題点に対する改善方針】
集計結果のフィードバック期間の短縮,学生への公表など,一層効果的な活用方法について学部執行
部で検討する。
・FD活動に対する組織的取組み状況の適切性
【現状】
本学部内各種委員会の一つとして「FD推進委員会」を設置している。全学のFD委員会にはFD推
進委員会の委員長が参加している。
【長所】
全学組織と学部との組織的連携が図られている。
【問題点】
現状では,FD活動が各教員の個別の取組に限定されていて,学部全体の組織的取組へと発展してい
ない。本学部独自のFD活動に進展させる必要がある。
【問題点に対する改善方針】
FD活動を学部全体の組織的取組に拡充させるための方針をFD推進委員会で確定する。
・FDの継続的実施を図る方途の適切性
【現状】
新任教員に対しては,教育研修が行われ,また,全学的なFD講演会に委員が参加し,情報を収集し
ている。
【長所】
新任教員に対する研修やFD講演会の開催など,全学的には様々な場でFDの組織的取組が進行して
いる。
【問題点】
教育の質を恒常的に高めるためには教員個人の意識改革を同時に進めなければならない。
第3章 商学部 -18-
/233
【問題点に対する改善方針】
FDの継続的実施を図るためには教員個人の意識改革を促す必要があり,アンケート結果のフィード
バックを行うなど,学部内の「FD推進委員会」で取り組む。
・学生満足度調査の導入状況
【現状】
個別の満足度調査は実施されていないが,学生満足度の高低は授業改善アンケートの中の設問として
調査されている。
【問題点】
学生の満足度は,様々な要因によって形成されているが,それら要因の把握が十分にできていない。
【問題点に対する改善方針】
学生満足度を調査するマークシート「学生満足度調査マークシート」を考案できるかどうかをFD推
進委員会等で議論する。
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
校友会や本学のホームカミング等を通じて,間接的に意見を聴取することはあるが,卒業後における
在学時の教育内容,方法を評価させる仕組みは現在,導入されていない。
【問題点】
学部独自の取組が不足していると言えるが,卒業生とコンタクトをとるのは,個人情報保護の問題等
もあり,簡単ではない。
【問題点に対する改善方針】
ホームカミング制度の拡充や卒業生に対する永久メールアドレスの発行などを検討する。
・雇用主による卒業生の実績を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
本学部出身者に対する,雇用主による実績評価の仕組みは現在,導入されていない。
【問題点】
雇用主による評価が継続的に可能なのかどうかを含めて,種々の課題がある。
【問題点に対する改善方針】
就職部や校友会とも関係することなので,関係部署と連携しながら,卒業生の実績を評価する仕組み
について検討する。
・教育評価の成果を教育改善に直結させるシステムの確立状況とその運用の適切性
【現状】
教育評価を教育改善に直結させるシステムは,FD推進委員会の設置を契機に,個々の教員レベルで
は意識されるようになったが,学部全体としては未整備である。
【問題点】
授業アンケートの結果をどのように教育改善に役立てるかは教員自身の個別判断に委ねられてしま
い,教員相互のモデル授業の参観や情報共有ができていない。
【問題点に対する改善方針】
学部内のFD推進委員会において,教員相互のモデル授業の参観制度などのシステムを立案する。
(授業形態と授業方法の関係)
【目的・目標】
第3章 商学部 -19-
/234
授業形態は大中規模教室使用の講義形式,専用演習室使用の演習形式,習熟度別の語学等の少人数ク
ラスに大別される。また,授業方法には一方向の説明型と意見のやりとり(学生の発言)を重視する発
言型がある。講義形式は説明型になりがちであるが,教員からの一方的な知の伝達にならないようにし
なければならない。
・授業形態と授業方法の適切性,妥当性とその教育指導上の有効性
【現状】
授業形態は大中規模教室使用の講義形式と専用演習室使用の演習形式に大別される。
【長所】
それぞれに適切かつ妥当な授業方法が採用されており,教育指導上の有効性は保持されている。
【問題点】
和泉に設置されている基本科目の受講者が特定時限に集中し,結果として,教室規模から見て,収容
しきれない状態が発生している。
【問題点に対する改善方針】
基本科目については,クラス指定を行って,受講者を分散させるなどの改善策をカリキュラム改善委
員会等で検討する。また,科目によって受講人数にバラツキがあり,授業方法の適切性や教育指導上の
有効性について,課題を整理する。
・マルチメディアを活用した教育の導入状況とその運用の適切性
【現状】
和泉校舎のメディア棟,駿河台校舎のリバティタワーやアカデミーコモンには最新のマルチメディア
機器が整備されている。こうした建物の教室においては,講義及び演習にその活用がなされている。
【長所】
教育方法を多様化させるためのイントラネットは最先端のものと言える。
【問題点】
マルチメディアを教育に導入するためのノウハウの蓄積がなされていない。そのため,活用が特定教
員に偏っている。
【問題点に対する改善方針】
大学が有するイントラネットを基盤とした教育等について,教員の活用状況を向上させるべく,学部
内のFD推進委員会で講習会等を企画する。
・「遠隔授業」による授業科目を単位認定している大学・学部等における,そうした制度措置の運用の
適切性
【現状】
「遠隔授業」による授業科目の展開,その単位認定に係る制度措置は現時点ではなされていない。な
お通信教育を主体とする「ユビキタスカレッジ」の構想が連合教授会で承認された。
【長所】
ユビキタスカレッジの構想が認められたことで,遠隔授業の展開が可能となった。
【問題点】
今後の検討課題を整理すれば,本学部として提供可能な独自のコンテンツは何かを検討していく必要
がある。科目の内容によってはユビキタスに馴染まないものもあろう。
【問題点に対する改善方針】
「遠隔授業」による授業科目の展開,その単位認定に係る制度措置については今後,構想の具体化に
伴って教授会で議論を進める。
第3章 商学部 -20-
/235
(3年卒業の特例)
【目的・目標】
本学部として,この特例を適用するのかどうかはいまだ未定である。大学院商学研究科や専門職大学
院との接続を念頭に置く必要があろう。大学院商学研究科との連携については,学部学生の単位履修を
部分的(上限12単位)に認めることとした。
・4年未満で卒業を認めている大学・学部等における,そうした制度措置の運用の適切性
【現状】
本学部では,各年次に最低限履修しなければならない単位数を定めており,3年卒業の特例を認めて
いない。適用事例は見られない。
【問題点】
3年卒業は大学全体として学則で認められているが,その卒業用件等の細則については未検討である。
こうした特例措置の適否を検討していく必要がある。
【問題点に対する改善方針】
4年次に履修すべき最低単位数の見直し,学年制の見直し,飛び級の適否などを将来構想検討委員会
に諮問し議論を進める。
(3)
国内外における教育研究交流
【目的・目標】
本学部として国際交流を促進するために,①学部独自の協定校づくりを進める,②学部独自の国際交
流の仕組みをつくる,③教員・学生に留学に関わる種々の情報を提供し,サポートする。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の適切性
【現状】
「学部国際交流委員会」を設置し,留学生交流の基本方針も 2005 年3月に策定している。また,在
学生からなる「国際交流学生委員会」もあらたに設置し,学生の主体的活動を重視し,「国際交流フォ
ーラム」や「国際交流ランチ」の企画・運営をゆだねている。
【長所】
留学に対する相談窓口となる教員の配置,学部独自の奨学金(フランス留学)の獲得など,海外への
学生派遣を促進する体制がかなり整備された。
【問題点】
策定された方針を具体化するための施策が必要になる。また教員の研究交流について未整備である。
【問題点に対する改善方針】
教員レベルの研究交流を含めた学部独自の国際交流のあり方について、国際交流センターと連携しな
がら、学部国際交流委員会で検討を進める。
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
【現状】
教員については,複数名の研究員を在外研究に派遣し,学生については大学の海外提携校と交換留学
制度も利用され,概ね適切であるといえる。特記すべきこととして大学全体とは別に,本学部独自にフ
ランス,中国の大学と交流協定を締結している。今年度,さらに拡充すべくドイツ,イギリスの大学と
交流協定を結ぶ作業を進めてきた。
【長所】
学生レベルでの国際交流の仕組みが大きく進展した。
【問題点】
第3章 商学部 -21-
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協定締結はいわば,交流の出発点であり,今後は,学生の意欲を高めていく方途を検討する必要があ
る
【問題点に対する改善方針】
学部国際交流委員会を軸に,留学生に対する奨学金の支給など,支援体制を整備していく。
・外国人教員の受け入れ体制の整備状況
【現状】
学部内に外国人専任教員が5人,外国人兼任講師が 19 人所属している。本学部独自の協定校から教
員を受け入れる可能性を検討した。
【問題点】
外国人教員の受け入れ数が少ない。交流協定で来訪する外国人教員のための研究室・宿泊施設等の整
備も,不十分なものである。
【問題点に対する改善方針】
外国人教員の受け入れについては,外国語教育推進委員会で外国語による専門教育の検討により模索
する。また,受け入れ態勢の整備を「年度計画書」により検討する。
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
【現状】
複数の教員が国際学会等での学会発表を行っている。なかでも国際学会議事録に掲載されたものが 2
名,国際学会でのゲストスピーカーを務めたものが1名いた。
【問題点】
英語版の成果発表が限られており,また発信するためのメディアも限定されている。
【問題点に対する改善方針】
外部発信状況を正確に把握し,最低限,英語版のサマリーなどを整備する。
第3章 商学部 -22-
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3-1.政治経済学部
(1) 教育課程等
(学部・学科等の教育課程)
【目的・目標】
本学部では,政治・経済的事象を中心にしつつ,社会諸現象の総合的=体系的研究及びその教授を使
命としている。これに教養教育的な基礎教育を加えて,
「教養豊かな専門人の育成」をおこなうことが,
本学部の基本理念である。さらに,2002 年度に開設された地域行政学科においては,今日的課題に対処
できる人材の養成を目的とした,より実学的な教育理念が付加された。
・学部・学科等の教育課程と理念・目的並びに学校教育法第 52 条,大学設置基準第 19 条との関連
【現状】
本学部では,政治・経済的事象を中心に置きつつ,広く社会諸現象の総合的=体系的諸研究及びその
教授を教育課程の根幹に置いている。それを踏まえて教養教育的な基礎教育として「教養豊かな専門人
の育成」に努めることを本学部の基本理念としてきた。2002 年に本学部第3番目の学科としてスタート
した地域行政学科は,このような本学部の基本理念をさらに充実させることを目的として開設されたも
のであり,今日的課題に対処できる人材養成を目指してより実学的な教育を実践している。これら一連
の活動を通じて,学校教育法第 52 条及び大学設置基準第 19 条の要請に十分応えてきている。
本学部は 2004 年度に二部学生(政治学科・経済学科)の募集を停止し,授業時間帯を月曜日から土
曜日まで1日7講時制とする全日制学部に移行した。それに伴い,二部入学定員の一部を全日制学部へ
の振り替えを行い,政治経済学部入学定員を 1,070 名(110 名増)とする体制であらたなスタートを切
った。ただし,2006 年度は二部に4年生が在籍しているため,6・7時間帯に二部授業の科目群を配置
するとともに,1~5時間帯の科目を履修できるようにするなど,当該学生たちへの履修上の利便性を
はかっている。一方,今年度から駿河台校舎でも3年生が半期履修制のもとで授業を受講することとな
った。つまり,4年生(二部も含む)は従来通りの学年制で受講するので,彼らが卒業する 2007 年3
月までの過渡的体制ではあるが,半期履修制と学年制が並存する状態となっている。ただし,2007 年度
以降は政治経済学部在籍学生のすべてが半期履修制・7講時制での履修・受講となり,加えて 2008 年
度から完全セメスター制もスタートする。教員の授業負担の増大が現実となった。そこで,旧カリキュ
ラムと新カリキュラムに設置されている科目の読み替え,旧制度二部学生の昼間時間帯(1~5時限)
での履修を支障のない限り認めるなどの移行措置を 2005 年度から実施してきたが,2006 年度も引き続
き,履修上の制限枠を広げるなどの措置を講じていく。
なお,本学部では学費の中に含めて納入された実習費を「学部教育振興費」と位置づけ,普段の教室
での講義では学ぶことのできない「キャリア教育・資格・スキル」などを身につけさせる学部教育振興
プロジェクトを実施している。TOEIC等各種検定試験やインターンシップ,就職セミナーなどによ
り,学生は社会に出るための「足腰を鍛える」ことができる。
【問題点】
このような本学部の特色のある教育理念,学問的・社会的使命を実現し続けるためには,改革のため
の不断の努力が必要である。
【問題点に対する改善方針】
改革努力を継続し,あらたな環境への適合を図るために,今年度から学部内に「新カリキュラム構想
委員会」を立ち上げたので,それを中心に変革の検討を進めていく。
・学部・学科等の理念・目的や教育目標との対応関係における,学士課程としてのカリキュラムの体系
性
【現状】
上述した本学部の理念・目的との対応関係から見て,現在本学部に設置されているカリキュラムは十
分な体系性を備えている。特に,政治学科・経済学科においては多様性や柔軟性のあるカリキュラムと
政治学や経済学の基本的な事項や内容に関して確実な学習を求めるカリキュラムという2つのニーズ
に適合するために1・2年次のみならず3・4年次にも「基本科目」を配置する一方,3・4年次には
第3章 政治経済学部 -1-
/238
6つのコースから1つを選択して学習を進めるコース制を実施することによって,学生が段階的・体系
的な学習を進められるように配慮している。また,地域行政学科においても1・2年次に基本理論,3・
4年次に応用科目を配置することに加え,自治体等でのインターンシップを経験させるなど理論と現場
についてのバランスの取れた学修が行えるよう独自の工夫を凝らし,「今日的課題に対処できる人材の
養成」という学科の理念に沿ったカリキュラムの体系性が追求されている。
【問題点】
このような体系性を備えたカリキュラムであるが,半期履修制の導入の効果をより高めるために,科
目配置やコースについてその内容等を含め再検討の必要性が認識されるようになってきている。
【問題点に対する改善方針】
各学科の特性を生かしたカリキュラムの体系性をさらに深めていくためには,今後とりわけ,半期履
修制の実施に適合した効果的な科目配置や個々の教授内容の見直しが必要であり,それについては,現
在,新カリキュラム構想委員会等で継続的な審議を進めている。
・教育課程における基礎教育,倫理性を培う教育の位置づけ
【現状】
「教養豊かな専門人の育成」という本学部の基本理念からして,教育課程における基礎教育の重要性
は十分に認知されている。とりたてて倫理性を培う教育という方針を掲げているわけではないが,基礎
教育の充実によってバランスのとれた人格の陶冶につとめていることは言うまでもない。したがって
1・2年生で履修する各科目は,それぞれが専門課程に進むために必要な広い視野と体系的にさまざま
な学問分野への知的好奇心を駆り立てるように配置されている。また,かねてより基礎教育の修得に至
らないと思われるスポーツ推薦学生,社会人入学生,留学生に対しては,特別の英語クラスを設置しき
た。このほか,1・2年生を対象とした「演習A」は,専門課程への進級の前段としての,幅広い学問
体系の修得と,担当教員による専門性を生かした魅力ある演習内容で履修学生の向学心と倫理性を促進
している。
教育課程における基礎教育の重要性は今後ますます高まってくるものと思われる。そのためにも基礎
教育のあり方について今後継続的にカリキュラム検討委員会等で検討していく必要がある。また,1・
2年次設置の「演習A」でも,基礎教育や倫理性を培う場として一層の充実をめざす。
【長所】
特別の英語クラスの設置に見られるように,個々の学生ニーズに適合するきめ細かな対応を,ある程
度実現してきている。
・「専攻に係る専門の学芸」を教授するための専門教育的授業科目とその学部・学科等の理念・目的,
学問の体系性並びに学校教育法第 52 条との適合性
【現状】
政治学科・経済学科は学生の学問的関心領域を段階的体系的に学修することによって「教養豊かな専
門人」となるよう6コースのコース制カリキュラムを編成している。
A 現代政治学コース(政治学科)
現代政治を理解するのに必要な道具を系統的なつながりの中で習得する。具体的には,選挙,政策形
成,制度改革,政治的決定といった現代政治の課題が山積みされており,講義を通してこれらに向き合
う。その際,現在進行中の政治を題材とするため,新聞やニュースから多くの雑学を学ぶこと,さらに
それを抽象化し,系統立てて整理する。このような訓練により,現に動いている政治の意味を理解し,
制度の意味を読み解けるようになる。本コース履修者はマスコミや官庁をはじめ広く民間企業に進出し,
学んだ知識を活用していく。
B 国際政治経済コース(政治学科・経済学科)
複雑な国際社会を分析対象とし,政治学や経済学の手法を用いて理論的,歴史的,そして実証的に考
察していく。複数の角度から国際社会を眺めることができるような科目を配置し,国際政治や国際経済
全般の諸問題,アメリカやアジアなどの地域に関わる諸問題,各国間の政治的対立や貿易摩擦,発展途
上国の民主化と経済発展,グローバリゼーションなどのテーマを学ぶ。このコースは国際政治経済に関
心のある学生,将来「世界」に活躍の場を求める学生に最適である。
C 財政・金融コース(経済学科)
第3章 政治経済学部 -2-
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金融政策,財政政策,金融・財政理論などをマクロ的視点に加え,政府・地方自治体の財政制度・税
制,金融制度,金融規制などをミクロ的な視点から,日本及び世界の政治経済情勢を分析,考察する。
経済社会運営の基礎となる専門的知識を総合的に身につけることができるコースである。
D 総合経済政策コース(経済学科)
現代経済政策の原理的な研究を基礎として,関連諸分野の経済問題と政策を研究する。雇用・失業・
賃金に関わる労働経済,女性の高学歴化・社会進出に伴う出生率の低下といった人口問題,高齢化社会
の進展における福祉と社会保障,さらには現実の経済家庭を駆動する産業組織論や地域産業の分析,中
小企業やNPO・協同セクターの活性化,こうした問題群を担う多様な科目を配置している。また経済
課程と自然過程の接点に発生する食糧問題や環境問題の解明をめざす科目も配置している。このように
広い視点から学んだ総合経済政策の知識は実社会に出て分担するさまざな分野の仕事に活用できる。政
策の立案とその効果の測定・分析は政府や地方自治体の重要な任務であるが,民間企業における企画立
案や業務遂行の課程でもこのコースで学ぶ基礎的な知識は強固な土台として大いに役立つ。
E 現代社会学コース(政治学科・経済学科)
主に社会学,文化人類学,社会心理学,そしてマスコミュニケーション研究の四つの学問領域を含ん
でいる。このコースは①研究の視野が広く,②社会調査やフィールドワークを重視する,③未知の研究
分野や未開拓の地域,新しい社会現象の研究に有効という特色がある。政治経済を含む現代社会の諸相
を主体的に研究しようとする学生に最適である。
F 国際文化コース(政治学科・経済学科)
政治学あるいは経済学の知識を基礎に,一見政治経済とは無関係に見えて実はそれらの背景となって
いる文化,芸術,文学,思想,宗教などを学ぶことにより,異なった角度から政治経済を見つめる複眼
的な視野を習得し,物事を総合的に見たり考えたりする能力を養う。これは,政治経済学部の教育全般
に本来備わっている要素であるが,本コースはそれを更に徹底させるためにある。このコースの特徴の
一つは外国語に関する地域研究が比較的多いことである。
総合コース(政治学科・経済学科)
このコースは原則として社会人特別入試による入学者を対象としている。夜間授業時間帯以外の履修
が難しいという事情を考慮していること,社会での経験によりコースという道案内が無くても体系的な
勉学に励むことが一般学生より安易であることから,A~Fコースのすべての応用科目をこのコースの
応用科目としている。これにより,科目選択の自由度が飛躍的に高まり,限られた時間帯のみの履修で
も最小年限による卒業要件を獲得することが可能である。
これまで記述してきたように,本学部における専門教育的授業科目は,学部の理念・目的に沿いなが
ら十分な体系性を備えたものとして編成されており,その特色を活かして,さまざまな政治・経済的事
象に関する総合的体系的な研究及びその教授が行なわれている。絶えず変化する環境に適合するために,
学部の根幹をなす専門教育的授業科目については,今後も十分な体系性を維持すべく,学部の理念・目
的に沿ったカリキュラム編成を図る。
・一般教養的授業科目の編成における「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い,豊かな人間性を涵
養」するための配慮の適切性
【現状】
本学部で一般教養的授業科目にあたるのは,「基礎科目」である。基礎科目には,おもに人文科学分
野と自然科学分野に関する多様な科目が設置され,さらに政治・経済・社会・文化などの基本に触れる
講座として「総合講座」を開講している。また,情報技術の基礎を学ぶ講座として,「情報基礎論」を
受講することができるようになっている。付言すれば,外国語科目も「幅広く深い教養及び総合的な判
断力を培い,豊かな人間性を涵養」するために欠かせない授業科目として認知されている。
【問題点】
一般教養的授業に求められる内容は,時代と共に変化してきている。既存の体系を維持しつつも新た
な要請を,どのように応えていくかが課題である。
【問題点に対する改善方針】
基礎科目には,伝統的な学問体系に依拠した「哲学」「歴史学」「数学」「心理学」などの授業科目が
設置されていると同時に,
「エネルギーと環境」
「異文化間コミュニケーション論」などの今日的課題を
テーマとする授業科目も開講されているが,例えば「ジェンダー論」「民族紛争論」など,時々刻々と
変化していく社会情勢,社会問題をテーマとしたリアルタイムの授業展開をカリキュラム検討委員会等
第3章 政治経済学部 -3-
/240
で検討する。
・外国語科目の編成における学部・学科等の理念・目的の実現への配慮と「国際化等の進展に適切に対
応するため,外国語能力の育成」のための措置の適切性
【現状】
2003 年度から新言語教育カリキュラムを実施している。これは,学生のニーズに応えるために,外国
語選択の自由度を高め,多様な学習機会を提供するために設けられたカリキュラムである。具体的には,
第一・第二外国語といった枠をはずし,本学部に設置されている英語,ドイツ語,フランス語,中国語,
スペイン語の中から自由に2ヶ国語以上を選択できるようにした。さらに,英語クラスは一部の指定ク
ラスを除き,ほとんどのクラスを選択クラスとし,内容やレベルによって学生が自主的に選択できるよ
うにし,英語以外の外国語にも,2年次以降のクラスに選択クラスを導入し,学生の興味にあわせた授
業設計を行っている。このほか英語力の集中強化プログラムとして,ACEを設置している。またTO
EICや各種外国語検定による単位認定及び本学「学部間共通外国語科目」の単位を認定することによ
って,夏期・春期集中講座や学部で正規に設置している英独仏中西語以外の“強国語”に偏らない,
「真
の」国際化を目指すべく,各種外国語(ラテン・ギリシャ・朝鮮・アラビア語等)の学習を促すことな
ども積極的に行っている。なお,2002 年度入学生から,全学年を対象としたTOEICが導入されてい
る。一方,外国語クラスの適正規模も 40 人以下を目安とすることで,効果的な授業環境の確保に努め
ている。さらに,スポーツ推薦学生,留学生,社会人・編入学生に対して,学習到達度に適合した特別
英語クラス(特定英語)を設けるなどしている。
【問題点】
このような動向は,結果として学部全体としての必要教室数や教員数の増大を招くことになる。それ
らを長期的に賄っていくために,現有の資源(教室や教員)で充分か否かの検討が必要である。
【問題点に対する改善方針】
新言語カリキュラムの実施によって旧来のシステムを大幅に更新することができたが,今後はこのシ
ステムが円滑かつ効果的に運用されていくように,条件整備等を行うため,引き続き言語教育検討委員
会等で検討を重ねる。
2005 年の和泉校舎メディア棟の完成に伴い,外国語教育の現場にIT教育的な幅広い「実習」を導入
することも可能になる。この点について,ACEなどの学習プログラムによって「国際化等の進展に適
切に対応するための外国語能力育成」に向けた言語教育をさらに推進させる。そのためにも,ややもす
れば,「強国語」に偏りがちな非国際的な外国語教育を是正すべく,言語教育検討委員会等で検討を重
ねる。
・教育課程の開設授業科目,卒業所要総単位に占める専門教育的授業科目・一般教養的授業科目・外国
語科目等の量的配分とその適切性,妥当性
【現状】
本学部の卒業所要総単位数は 124 単位である。このうち,一般教養的授業科目(基礎科目及び健康・
運動科学)と外国語科目は最低 48 単位以上を修得しなければならない。カリキュラム上は残りの 76 単
位に上記の 48 単位をこえて修得した単位を含めることができるが,学生の履修の実態からすると超過
履修する科目は1科目(4 単位)程度である。従って,卒業所要総単位 124 単位のうち,52 単位前後が
一般教養的授業科目,72 単位程度が専門教育的授業科目という内訳になり,量的配分として十分に適切
性,妥当性がある。卒業所要単位に含まれない設置授業科目全体について見ても,事情は同様である。
また,本学部では,むしろ従来の専門・一般教養という分け方にとらわれず,1・2年次から専門性の
ある授業科目を配置すると同時に,3・4年次においても一般教養的授業科目の配置に考慮するなどし
て,科目の質的配分にも配慮を施している。
【問題点】
科目の量的配分に関わる改善は,単なる科目数の問題だけでなく,教育の質の問題と切り離せない。
より充実したカリキュラムを模索しつつ,開設科目全体との関係からみたバランスのとれた科目配置を
行うことが必要となってくるだろう。
【問題点に対する改善方針】
第3章 政治経済学部 -4-
/241
現行のカリキュラムの適切性や妥当性,その運用についてはカリキュラム検討委員会が対応している。
また,2008 年度には本学部も完全セメスター制となる。それについては,現在,新カリキュラム構想委
員会が中心になり,専門教育的授業科目・一般教養的授業科目・外国語科目等の量的配分とその適切性,
妥当性を考慮して,カリキュラムの見直し等の諸問題を審議・検討している。
・基礎教育と教養教育の実施・運営のための責任体制の確立とその実践状況
【現状】
本学部では,1・2年次の基礎・教養教育の責任者として一般教育主任をおき,同時に和泉キャンパ
スの各学科の責任者として,政治学科・経済学科・地域行政学科主任をおいて,これらの各主任は学部
役職者が担当する体制がとられている。従って,学部教育全体の中での基礎・教養教育の位置づけや方
向性については,役職者を中心に責任をもってその実施・運営にあたる体制が確立していると言える。
【長所】
学部教育全体の運営に責任を持つ学部役職者によって,基礎・教養教育の運営も展開されているので,
その運営が円滑なものになっている。
・グローバル化時代に対応させた教育,倫理性を培う教育,コミュニケーション能力等のスキルを涵養
するための教育を実践している場合における,そうした教育の教養教育上の位置づけ
【現状】
コミュニケーション能力等のスキルを涵養するための教育として,本学部では英語力集中強化プログ
ラムであるACEを設置している。これまで教養教育全体におけるこのACEの位置づけは,外国語教
育のモデルケース的な位置づけであったが,前身であるEPC(English Proficiency Course)での
長年にわたる教育実践の成果を受けて,現在ではグローバル化時代に対応するための学部全体の教育に
とって欠くことのできない存在となっている。
【問題点】
一足先に改善に着手した英語と比較すると,他の外国語科目の取組みが遅れ気味となっているという
問題がある。
【問題点に対する改善方針】
今後の改善方針としては,EPC,ACEを通して培ってきた経験を英語以外の外国語教育や専門教
育にも生かしていけるような施策の検討が必要であろう。また,ややもすれば,「強国語」に偏りがち
な非国際的な外国語教育を是正すべく,カリキュラム検討委員会等で検討を重ねる。
・起業家的能力を涵養するための教育を実践している場合における,そうした教育の教育課程上の位置
づけ
【現状】
2004 年度より,各種インターンシップ・コースを設置しているが,その中で企業体験を積ませること
が,起業家的能力の発揚を促すことにも繋がるであろう。
【問題点】
より直接,起業家的能力の涵養につながる様な教育が必要となる。
【問題点に対する改善方針】
今後,学部教育振興プロジェクトのひとつとして,企業実習の範囲の拡大及び内容の充実を図ってい
き,その中で「起業家講座」を実施していく予定である。
・学生の心身の健康の保持・増進のための教育的配慮の状況
【現状】
本学部に設置されている「健康・運動科学ⅠA・ⅠB(1年次)」では人間形成や心身ともに健康な
活力を養うために不可欠な身体運動を科学的に解明し,それを有効に実践できる知識の習得をめざして
いる。また2年次に履修する「健康・運動科学ⅡA・ⅡB」では,1年次での修得したことを踏まえ,
継続的な運動の実践を教育の一環としてとらえるとともに,学生の自主的な身体運動への参加を促進し,
第3章 政治経済学部 -5-
/242
かつ身体運動の習慣化を図ることを目的としている。このほか,
「健康・運動科学理論では,
「健康とは
何か」「体育と医学」など,身体運動の実践だけではなく,それを支える理論的支柱を視座においた総
合的な運動科学理論が配置されている。このように,本学部では,身体面のみならず,精神面も含めた
健康保持増進を促す演習と理論がふんだんに盛り込まれている。
【問題点】
体力だけでなく,精神面での脆さが指摘されることの多い近年の学生気質を考慮すれば,より広範囲
な対応が求められてきている。
【問題点に対する改善方針】
学生が精神面の健康を保持・増進していくための,より総合的な教育的配慮について検討する。
(カリキュラムにおける高・大の接続)
【目的・目標】
学生の後期中等教育から高等教育の移行を円滑にするために,両者の連携が不可決なものになってき
ている。付属高校をはじめとする高校への一連の活動を通じて,円滑な移行の一助としたい。
・学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行するために必要な導入教育の実施状況
【現状】
本学部では,後期中等教育から高等教育への円滑な移行の一助とすべく,従来から「公開授業」や「出
張講義」等を行ってきた。また付属高校との連絡会を随時設け,高校からの要望を聴取してきたが,従
来から付属 3 校の生徒を対象とした公開授業を一・二部で実施してきた。そして 2002 年度からは,原
則的に和泉校舎開講の専任教員の全授業を公開しているほか,付属校の自主選択講座及び特別課外講座
への学部教員の派遣(本年度の自主選択講座では,ジャーナリズム研究の授業を本学部教員が担当)な
ども行ってきている。
【問題点】
付属校生徒の,導入教育への一層の積極的参加を促すための誘引策が必要である。
【問題点に対する改善方針】
付属高等学校生の導入教育への積極的参加を促すために,本学部で授業を履修し,当該科目の単位を
認定する方向で議論を重ねている。これについては 2006 年度以降の実施を予定している。
(カリキュラムと国家試験)
【目的・目標】
本学部に最も関連の深い国家試験は,公務員等の採用試験である。特に地域行政学科には,公務員志
望の学生が少なくない。また,公務員試験の受験を支援する機関として,本学部には,総合政策研究所
に設置されている「行政研究指導室」がある。行政研究指導室を発展させ,指導体制の強化を図る。
・国家試験につながりのあるカリキュラムを持つ学部・学科における,受験率・合格者数・合格率
【現状】
本学部の総合政策研究所に設置されている行政研究指導室では,全学部の学生を対象にし,学生のニ
ーズに合わせた指導を行っている。それを受け,本学部では,地域行政学科の学生が行政研究指導室に
所属している場合は,その学生に対して,民法・行政法の単位認定を行っている。これにより,同学科
の受験者増に貢献している。なお,国家試験に関する学部としてのデータは,収集していない。
【問題点】
現状では単位認定の対象が地域行政学科の学生に限定されているが,その対象とする学科を拡大する
ことが求められている。また,認定する科目の拡大も求められている。
【問題点に対する改善方針】
単位認定の対象や科目の拡大のための検討を,今後も推進する。また,受験支援に対する全学的な取
組みを行うことが必要であるので,センター化が構想されている。
第3章 政治経済学部 -6-
/243
(インターンシップ,ボランティア)
【目的・目標】
現在,学生は三年生の秋期から就職活動を始めることが多い。学生が進路を決める前に,インターン
シップ,ボランティア等を通じて,様々な社会実習をすることが必要だろう。学生を支援すべく,シス
テムの構築は必須である。インターンシップについて言えば,潜在的には数百名の単位で学生の需要は
あり,どこまで様々な企業との協力体制が組めるかが重要である。そのためには,各企業に対しても魅
力的だと思われるメニューを大学側から提示し,多くの企業の参加,協力を仰がねばならない。一方,
ボランティア(社会実習)については,学生側にまだその意義が十分浸透しておらず,学生に対する教育
を続行することが肝要である。
・インターンシップを導入している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
2004 年度から,①本学部内の政治学科,経済学科を対象にインターンシップ(企業実習,企業研究)
制度を,また,②地域行政学科では地域インターンシップ制度を展開した。2005 年度は2年目となり,
①については首都圏所在のおよそ 60 の受入れ先企業・団体との提携関係の構築し,担当教員・事務組
織の編成を行った。②についても,全国規模で地方自治体や団体・企業との提携関係を構築し,担当教
員・事務組織の編成を行った。
また,全てのインターンシップを終了した後,受け入れ企業と学生たちによる懇親会を開催するとと
もに,学生たちによる体験報告会を実施した。このように 2005 年度で,活発なインターンシップを展
開するための基礎固めをほぼ終えた。2006 年度からは,どのコースも2単位が認定されることが決まっ
ており,さらなる充実を図りたい。
【問題点】
インターンシップの受け入れ企業の確保については努力してきたが,量的にも分野的にも不足してい
る。そのことが学生のニーズの高さとの間でミスマッチを生じさせている。
【問題点に対する改善方針】
①の共通インターンシップについては,受け入れ検討中の企業との折衝をかさねるとともに,これま
で以上に新規受け入れ企業の開拓にあたる。また,学生の具体的な要望をふまえて新たな受入れ先の獲
得をめざし,首都圏での受け入れ先の多様化と多数化を模索する。さらに,学生の出身地でのインター
ンシップの実施可能性を再検討する。とはいえ,リスク管理上の理由により,首都圏での実施を中心に
せざるを得ない。なお,全学及び他学部でのインターンシップ制度とのシステム上の連携や統合につい
てもインターンシップ委員会等で検討を行う。
・ボランティア活動を単位認定している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
2005 年度は,前年度に続き,学生と教員の協働により構築された3学科(政治学科・経済学科・地域
行政学科)共通のボランティア(社会実習)制度(1単位)を実施した。しかし,事前の予告,情報等
による学生への周知が不足したこともあって,当初期待したような成果をあげることはできなかった。
なお,2004 年度には,受入れ先として本学所在地である千代田区並びに杉並区の約 20 を越えるボラン
ティア団体,行政組織との提携を,また各区教育委員会の仲介により公教育機関との提携を構築してお
り,2005 年度もそれを維持した。2006 年度からは2単位が認められ,一層の充実が望まれる。
【改善方針】
現在,千代田区と杉並区にボランティア対象地域を限定しているが,今後,学生が出身地や居住地近
隣で行うボランティア活動に対して単位認定を行なうためにも,早急に本制度の改善を図る。また学生
が海外で行うボランティア活動についての取り扱いも課題である。なお受入れ先の多様化や多数化を模
索する過程では学生と教員の協働関係を維持する必要があり,社会実習としてさまざまな活動を積極的
に認定していく。
(履修科目の区分)
【目的・目標】
第3章 政治経済学部 -7-
/244
「教養豊かな専門人の育成」を行なうことが,本学部の基本理念であるので,それに見合った必修・
選択の量的配分を確保することが,主目的である。理想的には専門教育に必要な科目を必修科目として
絞り込んで設定した上で,幅の広い選択科目数をバランスよく配置するというのが目標となる。
・カリキュラム編成における,必修・選択の量的配分の適切性,妥当性
【現状】
本学部の卒業に必要な単位数は 124 単位である。そのうち学科共通の必修科目(選択必修を含む)は
基礎科目 28 単位,外国語 16 単位,健康運動科学4単位であり,そのほかに政治学科 16 単位,経済学
科8単位,地域行政学科 28 単位である。
【問題点】
3・4年次配当の必修科目が少ないため,必修科目が1・2年次に偏りすぎているきらいがある。ま
た,学科別には経済学科の必修科目が少なくなっているので,差し迫った問題は生まれていないものの,
各学科間での必修科目数の差が,長期的に見た場合,問題がないかを再検討する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
2008 年度からのカリキュラム改革を目指して新カリキュラム構想委員会で問題点を検討しており,当
面,経済学科の必修科目と3学科の3・4年次に配当されている必修科目を増やすことを検討する。
(授業形態と単位の関係)
【目的・目標】
学生の履修実態に配慮した適切な授業配置を行ない,単位計算もこれに見合った形を検討していく必
要がある。
・各授業科目の特徴・内容や履修形態との関係における,その各々の授業科目の単位計算方法の妥当性
【現状】
本学部に設置されている授業科目のうち,講義形式及びゼミナール形式の授業科目は 4 単位科目とな
っており,一方外国語科目及び健康・運動科学科目,その他の半期授業科目は2単位科目となっている。
各授業科目の特徴・内容や履修形態との関係から見て,以上の単位計算方法は妥当なものだと思われる。
【問題点】
半期履修制の実施に伴い,通年受講が維持される一部の授業科目を除き,単位計算はそれぞれこれま
での2分の1となった。このような変化が,単位計算方法の修正を促しかねないという問題点がある。
【問題点に対する改善方針】
「新カリキュラム構想委員会」を中心に,半期履修制のもとでの単位計算方法について検討する。
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
協定校,もしくは学生が自ら留学先を探し,学部が留学を認めた認定校への留学者は今後ますます増
加してゆくことが予想される。他方,半期履修制への移行によって,国外の大学との単位互換はこれま
でより容易になる可能性がある。こうした情勢の変化に伴い,適切な単位互換の制度を設けていく必要
性が出てくるだろう。また,国内他大学との単位互換制度についても早急に検討されるべきである。
・国内外の大学等と単位互換を行っている大学にあっては,実施している単位互換方法の適切性
【現状】
本学部では,国外における本学の協定校,もしくは認定校において学生が修得した単位のうち,本学
部に開講されている授業科目の内容と類似しているものについては単位認定をしている。ただしその上
限は 30 単位である。
【問題点】
編入学生に対しては本学部に設置してある科目に相当する分についての単位認定を行っているが,国
内の他大学との単位互換はいまのところ行なっていない。
第3章 政治経済学部 -8-
/245
【問題点に対する改善方針】
協定校,もしくは認定校への本学学生の留学は今後ますます増加していくことが予想される。他方,
半期履修制への移行によって,国外の大学との単位互換はこれまでより容易になる可能性がある。こう
した情勢の変化に伴い,より適切な単位互換の制度について他大学の取組み等も参照しながら検討する。
また,国内他大学との単位互換制度についても早急に検討していく。
・大学以外の教育施設等での学修や入学前の既修得単位を単位認定している大学・学部等にあっては,
実施している単位認定方法の適切性
【現状】
2003 年度から実施された新言語教育カリキュラムによって,TOEFL,TOEICによる単位認定,
及び英語以外の外国語における各種検定試験による単位認定を行なっている。認定の方法としては,こ
れらの各種検定のレベルと,本学部に設置されている外国語科目のレベルの対応性を考慮し,段階的に
認定単位数を定めている。現状では英語の検定試験による単位認定がほとんどである。また,企業実習
と社会実習は,単位認定を行っているが,履修対象となるのは本学部と協定を結んだ企業・団体等にお
ける実習に限定しており,実習の目的や内容が変節しないように適切な運営が図られている。
2007 年度より付属高校生を対象に本学で実施しているプレカレッジプログラムへの参加を予定して
いる。
【問題点】
英語以外の外国語科目では,あまり活用されていないという問題がある。
【問題点に対する改善方針】
英語以外の外国語科目でも活用されやすいような制度を検討する。また,外国語科目以外にもこの種
のカテゴリーでの単位認定が可能なものがあるかどうか,検討していく。
・卒業所要総単位中,自大学・学部・学科等による認定単位数の割合
【現状】
全学的な合意事項としては,他学部履修の取得単位を 60 単位まで認定することが可能となっている
が,本学部ではこれを 20 単位までとしている。これは学部教育の体系性・独自性を維持するためには,
卒業所要総単位中における認定単位数をこの程度に抑えるのが適切だと判断されたことによる。
【問題点】
さしあたっての問題点はないが,教員の授業負担の軽減という観点からの検討が必要である。
【問題点に対する改善方針】
本学の現状からすると,複数の学部に類似する授業科目が設置されている例が少なくないものと思わ
れる。こうした授業科目については,これまでも学部間共通科目の設置や,あるいは他学部学生への履
修許可などの措置を講じて来ているが,教員の負担軽減を図る意味でも,今後同様の取組みを行って科
目配置の適正化を検討する。
・海外の大学との学生交流協定の締結状況とそのカリキュラム上の位置づけ
【現状】
本学は現在海外の 22 校と交換留学制度を結んでいる。本学部学生も,希望すればこれらの大学に留
学することができる。また,当該校で修得した単位のうち,本学部の授業科目と類似している場合,30
単位を限度として単位認定をしている。また,本学部では,通年制のもとで前期に授業科目を履修した
あと1年間留学した場合,帰国後,後期に同一科目の継続履修を認めてきた。このように本学部のカリ
キュラム編成は,学生が積極的に留学機会を利用できるような配置となっている。
【問題点】
半期履修制度が,単位認定に実際どのような影響を及ぼすかの検証が必要である。
【問題点に対する改善方針】
第3章 政治経済学部 -9-
/246
学生交流協定の締結は全学的な取組みの進捗に負うところが大きいが,学部としても,国際化に伴っ
て増大することが予想される学生の留学をより容易にするために,カリキュラム上の工夫が必要となる。
半期履修制への移行に伴い,より適切な単位認定・互換の方法を検討していく。
・発展途上国に対する教育支援を行っている場合における,そうした支援の適切性
【現状】
2001 年からの3年間に延べ5名の専任教員を,ラオス国立大学,ラオス国立行政学院に専任教員を派
遣し教育支援を行ってきた。それが一段落した現時点では,途上国への教育支援は,特に実施していな
い。
現時点においては,途上国を直接支援するよりも,日本への留学生に対する支援を優先させている。
【問題点】
長期的な課題として,途上国への教育支援を検討することも必要である。
【問題点に対する改善方針】
現段階では留学生への支援が優先されているが,将来的には途上国への教育支援も検討すべき課題で
ある。ただし,当該問題は全学的な取組みのなかで実践されるべきである。
(開設授業科目における専・兼比率等)
【目的・目標】
学部の基幹科目については専任教員が担当することが望ましい。その意味で,本学部では,ゼミナー
ル形式の授業を原則として専任教員が担当することとしているが,今後この方針を他の授業科目におい
ても一貫して推し進めていくことが必要であろう。
・全授業科目中,専任教員が担当する授業科目とその割合
【現状】
本学部所属教員数は,2006 年3月現在,専任教員 101 名(助手を除く),兼任教員 139 名となってい
る。担当する授業科目が専任・兼任の区別によって異なるわけではないが,ゼミナール形式の授業に関
しては原則として専任教員が担当することになっている。2005 年度における担当の割合は,授業科目に
よって若干の偏りはあるが,全体としては専任教員担当分が約 53%,兼任教員担当分が約 47%となっ
ている。
【問題点】
ゼミナール形式以外の授業の担当区分をどうすべきかについての基本的な考え方を整備する必要が
ある。
【問題点に対する改善方針】
言うまでもなく,学部の基幹科目については専任教員が担当することが望ましい。その意味で,本学
部では,ゼミナール形式の授業を原則として専任教員が担当することとしているが,今後この方針を他
の授業科目においても一貫して推し進めていくことが必要であろう。依然として兼任教員への依存度が
高いことも,改善すべき点である。
・兼任教員等の教育課程への関与の状況
【現状】
兼任教員への依存度が 50%近くに達している。特に語学科目での依存率が高いので,教育内容の統一
性や整合性を保つために英・独・仏・中・西・国語の各科目について専任教員と兼任教員が出席する教
科書会議を毎年,年度が始まる前に実施している。それに加え,全兼任教員と学部執行部の懇談会,全
専任教員との懇親会を毎年開催し,意見の聴取や交換を行い,体系的な教育への協力を求めている。
【問題点】
上記のような対応で効果をあげてきているものの,約 50%という比率からすると,教育課程への兼任
教員への関与は非常に大きなものとなっていると言わざるを得ない。適切な人事計画によって,それぞ
れの授業科目に相応しい兼任教員の採用をおこなってきているにせよ,兼任教員への依存が常態となっ
第3章 政治経済学部 -10-
/247
ている現状は,本学部の教育課程にとって必ずしも好ましいものではない。
【問題点に対する改善方針】
教育課程の充実という意味合いからすれば,量的に見て兼任教員の教育課程への関与の度合いをこれ
までよりも低減し,逆に専任教員の関与を増大させていく必要がある。一方,質的な関与という観点か
らすれば,今後も優秀な兼任教員の採用はむしろ積極的に活用していく必要もあるので,人事計画のよ
り一層の適正化を検討する。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
国際交流の側面からも留学生の積極的受け入れを促進していくと同時に,受入れ態勢の整備に努める。
・社会人学生,外国人留学生,帰国生徒に対する教育課程編成上,教育指導上の配慮
【現状】
本学部では,従来から二部教育の一環として社会人学生の受け入れを行なってきたが,2004 年度から
の二部学生募集停止,全日制(7講時)への移行に伴い,同年度入学の社会人学生に対して6・7講時
の受講の夜間帯のみの受講で卒業できるカリキュラム編成を用意した。しかし 2005 年度入学生からは
そうした配慮をしていない。なお,社会人学生,外国人留学生を対象とした英語基礎クラスを新たに設
置した。
【改善方針】
2004 年度入学の社会人学生に対する当該カリキュラムの運用を円滑に進めるために現状に見合った
適切な措置を講じていく。
外国人留学生,帰国生徒については,特に近年前者の受験生が増加傾向にあるが,国際交流の側面か
らも留学生の積極的受け入れを検討していくと同時に,国際交流センターと連携しながら受け入れ態勢
の一層の整備に努める。
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
社会人入学生に対する手厚い奨学金の給付ないしは貸与の措置を早急に講じる。
・生涯学習への対応とそのための措置の適切性,妥当性
【現状】
生涯学習の一環として,これまでは二部に社会人特別入試制度を設けて,社会人の受け入れに努力し
てきたが,受験者数の減少などもあり,二部の学生募集を停止し全日制へ移行した。他方,本学で実施
しているリバティ・アカデミーにおいては,本学部の専任教員が講座を担当し,生涯学習に貢献してい
る。
【問題点】
授業料を低額に設定していた二部の学生募集停止により,結果として授業料の高額化が避けられなく
なってきている。
【問題点に対する改善方針】
2004 年度の二部の学生募集停止と全日制への移行に伴い,授業料が 1 部と同額(現行の倍)となった
こと,また,授業時間帯(1~7時限)での受講が難しいなどの理由から社会人入学者の減少となってい
る。その改善策として,社会人学生に対する手厚い奨学金の給付ないしは貸与及びカリキュラム等の工
夫を早急に講じねばならないが,このことについては本学部の「年度計画書」に基づいて改善を図る。
(正課外教育)
【目的・目標】
多角的な正課外教育を模索する。
・正課外教育の充実度
第3章 政治経済学部 -11-
/248
【現状】
演習Aや演習Bなどでは,基礎・専門教育の一環としてセミナーハウス等を利用して研究合宿が行わ
れている。またゼミでの教育・研究の成果を公表する場として,論文集『政経セミナー』を毎年刊行し,
口述発表の場として「ゼミナール発表会」を毎年開催している。例年『政経セミナー』には 39 のゼミ
ナールが,
『ゼミナール発表会』には 25 のゼミナールが参加している。このほかにも,単独で卒業論文
集を刊行しているゼミナールもある。
【問題点】
正課外教育は,ゼミナールを中心としたものにとどまっている。
【問題点に対する改善方針】
ゼミナールは基本的には担当教員の方針が優先される。しかし,少人数教育の長所ともいうべき face
to face の授業をより活用するならば,たとえば,複数ゼミによるジョイント授業などといった多面・
多様な正課外教育について役職者会等で検討を進めている。
(2) 教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
学生の学習達成度を的確に判断して,教育内容に反映させる枠組みを確立する。そのためには,成績
評価について教員間で不適切な格差が生じないようにすること,また教育効果については,学生への『授
業改善アンケート』を定期的に実施することによって,その集計結果を教員にフィードバックし,教育
目標達成の指標とするなどを推進している。また,学業優秀者,あるいはボランティアなどを通じての
社会貢献の顕著な学生を顕彰するなどの制度を設置し,学生の勉学意欲を刺激させるなどの対策を講じ
ている。
・教育上の効果を測定するための方法の適切性
【現状】
現行二部においては 2002 年度入学者から,また,一部においては 2004 年度入学生からGPA制度に
よる成績評価が導入された。これにより 50 点以上を合格最低点としていた 2003 年度以前の成績評価が,
2004 年度から 60 点以上を合格最低点とすることに改正された。このGPA制度は,学部教育全体とし
ての成績評価上の統一基準として採用されたものである。また,2003 年度後期から学生による授業改善
アンケートが全学的に実施されているが,本学部も一教員一科目を単位としてこのアンケート調査を実
施している。このほかにも個々の授業内容が学部理念・目標に達成するように,FD推進を実施してい
る。
【問題点】
GPA制度や学生による授業評価制度は,導入間もないこともあり,現時点ではその結果を教育活動
に,十分活用されてはいない。
【問題点に対する改善方針】
2004 年度以降入学者に適用されたGPA制度については,積極的な利用方法を早急に検討すべきであ
る。また,学生による授業評価についても,学部としてどのような有効利用が考えられるか検討してい
く。
・教育効果や目標達成度及びそれらの測定方法に対する教員間の合意の確立状況
【現状】
教育効果や目標達成度及びそれらの測定方法については,現状では必ずしも教員間での合意ができて
いるとは言いがたい。授業科目によっては,客観的な基準を設けることがむずかしい場合もあると思わ
れるが,合意確立の必要性を各教員が認識していないわけではないものと思われる。学生に対して実施
する「授業改善アンケート」は教員に授業内容についての満足度等についてフィードバックしている。
【問題点】
教育効果や目標達成度及びそれらの測定方法に関しては,教員それぞれの判断に委ねられ,明確な合
第3章 政治経済学部 -12-
/249
意を形成するための合議機関が特別に設置されているわけではない。
【問題点に対する改善方針】
ひとつの方策としては,学部内での統一試験の導入(例えば外国語科目など),あるいは外部検定試
験の積極的利用などが考えられる。教育観,授業観にかかわる本質的な問題を含んでいるので,教員間
の合意を確立していくのには時間がかかるかもしれないが,FDの観点からもなんらかの客観的基準の
導入について検討する。
・教育効果を測定するシステム全体の機能的有効性を検証する仕組みの導入状況
【現状】
2004 年度入学者からGPA制度による成績評価が導入されたが,このシステム全体の機能的有効性を
検証する仕組みはまだ導入されていない。学生による授業評価についても同様である。
【問題点に対する改善方針】
本学に教員研修(FD)委員会が発展し,教育・開発支援センター(仮称)が設置されるため,この
センターと連携し,今後,なるべく早い時期にシステム全体の機能的有効性を検証する仕組みの導入を
図っていく。
・卒業生の進路状況
【現状】
製造業,小売業等への就職率が若干低下しており,情報,金融関係への就職率が増加傾向にある。教
育・公務関係への就職率は,相対的に高いとは言えないにせよ,堅調に推移している。新聞・出版・放
送・広告関係へ進む者の数も近年増加しているようである。2005 年度卒業生実績は,建設・不動産業
55 名,製造業 159 名,商事・卸小売業 118 名,金融業 190 名,新聞・放送等 101 名,運輸・旅行等 187
名,教育・公務員 54 名であった。なお,2004 年度より就職支援セミナーの開催,学部教育振興プロジ
ェクトをスタートさせ,学生の就職支援に取り組んでいる。すなわち,キャリア教育支援の一環として,
1,2年生を対象に「マスコミ入門講座」「公務員講座」,3,4年生を対象に「起業家講座」「国際公
務員講座」
「実戦マスコミ講座」を実施するとともに,3年生全員を対象に就職支援セミナー,3 年女子
学生だけを対象とした女子学生就職支援セミナーを開催する。
【問題点】
多くの卒業生は,職業人として活躍し社会に貢献しているものの,全般的に若年層の職業意識が低下
してきているのは否めない。卒業後の進路を真剣に考える機会を設けることにより,就職支援・キャリ
ア支援とすることが求められてきている。
【問題点に対する改善方針】
2006 年度においても,就職支援セミナー,学部振興プロジェクトを充実させ,学生への就職支援を一
層充実させる。
・教育効果の測定方法を開発する仕組みの導入状況
【現状】
教育効果の測定方法の検討の一環として,カリキュラム検討委員会を中心に,測定方法を開発する仕
組みを導入することについても検討を進める準備をしている。
【改善方針】
今後,なるべく早い時期に教育効果の測定方法を開発する仕組みの導入を図っていくべきである。新
たな測定方法の導入には,2006 年度から設立予定の「教育開発・支援センター」などを中心とした全学
的な取組みが必要である。
・教育効果の測定方法の有効性を検証する仕組みの導入状況
【現状】
2004 年度入学者からGPA制度による成績評価が導入されたが,このシステム全体の機能的有効性を
検証する仕組みはまだ導入されていない。学生による授業評価についても同様である。
第3章 政治経済学部 -13-
/250
【改善方針】
今後,なるべく早い時期にシステム全体の機能的有効性を検証する仕組みの導入を図っていくべきで
ある。新たな検証方法の導入には,2006 年度から設立予定の「教育開発・支援センター」などを中心と
した全学的な取組みと連携する必要がある。
・教育効果の測定結果を基礎に,教育改善を行う仕組みの導入状況
【現状】
2004 年度から成績評価のうち「優」の評価については,履修者数の 25%以内に抑える相対評価を導入
している。また,半期履修制の導入によって,前・後期にそれぞれ各1回の試験を実施している。さら
に,2004 年度からGPAも導入された。
【問題点】
GPAの導入後のデータ蓄積が少ないので,教育効果の測定やそれにも伴う改善に関しては,今後の
課題である。
【問題点に対する改善方針】
データの蓄積を図りつつ,同一科目に複数の担当者を置くなど適切な対応を検討する。
・国際的,国内的に注目され評価されるような人材の輩出状況
【現状】
本学部では今後,英語力集中強化プログラムであるACEなどを展開することで,国際的,国内的に
注目され評価されるような人材の輩出を目指している。
【問題点】
語学以外の対策が未整備である。
【問題点に対する改善方針】
より多角的な人材育成プログラムを模索すべきである。
(厳格な成績評価の仕組み)
【目的・目標】
学生の成績評価は,なによりも学生自身が自己の勉学の達成度を知るための基準となるものであり,
公正な評価とさらなる勉学意欲を増進させるものでなければならない。そのためには,履修登録に際し
ての適切なアドバイスはもとより,ゼミナールなどを通じて,学生との不断の連携を保ちながら,きめ
細かな学習指導を実施している。また,学業成績,社会貢献などについて顕著な成績・活動をした学生
への顕彰制度を設け,学生諸君の意欲向上を図るべく,目標を設定している。
・履修科目登録の上限設定とその運用の適切性
【現状】
本学部での上限設定は1年次から3年次までは各 44 単位,4年次については 40 単位であったが,2005
年度より1年次は 40 単位,2年次から4年次までは各 44 単位と改正した。学生は単位の未修得を前提
に一般にこの上限ぎりぎりまで履修している。ただし,2004 年度入学生からGPAによる成績評価が導
入され,履修登録している科目に対しての未受験はポイント零となるなどのペナルティが科せられるよ
うになったため,これまでのようなむやみに履修登録をする傾向に一定の歯止めがかかっている。
【長所】
履修登録数に一定の制限を設けることは必要であり,それにより適正な履修が行われているものと考
えられる。
【問題点】
現在,4年生に対して新規に 20 単位の履修を義務付けている。かつて学生の多くが3年生までに卒
業に必要な単位を修得してしまい,4年生になると就職活動など大学に来ない状態が顕著であった。4
第3章 政治経済学部 -14-
/251
年生での新規 20 単位履修を課したことにはそうした背景があった。しかし,現在,この制度には改善
すべきことが起こっている。なによりも,コース制の導入,セメスター制への移行など学内状況が,当
時とは一変し,こうしたしばりの効果がうすれている。また,履修単位数に上限を設定していることに
ついても,資格課程の単位取得などを考慮するならば,再考の余地もある。
【問題点に対する改善方針】
現在,上記の問題を含めて,カリキュラム検討委員会で改善策の策定に向けて継続的に審議している。
・成績評価法,成績評価基準の適切性
【現状】
2004 年度入学生から成績評価にGPAが導入され,さらにAが 100~90 点,Bが 89~80 点,Cが 79
~70 点,Dが 69~60 点(以上合格)
,Fが 59 点以下(不合格)と全学的に統一された。これにより成
績評価の基準がより透明性のあるものとなった。くわえて,学業成績優秀者を顕彰するなど,学習意欲
を向上させる制度を設置している。
【問題点】
本学部では 2004 年度入学生から半期履修制を導入している。しかしながら,2006 年度まで在籍する
二部生(原級生などを除く)と 2003 年度以前の入学生の履修科目は通年科目となっている。つまり現
在,本学部には半期履修科目と通年科目が混在し,成績評価が複雑化している。この点に関しては 2007
年度以降,半期履修科目に統一されるので,ある程度解消されるものと思われ,現状は過渡的なことと
考えてよい。
成績評価については,たしかにGPA導入によって成績評価が統一されたが,結局,最終的な判断は
教員個々にゆだねられており,その判断基準も統一されているわけではない。合わせて,一部の学生が
履修している科目は通年科目となっている。その判断基準は個々の教員の問題であり,その統一化は難
しい。
【問題点に対する改善方針】
成績評価の基準は教員個々の問題ではあっても,その基準に大きな開きがあるとすれば,成績評価に
公平さを欠くことになる。それについては,相対評価の導入などを取り入れ改善を図っているが,少人
数授業についての成績評価について検討を重ねている。また,未受験をT判定としているが,ポイント
はゼロとなることについて再検討する。
・厳格な成績評価を行う仕組みの導入状況
【現状】
成績評価方法については,シラバス上に担当科目の教員が明示し,学生に周知している。また,前・
後期にそれぞれ1回ずつ,「授業評価に対するアンケート」を実施し,成績評価についての学生からの
評価,要望を聞き取り,その結果を教員にフィードバックしている。また,GPA導入は,成績評価の
透明性を実現したものとなっている。ただし,成績評価は個々の教員の基準によるものであり,それを
統一することには無理がある。むしろ,個々の教員が自己の授業について常に工夫をし,良質の授業を
することに心がけることが肝要であり,また成績評価についてはその基準について公平性と透明性に留
意することが大切である。2004 年度から優の数のみを履修者の 25%以内に抑える相対評価が実施された。
【長所】
授業評価のアンケートの結果が個々の教員にフィードバックされるため,授業の進め方,成績評価へ
の取組みに従来以上の工夫がなされ,有効に機能している。
【問題点】
GPAの導入により,成績評価法に変更がみられたが,同時に個々の教員の成績評価の基準にばらつ
きもみられるようになった。
【問題点に対する改善方針】
成績評価の基準を統一することは難しいが,現在,必修科目,選択必修科目などで実施している出席
点による評価を全科目について行えるかどうかについて検討している。
第3章 政治経済学部 -15-
/252
・各年次及び卒業時の学生の質を検証・確保するための方途の適切性
【現状】
本学部では,ゼミナール在籍者に対しては卒業論文を義務付けている。各ゼミナールでは教員の指導
の下で論文作成の実をあげている。各年次については,2年次から3年次への進級に際して進級審査を
行っている。なお,GPAの導入によって成績チェックが容易になり,成績不振者には警告書を本人・
父母宛てに発送している。これは,本人にはさらなる努力と学習意欲を喚起させるものであり,父母に
は実情を認識してもらうことを目的としたものである。
【問題点】
卒業論文の義務付けがゼミナールを履修した学生に限られているため,ゼミを履修していない学生へ
の対応が問題である。また,半期履修制の導入に伴い,次のセメスターへの進級条件をどうするかも懸
案となっている。
【問題点に対する改善方針】
ゼミを履修していない学生に対して卒論に匹敵するものがあるかどうか,また,半期履修制導入によ
る新たな進級条件をカリキュラム検討委員会等で検討中である。
・学生の学習意欲を刺激する仕組みの導入状況
【現状】
本学部においては,選任教員が一定期間履修指導に専念する制度であるアカデミック・アドバイザー
とオフィス・アワーによって,学生への履修相談,成績評価に対する相談に積極的に応じている。TO
EIC,ACE,各種研究室及び学習支援室の設置,あるいは各種インターンシップの導入,並びに成
績優秀者の顕彰など,学生の学習意欲の向上に努めている。また,総合講座を設置し,各界から講師を
招聘して多面的な授業を展開している。
【問題点】
学習支援室への利用が当初,予想していたより少ない。
【問題点に対する改善方針】
アカデミック・アドバイザー,オフィス・アワーのさらなる充実にはTAの積極的活用が必要であり,
その増員が不可欠である。加えて奨学金の充実が望まれるが,これについては,本学部の「年度計画書」
に基づいて改善を図る。また,学習支援室への利用者が少ない点については,より一層のPRと,TA
の効果的な配置を考慮することで対応する。
(履修指導)
【目的・目標】
学生への履修指導は,学生自身の学問的関心を喚起させ,目標に向かっての総合力を身につけるため
の科目履修をめざしている。そのためにはクラスでの指導はもちろんであるが,そのほか,ゼミナール
での指導,そしてアカデミック・アドバイザー,オフィス・アワーの積極的利用を学生に指導している。
・学生に対する履修指導の適切性
【現状】
毎春実施しているオリエンテーション期間に,総合ガイダンス・学年別ガイダンス・クラス別ガイダ
ンスを開催し,履修相談のほか,履修登録についての個別指導を実施している。また,アカデミック・
アドバイザー制度では,新入生に対しては半期履修の意味を説明したうえで,必修科目,選択必修科目
の履修の仕方,1セメスターでの履修登録単位数の制限を考えて履修するように指導している。また,
2年生については,進級条件をクリアーすることが重要であることを十分に説明し,1年で履修した科
目の確認と新規に履修する科目について,基礎科目,基本科目などに設けられている履修単位を修得し
ているかなど,より具体的なアドヴァイスを行っている。これらには専任教員と学部のTAがあたって
いる。このほかにも学部事務の窓口での指導など,きめ細かな指導を行っている。
【問題点】
第3章 政治経済学部 -16-
/253
語学関係の履修相談については,本学部では学生の希望に応えるために,語学履修の選択肢を大幅に
増やした結果,アカデミック・アドバイザーや事務の窓口が対応しきれないほど混雑状態となっている。
また,事務機構改革にともなう職員の削減などによって,窓口業務(履修指導)やカリキュラム実行力
が甚だしく低下している。
【問題点についての改善方針】
特に年度当初の履修登録期間における窓口及びアカデミック・アドバイザーにおける混雑については,
担当教員を増員し,あらかじめ相談内容のマニュアルを作成するなど,あらたな対応を進める。また,
事務職員についても,一層の充実を求める。
・オフィス・アワーの制度化の状況
【現状】
現在,本学部で実施しているオフィス・アワーでは,事前予約した学生が利用しており,これに対し
て 20 名前後の専任教員が対応している。
【問題点】
現行のオフィス・アワーは予約制により制度的に実施されているものの,実施体制は不十分である。
【問題点に対する改善方針】
このことについては,学部助手,TAの導入によって一層充実させるべく検討中である。また,現在
の予約制を改めて,設定された時間内に学生が自由に担当教員の研究室を訪れて相談できるような改善
を検討している。
・留年者に対する教育上の配慮措置の適切性
【現状】
2006 年度まで二部学生(原級生などを除く)が在籍するが,そのほかにも原級生,復学生,再入学生
なども在籍している。現在,7講時制が実施されており,二部生が一部の科目を履修する際の制限も大
幅に緩和されている。これまでは 20 単位を上限としたが,さらにその上限をはずすこととした。また,
留年ケースでもっとも多い,基礎英語力の欠如を向上させるために特別英語クラスを設置し,教育上の
配慮を行っている。
【問題点】
留年生が各年次に一定数存在していることは,第一に当該学生の学習意欲の欠如があげられるが,た
とえばスポーツ学生についてはすべてではないにしても,練習・稽古などにより授業に出られないケー
スもある。それについては当該運動部の部長・監督の授業に対する理解が不可欠である。このほか,一
般学生の留年については,日ごろからのケアが必要となる。
【問題点に対する改善方針】
留年生への学習意欲をいかに掻き立てるかが肝心であるが,履修登録のミスによるケースも見られる。
この点については,履修登録に際してのアドヴァイスをさらに徹底する。
また,留年生との接触を通じて,履修状況を把握するなど,留年生に対する専門の相談窓口が必要で
ある。現在,GPAが導入されているが,一定の基準を設け,それに(たとえば 1.0 以下など)達しな
い場合,1年目で警告,2年連続したら退学勧告を出すなどといった方法をとることも必要となろう。
こうした諸点を踏まえて,現在,検討中である。
・学習支援(アカデミック・ガイダンス)を恒常的に行うアドバイザー制度の導入状況
【現状】
アカデミック・アドバイザー制度は学期の初めに1週間程度設置されているが,通年では行われてい
ない。これに代わって,本来の趣旨とは異なるが,オフィス・アワーが用いられている。また,2005 年
度から学習支援室が和泉・駿河台地区に設置され,学生の相談に対応している。
【問題点】
学習支援室についてのPRが不足していることも一因となって利用学生が少ない。また,現在は各学
第3章 政治経済学部 -17-
/254
部のTAと教務部のTAが対応しているが,学部のカリキュラムに精通している専任教員が担当するこ
とが望ましい。
【問題点に対する改善方針】
アカデミック・アドバイザーは学部のカリキュラムやシラバスに精通した教員があたるべきである。
そのためにはアドバイザーに適した専門家の養成が急務である。なお,学習支援室の活動内容について
は,学生に強く広報する必要がある。
・科目等履修生,聴講生等に対する教育指導上の配慮の適切性
【現状】
科目等履修生・聴講生に対する入学許可は教務主任が面接を行い,履修を希望する科目の妥当性及び
学業継続の意思と受講する分野の理解可能性を確認している。
【長所】
科目等履修生・聴講生は社会人が多く,受講目的も明確であり,また学習意欲も旺盛なため一般学生
に大きな刺激を与えている。
(教育改善への組織的な取組み)
【目的・目標】
本学部の教育理念・目標について,学生にいかに周知するか,またその実現のためにはどうすること
が必要か,について本学部では次のような取組みを行なっている。
①シラバスでの授業内容の明示及びWeb上での公開,②シラバスは学生にとっては担当教員の授業
方針を知る重要なメッセージである。それゆえ,シラバス作成にあたっては教員は分かりやすい内容に
心がけ,成績評価についても明確にすること,③「授業改善アンケート」の実施と教員へのフィードバ
ック
・学生の学修の活性化と教員の教育指導方法の改善を促進するための措置とその有効性
【現状】
全学組織である「教員研修(FD)委員会」に本学部から委員として専任教員が参加している。この
委員会では,高等教育の本質に関わる問題や具体的な教育方法についての様々な講習会を開催しており,
学部教員の参加をその都度促している。また,新任教員を対象とした「新任教員研修会」を4月と7月
に開催しており,本学部の新任教員も必ず参加している。
授業改善アンケートについては,前期・後期に1度ずつ,一人の教員に対して1科目以上を実施して
おり,その結果は学部平均や全学平均と比較した値などを盛り込んだレポートと共に教員にフィードバ
ックされている。
【長所】
FD委員会主催の講演への教員の参加が毎年増えており,また新任教員の研修参加によって,授業へ
の取組み,成績評価の公平性,透明性も一段と向上している。学生に対しては成績不振者に対する警告
書の発送,成績優秀者の顕彰が学習の活性化と教育指導方法の改善に寄与している。
【問題点】
教員の研修への参加は増えたとはいえ,十分ではなく,さらなる参加と授業内容の改善を必要として
いる。
【問題点に対する改善方針】
教員個々に対する授業への取組み,シラバス内容の改善などをめざした教員への個別対応を実施する
が,その具体的方法について検討中である。なお,合わせて教員個々に委ねられている授業内容,成績
評価の基準については,教員相互の情報開示とジョイント授業を行うなどして教員同士のある程度のチ
ェック機能(もちろん,教員の主体性と自主性は尊重する)を働かすようなシステムの構築について検
討を行う。
・シラバスの作成と活用状況
第3章 政治経済学部 -18-
/255
【現状】
シラバスは同一書式によって作成されている。紙媒体だけでなく,Oh-o! Meijiシステムのク
ラス・ウェブ上によっても全科目が閲覧できるようになっている。また,クラス・ウェブ・システムで
は,シラバスの編集もできる。
【長所】
シラバスの書式が統一されたことにより,学生には等質の内容を開示することができるようになった。
【問題点】
個々の科目について,まだ十分な内容が記載されておらず,内容にばらつきが見られる。
【問題点に対する改善方針】
教員によるシラバスの内容のばらつきについては,引き続いてシラバスの主旨の徹底と記載内容の精
粗をなくすように努める。
・学生による授業評価の活用状況
【現状】
個々の教員に授業改善アンケートの結果の集計と学生の個票がフィードバックされている。集計表か
らは学部や全学と比較した各自のポジションがつかめ,また個票にある自由記述欄から個々人の感想・
評価などを知ることができる。学生への公表は集計されたものにかぎり行っている。
【長所】
アンケートの実施によって,個々の教員の授業への取組み,成績評価の公平性への向上が顕著にみら
れるようになった。
【問題点】
授業改善アンケートの項目の精査,自由記述欄の設定の有無,教員あるいは外部に対する開示の方法,
集計結果の取り扱い等が適切であるかどうかの検討が必要である。また,アンケート実施時に,ふだん
は出ていない学生がたまたま出席して回答するといったケースがみられ,それへの対応も考慮すべきで
ある。
【問題点に対する改善方針】
アンケート項目については,あまり意味のないもの,わかりにくいものを削除ないし改良するなど本
学の教員研修(FD)委員会と連携して改善を行う。また,上記の問題点で指摘したような学生への対
策については,記名制,あるいは一定回数の出席者に限定するなど,回答の正確さを実現させるための
方策を検討する。
また,アンケートの集計結果の分析をさらに精密に行なう必要があり,加えて結果に対する評価,集
計の保存などについても検討する。なお,将来的には全科目に対する授業改善アンケートの実施につい
て検討を行う。
・FD活動に対する組織的取組み状況の適切性
【現状】
全学組織である「教員研修(FD)委員会」が組織的取組みを行い,各学部はその方針にしたがって
いる。本学部では教育目標の設定とそれを達成するためのカリキュラムの検討・改革を継続的かつ組織
的に行っている。また,シラバスの公開,GPAの導入,TAの導入などもすでに実施している。2004
年度からは学生による授業改善アンケートを導入している。また,全学的な取組みである教育に関する
GPプログラムに積極的に応募している。
【問題点】
FD委員会は現在,大学にのみ設置されているが,学部にも設置すべきであり,それを中心にした授
業改善のための報告会を行うことが必要である。
【問題点に対する改善方針】
第3章 政治経済学部 -19-
/256
今後は,現行のFDをさらに推進させて,個々の授業の内容が学部カリキュラムの意図する教育目標
に到達すること,つまりカリキュラムの「実質化」を推進していく。
・FDの継続的実施を図る方途の適切性
【現状】
前項で記述したように,すでに全学組織である「教員研修(FD)委員会」は学長のもとに発足し,
継続的に各種FD活動が実施されている。それにしたがって,本学部でも教育目標の設定とそれを達成
するためのカリキュラムの検討・改革を継続的かつ組織的に行っている。また,これらの実施とともに,
シラバスの公開,GPAの導入,TAの導入などによって,良質な授業の提供を図り,他方,2004 年度
から実施されている学生による授業改善アンケートによっても個々の教員の授業内容の向上を図って
いる。
【長所】
FD委員会への積極的参加によって,教員の授業への取組みがさらに向上している。また,アンケー
トの結果がフィードバックされたことにより,教員自身も自己の授業内容を客観的に診断できるように
なった。
【問題点に対する改善方針】
授業改善アンケートについては,その集計結果の分析,評価方法などの検証が必要である。
・学生満足度調査の導入状況
【現状】
授業改善アンケートを中心に履修学生の授業に対する評価の回答を得ている。2005 年度に新カリキュ
ラム構想委員会が現行のカリキュラム(たとえばコース制などについての)に関わるアンケート調査を
各学年を対象に行った。
【問題点】
アンケート項目の内容について検討が必要である。現行の内容には改善する必要のあるものが見られ
る。また,自由回答についても質問内容に画一的な面が見られる。
【問題点に対する改善方針】
評価項目の精査,自由記述欄の設定の有無,教員あるいは外部に対する開示の方法,集計結果の取り
扱い等について検討の必要があり,現在,新カリキュラム構想委員会において具体的検討を行なってい
る。
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みは導入していないが,政経同窓会開催時
に合わせて,ゼミナール発表会を実施している。卒業生に対して在学時の教育内容・方法について評価
させるには校友会と連携したシステムが必要であるが,現状ではそうした制度化への動きはない。その
実現に向けては基本的方針を明確にする必要がある。
・雇用主による卒業生の実績を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
雇用主による卒業生の実績を評価させる仕組みは導入していない。ただし,現在,実施している企業
インターンシップとの関係からいえば,その期間についての研修生(学部学生)の勤務評価は重要であ
り,それについての一定の評価基準の制定の実施にむけた検討は急ぐべき課題であり,インターンシッ
プ委員会で継続的に審議している。
・教育評価の成果を教育改善に直結させるシステムの確立状況とその運用の適切性
【現状】
従来より学部の教育目標の設定とそれを達成するためのさまざまな検討・改革を学部執行部をはじめ
としてカリキュラム検討委員会,学部教育振興プロジェクト委員会などで継続的かつ組織的に行ってい
第3章 政治経済学部 -20-
/257
る。すでに記述して来たように,学生による授業改善アンケートの実施によって,授業評価のフィード
バックを実現させている。
【長所】
改善は不断に行われなければならないが,アンケート実施は授業内容の改善に対する大いなる刺激と
なっており,その集計結果は教員個々へフィードバックされ,客観的資料として自己の授業への取組み
に対する重要なデータとなっている。
(授業形態と授業方法の関係)
【目的・目標】
本学部は従来から大規模授業の改善に取り組んでいるが,そのモデルとして1,2年生を対象とした
教養演習,3,4年の2年間で実習している卒論演習での少人数授業を位置づけている。また,語学授
業も 40 人体制で臨んでいる。しかし,すべての授業を少人数で行うことは,履修形態上無理であり,
たとえば大規模授業を最終的には 250 人程度に縮小することを目標としている。しかし,その実現には
コマ数の増加と非常勤講師を増やなどの対策が不可欠となる。
・授業形態と授業方法の適切性,妥当性とその教育指導上の有効性
【現状】
大規模授業を削減するために,履修者数が 400 名を超える授業については複数の授業に分けるなどの
対策を講じている。それによって,大人数による授業は減少傾向にある。また,本学部では少人数のゼ
ミナール教育の実施に力を入れており,1・2年生を対象とした教養演習,3・4年生を対象にした卒
論演習を設置しており,常時,100 以上の演習が開講されている。なお,ゼミナールにおける卒論指導
では,学生のテーマの設定,文献資料の収集などをアドヴァイスするとともに,論文指導では論理性,
展開性など細かな指導を行っている。また,フィールドワークを課しているゼミナールもあり,理論系,
政策系,地域行政系などのゼミナールとともに,本学部のゼミナール構成の多面性を示した内容となっ
ている。一方,外国語教育については,学生のニーズに対応するためにいずれの外国語も第一外国語と
して選択できるようにし,学習効果を高めるため,すべての外国語の教育に半期履修制を導入している。
さらに,指定クラス以外の英語の授業を内容やレベルによって選択できるようにした。英語力の集中強
化プログラムとしてACEを設置した。
【長所】
多様なゼミナール構成は,学生の選択肢を豊富にしている。また,語学教育でも第一・二外国語の区
別を無くし,選択の幅を広げたことにより,学習意欲を向上させる効果をあげている。
【問題点】
語学のしばりをなくし,選択肢を増やしたことにより,ドイツ語,フランス語などの選択が激減し,
中国語,スペイン語などの特定外国語への選択が集中する傾向が顕著となった。
【問題点に対する改善方針】
学生の需要に応じた少人数教育の実現は急務のことであるが,それには大規模授業の分割,非常勤講
師の増員などの予算的措置が必要である。また教室の確保など,他学部との連携も不可欠である。これ
については,本学部の「年度計画書」に基づいて改善を図っていく。
・マルチメディアを活用した教育の導入状況とその運用の適切性
【現状】
本学はわが国の大学でもっとも先進の情報環境を有しており,さらにOh-o!Meijiシステム
を基盤とした最先端のクラス・ウェブと学生3万5千人個々人のポータル・ページを運用している。学
生はあらゆる教育情報と大学生活情報をこのシステムから取得できる。本学部は,本学の中でも教員の
利用が最も高い学部であり,学生も約7割が活用している。また,上記のシステムについては教員の多
くが利用しており,授業でも積極的に活用しているほか,履修学生へのメッセージ,レポート提出など
の情報を常時,ポータル・ページに掲載している。
【長所】
第3章 政治経済学部 -21-
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Oh-o! Meijiシステムの導入により,学生・教員の双方向による情報の取得,伝達が円滑に
なった。
【問題点】
正確な情報の伝達,学生・教員の双方向性をさらに進めるためには,さらに多くの教員の参加が不可
欠である。また,教員個々人のもっている情報の量と質をこのシステムにどう活かしていくかも問題で
ある。
【問題点に対する改善方針】
Oh-o! Meijiシステムが,今後一層改善され,操作等が改良されれば,利用する教員は増加
すると思われる。そのためにも関係部署への働きかけとともに,システム改良のアイディアも提供して
適切な運用を行っていく。
・「遠隔授業」による授業科目を単位認定している大学・学部等における,そうした制度措置の運用の
適切性
【現状】
本学部では,教育の基本は対面教育にあると考えている。そのため,教育効果の十分に検証されてい
ない「遠隔授業」の導入は考えていない。また,IT環境の利用は,あくまでも「支援システム」と位
置づけている。対面教育の優れたところは,学生・教員がともに直接的に情報を共有でき,疑問等を即
座にぶつけることができる点にある。相手の目を見て授業を行うことは幼児教育からはじまり,大学あ
るいは大学院教育において最も重要な点である。
(3年卒業の特例)
【目的・目標】
3年卒業については,その利点,難点ともに精査する必要がある。現時点では,大学院進学を条件と
して飛び級制度の導入を検討しているが,制度として「3年卒業」特例を認めることは現時点では考え
ていない。
・4年未満で卒業を認めている大学・学部等における,そうした制度措置の運用の適切性
【現状】
本学部では 4 年未満での卒業は認めていない。
(3)
国内外における教育研究交流
【目的・目標】
本学部は3学科を擁しているが,とりわけ政治・経済両学科には国際関係を専門とする教員が多い。
また,外国文学を専門とする教員も研究対象としている当該国と密接な関係を持っている。それゆえ,
本学部では国際交流の推進は自明のことであり,国際的視野にたっての教育・研究を大きな柱とし,目
標としている。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の適切性
【現状】
本学部では,国際交流センターを中心として学生交流・学術交流を推進している大学と連動した対応
を行っている。たとえば,2002 年に学長の下に「国際協力支援委員会」が設置され,主として公的機関
による発展途上国への援助活動に協力する体制が確立されたが,本学部では 2001 年からの3年間にわ
たり,延べ5名,ラオス国立大学,ラオス国立行政学院に専任教員を派遣し,大きな成果を上げた(J
ICA,国際交流基金)
。さらに,2003 年度には,ラオス人民民主共和国ピマソン教育大臣が本学の招
待で来日し,本学部を中心に大学での教育・研究・運営につき研修を行った。
このほか,国際交流センターの招聘プログラム(短期・長期)を利用して,過去3年間に延べ5名の
外国研究者が本学部で講義を行っている。また,教員個々についても教育・研究交流は盛んに行なって
おり,本学部の専任教員は,昨年度実績で 30 件以上の国際学会での発表等が行われている。
学生の交流レベルでは,本学部を基礎とする大学院(政治経済学研究科)で,過去3年にわたって 10
名のマレーシアからの政府派遣留学生(博士前期課程)を受け入れ,英語による講義を受講している。
また,2003 年度からはJICA委託を受けて,エジプト,カンボジア,エチオピア,タンザニアから4
第3章 政治経済学部 -22-
/259
名の留学生を博士前期課程に受け入れた。講義は英語で行われている。マレーシア政府派遣留学生,J
ICA委託留学生のいずれも「専修コース」に在籍し,『研究報告書』(リサーチ・ペパー)を提出し,
所定の口頭試問に合格すると学位(修士号)が授与される。これらの活動は学部の教育研究にも大きな刺
激を与えている。
【問題点】
教員の外国派遣,研究交流に比して,留学生の受け入れは十分とは言えない。また,本学部の学生の
海外留学も積極的に支援する体制が必要である。
【問題点に対する改善方針】
国際交流については,教員の個人的な努力に頼る部分が依然として大きい。学生交流・学術交流につ
いては,国際交流センター等の制度は整備されているが,これに関わる業務は事務的内容だけでなく,
教員のコミットメントを多く必要としている。この意味で,ある一定期間,教員が専任で国際交流に対
応する体制を講じなければ,飛躍的な発展を見ることは難しい。また,留学生の受け入れも,大学全体
として整備を充実させるなどの取組みが必要であるが,これについては国際交流センター等と連携を図
りながら,本学部の「年度計画書」に基づいて改善を図る。
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
【現状】
学生の交流については,「協定校」及び「認定校」制度(提携校での修得単位の認定)の利用によっ
て,学生は標準修業年限内に卒業することが可能となっている。本学部の学生もこの制度を利用して留
学している。一方,学術交流については国際交流センターが本学教員の推薦による短期・長期招聘を実
施している。
【問題点】
「協定校」とは本学と学術交流協定を締結している大学のことであり,「認定校」は協定校以外で本
学が相手校での単位修得を認定している大学のことである。協定校の場合,授業料は相互に免除される
が,認定校だと学生は本学と相手校の両方の学費を支払わねばならず,それが障害となって認定校への
留学は頭打ち状態にある。一方,協定校についても,日本の物価高と滞在費(宿泊施設費用)の負担が
障害となって利用する留学生少ない。また,学術交流は,短期・長期のいずれの条件も他大学と比して
高い水準にあるが,海外の研究者の場合,サバティカルの場合を除けばキャリア・ディベロプメントの
関係もあり,招聘の条件整備を向上するだけではその交流は促進されず,全体的な改善が必要である。
【問題点に対する改善方針】
学生の交流を促進するためには,たとえば認定校留学での学費減免措置をとるといった思い切った措
置が必要である。また,提携校からの留学を促進するためには,宿泊施設(寮の整備あるいはホーム・
ステイ制度の確立)の整備が不可欠である。さらには,日本語講義にくわえて英語による講義も準備す
ることが必要となる。
学術交流については,大学みずからが特定の研究課題を設定し,それに参加する優秀な海外の人材を
一定期間集めるといったプロジェクト方式をあらたに考えてみる必要がある。こうしたプロジェクトを
通じて研究成果が発信されれば,大学の国際的認知も高まると同時に,多くの研究者が集まってくると
考えられる。この意味で,様々な外部資金の導入も考えるべきである。これらについては,国際交流セ
ンターを中心とした全学的な検討が必要であるが,本学部の「年度計画書」に基づいて具体的な改善を
図る。
・外国人教員の受け入れ体制の整備状況
「第5章.教員組織における外国人研究者の受け入れ状況」参照
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
【現状】
現在,知財センターが全学的な教育研究成果の外部発信基地として支援体制を構築している。また,
個々の教員も学会誌,一般メディア,研究所紀要,
『政経論叢』などに研究成果を発表し,
『政経フォー
ラム』などにおいて学部教育の成果を外部発信している。
第3章 政治経済学部 -23-
/260
【長所】
海外の研究雑誌への投稿も増えている現状は,本学部のさらなる研究の質的向上に貢献している。
第3章 政治経済学部 -24-
/261
4-1.文学部
(1) 教育課程等
(学部・学科等の教育課程)
【目的・目標】
「充分な専門知識を身につけた幅広い教養人の育成」という基本的理念に則り,「人間とは何か」と
いう問題に多角的に取り組むことが本学部の創設以来の目標である。この問題の究明を,文学(文学科),
歴史・地理(史学地理学科),そして個人,社会双方に立脚する臨床知(心理社会学科)という各方面
から行えるマインドの形成が,本学部教育課程の目的である。
知の共有と革新をもって社会に資することを目標とする大学教育は,確立された学問的基盤に則りつ
つ,同時に社会の変革に反応し,将来のビジョンを示すことが重要である。そのために,本学部は,受
け取るだけではなく,能動的に貢献できる「個」の育成を目指している。学生個々のキャリアビジョン
に直結した幅広い能動的実践を,人文科学という多様な学問の場で行うことができる環境の確保・形成
が,本学部教育課程構築の主眼である。
・学部・学科等の教育課程と理念・目的並びに学校教育法第 52 条,大学設置基準第 19 条との関連
【現状】
本学部は,徹底した少人数クラスにおける実践教育を通じて,上記の目標を実現している。この基本
方針は変わらないだろう。一方で,2002 年度に心理社会学科,また,2004 年度には文学科内に文芸メ
ディア専攻を新たに設置している。新学科はカウンセリングマインドの形成,新専攻はジャーナリズ
ム・出版・創作を志す者の育成をキャリアプラン上の重要なゴールとして設定しており,従前の各学科・
専攻と同様,十分な専門性を備えた現場知・実践知教育を指導の核としている。また,本学部では 2004
年度より基本計画委員会を発足させ,2008 年度大改革というタイムテーブルの下,学部内での議論をリ
ードしている。
【長所】
現場性・実践性を知的,道徳的及び応用的能力の要として維持するというこの方針は,これまでも成
功を収めてきたし,これからも維持していかねばならない。共通選択科目の幅を大きく認めることによ
り,3学科の有機的関連と幅広い教養形成の機会を提供しているのも,教育課程の幅と柔軟性を確保す
るためである。
新学科・新専攻は,社会の新たなニーズにこたえている。これは,受験生の牽引力の増加として,数
字の上でもあらわれている。特に新学科において,心理学と社会学の両アプローチが,臨床知という観
点の下,有機的にカリキュラムとして提示されている点は評価が高い。
また,学部改革を協議する基本計画委員会では,慎重に教員の同意を探りながらも,大胆な改変に向
けて原案が提示できそうである。
【問題点】
現在の高等教育において「幅広い教養」と「専門性」との関連性は,ますます大きな論点となってい
る。また,社会の急激な変化に鑑み,知的体系の再組織化が絶えず進行しているという事実も無視でき
ない。
【問題点に対する改善方針】
基本計画委員会では,教員の研究成果という知的資産を十全に活用できるよう,現在の専攻制を見直
し,カリキュラム・コース間の有機的な連携を学生一人一人に対して提案・指導できる体制を目指して
いる。そのためのコア科目絞り込みも,同委員会で検討されてきた。この委員会での計画案を元にして,
委員会を改組し,新たに改革実行委員会として 2008 年度大改革のタイムテーブル通りの移行を目指す
方針である。
・学部・学科等の理念・目的や教育目標との対応関係における,学士課程としてのカリキュラムの体系
性
【現状】
第3章 文学部 -1-
/262
各専攻・コースが立脚する学問的基盤に立った実践教育が行なえるように,一方では1年次から概論
科目を設置して各専攻・コースでの基礎固めを行うとともに,他方では1~3年次において少人数の演
習を徹底して実践の機会を確保している。これを両輪とすることで,4年次必修の卒業論文において
個々の学生が各自の成果を形にできるようになっている。
各学科の授業のほとんどが他学科にも開かれている。さらに,2004 年度の新カリキュラムでは,多く
の科目を半期化し,専攻必修単位の多かった文学科の必修単位数を減らし,他学科の授業や共通選択科
目がより履修しやすくなっている。
【長所】
各専攻・コースの専門性と横断的教養性が,学士課程に求められる実践知育成という観点の下,両立
している。
【問題点】
専門性と横断性の有機的バランスの確立は,学士課程構築において不断の見直しを迫られる課題であ
る。実際に,各専攻・コースに配分された学生が,それぞれが課せられる必修科目に,どの選択科目を
有機的に組み合わせて,自分の目指すキャリアを実現するべきか悩むという状況が一部で生じている。
短期的には,専攻する分野から離れすぎないよう,履修科目登録上の指導を充実する必要がある。中
期的には,(1)完全セメスター制の実現による選択幅の拡大,(2)コア科目の学部全体での絞り込みによ
る,専攻軸の明確化,そして,(3)学生が明確な指針の下,さらなる目的意識を持って登録科目を選択
できる有機的な課程再編が課題である。
【問題点に対する改善方針】
短期的問題への対処として,2006 年度より履修科目登録指導者の枠を,助手並びに大学院生TAにま
で拡げ,学習支援室でパーソナルな指導ができるようになった。またガイダンスも 2006 年度より量的
に増加する。
中期的問題点に対しては,完全セメスター制は 2008 年度のカリキュラム大改訂で対応するという教
務課題委員会での合意ができており,学部で実現できそうである。やはり 2008 年度を目途とするコア
科目の絞り込みと課程再編については,2004 年度から基本計画委員会が積み上げてきた議論をもとに,
2006 年度には改革実行委員会が具体的実行プランを作成する。組織内の合意を醸成し,各コースの個性
と重複を最大限に発揮・活用しながら専攻・コースを再編し,当学部の学士課程教育のあり方を再定義
する。
・教育課程における基礎教育,倫理性を培う教育の位置づけ
【現状】
分野によって差はあるものの,学問体系における基礎と,基礎教育という場合の「基礎」とは,必ず
しも合致しない。基礎教育はそもそも方法論と基礎知識の獲得から始めるべきなのか,それとも実践を
通じて醸成するべきなのかという教育論上の永遠の問題がここに存在する。たとえば,文献・資料を読
むために語学力は欠かせない基礎であるが,語学を文献・資料を読むための手段としてのみ教えること
は,言語運用能力を向上させるための教育方法として明らかに不十分であり,実際に不可能でもある。
学問的基礎と,基礎教育のあり方との関係は,学生層及び分野において多様性が際だつ本学部にとって,
特に大きな問題である。
学士課程教育を,(1)旧来の学問体系の伝授を主眼とする訓練指導型,(2)学問的興味を実践を通じて
醸成する啓発型,(3)興味が持てる以前に必要なスキルを補う治療型,に分けた場合,訓練指導型は大
学院教育に譲り,啓発型を指向しながらも治療型の必要性を等閑視もできないというのが,日本の多く
の大学の現状であり,当本学部も例外ではない。他方,当本学部の特徴は,他の文系学部に比べて知的
指向性が比較的明確な学生が多いという点にある。このような学生は,訓練指導型をむしろ好む傾向に
ある。
本学部学士課程は,教養科目,専門の基礎となる概論科目,そして語学科目を1・2年次に多く置く
という従来型の科目配置を取りながらも,議論と作文を通じて実践的に専攻対象にふれさせる演習を1
年次より積極的に導入している。これは具体例に基づく実践を通してしか,基礎的知性や倫理性の真の
啓発は行ないえないという確信に基づく。よって基幹実践科目における少人数制は絶対に維持しなけれ
ばならない。
リベラルアーツ主体の本学部の学士課程において,倫理教育を伴わない科目は基本的に存在しない。
第3章 文学部 -2-
/263
この場合の倫理性とはすなわちフットワークを惜しまない調査力と,その結果の共有と議論に端を発す
る批判力であり,それは学ぶ態度の醸成に直結する。
治療型教育を必要とする学生への配慮は,主に少人数教育並びに個別指導型の科目を多く置くことで
行っている。これにくわえ,2005 年度より本格化した学習支援室において,学生は授業教員,助手,T
Aから随時指導を受けられるようになっている。内容は語学,文献解読法から,履修登録科目の選択や
キャリアにまで多岐にわたっている。
【長所】
リベラルアーツを主とする本学部の科目も,一般教養科目であるなしにかかわらず,ほとんどが本学
部の学生全員に対して開かれており,その点では他学部と比べても恵まれた環境にある。本学部におけ
る基礎教育を実践的におこなう少人数教室制度も確保されており,演習科目においては特に充実してい
る。
【問題点】
概論等の講義科目や,実践的演習科目の配置は現在各学科や専攻の方針に委ねられている。よって,
各学科・専攻のコースそのものを本学部全体の文脈において再組織し,学生にとっても有機的な関連が
科目間に見て取れるようにしなければならない。
【問題点に対する改善方針】
科目の再組織は 2008 年度の大改革において行なう予定である。2006 年度には,この問題を取り扱っ
てきた基本計画委員会が改革実行委員会に移行する。学科・専攻性の大幅な見直しや,新コース・新プ
ログラム設置,副専攻制の導入などが,現在議論されている。
・「専攻に係る専門の学芸」を教授するための専門教育的授業科目と学部・学科等の理念・目的,学問
の体系性並びに学校教育法第 52 条との適合性
【現状】
文学科に設置している各専攻は次のような教育目標を掲げている。
○日本文学専攻
日本語による文学作品及び言語資料には,上代から現代まで 1300 年の長きにわたる歴史がある。
これらに厳密な読みと解釈をほどこすことを通じて,それぞれの時代の作品・作家・言語についての
理解を深める。さらに外国文学・演劇・日本史などの関連諸分野を学びながら,国際的・学際的な視
野からも,日本文学・日本語の位置づけを確認することで,個性豊かな,日本文学の教養に基づく魅
力ある人材を養成するのが,日本文学専攻の目標である。
○英米文学専攻
英米文学専攻では,(1)英語によるコミュニケーション能力(「読む力」,「書く力」,「話す力」),(2)
英語で発信されたコンテンツ(英米をはじめとする英語圏の文学,文化)を理解する力,語る力,ま
た,(3)英語という言語を分析・研究できる力(英語学・言語学)を学生が獲得し,向上できる環境
を用意している。どのセクションも初級から上級へと段階的なクラスを構成し,在学中に確実な能力
向上を期待できるように配慮している。
○ドイツ文学専攻
学生の「個を強くする」,これが明治大学のモットーである。そのもっとも有効な手段が,自国の
文化とは別の,新しい文化に触れることである。この専攻は,ドイツとオーストリア,スイス,リヒ
テンシュタインなど,いわゆるドイツ語圏の言葉や文化,特に文学,音楽,美術,哲学などを学ぶこ
とにより,視野を広げる手助けをすることをめざしている。なぜなら,学生自身と世界とをよく理解
する近道だと考えるからである。
○フランス文学専攻
フランス文化の形成過程を遡ってみると,古代ギリシア・ローマの影響だけでなく,東欧・アラブ・
アフリカ・東洋の諸国から様々な文化を積極的に受け入れて,多様な価値観を深めてきたことがわか
る。フランス文学専攻の理念・目標は,このような文化の特質を文学・思想・芸術の学問分野におい
て学生に教授し,多角的な視野から現代社会が提示する問題に対して,客観的に判断する能力を養成
することにある。
○演劇学専攻
劇(ドラマ)を通じて人間を考えることを専攻の教育目標とする。人間の文化の営みのうち最も古
第3章 文学部 -3-
/264
い伝統の一つである演劇を,日本と西洋の二つの視点から,歴史的理論的に学んでいく。現代にあっ
て,演劇は最もインターカルチュラルな文化形式となっており,演劇を学ぶことが単に舞台芸術を学
ぶことにとどまらず,異文化理解や文化交流の手がかりをつかむことにもつながることを目指してい
る。
○文芸メディア専攻
現代は,多様なメディア環境の中で人間存在が変容し,動揺している時代である。そのような時代
こそ,メディアの基底をなす文字言語に立ち返って,自己を見つめなおす必要がある。それには,何
よりも「読む力」と「書く力」が求められ,それに立脚してこそ発信者の視点,多様なメディアを意
識した視点が成り立つ。本専攻は,日本の言語及び精神・思想文化を中核として,古今東西の様々な
文芸や芸術及び批評理念に触れながら,その〈読み〉と〈文章表現〉の実践を通じて自己を探求し,
さらに広く世界に発信することを通じて,創造的な自己実現をめざす人間性豊かな教養人を養成する
のが目標である。
文学科は言語学方面を除けば,専門的な方法論の忠実なあとづけよりも,むしろ幅広い実践を通した
教育のほうが有効な場合が多い。そのため専門科目と一般教養的科目の境目は比較的緩やかである。特
に高度な専門性を必要とする科目については,大学院設置科目を学部生でも履修できるようにするなど,
意欲のある学生のニーズに応えられるよう,2004 年度より履修制度が改正された。
史学地理学科に設置している各専攻は次のような教育目標を掲げている。
○日本史学専攻
現代から過去を見ることは,過去から私たちの生きている現代を見ることでもある。日本史学専攻
の教育目標は,歴史を勉強することにより社会を見る目を養い,未来を作る想像力を養うことにある。
教育の場では,歴史書・古文書の解読や現地調査(フィールドワーク)を通して,史料(原典)の解
読力を養い歴史の現場を自分の目で実感することを大切にしている。こうして培われた探求心と知力
は必ずや未来を切り開く力となっていく。
○アジア史専攻
世界は,いま大きく変わりつつある。アジア史専攻では,アジアの歴史が持つ積極的な意味を学び,
かつその面白さに触れることを通じて,確かなアジア認識を身につけアジア世界と積極的に係わるこ
とのできる人材の養成を目指す。学生は,広くアジア各地の歴史と文化を学びつつ,それぞれが特定
の地域・時代を選択して,資料の読解力や多面的に考察する思考力を養い,それを卒業論文に結実さ
せていく。外国語の修得に力を入れており,中国語や朝鮮語・アラビア語・欧米語も授業に活用して
いる。
○西洋史学専攻
西洋史学専攻では,歴史的見地から異文化理解を深め,他者の人格や個性を尊重しながら,自己を
正しく表現できる能力をはぐくむことを教育理念としている。そして,グローバリゼーションや情報
化が進む現代社会にあって,学生一人ひとりが世界に対する幅広い知識や歴史について深い教養を身
につけ,情報の氾濫に溺れることなく,積極的に自ら思考し,創造する力の育成を教育目標としてい
る。
○考古学専攻
考古学とは,過去の人類が遺した遺蹟や遺物を様々な視点と方法によって検討し,自らの手で過去
の歴史を組み立て,さらには,過去を学びながら,現代社会の在り方を探る学問分野である。考古学
を軸としながら広く学び,社会人としての教養を身につけ,現代社会に生きる確かな力を養うことが
目標である。また,考古学専攻のユニークさは,教室だけでなく,遺跡の発掘調査や出土資料の整理
活動に参加することを通して,教員や大学院生を含む,年齢や学年を越えた人間的ふれあいを重ねる
点にある。
○地理学専攻
地理学専攻の目標は,学生に様々な情報を読み解く力・用いる力,他者の考えを理解する力,そし
て自分の考えを伝える力を身につけてもらうことである。そのために,まず,自然・人文・社会の幅
広い領域を学ぶことにより,多様な視点と発想を得てもらう。さらに,フィールドワークに積極的に
出向くことにより,五感を使って独自の視点から斬新な発想を得てもらう。そして,ゼミや卒論の場
で仲間と議論することにより,他者の考えを受け入れ,自分の考えを主張する能力を培ってもらう。
地理学専攻のモットーは,「歩く,観る,考える」である。
史学地理学科は,各専攻ごとに独自の方法論に基づいた専門科目を講義と演習両面において用意し,
一般教育の基礎のもとに体系的に専門性を追求できるようにカリキュラムが組まれている。また大学院
設置科目の学部生に対する開放は,文学科と同様である。
第3章 文学部 -4-
/265
心理社会学科に設置している各コースは次のような教育目標を掲げている。
○臨床心理学コース
1・2年で身に付けた,社会学的マクロな視野と心理学的ミクロな視野の二方向から人間を理解す
る力を基礎として,3年からは臨床心理学コースとして,より専門的に臨床心理学的な見方や対処法
を学び体得することを目的とする。その際,臨床心理士を目指す学生に対して基礎的な教育・訓練を
提供するだけでなく,より一般的に職場や家庭などにおいても活用できるように,臨床心理学的素養
を身に付けるための教育・研究をも行う。
○臨床社会学コース
現代社会での個人化は,人と人とのつながりを希薄にし,社会を暮らしにくいものにしている。市
民活動やボランティア,NPOなどの重要性が解か説かれるゆえんである。臨床社会学コースでは,
これらの問題に正面から取り組み,対応する力を養う。具体的には,水俣病患者たちの共生,環境に
優しいリサイクル型社会,そしてそれらを実現するための互酬的関係をつくり出すためのソーシャ
ル・キャピタルなどについて,市民活動の現場と教室での学習を行き来しつつ学び,問題対応力を身
につける。
心理社会学科においては「木を見て森も見る」という創設以来の姿勢をカリキュラムに活かしている。
よって1・2年次においては心理学と社会学を等分に履修することを学生に求めている。また「人間学」
等,他学科の教員が担当する科目を必修科目に指定し,他学科との連携を確保している。3 年次からは,
心理学と社会学両方の知に立脚した上で,臨床心理学コース,臨床社会学コースに学生を分け,専門的
な実習科目を重点的に配置し,実践を通した臨床知の獲得を可能にしている。
「人間とは何か」の究明を各学科で目指している本学部は,基本的にリベラルアーツ的指向性を有し
ている。各専攻並びにコースにおいて求められる語学,方法論,専門的技術並びに知識の教育は現在の
カリキュラムでも概ね問題ないが,リベラルアーツである以上,幅のひろさがそのまま専門性に反映す
ることは言うまでもない。その点においても,選択科目の幅広い配置という配慮がなされている。
【長所】
リベラルアーツとしての多様性並びに,少人数教育による実践性の追求がなされており,専門教育に
おいて有効に機能している。大学院科目との連携性も 2004 年度より改正された履修制度により,大幅
に改善した。
【問題点】
先述の通り,本学部における基礎教育と専門教育との境目は,単純な段階的思考を許さない。また,
たとえば文学科では専攻が言語ラインによって区分され,専門科目として各専攻が指定している必修科
目数が多すぎる感が否めないなど,有機的流動化をカリキュラム・コース間で進め,現在の他学科との
連携を促進する必要があるだろう。同時に,一般教養科目を主に担当する教員を積極的に専門教育に活
用することが求められる。
【問題点に対する改善方針】
リベラルアーツである以上,「専攻に係わる専門の学芸」を教えるにあたって,カリキュラムの適合
性は,最終的には実践の場ではこれらがどのように有機的に活用するかにおいてのみ下されるべきだろ
う。その点において,さらなる柔軟な有機性を目指す余地はある。先述の通り 2008 年度の大改革に向
けて作業を行っている。
・一般教養的授業科目の編成における「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い,豊かな人間性を涵
養」するための配慮の適切性
【現状】
共通選択科目を 24 単位以上(心理社会学科の場合は共通選択科目と学科選択科目Bを合わせて 24 単
位以上)を必修とすることで,自専攻の専門科目とは異なる領域を学ぶよう学生に義務づけている。1995
年度より開設された「日本の伝統と文化」科目では,能・狂言・連歌・俳諧などの日本の伝統文化を教
えている。また必修の英語授業ではビデオを使った歴史テキストを全学部統一教材として採用し,語学
力のみならず歴史知識を深められるようにしている。
【長所】
リベラルアーツらしい,幅広く深い教養,総合的判断力醸成,豊かな人間性の涵養に対する配慮が行
第3章 文学部 -5-
/266
われている。
【問題点】
2004 年度からの半期化をさらに進めることで,授業選択の幅を拡げることは,前述の通り短期的課題
である。しかし,共通選択科目に関しては学生の選択に委ねられているため,学生が偏った領域しか選
択しない場合がある。また興味を知の体系に位置づけることができるように,学生個々に対してよりき
め細かな指導を行う余地はある。
【問題点に対する改善方針】
知の体系への位置づけには,科目履修登録の際,あらたに学習支援室の助手・TAを活用した,一層
きめの細かいケアを 2006 年度より開始する。
・外国語科目の編成における学部・学科等の理念・目的の実現への配慮と「国際化等の進展に適切に対
応するため,外国語能力の育成」のための措置の適切性
【現状】
全学科とも英・独・仏・露・中・西及び朝鮮語から2言語の習得を義務づけ,単に実用のための語学
ではなく,広く教養を身につけるための語学教育を目指している。2005 年度からは本学部の主導により
学部間共通外国語科目にアラビア語も加わった。
英語では大人数授業を必修とし,歴史テキストを統一教材として歴史知識を深めるとともに,減らし
たクラス数の分で少人数クラスを新設し,やる気のある学生には少数徹底指導が受けられるようにして
いる。また,英語は 2004 年度より学部間共通外国語科目を本学部の単位として読み替えることを認め,
学生のより幅広い授業選択を可能とした。語学面では,英語科目でTOEIC対策授業が導入されてい
る(上級英語科目)。聞く・話す・書くの各スキルにおいては,特に英語において少人数英語クラスを
設置しており,意欲のある学生のニーズに応えている。
英語以外の未習外国語について,1年次に基礎段階教育を置き,2年次より目的に従って内容を多岐
化している。さらに,2005 年度発足の学習支援室は,外国語文学系の助手並びにTAによる個別的語学
相談対応の場となるだけではなく,語学教材をもとにしたディスカッションによる学生間の相互啓発の
場となっている。
【長所】
語学の幅は十分確保できている。クラス規模の調節も,授業の種類別に細かく行えている。また,語
学科目においても授業プログラム方針を学生に明確に提示することが重要である。語学教育のシラバス
は 2005 年度より一気に充実した。新入生向けの語学選択用パンフレットも配布し,語学ガイダンスを
含めて,本学部が提供する語学授業について,学生への周知が徹底されており,科目選択決定の際の十
分な指針となっている。
【問題点】
本学部の語学教育は,専門的文献講読の準備教育として従来機能してきた。しかるに,未習外国語に
おいても,「読む」にとどまらない外国語運用能力が求められているという現状がある。実際の授業面
でもこれに対応しているということを学生に周知する必要がある。同時に学生が嫌いがちな「読む」と
いう行為の重要性を,教え込む必要があるだろう。
文学科と心理社会学科は外国語の必修単位が 16 単位(1言語8単位)であるのに対し,史学地理学
科は 12 単位(1言語6単位)となっており,学科間に不揃いが生じている。1言語6単位というのは
外国語の習得に必ずしも充分とは言えず,単位数も含めて見直しが求められる。その際,特に英語にお
いてはスキル別・習熟度別のクラス編成が可能となる体制が現在時間割の固定化促進により整いつつあ
るので,これを実現することが短期の課題である。また,スポーツ特別技能枠で入学した学生は,語学
においてつまずくことが多いが,これに対する目に見える方策が,学習支援室業務以外にはとられてい
ない。
【問題点に対する改善方針】
「読む」以外の外国語運用教育について,シラバスをより充実させ,学生に外国語教育体系を理解さ
せると共に,その中で「読み」の重要性も強調していく。語学必修単位数の調整は,教務課題検討委員
会で引き続き議論する。中期的には,語学を集中的に学べるプログラムを 2008 年度より発足させる方
第3章 文学部 -6-
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向で,基本計画委員会の議論がまとまった。これをうけて 2006 年度より改革実行委員会が,手順を審
議する。
半期制を生かせば半期集中型の語学授業の導入や,再履修者のための基礎クラスを後期に置くことな
ども可能になるので,2008 年度には語学科目も半期化し,効率的な授業運営を目指す方針である。スポ
ーツ入学者用英語は,学部横断型のプログラムが 2006 年度より発足する。本学部も授業を提供し,こ
れに参加することが決定済みである。さらに,次年度以後,多言語にも拡大するよう検討を進める。
・教育課程の開設授業科目,卒業所要総単位に占める専門教育的授業科目・一般教養的授業科目・外国
語科目等の量的配分とその適切性,妥当性
【現状】
2004 年度からのカリキュラムより,卒業所要単位数 128 単位の配分が変わった。学科間の格差は縮ま
り,学科内の不統一もなくなって,文学科の学生もより幅広く授業を取れるようになった。
文学科
専攻必修科目 38 単位,専攻選択科目Aが 12 単位必修,合わせて最低 50 単位は専門科目単位であ
る。一般教育的授業である共通選択科目は 24 単位,外国語が 16 単位,保健体育科目が4単位。さ
らに 12 単位は専攻選択科目か共通選択科目から履修することが求められている。
史学地理学科
専攻必修科目が 28 単位,専攻選択科目Aが 12 単位必修,合わせて 40 単位が専門科目であり,一
般教育的授業である共通選択科目は 24 単位,外国語が 12 単位,保健体育科目が4単位となった。
さらに 26 単位は専攻選択科目か共通選択科目から履修することが求められている。
心理社会学科
専攻必修科目が 34 単位,学科選択科目Aが 50 単位必修,合わせて 84 単位が専門科目であり,一
般教育的授業である学科選択科目B及び共通選択科目は 24 単位,外国語が 16 単位,保健体育科目
が4単位である。
【長所】
リベラルアーツ教育を行う本学部では専門と一般教養の区別は時に難しいが,量的配分は現カリキュ
ラムにおいて適切であると考える。
【問題点】
実質上,史学地理学科は専門講読科目等で語学面での単位数不足を補っているが,この点については
学部全体でさらに議論する必要がある。より大きな問題としては,リベラルアーツを旨とする本学部に
おいて,そもそも一般教養科目と専門科目を厳格に区別することがどれだけ現代の流動的な知の形態に
おいて有効なのかという根本的な議論を引き続き行なう必要がある。
【問題点に対する改善方針】
教務課題検討委員会並びに一般教育委員会が検討している。外国語科目の比重を高めた集中的コース
選択を可能にするなどの方策は,基本計画委員会の答申に盛り込まれる。2006 年度に改革実行委員会が
これの手順を審議する。
リベラルアーツにおける流動的な知の形態への対応策は,基本計画委員会において議論がなされた。
コース再編,副専攻制,新コース設置,学科再編も含めて,2006 年度発足予定の改革実行委員会の議論
を軸に,学部教員間の合意を形成しつつ,実行段階に入る。2008 年度が目安となっている。
・基礎教育と教養教育の実施・運営のための責任体制の確立とその実践状況
【現状】
本学部においては専門教育を行う教員の多くが基礎・教養教育にも携わり,基礎教育と専門教育の連
関に努めている。各専攻・コースの専門性と関連の強い基礎教育に関しては,従来通り専攻・学科の判
断にゆだねられている。一般教育委員会が,授業運営(兼任講師の採用案提案を含む)の責任を担うと
ともに,基礎教育としての一般教育の将来計画についても検討している。
【長所】
教員組織上,現状で基礎教育と専門教育の有機的連関が形成されている。また語学を含む基礎教育に
ついては,2004 年度より一般教育委員会が設置され,責任体制が明確になった。
第3章 文学部 -7-
/268
【問題点】
基礎教育の位置づけに関しては,学部全体でのコア科目絞り込みが 2008 年度大改革に向けての課題
である。
【問題点に対する改善方針】
主に基本計画委員会において,各専攻・学科の枠を横断する議論がなされた。改革実行委員会におい
て 2006 年度より実行準備に入る。
・グローバル化時代に対応させた教育,倫理性を培う教育,コミュニケーション能力等のスキルを涵養
するための教育を実践している場合における,そうした教育の教養教育上の位置づけ
【現状】
文学・歴史・臨床というどの方面をとっても,グローバルなコミュニケーション能力は,実践教育を
旨とする本学部において重要な位置を占めている。
グローバル化時代教育
文学では外国語の文献講読を扱うコースが多い。また,日本文学を,あくまで世界文学の中に位
置づけて,
「国文学」と呼ばないのも,明治大学の伝統である。このように明治大学の本学部は,国
際性をその本質に昔から含んでいる。一例を挙げれば「地域と文化」という授業は専任教員が自己
の専門領域について全学部の学生向けにやさしく語る授業であり,毎年受講生が多い。一方で先述
の「日本の伝統と文化」は,国際性の中で自らを定位するための授業として位置づけられている。
コミュニケーション能力教育
語学に関しては前述の通りである。また,心理社会学科では必修科目として集中授業によるワー
クショップ形態での「コミュニケーション技法」という授業をもうけている。またレポート作成力,
プレゼンテーション能力などは,主に少人数演習授業において育成を行っている。これに加えて,
PCの操作等は情報基礎教育科目が特別に全学的にもうけられている。2005 年度からはこれに学習
支援室でのケア&キュアが付け加わった。
倫理教育
リベラルアーツ主体の本学部において,倫理教育を伴わない科目は基本的に存在しない。特に演
習・実習科目において実践を通じた少人数教育を行っている。
【長所】
文化の多様性の認識については,リベラルアーツ主体の本学部において従来通りの教育で十分培われ
ているものと考える。
ドイツ語,フランス語教育は,特に専攻教育における語学教育の徹底により,全国的外国語スピーチ
コンテストにおいて優勝を含む入賞者を出すなど,着実に成果を上げている。文学科の独仏専攻は全学
的な海外語学教育プログラムのコーディネーターも努めている。それから本学部は特にドイツ文学専攻
主導によるイエナ大学,ウィーン大学との密接な学生交換,学術交流を積極的に推進している。本学部
主導による明治大学とウィーン大学日本学研究所間の「明治大学・ウィーン大学共同シンポジウム」は,
2006 年度に6年目に突入する。これにはドイツ文学専攻以外の教員も参加している。また日本文学専攻
は韓国の日本文学研究者を客員教授として招聘することにより,リベラルアーツのグローバル化に努め
ている。
少人数での実践的指導を旨とする本学部の倫理教育は,机上の理論にとどまらない倫理観を形成する
点において,どこにも劣らないという自負がある。
【問題点】
本学部では,グローバルな文化教育はすべての授業に盛り込まれているものの,それをグローバル教
育として学生及び外部に明確に提示することにおいて,まだ若干の修正が必要かもしれない。
コミュニケーション能力教育については,それに特化した授業が心理社会学科でのみ行われているが,
学部全体に開放できるだろう。しかしワークショップ形態の授業なので,人数上の制約はある。
【問題点に対する改善方針】
学部内の3委員会(基本計画,教務課題検討,一般教育)において,それぞれ議論をしている。
グローバル教育プログラムの明確な提示としては,全学規模で行われる英語による授業を含んだプロ
第3章 文学部 -8-
/269
グラムに本学部も積極的に参加する。
コミュニケーション能力教育は,心理社会学科の「コミュニケーション技法」授業をより多くの学生
に向けて開放するべく,人員面での追加配置を求めていく。また少人数教育の利点を活かした,各教室
内でのコミュニケーション能力教育上のノウハウを,多くの教員が共有できるように,FDを行ってい
く。これに関しても全学的な対応が現在進行中である。
・起業家的能力を涵養するための教育を実践している場合における,そうした教育の教育課程上の位置
づけ
【現状】
2004 年度より進路選択ガイダンスを内外の講師を呼んで開催している。ガイダンスにおいて経営学部
の講師などがベンチャー起業精神について解説・紹介をしている。また起業家的能力涵養を含む就職支
援プログラムを拡充し,なおかつ 2006 年度よりそれをパンフレットなどの形で学生並びに受験生に対
して明確に広報する体制が完成した。
本学部は他学部と比べても特に就職面で弱いわけではないという事実の認識を学生により徹底して
いくとともに,実践を通じた教育が就職一般のみならず,起業面においても絶対に有効であることを理
解してもらう必要がある。本学部の学生は企業家志向となると尻込みをするタイプが多いのも事実であ
る。学生の意識改革を目指している。
【長所】
学生の意識改革は着実に進行している。
【問題点】
進路選択ガイダンスの参加者が,まだ少ない。進路選択ガイダンスが単位化されていないことと関係
している可能性がある。しかし,教務課題検討委員会は,就職科目の単位化について現段階において否
定的である。本学の起業家能力涵養のためのプログラムは,インキュベーション・センターなど充実し
ているが,本学部の学生の関心はいまだ高いとは言えない。
【問題点に対する改善方針】
ガイダンス参加者動員のため,単位化は引き続き上述委員会で検討する。全学で立ち上がる就職・キ
ャリアセンターにも,本学部は積極的に関与していく方針である。いかなる場においても自己決定性と
自発性をもって仕事をする能力を開発するよう学部として努めるのは当然のことであるが,これに加え
て本学部が輩出した起業家の講師招請,インターンシップの拡充,起業面により重きを置いた就職講座
の単位化など検討する。
起業家的能力の涵養も含んだ本学部の就職支援体制は,2006 年度より明確に学生及び受験生に対して
広報できる体制が整ったので、これを有効に活用する。
・学生の心身の健康の保持・増進のための教育的配慮の状況
【現状】
体育科目がカリキュラムに取り組まれ,上述の配慮がなされている。一方,授業以外でも,クラス担
任制をとり,毎年4月にガイダンスを行っているのみならず,1年生より演習科目が存在し,そこにお
いて教員とパーソナルな接点を確保することで,学生の心身の健康保持・増進に努めている。また,常
時担当教員が,学生相談室において問題を抱える学生の対応に意を尽くしている。学生主催によるスポ
ーツ大会への支援も行っている。
【長所】
細かな配慮がなされている。
【問題点】
学生相談室は,現在需要に供給が追いつかない状況である。これは,全学的課題である。また,学生
相談室以外でも,教員が学生への心理面でのケアを充実できるよう,オフィスアワー制度などを明示す
る必要がある。
【問題点に対する改善方針】
第3章 文学部 -9-
/270
学生相談室の充実は引き続き全学的対応を求めていく。オフィスアワー制度の明示など,学生が教師
に相談しやすい環境の一層の整備が必要である。役職並びに教務課題検討委員会を中心とした検討が行
われている。
(カリキュラムにおける高・大の接続)
【目的・目標】
学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行させることが必要である。本学部においてはいくつか
の特記するべき考慮点がある。
1. 一般の学生の高等教育への移行。
2. 付属高校との関係。
3. 2007 年度入試より指定校推薦入試を行うにあたっての,指定校との関係。
4. スポーツAO入試からの入学生との関係。
これらの点において,すべて移行をスムーズに行えるようにするのが,カリキュラムにおける高大接
続の目標である。
・学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行するために必要な導入教育の実施状況
【現状】
1. 一般の学生の高等教育への移行
大学進学後に関しては,各専攻の概論科目や1年次の基礎演習が大学教育への導入授業と言えるが,
これらの教育方法は各専攻や担当教員の判断に委ねられ,学生の学力の多様化に応じきれているとは
言いがたい。語学面及び専門導入授業において習熟度が不足している学生に対しては,2005 年度より
学習支援室に専任教員,助手,TAを配置することで対応している。また,本学部のカリキュラムを
よく理解してもらうために,積極的に出張授業を多くの高校で行っている。
2. 付属高校との関係
付属高校にはドイツ語とフランス語の授業を設け,独文学専攻や仏文学専攻に進学しやすいよう配
慮をしている。2006 年度も付属高校の要請に基づき,フランス語を配置する。また,付属高校とは全
学的プレカレッジプログラムを通して,2005 年度より大学の基礎的な授業を付属高校生が履修できる
システムができあがった。2006 年度は付属高校生がフランス文学史を履修する予定である。
3. 指定校との関係
指定校推薦の対象となる高校は,現段階でまだ決定していない。先述の出張授業の際に,綿密に高
校教員サイドと連携を深めるほか,首都圏高校教員説明会,OB校長を招いての懇談会などで,カリ
キュラム改善の余地をこれからも探っていく。
4. スポーツAO入試からの入学生との関係
スポーツAO入試からの入学生の場合,諸事情で習熟度が不足している場合が多々見られる。本学
部では,他学部と同様,入学以前に課題を出し,これを教員がチェック・指導するなどの入学前教育
を行っている。
【長所】
カリキュラムは,どの専攻・コースにおいて学問の基礎から始めるという体制をとっており,さしあ
たりカリキュラム上の整合性はとれている。また本学部は少人数教育を特徴としていることもあり,高
等教育への移行に関して教員の目が行き届きやすい。一方,学習支援室における支援体制も充実してお
り,幅広い学生に対して対応できている。
【問題点】
基礎教育と専門教育との関係という永遠の問題は,当然存在する。高等教育に求められる質そのもの
が変化しており,啓発型教育を目指しながらも治療型教育をも勘案せねばならない状況は,他の大学・
学部と同様であろう。
指定校推薦制度を導入するにあたって,これまで付属校にのみ開いてきたプレカレッジプログラムを,
その他の高校に対しても開放することを考える余地が生じてきている。スポーツ枠学生に対しては,彼
らのニーズにあったカリキュラム上の特別授業を設置すると共に,出席チェック及びそれに伴った学習
指導も不断に行う必要がある。
【問題点に対する改善方針】
第3章 文学部 -10-
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付属高校の授業についてはドイツ語とフランス語以外の開講も検討している。しかしこれはなにより
も高校側からの強い要請がなければならない。またプレカレッジプログラム授業を付属高校以外にも広
げられるかどうかは,付属校以外の高校教員との対話を強化し,その中から検討していく。
スポーツ枠学生のニーズに応じた特別授業は,2006 年より英語を皮切りに学部横断的に行うことがす
でに決定している。またやはり 2006 年度より,学習支援室への授業出席カードの提出をスポーツ枠学
生には義務づけ,それを通じて出席管理並びに不断のきめこまやかな学習支援を強化していくことも決
定済みである。
(カリキュラムと国家試験)
【目的・目標】
学部の性格上,厳密な意味での国家試験資格に直結したカリキュラムを持っているのは,本学部内で
は史学地理学科の地理学専攻のみである(測量士補資格)。しかしながら,国家試験資格ではない職業
資格に応じた大学院課程をも視野に入れたカリキュラム(臨床心理士,その他)は,他の専攻・コース
にも存在する。これらの充実を図ることが目的である。
・国家試験につながりのあるカリキュラムを持つ学部・学科における,受験率・合格者数・合格率
【現状】
史学地理学科の地理学専攻では,測量士補資格に対応した科目を設置している。この資格取得には,
地理学専攻の必修科目を修得していなければならない。資格取得後,会社に 1 年間勤務し,測量に関し
ての実習をこなすと,測量士資格が取得できる。
【長所】
資格取得を目指す者のニーズにこたえられていると考える。ひとたび卒業してから,この資格を取得
するために科目等履修生になる者も存在する。
【問題点】
規模が小さいために,上記資格の数的データが経年的に整理されていない。
【問題点に対する改善方針】
本学部として前述の数的データの把握を行う。
(インターンシップ,ボランティア)
【目的・目標】
インターンシップ並びにボランティアは,学生に在学中から社会活動に触れさせることによって,高
等教育の職業教育としての側面を強化することがその目的である。そのために,いわゆる一般的に捉え
られている意味でのインターンシップ並びにボランティアの枠組みにとらわれず,本学部の教育目標及
びカリキュラムに適した形で,学生に社会に触れさせるための制度を維持・促進していくことが本学部
の目標である。
・インターンシップを導入している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
全学的なインターンシップには参加しているが,単位は与えていない。また学部独自でのインターン
シップは導入していない。学部独自のインターンシップ受け入れ先開発と,インターンシップの単位認
定を教務課題検討委員会が 2005 年度において検討を行ったが,現状において単位化を積極的に促進で
きるような本学部独自の受け入れ先開発は不可能であり,よって単位化も時期尚早であるという結論に
達した。ただし,教職課程をとる学生の多い本学部においては,教育実習が事実上インターンシップに
相当することを看過するべきではない。これらの教育実習に関しては,実習学生が立てた授業計画等が
データ化され,他の学生の用にも供されている。また,心理社会学科の臨床社会学コースでは,演習授
業においてNPOなどでの実習が多く組み込まれている点も同様である。また考古学,地理学両専攻に
おける実習も,高密度の社会関与が求められる授業であり,インターンシップの性格を多分に有してい
る。
【長所】
第3章 文学部 -11-
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上記のように社会実習という意味でのインターンシップは有効に行えていると考える。
【問題点】
出版などの志望が多い本学部である以上,特に出版分野でのインターンシップ開発は必要かもしれな
い(特に文芸メディア専攻)。一方,本学部でもやはり多くの学生が,他の文系学部とあまり差異のな
い職種に就職する。しかしながら,学問分野の性格上,インターンシップの受け入れ先を開発できる教
員数が限られているのが現状である。この点においては,全学的な支援を要請する必要があろう。
【問題点に対する改善方針】
学部独自のインターンシップ受け入れ先開発にあたっては,特に臨床社会学コースに在籍する学生向
けのNPO派遣の可能性を視野に入れるべきである。主に心理社会学科の臨床心理学コース担当の教員
が,現在関わっている。
また,2006 年度で 3 年目を迎える文芸メディア専攻において,出版・メディア系でのインターンシッ
プが可能かどうかも,教務課題検討委員会で検討する。一方,全学的に 2006 年度よりスタートする就
職・キャリアセンターの活動に本学部も積極的に協力し,本学部学生に見合ったインターンシップを提
供できるように働きかけていく。
・ボランティア活動を単位認定している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
単位認定していない。単位認定導入を教務課題検討委員会において 2005 年度検討したが,現状の通
り,ケースに応じて欠席扱いにはしないという対応で十分であり,単位認定は行わないという結論に達
した。知の体系並びに社会の流動性に鑑み,ボランティア活動をカリキュラムにおいてどのように積極
的に位置づけるかは,これからも引き続き役職並びに教務課題検討委員会で議論していく。
(履修科目の区分)
【目的・目標】
教育目標「充分な専門知識を備えた幅広い教養人の育成」に見合った必修・選択の量的配分を確保す
ることが,主目的である。理想的には専門教育に必要な科目を必修科目として絞り込んで設定した上で,
幅の広い選択科目数をバランスよく配置するというのが目標となる。リベラルアーツ系の授業が多い点
を特徴とする本学部では,専攻・コース間の履修可能科目をできるだけ流動的に設定するという目標を
立てることで,幅の確保に努めている。
・カリキュラム編成における,必修・選択の量的配分の適切性,妥当性
【現状】
2004 年度からのカリキュラムでは,128 単位のうち文学科が専攻必修科目 38 単位,語学と体育 20 単
位を加えて,58 単位が必修科目となり,残りは選択科目で,ここには他学部履修も 22 単位まで含めら
れるようになった。
史学地理学科は専攻必修科目が 28 単位,語学と体育 16 単位を加えて,44 単位が必修科目,残りは選
択科目で,やはり他学部履修が 22 単位まで含められる。このように文学科と史学地理学科の差は縮ま
り,文学科の学生が授業選択できる幅は広がっている。
心理社会学科は 2002 年度カリキュラムから変更なく,専攻必修科目が 34 単位,外国語が 16 単位,
保健体育科目が4単位であるので,必修科目は 54 単位,残りが選択科目である。
【長所】
学科ごとの目標の違いもあるが,現状の配分は概ね適切であると考える。
【問題点】
専攻・コース毎に細分化されている本学部において,必修科目を多くすることで専門教育に十分機能
しうるカリキュラムを組もうとするのは分かるが,現状においてはそれが必修科目数過多の方向に機能
してしまっている。2008 年度に予定している大改革に伴う学部再編の際には,より一層コア科目を絞り
込む必要が生じるだろう。
史学地理学科の語学必修単位数 12 が果たして妥当であるかどうかは引き続き検討を要する。
第3章 文学部 -12-
/273
【問題点に対する改善方針】
コア科目絞り込みによるより有機的な知の再編成は,2008 年の大改革に向けて避けることのできない
課題である。これは基本計画委員会での検討をうけて,2006 年度より改革実行委員会が実現にむけて発
足する。
史学地理学科の語学必修単位数は,2008 年の大改革において見直しの可能性を含め,2005 年度に基
本計画委員会で検討してきた。2008 年度より本格的な語学集中プログラムの設置を提案する方針がすで
に決定している。
(授業形態と単位の関係)
【目的・目標】
各々の科目を具体的に検討し,それらのバランスを考えた上で,学生に対して履修の幅をできるだけ
制限することのない授業形態と単位設定を構築することが目標である。
・各授業科目の特徴・内容や履修形態との関係における,その各々の授業科目の単位計算方法の妥当性
【現状】
単位計算方法は 2004 年カリキュラム改訂でも変更なく,現行によれば語学と体育が通年2単位,そ
れ以外の科目は半期2単位である(ただし,演習と卒論は通年のみで,4単位)
。
【長所】
旧来からの方式であり,学生並びに教員の間に混乱を引き起こしにくい。
【問題点】
一部の科目が通年設定されていることで,学生の留学等のオプションを狭めている。通年2単位科目
の設定は,実際の授業のあり方,並びに特に語学を重視する本学部の特徴から考えても,もはや旧弊に
過ぎる印象がある。また単位数が少ないために,いかに必修科目として設けても,学生が語学・体育科
目を軽視する傾向が生じているのも否めない。またこれらの科目は,積極的に半期化を図ることで,学
生の選択の幅を拡げると共に,語学においては習得しうるレベルをはっきりさせることが必要だろう。
少人数環境における実践的教育を重んじる本学部では,演習や卒論はまさに基幹科目である。その点
でこれらの科目は学生の負担のわりに単位数が少ないと言える。これらも半期化した上で,授業の性格
に応じて運営することを考えるべきであろう。演習科目は授業時間が実質1コマに収まらないこともま
れではない。2コマ連続で半期に4単位とれるような制度も考慮する必要があるだろう。その際に,学
部を基礎とする大学院が充実している本学部の特徴を活かして,大学院科目との相互乗り入れを一層促
進することも考えるべきである。
【問題点に対する改善方針】
2008 年度のカリキュラム大改革まで,留学等のオプションをより拡げるために,留学の際の在籍条件
を緩和する方針はすでに決定済みである。通年2単位科目の改正は,制度上の可能性を見ながら,教務
課題検討委員会並びに役職において積極的に対処していく。これらの科目の 2008 年度における半期化
は,ほぼ方針として各部署を通じた確認がとれつつある。
卒論を含む演習科目の半期化並びに単位数変更は,やはり制度面での可能性を考えながら積極的に推
進する方針についても,やはり各部署で確認がとれつつある。これは,現状に即したより柔軟な演習科
目運営並びに単位認定を促進することになる。
大学院科目との相互乗り入れも,すでに 2004 年度より実現しているが,その単位数の拡大について
は,科目の性格と学生の習熟度を慎重に見極めながら,これからも推し進めて行くべく,学部と大学院
間で調整中である。
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
教育課程である以上,一定の幅と深さを兼ね備えた自己完結性を有していなければならないのは自明
の原理である。しかしながら学生の国際性の促進,並びに優秀な編入生の受け入れにあたっては,国内
外の大学等の単位を互換的に読み替えることは,学生の課程履修の便宜にあたっても必要である。この
必要性を満たすことが,単位互換・認定の第一の目的である。
同時に,課程の自己完結性を追求するあまり総花主義に陥るのは,愚かなことでもある。互恵性を機
第3章 文学部 -13-
/274
軸とした国内外の他大学との単位互換・認定を図ることにより,本学部の特色を明確にし,また他大の
人材をも活用することが,単位互換・認定のより発展的な目標となろう。
・国内外の大学等と単位互換を行っている大学にあっては,実施している単位互換方法の適切性
【現状】
海外の大学に留学した場合,留学先で修得した 30 単位を限度に本学部の卒業要件単位に置き換える
ことができる。留学先で単位取得した授業科目を,それに近い本学部の授業科目に読み替えて,単位を
認定する。同様の方法で編入生に対しても,それまで在籍した大学の単位を明治大学の単位として認め,
編入生が不利を被らないように努めている。また,2004 年度からは大学院との単位互換制度も導入,学
部の3年生以上は8単位を上限として大学院文学研究科設置科目を履修し,単位取得した場合は卒業に
必要な単位数に含めることができるようになっている。
【長所】
留学生並びに編入生が単位の認定において大幅な不利を被るという自体は生じていない。また,大学
院科目の単位認定は,大学院進学を志望する学生にとって大きな利点となっている。
【問題点】
通年科目がいくつか存在するために,通年科目の単位認定に際し,技術上の問題が生じることが時に
存在する。これは留学を促進するにあたっても好ましくない。また国内の大学との積極的連携による単
位互換・認定制度(いわゆる「授業交換」)は,まだ導入されていない。ただし,この点に関しては,
学部間ではなく大学間での慎重な条件の検討及び協働が必要とされるだろう。
【問題点に対する改善方針】
協定校単位互換を拡大する方向で,留学生の在籍条件を緩和する方針はすでに決定済みである。一方,
一定の制限内で国内の他大学の授業を履修し,本学の単位とする制度の導入も全学的に取り組むべき検
討課題である。しかし,これには各課程の教育目標そのものを深く吟味した上での検討・協働が必要で
ある。
・大学以外の教育施設等での学修や入学前の既修得単位を単位認定している大学・学部等にあっては,
実施している単位認定方法の適切性
【現状】
2005 年度より全学的に付属高校生向けのプレカレッジプログラムを導入した。それにより付属校生が
大学の基礎クラスを履修し,高校で単位として認めない場合に限り本学部では大学入学後に単位化でき
る。それ以外は特に事例はない。
【長所】
プレカレッジプログラムは意欲ある高校生にとって有益である。
・卒業所要総単位中,自大学・学部・学科等による認定単位数の割合
【現状】
他大学の単位の認定は,留学や編入などの事情以外では行っていない。2003 年度までのカリキュラム
では,他学部履修は 20 単位まで認められ,そのすべての単位を選択科目として卒業所要単位 128 のう
ちに含めることができた。2004 年度からは他学部履修を 60 単位まで認めることになったが,そのうち
卒業所要単位 128 のうちに含めることができるのは 22 単位である。
【長所】
十分な柔軟性がカリキュラム上確保されている。
【問題点】
学部間の科目共通化は,ケースに応じてさらに推し進める必要が考えられる。
【問題点に対する改善方針】
語学の学部間の共通化は,2006 年度,スポーツ学生を対象にした英語科目において実現する運びとな
第3章 文学部 -14-
/275
った。英語未習留学生を対象にした同様の枠の設置など,このような共通化を拡大する方向で教務部委
員会などで全学的に検討中である。
・海外の大学との学生交流協定の締結状況とそのカリキュラム上の位置づけ
【現状】
独文学専攻はドイツ,イエナ大学とウィーン大学と提携して学生の交流を行なっており,2003 年はイ
エナ大学との大学間協定が,またウィーン大学とは学部間協定が締結された。30 単位を上限として単位
の相互認定を行っている。
【長所】
両大学との学生交流は,学生の国際化に大きく貢献している。
【問題点】
他の大学との協定を結んでいく必要がある。
【問題点に対する改善方針】
前述の学生交流のさらなる拡大に努めると共に,それをモデルケースにした他の海外大学との交流を
国際交流センターと連携して積極的に推進する方針である。
・発展途上国に対する教育支援を行っている場合における,そうした支援の適切性
【現状】
ラオス大学との大学間協定では,本学部教員も参加している。
【長所】
適切な貢献を行っている。支援の拡充にはこれからも努めていく。
(開設授業科目における専・兼比率等)
【目的・目標】
科目の性格に鑑み,基幹科目にできるだけ専任教員を配置し,学部の性格を明確にすると共に,非専
任教員が担当する科目においても専任教員が方針を明確に示すことによって指導体制と責任の所在を
明確化することが第一の目的である。
・全授業科目中,専任教員が担当する授業科目とその割合
【現状】
専門科目での専任教員の担当率は 62.0%である。概論科目,演習等,各専攻の基幹となる科目にはお
もに専任教員を配している。語学・体育・共通選択科目を含めると,専任の担当率は 48.8%となり,兼
任への依存率はかなり高まる。廃止に伴う二部の収束に伴い,兼任への依存率は改善される方向で進ん
でいるが,移行期間における兼任講師数の一時的増加も一部で認められる。
【長所】
移行期間をまだ終了していない現状を考えると,現在の兼任依存率は妥当であると考える。
【問題点】
移行期間をどれだけ円滑に収束させるかが,専任率向上の鍵である。
【問題点に対する改善方針】
学部間共通外国語の有効活用などにより,語学における兼任講師への依存率を減らす工夫は今後も一
般教育委員会で検討していく。共通選択科目についても学部間の共通化をできるだけ促進し,兼任依存
率を抑える方向で検討している。骨太な基幹科目構成と,専攻・コース間の流動性の拡大も,専任率向
上に貢献する。この方向で 2004 年度より基本計画委員会が議論を重ねてきた。2008 年度の改革を目指
している。
・兼任教員等の教育課程への関与の状況
第3章 文学部 -15-
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【現状】
語学で兼任教員への依存率が高く,学部で統一的・体系的な教育を行ないにくい事情があった。しか
し,英語では大人数授業を導入して統一テキストを使うようになり,他の外国語でも兼任講師を集めて
の教科書会議を行い,統一的なプログラムに沿っての授業をお願いしている。兼任教員のカリキュラム
作成への関与は現在のところ兼任教員の自発的な働きかけに基本的に依存している。すべての兼任講師
との懇談会を毎年開催し,意見を聴取するとともに,体系的な教育への協力を求めている。
【長所】
基本的に専任教員のイニシアティブを重視した教育課程運営が実現している。
【問題点】
一部分野において,専任からの明確な課程運営方針に関する説明がなされていない可能性がある。ま
た兼任教員からのフィードバックの機会をより多く設ける必要があるかもしれない。
【問題点に対する改善方針】
語学において兼任教員への依存率を減らし,現在英米文学専攻主導の語学科目において進められてい
る統一的なプログラムに沿った教育を,学部全体においても促進する方向で今後も教務課題検討委員会
等で検討する。また,兼任教員からのフィードバックは,懇談会のみならず,各専任担当部署において
も積極的に促進する。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
社会人,外国人留学生,帰国学生に対して,それぞれのバックグラウンドを有効に活用できるような
教育課程を編成し,それに見合った教育指導を行うことが,第一の目的である。
そのために,(1)社会人にとって無理のない履修時間帯,(2)外国人留学生に対する日本語指導,(3)
帰国生に対する必要な学習指導を確保することを目標として掲げている。
・社会人学生,外国人留学生,帰国生徒に対する教育課程編成上,教育指導上の配慮
【現状】
社会人向けには,一部専攻で夜間プログラムを実施し,夜間帯の授業だけでも卒業要件科目がすべて
履修できるようになっている。外国人留学生には,日本語を必修外国語の一つとして数え,受け入れ時
に履修上のカウンセリングを行うなど配慮している。帰国学生に対しては,入試の際に別個枠を設けて
いるが,入学後の特別サポートの必要性は現在のところ生じていない。
【長所】
上記(1)~(3)の目標は概ね達成されていると考える。
【問題点】
社会人向け夜間プログラムの利用者数は現在のところきわめて限られており,2006 年度より募集停止
が決定している。
【問題点に対する改善方針】
社会人に関しては詳細を次項に示した。
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
社会人の教育需要の質が変わりつつある現在,特に高年齢層を中心とする生涯教育と,キャリア向上
を中心とするリカレント教育は分けて考える必要があるだろう。前者は普通制の時間帯でも対処できる
が,後者に関しては大学院教育の拡充によって需要に応えるべきかも知れない。これらの変化を見極め
ながら,生涯学習をよりよい形で供給していくことが,本学部の設定する目的である。
・生涯学習への対応とそのための措置の適切性,妥当性
【現状】
第3章 文学部 -16-
/277
2004 年度の二部募集停止に伴い,本学部は駿河台キャンパスにおける夜間プログラムへ移行すること
にしたが,社会人入学の志願者はきわめて少数にとどまっている。一方,1997 年度より科目等履修生制
度を導入した。他方,本学で実施しているリバティ・アカデミーにおいては,本学部の専任教員が講座
を担当し,生涯学習に貢献している。
【長所】
夜間プログラムの履修者は,少数ではあるが,有効にプログラムを活用している。また,科目等履修
生制度を利用した年長者の熱心な履修生は,一般学生にも良い影響を与えている。
【問題点】
先述の通り,夜間プログラムの履修者数はきわめて少数であり,2006 年度より新たな募集を停止した。
これに変わる,現代の需要に見合った生涯学習対応が求められている。
【問題点に対する改善方針】
教務課題検討委員会内で議論してきたが,より抜本的な改革の必要性の認識とともに,議論の主体が
基本計画委員会と大学院文学研究科の改革検討委員会に移った。新大学院コース設置,専門職大学院コ
ース設置(教職)の計画策定が進行中である。また学部教育の範囲内での社会人学生には,通信教育の
導入も全学レベルで検討されている。科目等履修生制度についても履修者の増加をはかるべく,弘報を
充実させる方針である。
(正課外教育)
【目的・目標】
正課外教育は,正課の履修深度を促進すると共に,学部に縛られない学生間の交流を通じて,良い意
味での大学への帰属感を醸成・強化することが大きな目的である。一方,正課ではまかないきれない分
野においても,学生へのサービスを提供するのも目的設定に含まれる(特にキャリア・就職部門)。な
お,学習支援活動などは既述のため,この正課外教育項目においての記述は避ける。このために,(1)
学生からのフィードバックを重視した正課外教育機会の拡充,(2)学生からのイニシアティブ支援,(3)
キャリア・就職部門での学部によるサポート体制の充実を,本学部では目標として掲げている。
・正課外教育の充実度
【現状】
本学部がコーディネーターを出した学部間総合共通講座「シェイクスピア劇の現代的魅力」の受講生
が中心となり,2004 年度には明治大学文化プロジェクト第一弾として「ヴェニスの商人」の上演が,ま
た,2005 年度には「マクベス」の上演が正課外教育の一環として行われ,成功を収めた。さらに、主に
3・4年生を対象に本学部独自の就職支援講座が開かれている。
【長所】
文化プロジェクトは,学生からのフィードバック及びイニシアティブが十分に吸収されていると考え
る。また就職支援講座は,学生が就職・キャリアについて考える良い機会となっている。
【問題点】
就職支援講座については,参加者をより増やし,また入学時からの一貫性を構築する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
就職支援講座は 2006 年度より2年生に向けても後期より開講することが決定済みである。また、1
~4年次にいたるまでのキャリア・就職支援体制の一貫性は,学部パンフレットにおいて明確に示す運
びとなっている。
(2) 教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
全体のカリキュラムと整合性のとれた科目別の履修目標と評価方法を学生に明示し,それに従った成
績評価を行うことで,厳正かつ効果的な教育効果測定を行うことが第一の目的となることは大前提であ
第3章 文学部 -17-
/278
る。
この際,以下の目標設定を本学部では行っている。
1. 教育目標達成度の評価に関し,教員間で非合理的な格差が生じないようにすること。
2. 教育効果について,授業改善アンケートなどを通じて,学生からのフィードバックを項目別の数値
並びに学生からの文章を通じて教員に提供し,各教員の教育目標達成度測定の指針とすると共に,改
善を促すこと。
3. GPA(評点平均値制度)を統計的に利用することで,教育効果測定が有効に機能しているかどう
か,また,各種学生及び卒業生において教育目標が達成されているかどうかを経年的にデータ化し,
検討に用いること。
4. 全学的に,公正かつ有効な教育効果測定方法を討議・推進すること。
5. 傑出した学生を顕彰し,他の学生を啓発すること。
・教育上の効果を測定するための方法の適切性
【現状】
2003 年度までは成績評価の合格最低点が 50 点だったが,2004 年度からはGPA(評点平均値制度)
導入に伴い,合格最低点は 60 点,合格評定数は4となった。また,卒業要件単位のすべてを対象とし
てGPAを計算し,学生の成績表に記載することで,学生の指導に活用している。さらに,3年次進級
の必要単位を 40 単位と定め,学生が学年ごとのカリキュラムに沿った形で履修を促進している。
【長所】
新成績基準は,より厳格な評価基準となった。また,GPAの導入は,経年的な教育目標達成度の分
析に大きく役立っている。
【問題点】
GPAや単位履修数との関係において特に成績の悪い学生に対する指導のあり方を制度化すること
が考えられる。
【問題点に対する改善方針】
教務課題検討委員会を中心として,GPAをさらに活用し,退学勧告も含めた履修指導を行う方向で
検討する。
・教育効果や目標達成度及びそれらの測定方法に対する教員間の合意の確立状況
【現状】
シラバスに授業の目標と成績評価法の欄を設け,学生には目標達成度とその測定方法(テストやレポ
ート),成績との相関が明示されるように努めている。アンケートによって学生がどの程度授業に満足
し,自己の成績評価に納得しているかは各教員にフィードバックしている。
【長所】
授業目標と成績評価法の明示は,教員相互の成績評価における意識の整合性を促進することにも貢献
している。
【問題点】
教育効果や目標達成度及びそれらの測定方法に関しては,教員それぞれの判断に委ねられ,明確な合
意を形成するための合議機関が特別に設置されているわけではない。
【問題点に対する改善方針】
全教員が授業の目標と成績評価法を学生に明示するように引き続き求めていく。また学生の成績評価
の基準化は,GPAが導入された以上,特に中規模以上のクラスにおいて比率のガイドラインなどをも
うける必要がある。これは教務課題検討委員会が前年度に引き続き検討している。
・教育効果を測定するシステム全体の機能的有効性を検証する仕組みの導入状況
【現状】
GPAが導入されている。一方,各教員レベルでは,全学的FD委員会の主導により,2003 年度末か
第3章 文学部 -18-
/279
らは全教員が担当授業のひとつでアンケートを行った。本学部ではFD委員会の委員でもある教務主任
を委員長とする教務課題検討委員会でこうした問題を検討している。アンケートの有効性については不
断の検討をFD委員会で行っている。
【長所】
GPAの導入により,教育効果を測定するシステムは,数値的にかなり整備された。
【問題点】
評価方法に関する教員間の合意がまだ討議・形成されていないために,システムとしての機能性を測
定する段階には至っていない。最低限の数値的データは現在活用できる状況にはあるものの,これを生
の状態で利用することは,科目性格の多様性に鑑み,慎重に行わない限り安易な「勤務評定」と化すば
かりではなく,教員の不信を作り出し,システム全体の機能を低下させる可能性がある。
【問題点に対する改善方針】
授業改善アンケートの拡充とアンケート結果の開示方法についてもFD委員会を中心に検討してい
る。この点での公開性を高めることが,システム全体の政策決定において有効なのは言うを待たないが,
この具体的活用法に至っては時間を掛けて教員間の合意を探っていく。そのためにまず教育方法自体に
ついての透明性を高めていく必要がある。この点に関しては手順を踏んで教員の合意を醸成していく。
また 2006 年度後期より発足する全学的な教育開発・支援センターに,本学部は積極的に関与する。
・卒業生の進路状況
【現状】
公務員や教員のほか,学芸員,図書館司書や司書教諭,社会教育主事などの資格を取る者も多い。一
般企業ではマスコミへの希望者が多いが,狭き門であるだけに,就職状況は厳しい。建設業・不動産業
3.6%,製造業 16.3%,商事・卸・小売業 16.1%,金融業 15.9%,新聞・出版・放送・情報・通信業 12.1%,
運輸・旅行・広告・観光・サービス業 20.8%,教育・公務 15.2%
大学院進学率が高いのも本学部の特徴である。2002 年度開設の心理社会学科は 2005 年度の大学院開
設に伴い,臨床心理士の養成を目指している。2004 年度開設の文芸メディア専攻はマスコミで働くため
のトレーニングをひとつの目標とする。これはまだ開設年度の関係で,いまだ具体的成果を得る段階に
ない。
【長所】
本学部の卒業生進路は多様である。これはリベラルアーツ教育の成果であると考える。
【問題点】
本学部卒業生のキャリアが多様であり,また就職率においても他の文系学部と比べ遜色がない点を,
積極的に在学生並びに受験生にアピールする必要がある。
【問題点に対する改善方針】
本学部のリベラルアーツ教育的幅の広さについて妥協するつもりはない。しかし,学生の意識の面で,
より職業選択を視野に入れた教育の充実を図る方策を役職者会で検討している。また,進路の多様性に
ついては,学部外に対する弘報並びに在学生向けの就職支援講座等において,現在行っていることを拡
充する。
・教育効果の測定方法を開発する仕組みの導入状況
【現状】
教育効果を測定するシステムとしては,前述の通りFD委員会主導による授業改善アンケート実施と
その結果のフィードバックがある。また,全本学部学生を対象とする英語大人数授業では,毎回の小テ
ストの集計点をもとに教育効果を統計的に測定している。
【長所】
授業改善アンケートの成果の判定には,まだ多少の時間を要するが,英語大人数授業については,着
実に教育効果をあげている。
第3章 文学部 -19-
/280
【問題点】
成績比率などに関する学部間での合意は形成されていない。成績比率などに関する学部間での合意を
達成し,GPAの全学的信頼性を向上する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
本学部としてはまず教務課題検討委員会で教育効果の測定方法を開発する仕組みを検討した後,学部
の教授会決定を経て教育開発・支援センターに働きかけていく予定である。
・教育効果の測定方法の有効性を検証する仕組みの導入状況
【現状】
学部として単独で教育効果の測定方法の有効性を検証する仕組みは導入していないが,全学的なFD
委員会においてこの点は常に議論している。
【問題点】
アンケートは現在まだとりっぱなしの状態で,それを整理して学部の理念とともに教員にアンケート
結果とともに配布するなどの措置は理工学部以外の学部ではまだ行われていないが全学的に実施され
ていない。
【問題点に対する改善方針】
アンケートにおいて,評価の納得度を学生に問い,これを教員にフィードバックしているが,これは
GPAの全学的信頼性と対照される必要がある。いまだデータが未整理・未分析状況であり,その十分
な蓄積を待って両者の有機的連携をはかる必要がある。教育開発・支援センターが行う今後の取り組み
に積極的に参加していく方針である。
・教育効果の測定結果を基礎に,教育改善を行う仕組みの導入状況
【現状】
本学部では,英語大人数授業等での成績をもとに,英語授業や演習科目の希望者を振り分けているな
どの利用がされている。
【長所】
上記の目標は達成されている。
【問題点】
フィードバックされた学生からのアンケート結果の活用方法は基本的に教員個人に任されており,組
織的な働きかけはない。
【問題点に対する改善方針】
アンケートの結果を学部全体のデータとして集計し,それをもとに教務課題検討委員会で検討した上
で指針案を出す。ただし,これには個人情報開示等の問題との齟齬をきたさぬよう,FD委員会との緊
密な連携が求められる。
・国際的,国内的に注目され評価されるような人材の輩出状況
【現状】
学部卒業生(女子)にはオリンピック金メダリストがおり,学生全体は当然のこと,特に女性にとっ
て大きな励みとなっている。また,演劇専攻出身者では,現場の創作過程に係わり国際的実績をあげて
いる者や,アーツマネジメントにおいて国際交流に貢献している人物も多い。国際的に注目される作家
も本学部は輩出している。たとえば唐十郎や倉橋由美子などがこれに該当する。これからも,有能な人
材の輩出に努めるとともに,学生に刺激と希望を与えるために,先輩の活動状況について弘報を通じて
知らしめていく。
(厳格な成績評価の仕組み)
【目的・目標】
第3章 文学部 -20-
/281
学生にとって可能性を狭めることなく,同時に無理のない履修イメージを指導並びに制度設定におい
て用意すること,そして厳格な成績評価を行うことで社会並びに学生からの信頼を確保・維持すること
が大きな目的である。このために成績評価に関する学生への指導・通知の徹底,評価方法の透明化,学
生からのフィードバックの活用,データの活用と分析,そして成績優秀者顕彰による学生の意欲向上を
目標として設定している。
・履修科目登録の上限設定とその運用の適切性
【現状】
年次履修制限単位数は,1年次 46 単位,2年次 44 単位,3年次 44 単位,4年次 44 単位である。た
だし,再履修科目については 16 単位を限度に上限を超えて履修できる。資格取得等の目的のために,
上限撤廃を望む声もある。2004 年度入学者からはGPAの導入に伴い,登録している科目の履修放棄に
はペナルティが課せられることになり,無闇な履修科目登録には歯止めがかかっている。
【長所】
これらの履修科目登録の上限設定は,履修進度としては妥当だと考える。
【問題点】
3年次までにほとんどの単位を取ってしまう学生がかなり多い。就職状況に鑑みればいたしかたない
部分があるが,とにかく単位数だけを早めにそろえてしまおうとする学生全体の傾向もあり,問題なし
とはしない。一方意欲のある学生にとって上限を低く設定しすぎてしまうことは問題があり,その点で
も運用面での向上と,その経験を通した制度の改善が求められる。
【問題点に対する改善方針】
特に資格取得等の目的のために制限単位数を越えて履修を希望する学生に対しては,現在上限を設け
ていないが,卒業単位として認可する場合に制限がある。この点については特例認可の方向で教務課題
検討委員会で検討している。また,4年次にも卒業論文以外の単位を取りやすくするよう,インセンテ
ィブを開発することも教務課題検討委員会で検討する。しかし,何よりも重要なのは,履修にふさわし
いステップを学生に徹底指導することである。この点に関しては履修登録において指導を 2006 年度よ
り強化し,その際助手・TAを含めることによって人員面での強化を図ることが決定している。
・成績評価法,成績評価基準の適切性
【現状】
2004 年度入学者から全学的にGPAが導入され,成績評価基準が厳格化された。それにより,Aは
100~90 点,Bは 89~80 点,Cは 79~70 点,Dは 69~60 点,Fが不合格で 59 点以下となった。
【長所】
合格が 50 点以上から 60 点以上となり,成績評価はより厳格となった。
【問題点】
成績評価法については各教員の判断に委ねられて,統一基準があるわけではない。
【問題点に対する改善方針】
成績評価基準が適切かどうかは,GPA導入から4年たっていないこともあり,今後見極めにむけて
引き続き努力していく。成績評価についても統一的な基準が設けられるかどうか検討していく。教員間
での評価平均の大幅なばらつきがあるようならば,これについては部分的に相対評価を導入するなどの
改善が必要である。数値的分析を拡充していく方針である。
・厳格な成績評価を行う仕組みの導入状況
【現状】
シラバスに成績評価法の欄を設け,学生にその基準を明示し,教員がそれに従って成績評価するよう
に求めている。また,アンケートによって学生がどの程度授業に満足し,自己の成績評価に納得してい
るか,調査結果を教員にフィードバックしている。
【長所】
第3章 文学部 -21-
/282
各教員に対するフィードバック・システムとしては,概ね有効に機能していると考える。
【問題点】
成績評価の明確な基準を全学で統一的に確立することは難しい。それよりも教員同士が,自分の評価
が厳しすぎないか,もしくは甘すぎないかを検討できるように,全教員の評価状況を数値データとして
開示する方法を確立する必要があるだろう。
【問題点に対する改善方針】
少なくとも合格に最低必要な出席率については基準を設ける方向で教務課題検討委員会においてひ
きつづき検討予定である。また,全教員が成績評価法を学生に明示するように引き続き求めていく。デ
ータの開示方法については,2006 年度後期に発足予定の教育開発・支援センターの活動に,本学部とし
ても積極的に関与する。
・各年次及び卒業時の学生の質を検証・確保するための方途の適切性
【現状】
本学部では 2004 年度より限定的に卒業論文要旨のデジタル化並びに,卒業生に対する論旨集の卒業
時配布などを導入した。2005 年度にはこれがより拡充した。卒業時の学生の質を検証・確保する方途と
して,定期的な指導と,具体的な成果の提出,及び卒業論文面接における学習成果の弁護を求める本学
部の卒業論文必修制度の有効性は,これからもさらに充実していくだろう。年次毎の学生の質の検証・
確保に関しては,2004 年度からのGPA導入に伴い,学生の成績や履修状況をチェックしていくことが
容易になった。また,3年次進級の条件を 40 単位と定めたことで,学年ごとの適切な授業履修を指導
しやすくなった。
【長所】
卒業論文必修制度並びにGPA制度は,卒業時の学生の質を検証・確保するために大いに役立ってい
る。特に卒業論文は,学生自身が関心を持つテーマを設定し,多くの学術論文や専門書を読み,あるい
は各種の調査や発掘などのフィールドワークを行い,また年数回,研究発表と討論を実施するなど,文
学や歴史学・地理学の神髄に触れるまたとない機会になっている。4年次の 10 月以降は,教員と学生
が一体となって取組み,両者の人間関係の構築にも役立っている。こうしたきめ細かい指導を通じて,
学生の質の向上に大いに貢献している。
【問題点】
3年次進級の条件を 40 単位と定める方式は,少々大雑把に過ぎるのではないかという批判がある。
卒業論文の執筆を開始するにあたって,一定の取得単位の履修を必要条件とするなどの方策もすでに一
部の専攻においてはとられているが,これを学部全体に拡げるべきかどうかも議論するべきだろう。
【問題点に対する改善方針】
年次毎の進級条件に一部の基幹科目の履修を含めるべきか,2008 年度に向けて教務課題検討委員会並
びに改革実行委員会で議論する方針である。またオフィスアワーによる指導など,GPAが活用できる
ようなシステムの導入を引き続き目指していく。さらに,GPAや取得単位数を退学勧告や卒業論文履
修の条件に使うかどうかなど,今後教務課題検討委員会で引き続き検討する。
・学生の学習意欲を刺激する仕組みの導入状況
【現状】
2年から3年次に上がる際に,父母会の協力を経て,成績優秀者に対しては「学部長奨励賞」を新入
生のガイダンス時に授与し,もって彼らの学習意欲を刺激するよう努めている。また,各界で活躍する
人物を特別招聘教授として毎年1,2名呼び,授業を行ってもらうことで,学生に刺激を与えている。
演劇学専攻ではこうした授業の成果として,毎年学生が自主的に演劇を上演するようになった。本学部
がコーディネーターを出した学部間総合共通講座「シェイクスピア劇の現代的魅力」の受講生が中心と
なり,明治大学文化プロジェクトによるシェイクスピア劇上演が 2004~5 年度と行われた。
【長所】
学生の学習意欲は十分刺激できていると考える。
第3章 文学部 -22-
/283
【問題点】
各学科1名ずつ(計3名)の特別招聘教授を目指しているが,候補者の都合があり,年3名の招聘は
必ずしも毎年の実現ができていない。
【問題点に対する改善方針】
招聘教授に関しては,今後は早期に打診するなど,3名の確保に向けて努力する。また,活用理念を
確立し,適切な運用が必要である。
(履修指導)
【目的・目標】
履修指導に関しては,教室内での教育が最重要であるのはもちろんのことであるが,どの科目を履修
登録するかからはじめて,随時,学生に必要な時にできるだけ教員側が対応できる体制を整えることが
第一目標となる。目標として細分化すれば,
(1)教室における指導の充実,(2)教室外での学習支援室並
びにオフィスアワーによる指導の充実,(3)履修科目登録指導の徹底,ということになるだろう。
・学生に対する履修指導の適切性
【現状】
クラス担任制をとり,学年初めのガイダンスで履修指導をしている。1年次から導入されている演習
科目における少人数制を活用し,各教員が定期的に履修指導を学生に対して行っている。教室外指導に
関しては,2005 年度から学問体系上の履修指導に関して,学習支援室も活用されている。学習支援室に
は助手・TAが常時配置されているほか,授業担当の教員も積極的にこれを利用している。
【長所】
きめ細かな指導体制はできていると考える。
【問題点】
卒業要件を含め履修科目登録に関しての理解が不十分な学生がいまだ生じている。
【問題点に対する改善方針】
2006 年度より助手を含む専任教員並びにTAを中心とした学習支援業務の一環として,履修科目登録
指導も格段に拡充することが決定している。
・オフィスアワーの制度化の状況
【現状】
資格課程教員は組織的にオフィスアワーを制度化しているが,学部全体での制度化はしていない。特
に1,2年生は和泉校舎で履修するため,駿河台校舎に研究室を持つ教員の多い本学部では,和泉キャ
ンパス学生に対する独自のケア方法も検討する必要がある。
【長所】
卒業論文必修の本学部では,制度化はしていないものの,オフィスアワーによる指導を行っている教
員が多数存在する。また,研究室を持つキャンパス以外のキャンパスでも,学習支援室を活用するなど,
各教員が積極的に学生に対する教室外指導を行っている。
【問題点】
現状に鑑みれば,特に制度化の必要はないかもしれないが,学生への情報としては明確に時間帯を設
ける必要があるかもしれない。
【問題点に対する改善方針】
研究室及びオフィスアワーによる指導を時間帯として示す方向で,さらに教務課題検討委員会におい
て検討を行う。
・留年者に対する教育上の配慮措置の適切性
第3章 文学部 -23-
/284
【現状】
再履修の授業に関しては,16 単位を限度に年間履修制限単位を超えて履修できるようにしており,さ
らに,3年次以上の学生には 16 単位を超えた再履修を例外的に認めることもある。不足単位が 20 単位
以下の学生には,2001 年度より9月卒業を認めるようになった。
【長所】
2004 年度からの7時限制導入により,授業を履修する時間帯に柔軟性が生まれており,留年者にとっ
ては履修上の利便性が向上している。
【問題点】
2004 年度からの夜間プログラム導入で駿河台の夜間授業に1・2年次の授業が開かれており,3年次
以上の学生も和泉キャンパスに行かずに1・2年次の授業が取れるケースがある。しかしながら,夜間
プログラムの存続は需要面で厳しく,また,二部も収束に向かいつつあるのでこれも難しくなっていく
だろう。しかし,何よりも大きな留年者に関わる問題は,彼らの授業出席率がきわめて低いという点で
ある。
【問題点に対する改善方針】
7時限制の有効活用をこれからも留年者に対して訴えていく。また,留年者の数を減らしていくため
の教育方法の改善を教員に引き続き訴えていく。留年生とのコンタクトは,大学側からこれからも必要
に応じて行う。しかしながら場合によっては退学勧告制導入の必要性も教務課題検討委員会で検討する。
・学習支援(アカデミック・ガイダンス)を恒常的に行うアドバイザー制度の導入状況
【現状】
従来のクラス担任制の他,2005 年度から助手とTAを中心に配置した学習支援室が和泉校舎に発足し
た。また,駿河台における学習支援も主に共同演習室において行われている。2006 年度は増員が決定し
ている。
【長所】
学習支援体制は,初年度である 2005 年度において有効に機能した。本学の文系学部の中でももっと
も支援体制において整備していたとの自負がある。2006 年度の人員拡充は,これをさらに充実させるで
あろう。
【問題点】
クラス担任がアドバイザーと考えられるが,助手以外の教員が定期的に学習支援を行えるだけの制度
はまだない。
【問題点に対する改善方針】
現在行われているオフィスアワーの制度化を教務課題検討委員会で検討する。
・科目等履修生,聴講生等に対する教育指導上の配慮の適切性
【現状】
科目等履修生に対しては,教務主任がそれぞれ面接し,履修科目の妥当性等や,希望者の学力レベル
等をチェックしている。教室内では個々の授業担当者の対応に任されているが,他の学部生と同様の授
業と評価基準を実施している。
【長所】
年長者が多い科目等履修生は,他の学生への良い刺激になっている。また続けて科目等履修を希望す
る社会人も多い。
(教育改善への組織的な取組み)
【目的・目標】
学生に対し,本学部の教育目標,履修方法,評価方法等を明確に提示した上で,その内容面並びに運
営面での不断の見直しを行うことにより,学生の学習環境を向上させることが,主たる目的である。そ
第3章 文学部 -24-
/285
のためには,以下のような目標を具体的に設定している。
1. すべての授業においてシラバス記載項目並びにその内容を明確にし,またそれをWeb にも開示して
徹底化を図る。
2. 読みやすいシラバスを作る。
3. 学生からの授業評価を積極的に活用する。
4. 学生からのフィードバックの活用方法を組織化する。
5. 授業改善の経年的蓄積を有効に活用する。
6. 学生からのフィードバックをわかりやすい形で得られるよう,質問事項を工夫すると共に,アンケ
ートをハードコピー並びに web レスポンスにより,できるだけ多く得られるように努力する。
7. 卒業生からのフィードバックの機会を拡充する。
8. 就職先からのフィードバックの機会を創設する。
9. 全学的な授業改善システム構築に積極的に参加する。
・学生の学修の活性化と教員の教育指導方法の改善を促進するための措置とその有効性
【現状】
授業改善については全学のFD委員会が取り組んできており,2003 年度より主に新任教員に対する研
修や授業改善に関するシンポジウムを開催している。また,全教員が担当授業のひとつで学生にアンケ
ートを取っている。本学部ではこうした全学的な動きに協力している。
【長所】
研修にも積極的に参加するようになるなど,教員の意識は向上しつつある。
【問題点】
まだ講師を招いての研修会レベルにとどまっていて,教員間の授業改善のための情報交換並びに討議
の場は設けられていない。そのため,互いにどのように授業を行っているかについて,情報共有性に乏
しい。
【問題点に対する改善方針】
アンケートをさらに多くの授業に拡大するとともに,アンケート結果を公開し,それに基づいた教員
間の意見交換ができるよう教務課題検討委員会等で検討する。また,教員間の相互授業モニタリングも
検討する。
・シラバスの作成と活用状況
【現状】
全教員に授業の目標,細かい授業計画,成績評価法などを明示するように求めており,徹底度は上が
っている。2005 年度より語学科目に関してもシラバスに記載されるようになった。シラバスはインター
ネット上でも閲覧できる。学生はシラバスを科目履修登録,履修方法,及び試験時に頻繁に活用してい
る。
【長所】
より多くの授業について,明確なシラバスが提供されるようになった。
【問題点】
一部のシラバス記載において,記述が不十分な項目がまだ存在する。
【問題点に対する改善方針】
引き続き全教員が求められた事項を適切に記入するよう徹底する。
・学生による授業評価の活用状況
【現状】
本学FD委員会主導の授業改善アンケートの結果を,教員個々人が授業改善に取り入れている。
【長所】
第3章 文学部 -25-
/286
アンケートの結果は,アンケート用紙の現物も含め,すべて教員に返されるようになっているため,
教員が個々の授業の改善に利用しやすい。
【問題点】
アンケートの結果はすべてデータ化されてはいるものの,組織的なデータ分析等はまだ行っていない。
【問題点に対する改善方針】
アンケート結果の組織的なデータ分析等の導入を,本学のFD委員会のみならず,教務課題検討委員
会等でも検討する必要がある。そのためにはまず,アンケートの趣旨と公開の原則,並びに個人的情報
流出に関わるセーフガード策について,広く専任・兼任教員の理解を得ていく必要がある。本学部では
役職者がこれを率先して行う。
・FD活動に対する組織的取組み状況の適切性
【現状】
授業改善アンケートを全学的に行っている。大学全体の問題としてFD活動により積極的に取り組め
るようになった。
【問題点】
FDは授業改善アンケート実施とそのフィードバックにとどまらない。教材の刊行のための大学出版
会の設置は,新たな教育プログラムの有効な実施のために全学で緊急に討議されるべきであると考える。
【問題点に対する改善方針】
上述の必要性について教育開発・支援センターに協力して改善していく。
・FDの継続的実施を図る方途の適切性
【現状】
全学的なFD委員会に一般教育主任が委員として参加し,本学部内では教務主任を委員長とする教務
課題検討委員会のほか,2004 年度からは一般教育的な科目に関する授業改善について検討する一般教育
委員会(委員長は一般教育主任)が設置され,FDを推進している。
【長所】
学生からのフィードバックの活用という点ではともに責任委員会が適切に設置されている。
【問題点】
フィードバック・データの体系的整理,分析,及び公表はいまだ行われていない。また,一般教育委
員会と教務課題検討委員会とのFDにおける連携も改善の余地がある。
【問題点に対する改善方針】
一般教育委員会と教務課題検討委員会の連携改善を目指す。また,フィードバック・データの体系的
整理,分析並びに公表方法も,さらに検討を進め,早急に実施したい。教育開発・支援センターが 2006
年度後期に設置されるため,これに本学部も積極的に関与する。
・学生満足度調査の導入状況
【現状】
2005 年度は,2003・04 年度に引き続き全教員が担当授業のひとつで学生に授業改善アンケートを実
施した。
【長所】
授業単位での学生満足度は,統一的基準で調査できる体制が整っている。
【問題点】
授業改善アンケートは授業にのみ関わるものであり,学生生活全般に関する満足度は調査できていな
い。
第3章 文学部 -26-
/287
【問題点に対する改善方針】
アンケートの質・量両面での拡大,公開に向けて検討する。本学に教育開発・支援センターが 2006
年度に設置される予定であり,これに本学部も積極的に関与する。
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
本学部OBを招いて情報交換会を行うべく,検討している。
【問題点】
卒業生からのフィードバックを得るための機会の創出が必要である。
【問題点に対する改善方針】
校友会との懇談会や,ホームカミングの有効な活用を図るほか,高校等で校長や教員を勤める本学部
OBを招いて情報交換会を行うべく,検討している。これを経年化し,最終的には情報交換会に招く卒
業生の範囲を教員以外にも拡げ,また学生自身も有効に活躍できる場にしたいと考えている。
・雇用主による卒業生の実績を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
学部としては特になし。
【問題点】
フィードバックのための機会の創出が必要である。
【問題点に対する改善方針】
全学的な就職懇談会で得られたデータを教育改善の場にできるように努力する。また,本学部OBを
招いて情報交換会も実施する。
・教育評価の成果を教育改善に直結させるシステムの確立状況とその運用の適切性
【現状】
授業改善アンケート結果のフィードバックをもとに,個々の教員が授業改善を行う以上のシステムは,
学部として特に導入していない。
【長所】
個々の教員がアンケートの内容をそれぞれの立場で分析し,授業改善の方策を考える重要なデータと
しているので,現状でも十分有効に運用されている。
【問題点】
フィードバック活用の「直結性」と,「システム度」に関しては,まだまだ改善の余地がある。
【問題点に対する改善方針】
少なくとも学部の授業理念に照らし合わせた,学生アンケート・データの組織的解析は,解析結果の
公表方法のあり方も含めて導入を検討するべきである。これについてもやはり教育開発・支援センター
に積極的に関与する方針である。
(授業形態と授業方法の関係)
【目的・目標】
本学部は少人数による実践的な演習授業をその基幹科目として設定しているが,当然すべての授業を
少人数体制で行えるわけではない。限られた人員の有効活用,並びに各授業の性格と目標に応じた授業
形態は,特にテクノロジーの進歩が著しい現在,不断の見直しと改善を必要とする。適切な教室規模を
設定し,テクノロジーを有効活用しながら,それぞれの授業方法並びに目標にふさわしい授業形態を環
境上可能ならしめることが目的である。
第3章 文学部 -27-
/288
・授業形態と授業方法の適切性,妥当性とその教育指導上の有効性
【現状】
専門の授業は講義,演習,実習,講読などに分けられる。それぞれに学生数の適正規模を定め,そこ
から大きく外れないようにクラス数を設定している。特に演習・実習等の少人数クラスは実践教育を核
とする本学部の最重要科目である。これらの適正規模(1クラス 20 名以下)を確保するべく,クラス
規模のメリハリの効いた適正配分を心がけている。たとえば英語では 2000 年度より大人数授業を導入
し,クラス数を減らした分,少人数による徹底指導クラスを新設して,能力のある学生の意欲に応える
ようにしている。また,2005 年度も引き続き未習外国語等の時間割固定化を推し進め,学生が履修しや
すいようにしてある。語学については,能力のある学生向けの少人数クラスだけでなく,習熟度の低い
学生のための基礎クラス,または補習クラスなどの新設が全学的に予定されている。
【長所】
時間割等の関係で一部の授業がオーバーサイズとなったものの,極端な問題は生じていない。
【問題点】
授業規模のメリハリの付け方は,基幹科目での少人数制を守るためにも,不断の見直しが必要な点で
ある。
【問題点に対する改善方針】
これからもメリハリの効いたクラス規模の配分により,本学部の絶対条件である実践教育に必要な少
人数クラスの確保を継続する。
・マルチメディアを活用した教育の導入状況とその運用の適切性
【現状】
Oh-o! Meiji システムを活用したマルチメディア教育が導入されているほか,情報教育科目が全学
的に整備されている。2005 年度より和泉校舎においてメディア棟が発足した。語学においてはALCシ
ステムも導入され,学生すべてに対して自習環境が提供された。個々の教員に対しては,Oh-o! Meiji
システム活用のための研修会が毎年実施されている。多数の教員がこのシステムを授業において活用し
ている。
2004 年度には全学的に教育の情報化推進委員会が発足し,各学部の個別的必要性により柔軟に対応で
きるマルチメディア授業運営環境が体制的にも整備されている。この委員会の協力を得て特に本学部に
おいては,2006 年度より本格的なDTP実習授業が導入される。
【長所】
Oh-o! Meiji システムを有する明治大学は,日本でもマルチメディアを活用した教育の最先端にあ
る。また和泉校舎のメディア棟は最新のメディア教育環境を提供している。また,教育の情報化推進本
部の協力により,コンピュータ貸与などの便宜を受けた障害者が一名,2005 年度に卒業した。これは大
きな成果である。
【問題点】
語学におけるマルチメディアの活用に関しては,各教員のノウハウの蓄積が重要である。教員の知識
を体系化し,より有効な活用を目指すためにも,全学的なチーム編成が必要であろう。また本学部教員
による和泉メディア棟の活用率は,さらなる向上の余地がある。
【問題点に対する改善方針】
引き続き教務部委員会等を通じて,マルチメディアを活用した授業方法の啓蒙活動が本学部教員にも
浸透していくように,教育の情報化推進本部と連携して改善していく。同時に本学部教員間での研修機
会を通じて,メディア授業の活性化も図る。
・「遠隔授業」による授業科目を単位認定している大学・学部等における,そうした制度措置の運用の
適切性
【現状】
カナダのアルバータ大学との遠隔授業に本学部も参加したが,現在この提携は先方の事情により頓挫
第3章 文学部 -28-
/289
状態にある。また,キャンパス間の遠隔授業の必要性は本学部においては当面生じていない。
【問題点】
新たな遠隔授業の海外提携先を検討するべきだろう。
【問題点に対する改善方針】
新たな遠隔授業の海外提携先の模索と,遠隔授業の記録推進について,大学の取り組みに協力してい
く。
(3年卒業の特例)
【目的・目標】
極めて優れた資質を持ち,かつ在学中に優秀な学業成績をあげた学生が,いち早く大学院等に進学し
てより一層才能を伸ばし,学術の発展に寄与すること,また優秀な学生をいち早く社会に送り出して,
社会・経済活動に貢献させることは重要である。同時に,この制度を通じて優秀な学生の育成に努め,
高等教育の充実に資することも必要である。
・4年未満で卒業を認めている大学・学部等における,そうした制度措置の運用の適切性
【現状】
本学部は学生が年次ごとに演習を通してステップアップし,4年次で卒業論文を書くというシステム
なので,3年次卒業は現実的に難しい。学問の性質や,就職活動状況からも3年次卒業は難しい。
(3)
国内外における教育研究交流
【目的・目標】
本学部は,外国文学・歴史・地理を扱う専攻が多い。一方日本文学専攻も世界文学の中での日本文学
の位置づけを鋭敏に意識してきたし,日本史学専攻も,周辺諸国等との国際史を常にその視野におさめ
てきた。分野性の点でそもそも国際的意識の高い学部である。
この学部の特質を活かした国際化への対応と国際交流の推進につとめることが本学部の国際戦略の
機軸をなす目的意識である。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の適切性
【現状】
文化理解が重要な学問的目標である本学部は,国際化と国際交流の推進に積極的に関わっている。特
にウィーン大学との学術交流が盛んである。
【長所】
ウィーン大学人文学部と本学部との学術協定締結は,大学単位ではない国際的学部間協定として,明
治大学において初めての例である。この協定は 2005 年度に大学間協定に格上げされた。また,同年度
にはこの協定に基づく共同公開シンポジウムが5年目を迎えるなど,着実に成果を積み重ねている。ウ
ィーン大学等とのルートを通じた留学生も継続して受け入れられている現状況は,基本方針の適切性を
裏付けるものであると考える。
【問題点】
学生の留学も促進するため,新たな海外の大学との協定関係締結に努め,海外の大学・研究所との学
術交流も促進するべく,努力を続ける必要がある。
【問題点に対する改善方針】
留学生の受け入れについては,インターナショナル・ハウスの建設等,全学的な受け入れ体制の整備
について,国際交流センターなどと連携して充実を図る。
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
【現状】
留学生の受け入れに関しては,海外からの留学希望者への便宜を図るため,2003 年度の留学生入試か
ら日本留学試験のみで合否を決定する選抜方式を採用した。学生の海外への留学に関しては,協定校留
第3章 文学部 -29-
/290
学と学生が自ら留学先を探し,学部が留学を認めた認定校留学の制度によって毎年 10 名程度ずつ留学
しているが,特に独文学専攻は独自で協定校化を進め,留学生を増やしている。研究の交流に関しても,
ウィーン大学人文学部と本学部との学術協定締結に伴い,公開シンポジウムを催している。また交流の
評価・発展に関しては両学部において担当教員が不断の連絡・協議に努めている。
【長所】
ウィーン大学との交流を始めとする海外諸大学との信頼関係は,人的交流に着実に結びついている。
【問題点】
留学生の受け入れに関しては,志願者は増えたものの,入学後の受け入れ体制が充分とは言えない。
留学生向けの宿舎の建設,日本語教育のシステムなど,全学的な対応が求められる。この点で,本学部
の 2006 年度の留学生試験による留学生受け入れが9名に終わってしまったことも反省点である。
【問題点に対する改善方針】
学生の海外への留学や研究交流に関して,現在はドイツ文学専攻が独自に推進しているが,全学部で
取組み,交流国をより広げる必要がある。単位互換の拡大についても検討していく。また,留学生試験
を通じた留学生に関しても,全学的対応を引き続き求め,受け入れ数の増加に努める方針である。
・外国人教員の受け入れ体制の整備状況
【現状】
「教員組織における外国人研究者の受け入れ状況」に現状を示した。
【長所】
特に受け入れに関して制度的支障はなく,受け入れ体制は整備されていると考える。
【問題点】
専任教員の枠内での外国人教師の採用は,言語上の問題により,学部内の諸業務,特に入試業務に関
する日本人教員の負担増につながる点もあるが,これに関しては適切な役割分担と,外国人教師がより
積極的に学内業務に関われるような環境の醸成がこれからも求められる。
【問題点に対する改善方針】
適切な役割の分担配分や外国人教師がより積極的に学内業務に関われるような環境整備に努めてい
く。
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
【現状】
知的資産センターが教育研究成果の外部発信支援を全学的に努めている。その他,研究成果の外部発
信については,各教員が学会誌,一般メディア,紀要等を通じて,従来通り活発に行っている。
【長所】
海外への成果発信例も少なくなく,本学部としては概ね適切であると考えている。
第3章 文学部 -30-
/291
5-1.理工学部
(1) 教育課程等
(学部・学科等の教育課程)
【目的・目標】
I-MAST構想に則り,世界に向けてユニークな研究情報を発信し続けることのできる,オンリー
ワンの人材を教育する。
理工学とは,自然の理法を説き明かし,それを工学的に実現させることである。これからの理工学者
は,学んだ知識を人類の幸福のために奉仕させる道筋を想像力豊かに思い描ける地球市民とならなくて
はならない。
したがって,理工学部の教育目標は,豊かな人間性と確かな実力を備え,知の創造と知の活用を以っ
て,世界の発展と人類の平和の実現に貢献し,多面的な思考のできる実践的な職業人・社会人を育成す
ることである。
併せて,本学の建学の精神を引き継ぎ,しっかりとした責任感と倫理観を持ち,いかなる分野にも対
応できる基礎学力と柔軟性のある技術者の育成を教育理念とする。
・学部・学科等の教育課程と理念・目的並びに学校教育法第 52 条,大学設置基準第 19 条との関連
・学部・学科等の理念・目的や教育目標との対応関係における,学士課程としてのカリキュラムの体系
性
【現状】
上記に言及しているI-MAST構想は「学校教育法第 52 条における知的,道徳的及び応用能力を
展開させる」ことや「大学設置基準第 19 条の幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い,豊かな人間
性を涵養するよう適切に配慮」しており,本学部はこれを学部・大学院6年一貫教育を通じて実現する
ことを目指す。学部教育の4年間では,人間としての幅広い教養と共に,理工学の学問と技術の基礎を
身に付けて,あらゆる分野で活躍できる,人間性豊かでバイタリティのある人間の育成を目指す。
そのために,複合領域専門科目を設置し,基礎的な知識と科学的思考法を鍛錬する。また,同じ理工
系科目でも,教養的な広がりを持つ総合科学的な講座も必要であるという観点からも,複合領域専門科
目を設け,宇宙科学や生命科学,人間工学,環境科学,工業経営,マーケティング,品質管理,技術者
倫理,等々を設置している。
また,入学後1年生あるいは2年生を対象に,まずは専門の科学技術に偏らない自由な個性を育むた
めに,少人数(上限 20 名)の教養教育を実施している。
科目名:「総合文化ゼミナール」
内容:文学,美術,映画,SF,哲学,音楽,能楽,数学思考法,環境問題,文章法,言語学,科学
技術史等
総合文化ゼミナールのテーマは多岐に渡り,その中から学生は自らの関心の赴くところに応じて履修
申請できる。科学技術に偏向しがちな学生に多様な文化相にふれる機会を用意し,個性と柔軟性の涵養
を実践している。また,専門科目一辺倒になりがちな3・4年次にも,教養科目を設置し,卒業の前に
再度,幅広い視野に立って物事を考える機会を用意している。
さらに6年一貫を目指す立場から,学部学生が大学院科目を先取ることを可能としている。このこと
から,学部4年間の前半部分は,自分の進路,得意分野を決める期間であり,後半部分は,専門分野の
ための基礎を学ぶ期間(大学院へ進む学生),または,社会へ出るための基礎を学習する期間(学部で
卒業する学生)としている。
【長所】
これにより,複合領域科目と合わせて,人文・社会・自然科学の分野を,総合文化的に1年から4年
まで満遍なく受講できるようになった。特に入学早々から参加型の少人数教養科目「総合文化ゼミナー
ル」については受験生からの問い合わせも多く,理工学部の看板科目のひとつになっている。
また,6年一貫教育をうたい,学部学生が大学院科目を先取りすることが可能としているので,学生
はその科目を履修することで進学という目標が定まり,それに向かって学習計画を前向きに組み立てる
ようになる。
第3章 理工学部 -1-
/292
【問題点】
総合的かつ多面的な思考のできる,基礎実力のある実践的な職業人,社会人の育成という理念と,専
門科目と教養科目との連携や接続性が,まだ充分に整合性のとれたものになっていない。また,教養教
育の担当者と専門教育の担当者の連携が十分ではない。
6年一貫教育をうたいながら,上記のように学部4年間を大枠では前半2年,後半2年と従来の制度
から抜け切っているとは言いがたい。学部4年間を基礎教育の期間と思い切る必要がある。学部と大学
院との接続性,学科・専攻間の人的交流や移籍を自由化し,ひいては学際的研究を行うことが出来る人
間を育て,分野横断的な空気をキャンパスに醸成するためには,共通カリキュラムを体系的に設計する
必要があるが,それが充分実現されているとは言えない。
【問題点に対する改善方針】
I-MAST構想で謳っている「豊かな人間性と確かな基礎的知識と実力を持った人材の育成」のた
めに常設の教学委員会と併せて,学部教育改善を戦略的に企画立案する学部FD委員会で,教育体制及
びカリキュラム体制の再編やJABEE受審において指摘されたカリキュラム体系における教育連携,
教養教育の担当者と専門教育の担当者の教育連携,それを実質的に保障するための担当者連絡会議の設
置などを組織的に推進する。
なお,カリキュラム改定にも係わる横断的な学科の再編や漸進的学科数の削減に一部着手した。例え
ば,電気電子工学科と電子通信工学科を統合し,電気電子生命学科の1学科にすることが決定した。そ
れを基点に今後の学科統合及び再編,さらには大学院組織の抜本的な改革を推進する。
・教育課程における基礎教育,倫理性を培う教育の位置づけ
【現状】
理系基礎科目として,基礎数学,基礎物理,基礎化学,基礎生物学,基礎地学,基礎物理実験,基礎
化学実験を設置している。特に基礎数学には,通常のクラス以外に,アドバンストクラスとベーシック
クラスが設けられている。また,人文的教養を身につける総合文化科目,健康を維持,増進していく方
法を学ぶ健康・スポーツ学,最新の科学技術に関する知識を得る手段となる,また,外国文化に対する
理解のための外国語科目が設置されている。特に,少人数で行われる1・2年生の総合文化ゼミナール
では,理系・文系の専門知識を問わないで,グループ討論,調査,発表を通じて,人間,文化,社会に
ついての理解を深められるような場を設けている。
【長所】
理系基礎科目の授業は,9学科の学生が1クラスに割り当てられる「混合クラス体制」で実施され
ているため,9学科の学生が全てのクラスで混ざり合い,色々な学科の人間と知り合え,専門の異なる
人間への理解と寛容と好奇心を引き出すことが可能になる。基礎数学の学習度別のクラス編成は脱落者
の減少に寄与している。
総合文化科目,健康・スポーツ学,外国語科目は,理系学生にありがちな閉鎖性を打ち破り,広く社
会の文化的相に視線を向けさせることによって,一般市民としての自覚を促し,結果的に社会倫理を培
うことが可能である。
【問題点】
総合文化ゼミナールの社会学分野のコマ数が不足している。また,履修希望者が多くいるにも拘らず,
各コマの上限設定を 20 名としているため,履修できない学生も出ている。
【問題点に対する改善方針】
総合文化ゼミナールについては,学部内に設置されている総合文化教室において集中審議し,理念の
確認や制限の撤廃などを含め,改善案を提案したが,全体のカリキュラム改定に合わせて再提案するこ
とに決まった。
基礎教育に関しては,学科横断科目であるが故の教材・教授法の不統一,成績評価の公正性など,そ
の抜本的な改革が必要と認められるため,教学委員会及び学部FD委員会の重要課題として取り組むこ
とが決定している。この件に関してはJABEE受審の際にも指摘があった。また人気の高い「総合文
化ゼミナール」に関しては,履修希望者が受講できないようなシステムを改善するよう指摘があった。
今後は社会分野において注目されているホットな話題について,ゼミナールを開講してもらえる兼任
講師を,積極的に,開拓,採用するべきではないかとの提案が,総合文化教室からあり,それを受けて
第3章 理工学部 -2-
/293
今後教学委員会等で検討する。
・「専攻に係る専門の学芸」を教授するための専門教育的授業科目とその学部・学科等の理念・目的,
学問の体系性並びに学校教育法第 52 条との適合性
【現状】
電気電子工学科においては,電気電子工学の分野が発展が目覚しく,領域も幅広く及ぶため幅広い電
気電子工学の理論や応用科学の基礎を習得し,新しい科学技術社会への対応力や独創性を生む能力を教
育するよう,特に基礎を重視したカリキュラムで構成されている。1・2年次においては,数学や物理
学の系統的な学習をはじめ,電気磁気学や電気回路論などの演習付授業により基礎科目の徹底的な教育
を行う。3年次にはゼミナールを配置,4年次の卒業研究は研究方法や論文のまとめ方を修得させるた
めの必修科目としている。
電子通信工学科もその分野が情報社会を土台から支える基礎技術であり,進歩が著しく時代のニーズ
に合致した学問であると同時に 21 世紀を担う重要な技術であるため新技術の創造と応用技術の開発を
担える人材を育成することを目標としながら,特に基礎を重視している。このため,低学年次において
数学・物理学などを系統的に学習し,電気磁気学・電気回路・電子回路・情報処理(コンピュータ実習)
などの科目では実習を併せて行ない,電子通信工学の基礎が十分理解できるように科目配置を考慮して
いる。また,1年次より電子通信工学概論などを通して最新の研究に目を向けられるように配慮し,3
年次から配属されるゼミナールで高度な専門能力を構築した後卒業研究を行なうこととしている。
機械工学科もこの分野が関係する範囲が極めて広いため,広い分野にわたる総合能力の養成を重視し
て編成している。低学年次には基礎的な科目を重点的に学び,高学年に進むにつれて身につけた基礎知
識を応用した高度の専門科目が受講できるようになっている。特に主要四力学(流体力学,熱力学,材
料力学,機械力学)には演習を設けて知識およびその応用力の向上を図るとともに,実験・実習,設計
製図はできるだけ多くの教員が担当し,教育をいきわたらせている。4年次にはゼミナール,卒業研究
に取り組む。ゼミナールでは論文あるいは専門書の講読や卒業研究に必要な特別講義を受ける。卒業研
究では学生が独自のテーマにより調査,設計,研究を進める。
機械情報工学科は,これからの人間社会に役立つ技術を先人たちの優れた技能や思考を理論化し有効
に活用できるようにするため,機械工学分野における高度な技術を基礎にして,豊かなアイデアを創出
し,かつ,それを具現化する情報化技術を得るための機械工学の専門分野を幅広く学び,さらに,情報
化技術も学べる環境としている。機械工学の基礎となるコア科目を中軸にし,その上に二つの履修コー
ス(機械の原理を学ぶ機械化学コース,機械の知能化を学ぶ機械知能コース)を設けている。また,相
互間の履修も可能であり,両コースの条件を同時に習得した場合は機械システムコース修了者(JAB
EE審査)として認定できるようにしている。
建築学科では,将来広く環境全体の分野の最前線で活躍し得る実務者,技術者,研究者を育成したい
と考えている。建築学科には大きく分けて「構造・材料」系,「環境・設備」系,
「歴史・意匠・計画」
系の三つの学問分野ある。これらは「授業」と「演習」という形で,毎年レベルを上げて学べるように
カリキュラムを組んでいる。最後に「卒業研究・設計」という形で自分の選んだテーマに従った論文や
作品を作成する。特に建築学科はどの分野の授業も自由に選択して学べる履修システムを採用している
ため,学生は自分自身で将来の進むべき方向を考えてカリキュラムを組み立てることができる。
応用化学科は「フラスコからコンピュータまで扱える科学者・研究者・技術者の育成」を目指し,特
に実験科目に重点を置いたカリキュラム構成となっている。その実験科目の一つである「化学情報実験」
では一人1台のコンピュータを使ってさまざまなシミュレーション実験を行ない,スクリーンの臨場感
ある立体画像を通して数値処理から分子エネルギー計算にいたるまでの多角的な化学のイメージを習
得できるように配慮している。これ以外に実験器具を利用する従来の基礎科学実験Ⅰ・Ⅱ,工業化学実
験1~4と併せて履修することによりリアルからバーチャルにいたるまでの幅広い化学実験を体験で
きるようにしている。
情報科学科は,情報に関する基礎理論の学習とコンピュータを活用した演習・実習に重点をおき,実
践的な力をつけることを重視している。低年次に離散数学,情報理論,情報リテラシー,情報処理・演
習などを配置して初学者がスムーズに情報科学を学習できるように配慮している。高年次にはシステム
からデバイスさらには他分野との境界領域をも含むより専門的な授業科目を配置し,幅広い知識の習得
ができるようにしている。また,ゼミナール,卒業研究などの科目により教員の個別指導を通じて問題
発見能力と問題解決能力を身につけカリキュラム全体を通じて時代を変える豊かな創造力と柔らかな
思考力を有する人材の育成をしていく。
数学科は数学の力をつけて卒業することを目標としている。1年次は「ゼミナールA」と「数学演習
第3章 理工学部 -3-
/294
1・2」を設置し,数学の全体像と4年間の勉強に不可欠な基礎知識を習得する。1・2年次は比較的
易しい内容となるよう設計しており,学生が高校までに覚えてきた数学との異質さに適応する期間と位
置づけている。3年次配置の講義科目は重厚な代数・幾何・解析の3分野で大切なテーマが論じられる
ため,講義内容のより深い理解を目的にほとんどの講義科目に「演習」がついている。到達目標である
4年次の「卒業研究1・2」では,少人数に分かれて研究室へ所属し具体的なテーマに沿って研究と勉
強が行なわれる。これらのカリキュラムを通じ,真理を純粋な形で体験し,数理的な思考法を身につけ
た人材を育成していく。
物理学科では,物理学を通して社会に貢献できる人材を養成することを目的にしている。そのため,
低学年のうちから授業と演習・実験によって物理的なものの見方・考え方を徹底的に教育する。これに
より,基礎科目の力をベースに学生の感心にしたがって専門科目の諸科目(素粒子物理学,レーザ物理,
光学,半導体物理学,生物物理学など)を選択することができる。また,卒業研究・ゼミを通じ,高度
科学技術社会を支える物性物理学やこれからの発展が期待される生物物理学など物理学研究の最先端
にふれる。
このような各学科固有の学科専門科目に加え,各学科に共通な科目として理工学全般の基礎となる数
学分野,物理分野,化学生物分野,情報分野,その他の分野で構成される共通基礎専門科目と複合的,
先端的な内容の複合領域専門科目がある。また,教育職員免許状取得条件に指定された教職関係専門科
目も設置している。
これらの専門教育的授業科目は学校教育法第 52 条に適合し,かつ,理工学の学問と技術の基礎を身
に付けて,あらゆる分野で活躍できる,人間性豊かでバイタリティのある人間の育成がなされている。
【長所】
実験科目,演習科目は,文系学部では得がたい学生,教員,TAの密接な関係が,学生の学業への取
組みを真摯なものにしている。
・一般教養的授業科目の編成における「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い,豊かな人間性を涵
養」するための配慮の適切性
【現状】
広く思想,歴史,文学,芸術などの人文的教養を身につけることで豊かな人間性を養い,また政治,
国際関係,経済,法律など社会生活に必要な知識を得ることで国内外に対する多角的な視野を持つこと
ができるようになることを目的とした総合文化科目として,1・2年生向けに少人数の教養教育科目「総
合文化ゼミナール」を開設し,受験勉強による受講一辺倒の学習経験しかない新入生に向けてディスカ
ッションやプレゼンテーションの訓練を用意している。3・4年生向けには「総合文化講義科目」,人
文・社会系科目を 16 科目設置し,進学や就職をひかえた学生に自らの専門と社会・文化とのかかわり
を再考してもらう機会を設けている。
【長所】
教養教育を少人数で実施することにより,学生は専門知識を身につける以前の常識の観点から授業に
参加し,自由に発言する機会を得られていることに喜びを感じている。授業内容はオーソドックスな伝
統的分野にこだわらない自由なメニューを用意してあるので,選択肢がひろく,非専門科目としての自
由闊達さが,授業スタイルにも反映されている。
【問題点】
メニューは通常の教養科目よりも多いが,少人数であるため,教員の数が足りない。グローバル社会
の実情に合わせてメニューも大幅に増加させるべきであるのに,予算と専門科目とのバランスなどが壁
になり,理念に沿った必要な体制が整っていない。
【問題点に対する改善方針】
3・4年生向けにも,自らの専門と社会とのかかわりを自覚し再確認させるような,ディスカッショ
ンやプレゼンテーションの訓練を実施するゼミナール形式の一般教養的授業科目が必要であるとの認
識から,「総合文化ゼミナール」の拡充をはかり,総合文化教室から提案の準備が整っている。アカデ
ミズムの世界だけでなく,ひろく実務や実社会で活躍している人材を講師に招くなど,教養科目ならで
はの自由な立場からカリキュラムの改善を図る。このことについては,次回のカリキュラム改定のとき
に正式に提案することが決定している。
第3章 理工学部 -4-
/295
・外国語科目の編成における学部・学科等の理念・目的の実現への配慮と「国際化等の進展に適切に対
応するため,外国語能力の育成」のための措置の適切性
【現状】
理念と目的は次のように総括できる。外国語を学ぶことを通して相互理解の技能を磨き,それをもと
に言葉そのものと,言葉が媒介する異文化の核心に触れ,多元的な地球社会を偏りなく見渡すことので
きる教養豊かな国際人を養成する。これに基づき,外国語科目の編成を次のようにしている。
第1外国語として英語,日本語(留学生向け),第2外国語としてドイツ語,フランス語,ロシア語,
英語(留学生向け)が設置されている。2005 年度から中国語を設置している。
英語については,1年生対象2科目のうち1科目の少人数化を実現したので,その分,基礎教育の充
実を図る手厚い授業を実施するよう各担当者に指示している。もう1科目については,必修 e-ラーニン
グ授業を実施している。その結果,CALL教室において,自学自習用の英語ソフトを使った授業が行
われるようになっている。2年生は1年生向けの基礎と実践の授業を経た後の接続性を考慮した総合英
語と長文読解クラスを組んでいる。
TOEIC,TOEFL,英検,ケンブリッジ英検などの試験のスコアによって,授業科目の単位認
定が受けられる。2006 年度より全学年無料のTOEIC団体テストを受験可能にした。
第2外国語は,上記理念の下,初学コースであるところから,入門→基礎固め→各言語圏の文化的紹
介及びグローバル社会における位置づけを念頭に,3つのメニューの接続性を確保した順次的教育を施
している。
第1・2外国語とも,さらなる学習のためには学部間共通科目・学科専門科目・e-ラーニングソフト
(現在は英語のみ:スタンダード・コース,技術英語基礎コース・英文法コース)を卒業まで継続学習
できる設備と環境が整っている。
スポーツ特別入試入学者と英語未習留学生向けに特設クラスを設置し外国語能力の育成を行ってい
る。
【長所】
上記カリキュラム編成は以下の効果を生んだ。
必修 e-ラーニング授業により,学生 1000 名対象の授業において,一部であるが同一教材・同一学習
環境の英語教育を実現することができた。CALL教室自習時間時の e-ラーニング自学自習者が増加し
つつある。特に導入以前の学生の自学自習率は大学の平均をはるかに上回っている。資格試験単位認定
学生数が着実に経年増加している。TOEIC団体テストの受験希望者が 1300 人以上あった。スポー
ツ特別入試入学者と英語未習留学生向けに手厚い授業を実施することができた。
【問題点】
3,4年に外国語(特に英語)の必修科目が設置されていないため,学生は1,2年で学習が終了し
たと決めつけてしまう。2005 年度から中国語を新設したが,応募が殺到したにもかかわらず,教員数と
クラス数が不足しているため,大勢の学生が希望通りに履修できなかった。
スポーツ特別入試入学者と英語未習留学生向けに特設クラスについては,学部設置とはいえ横断科目
であるので,生田地区で活動しているスポーツ学生,近隣に住んでいる留学生の利用増加があってしか
るべきであるのに,他地区及び他学部からの利用者はゼロであった。
e-ラーニング授業以外の科目の教員連携は年に1度の教科書会議に限られているため,授業運用や成
績評価についての公正性は確保されているとはいいがたい。メディア教材の管理部署の体制が不備であ
ることと,管理部署と教材利用教員との連携が十分にとれていない。
【問題点に対する改善方針】
TOEIC,TOEFL,英検,ケンブリッジ英検などの資格試験受験者を増やすために,単位認定
制度の周知を徹底的に実施する。2006 年度から実施する全学部生対象無料受験制度の希望者を増やすた
めに,新入生は4月のガイダンス時に,2年生以降は学生の希望や年度スケジュール等を調査し,日程
の調整をはかる。あるいは大学の団体テストにリンクさせることを検討し提案する。欧米圏に偏らない
国際理解講座,例えば,中国語の設置を学部間共通外国語科目委員会に提案できないか,学生の要望を
調査して検討する。
スポーツ特別入試入学者と英語未習留学生向けに設置した特設クラスを有効に機能させるために,各
クラブの部長や監督ともっと密に連携し,スポーツ学生が少しでも多く学習履歴を積めるような方策を
第3章 理工学部 -5-
/296
提案する。教学委員会等で授業運用や成績評価についての公正性の確保や,メディア教材の管理部署の
体制を整備することにより,外国語能力育成の措置を適切に行う。
・教育課程の開設授業科目,卒業所要総単位に占める専門教育的授業科目・一般教養的授業科目・外国
語科目等の量的配分とその適切性,妥当性
【現状】
卒業に必要な単位数は 132 単位。授業科目の構成は以下の通りである。
○ 総合文化科目8単位以上
○ 健康スポーツ学科目2単位以上
○ 外国語科目 22 単位以上
○ 理系基礎科目 12 単位以上
○ 専門教育科目 78~94 単位以上
専門教育科目の分類は以下のとおりである。
○ 共通基礎専門科目
○ 学科専門科目
○ 複合領域専門科目
○ 教職関係専門科目
2005 年度以降のカリキュラムは,JABEE の基準にあわせて,学習時間 1800 時間以上を 132 単位で確
保できるように実験実習科目,演習科目の充実が図られた。また,2004 年度より,GPAを導入し,成
績 60 点以上を単位認定条件とした。
【長所】
以前は教養講義科目に割り振ってあった「自然科学」部門を「理系基礎科目」と名称を改め,理工系
特有の基礎的科目として 12 単位以上履修できるように,その部分の充実化が図られた。
少人数の「総合文化ゼミナール」(総合文化科目の1つ)が設置されているので,学生は1,2年の
うちに教養科目によってディスカッションやプレゼンテーションの体験を積むことができる。
【問題点】
「理系基礎科目」の充実化と引き換えに,総合文化科目が削減された。その結果,履修可能な文系・
社会系科目が減り,学生が社会や文化の諸現象に学問的に取り組む機会を奪っている。
【問題点に対する改善方針】
各科目ごとの単位数の配分は,I-MAST構想の理念に即した適正な数字になっているか,学科再
編のプログラムにあわせて教学委員会等で検討する。
GPAが,大学院科内選考の条件,就職推薦順位,奨学金,学業成績優秀者の表彰の際に判定の材料
として使えるように,それがI-MAST構想に則った大学院教育の充実化につながるよう学部内の内
規を体系的に整備する。
・基礎教育と教養教育の実施・運営のための責任体制の確立とその実践状況
【現状】
理系基礎教育については,理系基礎教育運営委員会を設置し,予算や運営上の問題点を明確にすると
ともに対処してきた。現在,「学習支援センター」を開設し,基礎数学,基礎物理学,基礎化学の授業
で学習に支障をきたしている学生の支援を行っている。
教養教育の実施については,総合文化教室の専任教員が責任主体となって,担当教員(専任・兼任講
師)と連絡を取り合い,教科書会議等で意見交換を行っている。全体のカリキュラムとの連携において
は,教学委員会,教務主任がバックアップしている。
【長所】
「学習支援センター」のTAが学習支援の過程で教育参加への意識を高めている。
【問題点】
「学習支援センター」については,TAが学習支援の過程で蓄積した支援記録や支援技術をFDへと
フィードバックするための体系的な方策がない。
第3章 理工学部 -6-
/297
各TAの資質に合った配置になっているか,学習支援に熱心なTAに報いる機能がセンターに備わっ
ているか,など新たな検討課題が生じている。
教養教育については,専任教員と兼任教員の連携,専門学科教員と総合文化科目担当教員との連携が
十分とは言えない。
【問題点に対する改善方針】
理系基礎教育と学習支援センターは,一心同体となるためのさまざまな提案を整理する。最終的には,
教学委員会と理工学部事務室で学習支援センターを運営・維持し,
「低学年教育WG」
(仮称)を立ち上
げ具体的なセンター運営を行う。
教育に意欲的なTAをさらにスキルアップさせるために,「学習支援センター」を教育研修の場とし
ての機能を併せ持たせることを検討中である。TAの教育意識を高めるためのさまざまな仕掛け(情報
処理端末,参考図書,講演&セミナー,等々)を漸次,整備していく。問題点における教員連携につい
ては,JABEE受審の際に審査チームから指摘された点であったので,それを受けて担当教員には教
育連携の証拠(教科書会議,教育法打合せ会議等の記録)を保存するよう依頼している。
・グローバル化時代に対応させた教育,倫理性を培う教育,コミュニケーション能力等のスキルを涵養
するための教育を実践している場合における,そうした教育の教養教育上の位置づけ
【現状】
学部の必修外国語科目の他に,学部間共通外国語科目でグローバル化社会へと雄飛するための足掛か
りとなるような授業を行っている。外国語によるコミュニケーション能力等のスキルアップについては,
TOEIC,TOEFL,英検,ケンブリッジ英検の受験を勧めており,検定の結果によっては英語科
目の単位認定が受けられる。
倫理性を培う教育は,主に総合文化科目で行っている。また,環境問題がクローズアップされている
時代における産業倫理の涵養のため,専門教育科目に「複合領域科目」を設置し,
「環境と技術」
「環境
計画」「知的財産法」「技術者倫理」「人間工学」等の授業を行っている。
【長所】
学部間共通外国語科目によって,必修外国語だけでは満足できない学生は,さらにレベルの高い科目,
必修以外の外国語を,自らの目的と好奇心に従って履修できる。総合文化科目だけでなく,専門教育科
目においても,倫理性の涵養を以前よりも多く実践することが可能になった。
2005 年度よりCALL教室において e-ラーニング必修授業をしている(1年生「英語コミュニケー
ション1・2」)。これにより自学自習に取り組む時間を確保した。また,それと平行してCALL教室
を自習室として開放した。その結果,授業時間外に自学自習をする学生が急増した。
【問題点】
学部間共通科目であるが,履修者は他学部に比べて多いとは言えない。
(1)理工学部の卒業単位数が多い。
(2)実験科目によって時間を拘束されがちである。
(3)生田地区開講科目が少ない。
等々の理由が考えられるが,自然科学系学部特有の事情も考慮した解決策を考えなくてはならない。
倫理性の涵養については,昨今問題となっている「安全・安心」の科学技術という社会からの要請に
応えるために,全学生必修にするなど,学部理念のもとで体系化するべきであるが,それが十分ではな
い。
【問題点に対する改善方針】
グローバル化社会へさらに雄飛するために生田地区における「学部間共通外国語科目」の拡充につい
て教学委員会等で検討する。コミュニケーション能力等のスキルアップについては,e-ラーニング・ソ
フトの充実化を図り,CALL教室以外でも自由かつ容易に利用できるような環境整備を図る。また,
2006 年度より全学年無料のTOEIC団体テストを受験可能にしたので,学生の受験率を政策的に引き
上げていく。
倫理性の涵養については,「安全・安心の科学技術」への意識を高める科目設計を教学委員会により
検討する。
第3章 理工学部 -7-
/298
・起業家的能力を涵養するための教育を実践している場合における,そうした教育の教育課程上の位置
づけ
【現状】
現在のところ実践しているとは言えない。しかし,近々に設置する予定の新専攻のコース(数理ビジ
ネス・コース)において,秋葉原キャンパスとの連携の下に展開していくプランを作成済みである。
・学生の心身の健康の保持・増進のための教育的配慮の状況
【現状】
日々を積極的に,豊かに生きるためにスポーツを中心とした身体運動を通じ健康について考え,健康
を維持,増進していく方法を学ぶ「健康スポーツ学科目1・2」及び「スポーツ実習A・B」
,また,
「総
合文化ゼミナール(身体を造る)」にて,体育教員による少人数のトレーニング基礎論,体脂肪量測定・
形態測定,自己評価のノウハウを教育している。
【長所】
身体の管理を科学的に設計していく方法を学ぶことにより,人体への正しい理解と健康の維持が,人
生設計にも重要であることを,実践的に学ぶことができる。
【問題点】
身体の管理と維持の観点から言えば,3,4年にも設置しなくてならないはずである。この科目の授
業を健康スポーツ学的に推し進めていくときに,必要となる機器と設備が絶対的に不足している。
【問題点に対する改善方針】
問題点の解消のため,健康スポーツ学のカリキュラムと教員の体系的な教育連携図を作成し,充分な
設備の整備について年度計画によって改善を図る。
(カリキュラムにおける高・大の接続)
・学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行するために必要な導入教育の実施状況
【目的・目標】
2002 年度より導入したAO入学試験実施に伴い,入学予定者に対し,スムーズな受入れを行うための
入学前教育を実施した。
【現状】
特別入学試験入学者のために入学前教育を実施している科目は英語と数学であり,その対象は,AO
入試,公募制スポーツ入試による入学者としている。理系基礎科目及び専門科目の一部については,学
習支援センターで学習上の相談を受け付けている。
明治大学付属明治高校とのプレカレッジプログラムに加え,神奈川県立生田高校と明治大学理工学部
との間で,高校生に生田キャンパスで「理工学概論」の授業を受講させることについて協定書を結び,
模擬授業を実施している。高校生1・2年生が受講し好評を得ている。2006 年度は農学部教員からの協
力も得ている。
【長所】
生田地区2学部の地域貢献の一環として実施しているが,高校生の中には,キャンパスへ出向いて教
員や設備に直に接したことが刺激になって,AO受験をした生徒もいた。地元高校生の受験を促す結果
となっている。
【問題点】
生田高校との連携については,地域貢献をうたう以上,1校だけとの連携では不十分である。
【問題点に対する改善方針】
2006 年度からは,本学部,生田高校の高大連携プログラムに,農学部も参加し,理系を希望する生田
校舎周辺の高校生に対して貢献することとなった。また,同プログラムへの参加を,オープンキャンパ
スの日程を利用して,生田高校以外の近隣の高校にも呼びかけ,2006 年度においては,さらに参加校を
増やし,協定を結んで地域貢献の拡充を図る。
第3章 理工学部 -8-
/299
(カリキュラムと国家試験)
【目的・目標】
外部機関による教育評価と国家資格に直結したカリキュラム改革を,今後の本学部の目標とする。現
在は,機械系学科にとどまっているが,例えば,JABEE認定などの外部評価を受けることを前提に
教育改革の具体的目標を浮き彫りにしていくことにより,カリキュラムの実質的な改善を図ることを目
標にする。
・国家試験につながりのあるカリキュラムを持つ学部・学科における,受験率・合格者数・合格率
【現状】
機械系学科(機械工学科と機械情報工学科)は,2005 年にJABEEを受審したが,認定を受けると
技術士法に基づく日本の国家資格である「技術士」について,第一次試験の合格者と同等(つまり,修
習技術者)であるとみなされる(2006 年に両学科とも認定を受けた)。
【長所】
上記の通り,第一次試験の合格者と同等(つまり,修習技術者)であるとみなされる。
(インターンシップ,ボランティア)
【目的・目標】
インターンシップの目的は,学生が在学中に企業などで自分の学科や将来の専門分野に関連した就業
体験を通して学問と実社会とのつながりを理解し,勉学の意味を明確にすることである。
ボランティアとは,学生みずからの意志で希望し積極的に参加するという姿勢のもとで,社会にかか
わり,人とふれあう場を築き上げることである。本学部としては,学生に積極的に取り組むよう奨励す
る。ただし,それは学生自身の自主性に基づいて行わることが肝要である。
・インターンシップを導入している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
大学として「就職キャリア形成支援センター」が設置され,ジョブ・インターンシップの受け入れ可
能な企業の開拓を行っているが,学部としては教学委員会において,取りまとめ委員を選出し,個々の
学生には各学科の責任で指導を行うことになっている。また,「ジョブ・インターンシップ実習」を正
規科目として配置している。
2005 年には,神奈川経済同友会からは,企業が提案するテーマに大学生が応募し,さまざまな提案を
行うチャレンジ・プログラム(日常の経営課題の中から実践的な研究テーマを提示して学生の募集を行
い,提出された研究レポートを審査して優秀な研究について表彰するもので,学生が主役のプログラム)
への参加を打診されたことを受け,学部内広報を行い,学生の参加を促している。
【長所】
神奈川経済同友会のプログラムでプレゼンテーションするための準備,社会への参加意識,アイデア
の提示法など,いずれも学生への教育効果は非常に大きい。
【問題点】
ジョブ・インターンシップは学生にとって単位認定の手続きが煩雑であり,事前教育(マナー&安全)
への参加も必須であるため,積極的に取組みにくい。神奈川経済同友会のプログラムへの参加者はきわ
めて少ない。
【問題点に対する改善方針】
今後は,単位認定の手続き方法や事前教育方法の問題点を制度的に解消し,学生からの応募数を増や
す仕組みを検討する。神奈川経済同友会のプログラムへの参加を教学委員会等を中心に推進していく。
・ボランティア活動を単位認定している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
単位認定はしていない。ろう学生のためのノートテイカーは毎年募集すると必ず一定数は集まるので,
本学部の学生の意識は高いと認識している。単位認定と引き換えにボランティア活動を誘導することを,
第3章 理工学部 -9-
/300
学部の教育体制に組み込むことについては,教育理念の観点から疑問ではあるが,学部教育の一環とし
て,なんらかのボランティアに対する取組みは必要であると認識している。ただし,ボランティアは,
学生自身の自主性に基づいて行わなければ意味がないので,その社会的な意義をさまざまな場面でアピ
ールするために,例えば,表彰をしたり,HPで顕彰したり,ボランティアへの関心を高めるための条
件を整えることが必要ではないかと考える。
単位化については,ボランティアと矛盾しない理念を構築できるか,学部教員の賛同を得る前に,検
討すべき課題である。
(履修科目の区分)
【目的・目標】
豊かな人間性,正しい倫理観,基礎知識と幅広い教養を有し,世界の発展に貢献できる人材を育成す
る,理工系基礎の実力を有し,多様な価値観を許容し,明朗で感性豊かな職業人・社会人となる人材を
養成するなど,I-MAST構想の理念の実現をめざした現実的なカリキュラムを構築する。このよう
な教育目標に見合った教養教育と専門教育のバランス,必修・選択の量的配分,学部と各学科の方針の
調整,学部と大学院をつなぐ6年一貫教育,等々を慎重に見極め,カリキュラムを構築する。JABE
E受審等の外部評価に向けて,カリキュラムの継続的な点検・改善はもとより,JABEE基準に定め
られている 1800 時間の学習時間の確保するために,JABEE基準に関わる主要科目のクラス分割化,
必修化を図り,より高い教育効果を目指す。
・カリキュラム編成における,必修・選択の量的配分の適切性,妥当性
【現状】
学科別の必修と選択単位数は次のようになっている。
学科
電気電子工学科
電子通信工学科
機械工学科
機械情報工学科
建築学科
応用化学科
情報科学科
数学科
物理学科
必修単位数(選択必修科目
を含む)
96
90
95
95
89
98
101
97
81
選択単位数
36
42
37
37
43
34
31
35
51
卒業に必要な単
位数
132
132
132
132
132
132
132
132
132
2005 年度カリキュラム改定では,JABEE対応とするために,特に受審学科の特定分野の学習時間
を保証する必修・選択必修の科目数が増加した。それを受けて,年間履修可能単位数を次のように設定
した。
2005 年度カリキュラム改定;1年 52 単位,2年 52 単位,3年 48 単位,4年 46 単位
【改善方針】
JABEE受審および外部評価の結果を踏まえ,カリキュラム編成における必修・選択の量的配分の
適切性・妥当性について教学委員会等で検討を行う。
(授業形態と単位の関係)
【目的・目標】
理工系学部に必要な科目をひとつひとつ検討し,理系学科にありがちなタコツボ的カリキュラムにな
らないように,学部においては教養と理系基礎の充実化を図り,授業形態と単位数の設定を学部理念に
あわせて提案する。
・各授業科目の特徴・内容や履修形態との関係における,その各々の授業科目の単位計算方法の妥当性
【現状】
第3章 理工学部 -10-
/301
各授業科目は,講義,演習,卒業研究,卒業設計と外国語,実験・実習,設計・製図に分けられる。
実験・実習では,実験室に設置してある,装置,器具を使うもの,情報処理教室などのコンピュータと
特別なソフトウエアを使うものがある。単位は,講義,演習,卒業研究,卒業設計は,週に1時間の講
義+自習2時間を 15 週行うことで1単位が与えられる。外国語,実験・実習,設計・製図では,週に
2時間の実習+1時間の自習を 15 週行うことで1単位が与えられる。1時限(90 分)の授業は2時間
とみなしている。
【長所】
科目の内容や特徴に即した計算法になっており,特に疑問も混乱も生じることなくスムーズに実施で
きている。
【問題点】
時間数に関しては,春季・夏季休業期間に加え,入試日程の関係等もあり,年度によってはハッピー
マンデーの影響も大きく,すべての曜日に対して,15 週の授業は不可能である。
【問題点に対する改善方針】
今後は補講日を土曜日の数日間に設定するとともに,集中講義など,毎年の学年暦を見据えて授業日
程の調整を容易にするよう学内の連絡調整を図る。
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
カリキュラムを補完するためにむやみに他大学の科目に頼るのは,本学部の理念と特色を否定するこ
とになりかねない。しかしながら,分野の細分化・専門化が進んでいる理工学は,自前のカリキュラム
だけでは学生の希望に添えないことが多い。したがって,一定の範囲で他大学のユニークな科目の履修
単位を振り替えたり,認定することが学生の学習計画を完遂させる上で必要と認識される場合は,単位
互換・単位認定は大きな意味をもつ。また,同じように,他国の大学への留学者や他国からの編入・学
士入学者の単位互換・単位認定も,グローバル社会のなかにあっては,これからの重要な目標である。
・国内外の大学等と単位互換を行っている大学にあっては,実施している単位互換方法の適切性
【現状】
協定校や学生が自ら留学先を探し,学部が留学を認めた認定校に留学した場合,修得した単位を,教
学委員会に諮り,振り替え可能であるかを検証した後,単位認定している。国内の大学については,学
部ではなく,連携大学院(理工学研究科数学専攻)が都内の大学と行っている。
【長所】
海外の協定校・認定校との単位互換を認めることによって,帰国後の学習計画が立てやすくなるとと
もに,留学先での勉学の励みになる。
【問題点】
国内の大学と単位互換を実施していないことは,学生の自由な研究をある意味閉ざすことにつながる。
また,海外の協定校・認定校との単位互換を認めているのもかかわらず,送り出す留学生が少ない。
【問題点に対する改善方針】
学生が学部で対応できない新分野に意欲的に取り組む姿勢を見せたときは,単位互換だけでなく,他
大学のカリキュラムの内容について即座にアドバイスできる情報を少なからずもつべきである。
海外の協定校・認定校についての情報,留学に必要な語学力・経済的支援体制(奨学金)などの情報
を国際交流センター,学習支援センター等から入手できる体制を整備し,留学に意欲的になる空気を醸
成させていく。
・大学以外の教育施設等での学修や入学前の既修得単位を単位認定している大学・学部等にあっては,
実施している単位認定方法の適切性
【現状】
2004 年度より明治大学付属明治高校向けのプレカレッジプログラムが導入され(2005 年度から運用
第3章 理工学部 -11-
/302
を開始),付属校生が基礎的な科目を履修し,高校での単位として認められるとともに本学部でも入学
後に単位化できる科目がある。
【長所】
大学に入学する前に,大学の教室や設備に接することは,学習の動機付けに非常に効果的である。
【問題点】
本学部の場合,能力がありながら大学の講義スタイルに慣れずに不本意な成績に終わると,教育的に
はマイナスではないかという指摘があった。
【問題点に対する改善方針】
実質的な評価となるよう教務部教務課と連携し検討を行う。
・卒業所要総単位中,自大学・学部・学科等による認定単位数の割合
【現状】
卒業要件単位は 132 単位であるが,他大学等において修得した単位については 60 単位を超えない範
囲で認めている。
【長所】
他大学から入学してきた意欲的な学生の入学後の負担を軽減することにより,履修計画の作成や学習
指導が容易になった。
【問題点】
学部に設置していない第二外国語を履修した学生が編入・学士入学を希望した場合,その第二外国語
をどう認定するかについての明確な内規がない。
【問題点に対する改善方針】
問題点については,今後は入試制度改革のなかで,学部に設置していない第二外国語であっても,認
定するかどうかを正式に入試委員会等で審議し,明確なものとする。
・海外の大学との学生交流協定の締結状況とそのカリキュラム上の位置づけ
【現状】
協定校との交換留学を行っている。但し,国際交流センターが協定している大学は合計で 34 校ある
が,本学部独自の定期的な交流や,積極的な交流は行われていない。協定校や認定校ともに,修得した
単位については教学委員会において審議し,認定をすることになっている。
【長所】
学生の海外の大学における実績を評価することにより,帰国後の学習の動機付けに効果をあげている。
【問題点】
修得単位の認定を柔軟に実施しているが,留学希望者の増加を図れずにいる。
【問題点に対する改善方針】
協定校の教育・研究についての情報を学生に周知するとともに学生・教員の国際交流を促し,本学部
の特色に応じた学術交流やその単位化など,協定を有効活用するための実質的な活動を教学委員会等で
企画し,実行していく。
・発展途上国に対する教育支援を行っている場合における,そうした支援の適切性
【現状】
平成 15(2003)年度特色ある大学教育プログラムに採用された「ツイニングによる国際化への積極的
な取組み」(JADプログラム)によって,マレーシアで2年の教育を修了した学生を本学の2年次編
入として受け入れている。
2004 年度は,HELP2の最後の学生が修了し,日本の私立 13 大学と国立大学9校へ入学した。明
第3章 理工学部 -12-
/303
治大学では機械工学科で2名のJAD留学生を2年生として入学させることにした。
マレーシアで3年の教育を修了した学生を3年次編入として受け入れする計画(HELP3)が承認
され,そのためこの制度を運用するためのNPO法人に明治大学も参加した。
【長所】
教員や学生を派遣することにより,学部の研究・教育体制の国際化に貢献している。
他大学と教育支援の連携を図ることができた。その結果,研究と教育の情報交換の場が確保できてい
る。
【問題点】
留学生がマレーシアで修得した単位を認定するための科目数が,他大学に比べて少ない。
【問題点に対する改善方針】
単位を認定するための科目数に関しては 2008 年度のHELP3の受け入れに向けてJAD委員会を
設置し,受け入れ学科が認定科目の増加について検討することとした。また,今後の人的,財政的負担
については年度計画により対応して適切なものとしていく。
(開設授業科目における専・兼比率等)
【目的・目標】
設置科目の目的と内容に基づいて,基本的には専任に基幹科目を担当させることにより,学部の理念
と教員組織の整合性をもたせている。一方,クラス数の関係でどうしても兼任講師に依存せざるをえな
い科目については,必ず専任教員が教育連携の連絡調整を行う指導体制をとり,責任の所在を明確にす
る。
・全授業科目中,専任教員が担当する授業科目とその割合
【現状】
専門科目の約半数については,専任教員が担当している。
【問題点】
現状では,理系基礎科目について,専任教員の関与が低い科目が多くある。
【問題点に対する改善方針】
新専攻設置計画及び学科再編計画を念頭に置きながら,この件を教学委員会及びFD委員会において
検討し,制度的に解消するよう取り組む。
・兼任教員等の教育課程への関与の状況
【現状】
語学科目,理系基礎科目,実験・実習,演習科目については,兼任教員への依存率が高くなっている。
現状では兼任教員なしで,現行のカリキュラムの実施は不可能である。なお,語学においては教科書会
議を開催し,統一プログラムに則った授業を行っている。
【問題点】
理系基礎科目の同一科目間で内容に違いがあってはならない。そのため,科目単位での打ち合わせ会
議が必要である。
【問題点に対する改善方針】
科目単位での打ち合わせ会議の形態について検討するとともに,現状における教員数の問題について
は年度計画に従って改善していく。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
社会人学生,外国人留学生に対しては,一般学生とは異なった背景に配慮し,それゆえのハンディキ
第3章 理工学部 -13-
/304
ャップを埋め,長所を活かすような支援体制を整え,多面的な観点からの公正性を確保する。
・社会人学生,外国人留学生,帰国生徒に対する教育課程編成上,教育指導上の配慮
【現状】
本学部は社会人学生および帰国生徒は受け入れていない。外国人留学生については,所属学科の教員,
TAが学習支援を行っている。中国からの留学生で,英語が未履修の学生に対しては,特設クラスを正
規に開設し,学習支援を兼ねた教育を行っている。
【長所】
キャンパス・研究室に外国人が出入りすることは,日本人学生の国際感覚を培う上できわめて有効で
ある。
【問題点】
成績不振に陥った場合に不本意の帰国や退学に至るケースが少なくない。留学生入試に制度的問題が
あり,目的外入学者や英語未履修入学者の成績不振が問題になっている。
【問題点に対する改善方針】
問題点に関しては,学科の担当教員と国際交流センター事務局との連携を密にし,相談窓口を国際交
流分室だけでなく,学部及び学習支援センターでも対応できるように,学習面・精神面でのサポート体
制を構築する。目的外入学者や英語未履修入学者の問題については,2006 年度以降の留学生入試制度を
抜本的に改め教育指導上の配慮とする。
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
少子高齢化が進み,日本の教育需要は大きく変貌し,生涯学習は大学が取り組むべき重要課題になっ
た。とくに高齢層への生涯教育は,18 歳人口に対する教育とは根本的に質を異ならせた内容にならざる
をえない。ましてや,理工学の生涯教育をひろく開放するには,社会や文明を視野に入れた新世紀型理
工学の提案を兼ねたものになる。
・生涯学習への対応とそのための措置の適切性,妥当性
【現状】
本学部独自の取り組みはないが,ほぼ全ての本学部教員が所属する科学技術研究所主催の公開講演会,
主催の講演会が数多く開催されている。また,本学のリバティ・アカデミーにも講師として協力してい
る。
【長所】
本学部教員の多くが随時上記講演会講師等として参加し,本学の生涯学習への取組みに協力している。
(正課外教育)
【目的・目標】
正課外教育の目的は,学生に学部ではまかないきれない分野に挑んでもらい,学部に縛られない学生
間の交流と連携を図ることによって,他学部や社会とのつながりのもとで,むしろ正課科目の意義,所
属する大学と学部の位置づけを,学習主体である自らに確認させることである。
・正課外教育の充実度
【現状】
学部主催のTOEIC団体受験を 2006 年度より全学部生が無料で受験できるように制度化した。
文学部主催の学部間共通講座「シェイクスピア劇の現代的魅力」に基づいた文化プロジェクト「ベニ
スの商人」(2004 年),「マクベス」(2005 年)に本学部からも参加があった。また,就職支援セミナー
を実施している。
【長所】
学部主催TOEIC団体無料受験は受験希望者の増加につながった(1300 名以上)。
第3章 理工学部 -14-
/305
文化プロジェクトに参加した学生には大きな意義があったという父母からの意見も寄せられている。
【問題点】
TOEIC団体受験については大学院生からの希望があるのに対応できていない。文化プロジェクト
は駿河台キャンパスを主として行なわれるので,生田キャンパスからの参加者はきわめて少ない。
【問題点に対する改善方針】
TOEIC団体無料受験は大学院まで拡充する。文化プロジェクトに相当する科学の催しについてア
イデアを募り,正課外教育を充実させていく。
(2) 教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
学部カリキュラム体系と整合した科目別(総合文化科目,外国語科目,専門科目など)の履修目標を
シラバスに明記し,評価方法と併せて学生に周知する。それに従って厳正な成績評価を行い,教員によ
る教育連携に基づいた教育効果の測定を体系的に実施する。
・教育上の効果を測定するための方法の適切性
【現状】
学生による授業改善アンケートを実施し,データ集計を行った後,教学委員会において分析を行って
いる。また,その集計結果を各担当教員にFDに利用させるべく,渡している。
2005 年度にJABEEを受審した機械系学科(機械工学科と機械情報工学科)では,学科専門科目の
卒業研究,実験等において,学生に達成度を自己評価させるためのチェックシートを渡し,毎回の授業
で報告させている。また,教員の授業風景をビデオに撮るなどし,教員同士で評価しあい,FDに役立
てるよう指導している。
【長所】
JABEE受審そのものが,教員の教育意識を高める上で,間違いなく有効的に機能した。また,学
生の自己評価チェックシートについては,教員はそれを見て,自らの教育に学生がどう応えているかを
確認できる。授業ビデオをもとにした合評会は,授業の内容や運用法など,相互に意見を交わす場を設
けたことで,教員間の連携が増す。
【問題点】
教員全員の教育効果の測定に対する関心度は高いとは言えない。実際に試験やレポートを課すが,教
育上の効果を測定するためにではないからである。教員は,試験の出来が良ければ,教育効果があった
のではなく,問題が易し過ぎたと判断し,試験の出来が悪いときは,学生の勉強が足りないと判断して
いる場合もある。
【問題点に対する改善方針】
教員の教育効果の測定への関心度を上げるために理系基礎科目においては,定期試験の問題を全学科
共通にする。また,授業改善アンケートをもとに,学科ごとの成績分布,混合クラスごとの成績分布を
出し,個々の教員だけでなく,学部としての取組みの方途を提言する。在学時の授業改善アンケートだ
けでなく,卒業の前に4年間の総括アンケートを実施する。以上の方策を教学委員会及び新設のFD委
員会を中心に行うことにより教育効果の測定を適切なものとしていく。
・教育効果や目標達成度及びそれらの測定方法に対する教員間の合意の確立状況
【現状】
学部全体としての議論がなされているとは言えないが,機械系学科(機械工学科と機械情報工学科)
は,JABEE受審を機に,受審学科としての準備を推し進める中で,教員間の合意が形成されている。
機械系の受審を機に,教育効果や目標達成を学部の取組みへと展開し,実効あるものにするための「F
D委員会」が設置されている。
【長所】
第3章 理工学部 -15-
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初めてのJABEE受審により,教育連携や成績評価の公正性については,専門学科内での改善に向
けた意思統一につながった。このことは,他の学科にも教育保証についての面談をさせられるなかで,
あきらかに影響があった。
【問題点】
成績測定法の教員間連携は,各教員の教育理念や科目の内容に係わるが,達成度測定についての合意
形成は十分なされているとは言えない。
【問題点に対する改善方針】
授業の達成度,教育の効果について,教学委員会及び新設のFD委員会において科目ごとの履修者数,
成績分布をもとに議論する。そして,すべての試験を資格試験とみなし,履修者全員が定期試験で 60
点以上とれるような,授業,演習を実施するためのさまざまな方策を検討し,新設のFD委員会を通じ
て審議し提案することで教員間の合意を確立していく。
・教育効果を測定するシステム全体の機能的有効性を検証する仕組みの導入状況
【現状】
2004 年に導入したGPAと他学部に先駆けて実施した独自の授業改善アンケートをもとに,教学委員
会にて,教育効果測定の検証を行っている。それを現場の教員に返却し,FDに結びつけるよう指示し
ている。学生は全教員の授業アンケート集計結果を自由に閲覧できる。
JABEE受審にあたり,成績評価の公正性を保証するため採点記録の提出など,証拠の提出を受審
学科の学生を担当する教員に義務付けている。
【長所】
GPA制度の導入により,学生の無闇な履修は減少した。この成績評価方式は,学生の成績を数量的
に把握できるので,その部分では学習指導のターゲットを絞りやすくなった。JABEE受審のための
授業記録や採点記録の提出義務は,平常の授業運用と受講態度評価をおのずときめ細やかで明確なもの
にした。
【問題点】
各年次の履修制限を緩和したにもかかわらず,GPAを下げたくない心理が働くのか,その緩和策を
利用する学生は増えていない。
【問題点に対する改善方針】
授業改善アンケートの公開性を高め,それをてこに教員間のFDを推進する。
良い意味での教育の競争的雰囲気を作る(教員表彰など)。
システム全体が実際に有効であったかを検証するために,4年生前期で,各学科で理系基礎科目,専
門教育科目,学科専門の必修科目の基礎学力試験を行い,学科,学部の教育効果,目標達成度を計測す
る。
・卒業生の進路状況
【現状】
学生が就職課に進路の報告をすることになっている。ただし,厳密に義務化されている訳ではないの
で,データは不完全ではあるものの,就職率は以下のとおりである。
2005 年度卒業生
○建設不動産業 9.0%,○製造業 38.8%,○商事・卸・小売業 7.0%,○金融業 1.8%,○マスコミ 24.0%,
○運輸・旅行・広告・観光・サービス業 13.2%,○教育・公務 6.2%
【長所】
他学部に比べると,実学志向の学部としての就職率は高い。
【問題点】
高い就職率にもかかわらず,受験生の人気につながっていない。
第3章 理工学部 -16-
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【問題点に対する改善方針】
高い就職率に見合った人気を確保するために,時代を見据えた学部の再編を行う。2007 年より電気系
学科(電気電子工学及び電子通信工学)が統合されることを機に,新専攻,新学科,学科再編を大胆に
展開する。
・教育効果の測定方法を開発する仕組みの導入状況
・教育効果の測定方法の有効性を検証する仕組みの導入状況
・教育効果の測定結果を基礎に,教育改善を行う仕組みの導入状況
【現状】
教育効果の測定結果を基礎に教育改善を行う仕組みについては全学的なFD委員会による取り組み
がなされている。本学部では教員が学生に試験,レポートの提出をさせて,学生の理解度を測定してい
るが,教員個人の教育理念や教授法に基づいて,試験問題の作成,レポート課題の選定などを,すべて
教員個人に任せている。
教育効果の測定方法の有効性を検証する仕組みは学部として導入していないが,JABEE受審学科
では,各コースの節目で,学生に達成度を自己評価させている。例えば1年生科目「自動車の科学」で
は,リレー式の授業を実施する中で,学部カリキュラムの4年間の履修モデルを学生に提示できるよう
な工夫がされている。JABEE受審学科では,通常テストや学生による自己評価などをもとに,連絡
会議を開き,学科の教育改善につなげることを前提に相互に検証している。総合文化科目及び外国語科
目についても,年度終了時に教育改善のための反省会と次年度へ向けての教育連携の申し合わせを行っ
ている。
【長所】
各教員の教育改善努力を,学科としての教育改善策とリンクさせて展開していくことができる。教育
連携の打ち合わせは,同一科目内での方針確認をすることになり,授業内容や成績評価の公正性の確保
に役立っている。
【問題点】
試験の出題の仕方について,教員は,特別な訓練を受けてはいないため,厳格で公正な評価の点で,
同じ科目の異なった教員で違いが生じることがある。学生による達成度の自己評価が教育改善に反映し
ているか,その検証システムがない。
総合文化科目や外国語科目は,学科科目と異なって,授業規模,クラス数,教員数,兼任講師への依
存度の高さなどにより,現実には授業内容の統一や成績評価の公正性は,理念的なものにとどまってい
る。
【問題点に対する改善方針】
JABEE受審を機に教育の連携と成績測定の公正性は,学部の大きな課題となった。JABEE審
査チームが指摘した課題は,JABEE委員長の名で各教員に教育保証の担保となる記録を提出するよ
う指示があり,学部の教育改善のプログラムのなかで制度化することになっているため教育効果の測定
方法は制度化することになる。
学生による達成度の自己評価が教育改善に反映するためのシステムを教学委員会及び新設のFD委
員会を中心に考案し,教育効果の測定を有効なものとする。
問題点の解消は,連絡会議を何度も開くことができないため困難であるが,それにかわる方法として,
電子メール連絡を踏み込んだ内容とし,定期的に各担当教員が自己評価することを促し,教育改善を行
う仕組みを構築する。
・国際的,国内的に注目され評価されるような人材の輩出状況
【現状】
各分野に優秀な人材を輩出している。異色なOBとしてはタレントで映画監督として国際的に注目さ
れている北野武氏などがいる。
【長所】
北野武氏は 2004 年9月に明治大学特別功労賞及び特別卒業認定を受けている。
第3章 理工学部 -17-
/308
(厳格な成績評価の仕組み)
【目的・目標】
厳格な成績評価は,学生や父母からの信頼を得るために,大学がもっとも細心の注意を払って保証す
べき仕組みとならなくてはならない。そのために,本学部は,教育内容,教員連携,教育改善努力は当
然であるが,成績評価の公正性,評価方法の透明性,授業改善アンケート結果の真摯な受け止め,等々,
学生の努力が正しく報われるような仕組みの構築を目標にする。
・履修科目登録の上限設定とその運用の適切性
【現状】
2005 年度以降の各学年カリキュラム履修上限単位数は以下のとおりである。
1年:52 単位
2年:52 単位
3年:48 単位
4年:46 単位
【問題点】
新たな上限単位数を設けたにもかかわらず,学生は,GPAを気にしているのか,上限までとる学生
は思ったほど出ていない。
【問題点に対する改善方針】
履修科目登録の上限設定と適切であるが,問題点を解消するために,3年卒業(1学科が3年半卒業
を認めている),大学院進学などとセットにして提案するべく「教学委員会」等で運用を検討する。
・成績評価法,成績評価基準の適切性
【現状】
成績評価法,成績評価基準についてはシラバスに明記し,ガイダンス等の機会も使いながら学生に周
知している。また,履修登録前に学生からの成績問い合わせ期間を設け,学生の疑義に答える制度とし
ている。
【問題点】
複数学科混合クラスで実施している外国語科目や理系基礎科目では,同一科目を多数の教員が担当し,
試験問題も個別に出題されるので,教員間で成績評価法,成績評価基準が異なる場合が起こりえる。
専門科目においても,同一科目クラス(2,3クラス)にさえ評価基準に不統一が散見される。
【問題点に対する改善方針】
理系基礎科目などの共通科目を,共通問題で試験できないかについては,教学委員会の下に低学年教
育WGを設置し,学習支援と合わせて具体的な検討を行い,基礎化学を除いて,ある程度の共通化が図
られたが,今後は基礎科学や語学にも拡張できないか提案していく。ただし,兼任講師への依存度が高
い語学科目については成績評価基準について入念な準備を行う。
・厳格な成績評価を行う仕組みの導入状況
【現状】
2005 年度機械系2学科のJABEE受審に伴い,後期から関連科目の授業実施報告書の提出が義務づ
けられた。そこでは授業に用いた資料,成績評価方法,成績評価基準,評価の分布の報告を求めており,
機械系2学科では,この報告書に基づいて厳格な成績評価が行われていることを検証することとし,同
報告書は期末試験の答案等を含め,今後5年間保管することとしている。
【長所】
2005 年 10 月にJABEE受審したことにより,準備の段階から学部全体が協調することができ,F
D向上にとって得がたい機会となった。
【問題点】
教育連携,同一科目複数クラス間の成績評価の公正性の問題が浮き彫りになった。
学部内の他学科においても,同様な取組みを行う必要があるが,保管のスペース,事務的なマンパワ
ーの不足が解決できていない。
第3章 理工学部 -18-
/309
【問題点に対する改善方針】
今後は,このたびの受審実績をもとに浮き彫りになった点を再確認し,改善案を検討して次回の審査
へ向けた新たなプランを作成し,厳格な成績評価を行う仕組みの導入を年度計画により実行していく。
・各年次及び卒業時の学生の質を検証・確保するための方途の適切性
【現状】
2005 年カリキュラムでは,2年次より3年次への進級に際し,64 単位以上という条件を設定してい
る。また,3年修了までに 104~110 単位(学科により異なる)以上修得し,かつ各学科で指定した科
目の単位を修得していなければ,4年次での卒業研究・卒業設計の履修ができない制度としている。
卒業は4年以上学修し,132 単位以上を修得しているほか,各学科で指定された科目並びに科目群の
中から定められた単位数を修得していることを条件としている。なお,電気電子工学科,電子通信工学
科,機械情報工学科では3年次設置のゼミナール履修条件として単位数の条件を設けている。
これらとGPAにより,学生の履修計画が適正なものになるよう数量的見地から指導できるようにし
ている。
【長所】
学生の質の確保については,単位数による学年進行だけでは,学生の質の保証はありえないので,進
級条件にGPAを導入することは効果がある。
【改善方針】
学生の学習計画を有効な方向に導くために,GPAを研究ゼミや卒業研究履修条件に活用できるか,
適宜退学勧告に利用できるか等々を,学部の教育理念とカリキュラム体系との整合性のもとに制度化す
ることを教育資質開発委員会等で審議し,卒業時の学生の質を確保する取り組みを行う。
・学生の学習意欲を刺激する仕組みの導入状況
【現状】
電子通信工学科,機械工学科,情報科学科等において,外部研究機関や企業の研究者・技術者・経営
者による特別講義科目を設置して学生の学習意欲を刺激している。また,各学科単位で新入生を対象と
したフレッシュマンデーを設け,各種講演会やラボツアー等を実施している。
【長所】
上記のように社会との接点を意識させるような科目やイベントは,学生間の交流を促し,学生の学習
意欲を高める上で,非常に役立っている。
【問題点】
土曜日に実施するので,理工学部の場合には,休講措置を講じなくてならない。
【問題点に対する改善方針】
定期試験や,レポートに対して,優秀賞を出すなど,学習支援センターと教員が連携し,学生の勉学
意欲を戦略的に誘導する仕組みを構築する。
(履修指導)
【目的・目標】
学生の履修計画は,カリキュラムに習熟した教員と事務局による可能な限りの懇切丁寧な情報提供が
重要である。とくに入学直後の新入生にはガイダンス,シラバス,学習支援センター,オフィスアワー,
等々,学部の支援体制を充分に周知したのち,学生個人に可能な限りの自由を与え,履修計画に自己責
任を持たせることも,履修指導の重要な目的としなければならない。
・学生に対する履修指導の適切性
【現状】
新年度には学年ごとにガイダンスを実施し,履修上の留意点を学生に周知させている。また,成績不
良者に対しては 3 月上旬に個別に成績表を郵送し,別途,履修指導日を設けている。
第3章 理工学部 -19-
/310
【長所】
各学年ガイダンスを行うことによって,学生に本学部便覧に書かれていることがらを再確認させ,不
本意な履修ミスを防ぐことができる。また成績不良者については,教学委員が中心になって,学科とし
て直接指導にあたっている。
【問題点】
丁寧な学習指導並びに履修指導を行なっているにもかかわらず,成績不良者がゼロにできていない。
【問題点に対する改善方針】
丁寧な履修指導を行っても,なお成績不振から逃れられない学生を,「学習支援センター」と生田地
区学習支援室の「フォローアップ講座」による学習支援体制に組み込む教育連携図を構築する。
・オフィスアワーの制度化の状況
【現状】
オフィスアワーは学部としては制度化していないが,機械系学科(機械工学科と機械情報工学科)の
教員はシラバスにオフィスアワーを明記し,学生からの質問を受け付ける体制をとっている。また,数
学科においては資料室にてオフィスアワー体制をとっている。
【長所】
オフィスアワーの時間帯に相談しに来た学生は,自分の問題点を確認するきっかけになるばかりでな
く,それに対して教員のアドバイスを受けられるので,あきらかにプラスになる。
【問題点】
オフィスアワーが十分に活用されているとはいえない。
【問題点に対する改善方針】
オフィスアワーを学部の制度として実施する方向で教育資質開発委員会等で検討する。また,オフィ
スアワーの意義や利用目的について漠然とした理念をかかげているだけでは,利用者を増やすことは困
難なので,しばらくは利用せざるをえなくなるような,誘導型の実績づくりのための方策を考える。
・留年者に対する教育上の配慮措置の適切性
【現状】
留年者には,教学委員を中心にガイダンスと併せて個別面談を実施し,留年した理由の確認,今後の
学生生活・履修・勉学上の注意点をアドバイスしている。
【長所】
留年者は,学科の教員から直接懇切な指導を受けることができる。理工系学部は,達成度測定のハー
ドルが厳格になるが,学生への個別指導は,実験科目が多いこともあり,丁寧かつ入念である。
【問題点】
留年者は不登校になりがちであり,それが指導を難しくし,在籍原級を長引かせる要因になっている。
【問題点に対する改善方針】
留年生への対応は,上記の通り変わりはないが,それ以前に留年を出さないような履修指導体制をさ
らに充実化する。また,留年を無益に長引かせる学生に,学部の責任において退学勧告するための条件
を教学委員会で審議し整備する。
・学習支援(アカデミック・ガイダンス)を恒常的に行うアドバイザー制度の導入状況
【現状】
各学科には教学委員がおり,アカデミック・アドバイザーとして学生からのカリキュラム上の様々な
相談を受け付ける体制となっている。また,TAを活用した学習支援センターを発足させており,基礎
科目を中心に手厚い学習支援を実施している。
第3章 理工学部 -20-
/311
【長所】
学科の教員(主に教学委員)から直接懇切な指導を受けることができる。学習支援センターの支援体
制はJABEE審査チームの注目を集め,高い評価を受けた。
【問題点】
学習支援センターと基礎科目担当教員との連携が十分でない。
【問題点に対する改善方針】
低学年教育WGの大きな課題として取り組み,学習支援センターTAによる学習支援を組み込んだ教
育連携を構築する。
・科目等履修生,聴講生等に対する教育指導上の配慮の適切性
【現状】
科目等履修生,聴講生等に対しては,各学科の教学委員が個別にガイダンスし,レベルをチェックし
た上で教育指導をしている。
【長所】
科目等履修生や聴講生は,概して社会経験の豊富な者が多く,学部学生が教室や研究室で彼らとじか
に接触することは,得がたい刺激になる。
(教育改善への組織的な取組み)
【目的・目標】
I-MASTを念頭に置いた理工学部の教育理念のもとに,学部カリキュラムに整合させた教育目標,
履修方法,評価方法,教育連携,等々を,社会的組織としての責任において,適正に保証しうる高等教
育機関の構築し,教育改善を不断に行うことを目標とする。
・学生の学修の活性化と教員の教育指導方法の改善を促進するための措置とその有効性
【現状】
学部内に設置された常置委員会「教学委員会」は,学部・大学院の教務全般について意見をまとめる
機関である。学生の学修の活性化と教育指導方法の改善についての議論もこの組織体か,臨時のWGで
行っている。
後述する学生の授業改善アンケート,カリキュラムアンケートの内容の検討や,集計結果の吟味検討,
各学科におけるFD活動のための情報提供とその結果の取りまとめ等も教学委員会により行っている。
【問題点】
個別の教員の教育指導方法の具体的な改善をこの教学委員会で行ったことはなく,委員会として,要
望を出すにとどまっている。
【問題点に対する改善方針】
新設した「理工学部FD委員会」のもとで,学生の学修の活性化に教員の教育指導方法改善が有効
に作用するようJABEE審査チームからも指摘のあった専任・兼任,専門学科・総合文化教室間の教
育連携,学科専門教育の指導体制,教員表彰などの改善を検討する。
・シラバスの作成と活用状況
【現状】
シラバスは充実した内容になっている。ガイダンスのときにカリキュラム体系と履修計画を説明し,
十分シラバスの確認をさせている。普段の授業においては,これを教員も学生も利用する機会が少なか
ったが,2005 年度からは教員も学生も Oh-o!Meiji システムなどを利用して学習目標を確認するなどシ
ラバスを活用するようになった。
【問題点】
シラバスと授業改善アンケートの整合性を,学生が十分に認識しているとは言えない。
第3章 理工学部 -21-
/312
【問題点に対する改善方針】
学習目標は,どうすれば到達できるのか,学習目標の到達度はどのようにして計測できるのか,これ
らをシラバスに明記すべきことについて,学部として,全学科の教員に対して説明するとともに,教学
委員会を通してさらなる改善を実行に移す。
シラバスによって授業の計画性が保証されること,授業アンケートがFDに活かされることを学生に
周知する方法を検討し,シラバスをより活用していく。
・学生による授業評価の活用状況
【現状】
学生による授業改善アンケートは冊子にまとめられ,アンケートを実施した全教員の集計結果を閲覧
できる。教員個人が,その結果を反省材料として受け止めている。
【長所】
授業改善アンケートの実施によって,学生のカリキュラムへの意識が高まり,教員の授業計画に大き
な影響があった。
【問題点】
学部として授業改善アンケートを組織的に活用するには至っていない。
【問題点に対する改善方針】
アンケート実施に対してすべての教員が受け入れる体制ではないので,このアンケートの受け止め方
と利用法を整理し,学生による授業評価を活用できるようにする。
・FD活動に対する組織的取組み状況の適切性
【現状】
大学全体のFD委員会が,教員の啓蒙のための講演会や,懇談会を開いているが,本学部の教員の参
加者は比較的多い。本学部は学部内にFD委員会を設置した。
【長所】
講演会については,一般論だけでなく他大学の事例を確認できるので有益である。
【問題点】
講演会だけのFDでは,教育改善の取組みが精神論で終わってしまい,現場のFDにつながるような
企画に欠けている。
【問題点に対する改善方針】
学部FD委員会は,今後学部教育の立案企画委員会として,FDにかかわるさまざまな提案を行うこ
とになっている。具体的には教員連携,成績評価の公正性,教育貢献賞の充実化,等々について審議し,
学部スタッフ及び教学委員会に提言する。
・FDの継続的実施を図る方途の適切性
【現状】
教学委員会においてFD推進に関わる議論を展開してきたが,2005 年度には学部FD委員会が設置さ
れ,今後はこの委員会にて継続的に推進する。
【長所】
教学委員会は年間行事を実行することに追われており,新たな提案を体系的に運営するゆとりがない
ためこのFD委員会の設置には大きな意義がある。
・学生満足度調査の導入状況
【現状】
現在,機械系学科を中心に,新4年生に対し,カリキュラム全般についてのアンケートを実施し,満
足度の調査を行っている。
第3章 理工学部 -22-
/313
【長所】
満足度の調査をもとに,学部教育の改善に取り組むための材料が得られる。
【問題点】
全学科で行われていた満足度調査は,現在では機械情報工学科だけとなっている。
【問題点に対する改善方針】
どれくらい満足して卒業したのかは,FDにとって重要であるため,全学科満足度調査の再開を提案
する。その結果を教学委員会で検証し,教員のFDを促す材料にする。
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
機械工学科では,卒業研究審査会を実施しており,卒業生からの意見を聞く機会を作っている。機械
情報工学科では,卒業証書授与式後,卒業生にアンケートを実施している。
現在新4年生に行っている調査を卒業生に行うのは,在学中の教育が有効であったかの検証になるの
で全学科で導入すべきだと認識している。
【問題点】
これに対する取組みは不十分である。
【問題点に対する改善方針】
新4年生への満足度調査と併せて,卒業生への調査をFDの社会への接続性の観点から実施の提案を
教育資質開発委員会等で検討する。
・雇用主による卒業生の実績を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
必要性は認識しているが現在は導入されていない。
・教育評価の成果を教育改善に直結させるシステムの確立状況とその運用の適切性
【現状】
このシステムは,まだ確立してない。これについては機械系2学科JABEE受審後の最大の検討課
題であるが,受審そのものがシステム確立へ向けてのアクションになっている。
【問題点】
この問題に関するシステムが不十分である。
【問題点に対する改善方針】
教育連携の証拠の保管と提出,成績評価の公正性を確保する仕組み,FD委員会の設置により,学部
としての取組みを開始する。
(授業形態と授業方法の関係)
【目的・目標】
科目の内容に応じた授業形態(講義,演習,ゼミナール,実験,実技)があり,それに応じた授業方
法があるのは当然であるが,先端機器による授業(e-ラーニングなど)も視野に入れながら,合理化で
きるところは合理化し,その充実化すべき科目はさらなる充実を図るためのさまざまな方策を提案して
いく。
・授業形態と授業方法の適切性,妥当性とその教育指導上の有効性
【現状】
重要な基礎科目については少人数化し,演習付きで実施している。実験・実技科目は複数教員が担当
する形態をとっている。いずれの科目にも,TAを配置し,個々の学生の修学状況に応じた教育指導を
行っている。理系基礎科目については,1年生に学習支援センターの利用を勧めている。
第3章 理工学部 -23-
/314
2005 年度カリキュラムでは,手薄になっていた語学の基礎教育を整備した。理工学部1年生全員必修
の e-ラーニング自学自習ソフトを使った「英語コミュニケーション1・2」を開始した。e-ラーニング
による自学自習が可能となるように,空き時間・空き教室にTAを置いて対処している。
【長所】
学習支援センターの利用者が大幅に増加した。e-ラーニングによる自学自習者が予想を遥かに上まわ
る数にのぼった。
【問題点】
総合文化ゼミナールの履修希望者が多くいるにも拘らず,履修できない学生も出ている。
学習支援センターのTAの対応時間が,必ずしも相談学生の希望する時間に合っていない。
e-ラーニングによる自学自習のためのCALL教室開放時間が充分でない(昼休み時間帯にあけて欲
しいという要望がある)
。CALL教室のあるA館にサポートデスクがない。
【問題点に対する改善方針】
人気の高い少人数教養科目「総合文化ゼミナール」のメニューの拡充を図る。具体的には専任に限る
という制約を取り払い,広く社会に講師を求める。
TAの対応やA館にサポートデスクを設置するなどの問題については年度計画により実施し,教育指
導を有効にしていく。
・マルチメディアを活用した教育の導入状況とその運用の適切性
【現状】
本学部はOh-o! Meiji システムを最も多く利用している。2年前,教員に対して行った「授業に関
するアンケート」の集計結果(回答総数 172 件)によれば,授業の工夫としてAV関連機器を活用して
いる教員は全体の約 17%,専任・兼任ごとの割合をみてみると,専任は5%,兼任 20%という数字が
あった。
現在,A館のすべての教室にAV機器等が完備され,パソコンを持ち込んでの教員の授業も非常にや
りやすくなっている。
2005 年度には,特殊プレゼンホール(1室)
,スタジオ(1室),マルチメディアルーム(2室))に
もAV関連機器が完備され,CALL教室と情報処理教室ともに活用され教育効果を上げている。また,
CALL教室の空き時間を活用しての自習室運営も好評である。
【長所】
2005 年度より新設のCALL教室にて実施した e-ラーニング英語必修授業は,大きなトラブルもな
く順調に推移し,授業外自学自習者の増加,3・4年生への波及効果など,大きな成果を挙げた。
【問題点】
マルチメディア設備が十分とは言えない。
【問題点に対する改善方針】
本学部ではほとんどの教員ならびに学生が,プレゼンテーション用のマルチメディア設備を利用する
ので,教室環境の一層の拡充をし,教育内容においても新時代の先端を走っていくような有効なものを
提案していく。e-ラーニングによる自学自習のためのCALL教室開放時間,特に昼休み時間帯の開放
やCALL教室のあるA館に和泉キャンパスにあるようなサポートデスクを設置することを年度計画
によって実施していく。
・「遠隔授業」による授業科目を単位認定している大学・学部等における,そうした制度措置の運用の
適切性
【現状】
現在のところ実施していないが,本学部が提案している新専攻の授業をサテライトキャンパスとして
秋葉原で運営するとなれば,生田キャンパスとの連携を図らなくてはならない。そのためには当然「遠
隔授業」は必須となる。新専攻の設置に向け,現段階ではスタッフ間で意見調整を行っているが,今後
は新専攻設置委員会にて具体的な検討を行う。
第3章 理工学部 -24-
/315
(3年卒業の特例)
【目的・目標】
本学部は,実験科目のような着実な作業手順,途中結果,定期的な観察過程を順を追って学習してい
く科目が多いため,3年卒業の特例を設けることは困難である。ただし,学科によっては,大学院進学
への誘導など,学科の方針で3年半卒業は可能になっている。
・4年未満で卒業を認めている大学・学部等における,そうした制度措置の運用の適切性
【現状】
従来,学部3年修了時点で,成績優秀者に対しての大学院博士前期課程への飛び入学制度を実施して
いるものの,4年未満での卒業は認められなかったが,2005 年カリキュラム改訂で,応用化学科が,3
年半で卒業可能なカリキュラムを構築した。併せて,大学院博士前期課程も,1年半で修了できるカリ
キュラムを構築した。
【問題点】
2005 年入学生から適用するので,まだ不明である。
【問題点に対する改善方針】
本学部の将来構想「I-MAST計画」では,6年一貫教育の中で4年未満での卒業,大学院博士前
期課程への飛び入学と同課程の修業年限の短縮,博士後期課程への進学という一連の教育システムにつ
いて検討が行われているので,応用化学科のほかにも可能な学科はないか,教育資質委員会等で検討し
ていく。
(3)
国内外における教育研究交流
【目的・目標】
本学部は,科学並びに工学研究の学問的な性格から言っても国境を越えて知的な交流を果たすのに,
もっとも軽快なフットワークをもっていなくてはならない。教員については国際的研究交流を実践して
いるが,学生においては充分でない。協定校を中心に学問の特質を活かした学生による活発な国際交流,
留学奨励を仕掛けることを学部の目標に据える。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の適切性
【現状】
本学部は,21 世紀科学技術の新たな人的資源の開発及び発掘のために,マレーシア,ラオス,中国,
台湾,等のアジア諸国との教育・研究の連携を図ることを基本方針にしている。
【問題点】
アジア諸国との教育・研究の連携を戦略にかかげながら,外国人の学生・教員がキャンパスを闊歩す
る国際的な雰囲気に欠ける。
【問題点に対する改善方針】
国際交流センターと連携しながら教員については研究を通じ,学生については留学を促すために基本
方針に基づく具体策を教学委員会等で検討し提案する。
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
【現状】
本学(本学部)は,マレーシアで2年間の教育(日本語等の予備教育+大学1年次の工学系教育)を
受けた学生をマレーシア政府派遣留学生として,日本の大学の2年次に編入生として受入れる「マレー
シア・ツイニング・プログラム」に参加している。このツイニングによる留学生受入れプログラムは,
文部科学省の「特色ある大学教育プログラム」にも採択されている。
【長所】
教員と学生が教育協力のために現地に赴いて国際交流することにより,正規授業では得られない教育
効果が期待できる。
第3章 理工学部 -25-
/316
【問題点】
マレーシアの学生が編入するにあたり,現地で単位修得した科目を可能な限り認めなくてはならない
が,本学部は他大学に比べて単位認定科目が十分であるとは言えない。
【問題点に対する改善方針】
単位認定科目に関しては,留学生を受け入れる学科で検討し,教育研究交流を緊密化させる措置をと
る。
・外国人教員の受け入れ体制の整備状況
【現状】
専任の外国人教員は,現在のところいない。兼任講師に関しては,必修英語,科学技術英語,学部間
共通外国語に本学部所属の教員が担当している。
【問題点】
ネイティブスピーカによる教育が行なわれておらず,異文化に触れる機会が不足している。
【問題点に対する改善方針】
外国人教員の受け入れについては学部の教育理念・目標に沿って検討を行う。
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
【現状】
本学部の教員の中で国際学会に所属し,活躍している人材は多くいる。大学院生の国際学会発表も,
自然科学の国際性から数多くなされている。
【長所】
科学技術の国際性から教員学生ともに学会発表の機会が多い。
【問題点】
国際学会発表の機会は多いが,概して発表言語(英語)に多くの苦労が伴っている。
【問題点に対する改善方針】
教育研究の成果をより多く外部発信できるよう,必修英語科目のない3・4年生及び大学院の英語教
育改善プログラムを作成し,次回カリキュラム改革に提案する。
第3章 理工学部 -26-
/317
6-1.農学部
(1) 教育課程等
(学部・学科等の教育課程)
【目的・目標】
本学部では「人間の永続性を追求する」という理念のもとに食料,環境などの諸問題を解決すること
を目標とし,これに資する人材の育成を目指している。そのためには,自然科学だけでなく,経済学,
社会学などの社会科学が果たす役割も重要である。さらに科学技術の発達により可能になった「生命現
象の基礎的な理解」も課題解決のためには不可欠であることから,生命科学科が設置され,現在4学科
体制で教育・研究が行われている。これら教育・研究組織が適切に機能しているか検証しつつ,より優
れた体制を構築することを目標としている。
・学部・学科等の教育課程と理念・目的並びに学校教育法第 52 条,大学設置基準第 19 条との関連
【現状】
「人間の永続性を追求する」ために不可欠である食料や環境の問題を解決する人材の育成を目的とし,
「食料生産と環境」の調和を科学技術の視点から追求する学科と社会科学や経済学的な視点から問題の
解決を図る学科という学部内に大きく科学的手法の異なる特色ある学科を配置して総合的な教育を進
めている。
農学科では,農業・環境の分野での十分な基礎力に裏打ちされた問題意識と解決力を有し,国際的に
も活躍できる人材の育成を目指している。
農業経済学科では,食料と環境に関するテーマを経済学,経営学,社会学などから総合的に考察し,
政策提言できるような人材の育成を目指している。
農芸化学科では,バイオサイエンス研究などに必要な化学的,分子生物学的な知識を習得し,環境や
食料及び生物機能の開発研究並びに 21 世紀のバイオサイエンスに貢献できる人材の育成を目指してい
る。
生命科学科では,生命活動を分子レベルで理解することを基盤として,動植物・微生物を人類の直面
する様々な問題を解決できる人材の育成を目指している。
各学科共に1年次より段階的に専攻科目を履修し,3年次には卒業研究にかかわる研究室に所属し,
専攻科目にかかわる研究を行い,高度に専門的な科目を履修する。一方,語学・体育・共通科目(一般
教育科目)は,必修として指定された科目以外は,1~4年次まで履修可能なように設置されており,
時間割上も配慮がなされている。
【問題点】
各学科がそれぞれ教育目標を掲げて教育課程を進めているので,学科の特色ある専門知識や技術の習
得については問題が少ない。しかしながら,責任感と倫理観を持ち,多面的な思考で問題解決を図るこ
とのできる技術者や研究者の育成を目指すためには,専門科目一辺倒にならずに幅広い教養を持つ人材
を育成する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
総合科目群の総合講座やゼミナールなどを通じた教養教育や職業人から実践的な教育の機会の増加
を図り,これらの科目の履修者を履修指導で増加させる。
・学部・学科等の理念・目的や教育目標との対応関係における,学士課程としてのカリキュラムの体系
性
【現状】
1年次には各学科の専門分野の理解のための基礎科目・実験実習を設置し,学年が上がるにつれて段
階的に専門性を高めるように科目を配置している。1~2年次には特に自分の進路や専門とする分野を
選ぶ時期と位置づけて幅広い基礎科目と専攻科目や総合科目群科目を履修するようにカリキュラムを
設定している。特色として,各学科ともに卒業研究を行う研究室への入室は3年前期よりと早めに設定
して,研究活動を通して科学についての興味や理解を深めることを目的としている。なお,卒業研究担
当者は全員が専任教員である。
第3章 農学部 -1-
/318
【問題点】
1~2年次に自分の進路や専門とする分野を選ぶという目的意識を持って学ぶことができる反面と
して幅広い教養を身につけるという点でバランスに欠ける面もある。
【問題点に対する改善方針】
総合講座,共通総合講座などの科目を通じた職業人の外部講師による特色ある幅広い教育を行うとと
もに,3~4年次における英語による専攻科目を設ける。
・教育課程における基礎教育,倫理性を培う教育の位置づけ
【現状】
基礎教育は第一分野(人文科学)
,第二分野(社会科学)
,第三分野(自然科学)などから成る総合科
目群の中に位置づけられている。人間の活動・技術と善との関係を特に問う哲学・倫理学が第一分野に
置かれている。また,第二分野は自然科学系の学生が,第三分野は農業経済の学生が,それぞれクロス
履修することで,基礎教育のバランスが図られている。
【長所】
農学部には自然科学系の3学科と社会科学系の1学科があり,他学部にはない連携も可能となってい
る。また,他学科の専攻科目の履修についても一定の単位数については卒業単位として認められるので,
幅広い専攻科目の履修が可能である。また,本学では学部に一般教育担当教員が配置されていることで
総合科目群科目の中に専任教員によるゼミナールやゼミナール論文を設定して卒論関係科目との重複
履修が可能となっている。
【問題点】
基礎教育として人文科学,社会科学,自然科学の分野を総合科目群の中に位置づけて履修するが,例
えば自然科学の分野の基礎となる科目を高等学校等で履修していない基礎学力の不足した学生が目立
つようになり,総合科目群科目の基礎教育レベルの設定が困難となって来つつある。
【問題点に対する改善方針】
入学時の補習授業などの多彩な入学前教育の充実や基礎学力に応じた総合科目群科目の設置を学習
支援センターとカリキュラム委員会の連携で行うことで授業レベルを確保する。
・「専攻に係る専門の学芸」を教授するための専門教育的授業科目とその学部・学科等の理念・目的,
学問の体系性並びに学校教育法第 52 条との適合性
【現状】
学部便覧において,各学科の教育理念を説明している。学科ごとの理念と専門性に基づいて,体系的
にカリキュラムは作成されており,学部全体のバランスとしてもカリキュラム委員会においてオーソラ
イズされたものとなっている。専攻科目は1~4年次に配当されており,2005 年度から学習支援センタ
ーにおいてTAが授業科目や実験について学生の質問に対応する体制が構築され,利用者も増加してい
る。
農学科の教育・研究は幅広い分野にまたがっているため,学生の興味に合わせて学習の方向性を持た
せるために動植物の生産と利用を中心に扱う「生物資源モデル」,病害虫の制御や野生動植物の保全な
どを扱う「応用生物制御モデル」,地域空間の緑化や環境整備,生産環境の整備などを扱う「環境緑地・
生産環境モデル」の三つの履修モデルを設けている。また,教育の方法や水準を認証機関であるJAB
EE受審を目指したカリキュラムを導入し,教育の質の向上に努力している。
農業経済学科は,経済学,経営学,社会学などをベースとして,食料と環境に係わる諸問題を総合的
に考察する学科であり,課題解決に向けて政策提言することを目的としている。本学科は「国際・食料
分野」と「資源・環境分野」の2つにカリキュラムを分け,諸科学を人間生活の現実に向き合わせ課題
解決していくことを目指す。
農芸化学科は,農芸化学の中のどの分野においても基礎となる有機化学,生物化学,微生物学の3つ
の科目を 1 年次から履修する。2年次以降は各自の選択により専門性の高い科目を履修する。そして,
3年次から研究室に所属し卒業研究に取り組む。これらを通じ,「食糧」という課題に,生物の生産性
向上に関する研究や新しい食品素材の開発,食品の持つ機能の研究や生物を育む「環境」の保全や汚染
第3章 農学部 -2-
/319
物質の浄化に関する研究,生物の「生命」活動を理解し実生活に活用する課題に取り組む。
生命科学科では,DNAやタンパク質など,生物間で共通性の高い事柄を学ぶ科目から各生物の生命
現象や相互の関わりを学ぶ科目まで興味に応じて履修できるようになっている。1年次に生化学や有機
化学など生物科学の基盤となる科目を学ぶ。2・3年次にはさらに発展的な内容の専門的な科目を順次
系統的に履修していく。これらに加え,1年次から実験科目が配置され,タンパク質・DNAから組織・
個体までを対象として生命科学研究に必要な化学,生物実験の基礎技術を修得する。3年次からは授業
のほかに研究室での卒業研究を行う。これらを通じ,細胞内外の化学反応を扱う生化学や遺伝子の構造
と機能を扱う分子生物学を基盤として,動物・植物・微生物の代謝・成長・生殖に関する理解を深め生
物同士あるいは生物と環境の関わりを明らかにするとともに,生物の能力を高度に利用する方策を探求
していく。
【長所】
各学科が体系的なカリキュラムを作り上げ,時代の流れに応じて整合性を常に追求している。また,
実験科目や実習科目を通じて学生,教員,TAの密接な関係を作り上げ学生の学習に対する意欲を喚起
することができている。
【問題点】
学習支援センターの設置により基礎科目の履修に不十分な知識しか持たない学生に対する支援が行
われているが,本来的に学習支援センターを利用すべき学生の来室が少なく,学習意欲の旺盛な学生の
参加の方がむしろ多い。
【問題点に対する改善方針】
学習支援センターの利用を促進する目的で,広報活動,教員による学習相談の新設や支援を必要とす
る学生の抽出と指導体制をクラス主任制度を生かして進めて行く。
・一般教養的授業科目の編成における「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い,豊かな人間性を涵
養」するための配慮の適切性
【現状】
従来の人文科学を中心とした一般教育が,人文,社会,自然科学,ゼミナール等を含む一つの有機的
組織に改変されたので,幅広い教養,総合的判断力,豊かな人間性を目指す体制は整っている。
【問題点】
受身の授業から総合的な判断力などを養う授業に変革するためには少人数クラスによる授業への参
画意識を高めた参加型の授業を増やしてゆかなければならないが,予算や施設の面,専門科目とのバラ
ンスから実施することが難しい。
【問題点に対する改善方針】
参加型のゼミナール形式の科目,プレゼンテーション能力を高める科目や社会と自らの専門の接点を
認識する目的で実務経験を持つ社会人の外部講師を招いた総合講座などのオムニバス形式科目を3~
4年次に配当する試みを進めて行く。
・外国語科目の編成における学部・学科等の理念・目的の実現への配慮と「国際化等の進展に適切に対
応するため,外国語能力の育成」のための措置の適切性
【現状】
本学部としての学部理念実現への一助として,「科学英語Ⅰ・Ⅱ」を設けている。また,留学や研究
発表のためのプレゼンテーション能力等を養うため,TOEICやTOEFLを念頭に置いた授業や会
話の授業を置いている。学部間共通外国語科目の会話コースの単位も,4単位まで卒業単位として認め
ている。
【改善方針】
2004 年度より生田キャンパスに導入されたアルクNET・Academy による e-ラーニング・システムを
利用した,語学教育の補強・改善をカリキュラム委員会等で検討する。
第3章 農学部 -3-
/320
・教育課程の開設授業科目,卒業所要総単位に占める専門教育的授業科目・一般教養的授業科目・外国
語科目等の量的配分とその適切性,妥当性
【現状】
各学科の外国語科目を含む一般教養的授業(総合科目群)の平均割合が 49.11%(前年度 49.46%)
,
専門教育的授業科目(専攻科目群)の平均割合が 50.89%(前年度 50.54%)となっている。
【長所】
全体としてバランスが取れている。
[農学部開設科目数]
学科等
総合科目群
農学科
農業経済学科
農芸化学科
生命科学科
合 計
[総合科目群の内訳]
分類
一般教養的授業科目
外国語科目
合 計
科目数
81
116
81
78
68
424
科目数
46
35
81
分類
全体からの割合
一般教養的授業科目,外国語科目
19.10%
専門教育的授業科目
27.36%
専門教育的授業科目
19.10%
専門教育的授業科目
18.40%
専門教育的授業科目
16.04%
100.00%
15.98%の内訳
10.85%
8.25%
19.10%
[学科ごとの一般科目(総合科目群)及び専門科目(専攻科目群)の割合及び全学科の平均割合]
科目数
割合
総合科目群
81
41.12%
専攻科目群
116
58.88%
農学科
合 計
197
100.00%
総合科目群
81
50.00%
専攻科目群
81
50.00%
農業経済学科
合 計
162
100.00%
総合科目群
81
50.94%
専攻科目群
78
49.06%
農芸化学科
合 計
159
100.00%
総合科目群
81
54.36%
専攻科目群
68
45.64%
生命科学科
合 計
149
100.00%
総合科目群
49.11%
専攻科目群
50.89%
全学科平均
合 計
100.00%
・基礎教育と教養教育の実施・運営のための責任体制の確立とその実践状況
【現状】
社会科学分野と自然科学分野の基礎的な科目が一般教育の中に組み込まれ,全ての分野を包括する総
合科目群となった。その実施及び運営の責任体制は,カリキュラム委員会での検討とその結果の最終的
な教授会承認により良好に機能している。
【長所】
上記のように,可能な限りの配慮はなされており,体制は整っている。
第3章 農学部 -4-
/321
・グローバル化時代に対応させた教育,倫理性を培う教育,コミュニケーション能力等のスキルを涵養
するための教育を実践している場合における,そうした教育の教養教育上の位置づけ
【現状】
総合科目群の中に外国文学,地域文化研究,文芸思潮などの科目を設け,世界の文化,文明への学生
の目を開き,グローバル化への対処を図っている。また,このようにして異なる文化や人種などに対す
る学生の理解を深めることで,相対的視野に基づく倫理観の涵養を目指している。
【長所】
上記のように,可能な限りの配慮はなされており,体制は整っている。
【改善方針】
外国文学,地域文化研究,文芸思潮などの内容の更なる充実と向上を図る。
・起業家的能力を涵養するための教育を実践している場合における,そうした教育の教育課程上の位置
づけ
【現状】
農学部では行われていない。本学部ではその必要性も含め各学科やカリキュラム委員会で論議を続け
ていく。
・学生の心身の健康の保持・増進のための教育的配慮の状況
【現状】
総合科目群に生涯にわたる健康を考える「健康科学」という科目が設けられており,精神面では,専
門のカウンセラーを抱える学生相談室が学内に設置されている。また,スポーツ実習(体育実技科目)
Ⅲとして1年次より4年次まで重複履修科可能な科目を設置している。
【長所】
上記のように,可能な限りの配慮はなされており,体裁は整っている。
(カリキュラムにおける高・大の接続)
【目的・目標】
今まで学んだことが大学ではどのように発展するか,あるいはどこまで達成していなければならない
か等を認識させる。また生徒の知的好奇心を啓発し,学習意欲の向上,自己認識,理解の深化を図る。
・学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行するために必要な導入教育の実施状況
【現状】
後期中等教育から高等教育へのスムーズな移行に関しては,オリエンテーション指導や,個々の教師
の指導に委ねられているが,付属校との間では,数回のミーティングが用意されており,そこで高・大
移行についての意見を交わしている。また,付属高校推薦・同AO方式入試,及び地域農業振興特別入
試・公募制スポーツ特別入試及びスポーツAO入試による入学者には入学前の導入教育を実施しており,
付属高校自体には学部公開授業も行っている。とりわけ明治高校に関しては,入学前からの大学授業の
一部履修及び入学後への単位振替も認める高大連携プログラムも開始している。
【長所】
上記のように,可能な限りの配慮はなされており,体裁は整っている。
【問題点】
入学前の導入教育,付属高校への学部公開授業,入学前からの大学授業の一部履修及び入学後への単
位振替は実施されているが,まだ問題があるので,下記のような対応を行っている。
【問題点に対する改善方針】
教育・研究体制改革検討委員会による学生へのアンケートを 2004 年度に行い,この問題についても
2005 年度に検討した。2006 年度には,この問題への対処を具体化する予定である。
第3章 農学部 -5-
/322
(カリキュラムと国家試験)
【目的・目標】
本学部のカリキュラムにおいて,本学部の理念,教育目標に損なうことのないように国家資格が得ら
れるような科目を設置することにより就職の幅を広げる。
・国家試験につながりのあるカリキュラムを持つ学部・学科における,受験率・合格者数・合格率
【現状】
農学科では測量士補及び樹木医補の資格取得や技術士(2007 年度受審予定)の一次試験免除となるJ
ABEEが認定したカリキュラムにより履修することが可能である。また,農芸化学科の卒業者は食品
衛生監視委員,食品衛生管理者,毒物劇物取扱責任者の資格について申請することが可能である。また,
本学の就職課が公務員試験講座(有料)を外部と提携して開設しており,公務員を志望する学生たちへ
のサポートを果たしている。
【長所】
これらの国家資格を実際に取得して活躍している卒業生は多い。
【問題点】
大学教育として,その他の国家試験に直接つながりのあるカリキュラムが必要か否かについては,今
後検討する。
【問題点に対する改善方針】
技術士受審に向けて必修科目などの追加などについてカリキュラム委員会で今後検討していく。
(インターンシップ,ボランティア)
【目的・目標】
ジョブ・インターンシップを本学部のカリキュラムに盛り込むことで就職の幅を広げると同時に,就
職時のミスマッチを防止する。本学部のカリキュラムに加えてボランティア活動などを通じて本学部理
念でもある,全人的教養,大局的視野に立てる社会人を養成する。
・ジョブ・インターンシップを導入している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
単位認定なしのジョブ・インターンシップを以前より実施している。農学科のみ 2004 年度新カリキ
ュラムにおいて,「専門実習」という科目を設置し,学生からの手続きに応じて,ジョブ・インターン
シップを単位認定する制度を立ち上げた。各学科でジョブ・インターンシップを単位認定する科目につ
いてカリキュラム委員会で今後検討していく。
・ボランティア活動を単位認定している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
本学部では行っていない。特別入学試験の選考においては,活動歴として,合否判定に考慮している
学科もある。
【問題点】
単位認定については,大学教育として必要なのかどうか,慎重に検討すべきであろう。
【問題点に対する改善方針】
ボランティア活動を単位認定できるシステムについてカリキュラム委員会で今後検討していく。
(履修科目の区分)
【目的・目標】
農学の果たすべき役割も非常に大きくなっているため,単に専門的な知識,技術の習得のみならず,
全人的教養を身につけるため,学生の総合的な学習を促し偏った知識のみに陥らないようにしていく。
・カリキュラム編成における,必修・選択の量的配分の適切性,妥当性
第3章 農学部 -6-
/323
【現状】
外国語,体育関係の科目を除いた専門科目では,一部の基礎科目群を除いては各科目とも必修科目を
おいておらず,学生は,基本的に希望する科目を多数の設置科目から自由に履修することができる。し
かし,農学科を除いた3学科(農業経済学科,農芸化学科,生命科学科)においては,学科理念・教育
目的に応じて,若干の必修科目及び選択必修科目を設置している。ある程度の枠組みを作った上で,学
生に選択の余地を残しているという点から,カリキュラム編成における必修・選択の量的配分は適切で
ある。
(授業形態と単位の関係)
【目的・目標】
講義,実験,実習科目を連動させ,教育効果を高めると同時に,単位については基本的に半期履修制
に移行し,GPA制度とともに教育の完成度を高めていく。
・各授業科目の特徴・内容や履修形態との関係における,その各々の授業科目の単位計算方法の妥当性
【現状】
2004 年度の新カリキュラムより,実験・実習及び語学科目については1単位,その他講義課目につい
ては2単位と,完全に統一しており,このことから,授業形態・特徴・内容に応じた単位計算がなされ
ている。
(※但し,卒業関係科目については,理系3学科は8単位,農業経済学科においては 10 単位と
している。)このように,妥当と考えられる。
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
他大学との単位互換制度を確立することにより,学生の幅広い単位修得を可能とする。
・国内外の大学等と単位互換を行っている大学にあっては,実施している単位互換方法の適切性
【現状】
外国の大学との単位互換制度はなく,必要が生じた時はその都度,単位認定委員会や教授会で討議し
て対応している。ちなみに,協定校留学や学生が自ら留学先を探し,学部が留学を認めた認定校留学で
取得した単位は,単位認定委員会及び教授会の審査の上で 30 単位までを上限に卒業要件単位として認
定される。
【長所】
上記のように適切に対応している。
【問題点】
留学先で履修した科目に対する科目が自学部にない場合や単位数が異なっている場合がある。
【問題点に対する改善方針】
対処法等を必要に応じて単位認定委員会や教授会で検討する。
・大学以外の教育施設等での学修や入学前の既修得単位を単位認定している大学・学部等にあっては,
実施している単位認定方法の適切性
【現状】
本学部独自ではないが高大連携プログラムによる付属高校の入学前の既修得単位を単位認定してい
る。
【長所】
入学前の既修得単位を単位認定することによって大学での単位修得の自由度が増す。
【問題点】
特定の科目のみ認めているが,履修者はいない。上記高校以外にも単位認定に関して入学前の単位修
得に関して付属高校との連絡協議会などで論議を深めていく。
・卒業所要総単位中,自大学・学部・学科等による認定単位数の割合
第3章 農学部 -7-
/324
【現状】
学士入学者における個別的,限定的な単位認定を行っている。学士入学者に関わる単位認定基準が本
学部には定められており,本学部科目として2年次編入者は 40 単位,3年次編入者は 80 単位まで,外
国語科目については英語6単位,第2外国語については4単位まで,体育科目については3単位まで認
定している。この内規は本学部単位認定委員会,教授会の議を経て承認されたもので,適切・妥当なも
のである。
・海外の大学との学生交流協定の締結状況とそのカリキュラム上の位置づけ
【現状】
本学部独自の学生交流協定はない。しかし,国際交流センターを窓口として,アルバータ大学(カナ
ダ)を始めとする協定校との学生交流,および単位認定の互換など行っている。今後,協定校が増え,
活発化する方向にある。
・発展途上国に対する教育支援を行っている場合における,そうした支援の適切性
【現状】
本学部では特に行っていない。
【問題点】
発展途上国に対する教育支援の適切性について検討する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
執行部にて発展途上国に対する教育支援の適切性について予算面も含めて検討する。
(開設授業科目における専・兼比率等)
【目的・目標】
開設授業科目において専任,兼任講師の比率を教育効果の面から適切な比率になるよう改善していく。
・全授業科目中,専任教員が担当する授業科目とその割合
【現状】
本学部全科目数は 673 であり,そのうち専任教員が担当する科目数は 453 で,その割合は 67.3%であ
る(第5章 農学部 1頁参照)。
【問題点】
専任教員担当の比率をさらに高めていく必要がある。
【問題点に対する改善方針】
専任教員担当の比率を高めていくには新規採用人事にも関係することから,適切な比率について「年
度計画」によって改善していく。
・兼任教員等の教育課程への関与の状況
【現状】
兼任教員は全ての科目分野において関与している。特に専任教員がその科目にいない場合,重要な役
割を持っている。
【問題点】
専任教員と兼任教員間で講義内容などに関して話し合いの場が必要である。
【問題点に対する改善方針】
兼任教員も学部の教科目全体,とりわけ教育理念につき建設的意見を集約するための交流の場を設定
する。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
第3章 農学部 -8-
/325
社会人学生,外国人留学生などへの教育的配慮をカリキュラムや就学指導の面から行う。
・社会人学生,外国人留学生,帰国生徒に対する教育課程編成上,教育指導上の配慮
【現状】
社会人学生は当学部にはいない。外国人留学生に対しては日本語や日本事情の科目を置き,さらに英
語の十分わからない留学生に英語の特別コースを設けている。
【問題点】
外国人留学生の履修について十分理解し得ない点もあるので,学習指導期間で履修について重点的に
指導を行う必要がある。
【問題点に対する改善方針】
社会人学生も時代の流れ,要求が大きくなっている現在,入学方法を考えて受け入れる方向を入試委
員会等で検討する。外国人留学生の新入生については,国際交流センターなどと連携して履修指導を行
う。
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
リバティ・アカデミー,成田社会人大学などや黒川新農場で開設される予定のアグロサイエンスアカ
デミー(ASA)において成人教育を促進していく。
・生涯学習への対応とそのための措置の適切性,妥当性
【現状】
本学部では,全学的な対応に協力して行っている。リバティ・アカデミーでは公開講座・資格講座を
設置している。成田社会人大学や研究所の地方講演もあり,本学部から担当者を出している。
【問題点】
生涯学習への対応について全教員が協力して開かれた本学部について意識を高めなければならない。
【問題点に対する改善方針】
全学的な生涯教育プランと実行に一層当学部が役割を大きくしなければならない。他学部には無い生
命(植物,動物)を育てるという農学部の特徴を生かし,黒川新農場に社会人対象のASA(アグリサ
イエンスアカデミー)の開設やグリーン相談室による周辺住民等を対象とした農業を中心とする生涯学
習プログラムや生命に関する相談室の開設を新農場建設計画委員会等で検討する。
(正課外教育)
【目的・目標】
社会・地域の発展を視野に入れ,学生の社会貢献活動を教育していく。
・正課外教育の充実度
【現状】
学生課の M-Navi プログラムへの協力(里山や食生活・食の安全など)を行っている。また,学生部
主催の農場体験実習なども行っている。
川崎市による市民講座へ講師を派遣しており,本学部学生も受講することが可能である。
【問題点】
他学部学生に対して正課外教育が充実しているとは言えない。
【問題点に対する改善方針】
当学部の学生のみでなく,他学部の学生に一般市民の聴講も認める開かれた正課外の教育が更に強化
されるべきである。黒川新農場等で実施される里山体験などの正課外教育を活性化させる。
(2)
教育方法等
第3章 農学部 -9-
/326
(教育効果の測定)
【目的・目標】
教育効果の測定を学生によるアンケートなどで実施し,シラバスが適切に実施されたかなど,授業評
価を点検・評価し,FDの活性化を促す。
・教育上の効果を測定するための方法の適切性
【現状】
教育効果を測定するシステムはシラバスの適切な実施,定期試験(リポートによる試験も入る)や授
業内で科目担当者が自由に行う小試験で測定している。また,本学部では教育・研究体制改革検討委員
会により学部独自の授業評価アンケートを任意ではあるが実施していた。現在は,全学的に行う授業改
善のためのアンケートを実施しており,他学部を含め総合的に行っている。
【長所】
授業改善のためのアンケートは無記名であるので学生の率直な意見を担当教員は知ることができる。
【問題点】
シラバスが適切に実施されているかについて学生アンケートのみで教員間の相互理解がやや不足で
ある。プレゼンテーション機器による教育は全教員が用いていない場合もあるので,わかりやすいかと
いう問いは必ずしも適切でない。アンケート結果についても総合評価の低い学生は出席率が低い場合が
多いので参考にならない場合もある。
【問題点に対する改善方針】
シラバスが適切に実施されているか,授業改善のためのアンケートの実施方法などについて教育効果
測定方法の適切性を学部内のFD委員会などで論議を深めていく。
・教育効果や目標達成度及びそれらの測定方法に対する教員間の合意の確立状況
【現状】
FD委員会や各学科で検討し,教員間の合意を形成していく。
・教育効果を測定するシステム全体の機能的有効性を検証する仕組みの導入状況
【現状】
教育の内容や目標を示した各科目のシラバスが毎年度更新されている。また,実験・実習における教
育効果の測定では,レポートや教員との直接的な質疑応答によって教育効果を高めている。さらに,授
業改善アンケートを全学同一のフォーマットで実施し教育の質を高める効果を付与している。この有効
性に関する検証については大学全体としての実施に依存し,学部による検証が十分になされていない。
【問題点】
システム全体の機能的有効性を検証する仕組みについては,今後,第三者を加わえて実施する必要が
ある。
【問題点に対する改善方針】
本学に教員研修(FD)委員会が発展し,教育開発・支援センターが設置されるため,このセンター
と連携し,今後,なるべく早い時期にシステム全体の機能的有効性を検証する仕組みの導入を図ってい
く。
・卒業生の進路状況
【現状】
2005 年の業種別進路は製造業 38.4%,商事・卸・小売業 20.4%,情報・環境・サービス 14.4%,金
融業 8.4%,教育・公務員 7.1%,新聞・出版・放送・広告 6.3%,農林水産業・鉱業 2.5%その他とな
っている。
【問題点】
必ずしも学生の第一希望の職種,企業に就職できていない。
第3章 農学部 -10-
/327
【問題点に対する改善方針】
就職に有利な様々の資格取得教育を学部独自で実施するよう就職担当委員会等で検討する。
・教育効果の測定方法を開発する仕組みの導入状況
【現状】
本学においては全学的統一フォームで,学生による授業改善アンケートを実施している。
【問題点】
現在のアンケートだけでは必ずしも教育効果が十分に検証できていない。
【問題点に対する改善方針】
さらにきめ細やかな仕組みをFD委員会等で論議する。
・教育効果の測定方法の有効性を検証する仕組みの導入状況
【現状】
学部での導入はない。各個人,各学科により自主的に行っている。
【問題点】
学部全体で検証する仕組みを導入する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
このことをFD委員会等で学部全体として検討する。
・教育効果の測定結果を基礎に,教育改善を行う仕組みの導入状況
【現状】
2008 年の新カリキュラムに向け,学科での検討や学部に設置されているカリキュラム委員会,FD委
員会など各種委員会が連携し,検討している。
・国際的,国内的に注目され評価されるような人材の輩出状況
【現状】
少しずつ国際的・国内的に注目される人材が出てきている。
【問題点】
これらの教員に対する広報活動が弱い。
【問題点に対する改善方針】
国際会議などで活躍している教員は多くいるため,大学ホームページなどを通じ,研究内容などを公
開する広報活動を行う。また,専門領域での研究業績で注目されるような人材を出すためには,学生の
可能性,潜在能力を発見し,かつ育成する指導力をもつよう,今以上に教員の能力を向上させていく。
(厳格な成績評価の仕組み)
【目的・目標】
成績評価を厳格に行い,より教育効果を高め,学生の学習意欲を触発し,学習目標を明確化する。
・履修科目登録の上限設定とその運用の適切性
【現状】
1年次の履修制限単位数 40 単位,2年次同 60 単位以内,3年次同 70 単位以内,4年次同 70 単位以
内である。
【長所】
予習・復習も含めて履修制限単位数は適切である。
第3章 農学部 -11-
/328
・成績評価法,成績評価基準の適切性
【現状】
きめ細やかな成績評価を行うため,2004 年度よりGPA(Grade Point Average)を導入している。
S(90 点以上),A(80-89 点),B(70-79 点),C(60-69 点),F(59 以下)と国際基準に統一され
ている。
【長所】
成績評価は 2006 年度後期よりABCDFよりSABCFと改正され,適切なものとなった。
・厳格な成績評価を行う仕組みの導入状況
【現状】
GPAを導入して,従来よりも厳格な成績評価がなされている。
【長所】
各学科の学年別平均GPAを公開し,厳密な成績評価を行っている。
・各年次及び卒業時の学生の質を検証・確保するための方途の適切性
【現状】
学年進級(各学科2年次の進級条件として1年次終了時において実験実習を除く卒業要件単位 20 単
位以上)や研究室入室(各学科のおいて設定)を厳格に行っている。また,1年次 10 単位,2年次 30
単位,3年次 50 単位,4年次 60 単位を修得していない学生については退学勧告も含めた修学指導を行
っている。
【問題点】
3・4年次においては就職活動が行われるため研究教育が十分できない学生が見られる。
【問題点に対する改善方針】
一層学生の質を高めるために,研究室に必ず入室し指導教員による専門的な研究,そして単位を修得
することを卒業の必須条件とするようカリキュラム委員会等で検討する。
・学生の学習意欲を刺激する仕組みの導入状況
【現状】
成績優秀者に対する表彰制度を設けて,大学院授業にも一部出席できるようにしている。各種研究設
備について細やかな指導を行っている。
【問題点】
入学時の学生に不本意入学者が見受けられる。
【問題点に対する改善方針】
不本意入学学生に対しても学習意欲に対してモチベーションを高めることが重要であるため,各学科
で導入教育の実施をカリキュラム委員会で検討している。他大学の同系研究室への訪問や場合には一時
的参加についても検討を行う。
(履修指導)
【目的・目標】
入試の多様化によって,入学する学生も多様化しているため,履修指導はきわめて重要な項目となっ
た。一般的な基礎学力の低下ばかりでなく,共通の基礎知識の低下も深刻である。多様化する学生にあ
ったカリキュラムを提供することと,個々の学生にあわせて履修指導することが必要である。
・学生に対する履修指導の適切性
【現状】
学部便覧に各学科の履修モデルを掲載し,入学時,及び年度ごとに履修ガイダンスを実施している。
成績不良者へは,教員,TA,職員によるさまざまな学習支援制度がある。
第3章 農学部 -12-
/329
【問題点】
事務窓口で相談も行っているが,個々の学生への対応が十分できているか疑問である。
【問題点に対する改善方針】
生田校舎に設置された学習支援室の活用を推進し,個々の学生に十分対応ができるよう改善していく。
・オフィスアワーの制度化の状況
【現状】
各教員の自主性にもとづきシラバスにオフィスアワーの時間と研究室番号(教員によってはメールア
ドレス)を掲載している。予定を研究室のドアに掲示している教員もいる。
【問題点】
利用する学生が多いとは言えない。
【問題点に対する改善方針】
オフィスアワーが有効に活用されていないため,学生に対するアプローチ方法等について引き続き検
討する。
・留年者に対する教育上の配慮措置の適切性
【現状】
年度始めに在籍原級者ガイダンスを実施し,修学指導を行っている。また,学習支援委員会を設置し,
2年次進級のできない留年者に対しては,学習計画の提出を義務付け,学習意欲の向上を促している。
【長所】
学習支援委員会により留年者に対する指導が開始された。
・学習支援(アカデミック・ガイダンス)を恒常的に行うアドバイザー制度の導入状況
【現状】
学習支援委員会を設置し,学習支援室を開設した。また,フォローアップ補習授業を英語,数学,生
物,化学,物理の科目で実施した。本年度は入学直後にフォローアップ講座を実施し,受講者が増大し
た。さらに,TAの学生を配置している。
【問題点】
学生の受講者が増大し,補習授業の時間を十分にとることが困難である。また参加できない学生がい
る。
【改善方針】
フォローアップ補習授業への参加が自由に効果的にできるよう夏期休暇の前などに設置する。また,
学習支援室の利用に関して学生に周知すると共に,要望を聞きとり,より効果的な学習支援室の活用方
法を検討し,基礎学力の低下を防ぐ。
・科目等履修生,聴講生等に対する教育指導上の配慮の適切性
【現状】
履修,聴講科目担当教員による自主的なガイダンスが行われている。
【長所】
適切に配慮されている。
(教育改善への組織的な取組み)
【目的・目標】
本学部の教育の特徴は少人数教育と実験実習の重視にある。しかし,学生の多様化という新しい事態
のなかで,それが次第に困難になってきた。本学部は学生と開かれた関係を維持しつつ,教育改善を図
第3章 農学部 -13-
/330
る必要があろう。
・学生の学修の活性化と教員の教育指導方法の改善を促進するための措置とその有効性
【現状】
少子化や入学制度の多様化などにより全般的に学力が低下しつつあり,従来のような教育指導方法で
は,対応が困難になりつつある。特に学力の低い学生の学習意欲の低下が懸念されている。第一外国語
(英語)においては,学力別クラス編成を施行し,学力に応じた授業を行い,学習意欲の活性化を図っ
ている。また,,授業改善アンケートを実施しており,その結果は各担当教員にフィードバックされ,
教員は教育指導方法の改善に役立ている。
【問題点】
入学制度の多様化は学生の多様化をもたらし,学内に活気を与える半面において,学力の多様化を伴
った。
【問題点に対する改善方針】
これに対する対応はきわめて困難であるが,学習指導室やTAなどを活用し,対応する。
・シラバスの作成と活用状況
【現状】
各学科のカリキュラムの中での科目の位置づけ,達成目標と評価基準,授業回数の統一と各授業時に
おける項目を明示したシラバスを作成し,毎年のガイダンス時に配布し,全学生に周知している。
【問題点】
学習達成目標と評価基準の記載については,科目によって不十分なものや,授業回数とシラバスの記
載についても不十分な科目があった。
【問題点に対する改善方針】
シラバスについて,教員の意識を高めると同時に記載不十分な教員に対しては個々に通達する。
・学生による授業評価の活用状況
【現状】
各教員により1科目以上の授業改善アンケートをとることを制度化し,学生の授業評価を活用できる
ようにした。
【問題点】
授業評価の活用は教員に任されているので,必ずしも十分は成果を挙げているとはいえない。
【問題点に対する改善方針】
実験,実習,演習を含めて,すべての科目について授業改善アンケートを取り,授業改善に活用する
ことをFD委員会等で検討する。
・FD活動に対する組織的取組み状況の適切性
【現状】
本学部全体の組織的取組みには至っていないが,学部FD委員会により授業評価項目について検討し
ている。
・FDの継続的実施を図る方途の適切性
【現状】
FD委員会を設置し,全学FD委員会とも連携し,活動中である。
【問題点】
必ずしも学部で行うFDと全学でのFDの活動についての趣旨が十分に理解されているとは言えな
い。
第3章 農学部 -14-
/331
【問題点に対する改善方針】
全学でのFDにおいては,全教員に全科目(現アンケート項目になじまない科目については別途質問
項目を設定する)の学生アンケート実施を依頼していないので,全教員が取り組む改善策を学部FD委
員会等で検討する。
・学生満足度調査の導入状況
【現状】
全学統一フォームによる授業改善アンケートを実施している。また,2004 年度に発足した教育・研究
体制改革検討委員会において,学生の満足度について詳細なアンケートの実施を行った。
【長所】
アンケートを全学的,本学部独自で実施し,学生の満足度を調査できている。
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
現在は特に行っていない。しかし,2004 年度に発足した教育・研究体制改革検討委員会が卒業する4
年生に対してアンケートを実施した。
【長所】
4年生から個々の授業評価アンケートでは得ることの出来なかった,カリキュラム全体に関わる意見,
改善提案,コメント,学生の満足度などが得られた。これらは教育・研究体制改革検討委員会において
今後のカリキュラムの充実や4学科体制の問題点やその解決に向けての答申として生かすことが出来
た。また,これらは農学部協議会での学部改革の参考としても利用している。
・雇用主による卒業生の実績を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
現在は特に行っていない。
・教育評価の成果を教育改善に直結させるシステムの確立状況とその運用の適切性
【現状】
学生による授業改善アンケートを全学的に実施し,その結果を担当教員にフィードバックしているが,
成果の運用については,各教員の自主性に任せている。
【問題点】
全科目で授業改善アンケートが実施されていない。
【問題点に対する改善方針】
授業改善アンケートの成果による教育改善を推進する客観的,組織的な制度の確立をFD委員会等で
検討する。
(授業形態と授業方法の関係)
【目的・目標】
本学部の大きな特徴は,講義ばかりでなく,演習,実験,実習,ファームステイ研修などさまざまな
授業方法があることにある。学生は単に講義を聴くばかりでなく,実験,実習などに積極的に参加しな
ければならない。農学部は今後もこのような授業方法を維持するとともに,情報化の時代に合わせたさ
らなる工夫が必要である。
・授業形態と授業方法の適切性,妥当性とその教育指導上の有効性
【現状】
授業形態には,講義,演習,実験,実習,ファームステイ研修がある。実験,実習,ファームステイ
研修の履修比率はきわめて高く,教育指導上,有効に活用されている。特に付属農場での農場実習は農
学部の学生には貴重な授業形態である。
第3章 農学部 -15-
/332
ファームステイ研修については各県の農村において農家に宿泊して農作業に従事し,農家の生活に触
れ,総合的に現実の農業や農村生活の姿を体得することを目的に設置されている。また,2年生を対象
にした台湾でのファームスティ研修では,台湾大学の全面的な協力のもと,政府機関や農会(日本の農
協のような組織)の訪問,台湾大学教員による授業,農家や農産加工工場などの多彩なプログラムが用
意され,台湾大学の同世代の学生たちと親密な交流ができることも大きなメリットであり,現地で芽生
えた友情は一生の財産となっている。
【長所】
実地を重視し,実地を通じて理解を深め研究をすすめていくという農学の基本的性格を具体的に経験
できることは教育指導上,大変有効である。なお,実験,実習,ファームステイ研修については学生の
評価が高い。
【問題点】
教員の負担が大きい。また,新農場の整備が遅れている。
【問題点に対する改善方針】
教員への負担についてはTAの活用により改善していく。農場実習については,きちんとした教育・
訓練がなされるよう,新農場の迅速な整備を進め改善を図る。
・マルチメディアを活用した教育の導入状況とその運用の適切性
【現状】
本学部内に,情報化推進委員会を設置し,情報教育のあり方について中間答申を出した。マルチメデ
ィアに対応した設備の整備は順次行われ,その運用と活用は,各教員の工夫に任されている。
【問題点】
教員の工夫に任されているため,導入している教員に対しては支援体制が不十分である。
【問題点に対する改善方針】
必要なコンテンツの作成を支援する等,教員の負担を軽減する方策を情報化推進委員会等で検討する。
・「遠隔授業」による授業科目を単位認定している大学・学部等における,そうした制度措置の運用の
適切性
【現状】
農学部としては行っていない。
(3年卒業の特例)
【目的・目標】
本学部のカリキュラムには実験や実習が多く,そのため3年卒業は困難であると思われる。
・4年未満で卒業を認めている大学・学部等における,そうした制度措置の運用の適切性
【現状】
本学部では4年未満での卒業は困難ではあるため,卒業を認める条件について検討中である。
(3)
国内外における教育研究交流
【目的・目標】
開かれた学部となるために,国内外における人間と情報の交流が,学生と教員のそれぞれのレベルで
必要である。特に本学部の特徴であるファームステイ研修等を充実させていく。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の適切性
【現状】
本学部の目的である「食料」
「環境」
「生命」をキーワードに自然と人間社会の調和を図り,生命全般
や地球的な食料・環境問題の解決に向けた貢献を実現するため,国内外における交流を実施する。
農業経済学科の設置科目である「ファームステイ研修(海外)」では,国立台湾大学の協力を得て実施
第3章 農学部 -16-
/333
された。「ファームステイ研修(海外)」は海外において,その国の農業が如何に行われているかについ
て,政府機関や農会(日本の農協のような組織)の訪問,台湾大学教員による授業,農家や畜産物加工
場の見学など,風土に触れて体得することを目的として設置されており,学生の好評を得ている。
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
【現状】
教育における交流については,ファームステイ研修を主として実施している。研究交流は教員個人で
行っており,それは増加傾向にある。
【長所】
教員の国際活動と共に,学生の国際会議での学会発表の機会も増加している。
・外国人教員の受け入れ体制の整備状況
【現状】
本学部としては特に行っていない。
【問題点】
国際化に対応する外国人教員の受け入れ体制が未整備である。
【問題点に対する改善方針】
科学英語を担当する外国人教員を特任教員として受け入れるよう体制の整備を行う。
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
【現状】
『明治大学農学部研究報告』を年に4回発行している。教員は社会科学研究所,人文科学研究所,科
学技術研究所のいずれかに属し,それらが発行する紀要,主催する講演会などで成果を発表する機会が
与えられている。また,成田社会人大学,リバティ・アカデミー,神奈川県,川崎市などの講座に講師
を派遣し,研究成果の外部発信を行っている。また,特に海外にも研究成果を発表しているが十分とは
いえない。
第3章 農学部 -17-
/334
7-1.経営学部
(1)
教育課程等
(学部・学科等の教育課程)
【目的・目標】
本学部は,1953 年に私学で最も古い経営学部として設立され,常に時代をリードする経営学教育を行
うことを理念としている。近年の経営学の対象の拡大,会計専門職のニーズの増大から,経営学科の単
学科を,2002 年度から,経営学科,会計学科,公共経営学科の3学科体制に組織変更し,それぞれ教育
目標,人材養成等を明確化した。
経営学科では,グローバルからローカルにまで対応する企業経営のリーダーの育成,会計学科では,
公認会計士,税理士,国税専門官,CPAといった会計プロフェッショナルの育成を,公共経営学科で
は,公共性の理解を背景に行政組織などの既存の組織からNPOまで,非営利組織経営のリーダーの育
成を幅広い教養の上に形成することを目標にカリキュラムの編成をしている。
・学部・学科等の教育課程と理念・目的並びに学校教育法第 52 条,大学設置基準第 19 条との関連
【現状】
さまざまな経営活動に対応するべく導入された3学科体制では,学科の目標の下に社会の変化に柔軟
に対応できる人材の育成を目指している。また,3学科制移行を機にカリキュラム体系を整備し,それ
ぞれの学科理念に対応した専門科目の体系的配置,バランスを考慮した専門教育と教養教育の科目配置,
グローバル化・国際化に対応した語学教育,総合的判断力や深い教養を涵養する教養科目の充実をめざ
して以下のような具体的な充実策を実施している。
(1) 専門科目の一部をより早い段階から学べるように1・2年次にも割り当てている。また,逆に一部
の教養科目を段階的学習のため3・4年次に配当している。1・2年次と3・4年次ではキャンパス
が異なるので,この仕組みにより,効果的な教育が行える。
(2) TOEIC試験を毎年全員に実施(卒業までに4回)している。1・2年次の英語クラスでは,そ
の成績に基づく習熟度別少人数クラス制を導入している。
(3) ALC Net Academyの利用による e-ラーニングを実施している。
(4) 外国語科目・文章表現・教養演習・専門演習などはよりきめ細やかな指導をめざし,個別指導重
視の少人数授業を実施している。
(5) 専門演習の一部を2年生後期から行って,より深い教育が行えるようにしている。
(6) 専門演習を一般教育担当の教員も担当し,学生の幅広い興味に対応できるようにしている。
(7) 外国語教育は4年生まで発展的・体系的に学べるように設定した。
(8) 専門教育科目として,実践的な「ビジネス・プレゼンテーション」及び「ビジネス英語」科目を設
置している。
(9) 学部独自の留学プログラムであるIBP(International Business Program:海外の大学(経営学
部)への短期留学プログラム)を実施している。
(10)日商簿記検定を全員が受けられるように学内での団体受験を導入している。
(11)社会の第一線で活躍されている方々を中心としたオムニバス形式の特別講義として,経営学特別講
義,会計学特別講義,公共経営学特別講義を設置している。これらの科目は高大連携プログラムとし
て付属高校や指定校の生徒ならびに父母にも開放している。
(12)デジタル文書作成法,デジタルデータ処理法,デジタル情報検索法,デジタルプレゼンテーション,
デジタルメディア作成法などの情報リテラシー科目を学部独自で設置し,充実させている。
(13)就職(進路)をより意識化させるため,2004 年度から授業科目の経営総合講義として「キャリア・
デザイン」を設置しているほか,学部独自の就職支援策(課外)として,キャリア・デザイン委員会
主催により,教員と職員が協力して「経営学部就職セミナー(全 4 回)」を開催している。
(14)2005 年度が3学科移行の完成年度に当たっているので,更なる教育効果の向上を目指して,2006
年度以降のカリキュラムの見直し(新規科目の設置,科目区分の変更,配当年次の変更等)を行った。
(15)実務を経験するインターンシップを全学に先駆け導入し,単位化を行っている。ビジネス・インタ
ーンシップとNPOインターンシップがあり,派遣契約を結んでいる企業や非営利組織で受け入れて
いただいているが,自分で受け入れ先を開拓することもできる。
(16)3年早期卒業制度を 2002 年度から実施し,2005 年3月に4名,及び 2006 年3月に3名の卒業生を
第3章 経営学部 -1-
/335
送り出した。
(17)聴覚障害者の入学に伴って学部内にボランティア・センターを立ち上げ,登録学生がノートテイキ
ングや手話を学び,実際に講義の記録を行った。
【長所】
教養教育の充実と,体系的な専門科目の配置,語学教育と情報教育の効果的編成により,社会問題に
対して,高い対応力と問題発見力,そして問題解決力を発揮できる人材の養成につながっている。
3学科制への改革を機に各学科の専門科目を充実させるとともに,学科の枠を越えた履修の幅を大き
くとり,多様な要求に応える学習を可能にした。
【問題点】
学生が目的意識をさらに明確にして学ぶことができるように,各学科の理念と科目の位置づけを精緻
化する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
(1) 時代の変化に対応して,学年制と半期履修制が混在している現在のカリキュラムの再見直しを行う。
(2) 実習科目への参加を促すために,特に年度初めのガイダンスでの科目担当教員による広報と説明を
さらに充実させて学生に周知させる。
(3) IBPで短期留学に送り出す学生の参加者増加を促進するため,参加費用に対する補助金を支出す
る。
(4) 入学後の1年次生に対し,学習に対する目的意識を持たせるとともに,将来の自立的な進路選択の
一助となるよう「キャリア・デザイン講座」を開催する。
・学部・学科等の理念・目的や教育目標との対応関係における,学士課程としてのカリキュラムの体系
性
【現状】
経営学科におけるグローバルからローカルにまで対応する企業経営のリーダーの育成,会計学科にお
ける公認会計士,税理士,国税専門官,CPAといった会計プロフェッショナルの育成,公共経営学科
における公共性の理解を背景に行政組織などの既存の組織からNPOまで,非営利組織経営のリーダー
の育成をそれぞれ幅広い教養の上に形成するという各学科の目標に従って,教養科目と基礎教育科目,
専門科目が4年間にわたってバランスよく配置されるように配慮し,現在,上欄に挙げたような充実策
を講じている。外国語科目を4年間発展的・体系的に学べるように設置している。情報リテラシー科目
は学部間共通の科目に加えて学部独自でも設定している。専門分野をスムーズに学べるようにゼミナー
ル教育を教養演習,専門演習という形で1年から4年まで学べるように設定している。
【長所】
3学科制への改革を機に各学科の専門科目を充実させるとともに,学科の枠を越えた履修の幅を大き
くとり,多様な要求に応える学習を可能にした。
【問題点】
学科の理念を徹底させるための学科カリキュラムと学科を越えた履修とのバランスをさらに図るこ
とが必要である。
【問題点に対する改善方針】
学科の目的に沿ったカリキュラムの体系化を教育課程委員会等でさらに追求する。
・教育課程における基礎教育,倫理性を培う教育の位置づけ
【現状】
各学科の教育目標は幅広い教養の上にそれぞれの学科が目指す人材を育成することになっており,基
礎教育は1・2年生を基本に4年生まで関連・発展した形で学べるようにカリキュラムを設定している。
教育課程全般において,倫理性の涵養が求められるように科目設定を行っている。具体的には,倫理・
思想・哲学系の教養科目を1年から4年まで配当している。また,学部必修科目を始め,専門教育を理
解するための基礎科目を1・2年次に配置し,段階的な学習ができるカリキュラム編成となっている。
第3章 経営学部 -2-
/336
インターネット接続資格に関しては,入学時に学部独自でもインターネット講習会を開催し,情報倫
理教育を行っている。教養演習を1・2年次に設置し,専門演習への導入教育としている。
【長所】
幅広い教養科目の配置により,興味・関心を広げ,問題発見力を喚起している。情報リテラシーを学
部の基礎的な教育と位置付け,学部独自の科目を設置している。また,学部間共通的に設置されている
情報リテラシー科目を卒業単位に算入することができるようにしている。
学部間共通外国語科目を履修上限から除外して,意欲の高い学生がより学習できるように配慮してい
る。
【問題点】
社会への関心を高めるとともに倫理性について徹底を図る必要がある。
【問題点に対する改善方針】
現実の社会の問題への様々な取組を授業にさらに生かし,教育課程委員会等で基礎教育の充実および
倫理性の涵養に努める。
・「専攻に係る専門の学芸」を教授するための専門教育的授業科目とその学部・学科等の理念・目的,
学問の体系性並びに学校教育法第 52 条との適合性
【現状】
3学科制への改革を機に各学科の専門科目を充実させた。学科の枠を超えて経営学に係わる専門領域
を学ぶ共通専門科目を1,2年次から配置し,また,学科ごとの専門科目についても,1年次あるいは
2年次に履修ができる科目を配置している。
経営学科では,1年次には,経営学,近代経済学,簿記論といった学部必修科目の履修を通して企業
経営に関わる基礎的知識や基本的考え方を学ぶ。2年次には,企業論と経営管理論という学科必修科目
の履修を通して,社会における企業のあり方,および,企業経営の全体的構造を学ぶ。3・4年次には,
1・2年次におけるそれらの必修科目の履修を通して身につけた専門基礎知識を前提に,企業経営に関
わるさらに専門的な知識を身につけるために学科専門科目を履修する。またその他にも共通専門科目と
して,経営学関連の専門基礎を学ぶための科目,経済学関連の専門基礎を学ぶための科目,法律的知識
を学ぶための科目,経営の国際化に対応できる知識・発想を身につけるための文化論関係科目が開講さ
れている。
会計学科では資格取得を志す学生を対象にさまざまなバックアップを行っている。その一つが1年次
の簿記集中授業システムである。まず経営学部の必修科目である簿記論の授業において,会計学科特別
クラスを設け,経営学科・公共経営学科よりもレベルの高い講義を実施する。さらに会計学科の学生に
は「経理研究所」主催の簿記講座の積極的な受講を勧め,普通科高校出身の学生でも1年次に「日本商
工会議所主催 簿記検定試験2級」合格レベルに引き上げるよう指導する。また,この他にも学会,実
務会で活躍している方々を招聘教授として招き,特別講義を開講したり,資格取得についてのガイダン
スを実施するなど学生に興味をもってもらえるような試みを実施している。
公共経営学科では,1年次では,経営学,近代経済学,簿記論といった学部必修科目の履修を通して
経営に関わる基礎的知識や基本的考え方を学ぶ。同時に公共経営に関する入門的科目である基礎公共経
営学と NPO 事情が設定されているので,公共経営の基礎を学ぶことができる。2年次には,学科必修科
目の公共経営学の履修を通して,公共経営の理解を深めるとともに,公共性の思想や歴史,概念に関わ
る一部の専門科目が開設されている。3・4年次には,公共経営や公共セクターに関わる理論やマネジ
メント論など,さらに専門的な知識を身につけるために学科専門科目を履修することになっている。ま
た,その他にも4年間を通して一般教育科目や共通専門科目を履修することができ,国際化に対応でき
る「ものの考え方」・知識・発想を身につけるためのカリキュラムが用意されている。
また,本学部では学部教育の中心のひとつに少人数による演習(ゼミナール)を設定している。全て
の専任教員が演習を担当しており,専門的な学芸を追及できる環境を整えている。また,一部の教員は
専門演習に加えて教養演習(1・2年生を対象とした科目)も開設している。
【長所】
専門教育の充実を図ることにより,学生は早い段階で自らの問題意識を明確にし,広い視野で問題を
捉えることができる。また,科目の中には,経営学特別講義,会計学特別講義,公共経営学特別講義,
第3章 経営学部 -3-
/337
経営総合講義など,オムニバス形式の講義により,また,会計大学院教員との連携講座の開設により,
現場の第一線で活躍されている方々の経験が授業に生かされるように配慮している。同様に特別招聘教
授を経営学科2名,会計学科1名,公共経営学科2名採用し,第一線で活躍する講師の話を伺える機会
を設定している。
【問題点】
社会の現実の問題を専門教育に導入するとともに大学院との連携を深め,さらに専門教育の高度化を
図ることが必要である。
【問題点に対する改善方針】
特別講義は,学生に現実社会の問題への関心を目覚めさせる優れた機会である。今後も充実させる。
経理研究所の講座との連携を強め,国家試験の資格取得を促進する。
・一般教養的授業科目の編成における「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い,豊かな人間性を涵
養」するための配慮の適切性
【現状】
一般教育科目は人文科学系,社会科学系,自然科学系科目から特定分野に偏らないように構成してい
る。また,
「哲学」
「各国文化論」など一部の教養科目は一定の教養ができた上に学んだ方が効果的であ
ると考え,3・4年次に配当している。教養演習などで個別指導重視の少人数教育を充実させ,学生の
自主的な判断力や思考力が育てられるよう配慮している。
【長所】
専門演習を一般教育担当の教員も担当し,幅広い興味に対応できるようにしている。
【問題点】
一般教養科目と専門科目の有機的な連携をさらに図る必要がある。
【問題点に対する改善方針】
これまでは教室事情などにもより,少人数教養教育の充分な展開ができなかった面もあるが,校舎の
新・改築によって改善される見通しであり,さらに充実させる。
・外国語科目の編成における学部・学科等の理念・目的の実現への配慮と「国際化等の進展に適切に対
応するため,外国語能力の育成」のための措置の適切性
【現状】
TOEIC試験を毎年全員に実施し,その成績に基づく習熟度別少人数クラスによる英語の授業を実
施している。3・4年次に外国語専門科目として「外国書講読」
「ビジネス英語」
「ビジネス・プレゼン
テーション」を設置し,体系的・発展的な学習ができるように配慮している。また,IBPにより,実
践の機会を提供している。
ALC Net Academyの利用による e-ラーニングを実施している。
【長所】
習熟度別のクラス編成により,学生個々の能力に応じた教育を実施している。1年次から4年次まで
体系的・発展的な学習ができるように科目を配置している。また,学部独自のIBPにより,実践の機
会の導入及び異文化コミュニケーション能力の向上を図っている。
【問題点】
実践に根ざした語学教育のさらなる充実が急務となっている。
【問題点に対する改善方針】
英語教育は英語によるインタラクションの量と質を確保し,コミュニケーション能力の養成を全年次
を通して継続的に行う。
・教育課程の開設授業科目,卒業所要総単位に占める専門教育的授業科目・一般教養的授業科目・外国
第3章 経営学部 -4-
/338
語科目等の量的配分とその適切性,妥当性
【現状】
卒業所要総単位 126 単位のうち,以下のように配分している。
専門科目:64 単位
内訳
学部必修科目:12 単位,学科必修科目:8単位,学科専門科目:24 単位,共通専門科
目:16 単位,外国語専門科目:4単位
教養科目:26 単位
内訳
教養科目:24 単位,体育実技:2単位
外国語科目:16 単位
自由履修:20 単位
【長所】
共通専門科目を 16 単位,自由履修科目を 20 単位置くことで,選択の幅を持たせている。専門科目に
も外国語関連科目を配置している。他学部聴講を最大 56 単位まで認めている。4年間の履修上限単位
を 162(1年次:40 単位,2年次:41 単位,3年次:41 単位,4年次:40 単位)としており,自由に
履修できる幅が大きい。
【問題点】
学部間共通科目や他学部履修など幅広い履修選択の機会を与えているが,卒業のためにバランス良く
履修できるように指導することが必要である。
【問題点に対する改善方針】
学生が4年間にわたって各科目をバランスよく学べるように学習指導や科目配置について教育課程
委員会等でさらに配慮する。
・基礎教育と教養教育の実施・運営のための責任体制の確立とその実践状況
【現状】
教養教育担当の主任,教養教育担当の教務主任が選出されている。この二人の役職者を中心に教養教
育担当の教員会議を随時開催し,よりよい教育体制の構築をめざしている。
【長所】
上記の体制に加えて学部教務主任を中心に教育課程委員会が,教養教育・基礎教育・専門教育につい
て適時カリキュラムの検討を行っている。また 2002 年度に設置された学部組織体制検討委員会におい
ても,現在,適切な組織体制について審議している。
【問題点】
3学科体制になり,各学科の専門科目との有機的連携を促進する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
各科目の独自性を生かしつつ,適切な教養教育が行われるように,教員相互の意見交換などを重視す
る。学部組織体制検討委員会の答申を踏まえて,適切に対処する。
・グローバル化時代に対応させた教育,倫理性を培う教育,コミュニケーション能力等のスキルを涵養
するための教育を実践している場合における,そうした教育の教養教育上の位置づけ
【現状】
少人数制による語学教育の実施及び,学部独自の留学制度(IBP)の導入により,国際社会に対応
したコミュニケーション能力の向上を図っている。また,教養科目として3・4年次に各国の文化論を
配置し,国際感覚を高めるように配慮している。これが現在のビジネス環境を理解する背景となってい
る。
【長所】
習熟度別の少人数英語教育の展開は,語学力の向上のみならずコミュニケーション能力の向上も狙い
としている。また,IBPの実施により,効果的にビジネス英語と経営学を学ぶことができる。IBP
第3章 経営学部 -5-
/339
の実施は3年目を迎え,参加学生の国際性や学習意欲の向上,TOEICの得点増加(顕著な例では 350
点から 890 点に増加した学生もいる)などの効果があらわれている。
【問題点】
情報教育において,倫理性を徹底させるとともに,語学教育については海外派遣による語学の習得な
ど実践の機会をさらに充実させることが必要である。現在ではIBPに積極的に参加する学生がまだ多
くない。
【問題点に対する改善方針】
IBPに関して,多くの学生を対象に,より効果的に実施できるよう,交流の対象校や人数の拡大な
どを計画している。具体的には,現在のカナダ,アメリカ合衆国をはじめとしてイギリス,フランス,
ドイツ,イタリア,中国等の教育機関への派遣プログラムの充実を図り,学生の参加を促すためのガイ
ダンスを積極的に実施する。また,IBPの積極的活用を目的とした単位化や,一部のプログラムをイ
ンターンシップとして行うことをIBP委員会において検討中である。
・起業家的能力を涵養するための教育を実践している場合における,そうした教育の教育課程上の位置
付け
【現状】
経営学科専門科目として,ベンチャービジネス論を設置している。全学共通の学部間共通総合講座に
おいても「ベンチャービジネス」がテーマとして取り上げられている。また,キャリア・デザインに関
する科目の開講やセミナーを開催しており,起業家精神を啓発している。
【長所】
学部設置科目の受講により,日本経済における中小企業の歴史的背景や役割などを学び,総合講座の
受講により。第一線で活躍する実務家の講義を聴くことができる。理論と実践の両面から企業家的能力
の育成を図れている。総合講座の終了後には参加学生の実習報告と反省会が開かれている。
【問題点】
ベンチャー・ビジネス関連の科目の充実と実践科目(インターンシップ及び調査実習),キャリア・
デザイン関連科目の拡充が必要である。
【問題点に対する改善方針】
設置されて間もないこれらの科目を,さらに学生の意見を取り入れながら充実させる。ベンチャー・
ビジネスやキャリア・デザイン関係の科目などを開設する。
・学生の心身の健康の保持・増進のための教育的配慮の状況
【現状】
心身の健康の保持・増進のため,体育実技を1年次の必修科目としている。また,2・3・4年次で
も選択科目(選択体育実技)として履修できるようにしている。この場合の種目設定として,学内では
サッカー,バスケットなど,学外ではキャンプ,スキーなど,学生の要望が高いもの設定するように配
慮している。毎年秋には,教授会と学生のゼミナール協議会が共同してスポーツ大会を開催し,学部一
体となって心身の健康保持を図っている。また,心理的問題をはじめとするよろず相談所として全学的
に学生相談室が設置されており,学部からも相談委員を出している。
【長所】
スポーツ実習とともに,健康と運動能力についての科学的な理論が学べる科目が設けられており,学
生の健康保持・増進への教育的配慮を行っている。また,授業だけでなく,学生が自主的に運営できる
スポーツ活動を通じても心身の健康維持が図られている。
【問題点】
秋の学部スポーツ大会への参加者は年々多くなってきているが,さらに充実させるための促進策を検
討することが望まれる。
精神的なケアを必要とする学生は増加の傾向にあり,学生相談室の充実は全学的な課題となっている。
第3章 経営学部 -6-
/340
特に専門的なスタッフの充実を図る必要がある。
【問題点に対する改善方針】
選択体育実技に関しては,より多くの3・4年生の学生が履修するように,魅力あるプログラムが必
要であり,その作成を行う。
秋の学部スポーツ大会の充実と発展を積極的に図る。心のケアを行うプログラムを充実させる。
(カリキュラムにおける高・大の接続)
【目的・目標】
付属高校生,推薦入学試験合格者,及び特定の公立校の受験希望者等に対して,特定のプログラムを
設定している。これを通して,本学部の教育方針の周知徹底を図り,同時に高校生の本学部への期待が
自然に,円滑に教育の現場で叶えられるようなカリキュラムの実現を目標とする。
・学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行するために必要な導入教育の実施状況
【現状及び長所】
付属校に対して公開授業,自主選択講座(「簿記・会計入門」),ブリッジ講座を開設している。更に 2005
年度からは,一部の学部授業を履修できるプレカレッジプログラムを実施し,同時に3学科部門で特別
講義も行った。
推薦入学合格者を対象に入学前教育(指定図書の感想,ワープロの活用,自校教育など)を行っている。
特定の公立高校を対象にした公開授業を行っている。また,高校側からの依頼に応じて出張模擬授業
を行っている。オープンカレッジを開催して,学部紹介や模擬授業,個別相談会を行っている。
付属校に対して個人情報保護の上,入学者のTOEIC,GPAを示している。これにより,経営学
部の教育理念の理解と高校教育の改善を求めている。
【問題点】
種々の講座開設や事前教育が,学生の希望に叶い,それなりの教育効果をあげているのかについて,
短期間で答えが得られない。
【問題点に対する改善方針】
2005 年度から実施したプレカレッジプログラムを更に科目を増やして実施する方向である。
(カリキュラムと国家試験)
【目的・目標】
本学部では,会計学科のみならず,経営学科の学生も国家試験(CPA,税理士,国税専門官等)の資格
取得を希望して入学している。そのため,学部学生全員を対象に簿記検定試験の学内試験を実施してい
る。会計関係資格については,経理研究所や会計大学院との連携をさらに充実整備していくことを目標
とする。また,TOEICはカリキュラムに組み込んでいるが,さらに有機的に機能するように見直し
を図る。
・国家試験につながりのあるカリキュラムを持つ学部・学科における,受験率・合格者数・合格率
【現状】
公認会計士新試験制度に則したカリキュラムを組んでいる。また,2004 年度から,実習費を活用して,
すべての学科の学生が日商簿記検定試験を受けられるようにし,公認会計士や税理士等の国家試験を目
指す学生の拡大を図っている。
2005 年度は,公認会計士二次試験に経営学部4年生2名,経営学部卒業生3名が合格した(判明者の
み)。日商簿記検定の結果は以下の通りであった。
第1回目(2005.6.12)
1級合格者:3名(受験者:50 名),2級合格者:28 名(受験者:88 名),
3級合格者:83 名(受験者 141 名)
第2回目(2005.11.20)
1級合格者:4名(受験者:67 名),2級合格者:37 名(受験者:135 名),
3級合格者:16 名(受験者 126 名)
教員免許に関して 2005 年度一括申請による取得者数は 13 名であった。
第3章 経営学部 -7-
/341
TOEIC受験はカリキュラムの一つであり,卒業までに4回受験することとなっている。この受験
費用は授業料(実習費)に含まれている。2005 年度 TOEIC の結果は以下のとおりである。
第1回目(2005.4.4)
最高点 760 点(Listening425 点 Reading335 点)
平均点 414 点(Listening240 点 Reading174 点)
第2回目(2006.1.14)
最高店 775 点(Listening420 点 Reading360 点)
平均点 421 点(Listening239 点 Reading182 点)
【長所】
簿記検定試験やTOEICの学内実施を行っている。TOEICは英語の習熟度別クラス分けに反映
させている。
【問題点】
TOEICは学年が進むにつれて受験率が低下している。簿記検定試験についても一定割合の欠席者
がみられる。
【問題点に対する改善方針】
国家資格取得を目指す学生を効果的に支援できるよう,実習費などがさらに活用されるように方策を
講ずる。簿記検定試験及びTOEICの受験率向上のため,実施日程の再検討や受験に向けた指導を強
化する。
(インターンシップ,ボランティア)
【目的・目標】
インターンシップとは,「在学中に正規の教育課程の一環として,自らの専攻,将来のキャリアに関
連する就業体験を行うこと」である。その目的は,①学習意欲の喚起と学習目的の明確化,②高い職業
意識を持った職業人や課題解決型で創造的な人材の育成,③教育内容の改善,④大学と産業界・地域社
会との交流と相互理解,にある。すなわち,現場での就業体験を通じて企業・行政機関・NPOの経営
や仕事の実際に触れることで,経営学等の学問に対する学習意欲や理解が深まること,キャリアの入口
にある学生のキャリア意識が高まること,学生という人材の育成を通じた社会連携の促進という効果を
期待したものである。
・インターンシップを導入している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
本学部では 2003 年度から,単位認定科目として「インターンシップ実習」を設置している。
「インタ
ーンシップ実習」に参加する学生は前年度に「インターンシップ入門」(半期)の単位を修得しなけれ
ばならない。この「インターンシップ入門」は,インターンシップに関する基本的理解,企業・NPO
の人事担当者による事例紹介,グループによる業界研究・プレゼンテーション,ビジネスマナー研修な
どで構成されており,インターンシップに参加する前の事前学習としては,大変充実した内容となって
いる。4クラス開講し,計 200 名ほどの学生が履修しているが,授業ではデジタルコンテンツ教材(「イ
ンターンシップのためのビジネスマナー」)なども活用している。
「インターンシップ実習」には,民間
企業を派遣先とする「ビジネス・インターンシップ実習」とNPO・行政機関を派遣先とする「NPO
インターンシップ実習」がある。受け入れ先の開拓方法としては,大学が紹介する企業・団体で実習を
行う「大学経由型」と自ら実習先を開拓する「自己開拓型」の2通りを設けている。このことは,学生
の実習参加機会を拡大させている。2005 年度は,33 名の学生が実習に参加した。学生の満足度はおお
むね高く,トラブルも特になく円滑に実習を実施することができた。実習終了後には成果報告会や体験
レポートの提出,受け入れ先による評価などを行っている。これらの結果から,インターンシップ実習
は,学生の職業意識の涵養と学習意欲の喚起に着実に寄与していると評価している。また,新しい受け
入れ先も増えたことで,大学と産業界との連携もさらに強まっている。
【長所】
「インターンシップ入門」という事前学習とインターンシップ実習とを結びつけ,体系的なプログラ
ムを開発・整備した。これにより,インターンシップに期待される効果をより確実なものにすることが
第3章 経営学部 -8-
/342
できた。実習前・実習中・実習後のプロセスにおいても,事前説明会への参加,事前学習レポート・実
習日誌・体験レポートの作成,成果報告(プレゼンテーション)という流れをシステム化することで,
より教育効果を高めることができた。このような「経営学部方式」は,本年度から情報コミュニケーシ
ョン学部でも「インターンシップ入門」の開講ということで導入され,本学部教員が手助けを行ってい
る。
【問題点】
実習先の確保については努力してきたが,依然として量的にも分野的にも不足している。そのことが
学生のニーズの高さとの間でミスマッチを生じさせており,実習参加数の伸び悩みの原因となっている。
また,実習先の一部には,インターンシップに対する理解が不足している企業もあり,学生の期待と実
習内容との間でのギャップも見受けられた。
【問題点に対する改善方針】
実習先の拡大については,企業・団体に単に依頼状を送付するだけでは効果がないので,経営学部教
員に実習先の紹介を依頼するアンケートを実施した。また,例年行ってきたことであるが,実習担当教
員が3月・4月にかけて,直接,企業・団体を訪問し,実習受入を依頼する。2006 年度は,分野のバラ
ンスを配慮し,戦略的に実習先の拡大に取り組むことになる。現時点では実習先として 51 団体を確保
しているが,5月までには,20 団体以上の新規開拓を増やすことを目標としている。併せて,学生によ
る自己開拓もさらに促進する。インターンシップの充実についてはジョブ・インターンシップ委員会等
で常に検討している。
実習先の実習内容の改善については,実習担当教員が実習先と協議を行い,改善を求めるとともに,
パンフレットの配布などを通じて,実習のねらいや成功事例などを説明していくことで,さらに相互理
解を深めていく。こうした活動は,1年を通じて行うことであるが,3月から5月にかけて集中的に行
うことになる。なお,以前,実習内容について改善を申し入れたが,十分な改善がなされなかった企業
については,次年度から,受入依頼を行わないなどの処置をとる。
・ボランティア活動を単位認定している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
本学部では,ボランティア活動の単位化は行っていないが,身体に障害を持つ学生の入学を契機に,
学部内でボランティア・センターを組織して,障害を持つ学生へのサポートを実施している。そのため,
2005 年度は手話講座やノートテイカー養成講座を開催しており,2006 年度は正課の授業科目「教養演
習A・B(手話)」として,手話講座を単位化することを決定した。
【長所】
障害を持つ学生へのサポートのために経営学部ボランティア・センターは十分機能しており,多くの
学部生の参加があった。また,地域社会へのボランティア派遣の要請にも応え,学部生のボランティア
登録を学部ボランティア・センターを通して行っている。文部科学省による海外の先進的取組を視察・
研究する国際GPの採択(「大学教育における障害者学習支援」)により,海外の大学や行政による障害
学生のサポートに関する視察を行った。
【問題点】
学部のボランティア・センターの対応ではやはり限界があり,全学的なサポート体制を構築し,さら
に充実した活動を保証する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
文部科学省による海外の先進的取組を視察・研究する国際GPの採択により,海外の大学や行政によ
る障害学生のサポートに関する視察を行った。その成果を学部並びに全学の今後の取組に生かすため,
全学的な障害学生の学習支援を目的としたユニバーサル・アクセスセンター(仮称)の設置を図る。
(履修科目の区分)
【目的・目標】
学部開設 50 周年を契機にして,次世代に新しい経営リーダーを送り出すことを目標に3学科制を導
入した。この目標に向かって,経営管理の専門家,会計専門職の有資格者,行政体やNPO・NGOを
第3章 経営学部 -9-
/343
はじめとする非営利組織の経営に関する専門家の育成のために専門性の追求と幅広い教養のバランス
を考えたカリキュラムの編成を目的としている。
・カリキュラム編成における,必修・選択の量的配分の適切性,妥当性
【現状】
卒業単位数 126 単位中,必修科目と選択科目は以下のように配分されている。
必修科目:42 単位
内訳
学部必修科目:12 単位,学科必修科目:8単位,外国語科目:16 単位,
外国語専門科目:4単位,体育実技:2単位
選択科目:84 単位
内訳
学科専門科目:24 単位,共通専門科目:16 単位,教養科目:24 単位,自由履修:20 単位
この配分は,3学科体制へ移行するときに検討されている。
【長所】
3学科制度になる前の制度と比較して,必修科目及び選択必修科目の総単位数は変わらないが,もと
もと必修科目はできるだけ少なくして,選択の幅を重視したものであった。科目の半期化,学科増設に
伴い,科目総数が増加したため,さらにこの特徴を強化している。
4年間の履修上限単位を 162 単位(1年次:40 単位,2年次:41 単位,3年次:41 単位,4年次:
40 単位)としており,自由に履修できる幅が大きい。現状では特に問題点はないが,学科ごとに教育の
体系性を考慮しつつ,年度ごとに定期的な見直しを行う。
(授業形態と単位の関係)
【目的・目標】
学部,各学科の教育理念のもと,講義,演習,実習科目を効果的に配置し,教育効果を高める。
3学科のそれぞれの部門に配属された学生が,所期の目的を達成できるように,各学科部門の独立性
と部門間の関連性とに配慮した授業形態と単位数を設定することを目的としている。
・各授業科目の特徴・内容や履修形態との関係における,その各々の授業科目の単位計算方法の妥当性
【現状】
1学期は 15 週間とし,講義・演習科目は授業時間数週1時間,自習時間数週2時間,実習・実技・
外国語・スポーツ科目は授業時間数週2時間,自習時間数週1時間の学修を要する内容として1単位と
定めている。これは文部科学省が標準化している 45 時間の学修を1単位と算出して決められたもので
あり,ほぼ妥当な配分になっていると考えられる。
【問題点】
インターンシップ実習や調査実習(2006 年度から科目名変更:フィールドスタディ)の内容が充実す
るにしたがって,単位数を見直しする必要が生じている。
【問題点に対する改善方針】
ジョブ・インターンシップ委員会及びフィールド・スタディ委員会においてインターンシップ実習,
調査実習など,実習関係科目の適切な単位数を算定し直す。
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
本学部の経営学の学問領域からして,教育・研究の場を世界に広げることは自然の成り行きであろう。
これからも適格性の高い大学との交流を更に深め,学力の質の向上を目的とする。
・国内外の大学等と単位互換を行っている大学にあっては,実施している単位互換方法の適切性
【現状】
交換留学生の受入に関する協定を締結している国外の大学との 30 単位を上限とする単位互換を実施
している。
第3章 経営学部 -10-
/344
編入学生は本学部設置してある科目に相当する分についての単位認定を行っている。
【問題点】
国内の大学とは,単位互換を行っていない。
【問題点に対する改善方針】
国外の大学との単位互換の方法については,国際交流センターなどと連携するなどして全学で検討す
べき課題である。対応する委員会で検討を始めるように提案していく。
・大学以外の教育施設等での学修や入学前の既修得単位を単位認定している大学・学部等にあっては,
実施している単位認定方法の適切性
【現状】
本学部における大学以外の教育施設等での学修や入学前の既修得単位については,その授業内容を知
ることができるシラバス又はこれに準ずる資料を提出させ,教務主任が確認をした上で単位認定をして
いる。
インターンシップの単位認定は,文部科学省が標準化している 45 時間の学修を1単位と算出して決
められたものであり,学内での事前・事後学習,報告会を含め,時間としては適切である。
全学的には付属明治高校とのプレカレッジプログラムを実施している。この実施方法は「明治大学プ
レカレッジプログラム実施要領」に定められている。原則として,入学前に受講し,修得した大学科目
の単位(12 単位以内を入学後に本人が希望すれば大学の修得単位に累積加算することができる。
【長所】
インターンシップ及びインターンシップの準備科目(インターンシップ入門)を単位化して実施して
いる。
・卒業所要総単位中,自大学・学部・学科等による認定単位数の割合
【現状】
卒業に必要な単位数(126 単位以上)のうち,本学部における授業科目の履修とみなして単位を認定
するその総数は,大学設置基準に基づき,合計で 56 単位を超えない範囲としている。そのうち,20 単
位を自由履修科目として参入することができる。
【長所】
選択の幅を広く取った設定を行っている。
・海外の大学との学生交流協定の締結状況とそのカリキュラム上の位置付け
【現状】
IBPによる特定の大学との交流はあるが,協定は締結しておらず,課外教育として位置付けられて
いる。
学生交流協定の締結は交際交流センターが中心になって行っており,学部として協力している。本学
部では,アメリカ合衆国のオレゴン大学から,交換留学生1名を受け入れた。
【長所】
学部独自の学生国際交流に発展できるプログラムを実施している。
・発展途上国に対する教育支援を行っている場合における,そうした支援の適切性
【現状】
本学部では特に行っていない。
【問題点】
全学的な対応が必要な課題である。
【問題点に対する改善方針】
国際国流センターなどと連携して全学的に対応する。
第3章 経営学部 -11-
/345
(開設授業科目における専・兼比率等)
【目的・目標】
学部自体の独自性,主体性を考えれば,専任教員の比率が高いほうが望ましい。しかし,絶えず進化
する学問(科学)の本質に目を向けると,外部の兼任の新しい,異質の主張・見解を取り入れることも重
要である。教育・研究の理想的な発展のために,つり合いの取れた望ましい比率で科目担当を配分する
ことを目的とする。
・全授業科目中,専任教員が担当する授業科目とその割合
【現状】
2005 年度の開設科目は前期 472 コマ,後期 514 コマ,通年 158 コマ,合計 1,144 コマである。この
うち,専任教員が担当しているのは前期 161 コマ,後期 201 コマ,通年 123 コマ,合計コマで比率とし
ては 42.4%である。
【問題点】
現状では,カリキュラムの半分弱を専任教員が担当しているが,そのうち,1・2年次開講科目の比
率が3・4年次開講科目と比較すると低くなっている。
【問題点に対する改善方針】
専任教員による授業を重視する一方,多様な兼任教員による魅力ある授業の充実にも努める。1・2
年次開講科目の専任教員担当比率が低いので改善する。
・兼任教員等の教育課程への関与の状況
【現状】
同一科目を複数の担当者で運営している場合には,兼任教員も含めて,授業内容の共通化を目的とし
た担当者会議を開催している。担当者会議で明らかになった問題は教育課程委員会や執行部会議で対応
方法を検討している。
【問題点】
兼任教員を含めた担当者会議を適宜開催することは困難であるため,実際には年度始めおよび年度末
を主に限られた時期にしか開催できない。
【問題点に対する改善方針】
メーリングリストを活用するなどして,兼任教員からの意見・要望等を受ける体制をとり,教育課程
委員会等で検討する。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
学生の勉学意欲の向上,学生間の切磋琢磨による学力向上等は,社会人学生や外国人留学生等によっ
てさらに高まる。また,社会人学生や外国人留学生等の入学によって,本学部の教育・研究の質の向上
も期待できるので,これからも彼等の入学と入学後の教育について配慮する。
・社会人学生,外国人留学生,帰国生徒に対する教育課程編成上,教育指導上の配慮
【現状及び長所】
帰国学生に対して,語学の堪能な学生には,習熟度別少人数クラス編成の英語教育により,適切な指
導ができるように配慮している。
外国人留学生に対しては,日本語のクラスの設定,日本文化を紹介する講座を設置している。外国人
留学生入学試験は学内で試験を行う従来の方法と海外から「日本留学試験」の結果を利用して直接応募
できる方法を採用して,受験の利便性を上げている。
【問題点】
外国人留学生入学試験において,海外からの直接応募形式では,英語を未習の者であっても入学する
ことが可能となっている。外国人留学生や帰国生徒に限定した学部としての特別な学習支援は行ってい
第3章 経営学部 -12-
/346
ない。
【問題点に対する改善方針】
今後受け入れられる外国人留学生に関しては,科目ごとの習熟度に大きな差がある可能性が考えられ
る。特に英語については,本学部では英語未習者用の授業科目を設置していないため,国際交流センタ
ーと連携しながら,外国人留学生や帰国生徒への学習支援の方法(チューター制など)を具体化して実
行する。
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
本学では,2003 年度から,主に生涯教育・社会人教育を目的として駿河台校舎・アカデミーコモンに
おいて,生涯学習関連講座「リバティ・アカデミー」を開設している。資格取得希望者,転職・企業希
望者等の要請に応えて,更に講座内容を充実させ,講座数を増設させていきたい。
・生涯学習への対応とそのための措置の適切性,妥当性
【現状及び長所】
生涯学習関連の講座は,本学においては,リバティ・アカデミーでほぼ一元化して実施しており,学
部教員も協力している。
【問題点】
主に社会人を対象とした講座運営のため,その公共性に鑑みて,継続的かつ安定した講座運営をして
いくことが課題である。
【問題点に対する改善方針】
全学での対応をさらに充実させていく。
(正課外教育)
【目的・目標】
経営学部では,正課外教育として,企業における経営の現状を実感させることを主な目的として,工
場見学を実施している。また,これに加えて学生を短期留学させて異文化を実感させるIBPを実施し,
学生に対して海外への関心をも高めるように促している。
・正課外教育の充実度
【現状及び長所】
IBPの実施で国際的視野を身につけた人材の育成をめざしている。このプログラムに参加した学生
のTOIECの得点は著しく上昇している(顕著な例では 350 点から 890 点に増加した学生もいる)。
また,学生の満足度は一様に高いものとなっている。この留学で異文化に触れることがきっかけとなり,
さらに自発的な学修意欲を高めている。
工場見学を年間複数回実施している。企業活動の実態を机上の学習にとどまらず,を直接自分の肌で
感じることができる。
【問題点】
工場見学やIBPは正課外教育であるため,これらに参加するには,学費のほかに参加費用が生じる
ことになる。特にIBPプログラムでは,約4週間のホームステイを行うため,高額な費用の支出を伴
う。このため,参加を希望しても経済的な理由で断念せざるをえない者もいる。
【問題点に対する改善方針】
IBPへの参加費用については,その一部を本学部として経済的な支援を行う。
(2) 教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
学部理念や学科の目的に合うように教育課程委員会,学科部門会議,一般教育関係教員会議,学部執
第3章 経営学部 -13-
/347
行部でカリキュラムを見直すとともにより効果的な教育を行うよう改善を常に検討する。また,そのた
めにエビデンスとなる適切な教育効果指標の作成を行うことを目的とする。
・教育上の効果を測定するための方法の適切性
【現状】
成績については 2004 年度からGPAを導入している。授業全体に関しては,「授業改善アンケート」
を用いて,学生による各科目の評価を行っている。英語教育においてはTOEIC試験を学内で定期的
に実施することにより効果測定を行っている。
学部必修科目である「経営学」については,共通教科書の使用ならびに,評価方法の統一を図ってい
る。学部必修科目である「簿記論」については,統一試験の実施,並びに団体受験(学内)の実施によ
る検定試験の受験促進を図っている。
教育改善委員会により,学生評価の高い授業の見学を行い,内容について検討している。
【長所】
英語教育においてはTOEICの成績結果に基づき習熟度別少人数クラスを設け,効果的な教育指導
をしている。経営学においては,2006 年度より,現在の担当者が中心となって編集・改訂された教科書
が使用される。これによって,担当者の講義内容のバラツキが縮減される。教育改善委員会が「授業改
善アンケート」関連の仕事からさらに発展した検討を行うようになった。
【問題点】
教員間の成績評価比率にばらつきが見られる。授業改善アンケートの回収率の低下が見られる。TO
EIC及び簿記検定の受験率が,学年進行とともに低下する傾向が見られる。
【問題点に対する改善方針】
教育改善委員会を中心に,成績評価基準について,教員間の共通理解を促進する。授業改善アンケー
トの回収率の低下は,学生の参加意識の低下が主たる要因であり,その改善のため学生に向けての広報
活動を強めていく。TOEIC及び簿記検定の受験率向上のため,実施日程の再検討や受験に向けた指
導を強化する。
・教育効果や目標達成度及びそれらの測定方法に対する教員間の合意の確立状況
【現状】
教育改善委員会において,「授業改善アンケート」の項目の見直しや各教員へのデータ表示方法等に
ついて活発な議論が行われ,その内容は教授会等において報告が行われている。
学部必修科目の「経営学」,「簿記論」,また,国語,英語,その他の外国語は複数の教員が担当して
いるが,教育方針の合意がすでに教員間で確立されていて,統一的な教科書を用い授業内容の統一も図
られている。さらに,「経営学」については,デジタル・コンテンツ化の検討も行われている。
学部必修科目である簿記論においては,3学科の担当教員全員による簿記論担当者会議を設け,日本
商工会議所主催簿記検定試験の出題範囲表を参考としたシラバスの作成,授業内容の統一化を綿密に図
っている。また,習熟度を比較可能な方法で把握できるように,定期試験の問題を統一している。
【長所】
教科書の統一化や担当者会議を設けて検討を行っている。
【問題点】
複数担当者による授業では,授業内容の統一化は図られており,成績評価の方法でも合意は形成され
ているが,成績評価の基準には不十分な面が見られる
【問題点に対する改善方針】
複数担当者による授業については,担当者間での進め方の交流を促進し,さらに統一した成績基準の
合意をめざす。学科内のカリキュラムは,2006 年度からかなりの変更を行うことが決定された。その成
果を今後点検していく。
・教育効果を測定するシステム全体の機能的有効性を検証する仕組みの導入状況
第3章 経営学部 -14-
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【現状】
教育効果を把握するため 2004 年度からGPAシステムを導入している。教育改善委員会を設定し,
教育効果を測定するシステムを検討している。授業改善アンケートについては,項目の見直しが続けら
れてきた。TOEICに関しては,受験学生の成績の変化が継続的に把握されている。
【長所】
授業改善アンケートについては,今後項目の大幅な見直しはない見通しであり,時系列的な分析が可
能な条件が整いつつある。
【問題点】
GPAシステムについては,導入の効果や影響等の評価は,今後の課題である。授業改善アンケート
については,その結果の学生への広報方法を含め,より効果的な活用を考えていく必要がある。
【問題点に対する改善方針】
授業改善アンケートについては,「項目,利用方法」に関して,教員に対するアンケートも実施され
ており,その分析を踏まえて,教育改善委員会により有効な活用を図っていく。
・卒業生の進路状況
【現状】
卒業生の進路状況(2006 年 3 月 31 日現在)は,次の通りである。
就職者は 646 名であり,その業種別内訳をみると,金融業 26.3%,製造業 20.7%,商事・卸・小売
業 12.2%,運輸・旅行・広告・観光・サービス業 16.9%,新聞・出版・放送・情報・通信業 12.8%,
建設・不動産業 5.4%,教育・公務 5.3%,農林水産業・鉱業 0.3%となっている。昨年度と同様,広い
分野に分布しているが,金融業の比率が製造業を抜いて首位になっていることが注目される。
全学的な就職支援体制としては,就職事務部による支援があるが,2004 年度から経営学部キャリア・
デザイン委員会が中心となって,学部独自の就職活動支援をスタートさせた。2005 年度も引き続き,学
部OBや就職内定を得た先輩学生による,後輩への就職活動の経験の報告会や懇談会などを実施し,き
め細かい指導と支援を行った。
【長所】
学部独自の就職支援活動を行うことにより,より細やかな指導ができる。本学部卒業生及び内定者と
就職を目指す在学生との双方向的な情報交換が実現し,在学生にとっては,確からしさと実感をともな
った情報を得る機会となっている。また,経営学部卒業生を母校に招聘し,就職活動を行う学生の支援
を行うことから,卒業生にとっても母校及び経営学部への帰属意識を持つ機会となるほか,卒業生同士
の人的ネットワークを構築する場としても機能している。
【問題点】
現在は経営学部キャリア・デザイン委員会がその都度主催するかたちとなっているが,将来は学生に
よる自発的かつ恒常的な情報交換の場へと発展させることを考えている。具体的な進展を図る必要があ
る。
【問題点に対する改善方針】
経営学部キャリア・デザイン委員会が進めている学部独自の就職支援活動は,あくまで学生自身によ
る主体的な活動を支援するという理念でスタートし,学部卒業生と在学生性との継続的な交流の場が意
義あるかたちで継続することを目的としている。現状では,キャリア・デザイン委員会の支援の比重が,
学生自身による部分よりも大きいので,これを改善するために,学生自身の主体性を継続させる組織化
の施策を継続的に実施する。
・教育効果の測定方法を開発する仕組みの導入状況
【現状】
本学部の教育改善委員会や各科目の担当者会議において,逐次,教育効果の測定方法についても具体
策を検討している。今年度は,新しい試みとして,学部教育改善委員会の検討に基づいて学部の専門科
目の担当者による授業の見学・評価を実施した。科目担当者会議での検討によって発案されたTOEI
第3章 経営学部 -15-
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Cや簿記検定試験を実施している。
【長所】
学部教育改善委員会によって授業見学を行った。模範的授業の良い面を多々共有でき,これに関する
学生の意見も聞くことができた。またその成果を学部教授会でも報告し,共有度を高めることができた。
【問題点】
今年度は,一部教員の理解と協力によって,授業参観を実現することができた。しかし,この試みを
拡充するほど,全学部教員の理解を得るまでにいたっていないのが現状である。
【問題点に対する改善方針】
学部の教育改善委員会を中心に,新しい取組みを行う努力を継続する。
・教育効果の測定方法の有効性を検証する仕組みの導入状況
【現状】
学部教育改善委員会において,授業改善アンケートの有効性を検討している。また,アンケートの内
容を詳細に検討して改善を加え,全学のFD委員会にも改善案を提言した。TOEICについては英語
担当教員による検証を行った。また,簿記検定試験については会計科目担当教員による検証を実施した。
【長所】
全学的な授業改善アンケートの前後に,学部教育改善委員会が,問題点をチェックするシステムが恒
常化しており,学部としての意思を反映させることができている。
【問題点】
科目によっては,全学の統一アンケート書式の一部になじまない箇所もあり,科目の個性を検証する
ことができる書式の作成も課題のひとつである。
【問題点に対する改善方針】
学部教育改善委員会と科目担当者会議を中心に,引き続き,有効性を検証する。
・教育効果の測定結果を基礎に,教育改善を行う仕組みの導入状況
【現状】
授業改善アンケートのデータとその分析結果を担当教員にフィードバックすることによって,教育改
善に資する仕組みを導入している。また全学のFD委員会主催のさまざまな検討の場や情報提供の場に
参加し,教育改善に取り組んできた。
【長所】
アンケートの分析結果を受け取った教員が,自発的に授業改善を行ううえで,一定の効果を果たして
いる。
【問題点】
授業改善の結果についての情報共有を行うことが課題となっている。
【問題点に対する改善方針】
授業改善アンケートについては,学部教育改善委員会が中心となって,引き続き,より効果的なフィ
ードバック方法とその活用方法を検証する。
・国際的,国内的に注目され評価されるような人材の輩出状況
【現状】
多くの卒業生が,大手企業あるいは社会的評価の高い企業を中心に自らの進路を設定し,内外のビジ
ネスの現場で実績を上げ,高い評価を得ている。
【長所】
第3章 経営学部 -16-
/350
多様かつきめ細かい教育改善の努力が,学生の進路設定にあたり,自己の能力を最大限にいかせる高
い目標を目指すうえでの支援策となっている。
【問題点】
就職後の卒業生のキャリア形成を長期的にフォローするシステムづくりが課題となっている。
【問題点に対する改善方針】
今後も,質の高い国語・外国語教育,幅広い教養教育,高度な専門教育,IBP,ジョブ・インター
ンシップなどを通じて,国際的にも国内的にも活躍できる資質と能力をそなえた人材を輩出するための
具体的施策を実施する。
(厳格な成績評価の仕組み)
【目的・目標】
現在,GPA制度の導入による厳格な成績評価に取り組んでいるが,成績評価の表記について従来の
成績評価と混乱するおそれがあるので成績評価基準の徹底とGPAの適切な活用を図るよう教育課程
委員会で見直している。教育課程委員会の取組を通して,適正で厳格な成績評価システムを確立する。
・履修科目登録の上限設定とその運用の適切性
【現状】
1年生(2005 年度以降入学者)の履修制限については,1年次 40 単位,2年次 41単位,3年次 4
1単位,4年次 40 単位と設定している。また,3年早期卒業希望者には,履修上限単位を引き上げる
特別処置を実施している。2年生から4年生(2002~2004 年度入学者)においては新規履修上限単位数
48 単位と設定している。
【長所】
適正な履修制限により,学生が無理なく学習出来る履修システムを確立している。2004 年までのカリ
キュラム(2・3・4年生には適応)で生じた問題点(4年次履修0単位での卒業の可能性:実際には
教育的指導で該当者はいない)を改善した。
【問題点】
履修制限は十分に適正に機能しているが,実習科目や特別講座などの単位の認定などを考えて,学生
にとってさらに充実したカリキュラムを提供するよう検討する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
さらに充実したカリキュラムを提供することに合わせて履修科目登録の適切な運用方法を教育課程
委員会等で考え,実行する。
・成績評価法,成績評価基準の適切性
【現状】
2004 年度入学者からは,GPA制度を導入し,評価段階を以下に示す 5 段階として,厳格な評価を行
っている。
A:90 点以上,B:80 点~89 点,C:70 点~79 点,D:60 点~69 点,F:59 点以下(不合格)
2003 年度入学者以前は,評価段階は以下に示す4段階で示され,未受験の場合は未受という評価で示
している。
優:100~80 点,良:60~79 点,可:59~50 点,不可:49 点以下
各教員の責任のもと,厳格な成績評価を行っている。成績評価方法については,科目ごとにシラバス
に明示している。
基本的には期末試験,授業態度,小テスト,レポート,出席状態などを総合的に判断し,各教員の責
任のもと,厳格に行っている。試験を行わない科目についてもゼミなどの一部科目を除き,レポート,
授業態度,出席状態から総合的に判断した評価を行っている。
【長所】
2003 年まで不可が 49 点以下と,他大学などと比較してみても若干,甘い評価であった。厳格な成績
第3章 経営学部 -17-
/351
評価基準の設定を目指し,2004 年度入学者からGPA制度の導入を実施した。
【問題点】
現時点では,旧評価とGPAによる評価が混在しており,実際の成績評価の時に混乱するおそれがあ
る。しかし,年が進むにつれてこの問題は解消される。現在の5段階表記による成績評価は従来の4段
階評価時の「A」に相当する評価を「A」と「B」に変更することになった(「B」が「C」
,「C」が
「D」)。このため,評価に対して感覚的に違和感が生じている。
【問題点に対する改善方針】
GPA制度の評価基準について,教員間の共通認識を確保して厳正に運用する。成績評価に関して
2006 年度後期からは「S」,「A」,「B」,「C」,「F」に変更し,旧評価との整合性を確保する。
・厳格な成績評価を行う仕組みの導入状況
【現状】
2004 年度から評価段階を5段階としたGPA制度による評価を導入している。内容については上記項
目に示した。全学的な統一項目による授業改善アンケートを用いて,授業評価を行っている。授業評価
の結果は担当教員にフィードバックされるとともに教育改善委員会において検討を行っている。
学生が成績評価に疑問を持った場合には,成績表配布後に事務室に問い合わせができる期間を設定し
ている。問い合わせが合った場合には担当教員が確認し,誤りがある場合には成績評価の訂正を行う。
成績評価はガイダンス期間に本人に直接手渡している。
【長所】
GPA制度による評価をもちいて,学生の成績管理を行うことができる。
全学的な授業改善アンケートを行っている。アンケート内容は基本的に統一項目であるが,授業の特
殊性に応じて質問項目を加えることができるようになっている。
【問題点】
旧来の成績評価の仕方とGPA導入による評価が混乱しやすいが,これは 2006 年度後期からの新し
い評価表示により解消される見込みである。
【問題点に対する改善方針】
GPA制度の意義・性質を各教員が理解した上で評価を行うよう,周知し,GPA制度の厳正な運用
を行う。
・各年次及び卒業時の学生の質を検証・確保するための方途の適切性
【現状】
経営学,会計学,公共経営学を学ぶにあたって基礎となる学部必修科目の単位修得単位数を基準(12
単位中6単位未満は原級)として,2年次終了時の進級制限を行っている。卒業要件単位を数 126 単位
と定めている。
試験やレポートを含む成績評価は基本的には各教員の責任のもとで行われているが,学部設立以来厳
格に行っている。演習は必修ではないが,演習を履修することを奨励し,ほとんどの学生が履修してい
る。演習を履修した場合は学内発表大会,スポーツ大会,懸賞論文作成,卒論作成,合宿などを通じて
多様な学修を体験することができる。
【長所】
学部理念・目的に見合うようカリキュラムを編成し,卒業要件単位数 126 単位を設定している
【問題点】
学習支援を行い,学生の学習のサポートをしているが,毎年若干の留年生が出ている。これら留年生
をなくすことが継続している問題点である。
【問題点に対する改善方針】
学習支援システムを充実させる。
第3章 経営学部 -18-
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・学生の学習意欲を刺激する仕組みの導入状況
【現状と長所】
演習の学内発表大会や懸賞論文,インターンシップ,工場見学,IBP,調査実習等,本学部独自の
学内・学外活動を通じ,学生の自発的なインセンティブを高める機会を提供している。
成績優秀者に対し,学部長奨励賞を設定し,新入生ガイダンス時に表彰している。全学的にも成績優
秀者に対して,奨学金を設定している。
【問題点】
学習意欲を刺激する上記の取組みは成果をあげているが,さらに多くの学生に参加してもらうよう努
力する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
新たな仕組みを加えることを含め,取組をさらに活性化する。
(履修指導)
【目的・目標】
学生が大学での所期の目的を達成するために,1年次より徹底した履修ガイダンスと履修相談を実施
し,また通年の学習支援と学習相談により学習のパフォーマンスが向上するように指導する。
・学生に対する履修指導の適切性
【現状】
年度初めに新入生に対して5日間にわたる履修関係のガイダンスを実施している。2・3・4年次生
に対しても学年別・学科別にガイダンスを実施している。主に1・2年次生の授業科目の履修全般に関
する相談を受け付けるアカデミック・アドバイザーを設定している。
成績の低いスポーツ推薦学生に対しては,年2回学習指導を行っている。また,年度初めに当該運動
部監督と面接し,成績状況や活動状況などの情報を共有し,協力を要請している。成績の低いAO推薦
入学者に対しても面接をはじめとする学習指導を行っている。
【長所】
ガイダンスには履修方法や科目の具体的な説明の他,特別講師による講演,生活指導,インターネッ
トの倫理教育なども含まれ,学習への興味を刺激するとともに安全な学生生活が行われるように配慮し
ている。さらに,公共経営学科では,履修指導時にアンケート調査を行い,興味の対象や希望進路を尋
ねるとともに2年生以降では前年度の学習態度を回答させ,指導やカリキュラムに反映させている。
【問題点】
履修指導を徹底しているが,一部学生に履修に関する知識が伝えられずに卒業のための履修が不十分
となることがある。
【問題点に対する改善方針】
履修上の注意の周知徹底のため,年度初めの履修ガイダンス,学習支援,学習相談を強化し,さらに
学部ホームページの一層の活用・充実を図り,履修の適切さを確保する。
・オフィスアワーの制度化の状況
【現状】
学年初めにオフィスアワーを制度化して実施している。
【長所】
学生が個別に細かな履修指導を受けることにより,適正な履修が推進される。
【問題点】
多くの学生がオフィスアワーを利用しているが,一部学生には利用されていない。
第3章 経営学部 -19-
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【問題点に対する改善方針】
広報活動などを通じ,この制度の存在をいっそう学生に周知させる。
・留年者に対する教育上の配慮措置の適切性
【現状と長所】
留年者に対しては面接を含め個別にきめ細かい指導を行い,5年目以降については独自のクラスを編
成している。スポーツ推薦者の留年者については本人,当該部監督と面接し学習指導を行っている。
【問題点】
留年者をいかに動機づけし,学習意欲を高めるかが課題である。
【問題点に対する改善方針】
留年者の状況は単純ではないので,学習相談や学習支援で一層きめ細かい指導を行っていく。
・学習支援(アカデミック・ガイダンス)を恒常的に行うアドバイザー制度の導入状況
【現状】
学年初めに履修ガイダンスを制度化して実施している。主に和泉校舎における新入生の履修科目の登
録に当たり,アカデミック・アドバイザー(助手・TA)による相談態勢をとっている。学部学習支援室
を設置し,年間を通して相談を受け付けている。
【長所】
年間を通して学習支援をしており,その対象も一年生は全員である。2年生以上は,適時学習支援室
でアドバイスを実施している。
【問題点】
年間を通して物理的にも心理的にも使いやすい環境を整えることが必要である。
【問題点に対する改善方針】
TA制度の拡充や助手のさらなる採用などを図り,よりきめ細かい指導を行う。
・科目等履修生,聴講生等に対する教育指導上の配慮の適切性
【現状と長所】
科目等履修生,聴講生に対して入学許可時に面接を行い,教育指導を行っている。
【問題点】
科目等履修生,聴講生に限定したフォローアップは必ずしも行われていない。
【問題点に対する改善方針】
さらに充実した教育指導を行い,履修中や履修後のフォローアップを行う。
(教育改善への組織的な取組)
【目的・目標】
教育改善への組織的な取組みの目標は,教員が自ら積極的に教育方法の改善を図ることが可能となる
よう,FD委員会を組織し,授業改善に繋がるツールや機会の提供である。具体的には,教員のフィー
ドバックに基づく授業改善アンケートの項目見直しや,教育に置いて定評のある教員によるモデル授業
の実施とこれに参加した教員による授業法改善のレポート作成とその配布等を充実させる。また学部と
して教育改善に繋がる制度や新しい授業形態を取り入れるよう検討することである。
・学生の学修の活性化と教員の教育指導方法の改善を促進するための措置とその有効性
【現状】
授業改善アンケートを実施している。実施状況は良好である。教育改善委員会を設置しており,アン
ケート項目の見直しや結果の検討を行っている。また,評価の高い授業の見学を行い,内容について検
討した。
第3章 経営学部 -20-
/354
【長所】
モデル授業の参観とレポート作成を実施したことで,授業改善の具体的な方策やアイデアを共有する
ことをスタートさせることができ,教育改善の取組みをより実際的な段階に引き上げることができた。
【問題点】
開講されている授業が様々であるためそれぞれの教員に適した改善策を見いだすことが難しく,方法
の共有にも一定の限界があることなどが指摘されている。
【問題点に対する改善方針】
教員が個別にかかえる具体的な教育法の課題について教育改善委員会などでより具体的な改善方法
を探る。
・シラバスの作成と活用状況
【現状】
全科目について統一フォーマットを用いたシラバスを作成し,冊子として各学年の4月ガイダンスで
配布している。また,学期の開始時にシラバスを用いて概要を説明し,それに沿った授業を展開してい
る。複数教員担当の必修科目については,共通のシラバスを用意し,担当教員間で授業進捗会議を開き
調整を図っている。
【長所】
シラバスは,Oh-o! Meiji システムからも,閲覧可能なように各教員が掲載し,冊子では補いきれ
なかった情報や,新たな情報について,同システム上からより詳しく知ることができるよう工夫がなさ
れている。
【問題点】
シラバスの充実度に,教員間で多少開きがある。とくに,Oh-o! Meiji システム上での記載内容に
ついては,再調整する必要がある。
【問題点に対する改善方針】
Oh-o! Meiji システムの積極利用がみられないと思われる教員に対しては,年度開始時に開催され
るOh-o! Meiji システムの利用方法説明会へ参加させる,もしくは,学部独自の説明会を開催し,利
用方法などを習得させる。
・学生による授業評価の活用状況
【現状】
学部教育改善委員会において,全学共通フォーマットによるアンケートの検討を行い,学部独自の質
問項目を加えるなどの改善をした。アンケートは全担当教員が最低1科目でアンケートを実施した。ア
ンケート結果は担当教員に返され,教育方法の改善に利用されている。
【長所】
学部並びに各科目独自の質問項目を加えることにより,より多様な学生ニーズと教育環境の把握が可
能になった。
【問題点】
フィードバックされた情報が実際にどのように授業改善に使用されたのかが把握できていない。
【問題点に対する改善方針】
FD委員会主催による授業改善報告会を開催し,授業改善が実際,どのようになされたのかについて
情報の共有化を図る。
・FD活動に対する組織的取組み状況の適切性
【現状】
第3章 経営学部 -21-
/355
教育改善委員会を学部内に設置し,授業改善アンケートの内容や教育指導方法の改善を検討し,全学
のFD活動の取組にも協力している。全学のFD関係の講演会には学部の教育改善委員会の教員・職員
をはじめとして,多くの教職員が参加している。
【長所】
アンケート項目の見直しなどの全学FD委員会への具体的提言,モデル授業の参観結果の全教員への
配布など,教育改善の試みが抽象的ではない具体的レベルでなされている。
【問題点】
FD活動の重要性についての認識に教員間で差が見られる場合がある。
【問題点に対する改善方針】
教育改善委員会の活動をさらに具体化させ,各教員がかかえる問題意識により有効に訴えかける。
・FDの継続的実施を図る方途の適切性
【現状】
学部内には教育改善委員会を,全学的には教員研修(FD)委員会を設置している。
【長所】
本学におけるFDについて,継続的かつ体系的に現状分析及び改善策の検討を行っていく仕組みとな
っている。
【問題点】
学部間の情報の共有が充分でない場合がある。
【問題点に対する改善方針】
学内におけるFDへの取組について,学部ごとに具体的事例を公開するなどして情報の共有化を図る。
・学生満足度調査の導入状況
【現状】
全学共通フォーマットでの授業改善アンケートを実施した。公共経営学科は2年生以降の各学年に対
し,前年の学業,生活,及び進路希望についてアンケート調査を行い,その結果から学生の満足度を検
討している。
【長所】
各授業科目の改善に役立っている。また,学科カリキュラムに反映させている。
【問題点】
全学共通フォーマットでは各授業科目独自のアンケート項目の作成が難しい。また,授業改善アンケ
ートの制度的位置づけが不明確である。
【問題点に対する改善方針】
アンケートのフォーマットと各授業科目の対称性,アンケート回答の使用範囲と方法についてさらな
る検討を教育改善委員会等で行う。
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
導入していないため,導入の是非,方法など全般について今後の検討課題とする。
・雇用主による卒業生の実績を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
現在,制度として導入はしていないものの,昨年度に引き続いて,主に就職事務部が中心となり,企
業からの求人申込の際の面談や企業回礼において,各社人事担当者から本学卒業生の評判や実績につい
第3章 経営学部 -22-
/356
てヒアリング調査を行っている。
【長所】
就職事務部が企業の人事担当者に直接状況を聞いていることから,各社人事担当者に本学卒業生の状
況を把握させる動機づけができる。また,所謂「社会から見た明大のブランド・イメージ」といえる卒
業生の実績を基に,受験生やその父母にもこれを伝えることができる。
【問題点】
ヒアリング調査の性質上,ごく一部の企業にアプローチすることしかできない。また,出身学部ごと
に卒業生の状況を把握させることは,雇用主に負担を強いることになると考えられることから,学部単
位で個別々に雇用主による卒業生の実績を評価させる仕組みを導入することには限界がある。
【問題点に対する改善方針】
雇用主による卒業生の実績を評価させる仕組みを導入するためには,全学的な観点から制度化を図り,
雇用主に協力を要請していく必要があるが,本学部として当面は,就職事務部に対してヒアリング調査
から得られた本学部卒業生に関する情報をフィードバックするよう要請する。また,それと同時に本学
部卒業生の状況を,広く雇用主に問い合わせるように働きかける。
・教育評価の成果を教育改善に直結させるシステムの確立状況とその運用の適切性
【現状】
学部内に教育改善委員会を設置しており,学生に対する授業改善アンケート調査やモデル授業の参観
などに関する実施結果を検討している。さらに,その情報を基に教育改善委員会及び教育課程委員会が
教育指導方法の改善を継続的に検討していくというシステムが確立しつつある。
【長所】
システムの改善を通じて,教員に自らの授業を学生に評価させ,また,授業改善の具体的な方策やア
イデアに関する情報を共有することの意義を,一段と理解させることに役立っている。
【問題点】
授業改善アンケートによって得られる情報は,担当教員のみに提供される。このため,その情報に基
づいて各教員がどのように教育改善を図っているのかを把握することができない。また,ごく少数のモ
デル授業の参観から得られる情報は,開講されている多種多様な科目が持つ性質を反映したものとはな
りえない。このため,必ずしもすべての授業について具体的な改善方策を提供するものではない。概し
て,現在のシステムはいまだ委員会報告の域を出るものではなく,教育評価の成果を各教員のより具体
的な教育改善活動に直接結びつけていこうとする組織的な取組が不十分である。
【問題点に対する改善方針】
教育評価の成果に基づいて各教員が行った教育改善の状況を報告しあい,教員間でより多くのケース
に関する情報を共有しながら,教育改善に関するより具体的な方策やアイデアのシーズが蓄積され活用
されていくようなシステムを,教育改善委員会及び教育課程委員会を中心として構築する。
(授業形態と授業方法の関係)
【目的・目標】
これまで個々の教員の努力と創意工夫に委ねられてきた授業形態ならびに授業方法の改善・向上を,
それらを前提としつつ,組織的取組に変換していかなければならない。授業形態ならびに授業方法の改
善・向上を通じて,教育効果を高め,有為な人材を多数社会に輩出することが目的である。
・授業形態と授業方法の適切性,妥当性とその教育指導上の有効性
【現状】
基本的に講義・演習・調査実習・インターンシップなどを通じて授業を行っている。これらは設備や
人材など現在の教育資源に照らし概ね妥当かつ有効であると考えている。大学教育の基本である演習は
少人数制で,2年次後期から2年半の教育を行っている。また教員によっては1・2年次を対象に教養
演習を行っている。外国語教育においては習熟度別の少人数クラス制度を実施し,国際的な場で必要な
第3章 経営学部 -23-
/357
コミュニケーション能力開発の上で成果をあげている。
【長所】
リバティタワーやアカデミーコモン,メディア棟など校舎が新しくなり,黒板・ホワイトボード,マ
ルチメディアなどの教育資材が充実した。それに伴い授業形態に多様性をもたせることができるように
なり,教育の幅が広がり深さが増した。教員もそれに伴い教育改善に努めており,講義資料のビジュア
ル化や学生によるプレゼンテーション,討議形式の授業なども可能になっている。また近年導入された
調査実習(国内外)やインターンシップなど,教室外での授業はこれまでにない教育的刺激を学生に与
えている。外国語教育においては習熟度別の少人数クラスにとどまらず,マルチメディアを使用した効
果的な授業なども行って教育効果を上げている。英語教育では,それらに加えて,インターネットを活
用したTOEIC対策の自学自習,IBP による実践的教育なども実施し,学生に多様な教育機会を提供
している。
講義方法については,従来教員の専権事項と考えられてきたが,2005 年度より教員同士による講義参
観を実施し,講義の質を高める一助にしている(教育効果の測定の部分でも記した)。参観した教員及
び聴講した学生の評判も上々で,今後も継続して行っていく。「絶対不可侵」とされてきた講義形態並
びに講義方法について教員同士が相互チェックしながら向上を図ることは,大きな教育効果をもたらす
ことが期待される。
【問題点】
上記のように授業補助機材が充実し,教室内外,ならびに国内外の教育機会も多様性を増してはいる
が,実際の授業形態並びに授業方法の適切性・妥当性を向上させる責任は個々の教員に任されている。
授業に関して,教員は誰のチェックも受けることなく「性善説」に基づき全権を委任されているのが現
状である。教育改善委員会,カリキュラム委員会などでは公式に,その他では非公式に授業改善の議論
が重ねられてはいるが,組織的に授業形態ならびに授業方法を向上させているとはいいがたい。授業に
対する学生アンケートなども,個々の教員は早くから導入していたものの,学部全体・大学全体として
組織的に取り組んだのは近年になってからである。
【問題点に対する改善方針】
講義の相互チェックは授業の画一化をもたらすものであってはならず,個々の教員の個性と創意工夫
を前提に,「組織的に」教育効果を高めるものにする。授業のうち演習などについても教員同士,なら
びに教員と学生の対話を通じて改善を行う。また調査実習やインターンシップはさらに参加者(教員お
よび学生)を増やす努力を続ける。
・マルチメディアを活用した教育の導入状況とその運用の適切性
【現状】
1・2年生の授業を行う和泉メディア棟や,3・4年生の授業を行うリバティタワーやアカデミーコモ
ンには,マルチメディア設備(プロジェクター,パソコン,VTR,OHP/OHC)が整っている。
また,新校舎の教室には情報コンセントなどが常設されている。
パワーポイント,ビデオ映像などのマルチメディアを有効に使用した授業が数多く行われている。
英語教育では e ラーニング(ALC Net Academy)を活用している。経営学研究所にもP
C24 台を設置し,マルチメディア教育に対応している。また,学部独自に情報リテラシー科目を設置し
ている。
Oh-o! Meiji システムを利用した,シラバスの提示,レポートの提出が行われている。ゼミ教育(レ
ポート,卒論作成)や授業において電子図書館が利用されている。
【長所】
和泉メディア棟,リバティタワーおよびアカデミーコモンのマルチメディア設備は全国的にみても有
数のものであり,社会科学系教育を実施する上で極めて有用な施設である。さらに図書館のインターネ
ット活用(VPN,OPAC,外部データベースなど)やOh-o! Meiji システムなど,マルチメディ
ア環境は大変優れている。
【問題点】
マルチメディア設備が充実すればするほど,それを利用する側の習熟度も高度化しなければならない。
第3章 経営学部 -24-
/358
しかしながら,現状は一部に利用する側(教員と学生双方)の習熟度がなかなか高まらず,優れた設備
を完全に有効活用しているとは言い難い。とりわけ主として情報を提供し指導する立場にある教員のコ
ンピュータ・リタラシーにばらつきがあり,統一した有効利用には至っていない。たとえば,すべての
中大教室にはプロジェクター及びパソコンが常置されているが,パワーポント等のマルチメディア対応
ソフトを利用し講義を行っている教員はまだ半数程度である。また,教員・学生はVPNを使って自宅
に居ながら安全に大学サーバーにアクセスでき図書館の有効利用もできるのだが,教員・学生全員が大
いに活用しているとは言い難い。さらに,シラバスのアップだけでなく学生レポートの授受もできるよ
うになっているOh-o! Meiji システムを活用するより,印刷したレポートを提出させた方が簡便であ
るというのが実情である。
【問題点に対する改善方針】
助手・RA・TAなどの若い院生に支援してもらい,教員はこれらマルチメディアを有効に活用する。
幸いにも助手・RA・TAはこれらの操作を簡単に行うことができるスキルを有しているので,彼らの
支援は大きな改善をもたらす。さらに教員全体のコンピュータ・リテラシーを向上させるための組織的
対応が必要である。経営学部では教授会の連絡などをできるだけメールを使って発信しているが,この
ようなコンピュータ経由の情報共有を組織的に推進し,すべての教員がコンピュータに習熟するよう仕
向ける。また,全学的にもOh-o! Meiji システム利用者講習会などが開催されているので,それらに
積極的に参加することを促したり,そのフォローとして助手・RA・TAなどによる研究室でのオンサ
イト・ガイダンスなどを実施する。
・「遠隔授業」による授業科目を単位認定している大学・学部等における,そうした制度措置の運用の
適切性
【現状】
現在そうした制度措置は行っていない。しかし将来の導入を視野に入れてコンテンツ作りは始めてい
る。
【長所】
遠隔授業は,さまざまな理由で教室に来ることができない学生にリアルタイムで授業履修を可能にさ
せる特性がある。ケガや病気で在宅療養せざるを得ない学生,仕事の都合で大学に足を運ぶことができ
ない社会人学生,調査実習やゼミ旅行などで遠隔地に行かなければならない学生,留学等で海外に出て
いるけども授業を履修したい学生,などに授業履修機会を提供する。また,国内外の他大学ならびに諸
機関と提携し,交通費の負担なく授業を相互に交換できる長所がある。これまで「国際交流」といえば
人の移動が不可欠であったが,そしてそれは今でも重要な要素ではあるが,遠隔授業によって人の移動
を伴うことなく国際交流が可能になる。
【問題点】
教育の根幹は「人と人のコミュニケーション」にある。Face to Face の授業こそ本来あるべき姿であ
る。教員は学生の反応を見ながら理解度を測定し,臨機応変に説明を加えたり省略したりする。あるい
は学生に発言を求めることにより,授業参加意識を高め,研究のモチベーションを上げようとする。授
業によってはグループ討議などの学生主体の授業形態をとることもあり,それらは遠隔授業になじまな
い。また,コンテンツの作成には多大な時間と費用がかかり,教員の負担は大きい。コンテンツが他者
の著作権に触れないよう細心の注意を払わなければならないが,それを教員個人レベルで解決するのは
ほとんど困難である。教育効果の測定にも工夫が必要だろう。遠隔授業でもフォローアップとしてメー
ル等による教員と学生のコミュニケーション,及びメーリングリストによる学生同士のコミュニケーシ
ョンが可能ではあるが,教育効果は試験やレポートの点数だけでは計れないものがある。
【問題点に対する改善方針】
2006 年3月 11 日に開催された連合教授会で,ユビキタスカレッジの設立が教学レベルで全学的に承
認された。ただ学部毎の関わりについては未定であるので,今後,コンテンツと著作権問題などを含め
た精緻な検討を行う。また,遠隔授業を主催する専門的組織並びに事務的対応などが不可欠である。コ
ンテンツ作りは今後も継続していく。
(3年卒業の特例)
第3章 経営学部 -25-
/359
【目的・目標】
本学部では,学校教育法等の一部改正を受けて,2002 年度新入生から,学部の定める早期卒業の認定
基準を設け,3年早期卒業制度を導入し優秀な学生の育成に努力している。今後,この早期卒業制度を
充実させ,高まる高等教育の充実に寄与する。
・4年未満で卒業を認めている大学・学部等における,そうした制度措置の運用の適切性
【現状】
本学部では学校教育法等の一部改正を受けて,2002 年度新入学者から 3 年早期卒業制度を学部内の規
定(「早期卒業に関する内規」)で定めて適用している。2004 年度には4名,2005 年度には3名,合計
で7名の早期卒業生が出ている。本学部の早期卒業制度は以下のように定められている。
3年間で卒業要件単位を優秀な成績で修得し,かつ,本人が希望する場合には,3か年の在籍で卒業
を認め,学士(経営学)の学位を授与する。ただし,早期卒業を希望する者(2004 年度)は,3年次始め
の所定期間内に,所定の書式を届け出なければならない。また,その際の申請資格として,次の要件を
満たしている必要がある。
(1)2年次修了時に卒業要件単位の 84 単位以上を修得していること。
(2)2年次修了時の修得済み卒業要件の 80%以上が「優」であること。
さらに,卒業要件として,次の要件を満たしている必要がある。
(1)3年次の所定の時期に早期卒業の申請を行い,許可を受けていること。
(2)3年次修了時に,卒業要件を満たしていること。
(3)3年次修了時の修得済卒業要件の 80%以上が「優」であること。
【長所】
修業年限を短縮することにより,能力の高い学生の大学院への進学を早め,また公認会計士などの資
格試験を受けやすくしている。
【問題点】
すでに延べで 7 名の早期卒業生を送り出している。早期卒業制度については学則に定められているが,
その卒業要件等の細則については,学部内で規定されるにとどまっている。
【問題点に対する改善方針】
今後の展開のためには,修業年限の特例措置である早期卒業を大学全体の制度として確立する必要が
ある。
(3) 国内外における教育研究交流
【目的・目標】
学生の国際的な視野を広げるため専門を同じくする海外の学生との交流を図る。そのため,学部独自
の短期留学プログラムであるIBPを活性化する。学生の外国語によるコミュニケーション能力を高め,
国際ビジネスの場に必要な能力を養成する。教員の研究を支援し,また国際的な視野を広げるために在
外研究者を派遣する。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の適切性
【現状】
大学の在学研究制度により,経営学部では 2005 年度に専任教員4名の長期在外研究者を派遣した。
学部独自の短期留学プログラムとしてIBPを実施し,経営学部学生及び院生の国際的視野の拡大を
推進している。具体的には外国人学生を招き国内で交流するプログラムと,経営学部学生の英語圏への
派遣プログラムをこれまで実施してきた。現在はカナダの語学学校とアメリカの州立大学に学生を派遣
している。2005 年度は約 60 名の学生をアメリカ・カナダへ派遣した。
体育会所属の学生延べ 13 名が海外遠征・合宿を行った。
【長所】
学部独自の短期留学プログラムであるIBPを実施している。
【問題点】
第3章 経営学部 -26-
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IBPの海外学生招聘プログラムは予算や人員などの問題があるため 2005 年度は実施されなかった。
IBPに参加するために費用がかかる。
【問題点に対する改善方針】
IBPの外国人学生を招き本学の学生と交流を図る部分のプログラムは予算及び人員の都合上 2005
年度は実施できなかった。今後はプログラムの内容を検討し,予算等の制約の中で有意義かつ実現可能
なプログラムを作成し実施する。IBPの海外に学生を送り出すプログラムについては,より円滑かつ
事故や不測の事態に対応できるようIBP委員会等で運営方法の改良を図る。
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
【現状】
専任教員4名が国際学会で発表,または出席した。専任教員4名が海外において研究・調査を行った。
専任教員4名が演習の合宿を海外で行った。授業科目である「調査実習」の一部を中国で行った。
学部独自の短期留学プログラムとしてIBPを実施している。また,このプログラムにおける危機管
理マニュアルを作成している。
1・2年の英語必修課目を,コミュニケーション能力開発に焦点を当てたカリキュラムに基づいて実
施している。
専門課程の学生の選択必修科目として「ビジネス・プレゼンテーション」と「ビジネス英語」を設置
している。また,国際交流センターが運営する地域研究プロジェクト(フランス研究,カナダ研究など)
に対して協力している。
【長所】
専任教員の海外出張は申請により,基本的には申請どおり認められている。海外における複数プログ
ラムがある。
【問題点】
IBPに参加するために費用がかかる。
【問題点に対する改善方針】
さらなるプログラムの充実をIBP委員会等で図る。また,IBPへの参加を促すため,補助を行う。
・外国人教員の受け入れ体制の整備状況
【現状】
専任教員に2名の外国人教員がいる。2006 年度公共経営学科にアメリカ合衆国から招聘教授を迎える
ことを決定した。
【問題点】
外国人教員の受け入れ数が少ない。
【問題点に対する改善方針】
外国人教員の受け入れを活性化する。
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
【現状】
外国語版ホームページの内容に誤りがあったので訂正した。
専任教員4名が国際学会で発表し,又はこれに出席した。
本学部の紀要である『明治大学経営論集』の一冊(53 巻4号)を英語論文のみで作成した(MEIJI
BUSINESS REVIEW, Volume53Number4, March 2006, Special Issue of International Symposium)。
この活動については経営論集編集委員会で適切に運用されている。
第3章 経営学部 -27-
/361
8.情報コミュニケーション学部
(1) 教育課程等
(学部・学科等の教育課程)
【目的・目標】
総合的な視野から物事を見ることのできる能力,自主的,総合的,批判的に物事を思考し,的確に判
断できる能力等を育成するとともに,豊かな人間性を涵養し高い倫理観をもった人材を育成するような
高度教養教育を実施する。
・学部・学科等の教育課程と理念・目的並びに学校教育法第 52 条,大学設置基準第 19 条との関連
・学部・学科等の理念・目的や教育目標との対応関係における,学士課程としてのカリキュラムの体系
性
・教育課程における基礎教育,倫理性を培う教育の位置づけ
・「専攻に係る専門の学芸」を教授するための専門教育的授業科目と学部・学科等の理念・目的,学問
の体系性並びに学校教育法第 52 条との適合性
・一般教養的授業科目の編成における「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い,豊かな人間性を涵
養」するための配慮の適切性
・外国語科目の編成における学部・学科等の理念・目的の実現への配慮と「国際化等の進展に適切に対
応するため,外国語能力の育成」のための措置の適切性
・教育課程の開設授業科目,卒業所要総単位に占める専門教育的授業科目・一般教養的授業科目・外国
語科目等の量的配分とその適切性,妥当性
・基礎教育と教養教育の実施・運営のための責任体制の確立とその実践状況
・グローバル化時代に対応させた教育,倫理性を培う教育,コミュニケーション能力等のスキルを涵養
するための教育を実践している場合における,そうした教育の教養教育上の位置づけ
・起業家的能力を涵養するための教育を実践している場合における,そうした教育の教育課程上の位置
づけ
・学生の心身の健康の保持・増進のための教育的配慮の状況
【現状】
本学部は,高度情報化社会に発生する社会問題に的確に対応できる職業人・社会人を育成するために,
情報コミュニケーションのプロセスを基礎においた問題解決の実践的能力を培う教育課程を有してい
る。それを通して学校教育法,大学設置基準の要請に応えている。
前述の理念・目的を実現するために,社会・人間クラスター,情報メディアクラスター,言語クラス
ターの科目群からなる体系的なカリキュラムを設置している。情報コミュニケーション学科の1学科制
ではあるが,マクロな社会システムを探究の中心に据えた情報社会コースと,ミクロな人間関係を探究
の中心に据えた人間コミュニケーションコースを設け,2年次からコース選択を行い段階的な履修を促
している。
高度教養教育を推進する本学部においては,特に1・2年次の基礎教育が重視される。そのため,必
修科目の大半を1年次に配置して,学生の知識の基礎固めを図っている。なかでも「情報倫理」は,情
報の流通速度が高められたコミュニティで発生する倫理的問題を扱い,情報コミュニケーションを考察
するうえでの,基本的な考え方を教育している。また,学部間共通科目の運営に多くの教員が係わって
おり,それらの科目を積極的に履修するように学生に指導している。
学部の性質上,個々の学生の専門科目履修は,法学・経済学・社会学・政治学などの広範な社会系諸
科学の学際領域にそれぞれ収斂していく必要がある。学部では,それに対応するための豊富な選択科目
を準備しているが,学生が無計画に履修すれば力が分散して体系的な履修にならない可能性がある。そ
れを防ぐために,進路タイプ別履修モデルを提示し,学生の希望に応じた履修科目のガイドラインを示
している。
以上のように,本学部は高度教養教育を目指しているため,一般教養科目群と専門科目群の明示的な
区別はなく,言いかえれば,一般教養科目が専門科目の基礎となるような形で体系的に配置されている。
また,外国語科目は言語クラスターで,情報教育科目は情報メディアクラスターで,それぞれ体系化さ
れており,外国語や情報科目に軸足を置いた学際的な研究を究める道筋も選択できるように配慮してあ
る。さらに学生の心身の健康の保持・増進を目指した,理論と実践を合わせて教育するウェルネス科目
第3章 情報コミュニケーション学部 -1-
/362
群を配置している。
【長所】
情報コミュニケーションをキーワードに社会科学を中心にした学際領域を広くカバーする高度教養
教育の実現を目指した教育課程となっている。
【問題点】
2004 年度設置の新学部として自由度の大きいコース制を取り入れて現行の教育課程を構成したが,入
学してきた学生がコース制の意義を十分に理解してその特長を生かした履修をしておらず,むしろ安易
な履修の仕方に流れるなどの傾向も見られる。
【問題点に対する改善方針】
本学部は 2004 年度に開設したため,理念の実現評価・改善は,少なくとも第1期の卒業生が出る 2008
年以降になる。しかし,2005 年度より,適正規模・カリキュラム検討委員会を発足させ,問題点の先行
的な洗い直しを開始している。
具体的にはカリキュラム改定に向けて,学生アンケートをとるなど,コースの細分化などの具体的な
対応策の検討をする。同一キャンパスでの一貫教育の実現を含めて,改善の検討をする。
(カリキュラムにおける高・大の接続)
【目的・目標】
多様な入学生を受入れており,学士課程教育が円滑に開始できるよう導入教育を行う。
・学生が後期中等教育から高等教育へ円滑に移行するために必要な導入教育の実施状況
【現状】
付属明治高校を対象にプレカレッジプログラムを開始している。一般高校についても依頼に応じて講
師派遣をして,高校の教育との連続性の確保を図っている。「情報リテラシー」の履修に関しては,入
学手続時に学生にアンケートをとって高校からの履修が連続的になるようにクラス編成を工夫してい
る。英語については,入学形態に応じたTAによる補習・相談を実施している。
【長所】
きめ細かい対応が可能である。
【問題点】
外国人留学生やスポーツAOなどの入試形態が多様化しつつあるなかで,英語などの習熟度別クラス
編成などの対処が必要となっている。大学院が未設置のためTAとなる優秀な大学院生の確保が難しい。
【問題点に対する改善方針】
英語においては,2007 年度から習熟度別のクラス編成の導入を実施すべく準備をすすめる。他の授業
についてもTAの対応の強化を検討する。
(カリキュラムと国家試験)
【目的・目標】
国家試験や,各種民間試験に対応した履修上の配慮をしていく。
・国家試験につながりのあるカリキュラムを持つ学部・学科における,受験率・合格者数・合格率
【現状】
公務員試験や教職課程認定に対応したカリキュラムとなっている。また,国家試験ではないが,社会
調査士資格認定機構から7科目の科目認定を受けたので,2007 年度から若干名の社会調査士を輩出でき
る見込みである。情報関連資格取得支援のため「ネットワーク技術Ⅰ-Ⅳ」や「データベース実習Ⅰ-
Ⅱ」を開講している。情報技術者試験では,オラクルデータベース技術試験で合格者が出ている。その
他,TOEICの学内試験実施をしている。
【長所】
第3章 情報コミュニケーション学部 -2-
/363
広い領域の資格に向けた対応ができている。
【問題点】
卒業生がいないため,まだ見えてきていない。
【問題点に対する改善方針】
卒業生の状況を見て改善の検討に着手する。
(インターンシップ,ボランティア)
【目的・目標】
在学中から社会参画に対する学生の意識を高めるために,インターンシップに力を入れていく。
・インターンシップを導入している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
・ボランティア活動を単位認定している学部・学科等における,そうしたシステムの実施の適切性
【現状】
本学部では,2006 年度から学生をインターンシップに派遣する予定である。2004 年度は「キャリア
デザイン」という科目を通して,インターンシップへの動機を高める方策をとっている。2005 年度は「イ
ンターンシップ入門」を開講して,インターンシップへの準備を進めた。インターン先の確保が課題で
ある。
【長所】
卒業生には広い分野に向けた就職先がひらけているので,在学中に就業経験をして,職務内容を知る
ことは重要である。学生からの期待も高く,学生の約半数がオリエンテーションに出席している。
【問題点】
インターンシップ先の確保のなど,実施に向けた問題が懸念される。2006 年度の1期生の活動から問
題点が洗い出される見込みである。
【問題点に対する改善方針】
インターンシップについては,2006 年度の実績をみてインターンシップ委員会で改善を検討する。ボ
ランティアについては,今後検討に着手する。
(履修科目の区分)
【目的・目標】
情報コミュニケーションという学際分野の特徴を明確化した履修科目の体系的な区分,必修・選択の
適切な量的配分を目指している。
・カリキュラム編成における,必修・選択の量的配分の適切性,妥当性
【現状】
本学部は,全開講科目に占める必修科目は比較的少ない(卒業単位 124 単位中の 30 単位)。それは,
学際領域をターゲットにした本学部の教育方針から,学生がおのおの学究を深める学問領域を選択でき
る構成になっている。ただ学生の知識の基礎固めという観点から,必修科目の多くが1年次に集中して
1年生の精神的な負荷が高くなっている。こうした方法が妥当かどうかは今後の評価が必要である。
【長所】
広い学際領域を,学生が個々に将来目標に合わせた柔軟な履修ができる。
【問題点】
将来目標が明確でない学生は,選択する履修科目が分散して体系的な学習が実現しにくい傾向がある。
【問題点に対する改善方針】
2005 年度は,必修科目を中心としたカリキュラムに関する学生アンケートを実施した。そのアンケー
トの内容をもとに,また,各教員からの授業運営上の問題点をフィードバックし,適正規模・カリキュ
第3章 情報コミュニケーション学部 -3-
/364
ラム検討委員会で改訂案を決める。
(授業形態と単位の関係)
【目的・目標】
実習や演習などの多角的な授業形態をとりいれつつ,学生の達成度に合わせた確実な単位認定を目指
していく。
・各授業科目の特徴・内容や履修形態との関係における,その各々の授業科目の単位計算方法の妥当性
【現状】
本学部は,現在のところ,語学系の諸科目とデータベース実習・社会調査実習が実習科目である。実
習科目では,週2時間の授業と週1時間の自習を1学期 15 週行うことで1単位となっている。それ以
外の科目は,講義科目となっており,週2時間の授業と週4時間の自習を1学期 15 週行うことで2単
位となっている。ただし,ゼミナール科目と社会調査実習は,科目の性質上,長期的な一貫した教育が
必要と考え,前後期の2学期を通じての履修としている。
【長所】
伝統的な方法で理解されやすい。
【問題点】
前後期を各1学期として独立した運営を進める中で,2学期を通じての履修科目を将来どのように扱
うか検討が必要である。ウェルネスについては,他学部が体育実技を通年2学期の実習科目としている
なかで,本学部は1学期の講義科目として運営しており,全学共通の合宿履修に参加できない問題が出
ている。
【問題点に対する改善方針】
適正規模・カリキュラム検討委員会で検討し,問題点を改善する。
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
学際的な学問を謳う本学部の理念からして,教育・研究の場を国内に限らず,広く世界に求めること
は必要なことである。国内外の大学で履修した単位を互換・認定することで,学生の履修の便宜を図る
とともに,広い視野を身につけもらうことが重要であると考える。さらに,大学キャンパスという場に
限らず,社会で実体験を積むこともまた本学部の理念にかなう制度であり,今後一層の取組みを目指し
たい。
・国内外の大学等と単位互換を行っている大学にあっては,実施している単位互換方法の適切性
・大学以外の教育施設等での学修や入学前の既修得単位を単位認定している大学・学部等にあっては,
実施している単位認定方法の適切性
・卒業所要総単位中,自大学・学部・学科等による認定単位数の割合
・海外の大学との学生交流協定の締結状況とそのカリキュラム上の位置づけ
・発展途上国に対する教育支援を行っている場合における,そうした支援の適切性
【現状】
本学では,36 に上る海外協定校との間で 30 単位を限度として単位互換を認めている。2005 年度より
プレカレッジプログラムがスタートし,付属明治高校より学生を受け入れ,単位認定を行っている。ま
た,正規授業の一環としてインターンシップ制度を取り入れ,実際にインターンとして就業する前に,
キャリアデザイン及びインターンシップ入門等の授業を履修することで備えている。これらの科目の履
修は全て単位として認定されている。
卒業必要単位数は 124 単位以上のうち,1・2年次に学部必修科目 30 単位,クラスター毎に卒業必
要単位数 56 単位,また,履修コース毎に必要な単位数として,それぞれのコース科目から最低 20 単位
を修得することを定めている。
本学部独自の学生交流協定は現在のところ行っていない。
【長所】
本学短大からの編入時には,既習単位を本学部の単位として認定している。プレカレッジプログラム
第3章 情報コミュニケーション学部 -4-
/365
については,付属明治高校生が入学前に授業を履修できることで,大学教育への理解や進路の決定など
に役立てることができる。また,インターンシップについても,今後の進路決定になどに役立てること
ができる。
本学部設置科目以外については他学部授業科目等の履修を認めている。ただし,同種の授業科目が本
学部にある場合については,原則として本学部での科目履修を指導することで,本学部の教育課程重視
の基本を堅持している。
国際交流センターを窓口とした協定校との学生交流は実施している。受け入れについては 2005 年度
より協定校からの留学生を迎えている。
【問題点】
情報コミュニケーション学部では,他大学との単位互換についてはまだ該当する事例がなく,具体的
な認定については検討中である。
プレカレッジプログラムについては,まだ該当者数が少なく,方法の適切性については今後の検討が
必要。インターンシップについては,インターン先の企業の安定的な確保が必要である。
1年次の必修科目が多いという意見もあり,現在 2008 年度の新カリキュラムへ向けて適正規模・カ
リキュラム検討委員会において検討中である。
本学部の学生の協定校への派遣については,2005 年度はまだ実績がないが,国際交流センターと連携
しながら,今後積極的に実施する。
【問題点に対する改善方針】
まだ本学部に該当する事例が少ない。今後事例の積み重ねにより改善等の判断を行う。
(開設授業科目における専・兼比率等)
【目的・目標】
きめこまやかな教育を実現するため,専任教員の比率をあげるのを目標にしている。
・全授業科目中,専任教員が担当する授業科目とその割合
・兼任教員等の教育課程への関与の状況
【現状】
専任の担当比率は 30%となっている。学内他学部に比べて小さいので,比率をあげたい。
語学や情報リテラシーでは,同一科目を複数のクラスで行っており兼任教員の比率も高いので,懇談
会を開催して兼任教員からの教育内容への提言を受けている。
【長所】
兼任教員の協力を求めていることが,教育課程への広い学問領域の反映に効果がある。
【問題点】
他学部に比べて対学生定員の専任教員数が少ない。
【問題点に対する改善方針】
専任教員の増員に向けて,「年度計画書」などに従い,改善を図る。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
社会人や外国人,帰国生徒など,通常の日本での高等学校教育を受けていない,あるいは高等学校を
卒業してからの時間の経過した学生などが大学での教育を円滑に受けることのできるような支援をす
る。
・社会人学生,外国人留学生,帰国生徒に対する教育課程編成上,教育指導上の配慮
【現状】
外国人留学生については,入学時に国際交流センターで全学部一括してガイダンスを行い,日本での
大学生活へのスムーズな導入を促している。また,学部としても独自の入学時ガイダンスを行っている。
授業では全学的に留学生向けの「日本語」「日本事情」を開講しており,日本や日本文化についての理
第3章 情報コミュニケーション学部 -5-
/366
解を助け,大学での授業に適応できるような配慮をしている。
社会人学生や帰国生徒は今のところ在籍しておらず,特に配慮も講じていない。
【長所】
大学全体とは別個に本学部独自に留学生向けの配慮を講じている。すなわち,入学時には学部単位で
の留学生のガイダンスを催し,履修方法や学生生活についてのきめ細かい指導を行っている。また,学
部内に「日本語」担当を通して長年留学生を指導した経験のある教員がおり,留学生に学業や学生生活
上の問題が生じた時には,外国人特有の問題を踏まえて適宜指導し,対処する。2005 年度には学業不振
で1名の学生の相談・履修指導にあたった。現状には特段の問題点はない。引き続きこの状態を維持す
る。
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
大学は学齢期の学生のみでなく,その研究や教育の成果を広く社会に開かれたものとして還元してい
く責務がある。社会人に向け,勉学を深める意欲,資格取得や実務学習などの生涯にわたる学習の要請
に応える。
・生涯学習への対応とそのための措置の適切性,妥当性
【現状】
全学的にリバティ・アカデミーを通じて推進している。リバティ・アカデミーは 2003 年度より開始
された新しい制度である。本学部としても講師派遣などで協力している。
【長所】
各学部の枠を超え全学的に一体となって取り組んでおり,生涯学習関連の講座として,教養,資格取
得,転職希望者や働きながらさらにキャリアを積もうとする人々への実務など,時代の要請に応えるべ
く各種の講座が設置されている。
【問題点】
本学部教員のリバティ・アカデミーへの講師としての参加は,まだあまり多いとはいえない。
【問題点に対する改善方針】】
本学部としては,学部開設期にあたり教員の体制も整わなかったが,今後はさらに講師派遣や学部の
特性を生かした講座の開設などで積極的に協力していく。
(正課外教育)
【目的・目標】
正規の授業の枠を超えて,学生の学習効果や学部での活動への帰属意識を高めたり交流を深め,また
進路に向けての効果的なサポートを目指す。
・正課外教育の充実度
【現状】
資格取得に向けたトレーニングコースなどが考えられるが,まだ実施していない。シラバスに資格取
得に向けた資料をまとめてある。
【問題点】
現在は学部完成年度に至る途中であり,正課外教育はまだ十分に展開してはいない。
【問題点に対する改善方針】
ゼミナール協議会や就職支援活動などを計画中であるが,今後さらに学生の要望なども踏まえて充実
に向け適正規模・カリキュラム検討委員会等で検討していく。
第3章 情報コミュニケーション学部 -6-
/367
(2) 教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
学生の学習達成度を的確に判断して,教育内容に反映させる枠組みを確立する。学習達成度は,アン
ケートなどを通じた学生からの申し出と,成績評価の際の教員による評価と,資格試験などの外部基準
によるものがあり,それぞれ充実させる。
・教育上の効果を測定するための方法の適切性
・教育効果や目標達成度及びそれらの測定方法に対する教員間の合意の確立状況
・教育効果を測定するシステム全体の機能的有効性を検証する仕組みの導入状況
・卒業生の進路状況
・教育効果の測定方法を開発する仕組みの導入状況
・教育効果の測定方法の有効性を検証する仕組みの導入状況
・教育効果の測定結果を基礎に,教育改善を行う仕組みの導入状況
・国際的,国内的に注目され評価されるような人材の輩出状況
【現状】
個々の科目では,授業改善アンケートなどを通じて学生の意見を収集し,教育の改善に利用している。
成績評価についはGPA制度を導入して,学生の履修指導や顕彰に利用し教育上の効果の測定としてい
る。
英語についてはTOEICの一斉受験を定期的に行っている。
情報リテラシーや基礎語学などの同一科目を多くの教員で担当する場合は,担当教員懇談会を開いて
教育内容の統一と,効率化に向けた対処を行っている。
【長所】
理想的な方法がないなかで,多面的な対処を試みている。
【問題点】
異なった授業科目においてそれぞれどのように測定していくかは教員間で意見の一致が見られてい
ない。そのため,教育効果を測定するシステム全体の機能的有効性を検証する仕組みの導入ができてい
ない。
【問題点に対する改善方針】
科目を横断したかたちでの教育効果測定には画一的な方法・尺度を導入するのは困難であり,新しい
アイデアを案出する必要がある。授業運営委員会などの場において,教員間で議論を重ね,合意に向け
た意識合わせを図っていく。2007 年度に卒業生が出た段階で進路状況を調査し,学部全体としては評価
する。
(厳格な成績評価の仕組み)
【目的・目標】
学外と単位互換ができるような,厳格な成績評価の仕組みを確立していく。
・履修科目登録の上限設定とその運用の適切性
・成績評価法,成績評価基準の適切性
・厳格な成績評価を行う仕組みの導入状況
・各年次及び卒業時の学生の質を検証・確保するための方途の適切性
・学生の学習意欲を刺激する仕組みの導入状況
【現状】
本学部では,年間申請上限単位数を 44 に設定している。また,発足以来GPA制度を導入している。
各科目の評価基準はシラバスに明示するように促しており,その基準の達成度を試験またはレポートな
どの平常点でもって 100 点満点で評価をするように求めている。評価時点で,A評価(90 点以上)の学
生が3割以上,AとB評価(80 点以上)が合わせて7割以上,F評価(60 点未満の落第)の学生が3
割以上のいずれかに該当する場合は,教員に採点の根拠の報告を文書で求めている。
第3章 情報コミュニケーション学部 -7-
/368
取得単位とGPAに応じて履修指導すべき成績不良者の選定,各種表彰制度・奨学金付与の対象とな
る成績優秀者の選定を行っている。その修学指導制度とともに,3年次進級には,所定の単位数の取得
を必要と設定しており,学生の質の確保を維持する仕組みが運用できている。なお,成績照会期間を設
け,学生からの成績の問い合わせに対応している。
【長所】
年間申請上限単位数 44 には再履修科目の単位数も含まれることから,学生が適切な授業計画を行え
るよう規定している。単位数とGPA制度で学生が履修のペースをつかむことができる。奨学金などの
表彰制度で学生の学習意欲が喚起されている。
【問題点】
学部設置2年目であるので,まだ問題事例があがっていない。
【問題点に対する改善方針】
今後,授業運営委員会と修学委員会の活動を通して問題点の洗い出しを行う。
(履修指導)
【目的・目標】
学部の特徴である学際性に鑑み,学生の進路希望に合わせたきめこまやかな履修指導を行う。特に成
績不良者に対しては,定期的に密な履修指導をする
・学生に対する履修指導の適切性
・オフィスアワーの制度化の状況
・留年者に対する教育上の配慮措置の適切性
・学習支援(アカデミック・ガイダンス)を恒常的に行うアドバイザー制度の導入状況
・科目等履修生,聴講生等に対する教育指導上の配慮の適切性
【現状】
入学時や学期始めにはオリエンテーションを行い,履修指導を徹底している。加えて常時,専任が対
応するゼミナールの場を履修相談に活用している。オフィスアワーは申し込みにより対応することにな
っているが,申し込みはほとんどなく,ゼミナールの場で今のところ十分のようである。修得単位とG
PAに応じて成績不良と判定された者は,履修指導の対象となり,1年間の指導期間に入る。学習計画
書を提出し,修学指導員との面談をしなければならない。
進路タイプ別のアカデミック・アドバイザー制度を導入して,履修説明会を個別に開催したうえ,資
格取得などのキャリア支援を加えて行っている。
【長所】
学生個々の事情や希望に応じたきめこまやかな履修指導が実現できている。
【問題点】
1年間の履修指導期間を経過しても改善しない成績不良学生が4名発生した。生活面まで含めた指導
を行ったり,保護者を伴った面談をしたり,学生相談室と連携した指導を行ったり,と対処している。
【問題点に対する改善方針】
現状の方針で問題点が低減されるかについて,修学委員会を中心にして検証していく。
(教育改善への組織的な取組み)
【目的・目標】
現在行われている学部での教育は本学部の理念に基づき構想・構成されているが,実際の運用上には
様々な制約があり,完全なものではない。これを少しでも良いものにしていくため,学生の声を吸い上
げ,教員からの提言を取り上げるなどして,改善の方途を探る。
・学生の学修の活性化と教員の教育指導方法の改善を促進するための措置とその有効性
・シラバスの作成と活用状況
第3章 情報コミュニケーション学部 -8-
/369
・学生による授業評価の活用状況
・FD活動に対する組織的取組み状況の適切性
・FDの継続的実施を図る方途の適切性
・学生満足度調査の導入状況
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
・雇用主による卒業生の実績を評価させる仕組みの導入状況
・教育評価の成果を教育改善に直結させるシステムの確立状況とその運用の適切性
【現状】
学生の学習意欲を動機付け,教員もそれに積極的に関与するための有効な方策として,1年次から4
年次まで発展的に設置されたゼミナールを位置づけ,このうち1年次の基礎ゼミナールを必修としてい
る。現代社会の諸問題に関心を持ち,自ら解明しようとする姿勢を育むためである。2年次の問題発見
ゼミナールは選択科目だが,学生の受講率はきわめて高い。
シラバスの作成については,一定の形式に基づく標準化されたフォームが採用されており,全教員が
統一された書式に従って記載している。これは,全学のOh-o! Meiji システムによって,Web 上でも
閲覧可能である。
教員の教育指導方法の改善促進のために,全学統一フォームの学生の授業改善アンケートを実施した。
その結果は専門の業者の元で分析され,教員各個人に直接渡されている。
また,学部独自でも必修科目授業改善アンケートを 11 月に実施した。学生は教員や学部事務室など
を通して授業に対する要望をかなり表明してきている。これらをもとに,全学的なものの他に,現状で
の問題点を明らかにするために構成した学部独自のアンケートを作成し,実施した。その結果は,数値
として示せるものは集計して全教員に配布した。このアンケートでは,外国語科目,特に英語に対する
学生の改善の要望が多く,その他,大規模な必修授業の問題点,ゼミナール科目の運営の問題などが浮
上した。
学部内でのFD委員会を母体として,専任教員による授業運営懇談会を実施し,教員間で情報を共有
して教育指導の質の向上を図っている。2005 年度には3回開催し,特に基礎ゼミナールの現状と問題点
を炙り出した。
学部の代表として選出された委員が全学のFD委員会に参加しており,FD委員会の決定事項等の学
部等への説明や,学部からの連絡を図っている。また学部のFD委員会も独自の活動をしている。
【長所】
ゼミナールでは,各担当教員の得意分野をモデルに,具体例を通して実感的に考え,学習することが
できる。また,少人数で受動的ではなく,自発的,積極的に学習に取り組む姿勢を育てることもできる。
学生による授業改善アンケートの結果で授業実施上の問題点を知り,担当者に改善を求めることがで
きる。
全学の各授業ごとのアンケート結果は,各担当者ごとに活用して改善の参考としている。学部独自の
アンケートは学生からの改善要望に対処するための資料となり,また,カリキュラム構成上の問題点を
明らかにすることもできる。今回,特に学生の要望の多かった英語の授業に関しては,担当者に改善に
向けて適切に取り組むよう依頼した。アンケートの実施により,直接教員や事務室に訴えてくる学生以
外の学生の意見や要望を把握することができる。
シラバスは,授業の概要・目的,授業内容,履修の注意点,教科書,参考書,成績評価の方法などの
項目から成り,学生が履修を考えるにあたって事前に各授業についての必要な情報を得,学習の目安を
立て,勉学の意欲,動機付けのために役に立っている。
現在は,全学のFD委員会委員が学部のFD委員会の委員長でもあるため,このため両FD委員会は
連携を図り,全体として有効に機能しており,FD活動に対する組織的取組みは適切な状況が保たれて
いる。
【問題点】
1年次の基礎ゼミナールは専任教員も学生も全員参加であるため,希望するゼミナールに入りにくい,
ゼミナールによって人数にばらつきがある,等の問題点もある。2年次の問題発見ゼミナールは原則と
して全専任教員が受け持つことになっているが,担当しない教員が若干出た。更に3・4年次になると
問題分析ゼミナール,問題解決ゼミナールへと進むが,年次により教員が担当しない場合や,非常勤の
教員が年度ごとに単発的に担当すると,ゼミナール科目の連続性,発展性に問題が生じることにもなる。
日ごろ学生は事務室などに授業への不満や要望を訴えてくるが,アンケートでは賛否双方の意見が分
第3章 情報コミュニケーション学部 -9-
/370
かれるものも多かった。アンケートの項目が詳細に渉って,集計に時間がかかり,また,記述式のもの
はすべてを公開することは難しい。学生の満足度を全体的に把握するための方途としては現在ではアン
ケート以外の方法がない。また,アンケートの項目の設定により得られる情報やその後の分析,活用に
影響が大きい。
シラバスは担当教員によって記載の濃淡にばらつきがあり,学生にとっては充分な情報が得られない
こともある。また,実際の授業進行がシラバスと一致していないという学生からの申し出もあった。
【問題点に対する改善方針】
ゼミナールの開講数が多いということは,教員の授業担当の負担ともなり,そのため担当を敬遠する
教員も出てくる。新学部としての完成年次を終えた 2008 年度にはカリキュラムの大幅な改訂を実施す
るが,ゼミナール科目の運営の仕方も大きな課題として検討作業中である。
アンケートの結果を関係する担当教員には公開し,専任教員を中心として担当者間での話し合いを活
発にし,授業改善への実効性のある取組みを促進する。また,学生がどのような内容の満足度調査を望
んでいるかを検討する。さらに,アンケートの有効性を高めるための調査項目の設定などをより精度の
高いものにする。
シラバスの記載については,執筆依頼の際に記載漏れや不十分な記載のないよう周知徹底する。また,
シラバスと授業との不一致が指摘された教員に対しては,改善を求めた。
(授業形態と授業方法の関係)
【目的・目標】
科目の特性に応じた授業規模を実現する。また,人数の多い講義科目においても学生の参加意識を高
める。
・授業形態と授業方法の適切性,妥当性とその教育指導上の有効性
・マルチメディアを活用した教育の導入状況とその運用の適切性
・「遠隔授業」による授業科目を単位認定している大学・学部等における,そうした制度措置の運用の
適切性
【現状】
授業運営委員会のもとに,言語・外国語教育,情報教育に関する部会を設け,授業運営に関して検討
を行えるようになっている。
カリキュラム全般については,
「適正規模・カリキュラム検討委員会」を設置し見直しを行っている。
情報メディア科目では,少人数でかつTAを配置しきめ細かい教育を実施している。コミュニケーショ
ン科目の多くでも少人数で実習を伴った内容にして実施している。受講者数の多い授業についても,携
帯電話利用など,情報技術を積極的に活用する試みが広がってきている。
必修科目において,Oh-o! Meiji システムの利用法を取り上げており学生全員に周知している。ま
た,学内からインターネットを利用するのに必要となるインターネット講習会も授業内で実施しており,
入学後早い時点から大学の情報環境を有効利用できるようにしている。各担当教員が,各自の授業内容
や方法にしたがって判断し,必要に応じて各種映像メディア,パソコンを使ったプレゼンテーションを
授業に導入している。多数のゲスト講師を招いて行う授業などについては,TAを配置し,プレゼンテ
ーション機器の利用を円滑にしている。
【長所】
情報メディア科目で,TAの配置により円滑な授業運営,きめ細かな指導を実現できている。情報科
目や外国語科目では,クラスの規模が 40 名以下になっており,和泉メディア棟の情報環境を利用でき
るようになっている。コミュニケーション科目の多くで,複数クラスを設置し,1クラスあたりの人数
を絞ることで積極的に実習を取り入れている。これにより,教育効果向上が図られている。
授業を通じて全学生が大学の情報環境を利用できるよう指導がなされている。多くの授業で,プレゼ
ンテーション機器など大学のメディア環境が活用されている。
携帯電話を利用して授業内でアンケートを実施するなど,新しい試みが進められている。
【問題点】
学内のさまざまな活動でTAの需要が高まっている。そのため,情報メディア科目等の補助のための
TAを十分確保することが難しくなってきている。必修科目など受講者の多い授業は,前後期に開設す
第3章 情報コミュニケーション学部 -10-
/371
るなど規模の縮小に勤めたが,教員確保・教員への負担増の問題から,すべての科目において行うのは
難しい。
Oh-o! Meiji システムのクラスウェブ,及びポータル・ページの利用拡大のためには,いっそうの
機能拡充が必要であるし,その利用支援の体制の充実が必要である。マルチメディアを教育で活用する
には,コンテンツの充実が必要であり,
「100 コンテンツプロジェクト」のような枠組みや日常の支援体
制を充実させる必要がある。
【問題点に対する改善方針】
教室の形態や設備の制約のもとで,効果的な授業を今後も検討する。Web 履修申請の導入を進め,柔
軟なクラス分けを可能にしていく。授業補助者の確保については,学部学生の登用なども視野に入れて
検討する。
授業における携帯電話利用など新しい教育改善の試みを推進する。外国語教育や情報メディアクラス
ター科目に関する効果的な授業運営については「授業運営委員会」における各部会での担当教員らの議
論を促す。抜本的には,「適性規模・カリキュラム検討委員会」におけるカリキュラムの見直し,2008
年度のカリキュラム改訂において改善を図る。
「100 コンテンツプロジェクト」のようなコンテンツ拡充に寄与する学内の枠組みを積極的に活用す
る。講義科目における携帯電話利用など新しい技術を利用する試みを今後も推進する。
長中期計画に位置づけ,今後,遠隔授業の活用法,実現上の課題について検討する予定であるが,当
面,対面教育の充実に重心をおく。
(3年卒業の特例)
【目的・目標】
本学部は開設後3年目であり,完成年度(2007 年度)を迎え4年次の学習成果を検証した後に,早期
卒業の目的・目標を設定する。
・4年未満で卒業を認めている大学・学部等における,そうした制度措置の運用の適切性
【現状】
本学部は開設後3年目であり,完成年度(2007 年度)を迎え4年次の学習成果を踏まえた上で,早期
での卒業の効果を検討する。
(3)
国内外における教育研究交流
【目的・目標】
本学部は,情報社会と人間コミュニケーションを軸に,国際関連科目を多数設置しており,学際的で
国際性豊かなプログラムを展開している。今後も学部の特性を生し,更なる国際化への対応に努めたい。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の適切性
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
・外国人教員の受け入れ体制の整備状況
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
【現状】
学部全体としては,国際交流センターを窓口として留学生の受け入れ,学生の派遣を行っている。教
員独自の取組みとしては,海外における調査・研究や国際学会での発表や,ゼミナール単位での海外実
習も行われている。さらに,学生レベルでは,国際交流団体が組織され,活動するなど,国際交流を促
進する取組みが実践されており,学部もこれらに積極的な支援を行っている。
年次計画履行状況中のため,2005 年度の在外研究者については該当なし。授業に関しては,国際関係,
異文化関連科目が多数設置され,学部として「国際化」を意識した取組みが進められている。外国籍の
教員は,専任2名,兼任3名となっている。
紀要『情報コミュニケーション学研究』を発行し,国内大学・研究機関へ送付している。また,教員
は本学に設置されている社会科学研究所,人文科学研究所,科学技術研究所のいずれかに属し,これら
が発行する紀要等での成果発表の場を与えられている。
【長所】
国際交流センターの事業を積極的に支持しているほか,学部内に留学生との交流活動を行っている団
第3章 情報コミュニケーション学部 -11-
/372
体もあるなど,積極的に取り組んでいる。在外研究については,積極的に行うことを計画している。科
目の特性に合った外国人教員は積極的に受入れている。
国内における発信の場は豊富であると考える。
【問題点】
学部レベルでの交流についてはまだ実績が少ない。本学部の教員の派遣のみならず,海外からの研究
者の受け入れなども今後の課題と思われる。特に外国語科目については,外国人教員の受け入れを積極
的に進める必要がある。
発刊間もない『情報コミュニケーション学研究』を広く認知させていく必要がある。著者によっては,
英語で執筆する者もあるが,紀要の英語版の発行もこれからの課題である。
【問題点に対する改善方針】
今後は,国際交流センターと協力しながら,学部レベルでの交流を増やす。在外研究制度を積極的に
利用し,国際レベルでの教育研究交流を図る。授業科目の特性に合った外国人教員を積極的に受入れる。
紀要「情報コミュニケーション学研究」の認知を広める。
第3章 情報コミュニケーション学部 -12-
/373
Ⅲ
研究科
1-2.法学研究科
(1) 教育課程等
(研究科の教育課程)
【目的・目標】
社会の多様な要請に応えるため,大学院には,学術基礎研究の推進,学術研究の高度化,優れた研究
者の養成,先端的・現代的分野の研究,高度専門職業人の養成等,多様ないし複眼的な目的が求められ
ている。このような目的を果たすための教育・研究計画を策定し,それを実施してゆくことが,法学研
究科に課された最重要課題である。
本研究科は,本学の建学精神を体し,「地球市民」としての法律家・法学者の育成に目標を設定して
いる。
上記の目的を達成する手段を充実させるため,本研究科は公法学専攻・民事法学専攻のそれぞれに法
学研究コース,そして,2003 年度に新たに主として社会人を対象とする法学専修コースを設けている。
法学研究科博士前期課程(2年)は,研究者の養成とともに高度専門職業人を養成すること(専門職
養成)を目的とし,博士後期課程(3年)ではもっぱら高度の研究機能を有する研究者の養成を目的と
する。このような目的を果たすためには,開かれた研究体制の確立と幅広い人材を集めることが必須で
あり,そのような体制の下で従来からの指導体制を基礎としつつ,新たに必要な教育研究計画を策定し,
それを実施してゆく。
なお,2004 年度に法科大学院が設置されたが,法科大学院は法曹養成に特化した実践的教育を行う専
門職大学院であるのに対し,既存の法学研究科は法学研究者養成をその主たる目的としている。したが
って,両者はその目的を異にしており,それぞれの目的達成に向けて努力することが望まれている。し
かし同時に,両者はその目的追求の過程で相互に重なり合い,交差する課題を少なからず共有しており,
また法科大学院から後期課程への進学の道も現に開かれている。そこで,両者が相互に連携することが
必要であろう。そこで,例えば,創造的な思考力を備えた優れた法曹を養成するためにも,法科大学院
の学生に,法学研究科に設置されている授業科目の履修の機会を与えるようにしたい。例えば,法科大
学院の学生が,法学研究科の授業科目を法科大学院の選択科目として履修できるというような形が望ま
しい。
・研究科の教育課程と理念・目的並びに学校教育法第 65 条,大学院設置基準第3条第1項,同第4条
第1項との関連
【現状】
学校教育法 65 条との関連については,前述した。大学院設置基準3条1項は,
「修士課程は,広い視
野に立って精深な学識を授け,専攻分野における研究能力又は高度の専門性を要する職業等に必要な高
度の能力を養うことを目的とする。」と規定している。この目的を実現するための教育課程として博士
前期課程に公法学専攻と民事法学専攻が設けられ,さらにそれぞれに法学研究コースと法学専修コース
とが設置されている。また,設置基準4条1項は,「博士課程は,専攻分野について,研究者として自
立して研究活動を行い,又はその他の高度の専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその
基礎となる豊かな学識を養うことを目的とする。」と規定している。この目的を達成するために博士後
期課程に公法学専攻と民事法学専攻が設けられ,研究者養成のための指導が行われている。
前期課程では,演習の授業が設けられ,そこではとりわけ修士論文作成のための指導が行われている。
学生は,教員とのやり取りを通じて,テーマの選定,文献の収集,研究発表を行い,また,教員や他の
受講者との討議を繰り返し,さらには教員による修論原稿の添削を受けるなどの過程を経て修士論文を
仕上げている。
後期課程では,課程博士作成につき「学位(課程博士)授与促進のための方策」と題する指針を学生
に提示し,論文執筆のプロセスを明確化して,これに従って学位論文作成を指導している。その内容は
あらまし次のようなものである。学生は,後期課程に入学後1年次の末に,論文作成計画書を指導教授
に提出し,さらに副指導教授を決定する。2年次の末に「中間報告」を指導教授と副指導教授に提出す
る。この報告に基づき,3年次の前期中に公開報告を行う。3年次の9月までに「学位請求論文」を提
第3章 法学研究科 -1-
/374
出する。なお,後期課程の「講義」は論文執筆指導時間に充当し,また学位論文完成に至る中間作業と
して,『大学院紀要』(法学研究科論集)を執筆させている。
【問題点】
教育・研究のシステムはほぼできあがっているが,これをさらに有効に活用させるための工夫が必要
である。
【問題点に対する改善方針】
社会の多様な要請に応えつつ,高度な専門的職業人,優れた研究者を養成するための教育・研究体制
の確立に向けて研究プロジェクト構想や特定課題研究所構想を実施しており,今後この中に院生を組み
込んでいくプロセスが重要である。
・「広い視野に立って清深な学識を授け,専攻分野における研究能力又は高度の専門性を要する職業等
に必要な高度の能力を養う」という修士課程の目的への適合性
【現状】
法科大学院の新設に伴い,従来の国家試験コース・法曹養成コースは募集停止となり,2003 年度より
法学専修コースが設けられた。これにより,法学研究コースは研究者養成としての目的が一層明確化し,
また専修コースは特定課題研究を専修することにより,専門性を有する職業等に必要な能力の養成に特
化されている。
【問題点】
教員数が少ないため,専修コースの設置科目数が十分ではない。
【問題点に対する改善方針】
修士課程の目的を達成するために設置された教育課程を実施するとともに,特定課題研究所を設置し,
修士課程における教育にも活用する。教員の補充が実現されるまで,当面は研究コースの科目を専修コ
ースの学生に履修させるなどして対応する。
・「専攻分野について,研究者として自立して研究活動を行い,又はその他の高度に専門的な業務に従
事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養う」という博士課程の目的への適
合性
【現状】
博士論文作成の指導ということが博士後期課程における重要な課題となっているが,この指導を通じ
て自ずと高度の研究能力が養成されることになる。また,博士論文作成に至る準備段階として紀要(法
学研究科論集)論文の作成も指導している。近時,研究者養成型助手制度が軌道に乗りつつあり,博士
論文作成への意欲が高まっている。
【問題点】
論文作成後の研究ポストが限られており,この点の改善策が求められている。
【問題点に対する改善方針】
大学全体では,研究者養成助手やポストドクター制度が整備されているが,独創性と豊なる学識を養
うためには,プロジェクト研究への参加や特定課題研究所の活用などを行う。
・学部に基礎を置く研究科における教育内容と,当該学部の学士課程における教育内容の適切性及び両
者の関係
【現状】
学部教育において幅広い教養の修得と法律学についての十分な知識の習得を踏まえることが,本研究
科における法学研究の前提となっている。しかし,学部教育においては多様な要請に応えることも必要
であり,さらに法科大学院の新設に伴い,また法科大学院からの学部教育への強い要請もある中で,本
研究科としては,学部教育に対して何を求めてゆくかということが問われている。本研究科では,学部
との一貫教育を推進するため,学部生による博士前期課程授業の履修制度を導入した(2006 年度から実
施)。
第3章 法学研究科 -2-
/375
【問題点】
一貫教育をさらに推進するためには,本研究科には独自の権限や予算がなど,アイデアやプランがあ
っても実現できないという面がないではない。
【問題点に対する改善方針】
本研究科に進学し,法学研究を志す者は一般的な教養は勿論,法律学についての一般的な知識の修得
のみならず,物事についての鋭い洞察力,旺盛な探究心といったものが必要不可欠である。そこで,学
部教育においては少人数教育における個別指導,とりわけ論証能力,コミュニケーション能力,論文作
成能力の涵養などを求めることが必要となる。与えられた状況のもとで創意工夫を凝らし,カリキュラ
ム等検討委員会等で改善策を検討する。
・修士課程における教育内容と,博士(後期)課程における教育内容の適切性及び両者の関係
【現状】
博士前期課程と博士後期課程との教育内容については,とりわけ博士後期課程への進学コースである
法学研究コースの教育内容が問題となるであろう。そこでは,一貫性・連続性が要請されているが,こ
のことはいわゆる指導教授制度を円滑に運用することによって実現されている。
【問題点】
後期課程への進学を希望していても,後期入試(外国語2ヶ国語)に合格できない者がかなりいる。
【問題点に対する改善方針】
学問が多様化し,専門領域も分化している中で,指導教授制度の有効活用のみでは,必ずしも十分な
教育内容を提供できない場合もある。首都圏コンソーシアムの活用なども重要であるし,副指導教授制
の活用なども有用である。前期課程で,外書講読の授業を充実させる方向でカリキュラム等検討委員会
等で検討している。
・博士課程(一貫制)の教育課程における教育内容の適切性
【現状】
博士後期課程への進学者のほとんどは,本学の博士前期課程の修了者であり,指導教授制のもとで一
貫した研究指導を受けている。また,博士論文作成を支援するために,副指導教授制度が実施されてい
る。
【問題点】
指導教授制度の下で,マンツーマンの指導が実施されているが,他大学の教員や院生などとの交流が
少ない。特別講義の制度があり,他大学の教員の講義を受ける機会も皆無ではないが,予算上開講の回
数が極めて限定されている。
【問題点に対する改善方針】
副指導教授制を活用するとともに,プロジェクト研究への参加,特定課題研究所などを活用してダイ
ナミックな研究指導の実施を図る。特別講義の制度の拡充,ゲスト・スピーカー制度の新設などで対応
する。
・課程制博士課程における,入学から学位授与までの教育システム・プロセスの適切性
【現状】
本研究科では,上述した「課程博士の学位授与の促進のための方策」を策定し,学位授与に向けた指
導が実施されている。また,研究者養成型助手制度を活用し,学位論文作成のための支援を行っている。
【問題点】
上述したように,学位取得後の研究ポストの改善が問題となっている。
【問題点に対する改善方針】
従来,指導教授を中心とした指導体制が実施されてきたが,副指導教授制度や,研究プロジェクトへ
第3章 法学研究科 -3-
/376
の参加を通じて指導する方途を図る。
・創造的な教育プロジェクトの推進状況
【現状】
2004 年度より本研究科内に特定課題研究所を設置することが認められ,研究所の下での研究活動が実
施されている。この構想は,本研究科のあり方と関連させられたものであり,研究のみならず,創造的
な教育プロジェクトをも推進していくものである。
【問題点】
上述したように,研究支援体制が不十分であり,今後の運営が困難な状況にある。
【問題点に対する改善方針】
特定課題研究所の研究・教育活動の支援を強化してゆく方策を検討する。
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
本研究科において,学生の希望するすべての科目を揃えることは不可能である。そのため他大学との
単位互換制度は必要であり,現在実施している。
・国内外の大学等と単位互換を行っている研究科にあっては,実施している単位互換方法の適切性
【現状】
本研究科では,首都圏大学院コンソーシアム学術交流の趣旨に賛同し,協定聴講生及び協定研究生の
受入れ及び派遣を 2003 年度より実施した。これに伴い,協定校との間で単位互換も行われることにな
った。2005 年度は,院生 2 名が他大学大学院の講義を聴講している。
【問題点】
首都圏大学院コンソーシアム学術交流の制度が実施されたが,現状ではこの制度が十分に活用されて
いない。
【問題点に対する改善方針】
院生にこの制度の活用を促し,適切な運用に努める。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
社会人の教育の場合,とくにカリキュラムの設置時間帯に配慮する必要がある。また修士論文の執筆
に関しても,特別の指導が必要となる。また外国人留学生の場合,学習条件の整備や,論文指導に力を
入れることが大切である。
・社会人,外国人留学生に対する教育課程編成,教育研究指導への配慮
【現状】
2003 年度に昼夜開講制の専修コースが開設され,社会人を受入れることになった。外国人留学生につ
いては,従来の東アジア圏以外からの留学生も増えつつある。
【問題点】
専修コースの社会人に対する授業時間の配慮が必要だが,教員数が不足しており,十分な対応ができ
ていない。留学生については,受け入れのための環境の改善が問題となっている。
【問題点に対する改善方針】
教員の補充を要求するとともに,留学生問題については,国際交流センターと連携し,受け入れ環境
の改善を図る。特に日本法の研究・学習を目指す留学生については,教育課程編成を含めた受け入れ体
制を確立することなどを考えている。
(生涯学習への対応)
第3章 法学研究科 -4-
/377
【目的・目標】
社会人の再教育については,本研究科では税理士・行政書士を対象として2つの特設講座を実施して
きた。生涯学習への対応が可能な教員や管理運営に必要な人的環境を整備する。
・社会人再教育を含む生涯学習の推進に対応させた教育研究の実施状況
【現状】
社会人の再教育という点で,2003 年度に税理士特設講座が開設され,また 2004 年度には行政書士特
設講座も開設された。講座修了者には,修了証が発行された。
【問題点】
特設講座の開設には,教員の補充,事務体制の強化などが必要不可欠となっている。
【問題点に対する改善方針】
社会人再教育を含む生涯学習については,その要望に応えていくことが必要ではあるが,教員の確保
という点が最重要課題となってくる。そこで,今後は学内と諸機関と連携して実現する可能性などを探
る。
(研究指導等)
【目的・目標】
本研究科の教育目標達成のため,少人数・双方向指導を原則としている。
・教育課程の展開並びに学位論文の作成等を通じた教育・研究指導の適切性
・学生に対する履修指導の適切性
【現状】
少人数・双方向指導は,よいシステムとして機能している。後期課程では副指導教授制が実施されて
おり,学位論文作成の支援体制が強化された。
【問題点】
教員が指導する院生の人数のバランスが適当とは言えない。
【改善方針】
1人の教員に対する院生の人数を制限する必要がある。これについては,今後カリキュラム等検討委
員会で検討する。法科大学院の開設に伴い,教員の負担という面で問題がある。教員の増員については,
「年度計画書」により改善を図る。また,TAの有効活用も検討する。
・指導教員による個別的な研究指導の充実度
【現状】
指導教授がきめ細かな指導をしている点は認められる。
【問題点】
指導教授個人にすべてを委ねることの問題,指導教授の負担過重という問題もある。
【問題点に対する改善方針】
教員個人レベルではなく,研究教育プロジェクトによるな指導や副指導教授制等により指導を充実さ
せる。
・複数指導制を採っている場合における,教育研究指導責任の明確化
・教員間,学生間及びその双方の間の学問的刺激を誘発させるための措置の適切性
・研究分野や指導教員にかかる学生からの変更希望への対処方策
・才能豊かな人材を発掘し,その才能に適った研究機関等に送り込むことなどを可能ならしめるような
研究指導体制の整備状況
【現状】
指導教授・副指導教授の中,前者が指導責任を負う。
第3章 法学研究科 -5-
/378
上述したように,他大学の教員による特別講義の制度もある。
学生からの指導教員変更に関する申出については,
【問題点】
学問的刺激を誘発させる措置については,他大学の教員や院生との交流の場を積極的に設けることが
必要である。
特別講義は予算上の理由により回数が限定されている。
【改善方針】
学問的刺激を誘発させる措置について,他大学の教員や院生との交流の場を積極的に設ける。
特別講義に対しては,ゲスト・スピーカーの制度の導入を検討している。
人材発掘のため,学部との一層の連携を強化する方向で検討している。人材を研究機関に送り込むた
めの施策・戦略も法学研究科委員会等で検討中である。
(2) 教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
教育効果を客観的に判断するためには,学会報告や論文発表が求められる。但し当然それらの準備段
階があり,そうしたステップを一つ一つ登るように指導することが肝要である。
・教育・研究指導の効果を測定するための方法の適切性
【現状】
研究成果を公表する場として『法学研究科論集』があるが,近年,執筆者数が減少しており,指導体
制の強化が必要になっている。そこで 2005 年度は院生の投稿を促すため,原稿の種類を増加させた。
【問題点】
状況は,徐々に改善されつつある。
【問題点に対する改善方針】
院生の論文執筆・学会報告等を,TA,RA,研究者養成型助手制度とリンクさせることで動機付け
し,さらに執筆者数の増加を図る。
・修士課程,博士課程修了者(修業年限満期退学者を含む)の進路状況
・大学教員,研究機関の研究員などへの就任状況と高度専門職への就職状況
【現状】
後期課程修了後直ちに就任できる者は少数である。
【問題点】
研究機関への就職については,大学が一丸となって戦略を立てることが必要であるが,本学はその点
が弱いと思われる。
【問題点に対する改善方針】
院生に多くの就職情報を流し,積極的に応募させることが必要である。とりわけ専門の研究者として
就職することを希望する者については,一定水準の複数の論文を書かせ,教歴をつけさせる。なお,2003
年度より法学部で導入された研究者養成型助手制度を活用する。2004 年度春には,この助手の中から2
名の者が他大学の専任教員として採用された。
(成績評価法)
【目的・目標】
現在レポート,授業における平常点などを基礎にして評価している。今後学会発表や学会誌への投稿
等も加点していくことが考えられる。
・学生の資質向上の状況を検証する成績評価法の適切性
第3章 法学研究科 -6-
/379
【現状】
レポート,授業における平常点などを基礎にして,点数(満点 100 点)評価をしている。
【問題点】
大学院の場合,成績を単純に数値化できない部分が多々あり,数値化の信頼性は低くなる。しかし,
ことの性質上これはやむをえないものである。
【改善方針】
GPAの導入なども考えられるが,学部教育との違いもあり,なおカリキュラム等検討委員会での検
討を要する。
(教育・研究指導の改善)
【目的・目標】
慣行として,各教員の教育・研究指導については,教員個人の責任とされている。このためこうした
方法をただちに変更することは考えにくい。問題を抱える教員に対しては研究科執行部がまず対応する。
・教員の教育・研究指導方法の改善を促進するための組織的な取組み状況
【現状】
教育・研究指導法については,提起された問題について本研究科委員会やそれに続く懇談会などで随
時討議し,さらにカリキュラム等検討委員会において,具体的な方策について検討している。なお,本
研究科のカリキュラム等検討委員会は,カリキュラムの問題だけを検討しているのではなく,制度改革,
教育・研究指導方法の改善などについても検討対象としている。
【問題点】
教員各自の意識を高める仕組みが必要である。
【問題点に対する改善方針】
研究者養成を主眼とする大学院における授業改善は,教育に重点が置かれる学部におけるそれとはお
のずと異なるものがあると思われる。とはいえ,法科大学院の設立を契機に,法学分野でも授業方法等
の検討が進められており,本研究科においても改善に向けて組織的な検討が必要である。
・シラバスの適切性
【現状】
各研究科共通のシラバスを発行しており,その内容・形式ともに適切である。
・学生による授業評価の導入状況
【現状】
2003 年度には試験的に授業評価に関するアンケートを実施した。今後の実施方法については検討する
必要がある。
【改善方針】
調査結果をいかに活かしていくかが今後の課題である。アンケートの実施方法,評価結果の活用法な
どについて更なる検討がカリキュラム等検討委員会において必要である。
・学生満足度調査の導入状況
【現状】
先に記したアンケートで調査が試みられた。
【問題点】
法学研究科の場合,受講者数が少ないため,アンケートに多くのことを期待することはできない。
【問題点に対する改善方針】
アンケートも検討に値するが,法学研究科はそれよりも直接的なコミュニケーションが一層重要であ
第3章 法学研究科 -7-
/380
ると思われる。
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
実施されていない。アンケートよりも,卒業生との対話・コミュニケーションの機会を設けることが
より重要である。
・高等教育機関,研究所,企業等の雇用主による卒業生評価の導入状況
【現状】
実施されていない。
(3)
国内外における教育・研究交流
【目的・目標】
本研究科の教員による研究交流は,活発に行われていると言える。しかし教育面では極めて不十分で
あると言わざるをえない。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の明確化の状況
【現状】
国際化への対応については,国際交流センターを通じて個別的に行われている。また,他大学の教員・
院生との交流を図るために,「特別講義」が実施されている。特別講義は,他大学の教員を招聘し,研
究報告をしてもらうと同時に,他大学の院生を交えてテーマについて討議するという方式で実施されて
おり,本学の院生にとっては他大学の教員・院生との交流の場となっており,学問的な刺激を受ける機
会として有効に機能している。
【問題点】
「特別講義」の実施に関しては,予算上の理由により実施回数が限定されている。
【改善方針】
国際的な学術交流,とりわけアジア諸国との学術交流は,留学生の受入れ,研究者の個人的な交流の
レベルにとどまるのではなく,共同研究支援体制の構築といったような,より積極的な課題に取り組む
べき新たな段階を迎えていると言えよう。本研究科としても,こうした課題について具体的な施策を講
ずる。
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
【現状】
国際交流センターを通じて個別的に行われている。
【問題点】
組織的な取り組みとなっていない。
【改善方針】
国際的な学術交流,特にアジア諸国との学術交流は留学生の受け入れ,研究者の個人的な交流のレベ
ルをこえて,共同研究支援体制の整備というより具体的な課題に取り組むべき段階にあると解され,そ
のための具体的方策の検討が必要とされる。
・国内外の大学院間の組織的な教育研究交流の状況
・外国人研究者の受入れ体制とその運用の適切性
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
・国際的な教育研究交流,学術交流のために必要なコミュニケーション手段修得のための配慮の適切性
【現状】
国内外の大学院間の教育研究交流は,特別講義など各分野で学会や研究会を通じて実施されている。
外国人研究者の受け入れに関しては,招聘教授として教員が個別に国際交流センターを通じて受け入
れている。これらを通じ,教育研究およびその成果を外部発信するとともに教育研究交流を図っている。
第3章 法学研究科 -8-
/381
【問題点】
特別講義の制度については,今後拡大していくことが必要である。
教員個人の努力によって実施されているが,例えば本学の出版助成の支援体制などは不十分である。
【問題点に対する改善方針】
この点の配慮は不十分であり,国際交流センター等と連携し,英語による大学院共通講座の開講など
学術交流に必要なコミュニケーション手段の修得や各種の支援体制の整備を充実していく。
(4) 学位授与・課程修了の認定
(学位授与)
【目的・目標】
修士学位の授与は順調であるが,博士学位の授与数は,まだ少ないと言わざるをえない。今後助手を
中心にして,課程博士に挑戦してもらうことに力を入れる。また論文博士についても,毎年数件は審査
したい。
・修士 博士の各々の学位の授与状況と学位の授与方針・基準の適切性
【現状】
2005 年度は,修士学位を取得した者は,25 名(公法学 17 名,民事法学8名)であった。博士学位を
取得した者は2名(課程博士1名,論文博士1名)であった。修士の学位については,博士前期課程の
在学期間を満たし,所定の単位を修得し,かつ,必要な研究指導を受けたうえで,修士論文の審査及び
最終試験に合格した者につき修士の学位を授与するものとしている。また,専修コースについても,修
士論文に準ずる論文により修士の学位を授与することにしている。課程博士の学位については,博士後
期課程において所定の在学期間を満たし,かつ,研究指導を受けたうえ,博士論文の審査及び最終試験
に合格した者に授与するものとしている。論文博士については,論文を提出し,博士の学位を請求した
者で,論文の審査および試験に合格し,かつ,専攻学術に関して,課程博士を授与されるものと同等以
上の学力を有すると確認されたものにも授与することができるものとしている。
2003 年度は,博士学位取得者がなかったが,2004 年度は4名,2005 年度は2名となり,状況は徐々
に改善されている。なお,法学学位授与の手続と基準の明確化を図るため「博士学位請求論文の受理お
よび審査についての法学研究科内規」が作成され,2005 年度よりこの内規に従って博士学位請求論文の
受理と審査が行われることになった。
【問題点】
本研究科では,博士論文の審査が厳格なため,学位取得者が少ない。しかし,博士論文の質は高いも
のとなっている。
【問題点に対する改善方針】
修士については,学位授与状況等につき問題はないが,博士については 2003 年度取得者が0名であ
ったことを踏まえ,本研究科をあげて改善に向けて取り組んでいる。課程博士については,「学位授与
促進のためのガイドライン」を確実に実施し,研究者養成型助手制度,副指導教授制度の有効活用につ
いて検討する。
・学位審査の透明性・客観性を高める措置の導入状況とその適切性
【現状】
修士については,主査のほか2名の副査が論文を厳密に審査し,審査結果を本研究科委員会で報告し,
授与を決定している。博士論文については,新たに「受理および審査に関する内規」が作成された。こ
の内規によれば,受理審査手続きを経て本審査に入り,学位授与請求者による公開報告を行い,そこで
の吟味を経たうえで本審査が行われることになった。本審査では,主査と2名の副査が論文を審査し,
法学研究科委員会で審査結果を報告する。この審査報告に基づき授与するか否かについては,本研究科
委員会での投票によって決定される。
【長所】
本研究科では博士学位につき内規が作成され,手続きの透明性・客観性が確保されている。また,厳
第3章 法学研究科 -9-
/382
格な審査が実施されている。
・修士論文に代替できる課題研究に対する学位認定の水準の適切性
【現状】
本研究科では,修士学位の取得は修士論文の合格により決定しており,修士論文に代替する課題研究
による学位認定を実施していない。
・学位論文審査における,当該大学(院)関係者以外の研究者の関与の状況
【現状】
2005 年度の修士論文の審査に当たっては,本学法科大学院教授の協力を得た。また,博士論文2件の
副査のうち,法科大学院教授は1名,他大学教授は2名であった。今後も必要な場合,積極的に他大学
教授にも参加してもらう。
・留学生に学位を授与するにあたり,日本語指導等講じられている配慮措置の適切性
【現状】
組織としては,特別の措置を講じていないが,指導教授による個人的な配慮がなされている。
(課程修了の認定)
【目的・目標】
1年で修士の学位を付与する制度の採用を図る。
・標準修業年限未満で修了することを認めている大学院における,そうした措置の適切性,妥当性
【現状】
現在実施していないが,今後の検討課題としたい
第3章 法学研究科 -10-
/383
2-2.商学研究科
(1)
教育課程等
(研究科の教育課程)
【目的・目標】
本研究科は,2005 年に創立 101 周年を迎えた伝統ある明治大学商学部における教育を基礎として,な
お一層の高度な知識と幅広い教養を身につけ,広く世界を見渡し,人類の平和と進歩,繁栄に貢献する
ことのできる人物を育成するための教育・研究機関である。本研究科は,商学部の7コースを専門分野
別に再構成し,経済,商業,経営,会計,金融・証券,保険,交通および貿易の8つの特色ある系列で
構成されており,各系列は,少人数教育・研究を基本とし,約 50 名の教育・研究スタッフによる院生
の研究指導が行われている。
21 世紀を迎え大学院のもつ意義は以前にも増して重要な意味をもっている。大学院は,明治大学の建
学の精神を集大成する場でもあり,時代と社会が直面している問題を自ら問題意識化し,真摯な態度で
研究に取組む場であり,その目的は,グローバルな視野に立脚し,時代を先取りする人物を育成するこ
とにおかれている。本研究科は,開かれた大学院であり,海外からの留学生の受入れ,また協定校留学
制度による国際交流や,社会人の受入れにも積極的に対応している。本研究科を巣立った多くの研究者
が国内外の研究教育機関で活躍している。
・研究科の教育課程と理念・目的並びに学校教育法第 65 条,大学院設置基準第3条第1項,同第4条
第1項との関連
【現状】
本研究科の博士前期課程は,前述の研究科の理念,目的,教育目標および「広い視野に立って精深な
学識を授け,専攻分野における研究能力又はこれに加えて高度の専門性が求められる職業を担うための
卓越した能力を培うことを目的とする」との大学院設置基準に対応した教育課程の構築を進めてきた。
8つの学問分野からなる系列を配置し,履修は原則として2年以上在学,32 単位以上の履修・取得を要
件としている。この内訳は専修科目である講義・演習 12 単位を必修とし,専修科目以外の講義・演習・
文献研究 20 単位を選択としている。
修士学位請求論文は,指導教員による必要な「研究指導」を受けた上,専修科目によって作成・提出
するものとなっている。
博士後期課程は,前述の研究科の理念,目的,教育目標および「専攻分野について,研究者として自
立して研究活動を行い,又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその
基礎となる豊かな学識を養うことを目的とする」という大学院設置基準に対応して,専修科目の担当者
である指導教員による研究指導を受け,研究上必要と認められるときは,授業科目を履修することがで
きる。
【長所】
幅広い学際性と深い専門性の両立が可能となっている。
・「広い視野に立って清深な学識を授け,専攻分野における研究能力又は高度の専門性を要する職業等
に必要な高度の能力を養う」という修士課程の目的への適合性
【現状】
本研究科の8つの系列は幅広い分野をカバーしており,修士課程の目的に適合している。さらに技術
経営特論といった科目が新規で開講されている。
【長所】
幅広い学際性と深い専門性の両立が可能となっている。
【改善方針】
問題点は特に無いが,時代に適応した系列の再編成も考えられるので,今後ともこれについて議論し
ていく。
大学院生にとって専門分野における代表的な学者・研究者の学識に接し,個人的に知遇を得られるこ
第3章 商学研究科 -1-
/384
とは,何物にも替え難い財産となる。こうした講義の開設は,学部・大学院一貫教育を推進していく上
でも,大学院進学を目指す学部学生にとって大きな魅力となるものである。現在,多くの大学・大学院
で実施されている客員教員による集中講義形式での講義を本研究科でも開設することが可能となるよ
う「年度計画」に従って改善していく。
・「専攻分野について,研究者として自立して研究活動を行い,又はその他の高度に専門的な業務に従
事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養う」という博士課程の目的への適
合性
【現状】
博士後期課程においては,指導教員の授業科目の他,関連する2~3科目を履修するよう指導してい
る。
【長所】
指導教員のみならず関連の教員(特に副査予定者)の授業をとることは,有益である。
【改善方針】
問題点は特に無いが,副査予定者を前提とする副指導教員制度の導入も考えられるので,商学研究科
小委員会等で検討していく。
・学部に基礎を置く研究科における教育内容と,当該学部の学士課程における教育内容の適切性及び両
者の関係
【現状】
学部に設置されている科目との連続性,発展性を重視した科目設定に努め,改編を進めてきた。2005
年度からは,商学部の学生が本研究科博士前期課程の授業科目を 10 単位まで履修することが可能とな
り,18 名の4年生が履修した。
【長所】
本研究科入学後は,履修単位が修了要件に組み入れられる。
【問題点】
通年では4単位が基本となるため,10 単位は学生が選びにくい。
【問題点に対する改善方針】
学部に設置されている科目との連続性,発展性を重視した科目設定と担当者の確保を進めており,
2006 年度からは履修上限を 12 単位に改めた。
・修士課程における教育内容と,博士(後期)課程における教育内容の適切性及び両者の関係
【現状】
科目の設定と発展性,連続性について,確保されるような授業科目及び担当者の配置を行っている。
【長所】
博士前期は特論,博士後期は特殊研究として開講されている。
【改善方針】
問題点は特に無いが,科目の設定と発展性や連続性について,確保されるような授業科目および担当
者の配置をいっそう進める。
・博士課程(一貫制)の教育課程における教育内容の適切性
本研究科は一貫制博士課程ではないので該当しない。
・課程制博士課程における,入学から学位授与までの教育システム・プロセスの適切性
【現状】
修士学位請求論文の作成と後期課程における研究指導及び商学研究論集等による研究業績の積み上
第3章 商学研究科 -2-
/385
げ,さらに博士学位請求論文事前報告会の制度化,これらを文書にした「ガイドライン」の設定により,
研究科における学位取得プロセスの整備が図られている。
【長所】
大学院生が博士学位請求論文提出のための計画が立てやすくなり,
課程博士取得者は 2003 年度6名,
2004 年度 10 名,2005 年度 12 名と順調に増加している。
【改善方針】
問題点は特に無いが,主査,副査予定者などから構成される指導チームによる組織的な研究指導体制
などの制度化による教育システム・プロセスの導入を商学研究科小委員会等で検討する。
・創造的な教育プロジェクトの推進状況
【現状】
研究科として創造的な教育プロジェクトを行っていない。
【問題点】
創造的な教育プロジェクトの推進について,大学院全体としての支援体制の整備が必要である。
【問題点に対する改善方針】
創造的な教育プロジェクトの推進について大学院全体としての支援体制を整備するよう検討する。
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
本研究科では,博士前期課程では修士学位請求論文,博士後期課程では博士論文と論文の作成が第一
義となる。大学院生が取組む論文テーマは多岐にわたっているが,通常は研究科内部の授業によって論
文執筆を行うことが可能である。ただし論文テーマによっては他大学や他研究科の授業をとることが有
用であることもある。多様な研究に対応できるようなカリキュラムが設計されるべきである。
・国内外の大学等と単位互換を行っている研究科にあっては,実施している単位互換方法の適切性
【現状】
博士前期課程履修単位のうち8単位以内を,指導教員の承認を得て,単位互換協定を締結している他
大学院及び他研究科の授業科目によって履修することが出来る。2004 年度以降,文京学院大学大学院経
営学研究科との提携が強化されている。2006 年度より立教大学大学院経営学研究科とも提携がなされる。
【長所】
東京都心という便利な立地ゆえ学生の選択肢は多彩である。
【問題点】
単位互換では他大から本研究科へ来る学生の方が多い状態である。
【問題点に対する改善方針】
双方向の単位互換を実現させ,教育内容の一層の充実を図るよう必要に応じて提携先の更なる強化を
進める。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
「商学のパイオニア」としての本研究科の教育・研究をさらに発展させるためには,社会人や留学生
など多様な学生を受入れ,それを活力とすることが重要である。そのために,彼らが研究しやすいよう
な環境整備が不可欠である。
・社会人,外国人留学生に対する教育課程編成,教育研究指導への配慮
【現状】
社会人については,夜間及び土曜開講科目の設定・整備をはかり,必要に応じて,夜間帯履修を確保
第3章 商学研究科 -3-
/386
している。外国人留学生についてはチューター制度を導入して対応している。
【長所】
学生それぞれのニーズに対応出来る。
【問題点】
社会人学生は夜間・土曜日の授業を望むが,管理運営体制が十分に対応していない。
【問題点に対する改善方針】
夜間や土曜における授業に対しても十分な対応ができる体制を「年度計画書」によって改善を図る
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
再教育を望む社会人に対応した受け入れ体制を整備する。
・社会人再教育を含む生涯学習の推進に対応させた教育研究の実施状況
【現状】
聴講生制度で対応している。研究科の性格上,社会人再教育は,社会人特別入試制度と夜間・土曜開
講制度によって実現されている。現状で不都合は生じていないが,今後は学内の専門職大学院等との提
携強化が考えられる。
(研究指導等)
【目的・目標】
本研究科の第一義は修士学位請求論文であれ,博士学位請求論文であれ,論文執筆であるから,学生
がそれを行いやすいように,研究指導体制を整備し,修士学位請求論文については2年で,博士論文に
ついては3年で提出できるようにする。
・教育課程の展開並びに学位論文の作成等を通じた教育・研究指導の適切性
【現状】
博士前期課程については,32 単位の履修を前提として,研究指導が行われ,このうち特に演習を活用
した研究力量の形成が行われている。
博士後期課程については,指導教員による研究指導が中心であり,博士学位請求論文事前報告会を開
催し研究科としての研究力量の育成をサポートする体制となっている。
【長所】
演習を中心とする肌理細やかな研究指導が可能となっている。
【問題点】
特定の指導教員に負担が集中しがちである。
【問題点に対する改善方針】
特に博士後期課程については,複数教員による指導体制や研究指導の授業科目化が商学研究科小委員
会等で検討されている。
・学生に対する履修指導の適切性
【現状】
商学研究にかかわる8つの系列からなる科目群を整備しており,専修科目を中心にして,豊富な,か
つ広範囲の関連科目が設置されている。
【長所】
カリキュラムと研究指導との関連性は高く,高度な専門性と研究力量の養成を図る上での研究指導は
有効な役割を果たしている。
第3章 商学研究科 -4-
/387
・指導教員による個別的な研究指導の充実度
【現状】
博士前期課程において,個別的な研究指導は教育課程のなかに制度化してはいないが,当然行われて
いる。博士後期課程においては,個別的な研究指導が中心となっている。
【長所】
両課程とも研究指導の充実度について,特定の水準を確保する制度はないが,年2回発行される商学
研究論集の掲載本数の数や増加を続ける学位取得件数からみて,相当の個別的な研究指導が行われてい
る。
【改善方針】
問題点は特に無いが,研究分野の性格により,研究指導の場は外部の学会・研究会や海外・国内調査,
フィールドワークなど広範囲に及ぶものとなっている。指導教員による個別的な研究指導ではあるが,
学外者との集団的なプロジェクト・共同研究への参加が可能となるような制度的取組みを検討していく。
・教員間,学生間及びその双方の間の学問的刺激を誘発させるための措置の適切性
【現状】
学生の学会参加や報告を促進する学会参加費助成制度や学外研究者を招聘する特別講義によって,対
応している。本研究科特別講義は,平均して年5回開催され,内外の研究者によって最先端の研究内容
が紹介されている。
【長所】
学生の評判はどちらも良好である。
【問題点】
予算の制約がある。
【問題点に対する改善方針】
学生の学外との結び付きをさらに促進するための制度や方策を商学研究科小委員会等で検討する。
・研究分野や指導教員にかかる学生からの変更希望への対処方策
【現状】
原則的に研究分野や指導教員の変更は認めていない。指導教員や副査予定者以外の教員の講義・演習
を自由に履修できるので,学生が希望すれば幅広い学習を行うことができる。現状では学生からの変更
希望は出されておらず,問題はないと考えられる。将来,学生からの変更希望が出る場合は,対応を検
討する予定である。
(2)
教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
学生が在籍中は高い研究業績を示せるように,課程修了後は進路のアシストやフォローが出来るよう
に制度を整備する。
・教育・研究指導の効果を測定するための方法の適切性
【現状】
博士前期課程においては,履修単位にかかわる成績評価と修士学位請求論文の評価に加えて,商学研
究論集やその他の研究業績によって,教育・研究指導の効果が測定される。博士後期課程においては,
自立した研究者と同様に,研究業績,学会報告によって研究力量形成プロセスが評価されるとともに,
課程博士学位請求論文の審査によって,課程修了に相当するか否かの判定が行われる。
【長所】
学生自身が長期的な研究計画を立てやすい
第3章 商学研究科 -5-
/388
【問題点】
博士前期・後期ともに掲載される学生数が増加しており,紀要等に関する予算の制約が大きくなって
きている。
【問題点に対する改善方針】
商学研究論集や社会科学研究所紀要論文の応募が増加しており,これに対応する必要がある。
・修士課程,博士課程修了者(修業年限満期退学者を含む)の進路状況
【現状】
指導教員が個別に把握している。大学全体としては就職課により調査されている。
【問題点】
就職課アンケートにより集約された冊子が各部署に配布されるが,詳細については把握できていない。
【問題点に対する改善方針】
指導教員と就職課等による情報共有を図る。
・大学教員,研究機関の研究員などへの就任状況と高度専門職への就職状況
【現状】
商学部専任助手についていえば,2006 年度採用は前年度より5名増加し,12名となった。
【長所】
助手枠の拡大により,研究に専念できる。
【問題点】
就任状況の詳細は把握できていない。
【問題点に対する改善方針】
在籍院生の研究業績一覧表の作成・配付,本研究科出身教育関係者懇談会の毎年開催をさらに進める。
そして在籍院生の助手採用の促進,退学・修了生の兼任講師など教歴の取得を促進する。
(成績評価法)
【目的・目標】
より客観的な成績評価を行う。
・学生の資質向上の状況を検証する成績評価法の適切性
【現状】
履修単位科目の成績評価については,100 点満点とし,60 点以上を合格としている。全学的にはGP
A制度が導入されている。
商学研究論集の掲載資格の審査については,3名の審査員によるA(掲載可),B(条件つき掲載可),
C(掲載不可)の評価をして,AAA,AABを掲載の要件としている。修士学位請求論文の評価につ
いては,指導教員を主査,他の2名を副査として審査を行っている。100 点満点の 70 点以上を合格とし
て,最終的には研究科委員会において判定する。博士学位請求論文の評価については,指導教員を主査,
他2名を副査による審査を経て,学位規程にもとづいて研究科委員会において合否の判定を行っている。
【長所】
基準が制度化されている。
【問題点】
GPAへの対応については不十分である。
【問題点に対する改善方針】
第3章 商学研究科 -6-
/389
履修単位科目の成績評価については,GPAの導入にともなう変更が必要となる。
(教育・研究指導の改善)
【目的・目標】
大学院生が主体的に研究計画を立て,修士学位請求論文は2年で,博士学位請求論文は3年で執筆出
来るよう,教育・研究指導の体制を整備していく。
・教員の教育・研究指導方法の改善を促進するための組織的な取組み状況
【現状】
8つの系列から選出される小委員会での検討や研究科委員による懇談会において,組織的な検討が行
なわれている。また,教務部長を中心としたFDの取組みがなされており,そこでの企画には多くの教
員が参加している。
【長所】
各分野の特性に対応できるとともに,全学的な取組みが確保されている。
【改善方針】
問題点は特に無いが,博士学位請求論文作成のガイドラインの充実,改定に係わる検討やその1項目
となっている事前報告会の実施状況についての検討,院生からの要望事項などをテーマにして,組織的
な取組みを進める。
・シラバスの適切性
【現状】
担当教員ごとに,前期課程と後期課程のそれぞれに,講義と演習を一緒にした内容紹介を,シラバス
として配付していたが,授業科目の半期科目化を契機として,講義については半期科目ごと,演習につ
いては学年ごとなどの細分化と掲載内容の改善を行った。
【長所】
学生は履修可能なすべての授業の詳細を知ることができる。
・学生による授業評価の導入状況
【現状】
学部の授業評価と同一のシートによって試行的に授業評価が行われた。
【問題点】
大学院としての独自の評価を行いづらい。
【問題点に対する改善方針】
授業評価では,学部の質問用紙が流用されており,大学院にふさわしい授業評価方法を開発する必要
がある。
・学生満足度調査の導入状況
【現状】
学生に対しては,博士前期課程及び後期課程の双方において少人数教育が実現されており,講義や指
導,研究環境などに対する不満は,直接,担当教員あるいは指導教員に申し出るよう指導している。商
学研究科の院生の自治組織であり,長い歴史を持つ商学研究科院生協議会と商学研究科委員会執行部と
の定例の懇親会を開催している。
【長所】
学生と教員の間に自由に意見を交換する雰囲気と相互信頼関係が構築されている。
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
第3章 商学研究科 -7-
/390
本研究科出身教育関係者懇談会を開催し,意見を聞いている。
【長所】
本研究科出身教育関係者懇談会を博士論文の事前報告会と同日に開催するため,両者のコミュニケー
ションが採りやすい。
【問題点】
予算が限られている。
【問題点に対する改善方針】
本研究科出身教育関係者懇談会は修了生,在籍生ともに評判が良く,この制度をさらに活用していく。
・高等教育機関,研究所,企業等の雇用主による卒業生評価の導入状況
【現状】
指導教員が個別に対応している。ただし,研究職に就いた者の評価は継続的な研究業績の産出によっ
て定まることが多いため,大学院終了後のケアについても検討をしていく方針である。
【長所】
学生の特徴や性格をふまえた対応が可能である。
(3)
国内外における教育・研究交流
【目的・目標】
海外での資料収集,研究発表,さらには学位取得など,国際的な研究活動を支援するための制度を整
備する。2002 年度からは,国内のトップ・レベルの大学院生を対象としたルノー財団パリ国際MBAプ
ログラムに本学大学院が指定され,本研究科の院生が派遣された。また,日仏共同博士課程交流事業の
加盟校にも選ばれ,国際的な水準の研究を行う環境も整備されている。大学院生の研究の向上とより広
い教育機会を提供するために,海外を含む多くの教育・研究機関との単位互換協定を結び,相互の学術
交流も積極的に進めている。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の明確化の状況
【現状】
研究科の基本方針として国費留学生を含む留学生を積極的に受け入れている。また,大学院全体の国
際交流の動きに対応して留学生派遣を進める。
【長所】
留学生数が順調に増えている。
【問題点】
留学生の増加に対し,管理運営体制が十分でない。
【問題点に対する改善方針】
国際交流センターと連携し,留学生受け入れ後の管理運営体制の整備を図る。
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
【現状】
個別教員のレベルでは国際学会への参加を学生に促したり,国際会議の開催に学生を積極的にかかわ
らせたりしているが,研究科としては独自の措置はない。
【問題点】
予算措置を含めた改善が必要である。
【問題点に対する改善方針】
国際レベルでの交流を促進させるため,国際会議の参加費・渡航費・宿泊費などに対する補助金など
第3章 商学研究科 -8-
/391
支援体制の整備を図る。
・国内外の大学院間の組織的な教育研究交流の状況
【現状】
提携校との単位互換制度を促進している。2004 年度には,フランスのレンヌ商科大学と本研究科との
提携が加わった。
【問題点】
外国語による授業が少ない。
【問題点に対する改善方針】
英語による大学院共通講座の開設を図る。
・外国人研究者の受入れ体制とその運用の適切性
【現状】
学部において,受入れ制度がある。2005 年度には提携校である米国アイオワ大学から教授を短期受け
入れた。
【問題点】
大学院としての制度がない。
【問題点に対する改善方針】
大学院として独自に外国人研究者を客員・招聘教員や学内研究プロジェクトへの共同研究者として受
け入れられるよう,研究・知財戦略機構と連携するなどして制度を整備すべきである。
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
【現状】
教育研究及びその成果については,学内及び学術著書にその成果が集約・一覧され,それぞれの掲載
個所や出版によって,社会に発信されるとともに,一部の研究業績についてはインターネット上に公開
されているものもある。大学院生の商学研究論集については,キーワードの設定によって,外部からの
検索を容易にする改善を行っている。
【長所】
研究業績に対する外部からのアクセスが確保されている。
・国際的な教育研究交流,学術交流のために必要なコミュニケーション手段修得のための配慮の適切性
【現状】
指導教員が個別に対応している。
【問題点】
大学院としての制度的取組みがない
【問題点に対する改善方針】
大学院として英語によるコミュニケーション手段を習得するための制度として,英語による大学院共
通講座の開設を図る。
(4)
学位授与・課程修了の認定
(学位授与)
【目的・目標】
大学院生が主体的に研究計画を立て,修士学位請求論文は2年で,博士学位請求論文は3年で執筆出
来るよう,教育・研究指導の体制を整備していく。
・修士,博士の各々の学位の授与状況と学位の授与方針・基準の適切性
第3章 商学研究科 -9-
/392
【現状】
2004 年度は,課程博士 10 名,修士 23 名,2005 年度は課程博士 12 名,修士 29 名となり,どちらも
近年順調に増加している。基準は学位規程に基づくもの以外にはないが,運営上特に問題はない。
【長所】
学位授与については,研究科の存在価値を示すものとして,積極的に促進している。
・学位審査の透明性・客観性を高める措置の導入状況とその適切性
【現状】
修士学位請求論文の審査については,研究内容の審査にふさわしいと研究科委員会において,承認を
得た3名の教員による面接試問を含む審査が行われ,その審査結果について研究科委員会による合否判
定が行われる。
博士学位論文について課程博士の場合は提出された直後から1週間の閲覧期間があり,その後,研究
科委員会で受理が決定すると審査に入る。また,論文博士の場合は,研究科執行部から構成される受理
委員会によって受理がなされ,その後1週間の閲覧期間が設けられ,研究科委員会で審査に入るか否か
が決定される。審査に入ることが決定された後に審査を担当する3名の教員が承認され,審査が開始さ
れる。審査は語学試験と面接試問から成る。審査結果は研究科委員会に諮られ,投票によって合否が判
定される。以上の過程は,学位規定及び研究科内規によって定められている。
【長所】
学生にとっても客観的である。
・修士論文に代替できる課題研究に対する学位認定の水準の適切性
【現状】
修士学位請求論文に代替できる課題研究に対する学位認定の水準は存在しない。学生のニーズを調査
し,修士学位請求論文に代替できる課題研究に対する学位認定の水準を設置すべきか否かについては,
議論していく方針である。
【長所】
明治大学修士(商学)の学位としての価値・評価を確保している。また,専門職大学院との棲み分け
ができている。
・学位論文審査における,当該大学(院)関係者以外の研究者の関与の状況
【現状】
提出学位論文の審査について,より適切な学外研究者がいる場合,副査に加える。
【長所】
より適切な審査委員を選出できる。
【問題点】
学外の副査を招聘するための予算が限られている。
【問題点に対する改善方針】
学外の副査を招聘するように「年度計画書」に基づいて改善を図る。
・留学生に学位を授与するにあたり,日本語指導等講じられている配慮措置の適切性
【現状】
審査体制が整えば,外国語による論文執筆を認めている。
【長所】
外国語による論文執筆が可能になる。
(課程修了の認定)
第3章 商学研究科 -10-
/393
【目的・目標】
大学院生が主体的に研究計画を立て,修士学位請求論文は2年で,博士学位請求論文は3年で執筆で
きるよう,教育・研究指導の体制を整備していく。博士前期において極めて優秀な学生がいた場合には,
期間短縮出来るような制度を整備する。
・標準修業年限未満で修了することを認めている大学院における,そうした措置の適切性,妥当性
【現状】
1年次修了を認めているおり,2005 年度に学部生の大学院科目の履修を認めると同時に制度の見直し
を行った。その結果,2006 年度には1名の学生が標準修業年限短縮で博士前期課程を修了した。
【長所】
学部と大学院の連携が強化され,より多くの学部生が大学院に関心を持つ。
第3章 商学研究科 -11-
/394
3-2.政治経済学研究科
(1) 教育課程等
(研究科の教育課程)
【目的・目標】
博士前期課程に「研究者養成コース」と「専修コース」を設け,(1)「研究者養成コース」では,博
士後期課程への進学者の増加を図ることを狙いに,各専攻分野において自立した研究活動ができるよう
に資料・文献の読解力や分析能力を高める指導をするとともに,博士後期課程では博士論文を期間内に
作成できるように研究指導体制を整え,課程博士取得の増加を目指している。年2回『紀要論文』を発
行し,審査委員の査読により合格した論文を掲載できる場を提供するとともに,各自の研究テーマをも
とにその成果を発表する機会を与えるため,年1回教員と院生が共同で運営する政治経済学会(「政経
学会」)を開催し,会員相互の学問的な交流を深め研究意識を高めるなどの研究能力の向上や発表能力
の育成に努めている。(2)の「専修コース」では,学部教育だけでは達成することができない高度な資
質と能力の育成と社会に対する確固たる問題意識をそなえた人材の養成を図るとともに,社会人も積極
的に受け入れるなど高度専門職業人の育成にも努めている。
・研究科の教育課程と理念・目的並びに学校教育法第 65 条,大学院設置基準第3条第1項,同第4条
第1項との関連
・「広い視野に立って清深な学識を授け,専攻分野における研究能力又は高度の専門性を要する職業等
に必要な高度の能力を養う」という修士課程の目的への適合性
・「専攻分野について,研究者として自立して研究活動を行い,又はその他の高度に専門的な業務に従
事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養う」という博士課程の目的への適
合性
・学部に基礎を置く研究科における教育内容と,当該学部の学士課程における教育内容の適切性及び両
者の関係
・修士課程における教育内容と,博士(後期)課程における教育内容の適切性及び両者の関係
・博士課程(一貫制)の教育課程における教育内容の適切性
・課程制博士課程における,入学から学位授与までの教育システム・プロセスの適切性
・創造的な教育プロジェクトの推進状況
【現状】
高度職業人の養成と高い能力・資質をそなえた人材の育成を狙って,それぞれ違ったテーマと問題意
識をもった院生同士の交流(講義や演習の機会を借りて)を図ったり,大学の就職部と連携して就職懇
談会を設定したり,
「キャリア・サポート委員会」を設け外部から経験豊かな講師を招き“就職の意味”
を考える機会を与え,それぞれの問題に対する関心を高めるなど積極的に取り組んでいる。再教育を目
的とした社会人に対しては夜間に授業時間帯を置いてキャリア・アップの向上に努めると同時に,ネッ
トエントリーや就職の心得等を内容とした「就職支援講座」を開催している。
研究者養成コースでは今年度の課程博士は4人と昨年度に比べて2名の増加である。「紀要論文」の
投稿者数は昨年に比べて増加しており,「政経学会」の報告者数も増えていることから,ある程度の努
力目標は達成されている。
専攻分野における研究能力を高めるために,「特別講義推進委員会」を設立し,院生のアンケート調
査をもとに,その道の一流の講師(エコノミスト)を招いて連続講義を実施するなど普段の講義・演習
とは違った学問的な関心と刺激を与えている。
博士後期課程では,その在籍期間中に課程博士を取得できるように,3年前に全学的な「研究者養成
型助手」制度を設けた。助手採用には,研究業績書・研究計画書・博士論文概要の提出と審査委員会の
審査・面接という関門があるが,1年間一定額の資金的な支援を行い課程博士が輩出できるような体制
を整えている。その成果は上がってきている。各専攻分野ではそれぞれ担当する教員が研究会を設けプ
レゼンテーションを行わせるなど研究能力を高める指導を行っている。その場に他大学の教員や研究仲
間が参加することにより相互に啓発される研究環境をつくるなど,研究資質を向上させ学会での発表能
力を育成している。
学部には理論・政策・歴史に関係する各専門分野のコース制が開設されており,研究科の教育内容は
学部と連携した教育課程が実践されている。研究科では7月に3,4年生に向けた「大学院進学説明会」
第3章 政治経済学研究科 -1-
/395
を行っている。4月には学部の教育課程を考えて新入生向けにも行う予定である。
博士前期課程に「研究者養成コース」を設けた理由は一貫した教育内容を博士後期課程に繋げるため
である。殊に政治学専攻の後期課程への進学者の増加はその効果の現れといえる。課程博士取得を前提
に「研究者養成型助手」制度が確立され,博士論文を作成するため教員側に複数指導体制が構築されて
いることは,課程博士を輩出するのに適切な仕組みといえる。
【問題点】
現在,博士後期課程では,1年次と2年次に指導教員の演習のみの履修を課しているが,複数指導体
制との整合性がとれていない。また,制度上では3年次の演習の履修については規定していないなど,
カリキュラムの整備が必須である。後期課程への進学者数を増やし合格率を高める努力も必要とされる。
【問題点に対する改善方針】
現在,「将来構想委員会」が設立され,研究科横断的な教育・研究プログラムの設置など長期的な課
題と取り組んでいる
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
単位互換制度の狙いの一つは,各大学がそれぞれ持っている知的な資源を相互に有効活用することに
よって,他大学における研究の水準や研究の進め方や教育のあり方などを学ぶことにより広く学問的な
意識を高めるとともに,こうした交流を通して学識や研究能力を深めることである。
・国内外の大学等と単位互換を行っている研究科にあっては,実施している単位互換方法の適切性
【現状】
現在,首都大学院コンソーシアム,政治学・社会学・経済学関連校間の単位互換制度協定に参加して
いるが,こうした制度を有効に利用する人は少ない。単位互換という相互交流を通して教員や大学間の
学術的な交流ができれば,限られた資源の有効活用となり学問の発展に寄与するものといえるが,現状
では利用者は少ない。理由の一つとして,この制度を利用したくても,他大学側の事情(関係の科目を
履修する人がいない場合)があって聴講できない場合があるからである。外国の大学との交流・提携は
研究科としては行っていない。
【問題点】
相手校の授業に関する情報が不足している。現在,シラバスを交換・公開しているが,さらに情報を
共有するなどの工夫が必要であろう。
【問題点に対する改善方針】
本研究科は,科目配置の多様性を特徴としている。その点で,本研究科在籍院生に対して,積極的に
首都大学院コンソーシアムや単位互換制度の活用を進めることはほとんどなく,本研究科で対応出来な
いような極めてまれなケースにおいて補完的な意味でこれらの制度を利用するものであり,現状程度で
大きな問題とはならない。しかし,他大学の教員を加えた共同研究などへ大学院生も参加させるなど,
教員を媒介にした交流によって情報の共有を図る。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
博士前期課程に「専修コース」を設け,高度専門職業人の育成を目指して,多くの社会人を受け入れ,
社会人の再教育機関としての役割も担っている。今日のグローバル化した社会の中で多様な国際交流を
深め,国際間の人的な交流の場を広め国際理解の一助ともなるように留学生の受け入れの強化と拡大を
図っている。
・社会人,外国人留学生に対する教育課程編成,教育研究指導への配慮
【現状】
社会人の場合,授業時間帯に特別の配慮をし,教員の協力を得て教員間に授業時間を置き,また必要
に応じて基礎学力の向上を図るため学部授業を聴講させる措置をとっている。留学生にはチューター制
を設けて日本人の院生に勉学の支援を行わせているとともに,英語による講義を 10 コマ(政治学研究
第3章 政治経済学研究科 -2-
/396
科8コマ,経済学研究科2コマ)設置して履修の便宜を図っている。チューター制は国際理解に大いに
役立っている。
社会人入学を志願する者には,入試科目で語学を課さず,専門科目と基礎学力を問う科目に絞ってい
る。また,「修士論文」は,「研究報告書」と題している。1・2年次の「演習」は「研究報告書指導」
と呼び,単に「修士論文」に代わるものではなく,社会的経験を踏まえた内容を重視している。なお,
論文の口頭試問は,研究者養成コースと専修コースは全く同一に行っており,レベルの維持を図ってい
る。
【問題点】
教員側の授業時間をどのように調整するか,授業の理解力の差をどのように教育指導したらよいか,
経済学専攻の教員の不足をどう充実させたらよいかなど難しい問題がある。
【問題点に対する改善方針】
教員間の時間の調整を専門分野ごとに話し合う必要がある。理解力の違いは個別に担当できないか,
研究科にも「オフィス・アワー」制度を設けることはできないか将来構想委員会等で検討を行なう。
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
単なる知識の獲得ではなく,社会的な経験を土台に経済・社会・政治のあり方を再吟味し,新たな創
造的な研究活動が推進できるように,社会人の多種多様なニーズに応えた講義科目の充実,社会人向け
の特別入学試験の実施,授業時間帯の夜間設置など受け入れ態勢を整えている。
・社会人再教育を含む生涯学習の推進に対応させた教育研究の実施状況
【現状】
社会人,留学生,
「研究者養成コース」,
「専修コース」の院生など合同の授業があり,
「どの程度理解
したのか」理解力に差が見られるため,教員の指導には一定の配慮と工夫が必要とされる。ただし「受
講生同士のコミュニケーション」がうまく図れれば,それぞれの研究意欲が刺激され,学問追求の大き
なエネルギーとなっている。「自分のテーマ」をどのように見つけるかは重要な仕事の一つである。
【問題点】
社会人入学者の経歴と経験はそれぞれに異なるため,共通の場,共通のテーマ,共通の研究アプロー
チを共有する点で,困難な面も否定できない。
【問題点に対する改善方針】】
一人一人から聞き取り調査をするなど事前の対応に力を入れ,社会人向けの「個人面談」を充実させ
る。
(研究指導等)
【目的・目標】
「研究者養成コース」では,期間内に「課程博士」を取得させることを目的に博士前期課程から博士
後期課程にかけて首尾一貫した研究指導体制をとり,「研究者養成型助手制度」を利用して博士論文の
提出を促進させている。
・教育課程の展開並びに学位論文の作成等を通じた教育・研究指導の適切性
・学生に対する履修指導の適切性
・指導教員による個別的な研究指導の充実度
・複数指導制を採っている場合における,教育研究指導責任の明確化
・教員間,学生間及びその双方の間の学問的刺激を誘発させるための措置の適切性
・研究分野や指導教員にかかる学生からの変更希望への対処方策
・才能豊かな人材を発掘し,その才能に適った研究機関等に送り込むことなどを可能ならしめるような
研究指導体制の整備状況
【現状】
「研究テーマ」の決定から論文作成まで,博士前期課程から後期課程にかけて複数指導体制のもと,
第3章 政治経済学研究科 -3-
/397
指導教員を中心に論文指導に当たっている。研究過程において他大学の院生が参加するような切磋琢磨
する研究の場は学位論文提出の刺激剤になっている。
発表する論文を『紀要論文』に掲載させるかどうかは,指導教授を含めた3人の審査員の査読が必要
であり,論文の掲載は3人の審査員の判定で決まる。
教員間,院生間の研究や学問交流を促進する目的で「政経学会」が設立され,参加者の間の活発な議
論とともに,教員の参加と発言は学問的な刺激を誘発している。研究分野や指導教員の変更希望は研究
科委員会の承認を得て対処している。両者の事情を十分に聴取したうえで,できる限り院生からの希望
に応じている。
「研究者養成型助手制度」が全学的に設けられたことにより,博士後期課程の中から成績優秀者を助
手に採用し,研究支援活動ができるようになったが,博士後期課程在籍者すべてがこの制度に応じられ
る学問的レベルにあるとは言い難い。また,短期内間に研究者養成(学位取得)という大きな目標を実
現するには限界があり,長期的展望が欠かせないが,その点での研究科内での合意が得られていないの
が,現状である。なお,この他に,学術振興会への応募を指導している。
【問題点】
学会誌の掲載などは教員個人の協力によるが,学会誌への投稿や学術振興会への応募の増加を促す必
要がある。
【問題点に対する改善方針】
「研究者養成型助手制度」を活用しながら,研究支援活動の充実を図る。
(2) 教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
健全な教育・研究には成績評価のあり方を検討し,研究心を刺激するような仕組みや研究環境を構築
すると同時に,個々人が本来もっている能力を惹き出すことができるような教育環境を整える必要があ
る。
・教育・研究指導の効果を測定するための方法の適切性
・修士課程,博士課程修了者(修業年限満期退学者を含む)の進路状況
・大学教員,研究機関の研究員などへの就任状況と高度専門職への就職状況
【現状】
個々の教員の評価方法は,基本的に,レポート提出,研究発表・プレゼンテーションの実施などによ
り行われている。修士論文,博士論文の評価は主査・副査の3人の教員の査読により審査が行われるが,
審査委員の評価の判定は研究科委員会の承認が必要とされる。
博士後期課程修了者の5,6名を明治大学の非常勤講師として「外国書講読」を担当させ,教歴を持
たせるようにしている。
博士前期課程から後期課程への進学率はおよそ 30%程度であるが,「コース変更試験」が設けられて
いることから,「研究者養成コース」に変更を希望する院生が年々2,3名前後出ている。これは研究
過程において研究意欲が高まったものとみることができる。
「研究者養成コース」で後期課程に進学しないで,受験勉強をして公務員や税理士,一般教員になる
人や,学部生と同じように企業などに就職する人もいるが,社会人のなかには「専修コース」で学識を
深め「転職する」人も少なくない。大学教員や研究機関へ就任する人は多くはないが,かれらの研究業
績が評価されている実態がうかがわれる。
【問題点】
大学教員・研究機関への就任状況は個々の教員に頼ることが多い。
【問題点に対する改善方針】
「外国書講読」を担当させ,教歴を持たせることや研究者養成助手制度を活用するなど研究科として
組織的な体制づくりをする必要がある。
(成績評価法)
第3章 政治経済学研究科 -4-
/398
【目的・目標】
個々人の研究能力を高めるために,自分の研究テーマを決めること,そのテーマについてどのような
問題意識をもって取り組んでいるのか,問題の所在や動機などを把握し,一体何を主張したいのか,ど
のような意見を持っているのかなど,テーマの選定から資料・文献読み,論文の組み立て方まで一連の
研究手法を習得させることが主な狙いである。
・学生の資質向上の状況を検証する成績評価法の適切性
【現状】
出席を前提(常に問題関心をもって取り組んでいるか)として,課題(レジュメ)の提出状況(文献・
資料の読み方)や発表能力(プレゼンテーション)などを観察し,研究の心構えや取組み方などを総合
的に判断している。
【問題点】
社会人入学者の増加するなかで,社会人の多くが有職者であり,出席重視という評価方法が現実的で
はない面も見逃せない。
【問題点に対する改善方針】
問題関心は個々人によって異なるから,出席者のコミュニケーションを図りながら,理解力と分析能
力を向上させ,自分の意見や主張を伝える訓練がなされているか等を成績評価法に加えることにより,
成績評価法を適切に運用する。
(教育・研究指導の改善)
【目的・目標】
院生の資質や研究能力を高めるには,教員自身の研究・教育指導能力を高めることが必要であり,教
員同士の交流や評価システムを利用した取組みがなされている。
・教員の教育・研究指導方法の改善を促進するための組織的な取組み状況
・シラバスの適切性
・学生による授業評価の導入状況
・学生満足度調査の導入状況
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
・高等教育機関,研究所,企業等の雇用主による卒業生評価の導入状況
【現状】
授業評価制度の導入,全学的なFD委員会主催の研究会への参加,研究科内での教員による研究・教
育サークルの設立など教育・研究の改善方法に取り組んでいる。シラバスは公開しており,これにより
教員同士の授業内容が分かり,それぞれ特色のある専門分野の取組みから啓発される面があると同時に,
院生に対してはこの内容をもとに研究の取組み方や研究の方向などについて指導がしやすくなった。
院生の研究テーマが多様化すると,院生とシラバスとの間に齟齬が生じるため,授業内容をある程度
調整する必要が出ている。
授業評価制度は導入されているが,さらに院生とは定期的に「院生協議会」で会い,院生側の意見や
要望を聴取し研究科委員会で報告している。卒業生評価の制度は導入されていないが,「政経学会」に
は卒業生も参加し,在籍者・教員と意見を交換し合う場がつくられている。
【問題点】
学生の授業に対するニーズは,授業等で院生と接触するなかで把握することを基本的とするものの,
それでも把握しきれない要望をどう収集し,対応するかは,教員個人に任されていることも多い。専攻
会議,研究科委員会等での,教員の情報交換・意見交換には限界がある。
【問題点に対する改善方針】
個々の院生や院生協議会とは,常に話し合える環境をつくり対応しているが,院生の満足度を調査で
きる仕組みについて,院生協議会と話し合いの成果を活用し,より満足の高い教育環境を目指す。
第3章 政治経済学研究科 -5-
/399
(3)
国内外における教育・研究交流
【目的・目標】
国際交流の一層の推進と研究者の養成のためには,外国人留学生の受け入れとともに,英語による講
義科目の増加,さらに後期課程に在籍する院生に対して奨学金を与え留学できるような制度を確立する
必要がある。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の明確化の状況
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
・国内外の大学院間の組織的な教育研究交流の状況
・外国人研究者の受け入れ体制とその運用の適切性
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
・国際的な教育研究交流,学術交流のために必要なコミュニケーション手段修得のための配慮の適切性
【現状】
マレーシア政府派遣留学生やJICA留学生,アジア・アフリカなど国費・私費留学生を積極的に受
け入れている。また,英語による講義科目を設置して対応しているが,科目数はまだ十分とはいえない。
当研究科から協定校への留学の促進や各国政府給費留学生に関する案内など広報活動を行っている。学
生が自ら留学先を探し,研究科が留学を認める認定校留学生は毎年1名は出ている。
大学全体の教育・研究交流には当研究科も参加しており,研究科独自の研究交流も促進している。従
来から個々の教員の申請に基づき外国人研究者を受け入れ,研究室も与えている。
シラバスのインターネットによる公開,「政経学会」への外部からの参加,『紀要論文』の外部への配
布など教育・研究の成果は外部に向けて公表されている。インターネットを利用した教育システム(O
h-o! Meiji)を使って情報は外部に発信されている。
『社会科学研究所年報』や『社会科学研究所紀要
論文』には従来から外国語による論文投稿が認められている。英語による講義科目が開講されており,
コミュニケーションの手段は開かれている。
【問題点】
英語による講義科目が開講されており,コミュニケーションの手段は開かれているものの,英語によ
る科目は限られているうえ,コミュニケーション手段取得の配慮は十分ではない。
【改善方針】
国際交流センターでは外国人留学生とのコミュニケーションを図り日本の文化を理解してもらうた
めに(例えば,日本語スピーチ・コンテストなど)いろいろな機会を設けている。当研究科においても
院生,教員,留学生とのコミュニケーションの場を設けているが,異文化間の理解をいっそう深めるた
めにも留学生向けの「基本科目」を設置することも必要である。
外国人研究者の受け入れ,外国の大学との交流など個人の教員レベルでは活発に行われているが,研
究科として組織的な取組みも必要である。
研究科独自の情報の外部発信については将来構想委員会等で検討中である。
(4) 学位授与・課程修了の認定
(学位授与)
【目的・目標】
博士前期課程では2年以内に学位を取得するよう指導している。後期課程の「課程博士」の取得に関
しては,全学的な「研究者養成型助手」制度を利用して,課程期限内に取得できるよう体制を構築して
いる。
・修士 博士の各々の学位の授与状況と学位の授与方針・基準の適切性
・学位審査の透明性・客観性を高める措置の導入状況とその適切性
・修士論文に代替できる課題研究に対する学位認定の水準の適切性
・学位論文審査における,当該大学(院)関係者以外の研究者の関与の状況
・留学生に学位を授与するにあたり,日本語指導等講じられている配慮措置の適切性
【現状】
博士前期課程の期限内の学位取得は,毎年,80%を超えている。博士後期課程における「課程博士」
の取得は期限内に提出できるよう指導しており,また,複数指導体制の導入により,今年度の課程博士
第3章 政治経済学研究科 -6-
/400
は4名であった。
修士学位論文の審査は,主査・副査の3名の教員による審査を行い,3名の平均評定 70 点以上を合
格としている。
博士論文については,論文受理に先立って政治経済学研究会主催の「研究発表会」での口頭報告が義
務付けられている。受理された論文の審査には研究科委員会で選出された3名の教員が当たり,論文審
査と口頭試問を経た後に,審査員による審査報告が研究科委員会において書面でなされる。その後,一
定の業績開示期間を経て,研究科委員会での投票によって学位授与が決定される。
なお,審査委員に適当な教員が研究科内部に見られない場合,他研究科あるいは他大学の教員が審査
に加わることがある。この一連の手続きは院生に対しても周知される。
2004 年度に「専修コース」に最初の修了者が出たが,修士論文に代わる「研究報告書」が提出される。
この報告書の審査も,水準の適切性を確保するため,修士学位論文の審査に準じる。
留学生の学位取得を容易にするため,チューター制度が設けられ,複数指導体制を取って指導に当た
っている。なお,外国語による論文の提出も認められている。
【問題点】
博士前期課程の修士論文と研究報告書の審査は,論文提出者の増加に伴い,短期間に多量の論文を審
査することが求められている。学年末の多忙な時期に,審査の厳格化と教員の負担増が深刻な問題とな
っている。論文のテーマを優先して審査員を決めているが,特定の教員に集中し,一人の教員がかなり
多くの論文を読むことも起こっている。
【問題点に対する改善方針】
「後期課程」進学率を高め,博士学位の授与件数をいっそう増やすために,審査の時期や審査員の選
抜方法を見直す等,適正化を図る。
(課程修了の認定)
【目的・目標】
早くから自立した研究活動を行うのに必要な能力を育成する機会を優秀な大学院生に提供し,若手研
究者を社会に輩出することを狙っている。学部・大学院の教育連携による学部入学から5年間で修士学
位を授与することにより,大学院進学を拡大する。
・標準修業年限未満で修了することを認めている大学院における,そうした措置の適切性,妥当性
【現状】
政治経済学部在籍中に,大学院設置の講義科目を履修させ,大学院入学後に「単位認定」する制度を
設けている。この制度は,博士前期課程在籍中の負担を軽減し,在籍1年で,終了できるものである。
【問題点】
学部4年次在籍者から大学院科目を履修できるが,この制度の周知徹底が必要である。また,学部4
年次は大学院進学が確定せず,就職活動も併行して行っているケースも多く,授業出席がおろそかにな
ることも懸念される。
【問題点に対する改善方針】
現在のところ,この制度の利用者は極めて少ないが,その原因を解明し,長期的な展望を将来構想委
員会等で検討する。
第3章 政治経済学研究科 -7-
/401
4-2.文学研究科
(1) 教育課程等
(研究科の教育課程)
【目的・目標】
本研究科の教育理念・目的を達せられるよう,最低就学年内に修士論文,博士論文の提出と認定を可
能にする。
・研究科の教育課程と理念・並びに学校教育法第 65 条,大学院設置基準第3条第1項,同第4条第1
項との関連
・「広い視野に立って清深な学識を授け,専攻分野における研究能力又は高度の専門性を要する職業等
に必要な高度の能力を養う」という修士課程の目的への適合性
・「専攻分野について,研究者として自立して研究活動を行い,又はその他の高度に専門的な業務に従
事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養う」という博士課程の目的への適
合性
・学部に基礎を置く研究科における教育内容と,当該学部の学士課程における教育内容の適切性及び両
者の関係
・修士課程における教育内容と,博士(後期)課程における教育内容の適切性及び両者の関係
・博士課程(一貫制)の教育課程における教育内容の適切性
・課程制博士課程における,入学から学位授与までの教育システム・プロセスの適切性
・創造的な教育プロジェクトの推進状況
【現状】
本研究科は上記の理念,及び学校教育法第 65 条,大学院設置基準第3条第1項,同第4条第1項に
則り,博士前期課程は演習科目と講義科目を合わせて 32 単位以上の履修を義務付けている。後期課程
では研究論文指導,特別研究を毎年履修し,学位取得に結びつけるようにしている。理念・目的と各種
条項は遺漏なく関連している。
前期課程では学部の科目の履修を可能にし,学部教育との連続性の上に専攻研究の深化が図れるよう
にしてある。前期課程から後期課程への進学者は定員を超える応募があり,修了者の進路状況に鑑みて
も,前期課程の目的は達成している。
後期課程は学生の研究テーマに即した研究指導を徹底している。従来は論文博士がほとんどであった
が,近年課程博士が徐々に増えてきた。そのための指導の一環として学会発表,レフェリー付学会誌へ
の投稿を奨励し,学内紀要への投稿や学内研究発表会を行っており,課程博士学位取得へのマニュアル
は,専攻ごとに若干違いがあるが,ほぼ整備されている。マニュアルに則った指導が実施されている。
本研究科はすべて学部に基礎を置く専攻であり,大半の大学院生は学部時代の演習・卒業論文指導教
授を大学院における指導教授として選択しており,教育・研究の一貫性が確保されている。他大学から
の進学者についても指導教授の学部設置科目の履修を推奨している。
本研究科では修士課程は現行では 2005 年度新設の臨床人間学専攻だけであり,同専攻の博士課程は
ない。なお,同専攻に関して,2007 年度には博士前期・同後期課程に組織替えする。
臨床人間学専攻以外の専攻では前期課程の演習指導には後期課程学生も参加しており,後期課程の研
究指導には前期課程の学生も参加している。前期・後期を通じた一貫性のある教育・研究指導が実施さ
れている。
課程制博士課程の学位授与に至るまでのシステムやプロセスは前期課程での修士論文提出を受けて,
後期課程では研究論文指導,特別研究を毎年履修し,段階的に学位取得に結びつけるようにしている。
研究者養成助手制度を充実させる(2005 年度 12 人を 2006 年度は 16 人)とともに,後期課程学生には
学会発表,レフェリー付学会誌への投稿を奨励し,学内紀要への投稿や学内研究発表会を行っている。
これらを総合して課程博士取得に向けた指導をしている。2005 年度は課程博士5名を出した。また,大
学は院生のための全学的な就職対策室を設け,就職支援体制を整えた。なお,文学部では博士学位取得
者を積極的に非常勤講師に採用している。
創造的な教育プロジェクトとしては,「文化継承学」は本研究科の特色と考える。専門分野の異なる
学生と教員の研究発表と討議を通して,教員学生ともに他の専門分野への関心を強め,研究交流の必要
性を強く自覚するようになってきた。史学専攻には 2007 年度総合史学専修を前期課程に設置する準備
第3章 文学研究科 -1-
/402
を進めているが,これは従来の縦割り型の研究・教育を克服して,東アジアの観点から日本・中国・韓
国を総合的に研究・教育する専修であるが,日本文学専攻も加わる予定である。また,古代学研究所で
は文部科学省の学術フロンテイア推進事業「日本古代文化における文字・図像・伝承と宗教の総合的研
究」を 2004 年度から実施している。2005・2006 年度石刻文物研究所,文化財研究施設が大型科学研究
費等の助成を受けて,これらに学生がRAとして多数参加している。さらに,2006 年度,教職GPに採
用された。ウィーン大学とは毎年共同で研究発表会を実施している。
【長所】
学内における組織的な対応に加えて,特定課題研究所や学外の関連学会への関与や連携を密にしてい
る。
【問題点】
課程博士は学位取得後の就職が困難である。
「文化継承学」は後期課程だけであり,前期課程にも同様な科目の設置が考えられるが,実状は人手
不足といわざるをえない。
【問題点に対する改善方針】
文系課程博士の学位取得者の就職については,ポストドクターや研究者養成助手等の制度が整いつつ
あるが,学内だけでは対応しきれない。高等学校,図書館,学芸員等においては実状として博士学位取
得者は敬遠される傾向がある。博士学位取得者の就職を推進する国の方針が明示されることを希望する。
外国人留学生の積極的受け入れ,日本人学生の語学力,プレゼンテーション力の強化,向上を図るため
の施策を検討する。とりわけ,2007 年度より大学院共通科目として「英文学術論文研究方法論」と「学
術英語コミュニケーション」が開講される予定であり,本研究科の大学院生も積極的に受講できるよう
な措置を講じる。
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
他の研究科に先駆けて,本研究科はより専門的な研究と学際的な研究の両面を進捗させることを目的
に,他研究科設置科目単位認定や他大学との単位互換制の充実を図っている。
・国内外の大学等と単位互換を行っている大学院研究科にあっては,実施している単位互換方法の適切
性
【現状】
大学院における研究テーマがより専門化・細分化されていることから,他大学院の研究者からの指
導・アドバイスを受けるべく,研究科として 2003 年度より首都圏コンソーシアムに参加し,また,専
攻別に単位互換も実施している。さらに,大学院生の国際交流を促すことも意図して,海外 16 カ国,
30 大学・協定校との単位互換を実施している。また,留学を志向する院生に対して,海外における単位
取得を認定する制度も設けている。
2005 年度に国内の単位互換は 11 大学延べ 40 名に達している。うち,本研究科院生が他大学院で受講
しているのは8大学延べ 21 名であり,他大学院生が本研究科で受講するより多くなっている。また,
2005 年度に海外大学との単位互換は3大学で延べ3名となっている。
【長所】
本研究科院生が他大学で受講する件数が多いことは,単位互換性のメリットを理解していることによ
ると思われる。
【問題点】
国内単位互換に比して,海外との単位互換が低調であり,改善策を検討しなければならない。
【問題点に対する改善方針】
留学を含めて,海外大学との交流が少ない一因として学期制の弊害もあることから,2007 年度にはセ
メスター制度の導入を検討している。
第3章 文学研究科 -2-
/403
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
本研究科では制度的には社会人学生の枠を設置していないが,社会人学生の多い専攻では時間割等で
配慮している。また,外国人留学生に関しては,修学に対する支援を充実する。
・社会人,外国人留学生に対する教育課程編成,教育研究指導への配慮
【現状】
2005 年度より開設された臨床人間学専攻には社会人の進学希望者が多かったことから,必修科目の総
合演習等を6・7時限に配して,履修を容易にしている。外国人留学に関しては,全学的なチューター
制の導入のみであり,研究科として特段の配慮をしていない。
【長所】
7時限制の導入によって,一定程度の配慮を可能にし,大学院生の研究室を専攻別に設置しているこ
とから,留学生はTAを含む他の院生からのアドバイスも得ることができる。
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
社会人を積極的に受け入れるコースを設け,生涯学習対策を充実する。
・社会人再教育を含む生涯学習の推進に対応させた教育研究の実施状況
【現状】
研究科として生涯学習に関しては特段の措置を講じていないが,学部に資格課程として学芸員養成課
程,社会教育主事養成課程を設置しており,これらの課程に係わる教員が,臨床人間学専攻設置科目を
担当している。
本研究科として生涯学習に関しては特段の措置を講じていないが,約 20 名の教員はリバティ・アカ
デミーのコーディネーターや講師として生涯学習に関与している。また,首都圏内で開催されている区
民・市民大学等の講師として多数の教員が参画している。
【長所】
各種の機関や団体からの生涯学習に関する要請に応じるようにしている。
(研究指導等)
【目的・目標】
最短在籍期間中に修士,博士学位の取得を可能なように研究指導を密に実施する。
・教育課程の展開並びに学位論文の作成等を通じた教育・研究指導の適切性
・学生に対する履修指導の適切性
・指導教員による個別的な研究指導の充実度
・複数指導制を採っている場合における,教育研究指導責任の明確化
・教員間,学生間及びその双方の間の学問的刺激を誘発させるための措置の適切性
・研究分野や指導教員にかかる学生からの変更希望への対処方策
・才能豊かな人材を発掘し,その才能に適った研究機関等に送り込むことなどを可能ならしめるような
研究指導体制の整備状況
【現状】
入学時には研究科委員長,大学院委員による共通ガイダンスと専攻・専修別ガイダンスを実施,教育・
研究指導システムの周知を図っている。
博士前期課程では講読に加えた複数年度における演習・論文執筆指導と一貫している。また,後期課
程には 2004 年度より文化継承学を共通選択科目として開設し,特定領域に偏することなく,文化継承
者としての意識を喚起させつつ,学位論文の作成に臨ませている。
専攻によっては合同演習の形態による複数指導がなされているが,指導教授の変更は研究科委員会の
承認も不可欠であり,教育研究指導の責任所在は明らかになっている。
博士請求論文報告会は公開制としており,専門領域を超えて教員,学生や学外研究者も聴講している。
さらに,近年では専攻によっては修士論文に関しても同様な企画がなされている。年間2,3件の研究
第3章 文学研究科 -3-
/404
テーマの変更申請がなされているが,研究科委員会の承認のもとに指導教員の変更をも認めている。
【問題点】
博士後期課程への進学以外の進路に関しては,本人の就職活動や指導教員の人脈による個別的な紹介
にとどまり,研究科としては取組まれてこなかった。
【問題点に対する改善方針】
全研究科が共通して,進路開拓への対策を講じようとしているが,研究所等で研究を継続している修
了者との懇談など本研究科独自に改革検討委員会で検討する。
(2) 教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
博士前期課程では必要単位の取得と修士論文審査合格,後期課程では学位授与請求論文審査合格を最
短期間で実現し,大学等高等教育機関や研究機関へ就任する。
・教育・研究指導の効果を測定するための方法の適切性
・修士課程,博士課程修了者(修業年限満期退学者を含む)の進路状況
・大学教員,研究機関の研究員などへの就任状況と高度専門職への就職状況
【現状】
前期課程においては演習等でなされた研究成果を学内外の学会等で積極的に発表させ,本研究科紀要
等に投稿させている。後期課程でも同様であるが,とくに研究者養成助手に採用された院生は全学公開
発表会における研究発表をノルマ化し,研究指導の効果を対外的に明らかにしている。前期課程修了者
は中等教育分野に就職するケースが多く,後期課程の進学は 20%前後となっている。定員の枠もあり,
最近では他大学の後期課程に進学する院生も増えている。後期課程を修了し,博士学位を取得した院生
は市場が狭いことから高等教育・研究機関の専任職に就職することが困難であり,本学の兼任講師とな
り,求職活動を余儀なくされているケースが多い。また,学術フロンティアの研究プロジェクトに参加
している場合もみられる。
【長所】
修士論文等の評価審査は専攻単位に教員全員によってなされる。後期課程の文化継承学講義の評価に
際しては,専攻を越えて担当教員全員によってなされる。また,研究者養成助手の任用にあたっては,
公募制であり,エントリーした院生のプレゼンテーションと業績評価によってなされている。
【問題点】
現状においても記しているが,後期課程修了者の大学や研究機関への就職が伸びていない。
【問題点に対する改善方針】
学会誌への投稿を促し,研究活動の継続を可能にするため特定課題研究所におけるRAの活用やポス
トドクターの配置を検討する。
(成績評価法)
【目的・目標】
公正な成績評価を実施する。
・学生の資質向上の状況を検証する成績評価法の適切性
【現状】
講義科目に関しては年度末筆記試験を行っているが,大半の科目は演習形式でなされており,研究中
間報告や研究発表によって評価している。また,学会等における口頭発表や学術誌掲載の有無という外
部評価を加味するケースもあり,おおむね適切と判断される。
【長所】
専攻によっては修士論文・博士論文提出への予備論文を課しており,研究の進捗状況を客観的に把握
第3章 文学研究科 -4-
/405
している。
(教育・研究指導の改善)
【目的・目標】
専攻横断的な教育の導入を図る。
・教員の教育・研究指導方法の改善を促進するための組織的な取組み状況
・シラバスの適切性
・学生による授業評価の導入状況
・学生満足度調査の導入状況
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
・高等教育機関,研究所,企業等の雇用主による卒業生評価の導入状況
【現状】
専門領域と隣接領域の接近を図るために,専攻横断型の「文化継承学」が開設されており,2004 年度
より年報形式で『文化継承学論集』を刊行している。また,前述した合同研究発表会も教育・研究指導
の改善促進の一環としている。
講義や演習は受講する院生の研究目的や研究対象によって構成することから,シラバスは概要程度に
とどめている。
2004 年度には全学の統一フォーマットによる授業改善アンケートを実施したが,2005 年度には教員,
院生双方の「馴染まない」という意見から実施に至らなかった。修了生による在学中の評価や雇用主へ
の卒業生評価は導入していない。
【長所】
各専攻ごとに院生協議会を組織しており,それらの要望や申し入れ等には柔軟に応じている。
(3)
国内外における教育・研究交流
【目的・目標】
本研究科には外国文学・演劇や外国語学に関する文学系専攻と外国史や外国事情に関連する史学・地
理学専攻が含まれていることから,教員のみならず大学院生の積極的な国際的な教育・研究交流を促進
する。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の明確化の状況
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
・国内外の大学院間の組織的な教育研究交流の状況
・外国人研究者の受け入れ体制とその運用の適切性
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
・国際的な教育研究交流,学術交流のために必要なコミュニケーション手段修得のための配慮の適切性
【現状】
本研究科として取組んだウィーン大学との交流は,研究科を離れ,全学的な交流へと拡大した。しか
し,研究科としては従来と同様に当面は個別領域の国際交流も推進する基本計画を継続している。2006
年度には日本文学専攻は韓国高麗大学との交流を深め,同大学教授を客員教授とした。ドイツ文学専攻
ではイエーナ大学から教育実習生を受け入れるなど,国際交流に新たな展開を進めた。このように受け
入れ体制の拡充がなされつつある。
院生の国際交流として,2005 年度には受け入れ大学院生9名,派遣大学院生1名にとどまっており,
拡大方途を検討している。
2005 年度の在外研究は長短期を含めて 5 件,研究所特別研究や科学研究費補助等による教員の海外調
査研究活動は7件に達している。こうした学術交流に不可欠なコミュニケーション手段に関しては個人
に委ね,特段の配慮を講じていない。
【長所】
ウィーン大学をはじめ,海外から大学人や研究者を招聘した講演やシンポジュウムなど交流が活性化
している。また,研究科教員の海外における集中講義等も増加している。
第3章 文学研究科 -5-
/406
【問題点】
国際交流が受信型に留まっている傾向を脱せず,また,特定の専攻や教員に偏っている。
【問題点に対する改善方針】
受信型から発信型の国際交流には,国際交流センターと連携しながら,海外協定大学をはじめ外国の
大学へ派遣できる学内システムを形成に努める。また,当面は個人的なコネクションに基づく専攻別交
流(例;フランス文学専攻とランス大学,英文学専攻とハワイ大学,ロンドン大学等)を活性化する。
(4) 学位授与・課程修了の認定
(学位授与)
【目的・目標】
履修最短期間中に必要修了単位数を取得させ,修士・博士の学位を取得させる。
・修士・博士の各々の学位授与状況と学位の授与方針・基準の適切性
・学位審査の透明性・客観性を高める措置の導入状況とその適切性
・修士論文に代替できる課題研究に対する学位認定の水準の適切性
・学位論文審査における当該大学(院)関係者以外の研究者の関与の状況
・留学生に学位を授与するにあたり,日本語指導等講じられている配慮措置の適切性
【現状】
前述したように学位授与件数はここ数年にわたり微増をたどり,2005 年度には修士 63 件,博士7件
(課程5件,論文2件)である。修士は習得単位 36 単位,修士論文 70 点以上で認定され,博士はレフ
リー付論文を含めて学術誌等に3本以上の掲載を内規としており,適切と判断される。
修士請求論文については論文提出後に複数の副査を含めた論文審査および面接試問を行っている。博
士請求論文は提出後に公開発表会を義務付けており,また,審査に際しては副査に学外者を加えること
を慣習としており,これにより透明性・客観性を高めている。
修士論文代替措置は講じていない。また,留学生の学位論文は原則として日本語による執筆であり,
日本語の教育指導は指導教授に一任している。また,これとは別に日本語担当教員による授業を受講す
ることを可能にしている。
【問題点】
履修最低期間中における修士論文の提出率は 85%前後に達しているが,博士論文はきわめて低い。
【問題点に対する改善方針】
課程博士論文提出の基準が徹底しないこともあり,周知徹底を図る。
(課程修了の認定)
【目的・目標】
標準修了年限未満の修了を認める。
・標準修業年限未満で修了することを認めている大学院における,そうした措置の適切性,妥当性
【現状】
制度上では標準修業年限未満で修了可能であるが,現実には皆無である。
【問題点】
この措置に対する院生の理解が不十分である。
【問題点に対する改善方針】
ガイダンス等において周知を図る。
第3章 文学研究科 -6-
/407
5-2.理工学研究科
(1)
教育課程等
(研究科の教育課程)
【目的・目標】
本研究科は,理工学部と合同で理念・目的・教育目標及び人材の養成を進めるべく,2年間の検討を
踏まえたI-MAST構想の具体化を開始した。I-MAST構想の示す理念を集約すると以下のよう
である。
(1) 豊かな人間性,正しい倫理観,基礎知識と幅広い教養を有し,優れたリーダーシップを有し,世界
平和に貢献できる人材を養成する。
(2) 理工系基礎の実力を有し,多様な価値観を許容し,明朗で感性豊かな職業人・社会人を養成し,社
会に貢献する。
(3)「個」を強くし,世界で「オンリーワン」の研究者を育成し,その成果を広く情報発信する。
・研究科の教育課程と理念・目的並びに学校教育法第 65 条,大学院設置基準第3条第1項,同第4条
第1項との関連
【現状】
I-MAST構想に掲げる大学院研究科の使命及び目的・教育目標は,学校教育法,大学院設置基準
を遵守したうえで,本学の独自性を打ち出して設置しており,密接な関連がある。ただし,教育課程と
しては未完である。
【長所】
一方で,修士・博士(課程)の学位取得者が年々増加している。また,社会人大学院生の数も増加し
ている。
【問題点】
教育方法は,教員個人の多面的な努力により実施されている。しかし,その教育方法が学生にとって
望ましいものであるか,否かについては共通認識が確立されていない。また,指導教員数と指導学生数
については,他研究科と比して,1指導教員あたりの担当学生数と講義科目数,指導学生数とも多く,
教員の負担増となっている。現状のままでは教育の質の低下を惹起する恐れもある。
【問題点に対する改善方針】
I-MAST構想に掲げる大学院研究科の使命及び目的・教育目標を実現するための学際的・横断的
な履修が可能なカリキュラムを2年以内に改定する。また,2年以内にFDを実施し,学生の要望を幅
広く聴取するとともに,教員の資質向上を図る。さらに早急に学生数に見合った教員の増員が必要であ
る。
・「広い視野に立って清深な学識を授け,専攻分野における研究能力又は高度の専門性を要する職業等
に必要な高度の能力を養う」という修士課程の目的への適合性
【現状】
専攻分野においては専門的な職業人としての養成が十分に行われており,修士課程の目的に適合して
いる。
【長所】
高度な専門性を有する能力を養う点については,長所といえる。
【問題点】
専門分野に偏重し(いわゆる,タコツボ),多分野との有機的な連携能力に欠ける例が見受けられる。
【問題点に対する改善方針】
専攻間の流動性を高くし,学際的な分野の科目履修が容易となるようなカリキュラムの改定を2年以
第3章 理工学研究科 -1-
/408
内におこなう。また,ダブルメジャーの学生養成コースの設置準備を開始する。
・「専攻分野について,研究者として自立して研究活動を行い,又はその他の高度に専門的な業務に従
事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養う」という博士課程の目的への適
合性
【現状】
学位取得者のほとんどは,大学,企業等に採用され,研究者として活躍している現状から判断して,
博士課程の目的に適合しているといえる。
【長所】
目的に適合する能力を身に付ける教育研究体制が取られている。
【問題点】
本研究科の学生は幅広い学識を有しているといえるが,なかには対応の幅が限定されている者も見受
けられる。
【問題点に対する改善方針】
科目等履修制度等を活用し,多分野の講義科目の積極的な履修を教員が指導する。また,ダブルメジ
ャーの学生養成コースの設置準備を開始する。
・学部に基礎を置く研究科における教育内容と,当該学部の学士課程における教育内容の適切性及び両
者の関係
【現状】
I-MAST構想に掲げる大学院研究科の使命及び目的・教育目標を実現する6年一貫教育の計画が
緒についたばかりで,ある意味では試行錯誤の段階である。学部課程の境域内容の適切性に関する評価
は,数年待つ必要がある。
【長所】
学部学生への大学院科目の先取り履修を積極的に推奨している。
【問題点】
先取り履修において,他専攻・領域横断科目の履修実績があまりあがっていない。
【問題点に対する改善方針】
6年一貫教育の計画であるため,特に学部学生の大学院科目を先取る履修に関して,領域横断的な科
目の履修を指導していく。
・修士課程における教育内容と,博士(後期)課程における教育内容の適切性及び両者の関係
【現状】
両者の教育内容は深く関連しており,適切に設定されている。
【問題点】
文理融合・領域横断という観点からは,理工に重心を置きすぎている感がある。
【問題点に対する改善方針】
新専攻の設置に向けて,他専攻及び人文科学・社会科学系の科目の教育にも配慮した教育内容となる
よう適切化を図る。
・博士課程(一貫制)の教育課程における教育内容の適切性
【現状】
教育内容と研究活動は密接に関連しており適切であるが,他専攻分野の履修状況や学際領域分野の科
目設置が少ない。
第3章 理工学研究科 -2-
/409
【長所】
研究に関する教育内容に適している。
【問題点】
一貫性の利点である「ゆとりある・魅力ある教育内容」に欠ける点がある。
【問題点に対する改善方針】
タコツボ的な教育に陥らないよう科目設置や履修指導等を教学委員会等で検討する。
・課程制博士課程における,入学から学位授与までの教育システム・プロセスの適切性
【現状】
学位授与までのプロセスは適切であるが,学位授与の総数が少ない。
【長所】
研究者養成型助手の採用数は 36 名に増員され,進学志望者に対する在学中の経済的支援も準備され
ている。
【問題点】
他大学への進学者の数のほうが多い。
【問題点に対する改善方針】
本研究科への進学を増加させるために専任助手としての採用,給費奨学金等の入学から学位取得まで
のロードマップを示し,後期課程への進学者の増加を図る。
・創造的な教育プロジェクトの推進状況
【現状】
基礎理工学専攻数学系において,伝統的な数学の研究のみでなく経済学やファイナンス等の実社会が
解明を必要としている問題に対しての解決力を養成する「社会との関わりを重視したMTS数理科学教
育」が 2005 年度「魅力ある大学院教育」イニシアティブ(GP)に採択されるなど部分的な取組みは
なされてはいるものの,本研究科全体としてのプロジェクトの推進までには至っていない。
また,外部講師による特別講義を定期的(2005 年度は7回)に実施した。
【問題点】
専攻間を横断的に連携した教育プロジェクトが推進されていない。
【問題点に対する改善方針】
現在教員があるいは専攻が独自で行っているプロジェクトを,有機的に連携することで創造的なプロ
ジェクトを立上げる。
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
首都大学院コンソーシアムや大学院数学連絡協議会による単位互換だけでなく,地域性を重視した単
位互換制度を発足させることにより,より積極的に学生が利用できるような環境を整える。
・国内外の大学等と単位互換を行っている研究科にあっては,実施している単位互換方法の適切性
【現状】
数学連絡協議会(2001 年度)と首都大学院コンソーシアム協定(2003 年度)に加盟し,単位互換を
行っている。これらにおける単位互換方法は適切である。
【長所】
科目等履修生制度により取得した講義科目単位も認定している。
【問題点】
第3章 理工学研究科 -3-
/410
互換方法は適切であるにもかかわらず,この制度を活用する学生数が少ない。
【問題点に対する改善方針】
今後も,国内外の他大学大学院との単位互換制度を拡充し,特に,小田急線沿線の大学院との単位互
換の検討を積極的に行う。また,学生がこの制度を活用するように積極的に働きかける。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
社会人学生に対しては,企業における経験や成果を評価することにより,短期間で学位取得できるよ
うにロードマップを提示する。
・社会人,外国人留学生に対する教育課程編成,教育研究指導への配慮
【現状】
社会人に対しては,早期に博士の学位を取得できるよう,企業等での経験と業績を積極的に評価して
いる。外国人留学生に対しては,その申し出に応じて,日本人チューターを配置している。
【長所】
チューター制は,教育・研究のみならず,学生生活全般において,有効に利用されている。
【問題点】
チューターの数が十分ではない。
【問題点に対する改善方針】
社会人の履修を考慮した時間割,科目配置等を検討する。社会人向けの広報活動も,積極的に行う。
外国人留学生については,奨学金制度の充実を図る等,国際交流センターや学生部等の関係機関と連携
して改善していく。
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
生田校舎という立地条件において,生涯学習講座等の開設は厳しいため,本学のリバティ・アカデミ
ー等の講座に対して積極的に教員が参加することにより自然科学分野に関する知識の普及に貢献する。
・社会人再教育を含む生涯学習の推進に対応させた教育研究の実施状況
【現状】
リバティ・アカデミーにおいて,社会人を対象としたセミナー,シンポジウム等を開催している。ま
た,秋葉原サテライトキャンパスにおいて講演・講習・セミナー等が開催されている。
【長所】
社会人対象セミナーにおいては,多くの参加を得た。
【問題点】
生田地区という立地条件のため実施の実績がやや乏しい。また,科目等履修生については,制度はあ
るものの,社会人の履修実績は多いとは言えない。
【問題点に対する改善方針】
駿河台地区に立地するリバティ・タワー,アカデミーコモン,秋葉原サテライトキャンパスを活用し,
生涯学習の推進に対応する。
(「連携大学院」の教育課程)
【目的・目標】
現状において,3研究機関と連携大学院協定を結んでいるが,派遣学生と連携研究機関の増加を図る
ことにより,より幅広い知識が必要となる学際的・総合的研究が行えるようにする。
第3章 理工学研究科 -4-
/411
・研究所等と連携して大学院課程を展開する「連携大学院」における,教育内容の体系性・一貫性を確
保するための方途の適切性
【現状】
「NTT物性科学基礎研究所」,
「独立法人海洋研究開発機構」,
「三菱電機デザイン研究所」と連携大
学院協定を締結し,本研究科の体系的で一貫している研究活動を補完しており,教育・研究効果が高ま
っている。
【長所】
社会連携の推進にも寄与している。
【問題点】
派遣学生が多いとはいえない。
【問題点に対する改善方針】
派遣学生数と協定研究機関の増加を図り,よりいっそう教育・研究効果を高めていく。
(研究指導等)
【目的・目標】
専門分野に関する知識について深い理解を持たせるように指導することは言うまでもないが,一方で
専門分野にのみ知識が偏ることのないようにバランスのとれた研究者育成を重視した研究指導を行な
う。
・教育課程の展開並びに学位論文の作成等を通じた教育・研究指導の適切性
【現状】
適切に展開している。修士・博士のいずれの課程においても,適切な指導が行われている。
【長所】
とかくタコツボ的になりがちではあるが,学位論文の作成には適した指導である。
【問題点】
一部にタコツボ的な教育が散見される。また,学生も専門以外の教育に関する関心が薄い。
【問題点に対する改善方針】
境界領域や学際領域又は関連分野に関する知識の重要性についての共通認識を教員・学生に抱かせる
よう教育資質開発委員会等で検討する。
・学生に対する履修指導の適切性
【現状】
適宜履修指導を行っているが,担当指導教員の科目に特化した履修となる傾向がみられる。
【長所】
専門に特化した場合は,長所といえる。
【問題点】
専門に偏りすぎた履修と判断される場合もあり,広い視野に則って,履修指導に当たる必要がある。
【問題点に対する改善方針】
境界領域や学際領域又は関連分野に関する知識の重要性を認識し,履修指導を行うよう教育資質開発
委員会等を通じて教員に周知する。
・指導教員による個別的な研究指導の充実度
【現状】
指導する大学院学生数が多くなり,従来に較べてきめ細かい研究指導が困難となりつつある。また,
第3章 理工学研究科 -5-
/412
研究室・実験室の狭隘さも,要因の一つである。
【長所】
きめ細かな指導が困難となりつつあるなかで,教員は真摯に対応しており,他大学に較べた場合,個
別指導の充実度はかなり高い。
【問題点】
所属学生数,研究室・実験室の狭隘さが問題である。
【問題点に対する改善方針】
教員の増員と教育・研究施設の拡充については「年度計画書」に基づいて改善を図る。
・複数指導制を採っている場合における,教育研究指導責任の明確化
【現状】
基礎理工学専攻では,情報科学系・数学系・物理学系において,相互補完の体制をとっている。
【問題点】
複数指導制を採用している例が少ない。
【問題点に対する改善方針】
タコツボ的教育・研究を解消する必要がある分野については,教育・研究活動の効果を高めるよう複
数指導制の導入を教学委員会等で検討する。
・教員間,学生間及びその双方の間の学問的刺激を誘発させるための措置の適切性
【現状】
本研究科としては,そのような措置が取られていない。
【改善方針】
文理融合型・領域横断型の新専攻を設置するとともに,学部教育との連携についての見直しを教学委
員会等を中心に検討する。
・研究分野や指導教員にかかる学生からの変更希望への対処方策
【現状】
4月期には,指導教員の変更が可能であり,適切に対処している。
・才能豊かな人材を発掘し,その才能に適った研究機関等に送り込むことなどを可能ならしめるような
研究指導体制の整備状況
【現状】
連携大学院の開設に加えて,学術の発展と人類の福祉に貢献することを目的として,学内・外の研究
者等と共同又は連携し,総合的かつ学際的な共同研究の推進を図るために,特定課題研究所を設置する
ことが可能となった。この制度による研究機関への送り込みの実績は,来年のこととなる。
【長所】
特定課題研究所において,教員・RA・企業・外部研究機関が共同研究し,社会連携を推進している。
(「連携大学院」における研究指導等)
【目的・目標】
現状において,3研究機関と連携大学院協定を結んでいるが,派遣学生と連携研究機関の増加を図る
ことにより,より幅広い知識が必要となる学際的・総合的研究が行なえるようにする。
・「連携大学院」における,体系的な研究指導等を確保するための方途の適切性
【現状】
NTT物性科学基礎研究所との連携大学院方式による教育研究協定を締結した。2003 年度在籍者から,
第3章 理工学研究科 -6-
/413
客員教授(連携大学院)の任用と大学院学生の派遣を開始した。また,2004 年度から海洋研究開発機構
と,また 2005 年度から三菱電機デザイン研究所との協定に基づく学生派遣が実施されている。各研究
室からの学外研究施設への学生派遣は本研究科委員長に報告されている。
【長所】
最新の施設・設備等を用いた先端技術の研究が可能となるなど,成果への期待は大きい。
【問題点】
連携先の絶対数が少ない。
【問題点に対する改善方針】
現状にとどまらず,各種研究機関との交流協定の拡充を推進する。また,客員教授制度(連携大学院)
の学内制度を整備することや,新たな連携大学院方式による交流等を研究委員会等で検討する。
(2)
教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
教員側の効果測定法システムを構築するとともに,学生の意見を組み入れた効果測定方法を構築する。
・教育・研究指導の効果を測定するための方法の適切性
【現状】
教育・研究指導の効果については,修士論文・博士論文等の審査結果から判断しており,指導は効果
的に行なわれている。
【問題点】
FDの採用が実施されておらず,指導の効果の測定および学生の評価は不明である。
【問題点に対する改善方針】
学生の発表論文の質・数を研究指導の効果と評価を制度的に実施するための評価システムの構築を急
ぐ。また,FDを早急に導入する。
教育効果測定のためのFDの実施及びそれに基づく教育改善を実施する(1年以内,2007 年度目標)。
すでに本研究科に設置されている「FD委員会」の答申(2006 年度内に答申が出される)を受けて,2007
年度に実施する。同時に,研究指導の適否について学生の意見を幅広く聴取する制度を設置する。
・修士課程,博士課程修了者(修業年限満期退学者を含む)の進路状況
【現状】
博士前期課程修了者の殆どは,高度専門職業人として,企業の研究機関などに就職している。博士後
期課程修了者は,大学教員などアカデミックポジション,PD,学術振興会特別研究員,企業の研究機
関などに就職している。
【問題点】
アカデミックポジションへの進路が少ない。
【問題点に対する改善方針】
本学の就職部に加え,指導教員と連携した進路の開拓し,アカデミックポジションへの就職者の増加
を図る。
・大学教員,研究機関の研究員などへの就任状況と高度専門職への就職状況
【現状】
博士学位取得者は,国立大学,私立大学,研究機関等に採用されているが,その数は必ずしも多くな
い。
【問題点】
第3章 理工学研究科 -7-
/414
学位取得者の数が増えているが,求人の絶対数が少ない。
【問題点に対する改善方針】
民間研究機関への就職を積極的に展開する。また,学位取得後も研究者として在籍できる制度等を設
け,より良い就職先の選択を可能とする。
(成績評価法)
【目的・目標】
学生の資質向上に資する評価方法をシステムとして構築する。
・学生の資質向上の状況を検証する成績評価法の適切性
【現状】
成績評価は,教員個人の裁量で行なわれており,本研究科全体としての制度はない。
【問題点】
GPA制度が導入されていない。
【問題点に対する改善方針】
早急にGPAを導入し,公正化と厳格化を図る。
(教育・研究指導の改善)
【目的・目標】
教育・研究指導の改善を促進するため,早急に授業改善アンケートを実施する環境を整える。授業評
価システムを構築することにより,とりわけ教育改善を行なうことを目指す。
・教員の教育・研究指導方法の改善を促進するための組織的な取組み状況
【現状】
教員の質の向上に資するため,教員自己点検評価システムを 2005 年度に採用し,外部評価を受けた。
教員全員に「教員自己点検評価」を義務付けて提出を求めたところ,提出率は 100%であった。この評
価結果を受けて,改善への取組みを開始したところである。また,FD委員会を設置し,教育改善に係
わる検討も開始することとした。
【問題点】
個々の取組みはなされているが,組織的とは認められない範囲である。
【問題点に対する改善方針】
FDの導入,首都大学院コンソーシアム等での意見交換等を踏まえた組織的取組みを早急に開始する。
教育効果測定のためのFDの実施及びそれに基づく教育改善の実施(1年以内,2007 年度目標)。す
でに本研究科に設置されている「FD委員会」の答申(2006 年度内に答申が出される)を受けて,2007
年度に実施する。同時に,研究指導の適否について学生の意見を幅広く聴取する制度を設置する。
・シラバスの適切性
【現状】
学部に較べてシラバスの充実度が低い。現在は,個々の教員の判断により,シラバスを記載している
に過ぎない。
【問題点】
シラバスは組織として統一的に記述されていない。その意味ではやや不適切である。
【問題点に対する改善方針】
境界領域・学際領域・文理融合,等の観点に立てば,シラバスの充実は,学生にとって科目選択の際
の重要な情報となることから,研究科として統一的なものとなるようシラバスの作成マニュアル・記述
方法等を教学委員会等で早急に検討する。
第3章 理工学研究科 -8-
/415
・学生による授業評価の導入状況
【現状】
大学院においても,一部授業改善アンケートの実施を試みている教員がいるが,組織としては実施し
ていない。
【問題点】
学生の授業評価を反映するシステムがない。
【問題点に対する改善方針】
GPAとFDの導入を活用した授業評価システムを教学委員会等で早急に検討する。
・学生満足度調査の導入状況
【現状】
部分的な試行段階としての調査に着手し始めた段階である。
【問題点】
タコツボ的教育の感が強く,学生の満足度を知る機会がほとんどない。
【問題点に対する改善方針】
タコツボ的教育の改善や学生の満足度を収集する満足度調査を早急に実施すべきである。
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
研究室の同窓会,ホームカミングデー等を通じて一時的な聴取はしているが,システムとしては導入
していない。
【問題点】
卒業生や学外者からの評価に対する対応について全体的にシステム化がなされていない。
【問題点に対する改善方針】
外部評価の一環として位置づけ,システム導入のための具体的な検討を第三者評価委員会等で早急に
着手する。
・高等教育機関,研究所,企業等の雇用主による卒業生評価の導入状況
【現状】
卒業生評価システムを導入していないが,上場企業に対するアンケートを掲載した刊行物等により,
卒業生を評価している。
【問題点】
外部評価については,全体的にシステム化がなされていない。
【問題点に対する改善方針】
現状の形がより外部評価に近いと判断するが,独自の評価方法を就職指導委員会等で検討する。
(3)
国内外における教育・研究交流
【目的・目標】
国際社会に広く情報発信し,海外の大学・研究機関との交流を推進する。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の明確化の状況
【現状】
現在交流を行っているマレーシア,ラオスとの国際学術交流を推進することやフィンランドの大学と
の国際交流の実現を目指すという目標がI-MAST計画に掲げられている。
第3章 理工学研究科 -9-
/416
【問題点】
国家事業への協力と参加であるが,明治大学・本研究科とも戦略と展望に欠ける。
【問題点に対する改善方針】
明確な戦略と展望をもとに,海外派遣を視野に入れた計画を策定する。
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
【現状】
一部の教員個人レベルで進められてはいるが,組織的に対応していない。
【問題点】
国際交流センターとの連携を円滑に図る必要がある。
【問題点に対する改善方針】
国際レベルでの教育研究交流が組織的に推進されるよう,国際交流センターとの連携を円滑にする。
・国内外の大学院間の組織的な教育研究交流の状況
【現状】
単位互換協定数学連絡協議会や首都大学院コンソーシアムにより,他大学院との交流を深めている。
【問題点】
全専攻での交流実績は非常に乏しく,国外の大学院との組織的な交流はない。
【問題点に対する改善方針】
次のように他大学院との交流を進め,交流実績と交流数を高める。
ア.現在交流を進めているマレーシア,ラオスとの国際学術交流をさらに推進する。
(2007 年度以降
も継続)
ラオス私費留学生に対する給費奨学金が本研究科に設置され,すでに給費されている。
イ.フィンランドの大学との国際交流の実現を目指す。(2年以内,2008 年度目標)
現在,日本フィンランド協会を通じて内々の交渉が進められている。
・外国人研究者の受入れ体制とその運用の適切性
【現状】
受け入れている外国人研究者の数は少ない。
【問題点】
施設・スペース・費用等の受け入れ環境が不十分である。
【問題点に対する改善方針】
外国人研究者専用の研究施設,スペース,費用等については「年度計画書」により改善を図る。
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
【現状】
教員及び学生は,海外も含めて積極的に研究成果を発表している。
【長所】
発表の機会が多い。
【問題点】
専攻により海外発表の数が少ないところがある。
【問題点に対する改善方針】
第3章 理工学研究科 -10-
/417
国際会議等,海外への情報発信を積極的に推進すべきである。
・国際的な教育研究交流,学術交流のために必要なコミュニケーション手段修得のための配慮の適切性
【現状】
本研究科では,英語教育には実績があり,授業科目・学会等で,優れた成果をあげている。
【長所】
授業以外でも,教員個人レベルで指導している。
【問題点】
論文のレベルは高いが,プレゼンテーションに力不足の点がある。
【問題点に対する改善方針】
プレゼンテーションに関する授業科目・演習科目の設置を考え,教育研究交流に必要なプレゼンテー
ション能力の改善を教学委員会を中心に図る。
(4) 学位授与・課程修了の認定
(学位授与)
【目的・目標】
課程博士の学位授与を増加させるため,学生に対して学位取得までの明確なロードマップを提示する。
博士後期課程入学と同時に,目標を定め,学位取得のために確固たる意志を持たせるように導く。
・修士 博士の各々の学位の授与状況と学位の授与方針・基準の適切性
【現状】
修士・博士とも学位の授与者は増加している。博士課程の進学者数・学位取得者の数と研究者養成型
助手の採用枠との間には,相関性が認められている。
2005 年度にこれまで取得していた修士(工学・理学)の学位に加えて,修士(学術)を発行する認可
を得た。
【長所】
社会人の大学院(博士課程)への進学者が増している。
【問題点】
授与方針等は適切であるが,課程博士の学位授与者数がやや少ない。
【問題点に対する改善方針】
課程博士の学位授与者数の増加を教学委員会等で検討する。
・学位審査の透明性・客観性を高める措置の導入状況とその適切性
【現状】
学位授与の基準は,指導教員の研究指導の下で学会論文を掲載することが内規で明確にされていると
同時に,学生へも周知徹底されている。
・修士論文に代替できる課題研究に対する学位認定の水準の適切性
【現状】
専攻によっては(建築学専攻),論文に替わって修士設計を科しているところもあり,適切といえる。
・学位論文審査における,当該大学(院)関係者以外の研究者の関与の状況
【現状】
必要に応じて副査として,本学以外の研究者などに,論文審査を依頼している。
・留学生に学位を授与するにあたり,日本語指導等講じられている配慮措置の適切性
【現状】
第3章 理工学研究科 -11-
/418
チューター制が導入されており,配慮はほぼ適切といえる。
(課程修了の認定)
【目的・目標】
修業年限未満であっても,学業・研究において抜群な成果を収めた学生には,学位を授与する。
・標準修業年限未満で修了することを認めている大学院における,そうした措置の適切性,妥当性
【現状】
専攻によっては,学部からの「飛び入学試験」を認め,修士課程1年修了時に修士の学位を授与して
いる。後期課程に入学した社会人学生には,積極的な導入を推進している。
【長所】
現時点では有効に機能している。実務経験に富んだ社会人学生には有効な措置である。
【問題点】
必ずしも飛び入学試験の趣旨が活かされているとは言い難い面も内在している。
【問題点に対する改善方針】
社会人博士後期課程学生については,制度適用を拡大する。博士前期課程についても,社会人を対象
に具体的な検討を入試委員会等で開始する。
第3章 理工学研究科 -12-
/419
6-2.農学研究科
(1) 教育課程等
(研究科の教育課程)
【目的・目標】
人類の食糧,環境,保健に資するために,総合的な生命科学の深い理解に基づく,地球共生環境およ
び生物先端科学技術の基盤開発に関する教育研究を行い,国際レベルの人材を養成することを目標とし
ている。博士前期課程では,総合科学を駆使して問題を解決する高度な職業人養成を,博士後期課程で
は,新しい農学を創造する研究者,教育者を養成することを目標としている。
研究科では,専門性を高める一方で4専攻の枠を超えた他専攻の科目履修を可能とし,広い知識を身
につけることを推奨している。また,兼任講師の採用に当たっては,第一線で活躍する教員の採用に務
め,本研究科専任教員だけではカバーしきれない先端的な分野の吸収にも努めている。
・研究科の教育課程と理念・目的並びに学校教育法第 65 条,大学院設置基準第3条第1項,同第4条
第1項との関連
【現状】
本研究科の博士前期課程は,前述の研究科の理念,目的,教育目標及び「広い視野に立って精深な学
識を授け,専攻分野における研究能力又はこれに加えて高度の専門性が求められる職業を担うための卓
越した能力を培うことを目的とする」との大学院設置基準に対応した教育課程の構築を進めてきた。4
つの学問分野からなる系列を配置し,履修は原則として2年以上在学,30 単位以上の履修・取得を要件
としている。この内訳は専修科目である講義・演習 12 単位を必修とし,専修科目以外の講義・演習・
文献研究 18 単位を選択としている。
修士学位請求論文は,指導教授による必要な「研究指導」を受けた上,専修科目によって作成・提出
するものとなっている。
博士後期課程は,前述の研究科の理念,目的,教育目標及び「専攻分野について,研究者として自立
して研究活動を行い,又はその他の高度に専門的な業務に従事するに必要な高度の研究能力及びその基
礎となる豊かな学識を養うことを目的とする」という大学院設置基準に対応して,専修科目の担当者で
ある指導教授による研究指導を受け,研究上必要と認められるときは,授業科目を履修することができ
る。
【長所】
幅広い学際性と深い専門性の両立が可能となっている。
・「広い視野に立って清深な学識を授け,専攻分野における研究能力又は高度の専門性を要する職業等
に必要な高度の能力を養う」という修士課程の目的への適合性
【現状】
本研究科の4つの系列は幅広い分野をカバーしており,修士課程の目的に適合している。さらに技術
経営特論といった科目が新規で開講されている。
【長所】
幅広い学際性と深い専門性の両立が可能となっている。
・「専攻分野について,研究者として自立して研究活動を行い,又はその他の高度に専門的な業務に従
事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養う」という博士課程の目的への適
合性
【現状】
博士後期課程においても,特殊研究科目の単位履修制度を導入し,これに対応している。
【長所】
指導教授のみならず関連の教授(特に副査予定者)の授業をとることは,有益である。
第3章 農学研究科 -1-
/420
・学部に基礎を置く研究科における教育内容と,当該学部の学士課程における教育内容の適切性及び両
者の関係
【現状】
学部では,自然と人間との調和を図り,21 世紀の諸問題に対処し,生命全般や地球的な環境問題の解
決に貢献できるような応用・発展性のある人材を育成する目標をもっている。
この目標は,本研究科と同一である。当然,学士課程の教育内容をより発展したものとして研究科の
教育内容が設定されている。学部,修士課程の一貫体制が十分でなかったが,それらの整合性を図ると
ともに,優秀な学部生について前期課程特論の履修を可能とする条件の検討など組織的な取組みを開始
した。
【問題点】
学部から大学院に進学する学生数は増加しているが,まだ,全体に占める割合は少ない。
【問題点に対する改善方針】
2006 年度から定員増を行ったので,大学院進学者の増加を一層促すために,学部と大学院を一体化す
るような教育内容を検討し,教育内容に連続性を持たせる取組みについて,学部との協議の場を設ける。
本研究科への進学を促進するために,3年次進級ガイダンスなどにあわせて進学ガイダンスを開始す
る。
・修士課程における教育内容と,博士(後期)課程における教育内容の適切性及び両者の関係
【現状】
博士前期課程では,講義科目と演習科目が設定されている。前者は幅広く選択可能であって,多様な
講義を受けることができる。後者では,指導教員により専門的な教育を受けることができる。博士後期
課程では,研究指導が設定されており,より専門性を深めることができる。本研究科の教育目標を達成
するために教育内容は適切であり,博士課程両者には連続性がある。
2005 年度から始めた進学・就職ガイダンスをさらに充実する。
・博士課程(一貫制)の教育課程における教育内容の適切性
【現状】
適切である。博士後期課程への進学者のほとんどは,本学の博士前期課程の修了者であり,指導教授
制のもとで一貫した研究指導を受けている。
・課程制博士課程における,入学から学位授与までの教育システム・プロセスの適切性
【現状】
学位授与までの教育システム・プロセスは,基本的に指導教員に任されているが,課程博士を毎年輩
出しており,教育プロセスは適切であると判断される。
【問題点】
就業年限内で学位を取得できない学生がいる。
【問題点に対する改善方針】
修業年限内での学位取得をより促進するために,最適な教育プロセスのあり方を考えるワーキンググ
ループ等を研究科内または専攻内に設ける必要がある。
・創造的な教育プロジェクトの推進状況
【現状】
国内外若手研究セミナーを開催した。外部講師による特別講義を定期的(2005 年度5回)に実施した。
【問題点】
特別講義は増加させることを要求したいが,予算上の問題点がある。
【問題点に対する改善方針】
今後も特別講義ができるように,科学技術研究所等と連携し,「年度計画」に従って改善を図る。
第3章 農学研究科 -2-
/421
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
本研究科では,カリキュラムが充実しているので,単位互換制度を特に必要としない。しかし,世間
の趨勢に対応するために,ある程度の互換性を持たせるようにしている。
・国内外の大学等と単位互換を行っている大学院研究科にあっては,実施している単位互換方法の適切
性
【現状】
2004 年度から,首都大学院コンソーシアム及び神奈川県内大学院学術交流により他大学大学院と単位
互換を開始した。
【問題点】
首都圏大学院コンソーシアム学術交流の制度が実施されたが,現状ではこの制度が十分に活用されて
いない。
【問題点に対する改善方針】
院生にこの制度の活用を促し,またこの制度の運用に当たっての問題点を検討する。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
指導教員のレベルで,可能な範囲で社会人学生,外国人留学生への教育上の配慮をおこなうのが理想
的である。一般論として,特別な制度を設けることは,student/teacherratio の高い現状からみて,一
般学生に対する教育の質の低下を招く恐れがあり,現実的ではない。
・社会人,外国人留学生に対する教育課程編成,教育研究指導への配慮
【現状】
研究科としては特に行っていない。担当指導教員が配慮している。これまでに複数の社会人,外国人
の博士学位取得者を輩出しており,適切な配慮が行われている。
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
生涯学習は大切であるが,特別のプログラムを組む時間的な余裕が現在の教員規模では困難であり,
希望者には社会人枠で対応するべく努力をしている。
・社会人再教育を含む生涯学習の推進に対応させた教育研究の実施状況
【現状】
研究科では特別にないが,リバティ・アカデミー,研究所シンポジウムにおいて,大学院担当教員が
積極的に立案,開講に参画している。
【問題点】
特設講座の開設には,教員の補充,管理運営体制の強化などが必要不可欠となっている。
【問題点に対する改善方針】
教員増など,生涯学習の推進体制の整備を図る。
(研究指導等)
【目的・目標】
本研究科の理念・目的に沿う学生の輩出を目的としている。しかしながら,学生個人の意欲とエネル
ギーレベルには,かなりの差があり,研究指導は,各院生の勉学意欲や研究の能力に対応して行うこと
を目標としている。高いレベルで研究科の理念を達成するには,優れた学生を受入れることが非常に重
要である。
第3章 農学研究科 -3-
/422
・教育課程の展開並びに学位論文の作成等を通じた教育・研究指導の適切性
【現状】
各指導教員による研究指導のみならず各専攻において研究中間報告会等が開催されており,学位論文
の作成に向けた研究指導が適切になされている。
【問題点】
院生の成果公表支援制度が十分とは言えない。
【問題点に対する改善方針】
論文の掲載に必要な費用の支援を含めた,実験実習費の増額や学会旅費助成金の増額を「年度計画書」
に従って図る。ガイダンスや研究発表会を通じて,さらに世界に成果を公表するように指導を行なう。
・学生に対する履修指導の適切性
【現状】
毎年,新入生のガイダンス時に在学者も併せて再度の履修指導を行っており,適切である。
より充実させるためには,開催,参加のため,「年度計画書」等を通じて一層の予算措置を図る。
・指導教員による個別的な研究指導の充実度
【現状】
各指導教員によって十分な研究指導が行われており充実していると判断される。
【問題点】
院生一人7万円の実験実習費では不十分である。
【改善方針】
授業料の減額なども含め,「年度計画書」に従って改善を図る。
・複数指導制を採っている場合における,教育研究指導責任の明確化
【現状】
専攻内,専攻間あるいは外部における研究会への積極的な参加と発表が行われており適切である。
・教員間,学生間及びその双方の間の学問的刺激を誘発させるための措置の適切性
【現状】
指導教員によって,学会で報告させたり,学外の研究機関に派遣をしたりしている。
【長所】
積極的に学生が学会などで発表をしている。
・研究分野や指導教員にかかる学生からの変更希望への対処方策
【現状】
指導教員と学生との間に問題が生じた場合に対応するため,指導教員変更の内規が定められ,学生の
資質にあった教育的配慮を行っている。
【長所】
変更希望に十分に対応できる
・才能豊かな人材を発掘し,その才能に適った研究機関等に送り込むことなどを可能ならしめるような
研究指導体制の整備状況
【現状】
理化学研究所,森林研究所,農業生物資源研究所などに留学させている。指導教員によって,学会で
報告させたり,学外の研究機関に派遣をしたりしている。
第3章 農学研究科 -4-
/423
【長所】
実際に他研究機関に就職したりする者がおり,そうした者を育成するような研究指導体制となってい
るといえる。
(2) 教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
適切に教育効果を測定するために,学会発表,専門雑誌への論文投稿を奨励し,その数と質を向上さ
せることを目標としている。また,日常の講義,演習においても,適宜レポートを提出させて教育効果
を判定している。
・教育・研究指導の効果を測定するための方法の適切性
【現状】
専攻内研究会報告,外部研究会報告,学会報告,各種投稿論文などの内容によって評価されている。
【問題点】
教育・研究指導の効果を充分に測定しているとは言い難い。
【問題点に対する改善方針】
専門が異なるために,統一的な評価をどのようにするかをワーキンググループ等で検討する。
・修士課程,博士課程修了者(修業年限満期退学者を含む)の進路状況
【現状】
修士課程修了者:農芸化学専攻 17 名中 15 名就職,農学専攻 12 名中6名就職,3名後期課程進学,
農業経済学専攻9名中5名就職,2名後期課程進学,生命科学専攻 21 名中 18 名就職,2名後期課程進
学。
【長所】
大学院学生の努力もあって,比較的希望に即した進路に進んでいる。
・大学教員,研究機関の研究員などへの就任状況と高度専門職への就職状況
【現状】
博士課程1名ポスドクに就任,農芸化学専攻修士修了者8名,農学専攻修士修了者1名,生命科学専
攻修士修了者8名,民間企業研究員に就職した。
【長所】
博士後期課程の定員及び在籍者から考えて,大学教員への就任状況はきわめて良好である。
【問題点】
良好な就任状況を維持する仕組みが不十分である。
【問題点に対する改善方針】
就職状況を詳しく把握し,在学する院生に情報を提示するガイダンス等を開設する。
(成績評価法)
【目的・目標】
講義・演習の効果を判定するために,適宜レポートを提出させて学生の理解度を判定すると共に,そ
の理解度に応じた講義・演習を行うことを目標としている。
・学生の資質向上の状況を検証する成績評価法の適切性
【現状】
講義,演習については,担当教員による点数評価がなされている。適切に行われている。
第3章 農学研究科 -5-
/424
(教育・研究指導の改善)
【目的・目標】
教育・研究指導を改善するには,教員自身が最新の研究テーマで研究成果をあげることである。その
ためには,事務的な雑務に割く時間を最大限に削減し,研究・教育にあてる時間を確保することが目標
である。
・教員の教育・研究指導方法の改善を促進するための組織的な取組み状況
【現状】
個々の教員が個人のレベルで教育・研究指導方法の改善に努力している。また,全学のFD委員会に
は研究科委員会のメンバーとしては出席していないが,大学全体のFD活動と連携を維持することが可
能な体制となっている。
【問題点】
教育・研究指導方法の改善を促進するための取組みは,組織としては行っていない
【問題点に対する改善方針】
FD委員会を設置する予定である。
・シラバスの適切性
【現状】
学部と同じような統一したフォーマットでシラバスを作成することにより詳しく分かりやすくなっ
た。
【改善方針】
シラバスと併せて研究室の研究活動も判るように,大学院のホームページの充実が検討されている。
・学生による授業評価の導入状況
【現状】
比較的多数の受講生がいる授業について,学部と同じ様式で授業評価を行った。また,少人数の講義
については,個人が特定できないような形式でアンケートの実施を行った。
【長所】
教員と学生との密な人間関係によって,学生の要望が満たされる状況となっている。
【問題点】
学部とは授業形態が異なり,大学院は少人数の院生と指導教員の関係で研究指導が行われるため,個
人が特定されにくいような配慮が必要である。
【問題点に対する改善方針】
教育開発・支援センターと連携し,最適な方法を模索していく。
・学生満足度調査の導入状況
【現状】
上記のアンケートで同時に満足度の調査も行った。
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
卒業生に対して在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みは存在していない。
【問題点】
卒業生に対して在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みを導入することについては必ずしも合意
されていない。
第3章 農学研究科 -6-
/425
【問題点に対する改善方針】
在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みを導入することについて研究科委員会において意見交換
していく。
・高等教育機関,研究所,企業等の雇用主による卒業生評価の導入状況
【現状】
高等教育機関,研究所,企業等の雇用主によって卒業生を評価する仕組みは導入していない。
【問題点】
高等教育機関,研究所,企業等の雇用主によって卒業生を評価する仕組みを導入することについては,
必ずしも合意されていない。
【問題点に対する改善方針】
高等教育機関,研究所,企業等の雇用主によって卒業生を評価する仕組みを導入することについて研
究科委員会において意見を交換していく。
(3)
国内外における教育・研究交流
【目的・目標】
研究交流は現在でも必要に応じて行われているが,本格的に行うためには,教員の不在中の教育体制
を確保するために,学生に対する複数指導教員制度を整えることが大きな目標である。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の明確化の状況
【現状】
いずれの専攻でも国際レベルで活躍する人材の養成を目標に設定しているが,研究科として基本方針
は明確になっていない。
【改善方針】
それぞれの専攻に対する人材養成の目標に対し,国際交流センターと連携して推進していく。
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
・国内外の大学院間の組織的な教育研究交流の状況
・外国人研究者の受け入れ体制とその運用の適切性
【現状】
国際交流センターの支援のもと,米国のミネソタ大学,ジョージア大学,テキサスM&A大学や,韓
国チュナン国立大学と相互の研究・交流が行われている。
外国人研究者の受け入れ体制はあるが,現在,研修生は受入れていない。
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
【現状】
各教員が国内外の専門分野の雑誌に研究成果を原著論文として公表する他に,農学部研究報告,大学
院研究論集,研究所紀要等に適時論文等を載せている。その他に,リバティ・アカデミーへの協力があ
る。大学院のポータルサイトの中に,本研究科のホームページを設けている。
【問題点】
ホームページの英文化がなされていない。
【問題点に対する改善方針】
研究内容・研究業績を含めてホームページの英文化が必要である。
・国際的な教育研究交流,学術交流のために必要なコミュニケーション手段修得のための配慮の適切性
【現状】
農学部研究報告は英文報告も含み,国外への送付も行われている。原著論文の半数以上は英文で書か
れており,相当数が国際誌に掲載されている。本学の院生旅費補助制度を活用して,海外での研究発表
第3章 農学研究科 -7-
/426
が行われている。また,米国のミネソタ大学,ジョージア大学,テキサスM&A大学や,韓国チュナン
国立大学との相互の研究・交流が行われている。科学英語についての特論が開設されている。
(4) 学位授与・課程修了の認定
(学位授与)
【目的・目標】
専門的技術を身につけた修士課程修了生と,独立して新しい研究を遂行する能力を持つ博士課程修了
者を育てることが,大きな目標である。
・修士 博士の各々の学位の授与状況と学位の授与方針・基準の適切性
【現状】
修士 59 名,課程博士7名,論文博士3名。学位授与方針・基準は学位規程に従っており適切である。
・学位審査の透明性・客観性を高める措置の導入状況とその適切性
【現状】
学位審査の内規を定めており,審査は内規に則して行われている。透明性・客観性は適切であると判
断される。
・修士論文に代替できる課題研究に対する学位認定の水準の適切性
【現状】
本研究科では,代替の課題研究は認めていない。
・学位論文審査における,当該大学(院)関係者以外の研究者の関与の状況
【現状】
審査に他大学等の関係者が加わることは,主査及び審査委員会で判断される。制度は適切である。本
年度の学位審査では学外関係者はいなかった。
・留学生に学位を授与するにあたり,日本語指導等講じられている配慮措置の適切性
【現状】
研究科としては考慮していないが指導教員によって十分に配慮されている。
(課程修了の認定)
【目的・目標】
専門的技術を身につけた修士課程修了生と,独立して新しい研究を遂行する能力を持つ博士課程修了
者を認定することを目的とし,学術的に一定の水準に到達したことを学会発表などの活動を見ると共に,
学内で行う研究発表会での内容について質疑を行い,最終的には学位請求論文を基づく口頭試問および
論文審査を行っている。
・標準修業年限未満で修了することを認めている大学院における,そうした措置の適切性,妥当性
【現状】
安易な早期終了は好ましいことではないが,既に制度は定めている。しかし,現在のところ,該当者
はいない。適切に行われている。
第3章 農学研究科 -8-
/427
7-2.経営学研究科
(1) 教育課程等
(研究科の教育課程)
【目的・目標】
独立した精神と「個」の強さをもち,経営学の分野で高度な専門性を身につけた大学院学生を育成す
ることを基本理念・目的とする。それをふまえて,前期課程においては研究や教育,ビジネスや公的分
野で活躍しうる人材を養成すること,後期課程においてはプロフェッショナルとして研究に携わる人材
を養成することを目的とする。
・研究科の教育課程と理念・目的並びに学校教育法第 65 条,大学院設置基準第3条第1項,同第4条
第1項との関連
【現状】
教育課程は,「個」の強さをもち経営学の分野で高度な専門性を身につけるという本研究科の理念・
目的を実現できる体制となっている。修士論文が必須とされ,そのためには原則とて2年間の演習にお
ける指導が必要とされている。そのプロセスのなかでは『経営学研究論集』への投稿も奨励されている。
通常の授業においては,修士論文を重視した指導,少人数のメリットを生かした双方向型・ディスカッ
ション重視型教育ができるようになっている。
博士前期課程においては,学校教育法第 65 条及び大学院設置基準第3条第1項を達成するために,
経営学領域における多様かつ幅広い授業科目を設置し,専任助教授の一部をふくむ研究業績の高い教員
が学術の理論及び応用を教授して学生の研究能力を高めている。そして本研究科においては,社会人の
みを対象とするマネジメントコースであっても,大学院で研究をすることによって,結果としてしビジ
ネスその他の分野で求められる能力を育成することを意図している。
博士後期課程にあっては,学校教育法第 65 条および大学院設置基準第4条第1項を達成するために,
多様な授業科目を設置するとともに,前期課程の授業科目を履修できるようにしている。また,指導教
員による指導ばかりでなく,『経営学研究論集』の審査のさいには副査のコメントを投稿者に伝える仕
組みを採用している。
【長所】
多様かつ幅広い授業科目を設置している。修士論文指導のための演習は必修化されている。『経営学
研究論集』への投稿に際しての指導も充実している。
・「広い視野に立って清深な学識を授け,専攻分野における研究能力又は高度の専門性を要する職業等
に必要な高度の能力を養う」という修士課程の目的への適合性
【現状】
経営学領域における多様かつ幅広い授業科目を設置しており,「広い視野に立って」いるといえる。
また,担当する教員には,経験と研究業績豊かな教員はもちろん,若手の専任助教授の一部をふくまれ
ており,精深な学識を教授研究できる体制となっている。
本研究科においては,研究する能力と業績のある教員が学生の専攻分野の研究能力を高めている。そ
して社会人のみを対象とするマネジメントコースであっても,高度専門職業人の養成を第一の目標とし
ているわけではなく,研究をすることによってビジネスその他の分野で求められる高度の能力を育成す
るようにしている。
【長所】
個々の教員の修士論文にたいする熱意が指導に反映されている。他大学前期(修士)課程出身者が博
士後期課程を受験するさいに修士論文の提出が求められるが,それらの多くは本研究科の修士論文に比
べるとレベルが低く,欠格点である場合も多い。
【問題点】
多様かつ幅広い授業科目を用意しているので広い視野に立って精新な学識を授ける点では問題がな
い。ただし,多様な経歴を経た学生が存在するので,それに学生にとっては最低修得単位数を引き上げ
第3章 経営学研究科 -1-
/428
ることを検討すべきである。
【問題点に対する改善方針】
ガイダンス等において 36 単位程度が望ましいことを案内する。また,マネジメントコースのあり方
とも関連させて必要単位数についてカリキュラム委員会で検討する。検討結果は前期中に研究科委員会
に諮る。
・「専攻分野について,研究者として自立して研究活動を行い,又はその他の高度に専門的な業務に従
事するに必要な高度の研究能力及びその基礎となる豊かな学識を養う」という博士課程の目的への適
合性
【現状】
博士後期課程においては,一方で多様な授業科目を設置し,前期課程の授業科目を履修できるように
するとともに,履修単位数を限定して選択の幅を広げ,自立して研究活動を行う能力を育成する体制が
とられている。また,指導教授は熱意をもって通常の指導にあたる以外に,積極的に学会,研究会等に
も学生を参加させている。指導教授による指導ばかりでなく,『経営学研究論集』の審査のさいには副
査からも暖かでかつ厳しい指導がなされている。
【長所】
組織としての指導体制は現状にみられるように望ましいものとなっている。また指導教授による指導
は熱心かつ多様である。それは各種学会,研究会への参加状況に現れている。また『経営学研究論集』
の掲載率は教員の期待水準が高いために逆に低くなっている。しかし,掲載された論文の水準は高い。
熱心かつ暖かな指導の結果として,大学院学生と教員スタッフとの関係も良好である。
【問題点】
幅広い研究上の基礎や方法論を組織として教育するという点については,若干の課題が残されている。
【問題点に対する改善方針】
カリキュラム委員会において検討し,成案がえられたならば研究科委員会において諮る。
・学部に基礎を置く研究科における教育内容と,当該学部の学士課程における教育内容の適切性及び両
者の関係
【現状】
本研究科の教育内容は,経営学部の経営,会計,公共経営という3学科体制に対応した適切なものと
なっている。また,大学院授業科目を学部4年生が履修したり,早期卒業者を受け入れたりする制度も
存在している。
【長所】
本研究科と経営学部とは,現状にみられるように強い連携をもっている。制度としてこれ以上のもの
は存在しえない。
・修士課程における教育内容と,博士(後期)課程における教育内容の適切性及び両者の関係
【現状】
博士前期課程担当の専任教員のみが博士後期課程の研究指導をしており,その構成も適切である。前
期課程の授業科目は,外国語経営・会計研究以外は,経営理論,企業論,経営科学,経営管理,人事・
労務,経営史,財務会計,管理会計,公共経営という9つの系に分類されている。これに対応して博士
後期課程の授業科目は,経営理論特殊研究,企業論特殊研究,経営科学特殊研究,経営管理特殊研究,
人事労務特殊研究,経営史特殊研究,財務会計特殊研究,管理会計特殊研究,公共経営特殊研究という
九つの授業科目があり,それぞれを複数の教員が担当している。
また,博士後期課程の大学院学生が博士前期課程の授業科目を履修し単位をあたえるという制度が設
けられている。マネジメントコース(あるいは類似のコースや専門職大学院)の出身者についても博士
後期課程に入学できる。修士論文を作成しないマネジメントコース(あるいは類似のコースや専門職大
学院)の出身者については,原則として4万字以上の修士論文相当のものの提出が認められている。
第3章 経営学研究科 -2-
/429
【長所】
博士前期課程の単位を修得できるなど,前期課程と後期課程とが強く連携している。また,他の研究
科,他大学の大学院の出身者であっても,本研究科博士前期課程出身者に比べて不利ということはない。
・博士課程(一貫制)の教育課程における教育内容の適切性
【現状】
本研究科は博士前期課程と博士後期課程とに分かれており,厳密な一貫性は採用していないので,該
当しない。
・課程制博士課程における,入学から学位授与までの教育システム・プロセスの適切性
【現状】
入学時には充実した新入生オリエンテーションを実施している。そのさいには特別に博士学位取得を
取り上げ,大学院委員が説明している。博士学位の基礎は修士の学位であるので,オリエンテーション
の前には修士論文発表会を開催し,修士と博士の学位請求論文について認識を深めさせてい。前期課程
においては修士論文を重視した教育が熱心に行われており,それは博士学位請求論文の方法や基礎を構
築するプロセスとなっている。
博士後期課程に入学後は,新入生オリエンテーションのさいに,博士学位請求論文について「博士学
位請求論文について」「課程博士号授与までの手順および日程」という2種類の研究科独自の資料にも
とづいて詳細に説明している。そして『経営学研究論集』への投稿論文は博士学位請求論文を意識した
ものとするよう指導している。
博士後期課程に2年を超えて在学している者が課程博士号の申請をすることができる。申請者は毎年
10 月第3木曜日までに書類を提出する。申請をうけて研究科委員会では指導教授が推薦し予備審査には
いる。予備審査では面接も行われ,論文の修正・加筆が求められる。その後,研究科委員会において予
備審査報告が行われ,共同研究室において博士学位請求論文が約1カ月開示される。その後,研究科委
員会において本審査受理が審議され,投票により認められたならば本審査にはいる。本審査が行われた
のち,研究科委員会において合否の投票が行われて,学位授与が決定される。
【長所】
課程博士の授与者は,2004 年度,2005 年度とも 4 名であり,定員,在籍者数から考えて授与率は高
いといえる。ガイダンス等においても学位取得を奨励しており,学生も学位取得を具体的目標として意
識している。
・創造的な教育プロジェクトの推進状況
【現状】
2005 年度は,大学院学生を主対象とする国際シンポジウムを開催した。UCLAのビジネススクール
から 3 名,本研究科の大学院生が1名,本研究科の教員2名の合計6名が報告者となり,さらに,本研
究科の教員3名がコメンテーターとなった。本研究科大学院学生は,約 30 名が参加した。また,例年
のように学外研究者を中心として特別講義が数回にわたって実施された。
【長所】
大学院学生に大きな刺激をあたえた。次回はアジア圏中心で開催してほしい旨の希望が寄せられたほ
どであり,こうした企画の実現は他の大学,研究科ではあまり見られないものである。
【問題点】
博士後期課程の大学院生も対象にした前期,後期が一体化した教育研究プロジェクトに対する配慮が
乏しいといえる。
【問題点に対する改善方針】
研究科内のカリキュラム委員会を中心にして検討に着手する。また,創造的教育プロジェクトについ
ての学内外でのシンポジウムがあったら積極的に参加する。
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
第3章 経営学研究科 -3-
/430
他大学の大学院との学術的提携・交流を促進し,教育・研究の充実を図ることを目的としている。提
携大学の数及び
・国内外の大学等と単位互換を行っている大学院研究科にあっては,実施している単位互換方法の適切
性
【現状】
明治大学,法政大学,立教大学,中央大学,専修大学の5大学による「経済・経営・商学分野に関す
る協定」,中央大学,東洋大学,日本大学など 10 大学による「首都大学院コンソーシアム」に参加して
いる。文京学院大学大学院経営学研究科とも単位互換をすることになった。
これらの協定については,年度初めに事務室に申請書を提出し担当教員の承認をえることになってい
る。本研究科では,8単位まで他大学院の授業科目を履修することができる。
さらに,海外協定校への留学も可能であり,日仏共同博士課程交流事業,ルノー財団パリ国際 MBA プ
ログラムという制度もある。
【長所】
多くの単位互換校を有しており,また外国の大学院で学ぶことも可能である。充実した体制といえる。
【問題点】
大学院に行って単位互換をうける学生よりも受け入れる学生の方が多い。
【問題点に対する改善方針】】
他大学院との単位互換制度についてガイダンスなどで周知する。
(社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
社会人学生,外国人留学生を入学させることによって,多様な視点からの議論がなされるようになり,
個々の授業における理解が深められる。また,本研究科にとっては,一般学生の理論研究に大きな刺激
をあたえるために社会人の実務経験は貴重である。
・社会人,外国人留学生に対する教育課程編成,教育研究指導への配慮
【現状】
社会人に対しては夜間と土曜日に授業を行ったり,修士論文に代えて実務経験をふまえた課題研究レ
ポートの作成を指導したりして,適切に対応している。授業科目についても事例研究特論および類似の
授業科目を 13 科目設置したり,実務に従事している教員,実務経験のある教員を非常勤講師や兼担教
授としたりしている。
本研究科では外国文献研究8単位が必修とされている。そのため外国人留学生にたいしては,日本語
経営文献研究A・Bを設置している。また,特に英語経営文献研究A・Bについては,英語圏以外の国
の出身のために英語力が不足している者を対象とした授業を設置している。さらにアカデミック・プレ
ゼンテーションという授業科目も設置されており,英語による報告技術について指導が行われている。
なお,社会人や外国人留学生だけを対象としたオフィスアワーやカウンセリング,ガイダンスなどは
実施していない。
【長所】
社会人が関心をもつと想定される事例研究の授業を設置したり,実務経験のある教員を配置したりし
ているが,他方で理論研究の授業も豊富に設置している。したがって,社会人はバランスのとれた大学
院教育をうけることができる。
【問題点】
社会人は必ずしも実務に役立つ教育をうけたいと考えているわけではないことが次第に判明してき
た。したがって,マネジメントコースのあり方について再検討し,場合によってはカリキュラムを修正
する必要が生じてきた。
【問題点に対する改善方針】
第3章 経営学研究科 -4-
/431
カリキュラム委員会の答申をうけて,マネジメントコースの新たなあり方を前期中に研究科委員会に
諮る。
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
大学院の社会的使命として,生涯学習時代に対応して社会人の多様な学習の仕方に応じる体制を備え
ることが必要である。
・社会人再教育を含む生涯学習の推進に対応させた教育研究の実施状況
【現状】
科目等履修制度を備えている。社会人向けのマネジメントコースにおいても科目等履修制度を利用す
ることができる。
【長所】
面接だけで比較的容易に科目等履修制度を利用できる。授業においても大学院入学者となんらの区別
はない。
(研究指導等)
【目的・目標】
大学院での教育の中心は修士論文,博士論文の作成のための研究指導である。授業科目の履修も修士
論文,博士論文の作成に役立っているが,それを修士論文,博士論文に結実させるためには研究指導が
必要である。
・教育課程の展開並びに学位論文の作成等を通じた教育・研究指導の適切性
【現状】
修士論文,博士論文にいたる教育課程の展開は適切である。
博士前期課程において授業科目は9つの系に分けられ,学生が自らの関心に従って適切に授業科目を
履修できる体制となっている。修士論文を作成するうえでの指導教員は9つの系のいずれかに所属し,
学生はその指導教員の演習を履修することになっている。
修士論文を作成するにあたっての直接的指導は指導教員によって行われ,修士論文の作成のための幅
広い基礎が指導教員の講義科目並びに当該の系の他の講義科目などによって提供されている。
また,それら9つ以外の外国語経営・会計研究という区分のなかで,外国文献研究8単位が必修とさ
れ,修士論文を作成するさいに外国文献を用いるための基礎が教育されている。
修士論文の審査にあたっては主査と副査2名が選出される。主査は指導教員が務める。副査2名は専
門領域が近い教員が選ばれる。そのさい,審査業務負担も考慮される。なお,本研究科において与えら
れる修士学位は修士(経営学)であり,適切に専攻分野が付記されている。
本研究科では,標準修業年限未満で修了することを認めている。それは明治大学大学院学則 32 条に
おいて認められている。本研究科では,さらに「修業年限短縮による修士学位授与」内規が定められて
いる。現在までこの制度により修了した者はいないが,2006 年度は2名が申請している。この制度によ
り修士学位を授与されるためには一定の条件が必要であり集中的な研究も必要とされるが,実績と能力
がある者にとっては1年間という展望可能な期間であるために適切な制度となっている。
博士後期課程においては,前期課程における9つの系に対応した9つの授業科目のいずれかを担当す
る教員の研究指導を受けなければならない。それとともに,指導教員が必要と認めた授業科目を原則と
して1年次に履修する。指導教員は授業以外にも学生と頻繁に面談して博士論文の作成のための研究指
導をしている。
博士後期課程に2年を超えて在学している者は,毎年 10 月第3木曜日までに課程博士号の申請をす
ることができる。研究科委員会において指導教授が推薦し予備審査にはいる。面接,加筆・修正を含む
予備審査の後,研究科委員会において予備審査報告が行われ,約1カ月間の共同研究室開示期間にはい
る。その後,研究科委員会において本審査受理が認められたならば本審査にはいる。本審査の後,研究
科委員会において投票により学位授与が決定される。
博士論文の審査にあたっては主査と副査2名以上が選出される。主査は指導教員が務める。副査2名
は専門領域が近い教員が選ばれる。当該領域の専門家が少ない場合には,さらに他の研究科や他の大学
の研究者が副査に加わることがある。
第3章 経営学研究科 -5-
/432
なお,本研究科において与えられる博士学位は博士(経営学)であり,適切に専攻分野が付記されて
いる。
博士学位請求論文の審査にあたっては,次のような規準が適用されている。
① 論文は,社会科学とりわけ経営学の対象とする課題や分野について新たに立てられた問題提起に
おいて,これまでの研究状況を踏まえた上で,何を付け加えたかを明確にするとともに,そのこと
を通じてその分野の研究に寄与する内容をもつことが必要である。
② 理論ないし学説に関するテーマについては,その分野でこれまでの業績に十分に検討を加えた上
で,理論を明確にしながら,論文提出者の知見を提示することが求められる。
③ 実証的ないし歴史的なテーマについては,これまでの研究成果についての検討に加えて,十分な
データないし史料を検討・分析し一定の命題を論証することが求められる。
④ 新たな認識あるいは方法の適用や国際比較など新しい分野の研究やアプローチについては,その
ユニークさや何を特徴とするかについて論述することが求められる。
修士及び博士の学位の授与については,明治大学学位規程に定められている。しかし本研究科におい
ては,さらに「博士学位請求論文について」「課程博士号授与までの手順および日程」と題するものが
存在しており,上述の規準や論文の分量などは前者に,日程,提出書類などについては後者において示
されている。
【長所】
修士論文,博士論文の作成のための教育・研究指導の体制は上述のように充実している。教員はそう
した体制のもとで熱意をもって授業を行い,論文指導にも力を注いでいる。個々の教員が自らのミッシ
ョッンを意識していることは大きな意味をもっている。体制および教員の意識の結果,他大学と比べて
も修士論文の水準は高く,また博士論文の提出率や水準も満足できる水準にある。
【問題点】
個々の教員の研究指導は適切であるが,経営学領域における研究の方法についての全般的指導や研究
科横断的な情報,ノウハウの伝達が不十分である。
【問題点に対する改善方針】
カリキュラム委員会において教育課程上の工夫が可能かどうかを検討し,その結果を踏まえて研究科
委員会に諮る。
・学生に対する履修指導の適切性
【現状】
大学院学生向けの充実したオリエンテーションによってカリキュラムの趣旨や内容を理解させ,適切
な履修指導をしている。事務室の窓口においても,質問などにたいして個別に丁寧かつ親切に対応して
いる。各種配付資料においても履修について適切に示されている。さらに,具体的な締め切り期限など
の事項については,必要に応じて掲示により学生に伝達している。
たとえば 2006 年度のオリエンテーションは4月8日の午後2時半から2時間にわたって行われた。
司会は大学院委員が行った。執行部並びに事務局が紹介され,配付資料の確認が行われた。そして研究
科委員長より,大学院の目的や新入生に期待すること,研究科委員会の任務などについて訓辞した。つ
ぎに大学院委員より,大学院委員の役割,修士論文・博士論文の作成・手続き,奨学金などについて説
明した。続いて専攻主任より専攻主任の役割,研究計画・生活スタイル,
『経営学研究論集』
,図書館利
用などについて,履修指導的視点から説明した。最後に事務局より,履修届の詳細,学生証などについ
て説明した。以上において明らかなように,委員長の理念的,総論的な訓辞から事務局よりの詳細な説
明にいたるまで,適切に指導している。2006 年度オリエンテーションのときの配付資料は,次の 11 点
であった。
1.配付資料一覧表
2.2006 年度本研究科スケジュール
3.「博士学位請求論文について」および「課程博士号授与までの手順および日程」(博士後期課程の
み)
4.『経営学研究論集』執筆要綱
5.経営学研究科時間割表
6.履修計画書
第3章 経営学研究科 -6-
/433
7.履修計画書見本
8.履修届マークシート用紙
9.履修届提出にあたっての注意事項
10.科目コード一覧(履修番号表)
11.『経営学研究論集』第 24 号
『大学院シラバス 経営学研究科』においては,それぞれの授業科目についての形式が授業内容,履
修上の注意,教科書,参考書,成績評価の方法,その他に統一されており,学生は参照・比較しやすい
ものとなっている。なお,オフィスアワーは特に設けていないが,学生と接触する機会は多く,とくに
問題はない。
【長所】
教員や事務職員が丁寧かつ親切に対応しており,特に他の大学からの入学者から謝意が表明されるこ
とが多い。
・指導教員による個別的な研究指導の充実度
【現状】
博士前期課程においては,主として修士論文の作成に向けて個別的な研究指導が行われている。その
ためには,1,2年次の演習の時間があてられる。しかし通常はそれだけでは不充分であるので,別に
時間を確保して指導することも頻繁に行われている。さらに,すでに教員になった者や博士後期課程の
学生も参加する研究会等において報告し,そこで指導教員をふくむ多くの研究者からアドバイスを受け
ることも普通である。
博士後期課程においては,1年次の授業を除いては,制度的に定められた指導時間は設けられていな
い。後期課程では,研究者として自立して研究活動を行う高度の研究能力およびその基礎となる豊かな
学識を養うことを目的としており,その指導のためには柔軟な指導体制が必要であり,1週間のなかで
この時間に指導するという仕組みと相容れない。
そこで,博士後期課程においては,学生の研究の進捗状況に応じて,1週間に何回も面談したり時に
は2,3週間に1度面談したりするということが行われている。また,出身者・他大学教員や前期課程
学生との研究会等も頻繁に開催されており,そこでの指導教員を中心とする多くの研究者からのアドバ
イス・助言も研究指導の重要な一環である。さらには,学会報告とそれを手段とする指導も重要な機会
となっている。
修士論文や博士論文の提出率や水準から考えて,充実した指導がなされている。
【長所】
教員は丁寧かつ親切に対応しており,出身者から研究指導にたいして謝意が表明されることが多い。
・複数指導制を採っている場合における,教育研究指導責任の明確化
本研究科では複数指導制を採用していないので,該当しない。
・教員間,学生間及びその双方の間の学問的刺激を誘発させるための措置の適切性
【現状】
『経営学研究論集』掲載のための論文審査において副査と大学院学生とのコミュニケーションを可能
にしている。また,新入生オリエンテーション当日に修士論文発表会を開催し,教員がコメンテーター
を務めている。さらに,本学の地理的条件の良さから学会や研究会を開催することが多く,教員および
大学院学生にとって研究上の刺激となっている。
【長所】
『経営学研究論集』の審査を機会として,副査から研究上のアドバイスをうけることができ,良い人
間関係も構築できる。また,地理的条件の良さは,他大学の教員や大学院学生との研究交流に大きく寄
与している。
・研究分野や指導教員にかかる学生からの変更希望への対処方策
【現状】
(1)指導教員が在外研究や退職などにより指導教員に特別の事由が発生したとき,及び(2)入学後,当
第3章 経営学研究科 -7-
/434
該学生が指導教員の変更を希望し,現指導教員及び新指導教員双方が正当な理由であることを認め,変
更に同意したときには,研究科委員会の議を経て指導教員の変更を認めることがある。上記(1)の場合
は随時変更する。(2)の場合は履修届け提出締切日までに変更届けを事務室に提出しなければならない。
変更後の処置も含めて,これらの内容は「指導教員の変更に関する内規」に定められている。
【長所】
変更希望に充分に対応できる。
・才能豊かな人材を発掘し,その才能に適った研究機関等に送り込むことなどを可能ならしめるような
研究指導体制の整備状況
【現状】
本学の制度として,大学院に在籍したまま他大学の助手となったりすることが可能となっている。
2006 年度は博士後期課程に在籍しつつ早稲田大学の助手として勤務している者がいる。
【長所】
実際に他大学の助手となったり研究機関に就職したりする者がおり,そうした者を育成するような研
究指導体制となっているといえる。
(2) 教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
研究科の教育目標を達成し充分な成果をあげうるような教育方法を採用することが必要である。その
ためには,教育効果の測定方法,成績評価方法,教育・研究活動の改善策について自己点検・評価をし
なければならない。
・教育・研究指導の効果を測定するための方法の適切性
【現状】
過去には大学院学生アンケートを実施したことがある。試験等により教育・研究指導の効果を測定す
ることはつねに行っている。
【問題点】
教育・研究指導の効果を充分に測定しているとは言い難い。
【問題点に対する改善方針】
学部と同様に学生による授業評価が望ましいとは思われないので,大学院においてはどのような方策
が適当かについてカリキュラム委員会等で検討,実施する。
・修士課程,博士課程修了者(修業年限満期退学者を含む)の進路状況
【現状】
博士前期課程の修了者 22 名のうち,一般企業(入学前から勤務している場合を含む)が 15 名,博士
後期課程進学が2名,会計事務所が1名,帰国が1名,主婦が1名,その他不明が2名である。
博士後期課程については,若干が大学に就職したが,それ以外の多くは引き続き大学院に籍をおいて
研究をしている。
【長所】
大学院学生の努力もあって,比較的希望に即した進路に進んでいる。
・大学教員,研究機関の研究員などへの就任状況と高度専門職への就職状況
【現状】
博士後期課程大学院学生(専任校がなく非常勤講師としてだけ勤務している者をふくむ)の大学,短
期大学への就職は 2004 年度,2005 年度ともに 7 名であった。
【長所】
第3章 経営学研究科 -8-
/435
博士後期課程の定員及び在籍者から考えて,大学教員への就任状況はきわめて良好である。
【問題点】
良好な就任状況を維持する仕組みが不十分である。
【問題点に対する改善方針】
2005 年度に開催した出身者を講師とする博士後期課程大学院学生向け就職ガイダンスの継続を試み
る。また,本研究科出身者との連携を強めるために出身者の集いを開催する。大学教員としての就職の
ためには研究業績と博士学位が重要であるので,これらの指導の充実を図る。『博士後期課程在籍者一
覧』の作成,配付も継続する。
(成績評価法)
【目的・目標】
成績評価について自己点検・評価することは,研究科の教育目標を達成し十分な成果をあげるために
必要である。
・学生の資質向上の状況を検証する成績評価法の適切性
【現状】
授業は学生からの報告,ディスカッション,まとめという双方向型で行われている。そこで報告,出
席,議論への参加などを総合的に判断し評価している。教員によっては試験も実施している。外部の査
読雑誌や懸賞論文に応募することも奨励されており,時には掲載されたり入選したりしている。
【長所】
試験という結果だけで判断するというよりもそこに至るプロセスを評価することが重視されている
といえる。
(教育・研究指導の改善)
【目的・目標】
研究科の教育目標を達成し充分な成果をあげるためには,教育・研究指導を不断に改善していかなけ
ればならない。
・教員の教育・研究指導方法の改善を促進するための組織的な取組み状況
【現状】
個々の教員が個人のレベルで教育・研究指導方法の改善に努力している。また,全学のFD委員会に
は研究科委員会メンバーを大学院委員会選出の委員として出席させており,大学全体のFD活動と連携
を維持することが可能な体制となっている。
【長所】
大学全体のFD活動と連携を維持することが可能な体制となっている。
【問題点】
教育・研究指導方法の改善を促進するための取組みは,組織としては行っていない。
【問題点に対する改善方針】
大学院においてはどのような取組みが可能かについてカリキュラム委員会等で検討し,実施できると
ころから実現していく。
・シラバスの適切性
【現状】
統一フォーマットによって授業内容,履修上の注意,教科書,参考書,成績評価の方法などが示され
ている。また,各回の授業内容,予習事項,宿題,報告の分担などについては個々の授業のなかで提示
されている。
第3章 経営学研究科 -9-
/436
【長所】
一覧性に富み,見やすいものとなっている。
・学生による授業評価の導入状況
【現状】
学部では全面的に導入されているが,それを大学院で導入することも可能になっている。ただ,個々
の授業の履修人数の少なさ,教員と学生との人間関係の強さなど,大学院の授業のすべては学部で対象
外となっている演習科目と同様のものであるので,学生による授業評価は実施されていない。
【長所】
授業評価の目的はそれによって授業の方法やや内容を改善することにある。本研究科の授業ではそう
した調査をしなくても,教員と学生との密な人間関係によって,学生の要望が満たされる状況となって
いる。
・学生満足度調査の導入状況
【現状】
過去においてアンケート調査を実施したことがある。しかし,定期的には実施していない。
【問題点】
大学院学生の満足度調査の導入については必ずしも合意されていない。
【問題点に対する改善方針】
大学院学生による満足度調査の導入について研究科委員会において意見交換し,合意の形成を図る。
・卒業生に対し,在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みの導入状況
【現状】
ホームカミングデーや同窓会などを通じて非公式に意見を集めている。しかし,卒業生に対して在学
時の教育内容・方法を評価させる公式な仕組みは存在していない。
【問題点】
卒業生に対して在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みを導入することについては必ずしも合意
されていない。
【問題点に対する改善方針】
卒業生に対して在学時の教育内容・方法を評価させる仕組みを導入することについて研究科委員会に
おいて意見交換し,合意の形成を図る。
・高等教育機関,研究所,企業等の雇用主による卒業生評価の導入状況
【現状】
高等教育機関,研究所,企業等の雇用主によって卒業生を評価する仕組みは導入していない。
【問題点】
高等教育機関,研究所,企業等の雇用主によって卒業生を評価する仕組みを導入することについては,
必ずしも合意されていない。
【問題点に対する改善方針】
高等教育機関,研究所,企業等の雇用主によって卒業生を評価する仕組みを導入することについて研
究科委員会において意見交換し, 合意の形成を図る。
(3) 国内外における教育・研究交流
【目的・目標】
教育研究活動の維持・向上を図るためには,国内外の大学院との教育研究交流によって刺激をうけ,
その水準を高めることが必要である。
第3章 経営学研究科 -10-
/437
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の明確化の状況
【現状】
基本的には望ましいと考えられているが,明文化された基本方針は存在しない。
【長所】
基本的には望ましいということで合意されているので,それに基づいた柔軟な対応ができる。
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
【現状】
協定校留学,認定校留学,日仏共同博士課程交流事業,ルノー財団パリ国際 MBA プログラムなどの制
度が存在している。
【長所】
比較的充実した交流制度となっている。
・国内外の大学院間の組織的な教育研究交流の状況
【現状】
明治大学,法政大学,立教大学,中央大学,専修大学の 5 大学による「経済・経営・商学分野に関す
る協定」,中央大学,東洋大学,日本大学など 10 大学による「首都大学院コンソーシアム」に参加して
いる。また,文教学院大学大学院経営学研究科との単位互換制度,協定校留学制度,研究生制度,内地
研修員制度などが存在している。さらに,2005 年度には,UCLAアンダーセン・ビジネススクールと
の国際シンポジウムを開催した。
【長所】
充実した制度となっており,利用者も多い。
・外国人研究者の受け入れ体制とその運用の適切性
【現状】
外国人研究者は国際交流センターを通じて原則として受け入れている。2004 年度も 2005 年度もそれ
ぞれ1件,本学の国際交流基金事業の短期プログラムにて外国人研究者を受け入れている。若手の外国
人研究者が国費留学生として日本に来る場合などにも,積極的に受け入れている。
【長所】
外国人研究者を積極的に受け入れている。
・教育研究及びその成果の外部発信の状況とその適切性
【現状】
教員は『経営論集』と『社会科学研究所紀要』に論文を掲載している。2005 年度は『経営論集』には
16 編延べ 17 名の教員が論文を,1名の教員が翻訳を掲載している。2005 年度『経営論集』第3号にお
いては,2005 年 11 月 12 日(土)にUCLAアンダーセン・ビジネススクールと開催した国際シンポジ
ウムにおける報告が論文として掲載されている。『社会科学研究所紀要』には合計4編の論文が掲載さ
れている。
大学院学生は『経営学研究論集』において教育研究の成果を公表している。2005 年度は第 23 号と第
24 号が刊行され,第 23 号には 14 編,第 24 号には 11 編の論文が掲載された。掲載された論文について
は,
『経営論集』はもちろん『経営学研究論集』についても MAGAINE-PLUS という国会図書館編集のデー
タベースで検索できる。
【長所】
紀要の印刷数も多く,適切に配布されている。また,MAGAINE-PLUS によって『経営学研究論集』掲載
論文を検索できるということは,大学院学生の研究成果の外部発信という点から高く評価されるべきで
ある。
第3章 経営学研究科 -11-
/438
・国際的な教育研究交流,学術交流のために必要なコミュニケーション手段修得のための配慮の適切性
【現状】
国際学会のためのプレゼンテーションに関する知識と技能を学ぶために,アカデミック・プレゼンテ
ーション研究A・Bという授業科目を設置している。アカデミック・プレゼンテーション研究Aでは,
論理的に考えをまとめ,人前で英語で正確に分かりやすく,聴衆の反応に応じて適切な表現で,時間を
管理しながら説得的に話し,質問に答える考え方と技法を学ぶ。アカデミック・プレゼンテーション研
究Bでは,アカデミック・プレゼンテーション研究Aで学んだ基本的枠組みを応用して,ビジネス分野
のケース・スタディや英語論文の内容紹介を材料に実習し,最終的には学生自身の研究を英語で発表す
る練習をする。メモの私用やリハーサル技法なども学習する。この授業では実習も行う。授業は基本的
に英語で行うために,TOEIC が 550 点以上を履修の目安としている。
【長所】
アカデミック・プレゼンテーション研究A・Bにおいては,学術交流のために必要なコミュニケーシ
ョン手段について適切な授業が行われている。他大学大学院には設置されていない特色ある授業科目で
ある。
【問題点】
履修者数が限られている。
【問題点に対する改善方針】
新入生に対する学習指導において,国際的な教育研究交流,学術交流のためにはコミュニケーション
手段を修得する必要があることを認識させる。
(4) 学位授与・課程修了の認定
(学位授与)
【目的・目標】
教育研究指導は,博士前期課程においては修士学位,博士後期課程においては博士学位の授与に結実
する。したがって,その適切な授与は本研究科の教育研究活動の状況を表す重要な指標である。
・修士 博士の各々の学位の授与状況と学位の授与方針・基準の適切性
【現状】
博士前期課程においては修了に必要な単位を修得した者は 25 名であり,そのうち修士論文を提出し
て修士の学位を授与された者は 22 名であった。博士後期課程においては,2004 年度は3名,2005 年度
は4名に博士学位が授与された(授与数は課程博士のみ)
。なお,2005 年度に博士後期課程3年次に在
籍していた者は 14 名である。また,学位を授与された者は復学してきた者がほとんどである。
修士学位と博士学位は適確水準の論文が提出されたときには積極的に授与する方針である。とりわけ
博士学位の授与を促進する方針は,年度計画書の先頭で 16 行にわたって明文化されている。修士学位
については,入学を許可したのであるから,適切な指導をして学位を授与することは教育機関として当
然のことであり,その促進を明文化するまでのことはない。
修士学位は,広い視野にたつ精深な学識をもって経営学領域における研究をする能力があると認めら
れる者に授与している。これは大学院設置基準第3条及び明治大学学位規程第 14 条に従っており,本
研究科ではとくに明文化してはいない。
博士学位は,大学院設置基準第4条及び明治大学学位規程第 15 条に従いつつ,さらに博士学位請求
論文の審査にあたっては,次のような規準を適用している。
① 論文は,社会科学とりわけ経営学の対象とする課題や分野について新たに立てられた問題提起に
おいて,これまでの研究状況を踏まえた上で,何を付け加えたかを明確にするとともに,そのこと
を通じてその分野の研究に寄与する内容をもつことが必要である。
② 理論ないし学説に関するテーマについては,その分野でこれまでの業績に十分に検討を加えた上
で,理論を明確にしながら,論文提出者の知見を提示することが求められる。
③ 実証的ないし歴史的なテーマについては,これまでの研究成果についての検討に加えて,十分な
データないし史料を検討・分析し一定の命題を論証することが求められる。
④ 新たな認識あるいは方法の適用や国際比較など新しい分野の研究やアプローチについては,その
ユニークさや何を特徴とするかについて論述することが求められる。
第3章 経営学研究科 -12-
/439
さらに,博士学位請求論文の分量については,単行本1冊に相当する分量が望ましく,理論・学説関
連については 16 万字以上,歴史的・実証的研究については 20 万字以上が基準とされている。
本研究科においては,学位授与の判断基準として「博士学位請求論文について」と題するものが存在
しており,上述の規準や論文の分量などが示されている。
【長所】
修士学位と博士学位のいずれも積極的に授与している。また授与方針や基準も適切である。
【問題点】
授与状況,学位の授与方針・基準をさらに周知することが可能である。
【問題点に対する改善方針】
授与状況,学位の授与方針などを示した資料を作成し,ガイダンスなどにおいて配布し,説明する。
また,本研究科のホームカミングデーにおいて配布,説明する。
・学位審査の透明性・客観性を高める措置の導入状況とその適切性
【現状】
修士論文の審査にあたっては主査と副査2名が選出される。主査は指導教員が務める。副査2名は専
門領域が近い教員が選ばれる。そのさい,審査業務負担も考慮される。
博士論文の審査にあたっては主査と副査2名以上が選出される。主査は指導教員が務める。副査2名
は専門領域が近い教員が選ばれる。当該領域の専門家が少ない場合には,さらに他の研究科や他の大学
の研究者が副査に加わることがある。
博士後期課程に2年を超えて在学している者は,毎年 10 月第3木曜日までに課程博士号の申請をす
ることができる。研究科委員会において指導教授が推薦し予備審査にはいる。面接,加筆・修正を含む
予備審査の後,研究科委員会において予備審査報告が行われ,約1カ月間の共同研究室開示期間にはい
る。その後,研究科委員会において本審査受理が認められたならば本審査に入る。本審査の後,研究科
委員会において本審査報告がなされたら,研究科委員会委員の過半数が出席して無記名による投票を行
い,出席委員の三分の二以上の賛成で合否が決定される。
【長所】
学位審査にあたっては,内規等に従って運用しているので,透明性・客観性は確保されている。
【問題点】
学位審査が透明・客観的であることを大学院学生は十分に理解していないと考えられる。
【問題点に対する改善方針】
ガイダンスなどにおいて透明・客観的であることを周知する。また,本研究科院生協議会との話し合
いの際に説明する。
・修士論文に代替できる課題研究に対する学位認定の水準の適切性
【現状】
マネジメントコースについては,修士論文に代えて課題研究レポートを提出することによっても修士
学位が授与される。課題研究レポートの審査における基準を明治大学学位規程第 14 条に従っており,
とくに同条の後半にある「高度の専門性を有する職業等に必要な高度の能力を示す」という部分に重点
をおいた審査をしている。
【長所】
社会人にとっては,課題研究レポートの提出が認められることにより,実務での経験をふまえて関連
知識を拡大し,特定の課題について経験を普遍化,一般化する研究ができることになる。
・学位論文審査における,当該大学(院)関係者以外の研究者の関与の状況
【現状】
博士学位請求論文の審査にあたっては,必要に応じて他大学の研究者あるいは本研究科定年退職教員
第3章 経営学研究科 -13-
/440
に依頼することができる。
【長所】
適切な審査委員を選任することができる。
・留学生に学位を授与するにあたり,日本語指導等講じられている配慮措置の適切性
【現状】
指導教員が日本語についても適切に指導している。国費留学生については,大学院学生がチューター
となり,支援している。また,修士,博士の学位請求論文ともに英語で書かれていても受理される。
【長所】
特に留学生に学位を授与するにあたっては日本語指導等適切に配慮されている。英語で書かれていて
も受理される。
(課程修了の認定)
【目的・目標】
博士前期課程においては,とくに優秀な大学院学生は 1 年間で修了することを認める。それによって,
博士後期課程への進学を早めることができ,あるいは社会での貢献を期待できる。
・標準修業年限未満で修了することを認めている大学院における,そうした措置の適切性,妥当性
【現状】
博士前期課程学生で次の条件を満たす者は,「修業年限短縮による修士学位授与」の申請をすること
ができる。
(1) 在学1年間で,特に優れた学業成績をあげる見込み,及び修士論文を提出できる見込みのある者。
審査員による研究計画書の審査および面接で決定する。
(2) 指導教員の推薦をうけられる者。
(3) 前期課程の入学試験成績が,学内選考,一般入試または留学生入試(A・B区分)それぞれにおい
て上位3位以内の者。申請後,成績については研究科委員会で調査する。
(4)広く認知されている機関,団体,法人の発行する雑誌などに,博士前期課程入学前に掲載された優
れた活字論文を有している者。
希望者は4月の特定日 11 日までに書類を提出し,申請期間修了後第1回目の研究科委員会の議を経
て,修業年限短縮を許可する旨,本人に通知する。
修業年限短縮については,博士前期課程「修業年限短縮による修士学位授与」内規があり,それを踏
まえて博士前期課程「修業年限短縮による修士学位授与」について(学生用)と題するものが存在して
いる。
【長所】
早期に博士後期課程に進学できたり社会で活躍できたりするので,優秀な大学院学生にとっては魅力
的な制度となっている。
第3章 経営学研究科 -14-
/441
9.ガバナンス研究科
(1) 教育課程等
(独立大学院の教育課程)
【目的・目標】
政策創造力・政策形成能力・政策評価能力が涵養されるように編成する。
・学部に基礎を置かない独立大学院,独立研究科における,下位の学位課程の教育内容・レベルを視野
に入れた当該課程の教育内容の適切性
【現状】
ガバナンス研究科の教育課程は,一連の政策形成・展開過程に即して,院生に分かりやすく,また政
策創造能力・政策実施能力・政策評価能力が涵養されるように編成される。これらに関わる中核的な科
目群として,政策科学科目群(A群),その背景・基盤をなす教育分野として国際政策科目群(B群),公
共経営科目群(C群),法律技術科目群(D群)がある。
本研究科は,学部に基礎をおかない独立研究科としてあるものの,兼籍・兼担教員を政治経済学部か
らあおいでいることから,協力・連携関係にある。とりわけ,地域行政学科は,「自治体公共政策」を
主たる専攻分野としており関係もあることから,今年度から地域行政学科出身者について若干名(3名)
の推薦入学枠を設定している。しかし,大多数の志願者・院生は,理系・文系諸学部出身の多様な学問・
教育課程を修めた者からなるので,格別に,地域行政学科の学位課程の教育内容・レベルを視野に入れ
たカリキュラムは用意していない。
(単位互換,単位認定等)
【目的・目標】
コース別(政治・行政・公務員志望)に履修条件を満たすよう単位認定し,明確な問題意識と専門性
を高める目的で,教育課程を編成するものである。
・ 国内外の大学等と単位互換を行っている大学院研究科にあっては、実施している単位互換方法の適
切性
【現状】
現状では国内外の大学等と単位互換を行っていない。今後,必要に応じて教授会の基にワーキンググ
ループを設置し,検討を行う。
(外国人留学生等への教育上の配慮)
【目的・目標】
国際的な視野を備えた高度専門職業人を育成するとともに,研究.教育活動の一環として国際交流の
活発化を推進する。
2006 年度から外国人留学生コースを導入した。当該国の 21 世紀を担う指導者となることが期待され
る優秀な若手行政官,実務家,研究者等を迎え,専ら英語で,また帰国後の実務に資するよう公共政策
諸科学の教育を行うものである。これにより,わが国の公共政策学の理論水準を示すとともに,日本の
政治・行政文化,市民社会についての良き理解者として両国友好関係の基盤の拡大と強化に貢献するこ
とをめざす。
・外国人留学生に対する教育課程編成,教育研究指導への配慮
【現状】
「政策科学科目群」
「国際政策科目群」
「公共経営科目群」に配当されている英語による講義科目が用
意されており,英語による講義・演習のみで 40 単位を充足することができる。また,1年次から,留
学生個々人について指導教授が配され,外国生活に早く慣れることができるよう配慮されている。
【長所】
本研究科では,国際的な視野を備えた職業人を育成することをも目指していることから,双方に利点
があると思料する。
第3章 ガバナンス研究科 -1-
/442
外国人留学生については,政府派遣留学生,国費留学生等に限定しており,目的意識・経済的基盤な
どに問題はないと思料している。
(生涯学習への対応)
【目的・目標】
本研究科を卒業した者を対象に,会員制・会費制の「ガバナンス・ネットワーク」を立ち上げ,引き
続き公共政策研究の継続を支援する。
・社会人再教育を含む生涯学習の推進に対応させた教育研究の実施状況
【現状】
年3・4回ほど土曜日5限に,外部講師又は専任教員による講演会・研究会を開催し,会員(卒業生)
相互の親睦と情報交換,院生との交流をめざし,常に公共政策学に関する最新情報・知見に触れること
ができるような機会を確保している。
【長所】
自治体職員・議員・民間企業職員との交流・情報交換,生涯学習機会を可能にしている。
(研究指導等)
【目的・目標】
職業別かつ院生個々人の関心に対応するためにコース制を設定し,教育・研究効果があがるよう研究
指導を行う。
・教育課程の展開並びに学位論文の作成等を通じた教育・研究指導の適切性
・学生に対する履修指導の適切性
・指導教員による個別的な研究指導の充実度
【現状】
院生の関心に即し,その教育・研究成果をあげるために,コース制を採用している。①自治体の首長
や議員,さらにNPO・NGO職員,民間企業人(シンクタンク等)を対象とする「政治コース」では,
ガバナンス研究や政策創造研究,NPO・NGO研究など,共治・協治を理念とする政治・行政のあり
かたを学ぶ。②国・自治体職員,NPO・NGO職員等を対象とする「行政コース」では,公共政策・
公共経営・計画行政など,行政効果と効率性をめざすこれからの自治体経営のありかたを学ぶ。③公務
員をめざす「公務員養成コース」では,ガバナンス時代の公務員にふさわしい専門技術的知識と使命感
を体得できるよう,前掲の諸科目とともに,特に各人の興味と関心に沿った具体的事例に即した実践的
内容の政策分野研究を用意する。さらに,行政研究指導室を設置し,公務員受験準備と試験対策の指導
並びに法学・経済学等の科目を開講する。④「外国人留学生コース」では,「政策科学科目群」,「国際
政策科目群」
,
「公共経営科目群」に配当されている英語による講義科目を用意し,修得単位数を充足す
ることができるようにしている。また,1年次から,留学生個々人について指導教授が配され,外国生
活に早く慣れることができるよう配慮されている。
このように教育課程をコース別に例示することで,各人の関心・問題意識に沿った内容にするととも
に,①講義中心科目と②演習に比重をかけた科目,③演習中心科目とに分け,基礎的知識の理解と実務
的・実践的事例研究等を適切に組み合わせることで,幅広い知識と科目分野毎の技法(スキル)を習得
できるように工夫している。
【長所】
コース・メニューを設定することで,まずもって個々人の課題意識・関心に沿った基本的教育課程を
示し,その後の学修展開を院生に委ねることで,短期間に効率的に教育・研究内容を深めることができ
る。
【問題点】
時間割設定によってあるいは遠隔地からの通学者にとっては,一年次に当初メニューをとることがで
きない場合も想定される。
【問題点に対する改善方針】
第3章 ガバナンス研究科 -2-
/443
演習中心科目については,作業的学習が必要であることから,すでに,土日・祝祭日等・連休期間に
開講している科目があり,遠隔通学者も活用しているので,同一コースについて時間割が重複しないよ
う設定するとともに,遠隔地通学者の要望にしたがい土日・祝祭日等・連休期間における特設的な集中
講義の設定によって対応ができるかについても検討する。
(2) 教育方法等
(教育効果の測定)
【目的・目標】
2年次から指導教員の下で行われる課題設定演習,レポート作成演習における研究報告・レポート作
成によって,前年度来の個々の院生の関心テーマと学修の達成状況を測るとともに,教育・研究の成果
が「リサーチ・ペーパー」に表現・反映されるよう指導する。
・教育・研究指導の効果を測定するための方法の適切性
【現状】
個々の講義・演習,小テストによって,不断に教育効果を測ることができるとともに,2年目から作
成に入るリサーチ・ペーパーの内容によって,最終的評価を行うことができる。リサーチ・ペーパーの
評価については,卒業判定事項であることから,指導教授のほか,副査も査読することによって,評点
の客観性を担保することができる。このうち優れた内容の論文については,
「優秀リサーチ・ペーパー」
として,卒業論集の形式で編集・配布され,その評価の客観性を確保することができる。
【長所】
リサーチ・ペーパーの作成と優秀リサーチ・ペーパーの公開によって,院生に研究意欲を持たせるこ
とが可能になり,さらに,卒業後も研鑽を奨励する意味で,教員による査読を経て掲載される「大学院
生論集」が用意されている。
(成績評価法)
【目的・目標】
少人数教育であることから,厳格な成績評価以前に,一定の評価点に達するよう教育指導を徹底する。
・学生の資質向上の状況を検証する成績評価法の適切性
【現状】
成績評価は,A(90~100 点),B(80~89 点),C(70~79 点),D(60~69)点,F(0~59 点)の5段
階評価としている。
D以上の成績を修めることが単位修得の条件となる。Fは不合格点とする。さらに,成績評価の方法
はシラバスに明記し学生に周知させている。成績評価項目としては,①「授業への出席状況」,②「討
議への参加状況」,③「レポート等の報告」などであり,各項目毎にその割合について明示することで,
厳格な成績評価を行う。ただし,GPA(グレード・ポイント・アプローチ)方式はとっていない。大
講堂・マスプロ講義と異なり,少人数の対面式講義・演習が主であることから,評点B(80~89)以上
の達成をめざし,その意味でも前掲評価項目(①~③)を重視している。
【長所】
前掲評価項目に即して,個々の院生に声をかけ,きめ細かい教育指導が可能となる。
【問題点】
他大学・他大学院の評点基準として,S(90~100 点),A(80~89 点),B(70~89 点),C(60~69 点),
F(0~59 点)の5段階評価がとられているところが多い。そうすると本学のAは,内容的に同点である
にもかかわらず,S以下の評点と誤解される可能性があり,かねて学生・院生の中からその改善が求め
られてきた。
【問題点に対する改善方針】
評点基準が他大学の評価と異なることから,2007 年度以降,全学的に改善する措置がとられることに
なった。
第3章 ガバナンス研究科 -3-
/444
(教育・研究指導の改善)
【目的・目標】
FD(ファカルテイ・デベロップメント)の制度化と改善をめざす。
・教員の教育・研究指導方法の改善を促進するための組織的な取組み状況
・シラバスの適切性
・学生による授業評価の導入状況
【現状】
専門職大学院申請をめざし,2006 年度から研究科内に専ら研究科長,教務主任,大学院委員の三者か
らなるFD(ファカルティ・デベロップメント)委員会を設置している。院生による授業評価,指導評
価アンケートは前・後期授業期間終了時期に実施するものとし,教育面での要望や不満については,F
D委員会が整理して教授会に提出し,審議・検討するとともに,その内容と改善方法を公表する。さら
に,教員間の授業参観と内容評価を可能にするものとして,オン・デマンドによる講義内容のビデオ収
録とそのインターネット配信(Windows)により,受講生はもとより,教員もまた視聴できるものとし,
教育内容について教員相互間の評価,提案や助言を可能にしている。
また,ガバナンス研究科所属の教員と非常勤講師からなるFD協議会を年一回開催し,成績評価の方
法・基準の統一並びに教育手法について意見交換を行い,教育内容の向上と改善を図る。院生の受講判
断資料となっているシラバスについては,①授業の概要・目的,②開講回数・開講日毎の授業内容を具
体的に明記し,③履修の注意点,④教科書・参考書,⑤成績評価の方法その他の記述により,教員相互
間での講義内容の重複の回避,補足・展開を可能にしており,さらに前年度の講義内容の見直しと進展,
教材資料開発の要否等の判断材料となっている。
【長所】
少人数教育であることから,教育内容について院生に直接,講義内容の評価を聞くことができ,また,
院生からも時に教育方法について助言や積極的提言が行われており,そのことで日々,改善努力が払わ
れてきたと思料される。
オン・デマンドによる講義システムは好評であるためほぼ全科目にこのシステムを適用している。
【改善方針】
特にない。但し,これまでの2年間,院生による授業評価,指導評価アンケートを前・後期授業期間
終了時期に実施してきたが,アンケートは教員個々人毎に回収してきたこれまでのシステムをあらため,
執行部(研究科長,教務主任,大学院委員)の下に回収することで,より現状を正確に把握できると思
料される。
オン・デマンドによる講義システムについて,教室でのディスカッションの集音向上や板書の放映な
どの改良を行いリモートラーニングとしてより一層の充実を図り,将来的に遠隔授業の実施につなげる。
(3)
国内外における教育・研究交流
【目的・目標】
高度な専門的知識と国際的な視野を備えた職業人を育成しようとする観点から,海外との教育・研究
交流を推進するとともに,日本の政治と文化について理解を深めてもらうために,外国人留学制度を整
備し,発展途上国の国費・政府派遣留学生を積極的に受けいれ,公共政策学の教育・研究を通して,当
該国の支援をめざす。
・国際化への対応と国際交流の推進に関する基本方針の明確化の状況
・国際レベルでの教育研究交流を緊密化させるための措置の適切性
【現状】
前掲の目的・目標を掲げ,2006 年度から発展途上国の外国人留学生の受け入れを開始した。
【長所】
発展途上国の若手行政職幹部を育成するという観点から,マレーシア政府派遣留学生や国際協力機構
(JICA)留学性等,留学目的(ガバナンスを中心とした公共政策論)が明確な国費留学生を受け入
れようとするもので,教育効果をあげることができると思料している。
第3章 ガバナンス研究科 -4-
/445
【問題点】
マレーシア留学生については,マレーシア政府の宿舎があるが,それ以外の留学生については,大学
の方で必ずしも充分な規模・施設を備えた宿舎を用意しているわけではなく,現状では課題となってい
る。
【問題点に対する改善方針】
大学として早急な対策が講じられるよう「年度計画書」を通じて改善を図る。
(4) 学位授与・課程修了の認定
(学位授与)
【目的・目標】
昨年度,卒業生に「公共政策学」修士の学位を授与したが,今後とも順調に授与できる状況を維持す
る。
・修士 博士の各々の学位の授与状況と学位の授与方針・基準の適切性
・学位審査の透明性・客観性を高める措置の導入状況とその適切性
【現状】
「明治大学学位規程」の定めに則り,所定の在学期間を満たし,所定数の単位を修め,かつ,リサー
チ・ペーパーを作成したものに「公共政策学」修士の学位を授与した。さらに,総合成績優秀者上位 10
人に,特に,その旨を明らかにする趣旨で記念品を授与した。
(課程修了の認定)
【目的・目標】
本研究科は,標準修業年限を原則2年間とするが,行政コース(自治体職員等)において,修業年限
を1年間とする短期履修生の制度を特設し,論文その他優れた職務実績を持つ者に,短期課程修了を認
定することで,公共政策学の普及につとめ,高度専門職業人を一人でも多く社会に供給することを目的
とする。
・標準修業年限未満で修了することを認めている大学院における,そうした措置の適切性,妥当性
【現状】
本研究科は,発足して2年を経過したが,未だ実例がない。短期履修生の入学条件として次のような
基準を設定している。すなわち,行政実務経験を有し,地方自治関係の定評ある専門雑誌(例えば,地
方自治,自治研究,都市問題・都市問題研究,月刊自治研等)若しくは国・自治体の刊行物にすぐれた
論稿・研究報告書を掲載した実績をいくつか持つ者又は職務上顕著な業績を有する者で,1年以上の修
業期間による修了を志望する者を予定している。短期履修生試験においては,①事前に指導教授を特定
させ,かつ業績目録の提出を求め,その審査を経た上で,②小論文と③志望動機書・研究計画書に基づ
く面接を行う。
この場合,入学時点から指導教授に就き,課題設定演習・レポート作成演習科目を履修するとともに,
リサーチ・ペーパー作成の指導を受ける。単位ならびにリサーチ・ペーパーの作成を卒業要件とするこ
とについては,一般の院生と同様の卒業認定を行う。
【長所】
社会人の中には,すでに優れた業績を有する者があり,かつ,短期間に修学目的を達成する者がある
ことが想定されることから,画一的に修了認定するのではなく,個別事情に配慮した取扱いをすること
で,有為な人材を支援する意義があると思料される。
第3章 ガバナンス研究科 -5-
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