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エレベータの運転台数変更による省エネルギー効果と
電中研報告 電中研報告 電 気 利 用 報告書番号:R06001 エレベータの運転台数変更による省エネルギー効果と 利用者便益の変化に関する定量的分析 ─オフィスビルにおける事例検討─ 背 景 オフィスビルにおける省エネルギー方策の一環として、エレベータの運転台数の 削減が実際に行われているが、それによる電力削減効果、また利用者の待ち時間の 増加量(便益の低下量)について、これまで明らかにした例は見られない。効率的に 省エネルギーを行うためには、省エネルギー量のみならず、便益の変化量を正しく 評価する必要がある。 目 的 あるオフィスビルを対象にエレベータの消費電力、並びにエレベータの利用者数、 待ち時間を調査し、運転台数を削減することによる省エネルギー量と、待ち時間の 増加によりユーザーがこうむる便益の低下量を明らかにする。 主な成果 並列するエレベータ 2 台を備えるオフィスビル(6 階建て, 従業員数 130 人)にお いてエレベータの電力消費量と利用実態を計測し、運転台数を 1 台及び 2 台とした 場合に電力消費量及び利用者の待ち時間がどのように変化するかを明らかにした。 計測期間中、1 台のみ運転した日(以下、1 台運転日)は 23 日間、2 台とも運転した 日(以下、2 台運転日)は 13 日間であった。 (1) 計測したビルにおいては、エレベータの運転台数を 2 台から 1 台に変更しても 電力消費量の削減量は 0.7%にとどまった(図 1)。これは運転していないエレ ベータも電力を消費していることが主要な原因と推察される。 (2) エレベータの運転台数を 2 台から 1 台に変更すると、利用者の総待ち時間は 55[分/日](53%)増加した(図 2)。運転台数の変更による待ち時間の増加分にお ける機会損失額は年間 56 万円 1)程度となる。 (3) 1 時間毎のエレベータの電力消費量と待ち時間の実測値を用い、仮に 1 時間毎 のエレベータ運転台数を可変とした場合に、運転台数を説明変数、電力消費量 の削減と利用者の待ち時間の削減を目的変数とした多目的最適化を行い、パレ ート解を得た。1 台運転日の計測結果はパレート解から大きく乖離しており、 省エネルギー性と利用者の便益を同時に向上できる可能性がある。一方 2 台運 転日の計測結果はパレート解に近いため、省エネルギー性と利用者の便益を同 時に向上できる可能性は低い(図 3)。 注 1) 1 台運転日と 2 台運転日における待ち時間の差である 55[分/日]に対し、年間平日日数 240 日、平均的時 給 2,533[円/時間](厚生労働省資料より計算)を掛けて算出 2台運転日 消費電力[kW] 2.5 2 1.5 1 0.5 15 10 5 0 0:00 1:00 2:00 3:00 4:00 5:00 6:00 7:00 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 17:00 18:00 19:00 20:00 21:00 22:00 23:00 時刻[h] (a)電力日負荷曲線 (b) 1 日あたり電力消費量 1 台、2 台運転日におけるエレベータの電力消費状況 600 180 500 160 6階 5階 4階 3階 2階 1階 400 300 200 100 総待ち時間[人・分/日] 利用人数[人/日] 図1 140 6階 5階 4階 3階 2階 1階 120 100 80 60 40 20 0 0 1台運転日 2台運転日 1台運転日 (a) 利用人数 図2 180 170 160 150 140 130 120 110 100 90 80 1 台、2 台運転日における利用人数と総待ち時間 2 パレート解 1台運転日計測値 2台運転日計測値 解集合 1 0 15 15.5 16 16.5 電力消費量(7-22h)[kWh/日] 総待ち 時間小 7 9 11 13 15 時 17 刻[ 19 h] 21 17 (a) 電力消費量と総待ち時間のパレート解 図3 2台運転日 (b) 総待ち時間 運転台数[台] 総待ち時間(7-22h)[人・分/日] 停止時 稼動時 20 1台運転 日平均 0 25 2台運転 日平均 1台運転日 1日あたり電力消費量[kWh/日] 3 電力消 費量小 (b) 各解における運転台数パターン 時間帯により運転台数を変化させた場合の電力消費量と待ち時間の変化 研究報告 R06001 キーワード:エレベータ,省エネルギー,便益,オフィスビル 担 当 者 上野 連 絡 先 (財)電力中央研究所 システム技術研究所 Tel. 03-3480-2111(代) E-mail : [email protected] [非売品・不許複製] 剛 (システム技術研究所 需要家システム領域) c 財団法人電力中央研究所 平成18年7月 06−001