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当院回復期病棟入院患者における疾患別特徴 ~体組成データを用いて~

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当院回復期病棟入院患者における疾患別特徴 ~体組成データを用いて~
はじめに
• 回復期リハ病棟では在宅復帰を目指し、活動能
力の向上とともに基本的な心身機能の改善ア
プローチを集中的かつ十分に行う必要がある。
• 当院では主に脳血管疾患、運動器疾患、廃用症
候群を対象にリハビリテーションを実施するが、
疾患別による身体的特徴や回復の程度に差が
あるように感じている。
• 脳血管疾患、運動器疾患、廃用症候群の3疾患
の体組成データ、身体機能、FIMについて比較し、
疾患別における特徴について検討した。
対象
平成25年5月から平成26年2月まで当院回復
期リハ病棟に入院し体組成計測定が可能な
患者144名
脳血管疾患93名(男性64名、女性29名)
運動器疾患28名(男性4名、女性24名)
廃用症候群23名(男性14名、女性19名)
方法
• 以下の検討項目の入院時及び退院時の平均値の
差を比較した。
検討項目
年齢、BMI、筋肉量、骨格筋指数、Alb、Hb、CRP、握力、食事摂取
率、簡易栄養状態評価(mini nutrition assessment:MNA)
FIM得点、FIM利得、FIM効率
• 筋肉量測定は体組成計(Biospace社Inbody s10)を
用いてbioelectrical inpedance analysis(BIA:生体
電気インピーダンス)法により計測。
• 統計学的分析は一元配置分散分析及びTukey多重
比較検定を行った。
結果
脳血管疾患(93名)
入院時 退院時
年齢
68.56
MNA合計 7.31
8.54
Alb
3.73 3.95
Hb
13.26 13.06
CRP
0.729 0.426
摂食カロ
87.7
98.79
リー%
FIM得点 69.06 93.82
FIM利得
24.75
FIM効率
0.211
運動器疾患(28名)
廃用症候群(23名)
入院時 退院時
81.68
7.32 8.25
3.73 3.88
12.72 12.01
0.979 0.223
入院時 退院時
79.43
6.26 7.83
3.34 3.53
11.86 11.94
9.72
1.26
80.68 93.79 83.17 101.78
75.18 102.64 68.3 84.39
27.46
16.09
0.441
0.19
※赤字は有意差あり
結果
男性
(性別により基準値に違いあり、男女別に記載)
脳血管疾患(男64名) 運動器疾患(男4名) 廃用症候群(男14名)
入院時
退院時
入院時
退院時
入院時
退院時
BMI
22.9
22.1
21.3
19.6
22.1
21.4
四肢筋肉量
(kg)
骨格筋指数
(kg/m2)
17.7
17.03
16.1
14.7
15.1
15.1
6.83
6.55
6.31
5.73
5.97
5.96
握力(kg)
16.09
17.64
13.4
12.6
11.7
11.5
女性
脳血管疾患(女29名) 運動器疾患(女24名) 廃用症候群(女9名)
入院時
退院時
入院時
退院時
入院時
退院時
BMI
23.3
22.7
24.07
22.24
21.23
21.7
四肢筋肉量
(kg)
骨格筋指数
(kg/m2)
11.67
11.47
11.03
11.27
8.48
9.09
5.23
5.14
5.18
5.27
4.08
4.33
握力(kg)
7.74
9.09
11.73
11.38
6.11
5.78
※赤字は有意差あり
アルブミン値
**
5
4.5
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
*
3.732 3.739
脳血管
運動器
入院時
3.343
廃用
3.953
3.882
脳血管
運動器
3.535
廃用
退院時
*p<0.05 **p<0.01
脳血管疾患と運動器疾患に比べ、廃用症候群で有意に低かった。
ヘモグロビン値
17
**
16
15
14
13
13.26
12
13.06
12.73
11.81
11
11.98
12.04
運動器
廃用
10
9
8
脳血管
運動器
入院時
廃用
脳血管
退院時
*p<0.05 **p<0.01
脳血管疾患に比べ、廃用症候群で有意に低かった。
FIM得点
140
120
100
93.82
80
60
69.06
75.18
102.64
84.39
68.30
40
20
0
脳血管
運動器
入院時
廃用
脳血管
運動器
廃用
退院時
入院時と退院時のFIM得点に有意差は認められなかった。
FIM利得
*
50
45
40
35
30
25
20
24.75
27.46
15
16.09
10
5
0
脳血管
運動器
廃用
*p<0.05 **p<0.01
運動器疾患に比べ、廃用症候群で有意に低かった。
FIM効率
1
0.9
**
0.8
**
0.7
0.6
0.5
0.4
0.44
0.3
0.2
0.1
0.20
0.19
0
脳血管
運動器
廃用
*p<0.05 **p<0.01
脳血管疾患と廃用症候群に比べ、運動器疾患で有意に高かった。
四肢筋肉量
男性 四肢筋肉量
女性 四肢筋肉量
22
19
*
20
16
15
17.74
16.11
14
*
17
18
17.03
15.14
13
14.68
15.10
11
12
9
10
7
8
11.67
11.47
11.03
11.27
9.10
8.48
5
脳血管
運動器
廃用
入院時四肢筋量
脳血管
運動器
廃用
退院時四肢筋量
脳血管
運動器
廃用
入院時四肢筋量
脳血管
運動器
廃用
退院時四肢筋量
*p<0.05 **p<0.01
男女とも入院時の四肢筋肉量は脳血管疾患に比べ、
廃用症候群で有意に低かった。
骨格筋指数
女性 骨格筋指数
男性 骨格筋指数
9
9
8
8
7
7
6
6.83
5
6.31
5.97
6.56
5.73
5.96
5
4
3
3
2
2
1
1
0
0
運動器
廃用
入院時骨格筋指数
脳血管
*
6
4
脳血管
*
運動器
廃用
退院時骨格筋指数
5.23
5.18
5.15
5.27
脳血管
運動器
4.08
脳血管
運動器
廃用
入院時骨格筋指数
4.33
廃用
退院時骨格筋指数
*p<0.05 **p<0.01
女性の骨格筋指数において脳血管疾患と運動器疾患に比べ、
廃用症候群で有意に低かった。男性では有意差は認められないが
同様の傾向が見られた。
握力
女性
男性 握力
30
25
20
15
10
16.09
17.64
13.38
11.70
12.63
11.50
運動器
廃用
5
0
脳血管
運動器
入院時握力
廃用
脳血管
退院時握力
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
**
握力
*
**
11.73
9.10
7.74
脳血管
11.38
6.11
運動器
入院時握力
廃用
5.78
脳血管
運動器
廃用
退院時握力
*p<0.05 **p<0.01
女性の握力において脳血管疾患と廃用症候群に比べ、運動器疾患
で有意に高かった。
男性では有意差は認められないが脳血管疾患が高い傾向にあった
考察
脳血管疾患
若年、筋肉量が高い、握力が高い
退院時FIM93点、FIM利得24.75点、FIM効率0.21
運動器と比べFIM得点の差はないが、若年であることや全身持久力の高さ
が残存能力の発揮に効果をもたらし、運動器疾患と同程度のADL獲得につ
ながった。しかしFIM効率より、ADLの向上には期間を要する。
運動器疾患
高齢、脳血管に比べ筋肉量少ない、FIM利得・効率高い
退院時FIM102.6点、FIM利得27.46点、FIM効率0.44
高齢であるため筋肉量の減少が認められると考えるが、栄養状態や全身持
久力が保たれているため短期間でのADL改善が得られた。
廃用症候群
Alb 3.3、Hb11.86、筋肉量減少、握力低下
退院時FIM84.3点、FIM利得16.1点、FIM効率0.19
脳血管、運動器に比べADL改善が低く、全身状態の低さがADL改善への影響
を与えている可能性が大きい。
まとめ
• 廃用症候群においては脳血管疾患と運動器疾患
に比べ低栄養状態、筋肉量の減少、全身的な体力
の低下が背景にあるということがわかった。
• 廃用症候群は脳血管疾患に比べ入院期限が短い
ため、高いADL能力を獲得するにはその背景を考
慮した上で、栄養管理や個々に応じたリハ負荷量
の設定が重要になると考える。
• 今回筋肉量の測定に使用した方法は臥位で測定
でき、測定時間も短く簡便で利用者負担が少な
い。筋肉量の減少を防ぐためにも定期的な測定
でモニタリングすることも重要である。
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