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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
Title
生体モデル膜のカオス的自励発振(カオスとその周辺,研
究会報告)
Author(s)
渕上, 信子; 沢島, 信介; 神原, 武志; 八木沢, 亨一; 内藤, 正
美; 佐々木, 直幸
Citation
Issue Date
URL
物性研究 (1990), 53(5): 551-558
1990-02-20
http://hdl.handle.net/2433/93974
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
「カオスとその周辺」
生体 モデ ル膜 の カオス的 自励 発 振
都立大理 測上信子,沢島信介,電通大 神原武志,八木沢亨-,
日立基礎研 内藤正美,日歯大 佐々木直幸
1. は じめ に
'
,K'
,
C
l等のイオン濃度差 によっ
生体系 において,神経興菅現象が膜の内側 と外側 の Na
て駆動 されていることはよく知 られている 【
1
】. 一方,生体膜の二分子構造 を摸 したモデル膜
において も,浪度勾 配や直流電流印加 な ど種 々の条件下で,膜電位 が振動することが最近多 く
の実験 によ り示 されている 【
2日 31. ことに,浪度勾配下での 自励発振 は,特定のチ ャネル黄白
を持 たない比較的単純 な合成膜が,イオン濃度差のみによる電気 的興奮 とい う神経類似機能を
持つ ことを意味する点で興味深 い.
自励発振の振幅や周波数 ,波形は実験条件 によ り様々で,周期 的な ものか ら概周期的.また
4】
. 我々はこの ような自励発振現象 を再現する簡単
明 らかに*.
オス的な場合 も報告 されている【
なモデルシステムを提案 し,計算機 シミュレーションを行 なった. 系 は倍周期分岐 カオスや間
欠性 カオスへの転移 を含 む多彩 な分岐構造 を示す. ここではお もにカオス的運動 に焦点 をあて
て報告する.
2. モデル
濃度の異 なる二つ?溶液層 とこれ らを仕切
る膜 (脂質二分子膜 を想定 )か ら成 る図 1の よ
うな 1次元系 を考え ,x十 と Y とい う二種類の
イオンの運動 に注 目す る. 陰イオン Y をあら
高浪度溶液
佐渡度溶液
(X,
=Y
,
)
(XI=YI)
ヘルムホルツ
ヘルムI
i
5ルツ
わに含めることによ り,イオ ン分布 と電場をポ
電気二重層
電気二重層
ワソン方程式 を通 じて整合的に関係づけること
図1
. モデル .
がで きる. この点がこのモデルの特徴 である.
溶液内および膜内のイオ ンの流 れの駆動力 としては,浪度勾 配のみならず,電場 による ドリフ
トの影響 も考慮する. また,膜の表面でのイオ ンの出入 りについて非線形性 を仮定す る.
イオン濃度 は場所 によって連続的 に変化 しているので,本来ならば無限自由度系 であるが,
a
.
b
,
Bにおけるイオ ン濃度
ここでは近似的 に,膜の状態 を表面近傍 の薄い面状の領域 A.
xp/A.yp/A(F
L=A,a.b
.
B;Aは両の厚 さ )のみで記述する・ 膜 に比べて電解質溶液の電
気抵抗 は十分小 さいので,膜表面の電荷 は溶液中のイオンによって遮蔽 され,膜から十分遠方
.
Rを考 え,浴
では至 るところ電気的に中性であるとしてよい. そこで,膜の両側 に二つの面 L
液中における電荷分布の不均一の影響 を,これ らの面上の電荷 (面密度 eoL.eon)のみで表
.R]内の全電荷 は運動のあいだ じゅうゼロである:
わす ことにする. 区間 【L.
qL+qA+qd+qb
+qB+qR=0
qv=Xp-Yp,
(F
L=A,
B);
qy=Xp-Yp-qn,
(
(F
L=a,b)
1)
(2)
而電荷 qL とq^(および qR と qB)は左側 (およ甲右側 )のヘルムホルツ電気二重層 【
5]に対応
する. 固定電荷 屯 は,溶液中では膜の極性基か ら陽イオンが解放 して膜が負 に帯電すること
を考慮 した ものである. イオンの連動の各 プロセスは次のように表わされる:
-
5
5
1-
研究会報告
十
Aa
ky
o
一
年 ーJ
l
+
dy2
xb #
k
x
b
▲b
、
xB
+
kyb
溶液 お よび膜 内の速度定数 dを,電位差 4
'による ドリフ トの効 果 を含 め て次 の形で表わす:
土
(p=x,Y;Z
'
=1,2,3)
d
l
d-dl
d(l±eP中.
・
/2),
¢2= ¢
O
-¢b
-e6(
qL+JA+qd)/en
^-eLqL/CW,
¢3≡QB- Q,
--eLq斤/E"
¢1= ¢L
-¢
6:膜 の厚 さ;
A:面 の厚 さ
L:ヘル ムホル ツ電気二重層 の幅 ;
P
≡1/k
B T
6
.
,ら :水 お よび膜 の誘電率 ; e:素電荷 ;
電位差 Q^一九 (-A)お よび 中.-QB(-A)は A<<6,
tに よ り無視 で きる. 膜 表面での
イオ ンの出入 りについて は次の よ うな非線 形性 を仮 定す る:
(p-a
,b)
p=k完.ki
,2(Y
y)2,
k;y=k
;
.
・k;
2(
Xp)2,
A;
(5)
第 2項 は 3次の 自己触媒的過程
+
X^+2Xa
kx
d
子
-二二三
k
x
a
3Xd
に対 応 してお り,この形 は膜 の 自励発振 につい ての Ka
wa
kub
oのモデルで も用 い られ た 【
5
1.
x
,
(
膜 か ら十分 遠方 の溶液 中のイオ ン浪度
-Y,
)
,
x,
(-Y
,) を与えた とき.イオ ン分布 お
よび電荷分布 は次の時間発展方定式 (連続の式 )に従 う:
慧
I
x,
慧
r Ix.
・
・
・l・
慧
ニーI l
・lr・ (
+
x ・
1
Io
-′Y,
・
・
-Ir,-
),
(i-1・
- ,4)
慧 -lx.5-Ir.5(-)
0,
(
xl
,
X2
,.・,
X9,
X1
0
)≡(
XA,..
1
,
XB,Y^,‥ ,YB,qL ,qR).
ここで た とえば
+
l
x.
1≡d
x
I
Xl
-d
x
I
XA ,
十
J
x.
2
≡kx
q
XA- kx
d
Xq,
e
t
c
.
(7)
(eI
。は外部電流 .
) ただ し中性条件 (
I
)式 か ら,独 立 な方程式は 9個 であ り,これ らは (
7)
,(
3)
,
(
4)
,
(
2)
,
(
5
)式 を代 入 して次の形 にま とめられ る:
-
552-
「カオス とその周辺」
2 -,
( )
I
(8)
x = (xl・・・・
X9)
I
正負 イオ ンの連動 は βを通 じて結合 している. β=0 の場合 はこれ らは分離 し,4変数
(x ^,..,
xB)についての運動方程 式 は,Kawakuboのモデルで P=0 と した場合に-敦する 【
5
]
.
なお, 方程 式の形 か らパ ラメ タ一 についてい くつかの端尺別 が成 り立 ち,た とえばあるバ ラメ
,x,
,
qh,
β,a,k)について解 x(t)が得 られた とす れば ,a を定数 として,これらを
タ-の観 (x ,
.
,/α,βう aP.k
'
x
2う d k'
x
2,
x,
.
,一 X,
k'
r
2う a2k'
r
2,(残 りの速度定数 d.kは不
変 )の ように変換 した ときの解 は ∫(り /α
で与 え られ る. 以下の数値計算 では,次 の値
l
o
o
(6
,I
,
A)i
nA =
(
5
0, ,1),
(Xl
/A,X,
/A,
qJ A)
i
nmM凡=
(
3.
5,
0.
1
,
1
.
0).
cp-0
.
48
..
を用 いた:
3. 結 果
(
3
1
)
陽イオ ンについてのみ非線形性 を仮定
した とき,バ ラメ タ-の適 当な領域で ,系 は
周期振動 をす る. 振動す るの は主 と して陽
イオ ン濃度 であるが ,これ に引 きず られて陰
イオ ンが弱 い振動 をす る場合 もある.
(
32
) 直流 電流 J
oを印加す る と,振動 の振幅
は増大 し,周期 はわずかに短 くなる.
O3
)
P.
陽イオ ンと陰 イオ ンの両方 に非線形性
がある場合 ,二種類 の振動 は結合す る. 以下
ではことに断 らない限 り.陰イオ ンの膜 内取
P,
P.C
図2
. 周期倍化 カオスを含む分岐構造 .
横軸:0.
1
270<k'
,
。<0.
1
3
02;縦軸:1
.
4<Y.._ <2.
9.
(
a
)拡大臥 胡 軸:0
.
1
28
88くA◆r
.く0.
1
2938;
縦軸:1
.
58<Y._ <1
.
68.
'
r
. をコン トロール 'パ
り込みの速度 定数 k
ラメ タ- と し,残 りのバ ラメ タ-は次 の値 に
固定 した:(d
n,
d
x
2
.
d
x
,
.
d,I.
a,
2
.
d,
,)i
J
IS-1=
(0.
2,1
.
1
,2.
0,
0.
3,1
.
5
,2.
8),(k'
x
.
,
Ax
.
,
k'
r
.)
i
ns-1-(0.
1
3,
2.
0,2.
8),(k'
x
2
,
k'
x
2
,
k'
,
2
,
A
n)i
n S-I(mMAP.
)
-2=
(
2.
6,1
.
6,
3.
7,
2.
2).
≡T.q =0.
5(T.
=298K).
倍周期分 岐 カオス
図 2は区間 0.
1
27く
β
k
1.<0.
1
302 における分岐 図である. 縦軸
はk
'
,
.
の値 を決め た ときに得 られる時系列
Y.( I) の極小値 Y
^.
血 を表 わす. k
1.∼
0.
1
291
5 で周期倍化 カスケー ドに よるカオス
への転移が見 られる. 周期振動 Pl(k
'
Y
.=
0.
1
2
7),
P2 (k
'
Y
.=0.
1
28),
P.(k
'
Y
.=0.
1
29)
お よびカオス振動 C (k'
Y
.=0.
1
29
2
4)におけ
るイオ ン浪度
x
.,Y.の時間変化 と,対応す
る位相空 間 (
xA,
Y.)での軌道 を図 3
,
4に示
x^
-Y^
す. これ らはいず れ も初期状態 (
-5
5
3-
図 3. X. お よび Y. の振動波形 .
横 軸:o<L<50 ;縦軸 :I
.
0<(X.
.
Y
.)<3
j.
'
'
o
P':
A FO・
1
27.P暮:
上 ◆,. EO
.
1
28.P/:k●
.
.LO.
1
29,
C:
上●,. Z
10・
1
292
4. 周期の長い方が Y.(I).
研究会報告
図 5. ㌔ (り のパ ワー ・スペ ク トル .
図 4. 振動状態の位相空P
I
J
での軌道 .
,縦軸 ・
.l<Y.<3・
収 軸:1<X.<3・
X,
XB =Y
B
=X,,Xa=Xb-6 Y.-Yb=0)
l
.
.
H
か ら出発 して十分時間が経 過 してか らの もの
である.図 5に 211個 の デ-タか ら計算 した
l
うP2
う P
パ ワー・
スペ ク トル を示す . P
.
と
周期倍化す るにつれて、次 々に低調波成分 が
現われてい る.時系列
㌦ (り
の 〝番 目と
(
a+1)番 目の極小値 Yi.. ,Y^.A.Iを横 臥
縦軸 に とってプロッ トした リター ン ●マ ップ
(ポア ンカ レ断面 )を Pl
,P2,P.,P8(k'r
。=
0.
1
291
2),
PIG(k
'
Y
。=0.
1
291
3),
C について
図 6に示す. C の リター ン ●マ ップか ら,
この カオス ・ア トラクターの次元が 2に近い
ことが伺 える.
カオス ・ア トラクターの相関次元
カ レ断面上 のサ ンプル点 を
がァ ン
x l,
X2
,..,
X〟
とす る とき,積分相 関関数
C (r)= t
i
m
Nサ
Jち∑.0(r一 一XL-XjJ)
仙N .
I
,
・
J
♂(r)=1,(r>0); ♂(r)≡0,(rく0)
と相 関次元
Vは次の関係 にある 【
7
】
:
図 6. Y
. の リター ン ・マ ップ (d
!7 ンカレ断面 ):
.
.
.
.の プロ ッ ト・
極小値 Y.一 一 Y
l
i
m C
(r)牝r
y
pl:
A◆
,
o
岩
;0.
1
291
2.PIt:A●
,
o
=0・12913・
(p.
.pl
.
P
.
.
Cのバ ラメ タ-掛 ま図 3を劉 臥 )
∫
◆0
ここでは x と して 9次 元 の ベ
クト ル (
X^,
-
5
5
4
-
「カオスとその周辺J
C
P
i
図 7. ポア ンカ レ断面の相 関次元 V.
図8
. 閃欠性 カオス を含 tl分岐構 造 .
横軸 :0.
1
2
9
20<k
'
,
。く0.
1
92
42;縦軸 :0・
9<y<l
・
3・
破軸 :0.
1
3
5<A
●
T
。く0.
1
3
9;縦 軸:1
.
5
5<Y.,∼.< 1
.
7
5.
p.(A'
,
。=0.
1
2
92
8)は 6周J
y
J
点なので
y=0・
‥,
XB,YA,‥ .YB,
6,
.) を用い,N=2
000について
C(r)を計算 L l
ogr に対する l
o
gC(r) の プロ
003くr<0.
03 における傾 きか ら
ッ トの,区間 0.
V を求めた. アル ゴリズムは p.
,p2
,P.,P8 につ
いて V-0 となることでチェック した. カオス
領域 におけるい くつかの点での
Vの億 を図 7に示
す. ア トラクターの相 関次元 は β =(y+1) で与
えられる.
1
35<k
'
r
。<0.
1
39 に
間欠性 カオス
区間 0.
おける分岐図 を図 8に示す. k'r。-0.
1
35
9 と k1.
∼0.
1
377 のあた りで転移がみ られるが,こ れはサ
ドル ■ノー ド分岐であ りヒステ リシス はない. (す
なわち,バ ラメタ-を逆向 きに変化 させで も同 じ
図 9. 朕花位 l.…中.+Ql+中,の振動波形 ・
横 軸:0<t
<0
0
0;縦 軸.
I0.
2<eP
丸 く-0
・
l・
L
1
p・:
k◆
.
o=0.
1
36.C.:よ
◆
,
〇三0・
1
358・
分岐図が得 られる.
)周期 振動 p(k
'
r
D
=0.136)と
カオス振動 C'(k'r。
=0.
1
358)
における膜電位 礼
…¢l+¢2+¢,の時間変化 を図 9に,Clにおける
Q
mの極小値の リター ン ・
マ ップを図 1
0に示す.
C-は間欠性 カオスである.
ヒステ リシス
区間 0.
1
03<k'r。<0.
1
27 にお
ける分 岐図を図 11に示す. k'
r
。,
vO.
11
0 のあた り
で見 られる二つの周期振動 間の不 連続転移 p
.H
Pb はヒステ リシス を伴 う. 図 11は k'r. を左側 か
ら右側 に増加 させて得 られたものであるが,逆 に右
側か ら減少 させ たときの分岐図 はこれ と完全 には一
致 しない. すなわち,区間 0.
1
085<k
'
r
o<0.
11
00
では PAと pb が共 に安定軌道 と して共存 している.
k
'
,
o
=0.109 で異 なる初期条件 か ら出発 した二つの
周期振動 を図 1
2に示す. なお ,k
'
r
。∼0
.
1
23 の 3
-
5
55-
\
、
ヽ\
.
・
図1
0・ 問欠性 カオス C・における +_の リター ン ・
マ ップ :穣小催 九.一 九.
.
.0
)プロット
研究会報告
図 11
. 不達扶転移 を含む分岐梢造 .
胡 軸:o・
1
03<上◆
,
。<0.
1
271
. 縦軸:1
.
0<Y.
.
山.
く3.
4.
(
a
)拡大図. 磯 軸:0.
)
23
4<k●
,
.<0.
1
2
44・
.
縦 軸:2.
4<Y.
.
.
h
hく2.
9. (
b)拡大 臥
r
^
h<2.
0.
胡 軸:0.
1
234<l◆
,
。<0.
1
244; 縦軸:1
.
5<
,
.
固I
S. 声一
・O で秩周JVI振馴 こ判 る分岐構 造 ・
城 軸:0.
1<声<0.
9; 縦軸:0<
h<4・
0・
C点は図 2のそれ と同 じ.
r
^
,
A
図 1
2. 共存す る異なる剛 V
I
振動 ・
p..p
.非 に 上
◆
,
o
=0・
1
09・
城 軸:0<l< 1
0
0 ;縦軸 :11
0<Y.<2・
5・
-5
5
6-
「カオスとその周辺」
1(
a
)
,
(
b
))
,この先 ,〃周期
周期振動 か らカオスへ到 る分 岐 は,周期倍化 に よる ものであ り(図 1
振動の領域 とカオスの領域 が P.う Cj
ph.1
→
C→ の ように交互 に現 われ てい る. これは
一種 の p
er
io
d
i
c
c
h
a
o
d
c的n
s
i
L
i
o
ns
e
q
u
e
n
∝ と考 え られる 【
81.
概周期 振動 か らの カオス
これまで は k
'
,
。を コン トロール '
バ ラメタ一 に選 んだ. 図 1
3はこ
'
r
。=0
.
1
2
9
2
4 に固定 し,
・
Pを区間 0.
1<β< 0
.
9 で変化 させ た ものである.
れを k
声
=Oの と
き x の運動 と Y の運動 は独 立であ り系全体 で は概周期 振動 になっている. 声?小 さい領域
を拡大 す る と,初 めの うちは概周期 的 であるが ,ある ところで周期 振動が現 われ (周 波数 固定 )
,
やがてカオス に到 る様子 が見 て取 れる.
4.考 察
図 11や図 1
3に見 られ る ように.方程 式 (
8
)の分 岐構造 は 3変数や 4変数 な どの場合 に比
べ てか な り複雑 である・ これは自由度 の多 い ことを反映 している と思 われる・ だが基本 的 に阜
系 は陽 イオ ン系 と陰 イオ ン系 とい う 2種類 の部分系 が電気的 に結合 した もの と考 えて よい.
/dE
=J:
・
(x) におい て f.
I
(X) が少 な くと
振動が安定 に存在す るため には,時間発展方程 式 dx.
も 3次 以上の非線形項すなわち x
.
I
)に比例す る項 を含 む ことが必 要 である 【9]. この非線形
項 は,膜 表両 でのイオ ンの出入 りの速度定数が-定借 でな く,イオ ン法度 に非線 形 に依存 す る
とい う仮定 によって取 り入 れ られた. この点 は直接 実験 によ り証明 されてはいない. だが,
To
k
o等 は,イオ ン濃度 の変化 によ り膜 のキ ャパ シタンスが急激 に変化 す る機構 を,同種 の仮 定
によって概念 的 に説明 している 【
1
0】.
振動の仕組 み は定牲的 には次 の ように理解 される :表面のイオ ン濃度 が低 い間は膜 内取 り
込みの速度 が遅 く,表面 にはイオ ンが どんどんたまる. イオ ンがある程度 た まって くると,膜
内取 り込みの速度 が急 に速 くなってイオ ンの流 れ も急 に増大す る. す る と表面 でのイオ ン強度
は一気 に減少す る. 振動 はこの ようなプロセスの放 り返 しである. ただ しこれだけでは高々周
期 的 な振動 しか得 られない. カオスや概周期振動 は今 の場合 ,2組 の系 の振動が結合す ること
によって実現 されている. ここでは簡単の ため陽イオ ン X と陰 イオ ン Y を-種類ずつ考 えた.
モデル をよ り現実 に近づ けるには (
Na
'と K'の両方 を想定 して )さらにもうー種類 の陽 イオン
Ⅹ●
を含 め ることが考 え られ る. モデル をこの ように拡張す ることは容易 であ り、その場合 も β
→ O の極 限で X,Ⅹ,Y の運動 は完全 に分離す る. この とき 二種類以上のイオ ンが振動 してい
れば ,系全体 の運動 は一般 に概周期的 であ り,したが って
移が可能 となる.
5. む す び
β を有限 に した とき,カオスへの転
孜 々は,自励発振す る膜のモデルについて計算機 シミュ レー シ ョンを行 ない,カオス を含 む
種 々の振動状態 を得 た. 生体系 の振動 を記述す るモデル方程 式の代 表例 としては, フアン ・デ
ル ●ポル振動子 【
11
】やホジキ ン ーハ クス レイ方程式 【
1
2
】な どがあるが ,それ らは周期 的 に振動
す る外力 の もとでカオス となる 【
1
3日 1
4】. 一方我 々が扱 ったの は,一定の法度勾 配のみ で駆動
され る自律系 の カオスである. ここで扱 った ような単純 なモデル シス テムの研 究が,脳波 な ど
複雑 な生物 の カオス的振舞 いについて,その メカニズ ムの基本 的 な部分 の解明 に役 立 つ ことを
期待 してい る.
【
文献】
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