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公共政策の対象としての家族

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公共政策の対象としての家族
公共政策の対象としての家族
八代尚宏
日本経済研究センター
はじめに
怯統的な経諸学の教科書では、家謀 (
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) 辻、溶費の単投として、もっぱ
ら企業等、外部の経済主体との相法存関帯、が重視されていた。これに対して、家
ecker
等による「家族の経諸学」であるへここ
族舟部での活動に注目したものが、 B
で辻、家族の構成員は、その労動力を市場と家賠内サービスとの生産活動に最適に
配分するよう行動し、消費と同時に生産活動を営む主体であると考える。この家鹿
内生意活動とは、家事、出産、子供の養育、者人扶養等の龍、市場や公共サービス
と代響的なあらゆる活動を含む概念である。
戦後の日本経済の発展のもとで、日本の家族形態は大きな変化を遂げて 来た。そ
J
れら辻、〈会自営業世帯の雇現者世指化、②核家族北と少子化、③護用者世帯におけ
る共穣ぎ化、等の傾向である。こうした変化を「家族の経済学」のフレームで考え
てみると、家族の社会・経詩的機能が、次第に家麗内生産活動から市場経清活動の
1世紀に
方向へと変零して来たものと考えられる o さらに、こうした娘向は、今後2
向けて進躍する人口高齢化のもとで、一属加速するものと見込まれている。
これまでの伝説的な家族形態と、それに基づいた家族内相互扶助のシステムが急
速に変化するなかで、現行の公共政策は、必ずしも十分な対患を果たしていない。
これは、
C
D
現行の税艇・社合保障制度 i
土、暗黙の内に、犬が髄義、棄が家事に専念
る依統的なタイプの家挟形態をその基本的な前提としていること、②家族政策に
や各議の労鶴・社会政策等の間の議合性が十分でないこと、争家族機能
関する税制j
の低下に停い生じる様々な社会的問題を、もっぱら公共部門のサーピス生家で対処
し、社会政策における市場原理の活用の捜点が欠港していること、等のためである。
190 日 本 経 済 研 究 ぬ2
2,
1
9
9
2
.
3
以下で辻、家接形態の変化のもとでの、家族を対象とした公笑致策の問題点と、そ
の経済的なインブリケーションについて検討する o
1.家族形態の変化
経済の発展段階と嬢躍の役割
市場と家騒内サービスの代替の度合いは、経漆発競の段階によって大きく異なる。
まず、第一に、イ云続的令操業社会で辻、衣食住を始めとする日常の培養活動や、完ま
るまで、
における患
ーピス生産が諜踏で、あった。このため、
「共{動き世帯 J における家震の主締の労犠力は、
も、きわめて
事者運営する
も
、 また大家主主の家
を果たしていたとともに、こうした家震
経活全体においても大きなウエイトを占めてい
しかし、経済発震に静う産業構造の高捜化の進展ととも
の官まい自営業世帯の金需に占める
相対的に労動生藤性
に低下し、議現者世帯の比率が高まっ
て来た(表1)0 この雇用者世帯で、は、家族の生活と就識の場とが完全に切り離され、
夫が市場労檎に誕事するとともに、大部分の主織の労働は、もっぱら家庭内での脊
にF
長定される
党-
O
「片穣ぎ世帯j
これによって生じた F専業主婦 J
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立、高度成長期の 1963年には、
うち 64先
、
は30先{いずれも世
。
帯人員ベース)を占めていた(義 2戸
l 世帯種類別人員の推移(15
歳以上人口、努女計、万人)
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(1)獲用者君主苦手数をその女性労働力比主撃で案分したもの。
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2冷舌狐内はお幾以上人口に対する比喜久
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総
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会共放策の対委員としての家族 191
〈万人}
表 2 女性就業者の構成
1
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歳以上人口
就業者
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獲用者
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2
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{1}機用者世帯に匁げる2
0
歳以上の女子縁労数カ人口で近似。 f
霊
安
立
内i
ま1
5
設整以上女子人口におめる比率。
最後辻、悪期者世帯における主婦の就業が進む段階である。市場経済部門での労
議生産性の向上と、それに伴う重金水準の高まり誌、主購の家事労畿の機会費用を
高め、家経内活動から市場生護活動への代替、部ち妻の市場での就業を偲進した。
これに辻、パートタイムとフルタイムとの二つの形態がある。前者は家事・満児と
の両立を図れる範囲内での、時簡を限った就業であり、またその投入も、家計議助
的な役割にとどまる。これに対して、後者は、単身女子世帯の収入に匹敵するもの
であり、場合 ζ よっては失の設入を凌ぐことも希ではない。この「共稼ぎ世帯J に
おける失捕の経済的な役割は、他の設挙類型のように補完的であるよりも、なしろ
代替的であり、それだけ経済的な意味での家族としての結合力は弱まっている。
実、女性の経済的なま虫立性が高まるととも
未婚や離別ぷよる単身世帯の増加が
となっている。
「共稼ぎ世帯」の投金経済的意味
日本の女性労働力率は、戦後6
0%命から 1
9
7
5
年の 4
5%まで怒下し、その後1
9
9
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年
の5
0%まで間複した。これは、戦後、一繋して上昇している米闘と辻べた場合の大
1
9
9
0
年の女性労働力率5
0%の内容は、ほぽ問水準の 1
9
6
0
年誌と単純に比較することは誤解を生み易い。これは、 1
9
6
0年の女性就業者の内、
急な違いである。しかし、
家族従業者と濯用者が誌ぽ均諾していたことに対して、目的年における女'除就業者
の約弘が尊重用者で点められているためである(図1)。
192
自主幹絞済研究封。2
2,
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間 1 女性労働力率の推移
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9
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5
夫婦が共に嘉用者である「共穣ぎ世帯」の社会・結済的な意味は、
護憲が無給の家族従業者である「共犠き童搭」とは大きく
1
9
9
0
自
る。自営業堂帯で、は、
や子供は家族従業者として貴重量な労働力であり、家主主自体が、…つの生産単位であ
るo しかし、自営業世帯における家旗従業者の役割辻、あくまでも世帯主の補助的な
ものにとどまり、自ら独立の収入を得るわ ~t ではなく、市場経済の枠外にある。また、
として欝く嚢の場合に辻、生活と就業の場とが多くの場合 i
こ一致してお
り、っせ事と家事の閑の待関親分も比較的告自に行える。従って、家旗従業者とし
て
共糠
よりは、や i
まり無給で家殿内生産活動に専念する専業主婦に近
い経済的な.~生搭を持つものと蓄える。
この意味では、一定の蒋児期間の後、仕事へ復帰することの困難きや、男子との賃
金格器等、今
aの女性の就業 iこ静う、
害や片穣ぎ世帯にではなく、
-重金をめぐる大部分の問題は、ヲ毛1
動き
として挨穣ぎ枇帯の萎や女性の単身世帯の場合 t
;
:悶
宥なものであり、このタイプの世帯の比率が横向的
巡る問題の重量妻子詮を
まって来たことが、女性の就
となっている。
家主差規模の縮小
日本の平均的な家族規模辻、 1
9
5
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年の 5
.
0入から 1
9
8
5年の 3
.
2人まで傾向的に低下
してきた。この要部としては、ヨ〉核家族比率の高まり、争一家族当たりの子供数の減
少、@単身笠啓比率の上昇、等がある。
第一の要因については、農業の衰退と産業構造の高変化が、若年入口の都市圏集
中と相まって、親と成人した子供との問居率をき i
き下げたことがある。予告t
宣誓と
公共激策の対象としての家主義
193
題 2 世帯構成の推移
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1
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己三世代世帯露その他詮察
老親とが需居する
1
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5
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3
.
8克から 1
9
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9年の 14.2%まで傾
向的 i
こ母下しており、 これに代わって核家族世帯と単身世替の比率が高まっている
)。
(
図2
第二に、子供の数の減少は、
t
仕帯構成の変化と密接な関係にある。
生産活動自体の継承にとって
を果たす自営業世帯の比率が低下し、
の価値が、家族の生産活動と
関係になく、純粋に愛情のみの対象とな
用者世替比率の高まりは、
こ欝く。
を減らす方向 i
平均的な家族にとって、
と変化して来たものと
ニhは、部
人的資本から樹久活費財的
勃党死亡率の低下や、都市醤はお行る
講の悪北、及 1J
社会的
コストの高まり等も、
て、子供の数を減らすf
tわり
とっ
たりの震を向上させる方向へと
インセンティブを高めたと見なされる。
最後に、未婚・離婚率の高まり
による単身世帯の世帯数全体に占める
女性の高学歴化と就業機会の高まりと密接な関係にある。 日本の女性の平均
9
8
9
年で2
5
.
8
識と、
的な初婚年齢は、 1
きとなっている。 また、離婚率は、
向的に
は、スウェーデンに次いで一
回
に見ればまだ低いものの、や l
ま
り
まっている。
こうした家族楼龍の市場化仁家族規棋の減少鎖舟辻、?患の OECD
諸冨の慌を克て
ふ今後とも中・長期釣;こ持議する
主
さ
-育克に専念する「片穣
194 際空ド絵済研究ぬ2
2,
1
9
吉2
.
3
その意味で辻、夫のみが市場で
とは、経済発震の設暗では比較的
新しく、「共畿き世帯j から「共稼ぎ世巻J へと移行する間に生じる過渡的な現象で
あると考えられる。そうしたなかで、現行の「片稼ぎ世帯」が家族形態の基本であ
ることを前提とした現行の公共政策の陪題点勺こついて見ょう。
2
. 現行公共政策の問題京
2
.1 公共政策と家旗
税・社会保障政策に停う所得帯分配は、鑓人や家装の行動選択に対して、出来る
限り中立的であることが重要であり、税制や、社会保障害せ捜によって、家族の就業
意欲が損なわれたり、或いは家族の離散が慌進されるようなことは、社会の資源韓日
分を捜苦しさせる効果をもたらす可能性が大きい。しかし、ぞれむもかかわらず、家
主矢についての公共政策の概念は、それが成立した時点における平均約な家族儀に基
づいた社会の伝統的縞錐観を強く反映じており、その結果、少数派に属する家族に
とっては不利となる場合が多い。
公共政策の鑓的
家族を対象とする公共政策の目的辻、大胆して、
C
D
所得再分配政策、響機会均等
化政策、@家腕毅策、等の三つに分けられる。第一の所得再分配政築には、豊か
家族から貧しい家族への所得の霊渡的再分配(累進所持税、生活謀護政援等)と、
間一所樽階塁間での水平的再分配(社会保険〉がある。第二の機会均等化政策辻、
事後的な所得再分配ではなく、所帯獲得の機会(高等教育、麗用)そのものを事前
的に均等化する方向へ接正するものである
O
最後の家族政策とは、
を、構々の家挟から社合全体の賞担へと転換することを通じて、人口の社会的韓生
を維持するものである。
これらの政策辻、いずれも世替問の舟待の再分艶を第一次的な践的とするもので
あるが、問時に外部経済を内部イじすることによる資漉配分の改蕃を図ることも併せ
ている。偶えば、所得獲得機会の均等化は、それだ:
i
t
罷れた人材を活爵ずる機会を
高めることを通じて、経、蒜全体の資源開己分の改善立役立つ。また、
の一部を、予洪を持たない家族も合めた社会全体で、分控することは、高齢者の社会
的扶養と関じ意味を持っている o
公共政策の対象としての家主主
195
公共政策の手段
こませする幾鶴を射とすれば、争租税支出 (Tax
公共致策の手設としては、民欝活動 i
expen
丘i
t
u
r
e
)、争社会扶換金、参現物絵村等がある。第一の翠貌支出辻、家計に対
する戸病尋税や社会保険料実担を、各惑の捧持水準や年齢、その他家族の状況に志じ
て軽減することである。例えば、
たであろう所簿税の一部を免除すること i
こより、
設されてい
けれは撒i
には、政府から掘人への所
持移転を生じさせることと同じ経済的な意味を持つ。第この社会扶助金は、政府か
らの直義的な所得の移転である。社会扶助金の租税支出との濃いは、累進所得税制
のもとでは、所与の租税支出からの便益が、高所得者騰はど有利なものとなるのに
対して、社会扶助金では、所帯税を支払っていない低所樽階騰にも使識が及ぶこと
である o 最後に、現物給付は、公共政策の対象となる家般に、特定の財・サービス
の購入を強制させることを目的とする。
もη とも、これら公共政策の各手段培、現実には幾つも
にまたカするため、
それら相互間の整合性は、必ずしも十分ではない。そ
な公共政策の効
果が相殺され、結果的に非効率をものとなっている可能性がある。
2
.
2 家族の範囲
公共政葉の対象となる家族と辻、設藩主とそ
とカ通らなっている。 し
カ
ミ
し、家族が全て畠動的に扶養家族となるおげで i
まない。
として辻、
以下の条件が必要である。
(
1
) 扶護家族の定義
戸籍饗件
まず、第一に、扶養家族の範題である。税制において、扶養対象として認められ
る家艇の範囲は、民法の規定に準じ、配偶者及ぴその他の親旗(六等親以内の胤族
の姻族)と、広い範囲に及ぶぺしかし、配偶者や子供の範聞は、
されていることが条件であり、内縁の妻は合まれない。これに対して、社
合保険における扶養家践の範囲は、被保険者の配偶者、直系尊属・卑隣、兄弟姉妹、
内の親族であり、内縁の配偶者及びその子を食む。このよ
うに、税法の方が、社会保険に比べて配稿者の範顕をより厳密に、
はより広く取るなど、伝統的な家族の概念に捕らわれていると蓄える。
196 日 本 経 済 研 究 ぬ2
2,
1
9
9
2
.
3
間最饗件
立向躍していることが議長せであるが、同じ住居内に住むことは必ずしも必要
家族 l
、単身赴任、遊学等の場合にも、仕送り等により、経詩的な
条件ではない。畠穣きf
法幕開張が存在すれば扶養家族と認められる。
新得要件
家族の一員が一定以上の所帯を樽ていれ江、被扶識者とはなれない。位し、ぞグコ
限喪額、は、製度によって異なり、高齢者や身体襲撃者立ついて辻社会僚裁の方が税
制よりも緩い基準に基づいている。
(
2
) 所待税における配講者控除
個人爵鐸税の決定要閣のーっとして担税能力がある。組貌能力の単位として個人
と世替のいずれを取るかは大きな問題であり、米冨や戦前の日本では世帯を、また
戦後の E本 で は 楠 人 を 、 そ れ ぞ れ 課 校 単 位 と し て い る 。 し か し 、 日 本 の 場 合 こ
立、夫の被扶養者として取り接われており、技
の個人単位の併外として、無業の饗 l
養される配縄者と子侯・老親の数に応じて、それぞれ一定額が、世帯主の課税所得
から控除されるへこの結果、個人として間一水準の所樽に対する課税辻、単身者や
共稼ぎ世帯と比べて、専業主婚を持つ片譲ぎ世帯の方が、配偶者控除の分だけ軽い
ものとなる。この面では、現苛の所鐸悲劇では、棄が家事に専念する伝統的なタイ
ブの家族が憐遇されていると見ることもできる。
(
3
) 子脊ての社会的責護
子挟め出生と護育とは、個人的な事柄であると同時に、社合的にも大きな意味を
有している。子供を持つ枇替への所簿移転は、次の三三つの観点から必要とされる。
第一は、ま監査的所簿再配分の必要性である。生産能力比欠ける子供の扶養は、とく
に低所得者壌にとって大きな重葎である。第二に辻、社会における所帯獲得機会に
にアクセスするための高等教育への捜助である。第五は、畠主主主容が再生産率を
大きく下居っている状況のもとでの家族政策の視点である。以上の鏡点から、細別
の制度についてみると、以下の通りである。
所得扶盤控除
5
万円で、艶偶者の半分であ
舟樽税制のもとでの子供の扶礎控除は、一人につき 3
公共政策 r
J
)対象としての家族
197
る6)。この他、最近の改正で、 1
6
2
2歳の被扶養者を持つ世帯は、 1
0万円の扶養割増
控除制度が設けられた。この所得税の扶養控除方式は、①累進税率のもとでは、高
所得者層ほど減税額が多いこと、②所得税を支払っていない低所得者層には利益が
及ばないこと、等から逆進的であるとの批判がある(都村(19
91
) )。しかし、こう
した議論に対しては、子供の扶養控除の意味を、単に垂直的な所得再分配の観点か
らではなく、子育てのための母親の機会費用を社会的に補償するものと考えれば、
母親の従前の就業所得が大きいほど、その補償額も大きくなる必要があり、その意
味では逆進的な所得再配分も許容される。
もっとも、母親の子育ての機会費用を租税支出や児童手当等で完全に補償しよう
とすれば、それは莫大な額とならざるを得ない。より望ましい政策は、母親の就業
放棄の期間を最小限度に抑制し、或いは就業と子育てとを両立するような手段を提
供することである。それがひいては出生率の回復にも貢献すると考えられる。
児童手当
児童手当は、日本では 1
9
7
1年に導入された比較的新しい制度である。その対象は、
1
8
歳未満の児童を養育している家族で、従来は子供の数が三人以上となっていたが、
改正後三歳未満の第一子からも支給されることになった。これに加えて、主として
母子家庭を対象に、児童扶養手当が設けられている。本来、児童手当制度は、多く
の欧州諸国では、家族政策として発達してきた 7)。しかし、日本では、中途半端な存
在にとどまり、子供の年齢制限や世帯主の所得制限が極めて厳しく、平均的な家計
所得に占める比率は無きに等しい。
社会保障制度のなかにおける児童手当の意味は、必ずしも明確ではない。①所得
再分配政策の見地からは、現行のように、限られた原資を広く薄く配分する代わり
に、既にみた所得税の扶養控除とともに廃止し、児童扶養手当に統合することが望
ましい(都村(19
91
))と言える。また、②出生率の向上を目的とするならば、従来
のように第三子に限定し、集中的に与えることが政策効果として有効である。また、
所得制限を大幅に緩和し、むしろ扶養控除に統合することが望ましい。
育児休業法
今回成立した育児休業法は、以下のような特徴を持っている。第一に、これまで
のように特定の職種(保母、教員)に限られたものではなく、全労働者を対象とし
ていることである。第二に、女性だけでなく男性についても同様の権利を認めてい
198 日本経済研究 N
O
.
2
2,1
9
9
2.
3
る
、母親で誌なく、家族を明らかにその対象としているの第三に、家庭と
との荷立を図ることにより、労動者の福祉向上を達成することを本来の目的として
いるが、間接的には、それによって出生率の回議等、人口政策、幼克の福祉、及び、、
労{動力不是にも貢献することが出来るよう
多面的な効果を
している。
しかし、 こうした新しい社会致策が誕生すると、出来の政策との矛績が現れる。
には、保育所政策との関係である。公立保背所は、 これまで働く必要のある母
親の児議がきち悪な環境に置かれることを防止すムるため、児童福祉の観点から設けら
れている。従って、家惑にいる
照射として保育所を利用することは出
来ない。 これと同様に、育克休業中の両親め年上の子供が、 たまたま保育所を務用
していたと
ると、脊児休業期開やはその権利を
うこととなる。多くの都市では、
某脊所は供給不思であり、 しかも年震初に入所者を決定することから、
公立f
の権利を失うと年度中の再入所が器難となる。これ辻、常児休業のせっかくの利点
を大轄に損ない、その取得を抑制する効果を持っている ({呆育所自体の開題点につ
いては後述)。
第こには、雇用政築との関係である
当
企業にとっては麓用管珪と、大き
って、女子に比べて男子
Q
育児休識の制変辻、例え無給であっても、
を課すものと
る。この
め、企業か採用
るとのバイアスが生じる可詮註があるへこ
れを避ける一つの方法は、再護用制度の確立であり、女性が張、要な期間だけ膏見に
麦
、
し、そのf
しく不利とならない条件で手毒薬用されることが可龍であれば、
I
度に代わり寄る
背克休業苦J
ある c それを妨げているめが終身牒用を前提として
いる日本の産第慣行であるとすれば、雇用機舎の読動化を促進する政策が問時に豆、
要となろう。
2
.
3 保育所政築
女性の就業と
を両立するための重要な条件のひとつとして、保育所の整錆が
9
7
0
年から 8
0年にかけて約 7割増と
ある。 保育所め定員数は、 1
ったカ昔、 その後、
幼児人口数の減少とともに、 2
0
0
万人の水準に低下して来た。この内、 4議史以上の
比率は半分強を点めている
G
全体としての保育所の在所率は、 1
9
7
7年にピークに達
した後、徐々に抵下{噴出にあり、
には供給超過である。 しかし、他方では、
の保育苛比率の程きには、解消の見通しが立っていない。
この内、特に l蹴以下の乳児保育については、家庭保育援先の立場から、その対
公共政策の対象としヤごめ家族
199
陸宮市船引時総ヂ主主 REFT-i
は汎滋緩籍
都市における人口増加地域での不思、夜開保膏や棒審児保育等の特別保宵対象究期
象として、設馨の所得税の年額が1
2万円以下の殻所得者に議定されている。このた
め、ぞれ以上丹所得層は、著しくコストが高く、条件も不十分な民需の託児所に故
ざるを得ない。現に、無認可保育所立漬けられる見童の半数以上が 1議未満と
っている o このように現持の謀育所政築辻「基本的に生活を支えるため記止なを
簿ず働かざるを得ない低所得者のためのもの」との認識に碁づいている。また、乳
9
8
5
年の東京都で乳児…人当り 2
5
方舟強となっ
児鍔響併のコストはきわめて高く、 1
ている。こうした高いコストも、予算縦約から入所者を制課するひとつの大き
府となっている。
しかし、果たして党議の保育サーとス供給は、家挨か公約機関の二者択一でなけ
ればならないのか。子棋の数が減りすぎることの社会的外部不経済を考躍すれ託、
党議室の保育室担をある程度まで社会北し、公共サービスで賄うことが合理的として
も、それが「公共生産
(
p
u
b
l
i
cp
r
o
d
u
c
t
i
o
n
)J でなされる必然性は必ずしもない。
公立保育所の運営については、ヨ〉予算制約による入所者の制約、争サービス時間の
援定、③人口変イヒ等はより生じる地域的なアンパランス、等の需題が主主じている。
これ辻、市場傭格以下で公共サ…ピスを提供することが、超過需要を生み、それに
供給制接で対処するため、接定的なサーピスしか提供出来ないためである。しかも、
食業ベースではコストをカバーしないような公共サーピスが大きなシェアを市めて
いる市場に対じては、大手民間企業の新規参入は難しく、十分な競争条件が髄かない。
これに対して、慌に公立保育所を民営花し、公的部門が蓋接運営する費用を議助
(または所簿税控除)で賄うシステムに換えれ i
まどうだろうか。この結果、
合入訴者を限定せず、コストに晃合う料金を徴収する代わりに、抵所得者事
には、産工接公的扶助を行う。
争補助金は、機関(保育匿)矯主主よりはイ間人捕主主(切符毒事の形での現物給付)が、
供給樹の競争を剤散する効果を持つ意味で盟ましい。
③需要に晃合った多様なサーとス(地域分散、長時間保育〉が期待出来る。
2
.
4 学金
を扶養する家族に辻、-つのタイプの所得移転がなされている。それらは、
母既にあげた、 1
6
2
2
歳の被扶護者を持つ世替に対しての、 1
0万丹の扶養割増控除鰐
舎大学・高等学校への公的負語、金奨学金等である。
第一に扶養割増控除制度の意味は、戸前尋蒋分朝日か資漉配分の改善かとの点であ
る。仮に、結対約に子供の年齢が高いほど、教育妻がかかることが、設けられたこ
200 8本幾済研究 N
0
.
22,
1
9
号2
.
3
との意味であるとすれば、他方では、家族のライフ・サイクルを
変化を考慮し
じた所得水準の
は、幼児を持っている習い世帯主の方がより
いう可能性もあるへま
は苦しいと
そもそも所鐸控除は逆進的であって、
になじまないこと辻、践に晃た通りである。
自的
に愛しい斉害賠壊で辻、義務教育
卒業後、欝き立高て、被扶養者で誌なくなるため、 このおi
度にはなじま
い。それ
では、高等教育への進学を公的に{fE進することが自的であろうか。 これは、現在の
大学教育にどの程肢の外部経済効果を見いだすかに依存する。
第二に、上と同様の点が、高等教育への公的負担についても妥当
る
。
の補助金を通じて、授業料を相対的に安く抑えることは、程対的
を促し、所薄手写分艶効果を持つよう立も
進学率辻、
える。 しかし、龍方では、
く、器所鐸層で程いという逆進性が見られる‘(鶏口 (
1
9
9
2
)。
)
このように、高等教育機関への補助金を通じ
所得再分配を図ることの効果は、
極めて限定されたものにとどまる。
第三に、奨学金は、 ぞれを受ける学生の能力や親の所得暗層にリンクすることに
よって、高等教育の外部効果や所簿再分配
ることが出来る。また、
nた
ら
を有安定立話題するため、 f
民金耗の教育ローンに j
者用することも可能である。本
;こ器所得}警の高等教脊への進学機会を確保するためには、そのた
こ匹敵する規模での教育ローンが必要であり、
即ち高校卒の年開平均麓金所帯 i
授業料の上昇率抑制では不十分で、ある。 こ う し た 教 育 ロ ー ン が 金 融
場の
i
m
p
e
r
f
e
c
t
i
o
n によって十分に対応できないことが公共政策の役割となる。
2
.
5
社会福祉
会的技島等の社会揺設は、松銃声な家族によ
るものではなく、あ
くまでもそれを構完するものとの栓彊づけがなされている。 これが、公的扶助
族や親族による私的扶養が優先するとの、生活保護法に典製的に見られる補足性の
ある o
様子世都
現持の貌・社会保障制震が倍統的なタイプの片穣ぎ世善寺
内に憂還してい
ることは、やはり例外的な世帯である母子世帯についても
る。母子世帯が生
じる
として、夫との死別、離別、及び未婚の母の三つのケースがある。
この内、母子世帯への生活保磯政策に関しての特徴として、 ミーンズ・テストの
公共産主要長め対委主としての家族
201
なかに私的扶養義務の規定が含まれることがある。これは、民法7
5
2条と 8
7
7
条に碁
づく、夫婦、及び3親等以内の親族関の扶養軒寿規定から、そうした身内を探す義務
が生活体護の受給資格立合まれることであり、この結果、
に経済的に薮粧して
いる母子殺害が生活様護を受 i
すられない事態が増加している。ここうした状剖のもと
土、家旗の生活保時機能が高かった時代の産物で、今日の状況
で辻、扶養義務規定 i
には妥当せず、米国のように所得・資産基準のみで対花、すべきとの晃解が議然主主じ
1
9
9
2
)。
)
る(譲壌 (
しかし、これに対しては米国の AFDC(
A
i
dt
oF
a
m
i
l
i
e
sw
i
t
h Dependent
C
h
i
l
d
r
e
n
) が家族を守るというよりは、公的扶助に頼って夫が家臨を捨てることを
勤長する棋麗であるとの批判 (
G
l
a
z
e
r(
1
9
8
8
)
) がそのままきてはまる。しかし、こ
oralhazard は、ある程度までは社会保捧制度に品不可避的な間懇であ
うした m
ま卒替の経詩的な思難性とのバランスで判断
り、その具体的な効果の大きさと、遺棄t
する必要?性があろう則。いずれにしても、現行め社会政策が、間じ母子設帯でも未婚
の母よりも離別世苦手、またさらに苑刻による世帯を手厚く取り扱っているとの批判
(都村(19
9
0
))は、社会的な価髄観を反換するものとして興味深い。
その地の社会福祉
生活保護だけでなく、特定の類型の生活関窮者への扶助についても一定範密丹親
族の扶養義務が罷先する競走がある 11)。党童描祉手当や身棒韓害者の更正匿壌に要
る事費爵の支給に捺しても、その親按を含む扶養護務者の所得水準によって減額な
いし支給停止がなされる場合がある。また、間様の例 i
土、国民年金に於げる
祉年金や母子年金についても見られる。
2
.華 社 会 保 験
社会理険制捜における家族の思り扱い辻、自設業t
世帯と襲用者世帯とで大きく異
るo まず、公的年金制度 i
こついて克ると、告営業世替を対象とする菌民年金で辻、
擢人保障の考え方を取っており、夫も妻もそれぞれ猿自の被謀総者として保険料を
支払い、かつ臨有の年金結社を受けている。これに対して、護用者世替を対象とす
る摩生年金や共誇年金は社帯f
呆轄の考え 1
iで、家捷はおげる無策の棄は、犬の金存
中(まその年金で、また死亡後は違挨年金でそれぞれ扶養さF
れるせ鰻みとなっていた。
しかし、このように無業の妻が夫の設扶養義者としての地位しか持たず、その結果、
高齢で離婚した場合は無年金者ーとなる事態が生じた。これが1
9
8
6年の大改革で、
202 日本経済研究珂α
2
2,
1
9
9
23
刷
用者世帯の無業の善意も、 f
臨人を
とし
金となり、保険料が収入に比開し
部分として存続することと
もとに統合されて基礎年
-共済年金は、 この上乗せ
つ
公的医壌探検についても、
と問機であり、 自営業世替を対象とする
富民健康探検は器人様陣、
とする鍵保組合等は家族保障となっている。
程し、 7
0
議以上の老人について
刻途老人探検法によって、一律に橿入単柱の保
需が行われている。
異なる栓審議謹簡の受益の不均欝
稼さq空帯と共譲ぎ・共欝き・単身世苓との鵠
しかし、
に、大轄な受抵の不時機を
じさせている。まず、現行の公的年金制震と公的罷譲
こかかわらず、国ーの保険料と
とすれば、被扶養者の数 i
保設では、
なっている o これ辻、
に、棄のお給年金 (
1
9
8
6
年度改正前〉が設けられ
ること、 また匿療保険でも扶養家
ていたことや、
-共稼ぎ世帯から片稼ぎ世帯へ、所得税の場合
族の給付分など、
とは比べものになら
いて子供や恋人の
理がそれなり
移転を
いほどの多額の所得移転が生じることとなる。陸擦保険に
を社合全体で負担することには、「世代聞の連帯 J という論
されるとしても、同世代の無業の妻に対して、他の世帯からの
ることは基盤しいであろう。
更に捜雑となっている。 まず、棄の加給年金が廃止
された代わり
た
。 しかし、
つ
は、夫の所得水準を所与とすれば、妻の有無でその保険料が変
いから、議用者の無業の妻の探検科辻制度としてまとめ
わる
とと
無識の衰の基礎年金分は、夫の年金保険料で、賄わオしることに
るこ
っており、依擦として事実上、単身者や共稼ぎの棄の探検料によっても臨わ
ることと
っている問。これは、同じ基礎年金に加わっている自
告らの保検粍を払っていることや、 1989
年の改正により、
となり、 その分の保験科辻家族負担とさ紅たこと
も
、
問え
して
らかにバランスを欠く込歪である。
基礎年金に襲業の妻が4
0
年間加入したモデル・ケースについ
ると、
オ
工
昭和 6
3
年舗絡で、その年金給付額は、月額 5
2,2
6
7丹で、 ニ
から女性の平均寿命の 8
2議まで単純に累穫すれば、約 1千万円の棋入と
み
自営業社馨の家族従業者も、問題鶴加入することによって、
糸
働
、
公共政策の対象としての家主長 203
3 公的年金制捜における女性の年金権の格義(モデルケースでの上段交)
内)
(万円)
総額
{方向〉
蓮沼者
{標準報酬の 1
3
.
8
%
)
基礎年金(強鋭加入〉
1
5
8
.
4
2
23
4
8
4
.
8(
3
)
1
0
.
8
4
0
4
3
2
6
2
.
7
1
7 1
0
6
5
.
9
1
0
.
8
4
0
4
3
2
1
8
.
8
6
2
.
7
2
2 4
1
3
.
6
(
4
)
1
71
0
6
5
.
9
6
2
.
7
1
71
0
6
5
.
9
雇用者の然業の表
(
6
1年度改正前)
{被扶養者)
配偶者加給年金
{任意加入)
{改正後)
基礎年金(強制加入)
注)
(1)利子主主いを会まないモデル計翼手緩む
(
2
) *,~駐の王子均寿命 (82歳)をペース;こ試算。
(
3
) ~女平均値のため、女俊平均を大きく上主主る。
(
4
) これは夫が女径の平均禁善命まで生存するとの券双3
集約な仮定4
こ基づく。議室議長年金を考慮すれば、この
菱重はさらに大きくなる。
得ることが出来るが、このためには、加入期間分の保検料を当然納めなければなら
ない (還を幻 c
しかも、 1
9
8
6
年の年金制麦改正以前に、無業の棄が国民年金にそ壬意加入する選択
割の妻が、失の負担で既にこれに加入してお
が用意されていた際に、雇用者栓穫の 7
り、独自の年金権を期持していた。これ辻、公的年金辻社会扶助と異なり、保険料
に見合った給付を原則とすることの当然の議結であるが、今留の改正により、
の事委の年金濯が全く自
なし
したことは、こうした自助努力に水をさす
ものであると震える。
3
.公共政葉が「イ云統的家族」を主要対象としていることの経済的な効果
労鶴供給への謀議し効果
二棟乱
こうした、所得税及ぴ社会保険における扶養家挟の取り扱いは、労(勘侯詮 i
的効果
第一に、設楼主に扶養されている家族を
204 日本経済研究 N
0
2
2,
1
9
9
2.
3
ることは、そ
主にとって、社会保険料の雇用主負担分を免除されることとなり、労働コストの大
幅な節約となる。従って、これは、短時間または短期間雇用需要への意図せざる補
助金となっている。現在、社会保険料の雇用主負担率は、 10%強で、これを考慮す
ると、女子常用雇用とパートタイム雇用者との賃金コストの格差は、見かけ上の 2
害
J
j
か
ら 3害Jjへと更に拡大する。
第二に、配偶者控除を受けるための配偶者の所得制限額が、正常な形態の労働供
給に対する、意図せざる課税となっている。改正前の制度では、配偶者の給与所得
が年間 9
0万円を超すと、配偶者控除 (
3
5万円)が消失するため、世帯所得の増加分
よりも限界的に見た税額の増加分の方が大きくなり、限界的に 100%以上の「所得税」
負担が課されたのと同じ効果が生じた。このため、パートタイム労働者が年収9
0万
円を超すと仕事を止めるインセンティブが働き、税制による撹乱効果となっていた。
改正後では、この税負担の不連続性を緩和するために、配偶者控除額を倍にし、そ
の代わりに所得制限額を引き下げることにより、世帯としての税負担額の増加分を
世帯所得増加の範囲内に抑えた。しかし、これは実質的な限界所得税率を 100%以下
にようやくとどめたのみで、依然として労働供給に対する大幅な抑制効果は残って
いる。
以上の結果、需要・供給の両面から、税制を通じた短期間雇用を促進し、短時間
労働を含む常用雇用を抑制する効果が働き、長期的には女性労働者の経済的地位向
上の妨げともなっている。なお、社会保険料について同様の効果が、学生アルバイ
トについても妥当する。これらの労働市場における擾乱効果は、配偶者控除を廃止
し、社会保険の単位を 1
8
歳以上について個人化することによって防ぐことが出来る。
施設重点主義による浪費
公共サービス提供において、公立保育所や国公立学校の例に見られるように、市
場に類似のサービスが存在するにもかかわらず、公共部門が自ら社会的なサービス
生産を行うことは、①競争原理が十分に働かないことによる効率性の低下、②コス
トを下回る価格でのサービス供給を行うことによる超過需要の発生、③予算制約上、
そうした需要に見合う十分なサービス生産が行えないことから生じる供給制限とレ
ントの発生、等の結果をもたらす。また、家庭内扶養に比べて、公共サービスの利
用が有利となり、その浪費が生じる可能性が大きい。例えば、病院での老人医療に
比べて、家庭内の老人扶養や私立老人ホームの利用は、著しく不利であり、その結
果、医療サービスの浪費に結びつき易い。さらに、公共部門が、コストを下回る価
公共政策の対象としての家族
205
惑でサービスを供給することから、韓全な揺社経業の発展を妨げる蕗も大きい。
しかし、この代わりに、公共サービス生患のための費用を、民間企業による同種
のサーピス生産への補助金として用いれ培、より弾力的なサービス供給の堤進が期
待出来る。しかし、同じ補助金を与える場合にも、それが私立学校補助金めように
サーピスの供給者に夜接向けられる場合には、争政府の介入により供給者間の競争
され、効率最が損なわれること、争消費者主権の発揮が十分に離保きれない
こと、舎その利説が本来補協を必要としていない階騒にまで及ぶことにより、所待
薄分配設策としての効果が薄い。
これに対して、関じ資金を政清から家装や個人 ζ 対する移転の形で活用するなら
ば、その結果、消費者による市場サーゼス生藤者関の選択肢が増えるとともに、そ
の資金を家議内サ…ピス生産への補爵金としての活用(例えば家接の就業時間を誠
らし老人扶婆に充てる)するとの選択も可能となろう
o
これは、都村の「家庭内で
子棋や老人扶養への無業の護憲の貢献に対する社合的評描」にもつながる。以上のよ
うに、家主主機能と代替する、老人扶養施設や保育所等については、市場的福祉の選
択機会を拡大し、家族内、公的、市場聞の選択の r
e
q
u
a
lp
l
a
y
i
n
gf
i
e
l
d
J を図る
政策が必要とされる。
おわりに
家肢の社会経済的な機能は、高齢化の進展と既婚女性の就業増加、及び摺人主義
まり等の穣j
衰のなかで、今後、ますます変化せざるを縛ない。そうしたなかで、
個人ではなく設楼を単設としている現行の説部・社会f
呆険制度は、結果的に夫が市
場で鵠き、棄が家事労動に専念する片穣ぎ世菩に対して、他の静態の世替から暗黙
の内に大幅な所神移転を行っていることになる。こうした、間一所得水準の借入関
での所得移転に辻、ヨ〉護憲が家事に専念する家族が、鰐えば社会的価{躍が高いとのよ
うな外部経済効果を持っている、争饗が所得を稼ぐ世替や、護(犬)を持たない世
警は、それだけ「壌か J であるため、借入としての所得水準が問ーで無業の棄を扶
識する世帯へ所持再分配を行う必要がある、等の論拠が必要で、ある。もしこれらの
点について社会的な合意が成立していないなら培、公共致策 l
之、家主矢の形態に出来
る限り中立的であることが望ましし、その結果、家族の規模の剥益と摺人の選好と
に碁づいて、最適な形鵡の家捺が選択されるであろう
Q
また、家族の形聾は、克輩、高幹者、及び心身障害者等の扶養とも窓接に関わっ
206
日本経湊研究
N
0
2
2,1
9
9
2
.
3
¥
:
、
ている。家蔑による党議室や高齢者の扶養機能の蛍下のなかで、 叫
吻冊
サービスの生産によっ
ることは、そのコストが著しく
公的サーピス
もっぱら公的
くなるのみならず、
これを避
ら性給寄せ隈に結び付く
けるためには、
による直議生産から、市場生産への補助へ、 さらに機関構
助から個人補助へと、
より競争メカニズムの働き易い
ましい。そ
の結果、家腕内禍祉、社会的椙祉、及び市場的福祉の選択が円鴻・に行われることが、
経済資灘の効来的
ある。
とその公平性の確保のためにも
、
淫
釈
コメントを>]糞いた香西泰 5
本文;こ対
ンタ
と入国達夫大阪大学
教授に感謝したい c
E
き
合c
k
母r (
1
事7
6
)
1
)
2
) ここでは、
として、雇用者世待に
ていない女性の数を取ってい
していて働いていないお歳以上の娘や、その視母が含まれている可能性
る。このため、
カまある。
3
) この他に、家族手当等の企業内福祉が重要で、あるが、
即
、
明
立公共政策の範囲から外れる
、
でl
ため、取りよげない。
4
)
但し民法でi立、たとえ入籍されていなくとも、
じた取り扱いを受ける。また、
と
ていれば、内縁の
に国らずして出生した子f
共(非
も一定の相続権を持つことになっている c
5
)
夫婦の所得は合算されて祭進税家が賦課されるために、独身者
ることによって配偶者が鮫いていない場合には、所得税識を半分にすることがあ来
るα これは、夫の所得の半分は、家庭における霊祭の笈獄によるものとの立場を認めることに
なる。これに対して、個人単位課税方式の日本、では、 この
となる
6
)
3
借入院の現行所得税制におけ
の家族構成員別の負担能力の差をほとん
7
)
分に相当するものが
配偶者と子供、老人、
していないとの問題点がある。
児童愛手当が家計所得の大きな比率を占めている聞では、子供の数が多ければ、それだけに
、
土
よって家族が最抵限度の生活を維持することも可能で、ある。この結果、例えばフランスで1
党議室手当の受給額に人種間で大きなアンバランスが生じていると言われる。
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魂行の脊児休業法では、勢I~主も
までには、かなり
合
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1
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まわ議することが可能となっている。しかし、 即
可除
るであろう。
村木厚子氏のコメント
ふ扶養義務者がそ
その費用の一部
しない場合には、生活保護費
した地方公
ら数~又することが出来るとの規定になっているが、
公共政策 (
J
)対象としての霊長線
207
実効よ緩めて難ししミ。仮 i
こ、税に関する欝民背番号制か漣立されれば、政府が所得税と
もって幾育費を徴収する仕組みを設けることも考えられる。
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1
9
81)を参照。
詳細は、商潔 (
1
2
)
この改正を饗の家事労働の評価が公的に認められたものと守る解釈もあるが、これは政府
よりも夫が奏の家事労働をどう務備するかの問題であり、仮に、こうした妻の家庭内におけ
る非市場的労働を夫が十分に評{節すれ:ば、表の年金権を繕保するものと考えることもできる。
9
8
6
年度公的年金改正前には、穫期名世帯の 7饗Ijが、自ら保険料を主主砲して委の独自
現に、 1
の年金権会議保していたことは、妻の家事労働に対する夫の評価の高さを示すーっの証拠と
えよう。
1
3
)
この点に対して、少なくとも勤労者世帯籾草間では、社会保E
食料笈援がほぽ所得比領で、あ
り、基礎年金の財源、を共同でファイナンスしていることから、企喜三こそ向じ所得水準であ
る片稼智世帯と共稼ぎ世擦との間では、保険料負担の不平等はないとの批判が考えられる。
しかし、ここでは、橿入としての社会保険料の不平等に注障している。例えば年収 5百万円
の片稼ぎ没擦の夫仁倒人として肉類の年収の共稼ぎ世療の夫や妻、及び単身世帯とでは、
いずれも悶じ社会保険料負担となって芯札片稼ぎ世帯の終業の奏の保険料をキミ与え負担し
ていることになる。
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