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The Energy Aligned Clause 日本語訳
資料 3 狭義のグリーンリース条項の例 -米国 NY市 The Energy Aligned Clause 日本語訳(仮訳)- (省エネ改修投資におけるオーナー・テナント間のエネルギー費用の調整条項) 【留意事項】 ・この資料は情報提供を目的として、米国ニューヨーク市で作成された The Energy Aligned Clause を日本語訳 (仮訳)したものです。参考にされる場合は、必ず原文(英文)もご確認ください。 http://www.nyc.gov/html/gbee/downloads/pdf/121211_eac_overview_and_language.pdf ○米国NY市(The Energy Aligned Clause) 日本語訳(仮訳) エネルギー費用の調整条項 ベースビルの標準的な修正グロスコマーシャルリースにおける スプリット・インセンティブ問題を解消する賃貸契約条件の概要 スプリット・インセンティブ問題 「スプリット・インセンティブ問題」は、ベースビルについて、建物所有者がエネルギー効率改善の際に資本 支出を負担する一方、テナントはベースビルの運営費の負担割合が減ることによる経費削減という金銭的メ リットを享受することによって発生する。 この資本支出と運営費の責任の「負担の割合」は、省エネ対策を講じるインセンティブを建物所有者にほと んど与えない。 これは理論上の問題にとどまらない。ニューヨーク市長室に設けられた長期的持続可能性計画室(OLTPS) の調査によると、ニューヨークの商業用不動産の所有者の 60%が、スプリット・インセンティブ問題はエネルギ ー効率改善を実施する上で妨げになっていると回答している。 現行の賃貸借契約では、スプリット・インセンティブ問題を解消できない。 多くの修正グロスコマーシャルリースでは、所有者が運営費の削減につながる資本支出(額)を回収すること を認める条項が組み込まれている。しかし、この回収は通常、設備の耐用年数に基づいており、費用の回収 には長い年月がかかるため、所有者に支出を促すには至っていない。 問題の解決 OLTPS はこのスプリット・インセンティブ問題の解決を図るため、主要な建物所有者、テナント、不動産管理 会社、弁護士、技術者からなる作業部会を招集した。 所有者はエネルギーコスト削減額の予測に基づいて、効率的なエネルギー効率改善の資本コストを回収す ることを強く求めた。所有者の観点から見ると、実際に削減されたエネルギーの測定基準はとても複雑で多 額の費用がかかり、予測不可能なものだという。 一方、テナントは予測されたエネルギーコストの削減が達成されないことを懸念しており、実際に削減された エネルギーコストに基づいて費用を回収することを求めている。 1 スプリット・インセンティブ問題の解決策 ・作業部会は業界の経験から、エネルギー効率改善による実際の商業的コスト削減額は概ね削減予想値の± 20%にとどまるとの点で意見の一致を見た。 ・テナントはエネルギーコスト削減が予想値を下回った場合もテナントが不利にならない限りは、所有者の回収額 を予想値に基づいて決定することに同意した。 解決策:建物所有者の費用の回収は、両当事者が同意するエネルギー専門家によって決定され る予想削減額に基づく。ただし、所有者の資本コストの転嫁は、当該年の予想削減額の 80%を上 限とする。 これにより、テナントは予想を下回る場合に被る損害から保護され、それに伴い、所有者の回収期間は 25% 延長される。 OLTPS は懸念を生じさせる状況下でも、この取り決めに基づき、両当事者が金銭的メリットを得られる財務モ デルを策定した。つまり、エネルギー削減額が予想値を下回る場合、エネルギー効率改善が賃貸借契約期 間の後半に実施された場合、あるいはエネルギー効率改善コストの回収期間が長期にわたる場合、たとえこ れらすべてが実際に発生したとしても、テナントのダウンサイドリスクは最少に抑えられる。 この財務モデルが機能する理由 作業部会が出した主要な結論は「マルチテナント商業ビルにおけるエネルギー効率改善はゼロサ ムゲームではない」というものである。 エネルギー調整条項に詳述されるように、この転嫁構造は、エネルギー効率改善によるエネルギー節約の 可能性を生み出す。 ほぼすべての場合において、エネルギー調整条項は所有者とテナントの双方に対して、改善の正味現在価 値をプラスとし、更には「win-win の関係」をもたらす。エネルギー改善削減額が予想値を大幅に下回る場合 においても、両当事者のダウンサイドリスクは商業用ビルの所有・運営・稼働にかかる全体的なコストに比べ て、ごく僅かとなる。 エネルギー調整条項の主な特徴 使いやすい標準化された賃貸借条件 エネルギー調整条項は修正グロスコマーシャルリースに容易に追加することができる。これにより、エネルギー効 率改善費用の負担を決める「グリーン賃貸借契約」について新たに交渉する必要がない所有者とテナントの間の 取引コストは削減される。 両当事者はエネルギー節約の便益を享受 エネルギー効率改善効果が予想通りに得られた場合、テナントは削減分の 20%を直ちに得るとともに、エネルギ ー効率改善投資額が全額回収された後に、削減分のすべてを享受することができる。賃貸借契約が更新された 場合には、ベースビルのコストが下がることにより、所有者はエネルギーコスト削減効果を享受することができる。 2 幅を持たせることで、エネルギー効率改善効果が予想を下回った場合もテナントを保護 テナントの負担額の上限をエネルギーコスト削減予測額の 80%に設定する。これにより、回収期間は 125%に延長 される。テナントが削減分の 20%を保持することで、改善効果が予想を下回った場合も、テナントを保護することが できる。 所有者による資本コストの回収 建物所有者はエネルギー効率改善の実施後速やかに、テナントから費用を回収することができる。設備の耐用 期間が満了する前に全額を回収する。 予想回収額による会計の簡素化 エネルギー専門家によって決定されるエネルギーコスト削減予想額に基づき、毎月の回収額を事前に計算する。 これにより、実際の費用に基づいて回収額を決定する場合に比べて、簡素化され議論の余地も少なくなる。 エネルギー調整条項でカバーできない部分 エネルギー調整条項は、修正グロスコマーシャルリースについて、ベースビルのシステムで使用されるエネルギ ーのスプリット・インセンティブ問題を解決する。ただし、核テナントスペースに個別の使用量測定メーターがない 場合には、テナントスペース内で使用される電力のスプリット・インセンティブ問題を解決できない。この問題を解 決するには、テナントの使用料を個別に測定し、測定された電力使用量に対して使用料を支払うものとする。な お、ニューヨーク市は 2010 年 12 月に現地法 88 号を採択した。これは 2025 年までに大規模な商業用テナントス ペースのすべてにおいて、メーターあるいはサブメーターの設置を義務付けるものである。詳細はウェブサイトを 参照のこと。OLTPS はこの問題を解決するため、今後 10 年間で二酸化炭素排出量の 30%削減を目指して、商業 テナントに「Mayor’s Carbon Challenge」に参加するよう呼びかけている。詳細はウェブサイトを参照のこと。 3 下記の財務モデルは、エネルギー効率改善効果が予測を下回る場合に、いかにエネルギー調整条項がテナント を保護するかを示している。 テナントスペースの例: 100,000 平方フィート 1 平方フィート当たり賃料: 60.00 米ドル 基準年におけるエネルギー消費関連経費: 2.00 米ドル 10 年間の賃貸期間においてエネルギー効率改善が実施された年: 1 年目 1 平方フィート当たりのエネルギー効率改善費用: 2.50 米ドル 1 平方フィート当たりのエネルギー削減予想値: 20%または 0.41 米ドル 単純回収期間(予測): 6.1 年 エネルギー効率改善効果の幅: 20% エネルギー効率改善効果の幅による調整後回収期間: 7.6 年 4 エネルギー調整条項を導入した賃貸借契約第一号となる、シルバースタイン・プロパティーズとウィルマーヘール 法律事務所の契約調印式を見守るブルームバーク・ニューヨーク市長 エネルギー調整条項の支持 シルバースタイン・プロパティーズとウィルマーヘール法律事務所は 2011 年 4 月 5 日、ワールド・トレード・セ ンター第 7 ビルのワンフロアについてエネルギー調整条項を導入した賃貸借契約第 1 号を締結した。同年 9 月 19 日には同ビルで MSCI インクが同様の賃貸借契約を締結。 ニューヨーク市は今後、同市が賃借人となる新しい賃貸借契約にエネルギー調整条項を盛り込んでいく。賃 貸借契約にエネルギー調整条項を導入した最近の事例に、2012 年 6 月の 100 Church St. (285,314 平方フ ィート)、2012 年 8 月の St., Brooklyn(21,651 平方フィート)、2012 年 9 月の 100 Church St.(102,000 平方フ ィート)がある。 2012 年初頭、ニューヨーク市のある大手商業テナントが、賃貸借契約にエネルギー調整条項を盛り込むこと を誓約。 エネルギー調整条項の支持団体には、ニューヨーク不動産委員会、米国グリーンビルディング協会、天然資 源保護協議会、環境保護基金、HR&A アドバイザーズ社などがある。 マーク・ラウフ、フォレストシティラトナー、ファースト・ニューヨーク・パートナーズ、クッシュマン・アンド・ウェイ クフィールド、アーンスト・アンド・ヤング、ドイツ銀行、ゴールドマン・コープランド・アソシエーツ、JB&B などの 弁護士、所有者、テナント、不動産管理会社、エンジニアがエネルギー調整条項の策定を支援。 ニューヨーク州エネルギー研究開発局、天然資源保護協議会、ニューヨーク不動産委員会、環境保護基金、 ニューヨーク市の資金協力の下、ニューヨーク市長室の長期計画・サステナビリティ局およびアーバングリー ン・カウンシル、米国グリーンビルディング協会ニューヨーク支部が 6 カ月間に及ぶアウトリーチ活動を実施。 5 エネルギー調整条項モデル エネルギー効率の向上に向けた資本改善 (修正グロスコマーシャルリース) 1.1 営業経費 (a) 定義 (ⅰ)「基準年」とは をいう。 (ⅱ)「資本改善」とは、建物または共用部分あるいはその設備またはシステムにおいて/または建物または共用 部分あるいはその設備またはシステムに対して、オーナーが行う変更・追加・修正・修復・交換(構造的であるか 非構造的であるかを問わない)で、一般に認められた会計原則に基づいて、常に資本支出に適切に分類される ものをいう。資本改善の総額には、上記に関連して実際に発生した設計料、技術料、迅速化費用、弁護士費用、 コンサルティング料、調査費、手数料を含むが、この限りでない。ただし、上記に関連して実際に発生した融資 コストまたは融資帰属コストは除外する。 (ⅲ)「比較年」とは、基準年以後の連続する 12 カ月間をいう。 (ⅳ)「独立エンジニア」とは、本条項に付属書類 として添付されるリストからオーナーが選定したエンジニア をいう。随時(ただし、連続する 12 カ月間のうち 1 回を超えてはならない)オーナーとテナントはそれぞれ、ニュ ーヨーク州の認可を受けた独立専門エンジニアまたはエネルギー管理専門家を 1 名以上推薦することができる。 ただし、いずれの場合も、本条項に付属書類 として添付される一覧に記載された物件に規模および用途の 点で類似の商業用物件について、6 カ月以上のエネルギー監査実務経験を有する者とする。オーナーまたは テナントによる推薦は、相手方当事者の書面による承認を得るものとし、承認を不当に留保してはならない。 (ⅴ)「営業経費」とは、建物および全共有エリア、およびその設備またはシステムの運営、維持、修理、交換、照 明、保険、人員配置、清掃、保安、管理について、オーナーが負担した/またはオーナーの代わりに負担したす べての費用、経費、支払金、支出(および税金、該当する場合)(および直接支払いまたは負担した、あるいは 独立した請負業者や外部下請け業者を通じて支払った/または負担したもの)をいう。これには…(16) 下記の 1.1(b)項に基づき営業経費に含めることが可能な場合にその範囲内の資本改善(以下に定義する)費用を含 むが、この限りでない。かかる費用はかかる資本改善の耐用年数(かかる耐用年数は、一般に認められた会計 原則に従って決定され、常に適用される)にわたって定額法で減価償却されるものとする。ただし、下記の 1.1 (b)項に説明される資本改善は除く(かかる項の規定に従って減価償却される)。 (ⅵ)「年間予測削減額」とは、一般的に適用される土木技法および独立エンジニアが書面で提出する見積もり に基づいて決定される、資本改善の結果生じると想定される、建物の光熱費の平均年間削減額をいう。 6 (b)資本改善 オーナーは下記に従って、1.1(a)(v)(16)項に基づき、特定の資本改善を営業経費に計上することができる。 (ⅰ)エネルギー効率の向上を目指す資本改善である。独立エンジニアが書面で承認する資本改善は、 1.1(a)(v)項に矛盾する条項があった場合も、合理的な想定や必要条件に基づき、建物の電力、石油、天然ガス、 蒸気、水、その他の水道光熱使用量を減少させる。 A.かかる資本改善コストは、かかる資本改善コストを負担するために、オーナーが実際に受け取るエネルギー効 率の向上関連のニューヨーク州エネルギー研究開発局のインセンティブ、または類似の政府によるインセンティ ブを差し引いた額とする。更に、かかる資本改善の結果、オーナーに適用されるエネルギー効率税額控除または 類似のエネルギー効率に基づく税制優遇措置分を差し引く。 B.本 1.1(b)(ⅰ)項の目的上、「単純回収期間」とは、「X」(かかる資本改善コストの総額)」を「Y」(想定年間削減 額)で除することによって求められる期間(月で表示)をいう。一例を挙げると、かかる資本改善の総額が 2,000,000 米ドル、想定年間削減額が 500,000 米ドルの場合、かかる資本改善の単純回収期間は 48 カ月間とな る。 C.かかる資本改善が完了して稼働が開始された年に続く比較年の最初の年から、調整後回収期間(以下に定義 する)までの期間について、オーナーは想定年間削減額の 80%1 に相当するかかる資本改善の総額を、営業経 費に含めることができる。かかる資本改善コストの総額は、単純回収期間の 125%2(かかる期間を「調整後回収期 間」という)にわたり、全額減価償却される。一例を挙げると、かかる資本改善コストの総額が 2,000,000 米ドル、想 定年間削減額 500,000 米ドル、かかる資本改善の単純回収期間が 48 カ月間の場合、オーナーは連続する 5 比 較年間(つまり 60 カ月間または単純回収期間の 125%に相当する期間)において、かかる資本改善コストの総額で ある 400,000 米ドル(想定年間削減額の 80%に相当)を、営業経費に含めることができる。 1 エネルギー効率改善による実際のコスト削減額は、想定削減額を上回るか、下回る可能性がある。想定年間削減額の割引(および回収期間に 付随する延長)は、実際の削減額が、想定年間削減額を下回った場合の、許容誤差を示すことを目的としている。 2脚注1を参照のこと。 7