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DENSO MANUFACTURING VIETNAM CO., LTD.
制度利用事例 研修制度の事例(研修生派遣企業) DENSO MANUFACTURING VIETNAM CO., LTD. HIDA では、制度をご利用いただいた企業を訪ね、その 成果について調査を行っています。今回もこのうち 3 社の 事例をご紹介します。 最 初 に ご 紹 介 す る の は、DENSO MANUFACTURING VIETNAM CO., LTD.(DMVN)です。DMVN 社は株式会社 デンソーのグループ企業で、ベトナム・ハノイ市のタンロ ン工業団地内にあります。同社は高品質で低価格な商品を 実現するため、設立当初から人材育成に熱心で、毎年数人 ずつ AOTS(現 HIDA)の制度を利用して幹部候補社員を 日本に派遣して研修を行っています。 そこで、今回は生産技術部長の一樂弘州様に同社の人材 育成に対する考え方について伺うとともに、昨年度の研修 に参加されたグエン・チュン・フアンさんには日本で学ん だことについて伺いました。[取材日:2012 年 12 月 18 日] 【DENSO MANUFACTURING VIETNAM CO., LTD.】 所 在 地: ベトナム・ハノイ市(タンロン工業団地) 設 立: 2001 年 10 月 資 本 金: 3,540 万ドル 従 業 員: 2,200 人(2012 年 11 月 30 日現在) 事業内容: 自動車部品の製造 当社は「世界で勝てるものづくり」を 積み重ねも非常に重要だと考えていま スローガンに掲げ、高品質で低価格の製 す。しかし、こういった「あたりまえの 当社は株式会社デンソー(本社・愛 品を世界中に提供することを目指してい こと」を「あたりまえに行う」ことが非 知県刈谷市)が 95% 出資する自動車部 ます。従って、ベトナム国内や日本も含 常に難しいことでもあり、そういった意 品製造会社で、2001 年 10 月に設立され め世界中を相手にした仕事をしています。 味でも世界で今後戦っていくには人材育 ました。当社が通常の現地法人と異な その競争相手にはデンソーグループの他 成が一番重要であると考えています。 るのは、輸出加工企業(EPE)として登 の海外拠点も含まれています。そして、 録していることで、設立当初から世界 この結果「ベトナムの国の発展に貢献す デンソーグループは人材育成に特に熱心な 中に製品を供給することを目的にして る」ことが当社の使命だと考えています。 ようですが、御社もやはりそうですか。 初めに、御社の概要について教えてくだ さい。 その通りです。極端な言い方をすれ います。従業員は派遣社員を含めて約 2,200 人で、このうち日本からの出向者 世界で勝つために、どのような工夫をされ ば、私達日本人駐在員は人材育成のため が 18 人います。 ているのでしょうか。 に赴任しているようなものです。とにか デンソーには創業以来代々受け継が く『デンソースピリット』を理解したベ それでは、ベトナム国内向けの販売では れてきた「ものづくり」の基本的な価値 トナム人社員を一人でも多く作ることが なく、海外への輸出を目的としているの 観というものがあり、それを私たちは『デ 大切なのです。 ですね。 ンソースピリット』と呼んでいます。こ 一樂部長とフアンさん 6 そのためには、社員に対する日本語 の価値観を愚直に行動まで落とし込むこ の教育が非常に重要であると考えていま とが私たちの仕事に対する基本姿勢であ す。日本語の能力が向上することで、日 り、日本、海外を問わずこの価値観に基 本側の本隊にいる日本人社員とダイレク づいた行動を求められています。 トにコミュニケーションを取りながらプ 世界で勝つための方法というのは、特 ロジェクトを推進することが可能になり 別新しいこと、革新的なことを開発する ます。こうしたダイレクトコミュニケー だけが全てではなく、いかに小さいこと ションが可能になると、業務のスピード でもこだわりをもつことや、愚直に改善 アップに繋がるだけではなく、社員のブ を行うなどといった日頃の小さな成果の ラッシュアップが図れるのです。 HIDA ジャーナル No. 2 ● SPRING 2013 日本での研修に期待されるものは、やはり 一番理解してくれている非常に優秀な ています。彼には DMVN の社員として 日本語力なのでしょうか。 社員だと思います。私は厳しい上司で、 だけでなく、デンソーグループのグロー 技術者として決して妥協しない姿勢を バル人材として成長してほしいと思って います。 もちろん日本語は大切です。しかし、 たった 4 ∼ 5 カ月で劇的に上達するのは 彼には求めていますし、時に厳しく指 難しいでしょうから、まずはこちらの話 導することもありますが、これも期待 した内容を理解できるレベルに達してい の表れです。彼にはもっともっと成長 フアンさんに大変な期待をかけていらっ れば問題ありません。 してもらう必要がありますし、彼なら しゃるのですね。今後の成長を楽しみにし それとは別に、普段私達が教えている ことが実際の現場で実践されている様子 もっと上のレベルに行けると確信して ています。本日はお忙しいところありがと います。 うございました。 を見て、体験して来てほしいのです。ど また、彼には半ば本気で「私が帰任す んなにマニュアルを整備しても、“でき る際、一緒に日本に連れて帰る」と言っ る”ようにはなりません。実践すなわち OJT が不可欠なのです。 ちなみに、HIDA の研修制度(技術研 修)では、この 2 つを組み込むことがで きるので重宝しています。 ところで、昨年この技術研修を受けられた フアンさんですが、上司の目から見てどの ように映りますか。 まだ 27 歳と若いですが、私の考えを VOICE ダンボールで作った製造ラインの実物大模型 改善活動の成果を示すボード 日本で学んだ仕事の考え方 生産技術 3 課係長 グエン・チュン・フアンさん 私 は 2011 年 5 月 25 日 か ら 10 月 13 がな・カタカナの読み書きはできたので にも相談せずに対処することが多かった 日までの約 4 カ月半、AOTS(現 HIDA) すが、3 カ月間毎日朝から晩まで勉強す のですが、今ではまず『ホウ・レン・ソウ』 の制度を利用して日本で研修を受けまし るのは大変でした。特に漢字が苦手だっ を実行し、その後で問題の原因を自分な た。私にとって初めての外国だったこと たのでとても苦労しました。それでも、 りに追求するよう心がけています。もっ に加え、ベトナムでもまだ東日本大震災 一生懸命努力しているうちに、だんだん とも、まだまだ追求が甘いようで、一樂 関連のニュースが頻繁に流れていた時期 日本人の会話が聞きとれるようになって 部長からはいつも「技術者なのだから、 でしたが、日本にいる同僚や友人から常 きました。 もっとロジカルに考えなさい」と叱られ に正確な情報を入手することができたの で全く不安は感じませんでした。 このほか、一般研修では日本企業の特 ています。 徴や 5S と改善、ビジネスマナー、生活 さて、現在私は切削加工部門のリー 最初の 3 カ月は一般研修で、中部研修 習慣、防災等に関する講義と工場見学が ダーに昇格し、15 人の部下がいます。そ センターで日本語と日本の文化・習慣等 あり、日本という国を理解する意味でと して、プロモーションやその他幾つかの について勉強しました。私は日本に行く ても役に立ちました。 前から少し日本語を勉強していて、ひら 残りの 1 カ月半は実地研修で、三重県 にあるデンソーの関連会社で切削加工技 工場で部下を指導するフアンさん(右) プロジェクトを任されるようになりまし た。その分、仕事が忙しくなって残業も 増えました。 術について学びました。ただ、ここでは しかし、今の仕事にやりがいを感じて 技術を身に付けたことよりも、仕事のや いますし、部下のことも大切です。それ り方や考え方を理解できたことの方が大 に一樂部長の考えが少しずつ分かるよう きかったです。具体的には『ホウ・レン・ になってきたので、与えられた仕事をしっ ソウ(報告、連絡、相談) 』の必要性や 1 かりこなしていきたいと思います。現在 つの問題に対し原因追究することの大切 の役職は Supervisor(係長職)ですが、 さです。 3 ∼ 5 年後には 1 つの部門全体を任せて 日本に行く前の私は、何か問題が起き もらえる Manager(課長職)になって、 ると迅速に解決することを優先して、誰 DMVN 社の発展に貢献したいと思います。 HIDA ジャーナル No. 2 ● SPRING 2013 7