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サーボプレス - 素形材センター
「世界をリードするサーボプレスの最新動向を探る」 サーボプレスによる高付加価値生産の展望 ㈱ メタル・フォームテック・フォーラム社 中 原 洋 一 プレス加工は今、大きく変化している。生産グローバリズム、省資源・省エネルギー生産、高生産性の追求など、 “ものづくり”環境の変化を促す要因は多大であり、激しく厳しい課題への挑戦を余儀なくされている。プレス加 工という古くから存在する金属加工法においても例外ではない。 プレス加工の対象素材は日々新しいものが生まれ、それに対する加工機械、金型、自動化技術等は非常な勢いで進 化している。加工製品の品質は常に向上を求められるが、高品質必要箇所と不要箇所の分化も叫ばれ、多くの企業が 過剰品質に対しメスを入れ始めている。そして永遠の課題であるコストダウンの追求を考えるとき、製品に至る全て の加工をプレス加工の周辺に集約するという試みも激増しており、金属プレス加工に携わる企業は、独自加工システ ムの追及に余念がない。 このような状況の中、21 世紀の革新マシンとして登場し、現在導入が盛んに行われている『サーボプレス』の 動向とプレス加工技術の変化を探っていくことにする。 1.変革するプレス加工技術 の多様化、⑤ユーザー独自加工システムの台頭、とな る。このように進展する加工技術と生産条件の多様化 昨今のプレス加工技術キーワードを挙げてみる。加 は、プレス機械に対し大きな変革を求める原点となっ 工全般のキーワードとして、 “高精度”“複合、難加工” た(図 1)。 “精密鍛造加工” “超微細加工”また加工技術のキーワー “メガコンペティション(大競争時代)への突入”と ドとしては、 “ネットシェイプ” “冷鍛順送加工技術” “精 言われて久しいが、このような大きな変革要素がプレ 密せん断加工”“テーラードブランキング”“超高張力 ス業界に新しい波を造りつつある。 鋼板成形技術”等、これらは一例であり、プレス加工 プレス加工(塑性加工)という金属の加工法は、古 のテーマは激増の一途である。また、それに伴う生産 代より存在する加工法である。金属の塊(かたまり) 条件の変化を挙げてみると、①加工素材の多様化、② を作製した後、ハンマーで叩いて形状を整え、生活に 製品品質の多様化、③金型構造の多様化、④加工工程 必要な道具が造られた。食器や狩猟に必要な銛(もり) 特集「世界をリードするサーボプレスの最新動向を探る」企画趣旨 編集委員 松野建一 最近、金属プレス加工部品に対する高精度・超精密・複雑形状化、高付加価値化、生産性向上等の要求 がますます厳しくなるとともに、スライドの動きや速度、下死点位置、加圧力等を自由かつ高精度に制御 できるサーボプレス機が一段と注目を集め、各種部品の金属プレス加工への適用が進んでいる。一方、プ レス機械メーカーもこのような需要に対応するために、サーボプレス機の性能・機能向上と製造に力を入 れて、次々に改良が加えられており、また製造されるプレス機全体に占めるサーボプレス機の割合も年々 増えて、世界をリードしている状況である。 本特集では、今後の我が国の金属プレス加工業界の活力の維持・向上に大いに力を発揮すると思われる サーボプレス機について、最新の状況と活用事例を紹介していただいた。高度な部品加工への新たな適用 による金属プレス加工の付加価値向上へのヒントになれば幸いである。 1 し、“一般消費物”としての格付けを行ったのであ 21世紀 プレス加工の変革 1.加工素材の多様化 る。そして盛んに行われたのが、コストダウンであり プレス加工で自動車の部品を生産する手段であった。 プレス機械・加工システム (新素材が日々誕生) に対するユーザーの要求 2.製品品質の多様化 (高品質必要カ所、 不要カ所の分化) 5つのプレス加工ファンダメ ンタルズに対し、加工プログ ラマーの手で加工条件が設 定できる機械・システムでな ければならない!! 3.金型構造の多様化 (単純化と複雑化の両極) 4.加工工程の多様化 (あらゆる加工法の集約) ず手造りで 1 台全てを作り上げると、約 1 億円の販売 価格になると言われるほど自動車の構成部品は数多 く、生産に手間がかかる。現代の自動車は、部品総点 数の 60 ∼ 65% がプレス加工(板材成形、鍛造など)部 品であり、言い換えれば自動車はプレス加工の申し子 5.ユーザー独自加工 システムの多様化 (汎用機をベースとして) ちなみに、現在の大衆車でも、大型プレス機械を用い RAPID PROTOTYPING であると言って過言ではない。自動車が時代の寵児に なる段階で、プレス加工は大量生産システムとしての 最良のポジションを獲得したのである。 図1 プレス加工には金型が必要であり、加工難易度の高 などがそうであろう。その後、約 200 年前のことであ 低およびその構造の単純・複雑はさておき、金型の形 るが、ヨーロッパにおいて産業革命の時期に、近代の 状を素材に転写するということがプレス加工の基本で 鉄製によるプレス機械が作られ、「プレス加工」の時 ある。したがって分割された金型の間に加工対象素材 代が始まったと考えられている。当初は手動、その後 を置き、金型に所定の力を与えれば加工は成立する。 足動(俗にケトバシと呼ばれる:写真 1)に機械の構 言い換えれば、高いパワーを持った合理的な動きを金 造は変わっていったが、スライドを上下動させ、その 型に与えるように考えられた機械がプレス機械である 間に金型を取付けて素材を設定し、ワンショットで素 と言える。そして単純なスライドの往復運動を正確に 材が製品に生まれ変わるプレス加工の概念はこのとき 且つ安全に、そして長時間にわたり続けることが、プ に確立した。画期的な金属加工法であったと思われる。 レス機械の機能として求められた。 人々の生活に欠かせない現代の生活用品も、プレス加 しかし冒頭にも述べた昨今の“ものづくり環境の大 工から生まれたものは数知れない。 きな変化”は、あらゆる生産条件の多様化を持って、 その後時代は大きく変わり、ヨーロッパに端を発し 生産性の変革、生産システムの変革、そして生産環境 た“自動車”が大西洋を渡った。果てしなく広い荒 への対応をプレス機械に求めてきたのである。 野を馬で移動していたアメリカの人々にとり、この上 これらの変革要請を受け、約 100 年にわたるクラン なく便利なものに映ったことは言うまでもない。しか ク式機械プレスと液圧プレスの全盛時代に終章が訪れ し需要が広がるにはその価格が問題であった。いくら る兆しが出ている。 努力をしても高価すぎて個人で購入できないものでは 『サーボプレス』の出現である。サーボモータによっ 商品価値が高まらない。そこでアメリカは自動車に対 てダイレクトに駆動される構造のメカニカルサーボプ 写真 1 フートプレス 2|素形材 2008 .10 写真 2 クランクプレス 写真 3 油圧プレス 世界をリードするサーボプレスの最新動向を探る ∼超精密・生産性向上をバックアップ∼ レス、サーボモータを駆動源としボールスクリュー及 作業者の意思は存在していなかった、と言って過言で びリンク機構等を組合わせた構造のメカニカルサーボ はあるまい。作業者の意識は、加工作業前後の段取り プレス、またサーボバルブを使用した液圧サーボプレ と加工中の不具合発生に集中しており、機械の動作は ス、液圧ポンプの駆動をサーボモータで直接行う方式 あらかじめ決められたものとして、運転概念の外に置 の液圧サーボプレス等々の『サーボプレス』である。 かれていた。繰り返すが、図 3 の破線内に示すように サーボ技術そのものは従来から各種機械・装置に応用 従来は、金型にパワーを与え動作精度を確保すること されてきたが、『サーボプレス』としてビルドインさ がプレス機械の仕事であった。 れたプレス機械の出現はごく最近のことである。 プレス機械の概念を一新させ、長い歴史のあるプレ プレス加工の新基本構成 (P・B・C Angle) ス工業界で大きな技術革新となる、これらの新しいプ 動作:仕事 レス機械に寄せられる期待は大きい。上述のプレス加 工キーワードに対し、また生産性の向上、低騒音・低 金型 従来 新構成 振動の加工環境改善の実現、そしてエネルギー改革に 関する構造の刷新として、多種多方面にわたる生産技 人の意思 術革新の要素がこの『サーボプレス』には内蔵されて サーボ システム プレス機械 動的 いる。 静的 パワー コントロール 長年のプレス加工の歴史から、『サーボプレス』の 出現により大きく変化しようとしている現在を、“塑 性加工より派生する精密加工とフレキシブル生産への 図3 変革”『プレス 第 3 の波』と位置付けた(図 2)。 ソフトが介在せず、起動ボタンを押すだけで動作を プレス 第3の波 (Press The Third Wave) 第1の波(約200年前) 機械の上下運動で素材が製品に生まれ変わる概念 (ヨーロッパ) 第2の波(約70年前) 加工システムとして大量生産システムを創造 (自動車が時代の寵児と化した時) 第3の波(21世紀) 塑性加工より派生する精密加工とフレキシブル生産 への変革 (永遠なるプレス加工) 開始する機械は、マザーマシンと呼ばれる金属加工機 械群において、プレス機械が唯一最後に残された機械 であろう。一般の工作機械、現代の NC コントロール を搭載している機械は、運転時そのプログラムを設定 する必要があり、そこには何かしらのソフトが介在し ている。運転操作が単純であり、稼動に際し時間を要 しないことは、従来のプレス機械単体としては非常に 好ましいことであるが、ソフトが介在しない機械は、 一連の加工システムの中にユニットとして設定し難い 図2 2.プレス機械の新しい概念:ユーザーが 望んだ機能 という欠点も含んでいる。 このようなプレス機械の歴史の中で、いろいろな極 壁を乗越え、近年登場したのが『サーボプレス』であ る。従来の金型とプレス機械で行う加工に、作業者の 意思(考え方)を加えることができ、生産システムを 元来プレス加工は、金型をプレス機械に取付け、加 構成する“ユニット”としても設定できる、新しい 工素材を金型に設定し、作業者がプレス機械を運転す 概念を持ったプレス機械である。 れば製品ができるという、いうなれば単純な構図を “カスタマイズ”という言葉がある。プレス加工に 持っている。実質的な仕事(素材への形状転写)を行 おいても従来からその加工システムは、ユーザーの特 う金型は静的なものであり、そこにパワーを与え精度 異性に合わせてカスタマイズされたものが作られた を確保し動的なもの(加工)に変換するのがプレス機 が、加工そのものの動作(スライドおよびラムの動作) 械である。従来、金型とプレス機械、そこに作業者が は機械毎に一定であった。加工の種類に合わせ、決め 介在し加工が行われてきたが、実際の加工作業には、 られた動作パターンを持つ機械が存在していたのであ プレス機械のスピードの設定と動作の ON・OFF 以外、 る。鍛造、ファインブランキング、深絞り等々、その 3 加工に合致したプレス機械を選定することがなされて きた。元来プレス加工には加工の種類と被加工材の種 サーボプレス開発コンセプト : 21世紀の革新マシン 類によって、それに適する加工のパラメータが存在す ・ 生産性の変革 る。その中で、特に動作パターンを選定する場合には、 ・ 加工範囲の変革 機械の選定が唯一の手段であった。ユーザーズアプリ ・ 金型の革新 ケーションとしてのカスタマイズされた動作ソフトの ・ 環境対応性の変革 存在は、『サーボプレス』によって初めて明らかにさ れつつあり、今までプレス加工に無かった新しい概念 従来プレス機械の機能を全て踏襲し、 を造り出している。 あらゆるフレキシビリティーを追求 冒頭に述べた“5 種類の生産条件変化:多様化”へ の対応は、同時にプレス機械に対する市場の変革要求 図4 でもあった。 プレス機械への要求をまとめてみると、『加工時の も、従来持っている基本的な機能が変化するわけでは み遅く、非加工時はスライドが速く動作し、しかもエ ない。あくまで基本機能を踏襲し、加えてスライド動 ネルギー能力は高く、また加工種類別に動作のパター 作のどの位置でもモーションの自在設定を行えること ンプログラム作成が可能であり、システム化(コン が、メーカーの提示する 4 つの変革コンセプトを生む ピュータリンク)にも容易に対応できるプレス機械』 のである(図 4)。 ということになり、これがまさしく『サーボプレス』 の特長となっている。 3.サーボプレスの特長 この新しい思想を持つプレス機械は、ここ 4 ∼ 5 年 現在メーカー各社にて生産されている『サーボプレ の間に日本の各プレス機械メーカーによって商品化さ ス』の構造上の種類は多々ある。サーボモータによっ れ、市場を席巻し始めた機械である。“5 種類の生産 てダイレクトに駆動される構造のメカニカルサーボプ 条件変化:多様化”からの市場要求に対し、プレス レス、サーボモータを駆動源としボールスクリュー及 機械メーカーは大きな 4 つの変革を標語として打出し びリンク機構等を組合わせた構造のメカニカルサーボ た。①生産性の変革 ②加工範囲の変革 ③金型の革新 プレス、また液圧ポンプの駆動をサーボモータで直接 ④環境対応性の変革である。そして各々のメーカーが 行う方式の液圧サーボプレス、サーボバルブを使用し 市場要求に合致し、変革に対応する新しいプレス機械 た液圧サーボプレス、等々である。サーボプレスの分 の概念(コンセプト)として提示したものが、『従来プ 類を図 5 に示す。 レス機械の機能を全て踏襲し、あらゆるフレキシビリ ここでは基本構造による大きな分類を試みている ティーを追求する』ということであった。 が、加工用途別の分類を加えると、例えばメカニカル プレス加工とは、周知の通りプレス機械の種類・構 サーボプレス群の汎用サーボプレス、及び液圧サーボ 造の如何に関わらず、スライド(またはラム)の単純 プレス群の汎用サーボプレスは、シートメタル加工用、 な上下または左右運動により、スライド・ボルスター 鍛造用、ファインブランキング用等に分割されること 間に取付けられた金型によって素材を製品に生まれ変 になり、その種類名称は多岐にわたる。ここでは大分 えるものであり、金型の形状を素材に転写する加工法 類に留め、構造詳細や仕様はメーカー各社の解説に委 である。したがって、加工工具である金型に対し合理 ねることにする。 的な動きを与えることを目的として作られた機械がプ プレス加工は金属加工法の一種であるが、他の金属 レス機械である。単純な、しかし精度の高いパワーの 加工法と違い、その種類は非常に多く、また加工内容 ある往復運動を長時間にわたって金型に与えること も複雑である。加工に関する詳しい解説は次の機会と が、プレス機械の使命であったため、“フレキシブル するが、加工のメカニズムにより類似加工をグルーピ な機械”という概念は無かったのである。 ングした大きな分類のみ記しておく。 メカニカル汎用プレス、液圧汎用プレス、パンチン ①打ち抜き加工 ②曲げ加工 ③絞り・成形加工 グマシン、プレスブレーキ等々、プレス機械の種類は ④圧縮加工 ⑤複合加工、この加工ひとつひとつがま 多々あるが、それらが『サーボプレス』に変わって た多くの種類を持っている。打ち抜き加工に例を上げ 4|素形材 2008 .10 世界をリードするサーボプレスの最新動向を探る ∼超精密・生産性向上をバックアップ∼ うスライド動作における加工側ストローク エンドが存在するが、メカニカル汎用サー ボプレスのクランク式においても“下死点” は踏襲されている。曲げ・絞り・圧縮加工 などで“底突き加工”と称される加工精度 の追求を、その「下死点」ポイントで行 う場合、サーボプレスの特徴である極低ス ピード設定および下死点停留という機能要 素は、加工材内部応力の緩和に大きな効果 を発揮し、精度の高い加工を行うことがで きる。 スライド動作モーションの設定が自在に 行える機能は、いろいろな加工に大きな影 響を与えている。 ①ブランキング加工には「スウィング モーション」 図 7 に示すように、通常クランクプレス ではその動作を、クランク回転の角度によ り表示を行う。上死点より動作が開始され、 90 、下死点(180 )、270 、そして上死点に 図5 戻る動作を繰り返すわけであるが、単純な てみると、シャーリング、ブランキング、ハーフブラ ブランキング加工では下死点付近 50 ∼ 60 の間で加工 ンキング、トリミング、ノッチング、スリッティング、 が行われるため、その他の角度(非加工角度)は加工 パーティング、ピアッシング、…となり、詳細名称を には必要としない動作となる。そこで、サーボプレス 上げると数え切れないほどの種類となる。これら多種 では「スウィングモーション」として、加工角度に必 多彩なプレス加工を包括しながら『サーボプレス』に 要余裕動作を加えた範囲だけの、下死点付近の往復加 よる加工の優位性、コントロール性、環境対応性の概 工動作を設定し、生産性向上を図ることが可能となっ 要を述べてみたい。 ている。 3.1 機構の改革 図 6 は、従来のプレス機械と比較した場合の、サー 上死点 ボプレスの主な特異点を示している。 従来のクランクプレスにおいては、“下死点”とい 非加工角度 270° 90° サーボプレス:機構の改革 1) 下死点の存在 底突き加工追求 加工精度追求 (低スピードによる高精度加工 : 抜き、曲げ、絞り、 加工角度 圧縮加工すべて) 2) マイクロインチング機能付加 3) 生産性の追求 下死点 スウィングモーション範囲 スウィング加工(正転・逆転加工) 4) 動作モーション設定の自在性 図7 ※ 加工に最適なモーションを各人の考え方で設定可能 ②精密打ち抜き加工には「サイレントモーション」 5) マルチマシン機能 : ※ スライド角度概念よりスライド位置(距離)概念へ! 従来のプレス機械がCNC工作マシンになる! 図6 加工破断面をなるべく無くし、せん断面を多く取ろ うとする精密打抜き加工では、ブレイクスルー(加工 直後の機械フレームおよびボルスターの変形戻り動 5 作、振動が多く発生する)を極端に抑えるため、加工 い。エネルギーの源泉は全てサーボモータ自体にある 角度におけるスライド速度をなるべく低くすることが ため、大きな能力を生み出すための大容量サーボモー 必要となる。その動作パターンを「サイレントモーショ タがサーボプレスの開発には必要であった。 ン」と呼んでいる。 しかし大容量のサーボモータはその駆動に大きな電 ③深絞り加工には「リンクモーション」 力を必用とする。同等の仕事(加工)を行うとき、サー 絞り加工は絞り深さが深くなるにつれ、高いスライ ボプレスの方が従来のプレス機械に比べて何倍もの電 ド位置からの加工になるが、全て下死点で加工は終了 力を必要とするのであれば、加工特性にいくら優位性 する。その際加工開始から下死点までの間速度を下げ があろうとその商品価値は極端に下がり、導入に拍車 て加工を行い、下死点通過後は速度を上げて戻り動作 がかかるはずはない。 を行うことが生産効率の向上となる。このような動作 エネルギーロスに反して常にフライホイールを回し パターンを、以前リンク機構を用いて製作されたプレ 続ける上述メカニカルプレスや、油圧保持のために常 ス構造より名前を取って「リンクモーション」と呼ん にポンプ用モータを駆動しておく必要のある油圧プレ でいる。もちろん下死点において停留時間を設定した スと異なり、サーボプレスでは動力が必要な時だけ、 方が良い場合は、停留時間終了後に高速戻り動作を設 即ちプレス加工時のみエネルギーを供給すればよい。 定することになる。 またサーボモータの定格出力値はモータの能力を示 ④コイニング加工には「ナックルモーション」 すものであるが、これがそのままエネルギー消費の目 圧縮加工の一種であるコイニング加工は、下死点に 安であると誤解を受けることが多い。実際の消費エネ て強力な型締め動作が必要なため、ナックル機構(ト ルギーは、加工に必要なエネルギー、モータやアンプ グルリンク機構)を用いたプレス機械が多く使用され の内部ロス、及び機械部の摩擦エネルギーの総和とな た。加工開始より速度を下げ、下死点にて停留時間を る。消費エネルギーを実測したデータによると、駆動 持てる機構である。したがってこのモーションもナッ 方式や動作パターンにもよるが、サーボモータの定格 クルプレスより名前を取って「ナックルモーション」 出力値の数分の一から、十分の一に過ぎない事もある。 と呼ばれている。 そのような観点より“省エネルギー性”に関する重 このようなスライドモーションの設定を、現在はプ 要な懸念を解消するため、大容量サーボシステムの研 レス機械メーカーがパッケージソフトとして行ってい 究がなされ、商品化された。そのひとつがエネルギー るが、その選択は加工に情通している現場のオペレー の回生機構である(図 8)。 タによって行われることになる。そして今後 は、上記モーションの組合わせ、または加工 に最適なスライドの動作をソフト上で作成す ることが現場の仕事になるのである。 抵抗回生 電源回生 回生エネルギーを抵抗で熱で消費 回生エネルギーを電源に返す 従来のプレス機械は、電源投入後、各スイッ チで動作条件を設定すれば、起動ボタンを押 すだけで作動が始まった。そこにソフトの介 在はなく、言うなれば“誰が操作をしても同 じ機械”であった。サーボプレスは、加工素 材、加工内容、金型構造、自動化の条件等に 図8 より機械の動作を“プログラム”する機械で あり、オペレータの考え方で生産物が良品にも不良品 サーボモータの加速時に費やされた消費エネルギー にもなる機械である。 は、駆動系(プレス機械の動作)によって運動エネル 3.2 サーボコントロールの特長 ギーとして変換された後、加工と機構摩擦などで出力 従来メカニカル汎用プレスにおいては、大きな加工 された分を除き、減速時に“回生エネルギー”とし エネルギーを発生させるためのフラホイールが機構構 て回収する方法である。この回生手法については、現 成上重要な要素であった。しかし例外を除いて現在の 在抵抗を使用し熱として放出する“抵抗回生方式” サーボプレスには、フライホイールは使用されていな が一般的であるが、サーボシステムの大容量化に先駆 6|素形材 2008 .10 世界をリードするサーボプレスの最新動向を探る ∼超精密・生産性向上をバックアップ∼ け、より大きな省エネルギー追求を目的として、回生 エネルギーをダイレクトに電源に戻す“電源回生方 4.新しい加工技術を生み出すサーボプレス 式”も開発されている。 プレス加工の変革は、冒頭に述べた“5 種類の生産 3.3 環境対応性 条件変化:多様化”への対応が起点になっていること 以前、プレス加工の現場は騒音と振動による悪環境 を解説した。そしてそこから生まれる現代プレス加工 の代表とされていた。度重なる騒音や振動が人体に与 のキーワードは、枚挙にいとまがなく、激増であるこ える影響は非常に大きい。 とも述べた。 特に打ち抜き加工における騒音と振動は大きく、素 この項ではそのキーワードに従い、現在盛んに活用 材の破断による衝撃的なブレイクスルー(除荷)に されるようになった加工技術、また今後各産業に多く よってプレス機械のフレームや金型が振動することで 取り入れられる新しい加工技術の一端を紹介すると共 起こる。素材が打ち抜かれた瞬間、加工中にプレス機 に、それら加工の実現に大きく寄与しているサーボプ 械に蓄えられていた弾性エネルギーが急激に解放され レスの加工効果を述べることにする。 て振動が発生する。したがって厚い素材、硬い素材の いずれも素材、品質、金型構造、加工工程、加工シ 方が振動・騒音の発生は大きいことになる。 ステムの多様化要請より発生した新しい加工技術であ 従来から騒音・振動に対する低減対策は色々考えら り、高精度精密加工、複合加工、難素材加工といった、 れてきたが、どの手法も一長一短あり、全ての加工現 現在最も注目されるプレス加工キーワードに合致した 場に対して有効である、という策は見つからなかった。 加工技術である。 加工域(打ち抜き加工の破断工程域)にてスライドの 4.1 新しいプレス加工技術 スピードを落として加工することは、ブレイクスルー ①精密せん断技術 の極端な軽減になることより、非常に有効な手段で 精密せん断技術は、切削加工からの変換・代替技術 あったが、従来の機械プレスにおいては、スライドス として注目度の高いプレス加工技術である。通常プレ ピードを落とすと加工エネルギーが極端に下がり加工 ス加工におけるせん断加工面は、その加工の推移(パ ができない場合もあり、また生産性も落ちることから、 ンチの素材食い込みから加工完了まで)から破断面と この手法を敬遠する原因にもなっていた。 せん断面双方が現れるが、精密せん断加工は破断面を 表 1 にサーボプレスによる打抜き加工騒音テストの 発生させず、せん断面だけのきれいな加工面を作ろう データを示す。110 トン(1100 kN)の従来構造クラン とする技術である。写真 4 および写真 5 はサーボプレ クプレスとサーボクランクプレスでの比較である。加 スを使用した簡易精密打抜きによる製品例である。 工素材は SPCC、板厚 t 4.5 と t 6.0 mm、金型は精密ク リアランス 2 % および汎用クリアランス 10 % のものを 使用し、φ 40 mm の打抜き加工にてテストを行い、測 定器は金型前面より 1 m 隔れた位置に設定してある。 表1 加工素材板厚 t 4. 5 t 6. 0 t 4. 5 t 6. 0 金型クリアランス 2% 2% 10% 10% 110 トンプレス 従来クランクプレス 88dB 89dB 89dB 90dB サーボプレス 77dB 78dB 79dB 80dB 写真 4 写真 5 ②テーラードブランキング 素材板厚及び金型クリアランスの違いによる打抜き 図 9 に示すように、テーラードブランキング工法とは 音の相違はあまり見られないが、従来構造の機械と 特に自動車産業で活用され始まった技術であり、車体 サーボプレスを比較した場合には、各々で約 10 dB の パネルやサイドメンバーの製作に多く利用されている。 差が出ておりサーボプレス使用の効果は明らかであ 従来、自動車の車体パネルは 1 枚の板材から成形、 る。プレス加工現場で仕事をする人々に対し“最大な 穴あけ加工等により生産されてきたが、自動車の最大 る加工環境改善:騒音・振動の低減”をもたらした。 目標課題のひとつである軽量化と車体剛性アップを検 7 テーラードブランキング サンプル ① 自動車:フロントサイドメンバー 製品 テーラードブランク 衝突時のエネルギー吸収性向上 写真 6 ② 自動車:サイドパネルアウター 製品 テーラードブランク 材料歩留り向上、防錆性能向上、精度向上、見栄え向上 図9 討する場合、パネルの各部位をその要求剛性および材 質に合わせた部材構成とすることが望ましく、最適化 パネルの研究が長年なされていた。その結果、材質、 写真 7 板厚および形状の異なる板素材を溶接により組合わ せ、パネル成形のブランク材を製作することが最良と 大きな改善が見られている。 判断されたのである。 写真 6(SUS 304 t 0.6 幅 100 高さ 12 mm)、写真 7(SUS しかし、パネル素材の構成部材単品も大型のものに 430 t 0.15 幅 100 高さ 6.0 mm)に示す加工サンプルは なると 2 m を越えるものもあり、突合せレーザー溶接 その一種類であるが、絞り加工の要素を一切入れず全 にてブランク材を製作する場合、その溶接条件より部 て展開曲げで加工を行うため、板厚の変化が全く発生 材単品の溶接端面せん断精度が大きな問題点として浮 せず加工後の製品精度の安定が大きな特徴となって かび上がった。小さな部材であれ大きな部材であれ、 いる。 溶接端面を± 0.05 mm のせん断精度(直線・曲線精度) コンピュータ等に使用される小型ヒートシンクか に仕上げ、且つ「バリ無し、かえり無し」の平滑なせ ら、発電設備などに使用される大型の冷却設備まで応 ん断面を持っていなければならない。レーザーによる 用範囲は拡大している。加工対象素材も市場要求の拡 完全突合せ溶接に求められた部材の精密せん断技術で 大より、ステンレス、アルミニウム、銅、カラー鋼板、 あった。 そ加工におけるキズの防止、金網加工におけるメッ ③コルゲートフォーミング シュの変形防止は、上記の完全展開曲げ加工による功 波形成形と呼ばれるプレス加工分野であり、従来は 能といえる。 専用機を使用しての生産がほとんどであったが、昨今 ④冷間鍛造応用技術 汎用プレス機械によるコイルラインシステムでの生産 昨今「ネットシェイプ」という言葉が盛んに使われ が可能となる金型が開発され、生産性と設備コストに るようになったが、ネットシェイプとは製品の最終形 写真 8 8|素形材 2008 .10 写真 9 世界をリードするサーボプレスの最新動向を探る ∼超精密・生産性向上をバックアップ∼ 状または最終形状に近い状態まで、鍛造加工で成形す は、スプリングバックによる製品変形が非常に懸念さ ることを指している。従来切削加工の代替・変換技術 れる。曲げ加工とは、素材の弾性変形限度内で行われ として移行が進んでいる加工法であり、生産性、材料 る加工であるため、加工後その応力が除去されるに従 歩留り、品質等の点で切削加工に勝る加工技術として い、元に戻ろうとする力が働く。これをスプリング 注目されているものである。写真 8 に示すサンプルは バックと言うが、この量が多くなると製品精度が悪化 自動車部品の一例であるが、ネットシェイプ化が最も するばかりでなく、製品として成り立たない状態にも 進んでいる分野でもある。また写真 9 に示す「クラウ 陥る。したがって曲げ加工の場合には、その応力を緩 ニング付ヘリカルギヤ」の冷間鍛造加工なども今後大 和するために極力時間をかけて曲げる、また曲げ加工 きな進展が期待される加工法である。 が終わった後そのままの状態で、ある時間放置してお 4.2 サーボプレスの加工効果 く(プレス下死点で停留時間を取る)、という処置が 代表的な加工効果をいくつかを説明しよう。 取られる場合が多い。このようなコントロールも、上 直接的な加工効果としては、各加工においてその範 記スライドスピードと加工サイクル設定の自在性によ 囲の拡大が大きくクローズアップされる。打抜き、曲げ、 り可能となっている。 絞り、張出しおよび圧縮加工においても、それぞれに 加工の合理性を追求した、ひとつの金型内で行われ 合致した最適な加工条件(パラメータ)を詳細に設定で る「型内複合加工」も盛んに行われるようになり、そ きることで実現された「加工範囲の拡大」である。 の複雑さも日を追って高度なものになっている。 写真 10 写真10 のサンプルは、 図 10 に示すカム型(サイドピアスカム)は単純な複 SPCC(冷間圧延鋼板)で 合型の例であるが、昨今このようにひとつの型内に、 あり、この素材の第 1 絞 数個から 10 個程度のカムを入れ込んだ構造の金型も り率は 55 % という数値が 多々あり、上記同様その複雑さは増すばかりである。 一般的であった。しかし このようなカム構造の金型では、素材にパンチを押付 サーボプレスで加工する け加工を行う動作を、スライドの動きに連結するカム ことにより、サンプルで が行い、パンチを非加工定位置に戻す動作はスプリン は 44% の 数 値 ま で 絞 り グにて行わせている場合が多い。すると、生産性を上 率を伸ばしている。驚異的な数値といっても良い。サー げるためプレス機械のスピードを上げていった場合、 ボプレスにより、SPCC の塑性変形抵抗と塑性スピー このスプリングがスピードに追い付けずバウンドを起 ドに合致させた絞り加工サイクルの設定が可能になっ こす時点が来る。バウンドにより加工精度も低下する たための効果である。このサンプルは直径φ 80 mm の ことから、この時点が加工の限界となる。この加工限 ブランク材からφ 22 mm の製品を作成するものである 界を突破するためには、加工時には遅く非加工時には が、サーボプレス使用により、従来の 4 工程から 3 工 速く動作する、言い換えればネックとなるカムスプリ 程加工へと、1 工程の削減がなされている。このよう ングの動作に合わせて加工サイクルを設定する、とい に絞り率の向上は工程削減、金型費用の低減へとダイ うことが必要になるのである。 レクトに繋がっていくのである。 このようなサーボプレスの特長は、“加工の再現性 写真 11 に示す曲げ加工により構成される構造物で が生まれた”という評価につながってきた。従来、同 写真 11 図 10 9 表 2 サーボプレス加工効果 項目 加工区分 抜き 加工・金型 曲げ 絞り その他 システム 加工機械の 変化新シス テム 変化現象 加工効果視点 生産性 加工性 金型 ◎ ◎ ◎ パンチチッピング減少 再研磨延長、金型材料費軽減 ファインブランキング 精密打抜き加工(簡易的 FB) 低騒音・低振動 dB 極端減少、金型増締削減 プリント基板加工に最適 ◎ スプリングバック減少 精度向上、高張力鋼板加工性向上 ◎ パラメータ再現性 段取り時間の削減 ◎ 絞り率向上 加工工程削減、検査工程削減 ◎ ◎ 亀裂、しわの防止 不良率減少、素材材質変更 ◎ ◎ 焼付の減少 SPM 向上、塗油料の減少 ◎ キズの減少 塗装鋼板の加工に最適 ◎ ブローチ加工 新規プレス加工手法の導入 ◎ 張出し性向上 高難度張出し成形の実施 素材硬化減少 金型調整不要 ◎ 油圧プレスよりの変換 SPM 向上、底突き加工可能 ◎ 機械サイズの変化 大型より中型へ、中型より小型へ ◎ 複合加工 型内かしめ加工、型内タップ加工 ◎ インラインシステム化 連続自動生産システム化 ◎ 環境 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ じ金型でも加工するプレス機械を変えると、同じ製品 ス事情”はどのようなものであろうか、少々述べてみ を作り出すために非常に困難なプレス機械の調整が必 たい。 要であった。同種同型の機械でも動作や調整機能には 世界最大手のプレス機械メーカー、ドイツのシュ 微妙な差があり、それが生産に大きく影響する要素に ラー社は、昨年(2007 年)1 月にサーボプレスの販売 なっていた。サーボプレスにしても、機械毎の微妙な 開始を発表した。そのときの販売担当取締役の弁は下 差があることは確かであるが、その差を動作パラメー 記のようなことであった。販売開始後 1 年半が経過し、 タの設定で吸収できる、ということが加工の再現性に ヨーロッパを中心に導入は順調とのことである。 対する評価となっている。 『皆さん、プレス加工技術は現在大きな変革の時期 金型は、あらかじめ設定されたプレス機械を使用す にあります。長い歴史と深い市場性を持つ企業として、 ることを前提に設計が行われ、当然生産時もその機械 市場からの広い要求に対し、独創的な考え方と革新的 を使用することが通常であった。しかし昨今のように、 な製品によってこれらの要求に応えることが、我が社 グローバルな生産展開ということになると、金型と生 の基本的な考え方なのです。シュラー社はプレス加工 産機械が一対の関係はなかなか成り立たない。日本で 技術において、現在のすべての課題に対する明確な回 作られた金型がヨーロッパに渡り量産部品が生産され 答を用意しておく、これが私たちの目的であり方針で る、という例は多々生まれている。すると、能力的に す。そのひとつの回答例として、中小型(2500 kN ∼ クリアしたプレス機械であれば、どの機械を使用して 6300 kN)の新しいプレス機械を開発しました。サーボ も同一金型で同一製品が作られなければならない、と 駆動による任意の動作スピード設定によって、高いフ いう考え方に基づかなければ、生産計画が成立しない レキシビリティーを備えたプレス機械です。シュラー ことになる。“加工の再現性”が重要視され始めた グループは、革新的な現代に、中小型プレス機械を提 要因である。 案します。打抜き加工と成形加工に向くこの新しい自 加工効果をまとめたものを、表 2 を示すことにする。 動プレスは、多種多様なアプリケーションの設定を、 5.海外サーボプレスの状況 迅速に且つフレキシブルに行うことができます。』(写 真 12) サーボプレスは日本で考案され、世界に発信された また、同じくドイツのヒーガー社は、2006 年の見本 技術であり、ヨーロッパ、アメリカを始め各アジア諸 市:ユーロブレッヒから下記のサーボプレスを出展し、 国にも盛んに導入されているが、海外の“サーボプレ 話題を呼んでいる。 10|素形材 2008 .10 世界をリードするサーボプレスの最新動向を探る ∼超精密・生産性向上をバックアップ∼ のような構造を取った結果であるが、機械が非常にコ ンパクトにもなった。どのような偏心荷重に対しても、 スライド・ボルスターの平行度保持ができ、一方で 0.01 mm/ 秒の速度でジョイスティックオペレーショ ン(寸動操作)を可能にしたことから、当初は金型ト ライ用として販売を開始した模様である。しかし高速 ストロークモードにおいても最大 180 mm / 秒の速度 を達成することができたため、生産用に使用されるよ うになった。 その他アメリカでも、専用機械としての油圧サーボ プレスが市場に出てきたようであるが、技術、市場性、 応用性から考えた場合、『サーボプレス』は日本メー 写真 12 カーの独占市場に近い商品である。 6.世界を席巻する日本のプレス技術 加工素材、製品品質、金型構造、加工工程の多様化 に加え、独自加工システムの追求から生まれた市場要 求に対し、サーボプレスを持って大きな変化に立ち向 かおうとしている“プレス工業界”である。そこには、 生産性の更なる向上、フレキシブル生産、超精密加工、 切削レス加工、そしてエコ生産という課題も大きく挙 げられている。 写真 13 地球温暖化が叫ばれ、CO2 排出規制が強力に推進さ “SYNCHRO PRESS:シンクロプレス”と名付けら していくであろう。プレス加工技術はそのような環境 れたこのサーボプレスは、加圧力 400 kN(40 トン)∼ の中で、より鮮明にクローズアップされていく。日本 4000 kN(400 トン)までをラインアップしているとの の金属プレス加工企業とプレス関連機器メーカーの持 ことであり(写真 13 は 100 トン)、基本構造は NC 4 軸 つ技術思想と技能は、世界からますます期待されると のダイイングマシン(アンダードライブ仕様)である。 ころである。 当初金型トライ用プレスとして販売されたが、まもな 世界の技術的リーダーシップを図ろうとするサーボ く生産用として一般ユーザーに使用されたため、現在 プレスは、永年にわたる加工要素形態より生まれ、そ は①金型トライ用(ベーシックバージョン)②金型ト してこの枠を超えて育とうとしている。 ライ用&生産用(ベーシックバージョン&トルクバー 金属プレス加工企業にとり、新しい加工技術の開発 ジョン)③生産用(トルクバージョン)として、実用 に、またその技術を生かした新規市場の開拓に供する の範囲を 3 種類に分けた販売を行っている。 環境をサーボプレスは作り得る。前に示す 5 つの多様 スライド動作の基本構造は、4 軸のスクリュー方式 化:市場要求は、変革のための条件である。 れるなか、今後“ものづくり”の手法は大きく変化 (HIEGER 社はスピンドル方式といっている)であり、 『サーボプレス』は、求められる変革を確実になし それぞれの軸にサーボモータを搭載し、同期制御を 得る新時代のマシンであり、業界発展を促す 21 世紀 行っている。ここでいう「ベーシックバージョン&ト の寵児なのである。 ルクバージョン」とは、スクリューを駆動させる際の サーボモータと連結構造の違いを表わしている。 独特なスクリュー駆動技術とコントロール技術の開 発により、スライドとボルスターの動的な平行度を超 精密にしたことが大きな特徴となっている。また、こ 株式会社メタル・フォームテック・フォーラム社 〒222−0033 神奈川県横浜市港北区新横浜 2−14−8 オフィス新横浜ビル 301 TEL 045−473−7424 FAX 045−470−5481 11