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調 査 報 告 - 日本産業機械工業会
調査報告 シカゴ 調 査 報 告 ____________________________________ シカゴ ●廃棄物処理に関する国際情勢及び技術革新について 北米における廃棄物処理は、広大な国土を背景に埋立て処理が主流となっており、コスト 高や焼却処理への懸念から、焼却設備が普及していない。一方、廃棄物を資源やエネルギー 減として捉え、有効活用しようとする動きも見られる。このような中、カナダ・トロントに おいて、 「効率的な廃棄物処理のための国際プロセス及び技術革新」と題する会議が大気廃棄 物管理協会の主催により開催された。 各国の政府・自治体関係者、廃棄物処理事業者、環境技術企業等より、各国・自治体にお ける廃棄物処理の現状、廃棄物処理技術について紹介が行われたので、その内容を報告する。 なお、図表はすべて同会議で使用された資料からの出典である。 1.各国の廃棄物処理の現状 1.1 カナダにおける一般廃棄物処理 Alain Davidプログラムエンジニア(カナダ環境省廃棄物処理課国内廃棄物プログラム) カナダの一般廃棄物の定義は、ゴミ、リサイクル可能物及び堆肥化可能物であり、家庭ゴ ミ、IC&I、建設廃材が含まれる。連邦政府は、国際合意や廃棄物の越境移動について、 自治体は、廃棄物の域内移動、廃棄者、輸送者、処理施設の認可について、それぞれ責任を 持つ。排出者責任に係る規制は、自治体によって課される。自治体は、家庭ゴミの収集、転 換、処理においても責任を有する。 カナダは、2004年に一般廃棄物を3,320万トン排出した。これは2000年と比較して13%増加 しており、人口が2004年に3,200万人となり2000年から4%増加したよりも速いペースである。 カナダの一人当たり廃棄物排出量は、2004年では1,037kgで、2000年から9%増加した。 表1 一般廃棄物の排出量(転換及び処分) 2000 年 2002 年 2004 年 ‘00~’04 年増加率 排出量(百万トン) 29.3 30.7 33.2 13% 一人当たり排出量(kg) 952 970 1037 9% 人口(百万人) 30.7 31.4 32.0 4% 2004年に790万トンの廃棄物がリサイクル又は堆肥化により処理された。これは2000年から 30%増加している。廃棄物処理の転換率は、2004年に24%となり、2000年の21%から増加した。 表2 一般廃棄物の転換量(リサイクル及び堆肥) 2000 年 2002 年 2004 年 ‘00~’04 年増加率 転換量(百万トン) 6.1 6.6 7.9 30% 一人当たり転換量(kg) 199 212 246 24% 転換率(%) 21 22 24 13% しかしながら、埋立て地又は熱処理施設へ行く廃棄物総量の割合が減っても、実際の量は、 -12- 調査報告 シカゴ 依然として増加している。2004年に2,530万トンの廃棄物は埋立て又は熱処理され、2000年よ り9%増加している。 表3 一般廃棄物の処分量(埋立て及び熱処理) 2000 年 2002 年 2004 年 ‘00~’04 年増加率 処分量(百万トン) 23.2 24.1 25.3 9% 一人当たり処分量(kg) 753 768 791 5% 処分された一般廃棄物のうち45%が、紙、プラスチック、その他の容器のようなリサイク ル可能なものであり、また、28%が、台所及び庭の有機廃棄物であった。2004年にカナダで 廃棄(埋立て)されたリサイクル可能物(堆肥を除く)は、15億ドルの価値があった。 カナダ全体としては、北米及び欧州の先進国の中で、埋立て率が最も高く、転換率が最も 低い国の一つである。米国は、実際には廃棄物処理に関してはカナダより進んでおり、埋立 て率は低く、転換率は高い。 図1 各国の廃棄物処理の比較 埋立て地ガスについては、2003年時点で、44のガス回収システムと16の処理施設が稼動し ていた。2003年以降、より多くのプロジェクトが実施されている。また、カナダは、世界の メタンの60%を排出する19カ国の間で、メタン回収を促進し、活用するパートナーシップで ある国際メタン市場化イニシアティブ(International Methane To Markets Initiative)に 2005年7月より加盟している。 カナダの自治体の97%が人口20万人以下であり、中小自治体向けに施策が展開されなけれ ばならない。 -13- 調査報告 シカゴ 1.2 スウェーデンにおける一般廃棄物処理 Magnus Schonning一等書記官(在カナダ・スウェーデン大使館) スウェーデンは埋立て処理を最後のオプションと捉えている。可燃物及び有機廃棄物の埋 立て処理は法令により禁止されている。スウェーデン及びEUの廃棄物処理の最終目標は、 WTE(廃棄物からエネルギー)や生物的処理によるリサイクルやリカバー(回収)を通じ て、埋立て処理を減らすことである。高額な埋立て税が推進力の一つとなっている。過去10 年間に、埋立て廃棄物の総量が60%近く減少し、スウェーデンの廃棄物総量にして10%近く、 一般廃棄物の約半分が減少した。 スウェーデンの一般廃棄物(主に家庭からの廃棄物)の半分は、WTE又はその他の設備 により焼却される。3分の1は、リサイクル又はリカバーされ、埋立て処理されるのは、わ ずか5%である。なお、オンタリオ州の統計によれば、同州は、ほぼ3分の2の家庭廃棄物 が埋立て処理され、リサイクル又はリカバーされているのは4分の1以下である。 表4 スウェーデンとオンタリオ州との廃棄物の比較 スウェーデン オンタリオ州 廃棄物収集量(千トン) 4,347 3,438 有害廃棄物-特別処理(%) 0.6 0.4 埋立て(%) 4.8 65.0 生物学的処理-堆肥化等(%) 10.5 11.6 リサイクル及びリカバー(%) 33.9 23.1 焼却-WTE 等(%) 50.2 ? 注 :定義は異なる。スウェーデン:2005年における一般廃棄物(家庭ゴミと同じ施設で 処理された業務部門及び公共団体からの廃棄物を含む) 、オンタリオ州:2002年にお ける家庭ゴミ。 出所:スウェーデン環境保護庁、オンタリオ州環境省、カナダ統計局 排出者責任は、廃棄物削減の重要な推進力の一つとなっている。スウェーデン及びEU全 体には、包装法といったような規制があり、輸入者、製造者及び販売業者全てに義務が課せ られている。古紙、廃タイヤ、廃棄自動車、廃電気製品等においても義務が課せられている。 EUの包装指令94/62/ECは、そのような規制の一つである。 家庭から出されたリサイクル可能な廃棄物は収集され、排出者責任法に従って処理される。 スウェーデンにおけるリサイクル率は、ほとんどの物質で高く、例えば、低いもので金属・ スチール缶が3分の2、高いものではガラスやペットボトルが98~99%である。 表5 スウェーデンとオンタリオ州とのリサイクルの比較 スウェーデン オンタリオ州 アルミニウム缶 86* 41 新聞紙 83 75 ペットボトル 98*/78 50 金属/スティール缶 66 53 ガラス 99/90/96 58/61 (30cc/50cc/雑多) (透明/混合) 包装-ボール紙等 70 42 注:*払い戻し缶/ボトル 出所:www.sopor.nu、エコ年次報告 2005/2006 年版 -14- 調査報告 シカゴ スウェーデンでは、家庭ゴミを起源とするバイオガス産業が景気づいており、輸送燃料と して使用されている。また、庭ゴミは堆肥化され、土や肥料に使われる。 スウェーデンは、エネルギー効率が90%に達するWTEプラントから電気及び熱を供給し、 地域暖房に利用している。この効率的なCO2排出削減は、京都議定書を達成するためのスウェ ーデンの主要戦略の一つである。残灰は、建設資材に使用される。 技術及びプロセスの進歩は、廃棄物処理量が過去10年にかけて倍近くなったにもかかわら ず、スウェーデンのWTEプラントからの排出物の大幅削減につながった。WTEプラント の数、エネルギー生成量、物質回収量もまた大幅に増加した。 表6 廃棄物焼却による大気への排出 1985 年 1996 年 2004 年 NOx (トン/年) 3 400 1 463 1 707 硫黄(トン/年) 3 400 1 121 337 微粒子(トン/年) 420 33 24 塩化水素(トン/年) 8 400 412 101 水銀(kg/年) 3 300 77 37 カドミウム(kg/年) 400 8 5 鉛(kg/年) 25 000 214 54 ダイオキシン(g/年) 90 2 0.7 廃棄物焼却炉(施設数) 18 N/A 29 焼却廃棄物(百万トン) N/A 1.7* 3.2 エネルギー生成量(TWh) N/A 4.3* 9.3 回収物質(家庭ゴミ、千トン) N/A 580 1 385 注:*1994 年 出所:スウェーデン環境保護庁 ‘85~’04 年増減率 △50% △90% △94% △99% △99% △99% △99.8% △99.2% 61% 88% 116% 138% 1.3 中国における廃棄物処理 You-Zhi Tang副社長(CH2M Hill Canada社) 中国は、石炭の大量利用に頼っており、エネルギー効率的ではない。2003年の公害及び環 境破壊による損失はGDPの15%を見積もられている。下水処理設備のない都市は依然300 近くに上る。自動車及びトラックの急増により、工場、発電所からの大気汚染問題が深刻の 度を深めている。 中央政府は、環境政策及び規制を徐々に強めている。廃棄物処理に関する政府の責任が、 国家発展改革委員会、建設部、農業部、財政部、科学技術部、国務院国有資産監督委員会、 環境保護総局、衛生部等の多数の機関に複雑に分かれており、時に権限が重複している。こ のため、中国政府は、政府機関及び権限の再編成を行っている。国家環境保護総局は、1982 年の設置以来、規模とその重要性を増してきた。規制としては、持続可能は発展、よりクリ ーンな生産、再生可能エネルギー等に関する法律が過去4年間に成立した。 中国は、現在、米国を追い越し、世界最大の一般廃棄物の排出国となった。都市部では、 2004年に1.9億トンが排出され、今後25年で2.5倍になると見込まれている。これに伴い、廃 棄物処理予算は、2004年の300億人民元から、これらを処理するために2.300億人民元まで約 8倍増加させなければならない。また、中国では、今後20年間で1.400の埋立て地が必要とな る。100万人未満の小規模の都市では、廃棄物処理に必要な最も深刻な問題は予算である。 ケーススタディとして、中国南部の大都市郊外の人口50万人の地区を例に取ると、一般廃 -15- 調査報告 シカゴ 棄物は1日当たり500トン排出され、主なものは、有機物、プラスチック、紙、ガラス、金属、 灰等である。1998年と2005年の比較で、リサイクル率は10%から20%へ、有機物は20%以下 から50%へ、灰は70%から30%へ変化し、プラスチック、ガラス、紙は増加している。 1.4 ブラジルにおける廃棄物処理 Frederick Mosher副社長(Conestoga-Rovers & Associates社) 面積、人口で世界第5位のブラジルでは、ごみ収集網を持つ人口は60%となっており、都 市部ではこの割合は非常に高く、地方では非常に小さい。一般廃棄物の約4分の3が不法投 棄され、廃棄物処理はコンセプトとして始まったばかりである。一般廃棄物の10%以下が衛 生的に埋め立てられる。 廃棄物は、自治体の責任となっており、自治体はそれぞれ埋立て地を所有し、民間企業に より運営されている。現地の廃棄物作業者のコミュニティが、埋立て地運営の大きな要因と なっており、彼らの暮らしは、地区の埋立て地、リサイクル、回収、有価物販売を中心に展 開している。 リサイクルと有機物プログラムはほぼ存在しない。規制には欠陥があり、適用と執行に矛 盾がある。ブラジルに2万以上のサイトがあるが、ほとんどは管理されていない投棄である。 改善は容易かつ低コストで、例えば、ガス回収システムを設置したり、浸透液を管理するカ バーやライナーを使用したりすればよい。 多くの埋立て地は、暖かく湿気のある土壌で、漏出の管理が難しいが、ガス生産を高める。 京都議定書に基づくCDM(クリーン開発メカニズム)プロジェクトの約18%がブラジル で実施されるものであり、それらの4分の1は廃棄物管理及び処理に関するものである。 ブラジルでは、廃棄物処理は、今や急速に成長し発展している産業であり、持続可能は発 展に不可欠な要素となっているが、膨大な機会が存在する一方、コスト、教育等の多くの課 題を抱えている。 1.5 日本における廃棄物処理 Franklyn Zhao北米コーディネーター(Ebara Environmental International社) 日本は、一般廃棄物の熱処理される割合が77.5%と高く、主に焼却及び熱回収されている が、発電及びガス化プラントの数が増加している。現在、1.400近くの熱処理施設があり、約 72%が熱回収、約20%が発電を行っている。 エバラは、1978年から2006年の間に、150近くのTIF(流動床式焼却システム)を日本及 び海外で設置した。最新技術は、ダイオキシン発生を安全レベルまで最小化できる。エバラ のTIFG(流動床式ガス化溶融システム)は、最新式であり、現在のところ、11の建設実 績がある。運転操作が容易で、省スペースであり、ガラス状の灰は道路建設又は歩道のレン ガに使用できる。 1.6 カナダにおける最終処分予定の非有害廃棄物の輸出入に関する規制条項案 Nabila Elsaadi管理開発科学者(カナダ環境省汚染防止局越境移動部門) カナダにおける廃棄物処理は、政府の階層によって分限されている。連邦政府は国際合意 や廃棄物の輸出入について、州政府は廃棄物の輸送や処理施設の承認について、自治体は廃 棄物の収集、リサイクルプログラム、処分について、それぞれ責任を持つ。 バーゼル条約は、国境を越える全ての廃棄物の移動を管理するもので、各国に、有害廃棄 -16- 調査報告 シカゴ 物及び非有害廃棄物(一般廃棄物)の輸出入及び通行に際して事前同意、追跡、通告を求め ている。カナダ環境省は、同様の合意によってのみ他国へ廃棄物を輸送することができ、例 えば、カナダ-米国合意は、カナダから米国への輸出を管理している。 カナダは、現在、最終処分予定の非有害廃棄物の移動プロセスにおける政府通告、許可、 追跡、報告、最終確認を含む各事項に関して規制を準備している。対象となる非有害廃棄物 は、一戸建て及び集合住宅からの家庭ゴミ、家庭に似た性質(カフェテリア、オフィス等) のIC&I、公共の場(公園、動物園等)における地方地自体のゴミ箱、地上自治体の廃棄 物焼却施設からの家庭ゴミ及び灰、廃棄物処理方法の転換に用いられた家庭ゴミ(堆肥等) である。また、産業プロセスより生じた廃棄物(工場からのおがくず、くずゴム、繊維ごみ 等)、建築廃材、下水処理場のスラッジ、有害特性(可燃性、毒性、伝染性、腐食性等)を示 した廃棄物は、対象とはならない。これらの規制は、修正意見及び改正期間を経て、2008年 のある時期にカナダ官報にて公布される予定である。 1.7 オンタリオ州の今後の廃棄物処理 Gordon Miller環境コミッショナー(オンタリオ州政府) オンタリオ州は、現在、年間325万トンの廃棄物を米国へ輸出しており、米国が国境を閉じ た場合に、代替案がない。一人当たり廃棄量は、年間1.1トンで、うち0.5トンは家庭ゴミ、 0.6トンはIC&I(産業部門、業務部門、公共団体からの廃棄物)であり、埋立て地に行き 着くのは、約1立方メートルである。廃棄物総量は、現在の1400万トン近い水準から2030年 には2000万トンまで増加すると見込まれている。 オンタリオ州は、2008年までに廃棄物の処理方法を60%転換するという現行目標を達成で きる状況になく、廃棄物輸出ができなくなった場合に他の40%を処理する包括的な計画も持 ち合わせていない。集合住宅とIC&Iの廃棄物が、廃棄物処理方法を転換する上で最も難 しい分野である。 埋立ては、将来的な資金的責任を持たない恒久的な土地の処分であり、また、将来の全て の廃棄物の埋立てに必要となるスペースは現時点では十分ではない。 EFW(廃棄物からエネルギー=WTE)は、良いオプションであるが、大気汚染防止に 要するコストが大きい。また、最新の排気物管理に関する実態が住民の理解を得るために実 証されなければならない。 2.一般廃棄物処理の代替技術 2.1 プラスコ・ガス化システム Rod Bryden 最高経営責任者(Plasco Energy Systems社) オタワに設置したパイロットプラントは、廃棄物の80%を代替天然ガスへ変換するもので、 現地で発電し、地方の配電網に送電する。オタワプラントは1トンの廃棄物から1.400kWhの電 力量を発電して送電網へ供給することを目指しており、これはオタワの家庭で必要とされる 電力の55日分に相当する。また、廃棄物1トン当たり、150kgのスラグが発生し、コンクリー ト又はアスファルトに使用され得る。この他、5kgの硫黄、1kgの重金属、水に転換される。 プラントは、燃焼は行われず、無酸素でプラズマを使用する。また、石炭、天然ガスとい ったエネルギーの補充の必要はなく、ガス化で必要とされるエネルギーはプロセスで発電し た電力により賄われる。基準値に適合しているガス発電機の排出ガス以外に、排出ガスはな い。温室効果ガスも大きく削減される。 -17- 調査報告 シカゴ 表7 プラスコ・プラントの排出ガス 排出ガス オンタリオ州環境省 プラスコ実績 欧州基準 (発電で発生するもの) 2004 年焼却基準 (オタワプラント) 塩化水素 18 ppmv 7 ppmv (10 mg/Rm3) 5 ppmv 二酸化硫黄 21 ppmv 19 ppmv (50 mg/Rm3) 13 ppmv NOx 110 ppmv 159 ppmv (200 mg/Rm3) <110 ppmv 有機物 100 ppmv 10 mg/Rm3 20 ppmv 粒子状物質 17 mg/Rm3 10 mg/Rm3 10 mg/ Rm3 ダイオキシン及びフラン 80 pg/Rm3 100 pg/Nm3 0-30 pg/ Rm3 プラスコ社は、顧客のニーズに応じてプラントを建設、運転する。プラントは、他の企業 が製造したサブシステムをプラスコ社の標準的な設計、仕様に統合して建設する。各プラン トは、スケールに応じたユニットの数を除いて同一であり、処理する廃棄物の量に応じて決 定される。全ての資産はプラスコ社により提供され、収益は廃棄物の提供者と分担される。 2.2 ヨーク及びピール地区における廃棄物由来燃料 David Merriman廃棄物処理実行リーダー(MacViro Consultants社) 石炭の代替物として使用される燃料ペレットをゴミから製造する2つの施設が建設される。 ドンガラ社は、 「エナパックス」燃料ペレットをヨークで製造し、アンビエントエコ社はピー ルにて「エンヴァイロヒューエル」を製造する予定である。 プロセスとしては、リサイクル可能な金属やプラスチックを取り除き、破砕し、残った物 質を乾燥させる。ドンガラ社では、高い熱出力の物質を追加し、約9.000BTU/ポンドのエネ ルギー価のペレットを製造する。アンビエントエコ社のプロセスでは、シリアルフレークの 大きさの乾燥した約7.500BTU/ポンドの燃料を製造する。 ドンガラ社のプラントは、年間20万トンの処理能力を持つもので、今年から建設を開始す るが、 「エナパックス」のユーザーはまだ見つかっていない。アンビエントエコ社の実証プラ ントは、年間1.6万トンの処理能力であるが、建設の日程は定まっていない。実証プラントが 成功すれば、プラントを拡張する予定である。 2.3 ロサンゼルス市及び群における一般廃棄物の転換技術 Steve Jenkins地域リーダー(URS社電力事業部門) ロサンゼルスは、WTEではなく、転換技術(合成ガスへの転換)に関心を有している。 転換技術により生成される合成ガスは、廃棄物からさまざまな有用な製品を製造するために 利用することができる一方で、WTEプラントは、廃棄物を直接焼却する。 熱転換技術には、熱分解、ガス化、その組み合わせ、プラズマアークガス化、触媒を使っ た合成ガスからエタノール転換などがある。熱転換技術の一般廃棄物への応用は、比較的新 しい。ほとんどの商業スケールのガス化プラントは、欧州及び日本にあり、米国にはない。 しかしながら、開発中の多くの実証プラント、パイロットプラントがある。金属、炭化木炭、 スラグといった副産物は、非有害で販売できる。 生物的及び科学的転換技術には、嫌気性消化、エタノール発酵、熱的解重合、接触分解、 酸加水分解などがある。 ロサンゼルス市は、転換技術の種類を特定せずに、関心のある事業者に、1.000トン/日の 処理能力を持つ一般廃棄物処理施設の提案依頼書(RFP)を配布した。 -18- 調査報告 シカゴ ロサンゼルス群は、物質回収設備(MRF)を利用した100トン/日の処理能力の実証規模 の設備に関心を有している。 ロサンゼルスは、転換技術が環境面及び経済面の広範な便益から、伝統的なWTEプラン トよりも好ましいと考えている。ロサンゼルスは、一般廃棄物で実績のある企業と協働する ことを希望しているが、そのような企業は、北米では現在のところ一握りしかいない。 図2 ロサンゼルス市調査による環境技術企業の総合ランキング 2.4 アムステルダムにおけるWTE Harry de Waart氏(Afval Energie Bedvijf (AEB)社) AEB社は、現在、第4世代の廃棄物火力発電所(WFPP)の改修を行っている。これ が終了すると、世界最大で最も効率の高いWTEプラントとなり、一般廃棄物を年間150万ト ン処理することになる。正味の電気効率は30%で、年間100万MWhの電力量を発電する。リサ イクル率は99%以上となり、排出ガスは欧州及びオランダの基準値よりも低くなる。また、 オランダで最も費用が安いものとなる。 AEB社は、アムステルダム市が所有する公共事業会社であり、87年のWTEの経験を有 する。 オランダでは、過去20年間に家庭ゴミの排出量がGDPの成長に比例して増加してきたが、 産業廃棄物の排出量は減少している。 -19- 調査報告 シカゴ 図3 廃棄物量とGDPの推移(1985~2003年) 家庭ゴミ GNP 廃棄物合計 産業廃棄物 WFPPは、市営下水処理場、風力発電所、地域暖房プラント、建築資材会社を含むアムス テルダム・エコポートの一部である。一般廃棄物は、道路、鉄道、水路により輸送され得る。 AEB社は、これまでの経験から、排ガスの再循環、排ガス洗浄による残留物のリサイク ルのための塩類工場といった革新を行ってきた。プラント投資の50%以上は、排ガス洗浄で ある。 アムステルダムは、エネルギー自給都市であり、公共交通機関、電灯といった市政に必要 な全ての電力需要は、本プラントにより賄われる。地域暖房もまた、多くの家庭に利用され ている。 金属及びその他のリサイクル可能物の回収プロセスは、回収された物質の価格のため、そ れ自身で元が取れる。 過去20年間に、回収または焼却された廃棄物の量がオランダで2倍になり、埋立てされる 廃棄物はほんの僅かである。 図4 オランダにおけるリサイクル及びWTE 埋立て WTE 回収 規模の経済は、プラントを費用対効果が高くするために重要である。プラントが大きくな るほど、より多くの廃棄物が、より安い費用で処理できる。 -20- 調査報告 シカゴ この種のプラントは、低騒音、無臭、事実上のゼロエミッションのため、市内に設置する ことが可能である。AEB社は、技術移転及びライセンシングに関心を有し、設計、計画、 許可、運転サポートに協力する。 2.5 エドモントンにおけるガス化を含む統合廃棄物処理システム Jim Schubert工場長(エドモントン廃棄物処理センター) エドモントンは、郊外の550エーカーの敷地で廃棄物処理を行っており、一般廃棄物及び下 水汚泥の堆肥化施設、リサイクル可能物の物質回収施設(MRF)、家所有者が家庭ゴミを置 いていくためのゴミ収集所を運営している。 現行システムの下で、エドモントンは年間に24万トンの一般廃棄物、8万トンの下水汚泥 を受け入れている。約3.6万トンが市場性のある商品として回収され、5~7万トンの堆肥が 生産され、市場で売られる。約9.4万トンが埋立て処理されるが、そのほとんどがMRF及び 堆肥化設備の残留物である。 エドモントン市政府は、年間埋立て廃棄物を9.4万トンから2.4万トンへ削減するため、R DF(資源由来燃料)を通じたガス化プロセスを選定した。また、エドモントンは、コスト が最も低く、カナダの技術を基にした商業運転施設で実績のあるエナーケム・テクノロジー ズ(Enerkem Technologies)社を選定した。 前処理、RDF及びゴミ収集施設については2009年秋に、ガス化プラントは2010年末に操 業を開始する予定である。また、エドモントンは、2010年の新しいシステムの下で、家庭ゴ ミのフローの90%を転換する予定である。 2.6 バイオリアクター埋立て地 Hubert Bourque氏(CH4+3R社) バイオリアクターとは、廃棄物の生物的安定を促進又は高めるために、液体又は空気を管 理された状態で廃棄物の塊の中に注入するものである。選択肢は、サイトによって変わり、 好気性、嫌気性や、その混合型が可能である。 図5 バイオリアクター埋立て地のコンセプト 出所:カリフォルニア総合廃棄物処理理事会(CIWMB) -21- 調査報告 シカゴ バイオリアクターは、従来型の埋立て地よりも遥かに速く廃棄物を安定化させる。バイオ リアクター技術は、安定化させるための期間を短縮し、埋立て地の能力を高める。長期的な 管理も容易になる。浸出液は、毒性が低くなり、処理が容易になる。バイオリアクターは、 また、より多くの埋立てガスを生成し、使用又は販売のために収集することも容易である。 パブリック・アクセプタンス(市民の受容)には、コミュニケーション及び譲歩が不可欠 であるので、地域社会との信頼構築を早急に開始すべきである。 2.7 ハミルトン中央堆肥化施設における分別有機廃棄物 Craig Murdoch廃棄物処理マネージャー(ハミルトン市) ハミルトン市で有機廃棄物の新しい好気性堆肥化施設が昨年操業を開始した。この施設は、 約15万の一戸建て住宅をカバーする。住民は、全てのプラスチックを分けなければならない。 家庭からの全ての有機廃棄物は、落ち葉や庭のゴミと一緒に緑色のカートに入れる。 この施設は、1日当たり200トン以上、年間6万トン以上の堆肥を生産することができる。 施設の敷地面積は、17.000平米弱。従業員5名のみで高度に自動化された施設を運転し、必 要に応じて手動で管理する。施設全体が、酸素、温度、湿度の正しいバランスで管理され、 床の栓により堆肥の中を空気が循環し、浸出液も再循環する。臭い、汚染の問題はなく、施 設から排水はない。 堆肥化トンネルで20日間、硬化時間で30日間の計約50日で堆肥化が終わる。 2.8 高温ガス化 Bill Davis社長兼CEO(Ze-Gen社) Ze-Gen社のミッションは、偏在する廃棄物をガス化することによりエネルギーを生成する ことである。 米国人は、年間4億トン以上の一般廃棄物及びC&D(建設廃材)を排出している。この うち、約4分の3が埋め立てられ、焼却及び埋立て地のガス回収により発生する電力は 4.000MW未満である。1トンのC&Dから250世帯分の電力を供給できる。廃棄物は、平均で 約5.500BTU/ポンドのエネルギー価がある。エネルギー効率を50%と仮定すると、米国には、 廃棄物から40.000MW以上の潜在的な未利用エネルギーがある。これは、100万世帯に電力を供 給することができ、温室効果ガスの発生を3億トン以上防ぐことができる。埋立て地は、人 為的なメタン発生の主要源であり、50年に渡って活発に温室効果ガスを発生してきた。1ト ンの一般廃棄物及びC&Dから1.8トンの温室効果ガスは発生する。 マサチューセッツ州に設置する50~100トン/日の処理能力を持つ実証プラントは、5月に 建設が完了する。廃棄物のガス化に、溶解した金属(鉄)が使用される。このプロセスは、 熱の損失が少なく、廃棄物1トン当たりの合成ガスの生産効率が高い。燃料の供給は不要で ある。 -22- 調査報告 シカゴ 図6 Ze-Gen社の技術 Ze-Gen社は、共同開発プロジェクト及び技術のライセンシングに関心を有する。 2.9 一般廃棄物の熱処理技術における経済的意味 Jean-Yves Urbain氏(Earth Tech Canada社) 従来型のWTE施設が設置されているのは、米国に89ヶ所、欧州に400ヶ所以上、日本に約 100箇所、その他に70ヶ所以上である。カナダには、ほんの僅かあるだけである。 規模の経済は、運転コストの抑制に重要であるが、ガス化装置は、従来型のWTEプラン トより小さくなりがちである。従来型WTEは低コストであるが、ガス化より電力の発生量 が少ない。 ガス化は、現在、従来型燃焼の主たる代替手段として考えられている。プロセス温度は低 く、大気汚染防止システムは小さく、可燃性ガスの生成はより多様で、実際に何も燃やさな い。しかしながら、比較的新しいため、長期的な信頼性、収益性がまだ実証されていない。 技術は時間をかけて実証されなければならない。 -23-