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蛋白質核酸酵素:14-3-3蛋白質ファミリー : その構造とシグナル伝達系で
● 総 説● 14-3-3 蛋白質 ファミ リー その構造とシグナル伝達系での役割 新開史子 ・市村 徹 ・礒辺俊明 14-3-3蛋 白質 は,動 物,植 物,酵 母 に至 る真核生物 に広く分 布 し,蛋 白質の リン酸 化/ Database Center for Life Science Online Service 脱 リン酸化反応 に依存 した さまざまな シグナル伝 達系での 役割が推 定され る蛋 白質 フ ァミ リー である。そ の構造 は互 いに逆平行 に配置 され た9つ の αヘ リックスによって形成され る グローブ状の"溝"を もつ分子量 約28Kの サ ブユニッ トの2量 体 である。 この ファミリ ーは ,モ ノア ミン合成系の 酵素か ら核 内因子 に至るま で,多 くの標 的酵素,蛋 白質と複合 体を 形成するが,そ の標 的にはRasの 上流,下 流 に位 置するBcr,Bcr-Abl,ポ ウイルスMT抗 原,Raf-1キ ナーゼ などのが ん関連遺伝 子や,cdc25ホ リオーマ スフ ァターゼ,イ ノシ トール3キ ナーゼな ど,受 容体 チ ロシンキナ ーゼ に連結 した 一連 の分子 が含 まれ る。 14-3-3蛋 白質 フ ァミ リー は標 的蛋 白質の リン酸化を契 機と してこれ に結合 し,そ の活 性を 調節 し,あ るいは新たな蛋 白質複合体 を形成することで,細 胞の増殖と分化,細 胞周 期,細 胞 の運動や形態 変化,あ るい は細 胞機能 にかかわる 多彩な シグナルを調 節 していると推定 される。 TKey words は じめ に14-3-3蛋 【14-3-3蛋 白 質 】 【シ グ ナ ル 伝 達 】 【が ん遺 伝 子 】 【リン 酸 化 】 白 質[→ 今 月 のKey Words(p.380)] は脳 に 多 量 に存 在 す る こ と(可 溶 性 蛋 白質 の 約1%), が脳 に 豊 富 な酸 性 蛋 白 質 と して記 述 され たの は1967年, モ ノ ア ミ ン を伝 達 物 質 と し て い な い神 経 細 胞 や,各 命名 は古典 的な蛋 白質分 離法 で の分画 番号 に よって い の 臓 器,培 る。 神 経 細 胞 に局 在 し,軸 索 輸 送 に よ っ て神 経 終 末 に ァ ミ リー に は モ ノ ア ミ ン合 成 の調 節 以 外 の 機 能 が あ る 輸 送 され る こ とが 知 られ て い た が,そ の で は な い か と推 定 した 。 こ の推 定 は,14-3-3が の構造 や生 理活 性 は長 年 に わ た っ て 不 明 で あ っ た。1987年,筆 この 蛋 白 質 がCa2+/カ ゼII(CaMKII)の ル モ デ ュ リン依 存 性 蛋 白 質 キナ ー す さ ま ざ ま な 現 象 に か か わ っ て い る こ と を示 唆 す る そ 活 性 に依 存 して モ ノ ア ミ ン生 合 成 Toshiaki Faculty Toru Ichimura, Protein Niigata Family:The 白質 くの酵 素 や 蛋 白 質 が この フ ァ ミ リー の 標 的 と し て 同 定 され た 。 こ う し た研 究 の 流 れ の な か で,14-3-3がRaf-1キ ー ゼ の 活 性 制 御 を 通 じてMAPキ 東 京 都 立 大 学 理 学 部 化 学 科 生 物 化 学(〒192-03東 Tokyo Metropolitan 新 潟 大 学 理 学 部 化 学 科(〒951新 University, Igarashi, 14-3-3 Isobe, of Science, の 後 の 研 究 に よ っ て 裏 づ け られ,多 れ らの 構 造 を 決 定 した2∼4)。一 方,14-3-3蛋 Shinkai, Biochemistry, 動物 だ け で な く植 物 や 酵 母 に も存 在 し,こ れ ら の生 物 が 示 ミ リー と して 存 在 す る こ とを 示 す と と も に,そ Fumiko 養 細 胞 に も検 出 され る こ とか ら5∼8),こ の フ 者 らは を調 節 す る 因 子 で あ る こ と を明 らか に し1),こ れ が フ ァ 分子 の1次 種 University, Minamiosawa, 潟 市 五 十嵐 二 の 町8050) [Department [Department 192-03, Japan] 京 都 八 王 子 市 南 大 沢1-1) Hachioji, Tokyo of Chemistry, ナ ナ ー ゼ カ ス ケ ー ドを of Faculty of Science, Niigata 951, Japan] Structure and Function in Cell Signaling Pathway 313 2 蛋 白質 核酸 酵素 Vol.41 No.4 調 節 して い る可 能 性 が1994年 れ に 続 いてBcr,Bcr-Abl,ポ (1996) になっ て報 告 され9∼13),こ リオ ーマ ウイ ルスMT抗 され て い る 。 また,ラ 現 パ タ ー ン は サ ブ ユ ニ ッ トの 種 類 に よ り異 な っ て お り, 原 な ど の が ん 関 連 遺 伝 子 と も細 胞 内 で 複 合 体 を形 成 し γ鎖 は と りわ け脳 神 経 系 に特 異 的 に 発 現 して い る7)。σ てい る こ とが 相 次 い で報 告 され た14,15)。さ らに最 近 で は, 鎖 も ま た上 皮 細 胞 に 特 異 的 で あ る こ と が報 告 され て い 細 胞 周 期 の調 節 にか か わ るcdc25ホ る19)。一 方,オ オ ム ギ な どの植 物 で は,ウ イ ル ス感 染 に よ って14-3-3の 発 現 量 が 顕 著 に増 大 す る こ とが 知 られ ス フ ァター ゼや,細 胞 の 運 動 や 形 態 変 化 に か か わ る イ ノ シ トー ル3キ ナー ゼ と も複 合 体 を形 成 し て い る こ とが 報 告 され て16,17),こ て お り20),この フ ァ ミ リーが 病 原 体 に対 す る植 物 の 刺 激- の フ ァ ミ リー が 細 胞 膜 の 受 容 体 キ ナ ー ゼ か ら核 へ 至 る 応 答 系 の 一 翼 を 担 っ て い る もの と推 定 さ れ て い る。 14-3-3に 細 胞 内 シ グ ナ ル 伝 達 系 の 中 枢 に 深 くか か わ っ て い る こ とが 明 らか に な っ て き た。 本 稿 で は,最 近 発 表 さ れ た 14-3-3蛋 Database Center for Life Science Online Service ッ ト発 育 過 程 で の組 織 ご と の発 白 質 のX線 結 晶 解 析 の結 果 を含 む この蛋 白質 対 す る特 異 抗 体 に よ る脳 の組 織 化 学 で は, 神 経 細 胞 の 軸 索 や 樹 状 突 起 を含 む細 胞 質 が 明 瞭 に染 色 さ れ る 。 一 方,細 胞 分 画 法 な どの 生 化 学 的 方 法 で は, の構 造 ・分 布 ・活 性 と,酵 母 で の 遺 伝 学 的 な解 析 な ど, 14-3-3は 現 在 ま で の研 究 成 果 を 紹 介 し,細 胞 内 シ グ ナ ル 伝 達 系 や 小 胞 体 膜,ゴ に お け る14-3-3蛋 い る21)。細 胞 膜 に結 合 した14-3-3の 白 質 フ ァ ミ リー の役 割 に つ い て 考 察 した 。 主 と して 細 胞 質 に存 在 し,そ の 一 部 は細 胞 膜 質 の 機 能,と ル ジ 体 膜 な ど に結 合 し て い る と さ れ て 存 在 は,こ の蛋 白 りわ け が ん 遺 伝 子 との 関 連 で 注 目 さ れ て お り,そ の 確 認 と膜 上 の 受 容 体 の 同 定 は こ の 分 野 の重 I. 分 布 14-3-3蛋 要 な 課 題 で あ る。 白質 フ ァ ミ リー は,ヒ 乳 類 か ら,ア フ リカ ツ メ ガ エ ル,シ 虫,ア メ ーバ な どの 動 物,オ ロ イ ヌ ナ ズ ナ な ど の 植 物,出 トや ラ ッ トな どの哺 II. 構 造 ョ ウ ジ ョウバ エ,線 オ ム ギ,ホ ウ レ ン ソウ,シ 芽 酵母 や 分裂酵 母 に至 る まで,真 核 生 物 に広 範 囲 に分 布 して い る 。PC12やSf9 1次 構造 1. 14-3-3蛋 量 約28Kの 白 質 の 機 能 単 位 は等 電 点4.6∼5.1,分 子 サ ブ ユ ニ ッ トの2量 体 で あ る 。 ヒ トや ラ ッ な ど,実 験 系 と し て使 用 され る動 物 細 胞 由来 の 各 種 の トな どの 動 物 組 織 で は,現 在 ま で に8種 類 の サ ブ ユ ニ 培 養 細 胞 に も存 在 す るが,大 ッ トが 確 認 さ れ(α ∼ σ),こ の うち α と δ を除 く6種 腸 菌 な どの 原 核 生 物 に は 検 出 さ れ て い な い 。 ラ ッ トな ど の 哺 乳 類 で は,脳 神 経 類 の サ ブ ユ ニ ッ トに つ い て はす べ て ア ミノ 酸 配 列 が 決 系 に特 に 高 濃 度 で 存 在 し,つ い で 副 腎 や 腸 管,リ 定 され て い る 。 また,α ンパ 系 組 織 に比 較 的 多 く存 在 し て い る5,6)。 サ ブ ユニ ッ トに 特 異 的 なcDNAを 用 い たWatanabe と δ は,そ れ ぞ れ リ ン酸 化 さ れ た β と ζ と も報 告 さ れ て い る22)。植 物 で は シ ロ イヌ ナ ズ ナ(Arabidopsis saliana)で5種 類(ν ∼ ω),出 らの 組 織 化 学 的 な研 究 に よ れ ば6∼8,18),脳の14-3-3は, 芽 酵 母(Saccharomyces cerevisiae)や モ ノア ミン を 伝 達 物 質 とす る黒 質-線 条 体 を含 む ほ とん (Schizosaccharomyces pombe)で どす べ て の領 域 に 認 め られ る 。 い ず れ の 領 域 で も,そ BMHI,II;rad24,25)の の 発 現 は神 経 細 胞 に 特 異 的 で,海 て い る 。 これ ら を含 め て,現 在 ま で に ア ミ ノ酸 配 列 が 馬 の錐体細 胞 や小脳 決 定 さ れ た 各 種 生 物 の14-3-3は 多 量 に 発 現 し て い る 。 ラ ッ トの 発 育 過 程 で は,14-3-3 る。 発 現 し,多 くの組 織 で は 成 長 と と も に 発 現 量 が 一 時 的 最 近,筆 14-3-3蛋 れぞれ サ ブ ユ ニ ッ トが 同 定 され プ ル キ ン エ細 胞 な ど,比 較 的 大 型 の 神 経 細 胞 に は特 に は神 経 系 と リ ン パ 系 組 織 を 中 心 に比 較 的 早 期(E13)に 分 裂 酵 母 は2種 類(そ 約40種 類 に及 ん で い 者 ら は デ ー タベ ー ス に登 録 さ れ た これ らの 白 質 の ア ミノ 酸 配 列 を分 析 し,こ の 蛋 白質 フ に増 大 し た の ち 成 体 で 減 少 す る。 さ らに あ る種 の 神 経 ァ ミ リー が 構 造 上,大 細 胞 で は,軸 索 の 伸 長 な ど,神 経 の 分 化 が 活 発 に起 こ る こ と を見 い だ し た(図1)。 第1の っ て い る比 較 的 初 期 の段 階(E13-P1)で の ε鎖 を含 む グ ル ー プ で,こ れ に は植 物 の5種 類 と酵 に増 加 す る こ とか ら,14-3-3の 類,分 314 発 現量 が一時 的 き く2つ の グ ル ー プ に分 類 され グ ル ー プ は,動 物 発 現 が 組 織 や細 胞 の種 母 の2種 類 の分 子 種 も含 まれ る。 第2の グル ー プ は,σ 化 の 時 期 に よ っ て 調 節 さ れ て い る可 能 性 が 指 摘 鎖 と,そ の 他 の サ ブ ユ ニ ッ ト を含 む2つ の サ ブ グル ー 14-3-3蛋 白 質 フ ァ ミ リー の ア ミノ酸 配 列 は相 互 に59∼87%の 3 相 同 性 を も って い る。 驚 くべ き こ と に,植 物 や 酵 母 に存 在 す る分 子 種 も ま た動 物 組 織 の サ ブ ユ ニ ッ トとよ く似 た構 造 を もち,と りわ け ε鎖 と は非 常 に 高 い 相 同 性 を 示 して い る(73∼75 %)。 す な わ ち,14-3-3の ア ミノ酸 配 列 は生 物 種 を こ え て 高 度 に 保 存 さ れ て い る 。 ま た あ る サ ブ ユ ニ ッ トの 配 列 は,同 一 の 生 物 に 存 在 す る別 の サ ブユ ニ ッ トよ り も, む し ろ ほ か の 生 物 に 存 在 す る 対 応 す る サ ブ ユ ニ ッ トの 配 列 に よ く似 て い る 。 この こ と は,生 物 進 化 の 過 程 で 分 岐 し た サ ブ ユ ニ ッ トが そ れ ぞ れ独 自 の 機 能 を 獲 得 し, そ れ ぞ れ 独 自 に 進 化 し て き た こ と を示 し て お り,た え ば後 述 す る酵 母 で の14-3-3の 14-3-3蛋 Database Center for Life Science Online Service 図1 白質 フ ァ ミリーの 系 統樹 哺 乳 類 に 存 在 す る7種 GENETYXで 計 算 した 。 示 唆 して い る。 14-3-3の プ に 分 類 さ れ,後 者 は さ ら に2つ タ イ プ と,γ,η 役 割 は,原 初 的 な もの と し て動 物 や 植 物 の ε鎖 に受 け継 が れ て い る 可 能 性 を 類 の サ ブ ユ ニ ッ トの ア ミ ノ 酸 配 列 を, サ ブ ユ ニ ッ トは,い 残 基 か ら構 成 さ れ,そ β,ζ,θ と の タ イ プ,す なわ ち タ イ プ に細 分 類 され る。 第2 ず れ も約250ア ミノ 酸 の 配 列 に は リー ダ ー 配 列 や 膜 貫 通 型 の 蛋 白 質 に 特 有 な 疎 水 性 領 域 は存 在 しな い2,3)。ま た脳 か ら分 離 し た サ ブ ユ ニ ッ トの質 量 分 析 に よれ ば,脂 の グ ル ー プ の サ ブ ユ ニ ッ ト は,い ず れ も動 物 組 織 に 固 肪 酸 や 糖 鎖 付 加 な どの翻 訳 後 修 飾 は認 め られ ない(礒 辺 有 で あ る。 シ ョウ ジ ョウバ エ(Drosophila melanogaster) ら:未 発 表)。 この 意 味 で,14-3-3は や 線 虫(Caenorhabditis elegans)で は,い ず れ も第2グ 同定 され た分子 種 ル ー プ の β,ζ,θ タ イ プ に属 して い る。 白 質 の 特 徴 を も っ て い る 。 す べ て の サ ブ ユ ニ ッ トに 共 通 な 定 常 領 域 と,そ れ ぞ れ の サ ブ ユ ニ ッ トの 特 異 性 を 決 定 し て い る非 定 常 領 域 あ る い は 可 変 領 域 は分 子 全 体 図2に は動 物(ラ ッ ト)由 来 の6種 トの ア ミ ノ酸 配 列 を,表1に 類 のサ ブユ ニ ッ は これ らの 配 列 の相 同 性 に モ ザ イ ク状 に 分 布 し て い る 。 い ず れ の サ ブ ユ ニ ッ ト に もcAMPやCa2+依 を定 量 的 に比 較 し た 「差 マ ト リ ッ ク ス 」 を 示 した 。 差 列 や,ア マ ト リ ッ ク ス に は,典 め られ る。 分 子 のC末 型 的 な 例 と し て,シ ロイヌ ナズ 存性 の リン酸化 の ための共通 配 ネ キ シ ンのPKC結 合 部 位 に類 似 した配 列 が 認 端1/3に は14-3-3の ナ と酵 母 に存 在 す るサ ブ ユ ニ ッ トの ア ミノ 酸 配 列 も加 的 な 強 酸 性 の 領 域(等 電 点3.2)が えて 比 較 して あ る 。 動 物 由来 の6種 類 の サ ブ ユ ニ ッ ト 来 の あ る分 子 種 に は,カ 14-3-3蛋 白 質 サ ブ ユ ニ ッ トの ア ミ ノ酸 配 列 の 相 同 性 を 示 す 差 マ ト リ ッ ク ス(%) 構 造 に特 徴 あ る 。 一 方,植 ル モ デ ュ リ ン やS100な Ca2+結 表1 典 型 的 な細 胞 質 蛋 物由 どの 合 蛋 白 質 に 特 有 なEF ハ ン ド型 のCa2+結 合部位 に 類 似 の 配 列 が あ る こ とが 指 摘 さ れ て お り,実 際 に この 分 子 種 に は弱 いCa2+結 合 能(Kd= ∼10-4)が 報 告 され て い る23)。 ε鎖 を含 む 動 物 由 来 の サ ブ ユ ニ ッ トで は,Ca2+の 配 位やル ー プ の 屈 曲 に 重 要 な ア ミノ 酸 が植 物 の もの とは異 な ってお り,対 応 す る配 列 が 必 ず し も EFハ β∼ σ:ラ ッ ト,BMHI:酵 母,GF14:シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ 。 ン ド型 の 構 造 を とる もの と は 考 え られ な い 。 315 蛋 白質 核酸 酵 素 Vol.41 No.4(1996) Database Center for Life Science Online Service 4 図2 14-3-3蛋 白 質 フ ァ ミ リ ー の ア ミ ノ 酸 配 列2,6,18) ラ ッ ト由 来 のサ ブ ユ ニ ッ トの ア ミノ酸 配 列 を相 互 の 相 同 性 が 最 大 と な る よ うに 配 列 した。7種 類 のサ ブユ ニ ッ トの うち,半 分 以 上 のサブ ユ ニ ッ トで保 存 さ れ て い る ア ミ ノ酸 を網 か け で 示 した 。 ト リプ トフ ァ ン 水 酸 化 酵 素(TPH)と 実 線 で,14-3-3の Ca2+依 存 性,プ 316 構 造 に特 徴 的 な酸 性 領 域 を破 線 で,高 の結 合 部 位 とな っ て い る ボ ッ クス1を 太い 次 構 造 の うえで αヘ リックス を形 成 して いる領 域 をらせ んで示 した 。 また,cAMP, ロ リ ン指 向性 の リ ン酸 化 が 推 定 さ れ るSer残 基 を*で 示 した 。 14-3-3蛋 白 質 フ ァ ミ リー 5 平 行 に重 層 す る形 で配 置 され, 全体 として はやや 屈 曲 して内 部 に溝 状 の 構 造 を 形 成 し て い る 。 溝 の 幅 は最 長 の ヘ リ ッ ク ス α3,α4の 長 さ 約55Å に 相 当 し て い る。2量 体 分 子 で は,2分 子 のサ ブ ユ ニ ッ トが 点 対 称 の 位 置 に配 置 され,全 体 と し て は分 子 内 部 に 特 徴 的 な 溝 を2つ もつ"グ ロ ー ブ"状 の構 造 を 形 成 し て い る(図3 a)。 Database Center for Life Science Online Service 2量 体 形 成 に は,そ れ ぞれの サ ブ ユ ニ ッ トの α1∼ α4を 含 むN末 端 約100ア ミノ 酸 残 基 が 関 与 して い る。 す な わ ち,2 量 体 構 造 は,主 と し て α1, α2と 相 手 サ ブユ ニ ッ トの α3, α4の 間 の イ オ ン 結 合(α1/ Glu5:α4/Lys74,α2/ Asp21:α4/Lys85,α2/ Arg18:α4/Glu89)や,疎 水 結 合(α1/Leu12,α1/ Ala16,α3/Val62,α3/ 図3 14-3-3蛋 白 質 の 高 次 構 造27) (a)ζ 鎖 ホ モ2量 体 のX線 構 造 解 析 に よ り示 され た14-3-3蛋 白質 の高 次 構 造26)。2つ のサ ブユ ニ ッ トをそ れ ぞ れ 緑 赤 で 塗 り分 け,ヘ リ ック ス は 円 柱 で,そ れ を つ な ぐ リ ン カ ー は リボ ンで 示 して あ る 。 ヘ リッ ク ス8と9の て い な い 。(b)哺 間 は フ レ キ シ ブ ル ル ー プ に な う て い る た め,こ 乳 動 物 か ら酵 母 に 至 る14-3-3蛋 常 領 域 の ア ミ ノ酸 を赤 で,可 こでは描かれ 白 質 サ ブユ ニ ッ トの 配 列 で 保 存 され て いる 定 変領 域 の ア ミノ酸 を青 で 示 した。 溝 の 内側 に 定 常 領 域 の ア ミノ酸 Ile65,α4/Tyr82を よ っ て 安 定 化 され,分 トが 極 性 の ア ミ ノ酸 側 鎖 に 富 挟 ん で2カ な お,ヒ ト η 鎖 に つ い て は,染 色 体 遺 伝 子 の構 造 と 染 色 体 上 の 位 置(22番)が 最 近 の 研 究 で 明 らか に な っ て い る24,25)。 さ れ る2種 14-3-3が 細 胞 内 で 安 定 な2量 合 体 と し て 存 在 し う る大 き 子 に 最 も特 徴 的 な グ ロー ブ状 の2つ 造 の 内 部 は,そ 鎖(τ 鎖 と も よ ばれ る)な らび に ζ鎖 か ら構 成 類 の14-3-3蛋 白 質 ホ モ2量 体 のX線 構造 的 な骨 格 は,θ2,ζ2の Arg60),α5か い ず れ の 分 子 で も非 常 に よ く似 端 か ら α1∼ α9)と,そ の α ヘ リッ れ ら を連 結 す る短 い リ ン カ ー か ら構 成 さ れ て い る 。 α1∼ α9は 互 い に逆 れ ぞ れ 典 型 的 な α ヘ リ ッ ク ス を1つ 抱 か ら の 疎 水 性 側 鎖(Leu172,Leu216,Leu220,Leu 227),α3か て い る。 そ れ ぞ れ の サ ブ ユ ニ ッ トは,9個 の溝 構 え 込 む 程 度 の 大 き さ で あ る 。 そ の 内 壁 に は,α7,α9 解 析 の結 果 が 相 次 い で 報 告 され た26,27)。 分 子 全 体 の基 本 ク ス(N末 所 で 接 触 し,結 さ で あ る。 高次構造 最 近,θ 径6∼8Å)を して い る。 サ ブ ユ ニ ッ ト相 互 の 接 触 面 積(620Å2)は, 14-3-3分 2. 子全 体 と し て は2分 子 の サ ブ ユ ニ ッ む 中 央 の 穴(直 が集 中 して い る。 標 的 分 子 由 来 の 仮 想 ヘ リッ ク ス を緑 色 で 示 した 。 含 む)に ら の 塩 基 性 側 鎖(Lys49,Arg56, ら の 極 性 側 鎖(Lys120,Asp124, Arg127,Tyr128)な Arg60,Lys120,Arg127は どが 露 出 し,こ の う ちArg56, 溝 の内部 で塩基 性 のクラ ス タ ー を 形 成 し て い る。 こ の ク ラ ス タ ー は,C末 端 317 蛋白質 6 Database Center for Life Science Online Service 表2 14-3-3蛋 核酸 酵素 白 質 フ ァ ミ リー の 標 的 蛋 白 質 蛋 白 質 以 外 の標 的分 子 は()で トール3キ Vol.41 No.4 (1996) ナ ー ゼ,exoS:エ 231∼245の15ア 示 した。TPH:ト リプ トフ ァ ン水 酸 化 酵 素,TH:チ ロ シ ン 水 酸 化 酵 素,Pl3K:ホ ス フ ァチ ジ ル イ ノシ キ ソ エ ン ザ イ ムS。 ミノ酸 で 構 成 され る酸 性 ル ー プ の一 部 に,非 定 常 領 域 の ア ミノ 酸 は溝 の外 側 に,は っ きりと との 相 互 作 用 で 安 定 化 さ れ て い る 。 これ らの 極 性/非 局 在 して い る。 こ の こ とは,14-3-3の 極 性 の 部 分 的 な 構 造 は,そ れ ぞ れ 独 立 し て 溝 の 内 壁 に 部 構 造 が そ の 機 能 に と っ て 必 須 で あ る こ と,ま た そ の 局 在 し,全 体 と し て は標 的 蛋 白質 由 来 の ヘ リ ッ ク ス に 機 能 が 酵 母 か ら哺 乳 類 まで 保 存 さ れ て い る こ とを示 唆 対 し て両 親 媒 性 の 結 合 部 位 を形 成 し て い る よ う に み え し て い る。 さ ら に,2量 る。 性 相 互 作 用 に 関 与 す る ほ とん ど の ア ミ ノ酸 が サ ブ ユ ニ ッ トの 種 類 に か か わ らず よ く保 存 され て い る こ とか ら, と し て溝 の 一 部 を構 成 す る α5の 後 半 異 な っ た サ ブ ユ ニ ッ ト問 の 結 合 に よ っ て さ ま ざ まな ヘ 鎖 で はLys122か 部 分 に位 置 して い る。 また,cAMPやCa2+依 ン酸 化 が 想 定 され るSer58やSer65は2量 存性 の リ 出 し た形 で α7と ロ リン ,図3bに III. 14-3-3蛋 白質 の標 的蛋 白 質 分 子 表 面 に露 α8を 連 結 す る リ ン カ ー 部 分 に存 在 して い る。 物 の14-3-3蛋 テ ロ2量 体 が 形 成 され る こ とが 推 察 さ れ る 。 体形 成 のた め の 疎 水 性 結 合 部 位 の 内部 に埋 もれ た 形 で,プ 指 向 性 の リン酸 化 が 想 定 され るSer184は 一方 体 形 成 の た め の イ オ ン性/疎 水 ら 前 述 した ア ネ キ シ ン様 配 列(ζ Asp136)は,主 形 成 す る溝 の 内 現 在 まで に 同 定 された14-3-3の 標 的 酵 素,蛋 推 定 され て い る機 能 と と もに 表2に は,現 在 まで に 明 らか に され た 各 種 生 白質 の ア ミノ 酸 配 列 で,種 に よる変 異 が ミ リー の 分 布 と構 造 の 多 様 性 を 反 映 し て,多 が 同 定 さ れ,多 白 質 を, 示 し た 。 この フ ァ くの標 的 彩 な 機 能 が 推 定 され て い る。 一 般 的 に ま っ た く観 察 さ れ な い厳 密 な 意 味 で の 定 常 領 域 と非 定 は,14-3-3は 常 領 域 の ア ミノ酸 を高 次 構 造 の上 に配 置 し て 示 し た27)。 す る さ ま ざ ま な シ グ ナ ル 伝 達 系 で 調 節 的 な 役 割 を担 っ 定 常 領 域 の ア ミ ノ酸 は14-3-3分 て い る と推 定 され るが,そ 318 子 が 形 成 す る溝 の 内 側 蛋 白 質 の リン酸 化/脱 リン酸 化 反 応 が 関与 の 中 心 とな る の は,CaMK 14-3-3蛋 IIやPKCが か か わ るCa2+シ 7 白質 フ ァミ リー グ ナ ル の 調 節 と,受 容 体 チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ に連 結 し た増 殖 ・分 化 シ グ ナ ル の 調 節 と考 え られ る 。 こ の ほ か に も,多 白 質 が 同 定 され,そ 蛋 白 質 輸 送,脂 くの標 的 酵 素,蛋 れ に対 応 して ミ トコ ン ド リ ア へ の 質 代 謝,血 液 凝 固,H+輸 送 や,核 内 で の 機 能 な どが 想 定 さ れ て い る 。 1. モ ノア ミン合 成 と分泌 にか かわ る蛋 白質 チ ロ シ ン水 酸 化 酵 素(TH)と 酵 素(TPH)は ト リプ トフ ァ ン 水 酸 化 そ れ ぞ れ カ テ コ ー ル ア ミン,セ ロ トニ ン な ど の 生 理 活 性 ア ミ ン の生 合 成 経 路 の 律 速 段 階 酵 素 で あ り,そ の 活 性 は酵 素 分 子 や 補 酵 素 で あ る テ トラ ヒ Database Center for Life Science Online Service ドロ ビ オ プ テ リン の 生 合 成 な ど,さ ま ざ ま な レベ ル で 厳 密 に調 節 さ れ て い る。 蛋 白 質 キ ナ ー ゼ を 介 す る活 性 調 節 は,細 胞 の刺 激-応 答 系 と して 重 要 で あ り,実 際 に さまざ まな キナー ゼが その調節 にかか わ って いる。 CaMKIIは TPHのN末 細 胞 内 のCa2+濃 度 に 依 存 し てTH, 端 調 節 ドメ イ ン を リ ン酸 化 す る が,リ 酸 化 酵 素 の活 性 化 に は14-3-3蛋 14-3-3はCaMKIIに 白質 が不 可 欠 で あ る1)。 よって リン酸 化 され たTH,TPH に 選 択 的 に 作 用 し て,そ の 活 性 を2∼3倍 る1∼3)。この 活 性 化 は加 えた14-3-3の の 反 応 速 度Vmaxを cAMP依 ン 上 昇 させ 量 に依 存 し,酵 素 増 大 さ せ る。 同 様 の活 性 化 作 用 は, TPHに 存 性 蛋 白 質 キ ナ ー ゼ に よ っ て リ ン酸 化 され た 図4 モ ノ ア ミ ンの 合 成/分 泌 経 路 で の14-3-3蛋 白質 の役 割 対 して も観 察 され て い る 。 筆 者 ら は14-3-3に よ るTPHの 活 性 化 につ い て検 討 し,そ の 作 用 機 構 を 明 在 す る が,PKCと らか に して い る(IV節)。 一方 ,副 腎 の ク ロマ フ ィ ン細 胞 で は,14-3-3がCa2+ やin vivoで 濃 度 に依 存 して カ テ コ ー ル ア ミン の エ キ ソ サ イ トー シ 2. ス(exocytosis)を 促 進 し28),そ の抗 体 はエ キ ソ サ イ ト ー シ ス を 阻 害 す る29)こ とが 報 告 され て い る 究 に よれ ば,14-3-3は 粒 の 成 熟(priming)に 。 最 近 の研 細 胞 膜 と ド ッキ ング し た分 泌 顆 関 与 し て い る と さ れ て お り30), の 結 合 や 作 用 につ い て は分 子 レベ ル の さ ら に 詳 細 な 解 析 が 必 要 で あ る。 細 胞の増 殖 と分 化 にかか わる 蛋 白質 1994年,14-3-3蛋 白質 フ ァ ミ リー が が ん 関 連 遺 伝 子 産 物 と して 知 られ て い るRaf-1,Bcr,Bcr-Ab1,ポ オ ー マ ウ イ ル スMT抗 リ 原 と細 胞 内 で 複 合 体 を形 成 して い る こ とが 相 次 い で 報 告 され た9∼15)。これ らの 遺 伝 子 産 細 胞 膜 直 下 の ア ク チ ン線 維 の 脱 重 合 を促 進 す る31)活 性 物 は,い ず れ も細 胞 膜 の シ グ ナ ル 変 換 器 で あ るRasの が 認 め られ て い る。 した が っ て,14-3-3はCa2+シ 上 流,あ る い は下 流 に位 置 し て お り,Rasを グナ ル に依 存 して モ ノ ア ミ ン の 合 成 と分 泌 を促 進 す る と推 殖 ・分 化 シ グ ナ ル を増 幅 さ せ て,正 定 さ れ る(図4)。 乱 す る と考 え られ て い る。 がCa2+シ ま た,筆 者 ら とAitkenら グ ナ ル の 重 要 な 担 い 手 で あ るCa2+/リ 依 存 性 蛋 白 質 キ ナ ー ゼ(PKC)を 害32)す る こ とで,PKCが ン脂 質 活 性 化4)あ る い は阻 関 与 す る シ グ ナ ル伝 達 系 を調 節 し て い る可 能 性 を指 摘 し て い る 。14-3-3の PKCに は14-3-3 構造 に は 対 す る アネ キ シ ン の 結 合 部 位 に類 似 の配 列 が 存 Raf-1蛋 白 質 キ ナ ー ゼ は,Rasの り,RasがGTP型(活 介 す る増 常 な細 胞 周 期 を 撹 下 流 に位 置 し て お 性 型)に 変 換 す る と,そ れ を標 的 と して 膜 へ 移 行 し,活 性 化 し て そ の シ グ ナ ル を主 と して 下 流 のMAPキ 達 す る。Bcrキ ナ ー ゼ キ ナ ー ゼ(MAPKK)へ ナ ー ゼ,慢 伝 性 骨髄 性 白血病 で染 色 体転 319 8 蛋 白質 核酸 Vol.41 No.4 (1996) 酵素 座 に よ って 活 性 化 す るBcr-Ablチ ロ シ ンキ ナ ー ゼ と,ポ リオ ー マ ウ イル ス に 由 来 す るMT抗 原 は,い ずれ もRas の上 流 に 位 置 し て お り,Grb-2ア ダ プ タ ー 蛋 白質 とグ ア ニ ン ヌ ク レオ チ ド交 換 因 子Sosを 介 した 経 路 でRas そ の もの を 活 性 化 す る と考 え られ て い る。MT抗 はSrcフ ァ ミ リー キ ナ ー ゼ との 関 連 も指 摘 され て い る。 Raf-1と14-3-3の 結 合 はRaf-1キ 必 要 で あ る こ とが,ア ナー ゼ の活 性 化 に フ リカ ツ メ ガ エ ル 卵 や 出芽 酵 母 な どを 用 い たin vivoの わ ち,ア 実 験 で 確 か め られ て い る。 す な こか ら分 離 し たRafは り高 活 性 で あ る13)。この 場 合,Rafを Database Center for Life Science Online Service 変 異 株 か ら得 られ た も の の3∼4倍 初,14-3-3に たin vitroの よ るRafの はRaf-1に 過剰 発 欠損 した 実 験 で も確 か め られ10,11),14-3-3はRaf- 添 加 し た14-3-3が 射 線 の 照 射 強 度 に依 存 して酵 母 の生 存 率 が 低 下 す る。 こ の現 象 に か か わ る酵 母 で の14-3-3の らか に され て い な いが,こ れ に 関 連 し て注 目 さ れ る の あ る。cdc25蛋 細胞 膜 へ輸送 し局在 化 の後 の研究 で 必 ず し も直 接 的 にRaf- 白 質 ホ ス フ ァ ター ゼ はDNA複 合 せ ず,14-3-3を ご く最 近,14-3-3蛋 ー ル3キ ナ ー ゼ(PI3K)と 阻 害 す る ことが報 告 され た17)。PI3KはBcr相 SH2,SH3ド ホ ス フ ァ チ ジ ル イ ノ シ トー ル を リ ン酸 化 す る活 性 を も つ 触 媒 サ ブ ユ ニ ッ ト(p11O)か らな り,そ の 活 性 は細 胞 増 殖 や 免 疫 応 答 な ど と密 接 胞 で は,NGFな る ほ か,Rasに Bcr-Ablキ る。14-3-3は 示 唆 され て い る14)。 14-3-3蛋 白 質 は,こ ンス リ よ っ て も活 性 化 す る こ と が知 られ て い 触 媒 活 性 を もつp110と 性 を 阻 害 す る こ とで,PI3Kが れ ら のが ん遺 伝 子 産 物 に直 接 作 の ア ン タ ゴ ニ ス トで あ る ウ ォ ー トマ ニ ンで ン な ど の 受 容 体 チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ と結 合 して 活 性 化 す 性 と密 接 に か か わ っ て い る こ とが,14-3-3がBcrや ナ ー ゼ の 天 然 の 基 質 と な っ て い る こ とか ら ど の 分 化 刺 激 に よ っ て 突 起 伸 展 な どが み ら れ るが,こ 阻 害 され る38)。この 酵 素 は,NGFやPDGF,イ の 結 合 が これ らの 蛋 白 質 の 活 同領 域や メ イ ン を含 む 調 節 サ ブユ ニ ッ ト(p85)と, ナ ー ゼ,あ る い はMT抗 意 味 は不 明 で あ る が,そ 直接結 特 異 的 に結 合 して そ の活 性 を 現 象 はPI3Kの 結 合の生物 学的 よっ て も リ 白質 がホ ス ファチジルイ ノシ ト が 改 め て 問 題 とな って い る。 一 方,BcrやBcr-Ablキ 原 と14-3-3の への 介 して は じめ て結 合 して安 定 な酵 に 関 連 して い る。 た と えばPC12細 の現 象 が どの よ う な機 構 に よっ て い る のか らM期 素-基 質 複 合 体 が 形 成 さ れ る(IV節)16)。 胞 の運 動 や 形 態 変 化,細 のin vivoで 製 の完 ン酸 化 さ れ て 活 性 化 され るが,cdc25とRafは 1を 活 性 化 せ ず33∼35),また細 胞 質 に存 在 す る不 活 性 型 の 結 合 し て い る9,12)ことか ら,上 記 結 合16)で 了 シ グ ナ ル を受 け取 り,リ ン酸 化 され て 活 性 化,cdc2 Raf-1に も14-3-3が 直 接 的 な標 的 は明 は,最 近 明 らか に さ れ た14-3-3とcdc25の 高 活 性 で あ る9)。当 す る シ グ ナ ル 分 子 と も考 え られ た が,そ 外線や放 細 胞 周 期 を 調 節 し て い る。cdc25はRafに 活 性 化 が 分 離 した 標 品 を用 い 1の 活 性 化 因 子 ま た はRaf-1を 損株で へ の 移 行 時 間 の遅 延 は観 察 され ず,紫 通 常 の もの よ 効 果 は認 め られ な い。 また,14-3-3を ら へ の移 行 が 遅 くな るの に対 して,14-3-3欠 はM期 キ ナ ー ゼ を脱 リ ン酸 化 す る こ とで,G2か 欠 損 させ た卵 で は 現 し た酵 母 か ら免 疫 沈 降 したRafは14-3-3を M期 卵の フ リカ ツ メガ エ ル卵 に導 入 した14-3-3は 成 熟 を誘 導 し,こ 14-3-3の 原で 正 常 で は 修 復 の 完 了 ま で の時 間 が 延 長 され てG2か 結 合 し17),そ の活 関 与 す る シ グナ ル伝 達 系 を調 節 して い る可 能 性 が あ る。 用 す る こ とに よ り,受 容 体 チ ロ シ ンキ ナ ー ゼ-Ras-MAP キ ナ ー ゼ カ ス ケ ー ドを基 軸 とす る細 胞 周 期 の 制 御 系 で, 増 殖 ・分 化 シ グ ナ ル の 調 節 に関 与 して い る と推 定 さ れ 3. 標 的 に対 す るサ ブユニ ッ トの特 異性 14-3-3蛋 白 質 は 哺 乳 動 物 か ら酵 母 に 至 る真 核 生 物 に る。 こ の仮 説 は,上 記 の ツ メ ガ エ ル 卵 で の 研 究 の ほ か, 共 通 の細 胞 成 分 で あ り,蛋 出 芽 酵 母 で の2種 化 反 応 に 依 存 し た 多 くの シ グ ナ ル 伝 達 系 で 基 本 的 な役 類 の14-3-3遺 伝 子 の うち,ど ち らか 白質 の リ ン酸 化 や 脱 リ ン酸 1つ を 欠 損 さ せ た もの で は正 常 な細 胞 増 殖 が 抑 制 され る 割 を担 っ て い る と推 定 さ れ る。 こ の 意 味 で は,14-3-3 こ と36,37),また2つ とも欠 損 させ た場 合 には致 死(lethal) はCa2+シ に な る とい う遺 伝 学 的 な解 析 の 結 果 か ら も強 く支 持 さ 生 物 学 的 な 重 要 性 を もつ 蛋 白質 と考 え られ る が,前 者 れ る36)。分 裂 酵 母 で は,14-3-3がDNA修 復 に関連 す は フ ァ ミ リー を形 成 し て い る点 で 単 一 遺 伝 子 に コー ド る細 胞 周 期 の チ ェ ッ ク ポ イ ン トシ グ ナ ル の調 節 に か か さ れ る カ ル モ デ ュ リ ン に比 べ て よ り複 雑 で あ る。実 際 わ っ て い る こ とが 明 らか に さ れ て い る36)。す な わ ち,紫 に,脳 か ら分 離 した14-3-3蛋 外 線 や 放 射 線 の 照 射 でDNAに イ ブ リダ イ ゼ ー シ ョ ンに よる組 織 化 学 的 な研 究6∼8,18)か 320 損 傷 を与 えた 酵 母 で は, グ ナ ル伝 達 系 で の カル モ デ ュ リ ン に匹 敵 す る 白 質 の解 析 や,in situハ 14-3-3蛋 ら,細 胞 内 に はホ モ2量 体 の分 子 種 と と もにヘ テ ロ2量 分 子 種 ご と に異 な る こ と を観 察 し て い る(市 村 ら:投 稿 体 も存 在 し,ま た 多 くの 分 子 種 が 同 一 の細 胞 内 に共 存 準 備 中)。 し て い る こ とが 示 唆 さ れ て い る 。 一 方,組 程 で の14-3-3の 織 の形成 過 発 現 パ ター ン は サ ブ ユ ニ ッ トの種 類 に 細 胞 内 に 存 在 す る14-3-3分 子 の サ ブ ユ ニ ッ ト組 成, 特 に ヘ テ ロ2量 体 の 確 認 と そ の 組 成,そ れ ぞ れ の2量 よ り異 な る ほ か,γ 鎖 や σ 鎖 は神 経 細 胞 や 上 皮 細 胞 に 体 分 子 の 分 布 の 特 異 性,と 局 在 し,ま た あ るサ ブ ユ ニ ッ トは細 胞 膜 や 細 胞 内 小 器 に 対 す る結 合 や 作 用 の特 異 性 の 問 題 は,14-3-3蛋 官 に 結 合 して 存 在 して い る と考 え られ る(I節)。14-3- が フ ァ ミ リ ー を形 成 して い る こ との 生 物 学 的 な意 味 や 3蛋 白 質 フ ァ ミ リー が 示 す こ う した分 布 の 多 様 性 や,そ こ の フ ァ ミ リー の 機 能 と 関 連 して 今 後 の き わ め て 重 要 れ ぞ れ の サ ブ ユ ニ ッ トの構 造 が 生 物 種 を こ え て 高 度 に な研 究課 題 で ある。 保 存 さ れ て い る こ と(II節)は,14-33の や,あ る い は作 る細 胞 に特 有 な シ グ ナ ル の伝 達 に か か わっ て い 対 して は,脳 ッ ト(α ∼ η鎖)か 白質 白質 IV. 14-3-3蛋 白 質 の作 用 機 構 れ ぞ れ の2量 体 分 子 が 独 自 の 役 割 る 可 能 性 を示 唆 して い る 。 TPHに りわ け各 種 の 酵 素,蛋 サ ブユニ ッ トが そ れ ぞ れ 独 自 の 標 的 蛋 白 質 と結 合 し,あ 用 を 示 す こ とで,そ Database Center for Life Science Online Service 9 白質 フ ァミ リー 標 的 との結合 部 位 と結 合 シグ ナル 1. 以 上 の よ う に,14-3-3蛋 か ら分 離 した7種 類 のサ ブユ ニ ら再 構 成 し た14-3-3ホ モ2量 体が 白 質 フ ァ ミ リー はが ん 遺 伝 子 産 物 を含 む 多 くの標 的 酵 素,蛋 白質 に結 合 し,そ の 活 性 や 蛋 白 質 相 互 作 用 を 調 節 す る と考 え られ る が,多 す べ て 同 じ程 度 の活 性 化 能 を示 す こ とが 明 ら か に さ れ くの 例 で は そ の分 子 機 構 の詳 細 が よ くわ か っ て い な い 。 て い る3)。 これ に対 して 植 物 由 来 の あ る分 子 種(GF14) この 点 で比 較 的 研 究 が 進 んで い るTPHの は,TPH,PKC,ADP-リ ボ シル 化 反 応 に お い て動 物 は,反 応 は,(1)CaMKIIに の も の と 同様 の活 性 を 示 す に もか か わ らず,14-3-3の (2)リン酸 化TPHへ 1つ の分 子 種 を欠 損 した 酵 母 の細 胞 増 殖 能 の低 下 を救 助 る。 (rescue)で きな い39)。一 方,が ブ とす る酵 母tow-hybrid ん関連 遺伝 子 を プロー systemで は,14-3-3の 特定 よ るTPHの の14-3-3の 14-3-3とTPHの て い る40)。TPHは 活 性 化 の例 で リ ン 酸 化 と, 結 合 の2段 結 合 は,TPHの 階 で進 行 す リン酸 化 に依 存 し 触 媒 活 性 を もつC末 端 側 触 媒 ドメ イ の サ ブ ユ ニ ッ トの み が 標 的 と して 分 離 さ れ て い る。 た ン と,リ ン酸 化 部 位 を 含 むN末 と え ば,Raf-1に 構 成 され て い る 。 調 節 ドメ イ ン は,通 常,触 対 し て は β 鎖 と ζ鎖 が9),cdc25に 対 して は β 鎖 と ε鎖 が16),MT抗 原 で は ε鎖 と ζ鎖 が15)そ れ ぞ れ 同 定 され て い る(表2)。 に は,報 告 さ れ た 事 実 が,そ た だ し こ の場 合 れ ぞ れ の サ ブ ユ ニ ッ トの 結 合 や 作 用 の特 異 性 を示 す も の な の か,あ るい はそれ ン の活 性 を抑 制 し て お り,プ 端 側 調 節 ドメ イ ンか ら 媒 ドメ イ ロテ アー ゼ によ って調節 ドメ イ ン を 除 去 す るな どの 処 理 に よ って 活 性 化 す る。 こ う した 事 実 か ら,14-3-3は ンを標 的 としてTPHに リ ン酸 化 さ れ た 調 節 ドメ イ 結 合 し,そ の 高 次 構 造 を変 化 さ ぞ れ の 実 験 で 使 用 さ れ た ラ イ ブ ラ リー の サ ブ ユ ニ ッ ト せ る こ とで触 媒 ドメ イ ン を分 子 表 面 に 露 出 させ てTPH 含 量 な どの 特 性 を反 映 した もの な の か は必 ず し も明 ら を活 性化 す る と考 え られ る(図4)。 か で は な い 。 こ こで 分 離 され た β,ε,ζ 鎖 は いず れ も 14-3-3と が ん遺 伝 子 産 物 との 結 合 に つ い て は,Raf- 組 織 で の含 量 が 高 いサ ブ ユニ ッ トで あ り,実 際 に,tow- 1で 比 較 的 詳 細 に調 べ られ,TPHの hybrid systemで 機 構 が 推 定 され て い る。 それ に よ る と,Raf-1の 場合 に も,主 ミ ノ酸 は分 離 さ れ て い ない η鎖 も またRaf- 1に 結 合 す る こ とが,η 鎖cDNAを 人 為 的 に 導 入 した 酵 母 の 実 験 で 示 され て い る10)。これ と同 様 の 問 題 が,あ と し て そ のN末 136∼322)が14-3-3と る 作 用 を 指 標 と して 特 定 の サ ブ ユ ニ ッ トを分 離 し た と ドメ イ ン に はPDGF刺 す る多 くの 報 告 で も認 め ら れ,サ Ser259が ブ ユ ニ ッ トの 特 異 性 場 合 と同 様 の 分 子 端 調 節 ド メ イ ン(ア の 結 合 に 関 与 し て い る41)。こ の 激 に依 存 して リン酸 化 され る 含 まれ る 。Raf-1はSer259の リン 酸 化 に よ に つ い て は現 在 ま で 確 実 な 証 拠 が 得 られ て い な い 。 な って 構 造 変 化 を し,膜 に移 行 して 活 性 化 され るが42),こ お,こ の問 題 につ いて 最 近 筆 者 らは,GST標 の セ リン を ア ラ ニ ン に置 換 し た 変 異 体 は14-3-3と 3-3を プ ロー ブ と した 実 験 で,リ 識 した14- ン酸 化 処 理 し た ラ ッ ト 脳 抽 出 液 か ら分 離 され る標 的 蛋 白質 の種 類 が14-3-3の し な い 。 さ らに,14-3-3とRaf-1の 結 合 はRaf-1の リ ン酸 化 処 理 に よ っ て 阻 害 さ れ33),Raf-1と 結合 脱 結合 した 321 蛋 白質 10 核酸 Vol.41 No.4 (1996) 酵素 複合体形成の分子機構 2. 14-3-3蛋 白 質 は,標 的 蛋 白質 の リ ン酸 化 を 引 き金 と し て 標 的 と結 合 す る と考 え られ る。 調 べ られ た 範 囲 で は,こ の リ ン 酸 化 は い ず れ もSer/ Thrに ト リ プ トフ ァ ン 水 酸 化 酵 素(TPH)と 図5 哺 乳 類,植 物,酵 の 結 合 部 位(ボ ッ ク ス1)の ア ミ ノ 酸 配 列41) 特 異 性 を もつ キ ナ ー ゼ に よ る もの で あ る。 こ の意 味 母 の サ ブ ユ ニ ッ トで保 存 さ れ て い る ア ミ ノ酸 を 白抜 き で示 した。 で は。14-3-3の 14-3-3は ホ ス フ ァタ ー ゼ に よ るRaf-1の 阻 害 す る こ とか ら,14-3-3-Raf-1複 TPHの 場 合 と同 様 にRaf-1の 脱 リン酸 化 を を形 成 す る多 くのSH2蛋 白 質,と リン酸 化 が 必 要 と考 え ら 活 性 を もた な いGrb-2ア ダ プ ター 蛋 白 質 と よ く似 て い る。Grb-2な Bcr-Ablで は,主 と し てbcr遺 に コ ー ド され て い る領 域(ア リ ン酸 化 に依 存 し て複 合 体 合 体 の 形成 に は れ る。 Database Center for Life Science Online Service 結 合 特 性 と作 用 は,Tyrの 標 的 に対 す る 伝 子 の 第1エ キソン ミ ノ酸298∼412)が14- ど のSH2蛋 りわ け それ 自身 酵 素 白 質 で は,リ ン酸 化Tyrを 含 む 数 残 基 の 短 いペ プ チ ド配 列 を 認 識 し,こ れ に 直 接 結 合 して 複 合 体 を形 成 す る 。これ に対 して14-3-3で は, 3-3と の結 合 に 関 与 して い る14)。Bcrと 結 合 し た14-3- 標 的 とす る多 種 多 様 な 酵 素 や 蛋 白 質 の リ ン酸 化 ア ミ ノ 3はBcrの 酸 の 周 辺 に は 共 通 の 配 列 は認 め られ な い 。14-3-3と 脱 リ ン酸 化 処 理 で解 離 す る33)ことか ら,こ の 場 合 に も,Bcrの リン酸 化 が14-3-3と の 結 合 に必 要 と 考 え られ る。 一方 ,標 的 に対 す る14-3-3の 最 近,筆 結 合 部 位 に 関 連 して, 者 ら は リン酸 化 され たTPHと 必 要 な14-3-3の の複 合 体 形 成 に 結 合 部 位 を,大 腸 菌 で発 現 した η鎖 の 変 異 体 を用 い た実 験 で 同定 した43)。TPHと 14-3-3に 結 合 領 域 が 比 較 的 限 定 さ れ て い るRaf-1,Bcrに CysとSer/Thrに 特 徴 的 な 強 酸 性 のC末 の 結 合 で は, 端 領 域 の一 部 の構 造 (ボ ッ ク ス1:171∼213,図5)の 存 在 が必 要か つ十分 で あ る。 す な わ ち,ボ み を もつ 変 異 体 は リ ッ ク ス1の 配 列 がMT抗 の は, 富 ん だ 配 列 が 存 在 し,こ れ と類 似 の 原 に も存 在 す るが,TPHの 調 節 ドメイ ン に は こ う した配 列 は認 め られ な い(新 開 ら:未 発表)。 し たが っ て,14-3-3と 標 的 の 結 合 は,よ り高 次 の構 造 に 規 定 さ れ た ア ミノ 酸 側 鎖 間 の 相 互 作 用 に依 存 し て い る と考 え られ る。 II節 で 詳 し く述 べ た よ うに,14-3-3蛋 最 も大 き な特 徴 は,分 白質 の構 造 の 子全体 で形 成 す るグ ローブ状の ン酸 化TPHと 特 異 的 に結 合 し,ボ ック ス1の み を除 去 溝 で あ り,そ の 内部 に は塩 基 性 あ る い は疎 水 性 の ク ラ した14-3-3変 異 体 はTPHに ス タ ー が 露 出 し て い る。 この 構 造 は,14-3-3が らはRaf-1と 結 合 しな い 。 一 方,Luo の結 合 部 位 が14-3-3のC末 端100ア ミノ 酸 か ら な る領 域 に あ る こ と を示 し て い る44)。筆 者 ら は, (1)Raf-1に 対 す る14-3-3の 含 まれ る,(2)ボ ッ ク ス1の 結 合 部 位 に はボ ックス1が 構 造 は ヒ トか ら植 物,酵 に至 る まで 非 常 に よ く保 存 さ れ て お り(図5),植 来 の14-3-3も す,(3)ボ 動 物 の もの と同 様 のTPH活 ッ ク ス1は 形 成 に重 要 な ヘ リ α8を 構 成 して い る(図3)こ とか ら,こ の 領 域 が が ん 遺 伝 子 を 含 む 多 くの 標 的 酵 素,蛋 対 す る14-3-3の る。 322 白質 に 主 要 な 結 合 部 位 にな っ て い る と推 定 し て い る。 た だ し,TPHとRafの ク ス1以 物由 性 化 能 を示 高 次 構 造 の う え で は標 的 か ら の ヘ リ ッ ク ス を抱 え込 む た め の"溝"の ッ ク ス α7と 母 由来 す る α ヘ リッ ク ス,特 に リン酸 化Ser/Thrを 標的に 含む 極 性 ア ミ ノ酸 と疎 水 性 ア ミ ノ酸 か ら な る両 親 媒 性 の ヘ リ ッ クス を溝 の 内 部 に包 み 込 む こ とで 標 的 を捕 捉 し,複 合 体 を安 定 化 し て い る こ と を強 く示 唆 し て い る。 この 場 合,結 合 の 引 き金 とな るSer/Thrリ ン酸 化 は,標 的 の 高 次 構 造 を 変 化 させ て ヘ リ ッ ク ス を 分 子 表 面 に露 出 す る と と もに,14-3-3の 溝 内 部 の 塩 基 性 ク ラ ス ター に 対 す る イ オ ン性 の 結 合 部 位 を提 供 す る も の と推 定 され る(図6)。14-3-3に は,コ ム ギ胚 芽 抽 出 液 中 で合 成 し た ミ トコ ン ド リア 蛋 白 質 に 結 合 す る こ とで,そ の 重合 を抑 え る活 性 が あ る こ とが 知 られ て お り45),そ の直 接 の い ず れ の場 合 に もボ ッ 標 的 配 列 が 塩 基 性 お よび 疎 水 性 ア ミ ノ酸 に 富 む 両親 媒 外 の弱 い結合 部位 が あ る ことが示唆 されて い 性 の 構 造 で あ る こ と は,こ の モ デ ル を支 持 し て い る。 14-3-3蛋 Raf-1とBcrが,14-3-3を 11 白質 フ ァミ リー 介 して細 胞 内 で 複 合 体 を形 成 し て い る こ とが 示 唆 され て い る。 また,14-3-3の 的 と し て 同 定 され た が ん 遺 伝 子 は,多 身 がSH2/SH3ド メ イ ン を も ち,細 し て 存 在 し,あ 標 くの 場 合 そ れ 自 胞 内 で は複 合 体 と る い は刺 激 に よ っ て 複 合 体 を形 成 す る と考 え られ る。 た とえ ば,PI3Kは 受 容体 チ ロシンキナ ー ゼ と結 合 す る ほ か ,MT抗 原 やSrcと 成 し,BcrはGrb-2やSosと 結 合 す る。 この 場 合,14- も複 合 体 を形 3-3の サ ブ ユ ニ ッ トが それ ぞ れ 別 の標 的 を結 合 す る と仮 定 す る と,2種 く複 雑 な"シ 類 の複 合 体 は14-3-3を グ ナ ル 伝 達 複 合 体"を え られ る。 そ の 結 果 は,た 介 して よ り大 き 形 成 す る こ とが 考 と え ばRasの 上 流 ・下 流 の Database Center for Life Science Online Service 分 子 が 同 時 に結 合 して シ グ ナ ル 伝 達 の 迅 速 化 が 可 能 で あ り,あ る い は異 質 の 細 胞 応 答 を ひ き起 こす2つ のシ グ ナ ル 伝 達 系 を 同 時 に活 性 化 す る こ と も可 能 で あ る(図 7)。 た と えば,Raf-1とBcrは14-3-3の 存 在 下 で のみ 複 合 体 を形 成 す る46)。Raf-1とcdc25も また14-3-3の 存 在 に よ っ て は じめ て 直 接 的 な相 互 作 用 が 可 能 で あ り, Rasの 活 性 化 に よって細 胞 の 増 殖 ・ 分 化 にか かわ るMAP 図614-3-3蛋 白 質 と標 的 蛋 白 質 と の 複 合 体 形 成 の 分 子 機 構 14-3-3蛋 白 質 は 標 的 分 子 の リン酸 化 による構 造 変 化 を契 機 と して, そ の 調 節 ドメ イ ン の両 親 媒 性 の ヘ リッ クス と結 合 す る 。14-3-32 量 体 はサ ブ ユ ニ ッ トあ た り1分 子 の標 的 と結 合 す る こ とで,よ 破 線部)の イ ク リ ンの カ ス ケ ー ド を 同 時 に 駆 動 す る こ とが 可 能 と 思 わ れ る。Raf-1で り 複 雑 な シ グ ナ ル伝 達 複 合体 を形 成 す る と考 え られ る。 標 的ヘ リッ ク ス と の結 合 に は,14-3-3の キ ナ ー ゼ カ ス ケ ー ド と細 胞 周 期 に か か わ るcdk/cdc/サ 溝 内部 の塩 基 性(実 線)や 疎 水 性(縦 ク ラ ス ター が 関 与 して い る 。 の14-3-3の 結 合 部 位 がRasと の結 合 部 位 と は独 立 に 存 在 す る42)こ とは,細 胞 膜 上 で,た とえ ばRas-Raf-14-3-3-cdc25の 複 合 体 が 形 成 され う る こ と を示 唆 して い る 。 こ う した観 点 か ら,筆 者 ら は, シ グ ナ ル伝 達 系 で の14-3-3の 最 も基 本 的 な 役 割 は,リ ン酸 化 シ グ ナ ル に応 じて 蛋 白 質 複 合 体 を組 織 化 す る"コ V.シ ー デ ィネ ー タ ー 分 子"と グナル伝達系での役割 し て の 役 割 に あ る と想 定 して い る。 14-3-3蛋 白質 の 作 用 は,標 的 酵 素 や 蛋 白質 の リ ン酸 化 に 依 存 して 標 的 と複 合 体 を形 成 し,酵 素 の 活 性 化 や 不 活 性 化,活 性/不 活 性 構 造 の 安 定 化,あ るい は新 し おわ り に14-3-3蛋 白 質 の構 造 と作 用 か ら,シ グナ ル い蛋 白質 複 合 体 を形 成 す る こ とで あ る と考 え られ る(図 伝 達 系 で の この フ ァ ミ リー の 役 割 に つ い て考 察 した。 現 7)。 こ の 意 味 で は,14-3-3の 在 の 知 見 か ら は,14-3-3は 作 用 は いわ ゆ る分 子 シ ャ ペ ロ ン に 類 似 し て い る。 標 的 蛋 白質 の リン酸 化 を契 機 と し て これ に結 合 し,そ の 活 性 を 調 節 し,あ こ こで 注 目 され るの は,14-3-3が2量 体 構 造 を もち, 新 た な 蛋 白質 複 合 体 を 形 成 す る こ とで,細 胞 の増 殖 や しか も異 な るサ ブ ユ ニ ッ トか ら な るヘ テ ロ2量 体 を形 分 化,細 成 し う る こ とで あ る。 そ れ ぞ れ の サ ブ ユ ニ ッ トが 異 な 胞 機 能 に か か わ る シ グ ナ ル を 調 節,統 る標 的 を結 合 した 場 合,2つ 定 され る。 異 な っ た機 能 を もつ 蛋 白質 を必 要 に 応 じ て の 標 的 酵 素,蛋 白 質 は14- 胞 周 期,細 るい は 胞 の 運 動 や 形 態 変 化,あ る い は細 合 し て い る と推 3-3を 介 して連 結 し,よ り複 雑 な複 合 体 形 成 が可 能 で あ 集 合 し,複 雑 な 複 合 体 を 形 成 す る こ とで 一 連 の 反 応 を る。 これ と類 似 の 役 割 を担 う蛋 白質 と し て,シ 組 織 化,効 伝 達 系 で のSH2/SH3蛋 グナル 白 質 が 知 られ て い る。 実 際 に, 率 化 す る こ と は,血 液 凝 固 系 な ど の 多 くの 生 体 反 応 で 認 め ら れ る。14-3-3蛋 白質 フ ァ ミ リー に よ 323 Database Center for Life Science Online Service 12 蛋白質 核酸 酵素 Vol.41 No.4 (1996) シ グ ナ ル 伝 達 系 で の14-3-3蛋 図7 14-3-3は 白質 の 役 割 細 胞 応 答 に か か わ る さ ま ざ ま な分 子 を組 織 化 して シ グナ ル 伝 達 複 合 体 を形 成 す る コー デ ィネ ー ター 分 子 と して,細 胞 内 のシ ク ナ ル 伝 達 の 迅 速 化,多 極 化 にか か わ っ て い る と考 え られ る。 っ て 形 成 さ れ る 蛋 白質 の 複 合 体 は,活 性 の"シ 伝 達 複 合 体"で グナ ル あ り,こ れ に よ っ て シ グ ナ ル 伝 達 の迅 文 1) 速 化 や 多 極 化 が 可 能 と思 わ れ る 。 しか し な が ら,こ の 推 定 を裏 づ け る た め の 実 験 的 な 2) 根 拠 は 多 くの 重 要 な 点 で 欠 落 し て い る 。 た と え ば,本 稿 で もふ れ た よ うに,細 胞 内 で の14-3-3蛋 白質ヘ テロ 3) 2量 体 の 存 在 や,そ れ ぞ れ の サ ブユ ニ ッ トの標 的 や 作 用 の特 異 性 に つ い て の確 実 な 証 拠 が 得 られ て い な い 。14- 4) 3-3の 機 能 に つ い て も,細 胞 レベ ル で の 解 析 は数 少 な く,酵 母 の例 を 除 い て は遺 伝 子 の"ノ ッ ク ア ウ ト"な どの 個 体 レ ベ ル で の解 析 は行 な わ れ て い な い 。 ま た こ 5) れ とは 別 の問 題 と して,こ の フ ァ ミリーが 脳 神 経 系,と りわ け神 経 細 胞 に 多 量 に存 在 す る 生 物 学 的 な 意 味 や 必 6) 然 性 も十 分 理 解 され て い な い 。 14-3-3は,Grb-2な どのSH2/SH3蛋 る新 しい 概 念 の 蛋 白 質 と し て,蛋 白 質 と も異 な 白 質 の リ ン酸 化 や脱 7) の全 貌 の解 明 に は ま だ 多 くの 問 題 の解 決 が 必 要 で あ る 。 Watanabe, 8) (1993) Watanabe, M., Isobe, R., Takahashi, T., Ichimura, Y., Kondo, 17, 135-146 73, 225-235 324 M., Isobe, R., Takahashi, リ ン酸 化 反 応 に依 存 し た 多 くの シ グ ナ ル 伝 達 系 で 基 本 的 な 役 割 を担 っ て い る と推 定 され るが,そ 献 Ichimura, T., Isobe, T., Okuyama, T., Yamauchi T., Fujisawa, 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