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調 査 報 告 書 - ホテルなら阪急阪神第一ホテルグループ

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調 査 報 告 書 - ホテルなら阪急阪神第一ホテルグループ
調
査 報
告 書
平成26年1月31日
阪急阪神ホテルズにおける
メニュー表示の適正化に関する第三者委員会
平成26年1月31日
株式会社阪急阪神ホテルズ
御中
阪急阪神ホテルズにおける
メニュー表示の適正化に関する第三者委員会
委員長
小 林
委 員
三 木 秀 夫
委 員
森 澤 武 雄
1
敬
目
次
第1 第三者委員会設置に関する経緯 .................................................................................. 4
1 設置に至る経緯............................................................................................................ 4
2 当委員会の構成............................................................................................................ 4
3 当委員会の設置後の状況 ............................................................................................. 4
第2 本調査の概要 ............................................................................................................... 5
1 調査の目的 ................................................................................................................... 5
2 本調査の事項(範囲)................................................................................................. 5
3 調査の期間 ................................................................................................................... 6
4 調査の限界について .................................................................................................... 6
第3 本調査の流れ及び方法等 ............................................................................................. 7
1 内部資料の収集............................................................................................................ 7
2 直営ホテルレストラン及び事業部に対する社内調査の方法の検証 ........................... 7
3 セグメント会社、テナントレストランからの報告書の検証 ...................................... 8
4 現地調査の実施............................................................................................................ 8
5 従業員アンケートの実施と集計結果 ........................................................................... 8
第4 当委員会による調査開始以前の社内調査状況について.............................................. 9
1 社内調査の経緯............................................................................................................ 9
2 公表の経緯 ................................................................................................................. 11
3 公表後の経緯 ............................................................................................................. 12
4 小括 ............................................................................................................................ 12
第5 評価基準についての検討 ........................................................................................... 13
1 はじめに .................................................................................................................... 13
2 法令上の判断基準 ...................................................................................................... 13
3 消費者目線からの判断基準 ....................................................................................... 16
第6 直営ホテル関係の調査結果 ....................................................................................... 16
1 鮮魚関連について ...................................................................................................... 16
2 フレッシュ関連について ........................................................................................... 18
3 霧島ポークについて .................................................................................................. 21
4 芝海老について.......................................................................................................... 23
5 ビーフ関係について .................................................................................................. 25
6 自然卵について.......................................................................................................... 27
7 津軽地鶏について ...................................................................................................... 29
2
8 九条ねぎについて ...................................................................................................... 30
9 フレッシュマンゴーについて.................................................................................... 33
10 手作りチョコソースについて ................................................................................ 34
11 レッドキャビアについて ....................................................................................... 35
12 手捏ねについて ...................................................................................................... 38
13 沖縄まーさん豚について ....................................................................................... 40
14 天ざるそば(信州)について ................................................................................ 42
15 有機野菜・無農薬野菜・自家菜園野菜等について ............................................... 44
16 シャンパンについて............................................................................................... 47
17 全従業員アンケート回答について ......................................................................... 48
第7 セグメント会社及びテナントレストランについて ................................................... 48
1 対象としたセグメント会社及びテナントレストランについて................................. 48
2 調査方法について ...................................................................................................... 50
3 当委員会における調査結果 ....................................................................................... 50
4 阪急阪神レストランズの3店舗における表示の誤りについて................................. 50
5 阪急阪神レストランズの発生原因について .............................................................. 53
第8 不適切なメニュー表示の発生原因の調査分析 .......................................................... 53
1 今回の事案ごとの原因要約 ....................................................................................... 53
2 発生に至る背景について ........................................................................................... 57
第9 現時点で実施されている対策について ..................................................................... 60
第10 今後のとるべき対策についての提言 ..................................................................... 60
1 組織体制の見直し ...................................................................................................... 60
2 コンプライアンス教育の徹底に関連して ................................................................. 62
3 メニュー表示ルールに関連して ................................................................................ 62
第11 所感(まとめに代えて) ....................................................................................... 63
1 表示問題への評価について ....................................................................................... 63
2 偽装について ............................................................................................................. 64
3 おわりに .................................................................................................................... 65
3
第1 第三者委員会設置に関する経緯
1 設置に至る経緯
株式会社阪急阪神ホテルズ(以下「阪急阪神ホテルズ」という。)は、平成
25年10月22日、同社が運営する8ホテル及び1事業部の23店舗47商
品(別紙第1「直営ホテルに関する調査対象品目一覧」のうち番号1~47)
で、メニュー表示と異なった食材を使用して、顧客に料理を提供していた事実
を公表し、担当部長において、報道関係者への説明を行った。その後、同月2
4日、同社代表取締役社長が報道関係者への説明を行い、その際に説明が不十
分となった6品目について、同代表取締役自らが再調査を行った上で、同月2
8日、報道関係者への再説明を行った。また同時に同代表取締役社長が辞任を
表明した。
同年11月1日付けで新たに藤本和秀代表取締役社長が就任した上で、これ
らメニュー表示に関する調査のために、同月7日、同社と利害関係を有しない
外部の弁護士による第三者委員会(以下「当委員会」という。)を設置し、当
委員会に調査を委託した(同日付け同社リリース「第三者委員会の設置に関す
るお知らせ」)。
2 当委員会の構成
当委員会の構成は、以下のとおりである。
委員長 小林 敬(弁護士 大堅敢法律事務所)
委 員 三木秀夫(弁護士 三木秀夫法律事務所)
委 員 森澤武雄(弁護士 森澤武雄法律事務所)
また、当委員会は、食品に関する専門的見地からの意見を得るため、以下の
者を補助者として依頼した。
補助者 廿日出芳雄(株式会社阪急クオリティーサポート取締役専務執行
役員食品検査センター長・消費生活アドバイザー)
3 当委員会の設置後の状況
当委員会の設置後の同月11日及び同月12日、消費者庁による立入調査が
あり、阪急阪神ホテルズは、同月22日、消費者庁に対し、千里阪急ホテル・
シャンパン及びオレンジジュースの件を加えた51品目のリストを修正提出し
た。
次いで、同月28日、消費者庁から、景品表示法に基づく措置命令に対する
「弁明の機会の付与について(通知)」が出され、阪急阪神ホテルズ側は、そ
の内容につき争わなかったので、消費者庁は、同年12月19日、「不当景品
類及び不当表示防止法第6条の規定に基づく措置命令」を出した。同措置命令
の対象とされたものは、4ホテルの7施設12商品であった。(同措置命令の
対象となったものは別紙第2のとおり。このうち、同年10月22日に阪急阪
4
神ホテルズが自ら公表したものに含まれていなかったものが1施設2商品であ
った。)
(なお、「商品」という表現について、本来、レストランにおいて提供する
料理やドリンク等の提供は、法的な観点ではいわゆる「役務」(サービス)の
提供であって、「商品」という概念とは必ずしも一致はしないが、従来から個
数表記の関係から「商品」として表記されてきたこともあり、本報告書におい
ても商品という表現を用いることとした。)
第2 本調査の概要
1 調査の目的
当委員会の目的は、外部の中立・公正な立場から、次項に記載の事項につい
て調査(以下「本調査」という。)を行うとともに、阪急阪神ホテルズの信頼
回復のため再発防止策等を策定し提言を行うことである。
その目的を達成するために当委員会は日本弁護士連合会が策定した「企業不
祥事における第三者委員会ガイドライン(平成22年7月15日、同年12月
17日改訂)」にできる限り準拠して活動を行ってきた。
2 本調査の事項(範囲)
(1)調査対象事業
本調査の対象事業は、下記のとおり、①直営ホテル等関係、②ホテル事業セ
グメント事業会社関係、③ホテル内テナント関係の3部門とした。(ただし、
後述するとおり、①②③のそれぞれについて調査方法には相違がある。)。な
お、グループとしては、これ以外にフランチャイズ及びリファーラル契約関係
にあるホテルが29ホテルあるが、これらについては当委員会の調査では対象
から除外した。
記
①直営ホテル等関係
阪急阪神ホテルズが直営するホテルのうち13ホテル及びレストラン事業部
が運営するレストラン(第一ホテル東京、第一ホテルアネックス、第一ホテル
東京シーフォート、吉祥寺第一ホテル、ホテル阪急インターナショナル、大阪
新阪急ホテル、新阪急ホテルアネックス、ホテル阪神、千里阪急ホテル、ホテ
ル阪急エキスポパーク、宝塚ホテル、六甲山ホテル、京都新阪急ホテル、レス
トラン事業部がホテル施設内外において運営するレストラン)。
(注:これ以外に直営ホテルとしては、レム日比谷、レム秋葉原、レム鹿児島、
レム新大阪があるが、いずれも宿泊に特化したホテルであることから、本件対
象から除外した。)(別紙第3参照)
5
②ホテル事業セグメント事業会社関係(セグメント会社)
阪急阪神ホテルズの100パーセント株主で、いわゆる親会社である阪急阪
神ホールディングス株式会社(以下「阪急阪神ホールディングス」という。)
におけるホテル事業セグメント事業会社のうち、レストランを直営している株
式会社天橋立ホテル(京都府宮津市)、株式会社呉阪急ホテル(広島県呉市)、
株式会社有馬ビューホテル(神戸市北区)、株式会社阪急阪神レストランズ(大
阪市北区)、第一ホテルサービス株式会社(東京都港区)が運営するレストラ
ン(以下の記載においては株式会社の表示を省略し、対象としたセグメント会
社の範囲の詳細は後述する。)
③ホテル内テナント関係(テナントレストラン)
上記①直営ホテル等におけるホテル施設内テナントレストラン11店
(2)調査対象
上記対象事業におけるレストランでのメニュー表示の適正性について対象と
する。その調査基準日は、原則として、①の直営ホテル等関係については、阪
急阪神ホテルズが社内調査を正式に開始した平成25年7月2日時点における
メニュー表示とし、②については阪急阪神ホテルズでの社内調査を受けて始め
た自主調査時点、③については消費者庁が各種団体に出した調査依頼書をもと
に、平成25年11月1日時点の状況調査とした。
3 調査の期間
平成25年11月7日から平成26年1月30日
4 調査の限界について
(1)調査資料等
本調査は、当委員会が入手し得た資料及び調査協力者に対する聴取の結果を
調査資料としている。
(2)調査対象の広範性
前記のとおり、本調査の対象としたレストラン等は、極めて多数であって、
地域も広範であり、特に、セグメント会社及びテナントレストランに関しては、
阪急阪神ホテルズとは法人格を異にしていることから、調査については間接的
なものとなり、時間的制約もあることから、後述のとおり、調査方法を変える
などしており、その調査の程度について限界が存在している。
(3)資料の入手及び聴取は、できる限りの努力をもって行ったものであるが、
本報告は、現時点でのこれら資料等による判明事実を前提として報告するもの
である。
6
第3 本調査の流れ及び方法等
1 内部資料の収集
内部資料の収集として、当委員会は次の資料の提供を得た。
① 消費者庁に提出された報告書及び添付書類
② 報道機関に配布された文書
③ 記者会見用に作成された資料
④ リーガルチェック時に作成された品目リスト(メニューとコメントつき)
⑤
平成25年7月に社内調査を行った際に提出された各レストランのメニ
ュー(宴会メニュー、季節メニューを含む、延べ料理品目数約32000
品目)、同調査の際の各レストランからの報告書、各レストランからの報
告書に書き込みをしたメモ等)
⑥ 平成25年10月10日付で自主作成した料理メニュー表示に関するガ
イドライン及び同年12月10日付追加ガイドライン
⑦ 食品の請求書・納品書などの伝票、食品などの現物、食品などの写真、食
品の包装
⑧ 食品の規格書、取引先が作成した経緯書
⑨ 取引経緯に関するホテル関係者の報告書
⑩ 出﨑前社長が行った再調査6案件に関するヒアリング記録を含む調査資
料
⑪ 自家菜園における購入資材のリスト、使用されている薬品リスト
⑫ 原価計算を検証するために必要な再計算書
⑬ 当委員会の調査に際して提出を受けたメニュー、伝票類、商品現物その他
の関連資料類
⑭ 新設された品質管理委員会に関する資料
⑮ その他関連資料
2 直営ホテルレストラン及び事業部に対する社内調査の方法の検証
直営ホテルのメニュー表示として問題のあった当初公表の47品目、これに
千里阪急ホテルで後日に判明した4品目を加えた合計51品目については、阪
急阪神ホテルズで社内調査が行われていた。そこで、当委員会は、社内調査の
方法と内容について検証を行ったが、その方法について特段の問題はないとの
結論に至った。もっとも後述するとおり、社内調査では浮上しなかったメニュ
ー表示の問題点が新たにいくつか判明した。
なお、平成25年11月7日に当委員会が活動を開始する直前、千里阪急ホ
テルにおいてスパークリングワインを「シャンパン」として提供していた事実
が新たに同ホテルからの連絡で会社が把握し、同月1日に公表していたが、な
お詳細が不明な点があったこと、また、同月6日に、同ホテルでストレートジ
7
ュースを提供しながら「フレッシュオレンジジュース」としてメニューで表示
していたものの、その後に訂正していたが、これは社内調査の際に隠ぺいして
いたのではないかとの疑惑が報道されていたことから、これら2点に関しては、
当委員会の活動開始に伴って、当委員会において調査を行うこととした。
3 セグメント会社、テナントレストランからの報告書の検証
(1)セグメント会社からは、それぞれメニューに関する自主調査経過の報告
書及びメニューの提出を受けた(呉阪急ホテルではレストラン6店舗+宴会メ
ニュー、有馬ビューホテルではレストンラン2店舗+宿泊者向け食事メニュー、
天橋立ホテルではレストラン5店舗+宿泊者向け食事メニュー+宴会メニュー、
第一ホテルサービスでは、ホテル1店舗+レストラン7店舗、阪急阪神レスト
ランズでは駅そば店等90店舗)。その中の阪急阪神レストランズからは後述
のとおりメニュー表示の誤りが5品目判明していたので、報告書・メニューを
確認した上で、その詳細報告を受けるとともに事情聴取をした。またその他の
各社は提出のメニューから各3品目を選んで再度報告書を提出させ、使われて
いる食材の裏付けになる伝票などの確認を行った。
(2)テナントレストラン11店舗については、当委員会より指示をして阪急
阪神ホテルズから依頼をしてメニューに誤った表示がないか報告を求めること
にし、同店舗からは報告書とメニューの提供を受けた。
4 現地調査の実施
(1)自家菜園のある六甲山ホテルで、補助者である廿日出氏に委嘱の上で現
地調査を実施した。自家菜園の管理状況、肥料・農薬などの使用記録の有無、
使用している肥料・農薬の確認を行った。これによって明るみになった問題は
後述する。
(2)大阪新阪急ホテルの直営レストラン、ホテル阪急インターナショナルの
直営レストラン、レストラン「シィーファー」、セグメント会社経営の「あせ
んぼ母屋・離れ」「粋房ゆふな」「御鷹茶屋」等にて、メニューの実物、メニ
ューの設置場所、調理場の配置、営業形態等を確認した。
5 従業員アンケートの実施と集計結果
当委員会調査の一環として、未判明事実の確認、コンプライアンスに対する
意識、統制環境の状況、改善策のあり方などを知るために、調査対象事業のう
ち、阪急阪神ホテルズのすべての社員・契約社員(パート、アルバイト、執行
役員、取締役は対象外)である1977名に対し、以下の概要でアンケート調
査を実施し、調査の参考資料とした。
(1)実施日 平成25年11月27日(配布日)
(2)回答締切日 同年12月8日
(3)回収方法 返信用封筒による返送、FAX、電子メールのいずれかによ
8
って第三者委員会宛に直接に返送回収。
(4)顕名性 匿名での回答も可としたが、必要に応じて当委員会から連絡を
取り、事実確認を行う場合もあることをふまえて、可能な限りは氏名、部署等、
連絡先を記載するよう依頼した。
(5)質問内容
【質問1】過去において、会社の直営レストランのメニューが誤表示である
と感じたことがありますか。
□ない。
□ある。ある場合は、その時期、レストラン名、その内容等について、どの
ようなことでも結構ですので、できる限り具体的にお教え下さい(ただし、す
でに会社に報告済みのものを除きます。感じたことはあるが、レストランやメ
ニューを詳細に思い出せないときでも、記憶の範囲内で結構です)。
【質問2】このたびのメニューの表示に関する問題に関して、どこに問題が
あったと思われるか、また今後防止するためには、どのような方法が効果
的か、ご意見をお聞かせ下さい。また、当委員会に対する提言や希望など
があれば、ぜひ自由にお教え下さい。
(6)回答数
1103通で回収率は55.8%であった(回答締切日後の到着分も含む。)。
内 訳 郵送回答
1019通
FAX回答
44通
メール回答
40通
そのうち、問1について
「ない」にチェックがあったもの
1020通
「ある」にチェックがあったもの
83通
チェックの有無、内容にかかわらず何らかの記載があったもの 89通
であり、問2に何らかの記載があったものは1017通であった。
第4 当委員会による調査開始以前の社内調査状況について
1 社内調査の経緯
当委員会としては、調査を開始するにあたり、関係資料や関係者等への聴取
を実施して、いかなる事実経緯のもとでメニュー表示と異なった食材使用の事
実を公表するに至ったのかについて、調査を行った。それによると、経緯等は、
以下のとおりと認められる。
(1)社内調査実施の端緒
平成25年5月17日に、東京ディズニーランド内のレストランで、「ズワ
イガニとブロッコリーのピザ」で「ズワイガニ」ではなく「紅ズワイガニ」を
9
使用していたことを運営会社がホームページで発表し、同月30日には、同運
営会社の子会社であるホテル会社が運営する東京ディズニーリゾート内の3ホ
テルにおいて、車エビとしてブラックタイガーを使用、芝海老としてバナメイ
エビを使用、和牛として国産牛を使用、地鶏として国産鶏肉を使用していたな
どのメニュー表示と異なる食材使用の事実が公表された(以上の経緯は、運営
会社のホームページでの説明部分が既に削除されていたため、各種報道記事等
をもとに記載した。)。
その後の同年6月17日に、株式会社プリンスホテルの運営する4ホテルに
おいて、同ホテル内飲食4店舗やルームサービスで表示とは異なる食材で提供
していたこと(島豚ソーセージが実際はバラエティソーセージ、国産牛ロース
ステーキが実際はオーストラリア産、フランス産フォアグラが実際はハンガリ
ー産、ホタテが実際はイタヤ貝、国産牛肉のローストビーフが実際はチリ産、
地鶏が実際は国産鶏肉(銘柄鶏)、芝海老が実際はバナメイエビ、ずわい蟹が
実際はアブラ蟹)が公表され、さらに、同月24日、同社の運営するホテル・
ゴルフ場に対する社内調査において、新たに12施設でも同様のメニュー表示
と異なる食材を使用していた事実が判明したと発表された。(以上の事実は、
同社がホームページ上で公表した文書をもとに記載した。)
同年6月19日、阪急阪神ホテルズの藤本取締役常務執行役員(事業統括本
部長を委嘱)(当時・現代表取締役社長)が日本ホテル協会・研修専門委員会
に出席した際、その席上でプリンスホテルの件が話題となった。同月21日、
同取締役の指示により、総務人事部(食品衛生委員会事務局)から、誤ったメ
ニュー表示への注意喚起メールを社内に送信した。そのメールの内容は、上記
2ホテルでの事例を紹介して、今一度メニュー表記と実際の使用食材に相違が
ないか照合の上、正しい表示がされていることを確認するよう指示をしたもの
であった。
これだけでは徹底した確認とはならないと考えた同取締役は、同月24日、
森代表取締役副社長執行役員(営業統括、首都圏事業本部長を委嘱)及び森本
取締役常務執行役員(近畿圏事業本部長を委嘱)に対して、より突っ込んだ調
査をするよう指示を出した。
(2)第一次調査(7月2日~8月初旬)
同年7月2日に開催された近畿圏調理長会議において、岡崎執行役員(近畿
圏事業本部付総料理長を委嘱)から、会議に出席していた近畿圏の調理長に対
し、各事業所からすべてのメニューを早急に提出するように指示を行うととも
に、同日、同執行役員から松崎首都圏事業本部付総料理長にも電話でメニュー
収集をするよう指示を出した。
その後、岡崎執行役員と大石近畿圏事業本部付専任部長によって、順次提出
10
されたメニューに基づき、表示と食材の不一致が生じそうなキーワードを抽出
した。抽出基準としては、産地や品種を特定したもの、自家製、手作りなどの
特別感や、特選、極上などの高級感を与える表現を中心にキーワードを設けて
行った。
そのようにして抽出されたメニュー表示について、各ホテルの調理長に対し、
更に表示と使用食材の照合調査を行うよう指示がなされた。これを受けた各ホ
テルでは、一斉にその調査を行った。これにはシェフ以上の役職者が調査に関
与したが、調査対象者としては、調理101名(調理長11名、統括シェフ、
専任シェフ、シェフ90名)であった。また、必要に応じて調理担当者からサ
ービス担当者、購買担当者も調査に加わった。同年7月15日までには、各ホ
テルからの回答がほぼ出そろった。
出されてきた照合調査報告を受けて、総務人事部課長(購買・食品衛生)に
おいて、対象メニューの食材確認と産地確認ができたものを、順次、調査対象
メニューから外す一方、疑いのあるメニュー表示とこの時点で食材・産地確認
が取れていないメニューについては、表示を正しく変更するように各ホテル・
レストランに指示を行った。その段階での調査結果について、同年8月上旬、
途中経過として役員へ報告がなされた。
(3)第二次調査(8月中旬~10月初旬)
第一次調査での作業を経て疑問として残存した品目に対する個別ヒアリング
と再度の詳細調査を実施した。
具体的には、岡崎執行役員、大石近畿圏事業本部付専任部長及び総務人事部
課長(購買・食品衛生)が、調理長に対して個別メニューについての確認を実
施したほか、グレード表現(特選・極上など)の使用区別の確認、利用してい
る割合(「活け」「鮮魚」「自家菜園」など)の確認、メニュー表示名称、現
場使用名称、納品書・発注書名称の照合、商品規格書等による利用食材の裏付
けを行った。
2 公表の経緯
(1)同年10月7日、二次にわたる社内調査で判明してきた内容を消費者庁
に電話で報告したが、この時点では、具体的な品目までは告げず、報告手段な
どの相談としての連絡であった。同月10日、精査をしてもなお残った品目に
ついて法律事務所にリーガルチェックの依頼を行い、同月15日、同事務所弁
護士より精査結果の連絡を受け、公表対象とする47品目が確定した。これに
ついて同月18日に消費者庁へ電話及びメールで報告を行った。
(2)同月22日、ニュースリリース「メニュー表示と異なった食材を使用し
ていたことに関するお詫びとお知らせ」として47品目について公表を行い、
総務人事部長と営業企画部長が記者会見を実施して説明を行った。さらに、同
11
月24日、ニュースリリース「メニュー表示と異なった食材を使用していたこ
とに関する再発防止策と社内処分について」を出すとともに、出﨑代表取締役
社長、森代表取締役副社長執行役員及び森本取締役常務執行役員の3名が記者
会見を行った。その際に質問が多くあった6品目について、同社長自らが社内
調査をすることとし、同月28日、同社長が再度記者会見を行うとともに、「メ
ニュー表示と異なった食材を使用していた件について(調査の流れ及び個別の
メニューに関する詳細な調査内容に関するご説明資料)」を配布して同社長自
ら行った調査結果を報告した。同時に同社長が辞任を表明し、同月29日、ニ
ュースリリース「会長及び社長人事について」を発表した。
3 公表後の経緯
同年11月1日、ニュースリリース「千里阪急ホテルご婚礼ドリンクプラン
におけるメニュー表記に関するご報告」を発表した。その内容は、千里阪急ホ
テルにおいて、婚礼プランの中の一品として提供していたスパークリングワイ
ンに関してメニューに誤った表示をしていたことが10月30日に判明したこ
と、提供期間及び数量、原因等の追加調査を実施していることであった。(事
後発表となった原因等は後述する。)
同日、野崎光男取締役会長・藤本和秀代表取締役社長の就任会見を実施した
(ニュースリリース「役員人事及び機構改正について」)。
同月5日、消費者庁へ報告書を提出した(初回公表済み47品目+千里阪急
ホテルのシャンパン)。
同月6日、千里阪急ホテルにおいて、フレッシュオレンジジュースとのメニ
ューが実際には既製品のジュースが提供されていたにもかかわらず会社に報告
しないままメニュー表示を変更していたとして報道される。(この経緯につい
ての調査結果は後述する。)
同月7日、当委員会が設置され、ニュースリリース「役員人事について」(社
外監査役の就任)及び「メニュー表示の適正化に関する第三者委員会の設置に
ついて」を公表した。
4 小括
以上の事実経緯については、各種資料でも裏付けられ、他ホテルでのメニュ
ー表示問題に接した阪急阪神ホテルズが、自社においても自主的に社内調査を
行うことを決定するとともに、同年7月2日から正式にメニュー表示に関する
二次にわたる社内調査を開始し、その結果について同年10月18日に消費者
庁への報告を行った上で、同月22日に、運営する8ホテル及び1事業部の2
3店舗、47商品で、メニュー表示と異なった食材を使用して料理を提供して
いた事実を公表するに至ったことが認められる。
なお、この経緯に関し、内部告発が契機で公表に追い込まれたのではないか
12
との憶測もインターネット等で流布されていたことから、当委員会では、その
点も関心をもって調査をしたが、それを裏付ける事実は見受けることはなかっ
た。むしろ、以上の経緯のとおり、阪急阪神ホテルズの自主的な調査と発表で
あったというのが事実と認められる。
その後に、阪急阪神ホテルズは、顧客への対応として、該当する料理等を利
用した顧客に利用状況を聴取した上で、商品ごとに定めた金額の返金を行って
いる。また、阪急阪神ホテルズでは、その時点で、取締役6名に月額報酬の1
0パーセント減額(6か月間)、監査役3名に月額報酬の10パーセント減額
(6か月間)の処分を行うとともに、同年11月1日付けで、阪急阪神ホテル
ズ代表取締役社長が辞任した(同時に阪急阪神ホールディングスの取締役も辞
任。)。また、同日付けで就任した藤本代表取締役社長より、今後の再発防止
に向けた取組として、経営体制の変更、第三者委員会の設置・調査等、品質管
理委員会及び品質管理部門の設置等を順次実施して、信頼回復に全力を尽くす
旨を公表し、それに沿った措置が進められている。
第5 評価基準についての検討
1 はじめに
当委員会は、調査に当たっては、その事実評価の基準として、下記の現行法
令とともに、消費者目線というものを判断基準とすることとした。
2 法令上の判断基準
(1) 景品表示法
現在、メニュー・料理等の表示に関する重要な判断基準である法令上の規制
として、まずは「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)がある。同
法第4条第1項第1号では、「優良誤認表示」の禁止規定があり、また、同条
同項第3号にて商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認さ
れるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主
的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定した
表示の禁止規定がある。
このうち、第1号の「優良誤認表示」とは、一般消費者に対して実際のもの
よりも著しく優良であると示すこと、又は事実に相違して当該事業者と同種若
しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著
しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自
主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示をさし、上記
条項によって不当表示(優良誤認表示)として禁止されている。
この点について、不当な表示を行った者の故意・過失の存在は要さない。こ
のため、例えば仕入先から提示された原産地の説明等に虚偽があって、それを
13
知らずに実際と異なる表示をした場合でも、同法の不当表示に問われ得ること
になる。
この不当表示規制は、規制の上記趣旨目的からして、「著しく優良であると
示す」表示に当たるか否かは、業界の慣行や表示を行う事業者の認識により判
断するのではなく、表示の受け手である一般消費者からみて「著しく優良」と
誤認されるか否かという観点から判断することになる。「優良」であるかどう
かについては、商品・役務の品質等が科学的、客観的に見て、表示されたもの
よりも実際のものが上回っているかどうかという問題ではなく、あくまでも一
般消費者からして、実際のものと異なる当該表示によって、実際のものよりも
「優良」であると認識され、誘引されるかどうかによって判断される。
なお、広告・宣伝には、通常ある程度の誇張が存在するところではあるが、
一般消費者の適切な選択を妨げるとは言えない一定程度の許容される範囲があ
るが、その限度を超えるほどに実際のもの等よりも優良であると表示すれば(つ
まり「著しく優良であると示す」ならば)、消費者をして、その商品・役務の
選択に不当に影響を与えることとなる。このことから、同法で言う「著しく」
とは、当該表示の誇張の程度が、社会一般に許容される程度を超えて、一般消
費者による商品・役務の選択に影響を与える場合をいうと解される。この「著
しく優良であると示す」表示か否かの判断に当たっては、表示内容全体から一
般消費者が受ける印象・認識を基準として判断することになる。
同法については、政省令のほかに各種告示・指定告示、通達等があるほか、
過去の公正取引委員会・消費者庁による排除命令・措置命令が公表されており、
またQ&Aとして公表されている(なお、消費者庁は平成25年12月19日
に、
「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について(案)」
を公表し、意見募集をしたが、そこで示されたものは案として新しい考え方も
示されているところ、各方面から意見が出ていて確定したものではないが、参
考とした。)。
(2) 公正競争規約
これは景品表示法第11条に基づく協定又は規約であり、消費者庁長官及び
公正取引委員会の認定を受けて、事業者又は事業者団体が表示又は景品類に関
する事項について自主的に設定した業界ルールを指す。公正競争規約は、平成
25年12月1日現在、104規約が設定されており、このうち、表示関係は
67規約(食品関係37規約、酒類関係7規約、その他23規約)である。
(3)JAS法
「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(JAS法)では、
飲食料品等が一定の品質や特別な生産方法で作られていることを保証する「J
AS規格制度(任意の制度)」と、名称、原材料、原産地など品質に関する一
14
定の表示を義務付ける「品質表示基準制度」を定めている。平成21年5月に
は食品の産地偽装に対する直罰規定が創設された。同法の対象は主に容器・包
装の状態で販売される食材、加工食品であり、レストランに納入される食品や
レストランメニューは同法の枠外にあるが、今回の問題での判断において重要
な判断材料となる。
(4) 不正競争防止法
同法は、事業者間の公正な競争を促進することで国民経済の健全な発展を実
現することを目的としており、同法第2条第1項第13号において、商品若し
くは役務(サービス)若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通
信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはそ
の役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をする行
為を禁止している。レストランでの料理の提供は、基本的には役務(サービス)
の提供となり、同法の規制対象となる(原産地表示に関しては条文上は役務に
明記がないが、質・内容に該当するものと考えられる。)。景品表示法とは規
制対象や規制の仕方に違いがあるが、ここでの解釈は、今回の問題での判断に
おいて当然に念頭に置くべきものといえる。
(5)食品衛生法、健康増進法
食品衛生法は、食品の安全性確保の見地から、内閣総理大臣(消費者庁長官
に権限委任)が、消費者委員会の意見を聞いて、販売の用に供する食品等の表
示基準を定めることとされ、これに基づいて内閣府令等において、名称や添加
物、アレルギー物質、遺伝子組み換え食品等の表示基準を定めている。
また、健康増進法では、国民の栄養の改善その他の国民の健康の増進の見地
から、内閣総理大臣(消費者庁長官に権限委任)は、販売に供する食品につき、
栄養表示に関する基準を定めている。これらもいずれも食品表示に関するもの
であるから、本件事例での判断において参考となる(なお、これら2法及びJ
AS法における食品表示部分は、平成25年6月21日に成立した食品表示法
に統合されているが、現時点では未施行である。)。
(6)その他
上記法令等は主なものを列挙したがこれ以外の関連諸法令もあり、それ以外
にも、これら法令を具体的事例に即するような形で示す、「外食における原産
地表示に関するガイドライン」(農林水産省平成17年7月28日付)や「和
牛等特色ある食肉の表示に関するガイドライン」(農林水産省平成19年3月
20日)、「魚介類の名称のガイドライン」(水産庁平成19年7月)などの
ような各種ガイドラインが、各関連省庁や各種団体等で作成され公表されてい
る。
(7)なお、上記法令等を事実評価の判断基準とはするものの、一般論として
15
は以下の点も考慮をすべきものと考える。
食材をメニューに表示するに際してはどのような呼称を用いるのが適切か、
どこまでが許される範囲か、また、提供する場所がホテル内なのか、外部施設
での提供なのか、その店のグレード、同じホテル内のレストランでも平均価格
帯がどの程度の場所か、宴会やバイキングなどの提供形式など、本来は総合的
かつ相対的に判断されるべきものと考えられる。また、魚介類の名称などの生
物学的な呼称を、外食のメニューにおいて厳密に特定して実行することは、必
ずしも容易ではない。食材の名称は、地域的な呼び名の違い、社会の慣習、流
通や取引上の呼称、業界での一般的呼称などがある場合があり、それらが一般
的呼称となって定着する場合もあって、必ずしも生物学的呼称のみを基準とす
ることがよいかは、慎重に検討する必要はあると考える。
3 消費者目線からの判断基準
法令上の判断基準は、上記のとおりであるが、当委員会においては、さらに
広く、明らかに法令違反とまでは言えないが、消費者の立場から見て、提供を
受ける料理の選択において不当な影響を与え得る可能性のあるものは広く含め
る観点から不適切なメニューとすることにした。
第6 直営ホテル関係の調査結果
当委員会としては、前述したとおり、阪急阪神ホテルズによる社内調査の方
法とその内容を再検証した結果、公表済みのものを中心とした51品目(別紙
第1「直営ホテルに関する調査対象品目一覧」)について、その経緯と原因、
評価を行った。以下、その説明を行う。
1 鮮魚関連について
№1(第一ホテル東京シーフォートのレストラン「グランカフェ」における
メニュー「鮮魚のムニエル」)、№2(吉祥寺第一ホテル内のレストラン「一
寿し」におけるメニュー「旬鮮魚のお造り三種盛合わせ」
「鮮魚三種盛合せ」)、
№7(大阪新阪急ホテルのレストラン「モンスレー」におけるメニュー「魚市
場直送の鮮魚をX.O醤炒めで」)、№20、21(宝塚ホテルが運営する宝
塚大劇場内のレストラン「フェリエ」におけるメニュー「鮮魚とオマール海老
のミルフィーユアンチョビ入りヴァンブランソース」、「サイコロステーキと
鮮魚のフリッター完熟トマトのフォンデュソース」)、№24、28~30、
32、33(六甲山ホテルの宴会場でのメニュー「鮮魚と六甲山ホテル自家菜
園野菜の天婦羅」、「鮮魚のエスカベシュレモン風味」、「鮮魚のテリーヌ」、
「鮮魚のポワレと温野菜サルサソース」、「鮮魚のエスカベシュバルサミコ風
味」、「鮮魚のポワレとブールブラン香草風味」、№39(六甲山ホテルのレ
ストラン「レトワール」におけるメニュー「鮮魚のポワレサフラン風味のスー
16
プ仕立て」、№45(京都新阪急ホテルのレストラン「ロイン」におけるメニ
ュー「鮮魚の鉄板焼き」)
(1)これらは、いずれも「鮮魚」としてのメニュー表示が問題となったもの
であるが、調査した結果、その理由について分類すると、
ア そもそも冷凍した魚を仕入れた上で、メニューに「鮮魚」と表示したケ
ース(№2、20、21、24、28~30、32、33)
イ 冷凍魚でない「なまの魚」を仕入れたが、仕入れた日のうちに消費する
ことができなかったなどの理由で、ホテル厨房内で「なまの魚」を冷凍
保存し、後日消費者に調理・提供する際にも「鮮魚」としてメニュー表
示したケース(№ 1、7、39、45)
であった。
「鮮魚」という商品の定義は、JAS法を含めて法令において具体的に示さ
れていない。「鮮魚」は広辞苑によると、「新しい魚」「いきのよい魚」とさ
れているが、「新しい」「いきのよい」の意味も必ずしも一義的ではない。「鮮
魚店」は一般的には海産物を扱っている商店を指し(一般的には乾物店は指さ
ない)、鮮魚店の多くは冷凍魚をも扱っている。中国料理における「海鮮」と
のメニュー表示は冷凍魚を除く意味では使われていない。これらの例によれば、
日本語において「鮮魚」は必ずしも「冷凍魚」を除外する一義的意味があると
はいえない。
厳密に狭い意味で考えた場合は、鮮魚を冷凍した時点で鮮魚の範疇から外れ
るとも解釈できるところであるが、冷凍することで雑菌の繁殖や自己融解とい
った劣化を引き起こすことを停止させることともなる。わが国では冷凍技術が
高度に進化していることともあいまって、陸揚げされた魚は、その冷凍技術を
用いることで、鮮度を維持したままで輸送や保存がしやすくなるために広く食
品流通現場で用いられている。また今日では解凍方法にも工夫が凝らされ、急
速に冷凍されたものを適切に解凍することで、狭い意味での鮮魚にさほど劣る
ことも無いほどに新鮮さを保つことが可能となっている。このことから考える
と、そういった冷凍魚も広い意味での鮮魚の範疇に入れることも否定すべきで
はない。
他方で、メニューにおいて「鮮魚」に更に修飾を加えると(例えば「○○港
直送」、「今朝水揚げ」など)、通常の方法で鮮度を維持する以上に新鮮な魚
が提供されていると消費者が誤認する可能性が高い。そのことから、食材とし
て冷凍魚を除外している表示と判断できる場合も発生し得る。
上記の各メニューにおいては、鮮魚との表示が用いられてはいるが、更に上
記例のような修飾が加えられたメニュー表示ではないから、直ちに誤まった表
示とまでは言えないと考える。
17
ただし、上記イの場合において、「鮮魚」とメニュー表記しているときであ
っても冷凍魚を供してもよいとの解釈を取ると、「鮮魚」と表示されているメ
ニューを注文した消費者の中で「なまの魚」が供される消費者と「冷凍魚」が
供される消費者が、消費者の承諾なしに(店側の裁量で)分かれることになる。
そして一般論としては、「なまの魚」は「冷凍魚」よりも価値が高いと考えら
れているから、冷凍魚を提供された消費者は知らないうちに、他の消費者より
も不利な取引を余儀なくされたことになる。また、魚の冷凍はホテル内の冷凍
庫を用いており、冷凍魚専門業者が有している冷凍庫と同様の冷凍ができるの
かが不明である。したがって、「鮮魚」というメニュー表示は誤った表示とま
ではいえないものの、各種の問題をはらんでいるから、メニュー表示としては
安易に使用することは避けるのが望ましいと考える。
2 フレッシュ関連について
№3(ホテル阪急インターナショナルのルームサービスにおけるメニュー「フ
レッシュオレンジジュース」「フレッシュグレープフルーツジュース」)、№
18(宝塚ホテルにおけるバー「くすのき」及びレディースサロン「デューク」
におけるメニュー「フレッシュオレンジジュース」)、№43(六甲山ホテル
におけるバー&ラウンジ「トップオブロッコー」におけるメニュー「Fresh
Orange Juice」「Fresh Grapefruit Juice」)、№50、№51(千里阪急ホテ
ルにおけるレストラン「ボナージュ」及び「さくららうんじ」におけるメニュ
ー「フレッシュオレンジジュース」)
(1)これらは、いずれも「フレッシュ」または「Fresh」という用語を用いて
表示しながら、実際は既製品のジュースを提供していたというものである。(ち
なみに、千里阪急ホテルにおけるものを除いては、平成25年10月22日に、
阪急阪神ホテルズが47商品についてメニュー表示と異なった食材使用を公表
した際の公表事実であったが、千里阪急ホテルにおける№50、№51につい
ては、その際の公表には含まれていなかったが、その経緯等は後述する。)
(2)この事例のうち、ホテル阪急インターナショナルのルームサービスにお
けるメニュー「フレッシュオレンジジュース」「フレッシュグレープフルーツ
ジュース」及び宝塚ホテルにおけるバー「くすのき」及びレディースサロン「デ
ューク」におけるメニュー「フレッシュオレンジジュース」については、いず
れも実際には果実(オレンジ、グレープフルーツ)を絞っておらず、M 社から
仕入れた既製品「ハーダースヴィンテージ(H/V)フロリダフローズンジュ
ース」(冷凍の果汁含有率100%のストレートジュース)を使用していたこ
とが判明している(なお、判明した時点で、いずれも「フレッシュ」の文字は
削除されている。)。
そのような誤った表示をした理由であるが、まず、ホテル阪急インターナシ
18
ョナルについては、従前から生オレンジを絞って提供していたものの、平成1
8年ころにアメリカ合衆国での不作のためオレンジの納入が不確実となったた
め、既製品のストレートジュースに変更したが(この仕入れの変更時期は必ず
しも明確ではないようであるが、ホテル側は、平成19年4月ころからと公表
している。)、その際にメニューのフレッシュという表示を削除するなどの変
更を要することに思いが至らず、そのまま放置されたということであった。
また、宝塚ホテルについては、担当者が異動して業務の見直しがあり、平成
22年10月ころ、既製品のストレートジュースの納入に変更されているとこ
ろ、やはり、メニューの表示変更の必要性への認識がないまま放置されたとい
うものである。
いずれのホテルについても、フレッシュという表示を厳格に考えるという意
識が足りなかったということになろう。
(3)六甲山ホテルについては、夜のドリンクメニューにおいて「Fresh Orange
Juice」、「Fresh Grapefruit Juice」と表示していたものの、やはり M 社の既
製品を使用していた(表示期間は平成25年4月1日から同年7月15日まで)。
このメニュー表記の経緯であるが、この夜のドリンクメニューは、六甲山ホ
テルのマネージャーが、異動前にいたホテル(京都新阪急ホテル)のバーで使
用していたメニューのデータを用いて作成したものであり、同メニューでは日
本語表記と英語表記が左右並べて表示されていたので、そのメニュー形式をそ
のまま採用した。その際に、同マネージャーは、フレッシュオレンジジュース、
フレッシュグレープフルーツジュースとあった部分について、京都新阪急ホテ
ルでは実際に絞ったジュース(フレッシュジュース)を提供していたが、六甲
山ホテルでは M 社の既製品の提供となることから、正確を期すため、日本語部
分の「フレッシュ」の言葉を削除して「オレンジジュース」「グレープフルー
ツジュース」との表示に変更したものの、右側の英語表示部分の「Fresh」の表
示部分を見落としてしまい、これを削除することなく夜のドリンクメニューを
作成した。この結果、日本語表示では正しいが、英語表示部分だけが「Fresh」
と誤った表示をしていたということになった。
その経緯に照らすと、この六甲山ホテルのメニュー表示は、単純なミスに基
づく誤りという側面がある(なお、判明した時点で、「Fresh」の文字は削除さ
れている。)
(4)千里阪急ホテルについては、レストラン「ボナージュ」及び「さくらら
うんじ」において、飲料サービス部門がメニューを作成した際に「フレッシュ
オレンジジュース」と表示していたものであるが、これは、平成19年8月こ
ろ業務見直しにより、既製品のストレートジュースの納入に変更されていると
ころ、やはり、メニューの表示変更の必要性への認識がないまま放置されたと
19
いうものである。
ところで、同ホテルのこの表示の点については、隠ぺいがあったかのような
報道がなされたので、当委員会としても、その経緯を詳細に調査した。
その結果は、おおむね以下のとおりである。
平成25年6月21日に初めて発信されたメニュー表示への注意喚起メール
を受けた千里阪急ホテルでは、ドリンク部門の担当ではないものの、調理長が、
「ボナージュ」「さくららうんじ」のメニュー表記に「フレッシュオレンジジ
ュース」があり、同ジュースでは実際には果実を絞らず M 社の既製品を使用し
ていたことを確認したことから、その時点で自主的にメニュー表記を修正する
ように指示をした。
その後、第一次社内調査のために、同年7月2日の近畿圏調理長会議におい
て、すべてのメニュー提出の指示があったが、その段階では既にメニュー表記
を「オレンジジュース」に修正済みであったため、千里阪急ホテル側では、そ
のような場合はどうするかをその場で確認したところ、同日時点でのメニュー
表示の調査という観点から、「今日時点でのメニューの提出で構わない」との
返答がなされたため、修正後のメニューが提出された。
以上のような経緯があったことが隠ぺいがあったかのような報道に至った原
因と認められるが、当委員会が、このときの状況を聴取する限りでは、第一次
社内調査を始めた7月2日時点では、一斉に社内のメニューを提出させて問題
メニューを抽出する作業の最初の段階であったことから、対象メニューは同日
時点のものに固定化したために、そういった指示になったにすぎないと認めら
れる。
本来は、このケースについても会社の側で問題メニューとして組み入れるべ
きであったとも考えられるが、いずれにしろ、千里阪急ホテルの関係者は、メ
ニュー表示の修正を既に行っていたことを前提に提出メニューの確認を行って
いたものであり、会社に報告せず隠ぺいしたとは言えない。
(5)この「フレッシュ」の表示への評価であるが、当委員会でも議論があっ
たが、結論として、「フレッシュ」との表示から抱く認識には、人によって異
なる面があるものの、一般の消費者である顧客の側からすると、フレッシュ、
特に一流というべき信頼性の高いホテルでのフレッシュという表示においては、
ホテル内において果実を搾って提供されるものとのイメージがあり(むしろ、
そのイメージの方が強いかと思われる。)、既製品の冷凍ジュースを解凍して
使用しているのは、適切とは言い難いと思われる(フレッシュの文言に加えて、
「しぼりたて」「生絞り」などの文言を付加しながら、既製品を使用して提供
したような場合は景品表示法上の優良誤認に該当すると考えるが、当委員会と
しては、こういった付加文言がない場合であっても、違法とまでは言えないと
20
しても、不適切な表示として使用を差し控えることが望ましいと考える。)。
また、「果実飲料の表示に関する公正競争規約」では、客観的根拠に基づか
ないフレッシュ等の表示は不当表示に該当する(同規約に関する公正競争規約
施行規則第 4 条第2号ア)とされていることや、JAS法に基づく農水省告示・
果実飲料品質表示基準第6条では、メーカーや卸業者に対しては、加工したジ
ュースには「フレッシュ」の表現を使用できないと定めていることも踏まえる
と、安易にフレッシュと表示することには、消費者たる顧客の目線からすると
問題があると考えられる。
(6)原価について
果実生しぼりのジュース(フレッシュジュース)とM社製ストレートジュー
スの場合との原価の差について調査を行った。
まず、オレンジジュースに関しては、グラス一杯分(=180㎖)に用いる
オレンジは3個必要となるところ、オレンジ1個あたり仕入れ単価について、
春から秋にかけて入るバレンシアオレンジが1個43円、秋から春にかけて入
るネーブルオレンジが1個29円として考えると、1杯あたり原価は前者が1
29円(=@43円×3)、後者が87円(=@29円×3)となる。これに
対して、上記M社の既製品オレンジストレートジュースは、180㎖あたり8
6円であることから、1杯あたりの原価差は、バレンシアオレンジの場合は4
3円だが、ネーブルオレンジの場合は1円と解される(なお、いずれも産地
によって入荷時期が異なるので使用時期は一概には言えないものと思われる。)。
次にグレープフルーツジュースであるが、グラス1杯(180㎖)に用いる
グレープフルーツは2個必要となるところ、グレープフルーツの1個あたり仕
入れ単価を58円とすると、1杯あたりの原価は116円となる。これに対し
て上記M社の既製品のジュースは180㎖あたり92円であることから、1杯
あたりの原価差は34円となる。
以上のように、原価の差異が必ずしも大きいとは言い切れない上、六甲山ホ
テルのように、製造方法の変更に伴い、フレッシュの言葉を削減しようとして
いる事実もあることからすると、原価などが表示に影響したとは必ずしも断定
はしにくい。
3 霧島ポークについて
№4(ホテル阪急インターナショナルの中国料理店「春蘭門」におけるメニ
ュー「霧島ポークの上海式醤油煮込み(上海名物霧島ポークの醤油煮込み)」)
(1)これは、春蘭門のコースメニューあるいは個室プランメニュー合計4種
類のメニューにおいて、「上海名物霧島ポークの醤油煮込み」、「霧島ポーク
の上海式醤油煮込み」と記載されていたものの、実際には、霧島産の豚肉では
なく、神戸産の豚肉が使用されていたというものである。これはメニューで示
21
した産地が実際と異なっていたものであるから、誤った表示であったこととな
る。
(2)その経緯について当委員会の調査によると以下の事実が認められる。
春蘭門のシェフは、平成24年6月に上海に料理研修に行った経験を生かす
ため、上海で見分した皮付きの豚バラ肉を使った料理を提供することとしたが、
その際、グランド白楽天でも使用していたと聞いていた霧島産と呼ばれる豚肉
があったはずだという思いから、そのときの納入業者であるD社に確認をした
ところ、それが存在するということで、値段も通常の豚肉とさほど違いがなか
ったので、以後、この霧島ポークを仕入れて料理に使用し、メニューにもその
旨を表示していた。
実際にも、春蘭門の発注伝票には、「霧島豚ばら皮付き」と表示され、納品
伝票にも、同様に、「霧島豚ばら皮付き」と表示されていることに加えて、春
蘭門では入手していないものの、大阪新阪急ホテル経営の中国料理店「グラン
ド白楽天」がD社から入手した商品規格書には、D社の名義で「品名霧島豚バ
ラ、原産地九州霧島」などと記載されていた。また、実際に仕入れた豚肉にも
品名として豚バラ皮付との記載シールが貼ってあるだけで、商品自体に産地を
区別できる表示はなかったので、春蘭門のシェフらは、霧島産であることに疑
いを抱くことは全くなかった。したがって、平成25年8月に第二次社内調査
が開始された際にも、伝票などの記載を根拠に、この霧島産のメニュー表示に
は問題ないと回答をしていた。
ところが、それ以降に、春蘭門でメニュー改訂することとなり、アレルギー
などの関係で、D社を含む納入業者全部に納入商品の規格書の提出を求めたと
ころ、D社のみが、再三催促したにもかかわらず、提出を遅らせたので、同年
9月になって厳しく督促すると、同業者が、霧島産の肉ではなく神戸産の規格
書しか出せないと言い出したので、本件虚偽が判明した。
その後の社内調査で、D社は、長年にわたり霧島産と偽って神戸産の豚肉を
納入していたことを認めており、阪急阪神ホテルズでは、同年9月30日付け
でD社との取引を停止している。
なお、当委員会でも、D社の社長から事情聴取することとしたが、同社長は
忙しいからとして直接の事情聴取を拒否したため、D社の要望に従い、文書で
質問を送ったものの、現在まで返事が得られておらず、なぜ、霧島産の豚肉と
偽って神戸産の豚肉を納入したのか、霧島産の豚肉がないのであれば、それを
ないと正直にホテル側に伝えなかったのはなぜか、との点の解明が必ずしも十
分にできなかった。阪急阪神ホテルズの調査担当者によると、D社の社長が、
霧島産でないことを告げると阪急阪神ホテルズとの取引がなくなることを恐れ
たということが理由のようである。
22
(3)以上の経緯から判断するに、本件表示の誤りの原因は、もっぱら納入業
者の不誠実な取引姿勢と態度に起因することは明白である。
もちろん、霧島産というだけで、必ずしも明確でない注文をしている調理師
に更なる食材知識や確認を求める意見もあり得るではあろうが、それが望まし
いとしても、調理師としてもすべての産地や食材に精通していないことも少な
くないのであり、仕入・納入業者を信頼することもやむを得ないであろうし、
それを怠慢などと非難するのは行き過ぎとも考えられる。
しかしながら、阪急阪神ホテルズというグレードのホテルにおいて、霧島と
いう産地を意味する表示をメニューに取り入れて顧客に提供する以上は、食材
の産地が本当に霧島産として表示しても問題がないかどうかについて、何ら特
段の確認をすることなく提供してきたことは、ホテル側のチェック体制が不十
分であったと指摘せざるを得ない。産地などが指定された食材の場合は、少な
くとも最初の納入時期に産地確認をすることはもちろん、その後においても定
期的に納品された食材が注文食材と合致しているかどうか、確認できるような
仕組みづくりがなされるべきである。
阪急阪神ホテルズとしては、納入業者との関係では被害者であり、その点で
社会から一方的に過度な非難を受けることについては同情を禁じえないが、顧
客との関係では、今後においては同種事案の再発がないように努めるべき責務
があると考える。
ちなみに、本件では、原価率などの問題は発生する余地はない。
4 芝海老について
№5(大阪新阪急ホテルにおける宴会場メニュー「芝海老とイカの炒め物」)
(1)これは、大阪新阪急ホテルにおける宴会場メニューの中で「芝海老とイ
カの炒め物」と表示していたところ、実際には「芝海老」ではなくて「バナメ
イエビ」を提供していたというものである。
(2)JAS法においては、生鮮食品及び加工食品が小売店等で商品として販
売される場合には「名称」等の必要表示項目を記載することが義務付けられて
いて、魚介類の名称については「魚介類の名称のガイドライン」により、原則
として種毎の名称(標準和名)を表示する(標準和名より広く一般に使用され
ている和名があれば、この名称表示も可能)ことが推奨されており、それを前
提に市場で取引がなされている。この点からすれば、「バナメイ」の標準和名
は、「シロアシエビ」であり、標準和名が「シバエビ」とは異なる魚介類とさ
れていることからして、これを「芝海老」と表示することは、実際のものと異
なるものを表示していることになり、景品表示法で禁止された優良誤認表示で
あると言わざるを得ない。単に「エビ」「海老」と表示しておれば問題は生じ
なかったものである。また、消費者たる顧客の一般的認識においても、シバエ
23
ビよりもバナメイエビが安価であると考えられているのが現状と言えることか
らしても、誤った表示であると言える。
(3)これについて表示に至った経緯を調査したところでは、以下の事実が確
認できた。
このメニューは5000円のランチ用着席スタイルコースメニュー3種(ミ
ニ会席ランチ、フランス料理ランチ、中国料理ランチ)のうち、中国料理ラン
チのメニュー中の7品目のうちの一品として表示したものであった。平成23
年4月から提供を始めているが、セールス(一般宴会)部門から料金等の大枠
の提示を受けた当時の担当シェフがパーティ用料理としてメニュー化した際に
導入したものである。同シェフは、1ポンド(453.6g)あたり51~6
0匹入りから31~40匹入りの小さなサイズのエビを用いることにしたが、
そのような小さなサイズのエビは「蝦仁(シャーレン)」と呼んでいて、その
「蝦仁」を日本語表示にする際には、昔から「芝海老」と書く慣わしがあった
ことから、メニュー案においても「芝海老」と記入して、そのままメニューと
して使われたものである。実際にその小さなサイズのものとして仕入れていた
ものは「バナメイエビ」であったが、担当シェフは、小エビである限りは「芝
海老」と記載することに問題はないとの認識を持っていたようである。
(4)上記のシェフの認識に関して、公益社団法人日本中国料理協会は、平成
25年10月31日に、今回の問題を受けて、食材名の慣習的呼称や誤表記に
ついて、その改善に取り組むべきであるとして、顧客に誤解を与えない表記例
を会員に周知するための文書を出しているが、その中で、「芝海老」を、「海
老(えび)」又は「小えび」と表記するよう記載している。
同協会に聞いたところでは、日本の中国料理界において、「シバエビ=小エ
ビ」と認識することが一般的な慣例であったかというと必ずしもそうとは言え
ないが、一部では確かにそういった慣例があったとのことで、それを正す意味
での連絡をしたものとのことであった。また、東京五輪の当時、むきエビ用の
小エビとして東京湾の芝浦で取れたエビが多く出回っていたために大手ホテル
の中国料理シェフが、中国語で「むきエビ」を意味する蝦仁(シャーレン)を
「芝海老」と日本語メニューで表記したことから、一部の高級ホテルの中国料
理シェフの間で一般化したようであり、その後の大阪万博で東京から多くのシ
ェフが関西に移ってきた際に、関西のホテルの中国料理シェフの間でもその表
現が使われるようになり、今日に至っていたようである。
しかしながら、小エビならばすべて「芝海老」「芝エビ」と表記してよいと
思い込んでいるシェフの認識と、消費者たる顧客の理解とは大きな齟齬があり、
その慣例があったにしても、今回の表示を正当化することはできない。単なる
認識不足のため、業界内での慣例にそのまま従ったままでメニュー表記に至っ
24
ていたと言わざるを得ない。
なお、こういった魚介類の名称を料理メニューに用いる場合は、水産庁の前
記「魚介類の名称のガイドライン」に沿うよう留意すべきである。同ガイドラ
インは、JAS法の水産物の名称および一次加工品の名称及び原材料表記の指
針となっており、生産者、加工者、消費者の共通言語の役割を果たしている。
表示として使用する名称は標準和名を使用することとされ、流通範囲の狭いも
のについては地方名も認められている。調理用語や業界用語を料理メニューと
して使用する場合は標準和名を付記することで不当表示や誤った表示を防ぐこ
とができると考える。
(5)原価との関係について
今回の誤った表示の原因は前述のとおりであるが、念のために原価との関係
を調査した。バナメイエビと芝エビの仕入れ原価の価格水準は、サイズや産地、
グレード、時期等によってまちまちなようであるが、最近はバナメイエビの産
地での病害等の発生でその卸値が大きく上昇して、芝エビとの値差がほとんど
なくなっているようである。
調査の際に現物と注文伝票を確認したが、当該現物の仕入れ価格は、バナメ
イエビ(インドネシア産)は2ポンド(約0.906kg)の平均価格が12
75円(1kg換算で約1400円)であり、芝エビ(熊本産)は1kg13
50円であった。この点だけを単純比較すると、単価はさほど変わらないよう
である(むしろ芝エビのほうが安価)。しかしながら、バナメイエビは頭部を
取り除いた形(ムキエビ)で仕入れられるが、芝エビは有頭であり、その点で
の歩留まりや、頭や殻を取り除く手間(人件費)等を考慮すると、芝エビの方
が経済的には高値感があるものと考えられる。
もっとも、その金額の差異や表示の経緯などに照らし、今回のエビの誤った
表示の原因に原価率などのコスト削減が関係しているとまでは認め難いという
べきである。
5 ビーフ関係について
№6(大阪新阪急ホテルのレストラン「ビーツ」におけるメニュー「ビーフス
テーキ フライドポテト添え」)、№17(宝塚ホテルの宴会場におけるメニ
ュー「やわらかビーフソテー 赤ワインソース」)、№19(同ホテルのレス
トラン「ザ・ガーデン」におけるメニュー「柔らか牛肉の鉄板焼き ナムルと
コチジャンライス添え」)、№21(宝塚ホテルが宝塚大劇場内で運営するレ
ストラン「フェリエ」におけるメニュー「サイコロステーキと鮮魚のフリッタ
ー完熟トマトのフォンデュソース」)、№22(宝塚ホテルが関西学院会館で
運営するレストラン「ポプラ」におけるメニュー「和洋御膳(ステーキ)(注:
土日祝日のみ、手書き表示)」)
25
(1)これらは、牛脂注入肉を焼いたものを、「ビーフステーキ」(№6)、
「ビーフソテー」(№17)、「柔らか牛肉」(№19)、「サイコロステー
キ」(№21)、「ステーキ」(№22)とそれぞれ表示して、提供していたも
のである。
(2)ステーキとの表示について
牛脂注入肉を焼いたものをステーキと表示することに関しては、消費者庁に
おいて、かねてから牛脂注入肉を焼いた料理について、「ビーフステーキ」、
「やわらかビーフステーキ」と表示した場合、この表示に接した一般消費者は、
牛の肉を焼いた料理であると認識すること、牛脂注入肉は、牛の肉を加工した
ものであり、「加工食品」としての「食肉製品」に該当すること、牛脂注入加
工肉は、もともとは牛の一枚肉を使用したものだが、加工を施すと「生鮮食品」
の「肉類」には該当しないことを指摘し、「牛脂注入加工肉使用」等の表示を
しない場合は景品表示法上問題となることを指摘している。また、牛脂注入肉
には、牛肉脂肪以外の調味料や乳タンパクなどが含まれていることがあり、ア
レルギー問題に関心のある消費者や自然食品嗜好の消費者はこれらの物質が含
まれている食品は購入したくないとの事態が想定される。
これらの点から考えて、№6、№21、№22のメニュー表示は、何らの注
意書きがないことから誤った表示と言える。
(3)やわらかビーフソテー、柔らか牛肉の鉄板焼きの表示について
これらのメニュー表示においては、「ビーフ」、「牛肉」の表示が「生鮮食
品」の「肉類」に該当する肉(他の部位等を用いて結着する等の成形や牛脂注
入等の加工を行っていない肉)を焼いたものを意味していると消費者が認識す
る可能性が高い。
また、前述したとおり、牛脂注入肉には、牛肉脂肪以外の調味料や乳タンパ
クなどが含まれていることがあり、アレルギー問題に関心のある消費者や自然
食品嗜好の消費者はこれらの物質が含まれている食品は購入したくないとの事
態が想定される。
以上からして、やわらかビーフソテー、柔らか牛肉の鉄板焼きとの表示は、
生鮮食品である肉だけで構成されたメニューであると消費者を誤認させる可能
性があることから、メニュー表示としては誤った表示であると言える。
(4)ビーツにおける表示の誤りに関する事情について
ここではパーティプランとして「ビーフステーキ フライドポテト添え」と
のメニューで牛脂注入肉を焼いたものが提供されていた。前述したとおり、調
理担当者も牛脂注入肉であることを知って調理していたものである(注文書・
納品書、納品された牛脂注入肉の包装、調理担当者の認識いずれの点からも、
牛脂注入肉を注入されていない牛肉と誤認して使用した事実はない。)。
26
調理担当者からの聞き取りによれば、ビーツにおけるステーキ表示はパーテ
ィプランにて記載されており、パーティにおいては顧客の食べるスピードが遅
く料理が残りがちになるとの問題を受け、牛脂注入肉であれば顧客が冷めても
おいしく食べられることから食材として採用されたものであった。
オーストラリア産の牛肉は部位にもよるが、おおむね1キログラム1250
円程度で仕入れが可能である。これに対して、牛脂注入肉は1キログラム14
50円(オーストラリア産牛肉を加工したもの)ないし1650円(ニュージー
ランド産牛肉を加工したもの)で、加工していない輸入牛肉よりやや値段が高
い。したがって、原価を抑えるために牛脂注入肉を食材として採用した事情は
うかがえない。
これらの事情に照らすと、メニュー作成者が、食材に使用されている肉が牛
脂注入肉であることを隠ぺいすることによって、不当に利益を得ようとしたと
までは認定することはできない。
もっとも、牛脂注入肉をステーキとしてメニュー表示したことについて、次
の問題点を指摘しておく。牛肉について、生鮮品として扱えるのか加工肉とし
て扱えるかは、JAS法の解釈に依拠するが、結着肉(サイコロステーキ)のメ
ニュー表示については平成17年頃から議論があったことがうかがえること、
牛脂注入肉については注入成分についてメディアで取り上げられることがあっ
たこと、などから、確定的な法律の解釈はともかくとして、調理担当者・メニ
ュー作成者は牛脂注入肉を使った料理をメニューに掲載するときは十分注意す
るべきであったと言える(プロとしてマスコミ報道に関心を寄せていれば、慎重
に表示を選択できたはずである。)。加工肉としてメニューを表示するか否か
という、畜産物を食材に用いた際の極めて重要なポイントであったが、遺憾な
がらまったく見過ごされ、誤った表示に対する危険意識すらなくメニュー表示
が決まってしまっている。
(5)宝塚ホテルの宴会メニュー、同ホテルザ・ガーデン、フェリエ、ポプラ
のメニューに関する事情について
これらのホテルで牛脂注入肉が採用になった経緯は、調理担当者がほかのレ
ストランで牛脂注入肉を調理して提供したところ、柔らかいために顧客に好評
であったことからであった。すでに述べたとおり、牛脂注入肉を使用すること
によって原価を引き下げることは一般的に困難であるから、不当に利益を得る
ために牛脂注入肉を提供し、そのことを秘してメニューを表示したものとは認
定できない。
6 自然卵について
№8(大阪新阪急ホテルのレストラン「レインボー」におけるメニュー「ビ
ーフオムライス 自然卵の半熟オムライスに黒毛和牛ロース肉が入ったデミグ
27
ラスソースを」)
(1)このオムライスのメニュー表示については、①「自然卵」とはいかなる
卵を指すのか、②いわゆる液卵を加えているにもかかわらず「自然卵のオムラ
イス」と表示することは誤った表示になるのではないか、の2点が問題と考え
る。なお、阪急阪神ホテルズが消費者庁に報告した時点で同社が考えていた問
題点は上記②のみであったが、当委員会の調査過程において①もメニュー表示
上問題があることがわかったので、本報告書で取り上げることにした。
(2)「自然卵」という表示について
「自然卵」とのメニュー表示は、平成22年4月当時のレストランシェフが創
作したものである。阪急阪神ホテルズにおいては、食中毒予防の観点から卵料
理には液卵を使用することとしており、ゆで卵を消費者に供するような場合は、
特別に総料理長の許可を得て、殻付の卵を使用していた(以下、殻を割ってい
ない卵のことを「殻付き卵」という。)。当該担当シェフは、今回使用した殻
付き卵の納品書に「自然たまごビタミンE」との記載があったため、液卵を使
用したオムライスとの差別化を意図して、メニューに自然卵と表示したという
ことであった。
しかしながら,鶏卵の表示に関する公正競争規約及び施行規則5条は、「天
然」、「自然」又はこれらに類する用語は、「天然卵」「自然卵」等、卵を直
接修飾する表現として使用することはできないと定めている。
「自然卵」とのメニュー表記は当該レストランシェフが,殻付き卵の商品名
に由来して創作したものであることが明らかであるが、上記のとおり公正競争
規約において表現に制限があること、食品の表示として「自然卵」「自然たま
ご」の明確な定義がない(自然卵との表記を行っている養鶏業者間においても
自然卵の要件が異なっており(一般的には鶏の平飼いを要件としているようで
あるが)、消費者には「自然卵」という食材が何を意味しているのか、普通の
卵とどこが違うのかが直ちにはわからない。)ことに鑑みるとメニュー表示と
しては問題がある。公正競争規約における規制があること、自然卵、自然たま
ごの明確な定義がない以上は、消費者の誤断・誤認を生む可能性があるから、
メニュー表示としては、差し控えるべき表示とせざるを得ない。
なお、「自然卵」とのメニュー表記は殻付き卵の商品名に由来して創作された
もので、消費者を引きつけるメニューを作成しようとする意図は認められるが、
そこに原価削減などの目的はないし、上司からの原価削減などの具体的指示は
認められない。
(3)液卵を加えたにもかかわらず「自然卵」のオムライスと表示したことにつ
いて
当委員会の調査によれば、上記の殻付き卵を用いたオムライスを提供し始めて
28
から半年ほど経過した頃から、その殻付き卵の卵黄・卵白に液卵をほぼ半分程
度に加えてオムレツを作るようになったこと、液卵を混ぜるようになった理由
は、殻付き卵だけでオムレツを焼いた際には液卵を使用したほどには黄色くな
らず、見た目でおいしそうな色合いにならなかったからということであった。
「自然卵」と記載することによって、オムレツの材料である卵はすべて「自
然卵」(それによって顧客は通常の卵とは異なる特別な卵であるという印象を
持つ。)を用いているとの誤った認識を消費者に与える可能性がある。この点
からも、液卵を加えつつ「自然卵のオムライス」と表示するのは誤った表示で
あると解する。
なお、自然卵として用いていた殻付き卵と液卵とは、ほぼ同程度の値段であ
り、自然卵(殻付き卵)に液卵を加えたオムライスを消費者に提供することに
よって、レストランが不当に利益を得るといった事態はない。
7 津軽地鶏について
№9、11、12(大阪新阪急ホテル直営のレストラン「シィーファー」に
おけるメニュー「津軽地鶏のマリネ胡麻風味」、「津軽地鶏のマリネイタリア
風」、「柔らか地鶏のバンバンジー」)
(1)これは、大阪新阪急ホテル直営のレストラン「シィーファー」において、
同窓会プラン(お一人様6000円)のチラシの MENU(全13品)の一品と
して「津軽地鶏のマリネ胡麻風味」と記載されているもの(№9)、「要予約
パーティプランのご案内」と題するチラシのうちスタンダードプラン(お一人
様5800円)の一品として「津軽地鶏のマリネイタリア風」と記載されたも
の(№11)、メニューのオードブル部分に「柔らか地鶏のバンバンジー」(8
50円)と記載されたものと、「パブタイムのご案内」と題するチラシのオー
ドブル・サラダ欄に「やわらか地鶏のバンバンジー」と記載されたもの(№1
2)、以上の4種類のメニューの鶏の材料は、銘柄鶏である津軽鶏ではあるも
のの、「地鶏」ではなかったというものである。
「地鶏」については、「地鶏肉の日本農林規格」で定義がされ、日本在来種
の純系もしくは在来種の血液率が50パーセント以上のものであり、飼育期間、
飼育方法、飼育密度において厳格な要件が設定されている。その要件に該当し
ない鶏肉については、仮にそれが「銘柄鶏」(一般的にブロイラーよりも飼育
期間を長くしたり、エサを工夫したりして味を高めたものを指している)であ
っても「地鶏」とは明白に区別がなされている。したがって、「地鶏」ではな
い鶏を用いた料理メニューに「地鶏」と表示したことは景品表示法上の優良誤
認表示であって不適法と言える。
(2)この表示は相当長期間にわたるものの、その原因は、基本的には、「地
鶏」とは何か、「地鶏」表示が許される場合とは何かについての基本的な知識
29
が担当シェフになかったというものであり、同レストラン関係者においても誰
も同様に知識不足によってチェックがなされなかったからである。
シェフの一人は、「津軽鶏は地鶏と表記してもかまわないと思っていた。」
と述べており、誤った表示という認識がなかったと述べている。
また、当委員会による調査の少し前に(その時期は特定できなかった)、シ
ェフの一人は、特に理由はないものの「地鶏」としていた鶏の食感が気になり、
その鶏の仕入先に対し、「これは地鶏か」と尋ねたところ、「違う」という返
事を受けていた。しかしながら、その時点でメニュー表示の修正がなされるこ
となくそのまま放置されたという事実が認められる。
また、同レストランのマネージャーらにも問題意識はまったくなく、津軽鶏
という「地鶏」を使用しているものと思っていたと述べており、シェフらから
も地鶏表示の問題点を指摘されることもなかったと認められる。
(3)要するに、シェフらの知識の不足に起因してなされた誤った表示であり、
地鶏という表示に関しては厳格なルールがあることに気付かないという点、あ
るいは、津軽鶏といったいわゆる銘柄鶏は地鶏ではないという鶏の表示に対す
る無関心さには、やはり大きな問題があるというほかない。調理の担当者、あ
るいはレストランでメニュー作成を担当する場合、その食材表示に関する情報
を正確に認識し確認することが要請される。
また、仕入れ先から地鶏ではないという回答を得た前述のシェフは、その表
示はまずいかなと感じた後にも、サービスの担当者にその話しを少ししたこと
があったものの、特に顧客からのクレームもなかったので、それ以上の措置に
踏み切れないまま、そのまま放置してしまったという事情を正直に述べている
が、改善を目指そうともしなかった点は相当に強い非難を受けてもやむを得ま
いと思われる。
消費者は、阪急阪神ホテルズを信頼し、地鶏という表示を信じて食事してい
るのであるから、ホテル側担当者にはその期待に応える義務が当然にある。
もっとも、この誤った表示は、専ら認識不足に起因するもので、原材料の原
価率の低減をあえて狙ったとかの意図までは認められない(ただし、「津軽鶏」
ではなく「津軽地鶏」とあえて変えて記載するということで差別化を図ろうと
したということは、宣伝効果を見込んだ売上増を狙ったと言えるのであり、そ
のような営業姿勢自体は、背景において利益優先の意識が全くなかったとまで
は言えないとも考えられる。)。
8 九条ねぎについて
№10(大阪新阪急ホテル直営のレストラン「シィーファー」におけるメニ
ュー「若鶏の照り焼き 九条ねぎのロティと共に」)
(1)これは、同レストランにおける同窓会プラン(お一人様6000円)の
30
チラシの MENU(全13品)の一品の添え物として「九条ねぎ」と記載してい
たものの、実際には、九条ねぎではなく、通常の青ねぎや白ねぎを使用してい
た場合があったというものである。
(2)顧客が「九条ねぎ」が明記されたメニューを見て食事を注文したところ、
青ねぎ・白ねぎが使用されて出てきたというケースで言えば、それは明らかに
景品表示法での優良誤認表示となることに疑いはない。
しかしながら、当委員会としては、今回問題となったメニューに関しては、
ただちに同列に論じにくい面があると考える。
この点を検討するに、まず、本件のチラシというのは、同窓会プランと大き
く表示され、値段がお一人様6000円とされた、いわゆるパーティプランと
呼ばれるものであり、年間を通じて利用されるものであるが、そのなかで、
MENU(全13品)として、「鮮魚のお刺身サラダ、スモークサーモン、津軽
地鶏のマリネ胡麻風味、スズキの幽庵焼き、牛肉の網焼きポン酢風味フライド
ポテト添、若鶏の照り焼き九条ねぎのロティと共に、海老キスレンコン青唐の
天麩羅盛合せ、バジル風味のソーセージとチョリソー、冷製稲庭うどん、きの
こと栗のおこわ、二種類のあつあつ中国風点心、ホテルメイドケーキ各種、季
節のフルーツ盛合せ」と記載されたもののうちの1品である。
ところで、このチラシは、その記載の体裁から明白なように、複数人が同店
に集まってパーティを開く際などに事前予約のために参考とされる形式のもの
で、実際にも、そのチラシは店頭のラックに備え置かれて通行人が自由に持ち
帰られるようにして活用されており(稀に、セールス担当者が訪問先に配布す
ることもあるようである。)、その性格上、当初から、飲食当日にそのチラシ
のメニューを見て料理を注文することは想定されておらず、また、冷製稲庭う
どん、きのこと栗のおこわというような季節料理の表示内容からしても、その
メニュー表示の料理が、季節を問わずそのまま提供されることを厳格には予定
したものではないことが相当程度に了解し得ることが認められる(シェフによ
ると、同窓会の多い秋から冬にかけての季節を意識した料理プランと思われ
る。)。また、このチラシは、ラック内の数が減って必要になった都度、店舗
内で印刷されて作成され、ラックに補充されるという形で、通年のプランとし
て活用されていた。
そのメニュープランの下の部分には、実際にも、「*季節により一部メニュ
ーが変更になる場合がございます。」と表示されている上、当委員会の事情聴
取に際しても、シェフらは、「表示内容には季節物があり、すずきの魚がよく
変わったり、きのこと栗のおこわを寿司に変更したりしていた。冷製うどんを
温製うどんに変えたりもしていた。」「九条ねぎの代わりに通常のねぎのほか
ブロッコリーを使ったこともあった。九条ねぎを使わないときには通常ねぎの
31
ほかにニンジンを増やすなど値段相応の品の提供には気を配っていた。」と述
べている。すなわち、そもそもが、本件メニュー欄の記載料理は、6000円
プランのおおむねの料理構成・内容として表示されたもので(まったく同型式
で同様のチラシのメニュープランとして5000円の分があるため、それとの
差別化という意味あいで作成されたと認められる。)、季節などの理由で、そ
の料理内容が固定されたものでないことは顧客側も容易に承知しうるもので、
そのような性格のメニューにおける表示という前提で、その表示の適否や当否
を論じるべきものである。
なお、シェフらは、特に、春などであれば、きのこと栗のおこわを寿司に変
えており、寿司に変えると原価がだいぶ上がるけれども、価格に応じた料理を
提供すれば問題ないと思っていたことから、あまり内容を固定的に考えていな
かったと述べるとともに、サービス担当には提供食材の変更は伝えており、顧
客にも変更の事前説明がされていたと思うと述べている。この説明には特段に
不自然な点はないものの、特に若鶏照り焼きの添え物としてのねぎについてま
で、その変更についての顧客への説明が確実に履践されていたかどうかの確認
はできない。
(3)当委員会の調査によれば、このメニューを用いて以降、同レストランで
九条ねぎを注文して納品があったことが伝票上も確認できており、途中から何
らかの事情で使用してなかったことがうかがわれ、レストラン側が、当初から
意図的に虚偽を表示したとの疑いはない(九条ねぎの正確な定義には争いがあ
り得るようであるが、ここでは論じない。)。
同メニューで九条ねぎが使用されなくなった理由は、九条ねぎに品薄の時期
があって仕入れが困難な時期があり、そのような場合、仕入れのためには、通
常よりも早い目に注文を出す必要があるなどの制約があったこと(通常は前日
の午後3時ころまでの注文ですむが、3~4日前の注文が必要となる。)、他
に九条ねぎを使用するメニューがなく、このパーティプランによる宴会需要も
少なかったことなどにあるようである。
もっとも、ここで使用される九条ねぎは、メイン食材である若鶏の照り焼き
の添え物であり、その消費量は、当日全体でも、せいぜいねぎ2束程度(6本)
というのであり(これで約30人前がまかなえるとのことである。)、その原
価計算をするとき、九条ねぎを使用するか他のねぎ等を使用するかで大きな差
異がないこと自体は事実と認められ(当日の注文全体では100円ないし20
0円の差異とのことである。)、経費節減や利益獲得を狙って、殊更に九条ね
ぎを使わないようにしたとまでは認め難い。(シェフの供述によれば、仮に、
原価率の削減を考えるならば、少量のねぎの種類を云々するより、肉などの質
や量を変えたりする方がはるかに手っ取り早いということになるようであり、
32
相応の信用性のある供述と認められるが、このような情況からしても、九条ね
ぎの表示が殊更に優良誤認を招くためのものであったとか、それを意図してい
たと認めるのは困難というほかない。)
(4)以上の状況から検討していくと、まず、本事例においては、九条ねぎが
入手しにくいとき等において他のねぎや他の野菜を添え物として使用するこ
とが、店として許容される余地がないとか、顧客の信用を失わせるに至るほど
の虚偽の表示であると非難するのは行き過ぎと言わざるを得ない。もちろん、
そのような料理内容の変更は、とりわけ、品質が若干下がると思われかねない
変更については、顧客からして、変更前の食材が変更後の食材よりも優良であ
ると誤認されるような場合は、適切にその旨の説明と了解(グループの場合は
代表者の了解)を得るべきものと考える。本件ではそのことがなされていなか
ったか、または十分でなかった可能性があり、むしろそのことは問題であると
言うことができる。
また、本事例において、メニューの表示として、九条ねぎが使用されなくな
って相当日数を経た以上、とりわけメニュープランを新たに印刷作成される時
期を超える場合には、当然ながら、メニューに九条ねぎの表示を避けるように
変更すべきであったということは当然言えるであろう。パーティプランという
ことで、日常のメニューほどの関心を寄せなかったということや当日などの料
理説明で正確を期せば足りる場面もあり得たであろうし、提供する料理の原価
や価値には変わりがなかったといえるであろうことにつき、当委員会として一
定の理解をするものの、一般の人々の阪急阪神というブランドへの信頼が高い
ことに鑑みるとき、シェフなりサービスの担当マネージャーらには、メニュー
表示の正確性に気を配ることが義務として要請されるというべきであろう。
シェフのなかには九条ねぎを使っていない状態になっていることを知って
いた者もいたようであるが、その情報がマネージャーらに明確に伝えられない
ままになっていた上、マネージャーらも他のメニューと異なり、このチラシが
通年メニューということで確認する機会がなく、放置されたままになっていた
と認められる。いずれにしろ、シェフが気付いた時点で、少なくとも、チラシ
の次の印刷作成時期において、メニュー表示との乖離は訂正されるべきもので
あり、その意味では、やはり、不適切な状態であったというべきであろうし、
相当期間を経た時点では、そのメニュー表示は景品表示法に反する状態にあっ
たと言われてもやむを得ないものである。
9 フレッシュマンゴーについて
№13(大阪新阪急ホテルが運営するレストラン「シィーファー」における
メニュー「マンゴースムージーミルク仕立て(フレッシュマンゴーとバニラア
イスをブレンドしました)」)
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(1)これは、大阪新阪急ホテルが阪急ターミナルビル17階で運営するレス
トラン「シィーファー」において、ドリンクメニュー中の「マンゴースムージ
ーミルク仕立て」というメニュー名に添え書きとして「フレッシュマンゴーと
バニラアイスクリームをブレンドしました」と表示したところ、その「フレッ
シュマンゴー」は実際には、冷凍マンゴーをミキサーにかけて使用していたと
いうものである。
(2)これについて調査したところでは、このメニューは飲料等のサービス部
門が考案したものであるところ、このドリンクは、かつて企画的なものとして
の「おすすめドリンク」として提供したところ評判が良かったために、レギュ
ラーメニューとして採用する際に、「フレッシュマンゴー」の表現を入れた添
え書きを加えたものであった。実際の使用マンゴーを調査したところでは、皮
むき、半割りの冷凍マンゴー(原産国ベトナム)が使用されていた。
(3)「フレッシュマンゴー」という表示は、消費者である顧客からすると、
(特に冷凍マンゴーを使用している旨を顧客が容易に認識できるように注意書
きするなどして明示していれば別として)、マンゴーの生果実を材料としてい
ることと認識する余地があり、それに冷凍マンゴーが用いられていたとすると、
誤った表示であったと言える。なお、担当者は「うっかりしていた」と述べる
だけで否定するが、冷凍マンゴーを使用することを知りながら、フレッシュと
表記することで商品の差別化を図ったものと見られてもやむを得ないかと思わ
れる。
10 手作りチョコソースについて
№14(大阪新阪急ホテルが運営するレストラン「シィーファー」における
メニュー「苺とチョコのシュー・ア・ラ・モード…手作りチョコソースとあわ
せて…」)
(1)これは、同レストランのデザートメニューの「苺とチョコのシュー・ア・
ラ・モード¥750」につき、その添え書きに「シューアイスに苺と生クリー
ムを加えた甘さがたまらない一品。手作りチョコソースとあわせてどうぞ」と
記載されていたところ、このチョコソースが既製品であったというものである。
(2)このメニュー作成に従事したマネージャーによると、当初、既製のチョ
コソースがかけられたシューアイスに加えて、ピッチャーにクリームとチョコ
レートリキュールをわざわざ混ぜて提供していることから、これを手作りソー
スと表現していた(このメニュー内にも、小さな字で、このデザートにはアル
コールが含まれておりますという記載が残っている。)。ところが、リキュー
ルがアルコールであるためか、特に女性客などからは、これを不要とする顧客
が多く、半年以上を経過した後ころからは、このチョコレートリキュールなど
を入れたピッチャーを出さなくなっていたにもかかわらず、メニューの記載を
34
訂正するのを忘れたまま推移したという事実が認められる。
原価率を下げるという意味からチョコレートリキュールなどの提供をやめた
のかという観点からも調査したが、ピッチャーで提供するチョコレートリキュ
ールなどの量はごく少量であり原価率を意識した措置ではないとのことであり、
当委員会で試算した結果によっても、チョコレートリキュールとクリームを入
れたピッチャー1杯の原価は約6.6円程度にとどまるもので、原価率を意識
した措置とは必ずしも認め難い。
(3)本件メニューの表示方法やシィーファーという店の形態などから見て、
この手作りチョコソースという表現がどれほど顧客にアピールするものであっ
たかは疑問であり、客観的に見て、その影響は大きなものでなかったのは事実
であろうし、経緯からして、マネージャーらが訂正を失念する可能性があり得
ることに当委員会として理解し得ないわけではない。しかしながら、「手作り」
というような商品の差別化を図る表示を使った以上、その正確性には慎重さと
配慮が必要であり、いったん、その内容に変更があった場合には、直ちに訂正
する意識が必要であるし、その意識のかん養が求められるというべきであろう。
もっとも、この表示の誤りも、その経緯や原因などからして、原価率を下げ
るための殊更になされたものなどという非難は当たらないと認められる。
(4)なお、この事例は、消費者庁による措置命令では、市販されている業務
用のチョコソースを使用しているのにあたかも記載されている料理に手作りの
チョコレートソースを使用しているかのように示す表示とされている。この点、
実際の店(シィーファー)側の意図としては、既製品のチョコソースの使用を
偽るつもりはなく、単に、ピッチャーで提供されるチョコレートリキュールと
クリームを店側が混ぜる方式を手作りチョコソースと名付けたものの、その提
供をやめた結果、表示と実態が異なることとなったというもので、表示の誤り
が生じた経緯がやや異なることとなっている。
しかし、メニューを見る顧客からすれば、手作りチョコソースという表現は、
既にかかっているチョコソース自体の製造方法とその内容を指し示すと受け取
るのが普通であり、チョコレートリキュールとクリームを混ぜて使用するとい
う方法の表現として、手作りチョコソースというのは適切とは言い難い上、ピ
ッチャーの提供を中止して以降は、いずれの意味においても、手作りの表現の
根拠がなくなっており、早急な是正がなされるべきであった点に変わりはない。
11 レッドキャビアについて
№15(大阪新阪急ホテルが運営する会員制クラブ「関西文化サロン」にお
けるメニュー「クラゲのレッドキャビア添え」)
(1)これは、会員制クラブである関西文化サロン(阪急グランドビル19階)
におけるメニューの中で、「クラゲのレッドキャビア添え」とあったものにつ
35
いて、レッドキャビアが実際は「トビウオの卵」を塩漬けにしたもの(とびこ)
を使用していたものである。
(2)その経緯について、関連資料の他、同サロンで本件メニューを作成した
シェフ(仏料理専門)に事情を聴取し、使用していた商品のビン詰め商品の実
物を見分するなどした。それから判明した事実は以下のとおりである。
これは、平成25年6月1日から8月末までの3ヶ月間のパーティプランと
して考案したものである。この料理は、クラゲをメインにしたものであるが、
クラゲが醤油等で黒くなっていて、色合いが暗いので、明るくするために何か
を添える方が良いと考え、中華担当者と相談したところ、「レッドキャビア」
を使ったらどうかとアドバイスを受けた。その時に使用した商品の実物を見分
したところ、S社から仕入れていたビン入りのもので、そのラベルには以下の
ような記載がなされていた。
【表面ラベル】上方に赤文字で大きく「割烹珍味(Deli DeliDelicous)」と
表示があり、その下に、これも比較的大きな黒い文字で「レッドキャビア」
と書かれ、その下方にS社の名称が小さく記載されていた。
【裏面ラベル】名称として「味付とびうおの卵(レッドキャビア)」と書か
れ、原材料名として「塩蔵トビ魚卵(ペルー)」の記載がなされていた。
また、内容量は200gと記載され、同じく販売者として、S社の表示が
なされていた。
担当者は、この商品の表面ラベルに「レッドキャビア」と書かれているのを
見て、これをそのまま「レッドキャビア」としてメニューに表示することに何
ら疑問を抱くことなく表記したと供述した。この供述については、それ自体に
特段の不自然な点はなく、事実としても、その認識のとおりであったものと考
えられる。
この料理に関しては、チラシ(着席用・立食用の2種)と、それと同内容の
ポスターに表示し、平成25年6月1日から7月31日までの約2か月間、上
記ビン内のもの(トビウオの卵)を添えて提供していたものであった。
社内調査の際に、当該商品(トビウオの卵)を、メニューにおいてレッドキ
ャビアと表示していたのがよいか否かが問題点として浮上し、リーガルチェッ
クを経る中で、最終的には表示として正しくはないと判断するに至ったもので
ある。ちなみに、当該メニューは、同年7月末をもって提供を中止している。
(3)本件についての考察
本件は、担当者が仕入れ業者から仕入れた商品名が「レッドキャビア」であ
ったことから、その呼称を使用することに問題はないと安易に判断したことに
原因があったものといえる。
当委員会としては、この表示の適正性に関しては議論があったが、景品表示
36
法等に違反するとまでは言えないが、やはり適正とは言えないとの結論となっ
た。
「レッドキャビア」という表示自体は消費者たる顧客において一般的に認識
されたものとは言えず、その表示から顧客が抱く認識には様々なものがあると
考えられるが、高級品であるチョウザメの卵である「キャビア」という文言が
含まれているために高級感を期待させる表示であると言えるところ、通常は高
級とは認識をされていない「トビウオの卵」が使用されていたのであるから、
やはり消費者の誤解を誘引しかねない表示であったと言わざるを得ない。
ちなみに、レッドキャビアの意味を単に「赤い魚卵」と解釈するならば、今
回のトビウオの卵もまさにそれに該当することにはなる。トビウオの卵と呼ぶ
よりも、レッドキャビアと呼称した方が、受ける印象の点で後者の方が優れて
いるものと解され、おそらく当該ビン詰め商品を製造した業者も、そういった
判断で商品名にした可能性はある。この点について、当該製品を製造したI社
が、本件が問題になった以降の平成25年10月25日付けでS社に提出した
文書説明においては、同社の見解として、「レッドキャビア」「ゴールドキャ
ビア」は品名として使用しており、「キャビア」とは魚卵の総称として捉えて
いて、原材料一括表示シールには、「名称:味付けとびうおの卵」、「原材料:
塩蔵とびうおの卵(ペルー)」と表示していることから、トビウオの卵を使用
した商品であることは明確であり、お客様に誤解を与える事はないと考えてい
るとしている。
また、フランス料理の分野(今回の担当シェフは仏料理専門)においては、
一般的にマスの卵を「フレンチキャビア」と呼称することが多いようであり、
実際に今回の担当シェフたちによると、「マスの卵はフレンチキャビアと呼ぶ
と認識していた」、「キャビアと併用する場合は、フレンチキャビアとしてマ
スの卵を使用する」との認識が示され、「レッドキャビア=マスの卵」という
認識は有していなかったようである。
この点について、広辞苑を見ると、「キャビア」とは、「(もとイタリア語)
チョウザメの卵を塩漬けにした商品。ロシア南部・イランなどで産し、高価な
ものとして有名」とあり、「レッドキャビア」については項目がない。百科事
典マイペディア(電子辞書版)においても、キャビアについては、「チョウザ
メの卵の塩漬けで、世界的な珍味とされる。(以下略)」とあるが、「レッド
キャビア」については項目がない。
さらに、英英辞典 The American heritage dictionary で「caviar」を見ると、
「The roe of a large fish,especially sturgeon,that is salted,seasoned,and
eaten as a delicacy of relish」(大きな魚の卵、特に塩でほどよく味付けをして
食されるようにしたチョウザメの卵)とされている。これからすると、cavia は、
37
本来の意味は「大きな魚の卵」であり、特にチョウザメの卵とされるが、それ
に限られないことが示されている。これらの点から考えれば、「レッドキャビ
ア」を「赤色の魚卵」としても、文言上は明らかに間違いともいえない。
他方、「レッドキャビア」は、一般的に「マスの卵」を指すのであって、ト
ビコの卵をレッドキャビアと表示するのは間違いであるとの意見も聞こえると
ころであるが、このことを裏付ける文献的資料としては、明確なものは見当た
らなかった。(この点について、前述の百科事典によると、マスの卵(又はサ
ケの卵)に関する項はないが、「イクラ」の項があり、そこには「サケ、マス
の卵の塩蔵品で、本来はロシア語で魚卵(ikra)の意。」としていて、「レッド
キャビア」の呼称は出てこない。)
しかしながら、以上の諸点をふまえたとしても、提供する料理のメニュー表
示において、たとえビン詰め商品名にレッドキャビアと表示されていたとして
も、正しくは「トビウオの卵」であり、商品にも、そのことが明示されている
ものであるから、消費者である顧客に対しては、トビウオの卵であることを明
記して、正しい情報として提供することが必要であると考える。このことから
すると、本件でビン詰め商品名を漫然と表示したことは適正とは言い難いもの
と判断せざるを得ない。
(4)原価との関係について
実際に提供していたトビウオの卵は100gあたり500円であるのに対し
て、マスの卵の場合は、100gあたり1500円であり、約3倍の開きがあ
る。今回の本件メニューによるトビウオの卵による提供期間である3ヶ月間の
使用量は200g入りビン3本合計3000円(1000円×3本)であると
ころ、これをマスの卵を使用していた場合は、その3倍である9000円とな
る。その差は、3ヶ月6000円で、1ヶ月あたり2000円となる。これか
らすると、全体の原価率を下げる目的のみであえて行ったと断定するほどの差
とは言い難いものと考えられる。
また、商品名をそのまま表示したという経緯からしても、原価率を云々する
事例とは認め難い。
12 手捏ねについて
№23(阪神競馬場内において宝塚ホテルが運営するレストラン「フローラ」
におけるメニュー「手捏ね煮込みハンバーグ定食」)
(1)これは、兵庫県宝塚市に所在する阪神競馬場(管理者は日本中央競馬会
(JRA)のスタンド6階(Sラウンジ)にあるレストラン「フローラ」での
メニューにおいて、「手捏ね煮込みハンバーグ定食」として表示していたが、
実際は「手捏ね」ハンバーグではなく、既製品のハンバーグを仕入れて提供し
ていたというものである(なお、後述するが、同競馬場内ではもう一カ所のレ
38
ストランも同じハンバーグを提供していたが、ここには「手捏ね」表示はして
いなかった)。これについては、顧客からすると「手捏ね」と「既製品」との
双方のメニュー表示においては、前者が後者よりも優良と考えることから、こ
の表示は優良誤認表示であったと言える。
(2)これについて調査したところでは、以下の事実が確認できた。
「フローラ」は、JRAから宝塚ホテルが運営を受託しており、阪神競馬場
でレースが開催される日に営業を行っていた。このため、専任のシェフは常駐
しておらず、レース開催日に比較的経験年数の浅い調理担当者とサービス担当
者が、宝塚ホテルからフローラに出向きサービスに従事していた。このような
ことから、そこで提供する料理のうち、比較的調理が簡易なものを除いては、
宝塚ホテルで基本的な仕込みを行って、フローラに搬入し、厨房にて最終調理
を行った上で、顧客に提供していた。
ハンバーグについては、宝塚ホテルでは、かつてからこれを内部製造してい
る。つまり、牛ミンチ他の材料を仕入れて、ハンバーグ材料にした上で、これ
を手でこねたものを作って焼き上げ、真空パックにした状態でフローラへ運び
込み、顧客に提供する前に湯煎調理をして提供していたものであった。このよ
うに宝塚ホテル内で手ごね調理をしていることから、メニュー表示においては、
調理部門において「手捏ね」としたものであった。
しかしながら、平成24年4月に、新しく宝塚ホテルに就任した調理長が、
阪神競馬場内レストランの料理を再チェックする中で、内部製造のハンバーグ
においては、たとえグラム数が同じであっても、形成後の厚みが均一ではない
ため、一部の中心温度を計っても、多数を同時に焼き上げる工程において、す
べてが同じ温度とは断定できないこと、フローラはランチタイムに一気に顧客
が集中するために、十分な対応ができない場面があることや、スタッフ構成な
ども考慮した結果、同年6月から、既製品のハンバーグを使用することとした。
そして、複数の既製品を取り寄せて検討した結果、T社製のガストロハンバー
グが従来提供のものと近いことから、それを仕入れて、同年6月2日から提供
することとなった。しかしながら、その段階で、これを決定した調理長はフロ
ーラでのメニューをチェックしなかったことから、そこに「手捏ね」との表示
があることに気づかず、その変更を指示するに至らなかった。その結果、第二
次の社内調査の段階に至るまで、従来のメニュー表示を続けて提供することと
なったものである。
ちなみに同じ阪神競馬場内の馬主専用レストラン「パンジー」でも、全く同
じ方法、経緯でハンバーグを提供していたが、そこではもとから「手捏ね」の
表示はしていなかったため、同じような問題は生じなかった。なぜ「フローラ」
だけで「手捏ね」の表示がされるに至ったかの経緯は確認することができなか
39
った。
(3)原価との関係等について
既製品の仕入れ原価は、ハンバーグ一個あたり157円である。この点、従
来の手ごね工程の時の原価計算では、材料代から計算すると、一個あたり16
0円となり、既製品の仕入れ原価とはさほど違いはない。しかしながら、これ
には手ごね等の作業中の人件費は算入できていない。これについては、手作業
工程を行うときは、一度に大量に作り冷凍保存することから、一個あたり単価
としての人件費分はそれほど大きくならないとも考えられるが、既製品よりは、
一定程度、高くなることは推測できるところである。
(4)発生原因
以上より、もとは自社での手ごね作業工程を経た上で提供していたことから、
メニュー表示との間に違いはなかったものであるが、平成25年8月からの第
二次社内調査の段階で事実が判明してメニュー表示を変更した同9月29日ま
での約17か月間にわたってメニュー表示と異なる既製品のハンバーグを提供
していたこととなる。その原因は、調査した限りでは、阪神競馬場内レストラ
ンでの既製品ハンバーグへの食材変更時に、フローラにおけるメニューとの違
いが発生することに気づかなかったことにある。
この点において、他店との競争優位性を維持するため「手捏ね」の表示を殊
更に残した可能性なども一応念頭には置いて調査したが、そもそもフローラの
店舗はJRA施設内のSラウンジという特別観覧席内にある唯一のレストラン
であり、他の店舗と集客上の競争関係にあるわけでもない上、そのような疑い
をうかがわす資料等はなく、これらを動機とする余地はないと認められる。
13 沖縄まーさん豚について
№46(大阪市立大学医学部附属病院内においてレストラン事業部が運営す
るレストラン「パティオ」におけるメニュー「沖縄まーさん豚ひと口豚カツ御
膳」)
(1)これは、大阪市立大学医学部附属病院内にあるレストラン「パティオ」(レ
ストラン事業部運営)でのメニューにおいて、「沖縄まーさん豚ひと口豚カツ御
膳」として表示していたが、実際は沖縄まーさん豚(沖縄産)ではなく、他県
産の豚を提供していたというものである。これは沖縄産と解される表示をしな
がら、実際には他県産であったこととなり、誤った表示であったといえる。
(2)これについて、購買担当者、統括シェフ、統括マネージャー、メニュー
作成担当者等から事情を聴取したほか、仕入れ業者から提出されていた説明書
面等も精査し、かつ仕入れ伝票等の資料も見るなどして調査したところでは、
以下の事実が確認できた。
まず、「沖縄まーさん豚」についてであるが、「まーさん」とは沖縄地方に
40
おいて「おいしい」という意味があり、「沖縄まーさん豚」は「沖縄産のおい
しい豚肉」を意味するものである。
したがって、メニューにおける「沖縄まーさん豚」と表示する場合は、沖縄
産の豚肉を使用したものでなければならない。パティオにおいては、平成22
年4月に大阪市立大学との契約によりレストランの業務を開始した段階から、
この「沖縄まーさん豚ひと口豚カツ御膳」を提供していたが、沖縄産の豚につ
いては、O社から仕入れて提供していた。
パティオにおいて、当該メニューに基づく料理を提供することとしたのは、
開店前の企画段階において、何か顧客の目を引くメニューを考えていた際に、
レストラン事業部が経営する山陽道三木サービスエリア(SA)のレストラン
で提供していた「まーさん豚の豚かつ膳」が好評で売り上げが良いとの情報を
入手し、この「まーさん豚」をパティオでも採用してメニュー化したことから
であった。その際、その仕入れについては、三木SAにまーさん豚を納入して
いたO社からパティオにも納品をしてもらうこととなった。商品発注は、別々
に行っていたものであるが、二店における納入量の比率としては、三木SAが
80~90%、パティオが10~20%程度であった。この時のパティオから
の仕入れ伝票の商品名は「手作りヘレカツ」とし、コメント欄には「まーさん
豚」として明記して発注しており、同じ表示での納品伝票が付けられて、沖縄
産豚肉が納入されていたものである。
その後、平成23年11月末に、三木SAのレストランでは、「まーさん豚
の豚かつ膳」が中止された。このときに、O社には、まだ沖縄産豚肉の在庫が
あるということから、それを仕入れて平成24年9月まではカツカレー(「ま
ーさん豚」の表示なし)として、その後、同年11月まではスナックコーナー
の日替わりメニュー内で使用(まーさん豚の表示なし)していたところ、同年
11月末でその時点でO社の沖縄産豚の在庫がなくなった。
この段階で、O社としては、パティオへの沖縄産豚の納入もできなくなるの
であるから、本来はパティオの担当者に連絡をして協議をすべきであったにも
かかわらず、何ら連絡を取ることもなく、他県産の豚肉を納入していた。
これについて、パティオ側のスタッフが他県産の豚であることに気づかなか
ったか否かが疑問点として生じるが、発注時商品コードにおいては「手作りヘ
レカツ」となっているだけで(「まーさん豚」との指示はコメント欄)、納入
商品には「豚肉(国産)」とラベル表示があるだけで、沖縄産以外の豚が入っ
てきていても全く外観上判別できなかった。ちなみに、沖縄産豚と他県産豚と
は仕入れ価格はともに39円/個(30g)(パン粉付き)で同じであった。
社内調査における第二次調査の際に、産地の再確認のために、O社に対して
産地の証明の提供を求めたところ、規格書が提出されたが、そこには「国産」
41
とあるだけであったため、再度確認を求めると、同社は沖縄産ではなく、他県
産であることを認めた(9月25日付にて文書回答あり)。同社によると、同
社で扱う豚肉の産地は、沖縄の他、高知、香川、愛媛、徳島で、これらはすべ
て「国産豚」としてひとくくりで仕入れ管理をしており、これらは産地は異な
れど、価格的にほとんど差がないことから、同等の扱いをしており、品名、コ
ード、単価は同一にしていたとのことであり、沖縄産豚から他県産豚に変更と
なったことについてパティオ側に連絡していなかったとしている。
(3)原価との関係
上記のとおり、まーさん豚と他県産豚とは、仕入れ先業者O社からの仕入値
は同じ単価であり、仕入れ原価を下げる目的で他県産を仕入れていたとは解せ
られない。
(4)発生原因
関係者への聴取や資料確認を経た結論としては、上記のとおり「まーさん豚」
として仕入れをはじめ、当初は実際に沖縄産豚が納入されていたところ、業者
が無断で他県産に変更したにもかかわらず、その連絡はなく、かつ、納品名は
いずれも「国産豚」であったことから変更を担当者も見抜けなかったために、
メニュー表示と実際の提供とが異なる事態に至ったものであり、その責任の大
半は、納入業者側にあったと言わざるを得ない。しかしながら、「まーさん豚」
という名称を表示して顧客に提供する以上は、定期的に規格書や仕入れ産地の
証明の提示を求めるなどの対応がなされていれば、防ぎ得たものとも考えられ、
この点の管理上の問題は残る。
14 天ざるそば(信州)について
№47(大阪市立大学医学部附属病院内においてレストラン事業部が運営す
るレストラン「パティオ」における「天ざるそば(信州)」)
(1)これは、大阪市立大学医学部附属病院内においてレストラン事業部が運
営するレストラン「パティオ」では、そのメニューの「天ざるそば」につき、
平成22年5月ころから「天ざるそば(信州)」と表示していたところ、同そ
ば粉の原材料は、必ずしも信州産ではなく、外国産そば粉も使用したものであ
ったというものである(なお、当初の発表では「天ざるそば(信州)」の表示
開始は平成22年5月頃とされていたが、当委員会の調査の結果平成23年5
月頃からの可能性が高い。)。
(2)日本そば(以下単に「そば」と言う。)はそば粉を使用した麺で、そば
粉に小麦粉等を混ぜて麺が作られるが、郷土色豊かな食品とされ、日本各地に
名物そばが存在するのは公知の事実である。そばに関し、「越前」あるいは「信
州」という表示を付した場合、これが「原産地」に該当する場合があり景品表
示法上の優良誤認表示になる可能性もある。
42
「原産地」は一般的に商品が製造されたところと理解されるのが通常であり、
越前そばと表示したときには、そのそばのみならず、そば粉が越前=福井県で
製造されていると理解することになるであろうし、「信州そば」と表示した商
品については長野県産そば粉を使用しているそばと認識されるのが通常であろ
う(ただし、「生めん類の表示に関する公正競争規約」では、必ずしも信州産
そば粉を使用することは要求されていない。)。これを偽ったり、誤った表示
をすれば、明らかに不適切であり、優良誤認として違法でもあろう。
(3)事実関係について
この信州という誤った表示がなされた経緯については、関係者の記憶が曖昧で
あり、必ずしも明確にし得ない部分があり、阪急阪神ホテルズの社内調査など
とも一部食い違いが生じた。
しかし、当委員会の調査によれば、その経緯は、おおむね以下のとおりと思
われる。
すなわち、パティオでは、平成22年5月ころに同年夏用メニューを企画し
たときに、「天ざるそば(越前)」と表示したメニューを製作するに至った。
これについては仕入品にも越前産の表示があり、実際に福井県で製造された物
であるから問題はなかった。ところが、原因が明らかではないが、平成22年
の夏に天ざるそばを提供するときに「流し麺」(常温の水で解凍使用できる麺。
越前そばではない。)を使用していた。この麺につき、固いとの評判があった
として、翌平成23年5月ころから、「流し麺」を「平打ち麺」(越前そばで
も信州そばでもない。)に変更して、これを仕入れて提供することとなった。
この際に、パティオの調理担当者らの試食があったが、担当者の一人(調理
担当者の可能性はある。)が、信州産に変わるという説明をしたため、その後、
メニューに「天ざるそば(信州)」との表示がなされた。
しかしながら、変更された「平打ち麺」が信州で製造されたことや信州産の
そば粉を使用していたとの根拠は全くなく、「平打ち麺」の表示にもそれをう
かがわす表記は全くなく、調理担当者らが、これを確認することもなかった。
つまり、担当者の一人が、正確な根拠や知識のないまま、麺の色などを根拠
として変更したものであったかと思われるが、明確に信州産に変更されたと言
い出したため、その意見が正しいものとして、何らの裏付け資料もないまま、
従前の「越前」という記載部分が単純に「信州」という表示に変更されたとい
う経緯になる。
(4)パティオにおいて、天ざるそば(信州)とメニューに表示されていたもの
の、提供されていたそばが長野県で製造されたものではないことは明らかで、
当該メニューの表示の誤りは明白である。
表示の誤りに至った背景事情や動機が必ずしも明らかでないが、客観的事情
43
として、実際に供されていたそばの仕入価格と信州そばの仕入価格は1玉40
円程度の違いであり、1000円という提供価格からしても、このメニュー表
示によって原価を抑えようとしたとまでの事情はうかがえないし、そのような
要請があった形跡はない。むしろ、関係者の供述によれば、顧客の評判に従っ
て、単純にそばの種類を変えてみたというだけだということであろう。
しかしながら、同店のメニュー表示は、天ぷらうどんには「天ぷらうどん(讃
岐)」と表示しながら、天ざるうどんには何ら表示がないなど、あまり表示を
慎重に検討した形跡もなく、本件信州の表示に端的に表れているように、ずさ
んなまま、いわばいい加減な形で決定され、表示されていたと評価するほかな
く、その意味では、お粗末という表示になっている。
メニュー表示に対し、無関心や無責任であったと非難されてもやむを得ない
はずで、改善が望まれる事例である。
15 有機野菜・無農薬野菜・自家菜園野菜等について
№16(①ホテル阪神のレストラン「香虎(シャンフー)」におけるメニュー
「特選飲茶コース 有機野菜のプチサラダと前菜二種盛り合わせ」)、№24
(②六甲山ホテルの宴会場におけるメニュー「鮮魚と六甲山ホテル自家菜園野
菜の天婦羅」)、№25(③同宴会場におけるメニュー「海の幸とお肉の炭火焼
き小山農園の焼き野菜を添えて」)、№26(④同宴会場におけるメニュー「六
甲山ホテル自家菜園野菜のフレッシュサラダ」)、№27(⑤同宴会場におけ
るメニュー「スモークサーモン 自家菜園のサラダを添えて」)、№31(⑥
同宴会場におけるメニュー「ノルウェー産サーモンマリネ 自家菜園のサラダ
を添えて」)、№34(⑦同宴会場におけるメニュー「ノルウェー産サーモン
マリネ 自家菜園ハーブサラダ添え」)、№35(⑧六甲山ホテルの「レトワー
ル」におけるメニュー「神戸牛フィレ肉又はロース肉のグリエ 地元産野菜を
添えて」)、№36(⑨同レストランにおけるメニュー「ホテル自家菜園のサラ
ダ オリジナルヴィネグレットで」)、№37(⑩同レストランにおけるメニュ
ー「ホテル自家菜園のサラダオリジナルドレッシング」)、№38(⑪同レス
トランにおけるメニュー「オードブルバリエ レトワール風 ホテル菜園の無
農薬野菜を添えて」)、№40(⑫同レストランにおけるメニュー「レトワー
ル風オードブル ホテル菜園の無農薬サラダを添えて」)、№41(⑬同レスト
ランにおけるメニュー「オマールエビのポアレ 季節の地元野菜と共に」)、
№42(⑭六甲山ホテル「トップオブロッコー」におけるメニュー「パルマ産
生ハムと自家菜園のサラダ」)、№44(⑮同ホテルの「ジンギスカン」におけ
るメニュー「ホテル菜園の野菜を使ったシェフの気まぐれサラダ」)
(1)これらのメニュー表示の共通の問題点は、有機野菜、無農薬野菜、自家
菜園、地元産野菜など食材を限定している表示をしながら、有機野菜でない野
44
菜(なお、当委員会の調査の結果、調理担当者らが有機野菜や無農薬と考えて
いた野菜がそうではなかったことについては後述)や、自家菜園のものではな
い野菜、地元野菜ではない野菜も料理に使われていた点である。結論としては、
有機野菜、無農薬野菜と表示したメニューについては誤った表示、それ以外の
メニューについては不適切な表示と考える。
有機野菜のサラダとメニューに表示したとき、一般の消費者としては、「有
機野菜のみを使用しているサラダ」と感じるのであり、「有機野菜」が品薄で
有機野菜でない野菜を一部でも使用するのであれば、その旨をメニューにこと
わっておくべきであった。自家菜園の野菜、地元野菜についても同様である。
消費者に食品の安全についての関心が高まり、有機野菜専門の青果店があった
り、有機野菜の料理しか提供しないレストランが目につく今日においては、「有
機野菜が一部入ったサラダ」を「有機野菜のサラダ」と表現することで誤認の
可能性が高くなることは容易に理解できるはずである。
(2)上記①の表示(有機野菜)の誤りについて
ア 上記①においては、有機水菜をサラダに加えていた。仕入れていた「有
機水菜」(これが実は有機ではなかったことは後述)は、通常の水菜の1.5
倍程度の仕入値である。サラダにはレタス、トレビス、フルーツパブリカ、ラ
ディッシュなども入るので、有機水菜の分量はおおむね全体の3割程度である。
イ 有機水菜が有機野菜ではなかったことについて
同レストランでは、有機水菜を注文し、有機水菜が納品されていると思って
いたところ、実は有機水菜ではない水菜が納品されていた。有機水菜について
は有機JASマークが表示されるところ、同レストラン関係者でこのマークを
チェックしていた者がいなかった。また、納入業者も自社が同レストランに納
入している水菜が有機水菜であると信じていたようであり、結果として同レス
トランが提供していた有機野菜のサラダには有機野菜が入っていなかったこと
になる。メニュー表示が二重に間違っていたことになり、結果について真摯に
受け止める必要がある。
ウ 有機野菜を使用していないにもかかわらず、有機野菜のサラダと表示し
たことはメニューの誤った表示である(担当者が有機野菜と考えていた水菜が
サラダにどれだけ含まれていたかを論じるまでもない)。ただし、このサラダ
は飲茶コースメニューの1品として供されていたことから、殊更にサラダで利
益を得ようとした背景事情は見受けられない。
(3)上記②ないし⑮の表示(自家菜園・地元野菜等)の誤りについて
ア 六甲山ホテルにおいては、リゾートホテルとしての位置づけから、野菜
に関して非常にこだわったメニュー表示を行っていた。しかしながら、野菜は
季節商品であるから、自家菜園(六甲山ホテル内に、3か所、合計3000平
45
方メートルの面積を有し、温室も備えてはいる。)、特定生産者の野菜、地元
野菜にその供給を限ったときには、季節や野菜の種類によっては当日のホテル
レストランの需要をまかないきれないことがあるところ、自家菜園野菜や地元
野菜以外の野菜も混ぜた料理を提供していた。
イ 小山農園の焼き野菜について
ガーデンビュッフェのプランに、魚・肉の炭火焼きと共に供されるメニュー
として表示されていた。人数分だけの当該の野菜が確保できないときがあって、
その場合は他の仕入れ野菜を使用していたというものである(なお、「小山農
園」という農園名自体は存在せず、当該農家の明確な了解なしに「農園」を冠し
たメニューとして表示していたことは問題である。)。
ウ これらのメニューは、料理に自家菜園野菜・地元野菜や特定農園の野菜
が含まれないことがあるのに、常にこれらの野菜だけで構成された料理が提供
されていると消費者が誤解する可能性のあるメニュー表示になっていた。した
がって、誤った表示とまではいえないものの、不適切なメニュー表示といえる。
今後は、季節によっては野菜の産地が異なることを念頭においたメニュー表示
に努めるべきである。なお、いずれの野菜メニューも、コース料理の中の一品
であり、他に魚・肉のメインディッシュが組み込まれているから、野菜メニュ
ーによって大幅に原価が下げられるものではない(なおホテル農園の野菜につ
いては、種苗から育成するため原価をいくらに設定するべきかは極めて困難で
ある。)。
(4) 上記⑪、⑫の表示(無農薬野菜)の誤りについて
六甲山ホテルのレストラン「レトワール」では⑪と⑫において、「無農薬野
菜」をうたったメニューが提供されていた。
当委員会において、現地調査等をしたところ、ホテル菜園で栽培されている
野菜について、その苗が農薬を散布されたものであるかどうかの履歴が不明で
あること、野菜の種子に殺虫剤コーティングをされたものがあること、無農薬
栽培をうたう上で解釈が分かれる可能性のある殺菌剤(有機JASでは使用可
能ではある)や竹炭酢が用いられていることが認められた。
当該農園で栽培されている野菜については、相当程度農薬の使用回避が図ら
れているが、「無農薬野菜」の定義が曖昧な上に、特別栽培農産物に係る表示
ガイドライン(農水省平成 15 年 4 月・平成 20 年 6 月各改正)上その使用禁止が
望ましいとされていること、農薬の使用回数や種苗に関する無農薬性の証明が
できないことなどから、メニュー表示としては、使用する野菜(季節)によって
は誤った表示であると判断する。もっとも、減農薬の視点から菜園が管理され
ていることは明らかなので、「無農薬」との表現以外の表示で、菜園で採れる
野菜のクオリティを表現することは禁止されるものではない。
46
16 シャンパンについて
№48、49(千里阪急ホテルの宴会場における婚礼メニュー「(ドリンク
プラン A のうち)シャンパン デュック ド パリ」、「(ドリンクメニュー
B のうち)シャンパン ヴィニデルサ ドゥーシェ・シュバリエ ブリュット」)
(1)これは、同ホテルの婚礼プランにおいて、披露宴の客に出すドリンクを
3種類(Aプラン、Bプラン、Cプラン)の中から選択できるメニュープラン
があり、そのうちAプランとBプランに「シャンパン」という表示がなされ、
そのテーブルメニューにも、Aプランは「シャンパン デュック ド パリ」、
Bプランは「シャンパン ヴィニデルサ ドゥーシェ・シュバリエ ブリュッ
ト」として表示されていたところ、仏シャンパーニュ地方で生産され、決めら
れた製法で作られたものでなければそのシャンパンの名称が使用されてはなら
ないのにかかわらず、実際にはこれら提供された飲料は、シャンパンではなく、
本来はスパークリングワインと表示されるべきものであったというものである
(なお、Cプランはシャンパンとの表示が正しいものであった。)。
(2)この表示の誤りの時期や経緯は必ずしも明白ではないものの、本件関係
者への聴取によると、同ホテルでの婚礼を計画している顧客へのドリンクプラ
ンの説明上、スパークリングワインという言い方をするよりもシャンパンとい
う呼び名が分かりやすかったこと、シャンパンという表示が上記のように限定
されたものだけに許されるというルールがあること自体は認識していたものの、
炭酸入りのワインについてはシャンパンという呼び方でも分類上のジャンル名
として許容されるとの思い込みがあったことから、記載されていたとのことで
ある(赤ワイン、白ワイン、シャンパンというような形式で、ジャンル名とし
て許されると考えていたとのことである。)。
それによると、原因はメニュー作成者の認識不足に尽きるというべきである
が、北摂地域の一流のホテルとして評価される千里阪急ホテルとしては、やは
り、ブランド名につき、より慎重な対応が要請されるというべきであろう。
もっとも、実際のテーブルに配布されるメニューでは、シャンパンとした上
で、「デュック ド パリ」「ヴィニデルサ ドゥーシェ・シュバリエ ブリ
ュット」(いずれもスパークリングワインの銘柄である。)と銘柄まで記入し
ており、この銘柄を調べれば、シャンパンか否かが判明することからも明らか
なように、原価率を意識したというような事情はなく、意図的にスパークリン
グワインをシャンパンと偽ったとまでは認められない。
(3)本件については、先に、阪急阪神ホテルズがメニュー表示と異なった食
材を使用していたことを公表した後に判明して、追加発表したため、更にひん
しゅくを買うこととなったものであるが、この点については、同ホテルでは、
第一次社内調査の際には、「食材」の適正表示に意識を奪われ、「飲み物」の
47
メニューは正確であろうとの思い込みから見逃されて推移していたところ、同
ホテルの婚礼担当者が、大きなマスコミ報道に驚き、念のためと思い、改めて
婚礼のメニューの表示を調べたところ、この表示の誤りが判明したという経緯
がある。
当初の社内調査が不徹底であったという非難はあり得ようが、この経緯の説
明は自然なものであって、殊更に表示の誤りを隠ぺいしたというような事情は
見受けられなかった。
17 全従業員アンケート回答について
既述のとおり、アンケートで、過去においてのメニュー誤表示と感じた事例
の有無への質問に対し、何らかの記載のあった回答数が89通存在した。
これについて、当委員会では調査の対象としたが、その多くは、具体的な店
や時期を示すことがないものか、30年前あるいは十数年前の例などの裏付け
が乏しいことが一見して分かるものなどであった。具体的事例としても、本件
事例と同様の、例えば、解凍魚を鮮魚と書いていた、牛脂注入肉があった、芝
エビの表示があったなどという指摘にとどまるものが大半であり、改めて調査
対象とする意義にやや疑問がある指摘であった。
そして、産地の異なる食材の提供についての具体的事例を示した回答に関して
は、当委員会で、実際に当該メニューを取り寄せ事情を確認するなどしたが、
時期と個数の限定のメニューであって、当該食材がなくなってからは提供をや
めていたことが判明するなどした。結局、アンケート回答に基づいて、新たに
メニュー表示の誤りがあったと認めるべき事例が判明することはなかった。こ
の点は、調査の限界でもあり、やむを得ないと考えている。
第7 セグメント会社及びテナントレストランについて
1 対象としたセグメント会社及びテナントレストランについて
(1)今回の当委員会の調査においては、阪急阪神ホテルズへの信頼の回復と
いう観点からして、単に同社直営部分のみではなく、阪急阪神ホールディング
スの連結及び非連結子会社のうち、ホテル事業セグメントとして位置する下記
事業会社をも調査対象に加えることとした。
①株式会社天橋立ホテル(京都府宮津市)(連結子会社)
株主構成
阪急阪神ホテルズ90%、丹後海陸交通(株)10%
主事業
ホテルの運営受託
運営ホテル 天橋立ホテル、オーベルジュ天橋立
②株式会社呉阪急ホテル(広島県呉市)(連結子会社)
株主構成
阪急電鉄(株)100%
主事業
ホテルの運営受託
48
運営ホテル 呉阪急ホテル
③株式会社有馬ビューホテル(神戸市北区)(連結子会社)
株主構成
阪急電鉄(株)60%、阪急阪神ホテルズ20%
神戸電鉄(株)12%、(株)阪急交通社8%
主事業
ホテル・日帰り温泉施設の運営受託
運営ホテル 有馬ビューホテルうらら
運営施設
日帰り温泉「有馬温泉 太閤の湯」
④株式会社阪急阪神レストランズ(大阪市北区)(連結子会社)
株主構成
阪急阪神ホテルズ100%
主事業
そば屋、喫茶店、ベーカリーカフェ、居酒屋、カフェ、
ファストフードの経営及び運営
運営施設
そば屋(阪急そば等、主に駅構内店舗)32店舗、 喫
茶(主に駅構内店舗)27店舗、ベーカリーカフェ(主
に駅構内店舗)10店舗、居酒屋6店舗、カフェ・ダ
イニング11店舗、ファストフード4店舗(平成25
年11月7日時点)
⑤第一ホテルサービス株式会社(東京都港区)(非連結子会社)
株主構成
阪急阪神ホテルズ 100%
主事業
ホテル、食堂、飲食店の経営及び運営
運営ホテル モンタナリゾート(ホテル)
運営食堂 日本銀行鳥居坂分館内食堂、日本銀行本店内食堂、
中央大学駿河台記念会館内食堂、はなまるうどん(フ
ランチャイズ)、東京宝塚劇場内食堂、水交会内食堂
など。
(2)これ以外に、阪急阪神ホールディングスの連結子会社として、株式会社
阪神ホテルシステムズ(大阪市北区)(株主は阪神電気鉄道(株)100%)が
あり、その主事業はザ・リッツ・カールトン大阪の運営等であるところ、同社
と阪急阪神ホテルズとは直接の資本関係はなく、また、実際のホテル運営はザ・
リッツ・カールトン・ホテル・カンパニーL.L.C に委託しており、そこでのレス
トラン等のメニュー表示等に関しては、実質的な関与がない状態であることに
鑑み、これについては、今回の調査対象からは除外した。
(3)また、これら以外に、阪急阪神ホールディングスのホテル事業セグメン
ト事業会社であり、非連結子会社である㋑株式会社レムホテルズ西日本(大阪市
北区)、㋺宝塚ホテルサービス株式会社(兵庫県宝塚市)、㋩京浜サービス株式
会社(東京都港区)があるが、いずれもレストラン等飲食業務には直接には関
わっていないことから対象とはしていない。
49
2 調査方法について
これら調査対象セグメント各社に対する調査については、阪急阪神ホテルズ
が自主的に社内調査を開始した旨の連絡を受けて、上記各社においても自主調
査を行ったとのことであったため、当委員会から各社に対して、その自主調査
の経緯及びその結果について報告をするように依頼し、提出された報告書を精
査するとともに、各社について数点ずつサンプリング的に裏付け資料提供を求
めて確認を行う方法で実施した。またテナントレストランについては、改めて
自主報告を求めて、その報告書の検証を行った。
3 当委員会における調査結果
調査の結果、株式会社阪急阪神レストランズ(以下「阪急阪神レストランズ」
という。)の経営する以下の3店舗において、別紙第4「阪急阪神レストラン
ズにおいてメニュー表示と異なった食材を提供した内容の一覧」のとおりの表
示の誤りが判明した。
同社以外のホテル事業セグメント事業会社については、問題表示があったと
の報告が出なかったところ、上記のとおり、その真実性を担保するために、当
委員会としては、自主調査した結果の報告書を精査し、かつ各社について、数
点ずつサンプリング的に裏付け資料提供を求めるなどしたが、いずれも特に問
題となるような誤った表示は見受けられなかった。
4 阪急阪神レストランズの3店舗における表示の誤りについて
同社は、阪急阪神ホールディングスグループ内の飲食事業の集約のため平成
22年に設立され、株式会社阪急リテールズの飲食事業部門と、株式会社クリ
エイティブ阪急のフード事業部を継承して事業を開始した阪急阪神ホテルズの
100パーセント子会社である。主力の業態は、駅構内そば・うどん店の「阪
急そば」と、駅構内喫茶店「喫茶スタンダード」「プレンティ」などと、カフ
ェ・ベーカリーの「フレッズ」で、これ以外にも居酒屋・カフェ系レストラン、
フランチャイズ店舗の運営などを行っている。
阪急阪神レストランズでは、平成25年10月16日、阪急阪神ホテルズか
ら、メニュー表示について調査を行っている旨の連絡を受けたので、直ちに自
社においても自主的に対応することとし、担当部長2名において、全店舗から
全メニューの回収を行い同担当部長2名のもとで、あいまいな表現や産地表示
や食材表示があるなど誤った表示の可能性のあるメニュー表示の訂正を先行さ
せた。その上で、産地その他の食材確認が必要なメニューについて、使用食材
の照合(納品書・発注書・産地証明書などで確認)を実施した。その過程で、
当委員会がセグメント各社についても調査対象とすることになった。その後、
疑わしき事案について、代表取締役社長、常務、取締役営業本部長の3名で、
担当者らに対して、経緯などの詳細確認のためのヒアリングを実施した。その
50
結果、以下の5品目について、メニュー表示と使用食材とが異なっていたこと
が判明した。
その後、当委員会から同社に対して、上記調査経過についての報告書の作成
及び提出の依頼をしたところ、その事実についての報告書が提出され、それに
ついて、直接関係者への聴取を実施した。
それにより、判明した事実は、以下のとおりである。
(1)店舗名「あせんぼ母屋・離れ」(業態:居酒屋)
「和牛ヘレのあぶり焼き」について、「和牛」と表示しながら、実際は国産
牛を提供していた。
「食肉の表示に関する公正競争規約」により、「和牛」と表示できるのは、
黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種か、これらの品種間の交配による
交雑種等のみである。さらに、平成19年3月20日に農林水産省において「和
牛等特色ある食肉の表示に関するガイドライン」が策定され、「和牛」と表示
する場合は、上記要件を満たすことに加え、国内で出生し、国内で飼育された
牛であること、これら要件を満たしていることを牛トレーサビリティ制度によ
り確認できること、の要件をも満たすように事業者の自主的な取組を促してい
る。
そういった厳格な定義が存在するにもかかわらず、これらに該当しない国産
牛を用いた料理メニューに和牛と表示したことは明らかに景品表示法上の優良
誤認表示であったといえる。
これは、平成21年11月に担当の部長、グループ長、店長、調理長で検討
し、メニュー化をした際に、食材選定をした担当調理長から、仕入れることを
予定していた国内産牛肉について、その品質が良いとの仕入先の説明をもとに、
そのような肉については「和牛」と表示しても問題はなく、メニュー表示に入
れることを提案したところ、何らの疑問も呈されることなく採用されるに至っ
たということである。
これについては、疑わしい表示と判明した平成25年10月22日より、表
示を「国産牛」に変更している。
(2)店舗名「粋房ゆふな」(業態:居酒屋)
「丹後地鶏卵の出し巻き」「丹後地鶏卵の親子丼」について、いずれも「地
鶏卵」と表示しながら、実際は地鶏ではない丹後の特定の養鶏場からの直送卵
を使用していたものである。
「地鶏」については、「地鶏肉の日本農林規格」で定義がされ、日本在来種
の純系もしくは在来種の血液率が50パーセント以上のものであり、飼育期間、
飼育方法、飼育密度において厳格な要件が設定されている。その要件に該当し
ない鶏肉の卵を用いた料理メニューに「地鶏卵」と表示したことは優良誤認表
51
示であって不適法と言える。
これは、平成25年9月19日の改装オープン時に担当の部長、グループ長、
店長、調理長で検討し、メニュー化した際に、丹後地域の特定の養鶏場から仕
入れる卵に関しては、「地鶏卵」と表示してもよいものと一方的に解釈した上
で、メニューに「地鶏卵」と表示したものであったということである。これは
景品表示法上の優良誤認表示といえる。
これについては、疑わしい表示と判明した同年10月19日からは、「丹後
こだわり卵」に表示を変更している。
(3)店舗名「御鷹茶屋」(業態:そば屋)
日替わりランチメニューのうち、火曜日の「黒豚のてんぷら丼定食」につい
て、「黒豚」と表示しているが、実際は、「国産豚上ロース」を提供していた
ものである。
「黒豚」については、「豚肉小売品質基準」(農水省畜産局長通知)におい
て、バークシャー純粋種の豚肉のみを「黒豚」と表示できるものと規定し、上
記「和牛等特色ある食肉の表示に関するガイドライン」でも同じことが記載さ
れている。また、食肉公正競争規約及び、同規約に基づく食肉公正競争規約施
行規則において、バークシャー純粋種以外の豚肉を「黒豚」の肉と表示したり
誤認されるおそれがある表示をすることを禁止している。このことからして、
黒豚ではない国産豚を用いた料理メニューに「黒豚」と表示したことは明らか
に景品表示法上の優良誤認表示であって不適法と言える。
これは、平成25年4月1日から日替わりランチの火曜日分として担当の部
長、副部長、グループ長、店長、調理長で検討し、メニュー化した際に入れた
ものであるが、過去に仕入れていた豚が「黒豚」であったことを思い出して、
その時点で仕入れている豚肉が国産豚上ロースであるにもかかわらず、これを
黒豚であると思い込み、安易に「黒豚」と表示することを提案したところ、特
に異議なく採用することとなったということである。
これについては、疑わしい表示と判明した同年10月25日より販売を中止
している。
(4)店舗名「御鷹茶屋」(業態:そば屋)
上記(3)と同じ店舗の秋の季節メニュー「地鶏ときのこのつけ麺(あん仕
立て)」について、「地鶏」と表示しているが、実際は地鶏ではない「宮崎産
鶏肉」を提供していたものである。
「地鶏」の表示については上記(2)で記載したとおりであり、その要件に
該当しない鶏肉を用いた料理メニューに「地鶏」と表示したことは明らかに景
品表示法上の優良誤認表示といえる。
これは、平成25年10月に、担当の部長、副部長、グループ長、店長、調
52
理長で検討し、メニュー化する際に、食材選定をした担当調理長(店長兼務)
が「宮崎産鶏肉」と「地鶏」とは同じ(地鶏と表示してもよい)と思い込み、
「地鶏」と表示することを提案しあった結果、誰からも異議が出ずに採用され
たものであった。
これについては、疑わしい表示と判明した同月24日より販売を中止してい
る。
5 阪急阪神レストランズの発生原因について
こういった誤った表示に至った原因については、いずれもメニュー作成に関
与した従業員全員の無知識・確認不足によるものと言わざるを得ない。これら
店舗は、居酒屋やそば屋などの業態であって、高級ホテルでのレストランとは
料理単価などに違いはあるものの、顧客たる消費者の商品選択に誤った誘引表
示を行っていたという点は容認されるものではない。
第8 不適切なメニュー表示の発生原因の調査分析
1 今回の事案ごとの原因要約
(1)阪急阪神ホテルズのレストラン等でメニュー表記において誤った表示を
含む不適切な表示を行っていた主な原因を要約すると、以下のとおりである。
下記のうち、霧島ポーク、まーさん豚、九条ねぎは、メニューで記載した食
材を提供するはずであったが異なる食材を提供していたもので(霧島ポークと
まーさん豚は納入業者側に問題があり、九条ねぎは当初は正しく提供していた
が途中から別のねぎを提供していたというもの)、他の大半は、食材とは異な
ったメニュー表記をしてしまったというものである。
NO.
問題になっ
評価
問題の原因
た表示・食材
1、2、7、20、 鮮魚
21、24、
(表示)
28~30、
32、33、39、
45
△
冷凍魚の使用が必ずしも許されてな
いとはいえないが、メニュー表示にお
ける定義が不明であるにもかかわら
ず安易にメニューで表示したもの(今
後の使用は要注意)
3、13、18、 フレッシュ
43、50、51 (表示)
△
フレッシュの意味合いへの理解不足、
顧客目線の不足(公正競争規約等の存
在を意識せず、あいまいな食材表示の
選択)
53
4
霧島ポーク
(食材)
×
仕入業者の産地説明を誤信(基本的に
は納入業者の問題であるも、納品され
た食材のチェック体制の不備)
5
芝エビ
(表示)
×
食材表示の旧態維持(シェフ間での慣
例的なメニュー表示を十分に検証せ
ず使用)
×
過去の措置命令その他の例が公表さ
6、17、19、 ビーフステ
21、22
ーキ、やわら
かビーフ、
柔らか牛肉
(表示)
れているのにもかかわらず、食材表示
に関するJAS法その他法令の知識
不足
8
自然卵
(表示)
△
公正競争規約の存在等を知らずに商
品に付された表現の安易な流用及び
液卵も加えながら自然卵のみを表示
した不適切な使用
9、11、12
地鶏
(表示)
×
食材表示に関するJAS法その他法
令の知識不足
10
九条ねぎ
(食材)
×
継続的な仕入れが困難な状況が予想
できる中での不適切使用(ただし、メ
ニューには特別性あり)、食材変更時
のフォロー不十分、ホールスタッフに
おいて分かっていたものの放置
14
手作りチョ
コ
×
チョコソース自体を手作りと誤解を
招く日本語表現として不適切な表示、
(表示)
提供内容の変更後にメニュー表示変
更対応の放置
15
レッドキャ
△
ビア(表示)
使用食材商品名のメニューへの安易
な流用
16
有機野菜
(表示)
×
有機野菜という表示が許される範囲
に関するJAS法その他法令の知識
不足
23
手捏ね
×
料理素材変更時のメニュー表示変更
(表示)
に関する管理体制の不足
54
24、25、26、
27、31、34、
35、36、37、
38、41、42、
40、44
自家菜園
地元野菜
ホテル菜園
小山農園
(表示)
38、40
無農薬野菜
(表示)
△
×
あいまいな食材表示の選択、自家菜園
等以外の野菜も使用するなど顧客へ
の説明不足
「無農薬」に対するJAS法その他法
令の知識不足
46
まーさん豚
(食材)
×
仕入業者の産地説明を誤信(基本的に
は納入業者の問題であるも、納品され
た食材のチェック体制の不備)
47
そば(信州) ×
(表示)
商品知識の不足、メニュー作成・変更
の際の管理体制不足
48、49
シャンパン
(表示)
商品知識の不足
評価
×
△違法ではないが、適切ではない
×誤った表示又は表示と異なる食材使用
(2)阪急阪神レストランズ(セグメント会社)での発生原因
1
和牛
×
(「和牛ヘレのあぶり焼き」)
2
地鶏卵
(「丹後地鶏卵の出し巻き」 ×
「丹後地鶏卵の親子丼」)
3
4
黒豚
(「黒豚のてんぷら丼定食」)
食材表示に関するJAS法その他法
令の知識不足
×
地鶏
(「地鶏ときのこのつけ麺 ×
(あん仕立て)」)
評価
×誤った表示又は表示と異なる食材使用
(3)補足
個別の主たる原因は上記のとおりであるが、全体を通じて共通する部分を補
足すると、以下の点が指摘し得る。
①社内の前例、慣習のままでのメニュー表示
具体的な事例から多く見て取れた原因の一つとして、業界内や社内において
慣習的に用いてきた素材の呼び名や表示方法などについて、特に注意を払うこ
55
となく、そのまま継続していたことが誤った表示につながっていたことが挙げ
られる。
②顧客の目を引くメニュー表示という意識
後述する背景にもつながる点ではあるが、ホテル業界における競争激化から
くる売上向上策の一環として、メニュー表示を策定する過程において、装飾文
言を付加することで顧客の目を引こうとしたことが原因の一つとなっているも
のがあった。
③連携の不備、改善提案ができにくい体制
調理部門、サービス部門、購買部門等の横の連携が十分でないために、メニ
ュー作成の過程において相互間で意思疎通ができず誤った表示を生んだり、作
成後の継続的チェックにおいても同じような事態が生じていたものがある。ま
た、気になる表示があった場合でも他部門への気兼ねなどもあって改善提案へ
と至らなかったとみられる場合もある。
④食材・商品に関する知識の不足
料理を顧客に提供するにあたっては、本来は、扱う食材・商品が何であるか
を詳細に認識した上でメニュー表示にあたって誤りがないようにすることが求
められる。使用食材の商品名をそのままメニュー表示に使用した結果、不適切
な表示になったものもある。その知識が十分でない場合や不安がある場合は、
その点を確認する姿勢が必要であり、その対処法(例えば専門部署、専門家、
関係者等に質問する)が構築されていなかったことが原因となっているものが
ある。
⑤法令・各種ガイドラインの知識不足
法令・各種ガイドラインで定められた表示方法あるいは禁止された表示方法
を認識して、メニュー表示を行うべきであるが、今回の調査の結果、この点に
関する意識が責任者・担当者において不十分もしくは欠落していたというべき
ものがある。
⑥問題になった先例(マスコミ報道も含む)についての認識不足
責任者・担当者は日常業務に追われていて、食品表示について体系的に学習
することは困難との状況も予想されるが、近年、いくつかの食品偽装問題等が
マスコミで大きく取り上げられていたにもかかわらず、他人事と考えてしまっ
ていたからか、自分たちの問題でもあるという意識が薄かったのか、メニュー
を作成するときの注意喚起にはなっていなかったものと見受けられる。
⑦仕入材料の品質管理不足
食材を選定した上で、これをメニューとして表示するにあたり、業者の説明
を安易に信用して食材の規格書や産地証明書などの確認が徹底されていなかっ
たケースがあり、また誰の責任でこれらの文書とメニュー表示を対照・確認す
56
るかについての明確なルールがなかったケースがある。
そもそも、仕入れた特別な食材については、他の食材と混在しないように厨
房においても区別して保管するなどの徹底が必要である。また、顧客に提供さ
れるようになった後でも、メニュー表示と食材との整合性が保たれているのか
を定期的にチェックする体制が必ずしもなく、メニュー表示の点検・改正が適
切になされていない場面があった。
⑧仕入先との連携の不備
今回の問題発生の中に、納入業者において虚偽の説明や、不十分な情報提供
が原因となったものがある。取引先の選定に際しては、正しい情報の提供がで
きない業者との取引が生じないように注意を図る必要がある。
⑨食材が変更されるときのメニュー変更体制不備
当初使用していた食材の変更がなされたときに、メニューとの整合性をその
時点でチェックする体制が十分ではなく、メニュー表示が放置されるに至った
場面があった。
また、メニューが一旦確定してしまうと、定期的な点検・監査がシステムと
して存在しないため、調理責任者やホール責任者が着任するときなど、個別事
情が発生しない限り見直しがなされなかった場面があった。
⑩正しい情報提供意識の不足
例えば、ホテル菜園の野菜サラダと記載したとき、言葉の意味として,ホテ
ル菜園で採れた野菜のみで調理されたサラダ、半分以上ホテル菜園で採れた野
菜で調理されたサラダ、その日によって割合が異なる場合などが考えうるが、
消費者としては、特に説明もなければ、ホテル菜園で採れた野菜のみで調理さ
れたサラダと理解する可能性がある。当初から一部しか使用しないときはもち
ろん、ホテル菜園等、特定した入手先で入手した野菜が足りないときは、消費
者にそのことが適切に説明や表示がされていなければならない。このような点
において意識が欠けていた事例が見受けられた。
2 発生に至る背景について
個別事案での原因は以上のとおりであるが、今回の不適切表示問題が発生し
た背景には、様々な点があるものと考えられる。以下、その点を検討するもの
ではあるが、それを記述する前に、以下の点を述べておきたい。
当委員会としては、阪急阪神ホテルズが、今回の件を公表するまでの経緯は
前述したとおり、他ホテルでの公表事例に接した後に自主的な調査を開始し、
一部に漏れがあったとはいえ、公表すべき事案のものかどうか微妙な部分まで
も含めて積極的に公表したものであって、その点は、同社が自浄能力を有して
いたことを示す事実として評価されるべきものと考える。その点を強調した上
で、こういった一連の不適切表示がなぜ発生し、それが放置されてきたか、そ
57
の背景を探ることは、阪急阪神ホテルズの今後の進むべき道を検討する上で有
益であると考える。以下は、当委員会が調査を進める過程の中で、関係者への
聴取や全従業員アンケートでの回答内容等を踏まえて検討してきた中で浮かん
できたものである。これが同社における個別の問題点であることは言うまでも
ないが、広く今日におけるホテル業界全般に共通する部分もあるものと推測し
ている。
(1)ホテル業界における競争激化からくる過度の業績至上主義・利益至上主
義傾向と、顧客目線の低下
近時、ホテル業界での競争が激化してきていることは多方面から指摘されて
いるところであり、特に多くの外資系ホテルの新規参入、老舗ホテルでの大規
模リニューアルの実施、さらにはリーマンショック後の消費不況など厳しい経
営環境の出現などが続き、それらによる影響の下で、阪急阪神ホテルズにおい
て、業績重視、売上・利益向上重視という方向のベクトルが働き、今回の問題
の遠因となっていたと考えることができ、それがレストラン部門における原価
管理や顧客誘引を図るための広告戦略において大きな影響を与えてきたであろ
うことは否定できないものと考える。特に経費の節減施策は多くの場面で求め
られていたようであり、その中に料理原価率の低減目標の設定、デッドストッ
クの削減、廃棄率の低減、その一環としての食材変更等によるメニュー検討が
求められていたようである。
これらは、一企業として、ある意味当然の経営政策であることから、それ自
体を決して否定し問題視するものではないが、他方で売上げ向上という目標も
示される中で、現場には顧客の目を引きクオリティの高い料理提供を模索させ
るプレッシャーが働いていたものと考えられ、それが今回の事案発生の遠因に
なっていたものと考える。それが、次第に消費者目線からずれていく結果とな
っていったと指摘することも可能である。企業である以上、利益追求が一つの
大きな使命であることは事実であるが、それは顧客重視と両輪となってこその
ものであり、この点が会社全体として一方にやや傾いてしまっていたことが一
背景として考えられる。
(2)コンプライアンス体制の不備(メニュー表示管理体制の不備)
今回の問題を発生させた個別事案においては、少なくとも会社全体を統一し
たメニューに関連するコンプライアンス体制が不十分であったことは否定でき
ない。当該調理部門、サービス部門、購買部門等が十分な連携を取って、誤っ
たメニュー表示が生じないための体制を構築することが求められる。
取締役会においては、メニューにおいて誤った表示がなされないために、そ
れを予防し、発見し、対処するための内部統制システムを構築しておくべきで
あったが、それに対応していなかった点が指摘できる。
58
法令に対する知識不足の面だけでなく、一旦作成したメニューについて、そ
の後の食材変更等に対応せず放置したことや、メニュー内容と一致しない食材
が納入されていたのを見過ごしていたことなど、継続的で多重であるべきチェ
ック体制に不備があった。
(3)部門間での連携の不備、改善提案ができにくい体制
メニュー作成の過程とその後の継続的チェックという点からみて、調理部門、
サービス部門、購買部門等の横の連携が十分なされていなかった。また、会社
全体が縦割りとなっていて、他部門から意見を出しにくいことが指摘できる。
これらは、今回の関係者聴取の過程で浮かび上がってきたものであり、全従業
員へのアンケート回答の中でも多く指摘された問題点であった。
連携の不十分は、部門間で意見を言いにくいとか、どの管理職に問題を注進
すればよいのか分からないということにつながった。また、業務の中でメニュ
ー表記等に関して疑問に感じたことを直ちに意見具申し、これを企業内で改善
しようとする自由な空気がなかった点も背景の一つであったと考えられる。
また、阪急阪神ホテルズは、もともと伝統のあるホテルを複数経営したこと
から、ホテルごとに異なるルールが存在していたようであり、メニュー決定の
手続きも統一的ではなかったようである。このことは、各ホテルの個性を生か
し魅力性を高めることにもなるが、一方でホテルによってのチェック体制にば
らつきを生み、その結果、体制が不十分なホテルにおいて問題が多く発生した
ものといえる。この点は全従業員アンケートにおいても多く指摘されていたこ
とである。
(4)コンプライアンス意識の不足
役員・管理職のみならず、従業員の中で、メニュー表示に関するコンプライ
アンス意識が不足する者が多くいたことが指摘できる。食品表示に関する法令
や社会的ルールの認識不足、認識しても対応しない傾向が少なからず見受けら
れた。
こういった現場従業員における意識不足は、まずは役員・管理職の責任によ
るところが大きい。これが、消費者目線での対応意識を低下させ、飲食物を提
供するサービスを担う者として基本的に有すべき表示ルール等の知識不足を招
くものとなったといえる。
食の提供に携わる従業員においても、その道の職業人として、自ら意識を持
つ努力をし、また、過去に報道等がなされていた他社での食を巡る不祥事事例
から学ぶべきであったとも言える。会社の業績至上主義的な雰囲気の中、誤っ
た表示の予防という、どちらかといえばディフェンスの分野は関心を呼びにく
いものではあろうが、常に顧客の立場で考え、間違いは正す意識を持つべきで
あったところ、その点の意識が低い者が多かったと考えられる。
59
(5)企業規模に対応した表示及び衛生専門家の不在
阪急阪神ホテルズの規模及びレベルの企業の場合、それに応じたレベルの表示
及び衛生の専門家が求められるが、その育成が十分でなかったことが背景にあ
るものと考えられる。
第9 現時点で実施されている対策について
現時点で阪急阪神ホテルズにおいて、次のようなメニュー表示に関する対策
がなされている。これらの再発防止策は、いずれもメニューに誤った表示が生
じることの抑止と、万が一誤った表示が発生した場合の短期間の除去という面
で効果が期待できる。
(1)平成25年10月10日に、暫定ガイドラインが作成されている。この
暫定ガイドラインは直営ホテルのすべてのレストラン、セグメント会社(株式会
社阪急阪神レストランズを含む)のすべての直営レストランに配布され、平成
25年12月10日付けの追加版も同様に配布されている。
(2)平成25年9月11日、12日、25日にメニュー表示問題に焦点を絞
った講習会を実施し、関連部門の役職者および責任者を中心として合計259
名(社員・契約社員の約13%)がこれを受講した。
(3)社内機構改革として、社長直轄の品質管理委員会を設置しメニュー適正
表示をはじめとする品質管理の徹底に向けた諸施策を設定し、その意思決定を
行わしめることにした。また、品質管理委員会の意思決定に基づき、各事業所
の点検や従業員の教育等を行う「品質管理」なる部署を事業統括本部総務人事
部内に設置した(その後、食や施設の安心・安全を統括する「食品・施設統括
部」を設置し、「品質管理」を同部に移管した。)。「品質管理」は、品質管
理委員会の決定するチェック体制を実行し、チェックにより問題のあるときは、
当該メニューの提供を停止する権限を有し、定期・不定期の巡回・点検、その
他表示に問題に関する指導・教育を行うことにした。
(4)ホテルの調理部門・サービス部門・購買部門の連携不足から、不適切な
メニュー表示が発生したことを受け、調理部門・サービス部門・購買部門の連
携を強化すると共に、メニューが完成段階に至ったときの最終確認・承認がル
ール化されていなかったことに鑑み、総支配人・調理部門長・サービス部門長・
管理部門長の確認・承認を経て、メニューを完成させるルールを設定した。
第10 今後のとるべき対策についての提言
当委員会は、今回の調査結果を踏まえ、以下の再発防止策を提言する。
1 組織体制の見直し
当委員会の調査報告書を踏まえ、会社の組織体制について、更なる見直しを
60
検討されたい。
(1)内部統制の構築、監視機能の充実
取締役会において、メニューにおいて誤った表示がなされないための内部統
制システムを適切に構築するよう徹底した議論を行うよう求めるとともに、レ
ストランメニューという、ともすれば取締役会では議論の対象にならないアイ
テムについても、品質管理委員会等を通じて、適切に監視できる体制を整えら
れたい。
(2)企業行動規範の作成
コンプライアンス経営が確立するためには、社会の要請・ニーズに応え、社
会的責任を果たしていく上で企業行動のあり方を明示し、従業員一人一人が正
しく行動しなければならない。平成20年3月に農林水産省から「食品業界信
頼性向上自主行動計画」が報告されているが、そこで示された食品業界の信頼
性向上のための「5つの基本原則」が参考になるであろう。
(3)内部監査や内部通報制度の活性化
従来から内部通報制度は存在しているとのことであるが、それ以外にも、す
べての従業員が担当部門を問わず直接に新設された品質管理部門に意見が伝え
られるようなシステムを構築して積極的な活用を促すことが望まれる。品質管
理部門において、メニューについて内部監査を実施する予定とのことであるの
で、これらのシステムを十分に活用されたい。
(4)社内決裁に関する体制整備・運用
メニュー表示に関する社内決裁体制を策定し、コンピューターシステムの構
築も視野に入れ、効率的な体制を目指すことが望まれる。その際には、メニュ
ー決定において関係部門の情報共有が十分に図れるように留意するべきである。
(5)合理的な品質管理手法の確立と精度の向上
合理的な品質管理手法の確立を目指すことと、そのためにはメニュー表示や
食品衛生に関する専門職を養成することに配慮することが必要である。また、
当ホテルには飲食店として料理を提供するだけではなく、加工食品の製造販売
も行っていることから、これら業務においては、衛生管理と適切な品質表示作
成が必要である。品目によってはその品質表示作成が現場では対応が十分にで
きていない点もうかがえるので、特に専門職の養成や活用が必要である。
(6)実のある定期的、継続的な監視
メニュー表示について品質管理部門が定期的な監査を行う体制を構築しつつ
あるとの報告を受けている。実のある監査を行う上で留意するべき事項として、
順不同で指摘する。
①料理メニューに関する情報を、品質管理部門が一元管理できるシステムにす
る。
61
②監査を行うときの具体的な手法について検討を重ねる。
③定期監査を行うに際して、適切な期間・時期を設定する。
④メニュー表示はアレルギー対策や食品衛生と重複する問題であるから、品質
管理部門ではこれらの問題も視野に入れる。
⑤内部監査だけでは、当分の間リスクがあるというのであれば、少なくともメ
ニュー表示・食品表示に関して外部に意見を照会できるシステムやいわゆる外
部監査システムを検討するべきである。
(7)人員の適正配置
今回問題が発生したレストランでは、専任シェフや専任マネージャーが配置
されていない場合があった。メニュー表示に関しては、今後、監査も含めて対
応することが要請されるので無理な管理体制にならないよう配慮されたい。
2 コンプライアンス教育の徹底に関連して
(1)従業員に対する食品表示を含めた実効性のあるコンプライアンス研修・
教育の実施等
極めて簡単な内容でかまわないので、新入社員研修や階層別研修・教育の際
に食品衛生・食品表示に関する法律の存在・ガイドライン等の存在について教
育を行う。
(2)社内規程・マニュアルの改定と周知徹底
メニュー表示の自社ガイドライン、メニュー作成に関する社内規程、内部監
査制度について適切な時期に改定を行い、その際には改定内容を周知徹底させ
る。
(3)職業倫理の明確化
ハイグレードのホテルは、メニュー表示における法令遵守はもちろんのこと、
改めて職業倫理を明確にし、その徹底もはかるべきである。
(4)基礎的な知識の底上げ
ネットなどで情報が氾濫している社会では、消費者・顧客のメニューや食品
への関心は高く、専門家同様の知識を有している人もいる。このような現象に
対応するため従業員の知識・教養を底上げするための方策を検討するべきであ
る。
3 メニュー表示ルールに関連して
(1)ガイドラインの充実と周知徹底
現在の暫定ガイドラインを充実させ、調理・サービスの現場に周知徹底させ
ることが重要である。なお、現在の暫定ガイドラインは景品表示法などの法律
やガイドラインを意識して作成されているが、ホテル業という業態の本質に立
ち返り、消費者目線・顧客目線の観点が盛り込まれているかを配慮されたい。
(2)産地、銘柄表示の際の確認徹底(安易な表記禁止、検品チェック体制の
62
確立)
産地の誤記、銘柄を誤認することは、直ちにメニューの誤った表示につなが
る。メニューに産地・銘柄の表示をするときには、その根拠を明らかにするこ
と、根拠を裏付ける証票があること、メニュー実施後もそれが守られているこ
とに注意するべきである。
(3)安易な冠つき表示の禁止、制限
産地や「特選」「特上」など、優良誤認表示を引き起こしやすい表示は原則
禁止し、あらかじめ定めるガイドラインに従う場合など一定の要件をみたした
ときのみ例外的に使用を認める方式にするべきである。
また、今回問題になった「手ごね」「手づくり」などの表示、「鮮魚」など
多義的な表示をする場合は、細心の注意を払って行うようにすべきである。
(4)ヒューマンエラー防止のための多重確認
全社アンケートからも多くの提言があったものであるが、メニュー決定、表
示決定においては、関係する各担当者の間で確認書面を回付して決済をするな
ど、多重確認のシステムが必要である。また、メニュー表示に至った検討過程
を一定の範囲で文書化することも必要である。ヒューマンエラーは起こりうる
ことだから、エラーが生じたときになるべく短期間にこれを発見し回復しうる
方法も検討するべきである。
(5)提供商品とメニュー表示に違いが生じた場合の対応の徹底
このような場合のサービス担当者の対応についてマニュアル化しておくべき
である。顧客に対してどのように対応するのか、メニュー表示において変更を
加えるべきなのか、宴会用のチラシについてはどうするかなどの方針を決めて
おくべきである。
(6)全メニューにおける食材規格書におけるメニュー管理の徹底
これも(4)同様に全社アンケートによって指摘があったものであるが、従
来からアレルギーチェック対策のため、納入業者から規格書の提出を受けてい
たのであるから、同様に徹底して実施がなされるべきである。
第11 所感(まとめに代えて)
最後に、本件調査を通じての当委員会の所感を述べておく。
1 表示問題への評価について
(1)今回の表示問題の個々の事例における問題点などは既に述べたとおりで
あり、阪急阪神ホテルズのメニュー作成に当たり、食材や表示への知識不足や、
それを見過ごしていたことなどに問題があった点は事実で、また納入食材のチ
ェック不備もあったことから、その改善が求められるのは当然であるし、消費
者庁の措置命令自体も、厳粛に受け止めるべきである。
63
(2)しかしながら、今回の阪急阪神ホテルズでの表示問題の個別事例を冷静
に評価した結果であるが、報道されている他社の問題表示との比較など厳密に
はできないものの、今回の50余りの事例において、食材の産地が異なってい
たという事例は、霧島産のポーク、沖縄まーさん豚、九条ねぎ、信州そばであ
り、他の事例は、食材そのものに誤りや偽りはないものの、その表現が正しい
表示ではなかったもの(牛脂注入、有機野菜、手捏ねなど)、厳格な定義や意
味に反する表示となっているもの(鮮魚、芝エビ、地鶏、シャンパンなど)と
に分類され、後者では特に鮮魚の事例が13を占めている。そして、このうち、
一般的には悪質とされる前者(産地が誤っている事例)に関して言えば、霧島
産ポーク、沖縄まーさん豚は阪急阪神ホテルズに偽って納入した業者側に主た
る責任があると認められ、九条ねぎについては、当該メニューなるものが通年
のパーティプランであって、季節に合わせて食材を変更することが予定にある
など、産地を偽ったとされる他の事例と必ずしも同等に議論すべきものでない
と認められる(ただし、信州そばの事例は、相当にお粗末ではある。)。
以上のような事例について、阪急阪神ホテルズが、他社の表示問題を受けて
ではあるが、自主的に、しかも相当に徹底した調査を実施し、弁護士の意見な
ども踏まえた上で、問題事例の範囲をあえて広げて消費者庁に届けるとともに、
それを自ら公表したという同社の姿勢は、率直に評価されるべきではないかと
思われる。
また、顧客への代金の返還についても、議論はあり得たであろうが、顧客へ
の納得を得る意味から、直ちに対応しており、これに取り組んだ担当従業員の
労苦も鑑みると、会社の一つの姿勢として、相応の評価は可能ではないかと思
われる。
これらの事情をしんしゃくしないで、過度に非難をすることには、やや違和
感を覚えるというのが委員会としての率直な感想である。
2 偽装について
次に、今回の表示の問題については、マスコミ等からは食材の偽装ではない
かという追及がなされ、これを誤表示と述べた点が問題視されていたようなの
で、当委員会として、この点に関して若干の分析をしたので触れておきたい。
そもそも「偽装」という言葉の法的な定義が明確でなく、この用語の定義を
整理することなく議論をすると混乱する原因となる。
マスコミ等で用いる偽装という用語も一義的でないと思われるが、およそ食
材とメニュー表示との間に相違があるという客観的事実がある場合、その事態
を生じさせた者の主観を問わずに、これを偽装と表現することもあり得よう。
消費者の立場からみると、客観的に異なる商品を提供されたこと自体が被害だ
とも言えることから、そのような表現の使用を否定できないであろうし、偽装
64
をそのような意味で定義づけすることもあり得るであろう。そういった視点か
らの定義からすれば、今回の阪急阪神ホテルズでの事例においても偽装であっ
たと言われてもやむを得ない。
しかし、そのような理解もあり得ることを前提としつつ、別の定義での評価
もしておくべきと考える。つまり、偽装の定義として、「故意」に、つまり食
材とメニュー表示との間に客観的な相違があることを知っていて(食材が客観
的に何であるかを認識し、かつ認識している食材と表示や説明が一致しないこ
とも認識していること)、この違いの事実を知らない顧客に料理を提供し(顧
客が誤認すること及び誤認したため注文したという因果関係を認識しているこ
と)、その代金相当の利益を不当に奪う行為(不当な利益取得)という要件を
満たすものとする見方である。
法的には、むしろ、このような故意を重視して偽装と表現するのがむしろ一
般的ではあろう。
このような定義を前提にした上で、今回の事例を検討するとき、当委員会と
しては、個々の事例に関して、偽装と断定し得るまでの事例はなかったと考え
ている。
もっとも、偽装に当たるかどうかを議論すること自体、特に意味があること
ではないであろうし、いずれにしろ、今回の事例は、客観的には食材とメニュ
ー表示が一致せず、あるいは表示が不適切なものであったことは事実であり、
また、表示問題の背景に業界の競争と会社の利益追及の姿勢と全く関係がなか
ったと言えないと思われ、これらの不適切さについては、本文中で指摘したつ
もりである。
3 おわりに
当委員会としては、阪急阪神ホテルズが、今回の一連の問題を真摯に受け止
め、本報告書で指摘した事項をもとに、その再発防止に全社を挙げて取り組ま
れることを切に願うものである。その際には、阪急阪神ホテルズの企業理念で
ある、「心豊かな社会の実現に向けて~私たちは、常に変革に取り組み、『安
心・快適』そして『夢・感動』をお届けすることで、心豊かな社会の実現に貢
献します。」を、再度胸に刻み込み、行動指針にもある「法令や社内規則を遵
守し、公正な企業活動を行う」ということを改めて確認されることを求めるも
のである。
当委員会が行った全社員へのアンケートでは、実に多くの社員が真剣に回答
に応じておられ、しかも、その多くの方が、今後、お客様からの信頼回復に努
めるという決意を述べておられることに心から感心している。このような多く
の社員の存在については頼もしいというほかなく、その信頼回復も早晩なされ
得るものと感じている。
65
そして、単に元通りの信頼の取戻しだけではなく、顧客や市民からこれまで
以上に心から信頼を寄せられる新しい「阪急阪神ホテルズブランド」へと飛躍
していき、真にナンバーワンのホテルグループとして発展する契機にして頂く
ことを期待して、本報告書を提出するものである。
以
上
添付資料
別紙第1
別紙第2
別紙第3
別紙第4
直営ホテルに関する調査対象品目一覧
消費者庁措置命令内容一覧(要約)
阪急阪神ホテルズが運営するホテル又はレストラン
阪急阪神レストランズにおいてメニュー表示と異なった
食材を提供した内容の一覧
66
【別紙第1】
直営ホテルに関する調査対象品目一覧
N
O
施設名
提供場所等
メニュー名
表示(上段)・実際(下段)
鮮魚
1
第一ホテル東京
シーフォート
グランカフェ
鮮魚のムニエル
上段を冷凍保存したもの
2
3
4
5
6
7
吉祥寺
第一ホテル
ホテル阪急
インター
ナショナル
一寿し
ルームサービス
ホテル阪急
インター
ナショナル
春蘭門
大阪
新阪急
ホテル
宴会場
大阪
新阪急
ホテル
ビーツ
大阪
新阪急
ホテル
モンスレー
旬鮮魚
お造り
旬鮮魚のお造り三種盛合せ
鮮魚三種盛合せ
表示媒体
ホームページ
チラシ
チラシ拡大ポスター
料理台メニュー
メニュー
季刊誌
メニュー
三種の内一種は冷凍保存したもの
①フレッシュオレンジジュース
②フレッシュグレープフルーツジュース
フレッシュオレンジジュース
フレッシュグレープフルーツジュース
メニュー
①H/Vフロリダフローズンオレンジジュース
②H/Vフロリダフローズングレープフルーツジュース
霧島ポークの
上海式醤油煮込み
(上海名物霧島ポークの
醤油煮込み)
霧島ポーク
チラシ
神戸ポーク
芝海老
芝海老とイカの炒め物
バナメイ海老
パンフレット
メニュー
ビーフステーキ
ビーフステーキ
フライドポテト添え
チラシ
牛脂注入肉
(オーストラリア産ストリップロイン)
鮮魚
魚市場直送の鮮魚を
X.O醤炒めで
宿泊者専用チラシ
上段を冷凍保存したもの
8
大阪
新阪急
ホテル
レインボー
ビーフオムライス
自然卵の半熟オムライスに
黒毛和牛ロース肉が入った
デミグラスソースを
自然卵
メニュー
液卵
津軽地鶏
9
津軽地鶏のマリネ 胡麻風味
大阪
新阪急
ホテル
シィーファー
12
九条ねぎ
若鶏の照り焼き
九条ねぎのロティと共に
10
11
チラシ
津軽鶏
チラシ
青ネギ、白ネギ
津軽地鶏
大阪
新阪急
ホテル
シィーファー
大阪
新阪急
ホテル
シィーファー
津軽地鶏のマリネ イタリア風
チラシ
津軽鶏
津軽地鶏
柔らか地鶏のバンバンジー
津軽鶏
67
メニュー
チラシ
【別紙第1】
N
O
施設名
提供場所等
メニュー名
表示(上段)・実際(下段)
大阪
新阪急
ホテル
シィーファー
マンゴースムージー
ミルク仕立て
フレッシュマンゴー
13
(フレッシュマンゴーとバニラアイスを
ブレンドしました)
冷凍マンゴー
大阪
新阪急
ホテル
苺とチョコの
シュー・ア・ラ・モード
手作りチョコソース
シィーファー
14
15
大阪
新阪急
ホテル
メニュー
…手作りチョコソースとあわせて
…
メニュー
ハーシーチョコシロップ
レッドキャビア
関西文化サロン
表示媒体
クラゲのレッドキャビア添え
飛び魚の卵
チラシ
(着席用・立食用の2種)
ポスター
(チラシと同内容)
有機野菜
16
ホテル
阪神
香虎
特選飲茶コース
有機野菜のプチサラダと
前菜二種盛り合わせ
メニュー
6種(レタス、トレビス、キウリ、チェリートマト、ハスイモ、
水菜)の内、水菜
ステーキ
宝塚
ホテル
宴会場
宝塚
ホテル
くすのき
・デューク
フレッシュオレンジジュース
19
宝塚
ホテル
ザ・ガーデン
柔らか牛肉の鉄板焼き
ナムルとコチジャンライス添え
宝塚
大劇場
フェリエ
鮮魚とオマール海老の
ミルフィーユ
鮮魚
20
アンチョビ入りヴァンブランソース
冷凍アブラカレイ皮付フィレ
17
18
(宝塚ホテル運営)
やわらかビーフソテー
赤ワインソース
チラシ
牛脂注入肉(ニュージランド産ロースカブリ)
フレッシュオレンジジュース
メニュー
丸源オレンジジュース
柔らか牛肉
牛脂注入肉
(ニュージランド産ロースカブリ)
チラシ
メニュー
サイコロステーキ
21
宝塚
大劇場
サイコロステーキと鮮魚の
フリッター
(宝塚ホテル運営)
完熟トマトのフォンデュソース
フェリエ
牛脂注入肉
(オーストラリア産ストリップロイン)
メニュー
鮮魚
冷凍スズキフィレ
22
関西学院会館
23
阪神競馬場
ポプラ
(宝塚ホテル運営)
フローラ
(宝塚ホテル運営)
和洋御膳(ステーキ)
※土日祝日のみ手書き表示
手捏ね煮込みハンバーグ定
食
牛脂注入肉
(ニュージランド産ロースポーション)
土日祝日のみ入口ボードに
和洋御膳の内訳を手書き表
示
(メニューには和洋御膳とのみ
表示)
手捏ねハンバーグ
メニュー
テーブルマーク社ガストロハンバーグ
鮮魚
鮮魚と六甲山ホテル
自家菜園野菜の天婦羅
24
ステーキ
冷開きキス40入りおよび尾付のばし海老
市販野菜
25
26
六甲山
ホテル
宴会場
海の幸とお肉の炭火焼
小山農園の焼き野菜を添えて
六甲山ホテル自家菜園野菜
の
フレッシュサラダ
68
小山農園の焼き野菜
(小山農園産+市販)野菜
自家菜園野菜
自家菜園野菜+市販野菜
メニュー
【別紙第1】
N
O
施設名
提供場所等
メニュー名
表示(上段)・実際(下段)
自家菜園野菜
スモークサーモン
自家菜園のサラダを添えて
27
表示媒体
自家菜園野菜+市販野菜
鮮魚
鮮魚のエスカベシュ
レモン風味
28
六甲山
ホテル
①冷凍鯛フィレ1.5kg級
②冷凍すずきフィレ中国産3L
宴会場
29
鮮魚
チラシ
ホームページ
鮮魚のテリーヌ
①冷凍サーモン②冷凍ほたて貝柱
鮮魚
鮮魚のポワレと温野菜
サルサソース
30
①冷凍鯛フィレ1.5kg級
②冷凍すずきフィレ中国産3L
自家菜園野菜
ノルウェー産サーモンマリネ
自家菜園のサラダを添えて
31
自家菜園+市販野菜
鮮魚
鮮魚のエスカベシュ
バルサミコ風味
32
六甲山
ホテル
①冷凍鯛フィレ1.5kg級
②冷凍すずきフィレ中国産3L
宴会場
チラシ
ホームページ
鮮魚
鮮魚のポワレとブールブラン
香草風味
33
①冷凍鯛フィレ1.5kg級
②冷凍すずきフィレ中国産3L
34
六甲山
ホテル
宴会場
レトワール
六甲山
ホテル
チラシ
ホームページ
メニュー
自家菜園野菜
自家菜園野菜+市販野菜
自家菜園野菜
ホテル自家菜園のサラダ
オリジナルドレッシング
メニュー
自家菜園野菜+市販野菜
オードブルバリエ レトワール
風
ホテル菜園の無農薬野菜を
添えて
38
39
地元産野菜+市販野菜
ホテル自家菜園のサラダ
オリジナルヴィネグレットで
六甲山
ホテル
自家菜園+市販
レトワール
36
37
自家菜園ハーブ
地元産野菜
神戸牛フィレ肉又は
ロース肉のグリエ
地元産野菜を添えて
35
六甲山
ホテル
ノルウェー産サーモンマリネ
自家菜園ハーブサラダ添え
ホテル菜園無農薬野菜
ホテル菜園無農薬野菜+市販野菜
レトワール
メニュー
鮮魚のポワレ
サフラン風味のスープ仕立て
鮮魚
上段を冷凍保存したもの
69
【別紙第1】
N
O
施設名
提供場所等
40
六甲山
ホテル
43
44
45
六甲山
ホテル
ホテル菜園無農薬野菜
トップオブロッ
コー
ホテル菜園無農薬野菜+市販野菜
メニュー
地元産野菜+市販野菜
自家菜園野菜
パルマ産生ハムと
自家菜園のサラダ
メニュー
自家菜園野菜+市販野菜
①Fresh Orange Juice
②Fresh Grapefruit Juice
トップオブロッ
コー
Fresh Orange Juice
Fresh Grapefruit Juice
六甲山
ホテル
ジンギスカン
ホテル菜園の野菜を使った
シェフの気まぐれサラダ
京都
新阪急
ホテル
ロイン
医学部附属
病院内
大阪市立大学
医学部附属
病院内
メニュー
冷オレンジジュース(ストレート)
冷グレープフルーツジュース(ストレート)
ホテル菜園の野菜
メニュー
ホテル菜園野菜+市販野菜
鮮魚
鮮魚の鉄板焼き
メニュー
上段を冷凍保存したもの
パティオ
(レストラン事業部
運営)
沖縄まーさん豚
ひと口豚カツ御膳
パティオ
(レストラン事業部
運営)
天ざるそば(信州)
沖縄まーさん豚
メニュー
他府県産豚
そば(信州)
メニュー
冷凍茹でそば
シャンパン
デュック ド パリ
48
千里
阪急
ホテル
49
千里
阪急
ホテル
宴会場
50
千里
阪急
ホテル
ボナージュ
千里
阪急
ホテル
表示媒体
地元産野菜
六甲山
ホテル
47
51
レトワール風オードブル
ホテル菜園の無農薬サラダを
添えて
オマール海老のポアレ
季節の地元野菜と共に
大阪市立大学
46
表示(上段)・実際(下段)
レトワール
41
42
メニュー名
宴会場
(婚礼 ドリンクプランAのうち)
シャンパン
デュック ド パリ
スパークリングワイン
デュック ド パリ
シャンパン
(婚礼 ドリンクプランBのうち) ヴィニデルサ ドゥーシェ・シュバリエ ブリュット
シャンパン
ヴィニデルサ ドゥーシェ・シュバリエ
ブリュット
スパークリングワイン
ヴィニデルサ ドゥーシェ・シュバリエ ブリュット
卓上メニュー
リーフレット
卓上メニュー
リーフレット
フレッシュオレンジジュース
フレッシュオレンジジュース
メニュー
丸源オレンジジュース
フレッシュオレンジジュース
さくららうんじ
フレッシュオレンジジュース
メニュー
丸源オレンジジュース
70
【別紙第2】
消費者庁措置命令内容一覧(要約)
【措置命令の要旨】
(1)下表の表示は、一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良である
と示すものであり、景品表示法に違反するものであることなどを、一
般消費者に周知徹底すること。
(2)今後同様の表示が行なわれないよう必要な措置を講じ、これを役員・
従業員に周知徹底すること。
(3)今後同様の表示を行なうことにより、一般の消費者に対し実際のもの
よりも著しく優良であると示す表示をしないこと。
(4)
(1)の周知徹底及び(2)の措置について、速やかに消費者庁長官に
報告すること。
<措置命令の対象>(要約版)
ホテル
表示内容
施設名
ホテル阪神
香虎
有機野菜のプチサラダと前菜二種盛合せ
大阪新阪急ホテル
宴会場
芝海老とイカの炒め物
同上
ビーツ
ビーフステーキ
同上
シイーファー
津軽地鶏のマリネ 胡麻風味
同上
同上
若鶏の照り焼き
同上
同上
津軽地鶏のマリネ イタリア風
同上
同上
柔らか地鶏のバンバンジー
同上
同上
苺とチョコのシュー ア・ラ・モード
手作りチョコソースとあわせて
千里阪急ホテル
宴会場
婚礼 Drink Plan A
シャンパン
同上
同上
婚礼 Drink Plan B
シャンパン
宝塚ホテル
宴会場
やわらかビーフソテー赤ワインソース
同上
ザ・ガーデン
柔らか牛肉の鉄板焼きナムルとコチジャンライス添え
71
フライドポテト添え
九条ねぎのロティと共に
【別紙第3】
阪急阪神ホテルズが運営するホテル又はレストラン
番
号
施設名
所在地
1
第一ホテル東京
東京都港区新橋 1-2-6
2
第一ホテルアネックス
東京都千代田区内幸町 1-5-2
3
第一ホテル東京シーフォート
東京都品川区東品川 2-3-15
4
吉祥寺第一ホテル
東京都武蔵野市吉祥寺本町 2-4-14
5
ホテル阪急インターナショナル
大阪府大阪市北区茶屋町 19-19
6
大阪新阪急ホテル
大阪府大阪市北区芝田 1-1-35
7
新阪急ホテルアネックス
大阪府大阪市北区芝田 1-8-1
8
ホテル阪神
大阪府大阪市福島区福島 5-6-16
直営
ホテ
ル
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
レストラ
ン
調査
対象
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
9
千里阪急ホテル
大阪府豊中市新千里東町 2-1-D-1
10
ホテル阪急エキスポパーク
大阪府吹田市千里万博公園 1-5
11
宝塚ホテル
兵庫県宝塚市梅野町 1-46
12
六甲山ホテル
13
京都新阪急ホテル
14
レム日比谷
兵庫県神戸市灘区六甲町南六甲 1034
京都市下京区塩小路通新町東入ル東塩小路
町 579
東京都千代田区有楽町 1-2-1
15
レム秋葉原
東京都千代田区神田佐久間町 1-6-5
16
レム新大阪
大阪府大阪市淀川区宮原 1-1-1
17
レム鹿児島
鹿児島県鹿児島市東千石町 1-32
18
阪神甲子園球場
ロイヤルスイート
兵庫県西宮市甲子園町 1-82
○
○
19
大阪大学大学院工学研究科
レストラン ラ・シェーナ
大阪府吹田市山田丘 2-1
○
○
20
宝塚歌劇大劇場
レストラン
兵庫県宝塚市栄町 1-1-57
○
○
21
関西学院会館
レストラン ポプラ
兵庫県西宮市上ケ原 1-1-155
○
○
22
阪神競馬場
レストラン
兵庫県宝塚市駒の町 1-1
○
○
23
山陽自動車道三木サービスエリ
ア宝塚ホテルレストラン
兵庫県三木市大村字大門 1067-110
○
○
24
武庫ノ台ゴルフコース
宝塚ホテルレストラン
兵庫県神戸市北区道場町生野字北山
117-6-16
○
○
25
関西テレビ
レストラン
大阪府大阪市北区扇町 2-1-7
○
○
26
西宮カントリー倶楽部
レストラン
兵庫県西宮仁川町 6-1
○
○
27
兵庫医科大学病院
レストラン リビエール
兵庫医科大学病院 10 号館 10 階
○
○
28
大阪市大医学部付属病院
レストラン パティオ
大阪府大阪市阿倍野区旭町 1-5-7
○
○
29
阪急百貨店
ダイニング&バー 美味旬菜
大阪府大阪市北区角田町 8-7
○
○
72
○
○
○
○
○
○
【別紙第4】
阪急阪神レストランズにおいてメニュー表示と異なった食材を提供した内容の一覧
番
号
施設名
メニュー名
表示と実際
表示媒体
表示期間
和牛
1
あせんぼ 母屋・
和牛ヘレのあぶり焼き
離れ
メニュー
2009年11月1日
∼ 2013年10月20日
メニュー
2013年9月19日
∼ 2013年10月18日
メニュー
2013年9月19日
∼ 2013年10月18日
メニュー
(日替わりメニュー)
2013年4月1日
∼ 2013年10月24日
国産牛
地鶏卵
2
粋房 ゆふな
丹後地鶏卵の出し巻き
丹後の特定養鶏場の直
送卵
地鶏卵
3
粋房 ゆふな
丹後地鶏卵の親子丼
(お汁物付)
丹後の特定養鶏場の直
送卵
黒豚
4
御鷹茶屋
黒豚の天ぷら丼定食
国産豚上ロース
地鶏
5
御鷹茶屋
地鶏ときのこのつけ麺
(あん仕立て)
メニュー
(季節メニュー)
宮崎産鶏肉
73
2013年10月11日 ∼ 2013年10月23日
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