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国語科における評価・評定の在り方
国語科における評価・評定の在り方 Ⅰ 学習評価の進め方について 1 単元における観点別学習状況の評価の進め方について 国語科における評価の観点は、「Ⅰ国語への関心・意欲・態度」「Ⅱ話す・聞く能力」「Ⅲ書く 能力」「Ⅳ読む能力」「Ⅴ言語についての知識・理解・技能」の5つである。このうち、観点Ⅰ とⅤは他の3つの観点を支え、伸張させるものとして、どの単元でも評価することができる。そ こで、学習指導計画を立てるにあたっては、各単元で育成したい言語能力を明確にした上で、指 導事項を位置づけ、観点ⅠとⅤ、そしてⅡからⅣのうちどれか1つの観点で評価することが基本 となる。 観点別学習状況の評価は次の手順で進める。 2 ① 各単元で育成したい言語能力を明確にする。 ② 指導事項を明確に位置づけ、学習指導計画を立てる。 ③ 指導事項の文言を基本に、評価規準を設定する。 ④ 評価方法と評価場面を明確にし、「C」の状況の生徒への手立てを考える。 ⑤ 数値化した評価情報を総括し、「A・B・C」を判断する。 ⑥ 評価結果をもとに、個別や全体の指導及び評価の改善を図る。 学期末・学年末における観点別評価の総括の方法について 各単元における学習活動の評価情報は、数値化して、その記録を蓄積する。学期末・学年末 においては、学習指導要領の趣旨や改善事項等に照らして、妥当性・信頼性が高いと判断でき る学習評価を選び、観点別学習状況の評価として重点的に扱う。その他の評価は、日常の学習 指導に生かす評価として区別する。 それぞれの観点ごとに集約された数値を、判断の基準に照らし合わせ、目標の実現状況を判 断する。現行では、 「十分満足できる」状況と判断されるものが「A」、 「おおむね満足できる」 状況と判断されるものが「B」、「努力を要する」状況と判断されるものが「C」というよう に3段階で評価されるが、Bの状況には大きな幅があり、生徒や保護者にはどの程度の実現状 況であるのかが伝わりにくいという課題がある。また、観点別評価ではAばかりなのに、評定 では4であるというずれが生じ、特に保護者には理解されにくいという実態もある。そこで、 観点別評価をもう少し細かく設定することで、課題の解消になるのではないかと考える。以下 に示す判断基準は、その一例である。 目 標 の 実 現 状 況 判断の基準 評価 「十分満足できるもののうち、特に程度が高い」 状況と判断されるもの 90%以上 A+ 「十分満足できる」状況と判断されるもの 80%以上 A 「もう少しで十分満足できる」状況と判断されるもの 70%以上80%未満 B+ 「おおむね満足できる」状況と判断されるもの 60%以上70%未満 B 「もう少しでおおむね満足できる」 状況と判断されるもの 40%以上60%未満 B- 「努力を要する」状況と判断されるもの 40%未満 C 評価の対象としては、ノートやワークシートの記述内容、暗唱、作文(意見文、感想文、鑑 賞文など)、創作(文芸作品など)、生徒の自己評価、相互評価、発言や発表の内容、課題の 提出状況などがあげられる。これらを通して得た評価情報を数値化して記録に残し、蓄積する。 (例)「Ⅰ国語に対する関心・意欲・態度」 学 期 1 期 評価対象 暗唱 ノートの記述 自主学習 自己評価 ワークシートの記述 評 価 合 計 (50) 評価数値 5 8 7 4 10 34 単元名 3 学 ○○○○ ○○○○ 評 価 B 評定への総括の進め方について 各観点ごとに、合計した評価数値の評価合計に対する割合を実現状況とし、5つの観点の総合 計を出す。それを判断基準に当てはめて評定を出す。以下に示すのは、その一例であるが、観点 別評価の判断基準との整合性については検討が必要である。 目 標 の 実 現 状 況 判断の基準 評定 「十分満足できるもののうち、特に程度が高い」 状況と判断されるもの 90%以上 5 「十分満足できる」状況と判断されるもの 80%以上90%未満 4 「おおむね満足できる」状況と判断されるもの 40%以上80%未満 3 「努力を要する」状況と判断されるもの 40%以上20%未満 2 「一層努力を要する」状況と判断されるもの 20%未満 1 また、5つの観点の比重については、基本的にはそれぞれ20%であることが望ましいが、各 校の生徒の実態や配当時間を考慮し、重み付けをすることも可能である。ただし、学年末におい ては、5つの観点を同等の比重で評価する。その比重等については、生徒や保護者に十分な理解 が得られ、説明責任が果たせるよう、根拠を明確にしておく必要がある。 4 「伝統的な言語文化に関する事項」の指導と評価 学習指導要領では、伝統的な言語文化に親しむ態度を育てたり、国語の特質についての理解を 深めたり、豊かな言語感覚を養ったりすることなどを重視して〔伝統的な言語文化と国語の特質 に関する事項〕が新設された。特に、「ア 伝統的な言語文化に関する事項」は古典についての 指導事項である。これは「話すこと・聞くこと」、「書くこと」及び「読むこと」の指導を通し て指導することが基本となる。 たとえば、第2学年であれば、「古典の文章に表れたものの見方や考え方を想像する」ことま でを「伝統的な言語文化に関する事項」(イ)に基いて指導、評価することになる。そして、関 連する古典の文章を現代語訳で読み、「文章に表れたものの見方や考え方に関して自分の考えを もつこと」については「読むこと」の指導事項エに基いて指導、評価することになる。 5 「年間指導計画」に基いた評価の系統化・重点化 国語科においては、指導内容が螺旋的・反復的に繰り返しながら能力の定着を図ることを基本 としていることから、1つの指導事項を年間で繰り返し取り上げて指導することが多い。そのた め、年間を見通して、単元の指導目標や評価規準を設定し、効率的に指導することが重要である。 また、既習事項との関連を考え、活用させながら、言語活動に取り組ませることも大切である。 「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」については、他の領域と関連させて指導するこ とからも、3領域1事項全体を一覧することができる年間指導計画表を作成し、3年間の系統性 を把握しておくことが重要である。 【参考文献】国立教育政策研究所『評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料 中学校 国語』2011 年 冨山哲也・杉本直美編著『〈単元構想表〉でつくる!中学校新国語科授業 START BOOK』(明治図書)2011 年 Ⅱ 記録に 記録に残すための効果的 すための効果的・ 効果的・効率的な 効率的 な 評価方法等 評価方法等について 1 研究の基本的な考え方 本研究は、単元の目標に即して、評価の焦点化を図ると共に、単元・題材のどの場面で、どの ような評価を行うかを明確にすることによって、記録に残す評価の効果的・効率的なあり方につ いて考察する。また、具体的な評価の方法や規準を教師と生徒が共有化することによって、評価 の信頼性を高めたいと考える。 具体的な題材として、今回の指導要領改訂によって新設された「伝統的な言語文化と国語の特 質に関する事項」の領域から、3年生の「おくのほそ道」を取り上げて実践を行った。 2 単元名 3 目標 4 「おくのほそ道」(松尾芭蕉) ○ 古語のきまりや漢語的な表現に注意して古文を音読・暗唱し、古文特有のリズムを味わう。 ○ 歴史的な背景などに注意して、古典の世界や伝統的な文化に触れる。 ○ 冒頭部分を読んで、芭蕉の人生観・旅への思いを理解する。 ○ 「平泉の段」を読んで、この場面の情景や作者の心情を想像する。 ○ グループで協力して、「おくのほそ道」の他の俳句を紹介し合う。 単元の授業の流れと評価 時 評 価 規 準 及 び 学 習 内 容 評価の観点 評価方法 間 C の 生 徒 へ の 支 援 ・ 指 導 ・ 「おくのほそ道」の文 Ⅰ国語への関 ・授業への取り組みは、学習カードの記入内容から 学習カード 1 学的価値と松尾芭蕉に 心・意欲・態度 ついて知る。 Ⅴ伝統的な言語 ワークシート① A 質問やさらに調べたいことも書き加えている。 文化と国語の特 の点検 B ワークシートを完成している。 C 机間巡視をして、未完成な生徒には助言する。 A 「出発まで」の段の最後まで暗唱している。 B 冒頭の 4 行までを正しく暗唱している。 C 覚えさせて再度暗唱にチャレンジさせる。 A 芭蕉の考えだけでなく自分の感想も付け加えて 判断する。 質 ・「出発まで」(文語文) 2 を歴史的仮名遣いや漢 Ⅰ国語への関 語表現に注意して、正 心・意欲・態度 暗唱テスト しく音読する。 ・芭蕉の「旅」への思 いがよく表れている部 Ⅳ 読む能力 分を見つけて、話し合 書いている。 ワークシート② B 芭蕉の考えを書き写している。 う。 C グループの友人の助言を聞いて完成させる。 ・「平泉」(文語文)の A 音読の工夫点を述べて音読している。 B 歴 史 的 仮 名 遣 い な ど に 注 意 し て 正 し く 音 読し 段を歴史的仮名遣いに の点検 Ⅳ 読む能力 音読カード 注意して正しく音読す ている。 る。 3 C ・「平泉」の段を読み、 ャレンジさせる。 この場面の情景や芭蕉 の心情を想像して日記 を書く。 間 違 っ た 箇 所 を 反 復 練 習 し て 再 度 テ ス ト にチ A Ⅳ 読む能力 して書いている。 ワークシート③ の点検 芭蕉になって、場面の情景や作者の心情を想像 B 見学した場所や見たもの、体験したことだけを 書いている。 C 友人の日記を参考にして、最後まで書かせる。 ・ 「おくのほそ道」の他 A の俳句について紹介文 4 Ⅳ 読む能力 を書いて発表する。 5 手 引 き に 書 か れ て い な い こ と も 加 え て 紹 介が 書けている。 ワークシート④ の点検 B 手引きに従って、紹介文が書けている。 C グループの友人の助言を聞いて完成させる。 評価の実際 (1) 単元の指導のポイント ① 音読の徹底と工夫 ○ 反復練習・ペアでの読みのチェック ② ○ 自己評価・相互評価の活用 自主的な調べ学習の導入 ○ 分かりやすく、多様な図書資料の準備と紹介 ・国語便覧 ・「漫画で学習 おくのほそ道」 ・文庫本「おくのほそ道」等 ③ 話し合いの場の設定 (芭蕉の旅に対する考え方や人生観について) ④ グループごとのプレゼンテーションの場の設定(俳句の紹介) (2) 評価の視点 ① 観点Ⅰ「関心・意欲・態度」 ○ 学習カードの点検 ○ 「出発まで」暗唱テスト ○ 「平泉」の段の音読テスト ○ 俳句の紹介文の点検 ② 観点Ⅳ「読むこと」 ○ ワークシート②~④の点検 ・ワークシート②「芭蕉の人生観について」 ・ワークシート③「平泉での芭蕉の日記」 ・ワークシート④「芭蕉の俳句の紹介」 ③ 観点Ⅴ「伝統的な言語文化と国語の特質に関する項目」 ○ 6 ワークシート①「おくのほそ道コーナー」の点検 評価の記録 ① 観点Ⅴ 観点 Ⅴ「 伝統的な 伝統的 な 言語文化と 言語文化 と 国語の 国語 の 特質に 特質 に 関する項目 する項目」 項目 」 ◎ ワークシート①(出発まで) 解説や旅程図、俳句などを読んでワークシートを完成し、さらに、疑問点や調べたいこと を見つけて書くことができる。 ワークシートⅠ ワークシート Ⅰ 「 おくのほそ道 おくのほそ 道 」 と 芭蕉について 芭蕉 について調 について 調 べよう 4の 項目で 項目 で 評価を 評価 を 判別 ( 4 「 おくのほそ道 おくのほそ 道 」 コーナーの コーナー の 生徒の 生徒 の 感想で 感想 で 判別) 判別 ) 芭蕉 と「 おくのほそ道 おくのほそ 道 」コーナーの コーナー の感想より 感想 より 芭蕉と 評価 Cの 生徒 評価C 再度教科書を読んで、全部記入するように指導 評価 Bの 生徒 評価B 一~三までの項目について、すべて書き込めて いる生徒を全員B以上とした。 評価 Aの 生徒 評価A 一~三までの項目について、すべて書き込めて のように 、 いること。さらに さらに、 さらに、 左 の 例 の ア や イ のように、 学習課題 として考 える 価値のある 学習課題として として考 える価値 価値のある疑問点 のある疑問点を 疑問点を 考 え ている 者 や ウ や エ のように、 のように 、 今後の 今後 の 学習への 学習 への意 ている者 への意 芭蕉は、死ぬ前に、なぜ、こんな長い旅 に出たのか、疑問に思いました。だから、 「おくのほそ道」の旅の目的について考え たいです。 芭蕉の俳句は、それまでの俳句とどんな 心構 えが明確 じられる者 をA とした。 とした 。 欲や 心構えが えが明確に 明確に 感 じられる者 ア イ 点が違うのだろう。芭蕉の「蕉風」という 以前から、松尾芭蕉や「おくのほそ道」 に興味があったので、とっても楽しみで す。 「おくのほそ道」の学習では、旅をする 俳句の特徴を知りたいです。 ウ エ 芭蕉の気持ちを考えながら、読んでいこう と思います。 4の 項目で 項目 で 評価を 評価 を 判別 平泉での芭蕉の心情を想像して日記を書こう。 (日記の内容で評価を判別) 平泉での芭蕉 日記 より 平泉での での芭蕉の 芭蕉の日記より 芭蕉になって日記 こう~ ~芭蕉になって になって日記を 日記を書こう~ 秀衡館跡は、田野になり、栄華の面影はない。 評価 Bの 例 評価B ○ 義経たちが自害して果てたここ高館も夏草がぼ うぼうと生い茂っているだけだ。義経以下忠義 4の 項目で 項目 で 評価を 評価 を 判別 芭蕉の他の俳句を紹介しよう。 (4の紹介したいエピソード・感想で判別) の家来たちの栄光も悲しみも何も残っていな い。 今日、高館跡に登り平泉の都を一望した。 評価 Aの 例 評価A ○ かつて黄金の都と言われた平泉の都には、寺 も城も何も残っていない。それにしても、ここ は、義経が自害した場所だが、最後まで主人を 守ろうとして戦った弁慶、兼房らの忠義心が伝 わってくるようだ。「国破れて山河あり・・・」 ふと、杜甫の詩が思い出され、悲しさのあまり 涙が流れた。 だが、金色堂へ行くと五〇〇年前の藤原氏の 栄華を見る思いがした。あまりのみごとさに感 動したことよ。ここだけが、奇跡的に当時の美 しさが残していようとは。さすがの五月雨も、 ここだけは遠慮して降り残してくだされたのだ ろうよ。これからも四方を囲んだ鞘堂によって、 金色堂は守られていくことだろう。ほんとうに ありがたいことだ。 自分たちの選んだ俳句について紹介文を書いて、発表する。 ◎ ワークシート④(俳句の紹介文) 観点Ⅳ 観点Ⅳ 「 読むこと」 むこと」 ③ 芭蕉の旅への思いがよく表れている表現を書き写し、平泉で芭蕉を感動させたものについて ◎ ワークシート③(平泉) 観点Ⅳ 観点Ⅳ 「 読むこと」 むこと」 ② 日記の形式で表現する。 「おくのほそ道」レポート(一部省略) った 俳句を 紹介 しよう~ ~気 気 に 入った俳句 俳句を 紹介しよう しよう~ 一紹介する俳句 一紹介する する俳句 柳かな 俳句 の 意味( 意味 (省略) 省略 ) 俳句の 植えて立ち去る 二 俳句 の 表現について 表現 について( 省略) 俳句の について( 省略) 田一枚 三 季語・季節・切れ字・句切れ 表現技法 ここまでできたら、 評価B 評価Bとする。 とする。 ここまでできたら、 その 他 ・紹介したいこと 紹介したいこと その他 評価Aの例(書けていればA) 評価A 四 (生徒の紹介文の例) 西行という人は、旅に生き、旅に死んだ人として、芭蕉が心 から尊敬した歌人の一人です。その西行が「道のべに・・」と 歌に詠んだ柳を見て芭蕉は、きっと感動したことでしょう。遊 行柳を見ることが、この旅の目的の一つでもあったそうです。 ですから、早乙女たちが、田植えをする間も西行をしのびなが ら、遊行柳のそばで気持ちよく休んでいたと思います。私たち もぜひ、この柳を見てみたいです。自分の尊敬する古人と同じ 場所で、このような俳句を詠んで景色や田植えのようすを楽し んでいる芭蕉の姿が目に浮かびます。 私たちは、この俳句は、のどかな農村の田植えの風景が目に 見えるようなきれいな、心が落ち着く俳句だと思ったので紹介 することにしました。 ④ 観点Ⅰ 観点Ⅰ 「 関心・ 関心 ・ 意欲・ 意欲 ・態度」 態度」 ◎ 暗唱テスト(出発まで) 正確に暗唱・音読するとともに、現代語訳や脚注などを参考にして理解した古文の内容を的 確に説明できる。 < 暗唱チェックカード 暗唱 チェックカード> チェックカード> < 暗唱を 暗唱 を 終えての感想 えての感想の 感想 の一部抜粋> 一部抜粋 > 氏名( 暗唱チェックカード ) 暗唱を 暗唱 を 終 えて( えて ( 生徒の 生徒 の 感想より 感想 より) より ) 目標 暗唱テスト 最後まで暗唱する。 評価B 評価 B の コメント例 コメント 例 ( 冒頭の 冒頭 の 四行が 四行 が 暗唱できた 暗唱 できた。 できた 。) 本88頁~89頁 声の大きさ・ A B C できてよかった。 速さ・発音・態度 ( レベルA(15点) 最後まで ・文語文を覚えるのに、歴史的仮名遣いが難しかった。でも、一つのスト レベルB(10点) 10行まで ーリーとして理解すると覚えやすいことが分かった。 レベルC( 5点) /5 ・前に出たら、緊張して少し忘れそうになったけど、自分の目標まで暗唱 )点 評価A 評価 A の コメント例 コメント 例 ( 全部暗唱できた 全部暗唱 できた。 できた 。) ・繰り返し練習していると、自然に頭に残っていつの間にか覚えることが 4行まで できた。最後まで覚えた人がたくさんいたので、私も頑張ることができた。 暗唱を 暗唱 を 終 えて( えて ( 感想) 感想 ) ⑤ /20点 観点Ⅰ 観点Ⅰ 「 関心・ 関心 ・ 意欲・ 意欲 ・態度」 態度」 ◎ 学習カード 学習 カード 感想の 感想 の 欄 に 新 たな気 たな 気 づきがあればA づきがあれば A 自分の授業の取り組み方を自己評価し、新しい気づきを自覚している。 時 間 感 想・学 ん だ こ と 授業 への 本時の学習内容 ( 書 け ていればB ていれば B とするが、 とするが 、 新 たな気 たな 気 づきがあればA づきがあれば A に ) 月 日 ① / ② / ③ 取り組み 芭蕉の生涯と作品と旅 旅をすることが好きで、旅先で死んでもかまわないという必死の A ○ について調べる。 覚悟をして、この「おくのほそ道」の旅に挑んだのは、すごいこ B とだ。だから、すばらしい作品ができたのだと思う。 C 「出発」の部分を音読し 家庭を持たず生涯独身で、旅をすることで自分を見つめ、ひたす A ○ 芭蕉の旅に対する考え ら俳句をつ くること に生き がいを感じ た芭蕉の 生き方 はすごい B 方や人生観を読み取る。 と思った。音読も難しかっけど、頑張って読めた。 C 「平泉」の段を音読し、 私も、藤原三代が栄えたこの地が時がたつと何事もなかったかの A ○ 芭蕉の心情を想像して ようになるのは、とても寂しいと思った。だから、芭蕉の「夏草 B 日記を書く。 や・・」という俳句は、すばらしいと思う。曾良の俳句もいい。 C / また、中尊寺には、いつか行ってみたい。 ④ / 「出発」の部分の暗唱テ 暗唱が、自分の目標としていた最後まで言えたのでよかった。友 A ○ ストと「平泉」の段の音 達と一緒に繰り返し覚えたのがよかったと思う。 B 読テスト ⑤ / 7 C 「おくのほそ道」の俳句 芭蕉の俳句は、どれも情景が想像できてきれいなので好きだ。特 A ○ について紹介文を書き に「閑かさや・・・」の俳句が気に入った。山寺に私もいて、耳 B 発表する。 に真夏の蝉の声が聞こえてきそうなすごい俳句だ。 C まとめ 当初は、教師が記録に残すためのものであったが、単元の最初の時間に、目標や評価規準を具 体的に生徒に説明し共用化したことによって、生徒が、自主的に学習への取り組み方を反省する 自己評価の効果をもたらした。授業後、返却したワークシートのB評価を見て、何が欠けていた かを理解し、不足していた内容を付け足して再度提出する生徒が増えたのである。また、古典学 習への抵抗感を緩和し、意欲を高める上で音読・暗唱は重要であることが再確認できた。図書資 料やメディア教材の活用も、伝統文化に興味・関心を抱かせたり、理解を深めたりする上で効果 的であった。古文であっても読み方は、現代文と同じである。今後も、古語への興味・関心を育 てながら、現代に受け継がれている昔の人のものの見方や考え方に気付かせる学習をめざしたい。 Ⅲ 学習意欲の適切な評価方法について 言うまでもなく、評価には、「形成的評価」と「総括的評価」がある。この内、指導の改 善につながる「形成的評価」が重要であることは言うまでもないが、今回は、総括的評価に 限定しての「評価」を述べることとする。 1 国語科における「関心・意欲・態度」の評価について (1) よく行われている「関心・意欲・態度」の評価における誤り 2001年改訂指導要録の方針を定めた教育課程審議会「児童生徒の学習と教育課程の 実施状況の評価の在り方について(答申)」に次のようにある。 情意面にかかわる観点であることなどから、目標に準拠した評価であることが十分 理解されていなかったり、授業中の挙手や発言の回数といった表面的な状況のみで評 価されるなど、必ずしも適切とは言えない面も見られる。 しかし、現在でも挙手回数、発言回数、提出物、忘れ物頻度といった評価がまだまだ行 われていることが多いのが現状ではないか。西岡加名恵も述べているように、それらは「『行 動の記録』欄、及び『総合所見及び指導上参考となる諸事情』欄で評価すべきもの」(「『目 標に準拠した評価』をめぐる疑問に答える」『日本教育』2012、 7 月、12頁)である。あくまで「各教 科が対象としている学習内容に関心をもち、自ら課題に取り組もうとする意欲や態度を児 童生徒が身に付けているかどうか」(「報告」)を評価するものでなければならない。 (2) 「関心・意欲・態度」評価の基本的な考え方 では、実際に目には見えない「関心・意欲・態度」をどのように評価すればいいか。前掲 書の中で西岡は「『関心・意欲・態度』を身に付けていなければできないような課題を与え、 その課題の出来映えで評価することを基本とすればよい」とし「パフォーマンス課題の中でも 特に発展的なもの、生活との結び付きを考えさせるような課題や総合的な課題で評価すること が考えられる」としている。 心理学の測定の場合、動機付けの高さは「どれだけ自発的にコストを払ってくるか」によっ て判断するという。例えば「○○をやって来なさい」と課題を出した時、要求された課題以上 のことを書いてきた場合は動機付けが高いと判断する。逆に要求した内容に不足していたり、 提出が遅れたりした場合は低いと判断する。つまり、義務ではない課題を出し、自発的にどれ だけエネルギーを費やしてくるかが判断基準となるのである。こうした考え方は、西岡の課題 の出し方と一致する点も多い。国語科における評価もそうした考え方を基本としてよいであろ う。 (3) 国語科における「関心・意欲・態度」評価の例 上記の考えに基づいた、国語科における評価方法例として、次のようなことが考えられる。 ① 暗唱による評価 名文、古文の暗唱は、よく行われている学習活動である。これを全員一律に同じ暗唱を行 わせるのではなく、段階を作って行う。例えば平家物語冒頭であれば、「祇園精舎の・・・ 夢の如し」までは、全員が覚えるべき課題とする。これができればBとする。(当然Cにな らないように、なかなかできない生徒には支援をする。)さらに「遠く異朝を・・・」から は、できる人はチャレンジしていく課題とするのである。課題以上に労力を要してくる暗唱 してくる生徒をA以上と判断する。「・・・亡じにし者どもなり」までがA、「心も詞も及 ばれね」まで全文暗唱できた生徒をA+とした。 本年度、本校2年生で「平家物語」冒頭を暗唱した結果、実施した一クラス(39人) では、次のような結果となった。 A+ 22人 A 4人 B 13人 C 0人 生徒にとって、やはり暗唱は楽しい活動のようである。多くの生徒がBに満足せず、全文 暗唱にチャレンジしていた。Aに到達できた生徒のほとんどは、A+の全文暗唱にチャレン ジし、合格していた。また、暗唱の苦手な生徒も周囲に刺激され、Bまで全員到達できた。 やる気を損なわず、周りの生徒に意欲が連鎖していく仕掛けになったためである。(もちろ ん、Cの生徒が一人でもいれば、期限を限定せずに何度もチャレンジする機会を与えてBに 到達させる支援が必要である。) 暗唱と同様に、音読もこの方法で評価が可能であろう。 ② 学習過程での評価 学習の過程での評価は、主に観察がある。例えば、グル ープでの話し合いの様子を観察して、発言の様子をとらえ るなどである。しかし、そうした方法で生徒全員を評価す ることは難しい。生徒全員評価するには、やはり記述させ るしかない。右に示したのは、「高瀬舟」での授業における 生徒の「意味マップ」の記録表である。授業での話し合い を通しての自分の気づき、内面の変化をマッピングしてい くものである。毎時間の記入には色を変え、修正しながら マップが広がっていくのである。当然、深く考えたこと、 気づきが多いほど、マップは広がっていくのである。この マップの基準(枝分かれの数、マップの項目など)を定めた 上で、「A」「B」の評価をしていくのである。 ③ 学習のまとめに関する評価 単元の最終に、学習全体をまとめての作文やレポートの課題を行う活動がある。その量も もちろん評価の基準にはなるが、その内容によって評価を行うことも可能である。 例えば、学習した内容だけをまとめて書いてあればBとする。しかし、学習した内容をも 自分の生活や身の回りの気づきに近づけ、主観的に意味づけが行えていればAと評定できる。 「高瀬舟」の授業において「喜助の行為は罪と言えるのか」という中心課題で話し合いを もった。「話し合いを通して、最終的に自分の考えをまとめてくる」課題において、ある生 徒が書いた文章が次のとおりである。 (最終感想) 「高瀬舟」の授業を通して僕は喜助の行動をどうとらえたらいいのかすごく悩みました。 弟の ことを 思いや ったの は確か だけれ ど、人 を殺し たのには変わりないから です。「果たし て弟のこを思いやっただけで罪が消えるのか」こう考えると、一瞬で分かりました。それは あり得ないと言うことです。 64ページ15行「高瀬舟に乗る罪人の過半はいわゆる心得違いのために」から喜助も本心で 弟を殺そうと思ったのではなく、弟のことを思いやって思わぬ罪を犯した人の一員です。つ まり、思わぬ罪を犯した人でも罪は罪なのでもどんな理由があろうともやってはいけないの です 。また 74ページ 18行「殺したのは 罪に相違ない」から、・・・(中略)・・・どんな心が あろうとも罪をしてしまったのには変わりがないからです。僕はこう考えながらも、喜助が とてもかわいそうに思えました。苦しんでいる弟を前にして、何もできないもどかしさが喜 助の心の中には 強く表れていたと思います。そこで僕は、喜助が次のようにすればよいと 思い ました。「 たとえ弟 のため であっ ても、 最後を 迎えるまでは待って あげる。そしてまず 医者を呼ぶ」ということです。ここから読み取れたのは、喜助のくやしさと弟のつらさです。 もし僕が喜助だったら、絶対に剃刀は抜かなかったでしょう。でも医者も呼べなかったと思 います。ただぼう然として立ったままだったでしょう。そう考えると、たとえ罪であろうと も、 弟のた めに何 かをし てあげ た喜助 はすご いです 。 (以下略)何度読 み返しても、おくの 深い作品だなぁと感じました。 記述の内容については「読むこと」の評価とする。ここでは、下線部に注目したい。授業 での気づきを書くだけでなく、文章や自分自身に何度も立ち返り、内省しながら書いている ことが伺える。これも、②のマップ同様、基準を定めた上で、「関心・意欲・態度」として の評価が可能である。 2 単元「私の『枕草子』を書こう」における「関心・意欲・態度」の評価の実際 (1) 単元の目標 ・古文のリズムを感じながら音読し、文章に表れているものの見方や考え方について考える。 ・清少納言のものの見方や、「枕草子」の文体を参考にして「私の『枕草子』」を書くことが できる。 (2) 単元の指導のポイント ・歴史的仮名遣いなど、音読するために必要な文語のきまりについて指導する。 ・独特のリズムを体得させるために、繰り返し音読させる。 ・現代語訳や語注などを手がかりにして内容理解を深め、描かれた情景を想像させる。 (3) 評価の視点 ① 暗唱 「B」‥‥‥「春」を覚える。(全員が覚えるべき課題) 「A」‥‥‥「春」「夏」「秋」「冬」を一つずつ覚える。(チャレンジしていく課題) 「A+」‥‥第一段全文を覚える。(チャレンジしていく課題) ② 作文「私の『枕草子』」 「B」‥‥‥一つの季節のみについて書いている。(全員が取り組むべき課題) 「A」‥‥‥四季すべてについて書いているが、量は少ない。 (チャレンジしていく課題) 「A+」‥‥四季すべてについて書いており、量もある。(チャレンジしていく課題) (4) 単元の授業の流れと評価 ① 単元構成 ・ 文語文の語句や仮名遣いに注意しながら音読する。 ・ 文章の展開に即して内容をとらえ、作者のものの見方や感じ方を理解し、優れた表現を 読み味わう。 ・ ② 作者の視点や文体を参考に「私の枕草子」を書く。 ・・・・・1時間 ・・・・・2時間 ・・・・・1時間 評価の実際(生徒作品より) ○「A+」の作文例 春は、進学。やうやう落ちゆく桜。皆を包んで、咲きこぼれる笑顔の、広く広がりたる。 夏は、キャンプ。きもだめしのころは、さらなり。夜もなほ。先生もとてもよふかしし たる。また、ただ虫の観察など自然とふれあっていくもをかし。 花火などするも、をかし。 秋は、音楽会。練習をして、本番いと近うなりたるに、生徒の合唱する声、一つ一つ、 どの音よりもがんばる姿あはれなり。まいて、ケーナなどの吹きたるが、いと合わさって いるのはいとをかし。 舞台終わって、拍手音、歓声など、はた言ふべきにあらず。 冬は、マラソン。応援したるは、言ふべきにもあらず。息のいと白きも。また、さらで もいと寒きに、準備運動して、体あたためるも、いとつきづきし。 走りだして、徐々につかれていけば、歩き始め、人よりおくれたりして、わろし。 *量も多く、枕草子の文体を忠実にまねて、自分なりの枕草子を書こうとしている。 ○「A」の作文例 春は、もも色。花ひらくさくら、あたたかな空などあはれなり。 夏は、みどり。草木が育ち、葉が風にゆれる。山の緑も言ふべきにあらず。 秋は、やまぶき。ようよう色づく木の葉、いとをかし。 冬は、白。雪の朝の輝き、あはれなり。白く吐く息、自然の輝きなく、わろし。 春はひま。友達の家に毎日行く。春休みにいくもをかし。 夏はさらにひま。毎日遊ぶ。プールにいくもをかし。 秋はそこそこ忙しい。たまに友達と遊ぶ。一人で読書するもをかし。 冬はいそがしい。あまり遊べない。勉強するもつきづきし。 *春夏秋冬を独特の視点で見つめ、積極的に文語を使おうとしているが、量が少ない。 ○「B」の作文例 夏は昼。 昼はあつく、蝉がなくのも、をかし。 なほ、ほのかに風が吹き、風りんの音が鳴るのも、をかし。 *一つの季節についてのみ書いている。 結果と人数 ③ 本校1年生で実施した結果、一クラス(40人)では次のような結果になった。 A+ 27人 A 10人 B 2人 C 0人 生徒の振り返りより ④ ○ 今日は、「春」の部分を暗唱しました。描かれている風景を思い浮かべると覚えやすか ったです。今度は「夏」「秋」「冬」にも挑戦したい。 ○ 今日は、「私の『枕草子』」を書きました。すごく楽しいです。清少納言もこんな気持 ちで書いていたのかなぁと思いました。 ○ 「私の『枕草子』を作るのは難しいです。「春」「夏」はできました。残りも頑張りた いです。清少納言は、約300編も書いていて、すごいなと思いました。どんな話を書いて いたのか、他の話も読んでみたくなりました。 3 「関心・意欲・態度」の評価の総括 以上、「関心・意欲・態度」の評価法の考え方と事例のいくつかについて述べた。もちろん、 他にも方法は多数考えられる。しかし、重要なのはあくまでその評価項目が「関心・意欲・態度」 に即したものになっているかということ、そして、基準としての尺度をしっかりもっておくこと である。 今後の課題及び留意事項として、 「形成的評価」の側面がある。今回は主には述べなかったが、 今後の評価を考える上で、最も重要な点である。そのポイントとして、次の2点が挙げられる。 1点目は、「指導と評価の一体化」である。「評価」はそれだけが一人歩きするものではなく、 あくまで「指導」と一体でなくてはならないことは言うまでもないだろう。「暗唱による評価」 の生徒の例にあるように、評価が、生徒の国語への「関心・意欲・態度」を高めていくための指 導に生かされているかどうかが大切である。 2点目は、生徒の「自己評価力」を育成することである。そのために、生徒自身が「学習した ことを振り返る活動」が求められる。「学習過程での評価」「学習のまとめに関する評価」の例 で示したように、生徒が意味マップや文で、自分自身の学習の足あとを俯瞰し、振り返り、自分 自身に意味付けや価値付けを行うような評価の場を設定することが重要である。そうした自己評 価力を育成する評価の在り方について、さらに考えていく必要がある。