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公共事業としての農業農村整備事業の在り方について
参考資料2-3 公共事業としての農業農村整備事業の在り方について (参考資料) 目 Ⅰ 次 社会的共通資本としての農村 1.我が国における農村の特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.社会的共通資本としての農村 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.国富としての社会的共通資本たる農村 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅱ 農業農村整備事業の特徴と社会的役割 1.公共事業としての農業農村整備事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.農業農村整備事業の特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.農業農村整備事業の果たしてきた役割と成果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅲ 38 47 56 農業農村整備事業の展開方向 1.これからの農業農村整備事業が果たすべき役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.具体的な方針と取り組むべき施策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.効率的かつ効果的に施策を推進するために必要な事項 ・・・・・・・・・・・・・ Ⅴ 7 12 15 農業・農村を巡る情勢の変化と課題 1.農村社会の変容と環境の変化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.農村における社会資本ストックの状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.社会的共通資本としての農村の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Ⅳ 1 3 5 中長期的な整備の考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 62 88 99 Ⅰ 1 社会的共通資本としての農村 1.我が国における農村の特徴(我が国の農村と農政上の位置付け) ○ 農村は、土地・水利用の面では農地や農業用水といった農業生産要素が中心であり、農業を通 じた豊かな二次的自然は、国民に食料を供給するとともに、国土を保全し、美しい景観を形成。 ○ 食料・農業・農村基本法では、「食料その他の農産物の供給の機能及び多面的機能が適切かつ 十分に発揮されるよう(中略)、その振興が図らなければならない」と農村振興の理念を規定。 【土地利用】 農業的利用 都市的利用 100% 農業的利用 80% 41% 60% 二次的自然 一体となった場 80% 26% 33% 農業生産 活動 60% 40% 79% 59% 20% 0% 都市的利用 100% 21% 40% 農村の位置付け 【水利用】 74% 生活空間 67% 20% 長期以前 0% 現在 高度経済成 高度成長期 以前 現 在 高度成長期 以前 現 在 資料: 国土交通省「国土統計要覧」、「土地白書」 資料: 国土交通省「日本の水資源」、「国土庁調べ」 ・「農業的利用」は、農用地面積(森林は含まない)、 「都市的利用」は、宅地及び道路面積とした。 ・「農業的利用」は、農業用水取水量、「都市的利用」は、 工業用水及び生活用水取水量とした。 ・高度成長期以前については、「国土統計要覧」に おける昭和40年のデータより算出。 ・高度成長期以前については、「国土庁調べ」における 昭和40年の取水量より算出。 ・現在については、「土地白書」における平成22年の データより算出。 ・現在については、「日本の水資源」における平成22年 の取水量より算出。 農業上の⼟地利⽤・⽔利⽤が相当部分を占める地域 食料の 安定供給 国土の保全 自然環境の保全 良好な景観の形成 文化の伝承 子どもの教育 等 Ⅰ 社会的共通資本としての農村 1.我が国における農村の特徴(我が国の農村の成り立ちと特徴) ○ 急峻で平地が少ない地形特性を抱える我が国では、モンスーンアジアの豊かではあるが厳しい 自然条件の下、先人達が、降水を治水・利水し、人口扶養力が高い水田農業を展開。 ○ 分散錯圃した土地条件下では、集落による自治的、集団的用水管理により初めて個々の水利用 が可能となり、水田農業の発展とともに水でつながった地域社会(農村コミュニティ)が形成。 水田農業の発展に伴う人口・耕地面積・農業水利の変遷 弥生時代中期に東北地方まで 北進した稲作 12 400 300 天水・ため池 の利用 小河川利用 共同作業のみならず、時に は水争いを通じ、様々な約束 事ができたり、証文が交わさ れたりしながら農村における 秩序が形成 ha 工事が困難だった土地の開墾、 戦国大名による治水事業 4 200 荘園制における 比較的小規模な水利用 (対峙する両岸代表) 100 こほくへいや 湖北平野(滋賀県) 0 0 600 900 1100 800 1000 1700 1600 ・ 土地改良法制定 ・新田開発の奨励 ・ 太閤検地 ・米の増産、農地開拓 ・扇状地 三角洲の耕地 整備 昭和 平成 江 戸 2000 ・安積疎水 ・ 明治用水 室 町 1900 1800 明治 鎌 倉 ・ 二毛作の確立、牛馬耕 始まる ・鉄製農具の進展 ・墾田永年私財法( ) ・ 律令国家の誕生、 土地の公有化 ・かんがい農業始まる 農業土木年表 743 安 1500 1400 戦国 律令 古墳 弥生 平 1300 1200 ・ 西暦年 0 時代区分 (想像図) 500 治水・利水の一体化、 大規模土木事業 中河川利用 2 垂柳遺跡(青森県) 大規模水資源開発、 利水システムの整備 8 6 600 大河川利用 農業⽔利の 慣⾏的秩序の形成 10 たれやなぎいせき 共同作業による 田植えや水管理 耕地面積(万ha) 推計人口(千万人) ● 農村における秩序の形成 700 ⼟地改良法制度の確⽴ 耕地面積(万 ) 14 推計人口(千万人) ● 稲作の登場 ● 地域共同の保全管理 関係者総出で行う水路の 泥上げや畦畔の草刈り 2 Ⅰ 3 社会的共通資本としての農村 2.社会的共通資本としての農村 ○ 農村は、農地・農業用水等の「社会資本」、生態系や農村景観等の「自然資本」、同じ空間で 生産と生活を営む農業者等の「人的資本」により構成された社会的共通資本と捉えることが可能。 ○ これら3つの資本を結び付けているのは、水管理といった共同作業等に由来する慣習や文化に 裏打ちされた「農村協働力」であり、農村協働力は、人々の協調行動を活発にすることによって 社会の効率性を高めるソーシャル・キャピタルとして、農村の持続的かつ安定的な発展を実現。 社会的共通資本としての農村が有する多様な役割 安 定 持続的な ⾷料供給 環境への貢献 水循環制御 物質循環調整 安 全 生物多様性保全 安 心 土地空間保全 自然環境を始めとする 多様な社会的共通資本 を持続的に維持 人類が生存するために 最も大切な食料を生産 地域社会の 形成・維持 ※「地球環境・人間生活にかかわる農業及び多面的 な機能の評価(日本学術会議)」p37を参考に作成 地域社会振興 伝統文化保存 人間性回復 自然と人間の調和的な 関わり方を可能にし、 社会・文化の基礎を形成 人間教育 ■ 本研究会における「農村協働力」と「農村」の捉え方 ◇ 農村協働⼒ ・「農村におけるソーシャル・キャピタル研究会とりまとめ(農林水産省、平成19年6月)」では、「現場レベルでの施策 の理解と浸透を図るため、『農村におけるソーシャル・キャピタル』のうち、農地・水・環境保全向上対策が対象とする、 今後維持・再生すべき部分を、国民に分かりやすい日本語で表現する必要がある」との考えから、この対象に該当するも のを「農村、あるいは農村と都市の複数の主体が、農村の活性化のための目標を共有し、自ら考え、力を合わせて活動し たり、自治・合意形成などを図る能力または機能」として「農村協働力」と名付けた。 しかし本研究会では、「農村におけるソーシャル・キャピタル」※に当たるものを広く「農村協働⼒」として捉えるこ ととした。 ◇農 村 ・ 農村の範囲については、上記とりまとめにおいて、「主に農業集落で構成され、地域農業資源の維持管理や農業⽣産⾯ での相互補完、⽣活⾯での相互扶助といった集落を維持している地域」と捉え、都市にはない農業集落特有の社会関係を 維持しているコミュニティに着⽬したものとして用いている。 しかし本研究会では、都市近郊であってもこのような集落機能が存在していれば、「農村協働⼒」が発揮されるポテン シャルを有しているとし、必ずしも農村は都市から分断されたものではなく、広義の意味で捉えた「農村協働⼒」によっ て両者はつながりうると考えることとした。 ※ ソーシャル・キャピタルとは、「協調的行動を容易にすることにより社会の効率を改善しうる信頼、規範、ネットワークのような社会的組織 の特徴」を指す(出典:パットナム著 河田潤一訳「哲学する民主主義 伝統と改革の市民的構造」)。 注)「食料・農業・農村基本法解説」では、農村は、「行政区画を示すものではなく、また、地域の範囲を具体的に限定する概念として使って いるものではない。一般的に、農業的な土地利用が相当の部分を占め、かつ、農業生産と生活が一体として営まれており、居住の密度が低 く分散しているようなところ」を指すとされている。 農村集落特有の社会関係に着目する本研究会の捉え方では、結果としてこれよりも 広い範囲となる可能性がある。 4 Ⅰ 5 社会的共通資本としての農村 3.国富としての社会的共通資本たる農村 ○ 農村は、農業生産活動を通じて創り出される食料供給機能のみならず、国土・自然環境保全、 人格形成・教育、保健休養といった広く国民が享受する公益的機能を発揮。これは、私的な生産 活動に付随して生まれ、対価を求めることが無視されている、我が国の“見えざる国富”。 ○ 農業・農村への投資をないがしろにすれば、今後、農村が都市に対して提供しうる様々な価 値、さらには来るべき社会に向けて我が国が創り出していくべき新たな価値の母胎となる豊かな基 盤の衰退につながるおそれ。 農業・農村の有する公益的機能 地下⽔涵養 ⼟壌侵⾷(流出)防⽌ 持続的な農業生産活動 伝統⽂化の保存 ⽣物⽣態系保全 体験学習と教育 ⼈間性の回復(都市的緊張の緩和) ※「地球環境・人間生活にかかわる農業及び多面的な機能の評価(日本学術会議)」を引用 市場で売買されず金銭をもって ※ 対価されることのないために 農村コミュニティ 機能の活用 地域社会の振興 個々の生産者によって、大部分 はそ の対 価を求めること が 無視 されている社会的利益 内部化 河川流況の安定 国⺠の共有財産でもある 洪⽔防⽌ ⼟砂崩壊防⽌ 内部化 ※ ⽇本の原⾵景の保全 ﹁ ⾒えざる国富︵ストック︶﹂ 地域資源(農地や 水)の有効利用と 適正な管理 農業は、商品としての食料を生産しているだけでなく、自然環境システム と社会経済システムをつなぐ生活・生命の再生産システムを有するもの (参 考) 包括的「富」指標 (IWI, Inclusive Wealth Index) ・ 国際的にも、世代を通じた人々の福祉(well-being)の実現を目指す観点から、従来の国民総生産(GDP)や人間開 発指数(HDI)などのように短期的な経済発展を基準とせず持続可能性に焦点を当て、製造資本(機械、インフラ 等)、人的資本(教育やスキル)、自然資本(農地、森、石油、鉱物等)を含めた国の資産全体を評価し、数値化しよ うとする「包括的『富』指標」の開発に向けた議論が活発化。 ・ 国連大学(UNU)と国連環境計画(UNEP)は、平成24年6月にブラジルで開催された国連の持続可能な開発会議(リオ +20)において「包括的『富』報告書」を公表。 ・ 同報告書では、生産・人工資本、人的資本、ソーシャル・キャピタル、自然資本といった「生産的基盤」を、衣食 住、人間関係、余暇活動といった人々のニーズを満たす要素を生み出す「包括的『富』」と位置付け、この富を減らさ ないように次世代に引き継いでいくことが持続的な発展に必要であるとしている。 製造資本 現在から将来までの 世代が受ける 良好な生活や福祉 ・住宅ストック 人的資本 ・教育 ・工場機械等 ・公共資本 ・健康 自然資本 ・化石燃料 ・鉱物 ・森林資源 ・農地 ・漁業 その他 ・原油価格の上昇 ・生産性の向上 ・人口変化 6 Ⅱ 7 農業農村整備事業の特徴と社会的役割 1.公共事業としての農業農村整備事業(時代ごとの変遷) ○ 農業農村整備事業は戦後当初より公共事業として実施され、その時々の社会経済情勢に応じた 政策手段としての位置付けの下、農村を施策の対象として展開。 ○ 農業生産に必要な農地・水資源の整備と農村環境の改善を図ることにより、国民に対する食料 の安定供給や農村の健全な発展に寄与。 S20 S25 S30 社会の動き 戦後復興 S35 S40 S45 基本法農政(高度経済成長) S50 S55 米の生産調整の始まり S60 H2 H7 H12 貿易自由化・生活大国 H17 H22 新基本法農政 ・プラザ合意を契機とした農産物の貿易 ⾃由化と円⾼による農産物価格の低下 ・終戦直後、敗戦からの復興 ・社会の⼀応の安定 ・⾼度経済成⻑(S29〜S48頃) ・地域資源を活⽤した地場産業の衰退 ・コメ余剰が顕在化 ・農村における急激な都市化・混住化 ・農村における⽣活環境整備の遅れ ・農業基本法の制定(S36) ・農地法の改正(S45) 昭和20年代 ~ 農業農村整備事業の対応 ・帰還者や失業者を受け入れるため、緊急開拓を 中心とした農業農村整備事業を実施 ・農地改革の進展、土地改良法の制定(S24) ・開墾から既耕地の土地改良へ、失業対策から 食料増産へと重点を移行 ・国⺠の価値観の変化(物の豊かさ→⼼の豊かさへ、 経済成⻑→⽣活の質の向上へ) ・公共投資基本計画が閣議決定(⽣活関連投資に重点) ・新政策の公表(H4) ・⾷料・農業・農村基本法の制定(H11) 昭和40年代中盤 ~ ・稲作中心の投資から稲作転換の汎用化や畑地改良へと重点を移行 (畑地総合土地改良事業や排水対策特別事業の創設) ・農村の都市化から農業資源を保全することを目的とした各種防災 事業の創設 ・都市的水需要に応える農業用水合理化事業等の創設 ・農村の生活環境整備のための農村総合整備事業等の創設 ・第二次土地改良長期計画(S48~57) 昭和30年代後半 ~ ・他産業との格差是正を基本目標とする農業基本法の制定(S36) ・農業の生産性向上、農業生産の選択的拡大、農業構造の改善といった 政策の方向性に則し、予算名称を食糧増産対策事業費から農業基盤整 備事業費に変更 ・労働生産性向上のためのほ場整備事業の創設(S38) ・第一次土地改良長期計画(S40~49) 平成 ~ ・生活基盤整備、農村整備、防災保全を 3つの柱に据え、予算名称を農業農村 整備事業費に変更 ・第四次土地改良長期計画(H5~14) ・事業の実施原則として、環境との調和へ の配慮を明確化(H13) ・農家や地域住民らによる農地や水、環境 の保全活動を支援(H19~) 昭和60年代 ~ ・担い手への農地集積を図る大区画ほ場整備事業の創設 ・土地改良負担金対策の創設 ・第三次土地改良長期計画(S58~S67) Ⅱ 農業農村整備事業の特徴と社会的役割 1.公共事業としての農業農村整備事業(必要性:「市場の失敗」) ○ 農業農村整備事業は、広く国民全体が享受する食料安定供給、国土環境保全、保健休養といっ た公益的機能を発揮させる基盤を整備するもの。これを農家の私的な投資のみに委ねた場合には 国民経済上、農業は適正水準とならず、地域的な不均衡も生ずるおそれがあるため、公共事業と して行うことが妥当。 ○ 農業農村整備が適切な水準で行われなかった場合、これまで供給されてきた公益的機能が食料 危機や災害の発生といった「社会的費用」という形で顕在化し、国民の負担に跳ね返るおそれ。 ・ 価格・費用 一般に食料としての農産物のみに着目すると、農業が同時に 供給する公益的機能は無視されることになり、市場メカニズム に委ねた場合(=政府の介入がない場合)、公共財の過少供給 が発生する。 農産物生産のみに対する需要曲線 外部効果も含めた 需要曲線 ⾷料安定供給の危機 市場の失敗 ○ 我が国農業の動脈であり静脈である農業水利施設は、機能が持続 的に発揮されることにより、米の安定生産を実現。 現 況 (単収515kg/10a) ▲58% 基幹的農業水利 施設の利用が 不可能となった場合 (約338万t) 安定的な水が 配水されない場合 41%の減収 現 況 (約824万t) (単収216kg/10a) ※ 農村振興局試算 供給曲線 基幹的農業水利施設がカバーする水田面積 水稲作付面積 (160万ha) (113万ha) 社会的最適点 市場における供給 数量 ○ 畦畔に囲まれている水田は、雨水を一次的に貯留し、時間を掛け て徐々に下流に流すことにより、洪水流出を防止・軽減。 多い ( 流れる量) 社会的効用の損失 外部効果の喪失 市場均衡点 ・水田は出口が狭く、堰板がある。 ・堰板で降雨を貯留し、堰板を超える量の降雨 も出口が狭いため、一時貯留機能を発揮する。 農地がない場合 ピーク時の流量 が減少する 農地がある場合 少ない 早い 遅い (時間) 流量のピークが遅れる 8 Ⅱ 9 農業農村整備事業の特徴と社会的役割 1.公共事業としての農業農村整備事業(必要性:「規模の経済」) ○ ダムや頭首工といった共同で利用する農業水利施設等は、一定程度の規模をもって整備するこ とで「規模の経済」が働き、建設等のコストひいては農産物の生産コストを削減することが可能。 ○ これを個別農家の私的な投資に委ねた場合、小規模で非効率な施設整備しか行われず、公共投 資により実現される水準よりも高いコストで農産物が供給され、社会的損失が生じることに。 ○ 合 口 事 業 農業生産コストへの影響 農業生産コストのうち、 農業水利施設等に係るコスト 近接して多数の取⽔⼝がある河川において、取⽔の安定化、⽔利⽤の合理化、 維持管理費の低減を図るため、⾏政が、集落ごとに異なる慣⾏⽔利を調整しつ つ取⽔⼝を統廃合し、⾼度な取⽔施設を整備(ソフト・ハード⾯の関与)。 平均費用曲線 ※ ◎ 堰止位置 ( )受益面積 数字は堰間の距離 個別農家がそれぞれ 小規模な投資を 行った場合 公共事業として最適な 規模で投資した場合 浅瀬石川 用 水 路 線幹 岩木川 相馬川 左 岸 弘前市 岩木川統合頭首工 ※ 平均費用: 生産物1単位当たりに掛かる費用 ← 取⽔堰ごとに ⽔路が並列して おり、⾮合理的 な⽤⽔系統 12の堰を 一つの 頭首工に 統合 岩木川統合頭首工 施設能力 事 業 の 費 用 逓 減 性 合口前の水路網 Ⅱ 農業農村整備事業の特徴と社会的役割 1.公共事業としての農業農村整備事業(必要性:「取引費用の削減」) ○ 農業農村整備事業は、広域的かつ空間連続的な形で実施する必要があることから、関係者間で 合意形成を図るためには、膨大な取引費用が掛かるという特徴を有するもの。合意がまとまらず、 虫食い的に不参加地区が点在すると事業効率が悪くなり、事業全体を断念せざるを得ない可能性も。 ○ 農家の負担水準を下げる公的助成は、この取引費用を軽減し、合意形成を促すことにより、社会的に 望ましい状態を達成することが可能。 ほ場整備を通じた⾮農⽤地の創出による 更なる取引費⽤の軽減 事業目的 農地の大区画化による担い手への利用集積の促進 地区内で高速道路用地を創出し、用地買収に難航していた道路事業を円滑化 かみごうせいぶ 上郷⻄部地区(愛知県豊⽥市)では、伊勢湾岸⾃動⾞道の整備と連携し、換 地により創出された⾮農⽤地 27.6haを道路⽤地として売却することで、道 路事業の推進に寄与するとともに、地元負担を軽減。 受益面積216ha 受益者数819人 豊田 JCT 伊勢湾岸 自動車道 東名高速道路 日本道路公団 非農用地の創出 地元(土地改良区) 事業用地の確保 用地買収 地元負担軽減 創出した非農用地 優良農地 地域における効率的な土地利用調整を図りつつ、 大区画でまとまった優良農地の確保を実現 10 11 (参 考) 農業農村整備事業により生産性が向上するが、需要が伸びない限り農産物の市場価格は低下し、生産量拡大を意図し た事業の便益(生産者メリット)は、消費者余剰の拡大として社会的に還元。日常生活に欠かせない農産物は、価格弾 力性が小さいため(需要曲線の傾きは急)、生産者余剰(≒収益)よりも消費者余剰が増加する傾向。 事業効果発現の流れ(イメージ) 供給曲線のシフトと余剰の変化 農業農村整備事業を 行った場合の供給曲線 消費者余剰の増加 労働時間の短縮 機械経費の低減 生産コスト低減 <供給曲線の下⽅シフト> 生産者余剰の増加 社会的余剰の差 農業農村整備事業の実施 生産者余剰の増加 消費者余剰の増加 農業生産所得の低下 農産物の需要曲線 数量 ※ 社会的余剰 = 生産者余剰 + 消費者余剰 ※ 消費者余剰: 消費者が最大限払っても構わない価格から、 実際に支払った価格を差し引いた金額 生産者余剰: 生産者の収入から生産費用を差し引いた金額 等 農産物価格の低下 ・農業外の労働(6次産業化) ・他作物(高収益作物等)の導入 ・農地集積 集約化による規模拡大 価格・費用 農業農村整備事業を 行わなかった場合の 供給曲線 ・ ○ 農業農村整備事業による消費者への利益(消費者余剰の増加)