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Nao との HRI における自然なジェスチャーの検討

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Nao との HRI における自然なジェスチャーの検討
Nao との HRI における自然なジェスチャーの検討
B2 asami (飯野朝美)
B1 haruka (久慈悠夏)
B1 midori (市川翠)
親 高汐一紀*
February 3, 2015
1
はじめに
2
背景と目的
くのが一番納得して頂けるが、従来のロボットとの会
話の感覚と大きく異なる。使用したロボットは、フラン
私たち sociable robots は、ロボットがとけ込む社会を スの Aldebaran 社が開発したヒューマノイドロボットで
目指して、社会的なロボットのあり方を研究している。 ある Nao と pepper。Nao と pepper のプログラムは、同
近年のロボットシーンでは、ロボット1台と人間1人と じく Aldebaran 社が提供しているビジュアルプログラ
いう一対一のインタラクションが一般的で頭に浮かび ミングツールである「Choregraphe」を使って作成した。
がちだが、私たちは今年度の ORF でロボット2台に人 Choregraphe は python で書かれたプログラムが入った
1人という、ロボットが数的優位にあるシーンでのイン ボックスを繋げていくことで基本的なプログラミングが
タラクションのデモを作成した。デモを作成するにあた 行う事が出来る仕様で、より複雑な動作をプログラムす
り、テーマは「共感するロボット」とした。ORF 後は、 るさいには追加でボックスを作成する。また、ロボット
ORF でのデモの経験や、デモの参加者の反応や意見・質 同士の会話の際や間の手を入れる際に、話し終わりや話
問等を振り返って議論し、ロボットとの基本的なインタ し始めのタイミングをロボットを通信させて知らせてい
ラクションの一つである「会話」について焦点を絞って たが、その Nao と pepper の通信は、ネットワーク上で
行った。
より研究を進めることとした。
私達が sociable なロボットについて理解を深めるため
に最初に注目したのは「共感」というキーワードだった。
そのテーマにそって、ORF では「共感するロボット」と
いうデモを行ったが、そこで多くの疑問点や問題点にぶ
つかることとなった。その中でも私達が ORF でのデモ
で学んだ1番重要で基本的なことは、ロボットにはある
程度のロボットらしさが必要とされていることである。
今回、私達の研究室で主に使用している Nao というロ
ボットとの会話について考えていくことで、人に似せる
のではなくロボットに最適な会話の状態を考察し、その
結果を今後の私達の研究に活かすことが目的である。
3
Fig 1 Nao
ORF での実装
私たちが ORF でのデモを作成するにあたり掲げた
テーマは上でも説明したように「共感するロボット」、
そして「ロボット2台人間1人でのインタラクション」
である。ORF では、その大きなテーマに沿って「共感」
と「褒め」という2種類のデモを用意した。
3.1
複数台のロボットとのインタラクション
ロボット2台と人間1人でのインタラクションは、一
対一ではなく3対象での会話が行われることによって、
Fig 2 pepper
2対象の会話では実現し得なかったロボット同士の会
話が成立することとなる。また、ロボットの方が人よ 3.2 共感デモ
りも数的優位にある状態での会話は、一度経験して頂
sociable な robot に今必要とされているものは何かと
* 慶應義塾大学環境情報学部准教授
いう観点から議論を重ね、広い意味での「聞き上手」な
1
ロボットを実現すべく仕草や台詞をこだわって考えた。 がでてしまい、せっかく微調整した Nao と Pepper の発
人を happy にさせる存在でなくてはならない sociable な 話のタイミングがずれてしまうことが多くあった。
ロボットであるので、人がマイナスの感情の時に如何に ・ロボットのイントネーションがなかなか人が聞きやす
人をプラスの感情に導いてくかをデモとして再現した。 いものにはまらず、プログラム中の日本語をカタカナ
まず、人の落ち込みを示すキーフレーズが発されたのを 等で細かく調節することによって、標準語に近いイント
pepper が音声認識し、人に共感して一緒に落ち込むアク ネーションを話させていた。この作業は大変時間を要す
ションを開始しつつもう一台のロボットである Nao に信 るものだった。
号を送る。Nao は pepper から信号を受け取ると、pepper
と人の2対象に協調して、励ましのアクションを開始す
3.5 反省点・改善点
る。
3.3
褒めデモ
tablet 端末のアプリケーションである「褒めアプリ」を
参考にこちらのデモは作成した。「褒めアプリ」という
のは、iphone 等向けのアプリケーションで、軽快な音楽
と共に画面にひたすら褒め言葉が表示されるもの。単純
な仕様のアプリケーションではあるが、根強い人気があ
り、「褒め」が人に欲されていることがわかる。このア
プリケーションは tablet 端末用のものだが、これと似た
動作を人型のロボットが身振り手振り付きで行うこと
で、より伝わるものがあるのではないか、それはすごく
sociable なのではないか、、という観点のもとに私たちは
このデモを作成した。人が発した自信を無くした状態を
示すキーフレーズを pepper が音声認識し、励まして褒
め殺す動作を開始すると共に Nao に信号を送る。pepper
からの信号を受け取った Nao は、pepper の台詞に間の手
を入れるように発話し、pepper と共に人を元気付ける。
3.4
わたしたちは ORF のデモで、被験者の方々から多く
の意見を得ることができた。私たち自身も実装にいたる
までに多くの事を考えさせられ、結果として、「ロボッ
トとのインタラクションのあり方」自体を考え直さなく
てはならないという結論に至った。被験者からの意見と
しては、
・ロボットにはロボットらしい振る舞いをして欲しい。
・人に似せようとし過ぎではないのか。
・ロボットに主張されすぎると不快に感じる瞬間が有る
ので、ロボット側の話が長いのは良い感じがしない。
等の物があり、私達がヒューマノイドロボットを初めて
扱う上で当たり前のようにロボットを限りなく人に近
づけることが正解だと疑わなかった未熟さを自覚した。
よって ORF でのデモは私たちには新たな刺激となった。
これらによって私達は、ロボットらしいコミュニケー
ションとは何かというテーマについて今まで以上に考え
る機会が多くなった。
実装で苦労した点
4
・全く新しいツールである Choregraphe を使用しての
プログラミングは慣れるまでに時間がかかり、さらに、
新しいツールであるが故に使用方法などが広く出回って
おらず、手探りでプログラミングを進めた。
・おそらく容量の問題だと推測されるが、Choregraphe が
作動中に頻繁に停止・フリーズしてしまうことが多く
あった。その度に Choregraphe を強制終了して再度立ち
上げねばならず、デモを中断してその時間を頻繁にとら
なくてはならなかった。
・pepper は特に大型なので、近くに障害物があるとプ
ログラムした通りの動作がされず、ORF 会場では特に、
モーションが制限されてしまったり、微妙な動きになっ
てしまう事が多くあった。また、動作が発話と自然に連
動せず、細かなタイミングを調節する作業も必要となっ
た。
・ロボットはオーバーヒートしやすく、通常何時間も動
かしておくには無理がある仕様となっているため、こま
めに電源をおとしてモーターが冷えるのを待つ必要が
あった。
・ロボット2台のが交互に発言するシーンでは、それぞ
れの話すタイミングやスピードをとても細かく設定し
なければ綺麗に間の手のように聞こえず、微調整が必要
になった。
・ロボットへの接続がスムーズにいかない時が大変多く、
プログラムを作っても、ロボットで実際動かしてみるま
でに大変な時間が必要とされる場合が多かった。さらに
ロボット同士のネットワークを介しての通信だが、ORF
会場では特に、回線の混雑具合によって通信速度に遅れ
2
Nao との会話
ヒューマンロボットインタラクションのあり方を考え
直すこととなった私達がまず最初に焦点を当てることに
したのは、インタラクションの基本であり、欠かせない
要素である「会話」である。会話は言語と非言語によっ
てなりたっているが、ORF での実装では私達の『会話
=言葉のキャッチボール』という勝手な思い込みにより、
言語の方に比重を多く乗せてデモを作成してしまった。
具体的には、Animated say という、Choregraphe の中に元
から用意されているボックスをプログラムに差し込んだ
仕様で、ジェスチャーの種類や数は意識していなかった。
私達はデモを実際に行った際の被験者の反応や様々な方
の意見から、ロボットとの会話では人との会話以上に言
語よりも非言語が重要な要素であるのではないかとい
う疑問を感じ、会話の中でも非言語の、Nao で表しやす
いジェスチャーについて考察することにした。特定のコ
ンテクストにおけるより自然なジェスチャーを探求する
ことは、今後私たちが sociable なロボットをつくってい
くにあたり、大きなヒントとなる。
4.1
調査
Nao に計6パターンの動作をさせ、その全てのパター
ンを被験者に順に体験してもらう。被験者には口頭でそ
の場で感想と評価・意見を述べてもらい、それを記録・
集計した。まず私達は、会話は話し手と聞き手の2役
が連続的に入れ替わることで成り立っていると見なし、
Nao が聞き手の場合と話し手の場合 (それぞれの場合で
ジェスチャーの種類自体が異なる) の大きく分けて2種
類のプログラムを作成することにした。そしてそれぞれ
に対して、ジェスチャーの数を多い〜少ないで見た目で
はっきりと分かるように三段階に調節した3パターンの
デモを用意し、デモは計6パターンとなった。それぞれ
の会話はシーン設定としてなるべく日常的なシーンで
の会話を心がけ、会話の内容のテンションによる調査結
果への影響が出ないようにした。Nao が聞き手の場合に
は、ORF のときと同様に被験者には決まった文章を話
し手として読んでもらった。Nao を使用したので、実験
場所と対象は Δ 館の内で Δ に出入りする学生とした。
4.2
調査結果
Nao が聞き手の場合も話し手の場合も重要なポイント
と感じるとして被験者から多く意見されたのは、「目線」
であった。目線が適度に合うことは Nao とのインタラク
ションではこれからも大切にして行きたい。他に、Nao
が聞き手の時には返事のタイミングや、返事をする際の
言葉と動作のタイミングが一致することが大切なので
はないかという意見が多かった。また、Nao が話し手の
さいには動作と言葉の意味の一致が重要であり、会話で
はなく見せ物として Nao が単独で話すのであればジェ
スチャーはより多い方が良いという意見が多かった。
5
まとめ
今期全体の研究では ORF 前後で sociable robot につい
ての私達の考え方に大きな変更があり、その変化が得ら
れたことが最大の収穫だと言える。具体的には、ORF 以
前には私達はロボットを如何に人に似せるかという意
識のみで研究を行っていたが、ORF を経て、多くの人々
の反応を見て意見を聞き、ロボットにはロボットにしか
できないことを追求することがその存在意義を最大限
に発揮するという概念に達した。結果的に sociable robot
を考えることの導入としてロボットらしい HRI の探求
へと今期の後半私たちの研究の方向性は大きくかわった
が、この研究を行ったことで、今回得られた経験と結果
が今後の sociable robots 全体の研究の大きなヒントにな
ることを期待している。
References
[1] 劉超然、石井カルロス寿憲、石黒浩、萩田紀博 (2013)
人型コミュニケーションロボットのための首傾
げ生成手法の提案および評価 Proposal and Evalutionalof a Head Tilting Generation Method for Humanoid
Communication Robot 人工知能学会論文誌 28 巻 2
号
3
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