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4 教育課程実施上の留意事項

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4 教育課程実施上の留意事項
4
教育課程実施上の留意事項
(1)指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項
各学校においては,次の事項に十分配慮しながら,指導計画を作成するよう努めなければならない。
① 学校生活全体を通して,言語に対する関心や理解を深め,言語環境を整え,児童の言語活動が
適正に行われるようにすること。
② 各教科等の指導に当たっては,体験的な学習や問題解決的な学習を重視するとともに,児童の
興味・関心を生かし,自主的,自発的な学習が促されるよう工夫すること。
③ 日ごろから学級経営の充実を図り,教師と児童の信頼関係及び児童相互の好ましい人間関係を
育てるとともに児童理解を深め,生徒指導の充実を図ること。
④ 各教科等の指導に当たっては,児童が学習課題や活動を選択したり,自らの将来について考え
たりする機会を設けるなど工夫すること。
⑤ 各教科等の指導に当たっては,児童が学習内容を確実に身に付けることができるよう,学校や
児童の実態に応じ,個別指導やグループ別指導,繰り返し指導,学習内容の習熟の程度に応じた
指導,児童の興味・関心等に応じた課題学習,補充的な学習や発展的な学習などの学習活動を取
り入れた指導,教師の協力的な指導など指導方法や指導体制を工夫改善し,個に応じた指導の充
実を図ること。
⑥ 障害のある児童などについては,児童の実態に応じ,指導内容や指導方法を工夫すること。特
に,特殊学級又は通級による指導については,教師間の連携に努め,効果的な指導を行うこと。
⑦ 海外から帰国した児童などについては,学校生活への適応を図るとともに,外国における生活
経験を生かすなど適切な指導を行うこと。
⑧ 各教科等の指導に当たっては,児童がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に
慣れ親しみ,適切に活用する学習活動を充実するとともに,視聴覚教材や教育機器などの教材・
教具の適切な活用を図ること。
⑨ 学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り,児童の主体的,意欲的な学習活動や読書
活動を充実すること。
⑩ 児童のよい点や進歩の状況などを積極的に評価するとともに,指導の過程や成果を評価し,指
導の改善を行い学習意欲の向上に生かすようにすること。
⑪ 開かれた学校づくりを進めるため,地域や学校の実態等に応じ,家庭や地域の人々の協力を得
るなど家庭や地域社会との連携を深めること。また,小学校間や幼稚園,中学校,盲学校,聾学
校及び養護学校などとの間の連携や交流を図るとともに,障害のある幼児児童生徒や高齢者など
との交流の機会を設けること。
(2)指導上の留意事項
① 同和教育に関する指導
a
指導計画に位置付ける際の留意事項
学校における同和教育の充実深化を図るため,各教科,道徳,特別活動及び総合的な学習の時間等
の指導内容を同和教育の視点から検討し,指導計画に適切に位置付け,児童の心身の発達段階に応じ
て指導することが重要である。以下に掲げる事項は,指導計画に位置付けていく際の留意事項を示す
ものである。
ア 人間尊重の精神を養う
○ 生命を大切にする児童を育てる。
・ 人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を培う学習を通して,生命の大切さに目を向けてい
くように具体的に指導する。
○ 人権尊重の意識をもつ児童を育てる。
・ 人権にかかわる生活問題の教材化,人権を尊重し,お互いの人間としての価値を認めあう集団
づくりや人権尊重に関する作文やポスターの製作など,生活や学習指導のあらゆる機会を通して
人権尊重の意識を高めるよう指導する。
・ 日本国憲法の学習などで,基本的人権の尊重について身近な生活に見られる具体的事例を通し
て理解するよう指導する。
イ 差別に対する科学的認識をもち,差別をなくす実践力を養う
○ 差別に対する科学的認識をもつ児童を育てる。
・ 社会科の歴史的内容の取扱いでは,秀吉の検地・刀狩,江戸時代の身分制度,明治の解放令,
水平社運動,日本国憲法における基本的人権の尊重などを通して科学的認識を育てるように指導
する。
○ 差別を差別としてとらえ,差別をはねかえす力をもつ児童を育てる。
・ 身近におこる差別的事象について鋭く目を向け,不合理,矛盾や差別をなくす実践力を養うた
め,各教科,道徳,特別活動及び総合的な学習の時間等の教育活動全体を通して指導する。
ウ 個人を尊重するとともに集団の大切さを認識し,協力し合う実践力を養う
○ 一人一人を認め合う集団を育てる。
・ 一人一人を尊重し,集団の中での個人の存在価値を認め合う集団を育てるため,各教科,道徳,
特別活動及び総合的な学習の時間等の教育活動全体を通して指導する。
○
お互いの問題をみんなの力で解決し合う集団を育てる。
お互いの問題をみんなの力で解決していく自主性や連帯感を,各教科,道徳,特別活動及び総
合的な学習の時間等の教育活動全体を通して指導する。
エ 職業や労働に対する正しい見方,考え方をもつとともに実践力を養う
○ 職業や労働に対する正しい見方,考え方をもつ児童を育てる。
・ 社会科や道徳などの学習を通して適切な指導をする。
○ 働くことの尊さを理解し,実践力をもつ児童を育てる。
・ 清掃や係活動等を通して働くことの尊さや喜びを体得させ,自主的に行動するよう指導する。
オ 基礎学力の向上をはかる
○ 教科の本質をふまえ,指導内容の明確化,重点化をはかり,個性と能力に応じた指導を行うよう
にする。
○ 一人一人の生活や経験の違いを十分把握し,それぞれの児童がもっている成長の可能性を伸ばす
ように努める。
○ 教材,教具,情報機器,視聴覚機器等の活用を図ったり,実験用具,体育用具を用いたり,観察
や見学等を多用するなど一人一人の児童の学習意欲を高めるような体験的活動を重視する指導を行
うようにする。
○ 評価については,児童のよさや可能性をのばし,学習の喜びや意欲を高めることに留意するとと
もに,指導の過程や成果を評価し,指導の改善を行うようにする。
b 人権読本「ぬくもり」の活用
人権意識は身近な場面や具体的な行為を通して,課題を自分のものとして受けとめ,自らの生き
方と照らし合わせて学んでいく中で育つものである。このような考え方から身近な事例を中心に,
広い分野にわたって編集された人権読本「ぬくもり」の題材を各教科,道徳,特別活動及び総合的
な学習の時間の学習において活用し,人権意識高揚の一助とする。
・ 年間指導計画に位置付けられた人権尊重週間等の学習における活用については,児童の心身の
発達段階や課題に応じて選択し,十分に活用する。
・ 各教科,道徳,特別活動及び総合的な学習の時間の学習における活用については,上記事項(ア
∼オ)を深化・充実させるために,各教科等の単元・題材の目標分析を十分に行うとともに主教
材との関連性や学習過程への位置付けについて検討し,随時活用する。
※ 「人権読本一覧」参照(本基底教育計画に掲載)
② 平和に関する指導
平和に関する指導は,日本国憲法,教育基本法及び学校教育法に示された教育の根本精神を基調とし
て,平和な国家や社会を実現していこうとする人間の育成を目ざして行われるものである。従って各教
科,道徳,特別活動及び総合的な学習の時間等において平和に関する指導内容を検討し,指導計画に適
切に位置付け,児童の心身の発達段階に応じて指導しなければならない。以下にかかげる事項は,指導
計画に位置付ける場合の留意事項を示すものである。
a 全教育活動の場を通して行う。
平和に関する指導は,学校における全教育活動を通して行うことが基本であり,指導計画に時期,
目標,内容等を明示しておくことが大切である。
b 児童の発達段階に応じて行う。
平和に関する指導のねらいとする人権意識や国際意識などは,かなり高度なそして複雑な意識の範
囲に属するものである。従って児童の発達段階に応じて,指導内容を十分に吟味して適切なものを選
択するとともに,取扱いの範囲や程度についても慎重を期すことが必要である。
c 平和に関連ある記念日等の扱いは,教育効果を十分に検討して行う。
平和に関連ある一連の記念日をとらえて指導することは,そのねらいや方法が十分に検討され,か
つ教育計画の中に適切に位置付けられていれば,教育効果は大きいものがある。ただし,ある特定の
日,特別の時間を設定しての一時的な取扱いは,十分配慮して行わないと所期の効果は期待できない
ものである。
d 郷土や国土に対する愛情や国際理解の基礎を養う。
社会や道徳の学習などを通して,我が国と諸外国との相互理解と協力,国際的協力機関について理
解を深めるよう指導する。
③ 人権教育に関する指導
本市において,平成11年1月に策定された「人権教育のための国連10年」福岡市行動計画を策定
し,この計画を人権教育及び人権啓発分野における基本計画として位置づけ積極的に推進してきた。し
かしながら,現在も差別や偏見による様々な人権侵害が発生しているほか,人権問題も多様化・複雑化
してきており,このような人権問題を取り巻く社会情勢の変化に対応する必要が求められてきている。
そこで,本市では,今後の人権教育及び人権啓発についての取組みをより効果的かつ実効性あるもの
にするため,これまでの取組みの成果・課題や社会情勢の変化を踏まえて「人権のための国連10年」
福岡市行動計画の見直しを行い,新たに人権教育及び人権啓発の基本計画を策定した。
学校における人権教育は,「全教育活動を通して,生命を大切にし人権を尊重する心などの基本的な
倫理観をはじめ,正義感・公正さを重んじる心などの豊かな人間性を育む人権教育を推進する必要があ
る。」として,
a 学習指導法の工夫・改善
○ 心の教育の充実
・
「福岡市教育改革プログラム」を踏まえた人権教育や道徳教育の推進し,他人を思いやる心や生
命を大切にし人権を尊重する心などの育成する教育の充実を図る。
○ 学習指導法の工夫・改善
児童が自分で課題を見つけ,自ら学び自ら考える力を身につけられるよう,幼稚園,保育所,小
・中・高等学校,養護学校の校種間の連携を図り,それぞれの発達段階に応じた学習指導の工夫・
改善をしながら人権教育を推進するとともに,障害のある児童が地域における様々な活動に参加し
交流を深めることができるような機会の充実に努める。
○ 人権教育の内容の充実
これまでの同和教育の中で培われてきた手法や,その中で得られた成果や課題を踏まえながら,
さらに人権教育の内容の充実に努める。
○ 効果的な教材の整備・活用
人権読本,道徳副読本,男女平等教育副読本など,身近なことを題材にし,児童の関心や意欲を
引き出させるような効果的な教材を,それぞれの発達段階に応じて,さらに整備し活用する。
b 国際理解教育の推進
○ 在日外国人の人権に関する教育の充実
「在日外国人の人権に関する学校教育指導指針」(平成9年7月策定)や「在日外国人の人権に関
する学校教育指導資料集」(平成12年3月発行)の趣旨を踏まえ,在日外国人が在籍する・しな
いにかかわらず,すべての学校において,発達段階に応じた,在日外国人の人権に関する教育が適
切に行われるように努めること。
○ 国際理解教育の充実
国際理解教育を推進していく中で,人種・民族・国籍・文化などの多様性を互いに尊重しあう「共
生の心」を育む教育をさらに充実させていくこと。
これらを踏まえた人権教育の推進が重要である。
④ 命を大切にする教育に関する指導
「命を大切にする教育」については,平成9年の神戸市須磨区における連続児童殺傷事件以降,全国
各地において積極的な取組みが行われてきた。しかしながら,平成15年より沖縄県や長崎県において
発生した中学生等による殺人事件に続き,平成16年に入っても長崎県佐世保市の小学校において6年
生の女子児童が同級生に殺害されるという事件等が発生している。こうした事件の原因・背景は様々で
あると考えられるが,自他の生命のかけがえのなさなどについての実感が育まれていなかったり,自分
の感情を適切にコントロールができないなど自己抑制力が培われていないことがうかがえる。
そこで「命
を大切にする教育」をさらに充実し,実効のあるものとして進めていくことが必要である。
具体的には,下記のような取組みを行う必要がある。
a 命を大切にする心を育む教育の充実
道徳の指導をはじめ教育課程全体を通じて自他の生命ののかけがえのなさ,誕生の喜び,死の重さ,
生きることの尊さ,自信や夢をもって生きることの大切さなどを取り上げる場や機会を増やし,心の
ノート等の教材の活用や外部人材の効果的な活用を行い,積極的に指導を推進する。
b 伝え合う力を高め,望ましい人間関係の指導の推進
児童相互の間で生じたトラブルの解決を暴力に訴えることのないようにするために,自分の気持ち
や考えを適切に相手に伝え,生活上の問題を言葉で解決する力を育てるとともに,他者を認め互いに
尊重し合い,望ましい人間関係を構築するための指導を推進する。
c 社会性を育む体験活動の充実
他者への献身,奉仕の心,思いやりの心等を育むために,学校における自然体験活動や社会奉仕体
験活動等の充実を図り,心の絆づくりと望ましい人間関係の形成を目指す。
※
⑤∼⑭までの今日的な教育課題への指導については,各教科,道徳,特別活動及び総合的な学
習の時間等における単元(題材)等の位置づけの具体例を記載。
⑤
学校図書館教育に関する指導
学校図書館は,児童の読書活動を促進するとともに,各種の資料や情報を提供することにより,児童
の自主的・主体的学習活動を促し,豊かな人間性を培ったり,生涯にわたる自己教育力を育てる上で極
めて重要な役割をもつものである。
また,「総合的な学習の時間」の推進等を考慮に入れ,学習情報センターとして機能するように,資
料の活用や調査研究を行う学習活動の場として充実させるとともに,読書センターとしてその整備充実
に努めることが重要である。
<具体例>
・
・
・
国語
全学年「本と友達になろう」「読書の世界を広げよう」「読書の世界を見つめよう」
(自分の考えを広げたり深めたりするために,必要な読み物,図書資料を読む。
)
理科
3 年「こん虫をしらべよう」
(昆虫の食べ物やすみかなどについて学校の図書室等で調べる。
)
図画工作 1 年「きょうかしょびじゅつかん∼絵本がいっぱい∼」
(学校や地域の図書館で自分なりの観点で絵本を探し出し,作品のよさを味わう。
)
⑥
情報教育に関する指導
学校教育は,児童に過去の貴重な文化遺産を適切に伝えると同時に,科学技術の進展や社会の変化に
主体的に対応できる能力や態度の育成という役割をもつ。特に,情報化の進展に対しては,すでに,児
童の周りが各種の情報機器に取り囲まれていることも考慮しつつ,将来の高度情報通信化社会に生きる
児童に,情報活用能力を養うための教育を推進していくことが大切である。
今回改訂された学習指導要領は,
「各教科の指導に当たっては,児童がコンピュータや情報通信ネッ
トワークなどの情報手段に慣れ親しみ,適切に活用する学習活動を充実するとともに,視聴覚教材や教
育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。
」と述べている。小学校では,コンピュータや情報
通信ネットワークなどの情報手段について慣れ親しませ,教科の指導において指導の効果を高める観点
から利用したり,総合的な学習の時間で利用したりすることが大切である。
<具体例>
・
・
・
算数
4 年「かけ算のしかたを考えよう」
(算数で情報というコーナーを設け,コンピュータの活用場面を設定する。
)
理科
5 年「天気の情報(1)(2)」
(天気や台風に関する気象情報をインターネットやテレビ等で集め,調べる。
)
特別活動 4 年「情報と私たちの生活」
(様々な情報源から必要な情報を得る。)
⑦
国際理解教育に関する指導
国際理解教育は,国際社会に生きる日本人としての自覚をもった人間の育成を図るものである。とり
わけ,アジアの交流拠点都市づくりを目指す本市に育つ児童には,国際的な視野をもち,豊かな国際感
覚を育てることが求められる。
そのためには,自国の文化や生活を十分理解することやお互いの個性を認め合う生活習慣を身に付け,
その基盤に立って,他国の文化や生活を理解できるようにすることが重要である。
○ 日本の伝統文化や歴史などについての学習を地域と連携しながら推進する。
○ 福岡市在住の外国人や留学生,海外ボランティア等の経験を有する人等との交流や海外の学校との
交流を推進する。
○ 外国語会話等を行うときは,学校の実態等に応じ,児童が外国語に触れたり,外国の生活や文化な
どに慣れ親しんだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学習が行われるようにすること。
<具体例>
・
・
・
国語
3 年「三年とうげ」
(いろいろな国に昔話があり,それぞれの国の見方・考え方の面白さやよさに気づく。
)
音楽
2 年「リズムにのってあそびうたであそぼう∼世界の遊びうた∼」
(いろいろな国の遊びうたを歌ったり,聞いたりして,いろいろな国の音楽に親しむ。)
総合的な学習の時間 3年∼6年「自己紹介しよう」
(歌やゲーム,スキットなど,体験的な学習学習を通して,英語に慣れ親しむ。
)
⑧
環境教育に関する指導
環境に関する指導は,日本国憲法や公害対策基本法に示された精神を基本として,心身共に健康な国
民の育成を期して行われるものである。したがって各教科,道徳,特別活動及び総合的な学習の時間の
全領域にわたって,環境に関する指導内容を検討し,指導計画に適切に位置づけられねばならない。例
えば以下にかかげる事項は,指導計画に位置付けていく際の留意事項を示すものである。
a 生命の尊さと健康の大切さ
家庭科の食生活に関する内容の学習などを通して,健康と食物の関係を理解させ,食品公害等につ
いて指導する。
b 自然と人間とのかかわり
社会科の「国土」に関する学習(5年)などを通して,自然と人間生活との調和による環境保全の
大切さを指導する。
c 産業の発達と人間生活とのかかわり
社会科の「国土」に関する学習(5年)などを通して,各種の公害から国民の健康や生活環境を守
ることの大切さや,自然環境の保全を図ることの大切さを指導する。
d 国の政治と人間生活とのかかわり
社会科の「政治」に関する学習(6年)などを通して,基本的人権の尊重や住民福祉の向上が大切
であることを指導する。
<具体例>
・
理科
・
家庭
・
道徳
6 年「生き物のくらしと自然かんきょう」
(自分の生活と自然環境とのかかわりや環境保全のあり方を考える。
)
5 年「不用になったものを生かそう」
(生ゴミ,資源ゴミ,生活で使った水の再利用等から家庭生活における環境を考える。)
4 年「かるがもの親子」
(自然のすばらしさに気付き,動植物を大切にしようとする。
)
⑨
福祉教育に関する指導
福祉教育は,人間尊重の精神のもとに,人や自然を愛する心,社会連帯の意識,奉仕の心を育てると
ともに,福祉への理解と関心を高め,障害のある人や幼児・高齢者と共感的交流を通して福祉の心を培
う教育である。高齢化社会の到来に伴って,人間尊重,児童福祉の精神が浸透する中で,次代を担う児
童への福祉教育の重要性はますます高まっている。
各学校においては,教育課程の編成とその実施に当たって,学校における全教育活動において,福祉
教育の充実に努める必要がある。また,家庭や地域社会との連携を図り,地域ぐるみの福祉教育に取り
組むことが大切である。
福祉教育の推進にあたっては,次のようなことに留意することが大切である。
a 福祉の心が生かされる教育の推進
「豊かな心をもち,たくましく生きる人間」の育成のために,生命の尊重,人権尊重の精神,他者
への思いやり,人間としての生き方についての自覚,社会の一員としての自覚,そして自らの力で自
立しようとする心など「福祉の心」を培う。特に,道徳や特別活動及び各教科において関連する内容
のみならず,すべての学習場面・生活場面において人間としての生き方や人間関係のあり方等,心の
教育を重視する適切な指導を行っていく。
b 福祉への理解と関心を高める教育の推進
福祉の意味と内容,福祉の現状,障害者・高齢者の生活の理解,社会における個人の役割等につい
て,児童の実態,地域社会の実態を考慮し,教育活動の全領域において計画的な指導を行う。特に,
道徳や学級活動の指導においては,福祉教育にかかわるねらいの設定や題材の工夫を図り,福祉に関
する文献・資料等を活用しながら,福祉について正しい理解と関心を高める。
<具体例>
・
国語
6 年「みんなで生きる町」
(身の回りの施設等について考え,すべての人がよりよく生きるための考えを持つ。
)
・ 家庭
6 年「家庭や地域へのふれ合いを広げよう」
(家族や身近な人たちと,どのように協力したらよいかを考える。
)
・ 特別活動 2 年「校区にいるようご学校の友だちとの交流会」
(校区にいるようご学校の友だちと楽しく仲良くできる。)
⑩
男女平等教育に関する指導
小学校における男女平等教育は,学校の教育活動全体を通して行うものであり,各教科,道徳,特別
活動並びに総合的な学習の時間においてそれぞれの特質に応じて適切な指導を行うことが重要である。
指導にあたっては,人権意識と男女平等意識の高揚を図るため,男女平等の視点に立って組織的,計
画的に展開していく必要がある。また,指導を充実させるために,男女平等教育副読本「はらっぱ」を
活用した計画的な実践が望まれる。
男女平等教育の推進にあたっては,次のようなことに留意することが大切である。
a 人間の尊厳を基本とし,人権意識と男女平等意識を高めるための指導計画を作成するとともに指導
の充実に努める。
b 男女の平等観の育成に資する体験的学習を計画的に位置付け,体験を通して心に訴え,内面化を図
る。
c 学校の指導内容が日常生活に生かされるよう家庭や地域社会との共通理解と連携を図る。
<具体例>
・
社会
・
生活
・
体育
6 年「わたしたちのくらしと政治」
(くらしの中の基本的人権を考え,性別にかかわらず,その個性と能力が発揮される社会が求められていることを理解する。)
1 年「みんな大すき」
(家族とは,男女が支え合って仕事をしていることに気づいたり,自分にできることを進んですることができる。)
3・4年「思春期の体の変化」
(思春期の体や心の変化には個人や男女によって違いがあることやその違いを認め合って助け合い協力していくことの大切さを学習する。)
⑪
消費行動等についての教育に関する指導
消費行動等についての教育に関する指導は,児童に断片的な知識を与えるのではなく,児童が消費者
として情報をもとに正しく判断し,行動できるようにすることが重要である。
指導にあたっては,児童が小さな消費者として,自分小遣いで買い物をしたり,身の回りの生活用品
への対処の仕方を考えたりするなど具体的な学習を通して,思考力・判断力等を身に付けるような学習
を展開することが大切である。
また,消費についての教育にめあてを明確にし,各教科のねらいや目標を大切にしながら,どのよう
に取り組むのか,資料をどのように作成するか等についても具体的に検討することが重要である。
<具体例>
・
・
・
家庭
5 年「品物の買い方を考えよう」
(お金の計画的な使い方を考え,賢い買い方ができるようにする。
)
道徳
2 年「ノートのひこうき」
(無駄遣いが自他のためにならないことに気付き節度をもった生活をしようとする。
)
特別活動 4 年「小づかいの使い方」
(小づかいを大切に計画的に使うことができる。)
⑫
健康教育に関する指導
健康教育の指導にあたっては,保健・安全・給食指導の組織体制を確立し,学校の教育活動全体を通
して,年間を見通した保健・安全・給食指導計画を作成し,継続的・積極的に取り組み,児童の健康・
安全・給食に関する自己管理能力の育成が図られなければならない。
a 学校の実態に即した健康教育を年間指導計画に明確に位置づけ,校長のリーダーシップのもと,健
康教育の意義や必要性,実施の根拠,適切な目標や指導の重点などについて,全職員の共通理解のう
え,指導の徹底を図る。
b 指導参考資料及びパンフレット等を活用し,喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育,性教育,エイズ教育
の指導の充実を図る。
c 喫煙・飲酒・覚せい剤等の薬物乱用及び心や性の問題等について,実態と課題を踏まえた適切で計
画的な指導を行う。
d 安全教育並びに防災・防犯教育の充実を図る。
e 危険が予測される状況に対して,児童が安全を確認し,適切に対処できるように指導の徹底を図る。
f 給食指導については,日々の給食を「生きた教材」として指導に生かすとともに,児童自ら進んで
バランスのとれた食生活や適切な衛生管理ができるよう,食に関する指導の充実を図る。
<具体例>
・
国語
4 年「
『かむ』ことの力」
(人間の体の力とその力が互いにつながり合って大切な働きがあることを知り,体の成長と今後の生活について考える。)
・ 体育
3∼6年 保健学習全般
(健康な生活・育ちゆく体・けがの防止・心の健康・病気の予防について学習する。
)
・ 特別活動 6 年「心の健康」
(資料や話し合いを通して,自分の心の健康を維持していくことができる。
)
⑬
食に関する指導
児童を取り巻く社会環境の変化に伴い,食生活の多様化が進む中で,カルシウム不足,脂肪の過剰摂
取,偏った栄養摂取など食生活の乱れに起因する新たな健康問題が起きている。このような現状を踏ま
え,学校において児童が生涯にわたって健康で充実した生活を送ることができる能力や態度を育成する
ために,食に関する指導の一層の充実を図る必要がある。
食に関する指導は給食の時間を中心にしながらも,学校教育活動全体を通して計画的に実施すること
が大切である。特に,教科指導との関連において,学校栄養職員等と連携し,TTによる指導や学級活
動の中で児童の発達段階に応じて具体的に指導したり,総合的な学習の時間において食に関する内容を
取り上げるなど創意工夫した指導を展開することが重要である。
食に関する指導のねらいは,児童が正しい食事のあり方や望ましい食習慣を身につけ,食事を通じて
自らの健康管理ができるようにすることである。そのために,指導にあたっては,児童に食に関する知
識を与えるだけではなく,知識を正しい食生活習慣の実践につなげられるような学習を展開することが
大切である。
<具体例>
・
生活
・
家庭
・
体育
1・2年「ぐんぐん育て」
(野菜を栽培する活動を通して,野菜を収穫する喜びを実感し,日頃自分たちが口にする野菜に対して好き嫌いをせず食べようとする。)
5 年「日常の食事を調べよう」
(家庭の食事について見直し,食べることの大切さについて考える。
)
3・4年「よりよい健康」
(体をより良く発育させるには,
多くの種類の食物を食べることの大切さを学習する。
)
⑭ キャリア教育に関する指導
キャリア教育は,児童一人一人のキャリア発達を支援し,それぞれにふさわしいキャリアを形成して
いくために必要な意欲・態度や能力を育てる教育ととらえ,端的には,「児童一人一人の勤労観,職業
観を育てる教育」である。
基本的な考え方としては,学校の教育活動全体を通じて,児童の発達段階に応じた小学校からの組織
的・系統的なキャリア教育の推進が必要である。
キャリア教育推進のための方策として,教育課程への位置づけとその工夫,体験活動等の活用,社会
や経済の仕組みについての現実的理解の促進,多様で幅広い他者との人間関係の構築等が必要であると
考えられる。
<具体例>
・
・
・
社会
3 年「くらしをささえるまちではたらく人びと」
(地域の生産活動や販売活動の様子を調べて,それらに携わっている人々は生産や販売の工夫や努力をしていることを理解する。)
道徳
3 年「まどふき」
(働く喜びを知り,進んで人のために働く。)
特別活動 6 年「自分のよさを将来の夢に生かそう」
(自分のよさを生かして,将来やってみたい仕事について考え,希望や目標をもって生きようとすることができる。)
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