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第22回教育政策セミナー資料
学校選択制と生徒学力の関係 -米国チャータースクール制度の分析政策研究大学院大学 教育政策セミナー 2013年12月20日 国際大学 大学院国際関係学研究科 陣内 悠介 研究の背景① 学校選択制の種類 学校選択制:米国教育改革の中心 マッチング 生徒の志望順位 (手間がかかる) オープンエンロルメント 学区外からの入学 (定員枠が限定的) バウチャー 私立校入学に対する補助 チャータースクール 新しいタイプの公立校 (税金と宗教の問題) 研究の背景② 全米チャーターの拡大 (人) (%) 研究の背景③ チャーター校の特徴 チャータースクールは公立校 学費無料、入学自由、無宗教 従来校と異なり、学校運営の自由度が高い カリキュラム編成 (カスタマイズ教育) 授業時間 (放課後・土曜・夏期授業) 人事裁量 (教員の採用・解雇) 学区全廃 (他学区からの自由入学) ただし、運営責任が問われる 設立当初の運営計画と成果を州政府が評価判定 研究の背景④ 公立学校間の競争 【チャーター校設立前】 【チャーター校設立後】 研究の背景⑤ 問題意識と先行研究 チャーター校導入は周辺の従来校にどのような 影響を与えるのか? 学校間の競争によって、従来校の教育水準が高まる か? 従来校へのプレッシャー 生徒の転出、学校運営費の減少、教員数の削減等 議論が続く先行研究結果(生徒学力への影響) プラス効果:Sass (2006); Booker et al. (2008) 効果なし: Bifulco & Ladd (2006); Zimmer (2009) マイナス効果: Imberman (2011) 研究の背景⑥ 規制が続くチャーター校 ノースカロライナ州では、100校制限 本研究のアプローチ 従来校とチャーター校との間での選択/競争を 「学年」単位で定義 重複する学年への「直接効果」 重複しない学年への「間接効果」 直接効果を「競争効果」と「分離効果」に峻別 競争効果:リソース投入の変化(教員努力等) 能動的な変化:政策立案者の期待 (生徒)分離効果:学級規模および同級生の変化 受動的な変化:他の教育政策で実現可能 本研究のキーアイデア① 先行研究では競争の定義が「学校」単位 本研究のキーアイデア② データが示すのは「学年」構成のズレ 本研究のキーアイデア③ 重複する学年に「直接効果」(direct impact) 本研究のキーアイデア④ 重複しない学年に「間接効果」(indirect impact) 本研究のキーアイデア⑤ 直接効果=競争効果+分離効果 (生徒)分離効果:学級規模および同級生の変化 データ① 教育改革を先導したNC州 1995年、ノースカロライナ州がABCシステム導入 州の全ての公立校で標準学力テストを実施 テスト結果を公開(アカウンタビリティ) 2002年、全米レベルで No Child Left Behind 法 データ② 精緻な教育パネルデータ NC Education Research Data Center 生徒・教師・学校の特性 生徒レベルでの標準学力テスト結果 小学校3年生~中学校2年生:数学・読解 中学校3年生~高校3年生:プラス各種専門科目 生徒一人一人の学力テスト結果を長期的に観測 生徒の転出・転入を長期的に観測 データ③ 従来/チャーター校の立地 ノースカロライナ州における学校数(2010年) 従来校:2,411校 チャーター校:96校 (全公立校の約4%) データ④ 従来/チャーター校の特性 学校規模が小さい 黒人生徒比が高い 親の学歴が高い 親の収入が多い 生徒の成績は悪い 1997-2010年 データ⑤ 上方向に学年を拡大する 2010年のチャーター96校のうち41校がK-8学年 設立当初から同じ学年構成だったのは全体の29.3% 60%以上は、上方向に学年を拡大していく データ⑥ 上方向に学年を拡大する 全チャーター校の、最下学年と最上学年の平均 データ⑦ 記述統計 1997-2005年 推定モデル Y:従属変数 生徒 i の、学校 j、学年g、年度t におけるテスト結果 X:制御変数 Direct および Indirect 競争インデックス 従来校から2.5マイル(4km)圏内にあるチャーター校の数 チャーター校設立前後での、従来校の生徒の学 力の変化 推定結果① 数学点:正の直接効果 チャーター校設立が、従来校の生徒のテスト結果を、 0.033標準偏差、押し上げる 0.04:$200/人あたりの教育投資 0.04:最下位校(F)と中位校(C)の差 0.08:新任教師とベテラン教師の差 推定結果② 読解点:正の直接効果 数学の結果と同じパターン 正の直接効果(ただしより小さな効果) 直接効果/間接効果を峻別しないと、チャーター校が従来 校に与える影響を過小評価してしまう 学校間競争を通じた生徒学力の向上? 直接効果=競争効果+分離効果 分離効果:学級規模および同級生の変化 学級規模および同級生の変化を制御 K:生徒i にとっての同級生(peer)の数 課題:reflection problem 生徒同士が相互に与え合う影響をどう考慮するか? 二段階推定手法(2012)を用いて、上記式を推定 競争効果① 正の直接効果のうち 25%が同級生効果 学力の低い生徒がチャーター校へ転出 75%が学校間競争効果 教育リソースの投入 競争効果② 教師の配置転換が生徒の学力を押し上げている わけではない 本研究の結論と政策含意 チャーター校が周辺の従来校に与える「競争効 果」を推定するための新たなアプローチを提案 「直接効果」と「間接効果」の峻別 直接効果を「競争効果」と「分離効果」(学級規模およ び同級生の変化)に分解 チャーター校が従来校に正の効果を与える そのうち75%が「競争効果」 先行研究はこの効果を著しく過小評価