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その他の地球環境問題

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その他の地球環境問題
4
その他の地球環境問題
<概
況>
その他の地球環境問題としては 、「森林(熱帯林)の減少 」、「野生生物種の減少 」、「砂漠化」、
「海
洋汚染 」、
「有害廃棄物の越境問題 」、
「開発途上国の公害問題」があげられている。
世界の陸地の約4分の1の面積を占めている森林は 、地球環境の保全に重要な役割を果たしているが 、
現在、焼畑耕作や過剰伐採などにより世界的に森林(熱帯林)の減少が急速に進行しつつあり、地球
温暖化を加速させるなどの影響が懸念されている。また、この森林(熱帯林)の減少に加えて、砂漠
化の進行や海洋汚染の発生などが、生物の生息域の破壊や減少を招き、地球上の多くの生物種が絶滅
の危機に瀕している。さらに、廃棄物の発生量の増大に伴い、有害廃棄物が国境を越えて開発途上国
などへ移動する問題や、開発途上国の急激な工業化や都市化の進展による公害問題が深刻化している 。
これらの地球規模の環境問題は、地球温暖化やオゾン層破壊等の問題とともに人類の生存に関わる
重要な問題であり、国際的な対応が重要となっている。
(1)現 状
地球環境問題とは、被害や影響が一国内にとどまらない環境問題や国際的な取組が必要とされる開発
途上国における環境問題とされ、一般的に、前述した「地球温暖化 」、「オゾン層の破壊 」、「酸性雨」
のほか 、
「森林(熱帯林)の減少 」、「野生生物種の減少 」、「砂漠化 」、「海洋汚染 」、「有害廃棄物の越境
問題 」、
「開発途上国の公害問題」の9つに整理されている。
これらの問題は、人間活動の拡大という共通の要因に基づいて発生し、ある問題が別の問題の原因や
結果になっているなど相互に複雑な関係を有している。また、一般的に長い期間をかけてその影響が現
れるという特徴を持っている。
図3-1-12
地球環境問題の相互関係
先 進国
(国 際 取 引 )
大 規模 な 経済 活 動
開発援助
化 学物 質 の 使用
化 学燃 料 の 使用
⑦海 洋 汚 染
(フ ロ ン )
(二 酸 化 炭 素 等 )
(硫 黄 酸 化 物 )
(窒 素 酸 化 物 )
(フロ ン )
② オゾン層 の 破壊
① 地球 の 温暖 化
③酸 性 雨
⑥ 生 物 の多 様 性
の減少
環境 配 慮 が
不 足 した場 合
④ 熱 帯 林の 減 少
(焼 畑 移 動 耕 作 な ど )
⑧ 有 害 廃棄 物 の
越境移動
貧 困 ・対 外 債 務
⑤砂漠化
⑨発 展 途 上国 の
環境 問 題
(過 放 牧 ・過 耕 作 な ど )
経 済活 動 水 準
の 上昇
人 口の 急 増
発 展途 上 国
出典:環境庁編「平成2年度版環境白書」
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①森林(熱帯林)破壊の現状等
図3-1-13 世界の森林面積の動向
世界の陸地の約4分の1の面積を占
めている森林は、多くの野生生物の
生息・生育環境となっているととも
に、地球温暖化を抑制するための二
酸化炭素の吸収固定源、土壌の保全
や水源涵養といった地球環境の保全
に重要な役割を果たしている。
近年では、焼畑耕作や放牧地・農
地への転換、過度の薪炭材の採取、
不適切な商業伐採などが原因となっ
て、こうした森林(熱帯林)の破壊
が世界的に進んでおり、その背景に
は、開発途上国における急激な人口
増加や工業化の進展、貧困、土地制
度上の問題などの社会経済的要因が
あるとされている。
国 連食 料農 業機 関( FAO) によ る
と、世界の森林面積は、1990年から
出典:環境省編「平成13年版環境白書」
1995年までの5年間に 、全世界で約5,
630万ha、1年間当たりでは1,130万ha(日本の面積の約30%)もの森林が失われており、多くの野生生
物種が絶滅の危機に瀕していることが懸念されている。
また、森林の破壊・消失により蓄積された二酸化炭素が放出されるため、地球温暖化を加速する一因
になっているとの指摘もある。
こうした状況の中、1992年に開催された地球サミットにおいて、森林に関する初めての世界的なコン
センサスを示す「森林原則声明」及び「アジェンダ21」における森林減少対策が採択され、世界の森林
保全と持続可能な経営に関する取組が進められている。
我が国は、国連等の場で、持続可能な森林経営に向けた国際的な合意の実践を主張しており、生態系
との共存を基本とした持続可能な森林経営を実現するため、一定の地域を対象にモニタリング、研究開
発等をパイロット的に実施する「モデル森林」の推進について検討している。
2000年10月には、山梨県において、アジアを中心とした18ヵ国や国際機関が参加した「モデル森林の
推進に関する国際ワークショップ」最終会合が開催され、モデル森林の取組を通じて、持続可能な森林
経営を進めていくための重要事項が「山梨メッセージ」として取りまとめられた。
②野生生物種の減少等(生物多様性 )
現在 、地球上には 、1,300万から1,
400万 の生 物種 が生 息し てい ると 推
定されているが、このうちの多くの
生物種が絶滅の危機に瀕していると
いわれている。その結果、様々な生
物種の相互関係の上に成立している
地球環境が崩壊し、人類の存続その
ものの危険性が危惧されている。
野生生物種の減少の直接的な原因
は乱獲や密猟であるが、森林(熱帯
林)の破壊、海洋汚染、砂漠化の進
行などの生物の生息域の破壊・減少
のほか、地球温暖化や酸性雨の影響
による環境破壊も、その大きな要因
になっていると考えられている。
こうした状況を踏まえ、野生生物
種の保護、生物多様性の保全のため
の 国 際的 な対 応 とし て 、「絶 滅の お
それのある野生生物の種の国際取引
表3-1-4
絶滅のおそれのある種の現状
〈危機にさらされている動物種,2000年〉
哺乳類
鳥 類
爬虫類
両生類
状 況
種の数 割合 種の数 割合 種の数 割合 種の数 割合
(%)
(%)
(%)
(%)
現時点では絶滅の
2,957
62
8,033
81
7,597
95
4,777
97
危機にない種
存続基盤が
676
14
730
7
77
1
27
1
脆弱な種
絶滅の危険性が
610
13
680
7
161
2
83
2
増大している種
絶滅の危機に
520
11
503
5
135
2
63
1
瀕している種
〈危機にさらされている植物種,1997年〉
状 況
総 数
割 合
(種)
(%)
調査対象とな った種の総数
242,013
危機にさ らされている種の総数
33,418
14
絶滅の危険性が増大している種
7,951
3
絶滅の危機に瀕して いる種
6,893
3
本来希少である種
14,505
6
特定できな い種
4,070
2
すでに絶滅した種の総数
380
<1
出典:環境省編「平成13年版環境白書」
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に関する条約 」(ワシントン条約 )、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約 」(ラ
ムサール条約 )、「生物の多様性に関する条約 」
(生物多様性条約)などが締結されている。
わが国においても、1995年に生物多様性条約に基づき「生物多様性国家戦略」が決定されたが、その
後の社会経済の変化などを踏まえ、2002年3月 、「新・生物多様性国家戦略」を決定し、生物多様性の
保全とその持続的な利用に関する取組が進められている。
③砂漠化
砂漠化とは、一般には土地の乾燥化のみが考えられがちであるが、土壌の浸食や塩性化、自然植生の
種類の減少なども砂漠化現象の中に含まれ 、「深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの
国 )において砂漠化に対処するための国連条約(砂漠化対処条約 )」の第1条において「乾燥 、半乾燥、
乾燥半湿潤地域におけるさまざまな要因(気候変動及び人間の活動を含む 。)に起因する土地の劣化」
と定義されている。
現在、砂漠化は地球規模で進行しており、1991年の国連環境計画(UNEP)の調査によると、砂漠化の
影響を受けている土地の面積は地球上の全陸地の約4分の1(約36億ha)に達し 、世界人口の約6分の1(約
9億人)がその影響を受けているとされている。
砂漠化の原因は、干ばつなどの自然的な原因のほか、草地の回復能力を超えた家畜の放牧、土地の能
力を無視した過度の耕作、薪炭材の過剰な採取などと考えられ、開発途上国の貧困、人口増加など社会
的・経済的要因がその背景にあるとされている。
この問題に対する国際的な対応として、
「砂漠化対処条約 」が1994年に採択 、1996年に発効している 。
図3-1-14 砂漠化の現状
砂漠 化 の 影響 を
受 けてい る土 地の 面 積
約 36 億ha
約 1 49億 h a
地球 の 全 陸地 の 約 4分 の 1
砂 漠 化 の影 響 を
受 けて いる人 口
耕 作可 能 な感 想 地 にお ける
砂漠 化 地 域 の割 合 (大 陸 別 )
北 アメ
リカ
1 2.0%
約 9億 人
ヨー
ロッ パ
2 .6%
約 54億 人
世 界 の 人口 の 約 6分 の1
オー ス
トラリ
ア
1 0.6%
南 アメ
リカ
8 .6%
ア フリ
カ
2 9.4%
ア ジア
36 .8 %
出典:環境省編「平成13年版環境白書」
④海洋汚染
地球の全表面の4分の3を占める海洋は、重要な生物生産の場であると同時に、大気との相互関係によ
り気候に大きな影響を及ぼすなど 、地球上のあらゆる生命を維持する上で不可欠な要素となっているが 、
現在、河川などを通じた工場や家庭からの汚染物質の流入、タンカー事故や海底油田の開発等に伴う油
の流出、廃棄物の海洋投棄など人間活動に伴う各種汚染の拡大等により海洋汚染が進行している。
海洋環境を保全するための世界的な取組として、陸上で発生した廃棄物を船舶等から海洋投棄するこ
とを規制する「ロンドン条約 」、船舶等からの油、有害液体物質及び廃棄物の排出や船舶の構造・設備
等を規制する海洋汚染防止のための包括的な条約である「MARPOL73/78条約」並びに大規模油流出事件
が発生した場合への準備、対応及び国際協力を防災のみならず海洋環境の保全の観点からも強化するこ
とを目的とした「OPRC条約」が採択・発効している。
わが国でも、これらの条約を批准するとともに、周辺国と協力して地域的な海洋環境の保全が推進さ
れている。
⑤有害廃棄物の越境問題
廃棄物の発生量が年々増大する中、廃棄物処理コストの上昇や処分容量の不足に伴い、有害な廃棄物
が国境を越えて移動し、発生国以外の国で処分される事例が増えてきている。
しかし、このような有害廃棄物の越境移動では、廃棄物の有害性が極めて高い場合や、移動先におい
て適切な処理・処分がなされない場合が多いなど、深刻な環境汚染につながる事例が多く、地球的規模
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の環境問題の原因となっている。
このため、国連環境計画(UNEP)を中心に 、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に
関するバーゼル条約 」(バーゼル条約)が採択、発効(1992年)しており、わが国においてもこの条約
を批准するとともに、その条約に対応した国内法として「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する
法律」が制定(1993年施行)されている。
⑥開発途上国の公害問題
開発途上国では、急激な工業化や都市化の進展により、大気汚染や水質汚濁、森林等の減少などいわ
ゆる従来型の環境(公害)問題が深刻化するとともに、地球温暖化やオゾン層破壊等の地球規模の環境
問題への対処も必要となっている。
しかし、こうした国においては、資金、技術、人材等が不足しているため、自国だけでは十分な対応
が困難な状況にあり 、先進国の支援が不可欠となっている 。このため 、わが国では政府開発援助(ODA)
を通じて、開発途上国への環境協力・支援が行われている。
(2)今後の課題
特に地域レベルの環境や活動、対策等と密接な関連性を有している地球温暖化、オゾン層破壊、酸性
雨以外のその他の地球環境問題についても、その根本には人間活動の拡大という共通の要因があり、か
つそれぞれの地球環境問題が相互に複雑に関係している。
このため、持続可能な社会の実現に向けて、長期的な視点のもとで、国レベルの取組にとどまらず、
地域や個人のレベルにおいても、国際的な取組に協力していく必要がある。
<引用・参考文献>
・環境庁編.1990.平成2年版環境白書.
・環境庁編.1996.多様な生物との共生をめざして 生物多様性国家戦略.
・環境省編.2001.平成13年版環境白書.
・環境省編.2003.平成15年版環境白書.
・徳島県.2003.徳島県環境白書 平成15(2003)年度.
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