...

作業用ロボットへのマイクロ波送電 および通信技術の開発に関する

by user

on
Category: Documents
8

views

Report

Comments

Transcript

作業用ロボットへのマイクロ波送電 および通信技術の開発に関する
システム開発
18-F-8
作業用ロボットへのマイクロ波送電
および通信技術の開発に関する
フィージビリティスタディ
報 告 書
- 要 旨 -
平成 19 年 3 月
財団法人 機械システム振興協会
委託先 財団法人 無人宇宙実験システム研究開発機構
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
URL: http://keirin.jp/
序
わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社
会的諸条件は急速な変化を見せており、社会生活における環境、都市、防災、
住宅、福祉、教育等、直面する問題の解決を図るためには技術開発力の強化に
加えて、多様化、高度化する社会的ニーズに適応する機械情報システムの研究
開発が必要であります。
このような社会情勢の変化に対応するため、財団法人機械システム振興協会
では、日本自転車振興会から機械工業振興資金の交付を受けて、システム技術
開発調査研究事業、システム開発事業、新機械システム普及促進事業を実施し
ております。
このうち、システム技術開発調査研究事業及びシステム開発事業については、
当協会に総合システム調査開発委員会(委員長:政策研究院 リサーチフェロー
藤正 巖氏)を設置し、同委員会のご指導のもとに推進しております。
本「作業用ロボットへのマイクロ波送電および通信技術の開発に関するフィ
ージビリティスタディ」は、上記事業の一環として、当協会が財団法人無人宇
宙実験システム研究開発機構に委託し、実施した成果をまとめたもので、関係
諸分野の皆様方のお役に立てれば幸いであります。
平成19年3月
財団法人 機械システム振興協会
はじめに
本報告書は、財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構が、平成 18 年度事
業として、財団法人機械システム振興協会から受託した「作業用ロボットへの
マイクロ波送電および通信技術の開発に関するフィージビリティスタディ」の
実施内容をまとめたものです。
被災地などの危険な状況下でロボット等を用いて作業を行うことが考えられ
るが、無線で指令を出すほかに動力となる電力も無線で送ることが可能ならば、
ロボットの行動範囲および作業時間の拡大につながります。また、移動ロボッ
ト一般の使い勝手の向上、自由度の向上にもつながります。この場合、送受電
系も可搬で容易に展開できるように小型・軽量化されたものでなければならず、
通信機用の半導体・平面アンテナ技術を有機的に結合しなければなりません。
また、この技術が実証されれば、将来の大規模・超長距離マイクロ波無線送
電の実現に向け、大きく寄与するものであります。
このため平成 17 年度の検討結果を踏まえて作業用ロボットに対する無線送電
システムの適用検討、高効率・小型・軽量送受電システムの設計・試作・試験を
行いました。またロボットに対する無線送電実証試験を行い、マイクロ波送電
にデータ通信を共存させる技術(電力伝送を情報通信に干渉させないための技
術)についての基礎データを得るとともに超軽量・小型マイクロ波増幅回路の試
作・評価を行い将来の大規模マイクロ波送電実現のための基礎データを得まし
た。
本フィージビリティスタディの成果が関連各位にとって参考となり、機械振
興の一助となれば幸いです。
平成19年3月
財団法人
無人宇宙実験システム研究開発機構
目次
序
はじめに
1. スタディの目的 .......................................................... 1
2. スタディの実施体制 ...................................................... 2
3. スタディの内容 .......................................................... 5
第 1 章 作業用ロボットに対する無線送電システムの適用検討 .................... 6
1.1 目的 ................................................................. 6
1.2 無人小型飛行機に対する電力伝送 ....................................... 6
1.2.1 旋回飛行小型無人飛行機 ............................................ 6
1.2.2 蓄電池併用型無人小型飛行機 ........................................ 9
第 2 章 システム設計 ....................................................... 12
2.1 開発の目的とねらい .................................................. 12
2.2 システム仕様・構成 .................................................. 14
2.2.1 システム仕様 .................................................... 14
2.2.2 システム構成 .................................................... 16
2.3 サブシステム仕様 .................................................... 17
2.3.1 送電ステーション ................................................ 17
2.3.2 無線ローバ ...................................................... 21
2.4 試験仕様 ............................................................ 25
2.4.1 単体試験 ........................................................ 25
2.4.2 システム試験 .................................................... 25
第 3 章 マイクロ波電力送電系アレイおよび電源の設計・試作・試験 ............. 26
3.1 送電部の構成 ........................................................ 26
3.1.1 構成 ............................................................ 26
3.1.2 送電部の性能 .................................................... 27
3.2 試作 ................................................................ 31
3.2.1 AIA 部 ........................................................... 31
3.2.2 冷却部 ........................................................... 32
3.2.3 電源部(外付け) ................................................. 32
3.3 試験 ................................................................ 33
第 4 章 受電系レクテナアレイの設計・試作・試験 ............................. 34
4.1 受電電力の検討 ...................................................... 34
4.2 レクテナアレイの設計・製作 .......................................... 35
4.3 レクテナアレイ試験 .................................................. 37
第 5 章 受電系給電制御部の設計・試作・試験 ................................. 43
5.1 給電制御方法の検討 .................................................. 43
5.2 給電制御部の設計・試作・試験 ......................................... 44
第 6 章 システム総合試験準備 ............................................... 45
6.1 作業用ロボット ...................................................... 45
6.2 ローバ駆動制御システム .............................................. 46
6.3 受電アンテナ支持機構 ................................................ 46
6.4 経路制御機構 ........................................................ 47
6.5 インタフェース回路 .................................................. 47
6.6 走行経路 ............................................................ 47
6.7 追尾機構 ............................................................ 48
6.8 指令送受信系 ........................................................ 49
6.9 バッテリ電流インジケータ ............................................ 49
第 7 章 システム総合試験 ................................................. 50
7.1 試験内容 ............................................................ 50
7.2 試験評価 ............................................................ 51
第 8 章 送電系 MMIC 開発 .................................................. 56
8.1 設計方針 ............................................................ 56
8.2 試作と結果 .......................................................... 57
4. スタディの成果(まとめ) ............................................... 60
5. スタディの今後の課題および展開 ......................................... 61
参考文献 .................................................................. 62
1.
スタディの目的
移動しながら作業を行うロボット等に、無線で電力やデータを送るマイクロ
波送電・通信システムの原型を構築し、送電能力、安定受電能力等を確認する。
被災地などの危険な状況下でロボット等を用いて作業を行うことが考えられ
るが、無線で指令を出すほかに動力となる電力も無線で送ることが可能ならば、
ロボットの行動範囲および作業時間の拡大につながる。また、移動ロボット一
般の使い勝手の向上、自由度の向上にもつながる。この場合、送受電系も可搬
で容易に展開できるように小型・軽量化されたものでなければならず、通信機
用の半導体・平面アンテナ技術を有機的に結合しなければならない。
また、この技術が実証されれば、将来の大規模・超長距離マイクロ波無線送
電の実現に向け、大きく寄与するものである。
1
2.
スタディの実施体制
本スタディの実施体制は、(財)機械システム振興協会内に「総合システム調査開発
委員会」を、(財)無人宇宙実験システム研究開発機構内に「マイクロ波技術委員会」
を設置し、マイクロ波送電技術や適用案について意見・アドバイスをもらいながら進め
た。再委託先は、小型軽量化のマイクロ波の送受電システムの研究を実施している京都
大学、過去京都大学の MILAX 計画等に参画しマイクロ波の受電システムについて実績の
あるアイ・エイチ・アイ・エアロスペースおよび文部科学省/農林水産省等のロボット計
画に参画した実績のある次世代技術に決定した。
各役割・構成は以下のとおりである。
(財)機械システム振興協会
総合システム調査開発委員会
委託
(財)無人宇宙実験システム研究開発機構
(USEF)
マイクロ波技術
調査研究部
委員会
再委託
京都大学:送電系の設計・試験
アイ・エイチ・アイ・エアロスペース:受電系の設計・製作およ
び送受電試験
次世代技術:総合試験系の設計・製作および試験
・ (財)無人宇宙実験システム研究開発機構(調査研究部)は全体まとめ、適用検討、
試作品の概念設計を行う。
・ マイクロ波技術委員会は、京都大学、宇宙航空研究開発機構および情報通信研究機
構の専門家で構成し、適用検討、技術支援、設計レビュー、試作試験計画/試験結果
についての検討等を行い報告書原稿のレビューを実施する。
・ 再委託先の京都大学は、送電系の設計・試験を実施する。アイ・エイチ・アイ・エアロ
スペースは受電系の設計・製作および送受電試験を行う。次世代技術は総合試験系の
設計・製作および試験を行う。
2
総合システム調査開発委員会委員名簿
(順不同・敬称略)
委員長
政策研究院
藤
正
巖
太
田
公
廣
金
丸
正
剛
志
村
洋
文
中
島
一
郎
廣
田
藤
岡
健
彦
大
和
裕
幸
リサーチフェロー
委
員
埼玉大学
地域共同研究センター
教授
委
員
独立行政法人産業技術総合研究所
エレクトロニクス研究部門
副研究部門長
委
員
独立行政法人産業技術総合研究所
産学官連携部門
コーディネータ
委
員
東北大学
未来科学技術共同研究センター
センター長
委
員
東京工業大学大学院
薫
総合理工学研究科
教授
委
員
東京大学大学院
工学系研究科
助教授
委
員
東京大学大学院
新領域創成科学研究科
教授
3
また、(財)無人宇宙実験システム研究開発機構内に置かれた「マイクロ波技術委員
会」としては、下記の 5 名の先生方が委員となり、技術支援、設計レビュー、その他の
作業をした。
氏
篠原
名
真毅
所
京都大学
属
生存圏研究所
助教授
(委員長)
佐々木
進
宇宙航空研究開発機構
宇宙科学研究本部
宇宙情報・エネルギ工学研究
宇宙科学研究本部
宇宙情報・エネルギ工学研究
総合技術研究本部
高度ミッション研究センター
系教授
田中
孝治
宇宙航空研究開発機構
系助教授
久田
安正
宇宙航空研究開発機構
主任開発部員
藤野
義之
独立行政法人情報通信研究機構
星通信グループ主任研究員
4
鹿島宇宙通信研究センター
モバイル衛
3.
スタディの内容
スタディは以下の 6 項目について行った。項目毎に本節 1 章-8 章にまとめている。
(1) 作業用ロボットに対する無線送電システムの適用検討
H17 年度の適用検討結果および今年度試作試験結果を踏まえて空中作業用ロボッ
ト(監視用無人小型飛行機)への無線送電システムの適用検討を行った。
(2) マクロ波送電系アレイおよび電源の設計・試作・試験
120W 級 32 素子のマイクロ波電力送電系アレイとアレイに電気エネルギーを供給
する電源の設計・試作・試験を実施した。
(3) 受電系レクテナアレイの設計・試作・試験
平成 17 年度の試作成果を反映し効率などを改善した受電系レクテナアレイの設
計・試作・試験を実施した。
(4) 受電系給電制御部の設計・試作・試験
負荷の必要電力の変化にかかわらず一定電圧でレクテナからの電力を受け、効率
の良い電力供給を行うことのできる受電系給電制御部の設計・試作・試験を実施し
た。受電系レクテナアレイとの組み合わせ試験も実施した。
(5) システム設計(総合試験準備、試験)
作業用ロボットに対する送受電システム、通信システムの評価を行うために、受
電系に接続する負荷および負荷レベルを通信で制御する総合試験系の設計および
準備を行い、模型ローバの無線送電走行実証試験を実施した。
(6) 送電系 MMIC 開発
超軽量・小型マイクロ波増幅回路の試作・評価を行い、将来の大規模マイクロ波
無線送電実現のための基礎データを得た。
5
第1章
1,1
作業用ロボットに対する無線送電システムの適用検討
目的
作業用ロボットに対するマイクロ波無線送電システムによる電力供給の適用例とし
て災害等監視用無人小型飛行機への適用を昨年度の検討結果を踏まえてその活動範囲
を向上させるための概念検討を実施する。1-1)
1.2
無人小型飛行機に対する電力伝送
近年、欧米やアジア諸国では、大学を中心として無人小型飛行機の研究・開発が盛ん
になってきている。これらは Unmanned Air Vehicle(以下 UAV)、Micro Aerial Vehicle(以
下 MAV)と呼ばれている。1-2)
特に小型の MAV においては、小型プロセッサや MEMS を使った小型慣性センサ、小型
GPS 受信機等を使った軽量化が実現されている。1-3)1-4)
特に長時間の運用を配慮した場合に課題になるのが、電力の確保である。通常のバッ
テリの場合は必要な飛行時間とバッテリの大きさは比例し、逆にバッテリの重量を受け
入れるためには更なる重量の制約が発生する。このためマイクロ波を利用した MAV への
エネルギ伝送が研究されている。1-5)
1.2.1 旋回飛行小型無人飛行機
無人小型飛行機での災害監視を想定して地上の発電機付車両からマイクロ波を上空
の小型無人飛行機に送電し、無人小型飛行機は受電したエネルギにより一定高度で定常
旋回を行い周りの状況を観測する方式(図 1.2-1)について、昨年度実施した概念検討
概要は次のとおりである。
(1) 旋回中に小型飛行機はバンク角を取ることから、送電アンテナに対してバンク角
をとらない場合と比較して、送電されるマイクロ波を避ける方向に傾けることになる。
また高度が低い場合には、同じ旋回半径であっても地上からの角度は浅くなりビーム伝
送効率はともに低下する(図 1.2-2)。検討では速度 10m/s を想定している。
飛行高度 200m 以上では、バンク角 15 度程度でマイクロ波エネルギを小型飛行機の直
下から受ける場合の 90%程度は受電できる幾何学的な関係が維持され、必要な電力を地
上から送電できれば、小型飛行機は常に同じ高度で継続的に状況の観測等が可能となる。
(2) 旋回中の小型無人飛行機が必要とする電力は、空気抵抗、搭載電子機器/観測用セ
6
ンサ等用電力により決まり、地上からのマイクロ波を機体翼下面に実装したレクテナで
受電する小型無人飛行機の質量と必要電力およびマイクロ波電力密度との関係を図
1.2-4 に示す。
検討の前提とした機体重量と翼幅(翼面積)の関係を図 1.2-3 に示す。1-6).
図に示すように、ある重量に対し最大翼スパンをとるラインにのる飛行機を限界モデル
とし、実例のあるラインを K モデルとした。
機体の必要電力は翼下面全面をレクテナとしていることから、機体重量増加に対し必
要電力が増加しても、ほぼ一定電力密度が確保できればよく、図 1.2-4 に示すように
25∼40W/m2 程度である。
(3) 図 1.2-5 に地上送電アンテナ直径を 1.5m および 3m、送電電力を1kW に設定した
ときの高度と電力密度の関係を示す。
3m のアンテナ径を持つか、1.5m のアンテナ径の場合には送電電力を 1kW より大きく
することにより、必要電力密度のマイクロ波を送ることができる。
7
MAV
旋回による受電効率の低下
φ
Fz = L cos φ
L 揚力
φ:バンク角
1
0.9
Fy = L sin φ
0.8
高度(m)
Rc:旋回回転半径(m)
0.7
ε = θ +φ
ビーム入射角
効率
0.5
328
524
839
1342
0.4
小型無人飛行機
(MAV)
50
80
128
205
0.6
θ
発電機
0.3
送電アンテナ
無線送電アンテナ
0.2
0.1
0
0
図 1.2-1 無線送電小型無人飛行機
5
10
15
20
25
30
35
バンク角度(度)
図 1.2-2 旋回による受電効率低下
8
100
1000
必要電力
限界モデル
電力(W)、電力密度(w/m2)
Kモデル
P(k)
P/S(k)
P(low)
P/S(low)
10010
Kモデル
電力密度
限界モデル
101
0.01
0.1
1
10
質量(kg)
Kモデル
◇:既存機体より諸元推定
限界モデル △:表の下限値
図 1.2-3 世界の小型無人飛行機(重量と翼スパン)
レクテナ効率:85%
バンク効率(旋回):90%
機器電力:飛行電力の30%加算
図 1.2-4 必要電力・電力密度
1.2.2
蓄電池併用型無人小型飛行機
昨年度検討した前項の旋回飛行小型無人飛行機に対して、今年度実施したマイクロ波
送電試験の結果を反映して、蓄電池併用型無人小型飛行機の検討を行った。これは、地
上からの送電装置(アンテナ、送電部および発動機を所持した自動式/牽引式送電装置)
により、上空の無人飛行機に対して無線送電を行い、旋回中に蓄電池への充電を実施す
5 る。必要な時間旋回しながら
滞空した後、観測が必要な領域
監視用無人小型飛行機への送電システム
へ飛行し、観測を行うものであ
る。想定する観測のシナリオは、
ある程度距離の離れた観測地
域へ、無人小型飛行機が飛行し、
そこで観測を行った後、送電装
置上空に戻り、そこで旋回を行
い充電完了後、再度飛行するも
のである。(図 1.2-6 参照)
図 1.2-6
監視用無人小型飛行機への送電システム
図 1.2-7 にシステムのブロック図を示す。
空中作業用ロボットブロック構成
地上送電装置ブロック構成
H18試作
送電アンテナ
発電機
電力
MAV
H18試作
H18試作
給電制御部
GPS
通信:H18確認
通信系
飛行制御系
観測系
送電系
制御装置
送電部駆動系
(機械系又は電子系)
通信系
電力レベル
位置情報、
観測情報
バッテリ充電量
駆動系
電源系
送電部
受電部
バッテリ
通信
エネルギー伝送
:H18確認済み
機体構造系
指令系
放電期間
放電期間
自由飛しょう
送電/充電飛しょう期間
図 1.2-7
システムブロック図
9
図 1.2-7 における空中作業用ロボットブロックにおいては、今年度の試作で確認した
受電部のレクテナにおいて無線送電エネルギーを受電し、電力に変換する。給電制御部
においては、受電部の安定な動作を保障する電圧を確保するように動作する。
受電エネルギーは駆動系、内部電子機器、通信機、観測系、飛行制御系とともに、蓄
電池に蓄えられる。蓄電池は、マイクロ波送電を受けられない箇所の飛行における電源
供給および給電制御部の定常的な電力供給を行う。
無人飛行機側では、GPS により正確な自機位置を把握し、目的地への自律的誘導およ
び地上送電設備からのビーム制御の補助とする。
地上の送電装置側では、無人飛行機の場所を確認し、相対的な角度関係より送電アン
テナの指向制御と、相対的な距離より送電電力の制御を行う。これにより、電力送電に
必要な電力を無人飛行機側で確保することができる。
以下にシステム構成例を示す。
平成 17 年度に検討した無人小型飛行機に電動模型飛行機に使用されるリチウムポリ
マバッテリー(Advanced Energy 社、TP3200-2S:
7.4V、32Ah、146g)と同等品を搭
載することを前提とする。
パラメータの飛行機体重量とバッテリの関係は以下とする。
1.3kg の機体には、このバッテリを搭載し、それ以外のものには同じ質量密度、電力
密度のバッテリを搭載するものとする。
バッテリ容量@W kg(機体重量)= 32000mAh*(W/1.3)
バッテリ質量@W kg(機体重量)= 146g*(W/1.3)
送電側電力密度は、250W/㎡とする。これは、定常飛行を支援するシステムを前提と
した 1.2-1 項に示した平成 17 年度検討における電力密度の約 10 倍であり、余剰電力で
充電するものである。充電の効率をηとして、横軸に無人飛行機質量をとると、充電に
必要な時間は、図 1.2-8 に示すように約 1 分半程度から 3 分程度になる。(標準として
の効率η=0.8 の場合に、1.3kg の無人飛行機で約 2 分となる。)
無人飛行機は、10 分間 10m/s で飛行することで、往復 6km(片道 3km)の飛行を実現
することができる。飛行に必要な電力等は、平成 17 年度の検討を基にした。
10
エネルギー送電による飛しょう
充電に必要な飛行時間(分)
3.5
3
2.5
η=0.9
η=0.8
η=0.7
η=0.6
2
1.5
1
0.5
0
0.01
0.1
1
飛行機質量(kg)
図 1.2-8
無人飛行機質量と充電に必要な時間
11
10
第2章
2.1
システム設計
開発の目的とねらい
マイクロ波伝送を無線動力システムに応用するための研究開発を行う。本研究開発を
通じ無線送電技術の産業応用の可能性を明らかにするとともに、宇宙太陽発電衛星
(SSPS)の中枢技術であるマイクロ波送電システム技術の新たな展開を図る。
本研究で目指す主要な新技術の内容は、
(1) 半導体を用いた超軽量マイクロ波増幅システム技術(50g/W クラス目標)
(2) レクテナアレイ出力の変動負荷に対する電力利用技術
である。
また、
(3) 100W級の電力伝送用キャリアに 10mW 級(-40 dB)の通信情報を併用する技術(電力
送電を情報通信に干渉させないための技術)
についても基礎的なデータを取得し検討を行う。
無線動力システムとして図 2.1.1 に示す電動ローバ(4W 駆動タイプ)を検討の対象
とする。
図 2.1.1
無線動力システムとして使用する電動ローバ
これらの技術開発は、SPS 技術開発ロードマップ上以下の意義を持つ。
(1) SPS では輸送コストの観点から軽量小型(特に電力当たりの重量 g/W の値が小さい)
の送電システムが必須である。従来半導体では数百 g/W、6 x 10-3 m3/W のレベル(USEF
試作実績)であったが本研究で 50g/W、1 x 10-3 m3/W レベルまで技術を引き上げる。平
成 16 年度の USEF 試作から本研究計画を経て実証 SPS、実用 SPS に至る道筋を図 2.1.2
に示す。
(2) 太陽電池に類似した出力特性を持つレクテナから変動負荷に対し最大限の電力を
取り出すための技術を開拓する。レクテナ素子としての電力効率向上の研究はこれまで
多くなされてきたが、アレイとしての高効率電力供給技術の研究はこれまで殆どなされ
12
ていない。
(3) SPS ではビーム制御のため SPS からの電力伝送と地上からの誘導電波による情報の
フィードバックループの構成が必須である。100W 級電力伝送と 10mW 級通信情報の併用
(電力キャリアに対し-40dB)により電力伝送を通信に干渉させないための技術を検討
する。当初電力伝送キャリアそのものに情報をのせて共存させることを構想したが、開
発要素が大きいため、本計画では電力伝送キャリアと情報回線は周波数を分離して干渉
の程度を検討し、今後の併用技術についての技術的な指針を得ることを目指す。
表 2.1.1 にマイクロ波送電技術の現状と本研究での目標を示す。
10000
平成16年度試作
単位電力当たりの重量(g/W)
1000
100
平成17,18年度試作
実証SPS
10
実用SPS
1
図 2.1.2
平成 17、18 年度試作で目指すマイクロ波アンプの単位電力当たりの重量(平成 16 年度 USEF
試作結果および実証 SPS、実用 SPS での目標との関係)
表 2.1.1
マイクロ波送電技術の現状と本研究での目標
主要事項
技術現状
本研究での目標
半導体では 100∼1000g/W
半導体で 50g/W
送電アンプ軽量化
電子管では 40∼100g/W
6 x 10-3 m3/W
送電アンプ小容積化
1 x 10-3 m3/W
半導体で 23%(USEF 実績)、電子管で 60%
送電アンプ高効率化
半導体 40%以上目標
以上程度
パイロット信号によるレトロ方式で 4 ビ ビーム制御は行わないが、
ビーム形成・方向制御
ット程度まで
レトロ方式の制御の前提と
なる大電力電力伝送と微小
電力信号の共存技術の検討
2
100W/m 程度では素子単体で 85%程度ま
レクテナ高効率化
稠密配列によるアレイ受信
で達成
電力の向上
低電力密度の場合の高効率化に課題
未開拓の分野
薄型・軽量型レクテナアレ
電力密度の空間分布のある場合のアレ イの実現
レクテナ電力利用
イ動作に課題
アレイと変動する負荷との
アレイと実負荷との電力インタフェー 高効率電力インタフェース
ス(負荷変動も含む)に課題
13
技術の確立
2.2
システム仕様・構成
2.2.1
システム仕様
マイクロ波無線電力により、電力ローバの駆動を行う。
システム電力
300W
送電マイクロ波
5.8GHz, 直線偏波、100W 出力(最大 128W)
送電距離
送電アンテナ面前方約 2∼3m
ローバ追尾
送電アンテナは回転して受電アンテナを追尾する、
追尾回転角範囲±40°
アンテナ照射電力密度
127W/m2(典型値)
無線ローバの移動速度
0.03∼0.06m/s
無線ローバ駆動電力
1.3∼4W
制御・モニタインタフェース
微弱無線式 RS-232C 全二重通信ユニット
無線ローバ制御
光学式ライントレース方式
モニタ
電源部とローバとを独立のデータロガーで記録
運用モード
バッテリアシストモード
典型的な運用
左右(円弧)・前後への移動を繰り返す
デモンストレーションシナリオ例
送電ステーションを中心とした円周上でローバを移動させることにより送電
アンテナとレクテナを正対させる。図 2.2-1 にデモンストレーションの概念図
を示す。
バッテリアシストモードで図 2.2-2 に示すように、199W/m2(2m)
と 88W/m2
(3m)のエネルギ密度の間の領域を決められた経路に沿って走行する。
ローバは、①送電方向に直角方向に半径 3m の円弧状に左右に往復移動、②同様
に半径 2m、③送電方向に対して前後往復移動、および④半径 2m と半径 3m の円弧
を遷移する経路を走行する。
14
送電パネル
受電パネル
電源部
マイクロ波無線送電
作業用ロボット模擬(電動移動台)
指令通信系
指令制御装置
図 2.2-1 デモンストレーションの概念(例)
88W/m2
199W/m2
図 2.2-2
ローバの移動範囲
15
2.2.2
システム構成
図 2.2-3 にシステム構成図を示す。
(1) 送電ステーション
a. 電源部:100VAC 商用電力を DC 電力に変換して、制御・モニタ部、通信部、マイク
ロ波送電部に配電する。
b. 制御・モニタ部:送電ステーションの制御と無線ローバの制御を行う。また無線ロ
ーバの動作ステータスを表示する。無線ローバの制御と動作ステータス表示はパソ
コンで行う。
c. 通信部:微弱無線式 RS232-C 全二重通信ユニットアクセスポイント(周波数は 262
∼269MHz, 314∼321MHz)
d. マイクロ波送電部:アンテナ送電面を回転制御し受電アンテナを自動追尾して無線
ローバの受電アンテナ方向へマイクロ波電力を送電する。
(2) 無線ローバ
a. マイクロ波受電部:送電ステーションからのマイクロ波電力を受電する。
電力処理部:レクテナ出力を処理して、駆動部に必要な電力を配電する。蓄電系を
経由するモード(バッテリアシストモード)を持つ。
b. 通信部:微弱無線式 RS232-C 全二重通信ユニット
c. 駆動部:電力処理部からの電力を得て送電ステーションからの駆動コマンドに従っ
て駆動する。
図 2.2-3
システムブロック図
16
2.3
サブシステム仕様
2.3.1
送電ステーション
(1) 電源部
AC 入力
100V400W
DC 出力
マイクロ波回路 12V 300W
制御・モニタ部 TBD
追尾機構
TBD
(2) 制御・モニタ部
a. 送電ステーション制御項目
・主電源スイッチ(DC 電源とファンへの AC 入力)
・ゲートバイアス電源
・ドレインバイアス電源
・発振器電源
b. 送電ステーションモニタ項目
・DC 電源出力電流×2
・アンプ表面温度
c. ローバ制御(手動スイッチで制御)
・給電部とインタフェース回路の接続
・バッテリと給電制御部との接続(給電制御部への電源 ON/OFF)
・マイコンへの電源 ON/OFF
・ローバ起動/停止
d. ローバ制御(無線コマンドで制御)
・ローバ起動/停止
e. ローバ制御(H8 マイコンで制御)
・ローバ起動/停止:マニュアルスイッチまたは無線コマンドを受けて駆動サーボ
ドライバへの制御信号を出力
・経路追従:光学センサにより路面黒テープのエッジを検出し、追従するようにス
テアリングサーボへの制御信号を出力
・停止検出:リミットスイッチまたは、光学センサ全黒または全白出力信号を検出
したときに、停止・反転ロジックが起動
f. モニタ項目(ローバ上のデータロガー)(送電部用データロガー)
・レクテナ電圧×4
17
・アレイ出力電圧
・給電電圧
・給電電流
・バッテリ電流
g. モニタ項目(送電部用データロガー)
・電源出力電流×3
(3) 通信部
市販の微弱無線式 RS232-C 全二重通信ユニット(262∼269MHz, 314∼321MHz)を使用す
る。微弱無線式 RS232-C 全二重通信ユニットの例((株)ウェルパイン) (図 2.3-1)
図 2.3-1
RS232C 無線通信機器(P203H/WP-203L)
P203H/WP-203L の主な仕様(http://www.wellpine.co.jp/products/imagrs2/wp203.pdf)
RS-232C インタフェース
発振方式
PLL シンセサイザー方式
受信方式
スーパーヘテロダイン
送信出力
3m/500uV 以下
送受信周波数チャンネル 16CH
送信周波数
H TYPE 314∼321MHz
L TYPE 262∼269MHz
受信周波数
H TYPE 262∼269MHz
L TYPE 314∼321MHz
符号標準感度
4uV 以下
通過帯域幅
200kHz 以上(-6dB)
18
変調速度
110bps∼115.2kbps
電波形式
F2D
電源電圧
6V 以上
消費電流
65mA 以下
空中線インピーダンス
公称 50Ω
信号入出力端子
RS-232C 9Pin D-SUB オス/メス
外形寸法
90x55x15 mm
動作保証温度範囲
0∼40℃
(4) マイクロ波送電部
送電系の基本構成を図 2.3-2 に示す。
周波数
5.8GHz、直線偏波(送受電の偏波面を±20°以内に合
わせる)
素子数
4×4 素子アレイ×2 枚(32 素子)。4×4 アレイは上下に並
べて配置する。
アンテナ利得(1 パッチ) 7dBi
アレイアンテナ利得
20dBi(16 素子アレイ)
素子間隔
3.2cm(0.62λ)
アンテナサイズ
12.8cmx25.6cm
1 素子あたりの出力
3.2W(標準)、4W(最大)
素子単体アンプ総合利得
30dB
DC-RF 変換効率
50%
マイクロ波総出力
100W(正確には 102.4W)
消費電力
300W
排熱
ファンによる強制空冷(約 200W の排熱)
送電電力密度
199W/m2
at 2m、88.4W/m2
at 3m、49.4W/m2
at 4m
簡易式 p(W/ m2)=795/r2 (p:電力密度、r:距離)
図 2.3-3 に送電アンテナから 2m の位置でのマイクロ波密度
分布を示す。
ローバ追尾
市販品の回転追尾装置を流用、回転角±40°、
追尾速度 0.7°/sec
図 2.3-4 に市販の小型追尾装置の一例を示す。
19
図 2.3-2
図 2.3-3
送電系の基本構成
マイクロ波電力密度分布(距離 2m)
超音波受信器2個
アンテナ回転架台
追従円盤
サーボ円盤
DCモータ
楽々ツイビー
(b) 追尾駆動機構
(a) 自動追尾機構
図 2.3-4 市販の追尾機構の一例。
(a)は超音波を利用した自動追尾機構。2-2)ただし、この場合の搭載重量は 1kg なので(b)のような駆
動部を準備する。
20
2.3.2
無線ローバ
(1) マイクロ波受電部
受電系の構成
レクテナアレイ+給電制御部
レクテナアレイ
基本周波数
5.8GHz
アレイ形状・寸法
600mm×340mm
レクテナ素子数・配置
97 素子 三角形等間隔配置
最大入力電力
最大 500mW/素子
アンテナ
方 式
空洞後置型円形マイクロストリップアンテナ
利 得
9.1dBi
偏 波
直線偏波
整流方式
自己バイアス整流方式
RF/DC 変換効率
70%以上 但し、レクテナ素子レベル
最適負荷および最適入力電力に対して
回路構成
レクテナ素子を 3 ブロック分割、ブロック内
では素子を並列接続、3 つのブロックを直列
接続
重量
2.5kg 以下
外観形状
図 2.3.-5
出力電力
13.2W(2m), 6.6W(3m)
電力分布を考慮した詳細な値を表 2.3-1 に示す。
給電制御部
レクテナ出力電圧制御
18V∼24V 間の任意の電圧で一定電圧に制御
回路方式
非絶縁型降圧チョッパリング回路
電力伝達効率
85%以上目標
出力電圧
9V∼13V
21
アンテナ面(表面)
アンテナ面(裏面)
図 2.3-5
受電アンテナの形状
表 2.3-1
作業ロボットへの給電電力
送電距離
m
2
3
W/m2
199
89
平均入力電力
W
22.8
11.4
レクテナ出力電力
W
15.5
7.8
受電部出力電力
W
13.2
6.6
中心部電力密度
22
(2) 電力処理部
電力モード
バッテリアシストモード
電力制御機器の構成
図 2.3-6
バッテリ名称
小型鉛蓄電池
GS YUASA PE12V0.8
http://www.gs-yuasa.com/gyps/jp/products/denchi/pe_px.html
バッテリ容量
12V, 800mAH
バッテリ重量
360g
効率
80 %
充電電力
標準値 0.2A(0.25C 充電)、最大充電電流 1.2A
充電電圧保護
13V ツェナーダイオード
直接駆動時電力
想定値 4 W(12V0.52A)
初期駆動電流
最大 TBD、TBDms
初期駆動電力をバッテリで供給する場合の内部インピーダンス:TBD オーム以下
重量
マイクロ波受電部と電力処理部を合わせて TBDkg
注記 1 : S1,S2 は電流センサ
注記 2 : SW1 は給電スイッチでローバ起動時は常時オン
注記 3 : SW2 は給電制御電源スイッチ
図 2.3-6
電力制御器
(3) 通信部
方式
微弱無線式 RS232-C 全二重通信ユニット
電力
電力制御部 12V より給電
TBD W
重量
TBD kg
23
(4) 駆動部
図 2.3-7 にローバの図面を示す。
サイズ
600mm x 400mm x 222mm (LxWxH)
車輪サイズ
直径 126mm
搭載パネル
600×340mm(エンベロープ)
重量
2kg (空車時)
最大荷重
8kg
移動速度
0.04m/sec
消費電力
4W
入力電源
12V
モータ
DC モータ(定格 12V)
連続走行
2 時間(制御電源容量の制限)
図 2.3-7
ローバ外観図
24
2.4 試験仕様
2.4.1 単体試験
(1) 送電ステーション
試験場所:京都大学
試験項目:マイクロ波特性(3次元電力密度プロファイル、規格は節 2.3.1(4))
電力特性(電力フロー、送電ステーション総合効率、規格は節 2.3.1(4))
電気構造特性(特に g/W、cm3/W、規格は表 2.1-1)
温度特性(熱解析との比較)
ビーム追尾特性(範囲、速度、規格は節 2.3.1(4))
(2) 無線ローバ
試験場所:JAXA(ISAS)(または次世代または IA)
試験項目:マイクロ波整流特性(電力密度プロファイルに対する給電出力、規格は節
2.3.2(1))
電力特性(電力フロー、無線ローバ総合効率、規格は節 2.3.2(2))
機械的特性(規格は節 2.3.2(1))
ローバ駆動特性(規格は節 2.3.2(4))
微弱無線性能(ローバ制御性能、モニタ性能、規格は節 2.3.1(2))
2.4.2
システム試験
試験場所:京都大学
試験項目:総合電力特性(電力フロー、総合効率、規格は節 2.2.1)
ローバ制御特性(デモンストレーションシナリオ動作の確認、規格は節
2.2.1 および図 2.2-2)
25
第 3 章 マイクロ波電力送電系アレイおよび電源の設計・試作・試験
3.1
送電部の構成
3.1 .1
構成
本送電部の試作に関して、ハードウェアの全体構成を以下に示す。すなわち
・ パッチアンテナによる平面アンテナ部
・ 各アレイアンテナエレメントの構成要素である 3 段アンプとウィルキンソン電力
分配器等による RF 回路部
・ FET への DC 電圧印加のための電源回路部
・ 4×4 アレイアンテナへの周波数基準信号を増幅しながら電力を分配するアンプ
付分配器
・ RF 回路の発熱を処理する廃熱用冷却ファン
・ それらへ電力を供給する電源部
により構成される。これに加えて、機能により、それぞれサブシステムで次のようにま
とめた。
〇1RF 回路ユニット−製作用の組み合わせにより 2 素子アレイ
〇1AIA ユニットアレイ−1RF 回路ユニットを 2 ユニットまとめた 2 次元アレイの
最小単位である 2x2 の 4 素子アレイ
〇1 ユニットプレートアレイ−1AIA ユニットアレイを 4 つまとめた 4×4 の 16 素
子アレイ
とし、マイクロ波信号を分配して各アレイエレメントに供給する構成とした。これ以上
のアレイ構成にする場合は、RF 信号の源から電力を分配することを基本とした。この
概念にしたがって、試作を行った。(図 3.1-1 参照)
26
図 3.1-1
3.1.2
送電部の構成
送電部の性能
送電部各部の機能は、前項に説明したように、マイクロ波源から、分配し、その段数
が多くなると分配器の出力が低下するため、適切な電力増幅を行い、AIA ユニットまた
は RF 回路ユニットに給電し、3 段増幅器(2 段ドライバアンプ+高出力アンプ)を経て、
高出力のマイクロ波をアンテナより放射する。さらに送電部としては、半導体デバイス
による増幅器を動作させるための DC 電源の供給を行う電源部を外付けとする構成とし
た。図 3.1-2、図 3.1-3 および以下に、機能とともに具体的な構成を示す。
*発振(波源)
(分配)
→ 電力分配器(2 分配)
(増幅)
→ 2 段ドライバアンプ(廃熱構造)
↓
27
*16 素子アレイ
(増幅)
→ 2 段ドライバアンプ(廃熱構造)
(分配)
→ 電力分配器(2 分配)
(増幅)
→ 2 段ドライバアンプ(廃熱構造)
(分配)
→ 電力分配器(2+2 分配)
↓
*基本 AIA ユニット(電源回路付)
→ 電力分配器(2 分配)
→ 2 段ドライバアンプ(2 段目廃熱機構付折り曲げ回路構造)
→ 高出力アンプ(廃熱機構付折り曲げ回路構造)
→ パッチアンテナ
図 3.1-2
16 素子アレイ(アンプ付分配器+AIA ユニット)の構成
28
図 3.1-3
機能ブロック図
上記のような構成をもとに、具体的な送電部の性能目標を掲げた。以下の表 3.1-1 に
それを示す。
表 3.1-1
マイクロ波電力送電部の主な仕様目標値
項目
(全体)
仕様(目標値)
周波数
5.8GHz(送電のみ)
送電部の形状
2 次元アクティブ集積アンテナアレイ
機能
増幅・放射
送電アレイアンテナ
4×8=32 素子
電源ユニット
商用 100V 使用・外付け
(デバイス・回路 増幅器の形式
部)
多段半導体増幅器
AIA ユニット内アレイア 3 段 20dB
ンテナ 1 素子あたりの多
段増幅器の総合利得
アレイアンテナ 1 素子あ 4W
たりの増幅器の出力
(アンテナ部)
DC-RF 変換効率
40%程度
偏波
直線
アンテナ利得
18dB(パッチアンテナ単体 3dB/アレイ
因子 15dB)
29
アレイアンテナ素子間隔
32mm(0.62λ)
送電部放射出力
100W(合成効率 80%)
アンテナサイズ
256mm×128mm(外部ケースを除く)
( 電 源 ユ ニ ッ ト 総電力
100V 商用電圧使用で 1000W 以下
部)
12V・8A /
DC 出力
−5V
上記の性能目標のもと、入力からアンテナ入力端までのパワーダイアグラムを、素子毎
の出力として、以下の表 3.1-2 に示す。
表 3.1-2
素子
各素子におけるパワーダイアグラム(目標値)
入力
アンプ付分配器
アンプ
利得
4dBm
2 分配器
アンプ
AIA ユニット
2 分配器
2 分配器
2 分配器
アンプ
12dB
−3dB
12dB
−3dB
−3dB
−3dB
20dB
出力電力
16dBm
13dBm
25dBm
22dBm
19dBm
16dBm
36dBm
効率
30%
40%
35%
A-AB
A-AB
A-AB-A
(目標値)
アンプ級
30
3.2
3.2.1
試作
AIA 部
今回試作した各部品とモジュールを図 3.2-1∼図 3.2-7 に示す。
図 3.2-1
図 3.2-3
3 段アンプ
図 3.2-2
折れ曲がり 2 素子アンプアレイ
2 素子 AIA アレイ
図 3.2-4
図 3.2-5
4 素子 AIA アレイ
8 素子アレイ
図 3.2-6
図 3.2-7
アンプ付分配器
31
32 素子アレイ
3.2.2
冷却部
冷却部の概観を図 3.2-8 に示す。
図 3.2-8
3.2.3
冷却部概観
電源部(外付け)
電源部概観を図 3.2-9 および図 3.2-10 に示す。
図 3.2-9
図 3.2-10
電源部概観
電源部(内部)
なお、本試作による送電アンテナ部重量は、
①32 素子アンテナ+レギュレータ+分配器アンプ+アルミフレーム
2.2 kg
②バイアス供給用ケーブル(10 本)
0.65 kg
③ ①+②+外装ケース+送風部
5.7 kg
④ ①+②+③+支持台
7.4 kg
⑤電源部
10.0 kg
32 素子アンテナ部分を取り付けているケース部分は約 1 kg である。また、32 素子アン
テナ部分+ケーブル+アンテナ部ケースで約 4kg である。
32
3.3
試験
32 素子 AIA アレイに関するアンテナパターン測定結果を図 3.3-1、-2 に示す。
32素子 H面アンテナパターン
32素子 E面アンテナパターン
0
0
-5
-5
-10
-10
-15
Gain(dB)
Gain(dB)
-15
理論値
実測値
-20
-25
-30
-30
-35
-35
-40
-90
-60
-30
0
30
60
理論値
実測値
-20
-25
-40
90
-90
-60
角度(θ)
図 3.3-1
32 素子 AIA アレイのアンテナ
図 3.3-2
パターン(H 面)
-30
0
角度(θ)
30
60
90
32 素子 AIA アレイのアンテナ
パターン(E 面)
図 3.3-2 のアンテナパターンが左右対称でないのは、冷却用ファンの斜め金属部の影
響であると考えられる。また、このときの諸パラメータを以下の表 3.3-1 に示す。
表 3.3-1
送電部特性表
送受信パラメータ
測定値
中心周波数
5.80 [GHz]
受信電力(SA 読み値)
-60.80 [dB]
送信アンテナ高
1.00 [m]
送信アンテナ利得
18.00 [dBi]
伝搬距離
3.72 [m]
空間減衰
-59.12 [dB]
受信アンテナ高
1.00 [m]
受信アンテナ利得
2.00 [dBi]
伝送線路損失
-31.50 [dB]
全送信電力
120.80 [W]
平均送信電力/1 素子
3.80 [W]
送電アンテナ部重量は、32 素子アンテナ部分を取り付けているケース部分は約 1kg、
32 素子アンテナ部分+ケーブル+アンテナ部ケースで約 4kg であったので、単位電力
(W)あたりの重量(g)は
4000
= 33.3[g / W ]
120
が得られる。また、送電部で冷却ファンの部分を除いた容積は 17(w)×12(t)×32(h)cm3
であるので、
[
]
[
17 × 12 × 32
= 54.4 cm 3 / W = 0.0544 × 10 −3 m 3 / W
120
となる。
33
]
第 4 章 受電系レクテナアレイの設計・試作・試験
4.1 受電電力の検討
図 4.1-1 に示す 8 素子×4 素子のアンテナをベースに検討を行った。
送電電力は、計画では 100W であり、送電アンテナからの距離、2m∼5m での送電アンテ
ナの 4 素子方向および 8 素子方向の放射パターンに基づくマイクロ波の電力分布
(相対値)
を図 4.1-2 に示す。
送電アンテナは 4 素子×8 素子の長方形アンテナとなるため、楕円形の放射パターンと
なる。4 素子方向の放射パターンは、8 素子方向に比してビームの拡がりが大きいため、レ
クテナアレイ面での電力密度勾配は緩やかになり、レクテナの観点からは有利な条件とな
る。
Y軸
X軸
送電電力(100W)
図 4.1-1 送電アンテナ
0
0
2m
-10
-10
2m
3m
-20
4m
-20
4m
相対利得 (dB)
相対利得 (dB)
3m
-30
-40
-50
-30
-40
-50
-60
-60
-1
-0.8
-0.6
-0.4
-0.2
0
0.2
距離 (m)
0.4
0.6
0.8
1
-1
1.0
-0.8 -0.6
-0.4
-0.2
0
0.2
距離 (m)
0.4
0.6
0.8
1.0
0.8
0.8
距離2m
距離2m
距離3m
0.6
電力密度比率
距離3m
電力密度比率
1
距離4m
0.4
0.2
距離4m
0.6
0.4
0.2
0.0
0.0
-0.3
-0.2
-0.1
0
距離 (m)
0.1
0.2
0.3
-0.3
-0.2
-0.1
0
距離 (m)
0.1
0.2
8 素子配列方向
4 素子配列方向
図 4.1-2 受電位置での電力密度分布
34
0.3
4.2 レクテナアレイの設計・製作
レクテナ素子は 0.774λの等間隔で三角アレイ配置とし、送電系のマイクロ波放射パタ
ーンが楕円系であるため、長方形のレクテナアレイパネル形状とする。レクテナ素子は送
電系からの放射パターンで形成される楕円形状の等電力密度ライン内にくまなく配置して
いる。図 4.2-1 は送電距離 2m 位置、3m 位置での等電力密度ラインが、それぞれ 65%、80%
であることを示している。
等電力密度ラインは照射中心の電力密度に対する相対値である。
この結果、レクテナ素子数は昨年度検討仕様の 52 素子から 97 素子に増加している。
レクテナアレイの負荷である電池の動作電圧 9V∼13V を考慮し、また、レクテナの高効
率で安定した動作を考慮して、レクテナアレイを 3 ブロックに分轄し、ブロック内を並列
接続、ブロック間を直列接続するレクテナアレイ構成である。なお、ブロック内のレクテ
ナ素子の接続はパターンで行い、
ブロック間の接続はジャンパー線で行うこととしている。
ブロック分轄は、3 つのブロックがレクテナの動作範囲、即ち、送電距離 2m∼3m間で、
極力、均一の受電電力となるように配慮した。図 4.2-2 はレクテナアレイのブロック分轄
を示している。
レクテナアレイの中心に対して同心円状に 3 つのブロックを形成している。
内側よりブロックA、ブロックB、ブロックCと呼称している。レクテナ素子数は、それ
ぞれ 29 個、34 個、34 個である。
上記のアレイ配置に加えて、レクテナアレイパネル面の 4 隅に各 1 個のレクテナ素子を
配置している。目的はレクテナ素子レベルでの製造のモニターと照射試験段階での送電系
のマイクロ波電力の照射状況のモニタである。
また、各ブロック内には、ブロックとは分離した1つのレクテナ素子を配置している。
目的はレクテナ素子の実効開口面積の確認のためとレクテナ素子レベルでの製造のモニタ
のためである。 レクテナ素子の実効開口面積の確認後、ブロックと接続され、ブロックの
1素子として機能する。
以上の点を考慮して設計したレクテナアレイユニットを図 4.2-3 に、レクテナアレイユ
ニットの性能諸元を表 4.2-1に示す。
本設計に基づいた出力電力予測値は送電距離 2m で約 15W、送電距離 3m で約 8W である。
35
0.20
受電系レクテナアレイ寸法 : 600 x 340
0.20
受電系レクテナアレイ寸法 : 約560x320
距離2m、相対利得65%
0.15
0.15
0.10
0.10
0.05
Y方向 (m)
Y方向 (m)
0.05
0.00
-0.05
0.00
-0.05
-0.10
-0.10
-0.15
距離3m、相対利得80%
-0.15
-0.20
-0.35
-0.25
-0.15
-0.05
0.05
0.15
0.25
0.35
X方向 (m)
-0.20
-0.35
-0.25
-0.15
-0.05
0.05
0.15
X方向 (m)
図 4.2-1 レクテナアレイ面積と電力密度分布
図 4.2-2 アレイのブロック分轄
36
アンテナ面(裏面)
アンテナ面(表面)
図 4.2-3 レクテナアレイの構造
0.25
0.35
表 4.2-1 レクテナアレイユニットの性能諸元
表4.2.5-1 レクテナアレイユニットの性能諸元
番号
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
項 目
基本周波数
アレイ形状・寸法
レクテナ素子数・配置
最大入力電力
アンテナ 方 式
VSWR
偏波面
整合回路 回路数
配 置
整流効率
入力フィルター
出力フィルター
回路接続方法
構 造
重 量
規 格
5.8GHz
正方形 600mmx340mm
101素子、三角形等間隔配置 (モニタ素子4つを含む)
500mW/素子
空洞後置型円形マイクロストリップ
1.3以下
直線偏波
1回路/素子
アンテナ面に配置
70%以上 但し、最適負荷及び最適入力電力
二次高調波に対して減衰量40dBc以上
有
3ブロックを直列接続、各ブロック内は全並列接続
レクテナアレイ・パネルの周辺をフレーム構造で縁取ら
れること。
フレームにはレクテナアレイをロボットに機械的に固定
するための片持ちの取り付け構造を有すること。
又、レクテナの出力の接続端子を有すること。
2.5kg以下(目標)
4.3 レクテナアレイ試験
製作したレクテナアレイユニットに関して下記の試験を実施した。
(1) 試験概要
試験目的 :ユニットの受電特性の確認(3 ブロックを直列接続)
試験方法 :5.8GHz マイクロ波照射、出力電力/出力電圧の測定
試験条件 :入力電力 単素子当り 100W∼300mW 平均
負荷抵抗 単素子当り 150Ω∼350Ω相当
(2) 試験・計測系
試験・計測系を図 4.3-1 に示す。 試験用送電アンテナより1W∼100W 間の適切なレベル
のマイクロ波電力(5.8GHz)をレクテナアレイに照射している。
送電アンテナのビーム巾が図 4.3-2 に示される。また、図 4.3-3 には送電系のビーム巾
が表されている。
37
(3) 試験結果
ユニット特性試験は、第 1 回から第 3 回の総合試験の前に3回実施された。これらの試
験結果を、それぞれ図 4.3‐4∼図 4.3‐6 に示す。 いずれの場合も最高変換効率は 64%∼
65%であり、
上で推定した 68%には及ばないが昨年度からは 20%程度の改良となっている。
但し、上で推定した 68%の効率は、送電距離 2m でこのときの入力電力が約 23W での値で
あり、この点を考慮すると数%低い値である。この要因としてレクテナ素子の特性が想定
していた値より少し低かったこと、特性の不揃い等が考えられる。
このレクテナアレイユニットの場合、高効率に動作させるにはレクテナの出力電圧を
21V∼23V に保持することが必要である。
38
Anechoic
Chamber
Rectenna
E
RL
Volt
meter
Transmitting
Antenna
1.0m,1.3m
Amp
10dB
Coupler
5.8GHz
Source
Power
meter
図 4.3-1 レクテナアレイの試験・計測系
0
E面
H面
-5
-10
相対利得 (dB)
-15
-20
-25
-30
-35
-40
-45
-50
-180
1.2
-135
-90
-45
0
角度 (deg)
45
90
135
180
1.2
1.0
H面
0.8
E面
0.6
0.4
相対利得 (比率)
相対利得 (比率)
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0.2
0
0.0
-12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2
角 度 (deg)
4
6
8
-12 -10 -8
10 12
-6
-4
-2 0
2
角度 (deg)
E面
図 4.3-2 試験用送電アンテナの放射パターン
4
6
8
10
12
H面
図 4.3-3 送電系送電アンテナの放射パターン
39
変換効率 (%)
60
50
40
30
20
5
10
15
20
25
出力電圧 (V)
30
16
32
14
28
12
24
10
20
8
16
6
12
4
8
2
4
0
35
ブロックA
ブロックB
ブロックC
ユニット
ユニット電圧(V)
8.4W
10.5W
12.6W
14.6W
16.8W
18.9W
20.9W
70
ブロック電圧 (V)
80
0
15
25
35
45
55
負荷抵抗 (Ω)
65
75
V-I特性
40
49.7dBm
49.1dBm
48.6dBm
48.0dBm
47.3dBm
46.5dBm
45.5dBm
700
出力電流 (mA)
600
500
400
300
14000
13000
直流出力電力 (mW)
800
8000
7000
6000
5000
100
4000
3000
2000
0
1000
0
200
8
10
12
14
16
18
20
22
24
26
28
30
49.7dBm
49.1dBm
48.6dBm
48.0dBm
47.3dBm
46.5dBm
45.5dBm
12000
11000
10000
9000
20
25
30
35
40
45
50
負荷抵抗 (Ω)
出力電圧 (V)
図 4.3-4 レクテナアレイ/ユニット特性試験結果(1)
(第 1 回総合試験前)
55
60
65
70
変換効率 (%)
60
50
ブロック電圧 (V)
8.4W
10.5W
12.6W
14.6W
16.8W
18.9W
20.9W
70
40
30
20
5
10
15
20
25
出力電圧 (V)
30
35
16
32
14
28
12
24
10
20
8
16
6
12
4
8
2
4
0
ユニット電圧(V)
80
ブロックA
ブロックB
ブロックC
ユニット
0
15
25
35
45
55
負荷抵抗 (Ω)
65
75
直流出力電力の負荷特性
41
49.7dBm
49.1dBm
48.6dBm
48.0dBm
47.3dBm
46.5dBm
45.5dBm
700
出力電流 (mA)
600
500
400
300
14000
49.7dBm
49.1dBm
48.6dBm
48.0dBm
47.3dBm
46.5dBm
45.5dBm
13000
12000
11000
直流出力電力 (mW)
800
10000
9000
8000
7000
6000
5000
4000
200
3000
100
2000
1000
0
8
10
12
14
16
18
20
22
24
26
28
30
0
20
25
30
35
出力電圧 (V)
40
45
50
負荷抵抗 (Ω)
図 4.3-5 レクテナアレイ/ユニット特性試験結果 (2)
(第 2 回総合試験前)
55
60
65
70
変換効率 (%)
70
60
50
ブロック電圧 (V)
8.4W
10.5W
12.6W
14.6W
16.8W
18.9W
20.9W
40
30
20
32
14
28
12
24
10
20
8
16
6
12
4
8
2
4
0
5
10
15
20
25
出力電圧 (V)
30
25
35
45
55
負荷抵抗 (Ω)
65
42
700
12000
11000
600
14.6W
16.8W
500
18.9W
20.9W
400
300
直流出力電力 (mW)
12.6W
10000
9000
8000
7000
6000
5000
4000
3000
200
2000
1000
100
5
10
15
20
25
出力電圧 (V)
30
35
ブロックC
ユニット
49.7dBm
49.1dBm
48.6dBm
48.0dBm
47.3dBm
46.5dBm
45.5dBm
13000
10.5W
ブロックB
75
14000
8.4W
ブロックA
0
15
35
800
出力電流 (mA)
16
ユニット電圧(V)
80
0
20
25
30
35
40
45
50
負荷抵抗 (Ω)
図 4.3-6 レクテナアレイ/ユニット特性試験結果 (3)
(第 3 回総合試験前)
55
60
65
70
第5章
受電系給電制御部の設計・試作・試験
5.1 給電制御方法の検討
レクテナアレイを、常時、高い効率で動作させ、ここで発生した DC 電力を負荷とし
てバッテリに給電することが給電制御部の目的である
バッテリは、鉛蓄電池、PE12V0.8 が総合試験系によって選定されている。この電池
の仕様に合わせて 9V∼13V を出力電圧とする。
レクテナ素子の最高効率が得られる動作電圧は、100mW∼300mW の入力電力に対し 6V
∼8V である。制御回路には、効率、重量等を考慮して非絶縁タイプの制御回路を用い
る。これを前提として、レクテナ素子の動作電圧、高効率動作をすると制御回路の基本
形は降圧形チョッパ回路であり、これをベースとしてレクテナアレイの動作電圧の制御
を行う。 レクテナアレイの動作電圧はバッテリの電圧、9V∼13V を考慮して、レクテ
ナアレイを 3 つのブロックに分轄し、ブロック内を並列接続し、ブロック間を直列接続
して総出力電圧を 18V∼24V で動作させることにした。
給電制御部の仕様を表 5.1-1 示す。
表 5.1-1
項 目
番号
1 入力特性
1)入力電力範囲
2)最大電圧
3)最大電流
2
3
4
電力制御特性
1)制御方式
2)制御電圧及び精度
出力特性
1)最大電圧
最小電圧
2) 最大電流
3) 出力遮断機能
その他
1)入力/出力の絶縁
2)電力伝達効率
3)制御回路電源
4)状態モニタ
受電系給電制御部
規
格
5W∼15W
30VDC @非制御時
1A以下 @制御時
入力電圧の定電圧制御
18V∼24V
13V min
9V max
1.5A
出力電圧をモニターし、9V以下になるとき、出力
を負荷から切り離し、内臓のブリーダ抵抗に切り
替えること。
出力電圧が9V以上に復帰するとき、出力が負荷に
接続されること。
入力(一次)と出力(二次)は絶縁しなくてもよい。
85%以上 (目標)
8V∼13V (負荷バッテリから)
本装置の状態を監視するためのモニター機能を
有すること。
入力電圧、PWM入力、PWM出力、出力電圧
、PWM動作時ランプ表示等
43
5.2
給電制御部の設計・試作・試験
給電制御部の基本回路を図 5.1-1 に示す。 入力側の入力電力の変動、出力側の負荷
変動が入力側のコンデンサーの電位に影響を与えると、この電位の変動を電圧検出器と
コンパレータで検出し電圧変動分に応じた量が積分され、この積分値で PWM の変調率を
制御して入力の電圧を一定に維持している。
電力の伝達を司るだけに効率に最大に注目して設計に配慮した。85%の効率目標に対
して、現状、全ての条件で満足できる状態ではない。図 5.1-2、図 5.1-3 に伝達効率に
関する試験結果を示す。
PWM 制御は 2 系統のパルス列が使用されているが、図 5.1-2 は、
このパルスが相互に干渉しているために不安定な動作をする領域がある回路での測定
結果である。 図 5.1-3 は、PWM パルスの干渉を避けるために 1 系列のパルス列を停止
して安定動作させた状態で伝達効率を測定した結果である。
Q1
バッテリィ充電
L1
レクテナアレイ
Vin
出力
C1
+
D1
C2
回路電源
PWM生成
−
Vo
DC電源入力
Vref
図 5.1-1 給電制御部/基本回路
1.00
1.0
0.9
0.90
0.8
0.85
9.0V
11.0V
13.0V
0.7
0.80
伝達効率
伝達比率(出力電力/入力電力)
0.95
0.75
0.70
0.6
0.5
0.4
0.65
0.3
0.60
0.2
0.55
0.1
0.50
0.0
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
変調率(出力電圧/入力電圧)
0.9
4
6
8
10
12
14
入力電力 (W)
16
18
図 5.1-3 給電制御部の伝達効率
図 5.1-2 給電制御部の伝達効率
44
第6章
6.1
システム総合試験準備
作業用ロボット
マイクロ波送電実験用作業用ロボットとして模型ローバを使用することとした。この
模型ローバは 3kg を搭載しても単 3 電池 2 本で駆動できるほどの低電力仕様である。図
6.1-1 および図 6.1-2 に低電力型ローバの外観を示す。表 6.1-1 に低電力型ローバ設計
仕様を示す。図 6.1-3 に低電力型ローバ概観図を示す。
図 6.1-1 低電力型ローバ概観
表 6.1-1
図 6.1-2 上部搭載面を取り外した外観
低電力型ローバ設計仕様
項目
仕様
旋回半径
660mm
車載物重量と容積
5.3kg
備考
設計時の数値
内訳
レクテナ
2kg
受電部
1.3kg, 120×100×180mm
ローバ制御回路
約 1kg, 50×100×200mm
速度
30mm/s 程度
モータ
ツカサ電工 TG-06D
定格 12V、4W
45
1 台使用
図 6.1-3 低電力型ローバ概観図
6.2
ローバ駆動制御システム
低電力型ローバはラジコンサーボによって駆動制御を行う機構になっている。すなわ
ち、速度および前後進の制御は、サーボドライバへの PWM(パルス間隔変調)信号で行
っており、同様に、ステアリング角の制御も PWM 信号で行っているが今回の実験では
H8-3052 を使用した CPU 基板を搭載し、ソフトウエアによる自律走行を行った。
このため、CPU 基板から走行制御のために速度制御の PWM 信号と、方向制御の PWM 信号
とを出力している。
6.3
受電アンテナ支持機構
図 6.3-1 に受電アンテナ支持機構を取り付けたローバの外観を示す。
図 6.3-1 受電アンテナ支持機構を取り付けたローバの外観
46
6.4
経路制御機構
作業用ロボット(ローバ)は、あらかじめ設置された経路(白地の面に黒色テープ)
に沿って移動し、経路の終端を検出したら反転する。このような運動を制御する方法と
してはいく通りか考えられるが、今回は、ロボットコンテストなどで使用している光学
式センサを用い、搭載した CPU で制御を行っている。
6.5
インタフェース回路
マイクロ波受電による給電制御部からの電力は、受電電力を一定パワーで供給する。
一方、作業用ロボット(ローバ)は動作状況に応じた負荷変動がある。そのため、その
間の余剰パワーあるいは不足パワーを調整する機能を有するインタフェース回路につ
いて検討した。
図 6.5-1 にインタフェース回路の機能を示す。左図はモータ駆動電力がマイクロ波受
電電力より小さい状態(一定速度での移動時)を示しており、マイクロ波受電電力の余
剰分はバッテリに蓄えられる。右図はモータ駆動電力がマイクロ波受電電力より大きい
状態(起動・加速時)を示しており、モータ駆動電力の不足分がバッテリから放出され
る。
マイクロ波受電電力
モータ駆動電力
マイクロ波受電電力
バッテリ
モータ駆動電力
バッテリ
一定速度での移動時
起動・加速時
図 6.5-1 インタフェース回路の機能
6.6
走行経路
マイクロ波による受電電力の範囲内で作業用ロボット(ローバ)が駆動できることを
実証するためのローバの走行経路は、①送電方向に直角方向に半径 3m の円弧状に左右
に往復移動、②同様に半径 2m、③送電方向に対して前後往復移動、および④半径 2m と半
径 3m の円弧を遷移する周回経路を用意した。
図 6.6-1 に経路①、②および③を、図 6.6-2 に④周回経路を示す。
47
図 6.6-1 経路①、②および③
図 6.6-2 ④周回経路
実験においては送電アンテナと受電部レクテナアレイとの位置関係が重要である。送
電アンテナは追尾機構の架台上に設置し、円弧状をローバが移動するときには、ローバ
からの超音波信号を基に、移動するローバを追尾する。高さ方向の位置あわせは、送電ア
ンテナと受電レクテナとをほぼ同一にするようにした。図 6.6-3 にアンテナとローバの
位置関係を示す。
図 6.6-3 アンテナとローバの位置関係
6.7
追尾機構
追尾機構は市販のビデオカメラ用の楽楽ツイビー(RT-100-0、日本マイクロウエア
(株))の機能を利用し、メカニカルサーボ機構と DC モータで構成した。図 6.7-1 に追
尾機構概要を示す。
48
超音波受信器2個
アンテナ回転架台
追従円盤
サーボ円盤
DCモータ
楽々ツイビー
図 6.7-1 追尾機構概要
6.8
指令送受信系
指令送受信機はマイクロ波送受電中に作業用ロボットに指令を送信する機能を有す
る。今回の実験では、微弱無線式 RS-232C 全二重通信ユニットを使用した。無線モジュ
ールのローバ側には電圧発生ユニットが接続してある。これはシリアル通信で送った電
圧値(文字列)をデコードして指定の電圧を発生する。
パソコンのターミナル画面から電圧値を文字列で入力すると、それがシリアルポート
から RS-232C ラインに送出され、無線経由で電圧発生器が受信し、電圧を発生する。その
電圧でリレーをオンオフすることで、ローバ搭載 CPU の接点入力ポートで起動停止指令
を検出する。
図 6.8-1 に指令送受信系統図を示す。
図 6.8-1 指令送受信系統図
6.9
バッテリ電流インジケータ
ローバがマイクロ波による給電電流だけで駆動されているか、あるいは、バッテリか
らの電流を足した状態で駆動されているのかを判定するために、電流方向を LED で表示
するようにした。バッテリ充電時に赤色、バッテリ放電時に緑色の LED を点灯させる。
49
第7章
システム総合試験
7. 1 試験内容
(1) 試験実施場所
京都大学 生存圏研究所 METLAB(マイクロ波エネルギー伝送実験装置)
(2) 試験系統図
図 7.1-1 にシステム総合試験系統図を示す。
図 7.1-1 システム総合試験系統図
(3) 走行ルート
ローバ走行ルートは送電アンテナ放射パターン、受電系およびローバ特性を考慮して
図 7.1-2 の走行ルートとした。
(4) 試験状況
試験状況を図 7.1-3 に示す。
・2.Om∼3.3m 前後往復走行
・2.5m∼3.8m 前後往復走行
・2.0m 円弧往復走行
図 7.1-2 ローバ走行ルート
図 7.1-3 試験状況
50
7.2
試験評価
(1)
送電部電源の出力電力
図 7.2-1 に送電部直流電源の出力電流とアンプ温度データを示す。このデータは、電
源回路は非常に安定しており、他の実験でも同様の値である。
直流電源は 2 分割構成となっており、それぞれの出力電流を別々に測定している。こ
れらの電源の出力電圧は 12V の定電圧に制御されている。
区間 A での電流の平均値は、それぞれ電流 1 で 22.6A、電流2で 20.7A である。これよ
り、電源部全体の出力は、520W であることが分かる。
電流1[A]
温度[deg]
電流2[A]
送電部データ2/9
60
25
50
20
15
40
10
30
5
20
温度[deg]
電流1[A]
区間A
10
0
1600
1700
1800
1900
2000
2100
time[s]
図 7.2-1 送電部電源の電流と温度データ
(2)
受信側でのエネルギーの流れ
レクテナでの受電電力は給電制御部を通して、ローバ動力系に給電されるが、その間
にバッテリへの分岐回路があるので、マイクロ波による給電電力がローバの所要動力よ
り大きければ、バッテリに電流が流れ、バッテリが充電される。逆に、小さければ、バッ
テリから放電され、ローバの動力として補充される。
(a)マイクロ波の給電電力が小さい場合
アンテナからレクテナまでの距離が遠い場合にはバッテリから放電され、バッテリの
充電量が減少した。
直線ケース 1(前後往復 2.5-3.8m)の試験では、ローバは、アンテナからの距離 2.5m
から 3.8m と遠方を移動したことで、マイクロ波による給電電力よりローバ所要動力が
大きくなり、バッテリからの放電電流がローバに流れた。図 7.2-2 にこの直線ケース 1
での給電電流とローバ駆動電流とを示す。
51
給電電流は、送電アンテナに近づいたときに増加し、遠方では減少するため、山谷の波
形と成っている。
区間 A はローバが遠方から起動しアンテナの方に加速している状態である。区間 B で
は一定速度になり慣性で動いたのち停止するまでの状態である。区間 C は停止後に反転
しアンテナから遠ざかって加速している状態である。区間 D は遠方まで一定速度で移動
したのち停止するまでの状態である。
加速時のローバ駆動電流に約 0.3 秒周期の変動が見られるが、これは、レクテナ部が
ローバ上で約 3Hz の固有振動数で振動していることから、モータに変動負荷が加わり、
駆動電流が影響を受けたためと考えられる。往復運動の周期は約 10 秒である。この区
間での平均電流は、給電電流が 0.13A で、ローバ駆動電流が 0.18A である。同様に平均電
力は、給電電力が 1.5W、ローバ駆動電力は 1.9W である。
図 7.2-3 に本ケースのバッテリ電流積算グラフを示す。バッテリの充電量[Asec]が試
験時間とともに減少していることが分かる。
給電電流[A]
ローバ電流[A]
020709Line1
2
1.5
A
B
C
D
電流[A]
1
0.5
0
前後1往復
-0.5
60
65
70
75
80
85
90
time[s]
図 7.2-2 直線ケース 1 での給電電流とローバ駆動電流
5
25
3 8 前後往復走行
0
0
-5
50
ローバー駆動
100
1 50
200
250
電池充電電流容量〔Asec 〕
送電開始
-10
-15
ローバーが3.8m付近で
-20
送電停止
-25
ローバーを動かす(手動)
-30
ローバー停止(手動)
-35
-40
時間〔sec 〕
図 7.2-3 直線往復ケース 1 のバッテリ電流積算グラフ
52
(b)マイクロ波の給電電力が大きい場合
前項とは逆に、アンテナからレクテナまでの距離が近い場合にはバッテリに充電しつ
つローバが駆動される。ここで示す直線ケース 2 では、アンテナからの距離 2.0m∼3.3m
での前後往復運動である。
図 7.2-4 に直線ケース 2 での給電電流とローバ駆動電流を示す。前項と同様にローバ
駆動電流にはローバの振動の影響の変動が見られる。往復運動の区間での平均電流は、
給電電流が 0.24A で、ローバ駆動電流が 0.12A で、バッテリ電流(充電電流)は 0.12A で
ある。同様に平均電力は、給電電力が 2.6W、ローバ駆動電力は 1.3W である。
このように平均的にみれば給電電流がローバ駆動電流より大きいが、図で分かるよう
にローバ駆動電流は変動しておりピーク電流は給電電流より大きいので、エネルギのバ
ッファとしてのバッテリは必要である。
図 7.2-5 に直線ケース 2 でのバッテリ電流を示す。ローバ電流のピーク時には、一時
的にバッテリから電流が放電している。しかし、全体としては流入電流が多いので、エネ
ルギー収支としては、マイクロ波電力で、ローバ駆動とともにバッテリへの充電を行っ
ていることが分かる。
給電電流[A]
ローバ駆動電流[A]
バッテリ電流[A]
070209Line2
070206Line2
1
1.5
0.5
バッテリ電流[A]
電流[A]
1
0.5
0
-0.5
0
-1
前後1往復
-1.5
-0.5
220
225
230
235
240
220
245
225
230
time[s]
図 7.2-4
直線ケース 2 での給電電流とローバ駆動電流
図 7.2-5
235
240
time[s]
直線ケース 2 でのバッテリ電流(正=充電)
図 7.2-6 に直線往復ケース 2 のバッテリ電流積算グラフを示す。実験を通してバッテ
リが充電されている。
100
2 0m∼3 3m前後往復走行
90
2m∼3.3m 前後往復走行
電池充電電流容量〔Asec〕
80
70
60
ローバー停止
50
送電停止
40
送電開始
30
ローバー駆動
20
10
0
0
100
図 7.2-6
200
300
400
500
600
直線往復ケース時間〔sec〕
2 のバッテリ電流積算グラフ
53
245
700
また、図 7.2-7 にこのときの送電部電源から、ローバ駆動までのエネルギーの流れを
示す。
熱
520W
送電
アンプ
100W
2.6W
送電
アンテナ
受電
レクテナ
1.3W
給電
制御部
ローバ
駆動系
1.3W
バッテリ
図 7.2-7 送電部電源からローバ駆動までのエネルギーの流れ
(c)半径 2m の円弧往復移動
このケースでもマイクロ波の電力は、ローバ駆動電力を上回っている。図 7.2-8 に円
弧往復ケース 2 での給電電流とローバ駆動電流とを示す。ローバは円弧運動であり、送
電アンテナはローバを追尾しているので、本来は、給電電力は一定であるべきだが、ロー
バの特性上、ライン追尾で多少の蛇行をするため、レクテナがアンテナに正対しないこ
とがあり、給電電力に変動が生じている。
図 7.2-9 に同時刻でのバッテリ電流を示す。バッテリ充電電流を平均すると充電方向
である。図 7.2-10 に円弧往復ケース 2 のバッテリ電流積算グラフを示す。
給電電流[A]
ローバ駆動電流[A]
070210Circle2
1.5
電流[A]
1
0.5
0
1往復
-0.5
430
435
440
445
450
455
460
465
time[s]
図 7.2-8 円弧往復ケース 2 での給電電流とローバ
バッテリ電流[A]
070210Circle2
0.5
平均値 0.08A
バッテリ電流[A]
0
-0.5
-1
-1.5
430
435
440
445
450
455
460
465
time[s]
図 7.2-9 同時刻でのバッテリ電流(正=充電)
54
160
半径2m円弧往復走行
ローバー停止
140
120
送電停止
電池充電電流容量〔Asec〕
100
送電停止
80
送電再開
60
ローバー停止
40
ローバー駆動
20
0
0
200
400
600
800
1000
1200
送電開始
-20
時間〔sec〕
図 7.2-10 円弧往復ケース 2 のバッテリ電流積算グラフ
このケースでも、マイクロ波による給電電力で、ローバ駆動とバッテリ充電とが行わ
れていることが実証された。
55
第8章
送電系 MMIC 開発
将来の大規模マイクロ波無線送電実現のための超軽量マイクロ波増幅回路の試作・評
価を行った。
8.1
設計方針
H7 は主に、ハイパワー用途を目的としたアプリケーションに十分耐えうる廃熱構造
を MMIC 内にビア、背面 GND 構造を形成できることを特徴としている。これらの特徴を
まとめた表 8.1-1 および図 8.1-1 を下記に示す。
表 8.1-1
H7 の特徴
Process
Device
Channel
Gate Length (µm)
lds (mA/mm)
Vth (V)
Gm (mS/mm)
BVgdo/BVgso (V)
ft (GHz)
Resistor (Ω/sq.)
Capacitor (fF/µm2)
Wiring Metal
(local+global)
lnsulator
Die Thickness (µm)
Chip Separation
Substrate Via
Substrate
H7
P-HEMT D-Mode
Epitaxial
0.25
130
-0.65
310
-15/-15
49
Epitaxial 110
MIM:0.3
2 Layers
(1+1)
Air Bridge
28
Etching
Support
4" GaAs
Power MMIC
High Frequency
High Power
Application,
Features
●背面技術
・ドライプロセスを適用した背面ビア技術
・超薄膜基板厚(28um)
・超低熱抵抗、グランドインダクタンス低減
●エアーブリッジ配線 技術
・配線間容量低減
56
図 8.1-1
デバイスの特長と MMIC の利点
MMIC 高出力アンプの設計は、小信号モデルを用いて、A 級アンプとして設計を行った。
A 級アンプの効率として、概算で 50%とし、DC 特性の設計を行うものとした。図 8.1-2
に、検討した MMIC アンプの構成図を示す。
Drain Bias
Gate Bias
Short Stub
Short Stub
Short Stub
Short Stub
DC Cut
DC Cut
HP FET
RF Input
図 8.1-2
8.2
RF Output
MMIC アンプの構成図
試作と結果
今回試作した H7 を用いた MMIC アンプに用いた高出力デバイスの断面図を図 8.2-1 に
示す。
図 8.2-1
H7 半導体デバイスの断面図
57
MMIC アンプの性能測定状況とその結果を、図 8.2-2 および表 8.2-1 に示す。
図 8.2-2
MMIC アンプの性能測定状況とその結果
表 8.2-1
RF Characteristic
Freq.
Gain
MMIC
5.4GHz
3dB
MMIC アンプ性能の測定結果
Output
Power
17.72dBm(0.059W)
Drain Voltage Drain Current
2.43V
1.48A
これらより、以下の知見が得られた。
・ MMIC アンプの設計周波数 5.8GHz に対して 、Gain が得られた周波数は 5.4GHz
であった。
・ MMIC アンプの設計 Gain は 5.4dB に対し、実測値は、Gain=2.5dB となった。
・ 発熱による焼損がなかったことにより、MMIC の許容電流値の設計方針に問題はな
い。
・ RF 特性の設計に関しては、周波数、バイアス条件、初期設計値等の実測値が異な
った結果となったが、これらは初期の設計に用いた基本型 FET による並列拡張モ
デルを用いた小信号パラメータの精度によるものと考えられる。
58
これらより、以下の課題があげられる。すなわち、
・ 目標性能を達成するためには、最低 2 回のファンダリー利用による FET 試作が必
要であり、第 1 回目は所望の性能を持つように設計した FET チップのみを試作す
ることが望ましい。
・ 高出力アンプの試作では、特性計測時において、排熱を十分に考慮する必要があ
る。
59
4. スタディの成果(まとめ)
(1) 適用検討
平成17年度の適用検討結果および今年度試作試験結果を踏まえて、空中作業用ロボッ
ト(監視用無人小型飛行機)への無線送電システムの適用検討を行い、蓄電池併用型無
人小型飛行機の実現性を示した。
(2) マクロ波送電系アレイおよび電源の設計・試作・試験
120W級32素子のマイクロ波電力送電系アレイとアレイに電気エネルギーを供給する
電源の設計・試作・試験を実施し、所望のアンテナパターンを得るとともに、小型軽量
化に向けての基本データを取得した。放射出力約120W、重さ4kgであるため、質量出力
比が目標50g/Wに対して33g/Wが確認できた。
(3) 受電系レクテナアレイの設計・試作・試験
平成17年度の試作成果を反映し効率などを改善した受電系レクテナアレイの設計・試
作・試験を実施し、アンテナアレイとして、昨年の実績43%に対して約55%の変換効率を
確認した。
(4) 受電系給電制御部の設計・試作・試験
負荷の必要電力の変化にかかわらず一定電圧でレクテナからの電力を受け、効率の良
い電力供給を行うことのできる受電系給電制御部の設計・試作・試験を実施した。受電
系レクテナアレイとの組み合わせ試験も実施し、要求仕様を満たす成果を得た。(変換
効率約85%@作動電圧20V)
(5) システム設計(総合試験準備、試験)
作業用ロボットに対する送受電システム、通信システムの評価を行うために、受電系
に接続する負荷および負荷レベルを通信で制御する総合試験系の設計および準備を行
った。また、模型ローバの無線送電走行実証試験を実施し、マイクロ波送電能力、安定
受電能力等を確認した。マイクロ波送電を行っているときに、電圧安定用のバッテリへ
の充電とローバの駆動を行うこと、およびその状態で無線指令通信が可能なことを確認
した。
(6) 送電系MMIC開発
60
超軽量・小型マイクロ波増幅回路の試作・評価を行い、将来の大規模マイクロ波無線
送電実現のための基礎データを得た。
5. スタディの今後の課題および展開
マイクロ波送電による作業用ロボットの実現のためには、マイクロ波送電系アレイの
更なる小型化、薄型化、軽量化およびマイクロ増幅効率の向上等が今後の課題である。
これらの課題解決とともに、さらに高精度ビーム制御技術を開発することが、将来の大
規模・超長距離マイクロ波無線送電の実現につながる。
今後ともさらに継続的に試作評価を実施することで課題抽出を行い、将来の大規模シ
ステム実現に向けて問題点を解決していく必要がある。設計、試作、実証、再設計とい
うループを繰り返すことにより、一歩一歩進めていくことが重要である。
61
参考文献
1-1) 財団法人
機械システム振興協会「平成 17 年度
作業用ロボットへのマイクロ波
送電および通信技術の開発に関するフィージビリティスタディ」報告書、平成 18
年3月
1-2) (財)航空機国際共同開発促進基金、
航空機等に関する研究開発の動向
、平成
16 年度、16-4-4、P4-6
1-3) 赤坂剛史、田辺安忠、戸塚千晴、
川田技法、Vol.25
飛行ロボット HK-MAV シリーズの製品開発
、
2006、P36-P41
1-4)辰己薫、廣川類、實松洋平、鈴木真二、土屋武司、久保大輔、
小型自律飛行ロ
ボットシステムの開発と飛行試験 、日本航空宇宙学会誌 Vol.54,No.625,2006 年 2
月、P41-441-5)
1-5)H.Takayanagi,R.Ozawa,K.Katsunaga,H.Ertel,Y.Oda,H.Koizumi,K.Komurasaki,
Y.Arakawa,
Microwave Energy Transmission for Micro Aerial Vehicles by Phased
Array Antenna
4-1) 財団法人
,2005.Oct. IAC-05-C3.3.07
機械システム振興協会「平成 17 年度
作業用ロボットへのマイクロ波
送電および通信技術の開発に関するフィージビリティスタディ」報告書、平成 18
年3月
62
システム開発
18−F−8
作業用ロボットへのマイクロ波送電および通信技術の開発に関する
フィージビリティスタディ報告書
- 要旨 平成 19 年 3 月
作
成
財団法人
機械システム振興協会
東京都港区三田一丁目 4 番 28 号
TEL
委託先
財団法人
03−3454−1311
無人宇宙実験システム研究開発機構
東京都千代田区神田小川町二丁目 12 番地
TEL
63
03−3294−4834
Fly UP