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事業及び財務分析と見通し

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事業及び財務分析と見通し
44
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
事業及び財務分析と見通し
営業成績 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
株式会社エヌ・ティ・ティ・
ドコモ及び連結子会社
(以下
「当社」
)
の財務状況及び営業成績に関する以下の考察は、連結財務
諸表、
ならびにこのアニュアルレポートに記載された情報と合わ
せてお読みください。本文中の2002年度とは、2003年3月31
日に終了した会計年度を指し、
その他の年度も同様に翌年の
3月31日を末日としています。
営業収益および営業利益
営業収益
営業利益
売上高営業利益率
5,000(十億円)
4,659
4,000
3,000
EBITDA
4,809
(%)25
4,178
21.5
EBITDA
22.0
18.6
要因の結果として、将来の予測に関する記述のなかで予想さ
に記載されているものを含みますが、
それらには限定されません。
概況
1,681
1,500
40
1,425
15
38.2
1,000
2,000
1,000
れているものとは大幅に異なる可能性があります。なお、
その要
因としては「リスク要因」の項及びこのアニュアルレポートの中
EBITDAマージン
(%)40
1,836
20
本考察と分析には、
リスク、不確実性、仮定を伴う将来の予
測に関する記述を含んでいます。実際の営業成績は、一定の
2,000(十億円)
10
779
1,001
1,057
0
5
0
FY 00
01
02
35
36.1
34.1
500
30
0
25
FY 00
01
02
当社の2002年度の営業収益は2001年度の4,659,254百
万円から4,809,088百万円へ、営業利益は2001年度の
当社は2003年3月31日現在で日本全体の携帯電話サービス
1,000,887百万円から1,056,719百万円へ、それぞれ増加
契約のおよそ58.0%に相当する総計約4,390万の契約を有す
しました。新会計問題審議部会報告(Emerging Issues
る日本最大の携帯電話サービス事業者です。これらの契約
Task Force、以下「EITF」)01-09「売り手による顧客又
の中で約3,780万契約は当社のiモードサービスも契約してい
は自社製品再販業者への支払報酬に関する会計処理」
ます。
またPHS及びクイックキャストサービス(無線呼出サービ
(EITF 01-09)の適用により、2002年度とそれ以前の年
ス)
の提供を全国的に展開しており、
その契約数は2003年3月
度において販売費及び一般管理費の一部を営業収益と
31日現在でそれぞれ約170万及び60万となっています。
相殺しています。後述の「会計基準の動向」の項をご
当社の営業状況及び財務体質は、高水準の収益と利益、
参照ください。2002年度の当期純利益は、2001年度の
安定した営業利益率、
強力なバランスシートが特徴となってい
116,191百万円の純損失から212,491百万円の純利益へと
ます。2002年度の営業収益は4,809,088百万円、EBITDAは
増加しました。これらの業績は、当社の事業が引き続
1,836,264百万円、
営業利益は1,056,719百万円となり、
EBIT-
き拡大していることを示していますが、成長のスピー
DAマージンは38.2%、営業利益率は22.0%となりました。当期
ドは鈍化してきております。成長スピードの鈍化は、
純利益は212,491百万円、
1株当たり当期純利益は4,254円と
主として、新規契約者数の伸びの鈍化及び音声ARPU
なりました。貸借対照表上、2003年3月31日現在の借入債務
(1契約者当たり平均月間収益)の減少によるものです。
総額は1,348,368百万円で、
2002年度のEBITDAの約0.73倍
移動通信市場は安定成長期に入っていますが、当社で
でした。当社は、EBITDAを減価償却費及び有形固定資産
は、この市場は依然として大きな可能性を秘めており、
売却・除却損を控除する前の営業利益と定義しています。当
当社のビジネスチャンスも大きいと考えています。当
社のEBITDA、EBITDAマージンに関する追加情報ならびに
社は、非音声ARPUの一層の拡大、第3世代携帯電話の
最も直接的に比較可能な一般に公正妥当と認められた会計
契約者とiモードに代表されるデータ伝送サービスの契
原則(GAAP)
に基づく指標との調整過程については、
後述の
約者を中心とした契約者数の維持・拡大を通じ収益の
「開示したNon-GAAP財務指標から最も直接的に比較可能
なGAAPに基づく財務指標への調整過程」の項をご参照くだ
さい。
拡大へ注力していく方針です。
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
収益
参照ください。2001年度から2002年度にかけての端末機器
当社の主たる収益源は無線通信サービスと端末機器販売で
販売収益の減少は、
端末の総売上に対する機種変更の比率
す。当社の「無線通信サービス」には携帯電話サービス、
PHS
が増加したこと、
ならびにEITF 01-09のもとでは機種変更の方
サービス、
クイックキャストサービス、
その他の各種サービスがあ
が新規販売よりも収益の減額割合が大きいことによるもので
ります。携帯電話サービスには、現在、携帯自動車電話サー
す。一方、2000年度から2001年度にかけての端末機器売上
ビス、FOMAサービス、PDCパケット通信サービス、衛星電話
収益の減少は、
携帯電話市場の飽和により、
機種変更に係る
サービス、
航空機電話サービスが含まれ、
携帯電話サービスで
端末販売は増加したものの、新規契約に係る端末販売がそ
2000年度、2001年度、2002年度に無線通信サービス収益の
れ以上に減少し、結果として端末販売総数が減少したことに
約95.9%、
約96.1%、
約96.4%を占めました。PHSサービスによ
よります。
る収益は、
無線通信サービス収益の2.3%(2000年度)
、
2.2%
近年の収益の拡大は、主にiモードの成功によってもたらさ
(2001年度)
、
1.8%(2002年度)
に該当します。クイックキャスト
れたものでもあります。iモードは、
既存の携帯電話契約者からi
サービスによる収益は1996年度以来毎年減少し、無線通信
モード関連の追加収益を生み出しただけでなく、iモードが成
サービス収益に占める割合は、
2000年度には0.5%で、
2001年
功しているという正にそのことによって当社のサービスに加入
度及び2002年度はわずかに0.2%でした。
するようになった新規契約者からも、新たな音声伝送収益及
当社の携帯自動車電話サービス収益は、
主として、
定額の
びiモード収益をもたらすこととなりました。
また、収益の増加の
月額基本料金、発信通話料、着信通話に係る収益、
オプショ
一部は、
引き続き契約者数が増加していることによってもたらさ
ン・サービスや付 加 機 能の使 用 料から得られます。また、
れています。収益の成長は、音声ARPUの減少によって一部
FOMAサービスの収益には音声通信とパケット通信に係る収
相殺されております。
益が含まれます。無線通信サービス収益のうち、2000年度
9.8%、
2001年度17.2%、
2002年度には20.4%を占めるPDCパ
ケット通信サービス収益は、
そのほとんどがiモードによる収益と
なっております。iモード収益は、
携帯電話サービス収益の内訳
であるPDCパケット通信サービス収益及びFOMAサービス収
各サービスの契約数
40,000
益に含まれていますが、携帯自動車電話サービス契約の場
合、毎月300円のiモードサービス月額使用料とパケット当たり
PDC ARPUの推移
クイックキャスト
携帯電話
(うちiモード) PHS
50,000(千契約)
30,000
1,098
1,812
36,026
827
1,922
40,783
604
1,688
43,861
音声ARPU
8,000
8,650 8,480
880
8,120
1,540
(37,758)
(32,156)
iモードARPU
10,000(円)
1,750
6,000
0.3円のデータ伝送料金を含んでいます。先進の技術を活かし
て単位時間当りより多くのパケットを伝送可能なFOMAサービ
ス契約の場合、
iモードサービスの月額使用料は毎月150円で、
20,000
4,000
(21,295)
7,770
10,000
6,940
6,370
2,000
データ伝送料金はパケット当り0.02円∼0.2円となっております。
端末機器販売による収益の大半は携帯電話機やその他
端末機器の販売によるもので、
営業収益総額のうち2000年度
0
0
FY 00
01
02
FY 00
01
02
は13.4%、2001年度は10.9%、2002年度は9.5%を占めていま
す。2002年度には当社の新製品であるiショットカメラ付き携帯
FOMA契約者を含む当社の携帯電話契約者数は、2001
電話が好調な販売を記録しました。
しかしながら機器販売か
年3月31日現在の約3,600万契約から2002年3月31日現在
ら得る収益は、
特に端末の場合には売上原価及び関連費用
の約4,080万契約へと1年間で13.2%増加し、
そこから2003年
によって部分的に相殺されるため、
営業利益にあまり寄与して
3月31日現在、FOMAサービスの契約数を含め約4,390万契
いません。2002年度より当社ではEITF 01-09を適用しており、
約へと1年間で7.5%増加しました。iモードサービスを契約した
それにより2002年度及び過年度において当社が販売代理店
契約者は既存契約者と新規契約者を合わせて、2001年3月
に支払う契約者一人当り約3万円の平均販売手数料のうち
31日現在の約2,170万契約から2002年3月31日現在の約
一部を端末機器販売収益の減額として会計処理を行ってい
3,220万契約へと1年間で48.4%増加し、
そこから2003年3月
ます。この点に関しては後述の「会計基準の動向」の項をご
31日現在の約3,780万契約へと1年間で17.4%増加していま
45
46
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
す。PHS契約者数は2001年3月31日現在の約180万契約か
度の2,200円からやや減少して2002年度には2,110円となりま
ら2002年3月31日現在には約190万契約に増加しましたが、
した。
この減少は主として、
迷惑メール受信を補償するための
2003年3月31日現在は約170万契約へと減少しています。
ま
PDCパケット通信料の一部無料化、「iメニュー」コンテンツ閲
た、
クイックキャストサービス契約者は近年減少を続けており、
覧の一部無料化を2001年度から開始しましたが、2002年度
2001年3月31日現在の約110万契約、2002年3月31日現在
はその影響が通年で効いたこと、
及び2002年度から開始した
の約80万契約から2003年3月31日現在の約60万契約へと
一定以上のパケット数を超えた利用者へのPDCパケット通信
減少しています。当社のFOMAサービス契約者は2002年3月
料金の割引が原因と考えられます。
31日現在の約8.9万契約から2003年3月31日現在の約33万
他の無線通信事業者に支払うアクセス・チャージに関する
契約に増加しています。2003年5月30日現在、携帯電話契
相互接続契約の交渉が行われた結果、2001年度からARPU
約者はFOMAサービス契約者を含めて合計約4,420万契約
の計算の仕方が変わっております。2001年3月期以前は当社
で、iモードサービス契約数は合計約3,830万契約、PHSは約
の契約者が他の無線通信事業者のネットワークを利用して通
170万契約、
クイックキャストサービス契約は約60万契約となっ
話を行う際にかかるアクセス・チャージを当社は支払っていま
ています。
せんでした。
またこのような通話の相手方の通信事業者は、
通
1契約者当たりの月間平均利用時間は、2000年度の1ヵ月
話のうちその事業者のネットワーク利用部分に対する料金回
当たり約189分、2001年度の約178分から2002年度には約
収リスクを実質的に負っていました。このため通話のうち当社
168分へと減少しています。この減少の原因としては主として
ネットワークを利用している部分のみについて当社では収益を
低利用者層への普及の拡大及び多くの契約者が音声通話
計上していました。相互接続契約の見直しの結果、
当社の契
のかわりにiモードメールを利用したことが考えられます。
約者のかけた前述の通話で他の無線通信事業者のネット
携帯電話契約者数の増加は、
総合ARPU(1契約者当たり
ワークを利用した部分に関してはアクセス・チャージを当社が
平均月間収益)
の減少及びPHSとクイックキャストの収益減少
支払い、
またこうした通話の全料金の回収に関するリスクを当
を補ってきました。過去数年にわたって音声ARPUは減少して
社が負うことになりました。
このため2001年4月1日から当社の
いますが、
この原因としては、主として、携帯電話料金の値下
営業収益は増大しましたが、
それは営業費用の増加により相
げ、割引プランを利用する契約者が増加したこと、低利用者
殺されています。ただしこの変更の結果、当社の音声ARPU
層への普及が進んだこと、
多くの契約者が音声通話のかわり
は変更前と比較して2001年度で約330円、
2002年度で約320
にiモードメールを利用したこと、
そして、日本国内における消
円増加しております。
費の低迷からくる契約者の利用状況の悪化などが挙げられま
携帯電話契約者に関する当社の月間平均解約率は、
2000
す。
この結果、
当社の総合ARPUは、
2001年度の8,480円から
年度、
2001年度及び2002年度でそれぞれ1.39%、
1.18%及び
2002年度の8,120円へと4.2%減少しました。なお、2000年度
1.22%でした。解約率を低く保つために当社はいくつかの施
は8,650円でした。総合APRUが大幅な減少とならなかった主
策を実施し、
契約者の維持に重点をおいてきました。その施策
たる理由の一つとしては、iモードAPRUの増加が部分的に音
には、長期契約者に対する割引の適用や機種交換に対する
声APRUの減少を相殺したことが考えられます。2002年度の
インセンティブの提供が含まれます。当社の解約の一部には、
音声ARPUは2000年度の7,770円、2001年度の6,940円から
新機種への切り替えに関連する端末取替えに伴う解約が含
8.2%減少し、
6,370円となりました。一方、
iモードARPU(iモード
まれますが、
これは端末をアップグレードしたり交換したりする目
単独ARPUに、分子がiモード契約者数、分母が携帯電話契
的のために契約者が任意に解約していることが原因であると
約者総数となる分数を乗じたもの)
は2000年度の880円、
2001
考えられ、
このような利用者は当社の契約者として留まるため、
年度の1,540円から13.6%増加して1,750円となりました。携帯
完全な契約関係の解除となる解約に比べて当社の財務成績
電話ARPUはさらに減少し続け、1契約者当たり月間平均利
に与える影響は大きくないと考えています。また、当社の解約
用分数は今後数年間減少するものと予想されます。
しかしな
率は他事業者と比較して低いものとなっていますが、
これはi
がら音声ARPUを減少させるこのような傾向は、
契約者数の増
モードの導入、
当社ネットワークとサービスに対する顧客の信頼、
加や、少なくとも短期的にはiモードARPUの増加によって部分
及び新サービス導入など様々な要因の結果と考えます。ただ
的に補えるものと考えています。iモード単独APRUは、2001年
し、
この状況が継続する保証があるわけではありません。
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
2002年度 営業収益の内訳
無線通信サービス (90.5%)
携帯自動車電話収入(68.3%)
FOMA収入 (0.3%)
パケット通信収入
(18.4%)
PHS収入収入 (1.6%)
クイックキャスト収入 (0.2%)
その他 (1.7%)
端末機器販売収入
(9.5%)
2002年度 営業費用の内訳
サービス原価
端末機器原価
減価償却費
販売費及び
一般管理費
新規顧客獲得にかかる費用と同様に、
既存契約者への機
(18.1%)
(25.3%)
(20.0%)
種交換に伴う端末販売及び端末の利用登録手続に対しても
(36.6%)
1997年度をみると既存契約者は取替前に約3年間同じ端末
1契約につき約3万円の手数料を代理店に支払っております。
を使用していました。
しかしそれ以降、
機種交換までの平均期
間は短くなり、
現在では約2年半に1回の割合で契約者は端末
を取替えています。
これは、
端末の大きさ、
品質及びバッテリー
寿命が常に改善されてきたこと、
またiモード、
iアプリ及びiショッ
トのような新サービスの提供により契約者がより先進的な新機
種を求めようとしていることに大きな要因があると考えておりま
す。それに加えて、
特に高い人気を博した機種が端末の売上
を大幅に伸ばしています。2000年度には、新しい機種の売上
はiモードの成功にも大きな影響を受け、iモード対応機種を購
入する新規及び既存契約者の数が増えました。このような新
規端末及び機種交換端末の相当数の売上は、上記で述べ
費用
た顧客獲得費用を伴うことから利益率にマイナスの影響を及
当社の主たる営業費用は、主としてネットワーク運営費とアク
ぼしました。2001年度には新規契約者に対する端末の売上
セス・チャージから成るサービス原価、
端末機器やその他機器
は2000年度を下回り、
結果として関連する端末の顧客獲得費
の原価、販売代理店に対する手数料、流通費、広告宣伝・販
用は減少しました。2002年度には端末機器原価は主として
売促進費、及び顧客サービス費用を含む販売費及び一般管
FOMA端末の初期販売モデルの在庫処分に関連した費用
理費です。販売代理店に対する手数料は販売費及び一般
により若干増加しています。
管理費の約4割に相当します。さらに営業費用にはネットワー
周波数の利用に関して、当社は電波法に則って基地局及
ク構築の費用を含む設備投資に関連する減価償却費が含
び端末の数など複数の要因に基づいて定められる利用料を
まれます。
政府に支払っています。2000年度の利用料は約218億円、
新規契約の獲得にも一定の費用がかかります。主要な費用
2001年度は約240億円でした。2002年度は総計で約250億円
は、
販売代理店に対する手数料という形の販売費で、
販売費
の利用料を支払いました。第3世代携帯電話の割り当て周波
及び一般管理費に含まれています。当社は2002年4月1日より
数に関する利用料は、電波法により規定されている第2世代
EITF 01-09を適用しており、
2001年度及び2000年度において
割り当て周波数に関する現行の料金算定方式と同様の方式
販売費及び一般管理費に計上していた販売代理店への販売
で計算されています。当社は第3世代携帯電話サービスを開
手数料の一部についても会計処理の整合を図るため、
端末機
始したばかりで契約者数がまだ少なく、現状の第3世代携帯
器販売収益の減額として組替えております。
この点については
電話の割り当て周波数に対する利用料も限定的なものとなっ
後述の「会計基準の動向」の項をご参照ください。新規契約を
ています。
扱う代理店に当社が支払う手数料の主な構成要素は、
各新規
2002年度の下期から、当社は、端末製造メーカーによる
契約に対する成約手数料と、
各代理店ごとの1ヵ月当たりの新
FOMA端末の開発に投資することとしました。2002年度及び
規契約数によって決まる数量インセンティブです。
さらに当社は
2003年度のFOMA端末開発に対する投資額の合計は約420
代理店に対して、
契約者が購入した端末の種類に応じた端末
億円の見込みです。
販売奨励金という形態の手数料を支払っています。手数料は、
ここ数年における携帯電話トラフィックの増大に対応するた
各地域の競争及び経済情勢の相違などを要因として地域に
めに、当社は携帯電話ネットワークの拡張及び高度化を進め
よって異なっています。新規契約を獲得し契約者が同時に端末
ると同時にW-CDMA技術を利用した第3世代携帯電話通信
を購入した場合に当社が支払った平均手数料は、
2000年度、
システムの開発に努めてきました。既存のPDCネットワークの
2001年度及び2002年度ともに1契約者につき約3万円でした。
地理的なカバー・エリア拡大は事実上完了したものの、
トラヒッ
47
48
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
クが集中しているエリアにおける同ネットワークの容量拡大・改
する一定条件下で当社所有の同社株式及びワラントの買戻
善の継続、既存ネットワークの維持、第3世代携帯電話ネット
し請求の権利などによりAT&T Wirelessの事業に多大な影響
ワークの構築・拡大・改善及び第3世代や他のプロジェクトの
力を行使できるという事実に基づいて持分法による会計処理
研究開発は、
当面多額の設備投資を必要としています。後述
を行っています。
の「設備投資」の項をご参照ください。
当社では、関連会社の損益に対する当社の持分を計上し
ているのに加えて、
関連会社投資の価値についても定期的に
営業利益
評価しています。価値の減損が生じている場合には、
当社は、
当社の利益は、
すべての携帯電話事業者に影響を与えるさ
従来もそうでしたが今後も、
これらの投資にかかる一時的でな
まざまな要因、
例えば、
高水準の総合ARPUを維持する能力、
い価値の下落に関して評価損を計上することとしています。
顧客を獲得し維持する能力、契約数の増加率、契約者の通
近年、当社が投資している企業を含めて、多くの電気通信
信利用の程度、料金の水準・体系、競争状況、解約率、周波
事業者及び無線通信事業者は、競争の激化、
ネットワーク構
数の入手可能性と割り当て、電気通信事業者間アクセス・
築による債務負担の増加、第3世代通信向け周波数競争入
チャージ、
ネットワーク設備投資の必要性、研究開発費などか
札価格の高騰など、様々な悪材料に見舞われています。この
ら継続的に生み出されており、今後も、
これらの要因に大きく
結果、
これらの企業は財務的にも困難な状況に置かれており
影響されるものと考えております。
株価の変動も激化しています。これらの悪材料の影響やそれ
に伴う当社の関連会社の株価または市場価値の下落に照
持分法による投資損失
らして、当社は一部の関連会社に対する投資について2001
持分法による投資損失は、今後も引き続き、主として当社の海
年度に6,246億円(4,532億円の税効果調整後)
、
2002年度に
外投資に影響を受けるものと見ています。
まず、
持分法の適用
3,196億円(2,255億円の税効果調整後)の減損額を計上し
により投資対象の各社の当期純利益または当期純損失の当
ました。2 0 0 1 年 度の税 効 果 調 整 前の減 損 額は、A T & T
社持分が当社の業績に含まれております。また、当社の投資
Wireless Services, Inc.が6,645億円、KPN Mobile N.V.が
額は、投資時点における投資先の当社持分純資産を大幅に
3,205億円、KG Telecommunications Co., Ltd.が365億円、
上回っていましたが、
こうした差額(「営業権相当額」)
につい
Hutchison 3G UK Holdings Ltd.が564億円 、2002年度は
ては、2001年3月31日までは5年から20年までの期間にわたり
AT&T Wireless Services, Inc.が2,841億円、KPN Mobile
定額償却を実施していました。2001年3月31日までに行われ
N.V.が1,179億円、
KG Telecommunications Co., Ltd.が96億
た投資に関する2000年度における営業権相当額の償却額
円、
Hutchison 3G UK Holdings Ltd.が1,232億円、
(株)
ドコ
は、
およそ100億円でした。2001年4月1日付で、
当社は米国財
モ・エーオーエルが103億円です。当社の海外投資に関する
務会計基準書第142号「営業権及びその他の無形固定資
リスク要因については「リスク要因」の項をご参照ください。
産」
(SFAS第142号)
を適用し、投資に伴う営業権相当額の
2002年11月、
当社はKPN Mobile N.V.より同社に関する議
償却を停止しました。投資や営業権相当額は、一時的でない
決権割合を維持するための株式買増権行使による増資の引
価値の下落に基づき減損の要否を検討しており、
以下の通り
受要請を受領しました。2002年12月、
当社は株式買増権を行
数件の減損を認識しています。2003年3月31日現在、
当社の
使しないことを決定し、議決権割合が15%から約2.2%に減少
海外投資先関連会社に関する営業権相当額の残高は約
したため同社への役員派遣を含む引受契約及び株主間協
500億円となっております。
定における権利は終了しました。
この結果、
KPN Mobile N.V
AT&T Wireless GroupがAT&Tから分離されるまで、
当社
のAT&T Wirelessへの投資は、
AT&T発行の優先トラッキング
ストックへの投資という形態をとっており、
原価法で会計処理さ
れていました。2 0 0 1 年 7 月 9 日の分 離 後、当 社のA T & T
Wirelessへの投資は、
持分所有割合をはじめ、
取締役の派遣、
AT&T Wirelessの主要管理職へのドコモ社員の選任、技術
提携、
特定の活動を承認する権利及び、
AT&T Wirelessに対
に対して重要な影響を及ぼし得なくなったことから、持分法の
適用範囲から除外しております。
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
営業成績
次の表は、
各年度の損益計算書から抽出した円貨によるデータと営業収益に対する比率を表しています。
百万円
3月31日に終了した年度
2001
2002
2003
¥3,620,271
557,785
4,178,056
¥4,153,459
505,795
4,659,254
¥4,350,861
458,227
4,809,088
537,913
958,022
595,598
1,307,903
3,399,436
778,620
20,489
758,131
317,337
440,794
(17,767)
(21,272)
401,755
—
¥ 401,755
684,400
927,483
640,505
1,405,979
3,658,367
1,000,887
44,496
956,391
399,643
556,748
(643,962)
(28,977)
(116,191)
—
¥ (116,191)
677,940
950,699
749,197
1,374,533
3,752,369
1,056,719
13,751
1,042,968
454,487
588,481
(324,241)
(16,033)
248,207
(35,716)
¥ 212,491
営業収益:
無線通信サービス . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
端末機器販売(1)
...............................................
営業費用:
サービス原価 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
端末機器原価 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
減価償却費 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
販売費及び一般管理費(1)
........................................
営業利益 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
営業外費用、純額 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
法人税等、持分法による投資損失及び少数株主損益前利益 . . . . . . . . . . .
法人税等 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
持分法による投資損失及び少数株主損益前利益 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
持分法による投資損失*(2)
..........................................
少数株主損益 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
会計原則変更による累積的影響額前利益(損失)
会計原則変更による累積的影響額(3). . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
当期純利益(損失)
..............................................
3月31日に終了した年度
2001
2002
2003
86.6%
13.4
100.0
89.1%
10.9
100.0
90.5%
9.5
100.0
12.9
22.9
14.3
31.3
81.4
18.6
0.5
18.1
7.5
10.6
(0.5)
(0.5)
9.6
—
9.6
14.7
19.9
13.7
30.2
78.5
21.5
1.0
20.5
8.6
11.9
(13.8)
(0.6)
(2.5)
—
(2.5)
14.1
19.8
15.5
28.6
78.0
22.0
0.3
21.7
9.5
12.2
(6.7)
(0.3)
5.2
(0.8)
4.4
営業収益:
無線通信サービス . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
端末機器販売 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
営業費用:
サービス原価 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
端末機器原価 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
減価償却費. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
販売費及び一般管理費. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
営業利益 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
営業外費用、純額 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
法人税等、持分法による投資損失及び少数株主損益前利益 . . . . . . . . . . . .
法人税等 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
持分法による投資損失及び少数株主損益前利益 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
持分法による投資損失* . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
少数株主損益 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
会計原則変更による累積的影響額前利益(損失). . . . . . . . . . . . . . . . . . .
会計原則変更による累積的影響額 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
当期純利益(損失). . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
(注)(1) 2002年4月1日よりEITF 01-09を適用しています。これにより、2000年度及び2001年度の端末機器販売、販売費及び一般管理費を組替えています。2002年度の端末機器販売収入及び
販売費及び一般管理費は、
それぞれ558,923百万円、571,223百万円減少しております。また、規定により、2000年度及び2001年度の販売費及び一般管理費は、
それぞれ491,310百万円、
507,884百万円を端末機器販売にかかる収益の減額として表示変更しております。
(2) 2001年度において関連会社投資の減損額624,644百万円(453,235百万円の税効果調整後)を含みます。
2002年度において関連会社投資の減損額319,564百万円(225,535百万円の税効果調整後)を含みます。
(3) これは、EITF01-09の適用による代理店への手数料支払の認識時期に関連するものです。
49
50
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
2001年度と2002年度の比較
営業収益に対する営業費用の比率を見ると、2001年度の
2001年度の営業収益が4,659,254百万円であったのに対し、
78.5%から2002年度は78.0%へと減少しています。
これは主に、
2002年度には3.2%増加して4,809,088百万円になりました。収
減価償却費等営業費用の伸びに比し、PDCパケット通信収
益のうちで無線通信サービスの占める割合は2002年度で
入等営業収益の伸びが大きかったことによります。
90.5%、2001年度で89.1%でした。無線通信サービス収益の
増加は、
主として、
iモードやその他のPDCパケット通信サービス
以上の結果、当社の2002年度の営業利益は1,056,719百
万円に達し前年度から5.6%増加しました。
を含む携帯電話サービス収益が5.1% 増加して4,193,625百
営業外(収益)費用としては支払利息、受取利息、為替差
万円に達したことによるものです。携帯電話サービス収益がこ
損益、
市場性のある有価証券及びその他投資の実現損益な
れほどに増加した背景には、
携帯電話契約者ベースの増大、
i
どが含まれますが、
2002年度には2001年度の費用44,496百万
モードサービスの業績の堅調さがあり、
こうした要因によって、
円(純額)
から69.1%減少し、
13,751百万円の費用(純額)
にな
料金引き下げ、割引プランを利用する契約者の増加、低利用
りました。
この減少は主に、
AT&T Wireless普通株式のワラント
者層への普及の拡大、多数の契約者による音声通話に代わ
時価評価の結果、
2001年度に計上した評価減によるものです。
るiモードメールの利用、
及び日本国内の消費低迷による契約
法人税等、
持分法による投資損失及び少数株主損益前利
者の利用状況の悪化による音声ARPUの減少を相殺すること
益は2001年度が956,391百万円に対し2002年度は1,042,968
ができました。iモードサービスの拡大によって、PDCパケット通
百万円、
法人税等は2001年度が399,643百万円、
2002年度が
信サービスによる収益は2001年度の716,091百万円から2002
454,487百万円でした。税負担率はそれぞれ約42%と約44%
年度には886,337百万円にまで増大しました。PHSサービス収
でした。当社は、
法人税をはじめ事業税、
住民税など日本で課
益は無線通信サービス全体の1.8%を占めますが、
10.8%減少
される種々の税金を納付していますが、
これらすべてを合計す
しました。
また、
無線通信サービス全体の0.2%にあたるクイック
ると法定実効税率は2001年度、
2002年度ともに約42%でした。
キャストサービス収益は大幅に減少しており、
クイックキャストの
2003年3月、
日本国政府は税法体系の見直しを行い、
法人
契約者ベースと利用両面での衰退を物語っています。端末機
事業税の税率引き下げ及び外形標準課税制度の導入が実
器販売収益は前年度比で9.4% 減少しましたが、
これは主とし
施されることとなりました。この改正は平成2004年4月1日より
て、端末の総売上に対する機種変更の比率が増加したこと、
開始する事業年度より適用開始となるため、
2004年4月1日以
ならびにEITF 01-09のもとでは機種変更の方が新規販売より
降に解消が見込まれる一時差異にかかる繰延税金資産及び
も収益の減額割合が大きいことによるものです。
負債の金額の算定に適用される法定実効税率は40.7%に引
営業費用は、2001年度の3,658,367百万円から2002年度
き下げられることとなりました。この税率変更の影響により、繰
には3,752,369百万円へと2.6% 増加しました。
この増加は、
主
延税金資産(純額)が18,213百万円減少し、2002年度の法
に、2002年度に端末機器原価が2.5%増加したこと、及び減
人税等が同額増加しております。
価償却費が17.0%増加したことによるものです。端末機器原
持分法による投資損失(税効果調整後)
は、2001年度の
価の増加は、主に、
FOMA端末の初期販売モデルの在庫処
643,962百万円から2002年度には324,241百万円に減少しま
分によるものです。減価償却費の増加は、
主として、
FOMA用
した。これは、主に関連会社投資に係る減損額が2001年度
の通信設備の増加や企業情報システム用のハードウェア及び
の6,246億円(4,532億円の税効果調整後)
に対して2002年
ソフトウェアの取得によるものです。また、
サービス原価につい
度は3,196億円(2,255億円の税効果調整後)
と減少したこと
ては前年度比0.9%、販売費及び一般管理費については
によるものです。
2.2%減少しています。サービス原価の減少の主な要因は、他
EITF01-09は、収益及び当該支払手数料の減額を、自社
の電気通信事業者のネットワークを利用する通話に際して支
製品を最終顧客へ販売した時点ではなく、販売代理店に販
払うアクセス・チャージが使用単価の引下げにより減少したこ
売した時点で認識することを定めております。この結果、会計
とによります。販売費及び一般管理費の減少の主な要因は、
原則変更による累積的影響額が計上され、
当期純利益は、
税
新規契約者獲得に係る販売手数料が新規契約者獲得数の
効果考慮後で35,716百万円減少しました。
この点については
減少に伴い10.6%減少したことによります。
以下の「会計基準の動向」
を参照してください。
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
以上の結果、当社の2002年度の当期純利益は212,491百
万円となりました。なお、2001年度は116,191百万円の当期純
損失でした。
契約者増の飽和によるものです。
営業費用は、2000年度の3,399,436百万円から2001年度
には3,658,367百万円へと7.6% 増加しました。
この増加は、
主
に、2001年度に非関連当事者との取引にかかるサービス原
営業収益の推移
無線通信サービス
端末機器販売
5,000(十億円)
4,809
4,659
4,000
4,178
506
サービス原価
端末機器原価
558
5,000(十億円)
3,000
3,658 3,752
3,000
3,620
749
958
927
951
す。販売費及び一般管理費が増加した主な要因としては、
お
538
684
678
客様に提供しているポイントサービスプログラムのポイント還元
1,000
0
01
02
0
拡大や通信品質の改善のための設備投資に関連して施設
641
2,000
1,000
チャージが新たにかかるようになったこと、及びサービスエリア
1,374
596
FY 00
関連当事者との取引にかかるサービス原価の増加は、
主に他
1,406
1,308
4,351
販売費及び一般管理費が7.5%増えたことによるものです。非
の携帯電話事業者のネットワークを利用する通話にアクセス・
3,399
4,153
減価償却費
販売費および
一般管理費
458
4,000
2,000
価が108.4% 増加したこと、
減価償却費が7.5%増加したこと、
営業費用の推移
FY 00
01
02
保全費が増加したことによります。減価償却費の増加は、
主と
して、
FOMA用の通信設備の増加や顧客サービス及び請求
システム用のハードウェア及びソフトウェアの取得によるもので
費用や事業の拡大に伴う費用の増加が挙げられます。
営業収益に対する営業費用の比率を見ると、2000年度の
2000年度と2001年度の比較
81.4%から2001年度は78.5%へと減少しています。
これは主に、
2000年度の営業収益が4,178,056百万円であったのに対し、
2001年度の端末機器収入の減少によります。
2001年度には11.5%増加して4,659,254百万円になりました。
収益のうち無線通信サービスの占める割合は2001年度で
以上の結果、当社の2001年度営業利益は1,000,887百万
円に達し前年度から28.5%増加しました。
89.1%、
2000年度で86.6%でした。無線通信サービス収益の
営業外(収益)費用としては支払利息、受取利息、為替差
増加は、主として、iモードやその他のPDCパケット通信サービ
損益、
市場性のある有価証券及びその他投資の実現損益な
スを含む携帯電話サービス収益が14.9% 増加して3,990,496
どが含まれますが、2001年度には2000年度の費用20,489百
百万円に達したことによるものです。携帯電話サービス収益が
万円(純額)
から117.2%増加し、
44,496百万円の費用(純額)
これほどに増加した背景には、携帯電話契約者ベースの増
になりました。
この増加は主に、
AT&T Wireless普通株式のワ
大、
iモードサービスの業績の堅調さがあり、
こうした要因によっ
ラント時価評価減のために、
「その他、純額」が、2000年の
て、
料金引き下げ、
割引プランを利用する契約者の増加、
低利
1,038百万円から2001年度の27,421百万円へと増加している
用者層への普及の拡大、
音声通話の代わりにiモードメールを
ことによります。
利用する契約者の存在、
及びショートメール
(回線交換サービ
法人税等、
持分法による投資損失及び少数株主損益前利
ス、
音声収入とされています)
よりもiモード経由で電子メールを
益は2001年度が956,391百万円に対し2000年度は758,131百
送ることを好む契約者による音声ARPUの減少を相殺するこ
万円、法人税等は2001年度が399,643百万円、2000年度が
とができました。iモードサービスの拡大によって、PDCパケット
317,337百万円でした。税負担率は両年度とも約42%でした。
通信サービスによる収益は2000年度の353,468百万円から
当社は、法人税をはじめ事業税、住民税など日本で課される
2001年度には716,091百万円にまで増大しました。PHS収益
種々の税金を納付していますが、
これらすべてを合計すると法
は無線通信サービス全体の2.2%を占めますが、7.8%増加し
定実効税率は2000年度、
2001年度ともに約42%でした。
ました。一方、無線通信サービス全体の0.2%にあたるクイック
持分法による投資損失(税効果調整後)
は、2000年度の
キャスト収益は大幅に減少しており、
クイックキャストの契約者
17,767百万円から2001年度には643,962百万円に増加しまし
ベースと利用両面での衰退を物語っています。端末機器販売
た。
これは主に、
海外投資先の関連会社を減損したことによる
収益は前年度比で9.3% 減少しましたが、
これは主として新規
もので、市 場 価 額や実 質 価 額 が 著しく下 落したA T & T
51
52
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
Wireless Services, Inc.、
KPN Mobile N.V.、
Hutchson 3G UK
・ 衛星電話サービス
Holdings Ltd.及びKG Telecommunications Co., Ltd.の株式
・ 航空機電話サービス
が対象となっています。
・ 上記各サービスに関する機器販売
以上の結果、当社の2001年度の当期純損失は116,191百
万円となりました。なお、2000年度には401,755百万円の当期
2002年度営業収益:セグメント別内訳
純利益でした。
セグメント情報
合計4,809,088百万円
携帯電話事業 (97.5%)
PHS事業 (1.8%)
クイックキャスト事業 (0.2%)
その他事業 (0.5%)
概略
当社では米国財務会計基準書第131号「企業のセグメントと
関連情報に関する開示」(SFAS第131号)を採用しています。
このSFAS 第131号 では、当社の財務諸表でオペレーティン
当社のPHS事業セグメントの事業はPHSサービスと関連機
グ・セグメントの業績も報告することが義務付けられています。
器の販売です。
クイックキャスト事業セグメントの事業としてはク
SFAS 第131号の適用において、
当社では現在、携帯電話事
イックキャストサービス
(無線呼出サービス)
と関連機器の販売
業、PHS事業、
クイックキャスト事業、
その他事業の4つの主要
があります。その他事業には国際電話サービスやその他の
な事業セグメントを報告セグメントとしています。SFAS 第131号
サービスを含みますが、
その総額に重要性はありません。
の定めに従い、
当社は、
マネジメント・レポートに報告されている
事業セグメント情報を添付の連結財務諸表の中で記載してい
ます。
当社の最高意思決定者はマネジメント・レポートの情報によ
2002年度と2001年度の比較
2002年度、当社の営業収益は3.2%増加し4,809,088百万円
り各セグメントの業績をモニターし評価しています。当社は
に達しました。営業費用は2.6% 増の3,752,369百万円となり、
2002年度から日本国内における連結財務情報の開示を日
その結果営業利益は5.6%増の1,056,719百万円になりまし
本会計基準によるものから米国会計基準によるものに変更し
た。携帯電話事業セグメントに係る営業収益は3.7%増加して
ました。
これに伴い、
マネジメント・レポートについても、
従前は日
4,690,444百万円に達しました。これは主に携帯電話契約者
本の会計基準に準拠していたものを2002年度より米国会計
の増加が続いたこと、iモードサービスの事業が発展を続けた
基準に準拠したものに変更しております。連結財務諸表の注
ことによります。
この2つの要因により、
料金の引き下げ、
割引プ
記14では、2000年度及び2001年度のセグメント情報は引き続
ランを利用する契約者の増加、
低利用ユーザー数の増加、
多
き日本の会計基準に準拠したものを記載しておりますが、
セグ
数の契約者による音声通信に代わるiモードメールの利用、及
メント情報の比較可能性及び財務諸表読者の利便性を確保
び日本国内の消費低迷による契約者の利用状況の悪化に
する理由から、
2001年度及び2000年度の米国会計基準に準
よる音声ARPUの低下を部分的に相殺することができました。
拠したセグメント情報も同注記に補足情報として記載してい
上記に加え、
「iショット」サービスに対応した新型のカメラ付携
ます。同様の理由から、
セグメントに関する以下の考察及び分
帯電話が2003年6月の販売開始から11ヵ月で1,000万契約を
析は、全て米国会計基準に準拠したセグメント情報を用いて
突破するなど好調な販売により、関連サービスの収益が携帯
おります。
電話事業セグメント収益の増加に寄与しました。携帯電話事
当社の携帯電話セグメントの事業は以下のとおりです。
業セグメントによる収益が収益総額に占める割合は、2001年
・ 携帯・自動車電話サービス
度の97.1%から2002年度には97.5%へとわずかに増加しまし
・ FOMAサービス
た。当 社の携 帯 電 話 事 業の営 業 費 用は4 . 2 % 増 加して
・ PDCパケット通信サービス
3,603,257百万円となりました。これは、主にポイントサービス関
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
連の顧客維持費用の増加、FOMA通信設備や企業情報シ
新規契約者獲得に係る販売手数料の減少、PHS事業関連
ステムに関連する減価償却費の増加によるものです。この結
設備への設備投資額の減少に伴う減価償却費の減少及び
果、
携帯電話事業による営業利益は1.9%増えて1,087,187百
その他のコスト削減努力によって29.2%減少し、113,332百万
万円に達しました。
円となりました。PHS事業セグメントの営業損失は52.7%減少
当社では、FOMAサービスが今後の携帯電話事業におい
して28,294百万円になりました。
てますます重要なサービスとして位置付けられると予想してい
また、
クイックキャスト事業セグメントの営業収益は27.3%減
ます。2002年度にFOMAサービス収益(FOMA端末機器販
少して8,088百万円になりました。
これはクイックキャスト契約者
売収益を除く)
は主としてFOMA端末販売の増加による契約
数の減少と利用率の低下によるものですが、
この傾向に変化
数の増加により、18億円から136億円に拡大しました。FOMA
はありません。クイックキャスト事業の営業収益は、今では営業
端末販売の増加は、2003年3月31日現在FOMAネットワーク
収益総額のわずか0.2%を占めるに過ぎません。営業費用は、
の人口カバー率が91%となったこと、FOMA携帯電話機の待
通信設備使用料及びその他コスト削減努力により16.0%減少
機中の電池寿命の改善、及びP2102Vモデルのように動画
して14,546百万円になりました。クイックキャスト事業による営
メールまたはテレビ電話機能を持つ特定の機種が人気となっ
業損失は4.5%増加して6,458百万円となりました。
たことがその理由としてあげられます。FOMAは、2002年度に
その他事業による営業収益は、6.6%増加して25,518百万
収益は増加しましたが、主としてFOMA通信設備に関連した
円になりました。この増加は主に国際通信サービス及び国際
多額の償却費用により当社の営業利益の面では寄与してお
ローミングサービスに係る収入の増加によるものです。営業費
りません。
用はコスト削減努力により9.7%減少して21,234百万円になり
2002年度、当社のPHS事業セグメントの営業収益は15.1%
減少して85,038百万円になりました。これは主に当社のPHS
ました。その他事業による営業利益は約40億円増加して
4,284百万円となりました。
契約者数が減少したことによります。PHS事業の営業費用は、
携帯電話事業の営業利益
1,200(十億円)
PHS事業の営業損失
0(十億円)
クイックキャスト事業の営業損失
0(十億円)
その他事業の営業利益
10(十億円)
1,0664.4 1,087.2
1,000
-20
-10
-6.2
891.4
800
-28.3
-40
-6.5
-20
600
8
6
-20.5
-60
400
-30
4
-40
2
-50
0
4.3
-59.8
-80
200
1.0
0
FY 00
01
02
-100 -93.2
FY 00
01
02
FY 00
01
02
0.4
FY 00
01
02
2001年度と2000年度の比較
ことによります。
この2つの要因により、
料金の引き下げ、
割引プ
2001年度、
当社の営業収益は11.5%増加し4,659,254百万円
ランを利用する契約者の増大、
低利用者層への普及の拡大、
に達しました。営業費用は7.6% 増えて3,658,367百万円とな
音声通話の代わりにiモードメールを利用する契約者の存在、
り、営業利益は28.5%伸びて1,000,887百万円になりました。
ショートメール(回線交換サービス、音声収入とされています)
携帯電話事業セグメントによる営業収益は12.1%増加して
よりもiモード経由で電子メールを送ることを好む契約者による
4,523,989百万円に達しました。これは主に携帯電話契約者
音声ARPUの低下を相殺することができました。携帯電話事
の増加が続いたこと、iモードサービスの事業が発展を続けた
業セグメントによる収益が収益総額に占める割合は、2000年
53
54
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
度の96.6%から2001年度には97.1%に増加しました。当社の
機器販売収入ならびに販売費及び一般管理費は、
それぞれ
携帯電話事業の営業費用は10.0%増加して3,457,554百万
558,923百万円及び571,223百万円減少しております。
また、
規
円となりました。これは、他の携帯電話事業者のネットワークを
定により、
2001年3月期及び2002年3月期の販売費及び一般
使用する通話にかかる新しいアクセス・チャージ及び当社の通
管理費のうち、
それぞれ491,310百万円及び507,884百万円に
信網の拡大と品質改善に関連した施設保全費の増加による
ついては、
端末機器販売収入の減額として表示変更をしてお
サービス原価の増加、
当社の事業拡大及びポイントプログラム
ります。なお、
当該支払手数料の認識時期に関連して発生し
の運営に関連する販売費及び一般管理費の増加、
新FOMA
た2002年4月1日における会計原則変更による累積的影響額
通信設備や顧客サービス及び請求システムに関連する減価
△35,716百万円(税効果25,852百万円考慮後)が連結損益
償却費の増加によるものです。この結果、携帯電話事業によ
及び包括利益(損失)計算書に計上されております。
る営業利益は19.6%増えて1,066,435百万円に達しました。
2001年度、当社のPHS事業セグメントの営業収益は0.7%
2002年11月、EITFは、
「多種の引渡対象物がある販売契約
増加して100,186百万円になりました。これは主に当社のPHS
の会計処理」
(EITF 00-21)
に関して合意しました。EITF 00-
契約者数が微増したことによります。PHS事業セグメントの営
21は、複数の製品、
サービス、
あるいは資産を使用する権利を
業費用は、
コスト管理努力によって17.0%減少し、
159,990百万
提供、
あるいは履行する契約において、
その契約を構成する
円となりました。PHS事業セグメントの営業損失は35.9%減少
各要素を、別々の会計報告単位に、
いつの時点でどのように
して59,804百万円になりました。
分けるべきかに関する指針を提供するものであります。この合
2001年度、
クイックキャスト事業セグメントの営業収益は
意による指針は、
2003年6月16日以降に開始する事業年度に
41.1%減少して11,130百万円になりました。これはクイックキャ
おいて締結された契約から適用されます。なお、会計処理の
スト契約者数の減少と利用率の低下によるものです。特に
移行については、規定により、
その時点からの適用、
あるいは
iモードサービスの導入以降、
この低下は顕著です。クイック
適用する時点での累積的影響額による修正のどちらでも選択
キャスト事業セグメントの営業収益は、
今では営業収益総額の
することができます。EITF 00-21による経営成績及び財政状
わずか0.2%を占めるに過ぎません。営業費用はコスト管理努
態への影響については、
現在検討中であります。
力により56.1%減少して17,307百万円になりました。クイック
キャスト事業セグメントの営業損失は69.9%減少して 6,177百
2003年2月、
EITFは、
「厚生年金基金の代行部分の日本国政
万円となりました。
府への返還に関する会計処理」
(EITF 03-02)
に関して合意
その他事業による営業収益と営業費用とは、
2001年度には
しました。この合意は、日本国の雇用者に、退職給付債務の
それぞれ増加して23,949百万円と23,516百万円になりました。
代行部分とそれに関連する年金資産の日本国政府への返
2000年度には、
それぞれ24,421百万円と23,466百万円でした。
還処理が完了するまでの全体の過程を「一つの清算取引」
この結果、
その他事業による営業利益は前年度の955百万円
として会計処理するように求めております。この合意では、返
の営業利益と比較して433百万円でした。
還が受給者に不利になるような年金支給プランの変更にはあ
たらないと見なしております。
また、
代行部分とそれに関連する
会計基準の動向
年金資産を実際に返還するまでは、特に会計上は取引認識
2002年4月1日より、新会計問題審議部会報告(Emerging
しないとしております。さらにEITFは、企業が割引率を仮定し
Issues Task Force、
以下「EITF」
)01-09「売り手による顧客又は
て算定した代行部分見合いの退職給付債務の公正価値と
自社製品再販業者への支払報酬に関する会計処理」
(EITF
政府が算定した年金資産の要返還額との差額である「政府
01-09)
を適用しております。これにより、従来販売費及び一般
補助金から生じる利益」については、返還差益として直接認
管理費に計上していた代理店手数料の一部を端末機器販売
識すべきとしております。なお、
確定給付企業年金法の施行に
にかかる収益の減額として組替えております。
またEITF 01-09
基づき、当社が加入しているNTT厚生年金基金は日本国政
は、収益及び当該支払手数料の減額を、自社製品を最終顧
府から同基金の代行部分について将来分支給義務免除の
客に販売した時点ではなく、
販売代理店に販売した時点で認
認可を得るための準備をしておりますが、
その認可及び返上
識することを定めております。この結果、2003年3月期の端末
の時期、
清算に伴う影響額等は未定であります。
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
2001年6月、
FASBはSFAS第143号「資産除却にかかる債務
円、及び749,197百万円です。耐用年数は、資産が取得さ
に関する会計処理」を公表しました。SFAS第143号は、2003
れた時点で決定され、
またその決定は、予想される使用期
年4月1日以降、
当社に適用されます。SFAS第143号は、
有形
間、類似資産における経験、定められた法律や規則に基
固定資産の除却にかかわる法律上の義務を負債として認識
づくほか、予想される技術上及びその他の変化を考慮に
し、公正価値の見積りが可能な場合には、
これらの義務発生
入れています。無線通信設備の見積耐用年数は概ね6年
時に公正価値で評価することを義務付けております。企業が
から15年となっています。自社利用のソフトウェアの見積耐
資産除却義務のための負債を最初に認識する場合には、費
用年数は5年としています。技術上及びその他の変化が予
用を資産計上して関連する有形固定資産の簿価を増加させ
想より急速に、
あるいは予想とは異なった様相で発生したり、
なければなりません。SFAS第143号の適用による経営成績及
新たな法律や規制が制定されたり、予定された使用が変
び財政状態への影響については、
現在検討中であります。
更された場合には、かかる資産に当てられた耐用年数を
短縮する必要があるかもしれません。結果として、将来にお
最重要の会計方針
いて減価償却費の増加や損失を認識することになる可能
連結財務諸表の作成には、予想される将来のキャッシュ・フ
性があります。
ローや、経営者の定めた会計方針に従って財務諸表に報告
される数値に影響を与える項目について、経営者が見積りを
長期性資産の減損
行うことが要求されます。連結財務諸表の注記2には、
当社の
当社は、
使用目的で保有している長期性資産について、
つま
連結財務諸表の作成に使われる重要な会計方針が記載さ
り有形固定資産や、電気通信設備に関わるソフトウェアや自
れています。ある種の会計方針については、特に慎重さが求
社利用のソフトウェア、
及び有線電気通信事業者の電気通信
められます。なぜなら、
それらの会計方針は、財務諸表に与え
施設利用権といったある種の識別可能な無形固定資産につ
る影響が大きく、
また経営者が財務諸表を作成する際に使わ
いて、
その帳簿価額が回復不能であることを示唆する事象や
れた見積り及び判断の根拠となっている条件や仮定と将来の
環境の変化があるときは常に減損の検討を行っています。減
事象とが大きく異なる可能性があるためです。当社の経営者
損のための分析は、
耐用年数の分析とは分けて行われますが、
は会計上の見積もりの選定及びその動向、
ならびに最重要の
それらはいくつかの類似の要因によって影響をうけます。減損
会計方針に関する以下の開示について、独立監査人ならび
の検討のきっかけとなる事項のうち、当社が重要であると考え
に当社監査役と討議を行いました。当社監査役は、
取締役会
るものには、
その資産を利用する事業に関係する以下の傾向
及びいくつかの重要な会議に出席して意見を述べる他、
取締
または条件が含まれます(ただし、
これらの事項に限定される
役による当社の業務執行を監督し、
財務諸表を調査する法的
わけではありません)。
義務を負っています。最重要の会計方針は以下の通りです。
・ 資産の市場価値の著しい下落
有形固定資産、自社利用のソフトウェア及び
・ 当期の営業キャッシュ・フローが赤字
その他の無形固定資産の耐用年数
・ 競合技術や競合サービスの出現
当社の携帯電話、PHS、
クイックキャストビジネスで利用され
・ キャッシュ・フローの実績、
または見通しの著しい下方乖離
ている基地局、
アンテナ、交換局、伝送路といった有形固定
・ 契約者数の著しいまたは継続的な減少
資産、自社利用のソフトウェア及びその他の無形固定資産
・ 資産の使用方法の変更
は財務諸表上に取得価額または開発コストで計上され、見
・ その他のネガティブな業界動向あるいは経済動向
積耐用年数にわたって、定率法により減価償却が行われ
ています。当社は、各年度に計上すべき減価償却費を決
上記またはその他の事項が一つ以上存在し、
または発生
定するために、有形固定資産、自社利用のソフトウェア及
していることにより、特定の資産の帳簿価額が回復可能では
びその他の無形固定資産の耐用年数を見積っています。
ないかもしれないと判断した場合、当社は、予想される耐用
2000年度、2001年度、及び2002年度に計上された減価償
年数にわたってその資産が生み出す将来のキャッシュ・イン
却費の合計は、
それぞれ、595,598百万円、640,505百万
フローとアウトフローを見積ります。当社の割引前の予想将
55
56
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
来純キャッシュ・フロー合計の見積りは、過去のトレンドに将来
ニット)
の公正価値と営業権の簿価を比較することを求めてお
の市場状況や営業状況に関する最善の見積りを加味して
ります。報告単位(レポーティング・ユニット)の公正価値の見
行っております。
もし割引前の予想将来純キャッシュ・フロー
積りは、主として、割引キャッシュ・フローを用いた現在価値評
の合計額が資産の帳簿価額を下回る場合、資産の公正価
価手法に基づいて行われます。将来キャッシュ・フローの予測
値に基づき、減損を計上することになります。そのような公正
に際しては、
携帯電話事業の市場成長率、
当社のマーケット
・
価値は、確立された市場における市場価格、第三者による鑑
シェア、
解約率、
ARPU(1契約者あたり平均月間収益)
、
設備
定や評価、
あるいは割引キャッシュ・フローに基づくことになり
投資等が重要な見積の要素となっております。報告単位(レ
ます。もしその資産が使用される実際の市場状況や営業状
ポーティング・ユニット)
の簿価が公正価値を超過している場合
況が、経営者の予測より悪いかまたは短期的であり、
あるい
には、営業権の減損の第2段階として、
その報告単位(レポー
は、契約者数が経営者の計画を下回っており、結果として
ティング・ユニット)
の営業権の公正価値と簿価とを比較し、営
キャッシュ・フローの減少となる場合には、従来減損していな
業権の簿価が公正価値を超過している場合には、
その超過
かった資産に対する追加の減損が必要になるかもしれませ
額について減損費用が認識されることとなります。
ん。
割引キャッシュ・フローに関して、
異なる見積りや前提条件が
2000年度から2002年度までの3年間、当社は長期性資産
用いられた場合、
営業権の評価も異なったものとなる可能性が
の減損を行っておりません。当社は、過去における減損費用
あり、従って、関連する減損費用についても異なる結果を生じ
の計上、契約者数の減少、
キャッシュ・フローの低下のため、
るかもしれません。
クイックキャスト事業に注意しております。またPHS事業につ
いても、当社は過去及び最近の営業損失のため、注意して
関連会社投資
おりますが、当社は現時点ではクイックキャストの資産の簿価
当社は世界各地域において移動通信業界を継続的に発
(約160億円)
とPHSの資産の簿価(約1,350億円)
は回収可
展させる立場から、国内の営業子会社に加え、
その他の関
能であると見積っています。
さらに、
最近開始した3G
(FOMA)
連会社、
主に外国企業に対しての戦略的投資を行いました。
サービス・技術の成否は未知数ですが、当社は、FOMA事業
このような投資は、関連会社の事業活動、例えば技術の選
の契約者の成長とサービス費用に関する現時点の前提に
択といったことに我々が影響を行使しうるようになることを意
基づき、2003年3月末現在で約9,200億円ある3Gネットワーク
図しています。当社の投資の大部分は、投資先企業の営業
の資産の簿価は回収可能であると見積っています。
方針や財務方針に重要な影響力を行使できる能力がある
と当社が考える規模(20%から50%の議決権)の投資に
営業権の減損
なっています。
しかしながら、AT&T Wirelessの場合、当社
当社は、米国財務会計基準書(Statement of Financial
の投資は16%の議決権のみとなっています。当社はAT&T
Accounting Standards、以下「SFAS」第142号「営業権及び
Wirelessに対する投資の目的と投資条件を評価した結果、
その他の無形固定資産」に従い、営業権の減損の要否を検
取締役の派遣、
主要な役職員の任命、
特定事項の承認権、
討しております。SFAS第142号では、
最低年に一回、
資産の減
一定条件下で当社投資の買戻しを要求する権利等の付
損を示唆する事象や環境の変化が生じた場合には随時、減
加的要素により、AT&T Wirelessの営業方針や財務方針
損テストを実施することを求めております。資産が減損される
に重大な影響力を適切に行使することができると結論づけ
可能性を示唆する事象、環境には、事業環境、法的要因、業
ています。
績指標、
競争環境、
重要な事業の売却または処分等を示して
おります。
当社は、関連出資先企業への影響力を反映するために、
当該企業に対する投資を持分法により会計処理しておりま
当社の営業権は、主として2002年11月に実施した株式交
す。持分法の定めに従い、当社は出資先企業の損益の持
換による地域ドコモ8社の少数株主持分の取得により計上さ
分を当期の損益として計上しています。当社は関連出資先
れたもので、
予備的評価に基づく2003年3月末の営業権残高
企業それぞれとの関係を定期的に再検討することにより、
そ
は133,196百万円となっております。減損テストは、
まず第1段階
れらの投資を持分法により会計処理するために必要とされる
として、
営業権の計上されている報告単位(レポーティング・ユ
影響力を当社が引き続き保っているかどうかを確認していま
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
す。特定の投資先企業をとりまく将来の事象または状況や環
部の第三者による評価、
その他の財務情報、
ならびに適用可
境の変化によっては、
もはやその投資先企業に重大な影響
能である場合は株価分析を、投資価値の再検討及び見積り
力を行使する能力があるとは判断できなくなる可能性があり
の際に使用しています。
ます。その場合、投資先企業の損益の持分を当社の損益計
評価の結果、
数社の関連会社において、
一時的ではない価
算書に計上することは停止され、状況に応じて、原価もしくは
値の下落が見られると判断し、
2002年3月31日終了の会計年
時価で投資を計上するように会計処理を変更することになり
度において、総額624,644百万円の減損額(453,235百万円
ます。
の税効果調整後)
を計上いたしました。税効果調整前の減損
額は、
AT&T Wirelessが664,493百万円、
KPNMが320,481百
関連会社投資の減損
万円、
KGTが36,461百万円、
H3G UKが56,444百万円であり
上述の通り、当社には持分法で会計処理されている投資が
ます。当社はまた、
2003年3月31日終了の会計年度において、
あり、
そのような投資の2003年3月31日現在における簿価は
総額319,564百万円の減損額(225,535百万円の税効果調
3,810億円になります。持分法に関する会計基準では、当該
整 後 )を計 上いたしました。税 効 果 調 整 前の減 損 額は、
投資において価値の下落が生じたかどうか、
またもしそうで
AT&T Wirelessが284,078百万円、
KPNMが117,898百万円、
あれば、当該下落が一時的かどうかの評価、判定を行う必
KGTが9,619百万円、H3G UKが123,245百万円、DoCoMo
要があります。当社は、投資の簿価が回復できない可能性を
AOL, Inc.が10,259百万円でした。
この評価損は当社の損益
示唆する事象や環境の変化が発生したときは、常に、減損の
計算書の持分法による投資損失に含まれています。当社は関
要否について検討を行っています。減損の検討のきっかけと
連会社投資の減損実施後の簿価については実現可能であ
なる事項のうち、当社が重要であると考えるものは、以下の通
ると考えていますが、
実際の経営成績やキャッシュ・フローの予
りです(これらに限定されるわけではありません)。
測や評価を含む状況の変化によっては追加的な費用計上が
必要となる可能性もあります。
・ 通信業界に属する企業の市場価格が、
著しくまたは継続
的に下落していること
・ 投資先の当期営業キャッシュ・フローが赤字となっていること
・ 投資先のヒストリカル・キャッシュ・フローが計画に比べ著し
く低水準なこと
・ 投資先によって重要な減損または評価減が計上されたこと
・ 公開されている投資先関連会社株式の市場価格に著し
い変化が見られたとき
繰延税金資産
当社は、
繰越欠損金・税額控除について見込まれる将来の税
効果及び貸借対照表上の資産・負債の計上額と税務上の価
額との一時差異に関して法定税率を用いて繰延税金資産及
び負債を計上します。繰延税金資産または負債の額を決定
する際に、当社は欠損金等の繰越期間や、一時的差異が解
消した時に有効であると予想される法定税率を見積って用い
・ 投資先関連会社の競合相手が損失を出しているとき
る必要があります。当社はまた税務上の便益の実現可能性を
・ その他のネガティブな業界動向あるいは経済動向
反映するために、特定の繰延税金資産に対して評価性引当
金を計上する必要が出てくる可能性があります。評価性引当
評価を行うにあたって、
当社は、
キャッシュ・フロー予測、
外部
金の要否を決定する際、
当社は予想される将来の課税所得、
の第三者による評価、
ならびに適用可能である場合は株価分
税額控除を請求、
実現する時期、
及び利用可能なタックスプラ
析を含む様々な情報を活用しています。当該予測及び評価
ンニングを見積る必要があります。将来の課税所得が予想を
には、
人口、
普及率、
解約率、
技術革新、
設備投資、
市場の成
下回った場合、
もしくはタックスプランニングが期待通りに利用
長及びシェア、
ARPU及びターミナル・バリューなどの推定値が
可能とならなかった場合には、
将来かかる判断がなされた年度
必要になります。
において、評価性引当金を計上する必要が生じる可能性が
通信業界を取り巻く経済・金融情勢、
また、
ここ数年の世界
あります。
的規模での通信関連株価の著しい下落を勘案し、当社は関
2003年3月、日本国政府は税法体系の見直しを行い、法
連会社の事業の見通しを検討し、
当該価値の下落が一時的
人事業税の税率引き下げ及び外形標準課税制度の導入が
であるかどうかを評価いたしました。キャッシュ・フロー予測、外
実施されることとなりました。この改正は平成2004年4月1日よ
57
58
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
り開始する事業年度より適用開始となるため、2004年4月1日
2002年度において、
それぞれ16,638百万円、4,409百万円、
以降に解消が見込まれる一時差異にかかる繰延税金資産
3,945百万円の契約事務手数料収入及び関連する直接費
及び 負 債の金 額の算 定に適 用される法 定 実 効 税 率は
用を償却しました。2003年3月31日現在の繰延契約事務手
40.7%に引き下げられることとなりました。この税率変更の影
数料収入は117,283百万円となっております。
響により、繰延税金資産(純額)が18,213百万円減少し、
2003年3月期の法人税等が同額増加しております。
開示したNon−GAAP財務指標から最も直接的に
年金債務
比較可能なGAAPに基づく財務指標への調整過程
当社は、適格退職年金制度を設けており、
ほぼ全従業員を対
象としております。退職給付引当金に関する費用と債務の額
EBITDA及びEBITDAマージン
を算定するにあたっては、様々な判断及び見積もりが必要と
当社は、
EBITDAを減価償却費及び有形固定資産売却・除
なります。各年度の純年金費用を決定するにあたり最も重要
却損を控除する前の営業利益と定義しています。EBITDA
となる見積もりは、将来の給付債務の評価に用いられる割引
マージンは営業収益に対するEBITDAの比率です。EBITDA、
率と年金資産の期待長期収益率です。当社は年金制度の
EBITDAマージンのいずれも、
営業損益を測定するための重
参加者の残存勤務期間と一致する償還期間の高格付け、
要な指標として当社経営者により利用されており、
意味のある
固定利率の負債証券の現在の市場利子率に基づき、適正
有益な情報であると考えています。
な割引率を決定しております。
また、
過去の運用実績ならびに
当社経営者はEBITDAを主に金融費用、
税金、
非現金の
年金資産の長期運用収益に対する現在の見通しに基づき、
資本関連費用を控除する前の営業成績を測定するために、
資産の長期収益率を見積っております。年金債務の総額は、
他の財務数値と組み合わせて利用していますが、
これは当社
実績との差異や見積もりの変更により大きく変動する可能性
事業の設備集約的性格を考慮しているためです。
また、
があります。例えば、2002年度における予測給付債務は、割
EBITDA、
EBITDAマージンは、
投資家の皆様にとっても有益
引率が2.5%から2.0%へ変化した結果、
2,250億円増加し、
同
な指標であると考えています。何故なら、
EBITDAは、
アナリスト
年度の未認識の年金数理損失が増加した要因となりました。
や投資関連業界の他の参加者から、
金融費用、
税金、
非現
金の資本関連費用を控除する前の営業成績を同業他社と
収益の認識
比較するための広く認められた中核指標であると考えられて
2000年4月1日、当社は収益認識基準を変更し、契約事務手
いるからです。
また、
当社はこれらの指標が、
設備投資余力な
数料収入を繰り延べ、顧客の予想契約期間にわたって収益
らびに借入余力及び借入金返済能力を示すものとして認め
を認識する方針を採用しました。予想契約期間はサービス毎
られた指標であるとも考えています。
このことは、
EBITDAが、
に2年から7年にわたっています。関連する直接費用も、契約
格付機関が格付を決定する際の要素の1つであることや、
債
事務手数料収入の額を上限として、同期間にわたって繰り延
券アナリスト、
株式アナリストとのコミュニケーションの場でも重
べ償却しています。当該会計方針は、当期純利益に対する
要な焦点となっていることからも裏付けられます。
重要な影響はないものの、収益及びサービス原価の計上額
EBITDA及びEBITDAマージンは、
米国会計基準に準拠し
は、契約事務手数料及び関連する直接費用、
ならびに収益
て算定される営業利益その他の業績測定指標、
または流動
及び費用を繰延べる基礎となる顧客との予想契約期間に
性、
営業、
投資及び財務活動によるキャッシュ・フローを示す指
よって影響を受けます。収益、費用の繰延を行うための顧客
標を代替するものと解すべきではありません。当社が定義した
の予想契約期間の見積りに影響を与える要因としては、解約
EBITDA及びEBITDAマージンは、
他社が使用している同様
率、新規のまたは予想されうる競合商品、
サービス、技術等が
の名前の指標とは比較できない可能性があります。
挙げられます。現在の償却期間は、過去のトレンドの分析と当
社の経験に基づき算定されています。2000年度、2001年度、
NTTDoCoMo アニュアルレポート 2003 — 事業および財務分析と見通し
次の表は、
EBITDA及びEBITDAマージンの当期純利益への調整過程を示しています。
百万円
3月31日に終了した年度
EBITDA . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
減価償却費及び有形固定資産売却・除却損. . . . . . . . . . . . . .
営業外費用、純額 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
法人税等 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
持分法による投資損失. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
少数株主損益 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
会計原則変更による累積的影響額. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
当期純利益(損失). . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2000
2001
2002
2003
¥1,137,025
(627,838)
(21,359)
(211,072)
(1,730)
(18,462)
—
256,564
¥1,425,335
(646,715)
(20,489)
(317,337)
(17,767)
(21,272)
—
401,755
¥1,680,596
(679,709)
(44,496)
(399,643)
(643,962)
(28,977)
—
(116,191)
¥1,836,264
(779,545)
(13,751)
(454,487)
(324,241)
(16,033)
(35,716)
212,491
1,137,025
3,354,046
33.9%
EBITDA. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
営業収益 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
EBITDAマージン. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1,425,335
4,178,056
34.1%
1,680,596
4,659,254
36.1%
1,836,264
4,809,088
38.2%
設備投資
キャッシュ・フロー計算書の現金ベースの情報に加え、
この発
当社は、設備投資を、有形固定資産、無形固定資産及びそ
生ベースの設備投資を示すことは投資家の皆様にとって有益
の他の資産の取得に要した発生ベースの金額と定義づけて
であると考えているためです。当社が定義した設備投資は、
おり、取得日と支払日の差異の影響が反映されています。設
他社が使用している同様の名前の指標とは比較できない可
備投資に関する情報を記載しているのは、
当社経営者がこの
能性があります。
発生ベースの数値を設備投資の管理に使用しており、連結
次の表は、
設備投資の有形固定資産、無形固定資産及びその他の資産の取得による支出への調整過程を示しています。
百万円
3月31日に終了した年度
設備投資 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
取得日と支払日の差異影響等 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
有形固定資産の取得による支出 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
無形固定資産及びその他の資産の取得による支出 . . . . . . .
2000
2001
2002
2003
¥876,058
62,533
(745,002)
(193,589)
¥1,012,795
(55,319)
(803,397)
(154,079)
¥1,032,256
30,445
(863,184)
(199,517)
¥853,956
10,750
(700,468)
(164,238)
59
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