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公立学校教職員における低線量マルチスライス CT

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公立学校教職員における低線量マルチスライス CT
日呼吸会誌
●原
41(11),2003.
771
著
公立学校教職員における低線量マルチスライス CT による
気腫性病変頻度と喫煙意識
堀内 宣昭1)
山崎 保寛2)
藤田 次郎2)
雅2)
多田 慎也2)
上田 暢男2)
亀井
末光 一三2)
要旨:胸部 CT での気腫性病変検出頻度報告は,対象が同一の職業環境ではないので喫煙のみが原因か否か
は不明な部分が多い.我々は喫煙による気腫性病変の頻度を知る目的で,学校教職員 1,776 名に低線量マル
チスライス CT を用い検討した.同時に喫煙意識の把握目的のアンケートも取得した.アンケート内容は,
分煙,喫煙状況,タバコ成分や疾病発症への知識の有無などとした.気腫化の程度は Goddard 評価法を用
いスコア化し,肺機能,年齢,喫煙指数との相関を検討した.気腫化病変は男性喫煙者 22 例(1.2% 22!
1,776)
のみに検出した.22 例は喫煙指数に相関を認め,喫煙との強い関係が示された.分煙環境は 85% であり,
喫煙率は男性 56.7%,女性 4% であった.ニコチンの有害性は把握できていたが肺癌との関連知識が少な
かった.学校における禁煙教育が重視されているが,教員喫煙率は高く,タバコの有害性についての知識は
不十分であった.
キーワード:学校教職員検診,低分解能 CT,肺気腫
Assessment of pulmonary emphysema in public-school teachers,Low-dose multi-slice CT,
Pulmonary emphysema
緒
言
喫煙は肺癌の危険因子であるのみならず,気道炎症を
を用いた肺癌検診に際して,同時に気腫性病変の有無を
検討することにより,喫煙による気腫性病変の頻度をよ
り正確に示せると考えた.
惹起することにより,気管支喘息,慢性気管支炎,およ
また近年,喫煙開始年齢の低年齢化も進んでおり,社
び肺気腫などの病因,および病態に深く関与している.
会問題ともなっている.若年者の喫煙率増加を阻止する
また長期喫煙者の 10∼15% に慢性肺気腫を発症すると
ためには,初等,中等教育の中での禁煙指導がきわめて
の報告がある1).さらに受動喫煙も肺気腫発症の成因と
重要であると考える.我々の病院の受診者は,これら若
なりうると考えられている.
年者を直接指導する学校の教職員であることから,喫煙
喫煙以外の肺気腫の成因として,遺伝子異常(欧米で
認められる α1-proteinase inhibitor 欠損症など),および
に関して学校の教職員が,どのような意識を有している
かを探るために,アンケートを計画した.
環境因子があげられる.特に重要な環境因子として,職
本論文では LMCT を用いた検診での気腫性病変の頻
業上の粉塵暴露が問題となる.このため対象とする患者
度,および学校教職員の喫煙に関する意識調査の結果に
の職業により,肺気腫の発生頻度は異なってくる可能性
ついて報告する.
もあり,肺気腫発症の成因として,喫煙のみの影響を見
対象と方法
ることは困難な状況にある.
当院では,四国全県の学校教職員を対象に,希望者に
受診者である公立学校教職員と退職者 1,776 名(平均
は低線量マルチスライス CT(low-dose multi-slice com-
年齢 48±12 歳)を対象とした.30∼39 歳代は男性 135
puted tomography[以下 LMCT]
)
を用いた肺癌検診を
名,女性 72 名,40∼49 歳代は男性 378 名,女性 282 名,
行っている.学校教職員においては,職業上の粉塵吸入
50∼59 歳代は男性 381 名,女性 351 名,および 60 歳以
の可能性はきわめて低いと考えられる.このため LMCT
上は男性 130 名,女性 47 名であった.
〒799―0193 愛媛県川之江市川之江 2233
1)
公立学校共済組合四国中央病院内科
2)
北四国呼吸器疾患共同研究グループ
(受付日平成 15 年 2 月 10 日)
これらの検診受診者を対象に LMCT を行った.さら
に 972 名にアンケートを行った.LMCT にて肺気腫病
変を指摘された場合は肺機能(%VC,および FEV1.0%)
を追加した.
772
日呼吸会誌
Upper
41(11),2003.
Middle
Lower
Fig. 1 Grades of emphysema in the upper, middle, and lower lung fields are scored based on Goddard’
s criteria(0, bulla(−); 1, area of bulla less than 25% ; 2, from 25 to 50% ; 3, from 50% to 75% ; 4, more than 75%)
.
Then, the sum of the scores in the three lung fields is calculated. This sample case is scored as 7(2, 1, and
1 for the upper, middle and lower lobes of the left lung, respectively ; and 1 for each of the lobes of the
right lung)
.
Table 1 Status of smoking in public school teachers
(N = 870/972)
1 Smoking conditions in the office Smoking prohibited
8.6%
Smoking allowed, but segregated
77.1%
Smoking permitted in the office
14.3%
2 Smoking history
2-1 Rotes of smokers
Smokers
Male 56.7%
Female
4.0%
Ex-smokers
Male 24.5%
Female 9.2%
Non-smokers
Male 18.8%
Female
86.8%
2-2 Amount of smoking
22.1 ± 8.8(range 2―40)
cigarettes/day
2-3 Age when smoking started 21.0 ± 4.1(range 16―48)
3 Questions only for smokers
3-1 Have you ever tried to quit smoking?
yes 52.4%
3-2 Do you want to quit smoking if possible? yes 68.9%
Table 2 Questionnaire about smoking(N = 870/972)
Questions
Percentages of correct answers
4-1 Death rate of wives caused by lung cancer is doubled
if husband smoked 1 pack/day
87.7%
4-1 Cigarettes contain dioxin
33.3%
4-2 Quitting smoking is difficult because of nicotine
addiction
92.9%
4-3 Smoking rate of 17-year-old males is more than 30%
63.6%
4-4 About half of subjects will get smoking-related
diseases and one fourth of those who started smoking
at less than 20 years old die in middle age because of
smoking-related diseases
30.7%
4-5 Lung cancer is the main cause of cancer death in men
59.1%
4-6 Seventy percent of lung cancer is caused by smoking
60.7%
4-7 Risks of subarachnoid hemorrhage and myocardial
infarction are increased by a factor of 1.7 in smokers
29.3%
4-8 Several risks decrease immediately if smokers quit
smoking
46.3%
5
Planning to speak about smoking in a lecture to
students
45.0%
CT 装置は東芝 Aquilion を用い,電圧は 120 kV,電
流は 30 mA,0.5 s!
rotate,3 mm×4 列,再構成厚 8 mm,
earman’
s correlation coefficient についての決定係数は
肺野条件 WL-600,WW 1,600,縦隔条件 WL-20,WW 270
0.4 以上を相関有りとした.
とした.
気腫性病変の診断方法として LMCT を受けた受診者
成
績
の画像を呼吸器内科専門医 2 名,放射線専門医 1 名で読
1.アンケートのまとめ(Table 1,2)
影した.気腫性病変スコアーとして Goddard の評価法2)
アンケートは 972 名に依頼し,870 名より回答を得た
に従い,上,中,下肺野を肺気腫の程度に従い 0∼4 点
(回収率 89.7%).記入者の平均年齢は 48.5±8.0 歳(31∼
の評価(左右合わせて 0∼24 に分布)を行った(Fig. 1).
61 歳)で,割合は男性 61.5%,女性 38.5% であった.
アンケート質問内容としては,職場の分煙状況,本人
アンケート結果により学校 教 職 員 は,学 校 現 場 の
の喫煙状況,およびタバコの成分や疾病発症への知識の
85.7% で分煙環境であるが,考慮されていないという回
有無などとした.
答も 14.3% あった.喫煙者は男性 56.7%,女 性 4% で
統計学的検討は Abacus 社 Stat View 5.0 を用い,Sp-
あり,男性教員の喫煙率は同年齢の一般成人(56.2%)
学校教職員検診のマルチスライス CT による肺気腫病変
773
Table 3 Characteristics of subjects who had emphysematous change
Age & sex
CT score
%VC
FEV1.0%
Smoking index
40 male
41 male
42 male
45 male
46 male
48 male
50 male
52 male
53 male
53 male
54 male
55 male
56 male
58 male
59 male
59 male
60 male
60 male
60 male
60 male
61 male
61 male
2
8
9
3
6
6
22
18
2
3
8
11
10
8
14
3
10
8
2
2
5
7
115
125
118
107
100.2
108
128
99.7
83.5
105
110
114
54.6
120
98
99
86
126
92
111
107.7
71.1
83
75
75.7
71
65.8
78.5
57
60.4
76.7
60
76
71
53.3
86
74
77
59
81
62
68
76.1
53.9
400
575
575
800
780
400
1,280
1,280
700
700
1,050
700
720
760
1,200
900
1,600
1,000
600
700
820
820
Fig. 2 Correlation between CT scores and smoking indices : R=0.403
とほぼ同程度であった.そのうち,過去喫煙者は男性
した(68.9%)
.タバコについての知識の正答率をみる
24.5%,女性 9.2% で,今まで喫煙をしたことがないと
と,禁煙できないのはニコチン中毒のためだという回答
いう回答は,男性が 18.8%,女性は 86.8% であった.
は 92.9% とニコチンの有害性は充分理解していた.高
喫煙本数の平均は 22.1 本で,喫煙開始年齢は平均 21.0
校 3 年生男子の喫煙率は 30% 以上であるという正解回
歳であるが,16 歳から喫煙しているという回答もあっ
答は,63.6% と高校生の喫煙割合も良く知っていた.し
た.また喫煙者は禁煙を望んでいる者が多いことが判明
かし,肺癌への知識が少ない者も 40.9% おり,心筋梗
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日呼吸会誌
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塞やクモ膜下出血発症の知識は乏しかった(29.3%)
.
スコアは病理学的に算出された指標や 1 秒率,拡散能,
さらに禁煙するとその日からいろいろな危険率が下がる
全肺気量といった呼吸機能検査データと良好な相関を示
という知識は少なく(46.3%)
,授業でタバコの話をす
すことが報告されている6)∼8).
る予定があるという回答は 45.0% と低かった.
2.気腫性病変が指摘された検診受診者の特色につい
CT による気腫化の程度が過小評価される原因として
以下の事項が考えられる.I)直径 5 mm 以下の微細な
気腫病変(顕微鏡レベルの微細気腫化を含む)の検出が
て(Table 3)
気腫性病変発見率については男性 1,024 名に対し気腫
困難(解像力の限界)
,II)スライス幅,撮像呼吸相,
性病変 22 名(2.15%;22 例!
男性 1,024 例)を指摘した.
電圧,電流,window level,window width などの CT
22 例全例が現在も喫煙者であった.気腫性病変指摘者
撮像条件ならびに画像再構築アルゴリズムの違いによっ
の男女別に関しては,女性例はなかった.男性において,
て気腫病変部分が微妙に変化する,III)真の気腫化(気
気腫性病変の検出頻度を年齢別に検討してみると,40∼
腔壁の破壊を伴う気腔拡大)と加齢に伴う単なる気腔拡
49 歳代男性で 378 人中 6 名(1.6%)
,50∼59 歳代 男 性
大とを区別できない.これらの諸問題のなかで現時点で
で 381 人中 10 名(2.6%),および 60 歳以上の男性で 130
改善が期待できるのは CT 撮像条件ならびに画像再構築
人中 6 名(4.6%)であった.肺機能検査では FEV 1.0%
条件である.さらにこれらのなかで window level,win-
が受診時 70% より低値のものが 8 名であったものの,
dow width に関する検討は進んでおり,気腫化を CT に
全 22 症例において自覚症状を認めなかった.
よって検出するための至適条件が決定されつつある.す
LMCT を用いた Goddard の評価法による気腫性のス
なわち,気腫部位と健常部位との CT 密度差は小さく,
コアと喫煙指数とは,有意に相関(相関係数 0.403)し
気腫部位を健常肺実質から分離するためには window
た(Fig. 2)
.
level,window width に工夫を要する.辺縁強調を行う
考
ことによって low density area は強調され視覚的に見や
察
すくなるが wedge 効果によって肺末梢の血管構造が実
検診による気腫性病変の検出頻度として,山田ら3)は
際よりも太く苗出され視覚的読影に支障をきたす.その
一般住民を対象とした CT 検診により,男性 335 例中
ため,気腫病変の検出に最適な window level よりも幅
4)
110 例(32.8%)
と報告している.また名和ら は男性 6,144
広い window width を用いる.
例中 686 例(11.2%)に気腫性病変を認めたこと,また
名和らの報告9)では,高分解能 CT を基準に CT 検診
喫煙者は 4,470 例中 654 例(14.6%)
,非喫煙者は 1,470
画像を評価すると検診画像では上肺野の低吸収域は容易
例中 32 例(2.2%)に気腫性病変を認めたと報告してい
に指摘できるものの,下肺野は心拍動や横隔膜による
る.
アーチファクトの影響で評価困難であるために検出力が
今回の我々の検討では,気腫性病変の検出頻度は以前
15% 程度劣るとしている.しかし CT 検診画像は,肺
の報告より少なかった.この理由として,学校教職員は
気腫への進展が懸念される小葉中心性肺気腫は上肺野が
粉塵などに暴露される可能性が少ないので,これまでの
最も早く出現し,また,高頻度に障害されるため,肺気
報告にある一般市民の集団とは異なる対象群であること
腫の存在診断を行う意味では十分に有益な画像情報であ
によると考えられた.つまり公立学校教員およびその退
るとの報告10)もある.高分解能 CT でも径 5 mm 未満の
職者は一般市民と比較して特殊な集団ではないが,単純
低吸収域は指摘できないことが指摘されているもの
に職業的に労働内容が均一である,従い,肺気腫に罹患
の9),低線量らせん CT による画像は,高分解能 CT と
する可能性の高い職業ではないと想定できる.すなわち
比較し肺気腫の検出力は劣ると考えられ,比較的進行し
喫煙の影響のみによる気腫性病変の頻度を示すものと考
た例を指摘しているものと考えられる.
えられた.実際,今回の検討結果にもあるように God-
今回の我々の検討は,名和らの報告3)と撮影条件が異
dard 法2)による気腫性病変のスコアと喫煙指数との間に
なるため同等には比較することは出来ないものの,前述
相関が認められたことも,このことを支持するものと思
した要因により肺気腫の頻度を過小評価している可能性
われた.なお肺気腫の診断ではその広がりや程度を示す
もある.よって今後は高分解能 CT を用いた prospective
方法として,上肺野,中肺野,下肺野の 3 スライスのそ
study を実施予定である.
れぞれの画像で,気腫病変の広がりを全肺野に対する割
疫学的には喫煙者の 約 15% が chronic
obstructive
り合いとして視覚的に 5 段階評価(0 点:肺気腫病変な
pulmonary disease(COPD)に移行するとされる11).ま
し,1 点:25% 未満,2 点:25% 以上 50% 未満,3 点:
た肺気腫の成因の一つとしてオキシダントーアンチオキ
50% 以上 75% 未満,4 点:75% 以上)してスコア化す
シダント不均衡による酸化ストレスが注目されてい
るものを用いた2)5).この視覚的評価法で得られた肺気腫
る12).タバコの煙には 4,000 種類以上の化学物質が含ま
学校教職員検診のマルチスライス CT による肺気腫病変
れており,その中には 200 種類以上の有害物質,発癌物
18
質が存在している.特にタール 1 g 中には 10 個のラジ
カルが存在し,酸素からスーパーオキサイドなどの活性
15
775
paraseptal など)
,およびその頻度について,さらに呼
吸機能との関連4)などについても詳細に検討したい.
近年の若年者の喫煙率増加を阻止するために,初等,
酸素種を生成する.また,1 吸入のタバコ煙には 10 個
中等教育の現場での禁煙指導の重用性が指摘されてい
13)
のラジカルが含まれており ,これらのスーパーオキサ
る.その場合,医療関係者による一時的な指導よりも,
イドは気道を傷害すると考えられている14).すなわち喫
教職員による継続的な防煙知識の提供がより効果的と考
煙と肺気腫発生の因果関係については,科学的にも実証
えられる.しかしながら教員の喫煙率は,男性 56.7%,
されつつある.
女性 4% で,特に男性教員の喫煙率は同年齢の一般男性
肺気腫は高齢の喫煙者に特有な疾患であるような印象
(56.2%)とほぼ同程度であった.またタバコの有害性
がある.しかしながら今回の我々の検討では,比較的若
についての知識も不十分であること,授業でタバコの害
年者にも気腫性病変を検出することから,実際には若年
に関する話をする教員は 45% と少ないことなどから,
で発症し,喫煙を重ねることにより重症化していくと考
児童,生徒に対しての防煙教育は現状では不十分である
15)
えられた.Satoh らの報告 によると通常の診療で用い
ことが示唆された.若年者の喫煙率低下防止のためには,
る条件で撮影された CT 画像の検討では,肺気腫病変の
今後は学校単位,教育委員会主導での教員全体への禁煙
程度と喫煙歴との強い関連が認められている.このこと
教育が必要と考えられた.
からも肺気腫の発生に喫煙以外の因子(例えば先天的な
今回の我々の検討により,公立学校男性教職員および
ものなど)が関与しているとしても,肺気腫の増悪させ
その退職者における気腫性病変の頻度は 2.15%(22 例!
る因子として喫煙は極めて重要と考えられる.若年であ
男性 1,024 例)であること,および喫煙が主な原因であ
りながら,すでに気腫性病変を有する例が,今後どのよ
ることが示された.今回我々が公立学校教員およびその
うな経過をとるかの追跡調査が重要と考えられた.
退職者を対象として選択した最も大きな理由は,これら
いったん肺気腫に罹患すると,呼吸機能の低下に伴い
の対象者においては,職業的な労働内容が均一なことに
生活の質が著しく低下する.従って重要なことは早期発
加えて,職業上の粉塵暴露が比較的軽微である(チョー
見をするとともに禁煙教育を行うことにある.COPD
クの粉による影響は否定できないものの)と考えられる
の診療に関する国際的なガイドライ ン で あ る GOLD
点にある.すなわち職業上の粉塵暴露による気腫性変化
(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Dis-
の可能性を除外できる点にある.つまり公立学校教員お
ease)においては stage 0 を設定して早期発見と介入の
よびその退職者を対象としたことにより,喫煙による肺
11)
重要さが強調されている .
気腫の頻度をより正確に明らかにできたと考えた.
気腫性病変発見のための胸部 CT の有用性について考
また学校教員のタバコに関する意識の現状をも明らか
察したい.胸部単純 X 線のみで肺気腫の検出を行った
にできたと考える.気腫性病変の経時的変化など,今後
坪田ら16)は,気腫性肺!胞の頻度について,38,136 例中
も継続して検討したい.
192 例(0.87%)で認められること,および喫煙者に気
腫性肺!胞を多く認めたと報告している.胸部単純 X
線での肺気腫発見も重要ではあるものの,この頻度から
鑑みて CT で指摘しうる気腫性病変の大部分は胸部単純
X 線では検出困難である可能性が伺えた.従って LMCT
さらには HRCT 検診による早期発見の検討の必要性が
示唆された.ただし現時点では,人間ドックなどの検診
に際して,CT のみで指摘された気腫性病変の臨床的意
義は確立しておらず,今後は気腫性病変の経時的推移を
観察する必要がある.なお現段階での方策として,当院
では人間ドック時にパンフレットを用いての個別禁煙指
導を行なうとともに,気腫性病変を認めた際には,受診
者本人の CT 画像を用いて,気腫性病変が存在すること
を本人に直接通知し,禁煙することをより強く勧めてい
る.
今後の課題として,高分解能 CT を用いた解析を実施
することにより,肺気腫の分類(centrilobular,または
謝辞:本論文を作成するにあたりご協力をいただきまし
た,大塚製薬河内康正氏に深謝いたします.
文
献
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Abstract
Low-dose Multi-slice CT(LMCT)Assessment of Pulmonary
Emphysema in Public-school Teachers
Noriaki Horiuchi1), Yasuhiro Yamazaki2), Jiro Fujita2), Ichizou Suemitsu2), Tadashi Kamei2),
Shinya Tada2) and Nobuo Ueda2)
1)
Department of Internal Medicine, Shikoku Central Hospital of the Mutual Aid Assocoation
of Public School Teachers, Ehime, Japan
2)
North Shikoku Respiratory Disease Cooperative Study Group
Although rates of emphysematous change in smokers have been reported previously, the precise effects of
smoking on emphysematous change have not been established because the study subjects of previous reports
were heterogeneous. This study was designed to determine the incidence of emphysematous change identified by
LMCT imaging in public-school teachers. We reviewed 1776 consecutive subjects(ages from 31 to 61 years)who
had undergone LMCT scanning during health care examinations. In addition, their replies to questionnaires about
smoking were obtained. Emphysematous change was found by LMCT imaging in 22 male smokers. In these 22
smokers, the scores of emphysematous change according to Goddard’
s method was well correlated with smoking
history. According to the questionnaires, the smoking rates of male and female teachers were 56.7% and 4%, respectively. Eighty-five percent of the teachers worked in offices separated from smokers. Most smokers wished to
quit smoking and most teachers knew the risk of nicotine as well as the rate of smoking among high school students. However, knowledge of the relationships between smoking and lung cancer, myocardial infarction, and
subarachnoid hemorrhage were not adequate. Our present study clearly demonstrated the incidence of emphysematous change in school teachers. In addition, early exposure to information about the risks of smoking is believed
to be important for students, but school teachers did not have enough of such information.
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