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第10~11講

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第10~11講
今日の学習項目
1.会計上の認識と測定
2.現金主義と発生主義
3.発生主義会計の諸原則
4.資産の評価基準
5.まとめ
会計学入門
第10~11講 会計上の認識と測定
1
2
会計の5W1H
1.会計上の認識と測定
• 認識(recognition)
ある項目を財務諸表に正式に記載すること。
仕訳を切って記帳すること。
「何」を,「いつ」,認識するか。
Who
誰が
Where
どこで
Why
なぜ
What
何を
When
いつ
会計主体論
会計公準
資本主理論
企業主体論
企業実体の
公準
会計上の判断
の視点の決定
会計の場の決
定
How
どのように
会計の目的
会計認識
会計認識
会計測定
情報提供
利害調整
取引・事象
認識規準
配分・評価
会計の基本的
機能の決定
認識対象の決
定
認識のタイミン
グの決定
測定値の決定
• 測定(measurement)
ある項目の金額を決定すること。
狭義の会計処理。
3
4
設 例
2.現金主義と発生主義
• 現金主義
現金の収入と支出の時点で,収益と費用を認識・測定する考
え方または記帳方法。
現金の収支額が測定の基準となる。収入支出額基準。収支
的評価の基準。
• 現金¥300を元入れして開業した。
• 商品¥300(3個,@¥100)を仕入れ,代金は
現金で支払った。
• 商品2個を¥240で販売し,代金は掛けとした。
• 発生主義
営業活動の成果とそれに関連する事実が発生した時点で,収
益と費用を認識する考え方または記帳方法。
伝統的な測定の基準は現金の収支額。収入支出額基準。収
支的評価の基準。現金主義と共通。近年では時価基準も併
用。
5
6
利益計算の相違
発生主義による場合・・・
売上代金は現金収入ではない
(売掛金という債権)ので,収益
として認識されない。
• 現金主義による計算
元入収入 300
仕入支出 300
利
益 0
下記のような貸借対照表が出来上がっています。
収益・費用として認識されない項目(期間的未決項目)
が,ここに収容されています。
①元入収入は,営業活動の成
果ではないので,収益として認
識されない。
②売掛金は,現金収入ではな
いが,営業活動の成果なので,
収益として認識される。
• 発生主義による計算
売上収益 240
売上原価 200
利
益 40
貸借対照表
売 掛 金
商
品
240 資本金
100 利
益
300
40
資産合計
340 資本合計
340
7
8
発生主義の意義
見越し・繰延べ
• 一期間の営業活動の成果(収益)と,それを得
るための努力(費用)を関連づけ,適正な期間
損益計算を行うことが可能となる。
見越し:当期に発生した営業取引に関する後払い・後受け
繰延べ:当期に発生した営業取引に関する前払い・前受け
前 期
当期のガス代
当 期
次 期
当期の電気代
80
繰延
見越
当期の家賃 100
計算上のポイント
• 現金収支だが,当期の成果・努力を表さない
項目は,利益計算から排除する。
• 現金収支ではないが,当期の成果・努力を表
す項目は,利益計算に算入する。
見越
100
期間の振り替えなし
前期の水道代 30
繰延
次期の保険料 50
前期の支出 80
前期の費用 30
当期の支出 180
当期の費用 280
次期の支出 100
次期の費用 50
9
10
見越し・繰延べ/収益・費用
見越し・繰延べの図解
• 収入支出と収益費用の期間的ズレを調整
するための会計手続。
前期
当期
見越し
●
繰延べ
収 益
①資 産
(例)未収家賃
②負 債
(例)前受地代
費 用
③負 債
(例)未払利息
④資 産
(例)前払保険料
次期
繰延べ
●
見越し
繰延べ
●
●
見越し
●収入支出の発生
11
12
このとき当期のP/LとB/Sでは
①見越し収益の設例
収 益
300,000+150,000
• 家賃6ヶ月分(4月分から9月分まで)¥300,000を現金で受け
取った。当期の家賃収入=¥ 300,000
B/S
• 決算にさいし,家賃の未収分(3ヶ月分)¥150,000があったの
で,これを計上した。 → 当期の家賃収益=¥450,000
当期の家賃収益 ¥450,000
当期の受取家賃収入
¥300,000
現 金
300,000
P/L
利 益
450,000
利 益
450,000
受取家賃
450,000
未収家賃
150,000
次期の受取家賃収入
¥150,000
資 産
収益の見越し
未収分を当期に見越す
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14
このとき当期のP/LとB/Sでは
②繰延べ収益の設例
B/S
P/L
前受地代
60,000
利 益
120,000
現 金
180,000
当期の地代収入 ¥180,000
受取地代
120,000
利 益
120,000
次期の地代収益
¥60,000
前受分を次期に繰延べる
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このとき当期のP/LとB/Sでは
③見越し費用の設例
負 債
• 利息6ヶ月分(4月分から9月分まで)¥42,000を現金で支払っ
た。
収益の繰越し
B/S
P/L
未払利息
21,000
• 決算にさいし,利息の未払分(3ヶ月分)¥21,000があったの
で,これを計上した。
損 失
63,000
当期の利息費用 ¥63,000
当期の利息支出
¥42,000
180,000-60,000
収益の繰越し
• 決算にさいし,上記の受取地代のうち前受分(2ヶ月
分)¥60,000を次期に繰り延べた。
当期の地代収益
¥120,000
収 益
負 債
• 地代6ヶ月分(9月分から翌年2月分まで)¥180,000を現金で
受け取った。
負債・資本
42,000
支払利息
63,000
損 失
63,000
次期の利息支出
¥21,000
費 用
未払分を当期に見越す
42,000+21,000
17
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このとき当期のP/LとB/Sでは
④繰延べ費用の設例
• 火災保険料1年分(4月分から翌年3月分まで)¥60,000を現
金で支払った。 当期の保険料支出= ¥60,000
費 用
60,000-15,000
B/S
• 決算にさいし,上記の保険料のうち前払分(3ヶ月
分)¥15,000を次期に繰り延べた。→当期の保険料(費用)=
¥45,000
当期の保険料支出 ¥60,000
当期の保険料費用
¥45,000
資 産
費用の繰越し分
P/L
前払保険料
15,000
損 失
45,000
負債・資本
60,000
保険料
45,000
損 失
45,000
次期の保険料費用
¥15,000
前払分を当期に繰延べる
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20
発生原則
3.発生主義の諸原則
• 発生主義会計を支える最も基本的な原則。現金主
義との最も大きな違い。見越し・繰延べの根拠。主と
して費用の認識原則。 (accrual basis)
(1)発生原則
(2)実現原則
(3)対応原則
【意義】 収益・費用は,現金収支の事実によらず,営
業取引の発生の事実に基づいて認識する。営業活
動の成果と努力の適正な認識。
【出典】「すべての費用及び収益は〔・・・〕その発生した
期間に正しく割当てられるように処理しなければな
らない。」(企業会計原則第二の一のA)
21
22
実現の2つの要件
実現原則
• 収益の認識原則。 (realization basis)
(1)財貨やサービスの引渡し(販売)/対外取引テスト(成果性)
(2)対価としての貨幣性資産(売掛金・受取手形等)の受領/流動性テ
スト(処分可能性)
【意義】収益は,財貨やサービスが市場で取引された
時点(実現の時点)で認識する。収益(経済的価値)
は,生産プロセスで徐々に発生するが,実現するま
で認識しない。収益の確実性と客観性を保証。
【意義】(1)により収益の裏づけとなる資産の所有権が確定,(2)により
収益の客観的な金額が確定。処分可能利益の算定に適合的。原
価主義の収益認識基準。販売基準→原価・実現基準。
【出典】「ただし,未実現収益は,原則として,当期の損
益計算に計上してはならない。」 (企業会計原則第
二の一のA)
【例外】(1)割賦基準。収益の記録・リスク負担が不均等。回収期限到
来日(権利義務確定主義),または分割代金の入金日(現金主義)
に,売上収益を計上。
(2)工事進行基準。生産基準。仕掛工事原価の測定および工事対
価の予定が確定的。工事の進行度に応じて収益を認識。契約が
確定しており,収益の合理的な見積もりが可能。
(3)工事完成基準。価格変動期。工事の引渡し,対価および原価
の確定の時期をもって,収益を認識。
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24
リスクからの解放のCrucial Event
投資のリスクからの解放
• 定義
「投資のリスクとは,投資の成果の不確実性であるから,成果が事
実となれば,それはリスクから解放されていることになる。投資家
が求めているのは,投資にあたって期待された成果に対して,ど
れだけ実際の成果が得られたかについての情報である。」
(ASBJ[2006]第3章par.23)
事前の期待が現実のものに置き換わること。辻山[2007]150頁。
資産の種類
• 純利益の認識規準
「純利益とは,特定期間の期末までに生じた純資産の変動額(・・・)
のうち,その期間中にリスクから解放された投資の成果であって,
報告主体の所有者に帰属する部分をいう。純利益は,純資産のう
ちもっぱら株主資本だけを増減させる。」(ASBJ[2006]第3章
par.9)
認識事象
備
考
流動性テスト(処分可能性)を
重視。
企業会計原則第二の一のA
「未実現収益は,原則として,
当期の損益計算に計上して
外部との取引を通じてそれら はならない。」(発生主義の原
則)
が現金や現金請求権という
形で結実したとき。
辻山[2007]144頁。
事業投資
事業のリスクに拘束されない
独立の資産を獲得したとみ
なすことができるとき。
ASBJ[2006]第4章par.57.
金融投資
価値の変動。市場における
値上がり。ASBJ[2006]第4
章par.57.
活発な市場における値上が
り。辻山[2007]144頁。
対外取引テスト(成果性)を重
視。
25
26
事業投資と金融投資
投資目的
外形
事業投資
実現概念と「リスクからの解放」概念
•
「投資のリスクからの解放」という概念は,広義の「実現」概念と基本的に同一の
概念と考えてよい。
•
「実現可能」概念との異同。「現金または現金請求権に容易に転換可能」な状態
が「実現可能」(FASB概念書第5号par.83a)。売買目的有価証券は,①売却処
分に事業遂行上の制約がなく,②値上がりを期待して保有された資産である。し
たがって,「実現可能」な状態で,投資のリスクから解放される。149頁。
•
子会社関係会社株式やその他有価証券は,「容易に転換可能」だが,①売却処
分に事業遂行上の制約があり,②時価の変動を期待して保有された資産ではな
い。したがって,「実現可能」な状態でも,投資のリスクから解放されていない。
149頁。
子会社・関連会社株式→原価評価
その他有価証券→時価評価・評価差額は資本直入(評価損はP/L計上可)
•
辻山栄子[2007]「財務諸表の構成要素と認識・測定をめぐる諸問題」斎藤静樹編
著『詳解・討議資料・財務会計の概念フレームワーク』中央経済社,135-153頁。
金融投資
事業資産
事業遂行用の機械・設
備
投資用不動産
子会社・関連会社株式
その他有価証券(持ち
合い株)
売買目的有価証券
金融資産
事業投資
事業の遂行を通じて成果を得ることを目的にした投資。その
目的のために保有された資産・負債。原価・実現基準。
金融投資
市場価格の変動によって利益を獲得することを目的にした
投資。時価・実現可能性基準。
「リスクからの解放」は,以上を統一的に説明する概念。
27
実現概念の拡張
28
対応原則
• 「実現可能」概念を,市場条件(容易に転換可能・処分
可能性)に加えて,事業の制約条件(成果性)も満たし
ているものと狭義に解釈すれば,「リスクからの解放」
概念は,実現概念と実現可能概念を統一的に表現し
た概念に他ならないということができる。153頁。
• 「実現」が用いられなかったのは,①当該用語が様々
な解釈のもとで使われてきたために混乱を避けるため,
②伝統的な実現概念がIASB等で批判の的になって
以来,古い概念として一種のタブー視される傾向が顕
著になっていることを考慮したためであった。153頁。
29
• 収益と費用を関連づけて認識することを要請した原則。
(matching principle)
【意義】当期の収益と費用を対応させることによって,適正な利
益計算を行う。原価配分(減価償却等)の基準となる。①個別
的対応(例・売上高と売上原価)と,②期間的対応(例・売上高
と支払利息)の2つがある。
【出典】「費用及び収益は,その発生源泉に従って明瞭に分類
し,各収益項目とそれに対応する費用項目とを損益計算書
に対応表示しなければならない。」(企業会計原則第二の一
のC)
30
資産評価と費用認識
4.資産の評価基準
ー費用性資産の場合ー
第2第
期1
末期
の末
資の
産資
価産
額価額
(1)取得原価
(2)市場価格
(3)再調達原価
(4)実現可能価額
(5)現在割引価値
(6)その他
入金予定額
被投資企業の純資産額に基づく額
資産原価の配分プロセス
Cost Allocation
資産の取得原価
300
B/S計上
資産評価と費用認は
裏表の関係にありま
す。評価基準は基本
的に取得原価です。
費用に配分
100
第3期末
資産価額
ゼロ
100
原価配分
完了
100
費用に配分
費用に配分
第1期
100
P/L計上
100
第2期
100
P/L計上
第3期
100
P/L計上
100
会計期間
100
31
取得原価
評価 金融資産の評価と収益認識
【定義】資産取得のさいに支払われた現金もしくは現
金同等物の金額。歴史的原価。費用に配分した後
の残高は未償却原価という。
売買目的有価証券の場合
評価差額
50
取得原価
100
100
期 首
期 末
資産評価と収益・費用認は
裏表の関係にあります。評
価基準は時価です。
P/Lに収益として計上
【測定値の意味】実際に投下した資金の額。未償却原
価は収益に賦課されていない額(未回収資金)。原
価配分の基礎。当初の投資行動を継続することが
前提。
時価(市場価格) 150
B/Sに資産として計上
期末の有価証券価額(資産)=150
有価証券評価益(収益)=50
※[原価>時価]の場合は評価損が
発生します。e.g.,時価=70,評価損=30
32
【主な適用対象】有形固定資産。e.g.,設備,建物等。
33
市場価格
34
再調達原価
【定義】市場で成立している価格。一般に購買市場と
売却市場が区別されない場合の価格をいう。
【定義】購買市場と売却市場が区別される場合の購買
市場で成立している価格。取替原価。
【測定値の意味】資産の経済価値。市場価格の変動
額には,将来キャッシュ・フローや割引率に関する
市場の平均的な期待の改訂が反映される。事業上
の制約がなく清算できる投資で,かつ市場における
有利な価格変動を期待しているもの(金融投資)の
成果を表す。
【測定値の意味】その資産を購入し直すのに必要な資
金の額。資産の調達時期を遅らせていたならば生じ
たはずの損益。e.g.,低価法における評価基準。
【主な適用対象】金融投資。e.g.,売買目的有価証券。
35
【主な適用対象】棚卸資産。e.g.,原材料,商品等。
36
実現可能価額
割引現在価値
【定義】購買市場と売却市場が区別される場合
の売却市場で成立している価格(見積販売経
費を控除した金額)。正味売却価額。
【定義】資産の利用から得られる将来キャッシュ・フローの見積
額を,一定の割引率で測定時点まで割り引いた測定値。
キャッシュ・フローを継続的に見積り直す場合と,割引率を継
続的に改訂する場合がある。
【測定値の意味】資産を測定時点で売却処分す
ることによって回収できる資金の額。売却して
いれば生じたはずの損益。
【測定値の意味】
資産の価値を表す。資産の利用価値。市場の存在しない資産
の公正価値。用役可能性の測定値。経済学的利益。
【主な適用対象】減損会計を適用した場合の有形固定資産。市
場の存在しない資産。
【主な適用対象】有形固定資産。e.g.,土地等。
37
割引現在価値(PV)の算式
38
割引現在価値(PV)の考え方
Vn = V0(1+r)n
c1
c2
cn
TV n
PV =
+
+ L +
+
(1 + r ) (1 + r ) 2
(1 + r ) n (1 + r ) n
V2 = V0(1+r)2
V1 = V0(1+r)
c i : 第 i期のキャッシュ・フロ ー
r : 割引率
TV:終価
n
V0
PVの計算例:C=100, TV=1000, r=0.1
V2
V1
V0 = V1/(1+r)
第1期
第2期
第3期
第3期
終価
合計額
名目CF
100
100
100
1000
1300
割引CF
90.9
82.6
75.1
751.3
・・・・・
V0 =V2/(1+r)2
Vn
V0=Vn/(1+r)n
第n期の価値(Vn )がV0
(V0 )はVn/(1+r)nに等しいということです。つまり,第n期の価値(Vn )
を期初の価値水準で表したものが,Vn/(1+r)nであるということです。
(1+r)nで与えられるということは,期初の価値
999
39
流列Vnom( V1,V2 ,・・・,Vn )の総和は名目価値を,流列Vsub(V0,V0,・・・,V0)の
総和は実質価値を,それぞれ表します。この考え方を,キャッシュフローの流列
(C1,C2,・・・,Cn)に適用すると,前頁の公式が導かれます。
40
現行制度における評価基準
5.まとめ
(1)事業投資(事業用資産)は,原則として取得原価で評価しま
す。原価配分(費用配分)の基礎になります。
ただし,①減損会計では資産の利用価値=回収可能額 (割
引現在価値),②低価法では再調達原価を用います。
【理由】前者は,①時価の変動により利益を得ることが目的で
あり,②売却することに事業遂行上の制約がない。後者は,
①時価の変動により利益を得ること以外に目的があり,②事
業遂行上等の必要性から直ちに売買・換金できない。
(1)会計上の認識と測定の特徴的な考え方を,正確に
理解しましょう。
(2)最大のポイントは,発生主義の考え方です。現金主
義との比較で,その特徴を理解しましょう。見越し・
繰延べが,キーワードです。
(3)発生主義の3つの原則の意味を,正確に理解しま
しょう。
(4)資産評価と費用・収益認識は表裏の関係にありま
す。この点をふまえて,資産の代表的な評価基準を
整理しておきましょう。
41
42
(2)金融投資(金融資産)は,原則として時価(市場価格)で評価し
ます。時価評価差額は,売買目的有価証券の場合は損益に
算入し,その他有価証券の場合は資本に直入します。
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