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Heamo 6-2-Cover
Guidelines − Full Translation
ガイドライン
稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre
Doctors’ Organisation(UKHCDO)ガイドラインのレビュー
The rare coagulation disorders — review with guidelines for management from the United
Kingdom Haemophilia Centre Doctors’Organisation
P. H. B. Bolton-Maggs, D. J. Perry, E. A. Chalmers, L. A. Parapia, J. T. Wilde, M. D. Williams, P. W. Collins,
S. Kitchen, G. Dolan and A. D. Mumford
Department of Clinical Haematology, Manchester Royal Infirmary, Manchester; Haemophilia Centre and Haemostasis Unit, Royal
Free and University College Medical School, London; Department of Haematology, Royal Hospital for Sick Children, Yorkhill
NHS Trust, Glasgow; Haemophilia Centre, Bradford Royal Infirmary, Bradford; Department of Haematology, University Hospital
Birmingham, Edgbaston, Birmingham, West Midlands; Department of Clinical and Laboratory Haematology, Birmingham Children’ Hospital, Birmingham; Arthur Bloom Haemophilia Centre, University Hospital of Wales, Heath Park, Cardiff;
Department of Coagulation, Sheffield Haemophilia and Thrombosis Centre, Royal Hallamshire Hospital, Sheffield; Department
of Haematology, University Hospital, Queens Medical Centre, Nottingham; and Bristol Haemophilia Centre, Bristol Haematology
and Oncology Centre, Bristol, UK
要 約:稀な血液凝固異常症は,診断および管理が
インを提示する。今回我々は,Ehlers-Danlos 症候群
非常に困難な遺伝性疾患である。本レビューでは,
に関する項を設けたが,これは血液専門医がこの疾
フィブリノゲン異常症,ならびにプロトロンビン,第
患をもつ症例における出血症状について相談を受け
V 因子( FV ),FV + FVIII,FVII,FX,ビタミン K
依存性因子,FXI および FXIII の各凝固因子欠乏症
ることがある可能性を考慮して記載した。
に関するこれまでの文献を総括する。様々な臨床経
Key words:稀な血液凝固異常症,フィブリノゲン,
験と文献の双方に基づき,外科手術,自然出血,妊
プロトロンビン,FV,FVII,FX,FXI,ビタミン K
娠および新生児に対する対処について具体的助言を
依存性因子,FXIII,Ehlers-Danlos 症候群,FV・FVIII
示しながら,出血性合併症の管理に関するガイドラ
重複欠乏症,分子遺伝学
緒 言
いる特徴は,有病率が極めて低く稀な疾患であるこ
稀な血液凝固異常症は,診断および管理が極めて
。したがっ
とである
(第 XI 因子欠乏症は例外である)
困難な遺伝性疾患である。これらの疾患に共通して
て,これらの疾患を有する患者の診断とモニタリン
グには,専門家による症状および分子レベルでの機
Correspondence: Dr Paula Bolton-Maggs, Chairman of the
UKHCDO rarer haemostatic disorders working party, Department
of Clinical Haematology, Manchester Royal Infirmary, Oxford
Road, Manchester M13 9WL, UK.
E-mail: [email protected].
序の検査が必要と考えられるが,現時点ではこうし
た検査が行えるのは極めて限られた施設のみであ
る。これらの患者の出血症状は個々の患者ごとに異
なり,これは部分的にではあるが,これらの疾患の
Haemophilia (2004), 10, 593 – 628
©Blackwell Publishing Ltd.
分子レベルでの機序が多様であることに起因してい
15
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
ると考えられる。したがって,これらの患者では出
置を行う場合は常に施設で行い,その施設の医師が
血リスクの評価が困難である。これまでのところ,
直接治療に当たるべきである。
大規模患者集団を対象とした長期前方視的試験はほ
患者とその家族には,遺伝カウンセリングと遺伝
とんど行われておらず,多くの場合,治療に関する
子スクリーニングを受けるよう勧めるべきである。
信頼できる情報が非常に乏しい。凝固因子製剤を使
一部のフィブリノゲン( FI )異常症は例外であるが,
用するとしても,しばしばそれらは,未認可で処方
稀な血液凝固異常症の遺伝は,通常は常染色体劣性
箋が必要になる場合があることに加え,入手が困難
遺伝であることを認識しておかなければならない。
な場合もある。
したがって,発端者は,罹患者の非常に少ない親族
これらの疾患は稀であるが,ほとんどの血友病医
の中に存在し,表現型を予測するための情報は極め
療施設には複数の血液凝固異常症を有する患者が多
て限られていると考えられる。したがって,罹患者
数存在する。一部の国では血族結婚が一般的で,一
における分子異常を決定し,症例報告や電子データ
般集団におけるこれらの疾患の有病率が高く,これ
ベースを用いながら親族の中で罹患者と非罹患者と
らの国々の施設では極めて多数の患者が認められ
を比較することが最も重要である。
る。本ガイドラインの目的は,各疾患について簡潔
重症の稀な血液凝固異常症を有する妊婦は,血友
にレビューするとともに,可能な限り診断と治療に
病医療施設のある病院の産科で対応するのが最良で
関してエビデンスに基づくガイドラインを提示する
ある。これが不可能な場合は,産科と血友病医療施
ことである。特に,外科手術を要する患者,妊婦,
設とが密に連絡をとる必要がある。このような密な
罹患新生児における定期補充療法(予防投与療法)
連絡は,罹患している可能性のある新生児を適切に
と治療に重点を置く。これらの疾患に関する文献は
検査・評価そして治療を行ううえでも重要である。
限られていることから,本文で特に明記しない限り,
例えば,両親が血縁者同士で,既に罹患児がいる場
本文中のエビデンスはレベル III(症例研究など,整
合や,両親のいずれかが保因者であることがわかっ
然とデザインされた非実験的研究で得られたエビデ
ている場合などは特に注意が必要である。重症血液
ンス)またはレベル IV(専門家委員会の報告または
凝固異常症の中のいくつかは,生後 1 週間における
意見および専門家の経験に基づくエビデンス)であ
有意な頭蓋内出血のリスクを伴っている。
り,したがって推奨グレードは C(良質で直接的に
小児科医と新生児科医は,血縁関係にある両親か
臨床適用できる臨床研究の不在)である。各疾患に
ら生まれた新生児では重症血液凝固異常症のリスク
使用可能な血液製剤の詳細については,最近 United
が高いことを十分に認識しておく必要がある。新生
Kingdom Haemophilia Centre Doctors, Organisation
( UKHCDO )により発表された改訂治療ガイドライ
児に予期せぬ出血がみられた場合は,緊急に検査を
ン( 1 )に情報が盛り込まれているため,本ガイドライ
頭蓋内出血の治療が不十分な場合,あるいは遅れた
ンにはリストしないこととした。
場合は,致命的結果または予後不良につながるとと
今回我々は,Ehlers-Danlos 症候群( EDS )も対
行い,積極的に治療することが重要である。新生児
もに,長期的な重症障害をもたらす結果となる。
象疾患に含めたが,この理由は,この稀な疾患をも
罹患者が A 型肝炎および B 型肝炎のワクチン接
つ患者が出血症状により血液専門医を受診すること
種を未だ受けていない場合は,皮下注射によりワク
を考慮してのことである。
チン接種を行い,また血小板機能を妨げるような薬
物(サリチル酸,他の非ステロイド性抗炎症薬)の使
一般的推奨事項
より一般的な血液凝固異常症に関して既に確立さ
れている治療プロトコールに基づく一般的推奨事項
は,稀な血液凝固異常症にも適用可能である。患者
を血友病医療施設に登録するべきであり,侵襲的処
16
用は一般的に避けるよう助言するべきである。鎮痛
薬として用いるにはパラセタモールが比較的安全で
ある。
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
検索方法
たは 23 ゲージの針が必要であるかもしれない)
。
以下の各項は,これらの血液凝固異常症に関して
PT および APTT の検査では,末梢静脈カテーテル( 2 )
特に経験豊富(臨床および研究)な専門家グループ
またはヘパリン非添加中心静脈カテーテル( 3 )を通じ
のメンバーにより執筆されたものである。各専門家
た採血も可能である。ヘパリンによる試料の汚染を
が蓄積した資料に加え,適切なキーワードを用いて
回避する必要がある場合は,各施設の廃液手順に従
文献を検索し,可能な限り多くのエビデンスを収集
うべきである。
した。
採血から抗凝固薬との混和までに時間が経過して
しまった場合や,採血装置に血液を満たすのに遅れ
略 語
PT:プロトロンビン時間
APTT:活性化部分トロンボプラスチン時間
TT:トロンビン時間
LMWH:低分子ヘパリン
が生じた場合は凝固因子が活性化している可能性が
単 位:本稿作成時において国際標準があったもの
てはいけない。静脈穿刺におけるトラブルは,検査
( FII,FVII,FX )については IU/dL を用い,国際
結果に影響する可能性があり,これは特に血小板機
標準がなかったもの( FV,FXI,FXIII )については
能検査でいえることである。検査結果の分析を試み
U/dL を用いた。文献を引用する際に,文献がパー
る前に試料をチェックし,凝血や溶血が認められる
センテージを用いていた場合は,我々もそれに準じ
場合は試料を廃棄するべきである。
た。この場合,100%は 100 U/dL に相当する。
あるため,試料は廃棄しなければならない。採取し
た血液に抗凝固薬を混和したら容器を密閉し,静か
に 5 回転倒混和する(これは,真空採血管装置を用
いた場合も同様である)
。混和する際は,激しく振っ
② 抗凝固薬,試料充填および容器
凝固検査のための採血に通常推奨される抗凝固薬
稀な血液凝固異常症の臨床検査
はクエン酸三ナトリウムである( 4,5 )。クエン酸三ナ
トリウム( 0.105 ∼ 0.109
方法論
はじめに:血液凝固異常症の検査では,検査結果
M )は,凝固因子レベルの
定量を含めて,血液凝固検査一般に用いられる血液
に対して推奨されている( 5 )。抗凝固薬と血液は 1:9
が適切な血液試料の採取と処理に影響されるのみな
で混和する。以前は 0.129
らず,スクリーニング検査や定量法の選択,デザイン,
の使用も受け入れられていたが( 6 ),使用される試薬
質的管理,解釈により影響される。これらの影響は,
に よ っ て は 作 用 の 強 い 抗 凝 固 薬 で は PT お よ び
診断および治療に大きく関わってくる。この項では,
APTT が最大 10 %延長することがあるため,現在
これらの変数とそれらが及ぼし得る影響を明らかに
では推奨されない( 7 )。試料は適切に満たし,正確な
するとともに,可能であればこれらの疾患に対する
結果を得るためには少なすぎても多すぎてもいけな
臨床検査の方法論的な側面からも提示する(多くは
い( 8 )。ヘマトクリット値が 0.55 L/L を超える患者で
これらの疾患のすべてに当てはまることであるが)
。
は PT および APTT が影響を受ける可能性があるた
M
クエン酸三ナトリウム
め,血漿量を考慮して抗凝固薬の用量を調整する必
試料の採取および処理
① 試料の採取
要がある( 5 )。
採血容器の内表面は検査結果に影響を及ぼす可能
血液凝固検査では,注射器または可能であれば真
性があり,これは特にスクリーニング検査でいえる
空採血管装置を用いて静脈血を静かに,かつ速やか
ことである。採血管は不活性で,接触活性を誘発し
に採取する。採血を容易にするための駆血帯の使用
ないものを使用しなければならない(シリコン処理
は,過度の圧迫を加えない限り,通常これらの疾患
されていないガラスは不適切)
。凝固因子活性(レベ
に関するほとんどの検査結果に影響しない。注射
ル)の定量において,様々な方法で採取された試料
針は,21 ゲージ以下のものを選ぶ( 乳児では 22 ま
については,基本的に試料間で結果が異なることを
17
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
示すエビデンスが報告されている( 9 )。
④ スクリーニング検査
新生児および乳児の場合,年齢の高い小児や成人
凝固因子欠乏症の存在に対する PT および APTT
に比べて凝固検査においていくつかの特異的相違点
の感度は,使用するアッセイ系によって異なってく
がある。British Committee for Standards in Haema-
る( 15 ∼ 18 )。凝固因子欠乏症が存在する場合のこれら
tology は,新生児における血液凝固・血栓症の検査
のパラメーターの延長の度合いは,使用する試薬に
と治療に関するガイドラインを最近作成し,採血手
よって大きく異なる。スクリーニング検査で異常値と
順,臨床検査,検査結果の解釈について詳細に解説
して検出すべき凝固因子欠乏のレベルは,未だ定義
( 10 )
している
されていない。APTT の測定において異なるアクチ
。
③ 分析前における試料の処理および保存
ベーターを使用すれば感度に差が生じ( 18 ),さらに,
血小板機能検査に用いる多血小板血漿を調整する
リン脂質の異なった種類によっても著しい違いが生
,150 ∼ 200 g で
に は, 試 料 を 室 温( 18 ∼ 25 ℃)
じる( 19 )。APTT と同様に,異なる試薬の使用は PT
10 ∼ 15 分間遠心分離し,採血から 2 時間以内に分
検査の感度にも影響し,これは特に FVII および FX
析する。血液凝固異常症に関連する他のほとんどの
活性についていえる。境界値に近い結果が出た症例
検査では,例えば 2,000 g で 10 分間以上など,残
については,新鮮な試料を使って再検査を試みるこ
9
留血小板数が 10 ×10 /L より十分少なくなるよう
とが重要といえる。また,同一症例においても検査
な速度と時間で遠心分離する。18 ∼ 25 ℃での遠心
する時によって PT および APTT の変動がみられる
分離は,ほとんどの凝固検査において許容範囲内で
場合があり,この変動幅は 6 ∼ 12 %と考えられ,
ある。遠心分離後の試料を 4 ∼ 8 ℃で長時間保存す
留意しておく必要がある( 20 )。
ると寒冷活性化が生じ,FVII 活性の亢進( 11 )や,PT
軽症の凝固因子欠乏症が存在する場合は,PT お
または APTT の短縮が発生する可能性があるため,
よび APTT の延長の程度は小さいと考えられるた
このような保存は避けなければならない。
め,検査の質的管理には十分な注意を払うとともに,
APTT の測定では試料採取後 4 時間以内に分析す
るべきであり( 5 ),PT の測定では試料によっては 24
正確な正常値・基準値の範囲を定める必要がある。
スクリーニング検査にも限界があるため,スクリー
時間あるいはそれ以上の時間にわたって保存された
ニング検査の結果は,関連するあらゆる情報,すな
( 12 )
試料でも安定した結果が得られる場合もあるが
,
わち,患者の治療歴や家族歴の詳細と合わせて解釈
分子異常を有する症例において検査結果が安定して
することが重要である。スクリーニング検査での正
いるか否かについては不明である。したがって,い
常結果は,必ずしも軽症疾患の存在を除外すること
ずれの検査も採血から 4 時間以内に完了するべきで
はできない。
あるが,後に分析する場合はこの時間内に血漿を急
⑤ 基準値の範囲
速凍結する。凝固因子活性(レベル)の定量結果は,
いずれの凝固検査であれ,結果を解釈するに当
( 13 )
試料を − 24 ℃以下で保存した場合は 3 か月間
,
たって重要なことは,健康者における検査結果の
− 74℃で保存した場合は 18 か月間まで安定している
データを揃えておくことである。
「健康」の定義は明
(試料採取時の検査結果と比べて結果の相違が 10%
確ではなく,しばしば相対的な意味合いを含む。年
以内である場合を
「安定」
と定義した)
。家庭用 − 20℃
齢と性別をマッチさせた健康者が理想的な対照群で
冷凍庫は通常使用しない。凍結試料をドライアイスと
ある。しかし,稀な血液凝固異常症の評価に関連す
ともに輸送する場合は,血漿が二酸化炭素に曝露さ
る凝固検査の多くでは,このような注意深い対照群
( 14 )
れると pH に影響する可能性があるため
,これを
の選択が必須というわけではない。正常者から試料
避ける十分な注意が必要である。凍結試料を分析に
を収集し,これらの試料は各地域の検査施設で患者
供する際は,3 ∼ 5 分間 37℃で急速解凍しなければ
からの試料と同じ方法で,処理,分析するべきであ
ならない。これより低い温度で解凍すると寒冷沈降
る。文献や試薬製造業者からの情報は,あくまでも
反応が生じる危険性があるため容認できない。
ガイドとして考慮するべきである。
18
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
スクリーニング検査の場合,基準値は使用するアッ
合液中に存在する凝固因子の量が,APTT または
セイ系により影響され,また,同一製造業者の試薬
PT で測定される凝固時間に律速的に影響するよう
であってもバッチやロットが異なると正常範囲に相
にすることである。これを行うためには,凝固因子
違が生じる可能性も考慮しておかなければならな
活性(レベル)が既知の標準血漿または標準サンプル
い。凝固因子活性(レベル)の定量では,いかなる
を希釈する必要がある。いくつかの異なる比率で希
状況においても絶対的にというわけではないが,正
釈した標準血漿を準備することにより,血漿中に存
常者の結果は異なる手法を用いても結果が近似して
在する凝固因子活性(レベル)に応じて凝固時間が異
いることが理想的である。最も適切な定量法は,各
なる較正曲線を作成することができる。希釈比率
施設で確立された正常範囲が他の施設で行われた研
が低い,あるいは凝固因子活性(レベル)が高い場
究で報告されている値と近似する定量法である。
合は,評価対象の凝固因子が律速的に働くとは考え
これらの疾患に関連する凝固検査のほとんどにつ
られず,結果として定量は特異的ではなくなり無効
いていえることであるが,分析に用いる対照群の症
になる。10 U/dL 未満の被験血漿を分析する場合は,
例数は 25 例未満であってはならない。また,対照
異なる比率で希釈した標準血漿を用いて定量し,較
群における結果は,正規分布を示すものでなければ
正曲線を延長する必要があると考えられる。患者血
ならない。明確な,あるいは統計学的な外れ値は,
漿中の凝固因子活性(レベル)が極めて低い場合,
ほとんどの場合は誤りであるため,通常は除外する
希釈した被験血漿を追加しても凝固因子欠乏血漿の
ことが許容される。最もよく用いられている慣行は,
凝固時間は全くといっていいほど変化しないと考え
平均値±2SD を上限値および下限値として算出さ
られる。希釈液は,凝固因子活性(レベル)
(対数ス
れ,母集団全体の 95 %の値を基準値の範囲とする
ケール)と凝固時間(対数スケールまたは線型スケー
方法である。正規分布しない値については,他の計
ル)との関係が直線的になるものを選択する。標準
( 21 )
算方法を用いることができる( Walker
を参照)
。
曲線は,少なくとも 3 つの希釈比率の異なる希釈液
基準値の範囲はあくまでもガイドあるいは臨床的
について作成し,較正曲線を他の機会に使用するた
解釈のための補助として用いるべきである。
めに残しておけるほど反応が再現性に優れていると
⑥ 凝固因子活性(レベル)定量法のデザイン
いう明らかなエビデンスがない限り,較正曲線は定
凝固因子活性(レベル)の定量には長年にわたり 1
段法が最も一般的に使用されてきた ̶ FXI の場合
量を行うごとに求めなければならない。標準血漿は,
は APTT,FII,FV,FVII,FX の 場 合 は PT に 基
較正しなければならない。被験血漿についても希釈
づいている。凝固因子活性(レベル)の定量に関する
可能な限り WHO 国際標準血漿と比較できる方法で
。1
比率の異なる 3 つの希釈液で分析し,被験血漿の用
量 - 反応曲線が直線的で,かつ標準血漿の用量 -
段法では,正確で信頼性の高い有効な結果を得るた
反応曲線と一致するか否かを確認できるようにす
めには,そのデザインにおいて種々の特徴が必要と
る。1 つの希釈液のみでは精度が著しく低下するば
され,これらについては後に述べる。いずれの定量
かりか,インヒビターが存在する場合は,真の凝固
法においても,検査は評価対象の凝固因子を完全に
因子活性(レベル)が極めて過小評価されてしまい,
欠乏した血漿の凝固遅延を試料(被験血漿)がどれ
だけ是正あるいは短縮するかに基づいている。使用
とても受け入れられるものではない。被験血漿の用
量 - 反応曲線が標準曲線と一致せず,抗リン脂質抗
する凝固因子欠乏血漿は,評価しようとしている凝
体などのインヒビターの存在が確認された,あるい
固因子の含有量が 1 U/dL 未満で,かつ他のすべて
は疑われる場合は,最も希釈比率の高い試料で得ら
の凝固因子活性(レベル)が正常でなければならない
れた活性値が実際のレベルに最も近いと考えられる。
(「他のすべての凝固因子」は結果に影響を及ぼし得
しかし,このような結果は,妥当な定量法としての
る)
。重要なことは,凝固因子欠乏血漿+標準血漿
基準を満たした条件下で得られた結果ではないた
および凝固因子欠乏血漿+被験血漿のそれぞれの混
め,結果の解釈には注意を要する。
( 22 )
ガイドラインは既にいくつか発表されている
19
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
EQA:EQA は,ある検査室で得られた結果と他
精度保証
凝固に関する検査には,結果の信頼性を確かなも
の複数施設で得られた結果の一致度(確度)を特定す
のとするために注 意 深 い 精 度 保 証( quality assur-
るために用いられる。EQA の主要機能は個々の検
ance;QA )の適用が必要とされる。QA という言葉
査室における検査手技の熟達度を見極めることであ
は,臨床検査および報告の信頼性を確かなものにす
るが,より幅広く EQA を適用することにより分析
るために講じるすべての対策を意味する。すなわち,
手順(例えば,方法論,試薬,器機など)の相対的な
これらに含まれるのは,使用する検査の選択,患者
有効性に関する情報を得ることも可能である。EQA
からの有効な試料の採取,標本の分析,適時かつ的
計画の継続は,検査室のパフォーマンスの向上につ
確な手法による結果の記録および解釈そして紹介し
ながることが示されている( 23 )。これは検査室間にお
てきた臨床医に対する結果の伝達などである。
ける結果のバラツキの減少によって示される全般的
内部精度管理( IQC )および外部精度評価( EQA )
なパフォーマンスのみならず,個々の検査室におけ
は,臨床検査室 QA プログラムの補完的要素である。
る評価でもその効果が認められている。稀な血液凝
臨床検査の結果が,十分に信頼性が高く,臨床上
固異常症の評価に当たっている施設は,認証された
の意思決定や治療後のモニタリング,血液凝固異常
EQA プログラムに可能な限り参加するべきである。
症の診断という点で臨床医を支援するために提供で
きるか否かを調査するためには QA が必要とされる。
IQC:IQC は,一定の期間にわたり一連の技法お
推奨事項
① 9 容の血液を 1 容の 0.105 ∼ 0.109
よび手順が一貫した方法で実施されているかどうか
を見極める際に用いられる(精密さ)
。日々これら
M クエン酸
三ナトリウムと混和する。
②
量が不十分な試料や,溶血が認められる,ある
の一貫性を確認することが重要ということである。
いは部分的であれ凝固が認められる試料は分析
ここで大切なことは,精密な技法は必ずしも正確さ
に使用しない。
を約束するものではなく,得られた値がどれだけ真
③
いものを使用する。
の値に近いかが「正確さ」であることを認識するこ
とである。
④
乏血小板血漿を調製する際は,残留血小板数が
10 × 109/L 未満になるような速度および時間
(例えば,2,000 g 10 分間)で試料を遠心分離す
検査結果を速やかに,そして一貫して管理するた
めには,精度管理( QC )の各手順を適用するべきで
ある。検査室では,得られる結果の質は次の因子に
影響される ̶ ① 標準となる検査手順のマニュア
採血装置を使用する際は,接触活性を誘発しな
る。
⑤
分析は,採血後 4 時間以内に完了する。後に分
ルに常に最新の情報が網羅されているか,② 信頼性
析する場合は,血漿を凍結して保存する。− 24℃
の高い試薬および標準試料を使用しているか,③ 自
で保存する場合は 3 か月間,− 74℃で保存する
動化され適切な維持・管理がなされているか,④ 結
場合は 18 か月間まで保存できる。
果の記録および報告体制が適切か,⑤ 適切に訓練
⑥ スクリーニング検査の感度は試薬の影響を受け
された十分な人員のスタッフが揃っているか。
る。また,使用する検査法は,臨床的に重要な異
スクリーニング検査では,定期的かつ頻繁に QC
サンプルを検査することが重要である( QC サンプ
常を検出できるものでなければならない。
⑦
標準範囲は,各施設において正常者試料を患者
ルには,正常サンプルに加え,少なくとも 1 つのレ
試料と同じ技法を使って採取,処理,分析して
ベルの異常サンプルが含まれていなければならな
定める。これは特にスクリーニング検査におい
い)
。凝固因子活性(レベル)の定量では,各検査ご
て重要である。
とに QC サンプルを使用するべきである。患者試料
⑧
最も適切な定量法は,その地域で見いだされた
での結果は,QC の結果が許容範囲内である場合に
標準範囲が他の地域からの研究で報告されてい
のみ公表するべきである。
る値に近似する定量法である。
20
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
スクリーニング検査のための QC サンプルは,
ることにより特徴づけられる。典型的にはフィ
各凝固因子レベル定量法について定期的かつ頻
ブリノゲンの機能的定量法において免疫学的定
繁に分析し,患者試料の分析結果は,QC サン
量法に比べて低い値が示されるが,同等の値が
プルでの結果が許容範囲内である場合にのみ公
示されることもあれば,機能レベルが正常な場
表する。
合もある。
これらの疾患の評価に当たっている施設は,可
分析方法の急激な進歩に伴い,フィブリノゲ
能な限り,あらゆる検査を対象に,認証された
ンの異常に関する定義と分類は,次第に変化し
EQA プログラムに参加するべきである。
⑪ 1 段法では,可能な限り,WHO 国際標準血漿
てきた。したがって,過去の研究で無フィブリ
⑨
⑩
⑫
ノゲン血症と報告されていた症例の多くは実際
と比較できる標準血漿を使用して較正する。
には異常フィブリノゲン血症であることが既に
凝固因子レベルの定量では,希釈比率の異なる
3 種類の希釈液を使って分析し,用量 - 反応曲
示されており,同様に低フィブリノゲン血症と
線が直線的で標準曲線と一致する結果のみを有
能異常(低・異常フィブリノゲン血症)である。
効とする。
異常フィブリノゲン血症および低フィブリノゲ
報告されていた症例の多くもフィブリノゲン機
ン血症には多くの後天的因子が関与している
が,これらの因子については本ガイドラインで
遺伝性異常フィブリノゲン血症
は取り上げていない。
背 景
フィブリノゲンは肝臓で生合成される 340 kDa 蛋
有病率
白質である。血漿中レベルは約 1.5 ∼ 3.5 g/L,半
無フィブリノゲン血症の有病率は 1:1,000,000 と
減期は約 4 日である。フィブリノゲン分子はホモ二
推定されている( 24 )。1999 年の UKHCDO のデータ
量体で,各分子半量体は Aα 鎖,Bβ 鎖,γ 鎖と呼ば
によると,115 例が登録され,うち 10 例がこの年
れる 3 種のポリペプチド鎖で構成されている。この
に治療を受け,3 例が在宅治療を受けていた。
3 つの鎖の遺伝子はいずれも第 4 染色体長腕に座乗
している。
フィブリンは,フィブリノゲンがトロンビンによっ
地域別の分析では,イスラム諸国における血族結
婚の両親から生まれた小児において有病率が高いこ
とが示されている。この傾向はイラン,イタリア,
て蛋白質分解により開裂されることにより生じ,こ
英国の患者登録に基づくデータでも顕著に認められ
の開裂が生じる際にフィブリノペプチド A および B
ている(これらのレジストリーではフィブリノゲンレ
が放出されるとともに,不溶性フィブリンモノマー
( 24 )
。
ベルが 10%以下の症例のみが登録されている)
が生成され,続いて重合が生じる。フィブリノゲン
異常フィブリノゲン血症の有病率は不明であるが,
は,一次止血においても正常な血小板凝集のために
未診断および未報告の症例が少なくないと考えら
重要である。
れる。
定 義
①
②
先天性無フィブリノゲン血症は,抗原定量法に
よる測定でフィブリノゲンの完全欠如が認めら
Prevalence of severe fibrinogen deficiency (level <10% of normal)
in different countries.
れるものと定義される。
Country
低フィブリノゲン血症は,低フィブリノゲンレベ
ルにより定義される。
③
異常フィブリノゲン血症は,フィブリノゲン分子
の構造的異常により機能特性に変化を生じてい
Iran
Italy
UK
Number
Percentage
70
10
11
1.5*
0.2*
0.2*
*Percentage of total number of patients registered with inherited
coagulation disorders in each country.
21
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
臨床症状
他の 1 例は 15 歳女児における虚血性壊疽であっ
① 無フィブリノゲン血症と低フィブリノゲン血症
た( 25 )。これらはフィブリノゲン補充療法や他の明ら
出 血:無フィブリノゲン血症は,自然発生し生
かな危険因子とは無関係に発生しており,発生機序
命を脅かす出血症状も含め,様々な重症度の出血と
は明らかではない。この報告以外にも,明らかな無
関連しており,長期にわたって問題がない場合も珍
フィブリノゲン血症および低フィブリノゲン血症症例
しくない。これまでに発表されている文献のほとん
における血栓症の発症が数編の症例研究で報告され
どは症例報告であるが,無フィブリノゲン血症に関
ている( 33,34 )。しかし,これらの中には詳細が記載さ
しては,2 編の大規模研究が報告されている( 25,26 )。
れていないものや,患者が異常フィブリノゲン血症に
( 25 )
では,55 例
再分類されたものも含まれており,これらの疾患に
における出血症状および血栓性症状について報告さ
おける血栓症の全体的発生頻度は明らかではない。
れた。臍帯出血および粘膜出血が最も一般的であっ
その他:無フィブリノゲン血症では,術創治癒不
このうち,イランで実施された研究
た。筋骨格系出血は血友病に比べると頻度が低かっ
全も報告されている。
た が, 決 し て 低 頻 度 で は な か っ た。55 例 中 3 例
② 異常フィブリノゲン血症 ( 5.5 %)に中枢神経系( CNS )出血が発生していた
異常フィブリノゲン血症に関する文献は,そのほ
が,この出血の発生年齢は記載されてなかった。も
とんどが専門施設からの症例報告を収集したもので
う 1 つの研究はイスラエルの 2 つの大家族(患者 10
ある。また,ほとんどの研究はこの疾患の分子構造
例)に関する報告であり,この研究においても臍帯
学的レベルでの分析を行ったものであり,臨床面に
出血の発生頻度が高く,CNS 出血および腹腔内出
関する研究は比較的少ない。この傾向は臨床的に,
血も多くみられた。他の研究者らも,筋骨格系出血
より重症である患者を過大描写してしまう可能性が
の頻度は比較的低いと報告しており,CNS 出血お
あり,バイアスが生じているかもしれない。
よび脾臓破裂に関連した腹腔内出血に関する症例報
( 27 ∼ 29 )
告は多数ある
。一部の症例では再発が認めら
異常フィブリノゲン血症の臨床症状は予測不可能
である。異常フィブリノゲン血症患者 250 例以上を
対象とした検討では,53 %は無症候で,26 %では
れている。
低フィブリノゲン血症における出血傾向は無フィブ
出血,21%では血栓症が認められた(一部の患者で
リノゲン血症と類似しているが,経過がより穏やか
( 35 )
。分子異常
は出血と血栓症の両者が認められた)
であるようであり,侵襲的処置の施行時には出血が
と臨床症状との間にはいくらかの相関関係が認めら
生じる危険性がある。
れている。
妊娠関連の合併症:無フィブリノゲン血症および
低フィブリノゲン血症は,再発性の流産および分娩
無症候:患者は通常の検査もしくは家族歴を調査
することにより診断可能と考えられる。
前・分娩後出血と関連している( 30,31 )。無フィブリノ
出 血:分娩時,外科手術時あるいは抜歯時に出
ゲン血症をもつ女性 6 例における 13 件の妊娠に関
血することがある。臍断端からの出血,CNS および
する研究では,7 件が妊娠 6 ∼ 7 週での流産であっ
軟組織への出血は低フィブリノゲンレベルと関連して
た。このことは,フィブリノゲンが着床に重要であ
いる。創傷治癒の遅延や離開が生じるリスクがある。
ることを示唆しているとともに,無フィブリノゲン血
血栓症:国際血栓止血学会( ISTH )の科学的標準
症マウスを用いた研究において胚の着床不全が認め
化委員会( SSC )のフィブリノゲンに関する小委員会
( 32 )
られていることによっても支持される
。
は,これまでに 51 例における異常フィブリノゲン血
血栓症:血栓症は,重大な出血傾向と関連してい
症関連血栓症の報告を受けている( 36 )。この SSC の
る血液凝固異常症において逆説的であるが,無フィ
レポートでは,次のような厳格な基準(①∼④)に基
ブリノゲン血症患者においても報告されている。1
編では 55 例中 2 例( 4%)で血栓症の発生が報告さ
づいて検討がなされ,血栓症との明らかな関連が認
められる変異はわずか 26 個であった ̶ ① 血栓症
れ,このうち 1 例は 5 歳男児における洞静脈血栓症,
と関連のある既知の分子異常が認められる,② 家
22
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
族の 2 名以上において若年で血栓症が発生してい
① 無フィブリノゲン血症
家族に同一の変異が認められている場合は,その家
PT,APTT,TT の顕著な延長が認められ,出血
時間がしばしば延長する。機能( Clauss )定量法お
族にも血栓症が発生していなければならない。
よび抗原定量法のいずれによってもフィブリノゲン
る,③ 他に既知の危険因子が存在しない,④ 他の
この 26 例では,異常フィブリノゲン血症は若年時
(平均 32 歳)における深部静脈血栓症,血栓性静脈
炎,肺塞栓症と関連していた。また,重症出血は,
分娩後出血で報告されたのみであった。総数は 187
レベルは検出不可能である。
② 低フィブリノゲン血症
フィブリノゲンの欠乏度に応じて凝固時間が延長
する。TT が最も感度が高い。凝固に可能な総フィ
例であるが,このうち異常フィブリノゲン血症を有す
ブリノゲンおよび免疫原性フィブリノゲンは,機能性
る 99 例では 20 例に血栓症の既往が認められたの
フィブリノゲンと同レベルまで低下する。低フィブリ
に対し,異常フィブリノゲン血症を有していない 88
ノゲン血症の後天的原因を除外することが重要であ
( 36 )
例では血栓症の既往は全く認められなかった
。
血栓症のリスクは,後天性危険因子や他の血栓性素
( 37 )
因の同時遺伝により増大する
り,家族歴の調査が有用であるかもしれない。
③ 異常フィブリノゲン血症
通常の場合,TT 検査がスクリーニング検査として
。
一部の患者では,皮膚壊死が報告されている(例
最も感度が高い。大多数では TT が延長しているが,
。動
えば,フィブリノゲン Marburg ホモ接合体症例)
稀に正常である症例や短縮している症例もある。重
脈血栓症も発生し得るが,その頻度は静脈血栓症に
要なことは,ヘパリンの影響とフィブリン重合に対す
( 36 )
。
比べてはるかに低い
る障害[例えば,フィブリンならびにフィブリノゲン
( 36 )
妊 娠:先に述べた ISTH データベース
に登録
,
分解産物( FDP )またはパラプロテインによる障害]
されていた女性 15 例では,全例が少なくとも 1 回
トロンビンインヒビターによるトロンビン機能の障害
の妊娠経験をもち,7 例において分娩後に血栓症が
を除外することである。レプチラーゼ時間( RT )は
生じていた。流産が 24 件,死産が 6 件,正常分娩
通常延長しているが,短縮している場合もあれば,
( 36 )
が 34 件であった
。異常フィブリノゲン血症の妊
正常である場合もある。一部の症例においては,TT
婦は経腟分娩後,帝王切開後,および局所無痛法を
よりも RT の方が感度が良好である。PT と APTT
行った際に出血リスクを伴う。出血症状はフィブリ
も延長していると考えられるが,TT に比べると感
ノゲンレベルや TT と相関しないことがあるが,機
度は劣る。異常フィブリノゲン血症に対する凝固検査
能性フィブリノゲンが検出できない女性では分娩時
の感度は,
特定の変異,
試薬,
技法によって異なる( 39 )。
に出血が発生すると考えられ,流産の可能性も高い。
Clauss 法で定量した場合,機能性フィブリノゲン
レベルは若干低い結果が出ると考えられる。抗原定
量法では Clauss 法での結果と同等に低い結果がみ
診 断
フィブリノゲンの定量は,British Committee for
( 38 )
Standards in Haematology( BCSH )のガイドライン
( http://www.bcshguidelines. com/ )に従って行うべ
きである。PT から求めたフィブリノゲンレベルを用
いるべきではない。
検査結果を解釈する際は,後天性異常フィブリノ
ゲン血症であった場合の原因についても注意するべ
られるか,有意に高い結果が示される。
確定診断を下すためには,分子学的レベルの異常
を証明する必要がある。しかし,
ほとんどの異常フィ
ブリノゲン血症は遺伝性であるため,後天性異常フィ
ブリノゲン血症を除外するというよりも,むしろ家
族歴を調査して遺伝性異常フィブリノゲン血症を確
認するアプローチが有用である。
きである。患者の年齢,薬物使用歴,肝機能検査の
異常フィブリノゲン血症症例で血栓症の既往のあ
結果についても把握しておく。家族歴の調査も有用
る患者では,血栓性因子となる異常を除外するため
であるかもしれない。
に,血栓性素因のスクリーニングを行うことが有用
であろう。
23
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
は FGA の変異であり,うち 74 種は Aα 16 におけ
遺伝性フィブリノゲン異常症における分子異常
3 つのフィブリノゲンサブユニット( Aα ,Bβ ,γ )は,
るものである。FGB については 27 種,FGG では
第 4 染色体
( q28 ∼ 30 )
の 50 kb 領域に集まっている,
75 種(うち 25 種は γ 275 に影響する)が報告されて
FGA,FGB および FGG という 3 つの遺伝子によっ
いる。これらの変異は,フィブリノゲンの機能のあ
てそれぞれコードされている。
らゆる側面と関連している領域に影響を及ぼす。
FGA は長さ 5.4 kb で,6 つのエキソンで構成され,
3′
末端の選択的スプライシングにより 2 つの転写産
( mRNA の 99%を
物をコードする。主なイソ型(α )
占める)は,エキソン 1 ∼ 5 によりコードされる。
拡張型の α E 変異型は,FGA に 236 個のアミノ酸が
付加(エキソン 6 によりコードされる)されることに
異常フィブリノゲン血症におけるこれまでの変異
の検出から,これまで別個の疾患と考えられていた
症例が同一の分子異常を有していることが明らかに
なった。これにより,あらゆる変異に関する臨床情
報をプールすることが可能になり,意思決定に有用
な指針が得られるようになった。例えば,Fibrino-
より生じる。
gen Bremen( Aα Gly17 → Val )は,血液凝固異常お
FGB は 8 つのエキソンで構成され,長さは 8.2
kb である。Bβ 鎖の生合成は,成熟フィブリノゲン
の産生における律速段階で生じ,FGB プロモーター
よび創傷治癒遅延との関連が示唆されている。逆に,
領域における遺伝子多型のフィブリノゲンレベルに
か,軽度の出血傾向と関連していることが明らかに
対する影響については多くの研究がなされている。
なっている。さらに,FGG 変異を有する症例( 65%)
FGG は長さ 8.4 kb で,10 個のエキソンで構成さ
)があ
れている。γ 鎖には 2 つのイソ型(γ および γ ′
は無症候性で,出血傾向は 5%のみにみられ,血栓
り,これらは選択的スプライシングによって生じる。
また,Arg554 → Cys( Chapel Hill III,Paris V およ
γ′
は全体の約 15 %を占め,FXIII およびトロンビン
び Dusart )などの特定の変異は,血栓症とは関連す
に対する付加的結合部位を有する。
るが出血とは関連しないことが示されている( 35,40 )。
① 遺伝性無フィブリノゲン血症
異常フィブリノゲン血症において,分子学的レベル
異常フィブリノゲン血症症例の半数以上[ Aα Arg16 →
His( Bern IV および Milano XI )]は無症候性である
形成性傾向は 30%にみられることが示されている。
先天性無フィブリノゲン血症は常染色体劣性遺伝
の異常の同定は各症例を評価する当たって有用なス
によるもので,フィブリノゲン生合成が障害されて
テップではあるが,データベースにすべての変異を
いることに起因することが証明されている。
登録し,その有用性を最大限に活かすためには,
無フィブリノゲン血症の原因となっている変異は,
より正確で臨床的にインパクトのある情報が必要で
これまでの研究で先述の 3 つの遺伝子のいずれにお
ある。
いても検出されているが,これまでのところその半
データベースには http://www.geht.org/databaseang/
fibrinogen/ でアクセス可能である。
数以上は FGA で検出されている。これらの変異は
主に欠失やフレームシフト,ナンセンス,スプライシ
ングであり,復帰変異もいくつか検出されている(例
え ば,FGA に お け る 11 kb 欠 失, イ ン ト ロ ン
4+1G >T におけるスプライス供与部位変異)。
治療の原則
治療において重要な手引きとなるのは,患者およ
びその家族における出血および血栓症の既往歴であ
② 異常フィブリノゲン血症
る。フィブリノゲンの補充が必要な場合は,ウイルス
これまでに 300 種の異常フィブリノゲン,そして
不活化処理のなされた凝固因子製剤を使用するべき
100 種以上の構造異常が報告されている。これらは
である(レベル IIb のエビデンスに基づくグレード B
主にフィブリノゲンの構造あるいは機能に影響を及ぼ
の推奨事項)
。一般的に,フィブリノゲンレベル 0.5
すミスセンス変異に関連している。また,これらの
g/L 未満は,微小血管出血リスクの増大と関連して
変異はデータベースに登録されており( 35 ),オンライン
いる( 41 )。
で閲覧可能である。これらの変異の大多数( 180 種)
24
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
英国で認可されているフィブリノゲン製剤は現時点
るまでは 0.5 g/L 以上に維持する。
定期補充療法の適用 ̶ これまでに得られてい
ではない。欧州で使用可能な製剤については,治療
るデータに基づく限り,一次定期補充療法に関して
治療薬
(1)
ガイドライン
に掲載されている。
推奨事項を出すことは不可能である。二次定期補充
フィブリノゲン製剤の推奨用量は次の式で求められ
る。
療法に関しては,生命を脅かすような重症出血(頭
蓋内出血など)の既往があり,再出血のリスクのあ
用 量( g )= 目 標 レ ベ ル と 現 状 レ ベ ル と の 差
る症例では適切であるかもしれない。この定期補充
( g/L )×血漿体積[血漿体積 = 0.07 ×( 1 −ヘマ
療法におけるフィブリノゲン製剤の投与頻度および用
トクリット値)× 体重( kg )]
量は,トラフ値が 0.5 g/L を超える状態が維持され
したがって,フィブリノゲンレベルを 1 g/L まで
るよう調節するべきである。粘膜出血に対しては,
高めるためには,約 30 mg/kg の投与が必要になる。
抗線溶薬が有用と考えられ,月経過多にはエストロ
輸注フィブリノゲンの半減期は 3 ∼ 5 日であるた
ゲン製剤やプロゲステロン製剤が使用されている( 43 )。
め( 42 ),減少がない場合は,隔日より高頻度の投与は
血栓症の既往または家族歴のある症例に対する抗線
ほとんど不要であろう。これらの治療薬の薬物動態
溶薬の使用には注意を要する。
に関するデータは成人患者を対象とした試験で得ら
異常フィブリノゲン血症:異常フィブリノゲン血症
れたものであり,小児には適用できないこともある。
症例における止血治療に関するデータは極めて限ら
クリオプレシピテートは優れたフィブリノゲン供給
れている。患者血中の異常フィブリノゲンは機能性
源であるが,ウイルス不活化処理がなされていない
に異常があると考えられ,輸注フィブリノゲンの機
ため,通常は使用するべきではない。他に適当な治
能を障害する可能性がある。さらに,異常フィブリ
療薬がなく緊急に治療を要する場合は,使用を検討
ノゲンはフィブリノゲン製剤を輸注している患者にお
することが可能である。
ける臨床検査値に影響を及ぼす可能性がある。理論
フィブリン糊は,表層創傷や抜歯後の治療にしば
的にではあるが,患者のフィブリノゲンレベルを 1
しば有用である。しかし,使用後のフィブリノゲンイ
g/L まで増加させても,十分な止血は得られないと
(1)
ンヒビターの発生も報告されている
。
考えられる。
トラネキサム酸は,粘膜出血の治療や抜歯などの
以上の点を考慮すると,出血を呈している患者の
処置における出血予防に有用であり,凝固因子製剤
うち,一部はフィブリン糊の局所適用やトラネキサ
の使用を回避可能とする。しかし,血栓症のリスク
ム酸の適用で表在性出血や粘膜出血に対して十分で
を増加させるため,患者またはその家族に血栓症の
あるかもしれないが,多くの症例ではフィブリノゲン
既往がある場合は注意しなければならず,また,妊
製剤が必要になると考えられる。機能性フィブリノ
娠,外科手術または長期臥床やギプス固定など他の
ゲンレベルを 1 g /L以上まで増加させ,臨床症状を
危険因子がある場合は使用するべきではない。
観察することが重要である。臨床症状およびモニタ
リング検査の結果によっては,繰り返し輸注が必要
治 療
である。フィブリノゲンレベルは,創傷が完全に治
① 自然出血の治療
癒するまで 1 g/L 以上に維持する必要がある( 40 )。
無フィブリノゲン血症:重症出血に対しては,フィ
ブリノゲン製剤が第一選択である。治療目標は,
フィ
② 外科手術
無フィブリノゲン血症:イランからの報告( 25 )では,
ブリノゲンレベルを 1 g/L まで増加させ,そして臨
未治療の 55 例中 23 例( 40%)で術後出血が認めら
床症状をモニターすることである。臨床症状とモニ
れた。したがって,フィブリノゲンレベルを 1 g/L ま
タリング検査の結果によっては,繰り返し投与が必
で増加させ,かつ完全な止血が認められるまでこの
要である。止血が確認されるまではフィブリノゲン
レベルを維持し,術創が完全に治癒するまでは 0.5
レベルを 1 g/L 以上に維持し,創傷が完全に治癒す
g/L 以上に維持することが推奨される。
25
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
異常フィブリノゲン血症:出血傾向を有すること
に,可能な限り早期に投与を開始するべきである。
が既にわかっている患者では,術前にフィブリノゲ
至適フィブリノゲンレベルについては未だ明確に定
ン製剤を投与し,完全な止血を確認するまで凝固因
義されていないが,フィブリノゲンレベルが 0.5 g/L
子レベルを 1 g/L に維持し,術創が完全に治癒する
を超えている女性でも流産と出血が報告されてお
までは 0.5 g/L 以上に維持するべきである。また,
り,1 g/dL を超えるレベルが必要と考えられる(特
フィブリノゲン製剤の使用には静脈血栓症のリスクが
に,出産期に近づくにつれて)
。
伴うため,弾性ストッキングを使用するとともに,
予防的ヘパリン投与を考慮するべきである。
異常フィブリノゲン血症:分娩中は,新生児が異
常フィブリノゲン血症を有することを想定し,侵襲
血栓性症状がみられる患者では,既に発表されて
的なモニタリングや処置は避けるべきである(特に,
いる遺伝性血栓性素因に関するガイドライン( 44 )に
患者家族に出血の既往がある場合)
。出生したばか
従って,患者とその家族の既往歴に応じて,弾性ス
りの新生児では,生理的あるいは継承した異常フィ
トッキングを履かせ,LMWH を投与するべきである。
ブリノゲン血症により検査結果の解釈が複雑になる
出血と血栓症の両症状を有する患者は複雑であ
可能性がある(特に,早産児の場合)
。
り,フィブリノゲン製剤投与により 1 g/L のレベル
無症候性の女性においても注意深い観察が必須で
を維持するとともに,LMWH 投与が必要になる可
あるが,出血を生じない限り,あるいは家族歴から
能性が高い。
出血の発生が危惧されない限り,特に治療は必要で
無症候性患者や外科手術歴のない患者について
はない。静脈血栓症を予防するための標準的な対処
が必要である( 45 )。
は,次のように多数の選択肢がある。
i ) 経過を観察し,出血が生じた場合にフィブリノ
妊婦またはその家族に血栓症の既往がある場合
は,出産前に LMWH の予防的投与が必要である。
ゲン製剤を投与するのみ。
ii ) 先述の要領でフィブリノゲン製剤を投与する(特
に出血の家族歴がある場合)
。
分娩に当たっては注意深いモニタリングが必要であ
るが,フィブリノゲン製剤による補充療法は出血が
iii ) トラネキサム酸などの抗線溶薬を使用する。
生じた場合にのみ行う。局所麻酔のリスクは評価が
いずれの方針をとるかは,機能性フィブリノゲン
困難であるとともに,妊婦がヘパリンを使用してい
のレベル( 0.5 g/L 未満の患者は出血が生じるリス
るかもしれず,出血の危険性を除外することがで
クが高い)
,出血の既往歴,出血および血栓症の家
きないため,使用は避けるべきである。しかし,
族歴に基づいて決定する。
全身麻酔では静脈血栓症のリスクが高まるため,患
例えば,抜歯の際にトラネキサム酸を使用するこ
とにより血液製剤の使用を回避できるかもしれない
が,外科処置中の静脈血栓症のリスクが高まるため,
者および産科麻酔医と協議したうえで事前に計画
を立てる必要がある。
出血性素因を有する妊婦に対しては多数の選択肢
患者やその家族に静脈血栓症の既往がある場合はこ
があるが,どのアプローチをとるかは,妊婦および
のアプローチは避けるべきである。
その家族の出血歴に基づいて決定するべきである。
③ 妊娠の管理
経腟分娩の場合は,注意深く観察し,出血が生じ
フィブリノゲンレベル,ならびに患者とその家族
た場合に限りフィブリノゲン製剤を輸注してフィブリ
における出血および血栓症の既往歴に基づいて決定
ノゲンレベルを 1 g/L まで増加させることでしばし
するべきである。
ば管理可能である。妊婦またはその家族の出血歴が
無フィブリノゲン血症:フィブリノゲン製剤による定
出血の危険性を強く示唆する場合は,経腟分娩にお
期補充療法は妊娠経過を向上させるとともに,分娩
いても,フィブリノゲン製剤による定期補充療法を
( 30,
後出血の予防に有用であることが報告されている
31 )
。妊娠期間中は定期的なフィブリノゲン製剤の輸
注が必要であるとともに,早期流産を予防するため
26
行い,フィブリノゲンレベルを 1 g/L まで増加させる
必要がある。
フィブリノゲン製剤を使用する必要がある場合は,
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
創傷が完治するまでフィブリノゲンレベルを 0.5 g/L
劣性遺伝によるものであり,血族結婚の多い地域で
以上に維持しなければならない。
頻度が高い。
帝王切開の場合は,他の外科的処置と同様に,フィ
ルの挿入時および抜去時における硬膜外血腫のリス
臨床症状
2 つの臨床症状が認識されている。1 つは低プロト
ロンビン血症( I 型欠乏症)で,プロトロンビンの抗原
レベルと活性レベルが同時に低下する。他の 1 つは
異常プロトロンビン血症( II 型欠乏症)であり,プロト
クが高い。したがって,硬膜外麻酔は避けるべきで
ロンビン活性は低下するが抗原レベルは正常である。
ある。
時に混合型(複合へテロ接合体)が報告されている。
ブリノゲン製剤による補充療法が必要になる可能性
が高い。さらに,弾性ストッキングを使用した血栓
症予防および LMWH の予防的投与が必要と考えら
れる。出血傾向を有する妊婦では,硬膜外カテーテ
流 産:流産を繰り返している異常フィブリノゲ
プロトロンビンの完全な欠乏は未だ報告されておら
ン血症女性への対処に関する研究は未だ報告されて
ず,これはプロトロンビンが生命を維持するうえで不
いない。選択肢として LMWH の予防的投与があり,
可欠であることを示唆するものである。これは,プ
これが奏効しない場合はフィブリノゲン製剤による
ロトロンビン遺伝子を実験的に不活化したマウスモデ
補充療法を考慮する。適正投与量に関するデータは
ルにおいて,半数以上のマウスで胚の段階での死亡
なく,フィブリノゲンレベルを 1 g/L に維持すること
が認められ,出生した 1/4 のマウスも出生後早期に
を試みるべきである。
出血により死亡していることからも支持される( 47 )。
血栓症の管理:異常フィブリノゲン血症妊婦に血
( 45 )
栓症が生じた場合は,BCSH のガイドライン
に
従って対処する。
この疾患に関して発表されているデータは極めて
限られており,最も大規模な報告はイランからのも
のである( 46 )。この研究が発表されるまでは,プロト
ロンビン欠乏症が 26 例,他のプロトロンビン異常症
FII ― プロトロンビン欠乏症
が 22 例文献で報告されているのみであった( 48 )。
このイランの研究では 14 例が検討され,うち 11
分子生物学
例は低プロトロンビン血症(プロトロンビンレベル 4 ∼
プロトロンビン( FII )は,肝細胞で生合成される 72
10%)で,残りの 3 例は異常プロトロンビン血症であっ
kDa の一本鎖糖蛋白質である。ビタミン K 依存性凝
固因子の 1 つであり,機能的に活性化するためには
た。この患者群では,関節内血腫と筋肉内血腫が最
翻訳後のカルボキシル化が必要とされる。プロトロン
1 例と致命的な臍帯出血が新生児 2 例で報告された。
ビンは Gla ドメイン,クリングル 1 ドメイン,クリン
補充療法を行わなかった症例での術後出血が報告さ
グル 2 ドメイン,セリンプロテアーゼドメインという
れたが,分娩後出血は記載されていなかった。粘膜
4 つのドメインで構成されている。活性化 FX( FXa )
は,FV およびカルシウムの存在下で血小板表面にお
出血も頻繁に認められたが,重症ではなかった。
いてプロトロンビンを活性化する。プロトロンビンの
らの研究で認められた出血症状の特徴は,前述のイ
開裂に伴い,活性型ペプチドフラグメント 1 + 2 が放
ランからの報告と類似しており,粘膜出血,軟組織
出される。
出血,関節内血腫が比較的高頻度に認められた( 48 )。
も頻度の高い出血関連の症状であった。頭蓋内出血
低プロトロンビン血症の 26 例を対象とした Girolami
また,頭蓋内出血も 3 例で認められた。より最近で
有病率
プロトロンビン欠乏症は稀な遺伝性血液凝固異常症
の中で最も稀な疾患であり,一般集団における有病
は,低プロトロンビン血症乳児 2 例( 4 か月児と 7 か
月児)における頭蓋内出血が報告されている( 49 )。
異常プロトロンビン血症症例における出血症状は,
率は 1:2,000,000 と推定されている( 46 )。他の多くの
症例ごとにバラツキが大きく,多くの症例は無症候
稀な血液凝固異常症と同様に,この疾患は常染色体
性か,出血も比較的軽症のようである。
27
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
診 断
が複雑化される可能性があるため,これらの症例に
使用する試薬にもよるが,プロトロンビン欠乏症
おける軽症プロトロンビン欠乏症の診断は特に困難
では PT と APTT の両者が延長すると考えられる。
である場合がある。ビタミン K 補充後に再度評価す
しかし,異常の程度は軽微であり,正常範囲内であ
る必要があるかもしれない。
ることもある。したがって,臨床的にプロトロンビン
欠乏症が疑われる場合や,スクリーニング検査が正
分子異常
常であっても相応の家族歴がある場合は,プロトロ
プロトロンビンは第 11 染色体の遺伝子によって
ンビンに特異的な定量を行う必要があると考えられ
コードされている。これまでのところプロトロンビン
る。トロンボプラスチンを使用した PT による 1 段
欠乏症症例では少なくとも 32 種類の変異が同定さ
法が適切であり,最も一般的に使用されている。
れており,最近これらのデータがレビューされた( 50 )。
様々なヘビ毒を用いてプロトロンビンをトロンビ
うち 17 の変異は,異常プロトロンビン血症と関連づ
ンに転換させる多数の定量法がある。例えば,Echis
けられ,いずれもミスセンス変異であった。低プロト
carinatus 毒を使用した定量法は,リン脂質を必要
ロンビン血症と関連づけられた変異もほとんどがミ
とせず,完全にカルボキシル化されたプロトロンビン
スセンス変異であったが,ナンセンス変異も認めら
と部分的にカルボキシル化されたプロトロンビンと
れている。
を区別しない。Taipan 毒または Textarin 毒を用い
異常プロトロンビン血症における変異では,FXa
に対する開裂部位およびプロトロンビンのセリンプロ
る定量法はリン脂質依存性である。
低プロトロンビン血症では,どの定量法でも基本的
( 48 )
に同等のプロトロンビン活性の低下が認められる
。
テアーゼ領域でアミノ酸置換が生じているのに対し,
低プロトロンビン血症における変異では,Gla ドメイ
低プロトロンビン血症のホモ接合体と考慮された 3
ン,クリングルドメインおよび A 鎖の近くで生じてい
例では PT による定量法でプロトロンビン活性が 9 ∼
ることが多い。
16 U/dL であったのに対し,ヘテロ接合体症例では
43 ∼ 75 U/dL であった。これらの症例と血縁関係
管 理
にある正常者と血縁関係のない正常者におけるプ
( 48 )
ロトロンビン活性は 84 ∼ 130 U/dL であった
。
① 治療選択
プロトロンビンに特異的な凝固因子製剤は現時点
正常者におけるこれらの値は,ヒト遺伝子組換えト
ではないため,プロトロンビン複合体製剤が選択薬で
ロンボプラスチンを使用した PT による定量法での正
ある。これらの製剤の半数以上は,有効量のプロト
常者の結果[ 84 ∼ 132 IU/dL(平均値± 2SD )]と類
ロンビン,FIX および FX の 3 因子を含有する凝固
。
似している( S. Kitchen からの私信)
因子製剤である( 1 )。さらに,FVII を含む 4 因子を含
異常プロトロンビン血症では,PT による定量法お
有する凝固因子製剤も入手可能である( 1 )。これらの
よびヘビ毒を使用したいくつかの定量法での結果
製剤中の各凝固因子の含有量は既知であるが,バイ
は,抗原定量法および他の定量法で得られた結果と
アル当たりの力価はほとんどの場合,FIX 含有量で
比べて著明に低い。異常プロトロンビン血症を有す
示されている。通常は FIX 1 単位に対してプロトロ
る家系を対象とした最近の研究では,Echis carina-
ンビン 1 単位が含まれているため,これに基づいて
tus 毒を使用した定量法ではプロトロンビン活性は 2
U/dL であったのに対し,他のプロトロンビン定量
法での結果は 26 ∼ 49 U/dL であった。
投与量を算出可能である。適切な 3 因子または 4 因
後天性プロトロンビン欠乏症では,プロトロンビン
子含有製剤がない場合は,ウイルス不活化処理がな
された新鮮凍結血漿( FFP )が代替的なプロトロンビ
ン供給源となる。
インヒビターやループスアンチコアグラントの出現は
② 出血および外科手術の管理
稀であるが,出血は発生する可能性がある。
まず留意しなければならないことは,現時点では
早産児や新生児では,ビタミン K 欠乏により評価
28
治療方針を決定するための基礎となる研究データが
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
極めて限られていることである。
結果として生じるヘテロ二量体の FVa は,プロトロ
プロトロンビン 1 単位で血漿中プロトロンビンレベ
ンビンがトロンビンへ転換される際に FXa のコファ
ルが 1 IU/dL 上昇すると推定される。正常止血に
クターとして働く。現時点までに,26 種の変異が明
必要とされるプロトロンビンレベルは比較的低い
らかにされている( 51 )。このうち 12 種は,B ドメイ
( 20 ∼ 30 IU/dL )と考えられ,これまでに 20 ∼
ン全体をコードするエキソン(エキソン 13 )における
30 IU/kg が使用され,有効であると考えられる。
変異である。これらの変異の半数以上は FV の量的
しかし,致命的出血や大手術に際しては,より高用
異常をもたらすと考えられる一方で,症例のほぼ
量が必要になると考えられるとともに,注意深いプ
1/4 では FV の質的異常が報告されている( 46,52 )。
ロトロンビンレベルのモニタリングが必要である。
プロトロンビンの半減期は 72 時間前後であるため投
与頻度は比較的ゆるやかで,通常は 2 ∼ 3 日ごとで
ある。
臨床症状
遺伝性 FV 欠乏症は,極めて稀な常染色体劣性遺
伝疾患である。最初の症例は,Owren により 1947
③ 妊娠の管理
年に報告されたノルウェー人女性であった( 53 )。ホモ
分娩後出血に関する少数の報告がある以外は,プ
接合体の頻度は約 1:1,000,000 である( 54 )。両親が血
ロトロンビン欠乏症における妊娠の管理およびその
族結婚である場合がしばしば認められる。FV の正
結果に関する研究データは報告されていない。した
常レベルは 71 ∼ 125 U/dL であるが,ホモ接合体
がって,妊娠の管理に関して現時点で確固たる勧告
症例では 1 未満∼ 10 U/dL であることが報告され
を出すことは困難であるが,分娩前にプロトロンビ
ている( 55 )。ホモ接合体は,中等度の血液凝固異常
ンレベルを 25 IU/dL より高くしておくことは妥当
症と関連している( 55 )。小児期においては,通常の
と考えられる。
場合,軽症の皮下出血や粘膜出血,特に鼻出血と口
④ 新生児および小児の管理
腔内出血が認められる。関節内血腫および筋肉内血
臍帯出血の報告はあるものの,新生児期における
腫は FVIII 欠乏症に比べるとそれほど顕著ではなく,
重症出血の発生頻度は高くないようである。した
自然出血というよりも外傷との関連で生じることが
がって,この年齢期における定期補充療法の適用は
多い。消化管出血および血尿が稀に発生する。術後,
通常は推奨されない。
抜歯後,分娩後の出血が報告されている。頭蓋内出
より成長した小児における定期補充療法の適用
血も報告されており,特に出生前および新生児期に
は,出血の発生頻度およびタイプに基づいて決定す
発生している( 56 ∼ 59 )。これらのうち 2 例では,血漿
るべきである。再発性の関節内出血が認められる場
輸注後に FV インヒビターが生じ,他の 1 例は頭蓋内
合は,慢性関節症を予防するために定期補充療法を
出血を繰り返し生じ死亡したと報告されている。
適用するべきである。
FV 欠乏症
分子生物学
FV は,第 1 染色体の遺伝子でコードされる 249
kDa の大型糖蛋白質で,肝細胞および巨核球により
生合成される。FV と FVIII は,A ドメイン( FV )お
よび C ドメイン( FVIII )のアミノ酸の約 40%の相同
診 断
FV 欠乏症では,PT および APTT の延長が認め
られるが,TT は正常である。PT および APTT の
延長は,いずれも正常血漿を混和することにより是
正される。FV の欠乏は,PT に基づく FV 定量法か
免疫学的定量法で確認される。FV レベルの低下が
認められた症例については FVIII の定量も行い,FV
と FVIII の重複欠乏を除外するべきである。
性を有しており,全体的な蛋白質構造もほぼ同一で
ある。循環血中 FV の約 20 %は血小板に含まれて
いる。FV はトロンビンによって活性化され,その
管 理
FV 欠乏症の治療のための FV 製剤は現時点では
29
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
なく,FFP が FV の補充に使用できる唯一の血液製
いて FV の半減期を決定するために,注意深く FV
剤である。ウイルス不活化処理がなされた製剤を使
レベルをモニタリングし,FV レベルが 15 U/dL 未
用することが推奨され,さらに可能であれば,ドナー
満に低下し,臨床的にも追加投与の必要性が示唆さ
集団において変異型クロイツフェルト・ヤコブ病
れた場合の指針とすることが推奨される。
( vCJD )が報告されておらず,かつウシ海綿状脳症
( BSE )が報告されていない国で収集された血漿を
遺伝性の単一凝固因子欠乏症患者の管理における
理がなされた 2 種類の FFP 製剤が英国で使用可能
SD 血漿の使用に関して検討した最近の研究では,
単一凝固因子欠乏症患者 12 例における 51 件の出
血の治療に 15 mL/kg が使用された[ 12 例中 6 例
( 60 )
。これらの出
( 34 件)は FV 欠乏症症例である]
である。うち 1 つは National Blood Service(イング
血は,関節内血腫,血腫,歯科関連出血,消化管出
ランドおよびウェールズ)と Scottish National Blood
血,産科関連出血であった。評価可能であった 50
Transfusion Service( SNBTS )により供給されメチ
レンブルー処理された単一分画 FFP( MB FFP )で,
他の 1 つは有機溶媒 /界面活性剤( SD )処理により
ウイルス不活化処理がなされた血漿分画製剤( SD
( 60 )
血漿)
(市販製剤)
である。MB FFP 1 単位当た
りの平均 FV レベルは 80 U/dL である( NBA から
の私信 )
。SD 血漿はプール原料から製造されるた
め,各バッチの個々の単位の FV レベルは同一であ
り,単一分画 FFP におけるバラツキの問題を克服し,
件の出血のうち,49 件( 98%)は,SD 血漿平均 4.7
原料として製造された製剤を使用することが望まし
い( 1 )。本稿執筆時点においては,ウイルス不活化処
単位( 940 mL )で効果的に止血が達成された。ここ
で認識しておかなければならないことは,ある用量
の FFP を投与することにより止血という点で有効
な循環血中 FV レベルが得られるかもしれないが,
このレベルは PT を是正するために十分であるとは
限らないという点である。重症 FV 欠乏症の新生児
より一貫した投与計画を立てることを可能としてい
1 例の症例報告では,PT を是正するために FFP 30
mL/kg の 1 日 2 回投与が必要であった( 57 )。過去の
研究で FFP の補充によっても解消できない重症出
る。この製剤はロットを出す際に,
各バッチに 70 U/L
血では,血小板輸血を検討するよう提案されている
以上の FV,FVII,FX,FXI および FXIII が含まれ
が,この方法の有効性については十分に証明されて
ていなければならないという基準が設けられてい
いない( 61 )。血小板は FV を濃縮した形で供給し,
る。
血小板が活性化されて α 顆粒が放出されると,速や
① 自然出血
かに受容体表面に結合し,プロトロンビナーゼ複合
効果的な止血を達成するために必要とされる最低
活性を最適化すると考えられる。また,このような
限の循環血中 FV レベルは個々の患者によって異な
症例に対しては,遺伝子組換え活性型第 VII 因子
ると考えられ,15 U/dL 以上でなければならないと
( rFVIIa )製剤の使用も考慮するべきである。事実,
も報告されている( 46 )。このレベルを達成するために
ネキサム酸などの他の薬剤の使用も検討するべきで
FV 欠乏症患者でこの製剤を使用した成功例が最近
報告されている( 62 )。しかし,FV レベルが 1 U/dL
未満の症例では FV レベルがトロンビン生成の主な
律速因子になると考えられ,rFVIIa 製剤は有効では
ある。
ないかもしれない。
は,出血を呈している患者に FFP 15 ∼ 20 mL/kg
を投与しなければならないことが示唆される。トラ
FFP を投与する際は,投与後に FV レベルを測定
して,止血に必要とされる最低レベルである 15
U/dL が達成されているか否かを確認することが望
ましい。このレベルに達していない場合は,FFP を
追加投与するべきである。また,十分な FV レベル
が得られているにもかかわらず出血が続く場合は,
FFP の追加投与を検討するべきである。各患者につ
30
② 外科手術
FV が部分的に欠乏し,自然出血や手術関連出血
の既往のない症例に対する外科処置または歯科処置
の施行に関しては,今後検討が必要である。過度の
出血が生じた場合は,FFP を投与するべきである。
FV が部分的に欠乏し出血歴のある症例や,FV レ
ベルが 1 U/dL 未満の症例では,処置を行う直前に
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
FFP を投与するべきである。FFP の投与量は,出
血に対して推奨される投与量とする。FFP 投与後は
FV レベルを測定し,止血に必要とされる最低限の
出血については,少数の単一症例報告があり,これ
レベルに達していない場合は,追加投与する。処置
が認められる新生児については,FV 欠乏症の診断
後も FV レベルを注意深く観察し,必要な場合は
を検討するべきである。FV 欠乏症新生児における
FV をさらに投与して術創が完全に治癒するまで 15
U/dL を超えるレベルを維持する。また,FFP の繰
止血治療では,FV レベルを 15 U/dL を超えるレベ
ルまで高めるために,ウイルス不活化処理された
り返し投与には過剰輸液のリスクが伴うため,術後
FFP 15 ∼ 20 mL/kg を投与する必要がある。起こり
らの新生児の FV レベルは 2 ∼ 8 U/dL であった( 52,
56 ∼ 58,63 )
。したがって,頭蓋内出血と血液凝固異常
は心血管系機能を綿密にモニタリングすることが推
得る問題として過剰輸液が危惧され( 特に繰り返し
奨される(手術関連の報告で実際に何件か過剰輸液
輸注が必要とされる場合)
,このような場合には血漿
( 55 )
。
が報告されている)
交換が必要であるかもしれない。血小板は FV の代
( 60 )
では,FV 欠乏症患
Horowitz & Pehta の研究
者 5 例に対する 7 件の手術において,SD 血漿(初
期投与量 15 mL/kg )の予防的効果が認められてい
平均 13 U/dL
る。データが記載されていた 6 件では,
( 9 ∼ 17 U/dL )の FV レベルの増加が示された。残
念ながら,ベースラインにおける FV レベルと術後
の FFP 投与スケジュールについては記載されていな
かった。
③ 妊 娠
妊娠の管理に関するデータはない。FV レベルが
替し得る供給源になるため,血小板輸血は FFP に加
えた有用な治療オプションになると考えられる。新生
児の FV 欠乏症関連出血の治療における rFVIIa 製
剤の使用については未だ報告されていないが,成人
での経験からは使用を検討する価値があることが示
( 61 )
。
唆される(特に体液バランスに問題がある場合)
FV レベルが 15 U/dL 未満の FV 欠乏症新生児で
は,生後 2 ∼ 3 日以内に経頭蓋超音波検査を行って,
頭蓋内出血を除外するべきである。無症候性 FV 欠
乏症新生児に対する FFP の予防的投与が有益であ
1 U/dL 未満の症例では,陣痛が始まり次第速やか
に前述の外科手術例に対して提示された用量で FFP
を投与し,FV レベルを注意深くモニタリングするこ
ン K の投与が必要な場合,FV レベルが 15 U/dL
とが推奨される。分娩後も止血に必要とされる最低
重症である場合は,経口投与または静注とすべきで
限の FV レベルを維持する必要がある場合は,FFP
ある。
ることを示すエビデンスは得られていない。ビタミ
を超えている新生児では筋注が可能であるが,より
を追加投与するべきである。帝王切開の場合は,術
創が完全に治癒するまで FFP 投与を継続するべき
る出血の既往のない症例は,期待通りに管理できる
FV インヒビター
遺伝性 FV 欠乏症では,FFP 中の FV に対してイ
ンヒビターが発生し得る。FV インヒビターの発生は
と考えられる。
極めて少数が報告されているのみであるが,過少報
④ 新生児
告されている可能性がある。FFP 補充後の FV イン
中等症∼重症の FV 欠乏症は,臍帯血または末梢
ヒビター(特に低レベルの一過性インヒビター)の発
血を採取して診断できる。しかし,FV レベルは生
生は,稀ではない。出血が生じた場合,低力価の
後 1 か月は上昇しているため,軽症 FV 欠乏症につ
インヒビターであれば大量の FFP を投与すること
いては,もう少し成長した段階で確認する必要があ
により中和可能であることが示唆されている( 61 )。
るかもしれない。
しかし,これを行った場合は,外科手術症例に対す
である。FV が部分的に欠乏し,侵襲的処置に対す
新生児期における出血はそれほど頻度は高くない
( 55 )
ようであるが
,強調すべきこととして,この年齢
る治療と同様に,過剰輸液の発生が危惧されるた
め,注意深い心血管系のモニタリングが必要である。
の患児では FV 欠乏症が頭蓋内出血の原因になり
FV インヒビターを消去するためには免疫グロブリン
得る(上記参照)
。この年齢の患児群における頭蓋内
の静注が有効であるかもしれない( 64 )。
31
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
FV に対する自己抗体の発生に起因する後天性
FV 欠乏症では,血小板 FV は抗体の中和作用から
( 65 )
防止できるレベルに保たれている。しかし,外科手
術後や抜歯後,創傷発生後は出血が一般的にみられ,
。血小板輸
女性症例では月経過多や分娩後出血が頻繁にみられ
注は後天性 FV 欠乏症に有効であると報告されてい
る( 78,79 )。FV・FVIII 重複欠乏症症例における出血
るため( 66 ),インヒビターの生じた遺伝性 FV 欠乏症
の重症度は,いずれか一方の凝固因子が欠乏し,そ
においても有効な治療法になり得ると考えられる。
の凝固因子レベルがほぼ同等である単一凝固因子欠
インヒビターが生じた 1 例の FV 欠乏症症例に関す
乏症症例と同様であることが報告されている( 79 )。
比較的防御されることが示されている
る症例報告では,週 1 回の血小板の予防的投与は,
硬膜下血腫の治療,管理に有効であったと報告され
ている( 57 )。rFVIIa 製剤の使用についても考慮するべ
きである。
診 断
FV・FVIII 重複欠乏症は,PT および APTT の延
長と関連しているが,APTT の延長の程度は PT の
延長の程度と相関しない。PT および APTT のいず
FV・FVIII 重複欠乏症
れもが,正常血漿と混和することにより是正される。
分子生物学
FV と FVIII の重複欠乏症は稀な常染色体劣性遺
APTT に基づく凝固因子活性(レベル)定量法およ
び抗原定量法では,FV および FVIII のいずれにつ
いても 5 ∼ 20 IU/dL の値が示される( 67 )。
伝疾患であり,ほとんどの場合は血族結婚で生じ
る( 67 )。この疾患は,1954 年に Oeri により初めて報
( 68 )
告され
,有病者では血漿中 FV および FVIII レベ
管 理
① 出血症状
ルが低下している。遺伝パターンに関するいくつか
治療方針は,出血の特徴ならびに各症例の FV お
の研究では,この疾患は FV 遺伝子と FVIII 遺伝子
よび FVIII レベルによって異なってくる。この患者
のそれぞれ個別の異常を同時に継承したことによる
群における自然出血は,FVIII 製剤と FFP( FV 供給
ものではなく,単一の遺伝子異常によるものである
源として)で治療するべきである。軽微な出血に対
ことが示唆され,後の研究でこれは第 18 染色体長
しては,
FVIII レベルを 30 IU/dL 以上まで増加させ,
腕に座乗する遺伝子であることが確認されている。
より重症である場合は,rFVIII 製剤を選択薬とし,
この遺伝子は,ERGIC-53 蛋白質と呼ばれる小胞体
質( FV および FVIII を含む)の細胞内輸送で中心的
FVIII レベルを 50 IU/dL 以上まで上昇させる。さら
に,FV 欠乏症症例の場合と同様に,FFP を投与し
て FV レベルを 25 U/dL 以上まで増加させるべきで
ある。また,FFP は,ウイルス不活化処理がなされ
な役割を果たす蛋白質として同定された( 75 ∼ 77 )。FV
たものを使用するべきである。
局在性蛋白質(ゴルジ体中間コンパートメント)を
コードしている( 69 ∼ 74 )。この蛋白質は,特定の蛋白
および FVIII は肝細胞内で正常に生合成されるよう
② 外科処置
であるが,ERGIG-53 に機能障害がある場合は,こ
術創が完全に治癒するまで FVIII 製剤を 12 時間
れらの凝固因子の細胞内における移動が障害され,
ごとに投与して FVIII レベルを 50 IU/dL を超える
循環血中への放出が妨げられる。この遺伝子につい
レベルに維持するとともに,FFP を 12 時間ごとに
ては,FV・FVIII 重複欠乏症をきたす多数の異なる
投与して FV レベルを 25 U/dL 以上に維持する。
( 69,71 )
変異が報告されている
。
③ 妊 娠
この疾患を有する妊婦の管理に関するデータは未
臨床症状
だ報告されていない。妊娠中の FV レベルは一貫し
軽症皮下出血や鼻出血などの軽症出血は一般的に
て増加することも減少することもないが,FVIII レ
認められるが,ほとんどの場合,FV および FVIII
ベルは妊娠期間を通じて増加する。したがって,分
の循環血中レベルは,より重症の自然出血を十分に
娩中および分娩後の出血リスクは FV レベル次第で
32
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
は,他の血液凝固異常症を有する妊婦の管理に関す
血漿中 FVII レベル
血漿中 FVII レベルは環境因子と遺伝因子の双方
る一般的推奨事項に準じて,血友病施設と密に連携
によって決まり,血漿中レベルのバラツキの原因の
をとりながら産科部門で管理するべきである。分娩
時に血液製剤補充療法が必要であるか否かを確認す
1/3 は後者によるものである。環境因子の中で,脂
肪摂取と血漿中トリグリセリドレベルは FVII:C レベ
るため,妊娠第 3 期において FV および FVIII レベ
ルと正の相関を示すが,年齢や肥満,糖尿病,女性,
ルを測定するべきである。分娩中は,ウイルス不活化
性ホルモン剤の使用はすべて FVII レベルに影響を
処理がなされた血漿を用いて,FV レベルを止血レベ
及ぼす。
あると考えられる。この疾患を有する妊婦について
ルである 15 U/dL を超えるレベルに維持しなけれ
5 種(あるいは6種)のヒト F7 遺伝子の遺伝子多
ばならない。一方,FVIII レベルはこの間 50 IU/dL
型が,血漿中 FVII:C レベルと血漿中 FVIIa レベルの
を超えるレベルに維持しなければならない。帝王切
双方に影響を及ぼすことが明らかになっている( 80 )。
開を施行する場合は,FV レベルが 15 U/dL 未満の
これらの中で最も重要な遺伝子多型は,エキソン 7
女性については術創が完全に治癒するまで FV の補
における Arg353Gln 遺伝子多型であり,この遺伝
充を継続するのが賢明であろう。FV レベルおよび
子多型は英国人一般集団の約 20 %で認められる。
FVIII レベルがそれぞれ 15 U/dL,50 IU/dL を超
この遺伝子多型のヘテロ接合体は FVII:C および
えている妊婦では硬膜外麻酔の施行が可能である。
④ 新生児
FVII:Ag レベルの約 25 %の低下と関連しており,
ホモ接合体は血漿中 FVII レベルの約 50%の低下と
新生児における FV・FVIII 重複欠乏症は,臍帯
関連している。
血または末梢血を使って診断することができる。こ
の疾患が認められた新生児にビタミン K を投与する
FVIII 製剤による定期補充療法を原則的に適用する
遺伝性 FVII 欠乏症
FVII 欠乏症は,稀な遺伝性血液凝固異常症の中で
最も一般的にみられる疾患である。重症 FVII 欠乏症
( FVII:C が 2 IU/dL 未満)の有病率は 1:500,000 ∼
1:300,000 と推定されている。また,この疾患は常染
必要はない。この疾患では新生児における頭蓋内出
色体劣性遺伝疾患であり,血族結婚の多い地域で発
血は報告されていない。
生頻度が有意に高い。FVII レベルと出血リスクとの
場合は,筋注ではなく経口投与とし,小児向け予防
接種は皮下注射とすべきである。これらの罹患小児
は期待通りに管理可能と考えられ,血漿あるいは
相関は比較的弱く,FVII レベルが極めて低いにもか
FVII 欠乏症
かわらず,ほとんど症状のない症例もあれば,FVII
レベルがかなり高いにもかかわらず,重大な出血性
分子生物学
FVII は,約 50 kDa のビタミン K 依存性糖蛋白質
で,2 種類の形態で血漿中に存在し体内を循環して
いる。1 つは血中 FVII の大部分を占める不活性型の
一本鎖糖蛋白質で,濃度は 10 nmol/L( 0.5 µ g/mL )
である。もう 1 つは,はるかに少量(約 10 ∼ 110
pmol/L )で存在する活性型の二本鎖糖蛋白質であ
る。FVII 遺伝子は第 13 染色体の 13q34 に存在し,
長さは約 12 kb で,406 個のアミノ酸から成る成熟
型蛋白質をコードする 9 個のエキソンで構成されて
いる。FVII は組織因子と相互作用するため,血液
に み ら れ, 全 症 例 の 15 ∼ 60 % で 認 め ら れ て い
凝固開始における主要要素である。
る( 82 )。
素因を有する症例もある。
臨床症状
FVII 欠乏症における出血症状は実に様々である(81)。
鼻出血,歯肉出血,月経過多そして他の粘膜出血が
一般的である。FVII 欠乏症の女性では月経過多や
慢性鉄欠乏症がしばしば認められる。この疾患の重
症症例では関節内出血も報告されているが,常に認
められているわけではない。重症症例( FVII:C が
2 IU/dL 未満 )では中枢神経系への出血が一般的
33
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
これらの出血は出生後間もなくみられることが多
することが多い。これらの定量法では,わずか 0.01
く,この症状は高い罹患率および死亡率と関連して
IU/dL の FVII が検出可能である。しかし,これらの
定量法は機能性 FVII 定量法より先に行うべきでは
いる。
ない。
診 断
PT の延長が認められ,正常血漿と 1:1 で混和す
るとインヒビターが存在しない限り PT の延長が是
正される場合には,FVII 欠乏症が疑われる。APTT,
TT,フィブリノゲンレベルは正常である。新生児の
FVII レベルは低いため,FVII 欠乏症が疑われる場合
には年齢と妊娠期間に相応する FVII レベルを参照
③ FVIIa 定量法
FVII 活性が全く認められない試料では,FVII:C
および FVII:Ag の定量結果は等しいはずである。
FVIIa については 2 種類の直接的定量法が報告され
ているが,FVII 欠乏症の診断においてベースライ
ン FVIIa レベルを測定することにほとんど意味はな
いと考えられる。
( 10 )
することが重要である
。
FVII 欠乏症の診断を下す前に,ビタミン K 欠乏症
や血液凝固異常症の他の後天的原因を除外するこ
FVII 欠乏症と血栓症
FVII 欠乏症との関連において血栓症が報告され
とが重要である。試験的にビタミン K による治療を
ているが,その機序は不明である( 80 )。
行ってみるのもよいかもしれない。症例によっては,
家族歴の調査も診断の確定に有用である。FVII 欠
雑化される可能性のある早産児あるいは生後間も
遺伝性 FVII 欠乏症
( http://www.
FVII 突然変異に関するウェブサイト
193.60.222.13/index.htm )には FVII 遺伝子の 120
ない新生児で特に困難である。このような症例で
の変異がリストされている。他の多くの疾患と同様
は,ビタミン K を補充した後に,再評価する必要が
に,FVII 遺伝子内における反復変異が多数報告さ
ある。
れている。
乏症の診断は,ビタミン K 欠乏症により評価が複
① 機能性 FVII 定量法
機能性 FVII 活性( FVII:C )は,PT に基づく 1 段
て得られた結果が最も正確に in vivo FVII レベルを
管 理
FVII 欠乏症症例を管理するための現在の治療選
択としては,抗線溶薬,血漿,中間純度 FIX 製剤(プ
ロトロンビン複合体製剤)
,FVII 製剤,rFVIIa 製剤
がある。血漿中 FVII の in vivo 半減期は約 5 時間と
法で測定する。FVII 欠乏症では,稀にではあるが,
使用するトロンボプラスチンによって測定値が異な
ることがある( 83 )。ヒトトロンボプラスチンを使用し
反映すると考えられることから,ヒトトロンボプラ
短いが,出血が発生した際にはより短縮すると考え
スチンの使用が推奨される。機能性 FVII の定量に
られている( 87 )。重症症例( FVII:C が 2 IU/dL 未満)
おいて FVII:C を測定する場合は,FVII から FVIIa
では rFVIIa 製剤が選択薬であるが( 1 ),この適応で
への転換には制限があるため,不活性チモーゲンと
は未だ認可されていない。
生 成 前 の FVIIa の 両 者 を 測 定 す る べ き で あ る。
① 現在使用可能な治療薬
FVII:C を測定するための血液試料は,4℃で保存し
ておくと FVII が活性化し,FVII レベルの著しい過
使用されているが,その有効性に関する情報はほと
剰評価につながりかねないため,この温度で保存す
んどないのが現状であり,他の治療法がない場合を
( 84 )
るべきではない
。
血 漿:FFP は FVII 欠乏症の治療において広く
除き使用するべきではない。FFP は,単独または
② 免疫学的 FVII 定量法
FVII 製剤との併用で,様々な外科手術において使
FVII 抗原( FVII:Ag )は,モノクローナル抗体また
用されている( 88,89 )。持続的投与が必要とされる症
はポリクローナル抗体を使用した酵素免疫吸着測定
例において,FFP は十分量を速やかに投与すること
法( ELISA )または免疫放射定量法( IRMA )で測定
が困難であり,過剰輸液が生じる危険性がある。
34
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
FVII 欠乏症症例の管理において,FVII 源としての
FFP の使用は推奨されない。
FVII 製剤:FVII 製剤は,様々な急性出血の治療
FIX 製剤およびプロトロンビン複合体製剤(PCC )
:
において有用性が実証されている。
i ) 粘膜出血 ̶ FVII レベルを 40 ∼ 100%に是正
中間純度 FIX 製剤は,量は一定でないながらも
することにより,全例が 15 分以内に止血され
FVII を含有しており,FVII 欠乏症症例の管理にお
ている( 103 )。
ii ) 頭蓋内出血 ̶ 8 歳男児では FVII 製剤 37 IU/
いてその有用性が実証されている( 90 ∼ 92 )。これらの
FVII 欠乏症症例には PCC は推奨されない。
FVII 製 剤: 血 漿 由 来 FVII 製 剤( BPL 社 お よ び
Baxter 社)は,自然出血を引き起こした FVII 欠乏症
症例の治療,様々な外科手術,重症 FVII 欠乏症患
kg が 6 時間ごとに投与され,11 日間の治療に
おけるトラフ値は 4 %で,FVII レベルのピーク
値 は ほ ぼ 100 % で あ っ た。37 歳 男 性 で は 16
IU/kg と 8 IU/kg が 6 時間ごとに交互に投与
され,10 日間治療された。FVII レベルのピー
ク値は 30%台後半であった。FVII 製剤による
外科手術中の補充療法では,6 ∼ 12 時間の投
与間隔で 24 時間 ∼ 16 日間にわたる治療期間
において,全例のトラフ値は 8 ∼ 65%で,いず
れの症例においても FVII レベルのピーク値は
ほぼ 100%であった。
iii ) 定期補充療法 ̶ FVII 製剤は,重症 FVII 欠乏
児における出血予防において有用性が実証されてい
症患児における定期補充療法においても,その
る( 93 ∼ 95 )。これらの製剤は,ウイルス伝播リスクを抑
有用性が実証されている。長期定期補充療法に
制するためのウイルス不活化処理がなされている。
おいてガイドラインで提案されている投与量
製剤に含まれる FVII は極めてまちまちであるが,
それらはほとんどの場合,製造業者により提示され
ている。また,これらの製剤には活性型の FVII,FIX
および FX も含まれており,使用に伴う動・静脈血
栓症が報告されているため,使用に当たっては注意
を要する。肝疾患を有する症例や重症創傷症例,
アンチトロンビン欠乏症症例,および肝臓が比較的
未熟である新生児では使用を避けるべきである。
rFVIIa 製剤:報告されているデータは未だ限られ
は,
10 ∼ 50 IU/kg の週 1 ∼ 3 回投与である(レ
ているが,rFVIIa 製剤は FVII 欠乏症症例の管理に
ベル III のエビデンスに基づくグレード B の推
( 96 ∼ 102 )
,第一選
奨事項)
。FVII の短い半減期を考慮すると逆説
。rFVIIa 製剤の半減期は血漿由来
的ではあるが,臨床の現場では成功しているよ
おいて安全で有効な治療薬であり
(1)
択薬といえる
FVII 製剤の半減期よりも短いと考えられ,これは
特に,FVII のクリアランスが亢進していることが証
明されている小児や妊婦でいえることである。
フィブリン糊:局所止血を容易にすると考えられ
る。現時点では 2 つの製剤が認可されているが,う
ち 1 つは肝手術での適用に限られている( 1 )。
トラネキサム酸:トラネキサム酸 5 %溶液 10 mL
を口内洗浄薬として使用できる( 8 時間ごと)
。しか
うである( 103 )。
rFVIIa 製剤:Mariani らの研究では,大手術 7 件
と小手術 13 件が施行された 17 例( FVII:C 1%未満
9 例,1%以上 5%未満 5 例)における 27 件の自然
出血に対して rFVIIa 製剤が使用された( 104 )。関節内
血腫 15 件はわずか 1 回の rFVIIa 製剤投与( 14 ∼
30 µ g/kg )で治療され,1 例でのみ無効であった。
③ 外科手術
し,これは市販されていないため,薬局での調剤が
止血に必要とされる最小限の FVII:C レベルにつ
必要である。月経過多の女性では,トラネキサム酸
いては未だ明確ではないが,10 ∼ 15 IU/dL であれ
ば一般的に十分と考えられる。トロンビン生成試験
15 mg/kg の 8 時間ごと(臨床現場では 1 g を 6 ∼
8 時間ごと)の服用(月経期間中のみ)が有効である。 ( TGT )を使用した最近の研究では,TGT の正常化
② 急性出血
には 2 U/dL で十分であることが示唆されているが,
この方法は補充療法のモニタリングには未だ使用さ
効果的止血は,FVII:C 10 ∼ 15 IU/dL で達成可
能である。FVII の補充が必要な FVII 欠乏症症例で
れていない( 105 )。
は,rFVIIa 製剤が推奨される。
FVII 製剤:外科手術では,8 ∼ 40 U/kg( 4 ∼ 6 時
35
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
間ごと)の投与で有用性が実証されている( 89,106 ∼ 109 )。
rFVIIa 製剤の持続輸注が使用された( 111 )。輸注前に
FVII 製剤投与症例では,FVII レベルのピーク値およ
行われた薬物動態試験では極めて高いクリアランス
びトラフ値が過度に上昇しないよう,注意深いモニ
率( 0.208 L/h/kg )と短い半減期(0.884 時間)が認め
タリングが必須である。大手術においては,トラフ値
られ,著者らは妊娠に起因するものであると記載し
の 20 IU/dL 未満への低下は避けなければならない。
ている。この症例には,まず rFVIIa 製剤 13.3 µ g/kg
( 104 )
rFVIIa 製剤:先述した Mariani らの研究
では,
がボーラス投与され,その後,最初の 48 時間は 3.3
9 例が FVII レベル 1 %未満,5 例が 1 %以上 5 %未
満であった。関節内血腫 15 件は rFVIIa 製剤 14 ∼
30 µ g/kg の単回投与で治療され,無効であったの
は 1 例にすぎなかった。重症 FVII 欠乏症症例に対
して,rFVIIa 製剤投与下に 7 件の大手術が施行され
µ g/kg/h の持続輸注,さらに 48 時間 1.66 µ g/kg/h
たが,術中あるいは術後に出血は全く発生しなかっ
新生児の FVII レベルは生理的に低いため,新生
た。これらの症例では,rFVIIa 製剤は最初の 24 時
児における FVII 欠乏症の診断は容易ではないと考
間は 2 ∼ 3 時間ごとに投与され,以降の術後時間は
えられる。このような理由から,新生児の診断に際
より間隔をあけて( 3 ∼ 8 時間ごと)投与された。
しては,年齢および妊娠期間に応じた基準範囲を使
手術が施行された症例については,すべてトラネキ
用して評価しなければならない( 10 )。FVII レベルが
サム酸が併用された。1 例で FVII インヒビターが出
基準値よりも低かった場合は,両親に対するスクリー
現し,rFVIIa 製剤が無効になった。
ニングの実施が診断に有用であるかもしれない。
他の研究グループによっても,様々な臨床状況に
おける rFVIIa 製剤の有用性が報告されている( 96,99,
101,102 )
の持続輸注が施行された。血漿 FVII および FVIIa
レベルは 100 ∼ 150 U/dL に維持され,出血は認め
られなかった。
⑤ 新生児
両親のいずれもが FVII 欠乏症を有する場合は,
妊娠・分娩の際に母子双方の出血リスクを最小限に
。出血を呈している,あるいは術後治療を要
抑える必要がある。これを達成するためには,産科
する FVII 欠乏症症例において,その半数以上で
麻酔医を含めた産科部門と密に連携し,分娩および
20 ∼ 25 µ g/kg( 4 ∼ 6 時間ごと)で治療が成功する
と考えられる(レベル III のエビデンスに基づくグ
。これと併用して,トラネキ
レード B の推奨事項)
サム酸 10 mg/kg を 8 時間ごとに静注,または 25
mg/kg を 8 時間ごとに経口投与するべきである。
歯科手術の場合は,トラネキサム酸 5 %溶液 10 mL
を 8 時間ごとに 5 ∼ 7 日間にわたって口腔内洗浄薬
その後の新生児の検査に備えた管理計画を立てる必
として使用することができる。
るべきである。
rFVIIa 製剤 20 µ g/kg を 6 時間ごとに投与した症
例では,FVII レベルのピーク値が 430 ∼ 830 IU/
dL,トラフ値が 30 IU/dL になる(ただし,結果は
FVII の定量にどのトロンボプラスチンを使用するか
で大きく異なる)
。rFVIIa 製剤の使用に伴うインヒ
ビターの発生が報告されているが,これは稀なよう
要がある。妊娠中は,妊婦の FVII レベルが上昇す
ることがあり,分娩前には妊婦の FVII の定量を行
うべきである。出生時には臍帯血試料を採取して
FVII を定量するべきである。
重症 FVII 欠乏症が認められた新生児は頭蓋内出
血のリスクが高いため,経頭蓋超音波検査を施行す
また,重症 FVII 欠乏症が認められた新生児では
新生児期に定期補充療法が必要になるかもしれな
い。このような症例で特にいえることであるが,適
切な補充療法を行っても出血は生じ得る。
FX 欠乏症
( 110 )
である
。
④ 妊 娠
妊娠中の FVII 欠乏症の管理に関するデータは未
分子生物学
FX は,血液凝固カスケードの共通の経路におい
だ報告されていない。FVII 欠乏症妊婦 1 例( FVII:C
て最初に関与する酵素として,血液凝固系の中で固
3.7 U/dL )の選択的帝王切開では,止血のために
有の位置を占めている。FX 遺伝子は長さ 22 kb で,
36
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
13q34-ter,すなわち FVII 遺伝子の 2.8 kb 下流に位
置し,59 kDa の蛋白質をコードしている。FX は肝
5 IU/dL )では,出血は創傷発生時や外科手術時な
で生合成された後,血漿中に分泌され,二本鎖分子
ど止血負荷がかかった時にのみ生じ得ると考えられ
として 10 µ g/mL の濃度で循環血液中に存在する。
る。軽症症例( FX:C 6 ∼ 10 IU/dL )は,通常のス
FX は, 血 液 凝 固 の 開 始 過 程 に お い て 組 織 因 子,
FVIIa,カルシウムイオン,リン脂質膜から成る複合
体により活性化され FXa となる。しかし,この活
性化は FIXa,FVIIIa,カルシウムイオン,酸性リン
脂質膜から成る tenase 複合体でも生じる。また,in
vitro での FX の活性化は,Vipera russelli 毒( RVV )
クリーニング検査または家族歴の調査で偶然に発見
中にあるメタロプロテアーゼの直接作用によっても
生じ得る。生理学的に,FXa は最も重要なプロトロ
ンビンアクチベーターである。プロトロンビナーゼ複
合体( FXa,FVa,Ca2+,適切な陰性荷電リン脂質膜)
は,プロトロンビンからトロンビンへの転換を 28 万
倍に加速する。
遺伝性 FX 欠乏症
関節症になる可能性がある。中等症症例( FX:C 1 ∼
されることも多い。軽症症例は,軽症皮下出血や月
経過多がみられる程度である。
診 断
PT および APTT の延長が認められ,正常血漿と
1:1 で混和した場合にそれらが是正される場合は,
インヒビターが存在しない限り FX 欠乏症が疑われ
る。診断は,血漿中 FX レベルの測定により確認す
る。血漿中 FX レベルの測定には PT または APTT
に基づく 1 段法,合成基質法,RVV を使用した定
量法,免疫学的定量法の 5 つの異なる定量法があ
る。FX 欠乏症の診断には,PT または APTT に基
づく 1 段法で十分である。PT に基づく FX 定量法
重症(ホモ接合体)FX 欠乏症は常染色体劣性遺
では,一部の症例において,使用するトロンボプラ
伝疾患で,一般集団における発生頻度は 1:1,000,000
スチンの種類によって結果が異なることもある。ま
である。有病率は,血族結婚が一般的な集団でより
た,合成基質法は,機能障害を有する一部の FX 変
高い。ヘテロ接合体 FX 欠乏症の有病率は約 1:500
異体( II 型変異体:免疫学的には正常であるが,機
( 112 )
であるが,ほとんどは臨床的に無症候性である
。
能活性が低下している)で正常値を示すことがある
しかし,一部のヘテロ接合体は,重症の出血傾向
ため,FX 欠乏症のスクリーニング検査として使用
を有し,これは野生型 FX の酵素活性が不十分であ
するべきではない。これらすべての検査法が必要に
るためか,変異蛋白質により血液凝固経路におけ
なるのは,蛋白質の詳しい特徴を調べる場合のみで
る反応の 1 つが阻害されるためであると考えられ
ある。
新生児の FX レベルは低いため,新生児において
る。
臨床症状
FX 欠乏症は様々な出血傾向を示すが,重症症例
( FX:C が 1 IU/dL 未満)は,稀な血液凝固異常症
( 113 )
の中で最も重症であるとされる
。
FX 欠乏症が疑われる場合は,年齢および妊娠期間
に応じた FX レベルの基準範囲に基づいて診断しな
ければならない( 10 )。
また,診断を下す前に,ビタミン K 欠乏症をはじ
めとする血液凝固異常症の後天的原因を除外するこ
FX 欠乏症患者はどの年齢層にもみられ,新生児
とが重要である。試験的なビタミン K の投与も有用
期の重症症例も認められ,臍断端出血を呈する。
であるかもしれない。また,症例によっては,家族
FX 欠乏症において最も頻度の高い症状は鼻出血で,
歴の調査が診断に有用であるかもしれない。
いずれの重症度においても認められる。他の粘膜出
早産児あるいは出生後間もない新生児ではビタミ
血の頻度は比較的低く,主に重症症例で生じる。月
ン K 欠乏症により評価が複雑化される可能性があ
経過多は生殖可能年齢にある女性症例の半数に生
るため,この患者群における FX 欠乏症の診断は特
じる。関節内血腫,術後重症出血,中枢神経系出
に困難である。ビタミン K 投与後に再評価する必要
血も報告されている。再発性の関節内血腫は,重症
があるかもしれない。
37
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
ある。PCC は慎重に使用するべきであり,特に肝
遺伝性 FX 欠乏症
FX は血液凝固系において中心的役割を果たすた
め,FX 遺伝子の変異は稀であると考えられる。FX
チトロンビン欠乏症症例では特に注意を要する( 119 )。
遺伝子ノックアウトマウスは致命的症状を示し,子
これらの製剤はウイルス感染リスクを有意に低下
疾患や大血腫,大創傷を有する症例,新生児,アン
宮内あるいは生後数日で死亡しており,これらの結
させる加熱処理がなされている。
果は FX の完全欠乏は致命的障害であるという仮説
② 粘膜出血
( 114 )
。FX 遺伝子の変異をリ
トラネキサム酸が特に有用である(前項参照)
。月
ストしたウエブサイトは現時点ではないが,約 45 種
経過多の女性では,月経期間中におけるトラネキサ
を支持するものである
( 115 )
の変異が報告されている
ム酸 15 mg/kg の 8 時間ごと(臨床現場では 1 g を
。
6 ∼ 8 時間ごと)の服用が有効であると考えられる。
③ 急性出血
管 理
遺伝性 FX 欠乏症は稀な疾患であり,一般的に定
められた治療ガイドラインはない。現時点の治療選
択は,抗線溶薬,血漿,中間純度 FIX 製剤( PCC )で
ある。rFVIIa 製剤は,アミロイド症関連の後天性 FX
( 116 )
欠乏症の治療において有用性が示唆されている
。
重症出血が生じた場合は,補充療法が必要になる。
( 117 )
FX の生物学的半減期は 20 ∼ 40 時間であるため
,
特定の凝固因子製剤はなく,PCC が選択薬である。
フィブリン糊:局所出血の治療を容易にすると考
えられる。
血 漿:PCC が利用できない,あるいは禁忌であ
る場合は,
FFP を使用することができる(前項参照)。
PCC:PCC は重症 FX 欠乏症症例の通常の定期
補充療法での使用が報告されている( 120 )。この報告
繰り返し輸注により十分なレベルを得ることができ
( Kouides ら)では,在宅療法として Profilnine 30 単
る。止血に必要とされる FX レベルは,術直後も含
位 /kg(週 2 回)が投与された。また,自然出血が
( 118 )
めて,一般的に 10 ∼ 20 IU/dL で十分である
。
① 治療薬
発生した際に追加投与がなされたが,これらの追加
投与は 24 時間で 2 回,あるいは 3 日連続を超える
トラネキサム酸:粘膜出血に特に有用である。ト
ものではなかった。輸注後 48 時間における FX レ
ラネキサム酸は,臨床現場において口腔内洗浄薬と
ベルのトラフ値は 30 U/dL であった。12 か月間の
して使用されている( 5%溶液 10 mL を 8 時間ごと
経過観察では出血は全くみられなかった。また,最
に使用)
。しかし,これは市販されていないため,
近の報告( 121 )では,PCC を使用して一次定期補充療
薬局で調剤する必要がある。
法が成功した FX 欠乏症患児 4 例が報告されている
フィブリン糊:局所出血の止血治療を容易にする
と考えられる。
FFP:ウイルス不活化処理がなされたものを使用
するべきである。FX:C のトラフ値を 10 ∼ 20 IU/
。この 4 例
(うち 1 例は生後 1 か月で開始された)
はすべて重症 FX 欠乏症であり,出生後 24 ∼ 72 時
間以内に重症出血を呈した。
( FX:C が 1 IU/dL 未満)
重症 FX 欠乏症症例 1 例
dL に維持する目的で,最初は 20 mL/kg を投与し,
以降は 3 ∼ 6 mL/kg を 1 日 2 回投与する。
:計算で求
PCC(詳細については文献 1 を参照)
められる投与量は,FX 1 IU/kg の投与により FX
レベルは正常値の 1.5 %上昇するという経験的知見
効果的に出血を予防することが示されている。
に基づいている。トラネキサム酸の併用は血栓症リ
の FX 欠乏症症例での使用に関するデータは限られ
スクを増大させるため,この併用は避けなければな
ている。rFVIIa 製剤の作用機序においては,十分な
らない。FX の半減期は 60 時間であり,通常は毎
日投与する必要はない。しかし,補充療法を行って
FX レベルが重要であると考えられるため,重症 FX
欠乏症では rFVIIa 製剤は有効ではないと考えられ
いる場合は,FX レベルを毎日モニターするべきで
る( 122 )。
38
に関する Royal Free Hospital の未発表データでは,
HT Defix( SNBTS )10 U/kg の 3 日ごとの投与が
rFVIIa 製剤:rFVIIa は,アミロイド関連 FX 欠乏
症の治療における使用が報告されているが( 116 ),他
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
④ 外科手術
重症症例( FX レベルが 1 IU/dL 未満)では,FFP
FX:C が 2 IU/dL を超えている症例の管理
FX レベルが 10 IU/dL を超えている症例,ある
または PCC による定期補充療法により成功してい
いはこれより低いが,過去に止血負荷がかかったこ
る。FFP を使用した症例では,術前に FX レベルが
とがあるにもかかわらず有意な出血歴がない症例で
35 U/dL まで上昇し,術後は 20 U/dL を超えるレ
は補充療法は特には必要とされない。しかし,外科
( 118 )
。有効
手術を施行する必要がある場合は,外科手術の性質
な止血を得るために必要な FX レベルは,20 U/dL
や過去の止血負荷がかかった場合の出血歴を考慮し
で十分と考えられた。しかし,最近の報告では,約
なければならない。
ベルが維持され,出血は発生しなかった
0.05 IU/mL( 5 IU/dL )で十分であることも示され
ている( 121 )。さらに,この報告では,男性症例にお
遺伝性ビタミン K 依存性複数凝固因子欠乏症
ける FX クリアランス率のバラツキが,投与頻度に
分子生物学
影響することも述べられている。
プロトロンビン,FVII,FIX および FX がカルシ
⑤ 妊 娠
( 123 )
,重症
FX レベルは妊娠期間中に上昇するが
FX 欠乏症を有し過去の妊娠で予後が不良であった
ウムに結合しリン脂質膜へ接着するためには,それ
妊婦では積極的な補充療法が有効と考えられる。た
ぞれの Gla ドメイン内の重要なグルタミン酸残基が
γ -カルボキシル化されなければならない。γ -カル
だし,補充療法には血栓症リスクが伴うため,これ
ボキシル化反応は肝酵素 γ -グルタミルカルボキシ
については注意深い評価が必要である。
ラーゼによって触媒され,この反応にはコファクター
⑥ 新生児
として還元型ビタミン K( KH2 )が必要とされる。こ
新生児は生理的に FX レベルが低いため,FX 欠
の γ -カルボキシル化反応において,KH2 はビタミン
乏症の診断が困難であると考えられるが,重症で
K エポキシド( KO )に変換され,これは KO 還元酵
素( VKOR )複合体によって KH2 に再度変換され
る( 124 )。γ -グ ル タミル カ ル ボ キ シ ラ ー ゼ ま た は
VKOR 複合体の遺伝性機能障害は,不十分にカル
あった場合は診断はさほど困難ではない。診断に際
しては,年齢と妊娠期間に応じた基準範囲を参照し
なければならない( 10 )。FX レベルが基準値よりも低
かった場合は,両親に対するスクリーニング検査の
実施が診断の確立に有用であるかもしれない。
ボキシル化された凝固機能の乏しいプロトロンビン,
FVII,FIX,FX の分泌をもたらす。さらに,γ -カ
両親の双方が FX 欠乏症を有する場合は,母子双
ルボキシル化は,機能性蛋白質 C,S および Z,な
方の出血リスクを最小限に抑える対策をもって妊
らびに細胞骨格蛋白質であるオステオカルシンとマ
娠・分娩を管理しなければならない。これを実現す
トリックス Gla 蛋白質の分泌にも必要とされる。
るためには,産科麻酔医を含めた産科部門と密に連
携し,分娩および分娩後の新生児の検査に備えた管
有病率と遺伝
理計画を立てる必要がある。妊娠中は母体の FX レ
遺 伝 性ビタミン K 依 存 性 複 数 凝 固 因 子 欠 乏 症
ベルが上昇する。重症出血のリスクを有するヘテロ
( VKCFD )は,全世界で 20 家系未満について症例
接合体の女性症例では,分娩前に FX レベルを定量
報告の形式で報告されている。これは常染色体劣性
するべきである。新生児については,出生時に臍帯
遺伝疾患である。
血試料を採取して FX を定量するべきである。
重症欠乏症が認められた新生児は頭蓋内出血のリ
臨床症状
スクが高いため,経頭蓋超音波検査を施行するべき
これらの家系で報告されている症状は様々であ
である。重症 FX 欠乏症を有する新生児では新生児
る。重症症例は出生時に自然発生性の頭蓋内出血ま
期を通じて定期補充療法が必要と考えられるが,適
たは臍断端出血を呈する( 125 ∼ 127 ),あるいは乳児期
切な補充療法を行っても出血は生じ得る。
および小児期に自然関節内血腫ならびに後腹膜,軟
39
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
組織または消化管の出血を呈する( 128 ∼ 130 )。重症出
ゼ遺伝子に 2 つのミスセンス変異が特定されてい
血はほとんどの場合,5 U/dL 未満の欠乏凝固因子
る( 125,127,134 )。2 型 VKCFD の原因となる遺伝子座
活性と関連している( 125,126 )。VKCFD の症状は,後
は 16p12-q21 であることが既に証明されている( 135 )。
天性ビタミン K 欠乏症が併存する場合はより重症で
新生児における VKCFD 診断を非常に困難なものに
VKORC-1 と 呼 ば れ る VKOR 複 合 体 の 構 成 要 素
をコード す る 遺 伝 子 が 最 近 同 定 さ れ た が,2 型
VKCFD 症例はこの遺伝子に原因となる変異を有す
する。
る( 136 )。
あり,ビタミン K1 の投与により軽減される。これは,
重症患児では,nasal hypoplasia,distal digital
hypoplasia,epiphyseal stippling,軽度伝音難聴など
管 理
の骨格系異常が認められる( 131,132 )。これらの異常
① ビタミン K
はワルファリン胎芽症でみられる異常と類似してお
ごく最近報告された VKCFD 症例では,ビタミン
り,ビタミン K 依存性蛋白質であるオステオカルシ
である。VKCFD ではプロテイン C およびプロテイ
K1 の経口投与もしくは非経口投与により部分的に,
あるいは完全に凝固因子活性が改善すること,PT
および APTT が正常化すること,さらに出血症状
ン S も異常を呈するが,静脈血栓症の報告はない。
が改善することが示されている( 125,126,130 ∼ 132,134,
ンとマトリックス Gla 蛋白質の機能障害によるもの
137 )
。しかし,他の家系ではビタミン K が無効であっ
( 129,133,138 )
診 断
。これまでの文献からは,ビタミン K
た
罹患者では,プロトロンビン,FVII,FIX,FX 特
異的活性の低下(程度は,各凝固因子ごとに異なる)
と関連する PT および APTT の延長が認められる。
に対する反応と VKCFD の重症度あるいは分子レベ
ルの異常との間に明らかな関連は認められない。
したがって,VKCFD が診断された際には,経口
後天性ビタミン K 欠乏症の原因となる因子およびク
ビタミン K1(フィトメナジオン)が適用になると考え
マリンへの曝露を除外することが重要であり,これ
られる。この経口投与で十分な反応がみられない症
は特に新生児について重要なことである。臨床的に
例に対しては,限られた経験ではあるが,ビタミン
これらが不確かである場合は,空腹時血清中 KH2
K1 10 mg の週 1 回投与を行うことがある( 125,134 )。
を測定し,ほとんどの場合はこの検査の正常結果を
② 出血または外科手術の管理
もってこれらを除外することができる。また,時に
手術を要する,あるいは急性出血を呈している患
クマリン摂取を除外するために血清中ワルファリン
者で,ビタミン K1 に対する反応が不良である症例
プロトロンビン,
の定量が必要になる。VKCFD では,
では,凝固因子製剤による補充療法が必要である。
FVII,FIX,FX の抗原法による定量値には比較的
変化がないが,血清中デス-γ -カルボキシプロトロン
ビン( PIVKA-II )値は亢進する。血清中 KO の上昇
は,VKOR 複 合 体 中 に 分 子 異 常 が 存 在 す る VKCFD( 2 型 VKCFD )と γ -グルタミルカルボキシラー
ゼ活性に障害のある VKCFD( 1 型 VKCFD )とを
急性出血の治療における FFP の使用については経
験が限られているため( 125,133,137 ),ウイルス不活化
処理がなされた製剤が選択薬となる。VKCFD に関
連する凝固因子の中で FVII が最も半減期が短いた
め( 87 ),PT 測定または FVII 活性の定量により治療
効果をモニターするべきである。
区別するマーカーになると考えられる。一部の家系
4 因子含有 PCC は血漿の代わりとして使用可能
ではプロテイン C およびプロテイン S の活性の低下
であるが,これらの薬剤は血栓症や播種性血管内凝
( 125,133 )
が認められている
。
固との関連が報告されているため,症例によっては
十分な注意が必要である( 119 )。
分子異常
③ 妊 娠
重症表現型である 1 型 VKCFD を有する血族結
婚の 2 家系において,γ -グルタミルカルボキシラー
これまでのところ,妊娠中の重症 VKCFD の管
40
理については 1 編の症例報告があるのみであり,こ
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
の症例ではビタミン K1 15 mg の経口投与(毎日)が
の変異が報告されており,通常は単一家系に特異的
出産まで継続された。この症例では会陰切開部から
なものであるが,フランスのバスク地方( 145 )および英
の出血に対して FFP が投与された( 137 )。
( 146 )
国の 11 家系(エキソン 5 に C128X を有する)
で共通の変異が報告されている。
FXI 欠乏症
臨床症状
血友病 A および B に比べると,FXI 欠乏症にお
分子生物学
FXI は,血液凝固系における機能が最近明らかに
された二量体セリンプロテアーゼである。FXI は接
ける出血症状は極めて予測困難で,これは重症症例
触因子として知られているが,現在ではその接触経
出血はヘテロ接合体症例で生じ,FXI:C レベルとは
路は非生理的であると認識されている。血液凝固は,
組織因子 - FVII 経路の活性化によって開始され,ト
無関係である( 147,148 )。出血の最も一般的な原因は
創傷と外科手術で,線溶活性の高い領域(口,鼻,
ロンビンの活性化につながる。組織因子経路は組織
生殖・泌尿器)で特に頻度が高い。扁桃摘出術,
抜歯,
因子経路インヒビター( TFPI )により調節されてい
副鼻腔手術は,重症出血を伴うことがよく知られて
るため,トロンビンが FXI を活性化することができ,
いる。ある手術では出血を呈するが,他の手術では
( 139 ∼ 141 )
。
それによって内因系血液凝固が作動される
でもいえることである。自然出血は極めて稀である。
出血がみられない症例もある。出血症状が真の重症
これらのことは,血液凝固系にとってなぜ FXI が
度を表すものであるか否かについては意見が分かれ
FVIII や FIX ほどには重要ではないのかを説明する
ている。
ものであると考えられるとともに,場合によっては,
FXI 欠乏症(ヘテロ接合体を含む)の女性症例に
なぜ FXI 欠乏症における出血傾向が他の凝固因子
は月経過多( 149,150 )および出産関連の出血のリスクが
によって影響されるのかを説明するものであるかも
伴う。
出血症状は軽症 von Willebrand 病などの他の併
しれない。
FXI 欠乏症は常染色体劣性遺伝疾患であり,特に
存因子に左右されると考えられる( 151,152 )。血友病 A
アシュケナジ(東欧・ロシア系ユダヤ人)で高頻度に
または B,あるいは血小板異常症が併存する症例も
みられ,この集団におけるヘテロ接合体の頻度は 8%
時折報告されている。しかし,これらの知見では実
( 142 )
。FXI 欠乏症はあらゆる人種で報告され
際に観察されている出血症状の違いをすべて説明す
ているが,一般的に重症欠乏症[ FXI:C が 10 U/dL
ることはできない。このような臨床症状のバラツキ
未満(ただし厳密には定義されていない)]の発生頻
が,FXI 欠乏症の管理をより困難なものにしている。
である
( 143 )
度が極めて低く,
1:1,000,000 と推定されている
。
FXI 遺伝子は長さ 23 kb であり,アシュケナジに
おけるほとんどの FXI 欠乏症は 2 種類の遺伝子変
異と関係している。1 つは II 型と呼ばれるエキソン
5 におけるストップコドン,もう 1 つは III 型と呼ば
れるエキソン 9 におけるミスセンス変異であり,い
ずれも FXI 分子の発現低下をもたらす。ユダヤ人に
おけるこの 2 種類の遺伝子変異の発生頻度は等し
く,II 型ホモ接合体では FXI が検出不可能なほど
低く,出血がより重症である症例が典型的で,III
型ホモ接合体では FXI レベルが低下しており(約 10
U/dL ),両者のヘテロ接合体では II 型と III 型の中
( 144 )
間の臨床所見を呈する
。これら以外にもいくつか
他の遺伝性血液凝固異常症の場合と同様に,完全
な家族歴を調査し,リスクを有する者(両親,同胞,
子供)には必ず検査を行うことが重要である。FXI
レベルが極めて低い症例( 10 U/dL 未満)は,ホモ
接合体かへテロ接合体複合症例である。アシュケナ
ジではヘテロ接合体の頻度が極めて高いため,重症
欠乏症のリスクがより高く,注意が必要である。
診 断
FXI レベルが基準範囲を下回った場合に診断を下
す。たいていの試薬と機器の組合せは軽症接触因子
欠乏症に対して感度が良好であり,ほとんどの症例
で APTT の延長が認められる。特に注意すべきこ
41
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
とであるが,多くの検査室で参照されている基準範
における出血は多くの場合,外科手術関連であるた
囲は正しくなく,いくつかの研究グループは特記す
め,これらの症例には FXI レベルを高める治療を行
べき事項として,50 U/dL のカットオフ値は低すぎ,
うべきである。20 ∼ 70 U/dL の症例も出血リスク
正常範囲の下限値は 63 ∼ 80 U/dL であると報告し
があるため,これらの患者では出血歴(特に,過去
( 147 ∼ 150 )
。50 ∼ 70 U/dL の症例においても
に止血負荷がかかった時の出血)の調査や予定され
出血が報告されている。検査室ごとに独自の基準範
ている外科手術の種類などが治療の必要性を判断
囲を確立するべきである。1995 年の S. Kitchen & E.
するうえでよい指針になると考えられる。一部の症
Preston の私信では,凝固因子レベルが正常なドナー
群における平均 FXI レベルは 99 U/dL で,範囲は
60 ∼ 139 U/dL であったと報告されている。
FXI 欠乏症が疑われる症例に対して検査を実施す
例は von Willebrand 因子( VWF )レベルが低下し
ている
ているため,ベースラインレベルの測定が推奨され
る( 148 )。
FFP:FFP で の 治 療 が 成 功 し て い る。 し か し,
いては,ある研究では 40 U/dL 未満で延長が認めら
FXI レベルを治療レベルまで上昇させるためには多
量の FFP が必要とされ,過剰輸液をきたす危険性
がある。15 ∼ 20 mL/kg が効果的であると考えら
れているが( 153 ),他の研究では 50 ∼ 70 U/dL でも
れる( 154,155 )。治療中・治療後のモニタリングが重要
認 められている( 18 )。さらに,もう 1 つの研究では,
であるとともに,ウイルス不活化処理のなされた製
既に FXI 欠乏症と確認された患者から得た試料を検
剤の使用が推奨される。重症症例( FXI:C 15 U/dL
査した結果,ある 1 つの試薬を使った場合に 22 ∼
未満)では FFP 投与で FXI レベルを 30 U/dL 以上
る際は,一部のスクリーニング検査には限界がある
ことを認識しておくべきである。APTT の延長につ
( 17 )
50 U/dL で APTT の正常結果が得られている
。
へ増加できる可能性は低い。
これまでに発表されている研究および EQA プログ
FXI 製剤:FXI 製剤の使用は可能であるが,個々
ラムのデータからは,最も広く使用されている APTT
の患者ベースで評価し,適切と考えられる症例のみ
試 薬 で は 20 ∼ 25 U/dL 未 満 の 症 例 の 試 料 で は
( named-patient basis )に使用を限定する(詳細は文
APTT が延長し,25 ∼ 60 U/dL の試料では正常結
果と異常結果が混在することが示唆される。FXI 活
性の正常下限値はおそらく 60 ∼ 70 U/dL である( 17,
148 )
。したがって,APTT の正常結果をもって軽症
FXI 欠乏症の存在を除外することはできず,特に
FVIII レベルが著しく亢進している場合は,他の凝
固因子のレベルが低下していても APTT を正常化す
。FXI 製剤は血栓形成が懸念されてい
献 1 を参照)
ることがあるため,注意が必要である( 17 )。
るため( 156,157 ),ピーク値が 70 U/dL を超えないよ
うに調整することが重要である。また,FXI 製剤投
与症例におけるトラネキサム酸の使用は避けなけれ
ばならない。
rFVIIa 製剤:適用外使用ではあるが,成人の外科
手術症例での使用が成功している( 158 )。
トラネキサム酸:トラネキサム酸は FXI 欠乏症の
治療に広く使用されており,軽症症例に対して,ある
管 理
FXI 欠乏症症例の大部分は,ほとんど問題を有し
いは血漿または rFVIIa 製剤投与での補助的治療と
ていない。しかし,外科手術および創傷は適切に管
過多を有する女性 FXI 欠乏症症例でも有効である。
理することが重要である。軽症血友病 A または B
フィブリン糊:局所止血治療を容易にするうえで
して有効であるかもしれない。また,本剤は,月経
症例と同様に,これらの症例は出血リスクの存在を
有用であるかもしれない。
忘れがちであるため,十分な管理が施されない危険
② 粘膜出血
性がある。さらに,ほとんどの医師がこの疾患に精
トラネキサム酸:臨床の現場において,トラネキ
通していない。
サム酸 5%溶液 10 mL が 8 時間ごとの口腔内洗浄薬
① 治療選択
として使用されている。しかし,これは市販されて
( FXI:C 10 ∼ 20 U/dL 未満)
重症 FXI 欠乏症症例
42
いないため,薬局での調剤が必要である。月経過多
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
症例では,月経期間中に 15 mg/kg 8 時間ごと(臨床
現場では 1 g 6 ∼ 8 時間ごと)の服用が有効と考え
⑤ 妊 娠 FXI 欠乏症の女性は月経過多のリスクがあり,し
られる。
ばしばこれが診断のきっかけとなる( 160 ∼ 163 )。この疾
③ 自然出血
患をもつ妊婦では,しばしば QOL が低下する。出
産時の出血または分娩後出血は,危機的状況をもた
この患者群は稀である。
らすことがある。妊娠中の FXI レベルに関するデー
④ 外科手術
この患者群において外科手術を施行する場合は,
タはまちまちであるが,一般的に臨床的に重要な変
たとえ小手術であっても,FXI 欠乏症での経験が豊
化はみられていない。FXI レベルが heterozygous
富な血液専門医の監視下,あるいはこれらの専門家
の範囲にある女性は分娩時に出血をきたす可能性が
に相談したうえで施行しなければならない。重症症
ある。
例の場合,外科手術は通常,血友病医療施設で施行
経腟分娩:FXI レベルが 15 ∼ 70 U/dL で,過去
される。複数の戦略が適用可能であり,各症例の状
に止血負荷を経験しているにもかかわらず出血歴
況に合わせて治療法を変えていく必要がある。重症
のない女性では,“ watch and wait ”のポリシーは正
症例に対する小手術では 30 U/dL を超える FXI レ
当化される。
ベル,大手術では 45 U/dL を超えるレベルが止血
( 61 )
FXI レベルが約 15 ∼ 70 U/dL で,重大な出血歴
。臨床においては,大手術
がある,または,過去に止血負荷を経験していない
では術前 70 U/dL を目標とするべきである。FXI
妊婦では,トラネキサム酸の 3 日間投与がしばしば
の半減期は約 52 ± 22 時間であるため,毎日投与す
使用され,分娩中に初回投与を行う。
レベルと考慮できる
る必要はないと考えられる。毎日 FXI レベルをモ
ニタリングすることが推奨される。
抜歯は,重症症例であってもトラネキサム酸経口
投与( 1 g × 4/ 日,抜歯前日から 7 日間投与)の単
( 159 )
独療法で実施可能と考えられる
。
軽症症例は出血傾向が様々で,かつ予測困難であ
( 148 )
( FXI:C 10 ∼ 20 U/dL 未満)
重症 FXI 欠乏症妊婦
では,分娩中に FXI 製剤を投与するべきである。
帝王切開:重症症例( FXI:C 10 ∼ 20 U/dL 未満)
では FXI 製剤を投与するべきである。FXI レベル
が約 20 ∼ 70 U/dL の症例では,出血歴と FXI レ
ベルに応じて治療が必要であるか否かを判断する。
。ウイルス不活化処理の
硬膜外麻酔:一般的に,FXI 欠乏症妊婦では使用
なされた FFP を併用しながらのトラネキサム酸経口
を控えるべきであるが,既に FXI 製剤が投与され
投与,または後者による単独療法を考慮するべきで
十分な反応( FXI レベルの増加)が得られている場
ある。若年症例の大手術では,凝固因子製剤の投与
合には使用可能である。
が必要と考えられる。
⑥ 新生児
るため,管理が難しい
FXI 製剤:重症症例( FXI:C 10 ∼ 20 U/dL 未満)
新生児期における自然出血は報告されていない。
あるいは FXI レベルが 20 ∼ 70 U/dL の症例での
また,FXI 欠乏症に起因する新生児頭蓋内出血も報
大手術では,FXI 製剤の使用が推奨される。FXI レ
告されていない。
ベルが前述の上限に近い症例では,出血歴と手術の
割 礼:重大な出血を招くことがあるとともに,
種類を考慮して判断する。投与量は 30 U/kg を超え
これが重症 FXI 欠乏症の最初の症状発現であるこ
るべきではなく,ピーク値が 70 U/dL を超えるべき
ともある。出生時
(臍帯血)
の FXI レベルが 10 U/dL
ではない。また,FXI 製剤を投与している症例では
未満で宗教的慣習で割礼を行う必要がある場合は,
トラネキサム酸の使用は避けた方が賢明であり,こ
延期して 6 か月の時点で FXI レベルをチェックする
の理由は血栓症リスクが懸念されるからである。同
べきである。6 か月時においても 10 U/dL 未満で
様に,心血管系疾患または脳血管系疾患の既往のあ
ある場合は,総合施設において FXI 製剤または
る患者に対して FXI 製剤を使用する場合は注意を
FFP を投与しながら割礼を施行するべきである。し
要する。FXI レベルは毎日チェックする必要がある。
かし,割礼を行う際は宗教上の理由でモヘル(ユダ
43
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
ヤ教における割礼手術の専門家)の立ち会いが重要
大多数は重症の出血性素因を有する。
であるため,事前に病院側との調整が必要である。
FXI レベルが 10 U/dL を超えている新生児では,
トラネキサム酸( 15 mg/kg を 8 時間ごとに 3 日間投
診 断
与)を使用しながら処置を施す。適用外使用ではあ
ある研究では標準正常血漿での値の 53.2 ∼ 221.3%
るが,この状況においては静注用製剤を経口投与
( 167 )
,他の研究で
(平均±標準偏差 105 ± 28.56%)
一般集団における FXIII 活性値は極めて幅広く,
は 51 ∼ 152 U/dL( 169 )と報告されている。
する。
出血時間,PT,APTT は正常である。凝血塊溶
⑦ FXI インヒビターへの対処
FXI 欠乏症症例で FXI 製剤投与後に FXI インヒ
解試験は定性的スクリーニング検査であり,検体と
ビターが発生することは稀である。インヒビター症
なる血漿をカルシウム,トロンビンまたはその両者
( 158,164 )
例に対しては rFVIIa 製剤が有効であろう
。
で凝固させ,十分な FXIII 依存性架橋反応が生じな
い限り凝血塊を溶解しない化学物質に曝露して
FXIII 欠乏症
分子生物学
FXIII はフィブリン安定化因子であるが,先天性
FXIII 欠 乏 症(常 染 色 体 劣 性 遺 伝)ま た は 後 天 性
FXIII 欠乏症は極めて稀な血液凝固異常症で,血族
FXIII レベルを測定する。凝血塊は,5 mol/L 尿素,
2%酢酸,1%モノクロル酢酸またはこれらと類似す
る物質で溶解する。低レベル FXIII に対してどの組
合せが最も感度が高いかについては未だコンセンサ
スが得られていない。Jennings らによる最近の研
究( 170 )では,
FXIII レベルが 5 U/dL 未満( 5%に相当)
結婚の家系で有病率が高い。英国における有病率は
の血漿をカルシウムで凝固させて尿素で溶解した場
1:1,000,000 と推定される( 46 )。南アジア系移民の多
合に異常結果がみられている。トロンビン 30 U/mL
い地域では,有病率が著明に高い。同様に,地球
で凝固させて 2 %酢酸に懸濁した場合は,10 U/dL
規模でみても血族結婚の多い地域では有病率が極め
以下で異常結果が得られている。以前報告したよ
て高い。先天性 FXIII 欠乏症を有する家系が初めて
うに,我々は,顕著な FXIII 欠乏がある場合に最も
報告されたのは 1961 年で,血族結婚の家系であっ
感度の高いトロンビンと酢酸との組合せを推奨する
( 165 )
た
が( 170 ),この以前の研究では FXIII 欠乏症のスクリー
。
ニング検査では使用する試薬のタイプが結果に大き
臨床症状
FXIII レベルが 1 U/dL 未満の症例は,重症自然出
血のリスクが最も高い。1 ∼ 4 U/dL の症例は,中等
度∼重症出血を起こしやすい。5 U/dL を超えてい
ト(活性定量法)が既に市販されている。これらの
る症例でもしばしば出血が発生する( 166 )。特に注意
定量法は,グリシンとエチルエステルとの架橋反応
すべきことであるが,FXIII の定量は困難であり,
による特異的ペプチドの生成( 171 )またはアミン基質
FXIII レベルと臨床症状との関係を複雑にしている。
この疾患をもつ新生児の 80%では,生後数日以
のフィブリノゲンへの取り込み( 172 )に基づいており,
いずれも FXIII によるトロンビンの活性化を利用し
内での臍出血の発生が報告されており,これはこの
ている。ELISA による FXIII 抗原レベルの測定が報
疾患を強く示唆する症状である。その後,この患者
告されているが,広く普及しているわけではない。
,
群は,生涯にわたり重症皮下出血,筋血腫( 32%)
これらの定量法間における結果の一致度は低く,同
,頭蓋内出血( 30%)
,流産,分
関節内血腫( 24%)
一試料を用いて施設間での定量結果を比較した調査
( 167 )
娩後出血,術後・創傷後出血の傾向が続く
。ま
た,FXIII 欠乏症は創傷治癒の遅延につながる( 168 )。
症状が軽症である症例が一部で報告されているが,
44
く影響することも見いだされている。
いくつかのタイプの FXIII 定量法がこれまでに報
告されており,
少なくとも 2 つのタイプの定量法キッ
では,結果が施設間で大きく異なっていた(例えば,
1 つの試料について 3.0 ∼ 130 U/dL という結果が
( 170 )
。これらのデータは,現在の FXIII 定
得られた)
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
量法には正確さという点で問題があることを示して
とが重要であり,大手術を施行する場合や重症出血
いる。スクリーニング検査におけるこれらの相違を
が発生した場合の治療目標は正常レベルを得ること
( 170 )
,FXIII 欠乏症の検出およびその特
考慮すると
である。
徴の解明は困難であることが明らかであり,結果と
これらの製剤を使用するに当たり絶対的な禁忌は
して臨床的重症度と FXIII 欠乏の程度との関係を不
ないが,製造業者は,最近血栓症が発生した症例や
明瞭にしている。
アレルギー反応を有する症例では注意を要すると助
スクリーニング検査で異常結果が得られた場合は,
特異的定量法で確認するべきであり,また,こうし
た定量法はモニタリング目的でも使用可能である。
言している。
③ 外科手術
成人症例では手術直前に FXIII 製剤 10 ∼ 20 単
位 /kg を投与し,血漿中 FXIII レベルをモニターす
ることが推奨される。術後 5 日間あるいは術創が完
管 理
① 定期補充療法
全に治癒するまで,正常な FXIII レベルを維持する
この患者群では脳出血の発生率が高いため,重症
必要がある場合は,さらなる投与が可能である。
症例( FXIII レベル 1 U/dL 未満)については,すべ
④ 妊 娠
て診断以降 FXIII 製剤による定期補充療法を行うべ
FXIII 欠乏症の女性は流産が避けられず,罹患男
きである。これは,4 U/dL 未満の症例についても
性は不妊であると広く考えられているが,この見解
考慮するべきである。また,4 U/dL を超える患者
は文献において確証されていない( 174 )。FXIII は胎
群においても,一部の症例で有効と考えられる( 166 )。
盤着床および妊娠の継続において重要な役割を果
FXIII の循環血中における半減期は 7 ∼ 10 日と
長いため,4 ∼ 6 週間隔で投与する( 166,173 )。自然出
血の予防には 3 ∼ 10 U/dL で十分であるとする報
たしている( 175 )。重症症例の妊婦のうち最大 50%は
( 166 )
告もある
適切な治療を施さない限り流産すると考えられてい
る。したがって,この疾患をもつ女性に対しては診
断時以降月 1 回の間隔で FXIII 製剤を投与し,妊娠
。
10 単位 /kg の 4 週ごとの投与が推奨され,これ
中もこれを継続するべきである。妊娠期間中を通
により再発性の臨床的問題や出血を予防できると考
じて血漿中 FXIII レベルは低下するため,3 U/dL
えられる。
を超えるトラフ値を維持することを目標としながら
FXIII レベルをモニタリングするべきである。
② 急性出血症状
急性出血に対しては全血や FFP,保存血漿,クリ
⑤ 新生児
FXIII の十分な供給源となる。血漿由来 FXIII 製剤は,
FXIII 欠乏症は,新生児において致命的出血の原
因となり,FXIII レベルが 3 U/dL 未満の症例は乳
最小限の量で信頼できる高 FXIII レベルをもたらし,
児期にしばしば出血症状を呈する。重症症例で最も
汚染物質も比較的少ないことに加え,ウイルス不活
一般的に報告されている症状は,臍帯からの持続的
化処理もなれているため,FFP やクリオプレシピテー
出血である( 176 )。頭蓋内出血も,頭血腫,割礼後出
トよりも優れている( 173 )。英国では,rFXIII 製剤が
血とともに,この疾患においてよく認識されている
使用できるようになるまでは,低温殺菌処理のなさ
合併症の 1 つである。このような症状がみられるが,
れた血漿由来 FXIII 製剤を使用するよう推奨されて
通常の血液凝固スクリーニング検査で正常である場
オプレシピテートを使用した治療が成功しており,
(1)
いる
。血小板は FXIII を含有するため,緊急の場
( 169 )
合は血小板輸血が有用と考えられる
。
FXIII 製剤 10 ∼ 20 単位 /kg を投与し,血漿中レ
ベルをモニターしながら止血が得られるまで正常範
囲を維持するべきである。
FXIII 製剤投与後は FXIII レベルをモニターするこ
合には,診断に注意を要する。FXIII 欠乏症は,臍
帯血または末梢血を用いた先述のスクリーニング検
査により診断可能で,FXIII アッセイで確認する。
急性出血の治療には,FXIII 製剤が必要であり,
20 単位 /kg を投与する。FXIII レベルの測定に基づ
き,必要に応じて,また,可能であれば出血が止ま
45
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
るまで投与を続けるべきである。頭蓋内出血が生じ
これは EDS を意味していたのかもしれない。しか
た場合は,最低 2 週間は FXIII レベルを正常範囲内
し,この疾患について初めて明確に記述したのはオ
に維持するべきであり,これには,予防的レジメン
ランダ人外科医 Van Meek’ren であり,1657 年の
に切り替えるまで最大 1 日おきの投与が必要になる
ことであった。その後,1892 年に Tschernogobow
と考えられる。定量データがない場合,一部の臨床
が 2 例を文献で報告するとともに,これらの異常が
医は出血が続いた場合の長期的リスクを考慮して,
結合組織に原発することを提唱し,以来ロシアにお
毎日投与している。急性出血の治療については,さ
いてこの症候群が認識されるようになった。さらに,
らなる研究が必要である。
た新生児(および乳幼児)は,すべて FXIII 製剤に
1901 年に Ehlers(デンマーク人皮膚病学専門家)が
1 例の症例報告を発表し,続いて Danlos(フランス
人医師)が 1907 年に報告し,独立した病態として
よる定期補充療法を 10 U/kg の用量( 4 週ごとに投
認識されるようになった( 179 )。その後,英国におけ
与)で開始するべきである。その後の用量および投
る症候群診断の第一人者であった Weber によりさ
与間隔は,投与前後における FXIII レベルに基づい
らなる一連の報告がまとめられ,これらの報告者ら
て決定する(投与前は 3 U/dL,投与 1 時間後は 60
の名前をとって EDS と命名された( 180 )。
FXIII レベルが 3 U/dL 未満であることが判明し
U/dL を超えていなければならない)。
この疾患の病態の異質性は,すぐに明らかになっ
新生児期に予期せぬ重症出血が生じた場合,特に
た。1960 年代からこれらの病態を分類する試みが
両親が血族結婚である場合には,産科医と血液専門
なされ,1988 年にはベルリン疾病分類表に記載さ
医が密に連携するとともに,注意深い調査が必要で
れるに至った。この疾病分類は,現在では,各病態
ある。
の 病 因 に 基 づ く 改 訂 疾 病 分 類( 1997 年 に Ville-
franche で合意された)として分類されている( 181 )。
インヒビター
先天性 FXIII 欠乏症では FXIII インヒビターの発
過において様々な薬剤による慢性治療との関連で発
分 類
EDS は,徴候または症状に基づいて主に 6 つの
タイプに分類される( Table 1 )。稀に,皮膚生検と
生することがある( 167 )。このような症例では出血が
ともに,詳細な生化学分析が行われる。
生は極めて稀である。稀ではあるが,他の疾患の経
重症であると考えられ,脳出血での死亡例が数件報
告されている( 177 )。
治療法に関しては未だコンセンサスが得られてい
分子生物学
EDS は皮膚の強さ,弾力,治癒特性などに障害
ない。ステロイドやシクロホスファミドによる免疫抑
をきたす結合組織の異常を呈する。コラーゲン蛋
制,高用量 FXIII 製剤,血漿免疫吸着療法が有用で
白質は三量体蛋白質複合体である。コラーゲンの
あるかもしれない。
構造には少なくとも 29 個の遺伝子が関与してお
り,これらの遺伝子は 15 個の染色体に存在する。
Ehlers-Danlos 症候群
コラーゲン分子には 19 の異なる形態があり,EDS
はコラーゲンの生合成と代謝における様々な異常に
Ehlers-Danlos 症候群( EDS )は,異質性の遺伝
より引き起こされる( 182 )。
性結合組織疾患群であり,関節の過伸展,皮膚の過
伸展および組織脆弱化を特徴としている。有病率は
1:10,000 ∼ 1:5,000 と考えられ,男女いずれにも,
また,あらゆる人種,民族にみられる( 178 )。
診 断
EDS は,臨床所見および家族歴に基づいて診断
される。患者の多くはいずれか 1 つの特定のタイプ
ヒポクラテスは,遊牧民とスキタイ人にみられる
に何の相違もなく当てはまるわけではなく,診断の
関節弛緩および多発瘢痕に関して記述しているが,
遅れや見過ごしもしばしばである。血液専門医を受
46
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
Table 1. The classification of Ehlers-Danlos Syndromes (EDS) [181] Reprinted by permission of Wiley-Liss, Inc., a subsidiary of John
Wiley & Sons, Inc.
Type
Inheritance
Basic defect
Clinical features
Classical (was EDS I gravis +
II mitis type)
AD
Abnormality of type V collagen
encoded by COL5A1 + COL5A2 genes
Hypermobility (was EDS III
hypermobile type)
AD
Unknown
Vascular (was EDS IV
arterial or ecchymotic type)
AD
Structural defects of type III collagen
encoded by the COL3A1 gene
Kyphoscoliosis (was EDS VI
ocular or scoliosis type)
AR
Deficiency of lysyl hydroxylase,
a collagen modifying enzyme
Arthrochalasia (was included
in EDS VII)
AD
Deficiency of chains in type I collagen
due to skipping exon 6 in COL1A1
or COL1A2 gene
Dermatosparaxis (was
included in EDS VII)
AR
Deficiency of procollagen I N-terminal
peptidase in collagen type I
Major: skin laxity, typical scars, joint
hypermobility
Minor: velvety skin, molluscoid
pseudotumours, muscle hypotonia,
easy bruising, hernias
Major: skin laxity, velvet skin, joint
hypermobility
Minor: recurrent joint dislocations,
chronic limb and joint pain
Major: arterial/intestinal/uterine fragility
or rupture, easy bruising, typical
facial appearance
Minor: hypermobility of small joints,
tendon and muscle rupture, club feet,
varicose veins
Major: joint laxity, severe muscle
hypotonia in infants scoliosis from
birth, scleral fragility
Minor: tissue fragility, easy bruising,
arterial rupture, Marfanoid habitus,
microcornea, osteopenia
Major: severe joint hypermobility
with dislocations, congenital
bilateral hip dislocations
Minor: skin laxity, tissue fragility
and scarring, easy bruising, muscle
hypotonia, kyphoscoliosis
Major: severe skin fragility, sagging
redundant skin
Minor: soft, dough skin texture,
premature rupture of fetal membranes,
easy bruising, hernias
Three rare forms of EDS, with the classical phenotype have been recognized, although their syndromic status is unclear: X-linked EDS,
described in a single large UK family (was known as EDS type V); periodontal EDS with prominent gum fragility, AD inheritance (was
known as EDS type VIII); EDS with abnormal platelet aggregation, inheritance possibility AR (was known as EDS type X).
Two entities previously thought to be EDS have now been removed from the EDS classification: EDS type IX has been reclassified as
occipital horn syndrome, an X-linked disorder of copper metabolism; EDS type XI is now termed familial joint hypermobility.
診する患者で最も一般的な症状は皮下出血である。
PT,APTT,TT は正常である。出血時間は通常正
( 183 )
関節の過伸展は Beighton スケールで評価する。
関節の伸展の程度は年齢や性別,家族・民族背景に
。しばしば血小板異
よって異なる。スコアが 5/9 以上であれば過伸展と
皮膚の過伸展は,特に問題のない部位で検査する
判定され( 186 ),総合スコアは次の要領で算出される。
i ) 小指の受動的背屈が 90° を超える ― 片方の手
常であるが,稀に延長する
常が報告されている( 184 )。
べきである。抵抗が感じられるまで皮膚を引っ張っ
て評価する。乳幼児は皮下脂肪が多いので評価が難
( 185,186 )
しい
。
につき 1 点。
ii ) 親指が前腕屈筋面に向かって受動的に対位する
― 片方の手につき 1 点。
47
Full Translation: P. H. B. Bolton-Maggs, et al.
iii ) 肘の過伸展が 10°を超える ― 片方の肘につき
1 点。
iv ) 膝の過伸展が 10° を超える ― 片方の膝につき
1 点。
v ) 胴体を前屈すると膝が完全に伸展して手掌を床
に平らに付けていられる ― 1 点。
れ,整形外科医は関節を安定させるために装具が必
軽症皮下出血は自然斑状出血として現れ,しばし
与が処方されているが,その有益性については未だ
ば同じ部位に再発し,茶色く変色する特徴がある。
要になるかもしれない。関節の外科的修復が必要に
なることもある。理学療法士の協力を得て筋肉を強
化するための運動療法を患者に課したり,関節の適
切な使い方や関節を維持するための方法を指導する
のも有益である。1 日 4 g 以下のアスコルビン酸投
比較試験で実証されていない。
このような軽症皮下出血は,乳幼児期に出現する症
遺伝カウンセリングは全例に対して行うべきであ
状と考えられる。なお,皮下出血が小児虐待による
り,妊娠前の症例では子宮破裂のリスクが高まるた
ものである可能性も留意しなければならない。
め,特に重要である( 188 )。
組織脆弱は,軽度皮下出血あるいはジストロフィー
心関連の問題は進行する可能性があるため,これ
型瘢痕として現れる。瘢痕はほとんどの場合,圧点
については心臓病専門医が評価・治療に当たるべき
(膝,肘,前頭,顎)に認められ,薄くて萎縮性の
紙状外観を呈する。しばしば瘢痕は拡大,変色し,
( 185,186 )
創傷治癒が障害される
。
である。
時として眼科医(近視,網膜裂孔,角膜円錐)ある
いは歯科医(歯周炎)へ協力を依頼する必要がある。
僧帽弁逸脱症および近位大動脈拡張は,心エコーか
EDS 患者では局所麻酔がしばしば無効であるこ
,磁気共鳴映像( MRI )に
コンピュータ断層撮影( CT )
とが報告されている。いずれの症例であれ,処置中
基づいて診断するべきである。僧帽弁逸脱症は一般的
に予期せぬ痛みを訴える患者,特に十分量の局所麻
であるが,大動脈拡張の頻度は低い。慢性関節痛およ
酔を施しているにもかかわらず痛みを訴える患者で
び四肢痛は一般的ではあるが,
X 線所見は正常である。
は,EDS 診断を考慮するべきである。
脊柱後・側弯症型,関節弛緩型,皮膚無力症型は,
古典型な過可動性型や動脈型に比べると極めて頻度
( 185,186 )
が低い
デスモプレシン( DDAVP )による治療を受けてい
る患者において凝固時間や症状の改善がいくつかの
研究で報告されている( 189,190 )。また,EDS 妊婦の
。
一般的に,確認のための血液学的検査は必要では
分娩時の出血を防ぐための DDAVP の予防的投与
ない。変異の生じた遺伝子は生化学検査によって培
に関する 1 編の症例報告もある( 191 )。EDS 合併症を
養皮膚線維芽細胞で検出できる。IV 型,VI 型,そし
治療する,あるいはその進行を遅延させるための特
( 187 )
て一部の VII 型では分子学的検査が有用である
。
定の治療法は現時点ではないが,適切な診断は,妊
娠や外科手術,出血の管理そして遺伝カウンセリン
管 理
グに有益な影響をもたらすと考えられる。出血に対
皮下出血や他の出血に対する特定の治療法という
する治療オプションに関しては,未だ比較試験が行
ものはないが,失血や不快感を最小限に抑えるため
われていない。EDS については,臨床管理のすべ
の処置を講じることはできる。EDS のいくつかの
てのレベルにおいて適切にデザインされた臨床試験
タイプで一般的にみられる皮膚裂開は注意深く対処
が必要である。
しなければならない。これらの損傷は整形外科的な
る。疾患に関する情報は必ず外科医に伝達するとと
死 亡
IV 型症例は,中型動脈の自然破裂により突然死
もに,余分に縫合し,縫合糸は数日間延長して留め
する可能性がある。
形態変化が残らないように適切に修復する必要があ
ておくべきである。出血の再発を抑制する目的で,
術後のトラネキサム酸投与が使用されている。
関節の治療には特別な整形外科的ケアが必要とさ
48
役立つ連絡先
Ehlers-Danlos Support Group, 1 Chandler Close,
ガイドライン:稀な血液凝固異常症 ― United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation( UKHCDO )ガイドラインのレビュー
Richmond N, Yorks DL105QQ, UK。
Ehlers-Danlos National Foundation, 6399 Wilshire
Blvd., Ste 510, Los Angeles, CA 90048, USA。
謝 辞
FXI 欠 乏 症 の 章 で ご 協 力 を い た だ い た Niamh
O’Connell 氏,FXIII 欠乏症および Ehlers-Danlos 症
候群の章でご協力をいただいた Adrian Minford 氏
に謝意を表する。また,ご校閲をいただいた Paul
Harrison 氏に深謝する。
注 記
本ガイドラインに記載した助言や情報は本稿の出
稿時点で正しいと考えられたものであり,著者ら,
UKHCDO,出版者は,いずれも法的責任または賠
償責任を負うものではない。
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