Comments
Description
Transcript
第 42回日本腹部救急医学会総会 会長賞受賞記事 フリーザーバッグ
日本腹部救急医学会雑誌 26⑹:708,2006 第 42回日本腹部救急医学会総会 会長賞受賞記事 フリーザーバッグ(ZIPLOC )を用いた高度腹腔内感染例の 術後感染対策の工夫 兵庫医科大学救命救急センター 山田真理子,切田 学,小谷穣治,平田淳一,吉永和正,丸川征四郎 [背景]重症急性膵炎後の壊死組織の感染に代表され フリーザーバッグは一辺に開閉用ジッパーのついた る高度腹腔内感染症例では,open abdominal man- 厚さ 0.068mm の食品冷凍保存用のポリエチレン製 agement での腹腔内ドレナージや洗浄が行われてい の透明な袋で,スーパーマーケットなどで約 20円 袋 る。しかし,洗浄液や腸管保護などの 部管理に難渋 で入手できる。当院では頭蓋骨片の保存容器として滅 する。われわれは洗浄液のベッド上漏出の防止,腸管 菌状態で準備されており,今回は(中)176×203mm 保護を目的とし,フリーザーバッグ(ZIPLOC )を や(大)268×279mm を使用した。 応用した簡便な 部管理法を 案したので報告する。 術中にバッグの底を切り開き筒状に挿入し,バッグ [症例・方法]77歳男性の重症急性膵炎後膵周囲膿瘍, を腹膜に縫合固定する(図 1,2) 。腹腔内洗浄は 1回 48歳女性の重症急性膵炎壊死巣感染,58歳男性の虫 あたり生理食塩水約 5L 以上にて腹腔内留置チューブ 垂炎穿孔腹腔内膿瘍で臨床効果を検証した。 からとジッパーを開いてバッグ内から注入し,バッグ 内外で排液を吸引する。必要に応じてバッグ内から用 手的に感染巣誘導も行うことができた。術後感染徴候 がなくなるまで連日洗浄を繰り返し,閉腹時にバッグ を除去した。 [結果・ 察]従来の開腹 下でのベッドサイドでの 洗浄法では以下の問題点があげられる。 1:洗浄液や浸出液により 部周囲やベッドが汚染 する 2:被覆ガーゼ付着により露出腸管漿膜が損傷される 最近報告されてた Silo closure 法,vacuum closure 法でも上記は改善されるが,以下の問題がある。 1:密閉吸引であるため固形壊死物質の十分なドレ ナージが妨げられる 2: 処置の手間やドレッシング材のコストがかかる 図 1 浸出液が多い場合はジッパー部より吸引管を留置 し持続吸引も可能である。 フリーザーバッグでは上記すべてが改善され,さら に以下の利点がある。 1:バッグの開閉が容易なため頻回の洗浄処置も患 者に負担無く行える 2:開口部が大きく,用手的に十分な洗浄と壊死物 質除去が可能である 3:腹膜下にバッグの片縁を沿わせることにより腹 壁と腸管漿膜との癒着を防止できる 4:バッグは装着部が脱落するまで交換の必要がない [結語]Open abdominal management 法として,食 品冷凍保存用バッグを用いた被覆法を 案した。本法 は開腹 の洗浄処置の簡略化,周囲汚染の軽減,腸管 損傷の軽減,経済性に優れていた。 図 2 フリーザーバッグ装着の断面模式図 708