...

農山漁村再生可能エネルギー導入マニュアル

by user

on
Category: Documents
23

views

Report

Comments

Transcript

農山漁村再生可能エネルギー導入マニュアル
農山漁村再生可能エネルギー導入マニュアル
風を利用し発電
木材を燃料に発電
水を利用し発電
未利用地を利用し発電
平成 26 年 4 月
山口県農林水産部農林水産政策課
はじめに
地球温暖化対策、東日本大震災後の電力需給のひっ迫、異常気象に伴う水害等での
エネルギー供給の問題から、地域のエネルギー資源である再生可能エネルギーによる自
立・分散型のエネルギー供給システムの構築が望まれています。
農山漁村には、未利用の土地、水、光、バイオマス等の豊富な再生可能エネルギー
資源があるものの、導入コストや運営コストの問題、加えて各種法令に基づく煩雑な手
続きを要し、活用に向けた具体的な検討が進んでいません。
三方が海に面し、中国山地が縦断する自然豊かな山口県には、多くの再生可能エネ
ルギー資源があり、各種のプラントが運用されています。
バイオマス
④-1
④-2
畜産廃棄物
木質
農山漁村施設・資源
①
太陽光
②
小水力
③
風力
耕作放棄地
○
-
○
-
-
農業水利施設・中小河川
○
○
-
-
-
漁港・漁場
○
-
-
-
-
畜産農家
-
-
-
○
-
山林(森林資源)
-
-
○
-
○
①山口農業高等学校
②木屋川発電所
③油谷風力発電所
④-1 山口県酪乳業(株) ④-2 錦町ペレットボイラ
山口県内の再生可能エネルギー運用プラント
山口県には、太陽光発電パネル製造メーカ、バイオガスプラントメーカ、瀬戸内側
の工業地帯にはプラントメーカも多く有ります。様々な農山漁村の資源と技術力を活用
することにより、山口県は再生可能エネルギー導入を更に進展できる高いポテンシャル
を有しています。
本マニュアルは現状の山口県の再生可能エネルギーの導入状況、導入の可能性、導
入の手順をまとめております。本マニュアルにより、再生可能エネルギー普及に取り組
んでいただきたいと思います。
目
次
1章 山口県の地域特性
1.日照時間・日照量 ····················································· 1-1
2.風速・風況 ··························································· 1-5
3.降水量 ······························································· 1-8
2章 再生可能エネルギーとは
1.再生可能エネルギーとは ·············································· 2- 1
2.固定価格買取制度(FIT) ·········································· 2- 3
3.再生可能エネルギーによる発電型式 ···································· 2- 5
(1)太陽光発電 ························································· 2- 5
(2)小水力発電 ························································· 2-12
(3)風力発電 ··························································· 2-18
(4)その他-バイオマス ················································· 2-22
a.木質バイオマス ···················································· 2-22
b.畜産廃棄物 ························································ 2-25
3章 発電設備導入までの流れ
1.太陽光発電 ·························································· 3- 2
2.小水力発電 ·························································· 3- 3
3.風力発電 ···························································· 3- 4
4.バイオマス ·························································· 3- 6
(1)木質バイオマス ····················································· 3- 6
(2)畜産廃棄物 ························································· 3- 7
4章 発電設備導入に必要な協議・手続
1.行政との協議 ························································ 4- 1
(1)河川法 ····························································· 4- 1
(2)農地法 ····························································· 4- 8
(3)土地改良法 ························································· 4-13
(4)電気事業法 ························································· 4-14
(5)その他 ····························································· 4-14
2.電力協議 ···························································· 4-16
(1)申請の概要 ························································· 4-16
(2)電力会社 ··························································· 4-18
(3)経済産業省 ························································· 4-20
5章 発電設備導入スケジュール
1.太陽光発電 ·························································· 5- 2
2.小水力発電 ·························································· 5- 3
6章 活用できる補助事業
1.補助制度・融資制度 ·················································· 6- 1
2.民間ファンドについて ················································ 6- 6
7章 モデル地区の検討
1.太陽光発電 ·························································· 7- 1
(1)耕作放棄地モデル ··················································· 7- 1
(2)農業用施設モデル ··················································· 7-13
(3)ため池モデル ······················································· 7-23
2.畜産廃棄物 ·························································· 7-31
第1章
山口県の地域特性
1.日照時間・日射量
(1)日照時間
気象庁が公表している日照時間は、下図に示す県内 15 気象観測所で観測され、そ
のデータが公開されている。
図表 1-1
山口県内の気象観測所
須佐
油谷
萩
徳佐
広瀬
秋吉台
豊田
山口
岩国
防府
玖珂
下松
下関
柳井
安下庄
各気象観測所における年間の日照時間は図表 1-2(次ページ)のとおりであり、最
も長いのは安下庄観測所の 2,129.5 時間、次いで柳井観測所の 2,124.5 時間、下松観
測所の 2,087.6 時間となっている。
全国平均値(1,896.2 時間)を超える観測所は、計 6 観測所で確認され、特に瀬戸
内海沿岸地域の日照時間が長い。
-1-1-
図表 1-2
年間の日照時間(全国平均値(1,896.2 時間)
)
2,016.7
岩国観測所
安下庄観測所
2,129.5
柳井観測所
2,124.5
1,915.8
玖珂観測所
2,087.6
下松観測所
2,031.9
防府観測所
1,894.8
山口観測所
1,776.3
秋吉台観測所
1,736.0
豊田観測所
1,880.5
下関観測所
1,705.2
油谷観測所
1,749.7
萩観測所
1,694.0
須佐観測所
1,559.9
徳佐観測所
1,659.1
広瀬観測所
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
日照時間(時間)
図表 1-3
項
(単位:時間)
須佐観測所
萩観測所
油谷観測所
徳佐観測所
秋吉台観測所
年合計
1,694.0
1,749.7
1,705.2
1,559.9
1,776.3
備考
1986~2010
1981~2010
1986~2010
1986~2010
1986~2010
広瀬観測所
豊田観測所
山口観測所
岩国観測所
防府観測所
年合計
1,659.1
1,736.0
1,894.8
2,016.7
2,031.9
備考
1986~2010
1986~2010
1981~2010
1986~2010
1986~2010
下松観測所
玖珂観測所
下関観測所
柳井観測所
安下庄観測所
年合計
2,087.6
1,915.8
1,880.5
2,124.5
2,129.5
備考
1986~2010
1986~2010
1981~2010
1985~2010
1986~2010
項
項
目
日照時間の平年値
目
目
出典:気象庁ホームページ
-1-2-
(2)日射量
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公表している
「全国日射量平均値データマップ」では、図表 1-1 と同様の県内 15 箇所の気象観測
所において、日射量データを公開している。
各気象観測所における年間最適傾斜角日射量は図表 1-4 のとおりであり、最も多い
のは安下庄観測所の 4.25kWh/m2 、次いで柳井観測所の 4.19kWh/m2 、下松観測所の
4.17kWh/m2 となっている。
「太陽光発電導入ガイドブック(NEDO:平成 10 年 8 月)
」では、日本各地にお
ける年間最適傾斜角日射量は 3.4~4.4kWh/m2 と明記されており、その平均値は
3.9kWh/m2 となる。
この値を超える計 8 観測所は日射量が良好と考えられ、特に瀬戸内海沿岸地域の日
射量が良い。
図表 1-4
年間最適傾斜角における日射量(全国平均値 3.9kWh/m2)
岩国観測所
4.12
安下庄観測所
4.25
柳井観測所
4.19
玖珂観測所
4.00
下松観測所
4.17
防府観測所
4.12
山口観測所
3.92
秋吉台観測所
3.77
豊田観測所
3.71
下関観測所
3.92
油谷観測所
3.63
萩観測所
3.68
須佐観測所
3.58
徳佐観測所
全国平均より
高い地域
3.45
広瀬観測所
3.68
0
1
2
3
4
5
年間最適傾斜角における日射量(kWh/m2)
太陽光発電導入のモデル地区は、土地の用途の違いの他、日照量の違いも考慮し、
①長門日置の耕作放棄地、②柳井の農業用施設、③山口市のため池堤体の 3 か所とし
た。日本海側の日置と瀬戸内の柳井は、約 20%の日照量の差がある(詳細は7章参
照)
。
-1-3-
図表 1-5
項
目
平均
項
目
平均
項
目
平均
年間最適傾斜角における日射量
(単位:kWh/m2)
須佐観測所
萩観測所
油谷観測所
徳佐観測所
秋吉台観測所
3.58
3.68
3.63
3.45
3.77
広瀬観測所
豊田観測所
山口観測所
岩国観測所
防府観測所
3.68
3.71
3.92
4.12
4.12
下松観測所
玖珂観測所
下関観測所
柳井観測所
安下庄観測所
4.17
4.00
3.92
4.19
4.25
出典:NEDO 全国日射量平均値データマップ
-1-4-
2.風速・風況
(1)風速
気象庁が公表している風速は、図表 1-1 と同様に県内 15 気象観測所で観測され、
そのデータが公開されている。
各気象観測所における年平均風速は下図のとおりであり、最も大きいのは下関観測
所の 3.2m/s、次いで萩観測所の 3.1m/s、油谷観測所の 2.4m/sとなっている。
なお、全国平均値(3.0m/s)を超える観測所は、下関観測所と萩観測所の計 2 観測
所が確認されている。
図表 1-6
年平均風速(全国平均値 3.0m/s)
岩国観測所
1.4
安下庄観測所
1.7
柳井観測所
1.8
玖珂観測所
1.2
下松観測所
2.0
防府観測所
全国平均より
1.8
山口観測所
高い地域
1.7
秋吉台観測所
2.2
豊田観測所
1.9
下関観測所
3.2
油谷観測所
2.4
萩観測所
3.1
須佐観測所
1.8
徳佐観測所
1.2
広瀬観測所
0.8
0
1
2
3
4
風速(m/s)
図表 1-7
項
目
年平均風速
(単位:m/s)
須佐観測所
萩観測所
油谷観測所
徳佐観測所
秋吉台観測所
年合計
1.8
3.1
2.4
1.2
2.2
備考
1981~2010
1981~2010
1981~2010
1981~2010
1981~2010
広瀬観測所
豊田観測所
山口観測所
岩国観測所
防府観測所
年合計
0.8
1.9
1.7
1.4
1.8
備考
1981~2010
1981~2010
1981~2010
1981~2010
1981~2010
下松観測所
玖珂観測所
下関観測所
柳井観測所
安下庄観測所
年合計
2.0
1.2
3.2
1.8
1.7
備考
1981~2010
1981~2010
1981~2010
1981~2010
1981~2010
項
項
目
目
出典:気象庁ホームページ
-1-5-
(2)風況
NEDOでは、気象庁から収集した風況データと、全国を対象に 500mメッシュで
解析した「風況マップ(18 年度改訂版)」を公開している。
山口県における地上高 30mにおける年平均風速を示した風況マップを以下に示す。
図表 1-8
地上高 30m における年平均風速(●は年平均風速の大きい 4 地点)
油谷 2.4m/s
萩 3.1m/s
秋吉台 2.2m/s
下関 3.2m/s
上記の風況マップをもとに、市町毎にメッシュの年平均風速を加重平均した結果を
図表 1-9(次ページ)に示す。
山口県内の市町における地上高 30mの年平均風速は、3.85m/sから 5.88m/sの間で分
布する。
日本海側は、陸上部でも平均風速が 5~6mの地域である。また、気象庁のデータか
ら年平均風速(注:地上の風速)の大きい地点を●で示す。同様に日本海側が高く、
これら地域には風力発電設備が導入されている(詳細は2章参照)
。
-1-6-
図表 1-9 山口県内の市町における地上高 30m の年平均風速
風速メッシュ
(m/s)
中間風速
(m/s)
下関市
宇部市
山口市
萩市
防府市
下松市
岩国市
光市
長門市
柳井市
美祢市
周南市
山陽小野田市
周防大島町
和木町
上関町
田布施町
平生町
阿武町
3.5~4.0
4.0~4.5
4.5~5.0
5.0~5.5
5.5~6.0
6.0~6.5
6.5~7.0
7.0~7.5
合計
3.75
0
0.00
0
0.00
38
142.50
0
0.00
0
0.00
0
0.00
505
1,893.75
32
120.00
0
0.00
0
0.00
0
0.00
20
75.00
0
0.00
0
0.00
50
187.50
0
0.00
4
15.00
0
0.00
0
0.00
4.25
30
127.50
5
21.25
233
990.25
17
72.25
25
106.25
114
484.50
1279
5,435.75
216
918.00
0
0.00
195
828.75
9
38.25
428
1,819.00
1
4.25
0
0.00
13
55.25
0
0.00
59
250.75
64
272.00
0
0.00
4.75
583
2,769.25
841
3,994.75
1158
5,500.50
381
1,809.75
381
1,809.75
211
1,002.25
1011
4,802.25
164
779.00
12
57.00
274
1,301.50
521
2,474.75
1091
5,182.25
371
1,762.25
262
1,244.50
0
0.00
2
9.50
85
403.75
55
261.25
0
0.00
5.25
5.75
1142
5,995.50
373
1,958.25
1468
7,707.00
1243
6,525.75
369
1,937.25
107
561.75
555
2,913.75
25
131.25
434
2,278.50
106
556.50
815
4,278.75
847
4,446.75
207
1,086.75
409
2,147.25
0
0.00
67
351.75
6
31.50
57
299.25
32
168.00
1048
6,026.00
56
322.00
1243
7,147.25
1093
6,284.75
75
431.25
2
11.50
284
1,633.00
20
115.00
800
4,600.00
65
373.75
517
2,972.75
208
1,196.00
16
92.00
31
178.25
0
0.00
113
649.75
0
0.00
0
0.00
314
1,805.50
6.25
313
1,956.25
2
12.50
301
1,881.25
325
2,031.25
0
0.00
0
0.00
129
806.25
0
0.00
318
1,987.50
4
25.00
140
875.00
159
993.75
0
0.00
0
0.00
0
0.00
42
262.50
0
0.00
0
0.00
164
1,025.00
上段:各風速におけるメッシュ数、下段:メッシュ数×中間風速(m/s)
-1-7-
6.75
47
317.25
0
0.00
35
236.25
57
384.75
0
0.00
0
0.00
44
297.00
0
0.00
40
270.00
0
0.00
4
27.00
30
202.50
0
0.00
0
0.00
0
0.00
3
20.25
0
0.00
0
0.00
0
0.00
7.25
0
0.00
0
0.00
2
14.50
0
0.00
0
0.00
0
0.00
7
50.75
0
0.00
1
7.25
0
0.00
0
0.00
0
0.00
0
0.00
0
0.00
0
0.00
0
0.00
0
0.00
0
0.00
0
0.00
3,163
17,191.75
1,277
6,308.75
4,478
23,619.50
3116
17,108.50
850
4,284.50
434
2,060.00
3,814
17,832.50
457
2,063.25
1,605
9,200.25
644
3,085.50
2006
10,666.50
2783
13,915.25
595
2,945.25
702
3,570.00
63
242.75
227
1,293.75
154
701.00
176
832.50
510
2,998.50
平均風速
(m/s)
5.4 4
4.9 4
5.2 7
5.4 9
5.0 4
4.7 5
4.6 8
4.5 1
5.7 3
4.7 9
5.3 2
5.0 0
4.9 5
5.0 9
3.8 5
5.7 0
4.5 5
4.7 3
5.8 8
3.降水量
気象庁が公表している降水量は、図表 1-1 と同様に県内 15 気象観測所で観測され、
そのデータが公開されている。
各気象観測所における降水量は図表 1-10 のとおりであり、最も多いのは広瀬観測
所の 2,211.6mm、次いで秋吉台観測所の 1,994.7mm、徳佐観測所の 1,945.5mmとなっ
ている。
すべての観測所で全国平均値(1,604.8mm)を超えており、特に広瀬観測所は、全
国平均値を大きく超えている。
図表 1-10
年間降水量(全国平均値 1,604.8mm)
1,726.7
岩国観測所
安下庄観測所
1,693.7
柳井観測所
1,689.5
1,912.1
玖珂観測所
1,832.8
下松観測所
1,637.2
防府観測所
1,886.5
山口観測所
1,994.7
秋吉台観測所
1,921.4
豊田観測所
1,684.3
下関観測所
1,778.8
油谷観測所
1,658.1
萩観測所
1,750.8
須佐観測所
1,945.5
徳佐観測所
2,211.6
広瀬観測所
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
降水量(mm)
図表 1-11
項
(単位:mm)
須佐観測所
萩観測所
油谷観測所
徳佐観測所
秋吉台観測所
年合計
1,750.8
1,658.1
1,778.8
1,945.5
1,994.7
備考
1981~2010
1981~2010
1981~2010
1981~2010
1981~2010
広瀬観測所
豊田観測所
山口観測所
岩国観測所
防府観測所
年合計
2,211.6
1,921.4
1,886.5
1,726.7
1,637.2
備考
1981~2010
1981~2010
1981~2010
1981~2010
1981~2010
下松観測所
玖珂観測所
下関観測所
柳井観測所
安下庄観測所
年合計
1,832.8
1,912.1
1,684.3
1,689.5
1,693.7
備考
1981~2010
1981~2010
1981~2010
1981~2010
1981~2010
項
項
目
年間降水量
目
目
出典:気象庁ホームページ
-1-8-
第2章
再生可能エネルギーとは
1.再生可能エネルギーとは
再生可能エネルギーとは、重油・石炭等の化石燃料のように枯渇することがなく、
再利用できるエネルギーである。
エネルギー源としては、
「太陽光」
「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」がある。
「太陽光」
「風力」
「水力」
「地熱」は、自然のエネルギー資源、
“光”
“風”
“水”
“熱”
の力で発電、熱利用する。
「バイオマス」は生物に由来する再生可能な資源を利用し、直接燃焼、発酵・化学
反応で燃料を生成して、燃焼により熱としてエネルギー利用する。
(1)再生可能エネルギー導入によるメリット
再生可能エネルギーの導入には、次のメリットがある。このうち「④売電収入が得
られる」は、再生可能エネルギーの普及をはかるため、平成 24 年 7 月に施行され、
再生可能エネルギーで発電された電気を、電力会社が一定価格で買い取る固定価格買
取制度の活用によるものである(詳細は「2.固定価格買取制度(FIT)」参照。
2-3 ページ)
。
図表 2-1
再生可能エネルギー導入によるメリット
①環境にやさしい
・CO2 の排出がないので、環境へ与える負荷が小さい
②枯渇しないエネルギー
・太陽光や風力などは、無尽蔵で枯渇の心配がない
③地産地消が可能
・原油のように輸入に頼らない国産エネルギー
④売電収入が得られる
・固定価格買取制度により発電した電気は電力会社に売電
できる
-2-1-
(2)再生可能エネルギー導入状況
国内における再生可能エネルギーにより発電された電力の導入状況は、全体発電電
力の 1.4%しかなく、欧米の 10~20%に比較すると導入は進んでいない。
一方で農山漁村には、未利用の土地、森林資源等のバイオマス、農業用水等の豊富
な再生可能エネルギー資源がある。
これらを最大限に有効活用し、地域の活性化に繋げていくことが求められている。
図表 2-2 再生可能エネルギー導入状況(2011 年度)
出典:電気事業連合会資料
(3)再生可能エネルギー導入の課題
再生可能エネルギーの導入が進まない理由は、次による。
図表 2-3
①発電コストが高い
再生可能エネルギー導入の課題
・風力は山間部の建設、地熱はボーリング等で開発費用が
高価となる
「火力」
「原子力」
「水力」発電
の 10 円前後の発電単価に対
し、20~40 円前後
・化石燃料に比較し、自然エネルギーでの発電電力は低い
・木材等バイオマスは、資源は多くあるが、広く薄く存在
するので収集・運搬の費用を要する
②自然に左右され安定な ・太陽光は、晴天時、昼間しか発電できない
電源とならない
・風力は風速により発電量が左右される
図表 2-4
発電電源のコスト比較
導入の課題である、コストの削減を
図る方策として導入されたのが、固定
価格買取制度である。
-2-2-
出典:電気事業連合会資料
2.固定価格買取制度(FIT)
(1)概要
固定価格買取制度は、コストを要する再生可能エネルギー発電の導入促進を図るた
め、再生可能エネルギーで発電された電気を地域の電力会社が一定期間・一定価格で
買い取る制度である。
平成 24 年 7 月から施行され、“Feed
in
Tariff”を略してFITと呼ばれる。
(2)固定価格買取制度の仕組み
再生可能エネルギー発電の導入事業者・世帯の設置コストを回収できるよう、電力
会社の購入電力料金(概ね 20 円/kWh)より高い価格で買い取り価格が設定されてい
る(詳細は「(3)買取価格」参照。次ページ)
。
電力会社の買い取り費用は、“再生可能エネルギー賦課金”として電気利用者から
電力料金として集め、国民全体で再生可能エネルギー導入を促進する仕組みとなって
いる。
図表 2-5
固定価格買取制度(FIT)の仕組み
(*1)
*1:再生可能エネルギー導入のため電気料金に
上乗せされる費用
(*2)再生可能エネルギー賦課金 300kWh×0.75 円/kWh
+
太陽光発電促進賦課金 300kWh×0.05 円/kWh
一般的な家庭での電力使用量は約 300kWh/月であり、各家庭で毎月 240 円(*2)
を再生可能エネルギー導入の再エネ賦課金として電気料金とともに支払っているこ
とになる。
-2-3-
(3)買取価格
平成 26 年度の価格は下表となっている。
バイオマスについては、燃料として林地残材等の未利用資源、畜産ふん尿等の廃棄
物資源と他種類に及ぶので、燃料化に必要なコストを基に価格が設定されている。
図表 2-6
買取区分
固定価格買取制度の買取価格
買取価格
買取期間
(※1)建設及び運転保守のいずれの場合にも船舶によるアクセスを必要とするもの。
(※2)すでに設置している導水路を活用して、電気設備と水圧鉄管を更新するもの。
買取価格
買取期間
出典:資源エネルギー庁
(※3)「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」に基づく証明のな
いものについては、建設資材廃棄物として取り扱う。
再生可能エネルギー固定価格
買取制度ガイドブック
買取価格や買取期間ほか、次の点について留意が必要である。
留意点
①買取価格や買取期間は、各電源ごとに、事業が効率的に行われた場合、通常必要と
なるコストを基礎に適正な利潤などを勘案して定められる。そのため原則毎年度見
直される。導入が進んでいる太陽光発電(10kW以上)は、本年度は 32 円/kWh(+税)
であるが、平成 25 年度は 37.80 円/kWh(税込)であった。
②10kW未満の太陽光発電は、自己消費した残りの余剰電力のみの買取となる。
③H26 年度から風力は洋上風力、
水力は既設導水路活用中小水力の価格が設定された。
-2-4-
3.再生可能エネルギーによる発電型式
農山漁村地域に導入が可能な、太陽光発電、小水力発電、風力発電、その他熱利用
としてのバイオマス活用の概要をまとめる。
(1)太陽光発電
地球に降り注ぐ太陽光は 1m2 当たり 1kWに相当するエネルギーを持っている。この
太陽エネルギーの代表的な利用方法には、太陽光発電と太陽熱利用の 2 つがあるが、
ここでは太陽光発電の概要について記載する。
a.原理
太陽光発電は、シリコン(ケイ素)などで作った半導体に光が当たると起電力が発
生するという原理(光電効果)を利用して、太陽の光エネルギーを直接電気に変換す
る方法である。太陽電池は、直流の電気を発生させるので、一般的な電化製品に使用
する場合は、インバーターで交流の電気に変換する必要がある。
図表 2-7
太陽光発電利用システムと太陽光発電の原理
出典:NEFホームページ
b.特徴(○メリット、●デメリット)
○太陽の光さえ射していればどんな場所でも発電可能。
○動作音がなく静かなため、住宅やオフィスなどにも設置が容易。
○集荷場の屋根や空き地など、あまり使われていないスペースを有効に活用できる。
○災害時の非常用電源としても利用できる。
○他の再生可能エネルギーに比較して短期間で導入できる。
●発電効率が低いため太陽電池パネルの設置スペースを広くとる必要がある。
●日照がないと発電しないため、昼夜・気象変化・地域差などによる変動が大きくな
る。
-2-5-
c.技術開発の現状
太陽光発電技術は、シリコン系、化合物系、有機系に大別され、図表 2-8 の太陽電
池が開発されている。県内では、長州産業株式会社が単結晶で変換効率の高い製品を
製造している。
図表 2-8
種
類
変換効率※
実用化
状況
・200μm 程度の薄い単結晶シリコンの
基板を用いる
単結晶
・特長:性能・信頼性
・課題:低コスト化
~20%
実用化
・小さい結晶が集まった多結晶の基板
を使用
多結晶
・特長:単結晶より安価
・課題:単結晶より効率低い
~15%
実用化
シャープ
京セラ
三菱電機
実用化
シャープ
三菱重工業
カネカ
富士電機
~12%
実用化
ソーラーフロ
ンティア
ホンダソルテ
ック
~11%
実用化
国内:無し
First Solar (米)
(集光時
~42%)
研究
段階
(~11%)
研究
段階
(~8%)
研究
段階
特徴
結晶系
シ
リ
コ
ン
系
薄膜系
CIS 系
化
合
物
系
太陽電池の種類と特徴
CdTe 系
集光型
色素増感
有
機
系
有機薄膜
・アモルファス(非晶質)シリコンや
微結晶シリコン薄膜を基板上に形成
・特長:大面積で量産可能
・課題:効率が低い
・銅・インジウム・セレン等を原料と
する薄膜型
・特長:省資源・量産可能・高性能の
可能性
・課題:インジウムの資源量
・カドミウム・テルルを原料とする薄
膜
・特長:省資源・量産可能・低コスト
・課題:カドミウムの毒性
・Ⅲ族元素とⅤ族元素からなる化合物
に多接合化・集光技術を適用
・特長:超高性能
・課題:低コスト化
・酸化チタンに吸着した色素が光を吸
収し発電する新しいタイプ
・特長:低コスト化の可能性
・課題:高効率化・耐久性
・有機半導体を用いて、塗布だけで作
製可能
・特長:低コスト化の可能性
・課題:高効率化・耐久性
~9%
(アモルファス)
主な国内
メーカ
長州産業
シャープ
三洋電機(HITタイ
プ)
シャープ
大同特殊鋼
アイシン精機
シャープ
フジクラ
ソニー
新日本石油
パナソニック電工
住友化学
三菱化学
※モジュール変換効率、但し括弧内は研究段階におけるセル変換効率
出典:「NEDO再生可能エネルギー技術白書」平成 22 年 7 月,NEDO
日本の太陽電池に関する国家プロジェクトは 1970 年代のオイルショックを以降に
本格化し、太陽電池の技術開発が行われてきた。2009 年には太陽光発電ロードマッ
プの改訂版である「PV2030+」が策定され、その中で、太陽電池のコスト目標として、
2010 年に 23 円/kWh程度(家庭用電力料金並み)
、2020 年に 14 円/kWh程度(業務用電
力料金並み)
、2030 年に 7 円/kWh程度(汎用電源並み)をそれぞれ掲げている。
-2-6-
d.経済性
(a)システム価格
日本における太陽光発電システムの価格は、調達価格等算定委員会において報告さ
れており、平成 24 年度時点で 10kW以下のシステムで約 43 万円/kW、10kW以上では約
28 万円/kWの水準にあると報告されている。これは、各国と比べてやや高い水準にあ
るが、固定価格買取制度による導入拡大や競争拡大によって、システム価格の低下が
進みつつある。
図表 2-9
太陽光発電システム価格(2008-2012 年)
出典:「NEDO再生可能エネルギー技術白書」平成 25 年 12 月,NEDO
(b)発電コスト
日本の発電コストは、導入量の約 8 割を占める住宅用系統連系型太陽光発電シス
テムで 33~38 円/kWh、メガソーラーで 30~46 円/kWhの水準にあり、欧米と比較する
と高い水準にある。
図表 2-10
世界及び主要国の発電コスト
出典:「NEDO再生可能エネルギー技術白書」平成 25 年 12 月,NEDO
-2-7-
e.山口県の導入状況
(a)住宅系
平成 25 年 3 月末時点で山口県内の住宅の太陽光発電設備は 22,140 件導入されてい
る。県内の 1 戸建戸数は 403,800 戸であり、導入率は 5.5%で国内で 17 位である。
図表 2-11 住宅用太陽光発電普及率(中国経済産業局ホームページより)
県内の市町別の太陽光発電の導入実績については、中国経済産業局より平成 24 年
3 月末時点で 10kW未満、10kW以上に区分し、導入件数、発電出力が公表されている。
再生可能エネルギー固定価格買取制度においては、余剰買取の対象となっている 10kW
未満は家庭用と想定される。
この資料では県内の 10kW未満の太陽光発電設備は図表 2-12(次ページ)のように、
17,900 件導入され、発電出力は 69,259kWである。
市町別で見ると、太陽光発電の導入実績が最も多いのは山口市
(2,913 件・11,509kW)
となっており、次いで下関市(2,518 件・9,591kW)
、岩国市(2,135 件・7,763kW)と
なっている。
-2-8-
図表 2-12
市町名
下関市
宇部市
山口市
萩市
防府市
下松市
岩国市
光市
長門市
柳井市
美祢市
周南市
山陽小野田市
周防大島町
和木町
上関町
田布施町
平生町
阿武町
合計
太陽光発電導入実績
件数(件)
2,518
1,791
2,913
385
1,612
723
2,135
827
334
586
386
1,833
911
256
95
20
325
222
28
17,900
出力(kW)
10kW 未満
9,591
7,048
11,509
1,469
6,502
2,787
7,763
3,117
1,313
2,248
1,558
7,072
3,630
1,007
376
76
1,236
846
111
69,259
※端数処理のため、計が一致しない場合がある
※平成 24 年 3 月末現在(中国経済産業局調べ)
出典:中国経済産業局ホームページ
-2-9-
(b)非住宅系
中国経済産業局が公表している資料で主に非住宅用と想定される 10kW以上の太
陽光発電設備は、平成 24 年 3 月末時点で県内で 172 件、2,528kWが導入されている。
市町別では、太陽光発電の導入実績が最も多いのは下関市(39 件・549kW)とな
っており、次いで山口市(34 件・403kW)
、防府市(19 件・338kW)となっている。
図表 2-13
市町名
下関市
宇部市
山口市
萩市
防府市
下松市
岩国市
光市
長門市
柳井市
美祢市
周南市
山陽小野田市
周防大島町
和木町
上関町
田布施町
平生町
阿武町
合計
太陽光発電導入実績
件数(件)
39
17
34
2
19
5
8
7
3
5
1
16
3
10
1
0
0
2
0
172
出力(kW)
10kW 以上
549
287
403
40
338
70
83
157
50
82
10
202
30
187
10
0
0
30
0
2,528
※端数処理のため、計が一致しない場合がある
※平成 24 年 3 月末現在(中国経済産業局調べ) 出典:中国経済産業局ホームページ
非住宅系において大型太陽光発電所(メガソーラー1,000kW以上)は、平成 25 年 3
月末現時点で県内で 72 件、発電出力で 251,791kWが固定価格買取制度の設備認定を
受けている(設備認定については、4 章発電設備導入に必要な協議・手続 2.電力協議
(3)経済産業省参照)。
市町別では、山口市が(12 件・73,732kW)件数、出力とも最大で、件数では次い
で下関市(10 件・16,286kW)
、山陽小野田市(8 件・33,660kW)となっている。
-2-10-
図表 2-14
太陽光発電所(メガソーラー)の設備認定件数
(平成 25 年 3 月末時点)
出典:中国経済産業局ホームページ
図表 2-15
設置場所
岩国市
熊毛郡平生町
熊毛郡平生町
下松市
周南市
山口市
山口市
萩市
長門市
下関市
山陽小野田市
太陽光発電所(メガソーラー)の導入事例
計画概要
事業者
㈱大林組
ユアサ商事㈱
㈱ウエストエネルギーソリューション
JX日鉱日石エネルギー㈱
㈱ウエストエネルギーソリューション
三井物産㈱
東京海上アセットマネジメント投信㈱
㈱ウエストエネルギーソリューション
㈱ウエストエネルギーソリューション
㈱エネルギア・ソリューション・アン
ド・サービス
山根鉄工建設㈱
㈱多摩川ホールディングス
三井不動産㈱
-2-11-
出力(kW)
2,207
1,200
1,001
1,800
運転開始
H24.12
H25.7
H25.2
H25.3
1,000
H25.6
3,500
H25.6
1,414
H25.8
1,200
H25.12
1,960
H25.12
1,500
13,000
H25.6
H25.12
(2)小水力発電
水力発電は、水の位置・運動エネルギーを電力エネルギーに変換する発電で、戦前
から全国各地で行われてきた。大型の水力発電の適地は、国内ではほとんど開発され
つくしたものの、中小規模はまだ余地があると考えられている。
「小水力」の定義は明確ではないが、概ね 10 万kW以下を中水力、1 万kW以下を小
水力と呼び、1,000kW以下のものをミニ水力、100kW以下をマイクロ水力と呼んでいる。
図表 2-16
水力発電の規模による分類
分類
規模
大水力(large hydropower)
100,000kW 程度以上
中水力(medium hydropower)
10,000kW 程度~ 100,000kW 程度
小水力(small hydropower)
1,000kW 程度~ 10,000kW 程度
ミニ水力(mini hydropower)
100kW 程度~ 1,000kW 程度
マイクロ水力(micro hydropower)
100kW 程度以下
出典:「マイクロ水力発電導入ガイドブック」2003 年,NEDO
a.原理
水力発電量は、次式によって算出される。
発電量(kWh)=重力加速度(9.8m /s2)×水流量(m3/s)×落差(m)
×効率(発電出力により 60~80%)
図表 2-17
水力発電での発電量
・有効落差(m):He(m)=
総落差:Hg -損失落差:HL
3
・流量(m /s):1 秒間に流れる量
・9.8:重力加速度
水力発電は水の利用面に着目して分類すると、流れ込み式、調整池式、貯水池式お
よび揚水式の 4 種類の方式に分類される。また、落差を得る構造面に着目した分類と
して、水路式、ダム式、ダム水路式の 3 種類の方式がある。
-2-12-
図表 2-18
水力発電の規模による分類
出典:「マイクロ水力発電導入ガイドブック」(2003,NEDO)および資源エネルギー庁ホームページ
(http://www.enecho.meti.go.jp/hydraulic/device/class/index.html)
-2-13-
技術的には既に成熟しており、中小規模の河川や農業用水路においても小水力発電
やマイクロ水力発電が導入されるようになってきている。
図表 2-19 中小水力発電の形式
図表 2-20 サイフォン式水車
出典::メーカーホームページ
b.特徴(○メリット、●デメリット)
○昼夜、年間を通じて安定した発電が可能で、設備利用率が 50~90%と高い。
○ランニングコストが小さく、落差と水量があれば多くの場所で設置が可能である。
○山間部などの人家がまばらな地域における小型分散型の電源としても利用が可能
である。
●法的手続きが煩雑で、手間がかかる(河川法等)。
●水利権問題(法的な規制や既得権益)が生じて導入を妨げることが多く見られる。
●山間部ではゴミの流入対策等の維持管理が必要。
c.技術開発の現状
水力は古くからの技術であるため、技術上の問題点は少なくなっているが、特に流
量の大幅な変化に対応でき、低流量においての効率低下の少ない水車およびシステム
の開発に力が注がれている。
図表 2-21
中小水力発電の主な技術課題
発電効率の向上
・水車・発電機の高効率化
発電コスト
イニシャルコストの削減
の削減
・標準化による設備費の削減
・施工費の削減
ランニングコストの削減
・メンテナンスコストの削減
管理・運用 水量の確保
・取水口への土砂堆積、ゴミの目詰まり等の
防止(金網等の設置等)
出典:「NEDO再生可能エネルギー技術白書」平成 22 年 7 月,NEDO
-2-14-
d.経済性
(a)システム価格
小水力発電では、発電プラントは導入地点の地点特性に合わせて設置され、土木工
事が設置費用の大きな割合を占めることから、設置場所の条件により、設置コストは
大きく変化する。
マイクロ水力発電は、中小水力発電より採算性で劣る場合が多いが、海外メーカの
規格品の発電機を用いれば、どの地点でも大差ないコストで導入ができ、小規模の手
作り発電を行っている事例もある。
農林水産省の農業農村整備事業において建設された農業水利施設への小水力発電
施設の建設コストは、概ね 100 万円/kWとなっている。
図表 2-22 農林水産省農業農村整備事業における農業水利施設への小水力発電施設の建設コスト
出典:
「平成 23 年度第 4 回 農業農村振興整備部会 配布資料(資料 1 現行土地改良長期計画の実施状況について)
」
平成 23 年 9 月 1 日,農林水産省農村振興局
(b)発電コスト
一般水力発電の発電コストは、10.6 円/kWhと試算されているが、小水力の発電コ
ストは、19.1~22.0 円/kWhと割高になっている。
図表 2-23
一般水力及び小水力の発電コスト(2004 年,2010 年,2030 年)
出典:「コスト等検証委員会報告書」平成 23 年 12 月 19 日,エネルギー・環境会議コスト等検証委員会
-2-15-
e.山口県の導入状況
(a)山口県の導入状況
山口県における中小水力発電の設置状況を以下に示す。県企業局、中国電力のほか、
農協や民間企業も小水力発電設備を設置しており、県内で計 107,225kWの出力となっ
ている。現在企業局で萩市、宇部市に発電所を建設中である。
図表 2-24
中小水力発電施設の設置状況、建設計画
市町
施設名
最大出力(kW)
下関市
県企業局
木屋川発電所
1,850
宇部市
県企業局
二俣瀬発電所
600
山口市
宇部興産株式会社
厚東川発電所
3,500
中国電力株式会社
長門峡発電所
7,500
山口県
一の坂発電所
県企業局
萩市
100
佐波川発電所
3,500
中国電力株式会社
佐々並川発電所
中国電力株式会社
福栄発電所
14,200
4,200
県企業局
新阿武川発電所
下松市
県企業局
末武川発電所
岩国市
中国電力株式会社
弥栄発電所
7,000
中国電力株式会社
錦川第二発電所
7,300
本郷川発電所
260
県企業局
生見川発電所
1,800
県企業局
小瀬川発電所
630
山口東農協
阿武町
1,600
県企業局
中国地方整備局
周南市
19,500
弥栄ダム管理用発電所
450
稗原発電所
300
中国電力株式会社
向道発電所
500
中国電力株式会社
錦川第一発電所
4,000
中国電力株式会社
間上発電所
5,600
県企業局
水越発電所
1,300
県企業局
菅野発電所
14,500
県企業局
徳山発電所
6,500
中国電力株式会社
合
大井川第二発電所
535
計
107,225
※平成 24 年 11 月現在(山口県環境生活部環境政策課調べ)
企業局の建設中発電所
市町
施設名
萩市
県企業局
相原発電所
宇部市
県企業局
宇部丸山発電所
最大出力(kW)
運転開始予定
82
平成 26 年度
130
平成 26,27 年
度建設予定
出典:企業局ホームページより
-2-16-
(b)他県での導入状況
中国地方で農業用施設を利用し、固定価格買取制度を活用して建設が進められてい
る、鳥取県下蚊屋地区の事例を示す。
農業用ダムから取水する導水管(下図青線)から、河川維持放流水をバイパスして
発電(下図赤線)する。
完成は 平成 27 年 3 月(予定)
。年間発電量は約 1,537,000kWh/年、全量売電で約
55 百万円/年の収入が得られる予定である。
図表 2-25
農業用施設の小水力発電事例-鳥取県下蚊屋地区
ダム管理所
洪水吐
ダム下流調圧水槽
放流設備
バルブ室
トンネル内
導水管
分岐部
下蚊屋ダム
水圧管路
通信ケーブル
発電所
発電計画
総落差(m)
56.95
有効落差(m)
51.04
最大使用水量(m3/s)
0.51
最大出力(kW)
197
年間可能発電電力量(kWh)
1,537,000
設備利用率 89%
発電所
地上式
水車形式
工
事
7.0m×8.8m
横軸フランシス水車
費(百万円)
【予定】(328.9)
kW 当り建設単価(千円/kW)
【予定】(1,670)
売電価格(百万円。35.7 円/kWh)
【予定】54.87
発電事業者
【予定】大山山麓地区土地改良区連合
地域用水環境整備事業(農山漁村地域
整備交付金)
補助事業名
-2-17-
(3)風力発電
風の持つ運動エネルギーを風力エネルギーとする。風力エネルギーの利用方法とし
ては、古くから、風車を回転させて動力を起こし、揚水や製粉へ用いることが行われ
てきた。最近では、この動力で発電機を動かして電力を得る風力発電が一般的になっ
ている。発電規模で次のように分類されている。
図表 2-26
風力発電の規模による分類
分類
超大型
大型
中型
小型
ミニ
マイクロ
規模
1,000kW程度以上
500kW程度~1,000kW程度
100kW程度~500kW程度
5kW程度~100kW程度
1kW程度~5kW程度
1kW程度未満
a.原理
風力発電は、「風の力」でブレード(風車の羽根)を回し、その回転運動を発電機
に伝えて電気を起こす。変換効率が比較的高く、風力エネルギーの最大 40%程度を電
気エネルギーに変換できる。風車の形状は数種類あるが、プロペラ型の発電効率が高
く実用化も進んでいる。
一般に、高度が上がるほど風は強くなるため、風車は高くて大きい方が発電効率は
良くなる。プロペラ型で定格出力 600kWの場合、タワーの高さは 40~50m、羽根の直
径は 45~50mで、1,000kWから 2,000kWの場合、タワーの高さは 60~80m、羽根の直径
は 60~90mが一般的となっている。
図表 2-27
プロペラ式風力発電システムの構成例
出典:「NEDO再生可能エネルギー技術白書」平成 25 年 12 月,NEDO
-2-18-
b.特徴(○メリット、●デメリット)
○設置コストの低下に伴い、民間も含めて日本で近年急速に導入が進んでいる。
○地域のシンボルともなり、「まちおこし」にも結びつくことが期待できる。
●定格出力が数 100kW以上の大型の場合、年間を通じて強い風力が必要である。
(一般的には、年間平均風速毎秒 6m以上が必要とされている)
●風車の設置場所までの搬入道路があり、近くに高圧送電線が通っていることが必
要。
●風車の回転で騒音が生じたり、景観に影響を与えたりするため、設置場所が限られ
る。
●出力が不安定であり、大規模発電設備が導入されると電力系統に影響を及ぼす可能
性がある。
c.技術開発の現状
風車の技術開発は、1970 年代のオイルショック以降、風車本体の基礎的研究開発
に始まり、発電コストの低減を大きな目的として、主に「大型化」「高性能化・高耐
久化」に向けた技術開発が進められてきた。現在、発電コストは 10 円/kWh前後まで
下がり、世界的に導入が進んでいる。
しかし、陸上における適地の減少から、今後設置コストや発電コストが上昇する可
能性もあり、さらなる低コスト化に向けて、超大型風車や洋上風車(着床式・浮体式)、
低風速風車に関する技術開発が行われているところである。また、発電容量の増大に
伴い、風力発電の系統連系に関する技術開発が必要となっている他、プロジェクトの
採算性を確保する観点から、風況・発電量予測技術の高度化も重要課題となっている。
加えて、周辺環境への影響の低減も重要である。
図表 2-28
世界の風車の大型化の推移
出典:「NEDO再生可能エネルギー技術白書」平成 25 年 12 月,NEDO
-2-19-
d.経済性
(a)システム価格
日本におけるシステム価格は陸上風力の場合 20~35 万円/kWとなっており、欧州の
約 17 万円や北米の約 16 万円と比較して高い水準にある。システム価格は 2004 年度
以降上昇傾向であったが、2009 年以降は下落傾向に転じている。この要因としては、
鋼材価格が下がったこと、供給不足が解消され始めたこと、製造業者間の競争激化等
とされている。
図表 2-29 世界の風力発電システム価格(2013 年)
システム価格(万円/kW)
場所
※1 ㌦=100 円で換算
世界
陸上
風力
11~26
出典
(1,100~2,600 ㌦/kW)
欧州
17 前後
(1,700 ㌦/kW)
Technology Roadmaps
北米
16 前後
(1,600 ㌦/kW)
Wind energy(2013,IEA)
中国
11 前後
(1,100 ㌦/kW)
日本
20~35
世界
36~56
(3,600~5,600 ㌦/kW)
洋上
英国
31 前後
(3,100 ㌦/kW)
風力
ドイツ
オランダ
47 前後
(4,700 ㌦/kW)
日本
28.3~70
「コスト等検証委員会報告書」
(2011,エネルギー・環境会議 コスト等検証委員会)
Technology Roadmaps
Wind energy(2013,IEA)
Technology Roadmaps
Wind energy(2009,IEA)
「コスト等検証委員会報告書」
(2011,エネルギー・環境会議 コスト等検証委員会)
出典:「NEDO再生可能エネルギー技術白書」平成 25 年 12 月,NEDO
(b)発電コスト
陸上風力は好条件が揃った場合で発電コストは約 10 円/kWhと、火力発電と同程度
の発電コストになり得るという試算結果が示されている。洋上風力については、9.4
~23.1 円/kWhと、陸上風力よりも送電線の敷設コストが高価になることを考慮して
試算されている。
-2-20-
e.山口県の導入状況
山口県における大型風力発電施設の設置状況を以下に示す。平成 15 年 11 月に稼動
を開始した「楊貴妃の里ウインドパーク」をはじめ、計 8 ヵ所 55 基の風力発電が現
在稼動しており、その出力は計 113,450kWで全国 9 位である。
図表 2-30 大型風力発電施設の設置状況(平成 25 年 3 月末時点)
No
事業者
施設名
ジェイウイン
ド株式会社
油谷風力発電
株式会社
株式会社大星
山風力エネル
ギー開発
中電プラント
株式会社
CEF 豊北ウイ
ンドファーム
株式会社
楊貴妃の里ウ
インドパーク
油谷風力発電
所
6
1
2
設置場所
長門市油谷
長門市油谷
大星山風力発
電所
平生町大星山
日置風力発電
所
長門市日置
CEF 豊北ウイ
ンドファーム
下関市豊北町
寺地
豊浦風力発電
株式会社
豊浦風力発電
所
下関市豊浦町
宇賀
7
平生風力開発
株式会社
8
株式会社きん
でん
平生風力発電
所
CEF 白滝山ウ
インドファー
ム
3
4
5
平生町大星山
下関市豊北町
白滝山
合計
出力(kW)
4,500
(1,500×3 基)
1,500
(750×2 基)
1,500
(1 基)
1,950
(1 基)
25,000
(2,500×7 基)
(1,500×5 基)
20,000
(2,000×10
基)
9,000
(1,500×6 基)
50,000
(2,500×20
基)
113,450
(55 基)
着工
稼動
H14.10
H15.11
H15.1
H15.8
H16.6
H16.11
H16.1
H17.4
H17.10
H19.2
H18.6
H19.3
H20.5
H21.4
H19.4
H23.3
出典:中国経済産業局ホームページ
平生町大星山
風力発電所
1,500kW
長門市油谷風力発電
750kW×2 基
-2-21-
(4)その他 -バイオマス
“バイオマス”とは、生物に由来する再生可能な資源で、生物(bio)
・資源の量(mass)
で示される。バイオマスには、家畜排せつ物等の廃棄物系、稲わら等の農作物非食用
部、間伐材等の未利用系など多種多様なものがあり、農山漁村では、「林地残材等の
木材」「畜産廃棄物」等による発電利用、熱利用が行われている。
図表 2-31
バイオマスのエネルギー利用
木を燃焼
植物からBDF
畜産ふん尿を
発酵しメタン
(CH4)を生成
a.木質バイオマス
(a)特徴
木は古くから燃料として利用されており、木質チップ(水分率:50%)の状態で約
2,500kcal/kg、乾燥した状態やペレットの状態で 4,000~4,500kcal/kgの発熱量を有
する良好な燃料となる。
森林国であるわが国では木質資源が豊富であり、木質バイオマス発電、熱利用ボイ
ラーなどが多く運用されている。
木質バイオマスのメリット(○)
、デメリット(●)
○地域内から製造されるバイオマス燃料を使用することは、海外から購入している化
石燃料からの代替を促し、地域内で資金と資源が循環することになる。
○地域資源の活用の増大により林産業が活性化し、森林では効率的な施業が必要とな
る。それに伴い森林の整備が進み、雇用の増大にも寄与する。
○製材副産物やこれまで放置されていた未利用間伐材等残材に対して、一定の価値が
付加され、単位当たりの木材価値が向上する。
●バイオマス資源は広く分散しており、収集・運搬にコストと手間がかかる。
●燃料となる木質資源の安定確保、調達コストが経済性に大きく影響する。
-2-22-
(b)山口県の取組
山口県では、未利用の森林資源の供給からエネルギー利用に至る森林バイオマスエ
ネルギー活用推進の取組を展開し、エネルギーの地産・地消に全国に先駆けて取り組
んでいる。
主な取組みとしては、木質チップの専焼発電や石炭との混焼発電のほか、公共施設
を中心に木質ペレットボイラーの導入を進めている。また、一般家庭向けペレットス
トーブの設置補助を一部の市町が導入し、徐々に設置台数も増加している。
図表 2-32
県内の森林バイオマス利用発電施設一覧
温水供給ペレットボイラー
燃
料
ペレットストーブ
チップ
ペレット加温機(試作品)
ペレット
間伐材
-2-23-
図表 2-33
県内の木質ペレットボイラー設置施設一覧
(平成 24 年度末時点)
年度
施
設
名
用
H15 岩国市本郷山村留学センター
途
出力(kw)
給湯・床暖房
30
H16 錦パレスホテル
県林業指導センター
給湯・温泉加温
冷暖房
349
150
H17 憩の家
清流の郷
岩国市錦ふるさとセンター
県花き振興センター
給湯・温泉加温
給湯・温泉加温
暖房
温室加温
349
349
116
280
冷暖房
給湯・暖房
給湯
給湯・冷暖房
床暖房
150
150×2
233
110×2
156
給湯
110
冷暖房
床暖房
84
40
プール水昇温
150
冷暖房
84
H18 県水産研究センター
県十種ヶ峰野外活動センター
県立こころの医療センター
安岡エコタウン
宇部市アクトビレッジおの
H20 美祢社会復帰促進センター
H21 山口市阿知須総合支所
山口市立徳佐小学校
H22 県きらら博記念公園水泳プール
H24 山口市阿東地域交流センター
合計
17施設
-
-2-24-
b.畜産廃棄物
(a)特徴
畜産廃棄物は廃棄物系バイオマスの中では最も量の多いバイオマスである。
図表 2-34
廃棄物系バイオマスの種類
畜
産
廃
棄
物…約 8800 万 t/年
食品廃棄物(生ゴミ等)…約 1900 万 t/年
下
廃棄物系バイオマス
水
汚
泥…約 7800 万 t/年
製 材 工 場 等 残 材…約 340 万 t/年
建 設 発 生 木 材…約 410 万 t/年
製
紙
残
さ…約 2700 万 t/年
出典:一般社団法人日本有機資源協会(2011)
畜産廃棄物の対象は、牛(乳牛、肉牛)、豚、鶏(産卵鶏、肉鶏)の 3 大家畜であ
るが、図表 2-35 のように飼育頭数に差があり、1 頭当たりの排泄量がことなる。
尿を除いた家畜ふんの水分量が、鶏ふんは 50~77%と低いので畜産廃棄物の中で
は利用価値の高いバイオマスである。家畜ふんの水分を除去した乾燥重量は、発生量
は概ね 300 万t/年で各家畜でほぼ同一となる。
図表 2-35
家畜ふん
水分(%)
家畜ふんの
乾燥重量
(年当り)
国内
山口県
乳牛
80~86
250 万 t
1,423,000
3,560
肉牛
78~86
250 万 t
2,642,000
15,700
豚
71~81
250 万 t
9,685,000
18,900
2
産卵鶏
50~77
320 万 t
133,085 千羽
1,460 千羽
0.025
項目
牛
鶏
家畜ふんの水分と飼育頭数
飼育頭数(*1)
1 頭当たり
排泄量
(t/年*2)
10
*1:H25 山口県特産調査表より
*2:バイオマスハンドブックより
-2-25-
(b)畜産廃棄物のバイオマスとしての活用技術
バイオマスとしての活用技術は、大きくマテリアル利用(原料・素材として利用)
と、エネルギー利用(利用しやすい形に変換し、燃料等に利用)がある。
エネルギー利用は、熱をかけて化学的な反応を進行させる「熱化学的変換」と、生
物の力によってエネルギーとして有用な物質を得る「生物学的変換」がある。
図表 2-36
バイオマスの活用技術
マテリアル利用(原料・素材として利用)
バイオマス
の活用技術
飼料・肥料
原料・材料
エネルギー利用(利用しやすい形に変換し、燃料等に利用)
熱化学的変換
直接燃焼(燃料利用)
ガス化
炭化
等
生物学的変換
メタン発酵
エタノール発酵
等
家畜ふんは、
「臭気がある」
「水分が高い」等が制約となり、バイオマス資源として
の一般的な活用は次の 3 方式となる(図表 2-36 の青記)
。
①飼料・肥料化
・従来より堆肥の製造等、農家で行われている。
②直接燃焼(燃料利用)
・家畜ふんのなかでも鶏ふんは水分が低いので、直接燃焼が可能。
③メタン発酵
・空気の無い状態で、メタン菌により有機物を発酵させ(嫌気性発酵)メタンを生成
し、生成したメタンガスで発電等を行う(“ドブ川“での発生ガスもメタン発酵)
。
-2-26-
(c)メタン発酵について
ア.原理
有機物は、放置しておくと微生物の働きで分解するが、図表 2-37 のように空気の
有無(好気性発酵、嫌気性発酵)により生成物が異なる。
有機物は空気中では、最終的には二酸化炭素と水に分解されるが、空気が無い状態
ではメタン菌により二酸化炭素とメタンに分解される。メタンは気体燃料であり、ボ
イラの燃料として熱利用、畜産廃棄物が 10t/日以上あれば、マイクロガスタービン・
ガスエンジンの燃料として、発電・熱利用も可能となる。
空気がある状態で分解され生成する固形物が堆肥である。
図表 2-37
空
有機物の分解
マイクロガスタービン、
ガスエンジン 30kW~
空気を遮断
気
二酸化炭素
有機物
有機物 分解
電気
分解
水
固形物
が堆肥
熱
二酸化炭素
メタン
ボイラー
燃料
空気中での
有機物の分解
(好気性発酵)
空気が無い状態での
有機物の分解
(嫌気性発酵)
畜産廃棄物
10t/日以上で
発電可能
熱
イ.発生エネルギー
畜産廃棄物のエネルギー利用は、メタン発酵によるメタンを燃料として活用するも
のである。
メタン発酵は、水分がある廃棄物でもエネルギー利用としてバイオマス資源を活用
できることが特徴で、メタン発生効率は、図表 2-38 のように廃棄物の種類により異
なっている。
図表 2-38
メタン発生効率
項目
畜産廃棄物
3
廃棄物 1t 当たりメタン発生効率
廃棄物 1t 当たり発生電力
施設内での電力・熱の自給に必要な廃棄物量
食品廃棄物
約 40~50Nm /t
約 100~120Nm3/t
約 5kW
約 9kW
30~50t/日
3~5t/日
・畜産廃棄物のふん尿は、家畜の体内で消化後の物質であるので有機物が少なく、食
品廃棄物に比較するとメタン発生効率は約 1/2 に低下する。
・施設内の設備の運用には、電気、熱が必要となるが、施設の電気・熱を自給するに
は、畜産廃棄物では 30~50t/日の廃棄物が必要となる。
-2-27-
(d)プラント導入事例
メタン発酵は、「前処理:発酵しやすくするための廃棄物の処理」、「メタン発酵」
「後処理:発酵後の液体・固体のざん渣を処理」の 3 工程で構成される化学プラント
である。
図表 2-39
メタン発酵の処理フロー
エネルギー
利用可能な
バイオマス
可採量の多い「生ごみ」他
「畜産系バイオマス」
「下水汚泥」
を利用
前処理
熱
後処理
排水処理施設
メタン発酵槽
生ごみ
電気
プラント
メタン発酵
破砕機
分別機
畜産系
バイオマス
ガス(燃料)
バイオガス
処理水
脱水汚泥
・下水道放流
・河川放流
・焼却処理
・埋立処分
下水汚泥
分別残さ
副生成物
消化液
ごみ袋を除去する前処理装置
液 肥
・ 大学, 研
究機関で
の利用
・農地利用
メタン発酵槽
堆 肥
堆肥化施設
残さを処理する
排水処理施設
ア.国内の発電プラント事例
畜産廃棄物 1t当たり発生するメタンをガスエンジンの燃料とすることで約 1kWの
発電能力があるが、プラント本体で約 30kWの電気を消費するので、太陽光のように
売電するには、50t/日以上の畜産廃棄物を要する。そのため、売電まで発電できるプ
ラントは、畜産廃棄物が多く得られ、発酵後の液体・固体のざん渣を農地に散布し肥
料として活用できる北海道にしかない。
イ.県内のプラント事例
山口県内では、次の 2 つのプラントが運用されている(詳細は次ページ参照)
①鹿野ファーム:豚ふん尿約 20t/日処理。発電、熱利用。
②やまぐち県酪乳業(株)
:乳製品廃棄物約 2t/日処理。熱利用。
両プラントとも、地元企業の(株)コプロスの地下に発酵槽を設置するメタン発酵プ
ラントである。鹿野ファームでは、ガスエンジンで発電しているが電気はプラントの
自己消費である。
-2-28-
①鹿野ファームプラントの概要
事業主体
施設名称
原料
システム
フロー
有限会社鹿野ファーム
有限会社鹿野ファーム
農場内の豚ふん尿
所在地
運転開始年
利用方法
山口県周南市大字鹿野中 34 番地 1
2005 年 7 月
電気、熱、堆肥
システムフロー
プラント全景写真
設備仕様
運転状況
効果
1.メタン発酵槽:70m3×2 基。地下に設置。メタン発酵槽等の処理槽の容積の大部分を地
下に設置するため、地上部の構造物が少なく、地上部の有効活用ができる。
2.ガスホルダー:50m3 ダブルメンブレン式
3.発電機:30kW マイクロガスタービン(コージェネレーションシステム)
1.省エネルギー
メタン発酵槽を地下に設置するので、スラリーを導入する際にポンプの水などを必要と
しないため省エネルギーである。
2.環境性
バイオガス発生量:156,585Nm3/年→原油換算で 61,000L/年に相当。CO2 142t/年の
削減
1.豚舎のふん尿によるバイオガスで発電。原油換算で 61,000L/年のエネルギー生成に相
当。CO2 142t/年の削減
2.液肥は牧草の肥料に、発酵ざん渣は牛舎のふん尿と混合し堆肥を生成
出典:株式会社コプロス
-2-29-
ホームページ
②やまぐち県酪乳業株式会社のプラントの概要
事業主体
施設名称
原料
システム
フロー
やまぐち県酪乳業株式会社
やまぐち県酪乳業株式会社
乳製品廃棄物、汚泥
所在地
運転開始年
利用方法
山口県下関市菊川町田部夢団地 1 番
2007 年
バイオガスのボイラ燃料利用
システムフロー
設備仕様
運転状況
効果
プラント全景写真
1.メタン発酵槽:φ3.0m×13m 容積 85m3×2 基を地下に設置。メタン発酵槽等の処理槽
の容積の大部分を地下に設置するため、地上部の構造物が少なく、地上部の有効活用が
できる。
2.ガスホルダー:50m3 ダブルメンブレン式
3.ボイラ:蒸発量 250kg/h ボイラ
1.省エネルギー
メタン発酵槽を地下に設置するので、スラリーを導入する際にポンプの水などを必要と
しないため省エネルギーである。
1.乳製品廃棄物と排水処理の汚泥からメタン発酵で生成したガスを蒸気ボイラ燃料とし
工場内の蒸気を供給
2.エネルギー回収と、廃棄物処理費削減で設備投資回収 3.3 年を検証
出典:やまぐち県酪乳業株式会社、株式会社コプロス
-2-30-
ホームページ
第3章
発電設備導入までの流れ
再生可能エネルギーによる発電設備の導入は、まず「構想・計画づくり(ステップ
Ⅰ)」で建設候補地、導入目的、発電量を検討し、「許認可申請(ステップⅡ)」を受
けて、「設計・工事(ステップⅢ)
」による設備完成・発電開始となる。
再生可能エネルギーによる発電は自然環境に左右されるため、確実な発電量が見込
まれるか「構想・計画づくり(ステップⅠ)
」の検討が重要となる。
また、太陽光発電では農地、小水力発電では河川水の利用等、既存の用地、資源を
利用する場合があるので、発電設備毎に「許認可申請(ステップⅡ)」も異なってく
る。
この「構想・計画づくり(ステップⅠ)」での検討、「許認可申請(ステップⅡ)」
がまとまれば、
「設計・工事(ステップⅢ)
」は通常のプラント建設と大きな差はなく、
発電設備の建設は問題なく進められる。
以後に各発電設備毎に発電設備導入のフローをまとめる。
-3-1-
1.太陽光発電
太陽光発電の導入は次のステップとなる。発電量は日照条件により異なるので「ス
テップⅠ
構想・計画づくり」において以下の留意が必要である。
①日照条件の確認
日射量は、NEDOの日射量データベース等で国内の各地点のデータがまとめられ
ている。これらデータにより正確な発電量を算定する。
②送電設備の確認
山間部等で日射量が高くても、発電した電気を送電する設備がない場合は、送電設
備の工事費を要することになる。近隣に送電設備があるかの確認が必要である。
図表 3-1
太陽光発電導入のステップ
ステップⅠ 構想・計画づくり
検討事項
①基本構想
• 候補地選定、送電設備の確認
• 周辺環境調査(積雪、塩害等)
• 日照条件、権利関係、法規制等調査
• 導入目的、事業主体、管理主体検討 等
②基本計画
• 技術的な検討-発電量の予測
• 経済的な検討-コスト算定、助成制度調査 等
ステップⅡ 許認可申請
ステップⅢ 設計・工事
ステップⅢと並行して事前協議、申請、
届出等を行う。()は報告書の参照ページ。
検討事項
③基本設計
• 地形測量、ボーリング調査
• 設置位置、角度の検討
• 概略図面作成、工事費算出
関連法規
申請内容
• 農地法(P4-8)
• 農振法
耕作放棄地等農地を利用
する場合に申請
• 土地改良法
(P4-13))
土地改良施設を利用する
場合に申請
④実施設計
• 施工図面、特記仕様書、設計書作成
• 許認可添付資料作成 等
• 補助金適正化
法
補助金により整備した施
設を利用する場合に届出
⑤工事発注・施工
• 土木工事(架台基礎、組立等)
• 電気工事(太陽光パネル据付、結線、連系設
備据付等)
• 試験調整 等
• 電気事業法
(P4-16)
その他関係法令
電気事業に関する申請
土壌汚染対策法、文化財保
護法等
運営・管理
-3-2-
等
2.小水力発電
小水力発電の導入は次のステップとなる。小水力発電は、水利権を有する流水を利
用するので、
「ステップⅠ
構想・計画づくり」
「ステップⅡ
許認可申請」において
以下の留意が必要である。
①流量調査
発電量は利用できる水量による。水量は季節変動がある、また水利権により利用で
きる水量に制約がある場合があるので、利用可能な水量により正確な発電量を算定す
る。
②河川法の許認可申請
小水力発電は、水利権を有する流水を利用するので、水利権者の利用に支障のない
開発が求められる。水利使用許可の申請、また大規模な土木工事を伴う場合は、運用
まで 2~3 年を要する場合がある。
図表 3-2
小水力発電導入のステップ
ステップⅠ 構想・計画づくり
検討事項
①基本構想
• 候補地選定
• 周辺環境調査(積雪、水害等)、流量調査
• 権利関係(水利権)、法規制等(河川法)調査
• 導入目的、事業主体、管理主体検討 等
②基本計画
• 技術的な検討-発電量の予測
• 経済的な検討-コスト算定、助成制度調査 等
ステップⅡ 許認可申請
ステップⅢ 設計・工事
ステップⅢと並行して事前協議、申請、
届出等を行う。()は報告書の参照ページ。
検討事項
③基本設計
• 地形測量、ボーリング調査、流量測定
• 水車、発電機設計
• 概略図面作成、工事費算出 等
関連法規
申請内容
• 河川法(P4-1)
流水の占用、工作物設
置の申請
• 土地改良法
(P4-13)
土地改良施設を利用す
る場合に申請
④実施設計
• 施工図面、特記仕様書、設計書作成
• 許認可添付資料作成 等
• 補助金適正化
法
補助金により整備した施
設を利用する場合に届出
⑤工事発注・施工
• 土木工事(取排水設備、水車・発電機基礎、
組立等)
• 電気工事(水車、発電機据付等)
• 試験調整 等
• 電気事業法
(P4-16)
その他関係法令
電気事業に関する申請
砂防法、文化財保護法等
運営・管理
-3-3-
3.風力発電
風力発電の導入は次のステップとなる。風力発電は、風況のよい場所として山間部
に設置の場合が多いので「ステップⅠ
構想・計画づくり」において以下の留意が必
要である。
①風況データの収集
発電量は風速により左右される。風況データは、NEDOの風況マップ等で国内の
各地点のデータがまとめられている。これらデータにより正確な発電量を算定する。
②環境影響評価(環境アセスメント)
・山口県では環境影響評価条例で風力発電所は 5,000kW以上が環境アセスメントの対
象となる(詳細については次ページ図表 3-4 を参照)。
・風力発電は風況の良い山頂に設置される場合が多く、次の評価が重要となる。
(a)騒音・電波障害:静穏な地域で風車を回転するので、騒音、電波障害が発生する。
(b)生態系への影響:風況の良い場所は、希少な鳥類の生息地も多く、風車の運転、
また工事により生態系に影響を及ぼす場合がある。
(c)景観:見通しの良い場所に高い風車を設置するので景観への影響が生じる。
・環境影響評価法に基づく調査、評価は、書類作成、現地調査で 2~3 年を要する。
図表 3-3
風力発電導入のステップ
ステップⅠ 構想・計画づくり
検討事項
①基本構想
• 候補地選定
• 風況データの収集、権利関係、法規制等調査
• 導入目的、事業主体、管理主体検討 等
②基本計画
• 技術的な検討-発電量の予測
• 経済的な検討-コスト算定、助成制度調査 等
③環境影響評価法に基づく調査、予測・評価(出力5,000kW以上)
・配慮書、方法書、準備書、評価書の作成
・現地調査
ステップⅢ 設計・工事
ステップⅡ 許認可申請
ステップⅢと並行して事前協議、申請、
関連法規
申請内容
届出等を行う。()は報告書の参照ページ。
• 電気事業法
(P4-16)
その他関係法令
電気事業に関する申
請
土壌汚染対策法、文化
財保護法等
検討事項
④基本設計
• 地形測量、ボーリング調査
• 風車設計(機種、台数)、発電機設計
• 概略図面作成、工事費算出 等
⑤実施設計
• 施工図面、特記仕様書、設計書作成
• 許認可添付資料作成 等
⑥工事発注・施工
• 土木工事(風車・発電機基礎、組立等)
• 電気工事(風車、発電機据付等)
• 試験調整 等
運営・管理
-3-4-
環境影響評価(環境アセスメント)制度について
・環境影響評価(環境アセスメント)とは、大規模な開発事業の実施前に、事業者自
らが事業による環境影響について調査、予測及び評価を行うとともに、その結果を
公表し、住民等の意見を聴き、環境保全に配慮しようとするための仕組みであり、
環境の保全を図る上で、極めて重要である。
・山口県では、平成9年に「環境影響評価法」が施行されたこと等を契機に、平成
10 年 12 月に「山口県環境影響評価条例」を制定し、平成 11 年 6 月から制度を運
用している。
図表 3-4
第 1 種事業※1
事業の種類
条例※3
水力発電所
火力発電所
発電所
環境影響評価の対象となる事業
出力
同左
3 万kW以上
出力
同左
15 万kW以上
地熱発電所
―
原子力発電所
すべて
風力発電所
環境影響評価法
出力
1 万kW以上
同左
出力
同左
1 万kW以上
第 2 種事業※2
条例※3
環境影響評価法
1.5 万kW以上
2.25 万kW以上
3 万kW未満
3 万kW未満
7.5 万kW以上
11.25 万kW以上
15 万kW未満
15 万kW未満
―
0.75 万kW以上
1 万kW未満
―
―
0.5 万kW以上
0.75 万kW以上
1 万kW未満
1 万kW未満
※1 第 1 種事業:必ず環境アセスメントを実施する事業
※2 第 2 種事業:環境アセスメントを実施するか否かを個別に判定する事業
※3 山口県では、平成 9 年に「環境影響評価法」が施行されたこと等を契機に、平成 10 年 12 月に「山口
県環境影響評価条例」を制定し、平成 11 年 6 月から制度を運用している
出典:山口県/環境政策課/環境影響評価制度・環境影響評価に係るお知らせについて
-3-5-
4.バイオマス
(1)木質バイオマス
a.
「ステップⅠ
構想・計画づくり」
木質バイオマスによるボイラーを導入するにあたっては、燃料の確実な確保、施設
規模に見合った機種選定が重要であるため、以下の留意が必要である。
①収集可能な木質バイオマス量の算定
間伐材等の利用では搬出・輸送に費用を有する。森林整備計画、季節変動等を考慮
し確実な木質バイオマスの搬出量に基づく木材の利用可能量の調整が必要である。
②燃料化施設への確認
燃料となる木質チップやペレットは、製造工場から搬入するため、安定供給の可否、
輸送方法、輸送コストについて、事前に把握することが必要である。
③導入規模の検討
どのような施設でどのように利用するのか検討の上、エネルギー収支計算に基づ
き、導入するボイラーの機種・規格を選定する。
b.
「ステップⅡ
許認可申請」
ボイラー設置にかかる許認可申請は、太陽光発電や小水力発電等とは異なり、大気
汚染防止法、山口県公害防止条例等の法令の規制を受けることになる。
図表 3-5
木質バイオマスプラントの適用法令
No
法令
施設の種類
許可
/届出
許可届出の必要な規模
1
大気汚染防
止法
ばい煙発生施設
(ボイラー)
届出
伝熱面積 10m2 以上、またはバーナー燃
焼能力重油換算 50L/h 以上
2
山口県公害
防止条例
指定工場
届出
摂氏零度一気圧に換算して硫黄酸化
物に係るばい煙発生・排出 10m3/h 以
上、または排出ガス量 40,000m3 以上
3
消防法
火気使用設備
貯留倉庫
届出
ボイラー設置
指定可燃物の貯留 10m3 以上
4
労働安全衛
生法
小型ボイラー
届出
貫流ボイラー伝熱面積 5m2 超え 10m2 以
下
※廃棄物処理施設扱いとなった場合には、別途「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
「ダイオキシン類対策特別措置法」による手続きが必要となる。
-3-6-
(2)畜産廃棄物
バイオガスプラントは生物反応処理のため機構がボイラよりも複雑となり建設費
が高価となる。そのため発電、熱供給による収益は見込めないので、エネルギー利用
よりも廃棄物処理のプラントとなる。
a.
「ステップⅠ
構想・計画づくり」
廃棄物処理プラントとして、「ステップⅠ
構想・計画づくり」において以下の留
意が必要である。
①収集可能な畜産廃棄物量の算定
牛・豚・鶏のふん尿を利用するので、プラントの運用には牛で 1,000 頭以上、鶏で
200,000 羽以上分のふん尿を必要とする。
ふん尿を提供する畜産農家の確保とともに、
輸送方法も検討し、畜産廃棄物の利用可能量の算定が必要である。
②残渣の処理方法の検討
バイオガスプラントでは、燃料となるメタンの生成とともに、反応の残渣として固
形物、廃液が発生する。これら残渣は、堆肥、液肥として利用は可能であるが、利用
先がなければ、廃棄物としての処理が必要となりプラントの建設費、ランニングコス
トの増加となる。計画にあたっては、残渣の処理方法の検討が必要である。
b.
「ステップⅡ
「ステップⅡ
許認可申請」
許認可申請」では、木質バイオマスと同様にNO.1~4 の法令のほか、
残渣の処理において“水質汚濁防止法”、ふん尿の臭気対策として“悪臭防止法”の
規制を受ける。
図表 3-6
No
法令
畜産廃棄物プラントの適用法令
規制の対象、内容
1
大気汚染防止法
2
山口県公害防止
条例
3
消防法
4
労働安全衛生法
5
水質汚濁防止法
排水のあるバイオマスエネルギー施設
6
悪臭防止法
都道府県が規制する地域で特定悪臭物質を発生する施設
図表 3-5 木質バイオマスプラントと同一
-3-7-
第4章
発電設備導入に必要な協議・手続
1.行政との協議
発電設備により発電するには、①発電設備を設置するための土地、発電のため水資
源の確保、②発電設備の設置、設置後の運用に、関連する法令による規制があり、次
のように申請が必要となる。
①発電設備を設置するための土地、水等資源の確保
河川法-小水力発電
農地法-太陽光発電
土地改良法-太陽光発電
等
②発電設備の設置、設置後の運用-電気事業法により全発電設備が対象
以下に、それぞれの法令をまとめる。
(1)河川法(対象:小水力発電)
a.申請項目
河川水は公共資産として様々な用途で利用されている。発電設備の設置は、本来の
目的外での使用となる。そのため、河川管理者へ河川水の使用と、設備の設置のため
次の申請・許可が必要となる。
-4-1-
(a)流水の占用-発電水利権の申請(河川法第 23 条)
・水力発電に利用するかんがい用水や河川水は利用目的があり、利用者が水利権(以
下*1 参照)を有する。流水の一部を、他目的の発電に使用する場合には、河川法
に基づく申請・許可が必要となる。
・発電水利権には、水量により①従属発電水利権と②発電水利権がある。
①従属発電水利権
・農業用水としてすでに許可を得ている水を利用する場合
・目的が異なるため水利使用の許可が必要
・水力発電を行う者が、農業用水の水利使用者と同じであっても必要
②発電水利権
・農業用水としてすでに許可を得ている水量を超えて発電に水を利用する場合は、
改めて水利使用の許可が必要となる
図表 4-1
従属発電水利権と発電水利権
農業用用水
発電使用水量
取水量
発電水利権
従属発電水利権
かんがい期
非かんがい期
*1:水利権について
河川の流水、湖沼の水を取水し利用できる権利の水利権には、慣行水利権と許可水
利権がある。
①慣行水利権:河川法等の法令により水利権が規定される以前に、取り決めに
より水の利用が認められていた事業者に許可される権利
②許可水利権:河川法に基づき、河川管理者の許可により生じる水利権
-4-2-
・すでに許可を得ている水を利用する“従属発電水利権”は、「申請書類の簡素化」
「水利使用許可権限の移譲」「総合特別区域法等による手続きの簡素化・円滑化」
により、申請の簡易化が図られている(H24.4.3「エネルギー分野における規制・
制 度 改 革 に 係 る 方 針 」 よ り 。 国 土 交 通 省 ホ ー ム ペ ー ジ
http://www.mlit.go.jp/river/riyou/syosuiryoku/
参照)
。
・「申請書類の簡素化」、
「水利使用許可権限の移譲」の概要は次のとおりである。
申請書類の簡素化
従属発電水利権取得の申請は、許可制から登録制(河川法第 23 条の 2)となり、
次のように申請書類の簡素化が図られた。水利権の取得の期間は約 1 ヶ月とできる。
従来の従属発電(許可)
標準処理期間5ヶ月(目安)
登 録
制
(法第23条の2の登録の申請のみの場合)
標準処理期間1ヶ月(目安)
申請添付書類(施行規則第11条)
申請添付書類(施行規則第11条の2)
発電計画の概要
発電計画の概要
使用水量の算出根拠
使用水量の算出根拠
発電所工事計画の概要
・工事工程表、位置図、水車発電設備一
般図、設置箇所写真、(実測平面図)
発電所工事計画の概要
・位置図、平面図、水車発電設備一般図、
設置箇所写真
従属元の同意書、従属元の水利使用規則
従属元の同意書、従属元の水利使用規則
他法令の手続実施状況・実施予定
・電気事業法手続き
不要
その他参考図書
・各種補助金利用予定を示す図面、広報
誌等
誓約書(行政処分を受けて2年以内に該当してい
ないことの誓約)
※登録においては、添付資料を明確にし、既定されているもの以外の図書の提出は求めない。
※河川区域内等に工作物を設置する場合は、河川法第24条、第26条第1項等に基づく図書が必要となる。
※新たに水路等を設置せず、既存の水路に直接発電設備を設置する場合は、平面図は省力可。
-4-3-
水利使用許可権限の移譲
1,000kW未満の小水力発電の水利使用については、一級河川指定区間は水利使用許
可権限が国土交通大臣から都道府県知事へ移譲された。
<一級河川指定区間>
【従
前】
【政令改正後】
発電水利使用の
許可権者
発電水利使用の
許可権者
1,000kw以上
1,000kW 以上
国交大臣
(特定水利使用)*1
1,000kw未満
1,000kW
未満
200kw以上
200kW
以上
知事又は
政令市長
国交大臣
[整備局長認可必要]
(準特定水利使用)
*2
〈 一級河川直轄区間 〉
整備局長
知事又は
政令市長
200kw未満
200kW 未満
(その他)
[整備局長認可不要]
※一級河川直轄区間や二級河川においては、関係行政機関の長への協議等関係手続を一部簡素化
*1・発電事業(最大発電量が 1000kW 以上)
・水道(最大取水量が 2,500m3/日以上または給水人口 10,000 人以上)
・工業(最大取水量が 2,500m3/日以上)
・かんがい(最大取水量が 1m3/s 以上またはかんがい面積 300ha 以上)
*2・発電事業(最大発電量が 200kW 以上)
・水道(最大取水量が 1,200m3/日以上または給水人口 5,000 人以上)
・工業(最大取水量が 1,200m3/日以上)
・かんがい(最大取水量が 0.3m3/s 以上またはかんがい面積 100ha 以上)
-4-4-
・慣行水利権を利用した従属発電用水利権の申請も、取水量の最低 1 年の確認により
登録制を適用とし、申請手続の簡素化・円滑化が図られた。
慣行水利権を利用した従属発電用水利権への登録制の適用
○慣行水利権の取扱い
・慣行水利権の取水量が必ずしも明確でない。
・非かんがい期等に慣行水利権以上に取水した場合、下流の河川環境や河川利水者等に影響
の可能性がある。
従属関係の明確化が必要
○登録の対象とする場合の手法
(慣行水利権と発電の従属関係の明確化)
・取水口の流量を最低 1 年間(最低半旬毎)観測し、慣行水利権届出書の範囲内であれば登
録。
(発電地点での流量観測の場合は、取水地点と発電地点との受益面積比、同時流量観測
による換算率等により取水量を推定すること)
(登録の期間)
・登録の期間は流量観測期間と同年。
(登録制では下流利水者の同意は不要であり、流量観測
が短いと、他の河川利用者への影響を払拭できないため)
・登録後の、取水口での取水量観測期間に応じて次回の登録申請における登録の期間を設定
可能(最長 10 年)。
(発電使用水量の報告)
・発電事業者には、発電地点での使用水量の観測と毎年の報告を義務づけ。
・取水地点の取水量観測は、義務とはしない。
ねらい:慣行水利権が多い中山間地域の農業水利施設を活用した小水力発電の導入の促進を
図る
取水口(慣行水利権)
受益地
取水量(慣行水利権取水口)
漁業者
利
水
者
用
水
路
小水力
発電所
発電最大使用水量
受益地
排水路
-4-5-
(b)土地の占用-発電設備の設置(河川法第 24,26 条)
発電設備設置のため、河川の敷地の土地を使用、工作物(発電設備)を設置する場
合も許可の申請をしなければならない。
図表 4-2
発電設備設置での河川法に基づく申請
流水の占用許可申請
河川法第23条の申請
取水のための工作物設置に係る
土地を占用する場合
河川法第24条の申請
工作物を設置する場合
河川法第26条の申請
b.申請先
図表 4-3
申請先
河川の種類
許可申請窓口
一級河川直轄区間
国土交通省山口河川国道事務所
一級河川指定区間
県の各土木建築事務所維持管理課
二級河川
県の各土木建築事務所維持管理課
準用河川、普通河川
市役所、町役場の河川部局
-4-6-
c.必要書類
山口県河川課ホームページからダウンロードで入手が可能。
(http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a18600/kanri/shinseisho.html)。
図表 4-4
河川法に基づく申請書類の様式(山口県ホームページより)
-4-7-
(2)農地法(対象:太陽光発電)
a.申請項目
太陽光発電設備を耕作放棄地を含む農地に設置する場合、農地法による農地転用申
請が必要となる。
なお、農地は食料供給の基盤であることから、農地の転用は農業生産に支障のない
範囲に制限され、第 2 種、第 3 種農地以外は原則転用が認められていない。
図表 4-5
区
分
農用地区域内農地
甲種農地
第 1 種農地
第 2 種農地
第 3 種農地
農地の区分と農地転用の許可
営農条件、市街地化の状況
許可の方針
市町村が定める農業振興地域整備計 原則不許可(農振法第 10
画において農用地区域とされた区域 条第 3 項の農用地利用計画
内の農地
において指定された用途
の場合等に許可)
第 1 種農地の条件を満たす農地であ 原則不許可(土地収用法第
って、市街化調整区域内の土地改良事 26 条の告示に係る事業の
業等の対象となった農地(8 年以内) 場合等に許可)
等特に良好な営農条件を備えている
農地
10ha 以上の規模の一団の農地、土地 原則不許可(土地収用法対
改良事業等の対象となった農地等良 象事業の用に供する場合
好な営農条件を備えている農地
等に許可)
鉄道の駅が 500m 以内にある等市街地 周辺の他の土地に立地す
化が見込まれる農地又は生産性の低 ることができない場合等
い小集団の農地
は許可
鉄道の駅が 300m 以内にある等の市街 原則許可
地の区域又は市街地化の傾向が著し
い区域にある農地
-4-8-
b.申請先
申請先は、農地の面積により異なる。4haを超える場合は知事を経由して農林水産
大臣、4ha以下は知事の許可が必要となる。ただし、許可権限を移譲した市町では、
2ha以下は農業委員会の許可となる。
図表 4-6
農地転用の許可(山口県農林水産部団体指導室ホームページより*1)
◆農林水産大臣の許可
(農地が4ヘクタールを超える場合)
◆知事の許可
(農地が4ヘクタール以下の場合)
◆農業委員会の許可
(農地が2ヘクタール以下の場合・農地法に基づく許可権限等を移譲した市町のみ)
(*1:ホームページアドレス
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a171001/noutiseido/nouchi-index.html)
-4-9-
2ha以下の知事の許可については、次の市町には権限が委譲されている。
図表 4-7
農地転用の許可を県知事から委譲された市町
市
町
移譲年月日
山口市
平成 21 年 4 月 1 日以降
萩市、阿武町
平成 22 年 4 月 1 日以降
宇部市、周南市、山陽小野田市
平成 23 年 4 月 1 日以降
下松市、光市、柳井市、和木町
平成 24 年 4 月 1 日以降
美祢市
平成 25 年 4 月 1 日以降
(山口県農林水産部団体指導室ホームページより
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a171001/noutiseido/nouchi-index.html)
c.農地の再生可能エネルギー利用に向けた動き
農業用施設での再生可能エネルギーの導入の普及を図るため、次の施策が実施され
ている。
-4-10-
(a)営農継続型太陽光発電設備等について
近年、支柱を立てて営農を継続するタイプの太陽光発電設備等が技術開発されて実
用段階となっている。
これら発電設備については、
「下部の農地で農業生産が継続されること」
「周辺の営
農に影響を与えないこと」を基本として、平成 25 年 3 月 31 日に、支柱の基礎部分は
3 年間の一時転用が許可された。農業生産に影響がないかについては、年1回の報告
によりチェックを受けることになる。
図表 4-8
営農継続型太陽光発電設備について
営農継続型太陽光発電設備等について(H25.3.31 農林水産省通知)
①
一本脚タイプ
支柱の基礎部分について、一時転用許可の対象とする。
一時転用許可期間は3年間(問題がない場合には再許可可能)。
② 一時転用許可に当たり、周辺の営農上支障がないか等をチェッ
ク。
③ 一時転用許可の条件として、年に1回の報告を義務付け、農産
物生産等に支障が生じていないかをチェック(著しい支障があ
る場合には施設を撤去して復元することを義務付け)。
屋根タイプ
次に掲げる場合については、営農の適切な継続が確保されていないと判断される。
①下部の農地における単収が、同じ年の地域の平均的な単収と比較しておおむね 2 割以
上減少している場合
②下部の農地において生産された農作物の品質に著しい劣化が生じていると認められ
る場合
③農作業に必要な機械等を効率的に利用することが困難であると認められる場合
-4-11-
(b)農山漁村再生可能エネルギー法
平成 25 年 11 月 22 日に農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー
による発電の促進に関する法律(農山漁村再生可能エネルギー法)が公布された。
この法律は、農村地域の資源を農業との調和を図りながら再生可能エネルギーによ
る発電に活用し、売電収益の地域還元や発電した電気の地域利用等を通じ、農業・農
村の所得向上等による地域の活性化に結び付けることを目的としている。
図表 4-9 のように、市町村、発電事業者、農業者等の関係者から構成される協議会
の設置等を通じ、地域主導による計画的な再生可能エネルギー発電設備の整備を推進
する枠組みが示されている。
図表 4-9
農山漁村再生可能エネルギー法
農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電
の促進に関する法律:農山漁村再生可能エネルギー法(H25.11.15成立)
法律の狙い
農村地域の資源を農業との調和を図りながら再エネ発電に活用し、売電収益の
地域還元等を通じて、農業・農村の所得向上等による地域活性化に結び付ける。
-4-12-
(3)土地改良法(対象:主に小水力発電)
農業用水路などの土地改良施設を利用して小水力発電設備を設置する場合、次の手
続・承認が必要となる。
a.申請項目
(a)他目的使用等の許可手続き
土地改良施設本来の用途・目的と異なるため、施設所有者の承認を得て、施設管理
者と契約を締結する。
(b)他目的使用料
他目的使用に際し、既定の他目的使用料の負担が必要となる。
b.申請手続き
申請の流れ、手順は次のとおりである。
図表 4-10
申請の流れ・手順
(申請の流れ)
他目的使用申請者
(小水力発電を行う者)
・土地改良区
・市町
・民間企業 など
①申請
②申請
施設管理受託者
④契約
施設所有者
③承認
・土地改良区
・県
など
・国(農林水産省)
・県
・土地改良区 など
出典:「再生可能エネルギー導入の手引き」日本水土総合研究所 (申請の手順)
①施設管理受託者に他目的使用の申請を行う(小水力発電を行う者)
②施設管理受託者は、施設所有者に他目的使用の申請を行う
申請書に関係図面、管理委託協定書、他目的使用契約書(案)、管
理受託者の意見書を添付
③施設管理者は、管理受託者からの申請書を審査したのち、承認を行う
④他目的使用申請者と管理受託者が契約を結ぶ
c.申請先
申請先は、農業水利施設を管理する土地改良区となる。
-4-13-
(4)電気事業法
発電設備は、電気工作物として電気事業法の適用を受ける。これに伴い、経済産業
省への申請、電力会社との協議が必要になる(詳細は「2.電力協議」4-16 ページ
参照)。
(5)その他
その他発電設備を設置する場合、適用を受ける法令として次の法令がある。
図表 4-11
想定されるその他の関係法令
①自然公園法
国立公園、国定公園及び県立自然公園の 3 種類の自然公園に発電施設を建設する場
合、自然公園対象地域に応じた規制に従い許可が必要
②鳥獣保護及び狩猟に関する法律
特別鳥獣保護地区内で建築、水面の埋め立て、木竹の伐採等をする場合、指定の種
類により環境大臣または県知事の許可が必要
③文化財保護法
発電施設建設時に遺跡と認められるものを発見した場合、現状を変更することな
く、市町教育委員会に届け出ることが必要(遺跡があると予想される場合には、事
前に確認することが望ましい)。また、史跡、名勝、天然記念物の現状を変更する
場合も許可が必要
④土地収用法
公共の利益となる事業について、土地等の収用または使用に関し規定
⑤農業振興地域の整備に関する法律
計画地が、農用地区域の指定を受けている場合、市町に申請し、県知事の農業振興
地域整備計画の変更案の同意が必要
⑥森林法
森林において開発行為を行う場合、県知事の許可が必要。また、保安林を解除する
場合は、農林水産大臣または県知事の許可が必要
⑦国有林野法
国有林内で開発を行う場合、伐採許可や国有林や売払申請、貸付申請が必要
⑧水産資源保護法
保護水面において工事をする場合、水面を管理する県知事または農林水産大臣の許
可が必要
-4-14-
⑨国土利用計画法
規制区域内の土地で所有権、地上権、賃借権の移転または設置の契約をする場合、
許可の内容を変更して契約する場合は県知事の許可が必要
⑩国有財産法
道路法の適用を受けない道路や河川法の適用を受けない普通河川・水路・ため池な
ど国有財産で他の法律の適用のないものについて、他の目的に用いる場合は、用途
廃止及び払い下げ処分を受けることが必要
⑪砂防法
計画地が砂防指定地である場合、県知事または所管土木事務所長に対して許可申請
を行うことが必要
⑫地すべり防止法
計画地が地すべり防止地域内である場合、工事に際し県知事に対して許可申請を行
うことが必要
⑬建築基準法
発電所の建物の建築に際し、県知事または市長に建築確認申請が必要
-4-15-
2.電力協議
発電設備は①電気事業法の適用を受け、その中で②電気工作物として、工事・維持・
運営の規制をうける。そのため、経済産業省、電力会社への申請・協議が必要となる。
①電気事業法
電気事業の運営の適正化、電気の利用者の利益の保護、電気事業の健全な発展を目
的に、電気工作物の工事・維持・運営を規制することにより、公共の安全・環境の
保全をはかる。
②電気工作物
発電・変電・送電・配電、または電気の使用のために設置する「機械」
「器具」
「ダ
ム」
「水路」
「貯水池」
「電線路などの工作物」
。
さらに、FIT(固定価格買取制度)により、電力会社の送電設備を利用する場合は、
電力会社への申請・協議が必要となる。
(1)申請の概要
申請のフローは以下となる。売電する場合は、中国電力(株)の送電系統に接続する
ことになる。そのため、発電設備等を設置する場合の電気事業法の申請のほかに、別
途の手続きとして、図表の“1.接続検討”
“2.①設備認定”が必要となる。
図表 4-12
電力協議のフロー
一般用電気工作物
電力会社
自家用電気工作物
1.接続検討
2.①設備認定
2.①設備認定
2.②電気主任技術者
選任
経済産業省
2.③工事計画届提出
工事開始/竣工
2.④保安規定提出
使用開始
-4-16-
*1:一般用電気工作物
・電圧が小さく安全性の高
い電気工作物
(a)太陽光:出力50kW未満
(b)小水力:出力20kW未満
(ダムを伴うものを除く)
(c)風 力:出力20kW未満
*2:自家用電気工作物
・電気事業の用に供する事
業用電気工作物(電力会社
等)以外の事業用工作物
電気工作物は、図表 4-13 のように出力等により、一般用電気工作物と、自家用電
気事電気工作物に分けられ手続きが異なる。
発電設備は、小出力発電設備が一般用電気工作物、小出力発電設備以外が自家用電
気工作物となる。
(a)一般用電気工作物
手続きが簡易であり、“設備認定”をうければ他の申請は不要で、電力会社に売電
できる。
(b)自家用(事業用)電気工作物
“設備認定”ほか、電力会社に“接続検討”
、図表 4-12 の経済産業省への申請の“2.
②電気主任技術者選任”
“2.③工事計画届”
“2.④保安規定提出”が必要となる(「
(3)
経済産業省-b.電気工作物の設置に伴う申請」4-22 ページ参照)
。
図表 4-13
項目
定義
電気工作物の区分
一般用電気工作物
自家用電気工作物
・600V 以下で受電する需要設備又は小 事業用電気工作物のうち、電気
出力発電設備で、構外にわたる配電線 事業の用に供する電気工作物
路を有さない設備
以外のもの
・小出力発電設備以外の発電設備がない 例)工場・ビル等の 600V を超
等安全性の高い電気工作物
えて受電する需要設備(発電所
例)一般家庭、商店、小規模事業所等の も含まれる)
屋内配線等、家庭用太陽光発電・燃料
電池発電等の小出力発電設備
対象設備
一般家庭、商店、小規模事業所等の屋内 ①電力会社等から 600Ⅴを超え
配線等、家庭用太陽光発電・燃料電池発
る電圧で受電して電気を使
電等の小出力発電設備
用する設備
小出力発電設備の区分
②小出力発電設備以外の発電
①出力 50kW 未満の太陽電池発電設備
設備とその発電した電気を
②出力 20kW 未満の風力発電設備
使用する設備
③出力 20kW 未満の水力発電設備(ダム ③電力会社等からの受電のた
を伴うものを除く)
めの電線路以外に構外にわ
④出力 10kW 未満の内燃力を原動力とす
る火力発電設備
たる電線路を有する電気設
備
⑤出力 10kW 未満の燃料電池発電設備
-4-17-
(2)電力会社
a.申請項目-接続検討
電力会社の系統の送電設備を利用し売電するので、電力会社の設備に影響は無い
か、利用者に供給する電力の品質に影響を及ぼさないかの検討のため“接続検討”が
必要になる。申請のフローは次のとおりである。
接続検討は、発電容量が 50kW以上の高圧連系(*1)が対象となる。
図表 4-14 接続検討のフロー(1/2)
(手続きの流れ)
高圧連系 (50kW以上)
事業者の電力会社に対する協議
∗
低圧連系 (50kW未満)
●事前相談(必要な場合)
・配電線の空容量等を確認。系統連系の可否、
連系可能な発電機容量が判明
●接続検討申し込み
・事前検討で、系統連系に必要な工事期間、工
事費を算定
・1件につき、20万円の費用支払い(消費税抜)
低圧連系では接続検討(事前相談)は不要。
しかし、送電設備が近隣にない場合には、低圧連
系でも電柱等の敷設で工事負担金を要する場合
がある。
工事負担金の要否は中国電力営業所に確認の
こと。
●接続検討の実施
・所要時間 約3か月程度
・系統連系に係る諸条件、工事期間、工事費負
担金の見積額が判明
●電力購入契約、系統連系の申込書提出(契約者:事業主体)
・系統連系申込書、電力購入契約申込書を提出(国の設備認定通知書(写)も提出)
●契約締結
・系統連系契約及び電力購入契約の締結
●契約締結
・電力会社より案内送付
●工事費負担金支払い
・入金後に工事着手
・工事期間は2~3ヶ月程度
●工事費負担金支払い
・入金後に工事着手
・工事期間は高圧連系よりは短期
●受給開始
・設備工事完了後、電力需給を開始
*1:電力の受電では、電力消費する機器の容量が 50kWを越えると、高圧受電となり、6,600Vの高圧配
電線から受電するためキュービクルが必要となる。高圧連系は高圧配電線に接続するので、キュービク
ルが必要となる。また自家用電気工作物となり電気主任技術者等の資格が必要となる(4-23 ページ参照)
-4-18-
b.接続検討の留意点
申請にあたっては次の留意が必要である。
留意点
① 接続検討は高圧連系が対象。費用を 20 万円(税抜)要する。期間は約 3 カ月
② 設備認定(経済産業省への申請)が必要となる。設備認定は低圧連系でも必要
③ ①の設備認定、②の接続検討が不要で、系統連系の接続の可否を審査する無料の
「事前相談」も受けられる
④ 低圧連系でも、山間部等で隣接して電柱等の送電設備が無い場合は、電柱の敷設
等の工事費(工事負担金)を要する場合がある。低圧連系では接続検討で工事負担
金を確認できないので、工事負担金の有無については営業所に相談し確認のこと
以上をまとめた中国電力(株)の申請フローは以下となる。
図表 4-14 接続検討のフロー(2/2)
*1
事前相談(任意)
電
力
会
社
事
業
者
相
談
受
付
簡
易
検
討
結
果
回
答
*2
接続検討・設備認定
検
討
受
付
検討期間
標準1ヶ月
事
前
相
談
申
込
国
詳
細
検
討
連系申込~受給契約・連系
結
果
回
答
連
系
受
付
検討期間
標準3ヶ月
確
認
結
果
受
領
接
続申
検込
討
検
討受
結領
果
設
備申
認請
定
認
受
定
領
書
受
付
審
査
認
定
連
系
申
込
内
容
確
認
連
系
承
諾
書
発
行
連
系
承
諾
書
受
領
接続検討結果を踏まえ、必要
とされた対策工事を申込に反
映していただくことが必要
*1:接続可否の簡易な検討
工実
事施
工
事
補
償
金
契
約
完
成
・
連
系
開
始
工実
事施
連系承諾書により当該
設備の連系が確定
*2:20 万円(税抜)要
c.申請先
中国電力(株)お客さまサービス本部
http://www.energia.co.jp/elec/seido/kaitori/tetsuduki_jigyo.html
-4-19-
受
給
契
約
締
結
(3)経済産業省
経済産業省の申請は、電力会社への売電に伴う“2.①設備認定”と電気工作物の設
置に伴う申請がある。
a.設備認定
固定価格買取制度で電力会社に売電するためには、適正な法令に定める要件に適合
した発電設備であるかの認定が必要となる。
(a)設備認定の条件
設備認定の条件は次のとおりである。
①所期の性能が保持される保証またはメンテナンス体制があること
②電気の量を適正に計量できること
③発電設備の内容が具体的に特定されていること
④設置費用内訳、運転費用内訳が記録され、毎年度提出すること
⑤発電機の出力が 3 万kW未満であること
⑥揚水式発電でないこと
(b)申請のフロー、留意点
設備認定の申請のフローは図表 4-15(次ページ)となる。以下の留意が必要であ
る。
留意点
①設備認定は、一般用電気工作物も申請が必要
②申請から認定まで約 1 カ月を要する
③設備設置後は、設置コスト運転費用年報の提出が必要
(c)申請先
中国経済産業局
-4-20-
図表 4-15
設備認定の申請のフロー
出典:資源エネルギー庁ホームページ
太陽光発電設備の導入も多いこともあり、申請手続きは資源エネルギー庁のホーム
ページで公表されており、50kW未満の太陽光(一般用電気工作物)は電子申請となっ
ている。
-4-21-
b.電気工作物の設置に伴う申請-電気主任技術者選任、工事計画届、保安規定
(a)適用法規
電気事業法により、売電の有無にかかわらず自家用(事業用)電気工作物について
は、①電気主任技術者の選任、②工事計画届、③保安規定の届出が必要になる。これ
ら手続きは次の法規による。
①電気主任技術者
電気工作物の工事、維持・運用に関する保安監督者。第 1 種~3 種までの電気主任
技術者資格が必要
②工事計画届
発電設備の図面・計算書、工事工程等をまとめた届出書
③保安規定
電気工作物の工事、維持・運用に関する規定
図表 4-16
電気事業法の法規
・保安規定の届出(法第 42 条、規則第 50 条)
事業用電気工作物の開始前に、保安規定の経済産業大臣への届出が必要
・主任技術者の選任(法第 43 条、規則第 52 条)
電気主任技術者及びダム水路主任技術者を選任し、経済産業大臣への届出が必要
・工事計画の事前提出(法第 48 条、規則第 65 条)
事業用電気工作物の設置又は変更の工事の際は、工事計画の経済産業大臣への届出
が必要。その届出が受理された日から 30 日を経過した後でなければ、その届出に
係る工事を開始してはならない
なお、小水力発電でダムを利用、または出力 200kW以上、または最大使用水量 1m3/s
以上の発電施設においては、電気主任技術者とともにダム水路主任技術者が必要とな
る。
ダム水路主任技術者
水力発電所において電気事業法に規定する主任技術者として選任された者のうち、
水力設備に係る保安の監督を行う者
-4-22-
(b)申請内容
対象となる自家用(事業用)電気工作物の発電出力により申請内容が異なっている。
再生可能エネルギーによる発電設備は、電力会社等の一般電気事業者に比較し発電
出力・事業主体も小規模となることから、主任技術者の要件については、次の条件の
緩和が定められている。
①許可主任技術者の選任
・出力 500kW未満の発電設備については、主任技術者免状を有する以外の技術者を、
申請により選任許可の電気主任技術者、ダム水路主任技術者(許可主任技術者)とで
きる
②電気主任技術者の兼任
・出力 2,000kW未満の発電設備については、電気主任技術者業務を兼任できる
③電気主任技術者業務の外部委託
・出力 1,000kW未満の発電設備については、電気主任技術者業務を電気保安協会等の
電気主任技術者免状を有する技術者に外部委託できる
・業務を委託された受託者は、電気工作物の「みなし設置者」とされる
ダム水路主任技術者については②の主任技術者の兼任、③の主任技術者業務の外部
委託の制度はなく、選任が必要である。
図表 4-17(1)
自家用(事業用)電気工作物の申請の内容:太陽光
項目
50~500kW
未満
500~1000kW
未満
1000~2000kW
未満
2000kW
以上
要否
要
要
要
要
選任
○
○
○
○
許可主任
技術者
○
×
×
×
兼任
○
○
○
原則×
外部委託
○
○
×
×
保安規定
要
要
要
要
工事計画
不要
不要
不要
要
出力
電
気
主
任
技
術
者
自家用(事業用)電気工作物:太陽光
-4-23-
図表 4-17(2)
自家用(事業用)電気工作物の申請の内容:小水力発電
項目
自家用(事業用)電気工作物:小水力発電
ダム
ダム無
ダム有
出力
20~200kW
未満
または 200kW~
最大使用水量
1m3/s 未満
または 1m3/s 以上
区分
電気主任技術者
電気主任技術者
ダム水路主任技
術者
主
要否
要
要
要
任
選任
○
○
○
技
許可主任技
術者
○
兼任
○
外部委託
○
術
者
○
出力 500kW 未満
○
出力 2,000kW 未満
○
出力 1,000kW 未満
保安規定
要
要
工事計画
不要
要
×
×
なお、一般電気工作物(太陽光発電設備の 50kW未満、小水力発電設備の 20kW未満)
はこれら申請は不要である。
-4-24-
(c)「みなし設置者」として県土連の「電気主任技術者」の活用について
・
「みなし設置者」、
「兼任」の制度を活用することにより、複数の土地改良区が管
理する小水力発電施設の電気主任技術者として、都道府県土地改良事業団体連
合会(以下「県土連」という)職員を選任することが可能である。
・県土連が有する技術力を活用することにより、会員である土地改良区が管理す
る農業用水路等を活用した小水力発電の促進が可能となる。
ア.みなし設置者について
(ア)みなし設置者とは
・本来の発電施設設置者(土地改良区)から、電気設備に係る保安・監督の業務を受託
する者(県土連)は、設置者とみなして電気主任技術者の選任などを行うことができ
る。
(イ)みなし設置者(県土連)ができること
①県土連職員を電気主任技術者として選任
②保安規定の届出
など
(ウ)みなし設置者(県土連)がやるべきこと
①経産省が定める技術基準に発電施設が適合するよう維持すること
②経産省による報告徴収、立入検査への対応
など
(エ)県土連がみなし設置者となるためには
・本来の発電施設設置者(土地改良区)と県土連の間で、以下の事項が協定等で約さ
れていること
①発電施設の管理に従事する者(改良区)は、電気主任技術者(県土連)の指示に
従うこと
②電気主任技術者は、発電施設の保安・監督の職務を誠実に行うこと
③発電施設の保安に係る業務区分(改良区と県土連の役割分担)
(オ)電気主任技術者として選任されるための資格
①第 3 種以上の電気主任技術者の資格を有していること
②500kW未満の場合は、第 1 種電気工事士または高校電気科卒以上、100kW未満の場
合は、第 2 種電気工事士または高専・高校卒以上の一般電気工学履修者以上でも可
-4-25-
(カ)電気主任技術者の勤務地
・電気主任技術者として選任される県土連職員の常時勤務地は、発電施設又は土地改
良区事務所でなく、県土連事務所とすることが可能
イ.兼任制度について
(ア)複数施設の兼任
・第 3 種以上の電気主任技術者の資格を有している者は、最大 5 箇所まで兼任(当初
選任された施設を含め 6 箇所まで担当)することが可能
・ただし、常時勤務地又は自宅から発電施設まで 2 時間以内に到達できること
(d)申請先
経済産業省 中国四国産業保安監督部
-4-26-
第5章
発電設備導入スケジュール
前章までの、発電設備導入までの流れ、発電設備導入に必要な協議・手続をまとめ
た、再生可能エネルギーによる太陽光発電、小水力発電設備の導入スケジュールを図
表 5-1、5-2 に示す。
図表 5-2 の小水力発電設備については、ダム発電も参考に示す。
-5-1-
-5-2-
は必要に応じて実施する項目
「設備認定」
4-20ページ
【経済産業省:中国四国産業保安監督部】
「系統連系・電力販売協議」
4-18ページ
可
能
性
調
査
等
事
業
選
択
事前相談
設備認定
◇各種協議・調整
(1)他目的使用
基
本
設
計
実
施
設
計
認
接続検討
定
多目的使用申請
施設所有者
農業委員会
知事
農林水産大臣
連係受付審査
(法42 則50 )
保安規定の届出
【主任技術者の専任要件】
50kW以上
(法43‐1 則52)
主任技術者の届出
(法48‐1 則65‐1一号)
工事計画の事前届出
土地改良施設
農地 2ha以下
農地 4ha未満
農地 4ha以上
1年程度
理
受
※
工
事
着
工
可
許
工
事
完
成
需給契約締結
※受理後30日で着工可
工
事
発
注
( )
【中国電力(株)お客様サービス本部】
【経済産業省:中国経済産業局】
「電気事業法に基づく手続」
4-16ページ
「農地法、適化法等に基づく手続」
(他目的使用、改築追加工事等)
4-8ページ
【農林水産省等】
「調査・設計・施工」
【事業主体】
年(詳細は朱記のページ参照)
図表5-1 太陽光発電施設の協議等 スケジュール(実施例)
始
開
電
発
1.太陽光発電
-5-3-
は必要に応じて実施する項目
「設備認定」
4-20ページ
【経済産業省:中国四国産業保安監督部】
「系統連系・電力販売協議」
4-18ページ
可
能
性
調
査
等
事
業
選
択
事前相談
設備認定
◇各種協議・調整
(1)改築追加
(2)他目的使用
(3)国営水利使用
◇水利使用の予備協議
(国道交通省出先事務所)
基
本
設
計
実
施
設
計
認
接続検討
工事計画の事前届出
許
可
・
同
意
可
許
定
連係受付審査
(法42 則50 )
保安規定の届出
【主任技術者の専任要件】
20kW以上
(法43‐1 則52)
主任技術者の届出
(法48‐1 則65‐1一号)
他利水者との調整
国営水利使用調整
〈水利権取得に関連〉
多目的使用申請
改築追加申請
・水利使用許可申請 河川法
23条
・土地の占有 河川法24条
・工作物の設置 河川法26条
1~3年
工
事
着
工
可
許
工
事
完
成
需給契約締結
※受理後30日で着工可
※
理
受
関係知事(36条)
河川管理者
関係省庁(35条)
工
事
発
注
( )
【中国電力(株)お客様サービス本部】
【経済産業省:中国経済産業局】
「電気事業法に基づく手続」
4-16ページ
「土地改良法、適化法等に基づく手続」
(他目的使用、改築追加工事等)
4-13ページ
【農林水産省等】
「河川法に基づく手続」
(従属水利権協議)
4-1ページ
【国土交通省】
「調査・設計・施工」
【事業主体】
年(詳細は朱記のページ参照)
工
事
発
注
法50の2、 則73の2一号
出力3万kW以上又は
ダム高さ15m以上
出力3万kW未満で、
ダム高さ15m未満
使
管用
理前
審安
査全
申
請
使
用
前
自
主
検
査
使
安用
全前
管
理
審
査
完
成
検
査
法50の2、
則73の6二号
工事変更届出書提出
完
成
検
査
申
請
法50の2‐3、 法50の2、
則73の3 則73の3一号イ
法30‐1に該当しないもの
(法30‐1)
工
事
着
工
参考:ダムでの発電は以下追加
・高さ15m以上のダム
・兼用工作物
・堤防を開削して設置される工作物
図表5-2 小水力発電施設の協議等 スケジュール(実施例)
使
用
前
自
主
検
査
格
合
法50の2、
則73の3一号ロ
工
事
完
成
始
開
電
発
2.小水力発電
第6章
活用できる補助事業
1.補助制度・融資制度
(1)補助制度
a.補助の概要、条件
石油等の化石燃料に比較しエネルギー密度の低い再生可能エネルギー発電設備は、
発電出力に対し初期費用が高額となる。
そのため国では導入推進のため、再生可能エネルギー導入の目的である「省エネ」
「環境保全」「地域振興」に対応し、関連する各省庁から補助制度により発電設備導
入の支援を行っている。
なお、固定価格買取制度の施行に伴い、国の民間向け補助制度については原則的に
廃止され、農業基盤整備や自治体向けなど限定された条件となっている 。
①農林水産省 http://www.maff.go.jp/j/aid/
・農林水産省の補助制度は、農業あるいは農村地域の振興を目的とする。
・対象は市町村、農協や土地改良区など農業関連団体を助成する。
・売電収入の使途について制約がある。
②経済産業省 http://www.enecho.meti.go.jp/
・経済産業省の補助制度は、平成 22 年度以前に認定された事業に対する後年度補助
のほか、発電施設の技術開発に主眼を置いた事業等に限定されている。
③環境省 http://www.env.go.jp/
・環境省の補助制度は、地球温暖化対策の一環として実施。
・民間企業単独ではなく、地方公共団体や地域と一体となった地域の低炭素化の取り
組みが対象となっている。
補助制度については年度ごとに変更があるため、最新の情報を得ることが必要であ
る。
b.本年度の補助
本年度の関連する補助制度を図表 6-1 に示す。補助は設備導入の補助(ハード事業)
ともに、導入検討の補助(ソフト事業:FS)もある。
-6-1-
-6-2-
都道府県、市町村、農協、土
地改良区等
都道府県、市町村、農協、土
地改良区等
農山漁村活性化プロジェク
小水力発電
ト支援交付金のうち自
太陽光発電
然・資源活用施設
農山漁村地域整備交付
小水力発電
金のうち集落基盤整備事
太陽光発電
業
都道府県、市町村、協議会、
土地改良区等
都道府県
小水力等再生可能エネル
ギー導入推進事業
小水力発電
(旧小水力等農村地域資 太陽光発電
源利活用促進事業)
農山漁村地域整備交付金
のうち地域用水環境整備 小水力発電
事業
2.ソフト事業
都道府県、市町村、土地改良
区等
農山漁村地域整備交付
金のうち地域用水環境整 小水力発電
備事業
事業主体
国、都道府県等
対象施設
かんがい排水事業等の 小水力発電
土地改良事業
太陽光発電
1.ハード事業
事業種類
1/2
定額
1/2
1/2
1/2
国営事業 2/3
県営事業 1/2
補助率
助成の内容・条件
備 考
小水力発電施設設置に係る経済性の
検討
農業水利施設を活用した小水力発電
の導入の円滑化を図るため、調査・設 基本設計は1/2補助
計等を支援
農林水産省に係る助成又は融資の対
象となっている施設に電力を供給する
発電施設を整備
発電施設の単独整備は不可
農村振興整備事業計画が作成されて
いること
農林水産業に係る共同利用施設に電
力を供給する発電施設を整備
活性化計画への位置付けが必要
土地改良施設、農林水産省の助成対
象の農業施設や公的施設に電力を供給
する発電施設を整備
小水力発電整備事業計画が作成され
ていること
農業水利施設の整備と一体的に、土
地改良施設に電力を供給する発電施設 発電施設の単独整備は不可
を整備
図表6-1(1) 本年度の補助制度【農林水産省 農村振興局関連】
-6-3-
民間団体、地方公共団体等
民間団体、地方公共団体等
再生可能エネル
ギー施設
(小水力発電)
【公募事業】
(太陽光発電)
農山漁村活性化再生可能
(風力発電)
エネルギー総合推進事業
(バイオマス発
電)
他
バイオマス
【公募事業】
(木質)
地域バイオマス産業化推
(家畜排泄物)
進事業(地域バイオマス
(食品廃棄物)
産業化支援事業)
他
2.ソフト事業
民間団体、地方公共団体等
バイオマス発電等
【公募事業】
(木質)
地域バイオマス産業化推
(家畜排泄物)
進事業(地域バイオマス
(食品廃棄物)
産業化整備事業)
他
事業主体
民間団体
対象施設
再生可能エネル
ギー施設
【H24補正のみ】
(小水力発電)
地域還元型再生可能エネ (太陽光発電)
ルギーモデル早期確立事 (風力発電)
業
(バイオマス発
電)
他
1.ハード事業
事業種類
定額
定額
1/2
定額
補助率
助成の内容・条件
毎年度売電収入の5%以上
を地域の農林漁業の発展に
貢献する取組に活用
助成金相当額を法定耐用
年数で除した額を毎年度基
金に納付
備 考
地域のバイオマスを活用した産業化
と地産地消エネルギーの強化によりバ
イオマス産業を軸としたまちづくり・ 7府省連携事業
むらづくり(バイオマス産業都市)を
目指す地域による計画づくりを支援
農林漁業者等が主導して行う農山漁
村の資源を活用した再生可能エネル
発電施設の整備(詳細設
ギー発電事業の取組について、事業構
計を含む。)は支援対象外
想(入口)から運転開始(出口)に至
実証事業は不可
るまでに必要となる様々な手続や取組
を総合的に支援
バイオマス産業都市構想に位置づけら
れたプロジェクトの推進に必要な施設
7府省連携事業
整備や地域循環型燃料の地産地消の取
組を支援
農林漁業者等が参画し、農山漁村の
資源を活用して行う再生可能エネル
ギー発電事業で得られた収入を地域の
農林漁業の発展に活用するモデル的な
取組の構築への支援
図表6-1(2) 本年度の補助制度【農林水産省 食料産業局関連】
-6-4-
地方公共団体
非営利民間団体 等
民間事業者 等
太陽光発電
風力発電
バイオマス発電
水力発電
地熱発電
蓄電池(上記シス
テムに併せて設置
する場合)
【公募事業】
独立型再生可能エネル
ギー発電システム等対策
費補助金
(地域再生可能エネル
ギー発電システム等事業
者導入促進対策事業)
事業主体
太陽光発電
風力発電
バイオマス発電
水力発電
地熱発電
蓄電池(上記シス
テムに併せて設置
する場合)
対象施設
【公募事業】
独立型再生可能エネル
ギー発電システム等対策
費補助金
(地域再生可能エネル
ギー発電システム等導入
促進対策事業)
1.ハード事業
事業種類
備 考
地域における自家消費向けの再生可
能エネルギー発電システム等の導入促
固定価格買取制度で定める
進
設備認定を受けないシステ
地方公共団体又は民間と連携して行
ムであることが条件
う設備導入事業及び災害等の緊急時等
に蓄電池から電力を供給する事業
助成の内容・条件
上限額4千万円(併せ 自家消費向けの再生可能エネルギー発 固定価格買取制度で定める
て蓄電池を設置する 電システム等の設備導入事業を行う事 設備認定を受けないシステ
場合は6千万円)
業者に対し、導入費の一部を補助
ムであることが条件
太陽光発電は25万円
/kWまで
1/3
上限額4千万円(併せ
て蓄電池を設置する
場合は6千万円)
太陽光発電は40万円
/kWまで
1/2
補助率
図表6-1(3) 本年度の補助制度【経済産業省 資源エネルギー庁(新エネルギー導入促進協議会)】
(2)融資制度
設備導入のための融資制度として、日本政策金融公庫などの融資がある。また県で
も融資制度を設けている。
(日本政策金融公庫
http://www.jfc.go.jp/n/finance/)
再生可能エネルギー導入に利用可能な融資制度
利用可能な資金
スーパーL資金
農業改良資金
農林漁業施設資金
(共同利用施設)
利用できる者
認定農業者
認定農業者、
主業農業者等
農業協同組合、
農業協同組合連合会等
【個人】1億5,000万円
【法人】5億円
融資限度額
返済期間
(据置期間)
【個人】5,000万円
【法人】1億5,000万円
25年以内
(10年以内)
10年以内
(3年以内)
負担する額の80%
20年以内
(3年以内)
※利率等詳細については、日本政策金融公庫に確認のこと。
○農業基盤整備資金
http://www.maff.go.jp/j/nousin/kikaku/kiban_shikin/
項 目
内 容
融 資 対 象 者
土地改良区
土地改良区連合(事業主体になる場合に限る。)
農業協同組合
農業協同組合連合会
農業を営む者
農業振興法人
(農業を営む方、農業を営む方の組織する法人又は地方公共団体が構成員の過
半を占めるか又は過半の出資等を行っている法人で農業の振興を目的とする法
人)
・ 5割法人・団体(農業環境基盤施設、集落環境基盤施設に限る。)
(農業を営む方及び上記の法人が構成員又はその資本金などの過半を占めるか
又は過半の出資等をしている法人・団体)
・
・
・
・
・
・
・ 農地、牧野の新設、改良、造成及び復旧の事業に係る地元負担部分
資
金
使 途
・ 農業集落排水施設の整備などの、生産基盤と一体として行う生活基盤の改善に
必要な資金
融 資 限 度 額
地元負担額(最低限度額50万円)
融
資
期 間
25年以内(うち据置期間10年以内)
融
資
利 率
補助事業 県営
団体営
非補助事業 一般
1.15%
1.00%
1.00%
利率は平成25年11月21日現在
(最新の利率は、日本政策金融公庫に確
認のこと。)
【参考】再生可能エネルギー導入資金(県融資制度:商工労働部
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a16300/index/
区
分
内 容
融 資 対 象 者
再生可能エネルギー設備等を導入する中小企業者等
資
運転資金・設備資金
金
使 途
融 資 限 度 額
融
資
利 率
2億8,000万円(運転資金5,000万円限度)
5年以内
年1.9%(1.7%)
5年超10年以内
年2.0%(1.8%)
10年超
年2.2%(2.0%)
※( )内は責任共有対象外の場合の利率
保証無しは、( )内利率に0.3%加算
保
証
料 率
融
資
期 間
保
担
証
年0.34%~1.76%(必要に応じて保証付)
15年以内(うち据置期間2年以内)
運転資金の場合、5年(うち据置期間1年以内)
人
原則として法人の代表者以外は不要
保
必要に応じて徴求
-6-5-
経営金融課)
2.民間ファンドについて
(1)民間ファンドとは
民間ファンドは、必要な資金を民間から投資により集め事業を行うものである。
地球温暖化による環境破壊の進展、東日本大震災以後、市民による「再生可能エネ
ルギー」への関心が高くなっている。
再生可能エネルギーによる発電設備の導入、維持管理運営資金を「市民出資」「寄
付」の“民間資金“により集めた民間ファンド(市民ファンド)での事業運営が国内
各地で取り組まれている。
市民からの寄付を中心に、市民のために運営する基金であるので、①寄付受け入れ
の多様性、②投資目的の透明性、③運営主体の市民性が求められる。
(2)民間ファンド-市民ファンドの運営形態
運営形態は下図のように、初期費用を要する発電設備を、
「補助金」
「金融機関から
の融資」ほか、市民を対象とした「市民出資」「寄付」より募り、NPO等が事業者
となり運営する。
図表 6-2
市民ファンドの運営形態
出典:資源エネルギー庁再生可能エネルギーファンド&共同出資事例集
-6-6-
(3)中国地方の民間ファンドの事例-エネミラ(岡山市)
中国地方では、岡山市が、認定NPO法人おかやまエネルギーの未来を考える会(エ
ネミラ)と連携した市民共同発電事業により、市内公共施設(保育園)に太陽光発電
設備を設置している。この市民共同発電は次のように運営されている。
図表 6-3
エネミラの市民共同発電の事業形態
①太陽光発電設備などハード面
・エネミラ:設備調達・設置・所有・管理。
・岡 山 市:保育園など市の施設の屋根を無償で貸与。
②太陽光発電電力の利用、売電、事業運営などソフト面
(a) 発電電力の利用、売電
・岡 山 市:保育園など貸与施設の電力は自家消費し、余剰電力を中国電力に売電。
(b) 事業運営
・岡 山 市:発電電力(自家消費+売電)分の電気代相当額をエネミラに交付金として
支払。交付金の資金使途は、再生可能エネルギーを地域に普及させる啓発
活動などに限定される。
・エネミラ:交付金を、事業費不足分の返済、市民共同発電所の維持管理や増設などに
利用。
出典:信金中央金庫レポート(地域調査情報 23-2)
-6-7-
(3)民間ファンドの事例-その他国内の事例
各地域で次の市民ファンドが運営されている。行政では、横浜市、都留市が市債に
より風力発電、小水力発電を運用している。
図表 6-4 市民ファンドの運用事例
ファンド
運用発電所
NPO 法人北海道グ
リーンファンド
ギーファンド株
式会社
(長野県飯田市)
認定 NPO 法人お
かやまエネルギ
ーの未来を考え
る会(エネミラ)
(岡山市)
風力発電
太陽光発電
市民ファンド
小水力発電
補助金
チップボイラ―
金融機関等
太陽熱温水器
補助金
ペレットストー
寄付
小水力発電
(岡山県備前市) チップボイラ―
太陽光発電
サークルおてん
太陽光発電
(奈良市)
自然エネルギー
市民の会
http://www.ohisama-fund.jp
http://enemira.milkcafe.jp
ブ
株式会社
とさん
http://www.h-grennfund.jp/
太陽光発電
太陽光発電
ンファンド
補助金
助成金等
備前エネルギー
きょうとグリー
ホームページアドレス
市民ファンド
(札幌市)
おひさまエネル
資金調達方法
太陽光発電
(大阪市)
市民ファンド
補助金
補助金
寄付金
補助金
寄付金
補助金
寄付金
横浜市
風力発電
市債
都留市
小水力発電
市債
-6-8-
http://www.bizen-greenenergy.co.jp/
http://www.kyoto-gf.org/
http://www.geocities.jp/otentsan/
http://www.parep.org
http://www.city.yokohama.lg.jp/
kankyo/ondan/furyoku/
http://www.city.tsuru.yamanashi.jp/
forms/info/info.aspx?info_id=2681
第7章
モデル地区の検討
1.太陽光発電
農村地域での設置箇所モデルとして、耕作放棄地(長門市)
、農業用施設(柳井市)
、
ため池堤体(山口市)につき検討した。3 施設は次の違いがある。
①耕作放棄地、ため池堤体は営農箇所でないので全量売電となる。
②農業施設は営農箇所より①と同様全量売電とともに、施設の使用電力の余剰の売電も
可能。
③耕作放棄地は日本海側の長門であるので、瀬戸内側の 2 施設より日照量が 20%小さい。
各モデル地域は、日照量があり性能面で良好な発電量が見込める地域として選定して
いるが、実際の建設に当たっては、資金調達・運営体制の構築、土木工事また農村地域
への発電設備の設置は周辺環境に影響を及ぼす可能性があるので、地域住民との合意を
図りながら建設を進めることが重要となる。
(1)耕作放棄地モデル
山口県長門市における耕作放棄地を対象に、太陽光発電設備の導入を検討する。耕作
放棄地は土地の状況、周辺の電力設備の状況により採算性が異なるので、3 箇所の地点
を選定し太陽光発電設備を導入した場合の事業性についての比較検討から、最適となる
導入候補地を選定した。
a.対象エリア概要
太陽光発電導入候補地の 3 地点A~Cについて、位置を図表 7-1 に示す。
図表 7-1
山口県長門市
対象地点位置図
C.長門市日置野田
A.長門市日置中 1
B.長門市日置中 2
出典:電子国土ポータル
-7-1-
Digital Japan Portal Web Site
b.航空写真
対象となる 3 地点を上空から撮影した航空写真を図表 7-2 に示す。
図表 7-2
対象地点
航空写真(広域)
約 40m
A.長門市日置中 1
連系地点
北山 30
約 130m
連系地点
北山 30 右 8
B.長門市日置中 2
連系地点
宇津賀 47 左 9
約 400m
C.長門市日置野田
出典:山口県環境生活部環境政策課
快適環境づくりシステム
-7-2-
地理情報システム
(a)周辺の状況
太陽光発電設備は、
・発電量に影響する
①設置可能面積、②方角
・工事費に影響する
③周辺道路の状況-資材輸送の難易、
④売電のため中電の系統に接続する電柱位置-電気工事費
により、発電設備として設置の良否が左右される。3 地点の周辺状況は次のとおりで
ある。
図表 7-3
対象エリア
3 地点の周辺状況
A.長門市
B.長門市
C.長門市
日置中 1
日置中 2
日置野田
①
対象エリア面積
7,448 ㎡
8,112 ㎡
5,172 ㎡
②
方角
南向き
南向き
南向き
③
周辺道路現況
幹線道路(2 車線)隣接
接続道路
接続道路
接続道路 幅員約 3.0m
幅員約 2.5m
幅員約 2.0m
④
系統連系距離
40m
130m
400m
3 地点とも南向きであり日照量に差はないが、発電量からは設置面積の大きいA,B地点
が有利である。
工事の施工性からは、2 車線の幹線道路があり、連係する電柱までの距離が短い、A
地点が適する。
(b)高圧発電設備の中電系統への連系について
太陽光発電設備は、1kWの発電パネルの面積が約 10m2 である。5,000m2 以上の面積があ
る 3 地点は 500kW以上の発電設備となり、容量が 50kW以上の高圧発電設備となる。
高圧発電設備は、6,600Vの高圧配電線への連系とな 図表 7-4
る。高圧配電線は、3 相 3 線式で 3 本のケーブルで送
電され、住宅地の近隣まで敷設されている(電柱で碍
子で接続された 3 本のケーブルが目安)。
高圧配電線
6,600V 高圧配電線
碍子で接続される
3 本のケ-ブル
家庭で使用する 200V、100Vへの電圧には、電柱の柱
状変圧器で 6,600Vから降圧される。
なお、高圧の発電設備の連系には、連系により電力
の品質に影響を及ぼさないか、接続検討が必要となる
(4章 2.電力協議参照)
。
柱状変圧器
-7-3-
c.概算発電量、工事費の比較
3 地点に太陽光パネルを設置した場合の概算発電量、工事費をNEDO等の文献値か
ら算出した結果を図表 7-5 に示す。工事費は図表 7-6(次ページ)の計算による。
経済性からは、B地点が年間収入が 1,812 千円/年で最も良い。
施行性からは、2 車線の幹線道路があり、連係する電柱までの距離が約 40mのA地点が
適する。B地点は「周辺道路まで 100m以上の距離がある」
「中電の系統に接続する電柱ま
で 130mの距離がある」ことより、3 地点の中では施工の最も難易な地点である。
以上の経済性、施工性の総合評価から太陽光発電の詳細検討はA地点とする。
図表 7-5
3 地点の概算発電量、工事費の比較
対象エリア
A.長門市
B.長門市
C.長門市
日置中 1
日置中 2
日置野田
①
対象エリア面積
7,448 ㎡
8,112 ㎡
5,172 ㎡
②
設置可能面積*1
5,213 ㎡
5,678 ㎡
3,620 ㎡
3.63kWh/㎡・日
3.63kWh/㎡・日
3.63kWh/㎡・日
0.1kW/㎡
0.1kW/㎡
0.1kW/㎡
521kW
567kW
362kW
③
④
⑤
年間最適傾斜角における
日射量*2
面積あたり太陽光パネル
設備容量*3
設備容量
(=②×④)
⑥
総合設計係数*4
0.7
0.7
0.7
⑦
稼働日数
365 日
365 日
365 日
483,209kWh/年
525,872kWh/年
335,742kWh/年
総支出(a)
339,927 千円
361,326 千円
268,002 千円
総収入(b)
365,306 千円
397,559 千円
253,821 千円
+27,380 千円
+36,234 千円
-14,181 千円
+1,369 千円
+1,812 千円
-709 千円
⑧
年間概算発電量
(=③×⑤×⑥×⑦)
経済性
固定価格買取期間 20 年間に
おける収支:(b)-(a)
年間あたり収支
評価
施工性
△
○
×
幹線道路(2 車線)隣接
接続道路
接続道路
接続道路 幅員約 3.0m
幅員約 2.5m
幅員約 2.0m
系統連系する電柱までの距離
40m
130m
400m
評価
○
×
○
○
△
△
周辺道路現況
事業性総評
*1
対象エリアが過去、棚田として利用されており段差が生じていること、また、受変電設備・排水等設備を設置す
ることを考慮し、対象エリア面積の 70%を設置可能面積とする。
*2 出典:NEDO 日射量データベース閲覧システム(地点:油谷観測所)
。方位角は 0 度とする。
*3 出典:NEDO 太陽光発電フィールドテスト事業に関するガイドライン 設計施工・システム編
*4 出典:NEDO 太陽光発電フィールドテスト事業に関するガイドライン 設計施工・システム編
-7-4-
-7-5-
計
年間収支
固定価格買取期間内20年間における収支
年間売電収入
概算発電量
37.8 円(税込)
811 千円
税率1.4%
一般管理費
売電価格
総収入
収
入
836 千円
直接費の14%
諸費
1,369 千円
27,380 千円
365,306 千円
18,265 千円
483,209 kWh/年
337,927 千円
7,617 千円
1,114 千円
建設費の0.6%
固定資産税
1,856 千円
建設費の1.0%
3,000 千円
185,587 千円
480 千円 (0.04㎞)
15,000 千円
782 千円
169,325 千円
修繕費
主任技術者人件費
3,000 千円
12,000 千円/㎞
電源線
計
15,000 千円
1.5 千円/kW
325 千円/kW
昇圧費用
系統連系費用
土地造成費
年間経費
総支出
運
転
維
持
費
建
設
費
システム単価
建設費
7,448 m
敷地面積
2
A.長門市日置中1
521 kW
諸 元
設備容量
費 目
図表7-6 3地点の工事費の算出
2
1,812 千円
36,234 千円
397,559 千円
19,878 千円
525,872 kWh/年
361,326 千円
7,982 千円
883 千円
872 千円
1,210 千円
2,017 千円
3,000 千円
201,686 千円
1,560 千円 (0.13㎞)
15,000 千円
851 千円
184,275 千円
8,112 m
567 kW
B.長門市日置中2
費 用
-709 千円
-14,181 千円
253,821 千円
12,691 千円
335,742 kWh/年
268,002 千円
6,500 千円
563 千円
729 千円
828 千円
1,380 千円
3,000 千円
137,993 千円
4,800 千円 (0.40㎞)
15,000 千円
543 千円
117,650 千円
5,172 m 2
362 kW
C.長門市日置野田
(a)
国家戦略室(コスト等検証委員会)
国家戦略室(コスト等検証委員会)
経済産業省(調達価格等算定委員会)
経済産業省(調達価格等算定委員会)
出典
17年平均
((e)-(c))÷20
(e)-(c)
(e)=(d)×20 (固定価格買取期間20年間を想定)
(d) 経済産業省(調達価格等算定委員会・2013年度)
(c)=(a)+(b)×20 (固定価格買取期間20年間を想定)
(b)
国家戦略室(コスト等検証委員会)
経済産業省(調達価格等算定委員会)
経済産業省(調達価格等算定委員会)
経済産業省(調達価格等算定委員会)
主任技術者他所兼任 経済産業省(調達価格等算定委員会)
備 考
d.詳細検討
(a)前提条件
前項より選定した地点「A.長門市日置中 1」において、実際に配置可能となるパネル
枚数やその際の発電量、および概算工事費を詳細に検討する。
パネル配置、発電量算出にあたり必要となる前提条件は、次のように設定した。②、
③は、山口県での実勢工事費の算出とするためのメーカ値の適用である。
①対象地点は過去、棚田であったので、平地を確保のため土地の造成を行う
②パネルは長州産業(株)製とし発電量も長州産業(株)の計算値とする
③工事費は、長州産業(株)、中電工(株)より入手
図表 7-7
太陽光発電設置における前提条件
項目
諸元
備考
パネルサイズ*1
1476mm×998mm
長州産業(株)製品を想定
公称最大出力*1
236W
長州産業(株)製品を想定
アレイサイズ*2
4 段×4 列
パネル 16 枚
法面高さ
1.6m
現地より想定
法面勾配
1:1.8
方位角
+45°
傾斜角
20.0°
真南 0°より、東をマイナス、西
をプラスとする
長州産業(株)製品を想定
*1
出典:長州産業
*2
アレイは、太陽光により発電する半導体素子(セル)を並べて
カタログ
配線したモジュールを接続し必要な発電量を得るユニット。
(b)パネル配置図
選定地のパネル配置を図表 7-9(次ページ)に示す。
法面等造成形状は、周辺の現況確認が十分でないため、航空写真より想定した。
パネル枚数 1,824 枚、設備容量は 430kWとなる。
図表 7-8
項目
アレイ設置数
パネル設置枚数
パネル公称最大出力
発電出力
設備容量
諸元
備考
114 アレイ (A)
1,824 枚 (B)=(A)×16 枚
236W (C)
430kW (B)×(C)÷1000
-7-6-
アレイの前後間隔については、最も日陰が長くなる冬至の 9~15 時における影の長さ
を考慮し 4.14mとする。図表 7-10 に選定地における冬至の 9~15 時の日影図を示す。
図表 7-9
パネル配置図
パネル方位角
-
+
S=1:1000
0°
:アレイ(4 段×4 列)
図表 7-10
冬至の日影図
青の日照により、パネルが
影にならない間隔を確保
-7-7-
太陽光パネルは平地の耕作放棄地に設置するため、コンクリート基礎を設置し、鋼製架
台に 20°の傾斜角で設置することとする。
なお、この度の検討では、図表 7-11 の構造図を参考に見積もりを行っている。
図表 7-11
パネル設置架台
-7-8-
(c)発電量
長州産業(株)による 1981 年~2009 年まで 29 年間の平均日照量による発電量は
425,000kWh/年となる(図表 7-12)。
経年劣化を考慮した 20 年間の平均発電量は 391,000kWh/年となる(図表 7-13)。
【参考】
NEDOの太陽光フィールド事業によるガイドラインでは、発電量は 400,012kWhとな
る。
設備容量 430kW×日照量 3.53kWh/m2(*1)×総合設計係数 0.722(*2)×365 日=
400,012kWh。
*1:NEDO
日射量データベース閲覧システム。地点
油谷観測所。
*2:NEDO
太陽光フィールドテスト事業に関するガイドライン。
初年度の発電量 425,000kWhよりは低くなる。
図表 7-12
年間発電量
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 平均 合計
日射量
1.85 2.61 3.47 4.47 4.85 4.25 4.47 4.74 3.76 3.58 2.46 1.90 3.5
(kWh/m 2・日)
平均気温
5.6 6.1 8.9 13.7 18.0 21.7 25.7 26.7 22.7 17.4 12.5 8.0 15.6
(℃)
発電量
20
25
37
45
49
41
44
46
36
36
25
20
425
(MWh)
50
40
発
電 30
量
M
W 20
h
10
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
図表 7-13
経過年
発電量
(MWh)
0
1
2
3
4
5
6
7
7月
8月
9月
10月
11月
12月
20 年間の発電量
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19 平均
425 412 410 407 404 402 399 397 394 392 389 387 384 381 378 375 372 370 367 364 391
-7-9-
(d)経済性
検討条件は以下とした。
ア.機器費・工事費
長州産業(株)、中電工(株)見積もり。項目は以下。
図表 7-14 機器費・工事費の内訳
項目
太陽電池モジュール
太陽光発電の発電フロー
内容
(丸数字は右図のフローに対応)
①
右図の①、②
⑥のモジュール設置架台
機 架台
器
費 パワーコンディショナー ③
付属設備
システムの付属設備
引込設備工事
④~⑤間の電気工事
受変電設備工事
④のキュービクルほか高圧電気設
備工事
電気設備工事
①~④間の電気設備工事
モジュール設置工事
⑥のモジュールの設置工事
工
事 基礎工事
費
フェンス工事
電気
②
③
電力会社
④
⑤
⑥のモジュールの基礎工事
⑦の太陽光発電設備敷地周辺の
フェンス工事
防草対策工事
敷地内の除草工事
その他
運搬費、諸経費等
造成工事
整地工事
⑥
⑦
イ.運転維持管理費
ケース 1:経済産業省(調達価格等算定委員会)
ケース 2:メーカ値
150,000 円/年
※ケース 2 の修繕費は、パワーコンディショナー等の機器の交換も含めたメーカの
15 年間の機器修繕費より、単年度の費用を算出した。
-7-10-
概算工事費・売電収入の算出結果、および固定価格買取制度の買取期間である 20 年
間を想定した総支出と総収入の差を図表 7-15(次ページ)に示す。
kWあたりの建設費は、48.1 万円/kWであり、30 万円/kW台の屋根に設置の工事費と比
べると高価となる。機器費のみでのkWあたりの単価は 28.6 万円/kWと、高圧設備であっ
ても家庭用と同等の低価格である。
高価となる要因、安価とする方策として以下が挙げられる。
①平地に傾斜を取り太陽光パネルを設置するので、架台、基礎工事が必要になる
②安価とする方策として
・架台を鋼製の陸屋根架台でなく短管パイプとする
・「除草工事」「造成工事」が必要でない更地を選定する
③430kWの高圧の発電設備より、キュービクル等の高圧受電設備が必要となる
④侵入者の防止、高圧発電設備の安全管理のためフェンスが必要となる
概算工事費、および売電収入の算出結果は、20 年間で
ケース 1:-36,464 千円の赤字。建設費を年間収支で按分した投資回収年数 24.3 年
ケース 2: 67,816 千円の黒字。建設費を年間収支で按分した投資回収年数 15.1 年
となる。
経済性の差は、運転維持費によるものであり、ケース 1 は主任技術者人件費が大きく、
さらに諸費、一般管理費を計上している。
ケース 2 のメーカ値は山口県の実勢値であり、耕作放棄地への導入は経済性が見込ま
れる。
-7-11-
図表 7-15
費 目
パネル公称最大出力
パネル設置枚数
諸 元
費 用
備 考
費 用
備 考
備 考
236 W
1,824 枚
設備容量
430 kW
敷地面積
7,448 m2
諸 元
費 目
概算工事費および売電収入
除草・防草のみ
出 典
機器費
太陽電池モジュール
60,300 千円
架台
34,200 千円
パワーコンディショナー
メーカ見積もり
陸屋根架台
〃
ケーブル、集電箱等
〃
9,600 千円
付属設備
18,900 千円
小 計
〃
123,000 千円
工事費
建
設
費
引込設備工事
1,500 千円
受変電設備工事
16,000 千円
電気設備工事
3,900 千円
モジュール設置工事
8,900 千円
基礎工事
系統連携接続
キュービクル等電気設備 工事業者見積もり
〃
〃
22,600 千円
フェンス工事
3,900 千円
防草対策工事
7,500 千円
その他
〃
1.8m鋼製
〃
〃
17,300 千円
造成工事
ブロック基礎
運搬費、諸経費等
2,400 千円
小 計
〃
類似施設価格より算出
84,000 千円
合 計
207,000 千円
kWあたり単価
(a)
481 千円/kW
(a)÷出力430kW
ケース1:文献値
主任技術者人件費
3,000 千円
3,000 千円
主任技術者他所兼任 経済産業省(調達価格等算定委員会)
修繕費
建設費の1.0%
1,230 千円
経済産業省(調達価格等算定委員会)
諸費
建設費の0.6%
738 千円
経済産業省(調達価格等算定委員会)
一般管理費
直接費の14%
696 千円
税率1.4%
589 千円
固定資産税
運
計
転
総 支 出
維
持 ケース2:メーカ値
費
主任技術者人件費
6,253 千円
300 千円
(c)=(a)+(b)×20 (固定価格買取期間20年間)
電気保安協会委託費
150 千円
諸費
メーカ聞き取り
0 千円
一般管理費
0 千円
税率1.4%
計
589 千円
1,039 千円
総 支 出
売
電
収
入
300 千円
国家戦略室(コスト等検証委員会)
(b)
332,060 千円
修繕費
固定資産税
経済産業省(調達価格等算定委員会)
17年平均
227,780 千円
17年平均
国家戦略室(コスト等検証委員会)
(b)
(c)=(a)+(b)×20 (固定価格買取期間20年間)
売電価格
概算発電量
年間売電収入
総収入
391,000 kWh/年
37.8 円(税込)
14,780 千円
295,596 千円
メーカによる20年間発電量平均値
(d):2013年度購入単価
(e)=(d)×20 (固定価格買取期間20年間)
採算性検討:ケース1
固定価格買取期間内における収支
単純投資回収年数
-36,464 千円
24.3 年
(e)-(c)
67,816 千円
15.1 年
(e)-(c)
(a)÷[(d)-(b)]
採算性検討:ケース2
固定価格買取期間内における収支
単純投資回収年数
-7-12-
(a)÷[(d)-(b)]
(2)農業用施設モデル
a.対象施設概要
太陽光発電導入モデルとなる農業用施設の位置を以下に示す。
図表 7-16
山口県柳井市
対象地点位置図
柳井ダイヤモンドローズ
出典:電子国土ポータル
-7-13-
Digital Japan Portal Web Site
b.航空写真
対象となる施設を上空から撮影した航空写真を図表 7-17 に示す。現地調査の結果、
農業用ハウス周囲は製品搬出のためのスペースを要するため、太陽光パネルの設置は敷
地周辺部の平地を対象とする。設置可能であると想定されるエリア、および系統連系地
点を写真上に示す。
図表 7-17
対象施設
航空写真
約 10m
北側エリア
中電柱
東側エリア
南側1エリア
中電柱
南側2エリア
:設置可能エリア
0
出典:山口県環境生活部環境政策課
図表 7-18
快適環境づくりシステム
連系地点
-7-14-
現況写真
地理情報システム
15
30m
c.前提条件
パネル配置、発電量算出にあたり必要となる前提条件について、以下のように設定す
る。設置面積を考慮し、南・北側エリアと東側エリアで異なるアレイ構成としている。
図表 7-19
項目
太陽光発電設置における前提条件
諸元
南・北側
東側
備考
パネルサイズ
1476mm×998mm
長州産業(株)製品を想定
公称最大出力
236W
長州産業(株)製品を想定
アレイサイズ
方位角
傾斜角
4 段×4 列
6 段×4 列
パネル 16 枚
パネル 24 枚
-5°
-95°
20.0°
パネル仕様は図表 7-7 長門市日置と同一
-7-15-
真南 0°より、東をマイナ
ス、西をプラスとする
長州産業(株)製品を想定
d.パネル配置図
対象施設のパネル配置を図表 7-21(次ページ)に示す。なお、架台については図表
7-11(7-8 ページ)と同様に鋼製架台上に設置する。
アレイの前後間隔、および南側エリアにおける農業用ハウスとの離隔については、図
表 7-22、図表 7-23(7-18 ページ)の日影図を参考に、冬至の 9~15 時において影が掛か
らないよう考慮する。
農業用地の南、北、東の 4 箇所にパネル設置が可能であるが、4 箇所は距離が離れて
いる。系統連系には受変電設備は1箇所が適する。そのため、太陽光パネルを設置する
箇所は以下の経済性の理由により、南側の 2 箇所とする。
①北側は、南側の受変電設備にケーブル接続の場合は、距離が離れておりケーブル敷設
に費用を要する。
②東側は農業用ハウスの影となり、午後は日照がなく南側に比較し発電量が低下する。
南側 2 箇所のパネル枚数は 672 枚、設備容量は 158.6kW(96.3kW+62.3kW)となる。
図表 7-20
項目
アレイ設置数
パネル設置枚数
諸元
南側 1
備考
南側 2
42 アレイ
408 枚
パネル公称最大出力
発電出力
設備容量
264 枚
236W
96.3kW
-7-16-
(A)
(B)=(A)×16 枚
(C)
62.3kW
(B)×(C)÷1000
図表 7-21
パネル配置図
S=1:300
ケーブル敷設の
費用高より除外
パネル方位角
-
+
0°
農業用ハウス
農業用ハウス
農業用ハウス
農業用ハウス
日照が午前中
のみより除外
:アレイ
-7-17-
図表 7-22
アレイ
日影図
アレイ同士の影が
かからない距離を確保
:アレイ
:各時間帯の影
図表 7-23
農業用ハウス
日影図
ハウスの影が
かからない位置に設置
:農業用ハウス
:各時間帯の影
-7-18-
e.発電量
長州産業(株)による 1981 年~2009 年まで 29 年間の平均日照量による発電量は、南側
1:111,734kWh/年、南側 2:72,149kWh/年、合計 184,883kWh/年となる(図表 7-24)。
経年劣化を考慮した 20 年間の平均発電量は合計で 168,933kWh/年となる(図表 7-25。
次ページ)。
【参考】
NEDOの太陽光フィールド事業によるガイドラインでは、発電量は 172,924kWhとな
る。初年度の発電量 184,883kWhより低い。日射量は柳井観測所。
図表 7-24(1)
1月
日射量
2.96
(kWh/m 2・日)
平均気温
4.8
(℃)
発電量
7,103
(kWh)
年間発電量(南側 1)
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
平均
3.60
4.10
4.81
5.04
4.50
4.88
5.20
4.33
4.05
3.28
3.02
4.15
5.5
8.7
13.8
18.2
21.9
25.8
27.0
23.8
18.1
12.5
7.3
15.6
9,675 10,771 11,440 9,741 10,734 11,379 9,297
9,194
7,384
7,175
7,840
合計
111,734
12000
10000
発 8000
電
量
k 6000
W
4000
h
2000
0
1月
2月
3月
4月
5月
図表 7-24(2)
1月
日射量
2.94
(kWh/m 2・日)
平均気温
4.8
(℃)
発電量
4,565
(kWh)
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
年間発電量(南側 2)
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
平均
3.58
4.08
4.81
5.04
4.50
4.88
5.20
4.32
4.03
3.27
3.00
4.14
5.5
8.7
13.8
18.2
21.9
25.8
27.0
23.8
18.1
12.5
7.3
15.6
5,052
6,237
6,970
7,410
6,303
6,946
7,363
6,002
5,927
4,764
4,612
8000
7000
6000
発
電 5000
量
k 4000
W 3000
h
2000
1000
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
-7-19-
8月
9月
10月
11月
12月
合計
72,149
図表 7-25(1)
20 年間の発電量(南側 1)
経過年
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
発電量
111,734 108,382 107,688 106,999 106,314 105,634 104,958 104,286 103,618 102,955
(kWh)
経過年
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
平均
発電量
102,296 101,642 100,991 100,214 99,442 98,676 97,916 97,162 96,414 95,672 102,650
(kWh)
図表 7-25(2)
経過年
発電量
(kWh)
経過年
発電量
(kWh)
0
1
2
3
20 年間の発電量(南側 2)
4
5
6
7
8
9
72,149 69,985 69,537 69,092 68,650 68,210 67,774 67,340 66,909 66,481
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
平均
66,055 65,633 65,212 64,710 64,212 63,718 63,227 62,740 62,257 61,778 66,283
-7-20-
f.概算工事費
概算工事費・売電収入の算出結果、および固定価格買取制度の買取期間である 20 年
間を想定した総支出と総収入の差を求め、経済性を検討した結果を図表 7-26(次ページ)
に示す。検討条件は耕作放棄地モデルと同様である。
農業施設であり、太陽光発電は施設内の電力に使用し余剰売電もできるが、経済性評
価は全量売電とした。
概算工事費、および売電収入の算出結果は、20 年間で
ケース 1:-30,787 千円の赤字。建設費を年間収支で按分した投資回収年数 36.3 年
ケース 2: 45,713 千円の黒字。建設費を年間収支で按分した投資回収年数 12.0 年
となる。
経済性の差は、運転維持費によるものであり、ケース 1 は主任技術者人件費が大きく、
さらに諸費、一般管理費を計上している。
ケース 2 のメーカ値は山口県の実勢値であり、農業用施設への導入は経済性が見込ま
れる。
-7-21-
図表 7-26
費 目
パネル公称最大出力
諸 元
費 用
備 考
費 用
備 考
備 考
236 W
パネル設置枚数
672 枚
設備容量
159 kW
敷地面積
2,500 m2
諸 元
費 目
概算工事費および売電収入
除草・防草のみ
出 典
機器費
太陽電池モジュール
23,400 千円
架台
13,500 千円
パワーコンディショナー
8,200 千円
付属設備
1,800 千円
小 計
メーカ見積もり
陸屋根架台
〃
ケーブル、集電箱等
〃
〃
46,900 千円
工事費
建
設
費
引込設備工事
-
受変電設備工事
5,200 千円
電気設備工事
千円
受電設備工事に含む
キュービクル等電気設備 工事業者見積もり
800 千円
〃
モジュール設置工事
1,200 千円
基礎工事
7,500 千円
ブロック基礎
〃
フェンス工事
2,500 千円
1.8m鋼製
〃
防草対策工事
-
その他
4,400 千円
造成工事
-
小 計
〃
千円
〃
運搬費、諸経費等
〃
千円
21,600 千円
合 計
68,500 千円
kWあたり単価
(a)
431 千円/kW
(a)÷出力158kW
ケース1:文献値
主任技術者人件費
3,000 千円
3,000 千円
主任技術者他所兼任 経済産業省(調達価格等算定委員会)
修繕費
建設費の1.0%
469 千円
経済産業省(調達価格等算定委員会)
諸費
建設費の0.6%
281 千円
経済産業省(調達価格等算定委員会)
一般管理費
直接費の14%
525 千円
税率1.4%
225 千円
固定資産税
運
計
転
総 支 出
維
持 ケース2:メーカ値
費
主任技術者人件費
4,500 千円
300 千円
(c)=(a)+(b)×20 (固定価格買取期間20年間)
電気保安協会委託費
150 千円
諸費
メーカ聞き取り
0 千円
一般管理費
0 千円
税率1.4%
計
225 千円
675 千円
総 支 出
売
電
収
入
300 千円
国家戦略室(コスト等検証委員会)
(b)
158,500 千円
修繕費
固定資産税
経済産業省(調達価格等算定委員会)
17年平均
17年平均
国家戦略室(コスト等検証委員会)
(b)
82,000 千円
(c)=(a)+(b)×20 (固定価格買取期間20年間)
168,933 kWh/年
メーカによる20年間発電量平均値
売電価格
概算発電量
年間売電収入
総収入
37.8 円(税込)
6,386 千円
127,713 千円
(d):2013年度購入単価
(e)=(d)×20 (固定価格買取期間20年間)
採算性検討:ケース1
固定価格買取期間内における収支
単純投資回収年数
-30,787 千円
36.3 年
(e)-(c)
45,713 千円
12.0 年
(e)-(c)
(a)÷[(d)-(b)]
採算性検討:ケース2
固定価格買取期間内における収支
単純投資回収年数
-7-22-
(a)÷[(d)-(b)]
(3)ため池モデル
a.対象施設概要
山口県内には約 2,000 のため池がある。傾斜のあるため池堤体は、屋根の設置と同様
に架台を必要とせずに、太陽光パネルを据え付ける形での設置が可能である。
山口市梅の木遠下池の堤体への設置を検討した。
図表 7-27
山口県山口市
対象地点位置図
梅の木遠下池
出典:電子国土ポータル
-7-23-
Digital Japan Portal Web Site
b.航空写真
対象となるため池を上空から撮影した航空写真を図表 7-28 に示す。太陽光パネルは
南側の堤体に設置する。
図表 7-28
対象施設
航空写真
設置個所
図表 7-28
連系地点
-7-24-
現況写真
c.前提条件
パネル配置、発電量算出にあたり必要となる前提条件について、以下のように設定す
る。ため池の堤体は南向きで、傾斜も約 20°となっている。そのため、耕作放棄地、農
業用施設のように傾斜確保のための架台は不要であり、屋根の設置と同様に堤体に直接
設置となる。
ため池の堤体への設置のため、次の理由によりパネルは 2 段の分割配置とした。
①杭の設置はできない(漏水の原因となる)
②直接堤体に設置のため、堤体の漏水確認のため、堤体を目視するスペースが必要
堤体の中央に設置のため、階段を挟み左側 2 段×12 列、右側 2 段×15 列とした。
図表 7-30
項目
太陽光発電設置における前提条件
諸元
堤体右側
堤体左側
備考
パネルサイズ
1,476mm×998mm
長州産業(株)製品を想定
公称最大出力
236W
長州産業(株)製品を想定
アレイサイズ
2 段×12 列×2
2 段×15 列×2
パネル 48 枚
パネル 60 枚
方位角
-5°
真南 0°より、東をマイナ
ス、西をプラスとする
傾斜角
20.0°
長州産業(株)製品を想定
パネル仕様は図表 7-7 長門市日置と同一
-7-25-
d.パネル配置図
対象施設のパネル配置を図表 7-32 に示す。
階段を中心に左右の堤体の設置でパネル枚数 108 枚、設備容量は 25.5kW(11.3kW+
14.2kW)となる。
耕作放棄地、農業用施設と異なり 50kW以下の低圧発電となる。
図表 7-31
項目
諸元
堤体右側
アレイ設置
パネル設置枚数
備考
堤体左側
2 段配置
48 枚
パネル公称最大出力
発電出力
設備容量
60 枚
236W
11.3kW
図表 7-32
(A)
(B)
14.2kW
パネル配置図
-7-26-
(A)×(B)÷1000
パネルの設置は工事費を抑られる法枠ブロックへの設置で検討した。太陽光パネルは荷
重が 10~15kg/m2 と軽量であるので、安定した法面であれば法枠ブロック上への設置が可
能である。
図表 7-33
法枠ブロックへのパネル設置図
-7-27-
e.発電量
長州産業(株)による 1981 年~2009 年まで 29 年間の平均日照量による発電量は、
27,860kWh/年となる(図表 7-34)。
経年劣化を考慮した 20 年間の平均発電量は 25,595kWh/年となる(図表 7-35)。
【参考】
NEDOの太陽光フィールド事業によるガイドラインでは、発電量は 25,826kWhとな
る。初年度の発電量 27,860kWhより低い。日射量は山口観測所。
図表 7-34
1月
日射量
2.78
(kWh/m 2・日)
平均気温
4.3
(℃)
発電量
1,769
(kWh)
年間発電量
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
平均
3.39
3.92
4.59
4.70
4.17
4.23
4.69
4.11
4.09
3.29
2.85
3.90
5.2
8.5
13.9
18.5
22.4
26.2
27.1
23.3
17.3
11.6
6.5
15.4
1,959
2,454
2,720
2,823
2,384
2,459
2,715
2,341
2,469
1,968
1,798
合計
27,860
3000
2500
発 2000
電
量
k 1500
W
1000
h
500
0
1月
2月
3月
4月
5月
図表 7-35
経過年
発電量
(kWh)
経過年
発電量
(kWh)
0
1
2
3
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
20 年間の発電量
4
5
6
7
8
9
27,860 27,024 26,851 26,679 26,508 26,339 26,170 26,003 25,836 25,671
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
平均
25,506 25,343 25,181 24,987 24,795 24,604 24,414 24,226 24,040 23,855 25,595
-7-28-
f.概算工事費
概算工事費・売電収入の算出結果、および固定価格買取制度の買取期間である 20 年
間を想定した総支出と総収入の差を求め、経済性を検討した結果を図表 7-36(次ページ)
に示す。検討条件は耕作放棄地モデルと同様である。
概算工事費、および売電収入の算出結果は、20 年間で
ケース 1:4,150 千円の黒字。建設費を年間収支で按分した投資回収年数 15.0 年
ケース 2:5,210 千円の黒字。建設費を年間収支で按分した投資回収年数 14.1 年
となる。
「耕作放棄地モデル」「農業用施設モデル」と比較すると、低圧設備で電気主任技術
者を必要とせず運転維持費の差がないので、ケース 1、2 とも黒字となる。
低圧設備であり、同じ低圧設備の住宅用と同様に経済性が見込まれる。
-7-29-
図表 7-36
費 目
パネル公称最大出力
236 W
パネル設置枚数
108 枚
設備容量
25 kW
敷地面積
2,500 m2
諸 元
費 目
概算工事費および売電収入
諸 元
費 用
備 考
費 用
備 考
備 考
除草・防草のみ
出 典
機器費
太陽電池モジュール
3,800 千円
長州産業(株)見積もり
架台
600 千円
屋根設置用フレーム
パワーコンディショナー
900 千円
家庭用低圧用
〃
付属設備
300 千円
ケーブル、集電箱等
〃
小 計
〃
5,600 千円
工事費
建
設
費
引込設備工事
1,000 千円
受変電設備工事
-
千円
〃
電気設備工事
1,300 千円
〃
モジュール設置工事
低圧連系工事
中電工(株)見積もり
800 千円
〃
基礎工事
1,500 千円
法枠基礎
〃
フェンス工事
1,400 千円
1.8m鋼製
〃
防草対策工事
-
その他
1,000 千円
造成工事
-
小 計
千円
〃
運搬費、諸経費等
〃
千円
7,000 千円
合 計
12,600 千円
kWあたり単価
(a)
504 千円/kW
(a)÷出力25.5kW
ケース1:文献値
主任技術者人件費
-
50kW以下より不要
建設費の1.0%
56 千円
経済産業省(調達価格等算定委員会)
諸費
建設費の0.6%
34 千円
経済産業省(調達価格等算定委員会)
一般管理費
直接費の14%
13 千円
税率1.4%
27 千円
固定資産税
運
計
転
総 支 出
維
持 ケース2:メーカ値
費
主任技術者人件費
-
千円
国家戦略室(コスト等検証委員会)
(b)
15,200 千円
(c)=(a)+(b)×20 (固定価格買取期間20年間)
50kW以下より不要
50 千円
諸費
長州産業(株)
0 千円
一般管理費
固定資産税
経済産業省(調達価格等算定委員会)
17年平均
130 千円
修繕費
0 千円
税率1.4%
計
27 千円
77 千円
総 支 出
売
電
収
入
千円
修繕費
14,140 千円
17年平均
国家戦略室(コスト等検証委員会)
(b)
(c)=(a)+(b)×20 (固定価格買取期間20年間)
売電価格
概算発電量
年間売電収入
総収入
25,595 kWh/年
37.8 円(税込)
967 千円
長州産業20年間発電量平均値
(d):2013年度購入単価
19,350 千円
(e)=(d)×20 (固定価格買取期間20年間)
4,150 千円
15.0 年
(e)-(c)
5,210 千円
14.1 年
(e)-(c)
採算性検討:ケース1
固定価格買取期間内における収支
単純投資回収年数
(a)÷[(d)-(b)]
採算性検討:ケース2
固定価格買取期間内における収支
単純投資回収年数
-7-30-
(a)÷[(d)-(b)]
2.畜産廃棄物
畜産廃棄物でも、メタン発酵のメタンを燃料としたガスエンジン、マイクロガスター
ビンで発電は可能である。太陽光モデルと同様、畜産廃棄物での発電の可能性につき検
討した。検討はNEDO計算式による。
なお、メタン発酵によるバイオマス発電は、
①化学反応によるプラントのため建設費が高価
②小規模発電で発電効率が低い(タービン効率 10%程度=熱の 10%しか電気にならない)
より発電単価は、200~300 万円/kWとなり、採算性の確保は困難である(詳細は、
「(d)
売電プラントの事例」参照)。
(1)畜産バイオマスの賦存量・利用可能量
山口県畜産調査表(平成 25 年 2 月 1 日現在)による県内の市町村別の牛、豚、鶏の飼
育頭数を図表 7-37 にまとめる。
牛は乳用牛、肉用牛とも下関市が 1,648 頭、2,931 頭と多い。豚は岩国市が 7,327 頭
と多い。鶏は採卵鶏は山口市が 1,188,000 羽、ブロイラーは長門市が 907,000 羽で多い。
図表 7-37
市町村
下関市
宇部市
山口市
萩市
防府市
下松市
岩国市
光市
長門市
柳井市
美祢市
周南市
山陽小野田市
周防大島町
和木町
上関町
田布施町
平生町
阿武町
乳用牛
飼養頭数
(頭)
1,648
53
476
357
284
0
89
0
0
0
340
74
118
53
0
0
x
0
x
県内の牛、豚、鶏の飼育頭数
肉用牛
飼養頭数
(頭)
2,931
274
2,567
1,760
698
0
2,570
218
2,531
156
1,196
492
54
95
0
4
30
282
178
豚
飼養頭数
(頭)
0
x
184
x
x
0
7,327
0
4,145
x
x
x
0
x
0
x
0
0
x
採卵鶏
飼養羽数
(1,000 羽)
523
505
1,188
0
0.5
x
1.9
x
0.5
29.8
0
0
0
0.6
0
0
0
0
0
ブロイラー
飼養羽数
(1,000 羽)
x
0
x
0
0
0
180
x
907
0
115.6
0
0
x
0
0
x
0
0
これら牛、豚、鶏のふん尿を利用してのエネルギー利用は、水分の多い牛・豚はメタ
ン発酵、水分の少ない鶏は直接燃焼による熱利用となる。
-7-31-
(2)発電プラント運用の可能性
a.牛・豚ふん尿
(a)ふん尿の発生量
飼育頭数に一頭当たりのふん尿発生量を乗じて計算した、ふん尿発生量を図表 7-38
にまとめる。
ふん尿発生量はNEDO計算式で1頭あたり
乳用牛 31kg/日・頭、肉用牛 18.6kg/日・頭、豚 8.1kg/日・頭
である。
最大の発生量は、下関市で 38,526t/年(乳用牛 18,647t/年、肉用牛 19,874t/年)
、
105.6t/日である。
図表 7-38
ふん尿発生量
牛・豚 畜産廃棄物発生量
(t/年)
45,000
(t/日)
120
豚(年)
40,000
1 日当たり
年当たり
肉用牛(年)
乳用牛(年)
35,000
100
豚(日)
肉用牛(日)
30,000
乳用牛(日)
80
25,000
60
20,000
15,000
40
10,000
20
5,000
0
0
年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日
下関市 宇部市 山口市
萩市
防府市 下松市 岩国市
光市
長門市 柳井市 美祢市 周南市 山陽小 周防大 和木町 上関町 田布施 平生町 阿武町
野田市 島町
町
(b)活用できるエネルギー量(利用可能量)
各市町で図表 7-38 のふん尿を全量収集することは不可能であり、NEDOの式では、
収集により利用できる量はふん尿の 9%としている。
この 9%相当を“バイオマス利用可能量(t/年)
”とし、以下の計算式で利用可能量に
よる発生エネルギー量“利用可能量(GJ/年)
”を計算している。
利用可能量(GJ/年)=畜産系バイオマス利用可能量(t/年)×全固形物割合(%:9%)
×有機物割合量(%:35%)×バイオガス発生率(m3N/t-分解VS:
808)×メタン含有率(%:60%)×メタン発熱量(GJ/m3N:0.371)
×効率(発電:25%)
発電の場合は、メタンを燃料としてガスエンジン・マイクロガスタービンでの発電と
なる。発電の効率(熱→電気エネルギー変換効率)は 25%としている。
-7-32-
図表 7-39
発電に利用されるエネルギー量
牛・豚 畜産廃棄物賦存量・利用可能量
45,000
600
賦存量(TJ/年)
40,000
500
利用可能量(GJ/年)
35,000
利
400 用
可
能
量
300
G
J
200 /
年
(
賦 30,000
存
量 25,000
T
J 20,000
/
年 15,000
(
)
)
10,000
100
5,000
0
0
下
関
市
宇
部
市
山
口
市
萩
市
防
府
市
下
松
市
岩
国
市
光
市
長
門
市
柳
井
市
美
祢
市
周
南
市
山
陽
小
野
田
市
周
防
大
島
町
和
木
町
上
関
町
田
布
施
町
平
生
町
阿
武
町
※発生量の 9%利用が利用可能量(右軸)
全ふん尿を利用の場合のエネルギーが賦存量(左軸)
発生ふん尿の 9%が利用可能として、最も利用可能量が多いのは、下関市の 492GJ/年
である。9%のふん尿は、下関市の全頭数が 4,579 頭より、412 頭分(4,579 頭×9%)、9.5t/
日(105.6t/日×9%)となる。
(c)発電の可能性
上記下関市の 412 頭分の利用エネルギー492GJ/年による発生電力量は、365 日 24 時間
運用で、15.6kWhである。
1時間当たり電力量=492(GJ/年)÷3.6MJ/kWh÷365 日÷24 時間=15.6kWh
この電力では、以下により売電はできない。
①バイオガスプラントでは、30kWh以上の電力をプラントの電気として使用する
②売電の概ねの目安は、50kW以上とされる。50kWの発電には、上記検討の 3 倍のふん尿
量に相当する、約 1,200 頭(412 頭×3)、ふん尿量約 30t/日(9.5t/日×3) を必要と
するので収集が課題となる
③バイオガスプラントでは、発酵ざん渣として固形物、液肥が発生する。これら散布箇
所が必要となる。利用箇所がなければ産業廃棄物となる(以下「(d)売電プラント
の事例」参照)
-7-33-
(d)売電プラントの事例
バイオガスプラントでの売電の事例として北海道の士幌町のプラントの概要を図表
7-41(次ページ)に示す。
ア.概要
士幌町のプラントでは発酵後の液肥を農地散布することで後工程処理(発酵後の液
体・固体のざん渣の処理-排水処理)を不要とし、必要電力を抑え、15t/日の乳牛のふ
ん尿のメタン発酵からマイクロガスタービンの発電で、490kWhの電力を北海道電力に売
電している。
イ.事業性について
本プラントは、建設費が約 71,000 千円、発電機が 30kWマイクロガスタービンより発
電単価は、2,300 千円/kW(71,000 千円÷30kW)と、太陽光発電の 300~400 千円/kWの 7
~8 倍である。
太陽光発電の設備投資回収年が 15 年前後であり、発電単価が 10 倍となれば採算性確
保は困難である。
なお、本プラントは後工程処理がないので、発電単価 2,300 千円/kWは安価である。
運用プラントの実績からは、図表 7-40 のように、50kW以下の発電能力のプラントの発
電単価は、4,000 千円/kW以上である。また、プラントの建設コストは 1~20,000 万円で
ある。
1~20,000 万円のプラントで 30kWの発電設備では採算性の確保が厳しい。採算性向上
には次の方策があるが、採算性確保は困難である。
①士幌町のプラントと同様に後工程処理(発酵後の液体・固体のざん渣の処理-排水処
理)を不要とする。後工程処理はプラント建設費の 30~40%を占める
②畜産農家から、畜産廃棄物処理費用を徴収する(牛豚1頭あたり 10,000 円/年を徴収
している施設がある)
図表 7-40
バイオガスプラントの発電単価
発電単価
400 万円/kW 以上
プラント建設費
1~20,000 万円以上
(バイオマスエネルギー導入ガイドブック第3版(NEDO)より)
-7-34-
図表 7-41
士幌町バイオガスプラント(南地区)の概要
事業主体
北海道士幌町
所在地
施設名称
原料
システム
フロー
バイオガスプラント(南地区)
運転開始年
利用方法
家畜ふん尿
北海道河東郡士幌町字中士幌東 1 線
128
2003 年 4 月
メタン発酵・発電
システムフロー
プラント全景写真
出典:士幌町ホームページ
設備仕様
運転状況
効果
建設費
1.メタン発酵槽:モジュール式メタン発酵槽 424m3
2.ガスホルダー:50m3 コンテナ収納型ガスホルダー
3.発電機:30kW マイクロガスタービン(コージェネレーションシステム)
4.消化液貯留槽:3,300m3 液肥として利用するので、排水処理装置が無い
1.発電電力の売電
1 日 15t の畜産ふん尿(乳牛約 250 頭分)から、モジュール型中温メタン発酵処理で、30kW
のガスタービン発電により約 650kWh/日の発電、このうち約 490kWh/日の余剰電力を売電。
2.液肥の利用
1 日 15m3 発生する消化液を液肥とし利用。そのため排水処装置は設置しない。
1.消化液を液肥として利用することにより、①建設費の削減、②発電電力の約 75%を売電、
③化学肥料の削減
71,000 千円
-7-35-
b.鶏ふん尿
(a)ふん尿の発生量
飼育頭数に一頭当たりのふん尿発生量を乗じて計算した、ふん尿発生量を図表 7-42
にまとめる。
ふん尿発生量はNEDO計算式で一頭当たり、
採卵鶏 0.136kg/日・頭、ブロイラー0.13kg/日
である。
最大の発生量は、山口市で採卵鶏 58,972t/年、161.6t/日である。
図表 7-42
ふん尿発生量
鶏 畜産廃棄物発生量
(t/年)
70,000
(t/日)
180
ブロイラー(年)
60,000
採卵鶏(年)
ブロイラー(日)
160
140
採卵鶏(日)
50,000
120
1 日当たり
年当たり
40,000
100
80
30,000
60
20,000
40
10,000
20
0
0
年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日 年 日
下関市 宇部市 山口市
萩市
防府市 下松市 岩国市
光市
長門市 柳井市 美祢市 周南市 山陽小 周防大 和木町 上関町 田布施 平生町 阿武町
野田市 島町
町
(b)活用できるエネルギー量(利用可能量)
NEDOの式では、鶏ふんについては収集により利用できる量はふん尿の 50%として
いる(牛ふんの 9%に対し高いのは、軽量の鶏は鶏舎で多数飼育することを考慮している
推定される)
。
この 50%相当を“バイオマス利用可能量(t/年)”とし、以下の計算式で利用可能量に
よる発生エネルギー量“利用可能量(GJ/年)
”を計算している。
利用可能量(GJ/年)=鶏ふんバイオマス利用可能量(t/年)×鶏ふん発熱量(GJ/t:
10.47)×効率(発電:10%。蒸気ボイラでのタービン発電)
鶏ふんは、直接燃焼するので発電は蒸気ボイラでのタービン発電となる。発電の効率
(熱→電気エネルギー変換効率)は 10%としている。
-7-36-
図表 7-43
発電に利用されるエネルギー
鶏 畜産廃棄物賦存量・利用可能量
700,000
35,000
賦存量(TJ/年)
600,000
30,000
利用可能量(GJ/年)
25,000 利
用
可
20,000 能
量
(
500,000
賦
存
量 400,000
(
T
J
300,000
/
年
200,000
G
J
/
10,000 年
15,000
)
)
100,000
5,000
0
0
下
関
市
宇
部
市
山
口
市
萩
市
防
府
市
下
松
市
岩
国
市
光
市
長
門
市
柳
井
市
美
祢
市
周
南
市
山
陽
小
野
田
市
周
防
大
島
町
和
木
町
上
関
町
田
布
施
町
平
生
町
阿
武
町
※発生量の 50%利用が利用可能量(右軸)
全鶏ふんを利用の場合のエネルギーが賦存量(左軸)
鶏ふんの 50%が利用可能として、最も利用可能量が多いのは、山口市の 31,165GJ/年
である。50%の鶏ふんは、山口市の全数が 1,188 千羽より、594 千羽(1,188 千羽×50%)、
80.8t/日(161.6t/日×50%)となる。
(c)発電の可能性
594 千羽分の利用エネルギー31,165GJ/年による発生電力量は、365 日 24 時間運用で、
988kWhである。
1時間当たり電力量=31,165(GJ/年)×1000÷3.6MJ/kWh÷365 日÷24 時間=988kWh
988kWの発電電力であれば売電は見込まれるが次の課題がある。
①山口市の 50%の鶏ふんの収集方法
②鶏ふん発電ボイラを運用しているみやざきバイオマスリサイクル(株)では、約 10
倍の 11,700kWの発電プラントで、建設費が約 50 億円である。山口市の 988kWのプラ
ントは、発電量が約 1/10 となるが、工事費は発電出力に比例とすると約5億円とな
る(図表 7-44 参照)。
(d)売電プラントの事例
売電の事例として宮崎県のみやざきバイオマスリサイクル(株)の概要を図表 7-44(次
頁)に示す。
440t/日(132,000t/年)の鶏ふんをボイラ燃料とし、約 9,000kWの発電を行っている。
-7-37-
図表 7-44
事業主体
施設名称
原料
みやざきバイオマスリサイクル株式会社の概要
みやざきバイオマスリサイクル
株式会社
みやざきバイオマスリサイクル
発電所
ブロイラー鶏ふん(一部、種鶏ふ
ん(1%以下)を含む)
所在
運転開始年
利用方法
宮崎県児湯郡川南町大字川南 4621
番地 1
2005 年 5 月
(営業運転開始)
発電(充電あり)
焼却灰は肥料原料として販売
システム
フロー
システムフロー
プラント全景写真
出典:西日本環境エネルギー株式会社ホームページ
(http://www.neeco.co.jp/topics/17.06.14/main.htm)
設備仕様
設備形式:鶏ふんの直接焼却による発電
設備規模:鶏ふん焼却量 132,000 t/年 (440 t/日)
発電出力 11,350 kW (発電端)、約 9,000 kW (送電端)
①鶏ふんボイラ 自然循環ドラム型ボイラ(ストーカ炉)
蒸気量: 55 t/時
②蒸気タービン 横型衝動抽気復水タービン
出力:11,700 kW
③鶏ふん貯蔵サイロ 容量: 2,500 ㎥ ×2 基
-7-38-
運転状況
効果
建設費
①バイオマス受入
鶏ふん 131,081t/年 (2008 年度実績)
通常運転時は鶏ふんのみで燃焼(バイオマス比率 100%)
起動時は A 重油でボイラ加熱、ボイラ加温後、鶏ふん専焼で発電開始
②原料調達費
発電燃料として宮崎県内のブロイラー会社系列の養鶏農家から有償で購入
③熱利用
なし
④発電
発電量 74,943 MWh/年 (2008 年度実績)
所内動力(約 13~15%程度)を差し引いた全量を九州電力株式会社に売電
⑤処理済バイオマス
焼却灰(肥料原料)販売量 14,111 t/年 (2008 年度実績)
肥料原料として全量を契約取引先へ販売
・鶏ふんの大量焼却による減量化(約 1/10)と焼却灰の肥料原料化による資源循環
・環境負荷の低減(臭い、土壌・地下水への環境影響)
・農家個別の設備投資軽減およびふん尿処理にかかる精神的負担の軽減による畜産業の安
定的成長
・鶏ふんの焼却熱による発電で、石油・石炭などの化石燃料の焚き減らしができ、化石燃
料の温存化と二酸化炭素削減効果による地球温暖化防止への貢献
4,960,000 千円
-7-39-
農山漁村には、未利用地、水、バイオマス、太陽光など、再生可能エネルギーによ
る発電・熱利用に活用できる資源が豊富にあります。本マニュアルにより再生可能エネ
ルギーの導入を図り、農山漁村の活性化や、エネルギー供給の多様化に取り組んでいた
だきたいと思います。
問い合わせ先:山口県農林水産部 農林水産政策課 資源活用推進班
農山漁村再生可能エネルギー導入マニュアル
〒753-8301
山口市滝町1-1
平成 25 年 12 月発行
TEL 083-933-3473
E-mail:a17100@pref.yamaguchi.lg.jp
http://www.pref.yamaguchi.ig.jp/cms/a17100/index/
作成委託業者:中電技術コンサルタント株式会社
FAX 083-933-3339
Fly UP