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佐野市天明鋳物のまちづくり推進計画(案) 平成28年 月 佐 野 市
佐野市天明鋳物のまちづくり推進計画(案) 平成28年 佐 野 月 市 目 はじめに 第1章 次 ……………………………………………………………………… 佐野市の概況 ……………………………………………………… 第2章 天明鋳物の歴史 …………………………………………………… 第3章 天明鋳物を取り巻く環境 ………………………………………… 第4章 天明鋳物のまちづくり推進に向けた基本方針 第5章 施策の体系 2 6 9 ………………… 17 ………………………………………………………… 19 第6章 計画の推進に向けて 参考資料 1 ……………………………………………… 21 ……………………………………………………………………… 29 ~はじめに~ 本市を代表する文化財である「天明鋳物」の作品は、国や 県・市町村の文化財に指定されているものも多く、市内・県 内はもちろん東日本一帯に広く見出すことができ、天明鋳物 師(いもじ)の技術の優秀さと活躍ぶりがしのばれます。 ことに、天明の茶の湯釜は、茶の湯隆盛の歴史の中で天下の名声を得ました。 また、豊臣家滅亡の要因となったとされる京都方広寺梵鐘鋳造への参加や、 江戸城の建築に際する天明鋳物師の江戸への移住も伝えられています。 「天明鋳物」は美術品としても高い評価を受けており、昭和61年に栃木県 伝統工芸品に指定されています。また、最近では平成25年に「天命鋳物伝承 保存会」の活動が、ユネスコのプロジェクト未来遺産に登録されました。平成 26年には「ねんりんピック栃木」の大会メダルを制作するなど、天明鋳物を 取り巻く環境にも変化が見られています。 総合計画においては、基本目標に「豊かな心を育む教育・文化づくり」を掲 げ、後期基本計画では、基本施策に「歴史・文化資源の継承と芸術・文化活動 の推進」を挙げています。日本歴史の大きな流れの中にも位置づけられた「天 明鋳物」は、歴史的文化資源であり、我が国伝統工芸の華ともいえるものであ ります。 しかしながら、国民の生活様式の多様化、需要の減少、従事者の高齢化、後 継者不足等、様々な問題に直面しています。 そこで、本市が誇る貴重な財産ともいえる「天明鋳物」について、市・市民・ 事業者が一体となって、天明鋳物を活用したまちづくりを推進するため、その 基本方針となる「天明鋳物のまちづくり推進計画」を策定いたしました。 今後は、次期総合計画へ位置付けていくとともに、この計画の推進により地 域の活性化を図るため、各種の施策に取り組んで参ります。 結びに、本計画の策定にあたりまして、ご意見、ご提言をいただきました策 定懇談会をはじめといたします関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。 平成28年 月 佐野市長 -1- 岡部 正英 第1章 佐野市の概況 1.地理・地勢 本市は、関東平野の北端、栃木県の南西部に位置しています。 地形的には、北部から北東部、北西部にかけては、緑豊かな森林や美しい清 流など自然環境に恵まれた中山間地域、南部と西部は、住宅や産業基盤が集積 する都市的地域と農業が展開する地域となっています。 市の南東部、国道 50 号と東北自動車道がクロスする周辺の佐野新都市地区 には、新しいまちが誕生しました。佐野プレミアム・アウトレットやイオンモ ール佐野新都市などの大型商業施設が進出し、新しい商業地域が形成され、特 に週末には県内はもとより、関東一円から多くの人が訪れています。 市内には、日本名水百選に選ばれた「出流原弁天池湧水」、万葉集にも詠まれ、 かたくりの花が群生する「三毳山」、旗川の源流にあり利根川水系百選にも選 ばれ、別名「幻の滝」とも呼ばれている「三滝」 、秋山川上流沿いに咲く「ザ ゼンソウの群生地」、平将門の討伐やムカデ退治伝説で有名な藤原秀郷公が築 いたといわれる国指定史跡「唐沢山城」などの自然・歴史・文化的財産が各所 にあります。 2.交通 本市は、東京から70km圏内に位置し、東北自動車道の佐野藤岡ICと佐 野SAスマートIC、北関東自動車道の佐野田沼ICの3つのインターチェン ジを有する北関東の交通の要衝であるとともに、国道50号、国道293号な どの広域的な道路交通の利便性も備えています。 公共交通は、鉄道ではJR両毛線が小山市・前橋市方面を結び、東武鉄道佐 野線が生駅から佐野駅、館林駅を経て東京へと繋がっています。また、バス は佐野新都市線の循環バスや市営バスが市内を運行し、さらに、東北自動車道 を利用した高速バスが本市と東京駅・新宿駅の都心部や、羽田空港・成田空港 とを結んでいます。 このように、本市は北関東において良好な交通環境を有しています。 -2- 3.人口 本市の人口は、全国的な傾向と同様に減少が続いており、平成2年の国勢調 査では 128,276 人であったものが、平成 22 年の調査では 121,249 人とな り、この 20 年間で 7,000 人を超える人口が減少しています。また、人口の年 齢別構成比から、年々、少子高齢化が進んでいることが分かります。 世帯数は、平成 2 年から平成 22 年までに 6,821 世帯が増加していますが、 1 世帯当たりの人数は、3.34 人から 2.68 人と減少しており、核家族化が進行 していることが伺えます。 4.産業 本市の産業は、伝統的な石灰・繊維・鋳物工業中心から、プラスティック製 品製造業中心の時期を経て、機械・食品中心へと推移してきています。現在は、 佐野工業団地、羽田工業団地、田沼工業団地、佐野インター産業団地、佐野み かも台産業団地、佐野田沼インター産業団地、佐野AWS産業団地の7つの工 業団地を拠点としており、新たに佐野インター産業団地第2期の整備を進め、 これらの産業団地への企業の集積を図っています。 商業については、佐野新都市地区に大型商業施設が進出したことにより、新 しい商業地域や住宅地が形成され、にぎわいを増しています。 農業については、米を基幹作物としていますが、収益の中心は、園芸作物に 移りつつあり、いちご、かき菜、梨、桃などの栽培が有名で、いちご狩りやフ ルーツライン沿いの直売所には多くの人が訪れています。また、田沼地域及び 葛生地域では、そばの生産が盛んです。 5.歴史・伝統 「佐野」の地名が、記録上、初めて登場するのは、平安時代の荘園名である へい は ん き 「佐野庄」という記事からです。 「兵範記」という当時の記録には、左大臣藤原 頼長に寄進されていた荘園が、保元の乱(1156年)で勝利した後白河天皇の 所有になったことが書かれています。 そして、佐野庄は後白河天皇の側に立った藤原秀郷の子孫と称する藤姓足利 -3- 氏(後の佐野氏)とその一族によって治められるようになりました。 戦国時代末期、佐野氏は、現在の佐野市とその周辺を支配し、その拠点にな ったのが唐沢山城です。築城時期は不明ですが、佐野は交通の要衝にあるため、 越後の上杉氏や相模の北条氏などにも攻められ、たびたび改修が加えられた結 果、高石垣を備えた関東でも有数の山城になりました。 江戸時代のはじめ唐沢山城主佐野信吉は、佐野城(現城山公園)の地に移城する よう幕府から命じられ、さらに慶長 19 年(1614 年)所領も没収され、佐野氏の 支配は終わりを告げました。 明治 2 年(1869 年)政府は、各大名に命じて領地を天皇に返上させ、藩主を 知藩事に任命し、さらに 2 年後には藩を廃止して県を置きました。そのため彦 根県や佐野県ができましたが、わずか 4 ヵ月で栃木県に統合されました。そし て、明治 22 年(1889 年)に市制・町村制が施行され、現在に繋がる原型となり ました。平成 17 年 2 月、佐野市、田沼町、生町の 1 市 2 町が新設合併し、 現在の佐野市が誕生しました。 <受け継がれる伝統> 【ひな人形】 例幣使街道の宿場町として栄えた佐野には、日光東照宮造営で全国から集ま った職人たちが住み着き、人形を作ったことが始まりといわれています。その 技術によって作られた衣裳着雛は、栃木県の伝統工芸品に指定されています。 【土鈴】 佐野の土鈴は、相澤一太郎氏が、大正 9 年に創業しました。成形は一つ一つ 石膏型に指で押し込み、心を込めて作り上げています。これを松薪で 13 時間 一千度の高温で焼き上げ、一つ一つ念入りに彩色します。平成6年には、栃木 県伝統工芸品に指定され、その清らかな音色は、魔を払い、幸せを招くと言わ れています。 -4- 【飛駒和紙】 飛駒町の和紙は江戸時代、桐生川の上流、入飛駒(現桐生市)から伝わりま した。自生の楮(こうぞ)から漉いた飛駒産の生紙は、色は少々黒いが丈夫で 長持ちと評判で「飛駒八寸」と呼ばれ、古来障子紙や大福帳に愛用されてきま した。 【牧歌舞伎】 県内で唯一江戸時代から現在まで受け継がれている地芝居で、江戸時代後期 に江戸の歌舞伎役者・関三十郎により伝えられたのが始まりといわれています。 昭和 35 年に栃木県重要無形文化財に指定されました。 (昭和 52 年に無形民俗 文化財に指定変更) 6.観光 平成22年10月に佐野市観光立市推進基本計画(平成27年3月~第2次 計画)を策定し、市全体を観光資源として「住んでよし、訪れてよし」の佐野 市を築き上げることを目指し、魅力ある観光地の形成、人材育成とおもてなし の心の醸成、観光産業の振興と地域の活性化などを目標に、市民や関係団体と 協力し取り組んでいます。 主な観光スポットは、日本名水百選である「出流原弁天池」や国指定史跡の 「唐沢山城跡」、関東の三大師「佐野厄よけ大師」などのほか、ショッピング が楽しめる「佐野プレミアム・アウトレット」や「道の駅どまんなかたぬま」 などがあります。 ご当地グルメとしては、市内に 200 軒以上ある「佐野らーめん」が、今や 全国的にも有名ですが、B級グルメの「いもフライ」、郷土料理の「耳うどん」、 食感が楽しめる「大根そば」などもTVで取り上げられ、話題になっています。 また、ゆるキャラⓇグランプリ 2013 で優勝した「さのまる」が、本市を 盛り上げています。 -5- 第2章 天明鋳物の歴史 1.天明(命)鋳物とは 天明(命)鋳物とは、下野の国佐野天明(命) (栃木県佐野市)の地で作られ た作品、佐野の鋳物師によって作られた作品をいいます。さらに、佐野の鋳物 業そのものを指す場合もあります。 2.天明と天命 古くは天命、後に天明と書かれたようで、古文書、作品銘などから、江戸時 代初期頃までは天命であったと考えられます。天命は元々この地方の地名で、 後に天明と変わりました。 3.天明鋳物の起源と居住地 天明鋳物の起こりや鋳物師の居住場所については、金山神社、正田家、大川 家文書などに書かれています。それらによると天慶年間(938~947)に、 たんなん 河内国丹南(大阪府)から5名の鋳物師が移住し、藤原秀郷の命により兵器類 を鋳造したのが始まり、と伝えられています。しかし、出土品や各種の資料等 から当時の状況を推測すると、それ以前に土着の鋳工により鋳物が行われてい たと考える方が自然であると思われます。 い も じ い り 天明鋳物師の居住地は、金屋寺岡(足利市寺岡町)→犬伏宿鋳物師入(犬伏 ぜ かん た ま ち 中町)→是閑(城山公園西北)→安蘇川東の田町(大町)→金屋町(金井・金 屋・金吹町)と移転したといいます。文書によっては、太田和山阿曽(三毳山 南)を加えるものもあり、順序も異なります。いずれにしても、出土品や地名 からこれらの土地が鋳物に関係し、鋳物師が居住したことは確かなようです。 4.天明鋳物の作品と天明鋳物業の盛衰 天明鋳物の作品は、茶の湯釜をはじめ、鳥居、梵鐘、燈籠、釣燈籠、仏像、 ほうきょういんとう ぎぼうしゅ 鰐口、宝篋印塔 、多宝塔、擬宝珠、そして鍋、釜、鍬、鋤といった生活用品に 至るまで、数多くの種類があります。 -6- これらの作品は、地元佐野の地や県内はもちろん関東各地、岩手、山形県な ど東北地方、遠くは京都にまで及んでいます。戦前四十余年にわたり実地調査 が ぜん けんこん された丸山瓦全氏の「天明鋳工作品各国別(乾坤)」によると全国確認調査実数 624点、鋳物師氏名72家・456人にのぼります。 作品銘からすると、鎌倉時代には天明鋳物業が成立したと考えられます。現 げんこう 在知られる在銘最古の天明鋳物は、元亨元年(1321)の千葉県日本寺梵鐘 ほりごめ だいこう か い (国重文)で最初は下野州佐野庄堀籠郷天宝寺に寄進されたもので、 「大工甲斐 ごんのかみ う ら べ すけみつ 権守 卜部助光」とあります。助光は、元徳2年(1330)に茨城県長勝寺梵 鐘(国重文)も造っています。 14~15世紀になると、各地で手工業が発達し、天明鋳物師の活躍も一段 と盛んになりました。宝徳2年(1450)とその翌年の上杉家文書によると、 くわ てつ い も じ ほ ん ざ 和泉・河内両国の鋳物師が組織する鍬鉄鋳物師本座の訴えにより、幕府から関 東管領の上杉家に命じて、下野・上野両国における新規鋳物師等の営業を禁止 させました。このことは、天明を中心とする鋳物業が、和泉・河内両国鋳物師 たちの既得権を脅かすほどに成長していたことを推測させます。 室町時代、技術もますます優れたものとなったことは、天文14年(154 すかし つり とう ろう 5)の佐野富岡観音堂「鋳銅梅竹文 透 釣燈籠」 (国重文)の例によっても証明さ れます。 また、茶の湯の流行と相まって、天明の茶釜の野趣に富んだ素朴な作風は、 茶人に大いに好まれ、技術の優秀さとあわせて、九州筑前の芦屋(福岡県芦屋 町)の釜とともに、 「西の芦屋、東の天明」として天下にその名を知られました。 江戸中期の「倭漢三才図会」には、 「東山時代、関東の天明釜をもって良とな ぶ ん な す」とあります。文和元年(1352)の極楽寺釜(国重文)は、その銘から、 天明の茶釜として確証のある現存最古の優れたものであります。 天明鋳物の最盛期は室町から江戸初期といわれますが、現在ではそれ以降の 作品が多く残されています。 徳川家康の江戸入府に伴い、天明の鋳工が江戸に移り住んでいます。天明鋳 物師の技術の優秀さが認められ江戸築城、城下の形成に求められたためと考え られます。慶長19年(1614)江戸城(皇居)平河橋の擬宝珠などはその -7- 一例です。 明治年間は、日常用具の鋳造が盛んに行われました。しかし、明治末から大 正にかけてのアルミ製品の進出や他の鋳物産地の興隆等、社会の変化に伴い、 佐野の鋳物業は衰微の道をたどりました。第2次世界大戦では、金属類の供出 等により多くの作品も失われました。 現在、少数ではありますが、伝統を守り続ける人たちにより、天明鋳物の誇 りと優れた技術が受け継がれ、高い評価を得ており、今後の発展が期待されて おります。 (出典:佐野市教育委員会・佐野市文化財保護審議委員会・ (財)佐野市民文化 振興事業団「我が国伝統工芸の華 天明鋳物」より) -8- 第3章 天明鋳物を取り巻く環境 1.天明鋳物の現状 江戸時代の初期までは隆盛であった天明鋳物は、幕末の鎖国政策から開国に 向けた動乱の時代を迎える頃から、状況に変化があったのではないかと考えら れます。 つまり、外国船から国を守るため、海岸防備が必要になり、大砲等の武器類 を製造して防衛をすることにより、鋳物産業の中心は、工芸品的なものから武 器類に生産がシフトしていったと予想されます。多くの武器類鋳造のため原料 が不足し、寺の撞鐘、仏像、仏具などの製造は必然的に減少していったと思わ れます。 また、江戸に近い川口が、幕府や諸藩から大砲、弾丸を受注し、鋳物産地と して発展していったことが伺えます。特に、明治時代から大正時代にかけては、 東京という一大消費地に近い地理的優位性を背景に、大量受注・大量生産とな り、さらに 1905 年には、「川口鋳物業組合」が創立されるなど、川口鋳物は 急速な発展を遂げたと思われます。 このように、鋳物製造品の変化と他の鋳物産地の隆盛により、天明鋳物は徐々 に衰退に至ったものと考えられます。 需要が低迷し売上が減少すれば、経営自体が成り立たなくなります。やがて は後継者不足となり、必然的に鋳物事業者が減少することになります。 天明鋳物は、川口や高岡(富山県)のように産業として成り立っていないこ とや、鋳物の分野が文化財的な一面もあれば、伝統工芸品や工業製品といった 一面もあり、同じ鋳物でありながらその分野が異なることにより、組合として のまとまりを維持することが難しいことも、一つの要因として考えられます。 現在、市内の鋳物事業者は、個人・法人を合わせても10軒に満たない状況 になっております。 -9- 2.全国の伝統的工芸品の状況 天明鋳物の現状について、概要の把握はできましたが、統計的な資料がなく、 また衰退の原因が天明鋳物特有のものなのか、はっきりしていません。 そこで、鋳物が分類される金工品(※1)を含む全国の「伝統的工芸品」 (※2) の現状について考察することで、天明鋳物の課題や課題解決の方向性が浮き彫 りになると考えます。(※1、※2 → P28参照) (1)全国の伝統的工芸品産業の現状 第二次世界大戦によって荒廃したわが国の産業・経済は、朝鮮戦争を経て再 建が進み、高度工業化社会へと復興をはじめました。今日、伝統的工芸品産業 がかかえる後継者不足や原材料の確保難など多くの問題は、次に示すように特 に昭和 30 年代からの高度経済成長と、これに伴う生活様式、雇用環境などの 変化によるところが大きいといえます。 まず第1に、技術革新、工業材料革命およびマス・メディアの発達により、 大量生産、大量消費の経済構造が確立したことです。 所得水準の向上とあいまって、規格化、標準化された低価格の生活用品が大 量に供給・消費されるようになった結果、価格、量産性の面における競争を通 じて、伝統的工芸品は近代工業製品に圧倒され、シェアを低下させていきまし た。 第2に、農村の衰退による影響があります。経済成長が進展するにつれ、農 業などの第一次産業の比率が低下し、原材料の供給を農林業に大きく依存して きた伝統的工芸品産業の基盤が揺らぐ結果となりました。漆、木材、竹材、コ ウゾやミツマタなどの和紙原料、生糸などの原材料は、一部を除いて、その供 給が農林業の中に深く組み込まれていたため、農村の疲弊により、必要量の確 保が困難なものも出てきました。 - 10 - 第3に、道路、湾岸建設、宅地化などの推進があげられます。これにより、 木材、竹材、石材、陶土などの採取が困難となったり、陶磁器の登り窯のよう に、窯周辺の宅地化が進んだため、煙害のおそれが生じ、窯を閉鎖せざるを 得なくなった例もあります。 第4に、雇用環境の変化があげられます。産業の重化学工業化に伴う労働力 の農林業から鉱工業への移動は、主として農村の低廉な労働力をその基礎とし ていた伝統的工芸品産業に、人手不足をもたらしました。また、就学年限の長 期化によって、若いときから長期間の修行を必要とする「徒弟制度」の存立基 盤が崩れてきました。 この徒弟制度といういわば前近代的雇用形態は、戦後の民主的教育を受けた 若者たちには通用し難い職業訓練システムでもあります。同時に、高度経済成 長による就業機会の増大は若者の労働観に変化をもたらしました。 伝統的工芸品産業は、手仕事中心の地味な仕事であるうえ、小規模な事業所 が多く、給与、休日、福利厚生などの雇用条件が十分に整備されていないこと もあって、若者が集まりにくい原因となっています。 第5に、生活様式の変化があげられます。わが国の伝統的な生活様式は、農 林業主体であった過去の社会状況を反映して、季節感を尊重し、五節供やお正 月を始めとする季節ごとの行事、夏祭りや秋祭りに代表される豊作祈願の祭礼 などに彩られてきました。 しかしながら、このような伝統的な行事・生活文化も、生活様式の洋風化、 都市化が進む中で衰退していきました。また、戦後のマス・メディアの発達に より、都会から農村のすみずみに至るまで、プラスチック製の食器や容器、化 粧合板やスチール製の家具、電気洗濯機、テレビなどの家電製品が普及し、日 本人の生活は、風土に関係なく均質化していきました。 第6に、国民の生活用品に対する意識の変化があげられます。戦前は、倹約 を尊んで物を長く大切に使うという生活意識が支配的でしたが、戦後は一変し - 11 - て使い捨て思想がもてはやされ、商品選択の基準も価格、目新しさ、流行など の側面が重視されるようになりました。 このような風潮の中で、一見して地味なデザインが多い伝統的工芸品は、長 く使いこむことによって味が出てくるという特徴が真価を発揮する機会も限ら れ、消費者の伝統的工芸品に対する関心が薄れていったといえます。 最後に、戦後の家族制度の変化、特に核家族化の進行によって、親から子、 子から孫へと伝えられた生活様式、生活意識、生活慣習の伝承方式が崩れて、 伝統的なものが受け継がれにくくなっていることがあげられます。 一方では、下記のような明るい兆しも見られます。 ゆとりと豊かさをもたらす質の高い製品を求めるニーズの高まり 地域独自の文化を見直そうとする風潮の高まり 「和」の暮らしや「ものづくり」に対する再評価 欧米における「和」の生活様式に対する関心の高まり 循環型経済社会を体現している産業であるという評価 (出典:「伝統的工芸品産業振興協会のホームページ」より) 【生産額、事業所数、従事者数の推移】 伝統的工芸品産業全体の推移をみると、企業数では、平成 2 年に 26,490 件 あったものが、平成 8 年には 19,910 件、平成 14 年には 17,902 件と 3 割 以上減少しています。従事者数では、平成 2 年の 205,568 人が、平成 8 年に 137,615 人、平成 14 年には 102,384 人と半減しています。 また、金工品についても、平成 14 年の企業数、従事者数ともに平成 2 年と の比較では減少しており、同様の傾向にあることがわかります。 理由としては、生活様式の変化や海外からの安価な輸入品の増大等により、 需要が低迷し、生産額や企業数、従事者数の減少が続いていると推測されます。 - 12 - <伝統的工芸品産業全体> 600,000 ( ) ( 生 産 額 500,000 250,000 企 業 200,000数 伝統的工芸品産業の生産額等の推移 件 百 万 400,000 円 ) ・ 150,000従 業 者 数 100,000 人 300,000 ( ) 200,000 50,000 100,000 0 (年) 0 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 生産額(百万円) 企業数 従事者数(人) <金工品のみ> 14,000 ) 8,000 ( ) 6,000 3,000 人 4,000 2,000 2,000 (年) 企 7,000 業 数 6,000 件 ・ 従 5,000 業 者 4,000 数 百 万 10,000 円 0 8,000 ( ) ( 生 産 12,000 額 伝統的工芸品産業(金工品)の生産額等の推移 1,000 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 生産額(百万円) 企業数 0 従事者数(人) ( (財)伝統的工芸品産業振興協会「伝統工芸産業概要統計」をグラフ化) - 13 - (2)栃木県の現状 天明鋳物は栃木県指定の伝統工芸品となっていますが、県指定の伝統工芸品 の中で、国指定にもなっている益子焼については、統計資料がありますので、 参考にしたいと思います。 【益子焼における事業所数、従業者数、販売額の推移】 【事業所数】 平成 22 年 12 月 31 日現在で実施した「益子焼統計調査」における事業所 数は総数 302 事業所(陶磁器製造業 262、 陶磁器卸売業 1、 陶磁器小売業 33、 陶磁器粘土採掘 1、その他 5)であり、ピークであった平成 4 年から約 13.5% 減少しています。 【従業者数】 益子焼統計調査における従業者数は、総数 758 人(陶磁器製造業 551 人、 - 14 - 陶磁器小売業 181 人、その他 26 人)であり、ピークであった平成 7 年から 34.4%減少しています。その内訳は、製造業 35.2%減、小売業 2.2%増とな っており、製造業従事者の減少が顕著であります。 【総販売数】 益子焼統計調査における益子焼の総販売額は、29 億 4,542 万円であり、統 計が残されている平成 10 年(95 億 1,412 万円)から年々減少しており、平 成 10 年の 3 分の 1 以下となっています。 (出典:栃木県「産業振興対策特別委員会報告書」より) 3. 課題の整理 栃木県を含む全国の伝統的工芸品の状況等を参考に、天明鋳物についての課 題を整理すると、次のようなものが挙げられます。 第 1 <需要の低迷> ①生活様式の変化 ②生活用品に対する意識の変化 ③大量生産による安価な生活用品の普及 ④海外からの輸入品増加 第 2 <低い生産性> ①手作業による低い生産性 ②技術、技法へのこだわり ③家族経営等、小規模経営 第 3 <人材、後継者の不足> ①従事者の減少、高齢化 ②就労に対する若者の意識の変化 ③生産者から消費者への流通を円滑にする人材の不足 - 15 - 第 4 <知名度の不足> ①ブランド力が弱い ②地場産業としての周知不足 ③地域での連携・活用の不足 第 5 <流通形態の弱体化> ①顧客情報、消費者ニーズの把握が不十分 ②販売方式等、流通面での改善が必要 ③組合機能の低下 <衰退の流れ> 生活様式の変化・価値観の変化 必要性がない、魅力がない 需要がない 注文の減少、生産量の減少 売上の低迷 収入の減少(事業、生活が成り立たない) 事業規模の縮小 経営困難 会社へ就職(職業観の変化) 後継者不足(後を継がない) 廃 業 - 16 - 第4章 天明鋳物のまちづくり推進に向けた基本方針 1.基本目標 本市の天明鋳物を活用したまちづくりのめざすべきあり方を、本計画の「基本 目標」として、次のとおり定めます。 一千年の歴史「天明鋳物」のふるさと創生 2.基本方針 本計画の推進にあたっては、天明鋳物のおかれている現状と課題を踏まえ、 以下4つの基本方針を定め、市・市民・事業者が一体となった取り組みを推進 します。 また、計画の期間については、平成28年度から平成29年度までの2か年 とします。 (1) 市民との協働・連携 天明鋳物のまちづくりを推進するにあたっては、市民や事業者、関係団体と 連携して、地域ぐるみで鋳物のまちづくりを推進します。 また、子どもの頃から、日常生活の中で天明鋳物に触れ、鋳物づくりを体験 できる機会を確保します。 (2) 文化資源の環境整備 市民一人ひとりが天明鋳物についての理解と関心を深められるよう、文化施 設において展覧会を開催するほか、市内の文化芸術関連施設間の連携、他の公 共施設の利活用等により、天明鋳物に関する環境の整備や活用を図ります。 - 17 - (3) 新商品の開発及び販路の開拓 業界衰退の要因をもとに、今後も天明鋳物を継続させていくためには、安定 した収入を確保し、鋳物での経営が成り立つことが必要となります。 そのためには消費者ニーズにあった商品(売れる商品)の開発と効果的な販 売の方法が重要となることから、商工会議所や観光協会等とも連携し、販売促 進に繋がる取り組みを検討します。 (4) 次代を担う人材の育成 天明鋳物を活用したまちづくりを推進するためには、その活動の様々な場面 に係わる人材の育成が必要になります。 鋳物師など創作活動を行う人を育成するだけでなく、鋳物に携わる人の活動 に対して、企画や運営を支援する人の育成など、次代の天明鋳物を担う後継者 の育成を図ります。 - 18 - 第5章 施策の体系 【基本目標】 【基本方針】 一千年の歴史「天明鋳物」のふるさと創生 市民との協働・連携 文化資源の環境整備 新商品の開発及び販路の開拓 次代を担う人材の育成 - 19 - 【基本的施策】 【施策の内容】 ・市民への利用促進 郷土意識の醸成と ・観光、他の地域資源との連携 連携の強化 ・学校との連携 ・国・県の制度の活用 ・文化財としての保存、継承、 歴史的文化財の 活用 整備と活用 ・文化施設の整備、活用 ・ブランド力の向上 新たな「魅力」の ・他の鋳物産地との連携 創設と情報発信 ・新たな販路の開拓 ・情報発信の強化 ・海外へのPR ・後継者の育成 天明鋳物を取り巻く ・指導者の確保、技術の継承 担い手づくり ・鋳物組合の組織強化 - 20 - 第6章 計画の推進に向けて 1.市民との協働・連携 天明鋳物は、一千年の歴史を有する本市の代表的な文化財であるにも関わら ず、市民、県民に意外に知られていない部分もあります。 天明鋳物を市内外へPRするためには、まず市民に天明鋳物についての理解 と誇りを持ってもらうことが必要と考えます。 また、観光資源としても期待できるため、観光協会や商工会議所等の各種団 体との連携を強化します。 (1)市民への利用促進 天明鋳物は、本市の貴重な財産であり誇れる宝でもあります。この天明鋳物 が多くの市民に利用され、生活の中に定着してこそ、全国へPRできる歴史的 地域資源となります。 そのためには、市民に天明鋳物を知ってもらい、利用を促進する機会の創出 に取り組む必要があります。 また、子どもの頃から天明鋳物に触れ、生活に取り入れる事で、大人にも広 がりをみせると考えられるため、工房の見学や鋳物の歴史・体験教室の実施等、 子どもたちへの天明鋳物の理解につながる取り組みを進めます。 (2)観光、他の地域資源との連携 天明鋳物に関連した史跡めぐり・工房めぐり等、観光コースの設定や、テレ ビ・映画等の撮影場所の提供、映像の中に天明鋳物の作品や工房が映し出され ることにより、知名度の向上が図られます。 また、本市のひな人形や飛駒和紙等、他の伝統工芸品とのセット商品を企画 するなど、他の地域資源と連携することで相乗効果が生まれ、天明鋳物の知名 度アップや売り上げの増加につながると考えられます。 - 21 - (3)学校との連携 小中学校などに天明鋳物の作品や歴史資料を持参し、児童・生徒と学芸員等 が作品を前にして対話をする講座を実施します。 また、天明鋳物づくりを体験する講座等、天明鋳物の歴史や技法等を学ぶ機 会の充実を図ります。 (4)国・県の制度の活用 文化庁の伝統文化親子教室事業や県の地域産業育成等支援事業等の補助事業 等を活用し、後継者の育成や従事者の確保等、天明鋳物を地域産業の一つとす るため振興を図ります。 2.文化資源の環境整備 本市が誇る文化財である天明鋳物を、後世に伝えていくため、保存・継承を 行うとともに、文化財として適正に保全するため記録(データベース)化して いきます。 また、天明鋳物の歴史や文化を理解し、愛着や誇りを持つためには、学校で の学習や公民館等での講座等で、データベースが様々な用途に活用されること も重要となります。 (1)文化財としての保存、継承、活用 市内外に所在する茶釜や梵鐘、鰐口等の天明鋳物の作品を記録し、データを 整備する必要があり、まずは、各地に所在する天明鋳物の作品等の実態調査を 進めます。 (2)文化施設の整備、活用 天明鋳物の作品だけでなく、歴史的な建造物を文化財指定・登録することに より、その価値を高め、古い街並みを観光資源として活用し、地域の活性化を 図ります。 - 22 - また、公共施設を再利用することで、天明鋳物の拠点としての活用が見込ま れます。 3.新商品の開発及び販路の開拓 全国の伝統工芸品産業のデータでは、生産額、事業所数、従事者数ともに右 肩下がりとなっています。要因は、商品の売り上げ増加が見込めないことであ り、まずは「売れる商品」づくりに取り組む必要があります。 そのためには、現代社会の生活様式に合った、消費者ニーズを把握した、新 たな商品の開発が不可欠となります。 また、新商品の開発ができても、多くの消費者に売るための機会がなければ、 売れる商品とはなりません。そこで、新商品を販売するための効果的な販路を 開拓する必要があります。 (1)ブランド力の向上 天明鋳物に限らず、商品の売り上げを増加させるためには、「地域ブランド」 が効果的です。例えば「練馬大根」 、 「宇都宮餃子」等のように「地名+商品名」 を組み合わせたブランドです。 その他、 「商品ブランド」、 「企業ブランド」 、海外へは「JAPANブランド」 等、が挙げられますが、例えば、天明鋳物を「佐野・天明鋳物」という名称に して、ブランドを強化していきます。 (2)他の鋳物産地との連携 天明鋳物単独では「売れる商品」づくりの取り組みが困難な場合、他の鋳物 産地との連携により、新たなデザインや商品開発のアイディアが生まれる可能 性もあるため、富山県高岡市や福岡県芦屋町等との連携を進めていきます。 (3)新たな販路の開拓 消費者ニーズにあった新商品の開発ができても、それだけでは売れる商品に - 23 - はなりません。新たに開発した商品をどこで販売すれば効果的に売り上げを伸 ばせるのか、また、どのような方法で情報発信するのが良いのか、等を考慮し て、新たな販路を開拓する必要があります。 (4)情報発信の強化 天明鋳物の魅力を多くの人に知ってもらい、本市を訪れてもらうために、ホ ームページや観光パンフレット、テレビ、ラジオ等、マスメディアを活用し、 様々な方法で情報発信するとともに、天明鋳物のキャッチフレーズである 「千年の鋳物の歴史我が佐野市」の看板等を設置するなど、幅広くPR活動を 展開します。 また、観光協会等と連携を図り、首都圏での展示会や商談会等への出展を支 援します。 (5)海外へのPR 日本貿易振興機構(ジェトロ)栃木貿易情報センターや公益財団法人栃木県 産業振興センター等を活用し、世界各国のマーケット等の情報収集や海外展開 をするためのセミナーへの参加を支援するなど、海外へのPRに向けて検討を 進めます。 4.次代を担う人材の育成 天明鋳物に携わる人材(後継者)を確保するためには、まず、鋳物での安定 した収入を得ることが必要となります。そのためには、一定の受注(需要)が なければ売り上げにつながりません。売り上げを増加させるためには、やはり 「売れる商品」の開発が必要となります。 そして、 「売れる商品」の販売方法や販路開拓をマネジメントできる人材も必 要になります。 また、天明鋳物に関心のある市民が、身近にまちづくりに参加できるよう「文 化ボランティア」の登録制度等も検討します。 - 24 - (1)後継者の育成 伝統的工芸品産業は、いったん途絶えてしまうと再興が困難であると言われ ており、身近な例として「芦屋釜の再生」が挙げられます。 そこで、次代を担う天明鋳物の後継者を育成するために、支援制度の検討や 県の研修制度の活用を推進するなど、後継者の育成に努めます。 (2)指導者の確保、技術の継承 一千年の歴史を有する天明鋳物を、次の世代へ引き継ぐため、現在活動して いる鋳物師に指導者としての協力を依頼し、技術の継承を図ります。 (3)鋳物組合の組織強化 「売れる商品」を開発するだけではなく、効果的な販売方法や販路の開拓等 についても、効率的な運営が求められますので、個々の事業者が単独で活動す るのではなく、協働で事業を展開することが望ましいと考えられます。 そのためには、鋳物組合の活動が十分に機能できるよう、組織の強化を図る 必要があります。 また、商品開発から販売まで総合的に企画・運営できる人材やマーケティン グに精通した人材が必要となりますので、そのような人材の育成も課題となっ てきます。 5.推進体制の整備 本計画を推進していくためには、市・市民・事業者、さらには各種団体等と の連携や協力体制を図りながら取り組むことが必要となります。 そのため、各種の施策推進にあたっては、それぞれが役割を認識し、自主的 に取り組むとともに、各主体が協働して施策を展開することが重要になります。 (1)市民の役割 市民の文化は、地域で生まれ保全継承されていくものであり、その主体は市 - 25 - 民自身となります。本市が誇る歴史的地域資源である天明鋳物について、市民 一人ひとりが誇りと愛着を持って、主体的に地域づくりに参加することが期待 されます。 (2)団体の役割 文化協会をはじめとする文化芸術団体は、これまで市民文化祭等、文化芸術 に積極的に係わり、本市の文化振興事業を盛り上げてきました。 今後は、教育・観光・福祉等の団体とも積極的に連携及び協力することで、 本市の文化振興を推進するとともに、特に次代を担う子どもたちに、天明鋳物 の歴史や伝統文化などを伝える取り組みを推進することが期待されています。 (3)教育機関の役割 小中学校においては、児童生徒が天明鋳物の歴史や鋳物づくり等、参加・体 験できる機会を充実するとともに、郷土博物館等の公共施設を活用し、本市を 代表する文化財である天明鋳物について、触れ親しみ、誇りと愛着が持てるこ とができるようにします。 (4)事業者の役割 鋳物事業者は、後継者育成、新商品の開発、販路の拡大等を始めとする様々 な課題について、解決のため自らが主体的に活動することが求められます。 また、各種事業を実施する際には、積極的に事業に関わることが期待されま す。 (5)行政の役割 市は、市民、鋳物事業者、各種団体等と協同・連携を図り、鋳物のまちづ くりを推進するための事業を展開します。 また、鋳物事業者の活動を支援し、幅広い部門の施策を取り上げ、庁内にお いて相互連携を図りながら計画の推進に努めます。 - 26 - 【推進体制図】 協力・連携 教育機関 市民 天明鋳物の 事業者 各種団体 まちづくり 国・県 市 - 27 - ※1: 【金工とは】 金属に細工する美術工芸であり、鋳金・彫金・鍛金などを含みます。 ○鋳金:型の中に高温で溶けた金属を流し込んでかたちを作る技法 ○彫金:金属の表面に模様や図柄の装飾を施す技法 ○鍛金:金鎚(かなづち、ハンマー)を使い、金属を叩いて加工する技法 ※2: 【伝統的工芸品とは】 伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)に基づき経済産業大臣が指 定します。 「伝統的工芸品」に指定されるためには、下記の指定条件を備えていること が必要です。 1.主として日常生活の中で使われているものであること。 2.主要部分が手づくりであること。 3.伝統的な技術又は技法が守られていること。 4.伝統的に使用されてきた天然の原材料が用いられていること。 5.産地が形成されていること。 と規定されています。 一般の「伝統工芸品」とは別に、 「伝統的工芸品」という呼称は、伝産法によ り定められています。 「的」とは、 「工芸品の特徴となっている原材料や技術・技法の主要な部分が 今日まで継承されていて、さらに、その持ち味を維持しながらも、産業環境に 適するように改良を加えたり、時代の需要に即した製品作りがされている工芸 品」という意味です。 平成27年6月現在、全国で222品目が「伝統的工芸品」として指定され ており、うち関東経済産業局管内では58品目(60産地)の伝統的工芸品が あります。 ちなみに栃木県では、益子焼と結城紬の2品目が「伝統的工芸品」に指定さ れています。 - 28 - 参 考 資 料 ○市内鋳物事業者へのアンケート結果 ○佐野市天明鋳物のまちづくり推進計画策定の経過 ○佐野市天明鋳物のまちづくり庁内推進委員会設置要綱 ○佐野市天明鋳物のまちづくり推進計画策定懇談会設置要綱 ○佐野市天明鋳物のまちづくり推進計画策定懇談会委員名簿 - 29 - 市内鋳物事業所へのアンケート結果 ●アンケート数 5 事業所 ●現在、鋳物の製品(部品)を製造している い る→4事業所(工作機械部品、ダイカスト製品、袋物金具、食品金型等) いない→1事業所(平成14年頃まで、機械部品を製造) ●経営課題の項目 経営課題 (優先順位を上位 3 つまで選択) 1.後継者の確保・育成が難しく 不足している 2.産地としてのまとまりが 欠けている 3.売上・収入の減少 4.社会環境の変化により伝統 維持が難しい 5.流通が旧来のままで硬直的 である 6.消費者ニーズを収集しての 企画・開拓が困難 7.原材料や生産用具など生産 基盤の調達が困難 8.販路開拓が困難である 9.産地の知名度やPRが足り ない 1番目に 2 番目に 3番目に 選択 選択 選択 1票 ― 1票 2票 ― ― 1票 ― ― ― 1票 ― ― 1票 ― ― ― 1票 ― ― ― ― ― ― ― ― ― - 30 - 天明鋳物のまちづくり推進計画策定の経過 日 付 項 目 平成27年 第1回(仮称)天明鋳物推進庁内検討委員会 2月13日(金) ・これまでの経過について 平成27年 7月14日(火) 第2回佐野市天明鋳物のまちづくり庁内推進委員会 ・推進委員会の設置について ・今後の進め方について 第1回佐野市天明鋳物のまちづくり推進計画策定懇談会 平成27年 8月28日(金) ・佐野市天明鋳物のまちづくり推進計画策定懇談会の設置 について ・今後のスケジュール等について 平成27年 第3回佐野市天明鋳物のまちづくり庁内推進委員会 11月17日(火) ・天明鋳物のまちづくり推進計画(案)について 平成27年 第 2 回佐野市天明鋳物のまちづくり推進計画策定懇談会 11月27日(金) ・天明鋳物のまちづくり推進計画(案)について 平成28年 第4回佐野市天明鋳物のまちづくり庁内推進委員会 2月 4日(木) ・天明鋳物のまちづくり推進計画(案)について 平成28年 第 3 回佐野市天明鋳物のまちづくり推進計画策定懇談会 2月12日(金) ・天明鋳物のまちづくり推進計画(案)について - 31 - 佐野市天明鋳物のまちづくり庁内推進委員会設置要綱 平成 27 年7月 13 日訓令第 17 号 (設置) 第1条 天明鋳物を活用したまちづくりを推進するため、佐野市天明鋳物のま ちづくり庁内推進委員会(以下「委員会」という。 )を設置する。 (所掌事務) 第2条 委員会は、次に掲げる事務を所掌する。 (1) 天明鋳物を活用したまちづくりに係る推進計画の策定に関すること。 (2) 天明鋳物に関連する施策の推進に関すること。 (3) 前2号に掲げるもののほか、天明鋳物を活用したまちづくりに関し必要が あると認めること。 (組織) 第3条 委員会は、委員長、副委員長及び委員をもって組織する。 2 委員長は文化振興課長を、副委員長は政策調整課長を、委員は別表第1に 掲げる職員をもって充てる。 (委員長及び副委員長) 第4条 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。 2 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故があるときは、その職務を代 理する。 (会議) 第5条 委員会の会議は、委員長が招集し、委員長が議長となる。 2 委員会は、必要があると認めるときは、会議に構成員以外の者の出席を求 めて、その意見又は説明を聴くことができる。 (担当部会) 第6条 委員会は、天明鋳物を活用したまちづくりに関して調査研究するため、 担当部会を置くことができる。 2 担当部会は、次に掲げる事務を所掌する。 (1) 天明鋳物を活用したまちづくりに関して調査研究すること。 - 32 - (2) 前号に掲げるもののほか、委員会が指定する事務 3 担当部会は、部会長及び部会員をもって組織する。 4 部会長は文化振興課文化政策係長を、部会員は別表第2に掲げる職員をも って充てる。 5 部会長は、部会の事務を掌理する。 6 部会長に事故があるときは、部会長があらかじめ指名する部会員がその職 務を代理する。 7 前条の規定は、担当部会について準用する。この場合において、同条第1 項中「委員長」とあるのは、 「部会長」と読み替えるものとする。 (庶務) 第7条 委員会の庶務は、産業文化部文化振興課において処理する。 (その他) 第8条 この訓令に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、委 員長が委員会に諮って定める。 附 則 この訓令は、公布の日から施行する。 別表第1(第3条関係) 都市ブランド推進室長 行政経営課長 社会福祉課長 医療保険課長 推進課長 都市計画課長 市民活動促進課長 商工課長 観光立市推進課長 水道局総務課長 学校教育課長 環境政策課長 スポーツ立市 生涯学習課長 文化財課長 公民館管理課長 別表第2(第6条関係) 政策調整課政策調整係長 都市ブランド推進室ブランド戦略係長 課行政経営係長 市民活動促進課市民活動促進係長 長 社会福祉課管理係長 医療保険課国保係長 立市推進課観光立市推進係長 都市計画課計画長 行政経営 環境政策課環境政策係 商工課商工振興係長 観光 スポーツ立市推進課スポーツ立市推進係長 水道局総務課総務係長 課生涯学習係長 文化財課文化財保護係長 - 33 - 学校教育課学務係長 公民館管理課総務係長 生涯学習 佐野市天明鋳物のまちづくり推進計画策定懇談会設置要綱 平成 27 年8月 19 日告示第 176 号 (設置) 第1条 佐野市天明鋳物のまちづくり庁内推進委員会設置要綱(平成 27 年佐 野市訓令第 17 号)第1条に規定する佐野市天明鋳物のまちづくり庁内推進 委員会が作成した佐野市天明鋳物のまちづくり推進計画(以下「計画」とい う。 )の原案についての意見を聴くため、佐野市天明鋳物のまちづくり推進計 画策定懇談会(以下「懇談会」という。 )を設置する。 (所掌事務) 第2条 懇談会は、計画の原案に関し、意見を述べるものとする。 (組織) 第3条 懇談会は、委員 10 人以内をもって組織する。 2 委員は、次に掲げる者のうちから、市長が委嘱し、又は任命する。 (1) 学識経験のある者 (2) 文化関係団体に属する者のうち当該団体の推薦を受けた者 (3) 経済関係団体に属する者のうち当該団体の推薦を受けた者 (4) 観光関係団体に属する者のうち当該団体の推薦を受けた者 (5) 鋳物関係団体に属する者のうち当該団体の推薦を受けた者 (6) 産業文化部長 (7) 観光スポーツ部長 (任期) 第4条 委員の任期は、計画が策定される日までとする。 (会長及び副会長) 第5条 懇談会に会長及び副会長を1人置き、委員の互選によりこれらを定め る。 2 会長は、会務を総理し、懇談会を代表する。 3 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき、又は会長が欠けたとき は、その職務を代理する。 - 34 - (会議) 第6条 懇談会の会議は、会長が招集し、会長が議長となる。 2 懇談会は、委員の過半数が出席しなければ会議を開くことができない。 3 懇談会は、必要があると認めるときは、会議に委員以外の者の出席を求め て、その意見又は説明を聴くことができる。 (庶務) 第7条 懇談会の庶務は、産業文化部文化振興課において処理する。 (その他) 第8条 この告示に定めるもののほか、懇談会の運営に関し必要な事項は、会 長が懇談会に諮って定める。 附 則 (施行期日) 1 この告示は、告示の日から施行する。 (会議の招集の特例) 2 この告示の施行の日以後最初に開かれる懇談会の会議は、第6条第1項の 規定にかかわらず、市長が招集する。 附 則(平成 27 年8月 19 日告示第 176 号) この告示は、告示の日から施行する。 - 35 - 佐野市天明鋳物のまちづくり推進計画策定懇談会委員名簿 (平成27年8月28日現在 所属 氏 名 敬称略 団体名・役職 1 学識経験者 片柳 展代 2 文化関係団体 青木 勇 3 文化関係団体 旭岡 靖人 4 文化関係団体 亀田 宮吉 5 経済関係団体 小倉 伸介 6 観光関係団体 一川 政也 7 鋳物関係団体 栗崎 二夫 8 鋳物関係団体 若林 洋一 9 佐野市 矢澤 裕之 10 佐野市 高橋 清 佐野市文化財保護審議会 委員 佐野市文化協会 副会長 (公財)佐野市民文化振興事業団 評議員 佐野ユネスコ協会 副会長 佐野商工会議所 経営支援課長 (一社)佐野市観光協会 事務局長 佐野鋳物工業組合 組合長 天命鋳物伝承保存会 代表 佐野市役所 産業文化部長 佐野市役所 観光スポーツ部長 - 36 - )