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日本における知識共有ネットワークによる CCS コミュニケーション枠組み

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日本における知識共有ネットワークによる CCS コミュニケーション枠組み
CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
Final report
Contractor JOB code:0-6265-20
January 2013
日本における知識共有ネットワークによる
CCS コミュニケーション枠組みの構築
2014 年 1 月翻訳版
A CCS Communication Framework developed by
the Japanese Knowledge Network
August 2013
JGC Corporation
CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
Final report
Contractor JOB code:0-6265-20
January 2013
本レポートは日本メンバーの便宜のため英語から日本語に翻訳したものです。グローバル
CCS インスティテュートは、本レポートの日本語版に翻訳された内容の正確性、信頼性、また
は完全性を保証するものではありません。
CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
Final report
Contractor JOB code:0-6265-20
January 2013
要 旨
本報告書は、日本における知識共有ネットワークが実施した複数のフェーズにわたり実施さ
れた、「日本における知識共有ネットワークによる CCS コミュニケーション枠組みの構築」プロ
ジェクトの第 2 フェーズについて示したものである。実施内容は次のとおりである。
(1). プロジェクトの第 1 フェーズで行った、「CCS をコミュニケーションの枠組みを通じてどの
ように説明すべきか」という専門家の議論に基づき、CO2 回収・貯留(以下「CCS」)に関
する一般市民向けアウトリーチプログラムを作成・試験する。
(2). CO2 貯留に関する問題のうち、特に、CO2 圧入による誘発地震と、地震が CCS に与える
影響についての「知識ギャップ」に対処する。
背景
日本における知識共有ネットワーク(以下「知識共有ネットワーク」)は、グローバル CCS イン
スティテュート(以下「インスティテュート」)の資金提供を受けた取り組みであり、CCS に関係
する 20 以上の組織に属する専門家が自主的に参加し、CCS に関するコミュニケーションや
地震に関係するテーマについての知識共有に取り組んでいる。
知識共有ネットワークの包括的プロジェクトである「日本における知識共有ネットワークによる
CCS コミュニケーション枠組みの構築」は、インスティテュートと共同で進めているプロジェクト
であり、その目的は、CCS ネットワーク内において知識を共有する構造的アプローチの支援
を確立し、また、利用可能な知識管理の方法及びツールを作成し試験することである。
CCS に関するコミュニケーションに関する知識の共有枠組み
知識共有ネットワークで実施した知識の共有方法の試行評価では、プロジェクトに関する議
論及び活動の対象を、日本における CCS に関するコミュニケーションの改善に絞った。その
ため、「日本における CCS コミュニケーションの枠組みの開発」というプロジェクトとした。この
プロジェクトで追及する中心テーマは次のとおりである。
•
CCS に関係する全分野の専門家の知識を統合し、特定された課題の解決に利用可能
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CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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な一貫した情報群の形成に向けて、CCS の専門家等が最大限効果的に協力しあうには
どうすればよいかを明確にする。
•
専門家の知識をどのように集約すればよいか、科学技術に関する経験又は理解が様々
なレベルにある利害関係者にも理解できる簡素な形式で、どのように提示すればよいか、
を明確にする。
これまでの作業:第 1 フェーズ
2011 年に完了した第 1 フェーズでは、一般市民に CCS について専門家が明解に説明する
ために、日本における CCS に関するコミュニケーションの共通枠組みの構築を試みた。様々
な知識共有ツールを利用し、集合的な専門知識を照らし合わせることで CCS の論証モデル
(Argumentation Model)による論拠マップ(Argument Map)を作成した。論拠マップとは、複
雑な問題を分解し、問題の構成要素それぞれについて明確な説明又は論拠を提供すること
を容易にする、総合的な知識管理ツールである。
第 1 フェーズの論拠マップでは、CCS の技術開発を正当化するのに重要な根拠を得ることが
できた。また、第 1 フェーズのアクションプラン案では、そうした根拠を外部の利害関係者及び
一般市民に最善の形で伝達するにはどうすればよいかについて、知識共有ネットワークメン
バーから意見を収集した。
現在の作業:第 2 フェーズ
第 2 フェーズでは、パブリックアウトリーチプログラムを設計・試験し、第 1 フェーズで作成した
知識基盤の改良を試みた。これを行うに当たっては、CO2 貯留に関する最も重要な課題とし
て、CO2 圧入による誘発地震と、地震が CO2 の地層への貯留に影響を及ぼす可能性につい
て更に知識共有活動を進めた。
本報告書はその過程を要約すると共に、以下の重要な 2 つの「タスク」について報告すること
により、本プロジェクト第 2 フェーズの結果を提示する。
タスク 1:第 1 フェーズで作成したアクションプラン及び論証モデルに基づいて、パブリックアウ
トリーチプログラムを作成・試験する。
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CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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タスク 2:地震と CO2 貯留に関する重要な「知識のギャップ」に対処すべく、知識共有を重点的
に実施する。
方法と結果
タスク 1:パブリックアウトリーチプログラムの作成と試行
「タスク 1」は 3 つの作業からなる。
・タスク 1.1 利害関係者の特定
過去の CCS アウトリーチ活動、及び北海道で現在行われている CCS 実証プロジェクトから
得た地域社会調査、及び、回答者 979 名で構成される一般市民調査のデータを組み合わせ
ることで、「重要な利害関係者グループ」と、これらグループが持つ「懸念」や「必要としている
知識の主要分野」を把握した。
利害関係者に関する重要な特徴、たとえば職業、科学についての理解度、日本で CCS を実
施することへの関心の有無、CCS プロジェクトへの影響力などから、CCS への大きな懸念を
表明する主要な利害関係者として教師と主婦を特定した。これらグループを、一般市民アウト
リーチプログラム試行版の対象とした。
・タスク 1.2 パブリックアウトリーチプログラムの作成
上述の利害関係者グループのニーズを満たすべく、プロジェクトの第 1 フェーズで論拠マップ
に取り入れた専門家の知識を元に、簡潔に事実を整理した視聴覚資料としてまとめたものを
用いて、一般市民向けのアウトリーチプログラムを設計した。
・タスク 1.3 パブリックアウトリーチの試行評価
アウトリーチ資料を評価するため、利害関係者グループ(主婦、教員)を対象に、フォーカスグ
ループインタビュー(Focus Group Interview:以下「FGI」)を実施した。FGI では、参加者が
CCS についての知識と意見をどのように得たかを評価すべく、参加者を監視した。FGI は、
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CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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CCS に関する参加者の疑問や懸念の観察が主題であるため、対象テーマの専門的な知識
を持たないファシリテーターにより進められた。その結果を分析し、プログラムの有効性を判
断した。
結果
FGI では、一般市民が CCS に関するアウトリーチ資料を提供された際に、懸念や不安を感じ
る重要分野について、情報を収集することができた。
対象とした主婦と教員の 2 グループの参加者は、CCS が CO2 の回収、輸送、貯留から成る
ことを理解したが、提供した情報では、参加者が超臨界 CO2 の状態や地中貯留のメカニズム
を理解するには不十分であった。そのため、CCS が CO2 を長期間貯留する上で安全な技術
かどうかを参加者に評価させるまでには至らなかった。
結果の分析から明らかになったのは、参加者の教育又は職業上のバックグラウンドにより、
提供されたアウトリーチ資料の理解度に差が見られることである。とくに科学分野での教育を
受けたことが理解度の違いに表れていた。
利害関係者グループの当初の懸念にはほとんど差はなかったものの、居住地近隣で CCS を
実施することについて質問が及ぶと、グループ間で差が見られた。主婦は教員グループに比
べ、政府主導又は広く受け入れられた政策やプロジェクトに対して黙従的な傾向が強かっ
た。
FGI 参加者の中には、CCS が本当に気候変動の緩和につながるのであれば自らの生活様
式にも「利益」となるとの見解を示す者もいた。この結果は、正確な情報を得られれば、一般
市民でも CCS の利点をリスクよりも大きく評価する可能性があることを示唆している。
FGI の結果と、誘発地震に関して知識共有ネットワークでパブリックアウトリーチについて議
論した結果とを分析したところ、以下の結論に至った。
•
エネルギーや CCS 技術に関わる科学的知見に関する基本的な理解度が低いため、
CCS について具体的なメッセージを届けることと、CCS のリスクコミュニケーションを実
現するには、サイエンスコミュニケーションに類するものが必要である。
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•
こうした資料は、過度に複雑になることを避ける一方で、対象となる利害関係者の関心と
バックグラウンドを意識しながら慎重に立案することが必要である。
•
情報の不足や、疑問点を簡単に解決する説明や術を持たない情報提供は、情報の受け
手の懸念を増加させることになり、CCS の受容に影響を与える。専門家による適切な説
明と共に情報を提供すれば、利害関係者にとっても有用となり、安心を与えるはずであ
る。また、メッセージの内容は重要であるが、そのメッセージを信頼できる人間が提供す
ることも、それと同等に重要である。
タスク 2:重要な「知識のギャップ」の解消に関する知識共有
本ネットワークはタスク 2 を大きく 3 つの作業段階に分けた。
・タスク 2.1 情報の照らし合わせ
日本における誘発地震及び CO2 地中貯留に地震が影響を与える可能性について、文献調
査を実施した。関連するすべての情報を照らし合わせ、議論しやすい形にまとめた。
タスク 2.2 知識共有
知識共有作業の導入部として、インスティテュート主催で、数名の地震の専門家(CCS にも精
通)で構成されるオンラインセミナーを知識共有ネットワークメンバーに対して実施し、このテ
ーマの概要を説明した。その上で地震の専門家にも、知識共有セッションへの参加を促した。
オンラインセミナー後、メンバー間で協力が可能なテーマについて議論し、以下の 3 分野につ
いて合意が得られた。
テーマ 1:誘発地震のリスクに対処しつつ、CO2 地中貯留に関する安全方策を策定するため
に利用可能な情報の照らし合わせ
テーマ 2:誘発が疑われる地震に起因した損害について、賠償責任の可能性の議論
テーマ 3:誘発地震に関するパブリックアウトリーチについての議論
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・タスク 2.3 論証モデル及び知識ベースの作成
知識共有ネットワークのメンバーがオンライン議論を実施し、CCS の「安全性及びセキュリテ
ィのピラミッド」の各階層に関係する情報及び知見を要約した知識ベースを作成した。
また、CCS に関する 4 名の専門家が、Davis and Frohlich による誘発地震に関するチェック
リストを、中越地震(2004 年に日本の中部地方、長岡 CO2 貯留サイトから僅か 20km の位置
で発生した M6.8 の地震)に適用した。専門家から得られた回答を用いて、長岡試験サイトで
の CO2 圧入が中越地震を誘発したか否かの証拠について詳述する、論証モデルを作成し
た。
オンライン議論と直接会議を通じて知識ベース構築に向けた情報収集を行い、これをもとに、
特に誘発地震の問題に関するパブリックアウトリーチ戦略を作成した。
結果
大量の調査結果を照らし合わせることは、CO2 貯留と地震に関する問題について信頼に足る
知識ベースを構築するのに有用であった。さらに、この知識ベースを応用し、長岡試験サイト
での CO2 圧入と中越地震の関係について論証モデルを構築し、この手法を専門家の知識ベ
ースに適用すれば、各種利害関係者がこの問題について検討する基盤を形成可能なことが
実証できた。
地震誘発問題に関するパブリックアウトリーチについては、この調査により、以下の点が明ら
かになった。
•
CCS、特に CO2 地中貯留についての科学的根拠が、CCS に関する有効なリスクコミュ
ニケーションを促進するのに十分といえるほど一般市民との間で共有されていない。
•
リスクコミュニケーションの過程で、利害関係者を十分な科学的理解なしに CCS のリスク
について性急に判断を下すよう導くと、ネガティブな結果につながりやすい。こうした状況
を避けるためには、リスクコミュニケーションとともに、基礎科学を伝達するサイエンスコミ
ュニケーション等の適切な設計のプログラムを実施する必要がある。
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CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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•
サイエンスコミュニケーションプログラムの範囲と目標は、CCS のリスクに直接・間接に
影響を及ぼす問題点によって決まる。総合的なサイエンスコミュニケーション戦略を策定
するためには、様々な問題について一般市民の知識「ギャップ」を評価することが必要で
ある。
•
CCS のリスクに関係する可能性がある問題の中で、誘発地震の問題は、地層内への流
体圧入による地震誘発の可能性と、リスク低減に向けて講じうるすべての措置とを人々
に理解させるため、サイエンスコミュニケーションに十分な努力が必要な典型例である。
今後の調査のための提言
第 2 フェーズの調査結果を受けて、重要な「知識のギャップ」として特定した分野を中心にリス
クコミュニケーションとサイエンスコミュニケーションを統合する方法を開発する必要がある。
CCS に関する具体的なリスクのコミュニケーションを可能にする上で必要なサイエンスコミュ
ニケーションレベルは、上述の「知識のギャップ」分野それぞれにおいて検討・試行されること
が好ましく、これにより、日本と世界における今後の CCS コミュニケーション活動を支援し得
る基礎科学の情報が構築されるであろう。
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CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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目 次
1. 謝辞 .......................................................................................................................... 1
2. プロジェクトの目的 ..................................................................................................... 2
3. タスク 1: パブリックアウトリーチプログラムの開発と試行 .............................................. 4
3.1
タスク 1.1: 利害関係者の分析 ........................................................................ 4
3.1.1 CCS の利害関係者 ................................................................................. 4
3.1.2 地域住民の利害関心に関する調査 .......................................................... 6
3.1.3 一般市民の利害関心に関する調査 .......................................................... 7
3.2
タスク 1.2: パブリックアウトリーチプログラムの開発 ....................................... 10
3.2.1 コミュニケーションモデルと設計 .............................................................. 10
3.2.2 対象利害関係者へのアウトリーチプログラム ........................................... 14
3.3
Task 1.3: 試行による評価 ............................................................................ 16
3.3.1 フォーカスグループインタビューの設計.................................................... 16
3.3.2 フォーカスグループインタビューの結果概要 ............................................ 17
3.3.3 考察...................................................................................................... 27
4. タスク 2:重要分野(地震)における知識のギャップを埋める知識共有の実践................. 30
4.1
関連情報の整理 ........................................................................................... 30
4.2
知識共有の実践 ........................................................................................... 30
4.3
論証モデルと知識ベースの開発 .................................................................... 39
5. 考察 ........................................................................................................................ 41
参考文献 ..................................................................................................................... 46
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1.
謝辞
「日本における知識共有ネットワークによる CCS コミュニケーション枠組みの構築プロジェクト」
は、Global CCS Institute の支援を受けた。この報告書は、以下により作成された。
日揮株式会社
横浜市西区みなみとみらい 2-3-1
本業務に係る日揮株式会社のサポーターは以下のとおり:
株式会社クインテッサ・ジャパン(日本)
McKinley Consulting (スイス)
独立行政法人産業技術総合研究所(産総研) (日本)
日本エヌ・ユー・エス株式会社(JANUS)(日本)
株式会社ダイヤコンサルタント(日本)
本業務に係るグローバル CCS インスティテュートのマネージャーは以下のとおり:
Angus Henderson 及び Sean McClowry
主担当者は以下のとおり:
熊谷 司(日揮)
高瀬 博康(クインテッサ・ジャパン)
染矢 聡 (産総研)
Ian McKinley(McKinley Consulting)
桑垣 玲子(JANUS)
吉村 実義(ダイヤコンサルタント)
補助研究員は以下のとおり:
嶋田 秀充(日揮)
小曽根 健嗣(クインテッサ・ジャパン)
和田 克己(クインテッサ・ジャパン)
中川 加明一郎(ダイヤコンサルタント)
毛利 琢磨(JANUS)
堀尾 淳(ダイヤコンサルタント)
知識共有ネットワーク
日本の公的機関及び民間企業並びに国際機関から 20 人以上の専門家が自主的に意見提
供をすることで、この報告書の作成に携わった。これら専門家は、化石燃料、環境、エネルギ
ー、CCS、学術界等の多岐にわたる分野から参加した。
1
CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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2.
プロジェクトの目的
「知識の共有」は、CCS に関係する専門家コミュニティーが非常に必要とし、インスティテュー
トが中心的な役割を担っている分野である。インスティテュートでは、デジタル又は対面での
知識の共有プログラムを実施しているものの、特に知識の国際化の強化を図る観点から、他
にも効果的でよく構築された手法やツールが適用可能かを模索しており、このプロジェクトは、
そうした検討の一環である。日本の知識共有ネットワークメンバーのコミュニケーションと協力
を通じて検討される中心テーマには、以下を含んでいる。
i.
インスティテュートとそのメンバーが、特定された専門知識を有効とするためにど
のように協力していけるか。この知識は、多くの専門分野・研究領域に広められ、
一貫した知識母体を形成することとなる。
ii.
インスティテュートが専門知識をどのように抽出し、また、簡素化した形態で異なる
科学・技術リテラシーの利害関係者に提示することができるか。
フェーズ 1 の結果からは、上で述べた知識共有とコミュニケーションに係る以下の二つのテー
マについて更なる検討を進めるうえで重要な基礎を構築したが、改善と発展を必要とする分
野もある。

論証モデルとアクションプラン案は主に専門家の視点に立っており、インスティテュートの
会員が望むようなパブリックアウトリーチプログラムとして実際に用いられる前に、幅広
い分野の利害関係者の期待と必要性に合致しているかを評価する必要があるだろう。

論証モデル案のスコープは、既存知見の利用可能度合いに依拠しており、利害関係者
に確信を持たせるためには、主要分野におけるいくつかの(おそらく地域限定の)知識の
ギャップ(例えば CCS と地震との関連性)を埋めなければならないだろう。
フェーズ 2 の目的は 2 段階となっている。
I.
フェーズ 1 で作成されたアクションプランと論証モデルに基づいたパブリックアウト
リーチプログラムの作成と試行
II.
主要分野における「知識のギャップ」を埋めるための、幅広い知識の共有
インスティテュートが容易かつ効果的に利用できるようにするため、フェーズ 2 は基軸となる 3
つのプロジェクトで構成されている。

CCS 専門家コミュニティーを中心とした知識を取りまとめ、知識共有を実施するためのノ
ウハウ。
2
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
利害関係者の知識と異なるレベルの期待に応えるべく、論証モデルから簡潔に事実をま
とめた視聴覚資料まで様々な形態での知識の提示。

インスティテュートの知識共有デジタルプラットフォームを改善させるべく、特定の状況や
利用に合わせた経験と提言の提示。
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3.
3.1
タスク 1: パブリックアウトリーチプログラムの開発と試行
タスク 1.1: 利害関係者の分析
タスク 1.2 で設計するパブリックアウトリーチプログラムの対象として、優先度の高い重要なタ
ーゲットグループを選定するため、日本における CCS の利害関係者の分析を行った。
利害関係者の分析では、CCS 情報への関わり方、あるいは、職業、科学/技術へのリテラ
シーのような特徴や、日本における CCS 事業の実施への利害関心を把握し、コミュニケーシ
ョンの優先度を明らかにすることを目的とした。ここでの結果は、以下のサブタスクにおける
利害関係者の特定に用いた。
3.1.1 CCS の利害関係者
CCS に関する情報の「送り手」と「受け手」という観点から、日本における CCS の利害関係者
を分類した。
CCS の技術開発や事業を担っているのは、国(主に、経済産業省)、技術開発や研究を進め
る公的機関(独立行政法人産業技術総合研究所:AIST、公益財団法人地球環境産業技術
研究機構:RITE)であり、ほかに民間では日本 CCS 調査株式会社や、プラントメーカーやエ
ンジニアリング会社である。これら技術や専門知見を持つ主体が、CCS に関する情報の「送
り手」となり得る。ただし現状では、CCS のアウトリーチの担い手は不明確なままである。
アウトリーチ情報の受け手は、利害関心を持つすべての利害関係者となるが、それをグルー
プで分類した例として、インスティテュートが CCS のコミュニケーションのためのツールキット
で整理した利害関係者の一覧例で、メディア、NGO、地域、教育関係、各種団体(Unions)が
あげられている(CSIRO, 2012)。なお、これまで、日本では、メディアや NGO は CCS にほと
んど関心を示していない。ただし、2011 年に発生した東日本大震災により、科学技術全般へ
の不信感が高まっている点は重要である。また、わが国における大規模施設での経験から
は、立地地域における利害関係者として、地方自治体、首長、議員、地権者・近接住民、農業
者、漁業者、商工業者、女性団体、主婦、教育関係者、環境保護などのイシューを持つ各種
市民団体などがあげられる。
4
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利害関係者をまとめると以下のとおりである。

情報の送り手(専門家)
行政、研究機関や研究者、メーカー等

情報の受け手(CCS 専門家以外)
・NGO
・メディア
・地域社会(地方自治体、首長、議員、地権者・近接住民、農業者、漁業者、商工業者、
女性団体、主婦、教育関係者、各種市民グループ等)
・一般市民
上で列挙した利害関係者からアウトリーチプログラムの対象を日本において選定するに当た
り、地域社会と一般市民の利害関心を把握すべく、事前調査を行った。
地域社会については、実際に CCS 実証地点で複数回実施された住民説明会の内容を精査
した(3.1.2 参照)。また、日本国内の一般市民を対象とした先行研究例として、Itaoka らのア
ンケート調査結果によれば、多くの回答者が CCS の情報を知らないことがわかっている
(Itaoka et.al.,2009)。このため、さらに、CCS の安全性に関する不安や疑問を把握するため
に、インターネットアンケートによる調査を実施することとした(3.1.3 参照)。
5
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3.1.2 地域社会の利害関心に関する調査
わが国では、実証試験や候補地の沖合調査が開始されるなど 2030 年までの CCS の実用化
に向けた政策が進められている。
CCS の実証試験の実施が決定している北海道苫小牧市で開催された住民説明会への参加
者の質疑内容から、地域社会の関心を把握することとした。
北海道苫小牧市で開催された住民説明会に参加し、そこでの参加者の質問や不安の要点を
表 3-1 にまとめた。
説明会では、まず、CCS についての解説ビデオが流された後、専門家から、CCS の全体像
及び動向、CCS の技術及び地元への経済効果などについて説明があり、その後、参加者と
の質疑応答が行われた。参加者は、男性 9 名、女性 3 名、新聞記者、地元市議会議員であっ
た。質問者の属性としては、主婦、地元の学校教員からの発言が多かった。
表 3-1 苫小牧での説明会における参加者からの質問や不安
性別
職業
意見/質問
男性
不明
地球温暖化には懐疑的だ。
女性
主婦
地震等で CO2 が漏れたときにどういった被害が出るのか。
女性
主婦
どうして海で実施するのか。
男性
教員
新潟の CCS では実験開始後に中越地震が発生したのではないか。
男性
教員
CO2 は質量があるので、地震を誘発するのではないか。
男性
教員
利権が絡んでいるのではないか。
男性
教員
他の技術に投資したほうがよいのではないか。
男性
農業者
農作物や環境への影響があるのではないか。
6
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3.1.3 一般市民の利害関心に関する調査
一般市民の CCS の認知と懸念事項を把握するために、インターネットによるアンケート調査
を実施した。
調査対象は、首都圏に在住する 30 代~70 代の男女 1000 名程度とし、2012 年 7 月 2 日か
ら 9 日の調査期間中に E メールを通じて調査を告知した。有効回答数は 979 名であった(回
答者の属性は図 3-1 参照)。
なお、パブリックアウトリーチプログラムの試行評価のためのフォーカスグループインタビュー
(3.3 参照)のプレアンケートとして実施したことから、回答者はグループインタビューへの参加
意向を持つ者に限られている。
調査項目は、①地球温暖化対策に関する態度、価値観、②CCS への態度、③CCS につい
て特に気になる点、④CCS の安全性に対する不安や疑問、⑤CCS の実施に対する不安や
疑問、⑥CCS を導入するメリット、⑦自由記入欄(必須)とした。
全調査結果は付録 1 に添付する。
図 3-1 アンケート調査結果(回答者の属性)
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まず、地球温暖化対策に関する態度、価値観を調査し、次いで、CCS に関してスライドを用
いて情報を提供してから、CCS に関する設問を行った(情報提供に用いたスライドは、3.3.2
に後述する「CCS とは?」と同様である )。
CCS について気になる点、疑問に感じる点を選択する質問では、上位 5 つまでに選択されて
いる項目を合計すると「CCS 導入によるコスト」「自然環境への影響」「回収、貯留施設の技
術的な安全性」の順で多いが、1 位として選択されているのは「CCS 導入によるコスト」「CCS
導入の必要性の根拠」「人体への有害な影響」の順となっていた(図 3-2)。
図 3-2 アンケート調査結果(CCS について気になる点、疑問点)
さらに、CCS の安全性に対する不安や疑問(図 3-3)の結果をみると、「そう思う」「ややそう思
う」を合計すると、1~4 位までの項目が CO2 漏えいに関する不安や疑問であり、健康や環境
への影響などの漏えいの結果より漏えい自体に対する不安が上位回答を占めた。具体的に
は、「貯留地の近くで地震が起きたら、地層から CO2 が漏れるのではないか」、「CO2 はもとも
と気体なので、いずれ地表に出てくるのではないか」、「地中に貯留するので CO2 が漏れても
気づかないのではないか」などでは、70%以上が不安や疑問を感じるとしていた。
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図 3-3 アンケート調査結果(CCS の安全性に対する不安や疑問)
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3.2
タスク 1.2: パブリックアウトリーチプログラムの開発
2 つの属性の利害関係者(主婦と教員)を対象として、パブリックアウトリーチプログラムを設
計することとした。この後、パブリックアウトリーチプログラムの核となるコミュニケーション戦
略を設計した。さらに、重要な CCS の技術的メッセージに関連する専門家の詳細な知識を簡
潔に事実をまとめた視聴覚資料に落とし込む試みも行われた。
3.2.1 コミュニケーションモデルと設計
説明事項の基本的なコンテンツの設計には、日本での CCS の展開を目的に実施された専門
家間の知識共有の結果として「論証モデル(Argumentation Model)」が作成された第 1 フェ
ーズの検討結果(GCCSI 2011)を用いることとした。(図 3-4)。
第 1 段階では、「一般市民の方に CCS のことを正しくわかってもらう」ための論証モデルを整
理した。地球温暖化防止が必要であることに共感してもらい、他の地球温暖化対策を説明す
ると同時に、CCS の長所と短所を説明し、温暖化対策の一部としての CCS の必要性を適切
に判断してもらうという流れとなった。
第 2 段階では、第 1 段階での CCS の必要性についての国民全般の理解を得られたているこ
とが必須の前提として、「地域住民に CO2 地中貯留の実施を認めてもらう」ための論証モデ
ルを整理した。
タスク 1.1 で述べたように、現在の日本では、広く国民の理解を求めるアウトリーチ(第 1 段階)
の担い手と、適切な対話プログラムの立案が不足している状況にあり、立地受容のための合
意形成を求めるアウトリーチ(第 2 段階)が先行する懸念がある。
次に、パブリックアウトリーチプログラムの開発にあたり、社会心理学で研究された二つの態
度変容のモデルを参考にした。
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図 3-4 アウトリーチの第 1 段階(上)、第 2 段階(下)
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CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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■リスクコミュニケーションのモデル
伝統的な広報・宣伝では、対象のプラス情報を豊富に与えて、情報の受け手の態度を変えさ
せる、これは社会心理学で「説得的コミュニケーション」として研究されてきた。
図 3-5 のモデルに示すように、情報の受け手がある X について否定的な態度(-X)を持って
いる場合、肯定的(+X)にさせるためには、良い情報を提供する。例えば、車を買うつもりの
ない人には、車の素晴らしさを伝えるのが従来の広告である。
この広報も効果を持つが、例えば、車の欠陥事故や排気ガスの大気汚染などの懸念や不安
が高まっている状況では、車の性能や欠陥などの技術的情報やマイナス面を併せて説明し
た方が、消費者や国民が情報を信頼してくれるようになるというのがリスクコミュニケーション
の考え方である。
なぜかと言うと、送り手にとって不利になるマイナス面の情報も含めた情報をあえて提示する
行為には、情報の受け手の懸念や関心に配慮した誠実な姿勢があり、こうした「リスクコミュ
ニケーション」を通じて、情報の送り手と情報内容に信頼を持つようになる(図 3-6)。信頼を得
ることによって送り手自身も自らのコミュニケーション態度への自信を持つようになる。こうし
た信頼関係の構築とリスクに対する相互理解がリスクコミュニケーションの第一の目的であり、
この結果、相互に相手の立場を理解し、一緒に考える姿勢がでてくる。この一緒に考えるリス
クコミュニケーションの繰り返しを通じて、合意形成(Public Acceptance、あるいは
Consensus)の道筋を探る、というのが第二の目的となっている。
CCS については、まず、CCS の必要性を適切に判断してもらう段階で、公正な情報を提示し
て、情報の受け手のニーズを把握し、共に考える姿勢を作り出す必要がある。
本研究では、第 1 フェーズの検討を踏まえ、CCS についてどのような長所と短所の情報を提
供できるかの具体的な検討を行うこととした。
図 3-5 伝統的な説得的コミュニケーションのモデル(木下ら、1990)
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図 3-6 リスクコミュニケーションのモデル(木下ら、1990 から作成)
■精緻化見込みモデル(Elaboration likelihood model)
情報の受け手が態度変容に至る情報の処理には、「中心ルート」と「周辺ルート」の 2 つのル
ートがあるとするのが精緻化見込みモデルである(Petty and Cacioppo, 1986)。
情報の受け手に、動機付けと情報を処理する能力が十分にある場合は、「中心ルート」で情
報を処理するため、メッセージを入念に吟味(精緻化)して態度を形成する。
一方、動機や能力がない場合は、本質とは関係ない周辺的手がかり(情報の送り手の専門性
や論点の数)に基づいて、「周辺ルート」で短絡的に判断される。
CCS の場合に適用すると、NGO などの高関心層や知識レベルの高い層、あるいは安全性
に対して高い関心を持たざるを得ない状況に置かれる地域住民などに対しては、専門的な詳
しい情報を入手できるようにすると良い。例えば、第 1 フェーズで作成した論証モデルはこれ
に該当する情報提供ツールである。しかし、一般的な国民向けには、専門性が高く信頼され
る情報源から、なるべく簡潔でわかりやすいメッセージを提示する方が良い。ただし、知りた
い時には適切な詳細情報が手に入るようにして置く。
このモデルは、説得的コミュニケーションの態度変容に関する研究に基づくものであるが、
CCS のアウトリーチを含め、リスクコミュニケーションでの情報提供を検討する上で参考にで
きるものであろう。
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3.2.2 対象利害関係者へのアウトリーチプログラム
CCS のアウトリーチと教育の成功事例の要点は、CO2 Capture Project (2012)によると、以
下のとおりである。
・パブリックアウトリーチをプロジェクト管理の中に統合せよ
・強力なアウトリーチチームを構築せよ
・主要なステークホルダーを把握せよ
・社会的特性を導き、当てはめよ
・アウトリーチ戦略とコミュニケーション計画を開発せよ
・主要なメッセージを明らかにせよ
・受け手に応じたアウトリーチ素材を制作せよ
・積極的に、CO2 貯留事業の全工程を通じてアウトリーチを監視せよ
・柔軟に、アウトリーチを改良せよ
アウトリーチプログラムとは、プロジェクトマネジメントの一部として、チーム編成からはじまり、
利害関係者の同定、コミュニケーション計画、メッセージ作成、実施、評価までを一連のプロ
グラムとして実施する活動である。
こうした考えに基づいて、試行実施のためのパブリックアウトリーチプログラムを、アンケート
調査の結果(3.1.3)と、リスクコミュニケーションのモデルを参考に設計した。結果は以下のと
おりである。
■アウトリーチチーム:
アウトリーチの担い手は、技術開発や研究を進める公的機関の専門家の協力を得た研究チ
ームとした。
■主要なステークホルダー:
地域における事例調査(3.1.2)では、教員、主婦の参加者による発言が多く、その利害関心
はアンケートの結果と一致する傾向がみられた。このため、対象者は、CCS についてはほと
んど知識がない(CCS への特定の強い動機はなく、精緻化されていない)、首都圏在住の一
般市民から、主婦、教員に属する層を選定した。
-主婦は、強い不安や懸念を持つ意見を把握するために選定
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-教員は、地域で影響力の強い知識階層・オピニオン層として選定
(次世代教育担うという役割も重要であるが、本調査では子供向け教材等作成を目的と
した意見収集を実施するものではない)
■コミュニケーション計画
一般的市民向けに、CCS の短所と長所を説明する簡潔なメッセージを提示し、その内容に対
する率直な印象を聴取する。
■アウトリーチ資料:
インターネットサイトでの閲覧やプレゼンテーションで利用できるように、動画つきのイラストと
メッセージを1セットにした、パワーポイントのスライドによる簡潔な説明資料とした。
■主要メッセージの検討:
回収及び貯留施設の技術的な安全性、特に CO2 漏洩と、それが人体に与える影響を主要メ
ッセージとすることとした。
回答者の大多数が CCS の必要性を懸念点の一つとして挙げていたものの、本業務の目的
は一般市民がリスクに関する情報にどのように反応するかを評価することであるため、この
懸念には踏み込まないこととした。同様に、コストに関する議論も、信頼に足るコスト分析を入
手できなかったため、除外することとした。
下で示したスライドにおける CCS のメリットとデメリットについての主要メッセージは、フェーズ
1 で作成された論拠マップから選択された。CCS に関するその他の重要なメッセージ/側面
は、事前に行われたオンラインインタビューから得られた結果を基にしており、内容はスライド
に示したとおりである。
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3.3
Task 1.3: 試行による評価
第 1 フェーズで専門家間の知識共有の成果として作成した論証モデルについて、専門家以外
の他の利害関係者の視点から評価するため、3.2.3 のパブリックアウトリーチプログラムに基
づき、利害関係者(主婦、教員)を対象とした FGI を実施し、CCS に対する知識や意見を調査
した。
3.3.1 フォーカスグループインタビュー(FGI)の設計
FGI は、CCS の知識を持たない対象層が、CCS のメリットやデメリットに関する知識を与えら
れた場合に、どのような CCS への不安や懸念を持つか引き出すことを主目的とした。
調査項目と狙いは、以下のとおりである。
① 参加者の背景(簡単な自己紹介)
② 各参加者が地球温暖化へどのような意識を持っているかを把握する
③ 参加者の CCS に関する知識、理解度を把握する
④ CCS の安全性対策について説明し、それがどの程度理解されているのかを把握する
⑤ CCS と地震の影響について説明し、それがどの程度理解されているのかを把握する
⑥ CCS のメリットや必要性を説明し、それがどの程度理解されているのかを把握する
⑦ 参加者各人が CCS の立地についてどのような意識を持ったかを把握する
参加者は、3.1.3 に詳述した首都圏在住 30~70 代男女を対象としたアンケートの回答者
(979 名)のうち、地球温暖化を目的とした CO2 削減の必要性について明確に否定的な回答
をしていないことを抽出条件とした。参加者の属性は、下記のとおりである。
●主婦 6 名 (30~40 代、子供有)
●教員 6 名(詳しくは、表 3-2 参照)
表 3-2 FGI に参加した教員の属性
性別
女性
男性
男性
男性
男性
女性
年令
57
50
49
45
30
45
校種
小学校
小学校
中学校
中学校
高校
高校
16
担当教科
なし
なし
英語
社会
理科
英語
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実査は、東京都内のインタビュールームで、2012 年 8 月 1 日(各 2 時間程度)に行った。会
場の様子を図 3-7 に示す。
説明会のような場面ではなく、個々人が説明スライドのコンテンツを読んだ際に感じる印象を
率直に聴くことを想定したため、専門家からの説明や質疑を行わず、ファシリテーターの進行
により、説明スライドを提示しながら意見を求める設計とした。
図 3-7 インタビュールーム(上)とその配置図(下)
3.3.2 フォーカスグループインタビューの結果概要
■地球温暖化問題について
多くの参加者が、気温上昇や気候の変化を通じて地球温暖化を実感しているとし、温暖化対
策の必要性は理解されており、温暖化そのものに懐疑的な意見はなかった。教員グループ
の参加者は、地球温暖化を含む環境問題が理科・社会の指導内容や英単語等に表れてきて
おり、児童・生徒への指導事項において反映されていると回答した。
一方で、どうして大気中に放出される CO2 を削減する必要があるのかは十分に理解されてい
ないようであった。
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CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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■CCS について
□事前認知
両グループのすべての参加者が、CCS に関する事前の知識はないと回答した。
□「CCS とは?」スライドの提示
CCS(二酸化炭素の回収・貯留)とは?
CCS(二酸化炭素の回収・貯留)とは?
CCSとはどのような技術なのですか?
CCSとは、Carbon Capture and Storageの略称で、火力発電所や工場な
どから大量に排出される地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を回収
(Capture)し、それを海の下の地層などに長期間にわたり貯留(Storage)す
ることで大気中へのCO2放出を抑制する技術です。
主婦グループの参加者は、このスライドが示す CCS の仕組みを「概ね理解できる」としたもの
の、CCS を積極的に実施する姿勢は示さず、また、不安や疑問が残ると回答した。一方で教
員グループの参加者は、この技術に関する疑問を真っ先に口にした。この時点で出された疑
問や不安の内容は両グループにほぼ共通しており、主に以下の内容を含んでいた。

(気体の)CO2 をどのように注入するのかが想像できない

貯留された CO2 は長期的にどうなるのか

実施規模や、「長期間」が想定する時間の長さがわからない

CO2 が漏れた場合の危険
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■CCS の安全性
□「どのように CO2 を貯留するのですか?」スライドの提示
どのようにCO2
を貯留するのですか?
どのようにCO2を貯留するのですか?
CCSでは主に、CO2の「回収」、
「輸送」、「貯留」という3つの作業を
行います。
「回収」作業では、発電所などの排
気ガスから化学的処理などにより
CO2を分離し、回収します。
「輸送」作業では、パイプラインなど
を使って、分離・回収されたCO2を
貯留先まで送ります。
「貯留」作業では数千メートルの深
さまで井戸を掘り、圧力を加えて
CO2を地層に注入します。
CCS が「回収」「輸送」「貯留」のプロセスから成り立つことは理解したが、CO2 の状態(相、圧
力等)が不明瞭なままであるため、貯留の仕組み、構造、技術及び地層の状態が想像できな
いようであった。
また、スライド内の図から、パイプラインを含む地上施設の耐震性と誘発地震を懸念する意
見が、主婦グループ及び教員グループからそれぞれ示された。
主婦


教員

CO2 が貯留されている状態や、貯留が可能になる仕組み・構造が分からないとの反応。

気体を貯留する仕組み、構造が分からない。

貯留した具体的な状態が分からない。

圧縮してどんな形になって貯めるのかが気になる。
地震発生時の影響に不安感。特にパイプライン。(東日本大震災、“想定外”に言及)

パイプラインが不安。震災もあって想定外ということがある。

地震で壊れたらどうするのか。上が海だったら魚は大丈夫?
地層中へ圧入した CO2 の挙動、貯留が可能になる仕組みが分からない。

地層の中に注入した CO2 がどうなるのか。どこへ行ってしまうのか疑問。

地層の中に注入するという言い方が正確ではないのではないか。(本当はもっと管理された状
態ではないかというニュアンス)

岩盤のようになっている地層にどのように貯めこむということが可能なのか。染み込んでいく
のか。
19
CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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□「どうして CO2 は漏れないのですか?」スライドの提示
どうしてCO2
は漏れないのですか?
どうしてCO2は漏れないのですか?
CO2は、「超臨界」という気体と液体の
両方の特徴を持った状態で圧入され
ます(ガスではないが、液体でもない)。
CO2は「遮蔽層」と呼ばれる蓋の役割
をする地層の下に圧入されます。
CO2の貯留は、遮蔽層で覆われ、
CO2が長期間漏れない地層で行われ
ます。
本スライドにおいては、注入される CO2 は「超臨界」という「気体と液体の特徴を持った状態」
であるとの説明が加わったものの、どのような状態を意図しているかが理解できないとの声
が両グループから挙げられた。
「遮蔽層」については、以下を含む不安や疑問が示された。
 「漏れない地層で行う」だけでは、本当に漏れないか信用できない。
 「長期間漏れない」ということはいずれ漏れるということを暗示している。その後どうなるの
かを知りたい。
主婦



教員




超臨界状態の具体的イメージがわかないとの反応。また圧入後の CO2 の挙動に関心。

超臨界が分からない。液体と気体の両方の性質とは?

ずっと超臨界が続くのか?変わっていくのか?最後にどうなるのか?
遮蔽層が本当に漏れない地層なのかとの疑問も惹起。

遮蔽層って一体どんな地層なのか分からない。本当に漏れないの?と感じる。
その他、震災の想起あり。また、イメージできない概念の連続で理解できないと指摘。

震災でなんでも想定外を考えてしまい不安は完全に払拭されない。

分からないことが連続するので余計「?」になる。
難しいとの反応。
超臨界状態の具体的イメージがわかないとの反応。

気体と液体の両方の性質ということがイメージしにくい。ドライアイスから気体と固体ならイメー
ジできる気がするが。
遮蔽層がどのような地層なのかとの疑問も惹起。

遮蔽層がどんなものなのか分からない。漏れないと断言しているが、正確には漏れないであ
ろう地層ということではないか。
その他、漏れないということへの疑問。

長期間漏れないということは、いずれ漏れるということかと思う。圧入しすぎたとき地層はどう
なるのか。

圧力によって気体に戻ることがあるとすれば、どうなるのか気になる。
20
CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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□「どのように地中の CO2 を管理するのですか?」スライドの提示
どのように地中のCO2
を管理するのですか?
どのように地中のCO2を管理するのですか?
CCSでは、地中のCO2を長期にわ
たって監視(モニタリング)します。
監視は、監視用に掘られた井戸や、
地上・海上の施設から行い、地中の
CO2がどのような状態かは常に把握
されています(右図)。
万が一CO2が漏れた場合は、漏出検
知システムなどにより、漏れを最小限
に抑えます。
(地中のCO2の広がりを観測した例:GCCSI 2012)
地中のCO2 の状態は、地上から確認すること
ができます。
スライド内の図の説明(規模・縮尺、鳥瞰図か断面図か、色分けの意味、場所等)が不足して
いること、「長期」が意図する期間が判然としないこと等により、具体的な管理方法が想起で
きないとの指摘が目立った。
また、この説明から、将来は地中が CO2 で溢れてしまうのではないか、CO2 を検知する必要
性があるということは、危険であることの裏返しではないか等の意見があった。
主婦





教員



CCS の技術以前に社会的必要性等の導入がないと理解以前に関心が向かないと指摘。

専門的すぎる。一般には分からない。CO2 がどういうことなのか、なぜこういう対策が必要な
のかが分からない。それがないと理解できない。耳を傾けられない。そういう説明がなければ
否定からしか入れない。
CO2 をなくすのではなく「貯める」ことに違和感。(→地下が CO2 だらけ→管理大変→不安)

CO2 をなくすなら分かるが、何故貯めるのかが分からない。出てくるものを貯めていたら、どん
どん増えて広がっていく。地下が CO2 だらけになる。管理も大変になるし安全面の問題も増え
ていくと感じる。
監視するのは当たり前との反応も。
挿入図は、どのように CO2 が把握されているのか(図の見方が)分からないとの指摘。
その他、下記のような点について分からない。

長期がどの程度なのか分からない。

規模感が具体的に提示されていない。

地球単位で集めるのか。日本単位で集めるのか。漠然としすぎていて根拠に乏しい印象。
挿入図の見方、意味が分からないと指摘。

図の見方、意味が分からない。図がどのように CO2 が把握されるのか。断面図なのか、鳥瞰
図なのか、どの方向から表現されているのか。どこのデータなのか。何の意図で挿入している
のか伝わらない。説明不足。
危険だから「監視」という反応も。

監視するということは危険なものであるという印象。環境影響の観点ということか。
漏れた場合の CO2 滞留への懸念も。

漏れたら重い気体。CO2 は谷間などに滞留する気がする。そうすると窒息してしまう。
21
CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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■CCS と地震
□「地震の多い日本で、地中貯留を安全に行うことはできるのですか?」スライドの提示
地震の多い日本で、地中貯留を安全に行うことは
できるのですか?
CCSを行う際には、地球物理
学的な手法などにより事前に
活断層を把握し、地震が起き
やすい地層は避けるようにし
ます。
CO2は、日本で地震が多く発
生する地層よりも、浅い場所
に圧入されます。
また、地下の揺れは、地表で
の揺れに比べて小さくなりま
す。
主婦グループの参加者からは、説明自体は分かりやすく、自らの目で確認できないことなの
で専門家を信じるしかないという反応もあったが、一方で、説明の具体性がなく漠然として納
得感がないという意見が示された。
また、超臨界という CO2 の状態を想像することができなく、具体的な説明がないことから、理
解し難いとの意見が示された。さらに同グループでは、福島の原子力発電所事故にも言及し、
揺れない場所を対象とするという説明だけでなく、揺れることを前提とした対策について説明
すべきとの指摘があった。
教員グループからは、貯留地及び震源地の深さと安全性の関係を示した図の説明が論理
的ではなく、例えば地震の震源は浅いこともあるので説得力はない、かえってネガティブイメ
ージを与えるとの意見があった。また、地震や津波による地上施設への影響が示されていな
い点が指摘された。
このスライド作成にあっては、地震の震源域の深さについて正確な数値を入れる前提であっ
たが、適切な範囲を明確にできず省略した経緯があった。この曖昧さを指摘され、わかりやす
いイメージに特化したことがかえって論理的ではないことへの疑念を持たせる結果となった。
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CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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主婦




教員


説明自体は分かりやすいとの反応も。また、自ら目で確認できないことなので専門家を信じるという
人も。

地震はゆれるという事実以外、目に見えずよく分からないので、こう説明されれば、専門家に
任せて信じるしかない。説明は分かりやすい。
一方で、説明の信頼性、確実性に疑義も提起。(原子力発電所事故にも言及)

原発のこともあり、どこまで信じることができるのか疑問。

地震が起きる地層を避けることは完全にできることではない。ゆれる前提の対策のほうが安
心。
理解の前提となる超臨界状態の CO2 がイメージできないので判断できないとの指摘も。

液体でも気体でもないよく分からないものを前提に見ているので、よく分からない。
説明が一般的で具体性がないため納得感がないとの指摘も。

活断層からどれぐらい離れれば大丈夫なのか、どれぐらい離れれば揺れがどれぐらい減少す
るのか、といった説明がなく、漠然としていて納得感がない。
説明や絵の論理関係から疑問、ネガティブイメージが惹起。

震源の発表を聞いていると浅いこともある。浅い、深いで説明されても説得力はない気がす
る。

浅いところに貯留するとかえって漏れやすいのではないかという疑問がわく。

絵を見ているとネガティブイメージが増す。配管がどうなるのか。震災のときの津波のように、
地上施設への影響も気になる。
(このくだりで)CCS の必要性が知りたいとの反応あり。

そもそも CCS で何%ぐらいの CO2 削減に貢献するのか。
23
CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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□「近くで地震が起きると CO2 が漏れてしまうのではないですか?」スライドの提示
近くで地震が起きると、CO2
が漏れてしまうのではな
近くで地震が起きると、CO2が漏れてしまうのではな
いですか?
2004年に起きた中越地震の震源は、当
時長岡で行われたCO2の貯留試験地か
ら20km以内にありました。
地震発生までに8,950トンのCO2が圧入さ
れ、地震発生当時も圧入作業が行われて
いましたが、安全に自動停止しました。
その後の調査の結果、 地下に貯留済み
だったCO2は漏れていないことが確認さ
れています。
長岡の試験地の様子(中越地震前に撮影)
(GECニュース 第182号より)
多くの参加者が、このスライドの説明をある程度の参考程度にはなるものの、安全性の根拠
になるものではないと評価した。中越地震よりも大きな地震が CCS 実施地で発生した場合の
影響については明確に示されていないこと、スライド中の写真は地震前のものであるため実
際の破損の程度等がわからないこと、輸送過程での安全性については説明されていないこと
等を、この評価の理由として挙げた。
主婦




教員


事例紹介としては分かりやすい。
事例より大規模地震の安全性の根拠にならないとの反応。

震度がもっと大きい場合はどうなるか分からない。
貯留実験事例で輸送の安全性の根拠にならないとの指摘も。

圧縮してきたものを貯留している場所の事例なので、輸送過程で地震が起きたらどうなるのか
の説明になっていない。
その他、下記のような疑問。

海のそばの場合、津波対策は?

どれぐらいの破損があって、それでも漏れなかったということが知りたい。それなしに健全な状
態の写真を見せられても。
(東日本大震災後に)中越地震の事例では説得力がないとの反応。

中越地震より大きな地震があることは東日本大震災で分かった。説得力は弱い。
説明の論理関係、説明不足から説得力がないとも指摘。

先ほどの説明との対応関係が分からない。先ほどは海底下、長岡は内陸では。

試験地の説明が足りない。
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□「CO2 を地中に注入すると地震が起きるのではないですか?」スライドの提示
CO2を地中に注入すると地震が起きるのではないですか?
CO2を地中に注入すると地震が起きるのではないですか?
国内外において、水や廃棄物を地中に注入したり、岩盤を掘削したりする
際に地震が起きたことがあります。
例:アメリカ コロラド州(1962~1967年)
地下3,600mに液体を625万トン注入し、注入から1.5ヶ月後にM1~5の地
震が発生。
CCSではこういうことが起こらないよう、 CO2を注入する地層が地震を起
こさない強度かを事前に確認します。
さらに、CO2を注入する際には地震観測を行い、地震が起きていないこと
を確認します。
地中に CO2 を貯留することで地震を誘発することを想定した参加者は少数であったが、本ス
ライドの提示により誘発地震を認識した参加者が目立った。また、両グループの参加者が、
CCS を実施する際に地震が「起こらないことを確認する」との説明について疑義を示した。
主婦



教員


事例が古く、現在ではそのようなことは起こらないのではとの反応あり。
確認するということへの信頼性がないとの反応あり。(東日本大震災に言及)

今回の震災で完全な知見があるわけではないことが明らかになった。確認するといっても本
当か分からない。基本的に疑いの目から入ってしまう。
(このくだりで)CCS の必要性の説明がないことに疑義の提起あり。

そもそも何のために減らすのか、何のためにやる必要があるのかでつまずいているので、前
向きに理解していこうという姿勢になりにくい。
事例は初めて知った。
地中貯留による地震発生があり得ることを示す事例と認識。(→CCS は不安)

この事例でも影響を起こさないように配慮していたのであろうから、にも関わらず起きたという
ことかなと思う。

日本のように活断層が多数あり、常に地層が動いている地域では、予測不能なことが起きる
のではないかと思う。表面的な説明にしか感じられない。本当に我々の安全を守ろうとしてい
るとは思えない。明らかに莫大なコストがかかる印象。そこまでしてやる必要があるのか。

いつ地震が起きるかと不安なときに、さらに不安要素が増すもの。
25
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■CCS のメリット、受容性
□「CCS を行うとどのようなメリットがあるのですか?」スライドの提示
CCS(二酸化炭素の回収貯留技術)を行うと
CCS(二酸化炭素の回収貯留技術)を行うと
どのようなメリットがあるのですか?
①地球温暖化に貢献する先進技術
2008年に開催されたG8洞爺湖サミットでは、地球温暖化への取組みとして、
エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの促進とともにCCSを含む
先進的なエネルギー技術の開発と展開の必要性が確認されています。
②大幅なCO2
削減効果
②大幅なCO2削減効果
CCSの実施により、火力発電所や工場から排出されるCO2を大幅に削減できます。
③エネルギーの安定供給
現在の電力供給の主力である火力発電所でCCSを導入することにより、
電力の安定供給とCO2の排出量削減を両立することができます。
火力発電所でのCCSによりCO2を削減し、現在の
ライフスタイルを維持する場合
26
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④ライフスタイルを変えずに温暖化対策ができる
温暖化対策の一つにCCSを組み込むことで即効性のあるCO2削減が可
能となるため、他の温暖化対策のみを利用する場合よりも、時間をかけて
エネルギー構造やライフスタイルを移行していくことができます。
再生可能エネルギーのみの利用によりCO2の排出を抑
制し、現在のライフスタイルは変更する必要がある場合
主婦グループの参加者は、CCS によりエネルギーの「安定供給」につながることに好意的な
意見を述べた。教員グループでは、ライフスタイルを変えることについて特に不満を述べる参
加者はおらず、メリットとして CO2 の削減効果を明確に示すべきとの提案があった。同グルー
プではまた、③と④の関係の整理が必要との指摘もあった。
ファシリテーターによる口頭説明が、「安定供給」や「ライフスタイルを変えない」といったメリッ
トは、火力発電を継続して利用することを暗示しているとの理解を促したようであった。
□CCS 受容性についての質問
参加者自身の居住地において CCS を実施することについて、教員グループの参加者の多く
は、主婦グループよりも明確に CCS の実施に反対する姿勢を示した。この理由として、今回
の説明資料が、デメリットがメリットを上回る内容であるためとのことであった。これについて
は、複数の参加者が、CO2 の削減効果等のメリットは判然としない一方で、安全面の不安が
強調されていること、CO2 が漏洩した際の説明が不足していることを理由としてあげていた。
3.3.3 考察
FGI では一般市民が CCS に関するアウトリーチ資料を与えられた際に、どのような懸念や不
安を抱くのかを把握することができた。FGI は、NIMBY の事例でみられるような参加者と対立
27
CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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するような状況ではなく、参加者からは、メッセージの説明不足や論拠が不十分な点への的
確な指摘があった。
参加者の教育や職業上の背景により、説明資料への理解度差があるという印象を持った。
参加者のうち 3 名(主婦 1 名と教員 2 名)が科学的な教育を受けていたことが理解度の違い
に表れていた。
感じる懸念や不安について、教員と主婦という属性での差はなかったものの、居住地近隣で
CCS を実施することについて質問が及ぶと、グループ間で差異が見られた。主婦グループは
教員グループよりも政府主導又は広く受容されているプロジェクトや政策に対して黙従的な傾
向が強かった。
以上から、リスクコミュニケーションを実施する前提として、科学的な知識の共有(いやゆるサ
イエンスコミュニケーション)を実施すべきかを検討したいと考えている。
FGI 参加者の中には、CCS が本当に気候変動の緩和につながるのであれば自らの生活様
式にも「利益」となるとの見解を示す者もいた。この結果は、正確な情報を得られれば、一般
市民でも CCS の利点をリスクよりも大きく評価する可能性があることを示唆していた。
また、FGI では、CCS に対する一般市民の懸念や不安に焦点を当てたメッセージを提供した
が、専門家から説明を与えないことを前提として行われたため、参加者の懸念や疑問点は解
消されないままとなった。情報の不足は、情報の受け手が持つ懸念を解消できず、受容性を
低下させる結果となることを示唆していた。
28
CCS Knowledge Sharing in Japan (Phase 2)
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参考文献
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REPORT FEBRUARY,2012
(http://www.CO2captureproject.org/reports/stakeholder_issues_report_March_2012.pdf
)
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Engagement Toolkit for CCS Projects,2011
(http://www.globalccsinstitute.com/publications/communication-and-engagement-toolkit
-ccs-projects)
Global CCS Institute, Public perceptions of low carbon energy technologies: Results
from a Scottish Large Group Process,2012
(http://cdn.globalccsinstitute.com/sites/default/files/publications/38531/scottishlgpreport
.pdf)
Global CCS Institute, Development of a Knowledge-Sharing Test Bed for CCS in
Japan,2011
Itaoka Kenshi, Okuda Yuki, Saito Aya, and Akai Makoto , Influential information and
factors for social acceptance of CCS: The 2nd round survey of public opinion in Japan,
Energy Procedia 1 ,4803-4810
木下冨雄、吉川肇子、リスクコミュニケーションによる認知行動の変化(3)日本社会心理学会
第 31 回大会発表論文集、1990
Petty, R. E., & Cacioppo, J. T. , Communication and Persuasion: Central and Peripheral
Routes to Attitude Change. New York: Springer-Verlag.,1986
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4.
タスク 2:重要分野(地震)における知識のギャップを埋める知識共有の実践
CO2 の注入によって誘発される地震と、地震が CCS の何らかの要素(特に地中貯留)に与え
る影響に関する知識共有ネットワークメンバー間での議論を通じて、このような技術的な問題
に関して現在のメンバーの知識は限られていることが分かっている。一方で CCS に詳しい地
震の専門家はほとんど存在しないことから、この分野は、知識のギャップを埋めるため、積極
的に広範にわたる知識共有が必要である。この新たな分野での知識共有を実践するにあた
り、以下のサブタスクが行われた。
4.1
関連情報の整理
誘発地震と日本における CO2 地中貯留への地震の影響に関する文献調査が、日本の地質
コンサルティング会社である「ダイヤコンサルタント」によって行われた。この調査を実施する
に当たり、メンバー間での議論に先立って以下の情報が整理された。

地震の理論的背景

深い地層に流体を注入することで地震が誘発されるメカニズムの詳細

様々な産業部門での流体の注入により誘発されたと考えられる地震の事例

長岡での地中貯留パイロットプロジェクト周辺で発生した中越地方の地震の事例
この結果に基づいては報告書(付属文書 2-1)が作成され、ウェビナー(次項 4.2 参照)が行わ
れた。
4.2
知識共有の実践
グローバル CCS インスティテュートのプラットフォームを利用し、知識共有ネットワークメンバ
ーを対象としたウェビナーを行った。さらに、CCS に関する知見も有する地震専門家を招聘し
た。これら専門家には、その後のディスカッションセッションにも加わり、共同作業に参加する
よう依頼した。発表されたものの暫定英訳を添付した(付属文書 2-2 を参照)。
ウェビナーに引き続いて、メンバー間での共同作業の課題案を議論したところ、以下の 3 つを
課題とすることで合意した。

課題 1:誘発地震のリスクに取り組み、CO2 地中貯留の安全策の開発の推進に必要な
情報を整理すること。

課題 2:誘発の疑いがある地震に起因する損害に係る法的責任についての検討。
30
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
課題 3:誘発地震に関する市民へのアウトリーチについての検討。
(1) 「課題 1」についての共同作業
課題 1 については、「安全・安心ピラミッド」(Benson, 2007)が開発されており(図 4-1)、メンバ
ーが整理した情報はこのピラミッドの各「レイヤー」に構築されている。表 4-1 は、各レイヤー
の主要な参考資料を示した。この構造をタスク 2.3 で開発する知識ベースの基礎として使用
することとした。
Legal
法的及び
and financial
金銭的責任
responsibility
Regulatory
oversight
規制制度
改善方法
Remediation
methods
Monitoring
モニタリング
Safe operation
安全な操業
Storage engineering
貯留のエンジニアリング
Effective site selection and characterization methods
効果的なサイト選定とキャラクタリゼーションの方法
誘発地震とその影響についての基礎的な科学知識
Fundamental
scientific knowledge of induced seismicity and its potential impacts
図 4-1 誘発地震に関する安全・安心ピラミッド(Benson (2007)による)
31
32
法的及び金銭的責任


規制制度

改善方法
モニタリング


安全な操業


貯留のエンジニアリング


効果的なサイト選定とキャラクタリ
ゼーションの方法
誘発地震とその影響についての
基礎的な科学知識





Cypser and Davis (1998) *2
NRC 報告書*1
第 4 章:Government roles and responsibilities related to underground injection and induced
seismicity
NRC 報告書*1
第 4 章:Government roles and responsibilities related to underground injection and induced
seismicity
USDOE protocol for induced seismicity associated with EGS *4
NRC 報告書*1
第 6 章:Steps toward a “Best practices” protocol
USDOE protocol for induced seismicity associated with EGS *4
NRC 報告書*1
第 6 章:Steps toward a “Best practices” protocol
USDOE protocol for induced seismicity associated with EGS *4
NRC 報告書*1
第 5 章:Paths forward to understanding and managing induced seismicity hazard and risk in
energy technology development
Van Eijs ら(2006) *5
NRC 報告書*1
第 6 章:Steps toward a “Best practices” protocol
Davis and Frohlich (1993) *3
NRC 報告書*1
第 1 章:Induced seismicity and energy technologies
第 2 章:Types and causes of induced seismicity
第 3 章:Energy technologies: How they work and their induced seismicity potential
タスク 2.1 の成果
*1: National Research Council of the National Academies. Induced Seismicity Potential in Energy Technologies, The National Academies Press, 2012.
*2: Cypser, D.A. and Davis, S.D., Induced seismicity and the potential for liability under U.S. law, Tectonophysics 289, 239-255, 1998.
*3: Davis, S.D. and Frohlich, C., Did (or will) fluid injection cause earthquakes: criteria for a rational assessment. Seismol. Res. Lett. 64, 207-223,
1993.
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表 4-1 「安全・安心ピラミッド」の各レイヤーの主要な参考資料
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*4: Majer, E.M. et.al., Protocol for addressing induced seismicity associated with enhanced geothermal systems, DOE/EE-0662, 2012.
*5: Van Eijs, R.M.H.E., Correlation between hydrocarbon reservoir properties and induced seismicity in the Netherlands, Engineering Geology 84,
99-101, 2006.
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(2) 「課題 2」についての共同作業
Cypser and Davis(1998)に基づく問題を扱った、メンバー間のオンラインにおける共同作業
を通じ、誘発の疑いがある地震の損害について米国法上、法的責任が考えられるかを評価
すべくフローチャートが作成された(図 4-2)。
No
いいえ
Does a cause and effect
被告の活動、誘発されたと考
relationship exist between
えられる地震と原告への損
the
activities of the defendant,
害との間に因果関係が存在
the
earthquakes thought to be
induced, and the damage
するか?
to the plaintiff?
いいえ
No
Yes
はい
被告の活動は以下の一つに該当
Do the activities of the defendant
するか?
fall into one of the following?
Trespass
・• 不法侵入
Strict liability
・• 厳格責任
Negligence
・• 過失
• Nuisance
・ 迷惑行為
No liability
法的責任なし
はい
Yes
Liability
法的責任あり
図 4-2 米国法上の法的責任の可能性を評価するフローチャート
因果関係
チェックリストは、政府機関、規制当局とサイトオペレータ等の広範な利害関係者が、地中へ
の流体注入が地震を誘引する可能性の検討・評価や、地震誘発の有無の判断をするに当た
って有用なツールになり得るだろう。地震の誘発の可能性と有感地震の原因の判定のそれ
ぞれに対応した 2 種類のチェックリストが、Davis and Frohlich(1993)によって 20 年近く前に
開発されている。この論文は、「注入プロジェクト案が周辺で地震を誘発する可能性が高いか
どうか」を判断する「はい」「いいえ」で回答する 10 の質問リストと、「実施中の注入プロジェク
トが地震を誘発したかどうか」を判断する同様の 7 つの質問リストを提示している。後者は、
原因か否かに関連する 4 つの因子(バックグラウンドの地震、時間的相関、空間的相関と注
入方法)を評価している。表 4-2 には 7 つの質問が列挙されているが、答えが「はい」の場合
には地下注入が地震を誘発したことを示し、答えが「いいえ」の場合には注入が地震の原因
ではなかったことを示す言いまわしになっている。
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表 4-2 流体の注入と地震誘発の因果関係を判断する 7 つの質問
質問
1
2
3a
3b
3c
4a
4b
バックグラウンドの地震
この種の地震は当該地域では初めてです
か?
時間的相関
注入と地震との間には明らかな相関があり
ますか?
空間的相関
震源は坑井の近く (5km 以内) ですか?
地震は注入深度付近で起きていますか?
いいえの場合、地震の発生場所に流れを導
くような既知の地質構造がありますか?
注入方法
坑井底部での流体の圧力の変化は地震を
促すのに十分か?
震源での流体の圧力の変化は地震を促す
のに十分か?
「はい」の答えの合計
地震は明ら
かに誘発さ
れていない
地震は明ら
かに誘発さ
れた
I
コロラド州
デンバー
II
オハイオ州
ペインズビ
ル
いいえ
はい
はい
いいえ
いいえ
はい
はい
いいえ
いいえ
いいえ
はい
はい
はい
はい
はい?
はい?
いいえ
はい
いいえ?
いいえ?
いいえ
はい
はい
はい
いいえ
はい
はい?
いいえ?
0
7
6
3
出典:Davis and Frohlich (1993)
表 4-2 では、2 つの注入坑井を評価している。コロラド州デンバーの坑井はロッキーマウンテ
ン兵器工場にあり、1960 年代半ばの地震を誘発した明確な原因であると示されている。農産
物製造過程で発生した廃液を注入していた「Calhio 坑井」とも呼ばれるオハイオ州ペインズビ
ルの坑井は、地震の原因として調査されたが、結果は不明瞭なものであった。データを調べ
た科学者は、観測された地震が当該地域の過去(自然)の地震と似ていたこともあり、坑井で
の流体の注入を地震と関連付けることができなかった。
日本の知識共有ネットワークの専門家は、このチェックリストを他の地震に適用した。すなわ
ち、これを中越地震(4.3 項を参照)に適用する試みが行われた。
厳格責任
米国では、「厳格責任」や「絶対責任」は「異常に危険な活動」から生じると一般に考えられて
いる。Restatement (Second) of Torts(アメリカ法律協会、1979)の第520条は、ある活動が
異常に危険であり、厳格責任を問われるかどうかを判断するには、以下の点を検討すべきと
規定している(Cypser and Davis、1998)。
(a) 人や土地、他人の動産に何らかの害を及ぼす高いリスクの存在。
(b) 結果として生じる害が甚大になる可能性。
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(c) 相当な注意を払ってもリスクを排除することができないこと。
(d) 当該の活動が通常使用の問題でない度合。
(e) 当該の活動が行われる場所における当該活動の不適切さ。
(f) 当該活動の危険性が当該活動のコミュニティーへの価値を上回っている度合。
これらの要因は全て重要であるものの、ある活動が「異常に危険」であることの判断は、これ
らすべてを満たす必要はなく、1つ又は複数の要因に比較的大きく依存している。
(a)と(b)はそれぞれ、引き起こされる害が甚大になるリスクの程度と、甚大になる可能性につ
いて言及しているが、これらは併せて判断される必要がある。重大な害が生じるリスクの程度
と、その害が生じる可能性がともに大きい場合には、その活動が「異常に危険」とみなされる
確率は高くなる。一方で、いずれかの要因がゼロであれば、一方の要因はこの状況では特に
意味を持たず、当該活動が「異常に危険」と判断されることはない。多くの場合、ある要因の
スコアが高く、もう一方は低いといった中間的状況が生じると考えられるが、そうした場合でも
当該活動が「異常に危険」とみなされる可能性はある。例えば、害のレベルが非常に高くなり
得るものの、その害が実際に生じる確率(リスク)が低い場合が考えられる。
要因(c)の「地震を誘発するリスクを排除できるか?」に対する答えは、現状では「いいえ」の
はずである。地質学的応力の状態(Zoback and Zoback, 1980)や、断層の位置が十分に分
かっておらず地震による歪みエネルギーが放出されるメカニズムが完全には理解できていな
い状況では、全般的なメカニズムがよく理解できていたとしても、地震誘発の時期や位置を正
確に予測することは不可能である(NRC, 2012)。
現況の要因(d)の「通常使用」は「ほとんどの人が日常的に行う」ことを意味しているわけでは
なく、「人口の大部分が広範かつ頻繁に行う」活動を指している。例えば、米国では多くの
人々が鉱業や地熱エネルギー産業、石油及びガス採掘業に雇用され、更に多くの人々がこ
れらの産業の製品を使用している。しかしこれらの活動に関与しているのは米国の総人口の
比較的少ない部分だけであるため、これらの活動は「通常使用」とはみなされない。
また、米国では、個々の訴訟で厳格責任を適用する場合に裁判所が要因(e)と(f)をどう解釈
するかは、CO2 の貯留場所がどの程度適切か (人口密度や当該プロジェクトがなぜそこに立
地したかを考慮する可能性がある)、地元コミュニティーにとってのプロジェクトの価値(コミュ
ニティーの大部分の収入が当該活動に依存しているかや、コミュニティー全体が当該プロジェ
クトから大きな利益を得ているか)による可能性がある。従って、孤立した鉱業中心のコミュニ
ティーにおける誘発地震は、「異常に危険」な活動とみなされる可能性は比較的低いかもしれ
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ない。一方で、CO2 注入により首都圏で地震が誘発される場合は「異常に危険」とみなされる
であろう。
過失
「過失」も法的責任の理由となり得る。例えば、過失の訴訟において米国の裁判所は、害のリ
スクの予見可能性、適切な予防措置によりその害を回避する責任者の義務、義務の基準と
その基準を満たせなかったことで生じた損害を考慮する。傷害を回避するために求められる
予防措置の負担と過失に関する法的責任との間の関係は、ラーニド・ハンド判事によって代
数的に記述されている(United States v. Carroll Towing Co., Inc., 1947)。
このハンドの式は、地震誘発に以下のように適用された(Cypser and Davis, 1998)。
PL> Bなら、被告は法的責任を負う。
ここで、P:損害を与える地震を誘発する確率、L:結果として生じる傷害の重症度、B:地震を
誘発させる可能性のあるものに対する予防措置の負担。
この式は、米国の裁判所が、定性的にも (B と L を金額に置き換えて)定量的にも使用してき
た。
義務の基準は、一般には「かなり慎重な人」が果たす義務のレベルとされている。問題となる
のは、「同様の状況で同様のスキルと知性を持った分別のある慎重な人が用いるのと同じ義
務と注意を果たしたか?」である。CO2貯留に関わる者は、自らのスキルと知識を使って傷害
のリスクを緩和しなければならない。規制に従いさえすれば訴訟での法的責任を回避できる
とは、必ずしも限らないかもしれない。例えば米国では、最低限の基準しか関連法制度には
示されておらず、義務の基準についての定めはない。
地震は様々な人間活動で誘発されることが分かっており(例えばNRC, 2012)、多くの科学文
献で長年議論されてきた。少なくとも一般的な感覚では、地震の誘発は予見可能なリスクだと
言えるかもしれない。ただしこれは、誘発地震で生じる害のリスクが必ず予測可能であるとい
うことではない。なぜなら、地震を引き起こす確率は、産業、活動場所、使用方法によって異
なることが明確だからである。しかし、どの程度害が予見可能かは過失を判断するに当たっ
ての目安となるため、「分別のある慎重な人」はCO2貯留計画を策定するにあたり、地震誘発
の可能性を考慮すべきである。
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誘発される可能性のある地震によって生じるリスクの程度を判断し、正しい緩和計画を策定
することは、適切なサイト調査によってのみ可能である。これらの調査は、サイト選定やプロ
ジェクトの初期段階に開始し、プロジェクト期間を通して続ける必要がある。調査に含める必
要がある(Davis and Frohlich, 1993)のは、岩石の地中での応力の状態の判定、断層の位
置の確定、当該地域の過去の地震の判定並びにプロジェクトの実施前と期間中の地震のモ
ニタリングである。
法的観点からは、業界の基準や現行の規定が義務付けていない場合でも、当然の義務を履
行していることを示すために、これらの調査は必要かもしれない(Cypser and Davis、1998)。
これらの調査には高い費用が掛かると想像されるとしても、傷害を負った者へ賠償を支払っ
たり、法的措置で対抗したり、場合によってはプロジェクトを放棄する方が、遥かに費用が掛
かることには注目すべきである。
上述した状況の中で、知識共有ネットワークでは、「CO2 地中貯留に伴う地震誘発の害の回
避に向けた予防措置に係る義務とは何か?」という問いに対する検討を続ける予定である。
このことは、課題 1 で検討されている安全策の有効性をチェックする機会にもなるであろう。
(3) 「課題 3」についての共同作業
タスク 1 の成果を共有した上で、地震誘発に関するアウトリーチ策の開発を目指して、ネット
ワークメンバー間でのオンライン上と対面での議論を実施した。それら議論の主要な成果は
以下のとおりである。
i. タスク 1 で認識された重要点は、CCS、特に地中貯留の科学的な根拠(例:深井戸を通
じての超臨界の CO2 の地下貯留層への注入、貯留された CO2 のトラッピングメカニズム
と CO2 の人や広範な環境への影響)が、CCS に関する効果的なリスクコミュニケーショ
ンの促進に十分な程度まで、非専門家と共有されていないことである。
ii. リスクコミュニケーションでは、正しい科学的な理解がないまま CCS のリスクに関して性
急に判断を下すよう誘導すると、ネガティブな選択につながる可能性がある。これを避
けるためには、リスクコミュニケーションとともに、サイエンスコミュニケーションのプログ
ラムを実施すべきである。
iii. サイエンスコミュニケーションの対象と目標は、CCS のリスクに直接または間接的に影
響する問題による。サイエンスコミュニケーションの包括的な戦略を確立するためには、
様々な問題に関する専門外の人々の知識の「ギャップ」を評価する必要がある。
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iv. CCS のリスクに関係する問題の中で、地震の誘発は、流体を地層に注入することでど
のように地震が誘発され、どうすればそれを避けることができるか等を人々が理解でき
るようにするため、サイエンスコミュニケーションにおける広範な取り組みを必要とする
代表的な例である。
この問題については第 6 章で更に検討する。
4.3
論証モデルと知識ベースの開発
(1) 地震誘発についての知識ベース
知識共有ネットワークでのオンラインの議論に基づき、炭素回収・貯留(CCS)「安全・安心ピラ
ミッド」(図 4-1)の各段階に関連する情報と知識を要約した知識ベースが開発された。付属文
書 2-3 では、このピラミッドの各レイヤーを、最下層から始めて最上層に向かって上方向に
別々の項で扱っている。
この要約では、ピラミッドの各問題の、CCS によって引き起こされた可能性のある誘発地震
に関連する側面に焦点を当てている。しかしながら、重要な点は以下で説明されている。

誘発地震が人の広範な活動によって引き起こされる可能性について言及した 2 文書
(Cypser and Davis, 1998; NRC, 2012)

地熱システム活性化に伴う誘発地震への対処手順を示した報告書(Majer ら、2012)
(2) 論証モデル
オンライン議論の一環として、「Davis and Frohlich」の誘発地震に関するチェックリスト(表
4-2)を中越地震に適用するため、4人の地震専門家を招聘した。彼らの答えは図4-3に示す
論証モデルにまとめられ、「中越地震は長岡試験サイトへのCO2注入が誘発したものではな
い」ことになった。このモデルは、裏付けとなる証拠とともに以下の論証 (と続いて記述する論
証)に分けられる。

中越と同種の地震が、これまでに同じ地域で繰り返し発生している。

CO2の注入と中越地震との間には明確な時間的相関はない。

CO2の注入と中越地震との間には明確な空間的相関はない。

CO2の注入による流体の圧力の変化は、地震を誘発するほどのものではなかった。
39
中越地区は新潟‐神戸構造帯にあり、これまでに
繰り返し地震が発生している。
中越地震はこの地域では典型的な方向の逆断層
運動によって引き起こされた。
溝上恵(2004)「新潟県中越地震のメカニ
ズムを探る」(和文)
CO2 注入以前及び以降に地震予知総合研究振興会が注入井坑の
周辺で観測した微小地震のパターンが、同じ統計的特徴を示した。
CO2 注入と中越地震との間には明
確な時間的相関はない。
中越地震は、2003 年 7 月~2005 年 1 月の CO2 注入の間の 2004 年 10 月 23 日に発
生した。しかし、同種類の地震がこれまでに同じ地区で繰り返し発生していることを考
えると、因果関係があるとは必ずしも言えない。
中越地震の震源は、注入井坑の付近(5km 以
内)ではなかった。
資源・素材学会(2008)「CO2 の地中貯留」
注入井坑は震源から 22km 離れてい
る。
溝上恵(2004)「新潟県中越地震のメカニ
ズムを探る」(和文)
40
中越地震は長岡試験サイトでの CO2
注入によって誘発されたものではなか
った。
注入深度付近では地震は観測されなか
った。
震源の深さは約 10km であったが、注入深度は 1.1km であった。
資源・素材学会(2008)「CO2 の地中貯留」
CO2 注入と中越地震との間に明確
な空間的相関はない。
震源は注入深度よりもはるかに深く、密度の低い流体がそこまで下っ
て行く可能性は低い。
地震のサイトに流れを導く可能性のある既知
の地質構造はない。
微小地震の測定結果は、注入された CO2 が地震発生時には注入井
坑の付近に留まっていたことを示している。
その地区の地質断面図によると、貯留層のある透過層は、信濃川付近
の地表で途切れており、震源断層には達していない。
井坑底部での流体圧力の変化は、地震
を促すほどのものではなかった。
CO2 注入による流体圧力の変化は、
地震を促すほどのものではなかっ
た。
井坑底部での最大注入圧力は 12.5MPa であり、キャップロックを破
壊するほど高くはない。
貯留層はソフトロックであり、脆性破壊の可能性は低い。
注:断層運動を引き起こす圧力変化の閾値について現在の理解には、
不確実性が残っている。
震源位置の流体圧力の変化は、地震活動
を促すほどのものではなかった。
悲観的な条件設定(注入井坑と震源断層をつなぐ、貯留層と同程度の
透過性を持つ構造の存在)に基づいた数値シミュレーションは、注入井
坑から 20km 地点での圧力変化は 1kPa 未満であることを示唆している。
図 4-3 論証モデル:中越地震は長岡試験サイトでの CO2 の注入によって誘発されたものではなかった
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中越と同種の地震はこれまでに同じ地域で
繰り返し発生している。
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5.
考察
本研究の第 2 フェーズでは、次の 2 つのタスクが行われた。

タスク 1: 第 1 フェーズで策定されたアクションプランと論証モデルに基づく市民アウトリ
ーチプログラムの開発と試行。

タスク 2: 重要な分野におけるギャップを埋めるべく広範な知識共有の実践。ここでは、
CO2 の注入による誘発地震の可能性と、地震が CCS の地中貯留に及ぼす影響が優先
課題とされた。
タスク 1 で行われたフォーカスグループインタビューでは、非専門家が CCS に関するアウトリ
ーチ資料を与えられたときに、どのような懸念や不安を抱く可能性があるかについて把握した。
参加者の学歴/職歴が、与えられた資料の理解度と関連しているとの印象を持った。FGI は
専門家から説明を与えないことを前提として行われたため、参加者の懸念や不安は解決され
ないままとなった。量と質が不十分な情報は、情報の受け手の懸念を増大させ、受容性を低
下させるだけであることを示唆していた。
タスク 1 の成果を共有した上で、タスク 2(課題 3)の一環として、誘発地震に関連するアウトリ
ーチ戦略の策定を目指し、オンラインと対面での議論を知識共有ネットワークメンバー間で行
った。議論の主要な成果は次のとおりである。

タスク 1 から得られる重要な所見は、CCS、特に CO2 の地中貯留(例えば、超臨界 CO2
の注入や、貯留 CO2 を地中でトラップするメカニズムと CO2 が人や広範囲の環境に及
ぼし得る影響)の科学的な根拠が、CCS に関する効果的なリスクコミュニケーションを促
進できる程までは、非専門家と共有されてこなかったことである。

リスクコミュニケーションでは、正しい科学的な理解がないまま CCS のリスクに関して性
急に判断を下すよう誘導すると、ネガティブな選択につながる可能性がある。これを避
けるためには、リスクコミュニケーションとともに、サイエンスコミュニケーションのプログ
ラムを実施するべきである。

サイエンスコミュニケーションの対象と目標は、CCS のリスクに直接または間接的に影
響する問題に依存している。サイエンスコミュニケーションの包括的な戦略の確立には、
様々な問題に関して、非専門家の知識の「ギャップ」を評価する必要がある。

CCS のリスクに関係する可能性がある問題の中で、地震誘発は、流体を地下の地層に
注入することによってどのように地震が誘発され、どうすればそれを避けることができる
か等を人々が理解できるようにするために、サイエンスコミュニケーションにおける広範
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な取り組みを必要とする代表的な例である。
オンライン議論では、ネットワークのメンバーによって、サイエンスコミュニケーションについて
の情報も、以下に要約するとおり整理されている。
サイエンスコミュニケーション:定義(Lloyd Spencer, D. 2010)
•
サイエンスコミュニケーションとは、広義には、「科学の一般化」と定義できるかもしれ
ない。実際には、(通常は科学的な書き方の慣習に合致した論文及び書籍の形式で
公表される)科学・技術に関する専門的な情報や知識を、一般の人々(非専門家)に
も理解しやすい形に変換し伝えることを意味する。
•
サイエンスコミュニケーションの要点

Distillation:核となる情報に焦点をあて、もともとの知識や情報の複雑性や
量を低減する。

Engaging:情報が公開されている(隠されていない)だけではなく、それらが
人を引きつける魅力的なものとして提供される。

Value:サイエンスコミュニケーションで提供される情報には何らかの価値観
が直接あるいは間接的に付与されている場合が多い(完全に中立であるこ
とは難しい)。
サイエンスコミュニケーションの実践:Storytelling(Lloyd Spencer, D. 2010)
•
Storytelling:物語の形式は、知識の構造化及びそれを利用した教育のいずれの面
でも最も効果的なコミュニケーションである。(Bruner 1986, p119)。
•
物語は、聞き手の興味を喚起し、理解と記憶を強化する効力を持つ。その効力は、科
学技術に関する知識や情報についても同様に発揮される。 (Norris et al 2005)。
•
Storytelling は、サイエンスコミュニケーションの実務において、常に中核的な重要性
を持つものであり、種々の科学技術分野における優れた「語り手」の存在が最も重要
な要素となる。
サイエンスコミュニケーションの実践:興味を惹く(Lloyd Spencer, D. 2010)
•
肝心なのは、伝えている情報に注目を集めることである。情報*をどうパッケージする
かが、人々が興味を持つかどうかに影響する。
•
等価な情報を含むコミュニケーションであっても、それがどのように表現されているか
によって聞き手の興味や理解の程度は大きく異なる(Crilley et al 2008)
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* コミュニケーションデザインは、印刷物や展示物、電子媒体といった媒体による、人々との
コミュニケーション方法に関するデザインと情報開発の混合領域である。コミュニケーション
デザインは、メディアにおける美的感覚からは離れ、メッセージ開発に取り組むのみならず、
メッセージを対象に確実に届ける新たなメディアチャンネルの創造にも取り組むことである。
コミュニケーションデザインは、ブランド構築や販売促進、人道目的といった依頼者の最終
的な利益に好ましい影響をもたらすことを目的として、人々を引きつけ(attract)、刺激し
(inspire)、そこに込められたメッセージに反応する(respond)ように仕向けることを目指す。
そのプロセスには、戦略的ビジネス思考やマーケットリサーチの活用、創造、問題の解決が
含まれる。
サイエンスコミュニケーションの実践:創造性の向上(Lloyd Spencer, D. 2010)
•
同じ情報を含む同様の物語を伝える場合でも、語り手の創意工夫によって聞き手の
印象や理解度は異なる。
•
事実情報のライティング能力の向上に関しては、クリエイティブ・ノンフィクションライテ
ィング*と呼ばれるジャンルが発展してきた(Gutkind 1997)。要するに、通常はフィクシ
ョンに使われるライティング技術をノンフィクションのプレゼンテーションに応用するも
ので、提示する情報は真実で事実でなければならないとするものである。
* クリエイティブ・ノンフィクション(文芸又は物語的ノンフィクションとしても知られる)は、文芸
のスタイルとテクニックを使って事実に基づいた正確な物語を創造するライティングのジャン
ルである。クリエイティブ・ノンフィクションは、やはり正確な事実に根ざしているものの、そも
そも文芸作品として書かれたわけではない、テクニカルライティングやジャーナリズムといっ
た他のノンフィクションとは対照的である。クリエイティブ・ノンフィクションは、ジャンルとして
はまだ比較的新しく、フィクションや詩に対するのと同様の批判的な見方で吟味され始めた
ばかりである。クリエイティブ・ノンフィクションとされる文章は、事実として正確であって、文
芸のスタイルとテクニックに注意を払って書かれていなければならない。「つまるところ、クリ
エイティブ・ノンフィクション作家の第一目標は、まさにリポーターのように情報を伝える一方
で、フィクションの様に読めるように情報を加工することである。」
上記にまとめた議論に基づき、日本の知識共有ネットワークの継続に向けて以下を提言し
た。
(1)CCS のリスクに関する主要な課題それぞれに対応した、専門家以外の多様な利害関係
者との間の「知識のギャップ」を考慮したリスクコミュニケーションとサイエンスコミュニ
ケーションを統合した方法論の開発
サイエンスコミュニケーションは比較的新しい概念だが、様々な科学分野や関連する産業部
門での様々な適用が報告されている。CCS に関連する分野では、以下を含む多くの事例が
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存在する。

Japan CCS Co., Ltd.は、CCS の基本に関する「漫画」形式のクリエイティブノンフィクシ
ョンを作成し、2012 年の京都での GHGT-11 会合で発表した。CCS 関連の知識の普及
にこれがどう貢献したかについての正式な評価は、まだ報告されていない。

US DOE (米国エネルギー省)は、地下貯留層にやって来た「新人」CO2 分子を表すキャ
ラクターが、貯留層に CO2 を留めるメカニズムを先輩達から学ぶ「地中の炭素」というタ
イトルのビデオを制作した。
(http://blog.energy.gov/blog/2011/05/26/move-over-american-idol%E2%80%A6)

科学リテラシーや科学への関心を高めることに取り組んでいる非営利組織 Mindfuel は、
「CO2 コネクト」というタイトルのオンラインゲームを開発した。
(http://www.wonderville.ca/asset/CO2-connection)
これは、「アルバータ州の炭素排出量を削減する重要な任務を手掛ける Kelvin を助け
よう!彼の友人 Celsius も加わり、CO2 の回収や貯留を手伝いながら Kelvin は州を旅
する。炭素排出量の計算を学んで楽しんで」と言うものである。
(1)の目的を達成するためには、以下のタスクを試みる必要がある。

CCS のリスクに影響を与える主要な問題それぞれに対応した、非専門家間の「知識の
ギャップ」を評価すべく、多数を対象としたオンラインインタビュー。

主要な問題それぞれに関するリスクコミュニケーションの基礎として、サイエンスコミュニ
ケーションのために必要な取り組みの分析。

複数のフォーカスグループを対象に予行演習を行い、サイエンスコミュニケーションがあ
る場合とない場合の異なるリスクコミュニケーション戦略を比較する。予行演習は、以下
に述べる異なる方式のサイエンスコミュニケーションを試すために、第 2 フェーズよりも
長い期間にわたって続ける必要がある。
(2)CCS に関するサイエンスコミュニケーションで使用する方法論と情報パッケージの開発。
以下のタスクにおける日本の知識共有ネットワークメンバー間での更なる知識共有を通じ、
サイエンスコミュニケーションの方法論と(1)の中で試すべき内容を開発する。

サイエンスカフェやストーリーテリング、オンラインでの議論、クリエイティブ・ノンフィクシ
ョン等の以下に述べるアプローチの活用を含む、CCS のリスクに関係する問題ごとの
「知識のギャップ」の規模と特性に応じたサイエンスコミュニケーションの方法論の開発。
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
第 1 フェーズ及び第 2 フェーズで開発された論証モデルに基づく、サイエンスコミュニケ
ーションのコンテンツの具体化。

例えば Japan CCS が開発し、2012 年の GHGT-11 で配布された「漫画」や CCS に関
する多数の既存のパブリックアウトリーチプログラム(第 1 フェーズ報告書の付属文書)
で開発された「ゲーム」等の様々なクリエイティブ・ノンフィクションを評価して、このコミュ
ニケーションに適しているかどうかを評価。

知識共有ネットワークのメンバーが専門家グループとして参加し内容の正確性を確保し
た上で、漫画家やゲーム作者によるクリエイティブ・ノンフィクションを検討。
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参考文献
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