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農業信用保証保険法による農業信用基金協会の監査に 当たっての監査

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農業信用保証保険法による農業信用基金協会の監査に 当たっての監査
業種別委員会報告第35号
農業信用保証保険法による農業信用基金協会の監査に
当たっての監査上の取扱い
平 成 18年 4 月 13日
日本公認会計士協会
Ⅰ
はじめに
農業協同組合等が行う農業者等に対する貸付について、その債務の保証を行うこと
を主たる業務とする農業信用基金協会(以下「基金協会」という。)の制度を定める
農業信用保証保険法が、平成16年6月に改正され、公認会計士又は監査法人(以下「公
認会計士等」という。)による会計監査が平成17年度から導入されることとされた。
また、公認会計士等監査の導入に合わせ、「農業信用基金協会の事業報告書、貸借対
照表及び損益計算書並びに計算に関する命令」
(内閣府・農林水産省令第6号)
(以下
「会計命令」という。)が平成17年3月31日に公布、同年4月1日に施行され、平成
17年度から基金協会が準拠すべき会計基準が整備された。
会計命令の施行により基金協会の会計に適用される新会計基準は、債務保証損失引
当金の新規計上に加え、求償権償却引当金の算定方法や勘定科目体系など、平成16
年度までの会計処理と大きく異なっている点が多いことから、監査導入初年度に整備
された新会計基準への対応を巡り、現場レベルでは未だに混乱がみられる。
また、保証債務残高の一定割合を積み立てるとする保証責任準備金の会計上の取扱
いや、平成16年度決算まで大半の基金協会で行われてきたいわゆる「ゼロ決算」への
対処など、基金協会特有の問題が未解決のまま監査初年度の決算を迎えようとしてお
り、これらの問題に対し監査人として適切な対応が求められている。
本報告は、上記の経緯と現状を踏まえ、基金協会の監査に当たって監査人が留意す
べき事項を取りまとめている。
- 1 -
Ⅱ
監査上の留意事項
1.債務保証損失引当金
(1) 算出方法
平成17年度決算より、債務保証の損失に備えるための引当金として債務保証損
失引当金の計上が新たに義務付けられている(会計命令第50条第1項)
。
当該引当金は、事業年度終了の時の保証残高を被保証者の財務状況及び返済能
力に応じて被保証者ごとに区分し、当該区分ごとの事故率及び回収不能率を用い
た合理的な基準により算出することとされている(会計命令第50条第2項(以下
「個別法」という。
))
。
一方、ただちに「合理的な基準」を作成することが困難である基金協会に配慮
し、当分の間、第50条第2項の規定にかかわらず、下記大口保証案件を除く自己
リスク保証債務残高に対し、過去10年間における保証債務の弁済実績率及び回収
実績率を乗じて算出される額とすることができるとされている(会計命令附則第
3項前段(以下「一括法」という。
))。
債務保証損失引当金の監査に際しては、いずれの算出方法を採用したかが会計
方針に記載されていることを確かめる必要がある。
(2) 大口保証案件に係る取扱い
事業年度末の保証債務残高の上位500件(残高5,000万円以上を含む。)の大口
保証案件については、一括法の適用対象外とし、「当該保証案件ごとの被保証者
の財務状況及び返済能力を個別に把握し、個別の予想される損失額に対し引き当
てること」とされている(会計命令附則第3項後段)
。
上記の個別引当に当たって必要となる被保証者の財務状況等の把握は、基本的
には基金協会自らが行うべきものである。しかしながら、被保証者との接触は専
ら農業協同組合(以下「JA」という。)等の融資機関が行っていること、基金協
会が被保証者の財務状況等の把握及び分析を行うことは体制的に難しいこと等
から、これらの情報についてはJA等融資機関から提供を受けることが予定されて
いる(「農協系統金融機関から農業信用基金協会へのデータの円滑な提供につい
て」
(農林水産省経営局長
17経営第2596号
平成17年8月1日)
)。
大口保証案件に係る個別引当の監査に際しては、JA等融資機関から提供を受け
た情報の信頼性について監査人として正当な注意を払い、当該情報の精度が大口
保証案件に係る債務保証損失引当金の算定に及ぼす影響を勘案し、監査人の判断
に基づいて、必要と認める監査手続を実施しなければならない。
なお、監査人は、基金協会が自らの責任の下に、例えば下記の作業を行うこと
により、JA等融資機関の情報の信頼性について精査していることを確かめる必要
がある。
- 2 -
①
JA等融資機関の自己査定マニュアルを閲覧し、債務者区分の判定方法の妥
当性等を確認する。また、JA等融資機関に対し自己査定の方法等について、
必要に応じて照会を行う。
②
当該大口保証案件に関して、基金協会が保有する延滞情報等に照らし、JA
等融資機関の債務者区分の判定結果に不整合がないか確認する(個別に債務
者の情報を徴求する先(要管理先以下の先)の網羅性を確認する。)
。
③
個別調書徴求先(要管理先以下の先)について、JA等融資機関から入手し
た被保証者の査定資料を閲覧し、債務者区分の妥当性及び個別調書に記載さ
れた翌年度代位弁済希望額の合理性等について検討する。
監査人が大口保証案件に係る個別引当の妥当性を検証するに際しては、特に下
記事項に留意する必要がある。
①
個別引当の検討対象は、債務者単位ではなく保証案件単位であること
②
要引当額は、JA等融資機関の翌年度代位弁済希望額を基礎とし、基金協会
の判断による翌事業年度代位弁済見込額に基づき算定されるが、両者が相違
する場合は、その差異理由と翌事業年度代位弁済見込額の妥当性について確
認すること
③
代位弁済見込額について担保(保証を含む。)による回収を見込んでいる
場合は、その評価の妥当性に留意すること
(3) 事務ガイドライン規定の取扱い
基金協会の監督に当たっての行政上の手引きである「農業信用基金協会の監督
に当たっての留意事項について」(金融庁監督局長・農林水産省経営局長
第1581号・17経営第1753号
金監
最終改正平成17年6月13日)(以下「事務ガイドラ
イン」という。)において、債務保証損失引当金の「積立額が不足する場合、そ
の金額、理由及び解消方法を業務報告書のⅠの14「農業信用基金協会が対処すべ
き重要な課題」に記載するものとする。」(2−6−2(3)ニ(ヘ))と規定さ
れている。
これは、会計命令の規定に基づく債務保証損失引当金の計上を行わず、結果的
に引当不足となった場合において、行政監督に資するために記載を求めるもので
あり、基金協会の裁量によって引当金額を任意に減額することを容認するもので
はないことに特に留意する。
- 3 -
2.保証責任準備金
(1) 保証責任準備金の性格
保証責任準備金は、通常の予測を超えて発生する保証事故による損失に備える
ための準備金として積立てが義務付けられている(会計命令第43条第1項)
。
将来の代位弁済リスクに対しては、平成17年度から債務保証損失引当金の計上
が求められているが、債務保証損失引当金は当期末の保証債務に係る損失見込額
に備えるための引当金であり、保証責任準備金は次年度以降通常の予測を超えて
発生する保証事故に係る損失に備えるための準備金であると整理されている。す
なわち、保証責任準備金は、地域における農業経営に資する保証引受機関として
基金協会の保証基盤の充実強化を図る上で特に重要であるとの認識から、会計命
令において積立てが義務付けられているものである。
一般に公正妥当と認められる会計基準の慣行によれば、将来の予想取引に係る
損失に備えるための準備金を負債計上することや、費用収益の対応に関わりな
く、一定の保証債務残高に対して一定率を乗じて算出する計上方法などについて
議論はあるが、保証基盤の充実強化の趣旨に鑑み、法令においてその積立てが義
務付けられているものであることから、監査上も当分の間容認することとする。
(2) 事務ガイドライン規定の取扱い
事務ガイドラインにおいて、保証責任準備金の「積立額が不足する場合、その
金額、理由及び解消方法を業務報告書のⅠの14「農業信用基金協会が対処すべき
重要な課題」に記載するものとする。」
(2−6−2(3)ロ)とされている。
これは、会計命令の規定に基づく保証責任準備金の積立てを行わず、結果的に
積立不足となった場合において、行政監督に資するために記載を求めるものであ
り、基金協会の裁量によって積立金額を任意に減額することを容認するものでは
ないことに特に留意する。
3.JASTEM等電算システムを利用する財務諸表項目
基金協会の信用事業に関する事務処理は、各都道府県の信連等に対し、JA等が利
用する電算システムの利用を委託することにより行われている。従来、この電算シ
ステムは各県域独自のものが使われてきたが、平成14年度以降、全国統一の仕様に
基づくシステム(JASTEM)への移行が進められている。なお、表のとおり、平成18
年5月をもってJASTEMへの全県移行が完了する予定である。
基金協会の財務諸表項目のうち保証債務(見返)及び未経過保証料の残高は、各
県基金協会が独自に管理・計算しているもの以外は、当該電算システムからの還元
情報を利用することとなる。また、上記項目に関連して、保証責任準備金、債務保
証損失引当金及び保証料の計上額は、当該情報を利用して算定されることとなる。
- 4 -
このように、重要な財務諸表項目については、JASTEM等電算システムの情報を利
用することとなる。監査人は、当該財務諸表項目の重要性を踏まえ、利用する情報
の信頼性については、監査人として正当な注意を払い、必要と認める監査手続を実
施しなければならない。
なお、監査人は、基金協会が自らの責任の下に、JASTEM等電算システムの情報の
信頼性について検証していることを確かめる必要がある。
<JASTEM移行状況表>
移行時期
平成16年度以前
平成17年度
平成18年度
都道府県数
35
8
4
備
考
5月に6県、1月に2県が移行
5月に4県が移行予定
4.新会計基準適用に伴う修正
平成16年度までは、行政から発出された「農業信用基金協会経理規程(例)」等
の基準に基づき会計処理が行われていた。しかし、当該基準は法規範性がなかった
上、例えば、保証責任準備金の要積立額が行政通知により事実上の積立目標額とし
て位置付けられていたため、保証責任準備金の積立額を任意に減額するなどして、
期間損益をゼロになるよう調整する、いわゆる「ゼロ決算」が大半の県の基金協会
で行われていた。また、農業信用保証保険法において公正なる会計慣行の準用規定
がないため、
「金融商品に係る会計基準」等の企業会計の基準が未適用であるなど、
基金協会の会計は未整備の状態であった。
こうした経緯の下、平成17年度からの新会計基準の適用及び公認会計士等監査の
導入に伴い、期間損益計算を適正に行う観点から、平成17年度期首残高については、
下記のとおり処理されている場合は監査上妥当なものとして取り扱う。
(1) 新会計基準を期首時点で適用した場合の算定金額と平成16年度決算残高の
差額を、原則として平成17年度の特別損益に計上する。
(2) 当該修正に係る損益計算書の表示は、「新会計基準適用に伴う期首残高修正
損(益)
」等の科目名によるとともに、修正項目及び金額の内訳を注記する。
5.JASTEM移行に伴う未経過保証料の修正
未経過保証料については、県域単位の従前の計算とJASTEMの計算で、割引率や期
間配分方法等の計算の前提条件が異なることにより、移行時点において両者間に残
高の乖離が発生することが認識されている。また、基金協会によっては乖離額が数
億円規模になるなど、財政状態及び期間損益への影響が大きくなっている。
平成16年度までに移行済みの基金協会で、移行前の既存の保証契約に係る未経過
保証料をJASTEMの計算結果に基づき計上することとした基金協会について、移行時
- 5 -
点における乖離額の修正が未処理の場合は、平成17年度決算で乖離額の修正を行う
必要がある。なお、平成17年度中に移行を行った基金協会についても、同様に、移
行に伴う乖離額の修正を行う必要がある。
また、平成18年5月に移行が予定されている基金協会について、移行に伴う未経
過保証料の乖離額が監査報告書作成日までに判明する場合は、開示後発事象として
の所要の注記が記載されているかに留意する。
6.保証債務残高を極度額で計上している場合の修正
保証債務のうち極度貸付(当座貸付、カードローン)については、従来、管理上
の問題などから、極度額をもって貸借対照表価額としていたが、本来は実際の残高
(期末時点の原債務元本に対応する保証債務残高)で計上すべきものである。
したがって、平成16年度決算において極度額で計上されている保証債務(見返)
残高は、同時点における実際の残高に修正される必要がある。なお、当該修正に関
連して、保証債務残高を計算の前提とする保証責任準備金の期首残高の修正が発生
する可能性があるので留意する。
7.
「基金」の取扱い
基金協会は、出資金、繰入金(基金に繰り入れた過年度の剰余金)及び交付金(代
位弁済に充てるために都道府県等から交付された金銭)について、保証債務の弁済
に充てるための「基金」として、預金若しくは金銭信託又は国債若しくは地方債等
の有価証券により管理しなければならないとされている(農業信用保証保険法第9
条)
。
この「基金」に関しては、繰越欠損金の填補に充てられないものと基金協会業界
では従来から解釈されており、このことが過年度決算において「ゼロ決算」が行わ
れてきた要因の一つとされる。すなわち、欠損金が「基金」により填補できず、継
続的に繰越欠損金が残存してしまうことへの忌避のみならず、赤字決算により欠損
金が生じること自体が「基金」を実質的に毀損しており、農業信用保証保険法第9
条に違反すると解釈されていたためとされる。
しかしながら、基金協会の財産及び損益の状況を正しく表すため、新会計基準及
び一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき当期損失金を計上することは、損
失処理案が決算関係書類に位置付けられていることから、法律上も予定されてい
る。したがって、平成17年度決算以降、基金協会が当期損失金を計上することはも
ちろん、未処理の繰越欠損金が残存することは当然に容認されるものである。
なお、一般に公正妥当と認められる会計基準の慣行上、利益剰余金を繰越欠損金
の填補に充てることは認められるが、過年度剰余金の累積である繰入金について
は、法令において欠損の填補に充てることが予定されていないことから、繰入金を
- 6 -
繰越欠損金の填補に充てることは、現時点においても法解釈上議論があることに留
意する必要がある。
8.継続企業の前提に関する検討
新会計基準の適用に伴い、平成17年度において重要な当期損失を計上する場合な
どにおいては、会計命令第52条別紙様式第1号の(記載上の注意)1(1)に基づく
継続企業の前提に関する注記の要否とともに、監査委員会報告第74号「継続企業の
前提に関する開示について」(平成14年11月6日)に従い、注記内容が適切かどう
かについて監査上留意する。
Ⅲ
監査報告書
基金協会の監査に係る監査報告書の記載事項は、農林水産省経営局長通知「農業信
用基金協会に対する公認会計士又は監査法人の監査について」(17経営第1904号
平
成17年6月17日)(以下「監査通知」という。)によるほか、「表題」、「日付」等の形
式要件に関しては、監査・保証実務委員会報告第75号「監査報告書作成に関する実務
指針」(平成15年1月31日、最終改正平成17年4月25日)における取扱いに準拠する
こととする。また、「宛先」については、基金協会の場合、農業信用保証保険法にお
いて理事会が機関として位置付けられていないことから、会長理事又は理事長とす
る。
なお、平成17年度決算に係る監査報告書の記載事項は上記監査通知によることとな
るが、会社法施行に伴い、監査報告書に関する取扱いが変更された場合は、平成18
年度以降の監査報告書の記載内容も変更となることに留意する。
1.適法意見の文例
貸借対照表、損益計算書、事業報告書、財産目録及び剰余金処分案(又は損失処
理案)のいずれも適法であると認められた場合の監査報告書(指定証明の場合)の
文例は、以下のとおりである。
- 7 -
独立監査人の監査報告書
平成×年×月×日
○○○農業信用基金協会
会長理事 ○○ ○○殿
○
○ 監 査 法 人
指 定 社 員
業務執行社員
指 定 社 員
業務執行社員
公認会計士
○○○○
印
公認会計士
○○○○
印
(注1)
当監査法人(注2)は、農業信用保証保険法第42条第3項の規定に基づき、○○○
農業信用基金協会の平成×年4月1日から平成×年3月31日までの第×期事業年度
の決算関係書類、すなわち、事業報告書(会計に関する部分に限る。
)
、財産目録、貸
借対照表、損益計算書及び剰余金処分案について監査を行った。なお、事業報告書に
ついて監査の対象とした会計に関する部分は、事業報告書に記載されている事項のう
ち会計帳簿の記録に基づく記載部分である。この決算関係書類の作成責任は理事者に
あり、当監査法人(注2)の責任は独立の立場から決算関係書類に対する意見を表明
することにある。
当監査法人(注2)は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に
準拠して監査を行った。監査の基準は、当監査法人(注2)に決算関係書類に重要な
虚偽の表示がないかどうかの合理的な保証を得ることを求めている。監査は、試査を
基礎として行われ、理事者が採用した会計方針及びその適用方法並びに理事者によっ
て行われた見積りの評価も含め全体としての決算関係書類の表示を検討することを
含んでいる。当監査法人(注2)は、監査の結果として意見表明のための合理的な基
礎を得たと判断している。ただし、基金協会は当事業年度(注3)から農業信用保証
保険法第42条第3項の規定に基づき初めて監査を受けることとなったので、事業報告
書に記載されている過去3年間以上の事業成績及び財務の状況の推移並びにこれら
についての説明のうち第×期事業年度以前の各事業年度(注4)の事業成績及び財務
の状況は、未監査の決算関係書類に基づき記載されている。
監査の結果、当監査法人(注2)の意見は次のとおりである。
(1) 貸借対照表及び損益計算書は、法令及び定款に従い基金協会の財産及び損益の状
況を正しく示しているものと認める。
(2) 事業報告書に記載されている事項(会計に関する部分に限る。)は、監査の方法
の概要に関する記載区分に記載した監査のために必要な調査ができなかった事項
を除き、法令及び定款に従い基金協会の状況を正しく示しているものと認める。
- 8 -
(3) 財産目録は、貸借対照表及び会計帳簿と合致している。
(4) 剰余金処分案は、法令及び定款に適合しているものと認める。
基金協会と当監査法人又は業務執行社員(注2)との間には、公認会計士法の規定
により記載すべき利害関係はない。
以
上
(注1)監査人が監査法人の場合で、指定証明でないときには、以下とする。
○
○ 監査法人
代 表 社 員
業務執行社員
業務執行社員
公認会計士
○○○○
印
公認会計士
○○○○
印
また、監査人が公認会計士の場合には、以下とする。
○○○○
公認会計士事務所
公認会計士
○○○○
○○○○
印
公認会計士事務所
公認会計士
○○○○
印
(注2)監査人が公認会計士の場合には、
「私」又は「私たち」とする。
(注3)2年目以降の場合には「当事業年度から」は「前事業年度から」又は「前々事
業年度から」とする。又は「第××期事業年度から」とすることができる。
(注4)
「第×期事業年度、第×期事業年度及び第×期事業年度」とすることができる。
2.不適法意見の場合
貸借対照表又は損益計算書が、法令又は定款に違反し、基金協会の財産及び損益
の状況を正しく示していないと認められた場合は、以下のとおりである。
貸借対照表又は(及び)損益計算書の下記事項については、基金協会の財産及
び損益の状況を正しく示していないものと認める。
記
(例)保証責任準備金の計上額×××円は、
「農業信用基金協会の事業報告書、貸
借対照表及び損益計算書並びに計算に関する命令」(平成17年 内閣府・農林水産
省令第6号)第43条の規定に基づく要積立額×××円に対し×××円積立不足で
あり、その結果、当期利益金が同額過大計上となっている。
- 9 -
3.監査範囲の制約により監査に必要な調査ができなかった場合
(1) 限定付適法意見の場合
監査範囲の制約があり重要な監査手続を実施できなかったことにより、無限定
適法意見を表明することはできないが、その影響が財務諸表に対する意見表明が
できないほどには重要でないと判断した場合には、除外事項を付した限定付適法
意見を表明する。この場合の文例は、以下のとおりである。
当監査法人(注1)は、下記事項を除き我が国において一般に公正妥当と認
められる監査の基準に準拠して監査を行った。 ・・・
(以下、無限定適法意見
に同じ。
)・・・と判断している。
記
(必要な調査ができなかった事項及びその理由を記載する。
)
(注1)監査人が公認会計士の場合には、
「私」又は「私たち」とする。
(2) 意見不表明の場合
監査範囲の制約により、監査のために必要な調査ができず、その重要性が高い
ために意見不表明とする場合の文例は、以下のとおりである。
なお、監査範囲区分に記載する二重責任の原則に関する記述は、決算関係書類
の作成責任は理事者にある旨の記述のみ行い、監査人の責任については記述しな
いので留意が必要である。
記
(必要な調査ができなかった事項及びその理由を記載する。)
監査の結果、当監査法人(注1)は、上記事項の重要性に鑑み、以下について
の意見を表明しない。
(1) 貸借対照表及び損益計算書は、法令及び定款に従い基金協会の財産及び損益
の状況を正しく示しているか否か。
(2) 事業報告書に記載されている事項(会計に関する部分に限る。)は、法令及
び定款に従い基金協会の状況を正しく示しているか否か。
(3) 財産目録は、貸借対照表及び会計帳簿と合致しているか否か。
(4) 剰余金処分案は、法令及び定款に適合しているか否か。
(注1)監査人が公認会計士の場合には、
「私」又は「私たち」とする。
- 10 -
Ⅳ
理事者確認書
監査基準委員会報告書第3号「経営者による確認書」(平成5年1月19日、最終改
正平成16年3月17日)に基づき、基金協会の監査においても、監査意見表明に当たっ
て理事者からの書面による確認手続を実施する必要がある。
理事者確認書には、確認事項について最終的な責任を有する理事者である会長理事
又は理事長の署名(又は記名捺印)を求めなければならない。
監査基準委員会報告書第3号の内容を踏まえ、基金協会における用語等を考慮した
理事者確認書の文例は、以下のとおりである。
平成×年×月×日
○○監査法人
御中(注1)
○○○農業信用基金協会
会長理事(又は理事長) (署 名)
(又は記名捺印)
当基金協会の第×事業年度(平成×年4月1日から平成×年3月31日まで)の事業
報告書のうち会計に関する部分、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分
案(以下「決算関係書類」という。)の監査に関連して、私が知る限りにおいて、下
記のとおりであることを確認いたします。また、決算関係書類の作成責任は、理事者
にあることを承知しております。
記
1.決算関係書類は、農業信用基金協会の事業報告書、貸借対照表及び損益計算書並
びに計算に関する命令及び定款に準拠して、基金協会の財産及び損益の状況を正し
く示しております。
2.決算関係書類及びその作成の基礎となる会計記録に適切に記録していない重要な
取引はありません。
3.内部統制を構築し、維持する責任は理事者にあることを承知しております。
4.理事者や内部統制に重要な役割を果たしている職員等による決算関係書類に重要
な影響を与える不正及び違法行為はありません。
5.貴監査法人(注2)から要請のあった会計記録及び監査の実施に必要な資料は、
すべて貴監査法人(注2)に提供いたしました。
6.本日までに開催された総会及び理事会の議事録並びに重要な稟議書又は契約書
は、すべて貴監査法人(注2)の閲覧に供しました。
7.主務官庁からの通告・指導等で決算関係書類に重要な影響を与える事項はありま
せん。
- 11 -
8.決算関係書類の資産又は負債の計上額や表示に重要な影響を与える事業計画や意
思決定はありません。
9.契約不履行の場合に決算関係書類に重要な影響をもたらすような契約諸条項は、
すべて遵守しております。
10.決算関係書類に注記しているものを除き、所有権に制約がある重要な資産はあり
ません。
11.決算関係書類に計上又は注記している事項を除き、重要な偶発事象及び後発事象
はありません。
12.別添資料の貴監査法人(注2)が監査中に集計した未訂正の決算関係書類の虚偽
の表示による影響は、個別にも集計しても、決算関係書類全体に対する重要性はな
いものと考えております。
13.大口保証案件に係る債務保証損失引当金の計上額は、JA等融資機関から提供を受
けた被保証者の情報を自らの責任の下に精査した上で算定しております。
14.貸借対照表に計上されている保証債務(見返)残高及び未経過保証料並びに損益
計算書に計上されている保証料については、JASTEM(又は○○○信連電算センター)
の還元情報の内容を自らの責任の下に確認の上で利用しております。
(注1)監査人が公認会計士の場合には、
「公認会計士 ○○○○
(注2)監査人が公認会計士の場合には、
「貴殿」とする。
Ⅴ
殿」とする。
適用時期
本報告は、平成18年3月31日以後終了する事業年度から適用する。
以
- 12 -
上
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