...

眼内腫瘍の診断と治療

by user

on
Category: Documents
881

views

Report

Comments

Transcript

眼内腫瘍の診断と治療
眼内腫瘍の診断と治療
眼腫瘍外来
石田友香
主な眼内腫瘍
悪性
網膜
網膜芽細胞
転移性腫瘍
良性
網膜毛細血管腫
Vasoproliferative tumor (後天性血管腫)
網膜海綿状血管腫
星状膠細胞腫(後天性)
過誤腫
脈絡膜
転移性腫瘍
悪性黒色腫
悪性リンパ腫
脈絡膜血管腫
骨腫
母斑
その他(虹彩や毛
様体)
転移性腫瘍
悪性黒色腫
色素上皮の腺癌
色素上皮の腺腫、肥大など
生検が難しいことから、臨床的診断が重要となります。
• 当科で取り扱っている、転移性脈絡膜腫瘍、骨腫、
網膜と脈絡膜の血管腫について、典型的症例と、
診断に迷った非典型的な症例を示します。
脈絡膜転移性腫瘍の特徴
• 女性は乳がん、男性は肺がんに合併することが多い。
• 無症候性が多く、実は乳がんの10%に合併しているという
報告もある。
• 一方で、眼科初診時3分の1が、悪性腫瘍の既往を持たず
受診するという報告もある。
• 診断は、生検の報告もあるが、一般的には画像所見の組
み合わせ、全身の腫瘍検索により総合的に行う必要があ
り、最新の画像所見の検討が今後求められ続ける領域で
ある。
• 治療:全身化学療法と局所放射線療法。最近、抗VEGF抗
体硝子体注射や光線力学療法の有用性も報告されている。
症例3 54歳男性
人工心臓の管理で入院中に右眼視力低下自覚し受診(0.6)。
中心性網脈絡膜症の既往あり。
カラー写真
自発蛍光
FA
IA(wide field)
SS-OCT
PETCT陰性。
さらに、1か月後に脈絡膜隆起は消失した。
IAでは全周性に後期のdark spotsが出現した。
転移性脈絡膜腫瘍は否定され、脈絡膜
肉下腫性疾患の疑いにて経過観察中。
脈絡膜血管腫の特徴
• 孤発性 or Sturge-Weber症候群に伴うび漫性
• 孤発性は、30~40歳代に多く、片眼性。
• 後極付近の発生が多い。
• IAでごく早期から腫瘍内の血管が描出される。
• 治療は古くからレーザー治療の有用性が知られて
いる。最近は、抗VEGF抗体や光線力学療法の報
告もある。
症例1 55歳女性
右)歪視を主訴に受診 右視力(1.0)
自発蛍光
FA早期
IA早期(wide field)
FA後期
IA後期(wide field)
SS-OCT所見
治療後
治療前
治療2週間後
レーザー治療
脈絡膜血管腫に対してレーザー光凝固 (抗VEGF薬を併用)
症例2 72歳男性
歪視、視力低下を主訴に受診
転移性脈絡膜腫瘍のような肉眼所見
OCT
FA
IA
治療前
治療後
レーザー治療
レーザー治療にて黄斑の漿液性網膜剥離は治癒
骨腫の特徴
• 脈絡膜から発生した骨組織で構成されたまれな腫
瘍
• 10~30歳代の女性に多い。
• 片眼性が多い。
• 新生血管の合併が起こりうる。
• CTによる骨化の証明が診断の決め手となる。(た
だし、転移性腫瘍、astrocytoma、過誤腫も石灰化
するため総合的な判断を要す)
• 有効な治療法はないが、新生血管や骨腫増大に
対し光線力学療法の有用性も報告されている。
症例1 52歳男性
視力低下を主訴に受診
FA早期
IA早期
FA後期
IA後期
SD-OCT所見
CT
高輝度病変あり
脈絡膜骨腫と診断
6か月後CNV出現
~現在治療中(抗VEGF抗体+PDT)
FA早期
自発蛍光
SS-OCT
FA後期
症例2 72歳男性
飛蚊症で受診
自発蛍光
FA早期
FA後期
IA早期
IA後期
CT,MRIでは異常所見検出できず。
SS-OCT
Solitary idiopathic choroiditisと診断
SS-OCTにて強膜の病変であることがわかり、上記と診断した。
Solitary idiopathic choroiditis: 1997年に初めて報告され、この名前となったが、炎症
の有無や病理は明らかではない。30歳代から60歳代、後極から赤道にかけて分布
する。眼底所見から診断する。
網膜毛細血管腫の特徴
• 病理学的にはhemagioblastoma
• 周辺部型>傍乳頭型
• Von Hipple Lindau病に合併することがある(特に両
眼性、多発性は可能性が高い)
⇒遺伝子検索や脳、副腎の精査が必要。眼病変が
他の病変に先駆けて発症することもあり、注意が必
要。
⇒当院では、遺伝子外来に全身検索のコーディ
ネートを依頼している。
• 治療は主にレーザー治療、PDTなど
症例1 45歳男性
左視力低下と歪視で受診(0.5)
FA早期
IA早期
治療後(7回アバスチン+3回PDT)
レーザー治療後出血をきたしたため、視神経乳頭の近くではあるが、上記治療
施行し、黄斑部網膜下液は軽快、維持している。
全身精査では陰性。
遺伝子検索はせず。
悪性黒色腫
【由来】
メラノサイト(メラニン産生細胞)が
悪性腫瘍化したもの
虹彩の悪性黒色腫
【眼内発生部位】
脈絡膜、毛様体、虹彩
【発生頻度】
400万人に一人/年
(欧米の1/20) 1979年金子ら
眼科プラクティス24 見た目が大事!眼腫瘍 2008
脈絡膜悪性黒色腫
Schields CL et al. Clinics in Dermatology 2015.
Shields JA et al. Intraocular Tumors an atlas and textbook 2008
【眼底所見】
診断
1. 色
橙色(脈絡膜深部)
小型
中型
灰白色(内部壊死、線維化)
黒色(網膜下に露出)
2. 形
ドーム状
↓ ブルッフ膜穿破
マッシュルーム状
中型
大型
Schields CL et al. Clinics in Dermatology 2015.
3. その他
ブルッフ膜穿破後の出血(網膜下
や硝子体)
補助診断
確定診断
【蛍光眼底造影】
FA: window defect, 漏出など様々、IA:終始低蛍光
【超音波検査】
Hollowness and excavation (頻度は低い)
【MRI】
T1高信号(中等度が多い)、造影剤で増強
【生検 (針生検も含む)】
上記の臨床的診断がつかない場合に、有用。
Shields JA et al. Intraocular Tumors an atlas and textbook 2008
Schields CL et al. Clinics in Dermatology 2015.
悪性黒色腫の鑑別疾患
悪性黒色腫疑いとして紹介された患者12000人のうち14%
が他の疾患であった。
Shields CL et al. ophthalmology 2009
加齢黄斑変性症4%
脈絡膜血管腫5%
先天性色素上皮肥大症6%
peripheral exudative
hemorrhagic
chorioretinopathy(PEHCR) 13%
母斑
49%
メラノーマ
IAはどちらも黒い
母斑
造影
T1
T2
123I-IMP SPECT image
Fig. 3 Comparison of choroid nevus and melanoma. A, Choroid nevus with overlying chronic yellow drusen, a feature of aging in the
overlying retinal pigment epithelium. B, Small choroid melanoma with overlying orange-colored fresh lipofuscin pigment, a sign...
Carol L. Shields , Jane Grant Kels , Jerry A. Shields
Melanoma of the eye: Revealing hidden secrets, one at a time
Clinics in Dermatology, Volume 33, Issue 2, 2015, 183 - 196
http://dx.doi.org/10.1016/j.clindermatol.2014.10.010
母斑と悪性黒色腫の鑑別
最終的には増大傾向で判断する
【悪性疑いの所見】
TFSOM: To Find Small Ocular Melanoma
Shieldsらが提唱
1.Thickness( >2mm)
母斑
黄色のドルーゼンを伴う
2. subretinal Fluid
3. Symptoms
4. Orange pigment
5. Margin touching to the optic disc
悪性黒色腫
Orange pigmentを伴う
最周辺部腫瘍は、浸潤の有無など
UBMによる十分な観察が重要
Schields CL et al. Clinics in Dermatology 2015.
ご清聴ありがとうございました
PEHCRとは?
peripheral
exudative
hemorrhagic
chorioretinopathy
Shields CL et al. ophthalmology 2009
IA
• 周辺部網膜の出血、滲出を伴う 円形腫瘤性病変
• 所見での診断であり、病理学的に単一な疾患か不明
• 高齢白人に多い
• 89%が変化なしまたは自然寛解
周辺部に生じるPCVもPEHCRの一種ではないかと考えられている。
Darin N et al. RETINA 2013
質問対策
脈絡膜腫瘍の鑑別
悪性黒色腫
母斑
転移性腫瘍
血管腫(Sturge Weberに
伴言わないもの)
骨腫
特徴
年間400万人に一人(日
本)
1.4%(悪性化は8000~
9000人に一人)
CNV伴うことがある
原疾患は乳がん、肺がん
が多い
後極
30~40代に多い
10~30代女性に多い
CNV合併しやすい
カラー
黒色~褐色、平坦から
マッシュルーム型、
オレンジピグメント多くに
見られる
黒色~褐色
オレンジピグメント±
ほぼ平坦(高さ1mm以上
は悪性の可能性もある)
黄白色~正常(まれに色
素性もあり)
Golden brown pigment±
ほぼ平坦~ドーム状が多
いがごくまれにマッシュ
ルーム状。
赤色~褐色~正常
褐色~黄色~白色(石灰
化の状態により異なる)
FAG
低蛍光~過蛍光(RPEの状態による)
RPEの状態により過蛍光
と低蛍光混在~正常、周
辺部、時に腫瘍上に点状
過蛍光。大きい腫瘍は組
織染強い。
ごく早期に網目状過蛍光。
その後RPEの状態による
がびまん性過蛍光となっ
ていく。
RPEの状態による
CNV合併はlekage伴う過
蛍光
IA
強い低蛍光
低蛍光~過蛍光
ごく早期から強く過蛍光
後期にwash outで低蛍光
示すこともある。
低蛍光
CNV合併で過蛍光
自発蛍光
オレンジピグメントは過蛍光
オレンジピグメントは過蛍光
FAGと逆パターン
Pigmentは過蛍光
RPE変性部分やsRD部分
に変化示す
RPE変性部分やsRD部分
に変化示す
SS-OCT
低輝度脈絡膜腫瘤(良性は丈が低いが、悪性の30%
は3㎜以下)、sRD、網膜浮腫、網膜下液、網膜下沈着
物(これらの所見は悪性で60~90%、良性では1
0%)
脈絡膜腫瘤
(RPEの状態によるが、モ
ザイク状または低輝度)、
sRD、RPE変化、網膜下沈
着物
低輝度ドーム状またはモ
ザイク状、sRD、網膜分離
や浮腫
モザイク状または低輝度、
CNV、網膜はひ薄化
超音波
内部低反射が多い
内部高反射
内部高反射
強い高反射で石灰化示
す
CT,MRIなど
T1high T2low
T1highT2low造影効果あ
り。CTで石灰化示す場合
もある。
T1high T2high
CTで高輝度が特徴
内部高反射
Fly UP