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亘大ナル唾石症ノー症例
1775 亘大ナル唾石症ノー症例 高 市 岡 謙 堀 三 Ke/1ぶ。 HOi’i (昭和16年11月19日両三) 次 目 緒 言 結 論 症 例 文 献 時 察 緒 言 唾石ハ古來稀有ナル疾患二三ズ.二三幾多ノ 経験シタルヲ以テ,二三興味アル知見ヲ得蝕二 丈献ニヨリ,殆ド述べ霊サレタル感アルモ,余 其ノ概要ヲ記載シ,先人ノ報告二追加セント欲 ハ最:近無二二二経過セル,顎下腺實質内二介在 ス. セリト思惟セラル’,亘大ナル唾石ノー症例ヲ 例 症 患者 山○節○,27歳,男,漁師, ツ輩引セルニ,容易二摘出シ得タリ.夏二内部ヲ窺フ ニ小唾石ノ存在ヲ認メ是ヲ摘出ス.創面ハ「bリパフ 冨山縣氷見町, 既往症 生來強健ニシテ著患ヲ知ラズ■ ラビソ」ニテ消毒シ,含漱ヲ命ジタルニP数日ニシテ 現病歴 数年前ヨリ左側第1,第2大臼歯部ノ内側 創面ノ治癒ヲ認メタリ. 二於テ,嶺銀粘膜ノ腫脹アリシモ,障碍ヲ感ズル程度 唾石肉眼的所見 二非ザリシカバ,放任シ居りシニ,数日前ヨリ腫脹増 唾石ノ大キサハ2・35xL75×2・50ニシテ重サ4.69 大シ,同時二該部口腔底二異物感アリ,更二2,3日 不正形ノ塊状ヲナシ,灰黄白色表面凹凸不雫ニシテ粗 経過セル㍉腫咳部上端二於テ,小豆大ノ固キ異物ヲ 縫ナリ.之レヲ細線鋸ニテ分割シ3割面ヲ研磨醐察ス 燭知スルニ至レリトテ診ヲ乞フ. ルニ,核ノ如キ部アリ,之レヲ中心bシテ,恰モ樹木 圭訴 左側ロ腔底ノ異物感. ノ年輪ノ如ク淡褐色ノ輪状ノ線ヲ認メ得. 現症 艦格榮養共二良好,胸腹部臓器二異状無シ, 唾石ノ分析所見 ロ腔底ヲ梅スルニ,左側第1,窮2大日勧ノ内側二當 り,約小豆大ノ灰白色,稽固キ物質ノ露出セルラ認 分割セル牛分ノ唾石二就キ成分ヲ分析セルニ次ノ如 シ. ム.其ノ周邊輕微ノ護赤,腫脹ヲ呈スルモ,疹痛ヲ訴 水 分 ヘズ.耳鼻咽喉部ニハ著攣ヲ認メズ. 有機質 以上ノ所見ヨリ唾石ト診断シ,小切開ヲ施シ露出セ 灰 ル異物ノ先端ヲ鏡匙鉗子ニテ掴㍉輕ク動揺セシメツ [ 143 ] 6・21% 13.69% 分 80.10% 灰 分 100分中 1776 堀 { 燐酸カルシウムCa3(PO4)2 90分 其他炭酸カルシウムCaCO3 硫黄ノ微量ヲ認ム 考 唾石二關スル文獄ハ遠クHippokrates一両マ 察 ニヨルモワルトン直管隔日顎下腺唾石症64例中 ルト稽セラル・モSpeichelsteinナル名構ノ下二 8例ヲ存スルニ過ギズ. 襲表セラレタルハ173年目chererノ記載ヲ以テ 而モ其ノ重量:ハ4.6gr=シテ(硬度2.5度),最 嗜矢トシ,以來本症二就キテノ報告ハ枚基二蓬 近論旨年間二報告セラレタル丈獄二徴スルモ宮 無キ状態ナリ.且ツ叉多撒症例二品キテノ統計 城氏ノ4.9gr二次グモノ=シテ唾石中最モ:巨大 的観察モ,先人ニヨリ有意義ナル試刷トシテ護 ナルモノト思惟ス. 表ヲ観ル. 三二本症ノ成生機韓二就キ考察セシニ,從來 最近太田氏ハ昭和11年目リ15年二七ル本邦:文 唾石症ノ成因二就キテハ炎症読,細菌論,瀦溜 献72症例二就キ統計的観察ヲ行ヒ,次ノ如ク報 覗,髄質読,新陳代謝障碍読,外傷読,化學読 告セリ即チ, 等甲論乙駁未ダ露一スル所ヲ知ラズ. 1)年ve, 30−40 di 1 8例=シテ最高ヲ示シ,21 一一 深江氏ハ結石ノ化學成分ヲ分析シ,之レニヨ リテ其ノ獲生機縛ヲ検索シ次ノ如ク論ゼリ. R0tt 16例,41一一50ue 10例ニシテ之二次グ,2P 1)唾液が燐…酸乃至炭酸石荻ノ析出二封シ, チ壮年者二於テ多数二獲見セラル. 2)性別.男子43例,女子21例,不明8例ニ 適當ナル水素イオン濃度ヲ有スルコト. シテ男子ハ女子ノ約2倍ヲ示ス. 2)分泌液中=於ケル鷺類が過飽和欣三二在 3)部位.ワルトン氏管二二顎下腺92.8%バ ルコト. ∼セ上リ三面管二二舌下腺4・3%冬テ∠玄氏管並 3)唾液中二存スル粘素ハ燐酸石油,炭酸石 二耳下腺2・9%ヲ示シ,刀kト≧愚管及ビ顎下 友ノ析出二品目テ強キ保護作用ヲ有ス.此三二 腺唾石症が其ノ大部分ヲ示ス.而シテ唾石ハ腺 過飽和歌態ニアル之等盤ノ析出ヲ促ス昌ハ當然 艦内ヨリモ排泄管国命護スト. 粘素ヲ破壌セザルベカラズ. 4)側柏.左側31例,右側26例,不明15例. 4)析出シタル盤類二封スル種子ノ存在ヲ要 5)肉眼的所見.大キサハ粟粒大,米粒大ヨ スルコト,帥チ結石核ノ存在ヲ要ス. リ小豆大ノモノ最モ多ク,形態ハ球状,棺圓 余ノ分析成績ハ前述セル如ク友分100中燐酸 形,紡錘形ノモノ最:モ多ク,視捧歌ノモノ之= カルシウム90%,他ハ炭酸カルシウム及ビ微量 次ギ,其ノ他ハ種々雑多ナリ. ノ硫黄ナリ.深江氏ハ3例ノ唾石(:重量)0.550 8gr,0.08349,0。60239)二於テ燐i酸カルシウム 6)主訴.食事二二ハ食後ノ唾仙痛,墜迫感, 82・0%一一一84.2%,歩i酸カルシウム2.5%一3.1%, 腫脹嚥下痛心. 有機物5.7%一7.4%ト記載セリ.即チ余ノ症例 7)局所症歌.大部分ハ唾液腺,排泄管,或 二示セル所二略一致シ,其ノ主要成分ハ燐酸カ ハ腺ヲ中心トセル腫脹,駆痛,結石燭知等. ルシウムナルが如シ. 余ノ症例ハ27歳ノ男子ニシテ,左側顎下腺實 質内二介在シ,共ノ壇大ト共二口腔底二露出シ 而シテ余ノー臨床例ヲ以テ其ノ成因=就キ言 來レルモノト思考サレ,長年月閥無症朕二経過 及スルハ甚ダ躊躇スルモノナルモ,余ノ唾石ノ シ,且ツ著シキ局所症状ヲ呈セズ経過セルモノ 中心二核檬物質ノ存在スルコトヨリ,先人ノ彊 ニシテ,文献例二参照シ興味深キモノアリ.叉 調セル如ク,結石ノー條件トシテ核ノ存在ヲ必 腺罷内ノ存在モ比較的稀ニシテ,太田氏ノ統計 要トスル事ヲ首肯シ得,余ノ材料二於テハ核ノ [ 144 ] 堀 論 文 附 囲 鵜 ノ ぼ 馨 にノず モ ノいピベヒレねズやピナ ズヘミゑ ア む く ’ に セじ よ ピ とミ レジノ ド ア ぐ∬・噸爵終射1写る園勧 デ∴潟憲量団匠1・ 難 欝 りや.愚メ薪ジ}∴ゑ1七ン 蕪 鱗 ・ 一鰍㌻擬乳誘駕避∵・笥∴目 まド し ヘ ケぎ ア ノ へ 解㌦ノ L 霧 灘 w _ 〆 ・. ・げ一 ・ 羅 ノ〆 灘 罫 「「 S♂∫∬’ ド 〆ジ ヰ 筑 ノ▽∫1:ピ三 へ 凝 1 ・ /t fi 事 毛 ㌧塁 ・・鶏雪 .! ヂ轟轟 一塁 ∫露ブ㌃紘還 「 〆 ピメ『鍔鴫 貿 一 職鑛灘醗懸墜総懸論難欝灘ge’x 灘懸㌣繋鞭 ゴ L ff彰 繁動 1 醒 唾石割断面 (實物大) :巨大ナル唾石症ノー症例 ユ777 性質二就キ明ラカニスルヲ得ザリジモ,從來禰 備ハル=及ビ「カルシウム」ノ析出ヲ生ジ,余ノ セラル、如ク,一ツハ眞性核,即チ燐酸石友石 結石割面二号ルが如キ年輪欺ノ結石歌態ヲ形成 二封シテハ燐酸石次ソノモノ二言之ト同型結晶 シ,唾石ノ増大ヲ來スモノト思考セラル.即チ 質,他ハ陰核ニシテ小木片,魚骨,歯石等ノ小 唾石ノ成立ニハ核ノ成立→唾液成分ノ攣質一・核 異物ニシテ排泄管孔ヨリ侵入シテ核トナリシモ 周園ノ郷友沈着→結石形成ナル順序ヲ必要トス ノナリ.何レモ核ノ存在アリ此レ=諸種ノ條件 ルモノノ如ク思惟セラルペシ. 結 1)余日27歳男子ノ左側顎下腺二介在セル唾 石症ノー一症例ヲ経験セリ。 論 ヲ必要ト思惟ス. 本症例要旨ハ昭和16年10月大日本耳鼻咽喉科 2)唾石ノ大キサ2.35x1.75×250,其ノ重 會北陸地方會第56回例會’=講演セルモノニシテ :量4.69,硬度25度ニシテ從來報告セラレタル 松田教授開講10周年ヲ記念セシ爲執筆セシモノ モノノ申,極メテ特大ナルモノノーーナリ. ナリ. 3)化學的分析ニヨリ,水分2.21%,有機物 早筆スルニ臨ミ御懇篤ナル御指導ト御校閲ヲ賜ハリ 13.69%,友分80.10%ニシテ,友分中約90%ノ シ金澤轡大耳鼻咽喉科教室松田教授二深甚ナル謝意ヲ 「燐酸カルシウム」ヲ含有シ,残絵ハ「炭酸カル 表スルト共二唾石分析ノ勢ヲ願ヘシ金澤署大附闘藥學 シウム」及ビ微量ノ硫黄ナリ. 專門部助敢授渡邊榮吉氏及學友豊田博士ノ御助言二封 4)唾石症ノ成立ニハ核ノ存在→唾液成分ノ シ感謝ス, 攣質→核周園ノ石友沈着→結石形成ナルー過程 文 1)只木夏島,唾石トロ腔底化膿症二心テ.耳鼻 咽喉科,第8巻,第4號, 2)膏木猛,舌下膿 瘍ヲ思ハシメタル舌下腺唾石ノー例.耳鼻咽喉科, 第8巻,第6號. 3)保坂三RB,急激且ツ重篤 ナル症状ヲ呈シ急激ノ結石ヲ排出セシ唾石症例; 耳鼻咽喉科,第10巻,第1號. 4)北川大四鄭, 興味アル唾石症二例。:耳鼻咽喉科,第10巻9第10 號. 5)高田士,唾石ノー例.耳鼻咽喉科,第 10雀,第11號. 6)豊田女一」唾石症.耳鼻咽 喉科,第IO巻,第11號. 7)池固昌吉,レ分岐セ ル唾石症例.耳鼻咽喉科,第10巻,第11號. 8) 宮城置山,興味アル唾石症例,耳鼻咽喉科,第12 巻,第5號. 9)管一尉,田原昭,唾石症ノ四 例,耳鼻咽喉科,第12巻,9號, 10)冑木三弦, 唾石.耳鼻咽喉科,第13巻,8號. 11)村田 鷹一河端一雄,大阪隠道病院耳鼻咽喉科二於ケ ル過去16年間二避遇セル唾石症二三テ.耳鼻咽喉 科,第13巻,第9號. 12)田中孚之助,化膿性 炎症ヲ俘ヘル舌下腺唾石症例.耳鼻咽喉科,第13 巻,第8號. 13)金丸舅,顎下腺唾石症ノー例, 獄 耳鼻咽喉科,第13巻,第9貌. 14)ホ越浩,顎 下腺唾石ノー症例.耳鼻咽喉科,第14巻,第4號. 15)藤井薫,興味アル唾石五症例.耳鼻咽喉科, 第14巻,第4號. 16)船守曉,唾石自然排出例. 耳鼻咽喉科,第14巻,第9號, 17)牟田哲三郎, 唾石ニヨルロ腔二三頸部蜂窩織炎例.耳鼻咽喉科. 第14巻,第9號. 18)曲田益雄,顎下腺唾石症. 大日本耳鼻會報,第42巻,第1號, 19)松浦 三鄭,唾石症二就テ.大日本耳鼻會報,第44巻, 第5號. 20)坂田正,唾石ヲ俘ヘルウォールト ー氏管膿蕩.大日本耳鼻會報,第45巻,第1號・ 21)王漏,唾石症ノ三例.大目耳鼻會報,第46巻, 第4競. 22)田中半之助,化膿性炎症ヲ俘ヘル 舌下腺唾石症例.大日耳鼻會報,第46巻,第6號. 23)太田芸樹,唾石症知見補遺.大日酋科早耳誌, 第39年,第1號. 24)深江「扁桃腺,鼻腔及 ビ唾腺ノ結石亜二面ノ成因二就キテ.十全會雑誌, 第35巻, 第10號. 25) 1)enker u. Kahler, Handbuch d. Hals−Nasen−u. ohren heilkunde. (1926). [ 145 ]