...

Title 前凝集プロセスを組み込んだ下水処理システムの特性と その評価

by user

on
Category: Documents
39

views

Report

Comments

Transcript

Title 前凝集プロセスを組み込んだ下水処理システムの特性と その評価
Title
Author(s)
Citation
Issue Date
URL
前凝集プロセスを組み込んだ下水処理システムの特性と
その評価に関する研究( Dissertation_全文 )
大下, 和徹
Kyoto University (京都大学)
2007-03-23
https://doi.org/10.14989/doctor.r12035
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
author
Kyoto University
前凝集プロセスを組み込んだ下水処理システムの
特性とその評価に関する研究
2007 年 2 月
大 下 和 徹
目次
第 1 章 序論 1
1-1 はじめに
1
1-2 前凝集プロセスに関する研究調査
3
1-2-1 凝集剤
3
1-2-2 凝集沈殿法の歴史
5
1-2-3 凝集沈殿法の利用
6
1-2-4 前凝集沈殿法の水処理への影響
9
1-2-5 前凝集沈殿法の汚泥処理への影響
11
1-3 本論文の目的と構成
17
【第 1 章 参考文献】
19
第 2 章 下水処理場における固形物および主要元素の季節変動と物質収支
23
2-1 はじめに
23
2-2 調査方法
23
2-2-1 鴻池処理場の下水処理システム
23
2-2-2 サンプリング
24
2-2-3 分析項目
2-3 調査結果と考察
26
27
2-3-1 TS、SS、T-P
27
2-3-2 TS の組成
30
2-3-3 CHN 組成
32
2-3-4 物質収支
35
2-4 まとめ
40
【第 2 章 参考文献】
第3章
41
前凝集プロセスが下水汚泥処理に与える影響
43
3-1 はじめに
43
3-2 実験方法
44
3-2-1 プラント
44
3-2-2 凝集剤添加量の決定
46
3-2-3 パイロットプラントによる汚泥処理特性試験
49
3-3 水質分析・汚泥組成分析
51
3-3-1 水質分析
52
3-3-2 水質・汚泥の組成変化
57
3-3-3 物質収支と汚泥発生量
70
-i-
3-4 濃縮プロセスへの影響
76
3-4-1 重力濃縮試験
76
3-4-2 遠心濃縮試験
82
3-5 リン溶出試験
84
3-5-1 実験方法
84
3-5-2 リン溶出試験結果
85
3-6 脱水プロセスへの影響
86
3-6-1 実験方法
87
3-6-2 脱水試験結果
88
3-7 汚泥の粒径分画
92
3-7-1 実験方法
92
3-7-2 粒径分画測定結果
92
3-8 焼却プロセスへの影響
95
3-8-1 実験方法
95
3-8-2 発熱量測定結果
95
3-8-3 汚泥焼却炉まわりの熱収支からの考察
96
3-8-4 TG-DTAによる評価
98
3-9 溶融プロセスへの影響
100
3-9-1 実験方法
100
3-9-2 凝集沈殿汚泥焼却灰の組成
3-9-3 溶流度測定からの評価
102
103
3-9-4 塩基度からの評価
106
3-10 まとめ
108
【第 3 章 参考文献】
第4章
110
前凝集プロセスを組み込んだ下水処理システムの最適化
115
4-1 はじめに
115
4-2 オブジェクト指向分析
116
4-2-1 オブジェクト指向分析とは
116
4-2-2 クラスとオブジェクトの定義
117
4-2-3 オブジェクト指向分析・設計の特徴
118
4-3 評価対象システムについて
120
4-3-1 対象プロセスの選定
120
4-3-2 本研究におけるクラス構成
130
4-3-3 評価解析手順
131
4-4 物質収支
132
4-4-1 凝集プロセスと沈殿池プロセス
133
- ii -
4-4-2 生物処理プロセス
134
4-4-3 濃縮プロセス
140
4-4-4 消化プロセス
143
4-4-5 脱水プロセス
143
4-4-6 焼却、溶融、コンポスト、焼却灰の再資源化
145
4-4-7 返流水
148
4-5 コスト、所要面積
150
4-5-1 建設コスト
150
4-5-2 ランニングコスト
151
4-5-3 所要面積
160
4-6 現状システムのシミュレーションと、前凝集プロセスの導入効果
162
4-6-1 鴻池処理場の現状とその表現
162
4-6-2 現状システムへの前凝集プロセスの導入
165
4-7 最適処理システム
171
4-7-1 最適処理システムの抽出方法
171
4-7-2 最適処理システム抽出の結果とその考察
172
4-7-3 再資源型・都市型システム
178
4-7-4 窒素除去促進システム
182
4-8 まとめ
187
【第 4 章 参考文献】
190
第 5 章 結論
193
謝辞
付録
関連発表論文リスト
- iii -
第 1 章 序論
1-1 はじめに
近年、わが国の下水道の普及人口は確実に増加し、平成17 年度末で8800 万人を超え 1)、
下水道システムが流域の水循環の中でも極めて重要な位置を占めるようになってきて
いる。また、平成 15 年度から開始された社会資本整備重点計画により、ナショナルミ
ニマムである下水道は、社会システムの中で、限られた財源を最大限に生かし以下の
課題に対応することを求められている。
①施設のコンパクト化:都市部においては、新たな施設を設置するための用地の確保
が困難になってきている。また、既存の処理場では処理能力が不足しても用地拡張が
難しい。このため、処理場の新設、改造の際にはできるだけ少ない所要面積内で処理
施設を収める必要がある。施設の立体化によって用地を小さくすることもできるが、揚
水のためのエネルギーが必要であるなど、必ずしも経済的ではない。
②処理水質の向上:水質環境基準を達成維持するために、BOD、および SS 除去を推進
する一方、閉鎖性水域の富栄養化防止、水道水源水域の水質保全、および下水処理水の
再利用といった観点からは、窒素 (N)、およびリン (P) の除去をはじめとした高度処理
が要請されている。旧環境庁は、東京湾、伊勢湾、および瀬戸内海を対象に、昭和 54
年以来 COD に関する水質総量規制を 4 回にわたって実施してきたが、平成 13 年 12 月
には第 5 次水質総量規制を実施し、COD とあわせて、窒素、およびリンに対する含有
量削減目標を設定した 2)。平成 17 年 6 月には、下水道法の改正がなされ、閉鎖性水域を
対象とした流域別下水道整備総合計画に位置づけられた終末処理場については、処理
場ごとに窒素、およびリンに関わる削減目標量を定めることとされている 3)。
③省エネルギー:下水処理場はエネルギーを大量に消費するという一面もある。また、
平成 17 年 2 月の京都議定書の発効を受けて、下水処理場でも CO2 排出量の削減が求め
られている。エネルギー資源の逼迫やエネルギーコストの高騰、地球温暖化問題に対
し、エネルギー消費量や処理コスト、CO2 発生量を低下させるためには、下水処理にお
ける消費エネルギーの節減や、処理水、下水汚泥等からの回収エネルギーを増加させ、
有効な利用を進める必要がある。
④汚泥の有効利用:平成 15 年度における全国の産業廃棄物排出量は年間 4 億 1000 万ト
ンに及び、そのうち約 17.8% の約 7330t が下水汚泥である。埋立処分地は有限であり、
平成 14 年現在での産業廃棄物最終処分場の残余年数は全国で 4.3 年となっており、そ
の確保は困難なものとなってきている 4)。そこで、汚泥の減量化を一層進め処分地の延
命化を図るとともに、資源の有効利用の観点から下水汚泥のリサイクルを推進してい
-1-
く必要がある。下水汚泥はバイオマスとして着目され、処理工程におけるエネルギー
利用の他、最終安定化先としての緑農地利用、建設資材利用の 3 本が有効利用の柱と
なっており、有効利用量は発生汚泥量に対する割合が平成 15 年度末で 60% 以上に達し
有効利用は進んでいるが、未だ十分とはいえず、今後さらなる推進が望まれている。
現在、わが国で使用されている下水処理システムの大半を占める活性汚泥法は、約
100 年前に連続処理プロセスとして開発されたものであり 5)、都市下水などの比較的低
濃度の有機汚濁物質の処理法としては、処理水質が安定しており優れた処理法である。
しかし、難分解性有機物や窒素、およびリンの除去については、主として固形物の沈
殿、および付着除去に起因するものでしかなく、高い除去率は得られない。また、微生
物による有機物の固定化に伴って処理性の良くない余剰汚泥が多量に発生すること、
曝
気における消費電力が大きいことから上記①~④の課題に対応することが困難になって
きている。
今後もますます整備されるであろう下水道が、以上の課題に対応するための一つの
システムとして、前凝集プロセス ( 最初沈殿池での凝集沈殿法 ) と、後段の生物処理と
して主に窒素除去を対象とし、
浮遊担体あるいは生物膜を用いた接触酸化法を組み合わ
せた高度処理システムが積極的に研究され、水処理系では有効性が実証されてきてい
る。たとえば、パイロットプラントレベルで、前凝集プロセスでの凝集剤として PAC
や塩化第二鉄、あるいは塩化第二鉄とともに高分子凝集剤を添加し、後段の生物処理で
は、硝化槽にポリプロピレン、ポリウレタンフォーム等の生物付着担体を充填し、高度
窒素除去を行うものや 6)、7)、高度窒素除去を行いつつ、最後段に好気性ろ床を導入し、
最終沈殿池を不要としたものがある 8)。また、すでに下水処理場における水処理の 1 系
列を用いて、実機レベルでも検討がなされている 9)、10)。このシステムのメリットは、SS、
および有機物 ( 難分解性有機物も含む ) の他、リンの大半を前凝集プロセスで除去し生
物処理における負荷を軽減するとともに、生物処理での担体添加により窒素除去の高
速化に伴う省スペース化が可能であり、有機物負荷が小さいため、処理性の悪い余剰
汚泥の発生が抑制されること等が考えられている。
しかし、前凝集プロセスの導入は水質の負荷を汚泥に移行させることを意味してお
り、汚泥量が増加するとともに質も変化すると考えられ、より一層汚泥処理が重要と
なる。汚泥処理においては、濃縮、消化、脱水、焼却、および溶融の他に、現在も様々
な新汚泥処理システムが研究、開発されてきているが、前凝集プロセスを組み込んだ
システムで発生する汚泥は、既存の汚泥処理システムで処理可能なのか、新しい汚泥
処理システムを考えなければならないのか、それとも各単位汚泥処理操作の設計仕様、
操作条件を変更する必要があるのかを検討する必要がある。さらには、前凝集プロセ
-2-
スを既存のシステムに導入することで、
汚泥処理各単位プロセスのみならず汚泥処理シ
ステム全体、さらには下水処理システム全体に与える影響を明らかにし、処理水質、コ
ストや所要面積などからシステム全体を総合的に評価して、このシステムに最適な水
処理、汚泥処理を選択することが必要である。
そこで本研究では、このような前提をふまえて、まず、基礎データとして下水処理
場における物質収支を明らかにした上で、前凝集プロセスを組み込んだ下水処理シス
テムから発生する汚泥の処理特性を把握し、汚泥処理も含めた本システムの最適化を
試みることとする。
1-2
前凝集プロセスに関する研究調査
前凝集プロセスとは、凝集沈殿法に分類され、最初沈殿池への流入直前に凝集剤を添
加し有機物、SS 成分のみならずリンの除去を行って、生物処理への負荷を軽減する方
法である。
本節では、凝集剤、凝集沈殿法の原理、および歴史、また前凝集プロセスが水処理、
および汚泥処理に与える影響を検討した過去の研究例について文献調査を行った。
1-2-1 凝集剤
凝集処理とは、用・排水中に安定に分散している微細粒子やコロイドを凝集剤によっ
て、集合 ( 凝結 ) させ、大きなフロックとして分離する方法である。水中に存在する微
細粒子やコロイドは、その表面に荷電を持っていたり親水性物質で覆われているため、
粒子同士の反発や、ブラウン運動などにより、極めて安定した状態で分散している。凝
集剤はこれらの微細粒子やコロイドに吸着、あるいは反応して、①互いに反発している
懸濁粒子の表面を電気的に中和し ( 荷電中和、凝結 )、②粒子同士を結びつける働きに
よって、分散している粒子物質
を結合させ粒子群の固まり ( フ
ロック ) にする作用がある 。
11)
表 1-2-1 は、下水処理で用い
られる無機系凝集剤の PAC ( ポ
リ塩化アルミニウム )、硫酸バ
ンド、およびFeCl3(塩化第二鉄)
の特徴について簡単にまとめた
ものである。PACや硫酸バンド
表 1-2-1 凝集剤の種類と特徴 11)
種類
有効pH
特徴
長所
短所
有効pH:5~7.2
使用pH域:3.5~11
安価である
除濁性が高い
腐食性、
刺激性が少ない
フロックが軽い
pH8以上で効果低い
PAC
ポリ塩化アルミニウム
液体品:Al2O3 10~11%
市販:水処理用
有効pH:5.2~7.3
使用pH域:4~10
凝集性が硫酸バンド
より良い
中和剤(アルカリ)が
少なくてよい
(または不要)
硫酸バンドより高価
フロックが軽い
pH8以上では効果低い
塩化第二鉄
FeCl3
38%溶液・工業用
有効pH:5~11
使用pH域:3.5~12
フロックが重い
(沈降圧密良)
アルカリ性域でも有効
中和剤(アルカリ)
を多く必要とする
腐食性高い
やや高価
硫酸バンド
Al2(SO4)3
液体品:Al2O3 8%
市販:水処理用
等のアルミ系の無機凝集剤につ
-3-
いては腐食性、刺激性が少なく扱いやすい、除濁性が高いといった長所を持つ反面、フ
ロックが軽い、生物阻害性がある等の性質を持つため、下水処理で使用する際には、沈
殿池における沈降特性、および生物処理における配慮が特に必要である。一方、FeCl3
についてはフロックが丈夫で沈降性がよい、生物阻害が少ない、比較的安価である、と
いった長所を持つが、処理水が着色しやすい、腐食性が強いなどの性質を持ち注意が
必要である。本研究では、表 1-2-1 に示した、PAC、硫酸バンド、および FeCl3 を用い
て前凝集プロセスを評価することとした。なお、表 1-2-2 には、これら無機凝集剤につ
いての詳細を化学商品のカタログから引用したものを示した12)。日本国内での無機凝集
剤の使用量は、硫酸バンドが約 100 万 t/day、PAC が約 55 万 t/day、塩化第二鉄で 52 万
t/day 程度とされる。凝集剤の価格は、その選定の重要な要素となるが、輸送費に左右
されるため工場から遠隔地になるに従って割高となる。距離が変わらない場合は、有
効成分 ( アルミニウムあるいは鉄 ) 単位重量あたりの価格は、一般に PAC、硫酸アルミ
ニウム、塩化第二鉄の順に高くなる。ただし、等モル使用する場合は、鉄はアルミニウ
ムの 2 倍 ( 重量ベース ) の添加が必要になる。凝集剤の使用実績としては、アルミニウ
表 1-2-2 市販凝集剤の特徴 12)
硫酸アルミニウム
Aluminum sulfate
ポリ塩化アルミニウム
poly aluminum chloride
塩化第二鉄
Ferric chloride
化審法化学物質(1)-25
CAS No.(無水)10043-01-3 (xH2O)17927-65-0
(18H2O)7784-31-8
輸出(入)統計品目 2833.22-000(2833.22-000)
別名 硫酸バンド
荷姿 紙袋(25、30kg)、麻袋(50、100kg)、タンクロ
ーリー(液体)
性状 Al2(SO4)3・xH2O 純粋物に十八水和物と無
水物がある。工業品は固形品アルミナ分14%以上
、15%以上、および17%以上ならびに8.0~8.2%
の液体の4種類で、固形品は白色またはやや着色
した塊状または粉末で市販される。十八水和物は
無色結晶(単斜晶系)。比重1.69、融点86.5℃。水
に可溶、アルコールに不溶。水溶液を長時間沸騰
すると塩基性硫酸アルミニウムを生ずる。無水物
Al2(SO4)3は比重2.71、770℃で分解。
規格 JIS K 1423-70硫酸アルミニウム(硫酸バン
ド)、JIS K 1450-96 水道用硫酸アルミニウム(水
道用硫酸バンド)
用途 製紙、顔料、陶磁薬用、クレー沈殿剤、媒染
剤、浄水剤(上水道、工業用水、工場排水)、防水
布、消化器、アルミニウム化合物の製造、白色皮
革のなめし、油脂の清澄剤、各種の触媒用
製造業者 朝日化学、浅田化学、黒崎化学、光栄
化学、松栄化学 城北アルミナ 住友化学 多木
化学 大明化学 東信化学 南海化学 日本軽金
属 日本化学 細井化学 北陸化成工業所 王子
製紙 水澤化学 ラサ工業 小原化工、博光化学
、比奈化学 子安産業
原料 硫酸、苛性ソーダ、ボーキサイトまたは水酸
化アルミニウム
製法 ボーキサイトより製造するが、途中の水酸
化アルミニウムを購入し原料とする場合が多い。
近年では液体製品の需要が多い。
生産 8年 984,780t(14%固形換算) 輸出=229t
輸入=110t(輸出入ともアルミニウムの硫酸塩)
価格 9年9月 kg当 (液体8%)20~22円(ローリー)
固形(17%)65~70円(1t)
取扱注意 PRTR対象物質
化審法化学物質(1)-12 (1)-17
CAS No.(Al2OCl4)51943-95-4
(Al4Cl3H9O3)11089-92-2
(Aluminum Chloride,basic)1327-41-9
輸出(入)統計品目 3824.90-000(3824.90-490)
別名 パック:塩基性塩化アルミニウム:PAC
荷姿 タンクローリー ケミドラム缶(250kg) ポリエ
チ缶(25kg)
性状 〔Al2(OH)nCl6-n〕m (ただし1<n<5、m<10)無
色ないし淡黄褐色の透明な液体。酸化アルミニウ
ム10.0~11.0%、硫酸イオン3.5%以下、塩基度45
~65%、pH(1%溶液)3.5~5、比重(20℃)1.19以上
、粘度(20℃)3~6cPs、凝固点-10~-20℃
規格 水道用JIS K 1475-96
用途 上水道用、工業排水浄水用、工場などの一
般排水処理用
製造業者 浅田化学 住友化学 多木化学 大明
化学 東信化学 日本軽金属 日本化学 北海道
曹達 王子製紙 水澤化学 黒崎化学 北陸化成
工業所 ラサ工業 東ソー セントラル硝子 南海
化学
原料 水酸化アルミニウム 塩酸
製法 水酸化アルミニウムを塩酸に加圧下または
溶解助剤を加え溶解する。これに重合促進剤とし
て硫酸基を添加して熟成した後製品とする。溶解
助剤及び重合促進剤は各社独自のものを用いて
いる。
生産 8年 550,268t(アルミナ10%換算値)
価格 9年9月 kg当 38~41円(ローリー)
取扱注意 PRTR対象物質
化審法化学物質(1)-213
CAS No.(6H2O)10025-77-1 7705-08-0
輸出(入)統計品目 2827.33-000(2827.33-000)
別名 塩化鉄(Ⅲ):過塩化鉄:過クロル鉄:
Iron(Ⅲ)Chloride:Iron trichloride
荷姿 石油缶(30kg) タンクローリー
性状 FeCl3・6H2O 分子量(式量):270.30 FeCl3
分子量:162.22 無水物=黒褐色六方晶系結晶。
比重2.804、融点282℃、沸点351℃。水、アルコー
ル、エーテルに可溶。六水塩=微塩酸臭の潮解性
黄褐色単斜晶系結晶。融点37℃、沸点280~
285℃。光で変化する。
規格 JIS K 1447-56(塩化第二鉄液)、試薬JIS
K 8142-94、食品添加物公定書。日本薬局方、化
粧品原料基準
用途 プリント配線、ネームプレート(金属板腐食液
)、下水処理(汚水浄化沈殿剤)、写真製版、度量衡
器、触媒
製造業者 旭電化 関西日産化学 ダイソー、東
亜合成 東信化学 北海道曹達 播磨化学 ヤマ
トヤ商会 厚朴化学 鶴見曹達 ラサ工業 浮間
化学研究所 日本軽金属 ダイキン工業 日曹金
属化学 日本電酸 タイキ薬品 東ソー 子安産業
アステック入江 無水=関東電化
原料 鉄、塩酸、塩素ガス
製法 35%塩酸とくず鉄を反応させ、水素の発生
を止まるのを待って上澄み液を採取し、これを加
熱濃縮した後、塩素ガスを吹き込むと塩化第二鉄
溶液が得られる。または化学工業、製鉄工業で副
生する塩化第一鉄溶液に塩素ガスを吹き込んで
得られる。通常38%(40°ボーメ)溶液で液体のま
ま市販される。
生産 8年 517,024t
価格 9年9月 kg当 (無水97%以上)450~480円
(1t)(液状40°ボーメ)20~25円(ローリー)
告示別表11腐食性物質(Q-等級3)。
-4-
ム塩の硫酸バンド、または PAC が多く使用されており、鉄塩の使用実績は少ない 13)。し
かし、汚泥の緑農地還元を図る場合には、アルミニウム塩を添加した汚泥は、植物に
悪影響をおよぼす恐れも考えられるので 14)、凝集剤の選定には注意を要する。
1-2-2 凝集沈殿法の歴史
凝集沈殿法が下水処理の分野に取り入れられたのは古く、18 世紀にまでさかのぼる
といわれている。当時は灌漑以外の唯一の下水処理法は凝集沈殿法であり、1762 年に
英国で特許を得たことに始まる。ヨーロッパでは 1840 年にパリの下水処理場に用いら
れて以後、1800 年代中盤から後半に広く採用された。米国では 1889 ~ 1890 年に凝集
沈殿法の大規模な処理場が建設され、1934 年までに 34 都市の下水処理場で凝集沈殿法
が採用された 15)。当時の処理場の代表的なフローを図 1-2-1 に、処理能力を表 1-2-3 に
示した 16)。図 1-2-1 に示すような凝集沈殿法はリン除去を目的としたものではなく、薬
品を用いて生下水を直接沈殿処理するものであった。重力による自然沈降と比較する
と凝集沈殿は優れた処理能力を有するが、生成汚泥量が多い点、および生物処理に比
べて、BOD や窒素除去といった点で劣るといった問題点がある。したがって処理水の
CHEMICAL
FEEDERS
BAR
SCREEN
SLUDGE DRYING
BED
DIGESTER
GRIT
CHAMBER
INFLUENT
EFFLUENT
COLLECTION & WASHING
EQUIPMENT FOR
FLASH
LARGE PLANTS
MIXER
FLOCCULATION
TANK
SEDIMENTATION
TANK
CHLORINE CONTACT
TANK
図 1-2 -1 下水処理場における凝集沈殿法フロー図 16 )
表 1-2 -3 凝集沈殿処理を採用した下水処理場の処理能力 16 )
処理場名
凝集剤
SS除去率(%)
Conney Island
硫化鉄・塩素・石灰
New Britain
銅・塩素
El Paso
塩化鉄
Danville
硫酸アルミニウム
Dearborn
BOD5除去率(%)
67
48
85.5
78.2
84
63.8
81.4
61.5
塩化鉄・石灰
92
76
Perth Amboy
塩化鉄・石灰
88
61
Butler
銅・石灰・塩素
73
58.7
Shades Valley
銅・塩素
86
87
-5-
腐敗、多量の汚泥発生、薬品コストがかさむなどの理由で、20 世紀初頭からは次第に
通常の沈殿池を伴った生物処理法にとって替わられた 17)。
米国でも、第二次世界大戦を契機として凝集沈殿法はいったん衰退し、下水処理法と
しては生物処理法が主流を占めるように変わっていった。ところが 1960 年代になって
化学工業の隆盛とともに、都市下水中の全リン濃度が10-15 mgP/Lと非常に高いものと
なった。これに伴って閉鎖性水域における富栄養化が問題となり 1965 年連邦政府はリ
ン除去に関する研究開発に着手した。こうして凝集沈殿法がリン除去技術として再び
脚光を浴びることとなった。このような時代背景の下で、都市下水からのリン除去技
術は 1960 年からの技術的蓄積をもとに凝集沈殿法が各地の下水処理場で採用され、
1980 年の調査でも建設中を含めて 200 箇所を越している 15)。
わが国で下水の高度処理に本格的に着手したのは 1960 年代の末頃であり、まず環境
基準達成のために BOD、および SS 除去を目指し、物理学的手法、物理化学的手法を中
心に、砂ろ過法と凝集沈殿法が研究され実用化が進められた。また富栄養化対策とし
てのリン除去法としても凝集沈殿法が採用され、実績も増える傾向にあった。ただし、
わが国固有の条件として、省エネルギー、省コストに加えて、処理場用地が制限され
ることや、汚泥の処理処分が非常に厄介なことが問題となり、次第に実施設としては
敬遠されるようになってきた。1970 年代に入ると生物学的リン除去法が研究され、嫌
気-好気法や窒素との同時除去を目指した方法が開発されてきている 17)。
1975 年前後からは、下水二次処理水の高度処理として、凝集沈殿法が検討されるよ
うになり、各地でパイロットプラントによる実験が行われるようになった。近年では、
湖沼、閉鎖性水域などの公共用水域の富栄養化に伴った各種問題が顕在化し、高度処
理における凝集沈殿法の位置づけはリン除去方法としての意味を深く持つようになっ
た。代表的な例を表 1-2-4 に示したが、現在では琵琶湖、霞ヶ浦、瀬戸内海、伊勢湾、
東京湾など、富栄養化が懸念される閉鎖性水域近辺の下水処理場を中心に、活性汚泥
法や循環式硝化脱窒法などの生物学的処理、急速ろ過などと組み合わせた形で、約 140
の処理場で実用化されている 18)。
1-2-3 凝集沈殿法の利用
排水中のリン酸イオンを物理化学的に除去する方法として、薬品を投入して難溶性
の塩、フロックを形成するいわゆる凝集沈殿法が用いられるが、凝集沈殿法は 1-2-2 で
前述したように本来CODやSS、重金属類の除去を目的として用いられてきたものであ
り、水質環境基準の厳しい水域へ放流せざるを得ない下水処理場における初期運転時
対策として、エアレーションタンクへの凝集剤添加によって、活性汚泥の早期育成と、
-6-
表 1-2-4 わが国における凝集沈殿法の利用例(一部)17 )、18 )
目標水質 (mg/L)
箇所名、処理場名
BOD
COD
SS
T-N
T-P
処理方法
使用
開始年度
霞ヶ浦湖北流域下水道
霞ヶ浦浄化センター
茨城
10
15
15
15
0.5
嫌気無酸素好気法+凝集剤添加+急速ろ過
53
霞ヶ浦常南流域下水道
利根処理センター
茨城
10
15
15
15
0.5
標準活性汚泥法+凝集剤添加+急速ろ過
51
霞ヶ浦水郷流域下水道
潮来浄化センター
茨城
10
15
15
15
0.5
嫌気無酸素好気法+凝集剤添加+急速ろ過
61
多摩川流域下水道
南多摩処理場
東京
5
5
10
0.5
嫌気-無酸素-好気法+凝集剤添加
50
福井臨海特定公共下水道
テクノポート福井
浄化センター
福井
20
20
長時間エアレーション法+凝集剤添加+急速ろ過
5
琵琶湖流域下水道
湖南中部浄化センター
滋賀
5
10
6
10.0
0.5
嫌気無酸素好気法
循環式硝化脱窒法
ステップ流入式多段硝化脱窒法
+凝集剤添加+急速ろ過
56
琵琶湖流域下水道
湖西浄化センター
滋賀
5
10
6
10.0
0.5
嫌気無酸素好気法
循環式硝化脱窒法
ステップ流入式多段硝化脱窒法
+凝集剤添加+急速ろ過
59
琵琶湖流域下水道
東北部浄化センター
滋賀
5
10
6
10
0.5
循環式硝化脱窒法
ステップ流入式多段硝化脱窒法
+凝集剤添加+急速ろ過
2
大津市公共下水道
水再生センター
滋賀
10
10
9
10
0.5
標準活性汚泥法
循環式硝化脱窒法+凝集剤添加
55
志賀町特定環境保全
公共下水道
南小松浄化センター
滋賀
5
10
6
10
0.5
長時間エアレーション法+凝集剤添加
4
西播磨高原
上下水道事業団
播磨高原浄化センター
兵庫
8
8
10
1
循環式硝化脱窒法
オキシデーションディッチ法+凝集剤添加+急速ろ過
2
宍道湖流域下水道
東部浄化センター
島根
5
8
5
8
0.4
ステップ流入式多段硝化脱窒法+凝集剤添加+急
速ろ過
5
児島湖流域下水道
児島湖流域下水道
浄化センター
岡山
5
10
5
10
0.5
凝集剤添加・活性汚泥循環変法+急速ろ過
凝集剤添加・ステップ流入式多段硝化脱窒法
+急速ろ過
63
宗像市公共下水道
宗像終末処理場
福岡
5
5
10
0.3
凝集剤添加活性汚泥循環法
担体利用硝化促進型凝集剤添加循環法
6
生駒市公共下水道
山田川浄化センター
奈良
10
15
標準活性汚泥法+凝集剤添加+急速ろ過
59
洞爺村公共下水道
とうやクリーンナップ
センター
北海道
20
オキシデーションディッチ法+凝集剤添加
6
日光市公共下水道
湯本浄化センター
栃木
20
30
オキシデーションディッチ法+凝集剤添加
61
丹波山村特定環境保全
公共下水道
丹波山浄化センター
山梨
5
5
0.5
オキシデーションディッチ法+凝集剤添加+急速ろ過
62
小菅村特定環境保全
公共下水道
多摩清流苑
山梨
5
5
0.5
オキシデーションディッチ法+凝集剤添加+急速ろ過
63
岩村町特定環境保全
公共下水道
岩村浄化センター
岐阜
18
10
1.2
回分式活性汚泥法+凝集剤添加
57
浜松市公共下水道
湖東浄化センター
静岡
5
1
硝化内生脱窒法+凝集剤添加+急速ろ過
57
20
10
70
3
-7-
14
5
0.7
放流水質の安定化を図った例も報告されている 19)。
凝集沈殿法によるリン酸イオンの除去原理については、凝集剤として用いられる金
属塩 (Al 塩、Fe 塩 ) や石灰 (Ca 塩 ) の Al3+、Fe3+、Ca2+ の陽イオンは次式に従ってリンと
不溶性の塩を形成する。
Al 3+ + PO 34− → AlPO 4 ↓
Fe 3+ + PO 34− → FePO 4 ↓
2+
(1-2-1)
−
4
5Ca +7OH + 3H 2 PO → Ca 5 (OH)(PO 4 ) 3 ↓ +6H 2 O
-
各塩の最小溶解度は、AlPO4 が pH6 で約 0.01 mgP/L、FePO4 が pH5 で約 0.1mg-P/Lとな
る、Ca5(OH)(PO4)3 の溶解度は pH 上昇とともに対数的に減少する ( 図 1-2-2 参照 )。
一方、Al3+、Fe3+、Ca2+ は水中のアルカリ度とも反応する。
2Al 3+ + 6HCO-
2Al(OH) 3 ↓ +6CO 2
3 → 2Fe 3+ + 6HCO-
2Fe(OH)3 ↓ +6CO 2 3 → -
-
2+
+ HCO 3 → CaCO 3 ↓ + H 2 O
Ca +OH (1-2-2)
これらの水酸化物等は、リン酸塩を吸着除去する働きがあり、リンの凝集沈殿除去
効果を高める。しかし凝集剤はリン除去に加えてアルカリ度による消費分も添加しな
ければならない。処理水中リン濃度を決める条件は、pH と添加金属塩 / 原水中リンの
モル比 (Me/P) が重要で、金属 / リンのモル比を上げれば通常の下水の pH でも十分な除
去率を得ることができる。
法のプロセスと組み合わせて
-3
利用する方法には、凝集剤の
-4
投入位置によって、①一次処
理段階:最初沈殿池直前での
注入 ( 前凝集 )、②二次処理段
階:曝気槽もしくは最終沈殿
池への注入 ( 同時凝集 )、③三
次処理段階:最終沈殿池の後
P:CaHPO4
Ca=40mg/L
FePO4
-5
-6
Fe
Fe(OH)3
-8
P:水中
1
Ca5(OH)(PO4)3
0.1
AlPO4
-7
P:Ca5(OH)(PO4)3
Ca=40mg/L
0
2
4
6
pH
8
10
段の凝集槽(後凝集)への注入
がある。
図 1-2-2 各種リン化合物の溶解度 19)
-8-
0.01
0.001
P:Ca5(OH)(PO4)3
Ca=100mg/L
-9
-10
10
12
リン (mgP/L)
-2
log C (mol/L)
この凝集作用を、活性汚泥
表 1-2 -5 生物処理と組みあわせたリン除去法の比較(一部筆者で追記) 19 )
記号
処理段階
フローシート※
処分汚泥
次処理
②
返送汚泥
AT
PS
2
FS
処分汚泥
次処理
1
①
AT
PS
FS
凝集沈殿法
次処理法
3
③
PS
汚泥処理
④
注 ※
PS
AT
AT
PT
:下水
:汚泥
:凝集剤
FS
PT
FS
長所
短所
1)有機物、浮遊物の除去率が向上し、
2次処理への負荷を軽減できる。
2)石灰を用いる場合にはアルカリ度
が補給されるため2次処理における
硝化が促進される。
3)リン除去のための施設改造が最低
となる。
1)金属塩利用の場合には、初沈汚泥
よりも脱水性が悪くなる。
2)金属塩の場合には、処理水のpHが
低下するため2次処理における硝化が
抑制される。硝化促進にはアルカリ材
の添加が必要となる。
1)有機物除去率が向上する。
2)リン除去のための施設改造が最低
となる。
3)安価な第一塩鉄が利用できる。
1)最終沈殿池に、通常の設計値よりも
余裕が必要である。
2)硝化を行うにはアルカリ剤の添加が
必要となる。
3)活性汚泥に金属塩が影響を及ぼす。
4)処理水が白濁することもがある。
1)処理水中のリン濃度を最低に維持
できる。
2)汚泥中の不純物の割合が低いた
め、凝集剤、リンの回収が図れる。特
に石灰はその手法が確立している。
3)有機物の除去が行われる。
4)2次処理に影響を及ぼさない。
1)建設費、維持管理費が最大である。
2)石灰を用いると後段でpHが高くなる。
1)薬品費が最低となる。
1)建設費が比較的高い。
PS
PS:最初沈殿池
AT:エアレーションタンク
FS:最終沈殿池
PT:凝集沈殿池
PS:リン放出タンク
表 1-2-5 に各種凝集沈殿法の特徴を比較したものを示した 19)。
1-2-4
前凝集沈殿法の水処理への影響
ノルウェーやスウェーデンなどの北欧諸国における下水処理は、気温が比較的低い
ことで十分な生物処理が期待できないことや、湾、湖など閉鎖性水域が多いことから、
1960 年代から 70 年代にリン除去を目的として凝集沈殿法が導入され、生物処理を併用
する例が普及しており 20)、Karlsson の報告によれば、Norrkopong 下水処理プラントで、
最初沈殿池直前に Fe3+ を添加したところ、最初沈殿池の時点で 55% のリン、有機物質
の 50% が除去されたとしている 21)。また、U.Nyberg ら 22) は、ノルウェーの Klagshamm
下水処理場で、最初沈殿池直前に、FeCl3:10mgFe/L とアニオンポリマー:0.3mg/L とを
添加した場合に、最初沈殿池流出水の SS が 55 mg/L から 38 mg/L に、T-P が 2.7mgP/L か
ら1.8 mgP/Lに減少し、固形物負荷が取り除かれたことによって後段の硝化脱窒プロセ
スにおいて、硝化速度は 12% 程度増加したとしている。
貫上ら 7) は、大阪府流域下水道の終末処理場である鴻池処理場を対象として、パイ
ロットプラントにて FeCl3:7.5 mgFe/L、およびアニオンポリマー:0.25 mg/L を最初沈
-9-
殿池前に添加するとともに、後段では、担体添加型の硝化・脱窒を行った。その結果、
前凝集プロセスにより、SS で 73.1%、および T-P で 64.8% 除去されたが、T-N の除去率
は 28.4% にとどまり、後段の硝化・脱窒プロセスで、平均して T-N は 2.8mgN/L、およ
び T-P は 0.86mgP/L まで除去されたとしている。日高ら 8) は、同処理場で前凝集プロセ
スと担体添加型の硝化・脱窒に好気性ろ床を組み合わせた方法について検討しており、
FeCl3:10 mgFe/L、およびアニオンポリマー:0.25 mg/L を添加し、最初沈殿池では SS で
約 60%、および T-P で 55% 除去されたが、T-N に関しては 20% 程度の除去であり、残
りは後段の硝化・脱窒・好気性ろ床で除去され、処理水質の T-N は平均して 1.8 mgN/L
であったと報告している。岩部ら 6)、 および大阪府下水道技術研究会汚泥処理分科会 23)
は、同処理場内に設置された前凝集プロセスと硝化・脱窒プロセスを組み合わせたプロ
セスのパイロットプラントで、最初沈殿池前に PAC を 7.0 mgAl/L、あるいは FeCl3 を
23mgFe/Lの割合で凝集剤を添加し、最初沈殿池において水面積負荷70 m3/m2・日の場合
に、SS:66 ~ 70%、T-P:70 ~ 80% 除去される結果となったが、アンモニア性窒素に
関しては、3 ~ 5% の除去にとどまっている。
岩崎らは、同処理場にてパイロットプラントを用いて、前凝集沈殿に活性汚泥法を
組み合わせた方法で、水質の高度化、曝気時間の短縮の可能性について言及している。
凝集剤としては硫酸バンドを5.0 mgAl/Lの割合で添加した結果、最初沈殿池でSSが80%
以上、COD が 70% 以上除去可能であり、この際、COD 成分の粒径分布を調査したとこ
ろ、凝集剤添加によって、1μm以上の成分はほとんど除去されていた。曝気時間につい
ては、4時間から2時間にしても処理水質の変化はなく短縮可能であったとしている24)。
同様に、下水中の有機物を粒子径について考察した例によると、下水中の有機物の約
70%以上が粒子径0.1μm以上であることが示されており、また凝集沈殿ではコロイド粒
子 (0.1 ~ 1μm) 以上に対して有効であると考えられるので、70% 以上の有機物除去が期
待できる 25)。
以上、前凝集沈殿法の水処理に与える特徴をまとめると、以下の 3 つが挙げられる。
① 凝集沈殿により粒子径の大きい有機物を除去でき、SS では、60-75% の除去率が期
待できる。しかし窒素の除去は期待できない。
② その結果、曝気槽での固形物、有機物負荷を低くできることから、曝気エネルギー
( 電力費 ) と曝気槽容積の削減ができる。また硝化反応の生じやすい条件にでき、硝
化速度も上昇させることができる。
③ 凝集剤に含まれる Al3+、Fe3+ などの多価陽イオンによってオルトリン (PO4-P) を不溶
化して沈殿分離することにより、凝集剤添加量に応じてリンの除去が可能となり、
50 ~ 80% の除去が期待できる。
- 10 -
1-2-5
前凝集沈殿法の汚泥処理への影響
1) 汚泥発生量
凝集剤を最初沈殿池の前段で添加すると、発生汚泥量の絶対量が増加する。汚泥量
の増加は次の要因に起因する。
① 凝集剤添加による固形物(リンと金属塩の化合物、金属塩の水酸化物)
② 有機性固形物の最初沈殿池における除去率の向上
③ 溶解性固形物の除去
大阪府下水道技術研究会汚泥処理分科会 23)、26) は、前凝集+硝化・脱窒のプラントに
おいて、凝集剤として PAC を添加して、原水、前凝集処理水、および前凝集沈殿汚泥
について 1 日分のコンポジットサンプルをとり、発生汚泥量を評価した。その結果、
PAC:2.0 mgAl/Lでは、100-110%だったのに対し、PAC:4.1 mgAl/Lの場合には110-130%、
そして PAC:7.0 mgAl/L の場合には 170% と注入量の増加にともない、流出 SS 量が増加
していたと報告している。また岩崎は 24) パイロットプラントによって、前凝集プロセ
スに凝集剤として硫酸バンドを用いた実験を行って、流入水を仮定した場合の汚泥発
生量を試算しており、その結果、硫酸バンドを 10 mgAl/L 添加した場合に、前凝集沈殿
汚泥は凝集剤無添加の場合に比較してほぼ2倍に増加していた。しかしこの際余剰汚泥
に関してはほぼ1/10以下に減少しているため、トータルとしては120%程度の増加にと
どまっている。このように前凝集プロセスを導入すると、凝集剤の添加に伴って、最
初沈殿池で発生する凝集沈殿汚泥の増加とともに余剰汚泥との発生比率も変化するこ
とが予想される。
2) 濃縮
大阪府下水道研究会高度処理分科会27)は、前凝集沈殿汚泥の重力濃縮性を評価するた
め、高さ 1000mm の塩化ビニルカラムで濃縮試験を実施し、FeCl3:23 mgFe/L で作成し
た前凝集沈殿汚泥は、混合生汚泥よりも沈降速度が遅くなり、FeCl3:6 mgFe/L+ アニオ
ンポリマー:0.6mg/Lで作成した前凝集沈殿汚泥は混合生汚泥とほぼ同等の沈降速度が
得られたと報告している。
また、大阪府下水道研究会汚泥処理分科会 23) は、卓上遠心分離機を用いた遠心濃縮
試験により、PACを用いた前凝集沈殿汚泥の濃縮性について検討した。比較対象は、凝
集剤を添加せずに得られた汚泥としている。濃縮試験の結果、PAC を用いた前凝集沈
殿汚泥は、濃縮汚泥濃度、濃縮倍率ともに低く濃縮性が悪いことがわかった。しかし、
分離液の SS は低く SS 回収率の点で優れていた。岩崎 24) も同様の Al 系凝集剤の硫酸バ
ンドを 5 mgAl/L で最初沈殿池直前に添加して作成した前凝集沈殿汚泥について、凝集
- 11 -
剤無添加の場合と比較する形で遠心濃縮試験を行った結果、同じ濃度の汚泥の場合に
凝沈系の濃縮倍率が小さくなる傾向があったと報告している。一方、株式会社クボタ
の報告 28) によると、FeCl3 を用いた前凝集沈殿汚泥について、遠心濃縮試験を行った結
果、濃縮汚泥濃度は凝集剤無添加の場合に比較して高濃度が得られ、分離液の SS は低
く、SS 回収率の点で優れているとしている。また、大阪府下水道研究会高度処理分科
会の報告 27) では FeCl3:6mgFe/L+ アニオンポリマー:0.6mg/L 添加し、作成した前凝集沈
殿汚泥で上記と同様の実験を行ったところ、濃縮汚泥濃度、濃縮倍率は混合生汚泥よ
りも優れていたとしている。
以上のことから、前凝集沈殿汚泥の濃縮性は、通常の汚泥に比較して固液分離性は
優れているものの、PAC や硫酸バンドを用いた場合、通常の汚泥よりも濃縮汚泥濃度
が低下する傾向があり、FeCl3 や一部ポリマーを併用した場合の濃縮汚泥濃度は、同等
もしくは高くなると考えられる。
3) 消化
前凝集プロセスが汚泥消化に与える影響に関しては、いわゆる有機酸発酵とメタン
発酵への影響の二つに分けることができる。まず有機酸発酵プロセスへの影響として、
Kim ら 29) は、種汚泥+人工基質に PAC、FeCl3 およびポリマーを添加し、有機酸発酵実
験を行った結果、PAC:10 mgAl/L、あるいは FeCl3:120 mgFe/L の添加で、有機酸転換率
が 10% 以上低下し、鉄塩よりもアルミニウムのほうが阻害の影響が大きいこと、ポリ
マーの添加によっても有機酸発酵への阻害がみられることを報告している。
メタン発酵に関する影響としては、比較的多くの報告がなされている。高岡、廣田
ら 30) は、前凝集沈殿汚泥について回分式の嫌気性消化試験を実施した結果、アルミ系
の凝集剤 (PAC、硫酸バンド ) ではガス発生量が減少するが、FeCl3 を用いた場合は、汚
泥分解率の上昇がみられ、メタン比率、発生量ともに初沈汚泥を上回っていたとして
いる。岩崎 24) は、凝集剤として硫酸バンドを 5 mgAl/L の割合で添加した前凝集沈殿汚
泥と初沈汚泥の嫌気性消化特性を回分式実験装置で評価し、前凝集沈殿汚泥は初沈汚
泥に比較して、投入有機物あたりのガス発生量も減少し、発生ガス中のメタンガスの
割合が減少したとして、アルミ系の凝集剤を用いた場合の消化阻害を報告している。ま
た、大阪府下水道研究会汚泥処理分科会の報告 23) では、PAC と FeCl3 を用いた前凝集沈
殿汚泥のバイアル式消化実験を行った結果、PAC はメタン生成細菌に影響を与え、ガ
ス生成が減少する。一方、FeCl3 の場合にはほとんど影響を与えないものの、有機酸生
成率がわずかに減少するとしている。同研究会高度処理分科会 27) では、FeCl3 とアニオ
ンポリマーをそれぞれ 6 mgFe/L と 0.6mg/L 添加し作成した前凝集沈殿汚泥について、2
- 12 -
槽式の嫌気性消化パイロット実験を行ったところ、酸発酵槽で投入汚泥 COD の 46%、
消化槽では60%が分解され、通常の初沈汚泥と同等の分解率であったと報告している。
前凝集沈殿汚泥ではないが、生物処理槽へ凝集剤を添加し、発生した高度処理汚泥
についての消化特性を検討している報告がある。田中ら 31) は、嫌気好気活性汚泥法に
PAC 添加を組み合わせたプロセスから生じた高度処理汚泥 (Al 系汚泥、Al 添加:2.4 ~
3.9%TS)、および嫌気-無酸素-好気法にポリ硫酸第二鉄の添加を組み合わせたプロセ
スから生じた高度処理汚泥 (Fe 系汚泥、Fe 添加 4.4 ~ 7.4%TS) を対象として、バイアル
式消化実験を行った結果、Al 系汚泥では明らかにメタンの収率を低下させる傾向があ
るものの、Fe 系汚泥ではあまり影響はなかったとしている。Kindzierskiら 32) は、混合基
質に硫酸バンド、あるいは FeCl3 を直接添加し、アルミニウムおよび鉄の濃度を 22110mgAl/L、あるいは 8-364mgFe/L の範囲で変化させたところ、メタン発生量はアルミ
ニウムの場合も、鉄の場合も濃度が高くなるほど減少したと報告している。この場合
阻害は、毒性ではなく凝集作用により基質とメタン生成菌との接触率が低下するため
と推定している。
以上の調査からは、PAC や硫酸バンドに由来するアルミニウムが有機酸発酵やメタ
ン発酵に阻害影響を持つことはどの報告でも共通している。また、鉄系凝集剤に由来
する汚泥中の鉄は一部阻害が報告されるが、阻害物質とされる一方で、鉄はメタン発
酵における活性促進物質としても知られており、低濃度の添加はメタン生成量を増大
させるとの知見もあり 33)、阻害の程度はアルミニウムに比較し小さいと考えられる。
また、嫌気性消化で問題となるリンの溶出に関しては、前述した高岡ら 30) の前凝集
沈殿汚泥の嫌気性消化実験で、汚泥中の溶解性リンを測定したところ、Al 系において
も、Fe 系においても通常の混合生汚泥に比較して、低レベルに抑えられていることが
報告されている。
消化ガス中の微量成分への影響を調査した報告に関しては、梅染ら 34)、35) は、FeCl3:
22mgFe/L、および FeCl3:0.2mgFe/mg 原水 SS +ポリマー:0.5mg/L で作成した前凝集沈
殿汚泥と初沈汚泥とを対象に、半連続式の嫌気性消化装置で実験を行い、主にガス組
成の変化について言及し、前凝集沈殿汚泥では硫化水素発生量が初沈汚泥に比較して
減少することを明らかにしている。これは、硫化水素が汚泥中の鉄成分と反応し、FeS
として固定化されたためであるとしている。この鉄塩による硫化水素の抑制に関して
は、実処理場においても適用例が有り、重力濃縮槽にポリ硫酸第二鉄を添加し、後段
の消化槽から発生する消化ガス中の硫化水素を抑制し、かつ消化汚泥中の溶解性リン
濃度を減少させた報告がある 36)、37)。また田中ら 38) は、バイアル実験によりFeCl2、FeCl3、
あるいはポリ硫酸第二鉄を添加することによる消化ガス中硫化水素の抑制効果を調査
- 13 -
しているが、最も抑制効果が高いのは FeCl2 であったと報告している。
また近年、消化ガス中に含まれるシロキサンが、ガスエンジン内での燃焼に伴いト
ラブルを引き起こす例があり、調査・対策が行われているが 39)、40)、筆者らのグループ
では41)、42)、梅染らと同様の半連続式の実験装置を用いて、FeCl3:11mgFe/L、FeCl3:6mgFe/
L +アニオンポリマー:0.5mg/L、あるいはポリ硫酸第二鉄:11mgFe/L で作成した前凝
集沈殿汚泥 3 種と初沈汚泥について、中温消化 (38℃)、高温消化 (55℃) で消化実験を行
い、発生する消化ガス中のシロキサンを調査したところ、前凝集沈殿汚泥と初沈汚泥
とでガス中のシロキサン濃度に大差はなく、むしろ消化温度の影響の方が大きいこと
が明らかになっている。
以上、前凝集沈殿汚泥を消化した際には、凝集剤成分による有機酸発酵、あるいは
メタン発酵への促進もしくは阻害影響の他に、リンの溶出抑制、H2Sの発生抑制効果が
あることが明らかになっている。またシロキサンに関しては温度の影響が大きく、高
度処理の影響ははっきりしないが、下水処理場での挙動も含めて明らかにする必要が
あろう 42)。
4) 脱水
前凝集沈殿汚泥の脱水に関しては、いくつか報告があり、概要を以下に述べる。
1970 年後半に、安中ら 43) は、小型の加圧脱水機 ( 脱水助剤として塩化第二鉄と消石灰
を使用)を用いて、最初沈殿池に硫酸バンドを添加して作成した前凝集沈殿汚泥につい
て脱水性を検討した結果、前凝集沈殿汚泥の脱水性としては、コントロール系に比較
してケーキ含水率、およびろ過速度ともわずかに悪化すると報告している。
その後 1998 年、株式会社クボタ 28) は、前凝集沈殿汚泥の脱水性をベルトプレス脱水
機を想定した簡易試験器を用いて検討した。調整剤としては高分子凝集剤を用い、混
合生汚泥との脱水性の比較を試みた。その結果、PAC:7mgAl/L を用いた前凝集沈殿汚
泥は、両性カチオンポリマーを用いると、混合生汚泥と同等の添加率(0.9~1.2%TS)で、
含水率で 4% 程度となり、ろ液の T-P は 1.0mgP/L 以下に改善されたとしている。また、
FeCl3:23mgFe/L を用いた前凝集沈殿汚泥は両性ポリマーを用いると、脱水は可能であ
るものの、混合生汚泥に比較して含水率は 4% 程度上昇し、また、ろ液 T-P に関しては
改善されるものの、ろ液の SS に関しては悪化したとしている。一方、FeCl3:6mgFe/L+
ポリマー:0.6mg/L を用いた前凝集沈殿汚泥は、カチオン、両性などのポリマーが適合
し、混合生汚泥に比較して含水率は 4% 程度低下し、ろ液の T-P も改善されたが、ろ液
の SS については悪化したとしている。
以上より、前凝集沈殿汚泥の脱水に関しては、近年発展してきた脱水方式や、高分
- 14 -
子凝集剤の適切な選択により、生汚泥と同等以上の脱水性を確保できるとともに、脱
水ろ液の T-P が改善されるものと考えられる。
5) 焼却
前凝集沈殿汚泥が焼却プロセスに与える影響としては、まず発熱量の変化が考えら
れる。大阪府下水道研究会汚泥処理分科会 23) は、混合生汚泥、余剰汚泥、前凝集沈殿汚
泥 (PAC:7.5mgAl/L、FeCl3:23mgFe/L、FeCl3:6mgFe/L+ ポリマー:0.6mg/L) について低
位発熱量、高位発熱量を測定しており、PAC:7.5mgAl/L、および FeCl3:23mgFe/L では
低位発熱量、高位発熱量が混合生汚泥、余剰汚泥に比較して低下すると報告している。
また、FeCl3:6mgFe/L+ポリマー:0.6mg/Lに関しては顕著な低下はみられなかったとし
ている。
この変化に関しては考察されていないが、村上 44) は、高分子凝集剤を用いて脱水し
た汚泥 ( 高分子ケーキ ) より、石灰と FeCl3 を用いて脱水した汚泥 ( 石灰ケーキ ) の発熱
量が低い現象について、相対的に可燃分が希釈されたことによるものと、FeCl3 および
石灰は、石灰ケーキの乾燥固形物中で水酸化物の形で存在し、燃焼によって水分を生
じ、蒸発潜熱を持ち去ったことによるものと考察している。前凝集沈殿汚泥について
も凝集剤によって汚泥中の有機物割合が減少するとともに 24) 、凝集剤が式 (1-2-2) に
従って、アルカリ度と反応して水酸化物を形成し汚泥中に存在していることが想定さ
れるため、村上の推測しているような原因により、汚泥乾燥固形物あたりの発熱量が
低下したものと考えられる。
汚泥焼却においては、脱水ケーキの含水率、および有機分組成や燃焼空気比により
補助燃料使用量がほぼ決定され45)、汚泥乾燥固形物あたりの有機分割合が減少するとい
うことは、脱水ケーキ含水率や燃焼空気比が同様の場合、補助燃料必要量が多くなる
可能性がある。
6) 溶融
本研究において前凝集プロセスに用いる凝集剤は PAC、硫酸バンド、あるいは FeCl3
を使用するが、これらの幾分かは不溶性の無機金属塩として汚泥中に移行するため、脱
水ケーキや焼却灰中にも残留してくるものと考えられ、ケーキ中の灰分組成が変化す
ることが想定される。村上ら 46) は、全国 46 箇所の下水処理場から採取した高分子凝集
剤での脱水ケーキ(以下高分子ケーキ)
、および石灰と FeCl3 での脱水ケーキ(以下石灰
ケーキ)の灰分組成の測定を行い、双方とも主成分はSiO2 で 9.4 ~ 50.5%の範囲であり、
石灰ケーキでは脱水助剤の影響を受けて、CaO が 12.7 ~ 70.9% で、FeO が 5.6 ~ 23% と
- 15 -
高分子ケーキに比較して高くなっている傾向が見られたと報告している。下水汚泥灰
分組成を用いた溶融指標の 1 つに塩基度がある。塩基度は現在主に CaO/SiO2 が最も簡
便な指標とされ、この値がほぼ 1 となるように塩基度調整がなされている 47)。しかし、
吉野ら 48) は、SiO2、CaO、および Al2O3 の 3 成分を主成分とする模擬灰について溶融特
性を評価し、溶融特性には SiO2、および CaO 成分のみならず、Al2O3 が大きく影響し、
溶融温度の低下や改善操作には、Al2O3 の変動も指標として取り入れるべきであるとし
ている。
また前凝集沈殿汚泥ではないが、村田ら 49) は生物反応槽への PAC 添加による高度処
理を行った場合の溶融処理へ与える影響について、るつぼ転倒法による溶融特性の検
討を行っている。この結果、高分子系凝集剤による脱水を行った場合に、水処理用の凝
集剤は Al 系よりも、Fe 系を用いた方が溶融特性は改善されるとしている。
また、わが国で汚泥溶融炉の稼動が多くなりはじめた 1995 ~ 2000 年にかけて、汚泥
溶融炉でスラグ中へのリンの固定化率が低く、排ガス処理ラインで熱交換器がリン酸
により腐食されるトラブルや、溶融処理の排ガス処理排水に含まれるリンの返流負荷
が問題となった 50) ~ 54)。この問題の解決策として、岩部ら 55)、立石ら 56) は、濃縮プロセ
スや脱水プロセス、返流水へ鉄塩を添加することが望ましく、汚泥中にリンの鉄塩が
存在する場合、リンを効果的にスラグ中へ固定化することができるとしている。
前凝集プロセスに用いる無機凝集剤の幾分かは不溶性の無機金属塩として汚泥中に
移行するため、焼却灰ないしは脱水ケーキ中にこれらが残留してくるものと考えられ
る。前凝集プロセスを導入することで焼却灰の組成が、村上ら 46) の灰分組成調査結果と
異なってきた場合に、塩基度や溶融特性への影響を把握する必要がある。またリンの
挙動についても影響が生じる可能性がある。
7) コンポスト
汚泥の好気性発酵を利用したコンポストプロセスへの、
前凝集プロセスの影響につい
ては直接的なものはないが、有地ら 57)、58) は、脱水助剤として無機系の凝集剤としてPAC
をポリマーと併用した際に、汚泥中のオルトリン (PO4-P) が、難溶性のリン酸アルミニ
ウムとして固定され、
好気性発酵の立ち上がりの遅れなどの障害が生じると報告している。
さらに、鉄塩の影響に関しては、アルミニウムほどではなく、オルトリンを残留するよ
うに添加すれば特に問題ないとしている。また三羽ら 59) は、嫌気好気活性汚泥法にPAC
添加を組み合わせたプロセスから生じた高度処理汚泥、
および嫌気-無酸素-好気法に
ポリ硫酸第二鉄の添加を組み合わせたプロセスから生じた高度処理汚泥を、
それぞれAl
系汚泥、および Fe 系汚泥と定義し、カラム式の実験装置でコンポスト実験を実施した
- 16 -
結果、切り替えし操作を行った際に、Al 系汚泥では温度上昇が途絶えるといった傾向
を報告している。一方で、長田ら 60) は、汚泥の脱水時に Al 系、あるいは Fe 系の凝集剤
を TS に対して 10-60% 添加し、その脱水ケーキを用いてコンポスト発酵試験を行った
結果、発酵開始時の遅れなどは見られたが、発酵阻害はまったくなかったとしている。
また製造したコンポストを用いたコマツナの生育実験でも発芽生育に関して阻害はな
かったとしている。以上の調査から、コンポストに関しては、発酵の立ち上がり遅れ
などの影響が一部みられるものの、発酵やその後の使用に関して大きな影響はないも
のと考えられる。
1-3 本論文の目的と構成
前節の文献調査より、前凝集プロセスを導入した高度水処理システムに関しては、パ
イロットプラントにおける長期連続運転を中心として、その水処理特性が明らかにさ
れてきている。また、前凝集沈殿汚泥の処理特性についても、汚泥処理の各単位プロ
セスについて、一部の条件では明らかにされてきている。しかし、水処理からは汚泥
が発生する一方で、汚泥処理からは返流水が発生し相互に影響をおよぼすため、別々
に検討することよりも、双方を含めたクローズドシステムとしての下水処理システム
全体を評価する必要がある。そのためには、まず既存のシステムとして対象とする下
水処理場全体の物質収支を明らかにした上で、前凝集プロセスを導入した下水処理シ
ステムを比較検討しなければならない。
また、前凝集沈殿汚泥に関しては、その処理特性のデータが比較的少なく、その処
理特性は凝集剤の種類や、凝集剤添加量に大きく左右されることが予想される。そこ
で、同じ処理場の流入下水を用いて、凝集剤種や凝集剤添加量を変化させ作成した種々
の前凝集沈殿汚泥について、一連の汚泥処理特性試験を行って、その組成や発生量、各
単位汚泥プロセスに対応した処理特性を明らかにしなければならない。
さらに、前凝集プロセスを導入した下水処理システム全体を評価するためには、処
理水質のみならず、これまで明らかにされていない、ランニングコストや建設コスト、
所要面積など、経済的な観点からの評価が求められるとともに、対象とした処理場の
下水処理システムにとどまらず、様々な下水処理システムについて最適な処理システ
ムを明らかにする必要がある。
そこで、本論文の目的は、前凝集プロセスを組み込んだ下水処理システムについて、
既存のシステムにおける物質収支、前凝集プロセスから発生する汚泥の処理特性を実
験的に明らかにした上で、処理水質、コスト、および所要面積の側面から、汚泥処理
も含めた本システムと既存のシステムとの比較、および最適な処理システムの抽出を
- 17 -
シミュレーションにより試みることとした。
本論文の構成は全 5 章からなり、その構成は以下のとおりである。
第2章では、本研究でのベースとなる大阪府寝屋川北部流域下水道の終末処理場であ
る鴻池処理場において、汚泥処理プロセスを中心として固形物、元素レベルでの物質
収支、および汚泥性状の季節変動を調べることにより、既存のシステムの基礎調査を
行った。
第3章では、前凝集プロセスを既存のシステムに導入した際に発生する前凝集沈殿汚
泥の処理特性を把握するために、鴻池処理場に設置されたパイロットプラントを用い、
PAC、硫酸バンド、あるいは FeCl3 を凝集剤として用いて数種の前凝集沈殿汚泥を作成
し、その組成変化を把握するとともに、既存の各汚泥処理単位プロセスに対応した処
理特性の評価実験を行って、前凝集プロセスが各単位プロセスに与える影響を明らか
にした。具体的には、処理水質と最適凝集剤添加量の検討、前凝集汚泥の成分分析に
よる TS、リン、重金属、および CHN 等の組成変化の把握、物質収支として固形物、汚
泥発生量、リン、および主要元素の挙動、濃縮性として沈降性および固液分離性の把
握、脱水性、脱水ケーキ発熱量測定によるエネルギー的側面からの考察、溶融特性と
して溶流度測定を行った。これにより前凝集プロセスが各単位汚泥処理操作に及ぼす
影響を実験的に検討した。
第 4 章では、第 2 章における鴻池処理場における年間固形物収支、主要元素収支調査
結果と、第3 章における前凝集沈殿汚泥の処理特性調査結果、ならびに現在全国で用い
られている様々な単位汚泥処理操作の文献データを用いて、単位処理操作毎に、ユニッ
トを選択することで、様々な組み合わせの下水処理システム全体を表現する物質収支
モデルを構築し、処理水質、コスト、および所要面積をシミュレーションによって算
定することができるプログラムを構築した。このプログラムを用いてシミュレーショ
ンを行い、標準システムを設定し基準とすることで、前凝集プロセスや、硝化・脱窒
プロセスを含め、様々な制約条件の下で最適処理システムの抽出を行い、処理水質
(SS、T-N、T-P)、所要面積、コスト等の指標を算出し、現状プロセスとの比較を行った。
第 5 章で研究の総括を行い、今後の課題について述べた。
なお、本研究を実施した大阪府寝屋川北部流域下水道の終末処理場である鴻池処理場
は、平成 18 年 4 月 1 日に、鴻池水みらいセンターと名前を改称している。ただし、本
論文では実験を行った時期に相応して " 鴻池処理場 ” と表記することとする。
- 18 -
【第 1 章 参考文献】
1)
国土交通省都市・地域整備局下水道部下水道事業課:平成 17年度末下水道整備状
況について、下水道協会誌、Vol.43、No.528、pp.40-48 (2006)
2)
高田文子:第5次水質総量規制のポイント、月刊地球環境、Vol.33、pp.84-85 (2002)
3)
佐藤守孝:下水道法の一部を改正する法律について、下水道協会誌、Vo l. 4 2 、
No.513、pp.33-43 (2005)
4)
松原誠、伊藤貴輝:下水汚泥有効利用の現状と課題について、再生と利用、Vol.29、
No.111、pp.19-27 (2006)
5)
松本順一郎、西堀清六:新版下水道工学、朝倉書店、pp.123-124 (1982)
6)
岩部秀樹、堅田智洋、小松敏広、武田信生:凝集沈殿法と生物膜法を組み合わせ
た下水の高度処理システムの特性、PPM - 1996/4、pp.59-66 (1996)
7)
貫上佳則、宗宮功、津野洋、加賀山守、木下巌、今城宗久、日高平:前凝集沈殿・
付着微生物処理法による都市下水の高度処理に関する研究、下水道協会誌論文集、
Vol.37、No.454、pp.131-145 (2000)
8)
日高平、津野洋、宗宮功、貫上佳則、中本雅明:好気性ろ床を組み込んだ前凝集・
生物膜プロセスの開発、土木学会論文集、No.643/VII-14、pp.71-80 (2000)
9)
廣海敏郎、西口彰修、吉野正章、後藤雅子:前凝集と担体を用いた下水高度処理
システム、第 38 回下水道研究発表会講演集、pp.490-491 (2001)
10)
廣海敏郎、西口彰修、吉野正章、鈴木純二:前凝集と担体を用いた下水高度処理
システム、第 39 回下水道研究発表会講演集、pp.538-539(2002)
11)
下水道技術改善対策研究会、下水汚泥の処理処分対策研究専門部会:下水汚泥の
処理処分対策研究、( 平成三年度報告書 )、pp.5-17 (1992)
12)
13398 の化学商品、化学工業日報社、p.56-59、p.115 (1998)
13)
社団法人日本下水道協会:高度処理施設設計マニュアル ( 案 )、pp.87-88 (1994)
14)
岸野宏:酸性降下物による日本の森林土壌酸性化の機構と予測に関する基礎的研
究、京都大学博士論文、pp.13-15 (1995)
15)
栗林宗人:高度処理技術の変遷、下水道協会誌、Vol.21、No.245、p.38 (1984)
16)
天谷尚:都市下水の生物・化学的高度処理に関する研究、京都大学大学院工学研
究科衛生工学専攻修士論文、pp.3-4 (1991)
17)
村田恒雄:下水の高度処理技術-快適な水環境の創出に向けて-、理工図書、
p.10、pp.15-21、p.166 (1992)
18)
社団法人日本下水道協会:平成 1 5 年度版下水道統計-行政編、第 6 0 号の 1 、
pp.788-871 (2005)
- 19 -
19)
窒素・リン削減技術マニュアル、公害研究対策センター、官公庁公害専門資料特
別増刊号 (1984)
20)
I.Karlsson:Pre-precipitation for Improvement of Nitrogen Removal in Biological Wastewater
Tearement, Pretreatment in Chemical Wastewater Treatment, Hermann.H.Hahn, Rudolf Klute
(Eds.), pp.261-271 (1988)
21)
I.Karlsson:Chemical Precipitation:Alternative or Complement to Biological Treatment,
Chemical Water and Wastewater Treatment, Schr-Reihe Verein WaBoLu 62 (1985)
22)
U.Nyberg, B.Andersson, H.Aspegren and H.Φdegaard:The Use of Polymer in the Preprecipitation Step of a Wastewater Treatment System for Extended Nutrient Removal, Chemical
Water and Wastewater Treatment III, Hermann.H.Hahn, Rudolf Klute (Eds.), pp.105-115
(1994)
23)
大阪府下水道技術研究会汚泥処理分科会:有機物の有効利用に関する研究調査、
平成 6 年度報告書、pp.140-144、 pp.151-160 (1995)
24)
岩崎俊哉:化学凝集沈殿法を併用した下水処理の改善に関するパイロット実験、
京都大学修士論文 (1993)
25)
H.Φdegaard:Coagulation as the First Step in Wastewater Treatment, Pretreatment in
Chemical Wastewater Treatment, Hermann.H.Hahn, Rudolf Klute (Eds.), pp.249-260 (1988)
26)
下水道技術改善対策研究会、下水汚泥の処理処分対策研究会専門部会:下水汚泥
の処理処分対策研究 ( 平成五年度報告書 )、pp.117-118 (1996)
27)
大阪府下水道技術研究会、高度処理分科会:高度処理機構解析研究調査委託(その
4 )、平成 9 年度報告書、pp.161-165 (1998)
28)
株式会社クボタ:ENDSystem 開発研究成果報告書、p.4、pp.16-21 (1998)
29)
Jong-Oh KIM, 宗宮功:有機酸発酵における凝集汚泥中の無機、高分子凝集剤の阻
害効果、下水道協会誌、Vol.36、No.441、pp.102-108 (1999)
30)
高岡昌輝、廣田淳一、武田信生、藤原健史:前凝集沈殿汚泥の嫌気性消化特性,土
木学会論文集、No.685/VII-20、pp.17-26 (2001)
31)
田中松生、森孝志:Al、Fe 塩が汚泥処理プロセスに及ぼす影響について、再生と
利用、Vol.24、No.93、pp.29-35 (2001)
32)
Kindzierski W.B. and Hrudey S.E.:Effects of phosphorus removal chemicals upon methane
production during anaerobic sludge digestion, Canadian Joural of Civil Engineering, Vol.13,
No.1, pp.33-38 (1986)
33)
R.E.Speece原著、松井三郎・高島正信監訳:産業排水処理のための嫌気性バイオテ
クノロジー、技報堂出版、pp.239-241 (1999)
- 20 -
34)
梅染俊行、高岡昌輝、武田信生:前凝集沈殿汚泥の嫌気性消化から発生するガス
組成に関する検討、土木学会第 56 回年次学術講演会講演概要集第 VII 部、pp.352353 (2001)
35)
梅染俊行:鉄系凝集剤を用いた前凝集沈殿汚泥の嫌気性消化特性、京都大学修士
論文、pp.44-61 (2003)
36)
鈴木敏、大森郁美、片平陽子、秋野正造、加藤謙一、小野寺輝夫:重力濃縮槽前
のポリ鉄添加による硫化水素発生の抑制及び嫌気性汚泥消化工程に対する影響調査、
第 33 回下水道研究発表会講演集、pp.1081-1083 (1996)
37)
比嘉剛、湧田啓一、照屋孝子:ポリ硫酸第二鉄添加による下水処理施設の硫化水
素等の抑制効果について、第 40 回下水道研究発表会講演集、pp.150-152 (2003)
38)
田中松生、森孝志、渡辺真紀子、林仁:Fe 塩添加による消化ガス中の H2S 濃度抑
制調査、第 39 回下水道研究発表会講演集、pp.827-829 (2002)
39)
大阪市都市環境局、㈱東京設計事務所:中浜下水処理場消化ガスエンジン調査業
務委託報告書 (2004)
40)
長藤雅則、清水明、浜口敬三:消化ガス中のシロキサン化合物の吸着除去、第 38
回下水道研究発表会講演集、pp.695-697 (2001)
41)
小北浩司、大下和徹、高岡昌輝、武田信生、檜物良一:下水汚泥の消化および焼
却プロセスにおけるシロキサンの挙動に関する基礎的研究、
第40回下水道研究発表
会講演集、pp.1033-1035 (2003)
42)
大下和徹、小北浩司、高岡昌輝、武田信生、松本忠生、北山憲:下水処理場にお
けるシロキサンの挙動に関する研究、下水道協会誌論文集、Vol.44、No.531、pp.125138 (2007)
43)
安中徳二:凝集剤添加による既設下水処理施設の機能改善 ( 第 3 報 ) -硫酸バンド
の最初沈殿池への添加-、第 14 回衛生工学研究討論会論文集、pp.23-29 (1978)
44)
村上忠弘:下水汚泥の脱水ケーキの熱的特性に関する考察(1)、下水道協会誌論文
集、Vol.23、No.265、pp.38-47 (1986)
45)
松永一成:嫌気性消化プロセスの効率化による汚泥処理システムの最適化に関す
る研究、京都大学博士論文、pp.61-67 (1987)
46)
村上忠弘、石田貢、鈴木和美、角田幸二、笹部薫:下水汚泥灰分の溶融特性に関
する研究、下水道協会誌、Vol.26、No.300、pp.47-54 (1989)
47)
村上忠弘、石田貢、鈴木和美、角田幸二、笹部薫:汚泥溶融に関わる指標の検討、
下水道協会誌、Vol.26、No.300、pp.32-46 (1989)
- 21 -
48)
吉野敦志、桃井清至、小松俊哉:焼却灰主成分の変動が溶融特性とスラグ品質に
及ぼす影響、廃棄物学会論文誌、Vol.13、No.6、pp.361-369 (2002)
49)
村田康弘、早瀬宏:高度処理汚泥の溶融処理に与える影響について、月刊下水道、
Vol.16、No.300、pp.32-47 (1993)
50)
三品文雄、松本崇、杉森伸子、岩部秀樹:溶融処理施設におけるリン収支と高度
処理への対応に関する一考察、第 34 回下水道研究発表会講演集、pp.896-898 (1997)
51)
岩部秀樹、小出典宏、長谷川俊和、三品文雄:大阪南エースセンターにおけるリ
ン収支と返流水リン削減対策について、環境衛生工学研究、Vol.12、No.3、pp.866868 (1997)
52)
杉森伸子;溶融施設におけるリンの収支に関する一考察、第 35 回下水道研究発表
会講演集、pp.957-959 (1998)
53)
町田茂、三羽宏明:溶融処理施設におけるリンの挙動、第36回下水道研究発表会、
pp.866-868 (1999)
54)
三羽宏明、町田茂:溶融処理施設における物質収支の検討、第 37 回下水道研究発
表会、pp.876-878 (2000)
55)
岩部秀樹:下水汚泥集約処理施設における汚泥溶融プロセス内でのリンの挙動解
析と制御に関する研究、京都大学博士論文 (2001)
56)
立石政治、小出典宏、田村隆:下水汚泥溶融炉におけるポリ鉄添加によるリンの
固定化とその効果、第 36 回下水道研究発表会、pp.869-871 (1999)
57)
有地裕之、三村匡:コンポスト化プロセスでの金属塩による発酵障害について、第
34 回下水道研究発表会講演集、pp.914-916 (1997)
58)
有地裕之、原田一郎、尾崎正明:リン封鎖が下水汚泥の好気性発酵に及ぼす影響、
第 36 回下水道研究発表会講演集、pp.887-889 (1999)
59)
三羽宏明、堺好雄、若山正憲、田中松生:高度処理に伴う汚泥処理・処分の開発
に関する調査、日本下水道事業団技術開発部報 2000、pp.49-54 (2000)
60)
長田ちひろ、石井典輝、尾崎靖忠、糠谷禎治:無機凝集剤由来の金属塩が下水汚
泥のコンポスト化および植物生育に与える影響、下水道協会誌論文集、Vo l. 38、
No.462、pp.96-108 (2001)
- 22 -
第2章
下水処理場における固形物および主要元素の季節変動と物質収支
2-1 はじめに
前凝集沈殿法から発生する汚泥は、量、質ともに従来の活性汚泥法から発生するも
のと異なってくることが予想され 1)、2) 、既存の汚泥処理プロセスで処理可能であるの
か、それとも新しくプロセスの設計仕様を変更せねばならないのかを検討する必要が
ある。
このため、前凝集プロセスのような新しい処理プロセスを導入するにあたっては、ま
ず下水処理場全体の現状の物質の流れを把握することが重要である。また、汚泥処理
プロセスを中心とした物質収支を考える場合には、これまでのように BOD や、CODと
いった水質指標で全体のシステムをとらえることは難しく 3)、4)、5)、また、下水汚泥の燃
料的な価値や多量に含まれる有用資源(リンなど)の回収を考慮していくことも含め、
元素レベルでの物質収支を明らかにする必要がある。また汚泥性状は季節によって異
なり、周期性を持って変動することが報告されており 6)、季節変動についても現状を把
握しておく必要がある。
本章では以上のような観点から汚泥処理プロセスを中心として固形物、および元素
レベルでの物質収支、ならびに汚泥性状の季節変動を調べることにより、既存のシス
テムでの現状特性の調査を行った。これによって現処理システムが抱える問題点を明
らかにするとともに、前凝集沈殿法の運転、および設計を行う際の対照データとする
ことを目的とした。
具体的には、まず、2-2 において、対象とした鴻池処理場の下水処理プロセスについ
て説明し、各プロセスから発生する処理水、汚泥や返流水のサンプリング方法やその
時期、各サンプルの分析項目について述べた。2-3 では各サンプルの TS、SS、および
T-P 濃度、ならびに TS の組成、CHN 組成を中心にそれらの濃度や組成割合を明らかに
するとともに、処理場内でのそれらの物質収支、およびその季節変動を明らかにし、24 で総括した。
2-2 調査方法
2-2-1 鴻池処理場の下水処理システム
対象とした鴻池処理場は、合流式の流域下水道の終末処理場である。処理場の処理フ
ローを図 2-2-1 に、また、各処理プロセスの計画値と形状寸法を表 2-2-1 に示した。流
入生下水は、沈砂池-最初沈殿池-曝気槽-最終沈殿池-塩素滅菌-放流といった流
れに沿って処理され、場内返流水は沈砂池の前に戻されている。生物処理方法として、
- 23 -
①
②
沈砂池
生下水
④
最初沈殿池
曝気槽
最終沈殿池
⑤
⑥
初沈濃縮槽
終沈濃縮槽
③
⑦
⑧
⑪
⑨
遠心濃縮機
処理水
⑩
⑫
消石灰
塩化第二鉄
排ガス
混和槽
真空脱水機
⑬
⑭
⑯
焼却炉
焼却灰
⑮
図 2 - 2 - 1 鴻池処理場の下水処理システムフロー図
活性汚泥法でのステップエアレーション方式で設計されているが、実際は標準活性汚
泥法による運転を行っている、曝気槽、および最終沈殿池は A 系、B 系、および C 系に
分かれている。A 系は浅層散気旋回流方式、ならびに B 系、および C 系は深層散気旋回
流方式となっており、特に系列による負荷の差はない。また降雨などで通常の処理能
力(計画下水量の時間最大値)を上回った分については、最初沈殿池-塩素滅菌-放流
といった簡易処理が行われる。
汚泥処理系については初沈汚泥は重力濃縮槽を経て混和槽へ、終沈汚泥は一部曝気
槽へ返送され、その他は重力濃縮槽、遠心濃縮機を経て混和槽へ送られる。混和槽で
は無機凝集剤として消石灰、および塩化第二鉄がそれぞれ 50、20wt%TS で添加され、
真空脱水機で脱水される。焼却炉は竪型多段炉が 2 基と、流動床式焼却炉が 1 基あり、
脱水ケーキが焼却される。最終的に排出された焼却灰は全て海面埋め立てされる。た
だし、96 年 7 月から 97 年 1 月までは、焼却炉のメンテナンスのため脱水ケーキの一部
をトラックで搬出していた。
2-2-2 サンプリング
サンプリングは①流入生下水、②初沈流入水、③全返流水、④放流水(塩素滅菌前)、
⑤初沈汚泥、⑥終沈汚泥(余剰汚泥)、⑦初沈濃縮槽からの返流水、⑧初沈濃縮汚泥、
⑨終沈濃縮汚泥、⑩遠心濃縮機からの返流水、⑪遠心濃縮汚泥、⑫混合濃縮汚泥(薬
注前)、⑬脱水ケーキ、⑭脱水機からの返流水、⑮焼却炉からの返流水、および⑯焼却
灰の 16 サンプルについて行った。終沈汚泥については A 系、B 系、および C 系からそ
れぞれサンプリングし、それらを混合して試料とした。これらの 16 の試料について 96
年 5 月 20 日から 97 年 5 月 12 日まで月 2 回づつ計 24 回サンプリングした。なお本論文
- 24 -
表 2-2-1 各処理プロセスの計画値 (1997 年現在)
汚水沈砂池
最初沈殿池
計画下水量
形状寸法
計画下水量
沈殿時間
方式
池数
形状寸法
方式
エアレーションタンク
計画下水量
BOD-SS負荷
形状寸法
時間最大 3824m 3/s
幅5.0m×長さ27.5m×深さ1.931m×4池
晴天日 236000m3/日
晴天日 2.0時間
水平平行流2階層長方形沈殿池
13池
(A系)上層:幅13.2m×長さ19.6m×深さ2.35m×6池
(A系)下層:幅13.2m×長さ24.8m×深さ2.40m×6池
(B・C系)上層:幅13.2m×長さ19.6m×深さ2.35m×6池
(B・C系)下層:幅13.2m×長さ24.8m×深さ2.40m×6池
ステップエアレーション法
A系 浅層散気旋回流方式、B・C系 深層散気旋回流方式
3
236000m /日
0.3kg/SS-kg・日
(A系) 幅6.4m×長さ43.2m×深さ4.5m×12池
エアレーション時間
(B・C系) 幅9.6m×長さ36.95m×深さ11.7m×8池
Total 4.9時間
計画下水量
沈殿時間
236000m3/日
2.5時間
方式
A系 水平平行流3階層長方形沈殿池×6池
B・C系 水平平行流3階層長方形沈殿池×8池
最終沈殿池
形状寸法
(A系)幅13.2m×長さ37.2m×深さ3.25m×6池
(B・C系)上層:幅9.4m×長さ26.7m×深さ2.6m×8池
(B・C系)中層:幅9.4m×長さ27.7m×深さ2.6m×8池
(B・C系)下層:幅9.4m×長さ28.7m×深さ2.6m×8池
初沈汚泥重力濃縮槽
余剰汚泥重力濃縮槽
遠心濃縮機
計画汚泥量
58.97t/日×100/2%=2949m3/日
実容積
方式
2274m3
重力式沈殿濃縮
形状寸法
実滞留時間
径12.6m×3.0m×1槽、径16.4m×3.0m×3槽
18.5時間 (2274m3/2949m3/日)×24=18.5
計画汚泥量
実容積
方式
27.91t/日×100/0.7%=3987m /日
1122m3
重力式沈殿濃縮
形状寸法
実滞留時間
6.8時間 (1122m3/3987m3/日)×24=6.8
計画汚泥量
処理能力
形式
計画汚泥量
汚泥貯留タンク
(混和槽)
脱水設備
焼却炉
3
径12.6m×3.0m×3槽
22.44t/日×100/1.2%=1870m3/日
60m3/hr×3台(内1台予備)
横型遠心濃縮機
1048m3/日
3
実容積
計画貯留時間
形状寸法
792m
18時間 (792m3/1048m3/日)×24=18
幅6m×長さ12m×深さ5.5m×2池
計画汚泥量
計画固形物量
1048m3/日(脱水ケーキは含水率75%)
41.91t-DS/日
形式
ろ過速度
真空脱水機×8台(内1台予備)
ろ過面積
運転時間
47m2/台
9時間
計画ケーキ量
設備
198t-cake/日
70t-cake/日×3炉
竪型多段炉×2炉
形式
15kg/m2・時
流動床式焼却炉×1炉
- 25 -
について⑫混合濃縮汚泥とは遠心濃縮汚泥と初沈濃縮汚泥とが混合されたもので薬注
前のものである。また脱水機からの返流水とは、脱水ろ液の他にろ布の洗浄水が含ま
れ、焼却炉からの返流水とはスクラバ排水のことである。実際には下水の流入には時
間変動や、システム内の時間遅れなどがあるが、最初沈殿池以降のシステム内は定常
と考え、通常、やや SS 成分が高い時間帯であると考えられる午前 9 時~午前 9 時 30 分
の間にスポット的にサンプリングを行った。流量は場内に設置された流量計のデータ
を使用した。なおデータにはさほど影響が現れなかったが、7 月 22 日と 9 月 3 日のサン
プリングの前日には降雨があった。
2-2-3 分析項目
得られたサンプルについて、下水試験方法 7) に従い水温、TS、SS、および T-P を測定
した。さらに TS、および SS については強熱残留物を測定した。このことによって、全
固形物(TS:Total Solid)は浮遊性物質(SS:Suspended Solid)と溶解性物質(DS:Dissolved
Solid)に分けることができ、さらに、SS と DS は強熱残留物(FS:Fixed Solid)と強熱
減量(VS:Volatile Solid)で表現できる。本論文では強熱残留物(600 ± 25℃)を FTS
とし、強熱減量をVTS と表記した。浮遊性の強熱減量をVSSとすることによって、VSS
(浮遊性有機物)、VDS(溶解性有機物)、FSS(浮遊性無機物)、および FDS(溶解性無
機物)の 4 つに分画した 8)。これらの概念図を図 2-2-2 に示した。以後本論文ではこれ
らの略称を用いた。
固形性物質
SS
溶解性物質
DS
有機性物質
VTS
無機性物質
VSS
VDS
FSS
FDS
SS=VSS+FSS
TS=SS+DS=VTS+FTS
DS=VDS+FDS
VTS=VSS+VDS
FTS=FSS+FDS
FTS
図 2-2-2 VSS、VDS、FSS、FDS の TS4 分画概念図
- 26 -
元素分析(炭素、水素、窒素)に関しては CHN コーダ(MT-2:柳本製作所製)を用
い各サンプルの TS 成分について測定を行った。試料は均一化を図るため、あらかじめ
乳鉢ですりつぶし、分析に供する試料は 2 ~ 3 mg と微量であるため、各試料について
3 回測定を行い平均をとった。なお窒素に関して、上記のように各サンプルを一度湯浴
させた TS試料について測定しているため、汚泥のように固形物としての窒素が多く含
まれる試料の測定はある程度できるが、アンモニア性窒素の割合の高い試料に関して
は、もともとの試料中の窒素がすべて正確に測定できていない可能性があった。
2-3 調査結果と考察
2-3-1 TS、SS、T-P
1) TS、SS、T-P の季節変動
各試料の TS、SS、および T-P に関して分
らつきが大きく(TS =53 5 ± 10 3 mg/ L、
SS=100 ± 46 mg/L、T-P=3.5 ± 1.1 mg/L、平
600
6
400
4
200
2
0
測定月
いが、7~9月にかけてTSで500 mg/L程度、
図 2-3-1 生下水の TS、SS、T-P
リンで2 mg/L前後と濃度がやや低かった。
処理水は生下水よりも、変動がやや小さ
1000
く比較的安定的に推移していた(TS=386
に小さい値であり、TS の動向には DS(溶
解性物質)の寄与が大きかった。季節によ
800
TS、SS(mg/L)
mg/L、平均値±標準偏差)。特に SS は非常
0
5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5
均値±標準偏差)、はっきりした傾向はな
±80 mg/L、SS=12 ±7 mg/L、T-P=1.6 ±1.0
8
TS
SS
T-P
10
8
600
6
400
4
200
2
る変動は小さく、安定した処理が行われて
0
いた。
0
5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5
全返流水は全ての指標で非常に濃度が高
く(TS=10200±6720 mg/L、SS=5820±3020
mg/L、T-P=113± 60.1 mg/L、平均値±標準
- 27 -
測定月
図 2-3-2 処理水の TS、SS、T-P
T-P(mgP/L)
下水は、TS、SS、および T-P ともに値のば
TS、SS(mg/L)
グラフを図 2-3-1 ~図 2-3-5 に示した。生
800
10
T-P(mgP/L)
生下水、処理水、全返流水、初沈汚泥、終
沈汚泥の TS、SS、および T-P の季節変動の
TS
SS
T-P
1000
析を行った結果を付録 1 に示した。また、
流していることが考えられた。また、変動
40000
幅は大きいが、各指標ともに変動の傾向が
類似しており、8 ~ 10 月にかけては平均値
の1/10まで濃度が減少していた。後述の物
質収支の計算結果によると全返流水が有す
TS
SS
T-P
500
400
30000
300
20000
200
10000
100
T-P(mgP/L)
50000
TS、SS(mg/L )
偏差)、濃縮槽等で汚泥が濃縮されずに越
る負荷はこの処理場内を循環していた。8
0
~ 10 月にかけては降雨が多く、簡易処理
0
5
6
7
8
2
3
4
5
測定月
の際にこれらの負荷の一部が系外へ流出し
たためにこのような結果になっているもの
図 2-3-3 全返流水の TS、SS、T-P
TS
SS
T-P
50000
大阪府寝屋川南部流域下水道川俣処理場に
40000
TS、SS(mg/L )
おける調査で指摘している 9)。ここで、高い
500
400
30000
300
20000
200
SS、縦軸に同一サンプリング日の処理水
10000
100
の SS をとりプロットしたものである。こ
0
を考察した。図 2-3-6 は横軸に全返流水の
0
5
の図より SS に関してはわずかながら正の
6
7
8
4
5
TS
SS
T-P
50000
殿池や曝気槽で除去しきれず流出してし
40000
TS、SS(mg/L )
まったものがあることが推察された。なお
処理水には現れていなかった。高負荷の返
3
図 2-3-4 初沈汚泥の TS、SS、T-P
どがあるものの SS の一部に関しては、沈
水の水質には相関が無く、返流水の影響が
2
測定月
相関が見られた。このことから時間遅れな
TS、T-P に関しては全返流水の水質と処理
9 10 11 12 1
流水にもかかわらずその影響がさほど処理
水の水質に現れていないのは、水処理プロ
セスの能力に余裕があることや維持管理上
の努力によるものであろうと考えられる 。
500
400
30000
300
20000
200
10000
100
0
T-P(mgP/L)
理水の水質に影響を与えているのかどうか
T-P(mgP/L)
と考えられ、この現象については、津村も
負荷を有する汚泥処理系からの返流水が処
9 10 11 12 1
0
5
6
7
8
9 10 11 12 1
2
3
4
5
測定月
10)
初沈汚泥は非常に大きな幅の値をとって
図 2-3-5 終沈汚泥の TS、SS、T-P
いた(TS=19200 ± 6420 mg/L、SS=18200 ± 6600 mg/L、T-P=167 ± 51.5 mg/L、平均値
±標準偏差)。これに対して終沈汚泥はグラフからもわかるように比較的安定していた
- 28 -
(TS=6190 ± 945 mg/L、SS=5950 ± 2300 mg/L、
25
T-P=148 ± 58.8mg/L、平均値±標準偏差)。ま
20
100 mg/L前後にまで濃度が減少していた。
初沈
汚泥および終沈汚泥はタイマー制御により引
き抜き時刻や時間が設定された上、間欠的に
引き抜かれているが、初沈汚泥と終沈汚泥と
処理水SS(mg/L)
た 7 ~ 10 月においては TS で 4500 mg/L、T-P で
15
10
5
のばらつきの差が大きいのは、初沈汚泥の場
合、最初沈殿池以前に緩衝の役割を果たすプ
0
0
5000
ロセスがなく、生下水や汚泥処理系からの返
流水の水質変動の影響を直接受けてしまうた
10000
15000
全返流水SS(mg/L)
20000
図 2- 3- 6 全返流水と処理水との相関(S S)
めばらつきが大きく、終沈汚泥の場合は、最終
沈殿池について、最初沈殿池や曝気槽などのプロセスを経ているため、生下水や汚泥
処理返流水の水質変動の影響を直接的に受けず、安定に推移したことに起因すると考
えられる。
また、初沈汚泥、および終沈汚泥は、ともに TS と SS との間に非常に強い相関があっ
たのに対し、T-P とそれらの間の相関は、いずれも相関係数が 0.1 ~ 0.4 と低いもので
あった。
2) 各試料中の TS、SS、T-P 濃度
表 2-3-1 に各サンプルの TS、SS、および T-P 濃度の値(一年間の平均値)を示した。
なお表中のデータの単位は基本的にmg/Lで
示したが、脱水ケーキ、焼却灰などの固形
物試料に関しては mg/kg で示している。生
下水と処理水とを比較すると、TS、リンで
は 40 % 程度しか除去されなかったのに対
し、SS では 90 % 程度除去されていた。元
来、活性汚泥法は BOD や SS に対しては高
い除去効率を示すが、リンや窒素、ならび
に難分解性有機物については固形物の沈殿
や付着除去による効果などの物理的除去効
果しか考えられず、この結果は現状の活性
汚泥法の問題点を反映している。
- 29 -
表 2-3-1 水質分析結果
(mg/L)、ただし下線部は(mg/kg)
生下水
初沈流入水
全返流水
処理水
初沈汚泥
終沈汚泥
初沈濃縮槽返流水
初沈濃縮汚泥
終沈濃縮汚泥
遠心濃縮機返流水
遠心濃縮汚泥
混合濃縮汚泥
脱水ケーキ
脱水機返流水
焼却炉返流水
焼却灰
TS
535
1880
10200
386
19200
6190
13900
25000
12200
7590
54700
30000
198000
9350
802
809000
SS
100
771
5820
12
18200
5950
12000
26100
12000
6860
52800
27500
139
176
-
T-P
3.5
11
113
1.6
167
148
125
173
165
151
697
422
959
2.9
5.0
28700
初沈濃縮槽の前後に注目すると、初沈汚泥のTS が約 20000 mg/Lであるのに対し、初
沈濃縮汚泥が約 24000 mg/L、初沈濃縮槽の返流水で約 14000 mg/Lと明確な濃縮効果が
現れていなかった。SS とリンに関しても同様の傾向を示していた。またリンに関して
は計 24 回のサンプリングのうちの 6 回で初沈濃縮汚泥よりも返流水の方が濃度が高く
なる現象が見られた(TS に関しては 2 回)。原因は重力濃縮槽に滞留している間(滞留
時間 18.5h)嫌気性消化が進み、滞留している汚泥からリンが溶出したことによるもの
と考えられた 11)。また濃縮効果については、終沈濃縮槽では約 2 倍程度であり、遠心濃
縮機では約 4 ~ 5 倍の濃縮効果を示していた。
2-3-2 TS の組成
1) TS 組成の季節変動
図 2-3-7 ~図 2-3-11 に生下水、処理水、全返流水、初沈汚泥、および終沈汚泥の TS
組成の季節変動を示した。春期とは 3 ~ 5 月、夏期とは 6 ~ 8 月、秋期とは 9 ~ 11 月、
VSS
VD S
FS S
FD S
冬期
VSS
VD S
FS S
FD S
冬期
秋期
秋期
夏期
夏期
春期
春期
0%
20%
40%
60%
80%
0%
100%
20%
図 2- 3- 7 生下水の TS 組成の季節変動
秋期
夏期
夏期
春期
春期
40%
60%
100%
VSS
VD S
FS S
FD S
冬期
秋期
20%
80%
図 2- 3- 8 処理水の TS 組成の季節変動
VSS
VD S
FS S
FD S
0%
60%
TS に対する割合
T S に対する割合
冬期
40%
80%
0%
100%
20%
40%
60%
80%
100%
TS に対する割合
TS に対する割合
図 2-3 -9 全返流水の TS 組成の季節変動
図 2-3-10 初沈汚泥の TS 組成の季節変動
- 30 -
そして冬期は 12 ~ 2 月を指す。また図
VSS
VD S
FS S
FD S
冬期
ではデータ平均値を TS に対する割合と
して示した。
秋期
図より生下水については、さほど季
夏期
節による変動はないものの、処理水は
春期に10 %程度だったVTS(VSS+VDS)
春期
が冬期には 30 % 近くにまで上昇してい
0%
た。また、初沈汚泥、終沈汚泥、および
20%
40%
60%
80%
100%
TS に対する割合
全返流水では VTS、および SS の割合が
図 2-3-11 終沈汚泥の TS 組成の季節変動
高く、また夏期は VTS の割合が減少し
ていた。鴻池処理場は合流式ということもあり、夏期は降雨によって土砂などの無機
物が混入するため、このような結果になったと考えられた。一般的に汚泥中の有機分
と濃縮性、脱水性には負の相関があるとされている 12)。2-3-1 でも述べたように全返流
水の水質は冬期、春期には TS、および SS で約 10000 mg/L、T-P で約 150 mg/L 前後まで
達したのに対し、夏期から秋期にかけて TS、および SS で 1000 ~ 3000 mg/L、T-P で 10
mgP/Lとかなり減少していた。これは処理場内で循環している負荷が、降雨時の簡易処
理によって系外に排出され
生下水
るため負荷が減少したこと
初沈流入水
が第一の要因と考えられる
全返流水
が、汚泥中有機分の減少に
処理水
よる処理性の向上も寄与し
初沈汚泥
ていると考えられた。
終沈汚泥
VSS
VD S
FS S
FD S
初沈濃縮槽返流水
初沈濃縮汚泥
2) 各試料の TS 組成
終沈濃縮汚泥
図 2-3-12 に各サンプルを
遠心濃縮機返流水
4 分画し TS に対する重量 %
遠心濃縮汚泥
を計算した結果(一年間の
混合濃縮汚泥
脱水ケーキ
平均)を示した。
脱水機返流水
生下水、初沈流入水、およ
焼却炉返流水
び全返流水の 3 つについて
焼却灰
比較すると、初沈流入水は
0%
40%
60%
80%
TS に対する割合
生下水よりも全返流水の組
成に近い値を示した。これ
20%
図 2- 3- 12 各試料の TS 組成の年間平均
- 31 -
100%
は後述する物質収支計算の結果、沈砂池に流入する全返流水の固形物量が生下水の固
形物量を上回ったためであるが、実際に水処理系に流入してくるのは初沈流入水であ
ることを考えると汚泥処理系からの返流水の水質を把握しておくことは重要である。
初
沈汚泥と終沈汚泥とを比較すると前者のVTS が約70% であるのに対して後者が約80%
と割合が高くなっていた。また本来重力濃縮槽を経ると汚泥は SS の割合が高くなり、
返流水は逆に低くなるはずであるが、初沈汚泥、および終沈汚泥とも汚泥と濃縮汚泥、
および返流水の間で組成はさほど変わらず、濃縮効果が現れていなかった。これは 23-1 で前述した各サンプルの TS、および SS 濃度における結果を傍証している。
鴻池処理場では調質時に無機系の消石灰と塩化第二鉄を用いて脱水しているため脱
水汚泥の VTS は 55 % と減少していた。脱水機からの返流水中の FTS が非常に高くなっ
ているのは脱水ろ液中にカルシウム塩等が多く含まれていたためと考えられ、外観も、
カルシウム塩と思われる白色の粒子や固形物が多く認められた。
2-3-3 CHN 組成
50
炭素
窒素
水素
1) CHN 組成の季節変動
録 2 に示した。また、生下水、処理水、初
沈汚泥、終沈汚泥、および脱水ケーキの
CHN 組成の季節変動を図 2-3-13 ~図 2-3-
40
各成分の割合(%)
各試料の CHN についての測定結果を付
17 に示した。CHN 組成は、サンプルの TS
30
20
10
0
成分に対して測定するものであるため、こ
5
6 7
れらの図は TS に対する各元素の割合を重
8 9 10 11 12 1 2
3 4
5
測定月
量%で示したものである。
図 2-3-13 生下水の CHN 組成の季節変動
各元素と VTS との相関をとったところ、
50
炭素
窒素
水素
その相関係数は、生下水、処理水では各元
沈汚泥、および終沈汚泥では各元素とも相
関係数は 0.65 ~ 0.85 の間に入っており、各
元素が個々に独立して変動している傾向は
見られなかった。季節変動という観点から
は生下水と処理水についてははっきりした
40
各成分の割合(%)
素ともに0~0.4と低かった。それに対し初
30
20
10
0
5
6 7
8 9 10 11 12 1 2
3 4
5
傾向はみられなかった。初沈汚泥、終沈汚
測定月
泥、脱水ケーキについては炭素、水素、お
図 2-3-14 処理水の CHN 組成の季節変動
- 32 -
50
40
40
30
各成分の割合(%)
各成分の割合(%)
50
炭素
窒素
水素
20
10
0
30
炭素
窒素
水素
20
10
0
5
6 7
8 9 10 11 12 1 2
3 4
5
5
6 7
8 9 10 11 12 1 2
3 4
5
測定月
測定月
図 2-3- 15 初沈汚泥の CH N 組成の季節変動
図 2-3 -16 終沈汚泥の CH N 組成の季節変動
よび窒素の割合が 8 ~ 10 月に減少し、他の
50
時期はほぼ一定であった。炭素についてみ
月に 28 %、ならびに脱水ケーキで 22 % 程
度だったのが、それ以外の月でそれぞれ45
%、ならびに 30 % 程度の値をとっていた。
40
各成分の割合(%)
ると初沈汚泥、および終沈汚泥では 8 ~ 10
炭素
窒素
水素
30
20
10
ここで、脱水ケーキのCHN組成分析結果
0
を基にして、図 2-3-18に脱水ケーキの高位
5
8 9 10 11 12 1 2
3 4
5
測定月
発熱量の推定値の季節変動を示した。元素
組成から高位発熱量を求める式は、さまざ
6 7
図 2- 3-1 7 脱水ケーキの CH N 組成の季節変動
まな式が提案されているが、下水汚泥脱水
2500
一致するとされている 13)。95 年 12 月に鴻
池処理場の脱水ケーキについて調査を行っ
た結果でも、CHN 組成分析結果から様々
な提案式を用いて発熱量を推定したとこ
ろ、実際の発熱量測定結果とSümegiの式に
よる推定値が最もよく合っていたという報
告がある 。よって本研究においても発熱
14)
量を求めるのに以下の Sümegi の式を採用
した。
- 33 -
発熱量(kcal/kg-DS)
ケーキの場合は Sümegi の式が比較的よく
2000
1500
1000
500
0
5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5
測定月
図 2- 3- 18 脱水ケーキ( 発熱量) の季節変動
3 ⎞
O⎞
⎛
⎛
H = 8100 ⋅ ⎜ C- O ⎟ + 34500 ⋅ ⎜ H- ⎟ + 2500 ⋅ S (2-3-1)
8 ⎠
16 ⎠
⎝
⎝
H:高位発熱量(kcal/kg-TS)
C、H、O、S:乾燥試料 1kg 中の
炭素、水素、酸素、硫黄の重量(kg/kg-TS)
なお、汚泥中有機分は炭素、窒素、および水素の他に硫黄等が挙げられるが、一般に
微量であるため 13)、汚泥中有機分を VTS とし、そのうち炭素、窒素、および水素以外
の、その他成分はすべて酸素と考えて計算を行った。図より 6 月、および 10 ~ 3 月の
期間では、1800 ~ 2000 kcal/kg-DS で安定しているものの、8 月には 1200 kcal/kg-DS ま
で発熱量が低下していた。鴻池処理場においては汚泥焼却の際に、A重油を使用してい
る。調査を実施した当該年度は焼却炉の故障によって脱水ケーキの一部を外部に搬出
していたために、重油消費量は調査できなかったが、この時期は例年であれば焼却時
のケーキあたりの重油消費量が増加していることが予想された。
2) 各試料の CHN 組成
TS に対する炭素、水素、およ
生下水
び窒素の重量 %(1年間の平均)
初沈流入水
を図 2-3-19 に示した。図では、
全返流水
ややわかりにくいが、生下水と
処理水
初沈汚泥
処理水を比較すると生下水の炭
素、および水素の割合はそれぞ
初沈濃縮汚泥
処理水はそれぞれ 6 %、および
終沈濃縮汚泥
F T S (灰分)
その他
遠心濃縮汚泥
混合濃縮汚泥
程度と 1/3 程度までしか減少し
脱水ケーキ
ておらず、沈殿処理、および生
脱水機返流水
とが示唆された。
水素
遠心濃縮機返流水
窒素に着目すると 3 % から 1 %
物処理における除去率が低いこ
窒素
初沈濃縮槽返流水
れ25 %、および4 %なのに対し、
1 %と1/4に減少していた。一方
炭素
終沈汚泥
焼却炉返流水
焼却灰
0%
最初沈殿池から混和槽にいた
20%
40%
60%
80%
TS に対する割合
る初沈汚泥の濃縮ラインと、最
図 2-3- 19 各試料の CH N 組成の年間平均
- 34 -
100%
終沈殿池から混和槽にいたる終沈汚泥の濃縮ラインを比較してみると、炭素、および水
素はそれぞれ 40 % 弱、および 5 % 程度とあまり変わらなかったが、窒素に関しては初
沈汚泥で約 5 %、終沈汚泥で約 8 % と後者の方が高くなっていた。つまり炭素や水素に
比較すると窒素は最初沈殿池における除去率が低いということが推測される。
消化性やコンポストの指標となる C/N 比は初沈汚泥で 10 前後、終沈汚泥で 5 前後が
一般的な値であるとされる 15)。今回のデータでは終沈汚泥ではちょうど5前後になった
のに対して初沈汚泥では 7 ~ 8 とやや低い値となった。C/N 比は 12 ~ 16 程度が嫌気性
菌にとって栄養があり、消化性が優れているといわれている。生下水の C/N 比が 10 以
上あるにもかかわらず初沈汚泥や初沈濃縮汚泥で低くなっていたのは、重力濃縮槽で
嫌気性消化が進み易分解性の有機炭素が消費されたためと考えられた。また 95年 12月
の鴻池処理場の初沈汚泥、初沈濃縮汚泥、および初沈濃縮槽からの返流水の調査結果で
は、これらのサンプルは他のサンプルよりも pH が低く(6.0 ~ 6.3)14)、これは嫌気性
消化の一つの段階である有機酸発酵が進み有機酸が生成したためと考えられ16)、上記の
結果を裏付けるものであった。
2-3-4 物質収支
1) 処理場内の物質収支
本調査により得られたデータを用いて、当該処理場における処理プロセス内の物質
収支を計算した。なお、サンプリングを行っていない終沈濃縮槽からの返流水に関して
は流入と流出の関係から算出した。図 2-3-20 に一年間で平均した TS、SS、炭素、窒素、
およびリンの物質収支計算結果を一日あたりのトン数で示した。また水素に関しては
TS や炭素と異なる挙動を示していなかったため、図には示していない。
各プロセスのうち流入負荷量と流出負荷量を、サンプリングおよび分析によって完
全に把握しているのは沈砂池、初沈濃縮槽、遠心濃縮機、混和槽(薬注前)、および脱
水機である。測定の結果が妥
表 2-3 -2 総流出負荷 / 総流入負荷(%)
当であったかどうかを確認す
るために、これらのプロセス
TS
SS
T-P
炭素
窒素
水素
と処理場全体について流出負
沈砂池
106.2
116.5
108.2
106.2
85.2
84.1
荷と流入負荷のデータを平均
初沈濃縮槽
82.4
80.1
80.7
82.4
85.2
116.6
した上で、それらの比を計算
遠心濃縮機
141.0
183.2
164.4
141.2
178.0
190.5
(混和槽)
86.0
73.2
120.5
102.5
126.0
84.4
し表 2-3-2 に示した。
表 2-3-2 より、遠心濃縮機
に関してはすべての指標で、
脱水機
102.5 -
183.2
121.5
102.5
80.3
全体
81.9 -
166.8
41.9
62.2
48.2
- 35 -
- 36 -
③
流量 26500
T S 165
S S 146
C 59.6
N 8.80
P 2.64
生下水
流量 220000 C 27.5
T S 110
N 3.09
S S 23
P 0.77
①
⑦
⑭
C 1.10
N 0.15
P 0.01
真空脱水機
混和槽
⑧
⑬
⑪
流量 124 C 6.61
T S 24.9 N 1.08
SS
P 0.64
流量 245 C 6.27
T S 16.3 N 1.26
S S 12.2 P 0.19
流量 667 C 3.93
T S 16.5 N 0.50
S S 16.5 P 0.12
⑮
処理水
流量 3070 C 3.00
TS
8.7 N 0.65
S S 12.9 P 0.43
計算値
流量 220000 C 5.05
T S 75.3
N 0.68
S S 2.2
P 0.48
焼却灰
流量 18 C 0.19
T S 16.2 N 0.11
SS
P 0.50
流量 998 C 2.95
T S 8.0 N 0.62
S S 6.7 P 0.14
⑯
⑩
流量 3168 C 0.20
T S 2.6 N 0.05
S S 0.5 P 0.02
焼却炉
排ガス
遠心濃縮機
⑨
流量 1240 C 6.74
T S 17.3 N 1.32
S S 12.7 P 0.20
④
流量 m3/day C t/day
T S t/day
N t/day
S S t/day
P t/day
流量 4310 C 9.74
T S 26.0 N 1.97
S S 25.6 P 0.63
終沈濃縮槽
⑥
最終沈殿池
図 2 - 3 - 2 0 処理場内の物質収支(年間平均)
流量 3653
T S 3.8
S S 0.5
消石灰
10.4
塩化第二鉄 4.4
⑫
流量 777 C 5.83
T S 22.9 N 1.13
S S 20.4 P 0.36
流量 5820 C 36.4
T S 98.8 N 4.62
S S 73.2 P 0.71
曝気槽
流量 6470 C 55.9
T S 151 N 8.10
S S 124 P 1.05
初沈濃縮槽
⑤
最初沈殿池
流量 238000 C 91.8
T S 293
N 11.8
S S 171
P 2.74
沈砂池
②
また指標のうち各プロセスにおける T-P に関しては流出 / 流入比は 100 % を大きく超え
る結果となった。特に、遠心濃縮機では TS、SS、および T-P の指標で 170 % 程度となっ
た。このことから遠心濃縮汚泥、または遠心濃縮返流水のサンプリング方法、サンプリ
ング位置に濃度を過大評価してしまう問題があると考えられた。リンの処理場全体の収
支、および脱水機での収支が高めになったのは、脱水汚泥の T-P測定時の吸光度に正の
干渉が生じたことが原因であると推測された。渡辺ら 17) は、モリブデンブルーを用い
た鉄鋼試料中のヒ素の定量を検討しており、この際に、正の干渉を与える元素として、
リン、ケイ素、ゲルマニウム、タングステンを挙げている。本研究のリンの定量でも
モリブデンブルーを用いているが、脱水ケーキ程度に固形分濃度が濃くなると、リン
に対してケイ素などの干渉成分の存在割合が多くなり、正の干渉を受けたものと推測
される。今後、無機成分の多いサンプルの場合には、共存元素の干渉が無視できなく
なることが想定され、ICP発光分析などでリンを定量していく必要がある。炭素、窒素、
および水素の順に有機物を構成する元素についてはシステム全体の収支で低い値が出
ているが、曝気槽等での損失や汚泥中有機物の嫌気性分解に伴う無機化によるものと
考えられた。
しかしながら、上記以外の部分においては 80 ~ 120 % の間に入っておりサンプリン
グをスポット的に行って、時間変動や、システム内の時間遅れなどが想定されたにも
かかわらず、収支はよくあっていたと考えられた。
この処理場での流入は、生下水と脱水時の薬注であり、これらが処理されて最終的
に、処理水、焼却灰、および排ガスとなって流出する。流出、および流入の固形物を
考えると、大気に放出される排ガス中の固形物はわずかと考えて実測しなかったため、
流出分を、焼却灰と排ガスにかえて、焼却前の脱水ケーキとした場合、流入する固形
物は生下水の 110.6 t/day と薬注分の 14.8 t/day の計 125.4 t/day であり、流出する固形物
は処理水が 75.3 t/day、脱水ケーキが 24.9 t/day の計 100.2 t/dayとやや減少しており、シ
ステム内での損失分があることがわかった。
元素レベルの収支では、生下水と処理水を比較すると、炭素、窒素、およびリンで
それぞれ 85 %、80 %、および 40 % の除去率となっており、リンの除去率が極端に低
いことがわかった。また炭素、窒素に関しては流入和(炭素 27.5 t/day、窒素 3.09 t/day)
よりも流出和(炭素 11.7 t/day、窒素 1.8 t/day)がかなり低くなっており、上記の TS の
損失にはこれらの元素の寄与が大きかった。一方リンについては前述したように、収
支があまりあっていないためにはっきりしたことはいえないが、処理プロセスの中で
損失するとは考えにくく、全返流水の有する高いリンの負荷(2.64 t/day)は、場内を
循環していることが予想された。焼却炉では炭素、窒素については 90 % 前後損失して
- 37 -
いるのに対し、リンではほとんど損失はなかった。
図 2-3-20 によれば、全返流水による負荷が、生下水による負荷に対して TS で 1.4 倍、
SS にすると 6 倍以上となり非常に高くなっていた。初沈濃縮槽では最初沈殿池より
151.0 t/day の固形物が初沈濃縮槽に流入し、16.5 t/day が汚泥として、98.8 t/day が返流
水として流出しており、流入固形物の約15 %のみが後段の汚泥処理プロセスに移行し、
残りの 85 % が返流水として沈砂池前に戻されていた。この初沈濃縮槽は機械濃縮と異
なって重力濃縮であり、槽の形状、滞留時間によって能力の大半が決まる。一般に初
沈濃縮槽は滞留時間 12 時間程度、固形物負荷 60 ~ 90 kg/m2・日を経験値として設計さ
れるが、今回の調査から得られたデータから算出すると、この濃縮槽の滞留時間は18.5
時間、固形物の負荷は通常の設計値の3 倍と非常に大きくなっていた。初沈濃縮槽から
の返流水は全返流水の負荷の60 %近い量を有しているため最初沈殿池―初沈濃縮槽-
沈砂池といったプロセスの中で長時間循環してしまっている可能性が十分考えられた。
このように循環した形になってしまうと、管路の中および濃縮槽は嫌気的な状況が予
想されるために、慢性的に汚泥が腐敗し、それに伴う濃縮性の悪化、スカムの大量発
生などを招く。さらに曝気槽での好気状態で微生物に取り込まれたリンが嫌気状態に
長時間おかれると、リンを再放出することが明らかになっている 11)。また津村 9) は処理
プロセスは若干異なってくるが、ある下水処理場の物質収支を調査し、このように汚
泥が循環した処理場では、曝気槽に高いレベルで SS が流入し、活性汚泥に悪影響を及
ぼし、かつ運転管理で正常な状態に戻すことは不可能と述べている。大量の固形物の
循環を解消するためには、降雨による浄化といった外的要因に依存するのではなく、返
流水単独処理についても検討する必要があると考えられる。
遠心濃縮機は、前述したように TS、および SS 濃度にして終沈濃縮汚泥を数倍に濃縮
しているにもかかわらず、30 % 以上の固形物を返流水としてプロセス外に排出してい
た。またリンについて見てみると、40 % 以上が返流水中に含まれており、ここでもリ
ンの方が固形物よりも返流される割合が高いことがわかった。脱水機や焼却炉からの
返流水は全返流水の数 % 程度とごくわずかであった。
2) 季節による物質収支の違い
図 2-3-21 に最も特徴がでていた 8 ~ 10 月の平均を示した。この時期には全返流水の
負荷はこの期間中の平均の TS で 99 t/day、SS で 47 t/day、リンで 0.78 t/day であり、年
間平均と比較して大幅に負荷が減少していた。特に SS の負荷が減少しているというこ
とは、濃縮等の汚泥処理が比較的良好に行われているといえよう。
また、調査を始めるにあたって、水温が高い時期は嫌気性発酵が進みやすくなり、リ
- 38 -
- 39 -
③
流量 16400 C 33.9
T S 99
N 4.89
S S 47
P 0.78
生下水
流量 232000 C 33.9
T S 129
N 3.41
S S 33
P 0.57
①
⑦
⑭
流量 3609
T S 4.7
S S 0.5
消石灰
10.4
塩化第二鉄 4.4
⑫
混和槽
⑧
⑬
流量 126 C 6.72
T S 26.7 N 1.17
SS
P 0.60
流量 3550 C 6.73
T S 18.9 N 1.48
S S 16.5 P 0.38
⑮
④
処理水
流量 2510 C 2.40
TS
3.9 N 0.58
SS
2.2 P 0.20
計算値
流量 232000 C 5.96
T S 93.8
N 0.84
S S 1.0
P 0.38
焼却灰
流量 14 C 0.27
T S 11.5 N 0.01
SS
P 0.53
流量 817 C 1.15
T S 3.4 N 0.24
S S 1.6 P 0.04
⑯
⑩
流量 2880 C 0.16
T S 2.4 N 0.05
S S 0.6 P 0.02
焼却炉
排ガス
遠心濃縮機
⑨
流量 1034 C 4.33
T S 15.0 N 0.90
S S 14.3 P 0.13
終沈濃縮槽
⑥
最終沈殿池
図 2 - 3 - 2 1 処理場内の物質収支(8 ∼ 1 0 月の平均)
C 1.26
N 0.17
P 0.02
⑪
流量 216 C 4.26
T S 11.1 N 0.86
S S 11.0 P 0.17
流量 610 C 4.50
T S 16.0 N 0.56
S S 15.4 P 0.10
真空脱水機
流量 735 C 7.09
T S 20.6 N 1.38
S S 17.6 P 0.30
流量 5210 C 15.7
T S 47.3 N 1.89
S S 35.1 P 0.19
曝気槽
流量 5830 C 42.7
T S 129 N 6.29
S S 120 P 0.85
初沈濃縮槽
⑤
最初沈殿池
流量 248000 C 52.2
T S 190
N 6.69
S S 109
P 2.25
沈砂池
②
流量 m3/day C t/day
T S t/day
N t/day
S S t/day
P t/day
ンの返流の割合が高くなることが予想されたが、VTS の減少によって汚泥処理性が向
上する影響の方が大きかったためか、初沈濃縮槽、および遠心濃縮機ともにそのような
減少は見られず、返流の割合は低くなっていた。この時期は生下水の流量、流入する
固形物量ともに増えており、汚泥中の VTS の割合が減少しているのは、土砂などに由
来する無機物の量が増加しているためであると考えられる。土砂などが混在した場合、
汚泥フロックも、重く、沈降性が高まるため、返流水の負荷が減少した一因であると推
測された。また、他の時期はほとんど差がなく、この時期(8 ~ 10 月)だけ上述のよ
うに返流水の負荷が減少していた。
2-4 まとめ
本章では汚泥性状の季節変動および下水処理場内の物質収支を調査し、以下のような
知見が得られた。
1) 初沈汚泥(TS=19200 ± 6420 mg/L)は終沈汚泥(TS=6190 ± 945 mg/L)に比べて緩
衝となるプロセスがなく、生下水や汚泥処理系からの返流水の影響を受けて、変動が激
しかった。また、汚泥中の有機分は 8 ~ 10 月にかけて初沈汚泥、および終沈汚泥とも
に、それ以外の月に比べて 5 ~ 6 % 減少していた。
2) 全返流水は全ての指標で非常に濃度が高く(TS=10200 ± 6720 mg/L、SS=5820 ±
3020 mg/L、T-P=113 ± 60.1 mg/L、平均値±標準偏差)、濃縮槽等で汚泥が濃縮されずに
越流していることが考えられた。生下水の水質は、全返流水と混合されることによって
大きく変動しており、水処理プロセスへの悪影響を及ぼしていることが示唆された。
3) 物質収支を計算した結果、汚泥処理系からの返流水の負荷は非常に高く、例えば
TS では生下水の 1.4 倍(TS=165 t/day)に達しており、その固形物が処理場内で循環し
た形になっていた。さらに、リンについては各汚泥処理プロセスにおいて他の元素よ
りも返流する割合が高いことがわかった。炭素、水素、および窒素の有機物を構成する
主要元素はシステム内での損失が 20 ~ 50 % にものぼった。
4) 全返流水の各指標の濃度は 8 ~ 10 月にかけては平均値の 1/10 まで減少していた。8
~ 10 月にかけては降雨が多く、降雨時の簡易処理によって一部が系外に排出されるた
め負荷が減少したことが第一の要因と考えられるが、汚泥中有機分の減少による汚泥
処理性の向上も寄与していると考えられた。
- 40 -
5) 鴻池処理場の場合、
汚泥処理系からの返流水は水処理系に大きな影響を与えている
ため、前凝集プロセスを評価する際には、水処理系だけで要求水質の高度化に対応す
るのでは不十分であり、汚泥処理の側面からもシステムを評価しなければならない。
【第 2 章 参考文献】
1)
岩部秀樹、堅田智洋、小松敏弘、武田信生:凝集沈殿法と生物膜法を組み合わせ
た下水の高度処理システムの特性、PPM-1996/4、pp.59-66(1996)
2)
岩崎俊哉:化学凝集沈殿法を併用した下水処理の改善に関するパイロット実験、
京都大学修士論文、pp.34-36(1995)
3)
大阪府下水道技術研究会高度処理分科会:高度処理機構解析研究調査、pp.2-21 (1995)
4)
五十嵐保:下水処理場の物質収支モデルの開発と返流水対策の検討、京都大学卒
業論文(1988)
5)
小川昭彦:下水汚泥の処理と燃料的価値の変化に関する研究、京都大学卒業論文
(1985)
6)
西高志:汚泥性状の変動特性に関する一考察、京都大学卒業論文、pp.47-48(1982)
7)
社団法人日本下水道協会:下水試験方法 (1997)
8)
環境技術研究会:下水道必携、pp.1-4 (1984)
9)
津村和志:下水処理場における計算機制御システムの構築に関する研究、京都大
学博士論文、pp.163-168 (1994)
10)
栗林宗人:返流水対策を考慮した下水処理システム設計に関する研究、京都大学
博士論文、pp.44-104 (1985)
11)
村上孝雄:生物学的リン除去法における汚泥処理返流水リン負荷の影響とその削
減法に関する一考察、下水道協会誌、Vol.26、No.296、pp.19-30 (1989)
12)
平岡正勝:汚泥処理・再資源化とシステム、ティー・アイ・シー、pp.42-52(1994)
13)
平岡正勝、笠倉忠雄:下水汚泥脱水ケーキの燃料的価値、月刊下水道、Vol.4、No.12、
pp.20-40 (1981)
14)
松本暁洋:下水処理場における固形物および主要元素の収支に関する研究、京都
大学卒業論文、p.20 (1996)
15)
平岡正勝、吉野善禰:汚泥処理工学、講談社、p.193 (1983)
16) C.N.Sawer、P.L.McCarty 原著、松井三郎、野口基一共訳:環境工学のための化学、
森北出版、pp.229-247 (1982)
17) 渡辺邦洋、大澤剛士、岩田純一、板垣昌幸:分析化学、Vol. 55、pp.251-257 (2006)
- 41 -
第 3 章 前凝集プロセスが下水汚泥処理に与える影響
3-1 はじめに
下水汚泥処理においては、現在も様々な新汚泥処理システムが研究、開発されてき
ている。前凝集プロセスを組み込んだ下水処理システムにおいては、凝集剤成分を含
む前凝集沈殿汚泥が発生するが、この前凝集沈殿汚泥は、既存の汚泥処理システムで
処理可能なのか、新しい汚泥処理システムを考えなければならないのか、それとも各
単位汚泥処理操作の設計仕様、操作条件を変更する必要があるのかを検討する必要が
ある。
そこで、本章では鴻池処理場に設置されたパイロットプラントを用い、PAC、硫酸
バンド、あるいは塩化第二鉄 (FeCl3) を凝集剤として用いて前凝集沈殿汚泥を作成し、
その組成変化を把握するとともに、各汚泥処理単位操作に対応した処理特性実験を
実施して、前凝集プロセスが各汚泥処理単位操作に与える影響を明らかにすること
を目的とした。
具体的には、まず、3-2 で実験方法について述べ、パイロットプラントの諸元や、そ
の運転方法について説明するとともに、予備試験としてジャーテストを行って、実験
条件となる凝集剤添加量を決定した。3-3 では、パイロットプラント実験により得られ
た、処理水や凝集沈殿汚泥について、処理水質から最適凝集剤添加量を把握するとと
もに、水質・汚泥の組成分析によって TS 組成、リン、重金属、CHN 組成等の組成変化
の把握を行った。また、前凝集プロセスにおける固形物、リン、および主要元素の物
質収支を明らかにし、各条件での汚泥発生量を明らかにした。
3-4 以降では、主に実際の汚泥処理プロセスの流れに沿って、前凝集プロセスが各単
位汚泥処理操作に及ぼす影響を実験的に検討し、標準活性汚泥法を中心とした従来シ
ステムから得られる汚泥との比較を行った。まず3-4では、得られた各種前凝集沈殿汚
泥を対象に、濃縮性として沈降性および固液分離性の把握を行った。3-5 では、リン溶
出試験を行って、嫌気性条件下での前凝集沈殿汚泥からのリン溶出特性を明らかにし
た。3-6 では、各種前凝集沈殿汚泥について、高分子凝集剤を用いたベルトプレス脱水
を想定した簡易脱水試験を行って脱水性を把握した。3-7 では、3-4 および 3-6 からの
結果をうけて、前凝集沈殿汚泥の粒径分画を行って、濃縮や脱水プロセスで得られた
固液分離特性の裏づけを行った。3-8では各種前凝集沈殿汚泥の脱水ケーキの発熱量の
測定を行って、汚泥焼却におけるエネルギー的側面から考察するとともに、TG-DTAに
よる示差熱分析を実施し、燃焼特性を把握した。3-9 では、前凝集沈殿汚泥焼却灰を溶
融炉で処理することを念頭にし、焼却灰の元素分析により組成を明らかにしたうえで、
溶流度測定を行って溶融特性を把握した。3-10 では本章におけるまとめを行った。
- 43 -
3-2 実験方法
3-2-1 プラント
パイロットプラントは原水槽、凝集混和槽、沈殿槽、沈殿汚泥貯留槽、上澄み水貯留
槽、および薬注設備から構成される。プラントのフローを図 3-2-1 に、プラントにおけ
る機器リストを表 3-2-1 に、そして、凝集混和槽および沈殿槽の概略図をそれぞれ図 32-2 と図 3-2-3 に示した。
⑦凝集剤貯留タンク
⑥凝集剤注入ポンプ
P
④急速攪拌機
M ⑤緩速攪拌機
M
①原水槽
P
②原水ポンプ
③混和槽
⑧沈殿槽
⑪上澄み水貯留槽
⑨沈殿汚泥引き抜きポンプ P
⑩沈殿汚泥貯留タンク
図 3 - 2- 1 実験プラントのフロー
表 3- 2-1 プラントにおける機器リストとその仕様
No.
機器名称
①
原水槽
②
原水ポンプ
③
凝集混和槽
④
急速攪拌機
⑤
緩速攪拌機
⑥
凝集剤注入ポンプ
⑦
凝集剤貯留タンク
⑧
沈殿槽
⑨
沈殿汚泥引き抜きポンプ
⑩
沈殿汚泥貯留槽
⑪
上澄み水貯留槽
仕様
ポリエチレン製開放円筒形
200L
一軸式ネジ式ポンプ
3
32A×0.6m /hr×10m
鋼板製
W
L
H
400mm ×850mm ×900mm
プロペラ型
0-164rpm(0-60Hz)
パドル型
0-62rpm(0-60Hz)
ダイヤフラムポンプ
2.2-43(cc/min)
PVC製角形
100L
鋼板製円筒形
H
Φ510mm×1800mm
マグネットポンプ
16A×35L/min×5.6m
ポリエチレン製開放開放形
3
1m
ポリエチレン製開放円筒形
200L
- 44 -
電動機(kW)
-
0.4
-
0.2
0.2
0.017
-
-
0.15
-
-
850
250
600
400
50A(沈殿槽へ)
450
50A(ドレン)
50A(ドレン)
急速攪拌槽
50A
沈殿槽へ
600
800
900
50A
450
緩速攪拌槽
50A
図 3 -2 -2 凝集混和槽の概略図
180
100
700
350
200
Φ350
1650
1300
100Φ
82
268
Φ510
M
P
汚泥引き抜き
図 3-2 -3 沈殿槽概略図
- 45 -
3-2-2 凝集剤添加量の決定
1Lビーカに原水を採取する
プラントで用いる凝集剤は、凝集剤とし
て代表的な PAC、硫酸バンド、およびFeCl3
凝集剤投入
を選定し 1)、2)、予備実験としてジャーテス
急速攪拌120rpmで3分間
G値:86(sec-1)
トを行い、各凝集剤の添加量を決定した。
なお、凝集剤添加による一次処理水の目標
緩速攪拌30rpmで10分間
G値:11(sec-1)
水質は、生物処理への影響を考慮して、SS
で20 mg/L、およびT-Pで1.0 mgP/Lとした。
静置30分
ジャーテストは、サンプルとしてプラン
上澄み水サンプルを水面から3cmの点で
ピペットにより採取
トの流入水と同様に鴻池処理場流入原水を
用い、ジャーテスタ (MJS-4: 宮本製作所製
各種分析
) を使用して行った。凝集剤添加量は PAC
図 3 - 2- 4 ジャーテスト手順
と硫酸バンドについては、0、2.5、5.0、7.5、
10.0、および 12.5 mgAl/Lの 6 通り、FeCl3 に
ついては、0、5、10、15、20、および 25 mgFe/L の 6 通りとした。ジャーテスト手順を
図 3-2-4に示した。テスト終了後、得られた上澄み水サンプルについて、浮遊物質 (SS)、
全リン濃度 (T-P)、溶解性全リン濃度 (S-T-P)、および pH の 4 項目について下水試験方
法 3) に基づいて分析した。以下にジャーテストの結果に関して分析項目ごとに述べる。
1) SS
図 3-2-5 に Me/SS 重量比 (Me:添加した
原水SS濃度
凝集 剤中 の A l もし く は F e ) に対 する 、
180.0
ジャーテスト後の上澄み SS 濃度との関係
160.0
140.0
ける白抜きのプロットは各ジャーテスト
120.0
硫酸バンド
100.0
FeCl3
塩化第二鉄
に用いた原水中の SS 濃度を示し、残りの
Y 軸上のプロットは凝集剤を添加せず
SS濃度(mg/L)
を示した。なお、図において、Y 軸上にお
80.0
60.0
ジャーテストを実施して得られた上澄み
40.0
水中の SS を示す。
20.0
図より、PAC は約 0.03 mgAl/mgSS 程度、
硫酸バンドについては 0.06 mgAl/mgSS で
PAC
0.0
0
0.05
0.1
0.15
Me/SS重量比(-)
0.2
0.25
SSは20 mg/L以下となった。特に硫酸バン
ドについて添加量が少ない場合、SS の減
- 46 -
図 3-2-5 ジャーテスト結果(SS) 少は緩やかであるが、0.04 mgAl/mgSS 程度を超えたところで急激にSSの除去が顕著に
なる傾向を示し、添加量が少ないと固形分の除去性能は発揮されにくいと推測された。
これらの Al/SS 重量比は、それぞれ PAC で 5.0 mgAl/L、硫酸バンドで 7.5 mgAl/L に相当
する。また FeCl3 の場合は、凝集剤添加量が 0 mgFe/L の時の SS 濃度が小さいこともあ
るが、凝集剤添加量に応じて緩やかに減少しており、Fe/SS 重量比が0.10 mgFe/mgSS程
度で SS は 20 mg/L 以下となった。この場合、添加量にすると 15.0 mgFe/L 程度に相当す
る。SS との重量比のみで考えると PAC が最も SS 除去効果が高いと考えられた。
2) T-P
T-P については、図 3-2-6 に Me/T-P モル
原水T-P濃度
4.00
係を示した。
3.50
PAC
3.00
硫酸バンド
2.50
FeCl3
塩化第二鉄
図3-2-6より、凝集剤を添加しない場合で
除去可能な T-P は、すべての凝集剤の原水
で10~20%程度であり、SSに比較すると、
自然沈降のみによる除去は期待できない
ことが示唆された。これは S-T-P として後
述するが、原水中の T-P のうち溶解性とし
て存在するリンの割合が 80 ~ 90% と大部
T-P濃度(mgP/L)
比とジャーテスト後の上澄みT-P濃度の関
2.00
1.50
1.00
0.50
0.00
0
2
4
6
Me/T-Pモル比(-)
8
10
分を占めることによるものと考えられる。
次に、Me/T-Pモル比はPAC、硫酸バンド、
および FeCl3 のすべてのケースにおいて、
図 3-2-6 ジャーテスト結果(T-P) 3.0 程度の添加で T-P は 1.0 mgP/L前後にま
で除去されていた。後段での生物処理では、BOD酸化、または硝化脱窒を行う場合、そ
れらに必要な細菌の基質としてリンが必要であることを考えると、Me/T-Pモル比3.0程
度の添加が妥当であると考えられた。この時の凝集剤添加量は、PAC、硫酸バンド、お
よび FeCl3 のそれぞれで、7.5 mgAl/L、7.5 mgAl/L、および 15.0 mgFe/L に相当する。上
記の添加量以上では顕著に水質が向上しなかった。また硫酸バンドのT-Pの除去傾向は
SS の場合と類似しており、添加量が少ない場合沈殿効果が低い傾向であった。
- 47 -
3) S-T-P
原水S-T-P濃度
S-T-P については図 3-2-7 にそれぞれ
3.5
Me/T-P モル比と S-T-P の関係を示した。
3
比が 1.6 ~ 1.8 で、S-T-P は 1.0 mgP/L 前後
にまで除去されていた。この値は、添加量
で、PAC添加量 5.0 mgAl/L、硫酸バンド添
加量 5.0 mgAl/L、および FeCl3 添加量 10
S-T-P濃度(mgP/L)
図より、すべての凝集剤で Me/T-P モル
PAC
硫酸バンド
2.5
塩化第二鉄
FeCl3
2
1.5
1
mgFe/Lに相当する。S-T-Pの挙動は、FeCl3
0.5
と PAC 添加時については T-P の場合と類
0
0
似していた。しかし硫酸バンドの場合は、
2
4
6
Me/T-Pモル比(-)
8
10
T-P とS-T-Pとでは挙動が異なり、S-T-Pは
添加量が少ない範囲で除去されているが
図 3-2-7 ジャーテスト結果(S-T-P) T-Pは除去されにくいようであった。これ
は固形物由来のリンが除去されにくいことを示し、硫酸バンドは少ない添加量では、固
形物除去の性能が劣るものと考えられた。この結果は硫酸バンドにおけるSS の除去傾
向からも推測された。
4) pH
pHについてはすべての凝集剤について、
原水pH
凝集剤添加量との関係を図3-2-8に示した。
8.00
図から、全体を通して 7.1 ~ 7.7 の範囲でほ
7.80
ぼ一定の値であり、凝集剤添加によるpHの
7.60
低下は今回の実験における凝集剤添加量で
7.40
7.20
pH
はみられなかった。すべての凝集剤で 7 を
7.00
切ることはなかった。
6.80
6.60
以上の結果から、前凝集処理後の上澄み
水における目標水質、SS で 20 mg/L 、およ
びT-Pで1 mgP/Lを満たす最適添加量として
PAC
硫酸バンド
FeCl3
塩化第二鉄
6.40
6.20
6.00
0
10
20
凝集剤添加量(mgMe/L)
PAC と硫酸バンドについては 7.5 mgAl/L、
FeCl3 については 15 mgFe/L が最適と考え、
Me/T-P モル比では 3.0 程度、Me/SS 重量比
- 48 -
図 3-2-8 ジャーテスト結果(pH)
30
では、FeCl3 の場合 0.1 mgFe/mgSS、アルミ系凝集剤の場合 0.06 mgAl/mgSS 程度となっ
た。以上より、プラントでの凝集剤添加量は PAC と硫酸バンドでは 2.5、7.5、および
12.5 mgAl/L、FeCl3 では 5、15、および 25 mgFe/L として実験を行うことに決定した。
3-2-3 パイロットプラントによる汚泥処理特性試験
1) 汚泥処理特性試験全体のフロー
プラントでの実験条件における各試験操作フローを図3-2-9に示した。実験は大きく
分けて水質分析、汚泥組成分析、濃縮試験、リン溶出試験、脱水試験、燃焼試験、お
よび溶融試験の7つからなる。溶融試験については大量の試料が必要なため汚泥を長
時間 (3 日前後 ) 貯留した後、濃縮、脱水、乾燥、および焼却処理を行い、試料とした。
2) 凝集剤添加条件と実施時期
ジャーテストの結果から、凝集剤は添加量を PAC と硫酸バンドについては 2.5、7.5、
および 12.5 mgAl/L、FeCl3 に
ついては 5 、15 、および 2 5
プラント運転
原水、処理水
mgFe/L の条件で実験を行う
予定であったが、パイロッ
濃縮試験
凝集沈殿汚泥
汚泥組成分析
トプラントにおいて添加量
を誤ったために、硫酸バン
濃縮汚泥作成
ドの7.5 mgAl/Lは8.2 mgAl/L
濃縮汚泥
重力
濃縮試験
遠心
濃縮試験
リン溶出試験
脱水試験
として、FeCl3 は 11、22、32、
ベルトプレス
脱水試験
および53 mgFe/Lとして実験
を行った。この点に関して
水質分析
脱水ケーキ作成
脱水ろ液
脱水ケーキ
は、硫酸バンドの場合は添
脱水ケーキ
加量の値が大幅にずれてい
乾燥ケーキ作成
乾燥ケーキ作成
ないこと、FeCl3 の場合は当
乾燥ケーキ
乾燥ケーキ
水質分析
初の予定の添加量の範囲を
含むものであることから、
凝集沈殿汚泥の処理特性を
把握するにあたって問題は
焼却灰作成
焼却灰
組成分析
燃焼
試験
発熱量測定
塩基度調整
ないと判断した。
以上の条件に関しては、以
溶融試験
下の表記を、それぞれ凝沈
図 3-2-9
- 49 -
各試験操作フロー
TG-DTA
系 PAC2.5、凝沈系 PAC7.5、凝沈系 PAC12.5、凝沈系バンド 2.5、凝沈系バンド 8.2、凝
沈系バンド 12.5、凝沈系 FeCl311、凝沈系 FeCl322、凝沈系 FeCl332、および凝沈系 FeCl353
と記述することとした。比較対照としては凝集剤を添加しないケースを考え、これを
標準系と記述することとした。なお、標準系の汚泥は、流入原水を対象とし、凝集剤
を添加せずに沈殿させた汚泥であり、実プラントにおける初沈汚泥、もしくは初沈濃
縮汚泥に相当する。また、一部の汚泥処理特性試験 ( リン溶出試験、脱水試験、焼却試
験、および溶融試験 ) では、比較対照としては、標準系だけではなく、混合汚泥 ( 初沈
汚泥+余剰汚泥 ) を考慮し、標準系の汚泥と、鴻池処理場における余剰汚泥とを 1:1 の
固形物比で混合した汚泥を用い、各種汚泥処理特性試験を行った。この条件を基本系
と表記した。
凝沈系 FeCl311 はプラントの都合により 1 回しか実験を行っていないが、その他はす
べて 2 回ずつ行った。また標準系は時期を 2 回に分け、各時期 2 回ずつ計 4 回行った。
それぞれの実験を行った時期は PAC が平成 9 年 5 月~ 7 月、硫酸バンドで平成 9 年 8 月
~ 10 月、FeCl3 が平成 8 年 11 月~ 1 月であり、FeCl3 の物質収支、および金属収支を検
討する実験が平成 10 年 2 月~ 5 月であった。
3) パイロットプラントの運転条件
プラントの運転条件について表3-2-1に示した。流入原水は下水処理場内の沈砂池前
に水路を設け原水槽へポンプで取水し、1日あたりの処理量は約15 m3/dayであった。凝
集混和槽の攪拌条件は、パドル回転数をジャーテストとほぼ統一し、急速攪拌123 rpm、
緩速攪拌 31 rpmに設定し、凝集剤の種類や、添加量により条件は変化させなかった。な
お、G 値はジャーテストでは急速攪拌で 86 sec-1、および緩速攪拌で 11 sec-1 であり、プ
ラン ト 実験 で は 急速 攪 拌で
表 3 - 2 - 1 パイロットプラントの運転条件
227 sec -1、および緩速攪拌で
57 sec-1 であった。また攪拌時
間は各々の攪拌槽での滞留時
間から、急速攪拌で 3.5 min、
運転条件
処理量
寸法
急速攪拌槽
および緩速攪拌で 15.7 min で
滞留時間
攪拌機回転数
G値
寸法
あっ た 。汚泥 引 き抜 き 時 間
は、短すぎると沈殿槽で汚泥
緩速攪拌槽
の浮上、反転がみられ、長す
ぎると汚泥濃度が減少する。
さらに凝集剤を添加すると発
沈殿槽
滞留時間
攪拌機回転数
G値
寸法
水面積負荷
沈殿時間
- 50 -
14.3m3/日
400mmW×250mmL×450mmH
(有効水深350mmH)
3.5min
123 rpm
227(sec-1)
400mmW×600mmL×900mmH
(有効水深650mmH)
15.7min
31rpm
57(sec-1)
Φ510mm×1800mmH
70m3/m2・日
25min
生汚泥量が増加することも考慮に入れて 30 分に 15 ~ 60 秒の範囲で条件に応じて引き
抜きを行った。この時の引き抜き量は流量からみると、流入原水の 2 ~ 3% の量であっ
た。
3-3 水質分析・汚泥組成分析
パイロットプラントにおいて、流入原水、初沈上澄み水、および初沈引き抜き汚泥
に対し、水質・成分分析を行った。流入原水と初沈上澄み水についてはオートサンプ
ラー (ISCO Model 3700 Sampler Controller) を原水槽と上澄み水貯留槽に設置し、1 時間
おきに24時間連続サンプリングを行い、
それらを等量混合してそれぞれの試料とした。
初沈引き抜き汚泥については、貯留した汚泥を十分攪拌した後、サンプリングし、試
料とした。流量はサンプリング位置と同じ場所で測定した。分析項目は pH、M アルカ
リ度、TS、SS、VTS(TS 強熱減量 )、VSS(SS 強熱減量 )、FTS(TS 強熱残留物 )、FSS(SS
強熱残留物 )、CODMn、T-P( 全リン )、S-T-P( 溶解性全リン )、および S-PO4-P( 溶解性リ
ン酸イオン態リン ) とした。
また CHN コーダ (MT-2: 柳本製作所製 ) を用いて CHN 組成分析を行った。さらに ICP
発光分析装置 (ICPS-4960: 島津製作所製、もしくは ICP IRIS Intrepid Duo: サーモエレク
トロン社製 ) を用いて、サンプルを硝酸・硫酸を用いて酸分解した後、凝集剤 (Fe ある
いは Al) 成分および、有害重金属 (Zn、Cu、Cr、Cd、および Pb) を測定した。
表 3-3-1 に分析項目、分析方法・測定機器を示した。これらの表に従って水質分析、
汚泥組成を分析した結果を付録 3 に示し、各項目について、以下に詳細に述べる。
表 3 - 3 - 1 分析項目、分析方法・測定機器
測定項目
測定機器 実験方法
原水
初沈
上澄み水
初沈
引き抜き汚泥
流量
汚泥量
2Lメスシリンダ、ストップウォッチを用いて測定
○
○
○
下水試験法3.3、赤球棒温度計を用いて測定
TOA-DIGITAL-pH-METER HM-108
下水試験法3.7 ガラス電極法
下水試験法14.1
○
○
○
○
○
○
水温
pH
Mアルカリ度
TS VTS FTS
SS VSS FTS
T-P
S-T-P
S-PO4-P
○
○
○
下水試験法1、8、9、11
○
○
○
下水試験法27.2.1 ペルオキソ二硫酸カリウムによる分解
下水試験法27.2.2 硝酸と硫酸による分解
下水試験法27.1.1 モリブデン青(アスコルビン酸)吸光光度法
○
○
○
CODMn
下水試験法19.2
○
○
CHN組成
金属組成
(Fe、Al、Zn、Cu、Cr、Cd、Pb)
CHNコーダ(柳本製作所製:MT-2)
ICP発光分析装置(島津製作所製 ICPS-4960
もしくは サーモエレクトロン社製 ICP IRIS Intrepid Duo)
- 51 -
○
○
○
○
○
○
初沈上澄み水SS(mg/L)
100.0
100
SS除去率(%)
90.0
90
SS は生物化学的酸化速度にマイナスの
80.0
80
70.0
70
60.0
60
50.0
50
40.0
40
30.0
30
20.0
20
10.0
10
プロセスにおいて有機物酸化や硝化を促す
要因となる 4)。ここでは、原水の SS の変化
により一律の凝集剤量を添加していても効
果は異なることから、凝集剤添加量と流入
0.0
0.00
原水 SS との重量比によって整理し、凝集
0.10
0.20
0.30
0
0.40
Al/SS重量比(-)
剤毎に、初沈上澄み水 SS、および SS 除去
図 3-3-1 PAC 添加時の SS 除去特性
率との関係を図 3-3-1、図 3-3-2、図 3-3-3
初沈上澄み水SS(mg/L)
SS除去率(%)
100.0
に示した。ここで SS 除去率 Rss(%) は、各
初沈上澄み水SS(mg/L)
条件における流入原水のSS濃度Sin (mg/L)
と初沈上澄み水のSS濃度Sout (mg/L)から、
以下の式で算出したものである。
⎛ Sout ⎞
Rss = ⎜1 −
⎟ × 100 (3-3-1)
Sin ⎠
⎝
PAC と硫酸バンドの場合、凝集剤添加量
90
80.0
80
70.0
70
60.0
60
50.0
50
40.0
40
30.0
30
20.0
20
10.0
10
0.0
0.00
が0 mg/Lの場合には、初沈上澄み水のSS濃
度が 40 mg/L 程度であるので評価しにくい
100
90.0
0.10
0.20
0.30
Al/SS重量比(-)
0
0.40
図 3-3 -2 硫酸バンド添加時の SS 除去特性
が、Al/SS 重量比が小さい場合は効果が認
初沈上澄み水SS(mg/L)
SS除去率(%)
100.0
められず、逆に初沈上澄み水の SS 濃度が、
100
90.0
90
80.0
80
70.0
70
60.0
60
50.0
50
40.0
40
30.0
30
し、使用したパイロットプラントの設計条
20.0
20
件では除去できなかったことによるものと
10.0
10
はジャーテストでは見られなかったもの
の、アルミ系凝集剤のフロックは微細で軽
いとされ 1) 、それが初沈上澄み水中に混入
考えられた。SS の除去は、Al/SS 重量比は、
0.1 ~ 0.2 mgAl/mgSS 程度で安定しており、
- 52 -
初沈上澄み水SS(mg/L)
凝集剤を添加しない場合に比較して上昇す
るような負の傾向も認められた。この現象
SS除去率(%)
分を除去しておくことは、後段の生物処理
0.0
0.00
0.10
0.20
0.30
0.40
0
0.50
Fe/SS重量比(-)
図 3-3-3 FeCl 3 添加時の SS 除去特性
SS除去率(%)
影響を与えるため、生物処理の前段でSS成
初沈上澄み水SS(mg/L)
1) SS
SS除去率(%)
3-3-1 水質分析
添加量でみると、7.5 ~ 8.2 mgAl/L 程度で SS が 20 mg/L 以下に処理できた。
FeCl3 の場合、凝集剤添加率の上昇とともに SS 除去率は良くなるが、Fe/SS 重量比と
除去率の関係は必ずしも右上がりではなく、Fe/SS重量比で0.20~0.25 mgFe/mgSS程度
が最適添加率であるように考えられ、この場合の添加量は 20 ~ 30 mgFe/L の範囲で SS
が 15 mg/L 以下に除去できた。ただし、目標上澄み SS が 40 mg/L 程度まで許容されるな
らば、Fe/SS 重量比で 0.10 mgFe/mgSS 程度、この場合の添加量では、10 mgFe/L 程度で
よいと考えられた。Fe/SS 重量比で 0.40 mgFe/mgSS 程度になると、SS 除去率が悪化し
ていたが、この際の pH は後述するが 5.0 まで低下しており、FeCl3 の使用有効 pH 範囲
の限界下限であったことから、pHの低下
90.0
初沈上澄み水COD(mg/L)
い状況となったものと推測される。
2) CODMn
C O D についても S S と同様に、原水
COD の変化により一律の凝集剤量を添
加していても効果は異なることから、凝
集剤添加 量と原水 C O D との重量 比に
よって整理し凝集剤毎に、初沈上澄み水
3-3-4、図 3-3-5、および図 3-3-6 に示し
70.0
70
60.0
60
50.0
50
40.0
40
30.0
30
20.0
20
10.0
10
0.05
0.10
0.15
Al/COD重量比(-)
0.20
0
0.25
初沈上澄み水COD(mg/L)
( m g / L ) と初沈上澄み水の C O D 濃度
CODout (mg/L) から、以下の式で算出し
たものである。
⎛ CODout ⎞
= ⎜1 −
⎟ × 100 (3-3-2)
CODin ⎠
⎝
凝沈系 PAC、および凝沈系バンドの場
80.0
80
70.0
70
60.0
60
50.0
50
40.0
40
30.0
30
20.0
20
10.0
10
0.0
0.00
合、Al/COD 重量比および添加 Al 濃度が
上昇すると初沈上澄み水のCOD濃度は、
90
0.05
0.10
0.15
Al/COD重量比(-)
0.20
COD除去率(%)
初沈上澄み水COD(mg/L)
COD除去率(%)
90.0
件における流入原水の COD 濃度 CODin
緩やかに減少した。Al/COD重量比が0.10
80
図 3-3-4 PAC 添加時の COD 除去特性
た。ここで COD 除去率 RCOD(%) は、各条
RCOD
90
80.0
0.0
0.00
COD、および COD 除去率との関係を図
初沈上澄み水COD(mg/L)
COD除去率(%)
COD除去率(%)
に伴って凝集剤として有効に作用しにく
0
0.25
図 3 -3 -5 硫酸バンド添加時の C OD 除去特性 mgAl/mgCOD程度、この時の添加量が7.5
- 53 -
な減少を示さなかった。
COD 除去率でみると、無添加の場合が
10-30% 程度であるのに対し、PAC、もしく
は硫酸バンドの0.10 mgAl/mgCOD程度の添
加により、50 ~ 70% 程度まで上昇し、顕著
な効果が認められた。
初沈上澄み水COD(mg/L)
以上の凝集剤添加量では、COD濃度は顕著
初沈上澄み水COD(mg/L)
90.0
度が40 mg/L以下に処理された。なお、これ
COD除去率(%)
90
80.0
80
70.0
70
60.0
60
50.0
50
40.0
40
30.0
30
20.0
20
10.0
10
0.0
0.00
凝沈系 FeCl3 の場合、Fe/COD 重量比およ
び添加 Fe 濃度と初沈上澄み COD 濃度の関
0.20
0.40
0.60
Fe/COD重量比(-)
COD除去率(%)
~8.2 mgAl/L程度で初沈上澄み水のCOD濃
0
0.80
図 3-3-6 FeCl 3 添加時の COD 除去特性
係では、凝集剤の添加量の増加とともに、
初沈上澄み C OD が減少していくが、Fe /
COD重量比で0.2 mgFe/mgCOD、この時の添加量11 mgFe/L程度で、初沈上澄み水のCOD
濃度が 40 mg/L 以下に処理された。これ以上の添加量では COD 濃度は顕著な減少を示
さなかった。これは COD として測定される有機分が 0.1 μ m 以下の粒子として、SS よ
りも DS( 溶解性物質 ) により多く含まれていたためと考えられ、この場合、COD 除去
は、凝集沈殿による効果は限定的であると考えられた。
3) リン
リンについても、
原水リン濃度の変化によ
り一律の凝集剤量を添加していても効果は異
5.0
(3-3-3)式に従って不溶性の塩が形成される。
4.5
Al 3++PO 34- → AlPO 4 ↓
Fe 3++PO 34− → FePO 4 ↓
(3-3-3)
処理水中のリン濃度を決定する条件として
添加した無機凝集剤中の金属とT-Pとのモル
初沈上澄み水リン濃度(mgP/L)
なる。凝集剤でリンを処理する場合、以下の
T-P
S-T-P
S-PO
S-PO4-P
4-P
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
比が重要であるといわれている 1) 。そこで、
凝集剤添加量と原水T-Pとのモル比によって
整理し、初沈上澄み水中の T-P、S-T-P、およ
び S-PO4-P との関係を凝集剤ごとに、図 3-3-
- 54 -
0.0
0.0
5.0
10.0
Al/T-Pモル比(-)
15.0
図 3-3 -7 PAC 添加時のリン除去特性
7、図 3-3-8、および図 3-3-9 に示した。
5.0
図 3-3-7 より、凝沈系 PAC の場合は、Al/T程度にまでにしか減少させることができな
かった。Al/T-P モル比で 2.0、添加量で 7.5
mgAl/L 以上であれば 1.0 mgP/L 以下に維持で
きた。オルトリン酸 (S-PO 4 -P) についても同
初沈上澄み水リン 濃度(mgP/L)
P モル比が小さいと、T-P 濃度は約 2.0 mgP/L
4.5
T-P
S-T-P
S-PO
S-PO4-P
4-P
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
様であった。後段の生物処理も考慮し、上澄
0.0
0.0
み水に 1.0 mgP/L 程度リンを残存させなけれ
5.0
10.0
Al/T-Pモル比(-)
15.0
ばならないことを考えると Al/T-P モル比は 図 3 - 3 - 8 硫酸バンド添加時のリン除去特性
2.0、添加量で7.5 mgAl/L程度が妥当であると
考えられた。
T-P
S-T-P
S-PO4-P
S-PO4-P
5.0
ル比が小さい場合はデータが不安定であり、
初沈上澄み水中の T-P 濃度が 1.0 ~ 3.5 mgP/L
の範囲で、大きくばらつく傾向が見られた。
ただ、オルトリン酸 (S-PO 4 -P) は非常に低濃
度に抑えられた。上澄み水中のリン濃度を
4.5
初沈上澄み水リン濃度(mgP/L)
図3-3-8から凝沈系バンドの場合、Al/T-Pモ
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
1.0 mgP/L程度を目標とすると、Al/T-Pモル比
0.0
0.0
が4.0以下、添加量で8.2 mgAl/L程度が適当で
あると考えられた。
5.0
10.0
Fe/T-Pモル比(-)
15.0
図 3-3-9 FeCl 3 添加時のリン除去特性
凝沈系 FeCl3 の場合、Fe/T-Pモル比と上澄み
リン濃度の関係では Fe/T-P モル比で 2.0、凝集剤添加量で 11 mgFe/L を超えると、T-P で
1.0 mgP/L 以下、特に S-T-P、と S-PO4-P は非常に低濃度に抑えられた。初沈上澄み水中
のリン濃度を 1.0 mgP/L 程度を目標とすると、Fe/T-P モル比は 2.0、凝集剤添加量は 11
mgFe/Lが適当であると思われた。
4) pH、M アルカリ度
無機凝集剤を添加すると、以下の (3-3-4) 式に従って、凝集剤中の多価陽イオンが下
水中のアルカリ度と反応して、pH を低下させる、
2Al3++ 6HCO 3− → 2Al(OH)3 ↓ +6CO 2
2Fe3++6HCO 3− → 2Fe(OH)3 ↓ +6CO 2
- 55 -
(3-3-4)
後段の生物処理において硝化を考
14
360
12
300
10
240
8
180
てくるため、前凝集プロセスにおい
つ、アルカリ度の消費を最低限に抑
pH
ては、SS、リンなどの負荷を除去しつ
Mアルカリ度(mgCaCO3/L)
える場合、アルカリ度が必要となっ
えなければならない 。また凝集剤が
1)
6
有効に作用するには第 1 章、表 1-2-1
4
に示したように有効 p H 域が存在す
る。
60
2
0
0
2
4
全ての凝集剤に関して、凝集剤添
加量と pH、M アルカリ度の関係をそ
120
原水:pH
初沈上澄み水:pH
原水:Mアルカリ度
初沈上澄み水:Mアルカリ度
6
8
10
12
14
凝集剤添加量(mgAl/L)
図 3-3-10 PAC 添加時の pH、M アルカリ度の挙動
れぞれ図 3-3-10、図 3-3-11、および図
原水:pH
初沈上澄み水:pH
原水:Mアルカリ度
初沈上澄み水:Mアルカリ度
14
3-3-12 に示した。
12
360
300
原水の値と変わらなかった。pH は約
pH
濃度の上昇にかかわらず、ほとんど
6.8 を M アルカリ度は 200 mgCaCO3/L
10
240
8
180
6
120
4
60
Mアルカリ度(mgCaCO3/L)
まず、凝沈系 PACの場合は、添加 Al
を維持できた。PAC は、硫酸バンドや
FeCl3 に比較して、処理水に対する pH
2
やアルカリ度の影響が少ないとされ
0
0
2
4
10
12
14
図 3- 3- 11 硫酸バンド添加時の pH 、M アルカリ度の挙動
が再確認された。
原水:pH
14
凝沈系バンドの場合は、pH は、添
360
初沈上澄み水:pH
300
原水:Mアルカリ度
初沈上澄み水:Mアルカリ度
pH
み水の pH の差が大きくなったが、そ
で 6.3 程度あった。M アルカリ度は原
10
240
8
180
6
120
4
60
水にばらつきがあるため、一概に評
Mアルカリ度(mgCaCO3/L)
12
加 Al 濃度の上昇とともに原水と上澄
の差は最大で 0.5程度であり、最低pH
8
凝集剤添加量(mgAl/L)
ており 1)、本研究における前凝集プロ
セスへの適用に関しても、このこと
6
価しにくいが、今回の実験範囲では
2
全条件で上澄み水中に150 mgCaCO3/L
程度残存した。
凝沈系 FeCl3 の場合は、pH と Mアル
0
0
10
20
30
40
凝集剤添加量(mgFe/L)
50
60
図 3-3-12 FeCl 3 添加時の pH、M アルカリ度の挙動
- 56 -
カリ度は、添加 Fe 濃度の上昇とともに直線的に減少した。FeCl3 の有効 pHの範囲は、硫
酸バンドや PAC に比較して広いが、最大で pH は 5.0 程度まで減少し、アルカリ度も最
大で 10 mgCaCO3/L 以下までに減少した。凝沈系バンドの場合と同様に、原水の pH と
M アルカリ度にばらつきがあるため、一概に評価しにくいが、後段の生物処理を考慮
すると凝集剤添加量は小さいほうがよいと考えられ、添加量は11 mgFe/L程度にするこ
とが望ましいと判断した。
3-3-2 水質・汚泥の組成変化
80
1) TS 組成
70
それぞれの条件で得られた原水、初
60
対して TS、SS、VTS、および VSS を測
定し、TS を第 2 章の図 2-2-2 で示した概
念図のように 4 つの成分 (VSS、VDS、
各成分の割合(%)
沈上澄み水、および前凝集沈殿汚泥に
VSS
VDS
FSS
FDS
50
40
30
FSS、およびFDS)に分類した。なおそれ
20
ぞれの条件で原水の性状が異なるため
10
に、各条件での流入原水の TS と凝集剤
0
0
添加量の重量比を考え、それに対し、測
定した 4 つの成分の TS に対する割合を
0.005
0.01
0.015
0.02
Al/TS重量比
0.025
0.03
図 3 -3 - 13 アルミ系凝集剤添加量に対する、
原水、初沈上澄み水の T S 4 分画各成分の傾向
プロットしたものを、原水と初沈上澄
み水を対象として、凝沈系 PAC と凝沈
80
FeCl3 について図 3-3-14 に示した。また
70
凝集沈殿汚泥について、凝沈系 PAC、凝
60
沈系バンドの場合を図3-3-15に、凝沈系
FeCl3 の場合を図3-3-16に示した。なお、
標準系は凝沈系 PAC と凝沈系バンドの
実験前と、凝沈系 FeCl3 の実験前に時期
を分けて行ったため、それぞれの時期
各成分の割合(%)
系バンドについて図 3-3-13 に、凝沈系
50
40
VSS
VDS
FSS
FDS
30
20
10
に応じてグラフに示した。
まず、図 3-3-13、および図 3-3-14 にお
いて、Y 軸上の一際大きなプロットは、
各条件における原水の平均的な組成を
0
0
0.02
0.04
Fe/TS重量比
0.06
0.08
図 3-3-14 FeCl 3 添加量に対する、
原水、初沈上澄み水の T S 4 分画各成分の傾向
- 57 -
示す。図より、凝沈系全般に、凝集剤添加量が増加する、すなわち Me/TS 重量比が増加
するにしたがって、VSSの割合がわずかに減少していく傾向が見られた。これは有機性
固形物の除去に伴うものと考えられ、凝集剤添加量が増加するにしたがって、その効
果が顕著に現れていることが推測された。
次に、図 3-3-15、および図 3-3-16 において、凝集沈殿汚泥の傾向をみると、各条件
で、FSS の割合は標準系で 10% 強であったが、凝集剤添加量が増加するにつれて上昇
し、約 30 ~ 40% でほぼ一定となった。このように固形性の強熱残留物が増加している
ことに関しては、凝集剤の添加により、
80
が生じ、それが汚泥中に移行したものと
70
考えられた。
60
VTS 成分に着目すると、標準系におい
て、アルミ系の実験の際は VSS が 47%、
VDS が 32% であり、凝沈系 FeCl3 の実験
各成分の割合(%)
金属 (Al、Fe) のリン酸化合物、水酸化物
の際は VSS が 70%、VDS が 10%程度であ
VSS
VDS
FSS
FDS
50
40
30
20
り大幅に組成が異なっていた。これは、
10
凝沈系 PAC と凝沈系バンドの実験は主
0
0
に夏期に実施し、凝沈系FeCl3の実験は主
0.005
0.01
0.015
0.02
Al/TS重量比
0.025
0.03
に冬期に実施したこと、標準系の汚泥に
図 3 - 3- 1 5 アルミ系凝集剤添加量に対す
相当する初沈汚泥は、2 章でも述べたよ
る、汚泥中 T S 4 分画各成分の傾向
うに、夏期には特に VSS の割合が減少す
る傾向にあることから、汚泥組成の季節
80
変動によるものと考えられた。
70
凝集剤添加量の影響をみると、まず、
伴って VSS が 70% から、50 ~ 60% にま
で減少した。これは、FSS の増加割合と、
60
各成分の割合(%)
凝沈系FeCl3に関しては、添加量の増加に
VSS
VDS
FSS
FDS
50
40
30
VSS減少割合がほぼ対応していることか
20
ら、FSSが増加したことにより結果的に、
10
0
VSS成分の割合が低くなったことによる
0
と考えられる。
一方アルミ系の場合は、FeCl3 の場合と
0.02
0.04
Fe/TS重量比
0.06
図 3-3-16 FeCl 3 添加量に対する、
同様に、凝集剤添加に伴って FSS 成分が
汚泥中 T S 4 分画各成分の傾向
- 58 -
0.08
40% 弱まで増加したが、VSS 成分はそれに伴って減少するというよりもむしろ増加し
約 60% 程度となった、同時に比較的割合の大きな VDS 成分が凝集剤添加に伴って 30%
程度から 10% 弱まで減少しており、VDS 成分のうちコロイド、もしくは微細な粒子と
して存在する成分が凝集剤添加によってフロック化し、VSS 成分の増加につながった
ものと考えられた。
図 3-3-15 と図 3-3-16 を比較する形でまとめると、用いた凝集剤の種類が異なったり、
実施した時期は異なったりするが、凝集剤添加に伴い、以下の 3つの現象が生じている
と考えられる。
① FSS の増加とそれに伴う他成分 ( 特に VSS) の割合減少:凝集剤成分の水酸化物、
リン酸化物の汚泥中への移行
② 有機分の除去に伴う VSS の増加:凝集沈殿により有機物の汚泥中への移行
③ VDS 成分の減少およびそれに伴う VSS の増加:コロイド粒子、微細な粒子のフ
ロック化
特に①と②に関しては、①の影響が強いと考えられ、冬期に実施した凝沈系 FeCl3 の
ケースが典型的であると考えられる。一方、③に関しては、夏期に実施したアルミ系
のケースで顕著に見られているが、これはもともとの標準系の汚泥の組成の影響によ
るところが大きいと考えられ、この場合は①、②が生じた上に、③が生じているもの
と考えられる。
標準系の汚泥組成の変動に比較すると、凝沈系ではばらつきが少なくなり、VSS で
約 60%、FSS で約 30%、残りが DS 成分であるような組成に近づくことから、前凝集プ
ロセスの導入により汚泥組成の変動が小さくなり、常に一定性状の前凝集沈殿汚泥を
得ることが期待できる。
炭素
25.0
水素
窒素
2) CHN 組成
それぞれの条件で得られた原水、初沈上
澄み水、および前凝集沈殿汚泥に対して
CHN 組成を測定した結果を、原水と初沈
各成分の割合(%)
20.0
15.0
10.0
上澄み水を対象として、凝沈系 PAC、およ
び凝沈系バンドについては図3-3-17に、凝
沈系 FeCl3 については図 3-3-18 に示した。
また前凝集沈殿汚泥については、凝沈系
PAC、および凝沈系バンドの場合を図 3-319 に、凝沈系 FeCl3 の場合を図 3-3-20 に示
- 59 -
5.0
0.0
0
0.005
0.01
0.015
0.02
Al/TS重量比
0.025
0.03
図 3 - 3- 1 7 アルミ系凝集剤添加量に対す
る、原水、初沈上澄み水の C H N 組成の傾向
した。CHN に関しても、TS 組成の場合と
炭素
25.0
水素
同様に、各条件で原水の性状が異なるため
窒素
20.0
加量の重量比を考え、それに対し、測定し
た CHN組成をプロットした。なお、標準系
は凝沈系 PAC、および凝沈系バンドの実験
各成分の割合(%)
に、各条件での流入原水の TS と凝集剤添
前と、凝沈系 FeCl3 の実験前とに時期を分
15.0
10.0
5.0
けて行ったため、それぞれの時期に応じて
グラフに示した。
0.0
0
0.02
まず、図 3-3-17、および図 3-3-18 におい
0.04
Fe/TS重量比
0.06
0.08
て、Y 軸上の一際大きなプロットは、各条
図 3-3-18 FeCl 3 添加量に対する、
件における原水の平均的な組成を示す。原
原水、初沈上澄み水の C H N 組成の傾向
水平均は炭素が約 20%、水素が 2 ~ 5%、および窒素が約 2% であったが、初沈上澄み
水においては、凝集剤添加量が増加するにつれ、これらの割合はすべて減少傾向を示
した。このことから凝集剤添加により炭素、水素、および窒素を組成に持つ有機性成分
が効果的に除去されていることが示唆された。また、アルミ系と FeCl3 の場合で大きな
差はなかった。
また、凝集沈殿汚泥に関して、図 3-3-19、および図 3-3-20 から、標準系が炭素 30 ~
35%、水素が約 6%、および窒素約 3% であるのに対し、一部、凝沈系 FeCl3 において添
加量が低い部分では、わずかに炭素、水素、および窒素が増加する傾向にあるものの、
凝集剤添加量が増加するにつれて、特に炭素についてそれらの割合が約 30% 弱にまで
炭素
50
炭素
50
水素
水素
窒素
窒素
40
各成分の割合(%)
各成分の割合(%)
40
30
20
10
30
20
10
0
0
0
0.005
0.01
0.015
0.02
Al/TS重量比
0.025
0.03
0
0.02
0.04
Fe/TS重量比
0.06
図 3- 3- 19 アルミ系凝集剤添加量に
図 3-3-20 FeCl 3 添加量に対する、
対する、汚泥中 C H N 組成の傾向
汚泥中 C H N 組成の傾向
- 60 -
0.08
減少した。これは、前述の TS4 成分の結果より、FSS 成分、すなわち灰分の増加に伴っ
てその割合が減少したことによるものと考えられる。
凝集剤を添加した場合汚泥中に移行する有機分と無機分はそれぞれ同時に以下のよう
に挙動すると考えられる。( 前項においては TS の 4 成分の挙動に関して述べたが、ここ
では、簡略化のために VTS と FTS に分けて述べることとする。)
①
凝集剤の添加時に有機分の除去が行われ、汚泥中の有機分が上昇する。
②
凝集剤それ自身が無機性固形物として汚泥中に移行する。
凝集剤添加量が増大すると①よりも②の効果が上回り 結果的に炭素、水素、および
窒素の割合が減少する。また凝集剤添加量が少ないと①の効果は薄れるが、それ以上
に②の効果を低く抑えることができ、結果的に凝沈系FeCl3 の添加量が低い場合、炭素、
水素、および窒素の割合が微増したのではないかと考えられた。
嫌気性消化においては消化効率、
すなわち有機物減少率は有機物含有率(VTS)により
大きく正の影響をうけるため、汚泥処理後段において嫌気性消化を導入した場合、水
質は生物処理における必要有機分量を確保しながら、凝集剤添加量をおさえできるだ
け汚泥中の VTS を高く保つ必要があり、この点では凝集剤添加量を低く抑えた場合が
有利であると考えられた。また実際にパイロットプラントで実験を行っていないので
はっきりとはいえないが、凝集剤添加量を低くして、VTS の低下を抑えつつ、沈殿効
率を高めるために、
ポリマーを併用する二液薬注の場合も同様の理由から有利になって
くると考えられた。
3) リン
特に、凝集沈殿汚泥中
凝沈系FeCl3 53
のリンについて、T-P か
凝沈系FeCl3 32
ら S-T-P を差し引いたも
のを、P-P、さらに S-T-P
凝沈系FeCl3 22
凝沈系FeCl3 11
凝沈系バンド12.5
から S-PO4-P を差し引い
凝沈系バンド8.2
たものを S-non-PO4-P と
凝沈系バンド2.5
して、条件ごとに図 3-3-
凝沈系PAC12.5
21に固形分(TS)あたり
凝沈系PAC7.5
の重量 % として示した。
凝沈系PAC2.5
図よ りま ず 総量 と して
は、標準系では 1%TS 程
度であったが、凝集剤を
P-P
S-non-PO4-P
S-PO4-P
標準系
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
P/TS重量比(%)
図 3-3-21 凝集沈殿汚泥中のリン
- 61 -
3.5
4.0
700
3%TS 程度まで増加するもの
600
の、添加量が増加するにつれ
て、1.5 ~ 2.0%TS まで減少す
る結果となった。この原因と
しては、凝集剤を多量に添加
した場合に、アルカリ度と反
各分画のリン濃度(mgP/L)
添加すると、リン濃度は
その他P
汚泥中Poly-P
汚泥中PO4-P
S-non-PO4-P
S-PO4-P
500
400
300
200
応した水酸化物や、その他の
固形分の割合が増加し、結果
的に汚泥中のリン濃度が相対
的に減少したことによるもの
100
0
汚泥0
汚泥6
汚泥11
汚泥18
汚泥23
汚泥32
汚泥53
図 3-3-22 STS 法による凝集沈殿汚泥中リンの分画
と考えられる。また、各成分
に関しては、標準系で S-non-PO4-P、および S-PO4-P が各 0.1 ~ 0.2%TS 程度存在するも
のの、凝沈系では、そのほとんどが P-P として存在し、おそらく AlPO4 や FePO4 などの
難溶性のリンとして固定されているものと考えられた。
また筆者らのグループでは、凝集剤として、FeCl3 を用いた場合の前凝集沈殿汚泥に
STS 法 ( 汚泥中リンの形態分画手法 ) によって,汚泥中リンの形態を S-PO4 -P、S-nonPO4-P、汚泥中 PO4-P、汚泥中 poly-P( 汚泥中の低分子ポリリン酸 )、およびその他 P の
5 分画に分画した 5)。具体的な手法に関しては参考文献を参照されたい 6)、7)。その結果を
図 3-3-22 に示した。図の汚泥 0 ~汚泥 53 については、凝集剤添加量 0 ~ 53 mgFe/L で
前凝集沈殿させた汚泥であり、本研究と同じパイロットプラントを用いて作成してい
る。なお汚泥濃度は20000mg/Lに統一して測定しており、縦軸はそれぞれの画分のリン
濃度を示す。図より、ばらつきは多少あるが、凝集剤添加量が増加するにつれて汚泥中
のリン濃度が一旦増加し、添加量が多くなるとリン濃度は減少する傾向が見られる。ま
た凝集剤添加に伴って、その他 P はそれほど大きな変化はないが、汚泥中 PO4-P と汚泥
中 poly-P(汚泥中の低分子ポリリン酸) が増加する傾向にあり、この増加分が、凝集剤添
加によって汚泥中に移行したFePO4などの難溶解性塩であろうと考えられる。Al系の凝
集沈殿汚泥に関しては STS 法による分画を実施していないが、Al PO4 などの難溶解性
塩の生成に伴って、FeCl3 のケースとほぼ同様の傾向を示すものと推測される。
4) 凝集剤成分の挙動 (Al、Fe)
Al については、凝沈系 PAC、および凝沈系バンドでの挙動を対象とした。
まず、図 3-3-23 には、各条件での流入原水の TS と凝集剤添加量の重量比を考え、そ
- 62 -
沈上澄み水についてAl濃度をプロッ
トした。Y 軸上の一際大きなプロッ
トは、各条件での原水の平均的な Al
濃度を示す。標準系で 2.0 mgAl/L で
あったのに対し、凝集剤添加量が多
くなるにつれて初沈上澄み水へのAl
12
原水、初沈上澄み水中のAl濃度(mg/L)
れに対し、測定した原水、および初
濃度も 直線的 に増加 する傾 向にあ
10
8
6
4
2
0
0
り、最大で凝沈系 PAC12.5 の場合で
図 3-3-24 に示したが、各条件での流
がみられ、添加量が増加するほど、
汚泥中のAl濃度は増加する傾向を示
した。以上より、本研究で対象とし
0.03
0.12
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
0
0.005
0.01
0.015
0.02
0.025
0.03
凝集剤添加Al/原水TS重量比
た条件では、凝集剤として添加した
Al は、原水の TS、および凝集沈殿汚
0.025
0.14
汚泥中Al/汚泥TS重量比
に関しても凝集剤添加量と正の相関
0.02
0.16
入原水の TS と凝集剤添加量の重量
ロットした。この図より汚泥中の Al
0.015
図 3-3-23 凝沈系 PAC、バンドにおける
原水、初沈上澄み水の A l
凝集沈殿汚泥中の Al については、
中の Al 濃度と、TS との重量比をプ
0.01
凝集剤添加Al/原水TS重量比
11.0 mgAl/L弱となった。
比に対して、得られた凝集沈殿汚泥
0.005
図 3-3-24 凝沈系 PAC、バンドにおける
凝集沈殿汚泥中の A l
泥のTSに大きく依存して、一定の割
合で初沈上澄み水と凝集沈殿汚泥とに配分されることがわかった。これは、3-3-1 (4)の
水質分析の pH、アルカリ度の項でも前述したように、凝集剤添加に伴って pH の変動
がほとんどなかったことにも起因すると考えられる。
アルミ系凝集剤については生物処理への影響が大きく、6.0 ~ 7.5 mgAl/L以上で生物
種や個体数の変化があるという報告があり1)、また生物槽での硝化阻害になるという報
告もあるため 8)、凝集剤添加量の大きい場合 ( 凝沈系 PAC12.5、凝沈系バンド 12.5) は、
後段の生物処理プロセスに硝化阻害などの影響を与える可能性がある。また嫌気性消
化に関しては、1 章でも述べたように、PAC の添加により、有機酸の生成割合が低下す
る報告や9)、3 mgAl/L-下水の前凝集プロセスへの添加量で嫌気性消化の際のメタン生成
率が減少するといった報告がある 10)。また、S.G.Girogoropoulos ら 11) はメタン生成菌の
- 63 -
験結果から、2500 mgAl/L-汚泥以
上で、活性が失われるとしてい
る。以上から、凝集剤添加量はで
きるだけ少なく抑えることが必
要であると考えられた。
次 に 、F e につ い て は 凝 沈系
35
原水、初沈上澄み水中のFe濃度(mg/L)
アルミニウムに対する耐性の実
F e C l 3 における挙動を対象とし
30
25
20
15
10
5
0
0
た。まず、図 3-3-25 は、各条件で
の流入原水の TS と凝集剤添加量
0.02
0.04
0.06
凝集剤添加Fe/原水TS重量比
0.08
図 3-3-25 凝沈系 FeCl 3 における原水、初沈上澄み水の Fe
の重量比を考え、それに対し、測
0.25
水について Fe 濃度をプロットし
た。Y軸上の一際大きなプロット
は、各条件における原水の平均
的な Fe 濃度を示す。図から凝集
剤添加量が原水の TS に対し重量
比で 0.05 までは初沈上澄み水中
の Fe 濃度はほぼ 5 ~ 10mgFe/L 程
汚泥中Fe/汚泥TS重量比
定した原水、および初沈上澄み
0.2
0.15
0.1
0.05
0
0
0.04
0.06
0.08
凝集剤添加Fe/原水TS重量比
度で一定であるが、0.07程度にな
ると急激にFe濃度が増加し、13.0
0.02
図 3-3-26 凝沈系 FeCl 3 における凝集沈殿汚泥中の Fe
~ 29.0 mgFe/Lが初沈上澄み水中
に流出する結果となった。
一方凝集沈殿汚泥中の Fe について図 3-3-26 に示し、各条件での流入原水の TS と凝
集剤添加量の重量比に対して、得られた凝集沈殿汚泥中のFe濃度とTSとの重量比をプ
ロットした。図より、凝集剤添加量が増加するほど、汚泥中の Fe 濃度は増加する傾向
を示すが、凝集剤添加量が多くなると、増加傾向は汚泥中の TS に対して約 20% 程度で
頭打ちとなった。この原因としては、3-3-1(4) の水質分析の pH、アルカリ度の部分で述
べたように、凝集剤添加量の多い部分では pHが低下し、沈殿除去が良好になされず、Fe
が上澄み水中に移行する割合が多くなったことに由来するものと考えられる。
FeCl3 については生物菌体に対する影響はあまりないが、凝集剤に用いると処理水が
着色するとの報告がある 12)。これらのことも考えて Al と同様に凝集剤添加量はできる
だけ少なく抑えることが必要であると考えられた。
- 64 -
凝集沈殿汚泥中の Al や Fe は、上記の全量分析により挙動が明らかとなったが、凝集
剤の添加量に応じてそれぞれの凝集沈殿汚泥中のAlやFeの化合物の形態は変化してく
るものと考えられる。今後、前凝集沈殿汚泥からリンや凝集剤成分を回収したり、後
段のプロセスへの影響を考えた場合に、Al や Fe 化合物の形態の情報は非常に重要に
なってくると考えられる。筆者らのグループ 5) では、3-3-2(3) にて行った STS 法 ( 汚泥
中リンの形態分画手法 ) で対象とした FeCl3 による前凝集沈殿汚泥に対して、特定元素
の化学形態の同定が可能なX線吸収微細構造 (XAFS) 測定を実施し、汚泥サンプル中の
Feの化合物形態の同定を行った。XAFS 測定の原理や手法に関しては省略するが、詳し
くは成書を参照されたい 13)、14) 。XAFS 測定は財団法人高輝度光科学研究センターの
SPring-8 内のビームライン BL01B1 で行った。
測定対象は、標準試料として、Fe、Fe2O3、
FeS、FePO4、FeO(OH)、Fe3+ (FeCl3:1000mgFe/
汚泥53
L 水溶液 )、Fe2+ (FeCl2:1000mgFe/L 水溶液 )
汚泥32
とし、実試料として FeCl 3 添加量が 0 ~ 53
汚泥23
各汚泥 0 ~汚泥 5 3 とした。X AF S 測定は
汚泥18
Si(111) 2 結晶分光器を用い Fe-K 吸収端につ
汚泥11
いて行った。標準試料のうち、Fe、Fe 2 O 3 、
汚泥6
FeS、FePO4、FeO(OH) に関しては、FT-IR 用
錠剤成型器を用いてペレット化し透過法で
測定した。また、標準試料の水溶液サンプ
ル、および実試料に関しては、ポリエチレン
製の袋に封入し19素子Ge半導体検出器を用
いた蛍光法により測定を行った。測定の結
Normalized Adsorption(-)
mgFe/Lで前凝集沈殿させた汚泥7種を用い、
汚泥0
FeO(OH)
FeS
FePO4
果得られた実試料のXANESスペクトルの解
Fe2+
析については、XAFS 解析用ソフト RE X-
Fe3+
2000 Ver.2.2.3(理学電機社製)を使用し、標
準試料のXANESスペクトルを用いたパター
Fe2O3
ンフィッティングにより、実試料中の Fe 化
Fe
合物形態の同定を行った。
標準試料および実試料のXANESスペクト
ルを図 3-3-27 に示した。実試料では、いずれ
の汚泥も形状に大きな変化は見られなかっ
- 65 -
7080
7105
7130
7155
7180
7205
7230
Photon energy (eV)
図 3-3-27 前凝集沈殿汚泥中 Fe の
XANES スペクトル測定結果
たが、汚泥 53 のスペクトルでは 7140eV 付近にわずかな膨らみが見られ、7155eV 付近
の落ち込みが 7160eV 付近に移動しており、これは Fe2O3 や FeO(OH) のスペクトルの特
徴と類似していた。
これらのXANESスペクトルを用い、各汚泥中のFeの化合物の形態をパターンフィッ
ティングにより同定した。パターンフィッティングは式 (3-3-5) で示される R 値 ( 実試
料のスペクトルと標準試料の合成スペクトルとの残渣の二乗和)が最も低くなるような
標準試料の組み合わせ、組成割合を抽出することで行った。
∑ (X − X )
R=
∑ (X )
2
obs
cal
2
(3-3-5)
obs
X obs:XANES測定値、X cal:XANES計算値
また、凝集剤を添加していない汚泥0について標準試料のスペクトルを用いてパター
ンフィッティングを実施したが、その際の R 値は他の汚泥で 0.004 ~ 0.025 程度であっ
たのに対し、汚泥 0 では 0.06 以上と高くなったため信頼性の低いものと考え,汚泥 0 自
体を標準物質の一つとしてとらえ、汚泥 6 ~汚泥 53 中の Fe 化合物の同定を行った。汚
泥 0 中の Fe 形態の同定が困難であった原因としては、凝集剤を添加していないために
汚泥中 Fe 濃度が他の汚泥に比べて低いことに加え、汚泥中の Fe は、生物体に含まれる
他、フミン酸塩等とコロイド性の有機錯体を形成するなど 15)、複雑な形態で存在してい
る可能性が考えられる。
各汚泥中の Fe の形態をパターンフィッティングにより同定した結果を,各汚泥中全
Feに対する各化合物の割合
として図 3-3-28 に示した.
0.4
図より、凝集剤添加量の
増加に伴って F e 量は増加
は凝集剤を添加した全ての
条件で同定され,汚泥中 Fe
の10~60%の範囲で含まれ
ていた。また、32mgFe/L 以
0.3
Fe/TS重量比(-)
する傾向にあった。FePO 4
Fe2+
FePO4
汚泥0
FeS
FeO(OH)
0.2
0.1
下の凝集剤添加量では、
Fe2+、FeS、および汚泥 0 が
同定された。特にFe に関し
2+
0
汚泥0
汚泥6
汚泥11
汚泥18
汚泥23
汚泥32
汚泥53
図 3-3-28 凝沈系 FeCl 3 における凝集沈殿汚泥中の Fe
- 66 -
ては、標準物質としてFeCl2:1000mgFe/L 水溶液を用いたが、この pHは約 4.0 であり、Eh
は約 300mVであった。Fe-O-H系の Eh-pHダイアグラムから 16) この条件では、水溶液中で
Fe2+ として存在していると考えられ、汚泥中においても主に液相側で2価の状態で存在し
ているものと推測される。また 53mgFe/L の添加量では FeO(OH) が大きな割合で同定さ
れた。これは流入下水中のリンに対して Fe3+ が過剰になると、リンの除去よりも、(33-4)式に従って流入下水中のアルカリ度との反応により生成した水酸化鉄の割合の増加
によるものと考えられる。
5) 重金属組成
重金属の除去については、重金属が酸化物等の懸濁固形物状で存在するものに対し
て凝集沈殿法が有効である。また溶解性の重金属イオンについては、排水の pH をアル
カリ側に調整し、重金属イオンを水に難溶な水酸化物として析出沈殿させ凝集分離す
るアルカリ凝集法が、重金属イオンの除去に最も多く用いられている 17)。本研究で用い
た PAC、および硫酸バンドについては第 1 章の表 1-2-1 から有効 pH が 5 ~ 7.2 の弱酸性、
ないしは中性であり、排水の pHをアルカリ側に調整した場合凝集沈殿処理による効果
はあまり期待できないと考えられる。一方 FeCl3 については有効 pH が 5 ~ 11 とアルミ
系凝集剤に比較して幅広く、アルカリ側でも効力を発揮すると考えられ、重金属イオ
ンの除去が可能であると考えられた。なお、これらを凝集処理によって除去するという
ことは、同時に汚泥中に移行させることを意味しているため、この前凝集プロセスで
の重金属の挙動は十分把握しておか
ねばならない。
これら重金属組成分析の結果につ
Cr
Cu
Zn
Cd
Pb
凝沈系バンド12.5
凝沈系バンド8.2
いて、まず、原水、および初沈上澄
み水の重金属について、アルミ系凝
凝沈系バンド2.5
集剤を用いた場合、およびFeCl3を用
凝沈系PAC12.5
いた場合の測定結果を条件ごとにそ
凝沈系PAC7.5
れぞれ図 3-3-29、および図 3-3-30 に
凝沈系PAC2.5
示した。
アルミ系凝集剤を用いた場合につ
標準系
原水平均
いては、原水中は Cu と Znが主で 0.1
0
mg/L 程度であり、Cd、Pb について
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
重金属濃度(mg/L)
図 3-3 -29 原水、初沈上澄み水中
は 0.05 mg/L 以下であった。Cr につ
の重金属濃度(凝沈系 P A C 、バンド)
いても0.05 mg/L以下であった。しか
- 67 -
0.6
し、本研究では、重金属測定の前
処理として硫酸・硝酸分解を行っ
Cr
Cu
Zn
Cd
Pb
53
凝沈系FeCl33 53
たが、Crは硝酸との不動態を形成
するといわれているため 18)、Cr 濃
度については酸分解がうまくいか
凝沈系FeCl
32
凝沈系FeCl33 32
22
凝沈系FeCl33 22
ず過少評価している可能性があ
る。標準系については、Pb はほと
んど除去されておらず、原水とほ
11
凝沈系FeCl33 11
標準系
とんど同じ濃度であった。他の重
金属は凝集剤を添加せずとも良好
原水平均
に除去されており、Znに関しては
0
検出限界以下の濃度であった。凝
沈系においては、凝沈系 PACの場
合も、凝沈系バンドの場合も、凝
0.1
0.2
0.3
0.4
重金属濃度(mg/L)
0.5
0.6
図 3- 3- 30 原水、初沈上澄み水中の
重金属濃度 (凝沈系 FeCl 3 )
集剤添加量にかかわらず、ほとん
どの元素で検出限界以下にまで除
Cr
Cu
凝沈系バンド12.5
去されていた。このことから以上
の重金属に関しては凝集処理を実
施すれば、最初沈殿池のみで排水
基準 1 9) を達成できると考えられ
Zn
凝沈系バンド8.2
Cd
Pb
凝沈系バンド2.5
凝沈系PAC12.5
た。
FeCl3 を用いた場合の原水につ
いては Cu と Zn が約 0.2 mg/L であ
り、その他、Pb、Cr、および Cd が
0.02~0.05 mg/L程度であった、標
凝沈系PAC7.5
凝沈系PAC2.5
標準系
0
準系においては、CuとZnで約50%
500
1000
1500
重金属濃度(mg/kg-TS)
2000
が除去され、Pbはほとんど除去さ
図 3- 3- 31 凝集沈殿汚泥中の重金属濃度
れなかった。また、凝沈系全般に
(凝沈系 PAC、バンド)
おいては、すべての重金属が安定
して低濃度まで除去されており、そのほとんどが Al 系と同様に最初沈殿池流出水の時
点で排水基準 19) を達成できた。
また、図 3-3-31、および図 3-3-32 には各条件における凝集沈殿汚泥中の重金属濃度
を示したが、特に主な成分としては原水中に主に含まれる Cu とZnであり、すべての条
- 68 -
件で組成の半分以上を占めてい
た。具体的な含有レベルとして
は、Cu で 30 ~ 1200 mg/kg-TS、Zn
凝沈系FeCl
凝沈系FeCl33 32
32
Cr
Cu
Zn
Cd
Pb
で10~470 mg/kg-TS、Crで0~330
mg/kg-TS、Pbで0~180 mg/kg-TS、
凝沈系FeCl
凝沈系FeCl33 22
22
および Cd で 0 ~ 30 mg/kg-TS であ
り、全般的に、凝集剤添加量が上
凝沈系FeCl
凝沈系FeCl33 11
11
昇するにつれて汚泥中の重金属
もその含有レベルが全体的に上
昇し、これは原水中の重金属の
標準系
除去効果によるものであると考
0
えられた。
これらの凝集沈殿汚泥を、下
500
1000
1500
重金属濃度(mg/kg-TS)
2000
図 3- 3- 32 凝集沈殿汚泥中の重金属濃度
(凝沈系 FeCl 3 )
水汚泥肥料として再利用する
ケースを考えた場合、重金属の
含有量が問題となってくることが想定されるが、
下水汚泥肥料は、肥料取締法において普通肥料と
表 3 -3 -2 汚泥肥料の公定基準
(mg/kg-TS)
して、
「汚泥肥料等登録の有効期間が 3 年であるも
As
50
の」に分類され、Cd、Ni、As、Hg、Pb、および Cr
Cd
5
について重金属含有量の基準が定められている 。
Hg
2
また、Cu および Zn に関しては、汚泥肥料乾物 1 kg
Ni
300
あたり、各々 300 mg/kg 以上および 900 mg/kg 以上
Cr
500
を含有する場合には肥料の保証票への記入が義務
Pb
100
付けられている 21)。表 3-3-2にこれらの基準を示し
Cu
300
た。測定値とこれらの基準値を比較すると、凝沈
Zn
20)
汚泥肥料
公定規格
許容上限
汚泥肥料
保証票への
900 記述義務
系全般に関して、添加量が大きい場合に、Pb、Cu、
および Cd での基準を超過するケースが見られた。
以上より、現状のシステムに前凝集プロセスを導入した場合、重金属は除去され水
質は改善される。しかし、このことは前凝集汚泥中への重金属の移行を意味しており、
脱水ケーキとして処分する場合や緑農地利用を想定した場合、また各汚泥処理プロセ
スからの返流水を考える場合には、
汚泥もしくは脱水ケーキからの重金属の溶出には十
分留意する必要がある。
逆に生物学的処理由来の余剰汚泥中の重金属の含有量が減少す
るはずであり、余剰汚泥は前凝集汚泥とは別に処理しコンポスト化や緑地還元を計る
ことも考えられる。
- 69 -
3-3-3 物質収支と汚泥発生量
前凝集プロセスを既存の下水処理システムに導入した場合、想定される問題の一つ
が汚泥発生量の増加である。汚泥量が増大すれば、それだけ汚泥処理への負荷が上昇す
るため、物質収支として TS、SS、T-P、および主要元素 ( 炭素、窒素、Fe、Al、重金属
) の挙動を把握するとともに、凝集剤添加量に対してどの程度汚泥量が増加するのか
知っておく必要がある。そこで前述した 3-3-1 水質分析、および 3-3-2 水質・汚泥の組
成変化に加えて、流量測定結果を基に物質収支を計算した。
1) TS、SS、T-P、および主要元素
の物質収支
流入原水、および初沈上澄み水
の流量、前凝集沈殿汚泥の 1 日当
りの引き抜き貯留量、ならびに流
入原水、初沈上澄み水、および凝
集沈殿汚泥の TS、SS、T-P、炭素、
窒素、Al、およびFeのデータから、
沈殿池まわりの収支を計算し、特
に SS に関する物質収支の結果か
ら凝集剤添加による汚泥発生量の
変化を検討した。
凝沈系 PAC、および凝沈系バン
ドの場合についての結果を表3-33 に、凝沈系 FeCl3 の場合について
の結果を表 3-3-4 に示した。なお、
表においては、流入原水のみの流
入フラックス分の合計を 1 0 0 と
し、それに対して投入した凝集剤
成分を加え、初沈上澄み水と凝集
沈殿汚泥に配分されるフラックス
の割合を算出した。また、物質収
支の整合性がとれているか評価す
るため、それぞれの条件、フラッ
クスごとに流出 / 流入比を算出し
表 3 - 3- 3 凝沈系 P AC 、凝沈系バンドにおける物質収支
条件
標準系
凝沈系PAC2.5
流出
凝沈系PAC7.5
(%)
凝沈系PAC12.5
流入
凝沈系バンド2.5
凝沈系バンド8.2
凝沈系バンド12.5
原水
標準系
凝沈系PAC2.5
凝沈系PAC7.5
凝沈系PAC12.5
凝沈系バンド2.5
凝沈系バンド8.2
凝沈系バンド12.5
流入
凝集剤
標準系
凝沈系PAC2.5
凝沈系PAC7.5
凝沈系PAC12.5
凝沈系バンド2.5
凝沈系バンド8.2
凝沈系バンド12.5
初沈上澄み水 標準系
凝沈系PAC2.5
凝沈系PAC7.5
凝沈系PAC12.5
凝沈系バンド2.5
凝沈系バンド8.2
凝沈系バンド12.5
流出
凝集沈殿汚泥
標準系
凝沈系PAC2.5
凝沈系PAC7.5
凝沈系PAC12.5
凝沈系バンド2.5
凝沈系バンド8.2
凝沈系バンド12.5
- 70 -
TS
108
114
97
119
101
123
132
TS
100
100
100
100
100
100
100
TS
TS
95
80
73
96
87
88
100
TS
13
35
24
23
14
35
32
SS
80
176
258
249
160
228
263
SS
100
100
100
100
100
100
100
SS
SS
39
55
29
54
78
29
32
SS
41
120
229
194
82
199
232
T-P
103
92
63
90
111
90
89
T-P
100
100
100
100
100
100
100
T-P
T-P
90
64
20
28
69
26
37
T-P
13
27
43
62
42
65
52
C
88
88
48
51
62
76
67
C
100
100
100
100
100
100
100
C
C
65
29
12
20
39
29
24
C
23
59
36
31
23
47
43
N
180
175
95
94
144
148
121
N
100
100
100
100
100
100
100
N
N
152
78
35
43
116
76
60
N
28
96
60
51
28
72
61
Al
119
332
217
173
197
212
181
Al
100
100
100
100
100
100
100
Al
0
101
304
507
101
332
507
Al
71
147
250
440
79
339
390
Al
48
521
627
611
317
577
708
表中に示した。ここでいう流出と
は初沈上澄み水、および汚泥の有
するフラックスのことであり、流
入とは原水および凝集剤の有する
フラックスのことである。
これらの表よりまず、物質収支
の整合性を評価するとTS、および
T-P については各条件において、
それぞれ 97 ~ 132%、および 63 ~
111% であり、ほぼ収支が合って
いたが、SS については凝集剤を
加えると 、流出 / 流入は凝 沈系
PAC2.5 とバンド2.5で170%程度、
凝沈系 PA C 7 . 5 とバンド 8 . 2 で
230% 程度、凝沈系 PAC12.5 とバ
ンド 12.5 では約 250% にまで達し
表 3-3-4 凝沈系 FeCl 3 における物質収支
条件
標準系
流出
(%) 凝沈系FeCl3 11
流入
凝沈系FeCl3 22
凝沈系FeCl3 32
原水
標準系
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3 22
凝沈系FeCl3 32
流入
凝集剤
標準系
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3 22
凝沈系FeCl3 32
初沈上澄み水 標準系
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3 22
凝沈系FeCl3 32
流出
凝集沈殿汚泥
標準系
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3 22
凝沈系FeCl3 32
TS
97
110
94
116
TS
100
100
100
100
TS
TS
79
88
74
90
TS
19
22
20
25
SS
115
151
167
171
SS
100
100
100
100
SS
SS
46
67
29
14
SS
68
83
137
157
T-P
98
88
92
93
T-P
100
100
100
100
T-P
T-P
81
70
13
9
T-P
18
18
79
84
C
78
70
79
89
C
100
100
100
100
C
C
42
27
17
40
C
36
43
62
49
N
98
89
60
122
N
100
100
100
100
N
N
78
61
31
47
N
20
28
29
75
Fe
97
88
101
88
Fe
100
100
100
100
Fe
0
1007
1193
1545
Fe
70
497
277
196
Fe
26
478
1035
1258
ていた。また凝沈系 FeCl311 では
約 150%、凝沈系 FeCl322、FeCl332 では約 170% であった。これは、凝集剤の添加によっ
て DS( 溶解性成分 ) から SS へ転換した物質の影響によるものと考えられた。 また炭素については全体的に約 50 ~ 90% とやや低めの値になった。これは汚泥を長
時間貯留した上に、これは特に夏期に実施したアルミ系凝集剤のケースで低い値を示
したが、実験期間にプラントの設置された場所の温度が40 ℃近くにまで達したことも
あったため、汚泥の分解が進むなどして収支が低くなったと考えられた。また CHN
コーダによる測定は一度湯浴させ、乾燥 (105 ~ 110 ℃で 2 時間程度 ) させた TS 試料に
ついて行っているが、その際有機酸のような低沸点有機化合物などは揮発してしまう
と考えられた。原水や初沈上澄み水は、比較的有機酸への分解が進んでおらず、凝集
沈殿汚泥は含まれる炭素分が一部揮発性有機酸に分解されていると考えられるが、こ
のように物質収支を厳密に把握する場合は、CHN コーダによる測定に加えて、有機酸
を別途測定する、もしくは TOC の測定を併用することが望ましいと考えられた。
また、窒素についても同様に収支のばらつきが大きかったが、揮発しやすいアンモ
ニア性窒素等は CHN における TS 試料の前処理段階で蒸発してしまうと考えられ、窒
素が固形分として存在する割合の多い汚泥についてはある程度測定可能であるが、原
水、初沈上澄み水等アンモニア性窒素の割合が比較的高い試料についてはCHNコーダ
- 71 -
による測定の他に、別途アンモニア性窒素を測定する必要があろう。
Al と Fe についてであるが、Al はほとんどの条件で 200% 前後の値となった。これは、
アルミニウムについては汚泥中に非常に多く含まれる測定結果となったことから、汚
泥の攪拌が不十分で、サンプリング時にアルミニウムを多く含む固形物(Al(OH)3 等)を
採取してしまったこと等が原因として考えられる。また Fe については 90 ~ 105% の値
で収支が良くあっていたといえる。
表 3-3-3、表 3-3-4 を項目ごとに個別に見ていくと、TS と SS に関しては、凝集剤を
加えると凝集沈殿汚泥の量が増加しており、標準系においては TS および SS でそれぞ
れ流入原水負荷の 13 ~ 19%、および 41 ~ 69% であったのに対し、凝沈系 PAC7.5、凝
沈系バンド 8.2、凝沈系 FeCl322 では、TS および SS でそれぞれ 20 ~ 35%、137 ~ 229%
程度であった。特に TS の増加は、SS 成分の増加が原因であると考えられ、この SS 成
分の増加は凝集剤による DS 成分の SS 成分への転換に加えて、沈殿池での SS 除去率が
上昇したことによるものと考えられた。T-P については、標準系においては流入原水中
の T-P の 80 ~ 90% が初沈上澄み水中に流出しているが、凝沈系 PAC7.5、凝沈系バンド
8.2、および凝沈系 FeCl322 においては 10 ~ 30% にすぎなかった。このように凝沈系で
はT-Pが汚泥中に移行する傾向があり、凝集剤添加量が増加するほどその傾向は顕著に
なった。炭素については、ほぼ SS と同様の傾向を示していた。表 3-3-3 における Al に
ついては収支が合っていないので判断しにくいが、標準系では、約 60% が初沈上澄み
水としてリークし、残りの 40%が、汚泥中へ移行した、凝沈系では、全般的に凝集剤
添加量が増加するにつれて、汚泥中に移行する割合、初沈上澄み水として流出する割
合ともに増加傾向にあるが、後者の方が増加率は高い傾向にあり、凝集剤としての効
力を発揮せずにリークしてしまう傾向が見られた。Fe については、標準系では、原水
由来の Fe 成分のうち約 70% が初沈上澄み水として流出し、30% が汚泥中に移行した。
また凝沈系 FeCl311 では流入 Fe( 原水 Fe+ 凝集剤 Fe) のうち 50% が初沈上澄み水として
リークし、残りが凝集沈殿汚泥中に移行した。凝沈系 22 と凝沈系 32 では初沈上澄み水
としてリークする Fe の割合が減少し、流入 Fe の 2 割弱であった。残りの 8 割は凝集沈
殿汚泥中に移行しており、添加量の程度にもよるが、本実験の範囲では Al とは逆に Fe
については添加量が増加すると汚泥中に移行する割合が増加することがわかった。
2) 金属元素の物質収支
凝沈系 FeCl3 の場合のみであるが、別途各条件でのパイロット運転および原水、初沈
上澄み水、凝集沈殿汚泥を全く同様の条件でサンプリングを行って、前凝集プロセス
における金属元素の物質収支を検討した。各金属元素については、アルカリ金属、お
- 72 -
表 3- 3- 5 凝沈系 Fe Cl 3 における主要金属元素の物質収支
条件
標準系
流出
(%) 凝沈系FeCl3 11
流入
凝沈系FeCl3 22
凝沈系FeCl3 32
原水
標準系
流入
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3 22
凝沈系FeCl3 32
初沈上澄み水
標準系
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3 22
凝沈系FeCl3 32
流出
凝集沈殿汚泥
標準系
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3 22
凝沈系FeCl3 32
Mg
97
86
84
110
Mg
100
100
100
100
Mg
94
82
81
103
Mg
3
5
3
7
K
112
86
82
92
K
100
100
100
100
K
110
82
79
86
K
3
4
3
6
Ca
106
88
82
110
Ca
100
100
100
100
Ca
102
84
79
105
Ca
3
5
4
5
Cr
75
191
32
329
Cr
100
100
100
100
Cr
46
153
8
101
Cr
29
38
24
228
Cu
92
131
115
120
Cu
100
100
100
100
Cu
68
70
40
33
Cu
24
61
76
88
Zn
118
93
106
189
Zn
100
100
100
100
Zn
88
74
66
19
Zn
30
19
40
170
Cd
98
118
82
116
Cd
100
100
100
100
Cd
84
77
53
88
Cd
15
41
29
29
Pb
122
119
92
95
Pb
100
100
100
100
Pb
122
97
89
89
Pb
0
22
4
6
よびアルカリ土類金属である Mg、K、および Ca、ならびに重金属である Cd、Cr、Zn、
Pb、および Cu の 8 種類を、Fe、および Al の測定と同時に ICP 発光分析装置 ( 島津製作
所製:ICPS-4960) を用いて測定し、本項の 1) における TS、SS 等の物質収支と同様の
方法で算出した。金属元素の物質収支計算結果を表 3-3-5 に示した。なお、表において
は、流入原水のみの流入負荷分の合計を 100 とし、それに対して、初沈上澄み水と凝集
沈殿汚泥とに配分される負荷の割合を算出した。また、それぞれの条件、および負荷
ごとに流出 / 流入比を算出し表中に示した。
まず、アルカリ、およびアルカリ土類金属の Mg、Ca、および K の傾向であるが、物
質収支は 80 ~ 110% と良くあっていた。これらについてはほとんどが凝集沈殿除去さ
れず、初沈上澄み水中に流出した。原水中のこれらの形態はほとんどが溶解性成分で
あり、凝集沈殿処理の影響をうけにくいことに起因するものと考えられた。
また、Cr に関しては、ばらつきが多い上に、ほとんど物質収支が合っていなかった。
原因としては 3-3-3でも前述したようにCrは硝酸処理で不動態を生成するとされ 18)、前
処理が不適切であったことが影響したと考えられ、今後分解処理方法を検討する必要
がある。
Cu については、物質収支は 90 ~ 130% と比較的あっていた。凝集剤添加量が増加す
るにつれて汚泥への移行の割合が上昇し、凝沈系FeCl332で流入全体の約80%が汚泥中
に移行した。Zn は、凝沈系 FeCl332 の Zn の 189% 以外、収支は 100 ~ 120% と良くあっ
ていた。凝集剤を添加するしないにかかわらず、汚泥中には 20 ~ 40% が移行すること
- 73 -
がわかった。また Cd であるが、収支は 80 ~ 120% と比較的あっており、また凝集剤を
添加しても汚泥中へ移行する割合はそれほど変わらず凝沈系 FeCl3 22、および FeCl3 32
についてもは約 30% が汚泥中に移行するにとどまった。Pb は、凝集沈殿処理の影響を
うけず、ほとんど除去されずに初沈上澄み水に移行することが分かった。
3-3-2 での重金属の濃度測定とあわせて考えると、前凝集プロセスを導入した場合、
Pb 以外の重金属はある程度除去され濃縮された形で汚泥中に移行する。その結果水質
は改善される結果となる。流量で考えると、原水、初沈上澄み水の流量が汚泥の引き
抜き流量に比較して 30 ~ 50 倍であり、初沈上澄み水中へは、除去されずに残った重金
属が希釈された状態で生物処理へ移行していくものと考えられた。
3) 汚泥発生量
前凝集プロセスにおける負の影響として汚泥発生量の増加が考えられる。
そこで本項
1)で得られたSSに関する物質収支の結果から前凝集プロセスにおいて凝集剤添加量が
変化した時の汚泥発生量の推測を行った。表 3-3-3、および表 3-3-4 における SS の流出 /
流入比は、いわゆる凝集剤添加による固形物増加率である。プラントにおける固形物
増加量 S と固形物増加率 R1 は以下の式で示される。
R1 =
S 2 + S3
S1
(3-3-6)
S = (S 2 + S3 ) − S1 (3-3-7)
ただし S :固形物増加量 (kg/day)
R1:固形物増加率 (-)
S1:原水由来の
S3:汚泥として
流出するSS (kg/day)
固形物増加量S(mg/L)
流出するSS (kg/day)
FeCl3:6mgFe/L+ポリマー0.6mg/L
80
流入SS (kg/day)
S2:初沈上澄み水として
FeCl3:23mgFe/L
90
70
60
50
40
30
20
大阪府下水道研究会・高度処理分科会
10
の報告では、濃度の異なる原水をビー
0
0
カーにとり凝集剤を F e C l 3 として、2 3
mgFe/L および 6 mgFe/L +アニオンポリ
50
100
150
200
原水SS濃度(mg/L)
250
300
図 3- 3- 33 原水 SS 濃度と固形物増加量の関係 22)
- 74 -
マー 0.6 mg/L の 2 条件で一定量添
4
加し、添加前と添加後のSS濃度を
加量が一定の場合、前凝集プロセ
スにおける固形物増加量 S は原水
3
固形物増加率R1(-)
3 4 に示されるように凝集剤の添
2.5
2
1.5
1
SS 濃度によらずほぼ一定であり、
0.5
それゆえ (3-3-6) 式から、固形物増
0
加率R1はS1が大きくなっていくと
1 に近づいていくことになるとし
FeCl3:6mgFe/L+ポリマー0.6mg/L
3.5
測定し、固形物増加量を評価して
いるが、図 3-3-33、および図 3-3-
FeCl3:23mgFe/L
0
50
100
150
200
原水SS濃度(mg/L)
250
300
図 3- 3- 34 原水 SS 濃度と固形物増加率の関係 22)
ている 。すなわち、表 3-3-3、お
22)
よび表 3-3-4 における流出 / 流入比は実験時の原水 SS が高ければその値は減少し、低け
れば上昇することを意味しており、原水 SS の変動に対して絶対的なものではない。そ
こで流出 / 流入比を測定した各条件について、図 3-3-35 に原水 SS に対する Me/SS 重量
比 (Me は、凝集剤として添加した Al もしくは Fe の添加量 ) と固形物増加率 R1 の相関を
考え、近似式として直線近似式を考えた。この図から、原水 SS が一定の場合、固形物
増加率 R 1 は凝集剤添加
量が増 加す れば するほ
ど上昇する傾向にあり、
凝沈系バンド
R1=8.15(Me/SS)+1.12
相関係数R=0.88
凝沈系PAC
この近 似式 を用 いて実
4.0
験における Me/ SS 重量
固形物増加率 R 1(-)
可能であると思われる。
凝沈系バンド
凝沈系FeCl3
3.5
比範囲 での 固形 物増加
率 R 1 はおおむね予測が
凝沈系PAC
R1=6.71(Me/SS)+1.20
相関係数R=0.87
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
凝沈系FeCl3
R1=1.56(Me/SS)+1.05
相関係数R=0.77
0.5
0.0
0.00
0.20
0.40
Me/SS重量比
図 3-3-35 固形物増加率 R 1 の予測式
- 75 -
0.60
3-4 濃縮プロセスへの影響
濃縮試験は試料として凝集沈殿汚泥を用い、一般的な重力濃縮のほかに、機械濃縮
法の一つとして、遠心濃縮を想定した遠心濃縮試験を行った。
3-4-1 重力濃縮試験
1) 実験方法と沈降解析理論
凝集沈殿汚泥の重力濃縮特性を把握するため、凝集沈殿汚泥を用いて重力濃縮試験
を行いそれぞれの条件について回分沈降曲線を作成した。重力濃縮試験は、凝集沈殿
汚泥を径 300 mm× 高さ 1000 mm のアクリル製メスシリンダに満たし、攪拌後、汚泥界
面高さを経時的に測定することで、回分沈降曲線を作成した。測定は界面高さが一定
になるまで行った。また凝集沈殿汚泥の固液分離性を評価するために、測定開始後4時
間後に水面から 5 cm の点で上澄み水をサンプリングし、SS を測定した。
ただし、回分沈降曲線を作成して単純に比較したのでは、初期汚泥濃度がそれぞれ
の凝集剤添加量において異なっているため、濃縮性を判断できないので、以下の方法
により回分沈降曲線を用いて沈降速度を算出した 23)、24) 。
シリンダのある高さのところで、図 3-4-1 のような微小厚みの層を考える。この層の
濃度は初期濃度からはじまって、次第に濃くなる。この層を上方から、下方へ粒子を
貫流している。初期濃度の時点よりも、粒子を貫流させる容量の低い層があるとすれ
ば、それはシリンダの底からはじまり、清澄界
面まで移動するはずである。このような微小厚
速度と濃度とを求める方法は Talmage ら 23) によ
れば、以下のようになる。
任意の L 層の固体濃度を一定値 CL とし、この
濃度における粒子の沈降速度をvL とすると、濃
度が低い上方からは vL + dvL なる沈降速度で濃
層の上昇速度U
みの層 (capacity-limiting layer:以下 L 層 ) の沈降
CL-dCL, vL+dvL
Capacity
Limiting
Layer
CL,vL
度 CL-dCL なる粒子が入る。この濃度が一定であ 図 3-4-1 Capacity Limiting Layer と
る層は上方へ U なる速度で移動するので、これ
固形物のマテリアルバランス
を考慮すると、単位面積についてのマテリアル
バランスは次式で与えられる。
(C L − dC L )(v L + dv L + U ) = C L (v L + U ) (3-4-1)
- 76 -
変形し、二次微分項は微小と考えて省略すれば
U = C L
dv L
− v L (3-4-2)
dC L
ここで沈降速度 vL は濃度のみの関数であり、vL=f(c) と仮定すれば、dvL/dCL=f(c)’
とおいて
U = C L f(c)’
−f(c)
(3-4-3)
CL が一定であるから、f(c)、および f(c)’ も当然一定であり、したがって U は一定とな
る。メスシリンダの断面積 S、初期濃度 C0、スラリーの初期高さ z0 とすれば、粒子の全
質量は、C0z0S である。L 層は底から上方に移動して、最後に清澄界面まで達するから、
その間にシリンダ中のすべての固体が、この層を貫流する。濃度 CL の L 層が清澄界面
まで到達するのに必要な時間をθ L とすれば、この層を貫流する粒子の全質量について
は CLS θ L(vL+U) であり、これは C0z0S に等しい。つまり、
C LSθ L (v L + U ) = C 0 z 0S
(3-4-4)
θ L の時の界面の高さを zL とすれば、
Z
U=zL/ θ L であり、これを上式に代入して
次式を得る。
Z0
(3-4-5)
界面高さ
C0 z 0
CL =
(z L + v Lθ L )
ある時間θにおける回分沈降曲線の接
線の勾配は、清澄界面の沈降速度を示す
Zi
ZL
が、この沈降速度は清澄界面に存在する
粒子群の沈降速度、換言すれば、その時
0
間に清澄界面まで到達した L 層の粒子沈
降速度を示している。したがって、図 3-
θL
θ
時間
図 3-4-2 回分沈降曲線から v L を求める方法
4-2 より、
- 77 -
vL =
zi − zL
θL
(3-4-6)
これを、(3-4-5) 式に代入すると
CL =
C0 z 0
zi
(3-4-7)
式 (3-4-6)、および式 (3-4-7) を用い各濃度における粒子沈降速度を求めることがで
きる。
また回分沈降曲線から直接接線を引くと作図方法により接線に誤差が生ずるため、
回分沈降曲線を以下の Roberts の式 25) に近似したものについて解析を行った。
H=Aexp(-kT )+H ∞
(3-4-8)
A:(HC - H ∞ )exp(kTc)
H:圧密点以外の任意の沈降時間における界面高さ (cm)
Hc:圧密点における汚泥界面高さ (cm)
H ∞:無限時間経過後の汚泥界面高さ (cm)
T c:圧密沈降開始時間(min)
T:沈降時間 (min)
k:Roberts 定数
10
2) 実験結果および考察
希釈後汚泥(SS:3608mg/L)
まず上記のような方法が下水汚泥
希釈前汚泥(SS:7138mg/L)
か検討した。プラントから得られた
汚泥 ( 凝集剤無添加 ) に対して界面の
経時変化を測定し、その汚泥を SS 濃
度で約 2 倍に希釈した上で同日中に
沈降速度( cm/min)
の濃縮性を評価するのに適している
1
0.1
再び回分沈降曲線を作成した。それ
らを Roberts 式に近似させ、沈降速度
を求めた結果を図 3 - 4- 3 に示した。
0.01
これらの汚泥は濃度のみが異なると
0
考えられ、上記の仮定が適応できる
5000
10000
汚泥濃度(SS)(mg/L)
ならば、両者のプロットは重なるは
図 3-4-3 粒子群の沈降速度
- 78 -
15000
表 3-4-1 回分沈降曲線の Roberts 式への近似結果
ずである。図より、希釈前汚
泥についてやや沈降速度が
遅い結果となったが、この
程度の差であれば、攪拌の
強度等による実験誤差の範
囲と考えられ、十分汚泥の
濃縮性を判断できると判断
した。
各条件に おける 回分沈降
曲線を付録 4 に、Roberts 式に
近似させた結果を表 3-4-1 に
示した。相関係数 R はすべて
の実験で 0.99 を超えた。な
お、実験開始前に、シリンダ
内で汚泥を均一にするため
攪拌を行ったが、実験開始
直後には。この影響が残っ
ており、粒子の沈降速度は
A
標準系(1)
標準系(2)
標準系(3)
標準系(4)
凝沈系PAC2.5(1)
凝沈系PAC2.5(2)
凝沈系PAC7.5(1)
凝沈系PAC7.5(2)
凝沈系PAC12.5(1)
凝沈系PAC12.5(2)
凝沈系バンド2.5(1)
凝沈系バンド2.5(2)
凝沈系バンド8.2(1)
凝沈系バンド8.2(2)
凝沈系バンド12.5(1)
凝沈系バンド12.5(2)
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3 22(1)
凝沈系FeCl3 22(2)
凝沈系FeCl3 32(1)
凝沈系FeCl3 32(2)
凝沈系FeCl3 53(1)
凝沈系FeCl3 53(2)
91.0
90.3
88.4
95.4
82.3
81.6
79.1
79.2
75.2
76.2
79.0
80.3
75.1
76.2
74.3
72.1
83.2
43.6
74.5
70.9
84.3
72.9
68.1
k
0.137
0.147
0.136
0.169
0.0708
0.0504
0.00829
0.00634
0.00259
0.00242
0.0438
0.0317
0.00535
0.00634
0.00308
0.00106
0.0209
0.00555
0.00834
0.00174
0.00132
0.00173
0.00550
H∞(cm)
16.2
15.3
15.1
13.9
21.3
23.0
25.9
23.4
28.1
28.0
24.2
23.0
28.6
23.4
29.3
30.6
19.7
57.7
27.5
30.5
15.7
28.2
34.1
相関係数:R
0.992
0.998
0.991
0.993
0.997
0.999
0.994
0.998
0.992
0.991
0.998
0.997
0.998
0.991
0.993
0.992
0.998
0.982
0.995
0.998
1.000
0.999
0.997
遅くなっていると考えられたため、近似させるときには、T=0、H=100 の点は計算に入
れなかった。そのため、T=0 に対応する A+H ∞の値は、凝沈系バンド 8.2 の 1 条件を除
いて、全て 100( シリンダ高さ ) を超えた。近似の結果、凝集剤の添加量が増加するにし
たがって、Roberts 定数の値
が小さくなっており、界面
標準系(1)
標準系(2)
標準系(3)
標準系(4)
凝沈系PAC2.5(1)
凝沈系PAC2.5(2)
凝沈系PAC7.5(1)
凝沈系PAC7.5(2)
凝沈系PAC12.5(1)
凝沈系PAC12.5(2)
混合汚泥(文献値)
10
沈降速度が減少したことに
影響があるためにこの数値
だけからは凝集剤を添加す
ることによる直接的な影響
沈降速度(cm/min)
なるが、汚泥の初期濃度の
1
0.1
は評価できない。そこで式
(3-4-6)、および式 (3-4-7) を
用いて、汚泥濃度と粒子の
0.01
0
5000
沈降 速度 の 関係 を 計算 し、
PAC の場合、硫酸バンドの
10000
15000
20000
25000
30000
汚泥SS濃度(mg/L)
図 3-4-4 凝沈系 PAC における粒子沈降速度
- 79 -
場合、および FeCl3 の場合をそ
標準系(1)
標準系(2)
標準系(3)
標準系(4)
凝沈系バンド2.5(1)
凝沈系バンド2.5(2)
凝沈系バンド7.5(1)
凝沈系バンド7.5(2)
凝沈系バンド12.5(1)
凝沈系バンド12.5(2)
混合汚泥(文献値)
10
れぞれ図 3-4-4、図 3-4-5、お
重力濃縮試験においては、基
本系に相当する混合汚泥 ( 初
沈汚泥+余剰汚泥 ) の評価を
沈降速度(cm/min)
よび図 3-4-6 に示した。また、
1
0.1
行っていないため、同じく鴻
池処理場の汚泥を対象に、本
研究での重力濃縮実験と同様
0.01
0
5000
の実験を行った文献から 22) 、
10000
15000
20000
25000
30000
汚泥SS濃度(mg/L)
その 結 果を 同 様 に各 図 にプ
図 3-4- 5 凝沈系バンドにおける粒子沈降速度
ロットした。なお、この文献
は、凝集剤として FeCl3 を用い
標準系(1)
標準系(3)
凝沈系FeCl3 22(1)
凝沈系FeCl3 32(1)
凝沈系FeCl3 53(1)
混合汚泥(文献値)
凝沈系FeCl3 6+ポリマー0.6(文献値)
添加量 23 mgFe/L、および 6.0
mgFe/L+ ポリマー 0.6 mg/L の
ケースにおいても行っており、
標準系(2)
標準系(4)
凝沈系FeCl3
凝沈系FeCl3
凝沈系FeCl3
凝沈系FeCl3
22(2)
32(2)
53(2)
23(文献値)
10
比較のため に図 3 - 4 - 6 にプ
ロットした。
いて比較してみると、まず、
混合汚泥のケースは、標準系
に比較して沈降速度がわずか
に減少する傾向が見られた。
沈降速度(cm/min)
これらの図から各条件につ
1
0.1
さらに、純粋な凝沈系におい
てはいずれの凝集剤を用いた
時で も 凝集 剤 を 添加 す るほ
0.01
0
5000
ど、粒子の沈降速度は同濃度
の条件で徐々に減少している
10000
15000
20000
25000
30000
汚泥SS濃度(mg/L)
図 3-4-6 凝沈系 FeCl 3 における粒子沈降速度
ことが分かった。ただし、凝
沈系 FeCl353 のみについては沈降速度が上昇する傾向がみられた。
標準系に対して凝沈系では粒子の沈降速度が減少する。例えば汚泥濃度 10,000 mg/L
で考えると標準系全般で約 1.0 cm/min 弱であるのに対して、凝沈系では PAC2.5、およ
び 7.5、ならびにバンド 2.5、および 8.2 で約 0.5 cm/min まで減少し、特に凝沈系 FeCl322
- 80 -
や、凝沈系 FeCl323( 文献値 ) で約 0.1 cm/min にまで減少していた。ここで、ストークス
領域では、粒子終末速度は以下の式で示される。
u=
(ρ p − ρ)g
18μ
2
Dp (3-4-9)
u:粒子の終末速度 (m/s)
ρp:粒子密度 (kg/m3)
ρ:流体密度 (kg/m3)
μ:流体の粘性係数 (Pa・s)
Dp:粒子径 (m)
g:重力加速度 (m/s2)
本研究では、汚泥の粘性、粒子の密度等は測定しなかったが、標準系と凝沈系で同じ
値を用い、粒子同士の干渉も少ないと仮定すれば 26)、凝沈系では汚泥の粒径分布が小さ
いほうに移行していると推
測された。なお、凝沈系
FeCl3 -6.0 +ポリマー 0.6 に
関しては、混合汚泥と同程
度の沈降速度が得られてお
り、凝集剤添加量を抑え、高
分子凝集剤を添加 ( 二液薬
注 ) することで、純粋な凝沈
系 ( 一液薬注 ) よりも重力濃
縮性が改善されることが明
らかとなった。
また重力濃縮試験を固液
分離性からも評価するた
め、実験開始時の4時間後の
上澄み水 S S を測定した結
果を表 3-4-2 に示した。この
結果から、標準系全般で上
澄み水 SS は 120 ~ 180 mg/L
表 3-4-2 重力濃縮試験による SS 回収率
標準系(1)
標準系(2)
標準系(3)
標準系(4)
凝沈系PAC2.5(1)
凝沈系PAC2.5(2)
凝沈系PAC7.5(1)
凝沈系PAC7.5(2)
凝沈系PAC12.5(1)
凝沈系PAC12.5(2)
凝沈系バンド2.5(1)
凝沈系バンド2.5(2)
凝沈系バンド8.2(1)
凝沈系バンド8.2(2)
凝沈系バンド12.5(1)
凝沈系バンド12.5(2)
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3 22(1)
凝沈系FeCl3 22(2)
凝沈系FeCl3 32(1)
凝沈系FeCl3 32(2)
凝沈系FeCl3 53(1)
凝沈系FeCl3 53(2)
であったが、凝沈系におい
- 81 -
SS(mg/L)
上澄みSS(mg/L)
3800
180
4000
140
3400
160
2300
120
5100
91
5300
100
9800
64
9200
71
9200
10
11000
16
4100
86
5100
97
8200
52
9200
43
9100
23
10000
18
4000
71
4800
73
5300
47
5800
50
4800
85
10000
3.1
6100
7.3
SS回収率(%)
95.3
96.5
95.3
94.9
98.2
98.1
99.3
99.2
99.9
99.9
97.9
98.1
99.4
99.5
99.8
99.8
98.2
98.5
99.1
99.1
98.2
100.0
99.9
ては、すべての凝集剤で、凝集剤添加量が増加するにつれ上澄み SS は減少し、SS は
100 mg/L 以下となった。もともとの汚泥濃度を C0(mg/L) とし、上澄み SS を Cs(mg/L) と
して、重力濃縮における SS 回収率 rg (%) を以下の式で定義すると、SS 回収率について
は、標準系で 95% 程度であるのに対して凝沈系では 98% 以上の回収率が得られ、固液
分離性が上昇した。
rg = (1 −
Cs
) × 100 (3-4-10)
C0
重力濃縮槽からの返流水に関しては、第 2 章で述べた、鴻池処理場の年間物質収支調
査によると、当該処理場の初沈重力濃縮槽からの返流水 TS は、初沈汚泥 TS 濃度の約
65% であり、汚泥が浮上し、越流するなどの原因で固液分離が十分に行われていない
ことがわかっている。重力濃縮実験中に標準系については、データとしては示してい
ないが、一定期間 (1 日程度 ) を過ぎると、沈降、圧密された汚泥が反転し、シリンダの
上部を覆った ( 汚泥が腐敗して、気泡を発生したためと考えられた。) のに対し、凝沈
系全般では、この現象は見られなかった。この点からは前凝集プロセスの導入により、
汚泥の越流もおこりにくく、濃縮槽返流水の水質が大幅に改善されることが示唆され
た。
3-4-2 遠心濃縮試験
1) 実験方法
重力濃縮試験と同様の試料を用い、以下に示す遠沈管試験方法 27) で実験を行い、遠
心濃縮性を判断した。
① 試験検体の TS(A(mg/L))を求める。
② 50 mL の遠沈管 4 本に検体を 50 mL ずつ採取する。
③ 遠心分離器で所定の遠心効果(G=1500)を得られるように回転数2800 rpmに設定し、
卓上遠心分離器 (CENTRIFUGE 05P-22: 日立製作所製 ) を用いて、60 秒間遠心分離する。
遠心分離器の分離時間 (60 秒間 ) は立ち上がり、および停止間での時間は除くものとす
る。
④ 4本の遠沈管をデカントして、上澄み水をメスシリンダに採取して平均の上澄み水
量 (V(mL)) を求める。
⑤ ④で採取した上澄み液の TS(B(mg/L)) を測定する。
⑥ 濃縮汚泥濃度 (C(mg/L))、および濃縮倍率 (D) を算出する。
なお濃縮汚泥濃度 (C(mg/L))、および濃縮倍率 (D) の算定には以下の式を用いた。
- 82 -
表 3-4-3 遠心濃縮試験結果まとめ
(A × 50 − B × V)
(50 − V )
(3-4-11)
C
D=
A
試料
汚泥濃度
(mg/L)
C=
標準系(1)
標準系(2)
標準系(3)
標準系(4)
凝沈系PAC2.5(1)
凝沈系PAC2.5(2)
凝沈系PAC7.5(1)
凝沈系PAC7.5(2)
凝沈系PAC12.5(1)
凝沈系PAC12.5(2)
凝沈系バンド2.5(1)
凝沈系バンド2.5(2)
凝沈系バンド8.2(1)
凝沈系バンド8.2(2)
凝沈系バンド12.5(1)
凝沈系バンド12.5(2)
凝沈系FeCl 311
凝沈系FeCl322(1)
凝沈系FeCl322(2)
凝沈系FeCl332(1)
凝沈系FeCl332(2)
凝沈系FeCl353(1)
凝沈系FeCl353(2)
2) 結果および考察
遠心濃縮試験の結果を表 3-4-3 に示し
た。汚泥濃縮倍率は標準系が最も高く10
~ 2 5 倍に濃縮されていた。凝沈系は、
PAC、および硫酸バンドについては全体
的に濃縮倍率が減少する傾向にあった
が、双方とも凝沈系の PAC2.5、およびバ
ンド 2.5 の場合が濃縮汚泥濃度、および
濃縮倍率ともに一部上昇する傾向がみら
6500
12000
4100
2900
24000
13000
9700
6400
7900
7300
3400
8400
12000
8800
11000
11000
4600
9100
6700
6600
7700
11000
7600
遠心濃縮
汚泥濃度
(mg/L)
濃縮
倍率
(-)
75000
130000
100000
63000
92000
180000
64000
52000
37000
30000
65000
230000
66000
54000
61000
45000
44000
72000
72000
49000
44000
97000
87000
11.5
10.8
24.4
21.7
3.8
13.8
6.6
8.1
4.7
4.1
19.1
27.4
5.5
6.1
5.5
4.1
9.6
7.9
10.7
7.4
5.7
8.8
11.4
れた。図 3-4-7 には各条件において初期
汚泥濃度と濃縮汚泥濃度との関係をグラフにして示した。細実線は濃縮倍率 5 倍を、太
実線は濃縮倍率 10 倍を、破線は濃縮倍率 20 倍の直線を示す。また、濃縮試験において
は、基本系に相当する混合汚泥 ( 初沈汚泥+余剰汚泥 ) の評価を行っていないため、同
じく鴻池処理場の汚泥を対象に、本研究での遠心濃縮実験と同様の実験を行った文献
から 22)、その結果を同様にプロットした。
標準系
凝沈系PAC
凝沈系バンド
凝沈系FeCl3
凝沈系FeCl3 23(文献値)
混合汚泥(文献値)
凝沈系FeCl36+ポリマー0.6(文献値)
なお、この文献では、凝集剤として FeCl3
を用い添加量23 mgFe/L、
および6.0 mgFe/L+
ており、比較のために同様にプロットし
た。
このグラフからは凝集剤添加量による
影響はわからないが、凝集剤の種類によ
る影響が示されている。すなわち、主に
アルミ系凝集剤や混合汚泥 ( 文献値 ) は、
遠心濃縮汚泥濃度(mg/L)
250000
ポリマー0.6 mg/Lのケースにおいても行っ
濃縮倍率が 5 ~ 10 倍の範囲に多く分布
200000
150000
100000
50000
0
0
し、また FeCl3 の場合は文献値の FeCl323
5000 10000 15000 20000 25000
試料汚泥濃度(mg/L)
図 3-4-7 遠心濃縮試験結果
を含めて、10 倍の濃縮倍率を示す太実線
- 83 -
付近に、また標準系、および凝沈系 FeCl3-6.0+ ポリマー 0.6 は濃縮倍率が 10 ~ 20 倍の
範囲に分布していた。このことから、標準系に比べると通常の凝沈系汚泥は遠心濃縮
しにくいが、FeCl3 の凝集沈殿汚泥がアルミ系の凝集沈殿汚泥や混合汚泥よりも濃縮し
やすいと考えられる。また、凝沈系 FeCl3-6.0 +ポリマー 0.6 に関しては、標準系と遠心
濃縮性がほぼ同様であると考えられ、無機凝集剤に加えて、ポリマーを併用し、二液薬
注を実施することで遠心濃縮性が高くなるものと考えられる。
本研究での遠沈管試験は、1500G、1min という条件で行ったが、式 (3-4-9) で示したス
トークスの式から、重力試験と比較すると、粒子の沈降速度は 1500 倍になると考える
ことができる。重力試験による界面沈降速度と、遠沈管内試料の液面高さ ( 約 8cm) か
ら考えて、濃縮汚泥濃度を決定するのは粒子の沈降過程より圧密過程の方が支配的で
あろうと推測された。この場合圧密応力は、粒子に働く重力であるので、当然汚泥の
SS としての濃度が高いほうが大きくなる。全体的な傾向として、表 3-4-3 から、凝沈
系の初期汚泥濃度が高かったにもかかわらず、濃縮汚泥濃度がほぼ同等か、凝沈系の
汚泥の方が低いということは、凝沈系の汚泥は圧密しにくい汚泥であるといえる。こ
の原因は粒子径が小さいため圧密応力が低いか、汚泥の比抵抗が大きいためと考えら
れた 28)、29) 。
3-5 リン溶出試験
実験用プラントの設置された鴻池処理場における実機プラント物質収支調査 ( 第 2 章 )
によると、当該処理場においてリンは汚泥処理の際に返流の割合が高く、流入生下水
の約 3.5 倍となる結果であった。前凝集プロセスを導入した場合にもこのような問題が
生じるかどうか検討する必要
がある。そこで凝集剤の添加
により、不溶性の化合物
(FePO4 や AlPO4等 )として固定
化されたリンが、嫌気雰囲気
下で再溶出されるかどうかを
実験により検討した。
発生ガストラップ
3-5-1 実験方法
実験装置の概略を図 3-5-1
攪拌子
N2ガスボンベ
マグネチックスターラー
に示した。実験方法は、貯留
してある凝集沈殿汚泥とは別
図 3-5-1 リン溶出試験実験装置
- 84 -
に、凝集沈殿汚泥をポンプで引き抜き、でき
12
るだけ新鮮な状態を優先させ、汚泥濃度を
三角フラスコに入れ、高純度窒素ガス (N2:
ZERO-A) を吹き込むことでフラスコ内を嫌
気状態にし、スターラーで汚泥を攪拌した。
10
S-T-P濃度(mgP/L)
約 2000 mg/L に統一して行った。汚泥は 1L の
この汚泥を 12 時間毎にサンプリングし、溶
8
標準系
基本系
6
凝沈系PAC2.5
凝沈系PAC7.5
4
凝沈系PAC12.5
2
解性全リン (S-T-P) の濃度を測定した。サン
0
プリング、測定は攪拌開始後 48 時間後まで
0
20
40
60
経過時間(h)
計 5 回行った。
図 3-5-2 リン溶出試験結果(PAC)
3-5-2 リン溶出試験結果
12
凝集沈殿汚泥に対し、嫌気性状態で汚泥
集剤の影響を検討するため、リン溶出試験
を行い、S-T-P を経時的に測定した。標準系
については凝集剤を添加せずにパイロット
S-T-P濃度(mgP/L)
中に取り込まれたリンの再溶出に対する凝
10
8
標準系
基本系
6
凝沈系バンド2.5
凝沈系バンド8.2
4
プラントで得られた汚泥をそのまま用いた
2
場合であるので、実機プラントにおける初
0
凝沈系バンド12.5
0
沈汚泥を想定したものであり、基本系につ
20
40
60
経過時間(h)
いては、標準系の汚泥と別途、鴻池処理場で
図 3 - 5 - 3 リン溶出試験結果(バンド)
得られた標準活性汚泥法での余剰汚泥を固
形物比 1:1 で混合したものであり、混合生
12
汚泥を想定している。PAC を添加した場合
バンドを添加した場合を図 3-5-3 に、FeCl3 を
添加した場合を図 3-5-4 に、それぞれ標準
系、基本系ともに示した。また汚泥毎に、リ
10
S-T-P濃度(mgP/L)
の S-T-P 濃度の経時変化を図 3-5-2 に、硫酸
標準系
基本系
凝沈系FeCl3
凝沈系FeCl3
凝沈系FeCl3
凝沈系FeCl3
8
6
11
22
32
53
4
ン濃度が異なるため、各時間における S-T-P
濃度のもともとの汚泥中 T-P 濃度に対する
割合を、リン溶出率とし、表 3-5-1 に示した。
なお全ての実験で汚泥の ORP は - 181mV ~
-350mV であり、フラスコ内は嫌気性雰囲気
- 85 -
2
0
0
20
40
60
経過時間(h)
図 3-5-4 リン溶出試験結果(FeCl 3 )
表 3-5 -1 リン溶出試験によるリン溶出率(% )
経過時間(h)
対象汚泥
T-P(mgP/L)
標準系
0
16.0
12
27.7
24
35.0
36
45.7
48
45.6
基本系
18.8
31.4
32.3
34.0
35.6
30.3
24.9
凝沈系PAC2.5
1.01
1.50
1.54
1.65
1.63
81.6
凝沈系PAC7.5
0.252
0.595
0.584
0.422
0.455
92.4
凝沈系PAC12.5
0.104
0.334
0.230
0.104
0.313
95.7
凝沈系バンド2.5
1.75
2.30
2.15
1.99
1.84
65.2
凝沈系バンド8.2
0.376
1.02
0.915
0.915
1.32
98.4
凝沈系バンド12.5
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3 22
凝沈系FeCl3 32
0.109
0.381
0.702
0.890
0.355
0.109
1.95
1.12
1.05
0.438
0.109
2.36
1.59
1.35
0.656
0.328
5.19
1.88
1.56
0.679
0.219
3.54
2.44
1.58
0.737
91.4
75.0
54.9
89.8
80.3
凝沈系FeCl3 53
あることを確認している。
まず、図 3-5-2 ~図 3-5-4 においては、0 時間のデータはもともとの汚泥中における
S-T-P 濃度を示すが、標準系で約 4 mgP/L、基本系で約 8 mgP/L 存在しているのに対し、
全般的に凝沈系では、1 mgP/L 以下であり、また表 3-5-1 における 0 時間のリン溶出率
も、標準系、基本系で 16 ~ 19% であったが、凝沈系では 2% 以下であり、凝集剤添加
によって、リンが不溶化されていることが示された。実験時間の経過とともに、標準
系および基本系においては嫌気性状態でリンの溶出がみられ、48 時間後には S-T-P で
汚泥中の T-P の約 35 ~ 45% になった。凝沈系の PAC2.5、バンド 2.5、および FeCl311 で
は、リン濃度は標準系に比べ顕著に抑えられ、36 時間後には S-T-P で約 4.0 mgP/L 以下
に抑えられた。凝集剤添加量では、凝沈系の PAC7.5、バンド 8.2、および FeCl332 以上
で、T-P の値が増加しているのにもかかわらず S-T-P 濃度は低く溶出が抑えられている
ことがわかった。これは添加した凝集剤の Al、または Fe が、汚泥中でリンを AlPO4、も
しくはFePO4の形で固定していることによるものと考えられる。
すなわち標準系や基本
系においてはリンを固定化する Al や Fe がわずかであり、嫌気性雰囲気下でリンの溶出
がおこってしまったものと考えられた。この試験により、リン再溶出に対する凝集剤
添加の優位性が示され、嫌気性状態により溶出したリンが返流水として戻ってくると
いうような問題が解決できるものと考えられる。
3-6 脱水プロセスへの影響
汚泥の脱水は機械脱水が主流で、鴻池処理場では 2000 年まで、FeCl3 と石灰を凝集剤
として用いる真空脱水方式を採用していたが、現在は、高分子凝集剤 ( 以下ポリマー )
- 86 -
を用いるベルトプレス脱水を行ってい
る。1990 年代に入ってからは、高分子
エ ア ーシ リン ダ
凝集剤 ( 以下ポリマー ) を用いる遠心脱
ビ ー カー
水やベルトプレス脱水方式を採用する
ろ過筒
処理場が多い傾向にある 。そこで、本
30)
試 料 汚泥
ろ布
研究では脱水試験として、図 3-6-1 に示
す簡易脱水試験機を用いてベルトプレ
メ ス シリ ンダ
ス脱水方式を想定した脱水試験を行っ
た。
図 3-6-1 BP 脱水試験装置
3-6-1 実験方法
試料としては沈殿汚泥貯留タンクに貯留した汚泥を、さらに 1 日程度重力濃縮させ、
上澄み水を除いて TS を 1% ~ 3% にした濃縮汚泥を用いた。実験方法を図 3-6-2 に示し
た。なお実験に用いたポリマーは、電荷性が異なるもの 3 種類を使い分け、表 3-6-1 に
詳細を示した。ポリマー注入率は汚泥の TS に対して基本的に 1% 前後で 3 段階に変化
させた。なお凝沈系汚泥の比較対照としてパイロットプ
ビーカーに500mLの試料汚泥をとる
ラントにおいて、凝集剤を添加せずに得られた汚泥:標
準系、標準系の汚泥と鴻池処理場の余剰汚泥とを固形物
比 1:1 で混合した汚泥:基本系、を使用した。脱水試験
終了後には得られた脱水ケーキの含水率を下水試験方法
3)
試料汚泥に有機高分子凝集剤を
汚泥中の固形物量に応じて注入する
ジャーテスタで攪拌混合後形成された
凝集フロックの粒径を目測で判定する
簡易脱水試験機のろ布上においたろ過筒
に試料を注ぐ(t=0min)
に従って測定した。
また、ポリマーを加えた後のフロック汚泥に対し CST
値を測定した。この CST は脱水しやすさの指標に用いら
れ、毛細管現象より汚泥中の水分が一定量ろ紙に浸透さ
れるのに要する時間として定義される。実験に用いた
CST 測定装置(TYPE165:TRITON electronics Ltd.)の概略
表 3 - 6 - 1 脱水試験に用いた高分子凝集剤
重力脱水過程
注ぐと同時にろ過時間毎のろ液量を記録していく
圧搾脱水過程
ろ過筒内に重しを入れ、ろ過時間とともに
段階的にエアシリンダで加圧する
0.5kg/cm2で(t=1~2min)
1kg/cm2 で(t=2~4min)
2kg/cm2 で(t=4~6min)
3kg/cm2 で(t=6~8min)
4kg/cm2で(t=8~10min)
加圧中、経過時間ごとにろ液量を測定する
T=10minでエアシリンダを上げ
重しをろ過筒からはずす
種別
成分系
電荷性
分子量(×万)
A
ポリアミジン系
カチオン
300~400
B
ポリアミン系
両性カチオン
400
C
メタクリル酸エステルとアクリル酸と
アクリルアミドの共重合物
両性
400
ろ液の清澄度、ケーキの剥離性、ろ布から
の染み出し具合を(5段階:5から順に良~悪)
を観察により測定する
できた脱水ケーキの含水率を測定する
図 3-6 -2 脱水試験方法
- 87 -
図を図 3-6-3 に示した。操作としては、ろ紙の
01 2 3
中央にシリンダをセットし、そこに汚泥を注
入する。毛細管現象により、ろ液がろ紙に吸収
され湿潤域が AA’ に達すると、カウンターが作
動し始め B に達するとカウンターが停止する。
試料汚泥
シリンダ
B
この間の時間を CST 値 (sec) といい、小さいほ
A
A'
ど脱水性がよいとされる 31)、32) 。
ろ紙
カバー
台
さらに脱水試験で生じた脱水ろ液について
は、水質分析を行った。測定項目は SS、T-P の
2 項目である。測定方法は水質・成分分析と同
様に主に下水試験方法 3) に基づいて行った。
試料汚泥
シリンダ
ろ紙
電極
カバー
3-6-2 脱水試験結果
A B
台
脱水実験結果をケーキ含水率、ろ液 SS、ろ液
T-P、および CST について、凝集剤毎に表 3-6-
図 3-6-3 CST 測定装置
2 に示した。表で空欄が存在するのはポリマーが適合せず、注入後に汚泥フロックが形
成されずスラリー状であったので脱水が不可能であった場合を示している。
標準系については凝集剤を添加せずにパイロットプラントで得られた汚泥をそのまま
用いた場合であるので、実機プラントにおける初沈汚泥の脱水を想定したものという
ことになる。また、基本系については、標準系の汚泥と別途、鴻池処理場で得られた
標準活性汚泥法での余剰汚泥を固形物比 1:1 で混合したものであり、混合生汚泥の脱
水を想定している。
凝沈系については前凝集プロセスによりほとんどの固形物は最初沈殿池で除去され、
凝集剤添加によりその量が増加するため、余剰汚泥はほとんど発生しないか、発生し
て凝集沈殿汚泥と混合してもその性状は凝集沈殿汚泥の影響が支配的になると考え、
そ
のままの汚泥を用いた。
表 3-6-2 より適合ポリマーの種類については、標準系、および基本系においてはカチ
オンポリマーが最も適合していた。一般に下水中の粒子は負に帯電しているとされ負
の荷電量が大きいと粘質物量が多く脱水性に乏しくなるといわれている32)、そのため正
の電荷をもつカチオンポリマーにより良好に脱水できたと考えられた。凝集剤として
PAC、あるいは硫酸バンドを用いた場合は、凝集剤添加量が少ない場合は、両性カチオ
ンポリマー、多くなると両性ポリマーが適合した。FeCl3 を用いた場合についても凝集
剤添加量が上昇するにつれて両性ポリマーが適合した。
- 88 -
- 89 87
58
両性
85.6
84.1
0.62
85.3
0.49
0.92
85.2
76.9
0.92
カチオン
90.8
1.23
0.62
75.4
0.92
両性
77.7
87.8
0.62
0.31
105
219
553
202
343
667
145
161
843
SS
カチオン
ろ液
含水率
2.4
9.1
9.1
3.4
3.5
3.3
4.8
5.1
2.3
2.9
5.8
4.5
TP
ろ液
凝沈系FeCl3 11
89.2
88.9
1.46
1.94
0.68
0.97
1.46
1.46
1.94
2.43
0.97
49
3.9
1.11
77.7
73
1.6
9
10.3
12
14.2
9.2
4.4
3.6
2.2
4.1
CST
1.31
82.6
42
0.8
凝沈系PAC7.5
添加率 ケーキ ろ液 ろ液
含水率 SS
TP
0.70
87.3
78
1.1
1.01
86.8
102
2.2
1.31
86.2
99
2.2
0.70
85.6
31
1.5
1.01
88.4
24
1.7
1.31
89.1
56
1.6
0.70
84.1
32
2.1
1.01
85.3
34
1.0
2.7
3.0
6.3
5.1
1.2
13.9
3.7
1.6
10.6
CST
9.5
19.9
1.32
1.02
0.71
1.32
1.02
0.71
1.32
1.02
0.71
80
138
8.1
10.2
83.8
83.5
85.3
85.7
87.0
86.9
87.6
含水率
90
209
278
391
211
174
212
SS
ろ液
1.7
1.7
1.7
2.2
1.7
1.8
1.8
TP
ろ液
凝沈系 FeCl3 22
74.8
75.6
添加率 ケーキ
0.93
0.75
7.7
3.8
10.2
10.3
21.0
45.0
2.5
10.2
9.4
CST
11.8
13.4
51
59
1.00
1.50
1.00
0.50
2.50
2.00
1.50
2.00
1.50
83.3
85.2
87.2
79.3
78.9
80.3
78.0
80.1
82.1
含水率
84
210
2153
148
142
221
163
480
798
SS
1.0
1.2
1.28
1.7
5.1
0.7
0.6
1.7
1.3
2.6
4.3
TP
ろ液
凝沈系FeCl3 32
82.6
86.8
添加率 ケーキ ろ液
0.77
0.51
基本系
凝沈系バンド2.5
凝沈系バンド8.2
ケーキ ろ液 ろ液 CST 添加率 ケーキ ろ液 ろ液 CST 添加率 ケーキ ろ液 ろ液
含水率 SS
TP
含水率 SS
TP
含水率 SS
TP
91.1
236
8.8 12.1
0.47
75.3
68
2.1
9.2
0.52
84.8
88
7.9 10.5
0.75
75.9
66
5.6 10.3
1.03
88.0
79
9.0
5.9
0.93
71.2
39
3.4
8.8
1.54
81.1
197 10.1 11.4
0.47
80.7
120
6.4 20.6
0.26
85.2
80
8.7
5.1
0.75
79.7
143
6.1 23.7
0.52
83.2
90
8.9
5.6
0.93
78.2
65
7.0 16.58
0.77
88.5
157
2.5
90.1
216
9.9
10
0.47
78.1
89
1.5
8.1
0.26
87.9
208
3.4
62.1
ポリマー 添加率 ケーキ
両性
両性
カチオン
カチオン
ポリマー 添加率
0.73
標準系
凝沈系PAC2.5
ポリマー 添加率 ケーキ ろ液 ろ液 CST 添加率 ケーキ ろ液 ろ液
含水率 SS
TP
含水率 SS
TP
0.20
63.6
174
3.7 10.5
0.60
81.1
77
1.8
カチオン
0.46
62.5
19
2.6
1
0.85
81.6
135
2.0
0.73
65.4
31
2.9
2.7
1.28
83.0
219
3.0
両性
0.20
67.2
223
3.9
4
0.51
80.4
75
3.8
カチオン
0.46
64.2
37
2.6
3.7
1.03
74.2
65
1.3
0.73
64.1
43
3.0
2.9
1.54
75.8
30
1.1
0.20
64.5
412
5.3 14.2
0.43
83.4
49
1.4
両性
0.46
62.9
182
3.2
4.5
0.85
81.0
64
1.4
18.4
20.4
30.2
5.0
4.4
5.9
8.3
7.2
11.8
CST
4.3
3.8
30.7
23.8
21.7
21.1
20.3
9.4
10.1
CST
5.4
9.3
9.7
10.1
2.1
2.2
41.9
8.7
7.1
CST
88.1
73
0.59
1.76
1.18
0.82
1.76
1.18
0.82
1.76
1.18
0.7
1
9
4
13
43
0.5
0.4
0.5
0.6
0.8
89.9
85.8
89.9
89.1
84.1
87.7
83.2
含水率
34
52
411
80
6330
99
6270
SS
0.1
0.1
0.2
0.1
2.3
0.3
0.9
TP
ろ液
凝沈系FeCl3 53
86.0
83.7
89.4
88.7
87.6
凝沈系バンド12.5
ケーキ ろ液 ろ液
含水率 SS
TP
84.7
58
2.0
84.5
66
1.1
84.6
34
0.7
添加率 ケーキ ろ液
0.81
0.65
0.40
0.65
0.81
0.40
0.65
0.81
0.40
添加率
1.30
凝沈系PAC12.5
添加率 ケーキ ろ液 ろ液
含水率 SS
TP
0.70
1.00
1.30
0.70
90.2
575
1.1
1.00
88.6
65
0.3
1.30
88.6
30
1.1
0.70
1.00
87.6
64
0.6
(添加率:%TS、ケーキ含水率:%、ろ液 SS、T-P:mg/L、CST:sec)
表 3 - 6 - 2 ベルトプレス脱水試験結果
2.2
2.2
8.5
6.1
16.8
7.4
15.2
CST
2.2
6.3
8.4
7.8
9.4
19.7
5.2
5.4
2.8
CST
9.2
28.3
22.1
18.2
0.7
1.4
1.6
17.8
6.9
CST
凝集剤が添加されると負に帯電している粒子の電荷が、正イオン (Fe3+、Al3+) により
中和されるため、凝沈系については両性カチオンや両性ポリマーが適合したと考えら
れた。
比較的新しい汚泥の濃縮方法である造粒濃縮法は、汚泥の調質にアルミニウム塩や
鉄塩を用い、まず負に帯電している汚泥粒子を中和、変質させる。反応させるカチオ
ン物質の分子量が小さいと、カチオンは汚泥粒子の細部にまで反応しやすいため、そ
の分荷電中和しやすいと考えられ、このことから荷電中和のためだけにはアルミニウ
ム塩や鉄塩が最も優れていると考えられる。その後、ポリマー中にカチオン部とアニオ
ン部を併せ持つ両性ポリマーにより架橋反応 ( フロック形成 ) を行う 33)。造粒濃縮法は
汚泥に対し鉄塩やアルミニウム塩の添加を行っているのに対し、
前凝集プロセスは汚泥
処理の前段で原水に凝集剤の添加を行っているのでまったく同様には考えられないが、
これと同様のことが凝集沈殿汚泥の脱水についても考えられる。 凝集沈殿汚泥は前凝集プロセスの時点で凝集剤により荷電中和、変質された汚泥で
あるゆえ、両性ポリマーや両性カチオンポリマーが適合するものと考えられた。
表 3-6-3 には、表 3-6-2 より各条件で最適なものを選定しまとめて示した。ここで最
適なものとは、できるかぎり、(1) ポリマー注入率が低いこと、(2) 含水率が低いこと、
(3) ろ液の SS、および T-P が比較的低いこと、ならびに (4)CST が小さいことの 4 つの観
点から選定した。
表 3-6-3 から、まず含水率で評価すると、標準系が最も低く約 63% の値を示した。こ
れはパイロットプラントで得られた無薬注汚泥のみの脱水であるが、実機プラントに
置き換えれば初沈濃縮汚泥に相当する。初沈汚泥と余剰汚泥を比較すると前者のほう
表 3 - 6 - 3 ベルトプレス脱水試験結果のまとめ
添加率 含水率
(%)
(%)
0.46
62.5
条件
適合ポリマー
標準系
カチオン
基本系
カチオン
0.97
凝沈系PAC2.5
両性カチオン
1.03
ろ液SS
(mg/L)
19
ろ液T-P
(mg/L)
2.6
CST
(sec)
1.0
84.8
88
7.9
10.5
74.2
65
1.3
4.4
凝沈系PAC7.5
両性
0.70
84.1
32
2.1
8.7
凝沈系PAC12.5
両性
1.00
87.6
64
0.6
6.9
凝沈系バンド2.5
カチオン
0.93
71.2
39
3.4
8.8
凝沈系バンド8.2
両性
0.77
82.6
51
1.0
4.3
凝沈系バンド12.5
両性
0.65
83.7
9
0.4
6.3
凝沈系FeCl3 11
カチオン
0.92
75.4
145
2.9
3.7
凝沈系FeCl3 22
両性
1.32
83.8
90
1.7
7.7
凝沈系FeCl3 32
両性
1.50
83.3
84
1.3
18.4
凝沈系FeCl3 53
両性
1.18
85.8
52
0.1
2.2
- 90 -
が、粗浮遊物が多く易脱水性といわれており 32)、余剰汚泥が加わっている基本系の脱水
ケーキ含水率 84.8% に対して非常に低い値となった。次に凝沈系に関しては、標準系
ほど低くはならないが、PAC の場合で 74.2 ~ 87.6% 、硫酸バンドで 71.2 ~ 83.7% 、また
FeCl3 で 75.4 ~ 85.8% であり、含水率は基本系と同程度かそれ以下の含水率が得られて
おり、適合ポリマーを適正な注入率の条件で脱水を行うことで凝沈系においても基本
系と変わらないケーキ含水率が得られることがわかった。一般に PAC の方が硫酸バン
ドよりもろ過性や脱水性が良いとされているが1)、本実験においては両者の間にほとん
ど差は見られなかった。凝集剤添加量の傾向としては、凝沈系では、全ての凝集剤にお
いて、凝集剤添加量が増加するにつれてケーキ含水率が増加し、脱水性が悪化する傾
向が見られた。
ろ液の SS は、基本系に対して凝沈系では PAC や硫酸バンドの場合は改善されたが、
FeCl3 の場合については、同程度もしくは悪化する傾向にあった。表 3-6-2 においても、
PAC や硫酸バンドのケースに比較して 100 mg/L 以上のものが多い結果となった。FeCl3
による前凝集沈殿汚泥を対象として、
ベルトプレス脱水を想定した脱水試験をおこなっ
て、得られた脱水ろ液は SS がわずかに悪化するという報告があり、このことについて
は、ろ液中の Fe 濃度が高く、Fe 成分が酸化され酸化鉄となって SS 濃度の増加につな
がり、本来の汚泥成分ではないとされており34)、本実験でも同様のことが生じているも
のと考えられた。
ろ液中の T-P については、表 3-6-2 において、基本系の 7.0 ~ 10.0 mgP/L に比較して、
凝沈系では全般に 3.0 mgP/L を下回るものが多く、3-3-3 でも示したが、凝沈系汚泥中
の S-T-P はもともと低いため、ろ液として流出する割合が減少したと考えられた。
CST については表 3-6-3 に示した値では、そのほとんどが 10 以下となり、表 3-6-2 か
ら、その値が 20 を超えると脱水しにくくなると考えられた。
総括すると、凝沈系では汚泥粒子の電荷中和が一部すでに凝集剤によりなされている
ため、適合ポリマーは両性カチオンポリマー、もしくは両性ポリマーが望ましい。ま
た、ろ液 SS は同程度もしくは改善され、ろ液 T-P については大幅に減少する。ケーキ
含水率は、基本系と同等、もしくはそれ以下にすることができるが、凝集剤添加量が
増えると、ケーキ含水率が増加し難脱水傾向を示す結果となった。3-3-2.1) の凝集沈殿
汚泥の TS 組成の結果より、凝集剤添加量の増加とともに汚泥の有機分の割合が減少し
ていたにもかかわらず脱水性が悪化していたのは、3-4 の濃縮試験でも同様のことが示
されたが、汚泥の粒径分布が細かい方へ偏ったことにより、比表面積が増加したため
表面水や、内部水、毛管結合水の割合が増加したのではないかと推測される 35)、36)、37)。
- 91 -
3-7 汚泥の粒径分画
濃縮、および脱水性に関する実験より、凝沈系汚泥では標準系汚泥に比較して粒径が
小さくなっていることが予想された。そこで、汚泥の性状が変化している原因を明確
にするために、各汚泥の粒径分布を調べた。
3-7-1 実験方法
粒径分画の対象汚泥としては、脱水試験で用いた各実験条件での汚泥とし、さらに単
独で脱水試験を行ってはいないが、
鴻池処理場で得られた余剰汚泥を対称汚泥として汚
泥の粒径分布を調べた。実験方法としては、得られた試料に関して、1000、500、212、
106、および 53 μ m の真鍮製の標準ふるいと孔径 10、および 1 μ m のメンブレンフィ
ルターとを用いて測定を行った。ふるいを用いた測定に関しては、下水試験方法の粗
浮遊物の測定法を参考にした 3)。まず、試料 10 ~ 20mL を濃度に応じてふるいにかけ、
ポンプで吸引しながら 1 ~ 2L 程度の蒸留水で洗浄した。その後ふるい上の残渣を蒸留
水で逆洗浄しながら一旦ビーカーに移し、その液をあらかじめ重量を測定している SS
測定用のガラス繊維ろ紙に通過させ、乾燥機 (105 ~ 110℃) で 2 時間以上乾燥させたあ
と、再び重量を測定した。1000 ~ 212 μ m までは直接汚泥を通過させ測定し、106 ~ 53
μmのものについては目詰まりによって粒径が正確に測定できない恐れがあるため、
そ
れぞれ1段階前のふるい分けによって得られたろ液を使用した。メンブランフィルター
による測定は、53 μ m のふるいを通過後のろ液の一部を用いて行った。また 1 枚のメ
ンブレンフィルターに試料を通過させ過ぎると、目詰まりが起こり、孔径毎に重量差
が無くなってしまうので、1 試料につきその濃度に応じて 10 ~ 20 枚のメンブレンフィ
ルターを用いた。1 枚毎に 10mL 程度 ( 洗浄後の試料であるため 10mL の汚泥が 1 ~ 2L に
希釈された状態 ) の試料を通過させ、さらに吸引しながら数回蒸留水で洗浄した後、乾
燥させ全量を測定した。
70
標準系
60
余剰
各条件下における汚泥
の粒径分画測定結果を、
図 3-7-1 ~図 3-7-4 に示し
た。全体的な傾向として、
500 μ m以上に分画された
ものは、はっきり目視で
確認できるほど粗大な物
SS重量割合 (%)
3-7-2 粒径分画測定結果
基本系(標準系+余剰)
50
40
30
20
10
0
10~1
53~10
106~53
212~106
500~212
1000~500
1000以上
(μm)
図 3 - 7 - 1 標準系、基本系における粒径分画測定結果
- 92 -
70
質で、あまり汚泥そのものの
ふるいでは、外観上、繊維状
のものがふるい上に残った。
凝沈系PAC7.5
SS重量割合 (%)
考えられた。また 212 μ m の
これらを粒径と称して分画す
50
40
30
20
0
10~1
水洗浄後にもふるい上に残留
212~106
500~212
1000~500
1000以上
70
範囲に分画することにした。
凝沈系バンド2.5
60
凝沈系バンド7.5
SS重量割合 (%)
た。一方 10 ~ 53 μ m、および
106~53
図 3- 7- 2 凝沈系 PAC における粒径分画測定結果
えられたので、そのままこの
物質が 30% 以上にも達してい
53~10
(μm)
し、脱水性にも影響すると考
は、212 ~ 500 μ m の繊維状の
凝沈系PAC12.5
10
るのは疑問が残ったが、蒸留
図 3-7-1 より、標準系の汚泥
凝沈系PAC2.5
60
処理性とは関係がないものと
1 ~ 10 μ m のものはそれぞれ
50
凝沈系バンド12.5
40
30
20
10
25、および 10% 程度であった。
0
10~1
53~10
106~53
212~106
500~212
1000~500
1000以上
余剰汚泥に関しては、106 μ m
(μm)
以上に分画される粒子はほと
図 3 - 7 - 3 凝沈系バンドにおける粒径分画測定結果
んど存在せず、1 ~ 10 μ m の
70
粒子が 60% 以上、10 ~ 53 μ m
60
が 30% 程度となり、53 μ m 以
50
超える結果となった。また、
脱水試験において対象とした
凝沈系FeCl3 32
SS重量割合 (%)
下に分画された粒子が 90% を
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3 53
40
30
20
基本系(標準系 + 余剰)に関し
10
ては、10 ~ 53 μ m が 30% 、1
0
10~1
53~10
106~53
212~106
500~212
1000~500
1000以上
~ 10 μ m が 35% 程度であっ
た。これらの値は混合後、迅
(μm)
図 3-7-4 凝沈系 FeCl 3 における粒径分画測定結果
速測定したこともあり、標準
系汚泥と余剰汚泥との平均値とほぼ合致していた。
凝沈系では、図 3-7-2 ~図 3-7-4 より、どの凝集剤においても凝集剤の添加とともに、
212 ~ 500 μ m の繊維状の物質の割合が低くなっており、凝沈系 PAC2.5、バンド 2.5、
- 93 -
15%‚Å、凝沈系 PAC7.5、バ
ンド 8.2、および FeCl332 で
は約 10% で、そして凝沈系
PAC12.5、バンド 12.5、お
よび FeCl353 では 7 ~ 8% で
あった。また、1 ~ 10 μ m
に分画された物質に注目
50
粒径分画における各分画の割合(%)
および F e C l 31 1 では約
45
212~500μm
40
1~10μm
35
30
25
20
15
10
5
0
0
してみると、凝沈系
20
40
60
80
100
ケーキ含水率(%)
PAC2.5、バンド 2.5、およ
び FeCl311 では 25 ~ 30% 程
図 3 - 7 - 5 ケーキ含水率と繊維状物質及び粒子状物質の関係
度であり、凝沈系 PAC7.5、
バンド 8.2、および FeCl332 以上になると、30 ~ 40% 以上となった。このように、凝集
剤添加量の増加に伴って、微細な粒子の割合が増加したのは、凝集剤が DS( 溶解性物質
) を SS に転換する際に、主にこの範囲の粒子として凝集しているためと考えられた。
一般に、汚泥中の繊維状の物質の割合と脱水性 ( 含水率、はく離性 ) は正の相関があ
り 32)、38)、逆に、3 μ m 以下の粒子含有量とケーキ含水率の間には負の相関があるとし
ている。これらのことを確認するため、図 3-7-5 にケーキ含水率と、212 ~ 500 μ m の
繊維状の物質の割合、および 1 ~ 10 μ m に分画された物質の割合との関係を示した。図
より、それほど高い相関ではないが、212 ~ 500 μ m の繊維状の物質の割合が増加する
とケーキ含水率が低下する傾向が見られた。また、1 ~ 10 μ m に分画された物質に関
しては、これらの粒子の割合が増加するほどケーキ含水率が増加する傾向が見られた。
以上をまとめると、
① 汚泥固形物を繊維状の物質と粒子状の物質に分けた場合、凝集剤の添加量が増加す
るにしたがって、粒子状物質の割合が増加した。
② 粒子状物質のみの粒径分布に関しても凝集剤添加量が増加するにつれ、1 ~ 10 μ m
の微細な粒子の割合が増加していた。
脱水試験の結果に関しては①、②双方、重力濃縮において粒子沈降速度が減少した
ことや、遠心濃縮で濃縮汚泥濃度がそれほど高くならなかったことについては、
②が影響しているものと考えられた。また今回の測定では凝集剤の種類による汚泥の
粒径分画にはあまり差がなかった。
- 94 -
3-8 焼却プロセスへの影響
脱水ケーキの焼却は、ケーキ中に存在する有機物の燃焼により発生する熱量と、補
助燃料による不足分の熱量補給により可能となる。本節では、前凝集プロセスが焼却
プロセスに与える影響を明らかにするために、各条件で発生した凝集沈殿汚泥の脱水・
乾燥ケーキについて、高位発熱量測定を行うとともに、汚泥焼却炉における補助燃料
の必要量を試算した。また凝集沈殿汚泥の熱的特性を把握するために、TG-DTA による
示差熱分析を行って、熱挙動の違いを考察した。
3-8-1 実験方法
先述の脱水試験で得られた脱水ケーキを乾燥させたものを試料として、ボンブ熱量
計 (OSK150:小川精機製 ) による高位発熱量の測定、および TG-DTA(TG8110:理学電
機製 ) による熱重量示差熱の分析を行った。なお、脱水試験は、全ての対象汚泥につい
て、3 種類のポリマーを用い、注入率を 3 段階に変化させておこなったが、ここで試料
としたものは各ポリマーにおいて含水率が最も低かったものに限定した。なお高位発
熱量の測定は各条件に対して 2 回行い、結果はそれらの平均値で示した。TG-DTA に関
しては実験回数は 1 回とし、測定条件は、Pt パンに試料を約 10mg セットし、Air 雰囲気
150 mL/min下で、温度については室温から1450℃まで、
昇温速度10℃/minでおこなった。
3-8-2 発熱量測定結果
各条件における、ボンブ熱量
計による高位発熱量の測定結果
表 3-8-1 高位発熱量測定結果
を、表 3-8-1 に示した。また可
沈殿汚泥の TS 組成の VTS 測定
標準系
85.0
汚泥固形分あたり
高位発熱量
(kcal/g-TS)
4210
結果を用い、可燃分あたりの高
基本系
79.0
4010
5180
凝沈系PAC2.5
79.0
4240
5370
VTS
(%)
燃分含有率として 3-3-2 の凝集
位発熱量も算出した。
可燃分あたりの
高位発熱量
(kcal/g-VTS)
5300
凝沈系PAC7.5
69.0
3820
5550
表から、基本系、標準系の脱
凝沈系PAC12.5
59.0
2900
4920
水ケーキ高位発熱量は約 4000
凝沈系バンド2.5
78.0
3660
5150
~4200 cal/g-TSであったのに対
凝沈系バンド8.2
71.0
3230
5010
凝沈系バンド12.5
57.0
3080
5210
し、凝沈系全般では凝集剤添加
凝沈系FeCl311
77.5
4290
5540
量が増加するにつれて徐々に
凝沈系FeCl322
60.6
3620
5750
凝沈系FeCl332
63.0
3600
5670
凝沈系FeCl353
59.0
3280
5560
V T S および高位発熱量が減少
し、凝沈系 PAC12.5、凝沈系バ
- 95 -
7000
いては約3000 cal/g-TSにまで減少し
6000
ていた。可燃分あたりの高位発熱量
5000
に関しては、標準系、および基本系
は、5180 ~ 5300 cal/g-TS であったの
に対し、凝沈系の可燃分あたりの高
高位発熱量(kcal/g)
ンド 12.5、および凝沈系 FeCl353 につ
位発熱量は 4920 ~ 5750 cal/g-VTS の
範囲でばらつきが大きい結果となっ
4000
汚泥固形分あたり
高位発熱量
(kcal/g-TS)
3000
可燃分あたりの
高位発熱量
(kcal/g-VTS)
2000
1000
0
た。
0.0
ここで、脱水ケーキの VTS に対す
る、固形分あたりの発熱量、および
20.0
40.0
60.0
VTS(wt%)
80.0
100.0
図 3-8-1 高位発熱量と VTS との関係
可燃分あたりの発熱量それぞれの関
係を図 3-8-1 に示した。図より、VTS と固形分あたりの高位発熱量とは正の相関が見ら
れるものの、可燃分あたりの高位発熱量に関しては、VTS の変化にかかわらず、ほぼ
5300±400 cal/g-VTS の範囲で一定であった。すなわち、凝集剤により無機分由来の固形
分が増加し、固形分あたりの発熱量は下がるが、可燃分としての発熱量にはそれほど
変化はないことが明らかになった。
以上から凝集剤の添加で、無機分由来の固形分増加により固形分あたりの発熱量は
減少するが、汚泥の有機分の発熱量は影響をうけないことがわかった。
3-8-3 汚泥焼却炉まわりの熱収支からの考察
前凝集汚泥を汚泥焼却炉で焼却することを考えた場合には、高位発熱量だけではな
く、脱水ケーキの含水率や可燃分 ( 有機分 ) の割合が重要であり、それによって補助燃
料の必要量が変わってくる。松永 39) は汚泥焼却炉まわりの熱収支を考え、脱水ケーキ
の VTS と、含水率から補助燃料として必要な重油量 (L/t-cake) を簡易に求める式を算出
しており、下にその算出方法を示した。
まず、予備乾燥のない汚泥焼却炉 ( 図 3-8-2 参照 ) の熱収支は以下の式 (3-8-1) で示さ
れる。
( ケーキ中可燃物発熱量+補助燃料発熱量 )×0.75
= ( 水蒸気保有熱量+ケーキ燃焼空気保有熱量
+補助燃料燃焼空気保有熱量+灰保有熱量 ) (3-8-1)
- 96 -
ここで、0.75 は熱効率を示す経験
排ガス:300℃
・水蒸気
・ケーキ燃焼空気
・燃料燃焼空気
値である。有機物および重油の理論
燃焼空気量を、各 10.0 kg/kg-VTS 、
14.9 kg/kg- 重油とし、水、水蒸気、空
気および灰の比熱をそれぞれ、1.00
0.47 kcal/kg・℃、
0.25 kcal/
kcal/kg・℃、
脱水ケーキ
・水分:W%
・有機物:VS%
焼却炉
kg・℃、および 0.20 kcal/kg・℃、水の
気化熱を 539.63 kcal/kg とし、また重
油の発熱量を 8800 kcal/L、空気比を
1.3、密度を 0.8 kg/L、排ガス温度を
燃焼用空気+燃料
・X(L)-重油
・燃料の密度:
0.8(kg/L)
・空気比:1.3
空気比m
周囲温度
20℃
300℃、灰の温度を 500℃、水の温度
を 100℃、水蒸気温度を 220℃、およ
灰:500℃
び周囲温度を 20℃とすれば、(3-8-2)
図 3 - 8- 2 焼却炉まわりの熱収支
式が導かれる。
(100 − W ) ⋅ VS ⋅ q + 8800 ⋅ X ⎫ ⋅ 0.75
⎧
⎨1000 ⋅
⎬
vh
100
100
⎩
⎭
(100 − W ) ⋅ VS ⋅ 10 ⋅ 0.25 ⋅ (300 − 20)
W
= 1000 ⋅
⋅ {1 ⋅ (100 − 20) + 539.63 + 0.47 ⋅ (220 − 20)} + m ⋅ 1000 ⋅
100
100
100
(100 − W ) ⋅ (100 − VS ) ⋅ 0.20 ⋅ (500 − 20)
+ 1.3 ⋅ X ⋅ 0.8 ⋅ 14.9 ⋅ 0.25 ⋅ (300 − 20) + 1000 ⋅
(3-8-2)
100
100
これを X について解くと次の (3-8-3) 式が得られる。
X = 129.4 − 0.0129 × (100 − W){(0.137 + 0.001071428 × q vh − m ) × VS + 87.57} (3-8-3)
ただし X:脱水ケーキ 1t 焼却するのに必要な重油量 (L/t-cake)
W:ケーキ含水率 (%)
VS:有機物含有率 (%)
m:燃焼空気比 ( 竪型多段炉では 2、流動床炉では 1.3 ~ 1.4)
qvh:可燃分あたりの発熱量 (cal/g-VTS)
前項で得られた可燃分あたりの高位発熱量を (3-8-3) 式に代入し、脱水ケーキ 1t あた
りの必要重油量を算定した。なおケーキ含水率は 3-6 での脱水試験の結果を、また有機
物含有率は 3-3-2 の凝集沈殿汚泥の TS 組成の VTS の結果を用いた。また空気比は流動
床炉を想定し 1.3 を用いた。
- 97 -
この結果を表 3 - 8- 2 に示
表 3-8-2 必要重油量算定結果
した。必要重油量は基本系
標準系
85.0
ケーキ
含水率
(%)
62.5
VTS
(%)
では 42.3 L/t-cake であり、標
準系では含水率が約 63% と
可燃分あたりの
高位発熱量
(kcal/g-VTS)
5300
必要重油量
推定値
(L/t-cake)
-92.9
低かったため- 93 L/t-cake
基本系
79.0
84.8
5180
42.3
凝沈系PAC2.5
79.0
74.2
5370
-20.3
と非常に低い 値を示した。
凝沈系PAC7.5
69.0
84.1
5550
43.9
どの凝集剤についても凝集
凝沈系PAC12.5
59.0
87.6
4920
76.7
凝沈系バンド2.5
78.0
71.2
5150
-29.3
凝沈系バンド8.2
71.0
82.6
5010
42.8
剤添加量が増加するにつれ
必要重油量は増加する傾向
凝沈系バンド12.5
57.0
83.7
5210
58.0
を示した。凝沈系 PAC7.5 、
凝沈系FeCl311
77.5
75.4
5540
-15.6
凝沈系FeCl322
60.6
83.8
5750
47.9
凝沈系FeCl332
63.0
83.3
5670
43.5
凝沈系FeCl353
59.0
85.8
5560
61.5
凝沈系バンド 8.2、および凝
沈系 FeCl 3 22 では基本系と
ほとんど変わらない値と
なった。
先述したように汚泥の可燃分あたりの発熱量は、標準系、基本系、凝沈系でほとん
ど変化していないので、焼却プロセスにおいて投入エネルギーを削減するためには、既
存の汚泥処理システムにおいても、前凝集の場合も脱水プロセスで含水率をできるだ
け削減し、ケーキ VTS の割合を減少させないようにすることが重要であると考えられ
る。そのためには凝集剤添加量を過剰にならない程度に添加することが必要であり、脱
水ケーキ単位重量あたりの必要重油量から考えると、従来システムと同等とするために
は、少なくとも、PAC で 7.5 mgAl/L、
硫酸バンドで 8.2mgAl/L 、および
20
FeCl3 で22mgFe/Lまでに抑える必要
標準系
基本系
凝沈系PAC2.5
凝沈系PAC7.5
凝沈系PAC12.5
凝沈系バンド2.5
凝沈系バンド8.2
凝沈系バンド12.5
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3-11
凝沈系FeCl3-32
凝沈系FeCl3 32
凝沈系FeCl3-53
凝沈系FeCl3 53
0
がある。
-20
図 3-8-3 に各条件における乾燥
ケーキの TG 曲線を、また図 3-8-4
に DTA 曲線を示した。標準系、基
wt%
3-8-4 TG-DTA による評価
-40
-60
-80
本系、および各凝沈系ともにおお
よそ、200 ~ 350℃と 350 ~ 550℃
の温度域で 2 段階の重量減少を示
し、その後の温度では重量減少は
-100
0
500
1000
温度(℃)
図 3 - 8- 3 各汚泥乾燥ケーキの TG 曲線
- 98 -
1500
ほとんどみられなかった。 1 段階
250
目では 50 ~ 70 %の急激で大きな
200
重量減少を示し、一方、2 段階目で
150
100
は 10 ~ 30 %の比較的緩やかで小
の最終的な重量減少率は各凝集剤
50
wt%
さな重量減少を示した。1500℃で
0
-50
において、凝集剤添加量が増加す
-100
るほど小さくなった。これは、凝集
-150
剤として添加した鉄やアルミの影
-200
響であると考えられる。
標準系
基本系
凝沈系PAC2.5
凝沈系PAC7.5
凝沈系PAC12.5
凝沈系バンド2.5
凝沈系バンド8.2
凝沈系バンド12.5
凝沈系FeCl3-11
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3 32
凝沈系FeCl3-32
-250
0
500
図3-8-4のDTA曲線をみると、TG
曲線で第 1 段階目の重量減少が見
1000
1500
温度(℃)
図 3- 8- 4 各汚泥乾燥ケーキの D TA 曲線
られた 200 ~ 350 ℃で大きな発熱
ピークがみられ、これは汚泥中有機分の酸化反応であると考えられた。また 2 段階目の
350 ~ 550℃の温度域での重量減少にははっきりとした発熱ピークは観測されないが、
これは重量減少が 1 段階目に比較して緩やかであるためと考えられた。浦邊ら 39)、40) は
下水汚泥の示差熱分析を行って、本実験と同様に、300℃付近と 400 ~ 500℃付近での
発熱反応を確認し、この反応ピークはピート ( 泥炭 ) や好気性菌の DTA 曲線に類似して
おり、これらの物質の共通点は多量の炭水化物と少量の不飽和芳香族化合物とから構
成される点にあるとしている。また、他に含有が推定されるタンパク質等による影響に
関しては、明確ではないと結論付けている。
凝沈系 FeCl3 に関しては、1200℃以降で大きな吸熱反応が見られ、図 3-8-3 を見ると
この温度域では重量減少を伴っていないため溶融が生じていると考えられた。標準系
においてははっきりとした溶融反応は確認できないが、基本系や、凝沈系 PAC、凝沈
系バンドに関しても、1200℃付近から緩やかな吸熱反応が見られ溶融が生じているも
のと推測された。
以上より、TG-DTA による標準系、基本系、および各凝沈系の熱処理特性は、燃焼に
よる重量減少には大きな変化は無く、凝集剤として鉄やアルミニウムが最終的に灰分
に残留してくること、1200℃付近から、凝沈系 FeCl3、基本系、ならびに一部の凝沈系
PAC、および凝沈系バンドで溶融が生じているものと推測されるが、凝集剤の種類や添
加量との関係は本実験からは不明確であり、次節で詳細に検討する。
- 99 -
3-9 溶融プロセスへの影響
前凝集プロセスが溶融プロセスへ与える影響を把握するにあたって、3-3-3でも述べ
たように、前凝集プロセスにおいては無機凝集剤を添加するため、凝集沈殿汚泥中に
Fe や Al が多く含有されることになる。これらは大半が脱水ケーキ中に移行し、焼却処
理されて灰中に残留してくるものと考えられるが、凝集沈殿汚泥焼却灰の組成が、一
般的な高分子脱水汚泥焼却灰や、石灰系脱水汚泥焼却灰と比較して、どのような差が
あるのかあらかじめ把握しておく必要がある。
一方、溶融プロセスを評価する手法の一つとして、前節にて示したTG-DTAを用いた
溶融温度の推定が挙げられる。たとえば、芦沢ら 41) は、種々の石炭灰の DTA データを
蓄積し、DTA 曲線を 3 つのパターンに大別し、DTA 曲線に補助線を引いて、溶融開始
温度、溶融終了温度などを推定している。DTA 法により推定された溶融開始温度など
は灰の相変化を直接的に表すものとして考えられるものの、
前節のTG-DTAによる検討
では、凝集剤添加量や凝集剤の種類が溶融に与える影響は不明確であった。
以上のことから、本節では、まず凝集沈殿汚泥焼却灰の元素分析をおこない、その
組成を明らかにするとともに、
大阪府内の流域下水処理場からサンプリングした各種汚
泥焼却灰との比較を行って、標準的な汚泥焼却灰に対する前凝集沈殿汚泥焼却灰の位置
づけを行った。次に、実際の溶融処理を念頭に、灰の粘性や、表面張力、塩基度調整な
どの影響も含めた溶融試験として溶流度試験 42) に着目し、凝集沈殿汚泥を対象に実施
して溶融特性の把握を行った。
3-9-1 実験方法
溶融試験では、標準系、基本系、各凝沈系で得られた汚泥をハンディプレスの加圧脱
水機でポリマー添加後脱水し、できた脱水ケーキを乾燥、焼却することによって得ら
表 3-9-1 比較に使用した汚泥焼却灰の由来
濃縮方式
余剰汚泥
し尿
混合
標準
活性汚泥法
遠心濃縮
○
○
分流
(一部合流)
標準
活性汚泥法
遠心濃縮
○
○
I焼却灰
分流
標準
活性汚泥法
加圧浮上濃縮
○
○
K焼却灰
合流
ステップ
エアレーション法
重力濃縮
→遠心濃縮
-
-
焼却灰
下水道の方式
水処理方式
C焼却灰
分流
(一部合流)
H焼却灰
初沈汚泥
重力濃縮
嫌気性
脱水助剤 脱水方式
消化
O焼却灰
分流
A2O法
遠心濃縮
-
-
S焼却灰
分流
標準
活性汚泥法
加圧浮上濃縮
-
-
T焼却灰
分流
(一部合流)
標準
活性汚泥法
遠心濃縮
-
-
W焼却灰
分流
(一部合流)
ステップ
エアレーション法
遠心濃縮
-
-
- 100 -
焼却方式
FeCl3
Ca(OH)2
高分子
凝集剤
ベルト
プレス
脱水
流動床
焼却
供試長:K
れた灰を塩基度調整して試料とし
た。汚泥焼却灰の溶融特性を考える
流下スラグ長:L
磁性ボート
場合、最も実用的に用いられる指標
は塩基度であるとされ、それは灰中
供試焼却灰
の塩基性成分と酸性成分の比率で表
台
わされている 43)、44)、45) 。本実験では
5°
塩基度は一般的に用いられている
溶流度 : M ( % )=
CaO/SiO2 を用いた。焼却操作は、電
気炉(ELE-HEAT:眞陽理化学器械製
L−K
×100
K
図 3-9-1 溶融実験装置
) を用い 800℃で 1 時間灰化した。得
られた焼却灰は、すり鉢で粉砕し 1mm のふるいにかけたものを原灰とした。
標準系、基本系、および各凝沈系の元素組成としては、脱水ケーキの時点で Mg、Al、
Ca、および Feをフレーム原子吸光法( 島津製作所製:原子吸光分光光度計AA-6700) で、
ならびに Siを下水試験方法 3) に準拠して分析した。組成を比較するための焼却灰は、表
3-9-1 に示した下水処理場で 8 種類をサンプリングし、元素組成は、Si、Mg、および Fe
を蛍光 X 線分析法 ( 島津製作所製波長分散型 XRF-1700) で、また Ca、および Al を ICP
発光分析法 (ICP-AES: 島津製作所製 ICPS-8000) を用い分析した 46)。
その結果から、原灰の塩基度を計算し、焼却灰の組成を算出した。塩基度調整は塩基
度を下げる時は二酸化ケイ素(SiO2)、上げる時は消石灰(Ca(OH)2)を原灰と混合した。二
酸化ケイ素、および消石灰は片山化学工業製(1 級)を用いた。
溶融試験では、電気炉で高温まで試料を加熱した時の状態をみた。溶融指標として
は、溶融特性把握のために定義された溶流度 M(%) を用いた。この指標は、試料の持つ
表 3-9-2 溶融試験設定塩基度
乾燥・焼却灰試料を磁性ボート(14cm)に半分入れる
マッフル炉をあらかじめ設定温度まで加温しておき、
試料を炉内に入れる
この時ボートは傾斜させておく
基本系
0.32:原灰
0.60
1.00
1.40
凝沈系2.5
0.2:原灰
0.60
1.00
1.40
所定時間(15分間)炉内で加熱した後、炉内から取り出す
溶流度Mを測定する
供試長:K 流下スラグ長:L
L−K ×
100
溶流度 : M ( % )=
K
図 3 -9 -2 溶融試験フロー
凝沈系2.5
0.24:原灰
0.60
1.00
1.40
標準系
0.21:原灰
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
- 101 -
凝沈系11
0.20
0.40:原灰
0.51
0.80
1.00
1.20
PAC
凝沈系7.5
0.21:原灰
0.60
1.00
1.40
バンド
凝沈系8.2
0.21:原灰
0.60
1.00
1.40
FeCl3
凝沈系32
0.20
0.44:原灰
0.60
0.80
1.00
1.20
凝沈系12.5
0.15:原灰
0.60
1.00
1.40
凝沈系12.5
0.2:原灰
0.60
1.00
1.40
凝沈系53
0.10
0.27:原灰
0.50
0.80
1.00
1.20
融点、流動性、加熱過程における溶融速度などを一意的に表現しようとしたもので、図
3-9-1 に示すような溶融試験装置で測定し、以下の (3-9-1) 式で示される。
M =
L−K
× 100 (3-9-1)
K
ただし、M:溶流度 (%)、L:流下スラグ長さ (mm)、K:供試灰長さ (mm)
磁性ボートは市販のアルミナ製の 140mmのものを用いた。ボートの傾斜角は 5°であ
り、これは表面溶融炉内部傾斜角の設計基準値である。供試長 Kは 70mm とした。溶融
試験方法の手順のフローチャートを図3-9-2に示した。溶融に用いた電気炉は常時1400
℃、Max1600℃まで使用できるものであり、焼却操作で用いたものと同じものを使用し
た。溶融試験は各条件において 1 回ずつ行った。各条件における設定温度は 1050℃~
1450℃までとした。設定塩基度は、実験条件に応じて約 0.1 ~ 1.4 までを考え、表 3-92 に示した。
3-9-2 凝集沈殿汚泥焼却灰の組成
まず、各条件の原灰組成の分析結果、および比較のための8 種類の汚泥焼却灰の結果
を、村上らが全国 46 箇所の下水処理場から採取した脱水ケーキの灰分組成の結果 43) と
ともに表 3-9-3 に示した。表で、各金属酸化物の割合の和が 100% からやや外れている
のは、表の値は灰分
中の金属はすべて酸
化物の形態で存在し
ていると考えて計算
を行ったものである
のに対し、現実には
一つの酸素分子を複
数の金属原子が共有
したり、表に示され
ているもの以外の金
属が存在するためで
ある。まず標準系の
灰分組成であるが、
標準系と基本系は実
表 3-9-3 汚泥焼却灰組成分析結果(%)
条件
標準系
基本系
凝沈系PAC2.5
凝沈系PAC7.5
凝沈系PAC12.5
凝沈系バンド2.5
凝沈系バンド8.2
凝沈系バンド12.5
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3 32
凝沈系FeCl3 53
C焼却灰
H焼却灰
I焼却灰
K焼却灰
O焼却灰
S焼却灰
T焼却灰
W焼却灰
高分子系(文献値)43)
石灰系(文献値)43)
MgO
1.0
2.7
0.9
0.4
0.3
0.4
0.3
0.3
0.8
0.4
0.2
1.8
3.3
4.3
2.5
4.6
5.5
5.6
2.8
1.9~6.7
0.1~5.3
- 102 -
SiO2
34.6
29.7
27.9
23.4
21.2
31.3
21.7
23.2
15.9
11.0
5.6
8.1
27.8
20.5
34.2
19.5
23.5
21.2
27.8
24.5~50.5
9.4~42.2
CaO
7.2
9.4
6.7
5.0
3.1
3.1
4.6
4.4
8.0
4.8
1.5
47.6
10.2
9.0
4.1
8.5
9.0
7.6
5.2
4.2~14.5
12.7~70.9
FeO
Al2O3
7.0
9.6
7.6
5.4
5.0
5.4
6.0
4.2
26.1
47.9
61.4
10.0
6.9
12.1
10.2
4.1
3.6
5.9
12.5
4.2~19.0
5.6~23.0
14.2
10.4
23.2
44.2
63.3
31.2
37.2
41.2
8.0
5.9
2.8
4.0
12.8
11.5
14.2
14.0
18.9
12.5
15.9
9.3~21.7
3.3~14.3
機プラントにおける初沈汚泥と混合汚泥に対応したものとなるが、SiO2、CaO、MgO、
Al2O3、および FeO で、双方はあまり変わらなかった。C 焼却灰~ W 焼却灰については、
ややばらつきがあるものの、C 焼却灰以外は、すべて類似した傾向であり、SiO2 が最も
多く 20 ~ 34%、ついで Al2O3 が 11.5 ~ 18.9% であり、残りは MgO が 2.5 ~ 5.6%、CaO
が 4.1 ~ 10.2%、FeO が 3.6 ~ 12.5% であった。標準系を基本系と比較すると、MgO の
含有率がやや低いが、ほぼ類似した傾向を示した。また文献値 43) と比較すると、標準
系、基本系、および H 焼却灰~ W 焼却灰は、やや値が外れるものがあるものの高分子
系汚泥焼却灰の組成範囲にほとんどが入っており、これらは標準的な高分子系汚泥焼
却灰であると考えられた。また、C 焼却灰については、石灰系汚泥焼却灰であり、CaO
が 48% 含まれていた。石灰系の文献値 43) と比較すると、SiO2 がやや低いが、他の元素
は文献値 43) の組成範囲に入っており、標準的な石灰系汚泥焼却灰であると考えられる。
凝沈系 PAC、および凝沈系バンドについては、凝集剤添加量が増加するにつれて
Al2O3 が40~60%程度までと大きな割合を占めるようになった。他の元素については凝
集剤添加量が増加するにつれて減少するか、同程度の値を示した。表中の文献値と比
較すると、凝沈系 PAC2.5、および凝沈系バンド 2.5 ですでに高分子系汚泥焼却灰の Al
の上限を超えており、アルミニウム含有率の非常に高い汚泥焼却灰であると位置づけ
ることができる。吉野ら 47) は、SiO2、CaO、および Al2O3 を主成分とする模擬灰を対象
に、溶融特性を評価し、溶融特性には SiO2、および CaO 成分のみならず、Al2O3 が大き
く影響し、溶融温度の低下や改善操作には、Al2O3 の変動も指標として取り入れるべき
であるとしている。後述する溶流度測定においても、アルミニウムが溶融特性に大き
く影響することが示された。
凝沈系 FeCl3 についても、Al2O3 を FeO に置きかえてみると、凝沈系 PAC とほぼ同様
の傾向を示した。文献値と比較すると、凝沈系 FeCl311 では C 焼却灰や文献値の FeO 含
有量の上限をオーバーしており、鉄含有量の高い汚泥焼却灰と位置づけることができ、
Al 系と同様に後述する溶流度測定においても、高濃度に含有される鉄が溶融特性に大
きく影響することが示された。
3-9-3 溶流度測定からの評価
溶流度測定の結果を、図 3-9-3 ~図 3-9-5 に、それぞれの条件においてグラフ化した
ものとして示した。なお代表的な溶融試験の結果を写真として付録 5 に示した。
これらの図表より、標準系に関しては、1300℃以上で塩基度全般に溶融がおこり、温
度、および塩基度が上昇するにつれて溶流度は上昇していく傾向をみせ、1400℃付近
でほぼ溶流し、溶流度も塩基度が低い部分を除いては 80% 以上の値を示した。また基
- 103 -
100
100
40
0.2
0.4
0.51(原灰 )
0.8
1.0
1.2
1100
1150
塩基度
凝沈系FeCl 3-11
標準系
100
100
1
1.2
0.1
0.27(原灰)
0.5
0.8
1100
1150
温度(℃)
塩基度
1250
1450
1
1.2
0.2
0.44(原灰)
0.6
0.8
1150
1100
1250
1200
温度(℃)
1350
-20
1300
-20
1450
0
1400
0
1200
20
1350
20
40
1300
40
60
1400
60
0.1
0.27(原灰)
0.5
0.8
1
1.2
80
溶流度(%)
0.2
0.44(原灰)
0.6
0.8
1
1.2
80
溶流度(%)
1250
温度(℃)
塩基度
1200
1450
0.21(原灰)
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
1150
1100
1250
温度(℃)
1200
-20
1350
-20
1300
0
1450
0
1350
20
1300
20
60
1400
40
1400
溶流度(%)
60
0.2
0.4
0.51(原灰)
0.8
1.0
1.2
80
溶流度 (%)
0.21(原灰)
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
80
塩基度
凝沈系FeCl3-53
凝沈系FeCl 3-32
図 3-9-3 溶融試験結果(1)
本系に関しても、標準系と概ね同様の傾向を示した。
次に凝沈系 PAC、および凝沈系バンドの場合は、凝集剤添加量が増加するにつれて、
1300℃以上になっても溶流度が高い値を示さなくなり、凝沈系PAC12.5、および凝沈系
バンド 12.5 においては 1450℃になっても、溶流度は 50% 以下であった。これは、凝集
剤添加量が上昇するにつれて灰分における酸化アルミニウム (Al2 O 3 ) の割合が上昇し、
酸化アルミニウムの融点は 2020℃
43)
と高いことから、融点が上昇したことによるもの
と考えられる。また、灰分中のアルミニウムの割合が増加するに従って、融点が上昇
する傾向が確認されており 42)、43)、全体的な傾向として、アルミ系の凝集剤を添加する
- 104 -
100
0.6
塩基度
基本系
1.4
1
0.6
塩基度
凝沈系PAC2.5
100
塩基度
凝沈系PAC7.5
1.4
1
0.6
1450
1.4
1
温度(℃)
0.6
0.21(原灰)
1050
1150
1250
1350
-20
1300
-20
1450
0
1400
0
温度( ℃)
1.4
20
0.15(原灰 )
20
1
40
1050
1.4
0.6
1150
1
40
60
1250
0.6
0.15(原灰)
1350
60
80
1300
0.21(原灰)
溶流度 (%)
80
1400
100
溶流度(%)
0.24(原灰 )
温度(℃)
1050
1450
1.4
1
0.6
0.32(原灰 )
1050
1150
1250
-20
1350
-20
1300
0
1450
1.4
20
0
温度(℃)
1
40
1150
20
60
1250
1.4
0.24(原灰)
1350
1
40
80
1300
60
0.6
1400
0.32(原灰)
溶流度 (%)
80
1400
溶流度(%)
100
塩基度
凝沈系PAC12.5
図 3-9-4 溶融試験結果(2)
と、基本系、および標準系に比較して融点が上昇し、溶融しにくくなると考えられた。
それに対して、凝沈系 FeCl3 では、凝沈系 FeCl332 の場合にも、1250℃の時点で、す
べての塩基度で溶流度は 100% 近くになり、基本系、および標準系に比較して、融点が
降下し溶融しやすくなると考えられた。
以上より、凝集剤としてアルミ系凝集剤を前凝集プロセスに用いた場合の汚泥焼却
灰は、標準系、および基本系よりも溶融しにくくなり、FeCl3 を用いた場合の汚泥焼却
灰は、標準系、および基本系よりも低い温度で溶融が開始され、低い粘性となり、塩基
度調整をうまく行うことで、標準系、および基本系と同程度またはより低い温度で溶流
- 105 -
100
0.6
塩基度
凝沈系バンド2.5
1.4
1
0.6
0.21(原灰)
温度(℃)
1050
1450
1.4
1
0.6
0.20(原灰)
1050
1150
1250
-20
1300
-20
1400
0
1350
1.4
20
0
温度(℃)
1
40
1150
20
60
1250
1.4
0.21(原灰)
1300
1
40
80
1400
60
0.6
1350
0.20(原灰)
溶流度(%)
80
1450
溶流度(%)
100
塩基度
凝沈系バンド8.2
溶流度(%)
100
80
0.20(原灰)
60
0.6
1
40
1.4
20
0
1.4
1
0.6
0.20(原灰)
1050
1150
1250
1300
1400
温度(℃)
1350
1450
-20
塩基度
凝沈系バンド12.5
図 3-9-5 溶融試験結果(3)
する。したがって溶融炉内で設定温度の低下が期待でき、溶融炉の省エネルギー化に
つながると推測される。この観点からは、アルミ系凝集剤よりも、FeCl3 のほうが優れ
ていると判断できる。
3-9-4 塩基度からの評価
本実験では、塩基度を CaO/SiO2 として決定し塩基度調整を行ったが、今回の焼却灰
には、CaO、および SiO2 のほかに、多量の Al2O3、および FeO が存在した。このような
多様な構成酸化物に対し、単に CaO/SiO2 の比の塩基度指標で評価したのでは正確な評
価はできないと考えて、塩基度本来の考え方 ( 塩基性成分/酸性成分 ) に基づいて、広
- 106 -
義の塩基度 Bwを以下の式 (3-9-2) で考え
100
た。
90
80
CaO + MgO + FeO
Bw =
SiO 2 + Al 2 O 3 + P2 O 5 (3-9-2)
溶流度(%)
70
広義の塩基度Bwを表3-9-3からの灰分
60
50
40
30
組成分析結果から各条件について求め、
溶流点
溶融点
20
10
また(CaO/SiO2)による塩基度調整後の広
0
1000
義の塩基度BwについてもCa(OH)2、およ
1100
1200
1300
1400
1500
び SiO2 添加量から計算した。P2O5 に関し
温度(℃)
ては、脱水ケーキについて、下水試験方
図 3 - 9 - 6 溶融点、溶流点算出方法
法 3) に準拠して分析したが、凝沈系 FeCl3
については、P2O5 を測定していなかった
ので、アルミ系凝集剤の灰分組成の結果
1500
溶融点、溶流点(℃)
を基に、MgO、CaO、FeO、SiO2、および
Al2O3 以外のその他成分の内 90% が P2O5
であると考えた。
また木村 44) は、同じ方法で溶流度測定
を行い溶流度Mが30%となる温度を溶融
点、60% となる温度を溶流点と定義し、
1400
1300
1200
1100
この溶融点以上になると溶融炉において
1000
溶融が可能であり、溶流点以上になると
0
0.5
1
1.5
2
2.5
広義の塩基度:Bw
非常に高い処理性能が期待できるとして
いる。本実験での測定においては連続的
溶融点(標準系・基本系)
溶融点(凝沈系PAC・バンド)
溶融点(凝沈系FeCl3)
溶流点(標準系・基本系)
溶流点(凝沈系PAC・バンド)
溶流点(凝沈系FeCl3)
1600
図 3 - 9 - 7 広義の塩基度と溶融・溶流点の関係
な温度変化による溶流度の変化はわから
ないため、図 3-9-6 に示した方法に従って、各設定温度における溶流度を直線で結び、
溶融点、および溶流点を各条件について求めた。またこの方法により、各条件について
求めた広義の塩基度 Bw と溶融点、溶流点との関係を図 3-9-7 にまとめて示した。
図 3-9-7 より、全体的な傾向として、溶融点、および溶流点ともに 1.0 ~ 1.5 付近で最
小値となった。このことから塩基度調整により広義の塩基度 Bwを 1.0 ~ 1.5の範囲に調
整すれば、炉内での設定温度の低下が可能になると考えられる。また、標準系、基本
系、および凝集剤としてアルミ系を用いた場合に関しては、図より広義の塩基度 Bwは
0.1 ~ 0.8 の範囲であり、溶融点、および溶流点ともに高い値を示した。特にアルミ系
- 107 -
に関しては式 (3-9-2) から、Al2O3 の割合が上昇するため、広義の塩基度 Bw は減少する
ものと考えられる。また、凝集剤として FeCl3 を用いた場合は、広義の塩基度 Bw は 1.0
~ 2.0 の範囲であった。これは FeO の割合が上昇し、広義の塩基度 Bw としては増加す
る傾向にあることによるものと考えられる。すなわち、FeCl3 を用いた場合は塩基度調
整が要らないか、調整剤が微量で済むが、アルミ系凝集剤を用いた場合は塩基度調整
が必要であり調整剤も多量に必要になるものと考えられ、経済的にも不利になること
が予想できる。
また、本研究で対象とした前凝集沈殿汚泥焼却灰のように、Al 成分や Fe 成分を多く
含む場合には、CaO/SiO2 の塩基度指標を用いるよりも、経済的な溶融炉の運転管理を
考えた場合には、広義の塩基度Bwを用いて塩基度調整を行うことが必要であろうと考
えられる。
3-10 まとめ
本章では、鴻池処理場に設置されたパイロットプラントを用い、PAC、硫酸バンド、
FeCl3 を凝集剤として用いて前凝集沈殿汚泥を作成し、その組成変化を把握するととも
に、既存の各汚泥処理単位プロセスに対応した処理特性実験を行って、前凝集プロセ
スが各単位プロセスに与える影響を明らかにした。以下に得られた知見を示した。
1) 水質への影響:パイロットプラント実験の水質分析結果より、鴻池処理場の原水に
対しては、凝沈系 PAC、凝沈系バンドで 7.5 ~ 8.2 mgAl/L (Al/SS 重量比:0.1 ~ 0.2、Al/
COD 重量比:0.1、Al/T-P モル比:2.0)、凝沈系 FeCl3 においては 20 ~ 30 mgFe/L (Fe/SS
重量比:0.20 ~ 0.25、Fe/COD 重量比:0.2、Fe/T-P モル比:2.0 ~ 3.0) で、初沈上澄み水
SS:20 mg/L 以下、CODMn:40 mg/L 以下、T-P:1.0 mgP/L 以下が達成可能である。特に
凝沈系 FeCl3 ではアルカリ度の多量消費および pH の低下が生じないように、凝集剤添
加量および原水水質に留意することが必要である。
2) 汚泥の TS 組成への影響:前凝集プロセスの導入に伴う凝集剤添加によって、汚泥
の TS 組成が変化するが、以下の 3 つの現象に伴う変化が生じていると考えられる。
① FSS の増加とそれに伴う他成分 ( 特に VSS) の割合減少:凝集剤成分の水酸化物、リ
ン酸化物の汚泥中への移行
② 有機分の除去に伴う VSS の増加:凝集沈殿により有機物の汚泥中への移行
③ VDS 成分の減少およびそれに伴うVSSの増加:コロイド粒子、微細な粒子のフロッ
ク化
- 108 -
上記の現象により、標準系の汚泥組成の変動に比較すると、凝沈系ではばらつきが
少なくなり、VSS で約 60%、FSS で約 30%、残りが DS 成分であるような組成に近づく。
したがって、前凝集プロセスは、常に一定性状の凝集沈殿汚泥を得ることが期待でき
る。ただし、有機分の割合を増加させるためには凝集剤添加量を減少させ、ポリマー
と 2 液薬注することが必要である。
3) 濃縮プロセスへの影響:重力濃縮試験の結果、凝沈系では全般に粒子の沈降速度が
減少することが明らかとなった。遠心濃縮試験の結果においても、標準系に比較して
凝沈系全般では濃縮しにくい傾向が見られた。この原因は、凝集剤添加量が増加する
につれて、1~10μmの微細な粒子の割合が増加していることが一部寄与しているもの
と考えられる。この観点からは、無機凝集剤の一液薬注よりもポリマーを併用し、粒子
径を大きく保つ二液薬注が望ましいと考えられる。ただし凝沈系汚泥は、全般的に固
液分離性、嫌気状態におけるリンの再溶出を防止する点で優れており、返流水への負
荷が大幅に軽減できることがわかった。
4) 脱水プロセスへの影響:簡易ベルトプレス脱水試験の結果、凝沈系では汚泥粒子の
電荷中和が一部すでに凝集剤によりなされているため、ポリマーは両性カチオンポリ
マー、もしくは両性ポリマーが適合し、ケーキ含水率は、基本系と同等、もしくはそ
れ以下にすることができる。また、ろ液 SS、T-P については大幅に減少し、返流水負
荷を軽減することが可能であった。ただし、適合ポリマーを用いても凝集剤添加量が増
えるとケーキ含水率が増加し難脱水傾向を示す結果となったが、濃縮の場合と同様に、
汚泥の粒径分布が細かい方へ偏ったことによって、比表面積が増加したため表面水や、
内部水、毛管結合水の割合が増加し、難脱水傾向を示したのではないかと推測された。
5) 焼却プロセスへの影響:発熱量測定の結果、凝沈系では凝集剤により無機分由来の
固形分が増加し、発熱量は減少するが可燃分あたりの発熱量には変化はないことが明
らかになった。脱水ケーキ 1t あたりに必要な補助燃料を試算したところ、凝集剤添加
量の増加に伴って、多くの補助燃料が必要となることが示唆された。焼却プロセスに
おいて投入エネルギーを削減するためには、既存の汚泥処理システムにおいても、前
凝集の場合も脱水プロセスで含水率をできるだけ削減し、ケーキ VTS の割合を減少さ
せないようにすることが重要であり、そのためには凝集剤添加量を過剰にならない程
度に添加することが必要である。
- 109 -
6) 溶融プロセスへの影響:溶流度試験の結果、凝沈系 PAC、凝沈系バンドの汚泥焼却
灰は溶融しにくく、凝沈系 FeCl3 の汚泥焼却灰は、より低い温度で溶融することがわ
かった。この点に関して広義の塩基度 Bw と溶融点、溶流点との関係を求めたところ、
溶融点、溶流点が最小となる最適範囲は Bw:1.0 ~ 2.0 であり、凝沈系 PAC、凝沈系バ
ンドの汚泥焼却灰は Al2O3 の割合が高いため、Bw はこの範囲を大きく外れるが、凝沈
系FeCl3を用いた場合は、
塩基度調整をせずとも最適範囲となることが明らかとなった。
すなわち、FeCl3 を用いた場合は塩基度調整が要らないか、調整剤が微量で済むが、ア
ルミ系凝集剤を用いた場合は塩基度調整が必要であり経済的にも不利になることが予
想できた。この観点からは、アルミ系凝集剤よりも、FeCl3 のほうが優れているといえ
た。また、前凝集沈殿汚泥焼却灰のように、Al成分や Fe成分を多く含む場合には、CaO/
SiO2 の塩基度指標よりも、広義の塩基度 Bwを用いて塩基度調整を行うことが必要であ
ろう。
【第 3 章 参考文献】
1) 下水道技術改善対策研究会、下水汚泥の処理処分対策研究専門部会:下水汚泥の処
理処分対策研究、( 平成三年度報告書 )、pp.6-14、p.47、p.69、pp.71-80 (1992)
2) 13398 の化学商品、化学工業日報社、p.56-59、p.115 (1998)
3) 社団法人日本下水道協会:下水試験方法 (1997)
4) 岡田昭彦:前凝集プロセスからの有機物回収・利用プロセスの開発、京都大学修士
論文、pp.3-4 (1997)
5) 大下和徹、北小路博之、加藤文隆、高岡昌輝、武田信生、松本忠生、檜物良一:塩
化第二鉄を用いた凝集沈殿汚泥の性状がリンおよび凝集剤回収プロセスに与える影
響、環境工学研究論文集、Vol.43、pp.399-410 (2006)
6) 味埜俊、松尾友矩、川上智規:活性汚泥のリン組成とリン代謝に関する研究 ( 第 1
報 )‐STS 法を用いた汚泥内リン組成の分析、下水道協会誌、Vol.20、No.228、pp.2836 (1983)
7) 味埜俊、松尾友矩、川上智規:活性汚泥のリン組成とリン代謝に関する研究 ( 第 2
報 )‐各種リン組成を持つ汚泥の形成とそのリン組成変化、下水道協会誌、Vol.20、
No.229、pp. 22-29 (1983)
8) 小越真佐司、佐藤和明、野村克巳:循環式硝化脱窒法に付加するリン除去用凝集剤
の検討- PAC と硫酸ばん土の比較-、衛生工学研究論文集、Vol.24、pp.105-114
(1988)
- 110 -
9) Jong-Oh KIM, 宗宮功:有機酸発酵における凝集汚泥中の無機、高分子凝集剤の阻
害効果、下水道協会誌、Vol.36、No.441、pp.102-108 (1999)
10) 岩部秀樹、堅田智洋、小松敏広:無機凝集剤を併用した下水高度処理システムの処
理特性、環境衛生工学研究、Vol.10、No.3、pp.251-256 (1996)
11) S.G.Girogoropoulos, R.C.Vedder, D.W.Max,:Fate of Aluminum-Precipitated Phosphorus in
Activated Sludge and Anaerobic Digestion, Journal of Water Pollution Control Federation,
Vol.43, No.12, pp.2366-2382 (1971)
12) 下水道技術改善対策研究会、下水汚泥の処理処分対策研究専門部会:下水汚泥処理
の処理処分対策研究、( 平成五年度報告書 )、p.99 (1994)
13) 宇田川康夫:日本分光学会 測定法シリーズ 26「X 線吸収微細構造- XAFS の測定
と解析-」、学会出版センター (1993)
14) 太田敏明:X 線吸収分光法 -XAFS とその応用 -,アイピーシー (2002)
15) 社団法人 日本水道協会:上水試験方法 / 解説編 1993 年版、pp.318-319 (1993)
16) 竹野直人:Eh-pH 図アトラス、熱力学データベースの相互比較、地質調査総合セン
ター研究資料集、No.419、pp.104-105 (2005)
17) 辻幸男:排水処理基礎講座、凝集分離、重金属の除去 (1)、PPM-1994/3、pp.65-75
(1994)
18) 長倉三郎、井口洋夫、江沢洋、岩村秀、佐藤文隆、久保亮五:岩波理化学辞典、第
5 版、岩波書店、p.391 (1998)
19) 廃棄物学会編:廃棄物ハンドブック、オーム社、p.389 (1997)
20) 福田英明:肥料取締法の改正について、再生と利用、Vol.23、No.88、pp.21-30 (2000)
21) 井上恒久:下水汚泥と微量元素問題について、再生と利用、Vol.24、No.93、pp.1116 (2001)
22) 大阪府下水道技術研究会、高度処理分科会:高度処理機構解析研究調査委託 ( その
4 )、平成九年度報告書、p.149、p.161 (1998)
23) 日刊工業新聞社:粉体工学通論、pp.212-219 (1982)
24) Talmage.W.P, Fitch.E.B.:Determining Thickener Unit Areas, Industrial & Engineering
Chemistry, Vol.47, No.1, pp.38-41 (1955)
25) 渡辺春樹、落修一、北村友一:下水汚泥濃縮機構の解明に関する研究、下水道関係
調査研究年次報告集 ( 平成七年度 )、pp.59-68 (1995)
26) 毛利光男、藤井滋穂:累積型沈降筒法による懸濁粒子沈降速度分布の把握、水環境
学会誌、Vol.20、No.12、pp.838-844 (1997)
- 111 -
27) 萩原幸明:維持管理面から見た機械濃縮のポイント、月刊下水道、Vol.13、No.12、
pp.13-21 (1990)
28) 西田克範、小川重治、宮野啓一郎:圧密機構を付加したデカンタの脱水特性、第 29
回下水道研究発表会講演集、pp.617-619 (1992)
29) 平松達生、武川幸一:汚泥粒子径から見る遠心濃縮機の処理特性、第 28 回下水道
研究発表会講演集、pp.575-577 (1991)
30) 渡部春樹:汚泥処理技術の現状と将来展望:下水道協会誌、Vol.33、No.396、pp.1217 (1996)
31) 大西春樹:CST による下水汚泥脱水処理の管理について、環境技術、Vol.9、 No.3、pp.23-27 (1980)
32) 平岡正勝:汚泥処理・再資源化とシステム、ティー・アイ・シー、pp.42-51、pp.119137 (1994)
33) 日本下水道事業団技術開発部、下水道事業団業務普及委員会:効率的な汚泥濃縮法
の評価に関する第 1 次報告書-造粒濃縮法について-、pp.8-22 (1991)
34) 大阪府下水道技術研究会、汚泥処理分科会:有機物の有効利用に関する研究調査、
平成 6 年度報告書、p.160 (1995)
35) 高桑哲男:下水汚泥の脱水操作に関係する諸因子、汚泥処理研究年報1980、pp.127134 (1980)
36) 須藤さつき:下廃水の粒径分布と脱水性について、第 25 回下水道研究発表会講演
集、pp.503-505 (1988)
37) 五十嵐千秋、西沢和夫:下水汚泥のポリマー凝集、圧搾脱水に及ぼす微細粒子の影
響、第 28 回下水道研究発表会講演集、pp.623-625 (1991)
38) 橋本正憲:汚泥の脱水特性解析とプロセスの開発に関する研究、京都大学博士論
文、pp.76-78(1993)
39) 松永一成:嫌気性消化プロセスの効率化による汚泥処理システムの最適化に関する
研究、京都大学博士論文、pp.61-62 (1987)
40) 浦邊真郎、寺島泰:熱分析からみた下水汚泥の熱的性状、下水道協会誌、Vol.18、
No.209、pp.46-54 (1981)
41) 芦沢正実、犬丸淳、市川和芳、高橋毅、浜松照秀:超高温融点測定法の開発と石炭
灰溶融特性、火力原子力発電、pp.42-47 (1995)
42) 木村淳弘:下水汚泥表面溶融処理システムの実用化に関する研究、京都大学博士論
文、pp.25-27 (1994)
- 112 -
43) 村上忠弘、石田貢、鈴木和美、角田幸二、笹部薫:汚泥溶融に関わる指標の検討、
下水道協会誌、Vol.26、No.300、pp.32-46 (1989)
44) 村上忠弘、石田貢、鈴木和美、角田幸二、笹部薫:下水汚泥灰分の溶融特性に関す
る研究、下水道協会誌、Vol.26、No.300、pp.47-54 (1989)
45) 尾崎正明:講座 汚泥処理(7) -汚泥溶融-、下水道協会誌、Vol.34、No.414、pp.8487 (1997)
46) 高岡昌輝、中塚大輔、武田信生、藤原健史:ごみ焼却飛灰中元素の定量に関する蛍
光 X 線分析法の適用性、廃棄物学会論文誌、Vol.11、No.6、pp.333-342 (2000)
47) 吉野敦志、桃井清至、小松俊哉:焼却灰主成分の変動が溶融特性とスラグ品質に及
ぼす影響、廃棄物学会論文誌、Vol.13、No.6、pp.361-369 (2002)
- 113 -
第 4 章 前凝集プロセスを組み込んだ下水処理システムの最適化
4-1 はじめに
第 3 章では、前凝集沈殿汚泥の処理特性を調査することで、前凝集プロセスが各汚泥
処理単位プロセスに与える影響を明らかにしてきたが、
各単位プロセスへの影響は一長
一短であり、これらが総括されて、システム全体へどのような影響をおよぼすか、はっ
きりしていない。すなわち、前凝集プロセスを既存のシステムに導入することで、各単
位汚泥処理のみならず汚泥処理システム全体、
さらには下水処理システム全体に与える
影響を明らかにしなければ、前凝集プロセスを組み込んだ下水処理システムは完結し
ない。
また、下水処理場においては数々の処理フローが考えられ、単位プロセスの組み合
わせ方により、そのシステム構成は多岐にわたる。特に汚泥処理システムを構成する
単位プロセスには濃縮、消化、脱水、焼却、溶融等がある。また、各単位プロセスにお
いても、数々のユニット、たとえば濃縮プロセスについては遠心濃縮や浮上濃縮等が実
用化され、さらに造粒濃縮など新しい濃縮方法が開発・研究されてきており 1)、これら、
多種多様のユニットおよび単位プロセスの組み合わせをそれぞれ一つのシステムとし
て捉え、処理水質のみならず、コストや、所要面積などから、システム全体を総合的
に評価していく必要がある。その上で、前凝集プロセスの導入などによって高度化が推
進される水処理システムが下水処理システム全体に与える影響を加味しつつ、適切な
汚泥処理を選択していく手段が今後必要になってくるものと考えられる。
そこで、本章では、このような手段への最初のアプローチとして、第 2 章における鴻
池処理場における年間固形物収支、主要元素収支調査結果と、第3章における前凝集沈
殿汚泥の処理特性調査結果、ならびに現在全国で用いられている様々な単位汚泥処理
操作の文献データを用いて、膨大な組み合わせが考えられる汚泥処理を含めた下水処
理システム全体を表現し、評価指標として、処理水質、コスト、所要面積等を挙げ、そ
れらをシミュレーションによって算定することができるモデルを構築することを第一
の目的とした。次に、鴻池処理場の既存のシステムで構築したモデルの検証を行うと
ともに、前凝集プロセスを導入した処理システムを、シミュレートし、処理水質への
影響やランニングコスト、所要面積などの増減を総合的に評価することを第二の目的
とした。最後に、前凝集プロセスも含めた、様々な下水・汚泥処理プロセスの組み合
わせについて網羅的にシミュレートし、最適な処理システムを検討することを第三の
目的とした。
具体的には、4-2 では、本研究でシミュレーションに用いたプログラミング手法とし
- 115 -
てのオブジェクト指向分析の特徴、またその手順について述べた。4-3においては、様々
な下水処理システムを構成する対象プロセスの選定や、モデルの対象範囲、構成、評
価解析手順について述べた。4-4、および 4-5 では、具体的な物質収支、コストおよび
所要面積の算定方法について述べた。
4-6においては、鴻池処理場における現状システムにおいてモデルの検証を行うとと
もに、前凝集プロセスを導入した際の影響をシミュレートした。4-7 では、前凝集プロ
セスを含めた種々のプロセスを組み合わせることで、様々な処理システムを表現し、現
状システムの処理水質や、コスト、所要面積を制約条件として、それぞれの観点から最
適な処理システムを抽出し、前凝集プロセスを含めた下水処理システムのあり方に言
及した。最終的に 4-8 で本章のまとめを行った。
4-2 オブジェクト指向分析 2)、3)、4)
4-2-1 オブジェクト指向分析とは
プログラミングの世界では、1980 ~ 1990 年までは FORTRUN、あるいは C 言語に代
表されるような「手続き指向プログラミング言語」が主流であり図 4-2-1 に示したよう
に、一連の手続きの流れを記述したプログラムに対して、必要なデータを入力したり、
結果を出力したりすることで処理を実現する。
この手法では新しい要素を追加する場合には、新たな変数を追加することになり、ま
た新たな反応を追加する場合にはそれに応じた手続きを追加することになる。
それに対してオブジェクト指向プログラミングは、現実世界を構成する「部品」を
「オブジェクト」として捉えることから始まる。「部品」とは人間から見て一つの「か
たまり」として認識しうる任意の単位でよく、対象が汚泥処理の場合は濃縮プロセス
や脱水プロセスのような単位プロセスや、汚泥、脱水ケーキなどの処理対象物質を「オ
ブジェクト」として捉えることになる。
データ
オブジェクト
オブジェクト
手続き
手続き
データ
手続き
手続き
データ
データ
手続き
データ
メッセージ通信
プログラム
図 4 - 2 - 1 手続き指向プログラミング
図 4 - 2 - 2 オブジェクト指向プログラミング
- 116 -
現実の世界では、各部品はそれぞれが持つ状態と、他の部品との相互作用に応じて、
自律的に自らの状態を変化させる。ここで図 4-2-2 に示したように、各部品が持つ現在
の状態を表わす「データ」と、自らの状態を変化させるための「手続き」をひとまと
めにして「オブジェクト」として定義し、他の部品との相互作用は「メッセージ」に
よる通信を介して実現する。逆にいえばこのメッセージを介さなければ、オブジェク
トにアクセスしデータを変更できないことを示す。複雑化した現実世界のシステムを
モデル化する場合に、オブジェクトの内部で情報が完結しており、外部の複雑性の影
響を受けないというメリットを持つ。このような特徴を「カプセル化」と呼んでいる。
4-2-2 クラスとオブジェクトの定義
オブジェクト指向のモデル化を行なう際には、実際に存在する要素に対応する「オブ
ジェクト」とオブジェクトの性質を定義する「クラス」との区別を明確にする必要が
ある。クラスとは、図 4-2-3 に示したようにそのオブジェクトに共通した性質を定義し
た型であり、オブジェクトはこの型によって作り出された実体である。
沈殿池クラス
データ:
実数 流入流量,流入TS,流入SS,流入TN,流入TP
実数 流出流量,流出TS,流出SS,流出TN,流出TP
実数 汚泥流量,汚泥TS,汚泥SS,汚泥TN,汚泥TP
実数 TS除去率,SS除去率,TN除去率,TP除去率
メソッ ド:
流入計算()
流出計算()
流量計算()
濃縮クラス
データ:
実数 汚泥流量,汚泥TS,汚泥SS,汚泥TN,汚泥TP
実数 返流流量,返流TS,返流SS,返流TN,返流TP
実数 濃縮汚泥流量、 濃縮汚泥TS,
濃縮汚泥SS,濃縮汚泥TN,濃縮汚泥TP
実数 TS回収率,SS回収率,TN回収率,TP回収率
メソッ ド:
流入計算()
流出計算()
流量計算()
生成
生成
沈殿池
オブジェクト
濃縮
オブジェクト
リンク
1対1対応
1対1対応
沈殿池
濃縮
図 4 - 2 - 3 沈殿池クラスと濃縮クラスおよびオブジェクト
- 117 -
沈殿池というクラスには沈殿池という概念が共通して持つ、汚泥 TS、汚泥 SS、汚泥
T-P、TS 除去率、SS 除去率、T-P 除去率などのデータ収納箱と、流入・流出・流量計算
等の手続き(メソッド)を定義することができる。シミュレーションの過程において、実
際に存在する沈殿池と1 対 1で対応するように、それらのクラスから個々のオブジェク
トが生成され、それらは独自の SS 除去率や、T-P 除去率の収納箱を有することになる。
同様に濃縮クラスにおいても、具体的な濃縮クラスが生成される。
これらのオブジェクトは同時に実際の接続関係によってリンクされており、リンク
されたオブジェクトどうしはメッセージによって互いの交換を行なう。
このようにクラスは鋳型、そしてオブジェクトは鋳型から生成される鋳造物のよう
な関係にある。本論文でも、一般的な性質を定義する時には「クラス」を、個々のも
のの存在、状態や動作を表わす時には「オブジェクト」と表現することとした。
4-2-3 オブジェクト指向分析・設計の特徴
オブジェクト指向分析・設計で用いられる代表的なキーワードに、カプセル化、継
承、ポリフォーフィズム ( 多態性 ) がある。ここでは、それぞれの用語を説明し、オブ
ジェクト指向分析・設計の特徴を示した。
1) カプセル化
4-2-1 でも前述したように、クラスを定義し、データとそれを操作する手続き関数 (
メンバ関数、あるいはメソッド) を一体化してクラスの中に閉じ込め、外部からデータ
を隠してしまうことができる。カプセル化されたクラス内部のデータへのアクセスは
メンバ関数によって行なうことで、各クラスでのデータの独立性を高くできる。
2) 継承
現実の世界では、あるものの性質を引き継ぎつつ新しい機能を追加したり、別々の機
能を持つもの同士を一つに併せて新しい種類のものを作り出したりすることも多い。
こ
のような概念を、クラス間の関係に取り込んだものを継承と呼び、オブジェクト指向
分析モデルではこの継承を行なうことができる。継承を利用すると、すでに存在する
クラス(スーパークラス)を継承して、概念や特性を引き継ぐとともに、スーパーク
ラスに存在しない新たな性質を追加することで、新しいクラス(サブクラス)の定義
が簡単に行えるため、自分のプログラムで任意のクラスを作成し継承させることで、従
来の手法では利用することが難しかったような外部のプログラム、過去のプログラム
などを利用し発展させる可能性が増えてくる。また既存のクラスを組み合わせて新し
- 118 -
いクラスを作成することも可能であ
り、プログラムの再利用性が高くな
る。
継承
脱水クラス
脱水()
遠心脱水
脱水()
ベルトプレス脱水
脱水()
3) ポリフォーフィズム
通常のプログラミング言語では、
真空脱水
脱水()
異なる演算をする別々の関数に対し
て、同じ名前を付けることはできな
加圧脱水
脱水()
い。しかし現実世界では、たとえば
「数 学を勉 強 す る 」「英 語 を勉 強 す
スクリュープレス脱水
脱水()
る」
「プログラミングを勉強する」と
いう様に動作自身、動作の対象は全
く異なっていても概念や目的の共通
図 4 - 2 - 4 脱水クラスでのポリフォーフィズム
するものには共通の名前を付けて呼
ぶことが多い。
オブジェクト指向分析においてもクラス毎に異なった機能として実現されている関
数に対して同じ名前を付けることができ、これをポリフォーフィズムと呼んでいる。汚
泥処理プロセスにおいても、たとえば図4-2-4に示した様に脱水クラスから継承された
それぞれのクラスは、
「脱水」という手続きにおいてそれぞれ全く物理的に異なった脱
水方法をとる。しかしいずれも「脱水」という同じ名前の手続きで呼ぶことができる。
実
際にどの「脱水」が行われるかは、そのオブジェクトがどのクラスに属しているかに
依存する。
これらの性質はオブジェクトを、分析や動作の主体として捉えることによって生ま
れてきたメリットであり、現実世界の我々の感覚からしても自然なモデル化の手法で
あるといえる。
オブジェクト指向分析のプログラミングをサポートする言語としては C++、Java、C#
などが挙げられるが、本研究では最もよく利用される C++ を用いた。C++ は C 言語から
派生した言語であり、AT&T ベル研究所の Bjarne Stroustrup 博士により開発された。現
在は前述のオブジェクト指向言語の特徴を満たした言語として多くの計算機上で利用
できるようになっている。
- 119 -
4-3 評価対象システムについて
4-3-1 対象プロセスの選定
本プログラムでは様々な水処理、汚泥処理単位プロセスをオブジェクト指向分析の
特徴の1つであるクラスという、モジュールとしての階層からなる画一的な表現構造
で表し、これらのクラスを組み合わせることより、下水処理システムを表現する。評
価範囲は、下水処理場全体のシステムを対象とし、特に前凝集プロセスを導入した水
処理のみならず、脱水や焼却プロセスなどの汚泥処理を含めることとした。
様々な下水処理プロセス、汚泥処理プロセスを組み合わせて、下水・汚泥処理シス
テムを表現するにあたって、まずは個々の対象プロセスを選定し、物質収支モデルの
基本フロー ( 図 4-3-1 参照 ) について検討した。
まず、本研究において中心となる前凝集プロセスは、最初沈殿池前に設置すると考
えた。さらに前凝集プロセスと同様に凝集剤を用いたプロセスとして生物処理槽に直
接凝集剤を添加する同時凝集プロセスおよび最終沈殿池の後段に凝集剤を添加する後凝
集プロセス、凝集剤を添加しない通常のプロセスを比較対象プロセスとした。
また表 4-3-1 に平成 13 年度現在における全国の汚泥処理システムを処理方式別にま
とめた 5)。この表から、濃縮 ― 脱水 ― 焼却プロセスを採用している処理場は690フロー
あり、処理固形物量全体の 46.6% を占める。同様に、濃縮 ― 消化 ― 脱水 ― 焼却プロ
セスを採用している処理場は290フローで約 23.0%、濃縮 ― 消化 ― 脱水プロセスは126
凝集剤
最初沈殿池
生下水
凝集剤
凝集剤
生物処理
最終沈殿
処理水
濃縮
※
消化
消化ガス
脱水助剤
コンポスト
製品
コンポスト
脱水
埋立
焼却灰
再資源化
再資源化
製品
焼却
溶融
スラグ
溶融飛灰
※ 消化プロセスの返流水は、メタン発酵の場合消化脱離液を示すが、有機酸発酵の場合、有機酸を示し、
生物処理として硝化・脱窒に投入するケースも想定している。
図 4 - 3 - 1 処理場における物質収支モデルの対象フロー
- 120 -
表 4 - 3 - 1 汚泥処理システム別のシステム採用数および処理数(平成 1 3 年度)5 )
最終安定化 フロー
状態
No.
液状汚泥
汚泥処理システム
4
5.9
0.0%
濃縮-消化
1
0.7
0.0%
5
0.0%
濃縮-脱水
333
57,956.3
2.8%
12
濃縮-消化-脱水
126
65,480.5
3.2%
13
好気性消化-濃縮-脱水
0
0.0
0.0%
濃縮-熱処理-脱水
0
459
21
濃縮-脱水-コンポスト
22
濃縮-好気性消化-脱水-コンポスト
濃縮-消化-脱水-コンポスト
小計
31
0.0
123,436.8
108,150.6
5.3%
3
855.0
0.0%
168
濃縮-乾燥
0.0%
6.0%
476
647
112,080.0
221,085.6
5.5%
10.8%
14
58.4
0.0%
32
濃縮-消化-乾燥
6
207.0
0.0%
33
濃縮-脱水-乾燥
82
17,811.1
0.9%
34
濃縮-消化-脱水-乾燥
37
34,637.6
1.7%
41
濃縮-脱水-焼却
690
953,600.0
46.6%
42
濃縮-消化-脱水-焼却
290
470,188.6
23.0%
小計
139
52,714.1
2.6%
43
好気性消化-濃縮-脱水-焼却
1
225.0
0.0%
44
濃縮-熱処理-脱水-焼却
3
5,998.0
0.3%
47
濃縮-湿式酸化-脱水-焼却
0
0.0
0.0%
48
その他
126
小計
溶融スラグ
6.6
11
23
焼却灰
割合%
濃縮
小計
乾燥汚泥
量(DS-t/年)
2
14
コンポスト
処理固形物
1
小計
脱水汚泥
最終安定化
処理フロー数
1110
81,694.1
1,511,705.7
4.0%
73.9%
51
濃縮-脱水-溶融
89
77,919.1
3.8%
52
濃縮-消化-脱水-溶融
12
18,099.0
0.9%
53
濃縮-脱水-焼却-溶融
18
18,514.0
0.9%
54
濃縮-消化-脱水-焼却-溶融
5
5,923.0
0.3%
55
その他
9
17,978.0
0.9%
小計
133
合計
138,433.1
2,493
2,047,381.9
1.処理固形物量は濃縮汚泥固形物量を原則とし、濃縮が省略される場合は発生汚泥(沈殿池
引抜汚泥)より求めた。
2.濃縮汚泥を省略している場合も濃縮ありとカウントした。
3.濃縮-好気性消化には好気性消化-濃縮(消化投入汚泥の固形物量でカウント)を含む。
4.1つの処理場で2つ以上の汚泥処理システムを有している場合。それぞれのシステムでカ
ウントした。また、他処理場ないし民間のコンポスト工場等で後段の処理を行う場合にも後
段の処理を行うシステムとしてカウントした。
- 121 -
6.8%
100%
フローで約 3.2%、濃縮 ― 脱水プロセスは 333 フローで、約 2.8% となっている。また
最終処分としてコンポストおよび、溶融を採用している処理場は、それぞれ 647、およ
び133フローと少なくない。これらの集計から、シミュレーションを行なうにあたり基
本的なフローは図4-3-1のように決定した。つまり1つの処理場で、少なくとも脱水ケー
キまでは作成し、返流水は施設内で処理するシステムである。また、汚泥の有効利用
をふまえて、汚泥焼却灰の再資源化施設を組み込んだ。
次に、各単位プロセスにおけるユニット、条件を考えた。以下にその詳細を示す。
1) 凝集プロセス
前凝集プロセス、同時凝集プロセス、後凝集プロセスともに、凝集剤の種類は第 3 章
のプラント実験で用いた PAC、硫酸バンド、FeCl3、および FeCl3 +ポリマーの 4 種類と
した。また凝集剤添加量は第 3 章の実験の添加条件を参考に PAC、硫酸バンドを 2.5、
7.5、12.5 mgAl/L で添加するケース、FeCl3 を 11、22、32 mgFe/L で添加するケース、さ
らに実験は行なっていないが、文献値を参考に二液薬注のケース(FeCl3:6.0 mgFe/L+
ポリマー:0.6 mg/L)も対象とした 6)。またこれら 3 パターンの凝集プロセスを、前凝
集プロセス→最初沈殿池→生物処理+同時凝集プロセスというように併用するシステ
ムは非現実的であると考え、組み込みこまず、3 パターンのうちどれか一つを選ぶかも
しくは選ばない(無添加)ことにした。
2) 生物処理
鴻池処理場では、活性汚泥法としてステップエアレーション法で設計されているが、
実際は標準活性汚泥法で運転されているため、標準活性汚泥法を想定した。また前凝集
プロセスの導入により、最初沈殿池において固形物、および有機物の負荷が減少し硝化
細菌が増殖しやすい条件が形成されるため、後段の生物処理においては担体添加型の
硝化・脱窒プロセスが研究されており、本研究においても、硝化・脱窒プロセスを以下
の 3 パターン ( 図 4-3-2 参照 ) を考えた 6)。
①
硝化→脱窒→再曝気 ( 循環なし:硝化槽、脱窒槽、再曝気槽に担体充填 )
②
脱窒→硝化 ( 硝化液の循環あり:硝化槽に担体充填 )
③
脱窒 I →硝化→脱窒 II →再曝気 ( 硝化液の循環あり:硝化槽に担体充填 )
3) 最初沈殿池、最終沈殿池
最初沈殿池、および最終沈殿池については、鴻池処理場の形式と同様の水平平行流長
方形沈殿池を考えた。
- 122 -
パターン①
アルカリ剤
工業用酢酸
再曝気槽(1hr)
最終沈殿池
硝化槽(4hr)
脱窒槽(3hr)
余剰汚泥
パターン②
硝 化槽(1.0hr×3 )
脱窒槽 (2.3hr×2)
エアリフト 担体循環
M
最終沈 殿池
M
F
F
F
F
B
硝 化液循環
P
返 送汚泥
P
余剰汚泥
パターン③
硝化液循環
工業用酢酸
1hr
2hr
3hr
2hr
図 4-3-2 硝化・脱窒処理 3 パターンのフロー図 6 )
- 123 -
最終沈殿池
余剰汚泥
- 124 -
55
17
8
653
1992
57
21
9
692
1993
63
27
12
703
1994
2
29
26
693
1995
そ
の
他
計
・
不
明
重 力式 +浮 上式 +遠 心式
遠心式+スクリーン式
633
2
672
3
710
3
767
2
807
3
863
3
918
4
110
940
2
2
109
浮上式+スクリーン式
81
4
71
重 力 式 + 造 粒 式
63
2
52
重力式+スクリーン式
47
41
47
16
8
631
1991
重 力 式 + 遠 心 式
47
8
9
591
1990
64
44
6
9
563
1989
42
式
5
8
535
1988
重 力 式 + 浮 上 式
ン
式
式
式
式
6
粒
ー
方
式
造
リ
心
遠
ク
上
浮
ス
力
縮
重
濃
1,017
3
2
128
66
8
2
36
17
755
1996
表 4 - 3 - 2 濃縮方式別処理場数の推移 7 )
1,093
3
3
140
75
14
2
37
21
798
1997
1,096
11
2
4
2
145
77
18
1
38
26
772
1998
1,281
12
2
4
2
155
89
25
1
42
26
923
1999
1,385
8
2
2
3
167
95
34
2
45
28
999
2000
1,464
5
2
6
2
179
105
36
2
44
31
1,052
2001
4) 濃縮
濃縮については多岐にわたり様々な方式が採用されており、すべてのケースを考え
ると必要データ量や、プログラミング時間が莫大な量になるため、下水道統計を参考
にし 7)、現在多く用いられている濃縮方式のいくつかを採用することにした。表 4-3-2
に下水汚泥の濃縮方式の経年推移を示した。表から、最も多く用いられる方式は重力
濃縮方式、あるいはそれとの組み合わせ方式であり、濃縮を行っている処理場全体の
92% を占めていた。また重力濃縮方式以外では、遠心式、浮上式が多く、新しいタイ
プの造粒濃縮方式についても、近年増加傾向にある。この結果から、濃縮方式は以下
の 8 条件を対象とすることにした。
① 混合汚泥(初沈汚泥+余剰汚泥):重力濃縮
② 混合汚泥:遠心濃縮
③ 混合汚泥:加圧浮上濃縮
④ 混合汚泥:造粒濃縮
⑤ 初沈汚泥:重力濃縮+余剰汚泥:重力濃縮
⑥ 初沈汚泥:重力濃縮+余剰汚泥:遠心濃縮
⑦ 初沈汚泥:重力濃縮+余剰汚泥:加圧浮上濃縮
⑧ 初沈汚泥:重力濃縮+余剰汚泥:重力濃縮→遠心濃縮(鴻池処理場のケース)
5) 消化
わが国で採用されている消化方式のほとんどは嫌気性消化方式であり、平成 13 年度
の下水道統計 8) から、消化温度、
布を示した。図より 30 ~ 40℃
の中温嫌気性消化で消化日数
20 ~ 30 日が最も多い。そこで
140
嫌気性消化施設数
消化日数を集計し図 4-3-3 に分
ついては O R P を制御して-
60
40
20
5~10
15~20
20~25
25~30
30~35
35~40
40~45
45~50
50~55
55~60
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0~10
10~20
300mV程度に保ち、汚泥中の有
機物を分解して有機酸を生成さ
10~15
消化温度(℃)
嫌気性消化施設数
発酵を考えた。有機酸発酵に
80
0~5
気性消化によるメタン発酵を想
年注目されてきている有機酸
100
0
消化を行なわない場合と中温嫌
定することとした。加えて、近
120
20~30
30~40
40~50
50~60
60~70
70~80
80~90
90~100
消化日数(日)
図 4-3-3 消化温度および消化日数の分布 8 )
- 125 -
100~200
せるプロセスであり、メリットとしては、
①
有機酸を生成するのみであるので嫌気性消化 (30 日 ) ほど分解に時間がかからず、
発酵槽の滞留時間は 48 時間程度ですむため施設が小規模ですむ。
②
生成した有機酸が、脱窒プロセスにおける BOD 源として有効利用できる。
等が挙げられる 9)、10)、11)。
6) 脱水
脱水に関して、汚泥脱水機の種類別に採用数の経緯を表 4-3-3 7) に示した。本研究で
対象とする脱水方式としては、採用数の多いベルトプレス脱水、遠心脱水、スクリュー
プレス脱水、真空脱水方式、および加圧脱水方式の 5 種とした。採用数の多い近年の傾
向としては、ベルトプレス脱水、遠心脱水、およびスクリュープレス脱水が増加してき
ている。逆に、真空脱水方式や、加圧脱水方式は減少傾向にあるが、これらは、消石
灰・塩化第二鉄といった無機系脱水助剤を多く使用することで脱水汚泥が増加するた
め、他の方式に比較して維持管理性が劣ることによると考えられる。
表 4 - 3- 3 汚泥脱水機別・年度別設置台数 7 )
(単位:台)
脱
水
方
式 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
真 空 ろ 過 機 452
438
416
404
373
358
334
285
257
231
207
184
144
115
加 圧 ろ 過 機 326
323
338
352
358
389
363
330
314
312
300
293
271
256
遠 心 脱 水 機 342
368
340
357
367
404
414
439
484
519
549
671
716
782
ベ ル ト プ レ ス 561
622
704
789
847
882
983
1089 1152 1202 1195 1319 1370 1413
スクリュープレス
25
26
24
28
28
28
24
31
30
29
33
47
57
86
30
40
28
42
多
重
円
板
12
21
蒸
発
乾
燥
1
1
移 動 遠 心 式
1
そ
の
他
8
1
1
1
1
2
1
4
29
158
10
8
7) 焼却
焼却については、流動床焼却炉による焼却が圧倒的に主流となってきているが、流
動床炉のデメリットとして、以下の 2 点が挙げられる。
① 炉内空塔速度の制限から汚泥の炉床面積負荷に制限がある。
② ケーキ中水分の蒸発潜熱により低下した砂層温度と、およびフリーボード温度の上
昇に起因する炉内温度との差が、高カロリー、高含水率脱水ケーキ焼却時に問題と
なる。
- 126 -
これらのデメリットを解消するために石炭燃焼用の流動層ボイラに用いられている循
環流動床焼却炉を下水汚泥焼却にも用いるようになってきており、燃焼特性の把握等、
盛んに研究が行われている 12)、13)。循環流動床焼却炉では、炉に投入される脱水汚泥の
入熱変動に対し、十分な熱量を有する流動媒体が炉内全体を循環するため、炉内の温度
分布が均一となり、処理対象物に負荷、性状変動があってもその影響を受けにくいとさ
れる。またその炉形状から、流動床焼却炉よりもスペースがコンパクトで済むといった
利点がある 12)。本研究では、従来型の流動床焼却炉と、循環流動床焼却炉を想定した。
8) コンポスト
コンポストは、下水汚泥中の易分解性有機
表 4 - 3- 4 コンポスト化設備形式採用数 7 )
物を好気性微生物群の分解機能によって、緑
形状
方式
農地に利用可能な形態や、性状にまで安定化
堆積型
自然通気式
7
12.7
施設数
割合
堆積型
強制通気式
4
7.3
させることをいう。表4-3-4 7) のように全国で
横型
シャベル式
1
1.8
各種の形式が採用されているが、その内全体
横型
パドル式
5
9.1
の約 15% を占める横形スクープ形式を採用
横型
スクープ式
8
14.5
立型
パドル式
3
5.5
立型
落とし戸式
3
5.5
円形
旋回型
2
3.6
その他
22
40.0
計
55
100.0
することにした。なお、コンポストには最適
な原料の含水率が存在し、55 ~ 60% とされ
る。これより水分が高くなると空隙率が少な
くなり空気の供給が不十分となって反応速度
が低下する。このため、含水率が低く、通気性改善効果の高いもみ殻、おが屑、および
木材チップなどの副資材を添加する必要があるが、
本研究では副資材として木材チップ
を投入することとした 14)。
9) 焼却灰の再資源化
焼却灰の再資源化に関しては、
手法として焼却灰プレス焼成プロセスによるインター
ロッキングレンガの製造と、焼却灰を造粒成型・焼成し、焼成砂利を製造するプロセ
スを想定することとした 14)。
10) 溶融
溶融については、溶融方式種類別に採用数の経緯を表 4-3-5 7) に示した。現在主に採
用されているのは、コークスベッド式溶融炉、旋回溶融炉、および表面溶融炉である。
また備考欄より、溶融処理対象物質としては脱水ケーキをコークスベッド式溶融炉、旋
回溶融炉、および表面溶融炉によって溶融するケース、汚泥焼却灰に関しては、旋回溶
- 127 -
融炉によって溶融するケース
表 4 - 3- 5 溶融炉形式別採用数の経緯 7 )
が考えられ、これらの 4 パター
溶
ンを想定することにした。
表 4-3-6
15)
にそれぞれの溶融
融
方
式 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
※備考
コークスベッド式溶融炉
5
8
8
8
8
9
9
(9/0)
旋
回
溶
融
炉
6
7
7
7
7
9
12
(8/4)
表
面
溶
融
炉
5
5
6
6
6
7
6
(6/0)
他
1
1
1
1
(0/1)
炉の特徴について示した。
そ
コ ー ク ス ベ ッ ド 溶 融 炉 では 、
※備考欄は、溶融対象物としてそれぞれ(脱水汚泥/焼却灰)の溶融炉基数を示す。
の
溶融炉下部に 1 次空気により
燃焼した約 1500℃のコークスベッドがあり、乾燥汚泥または焼却灰をコークスととも
に溶融炉に投入し、灰分はこのコークスベッド層を通過する間に溶融スラグとなる。還
元性雰囲気で NOx 発生量が非常に少ない特徴を持つ。
表面溶融炉では炉内に焼却灰や、乾燥汚泥を定置し、バーナで炉内を加熱することで
炉内上部を加熱し、反射炉を形成させて溶融を行なう。通常、酸化性雰囲気で運転され
るが、投入汚泥で炉壁の保護を行なっており、滞留時間が 4 ~ 5.5 時間と長く汚泥性状
表 4-3-6 溶融炉の特徴 1 5)
コークスベッド溶融炉
旋回溶融炉
溶融炉の形式
原理
特徴
表面溶融炉
横型
一般型
高効率型
-
乾燥汚泥と空気を円筒炉内
の接線方向に高速で供給
し、内部で高速旋回流を起
こさせながら、高温高負荷
燃焼させる。
灰分はバッフルでせき止め
られ、溶融状態で抜き出し
口から連続的に排出され
る。
この為スラグを二次燃焼炉
で分離排出する必要がなく
燃焼炉を二次燃焼炉として
流用できるため燃焼と溶融
の兼用ができる。
汚泥の有機物割合が70%以
上の場合には燃焼用空気
温度を600℃以上にすること
により自然溶融が可能とな
る。
乾燥汚泥の含水率は10%以
下。
乾燥汚泥とコークスを炉内
に投入し通気性の確保と
1600℃以上の高温を保持し
溶融を行う。
スラグ発生量は、通常の汚
泥灰分にコークス灰分(約
10%)が追加される。
乾燥汚泥の含水率は35~
45%でよい。
投入汚泥の大きさは150mm
以下に成形する。
同一条件下で汚泥がコーク
スに対し優先的に燃焼する
ことを利用し、溶融に汚泥
の発熱量をできるだけ使用
することでコークスの大幅な
削減を図った方式である。
粉末状の汚泥を余熱空気
により燃焼溶融するための
燃焼空間に搬送し、さらにこ
の空間内に汚泥を旋回させ
る空気を挿入しコークスベッ
ドからの輻射熱を利用して
燃焼溶融させる。
コークスと塩基度調整剤は
共に炉上部より投入しコー
クスベッドを形成する。
コークスベッド下部では、汚
泥灰分のスラグの滴下を円
滑にするとともに、出滓口か
らの未燃焼汚泥を、上部で
はダスト飛散防止の機能を
有している。
乾燥汚泥の含水率は10%以
下。
投入汚泥の平均粒径は
1mm以下。
乾燥汚泥を炉芯に対して
ドーナツ型に定着し、着火
すると炉内上部の壁が加熱
されて一種の反射炉を形成
し、輻射熱を利用して溶融
を行う。
熱効率が良いので、自然溶
融が可能である。
スラグと排ガスの流れが同
一方向であり、スラグの出
滓部が常に高温にさらされ
ているのでスラグの取り出
しが比較的容易。
乾燥汚泥の含水率は30%以
下。
①起動、停止が短時間で容 ①還元性雰囲気であり、汚
易に行うことが可能である。 泥中のアンモニアでアンモ
②焼却と溶融の兼用が可能 ニア脱硝を促進するため、
NOx発生量が非常に少な
である。
③自然溶融が可能である。 い。
②スクリーンしさの投入、処
(ただし灰溶融炉は除く)。
理が可能である。
④スラグ化率は高い。
①還元性雰囲気であり、汚
泥中のアンモニアでアンモ
ニア脱硝を促進するため、
NOx発生量が非常に少な
い。
②スクリーンしさの投入、処
理が可能である。
①酸化性雰囲気である。
②汚泥で炉壁の保護を行
う。
③自然溶融が可能である
(ただし灰溶融は除く)。
④スクリーンしさの投入、処
理が可能である。
⑤汚泥の性状変動に強い。
- 128 -
の変動に強い。
旋回溶融炉では、円筒状の炉の外周に沿った旋回流を汚泥と空気で形成させ、炉壁を
加熱して溶融する。旋回溶融炉は立型、傾斜型、および横形に大別される。酸化性雰囲
気で運転され、炉の起動、停止が短時間で容易に行える特徴を持つ。
11) 脱水ケーキ、焼却灰の処分
脱水プロセスから生じる脱水ケーキは、トラック搬送を行い、陸上埋め立てを想定し
た。また焼却灰については、加湿後に、トラック搬送を行い、陸上埋め立てを想定した。
以上のユニット、条件の決定、これらの組み合わせによる評価対象システム数およ
び内訳をまとめて表 4-3-7 に示した。本プログラムではこれら約 70000 パターンのシス
テムについて物質収支計算や、コスト試算が可能となるようなプログラムを構築した。
表 4 - 3 - 7 評価対象プロセスのユニットと評価対象システム数
従来型
標準活性汚泥法
1
PAC:2.5、7.5、12.5(mgAl/L) 前凝集+標準活性汚泥法
凝集剤 硫酸バンド:2.5、7.5、12.5(mgAl/L)
塩化第二鉄:11、22、32(mgFe/L)
10×2(*)
塩化第二鉄6(mgFe/L)+アニオンポリマー0.6(mg/L)
凝集剤添加活性汚泥法
水処理 (同時凝集
+標準活性汚泥法)
PAC:2.5、7.5、12.5(mgAl/L) 凝集剤 硫酸バンド:2.5、7.5、12.5(mgAl/L)
9
45
塩化第二鉄:11、22、32(mgFe/L)
PAC:2.5、7.5、12.5(mgAl/L) 標準活性汚泥法+後凝集
凝集剤 硫酸バンド:2.5、7.5、12.5(mgAl/L)
前凝集+
担体添加硝化脱窒法
凝集剤 塩化第二鉄6(mgFe/L)+アニオンポリマー0.6(mg/L)
9
塩化第二鉄:11、22、32(mgFe/L)
濃縮 3(**)×2(*)
担体添加
有り、硝化槽へポリウレタンもしくはポリビニル系担体を添加
混合濃縮:
重力濃縮、遠心濃縮、浮上濃縮、造粒濃縮
4
分離濃縮:
初沈汚泥→重力濃縮
余剰汚泥→重力濃縮、遠心濃縮
浮上濃縮、重力濃縮+遠心濃縮
4
8
消化 嫌気性消化(嫌気性消化しない、有機酸発酵、メタン発酵)
3
3
脱水 真空脱水、ベルトプレス脱水、加圧脱水、スクリュープレス脱水、遠心脱水
5
5
汚泥処理 脱水ケーキ埋立処分
トラック搬送→陸上埋立
1
コンポスト
横形スクープ式
1
直接溶融 コークスベッド溶融炉、旋回溶融炉、表面溶融炉
3
焼却+灰埋め立て
流動床焼却炉、循環流動床焼却炉→加湿→トラック搬送→陸上埋立
2
焼却+灰溶融 流動床焼却炉、循環流動床焼却炉→旋回溶融炉
2
焼却+再資源化 流動床焼却炉、循環流動床焼却炉→焼成レンガ、焼成砂利
4
(*) 全返流水の混合位置を前凝集の前後2パターンを想定
(**) 3つの硝化・脱窒形式を想定。(図4-3-2)
評価対象システム総数は、45×8×3×5×13=70,200システム
- 129 -
13
4-3-2 本研究におけるクラス構成
決定したユニット、および
条件から本研究におけるシ
Waste water treatment
ミュレーションプログラム
Influent
のクラス構成、および階層構
Pre-coagulation
造を図 4-3-4 のように設定し
た。
クラスInfluentとは、その中
に流入水の流量、水質、また
揚水による電力原単位、電力
計算のメンバ関数などを有
する。クラス Pre-coagulation
は前凝集プロセスを示し、ク
Al2(SO4)3
Primary sedimentation
FeCl3
Simultaneous-coagulation
Biological-treatment
Post-coagulation
Granulator thickening
Centrifuge thickening
Floatation thickening
Gravity thickening
Final sedimentation
Thickening
Digestion
ラス PAC、クラス Al2(SO4)3 、
Dewatering
およびクラス FeCl3 がこのク
Incineration
ラスを継承して、それぞれの
Melting
凝集剤添加量、前凝集プロセ
Composting
スを用いた場合の最初沈殿
Recycling
池での SS 除去率、T-P 除去
Reverse
率、汚泥処理への影響として
PAC
Screwpress
Organicacid
Filterpress
Methane
Beltpress
Vacuum filtration
Centrifuge
Fluidized bed
High Efficiency fluidized bed
Spiral melting
Cokebed melting
Surface melting
Burned gravel
Burned brick
図 4-3-4 クラスの構成および階層構造 前凝集プロセスを用いた場
合の汚泥発生量、濃縮における回収率、脱水機における回収率、沈殿汚泥の VTS 等の
データを有する。
メンバ関数としてはクラスInfluentからのオブジェクトを受け取り、
流
入 SS に対して凝集剤添加による汚泥増加量の計算を行なう関数、凝集剤の添加量から
凝集剤コストの計算を行なう関数等を有する。クラス Simultaneous-coagulation、および
クラスPost-coagulationもほぼ同じ構成である。クラスPrimary sedimentation、およびクラ
スFinal sedimentationはそれぞれ、凝集プロセスを導入しない場合の沈殿池における除去
率や、汚泥引き抜き流量等をデータとして有し、除去率による収支計算、またプロセ
スでのコスト試算関数等をメンバ関数として定義する。汚泥処理についてもそれぞれ
のクラスについて、汚泥性状のデータ、収支計算、コスト試算等のメンバ関数を有す
る。
- 130 -
4-3-3 評価解析手順
①各プロセスの選定と収支計算
1) 任意のシステムの解析
②コスト・所要面積計算
流入水水質
(流量, SS,
T-P, T-N)
まず、任意のシステムをシミュレートし、解析す
凝集プロセスの有無、
方式(薬剤種類、添加量
投入位置)の決定
る手順を図 4-3-5 に示した。
出力評価指標としては、流量、SS、T-P、T-N 収支、
処理水の水質 (SS、T-N、T-P)、および経済性事項 ( 建
建設コスト計算
水処理方式の決定
(生物処理)
設コスト、ランニングコスト、所要面積 ) を選定し
汚泥処理方式の決定
(濃縮、消化、脱水
焼却、溶融etc.)
た。解析手順は 2 段階からなっており、以下に説明
各プロセスの
スペック決定
する。
建設コスト
計算結果
ランニング
コスト計算
ランニングコスト
計算結果
物質収支計算
①流入水水質を入力するとともに、各処理プロセス
所要面積計算
収支計算結果
を選択し、対象とするシステムを決定、物質収支を
処理水質
汚泥発生量
計算する。
②物質収支の結果を用いて、水処理、汚泥処理の各
所要面積
計算結果
図 4-3-5 評価解析手順
スペックを決定し、建設コスト、ランニングコスト、
所要面積を計算する。
なお本研究では、ランニングコストに関しては下水処理システム全体で算出してい
るが、建設コストと所要面積は水処理における設定が困難であったため、汚泥処理の
みを対象とした。
現状の下水処理システム(A)
2) 最適システムの抽出
処理水水質 (SS, T-P, T-N)
:FA1, FA2, FA3 ,
所要面積 FA4
建設コスト FA5
ランニングコスト FA6
本研究で作成したプログ
ラムは、各単位汚泥処理プ
ロセスのユニットを最初に
70,199 パターン(N=1-70,199)
下水処理システム(N)
選定し、それらを組み合わ
せた場合について物質収支
処理水水質 (SS, T-P, T-N)
FN1, FN2, FN3 ,
所要面積 FN4
建設コスト FN5
ランニングコスト FN6
計算、コスト試算、および
設置面積計算の結果を出力
するプログラムである。本
研究では、各システムは各
単位汚泥処理プロセスのユ
ニットの組み合わせ方によ
N+1
システム(A)とシステム(N)の比較
( FN1< FA1 ∧ FN2< FA2 ∧FN3< FA3
∧ FN4< FA4 ∧ FN5< FA5 ∧FN6< FA6 )
yes
①各プロセスの選定と収支計算
流入水水質
(流量, SS,
T-P, T-N)
凝集プロセスの有無、
方式(薬剤種類、添加量
投入位置)の決定
各プロセスの
スペック決定
建設コスト計算
水処理方式の決定
(生物処理)
汚泥処理方式の決定
(濃縮、消化、脱水
焼却、溶融etc.)
建設コスト
計算結果
ランニング
コスト計算
ランニングコスト
計算結果
物質収支計算
no
システム(N)を
最適処理
システム
として抽出
②コスト・所要面積計算
所要面積計算
収支計算結果
システム(N)
を
除外
処理水質
汚泥発生量
り約 7 0 , 0 0 0 パターンに及
び、それぞれのシステムに
図 4-3-6 最適化解析手順
- 131 -
所要面積
計算結果
ついて評価していたのでは非常に時間と労力を要する。そこで、処理水質 (SS、T-P、TN)、ランニングコスト、設置面積、および建設コストの 6 つの指標から現状のシステム
を全ての指標で下回るシステムを、最適システムとして定義し、プログラム中でルー
プ計算により、すべてのパターンについて図 4-3-5 に基づいた物質収支計算、コスト試
算、および設置面積計算を行い、図4-3-6に示した手順で最適処理システムを抽出した。
図 4-3-6 により、現状のシステム(システム A)の 6 つの指標を算出し、70200 パター
ンのシステム(システム N:N=1 ~ 70199)においても 6 つの指標を算出する。前者と
後者を比較し現状のシステムの 6 つの指標を 1 つでも上回るシステムは切り捨てられ、
最終的にすべての基準を下回るシステムが抽出されることになる。
4-4 物質収支
流入水量、および水質は 第2 章での鴻池処理場の調査における、流入水の年間平均
値を用いて設定するものとした。各プロセスにおける物質収支は、除去率、もしくは
回収率としてユニット毎に一定の値を設定し、処理水と汚泥、もしくは汚泥と返流水
などに分配した。各汚泥処理プロセスからの返流水は、濃縮と消化については固液分
離水、脱水については脱水ろ液および脱水機の洗浄水、ならびに焼却炉、溶融炉につい
てはスクラバ排水のことを示し、選択した処理プロセスからの返流水負荷は総和され
て全返流水負荷となり最初沈殿前で流入水負荷に加えられることとした。その後、シ
ステム全体において流量、SS、T-N、および T-P の各値が収束するまで計算し、定常状
態での物質収支を
凝集剤
求めた。以下に各
プロセスでの計算
S1
S2
S3
最初沈殿池
生下水
凝集剤
凝集剤
S4
生物処理
S5
最終沈殿
処理水
やパラメータに関
して詳細に述べる
S6
SR1
濃縮
が、物質の流れ
S8
は、流量、SS、T-
SR2
N、およびT-Pに対
脱水助剤
応して、それぞれ
F、S、N、および P
に流入水などの、
各媒体を示す番号
を組み合わせて表
した。図 4-4-1 に、
S7
消化
コンポスト
製品
Sg
S9
埋立
S10
S14
コンポスト
消化ガス
脱水
SR3
焼却灰
再資源化
S11
焼却
SR4
溶融
SR5
S12
S13
再資源化
製品
スラグ
溶融飛灰
図 4 - 4- 1 物質収支モデルの対象フローおよび使用記号(SS)
- 132 -
SS の場合を例として、図 4-3-1 に示した物質収支モデルの対象フローに追記する形とし
て示した。
4-4-1 凝集プロセスと沈殿池プロセス
まず、流入水と全返流水が混合される際の物質収支は、設定したシステム流入下水
の流量を F1(m3/day)、SS を S1(t/day)、T-N を N1(t/day)、および T-P を P1(t/day)、全返流
水の流量、SS、T-N、および T-P をそれぞれ FR(m3/day)、SR(t/day)、NR(t/day)、および
PR(t/day) とし、そして最初沈殿池の流入流量、SS、T-N、および T-P を F2(m3/day)、S2(t/
day)、N2(t/day)、および P2(t/day) とおいて、以下の (4-4-1) 式のように示される。
⎧ F 2 = F1 + FR
⎪ S 2 = S1 + SR
⎪
⎨
⎪ N 2 = N1 + NR
⎪⎩ P 2 = P1 + PR
(4-4-1)
前凝集プロセスを導入した場合は、凝集剤の添加により、DSが SSに転換することか
ら固形物量が増加する。この場合は3-3-3でのパイロットプラント実験により求めた固
形物増加率 R1(図 3-3-35)を SS に乗じるものとした。この固形物増加率は同時凝集お
よび後凝集の際にも使用することとした。また T-N、および T-P については変化しない
ものとした。凝集剤添加による流量の増加は流入水の流量に比較してわずかであるた
め無視した。前凝集プロセスにおける物質収支は、前凝集プロセスの前段で全返流水
が流入水と混合される場合(前凝集 A)と、前凝集プロセスの後で全返流水が前凝集処
理水と混合される場合(前凝集 B)について (4-4-2) 式で示される。
⎧ F 2 = F1 + FR
⎪S 2 = R (S1 + SR ) : 前凝集Aの場合
1
⎪⎪
⎨S 2 = R1 ⋅ S1 + SR : 前凝集Bの場合
⎪ N 2 = N1 + NR
⎪
⎪⎩ P 2 = P1 + PR
(4-4-2)
次に、最初沈殿池での汚泥引き抜き率をα F とし、SS 除去率、T-N 除去率、および TP 除去率をそれぞれα S 、α N、およびα P とし、最初沈殿池流出水の流量、SS、T-N、お
よび T-P を F3(m3/day)、S3(t/day)、N3(t/day)、および P3(t/day) とし、また、初沈汚泥量、
SS、T-N、および T-P を F6(t/day)、S6(t/day)、N6(t/day)、および P6(t/day) として、以下
の (4-4-3) 式により最初沈殿池流出水と、初沈汚泥とに配分した。
- 133 -
⎧F3 = (1− α F ) ⋅ F 2 F 6 = α F ⋅ F 2
⎪S3 = (1− α ) ⋅ S 2 S6 = α ⋅ S 2
⎪
S
S
⎨
(
)
N
3
=
1
−
⋅
N
2
N
6
=
α
α
N
N ⋅ N2 ⎪
⎪⎩P3 = (1− α P ) ⋅ P2 P6 = α P ⋅ P2
ここで、前凝集プロセスを導入
FeCl3
αP= -2.19X2+24.8X+19.2
R =0.91
した場合は、最初沈殿池での T-P
第 3 章における、パイロットプラ
係を、最も相関の高かった二次多
項式で近似し、図 4-4-2 に示した。
相関係数は全ての条件で0.87以
上であったが、この近似を用いる
ことで PAC で Al/T-P モル比が 6 以
上、また硫酸バンドで Al/T-P モル
100
αP:T-P除去率(%)
剤量(Me/T-Pモル比)と除去率の関
80
60
PAC
αP= -1.82X2+20.8X+20.3
R =0.88
40
20
PAC
硫酸バンド
FeCl3
0
0
比が 10 以上、FeCl3 で Fe/T-P モル
比が 6 以上で除去率が減少する傾
硫酸バンド
αP= -0.99X2+17.6X+20.1
R =0.87
120
除去率 α P を近似式で表現した。
ントの水質分析の結果から、凝集
(4-4-3)
5
10
X:(Al or Fe)/T-Pモル比(-)
15
図 4-4-2 Al/T-P、Fe/T-P モル比とリン除去率の相関
向が見られた。この除去率の低下
は、特に FeCl3 の場合に顕著であるが、凝集剤添加量が上昇すると pH が低下し、沈降
性が悪くなったり、固定化されたリンが逆に溶出してくる現象によるものと考えられ
る。厳密にいえば凝集剤添加によって変化する pH や、生成する AlPO4、FePO4 の溶解
度などから考えるべきであるが、本研究では簡易的にこの二次多項式近似を用いるこ
とにした。また同時凝集、および後凝集も最終沈殿池の T-P 除去率として、この式を用
いた。
4-4-2 生物処理プロセス
次に最初沈殿池流出水は、生物処理プロセスに流入し、溶解性成分の固形物化など
により余剰汚泥となって最終沈殿池で引き抜かれる。本研究では、定常状態でのシス
テムの評価を念頭においているため、生物処理槽ではMLSS濃度は一定とし、汚泥返送
率 Rs も一定であるとした。すなわち最終沈殿池での生成汚泥→返送汚泥→ MLSS →最
終沈殿池での生成汚泥のサイクルは定常であるものとした。
- 134 -
よって生物処理プロセスにおいては T-P については変化しないものとした。また SS
については BOD酸化菌の増殖によるSS への転換、ならびに硝化および脱窒菌の増殖に
よる SS への転換、さらには汚泥の自己分解等により変化する。生物処理槽での汚泥増加
量については、これらを反映させたものとした 6)、16)、17)。
T-N については硝化・脱窒を想定した場合、最終的には無機化され N2 として揮散す
ることになる。よって生物処理槽ではT-N除去率をβ N とし、生物処理槽流出水の流量、
SS、T-N、および T-P をそれぞれ、F4(m3/day)、S4(t/day)、N4(t/day)、および P4(t/day) と
して以下 (4-4-4) 式のような物質収支式が成立する。
⎧ F 4 = F 3 + FR 2
⎪S 4 = a ⋅ (s-B3 + s-BR 2 ) + b(S 3 + SR 2 ) + c( N 3 + NR 2) + d ( N 3 + NR 2) − e ⋅ MLSS ⋅V ⎪
⎨
(4-4-4)
⎪ N 4 = (1 − β N ) ⋅ ( N 3 + NR 2 )
⎪⎩ P 4 = P3 + PR 2 ただし、MLSS:MLSS 濃度 (mg/L)、V:好気槽容量 (m3)、
a:S-BOD 汚泥転換率 (gMLSS/gBOD)、b:SS の汚泥転換率 (gMLSS/gSS)、
c:硝化菌の収率 (gVSS/gNH4+-N)、d:脱窒菌の収率 (gVSS/gNO3--N)、
e:汚泥の自己分解係数 (1/ 日 )
ここで FR2 (m3/day)、SR2 (t/day)、NR2 (t/day)、および PR2(t/day) は硝化・脱窒プロセス
を想定した場合に、脱窒で必要
100
プロセスからの有機酸の有効利
90
用を考慮したものであり、それ
80
ぞれ投入有機酸の各負荷であ
70
る。また s-B3(t/day)、および sBR2(t/day) はそれぞれ最初沈殿
池流出S-BOD、有機酸発酵プロ
S-BOD(mg/L)
となる有機源として有機酸発酵
最初沈殿池流出水(FeCl3-23mgFe/L添加)
最初沈殿池流出水(FeCl3-6(mgFe/L)+ポリマー0.6(mg/L)添加
60
50
40
セスからの有機酸の S-BOD を
30
示している。ただし、硝化・脱
20
窒を行っても有機酸発酵プロセ
10
スを選択しないシステムでは有
0
機酸の補填はできないものと考
最初沈殿池流入水
R=0.717
R=0.717
0.0
え、有機源として工業用酢酸を
1.0
2.0
3.0
T-P(mgP/L)
図 4-4-3 T-P と S-BOD の相関
- 135 -
4.0
5.0
添加するものとし、
この場合酢酸投入による負荷の増大はS-BODを示すs-BR2 (t/day)以
外は無視することとした。詳細は有機酸発酵プロセスで後述する。
ただし、この式で、s-B3(t/day) で示される最初沈殿池流出 S-BOD は、プラント実験で
初沈上澄み水の S-BOD を測定していなかったため、鴻池処理場で同時期に、同様の最
初沈殿池のパイロットプラントを用いた実験を行って、原水、および凝集剤を添加し
た場合の最初沈殿池流出水の S-BOD 濃度、T-P 濃度を測定した値 18) を用い、S-BOD 濃
度と T-P 濃度との相関をとり、図 4-4-3 に示した。図より、S-BOD と T-P とは、ばらつ
きが多少あるものの、直線近似で相関係数 R=0.717 程度となり、T-P 濃度から S-BOD濃
度を、以下 (4-4-5) 式を用いて求めることとした。
s-B3 = 8.32 ⋅ P3 + 12.1
(4-4-5)
好気槽容量 V(m3) については、標準活性汚泥法、および硝化・脱窒各系列についての
好気槽における滞留時間 HRT(h) と最初沈殿池流出水量から算定するものとし、以下の
(4-4-6) 式により計算した。
V=
F 3 ⋅ HRT
24
(4-4-6)
また、余剰汚泥量は、余剰汚泥濃縮プロセスへの流入量として定義するが、(4-4-4) 式
で算定した生物処理槽での汚泥発生量とは異なって、汚泥返送率や、余剰汚泥濃度、最
終沈殿池での SS 除去率に関連する。最終沈殿池での SS 物質収支としては、SS 除去率
によって、余剰汚泥と処理水に配分することとしているが、体積ベースでの余剰汚泥
量を求めるには、余剰汚泥濃度が必要となってくる。そこで以下の方法で余剰汚泥濃
度を求めた。
まず、MLSS 濃度 (mg/L) MLSSは一定とし、汚泥返送率 Rsも一定であるとしているた
め、余剰汚泥濃度をCr(mg/L) とすると生物処理の流入端でのSS収支は以下の (4-4-7)式
で成立する。
⎛ MLSS ⎞
⎛ Cr ⎞
F 3 ⋅ Rs ⋅ ⎜ 6 ⎟ + S 3 = F 3 ⋅ (1 + Rs ) ⋅ ⎜
6 ⎟
⎝ 10 ⎠
⎝ 10 ⎠
(4-4-7)
(4-4-7) 式の両辺を、最初沈殿池流出流量 F3 で除し、最初沈殿池流出 SS 濃度を C3(mg/
L) とおいて、Cr について解くと以下の式となる。
- 136 -
Cr =
(1 + Rs ) ⋅ MLSS − C 3
(4-4-8)
Rs
上式を用いて余剰汚泥濃度を算定した。ただし生物処理における硝化・脱窒のパ
ターン①は、生物処理槽に担体を投入することで返送汚泥を必要としないため、Cr は
8000 mg/L に設定した。
最終沈殿池まわりの物質収支に関しては、最終沈殿池流出水の流量、SS、T-N、およ
び T-P を F5(m3/day)、S5(t/day)、N5(t/day)、および P5(t/day) として、引き抜き余剰汚泥
の流量、SS、T-N、および T-P をそれぞれ、F7(m3/day)、S7(t/day)、N7(t/day)、およびP7(t/
day) とし、さらに、最終沈殿池での SS 除去率、T-N 除去率、および T-P 除去率をそれぞ
れγ S 、γ N、およびγ P とすると、以下の式のように示される。
⎧F5 = F 4 − F 7 ⎪
⎪S5 = (1 − γ S ) ⋅ S 4 ⎨
⎪N5 = (1 − γ N ) ⋅ N 4
⎪⎩P5 = (1 − γ P ) ⋅ P4
F 7 = (S 7 Cr) ⋅ 106
S7 = γ S ⋅ S 4
N7 = γ N ⋅ N 4
(4-4-9)
P7 = γ P ⋅ P4
以上が水処理系における物質収支式である。これら (4-4-1) 式~ (4-4-9) 式中で実際に
設定値として用いた諸係数を表 4-4-1、表 4-4-2 に示した。
- 137 -
表 4- 4- 1 水処理系における諸係数一覧(1 )
処理プロセス
流入
凝集プロセス
記号
F1
S1
N1
P1
R1
αF
αS
最
初
沈
殿
池
定義
流入水量
流入SS量
流入T-N量
流入T-P量
固形物増加率
汚泥引き抜き率
標準系
PAC2.5
PAC7.5
PAC12.5
硫酸バンド2.5
硫酸バンド7.5
硫酸バンド12.5
FeCl36+ポリマ-0.6
FeCl311
FeCl322
SS除去率
FeCl332
αN
標準系
PAC2.5
PAC7.5
PAC12.5
硫酸バンド2.5
T-N除去率
硫酸バンド7.5
硫酸バンド12.5
FeCl36+ポリマ-0.6
FeCl311
FeCl322
FeCl332
αP
最終沈殿池
γS
γN
γP
標準系
凝沈系
SS除去率
T-N除去率
T-P除去率
T-P除去率
標準系
凝沈系
単位
(m3/day)
(t/day)
(t/day)
(t/day)
(%)
数値、参照先
備考
220,000
第2章 処理場調査結果
23.0
第2章 処理場調査結果
5.49
文献値 6)
0.77
第2章 処理場調査結果
図3-3-31 第3章 パイロットプラント実験結果
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
3.0
50.0
40.0
70.0
50.0
50.0
70.0
70.0
74.0
55.0
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
70.0 第3章 パイロットプラント実験結果
90.0 第3章 パイロットプラント実験結果
3.0
文献値 6)
5.0
文献値 6)
18.0
文献値 6)
20.0
設定値
5.0
文献値 6)
18.0
文献値 6)
20.0
設定値
5.0
文献値 6)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
5.0
文献値 6)
18.0
文献値 6)
20.0
設定値
32.0
第2章 処理場調査結果
図4-4-1 第3章 パイロットプラント実験結果
95.0
第2章 処理場調査結果
30.0
文献値 6)
80.0
第2章 処理場調査結果
図4-4-1 第3章 パイロットプラント実験結果
- 138 -
第2章 処理場調査結果
第2章 処理場調査結果
第3章 パイロットプラント実験結果
第3章 パイロットプラント実験結果
第3章 パイロットプラント実験結果
第3章 パイロットプラント実験結果
第3章 パイロットプラント実験結果
第3章 パイロットプラント実験結果
文献値 6)
第3章 パイロットプラント実験結果
表 4- 4- 2 水処理系における諸係数一覧(2 )
処理プロセス
生物処理
全般
標準
活性汚泥法
凝集剤添加
活性汚泥法
硝化・脱窒
パターン①
硝化・脱窒
パターン②
硝化・脱窒
パターン③
記号
S-B3
a
b
c
d
e
MLSS
HRT
βN
Rs
c
d
e
MLSS
HRT
βN
Rs
c
d
e
MLSS
HRT
βN
Rs
c
d
e
MLSS
HRT
βN
Rs
c
d
e
MLSS
HRT
βN
Rs
定義
曝気槽流入S-BOD
S-BODの汚泥転換率
SS汚泥転換率
硝化菌の収率
脱窒菌の収率
汚泥の自己分解係数
MLSS濃度
好気槽HRT
T-N除去率
汚泥返送率
硝化菌の収率
脱窒菌の収率
汚泥の自己分解係数
MLSS濃度
好気槽HRT
T-N除去率
汚泥返送率
硝化菌の収率
脱窒菌の収率
汚泥の自己分解係数
MLSS濃度
好気槽HRT
T-N除去率
汚泥返送率
硝化菌の収率
脱窒菌の収率
汚泥の自己分解係数
MLSS濃度
好気槽HRT
T-N除去率
汚泥返送率
硝化菌の収率
脱窒菌の収率
汚泥の自己分解係数
MLSS濃度
好気槽HRT
T-N除去率
汚泥返送率
単位
(t/day)
(gMLSS/gBOD)
(gMLSS/gSS)
4+
(gVSS/gNH -N)
(gVSS/gNO3--N)
(1/day)
(mg/L)
(h)
(%)
(%)
(gVSS/gNH4+-N)
(gVSS/gNO3--N)
(1/day)
(mg/L)
(h)
(%)
(%)
(gVSS/gNH4+-N)
(gVSS/gNO3--N)
(1/day)
(mg/L)
(h)
(%)
(%)
(gVSS/gNH4+-N)
(gVSS/gNO3--N)
(1/day)
(mg/L)
(h)
(%)
(%)
(gVSS/gNH4+-N)
(gVSS/gNO3--N)
(1/day)
(mg/L)
(h)
(%)
(%)
- 139 -
数値、参照先
(4-4-5)式
0.55
0.95
0
0
0.05
2000
8.0
0
33
0
0
0.03
3000
8
0
33
0.10
0.40
0.05
2500
5
85
0
0.10
0.40
0.05
2000
3
70
50
0.10
0.40
0.05
2000
4
80
23
備考
文献データより算出 18)
文献値 6)
文献値 6)
設定値
設定値
文献値 6)
設定値
設定値
設定値
設定値
設定値
設定値
文献値 17)
文献値 19)
設定値
設定値
設定値
文献値 6)
文献値 6)
文献値 6)
設定値
文献値 6)
文献値 6)
文献値 6)
文献値 6)
文献値 6)
文献値 6)
設定値
文献値 6)
文献値 6)
文献値 6)
文献値 6)
文献値 6)
文献値 6)
設定値
文献値 6)
文献値 6)
文献値 6)
4-4-3 濃縮プロセス
濃縮プロセスの物質収支式は、濃縮汚泥量を F8(m3/day) として、濃縮汚泥の SS、TN、および T-P をそれぞれ S8(t/day)、N8(t/day)、および P8(t/day) とし、また、濃縮汚泥
濃度を C8(mg/L) とし、さらに、SS 回収率、T-N 回収率、および T-P 回収率をそれぞれ
δ S、δ N、およびδ P、濃縮返流水の流量、SS、T-N、および T-P をそれぞれ FR1(m3/day)、
SR1(t/day)、NR1(t/day)、および PR1(t/day)、として以下 (4-4-10) 式で示される。
⎧ F 8 = (S 8 C 8) ⋅ 10 6
⎪
⎪S 8 = δ S ⋅ ST ⎨
⎪ N 8 = δ N ⋅ NT
⎪⎩ P8 = δ P ⋅ PT
ただし
FR1 = FT − F 8
SR1 = (1 − δ S ) ⋅ ST
NR1 = (1 − δ N ) ⋅ NT
PR1 = (1 − δ P ) ⋅ PT
⎧ FT ⎫ ⎧ F 6 ⎫ ⎧ F 7 ⎫ ⎧ F 6 + F 7 ⎫
⎪ ST ⎪ ⎪ S 6 ⎪ ⎪ S 7 ⎪ ⎪ S 6 + S 7 ⎪
⎪
⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪
⎬
⎨ ⎬ = ⎨ ⎬, or ⎨ ⎬, or ⎨
⎪ NT ⎪ ⎪ N 6⎪ ⎪ N 7⎪ ⎪ N 6 + N 7 ⎪
⎪⎩ PT ⎪⎭ ⎪⎩ P6 ⎪⎭ ⎪⎩ P7 ⎪⎭ ⎪⎩ P6 + P7 ⎪⎭
(4-4-10)
濃縮プロセスは、以下の 4 通りの濃縮方式について、対象汚泥ごとに SS 回収率、TN 回収率、および T-P 回収率を考えた。
① 重力濃縮:初沈汚泥、余剰汚泥、混合汚泥
② 遠心濃縮:余剰汚泥、混合汚泥
③ 浮上濃縮:余剰汚泥、混合汚泥
④ 造粒濃縮:混合汚泥
下水道統計(行政編)8) において、各方式別に各処理場の投入汚泥の年間総量Qin(m3/年
)、流入汚泥含水率Win(%)、濃縮汚泥年間総量Qout(m3/年)、および濃縮汚泥含水率W out(%)
から、固形物回収率δ S を算定するとともに、濃縮汚泥濃度 C8(mg/L) を算定した。計算
式を (4-4-11) 式に示した。
(100 − Wout ) ⋅ Qout
(100 − Win ) ⋅ Qin
(100 − Wout ) ⋅ 10 6 (4-4-11)
C8 =
δS =
100
算定結果を累積度数分布にして図 4-4-4 に示した。固形物回収率および、濃縮汚泥濃
度については、それぞれこれらの累積度数分布から全国の中央値を求め、その値を採用
- 140 -
100
100
90
80
70
60
度数
60
重力濃縮
重力濃縮
80
初沈汚泥
余剰汚泥
混合汚泥
70
度数
90
重力濃縮
重力濃縮
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
初沈汚泥
余剰汚泥
混合汚泥
0
0
20
40
60
80
100
120
1
2
3
4
固形物回収率(%)
7
8
9
10
100
90
90
遠心濃縮
遠心濃縮
80
80
70
遠心濃縮
遠心濃縮
70
余剰汚泥
混合汚泥
60
度数
60
度数
6
濃縮汚泥濃度(%)
100
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
余剰汚泥
混合汚泥
0
0
20
40
60
80
100
120
0
1
2
固形物回収率(%)
100
3
4
5
6
7
8
9
10
濃縮汚泥濃度(%)
100
余剰汚泥
混合汚泥
90
90
80
80
浮上濃縮
浮上濃縮
70
70
60
度数
60
度数
5
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
余剰汚泥
混合汚泥
50
浮上濃縮
浮上濃縮
0
0
20
40
60
80
100
120
1
2
3
固形物回収率(%)
4
5
6
7
濃縮汚泥濃度(%)
図 4-4-4 濃縮方式、対象汚泥別の固形物回収率
および濃縮汚泥濃度の累積度数分布
- 141 -
8
9
10
した。ただし、④混合汚泥の造粒濃縮に関しては実績が少ないため、文献値 20) を参考
とした。また、T-N 回収率については汚泥中の T-N はほとんどが固形分であると考え、
SS( 固形分 ) 回収率と同等とした。T-P 回収率は第 3 章におけるパイロットプラント実験
の結果および、第2章での鴻池処理場における物質収支結果から濃縮形式に応じて設定
した。また、凝集プロセスを組み込んだ場合は濃縮汚泥の回収率は第3章のパイロット
プラント実験の結果を用いて濃縮形式によらず一定とし、濃縮汚泥濃度は、図に示し
た濃縮汚泥濃度算定結果による中央値を用いることとした。濃縮における諸係数を表
4-4-3 に示した。
表 4 - 4 - 3 濃縮プロセスにおける諸係数一覧
処理プロセス
δS
重力濃縮
遠心濃縮
浮上濃縮
造粒濃縮
定義
記号
SS回収率
初沈汚泥
単位
(%)
数値、参照先
77
備考
文献データより算出 8)
余剰汚泥
混合汚泥
凝集沈殿汚泥
(%)
(%)
(%)
92
文献データより算出 8)
76
文献データより算出 8)
99 第3章 パイロットプラント実験結果
初沈汚泥
余剰汚泥
混合汚泥
凝集沈殿汚泥
(%)
(%)
(%)
(%)
13
設定値
32
第2章 処理場調査結果
20
設定値
99 第3章 パイロットプラント実験結果
初沈汚泥
余剰汚泥
混合汚泥
余剰汚泥
(mg/L)
(mg/L)
(mg/L)
(%)
δP
TP回収率
C8
濃縮汚泥濃度
δS
SS回収率
混合汚泥
凝集沈殿汚泥
余剰汚泥
(%)
(%)
(%)
δP
TP回収率
C8
濃縮汚泥濃度
混合汚泥
凝集沈殿汚泥
余剰汚泥
混合汚泥
(%)
(%)
(mg/L)
(mg/L)
δS
SS回収率
余剰汚泥
混合汚泥
凝集沈殿汚泥
余剰汚泥
(%)
(%)
(%)
(%)
δP
TP回収率
C8
濃縮汚泥濃度
混合汚泥
凝集沈殿汚泥
余剰汚泥
(%)
(%)
(mg/L)
60
設定値
99 第3章 パイロットプラント実験結果
38000
文献データより算出 8)
δS
SS回収率
δP
TP回収率
混合汚泥
混合汚泥
凝集沈殿汚泥
混合汚泥
(mg/L)
(%)
(%)
(%)
40000
文献データより算出 8)
95
文献値 20)
99 第3章 パイロットプラント実験結果
94
文献値 20)
C8
濃縮汚泥濃度
凝集沈殿汚泥
混合汚泥
(%)
(mg/L)
99 第3章 パイロットプラント実験結果
30000
文献値 20)
- 142 -
28000
17000
22000
86
文献データより算出
文献データより算出
文献データより算出
文献データより算出
8)
8)
8)
8)
88
文献データより算出 8)
99 第3章 パイロットプラント実験結果
77
第2章 処理場調査結果
60
設定値
99 第3章 パイロットプラント実験結果
40000
文献データより算出 8)
42000
文献データより算出 8)
93
文献データより算出 8)
78
文献データより算出 8)
99 第3章 パイロットプラント実験結果
60
設定値
4-4-4 消化プロセス
本研究で想定した嫌気性消化は二段消化であり、消化脱離液の発生を考えた。また
有機酸発酵においても、返流水もしくは脱窒のための有機源として、脱離液が発生す
るものと考えた。物質収支は、発酵もしくは消化脱離液の流量、SS、T-N、および T-P
をそれぞれ FR2(m3/day)、SR2(t/day)、NR2(t/day)、および PR2(t/day) とし、また発酵もし
くは消化汚泥の流量、SS、T-N、および T-P をそれぞれ F9(m3/day)、S9(t/day)、N9(t/day)、
および P9(t/day) とし、さらに SS 回収率、T-N 回収率、および T-P 回収率を、εS 、εN、お
よび εP、ならびに VSS 分解率を εDS とし、混合濃縮汚泥の VSS/SS 比を、VS1 として以下
の(4-4-12)式で示した。また各処理後の汚泥濃度C9 (mg/L)は混合濃縮汚泥濃度C8 (mg/
L) から変化しないと設定した 18)。なお、消化に伴って発生する消化ガス量 Fg(Nm3/day)
は、VTS 分解率を εDT、混合濃縮汚泥の VTS/TS 比を VT1、および TS を T8(t/day)とし、
分解有機物あたりのガス発生量を εG (Nm3/kg- 分解 VTS) = 1.0 とし 21)、同じく (4-4-12)
式中に示した。
⎧F9 = (S9 C9) ⋅106
FR2 = F8 − F9
⎪
⎪S9 = ε S ⋅ (1− ε DS ⋅VS1) ⋅ S8 SR2 = (1− ε S ) ⋅ (1− ε DS ⋅VS1) ⋅ S8
⎨
NR2 = (1− ε N ) ⋅ N8
⎪N 9 = ε N ⋅ N 8
⎪⎩P9 = ε P ⋅ P8
PR2 = (1− ε P ) ⋅ P8
Fg = ε G ⋅ ε DT ⋅VT1⋅ T 8
Sg = 0
Ng = 0
(4-4-12)
Pg = 0
有機酸発酵脱離水の流量、SS、T-N、およびT-Pを示すFR2(m3/day)、SR2(t/day)、NR2(t/
day)、およびPR2(t/day)については脱窒における有機源補填に用いる場合、それぞれ(44-4) 式に代入されることになる。有機酸の S-BODを示す s-BR2 (t/day) は文献データ 6) か
ら、単位 SS あたりの有機酸生成量として 130 (mgCODcr/gSS 汚泥 ) を算出し、混合濃縮
汚泥 SS を示す S8(t/day) に、この値を乗じることで CODcr ベースの有機酸量を求め、有
機酸における CODcr の値と S-BOD の値をほぼ同等と考え 6) 、(4-4-4) 式に代入した。
消化に関しての諸係数を表 4-4-4 に示した。
4-4-5 脱水プロセス
脱水機の物質収支は脱水ケーキ量を F10 (m3/day)、また、脱水ケーキ SS、T-N、およ
び T-P をそれぞれ、S10(t/day)、N10(t/day)、および P10 (t/day) とし、さらに、脱水ケーキ
含水率を Cw(%) とし、SS 回収率、T-N 回収率、および T-P 回収率を、ζS 、ζN、および ζP、
脱水機返流水流量、SS、T-N、および T-P を FR3(m3/day)、SR3(t/day)、NR3(t/day)、およ
- 143 -
表 4 - 4 - 4 消化プロセスにおける諸係数一覧
処理プロセス
定義
SS回収率
単位
(%)
TN回収率
TP回収率
基本系
(%)
(%)
(%)
63
文献値から算出 6)
80
文献値から算出 21)
70 第3章 パイロットプラント実験結果
PAC2.5
PAC7.5
(%)
(%)
80 第3章 パイロットプラント実験結果
70 第3章 パイロットプラント実験結果
PAC12.5
硫酸バンド2.5
硫酸バンド7.5
(%)
(%)
(%)
59 第3章 パイロットプラント実験結果
78 第3章 パイロットプラント実験結果
73 第3章 パイロットプラント実験結果
硫酸バンド12.5
FeCl36+ポリマ-0.6
FeCl311
FeCl322
(%)
(%)
58 第3章 パイロットプラント実験結果
77
文献値 6)
FeCl332
(%)
(%)
(%)
77 第3章 パイロットプラント実験結果
63 第3章 パイロットプラント実験結果
63 第3章 パイロットプラント実験結果
基本系
PAC2.5
PAC7.5
(%)
(%)
(%)
70 第3章 パイロットプラント実験結果
82 第3章 パイロットプラント実験結果
69 第3章 パイロットプラント実験結果
PAC12.5
硫酸バンド2.5
(%)
(%)
59 第3章 パイロットプラント実験結果
84 第3章 パイロットプラント実験結果
硫酸バンド7.5
硫酸バンド12.5
FeCl36+ポリマ-0.6
FeCl311
(%)
(%)
(%)
75 第3章 パイロットプラント実験結果
56 第3章 パイロットプラント実験結果
77
文献値 6)
(%)
(%)
78 第3章 パイロットプラント実験結果
67 第3章 パイロットプラント実験結果
有機物分解率
固形有機物分解率
(%)
(%)
(%)
64 第3章 パイロットプラント実験結果
0.66*VT1 -4.46
文献による実験式 21)
0.66*VS1 -4.46
文献による実験式 21)
有機物分解率
固形有機物分解率
(-)
(-)
記号
εS
εN
εP
VT1
濃縮汚泥
VTS/TS
消化
プロセス
全般
VS1
濃縮汚泥
VSS/SS
FeCl322
FeCl332
嫌気性消化
(メタン発酵)
有機酸発酵
ε DT
ε DS
ε DT
ε DS
数値、参照先
80
46
46
備考
文献値から算出 21)
文献値 6)
文献値 6)
びPR3(t/day) とし、脱水助剤添加による流量、SS の増分を ΔF(m3/day)、およびΔS(t/day)、
ならびに、脱水機洗浄水による返流水量の増分を ΔW(m3/day) として、以下、(4-4-13) 式
により、脱水ケーキと、脱水機返流水とに配分した。
⎧ F10 = S10 ⋅ Cw (1 − Cw)
⎪S10 = ζ (SD + ΔS ) ⎪
S
⎨
N
ζ
10
=
N ⋅ ND
⎪
⎪⎩ P10 = ζ P ⋅ PD
FR3 = FD − F10 + (ΔF + ΔW )
SR3 = (1 − ζ S ) ⋅ (SD + ΔS )
NR3 = (1 − ζ N ) ⋅ ND
PR3 = (1 − ζ P ) ⋅ PD
ただし
⎧ FD ⎫ ⎧ F 8 ⎫ ⎧ F 9 ⎫
⎪ SD ⎪ ⎪ S 8 ⎪ ⎪ S 9 ⎪
⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪ ⎪
⎨ ⎬ = ⎨ ⎬, or ⎨ ⎬
⎪ ND ⎪ ⎪ N 8⎪ ⎪ N 9⎪
⎪⎩ PD ⎪⎭ ⎪⎩ P8 ⎪⎭ ⎪⎩ P9 ⎪⎭
(4-4-13)
また、ここで用いる脱水ケーキの含水率については、前述した濃縮における固形物回
収率と同様に、下水道統計(行政編)8) による全国の下水処理場の報告値を脱水方式別
に整理した。脱水ケーキ含水率の累積度数分布を脱水方式別に図 4-4-5 に示した。ケー
キ含水率はこの結果から、全国の中央値を求め用いることとした。脱水における諸係
- 144 -
ベルトプレス脱水
加圧脱水
スクリュープレス脱水
遠心脱水
90
90
80
80
70
70
60
60
度数
100
度数
100
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
0
真空脱水
0
40
50
60
70
80
90
100
40
ケーキ含水率(%)
50
60
70
80
90
100
ケーキ含水率(%)
図 4-4-5 脱水方式別ケーキ含水率の累積度数分布
数を表 4-4-5 に示した。表 4-4-5 に示したように、凝沈系の場合の各回収率は、脱水方
式によらずパイロットプラント実験の結果を用いて一定であると仮定した。
4-4-6 焼却、溶融、コンポスト、焼却灰の再資源化
脱水後に関しては、脱水ケーキとして埋め立てられるか、焼却、焼却灰の再資源化、
溶融、あるいはコンポスト化が想定され、以下に各プロセスでの物質収支について述べ
る。
1) 焼却
焼却の際は、固形物の場合は、投入脱水ケーキの VTS(強熱減量)分が排ガスへ、そ
れ以外は焼却灰とし、その後集塵機で捕集されなかった灰分がスクラバ排水へ移行す
るものと考えた。なお、T-P、および T-N についても同様に、排ガス、焼却灰、スクラ
バ排水へ配分されるものとした。投入脱水ケーキ中固形分の VTS の割合を VS2、熱処
理により排ガスとして排出される T-N、および T-P の割合を VN2、および VP2 とし、焼
却灰発生量、焼却灰に移行する T-N、および T-P を S11(t/day)、N11(t/day)、および P11(t/
day)、処理固形物あたり発生するスクラバ排水の割合を ηF (m3/t)、ならびに焼却灰、TN、およびT-P が集塵機で捕集される割合をηS 、ηN、およびηP、スクラバ排水の流量、SS、
T-N、および T-P を FR4(m3/day)、SR4(t/day)、NR4(t/day)、および PR4(t/day)、とすると、
焼却炉まわりの物質収支は、以下の (4-4-14) 式で示される。
- 145 -
表 4 - 4 - 5 脱水プロセスにおける諸係数一覧
対象汚泥
処理プロセス
記号
ζS
ζP
遠心脱水
Cw
ζS
ζP
BP脱水
Cw
ζS
ζP
基本系
真空脱水
Cw
ζS
ζP
加圧脱水
Cw
ζS
スクリュ-プレス脱水 ζ P
Cw
ζS
ζP
凝沈系の脱水全般
Cw
遠心脱水
ΔS
ΔW
BP脱水
ΔS
ΔW
基本系
凝沈系
共通
真空脱水
ΔS
ΔW
加圧脱水
ΔS
ΔW
スクリュ-プレス脱水
ΔS
ΔW
定義
SS回収率
TP回収率
ケーキ含水率
SS回収率
TP回収率
ケーキ含水率
SS回収率
TP回収率
ケーキ含水率
SS回収率
TP回収率
ケーキ含水率
SS回収率
TP回収率
ケーキ含水率
SS回収率
TP回収率
PAC2.5
PAC7.5
PAC12.5
硫酸バンド2.5
ケーキ
硫酸バンド7.5
含水率
硫酸バンド12.5
塩化第二鉄11
塩化第二鉄22
塩化第二鉄32
ポリマー
塩化第二鉄
消石灰
洗浄水
ポリマー
塩化第二鉄
消石灰
洗浄水
ポリマー
塩化第二鉄
消石灰
洗浄水
ポリマー
塩化第二鉄
消石灰
洗浄水
ポリマー
塩化第二鉄
消石灰
洗浄水
単位
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%汚泥固形分)
(%汚泥固形分)
(%汚泥固形分)
(m3/投入汚泥m3)
(%汚泥固形分)
(%汚泥固形分)
(%汚泥固形分)
(m3/投入汚泥m3)
(%汚泥固形分)
(%汚泥固形分)
(%汚泥固形分)
(m3/投入汚泥m3)
(%汚泥固形分)
(%汚泥固形分)
(%汚泥固形分)
3
3
(m /投入汚泥m )
(%汚泥固形分)
(%汚泥固形分)
(%汚泥固形分)
3
3
(m /投入汚泥m )
- 146 -
数値
95
90
83
99
90
79
90
98
81
90
98
66
95
90
72
99
99
80
84
87
70
82
83
75
84
83
1
0
0
0.26
1
0
0
2.0
0
20
50
4.0
0
20
50
4.0
1
0
0
0.14
備考
文献値 22)
設定値
文献データより算出 8)
第3章 パイロットプラント実験結果
第3章 パイロットプラント実験結果
文献データより算出 8)
第2章 処理場調査結果
第2章 処理場調査結果
文献データより算出 8)
設定値
設定値
文献データより算出 8)
文献値 22)
設定値
文献データより算出 8)
第3章 パイロットプラント実験結果
設定値
文献データより算出 22)
第3章 パイロットプラント実験結果
文献値 23)
第2章 処理場調査結果
設定値
文献値 22)
⎧
⎪S11 = η ⋅ S10(1 − VS 2) ⎪
S
⎨
N
11
=
η
N ⋅ N 10(1 − VN 2 )
⎪
⎪⎩ P11 = η P ⋅ P10(1 − VP 2 )
FR 4 = η F ⋅ S10
SR 4 = (1 − η S ) ⋅ S10(1 − VS 2)
NR 4 = (1 − η N ) ⋅ N10(1 − VN 2) (4-4-14)
PR 4 = (1 − η P ) ⋅ P10(1 − VP 2)
2) 溶融
汚泥の溶融に関しては、脱水ケーキを乾燥し溶融する直接溶融と、灰溶融に分かれ
る。直接溶融の場合は、投入固形物の VTS(強熱減量)分が排ガスへ、それ以外はス
ラグ、および溶融飛灰とし、溶融飛灰のうち、集塵機で捕集されなかったものが後段の
スクラバ排水に移行すると考えた。T-P、および T-N は、スラグ、スクラバ排水、溶融
飛灰、および排ガス、それぞれに移行率を設定し収支計算を行った。
スラグ量、スラグ中の T-N、および T-P を S12(t/day)、N12(t/day)、および P12(t/day)、
また、スラグ化率を θS 、θN、および θP、溶融飛灰や T-N、および T-P が集塵機で捕集さ
れる割合を κS 、κN、および κP、溶融飛灰量、溶融飛灰中 T-N、および T-P を S13(t/day)、
N13(t/day)、およびP13(t/day) として、さらに、処理対象物あたり発生するスクラバ排水
の割合を κF (m3/t)、スクラバ排水の流量、SS、T-N、および T-P を FR5(m3/day)、SR5(t/
day)、NR5(t/day)、および PR5(t/day) とすると、直接溶融に関する物質収支は以下の (44-15) 式で示される。
⎧
⎪S12 = θ ⋅ S10(1 − VS 2) ⎪
S
⎨
12
=
N
θ
N ⋅ N 10(1 − VN 2 )
⎪
⎪⎩ P12 = θ P ⋅ P10(1 − VP 2 )
FR5 = κ F ⋅ S10
SR5 = κ S (1 − θ S ) ⋅ S10(1 − VS 2)
S13 = (1 − κ S ) ⋅ (1 − θ S ) ⋅ S10(1 − VS 2)
NR5 = κ N (1 − θ N ) ⋅ N10(1 − VN 2 ) N13 = (1 − κ N ) ⋅ (1 − θ N ) ⋅ N10(1 − VN 2 )
PR5 = κ P (1 − θ P ) ⋅ P10(1 − VP 2) P13 = (1 − κ P ) ⋅ (1 − θ P ) ⋅ P10(1 − VP 2)
(4-4-15)
灰溶融の場合は、焼却灰中のVTSの割合であるVS2、熱処理により排ガスとして排出
される T-N、および T-P の割合である VN2、および VP2 はほとんど無視できるので、以
下の (4-4-16) 式で示すことができる。
⎧
⎪S12 = θ ⋅ S11
⎪
S
⎨
N
12
=
θ
N ⋅ N 11
⎪
⎪⎩ P12 = θ P ⋅ P11
FR5 = κ F ⋅ S11
SR5 = κ S (1 − θ S ) ⋅ S11
S13 = (1 − κ S ) ⋅ (1 − θ S ) ⋅ S11
NR5 = κ N (1 − θ N ) ⋅ N11 N13 = (1 − κ N ) ⋅ (1 − θ N ) ⋅ N11 (4-4-16)
PR5 = κ P (1 − θ P ) ⋅ P11
P13 = (1 − κ P ) ⋅ (1 − θ P ) ⋅ P11
- 147 -
3) 焼却灰の再資源化
焼却灰の再資源化は灰の投入に対し、100% の再資源化率を仮定し 14)、それぞれ焼成
レンガや焼成砂利を生成するものとした。
4) コンポスト
コンポストについては、有機分が好気性条件化で発酵分解され肥料化される。この
過程で、脱水ケーキ中 N 分の一部はアンモニアまで分解され、発酵熱により大気中に
揮散するとともに、脱水ケーキ中の水分も幾分か蒸発する。また T-Pには変化はないと
考えられる。そこで、最終的に生成されるコンポスト製品の量、SS、T-N、および T-P
を、F14 (m3/day)、S14(t/day)、N14(t/day)、および P14(t/day) とし、含水率を Cow(%)、脱
水ケーキ中の有機分分解率を λs、有機分の分解に伴って脱水ケーキ中 N 分が大気中に
揮散する割合を λN として、物質収支は以下 (4-4-17) 式のように示される。
⎧ F14 = F10 (1 − Cow )
⎪S14 = (1 − λ ⋅ VS 2 )S10
⎪
S
⎨
(
λ
=
−
14
1
N
N )N 10
⎪
⎪⎩ P14 = P10
(4-4-17)
特に、コンポストの含水率は下水道統計(行政編)8) により全国のコンポスト施設に
おける製品の含水率が報告されており、これらの報告値から図4-4-6に示す累積度数分
布を作成し中央値を求めて用いた。
以上、特に焼却、溶融、コンポストに関しての諸係数をまとめて表 4-4-6 に示した。
4-4-7 返流水
4-4-3 ~ 4-4-6 で前述した汚泥処理プロセスからの返流水は、総和され、全返流水と
して最初沈殿池の前にまで戻されることになる。したがって、全返流水の流量、SS、TN、および T-P は以下 (4-4-18) 式のように示される。ただし生物処理において一部の硝
化・脱窒プロセスを選び、かつ有機酸発酵プロセスを選定した場合においては、有機
酸を脱窒のための有機源として生物処理槽へ投入するため、有機酸発酵プロセスから
の返流水は全返流水に含まれず生物処理流入水と混合されることとした。
⎧ FR = ∑ FRi
⎪
i =1
⎪ SR = ∑ SRi
⎪
i =1
⎨
NR
NRi =
∑
⎪
i =1
⎪
⎪ PR = ∑ PRi
i =1
⎩
- 148 -
(4-4-18)
100
90
80
70
度数
60
50
40
30
20
10
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
コンポスト製品含水率(%)
図 4-4-6 コンポスト製品含水率の累積度数分布
表 4 -4 -6 焼却・溶融・コンポストプロセスにおける諸係数一覧
処理プロセス 記号
定義
単位
数値、参照先
VS2
焼却
VN2
全般
VP2
ηF
ηS
流動床
焼却炉
ηN
ηP
ηF
循環流動床 η S
焼却炉
ηN
ηP
VS2
VN2
VP2
θS
θN
直接溶融
θP
κF
κS
κN
κP
θS
θN
θP
κF
灰溶融
κS
κN
κP
λS
コンポスト λ N
Cow
ケーキ中VTS
排ガスへ移行するT-Nの割合
(%)
(%)
計算ニヨル
100
備考
計算値
設定値
排ガスへ移行するT-Pの割合
(%)
0
設定値
焼却炉排水発生量
35
文献値 23)
3
排水への飛灰移行率
(m /投入ケーキt)
(%)
排水への飛灰中T-N移行率
(%)
排水への飛灰中T-P移行率
焼却炉排水発生量
(%)
14 第2章 処理場調査結果
0
設定値
4 第2章 処理場調査結果
21
文献値 14)
排水への飛灰移行率
(m3/投入ケーキt)
(%)
排水への飛灰中T-N移行率
(%)
0
排水への飛灰中T-P移行率
(%)
4 第2章 処理場調査結果
14 第2章 処理場調査結果
設定値
ケーキ中VTS
(%)
計算ニヨル
排ガスへ移行するT-Nの割合
(%)
100
設定値
排ガスへ移行するT-Pの割合
ケーキ中無機分のスラグ化率
(%)
(%)
0
80
設定値
文献値 25)
ケーキ中T-Nのスラグ化率
(%)
0
設定値
ケーキ中T-Pのスラグ化率
(%)
65
文献値 26)
溶融排水発生量
0.15
文献値 14)
溶融飛灰の排水中移行率
(m /投入ケーキt)
(%)
溶融飛灰中T-Nの排水中移行率
(%)
0
設定値
溶融飛灰中T-Pの排水中移行率
スラグ化率
(%)
(%)
75
80
文献値 26)
文献値 25)
3
10
計算値
設定値
T-Nのスラグ中固定化率
(%)
0
設定値
T-Pのスラグ中固定化率
(%)
65
文献値 26)
溶融排水発生量
(m /投入灰t)
(%)
3.0
文献値 14)
溶融飛灰の排水中移行率
50
設定値
溶融飛灰中T-Nの排水中移行率
(%)
0
溶融飛灰中T-Pの排水中移行率
ケーキ中有機分分解率
(%)
(%)
75
15.6
文献値 26)
文献値 14)
ケーキ中N分揮散率
(%)
15.6
設定値
コンポスト含水率
(%)
3
- 149 -
設定値
34 文献データより算出 8)
本研究のシミュレーションでは、4-4-1 式~ 4-4-18 式のうち、選択されたシステムに
対応したものを用い、システム全体において流量、TS、SS、および T-P の各値が収束
するまで続けられることになる。収束判定条件は全返流水の FR、SR、NR、および PR
の値を用いた。収束計算を行い、前のループでの FR、SR、NR、および PR との差が全
て 10-5 以下になったところでループ計算を打ち切った。
4-5 コスト、所要面積
コスト試算は、主に建設コスト、およびランニングコストについて行ない、さらに所
要面積の算定を行なった。建設コスト、および所要面積は汚泥処理全般について求め、
ランニングコストは、水処理を含めた処理場全体を対象とした。
4-5-1 建設コスト
建設コストは汚泥処理全般に対して算出した。建設コストは、主に平成 3 年に作成さ
れた下水汚泥総合計画策定マニュアル 27) 中で、汚泥処理プロセス毎に、土木建築、機
械設備、および電気設備の 3 つに分けて提案されている費用関数を用いた。ただし、有
機酸発酵や造粒濃縮など比較的新しい処理プロセスに関しては、別途文献値を参考に
決定した 14)、20)、21)、28)、29)、30)。建設コスト試算費用関数を表 4-5-1 に示した。これらの
表 4 -5 -1 建設コスト費用関数
(単位:×百万円)
処理プロセス
重力濃縮
文献
27)
土木設備
機械設備
A*(24.2Q0.485-9.1Q0.469)
B*9.1Q0.469
A*16.5*Q0.303
A*1.4*(Qd/24)*(n/(n-1))
B*4.32*Q0.821
B*2.064*(Qd/24)*(n/(n-1))
(2/3)*A*(24.2Q0.485-9.1Q0.469)
Q*T*m
(4/5)*B*9.1Q0.469
(Q*1.04/FL)*m/0.7
遠心濃縮
27)
加圧浮上濃縮
21)
造粒濃縮
20),27)
有機酸発酵
消化(メタン発酵)
28)
27)
遠心脱水
27)
A*80.4*Q0.394
B*78.14*Q0.279
ベルトプレス脱水
27)
加圧脱水
21)
A*21.5*Q0.74
A*115*n
B*78.14*Q0.279
B*269.4*n
真空脱水
スクリュープレス脱水
21)
22)
A*135*n
63*n
B*130.2*n
500*n
焼却全般
27)
A*240.78*X0.05
直接溶融
29)
B*48.89*X0.785
1435.4*Xd0.4384
灰溶融
29)
874.99*Xa0.7215
コンポスト
焼成レンガ
30)
39)
129.61*X0.6628
1400*n
A*27.7*Q
0.59
B*28.4*Q
400*n
0.536
焼成砂利
14)
100*n
650*n
A:建設デフレーター B:一般機器卸売物価指数 C:電気機器卸売物価指数
電気設備
受変電設備:
0.2*C*28.02*Q0.172
運転設備 :
C*18.19*Q*0.227
C*21.43*X0.739
500*n
200*n
Q:処理相当処理水量 (10 3×m3/day) Qd:処理汚泥量 (103×m3/day) T:有機酸発酵槽滞留時間 (day)
X:処理汚泥量 (wet-t/day) Xd:処理汚泥量 (dry-t/day) Xa:処理灰量 (t/day)
n:設置ユニット数 (台) m:槽および膜単価 (円/m 3) FL:膜流束 (m/day)
- 150 -
式と物質収支計算結果を基に、建設
コストを算出するが、この表におい
て採用した費用関数のうち文献が古
いものについては、土木設備建設費
に関しては建設デフレータを、機械
表 4 - 5 - 2 建設コスト算定に用いた諸係数
項目
記号 単位
建設デフレーター
A
(-)
一般機器物価指数
B
(-)
電気機器物価指数
C
(-)
有機酸発酵槽および膜単価 m (円/m3)
膜流束
FL (m/day)
有機酸発酵滞留時間
T
(day)
設備建設費については一般機器の企
ユニット数
業物価指数を、電気設備建設費につ
n
(台)
数値、内容
1.05
0.99
0.87
50000
0.24
2
1台あたりの処理能
力を定め、処理汚泥
量から決定。プロセ
スによっては予備機
1台を含む。
文献
31)
31)
31)
28)
28)
28)
8)
いては電気機器の企業物価指数を考
慮し、それぞれにこの換算係数を乗じて平成 13 年現在のデータに換算した 31)。これら
建設費算定に用いた諸設定値を表 4-5-2 に示した。
4-5-2 ランニングコスト
ランニングコストは、汚泥処理システムに関しては、電力費、燃料費、薬品費、設備
補修費、処分費、便益、および人件費について考え、さらに水処理については電力費と
薬品費を考慮して総和をランニングコストとした。
1) 電力費
電力費については、汚泥処理全般と水処理における電力量消費を考え、電力量単価
を乗じることで求めた。電力量は基本的に表 4-5-3 に示した文献 6)、14)、20)、21)、22)、27)、32)、
33)
や鴻池処理場へのヒアリングで求めた原単位を用いて各プロセスについて算定した。
原単位を用いる方法以外の方法で算定した電力量は、生物処理での曝気に必要な電
力量および有機酸発酵の電力量であり以下に述べる。
生物処理の曝気電力は、Eckenfelder&O’Connor のモデル 34)、35) を用いて求めた。曝気
槽必要酸素量を NBOD(kg/day) とすると、以下の (4-5-1) 式で示すことができる。
N BOD = a BOD ⋅ B3 ⋅ 10 3 +
b MLSS ⋅ MLSS ⋅ V
10 3
ただし、B3:曝気槽流入 T-BOD(t/day)
MLSS:MLSS 濃度 (mg/L)、V:好気槽容量 (m3)
aBOD:除去 BOD1kg あたりの必要酸素量 (kgO2/kgBOD)
bMLSS:MLSS1kgあたりの必要酸素量 (kgO2/kgMLSS)
- 151 -
(4-5-1)
表 4 -5 -3 電力量の原単位
プロセス
揚水
最初沈殿池
水処理
濃縮
消化
脱水
焼却
焼却灰
再資源化
脱窒
硝化槽循環ポンプ
汚水ポンプ
その他(場内換気等)
最終沈殿池
重力濃縮機
遠心濃縮機
加圧浮上濃縮
造粒濃縮
消化(メタン発酵)
遠心脱水機
ベルトプレス脱水
加圧脱水
真空脱水
スクリュープレス脱水
流動床
単位
原単位
0.049
0.003
3
(kwh/m )
(kwh/m3)
(kwh/m3-脱窒槽)
0.008
6)
0.060
6)
0.068 鴻池処理場実績値
0.090 鴻池処理場実績値
0.017
6)
3
(kwh/m )
(kwh/m3)
(kwh/m3)
(kwh/m3)
(kwh/t-DS)
(kwh/t-DS)
(kwh/t-DS)
(kwh/day)
無視できる
179
125
336
6.5
27)
27)
21)
20)
27)
(kwh/m3)
(kwh/m3)
(kwh/m3)
(kwh/t-ケーキ)
190
70
6.2
4.1
1.3
90
27)
27)
21)
21)
22)
6)
(kwh/t-ケーキ)
(kwh/t-ash)
(kwh/t-ash)
(円/t-DS)
(kwh/t-ash)
64
300
365
11000
180
14)
14)
14)
32)
33)
(kwh/t-ケーキ)
90
38)
((万円/年)/(千m3/day))
(kwh/t-DS)
(kwh/t-DS)
循環流動床
焼成砂利
焼成レンガ
直接溶融
灰溶融
コンポスト
文献
6)
6)
ここで、B3(t/day) の値は実験で
最初沈殿池流入水
200
求めていなかったため、式 (4-4-4)
最初沈殿池流出水(FeCl3-23mgFe/L添加)
最初沈殿池流出水(FeCl3-6(mgFe/L)+ポリマー0.6(mg/L)添加
におけるs-B3(t/day)(最初沈殿地流
出 S-BOD) のケースと同様に、鴻
沈殿池のパイロットプラントを用
いた実験を行って、原水および凝
T-BOD(mg/L)
池処理場で同時期に、同様の最初
150
100
集剤を添加した場合の最初沈殿池
流出水の T-BOD 濃度と T-P 濃度を
R=0.930
R=0.930
50
測定した値 18) とを用い、T-BOD 濃
度と T-P 濃度との相関をとり、図
0
0.0
4-5-1 に示した。図より、T-BODと
T-P とは、高い相関があり、直線近
1.0
2.0
3.0
T-P(mgP/L)
4.0
図 4-5-1 T-P と T-BOD の相関
- 152 -
5.0
似で相関係数 R=0.93程度となり、P3(t/day)(最初沈殿池流入 T-P)から B3(t/day) を、以下
(4-5-2) 式を用いて求めることとした。
B3 = 25.3 ⋅ P3 + 13.0 (4-5-2)
また、硝化槽必要酸素量 NNOD(kg/day) は以下の式で示すことができる。
N NOD = 4.25 ⋅ N 3 ⋅ 10 3 (4-5-3)
ただし N3:硝化槽流入 NH4-N(t/day)
N3 ≒最初沈殿池流出 T-N と仮定
これら 2式の和が、総括必要酸素量N(kg/day) であり、この値から実際にBOD除去と・
硝化に用いられる空気量、すなわち送気量 Qs(m3/min)は以下の式で示すことができる。
QS =
N
(τ⋅ O W ⋅ E A ⋅ 24 ⋅ 60) (4-5-4)
ただし、τ:空気比重量 (kg/m3)、OW:空気中の酸素含有重量 (kg・O2/kg・Air)
E A:酸素移動効率(-)
この送気量 Qs から送風機の電力を算定するが、送風機動力を L(kw) とすると以下の式
で示すことができ、L が求まれば、1 日の電力量は 24(h) を乗じて求めることができる。
k
⎛ Pa Qs ⎞
⎧
1
L = (1 ξ ) ⋅ k − 1 ⋅ ⎜ 6120 ⎟ ⋅ ⎨(Pa 2 Pa 1 )
⎠ ⎩
⎝
( k −1)
k
⎫
− 1⎬ ⎭
(4-5-5)
ただし、ξ:全断熱効率、k:空気の比熱比、Pa1:吸込口における絶対圧力(mmaq)、
Pa2:吐出口における絶対圧力 (mmaq)
また有機酸発酵の電力量は、発酵槽のポンプ攪拌動力を考えた。ポンプの動力は以下
の式で示すことができこの E(kw) に 24(h) を乗じることで電力量を算定した。
E =
9.8 × (F 8 1440 ) × HL
EF
- 153 -
(4-5-6)
ただし、F8:処理汚泥量 (m3/day)、E:発酵槽ポンプ動力 (kw)、
HL:損失水頭 (m)、EF:ポンプ効率 ( - )
電力費算定に用いた諸係数を表 4-5-4 に示した。
表 4 - 5 - 4 電力費算定に用いた諸係数
プロセス
記号
電力単価
基本料金
除去BOD1kgあたりの必要酸素量 aBOD
MLSS1kgあたりの必要酸素量 bMLSS
空気比重量
τ
空気中の酸素含有重量
Ow
酸素移動効率
Ea
全断熱効率
ξ
Pa1
吸込口絶対圧力
Pa2
吐出口絶対圧力
空気の比熱比
k
酸発酵槽ポンプ効率
EF
損失水頭
HL
単位
(円/kwh)
(円/月)
(-)
(-)
(kg/m3)
(kg・O2/kg・Air)
(-)
(-)
(mmaq)
(mmaq)
(-)
(-)
(m)
原単位
12
1600
0.5
0.1
1.198
0.229
0.075
0.65
10130
16330
1.4
0.65
4
文献
設定値
設定値
35)
35)
28)
28)
28)
28)
28)
28)
28)
28)
28)
2) 燃料費
燃料費は汚泥処理での消化槽や有機酸発酵槽の加温に用いる燃料と、焼却炉、再資
源化設備、および溶融炉の補助燃料を考え、それぞれ燃料の単価を乗じることで求め
た。
まず、消化槽、および有機酸発酵槽の加温に用いる燃料 21) については、重油ボイラー
により熱供給しつつ、発生した消化ガスを補填し有効利用することを想定した。ただ
し、有機酸発酵においては ORP 制御によりメタン発酵を抑制しているため、いわゆる
消化ガスの発生はわずかであるとして燃料への補填を考えなかった。
消化槽、有機酸発酵槽における必要重油量 A(L/day) は、以下の式で示すことができ
る。
A=
H 1 − Fg ⋅ hg
hf
- 154 -
(4-5-7)
ただし、H1:消化槽加温エネルギー (kcal/day)、Fg:消化ガス発生量 (Nm3/day)
hg:消化ガス発熱量 (kcal/Nm3)、hf:重油発熱量 (kcal/L)
また、消化槽加温エネルギー H1(kcal/day) は以下の式で算定され、(4-5-7) 式、(4-5-8)
式により、必要重油量を求めた。なお必要重油量が負の場合、すなわち消化ガスが余っ
た場合はフレアスタックで燃焼させるとし、焼却炉などへの補填は考えなかった。
H 1 =
F 8 × ρ × C P × ΔT
η
(4-5-8)
ただし、F8:消化槽投入汚泥量 (m3/day)、ρ:汚泥比重 (kg/m3)、
CP:汚泥比熱 (kcal/kg・℃)、Δ T:加温温度差 (℃)、
η:消化系総括熱効率 (-)
次に、焼却炉での補助燃料消費量であるが、流動床方式および循環流動床方式とも
に、第 3 章 8 節 3 項で述べた (3-8-3) 式を用いて脱水ケーキ 1t 焼却するのに必要な重油
量を求め、投入ケーキ量に乗じることで求めた。
灰溶融炉における補助燃料消費量ならびに再資源化設備の燃料消費量は原単位を用
いて求めることとし、表 4-5-5 にその原単位の値を示した。
以上の燃料費計算に用いた各設定値を表 4-5-6 に示した。
表 4 - 5- 5 燃料消費の原単位
プロセス
焼却灰
再資源化
直接溶融
焼成砂利
単位
(L/t-ash)
原単位
300
備考、文献
重油トシテ、14)
焼成レンガ
コークスベッド溶融
(Nm3/t-ash)
(円/t-DS)
365
10100
LNGトシテ、39)
32)
表面溶融
(円/t-DS)
4332
32)
旋回溶融
灰溶融
(円/t-DS)
(kg/t-ash)
6630
250
32)
灯油トシテ、33)
- 155 -
表 4 - 5 - 6 燃料費算定に用いた諸係数
項目
LNG単価
コークス単価
灯油単価
記号
-
重油単価
重油発熱量
消化ガス発熱量
-
汚泥比重
汚泥比熱
加温温度差
消化系総括熱効率
hg
hf
ρ
CP
ΔT
η
単位
3
(円/Nm )
(円/kg)
(円/L)
原単位
40.0
43.0
28.0
(円/L)
(kcal/L)
備考、文献
14)
36)
36)
(kcal/Nm3)
27.5
8800
5500
36)
21)
21)、65%CH4トシテ
(kg/m3)
(kcal/kg・℃)
(℃)
(-)
1000
1.0
15
0.70
設定値
設定値
設定値(35℃-20℃)
21)
3) 薬品費
薬品費用は、凝集プロセスでは凝集剤費用を考えた。生物処理では、硝化・脱窒を
選択した場合に、脱窒に適宜必要な有機源として酢酸を考え、この酢酸は汚泥処理に
て有機酸発酵プロセスを選択した場合、有機酸で補填できることとした。
必要酢酸量の算定は対象となる硝化・脱窒の 3 パターンにより異なるが、まず、脱窒
が順調に行われるために、NOx-N と BOD の関係は、T-BOD5/ NOx-N = 3 以上でなくて
はならない 6)。酢酸を添加する場合、酢酸は以下 (4-5-9) 式のように反応する。
CH 3 COOH + 2O 2 → 2CO 2 + 2H 2 O
(4-5-9)
上式より酢酸の Ultimate-BOD は 64/60 = 1.07(t-O2/t- 酢酸 ) である。T-BOD5 = UltimateBOD × 0.7 と考えると必要酢酸量 As (t/day) は NOx-N ≒ TN(t/day) として以下の (4-5-10)
式で示される。
As = 3 ⋅ (TN ) ⋅ (1 0.7 ) ⋅ (1 1.07 ) (4-5-10)
(4-5-10) 式を基本として、図 4-3-2 でのフロー図を基に、本研究で対象とする 3 パター
ンの硝化・脱窒それぞれについての必要酢酸量を以下のように算出した。
パターン①:硝化-脱窒-再曝気
脱窒前段の硝化で生物処理槽に流入するBODのほとんどが分解され、N3(t/day)(最初
沈殿池流出 T-N) のほとんどが NH 4 -N であって、これらが硝化で NOx-N に酸化された
とすると、必要な酢酸量 As は以下の式で示すことができる。
- 156 -
As = 3 ⋅ ( N 3) ⋅ (1 0.7 ) ⋅ (1 1.07 )
(4-5-11)
パターン②:脱窒-硝化(硝化液循環あり)
本フローでは、脱窒に必要な有機源として生物処理槽流入 BOD を使用する。またこ
のパターンは硝化・脱窒の循環変法であり、硝化槽からの硝化液を循環率 1.5Q で返送
している。すなわち流入 NOx-N はここで 1.5Q/(1.0+1.5)Q だけ脱窒されることになる。
よって必要酢酸量は、以下の式で示すことができる。
As = { 3 ⋅ (0.6 ⋅ N 3) − ( B3)}⋅ (1 0.7 ) ⋅ (1 1.07)
(4-5-12)
パターン③:脱窒-硝化-脱窒(硝化液循環あり)
脱窒-硝化-脱窒フローでは、前段のパターンは硝化・脱窒の循環変法であり、硝
化槽からの硝化液を循環率 1.2Q で返送しており、パターン②と同様に考えることがで
きるが、後段の脱窒には前段で処理しきれなかった NOx-N に相当する酢酸を投入する
必要がある。よって必要酢酸量は以下のように示すことができる。
As = { 3 ⋅ (N 3) − ( B3)}⋅ (1 0.7 ) ⋅ (1 1.07)
(4-5-13)
これらの式を用いて必要酢酸量の算定を行い、単価を乗じることで酢酸の費用とし
た。また有機酸を用いる場合には、(4-5-2) 式を用いて有機酸 BOD を求め、酢酸に換算
し補填するものとし、さらに不足している分については酢酸で補填しその費用を酢酸
の費用とした。
造粒濃縮プロセスや脱水プロセスでは、高分子凝集剤や脱水助剤が、焼却プロセスで
は流動床用砂、上水、および排ガス処理用の苛性ソーダが、溶融炉では排ガス処理用の
薬品および溶融飛灰処理用のセメントやキレート剤、ならびに上水が含まれる。コンポ
ストでは有機物発酵を促進させるための木材チップが、
再資源化プロセスではプレス設
備用の潤滑油等が含まれる。これらを原単位および薬品単価を用いて薬品費用を算定
した。表 4-5-7 に、薬品消費に関する原単位を、表 4-5-8 に薬品費算出に用いた各薬品
単価を示した。
- 157 -
表 4 - 5- 7 薬品消費の原単位
プロセス
単位
各種凝集剤
添加量に応じて決定
水処理
酢酸
プロセス、水質に応じて決定
濃縮
塩化第二鉄、両性ポリマー
添加率を設定し決定
脱水
脱水助剤
添加率を設定し決定
砂
(kg/t-ケーキ)
流動床
上水
(m3/t-ケーキ)
焼却炉
苛性ソーダ(25%)
(kg/t-ケーキ)
砂
(kg/t-ケーキ)
循環
3
流動床
上水
(m /t-ケーキ)
焼却炉
苛性ソーダ(25%)
(kg/t-ケーキ)
次亜塩素酸ソーダ
(kg/t-ケーキ)
苛性ソーダ(20%)
(kg/t-ケーキ)
コンポスト
3
木チップ
(m /t-ケーキ)
硫酸(75%)
(kg/t-ケーキ)
3
焼成砂利
上水
(m /t-ash)
プレス潤滑油
(L/t-ash)
焼成
レンガ
上水
(m3/t-ash)
3
上水
(m /t-ash)
キレート剤
(kg/t-ash)
旋回
灰溶融
セメント
(kg/t-ash)
消石灰
(kg/t-ash)
コークスベッド直接溶融
(円/DS-t)
表面直接溶融
(円/DS-t)
旋回直接溶融
(円/DS-t)
原単位
-
-
-
-
6
38
11.5
6.5
20.7
12.1
8
6
0.025
27
10
3.7
40
2
6
40
8
5445
2664
1844
文献
計算値
計算値
計算値
計算値
37)
37)
37)
14)
14)
14)
38)
38)
38)
38)
14)
39)
39)
33)
33)
33)
33)
32)
32)
32)
表 4 - 5 - 8 薬品費算定に用いた諸単価
プロセス
PAC(Al2O3:10.5%)
(円/kg薬品)
単位
単価
23
備考、文献
40)
硫酸バンド(Al2O3:8%)
(円/kg薬品)
40
40)
FeCl3(38%溶液)
(円/kg薬品)
25
6)
アニオンポリマー
(円/kg薬品)
1680
40)
酢酸
(円/kg薬品)
182
40)
両性ポリマー
(円/kg薬品)
1500
20)
消石灰
(円/kg薬品)
24
40)
脱水ポリマー
(円/kg薬品)
1050
40)
苛性ソーダ(NaOH25%溶液)
苛性ソーダ(NaOH20%溶液)
(円/kg薬品)
(円/kg薬品)
45
20
37)
38)
砂
(円/kg薬品)
上水
硫酸(75%)
(円/m )
(円/m3)
(円/kg薬品)
次亜塩素酸ソーダ(12%)
プレス潤滑油
3
30
37)
100
設定値
7000
38)
20
38)
(円/kg薬品)
40
38)
(円/L)
250
14)
キレート剤
(円/kg薬品)
900
33)
セメント
(円/kg薬品)
12
40)
木チップ
- 158 -
4) 設備補修費
設備補修費は、各汚泥処理単位プロセスにおける機械設備建設コストの 2.4% と設定
した 27) 。
5) 処分費と便益
処分費では、脱水ケーキ処分費と、焼却灰処分費を考えた。脱水ケーキはトラック搬
送を行い陸上埋め立てを、
また焼却灰については焼却灰加湿後にトラック搬送を行い陸
上埋め立てを想定した。脱水ケーキ処分費は 16,000( 円 / ケーキ -t) と設定、また焼却灰
は 20% 加湿後の重量に対し、処分費を 16,000( 円 / 灰 -t) と設定した 14)。なおここでいう
処分費とはトラックによる搬送と埋め立て作業による費用を考慮したものである。溶
融炉から生じる溶融飛灰に関しては、発生量が微量であることと、薬剤費として安定
化に必要なキレート剤やセメントを計上するため処分費は考慮しなかった。
以上の処分費に関しては、脱水プロセスの後段に焼却プロセスや直接溶融プロセス、
あるいはコンポストプロセスを選択した場合、
脱水ケーキ処分費は差し引かれるものと
し、さらに焼却プロセスの後段に、灰溶融プロセスや焼却灰再資源化プロセスを導入し
た場合、焼却灰処分費は差し引かれるものとした。ただし、上記の焼却プロセス、溶
融プロセス、焼却灰再資源化プロセス、およびコンポストプロセスは、稼働率を設定し
コンポスト設備、焼却炉、および焼却灰再資源化設備では 90%、溶融炉では 80% とし
た。このため、これらの設備が稼働停止している場合は前段の設備で最終処分を行な
うため、その期間で発生する脱水ケーキまたは焼却灰は処分費を考えることにした。
また、溶融炉、焼却灰再資源化設備、およびコンポスト設備は最終処分プロセスであ
るとともに、汚泥から資源としての有用品を作り出す資源化プロセスでもある。そこ
でそれぞれ溶融スラグ、焼成レンガ、焼成砂利、およびコンポスト製品については売却
費を設定し、それを便益とみなしてランニングコストから差し引くこととした。
以上、処分費と便益の算出に用いた諸単価、施設稼働率を表 4-5-9 に示した。
表 4 - 5 - 9 処分費、便益算定に用いた諸係数
プロセス
脱水
焼却炉
コンポスト
焼却灰
再資源化
溶融
項目
脱水ケーキ処分費
焼却灰処分費
単位
(円/t-ケーキ)
(円/t-ash)
焼却炉稼働率
コンポスト製品
(%)
(円/20kg袋詰め)
90
400
設定値
41)
コンポスト施設稼働率
焼成レンガ
焼成砂利
(%)
(円/m レンガ)
(円/t-砂利)
90
5000
8000
但し8.05(m /t-ash)、14)
27)
焼却灰再資源化設備稼働率
溶融スラグ
(%)
(円/t-スラグ)
90
400
設定値
8)
溶融炉稼働率
(%)
80
設定値
3
- 159 -
単価
16000
16000
備考、文献
14)
20%加湿、14)
設定値
3
6) 人件費
人件費については汚泥処理の各単位プロセスについて考え、各文献からの人件費算
定費用関数を使用した。人件費は各プロセスでの運転・管理に必要な人員を求め、人
件費単価を乗じることで求めた。人員の決定に関しては、松永 21) は施設を 24 時間稼動
し、4 班 3 交代制を基本とし、各プロセスの運転台数 n の関数として濃縮と脱水機に関
しての人員を算定している。また消化槽については、日本下水道協会の全国調査結果
により規模にかかわらず 1 人としていることから、嫌気性消化および有機酸発酵は 1 人
とした。焼却炉と溶融炉に関しては同調査結果により、必要人員を規模に対するべき乗
関数として求めており、コンポスト設備に関しては、施設規模と必要人員の関係を一
次回帰式として人員を算定している 27)。再資源化設備に関しては、文献 14) から規模と
処理能力を一定とし、その規模での人員を設定した。これら人員の設定や人件費単価
について表 4-5-10 に示した。
表 4 -5 - 10 人件費算定に用いた諸係数
プロセス
全般
項目
人件費単価
単位
(×百万円/年)
単価
濃縮
消化
必要人員
必要人員
(人)
(人)
4*{ 0.5+0.25(n-1) }
1
21)
27)
脱水
焼却炉
溶融炉
必要人員
必要人員
必要人員
(人)
(人)
(人)
4*{ 3+0.5(n-1) }
21)
27)
27)
コンポスト
焼成レンガ
必要人員
必要人員
(人)
(人)
焼成砂利
必要人員
(人)
5
0.850
0.154*X
0.850*X0.636
1.898*X
0.325
備考、文献
設定値
3
30)
14)
10
14)
4-5-3 所要面積
所要面積については汚泥処理全般を対象として算定を行なった。算定方法は各プロ
セスで異なるが、基本的には、まず、各処理プロセスや、単位ユニット毎に一基あた
りの処理能力を設定し、物質収支計算の結果明らかとなった処理汚泥量もしくは処理
固形物量を用いて予備も含めた基数を決定した。次に、文献値 14)、16)、20)、30)、39) や国内
プラントメーカーの各種カタログから集計したデータを用いて各単位ユニット1基あた
りの処理能力に対する所要面積の関係を回帰式で表現し、最終的に、基数と 1 基あたり
の所要面積を掛け合わせることで所要面積とした。特に、集計に用いた国内プラント
メーカーのカタログに関しては膨大な数に上るので、ここでは参考文献として引用す
ることはしないが、各単位ユニット1基あたりの処理能力に対する所要面積の関係につ
いては、付録 6 に示した。また、表 4-5-11 に各プロセス、各ユニットの所要面積算定に
用いた諸係数、式を示した。
- 160 -
表 4-5-11(1) 所要面積算出に用いた式と諸係数(1)
プロセス
重力濃縮槽
浮上濃縮槽
項目
固形物負荷
所要面積
固形物負荷
所要面積
1基あたりの処理能力
遠心濃縮機
1基あたりの所要面積
所要面積
1基あたりの処理能力
造粒濃縮機
1基あたりの所要面積
所要面積
有効容積
有機酸発酵槽
消化槽
遠心脱水機
スクリュープレス
脱水機
ベルトプレス脱水
記号
SL
SQ
SL
C
SU
SQ
V
1基あたりの有効容積
滞留時間
1基あたりの所要面積
V
T
SU
SQ
所要面積
1基あたりの処理能力
1基あたりの所要面積
所要面積
1基あたりの有効ろ布幅
ろ過速度
1基あたりの所要面積
必要ろ布幅
所要面積
2
C
SU
SQ
h
d
SQ
設定値および式
(m )
(kgDS/m2・day)
(m2)
(m3/(h・基))
SQ
発酵槽高さ
底面径
所要面積
所要面積
1基あたりの処理能力
1基あたりの所要面積
単位
(kgDS/m2・day)
(m2/基)
(m2)
(m3)
(m)
(m)
12
SQ = SU * Qd / (24 * C)
(m2/基)
(m2)
(m3/(h・基))
(m2/基)
(m2)
(m3/(h・基))
(m2/基)
C
SU
SQ
(m2)
(m/基)
(kgDS/m・h)
A
FV
SU
NA
SQ
16)
計算式
設定値
60
SU = 1.23 C0.677
SQ = SU * Qd / (24 * C)
(m2)
C
SU
SQ
120
SQ = X / S L
(m2/基)
(m2)
(m3/(h・基))
(m3/基)
(day)
備考、文献
16)
計算式
70
SQ = X / S L
回帰式
計算式
20)
315
20)
計算式
設定値
Qd
h = ( 4V / π ) 1/3
d = ( 4V / π ) 1/3
SQ=π* (d / 2) 2
6000
20 + 10
設定値
設定値
計算式
設定値
16)
回帰式
0.675
SU = 0.96 V
SQ = SU * (Qd * T) / V
計算式
設定値
回帰式
30
SU = 1.75 C 0.648
SQ = SU * Qd / (24 * C)
計算式
設定値
回帰式
20
SU = 3.84 C 0.592
SQ = SU * Qd / (24 * C)
計算式
設定値
設定値
3.0
100
(m2/基)
(m)
SU = 9.98 A 0.746
NA = X / (24 * FV)
(m2)
SQ = SU * (NA / A)
回帰式
計算式
計算式
投入汚泥量:Q d (m 3 /day)、投入汚泥量:X(t/day)、投入焼却灰量:X a (t/day)
表 4-5-11(2) 所要面積算出に用いた式と諸係数(2)
プロセス
項目
1基あたりのろ過面積
ろ過速度
加圧脱水
真空脱水
1基あたりの所要面積
必要ろ過面積
所要面積
1基あたりのろ過面積
ろ過速度
1基あたりの所要面積
必要ろ過面積
所要面積
流動床焼却炉
循環流動床
焼却炉
直接溶融炉
灰溶融炉
コンポスト
処理能力
所要面積
1基あたりの処理能力
1基あたりの所要面積
所要面積
処理能力
所要面積
処理能力
所要面積
処理能力
所要面積
焼成砂利
1基あたりの処理能力
1基あたりの所要面積
焼成レンガ
所要面積
1基あたりの処理能力
1基あたりの所要面積
所要面積
記号
FS
FV
SU
NS
SQ
FS
FV
SU
NS
SQ
C
SQ
C
SU
SQ
C
SQ
Ca
SQ
C
SQ
Ca
SU
SQ
Ca
SU
SQ
単位
設定値および式
(m2/基)
(kgDS/m2・h)
備考、文献
150
3.0
(m /基)
(m2)
(m2)
SU = 4.29 FS 0.379
NS = Qd / (24 * FV)
(m2/基)
(kgDS/m2・h)
47
9.0
48.8
NS = Qd / (24 * FV)
2
2
(m /基)
(m2)
(m2)
(t/day)
(m2)
(t/(day・基))
(m2/基)
(m2)
(t/day)
SQ = SU * (NS / FS)
SQ = SU * (NS / FS)
X
SQ = 164 C
100
(m2/基)
(m2)
設定値
回帰式
14)
設定値
回帰式
設定値
SQ = 112 Ca
(m2)
(t/(day・基))
計算式
計算式
X
(m2)
(t/day)
(m2/基)
設定値
設定値
設定値
14)
計算式
SQ = 454 C
2
回帰式
計算式
計算式
500
SQ = SU * (X / C)
(m2)
(t/day)
(m )
(t/(day・基))
0.411
設定値
設定値
0.260
Xa
0.683
X
SU = 795 C 0.628
6
346
SQ = SU * (Xa / Ca)
5
1480
SQ = SU * (Xa / Ca)
回帰式
設定値
回帰式
14)
14)
計算式
39)
39)
計算式
投入汚泥量:Q d (m 3 /day)、投入汚泥量:X(t/day)、投入焼却灰量:X a (t/day)
- 161 -
4-6 現状システムのシミュレーションと、前凝集プロセスの導入効果
本節では、構築した物質収支モデルおよびコスト、所要面積算出プログラムを用い
て、まず、第 2 章での処理場の調査結果による鴻池処理場における現状をシミュレー
ションによって再現した上で、
本研究の核となる前凝集プロセスを現状のシステムに導
入した場合の影響を明らかにする。
4-6-1 鴻池処理場の現状とその表現
対象となる鴻池処理場は、流域下水道で合流式下水道の終末処理場である。処理場の
下水処理システムのフローを図 4-6-1 に示した。処理方法としては、水処理系では沈砂
池-最初沈殿池-曝気槽-最終沈殿池-塩素滅菌-放流といった流れであり、場内返
流水は沈砂池の前に戻されている。汚泥処理系については、初沈汚泥は重力濃縮槽を
経て混和槽へ送られる。余剰汚泥は重力濃縮槽、および遠心濃縮機を経て混和槽へ送ら
れる。混和槽では脱水性を良くするため消石灰と、塩化第二鉄が添加され、凝集され
た汚泥は真空脱水機で脱水される。焼却炉は竪型多段炉が2基、流動焼却炉が1基あり、
脱水ケーキが焼却される。最終的に排出された焼却灰はすべて海面埋め立てされる。
第 2 章では、当該処理場において汚泥処理プロセスを中心とした現状の調査を行い、
年間の処理場の固形物、および元素レベルでの物質収支を求めた。図 4-6-2 にこの結果
を示した。この図から鴻池処理場では特に初沈濃縮槽で固形物およびT-Pの回収率が悪
く、初沈汚泥の大部分が返流水として沈砂池前に戻り、再び初沈汚泥として沈殿する
という固形物の循環が生じていた。なお窒素に関しては、TS 成分の CHN 組成から、N
分を求めているが、いわゆる T-N については測定していない。
まず、図 4-6-2 から水処理における SS、T-N 除去率、および T-P 除去率、汚泥処理に
おける固形物回収率、および T-P 回収率を計算し、設定値としてモデルに組み込むこと
により、この鴻池処理場の現状
を再現することを試みた。なお汚
生下水
沈砂池
泥処理における T- N 回収率につ
最初沈殿池
初沈濃縮槽
曝気槽
最終沈殿池
処理水
終沈濃縮槽
いては SS 回収率と同等とした。
遠心濃縮機
また流入水の設定については鴻
池処 理 場 の年 間 平 均値 を 用 い、
消石灰
塩化第二鉄
混和槽
排ガス
真空脱水機
焼却炉
流量は 22000 m3 /day、SS は 23 t/
day、T-N は 5.49 t/day、および T-
焼却灰
Pは0.77 t/dayとした。この時の流
入負荷濃度はそれぞれ SS で 100
図 4 - 6 - 1 鴻池処理場の下水処理システム
- 162 -
- 163 -
流量 26500
T S 165
S S 146
C 59.6
N 8.80
P 2.64
生下水
流量 220000 C 27.5
T S 110
N 3.09
S S 23
P 0.77
流量 3653
T S 3.8
S S 0.5
消石灰 10.4
塩化第二鉄 4.4
真空脱水機
混和槽
処理水
流量 3070 C 3.00
TS
8.7 N 0.65
S S 12.9 P 0.43
計算値
流量 220000 C 5.05
T S 75.3
N 0.68
S S 2.2
P 0.48
焼却灰
流量 18 C 0.19
T S 16.2 N 0.11
SS
P 0.50
流量 998 C 2.95
T S 8.0 N 0.62
S S 6.7 P 0.14
流量 3168 C 0.20
T S 2.6 N 0.05
S S 0.5 P 0.02
焼却炉
排ガス
遠心濃縮機
流量 1240 C 6.74
T S 17.3 N 1.32
S S 12.7 P 0.20
終沈濃縮槽
流量 4310 C 9.74
T S 26.0 N 1.97
S S 25.6 P 0.63
最終沈殿池
図 4 - 6 - 2 鴻池処理場内の物質収支(年間平均)
流量 124 C 6.61
T S 24.9 N 1.08
SS
P 0.64
流量 245 C 6.27
T S 16.3 N 1.26
S S 12.2 P 0.19
流量 667 C 3.93
T S 16.5 N 0.50
S S 16.5 P 0.12
初沈濃縮槽
C 1.10
N 0.15
P 0.01
曝気槽
流量 6470 C 55.9
T S 151 N 8.10
S S 124 P 1.05
最初沈殿池
流量 777 C 5.83
T S 22.9 N 1.13
S S 20.4 P 0.36
流量 5820 C 36.4
T S 98.8 N 4.62
S S 73.2 P 0.71
沈砂池
流量 238000 C 91.8
T S 293
N 11.8
S S 171
P 2.74
流量 m3/day C t/day
T S t/day
N t/day
S S t/day
P t/day
mg/L、T-N で 25 mgN/L、および T-P で 3.5 mgP/L である。なお T-N に関しては文献値 6) を
用いた。図 4-6-2 の物質収支は、各プロセスにおいてスポットサンプリングを行った 2
章の結果であるが、収支は厳密にはあっていなかった。そこで各プロセスにおける除去
率、および固形物回収率は以下に示す 2 通りの方法で求めた。
プロセスに流入する負荷をLin、上澄み水または返流水として流出する負荷をLw、汚
泥または脱水ケーキとして流出する負荷を Ls とすると各プロセスにおける除去率、も
しくは回収率 r は、以下の (4-6-1) 式で示される。
⎧r = Ls Lin
⎨
⎩r = Ls (Ls + Lw)
(4-6-1)
調査結果の収支があっていれば 2 式より求めた r は一致するはずであるが、収支が
あっていなかったためこの 2 通りの方法で求めた r を平均して用いた。表 4-6-1 にこれ
らの値を含め、鴻池処理場の状態をシミュレートするにあたっての設定値を示した。
表 4-6-1に示した値を用いてシミュレーションを行い、物質収支を計算した結果を図
4-6-3 に示した。最初沈殿池、初沈重力濃縮槽、および遠心濃縮機に関しては物質収支
の年間平均とよく合致していた。余剰汚泥量に関しては年間平均値に比較して1.7倍程
度の値となった。これは実際の最終沈殿池まわりの物質収支があっていなかったこと
から生じたと考えられた。処理水質についても SS、および T-P ともにわずかに悪化し、
放流水質で SS で 15.7 mg/L、T-P で 2.54 mgP/L であったが、余剰汚泥量と同様のことが
原因として考えられた。また脱水機においては、脱水ケーキ量が SS として 2 倍程度増
加しているが、ここでは混和槽まわりの年間物質収支があっていなかったためである
と考えられ、本来ならば脱水ケーキ量はシミュレーションによる値に近い値になると
予想される。最初沈殿池前に戻される全返流水はシミュレーションでも SS、および TP において負荷が高く、それぞれ流入水の約 5 倍、および約 1.3 倍となった。また放流
水の T-N については実機の物質収支で測定していなかったため、実験を行った当時に
最も近い平成 9 年下水道統計(行政編)では鴻池処理場の T-N放流水質値が 24mgN/Lで
報告されているが 42)、シミュレーション結果は 21 mgN/L であり、ほぼ表現できている
と考えられる。
以上のことから、本プログラムにおいてパラメータを変化させたシミュレーション
により全返流水の有する固形物、T-P が場内を循環する特徴を含め、鴻池処理場におけ
る現状を概ね表現できるものと考えた。
- 164 -
表 4 - 6 - 1 鴻池処理場シミュレーション設定値
処理プロセス
流入
沈殿池
生物処理
重力濃縮(初沈汚泥)
重力濃縮(余剰汚泥)
遠心濃縮
真空脱水
焼却炉
記号
定義
単位
F1
流量
数値
S1
SS
(m3/day)
(t/day)
N1
T-N
(t/day)
5
P1
αF
T-P
(t/day)
0.77
初沈汚泥引き抜き率
(%)
3
220000
23
αS
最初沈殿池SS除去率
(%)
50
αN
最初沈殿池TN除去率
(%)
3
αP
最初沈殿池TP除去率
(%)
32
γS
最終沈殿池SS除去率
(%)
92
γN
最終沈殿池TN除去率
(%)
30
γP
最終沈殿池TP除去率
(%)
47
HRT
δS
HRT
(%)
5
SS回収率
(%)
16
δN
TN回収率
(%)
16
δP
TP回収率
(%)
13
C8
δS
濃縮汚泥濃度
(mg/L)
SS回収率
(%)
δN
TN回収率
(%)
50
δP
TP回収率
(%)
32
C8
δS
濃縮汚泥濃度
(mg/L)
SS回収率
(%)
δN
TN回収率
(%)
81
δP
TP回収率
(%)
77
26000
50
12000
81
C8
濃縮汚泥濃度
(mg/L)
ζS
SS回収率
(%)
ζN
TN回収率
(%)
90
ζP
ΔS
TP回収率
(%)
98
塩化第二鉄
(%SS)
20
ΔS
消石灰
(%SS)
50
ΔF
洗浄水
4
Cw
ηF
(m3/投入汚泥m3)
(%)
焼却炉排水発生量
脱水ケーキ含水率
3
50000
90
81
35
ηS
排水への飛灰移行率
(m /投入ケーキt)
(%)
ηN
排水への飛灰中T-N移行率
(%)
0
ηP
排水への飛灰中T-P移行率
(%)
4
14
4-6-2 現状システムへの前凝集プロセスの導入
鴻池処理場では、特に初沈汚泥の重力濃縮槽での固形物、およびリン回収率が低く、
全返流水の有する固形物、およびT-P が場内を循環する現状にあった。前凝集プロセス
の導入による処理場全体への波及効果を純粋に評価するためには、固形物、およびリン
の場内循環の影響をまず取り除く必要がある。そこで、固形物回収率について本章第
4 節で下水道統計から算定した値を用いるとともに、生物処理のHRT が8時間である標
- 165 -
- 166 流量 4720
S S 4.9
N 0.08
P 0.01
流量 234
S S 44.4
N 0.76
P 0.21
流量 327
S S 16.4
N 0.82
P 0.12
曝気槽
流量 1550
S S 3.54
N 0.00
P 0.01
焼却炉
排ガス
遠心濃縮機
流量 1700
S S 20.4
N 1.01
P 0.16
終沈濃縮槽
流量 5390
S S 40.6
N 2.03
P 0.51
最終沈殿池
焼却灰
流量
S S 21.7
N 0.00
P 0.20
流量 1340
S S 3.96
N 0.20
P 0.04
流量 m3/day
S S t/day
N t/day
P t/day
図 4 - 6 - 3 鴻池処理場の物質収支計算結果
真空脱水機
混和槽
流量 636
S S 16.5
N 0.03
P 0.09
初沈濃縮槽
流量 7120
S S 103
N 0.21
P 0.66
最初沈殿池
流量 963
S S 32.9
N 0.85
P 0.21
流量 6490
S S 86.8
N 0.18
P 0.58
沈砂池
流量 237000
S S 143
N 6.96
P 1.74
消石灰 50%SS
塩化第二鉄 20%SS
流入水濃度
S S 104
N 25.0
P 3.51
流量 17800
S S 120
N 1.47
P 0.97
生下水
流量 220000
S S 23.0
N 5.49
P 0.77
mg/L
流量 3690
S S 20.4
N 1.01
P 0.35
処理水
流量 225000
S S 3.53
N 4.73
P 0.57
放流水濃度
S S 15.7
N 20.9
P 2.54
mg/L
準活性汚泥法を想定し、汚泥処理におけるプロセスはそのままで、固形物循環のない
全国平均的な下水処理プロセスを標準システムとしてシミュレーションした。ただし、
初沈汚泥の重力濃縮槽の固形物回収率は全国中央値で約77% であったが、第 3章 4節に
おける重力濃縮試験での結果は 95% であった。この違いは実機レベルとメスシリンダ
による実験のスケール、滞留時間、および初沈汚泥引き抜きの影響の有無に由来すると
考えられるが、本研究では次節以降で、このシステムを基準として、最適汚泥処理シ
ステムの抽出を行うため、より厳しい値であるプラント実験の固形物回収率を採用し
た。
また、重力濃縮槽での T-P 回収率は、濃縮プロセス等で溶解性となって再溶出するST-P を考慮し、初沈汚泥重力濃縮槽で 13% であった回収率を 50% までの改善にとどめ
た。さらに最終沈殿池での T-P 除去率は、実調査では約 50% と非常に低い値であった
が、標準的なシステムを表現するにあたり、処理場全体での除去率が少なくとも 50%
程度となるように、最終沈殿池の T-P 除去率は 80% に設定した。
物質収支計算結果を図 4-6-4 に示した。図 4-6-3 と比較すると、処理水は濃度で SS は
4.78 mg/L、T-N は 18.1 mgN/L、T-P は 1.02 mgP/L にまで処理された。汚泥処理プロセス
の固形物回収率の上昇により場内返流水もSS で流入水の約 50% となり、固形物が循環
する傾向が改善されているといえる。また、T-N については、SS 回収率が上昇したた
め汚泥処理からの返流水負荷は 30% 程度に減少できるが、もともと水処理については
除去率が低いため、あまり改善されない結果となった。T-P に関しては、処理水の濃度
は半減するが、返流水負荷は、余剰濃縮返流水の負荷が大部分を占めるとともに、流入
水の約 1.4 倍であり処理場内を循環する傾向は改善されていなかった。これは、主に、
余剰汚泥の重力濃縮槽での回収率が低いことによる。このような現象は、リンにとどま
らず、水処理で高度処理を行っても、汚泥処理の一部で回収率が悪化していれば、処理
場内を負荷が循環することを意味しており、水処理と汚泥処理の総合的な対策が重要
であることが改めて示唆された。
リンが処理場内を循環するような現象は改善されなかったものの、以下このシステ
ムを標準システムとして評価を行った。
次に前凝集プロセスを標準システムに導入した場合をシミュレーションするにあたっ
ては、凝集剤は FeCl3 を用い、流入原水に対して 22 mgFe/L の割合で添加するものとし
た(凝沈系 FeCl322)。また場内返流水は、原水の前凝集プロセス通過後に混合されると
した。凝沈系 FeCl322 の物質収支計算結果を図 4-6-5 に示した。
図から標準システムと比較すると、前凝集プロセスの効果により、SS で 3.96 mg/L、
T-Nで14.8 mgN/L、およびT-Pで0.18 mgP/L にまで処理された。
初沈汚泥が凝沈系FeCl322
- 167 -
- 168 流量 5430
S S 5.09
N 0.16
P 0.01
流量 241
S S 45.8
N 1.40
P 0.56
流量 246
S S 9.82
N 1.39
P 0.22
曝気槽
流量 1600
S S 3.05
N 0.00
P 0.02
焼却炉
排ガス
遠心濃縮機
流量 672
S S 11.4
N 1.61
P 0.29
終沈濃縮槽
流量 1570
S S 12.4
N 1.75
P 0.92
最終沈殿池
焼却灰
流量
S S 18.7
N 0.00
P 0.54
流量 426
S S 1.60
N 0.23
P 0.07
流量 m3/day
S S t/day
N t/day
P t/day
図 4 - 6 - 4 標準システムの物質収支計算結果
真空脱水機
混和槽
流量 636
S S 24.1
N 0.17
P 0.35
初沈濃縮槽
流量 7030
S S 25.4
N 0.18
P 0.70
最初沈殿池
流量 1110
S S 33.9
N 1.56
P 0.58
流量 6160
S S 1.27
N 0.01
P 0.35
沈砂池
流量 235000
S S 35.0
N 6.02
P 1.84
消石灰 50%SS
塩化第二鉄 20%SS
流入水濃度
S S 104
N 25.0
P 3.51
流量 14500
S S 12.0
N 0.53
P 1.08
生下水
流量 220000
S S 23.0
N 5.49
P 0.77
mg/L
流量 893
S S 0.99
N 0.14
P 0.62
処理水
流量 226000
S S 1.08
N 4.09
P 0.23
mg/L
放流水濃度
S S 4.78
N 18.1
P 1.02
- 169 -
流量 220000
S S 23.0
N 5.49
P 0.77
流量 14600
S S 7.39
N 0.33
P 0.17
生下水
流入水濃度
S S 104
N 25.0
P 3.51
mg/L
消石灰 50%SS
塩化第二鉄 20%SS
流量 327
S S 52.4
N 2.15
P 0.76
流量 203
S S 8.13
N 1.13
P 0.04
曝気槽
流量 1830
S S 4.44
N 0.00
P 0.03
焼却炉
排ガス
遠心濃縮機
流量 556
S S 9.46
N 1.32
P 0.05
終沈濃縮槽
流量 1300
S S 10.3
N 1.43
P 0.16
最終沈殿池
焼却灰
流量
S S 27.3
N 0.00
P 0.73
流量 353
S S 1.32
N 0.18
P 0.01
図 4-6-5 凝沈系 FeCl 3 22 の物質収支計算結果
流量 5680
S S 0.53
N 0.02
P 0.01
真空脱水機
混和槽
流量 969
S S 27.1
N 1.04
P 0.73
初沈濃縮槽
流量 7030
S S 27.4
N 1.05
P 0.74
最初沈殿池
流量 1170
S S 35.3
N 2.17
P 0.77
流量 6060
S S 0.27
N 0.01
P 0.01
凝集プロセス
FeCl3:22mgFe/L
流量 m3/day
S S t/day
N t/day
P t/day
流量 744
S S 0.82
N 0.11
P 0.11
処理水
流量 226000
S S 0.89
N 3.34
P 0.04
mg/L
放流水濃度
S S 3.96
N 14.8
P 0.18
の方が上昇しており、凝集剤添加に
25
焼却炉
脱水
れた。T-N については前凝集プロセ
スを導入しても、除去が期待できる
のは粒子や、コロイド状の窒素(P-N)
のみであり、アンモニア性および硝
酸性窒素の除去はできないため、標
処理単価(円/m3-下水)
より汚泥量が増加したものと考えら
遠心濃縮
20
余剰濃縮
初沈濃縮
15
生物処理
最初沈殿池
凝集剤
10
揚水
5
準システムと比較すると20%程度し
か改善されていなかった。また T-P
については凝沈系 FeCl322 において、
最初沈殿池における T-P 除去率のみ
0
鴻池処理場
標準システム
凝沈系FeCl322
凝沈系FeCl322
図 4- 6- 6 鴻池処理場、標準システム、
凝沈系 Fe Cl 3 22 のランニングコスト比較
ならず、汚泥処理システム全体におけるT-P回収率が上昇したために、流入T-Pの約95%
が焼却灰中に固定され、返流水として戻る T-P の割合が 1/4 に減少した。
以上のことから前凝集プロセスを標準システムに導入した場合、SS および T-P は改
善され、T-P が効率的に焼却灰中に固定化されると考えられた。
また鴻池処理場の現状、標準システム、および凝沈系 FeCl322 をシミュレーションし
た場合におけるランニングコストの比較を図 4-6-6 に示した。鴻池処理場の現状をシ
ミュレーションした場合に比較して、標準システムでは各単位汚泥処理プロセスのラ
ンニングコストは、全体的にほとんど同様であった。凝沈系 FeCl322 においては生物処
理において後段への負荷が減少したために曝気電力が減少しているが、凝集剤コスト
の増加、および汚泥量の増加の影響の方が大きく、結果的に処理単価は凝沈系 FeCl322
が約 20.3 円 /m3- 下水、標準システムは 18.8 円 /m3- 下水、鴻池処理場をシミュレーショ
ンした場合でも約 18.7 円 /m3- 下水となり凝沈系 FeCl322 の方が高くなる結果となった。
また、処理水質 (SS、T-P、T-N)、ランニングコスト、建設コスト、所要面積について、
各ケースの比較を総合的に行った結果をレーダーチャートにして図4-6-7に示した。こ
の図では標準システムの各指標における最大値を 10 として、割合で示した。具体的な
各指標値を表 4-6-2 に示した。図表から凝沈系 FeCl322 が処理水質がよくなる反面、前
述したようにランニングコスト、また所要面積、建設コストが標準システムに比較し
て、わずかであるが増加する結果となった。
以上をまとめると、現在の鴻池処理場においては初沈濃縮槽における固形物回収率
を上昇させ、固形物循環をなくすことができれば処理水の SS を低く維持でき、また処
理水の T-P からは、前凝集プロセスを組み込んだ場合の方が飛躍的に低い T-P 濃度が得
られる。一方、コストや所要面積からは標準システムに前凝集プロセスをそのまま導
- 170 -
入したのでは経済的に
SS
40
も、立地条件でも同等、も
30
しくは不利という結果に
なる。
建設コスト
T-N
20
これらの結果から、次
10
節では、標準システムを
鴻池処理場
標準システム
0
ベースとして、前凝集プ
凝沈系FeCl
凝沈系FeCl3-22
322
ロセスや、担体添加型の
硝化・脱窒の3パターンを
所要面積
T-P
含めた水処理や、様々な
汚泥処理プロセスを組み
ランニングコスト
合わせた種々のシステム
図 4 -6 - 7 鴻池処理場、標準システム、
について、物質収支、コス
凝沈系 FeCl 3 22 の総合比較
ト試算、所要面積算定を
行い、水質(SS、T-P、T-N)、
表 4 -6 - 2 鴻池処理場、標準システム、
ランニングコスト、所要
凝沈系 FeCl 3 22 の総合比較
面積、建設コストの6つの
指標から標準システムを
全ての指標で上回るシス
テムを検討することとし
た。
指標
SS
T-N
T-P
ランニングコスト
所要面積
建設コスト
単位
mg/L
mgN/L
mgP/L
3
円/m
2
m
6
×10 円
鴻池処理場
15.7
21.0
2.54
18.7
4100
3270
標準システム 凝沈系FeCl3-22
4.8
4.0
18.1
14.8
1.02
0.18
18.8
20.3
1980
1990
3270
3290
4-7 最適処理システム
4-7-1 最適処理システムの抽出方法
本研究で作成したプログラムは、各単位汚泥処理プロセスのユニットを最初に選定
し、それらを組み合わせた場合について物質収支計算、コスト試算、および所要面積計
算の結果を出力するプログラムである。本研究で、各システムは各単位汚泥処理プロ
セスのユニットの組み合わせ方により約70000パターンに及び、それぞれのシステムに
ついて評価していたのでは非常に時間と労力を要する。そこで処理水質の SS、T-N に
ついては 10 mg/L 以下とし、処理水質 (T-P)、ランニングコスト、所要面積、および建
設コストの6つの指標から標準システムを全ての指標で下回るシステムを考察するため
に、図 4-3-6 にしたがって、プログラム中でループ計算により、すべてのパターンにつ
いて物質収支計算、コスト試算、所要面積計算を行った。これらの操作により、約70000
- 171 -
パターンのシステムの中から SS、T-N については 10 mg/L 以上、T-P、ランニングコス
ト、所要面積、建設コストについては標準システムの値を1つでも上回るシステムは切
り捨てられ、最後にすべての基準を下回るシステムが抽出されることになる。システ
ム抽出の基準となる標準システムの水質 (T-P)、ランニングコスト、所要面積、および
建設コストは、前節表 4-6-2 に示したとおりである。
4-7-2 最適処理システム抽出の結果とその考察
最適システム抽出の結果、最終的に6 つの指標をすべて満たしたシステムは481シス
テムであった。
抽出されたシステムの各単位汚泥処理と凝集剤添加条件を具体的に全481システムに
対する比率として単位汚泥処理プロセス毎に表 4-7-1 ~表 4-7-5 に示した。まず、表 47-1 より、水処理全般(凝集剤添加条件、生物処理)については、すべて凝集剤の添加
条件は FeCl36 mgFe/L+ ポリマー 0.6 mg/L と硝化・脱窒プロセスの組み合わせであった。
生物処理として硝化・脱窒プロセスが抽出された理由としては、処理水質の T-N を 10
mgN/L 以下に制限したことによる。内訳についてはパターン①、および③がそれぞれ
10 ~ 16% とほとんど同様の割合を占めており。パターン②がそれぞれ約 20% と高い割
合を占めていた。また、これは凝集剤の添加条件としてFeCl36(mgFe/L)+ポリマー0.6(mg/
L) は、無機凝集剤の添加を最低限に抑えつつ、ポリマーにて最初沈殿池での SS 除去率
を補完する方式であり、他の一液薬注タイプである凝沈系 PAC、凝沈系バンド、凝沈
系FeCl3 に比較して、凝集剤コス
表 4 - 7- 1 最適処理システム抽出後の
トや汚泥発生量が低くでき、ラ
水処理プロセスの比率
ンニングコストが抑えられたこ
抽出されたプロセス
とによる。ここで前凝集1、前凝
集 2 とは、返流水の混合位置に
よる違いであり、前凝集 1 の場
前凝集1
合が前凝集プロセスの前段で流
入水と混合され、前凝集 2 の場
合、流入水が前凝集プロセス通
過後返流水と混合されることを
示している。前者の方が、返流
水についても凝集沈殿処理がな
前凝集2
凝沈系FeCl3-6
+アニオンポリマー0.6→硝化・脱窒①
14.7
凝沈系FeCl3-6
+アニオンポリマー0.6→硝化・脱窒②
21.5
凝沈系FeCl3-6
+アニオンポリマー0.6→硝化・脱窒③
11.3
凝沈系FeCl3-6
+アニオンポリマー0.6→硝化・脱窒①
16.3
凝沈系FeCl3-6
+アニオンポリマー0.6→硝化・脱窒②
23.7
凝沈系FeCl3-6
+アニオンポリマー0.6→硝化・脱窒③
12.5
されるために、水質への影響は
軽減されるものと推測していた
比率(%)
合計
①、②、③はパターンを示す。
- 172 -
100.0
が、双方の比率に大きな差はな
表 4 - 7- 2 最適処理システム抽出後の
く、返流水混合位置の影響は軽
濃縮プロセスの比率
微であろうと考えられる。
抽出されたプロセス
濃縮方式については、表 4-7-2
より、全体的に初沈汚泥と余剰
混合濃縮
汚泥とを分けて濃縮する分離濃
縮よりも、混合濃縮方式の方が
重力濃縮
遠心濃縮
10.3
31.8
浮上濃縮
2.9
造粒濃縮
21.1
初沈:重力濃縮+余剰:重力濃縮
初沈:重力濃縮+余剰:遠心濃縮
5.9
12.5
高い割合を占めていた。これは、 分離濃縮
初沈:重力濃縮+余剰:遠心濃縮
建設コストおよび所要面積の制
初沈:重力濃縮+余剰重力濃縮→遠心濃縮
合計
限の影響による。本研究での建
比率(%)
11.2
4.3
100.0
設コストおよび所要面積の算定
は、主に対象汚泥処理量を変数としたべき乗関数で表しておりスケールメリットによる
低減効果を反映できるため、分けて濃縮するよりも、混合して濃縮する方式が多く抽
出されたものと考えられた。方式として最も大きな割合を占めていたのは、混合汚泥
の遠心濃縮方式が約 32% であった。次は造粒濃縮方式が最も大きな割合を占めており
約 21% であった。造粒濃縮方式は両性ポリマーと凝集助剤とを用いてフロックを形成
させ濃縮する方式で、後段の脱水プロセスでのポリマーの添加が要らないことや、装
置がコンパクトであり所要面積を必要としないこと1)、20)などの理由により抽出された。
消化方式については、表 4-7-3 より、消化なしと有機酸発酵でそれぞれ約 50% の割合
であった。嫌気性消化については汚泥量の減少、メタンが再利用できること等からラ
ンニングコストの減少にはつながるが、所要面積が大きいこと、また固形物回収率が
悪いことにより返流水水質の悪化を招く一因となると考えられ、割合は 0% であった。
有機酸発酵については嫌気性消化に比較して汚泥滞留時間が短いため所要面積も少な
くてすむことや、生成した有機酸はアンモニア性窒素を有するが、脱窒における有機源
に用いることができるため、本抽出条件では、水処理系で抽出された硝化・脱窒プロセ
スとのユニットでランニングコストの節約につながることから抽出された。
脱水方式については、表 4-7-4 より、5 つの脱水プロセスのうちで、真空脱水および
加圧脱水の石灰系脱水助剤を用
表 4 - 7- 3 最適処理システム抽出後の
いる方式は割合が低く、逆に遠
消化プロセスの比率
心脱水、ベルトプレス脱水、お
抽出されたプロセス
よびスクリュープレス脱水のポ
リマーを用いる脱水方式の方が
消化
消化なし
有機酸発酵
合計
大きな割合を占める結果となっ
- 173 -
比率(%)
45.1
54.9
100.0
表 4 - 7- 4 最適処理システム抽出後の
脱水プロセスの比率
た。これに関しては、石灰系脱水
助剤は汚泥の固形分に対して消
抽出されたプロセス
石灰 50% と塩化第二鉄 20% の割
合で添加するため、汚泥量が増
加する上に、汚泥 VTS の割合が
脱水
遠心脱水
49.8
ベルトプレス脱水
10.6
真空脱水
加圧脱水
減少した結果、後段の焼却での
スクリュープレス脱水
合計
補助燃料、電力、薬剤のコスト、
比率(%)
9.4
8.7
21.5
100.0
および埋め立てコストが増加す
ることにより、抽出されなかっ
表 4 - 7- 5 最適処理システム抽出後の
最終処分プロセスの比率
た。ポリマー方式では、遠心脱水
抽出されたプロセス
方式が全体の約 50% を占めてい
脱水ケーキ埋め立て
流動床焼却炉+灰埋め立て
た。本研究における脱水の方式
について固形物回収率はそれほ
最終処分 流動床焼却炉+灰溶融
循環流動床焼却炉+灰埋め立て
ど変わらないため、所要面積が
循環流動床焼却炉+灰溶融
合計
少ないことが第一の要因になっ
比率(%)
41.8
20.0
6.0
23.7
8.5
100.0
たと考えられる。
最終処分方式については表4-7-5より、ケーキ埋め立てと焼却後灰埋め立てが大きな
比率を占めておりあわせて約 85% であった。これは、所要面積の制限によるところが
大きく、本研究では対象範囲を下水処理場内に限定し、トラック搬送後に埋立地での
必要な所要面積はカウントしていないことによる。また比較的大きな所要面積を必要
とするコンポストや焼却灰再資源化プロセスは抽出されなかった。また溶融について
は灰溶融が残りの 15% を占めていたが、直接溶融に比較して灰を対象とするため、装
置はコンパクトになるとともに、処理場全体として、ランニングコストや建設コスト
が節約された結果、導入が可能となった。
抽出された 481 システムについて、一例として前凝集 FeCl36+ ポリマー 0.6(mg/L)( 前
凝集2:返流水を前凝集処理後の流入原水と混合する)→硝化・脱窒パターン①→混合遠
心濃縮→有機酸発酵→遠心脱水→循環流動床焼却炉→灰埋め立て(以下RunAとする)の
プロセスを挙げる。
まず RunAについて図 4-7-1 に物質収支計算結果を示した。図 4-6-4の標準システムと
比較すると処理水はSS で 4.78 mg/Lから 6.92 mg/Lとわずかながら上昇した。SS の増加
要因として硝化・脱窒により硝化菌、脱窒菌の余剰汚泥への移行により生物処理槽で
の発生汚泥量が増大したことや、有機酸を脱窒の有機源に100%まかなうことができた
反面、結果的に生物処理へのBODや SS 負荷が増加したことなど、主に生物処理での要
- 174 -
- 175 -
流量 220000
S S 23.0
N 5.49
P 0.77
流量 10600
S S 6.87
N 0.09
P 0.05
生下水
流入水濃度
S S 105
N 25.0
P 3.51
mg/L
ポリマー:1.0%SS
遠心脱水機
流量 415
S S 15.2
N 0.37
P 0.67
有機酸発酵槽
流量 961
S S 35.1
N 0.46
P 0.89
遠心濃縮機
酢酸:0
排ガス
図 4- 7-1 RunA の物質収支計算結果
流量 357
S S 0.37
N 0.00
P 0.03
焼却灰
流量
S S 2.30
N 0.00
P 0.64
流量 2210
S S 17.6
N 0.27
P 0.52
最終沈殿池
循環流動床焼却炉
流量 546
S S 3.79
N 0.09
P 0.22
硝化・脱窒パターン①
無機化:T-N:4.45
流量 69
S S 15.4
N 0.37
P 0.67
流量 6910
S S 23.6
N 0.28
P 0.39
最初沈殿池
流量 2100
S S 0.31
N 0.01
P 0.01
流量 8150
S S 6.19
N 0.08
P 0.02
凝集プロセス
FeCl3:6mgFe/L
+ポリマー:0.6mg/L
流量 m3/day
S S t/day
N t/day
P t/day
処理水
流量 222000
S S 1.53
N 0.67
P 0.13
mg/L
放流水濃度
S S 6.92
N 3.02
P 0.59
因が考えられる。一方
25
有機酸投入
焼却炉
前凝集プロセスの導入
により、最初沈殿池で
の除去率が上昇し、生
物処理への負荷が軽減
されたことに加え、汚
泥処理系での SS 回収
処理単価(円/m3-下水)
SS 減少の要因として、
脱水
20
有機酸発酵
濃縮
15
生物処理
最初沈殿池
凝集剤
10
揚水
5
率が増加したこと、ま
た真空脱水機は脱水前
の調質剤として塩化第
0
標準システム
RunA
RunA
図 4- 7-2 標準システムと Ru nA のランニングコスト比較
二鉄 20%、消石灰 50%
を汚泥のSSに対して添加しているのに対し、RunAでは遠心脱水機の導入により、脱水
助剤は、ポリマー 1.0%SS の添加にとどまるため、脱水ケーキ中焼却灰として残存する
無機分が減少し、焼却炉でのスクラバ排水中に移行する固形分が少なくなったという
ことが考えられ、主に汚泥処理系からの返流水の負荷軽減が要因となる。結果として
処理水の SS が増加したのは、生物処理系での SS 増加要因が、前凝集プロセスの導入、
汚泥返流水の高度化のSS 減少要因の影響を上回ったためと考えられた。しかし設定し
た SS の基準値 10 mg/L は大幅に下回っていた。
また T-N については硝化・脱窒を導入したことにより 18.1 mgN/L から 2.80 mgN/L へ
と大幅に改善された。T-P についても前凝集プロセスを導入したことにより、4-6-2 で、
標準システムに前凝集 FeCl322 を組み込んだケースほどではないものの、1.02 mgP/Lか
ら 0.58 mgP/Lへと顕著に改善された。
ランニングコストについて、標準システムと RunA の比較を図 4-7-2 に示した。これ
らの図から、RunA では、標準システムが約 18.8 円 /m3 であるのに対し、凝沈系では凝
集剤コストと有機酸発酵のコストが追加されたにもかかわらず処理単価は約 14 円 /m3
に抑えられた。RunAのランニングコスト増減の特徴を標準システムと比較して述べる
と以下のとおりとなる。
【ランニングコスト増加要因】
・ 凝集剤の添加により凝集剤コストがランニングコストを増加させた。
・ 硝化・脱窒の導入により、一部循環ポンプ、攪拌機などの電力コストが増加した。
・ 有機酸発酵の導入により発酵槽の加温や攪拌等におけるランニングコストが増加し
た。
- 176 -
【ランニングコスト減少要因】
・ 凝集剤添加により生物処理への負荷が軽減され生物処理における曝気電力が減少し
た。
・ 脱窒における有機源は100% 有機酸でまかなうことができたため酢酸の費用が節約
された。
・ 有機酸発酵により、汚泥が SS ベースで約半分に分解され、後段における汚泥量が減
少し、脱水および焼却におけるランニングコストが減少した。
・ 脱水機においてポリマーを用いるため、薬注による汚泥量の増加が抑えられ、脱水
プロセスおよび後段の焼却プロセスでのランニングコストが減少した。
・ 流動床焼却炉に換えて、循環流動床焼却炉が導入されたことにより、焼却炉での電
力消費が減少した。
以上の要因のうち最も影響が大きいのは、図 4-7-2 より、有機酸発酵からの有機酸を
硝化・脱窒に用いたことと、脱水方式の変更に伴って、脱水助剤がポリマーになった
ことから、脱水、および焼却でのランニングコストが減少したことである。
次に総合的な評価であるが、
最適システムの抽出に用いた
表 4- 7-6 標準システムと RunA との比較
指標
単位
SS
mg/L
4.8
6.9
ステムと比較して表4-7-6に示
T-N
mgN/L
18.1
3.02
した。また総合的な評価の結
T-P
mgP/L
1.02
0.58
3
それぞれ 6 つの指標を標準シ
果をレーダーチャートにして
図 4-7-3 に示した。図 4-7-3 は、
ランニングコスト
所要面積
建設コスト
RunA
18.8
13.8
2
1980
1310
6
3270
2920
円/m
m
標準システム
×10 円
抽出条件(SS、T-N:10 mg/L)、
SS
ならびに標準システムの処理
20
水質 T-P、建設コスト、ランニ
15
ングコスト、および所要面積
建設コスト
を 10 として、それに対する各
10
T-N
標準システム
5
システムの指標の割合をプ
RunA
0
ロットしたものである。RunA
は処理水 SS 以外で標準システ
ムを下回るが、特に T-N、ラン
所要面積
T-P
ニングコストの減少が顕著で
あった。また所要面積につい
ては有機酸発酵を導入して所
ランニングコスト
図 4-7-3 標準システムと RunA の総合比較
- 177 -
要面積が増大するにもかかわらず、標準システムの約 60% となった。これは、遠心濃
縮機、遠心脱水機、および循環流動床焼却炉の所要面積が小さいことや、有機酸発酵、
および脱水方式の変更に伴う汚泥量の減少が影響していると考えられた。
建設コストに
ついてはほぼ同程度であった。
以上のことから処理水質の SS、および T-N が 10 mg/L 以下、標準システムの処理水
質 T-P、建設コスト、ランニングコスト、および所要面積を基準とした最適汚泥処理シ
ステムの抽出により、前凝集プロセスに硝化・脱窒を組み合わせた高度下水処理シス
テムは、汚泥処理を適切に組み合わせることによって、高度処理を実施しつつ、コス
ト、および所要面積を現状維持もしくは軽減できることが示された。
4-7-3 再資源型・都市型システム
前項で抽出されたシステムのうち、最終処分方式に関しては表 4-7-5 において、ケー
キ埋め立て、灰埋め立てが全体の約 85% を占めていた。しかし、本研究では所要面積
でケーキ、または灰の必要埋め立て地面積を考慮していない。また埋め立て処分地は
有限でその確保は困難なものとなっており、今後さらに下水汚泥のリサイクルを推進
していく必要がある。そこで抽出された481システムの中から灰埋め立てと、ケーキ埋
め立てプロセスを除くことで、必然的に直接溶融、灰溶融、コンポスト、および焼却灰
の再資源化プロセスが含まれるようにし、さらに所要面積を標準システムの約2000 m2
から半分の 1000 m2 に制限し、再資源型・都市型システムと定義して抽出を行った。こ
こで抽出されたシステムは処理場用地の確保が困難であると考えられる都市圏におい
て、省面積型システムであるとともに再資源化システムとしての要素も兼ね備えてお
り、標準システムよりも処理水質が高度化されているバランスのとれたシステムであ
ると位置づけることができる。
抽出の結果、都市型であり、再資源化システムを含むものとして481システムのうち
最終的に抽出されたのは、凝集剤添加条件が前凝集プロセス凝沈系 FeCl36+ ポリマー
0.6(mg/L)、生物処理は硝化・脱窒のパターン②(脱窒→硝化)、濃縮形式が造粒濃縮、
消化なし、脱水方式は遠心脱水、最終処分は循環流動床焼却炉に灰溶融を加えた場合
で、2 システムのみが抽出される結果となった。2 つのシステムの違いは、全返流水の
混合位置が前凝集プロセスの前段か、もしくは後段というところであり、これらのシ
ステムをそれぞれ RunB-1、RunB-2 と定義し、SS、T-N、T-P、建設コスト、ランニング
コスト、および所要面積を表 4-7-7 に示した。これらの表からすべての指標で RunB-1
と RunB-2 はほとんど変わらない結果となった。表 4-7-1 における、抽出結果でも全返
流水の混合位置と前凝集プロセスの関係はほとんど抽出結果に影響を及ぼさないこと
- 178 -
が明らかになっており、それと
同様のことが示された。
RunB-2について物質収支計算
結果を図 4-7-4 に示した。処理水
質について標準システムと比較
すると、SS で 4.78 mg/Lから6.12
mg/L とわずかに上昇した。これ
表 4-7-7 RunB-1 と、RunB-2 との比較
指標
SS
T-N
T-P
ランニングコスト
所要面積
建設コスト
単位
mg/L
mgN/L
mgP/L
円/m3
m2
×106円
RunB-1
6.21
5.1
0.52
18.1
945
2600
RunB-2
6.10
5.1
0.50
17.9
943
2600
はRunAの場合でも同様の傾向で
あり、窒素除去に伴う脱窒菌と硝化菌の増加に伴って生物処理槽での発生汚泥量が増加
したことや、有機酸発酵からの有機酸を脱窒に用いたことにより、有機酸の有する SS
や BOD などの負荷が増加したことによるものと推測した。しかし、RunB の場合は「脱
窒→硝化プロセス」であるため脱窒に必要な有機源を生物処理槽流入水から得て、こ
の場合は酢酸や有機酸の投入を必要としなかった。すなわち、硝化・脱窒の導入に伴っ
て処理水 SS 濃度がわずかに悪化する傾向は、高度処理に伴う生物処理槽での発生汚泥
量の増加が主要因であると考えられた。また T-N は 18.1 mgN/L から 5.07 mgN/L と 70%
程度改善されたが、RunAは 2.80 mgN/Lであり、窒素除去の観点からは RunAおよび、硝
化・脱窒パターン①(硝化-脱窒-再曝気)よりは劣るものと考えられた。T-P は 1.02
mgP/Lから 0.50 mgP/Lまで減少し凝集プロセスの顕著な改善効果が得られた。
ランニングコストについては標準システムとの比較を図4-7-5に示した。凝集剤のコ
ストとしては、RunA の場合と同様に、4-6 で述べた凝沈系 FeCl322 のケースよりも、無
機凝集剤の量を減らし、単価としては高価ではあるが添加量が低いポリマーを同時添
加することにより、結果的に凝集剤コストは減少する結果となった。また後段の生物
処理については、硝化・脱窒を組み込んだため、循環ポンプ等の電力コストが増大する
ものの、前凝集プロセスにより負荷が軽減され、曝気に関する電力が低減したため、生
物処理におけるコストはわずかに減少した。
濃縮・脱水に関しては、RunB-2では造粒濃縮+遠心脱水方式を採用しているので、濃
縮において、塩化第二鉄およびポリマーをあらかじめ添加することになる。よって、標
準システムの場合に比較すると、濃縮におけるランニングコストは増大し、逆に脱水
の部分のランニングコストが減少する結果となった。濃縮・脱水トータルで考えると、
標準システムの場合よりも 13% 程度減少する結果となった。これに関しては、標準シ
ステムでの脱水方式が消石灰・塩化第二鉄を脱水助剤とした真空脱水機であったこと
も影響している。
焼却・溶融に関しては、標準システムから濃縮・脱水方式が変更になったことなど
- 179 -
- 180 -
流量 220000
S S 23.0
N 5.49
P 0.77
流量 10600
S S 7.05
N 0.13
P 0.28
生下水
流入水濃度
S S 105
N 25.0
P 3.51
mg/L
流量 8150
S S 6.19
N 0.08
P 0.02
凝集プロセス
FeCl3:6mgFe/L
+ポリマー:0.6mg/L
流量 785
S S 0.45
N 0.00
P 0.04
循環流動床焼却炉
排ガス
流量 8.22
S S 0.05
N 0.00
P 0.22
処理水
mg/L
放流水濃度
S S 6.12
N 5.07
P 0.50
流量
S S 2.18
N 0.00
P 0.59
溶融スラグ
溶融飛灰
流量
S S 0.49
N 0.00
P 0.07
流量 221000
S S 1.35
N 1.60
P 0.11
旋回灰溶融炉
排ガス
流量 2630
S S 15.5
N 0.48
P 0.44
最終沈殿池
流量
S S 2.74
N 0.00
P 0.88
図 4-7-4 RunB-2 の物質収支計算結果
流量 1510
S S 0.67
N 0.01
P 0.01
遠心脱水機
酢酸:0
硝化・脱窒パターン②
流量 151
S S 33.0
N 0.63
P 0.91
流量 1290
S S 33.7
N 0.65
P 0.92
造粒濃縮機
流量 6910
S S 23.7
N 0.28
P 0.50
最初沈殿池
無機化:T-N:4.51
流量 m3/day
S S t/day
N t/day
P t/day
によって、焼却炉のランニ
25
溶融炉
ングコストが低く抑えら
焼却炉
むことができたものと考え
られた。また溶融炉を組み
込むことによって焼却灰の
処分費がかからなくなった
ことも、焼却炉のランニン
処理単価(円/m3-下水)
れ、その分溶融炉を組み込
20
脱水
濃縮
生物処理
15
最初沈殿池
凝集剤
10
揚水
5
グコストが低く抑えられた
要因の一つであると考えら
0
れる。
標準システムとRunA、お
標準システム
RunB-2
図 4- 7-5 標準システムと Ru nB- 2 のランニングコスト比較
よび RunB-2 との総合評価
をレーダーチャートにして図 4-7-6 に示した。RunB-2 は、標準システムに比較して SS
が微増、T-N、および T-P が高度除去される傾向は RunA と同様であったが、T-N に関し
ては前述したように、硝化・脱窒パターン①に比較して、硝化・脱窒パターン②の場
合は除去性能が劣る結果となった。
本抽出条件で硝化・脱窒パターン①が抽出されなかった理由としては、硝化・脱窒
パターン①では酢酸の投入が必要であり、ランニングコストが制約される条件では、有
機酸発酵を導入せざるを得ない状況にある。しかし、有機酸発酵を導入すると、所要
面積の制約(1000 m2)を超過してしまうため、結果的に硝化・脱窒パターン①が抽出
されなかったものと考えられた。所要面積の制約を緩和すれば、硝化・脱窒パターン
①も抽出されてくるものと
SS
考えられ、T-Nの一層の高度
20
除去が期待できる。
15
所要面積については、
建設コスト
10
T-N
10 00 m 2 の制約の中で、約
5
標準システム
950 m2 に抑えられたが、採用
0
RunA
RunB-2
された造粒濃縮プロセスの
所要面積はユニット一台あ
所要面積
T-P
たり 12 m2 ですむため、その
影響が大きいものと考えら
れた。ランニングコストに
ランニングコスト
図 4-7-6 標準システムと RunA、RunB-2 の総合比較
- 181 -
関しては、標準システムをわずかに下回る程度であったが、これは再資源化システム
として灰溶融炉が導入された結果によるものと考えられる。灰溶融炉から算出される
溶融スラグは、1t あたり 400円で売却できるものとし、ランニングコストから差し引く
ものとしているが、その便益はわずかであり、今後溶融炉の高度化を進めていくとと
もに、溶融スラグの付加価値を高めていくことが必要であろう。建設コストに関して
は、ほぼ RunA と同等であった。
以上より、設置スペースの制約があり、かつ再資源化を推進して行く状況の下で SS
の除去とともに、T-N、および T-P を高度除去し、再資源化を実践して行くためには、
前凝集プロセスと硝化・脱窒プロセスを組み合わせたプロセスに、造粒濃縮を導入し、
脱水・焼却・溶融を実施するシステムが望ましいと考えられた。ただし、さらに T-N を
高度除去するとなると、より窒素除去性能の高い硝化・脱窒パターン①の導入が必要
であり、そのためには所要面積、もしくはランニングコストの制限を緩和する必要が
あろう。
4-7-4 窒素除去促進システム
前節までは T-Nについての処理水質で10 mgN/L以下を基準として最適汚泥処理シス
テムの抽出、さらに都市型・再資源化システムの抽出を行ったが、次に窒素除去をよ
り促進するシステムを抽出した。そこで基準を処理水質のT-Nで3.0 mgN/Lとして窒素
除去促進システムの抽出を行った。なおその他の基準は処理水SSを10 mg/L以下とし、
処理水のT-P、所要面積、ランニ
ングコスト、および建設コスト
については標準システムの値を
表 4 - 7- 8 窒素除去促進システム抽出後の
水処理プロセスの比率
抽出されたプロセス
用いた。窒素除去促進システム
の抽出の結果、最終的に抽出さ
れたのは約 70000 パターンのう
前凝集1
ち 153 パターンであった。この
1 5 3 パターンの詳細について、
各水処理方式、および汚泥処理
方式ごとに割合を示したものを
表 4-7-8 ~表 4-7-12 に示した。
まず水処理方式では、表 4-78 から、すべて前凝集プロセス
凝沈系 FeCl36+ポリマー 0.6 と硝
前凝集2
比率(%)
凝沈系FeCl 3-6
+アニオンポリマー0.6→硝化・脱窒①
47.4
凝沈系FeCl 3-6
+アニオンポリマー0.6→硝化・脱窒②
0.0
凝沈系FeCl 3-6
+アニオンポリマー0.6→硝化・脱窒③
0.0
凝沈系FeCl 3-6
+アニオンポリマー0.6→硝化・脱窒①
52.6
凝沈系FeCl 3-6
+アニオンポリマー0.6→硝化・脱窒②
0.0
凝沈系FeCl 3-6
+アニオンポリマー0.6→硝化・脱窒③
0.0
合計
①、②、③はパターンを示す。
- 182 -
100.0
化・脱窒パターン①を組み合わせた方式であった。最初に行った最適システムの抽出
結果と比較すると、表 4-7-1 では、パターン②が最も多く、全体の約 50% を占めてい
た。最適システムの抽出結果との制約条件の変更点は、窒素除去を 10 mgN/L から 3.0
mgN/L以下にしたことであり、このことから窒素除去を促進する方針では硝化・脱窒方
式でパターン①がより優れていると考えられた。
また濃縮方式では表 4-7-9 か
ら、遠心濃縮と造粒濃縮があわ
表 4 - 7- 9 窒素除去促進システム抽出後の
濃縮プロセスの比率
せて約 55% を占めており、これ
抽出されたプロセス
重力濃縮
比率(%)
10.9
遠心濃縮
31.3
は、最適システム抽出時の表 47-2と同様の傾向であった。消化
方式に関しては、表4-7-10から、 混合濃縮 浮上濃縮
造粒濃縮
有機酸発酵プロセスが全体の
70% 以上を占めており、最適シ
ステム抽出時の表 4-7-3 と比較
分離濃縮
すると、有機酸発酵の割合が増
脱窒への有機源として活用でき
24.2
初沈:重力濃縮+余剰:重力濃縮
初沈:重力濃縮+余剰:遠心濃縮
5.2
10.9
初沈:重力濃縮+余剰:浮上濃縮
8.5
初沈:重力濃縮+余剰重力濃縮→遠心濃縮
合計
加していた。これは、有機酸発
酵プロセスから生じる有機酸を
3.8
5.2
100.0
表 4 - 7- 10 窒素除去促進システム抽出後の
消化プロセスの比率
ることが抽出された原因と考え
抽出されたプロセス
られた。脱水方式では表 4-7-11
から、遠心脱水が全体の 45% を
消化
消化なし
有機酸発酵
合計
占めており、全体的な傾向は、
最適処理システム抽出時の表47-4と同様の傾向であった。また
比率(%)
26.1
73.9
100.0
表 4 - 7- 11 窒素除去促進システム抽出後の
脱水プロセスの比率
最終処分方式では表 4 - 7 - 1 2 か
抽出されたプロセス
ら、ケーキ埋立と灰埋立で全体
の 90% 程度を占めており、残り
はすべて灰溶融であり、最適処
脱水
比率(%)
遠心脱水
45.5
ベルトプレス脱水
10.0
真空脱水
8.5
理システム抽出時の表 4-7-5 と
加圧脱水
8.1
同様の傾向であった。
スクリュープレス脱水
合計
28.0
100.0
次に、T-Nで3.0 mg/L以下を満
たす窒素除去促進システムについて抽出された153パターンのシステムから都市型・再
資源型システムを満たすシステムを抽出するために灰埋め立て、
あるいはケーキ埋め立
- 183 -
てを含むシステムを除き、再資
源化プロセスが必然的に含まれ
表 4 - 7- 12 窒素除去促進システム抽出後の
最終処分プロセスの比率
るようにし、所要面積の制限を
抽出されたプロセス
試行錯誤的に決定して抽出を
行った結果、所要面積の制限が
1500 m2 以下とした場合に1シス
脱水ケーキ埋め立て
流動床焼却炉+灰埋め立て
最終処分 流動床焼却炉+灰溶融
循環流動床焼却炉+灰埋め立て
テムが抽出される結果となっ
循環流動床焼却炉+灰溶融
合計
た。抽出された1システムは、凝
比率(%)
43.2
18.9
5.9
24.8
7.2
100.0
沈系 FeCl36+ ポリマー 0.6 で、生
物処理は硝化・脱窒パターン①、濃縮形式が分離濃縮方式で、重力濃縮 ( 初沈汚泥 )+ 遠
心濃縮 ( 余剰汚泥 )、脱水は遠心脱水、そして最終処分は循環流動床焼却炉+灰溶融の
方式であった。このシステムを RunCとする。RunCでは硝化・脱窒パターン①が選択さ
れているにもかかわらず、有機酸発酵は選択されず、濃縮プロセスにおいても造粒濃
縮は選択されなかった。有機酸の有する負荷により、生物処理槽への T-N が結果的に
上昇した結果、処理水 T-N の制約 3.0 mgN/L をクリアできなかったことによる。また、
省スペースであり所要面積が少なくてすむ造粒濃縮ではなく、分離濃縮方式で、重力濃
縮 ( 初沈汚泥 )+ 遠心濃縮 ( 余剰汚泥 ) が選択された理由は、有機酸発酵プロセスが導入
されず、酢酸を投入することとなり、生物処理の薬剤費が増加したことや、灰溶融炉
が導入されたことから、ランニングコストの制約によるものと考えられる。造粒濃縮
は、脱水でのポリマーの添加を、濃縮の時点で塩化第二鉄とともに行うため、固形物
回収率はよくなるが、結果的にはランニングコストが増加することとなる一方で、分
離濃縮方式で重力濃縮 ( 初沈汚泥 )+ 遠心濃縮 ( 余剰汚泥 ) のランニングコストに関して
は、重力濃縮に関してはほとんど無視でき、余剰汚泥分の遠心濃縮に関わる電力費に
なるため、比較的安価で済むことによると考えられた。
RunC について、その物質収支を図 4-7-7 に示した。図から処理水質については SS で
5.37 mg/L、T-N で 2.52 mgN/L、および T-P で 0.55 mgP/L となり、RunAや RunB に比較し
ても、SS、T-N、および T-P については低くなるもしくは同等のレベルでの除去が行わ
れていた。また、このプロセスでは有機酸発酵プロセスを使用していないため、酢酸
投入が 3.19 t/dayの割合で必要であった。
ランニングコストについては、標準システムとの比較として図4-7-8に処理単価を示
した。図から、RunC のランニングコストは約 18 円 /m3- 下水であり、標準システムよ
りもわずかに少ない程度であった。これは、主に、前凝集プロセスの導入で、生物処
理への負荷が軽減され、曝気電力は減少するものの、処理水 T-N の制限で有機酸発酵
- 184 -
- 185 -
流量 220000
S S 23.0
N 5.49
P 0.77
流量 9730
S S 6.63
N 0.08
P 0.38
生下水
流入水濃度
S S 105
N 25.0
P 3.51
mg/L
ポリマー:1.0%SS
流量 5980
S S 3.54
N 0.04
P 0.01
凝集プロセス
FeCl3:6mgFe/L
+ポリマー:0.6mg/L
流量 757
S S 0.48
N 0.00
P 0.04
循環流動床焼却炉
排ガス
図 4- 7-7 RunC の物質収支計算結果
流量 1580
S S 0.64
N 0.01
P 0.01
遠心脱水機
酢酸:0
硝化・脱窒パターン①
流量 146
S S 31.5
N 0.43
P 0.90
流量 1190
S S 31.8
N 0.91
P 0.44
初沈濃縮槽
流量 6880
S S 23.6
N 0.28
P 0.55
最初沈殿池
無機化:T-N:4.51
排ガス
流量 1410
S S 1.90
N 0.03
P 0.11
旋回溶融炉
流量 8.92
S S 0.06
N 0.00
P 0.21
流量
S S 2.97
N 0.00
P 0.86
遠心濃縮槽
流量 1700
S S 13.6
N 0.24
P 0.48
最終沈殿池
流量 m3/day
S S t/day
N t/day
P t/day
処理水
mg/L
放流水濃度
S S 5.37
N 2.52
P 0.55
流量
S S 2.36
N 0.00
P 0.59
溶融スラグ
溶融飛灰
流量
S S 0.53
N 0.00
P 0.07
流量 221000
S S 1.19
N 0.56
P 0.12
プロセスが導入されなかった
25
溶融炉
ために酢酸の投入が必要であ
焼却炉
によるランニングコストが増
加したことと、標準システム
と異なって、脱水機において
ポリマーを用いるため、薬注
による汚泥量の増加が抑えら
れ、脱水プロセスおよび後段
処理単価(円/m3-下水)
り、その分生物処理における
20
脱水
濃縮
生物処理
15
最初沈殿池
凝集剤
10
揚水
5
の焼却プロセスでのランニン
グコストが減少した分、溶融
炉を導入できたことに起因す
0
標準システム
RunC
図 4- 7- 8 標準システムと Ru nC のランニングコスト比較
ると考えられる。
次にRunCについて、6つの評
価指標を、標準システムとの
表 4-7-13 標準システムと RunC との比較
比較として、表4-7-13に示すと
指標
SS
単位
mg/L
ともに、標準システムとこれ
T-N
mgN/L
18.1
2.52
T-P
mgP/L
1.02
0.55
3
までの RunA、RunB-2、および
RunC について、総合的な評価
をレーダーチャートにして図
ランニングコスト
所要面積
建設コスト
RunC
5.37
18.8
18.7
2
1980
1480
6
3270
2760
円/m
m
標準システム
4.78
×10 円
4-7-9 に示した。RunC は、標準
システムに比較して SS が微増、T-N、および T-P が高度除去される傾向は RunB-2、お
よび RunAと同様であった、T-N に関しては窒素除去促進システムとしての制約条件で
抽出を行ったため最も低い結果となった。
所要面積については、1500 m2 の制約の中で、約 1480 m2 に抑えられた。ランニング
コストに関しては、標準システムとほぼ同等であり、わずかに下回る程度であったが、
RunC は所要面積が限られた中で、窒素を高度除去しつつ、灰溶融炉を組み込んだシス
テムであり、最もランニングコストが制約条件として厳しかったものと考えられる。建
設コストに関しては、ほぼ RunA、および RunB-2 と同等程度であった。
以上より、RunB-2 の状況から、さらに窒素高度除去を実施するためには、前凝集プ
ロセスと硝化・脱窒プロセス①を組み合わせたプロセスが不可欠であるものの、有機
酸発酵を用いることができないため、ランニングコストの増加は免れることができず、
ランニングコストを抑えるためには、所要面積をある程度許容せねばならないことが
- 186 -
SS
20
明らかとなった。ただし、所要
面積が限られた中で、窒素、リ
15
建設コスト
10
ンをはじめとする負荷を高度
5
除去し、再資源化プロセスが
0
T-N
標準システム
RunA
RunB-2
導入されるシステムとしては、
本研究で対象としたシステム
RunC
所要面積
T-P
を、6 つの制約条件で抽出した
中ではRunCが最も望ましいこ
ランニングコスト
とが明らかとなった。
図 4-7-9 標準システムと RunA、
RunB-2、RunC の総合比較
4-8 まとめ
本章では、第 2 章における鴻池処理場における年間固形物収支、主要元素収支調査結
果と、第3 章における前凝集沈殿汚泥の処理特性調査結果、ならびに現在全国で用いら
れている様々な単位汚泥処理操作の文献データを用いて、各単位処理操作毎に、ユニッ
トを選択することで、様々なバリエーションの下水処理システム全体を表現する物質
収支モデルを構築し、処理水質、コスト、所要面積をシミュレーションによって算定
することができるプログラムを構築した。このプログラムを用いてシミュレーション
を行い、標準システムを設定し基準とすることで、前凝集プロセスや、硝化・脱窒プ
ロセスを含め、最適処理システムの抽出を行い、処理水質 (SS、T-N、T-P)、所要面積、
コスト等の指標を算出し現状プロセスとの比較を行った。以下に本研究で得られた主
な知見を以下に示した。
1) C++ を用いたオブジェクト指向分析の有する特徴を活用し、下水処理システム全体
を様々なプロセスの組み合わせとして捉え、物質収支モデルと組み合わせることで、水
処理システムとしては凝集プロセス、硝化・脱窒プロセス、標準活性汚泥法、汚泥処
理システムとしては、濃縮、消化、脱水、焼却、溶融、コンポスト、焼却灰再資源化
プロセスを含め、これらの中から種々のユニットを選択し、構成することで、様々な
処理システムの物質収支およびコスト、所要面積を算定できるプログラムを構築した。
2) 第2章での鴻池処理場の年間物質収支の調査結果から、作成したプログラムのパラ
メータを変化させ、鴻池処理場の状態をシミュレーションしたところ、もともとの物
質収支があっていないことに由来する誤差はあるものの、全返流水の有する固形物、TP が場内を循環する特徴を含め、鴻池処理場における現状を概ね表現できた。
- 187 -
3) 鴻池処理場の現状について、
シミュレーションのパラメータを全国平均的な値に変
化させシミュレートしたシステムを標準システムとして定義した上で、標準システム
に前凝集プロセスを導入させた結果、鴻池処理場においては初沈濃縮槽における固形
物回収率を上昇させ、固形物循環をなくすことができれば、処理水の SS を低く維持で
きる。また T-P は、前凝集プロセスを組み込んだ場合の方が飛躍的に低い処理水 T-P 濃
度が得られることが分かった。しかし、コストや所要面積からは標準システムに前凝集
プロセスをそのまま導入したのでは経済的にも、立地条件でも同等、もしくは不利と
なる。
4) 標準システムを基準として、処理水質、ランニングコスト、建設コスト、および所
要面積の指標から最適汚泥処理システムを抽出した結果、約 70,000 パタ-ンの処理シ
ステムから 481 システムが抽出される結果となった。481 システムの全てが、前凝集プ
ロセスと硝化・脱窒を組み合わせた水処理方式であり、この水処理システムの優位性が
示された。また、前凝集プロセスと硝化・脱窒を組み合わせた水処理方式の全てが抽
出されたわけではなく、汚泥処理システムの組み合わせが重要であることが示唆され
た。一例として RunA:前凝集プロセス FeCl36+ ポリマー 0.6 →硝化・脱窒パターン①→
混合遠心濃縮→有機酸発酵→遠心脱水→循環流動床焼却炉→灰埋め立てが挙げられ、
汚泥処理を適切に組み合わせることによって、高度処理を実施しつつ、コスト、所要
面積を現状維持もしくは軽減できるシステムであることが示された。
5) 481 の最適システム群から、都市型・再資源化システムの抽出を行った結果、以下
のシステムが決定された。RunB-2:前凝集プロセス FeCl36+ ポリマー 0.6 →硝化・脱窒
パターン②→造粒濃縮→遠心脱水→循環流動床焼却炉→旋回灰溶融)が挙げられ、シス
テム内に灰溶融を組み込むことができた。窒素除去の観点からはRunAの硝化-脱窒①
が望ましいが、所要面積を極端に制限したことによって有機酸発酵が導入できなかっ
たため、ランニングコストの制約をクリアできなかったことにより選択されなかった。
設置スペースの制約がある状況の下で SS の除去とともに、T-N、T-P を高度除去し、再
資源化を実践して行くためには、前凝集プロセスと硝化・脱窒プロセスを組み合わせ
たプロセスに、造粒濃縮を導入し、脱水・焼却・溶融を実施するシステムが望ましい
と考えられた。
6) 窒素除去促進システムとして、処理水 T-N を 3 mg/L 以下に制限した抽出を行った
結果、最終的に抽出されたのは 153 システムであった。153 システムの全てが、前凝集
- 188 -
プロセスと硝化・脱窒①を組み合わせた水処理方式であり、窒素除去をより促進する
ためにはこの水処理システムが必要であることが再確認できた。
7) 窒素除去促進システムとして、都市型・再資源型も満たすシステムは、基準として
所要面積を 1500 m2 以下にした場合、RunC:前凝集 FeCl36+ ポリマー 0.6 →硝化・脱窒:
パターン①→分離濃縮:重力濃縮 ( 初沈汚泥 )+ 遠心濃縮 ( 余剰汚泥 ) →遠心脱水→循環
流動床焼却→旋回灰溶融が最適システムとして挙げられた。所要面積が限られた中で、
窒素、リンをはじめとする負荷を高度除去し、再資源化プロセスが導入されるシステ
ムとして、本研究で対象としたシステムを、6 つの制約条件で抽出した中では RunCが
最も望ましいことが明らかとなった。窒素高度除去を実施するためには、前凝集プロ
セスと硝化・脱窒プロセス①を組み合わせたプロセスが不可欠であるものの、有機酸
発酵を用いることができないため、ランニングコストの増加は免れることができず、ラ
ンニングコストを抑えるためには、所要面積をある程度許容せねばならないことが明
らかとなった。
8) 本章では、所要面積、ランニングコスト、建設コストの制約の中で、水質の高度化
を求めるためには、水処理のみならず、汚泥処理も含めたシステムの最適化が重要で
あることを再認識することができ、今後の下水処理場における処理システムのありか
たについて言及することができた。
- 189 -
【第 4 章 参考文献】
1)
日本下水道事業団技術開発部、下水道事業団業務普及委員会:効率的な汚泥濃縮
法の評価に関する第 1 次報告書-造粒濃縮法について- (1991)
2)
倉田学児:下水処理プロセスシミュレータを用いた生物学的栄養塩除去システム
の高度化に関する研究、京都大学博士論文、pp.7-20 (1998)
3)
Richard S. Wiener, Lewis J. Pinson 原著、前川守訳:C++:オブジェクト指向プログ
ラミング、Addison-Wesley・トッパン、情報科学シリーズ -5、pp.2-24 (1994)
4)
福里豊:オブジェクト指向モデルによる発電量と二酸化炭素排出量を指標とした
ごみ焼却システムの評価、京都大学卒業論文、pp.6-22 (1998)
5)
国土交通省都市地域整備局下水道部:汚泥有効利用に関するデータベース、http:/
/www.mlit.go.jp/crd/city/sewerage/info/odeidb/031224db.html
6)
大阪府下水道技術研究会、高度処理分科会:高度処理機構解析研究調査委託(その
4 )、平成九年度報告書 (1998)
7)
社団法人日本下水道協会:平成 13 年度版下水道統計要覧、第 58 号の 3、p.105-110
(2003)
8)
社団法人日本下水道協会:平成 13 年度版下水道統計 ( 行政編 )、第 58 号の 1 (2003)
9)
藤原茂樹、局俊明、木原泰彦:下水汚泥の酸発酵技術、JFE 技報、No.6、pp.5457(2004)
10)
Jong-Oh KIM, 宗宮功:有機酸発酵における凝集汚泥中の無機、高分子凝集剤の阻
害効果、下水道協会誌、Vol.36、No.441、pp.102-108 (1999)
11)
海老澤雅美:汚泥からの有機酸回収と活用技術に関する共同研究、東京都下水道
局技術調査年報 2005、pp.203-213 (2005)
12)
財団法人下水道新技術推進機構:循環式流動汚泥焼却炉技術資料 (2003)
13)
J. Werther and T. Ogada:Sewage sludge combustion, Progress in Energy and Combustion
Science, Vol.25, pp.55-116 (1999)
14)
中外炉工業株式会社:下水汚泥処理設備資料(1998)
15)
早瀬宏:下水汚泥溶融システムの効率化と最適化に及ぼす影響因子に関する研究、
長岡技術科学大学博士論文、pp.6-9 (1997)
16)
社団法人日本下水道協会:下水道施設計画・設計指針と解説 ( 後編 )、pp.38-39、
p.362、p.372、p.386 (2001)
17)
社団法人日本下水道協会:高度処理施設設計マニュアル ( 案 )、pp.87-88 (1994)
18)
株式会社クボタ:End System開発研究・平成9年度パイロットプラント運転データ
(1998)
- 190 -
19)
株式会社クボタ:End System 開発研究成果概要報告書、pp.28-36 (1998)
20)
日本下水道事業団技術開発部、下水道事業団業務普及委員会:効率的な汚泥濃縮
法の評価に関する第 1 次報告書-造粒濃縮法について- 添付資料、pp.68-72、p.128
(1991)
21)
松永一成:嫌気性消化プロセスの効率化による汚泥処理システムの最適化に関す
る研究、京都大学博士論文、pp.185-194 (1987)
22)
株式会社石垣:脱水機技術資料 (1998)
23)
株式会社クボタ:ベルトプレス脱水機カタログ (1998)
24)
株式会社クボタ:下水汚泥流動焼却プラントカタログ (1996)
25)
大阪府下水道技術研究会、汚泥処理分科会:有機物の有効活用に関する研究調査、
平成 7 年度報告書、pp.25-28 (1996)
26)
杉森伸子;溶融施設におけるリンの収支に関する一考察、第 35回下水道研究発表
会講演集、pp.957-959 (1998)
27)
社団法人日本下水道協会:下水汚泥処理総合計画策定マニュアル、pp.82-126、
p.251 (1991)
28)
立木裕子:高度下水処理システムの処理効率と経済性の評価、京都大学卒業論文、
pp.25-26 (1993)
29)
日本下水道事業団技術開発部:新技術導入の事後評価に関する調査(溶融炉)、技
術開発部報 2001、pp.97-105 (2002)
30)
日本下水道事業団技術開発部:新技術導入の事後評価に関する調査(コンポスト
化施設)、技術開発部報 1997、pp.74-81 (1998)
31)
総務庁統計局編:第五十五回日本統計年鑑、第 9 章 -12、第 17 章 -1 (2006)
32)
森孝志:下水汚泥溶融処理の現状と課題、再生と利用、Vol.25、No.95、pp.92-97
(2002)
33)
東京都清掃局:焼却灰溶融スラグの有効利用マニュアル、pp.161-182 (1998)
34)
W.W. Eckenfelder, Jr., D.J. O’Connor 原著 , 岩井重久訳:廃水の生物学的処理、コロ
ナ社 (1965)
35)
古川誠司:下水処理場コスト管理モジュールの構築とその応用に関する研究、京
都大学卒業論文、p.57 (1988)
36)
財団法人経済調査会:月刊積算資料 2003-3、pp.753-755 (2003)
37)
株式会社クボタ:流動床式汚泥焼却炉技術資料、pp.30-35(1993)
38)
中外炉工業株式会社:汚泥コンポスト化設備見積仕様書、下水汚泥処理設備資料、
p.8 (1998)
- 191 -
39)
中外炉工業株式会社:下水汚泥処理設備資料、プレス焼成設備 - 建設費・維持管
理費、p.2 (1998)
40)
財団法人経済調査会:月刊積算資料 1998-12、pp.56-57、p.667、p.705 (1998)
41)
石崎隆宏、尾崎正明:下水汚泥コンポスト化システムの実態調査、第 35 回下水道
研究発表会講演集、pp.978-980 (1998)
42) 社団法人日本下水道協会:平成 9 年度版下水道統計(行政編 )、第54 号の 1、 p.1598
(1999)
- 192 -
第 5 章 結論
最後に各章で得られた主な成果を総括し、今後の研究の課題および展望について述
べる。
第 2 章では、大阪府寝屋川北部流域下水道鴻池処理場において、汚泥処理プロセスを
中心として固形物、元素レベルでの物質収支、および汚泥性状の季節変動を調べるこ
とにより、既存のシステムの調査を行った。第 2 章で得られた主な知見を以下に示す。
1) 初沈汚泥(TS=19200 ± 6420 mg/L)は終沈汚泥(TS=6190 ± 945 mg/L)に比べて緩
衝となるプロセスがなく、
生下水や汚泥処理系からの返流水の水質変動の影響を受けて、
変動が激しかった。また、汚泥中の有機分は 8 ~ 10 月にかけて初沈汚泥、終沈汚泥と
もに、それ以外の月に比べて 5 ~ 6 % 減少していた。
2) 全返流水は全ての指標で非常に濃度が高く(TS=10200 ± 6720 mg/L、SS=5820 ±
3020 mg/L、T-P=113± 60.1 mg/L、平均値±標準偏差)、濃縮槽等で汚泥が濃縮されずに
越流していることが考えられた。生下水の水質は、全返流水と混合されることによって
大きく変動しており、水処理プロセスへの悪影響を及ぼしていることが予想された。
3) 物質収支を計算した結果、汚泥処理系からの返流水の負荷は非常に高く(TS=165
t/day)、生下水の 1.4 倍に達しており、その固形物が処理場内で循環した形になってい
た。さらに、リンについては各汚泥処理プロセスにおいて他の元素よりも返流する割
合が高いことがわかった。炭素、水素、窒素の有機物を構成する主要元素はシステム
内での損失が 20 ~ 50 % にものぼった。
4) 全返流水の各指標の濃度は 8 ~ 10 月にかけては平均値の 1/10 まで減少していた。8
~ 10 月にかけては降雨が多く、降雨時の簡易処理によって一部が系外に排出されるた
め負荷が減少したことが第一の要因と考えられるが、汚泥中有機分の減少による汚泥
処理性の向上も寄与していると考えられた。
5) 鴻池処理場の場合、
汚泥処理系からの返流水は水処理系に大きな影響を与えている
ため、前凝集プロセスを評価する際には、水処理系だけで要求水質の高度化に対応す
るのでは不十分であり、汚泥処理の側面からもシステムを評価しなければならないこ
とが確認された。
第3章では、前凝集プロセスを既存のシステムに導入した際に発生する前凝集沈殿汚
泥の処理特性を把握するために、鴻池処理場に設置されたパイロットプラントを用い、
PAC、硫酸バンド、FeCl3 を凝集剤として用いて前凝集沈殿汚泥を作成し、その組成変
- 193 -
化を把握するとともに、
既存の各汚泥処理単位プロセスに対応した処理特性実験を行っ
て、前凝集プロセスが各単位プロセスに与える影響を明らかにした。以下第3章で得ら
れた主な知見を示す。
1) 水質への影響:パイロットプラント実験の水質分析結果より、鴻池処理場の原水に
対しては、凝沈系 PAC、凝沈系バンドで 7.5 ~ 8.2 mgAl/L (Al/SS 重量比:0.1 ~ 0.2、Al/
COD 重量比:0.1、Al/T-P モル比:2.0)、凝沈系 FeCl3 においては 20 ~ 30 mgFe/L (Fe/SS
重量比:0.20 ~ 0.25、Fe/COD 重量比:0.2、Fe/T-P モル比:2.0 ~ 3.0) で、初沈上澄み水
SS:20 mg/L 以下、CODMn:40 mg/L 以下、T-P:1.0 mgP/L 以下が達成可能である。特に
凝沈系 FeCl3 ではアルカリ度の多量消費および pH の低下が生じないように、凝集剤添
加量および原水水質に留意することが必要である。
2) 汚泥の TS 組成への影響:前凝集プロセスの導入に伴う凝集剤添加によって、汚泥
の TS 組成が変化するが、以下の 3 つの現象による変化が生じていると考えられる。
① FSS の増加とそれに伴う他成分 ( 特に VSS) の割合減少:凝集剤成分の水酸化物、リ
ン酸化物の汚泥中への移行
② 有機分の除去に伴う VSS の増加:凝集沈殿により有機物の汚泥中への移行
③ VDS 成分の減少およびそれに伴うVSSの増加:コロイド粒子、微細な粒子のフロッ
ク化
上記の現象により、凝沈系では VSS で約 60%、FSS で約 30%、残りが DS 成分である
ような組成に近づく、したがって汚泥組成の変動が小さくなり、常に一定性状の凝集
沈殿汚泥を得ることが期待できる。ただし、有機分の割合を増加させるためには凝集
剤添加量を減少させ、ポリマーと 2 液薬注することが必要である。
3) 濃縮プロセスへの影響:重力濃縮試験の結果、凝沈系では全般に粒子の沈降速度が
減少することが明らかとなった。遠心濃縮試験の結果においても、標準系に比較して
凝沈系全般では濃縮しにくい傾向が見られた。この原因は、凝集剤添加量が増加する
につれて、1 ~ 10μm の微細な粒子の割合が増加していることが一要因であることが示
唆された。この観点からは、無機凝集剤の一液薬注よりもポリマーを併用し、粒子径
を大きく保つ二液薬注が望ましいと考えられる。ただし凝沈系汚泥は、固液分離性、嫌
気状態におけるリンの再溶出を防止する点で優れており、返流水への負荷が大幅に軽
減できる。
4) 脱水プロセスへの影響:簡易ベルトプレス脱水試験の結果、凝沈系では汚泥粒子の
電荷中和が一部すでに凝集剤によりなされているため、ポリマーは両性カチオンポリ
マー、両性ポリマーが適合し、ケーキ含水率は、基本系と同等かそれ以下にすること
- 194 -
ができることがわかった。また、ろ液 SS、T-P については大幅に減少し、返流水負荷を
軽減することが可能であった。ただし、適合するポリマーを用いても凝集剤添加量が
増えると、ケーキ含水率が増加し、難脱水傾向を示す結果となったが、濃縮の場合と
同様に、汚泥の粒径分布が細かい方へ偏ったことによって、比表面積が増加したため
表面水や内部水、毛管結合水の割合が増加し、難脱水傾向を示したのではないかと推
測された。
5) 焼却プロセスへの影響:発熱量測定の結果、凝沈系では凝集剤により無機分由来の
固形分が増加し発熱量は減少するが、可燃分あたりの発熱量には変化はないことが明
らかになった。脱水ケーキ 1t あたりに必要な補助燃料を試算したところ、凝集剤添加
量の増加に伴って、多くの補助燃料が必要となることが示唆された。焼却プロセスに
おいて投入エネルギーを削減するためには、既存の汚泥処理システムにおいても、前
凝集の場合も脱水プロセスで含水率をできるだけ削減し、ケーキ VTS の割合を減少さ
せないようにすることが重要であり、そのためには凝集剤添加量を過剰にならない程
度に添加することが必要である。
6) 溶融プロセスへの影響:溶流度試験の結果、凝沈系 PAC、凝沈系バンドの汚泥焼却
灰は溶融しにくくなり、凝沈系 FeCl3 の汚泥焼却灰は、より低い温度で溶融することが
わかった。溶融点、溶流点が最小となる最適範囲は広義の塩基度 Bw:1.0 ~ 2.0 であり、
凝沈系 PAC、凝沈系バンドの汚泥焼却灰は Al2O3 の割合が高いため、Bw はこの範囲を
大きく外れるが、凝沈系 FeCl3 を用いた場合は、塩基度調整をせずとも最適範囲となる
ことが明らかとなった。すなわち、FeCl3 を用いた場合は塩基度調整が要らないか、調
整剤が微量で済むが、アルミ系凝集剤を用いた場合は塩基度調整が必要であり、
経済的
にも不利になることが予想できた。この観点からは、アルミ系凝集剤よりも、FeCl3 の
ほうが優れているといえた。また、前凝集沈殿汚泥焼却灰のように、Al 成分や Fe 成分
を多く含む場合には、CaO/SiO2 の塩基度指標を用いることは不適切であり、より経済
的な溶融炉の運転管理を考えた場合には、広義の塩基度Bwを用いて塩基度調整を行う
ことが必要であろう。
第 4 章では、第 2 章における鴻池処理場における年間固形物収支、主要元素収支調査
結果と、第3 章における前凝集沈殿汚泥の処理特性調査結果、ならびに現在全国で用い
られている様々な単位汚泥処理操作の文献データを用いて、各単位処理操作毎に、ユ
ニットを選択することで、様々なバリエーションの下水処理システム全体を表現する
物質収支モデルを構築し、処理水質、コスト、所要面積をシミュレーションによって
算定することができるプログラムを構築した。
このプログラムを用いてシミュレーショ
- 195 -
ンを行い、標準システムを設定し基準とすることで、前凝集プロセスや、硝化・脱窒
プロセスを含め、最適処理システムの抽出を行い、処理水質 (SS、T-N、T-P)、所要面
積、コスト等の指標を算出し現状プロセスとの比較を行った。以下に第4章で得られた
主な知見を以下に示した。
1) C++ を用いたオブジェクト指向分析の有する特徴を活用し、下水処理システム全体
を様々なプロセスの組み合わせとして捉え、物質収支モデルと組み合わせることで、水
処理システムとしては凝集プロセス、硝化・脱窒プロセス、標準活性汚泥法、汚泥処
理システムとしては、濃縮、消化、脱水、焼却、溶融、コンポスト、焼却灰再資源化
プロセスを含め、これらの中から種々のユニットを選択し、構成することで、様々な
処理システムの物質収支およびコスト、所要面積を算定できるプログラムを構築した。
2) 第2章での鴻池処理場の年間物質収支の調査結果から、作成したプログラムのパラ
メータを変化させ、鴻池処理場の状態をシミュレーションしたところ、もともとの物
質収支があっていないことに由来する誤差はあるものの、全返流水の有する固形物、TP が場内を循環する特徴を含め、鴻池処理場における現状を概ね表現できた。
3) 鴻池処理場の現状について、
シミュレーションのパラメータを全国平均的な値に変
化させシミュレートしたシステムを標準システムとして定義した上で、標準システム
に前凝集プロセスを導入させた結果、鴻池処理場においては初沈濃縮槽における固形
物回収率を上昇させ、固形物循環をなくすことができれば、前凝集プロセスを組み込
まなくとも、処理水の SS を低く維持できることがわかった。また T-N については前凝
集プロセスのみを組み込んでも顕著な効果は得られないが、T-P は、前凝集プロセスを
組み込んだ場合の方が飛躍的に低い処理水 T-P 濃度が得られることが分かった。一方、
コストや所要面積からは標準システムに前凝集プロセスをそのまま導入したのでは経
済的にも、立地条件でも同等、もしくは不利という結果になった。
4) 標準システムを基準として、処理水質、ランニングコスト、建設コスト、所要面積
の指標から最適汚泥処理システムを抽出した結果、約 70,000 パタ-ンの処理システム
から 481 システムが抽出される結果となった。481 システムの全てが、前凝集プロセス
と硝化・脱窒を組み合わせた水処理方式であり、このシステムの優位性が示された。ま
た、前凝集プロセスと硝化・脱窒を組み合わせた水処理方式の全てが抽出されたわけ
ではなく、汚泥処理システムの組み合わせが重要であることが示唆された。一例とし
て RunA:前凝集プロセス FeCl36+ ポリマー 0.6 →硝化・脱窒パターン①→混合遠心濃縮
→有機酸発酵→遠心脱水→循環流動床焼却炉→灰埋め立てが挙げられ、
汚泥処理を適切
に組み合わせることによって、高度処理を実施しつつ、コスト、所要面積を現状維持
- 196 -
もしくは軽減できるシステムであることが示された。
5) 481 の最適システム群から、都市型・再資源化システムの抽出を行った結果、以下
のシステムが決定された。RunB-2:前凝集プロセス FeCl36+ ポリマー 0.6 →硝化・脱窒
パターン②→造粒濃縮→遠心脱水→循環流動床焼却炉→旋回灰溶融が挙げられ、
システ
ム内に灰溶融を組み込むことができた。窒素除去の観点からはRunAの硝化-脱窒①が
望ましいが、所要面積を極端に制限したことによって有機酸発酵が導入できなかった
ため、ランニングコストの制約をクリアできなかったことにより選択されなかった。設
置スペースの制約がある状況の下で SS の除去とともに、T-N、T-P を高度除去し、再資
源化を実践して行くためには、前凝集プロセスと硝化・脱窒プロセスを組み合わせた
プロセスに、造粒濃縮を導入し、脱水・焼却・溶融を実施するシステムが望ましいと
考えられた。
6) 窒素除去促進システムとして、処理水 T-N を 3(mg/L) 以下に制限した抽出を行った
結果、最終的に抽出されたのは 153 システムであった。153 システムの全てが、前凝集
プロセスと硝化・脱窒①を組み合わせた水処理方式であり、窒素除去をより促進する
ためにはこの水処理システムが必要であることが再確認できた。
7) 窒素除去促進システムとして、都市型・再資源型も満たすシステムは、基準として
所要面積を 1500 m2 以下にした場合、RunC:前凝集 FeCl36+ ポリマー 0.6 →硝化・脱窒:
パターン①→分離濃縮:重力濃縮 ( 初沈汚泥 )+ 遠心濃縮 ( 余剰汚泥 ) →遠心脱水→循環
流動床焼却→旋回灰溶融が最適システムとして挙げられ、所要面積が限られた中で、窒
素、リンをはじめとする負荷を高度除去し、再資源化プロセスが導入されるシステム
として、本研究で対象としたシステムを、6 つの制約条件で抽出した中では RunC が最
も望ましいことが明らかとなった。ただし、窒素高度除去を実施するためには、前凝
集プロセスと硝化・脱窒プロセス①を組み合わせたプロセスが不可欠であるものの、有
機酸発酵を用いることができないため、ランニングコストの増加は免れることができ
ず、ランニングコストを抑えるためには、所要面積をある程度許容せねばならないこ
とが明らかとなった。
本研究から、第 1 章で述べたような、下水処理システムに求められる4つの課題:高
度処理、省エネルギー、施設のコンパクト化、資源の有効利用、を満たすシステムと
して、前凝集プロセスを組み込んだ下水処理システムは、適切な汚泥処理プロセスを選
択することで、非常に有望であることが明らかとなった。本論文における前凝集プロセ
スと汚泥処理の関係のように、今後は水処理側で高度処理を行いつつ、発生する汚泥を
効率的に処理する、有効利用するといったことがさらに重要になってくるものと考えら
- 197 -
れる。この点にまずアプローチできたことが本研究の成果の一つであると考える。
しかし、本研究の結論としては、凝集剤の過剰な添加は、直接的に処理水質や返流水
水質、特にリン濃度の低減にはつながるものの、凝集剤コスト、および汚泥量の増加に
ともなう汚泥処理コストの増大を招くことになる。第4章でも最適処理プロセスとして
抽出されたのは、すべて FeCl3 の量を減少させ、ポリマーを補填するといった二液薬注
方式であった。
前述したように前凝集プロセスを含め、凝集剤を使用するということは、水質の負荷
を汚泥処理に移行することであり、有機物のみならず、枯渇が懸念されるリンや凝集
剤成分そのものに代表される無機物も汚泥中へ移行することになる。
以上のことから、凝集沈殿汚泥中の有機物・無機物は、その有効利用をこれまで以
上に積極的に進めていく必要があり、そのことが結果的にシステム全体のランニング
コスト、所要面積などの減少につながって、様々な処理プロセスの選択の幅が広がるこ
とになる。凝集沈殿汚泥中の有機物に関しては、本研究での第 4 章でも、最適システム
の1プロセスとして抽出された凝集沈殿汚泥の有機酸発酵液を脱窒源に用いる技術や、
凝集沈殿汚泥の嫌気性消化によるメタン発酵特性などが積極的に研究されているが、
凝
集沈殿汚泥中に濃縮されるリンを回収したり、凝集剤成分そのものを回収して再利用
するといったようなことはあまり研究されていない。
第 3 章でも述べたようにリンは凝集剤によって高度除去が可能であり、結果的に、凝
集沈殿汚泥中に一部安定なリン酸塩の形態で濃縮される。
凝集沈殿汚泥中のリンは嫌気
性条件化におかれてもほとんど溶出されないことから、MAP のような方式は、凝集沈
殿汚泥やその汚泥処理返流水には適用が難しいものと考えられ、今後、凝集沈殿汚泥か
らのリン回収などの研究が期待される。また、容易に凝集剤を回収できれば、直接的
にランニングコストの節約になるため、凝集沈殿汚泥からの凝集剤の回収などの研究
も期待される。
また、第 2 章における下水処理場の基礎調査で、処理場内を固形物が循環する現象が
生じていることが明らかとなった。この問題に関しては主に、初沈濃縮槽における固形
物の回収率が減少することによるものであったが、その原因は解明されていない。運転
条件によるものなのか、それとも流入水、ないしは初沈汚泥中の何らかの成分の影響な
のか、今後明らかにしていく必要がある。特に雨天時には簡易処理によって全返流水の
高い負荷は一部放流されることになるため、特に合流式の下水処理場で上記の現象が生
じている場合には、早急に対応する必要があろう。
さらに、下水道がさらに普及するにしたがって処理汚泥量の増加や、ディスポーザー
導入などにより汚泥性状の変化が予想される中、
前凝集プロセス+窒素高度除去システ
- 198 -
ムといった高度処理システムだけではなく、炭化、ベルト濃縮など、新しい汚泥処理プ
ロセスが開発されてきている。
本研究のプログラムはオブジェクト指向をサポートする
言語 C ++ により作成したものであり、コストや原単位、物質収支パラメータ等の基礎
データがあれば、新たなクラスとして簡単にプログラム中に組み込むことが可能であ
る。この特長を生かしてプログラムを発展させていくことにより、新しい汚泥処理プ
ロセスを既存のシステムに導入した際の全体システムへの波及効果を明らかにしたり、
それに望ましいシステムの選択が、比較的容易に行えるものと考えられる。
ただし、本研究にて構築したプログラムでは、鴻池処理場での調査、およびパイロッ
トプラント実験を基に、汚泥処理における固形物回収率を一部は一律として決定した
が、現実は、VTS や粗浮遊物などの汚泥性状、固形物負荷等によっても変化してくる
はずであり、他の処理場に本プログラムを適用する際にはこの点に留意する必要があ
る。また、SS、リン、T-N のみならず、TOC、COD などの有機物指標も、元来水質指
標として非常に重要であり、地球温暖化問題を考慮した場合は、CO 2 発生量やエネル
ギー指標などの指標が重要となるであろう。今後、汚泥処理も含めた処理場全体での有
機分の挙動、エネルギー消費量、CO2 発生量を明らかにした上で、最適指標として導入
する必要がある。
最後に、第 1 章でも述べたように、本研究を実施した大阪府寝屋川北部流域下水道の
終末処理場である鴻池処理場は、平成 18 年 4 月 1 日に、鴻池水みらいセンターと名前を
改称した。本論文が水、ならびに汚泥の”みらい”を切り開く一助となることを願う。
- 199 -
謝辞
本論文は、京都大学大学院工学研究科環境工学専攻在学中ならびにその後に奉職さ
せていただきました同工学研究科環境工学専攻(環境システム工学講座都市代謝工学分
野)、および都市環境工学専攻(環境デザイン工学講座)において行った研究成果をまと
めたものです。
この間、本研究の機会をお与えいただき、終始一貫して熱心なご指導、ご鞭撻を賜
りました京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻教授 武田 信生博士には心か
ら感謝いたします。研究室配属当初から、現在に至るまで、教員になるきっかけをお
与え下さるとともに、数え切れないほどの適切なご助言をいただき、お世話になりま
した。重ねて謝意を表します。
京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻教授 津野 洋博士、京都大学大学院
工学研究科附属流域圏総合環境質研究センター教授 田中 宏明博士には本論文の審
査をしていただき、適切なご助言とご指導を賜りました。深く感謝いたします。
研究に際して、直接的にご指導いただきましたのが、京都大学大学院工学研究科都
市環境工学専攻環境デザイン工学講座助教授 高岡 昌輝博士でした。本論文におけ
るパイロットプラントの実験やシミュレーション、最終的な論文作成まで、懇切丁寧
なご指導を頂きました。深く感謝いたします。
京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻助手 松本 忠生先生には、いつも暖
かくご助言を賜りました。研究が行き詰ったときは必ず親身になって一緒に考えて下
さり、適切なアドバイスをいただきました。深く感謝いたします。
京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻助教授 藤原 健史博士には、在学中
から本研究に対する適切なご助言、ご指導をいただきました。深く感謝いたします。
京都大学工学研究科技術職員 塩田 憲司氏には、本論文の作成にあたり多大なご
尽力をいただきました。深く感謝いたします。
本研究の調査およびパイロットプラント実験は大阪府下水道研究会のもとで行いま
した。財団法人大阪府下水道技術センター、大阪府都市整備部下水道課、大阪府東部
流域下水道事務所の檜物良一様らご担当の皆様、寝屋川北部流域下水道組合第二管理
課長の江端繁雄氏ら鴻池処理場(現 鴻池水みらいセンター)の皆様には実験に際し
暖かい配慮を賜りました。深く感謝いたします。
京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻環境デザイン工学講座の関係者、卒業
生、現学生の方々にも、本論文の作成にあたり多大なご尽力をいただきました。在学
中ともに研究をさせていただきました、松本 暁洋氏(現、株式会社タクマ)には実
験方法、解析方法のみならず、研究の厳しさを教えていただきました。廣田 淳一氏
(現 日本ガイシ株式会社)には研究に対する非常に柔軟な発想を教えていただきまし
た。また、実験作業におきましては、当時研究室の学生であった、岩下 真理氏(現
株式会社東芝)、梅染 俊行氏(現 月島機械株式会社)、小北 浩司氏(現 株式
会社タクマ)、原田 浩希博士(現 Hitz 日立造船株式会社)、北小路 博之氏(現 中
外炉工業株式会社)、また現学生の加藤 文隆氏、森 彰宏氏、石原 裕希子氏に大変
お世話になりました。ありがとうございました。
日本ガイシ株式会社での 3 年間の在職中には、坪井 徹氏、富田 美穂博士、吉田 修一氏、柳瀬 哲也氏、徳倉 勝浩氏をはじめとする数々の方にお世話になりました。
民間企業では、非常に多くのことを学ぶことができました。この 3 年間があってこそ、
本論文をまとめることができました。皆様に深く感謝いたします。
第3章のパイロットプラントにおける実験遂行にあたりましては、株式会社クボタ 岩部 秀樹博士、堅田 智宏氏をはじめとする関係者各位に大変お世話になりました。
深く感謝いたします。
第 4 章のシミュレーションでは、数々のプラントメーカーの方に情報を提供いただき
ました。関係者各位に深く感謝いたします。
この他にも多くの方々のご尽力、ご指導があって本論文をまとめることができまし
た。ここにあらためて感謝する次第です。
最後に、いつも温かく支えてくれた、妻・明子、長男・遥人をはじめ家族に深く感
謝いたします。
付 録
付録 1 鴻池処理場における固形物、主要元素年間調査結果(TS, SS, T-P)
付録 2 鴻池処理場における固形物、主要元素年間調査結果(CHN 組成)
付録 3 パイロットプラント実験の水質分析結果
付録 4 重力濃縮試験における回分沈降曲線
付録 5 溶流度測定写真(一部)
付録 6 所要面積算定に用いた各プロセスにおける回帰曲線
- 付1 -
TS 測定結果 -1(mg/L、脱水ケーキ、焼却灰は mg/kg)
- 付2 -
TS 測定結果 -2(mg/L、脱水ケーキ、焼却灰は mg/kg)
日付
12.16
1.13
1.20
2.1
2.17
3.3
3.17
4.7
4.21
5.6
平均
最大値 最小値 標準偏差値
生下水
614
703
618
611
531
364
538
457
417
472
536
832
414
109
初沈流入水
1600
1590
1700
1520
1520
1590
3650
3980
3270
7470
1180
3300
311
750
全返流水
7320
7980
7220
9670
6080
28800
12200
19000
22900
18100
7630
16900
728
4680
処理水
365
357
416
639
335
402
478
427
408
441
359
454
205
67
初沈汚泥
17900
18300
25100
16000
9330
16200
14900
14500
15000
14900
22500
37600
10500
6830
終沈汚泥
6150
6230
6600
7480
7220
7270
7270
7280
7260
7270
5540
6650
4110
760
初沈濃縮槽返流水
16200
12500
18000
17900
8580
16500
14800
14700
15200
15100
12500
21300
813
7300
初沈濃縮汚泥
18500
25700
22600
21500
35400
28600
27200
29000
29200
28300
25500
63700
4370
14100
終沈濃縮汚泥
6790
8250
9590
11200
12600
11900
11600
11900
11900
11800
14500
38200
3740
9470
遠心濃縮機返流水
7730
14100
6650
5940
13500
9600
9020
9900
9990
9530
6520
17300
781
5650
遠心濃縮汚泥
57700
33100
43400
48200
73600
55500
56800
58700
58100
57500
50000
64500
42900
6250
混合濃縮汚泥
26400
28000
28000
23200
31700
29000
27400
28700
29100
28300
32500
63900
17800
11800
脱水ケーキ
170000 183000 128000 196000 222000 241000 206000 226000 233000 221000 197000 245000 159000
29800
脱水機返流水
10400
10300
12100
15600
8810
12700
12600
12200
12200
12400
7190
12300
1810
2830
焼却炉返流水
715
631
897
1000
994
767
942
871
828
880
777
1000
545
119
焼却灰
810000 834000 848000 860000 902000 750000 849000 811000 787000 815000 799000 982000 723000
65400
付表 1-2
日付
5.20
6.3
6.17
7.1
7.22
8.6
8.20
9.3
9.30
10.7
10.22
11.5
11.18
12.2
生下水
518
653
483
414
463
475
506
505
528
523
832
528
455
628
初沈流入水
1300
1390
1260
1390
992
970
1100
311
721
483
984
3300
1210
1790
全返流水
10400
9130
8930
16900
7540
9940
12900
2190
3850
728
4790
4230
5640
7830
処理水
315
346
343
205
325
347
433
393
439
350
454
358
316
372
初沈汚泥
23100
23200
17400
37600
16300
24600
21700
28300
27300
10500
18700
21200
10600
17700
終沈汚泥
5790
5900
6040
4990
6020
5790
6650
4930
4110
4410
5690
6150
6360
5640
初沈濃縮槽返流水
17600
16600
17500
21300
13900
14200
18000
1790
854
813
10900
16500
15500
19100
初沈濃縮汚泥
23300
21600
19400
32700
25500
32500
18400
63700
20500
26100
4370
18000
23800
5090
終沈濃縮汚泥
10800
11900
12300
5890
11800
19900
25200
38200
3740
7780
11500
15400
8400
2390
遠心濃縮機返流水
6590
7510
8130
1310
8200
8160
17300
1320
781
991
2080
15900
2010
5870
遠心濃縮汚泥
47700
49500
45000
51300
46000
51600
58900
49300
42900
49600
43900
64500 118000
51400
混合濃縮汚泥
34100
28100
25100
63900
28500
39100
32900
39200
17800
32300
27800
21500
25200
24600
脱水ケーキ
171000 167000 159000 178000 215000 192000 159000 220000 233000 245000 216000 207000 167000 185000
脱水機返流水
5230
4210
1810
10100
12300
9650
8450
7000
7660
5310
7530
7050
7020
11700
焼却炉返流水
689
545
719
796
785
822
756
1000
804
663
916
824
726
670
焼却灰
763000 723000 777000 773000 804000 842000 982000 760000 807000 756000 792000 804000 780000 779000
付表 1-1
付録 1 鴻池処理場における固形物、主要元素年間調査結果(TS, SS, T-P)
- 付3 -
SS 測定結果 -1(mg/L)
SS 測定結果 -2(mg/L)
日付
1.20
2.1
2.17
3.3
3.17
4.7
4.21
5.6
平均
最大値 最小値 標準偏差
生下水
46
129
94
92
98
87
94
89
100
221
43
46
初沈流入水
913
910
1040
1020
1130
918
1060
956
771
1130
83
312
全返流水
6560
8570
4780
7270
6180
6560
6160
6550
5820
15500
148
3020
処理水
18
22
16
21
19
18
19
19
12
22
1
7
初沈汚泥
25000
14900
8310
15700
13000
13800
12800
13800
18200
36400
8310
6610
終沈汚泥
15600
6550
6260
6020
7750
5640
6970
5940
5950
15600
3310
2300
初沈濃縮槽返流水
17800
16700
7390
15700
11700
13800
11900
13600
12000
19900
80
5490
初沈濃縮汚泥
22200
19800
35700
27800
35600
25000
32400
26700
26100
60600
4110
9900
終沈濃縮汚泥
8700
10400
11700
11100
12400
10000
11600
10400
12000
38700
1630
7220
遠心濃縮機返流水
5870
4960
12800
8790
12200
7860
10900
8570
6860
15000
193
4500
遠心濃縮汚泥
44900
46400
75200
52400
72800
48600
65800
52400
52800
79600
33000
11400
混合濃縮汚泥
27300
20600
29100
27500
31300
24400
29000
25600
27500
57300
3300
9250
脱水ケーキ
脱水機返流水
127
152
104
120
121
111
117
113
139
597
15
125
焼却炉返流水
219
146
180
195
207
172
193
178
176
285
51
60
焼却灰
付表 1-4
日付
5.20
6.3
6.17
7.1
7.22
8.6
8.20
9.3
9.30
10.7
10.22
11.5
11.18
12.2
12.16
1.13
生下水
72
53
165
43
64
119
221
126
112
76
215
54
114
92
80
67
初沈流入水
791
777
813
800
580
677
1030
163
170
83
473
420
640
1090
966
1090
全返流水
9620
7800
5360 15500
6500
6040
2800
750
3000
148
3680
3830
4800
6290
5700
5150
処理水
8
7
11
7
11
7
7
3
3
1
4
9
5
7
13
22
初沈汚泥
26600 21200 25600 36400 15000 23100 19900 26600 19500
9890 18600 19800
8870 15700 16300 16000
終沈汚泥
5090
5190
5020
4970
5390
5180
5980
3870
3680
3310
5340
5510
5710
4880
7390
5580
初沈濃縮槽返流水
16100 15000 13000 19900 12500 11900
6250 11600
115
80
230 15900 13900 16800 15000 12100
初沈濃縮汚泥
23500 19300 25300 29200 23500 30100 16800 60600 28300 23600
4110 16700 22200 28900 24700 23900
終沈濃縮汚泥
9520 11600 10600
5310 11500 19300 23300 38700 16000
7380 10500 15100
7860
1630
6020
7400
遠心濃縮機返流水
4280
6560
3510
1000
7210
3230
2870
1350
193
486
4720 13800 15000
5020
9760 13600
遠心濃縮汚泥
53400 55400 53200 50100 44300 39300 53100 53200 79600 51200 46500 63400 40900 49800 42000 33100
混合濃縮汚泥
35700 25500 28600 57300 25800 35800 31500 35500
3300 31100 25000 19300 23000 20000 23500 24700
脱水ケーキ
脱水機返流水
253
15
332
597
52
192
79
166
17
144
252
95
24
40
61
62
焼却炉返流水
73
71
109
51
243
192
171
285
239
138
221
273
170
197
174
124
焼却灰
付表 1-3
- 付4 -
日付
生下水
初沈流入水
全返流水
処理水
初沈汚泥
終沈汚泥
初沈濃縮槽返流水
初沈濃縮汚泥
終沈濃縮汚泥
遠心濃縮機返流水
遠心濃縮汚泥
混合濃縮汚泥
脱水ケーキ
脱水機返流水
焼却炉返流水
焼却灰
日付
生下水
初沈流入水
全返流水
処理水
初沈汚泥
終沈汚泥
初沈濃縮槽返流水
初沈濃縮汚泥
終沈濃縮汚泥
遠心濃縮機返流水
遠心濃縮汚泥
混合濃縮汚泥
脱水ケーキ
脱水機返流水
焼却炉返流水
焼却灰
12.16
4.5
12.9
100
1.3
165
131
169
128
164
106
730
434
818
4.3
4.9
36100
5.20
4.9
9.4
163
4.6
229
192
199
269
274
219
868
951
1000
1.4
2.0
12500
1.13
3.2
12.0
133
1.4
160
141
157
195
169
202
691
498
1010
2.3
4.5
41000
1.20
3.4
12
104
2.0
165
145
154
150
158
140
731
418
918
3.9
5.6
28700
7.22
2.9
11.0
39.5
0.8
40.0
68.6
143
191
159
169
577
300
1090
2.2
5.9
35700
1.0
11.5
63.7
3.1
143
118
2.0
166
153
141
780
305
1100
3.1
4.6
31600
8.6
8.20
2.3
16.6
81.6
2.4
151
110
100
200
180
150
801
454
1010
3.8
5.4
27800
3.5
5.0
36.2
0.6
198
125
30.8
211
210
0.0
0.0
718
827
3.9
6.1
48200
9.3
9.30
1.7
3.9
46.5
1.7
73.0
102
15.6
114
76.8
18.5
613
307
912
2.5
6.2
30500
10.7
3.0
8.6
33.9
0.9
151
94.3
20.5
205
128
29.5
800
432
1080
3.3
5.2
40600
10.22
3.5
8.3
11.2
1.2
108
82.4
13.6
154
124
16.8
8.7
469
965
2.8
5.6
35500
4.7
11.4
150
2.6
144
167
167
156
189
161
593
508
1080
4.8
4.1
25900
2.1
2.17
3.9
10.9
131
1.8
130
189
131
183
190
193
696
310
1110
1.3
4.9
11000
251
180
177
148
151
181
703
300
660
2.5
3.7
20700
3.1
8.6
208
3.3
3.17
4.0
11.4
164
1.4
183
201
160
188
194
203
771
349
1070
2.1
5.1
16800
3.0
8.3
177
0.4
208
163
156
138
144
163
629
295
677
2.4
3.5
18700
4.7
4.21
3.7
10.4
165
1.2
185
188
156
172
179
190
721
329
954
2.1
4.6
16800
3.2
8.7
178
0.5
208
170
158
146
152
170
655
303
731
2.4
3.7
18500
5.6
平均
3.5
11.1
113
1.6
167
148
125
173
165
151
697
422
959
2.9
5.0
28700
11.5
3.9
7.1
45.8
2.4
121
104
231
181
154
186
737
412
792
5.1
5.0
28600
11.18
4.6
16.1
85.3
1.8
180
153
177
165
183
197
907
253
995
3.3
6.8
34600
12.2
3.3
13.1
74.6
1.1
153
121
6.3
40.4
41.8
50.0
690
531
1110
1.3
5.5
29800
最大値
最小値 標準偏差
6.4
1.0
1.1
23.3
3.9
4.0
208
11.2
60.1
4.6
0.2
1.0
251
40
51.5
323
47.3
58.8
231
2.0
69.6
269
40.4
47.0
274
41.8
49.5
257
0.0
75.5
907
0.0
169
951
253.3
157
1130
660
141
5.1
1.3
1.1
6.8
2.0
1.0
62300
11000
12100
T-P 測定結果 -2(mg/L、脱水ケーキ、焼却灰は mg/kg)
2.8
13.6
156
0.7
178
47.3
128
163
116
250
727
279
926
2.8
5.7
14000
7.1
T-P 測定結果 -1(mg/L、脱水ケーキ、焼却灰は mg/kg)
6.17
3.3
12.2
197
0.2
235
323
147
251
225
257
702
503
1130
2.2
5.4
22500
付表 1-6
6.4
23.3
177
2.7
247
231
195
236
246
229
802
476
1050
4.8
5.4
62300
6.3
付表 1-5
35.0
32.4
37.2
4.2
37.1
39.8
36.4
37.2
39.8
38.2
38.2
35.4
27.7
35.7
5.6
0.7
6.17
32.6
30.4
36.8
7.1
36.5
36.9
35.8
36.6
36.9
37.0
37.7
34.9
24.6
35.4
7.7
0.7
7.1
日付
12.16
1.13
1.20
2.1
生下水
19.0
16.5
22.3
初沈流入水
34.1
33.1
30.5
全返流水
39.8
40.9
42.8
処理水
5.3
8.1
10.5
初沈汚泥
40.8
39.4
42.2
終沈汚泥
42.6
43.8
44.0
初沈濃縮槽返流水
40.3
38.9
42.1
初沈濃縮汚泥
40.8
38.9
41.6
終沈濃縮汚泥
42.4
43.6
43.8
遠心濃縮機返流水
38.5
39.3
39.4
遠心濃縮汚泥
39.4
41.3
41.7
混合濃縮汚泥
38.0
39.8
40.4
脱水ケーキ
28.4
27.7
30.0
脱水機返流水
21.1
27.9
31.5
焼却炉返流水
13.2
10.5
15.3
焼却灰
0.9
1.1
1.4
日付
5.20
6.3
生下水
31.2
初沈流入水
31.7
全返流水
41.4
処理水
10.2
初沈汚泥
36.5
終沈汚泥
38.2
初沈濃縮槽返流水
35.8
初沈濃縮汚泥
36.6
終沈濃縮汚泥
38.2
遠心濃縮機返流水
39.4
遠心濃縮汚泥
40.6
混合濃縮汚泥
38.8
脱水ケーキ
25.9
脱水機返流水
38.9
焼却炉返流水
7.5
焼却灰
1.2
7.22
32.9
26.8
37.1
12.5
27.5
28.1
26.9
27.4
28.1
36.4
36.4
32.0
24.9
38.9
7.3
1.9
8.6
33.3
34.2
37.1
8.5
29.3
30.2
28.7
29.2
30.2
36.9
37.2
33.0
21.3
32.8
8.2
2.9
8.20
34.3
38.1
39.4
6.0
30.2
32.7
30.5
30.1
32.7
37.6
38.5
36.1
22.2
22.7
11.4
4.6
9.3
15.6
9.6
28.3
5.5
33.0
33.9
33.3
34.8
35.1
32.7
38.4
28.5
24.5
7.5
5.4
1.2
- 付5 27.9
39.7
40.5
5.0
41.2
42.0
41.0
40.6
41.8
37.6
39.2
38.7
28.9
30.1
8.2
1.9
2.17
25.0
37.9
42.3
11.0
43.6
43.1
43.4
43.0
42.9
38.0
37.5
37.3
28.8
32.8
12.6
3.5
3.3
13.1
32.6
12.5
2.0
40.0
42.4
39.8
39.4
42.2
37.6
39.4
36.0
24.6
30.9
3.2
1.3
3.17
21.1
36.3
29.8
5.6
41.4
42.5
41.3
40.8
42.3
37.7
38.8
37.2
27.2
31.2
7.5
2.1
4.7
20.3
35.8
29.6
6.7
41.9
42.7
41.7
41.3
42.5
37.8
38.4
36.9
27.1
31.8
8.3
2.4
4.21
24.0
32.1
34.8
6.5
37.8
39.4
37.6
37.8
39.6
36.7
38.5
36.0
26.6
29.4
7.4
1.7
最大値 最小値 標準偏差値
35.0
13.1
7.4
39.7
9.6
6.4
42.8
12.5
7.0
12.5
2.0
2.5
43.6
27.5
4.6
44.0
28.1
4.6
43.4
26.9
4.6
43.0
27.4
4.3
43.8
28.1
4.5
39.4
28.2
2.7
41.7
33.6
1.6
40.4
28.5
2.9
30.0
21.3
2.4
38.9
7.5
8.4
15.3
1.8
3.4
4.6
0.2
1.0
10.22
11.5
11.18
12.2
26.2
13.4
19.4
16.7
30.8
37.8
33.7
32.4
34.3
35.3
40.1
38.6
6.7
3.5
7.5
4.9
36.9
37.7
42.5
41.7
39.4
40.1
43.7
43.1
37.0
37.8
42.6
41.1
36.9
37.7
42.5
41.7
40.8
41.5
43.5
42.9
34.4
38.0
37.1
37.7
38.3
37.2
39.2
38.6
36.2
36.6
36.5
36.4
28.5
28.2
28.0
29.0
29.0
38.6
15.3
10.6
4.7
3.8
3.4
1.8
1.4
1.0
0.6
0.2
平均
17.8
18.7
28.9
6.1
38.0
39.0
38.4
40.0
40.4
33.8
38.7
36.4
30.0
38.7
4.8
1.0
19.8
35.6
27.6
5.7
41.4
42.6
41.3
40.9
42.4
37.8
38.7
36.9
26.8
31.4
7.3
2.2
10.7
5.6
30.0
33.3
37.3
5.3
31.6
38.4
31.9
33.3
39.7
28.2
38.7
36.1
24.2
29.7
5.2
2.7
18.4
35.0
24.5
5.0
41.2
42.6
41.0
40.6
42.4
37.7
38.8
36.7
26.4
31.4
6.5
2.0
9.30
付表 2-2 炭素測定結果 -2(%)
34.6
29.3
31.9
4.3
35.7
33.9
34.9
35.5
33.9
31.7
33.6
28.7
24.0
32.6
8.9
1.3
付表 2-1 炭素測定結果 -1(%)
付録 2 鴻池処理場における固形物、主要元素年間調査結果
(CHN 組成)
- 付6 -
3.9
4.1
5.5
0.4
4.7
8.5
4.1
4.3
7.8
8.0
7.6
6.9
3.1
5.6
1.5
0.0
6.17
7.9
3.9
5.5
0.8
5.0
7.7
4.4
4.2
7.7
7.7
7.6
6.8
3.5
4.7
2.0
0.0
7.1
日付
12.16
1.13
1.20
2.1
生下水
1.7
1.5
2.0
初沈流入水
4.4
4.2
3.9
全返流水
5.9
6.1
6.4
処理水
0.8
1.2
1.6
初沈汚泥
6.4
6.6
6.5
終沈汚泥
7.9
8.1
8.3
初沈濃縮槽返流水
5.4
5.6
5.6
初沈濃縮汚泥
5.3
5.5
5.6
終沈濃縮汚泥
7.8
8.0
8.3
遠心濃縮機返流水
8.1
8.2
8.2
遠心濃縮汚泥
8.0
8.2
8.3
混合濃縮汚泥
7.3
7.6
7.7
脱水ケーキ
4.8
4.7
5.1
脱水機返流水
2.9
3.8
4.3
焼却炉返流水
3.5
2.8
4.0
焼却灰
0.0
0.1
0.1
日付
5.20
6.3
生下水
3.3
初沈流入水
4.1
全返流水
6.2
処理水
2.1
初沈汚泥
4.6
終沈汚泥
7.9
初沈濃縮槽返流水
4.7
初沈濃縮汚泥
4.7
終沈濃縮汚泥
7.9
遠心濃縮機返流水
8.2
遠心濃縮汚泥
8.2
混合濃縮汚泥
7.5
脱水ケーキ
4.5
脱水機返流水
5.1
焼却炉返流水
1.9
焼却灰
0.1
7.22
5.8
3.4
5.5
0.8
4.3
7.8
4.2
4.2
7.4
7.5
7.4
6.3
3.3
5.2
1.9
0.1
8.6
4.2
4.4
5.5
0.6
4.2
6.2
4.3
4.2
7.7
7.6
7.5
6.5
4.2
4.4
2.2
0.1
8.20
3.4
4.9
5.9
0.7
7.1
10.0
4.6
4.5
8.0
7.7
7.8
7.1
5.5
3.0
3.0
0.2
9.3
2.0
1.2
4.2
0.6
4.3
7.5
3.6
3.0
6.7
6.7
7.7
5.5
3.7
1.0
1.4
0.1
9.30
2.5
5.1
6.0
0.8
6.3
7.9
5.4
5.4
7.8
7.8
7.9
7.5
4.9
4.1
2.2
0.1
2.17
2.3
4.9
6.3
1.5
6.4
8.1
6.0
6.2
7.8
7.9
7.6
7.2
4.8
4.5
3.3
0.2
3.3
1.2
4.2
1.9
0.3
5.9
8.0
5.5
6.1
7.8
7.8
7.9
7.0
4.1
4.2
0.8
0.1
3.17
1.9
4.6
4.4
0.8
6.2
8.0
5.6
5.9
7.8
7.8
7.8
7.2
4.6
4.3
2.0
0.1
4.7
1.8
4.6
4.4
0.9
6.2
8.0
5.7
6.1
7.8
7.9
7.7
7.1
4.5
4.4
2.2
0.1
4.21
付表 2-4 窒素測定結果 -2(%)
3.4
3.8
4.8
0.5
4.4
6.5
3.7
3.8
6.9
6.6
6.9
5.6
3.2
4.3
2.3
0.1
付表 2-3 窒素測定結果 -1(%)
1.7
4.5
3.7
0.7
6.1
8.0
5.6
6.0
7.8
7.8
7.8
7.1
4.4
4.3
1.7
0.1
2.2
4.3
4.6
1.6
3.0
8.4
3.4
4.8
7.2
5.8
7.7
7.0
2.9
4.0
3.3
0.1
5.6
10.7
1.8
4.6
4.1
0.8
6.2
8.0
5.6
6.0
7.8
7.9
7.8
7.1
4.5
4.3
1.9
0.1
1.6
2.4
4.3
0.9
5.4
7.5
3.3
4.6
7.9
7.1
7.9
7.1
5.1
5.9
1.2
0.1
平均
10.22
2.6
4.1
5.1
0.9
5.5
7.9
4.8
5.0
7.7
7.6
7.8
7.0
4.4
4.0
2.0
0.1
2.4
3.9
5.1
1.0
5.2
7.6
4.6
4.2
7.8
7.3
7.8
7.0
4.8
3.8
1.2
0.1
1.2
4.8
5.3
0.5
5.3
7.7
4.6
4.5
7.9
8.0
7.5
7.0
4.8
5.1
1.0
0.0
11.18
1.8
4.3
6.0
1.0
5.5
7.8
5.3
5.1
6.9
7.8
7.9
7.0
4.8
2.1
0.9
0.0
12.2
1.5
4.1
5.7
0.7
6.2
7.7
5.3
4.7
7.3
8.0
7.8
7.0
4.9
1.4
0.5
0.0
最大値 最小値 標準偏差値
7.9
1.2
1.6
5.1
1.2
0.8
6.4
1.9
1.1
2.1
0.3
0.4
7.1
3.0
1.0
10.0
6.2
0.7
6.0
3.3
0.8
6.2
3.0
0.9
8.3
6.7
0.4
8.2
5.8
0.6
8.3
6.9
0.3
7.7
5.5
0.5
5.5
2.9
0.7
5.9
1.0
1.2
4.0
0.5
0.9
0.2
0.0
0.1
11.5
- 付7 -
4.5
4.9
5.9
1.4
5.8
6.1
5.3
5.2
5.5
5.4
5.9
6.1
4.3
8.8
1.4
0.5
6.3
日付
12.16
1.13
生下水
2.9
初沈流入水
5.2
全返流水
5.7
処理水
0.7
初沈汚泥
5.6
終沈汚泥
5.6
初沈濃縮槽返流水
5.5
初沈濃縮汚泥
5.2
終沈濃縮汚泥
5.5
遠心濃縮機返流水
5.4
遠心濃縮汚泥
5.7
混合濃縮汚泥
5.9
脱水ケーキ
4.5
脱水機返流水
4.9
焼却炉返流水
2.5
焼却灰
0.4
日付
5.20
生下水
初沈流入水
全返流水
処理水
初沈汚泥
終沈汚泥
初沈濃縮槽返流水
初沈濃縮汚泥
終沈濃縮汚泥
遠心濃縮機返流水
遠心濃縮汚泥
混合濃縮汚泥
脱水ケーキ
脱水機返流水
焼却炉返流水
焼却灰
2.5
5.1
5.9
1.0
5.5
5.8
5.7
5.4
5.7
5.5
5.9
6.2
4.4
6.5
2.0
0.5
5.6
4.9
5.3
1.0
6.1
5.3
4.6
4.7
4.9
5.2
5.6
5.6
4.8
8.7
1.1
0.3
1.20
6.17
3.4
4.7
6.1
1.3
6.1
5.9
5.6
5.6
5.8
5.4
6.0
6.3
4.7
7.4
2.9
0.6
9.7
4.6
5.2
0.8
5.6
5.5
4.9
4.7
4.9
5.1
5.5
5.5
4.4
8.0
1.4
0.3
2.1
7.1
4.2
6.1
5.8
0.6
5.9
5.6
5.5
5.4
5.6
5.2
5.7
6.1
4.5
7.1
1.6
0.8
5.2
4.5
4.5
1.3
5.6
6.6
4.1
3.7
4.0
4.3
5.0
4.6
4.1
7.4
1.7
0.6
4.2
4.1
5.2
1.2
2.4
3.2
4.6
4.5
4.8
4.9
5.5
5.1
2.5
8.9
1.4
0.8
8.6
5.2
5.2
5.2
1.1
3.2
5.3
4.8
4.6
4.9
5.0
5.6
5.3
4.2
7.5
1.6
1.3
8.20
6.7
5.8
5.5
1.1
6.9
7.4
5.2
4.9
5.2
5.1
5.8
5.7
6.6
5.2
2.2
2.0
9.3
3.6
1.5
4.0
0.8
6.8
7.5
4.2
3.3
3.5
4.5
5.7
4.5
6.0
1.7
1.0
0.5
9.30
7.4
5.1
5.3
1.4
7.0
9.0
4.0
5.3
5.5
3.9
5.6
5.7
7.2
6.8
1.0
1.2
2.17
3.8
5.8
6.1
1.2
6.0
5.7
5.7
5.2
5.4
5.2
5.5
5.9
4.5
7.7
2.4
1.5
3.3
2.0
5.0
1.8
0.2
5.5
5.7
5.2
5.2
5.4
5.2
5.7
5.7
3.8
7.2
0.6
0.6
3.17
3.2
5.5
4.3
0.6
5.8
5.7
5.4
5.2
5.5
5.2
5.6
5.9
4.2
7.3
1.4
0.9
4.7
3.1
5.5
4.2
0.7
5.8
5.7
5.4
5.2
5.4
5.2
5.6
5.8
4.2
7.4
1.6
1.1
4.21
2.8
5.3
3.5
0.6
5.7
5.7
5.4
5.2
5.4
5.2
5.6
5.8
4.1
7.3
1.2
0.9
付表 2-6 水素測定結果 -2(%)
7.22
付表 2-5 水素測定結果 -1(%)
5.6
10.7
3.0
5.4
4.0
0.6
5.8
5.7
5.4
5.2
5.4
5.2
5.6
5.8
4.2
7.4
1.4
1.0
2.7
2.9
4.1
0.7
5.7
5.3
3.8
5.1
5.3
4.7
5.6
5.7
4.7
8.8
0.9
0.4
平均
10.22
4.0
4.9
5.0
0.9
5.6
5.8
5.1
4.9
5.2
5.0
5.6
5.7
4.6
6.8
1.5
0.7
3.9
5.7
4.9
0.8
5.5
5.4
5.3
4.7
4.9
4.7
4.6
5.7
4.5
6.6
1.9
0.6
2.0
5.8
5.1
0.4
5.6
5.5
5.3
5.0
5.2
5.3
5.4
5.7
4.4
8.7
0.7
0.4
11.18
2.9
5.2
5.7
0.8
5.8
5.5
5.4
5.0
5.3
5.2
6.6
5.7
4.4
4.6
0.7
0.3
12.2
2.5
5.0
5.5
0.5
5.7
5.5
5.4
4.6
4.8
5.3
5.6
5.7
4.6
2.5
0.4
0.1
最大値 最小値 標準偏差値
9.7
2.0
1.8
6.1
1.5
1.0
6.1
1.8
1.0
1.4
0.2
0.3
7.0
2.4
1.0
9.0
3.2
1.0
5.7
3.8
0.6
5.6
3.3
0.5
5.8
3.5
0.5
5.5
3.9
0.4
6.6
4.6
0.4
6.3
4.5
0.4
7.2
2.5
0.9
8.9
1.7
1.9
2.9
0.4
0.6
2.0
0.1
0.4
11.5
付録 3 パイロットプラント実験の水質分析結果
付表 3-1 水質分析結果(PAC)
(単位:mg/L、pH(-)、M アルカリ度(mgCaCO 3 /L))
M
pH アルカリ
度
実験条件
原水
標準系-1
標準系-2
凝沈系PAC2.5-1
凝沈系PAC2.5-2
凝沈系PAC12.5-2
T-P S-T-P S-PO4-P
190
502
73.6
63.3
5.16
2.11
1.62
150
521
36.0
55.5
4.69
1.98
1.53
原水
7.2
250
520
126
66.1
2.15
1.32
1.15
初沈上澄み水 7.2
210
469
43.0
50.0
2.02
1.07
0.97
原水
288
523
73.7
74.0
2.85
1.31
0.99
初沈上澄み水 6.9
237
450
40.4
42.5
2.02
0.83
0.53
原水
7.3
331
705
110
94.0
3.28
2.06
1.55
初沈上澄み水 7.1
288
541
62.5
48.5
2.22
0.88
0.74
7.2
7.2
300
538
60.0
76.5
2.39
1.24
1.07
初沈上澄み水 7.0
234
430
16.4
37.9
0.59
0.23
0.10
6.8
270
463
35.5
84.8
3.08
2.07
1.59
初沈上澄み水 7.1
240
311
11.4
29.4
0.72
0.23
0.10
原水
凝沈系PAC12.5-1
CODMn
7.2
原水
凝沈系PAC7.5-2
SS
初沈上澄み水 7.1
原水
凝沈系PAC7.5-1
TS
7.1
280
536
68.0
88.5
2.65
2.11
1.57
初沈上澄み水 6.9
236
519
32.8
41.8
0.97
0.17
0.10
原水
7.0
264
450
37.5
56.4
2.11
1.85
1.04
初沈上澄み水 6.8
219
440
25.2
34.6
0.32
0.17
0.10
付表 3-2
水質分析結果(硫酸バンド)
(単位:mg/L、pH(-)、M アルカリ度(mgCaCO 3 /L))
M
pH アルカリ
度
TS
SS
7.2
190
502
73.6
初沈上澄み水 7.1
150
521
36.0
55.5
4.69
1.98
1.53
原水
7.2
250
520
126
66.1
2.15
1.32
1.15
初沈上澄み水 7.2
210
469
43.0
50.0
2.02
1.07
0.97
原水
7.2
315
547
66.0
136.8
2.40
1.70
1.39
初沈上澄み水 7.1
300
596
90.2
46.9
0.99
0.55
0.44
原水
7.2
309
697
126
86.5
3.91
2.37
1.29
初沈上澄み水 7.0
157
507
63.0
84.1
3.43
1.14
0.30
実験条件
標準系-1
標準系-2
凝沈系バンド2.5-1
凝沈系バンド2.5-2
凝沈系バンド8.2-1
凝沈系バンド8.2-2
凝沈系バンド12.5-1
凝沈系バンド12.5-2
原水
原水
CODMn
63.3
T-P S-T-P S-PO4-P
5.16
2.11
1.62
6.7
235
450
76.0
92.7
2.40
1.70
1.39
初沈上澄み水 6.6
164
424
11.9
33.9
0.45
0.18
0.10
原水
6.8
178
465
50.0
69.3
2.40
1.79
1.29
初沈上澄み水 6.3
140
393
20.0
34.9
0.80
0.37
0.17
原水
7.1
212
498
73.5
82.4
4.81
3.35
3.22
初沈上澄み水 6.6
150
433
21.6
29.6
2.06
0.61
0.55
原水
7.2
225
550
60.5
60.7
1.10
0.78
0.75
初沈上澄み水 6.9
207
470
21.8
31.6
0.15
0.08
0.05
- 付8 -
付表 3-3 水質分析結果(FeCl3 )
(単位:mg/L、pH(-)、M アルカリ度(mgCaCO 3/L))
M
pH アルカリ
度
TS
SS
6.9
157.5
646
144.7
117.2
5.43
2.71
2.31
初沈上澄み水 7.1
155
524
68.8
72.1
2.75
2.21
2.00
実験条件
標準系-1
標準系-2
凝沈系FeCl 3 11
凝沈系FeCl 3 22-1
凝沈系FeCl 3 22-2
凝沈系FeCl 3 32-1
凝沈系FeCl 3 32-2
凝沈系FeCl 3 53-1
凝沈系FeCl 3 53-2
原水
原水
CODMn
T-P S-T-P S-PO4-P
7.3
150
714
210
93.5
4.19
2.09
1.61
初沈上澄み水 7.2
130
521
87.0
60.4
3.48
1.89
1.53
原水
7.3
177.5
549
90.0
65.5
3.24
2.45
2.18
初沈上澄み水 6.7
112.5
478
39.5
33.0
0.96
0.23
0.03
原水
7.1
162.5
645
61
96.0
4.55
2.59
2.48
初沈上澄み水 6.3
77.5
487
18.0
33.4
0.61
0.16
0.01
原水
6.6
65
377
55.0
37.2
1.34
0.74
0.70
初沈上澄み水 5.9
40
229
23.8
22.5
0.48
0.07
0.01
174
599
125.3
77.0
3.88
2.49
1.92
原水
7.4
初沈上澄み水 6.6
原水
7.4
初沈上澄み水 6.4
原水
7.3
初沈上澄み水 5.2
87.5
497
13.2
29.4
0.46
0.14
0.00
189.5
634
138.7
83.5
4.59
3.04
2.37
86.5
502
10.2
42.0
0.48
0.24
0.01
189.5
722
255.0
118.1
4.28
3.10
2.23
6.5
534
25.7
31.6
0.73
0.24
0.00
7.3
177.5
773
263.0
124.4
5.24
2.99
2.32
初沈上澄み水 5.0
7.5
692
66.5
33.6
0.95
0.21
0.00
原水
- 付9 -
- 付 10 -
5.9
5.9
5.7
6.7
6.4
6.4
5.6
凝沈系バンド12.5
標準系
凝沈系FeCl3 11
凝沈系FeCl3 22
凝沈系FeCl3 32
凝沈系FeCl3 53
6.4
凝沈系PAC12.5
凝沈系バンド8.2
5.7
凝沈系PAC7.5
6.9
5.6
凝沈系PAC2.5
凝沈系バンド2.5
5.7
標準系
実験条件
88.3
285
610
273
98.8
527
326
412
408
416
581
165
5310
4150
3610
2740
2470
5840
5780
3880
4070
5100
8000
4360
2800
2330
1940
1250
377
4000
2420
1010
2820
2270
1800
1040
509
306
1200
310
287
241
1890
739
423
506
6780
3140
C
725 2600
388 2040
1140 2550
283 1510
373 1150
398 2780
464 2860
260 1900
257 2020
169 2400
2000 6300
544
428
369
336
177
522
451
274
370
384
536
329
H
132
122
100
103
62
163
179
113
135
191
331
137
N
148.7
163.7
259.6
150.1
42.3
182.8
295.2
130.4
191.4
277.2
244.8
90.9
T-P
0.44
0.55
2.25
0.50
7.29
0.20
1.11
2.28
0.20
0.69
2.49
17.10
46
45
53
94
32
1150
934
514
1030
1020
843
68
Al
N.A
288
646
46
22
52
53
29
38
40
93
47
Fe
凝集剤成分
N.A
2.16
1.07
0.00
0.13
1.54
0.00
0.06
2.53
2.03
0.20
0.11
Cr
N.A
2.52
2.44
0.81
0.42
8.50
1.20
0.19
6.11
9.59
2.44
0.90
Cu
N.A
3.35
3.52
0.29
0.27
0.83
0.10
0.05
1.29
1.34
1.10
0.75
Zn
重金属
N.A
0.21
0.11
0.08
0.04
0.08
0.00
0.01
0.09
0.01
0.01
0.00
Cd
N.A
1.29
0.02
0.03
0.04
0.67
0.00
0.00
0.69
0.26
0.08
0.53
Pb
(N.A Not Analyzed N.D Not Detected)
N.D
N.D
N.D
0.46
3.80
N.D
N.D
0.82
N.D
N.D
1.50
6.30
S-T-P S-PO4-P
リン
(単位:mg/L、pH(-)、M アルカリ度(mgCaCO 3 /L))
凝集沈殿汚泥分析結果
CHN組成
917 3280
TS組成
SS
DS
M
pH アルカリ
度
VSS FSS VDS FDS
付表 3-4
付録 4 重力濃縮試験における回分沈降曲線
120
近似式 (1)
H=91.0exp(-0.137T)+16.2
120
100
R=0.992
近似式 (1)
H=82.3exp(-0.0708T)+21.3
100
標準系(1)
凝沈系PAC2.5(1)
凝沈系PAC2.5(2)
80
界面高さH(cm)
界面高さH(cm)
標準系(2)
60
40
R=0.997
80
60
40
近似式 (2)
近似式 (2)
H=90.3exp(-0.147T)+15.3
20
20
0
0
H=81.6exp(-0.0504T)+23.0
R=0.999
R=0.998
0
20
40
60
経過時間T(min)
80
0
120
近似式 (1)
100
200
経過時間T(min)
300
120
近似式 (1)
H=79.1exp(-0.0829T)+25.9
100
100
凝沈系PAC7.5(1)
R=0.994
凝沈系PAC12.5(1)
凝沈系PAC12.5(2)
80
界面高さH(cm)
界面高さH(cm)
凝沈系PAC7.5(2)
60
40
80
H=75.2exp(-0.0259T)+28.1
R=0.992
60
40
近似式 (2)
近似式 (2)
20
20
H=76.2exp(-0.0242T)+28.0
H=79.2exp(-0.0634T)+23.4
0
R=0.998
500
1000
経過時間T(min)
1500
0
120
近似式 (1)
H=79.0exp(-0.0438T)+24.2
2000
近似式 (1)
H=75.1exp(-0.00535T)+28.6
100
80
凝沈系バンド7.5(1)
凝沈系バンド2.5(2)
凝沈系バンド7.5(2)
60
40
80
40
20
0
0
0
50
100
経過時間T(min)
150
R=0.998
60
20
H=80.3exp(-0.0317T)+23.0
R=0.997
1000
1500
経過時間T(min)
凝沈系バンド2.5(1)
界面高さH(cm)
界面高さH(cm)
近似式 (2)
500
120
100
R=0.998
R=0.991
0
0
近似式 (2)
H=76.2exp(-0.00634T)+23.4
R=0.991
0
500
1000
1500
経過時間T(min)
2000
120
近似式 (1)
H=74.3exp(-0.00308T)+29.3
100
凝沈系バンド12.5(1)
界面高さH(cm)
R=0.993
凝沈系バンド12.5(2)
80
60
40
近似式 (2)
H=72.1exp(-0.00106T)+30.6
R=0.992
20
0
0
500
1000
1500
経過時間T(min)
2000
付図 4-1 凝沈系 PAC、凝沈系バンドでの重力濃縮試験における回分沈降曲線
- 付 11 -
120
100
近似式
H=95.4exp(-0.170T)+13.9
R=0.993
100
界面高さH(cm)
標準系(1)
80
界面高さH(cm)
120
近似式
H=88.4exp(-0.136T)+15.1
R=0.991
60
40
標準系(2)
80
60
40
20
20
0
0
0
100
200
300
経過時間T(min)
120
0
400
近似式
H=83.2exp(-0.0209T)+19.7
R=0.998
100
100
200
300
経過時間T(min)
近似式
H=43.6exp(-0.00555T)+57.7
R=0.982
120
凝沈系FeCl3-22(1)
100
凝沈系FeCl3-22(2)
80
80
界面高さH(cm)
界面高さH(cm)
400
凝沈系FeCl3-11
60
40
60
40
近似式
H=74.5exp(-0.00834T)+27.54
R=0.995
20
20
0
0
0
0
500
1000
1500
経過時間T(min)
120
120
凝沈系FeCl3-32(1)
凝沈系FeCl3-32(2)
近似式
H=70.9exp(-0.00174T)+30.5
R=0.997
80
60
近似式
H=84.3exp(-0.00132T)+15.7
R=0.999
40
20
100
200
300
経過時間T(min)
400
近似式
H=72.9exp(-0.00173T)+28.2
R=0.999
100
界面高さH(cm)
100
界面高さH(cm)
2000
凝沈系FeCl3-53(1)
80
凝沈系FeCl3-53(2)
60
近似式
H=68.1exp(-0.00550T)+34.1
R=0.997
40
20
0
0
2000
4000
6000
0
8000
0
経過時間T(min)
1000
2000
経過時間T(min)
3000
付図 4-2 凝沈系 FeCl3 での重力濃縮試験における回分沈降曲線
- 付 12 -
付録 5 溶流度測定写真(一部)
標準系
標準系
基本系
基本系
凝沈系PAC7.5
凝沈系PAC7.5
凝沈系バンド7.5
凝沈系バンド7.5
凝沈系FeCl3-11
凝沈系FeCl3-11
凝沈系FeCl3-32
凝沈系FeCl3-32
付図 -5 溶流度試験結果(塩基度:1.0、温度 1100 ~ 1450℃)
- 付 13 -
付録 6 所要面積算定に用いた各プロセスにおける回帰曲線
消化槽
45
350
40
40
0.68
y = 1.23 x
30
25
20
15
10
300
250
200
150
100
5
50
0
0
50
100
150
200
0.67
y = 0.96 x
0
2000
ベルトプレス脱水機
1基あたりの所要面積 (m2/基)
4000
6000
20
15
10
5
10
45
35
40
30
0.59
y = 3.84 x
25
20
15
10
30
25
20
15
10
0
流動床焼却炉
10
20
30
40
50
0
0.41
所要面積 (m2)
1000
800
600
1000
1600
900
1200
0.26
y = 453.99 x
1000
800
600
600
500
400
300
200
200
200
100
0
0
処理能力(t/day)
y = 112.23 x
700
400
200
300
0.68
800
400
150
200
灰溶融炉
1800
1400
1200
100
100
1基あたりのろ過面積(m2/基)
直接溶融炉
y = 163.64 x
50
0.38
y = 4.29 x
35
1基あたりの処理能力(m3/h・基)
1600
150
5
0
4
100
加圧脱水機
40
1基あたりの有効ろ布幅(m/基)
0
50
1基あたりの処理能力(m3/h・基)
0
0
1400
15
0
5
3
20
8000
所要面積 (m2)
1基あたりの所要面積 (m2/基)
0.75
2
25
スクリュープレス脱水機
y = 9.98 x
1
30
1基あたりの有効容積(m3/基)
30
0
35
0
250
1基あたりの処理能力(m3/h・基)
25
0.65
y = 1.75 x
5
1基あたりの所要面積 (m2/基)
35
1基あたりの所要面積 (m2/基)
45
0
所要面積 (m2)
遠心脱水機
400
1基あたりの所要面積 (m2/基)
1基あたりの所要面積 (m2/基)
遠心濃縮機
50
0
0
50
100
処理能力(t/day)
150
200
0
5
10
15
処理能力(t/day)
付図 -6 各プロセスにおける 1 台あたりの処理能力と所要面積の関係
- 付 14 -
20
25
関連発表論文リスト
【審査つき論文】
・ 松本暁洋、高岡昌輝、大下和徹、武田信生:下水処理場における固形物および主要
元素の季節変動と物質収支、環境工学研究論文集、Vol.34、pp.279-289 (1997)
・ 高岡昌輝、松本暁洋、大下和徹、武田信生、永原茂:前凝集プロセスが下水汚泥処
理に与える影響、環境工学研究論文集、Vol.35、pp.171-180 (1998)
・ 高岡昌輝、大下和徹、武田信生、藤原健史、永原茂:前凝集プロセスを組み込んだ
汚泥処理システムの最適化に関する研究、環境工学研究論文集、Vol.36、pp.93-103
(1999)
・ 大下和徹、岩下真理、高岡昌輝、武田信生:下水汚泥焼却灰からの湿式リン抽出方
法の体系化、 環境工学研究論文集、Vol.40、pp.395-404 (2003)
・ 大下和徹、北小路博之、高岡昌輝、加藤文隆、武田信生、松本忠生、檜物良一:薬
剤添加による前凝集沈殿汚泥からのリン抽出および回収方法に関する研究、環境工
学研究論文集、Vol.42、pp.335-345 (2005)
・ 加藤文隆、大下和徹、高岡昌輝、武田信生、松本忠生、檜物良一:下水処理システ
ムからの各種リン回収技術の仮想的適用および評価、土木学会論文集 G、Vol.62、
No.1、pp.27-40 (2006)
・ 大下和徹、北小路博之、加藤文隆、高岡昌輝、武田信生、松本忠生、檜物良一:塩
化第二鉄を用いた凝集沈殿汚泥の性状がリンおよび凝集剤回収プロセスに与える影
響、環境工学研究論文集、Vol.43、pp.399-410 (2006)
・ 大下和徹、小北浩司、高岡昌輝、武田信生、松本忠生、北山憲:下水処理場におけ
るシロキサンの挙動に関する研究、下水道協会誌論文集、Vol.44、No.531、pp.125138 (2007)
・ 大下和徹、森彰宏、高岡昌輝、武田信生、松本忠生、北山憲:前凝集プロセスが下
水汚泥炭化処理および炭化物に与える影響、土木学会論文集 G、Vol.63、No.1、pp.1221 (2007)
【口頭発表】
・ 大下和徹、武田信生、高岡昌輝、松本暁洋、長谷川明巧:塩化第二鉄を用いた化学
凝集沈殿汚泥の処理特性に関する研究、土木学会第52回年次学術講演会講演概要集
第 7 部、pp.506-507 (1997)
・ 小北浩司、大下和徹、高岡昌輝、武田信生、檜物良一:下水汚泥の消化および焼却
プロセスにおけるシロキサンの挙動に関する基礎的研究、第40回下水道研究発表会
講演集、pp.1033-1035 (2003)
・ 北小路博之、大下和徹、高岡昌輝、武田信生、檜物良一:薬剤添加による凝集沈殿
汚泥からのリン抽出方法に関する研究、下水道研究発表会講演集、Vol.41、pp.468470 (2004)
・ 大下和徹、高岡昌輝、武田信生:下水処理システムにおけるシロキサンの挙動に関
する研究、第 42 回下水道研究発表会講演集、pp.1017-1019 (2005)
・ 森彰宏、大下和徹、武田信生:前凝集プロセスが下水汚泥炭化処理に与える影響、
第 42 回下水道研究発表会講演集、pp.1041-1043 (2005)
・ 加藤文隆、大下和徹、武田信生:NaHS 添加による各種下水汚泥からのリン抽出特
性に関する研究、第42回下水道研究発表会講演集、pp.1095-1097 (2005)
・ F.Kato, H.Kitakoji, K.Oshita, M.Takaoka, N.Takeda and T.Matsumoto:Extraction Efficiency
of Phosphate from Pre-Coagulated Sludge with NaHS, Proceedings of the specialist conference
on Management of Residues Emanating from Water and Wastewater Treatment (CD-ROM)
(2005)
・ K.Oshita, M.Takaoka, N.Takeda and T.Matsumoto:Optimization of Sludge and Wastewater
Treatment Systems: A Case Study of Sewage Treatment Facilities around Lake Biwa, Proceedings
of the specialist conference on Management of Residues Emanating from Water and
Wastewater Treatment (CD-ROM) (2005)
・ 加藤文隆、北小路博之、大下和徹、高岡昌輝、松本忠生、武田信生:NaHS 添加によ
る前凝集沈殿汚泥からのリン、凝集剤回収特性に関する研究、第 43 回下水道研究発
表会講演集、pp.433-435 (2006)
・ 石原裕希子、大下和徹、高岡昌輝、松本忠生、武田信生:消化ガス中シロキサンの
効率的吸着除去に関する研究、
第43回下水道研究発表会講演集、pp.1001-1003 (2006)
Fly UP