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平成28 年5 月2 日 No.535

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平成28 年5 月2 日 No.535
平成 28 年 5 月 2 日
No.535
老人ホームに入居して空き家となっている不動産の譲渡時期を考えるにあたって
平成 28 年度の税制改正により「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」が創設されました(適用要件
等については、資産税 FPNews の No.522 をご覧ください。
)が、この特例の適用にあたって、被相続人が老人ホームに
入居していた場合の適用の可否については、明らかになっていませんでしたが、法令のみを見る限り、老人ホームに入居す
るなどして空き家となった場合には、本特例の適用は認められないようです。
そこで、今回は老人ホームに入居していて空き家となっている不動産がある場合において、譲渡時期を考えるにあたり考
慮すべき事項についてご説明させて頂きます。
(1)居住用財産の 3,000 万円特別控除・居住用財産の軽減税率
居住用財産の 3,000 万円特別控除とは、譲渡所得から最大 3,000 万円を控除することができる制度であり、主な要件と
しては、
「居住の用に供さなくなった家屋を、その居住の用に供さなくなった日以後 3 年を経過する日の属する年の年末ま
でに譲渡する」こととなっているため、現在は老人ホームに入居されていて空き家となっていたとしても、要件を満たす可
能性が十分にありますので、税負担を大きく軽減することができます。
また、譲渡する年の 1 月 1 日において所有期間が 10 年を超えている場合は、一定に要件を満たせば居住用財産の軽減税
率(課税長期譲渡所得金額のうち 6,000 万円以下の部分対して、税負担割合が 20.315%のところ 14.21%となります。
)
を受けることもできますので、更に税負担の軽減を図れます。
(2)相続税評価額と売却金額との乖離
一般的に、不動産のうち土地の相続税評価額は時価よりも低くなるように定められています。つまり、土地を売却するこ
とにより低い評価の財産から高い評価の財産に置き替わることとなりますので、相続財産が増えることとなります。
例えば、不動産(時価 5,000 万円、相続税評価額:4,000 万円)のような場合は、不動産の状態で相続が発生すれば、
4,000 万円で評価されますが、譲渡後に相続が発生すれば 5,000 万円(実際にはここから諸経費や譲渡税等が控除されま
す。
)の現預金として評価されます。
ただし、対策方法として、譲渡後の現預金を暦年贈与により減らしていくという方法があります。
暦年贈与については、年 110 万円以下であれば贈与税の負担無しに贈与を行うことができ、財産の種類は問わないので
不動産でも構いませんが、不動産の場合、年 110 万円以下での贈与を行うためには評価額が大きいため、持分での贈与と
なり、また、登記費用も必要なため、手間とコストがかかりますので、ほぼコストをかけずに行うには現預金の贈与が好ま
しいです。なお、相続財産が多い方は年 110 万円を超える贈与を行って、あえて贈与税を払ったとしても相続対策になり
ますので、贈与金額については、検討が必要です。
(3)小規模宅地等の特例(相続税の特例)との適用要件の相違に注意
小規模宅地等の特例という制度のなかに、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等について、
同居していない親族が相続する場合において、下記の要件を満たすときは、最大 330 ㎡までの部分については、通常の評
価額から 80% が減額できるというものがあります。
相続した者
適用要件
被相続人の配偶者又は相続開始の直前において被相続人と同居していた一定の親
族がいない場合において、被相続人の親族で、相続開始前 3 年以内に日本国内に
ある自己又は自己の配偶者の所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の
被相続人と同居していない親族
居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがなく、かつ、相続開
始の時から相続税の申告期限までその宅地等を有している人(相続開始の時に日
本国内に住所がなく、かつ、日本国籍を有していない人は除かれます。)
そして、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった宅地等の場合であっても、下記の①・②の
いずれの要件も満たすときには、その被相続人により老人ホーム等に入居等をする直前まで居住の用に供されていた宅地等
(その被相続人の特別養護老人ホーム等に入居等後に、事業の用又は新たに被相続人等以外の者の居住の用に供されている
場合を除きます。
)については、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に当たることとされています。
①被相続人が、相続の開始の直前において介護保険法等に規定する要介護認定等を受けていたこと
②その被相続人が老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等に入居等していたこと
この制度は、老人ホームに入居されていたとしても、要件さえ満たせば特例の適用を受けることができますので、
「被相続
人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」とは取扱いが違うという点にご注意ください。 (担当:田中 正洋)
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