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業務用電化厨房における換気量低減時の換気性 能の検証と省エネ効果

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業務用電化厨房における換気量低減時の換気性 能の検証と省エネ効果
電力中央研究所報告
電 気 利 用
業務用電化厨房における換気量低減時の換気性
能の検証と省エネ効果の推定
キーワード:業務用電化厨房,エネルギー消費量,温熱環境,実測,
住宅用室内温熱環境設計ツール
背
報告書番号:R12001
景
電化厨房では、調理時に燃焼ガスが発生しないため、換気量を低減し、それによって
換気・空調用の消費電力を減らすことが可能であると考えられている。しかし、換気量
の低減による室内環境への影響の有無、また換気量低減による換気・空調用消費電力の
削減量について、営業中の実厨房を対象に検討した例は見当たらない。
目
的
厨房を含む実食堂
1)
での換気量の低減試験を行い、換気量低減による温冷感の悪化、
結露、臭いの増加について問題の有無を明らかにする。また同食堂を対象に、換気量低
減による年間の換気・空調用エネルギーの削減効果をシミュレーションによって明らか
にする。
主な成果
1. 換気量低減による明確な問題の有無の把握
実食堂一ヶ所をフィールドとして、長期にわたる換気量の低減試験
2)
を行った。厨房
内作業者へのアンケート結果、並びに食堂内の温湿度計測結果から、同食堂においては、
換気量の変更によって、温度の有意な上昇や温冷感の悪化、また結露や臭いの増加につ
いて、明確な問題はみられなかった(図 1)。
2. 換気量低減による換気・空調用消費電力量の削減効果
同食堂を対象に、当所開発の室内温熱環境設計ツール CADIEE を用いて空調用消費電力
量のシミュレーション計算 3)を行い、
換気量の低減による年間省エネルギー量を算出した。
その結果、換気量の低減 4)によって、換気用消費電力量を約 3.3MWh/年(換気用消費
電力量の 60%)、空調用消費電力量を約 1.1MWh/年(空調用消費電力量の 11%)削減で
きることが分かった(図 2)。これは、食堂の年間消費電力量全体の約 4%に相当する。
注 1) 厨房のほか、客席や洗い場、事務室も含んだ食堂全体を対象として、試験およびシミュレーションを
行った。食堂の延床面積は 436 ㎡(厨房 25%、客席 63%、その他 12%)、客席数 160 席、1 日あたり
平均提供食数 160 食、従業員数 6-7 名である。
2) 2011 年 6 月から 2012 年 2 月まで、厨房および洗い場の排気フードの排気ファン回転数を変更するこ
とによって、週ごとに食堂の換気量を 3 段階(排気フードの平均面風速 0.25m/s、0.20m/s、0.15m/s)
に変更した。厨房内温熱環境、機器消費電力を連続計測すると共に、厨房内作業者を対象として毎日、
アンケート調査を行った。実験対象日は延べ 158 日となった。
3) 東京地域の AMeDAS 標準気象データを用いて、年間を通したシミュレーションを行った。また対象
とした食堂には、室内の温度によらず一定運転をするエアコン(定速機)が設置されていたが、シミ
ュレーションでは、室内の温度を制御できるエアコン(インバータ機)を前提として計算を行った。
また換気スケジュール、時刻毎の室内人数、室内発熱等は実測データに基づいて決定した。
4) 排気フード面の平均面風速を、国土交通省による建築設備設計基準の面風速規定の最低値である
0.30m/s からその半分の 0.15m/s に低減した場合。
厨房内温度(夏期、時系列変化)
0.20m/s
0.15m/s
平均面風速0.25m/s
100%
80%
80%
回答の割合
30
60%
40%
20%
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22
時刻[h]
換気量低減による室温の
上昇は見られなかった#1。
どちらでも
ない
100%
80%
やや寒い
60%
40%
20%
0%
60%
40%
20%
0%
0‐2
2‐4
4‐6
6‐8
8‐10
10‐12
12‐14
14‐16
16‐18
18‐20
20‐22
22‐24
24‐26
26‐28
28‐30
0%
26
やや暑い
0‐2
2‐4
4‐6
6‐8
8‐10
10‐12
12‐14
14‐16
16‐18
18‐20
20‐22
22‐24
24‐26
26‐28
28‐30
温度[℃]
34
暑い
平均面風速0.15m/s
100%
回答の割合
0.25m/s
平均面風速
温冷感に関するアンケート結果
日平均外気温度[℃]
日平均外気温度[℃]
寒い
F3(0.25m/s
)
換気量低減によって温冷感に
差は見られなかった#2。
室温の上昇による
温冷感の悪化?
換気量低減によって考えられる問題
結露に関するアンケート結果
湿度の上昇による
結露の増加?
臭いの増加?
臭いに関するアンケート結果
100%
80%
60%
40%
20%
0%
0.25m/s
0.20m/s
0.15m/s
試験条件(平均面風速)
とても気になる
とても感じる
気になる
感じる
100%
やや気になる
50%
0%
気にならない
F3(0.25m/s)
回答の割合
回答の割合
100%
100%やや感じる
50%
0%
感じない
F3(0.25m/s)
換気量低減による結露の増加は
特に見られなかった#2 。
80%
60%
40%
20%
0%
0.25m/s
0.20m/s
0.15m/s
試験条件(平均面風速)
換気量低減による臭いの増加は
特に見られなかった#2 。
#1: 平均面風速0.25m/sと0.15m/sの2つの試験条件間でT検定を行ったところ、夏期、冬期の日中、両者間に有意差は見られなかった。
#2: 平均面風速0.25m/sと0.15m/sの2つの試験条件間でMann-WhitneyのU検定を行ったところ、両者間に有意差は見られなかった。
図 1 食堂の換気量低減により考えられる問題とそれに関連する実測およびアンケートの結果
厨房
6,000 洗い場
事務室
厨房
10,000 客席
洗い場
事務室
11%削減



4,000 3,000 2,000 1,000 年間消費電力量[kWh/year]

削減
60%

年間消費電力量[kWh/year]
9,000 5,000 8,000 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 0.30m/s

0.25m/s
0.20m/s
換気条件(平均面風速)
0.15m/s
0 0.30m/s



(a)換気用消費電力量
図2
0.25m/s
0.20m/s
0.15m/s
換気条件(平均面風速)
計算条件
・冷房設定温度24℃
・暖房設定温度22℃
・実測調査に基づき、
厨房と洗い場は暖房なし
(b)空調用消費電力量
換気量の低減による年間消費電力量の削減効果に関するシミュレーション結果

関連研究報告書
R11006「業務用厨房におけるエネルギー消費・温熱環境の詳細計測調査―電化改修前
後の比較―」(2012. 6)
R10036「業務用厨房の温熱環境設計ツールの開発―実測対比による CADIEE の計算精
度の検証―」(2011. 7)
研究担当者
上野 剛(システム技術研究所 需要家システム領域)
問い合わせ先
電力中央研究所 システム技術研究所 研究管理担当スタッフ
Tel. 03-3480-2111(代) E-mail : [email protected]
報告書の本冊(PDF 版)は電中研ホームページ http://criepi.denken.or.jp/ よりダウンロード可能です。
[非売品・無断転載を禁じる]
© 2013
CRIEPI
平成25年6月発行
12-011
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