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有澤誠研究会 JRE プロジェクト 2009 年度秋学期タームペーパー

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有澤誠研究会 JRE プロジェクト 2009 年度秋学期タームペーパー
有澤誠研究会 JRE プロジェクト
2009 年度秋学期タームペーパー
環境情報学部 2 年
相原健太(70840039)
[email protected]
2010 年 1 月 14 日
目次
1.はじめに
2.既存の車両空調
2.1 コントロール
2.2.1 エアコン
2.2.2 ヒーター
2.2.3 扇風機
2.2.4 エアーカーテン
2.2.5 その他
3.利用者への調査
3.1 調査方法
3.2 アンケート調査
3.3 考察
4.より快適な空調への提案
4.1 既存空調システムの外部取得データの増強
4.1.1 現状最新技術
4.1.2 列車行路による気象情報との連動
4.1.3 混雑予想
4.2 利用者の投票による空調管理
5.最後に
謝辞
参考文献
1.はじめに
現代社会において鉄道という存在は無くてはならない存在になっている. 一昔前までは
鉄道車両は単なる乗り物に過ぎなかったが, 様々なサービス向上により移住性が飛躍的に
向上している. 移住性と言っても様々な要素があるが, この論文では特に乗客から鉄道会
社への要望が多い空調に注目する. 本研究は, 鉄道車両における空調の現状とより良い空
調システムへ向けての提案を行うものである.
2.既存の車両空調
2.1 コントロール
基本的に設定温度は冷房 26 度(弱冷房車は 28 度), 暖房 20 度で設定されている. しか
し旧来の車両においては, すべて空調管理は車掌(ワンマン車両の場合は運転士)に任さ
れている.その上, 運転席/車掌室には冷房・暖房・送風といった大まかな ON/OFF のスイッ
チしか配置されておらず, 細かい調節は各車両にある温度計と調整盤で行っていた. すな
わちきちんとした温度管理をすることは非常に困難だった.
JR東日本が開発したMONシステムから, 乗務員室にモニタが設置されると共に, 各車両の
温度が表示されるようになった. 尚, この頃から車内温度に応じた自動運転が可能になっ
ている. MONシステム改良版のTIMSは車両に搭載した空気バネの沈み具合で乗客数を把握
したり, 車内外の温度・湿度を計測をしている. 元々組み込まれている各月の温度に対応
させた空調動作パターンによってさらに細かい空調管理が可能となっている . 尚, 前述し
たのはJR東日本におけるシステムであるが, 私鉄各社も同じかほぼ類似のシステムが搭載
されている.
2.2 空調機器
2.2.1 エアコン
鉄道車両のエアコンは基本的に天井に設置されている. 尚, 東京メトロ01系などの車両
限界が小さい車両には車端部に搭載された例もある.
近年の通勤電車において主流になっている装置は円柱型の吹き出し口が左右に回転しな
がら動く通称ラインデリアである.(写真1参照)ちなみにこのラインデリアは, 三菱電機
(株)の登録商標であり, 他社の同じような製品を搭載している車両も存在する. 特急用
車両では導入例が殆どない. その理由として特急車両は乗客が長時間乗車するので空調風
が当たらないようにしなければならない為である. 通勤車両は扉の開閉頻度が非常に多い
ため, 車内外の空気の出入りが多く, 体感的な温度低下と共に清涼感を与えられるように
わざと風が当たるようになっている.
写真1:天井のラインデリア
2.2.2 ヒーター
旧来の車両から座席下の足もとに配置されている. 旧来の車両は座席下をすっぽりと金
属板で覆ってヒーターを配置していたが, 近年の車両では非常に小型化しており下に荷物
などを置くスペースが生まれている. (写真 2)鉄道車両における暖房はこの電気ヒーター
が主に使用されており, 天井のエアコンはあくまでも補助的に稼動する. にくわえ、エア
コンの暖房装置も使って車両の温度を上昇させる。また座席下にヒーターがある事で座席
自体を温める効果もある。座席下にヒーターを置くのは熱は下から上に上っていく特性を
考えているからである. もし天井のエアコンだけにしてしまうと, 上部に熱が溜まってし
まい, 足元や着席している人がとても寒くなってしまう為である. 暖房は頭寒足熱が効果
的とされている.
写真 2:座席下のヒーター
2.2.3 扇風機
近年の車両では見ることが少なくなったが, 旧来の車両には扇風機が設置されていた.
エアコンが無い車両においては単に送風の役割だけだが, エアコンが付いている車両にお
いてはダクトから出た冷気をまんべんなく車内に送る役割をした . しかし前述のラインデ
リアなどのダクト部が回転する装置の普及により近年の車両では見られなくなった.
尚、相模鉄道の車両には扇風機のスイッチが設置されており , 乗客の好みに任せると言う
画期的な物も存在する.(写真 3)
写真 3:客室にある扇風機のスイッチ
2.2.4 エアーカーテン
JR北海道の一部の通勤電車に搭載されている. ドアの上部と側面から強い温風を送り,
外気を遮断する. 元々はデッキを廃止するために設置されたが, やはり外気遮断効果は
デッキに比べると落ちる. 北海道以外の地域に採用された例は無いが, ドアの開閉回数が
多い通勤車両に搭載すると効率が良いのではないかと考えられる.
2.2.5 その他
JR 東日本の E233 系には新たに空気清浄機が搭載されている. また小田急電鉄も一部車両
に脱臭用カードリッジを設置しており, 直接空調に関与はしないが車内空間の快適性向上
に繋がっている.
3.利用者への調査
3.1 調査方法
鉄道車両の空調に関して利用者はどのように感じているのかアンケート調査を行い , 検
討することにした.
3.2 アンケート調査
以下が結果である. 対象は 18 歳~25 歳の電車通学をする男女 75 名である. 5 項目と最
後に要望を書いてもらうスペースを設けた. 以下が結果である. 尚、グラフ中の数字は人
数を表す.
[1]車内空調で不快だったことはあるか
[2]夏における車内の温度は
[3]冬における車内の温度は
[4]弱冷房者をわざわざ利用するか
[5]車内空調に改善の余地があると感じるか
[6]その他(一部抜粋)
・混雑していると体感温度は車内温度より高い
・冬場は座席下ヒーターが暑い
・冬はドアの開閉で冷たい風が入ってくる
・車内の温度が不快なとき誰に言えば良いのか
・夏は冷房が効きすぎて上着が必要
・冬は外気温に適した格好なのに車内は暑い
・扇風機は直接風が当たるので良い
3.3 考察
多くの利用者が車内空調で不快だったことがある・改善の余地があると答えたのは非常
に意外であった. この研究の前に鉄道の快適性は何によって左右するのかというアンケー
トをしたこともあるが, そのアンケートで 60%程度の人が空調と答えていた経緯もあり,
鉄道の快適性を考える上で非常に重要な問題であると分かる . 夏・冬における車内温度の
質問に関してはどちらかに偏っているわけでもない. 結果的には両者が拮抗するものとな
った. 人それぞれ感覚が違う為, 車内温度への感じ方の差が大きい為だと考えられる. 弱
冷房車の質問では,弱冷房者を好んで行く人はとても少なく, 車両ごとに暖かい車両と涼
しい車両を作ってもあまり効果的でないという事が考えられる . また, 最後の要望や意見
の欄に最も多かったのが, 混雑により体感温度が室温より高くなっていることを指摘する
という記述だった. 混雑率は車内の温度とはまた別に非常に重要なデータであることが分
かる. しかしながら, 混み始めてから空調が稼動するのでは遅く, いかに予想して快適な
空間を作っておくかが重要だと考えた.
4. より快適な空調への提案
4.1 既存空調システムの外部取得データの増強
4.1.1 現状最新技術
現在最新型の車両は, 前述したとおり車内と車外の温度と湿度, 乗車率とカレンダー機
能による通年自動制御が行われている.
4.1.2 列車行路による気象情報との連動
これは主に近郊型の車両に言える事だが, 一部の電車はとても長い距離を走行している
うちに天候の特色が変わる事がある. 例えば平日前橋駅 5 時 40 分発湘南新宿ライン小田原
行は, 終点小田原駅に 9 時 24 分に到着する.(図 1) 北関東から南関東を縦断するので全
く気候も異なる上, 時間的に始発時は約-3℃, 終着時には約 6 度であり, かなりの温度差
が生じている.
図 1:湘南新宿ラインの経路
このような列車でその場の外気温を測定しながら空調扱いを行うと , 不快な温度の時間
が必ず発生してしまう. そこで, 車両の行路を始発駅で入力と同時に天気情報を取得, G
PSもしくは走行距離によってあらかじめ気温を予測して空調扱いが出来るのではないか
と考えられる.
4.1.3 混雑予測
これは通勤車両に特に有効な物である. ラッシュ時など混雑する駅や号車はある程度パタ
ーン化していると考えられる. そのパターンをプログラム化して中に組み込み, 混雑して
不快になる前に, あらかじめ混雑時に対応した適温にすることが出来るのではないだろう
か.
4.2 利用者からの投票による空調管理
アンケートからも分かるように, 人それぞれ感じ方が全く異なる上, 空調というのは人
の感性が基準なので非常に難しいものがある. そこで利用者の好みに合わせるというのか
このコンテンツの趣旨である. 利用者は携帯電話を使用して車内の QR コードもしくは鉄道
会社ホームページから特設ページにアクセスする. そこで掲示されている編成番号と号車
を入力して投票, 投票されたデータはサーバーから車両に届けられて反映される仕組みで
ある. 尚, 結果は視覚的にドア上のディスプレイなどに表示される.(図 2)
視覚的に自分の意見が反映されることによって, 鉄道会社が利用者の意見を取り入れて
空調扱いをしているという企業イメージの向上が見込める. しかしながら問題点も多くあ
り, サーバーとの交信回数や, 短距離乗客が多い場合あまり活用されない懸念がある事,
いたずらで車内温度を上下される可能性がある事などが挙げられる.いかに既存の自動空
調との優先割合や調和を図りつつ実用化していくかが非常に難しく , 重要になってくるの
ではないかと考えられる.
4.3 その他
ドアを開閉することによって生じる空調効果の損失については , エアーカーテンの設置
もしくはドアカットを現在よりも頻繁に行うことである程度解消できるのではないかと考
えられる.
5. おわりに
鉄道車両の空調は以前に比べると飛躍的に快適性が向上した . しかしながら更なる空調
データの増強を行うことで空調管理の基盤を作り, それに加え乗客の好みに合わせること
で最適な車内環境を構築できるのではないだろうか.
謝辞
最後に, 本研究を進めるに当たり有澤教授をはじめ研究会の方々に貴重な助言を多数頂
きました. この場を借りて厚く御礼申し上げます.
参考資料
[1] 三菱電機 HP (2009 年 12 月 23 日閲覧)
http://www.mitsubishielectric.co.jp/
[2] 近畿車輛 HP
(2009 年 11 月 16 日閲覧)
http://www.kinkisharyo.co.jp/
[3] JR 東日本八王子支社 E233 紹介
(2009 年 12 月 23 日閲覧)
http://www.jreast.co.jp/hachioJi/top.html
[4] 梅原淳『鉄道・車両の謎と不思議』 東京堂出版, 2001 年
[5] 中原信生 『空調システムの最適設計』 名古屋大学出版会, 1997 年
[6] 中井多喜雄 『イラストでわかる空調の技術』 学芸出版社, 1991 年
[7] 小原淳平 『100 万人の空気調和』オーム社, 1950 年
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