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簡易型遮断器累積遮断量カウンタの開発

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簡易型遮断器累積遮断量カウンタの開発
トピックス
簡易型遮断器累積遮断量カウンタの開発
流通事業本部 流通技術センター 保全技術課 早瀬 敬之*
藤井 大輔 1
きる。また,装置電源のヒューズ断等の異常を検出し
ての警報表示も可能である。
はじめに
遮断器の心臓部である遮断部の損耗量は,事故遮断
した電流の大きさと遮断した回数によって決まること
から,内部点検は遮断電流と遮断回数から累積遮断電
流量を算出し,一定の値を超過した場合に実施してい
電源用
配線類
遮断指令
検出用CT
る。
しかし,累積遮断電流量はオシロなどの事故電流記
録や短絡容量マップから計算したもので求めており,
管理労力が大きいうえ,短絡容量マップから計算した
場合は数値が実際より過大となり,内部点検を行って
も遮断部がほとんど損耗していなかったというケース
が多々ある(図1)
。このため,累積遮断電流量を正確
に把握することを目的として,安価で簡易型の遮断器
累積遮断量カウンタを開発したので,以下に紹介する。
【 遮断器外観 】
装置
本体
事故電流
計測用CT
〔装置本体のサイズ〕(縦)129mm×(横)151mm×(厚さ)46mm
写真1 簡易型遮断器累積遮断量カウンタ外観
【遮断部】
各相接触子損耗残量
(%)
ノズル
アーク接触子
〔参考〕他に電流データ(実績)も表示が可能である。
図1 実際の遮断部取替部品
2
装置の構成
図2 計測データ表示状態の画面
3
装置の設置
本装置は,遮断器の「切」指令を行う制御回路お
よび事故電流を検出するCT二次の計測回路において,
本装置は,図3のとおり遮断器制御箱内に設置し,
遮断器指令電流および事故電流を検出するクランプ
流れる電流を常時計測するクランプCTと,計測デー
タを処理する装置本体で構成する。装置の外観は写真
CTは制御箱内の遮断器制御回路および遮断器CT二次
回路に取り付け,装置電源は照明・ヒーター回路等に
接続する。装置本体は,厚さが50mm程度とコンパク
トであり,ネオジウム磁石により接着可能なため,遮
1のとおりである。
本体には,状態表示(LED)
・操作ボタン・USBを
有しており,装置本体の電源はAC200V・AC100V・
DC100Vのいずれでも対応可能である。計測された
データ等は,装置(ディスプレイ)に表示させること
断器制御箱内の空いたスペースに取り付けることがで
きる。
対象となる遮断器制御箱から装置電源を確保できな
ができるが,USBケーブルでPCと接続して回収し,
図2のとおりPC上に計測データを表示させることもで
い場合は,変電所配線室においてコンセント等から装
置電源を供給し,配線棚に布設された遮断器制御回路
*現 流通事業本部 尾道電力所 発変電課
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エネルギア総研レビュー No.23
簡易型遮断器累積遮断量カウンタの開発
およびCT二次回路にクランプCTを設置する方法もあ
る。この場合は,設置環境が遮断器制御箱よりも良好
なことから,装置の延命化が期待できる。
遮断器制御箱
タイムクロックの修正や記録されたデータの確認,お
よびデータの削除等に使用する。
LEDは,監視装置の状態(常時計測中動作,異常検
出など)を表示させるものである。
トリップ指令用
クランプCTへ
交流クランプCT
(事故電流検出)
簡易型遮断器
累積遮断量カウンタ
CT回路
交流クランプCT
(遮断指令検出)
T.C
簡易型遮断器
N
累積遮断量カウンタ
アース
制御回路
装置電源
(AC200V,
AC100V,
DC100V)
図3 装置接続例
4
DC110V
or
AC100
∼200V
装置の概要
装置本体の内部構造を図4に示す。遮断器のCT二次
回路に取り付けられた交流クランプCTの出力電流は,
接続された抵抗への通電により,電圧に変換される。
変換された電圧は整流後にCR回路に印加されること
で,クランプCTに流れる電流に比例した直流電圧が
電圧変換
電源
入力 → DC5V
RTC
EEPROM
LED
MPU
ユニット
LCD表示器
CT赤・白・青相用
クランプCTへ
整流・CR回路
電圧変換
USB
操作SW
〔シンボル説明〕
電圧変換:電流→電圧変換器
整流・CR回路:電流→電圧変換→電圧保持器
電源:入力電圧→5V変換器
MPU:計測・制御用マイクロプロセッサ(A/Dコンバータ機能内蔵)
RTC:リアルタイムクロック
EEPROM:書換可能ROM
LED:状態表示用発光ダイオード(複数個)
LCD表示器:液晶表示器
操作SW:装置制御切替用スイッチ(リセットを含む)
USB:外部インターフェース
5
図4 装置内部構造
おわりに
一定時間ホールドされ,その信号がMPUに取り込ま
れ,一定間隔でリングバッファに常時記録される。
遮断器制御回路に取り付けられた交流クランプCT
の出力電流は,接続された抵抗への通電により,電圧
今回開発した簡易型遮断器累積遮断量カウンタは,
遮断器の正確な接触子損耗量を掴むことには非常に有
効な装置である。しかし,これまで実験室レベルでの
検証はできているもののフィールドでの検証試験がで
に変換されてMPUに取り込まれ,これにより遮断器
きていないため,今年度,過去3年間で短絡事故実績
が多い送電線を選定し,約十台の装置を各所に設置し
の遮断指令の有無を常時監視している。
遮断器に遮断指令が出力されると,MPUが遮断指
令を検出し,一定時間内(遮断指令から50ms程度内)
の事故電流の最大・平均電流値を計算して,リアルタ
イムクロックから読み出した現在時刻データととも
に,事故電流情報として記憶装置に記録される。次に,
記憶装置に記憶された前回までの累積遮断電流量を読
み出し,今回の遮断電流を加算して新累積遮断電流量
として記憶装置に記録させるとともに,液晶表示器に
最新の各相ごとの接触子損耗残量,動作回数カウンタ
および事故遮断日時を表示させる。
操作SWおよびLCD表示器は,内蔵しているリアル
エネルギア総研レビュー No.23
てデータ収集を行っているところである。今後,検証
試験結果の評価を行い,懸案事項や精度向上のための
改修を実施していく予定である。
装置導入により期待される効果として,年1回の設
備診断パトロールや定期巡視時にデータを把握するこ
とで,内部開放点検時期を容易に推定することが可能
となる。さらに,実際の遮断電流を正確に把握できる
ことから,内部開放点検時期の適正化を図ることがで
き,あわせてコスト低減も可能となる。なお,本装置
は平成24年度から本格導入する方向で検討を進めて
いるところである。
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