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アルミ一筋45年 世界が認め

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アルミ一筋45年 世界が認め
インタビュー
日本伸管株式会社
目指すは「小さな世界一企業」
創業以来、アルミ一筋45年
世界が認め、世界に求められる精密無比の引抜加工技術
世界に誇る、と賞賛されてきた日本のモノ
づくり技術。しかし、海外生産シフトによる
技術流出、リーマンショックや東日本大震災
などの影響もあり、日本の製造業は大きく揺
さぶられているのが現状だ。
そんな中、1967年の創業以来一貫して世
界トップクラスの「アルミ加工技術」を有し、
国内外で高い評価を受けている企業が新座市
にある。
2008年に創業者である父・細沼哲夫氏か
ら
「日本伸管株式会社」
を引き継いだ若きリー
ダー・細沼直泰社長に、同社が目指す“小さ
な世界一企業”のビジョンと、モノづくり・
人づくりへのこだわりを伺った。
日本伸管 株式会社
代表取締役社長
ほ そ ぬ ま
な お や す
細沼 直泰
氏
1967年埼玉県志木市生まれ。早稲田実業学校高等
部から東京工業大学に進学、1993年、大学院理工
学研究科修了。同年、ソニー株式会社に入社し、
WebカメラやAIBOの開発等に関わる。2001年、
日本伸管(株)に入社し経営企画室長に就任。以後、
本社工場長、取締役、常務取締役を経て、2008年
に代表取締役社長に就任した。座右の銘は母校・
早稲田実業の校是である「去華就実~外見の華や
かさを取り去り、実際に役に立つ人間になる」「三
敬主義~他を敬し、己を敬し、事物を敬す」。情
熱・挑戦・誠実の3つを経営のキーワードとして
同社を率いている。
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ぶぎんレポート No.182 2014 年 11 月号
1000分の1mmレベルの精度を極めた
アルミ管引抜加工技術
――まず日本伸管株式会社の誇る「アルミ加
工技術」とはどんなものなのかをお聞かせく
ださい。
1円玉でもお分かりの通り、アルミという
のは非常に軽く、しかも高強度な金属です。
このほかにも、腐食しにくい、磁気を帯びな
い、電気や熱の伝導率が高いといった優れた
特徴があるため、OA機器や光学機器、自動
車や医療機器などさまざまな分野で用いられ
ています。
当社は創業以来、このアルミ管を原料に、
より高精度なアルミ完成品や部品を製造・供
給することをビジネスの柱としています。
(現代表取締役会長・細沼哲夫氏)の時代か
アルミ管を原料にアルミ管をつくる、とい
ら高く評価されていましたね。事業承継にあ
うのがよく分からないかもしれませんが、違
たっては、どのようなエピソードがありまし
いはそのつくり方にあります。
たか?
原料となるアルミ管材は、アルミ素材に熱
私は1967年生まれ、そして父が脱サラし
を加え、ところてんのように押し出すことで
てこの会社を立ち上げたのも1967年のこと
管状に加工したもので、厚みや形状にはバラ
でした。
つきがあります。
当時は高度成長期だったこともあり、業績
一方、我々が得意としている「引抜加工
(抽
は極めて順調に伸びました。鉄管や銅管を扱
伸加工ともいう)」は、上記の精度の低いア
う「伸管業者」は多々ありましたが、アルミ
ルミ管を、常温のまま任意の口径の穴(ダイ
に特化して技術を磨いてきたのは当社ぐらい
ス)に入れ、強い力で引き抜くという技術で
で、大手が本格参入していないニッチな業界
す。粘度の高いアルミは破断することなく伸
だったということや、パソコン等の普及でO
びるため、口径を細くする、肉厚を薄くす
A機器や光学機器の需要が急激に伸びたこと
る、表面を平滑に仕上げるといった、より精
などが幸いして、創業以来一度も赤字を出し
度の高い加工が可能なのです。
ていないというのが父の密かな自慢だったも
当社では現在、1マイクロメートル(1000
のです。
分の1ミリ)単位の高精度に対応できる技術
ところが私が事業を引き継いだのは2008
力・製造ラインを有しています。
年。あのリーマンショックが起こり、それま
世界トップに成長した事業を6年前に承継
直後のリーマンショックも糧にして
――御社の技術力は、創業者である先代社長
で40億円を突破していた売上高が一気に30
億円を割り込むまでに急落するという、会社
始まって以来の危機的状況に陥ってしまいま
した。
「引抜加工(抽伸加工)」では、素材を加熱することなく、室温で素材をダイスの狭い穴に通して引抜く技術。一般的な
押出形材よりも細くて寸法精度がよく、表面のきれいな製品を作ることができるのに加え、外形を決めるダイスや、内径の
プラグを変えることによって、円筒状だけでなく、六角・星形などさまざまな形状に仕上げることができる。
日本伸管は、創業以来アルミの引抜加工に特化したエキスパート企業であり、その技術力は海外企業への技術提供や、
彩の国工場への指定、中小企業優秀新技術・新製品賞の
受賞など、国内外で高い評価を得ている。
引抜前のパイプ
Tube before drawing
ダイス
Die
引抜後のパイプ
Tube after drawing
プラグ
Plug
ぶぎんレポート No.182 2014 年 11 月号
LEADER’S INTERVIEW COLUMN
日本伸管が得意とする「アルミ引抜加工」とは
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――その窮地をどのように乗り切られたので
には大きな痛手を受けましたが、社員一人ひ
しょうか?
とりが力をつけ、現場力が向上したという意味
まず考えたのは、ここで慌ててはいけない
では、踏ん張った甲斐があったと思います。
ということです。
またこの経験は、東日本大震災の時にも活
幸い過去の実績から、ある程度持ちこたえ
かされました。当社は福島県白河にも工場を
るだけの企業体力はある。技術流出や品質低
持っていますが、震災後の判断や対応が早
下を防ぐ意味でも、一時的なピンチに焦って
かったことで、非常に早く復旧することがで
人員を削減したり、むやみにコストカットに
きたのです。
走ったりはしないと決め、その意向を社員達
お客様のご支援や、ベテラン工場長の経験
にも発表しました。
豊富さなども奏功しましたが、その陰で社員
「しばらくはラインが止まったり、勤務時
一人ひとりが自分の判断で会社や仲間のため
間が短くなったりして、不安に思うかもしれ
に動いてくれたことなどを聞いて、本当に嬉
ない。けれど会社はできる限り頑張ってみん
しかったですね。
なの雇用を守るつもりだから、いずれ事態が
改善するまで、この空いた時間を有意義に活
かしてほしい」と伝えたのです。
社員達もこの想いに応えて、社員教育や現
場改善活動、外部から講師を招いての技術指
導などに熱心に取り組んでくれました。業績的
OA機器・光学機器・農機具
3本柱に次ぐ新分野を開拓するために
――御社の製品は主にどのような分野・製品
に活用されているのでしょう?
売上に占める割合が大きいのはやはりOA
日本伸管の事業を支える、3つのコア技術
引抜
LEADER’S INTERVIEW COLUMN
伸管を手掛ける会社は数多くあるが、引抜だけでなく、加
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工、表面処理にも対応可能な会社は希だ。日本伸管では、3
つのコア技術を柱とした一貫生産体制の確立により、各ユー
ザーからの厚い信頼を得ている。
近年、需要が高まっているのが「特殊引抜」と呼ばれる
応用技術。複雑な形状への加工が可能な「異形引抜」や、
アルミと鉄やチタン、カーボンなどの異素材を組み合わ
せる「クラッド引抜」についても豊富な実績をもつ。
①引抜のバリエーション
■高精度
■異形
■クラッド
最大350mmまでの大口径や、0.5mm
もの薄肉アルミ管製造に対応。
円筒・丸型以外の複雑な形状の引抜
加工に対応。
アルミと、それ以外の異種素材の引抜
接合に対応。
ぶぎんレポート No.182 2014 年 11 月号
インタビュー
機器分野ですね。国内外の大手メーカー様の
お引き立てをいただき、コピー機の中にある
感光ドラム・現像ロールの生産では国内トッ
プの45%近いシェアを占めています。
もうひとつが、農機具部材。農機具や芝刈
り機の操作をするときに掴むシャフトやハン
ドルに、当社のアルミパイプが採用されてい
ます。ゴム製グリップを取り付けたり、パイ
プの中に特殊な部品を仕込んだりといった工
程も請け負うことで、会社の柱の一つとなる
ビジネスへと成長してくれました。
同じく高いシェアを得ているのが光学機器
部品。具体的にはカメラレンズを動かす鏡筒
材と呼ばれる部品でも約50%と国内トップ
です。
加工
表面処理
アルミ管を製造した後、曲げ・溶接・研磨といった後加
工にも対応可能。短納期と品質管理を両立し、輸送コス
トや在庫管理などの負担軽減を提案している。
同社では硬質アルマイトの他、普通アルマイト・黒染め
アルマイトの加工も可能。独自開発の超硬質クラックレ
スアルマイト「ウルトラハード」開発など、高い技術力
が注目を集めている。
②加工のバリエーション
③表面処理
■プレス
■切削
■硬質アルマイト
■特殊コーティング
引抜後のアルミ部材の削り出し、
穴あけ、溝掘りなどに対応。
金色に輝く超硬質のアルマイト皮膜で、
硬度・摩耗性・耐食性を強化。
アルマイト表面に付加
加工することで、潤滑
性・耐摩耗性を向上。
絞り
ピアス
絞り、穴あけなどのプレス加
工に対応。
ぶぎんレポート No.182 2014 年 11 月号
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――こうした主力製品を供給する傍ら、小
ロット製品や特殊なオーダーなどにも積極的
に応えていると伺いました。
そうですね。現在の主力であるカメラ部品
なども、当社は後発での参入でしたが、縁
あってお声掛けいただいたことから大きなビ
ジネスへと発展しました。
ですから、新たな分野・品目にチャレンジ
する機会に巡り合ったら、その時点では難し
かったり採算が疑問視されたとしても、積極
的に挑戦してみようというのが当社のポリ
シーなのです。
掘削実験の足場
改良型深層掘削ドリル模式図
ユニークなところでは、国立極地研究所様
からのご依頼で、南極の氷床を3,000m掘削
金属との一体化加工などが求められた高速鉄
し、72万年前の氷を取り出すという一大プ
道車両の窓枠やドアシリンダーなどにも、当
ロジェクトに使うパイプを制作したことがあ
社のアルミ加工製品が採用されています。
ります。4,700ミリメートルの長さに対して
継続的な案件に育ったものも、一度きり
曲がりが0.3ミリメートルという、高い精度
だった案件もありますが、どれも当社の成長
と、軽量高強度なアルミパイプによって、よ
につながる経験だったと思います。今後もお
り早く、より深くまで掘削することが可能に
声掛けいただいたら、前向きに取り組んでい
なった点を、高く評価していただきました。
きたいと考えています。
極めて用途が限られた一点物ですから、売
上的にはまったくの赤字でしたが、当時マス
コミなどで盛んに取り上げていただけたおか
げで、宣伝効果は上々だったと思います。
この他にも、特殊な形状の成型や、異なる
「小さな世界一企業」を目指し
3つの拠点それぞれに使命と期待をこめて
――御社では現在国内外に3ヶ所の拠点を持
ち、設備投資や生産力強化に努めていらっ
しゃいます。こうした拡大戦略も含め、将来
のビジョンについてお聞かせください。
新座市・所沢市にまたがる本社は、営業お
よび統括業務を担当。本社工場では、前述の
光学機器用の部品を中心に手掛けているほ
か、異形シリンダ部品といって、円筒形では
ない特殊な形の引抜加工を行っています。
また、同敷地内にあるグループ企業の株式
会社アルマでは、アルミの表面を酸化させて
硬質な被膜をつくる“アルマイト技術”を保
有しています。強度や耐久性・耐摩耗性を向
本社工場内の様子
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ぶぎんレポート No.182 2014 年 11 月号
上させるアルマイト加工によってアルミ製品
インタビュー
に付加価値を加えることで、今後の需要拡大
タイに工場を開設したのは2012年です
が期待されています。
ね。現在はOA機器の感光ドラムやマグネッ
福島県にある白河工場は1976年に開設し
トロールの生産をここで行っています。
た当社の中心的生産拠点で、主にOA機器用
進出のきっかけは2010年に常務とタイの
のドラム類の製造を担当しています。
産業視察に行ったことなのですが、リーマン
ここに今年、6億円を投じて設備増強を図
ショック後ということもあって、はじめは海
りました。従来よりも大口径で継ぎ目のない
外に生産拠点を持つなどということは考えて
アルミ製品の加工ができるラインを整備し、
もいなかったのです。ただ、お客様の生産拠
最大径350mmという大型部品を製造できる
点がタイにあったので一度見ておかなくては
準備が整いました。このサイズのアルミ引抜
という程度でした。
加工が可能な企業は、国内にはありません。
しかし、現地の活気に触れ、親日的なお国
さらに白河には、新たに技術開発センター
柄であることを実感する中で、ここでなにか
を開設しました。この施設の狙いは、第一は
ができたらという意欲が湧いてきたこと。さ
試作のスピードアップです。お客様のニーズ
らにはお客様からも、ぜひ同国内で生産・供
に対し、社員の知恵と技術を結集し、速やか
給してほしいという熱いご要望をいただいた
に対応することができたら競争力はさらに高
ことから、進出を決断しました。
まるでしょう。そういう希望を実現できる場
お客様からは、当時日本でしかできなかっ
をつくりたいと考えたのです。
た製品の外周を研削する加工技術をご指導い
当社の未来を担う新分野への挑戦。そして
ただき、タイ工場で手掛けられるようになる
人材育成の場としても、大いに期待を込めた
など、非常に良い関係を築くことができてい
投資といえるでしょう。
ます。
――タイ工場での海外戦略はいかがですか?
生産力や売上的にはまだ軌道に乗ったとは
内 容:‌秋晴れの9月18日(木)当社念願の技術開発センターが竣工しました。当日は御尽力戴きました西郷村佐藤村長
様はじめ関係者の皆様をお迎えし式典を行い、その際新設建物、各種の新型設備をご披露することができました。
誠に感慨深い想いです。
目 的:‌引
抜技術の更なる開発として業界初めての最大
350mm大径マンドレル管
(シームレス管)製造、
超高 精度異形引抜の実現、次世代V溝マグ
ネットローラー製造などを行うものです。また、
試作のスピードアップを図り、お客様ニーズに
速やかに対応できる体制を目指します。
場 所:‌福島県西郷村小田倉大平(白河工場隣接)
面 積:‌建築面積400㎡
設 備:‌3 50mm大径管引抜機、小中径管引抜機、測
定機、矯正機、切断機など各種
LEADER’S INTERVIEW COLUMN
技術開発センター竣工式について
竣工した技術開発センターの外観
ぶぎんレポート No.182 2014 年 11 月号
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いいがたい状況ですが、長引く不況下で、競
合他社の多くが海外進出をためらっていまし
たから、望まれて拠点を持つことができた当
社はとても恵まれているのでしょう。
国内で働く社員にとっても、グローバルな
可能性のある企業なのだというシンボルに
なっていますし、今後世界市場を狙う上で
も、大きな意味のある挑戦だったと考えてい
ます。
――各拠点ごとにしっかりとした役割と将来
展望をお持ちなのですね。
そうですね。当社は幸いにして、創業時か
新座・所沢本社
1967年の創業から、事業の成長に伴って拡大してきた本社
工場は、所沢市と新座市にまたがる立地。主にカメラ部品
や異形シリンダの製造を手掛ける。アルマイトによる表面
加工を担当する(株)アルマも、同敷地内に併設。
らその技術力を高くご評価いただいていま
す。これはやはり、アルミ一筋にこだわって
きた成果といえるでしょう。
今後は世界トップレベルの技術をさらに磨
いて、より多くの国・企業とお取引ができる、
真の世界企業へと成長していきたい。経営規
模も業績も、当社より大きい企業はいくらで
もあるでしょう。でも、技術力ならばどこま
でも追及していけます。
ここ埼玉から、アルミ加工技術世界一を目
指す。日本伸管株式会社を、社員が誇り、地
域社会に貢献できる「小さな世界一企業」に
白河工場
1976年 に 設 立 さ れ た 福 島 県 西 郷 村 の 白 河 工 場。 最 大
350mmの大口径に対応する最新ラインを保有し、主にOA
部品や農機具などの製造拠点となっている。2014年秋には
「技術開発センター」も竣工し、さらなる技術革新を目指す。
発展させるのが、父から受け継いだ、私の夢
です。
日本伸管株式会社概要
8
創 業
1967年9月
資 本 金
8,375万円
売
上
高
41億3千万円(2014年1月期)
従
業
員
141名(2014年3月期)
本 社
〒352-0005
埼玉県新座市中野1丁目10番地22号
電 話
048-477-7331㈹
ホームページ
http://www.nihonshinkan.co.jp/
取
志木支店
引
店
ぶぎんレポート No.182 2014 年 11 月号
タイ工場
クライアントの海外工場がある関係から、2012年、タイ・
アユタヤ県に設立された、同社初の海外製造拠点。日本人
技術者の指導の下、現地社員40名がOA部品の製造に取り
組んでいる。
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