Comments
Transcript
Basic Knowledge of Fine Blanking Technology
FB技術の基礎知識 林 一 雄 ファインブランキング技術研究会 会長 1922 年に発明され 1960 年に日本に紹介されたファインブランキング (FB)は、精度・原価・環境配慮など厳しい条件が課された製品の加工 に最適である。今回は、初心者に向けて総合的に紹介する。 1.はじめに 精密部品は、切削あるいは研削などのように素材 以下に 1922 年に発明されて以来工程短縮によって から薄皮を剥くように微量を繰り返し除去すれば得 技術・経済の両面で優れた成果をあげてきたファイ られる新生面は滑らかでバリもダレも発生せずに希 ンブランキング(FB)を紹介する。 望する精度に忠実に加工できる。 FB は一部の専門家にはよく知られているが一般 生産量が多い場合にはプレス加工が有利である の人は FB の普及の初期に書かれた簡単な紹介記事 が、プレス加工と言っても衝撃で打抜いた破断面を 程度しか認識されていない。そこで、初心者に向け 持つ従来の品質ではなく、最近求められている精度・ て理論・実用・変遷、研究者による学術的な裏付け、 原価・重量・材料消費量・環境配慮などの様々な厳 生産現場での事例、諸外国の現状なども交えた気楽 しい条件が課された製品を加工する手段としては切 な読み物として記述する。 削加工と似たシェービングや鍛造など多くの工程を 混ぜる新しい技術が増えている。 最近は従来よりも加工コストを下げるためにプレ ス加工を前提として設計されなかった製品あるいは 他の工法で生産されてきた部品をプレスで生産する ことが多くなったが、注意したいことは製品設計・ 材料の選択で幾つかの見直しあるいは変更が必要と なることである。 写真 1 一般のプレスで打抜いた断面と表面(上)、 FB による 1 ストロークで得た平滑なせん断面 2.FB とはなにか 2 スイスで 1980 年 7 月 15 日に生まれた Schiess 氏は、 体を破断面なしに平滑に切断する経済的な生産手段 従来は多くの切削工程を必要としていたタービンブ を考案して 1922 年に FB の特許を取得した。 レードの生産工程の改善に取り組み、社内にあった 日本に FB を紹介したのは世界的な塑性加工、特 油圧プレスを改造して 1 ストロークで材料の厚さ全 に冷間鍛造の権威者である工藤英明博士である。 SOKEIZAI Vol.54(2013)No.9 特集 自動車部品を支えるファインブランキング技術 ∼板鍛造技術の最新動向を探る∼ 金銭登録器などの部品生産には最適である」と次第 に FB の姿が見えてきた。 FB プレスを日本に輸出するのに先立って市場の 受容度と市場規模の算定・戦略行動体系の計画・事 業収支などの詳しい調査が不可欠である。と企画の 概要がまとまり FB プレスと金型の製造販売、FB 部品の受託加工をしている Schmid 社で詳細の報告 写真 2 Schiess 氏が厚さ約 3mm の全てを 1 ストローク で平滑にせん断したタービンブレード 書が作成されて日本の海外通商に報告された。 1960 年に工藤博士が 3 年間の留学から帰国し講演 料も不十分な FB に興味を持つ人は少なかった 1964 会で金属をまるで豆腐を切ったように平滑にせん断 年にブラザー工業は自社なりに集めたヨーロッパの した数個のサンプルを回覧し、人々は生まれて初め FB 情報を基礎に日本で最初にスイスの Osterwalder て FB 部品を手に取って見る機会を持った。 社製の FB プレスを輸入してジグザグミシンの模様 これが当時ヨーロッパ諸国の研究所・学者・企業 カムの生産を始めた。 日本では高速プレスに関心が高まっていて技術資 などで話題となっていた最新技術の FB であった。 しかし、当時の FB とは試行錯誤が当たり前で FB に関しては何も理論的な解析はされていなく学問的 な資料は存在しなかった。従って FB を紹介しよう と計画しても、この技術の意義また採用すればどの ような効果をもたらすのかは漠然としていて、その 最終目標も定かではなかった。 海外渡航が自由化されていなかった時代だが、ス イスを訪れた日本の学者や企業の経営者など FB の生 産現場を見学した誰からも FB の評判は極めて良かっ 写真 4 ブラザーが日本初に量産したミシンのカム たので、スイスの精密機械の大手貿易商の UHAG 社 は日本向け FB プレスの輸出することを企画した。 翌 1965 年にはまたしてもこの FB の将来性を先取 りしようと三井三池製作所がスイスの Hydrel 社と 技術提携し FB プレスと金型の国産化・部品の受託 加工を一貫して扱う新会社の東洋精密プレス工業を 設立して人々を驚かせた。FB 部品の受託加工業と して東洋精密の役目は、高額な FB プレスを導入し ようと考えた客先に対し FB 活用の事例を示すと共 に教育指導をして、新技術導入のリスクを取り除く FB のテクニカルセンターとしての働きを始めた。 写真 3 FB を日本に紹介した工藤英明博士 東洋精密が事例を紹介するのに従って、FB の経済 FB の新しさは何かまた既存の技術と比較・商売 な説得力のある技術的な裏付けのないことに不安と としての将来性などは不明であったが「FB は在来 不満を感じ躊躇した人もいた。これが発端となり研 工法とは異なり、1 工程で平滑なせん断・加工硬化 究者と企業の技術者による理論的な解析が始められ、 の発生・だれが少ない・平坦度が優れ・せん断を静 そして彼等の研究結果と具体的な応用例が塑性加工 かに・経済的に生産できる工法、ミシン・事務機・ 学会などで公開され FB の理解者は徐々に増えた。 的な評価も高まったが、一方この技術の導入に必要 3.FB の実用の初期 Schiess 社による FB 部品の受託加工によると最大 も加わって次第に FB 部品の実用範囲は厚く・大き 板厚の記録は 5 mm で外周の近接した穴までの壁の く・硬くなった。 厚さは 3 mm であった。徐々に能力 1,000 kN 程度の こうして抗張力の上限は 550 kN 程度、形状精度は プレスが使われ、1960 年になると Brunnen 社など ±0.02 mm、大きさは名刺の半分ほどとなった。FB Vol.54(2013)No.9 SOKEIZAI 3 るが早くから近隣諸国だけに留まらず、異なる文化 を持つ国々向けの FB ビジネスをリードした。 実用が始まった当初、日本の自動車部品生産での FB の評価はあまり芳しくなく、具体的にはプレスの操作 性・FB 金型製作技術に対する改善要求に対してスイス の FB プレスメーカー各社は理解に苦しみ手を焼いた。 しかし、間もなくすると彼たちはアメリカの自動 写真 5 1960 年に Brunnen 社が紹介した FB 部品 車関連企業を訪れるようになり、次第に日本の要求 する金型の標準化・金型のシングル段取りなどを理 を発明した Schiess 社をはじめ FB 関連の数社があ 解して、加工できる材料は S 45 C など硬さ 600 kN 程 るスイスはドイツ・フランス・イタリアなどに囲ま 度、厚さは最大 15 mm、また形状は複雑になり精度 れた四国よりも僅か大きい自動社産業もない国であ は±0.01 mm、大きさは A4 サイズ以上となった。 4.FB と他の工法との違い あらゆる金属は塑性と脆性の二つの相反する性質 し、粘土細工のように力を加えると変形してその力 を除いても変形が元に戻らない性質を塑性と呼び、 一方、力を加えると組織が破壊して割れたり・折れ る脆い性質を脆性と呼ぶ。 切削・研削加工では素材を部分的に切除するため 切り屑を発生し組織を分断するのには脆性が歓迎さ れるのに対して金属をせん断あるいは鍛造する仕事 では素材を変形・移動させるので塑性が歓迎される。 ここで塑性加工の素晴らしさを紹介すると、分離 せん断表面からの距離 0.003 mm 0.15 mm 0.3 mm 1.0 mm 3.0 mm 板 厚 を兼ね備えている。物質に外から力を加えると変形 6.0 5.5 5.0 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 mm 2.0 1.5 1.0 0.5 0 250 または成形によって生まれた部分を詳しく観察する と組織が連続的に流動して密度が高まってそこだけ 3.0 1 0.3 0.15 表面 300 350 400 450 500 550 600 硬さ HV 表面から異なった距離での硬さ 650 図 1 FB による分離面の加工硬化 が硬くなっていることが認められる。この現象を専 門用語で加工硬化と呼び、スプロケットなどのよう 4 な機構部品を FB で加工した場合に切削加工したも どの制約が多いので実用には不向きである。 のと比較すると FB に使う金型に特徴があり、加工 また加工しやすいように焼きなました素材を FB 硬化の発生が顕著なのでこのような現象を活用する した場合には後に熱処理をして必要な硬度を取り戻 と製品の耐久性が改善できるので FB は好評である。 さなければ部品としては使えず、毎回費用・時間を 次に多くの人が体験的に知っているように金属を 必要とするばかりでなく材料を加熱すると熱処理変 希望する形状にせん断・成形するために必要な圧力 形が発生するので品質のばらつきとなるなど問題が は、その素材の物理的な性質によって大きく異なり、 多い。 この成形し易さを専門用語では塑性変形能(あるい こうした従来の加工手段とは全く異なり、圧力を は延性)と言う。 活用して加工しにくい素材を加工するその瞬間だけ 工業規格で定められた化学成分・物理的性質を持っ 物理学的な性質を変えてせん断あるいは成形を有利 た素材を用いて塑性加工を行うに場合には塑性変形能 に行うのが FB の最大の特徴である。 を高められると仕事はし易くなる。方法として歴史的に 製品設計あるいは生産技術に従事する人の中で他 も広く使われてきたのが加熱状態で成形するあるいは の工法では利用していない省エネの最適手段である 事前に素材を焼きなまして性質を変えることである。 FB を詳しく知っている人は少ない。 工業規格で許される範囲でチタン・ニオブなどを また従来と同じ圧力を用いるならば FB では余裕 添加し微粒子にした素材を使えば加工は有利になる を持って成形できるので製品の成形精度は向上する が、こうした手段は、加工条件・量・時間・費用な ことを活用することができる。 SOKEIZAI Vol.54(2013)No.9 特集 自動車部品を支えるファインブランキング技術 ∼板鍛造技術の最新動向を探る∼ 5.なぜ FB FB を発明した Schiess 氏は、切り口を平滑にせん 性変形能の豊かな材料ほどその断面は小さい。これ 断する目的を達成し、人々はそれに満足し実用しは を専門用語で断面減少率と言う。 じめ FB プレスで自分の顔が映るほど平滑にせん断 このように圧力によって塑性変形能を高める現象 できたが、条件の詳細は明らかでなく、実際に FB を静水圧効果と呼び、FB ではダイの切れ刃に小さ を使ったことがなかった人たちはもっと上手に実用 な丸みを設け、切れ刃に沿って V 型の突起を設けせ したいと望んだ。 ん断圧力の約 50 % 相当の圧力で素材に加圧する板押 この頃、FB の条件について前田禎三・宮川松男 さえ圧力・ダイに押し込まれる製品に対向する圧力 の両博士とその門弟をはじめ、ブラザー工業の浅見 で、せん断圧力の約 20 % の逆圧力を使って材料の塑 和也氏・日立製作所の長屋稔氏・トヨタ自動車の大 性変形能を高めている。 西利美氏ほかプレス加工の専門家が検証に取り組み、 FB と静水圧の関係についての謎を解く研究に多 前田禎三博士・宮川松男の両博士は塑性変形能が圧 くの人が取り組み、前田博士の高弟の中川威雄博士 力の下で変化することを追求し 1964 年にノーベル物 は FB 金型のダイとパンチのクリアランス・せん断 理学賞を受賞した Bridgman 博士の金属の高圧下で 速度などの広汎な研究を行った結果日本で初めて の物理的性質に関する研究と FB との関連にたどり FB に関する博士号を授与された。 着き“常温でせん断領域の塑性変形能を高めること FB ではできる限り 1 工程で平滑なせん断面を得 ができる静水圧効果”を活用することになった。 ようと他の工法では縁がない V 型の突起をせん断輪 金属の物理的性質を調べる「引張試験」でその引 郭に沿って材料に押し込む。そのため在来のプレス きちぎられた断面のくびれの大きさを比較すると塑 の材料消費量と比較すると材料歩留まりが悪いとの 声が一時期寄せられた。こうした疑問を解こうと世 界で最大の実績を持つスイスの Feintool 社が製造販 売した FB 金型 343 個と日協製作所が製造販売した FB 金型 57 個の材料消費量の記録を調査し V 型の突 起を設けた場合には在来のプレス金型よりも材料消 費量が 0.8 % の多いことがわかった。 そこでこの V 型の突起の影響に関しては突起の形 状・配置する場所など最適条件を検証した結果金型 には部分的に突起を省けることがわかり材料消費量 の差を更に 0.7 % まで少なくでき、V 型の突起を用い 写真 6 静水圧による塑性変形能の違い る FB の材料歩留まりが悪いと考える専門家はもは 1.0 0.75 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 銅 ア ル ミ ニ ウ ム 80 C 0.5 % 60 Zn−Al合金 1.5 100 亜鉛 5.0 3.0 2.0 断面減少率(1−Ao/Af)×100% 破壊対数ひずみ ε f=I n・Ao/Af やいなくなった。 40 20 0 0.2 % C 炭素銅 鋼 炭素 ム シウ ネ マグ ム ー ロ ク 鋳鉄 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 圧力 103 P・S・I 0 4,000 8,000 12,000 16,000 静 水 圧 P kg/cm2 20,000 24,000 写真 7 スケルトンに残った V 型の 突起を押し込んだ圧痕 図 2 塑性変形能の違いと断面減少率 Vol.54(2013)No.9 SOKEIZAI 5 6.これが FB の人気 2013 年春の時点では、ドイツの SMG 社から世界で 最大能力 14,000 kN の FB プレスが販売され、素材は SNC・SNCM・SUS・非 鉄 な ど、 厚 さ 0.1 ∼ 20 mm、 硬さの上限は 1,000 kN 程度、形状精度は±0.01 mm、 大きさは直径 400 mm ほどとなった。 FB に携わる各社では他社が手がけていない製品 に取り組むなどのチャレンジが多く見られるととも 写真 8 Haenggi 社の FB による医療機器部品 にせん断加工よりも 3 次元の成形である板鍛造が増 これまで日本で FB プレスを製造販売した会社は 加しまた自動車の軽量化で求める高硬度鋼などの加 数社あったが、販売機種が能力 1,000 から 14,000 kN 工は拡大し続けている。 まで広範囲であるので現在 FB プレスを製造してい 世界中でこれまで採用された FB プレスは約 5,000 る会社は少ない。なぜ今頃?と思われる 1982 年に森 台、現在 FB プレスを製造している国は日本・スイス・ 鉄工が FB プレスの製造販売に参入し機械式・油圧 中国・韓国などなどの数社とあまり多くない。 式 FB プレスを製造販売している。 FB 部品の世界の年間生産量は 9 ∼ 10 億個、素材 現在急速に FB が普及している国はタイ・インド・ の約 90 % は鉄とその合金で残りが銅やアルミ合金で 中国などで、日本製の FB プレスと FB 金型は精度・ ある。 耐久性・操作性・信頼性・保全性・短納期・価格が 量産されている部品の約 85 % は自動車部品で、比 各国で好評である。 較的大型部品で生産量が多いと言う魅力がある。日 我 が 国 で は、110 ∼ 120 社 が 約 450 ∼ 500 台 の FB 本では自動車部品の受託加工業では競争が激しい プレスを導入し、年間約 1 ∼ 1.2 億個の製品を生産し が、小物部品で月間生産量の少ない製品は競争が激 ている。国内の FB 部品受託加工業の中で最も多く しくなく、単価が高くて軽量なので好都合である。 の FB プレスを保有している会社は 47 台、アメリカ 自動社産業比率が高いけれど産業機械・農業機 には 100 台以上も所有する会社もある。 械 の 部 品 も あ り 1843 年 に 創 業 し 6,500 人 の 陣 容 を 日本の FB 部品受託加工業者は過去の事例を参考 抱 え る BARNES グ ル ー プ の 一 角 に あ る ス イ ス の にした伝統的な平滑なせん断だけでなく、海外では Haenggi 社のように様々な医療機器の部品などの精 受注しないだろうと思われる難しい立体的な成形加 密部品をプログレシブおよび FB で生産している会 工をこなし、さらに在来工法から FB への転換など 社もある。 で年々取引量を拡大している。 7.上手な FB の使い方 日本ではできる限り FB の 1 工程で要求を満た すことに努力・工夫して進歩を続け、従来は切削・ シェービングなどで加工していた高精度部品を FB に転換する会社が多い。 さらに高度な応用として人気のあるのが、製品の 写真 9 1951 年に Schiess 社が生産した板鍛造 一部を潰したり増肉したり材料を移動させる複合成 6 形加工と呼ばれる工法である。基本となる平滑なせ このような FB による複合成形は 1949 年に不況で ん断に局部的な成形を複合するもので従来は FB と 売り上げが減少した Schiess 社が付加価値の高い製 冷間鍛造との境界領域として互いに手をつけていな 品加工を狙って世界で最初に実現した。円盤状の厚 かった仕事である。 さ 3 mm の穴付き素材を準備して、冷鍛鍛造で局部 複合成形と呼ぶほか、板材を用いる成形で鍛造技 的に潰した後に厚さの異なる歯車をせん断した。 術を活かすので板鍛造と呼んだり、渕脇氏は精密成 かつて技術的に困難だと判断して受注しなかった 形を行うので FF(ファインフォーミング)と名付け 製品あるいは生産を開始したが技術的に困難が多か たが、ファインフォージング(精密鍛造)も当ては 使って成形していたラウンドリクライナーの 1 まるネーミングでもある。 ショット化も実現した。 SOKEIZAI Vol.54(2013)No.9 特集 自動車部品を支えるファインブランキング技術 ∼板鍛造技術の最新動向を探る∼ 一般プレスを FB に利用することが何度も試みら 最近は FB 専用ではないが高剛性のプレスが開発 れたが、一般プレスを FB 用に改造するには精度・ され油圧の制御技術のレベルも上がったので FB 用 剛性・速度などが適さないので苦労が多くて失敗し に機能を改造し高精度の金型を調達できるならば問 た会社は多かった。 題は少ない。 8.ファインブランキング技術研究会 日本には世界中で初めてファインブランキング技 術研究会が 2005 年に設立され、続いて 2008 年に中 国の鍛造学会にもファインブランキング分科会が生 まれた。日本の会員構成は、FB を自社製品の生産だ けに使っている・客先からのさまざまな部品を受託 加工する・FB だけでなく他の工法と併用し使い分け 写真 10 潰し・増肉・半抜き・平滑なせん断などが 混じった複合成形部品 る・FB だけに特化・周辺機材の製造あるいは販売・ そして大学や公設の研究所の研究者など範囲は広い。 を加工する順送型・単片に準備された素材を搬送装 国際競争が激化する中で日本では“最新技術情報 置で送って加工するトランスファー型・素材を 1 カ を求めるが自分の経験は外部に知らせたくない”人 所に留まらせたままで幾つもの圧力で成形する多軸 たちが多かったが今では同業者の工場訪問・入門 型などがある。一言で FB と言うが生産量・要求精度・ 講座・技術セミナー・周辺技術講習会などを開催し 製品形状などによって使い分けする知恵を会員が互 て FB の技術のシェアリング(共有化) ・冷間鍛造と いに交換している。 のハイブリッド(複合化)などで高度利用を互いに 現在会員たちが金型の納期短縮・原価低減対策と 開拓し会員は協力してファインブランキングハンド して関心を高めているのがコンピュータを使ったシ ブックを共同執筆して仲間意識が根付いた。 ミュレーションで、これまで経験したことのない複 この研究会では中国・韓国などの FB 仲間とも交 雑な形状の複合成形用の金型の設計で従来なら部分 流して、FB の応用の拡大・高精度・原価低減・重 的な試作金型を必要としたが時間と経費のロスを省 量軽減・高硬度材の加工・板鍛造・プレスの開発・ く手段として鍛造などでの経験豊富な Deform など FB と周辺技術の連携・総合知識と共通の情報を共 のシミュレーションの利用が役立つ。 有することを実現した。 周辺機材も進歩が著しく、公害対策で開発された 会員たちが使っている FB 金型は種類が豊富で、 非塩素系潤滑油・生産現場の騒音と汚染対策には製 1 ストロークでせん断するコンパウンド型・鏡面の 品自働取り出し装置などの開発が進んでいる。 ように細かな表面にせん断できるスーパーフィニッ 会員たちが FB を高度利用するには多くの周辺の シュ型・1 ストロークで幾つもの製品をせん断でき 先端技術の活用だけでなく理論的な解析が大切で大 る多列取り型・複数の工程を経て複雑な形状の製品 学・研究所などとの連携が活かされている。 9.これからの FB 1922 年にスイスで誕生してから 90 年間進歩を続け 参考文献 た FB は、世界中の関係者の異なった着想によるチャ 1 )工藤:塑性と加工,Vol. 1,No. 2(1960-2) レンジによって時代の要求に合わせた膨大な量の新 2 )中川:塑性と加工,Vol. 6,No. 55(1965-8) しい応用を開発してきた。 車社会ではハイブリッドまたは EV 化によって姿 を消した部品もあるが新しく誕生した FB 部品もた くさんある。 Schiess 氏が考案して工藤博士が日本に紹介した FB を私たちは活用してきた。これから FB をどの ように高度化して継承するかは貴方たちに与えられ たテーマである。 3 )前田:塑性と加工,Vol. 9,No. 92(1968-9) 4 )渕脇:プレス技術,16-6(1978)57-59 5 )福田:塑性と加工,vol. 20,No. 220(1979-5) 6 )室田:塑性と加工,vol. 25,No. 278(1984-3) 7 )木内:塑性と加工,vol. 29,No. 332(1988-9) 8 )村川:塑性と加工,vol. 31,No. 278(1984-3) 9 )宮川:日本機械学会誌,vol. 71,No. 591(1968-10) 10)林:塑性と加工,vol. 51,No. 592(2010-5) Vol.54(2013)No.9 SOKEIZAI 7