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デジタルサイネージの地域活性への利用事例調査
情報処理学会第 73 回全国大会 2ZE-2 デジタルサイネージの地域活性への利用事例調査 畠 直輝† 嶋津 恵子‡ 慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント† 慶応義塾大学先導研究センター‡ 1. はじめに インタ-ネットの台頭で大きく様変わりした広告ビジ ネスが,最近ではデジタルサイネージの登場で再び大き く変貌しようとしている.最近では,商店街の入り口や大 型ショッピングモールにデジタルサイネージを設置し,販 売促進に利用している例も出始めている.そこで,現在, デジタルサイネージがどのように利用されているかと, 研究テーマとしてどういうものが取り上げられているか を網羅的に調べ,整理した.ここから,特に地域活性に このサービスを利用する可能性を考察した. 本書は,2 章に産業界におけるデジタルサイネージの 利用状況を述べ,3 章に研究のテーマの傾向を示す.4 章 にこれらから考察されるデジタルサイネージを地域活性 に活かすための研究テーマをまとめる. 2. 産業界におけるデジタルサイネージの利用状 況 いるもの,動画や音楽,香りを流しているものの 4 つに 分けて表 3 に整理した.日経 BP 社発行の記事では, 6 件 , 18 件 , 12 件 , 3 件 あ り , Digital Signage Consortium の事例では, 4 件, 14 件, 11 件, 0 件で あった. 表 1 情報配信の方法の違いによるサービス例の数 表2 利用場所の違いによるサービス例の数 我々は,2008 年 2 月から 2011 年 1 月までに日経 BP 社 が発行した技術・情報・経営に関する雑誌の全記事と, デ ジ タ ル サ イ ネ ー ジ の 事 例 を 多 く 紹 介 す る Digital Signage Consortium1 を参照し,デジタルサイネージに関 表 3 配信情報の違いによるサービス例の数 するものを (1)情報の配信方法の違いと,(2)利用場所の 違いと,さらに(3) 配信情報の種類(マルチメディア性) で , 整 理 し た [1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20 ,21,22,23,24,25]. 表 1 は,情報をあらかじめ決定されたスケジュールに 従って配信するものと,視聴者の動きや操作によって配 3. 研究テーマの傾向 信する情報を更新するものに分けて記事件数を整理した 我々は,2007 年 3 月から 2010 年 6 月までに情報処理 ものである.日経 BP 社発行の記事数は,スケジュール型 学会や電子情報通信学会で発表されたデジタルサイネー が 19 件 , オ ン デ マ ン ド 型 が 20 件 で あ り , Digital ジに関する論文と予稿(全 8 件)の傾向をみた Signage Consortium の事例では,前者が 16 件,後者が [26,27,28,29,30,31,32,33].表 4 がその結果である.携 13 件であった. 帯電話や ID タグをデジタルサイネージとの入出力装置と 次に我々は,デジタルサイネージが利用されている場 して利用する試みの実験・検証について書かれていたも 所に注目して,同じ記事群を整理した(表2).日経 BP のが 4 件,映像,「香り」に加え情報配信する効果につ 社発行のものは,交通機関内(電車,バス,タクシー) いて述べた文献が 3 件,利用者の意図を推定し,有益な で利用されているデジタルサイネージが 2 件,全国チェ 情報をその場で提供する試みについての文献が 1 件あっ ーン展開されているような店舗間で利用されているもの た. が 12 件,そして駅構内やショッピングモール,催し物会 場 で 利 用 さ れ て い る も の が 11 件 で あ っ た . 同 様 に 表 4 研究テーマの傾向の違いによる文献の数 Digital Signage Consortium の事例では,それぞれ,3 件,4 件,13 件であった. そして,さらに我々は配信する情報に注目し,静止画 であるもの,動画であるもの,動画に加え音楽を流して Present Status about Digital Signage Services †Naoki Hata ・ Graduate School of System Design and Management Keio Univercity ‡Keiko Shimazu・Keio Advanced Research Centers 1 http://www.digital-signage.jp/case/ 4. 考察 今度の作業では,産業界,学界では,地域活性にデジ 4-615 Copyright 2011 Information Processing Society of Japan. All Rights Reserved. 情報処理学会第 73 回全国大会 タルサイネージを活用する報告は,存在しなかった.そ の理由として,現段階のデジタルサイネージの利用方法 は映像看板の延長上にあり,配信するコンテンツを時 間・場所に合わせて切り替えることは可能だが,オンデ マンド配信型のような利用者を取り込んで行うサービス は少ないことがある.今後,「顔認識機能」や「香り」 などを利用したデジタルサイネージが増えていくことで, 地域の活性化に役立つと考える. これに対し我々は,「人の動きに合わせて広告を変え るデジタルサイネージ」の技術と「デジタルサイネージ と ID タグによる新たなクロスメディアコミュニケーショ ン」の研究の二つを組み合わせた,「メディアストリー ト」という新たな広告形式を構想している.ショッピング モールやアウトレットモールといった複合商業施設の通 路において,床にデジタルサイネージを埋め込み,人の 歩く速度に合わせ広告が追尾するというものである.歩行 者が ID タグをついた商品を持っていた場合に,無線でデ ジタルサイネージと連動し,その歩行者に対し適切な情 報を提供するシステムである.このシステムにより,ショ ッピングモールを訪れた客は自分に適した情報を歩きな がらにして得ることができ,その情報元の店舗まで誘導 することが出来ると考える. 参考文献 1) 日野なおみ、佐々木淳之、上原太郎、有我武紘:施設・レ ジャー−「駅」「鉄道」が一大レジャーとして脚光を浴びる,日 経 TRENDY, 2011/02 号, pp.114-117(2011). 2) 長井美暁:iPad などを駆使し,客との接点を広げる一文, 日経アーキテクチュア,2010/12/20 号,pp.10-13(2010). 3) 篠田香子:フットボールの殿堂に「早変わり」店舗-03 The Flagship Store Powered by Reebok 米国イーストラザフォード, 日経アーキテクチュア,2010/12/20 号,pp.14-16(2010). 4) 増谷彩:企業の最新 IT 活用-事例に学ぶ コスト削減&効 率化の特効薬−,日経パソコン,2010/12/13 号,pp.66-73(2010). 5) 介川亜紀:マーケティング機能搭載の次世代自動販売機, 日経デザイン,2010/10 号,pp.15(2010). 6) 小田舞子:デジタルサイネージで広告が変わる?/K-POP, 映画 韓国が日本のエンタ界に攻勢,日経ビジネスアソシエ, 2010/10/05 号,pp.12-14(2010.) 7) 増谷彩:拡張現実のビジネス利用が進む-スマートフォンや Web カメラの普及で環境が整う,日経パソコン,2010/08/09 号, pp.13(2010). 8) 丸尾浩志:美術館をテーマに地域活動を見せる地方百貨店 の新たな試み,日経デザイン,2010/06 号,pp.13(2010). 9) 小 笠 原 啓 : デ ジ タ ル サ イ ネ ー ジ 開 花 , 日 経 ビ ジ ネ ス , 2010/02/29 号,pp.102-107(2010). 10) 斎藤訓之:プロジェクタに動画や文字を表示する電子看板 中小店向けのサービスに NTT が乗り出す-デジタルサイネージ-, 日経レストラン,2010/03 号,pp.116(2010). 11) 島田昇:Xaas 続々登場、問われる目利き力,日経コンピュ ータ,2010/01/20 号,pp.56-67(2010). 12) 山本恵久:情報技術,インタラクティブコンテンツと場所 を融合させる「デジタルサイネージ」,日経アーキテクチュア, 2009/06/15 号,pp.62-65(2009). 13) 境洋人:「変わらない新しさ」を銀座で守り続ける 90 年 代にはアート用のファサードに転換,日経アーキテクチュア, 2009/06/15 号,pp.68-71(2009). 14) 西部浩之,荒井優,勝俣哲生,日野なおみ,相良朋,奥井 真紀子,大竹敏之,井垣節子:目からウロコのヒット商品ここ まで来た!「09 年版販促」,日経 TRENDY,2009/07 号,pp.5861(2010). 15) 中井奨:従業員間の情報格差を解消コミュニケーション活 性化も-社内で使う電子看板−,日経コンピュータ,2009/05/27 号,pp.108-111(2009). 16) 中井奨:社内で電子看板を立て,情報共有-NTT コミュニケ ーションズ-,日経コンピュータ,2009/04/15 号,pp.20(2009). 17) 日川:国内最大級のデジタルサイネージを展開-みずほ銀 行,日経コンピュータ,2009/04/15 号,pp.22(2009). 18) 福田崇男:IT 機器と照明,空調が自律動作「チームマイナ ス6%」の一歩先へ-オフィスの省エネルギ-,日経コンピュー タ,2009/04/15 号,pp.92-95(2009). 19) 中井奨:顔認証,香り,TV 電話,ケータイ組み合わせで進 化 す る 電 子 看 板 , 日 経 コ ン ピ ュ ー タ ,2009/04/01 号 , pp.4652(2009). 20) 島田昇:ネットを活用し地域展開の事例も配信システムの 共通化も進展-デジタルサイネージ.日経コミュニケーション, 2009/04/01 号,pp.54-58(2009). 21) 中井奨:デジタルサイネージによる広告は威信導入-いな げ,日経コンピュータ,2009/02/01 号,pp.26(2009). 22) 伊 藤 元 昭 : 姿 を 現 す ア ン ビ エ ン ト ・ デ ィ ス プ レ イ 「CREATEC2008」に見る FPD の新応用,日経マイクロデバイス, 2008/11 号,pp.43-48(2008). 23) 小笠原啓:ソニー電子看板に本腰 離陸間近のデジタルサ イ ネ ー ジ に 参 入 相 次 ぐ , 日 経 ビ ジ ネ ス , 2008/08/25 号 , pp.18(2008). 24) 田中直樹:胎動する「デジタルサイネージ」ディスプレイ が街中に組み込まれる,日経マイクロデバイス,2008/08 号, pp.53-61(2008). 25) 山崎洋一:未開の映像広告メディアが急展開ネットワーク 化で媒体価値が向上-デジタルサイネージ、日経コミュニケーシ ョン,2008/02/01 号,pp.81-85(2008). 26) 高橋郁子,菅沼悠子,久永聡,田中敦,田中聡:インタラ クティブデジタルサイネージと携帯電話による歩行者誘導,情 報処理学会研究報告,2007-ITS-28,pp.71-78(2007). 27) 杉山弦,小林茂,鈴木宣也:ショッピングバックとデジタ ルサイネージによる新しいクロスメディアコミュニケーション の研究,情報処理学会インタラクション 2010,(2010). 28) 平賀高市,若林佳織,松浦宣彦:仮想タッチパッド-タッ チパッドの操作を模したジェスチャマウス−,電子情報通信学会, 信学技報,MVE2010-33,pp.57-62(2010). 29) 門洋一,張兵,リムアズマンオスマン:携帯電話でディス プレイ画面にタッチして情報を取得する零次元コードシステ ム : 電 子 情 報 通 信 学 会 , 信 学 技 報 , NSN2008-40 , pp.1316(2008). 30) 境野哲:五感に訴え,感性を伝える「香り通信」の取り組 みと成果-「香るデジタルサイネージ」効果測定実験結果−,電 子情報通信学会,信学技報,EID2008-42,pp.53-57(2008). 31) 渡辺浩志,木原民雄:人の位置移動による状況即応型情報 アクセスインターフェイスの提案,情報処理学会研究報告, 2008-DPS-136,2008-GN-69,2008-EIP-41,pp.47-52(2008). 32) 遠藤潤一,茂登山清文,中村純:学内向けデジタルサイネ ージの視線情報によるデザイン評価,情報処理学会研究報告, Vol.2009-CE-102,No.3,pp.1-4(2009). 33) 伴野明,大竹俊弥:香り付き映像広告の誘目性と香り放出 映 像 表 示 装 置 の 検 討 : 電 学 論 C , 130 巻 , 4 号 , pp.668675(2010). 4-616 Copyright 2011 Information Processing Society of Japan. All Rights Reserved.